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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】薬物製剤及びその製造方法と用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/05 20060101AFI20240905BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 25/26 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240905BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240905BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240905BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240905BHJP
   C07K 7/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K38/05
A61P25/08
A61P25/00
A61P25/26
A61P17/02
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61P3/06
A61P3/08
A61P3/04
A61P19/06
A61P3/10
A61P9/06
A61P9/12
A61P9/10
A61P9/04
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P3/00
A61P9/00
A61P35/00
A61P37/04
A61K47/64
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/18
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/02
A61K9/19
A61K47/54
A61K31/519
A61K38/10
C07K7/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515439
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 CN2022117610
(87)【国際公開番号】W WO2023036193
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】202111051190.6
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524088021
【氏名又は名称】同宜医藥(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】範思祥
(72)【発明者】
【氏名】商培培
(72)【発明者】
【氏名】張賢慧
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB15
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD22Z
4C076DD26Z
4C076DD38
4C076DD41Z
4C076DD50
4C076DD50Z
4C076DD60
4C076DD67
4C076EE38
4C076EE39
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF61
4C076GG06
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4C084AA03
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4C084BA18
4C084BA23
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4C086ZB15
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4C086ZC33
4C086ZC35
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA13
4H045BA16
4H045BA62
4H045BA72
4H045EA20
(57)【要約】
薬物製剤であって、リガンド-薬物コンジュゲートと、凍結乾燥賦形剤と、緩衝剤とを含有する。上記製剤に対してpHスクリーニングを行い、その使用する緩衝剤と凍結乾燥賦形剤を限定し、同時に凍結乾燥プロセスをスクリーニングすることによって、最終的に該製剤の保存期間における外観、水分含有量、不純物含有量及び再溶解時間などをいずれも安定に保つことができるという効果を達成している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性薬物及び任意選択的に薬学的に許容可能な賦形剤を含む、薬物製剤。
【請求項2】
前記活性薬物は、リガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩を含み、
前記薬学的に許容可能な賦形剤は、凍結乾燥賦形剤及び緩衝剤のうちの一つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項3】
前記活性薬物は、リガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩を含み、
前記薬学的に許容可能な賦形剤は、凍結乾燥賦形剤、緩衝剤及び溶媒のうちの一つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の薬物製剤。
【請求項4】
前記リガンド-薬物コンジュゲートは、二重リガンド-薬物コンジュゲートであり、
好ましくは、前記二重リガンド-薬物コンジュゲートは、葉酸受容体とTRPV6受容体を標的とする薬物コンジュゲートであり、
より好ましくは、前記二重リガンド-薬物コンジュゲートは、以下のような構造
【化1】
を有し、
さらに好ましくは、前記二重リガンド-薬物コンジュゲートは、以下のような構造
【化2】
を有する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の薬物製剤。
【請求項5】
前記溶媒は、水であり、
好ましくは、前記溶媒は、精製水であり、
より好ましくは、前記精製水は、無菌水、蒸留水又は脱イオン水であり、
より好ましくは、前記無菌水は、無菌注射用水、単蒸留水又は再蒸留水である、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の薬物製剤。
【請求項6】
前記活性薬物の濃度は、4.75mg/mL~6mg/mLであり、
好ましくは、前記活性薬物の濃度は、4.75mg/mL、5mg/mL、5.25mg/mL、5.5mg/mL、5.75mg/mL、6mg/mLである、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の薬物製剤。
【請求項7】
前記薬物製剤のpH値は、6.5~8.5であり、
好ましくは、前記薬物製剤のpH値は、6.9~8.0、例えば6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0であり、
より好ましくは、前記薬物製剤のpH値は、6.9~7.7、例えば6.9、7.0、7.3、7.5、7.7である、ことを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の薬物製剤。
【請求項8】
前記凍結乾燥賦形剤は、ポリオール、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、キシリトールのうちの一つ又は複数を含み、
好ましくは、前記凍結乾燥賦形剤は、マンニトールを含む、ことを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の薬物製剤。
【請求項9】
前記凍結乾燥賦形剤は、糖類、例えば単糖、二糖、多糖のうちの一つ又は複数をさらに含み、
好ましくは、前記糖類と前記ポリオールとの質量比は、1:1~1:5であり、
より好ましくは、前記糖類と前記ポリオールとの質量比は、1:2~1:4である、ことを特徴とする請求項8に記載の薬物製剤。
【請求項10】
前記単糖は、グルコース及びフルクトースのうちの一つ又は複数を含み、
前記二糖は、ショ糖、トレハロース、マルトース及び乳糖のうちの一つ又は複数を含み、
前記多糖は、シクロデキストリン及びデキストランのうちの一つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の薬物製剤。
【請求項11】
前記凍結乾燥賦形剤は、マンニトールとショ糖とを含み、好ましくは、前記ショ糖とマンニトールとの質量比は、1:2~1:5、例えば1:2、1:2.4、1:2.5、1:4、1:4.5、1:4.7、1:5である、ことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の薬物製剤。
【請求項12】
前記凍結乾燥賦形剤は、マンニトールとトレハロースとを含み、好ましくは、前記トレハロースとマンニトールとの質量比は、1:2~1:4である、ことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の薬物製剤。
【請求項13】
前記緩衝剤は、トロメタミンと酸性物質とを含み、前記トロメタミンと活性薬物との質量比は、1:4~1:10であり、好ましくは、1:5~1:8.5である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の薬物製剤。
【請求項14】
前記酸性物質は、塩酸、酢酸、リン酸二水素ナトリウム、トロメタミン塩酸塩のうちの一つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の薬物製剤。
【請求項15】
前記緩衝剤は、トロメタミンと塩酸とを含み、好ましくは、前記トロメタミンと活性薬物との質量比は、1:5~1:8.5、例えば1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:8、1:8.5である、ことを特徴とする請求項13又は14に記載の薬物製剤。
【請求項16】
前記薬物製剤は、1mL当たりに4.75~6mgのリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、25~55mgのマンニトール、0~55mgのショ糖、0.5~1.25mgのトロメタミン、塩酸と残部の溶媒を含み、ここで、前記薬物製剤のpHは、6.5~8.5であり、好ましくは、6.9~8.0であり、
例えば、前記薬物製剤は、1mL当たりに5mgのリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、40mgのマンニトール、10mgのショ糖、0.765mgのトロメタミン、塩酸及び残部の水を含み、ここで、前記薬物製剤のpHは、6.5~8.5であり、好ましくは、6.9~8.0である、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項17】
前記薬物製剤は、無菌である、ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の薬物製剤。
【請求項18】
前記薬物製剤は、冷凍と解凍の時に安定である、ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の薬物製剤。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の薬物製剤の製造方法であって、
処方量の活性薬物及び任意選択的に薬学的に許容可能な賦形剤を取り、均一に混合すると、薬物製剤が得られるステップを含む、製造方法。
【請求項20】
処方量のリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、凍結乾燥賦形剤、緩衝剤及び溶媒を取り、溶媒を利用してリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩と凍結乾燥賦形剤を溶解し、緩衝剤を利用してpH値を6.9~7.7に調節し、均一に混合し、濾過すると、薬物製剤が得られるステップを含む、ことを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
凍結乾燥製剤であって、請求項1から18のいずれか1項に記載の薬物製剤を凍結乾燥して製造される、ことを特徴とする凍結乾燥製剤。
【請求項22】
請求項21に記載の凍結乾燥製剤の製造方法であって、
-45℃で前記薬物製剤を冷凍するステップ(i)と、
-25℃で前記薬物製剤をアニーリングするステップ(ii)と、
-45℃で前記薬物製剤を再度冷凍するステップ(iii)と、
-15℃で前記薬物製剤を一次乾燥するステップ(iv)と、
25℃で前記薬物製剤を二次乾燥するステップ(v)とを含む、製造方法。
【請求項23】
前記一次乾燥の時間は、800~3000minであり、前記二次乾燥の時間は、300~600minである、ことを特徴とする請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
請求項21に記載の凍結乾燥製剤を水で再構成してなる、液体製剤。
【請求項25】
前記水は、蒸留水、純水及び無菌水のうちの一つ又は複数を含み、好ましくは、前記凍結乾燥製剤を水で再構成した後のpHは、6.5~8.5である、ことを特徴とする請求項24に記載の液体製剤。
【請求項26】
請求項24又は25に記載の液体製剤の製造方法であって、
前記凍結乾燥製剤と無菌水とを混合すると、液体製剤が得られるステップを含む、製造方法。
【請求項27】
薬物含有送達装置であって、請求項1から18のいずれか1項に記載の薬物製剤、請求項21に記載の凍結乾燥製剤又は請求項24又は25に記載の液体製剤のうちの1つの製剤を含む、薬物含有送達装置。
【請求項28】
プレフィルドシリンジであって、請求項1から18のいずれか1項に記載の薬物製剤、請求項21に記載の凍結乾燥製剤又は請求項24又は25に記載の液体製剤のうちの1つの製剤を含み、好ましくは、静脈内注射又は筋内注射に用いられる、プレフィルドシリンジ。
【請求項29】
請求項1から18のいずれか1項に記載の薬物製剤、請求項21に記載の凍結乾燥製剤又は請求項24又は25に記載の液体製剤の、被験体において免疫エフェクター細胞反応を増強し及び/又は免疫抑制を減少させるための送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物の製造における用途。
【請求項30】
請求項1から18のいずれか1項に記載の薬物製剤、請求項21に記載の凍結乾燥製剤又は請求項24又は25に記載の液体製剤の、被験体において癌、免疫性疾患、心血管疾患、代謝疾患及び神経疾患を治療又は予防するための送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物の製造における用途。
【請求項31】
前記癌は、乳癌、肺癌、前立腺癌、腎臓癌、白血病、卵巣癌、胃癌、子宮癌、子宮内膜癌、肝臓癌、結腸癌、甲状腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、食道癌、皮膚癌、リンパ腫、多発性骨髄腫のうちの一つ又は複数を含み、
前記免疫性疾患は、結合組織病、全身性硬化症、関節リウマチ及び全身性エリテマトーデスのうちの一つ又は複数を含み、
前記心血管疾患は、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、心臓発作、高血圧性心疾患、リウマチ性心疾患、心筋症、心臓不整脈及び先天性心疾患のうちの一つ又は複数を含み、
前記代謝疾患は、糖尿病、痛風、肥満、低血糖症、高血糖症及び脂質異常のうちの一つ又は複数を含み、
前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、頭部外傷、多発性硬化症、めまい、昏睡及びてんかんのうちの一つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項30に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<優先権と関連出願>
本出願は、2021年9月8日に中国特許局に提案された、出願番号が202111051190.6であり、発明名称が「薬物製剤及びその製造方法と用途」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容のすべては、援用により本出願に取り込まれる。
【0002】
<技術分野>
本発明は、生物医薬分野に関し、具体的には、本発明は、薬物製剤に関し、具体的にリガンド-薬物コンジュゲートを含む薬物製剤、及びその製造方法と用途である。
【背景技術】
【0003】
腫瘍細胞と病変を発生する他の細胞(例えば血管内皮細胞、白血球、脳毛細血管内皮細胞)の表面には、多種類の特異性又は過剰発現受容体、例えばトランスフェリン受容体(TFR)、低密度リポ蛋白受容体、葉酸受容体、尿酸キナーゼ受容体、腫瘍壊死因子受容体、細胞間接着分子(ICAM)、インテグリン受容体LFA-1などが存在する。これらの受容体のリガンドは、タンパク質類(フェリチン、アポリポタンパク質、低密度リポ蛋白受容体関連タンパク質1であるLRP1など)、ポリペプチド類(インスリン、SOR-C13、黄体形成ホルモン放出ホルモンLHRH、ソマトスタチンSST-14など)、小分子類(葉酸及び類似体、糖化合物)に分類される。これらのリガンドは、受容体と結合して特異性が良く、親和性が適度で、生物効果が明らかな特性があり、治療性薬物とカップリングしてリガンド-薬物コンジュゲート(LDC)を形成することで、明らかに薬物の標的性と薬効を向上させ、同時に毒性を低減させることができる。リガンド-薬物コンジュゲートは、細胞エンドサイトーシス媒介機能を有し、腫瘍、免疫調節、心血管疾患の治療に応用でき、その優位性は、次の通りである。(1)標的とエンドサイトーシス構造の結合は、任意のリガンドを標的とするポリペプチドを誘導部分とすることを実現することによって、この種類の薬物の標的範囲を広げ、(2)双標的リガンドを利用して薬物コンジュゲートの病変細胞に対する親和性と標的性を増強することによって、高効率の毒素薬物、例えばモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を携帯し、薬効を増強し、治療の窓口を増強して薬物の副作用を避けることができ、(3)コネクターは、細胞外部(細胞間質、血液循環系など)で薬物分子を放出することができず、薬物が体内で循環する時の安定性を保証し、薬物毒性を低減させ、正常細胞に対して毒作用を生じない。標的細胞の内部に入った後、コネクターが分解して治療作用のある薬物分子が放出され、多剤耐性(MDR)の発生を回避することができる。
【0004】
LDC製剤は、被験体への投与に適した方式でコンジュゲートを配合することに加えて、保存及びその後の使用期間に、その安定性を維持する方式で配合される必要がある。例えば、LDCが液体において適切に配合されていない場合、液体溶液におけるLDCは、分解、凝集又は望ましくない化学修飾などが発生する傾向がある。LDCの製剤における安定性は、製剤において使用される緩衝剤、安定化剤と界面活性剤などに依存する。
【0005】
本分野では、十分に安定であり、且つ被験体への投与に適したLDCを含有する新規薬物製剤に対する需要が存在し、そのため、疾患の治療又は予防のために適切なLDC製剤を製造する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記本分野における、安定であり、且つ被験体への投与に適したLDC新規薬物製剤に対する需求に対して、本発明は、リガンド-薬物コンジュゲートを含む製剤及びその製造方法と用途を提供しようとし、pH値、緩衝剤と凍結乾燥賦形剤及び凍結乾燥プロセスなどのパラメータを限定することによって、LDC製剤として保存期間に良好な安定性を保持するという需求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様によれば、本発明は、薬物製剤を提供し、該薬物製剤は、活性薬物及び任意選択的に薬学的に許容可能な賦形剤を含む。
【0008】
更に、上記薬物製剤において、前記活性薬物は、リガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩を含み、前記薬学的に許容可能な賦形剤は、凍結乾燥賦形剤及び緩衝剤のうちの一つ又は複数を含む。
【0009】
更に、上記薬物製剤において、前記薬学的に許容可能な賦形剤は、溶媒をさらに含む。
【0010】
更に、上記薬物製剤において、前記リガンド-薬物コンジュゲートは、二重リガンド-薬物コンジュゲートであり、好ましくは、前記二重リガンド-薬物コンジュゲートは、葉酸受容体とTRPV6受容体を標的とする薬物コンジュゲートであり、より好ましくは、前記二重リガンド-薬物コンジュゲートは、以下のような構造
【化1】
を有し、
さらに好ましくは、前記二重リガンド-薬物コンジュゲートは、以下のような構造
【化2】
を有する。
【0011】
更に、上記薬物製剤において、前記溶媒は、水であり、好ましくは、前記溶媒は、精製水であり、より好ましくは、前記溶媒は、無菌水、蒸留水又は脱イオン水であり、より好ましくは、前記無菌水は、無菌注射用水、単蒸留水又は再蒸留水である。
【0012】
更に、上記薬物製剤において、前記活性薬物の濃度は、4.75mg/mL~6mg/mLであり、好ましくは、前記活性薬物の濃度は、4.75mg/mL、5mg/mL、5.25mg/mL、5.5mg/mL、5.75mg/mL、6mg/mLである。
【0013】
更に、上記薬物製剤のpH値は、6.5~8.5であり、好ましくは、前記薬物製剤のpH値は、6.9~8.0、例えば6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0であり、より好ましくは、前記薬物製剤のpH値は、6.9~7.7、例えば6.9、7.0、7.3、7.5、7.7である。
【0014】
更に、上記薬物製剤において、前記凍結乾燥賦形剤は、ポリオール、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、キシリトールのうちの一つ又は複数を含み、好ましくは、前記凍結乾燥賦形剤は、マンニトールを含む。
【0015】
更に、上記薬物製剤において、前記凍結乾燥賦形剤は、糖類、例えば単糖、二糖、多糖のうちの一つ又は複数をさらに含み、好ましくは、前記糖類とポリオールとの質量比は、1:1~1:5であり、より好ましくは、前記糖類とポリオールとの質量比は、1:2~1:4である。
【0016】
好ましくは、上記薬物製剤において、前記単糖は、グルコース及びフルクトースのうちの一つ又は複数を含み、前記二糖は、ショ糖、トレハロース、マルトース及び乳糖のうちの一つ又は複数を含み、前記多糖は、シクロデキストリン及びデキストランのうちの一つ又は複数を含む。
【0017】
より好ましくは、上記薬物製剤において、前記凍結乾燥賦形剤は、マンニトールとショ糖とを含み、好ましくは、前記ショ糖とマンニトールとの質量比は、1:2~1:5、例えば1:2、1:2.4、1:2.5、1:4、1:4.5、1:4.7、1:5であり、より好ましくは、前記ショ糖とマンニトールとの質量比は、1:4である。
【0018】
より好ましくは、上記薬物製剤において、前記凍結乾燥賦形剤は、マンニトールとトレハロースとを含み、好ましくは、前記トレハロースとマンニトールとの質量比は、1:2~1:4であり、より好ましくは、前記トレハロースとマンニトールとの質量比は、1:4である。
【0019】
更に、上記薬物製剤において、前記緩衝剤は、トロメタミンと酸性物質とを含み、前記トロメタミンと活性薬物との質量比は、1:4~1:10であり、好ましくは、1:5~1:8.5である。
【0020】
好ましくは、上記薬物製剤において、前記酸性物質は、塩酸、酢酸、リン酸二水素ナトリウム、トロメタミン塩酸塩のうちの一つ又は複数を含む。
【0021】
より好ましくは、上記薬物製剤において、前記緩衝剤は、トロメタミンと塩酸とを含み、好ましくは、前記トロメタミンと活性薬物との質量割合は、1:5~1:8.5、例えば1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:8、1:8.5であり、より好ましくは、前記トロメタミンと活性薬物との割合は、1:6.5である。
【0022】
更に、上記薬物製剤において、前記薬物製剤は、1mL当たりに4.75~6mgのリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、25~55mgのマンニトール、0~55mgのショ糖、0.5~1.25mgのトロメタミン、塩酸及び残部の溶媒を含み、ここで、前記薬物製剤のpHは、6.5~8.5であり、好ましくは、6.9~8.0であり、例えば、前記薬物製剤は、1mL当たりに5mgのリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、40mgのマンニトール、10mgのショ糖、0.765mgのトロメタミン、塩酸及び残部の水を含み、ここで、前記薬物製剤のpHは、6.5-8.5であり、好ましくは、6.9~8.0である。
【0023】
更に、上記薬物製剤は、無菌である。
【0024】
更に、上記薬物製剤は、冷凍と解凍の時に安定である。
【0025】
第二の態様によれば、本発明は、上記薬物製剤の製造方法を提供し、該製造方法は、処方量の活性薬物及び任意選択的に薬学的に許容可能な賦形剤を取り、均一に混合すると、上記薬物製剤が得られるステップを含む。
【0026】
更に、上記製造方法は、処方量のリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、凍結乾燥賦形剤、緩衝剤及び溶媒を取り、溶媒を利用してリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩と凍結乾燥賦形剤を溶解し、緩衝剤を利用してpH値を6.9~7.7に調節し、均一に混合し、濾過すると、上記薬物製剤が得られるステップを含む。
【0027】
第三の態様によれば、本発明は、凍結乾燥製剤を提供し、該凍結乾燥製剤は、上記の薬物製剤を凍結乾燥して製造されることを特徴とする。
【0028】
第四の態様によれば、本発明は、上記凍結乾燥製剤の製造方法を提供し、該製造方法は、-45℃で薬物製剤を冷凍するステップ(i)と、-25℃で薬物製剤をアニーリングするステップ(ii)と、-45℃で薬物製剤を再度冷凍するステップ(iii)と、-15℃で薬物製剤を一次乾燥するステップ(iv)と、25℃で薬物製剤を二次乾燥するステップ(v)とを含む。
【0029】
更に、上記製造方法において、前記一次乾燥の時間は、800~3000minであり、前記二次乾燥の時間は、300~600minである。
【0030】
第五の態様によれば、本発明は、液体製剤を提供し、該液体製剤は、上記凍結乾燥製剤を水で再構成してなる。
【0031】
更に、上記液体製剤において、前記水は、蒸留水、純水及び無菌水のうちの一つ又は複数を含み、好ましくは、前記凍結乾燥製剤を水で再構成した後のpHは、6.5~8.5である。
【0032】
第六の態様によれば、本発明は、上記液体製剤の製造方法を提供し、該製造方法は、前記凍結乾燥製剤と無菌水とを混合すると、上記液体製剤が得られるステップを含む。
【0033】
第七の態様によれば、本発明は、薬物含有送達装置を提供し、該薬物含有送達装置は、上記薬物製剤、上記凍結乾燥製剤又は上記液体製剤のうちの一つの製剤を含む。
【0034】
第八の態様によれば、本発明は、プレフィルドシリンジを提供し、該プレフィルドシリンジは、上記薬物製剤、上記凍結乾燥製剤又は上記液体製剤のうちの一つの製剤を含み、好ましくは、静脈内注射又は筋内注射に用いられる。
【0035】
第九の態様によれば、本発明は、上記薬物製剤、上記凍結乾燥製剤と上記液体製剤の、被験体において免疫エフェクター細胞反応を増強し及び/又は免疫抑制を減少させるための送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物の製造における用途を提供する。
【0036】
第十の態様によれば、本発明は、上記薬物製剤、上記凍結乾燥製剤と上記液体製剤の、被験体において癌、免疫性疾患、心血管疾患、代謝疾患及び神経疾患を治療又は予防するための送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物の製造における用途を提供する。
【0037】
更に、上記用途において、前記癌は、乳癌、肺癌、前立腺癌、腎臓癌、白血病、卵巣癌、胃癌、子宮癌、子宮内膜癌、肝臓癌、結腸癌、甲状腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、食道癌、皮膚癌、リンパ腫、多発性骨髄腫のうちの一つ又は複数を含み、前記免疫性疾患は、結合組織病、全身性硬化症、関節リウマチ及び全身性エリテマトーデスのうちの一つ又は複数を含み、前記心血管疾患は、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、心臓発作、高血圧性心疾患、リウマチ性心疾患、心筋症、心臓不整脈及び先天性心疾患のうちの一つ又は複数を含み、前記代謝疾患は、糖尿病、痛風、肥満、低血糖症、高血糖症及び脂質異常のうちの一つ又は複数を含み、前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、頭部外傷、多発性硬化症、めまい、昏睡及びてんかんのうちの一つ又は複数を含む。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、リガンド-薬物コンジュゲートを含む製剤に対してpHスクリーニングを行い、その使用する緩衝剤と凍結乾燥賦形剤を限定し、同時に凍結乾燥プロセスをスクリーニングすることによって、最終的に該製剤の保存期間における外観、水分含有量、不純物含有量及び再溶解時間などをいずれも安定に保つことができるという効果を達成している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下は、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は、これに限らない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、発明要求の保護範囲内で様々な変更を行うことができるが、異なる実施の形態、実施例にそれぞれ開示される技術手段を適切に組み合わせて得られる実施の形態、実施例も本発明の技術範囲に含まれる。また、本明細書に記載されている文献は、すべて参考文献として本明細書で援用される。
【0040】
特に定義されない限り、本発明で使用される技術用語と科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0041】
本明細書では、「数値A~数値B」又は「数値A-数値B」を用いて表される数値範囲とは、端点数値A、Bを含む範囲である。
【0042】
本明細書では、「%」が現れる場合、他の特記事項がない限り、質量又は重量の含有率、即ち「質量%」又は「重量%」を表す。
【0043】
本明細書では、「常温」又は「室温」は、約25℃の環境温度を表す。
【0044】
本明細書では、「てもよい」を用いて表す意味は、何らかの処理を行うこと及び行わないことの両方の意味を含む。本明細書では、「任意選択的」又は「任意選択的に」とは、次に記述されるイベント又は状況が発生し得るか又は発生し得ないことであり、且つ該記述は、該イベントが発生する状況と該イベントが発生しない状況とを含む。
【0045】
本明細書において、言及された「いくつかの具体的/好ましい実施形態」、「別のいくつかの具体的/好ましい実施形態」、「いくつかの具体的/好ましい技術案」、「別のいくつかの具体的/好ましい技術案」などは、該実施の形態に関連して記述された特定の要素(例えば、特徴、構造、性質及び/又は特性)が、ここに記載された少なくとも1つの実施形態に含まれ、且つ他の実施形態に存在してもよく、又は他の実施形態に存在しなくてもよいことである。また、理解すべきこととして、前記要素は、任意の適切な方式で様々な実施の形態に組み合わせられてもよい。
【0046】
本発明の明細書と特許請求の範囲における「含む」用語及びそれらの任意の変形は、非排他的な「含む」を意図的にカバーするものである。
【0047】
本発明では、「薬学的に許容可能な」とは、合理的な医学的判断の範囲内において、不適切な毒性、刺激性、アレルギー反応などを伴うことなくヒト及び他の動物の細胞との接触に適用され、合理的な利益/リスク比に見合っていることである。
【0048】
本発明では、「薬物的に許容可能な塩」とは、本出願のコンジュゲート化合物の相対的に毒性のない無機と有機酸付加塩と塩基付加塩である。代表的な酸付加塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ペンタン酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、ラクトース酸塩、スルファミン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、プロピオン塩、メチレン-ビス-b-ヒドロキシナフトエ酸塩、ロンコール酸塩、ヒドロキシエチルスルホン酸塩、ジ-p-トルイル酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩及びキナ酸ラウリルスルホン酸塩などを含む。塩基付加塩は、薬学的に許容可能な金属とアミン塩を含む。適切な金属塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム及びアルミニウム塩を含む。いくつかの実施形態では、ナトリウム塩とカリウム塩が好ましい。適切な無機塩基付加塩は、金属塩基から製造され、前記金属塩基は、例えば水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛を含む。適切なアミン塩基付加塩は、安定な塩を形成するために十分な塩基性を有するアミンから製造され、且つ好ましくは、毒性が低く、医療用途に許容されるため、医薬化学的によく使用される以下のアミン:アンモニア、エチレンジアミン、N-メチルグルコサミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェニルエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリメチロールアミノメタン、テトラメチルアンモニウム水酸化物、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルヒドロキシメチン、デヒドロアビエチルアミン、N-エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、塩基性アミノ酸(例えば、リジンとアルギニン)及びジシクロヘキシルアミンなどを含む。
【0049】
本発明では、「リガンド-薬物コンジュゲート」(LDC)は、化学的結合を介して生物学的に活性な薬物をリガンドに連結するものであり、リガンドは、担体として小分子薬物を目標細胞に標的輸送し、ここで、リガンドは、ポリペプチド又は小分子であってもよい。好ましくは、前記リガンド-薬物コンジュゲートは、二重リガンド薬物コンジュゲートであり、好ましくは、前記二重リガンド薬物コンジュゲートは、葉酸受容体とTRPV6受容体を標的とする薬物コンジュゲートである。より好ましくは、本発明のリガンド-薬物コンジュゲートは、出願番号が201680045855.3であり、発明名称が「マルチリガンド薬物コンジュゲート及びその用途」である特許出願に記載されたリガンド-薬物コンジュゲートであり、より好ましくは、前記リガンド結合化合物は、二重リガンドカップリング物LDC10Bであり、リガンドは、それぞれTRPV6受容体と葉酸受容体を標的し、担体薬物は、MMAEであり、その構造は、以下のように示し、
【化3】

さらに好ましくは、前記二重リガンド-薬物コンジュゲートは、以下のような構造
【化4】
を有する。
【0050】
本発明では、「緩衝剤」は、溶液のpHを許容範囲に維持することができる試薬である。いくつかの実施態様では、本発明の製剤に用いられる緩衝剤は、本発明の製剤のpHを約6.5~8.5のpH範囲、例えば約6.9~8.0のpHに制御することができる。いくつかの具体的な実施態様では、本発明の製剤は、約6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0のpHを有する。
【0051】
本発明では、「ポリオール」とは、分子に2個又は2個以上の水酸基が含有されるアルコール類である。
【0052】
本発明では、「再構成」とは、固形製剤(例えば凍結乾燥製剤)を生理学的に許容可能な溶液に溶解及び/又は懸濁させることである。
【0053】
本発明では、「約」とは、限定された数値がおおよそであることであり、関連データにおいてある特定の数値が非常に正確である必要はない。
【0054】
本発明では、「製剤」とは、一定の剤形要求に従って作成され、最終的に投薬対象者に使用するために提供されることができる薬品である。
【0055】
本発明では、「凍結乾燥製剤」とは、冷凍乾燥法により得られる注射用無菌固体である。
【0056】
本発明では、「凍結乾燥賦形剤」とは、凍結乾燥保護剤とも呼ばれ、食品、薬品及び生物体の冷凍乾燥と貯蔵過程において添加される添加剤であり、多くの要因(化学成分、凍結速度、凍結及び脱水応力、ガラス転移温度、乾燥固体における残留水分、貯蔵環境の温度と湿度など)の影響下においても製品が安定性と活性を保持することを目的とする。
【0057】
本発明では、「安定な製剤」とは、製品の製造及び貯蔵過程において水分含有量、外観、pH値、不純物含有量及び再溶解性状などが基本的に変化しないか、又は薬学的に許容可能な範囲内に変化する製剤である。
【0058】
本発明では、「HPLC」とは、高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography)であり、クロマトグラフィーの重要な分岐であり、液体を移動相とし、高圧輸液システムを採用して、異なる極性を持つ単一溶媒又は異なる割合の混合溶媒、緩衝液などの移動相を固定相の入ったカラムにポンプし、カラム内で各成分が分離された後、検出器に入って検出することで試料の分析を実現する。
【0059】
[LDCを含む薬物製剤及びその製造方法]
本発明は、薬物製剤を提供し、それは、活性薬物と任意選択的に薬学的に許容可能な賦形剤とを含んでもよい。
【0060】
一つの実施態様では、上記薬物製剤は、リガンド-薬物コンジュゲートと、凍結乾燥賦形剤と、緩衝剤とを含んでもよい。
【0061】
一つの実施態様では、上記薬物製剤は、リガンド-薬物コンジュゲートと、凍結乾燥賦形剤と、緩衝剤と、溶媒とを含んでもよい。
【0062】
一つの好ましい実施態様では、上記薬物製剤におけるリガンド-薬物コンジュゲートは、葉酸受容体とTRPV6受容体を標的とする二重リガンド-薬物コンジュゲートであってもよい。
【0063】
一つの実施態様では、上記薬物製剤における溶媒は、水である。
【0064】
一つの好ましい実施態様では、上記薬物製剤における溶媒は、精製水である。
【0065】
別の好ましい実施態様では、上記薬物製剤における溶媒は、無菌水、蒸留水又は脱イオン水である。
【0066】
一つのより好ましい実施態様では、上記薬物製剤における溶媒は、無菌注射用水、単蒸留水又は再蒸留水である。
【0067】
一つの実施態様では、上記薬物製剤における活性薬物濃度は、4.75mg/mL~6mg/mL、例えば4.75mg/mL、5mg/mL、5.25mg/mL、5.5mg/mL、5.75mg/mL、6mg/mLである。
【0068】
一つの好ましい実施態様では、上記薬物製剤の活性薬物濃度は、5mg/mLである。
【0069】
一つの実施態様では、上記薬物製剤のpH値は、6.5~8.5であってもよい。
【0070】
一つの好ましい実施態様では、上記薬物製剤のpH値は、6.9~8.0、例えば6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0であってもよい。
【0071】
一つのより好ましい実施態様では、上記薬物製剤のpH値は、6.9~7.7、例えば6.9、7.0、7.3、7.5、7.7であってもよい。
【0072】
一つの実施態様では、上記薬物製剤における凍結乾燥賦形剤は、ポリオール、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、キシリトールのうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0073】
一つの好ましい実施態様では、上記薬物製剤における凍結乾燥賦形剤は、マンニトールを含む。
【0074】
一つの実施態様では、上記薬物製剤における凍結乾燥賦形剤は、ポリオールと糖類、例えば単糖、二糖、多糖のうちの一つ又は複数を含む。
【0075】
更に、上記薬物製剤における凍結乾燥賦形剤における単糖は、グルコース及びフルクトースのうちの一つ又は複数を含み、二糖は、ショ糖、トレハロース、マルトース及び乳糖のうちの一つ又は複数を含み、多糖は、シクロデキストリン及びデキストランのうちの一つ又は複数を含む。
【0076】
更に、前記糖類とポリオールとの質量比は、1:1~1:5であり、好ましくは、前記糖類とポリオールとの質量比は、1:2~1:4である。
【0077】
一つの好ましい実施態様では、上記薬物製剤における凍結乾燥賦形剤は、マンニトールとショ糖とを含んでもよく、好ましくは、前記ショ糖とマンニトールとの質量比は、1:2~1:5、例えば1:2、1:2.4、1:2.5、1:4、1:4.5、1:4.7、1:5である。
【0078】
一つのより好ましい実施態様では、上記薬物製剤における凍結乾燥賦形剤は、マンニトールとショ糖とを含んでもよく、好ましくは、前記ショ糖とマンニトールとの質量比は、1:4である。
【0079】
別の好ましい実施態様では、上記薬物製剤における凍結乾燥賦形剤は、マンニトールとトレハロースとを含んでもよく、好ましくは、前記トレハロースとマンニトールとの質量比は、1:2~1:4である。
【0080】
別のより好ましい実施態様では、上記薬物製剤における凍結乾燥賦形剤は、マンニトールとトレハロースとを含んでもよく、好ましくは、前記トレハロースとマンニトールとの質量比は、1:4である。
【0081】
一つの実施態様では、上記薬物製剤における緩衝剤は、トロメタミンと酸性物質とを含んでもよく、前記トロメタミンと活性薬物との質量比は、1:4~1:10であり、好ましくは、1:5~1:8.5である。
【0082】
更に、上記薬物製剤における緩衝剤に含まれる酸性物質は、塩酸、酢酸、リン酸二水素ナトリウム及びトロメタミン塩酸塩のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0083】
一つの好ましい実施態様では、上記薬物製剤における緩衝剤は、トロメタミンと塩酸とを含んでもよく、好ましくは、前記トロメタミンと活性薬物との質量割合は、1:5~1:8.5、例えば1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:8、1:8.5である。
【0084】
一つのより好ましい実施態様では、上記薬物製剤における緩衝剤は、トロメタミンと塩酸を含んでもよく、好ましくは、前記トロメタミンと活性薬物との割合は、1:6.5である。
【0085】
別の好ましい実施態様では、上記薬物製剤における緩衝剤は、トロメタミンと酢酸とを含んでもよく、前記トロメタミンと活性薬物との割合は、1:6.5である。
【0086】
また一つの好ましい実施態様では、上記薬物製剤における緩衝剤は、トロメタミンとリン酸二水素ナトリウムを含んでもよく、前記トロメタミンと活性薬物との割合は、1:6.5である。
【0087】
また一つの好ましい実施態様では、上記薬物製剤における緩衝剤は、トロメタミンとトロメタミン塩酸塩とを含んでもよく、前記トロメタミンと活性薬物との割合は、1:6.5である。
【0088】
一つの実施態様では、上記薬物製剤は、1mL当たりに4.75~6mgのリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、25~55mgのマンニトール、0~55mgのショ糖、0.5~1.25mgのトロメタミン、塩酸と残部の溶媒を含み、ここで、前記薬物製剤のpHは、6.5~8.5であり、好ましくは、6.9~8.0である。
【0089】
一つの好ましい実施態様では、上記薬物製剤は、1mL当たりに5mgのリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、40mgのマンニトール、10mgのショ糖、0.765mgのトロメタミン、塩酸及び残部の水を含み、ここで、前記薬物製剤のpHは、6.5~8.5であり、好ましくは、6.9~8.0である。
【0090】
一つの実施態様では、上記薬物製剤は、無菌である。
【0091】
一つの実施態様では、上記薬物製剤は、冷凍と解凍の時に安定である。
【0092】
一つの実施態様では、上記薬物製剤の製造方法は、処方量の活性薬物及び任意選択的に薬学的に許容可能な賦形剤を取り、均一に混合すると、上記薬物製剤が得られるステップを含む。
【0093】
一つの好ましい実施態様では、上記薬物製剤の製造方法は、処方量のリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、凍結乾燥賦形剤、緩衝剤及び溶媒を取り、溶媒を利用してリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩と凍結乾燥賦形剤を溶解し、緩衝剤を利用してpH値を6.9~7.7に調節し、均一に混合し、濾過すると、上記薬物製剤が得られるステップを含む。
【0094】
[凍結乾燥製剤及びその製造方法]
本発明は、凍結乾燥製剤を提供し、それは、本発明の薬物製剤を冷凍乾燥して得られる。
【0095】
本発明は、上記凍結乾燥製剤の製造方法をさらに提供し、該方法は、本発明の薬物製剤を冷凍乾燥すると、上記凍結乾燥製剤が得られるステップを含む。
【0096】
一つの実施態様では、上記製造方法において、前記冷凍乾燥は、-45℃で薬物製剤を冷凍し、-25℃で薬物製剤をアニーリングし、-45℃で薬物製剤を再度冷凍し、-15℃で薬物製剤を一次乾燥し、25℃で薬物製剤を二次乾燥するステップを含む。
【0097】
一つの好ましい実施態様では、上記製造方法において、前記冷凍乾燥は、-45℃で薬物製剤を冷凍し、-25℃で薬物製剤をアニーリングし、-45℃で薬物製剤を再度冷凍し、-15℃で薬物製剤を800~3000min一次乾燥し、25℃で薬物製剤を300~600min二次乾燥するステップを含む。
【0098】
一つのより好ましい実施態様では、上記製造方法において、前記冷凍乾燥は、以下のステップを含み、冷凍:処方溶液を凍結乾燥機筐体に放置し、大気圧下で、-45℃まで降温し、120min保持し、アニーリング:大気圧下で、-25℃まで昇温し、180min保持し、冷凍:大気圧下で、-45℃まで降温し、120min保持し、予備真空排気:筐体の大気圧を0.2mbarに変更し、一次乾燥:0.13mbarで、-15℃まで昇温し、800~3000min保持し、二次乾燥:0.13mbarで、25℃まで昇温し、300~600min保持する。
【0099】
一つのより好ましい実施態様では、上記製造方法において、前記冷凍乾燥は、以下のステップを含み、冷凍:処方溶液を凍結乾燥機筐体に放置し、大気圧下で、-45℃まで降温し、120min保持し、アニーリング:大気圧下で、-25℃まで昇温し、180min保持し、冷凍:大気圧下で、-45℃まで降温し、120min保持し、予備真空排気:筐体の大気圧を0.2mbarに変更し、一次乾燥:0.13mbarで、-15℃まで昇温し、800min保持し、二次乾燥:0.13mbarで、25℃まで昇温し、600min保持する。
【0100】
[液体製剤及びその製造方法]
本発明は、液体製剤を提供し、それは、本発明の凍結乾燥製剤を水で再構成して得られる。
【0101】
本発明は、上記液体製剤の製造方法をさらに提供し、該方法は、本発明の凍結乾燥製剤と水とを混合すると、得られるステップを含む。
【0102】
一つの実施態様では、上記製造方法において、前記再構成は、蒸留水、純水又は無菌水を採用して完了する。
【0103】
一つの実施態様では、前記凍結乾燥製剤を水で再構成した後のpHは、6.5~8.5である。
【0104】
[装置]
本発明は、薬物含有送達装置を提供し、該装置は、上記薬物製剤、上記凍結乾燥製剤又は上記液体製剤のうちの一つを含む。
【0105】
本発明は、プレフィルドシリンジをさらに提供し、該プレフィルドシリンジは、上記薬物製剤、上記凍結乾燥製剤又は上記液体製剤のうちの一つを含む。
【0106】
[医薬用途]
本発明は、活性薬物を含む上記薬物製剤、上記凍結乾燥製剤又は上記液体製剤の、送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物の製造における用途を提供する。
【0107】
一つの実施態様では、上記用途における送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物は、被験体において免疫エフェクター細胞反応を増強するために用いられる。
【0108】
一つの実施態様では、上記用途における送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物は、被験体における免疫抑制を減少させるために用いられる。
【0109】
一つの実施態様では、上記用途における送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物は、被験体における癌の治療又は予防に用いられる。
【0110】
更に、上記用途における癌は、乳癌、肺癌、前立腺癌、腎臓癌、白血病、卵巣癌、胃癌、子宮癌、子宮内膜癌、肝臓癌、結腸癌、甲状腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、食道癌、皮膚癌、リンパ腫、多発性骨髄腫のうちの一つ又は複数を含む。
【0111】
一つの実施態様では、上記用途における送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物は、被験体における免疫性疾患の治療又は予防に用いられる。
【0112】
更に、上記用途における免疫性疾患は、結合組織病、全身性硬化症、関節リウマチ及び全身性エリテマトーデスのうちの一つ又は複数を含む。
【0113】
一つの実施態様では、上記用途における送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物は、被験体における心血管疾患の治療又は予防に用いられる。
【0114】
更に、上記用途における心血管疾患は、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、心臓発作、高血圧性心疾患、リウマチ性心疾患、心筋症、心臓不整脈及び先天性心疾患のうちの一つ又は複数を含む。
【0115】
一つの実施態様では、上記用途における送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物は、被験体における代謝疾患の治療又は予防に用いられる。
【0116】
更に、上記用途における代謝疾患は、糖尿病、痛風、肥満、低血糖症、高血糖症及び脂質異常のうちの一つ又は複数を含む。
【0117】
一つの実施態様では、上記用途における送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物は、被験体における神経疾患の治療又は予防に用いられる。
【0118】
更に、上記用途における神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、頭部外傷、多発性硬化症、めまい、昏睡及びてんかんのうちの一つ又は複数を含む。
【0119】
特に断りのない限り、本発明で使用される計器機器、試薬、材料などは、いずれも従来の商業的手段により入手することができる。以下は、具体的な実施例を結び付けて本発明の技術案をさらに記述する。
【0120】
実施例1
LDC10Bを含む製剤のpH6.9から8.0における安定性を考察するために、計5つのpH値を設計し、それぞれ6.9、7.2、7.5、7.8及び8.0である。
【0121】
1.1 実験ステップ
LDC10B(5mg/mL)、マンニトール(40mg/mL)、ショ糖(10mg/mL)とトロメタミン(0.765mg/mL)を含有する水溶液を調製し、希塩酸でpHをそれぞれ6.9、7.2、7.5、7.8及び8.0に調節し、濾過してバイヤルに分注し、栓を押し、盖をした。各サンプルを室温条件において安定性考察を12h行った。
【0122】
1.2 実験方案
具体的な方案は、以下の表に示すとおりである。
【0123】
【表1】
【0124】
1.3 実験結果
【表2】
【0125】
pH6.9、7.2、7.5、7.8と8.0で、室温で異なる時間放置した後、HPLCによって各サンプルの関連物質をそれぞれ測定した。そこから分かるように、室温条件において12h考察し、各pH値のサンプルの総不純物は、いずれも上昇し、0hのサンプルにおける関連物質の状況と比べて、pH6.9、7.2、7.5、7.8と8.0のサンプルにおける総不純物は、それぞれ0.17%、0.37%、0.58%、0.68%と1.28%増加した。
【0126】
上記実験結果によると、pH6.9~8.0の間で、総不純物は、いずれも許容範囲内にあった。
【0127】
1.4 サンプルを最終製剤形式(凍結乾燥形式)に製造してpH確認を行う
1.4.1 実験ステップ
LDC10B(5mg/mL)、マンニトール(40mg/mL)、ショ糖(10mg/mL)とトロメタミン(0.765mg/mL)を含有する水溶液を調製し、希塩酸でpHをそれぞれ6.9、7.3、7.7に調節し、濾過してバイヤルに分注し、栓を半押し、凍結乾燥し、盖をした。各サンプルを30℃の条件において安定性考察を1ヶ月行った。
【0128】
1.4.2 実験方案
具体的な方案は、以下の表に示すとおりである。
【0129】
【表3】
【0130】
1.4.3 実験結果
【表4】
【0131】
実験結果は、上記の表に示すとおりであり、データによると、pH6.9~7.7の範囲内で、LDC10Bを含有する凍結乾燥製剤の品質が安定していた。
【0132】
実施例2
トロメタミン緩衝系統、リン酸塩緩衝系統及び酢酸塩緩衝系統が、LDC10Bを含む製剤の安定性に与える影響を研究するために、計4つの処方を設計し、詳細な処方情報は、以下の表に示すとおりである。
【0133】
【表5】
【0134】
2.1 実験ステップ
上記各処方の水溶液を調製し、濾過してバイヤルに分注し、栓を半押し、凍結乾燥し、盖をした。各サンプルを40℃の条件において安定性考察を行った。
【0135】
2.2 実験方案
具体的な方案は、以下の表に示すとおりであり、検出指標は、外観、関連物質である。
【0136】
【表6】
【0137】
2.3 実験結果
【表7】
【0138】
上記実験結果によると、40℃の条件において、各処方の総不純物の変化は、いずれも許容範囲内にあった。
【0139】
実施例3
得られた緩衝系統において、より良い製品の品質を得るために、トロメタミンの使用量(0.615~1.00mg/mL)をスクリーニングして最適化した。
【0140】
【表8】
【0141】
3.1 実験ステップ
上記各処方の水溶液を調製し、濾過してバイヤルに分注し、栓を半押し、凍結乾燥し、盖をした。各サンプルを2~8℃の条件において安定性考察を行った。
【0142】
3.2 実験結果
【表9】
【0143】
結果によると、トロメタミンの使用量が0.615mg/mL~1.00mg/mLである場合、製品の再溶解時間、性状、水分及び関連物質に有意差がなく、0.615mg/mL~1.00mg/mLは、使用量許容範囲である。
【0144】
実施例4
ポリオールとしてのマンニトール及び糖類としてのショ糖とトレハロースが、LDC10Bを含む製剤に与える影響を研究するために、4つの処方を設計し、詳細な処方情報は、以下の表に示すとおりである。
【0145】
【表10】
【0146】
4.1 実験ステップ
上記各処方の水溶液を調製し、濾過してバイヤルに分注し、栓を半押し、凍結乾燥し、盖をした。凍結乾燥して箱を出た後に、処方9と処方10製品は、萎縮したが、残りの処方は、この現象がなかった。
【0147】
4.2 実験方案
具体的な方案は、以下の表に示すとおりであり、検出指標は、外観、水分、関連物質である。
【0148】
【表11】
【0149】
4.3 実験結果
【表12】
【0150】
上記実験結果によると、ショ糖(処方9)とトレハロース(処方10)を充填剤とする時に製品が萎縮し、マンニトールを加えた後に外観、水分と品質に合格した凍結乾燥製剤が得られるため、マンニトールとショ糖、又はマンニトールとトレハロースを共同で賦形剤として使用するよう選択することができる。
【0151】
実施例5
得られた賦形剤系統において、より良い製品の品質を得るために、マンニトールとショ糖の使用量をスクリーニングして最適化した。
【0152】
【表13】
【0153】
5.1 実験ステップ
上記各処方の水溶液を調製し、濾過してバイヤルに分注し、栓を半押し、凍結乾燥し、盖をした。各サンプルを40℃の条件において安定性考察を行った。
【0154】
5.2 実験結果
【表14】
【0155】
結果によると、マンニトールを単独に使用する時に製品の不純物が顕著に増加し、ショ糖とマンニトールを共同で賦形剤として使用する時に不純物の増加量が明らかに減少したため、本製品の賦形剤の使用量は、ショ糖20mg~33.5mg、マンニトール80mg~93.5mgである。
【0156】
実施例6
6.1 プロセス選択
【表15】
【0157】
6.2 実験結果
【表16】
【0158】
すべてのプロセスは、いずれも外観が良好で、水分に合格し、再溶解時間とpH値が臨床使用を満たす製品を得た。凍結乾燥プロセスの許容冷凍は、-45℃で、-25℃のアニーリングを経たものであり、一次乾燥温度は、-15℃であり、時間は、800min~3000minであり、二次乾燥は、25℃であり、時間は、300min~600minである。
【0159】
実施例7
処方スクリーニング実験の結果を結び付けて処方プロセス確認実験を行い、最終処方の安定性を考察した。
【0160】
処方情報は、以下の表に示すとおりである。
【0161】
【表17】
【0162】
プロセス情報は、以下の表に示すとおりである。
【0163】
【表18】
【0164】
実験方案は、以下の表に示すとおりである。
【0165】
【表19】
【0166】
実験結果は、次のとおりである。
【0167】
【表20】
【0168】
結果によると、決定された処方とプロセスによって製造された製品は、25℃-6ヶ月と高温40℃-1ヶ月で、外観、水分(<5%)、再溶解pH(6.9~7.7)と関連物質(総不純物<5%)の変化は、いずれも許容範囲内にあった。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性薬物及び任意選択的に薬学的に許容可能な賦形剤を含む、薬物製剤であって、
前記活性薬物は、リガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩を含み、
前記薬学的に許容可能な賦形剤は、凍結乾燥賦形剤、緩衝剤及び溶媒のうちの一つ又は複数を含むか、
あるいは
前記リガンド-薬物コンジュゲートは、二重リガンド-薬物コンジュゲートであり、
好ましくは、前記二重リガンド-薬物コンジュゲートは、葉酸受容体とTRPV6受容体を標的とする薬物コンジュゲートであり、
より好ましくは、前記二重リガンド-薬物コンジュゲートは、以下のような構造
【化1】
を有し、
さらに好ましくは、前記二重リガンド-薬物コンジュゲートは、以下のような構造
【化2】
を有する、ことを特徴とする、薬物製剤
【請求項2】
前記溶媒は、水であり、
好ましくは、前記溶媒は、精製水であり、
より好ましくは、前記精製水は、無菌水、蒸留水又は脱イオン水であり、
より好ましくは、前記無菌水は、無菌注射用水、単蒸留水又は再蒸留水であるか、
あるいは
前記活性薬物の濃度は、4.75mg/mL~6mg/mLであり、
好ましくは、前記活性薬物の濃度は、4.75mg/mL、5mg/mL、5.25mg/mL、5.5mg/mL、5.75mg/mL、6mg/mLである、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項3】
前記薬物製剤のpH値は、6.5~8.5であり、
好ましくは、前記薬物製剤のpH値は、6.9~8.0、例えば6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0であり、
より好ましくは、前記薬物製剤のpH値は、6.9~7.7、例えば6.9、7.0、7.3、7.5、7.7である、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項4】
前記凍結乾燥賦形剤は、ポリオール、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、キシリトールのうちの一つ又は複数を含み、
好ましくは、前記凍結乾燥賦形剤は、マンニトールを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項5】
前記凍結乾燥賦形剤は、糖類、例えば単糖、二糖、多糖のうちの一つ又は複数をさらに含み、
好ましくは、前記糖類と前記ポリオールとの質量比は、1:1~1:5であり、
より好ましくは、前記糖類と前記ポリオールとの質量比は、1:2~1:4であるか、
あるいは
前記単糖は、グルコース及びフルクトースのうちの一つ又は複数を含み、
前記二糖は、ショ糖、トレハロース、マルトース及び乳糖のうちの一つ又は複数を含み、
前記多糖は、シクロデキストリン及びデキストランのうちの一つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の薬物製剤。
【請求項6】
前記凍結乾燥賦形剤は、マンニトールとショ糖とを含み、好ましくは、前記ショ糖とマンニトールとの質量比は、1:2~1:5、例えば1:2、1:2.4、1:2.5、1:4、1:4.5、1:4.7、1:5である、ことを特徴とする請求項4に記載の薬物製剤。
【請求項7】
前記凍結乾燥賦形剤は、マンニトールとトレハロースとを含み、好ましくは、前記トレハロースとマンニトールとの質量比は、1:2~1:4である、ことを特徴とする請求項4に記載の薬物製剤。
【請求項8】
前記緩衝剤は、トロメタミンと酸性物質とを含み、前記トロメタミンと活性薬物との質量比は、1:4~1:10であり、好ましくは、1:5~1:8.5であるか、
あるいは
前記酸性物質は、塩酸、酢酸、リン酸二水素ナトリウム、トロメタミン塩酸塩のうちの一つ又は複数を含むか、
あるいは
前記緩衝剤は、トロメタミンと塩酸とを含み、好ましくは、前記トロメタミンと活性薬物との質量比は、1:5~1:8.5、例えば1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:8、1:8.5である、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項9】
前記薬物製剤は、1mL当たりに4.75~6mgのリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、25~55mgのマンニトール、0~55mgのショ糖、0.5~1.25mgのトロメタミン、塩酸と残部の溶媒を含み、ここで、前記薬物製剤のpHは、6.5~8.5であり、好ましくは、6.9~8.0であり、
例えば、前記薬物製剤は、1mL当たりに5mgのリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、40mgのマンニトール、10mgのショ糖、0.765mgのトロメタミン、塩酸及び残部の水を含み、ここで、前記薬物製剤のpHは、6.5~8.5であり、好ましくは、6.9~8.0である、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の薬物製剤の製造方法であって、
処方量の活性薬物及び任意選択的に薬学的に許容可能な賦形剤を取り、均一に混合すると、薬物製剤が得られるステップを含み、
処方量のリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩、凍結乾燥賦形剤、緩衝剤及び溶媒を取り、溶媒を利用してリガンド-薬物コンジュゲート又はその薬物的に許容可能な塩と凍結乾燥賦形剤を溶解し、緩衝剤を利用してpH値を6.9~7.7に調節し、均一に混合し、濾過すると、薬物製剤が得られるステップを含む、製造方法。
【請求項11】
凍結乾燥製剤であって、請求項1に記載の薬物製剤を凍結乾燥して製造される、ことを特徴とする凍結乾燥製剤。
【請求項12】
請求項11に記載の凍結乾燥製剤の製造方法であって、
-45℃で前記薬物製剤を冷凍するステップ(i)と、
-25℃で前記薬物製剤をアニーリングするステップ(ii)と、
-45℃で前記薬物製剤を再度冷凍するステップ(iii)と、
-15℃で前記薬物製剤を一次乾燥するステップ(iv)と、
25℃で前記薬物製剤を二次乾燥するステップ(v)とを含み、
任意選択的に
前記一次乾燥の時間は、800~3000minであり、前記二次乾燥の時間は、300~600minである、製造方法。
【請求項13】
薬物含有送達装置であって、請求項1から9のいずれか1項に記載の薬物製剤、又は請求項11に記載の凍結乾燥製剤のうちの1つの製剤を含む、薬物含有送達装置。
【請求項14】
プレフィルドシリンジであって、請求項1から9のいずれか1項に記載の薬物製剤、又は請求項11に記載の凍結乾燥製剤のうちの1つの製剤を含み、好ましくは、静脈内注射又は筋内注射に用いられる、プレフィルドシリンジ。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか1項に記載の薬物製剤、又は請求項11に記載の凍結乾燥製剤の、免疫エフェクター細胞反応を増強し及び/又は免疫抑制を減少させるか、又は被験体において癌、免疫性疾患、心血管疾患、代謝疾患及び神経疾患を治療又は予防するための送達装置又はプレフィルドシリンジ又は薬物の製造における用途。
【請求項16】
前記癌は、乳癌、肺癌、前立腺癌、腎臓癌、白血病、卵巣癌、胃癌、子宮癌、子宮内膜癌、肝臓癌、結腸癌、甲状腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、食道癌、皮膚癌、リンパ腫、多発性骨髄腫のうちの一つ又は複数を含み、
前記免疫性疾患は、結合組織病、全身性硬化症、関節リウマチ及び全身性エリテマトーデスのうちの一つ又は複数を含み、
前記心血管疾患は、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、心臓発作、高血圧性心疾患、リウマチ性心疾患、心筋症、心臓不整脈及び先天性心疾患のうちの一つ又は複数を含み、
前記代謝疾患は、糖尿病、痛風、肥満、低血糖症、高血糖症及び脂質異常のうちの一つ又は複数を含み、
前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、頭部外傷、多発性硬化症、めまい、昏睡及びてんかんのうちの一つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項15に記載の用途。
【国際調査報告】