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特表2024-533379薄板から少なくとも1つのワークを切り抜くための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】薄板から少なくとも1つのワークを切り抜くための方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20240905BHJP
【FI】
B23K26/38 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515398
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2022073912
(87)【国際公開番号】W WO2023036640
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】102021123520.0
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン エス・エー プルス コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Werkzeugmaschinen SE + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, 71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン クラウゼ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック マッハ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CB03
4E168DA26
4E168FB01
4E168FB02
4E168GA02
4E168HA05
4E168JA02
(57)【要約】
本発明は、薄板(6)から少なくとも1つのワーク(12)を切り抜くための方法であって、A)レーザ切断機のテーブル(4)に薄板(6)を配置するステップと、B)ワーク(12)の仕上り線(19)に沿って薄板(6)にレーザビームを指向するステップであって、仕上り線(19)のメイン範囲において薄板(6)を切断し、ワーク(12)と薄板(6)の隣接部分(13)との間の仕上り線(19)の少なくとも1つの結合範囲に、薄板(6)の厚さよりも小さい高さを有する少なくとも1つの結合部(14)を残す、指向するステップと、C)少なくとも1つのワーク(12)と、このワーク(12)に結合された隣接部分(13)とをテーブルから取り出すステップと、D)少なくとも1つのワーク(12)を隣接部分(13)から分離するステップとを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板(6)から少なくとも1つのワーク(12)を切り抜くための方法であって、
A)レーザ切断機(1)のテーブル(4)に薄板(6)を配置するステップと、
B)前記ワーク(12)の仕上り線(19)に沿って前記薄板(6)にレーザビーム(5)を指向するステップであって、前記仕上り線(19)のメイン範囲において前記薄板(6)を切断し、前記ワーク(12)と前記薄板(6)の隣接部分(13)との間の前記仕上り線(19)の少なくとも1つの結合範囲に、前記薄板(6)の厚さ(D)よりも小さい高さ(d)を有する少なくとも1つの結合部(14;14a,14b)を残す、指向するステップと、
C)前記少なくとも1つのワーク(12)と、該ワーク(12)に結合された前記隣接部分(13)とを前記テーブルから取り出すステップと、
D)前記少なくとも1つのワーク(12)を前記隣接部分(13)から分離するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
小さな高さの前記結合部(14;14a,14b)の高さ(d)は、前記薄板(6)の前記厚さ(D)の多くとも1/3、好適には多くとも1/4、特に好適には多くとも1/6であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
小さな高さの前記結合部(14;14a,14b)の、前記仕上り線(19)に沿って測定した長さ(L)は、前記薄板(6)の前記厚さ(D)の多くとも半分および/または少なくとも1/4であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ステップB)において、複数のワーク(12)の少なくとも1つの共通の仕上り線(27)のところで小さな高さの結合部(14)を介して互いに結合された前記複数のワーク(12)のグループ(26)を形成することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記複数のワーク(12)のグループ(26)は、前記薄板(6)を切断する際に沿う前記ワーク(12)の仕上り線(29)により形成された全周にわたって延びる外側仕上り線(28)を有することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ステップC)において、前記グループ(26)のうちの1つの前記ワーク(12)に取出し装置を作用させることを特徴とする、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
前記ステップB)において、それぞれ小さな高さの少なくとも1つの結合部(14)を介して1つの共通のスクラップスケルトン部分(17;17a,17b;17c,17d)に結合され続けている複数のワーク(12)のグループ(16)を形成し、前記ステップC)において、前記複数のワーク(12)と、隣接した前記スクラップスケルトン部分(17;17a,17b;17c,17d)とを一緒に取り出すことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ステップC)に先だって、前記スクラップスケルトン部分(17;17a,17b;17c,17d)を、特に全周にわたって延びる輪郭(18)に沿って前記薄板(6)から切り離し、好ましくは、前記輪郭(18)は凹状であることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記グループ(16)の前記ワーク(12)からの前記輪郭(18)の最小の間隔は、少なくとも12mmであり、好ましくは、前記薄板(6)の前記厚さ(D)よりも大きく、かつ/または前記ワーク(12)を有しない前記スクラップスケルトン部分(17;17a,17b;17c,17d)に、取出し装置用の少なくとも120mmの直径の少なくとも1つの作用面(21)が残されていることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ステップC)において、前記スクラップスケルトン部分(17;17a,17b;17c,17d)に取出し装置を作用させることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記テーブル(4)は、互いに平行に延在するタブ(23)を有し、2つの隣り合ったタブ(23)の間の間隔(A)よりも狭幅である1つの前記ワーク(12)は、小さな高さの2つの結合部(14)を獲得しており、好適には、小さな高さの前記結合部(14)のうちの第1の結合部は、前記ワーク(12)の短辺(24)に配置されており、特に好適には、小さな高さの前記結合部(14)のうちの第2の結合部は、前記ワーク(12)の長辺(25)に、特に前記ワーク(12)の長さの少なくとも60%だけ前記第1の結合部(14)から遠ざけられて配置されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記ステップC)において取り出すために、真空グリッパ、磁石グリッパ、ベルヌーイグリッパおよび/または機械式のグリッパ、特にパラレルグリッパを有する取出し装置を使用することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記ステップD)における分離を揺振、押圧、吹飛しまたは吸着、特に磁気的な吸着または負圧による吸着によって行うことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ステップD)における分離を、前記ステップC)において取り出すために使用されている取出し装置が前記ワーク(12)を間接的または直接的に保持している最中に行うことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ステップD)における分離を、ステップC)において取り出すために使用された取出し装置が前記ワーク(12)を解放した後、特に分離装置に降下させた後に行うことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、レーザ切断機のテーブルに配置された薄板から少なくとも1つのワークを切り抜くための方法に関する。
【0002】
薄板からワークを切り抜くレーザ切断法は基本的に知られている。薄板は、ワークを切り抜くために、典型的には、レーザ切断機のテーブルに配置される。このテーブルは、互いに離間させられた複数のタブを有していることが多いため、薄板は面にわたって支持されない。したがって、特により小さなワークが切抜き後に傾倒してしまうリスクがある。これによって、ワークを自動化して取り出すことができなくなるかまたはワークが薄板のスクラップスケルトン内で引っ掛かってしまう。
【0003】
米国特許出願公開第2018/0093348号明細書に基づき、ワークを部分的にのみ切り抜き、これによって、ワークをスクラップスケルトンユニットに結合したままにすることが公知である。このスクラップスケルトンユニットは薄板から完全に分離され、これによって、スクラップスケルトンユニットを、このスクラップスケルトンユニットに結合された1つ以上の構成部材を含めて取り出すことができる。各々のワークとスクラップスケルトンユニットとの間に結合部を得るために、レーザビームが中断される。これによって、薄板が結合部の領域でレーザビームの照射を受けなくなり、加工されなくなる。
【0004】
米国特許出願公開第2018/0093348号明細書に記載された方法により得られる結合部は、薄板の厚さ全体にわたって延在している。このような結合部は、いわゆる「ミクロジョイント」とも呼ばれる。薄板の厚さ全体を含む結合部の高さに基づき、ワークを各々のスクラップスケルトンユニットから分離するためには手間がかかる。さらに、結合部を製作するためにレーザビームが中断された後、再度薄板へのピアシングが行われなければならない。このことは、1つには、時間を要する。もう1つには、ワークに直接ピアシングを行うことによって、通常、切断エッジ品質が局所的に低下させられる。したがって、ワークに直接ピアシングを行うことは許容されていないことが多い。
【0005】
発明の課題
本発明の課題は、品質的に高価値の薄板ワークを合理的に、特に確実に自動化可能かつ簡単なプロセスで製作することができる方法を提供することである。
【0006】
発明の説明
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載した特徴を有する方法によって解決される。従属請求項および明細書には、有利な方法変化形態が記載してある。
【0007】
本発明によれば、薄板から少なくとも1つのワークを切り抜くための方法が特定されている。薄板は、典型的には金属から成っている。薄板は、特に鋼から成っていてよい。薄板の厚さは少なくとも2mm、特に少なくとも4mmであってよい。薄板の厚さは多くとも40mm、特に多くとも30mmであってよい。
【0008】
方法は、
A)レーザ切断機のテーブルに薄板を配置するステップと、
B)ワークの仕上り線に沿って薄板にレーザビームを指向するステップであって、仕上り線のメイン範囲において薄板を切断し、ワークと薄板の隣接部分との間の仕上り線の少なくとも1つの結合範囲に、薄板の厚さよりも小さい高さを有する少なくとも1つの結合部を残す、指向するステップと、
C)少なくとも1つのワークと、このワークに結合された隣接部分とをテーブルから取り出すステップと、
D)ワークを隣接部分から分離するステップと
を含んでいる。
【0009】
ステップA)~D)は、基本的に、記載した順序で実施される。
【0010】
ステップA)では、薄板がレーザ切断機のテーブルに載置される。薄板はテーブルに位置固定されてよい。このテーブルは、典型的には、薄板を局所的に制限して載置するための種々の載置手段、例えば互いに平行にかつ離間させられて延在する複数のタブを有している。
【0011】
ステップB)では、薄板にレーザビームが指向される。このレーザビームは、レーザ切断機の加工ヘッドから出射させられてよい。薄板へのレーザビームの射当点は、ワークの仕上り線に沿って移動させられる。このためには、加工ヘッドがテーブルに対して相対的に走行させられてよい。レーザビームと一緒に切断ガス噴流、例えば窒素および/または酸素が、仕上り線に沿って薄板に指向されてよい。レーザビームと切断ガス噴流とは、加工ヘッドの切断ガスノズルから一緒に進出してよい。仕上り線はワークの外側輪郭に相当している。仕上り線に沿った移動は、閉じられるように行われてもよいし(中断なし)、時間的に分離された複数の区分で行われてもよい。仕上り線に沿った移動時には、レーザビームのスイッチは基本的にオフにされない。仕上り線のあらゆる箇所で材料が除去される。
【0012】
仕上り線のメイン範囲では、薄板が切断される。メイン範囲は、典型的には、仕上り線の長さの90%超、好適には95%超、特に好適には98%超を含んでいる。仕上り線の少なくとも1つの結合範囲では、ワークと薄板の隣接部分との間に、薄板の厚さよりも小さい高さを有する少なくとも1つの結合部が残される。以下では、このような結合部を「ナノジョイント」または「小さな高さの結合部」とも呼ぶ。この結合部は、基本的に、薄板の、レーザビームの射当点と反対の側に形成される。言い換えると、少なくとも1つのワークは、少なくとも1つの別のワークまたはスクラップスケルトン部分に結合されたままである。結合部は、薄板もしくはワークの厚さ全体にわたって延在していない。隣接部分との結合によって、ワークの傾倒を阻止することができる。
【0013】
好ましくは、仕上り線の結合範囲でレーザ出力が低下させられ、これによって、小さな高さの結合部が得られる。代替的または付加的には、切断速度が高められてもよいし、レーザビームと切断ガス噴流とを薄板もしくはワークに指向する切断ガスノズルの間の間隔が増大させられてもよい。これらのパラメータ変更によって、薄板の完全な切断が局所的に制限されて回避される。小さな高さの結合部を形成するためのパラメータ変更の実施は、国際公開第2019/025327号に記載されているように行われてよい。これについては、国際公開第2019/025327号における記載を参照されたい。ただし、本明細書で小さな高さの結合部または「ナノジョイント」と呼ぶ結合部が、国際公開第2019/025327号では「ミクロジョイント」と呼ばれる。
【0014】
ステップC)では、少なくとも1つのワークが、僅かな高さの少なくとも1つの結合部を介してワークに結合された隣接部分と共にテーブルから取り出される。少なくとも1つのワークと隣接部分との結合に基づき、このことを特に簡単に行うことができる。取出し装置は、各々のワークに作用する必要はなく、複合体の1つの適切な箇所または場合により複数の適切な箇所に作用しさえすればよい。作用点の個数は、典型的には、一緒に取り出すべきワークの数よりも少ない。このことは、取出し工程を加速させる。取出し装置は、真空グリッパ、磁石グリッパ、ベルヌーイグリッパおよび/または機械式のグリッパ、特にパラレルグリッパを有していてよい。ナノジョイントによって、1つには、ワークを互いに十分に固く保持することができるかまたはスクラップスケルトン部分に保持することができ、もう1つには、それにもかかわらず、容易に、例えば手で互いにもしくはスクラップスケルトン部分から個別化することができる。
【0015】
その後、ステップD)において、少なくとも1つのワークが隣接部分から分離される。言い換えると、ワークが個別化される。結合部の僅かな高さに基づき、分離を特に簡単に、特に少ない力消費で行うことができる。さらに、結合部の僅かな高さのおかげで、切り離されたワークに十分に損傷のないエッジ、つまり、良好な品質を有するワークが得られる。分離は手で行われてよく、例えば指で押すかまたはハンマで叩くことによって行われてよい。好ましくは、分離は自動化されて行われる。複数のワークが一緒に取り出された場合には、複数のワークの分離を1回の作業工程で行うことができる。これによって、方法がさらに加速させられる。分離は、揺振、押圧、吹飛しまたは吸着、特に磁気的な吸着または負圧による吸着によって行われてよい。揺振とは、本明細書では、特に複数回の往復運動を意味している。揺振させられると、少なくとも1回の衝撃を複合体に導入することができる。
【0016】
ワークを、このワークにナノジョイントを介して結合された部分から分離するための分離装置は、取出し装置に形成されていてよく、特に取出し装置内に組み込まれていてよい。代替的には、取出し装置と分離装置とが互いに別個に設けられていてよい。分離装置は、例えば、特に空気圧シリンダにより可動の押出しピンを備えた押出し装置であってよい。揺振による分離のために、必ずしも固有の分離装置は必要でない。小さな高さの結合部を介して結合された複合体は、例えば取出し装置によって揺振させられてよく、これによって、少なくとも1つのワークが隣接部分から解離される。このときに、ナノジョイントが裂開する。
【0017】
個別化のために、取出し装置は、ワークを含む複合体と共に完成品トレイの上方に走行させられてよい。個別化後、良品は完成品トレイ上もしくは完成品トレイ内に位置している。場合により残されたスクラップスケルトン部分は別個のトレイに降下させられてよい。
【0018】
本発明に係る方法は、さらに、ナノジョイントが配置される切断間隙が極めて狭幅であってよいという利点を有している。特に、複数のワークが共通の分離断面を有していて、互いに結合部により一緒に複合体として(個々の部分が傾倒しないように)テーブルに保持されることが求められる場合、このことは、ナノジョイントを介してしか実現することができない。(薄板もしくはワークの厚さ全体にわたって延在する)ミクロジョイントを形成する際には、レーザビームのスイッチがオフにされなければならないため、その後、ワーク同士の間の更なる切断のためには、この良品に直接ピアシングが行われなければならなくなってしまう。通常、このことは不可能である。狭幅の切断間隙は、さらに、取出し装置の真空サッカ(真空グリッパ)が、切断線のないスクラップスケルトン領域または十分に大きなワークに必ずしも作用する必要はなく、サクション作用が過度に少なくなることなしに、切断間隙を越えて延在していてもよいという利点を有している。こうして、サッカ位置決め用の特有の領域を設けることが必ずしも必要なくなる。
【0019】
小さな高さの結合部の高さは、薄板の厚さの多くとも1/3、好適には多くとも1/4、特に好適には多くとも1/6であってよい。典型的には、結合部の高さは、薄板の厚さの少なくとも1/20、特に少なくとも1/10である。小さな高さの結合部の、仕上り線に沿って測定した長さは、薄板の厚さの多くとも半分および/または少なくとも1/8、特に少なくとも1/4であってよい。このように寸法設定された結合部によって、ワークを、1つには確実に保持することができ、もう1つには簡単に個別化することができる。
【0020】
有利な方法変化形態では、ステップB)において、複数のワークの少なくとも1つの共通の仕上り線のところで小さな高さの結合部を介して互いに結合された複数のワークのグループが形成される。言い換えると、ワーク同士が共通の切断エッジを有している。この場合、各々の共通の切断エッジに少なくとも1つのナノジョイントが配置されている。複数のワークのこのようなグループは、「ネスト」と呼ばれることもある。この変化形態は、小さな高さの結合部の作製後に新たにピアシングを行う必要がないことを利用している。したがって、結合部を2つのワーク(良品)の間に形成することができる。さらに、共通の仕上り線によって、薄板へのワークの特に省スペースの配置が可能となる。
【0021】
複数のワークのグループは、薄板を切断する際に沿うワークの仕上り線により形成された全周にわたって延びる外側仕上り線を有していてよい。言い換えると、この外側仕上り線は、複数のワークの仕上り線のメイン範囲によって形成されてよい。こうして、互いに結合されたワークの、全体的にスクラップスケルトンから完全に切り離される「ネスト」が得られる。複数のワークのグループ(ネスト)は、ユニットとして、つまり、バラストとしてのスクラップスケルトン部分なしに、薄板から取り出されてよい。
【0022】
ステップC)において、グループのうちの1つのワークに取出し装置が作用してよい。取出し装置の支持力は制限されているので、こうして、1回のステップでより多くのワーク(良品)を一緒に取り出すことができる。ネストに対する最大の部分重量は、好ましくは100kgである。ネストの最大のサイズは、1000mm×1500mmであってよい。
【0023】
ステップB)において、少なくとも1つのワークのほかに、少なくとも1つの薄板部分が薄板から切り抜かれ、この薄板部分が、ステップC)において、少なくとも1つのワークとその隣接部分とから独立して個々に取り出されてよい。これによって、特に、位置固定される必要がなく、個々にハンドリングすることができる大きな薄板部分と、位置固定される必要があり、有利には複合体で取り出されるより小さなまたは長く延ばされたワークとを製作するための薄板の臨機応変な使用が可能となる。
【0024】
有利な方法変化形態では、ステップB)において、それぞれ小さな高さの少なくとも1つの結合部を介して1つの共通のスクラップスケルトン部分に結合され続けている複数のワークのグループが形成される。ステップC)において、複数のワークと、隣接したスクラップスケルトン部分とは一緒に取り出されてよい。この変化形態は、互いに直接隣接して配置することができない小さなワークのために特に適している。
【0025】
好ましくは、ステップC)に先だって、スクラップスケルトン部分が、特に全周にわたって延びる輪郭に沿って薄板から切り離される。スクラップスケルトン部分が薄板の縁部に配置されている場合、切離しのための輪郭は、薄板の縁部点同士の間に延在していてよい。輪郭は凹状であってよい。こうして、ナノジョイントによりスクラップスケルトン部分に結合され続けている複数の(特により小さなかつ/または細長い)ワークを、ナノジョイントにより安定させられる必要がないより大きなワークもしくは薄板部分同士の間で薄板に分配し、輪郭に沿って連続した切断線によって取り囲むことができる。グループの複数のワークを取り囲む輪郭の形状は、実質的に自由に選択されてよい。特に、正方形と異なるスクラップスケルトン部分、特に長方形と異なるスクラップスケルトン部分も残りの薄板から切り離されてよい。こうして、ワークの材料効率の良いネスティングが可能となる。より小さなワークの配置は、薄板においてより大きな薄板部分同士の間で使用可能なスペース次第であってよい。この場合、複数のワークのグループを取り囲む輪郭が相応に選択される。言い換えると、複数のワークを取り囲むように、任意の形状を有していてよく、特に長方形である必要がないスクラップスケルトン部分が形成される。このスクラップスケルトン部分は薄板から切り離され、薄板に含まれているワークと一緒に取り出される。
【0026】
グループのワークからの輪郭の最小の間隔は、少なくとも12mmであってよい。好ましくは、特に薄板の厚さが15mmよりも大きい場合、最小の間隔は薄板の厚さよりも大きい。これによって、スクラップスケルトン部分がレーザ切断の入熱によって膨れ上がることを回避することができる。
【0027】
スクラップスケルトン部分は、取出し装置のグリッパ用、特に真空グリッパ用の作用面を有していてよい。作用面には、基本的に切断線は加工されない。特に好適には、ワークを有しないスクラップスケルトン部分に、取出し装置用の少なくとも120mmの直径の少なくとも1つの作用面が残されている。これによって、より大きな複合体の確実なハンドリングも可能となる。
【0028】
ステップC)において、スクラップスケルトン部分に取出し装置が作用してよい。これによって、ワークが極めて小さい場合の取出しが簡単になる。さらに、取出し装置によるワークの損傷が回避される。取出し装置がスクラップスケルトン部分に作用している最中にスクラップスケルトン部分からのワークの分離が行われる場合には、取出し装置により保持された重量を測定することによって、全てのワークがスクラップスケルトン部分から解離されたかどうかを確認することができる。
【0029】
好適には、スクラップスケルトン部分は30mm×80mm以上1000mm×1500mm以下である。このように寸法設定されたスクラップスケルトン部分は、自動化された取出し装置によって良好に取り出すことができる。スクラップスケルトン部分と、このスクラップスケルトン部分に保持されたワークとの最大重量は、好ましくは最大100kgである。
【0030】
スクラップスケルトン部分と、このスクラップスケルトン部分に含まれていて、ナノジョイントを介してスクラップスケルトン部分に結合されたワークとは、薄板の縁部に配置されてよい。こうして、薄板の、従来では通常使用されない残される縁部(典型的には10mmの縁部幅)を、1つには、取出し用のワークを位置固定するために、もう1つには、取出し装置用の作用点として使用することができる。
【0031】
複合体を取り出すための取出し装置がワークに作用するような場合には、このワークに少なくとも2つのナノジョイントが互いに反対側で設けられることが望ましい。こうして、取り出すべき複合体の重量が少なくとも2つのナノジョイントに分散される。これによって、ナノジョイントが早期に破断されるリスクが減じられる。
【0032】
取出し装置の1つ以上の作用点は、好ましくは、取り出すべき複合体が取出し時に傾倒することがないように位置決めされる。作用点は複合体の重心に位置していてよい。この場合には、原理的に1つのグリッパで十分である。2つの作用点は、複合体の互いに向かい合って位置する角隅に位置していてもよいし、複合体の重心を通る軸線の互いに反対側の面に位置していてもよい。これらの事例では、少なくとも2つのグリッパが必要となる。
【0033】
薄板用のテーブルは、互いに平行に延在するタブを有していてよい。この事例では、ワークの短辺がタブに対して横方向に向けられていると、テーブルの2つの隣り合ったタブの間の間隔よりも狭幅である1つのワークが、少なくとも小さな高さの2つの結合部を獲得している。言い換えると、ワークの長い方の辺がタブに対して(ほぼ)平行に延在していると、2つのナノジョイントが設けられる。ワークは、典型的には少なくとも100mmの長さである。細長いワークが傾倒リスクのある姿勢で切り抜かれる場合には、少なくとも2つのナノジョイントによって、細長いワークは安定させられる。好適には、小さな高さの結合部のうちの第1の結合部が、ワークの短辺に配置される。特に好適には、小さな高さの結合部のうちの第2の結合部が、ワークの長辺に、特にワークの長さの少なくとも60%だけ第1の結合部から遠ざけられて配置される。こうして、ワークを有効に安定させることができる。特に、取出しを困難にするかまたは不可能にする恐れがあるワークの垂れ下がりを回避することができる。
【0034】
ステップD)における分離は、ステップC)において取り出すために使用されている取出し装置がワークを間接的または直接的に保持している最中に行われてよい。これによって、ワークを個別化するための装置に関する手間を減じることができる。特に、取出し装置が、分離のために、ワークを備えた複合体を揺振させる場合には、ワークを隣接部分から分離するための付加的な装置を省くことができる。取出し装置が、ワークを備えた複合体を保持している最中にワークの押出し(「ピンエジェクト」)も簡単に行うことができる。取出し装置、特に取出し装置のグリッパに可動の押出しピンが配置されていてよい。
【0035】
代替的には、ステップD)における分離は、ステップC)において取り出すために使用された取出し装置がワークを解放した後、特に分離装置に降下させた後に行われてよい。この変形形態は、複合体にスクラップスケルトン部分を含まないワークのグループのために特に適している。分離装置は、後続処理のためにワークを仕分けてよい。
【0036】
本発明の更なる特徴および利点は、特許請求の範囲、明細書および図面から明らかとなる。本発明によれば、前述した特徴および以下に記載する特徴は、それぞれ個々に単独で使用されてもよいし、複数を任意に有利に組み合わせて使用されてもよい。図面に示して説明する実施形態は限定的な列挙と解すべきものではなく、むしろ、本発明を説明するための一例としての特徴を有している。
【0037】
発明および図面の詳細な説明
本発明を図面に示し、実施例に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明によるレーザ切断法を実施するように構成されたレーザ切断機を示す図である。
図2a】薄板からレーザ切断され、ナノジョイントにより隣接部分に保持されているワークの平面図である。
図2b】薄板からレーザ切断され、ナノジョイントにより隣接部分に保持されているワークの、図2aに示したIIb-IIbに相応の断面図である。
図3】本発明に係る方法の最中の、それぞれグループの1つの共通のスクラップスケルトン部分にナノジョイントを介して結合されたワークの4つのグループを備えた薄板の概略的な平面図である。
図4】本発明に係る方法の最中の、それぞれグループの1つの共通のスクラップ部分にナノジョイントを介して結合されたワークの2つのグループと、切り抜かれた別の個々の薄板部分とを備えた薄板の概略的な平面図である。
図5】本発明に係る方法の最中の、それぞれグループの1つの共通のスクラップ部分にナノジョイントを介して結合されたワークの2つのグループと、切り抜かれた別の個々の薄板部分とを備えた別の薄板の概略的な平面図である。
図6】本発明に係る方法の最中の、互いにナノジョイントを介して結合されたワークの1つのグループを備えた薄板の概略的な平面図である。
図7】本発明に係る方法の概略的なフローチャートである。
【0039】
図1に斜視図で示したレーザ切断機1は、例えば、レーザビーム発振器2としてのCCVレーザ、ダイオードレーザまたは固体レーザと、走行可能な(レーザ)加工ヘッド3と、テーブル4とを有している。レーザビーム発振器2では、このレーザビーム発振器2からライトガイドケーブル(図示せず)または変向ミラー(図示せず)を介して加工ヘッド3にガイドされるレーザビーム5が発生させられる。テーブル4には、薄板6が配置されている。レーザビーム5は、加工ヘッド3内に配置された集束光学系によって薄板6に指向される。レーザ切断機1には、さらに、切断ガス7、例えば酸素および窒素が供給される。各々の切断ガス7の使用は、薄板6の材料と、切断エッジに課される品質要件とに依存している。さらに、吸引装置8が設けられている。この吸引装置8は、テーブル4の下方に位置する吸引通路9に接続されている。切断ガス7は、加工ヘッド3の切断ガスノズル10に供給され、この切断ガスノズル10からレーザビーム5と一緒に進出する。
【0040】
レーザ切断時には、薄板6がレーザビーム5によって、切り抜くべきワークの仕上り線の一部である所望の軌道曲線Kに沿って、薄板を切断するために十分なより高いレーザ出力(切断出力)で切断される。図示の構成では、レーザビーム5が移動させられるが、しかしながら、代替的または付加的には薄板6も移動させられる。このためには、まず、図2aに示したように、切断すべき軌道曲線K上でまたは切断すべき軌道曲線Kの側方で点Sにおいて薄板6にピアシングが行われなければならない。
【0041】
図2a、図2bに示したように、薄板6のレーザ切断時には、レーザ切断されるワーク12と薄板6の隣接部分13との間の切断間隙11にタブもしくはナノジョイントの形態の結合部14a,14bが残される。この結合部14a,14bはワーク12を隣接部分13に位置固定していて、ひいては、この隣接部分13もしくはテーブル4に対する傾倒を阻止している。さらに、結合部14a,14bに基づき、ワーク12と隣接部分13とを複合体にてハンドリングすることができる。
【0042】
図2bに示したように、ナノジョイント14a,14bは、薄板6の厚さD全体にわたって延在しているのではなく、下側の1/3にしか延在しておらず、つまり、厚さDよりも少ない高さdを有している。したがって、本明細書では、ナノジョイントを小さな高さの結合部14a,14bとも呼ぶ。ナノジョイント14a,14bの長さLは、切断間隙11に沿って厚さDよりも短い。好ましくは、ナノジョイント14a,14bの長さLは厚さDの半分よりも短い。
【0043】
ナノジョイント14aは、図2aでは切断終端部に位置しており、つまり、自体閉じられた軌道曲線Kの始点Sに再び到達する直ぐ手前に形成される。これに対して、ナノジョイント14bは、切断終端部ではなく、軌道曲線Kの任意の部分に位置している。本明細書では、ナノジョイント14a,14bが形成される軌道曲線Kの長さ範囲をワーク12の仕上り線19の結合範囲とも呼ぶ。また、薄板6が完全に切断される軌道曲線Kの長さ範囲をワーク12の仕上り線のメイン範囲とも呼ぶ。
【0044】
以下に、結合部14a,14bの作製をレーザ出力の変化の例で説明する。方法のこの変化形態では、ナノジョイント14a,14bは、切断プロセス中に適切に選択される出力勾配によりレーザ出力を的確に適合させることによってのみ形成される。出力勾配は、図1に示したレーザ加工機1の制御装置15によってワーク材料に応じて予め設定される。制御装置15は、薄板6に対する加工ヘッド3の移動も制御する。切断プロセスには、低下させられたレーザ出力によって、完全な切断のために必要となる区間エネルギーがもはや提供されないため、材料が薄板6の厚さD全体にわたって溶融されず、切断間隙11もしくは切断エッジの下側の領域で、レーザ切断されるワーク12と隣接部分13との間に、ナノジョイント14a,14bが残される。
【0045】
レーザ出力は別として、ナノジョイント14a,14bの形成時には、レーザ切断の別の全ての切断パラメータ、つまり、例えば、レーザビーム5の集束位置、ワーク表面に対する切断ガスノズル10の間隔、切断ガス圧および切断速度が不変に保たれる。ナノジョイント14bの形成後には、標準パラメータによって引き続き切断が行われる。ナノジョイント14aの形成後には、レーザビーム5のスイッチがオフにされてよい。代替的には、更なるワークが切り抜かれてよい。
【0046】
ワーク厚さDよりも少ない高さdを有する、軌道曲線Kの終端部に位置していないナノジョイント14bを形成するためには、薄板6のレーザ切断時に、レーザビーム5のレーザ出力が、ナノジョイント14の長さLに相当する軌道曲線Kの部分において、薄板6を切断するために十分なより高いレーザ出力(切断出力)から、薄板6を完全に切断するために十分でないより低いレーザ出力(低下出力)に低下させられ、次いで、再びより高いレーザ出力(切断出力)に高められる。低いレーザ出力(低下出力)での加工時には、ナノジョイント14a,14bの上方で薄板6に凹部が形成される。
【0047】
図3には、ワーク12の4つのグループ16が切り抜かれた薄板6が示してある。各々のグループ16は、複数のワーク12と、グループ16のワークに対する隣接部分13を成すスクラップスケルトン部分17とを備えている。グループ16の全てのワーク12は同形であってよい。代替的には、グループ16は、種々異なるワーク12を含んでいてよい。グループ16のワーク12は、それぞれ(市松模様により抽象的に図示した)少なくとも1つのナノジョイント14を介して、対応するスクラップスケルトン部分17に結合されている。当然ながら、結合部14は、実際のところ、図3には見やすさの理由から概略的に示してあるサイズよりも小さく形成される。スクラップスケルトン部分17は、それぞれ全周にわたって延びる輪郭18に沿って薄板6から切り離されている。スクラップスケルトン部分17は、図3では例示的に方形である。
【0048】
ワーク12はその各々の仕上り線19よりも内側に、切断された内側輪郭20を有していてよい。この内側輪郭20により取り囲まれる領域が十分に大きい場合には、内側輪郭19よりも内側で別のより小さなワークを切り抜いて、ナノジョイントを介してワーク12に結合することが可能である(図示せず)。
【0049】
スクラップスケルトン部分17には、取出し装置(図示せず)のグリッパ用の複数の作用面21が設けられていてよい。これらの作用面21は、例えば120mmよりも大きな直径を有していてよい。図示の構成では、作用面21はスクラップスケルトン部分17の角隅に配置されている。作用面21の範囲内には、切断線は設けられていない。したがって、真空グリッパが、スクラップスケルトン部分17を作用面21の領域で吸引することができる。その後、各々のスクラップスケルトン部分17を、このスクラップスケルトン部分17に保持されたワーク12を含めて、薄板6の残りのスクラップ部分30から取り出すことができる。
【0050】
ワーク12を個別化するために、取出し装置は各々のスクラップスケルトン部分17を振動もしくは揺振させてよい(急激に往復運動させてよい)。この場合に発生させられる動的な負荷に基づき、結合部14が破断される。ワーク12がスクラップスケルトン部分17から落下して、例えば捕集容器内に集められてよい。ワーク12の解離時の重量減少を取出し装置によって測定することができ、これによって、個別化が完全に行われたかを検査することができる。
【0051】
図4には、複数のより大きな薄板部分22と、それぞれ複数のより小さなワーク12の2つのグループ16とが切り抜かれた薄板6が示してある。薄板部分22は、それぞれ完全に切り離されていて、それぞれ個々に取り出される。両方のグループ16のワーク12は、図4には示していないナノジョイントを介して各々のスクラップスケルトン部分17a,17bに結合されている(これについては、図3に対する前述した説明を参照のこと)。このスクラップスケルトン部分17a,17bは、同じく取出し装置のグリッパ用の作用面21を有していてよい。
【0052】
図4の右下に配置されたスクラップスケルトン部分17aの全周にわたって延びる輪郭18は方形である。2つの作用面21は、互いに向かい合って位置する角隅に設けられていてよい。
【0053】
図4の左側のスクラップスケルトン部分17bは複雑な輪郭18を有している。ここでは、スクラップスケルトン部分17bはほぼC字形であり、凹状の区分を有している。作用面21は、C字形の3つの辺の端部の領域に設けられていてよい。
【0054】
グループ16内でナノジョイントを介して各々のスクラップスケルトン部分17a,17bに結合されたワーク12の配置は、図示の構成では、薄板6の面積が、薄板部分22およびワーク12の製作のために可能な限り十分に使用されるように選択されている。スクラップスケルトン部分17a,17bの全周にわたって延びる輪郭18は、ワーク12が、有利にはグループ16内にまとめられるように選択されている。
【0055】
図5には、レーザ切断機1(図1参照)のテーブル4の互いに平行に延在するタブ23に載置された薄板6が示してある。2つのより大きな薄板部分22は完全に切り離されている。さらに、同図には、複数のワーク12の2つのグループ16が例示してある。
【0056】
図5の左下に示したグループ16は、例えば2つの小さなワーク12を備えている。これらのワーク12は、それぞれ1つのナノジョイント14を介してスクラップスケルトン部分17cに結合されている。このスクラップスケルトン部分17cは薄板6の縁部に直接配置されている。スクラップスケルトン部分17cの輪郭18は薄板6の2つの外面の間に延在している。スクラップスケルトン部分17cの縁部側の領域は、2つのワーク12とスクラップスケルトン部分17cとの複合体をハンドリングするための作用面として使用されてよい。
【0057】
図5の中央右側に示したグループ16は、例えば2つの細長い(長く伸ばされた)ワーク12を備えている。これらのワーク12は、それぞれ2つのナノジョイント14を介してスクラップスケルトン部分17dに結合されている。両方のワーク12の短辺24は、テーブル6の互いに隣り合ったタブ23の間の間隔Aよりも短い。両方のワーク12の長辺25は間隔Aよりも長いにもかかわらず、細長いワーク12は、タブ23に対して平行な長辺25を伴う図示の向きでは、タブ23同士の間で傾倒もしくは落下してしまう。このことを阻止するため、細長いワーク12は、ナノジョイント14によってスクラップスケルトン部分17dに位置固定されている。この場合、それぞれ1つのナノジョイント14は一方の短辺24に配置されている。第2のナノジョイント14は、それぞれ一方の長辺25に配置されている。各々のワーク12の両方のナノジョイントの間の距離Eは、ワークの長さの少なくとも2/3であってよい。
【0058】
取出し装置のグリッパ用の作用面21はスクラップスケルトン部分17dに設けられていてよい。ワーク12の仕上り線19に沿う切断間隙が十分に狭幅である場合には、作用点21が、一方のワーク12と、隣接したスクラップスケルトン部分17dとに延在していることも可能である。
【0059】
図6には、ナノジョイント14を介して互いに結合された複数のワーク12のグループ26を備えた薄板6が示してある。互いに隣り合ったワーク12は、同図では、複数の共通の仕上り線27を有している。これらの共通の仕上り線27のうちの1つに沿って、それぞれ少なくとも2つのワーク12が互いに隣接している。各々のワークの仕上り線は少なくとも1つ共通の仕上り線27を含んでいる。この共通の仕上り線27のメイン範囲は、ワーク12の切抜き時に分離される。共通の仕上り線27の結合範囲には、ナノジョイント14が残される。このナノジョイント14を介して、ワーク12は互いに結合される。本明細書では、互いに直接結合されたワーク12の複合体をネストとも呼ぶ。
【0060】
ワーク12のグループ26は、全体として、全周にわたって延びる外側仕上り線28を有している。この外側仕上り線28は、ワーク12の自由な仕上り線29によって形成されている。この自由な仕上り線29には、グループ26の別のワーク12は隣接していない。自由な仕上り線29は、ネスト内で外側に配置されたワーク12の仕上り線の一部である。
【0061】
外側仕上り線28に沿って、薄板6は完全に切断される。したがって、グループ26を薄板6のスクラップ部分30から取り出すことができる。このためには、取出し装置のグリッパが1つ以上のワーク12に直接作用してよい。図6には、例えば、グループ26を通じてほぼ対角線上に位置する真空グリッパ用の3つの作用面21がマークしてある。ワーク12を互いに分離するために、グループ26は、取出し装置がワーク12を解放した後にこのワーク12を個別化する分離装置内に挿入されてよい(図示せず)。
【0062】
図7には、薄板から少なくとも1つのワーク、好ましくは複数のワークを切り抜くための方法の包括的なフローチャートが示してある。ステップ102では、薄板がレーザ切断機のテーブルに配置される。
【0063】
その後、ステップ104でレーザ加工が行われる。このためには、レーザビームが薄板に指向される。レーザビームの射当点が、少なくとも1つのワークの仕上り線に沿って移動させられる。各々のワークの仕上り線のメイン範囲で薄板が完全に切断される。各々のワークの仕上り線の少なくとも1つの結合範囲では、レーザ加工が、ワークと薄板の隣接部分との間に結合部が残されるように制御される。この結合部は、薄板の厚さよりも小さい高さを有している。(いわゆるナノジョイントの)小さな高さの結合部を形成するために、レーザ出力が低下させられてよい。隣接部分は別のワークまたはスクラップスケルトン部分であってよい。
【0064】
後続のステップ106では、少なくとも1つのワークと隣接部分との複合体がテーブルから取り出される。場合によりスクラップスケルトン部分を備えるワークのグループが、ステップ104において、薄板のスクラップ部分から予め切り離されていてよい。
【0065】
最後に、ステップ108において、少なくとも1つのワークが隣接部分から分離される。特に、複合体の全てのワークが互いに個別化され、場合により存在しているスクラップスケルトン部分から個別化される。
【符号の説明】
【0066】
1 レーザ切断機
2 レーザビーム発振器
3 加工ヘッド
4 テーブル
5 レーザビーム
6 薄板
7 切断ガス
8 吸引装置
9 吸引通路
10 切断ガスノズル
11 切断間隙
12 ワーク
13 隣接部分
14;14a,14b 結合部(ナノジョイント)
15 制御装置
16 ワーク12とスクラップスケルトン部分とを備えたグループ
17;17a,17b;17c,17d スクラップスケルトン部分
18 スクラップスケルトン部分の輪郭
19 仕上り線
20 内側輪郭
21 作用面
22 薄板部分
23 タブ
24 短辺
25 長辺
26 互いに結合されたワーク12のグループ
27 共通の仕上り線
28 外側仕上り線
29 自由な仕上り線
30 スクラップ部分
K 軌道曲線
S ピアシング点
D 薄板6の厚さ
d 結合部14;14a,14bの高さ
L 結合部14;14a,14bの長さ
A タブ23同士の間の間隔
E 距離
102 配置
104 レーザ加工
106 取出し
108 分離
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】