(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ワクチン産生のための生物学的に産生された核酸
(51)【国際特許分類】
C12N 15/50 20060101AFI20240905BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240905BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240905BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240905BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240905BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240905BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240905BHJP
C07K 14/165 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240905BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240905BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C12N15/50 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C07K14/165
A61K31/7088
A61P31/14
A61K39/215
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515395
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2022075140
(87)【国際公開番号】W WO2023036947
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512154932
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート・バーゼル
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAT BASEL
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】キッパー,エンヤ タチアーナ
(72)【発明者】
【氏名】クリムカイト,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ミッテルホルツァー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】オッティ,ファビアン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG32
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、SARS-CoV-2の2つまたは3つの一次核酸配列部分および3つ以下の二次核酸配列部分を含む生物学的に産生された核酸配列であって、二次核酸配列部分が、ORF3a、ORF6、ORF7aまたはORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする、核酸配列に関する。本発明はさらに、本発明の核酸を産生するための宿主細胞またはキット、本発明の核酸をコードするベクター、および本発明の核酸の発現によって得ることができる生成物、例えば、ウイルスエンベロープに関する。本発明はさらに、本発明の核酸またはそれに由来する生成物を含む、好ましくはSARS-CoV-2の予防に使用するための医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的に産生された核酸配列であって、
a)2つまたは3つの一次核酸配列部分であって、
i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
iii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
iv)配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする一次核酸配列部分を含み、ならびに
b)3つ以下の、2つ以下の、もしくは1つ以下の二次核酸配列部分であって、ORF3a、ORF6、ORF7a、またはORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードし、ここで、a)iii)の配列部分、およびORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分が存在しない場合には、a)i)、a)ii)、a)iv)およびORF6、ORF7aまたはORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分から選択される5つ以下の、4つ以下の、3つ以下の核酸配列部分が存在する、二次核酸配列部分を含む、または前記二次核酸配列部分を含まない
前記核酸配列。
【請求項2】
2つまたは3つの一次核酸配列部分を含み、ここで、一次核酸配列部分が、
i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
iii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードし、
配列番号4(SARS-CoV-2 M)によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分を有しない、
請求項1に記載の核酸配列。
【請求項3】
3つの一次核酸配列部分:
i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
iii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含む、請求項2に記載の核酸配列。
【請求項4】
1)ORF7およびORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分を含まず、
2)ORF6およびORF7abによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分を含まず、または
3)ORF6、ORF7abおよびORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分を含まない、
請求項2または3に記載の核酸配列。
【請求項5】
アミノ酸配列a)i)をコードする一次核酸配列部分、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分、およびアミノ酸配列a)i)をコードする一次核酸配列部分と、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分との間に位置する核酸配列の配列部分を含み、
ここで、前記配列部分が、
I)配列番号35、もしくは配列番号35に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、
II)配列番号36、もしくは配列番号36に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、または
III)配列番号37、もしくは配列番号37に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列
を含む、請求項4に記載の核酸配列。
【請求項6】
i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
iii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする2つまたは3つの核酸配列部分を含む生物学的に産生された核酸配列であって、
配列番号4(SARS-CoV-2 M)によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分を有さず、
好ましくは、配列番号33によって定義される配列を含む、
前記核酸配列。
【請求項7】
2つの一次核酸配列部分:
i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含み、かつ
配列番号4(SARS-CoV-2 M)および配列番号3(SARS-CoV-2 E)によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分を有さず、
好ましくは、配列番号34によって定義される配列を含む、
請求項3に記載の核酸配列。
【請求項8】
SARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分について、
i)ORF3aが、配列番号5によって定義される配列であり、
ii)ORF6が、配列番号6によって定義される配列であり、
iii)ORF7aが、配列番号7によって定義される配列であり、および/または
iv)ORF8が、配列番号9によって定義される配列である、
請求項1に記載の核酸配列。
【請求項9】
3つの一次核酸配列部分を含む、請求項1または8に記載の核酸配列。
【請求項10】
二次核酸配列部分のうちの1つが、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする、請求項1、8または9のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項11】
一次核酸配列部分および二次核酸配列部分が、5’から3’方向に、以下の順序:
1.配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
2.ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
3.配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
4.配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
5.ORF6によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
6.ORF7aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
7.ORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
8.配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列
で配列されている、請求項1、8から10のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項12】
a)E遺伝子、ORF6遺伝子、ORF7a遺伝子およびORF8遺伝子、または
b)E遺伝子、ORF6遺伝子およびORF8遺伝子
の欠失および/または機能不全を伴う、配列番号10(SARS-CoV-2ゲノム)によって定義される核酸配列またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列
を含む、請求項1、8から11のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項14】
プラスミドベクターである、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
a)配列番号11(ORF7a遺伝子を有する生物学的に産生されたベクター)によって定義される配列、もしくはそれと90%の配列同一性を有する配列、または
b)配列番号12(ORF7a遺伝子を有しない生物学的に産生されたベクター)によって定義される配列、もしくはそれと90%の配列同一性を有する配列
を含む、請求項14に記載のベクター。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか一項に記載の核酸配列または請求項13から15のいずれか一項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
その少なくとも1つの補完的なSARS-CoV-2配列をさらに含む、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
請求項16または17に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、ウイルスエンベロープおよび/またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質の産生の方法。
【請求項19】
I.)請求項1から12のいずれか一項に記載の核酸配列、請求項13から15のいずれか一項に記載のベクター、または請求項16に記載の宿主細胞、および
II.)(I.)に含まれる核酸配列に対して補完的な少なくとも1つのSARS-CoV-2配列部分
を含むキット。
【請求項20】
ウイルスエンベロープまたはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質であって、
a)請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの核酸をパッケージングする、および
b)請求項1から6のいずれか一項に記載の少なくとも1つの核酸を使用した、請求項13から15のいずれか一項に記載のベクターを使用した、請求項16もしくは17に記載の宿主細胞を使用した、請求項18に記載の方法を使用した、または請求項19に記載のキットを使用した遺伝子発現によって得ることができる、
前記ウイルスエンベロープまたはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質。
【請求項21】
a)請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの核酸、および
b)請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの核酸を使用した、請求項13から15のいずれか一項に記載のベクターを使用した、請求項16もしくは17に記載の宿主細胞を使用した、請求項18に記載の方法を使用した、または請求項19に記載のキットを使用した遺伝子発現によって得ることができる、少なくとも1つのアミノ酸配列
を含む医薬組成物。
【請求項22】
少なくとも1つのアミノ酸配列が、請求項20に記載のウイルスエンベロープまたはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
医薬品として使用するための、請求項21または22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
SARS-CoV-2感染症またはその少なくとも1つの症状の予防に使用するための、請求項21または22に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS-CoV-2の2つまたは3つの一次核酸配列部分および3つ以下の二次核酸配列部分を含む生物学的に産生された核酸配列であって、二次核酸配列部分が、ORF3a、ORF6、ORF7aまたはORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする、核酸配列に関する。本発明はさらに、本発明の核酸を産生するための宿主細胞またはキット、本発明の核酸をコードするベクター、および本発明の核酸の発現によって得ることができる生成物、例えば、ウイルスエンベロープに関する。本発明はさらに、本発明の核酸またはその由来の生成物を含む、好ましくはSARS-CoV-2の予防に使用するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンの急速な開発および利用可能性は、多くのウイルスおよび細菌と戦う上で重要である。適切なワクチンの産生は、多段階的な、複雑なプロセスであり、高い投資にもかかわらず、常に成功するわけではない。典型的には、適切なワクチンの開発には数年を要する。これらの長期の開発時間は、特に新しく生じる病原体、変異病原体に関する主要な問題からなり、これは、疫学的な観点から、新しい疾患の出現に対して、できたとしても遅すぎる反応しか可能でないためである。対照的に、新しい、または重度に変異した病原体の解析、同定およびさらなる検出は今では、数週間、または数日以内でも可能であり、これは、この1世紀の間での大きな進歩である。
【0003】
この文脈において、ウイルスは特別な標的であるが、これは、他の種からヒトへの拡散を引き起こす高度な変異頻度を有するためである。これらのウイルスの急速な拡散により、ウイルスは現代の医学に対する主要な課題となっている。新規に出現したウイルスの検出/同定と、ワクチンの開発の間の通常の時間は、典型的には数年である。わずかな場合、十分に事前知識があれば、試験的なワクチンが数ヶ月以内に供給され得る。しかし、この期間は、数千人または数百万人の人々が感染するまでの典型的な時間よりもはるかに長い。このような急速な拡散はまた、現代社会の高い移動性の直接的な結果である。
【0004】
新しいウイルスの同定の直後に、十分な量および最高品質のワクチンが利用可能であり、新しいウイルスの最初の激増地点に何らかのかたちで接近した全てのヒトの全国的なワクチン接種が可能であることが理想的である。さらに、このようなワクチンの理想的な方法は、ウイルスの進化および適応に反応できることであろう。このような理想的な産生可能性は、現在の当業者には実現不可能であると考えられる。
【0005】
特に直近の過去では、コロナの大流行によって、ワクチン産生の適切なツールの開発の妥当性が劇的に増大した。コロナウイルスSARS-CoV-2に対するワクチンの開発は、長期間の大流行および関連する世界的な危機を封じ込める、証明されている唯一の手段であることは、一致して同意されている。
【0006】
したがって、大量および高品質のコロナウイルスSARS-CoV-2に対するワクチンの産生を可能にする設備を提供することには需要がある。
【0007】
上記の技術的問題は、本明細書に開示され、特許請求の範囲に定義される実施形態によって解決される。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、とりわけ、以下の実施形態に関する:
1.生物学的に産生された核酸配列であって、
a)2つまたは3つの一次核酸配列部分であって、
i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
iii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
iv)配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする一次核酸配列部分を含み、ならびに
b)3つ以下の、2つ以下の、もしくは1つ以下の二次核酸配列部分であって、ORF3a、ORF6、ORF7a、またはORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードし、ここで、a)iii)の配列部分、およびORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分が存在しない場合には、a)i)、a)ii)、a)iv)およびORF6、ORF7aまたはORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分から選択される5つ以下の、4つ以下の、3つ以下の核酸配列部分が存在する、二次核酸配列部分を含む、または二次核酸配列部分を含まない
核酸配列。
2.2つまたは3つの一次核酸配列部分を含み、ここで、一次核酸配列部分が、
i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
iii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードし、
配列番号4(SARS-CoV-2 M)によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分を有しない、
実施形態1に記載の核酸配列。
3.3つの一次核酸配列部分:
i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
iii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含む、実施形態2に記載の核酸配列。
4.1)ORF7およびORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分を含まず、
2)ORF6およびORF7abによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分を含まず、または
3)ORF6、ORF7abおよびORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分を含まない、
実施形態2または3に記載の核酸配列。
5.アミノ酸配列a)i)をコードする一次核酸配列部分、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分、およびアミノ酸配列a)i)をコードする一次核酸配列部分と、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分との間に位置する核酸配列の配列部分を含み、
ここで、配列部分が、
I)配列番号35、もしくは配列番号35に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、
II)配列番号36、もしくは配列番号36に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、または
III)配列番号37、もしくは配列番号37に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列
を含む、実施形態4に記載の核酸配列。
6.i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
iii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする2つまたは3つの核酸配列部分を含む生物学的に産生された核酸配列であって、
配列番号4(SARS-CoV-2 M)によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分を有さず、
好ましくは、配列番号33によって定義される配列を含む、
核酸配列。
7.2つの一次核酸配列部分:
i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含み、かつ
配列番号4(SARS-CoV-2 M)および配列番号3(SARS-CoV-2 E)によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分を有さず、
好ましくは、配列番号34によって定義される配列を含む、
実施形態3に記載の核酸配列。
8.SARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分について、
i)ORF3aが、配列番号5によって定義される配列であり、
ii)ORF6が、配列番号6によって定義される配列であり、
iii)ORF7aが、配列番号7によって定義される配列であり、および/または
iv)ORF8が、配列番号9によって定義される配列である、
実施形態1に記載の核酸配列。
9.3つの一次核酸配列部分を含む、実施形態1または8に記載の核酸配列。
10.二次核酸配列部分のうちの1つが、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする、実施形態1、8または9のいずれか1つに記載の核酸配列。
11.一次核酸配列部分および二次核酸配列部分が、5’から3’方向に、以下の順序:
1.配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
2.ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
3.配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
4.配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
5.ORF6によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
6.ORF7aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
7.ORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
8.配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列
で配列されている、実施形態1、8から10のいずれか1つに記載の核酸配列。
12.a)E遺伝子、ORF6遺伝子、ORF7a遺伝子およびORF8遺伝子、または
b)E遺伝子、ORF6遺伝子およびORF8遺伝子
の欠失および/または機能不全を伴う、配列番号10(SARS-CoV-2ゲノム)によって定義される核酸配列またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列
を含む、実施形態1、8から11のいずれか1つに記載の核酸配列。
13.実施形態1から12のいずれか1つに記載の核酸配列を含むベクター。
14.プラスミドベクターである、実施形態13に記載のベクター。
15.a)配列番号11(ORF7a遺伝子を有する生物学的に産生されたベクター)によって定義される配列、もしくはそれと90%の配列同一性を有する配列、または
b)配列番号12(ORF7a遺伝子を有しない生物学的に産生されたベクター)によって定義される配列、もしくはそれと90%の配列同一性を有する配列
を含む、実施形態14に記載のベクター。
16.実施形態1から12のいずれか1つに記載の核酸配列または実施形態13から15のいずれか1つに記載のベクターを含む宿主細胞。
17.その少なくとも1つの補完的なSARS-CoV-2配列をさらに含む、実施形態16に記載の宿主細胞。
18.実施形態16または17に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、ウイルスエンベロープおよび/またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質の産生の方法。
19.I.)実施形態1から12のいずれか1つに記載の核酸配列、実施形態13から15のいずれか1つに記載のベクター、または実施形態16に記載の宿主細胞、および
II.)(I.)に含まれる核酸配列に対して補完的な少なくとも1つのSARS-CoV-2配列部分
を含むキット。
20.ウイルスエンベロープまたはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質であって、
a)実施形態1から12のいずれか1つに記載の少なくとも1つの核酸をパッケージングする、および
b)実施形態1から6のいずれか1つに記載の少なくとも1つの核酸を使用した、実施形態13から15のいずれか1つに記載のベクターを使用した、実施形態16もしくは17に記載の宿主細胞を使用した、実施形態18に記載の方法を使用した、または実施形態19に記載のキットを使用した遺伝子発現によって得ることができる、
ウイルスエンベロープまたはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質。
21.a)実施形態1から12のいずれか1つに記載の少なくとも1つの核酸、および
b)実施形態1から12のいずれか1つに記載の少なくとも1つの核酸を使用した、実施形態13から15のいずれか1つに記載のベクターを使用した、実施形態16もしくは17に記載の宿主細胞を使用した、実施形態18に記載の方法を使用した、または実施形態19に記載のキットを使用した遺伝子発現によって得ることができる、少なくとも1つのアミノ酸配列
を含む医薬組成物。
22.少なくとも1つのアミノ酸配列が、実施形態20に記載のウイルスエンベロープまたはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質である、実施形態21に記載の医薬組成物。
23.医薬品として使用するための、実施形態21または22に記載の医薬組成物。
24.SARS-CoV-2感染症またはその少なくとも1つの症状の予防に使用するための、実施形態21または22に記載の医薬組成物。
【0009】
したがって、本発明は、a)2つまたは3つの一次核酸配列部分であって、i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、iii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、およびiv)配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする一次核酸配列部分を含み、ならびにb)3つ以下の、2つ以下の、もしくは1つ以下の二次核酸配列部分であって、それぞれが、ORF3a、ORF6、ORF7aまたはORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードし、ここで、a)iii)の配列部分、およびORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分が存在しない場合には、a)i)、a)ii)、a)iv)およびORF6、ORF7aまたはORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分から選択される5つ以下の、4つ以下の、3つ以下の核酸配列部分が存在する、二次核酸配列部分を含む、または二次核酸配列部分を含まない核酸配列に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の核酸は、好ましくは、生物学的に産生される。
【0011】
用語「核酸配列」は、本明細書で使用される場合、DNA、RNA、およびその任意の修飾物のいずれかを指す。核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。修飾は、さらなる電荷、分極率、水素結合、静電気相互作用および流動性を核酸リガンド塩基または核酸リガンド全体に取り込む他の化学基を提供するものを含むが、これに限定されない。そのような修飾としては、2’-位糖修飾、5-位ピリミジン修飾、8-位プリン修飾、環外アミンにおける修飾、4-チオウリジンの置換、5-ブロモまたは5-ヨード-ウラシルの置換、骨格修飾、メチル化、異常な塩基対の組合せ、例えば、イソ塩基イソシチジンおよびイソグアニジンが挙げられるが、これらに限定されない。修飾としてはまた、キャッピング等の3’および5’修飾も含まれ得る。
【0012】
本明細書に記載される任意のデオキシリボ核酸は、代替的に、対応するリボ核酸を指してもよい。これらにおいて、対応するリボ核酸は、チミン(T)がウラシル(U)に置換された上記定義の配列部分を有する。
【0013】
用語「一次」および「二次」は、本明細書で使用される場合、必ずしも構造特性を記述することなく、核酸の2つのグループを区別するために使用される。
【0014】
参照配列に関する用語「パーセント(%)配列同一性」は、配列のアラインメントを行い、最大パーセント配列同一性を達成するために必要であればギャップを導入した後の、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しない場合の、参照配列のヌクレオチドまたはアミノ酸残基と同一である候補配列のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセント比率として定義する。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のアライメントは、当業者の範囲内である様々な方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公に利用できるコンピューターソフトウェアを使用して達成できる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大限のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアライメントするための適切なパラメータを決定することができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明のヌクレオチド酸配列は、タンパク質生成物の特性を変更することなく、または実質的に変更しないことにより(例えば、ヌクレオチド酸配列またはその生成物の産生プロセスを促進するために)変更される。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明のヌクレオチド酸配列の変更は、以下の群から選択される少なくとも1つの変更を含む:
1)タンパク質生成物の特性を変更しない、または実質的に変更しないことにより、参照配列に対する塩基置換、挿入、または欠失、
2)コドンを同義形で置き換えること、ならびに
3)(選択的)ORF、予測される遺伝子内部転写開始部位、および/または翻訳速度を微調整する配列モチーフ(予測または潜在)(例えば、リボソーム停止モチーフ)等のタンパク質コード配列内に存在する仮説的遺伝エレメントの数の減少。
【0017】
本発明の変更されたヌクレオチド酸配列の遺伝子が機能的であり続けるかどうかを試験することにより、アミノ酸コード以外のさらなる情報が適切な機能のために必要な遺伝子が同定されると考えられる。
【0018】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるヌクレオチド酸配列は、コードされるタンパク質生成物の生物学的機能を改善するために変更される。
【0019】
そのような生物学的機能としては、安定性の向上、産生の促進(例えば、追加の複製開始配列の挿入)、抗原性の変更、複製の制限が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるヌクレオチド酸配列は、類似の構造を有するが、SARS-CoV-2バリアントのタンパク質の機能等、代替の生物学的機能を有する目的の少なくとも1つの代替タンパク質をコードするように変更される。
【0021】
当業者は、目的の少なくとも1つの代替タンパク質をコードする配列(例えば、変異ウイルスのヌクレオチド酸配列)を解析して、関連する変更(例えば、変異)を本明細書に記載される対応するヌクレオチド酸配列に実施することにより、そのような変更されたヌクレオチド配列を得ることができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるSARS-CoV-2は、del 69-70、RSYLTPGD246-253N、N440K、G446V、L452R、Y453F、S477G/N、E484Q、E484K、F490S、N501Y、N501S、D614G、Q677P/H、P681HおよびP681Rの群から選択される少なくとも1つの変異を含む、SARS-CoV-2バリアントである。
【0023】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるSARS-CoV-2は、系統B.1.1.207、系統B.1.1.7、クラスター5、501.V2バリアント、系統P.1、系統B.1.429/CAL.20C、系統B.1.525、系統B1.620、系統C 37および系統B.1.621の群から選択されるSARS-CoV-2バリアントである。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるSARS-CoV-2は、群19A、20A、20C、20G、20H、20B、20D、20F、20I、20Eおよび21Aから選択されるNextstrainクレイドによって記載されるSARS-CoV-2バリアントである。
【0025】
当業者は、新たに発生するSARS-CoV-2バリアントに基づいて、本明細書に記載されるさらなる変異または変異の組合せを実施する方法を認識している。
【0026】
いくつかの実施形態において、目的の少なくとも1つの代替タンパク質をコードする配列は、少なくとも1つのSARS-CoV-2バリアントに特徴的なタンパク質をコードする配列を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのSARS-CoV-2バリアントに特徴的なタンパク質は、配列番号13、配列番号14、配列番号15および/または配列番号16の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有する配列によってコードされるタンパク質である。
【0027】
この関連する変更の実施は、例えば、本明細書に記載されるヌクレオチド酸配列のパーセント比率を超えない、少なくとも1つの塩基の挿入、欠失、置換および/または修飾によって達成することができる。
【0028】
用語「生物学的に産生された」は、本明細書で使用される場合、1000塩基未満の長さを有する本発明による核酸のオリゴマー断片が、PCRで主導される少なくとも1つの分子生物学手法によって産生されることを意味する。したがって、短いオリゴマーは、化学試薬を使用する化学反応ステップのみによって産生されるわけではない。また、PCRで主導される分子生物学手法を、個々の後期産生ステップ、例えば、既に長いオリゴマーの接合の間にも使用し得る。後者は、同様に任意に合成性であり得る。生物学的に産生された核酸は、天然に存在する核酸と同一であり得る。生物学的に産生された核酸は、以下の配列特徴のうちの1つまたは複数の点で、完全合成核酸とは異なる:
1.)当業者にとって公知である、1つまたは複数の酵素制限部位、特に、IIS型制限エンドヌクレアーゼの制限部位が存在すること、
2.)対応する完全合成核酸と比較して、生物学的に産生された核酸内に9を超える同一塩基の連続単位を有する反復核酸配列が存在するか、または頻度が増加していること、
3.)対応する完全合成核酸と比較して、12を超える塩基を有する反復塩基対配列が存在するか、または頻度が増加していること、
4.)対応する完全合成核酸に比して、その逆相補配列として、当業者に公知の12を超える塩基単位からなる間接的反復塩基対セグメントが存在するか、または頻度が増加していること、
5.)対応する完全合成核酸に比して、当業者に公知の9を超える連続的な重複塩基単位(ジヌクレオチド反復)の反復を有する核酸配列が存在するか、または頻度が増加していること、および
6.)対応する完全合成核酸に比して、当業者に公知の5を超える連続的な三重塩基単位(トリヌクレオチド反復)の反復を有する核酸配列が存在するか、または頻度が増加していること。
【0029】
語句「SARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有する配列」は、本明細書で使用される場合、配列番号10によって定義される配列によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有する配列を指す。SARS-CoV-2アミノ酸配列の構造および機能は、当技術分野で公知である(例えば、Yadav, Rohitash et al., 2021, Cells vol. 10,4 821; Arya, Rimanshee, et al., 2021, Journal of molecular biology 433.2: 166725; Gorkhali, R., et al., 2021, Bioinformatics and Biology Insights, 15, 11779322211025876; Redondo N, et al., 2021, Front Immunol. Jul 7;12:708264を参照)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有する配列は、配列番号10に含まれる配列、または配列番号10に含まれる配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、もしくは少なくとも99.9%の配列同一性を有する配列である。そのような%配列差異は、例えば、配列番号10におけるSARS-CoV-2バリアントの1つもしくは複数の変異に由来するか、またはコードされるアミノ酸配列の機能を変更することなく、もしくは実質的に変更することなく配列を変更する挿入、欠失および/もしくは置換、好ましくは保存的な挿入、欠失および/もしくは置換に由来することができる。
【0030】
ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能、ならびにORF3a配列およびその変異は、当技術分野で公知である(例えば、Bianchi M, et al., 2021, Int J Biol Macromol. 2021;170:820-826.を参照)。ORF3a配列における最も一般的な変異は、V13L、Q57H、Q57H+A99V、G196VおよびG252Vである。いくつかの実施形態において、ORF3aの機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分は、配列番号5をコードする配列、または配列番号5をコードする配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、もしくは少なくとも99.9%の配列同一性を有する、配列番号5をコードする配列である。いくつかの実施形態において、ORF3aの機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分は、配列番号17に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有する、配列番号17によって定義される配列である。そのような%配列差異は、例えば、Bianchi M, et al., 2021, Int J Biol Macromol. 2021;170:820-826に記載された1つもしくは複数の変異、またはコードされるアミノ酸配列の機能を変更することなく、もしくは実質的に変更することなく配列を変更する挿入、欠失および/もしくは置換、好ましくは保存的な挿入、欠失および/もしくは置換に由来することができる。
【0031】
ORF6によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能、ならびにORF6配列およびその変異は、当技術分野で公知である(例えば、Hassan, Sk Sarif, Pabitra Pal Choudhury, and Bidyut Roy, 2021, Meta Gene 28: 100873.を参照)。いくつかの実施形態において、ORF6の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分は、配列番号6をコードする配列、または配列番号6をコードする配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、もしくは少なくとも99.9%の配列同一性を有する配列である。いくつかの実施形態において、ORF6の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分は、配列番号18に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有する、配列番号18によって定義される配列である。そのような%配列差異は、例えば、Hassan, Sk Sarif, Pabitra Pal Choudhury, and Bidyut Roy, 2021, Meta Gene 28: 100873に記載された1つもしくは複数の変異に由来するか、またはコードされるアミノ酸配列の機能を変更することなく、もしくは実質的に変更することなく配列を変更する挿入、欠失および/もしくは置換、好ましくは保存的な挿入、欠失および/もしくは置換に由来することができる。
【0032】
ORF7aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能、ならびにORF7a配列およびその変異は、当技術分野で公知である(例えば、Yashvardhini, Niti, et al., 2021, Biomedical Research and Therapy 8.8: 4497-4504.を参照)。いくつかの実施形態において、ORF7aの機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分は、配列番号7をコードする配列、または配列番号7をコードする配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、もしくは少なくとも99.9%の配列同一性を有する配列である。いくつかの実施形態において、ORF7aの機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分は、配列番号19に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有する、配列番号19によって定義される配列である。そのような%配列差異は、例えば、Yashvardhini, Niti, et al., 2021, Biomedical Research and Therapy 8.8: 4497-4504に記載された1つもしくは複数の変異に由来するか、またはコードされるアミノ酸配列の機能を変更することなく、もしくは実質的に変更することなく配列を変更する挿入、欠失および/もしくは置換、好ましくは保存的な挿入、欠失および/もしくは置換に由来することができる。
【0033】
ORF7bによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能、ならびにORF7b配列およびその変異は、当技術分野で公知である(例えば、Hassan, Sk Sarif, Pabitra Pal Choudhury, and Bidyut Roy, 2021, Meta Gene 28: 100873.を参照)。いくつかの実施形態において、ORF7bの機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分は、配列番号8をコードする配列、または配列番号8をコードする配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、もしくは少なくとも99.9%の配列同一性を有する配列である。いくつかの実施形態において、ORF7bの機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分は、配列番号20に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有する、配列番号20によって定義される配列である。そのような%配列差異は、例えば、Hassan, Sk Sarif, Pabitra Pal Choudhury, and Bidyut Roy, 2021, Meta Gene 28: 100873に記載された1つもしくは複数の変異に由来するか、またはコードされるアミノ酸配列の機能を変更することなく、もしくは実質的に変更することなく配列を変更する挿入、欠失および/もしくは置換、好ましくは保存的な挿入、欠失および/もしくは置換に由来することができる。
【0034】
ORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能、ならびにORF8配列およびその変異は、当技術分野で公知である(例えば、Badua, Christian Luke DC, Karol Ann T. Baldo, and Paul Mark B. Medina., 2021, Journal of medical virology 93.3: 1702-1721; Hassan, Sk Sarif, et al., 2021, Computers in biology and medicine 133: 104380.を参照)。いくつかの実施形態において、ORF8の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分は、配列番号9をコードする配列、または配列番号9をコードする配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、もしくは少なくとも99.9%の配列同一性を有する配列である。いくつかの実施形態において、ORF8の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分は、配列番号21に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有する、配列番号21によって定義される配列である。そのような%配列差異は、例えば、Badua, Christian Luke DC, Karol Ann T. Baldo, and Paul Mark B. Medina., 2021, Journal of medical virology 93.3: 1702-1721に記載された1つもしくは複数の変異に由来するか、またはコードされるアミノ酸配列の機能を変更することなく、もしくは実質的に変更することなく配列を変更する挿入、欠失および/もしくは置換、好ましくは保存的な挿入、欠失および/もしくは置換に由来することができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明は、a)2つの一次核酸配列部分であって、1つの一次核酸配列部分が、配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ、1つの一次核酸配列部分が、配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、2つの一次核酸配列部分を含む、本明細書に記載の核酸配列に関する。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明は、a)2つの一次核酸配列部分であって、1つの一次核酸配列部分が、配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ、1つの一次核酸配列部分が、配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、2つの一次核酸配列部分を含む、本明細書に記載の核酸配列に関する。
【0037】
いくつかの実施形態において、本発明は、a)2つの一次核酸配列部分であって、1つの一次核酸配列部分が、配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ、1つの一次核酸配列部分が、配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、2つの一次核酸配列部分を含む、本明細書に記載の核酸配列に関する。
【0038】
いくつかの実施形態において、本発明は、a)2つの一次核酸配列部分であって、1つの一次核酸配列部分が、配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ、1つの一次核酸配列部分が、配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、2つの一次核酸配列部分を含む、本明細書に記載の核酸配列に関する。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明は、a)2つの一次核酸配列部分であって、1つの一次核酸配列部分が、配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ、1つの一次核酸配列部分が、配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、2つの一次核酸配列部分を含む、本明細書に記載の核酸配列に関する。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明は、a)2つの一次核酸配列部分であって、1つの一次核酸配列部分が、配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ、1つの一次核酸配列部分が、配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、2つの一次核酸配列部分を含む、本明細書に記載の核酸配列に関する。
【0041】
本発明による核酸によって、例えば、研究、またはワクチンなどの医薬組成物に使用することができるウイルス、ウイルス部分および/またはウイルス粒子の産生を有意に加速させることが可能になる。これらは言及されたワクチンであり、ウイルスまたはその変異に対して、特にコロナウイルスSARS-CoV-2に対して、非常に特異的な明確に定義されたワクチンをもたらす。
【0042】
結果として得られる配列が定義されたゲノムは、PCRで主導される分子生物学手法によって生成され、これにより、ウイルスがその遺伝的再生産および複製のために必要とする遺伝子および調節エレメントの欠失を導入することが可能となる。
【0043】
意図的な欠失は、それらが、各々のウイルス遺伝子が産生細胞株の内部で発現されるプラスミドとの配列重複を保持しないように設計することができる。
【0044】
本発明による核酸は、化学合成によって生成される完全合成配列とは異なっており、分子生物学手法による核酸の生物学的産生を可能にする。
【0045】
タンパク質発現に使用される一般的な発現システムを利用してタンパク質成分が産生され得るということは、ワクチンが非常に迅速に大量に利用可能になり得ることを意味する。これは、コロナウイルスSARS-CoV-2のような、拡散によって大流行の比率が想定され、そのため封じ込めに広範なワクチン投与が必要なウイルスにとっては非常に重要なことである。
【0046】
本発明は、特定の欠失、脱落または機能不全によって、高い抗原性を有する複製制限されたウイルス粒子の効率的な産生が可能になる、組合せアプローチを提供する。いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2 Eをコードする一次核酸配列部分は、欠失しているか、機能不全であるか、または本発明の核酸配列中に存在しない。したがって、本発明者らは、SARS-CoV-2ゲノムの特定の配列部分(または同等の機能を有する配列)を、複製制限されたウイルス粒子の効率的な産生のために、組み合わせるかまたは省略することができることを見出した。
【0047】
本発明者らは、高い抗原性のためには、本明細書に記載の2つまたは3つの一次核酸配列部分が必要であることを見出した。これらは、本明細書に記載される二次核酸配列部分と任意の組合せで組み合わせることができる。これらの組合せは、二次核酸配列の単一または二重の欠失/機能不全/省略を含み得る。
【0048】
配列部分の欠損は、再生産を制限する可能性があり、効率的な産生を可能にするために産生システムにおいて補完される可能性がある。
【0049】
本発明者らは、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能が欠失しているかまたは存在せず、かつSARS-CoV-2 Eをコードする一次核酸配列部分を含まない本発明の核酸が、さらなる配列部分が存在しないか、欠失しているかまたは機能不全である場合に特に有用であることを見出した。したがって、元のSARS-CoV-2ウイルスゲノムと比較したコード要素の三重(またはそれ以上の)欠失は、ORF3aおよびEの二重欠失よりも有用である。いくつかの実施形態において、本発明の核酸は、SARS-CoV-2によってコードされる配列と比較した場合、ORF3a/E二重欠失、ならびにORF6欠失、ORF8欠失、ORF7a欠失、M欠失、S欠失およびN欠失の群から選択される機能のさらなる欠失を含む。
【0050】
核酸配列の再生産は、ウイルス再生産において重要な働きをする機能的な配列部分を省略することによって低下する。これらの部分は、例えば、合成されないこと、欠失させること、または機能不全にすることによって省略することができる。そのため、SARS-CoV-2は特殊化した細胞で効率的に産生され得るが、他の細胞では再生産する能力がないか、限られている。
【0051】
SARS-CoV-2の感染に由来する免疫性は、SARS-CoV-2 Sタンパク質を介したワクチン接種に由来する免疫性よりも多くの防御を提供することが証明されている(例えば、Gazit, Sivan, et al., 2021, medRxivを参照)。これらの配列は、野生型ウイルスの構造タンパク質またはそれらと同等の機能を有するタンパク質の組合せをコードする。これにより、T細胞エピトープを含む免疫系にとって利用可能な広範なエピトープが可能になる(例えば、Grifoni, A., et al., 2020, Cell, 181(7), 1489-1501を参照)。この広範なエピトープによって、既存の免疫の有無にかかわらず、患者における広範なウイルスバリアントに対する免疫が可能になり得る。
【0052】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、本発明の核酸により、複製能が制限されているが、元のウイルスと類似の抗原性を有する組合せウイルス様タンパク質を効率的に産生できるという知見に基づくものである。
【0053】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、2つまたは3つの一次核酸配列部分を含み、一次核酸配列部分が、i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、およびiii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードし、核酸配列が、配列番号4(SARS-CoV-2 M)によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分を有しない、核酸配列に関する。
【0054】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、3つの一次核酸配列部分:i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、およびiii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む核酸配列に関する。
【0055】
したがって、本実施形態における本発明の核酸配列は、SARS-CoV-2ゲノムの任意の他の配列部分または他の全ての部分を含み得るが、配列番号4(SARS-CoV-2 M)によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分は含まない。例えば、配列番号4(SARS-CoV-2 M)によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有する配列は、存在しないか、欠失させられているか、または機能不全である。
【0056】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、ORF7およびORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分を含まない核酸配列に関する。
【0057】
したがって、本実施形態における本発明の核酸配列は、SARS-CoV-2ゲノムの任意の他の配列部分または他の全ての部分を含み得るが、配列番号4(SARS-CoV-2 M)、ORF7および/またはORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分は含まない。例えば、配列番号4(SARS-CoV-2 M)、ORF7およびORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有する配列は、存在しないか、欠失させられているか、機能不全であるか、またはそれらの組合せである(例えば、配列番号4(SARS-CoV-2 M)は存在せず、ORF7およびORF8は機能不全である)。
【0058】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、ORF6およびORF7abによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分を含まない核酸配列に関する。
【0059】
したがって、本実施形態における本発明の核酸配列は、SARS-CoV-2ゲノムの任意の他の配列部分または他の全ての部分を含み得るが、配列番号4(SARS-CoV-2 M)、ORF6および/またはORF7abによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分は含まない。例えば、配列番号4(SARS-CoV-2 M)、ORF6およびORF7abによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有する配列は、存在しないか、欠失させられているか、機能不全であるか、またはそれらの組合せである(例えば、配列番号4(SARS-CoV-2 M)は存在せず、nORF6およびORF7abは機能不全である)。
【0060】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、ORF6、ORF7abおよびORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分を含まない核酸配列に関する。
【0061】
したがって、本実施形態における本発明の核酸配列は、SARS-CoV-2ゲノムの任意の他の配列部分または他の全ての部分を含み得るが、配列番号4(SARS-CoV-2 M)、ORF6、ORF7abおよび/またはORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分は含まない。例えば、配列番号4(SARS-CoV-2 M)、ORF6、ORF7abおよびORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有する配列は、存在しないか、欠失させられているか、機能不全であるか、またはそれらの組合せである(例えば、配列番号4(SARS-CoV-2 M)は存在せず、ORF6、ORF7abおよびORF8は機能不全である)。
【0062】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、配列番号1によって定義されるアミノ酸配列(SARS-CoV-2 N)(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列)をコードする一次核酸配列部分、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分、および前記一次核酸配列部分と前記二次核酸配列部分との間に位置する核酸配列の配列部分を含み、配列部分は、I)配列番号35または配列番号35に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、核酸配列に関する。
【0063】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、配列番号1によって定義されるアミノ酸配列(SARS-CoV-2 N)(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列)をコードする一次核酸配列部分、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分、および前記一次核酸配列部分と前記二次核酸配列部分との間に位置する核酸配列の配列部分を含み、配列部分は、II)配列番号36または配列番号36に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、核酸配列に関する。
【0064】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、配列番号1によって定義されるアミノ酸配列(SARS-CoV-2 N)(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列)をコードする一次核酸配列部分、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分、および前記一次核酸配列部分と前記二次核酸配列部分との間に位置する核酸配列の配列部分を含み、配列部分が、III)配列番号37または配列番号37に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、核酸配列に関する。
【0065】
特定の実施形態において、本発明は、i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、ii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、およびiii)配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする2つまたは3つの核酸配列部分を含み、かつ、配列番号4(SARS-CoV-2 M)によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分を有しない、生物学的に産生された核酸配列に関する。
【0066】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、配列番号33によって定義される配列を含む核酸配列に関する。例えば、配列番号1によって定義されるアミノ酸配列(SARS-CoV-2 N)(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列)をコードする核酸配列部分と、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分との間に位置する、配列番号33によって定義される配列。
【0067】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、2つの一次核酸配列部分:i)配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、およびii)配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号4(SARS-CoV-2 M)および配列番号3(SARS-CoV-2 E)によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする配列部分を有しない、核酸配列に関する。
【0068】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、配列番号34によって定義される配列を含む核酸配列に関する。そのような配列は、例えば、配列番号1によって定義されるアミノ酸配列(SARS-CoV-2 N)(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列)をコードする核酸配列部分と、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分との間に位置する、配列番号34によって定義される配列である。特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、配列番号35によって定義される配列を含む核酸配列に関する。そのような配列は、例えば、配列番号1によって定義されるアミノ酸配列(SARS-CoV-2 N)(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列)をコードする核酸配列部分と、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分との間に位置する、配列番号35によって定義される配列である。
【0069】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、配列番号36によって定義される配列を含む核酸配列に関する。そのような配列は、例えば、配列番号1によって定義されるアミノ酸配列(SARS-CoV-2 N)(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列)をコードする核酸配列部分と、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分との間に位置する、配列番号36によって定義される配列である。
【0070】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、配列番号37によって定義されるアミノ酸配列を含む核酸配列に関する。そのような配列は、例えば、配列番号1によって定義される配列(SARS-CoV-2 N)(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列)をコードする核酸配列部分と、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分との間に位置する、配列番号37によって定義される配列である。
【0071】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、配列番号66によって定義される配列を含む核酸配列に関する。そのような配列は、例えば、配列番号1によって定義されるアミノ酸配列(SARS-CoV-2 N)(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列)をコードする核酸配列部分と、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分との間に位置する、配列番号66によって定義される配列である。
【0072】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、配列番号67によって定義される配列を含む核酸配列に関する。そのような配列は、例えば、配列番号1によって定義されるアミノ酸配列(SARS-CoV-2 N)(またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列)をコードする核酸配列部分と、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分との間に位置する、配列番号67によって定義される配列である。
【0073】
当業者は、配列番号34~37によって定義される配列部分が、典型的には、本明細書に記載される配列部分の間に位置し、配列のさらなる部分が、SARS-CoV-2ゲノムまたはそのSARS-CoV-2バリアントに対応することを認識している。そのため、配列番号34~37は、SARS-CoV-2ゲノムに欠失を導入するための方法を提供する。さらなる欠失、挿入および/または置換を、隣接する配列部分および/または配列のさらなる部分に導入することもできる。
【0074】
本発明者らは、遺伝子操作された産生細胞において、ΔM、ΔEΔM、ΔMΔORF7ΔORF8、ΔMΔORF6ΔORF7abおよび/またはΔMΔORF6ΔORF7ΔORF8ウイルス(実施例9参照)の複数回の細胞継代後に、真正配列が保持され得ることを実証した。さらに、本発明者らは、ワクチンウイルスのいくつかの並行感染において、VeroE6細胞上での複数回のブラインド継代の後に生存ウイルスが出現せず、最初の継代の後に既に、正常なSARS-CoV-2感受性細胞において複製能のあるウイルスが示されないことを示した。本発明者らはさらに、許容性産生細胞における連続継代において、子孫ワクチンウイルスの集団が十分に保存されていることが見出されることを実証した。
【0075】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、本明細書に記載の核酸が、産生細胞における細胞培養下でのウイルス増殖の間に自然発生的に変化する確率の低いウイルスをコードすることができ、一方で、感染性で複製能のある野生型または野生型様のSARS-CoV-2を再生する可能性は低いという知見に基づくものである。そのため、本明細書に記載の核酸は、SARS-CoV-2様抗原および/またはワクチンの安全な産生を可能にする。
【0076】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、SARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分について、ORF3aが、配列番号5によって定義される配列、またはORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を保持している、それと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列である、核酸配列に関する。
【0077】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、SARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分について、ORF6が、配列番号6によって定義される配列、またはORF6によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を保持している、それと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列である、核酸配列に関する。
【0078】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、SARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分について、ORF7aが、配列番号7によって定義される配列、またはORF7aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を保持している、それと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列である、核酸配列に関する。
【0079】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、SARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分について、ORF7bが、配列番号8によって定義される配列、またはORF7bによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を保持している、それと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列である、核酸配列に関する。
【0080】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、SARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分について、ORF8が、配列番号9によって定義される配列、またはORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を保持している、それと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列である、核酸配列に関する。
【0081】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、SARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする二次核酸配列部分について、i)ORF3aが、配列番号5によって定義される配列であり、ii)ORF6が、配列番号6によって定義される配列であり、iii)ORF7aが、配列番号7によって定義される配列であり、および/またはiv)ORF8が、配列番号9によって定義される配列である、核酸配列に関する。
【0082】
本発明者らは、SARS-CoV-2の配列とほとんど同一なORFが、SARS-CoV-2タンパク質の効率的な産生を可能にすることを見出した。
【0083】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、本明細書に記載されるように、SARS-CoV-2タンパク質が効率的に産生され得るという知見に基づくものである。
【0084】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列であって、3つの一次核酸配列部分を含む核酸配列に関する。
【0085】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の核酸配列であって、a)3つの一次核酸配列部分を含み、ここで、1つの一次核酸配列部分が、配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、1つの一次核酸配列部分が、配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ、1つの一次核酸配列部分が、配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、核酸配列に関する。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の核酸配列であって、a)3つの一次核酸配列部分を含み、ここで、1つの一次核酸配列部分が、配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、1つの一次核酸配列部分が、配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ、1つの一次核酸配列部分が、配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、核酸配列に関する。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の核酸配列であって、a)3つの一次核酸配列部分を含み、ここで、1つの一次核酸配列部分が、配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、1つの一次核酸配列部分が、配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ、1つの一次核酸配列部分が、配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、核酸配列に関する。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の核酸配列であって、a)3つの一次核酸配列部分を含み、ここで、1つの一次核酸配列部分が、配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、1つの一次核酸配列部分が、配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ、1つの一次核酸配列部分が、配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、核酸配列に関する。
【0089】
したがって、いくつかの実施形態において、配列は、野生型ウイルスの3つの構造タンパク質またはそれらと同等の機能を有するタンパク質の組合せをコードする。これにより、T細胞エピトープを含む免疫系にとって利用可能な広範なエピトープが可能になる(例えば、Grifoni, A., et al., 2020, Cell, 181(7), 1489-1501を参照)。この広範なエピトープによって、既存の免疫の有無にかかわらず、患者における広範なウイルスバリアントに対する免疫が可能になり得る。
【0090】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、本発明の核酸により、複製能が制限されているが、元のウイルスと類似の抗原性を有する組合せウイルス様タンパク質を効率的に産生できるという知見に基づくものである。
【0091】
特定の実施形態において、本発明は、本発明のいずれか1つの核酸配列であって、二次核酸配列部分のうちの1つが、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする、核酸配列に関する。
【0092】
特定の実施形態において、本発明は、本発明のいずれか1つの核酸配列であって、二次核酸配列部分のうちの1つが、ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードし、二次核酸配列部分のうちの1つが、ORF7bによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする、核酸配列に関する。
【0093】
本発明者らは、ORF3aが、ワクチンに使用され得るSARS-CoV-2タンパク質の産生を促進することを見出した。
【0094】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、ORF3aが、本明細書に記載されるSARS-CoV-2タンパク質の産生に寄与するという知見に基づくものである。
【0095】
特定の実施形態において、本発明は本発明のいずれか1つの核酸配列であって、一次核酸配列部分および二次核酸配列部分が、5’から3’方向に以下の順序で配列されている、核酸配列に関する:
1.配列番号2(SARS-CoV-2 S)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
2.ORF3aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
3.配列番号3(SARS-CoV-2 E)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
4.配列番号4(SARS-CoV-2 M)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
5.ORF6によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
6.ORF7aによってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
7.ORF8によってコードされるSARS-CoV-2アミノ酸配列の機能を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列部分、
8.配列番号1(SARS-CoV-2 N)またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列。
【0096】
本発明者らは、配列部分の順序がSARS-CoV-2ゲノム配列の元の順序に対応する場合に、本明細書に記載の配列が特に効果的に発現され得ることを見出した。そのため、配列部分1.~9.のうちの1つまたは複数が存在しない、欠失させられている、または機能不全である場合には、順序を次の対応する配列に移行させることができる。さらに、配列部分は直接連結される必要はなく、配列部分間の他の配列または重複する配列部分があってもよい。本明細書に記載される順序は、順序番号が大きい場合に、開始点が5’から3’方向で、より後にあると考えることができる。
【0097】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、配列部分が本明細書に記載されるように配列されている場合に、核酸を特に効率的に発現させ得るという知見に基づくものである。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明の核酸配列は、さらなる配列部分、例えば、ORF1a、ORF1b、ORF1abおよび/またはORF10等のSARS-CoV-2配列部分を含む。
【0099】
特定の実施形態において、本発明は、本発明のいずれか1つの核酸配列であって、E遺伝子、ORF6遺伝子およびORF8遺伝子の欠失および/または機能不全を伴う、配列番号10(SARS-CoV-2ゲノム)によって定義される核酸配列またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む核酸配列に関する。
【0100】
特定の実施形態において、本発明は、本発明のいずれか1つの核酸配列であって、E遺伝子、ORF6遺伝子、ORF7a遺伝子およびORF8遺伝子の欠失および/または機能不全を伴う、配列番号10(SARS-CoV-2ゲノム)によって定義される核酸配列またはそれと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む核酸配列に関する。
【0101】
用語「E遺伝子」は、本明細書で使用される場合、配列番号15をコードする核酸配列を指す。
【0102】
用語「ORF6遺伝子」は、本明細書で使用される場合、配列番号6をコードする核酸配列を指す。
【0103】
用語「ORF7a遺伝子」は、本明細書で使用される場合、配列番号7をコードする核酸配列を指す。
【0104】
用語「ORF8遺伝子」は、本明細書で使用される場合、配列番号9をコードする核酸配列を指す。
【0105】
本発明者らは、E遺伝子、ORF6遺伝子、ORF7aおよび/またはORF8遺伝子を除去して、少なくとも部分的にはトランス補完性産生細胞によって置き換え得ることを見出した。これにより、複製が制限されたウイルス粒子の効率的で安全な産生が可能になる。
【0106】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、E遺伝子、ORF6遺伝子、ORF7aおよび/またはORF8遺伝子の機能性を除去することが、複製が制限されたウイルス粒子の産生において特に有用であるという知見に基づくものである。
【0107】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の1つの核酸配列を含むベクターに関する。
【0108】
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、それ自体および/または他の核酸分子を細胞内に移入または輸送することができる核酸分子を指す。移入された核酸は、一般的にベクター核酸分子に連結され、すなわち挿入される。ベクターは、細胞内での自律的な複製を指示する配列を含んでいても、または宿主DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるベクターは、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、シャトルベクター、トランスポゾン、コスミド、人工染色体(例えば、細菌、酵母、ヒト)、およびウイルスベクターからなる群から選択されるベクターである。
【0109】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明によるベクターであって、T7プロモーターをコードする少なくとも1つの配列と、ネガティブ鎖RNAの合成を可能にする、および/またはポジティブ鎖RNAの合成を可能にする配列を含む少なくとも2つの非翻訳領域とを含む、ベクターに関する。
【0110】
特定の実施形態において、本発明は、本発明のベクターであって、プラスミドベクターである、ベクターに関する。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるプラスミドベクターは、選択マーカーおよび複製起点を決定する配列を有する。
【0112】
本発明者らは、プラスミドベクターが、本明細書に記載されるような大きな配列を移入するのに特に適することを見出した。
【0113】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、プラスミドベクターが、本明細書に記載されるような核酸配列を移入するのに特に有効であるという知見に基づくものである。
【0114】
特定の実施形態において、本発明は、本発明のベクターであって、配列番号11によって定義される配列(ORF7a遺伝子を有する生物学的に産生されたベクター)またはそれと90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むベクターに関する。
【0115】
特定の実施形態において、本発明は、本発明のベクターであって、配列番号12によって定義される配列(ORF7a遺伝子を有しない生物学的に産生されたベクター)またはそれと90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むベクターに関する。
【0116】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のベクターは、少なくとも1つのトランスフェクションエンハンサー、例えば、オリゴヌクレオチド、リポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックス、デンドリマー、無機ナノ粒子および細胞侵入ペプチドからなる群から選択されるトランスフェクションエンハンサーと組み合わせて使用される。
【0117】
本明細書に記載のベクターは、増幅宿主細胞における本発明の核酸配列の効率的な移入および/または増幅に使用することができる。
【0118】
増幅宿主細胞(例えば、酵母細胞)における増幅の生成物は、単離され、その後、さらなる宿主細胞(例えば、ヒト細胞)において翻訳され得る。
【0119】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、本明細書に記載のベクターが、本明細書に記載の核酸の効率的な増幅、および複製能が制限されているが高い抗原性を有する組合せウイルス様タンパク質の効率的な産生を可能にするという知見に基づくものである。本発明の核酸は、上記の手順を経て、タンパク質および他の構成要素を含む分散物の産生をもたらす。
【0120】
当業者に知られている適切な分離方法、例えば、遠心分離またはクロマトグラフィーを用いて、これらの構成要素を、必要に応じて、使用した産生細胞株または他の産生補助物または生物の残渣からも分離し、それによってそれらを精製することが可能である。
【0121】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の構成要素は、クロマトグラフィー、沈殿化、超遠心分離、接線流濾過、および酵素消化の群から選択される少なくとも1つの分離方法を用いて精製される。
【0122】
これらの任意に精製されたウイルスエンベロープまたはその断片は、ワクチンの基礎を表し、これは、次いで、適用の種類に応じて異なる剤形に移される。
【0123】
一般的に、この目的のためにアジュバント、保存性を向上させるための安定剤、塩および緩衝剤が使用される。このため、ワクチンはここで記載した長鎖の完全合成核酸の生成物である。
【0124】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列または本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0125】
用語「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、そのような細胞の子孫を含む、外因性核酸が導入された細胞を指す。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、これは、継代回数に関係なく、初代形質転換細胞およびそれに由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と完全に同一な核酸含有量でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。本明細書において、最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同一の機能または生物学的活性を有する変異子孫が含まれる。
【0126】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞は、SARS-CoV-2のウイルス侵入を可能にする細胞を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞は、ヒトACE2受容体または機能的なヒト様ACE2受容体を発現する細胞を含む。SARS-CoV-2のウイルス侵入を可能にするヒト様ACE2受容体は、当業者に知られている(例えば、Damas, J., et al., 2020, Proceedings of the National Academy of Sciences, 117(36), 22311-22322を参照)。
【0127】
いくつかの場合、本明細書に記載の宿主細胞は、HEK293、MDCK、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、SF9、Vero、MRC 5、Per.C6、PMK、およびWI-38の群から選択される少なくとも1つの細胞種を含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞は、少なくとも部分的にヒトである細胞、または少なくとも部分的にヒト細胞株の細胞である細胞を含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞は、本発明のヌクレオチドまたは、宿主細胞の細胞において完全に複製可能であるが、ヒト身体の細胞において完全に複製可能ではないか、または実質的に複製可能ではないという点で、選択的に複製可能である本発明のベクターを含むウイルス粒子の産生を可能にする細胞を含む。この選択的複製可能性は、ウイルス粒子の複製のための補完的タンパク質を含む細胞によって達成される。
【0130】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される宿主細胞は、ウイルス複製のための少なくとも1つのタンパク質を発現することができる細胞を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞は、本発明のヌクレオチド酸配列または本発明のベクター中にコードされていない、ウイルス複製のための少なくとも1つのタンパク質成分を発現することができる細胞を含む。
【0131】
本発明のベクターによる宿主細胞の形質導入は、安定的または一過性の形質導入によって達成することができる(例えば、Stepanenko, A. A., and Heng, H. H., 2017, Mutation Research/Reviews in Mutation Research, 773, 91-103を参照)。
【0132】
第1の実施形態による産生ユニットにDNAを導入する場合、通常、この目的に適したプラスミドを用いて行われる。
【0133】
あるいは、DNAは、任意の種類のベクターによって、宿主細胞に導入されてもよい。
【0134】
特定の実施形態において、本発明は、その少なくとも1つの補完的なSARS-CoV-2配列をさらに含む、本発明の宿主細胞に関する。
【0135】
用語「補完的なSARS-CoV-2配列」は、本明細書で使用される場合、SARS-CoV-2タンパク質の機能を有する配列を指し、ここで、その機能は、それを補完する核酸には含まれない。したがって、本明細書で使用される用語「補完的な」は、二本鎖構造を形成する能力を指すのではなく、さらなるSARS-CoV-2タンパク質またはさらなるSARS-CoV-2タンパク質の機能を有するタンパク質をコードする核酸配列を指す。例えば、配列は、それが機能的なSARS-CoV-2 E、ORF6、ORF7aおよび/またはORF8タンパク質をコードするヌクレオチド酸配列を含む場合、配列番号12によって定義される配列に対して補完的である。
【0136】
いくつかの実施形態において、宿主細胞に含まれる全ての補完的配列と組み合わされた本発明の核酸は、本明細書において、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、またはORF1a、ORF1b、S、ORF3a、E、M、ORF6、ORF7a、ORF8、Nの群から選択される全ての配列部分を補完する。
【0137】
特定の実施形態において、本発明は、a)本発明のベクターまたは本発明の核酸に含まれず、b)SARS-CoV-2ゲノム中にコードされるタンパク質の機能をコードする少なくとも1つの配列部分を含む、少なくとも1つの核酸配列をさらに含む、本発明の宿主細胞に関する。
【0138】
宿主細胞にさらに含まれる配列は、プラスミドベクター等の別のベクターによって宿主細胞に追加することができる。
【0139】
本発明者らは、本明細書に記載の核酸配列が、トランス補完的産生システムの一部として使用され得ることを見出した。
【0140】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、トランス補完的産生によって、自己複製が制限されたままである完全な、またはほぼ完全なウイルス粒子の産生を可能にするという知見に基づくものである。
【0141】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の宿主細胞を培養するステップを含む、ウイルスエンベロープおよび/またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質の産生の方法に関する。
【0142】
用語「ウイルスエンベロープ」は、本明細書で使用される場合、ヌクレオチド酸配列(本発明のヌクレオチド酸配列等)の安定化機能を有するタンパク質層等のタンパク質アセンブリを指す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスエンベロープは、本発明のヌクレオチド酸配列のヒト細胞への同化を可能にする。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスエンベロープは、スパイクタンパク質、エンベロープタンパク質および膜タンパク質を含む。
【0143】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明によるベクターを使用して、本発明によるキット、または本発明による宿主細胞を使用して、本発明による少なくとも1つの核酸を使用した遺伝子発現によって得ることができるウイルスエンベロープの断片に関する。
【0144】
用語「ウイルスエンベロープの断片」は、本明細書で使用される場合、不完全なウイルスエンベロープを形成する、少なくとも2つのアセンブルされたタンパク質を指す。
【0145】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明による本発明によるベクターを使用して、本発明によるキット、または本発明による宿主細胞を使用して、本発明による少なくとも1つの核酸を使用した遺伝子発現によって得ることができるウイルスエンベロープタンパク質に関する。
【0146】
用語「ウイルスエンベロープタンパク質」は、本明細書で使用される場合、ウイルスエンベロープの一部を形成することができる少なくとも1つのタンパク質を指す。
【0147】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明によるベクターを使用して、本発明によるキット、または本発明による宿主細胞を使用して、本発明による少なくとも1つの核酸を使用した遺伝子発現によって得ることができるウイルスエンベロープ、ウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質に関し、ここで、ウイルスエンベロープ、ウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質は、本発明による少なくとも1つの核酸をパッケージングする。
【0148】
用語「パッケージングされる」は、本明細書で使用される場合、少なくとも部分的に飲み込まれ、および/または結合されることを指す。いくつかの実施形態において、ウイルスエンベロープ、ウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質における本発明のパッケージング核酸は、ヒト細胞への侵入を可能にする。
【0149】
本発明の核酸および/またはベクターの生成物は、生成物がウイルスエンベロープ、ウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質で具現化されている場合、対応する機能性ウイルスに対して特に高い抗原類似性を示す。したがって、誘発/誘導された免疫反応により、機能性ウイルスとの実際の接触に特に有益な免疫反応が誘導される可能性が高い。
【0150】
ウイルスエンベロープ、ウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質にパッケージングされたヌクレオチド酸は、対象のヒト細胞に移入され、ヒト細胞におけるウイルスタンパク質の産生を誘導することが可能である。この結果、複製能が制限された抗原性ウイルス様タンパク質の露出が長期化し、増強される。
【0151】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、本明細書に記載のベクターにより、複製能が制限されているが、元のウイルスと類似の抗原性を有する組合せウイルス様タンパク質を効率的に産生できるという知見に基づくものである。
【0152】
特定の実施形態において、本発明は、I.)本発明の核酸配列、およびII.)(I.)に含まれる核酸配列に対して補完的な少なくとも1つのSARS-CoV-2配列部分を含むキットに関する。
【0153】
特定の実施形態において、本発明は、I.)本発明のベクター、およびII.)(I.)のベクターに含まれる核酸配列に対して補完的な少なくとも1つのSARS-CoV-2配列部分を含むキットに関する。
【0154】
特定の実施形態において、本発明は、I.)本発明の宿主細胞、およびII.)(I.)の宿主細胞に含まれる核酸配列に対して補完的な少なくとも1つのSARS-CoV-2配列部分を含むキットに関する。
【0155】
本発明者らは、本明細書に記載の核酸配列が、トランス補完的産生システムの一部として使用され得ることを見出した。
【0156】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、SARS-CoV-2粒子が、本明細書に記載されるように、トランス補完的方法によって産生され得るという知見に基づくものである。
【0157】
特定の実施形態において、本発明は、ウイルスエンベロープ、またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質であって、a)本発明のいずれか1つの少なくとも1つの核酸をパッケージングし、b)本発明のいずれか1つの少なくとも1つの核酸を使用した遺伝子発現によって得ることができる、ウイルスエンベロープ、またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質に関する。
【0158】
特定の実施形態において、本発明は、ウイルスエンベロープ、またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質であって、a)本発明のいずれか1つの少なくとも1つの核酸をパッケージングし、b)本発明のいずれか1つのベクターを使用した遺伝子発現によって得ることができる、ウイルスエンベロープ、またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質に関する。
【0159】
特定の実施形態において、本発明は、ウイルスエンベロープ、またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質であって、a)本発明のいずれか1つの少なくとも1つの核酸をパッケージングし、b)本発明のいずれか1つの少なくとも1つの宿主細胞を使用した遺伝子発現によって得ることができる、ウイルスエンベロープ、またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質に関する。
【0160】
特定の実施形態において、本発明は、ウイルスエンベロープ、またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質であって、a)本発明のいずれか1つの少なくとも1つの核酸をパッケージングし、b)本発明の方法を使用した遺伝子発現によって得ることができる、ウイルスエンベロープ、またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質に関する。
【0161】
特定の実施形態において、本発明は、ウイルスエンベロープ、またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質であって、a)本発明のいずれか1つの少なくとも1つの核酸をパッケージングし、b)本発明のキットを使用した遺伝子発現によって得ることができる、ウイルスエンベロープ、またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質に関する。
【0162】
本明細書に記載されるキットは、必要な宿主細胞および試薬を集めることによって調製することができる。キットに含まれる核酸がDNAの形態で存在する場合、少なくとも1つのプラスミド、好ましくは2つ以上のプラスミドで存在することがさらに好ましい。これにより、後述の具体例の文脈でも記載するように、対応する宿主細胞に容易に核酸を導入することができる。
【0163】
特定の実施形態において、本発明は、a)本発明の1つによる少なくとも1つの核酸、およびb)本発明のいずれか1つの少なくとも1つの核酸を使用した、本発明のいずれか1つのベクターを使用した、本発明の宿主細胞を使用した、本発明の方法を使用した、または本発明のキットを使用した遺伝子発現によって得られる少なくとも1つのアミノ酸配列を含む医薬組成物に関する。
【0164】
用語「医薬組成物」は、本明細書で使用される場合、その中に含まれる有効成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態にあり、その製剤が投与される対象に対して容認できないほど有毒な追加の構成成分を含まない調製物を指す。
【0165】
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1つのアミノ酸配列が、本発明のウイルスエンベロープ、またはウイルスエンベロープの断片および/またはウイルスエンベロープタンパク質である、本発明の医薬組成物に関する。
【0166】
特定の実施形態において、本発明は、医薬品として使用するための本発明による医薬組成物に関する。
【0167】
特定の実施形態において、本発明は、医薬品として使用するための本発明のベクターに関する。
【0168】
特定の実施形態において、本発明は、治療および/または予防に使用するための本発明による医薬組成物に関する。
【0169】
用語「治療」(および「治療する」または「治療すること」等のその文法的変形)は、本明細書で使用される場合、治療される個体の自然経過を変更する試みにおける臨床介入を指し、予防のためまたは臨床病理の経過中のいずれでも実施することが可能である。治療の望ましい効果としては、疾患の発症または再発の防止、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の軽減、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の改善等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
特定の実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染またはその少なくとも1つの症状の予防に使用するための、本発明による医薬組成物に関する。
【0171】
特定の実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染症またはその少なくとも1つの症状の予防に使用するための、本発明のベクターに関する。
【0172】
いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2感染症の症状としては、発熱、咳、疲労、呼吸困難、悪寒、関節痛、筋肉痛、喀痰、喀痰産生、呼吸困難、筋痛、関節痛、咽頭痛、頭痛、悪心、嘔吐、下痢、副鼻腔痛、鼻詰まり、嗅覚の変化および/または低下、味覚の変化および/または低下、食欲不振、体重減少、胃痛、結膜炎、皮疹、リンパ腫、無気力、および傾眠の群から選択される少なくとも1つの症状が挙げられる。
【0173】
いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2感染症またはその少なくとも1つの症状の予防に使用するための本発明による医薬組成物は、ワクチンである。
【0174】
用語「ワクチン」は、本明細書で使用される場合、宿主において免疫応答を誘導/誘発することができ、感染症および/または疾患を治療および/または予防することを可能にする、任意の剤または組成物を指す。したがって、そのような剤の非限定的な例としては、タンパク質、ポリペプチド、タンパク質/ポリペプチド断片、免疫原、抗原、ペプチドエピトープ、エピトープ、タンパク質、ペプチドまたはエピトープの混合物、ならびに(目的のポリペプチドもしくはタンパク質またはそれらの断片をコードする)核酸、遺伝子および/または遺伝子の一部が挙げられる。
【0175】
用語「SARS-CoV-2感染症」は、本明細書で使用される場合、「COVID-19」としても理解され得る。
【0176】
コロナウイルスの構造タンパク質は、免疫反応を誘発することが示されている(例えば、Li, J. Y., et al., 2020, Virus research, 286, 198074; Walls, A. C., et al., 2020, Cell, 181(2), 281-292.e6; Chen, Z, et al., 2004, Clinical chemistry, 50(6), 988-995; Peng, Y., et al., 2020, Nature immunology, 21(11), 1336-1345.を参照)。提供される手段および方法は、免疫回避機構を低減した、同等のエピトープおよび/または同等の粒子を有するワクチンの製造および投与により、同等の免疫応答を誘導/誘発することができる。いくつかの実施形態において、ワクチンは、対象において複製能が制限された粒子の産生を誘導する。
【0177】
これにより、これらのワクチンは、しばしば動物血清に由来し、したがって分子的に一貫性のない古典的なワクチンとは大きく異なる。動物生物からの産生は、伝統的に選択された方法である。しかし、分子的に不明確な生成物は、大規模な品質問題、および製造バッチごとの産生の変動をもたらす。このことは、長い承認期間、および発見が単に遅くなることがしばしばである副作用とも関連している。分子的に明確な生成物組成は、本発明による核酸を用いて得ることができるため、好都合である。
【0178】
さらに、本明細書に記載のワクチンは、明確に定義され、かつ幅広い抗原性エピトープを提供する。この結果、ワクチンは、免疫応答を増強するアジュバントの必要性が低いか、または全く必要としないという利点がある。免疫応答を増強するこのようなアジュバントは、典型的には、一部の患者におけるアレルギー反応等の副作用と関連している。さらに、本明細書に記載のワクチンの主要な活性成分は、タンパク質ベースであり、したがって、他のワクチン(例えば、RNAワクチン)と比較してより耐熱性である。したがって、本発明のワクチンは、その安定性により、容易に輸送および保管が可能である。
【0179】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、本明細書に記載のワクチンがSARS-CoV-2感染症の治療および/または予防において特に有用であるという知見に基づくものである。
【0180】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、本明細書において、冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ、または1つ以上)を指すために使用される。
【0181】
「または」は、選択肢のいずれか一方、両方、またはその任意の組合せを意味すると理解されるべきである。
【0182】
「および/または」は、選択肢のいずれか1つ、または両方を意味すると理解されるべきである。
【0183】
本明細書を通じて、文脈上他に必要とされない限り、語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」は、記載されたステップまたは要素、またはステップもしくは要素の群を含むことを意味するが、他のステップまたは要素、またはステップもしくは要素の群を除外しないことは理解されるであろう。
【0184】
用語「含む(include)」および「含む(comprise)」は、同義的に使用される。「好ましくは」は、他の選択肢を排除しない一連の選択肢のうちの1つの選択肢を意味する。「例えば」は、言及された例に制限されない1つの例を意味する。「からなる(consisting of)」は、句「からなる」の後に続くものを全て含み、かつ、それに限定されることを意味する。
【0185】
本明細書を通じて、「一実施形態(one embodiment)」、「ある実施形態(an embodiment)」、「具体的な実施形態(a particular embodiment)」、「関連する実施形態(a related embodiment)」、「特定の実施形態(a certain embodiment)」、「追加の実施形態(an additional embodiment)」、「いくつかの実施形態(some embodiments)」、「特定の実施形態(a specific embodiment)」または「さらなる実施形態(a further embodiment)」またはそれらの組合せへの言及は、その実施形態と関連して記載される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じた様々な場所における前述の語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。また、一実施形態における特徴の積極的な記載は、特定の実施形態における特徴を除外するための根拠となることが理解される。
【0186】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料は以下に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。加えて、材料、方法、および例は、例示的なものに過ぎず、限定することを意図したものではない。
【0187】
本明細書に記載される一般的な方法および手法は、特に示されない限り、当技術分野において周知である従来の方法に従って、および本明細書全体を通して引用および考察される様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されるように行うことができる。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992)、およびHarlow and Lane Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990)を参照。
【0188】
本発明の態様は、図および前述の説明において詳細に説明および記載されるが、そのような説明および記載は、説明的または例示的であり、制限的ではないと考えられるべきである。以下の特許請求の範囲および趣旨の範囲内で、当業者は変更および修正を行うことができることが理解されるであろう。特に、本発明は、上記および以下に記載される種々の実施形態からの特徴の任意の組合せを有するさらなる実施形態をカバーする。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【
図1】E遺伝子プラスミドおよび遺伝子(配列番号27)のマップ。
【
図2】ORF6プラスミドおよび遺伝子(配列番号28)のマップ。
【
図3】ORF7aプラスミドおよび遺伝子(配列番号29)のマップ。
【
図4】ORF8プラスミドおよび遺伝子(配列番号30)のマップ。
【
図5】
図5~8は、真核細胞における各々の遺伝子の発現の実証(RT-qPCRによって実証されたmRNA発現)である。
図5は、hygro選択されたVero細胞における発現:E発現(RNA発現を検証するためのRT-PCR):濃色の線:逆転写酵素(RNA+DNA)を用いた増幅、ライトグレー:(組み込まれた細胞DNAからの)DNAバックグラウンドのレベルを実証するための、RT反応を用いない増幅。
【
図6】
図6は、hygro選択されたVero細胞における発現:orf 6発現(RNA発現を検証するためのRT-PCR):濃色の線:逆転写酵素(RNA+DNA)を用いた増幅、ライトグレー:(組み込まれた細胞DNAからの)DNAバックグラウンドのレベルを実証するための、RT反応を用いない増幅。
【
図7】
図7は、hygro選択されたVero細胞における発現:orf 7a発現(RNA発現を検証するためのRT-PCR):濃色の線:逆転写酵素(RNA+DNA)を用いた増幅、ライトグレー:(組み込まれた細胞DNAからの)DNAバックグラウンドのレベルを実証するための、RT反応を用いない増幅。
【
図8】
図8は、hygro選択されたVero細胞における発現:ORF8発現(RNA発現を検証するためのRT-PCR):濃色の線:逆転写酵素(RNA+DNA)を用いた増幅、ライトグレー:(組み込まれた細胞DNAからの)DNAバックグラウンドのレベルを実証するための、RT反応を用いない増幅。
【
図9】ウイルス産生の実証:全ゲノムのDNA導入後に、ウイルスに典型的な細胞変性効果が誘導される。
【
図10】ウイルスの力価判定を細胞培養下での増大後に行ったところ、SARS-CoV-2の臨床参照分離株と同じウイルス力価をもたらすことが示された。感染イベントによる最終的な希釈物を、第3列の個々のプラークと共に示している。(行A=非感染対照、行B~D=臨床分離株(参照)、行E~G=レスキューされたウイルス)
【
図11】ORF3aプラスミドおよび遺伝子(配列番号32)のマップ。
【
図12】N遺伝子プラスミドおよび遺伝子(配列番号31)のマップ。
【
図13】完全長SARS-CoV-2ゲノムの細胞内再構築をもたらす4つのDNA断片のゲノム構成。トランスフェクトされた標的細胞の内部で、DNA断片が組換えを起こす。最初のRNA転写ステップは、断片Dの下流の非コード性シグナル配列と共に断片Aの上流に連結された異種プロモーターによって促進される。
【
図14】4つのコトランスフェクトされたDNAセグメント(配列番号22~24、68)からの機能的SARS-CoV-2の細胞内再構築後の26種のウイルスゲノムの忠実度のNGS解析。上のダークグレーのバーは完全長配列を表し、単一ヌクレオチドの変化または欠失は、各々の配列(配列番号38~63)において明色のバーとして示される。一番上の垂直の記号は、種々の断片末端の正確な位置を示す。下のライトグレーのバーは、4つのDNA断片A~Dの位置および範囲を示す。
【
図15】A)完全長またはRVX-13(配列番号26を含む)のいずれかの同量の再構築ウイルスによる非改変VeroE6細胞の無細胞感染。B)は、VeroE6細胞における6回の継代後の感染培養物の上清試料における定量的RT-PCRによる完全長ウイルス(FL)またはワクチンウイルスRVX-13(配列番号26を含む)およびRVX-14(配列番号65を含む)のウイルスレベルを示す。
【
図16】A)完全長の再構築SARS-CoV-2(検出された系統)ならびにワクチンウイルスRVX-13(配列番号26を含む)およびRVX-14(配列番号65を含む)(検出閾値以下の系統)の6回の無細胞継代後の上清試料に関する定量的RT-PCRプロット。RVXワクチンウイルスに関する全ての値は、正のRNAシグナルを示すことなく増幅閾値未満のままである。B)武漢臨床分離株の力価判定用ストックを用いたウイルス標準物の定量。左からウイルス量:3x10e7、3x10e6、3x10e5、3x10e4、3x10e3。
【
図17】M-プラスミド(pcDNA3.1hygro(+)_M(配列番号64))のプラスミドマップ。
【実施例】
【0190】
[実施例1]
ウイルスゲノムの再構築
本出願において記載されるSARS-CoV-2ゲノムは、1~8つの補完的セグメントの形態で産生され、これは、SARS-CoV-2の全ての遺伝子を有する完全なウイルスゲノム、または意図的に排除されたもの(すなわち、E-遺伝子、orf 6、orf 7a、orf 8)を除くSARS-CoV-2の全ての遺伝子を有するウイルスゲノムを再構築する。ウイルスRNAゲノムの産生を開始するためには、別個のプロモーターエレメント、例えば、サイトメガロウイルス由来のものをゲノムの5’末端に結合させ、3’末端は、適切な長さのポリA尾部、リボザイム切断エレメントおよび真核生物ポリAシグナル(例えば、SV40またはbGH)を含むように操作される。最後の1~8つのセグメントは、以下の2つの主要な方法で再構成することができる:
1 細胞への導入の前に、Gibsonアセンブリ、もしくはリガーゼ酵素を用いた部位特異的ライゲーション等の公表された方法を、各断片の末端に作製されたII型制限部位への接続のために使用する。留意されることに、制限部位の導入では、タンパク質の変更は回避されるかもしくは最小限に抑えられた(保存的変化に限定された)、または
2 1~8つの断片を、隣接する断片の末端が30~40ヌクレオチド対の配列重複(両方の隣接断片において同一の配列)を有するように操作することによる。続いて、適切な手段を使用して、これらの断片を化学量論的量で標的細胞に導入し、そこで完全なSARS-CoV-2ゲノムの再構成が、細胞酵素によって促進される組換えを介して起こる。
【0191】
さらなる代替法は、SARS-CoV-2全ゲノムの細胞外にインビトロで産生されたRNA、または意図的に排除されたもの(すなわち、E-遺伝子、orf 6、orf 7a、orf 8)を除くSARS-CoV-2の全ての遺伝子を有するウイルスゲノムの導入であり、これはT7プロモーターをウイルスゲノムの5’末端に連結させることによって得ることができる。市販のT7ポリメラーゼにより、ゲノムSARS-CoV-2 RNAの効率的な産生が可能となり、これは公表された手段(例えば、エレクトロポレーションまたはJetメッセンジャー等のトランスフェクション試薬)によって導入することができる。
【0192】
[実施例2]
細胞導入
このプロセスのために使用される細胞株は、好ましくはHEK293細胞であるが、トランスフェクションによる有効なDNA導入のために適した他の細胞、例えば、HeLa、BHK、またはVeroクローンでもあり得る。
【0193】
効率的な導入のためには、特殊な市販の促進剤、優先的にはLipofectamine 3000またはjetPRIMEが使用されるが、リン酸カルシウムまたはエレクトロポレーションを使用する他の関連製品または方法も使用される。このプロセスには、製造元のプロトコールまたはその改変版が使用される。
【0194】
効率的なワクチン産生に必要な補完的遺伝子またはウイルス遺伝子の共発現のための方法(例えば、ウイルスヌクレオカプシド遺伝子の発現プラスミドまたはRNA)が、ゲノム核酸と共にコトランスフェクトされる。
【0195】
導入されたウイルスワクチンゲノムは、SARS-CoV-2の規定の遺伝子を欠損しているため、これらの遺伝子生成物は、宿主細胞(事前に安定に形質導入またはトランスフェクトされた)または欠損遺伝子に対する発現プラスミドのコトランスフェクションのいずれかによって提供されなければならない。
【0196】
[実施例3]
ウイルスの回収
標的細胞への核酸構築物の導入後に、ウイルスRNAテンプレートの産生が、導入されたRNAゲノムから、またはDNAゲノムの転写後に自発的に開始される。機構的には、ネガティブ鎖RNAゲノムが産生され、続いてそれがポジティブ鎖mRNAおよびゲノム完全長RNAのテンプレートとなる。
【0197】
トランスフェクションによるそのような一過性の導入状況での発現は3~4日後に低下するので、トランスフェクトされた培養物を、感受性細胞、すなわち、欠損遺伝子を恒常的に発現する細胞と共培養する。その結果、トランスフェクトされた細胞は、ウイルスの子孫を第2の細胞種の細胞に直接伝達して、欠損した遺伝子を発現させる。後者の細胞では、持続的な感染が開始され、遊離ウイルス粒子の産生および放出がもたらされる。
【0198】
これらの粒子は、欠損遺伝子を発現する細胞株(産生細胞)に対してのみ完全に感染性となり、ワクチンウイルスの増殖が可能となる。対照的に、これらのウイルス粒子を使用して(補完機能が欠損した)ナイーブ細胞を感染させる場合に、ウイルス複製は起こらない。
【0199】
[実施例4]
この細胞系は単一サイクルウイルスの産生のための生物学的に安全な系を反映しており、これは産生細胞が使用される限りにおいてのみ感染性である。この制約により、ウイルス産生はより低いバイオセーフティレベル2に移行することができる。これにより、診断目的でこのシステムを容易に使用できるようになる。SARS-CoV-2に対してバイオセーフティレベル3を要求する代わりに、操作された細胞に加えて欠失ウイルスゲノムを標準的な診断状況で取り扱うことができる。
【0200】
さらに、補完により、ウイルス増殖(まさにその細胞およびまさにそのウイルス型に限定される)が可能になることから、プラーク減少アッセイおよびウイルス中和試験を、本発明を使用して行うことができる。
【0201】
[実施例5]
クローン系の多用途性
本発明者らは、8つまでのサブゲノム断片を利用する欠失保有ウイルスゲノムの分子再構築を使用して、技術的な柔軟性により、断片のうち1つのみに見出される特定の標的遺伝子に妥当な変異および変化を迅速に導入する、この「カセット系」の大きな多用途性を見越している。例えば、(8つの断片のうちの)断片7または断片4a(4つの断片)にのみ存在するS遺伝子を、他の遺伝子セグメントのいずれをも操作する必要なしに、インビトロで容易に操作して、ゲノムアセンブリに再導入することができる。
【0202】
このステップにより、このプロセスは、ウイルスの多様性(現在出現している臨床的に懸念されるバリアントに見られるような)に容易に対処することができ、同時に、他の全てのゲノム領域の完全な配列を保持する。
【0203】
[実施例6]
トランスフェクションおよび感受性Vero細胞株における培養の第7日に、細胞変性変化により、細胞層におけるウイルスプラークの産生がもたらされた。
【0204】
ウイルス力価判定(
図10)を、各ウイルスストックの連続2倍希釈によって行った。感受性Vero細胞上にプレーティングして48時間インキュベートした後に、培養物を固定し、クリスタルバイオレットで染色して、ウイルスプラークを顕微鏡で検査した。
材料および方法
ウイルスゲノムおよび産生細胞における遺伝子の存在の配列検証
- 細胞の樹立、選択プロセス
発現可能な単離されたウイルス遺伝子の発現プラスミドは、その中に誘導可能なプロモーターのある、標準的な発現ベクターまたは構築物のいずれかを利用する。
- 発現の検証
抗生物質選択ステップを生き延びた細胞クローンの安定的導入および増大の後に、mRNAの発現が実証され、いくつかの遺伝子についてはタンパク質の発現も実証される。
- トランスフェクションのプロトコール
細胞は、標準的なプロトコールまたはその改変版を使用する、脂質ベースの促進試薬、リン酸カルシウム、またはエレクトロポレーションを使用した適切なDNAまたはRNAトランスフェクション法によってトランスフェクトされる。
【0205】
トランスフェクトされた一過性発現細胞(293T、BHK)と感受性産生細胞(Vero+E+7等)との細胞培養および/または共培養の後に、ウイルス産生を、コロナウイルスに典型的な細胞変性効果の自然発生、ウイルスRNAの力価についての濾過上清のRT-PCR、および感受性産生細胞上の第一世代ウイルス上清の段階的希釈を使用したプラークアッセイによって実証し得ると考えられる。
- 機能的補完プロトコール:ウイルス産生の証明
ウイルス欠失バリアントによる産生細胞のトランスフェクションに続いて長い培養期間を置き、その間に細胞変性変化(CPE)の自然発生、すなわちプラーク形成を、顕微鏡検査によってモニターする。CPEおよび細胞死の増加が認められたらすぐに、無細胞上清試料を非感染産生細胞の層の上に移す。約2日後のCPEの発生およびRT-PCRによるSARS-CoV-2特異的RNAの同時実証は、ウイルス複製の証拠として役立つ。
- 感染プロトコールおよび読み取り
感受性細胞を、0.1~0.01の接種力価を使用して、ワクチンウイルスの希釈液と共にインキュベートした。感染後の第2日から、細胞生存率およびプラーク形成について検査し、第3日~第5日にウイルスを収集した。
- ウイルス増殖、ストック産生
感染培養物からのウイルス上清を、培養上清の除去および遠心分離による清澄化によって得た。ウイルスアリコートを-70℃で凍結保存し、感受性産生細胞を使用する標準プラークアッセイでウイルス力価を決定した。試験のためには、感染細胞を低融点アガロースで覆い、第2日に固定して、感染イベント(=プラーク)の計数のためにクリスタルバイオレットで染色した。
【0206】
[実施例7]
1)5’末端でサイトメガロウイルスプロモーター(CMV)に、3’末端で30~35nt長のポリA尾部、肝炎デルタリボザイムおよびシミアンウイルス40ポリアデニリル化シグナル(HDV/SV40)に隣接する完全なSARS-CoV-2ゲノムを4つのプラスミド中にクローニングし、Q5高忠実度ポリメラーゼ(M0491S、NEB)によりPCR増幅した。このアプローチについて、原理証明のために、全ての遺伝子を含む完全なウイルスゲノムを増幅させて、野生型ウイルスを作製した。PCRプライマーは、Gibson法(Gibson, et al., 2009, Nature Methods 6(5): 343-345)による完全長ゲノムのその後のアセンブリを可能にするために、隣接する断片間に20~25ntの重複が生じるように設計した。NEBuilder HiFi DNA Assemblyクローニングキット(E5520S、NEB)を使用し、製造元のプロトコールに従った。精製することなく、この生成物を、完全長生成物をさらに増幅するための別ラウンドのPCRのテンプレートとして役立てた。EtOH精製後に、2ugの完全長ウイルスDNAゲノムを、jetPRIME(114-07、Polyplus)を使用して、4x10^5個の293T細胞にトランスフェクトした。翌日に、感受性Vero E6/TMPRSS2細胞を集密度30%となるまで添加した。この共培養物からの上清を新鮮なVero E6/TMPRSS2細胞上で継代したところ、トランスフェクションの8日後に最初のCPEが検出された。感染性ウイルスの存在は、上清を新鮮なVero E6/TMPRSS2細胞上で2回継代し、上清のCPE(
図9)、RT-qPCRおよびNGSシークエンシングを確認することによって確認された。後者により、同定のためにサイレント変異によって導入されたユニークSalI部位の存在が確認された。
【0207】
2)第2の方法は、Aubry et al. 2014 The Journal of General Virology 95(Pt 11): 2462-2467に記載されたISA(感染性サブゲノムアンプリコン)法に従う。重複する二本鎖DNA断片のトランスフェクションにより、細胞内組換え後に完全長ウイルスDNAコピーがもたらされる。このアプローチでは、断片間に100ntの相同領域が生じるように設計されたプライマーを使用して、前に記載したプラスミド(frA、frB、frC、frD)から4つの断片を増幅させた。アンプリコンをQIAquick PCR精製キット(28104、Qiagen)を使用して精製し、2.5ugの等モル混合物を、Lipofectamine-3000(L3000001、Invitrogen)を使用して、4x10^5個の293T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの後に、1に記載したものと同じ手順を実施した。
【0208】
第1の戦略も第2の戦略もトランス補完的細胞株に作用し、これらの細胞がトランスフェクト可能であると共に感染可能であることが証明された。排除された遺伝子を欠損しているウイルスの産生のためには、断片Dを断片D1(配列番号25)またはD2(配列番号26)で置き換えて、排除された遺伝子をトランス性に発現する細胞株のみを使用する。1)および2)に記載したものと同じプロトコールに従い、以下のものにも従う。
【0209】
3)CMVプロモーターと5’UTRとの間に挿入された小さな配列は、ゲノム完全長mRNAのインビトロ転写を可能にするT7プロモーターをコードする。Xieらによる公表された研究にわずかな変更を加えたものに従って、RiboMAX Large Scale RNA産生システム(P1300、Promega)をウイルスmRNAの産生のために使用した(Xie et al., 2021, Nature Protocols 16(3): 1761-1784)。手短に述べると、20ugの完全長mRNAを10ugのN mRNAと共に、Amaxa 4Dヌクレオフェクター装置(Lonza)を使用して、製造元のプロトコールに従って、1x10^6個のVero E6/TMPRSS2細胞にエレクトロポレートした。
【0210】
4)意図的に排除した遺伝子を除いてSARS-CoV-2ゲノム全体をカバーする4つの断片を、プラスミド骨格から断片を遊離させるために、5’末端および3’末端にタイプIIS制限部位を有するように設計した。対応する酵素による消化後に、T4 DNAリガーゼ(M0202S、NEB)を使用して、完全長ウイルスDNAゲノムの特異的なエラーのないライゲーションを達成することができる。生成物をQiaEX II Gel Extractionキット(20021、Qiagen)またはEtOH沈殿を使用して精製する。この32kbのDNA構築物を、適切なトランスフェクション試薬(jetPRIME、Lipofectamine-3000、Lipofectamine-LTX)を使用してトランスフェクトするか、またはAmaxa 4Dヌクレオフェクター装置(Lonza)を使用してエレクトロポレートする。
【0211】
[実施例8]
ワクチンウイルスゲノムに対応する一本鎖RNAを、T7ポリメラーゼを使用するインビトロ転写によって得た。そのようにして得られたRNAを、適切な細胞株(HEK293TまたはVero細胞)にトランスフェクトした。陽性対照の場合には、完全長構築物、非改変HEK293またはVero細胞は、RNAゲノムの複製、サブゲノムmRNAの生成を支持し、それ故にウイルスタンパク質への翻訳を支持した。これらは、ポジティブ鎖RNAゲノムおよび細胞膜由来の構成成分と共に、子孫ウイルス、この場合には野生型の天然SARS-CoV-2ウイルスを形成した。欠失変異株の場合には、ウイルスゲノム中で欠失している1つまたは複数の遺伝子は、DNAの形態で細胞株にトランスフェクトされて(
図1~4参照)、1つまたは複数のタンパク質の一過性発現をもたらし、これにより、子孫ウイルスの生成を可能にするために必要な欠損因子を提供する。あるいは(および好ましくは)、選択圧下でのこれらの細胞の培養により、1つまたは複数の遺伝子が細胞ゲノム中に安定的に組み込まれ、そこから1つまたは複数の遺伝子が連続的に発現される(発現により、遺伝子からのmRNAの生成(
図1~4参照)とそれに続くタンパク質への翻訳が把握される)。そのような細胞は、ワクチンウイルスゲノム中で欠損している遺伝子から作られたタンパク質を一過性にまたは安定的に発現するかのいずれかで、構造タンパク質の完全なセットおよび1つまたはいくつかの遺伝子が欠失したワクチンウイルスゲノムを特徴とするワクチンウイルスの連続的な産生を可能にする。そのようにして得られたワクチンウイルスを、清澄化(ワクチンウイルスからの細胞の分離)、ベンゾアーゼによるDNA消化、限外濾過/ダイアフィルトレーション(「UF/DF」)、および最後に滅菌濾過(0.22μm濾過)によって特徴付けられる、いわゆる下流処理(DSP)プロセスにて精製した。
【0212】
[実施例9]
RVX-13、RVX-14の生物学的安全性の実証
本発明者らは、E遺伝子のみ(配列番号65を含むRVX-14)について、または細胞性免疫防御に関与する1~2つのさらなる遺伝子(配列番号26を含むRVX-13)と組み合わせて、コード情報の正確な切り出しを利用するアプローチを採用した。失われた機能は、特殊化された「産生細胞」を介して供給され(=トランス補完)、ウイルスワクチンのゲノム中には決して現れない。
【0213】
SARS-CoV-2ワクチン候補RVX-13(配列番号26を含む)およびRVX-14(配列番号65を含む)、ならびに候補MoVi-1(配列番号36を含む)は、複製することができない、独特で完全に「サイクルブロックされた」ワクチンウイルスである。
【0214】
具体的には、RVX-13は、前記の実施例の方法に従って、断片A、B、C、DおよびD2(配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号26および配列番号68)からアセンブルした。
【0215】
RVX-14は、配列番号65によって定義される配列を含み、断片A、B、C(配列番号22、配列番号23、配列番号24)およびD14(D14は、配列番号65によって定義される配列がSARS-CoV-2 Nタンパク質をコードする配列部分とORF3aをコードする配列部分との間に位置するように修正された断片D2(配列番号68)に基づいて構築された配列である)から、前記の実施例の方法に従ってアセンブルされる。
【0216】
MoVi-1は、配列番号36によって定義される配列を含み、断片A、B、C(配列番号22、配列番号23、配列番号24)およびDV1(DV1は、配列番号36によって定義される配列がSARS-CoV-2 Nタンパク質をコードする配列部分とORF3aをコードする配列部分との間に位置するように修正された断片D2(配列番号68)に基づいて構築された配列である)から、前記の実施例の方法に従ってアセンブルされる。
【0217】
この基礎にあるのは、ウイルスゲノムが、SARS-CoV-2感染に感受性のある正常細胞株におけるウイルス複製に不可欠な、記載された重要な遺伝子を欠損しているということである。
【0218】
各々の不活性候補ワクチンを産生させるために、欠損したウイルス機能を恒常的に産生する特殊化された遺伝子変更細胞株を設計した。その結果として、これらの操作されたSARS-CoV-2感受性細胞の「サイクルブロックされた」ワクチンウイルスによる感染により、入ってくるウイルスゲノムに欠損している遺伝情報と、この特殊化された細胞株で既に産生されているウイルスタンパク質との「トランス補完」が生じる。
【0219】
その結果、欠損ウイルスは、産生細胞から供給されるウイルスタンパク質を取り込んで、機能的に真性の粒子を産生することができるが、それでも欠損ウイルスRNAゲノムのみを含み続ける。
【0220】
「細胞ベースのウイルス遺伝子」によるSARS-CoV-2のこのトランス補完は非常に安全なプロセスであり、導入遺伝子DNAは独占的に細胞核に局在するが、ポジティブ鎖RNAウイルスとしてのSARS-CoV-2の複製は細胞質区画に限定されることから、産生細胞におけるDNA組換えをもたらさない。
【0221】
以下において、野生型SARS-CoV-2感染に感受性のある任意の非改変正常細胞株において完全に複製がブロックされる、提唱されるウイルス産生システムの安全性および安定性を証明する証拠を提供する。
【0222】
その結果、本発明者らは、サイクルブロックされたワクチンウイルスRVX-13(配列番号26を含む)、RVX-14(配列番号65を含む)およびMoVi-1(配列番号36を含む)のバイオセーフティレベルをバイオセーフティレベルBSL-2に低下させることを可能にするために必要な実験的証明を提供する。
【0223】
ワクチンウイルスは、細胞内DNA組換えステップによって忠実に再構築される。
ウイルス再構築のために、本発明者らは、100bp重複する4つのDNAセグメントを利用して、完全長ウイルスゲノムの機能的回復を可能にし、これは続いて所望の欠失を保有する。この最初の再構築は、ワクチン産生プロセスの必要な最初のステップである。
【0224】
検証のために、複数の独立した再構築実験を実施し、その中において、完全なウイルスゲノムを再生するために必要な4つのサブゲノムDNA断片の全てを、感受性のある標的細胞株HEK293またはVeroE6に同時に導入した。完全長ウイルスゲノムへの細胞内組換えおよび修復が、細胞により作動される自発的プロセスによって起こり、感染性ウイルス子孫の出現を解析することによってそれを評価した。無細胞培養上清中に出現したウイルスをNGSによって解析したところ、再現性のある修復が非常に明確な様式で実証された。
【0225】
本発明者らは、
図13に概略が示された4つの断片間の各組換えおよびライゲーションのステップが、26件の独立した再構築実験において3つの接合部のそれぞれに出現するウイルス生成物の配列解析によって示されるように、非常に忠実な様式で起こっていることを実証する。これについて
図14にまとめた。
【0226】
1%および10%のカットオフでの詳細なNGS配列解析により、クローニングの開始点であったSARS-CoV-2の武漢臨床分離株である参照DNAとの配列の違いはごくわずかであることが明らかになった。すなわち、解析したゲノムのいずれも、それらの30000ヌクレオチドゲノム長において、参照に対して9つを上回るほぼサイレントなまたは保存的な点変異を有しておらず、断片接合部における組換え領域にマッピングされる単一の変化も認められなかった。
【0227】
これらのデータにより、ワクチンウイルス候補RVX-13(配列番号26を含む)、RVX-14(配列番号65を含む)およびMoVi-1(配列番号36を含む)を生成するための「IDRA手法」(「細胞内DNA組換えおよびアセンブリ」のための)によるSARS-CoV-2ゲノム組換えが非常に正確であることが裏付けられる。
【0228】
複製中のワクチンウイルスの遺伝的安定性
欠失を保有するワクチンウイルスは、欠損した構造遺伝子を導入遺伝子として含む産生細胞株に添加される。産生細胞のこの独特な性質によってのみ、ワクチンウイルスは複製することができる。(i)正確な再構築、(ii)異常な遺伝子組換えが存在しないこと、および(iii)ウイルス産生中の安定性を実証するために、ワクチンウイルスの新たに形成されたビリオン由来のウイルスゲノムをNGSによって解析した。
【0229】
1回限りのイベントを除外するために、産生細胞の感染およびその後のNGS解析を、互いに独立して数回実施した。要約すれば、感染および約5~10ウイルス世代の後に、関連する遺伝子における一貫した変異パターンまたは欠失の選択は観察されなかった。
【0230】
解析した26件のウイルス再構築において、
図14の上のパネルの淡色の印によって示されるように、ほとんどがサイレント変異を有する最大で9つのSNPが観察された。
【0231】
全ての再構築された複製能のあるウイルス分離株について、NGS情報を使用して、全ての再結合された断片接合部の詳細な解析を行った。これにより、
図16における断片BおよびCの例に示されるように、3つの接合部の全てについて忠実度が高いこと、および変異が存在しないことが明らかになった。
【0232】
全ての単離されたウイルス配列間の非常に高い配列同一性を
図14にまとめる。これは、完全に機能的なSARS-CoV-2ゲノムの再構成をもたらす細胞内DNA修復機構の高い忠実度を実証している。
【0233】
これらのデータは、本ワクチンウイルスが、遺伝的変更、ウイルス配列の改変、または細胞遺伝子との組換えをいずれも伴わずに、再現性の高い方法で忠実に複製することを証明している。
【0234】
本ワクチンウイルスが非改変VeroE6細胞において複製を行えないことの証明
ワクチンウイルスRVX-13(配列番号26を含む)、RVX-14(配列番号65を含む)およびMoVi-1(配列番号36を含む)が、ウイルス侵入のためにヒトACE-2およびTMPRSS2タンパク質を発現するVeroE6または293 HEK細胞のような、典型的にはSARS-CoV-2複製に完全に感受性である細胞株において複製を行えないことを検証することは、極めて重要である。
【0235】
図15に示すデータに至った培養感染の実験的詳細:
第0日にDNAからウイルスを再構築した後、出現したウイルス粒子を培養上清から収集して(第3日前後に培養上清中のN-タンパク質が検出された後に)、濾過した。10件の別々の並行感染実験におけるウイルス接種を、第3日に約10
-3の感染多重度(moi)で行い、ウイルスの拡散および増殖を最大にした。感染のために、ウイルスを4時間吸着させた。吸着期間の後に、最大のストリンジェンシーを確実にするために、完全長ウイルス(青の線)を含有する培地を完全に除去して、細胞をPBS(**)で3回洗浄した。ワクチンウイルスの複製能は低いと予想されたため、RVX-13(配列番号26を含む)の接種物は培養物上に残した。培地は1日後にのみ、洗浄せずに交換した(***)。感染培養物を2~3日間継続して、最大のウイルス増殖を可能にした。続いて、上清の試料採取を行い、ウイルスについて解析した。
【0236】
収集したFLウイルスを、新たな感染を開始するために、細胞1,000個当たり1感染単位の多重度(10-3のmoi)に再度希釈した。この手順により、多重感染ラウンド中に起こるあらゆる遺伝的進化および改変を追跡することができる。
【0237】
ワクチンウイルスであるRVX-13ワクチンウイルス(配列番号26を含む)について想定される感染性の低さを代償するために、各ブラインド継代時に、収集した培養上清の1/10というより大きな容量を「推定接種物」として、新たな非感染VeroE6細胞に添加した。
【0238】
再構築された完全長ウイルス(FL)の連続的な対数的増幅により、感染に対する細胞株の完全な感受性が確かめられ、完全長ウイルスの類似の複製パターンは、欠損遺伝子を提供するVeroE2T細胞の感染後に認められる。
【0239】
これとは著しく対照的に、ワクチンウイルスRVX-13(配列番号26を含む)およびRVX-14(配列番号65を含む)については、最初のウイルス継代後に既にウイルス増殖の完全な欠如が観察された。
【0240】
1回限りのイベントを除外するために、非改変細胞へのワクチンウイルスの添加を繰り返し、定量的RT-PCRにより、互いに独立して数回解析した(
図16)。シグナルの完全な欠如により、数回の独立した実験において、ワクチンウイルスが子孫ウイルスを産生せず、感染性で複製可能な野生型または野生型様のSARS-CoV-2が出現するような様式では、非改変細胞内で自然に復帰することができないことを示している。
【0241】
完全長ウイルスまたは2種のワクチンウイルス候補RVX-13(配列番号26を含む)およびRVX-14(配列番号65を含む)のいずれかの6回のそのような継代物に対して、逐次的なウイルス継代を実施した。
【0242】
完全長ウイルスは、2~3日以内は非常に高い力価を生じ続けるが(RT-PCRによって定量化:Ct値は約12、
図16)、継代したワクチンウイルス候補RVX-13(配列番号26を含む)またはRVX-14(配列番号65を含む)はいずれも、40回までのPCRサイクルで増幅した場合(Ct値なし)でさえ、ウイルス増殖の徴候を全く示さない。最初の継代時には既に、感染性ワクチンウイルスは培地中に検出されなかった。
【0243】
本発明者らの実験のために使用した定量的RT-PCRのプロトコールは、RVX-13(配列番号26を含む)または-14(配列番号65を含む)を生成するために導入された変異のいずれによっても影響されないウイルス遺伝子を標的としている。この定量的な施設内プロトコールは、公式の診断プロトコール(Corman et al, Euro Surveill.2020: 25(3); doi: 10.2807/1560-7917.ES.2020.25.3.2000045)に対して検証されている。
【0244】
SARS-CoV-2増殖のために使用される標準的細胞株(VeroE6、HEK293-TA)において、複数回の継代にわたってRVX-13(配列番号26を含む)およびRVX-14(配列番号65を含む)のウイルス複製が完全に欠如していることにより、ワクチンウイルスの生物学的安全性が証明される。
【0245】
このことは、これらの単一サイクルワクチンウイルスを用いた研究に対して、より低いバイオセーフティレベルを適用することの正当な根拠となる。
【0246】
欠損したウイルス遺伝子を提供する特殊化された産生細胞において、同じストックからウイルスを同時に増殖させることが可能であることにより、ワクチンウイルスをさらなる用途のために産生することが可能になる。
【0247】
インビトロでの復帰またはウイルス進化が存在しないこと、ウイルスゲノムRNAと導入遺伝子との間の組換えの欠如
図14~16に示された広範な分子データパッケージは、無効化されたワクチンウイルスRVX-13(配列番号26を含む)およびRVX-14(配列番号65を含む)が、複製ウイルスの復旧を促進すると考えられる分子変化を来すことができないという主張を強く支持する。
【0248】
さらに、理論的には可能性は低いものの、ウイルスRNAゲノムが産生細胞の核内に存在する補完的な導入遺伝子との組換えを行う方法を見出す可能性があるという懸念もある。この修復ステップは、本発明者らの実験で使用した完全長対照の場合と同様に、続いてウイルスゲノムの再生をもたらすはずである。
【0249】
しかし、(優れた複製能を有する)完全長ウイルスの出現によるそのようなイベントは観察されたことがなく、また、NGSによる感染の広範な配列解析からも、細胞質ウイルスゲノムと細胞DNA情報との間のそのような組換えイベントの兆候は見出されなかった。
【0250】
上記に描写した実験設定において、複数回の連続したウイルス継代後にインビトロでウイルスが全く回収されないことは、インビトロ継代中に「野生型」へのウイルス復帰が可能ではなく、その後も可能ではないことの確固たる証拠としての役割を果たす。
【0251】
この知見は、ワクチンウイルスRVX-13(配列番号26を含む)およびRVX-14(配列番号65を含む)またはMoVi-1(配列番号36を含む)に関する分子設計戦略の意図を完全に裏付けるものである:目的のウイルス遺伝子の完全なオープンリーディングフレームは欠失しており、「残りの配列」と産生細胞中のいずれの対応物との組換えも許されない状況をもたらし、それ故にウイルスゲノム修復は排除された。
【0252】
まとめ:
1.本発明者らは、遺伝子操作された産生細胞においてワクチンウイルスRVX-13(配列番号26を含む)およびRVX-14(配列番号65を含む)の複数回の細胞継代を行った後、その元の真正配列の99%超が、第6世代の後のワクチンウイルスでも完全に保持されることを実証した(さらなる継代が継続中である)。
【0253】
2.本発明者らは、ワクチンウイルスRVX-13(配列番号26を含む)およびRVX-14(配列番号65を含む)の10件の並行感染において、ならびにVeroE6細胞上での複数回のブラインド継代の後に、生存ウイルスが出現せず、既に最初の継代の後に、正常なSARS-CoV-2感受性細胞において複製性ウイルスが実証されないことを示す。
【0254】
3.次世代シークエンシング(NGS)によるRVX-13(配列番号26を含む)およびRVX-14(配列番号65を含む)の高感度解析により、許容性の産生細胞における5回の連続継代の後に、子孫ワクチンウイルスの集団が十分に保存され、コドンが変化する点変異は0.1%未満しか含まないことが明らかになる。
【0255】
4.このことは、本ワクチンウイルスが、産生細胞における細胞培養下でのウイルス増殖の間に自発的に変化することができず、また変化せず、感染性で複製能のある野生型または野生型様のSARS-CoV-を再生することができないままであることを実証する。
【配列表】
【国際調査報告】