(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】高電圧リチウムイオン二次電池用カソード及びその乾式製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240905BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240905BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240905BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240905BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240905BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240905BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240905BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240905BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240905BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20240905BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240905BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/64 A
H01M4/139
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024515419
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022042823
(87)【国際公開番号】W WO2023039013
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イン シャーリー メン
(72)【発明者】
【氏名】デニス ジェイ.コンツ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ゴウルド
(72)【発明者】
【氏名】ウェイカン リー
(72)【発明者】
【氏名】アリソン シクラー
(72)【発明者】
【氏名】クリスタル ケー.ウォーターズ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイリアン ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ミンハオ ジャン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS10
5H017CC01
5H017DD01
5H017EE05
5H017HH03
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5H029AK03
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5H029AL12
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5H029HJ14
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5H029HJ17
5H029HJ19
5H029HJ20
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
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5H050DA11
5H050EA10
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5H050FA15
5H050GA02
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5H050GA05
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
カソード活性粒子、フルオロポリマー結合剤、及び導電性炭素を含有する電極組成物を有する電極層を含む、高電圧リチウムイオン二次電池用のカソードが記載される。カソード活性粒子は、高電圧リチウム遷移金属酸化物であり、フルオロポリマー結合剤は、高い溶融クリープ粘度を有するフィブリル化テトラフルオロエチレンポリマーであり、導電性炭素は、約50m2/g以下の比表面積を有する炭素繊維である。炭素繊維及びフルオロポリマー結合剤は、カソード活性粒子を電子的に接続させる導電性構造ウェブを形成し、電極層を通る電子導電性を可能にする。電極層は、表面粗さを有し、電極層の導電性炭素以外の炭素表面コーティングを実質的に有しないアルミニウムを含む集電体に接着される。更に、かかるカソードを製作するための乾式結合剤プロセス、及び高電圧リチウムイオン二次電池におけるかかるカソードの有用性が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧リチウムイオン二次電池用のカソードであって、
カソード活性粒子、フルオロポリマー結合剤、及び導電性炭素を含む、電極組成物を含む電極層を含み、
前記カソード活性粒子が、少なくとも約4.5VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有するリチウム遷移金属酸化物を含み、
前記フルオロポリマー結合剤が、少なくとも約1.8×10
11ポアズの溶融クリープ粘度を有するテトラフルオロエチレンポリマーであり、
前記フルオロポリマー結合剤が、フィブリル化されており、
前記導電性炭素が、約50m
2/g以下の比表面積を有する炭素繊維を含み、
前記炭素繊維及びフィブリル化された前記フルオロポリマー結合剤が、前記電極層を通る電子導電性を可能にするように前記カソード活性粒子を電子的に接続させる導電性構造ウェブを形成し、
前記電極層が、表面粗さを有し、前記電極層の前記導電性炭素以外の炭素表面コーティングを実質的に有しないアルミニウムを含む集電体に接着されている、カソード。
【請求項2】
前記導電性構造ウェブが、
A.前記ウェブ中の前記テトラフルオロエチレンポリマーの一部分及び前記炭素繊維の一部分が、連続テトラフルオロエチレンポリマーマトリックス及び複数の炭素繊維を含む導電性ストランドの形態で組み合わされており、前記炭素繊維が、前記ストランドを含む前記テトラフルオロエチレンポリマーマトリックスに埋め込まれ、かつ接着されており、前記炭素繊維の長手方向軸が、前記ストランドの長手方向軸と実質的に位置合わせされており、前記ストランドが、前記カソード活性粒子間の体積全体にわたってランダムに織り合わされ、かつ相互接続されており、前記カソード活性粒子と接触していること、
B.前記ウェブ中の前記テトラフルオロエチレンポリマーの一部分及び前記炭素繊維の一部分が、前記カソード活性粒子に隣接して位置付けられ、かつ付着した不連続ランダムマット化領域の形態で組み合わされており、前記炭素繊維が、前記領域を含む前記テトラフルオロエチレンポリマーに埋め込まれ、かつ接着されていること、
C.前記ウェブ中の前記テトラフルオロエチレンポリマーの一部分が、フリーテトラフルオロエチレンポリマーフィブリルの形態であること、
D.前記ウェブ中の前記テトラフルオロエチレンポリマーの一部分が、前記カソード活性粒子のいくつかの表面の一部分を被覆するテトラフルオロエチレンポリマーコーティング層の形態であること、並びに
E.前記ウェブ中の前記炭素繊維の一部分が、導電性炭素繊維無しであること、のうちの少なくとも1つを含み、
前記導電性ストランド(A.)、前記不連続ランダムマット化領域(B.)、前記フリーフルオロポリマーフィブリル(C.)、前記テトラフルオロエチレンポリマーコーティング層(D.)、及び前記導電性炭素繊維無し(E.)が、前記電極層全体にわたって互いにランダムに相互接続されており、前記カソード活性粒子の前記表面と接触しており、それによって、前記カソード粒子を電気的に接続させ、かつ定位置に固定する前記導電性構造ウェブを形成する、請求項1に記載のカソード。
【請求項3】
前記電極組成物が、前記フルオロポリマー結合剤、前記カソード活性粒子、及び前記導電性炭素の合計重量に基づいて、約1~約10重量パーセントの導電性炭素、約0.5~約5重量パーセントのフルオロポリマー結合剤、及び残りのカソード活性粒子を含有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項4】
前記電極組成物が、前記フルオロポリマー結合剤、前記カソード活性粒子、及び前記導電性炭素の合計重量に基づいて、約2~約7重量パーセントの導電性炭素、約1~約3重量パーセントのフルオロポリマー結合剤、及び残りのカソード活性粒子を含有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項5】
前記電極組成物が、前記フルオロポリマー結合剤、前記カソード活性粒子、及び前記導電性炭素の合計重量に基づいて、約5重量パーセントの導電性炭素、約2重量パーセントのフルオロポリマー結合剤、及び残りのカソード活性粒子を含有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項6】
前記炭素繊維が、約10マイクロメートル~約200マイクロメートルの長さを有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項7】
前記導電性炭素が、約40m
2/g以下の比表面積を有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項8】
前記導電性炭素が、約30m
2/g以下の比表面積を有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項9】
前記導電性炭素が、約20m
2/g以下の比表面積を有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項10】
前記電極層が、約50m
2/g超の比表面積を有する導電性炭素を実質的に含まない、請求項1に記載のカソード。
【請求項11】
前記電極層が、約40m
2/g超の比表面積を有する導電性炭素を実質的に含まない、請求項7に記載のカソード。
【請求項12】
前記電極層が、約30m
2/g超の比表面積を有する導電性炭素を実質的に含まない、請求項8に記載のカソード。
【請求項13】
前記電極層が、約20m
2/g超の比表面積を有する導電性炭素を実質的に含まない、請求項9に記載のカソード。
【請求項14】
前記テトラフルオロエチレンポリマーが、少なくとも約2.0×10
11ポアズの溶融クリープ粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記テトラフルオロエチレンポリマーが、少なくとも約3.0×10
11ポアズの溶融クリープ粘度を有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項16】
前記テトラフルオロエチレンポリマーが、少なくとも約4.0×10
11ポアズの溶融クリープ粘度を有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項17】
前記電極層が、溶媒を含まないプロセスによって形成されている、請求項1に記載のカソード。
【請求項18】
前記電極層が、前記カソード活性粒子、フルオロポリマー結合剤及び導電性炭素を乾式混合して、前記電極組成物を形成することと、溶媒の非存在下で前記電極組成物にせん断力を適用して、前記電極層を形成することと、によって形成されている、請求項1に記載のカソード。
【請求項19】
前記導電性炭素繊維が、約0.1マイクロメートル~約0.2マイクロメートルの直径を有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項20】
前記導電性炭素繊維が、気相法炭素繊維(VGCF)を含む、請求項1に記載のカソード。
【請求項21】
前記リチウム遷移金属酸化物が、少なくとも約4.6VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項22】
前記リチウム遷移金属酸化物が、LiNi
xMn
2-xO
4(LNMO)及びLi
1.098Mn
0.533Ni
0.113Co
0.138O
2(Liリッチ層状酸化物(LRLO))からなる群から選択される、請求項1に記載のカソード。
【請求項23】
前記リチウム遷移金属酸化物が、LiNi
0.5Mn
1.5O
4、LiNi
0.45Mn
1.45Cr
0.1O
4、LiCr
0.5Mn
1.5O
4、LiCrMnO
4、LiCu
0.5Mn
1.5O
4、LiCoMnO
4、LiFeMnO
4、LiNiVO
4、LiNiPO
4、LiCoPO
4及びLi
2CoPO
4Fからなる群から選択される、請求項1に記載のカソード。
【請求項24】
前記フルオロポリマー結合剤は、前記電極層が自己支持性であるようにフィブリル化されている、請求項1に記載のカソード。
【請求項25】
Sa(算術平均高さ)として表される前記アルミニウム集電体の前記表面粗さが、少なくとも約260nmである、請求項1に記載のカソード。
【請求項26】
Sa(算術平均高さ)として表される前記アルミニウム集電体の前記表面粗さが、少なくとも約280nmである、請求項1に記載のカソード。
【請求項27】
Sa(算術平均高さ)として表される前記アルミニウム集電体の前記表面粗さが、少なくとも約300nmである、請求項1に記載のカソード。
【請求項28】
前記電極層の厚さが、約60マイクロメートル~約250マイクロメートルである、請求項1に記載のカソード。
【請求項29】
前記電極層の厚さが、約80マイクロメートル~約120マイクロメートルである、請求項1に記載のカソード。
【請求項30】
前記電極層の厚さが、少なくとも約240マイクロメートルである、請求項1に記載のカソード。
【請求項31】
前記電極層の厚さが、少なくとも約80マイクロメートルであり、2点プローブ導電性が、少なくとも約1×10
-2S/cmであり、4点プローブ導電性が、少なくとも約1×10
-2S/cmである、請求項1に記載のカソード。
【請求項32】
前記電極層の厚さが、少なくとも約100マイクロメートルであり、2点プローブ導電性が、少なくとも約1×10
-2S/cmであり、4点プローブ導電性が、少なくとも約1×10
-2S/cmである、請求項1に記載のカソード。
【請求項33】
前記電極層の厚さが、少なくとも約130マイクロメートルであり、2点プローブ導電性が、少なくとも約1×10
-2S/cmであり、4点プローブ導電性が、少なくとも約1×10
-2S/cmである、請求項1に記載のカソード。
【請求項34】
高電圧リチウムイオン二次電池であって、
カソード活性粒子、フルオロポリマー結合剤及び導電性炭素を含む電極組成物を含む電極層を含むカソードであって、前記カソード活性粒子が、少なくとも約4.5VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有するリチウム遷移金属酸化物を含み、前記フルオロポリマー結合剤が、少なくとも約1.8×10
11ポアズの溶融クリープ粘度を有するテトラフルオロエチレンポリマーであり、前記フルオロポリマー結合剤が、フィブリル化されており、前記導電性炭素が、約50m
2/g以下の比表面積を有する炭素繊維を含み、前記炭素繊維及びフィブリル化された前記フルオロポリマー結合剤が、前記電極層を通る電子導電性を可能にするように前記カソード活性粒子を電子的に接続させ導電性構造ウェブを形成し、前記電極層が、表面粗さを有し、前記電極層の前記導電性炭素以外の炭素表面コーティングを実質的に有しないアルミニウムを含む集電体に接着されている、カソードと、
アノードと、
前記カソードと前記アノードとの間のセパレータと、
前記カソード、アノード及びセパレータと連通する電解質と、を含む、高電圧リチウムイオン二次電池。
【請求項35】
前記炭素繊維が、約10マイクロメートル~約200マイクロメートルの長さを有する、請求項34に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項36】
前記アノードが、少なくとも約C/20の放電レートで少なくとも約300mAh/gの比容量を有する約80%からの活性材料を含むグラファイトアノードであり、少なくとも約5mg/cm
2であるアノード活性材料の負荷レベルを有し、
前記カソードが、少なくとも約10mg/cm
2である前記集電体上のカソード活性材料の負荷レベルを有し、
第1の充電サイクルにおける前記電池の活性化に続いて、負極が、少なくとも約C/20のレートで、負極活性材料の重量に基づいて、少なくとも約300mAh/gの比放電容量を有し、
前記電池が、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約260Wh/kgの放電エネルギー密度を有し、
前記電池が、100回目の充放電サイクルで、3回目のサイクルにおける放電エネルギー密度の少なくとも約90%の前記放電エネルギー密度を有する、請求項34に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項37】
前記アノードが、純シリコンアノードであり、前記電池が、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約300Wh/kgの放電エネルギー密度を有し、前記電池が、100回目の充放電サイクルで、3回目のサイクルにおける放電エネルギー密度の少なくとも約90%の前記放電エネルギー密度を有する、請求項34に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項38】
前記アノードが、リチウム金属アノードであり、前記電池が、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約340Wh/kgの放電エネルギー密度を有し、前記電池が、100回目の充放電サイクルで、3回目のサイクルにおける放電エネルギー密度の少なくとも約90%の前記放電エネルギー密度を有する、請求項34に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項39】
前記電池が、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約350Wh/kgのエネルギー密度を有する、請求項34に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項40】
前記電池が、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約400Wh/kgのエネルギー密度を有する、請求項34に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項41】
前記電池が、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約450Wh/kgのエネルギー密度を有する、請求項34に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項42】
前記電池が、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約500Wh/kgのエネルギー密度を有する、請求項34に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項43】
前記電解質が、フッ素化有機溶媒を含む、請求項34に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項44】
前記電解質が、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びメチル(2,2,2ートリフルオロエチル)カーボネート(FEMC)からなる群から選択されるフッ素化有機溶媒を含む、請求項43に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項45】
高電圧リチウムイオン二次電池において使用するためのカソードを製造するための方法であって、
I.)
i)約50m
2/g以下の比表面積を有する炭素繊維を含む導電性炭素と、
ii)少なくとも約4.5VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有するリチウム遷移金属酸化物を含むカソード活性粒子と、
iii)少なくとも約1.8×10
11ポアズの溶融クリープ粘度を有するテトラフルオロエチレンポリマーを含むフルオロポリマー結合剤と、の混合物を乾式粉砕して、
粉末化された乾燥カソード混合物を形成する工程であって、前記乾式粉砕が、前記フルオロポリマー結合剤をフィブリル化し、前記フルオロポリマー結合剤及び前記導電性炭素を含む導電性構造ウェブを形成し、前記導電性構造ウェブが、前記カソード全体にわたって電子導電性を可能にするように前記カソード活性粒子を電子的に接続させる、工程、
II.)前記粉末化された乾燥カソード混合物をカレンダー加工して、乾燥カソード電極層を形成する工程、
III.)前記乾燥カソード電極層を、表面粗さを有し、前記カソード電極層の前記導電性炭素以外の炭素表面コーティングを実質的に有しないアルミニウムを含む集電体に接着させる工程、を含む、方法。
【請求項46】
前記炭素繊維が、約10マイクロメートル~約200マイクロメートルの長さを有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記乾式粉砕が、前記炭素繊維及び前記フルオロポリマー結合剤を前記カソード活性粒子とともに実質的に均質に分布させる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記乾式粉砕に供される前記炭素繊維が、凝集体の形態であり、前記乾式粉砕が、前記凝集体を実質的に解凝集させて、単一の炭素繊維及び相対的に小さいクラスタの炭素繊維をもたらすのに十分である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記乾式粉砕が、
前記炭素繊維の凝集体と前記カソード活性粒子とを含む混合物を第1の条件下で乾式粉砕して、第1の乾燥混合物を得ることと、
前記フルオロポリマー結合剤と前記第1の乾燥混合物とを組み合わせて、第2の乾燥混合物を形成することと、
第2の条件下で前記第2の乾燥混合物を乾式粉砕することと、を更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記乾式粉砕が、約40℃~約150℃の温度で実行される、請求項45~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記乾式粉砕が、せん断の適用によって実行される、請求項45~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記乾式混合が、ボトルローラ中で実行される、請求項45~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記乾式混合が、前記フルオロポリマー結合剤がフィブリル化され、前記炭素繊維が実質的に壊れず、前記粉末化された乾燥カソード混合物全体にわたって均質に分布されるような、せん断力の適用を含む、請求項45~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記カレンダー加工が、約70℃~約200℃の温度で実行される、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記カレンダー加工が、約1メートルトン~約10メートルトンの適用圧力下で実行される、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
溶媒無しで実行される、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
導電性粒子を相互接続させる導電性構造ウェブであって、
炭素繊維、及び少なくとも約1.8×10
11ポアズの溶融クリープ粘度を有するテトラフルオロエチレンポリマーを含み、
前記炭素繊維及び前記テトラフルオロエチレンポリマーが、前記導電性粒子を含む固体構造を通して、構造的補強及び導電性を可能にするように、前記導電性粒子を電子的に接続させる導電性構造ウェブの形態で組み合わされており、
前記ウェブ中の前記テトラフルオロエチレンポリマーの一部分及び前記炭素繊維の一部分が、(A.)連続テトラフルオロエチレンポリマーマトリックス及び複数の炭素繊維を含む導電性補強ストランドの形態の複合体であり、
前記炭素繊維が、前記ストランドを含む前記テトラフルオロエチレンポリマーマトリックスに埋め込まれ、かつ接着されており、
前記炭素繊維の長手方向軸が、前記ストランドの長手方向軸と実質的に位置合わせされており、
前記ストランドが、前記固体構造体を含む前記導電性粒子間の体積全体にわたってランダムに織り合わされ、かつ相互接続されており、前記ストランドが、前記導電性粒子と接触している、導電性構造ウェブ。
【請求項58】
前記導電性構造ウェブが、
B.前記ウェブ中の前記テトラフルオロエチレンポリマーの一部分及び前記炭素繊維の一部分が、前記導電性粒子に隣接して位置付けられ、かつ付着した不連続ランダムマット化領域の形態で組み合わされており、前記炭素繊維が、前記領域を含む前記テトラフルオロエチレンポリマーに埋め込まれ、かつ接着されていること、
C.前記ウェブ中の前記テトラフルオロエチレンポリマーの一部分が、フリーテトラフルオロエチレンポリマーフィブリルの形態であること、
D.前記ウェブ中の前記テトラフルオロエチレンポリマーの一部分が、前記導電性粒子のいくつかの表面の一部分を被覆するテトラフルオロエチレンポリマーコーティング層の形態であること、並びに
E.前記ウェブ中の前記炭素繊維の一部分が、導電性炭素繊維無しであること、のうちの少なくとも1つを更に含み、
前記導電性補強ストランド(A.)、前記不連続ランダムマット化領域(B.)、前記フリーフルオロポリマーフィブリル(C.)、前記テトラフルオロエチレンポリマーコーティング層(D.)、及び前記導電性炭素繊維無し(E.)が、前記導電性構造ウェブ全体にわたって互いにランダムに相互接続されており、前記導電性粒子の前記表面と接触しており、それによって前記導電性粒子を電気的に接続させ、かつ定位置に固定する前記導電性構造ウェブを形成する、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項59】
前記炭素繊維が、約50m
2/g以下の比表面積を有する、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項60】
前記炭素繊維が、約10マイクロメートル~約200マイクロメートルの長さを有する、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項61】
前記炭素繊維が、約40m
2/g以下の比表面積を有する、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項62】
前記炭素繊維が、約30m
2/g以下の比表面積を有する、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項63】
前記炭素繊維が、約20m
2/g以下の比表面積を有する、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項64】
前記テトラフルオロエチレンポリマーが、少なくとも約2.0×10
11ポアズの溶融クリープ粘度を有する、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項65】
前記テトラフルオロエチレンポリマーが、少なくとも約3.0×10
11ポアズの溶融クリープ粘度を有する、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項66】
前記テトラフルオロエチレンポリマーが、少なくとも約4.0×10
11ポアズの溶融クリープ粘度を有する、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項67】
溶媒を含まないプロセスによって形成された、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項68】
前記粒子、テトラフルオロエチレンポリマー及び導電性炭素を乾式混合して、電極組成物を形成すること、及び溶媒の非存在下で前記電極組成物にせん断力を適用して、前記導電性構造ウェブを形成することによって形成された、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項69】
前記導電性炭素繊維が、約0.1マイクロメートル~約0.2マイクロメートルの直径を有する、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項70】
前記導電性炭素繊維が、気相法炭素繊維(VGCF)を含む、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項71】
前記粒子が、少なくとも約4.6VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有するリチウム遷移金属酸化物を含む活性粒子である、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項72】
前記リチウム遷移金属酸化物が、LiNi
xMn
2-xO
4(LNMO)及びLi
1.098Mn
0.533Ni
0.113Co
0.138O
2(Liリッチ層状酸化物(LRLO))からなる群から選択される、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項73】
前記リチウム遷移金属酸化物が、LiNi
0.5Mn
1.5O
4、LiNi
0.45Mn
1.45Cr
0.1O
4、LiCr
0.5Mn
1.5O
4、LiCrMnO
4、LiCu
0.5Mn
1.5O
4、LiCoMnO
4、LiFeMnO
4、LiNiVO
4、LiNiPO
4、LiCoPO
4、及びLi
2CoPO
4Fからなる群から選択される、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項74】
前記導電性構造ウェブが自己支持性であるように、前記テトラフルオロエチレンポリマーが、フィブリル化されている、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項75】
前記導電性構造ウェブの厚さが、約60マイクロメートル~約250マイクロメートルである、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項76】
前記導電性構造ウェブの厚さが、約80マイクロメートル~約120マイクロメートルである、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【請求項77】
前記導電性構造ウェブの厚さが、少なくとも約240マイクロメートルである、請求項57に記載の導電性構造ウェブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高電圧動作のためのリチウムイオン二次電池カソード、かかるカソードの乾式製造方法、及びかかるカソードを実装する高電圧リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
LiCoO2(LCO)、LiNixMnyCozO2(x+y+z=1)(NMC)、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA)、LiFePO4(LFP)、及びLiMn2O4(LMO)を含む、様々なLiイオン電池(Li-ion battery、LIB)カソード材料が、過去20年間にわたって成功裏に商業化されている。電気自動車(electric vehicle、EV)及び電子デバイスに対する需要の増加に伴い、次世代の二次リチウムイオン電池にとって、より高いエネルギー密度及びより低い製造コストの両方が商業的に望ましい特徴である。LiNi0.5Mn1.5O4(LNMO)は、その高い動作電圧(約4.7V)及びコバルトが存在しないことに起因して、最も有望なカソード候補のうちの1つと考えられている。LNMOの高い平均動作電圧は、電池パックシステムのためのセルの数を効果的に低減することができ、このため、より高い体積エネルギー密度を提供する。LCO、NMC及びNCAなどの従来のコバルト含有カソード材料とは異なり、高価で有毒なコバルトの除去により、LNMOは、電化用途のための最も費用効率の高いカソード材料のうちの1つになる。
【0003】
高エネルギー密度及び低コストにもかかわらず、LNMOは、商業化に対する様々な課題に直面する。例えば、LNMOのよく知られた欠点は、電池システムにおけるサイクル安定性が低いことである。LNMOの高い作動電位(約4.7V)に起因して、カソード及び電解質は、極度に酸化性の環境で動作することが可能でなければならない。特に、酸化安定性が低い市販の炭化水素カーボネート系の電解質を使用する場合、激しい電解質分解及び大量の寄生反応生成物は、急速な崩壊又は電池システムに対する安全性の問題さえ引き起こすであろう。LNMOの別の課題は、その本質的に低い電子導電性(約10-6S/cm)であり、これは、市販のNMC、NCA、及びLCOよりも1~2桁低い。結果として、効率的な導電性ネットワークを維持するために、公表された結果において、5重量%を超える導電性炭素が使用されている。しかしながら、これにより、不活性成分の含有量が増加することに起因する、電池システムのエネルギー密度が減少する。更に、追加の導電性炭素は、容量減衰を悪化させる、追加の副反応を触媒する可能性がある。最も重要な副反応のうちの1つは、強酸HFを形成するための、極微量の水と塩分解生成物PF5との間の反応であり、これは電極及び界面相を著しく腐食する。
【0004】
LNMOの性能を改善するために、潜在的な問題に対処し、かつそれを軽減するための努力がなされてきた。添加剤を有する新規の電解質を開発することは、カソード及びアノードの両方の界面相を安定化するための最も一般的な戦略である。フルセルにおいて観察された改善の中で、20mg/cm2未満のカソード負荷を使用して、より長いサイクル寿命を実証した少数のものは別として、ほとんどが200サイクルに制限され、改善を、産業用途との適合性が低いものにする。材料ドーピングは、HFによる分解を軽減しながら、カソード電解質界面(cathode electrolyte interphase、CEI)を安定化するための別の戦略である。しかしながら、高価な遷移金属を添加すると、製造コストが上昇することは避けられない。材料又は電極上に適用される表面コーティングは、カソード表面の劣化を低減し、セルサイクルを延長するために検討された別の方法である。均一なコーティング及び適切なコーティング厚さは、より堅牢なCEIを形成し、遷移金属の溶解を防止するのに役立ち得る。しかしながら、洗練された合成プロセスのスケールアップは、重要な産業上の挑戦である。更に、原子層堆積(atomic layer deposition、ALD)などの電極上の表面コーティング技術における装置及び前駆体のコストは、大規模製造におけるそれらの有用性を減少させる。
【0005】
LNMOの性能を改善するためになされた進歩の中で、実用に向けて最も重要な基準である、厚い電極との提案された戦略の適合性を考慮したものはほとんどない。LNMOに関して、おおよそ300Wh/kgを達成するために、片面当たり少なくとも3mAh/cm2(約21mg/cm2)が必要とされ得る。このレベルの負荷を達成する以前の研究は、低いサイクル数(300サイクル未満)又は低い容量利用率のいずれかによって制限されていた。したがって、産業的に実用的な条件でLNMOの潜在能力を実現するためには、他の修正と同時に高負荷を達成しなければならない。
【0006】
厚いカソードの効果的な製作は、Liイオン電池分野において進行中の技術的課題である。スラリー系電極製作では、N-メチル-2-ピロリドン(N-Methyl-2-pyrrolidone、NMP)は、その優れた化学的安定性及び熱的安定性、並びにカソード動作において高い機械的安定性及び電気化学的安定性を提供するポリビニリデンフルオリド(polyvinylidene fluoride、PVDF)結合剤を溶解するその能力に起因して、溶媒として広く使用されている。厚いカソードの乾燥プロセスは、プロセス中に発生する対流力及び毛管力に起因して、電極の上部表面への結合剤及び炭素の移動の原因となり得る。その結果、電極と集電体との間の接着不良が生じ、深刻な電極亀裂の原因となる可能性がある。このため、例えば、ねじれを低減し、イオン流を改善するための人工チャネルを作成するために繰り返し共押出/アセンブリを使用すること、単層カーボンナノチューブ(single-wall carbon nanotube、SWCNT)を分散させて、800μm厚の電極を製作すること、及びポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)などの新規な結合剤を利用して、高負荷を可能にすることなど、効果的な厚い電極製作プロセスを探索するために多大な努力が払われてきた。しかしながら、これらの方法は、非常に複雑な製作手順を有するか、又は実験室規模の処理に限定される。NMPの別の負の特徴は、その毒性及び高価な溶媒リサイクル装置の必要性であり、スラリー系製作プロセスを更により高価にする。
【0007】
上述の方法とは異なり、結合剤フィブリル化を使用する製作は、乾式プロセスであり、フィブリル化の可能なポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)が既知の利用される結合剤である。このプロセスでは、PTFE粒子は、せん断混合され、及びこれらの条件下で、導電性炭素及び活性材料の両方を結合することができる接着性フィブリルになり、かかる乾式電極は、近年、産業上の関心の高まりを引き起こしている。スラリー系の方法と比較して、この乾式プロセスは、無制限の厚さ及び最小の亀裂を有するロールツーロール電極を製作する可能性を有する。より重要なことに、有毒なNMP及び溶媒再循環装置の除去は、乾式プロセスを、費用効果が高く、環境に優しい電極製造戦略とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、様々な高負荷(>3mAh/cm2レベル)で高電圧リチウムイオン二次電池用のカソードを製作するための乾式結合剤フィブリル化プロセスを提供することによって、この先行研究の欠点に対処し、かつ高電圧(>4.7V)二次リチウムイオン電池用途における長期サイクルの性能改善を実証する。本発明のカソードを利用する二次リチウムイオン電池の安定したサイクル安定性は、部分的には、低減された寄生反応、堅牢な機械的特性、及び電極層を通る電子導電性を可能にするようにカソード活性粒子を電子的に接続させる導電性構造ウェブの組み合わされた要因に帰することができる。一実施形態では、本発明は、高電圧リチウムイオン二次電池用のカソードであって、カソード活性粒子、フルオロポリマー結合剤及び導電性炭素を含む電極組成物を含む電極層を含み、カソード活性粒子が、少なくとも約4.5VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有するリチウム遷移金属酸化物を含み、フルオロポリマー結合剤が、少なくとも約1.8×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有するテトラフルオロエチレンポリマーであり、フルオロポリマー結合剤が、フィブリル化されており、導電性炭素が、約50m2/g以下の比表面積を有する炭素繊維を含み、炭素繊維及びフィブリル化されたフルオロポリマー結合剤が、電極層を通る電子導電性を可能にするように、カソード活性粒子を電子的に接続させる導電性構造ウェブを形成し、電極層が、表面粗さを有し、電極層の導電性炭素以外の炭素表面コーティングを実質的に有しないアルミニウムを含む集電体に接着されている。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、高電圧リチウムイオン二次電池であって、カソード活性粒子、フルオロポリマー結合剤及び導電性炭素を含む電極組成物を含む電極層を含むカソードであって、カソード活性粒子が、少なくとも約4.5VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有するリチウム遷移金属酸化物を含み、フルオロポリマー結合剤が、少なくとも約1.8×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有するテトラフルオロエチレンポリマーであり、フルオロポリマー結合剤が、フィブリル化され、導電性炭素が、約50m2/g以下の比表面積を有する炭素繊維を含み、炭素繊維及びフィブリル化されたフルオロポリマー結合剤が、電極層を通る電子導電性を可能にするようにカソード活性粒子を電子的に接続させる導電性構造ウェブを形成し、電極層が、表面粗さを有し、上記電極層の導電性炭素以外の炭素表面コーティングを実質的に有しないアルミニウムを含む集電体に接着される、カソードと、
アノードと、
カソードとアノードとの間のセパレータと、
カソード、アノード、及びセパレータと連通する電解質と、を含む。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、高電圧リチウムイオン二次電池において使用するためのカソードを製造するための方法であって、
I.)
i)炭素繊維を含む導電性炭素であって、好ましい実施形態では、炭素繊維が、約50m2/g以下の比表面積を有する、導電性炭素と、
ii)少なくとも約4.5VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有するリチウム遷移金属酸化物を含むカソード活性粒子と、
iii)少なくとも約1.8×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有するテトラフルオロエチレンポリマーを含むフルオロポリマー結合剤と、の混合物を乾式粉砕して、
粉末化された乾燥カソード混合物を形成する工程であって、乾式粉砕が、フルオロポリマー結合剤をフィブリル化し、フルオロポリマー結合剤及び導電性炭素を含む導電性構造ウェブを形成し、導電性構造ウェブが、カソード全体にわたって電子導電性を可能にするようにカソード活性粒子を電子的に接続させる、工程、
II.)粉末化された乾燥カソード混合物をカレンダー加工して、乾燥カソード電極層を形成する工程、
III.)乾燥カソード電極層を、表面粗さを有し、カソード電極層の導電性炭素以外の炭素表面コーティングを実質的に有しないアルミニウムを含む集電体に接着させる工程、を含む。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、導電性粒子を相互接続させる導電性構造ウェブであって、
炭素繊維、及び少なくとも約1.8×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有するテトラフルオロエチレンポリマーを含み、
炭素繊維及びテトラフルオロエチレンポリマーが、導電性粒子を含む固体構造を通して、構造的補強及び導電性を可能にするように、導電性粒子を電子的に接続させる導電性構造ウェブの形態で組み合わされており、
ウェブ中のテトラフルオロエチレンポリマーの一部分及び炭素繊維の一部分が、(A.)連続テトラフルオロエチレンポリマーマトリックス及び複数の炭素繊維を含む導電性補強ストランドの形態の複合体であり、
炭素繊維が、ストランドを含むテトラフルオロエチレンポリマーマトリックスに埋め込まれ、かつ接着されており、
炭素繊維の長手方向軸が、ストランドの長手方向軸と実質的に位置合わせされており、
ストランドが、固体構造体を備える導電性粒子間の体積全体にわたってランダムに織り合わされ、かつ相互接続されており、ストランドが、導電性粒子と接触している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】倍率6.71KでのSEMによる本電極層の表面の平面図画像である。
【
図2】倍率14.04KでのSEMによる本電極層の表面の平面図画像である。
【
図3】倍率22.19KでのSEMによる本電極層の表面の平面図画像である。
【
図4】3、4、6及び9.5mAh/cm
2の面積負荷を有する、本発明の乾式法LNMOカソードを使用するC/10レートハーフセル性能(電圧(V))対ハーフセル電池の比容量(mAh/g)のプロットである。
【
図5】3及び4mAh/cm
2の面積負荷を有する比較スラリー法LNMOカソードを使用するC/10レートハーフセル性能(電圧(V))対ハーフセル電池の比容量(mAh/g)のプロットである。
【
図6】約240μmの厚さに対応する9.5mAh/cm
2の面積容量を有する、本実施例1の本発明の乾式方法によって作製されたLNMOカソードの断面SEM画像である。
【
図7】約110μmの厚さに対応する4mAh/cm
2の面積容量を有する、本比較例1の比較溶媒スラリー法によって作製されたLNMOカソードの断面SEM画像である。
【
図8】スラリー法で調製されたLMNOカソードを使用する同様の比較フルセル電池と比較された、本発明の乾式法で調製されたLMNOカソードを使用するフルセル電池のC/3レートでの性能(比容量(mAh/g)及びクーロン効率(%)対サイクル数)の長期サイクル(最大1,000サイクル)のプロットであり、各カソードが、3mAh/cm
2の面積負荷を有する。
【
図9】スラリー法で調製されたLNMOカソードを使用する同様のフルセル電池と比較した、本発明の乾式法LMNOカソードを使用するフルセル電池の300サイクルにわたるサイクル数に対する平均充電電圧(V)及び平均放電電圧(V)のプロットであり、各カソードは、3mAh/cm
2の面積負荷を有する。
【
図10】3mAh/cm
2の面積負荷を有する本発明の乾式法で調製されたLMNOカソードを使用する、本発明のフルセル電池のdQ/dVプロット(dQ/dV(mAh/g・v
-1)対電圧(V))プロットである。
【
図11】3mAh/cm
2の面積負荷を有する比較スラリー法で調製されたLNMOカソードを使用する、比較フルセル電池のdQ/dVプロット(dQ/dV(mAh/g・v
-1)対電圧(V))プロットである。
【
図12】50及び100サイクル後の、本発明の乾式法で調製されたLMNOカソードを使用する本発明のフルセル電池、及び比較スラリー法で調製されたカソードを使用する比較フルセル電池に関する、電気インピーダンス分光法(Electrical Impedance Spectroscopy、EIS)によって生成されたナイキストプロット(-Z’’/Ω対Z’/Ω)であり、各カソードは、3mAh/cm
2の面積負荷を有する。
【
図13】本発明の乾式法LMNOカソードを使用するフルセル電池、及び比較スラリー法で調製されたカソードを使用する同様の比較フルセル電池に関する、エネルギー密度(Wh/kg)及びエネルギー効率(%)対300サイクルにわたるサイクル数のプロットである。
【
図14】Gen2電解質を使用する本発明の乾式法で調製されたLMNOカソード、及びフッ素化(FEC-FEMC)電解質を使用する同様の本発明の乾式法で調製されたLMNOカソードを使用する、フルセル電池の性能(比容量(mAh/g)及びクーロン効率(%)対サイクル数)を比較するプロットである。
【
図15】Gen2電解質を使用する本発明の乾式法で調製されたLMNOカソード、及びフッ素化(FEC-FEMC)電解質を使用する同様の本発明の乾式法で調製されたLMNOカソードを使用するフルセル電池に関する、200サイクルにわたるサイクル数に対するエネルギー密度(Wh/kg)及びエネルギー効率(%)のプロットであり、各カソードは、3mAh/cm
2の面積負荷を有する。
【
図16】Gen2電解質を使用する本発明の乾式法で調製されたLMNOカソード、及びフッ素化(FEC-FEMC)電解質を使用する同様の本発明の乾式法で調製されたLMNOカソードを使用するフルセル電池に関する、200サイクルにわたるサイクル数に対する平均充電電圧(V)及び平均放電電圧(V)のプロットであり、各カソードは、3mAh/cm
2の面積負荷を有する。
【
図17】電極層と接触するアルミニウム表面上に炭素コーティング(電極層に含有される導電性炭素以外)を実質的に有しないアルミニウムを含む集電体上の本発明の乾式法で調製されたLMNOカソード、及び炭素コーティングを有するアルミニウムを含む集電体上の同様の乾式法で調製されたLMNOカソードを使用するフルセル電池に関する、放電容量(mAh/g)及びクーロン効率(%)対サイクル数のプロットであり、各カソードは、3mAh/cm
2の面積負荷を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
カソード
本電極層は、リチウム遷移金属酸化物を含む相対的に高電圧で動作可能なカソード活性粒子を部分的に含む、電極組成物を含む。本カソード活性粒子は、少なくとも約4.5VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有し、いくつかの実施形態では、少なくとも約4.6VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有する。リチウム遷移金属酸化物を含む例示的な高電圧対応カソード活性粒子は、この分野で既知であり、この分野において、LNMO(例えば、LiNixMn2-xO4)とも称されるリチウムニッケルマンガン酸化物、及びこの分野においてLRLO(例えば、Li1.098Mn0.533Ni0.113Co0.138O2)とも称されるリチウムリッチ層状酸化物を含む。更なる例としては、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi0.45Mn1.45Cr0.1O4、LiCr0.5Mn1.5O4、LiCrMnO4、LiCu0.5Mn1.5O4、LiCoMnO4、LiFeMnO4、LiNiVO4、LiNiPO4、LiCoPO4、及びLi2CoPO4Fが挙げられる。
【0014】
本電極層は、炭素繊維を含む導電性炭素を部分的に含む、電極組成物を含む。本炭素繊維は、約10マイクロメートル~約200マイクロメートルの長さを有する。いくつかの実施形態では、本炭素繊維は、約0.1マイクロメートル~約0.2マイクロメートルの直径を有する。本炭素繊維は、約50m2/g以下の比表面積を有する。いくつかの実施形態では、本炭素繊維は、約40m2/g以下、又は約30m2/g以下、又は約20m2/g以下の比表面積を有する。いくつかの実施形態では、電極層は、約50m2/g超、又は約40m2/g超、又は約30m2/g超、又は約20m2/g超の比表面積を有する導電性炭素を実質的に含まない。炭素繊維を含むかかる相対的に低い比表面積の導電性炭素の例としては、気相法炭素繊維として既知の材料が挙げられ、この分野ではVGCFとも称される。
【0015】
本発明者らは、本導電性炭素に対して相対的に高い表面積を有する導電性炭素が、本発明の電池が高電圧で動作するときに、高電圧動作中にかかる高表面積炭素によって触媒されて生じると考えられる従来の電解質の分解に起因して、電池サイクル性能及びクーロン効率の低下をもたらすことを発見した。
【0016】
本電極層は、フルオロポリマー結合剤を部分的に含む電極組成物を含む。本フルオロポリマー結合剤は、少なくとも約1.8×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有するテトラフルオロエチレンポリマーである。別の実施形態では、テトラフルオロエチレンポリマーは、少なくとも約2.0×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有する。別の実施形態では、テトラフルオロエチレンポリマーは、少なくとも約3.0×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有する。好ましい実施形態では、テトラフルオロエチレンポリマーは、少なくとも約4.0×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有する。本明細書において、溶融クリープ粘度(melt creep viscosity、MCV)は、米国特許第3,819,594号を参照して、Ebnesajjad,Sina,(2015),Fluoroplastics,Volume1-Non-Melt Processible Fluoropolymers-The Definitive User’s Guide and Data Book(2nd Edition),Appendix 5,Melt Creep Viscosity of Polytetrafluoroethylene,pp.660-661に記載されている方法によって測定される。
【0017】
本テトラフルオロエチレンポリマーは、この分野ではTFEとも称されるテトラフルオロエチレンモノマーの繰り返し単位を含むポリマーであり、少なくとも約1.8×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有する。かかる高い溶融粘度では、ポリマーは、溶融状態で流動せず、したがって、溶融加工可能ではない。一実施形態では、テトラフルオロエチレンポリマーは、テトラフルオロエチレンモノマーの繰り返し単位からなるテトラフルオロエチレンホモポリマーであり、この分野において、ポリテトラフルオロエチレンとしても既知であり、PTFEと略される。別の実施形態では、テトラフルオロエチレンポリマーは、「変性」PTFEであり、変性PTFEは、TFEと、得られるポリマーの融点がホモポリマーPTFEの融点を下回って実質的に低下しないような低濃度のコモノマーとのコポリマーを指す。変性PTFE中のかかるコモノマーの濃度は、1重量%未満、好ましくは、0.5重量%未満である。概して、著しい効果を有するために、最小量の少なくとも約0.05重量%が使用される。変性PTFE中の例示的なコモノマーとしては、ペルフルオロオレフィン、特に、アルキル基が1~5個の炭素原子を含有するヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene、HFP)又はペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(perfluoro(alkyl vinyl ether)、PAVE)、((ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(perfluoro(ethyl vinyl ether)、PEVE)、及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(perfluoro(propyl vinyl ether)、PPVE)が好ましく、クロロトリフルオロエチレン(chlorotrifluoroethylene、CTFE)、ペルフルオロブチルエチレン(perfluorobutyl ethylene、PFBE)、又は相対的に嵩高い側鎖基をポリマー鎖に導入する他の同様のモノマーが挙げられる。
【0018】
本テトラフルオロエチレンポリマーは、フィブリル化可能である。フィブリル化可能とは、テトラフルオロエチレンポリマーが、例えば、本方法の実施中に、テトラフルオロエチレンポリマーがせん断力を受けるときに、長さがサブマイクロメートルから数マイクロメートル、数十マイクロメートルまで変化し得るナノサイズの少なくとも1つの寸法(すなわち、<100nm幅)のフィブリルを形成することが可能であることを意味する。
【0019】
本電極層は、カソード活性粒子、フルオロポリマー結合剤、及び導電性炭素を含む電極組成物を含み、一実施形態では、上記のフルオロポリマー結合剤、上記のカソード活性粒子、及び上記の導電性炭素の合計重量に基づいて、約1~約10重量パーセントの導電性炭素、約0.5~約5重量パーセントのフルオロポリマー結合剤、及び残りのカソード活性粒子を含有する。別の実施形態では、電極組成物は、約2~約7重量パーセントの導電性炭素と、約1~約3重量パーセントのフルオロポリマー結合剤と、残りのカソード活性粒子と、を含有する。好ましい実施形態では、電極組成物は、約5重量パーセントの導電性炭素と、約2重量パーセントのフルオロポリマー結合剤と、を含有する。
【0020】
本電極層は、表面粗さを有するアルミニウムを含む集電体に接着される。一実施形態では、Sa(算術平均高さ)として表されるアルミニウム集電体の表面粗さは、少なくとも約260nmである。別の実施形態では、アルミニウム集電体の表面粗さは、少なくとも約280nmである。好ましい実施形態では、アルミニウム集電体の表面粗さは、少なくとも約300nmである。
【0021】
本カソードは、少なくとも約10~約90mg/cm2である集電体上のカソード活性粒子の負荷レベルを有する。
【0022】
本電極層は、電極層に含有される導電性炭素以外に、電極層と接触するアルミニウム表面上に炭素コーティングを実質的に有しないアルミニウムを含む集電体に接着される。従来のアルミニウム箔集電体は、アルミニウム集電体を保護する目的で炭素質コーティングを有する。本アルミニウム集電体は、かかる炭素質コーティングを実質的に含まない。本発明者らは、電極層と接触するアルミニウム表面上の炭素コーティングの存在が、本発明の高電圧対応電池における電池サイクル性能及びクーロン効率の低下をもたらすことを発見した。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、これは、高電圧動作中にかかる高表面積炭素コーティングによって触媒されて生じると考えられる従来の電解質の分解に起因すると考える。
【0023】
本電極層は、ある電池用途に好適な選択された厚さを有することができる。本明細書で提供される際の電極層の厚さは、従来のプロセスによって調製された電極層の厚さよりも大きくなり得る。本電極層の厚さにおけるこの増加は、相対的により厚い電極層を通る電子導電性を可能にするように、カソード活性粒子を電子的に接続させる導電性構造ウェブを形成する電極層中の本炭素繊維及びフィブリル化されたフルオロポリマー結合剤によって可能になる。いくつかの実施形態では、電極層は、少なくとも約60マイクロメートル、約70マイクロメートル、約80マイクロメートル、約90マイクロメートル、約100マイクロメートル、約110マイクロメートル、約115マイクロメートル、約120マイクロメートル、約130マイクロメートル、約135マイクロメートル、約140マイクロメートル、約145マイクロメートル、約150マイクロメートル、約155マイクロメートル、約160マイクロメートル、約170マイクロメートル、約180マイクロメートル、約190マイクロメートル、約200マイクロメートル、約250マイクロメートル、約260マイクロメートル、約265マイクロメートル、約270マイクロメートル、約280マイクロメートル、約290マイクロメートル、約300マイクロメートル、約350マイクロメートル、約400マイクロメートル、約450マイクロメートル、約500マイクロメートル、約750マイクロメートル、約1mm、若しくは約2mm、又はその間の任意の範囲の値の厚さを有することができる。本電極層の厚さは、本発明の高電圧リチウムイオン二次電池の所望の面積容量、比容量、面積エネルギー密度、エネルギー密度、又は比エネルギー密度に対応するように選択することができる。
【0024】
高電圧リチウムイオン二次電池用の本カソードでは、炭素繊維及びフィブリル化されたフルオロポリマー結合剤は、導電性構造ウェブを形成し、これは、カソード活性粒子を電子的に接続させて、電極層を通る電子導電性を可能にし、また、カソード活性粒子を定位置に固定することによって電極層における構造的完全性を維持する。
【0025】
一実施形態では、本発明は、リチウムイオン二次電池用カソードであって、リチウムイオン二次電池カソードのカソード活性層内の実質的に球状のカソード活性粒子を接続させる導電性構造ウェブを含むカソード活性層であって、導電性構造ウェブが、PTFE結合剤及び導電性炭素繊維を含む、カソード活性層を含み、
A.ウェブ中のPTFEの一部分及び炭素繊維の一部分は、連続PTFEマトリックス及び複数の炭素繊維を含む導電性ストランドの形態で組み合わされており、炭素繊維は、ストランドを含むPTFEマトリックスに埋め込まれ、かつ接着され、炭素繊維の長手方向軸は、ストランドの長手方向軸と実質的に位置合わせされ、ストランドは、カソード活性粒子間の体積全体にわたってランダムに織り合わされ、かつ相互接続され、カソード活性粒子と接触しており、
B.ウェブ中のPTFEの一部分及び炭素繊維の一部分は、カソード活性粒子に隣接して位置付けられ、かつ付着した不連続ランダムマット化領域の形態で組み合わされており、炭素繊維は、領域を含むPTFEに埋め込まれ、かつ接着され、
C.ウェブ中のPTFEの一部分が、フリーPTFEフィブリル(すなわち、炭素繊維を実質的に含まないPTFEフィブリル)の形態であり、
D.ウェブ中のPTFEの一部分が、カソード活性粒子のいくつかの表面の一部分を被覆するPTFEコーティング層の形態であり、
E.ウェブ中の炭素繊維の一部分が、導電性炭素繊維無し(すなわち、PTFEを実質的に含まない炭素繊維)であり、
導電性ストランド(A.)、不連続ランダムマット化領域(B.)、フリーフルオロポリマーフィブリル(C.)、PTFEコーティング層(D.)、及び導電性炭素繊維無し(E.)は、電極層全体にわたって互いにランダムに相互接続され、カソード活性粒子の表面と接触しており、それによって、カソード粒子を電気的に接続させ、かつ定位置に固定する導電性構造ウェブを形成する。
【0026】
図1は、倍率6.71KでのSEMによる本電極層の表面の平面図画像である。101は、PTFE及び炭素繊維(A.)を含む導電性ストランドである。102は、カソード活性粒子103(B.)の間に位置付けられ、及びカソード活性粒子103(B.)に付着したPTFE及び炭素繊維の不連続なマット化領域である。104は、フリーフルオロポリマーフィブリル(C.)の形態のPTFEである。105は、カソード粒子103(D.)の一部分を被覆するコーティング層の形態のPTFEである。106は、フリー炭素繊維である。
【0027】
図2は、
図1の画像の一部分を更に拡大する、倍率14.04KでのSEMによる本電極層の表面の平面図画像である。101は、PTFE及び炭素繊維(A.)を含む導電性ストランドである。102は、カソード活性粒子103(B.)の間に位置付けられ、及びカソード活性粒子103(B.)に付着したPTFE及び炭素繊維の不連続なマット化領域である。104は、フリーフルオロポリマーフィブリル(C.)の形態のPTFEである。105は、カソード粒子103(D.)の一部分を被覆するコーティング層の形態のPTFEである。106は、フリー炭素繊維である。
【0028】
図3は、倍率22.19KでのSEMによる本電極層の表面の平面図画像である。301は、カソード活性粒子302の間にあり、及びカソード活性粒子302と接触している体積内のPTFE及び炭素繊維(A.)を含む2つの導電性ストランドである。PTFE相は、303ではっきりと見ることができる。
【0029】
フィブリル化されたPTFE結合剤及び導電性炭素繊維を含む本発明の導電性構造ウェブは、かかる相対的に厚い電極の全体積にわたって優れた導電性を有する従来の電極よりもはるかに厚い電極の形成を可能にする。導電性は、従来の方法、例えば、2点プローブ及び4点プローブ導電性法によって評価することができる。いくつかの実施形態では、本電極層の厚さは、少なくとも約Xマイクロメートルであり、2点プローブ導電性は、少なくとも約1×10-2S/cmであり、4点プローブ導電性は、少なくとも約1×10-2S/cmである。本明細書において、Xは、以下の値:60、70、80、90、100、110、115、120、130、135、140、145、150、155、160、170、180、190、200、250、260、265、270、280、290、300、350、400、450、500、750、1,000(すなわち、1mm)、及び2000(すなわち、2mm)、並びにこれらの値の間の任意の範囲の値からなる群から選択される。
【0030】
一実施形態では、本発明は、導電性粒子を相互接続させる導電性構造ウェブであって、
炭素繊維、及び少なくとも約1.8×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有するテトラフルオロエチレンポリマーを含む、導電性構造ウェブとして説明することができ、
炭素繊維及びテトラフルオロエチレンポリマーが、導電性粒子を含む固体構造を通して、構造的補強及び導電性を可能にするように、導電性粒子を電子的に接続させる導電性構造ウェブの形態で組み合わされており、
ウェブ中のテトラフルオロエチレンポリマーの一部分及び炭素繊維の一部分が、(A.)連続テトラフルオロエチレンポリマーマトリックス及び複数の炭素繊維を含む導電性補強ストランドの形態の複合体であり、
炭素繊維が、ストランドを含むテトラフルオロエチレンポリマーマトリックスに埋め込まれ、かつ接着されており、
炭素繊維の長手方向軸が、ストランドの長手方向軸と実質的に位置合わせされており、
ストランドが、固体構造体を備える導電性粒子間の体積全体にわたってランダムに織り合わされ、かつ相互接続されており、ストランドが、導電性粒子と接触している。
【0031】
一実施形態では、導電性構造ウェブは、
B.ウェブ中のテトラフルオロエチレンポリマーの一部分及び炭素繊維の一部分が、導電性粒子に隣接して位置付けられ、かつ付着した不連続ランダムマット化領域の形態で組み合わされており、炭素繊維が、領域を含むテトラフルオロエチレンポリマーに埋め込まれ、かつ接着されていること、
C.ウェブ中のテトラフルオロエチレンポリマーの一部分は、フリーテトラフルオロエチレンポリマーフィブリルの形態であること、
D.ウェブ中のテトラフルオロエチレンポリマーの一部分は、導電性粒子のいくつかの表面の一部分を被覆するテトラフルオロエチレンポリマーコーティング層の形態であること、並びに
E.ウェブ中の炭素繊維の一部分は、導電性炭素繊維無しであること、のうちの少なくとも1つを更に含み、
導電性補強ストランド(A.)、不連続ランダムマット化領域(B.)、フリーフルオロポリマーフィブリル(C.)、テトラフルオロエチレンポリマーコーティング層(D.)、及び導電性炭素繊維無し(E.)は、導電性構造ウェブ全体にわたって互いにランダムに相互接続され、導電性粒子の表面と接触しており、それによって導電性粒子を電気的に接続させ、かつ定位置に固定する導電性構造ウェブを形成する。
【0032】
好ましい実施形態では、導電性構造ウェブは、前述の要素A、B、C、D、及びEのうちの全てを含む。
【0033】
導電性構造ウェブの一実施形態では、炭素繊維(導電性炭素)は、約50m2/g以下の比表面積を有する。導電性構造ウェブの代替の実施形態では、炭素繊維は、約40m2/g以下の比表面積を有する。導電性構造ウェブの代替の実施形態では、炭素繊維は、約30m2/g以下の比表面積を有する。導電性構造ウェブの代替の実施形態では、炭素繊維は、約20m2/g以下の比表面積を有する。
【0034】
導電性構造ウェブの一実施形態では、炭素繊維は、約10マイクロメートル~約200マイクロメートルの長さを有する。導電性構造ウェブの一実施形態では、導電性炭素繊維は、約0.1マイクロメートル~約0.2マイクロメートルの直径を有する。
【0035】
導電性構造ウェブの一実施形態では、テトラフルオロエチレンポリマーは、少なくとも約2.0×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有する。導電性構造ウェブの代替の実施形態では、テトラフルオロエチレンポリマーは、少なくとも約3.0×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有する。導電性構造ウェブの代替の実施形態では、テトラフルオロエチレンポリマーは、少なくとも約4.0×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有する。
【0036】
一実施形態では、導電性構造ウェブは、溶媒を含まないプロセスによって形成される。代替の実施形態では、導電性構造ウェブは、粒子、テトラフルオロエチレンポリマー及び炭素繊維を乾式混合して、電極組成物を形成し、溶媒の非存在下で電極組成物にせん断力を適用して、導電性構造ウェブを形成することによって形成される。
【0037】
導電性構造ウェブの一実施形態では、導電性炭素繊維は、気相法炭素繊維(vapor grown carbon fiber、VGCF)を含む。
【0038】
導電性構造ウェブの一実施形態では、粒子は、少なくとも約4.5VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有するリチウム遷移金属酸化物を含む活性粒子である。導電性構造ウェブの代替の実施形態では、粒子は、少なくとも約4.6VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有するリチウム遷移金属酸化物を含む活性粒子である。導電性構造ウェブの一実施形態では、リチウム遷移金属酸化物は、LiNixMn2-xO4(LNMO)及びLi1.098Mn0.533Ni0.113Co0.138O2(Liリッチ層状酸化物(Li-rich layered oxide、LRLO))からなる群から選択される。導電性構造ウェブの一実施形態では、リチウム遷移金属酸化物は、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi0.45Mn1.45Cr0.1O4、LiCr0.5Mn1.5O4、LiCrMnO4、LiCu0.5Mn1.5O4、LiCoMnO4、LiFeMnO4、LiNiVO4、LiNiPO4、LiCoPO4及びLi2CoPO4Fからなる群から選択される。
【0039】
導電性構造ウェブの一実施形態では、テトラフルオロエチレンポリマーは、導電性構造ウェブが自己支持性であるようにフィブリル化される。
【0040】
一実施形態では、導電性構造ウェブの厚さは、約60マイクロメートル~約250マイクロメートルである。代替の実施形態では、導電性構造ウェブの厚さは、約80マイクロメートル~約120マイクロメートルである。代替の実施形態では、導電性構造ウェブの厚さは、少なくとも約240マイクロメートルである。
【0041】
電池
一実施形態では、本発明は、本明細書において先に定義されたカソードと、アノードと、カソードとアノードとの間のセパレータと、カソード、アノード及びセパレータと連通する電解質と、を備える高電圧リチウムイオン二次電池である。
【0042】
本発明のアノードは、本電池の連続高電圧動作が可能なアノードを含み、例は、グラファイトアノード、純粋なシリコンアノード、又はリチウム金属アノードを含む。
【0043】
一実施形態では、本電池のアノードは、グラファイトアノードである。一実施形態では、グラファイトアノードは、少なくとも約C/20~約2Cの放電レートで、少なくとも約300~約370mAh/gの比容量を有する約80重量%~約98重量%の活性材料を含み、少なくとも約5~約mg/cm2であるアノード活性材料の負荷レベルを有する。第1の充電サイクルにおける電池の活性化に続いて、負極は、少なくとも約C/20~約2Cのレートで、負極活性材料の重量に基づいて、少なくとも約300~約370mAh/gの比放電容量を有し、電池は、少なくとも約C/20~約5Cのレートで、少なくとも約260~約340Wh/kgの放電エネルギー密度を有し、電池は、100回目の充放電サイクルで、3回目のサイクルにおける放電エネルギー密度の少なくとも約90%の放電エネルギー密度を有する。
【0044】
一実施形態では、アノードは、純シリコンアノードであり、電池は、少なくとも約C/20~約5Cのレートで、少なくとも約340~約650Wh/kgの放電エネルギー密度を有し、電池は、100回目の充放電サイクルで、3回目のサイクルにおける放電エネルギー密度の少なくとも約90%の放電エネルギー密度を有する。
【0045】
一実施形態では、アノードは、リチウム金属アノードであり、電池は、少なくとも約C/20~約5Cのレートで、少なくとも約300~約560Wh/kgの放電エネルギー密度を有し、電池は、100回目の充放電サイクルで、3回目のサイクルにおける放電エネルギー密度の少なくとも約90%の放電エネルギー密度を有する。
【0046】
本高電圧リチウムイオン二次電池の発明のセパレータは、本電池の連続高電圧作動が可能なリチウムイオン二次電池用の従来のセパレータを含む。セパレータは、セパレータの両側に隣接する2つの電極を電気的に絶縁する一方で、2つの隣接する電極間のイオン連通を可能にするように構成される。セパレータは、好適な多孔質の電気絶縁材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、セパレータは、ポリマー材料を含むことができる。例えば、セパレータは、セルロース系材料(例えば、紙)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及び/又はこれらの混合物を含むことができる。
【0047】
本高電圧リチウムイオン二次電池の発明の電解質は、本電池の連続高電圧動作が可能なリチウムイオン二次電池のための従来の電解質を含む。本電解質は、本電池の電極間のイオン連通を容易にし、典型的には、カソード、アノード及びセパレータと接触している。一実施形態では、本電池は、好適なリチウム含有電解質を使用する。例えば、リチウム塩、及び溶媒、例えば、非水性若しくは有機溶媒、又はフッ素化有機溶媒である。概して、リチウム塩は、レドックス安定性であるアニオンを含む。いくつかの実施形態では、アニオンは、一価であり得る。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムパークロレート(LiClO4)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO2CF3)2)、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(LiSO3CF3)、リチウムビス(オキザラート)ボレート(LiBOB)、及びこれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態では、電解質は、四級アンモニウムカチオンと、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート及びヨージドからなる群から選択されるアニオンと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、塩濃度は、約0.1mol/L(M)~約5M、約0.2M~約3M、又は約0.3M~約2Mであり得る。更なる実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.7M~約1Mであり得る。ある実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.2M、約0.3M、約0.4M、約0.5M、約0.6M、約0.7M、約0.8M、約0.9M、約1M、約1.1M、約1.2M、又はそれらの間の値の任意の範囲であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、本高電圧リチウムイオン二次電池の発明の電解質は、液体溶媒を含む。更なる実施形態では、溶媒は、有機溶媒であり得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、カーボネート、エーテル及び/又はエステルから選択される1つ以上の官能基を含むことができる。いくつかの実施形態では、溶媒は、カーボネートを含むことができる。更なる実施形態では、カーボネートは、例えば、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、ビニルエチレンカーボネート(vinyl ethylene carbonate、VEC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate、VC)、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate、FEC)、メチル(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート(methyl(2,2,2-trifluoroethyl)carbonate、FEMC)及びこれらの組み合わせなどの環状カーボネート、又は例えば、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、エチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate、EMC)及びこれらの組み合わせなどの非環状カーボネートから選択することができる。ある実施形態では、電解質は、LiPF6及び1つ以上のカーボネートを含むことができる。例示的な有機溶媒電解質としては、この分野で「Gen2」電解質として既知の電解質が挙げられ、これはエチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)中の1.0MのLiPF6であり、EC:EMCの重量比は3:7である。好ましい実施形態では、本高電圧リチウムイオン二次電池の発明において使用される電解質は、フッ素化有機溶媒電解質である。例えば、FEC-FEMCと称されるフッ素化電解質は、FEC:FEMCの体積比1:9を有する、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びメチル(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート(FEMC)中の1MのLiPF6である。
【0049】
一実施形態では、本リチウムイオン二次電池は、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約350Wh/kgのエネルギー密度が可能である。別の実施形態では、本リチウムイオン二次電池は、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約400Wh/kgのエネルギー密度が可能である。別の実施形態では、本リチウムイオン二次電池は、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約450Wh/kgのエネルギー密度が可能である。別の実施形態では、本リチウムイオン二次電池は、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約500Wh/kgのエネルギー密度が可能である。別の実施形態では、本リチウムイオン二次電池は、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約550Wh/kgのエネルギー密度が可能である。別の実施形態では、本リチウムイオン二次電池は、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約600Wh/kgのエネルギー密度が可能である。別の実施形態では、本リチウムイオン二次電池は、少なくとも約C/20のレートで、少なくとも約650Wh/kgのエネルギー密度が可能である。
【0050】
方法
一実施形態では、本発明は、高電圧リチウムイオン二次電池における使用に関して、本明細書において先に定義されたカソードを製造するための方法であって、
I.)
i)約10マイクロメートル~約200マイクロメートルの長さ及び約50m2/g以下の比表面積を有する炭素繊維を含む導電性炭素と、
ii)少なくとも約4.5VのLi/Li+に対する電気化学的電位を有するリチウム遷移金属酸化物を含むカソード活性粒子と、
iii)少なくとも約1.8×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有するテトラフルオロエチレンポリマーを含むフルオロポリマー結合剤と、の混合物を乾式粉砕して、粉末化された乾燥カソード混合物を形成する工程であって、乾式粉砕が、フルオロポリマー結合剤をフィブリル化し、フルオロポリマー結合剤及び導電性炭素を含む導電性構造ウェブを形成し、導電性構造ウェブが、カソード全体にわたって電子導電性を可能にするようにカソード活性粒子を電子的に接続させる、工程、
II.)粉末化された乾燥カソード混合物をカレンダー加工して、乾燥カソード電極層を形成する工程、
III.)乾燥カソード電極層を、表面粗さを有し、カソード電極層の導電性炭素以外の炭素表面コーティングを実質的に有しないアルミニウムを含む集電体に接着させる工程、を含む。
【0051】
本乾式粉砕工程は、相対的に小さい質量の炭素繊維及びフルオロポリマー結合剤を、相対的に大きい質量のカソード活性粒子を伴い実質的に均質に分布させる。
【0052】
一実施形態では、I.)乾式粉砕工程に供される炭素繊維は、凝集体の形態であり、乾式粉砕は、かかる凝集体を実質的に解凝集するのに十分であり、単一の炭素繊維及び/又は相対的に小さいクラスタの炭素繊維をもたらす。
【0053】
本方法では、溶媒を使用しない方法で電極層を形成する。本方法の一実施形態では、電極層は、カソード活性粒子、フルオロポリマー結合剤及び導電性炭素を有機溶媒又は水の非存在下で乾式混合して、乾燥電極組成物を形成することと、溶媒の非存在下で乾燥電極組成物にせん断力を適用して、電極層を形成することと、によって形成される。
【0054】
一実施形態では、フルオロポリマー結合剤は、カソード電極層が自己支持性であるようにフィブリル化される。自己支持性とは、カソード電極層が、バッキング又は支持フィルム無しで自己支持性フィルムとして製造、かつ取り扱われ、並びに破損(例えば、亀裂、引裂、しわ、座屈、伸張など)を被ることなく操作され、かつ集電体に適用され得るように、十分な引張強度、並びに引裂抵抗及び破壊抵抗を有することを意味する。
【0055】
本方法の一実施形態では、I.)乾式粉砕工程は、導電性炭素及び乾燥カソード活性粒子を含む混合物を、第1の条件下で乾式粉砕し、第1の乾燥混合物をもたらすことと、次いで、乾燥フルオロポリマー結合剤を第1の乾燥混合物に添加して、第2の乾燥混合物を形成することと、第2の条件下で第2の乾燥混合物を乾式粉砕して、フルオロポリマー結合剤がフィブリル化された粉末化された乾燥カソード混合物を形成することと、を更に含む。
【0056】
本乾式粉砕工程I.)は、室温から高温で実行される。一実施形態では、乾式粉砕は、約40℃~約150℃の温度で実行される。
【0057】
本乾式粉砕工程I.)は、粉砕される材料にせん断力を適用することによって実行される。導電性炭素、カソード活性粒子及びフルオロポリマー結合剤が組み合わされ、次いで一度にともに粉砕される実施形態では、適用されるせん断は、導電性炭素繊維又はカソード活性粒子を実質的に破壊することなく、材料を均質に分布させ、フルオロポリマー結合剤をフィブリル化するのに十分である。
【0058】
導電性炭素繊維が最初に供給業者から凝集体として得られる一実施形態では、導電性炭素の凝集体を実質的に解凝集するために十分に乾式粉砕して、単一の炭素繊維及び/又は相対的に小さい炭素繊維のクラスタをもたらすことが好ましい。この実施形態では、導電性炭素繊維は、単独で、又は好ましい実施形態では、カソード活性粒子とともに乾式粉砕することができ、その結果、導電性炭素は、単一の炭素繊維又は相対的に小さい炭素繊維のクラスタとなり、導電性炭素は、カソード活性粒子全体にわたって均一に分散される。この実施形態では、フルオロポリマー結合剤が、次いで導電性炭素とカソード活性粒子との粉砕混合物にその後添加され、次いで、この混合物は、更に粉砕されて、導電性炭素繊維又はカソード活性粒子を実質的に破壊することなく、全ての材料を均質に分布させ、フルオロポリマー結合剤をフィブリル化することができる。
【0059】
一実施形態では、乾式粉砕は、ボトルローラ内、又は、例えば、回転ドラムミキサ内などで圧延することによって実行され、そのためフルオロポリマー結合剤がフィブリル化され、炭素繊維が実質的に壊れず、粉末化された乾燥カソード活性粒子全体にわたって均質に分布されるように十分なせん断力が付与され、また、フルオロポリマー結合剤及び導電性炭素を含む導電性構造ウェブの形成がもたらされる。一実施形態では、圧延は、約30~約150rpmの回転速度で実行することができる。好ましい実施形態では、圧延は、約70~約90rpmの回転速度で実行される。好ましい実施形態では、圧延は、約80rpmからの回転速度で実行される。一実施形態では、圧延は、少なくとも約1時間の持続時間にわたって実行することができる。一実施形態では、圧延は、室温から高温で実行される。一実施形態では、圧延は、約70℃~約250℃の温度で実行される。好ましい実施形態では、圧延は、約80℃の温度で実行される。
【0060】
一実施形態では、乾式粉砕は、ある期間にわたって高温(例えば、80℃)で乳鉢及び乳棒を使用して実行され、材料の均質な混合、PTFEのフィブリル化、及び導電性構造ウェブの形成をもたらすのに十分なせん断力を適用される。乳鉢及び乳棒による粉砕方法では、望ましくないことにVGCFの繊維を実質的に断片化する(短くする)及び/又はLNMOを実質的に断片化するように、混合物上に過剰なせん断を付与しないように注意する必要がある。一実施形態では、乾式粉砕は、約30℃~約150℃の高温で乳鉢及び乳棒を使用して実行される。一実施形態では、乾式粉砕は、乳鉢及び乳棒を使用して、約10分~約1時間の期間にわたって実行される。
【0061】
本方法は、粉末化された乾燥カソード混合物をカレンダー加工して、乾燥カソード電極層を形成する工程II.)を含む。一実施形態では、本カレンダー加工工程II.)は、室温からの高温で実行される。一実施形態では、カレンダー加工は、約70℃~約250℃の温度で実行される。一実施形態では、本カレンダー加工工程II.)は、加圧下で実行される。一実施形態では、適用される圧力は、約1メートルトン~約10メートルトンである。
【0062】
本方法は、III.)表面粗さを有し、上記電極層の上記導電性炭素以外の炭素表面コーティングを実質的に含まないアルミニウムを含む集電体に、乾燥カソード電極層を適用する工程を伴う。一実施形態では、本適用工程III.)は、室温から高温で実行される。一実施形態では、かかる適用は、約70℃~約250℃の温度で実行される。一実施形態では、本適用工程III.)は、加圧下で実行される。一実施形態では、適用される圧力は、約1メートルトン~約10メートルトンである。
【0063】
本III.)適用工程は、カソード電極層を調製し、高温及び加圧下でカソード電極層を集電体に適用することによって実行することができる。代替の実施形態では、本III.)適用工程は、II.)カレンダー加工工程と同時に実行することができ、カソード電極層は、単一のカレンダー加工工程において集電体に形成され、かつ適用される。
【実施例】
【0064】
実施例1-本発明のカソードを調製するための乾式方法
本発明のカソードを調製するために使用される材料は、市販の電池グレード材料:Haldor Topsoe製のリチウムニッケルマンガン酸化物(lithium nickel manganese oxide、LNMO)カソード活性、50m2/g未満の表面積を有するSigma Aldrich製の気相法炭素繊維(VGCF)導電性炭素、及びChemours FC LLCによって製造された少なくとも約1.8×1011ポアズの溶融クリープ粘度を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フルオロポリマー結合剤であった。全ての材料を、乾燥して(すなわち、水若しくは有機溶媒を含有せず、水若しくは有機溶媒中に溶解されず、又は水若しくは有機溶媒中に担持/分散されない)、及びそうでなければ製造業者から得られたままの状態で使用した。カソード活性材料を、Ar雰囲気下の無酸素ドライボックス内で保管し、かつ操作した。PTFEフルオロポリマー結合剤は、使用前に0℃で保管される。
【0065】
材料を、適切なサイズの圧延容器(ボトル)内で所望の重量比で組み合わせ、ボトルローラを使用して、80rpm及び80℃の温度で24時間圧延して、材料を十分に混合し、PTFEをフィブリル化し、導電性構造ウェブを形成した。
【0066】
代替の好ましい実施形態では、カソード活物質(LNMO)及び導電性炭素(VGCF)を組み合わせ、まずフルオロポリマー結合剤(PTFE)の非存在下で、VGCF凝集体を実質的に壊し、VGCFの繊維を分離し、VGCF及びLNMOを均質に混合するのに十分な期間粉砕した。その後、PTFEを添加し、ボトルローラを使用して混合物を更に圧延して、PTFEを先に粉砕されたVGCF及びLNMOと均質に混合し、PTFEをフィブリル化し、本導電性構造ウェブを含む粉砕された乾燥カソード粉末を形成した。
【0067】
次いで、得られた粉砕乾燥カソード粉末LNMO、VGCF及びPTFE混合物を、カレンダー加工して、所望の厚さの乾燥カソード電極層を形成した。70~200℃の温度及び1~10メートルトンの圧力の条件下で5~40秒間、MTIローリングプレス内でカレンダー加工を実行して、所望の厚さの乾燥カソード活性層をもたらす。本発明の乾燥カソード活性層は、自己支持性であり、これは、バッキング又は支持フィルムを必要とすることなく自己支持性フィルムとして取り扱い及び操作することができ、破損(例えば、亀裂、引き裂き、破壊、しわ、座屈、延伸など)を受けることなく操作され(例えば、圧延、スリットなど)及び集電体に適用することができるように、十分な強度(例えば、引張、引き裂き、及び破壊抵抗)を有することを意味する。
【0068】
次いで、得られたカソード活性層を、少なくとも約260nmのSa(算術平均高さ)として表される表面粗さを有し、炭素表面コーティングを有しないアルミニウム集電体に接着させた。カソード活性層及びアルミニウム集電体の接着を約70℃~約250℃の温度で、室温からの高温において、約1メートルトン~約10メートルトンの適用された圧力において、加圧下で実行され、本カソードの形成をもたらした。
【0069】
比較例1-溶媒スラリー法比較カソードの調製
比較溶媒スラリー法を使用するカソードを調製するために使用される材料は、市販の電池グレード材料:Haldor Topsoe製のリチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)カソード活物質、MTI Corporation製のSuper C65(C65)導電性カーボン、及びArkema製のHSV-900ポリビニリデンフルオリド(PVDF)であった。設計された重量比で材料を秤量した後、PVDFをジャー内のN-メチル-2-ピロリドン(NMP、Sigma Aldrich製)溶媒に移した。Thinkyミキサ(ARE-310)を使用して、PVDFを混合及び溶解した。次いで、LNMO及びSC65を混合物に添加し、いずれの粉砕ビーズ無しで更に1時間混合を続けた。次いで、スラリーを、フィルム流延ドクターブレード(Futt Brand)を用いて集電体上に流延した。流延したスラリーを、真空オーブン(MTI Corporation)中で80℃で24時間乾燥させた。圧延プレス機(MTI Corporation)を使用して、乾燥した電極をカレンダー加工して、気孔率を約35%に低減させた。
【0070】
実施例2-異なる面積容量の本発明のカソードの電子導電性
様々なカソード層面積容量及び厚さのカソードを、実施例1において説明した乾式法及び材料を使用して調製した。カソード電極層中のLNMO:PTFE:VGCFの重量比は、93:2:5である。カソードの導電性を、2点プローブ導電性法及び4点導電性法によって測定し、結果を表1において報告する。
【0071】
2点及び4点導電性試験方法は、電池分野における電極の電子導電性を評価するための典型的な方法として当業者に概して既知であり、参考文献、例えば、i)Park,Sang-Hoon,et al.「High areal capacity battery electrodes enabled by segregated nanotube networks」Nature Energy 4.7(2019):560-567、ii)Liu,G.,et al「Effects of various conductive additive and polymeric binder contents on the performance of a lithium-ion composite cathode」Journal of The Electrochemical Society 155.12(2008):A887、及びiii)Entwistle,Jake,et al.「Carbon binder domain networks and electrical conductivity in lithium-ion battery electrodes:A critical review.「Renewable and Sustainable Energy Reviews 166(2022):112624」において開示される。
【0072】
【0073】
異なる面積負荷を有する本発明のカソードは、4点プローブ導電性法によって同じ桁の電子導電性を示す。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、これが面内導電性炭素ねじれに関すると考える。2点プローブ法による電子導電性は、面積負荷が増加するにつれて増加する傾向を呈する。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、これは、カレンダー加工工程中のカソード層の厚さの低減に起因するものと考え、これは炭素繊維を分散させ、結果として得られるより薄いカソードにおいて単位体積当たりのより少ない炭素繊維をもたらす(すなわち、カソード組成物をカレンダー加工して、カソード層フィルム厚さを低減させることによって、より大きい面積のカソード層フィルムが得られる)。
【0074】
実施例3-導電性炭素(VGCF)の含有量を変化させた本発明のカソードの電子導電性
同様の面積容量(3mAh/cm2)及び厚さのカソードを、本乾式方法及び実施例1において説明した材料によって調製した。電極層中のLNMO:PTFE:VGCFの重量比は、表2に示されるように変化した。カソードの導電性を、4点導電性法によって測定し、結果を、表2において報告する。
【0075】
【0076】
これらの結果は、VGCFの量を、特に3重量%未満に低減させることが、4点プローブ導電性によって測定される際、導電性に相対的に大きい影響を及ぼすことを示す。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、3重量%未満のVGCFを含有する本発明の電極は、カソード活性粒子を接続させる能力が低く、有効な電子導電性構造ウェブを形成する能力が低いと考える。この量未満では、測定された導電性は、LNMOカソード活性粒子の導電性に本質的に対応するようであり、約1×10-6S/cmである。
【0077】
実施例4-異なるカソード電極組成物の粉砕方法によって作製された本発明のカソードの電子導電性
カソード活性粒子、フルオロポリマー結合剤、及び導電性炭素を含む電極組成物を調製するために、3つの異なる粉砕方法:Thinkyミキサ法、ボトルローラ法、並びに乳鉢及び乳棒法を研究した。
【0078】
Thinkyミキサ法は、表3において説明されたLNMO:PTFE:VGFE組成物を混合するためのThinky遊星遠心ミキサモデルARE-310の使用を伴った。ミキサを、以下の条件下:2000rpmで30分間で操作した。調製されたのは、乾燥粉末LNMO:PTFE:VGCFカソード電極混合物であった。
【0079】
ボトルローラ混合法は、概して、実施例1において説明したものに従った。約2g量のLNMO:PTFE:VGCF混合物を、20mLのガラスバイアルに設置し、一試行では粉砕ビーズ無しで、別の試行では4つの粉砕ビーズを用いて、ボトルミキサ上で80rpm及び80℃で24時間回転させて、乾燥粉末LNMO:PTFE:VGCFカソード混合物を調製した。ボトルローラ混合法における粉砕ビーズの使用は、望ましくないことに、粉砕ビーズの存在がVGCFの実質的に断片化された(短くなった)繊維及び/又は実質的に断片化されたLNMO粒子をもたらしたので、望ましくないことが見出された。相対的に低い混合速度(80rpm未満)でのボトルローラ混合は、VGCFを十分に分散させず、むしろ、VGCFの凝集をもたらすことが見出された。
【0080】
乳鉢と乳棒の混合方法は、概して、本実施例1の方法に従った。ある量のLNMO:PTFE:VGCF混合物を、乳鉢及び乳棒に設置し、粉末混合物が視覚的に均一になるまで80℃に加熱しながら手で穏やかに混合して、乾燥粉末LNMO:PTFE:VGCFカソード電極混合物を調製した。
【0081】
同様の面積容量のカソードを、上で説明された混合法によって調製された、乾燥粉末LNMO:PTFE:VGCFカソード電極混合物、及び本実施例1において説明されたような材料を使用する本乾式法によって調製した。電極層中のLNMO:PTFE:VGCFの重量比を、表3において報告する。カソードの導電性を、4点導電性法によって測定し、結果を表3において報告する。
【0082】
【0083】
実施例5-本発明の乾式コーティング法によって作製されたLNMOカソード、及び比較溶媒スラリー法によって作製されたカソードを使用するハーフセル及びフルセル電池の電気化学的性能
カソードを、実施例1のボトルローラ混合法及び比較例1の溶媒スラリー法に従って調製した。本発明の乾式法LNMOカソードを、3、4、6及び9.5mAh/cm2の面積負荷で調製した。比較溶媒スラリー法LNMOカソードを、3及び4mAh/cm2の面積負荷で調製した。
【0084】
ハーフセルコインセル電池を、これらのカソード、リチウム金属アノード、Celgard2325セパレータ及びGen2電解質(Gen2電解質は、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)中の1.0MのLiPF6であり、EC:EMC重量比が3:7)を使用して組み立てた。これらのカソード、アノード、Gen2電解質及びCelgard2325セパレータを用いて、フルセルコインセル電池を組み立てた。アノードは、Ningbo Institute of Materials Technology and Engineeringから得られたグラファイトアノードである。使用されるグラファイトは、人造グラファイトであり、重量パーセンテージは、95%である。
【0085】
図4は、3、4、6及び9.5mAh/cm
2の面積負荷を有する本乾式法LNMOカソードを使用するハーフセル電池のC/10レートハーフセル性能(電圧(V))対比容量(mAh/g)のプロットである。
図5は、3及び4mAh/cm
2の面積負荷を有する比較スラリー法LNMOカソードを使用するハーフセル電池のC/10レートハーフセル性能(電圧(V))対比容量(mAh/g)のプロットである。乾式法LNMOハーフセルは、面積負荷が3倍になっても、一貫して良好な性能を維持する。一方、スラリー法LNMOは、面積負荷が4mAh/cm
2に増加する場合、著しい性能低下を示す。本発明者らは、優れた導電性炭素ネットワークがこの性能を達成するのに役立ったと考えている。
【0086】
図6は、約240μmの厚さに対応する9.5mAh/cm
2の面積容量を有する、本実施例1の本発明の乾式方法によって作製されたLNMOカソードの断面SEM画像である。
図7は、約110μmの厚さに対応する4mAh/cm
2の面積容量を有する、本比較例1の比較溶媒スラリー法によって作製されたLNMOカソードの断面SEM画像である。緻密な電極層は、本発明の乾式法によって作製されたLNMOカソードにおいて達成された。電極層と集電体とのいずれの間にも剥離は見出されない。
【0087】
図8は、本発明の乾式法LMNOカソードを使用するフルセル電池及びスラリー法LMNOカソードを使用する同様の比較フルセル電池を、C/3レートでの性能(比容量(mAh/g)及びクーロン効率(%)対サイクル数)の長期サイクル(1,000サイクルを通して)の比較を示すプロットであり、各カソードが、3mAh/cm
2の面積負荷を有する。本発明の乾式法LNMOカソードを使用して、1000サイクルにわたって99.88%の平均クーロン効率を有し、700サイクルにわたる比放電容量の67%の保持率を有するフルセル電池がもたらされた。比較スラリー法LMNOカソードを用いた同様のフルセル電池は、わずか300サイクル後にクーロン効率及び比放電容量において著しい低減を被る比較フルセル電池をもたらした。本発明者らは、低比表面積の低減及び炭素コーティングの除去が、高電圧での寄生反応の低減に役立つと考える。
【0088】
図9は、本発明の乾式法LMNOカソードを使用するフルセル電池及びスラリーコーティングされたカソードを使用する同様のフルセル電池に関して300サイクルにわたるサイクル数に対する平均充電電圧(V)及び平均放電電圧(V)を示すプロットであり、これらのカソードは、3mAh/cm
2の面積負荷を有する。本発明のカソードを使用する電池は、スラリーコーティングされたカソードを使用する同様の比較フルセル電池よりも、300サイクルにわたって相対的に低い平均充電電圧及び相対的に高い平均放電電圧を示す。本発明のカソードを使用する電池における低く安定した電圧ヒステリシスは、サイクルに沿ったセルにおいてはるかに遅いインピーダンス成長を示す。
【0089】
図10は、本発明の乾式法LMNOカソードを使用するフルセル電池のdQ/dVプロット(dQ/dV(mAh/g・v
-1)対電圧(V))である。
図11は、比較のスラリーコーティングされたカソードを使用するフルセル電池のdQ/dVプロット(dQ/dV(mAh/g・v
-1対電圧(V))であり、これらのカソードは、3mAh/cm
2の面積負荷を有する。本発明の乾式法LMNOカソードを使用するフルセル電池からの酸化及び還元ピーク位置は、良好に維持される。これらの結果は、比較のスラリーコーティングされたカソードを使用するフルセルにおける劇的なインピーダンス上昇及び深刻なLi在庫損失を示す。
【0090】
図12は、50及び100サイクル後の、本発明の乾式法LMNOカソードを使用するフルセル電池、及び比較のスラリーコーティングされたカソードを使用するフルセル電池に関する、電気インピーダンス分光法(EIS)によって得られたナイキストプロット(-Z’’/Ω対Z’/Ω)であり、これらのカソードは、3mAh/cm
2の面積負荷を有する。100サイクル中、比較のスラリーコーティングされたカソードを使用するフルセル電池においても、著しいインピーダンス増加を観察することができる。
【0091】
図13は、21.2mg/cm
2のLNMO負荷を有する本発明の乾式法LMNOカソードを使用するフルセル電池、及び21.2mg/cm
2のLNMO負荷を有するスラリーコーティングされたカソードを使用する同様のフルセル電池に関して、300サイクルにわたるサイクル数に対するエネルギー密度(Wh/kg)及びエネルギー効率(%)を示すプロットである。エネルギー密度レベルは、本発明の乾式法LMNOカソードを使用するフルセル電池において長いサイクルの後であっても良好に維持することができる。
【0092】
実施例6-本発明の乾式コーティング法によって作製されたカソードを使用し、フッ素化電解質を使用するフルセル電池の電気化学的性能
LNMOカソード活物質を使用し、3mAh/cm2の面積負荷を有するカソードを、実施例1のボトルローラ乾燥法に従って調製した。
【0093】
フルセル電池は、これらのカソード、グラファイトアノード、Dreamweaver Gold 20セパレータを使用して組み立てられ、一例の電池では、使用される電解質は、Gen2電解質(Gen2電解質は、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)中の1.0MのLiPF6であり、EC:EMC重量比が3:7)を使用して組み立てられ、別の例示的な電池では、使用される電解質は、FEC-FEMCと称されるフッ素化電解質である(FEC-FEMC電解質は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びメチル(2,2,2ートリフルオロエチル)カーボネート(FEMC)中の1MのLiPF6であり、FEC:FEMC体積比が1:9である)。アノードは、Ningbo Institute of Materials Technology and Engineeringから得られたグラファイトアノードである。使用されるグラファイトは、人造グラファイトであり、重量パーセンテージは、95%である。
【0094】
図14は、Gen2電解質を使用する本発明の乾式法LNMOカソードを使用するフルセル電池と、FEC-FEMC電解質を使用する本質的に同一のフルセル電池に関する性能(比放電容量(mAh/g)及びクーロン効率(%)対サイクル数)の比較を示すプロットである。ほぼ50サイクルで、99.9%のクーロン効率に達することができる。このセルシステムは、かかる高電圧動作において迅速に安定化され得る。
【0095】
図15は、Gen2電解質を使用する本発明の乾式法LNMOカソードを使用するフルセル電池、及びFEC-FEMC電解質を使用する本質的に同一のフルセル電池に関して、200サイクルにわたるサイクル数に対するエネルギー密度(Wh/kg)及びエネルギー効率(%)を示すプロットである。エネルギー密度レベルは、FEC-FEMC電解質を有する本発明の乾式法LMNOカソードを使用するフルセル電池において、長いサイクル後であっても良好に維持することができる。
【0096】
図16は、Gen2電解質を使用する本発明の乾式法LNMOカソードを使用するフルセル電池、及びFEC-FEMC電解質を使用する本質的に同一のフルセル電池に関して、200サイクルにわたるサイクル数に対する平均充電電圧(V)及び平均放電電圧(V)を示すプロットである。FEC-FEMC電解質とともに本発明の乾式法LMNOカソードを使用するフルセル電池を使用する電池における低く安定した電圧ヒステリシスは、サイクルに沿ったセルにおいてはるかに遅いインピーダンス成長を示す。
【0097】
実施例7-カーボンコーティングを有するアルミニウム集電体及びカーボンコーティングを有しないアルミニウム集電体に接着された、本発明の乾式コーティング法によって作製されたカソードを使用するフルセル電池の電気化学的性能
LNMOカソード活物質を使用し、3mAh/cm2の面積負荷を有するカソードを、実施例1の乳鉢及び乳棒混合法並びにカレンダー加工法に従って調製した。1つの例示的な実施形態では、得られたカソード層フィルムを、少なくとも約260nmのSa(算術平均高さ)として表される表面粗さを有し、炭素表面コーティングを有しないアルミニウム集電体に接着させた。アルミニウムは、Tob New Energy製のSupercapacitor用の20umのEtched Aluminum Foilであった。比較例の実施形態では、得られたカソード層フィルムを、炭素コーティングされたアルミニウム集電体箔に接着させた。炭素コーティングされたアルミニウム集電体箔は、MTI Corporation製のConductive Carbon Coated Aluminum Foil for Battery Cathode Substrate(260mm W×18um厚、80mL/ロール)、EQ-CC-Al-18u-260インチであった。
【0098】
図17は、電極層と接触するアルミニウム表面上に炭素コーティング(電極層に含有される導電性炭素以外)を実質的に有しないアルミニウムを含む集電体上の本発明の乾式法で調製されたLMNOカソードと、炭素コーティングを有するアルミニウムを含む集電体上の同様の乾式法で調製されたLMNOカソードとを使用する、フルセル電池に関する放電容量(mAh/g)及びクーロン効率(%)対サイクル数のプロットである。
【0099】
この実験から、集電体上の炭素コーティングが、クーロン効率及び容量維持率に関して高電圧サイクル性能に非常に有害な影響をもたらすことが明らかである。電極層と接触するアルミニウム表面上に炭素コーティングを実質的に有しないアルミニウムを含む本発明の集電体が使用される場合、サイクル安定性は、著しく改善される。
【国際調査報告】