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特表2024-533400腫瘍の非毒性コロニー形成のために操作されたサルモネラ菌
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  • 特表-腫瘍の非毒性コロニー形成のために操作されたサルモネラ菌 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】腫瘍の非毒性コロニー形成のために操作されたサルモネラ菌
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20240905BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20240905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/09 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C12N1/21
C12N1/20 E
C12N15/31
A61K35/74
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K31/05
A61K45/00
A61K31/09
A61P31/04
A61K31/661
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515462
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 US2022043112
(87)【国際公開番号】W WO2023039194
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/242,975
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513112245
【氏名又は名称】リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミネソタ
【氏名又は名称原語表記】REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MINNESOTA
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】サルツマン、ダニエル アラン
(72)【発明者】
【氏名】ショッテル、ジャネット ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】オーガスティン、ランス ビショフ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B065AA46X
4B065AA46Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC15
4B065BA02
4B065BD50
4B065CA44
4C084AA19
4C084NA07
4C084NA13
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA34
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA07
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC35
4C087NA07
4C087NA13
4C087ZB26
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA06
4C206NA13
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
本明細書では、敗血症性副作用を伴わない細菌の静脈内送達する能力、および全身毒性のある免疫調節タンパク質を、いかなる全身毒性も伴わずに腫瘍微小環境に直接送達する能力が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱毒化サルモネラ菌細胞であって、
a)IL-6分泌を誘導する細胞表面タンパク質をコードする1以上のサルモネラ菌遺伝子における変異または欠失であって、前記1以上の細胞表面タンパク質の発現が減少するかまたは全く発現しなくなる、変異または欠失と、任意選択で、
b)対照細胞と比較して、補体活性化を阻害する1以上の外膜プロテアーゼの発現の増加、および/または細胞表面リポ多糖タンパク質(LPS)の発現の減少と、
を含む、細胞。
【請求項2】
前記細胞がS.Typhimurium細胞である、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記1以上のサルモネラ菌遺伝子が、フラジェリン、フィンブリア、O抗原、および/またはリポ多糖タンパク質(LPS)をコードする、請求項1に記載の細胞。
【請求項4】
前記1以上のサルモネラ菌遺伝子が、fliC、fljB、fimH、および/またはrfaLである、請求項1に記載の細胞。
【請求項5】
前記1以上の外膜プロテアーゼがPgtEである、請求項1に記載の細胞。
【請求項6】
腸内細菌共通抗原遺伝子座(eca)の欠失を更に含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項7】
rpoS遺伝子の欠失、glmSの欠失、および/またはviaB遺伝子座の付加を更に含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項8】
fljA、rflP、flgKL、および/またはmotAB遺伝子の1つ以上の欠失を更に含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項9】
flhDPプロモーターが腫瘍特異的発現プロモーターで置き換えられている、請求項1に記載の細胞。
【請求項10】
前記腫瘍特異的発現プロモーターが、FF+20プロモーターである、請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
前記細胞は、外因性免疫調節因子タンパク質を発現する1以上の外因性免疫調節因子遺伝子を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項12】
前記免疫調節因子遺伝子が、IL-12、IL-18、IL-15、CXCL9-10、αCTLA-4単鎖可変フラグメント(scFv)、αPD-L1 scFv、αCTLA-4単一ドメイン抗体(sdAb)、αPD-L1 sdAbおよび/またはαCD47 sdAbを発現する、請求項11に記載の細胞。
【請求項13】
前記免疫調節因子タンパク質が前記細胞から分泌されている、請求項11に記載の細胞。
【請求項14】
前記1以上の外因性免疫調節因子遺伝子が、腫瘍特異的発現プロモーターの制御下にある、請求項11に記載の細胞。
【請求項15】
前記腫瘍特異的発現プロモーターが、FF+20である、請求項14に記載の細胞。
【請求項16】
請求項1に記載の細胞集団またはその組み合わせと、薬学的に許容される担体と、を含む組成物。
【請求項17】
がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項1に記載の細胞集団を、前記がんを処置するように投与することを含む、方法。
【請求項18】
腫瘍成長/増殖を阻害するか、または腫瘍の体積/サイズを減少させる方法であって、それを必要とする対象に、腫瘍成長を抑制するか、または前記腫瘍の体積を減少させるように、有効量の請求項1に記載の細胞集団を投与することを含む、方法。
【請求項19】
転移を処置する、転移の形成/数を減少させる、または転移の広がりを阻害する方法であって、それを必要とする対象に、転移を処置する、転移の形成/数を減少させる、または転移の広がりを阻害するように、有効量の請求項1に記載の細胞集団を投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記腫瘍、がん、または転移が、肺、肝臓、腎臓、乳房、前立腺、膵臓、結腸、頭頸部、卵巣、および/もしくは消化器系腫瘍、腫瘍関連細胞、がん、または転移である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞または組成物が、全身投与、例えば静脈内投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞が2回以上投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
血管破壊剤(VDA)および/またはカンナビジオール(CBD)を投与することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記VDAおよび/またはCBDが、処置前および/または処置中に(前記細胞の少なくとも1回の投与後に)投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項25】
前記VDAおよび/またはCBDが2回以上投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記VDAが、VDAコンブレタスタチンA4ホスフェートおよび/またはVDA CKD-516である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
抗インターロイキン-6(IL-6)が投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
サルモネラ菌の毒性を低減する方法であって、前記サルモネラ菌が、
a)IL-6分泌を誘導する細胞表面タンパク質をコードする1以上のサルモネラ菌遺伝子の欠失であって、前記1以上の細胞表面タンパク質の発現が減少するかまたは全く発現しなくなる、欠失と、任意選択で、
b)対照細胞と比較して、補体活性化を阻害する1以上の外膜プロテアーゼの発現の増加、および/または細胞表面リポ多糖タンパク質(LPS)の発現の減少と、
を含む、方法。
【請求項29】
前記サルモネラ菌が、S.Typhimurium細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記1以上のサルモネラ菌遺伝子が、フラジェリン、フィンブリア、O抗原、および/またはリポ多糖タンパク質(LPS)をコードする、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記1以上のサルモネラ菌遺伝子が、fliC、fljB、fimH、および/またはrfaLである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記1以上の外膜プロテアーゼがPgtEである、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
腸内細菌共通抗原遺伝子座(eca)の欠失を更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
rpoS遺伝子の欠失および/またはviaB遺伝子座の付加を更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
fljA、rflP、flgKL、および/またはmotAB遺伝子の1つ以上の欠失を更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
flhDPプロモーターが腫瘍特異的発現プロモーターで置き換えられている、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記腫瘍特異的発現プロモーターが、FF+20プロモーターである、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍の非毒性コロニー形成のために操作されたサルモネラ菌に関する。
【背景技術】
【0002】
開発されている細菌抗がん治療の多くは、細菌が腫瘍に特異的に定着(コロニー形成)する能力に依存している。Salmonella enterica Typhimurium(S.Typhimurium)の前臨床結果を臨床環境に応用する初期の試みは、主に腫瘍定着がないことと、全身投与されたグラム陰性菌による有意な毒性とにより失敗した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書において、細菌表面分子と哺乳動物細胞上の受容体との相互作用による毒性の低減が提供される。これは、細菌ゲノムを編集して、哺乳動物細胞上のtoll様受容体に結合するフラジェリン、フィンブリア、O抗原、およびリポ多糖タンパク質を除去することによって達成される。加えて、補体活性化を阻害する外膜プロテアーゼの発現が増加した。更に、免疫調節因子タンパク質の全身投与により、毒性が低減/排除される。これは、腫瘍微小環境にタンパク質を発現および分泌するための遺伝子カセットを有するプラスミドを含有する細菌株によって達成され、全身毒性が低減された抗がん免疫応答をもたらす。したがって、本明細書では、敗血症性副作用を伴わない細菌の静脈内送達能力、および全身毒性のある免疫調節タンパク質を、いかなる全身毒性も伴わずに腫瘍微小環境に直接送達する送達能力が提供される。
【0004】
一態様は、弱毒化サルモネラ菌細胞であって、a)IL-6分泌を誘導する細胞表面タンパク質をコードする1以上のサルモネラ菌遺伝子における変異または欠失であって、該1以上のタンパク質の発現が減少するかまたは全く発現しなくなる、変異または欠失と、任意選択で、b)対照細胞と比較して、補体活性化を阻害する1以上の外膜プロテアーゼの発現の増加、および/または細胞表面リポ多糖タンパク質(LPS)の発現の減少と、を含む、弱毒化サルモネラ菌細胞を提供する。一態様において、細胞はS.Typhimurium細胞である。一態様において、1以上のサルモネラ菌遺伝子は、フラジェリン、フィンブリア、O抗原、および/またはリポ多糖タンパク質(LPS)をコードする。別の態様において、1以上のサルモネラ菌遺伝子は、fliC、fljB、fimH、および/またはrfaLである。一態様において、1以上の外膜プロテアーゼはPgtEである。
【0005】
一態様は、腸内細菌共通抗原遺伝子座(eca)の欠失を更に含む。別の態様は、rpoS遺伝子の欠失および/またはviaB遺伝子座の付加を更に含む。別の態様は、fljA、rflP、flgKL、および/またはmotAB遺伝子の1つ以上の欠失を更に含む。いくつかの態様において、サルモネラ菌の内因性flhDPプロモーターは、腫瘍特異的発現プロモーターで置き換えられている。一実施形態において、腫瘍特異的発現プロモーターは、FF+20プロモーターである。
【0006】
一態様において、細胞は、外因性免疫調節因子タンパク質を発現する1以上の外因性免疫調節因子遺伝子を含む。いくつかの態様において、免疫調節因子遺伝子は、IL-12、IL-18、IL-15、CXCL9-10、αCTLA-4単鎖可変フラグメント(scFv)、αPD-L1 scFv、αCTLA-4単一ドメイン抗体(sdAb)、αPD-L1 sdAbおよび/またはαCD47 sdAbタンパク質をコードする/発現する。一態様において、免疫調節因子タンパク質は細胞から分泌されている。いくつかの態様において、1以上の外因性免疫調節因子遺伝子は、腫瘍特異的発現プロモーターの制御下にある。一態様において、腫瘍特異的発現プロモーターは、FF+20である。
【0007】
一態様は、本明細書に記載される細胞集団またはその組み合わせと、薬学的に許容される担体と、を含む組成物を提供する。
一態様は、がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書に記載される細胞集団、その組み合わせ、または本明細書に記載される組成物を、がんを処置するように投与することを含む、方法を提供する。
【0008】
一態様は、腫瘍成長/増殖を阻害するか、または腫瘍の体積/サイズを減少させる方法であって、それを必要とする対象に、腫瘍成長を抑制するか、または腫瘍の体積を減少させるように、有効量の本明細書に記載される細胞集団、その組み合わせ、または本明細書に記載される組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0009】
別の態様は、転移を処置する、転移の形成/数を減少させる、または転移の広がりを阻害する方法であって、それを必要とする対象に、転移を処置する、転移の形成/数を減少させる、または転移の広がりを阻害するように、有効量の本明細書に記載される細胞集団、その組み合わせ、または本明細書に記載される組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0010】
一態様において、腫瘍、がん、または転移は、肺、肝臓、腎臓、乳房、前立腺、膵臓、結腸、頭頸部、卵巣、および/もしくは消化器系腫瘍、がん、または転移である。
別の態様において、細胞または組成物は、全身投与される。一態様において、細胞は2回以上投与される。別の態様は、血管破壊剤(VDA)および/またはカンナビジオール(CBD)を投与することを更に含む。一態様において、VDAおよび/またはCBDは、処置前および/または処置中に(細胞の少なくとも1回の投与後に)投与される。ある態様において、VDAおよび/またはCBDは2回以上投与される。一態様において、VDAは、VDAコンブレタスタチンA4ホスフェートおよび/またはVDA CKD-516である。一態様において、抗インターロイキン-6(IL-6)が投与される。
【0011】
一態様は、サルモネラ菌の毒性を低減する方法であって、該サルモネラ菌が、a)IL-6分泌を誘導する細胞表面タンパク質をコードする1以上のサルモネラ菌遺伝子の欠失であって、該1以上のタンパク質の発現が減少するかまたは全く発現しなくなる、欠失と、任意選択で、b)対照細胞と比較して、補体活性化を阻害する1以上の外膜プロテアーゼの発現の増加、および/または細胞表面リポ多糖タンパク質(LPS)の発現の減少と、を含む、方法である。一実施形態において、サルモネラ菌はS.Typhimurium細胞である。一態様において、1以上のサルモネラ菌遺伝子は、フラジェリン、フィンブリア(fimbriae)、O抗原、および/またはリポ多糖タンパク質(LPS)をコードする。別の態様において、1以上のサルモネラ菌遺伝子は、fliC、fljB、fimH、および/またはrfaLである。一態様において、1以上の外膜プロテアーゼはPgtEである。一態様は、腸内細菌共通抗原遺伝子座(eca)の欠失を更に含む。別の態様は、rpoS遺伝子の欠失および/またはviaB遺伝子座の付加を更に含む。更なる態様は、fljA、rflP、flgKL、および/またはmotAB遺伝子の1つ以上の欠失を含む。一態様において、flhDPプロモーターは、腫瘍特異的発現プロモーターで置き換えられている。別の態様において、腫瘍特異的発現プロモーターは、FF+20プロモーターである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】抗IL-6抗体は、全身性S.Typhimurium+VDAの毒性を低減する。400mmの腫瘍を有するBALB-neuT雌マウスを、5×10または1×10cfuのBCT1株(pNG)のいずれかで静脈内処置した。細菌cfu数は0日目に送達された総cfuを示しており、細菌の50%が3時間間隔で2回の注射で投与された。全てのマウスにCA4P VDAを、1回の注射につき0.4mg、3時間間隔で2回の静脈内注射を行い、これは-2日目と-1日目とに投与された。示されている場合、1mgの抗IL-6 mAbを、最初のS.Typhimurium注射の直後に腹腔内投与した。マウスを、7日間の処置後の体重減少および生存についてモニターした。各群において処置された生存マウス/全マウスを、各列の下に分数として表す。y軸値は、各群における生存マウスの平均体重減少率(%)を表す。エラーバーは、平均からの標準偏差を示す。
図2】BCT2株の構築。S.Typhimurium BCT2株は、ΔfliC、ΔfljB、ΔfimH、pgtEp(NC_016863.1:g.2506794G>A)、およびΔrfaL変異を、χ11091株(リピドA変異(23)を含有する)に導入し、CRSの全身誘導を回避するように表面分子を改変することによって構築された。遺伝子は最後の列に列挙され、それらがコードする分子は中央の列に、対応する免疫応答は最初の列に列挙される。
図3】S.Typhimurium BCT2毒性。1×10cfu(黒記号)または1×10cfu(白記号)の株VNP20009またはBCT2(pPflEPLux)を非腫瘍負荷BALB/cマウスに細菌投与した後の体重変化を、細菌注射後7日間追跡した。エラーバー(明確にするために単一方向で示される)は、4匹のマウスからの測定値の標準偏差を表す。
図4】S.Typhimurium BCT2毒性および腫瘍定着(colonization)。株BCT2(pFF+20Lux)およびVDAで処置した腫瘍負荷BALB-neuTマウスにおいて、体重変化を追跡した。CKD-516 VDAを、-4、-3、-2および-1日目に0.1mgの腹腔内注射を1回実施した後、0日目に3時間間隔で2回の1.5×10cfuのBCT2(pFF+20Lux)用量を静脈内投与し、1時間後にCKD-516の0.05mgの腹腔内注射を実施した。エラーバーは、3匹のマウスからの測定値の標準偏差を表す。挿入図:BCT2(pFF+20Lux)およびVDAで処置した3匹のBALB-neuTマウスにおける腫瘍からの生物発光である。各マウスの4つの図が示されている。
図5A】Balb-neuT腫瘍負荷マウスにおける操作された細菌株の有効性。このデータは、BCT2、BCT5およびBCT14株の抗がん治療有用性を実証する。全てのマウスに、100マイクロリットルの示された株を注射した。処置(A)~(D)は以前に記載されたものである(11)。全ての処置マウスに、-2日目に4mg/kgのVDA(血管破壊剤)+50mg/kgのCBD IP(カンナビジオール)を投与した。処置(E)では、0日目に、マウスに2×10cfuのBCT2(pFF+20-Quad)-2時間-2×10cfuのBCT2(pFF+20-Quad)を、続いて14日目に、5×10cfuのBCT5(pFF+20-Quad)-2時間-5×10cfuのBCT5(pFF+20-Quad)を静脈内注射した。処置(F)では、マウスに、0日目に2.5×10cfuのBCT14-PL-Lux(pfliC-P)-2時間-2.5×10cfuのBCT14-PL-Lux(pfliC-P)を投与した。コホート(E)および(F)のマウスには、0日目の細菌の2回目の静脈内注射の2時間後に、2mg/kgのVDA+50mg/kgのCBD IPを投与した。腫瘍体積差(パネルA)および平均生存時間差(パネルB)についての統計は、p値<0.05を有する比較についてのみ提供される。
図5B】Balb-neuT腫瘍負荷マウスにおける操作された細菌株の有効性。このデータは、BCT2、BCT5およびBCT14株の抗がん治療有用性を実証する。全てのマウスに、100マイクロリットルの示された株を注射した。処置(A)~(D)は以前に記載されたものである(11)。全ての処置マウスに、-2日目に4mg/kgのVDA(血管破壊剤)+50mg/kgのCBD IP(カンナビジオール)を投与した。処置(E)では、0日目に、マウスに2×10cfuのBCT2(pFF+20-Quad)-2時間-2×10cfuのBCT2(pFF+20-Quad)を、続いて14日目に、5×10cfuのBCT5(pFF+20-Quad)-2時間-5×10cfuのBCT5(pFF+20-Quad)を静脈内注射した。処置(F)では、マウスに、0日目に2.5×10cfuのBCT14-PL-Lux(pfliC-P)-2時間-2.5×10cfuのBCT14-PL-Lux(pfliC-P)を投与した。コホート(E)および(F)のマウスには、0日目の細菌の2回目の静脈内注射の2時間後に、2mg/kgのVDA+50mg/kgのCBD IPを投与した。腫瘍体積差(パネルA)および平均生存時間差(パネルB)についての統計は、p値<0.05を有する比較についてのみ提供される。
図6A】免疫調節因子タンパク質を発現および分泌するプラスミド。pFF+20IL15Hlyプラスミド(A)およびpFF+20αCTLA4Hlyで表されるscFv分泌プラスミド(B)の両方が、E.coli rrnB遺伝子座転写ターミネーター配列、p15A複製起点、およびS.Typhimuriumアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするcDNAを含むプラスミドpYA292由来の配列を含む。それらはまた、C末端60アミノ酸の溶血素分泌シグナル配列(HlyA)に融合された免疫調節因子タンパク質cDNAと、E.coli(HlyB)および(HlyD)溶血素輸送タンパク質をコードするcDNAからなるFF+20促進型オペロンを含有する。IL15免疫調節因子cDNAは、マウスIL-15受容体アルファサブユニットのスシドメインをコードする配列(IL15Ra)、続いてgly/serフレキシブルリンカー(L1)、続いてマウスIL-15をコードする配列(IL15)、続いて第2のgly/serフレキシブルリンカーをコードする配列(L2)からなる。scFv免疫調節因子cDNAは、フレキシブルgly/serリンカー(L)によって分離された可変軽鎖(Vl)および可変重鎖(Vh)抗体配列をコードする配列、続いて6×ヒスチジンおよびヘマグルチニンタグ(T)からなる。pFF+20αPDL1(図示せず)を構築するための戦略は、pFF+20αCTLA4と同一であった。
図6B】免疫調節因子タンパク質を発現および分泌するプラスミド。pFF+20IL15Hlyプラスミド(A)およびpFF+20αCTLA4Hlyで表されるscFv分泌プラスミド(B)の両方が、E.coli rrnB遺伝子座転写ターミネーター配列、p15A複製起点、およびS.Typhimuriumアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするcDNAを含むプラスミドpYA292由来の配列を含む。それらはまた、C末端60アミノ酸の溶血素分泌シグナル配列(HlyA)に融合された免疫調節因子タンパク質cDNAと、E.coli(HlyB)および(HlyD)溶血素輸送タンパク質をコードするcDNAからなるFF+20促進型オペロンを含有する。IL15免疫調節因子cDNAは、マウスIL-15受容体アルファサブユニットのスシドメインをコードする配列(IL15Ra)、続いてgly/serフレキシブルリンカー(L1)、続いてマウスIL-15をコードする配列(IL15)、続いて第2のgly/serフレキシブルリンカーをコードする配列(L2)からなる。scFv免疫調節因子cDNAは、フレキシブルgly/serリンカー(L)によって分離された可変軽鎖(Vl)および可変重鎖(Vh)抗体配列をコードする配列、続いて6×ヒスチジンおよびヘマグルチニンタグ(T)からなる。pFF+20αPDL1(図示せず)を構築するための戦略は、pFF+20αCTLA4と同一であった。
図7A】免疫調節因子タンパク質分泌のウェスタン分析。培地(M)から採取した可溶性タンパク質および免疫調節因子分泌プラスミドを有するχ4550株の培養物由来の超音波処理した細菌(B)をゲル電気泳動に供し、PVDF膜に転写した。3つ全ての膜を、非分泌タンパク質の対照として抗DnaK抗体でプローブした。パネルAでは、赤色蛍光色素に融合した二次抗体を用いてDnaKが同定されたが、パネルBおよびCでは、DnaKは緑色蛍光バンドとして検出された。パネルAではゲルからのタンパク質を抗マウスIL-15抗体でプローブし、パネルBおよびCではゲルからのタンパク質を抗体でプローブして、抗CTLA-4または抗PD-L1 scFvのC末端に位置する6つの連続したヒスチジン残基を同定した。パネルAのゲルに含まれるタンパク質ラダー(ladder)(Li-Cor cat.928-40000)の分子量(レーンM.W.)が示される。
図7B】免疫調節因子タンパク質分泌のウェスタン分析。培地(M)から採取した可溶性タンパク質および免疫調節因子分泌プラスミドを有するχ4550株の培養物由来の超音波処理した細菌(B)をゲル電気泳動に供し、PVDF膜に転写した。3つ全ての膜を、非分泌タンパク質の対照として抗DnaK抗体でプローブした。パネルAでは、赤色蛍光色素に融合した二次抗体を用いてDnaKが同定されたが、パネルBおよびCでは、DnaKは緑色蛍光バンドとして検出された。パネルAではゲルからのタンパク質を抗マウスIL-15抗体でプローブし、パネルBおよびCではゲルからのタンパク質を抗体でプローブして、抗CTLA-4または抗PD-L1 scFvのC末端に位置する6つの連続したヒスチジン残基を同定した。パネルAのゲルに含まれるタンパク質ラダー(Li-Cor cat.928-40000)の分子量(レーンM.W.)が示される。
図7C】免疫調節因子タンパク質分泌のウェスタン分析。培地(M)から採取した可溶性タンパク質および免疫調節因子分泌プラスミドを有するχ4550株の培養物由来の超音波処理した細菌(B)をゲル電気泳動に供し、PVDF膜に転写した。3つ全ての膜を、非分泌タンパク質の対照として抗DnaK抗体でプローブした。パネルAでは、赤色蛍光色素に融合した二次抗体を用いてDnaKが同定されたが、パネルBおよびCでは、DnaKは緑色蛍光バンドとして検出された。パネルAではゲルからのタンパク質を抗マウスIL-15抗体でプローブし、パネルBおよびCではゲルからのタンパク質を抗体でプローブして、抗CTLA-4または抗PD-L1 scFvのC末端に位置する6つの連続したヒスチジン残基を同定した。パネルAのゲルに含まれるタンパク質ラダー(Li-Cor cat.928-40000)の分子量(レーンM.W.)が示される。
図8】処置の有効性。50mm未満と測定される最大腫瘍を有するBALB-neuT雌マウスを、処置しないか、または材料および方法に記載されるようにVDA、CBDおよび細菌を投与した。実験中、経時的に各マウスの腫瘍サイズを測定し、総腫瘍質量を実験開始時の腫瘍質量と比較して、倍率変化を算出した。明確にするために、1標準偏差を表す正のエラーバーのみを示す。2標本両側不等分散スチューデントt検定を使用した28日目の平均腫瘍量の比較では、示されたP値が得られた。A対BおよびB対Cは、それらのP値が0.05より大きかったため、有意差ありとはみなされなかった(nd)。
図9】カプラン・マイヤー生存分析。図8に記載した有効性実験からのマウスの生存を、処置後9週間追跡した。腫瘍の1つが2cmを超えたときに、マウスを安楽死させた。平均生存時間の差は、SAS JMP(登録商標)ソフトウェアバージョン15.1.0を用いて計算したログランクP値と共に報告される。A対BおよびA対Cは、それらのP値が0.05より大きかったため、有意差ありとはみなされなかった(nd)。
図10】処置毒性。0日目からのマウスの体重変化をプロットして、処置の結果としてマウスが被った体重あたりの毒性量を示す。最大耐容量ドキソルビシンデータ(MTDドキソルビシン)は、腫瘍負荷BALB-neuTマウスにおいて以前に公開された研究からインポートした[27]。これらのマウスには、体表面積換算でヒトでの最大耐容量に匹敵する5mg/kgのドキソルビシンを注射した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
サルモネラ菌は、固形腫瘍に定着する固有の性向を有する。有意な量のサルモネラ菌を静脈内送達すると腫瘍定着率は有意に高くなるが、グラム陰性菌の毒性により多数の細菌を注射することはできない。本明細書では、毒性副作用を低下させるために更に弱毒化されているが、腫瘍に定着する有効性を維持するように遺伝子改変された、弱毒化サルモネラ菌が提供される。加えて、本明細書では、有意な抗腫瘍効果を有する様々な免疫調節因子タンパク質を発現および分泌する複数の遺伝子操作されたサルモネラ構築物が提供される。治療用量で投与される場合、これらの免疫調節因子タンパク質は毒性であり得、本送達方法は、このような毒性を低減し、更には排除する。
【0014】
自然発症腫瘍の強固な治療的定着に必要な細菌数の投与を可能にするレベルまでの毒性の低下は報告されていない。細菌株に導入されたフラジェリン、フィンブリア、O抗原、LPSおよび外膜プロテアーゼ変異の組み合わせは、自然発症腫瘍の広範囲にわたる強固な定着を達成するのに十分な数の細菌の非毒性投与を可能にする。更に、投与された免疫調節因子タンパク質の抗がん有効性を制限する全身毒性は、複数の免疫調節因子タンパク質を直接腫瘍微小環境に同時に連続的に分泌させることによって、現在のがん免疫療法の有効性を制限する全身毒性を伴わずに対処される。
【0015】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似のまたは等価ないかなる方法および材料も、本発明の実施または試験において使用することができるが、方法および材料に関するいくつかの実施形態が本明細書に記載されている。本明細書で使用される場合、以下の用語の各々は、この節においてそれに関連する意味を有する。
【0016】
明確さおよび簡潔な説明のために、特徴は、同じまたは別個の実施形態の一部として本明細書に記載され得る。しかしながら、本発明の範囲は、記載された特徴の全てまたは一部の組み合わせを有する実施形態を含み得ることが理解されるであろう。
【0017】
本明細書における「1つの実施形態」、「一実施形態」などへの言及は、記載の実施形態が特定の態様、特徴、構造、部分、または特性を含み得るが、全ての実施形態が必ずしもその態様、特徴、構造、部分、または特性を含むわけではないことを示す。更に、このような語句は、本明細書の他の部分で言及されているのと同じ実施形態を指す場合があるが、必ずしもそうである必要はない。更に、特定の態様、特徴、構造、部分、または特性が実施形態に関連して説明されている場合、明示的に説明されているか否かにかかわらず、このような態様、特徴、構造、部分、または特性を他の実施形態に用いるかもしくは結び付けることは、当業者の知識の範囲内である。
【0018】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」、「an」および「the」は、文脈で別段明確に示されない限り、複数形の指示対象を含むことを理解されたい。
本明細書で使用される「および/または」という語句は、そのように接続された要素の「いずれかまたは両方」、例えば、いくつかの場合では共同して存在し、他の場合では選言的に存在する要素を意味すると理解されたい。
【0019】
本明細書で使用される場合、「または」は、上で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されたい。例えば、項目のリストを分離するとき、「および/または」または「または」は、包括的である、例えば、多数の項目のうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、任意選択で、追加の列挙されていない項目を含むものとして解釈するものとする。「のうちの1つのみ(only one of)」もしくは「のうちのちょうど1つ(exactly one of)」、または特許請求の範囲において使用される場合、「からなる(consisting of)」などの明確に反対に示される用語のみが、多数の要素もしくは要素のリストのうちのちょうど1つの要素の包含を指す。概して、本明細書で使用される場合、「または」という用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちのちょうど1つ」などの排他性の用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈するものとする。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、またはそれらの変形は、用語「含む(comprising)」と同様に包括的であることが意図される。
【0021】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、示された値のプラスまたはマイナス10%を意味する。例えば、約100は、90~110を意味する。端点によって本明細書に記載される数値範囲は、その範囲内の全ての数値および分数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5を含む)。また、全ての数およびその分数は、用語「約」によって修飾されると推定されることも理解されたい。
【0022】
用語「個体」、「対象」、および「患者」は、本明細書において互換的に使用され、診断、処置、または治療が望まれる任意の対象、例えば哺乳動物を指す。哺乳動物としては、ヒト、家畜、競技用動物およびペットが挙げられるが、これらに限定されない。「対象」は、哺乳動物などの脊椎動物、例えばヒトである。哺乳動物としては、ヒト、家畜、競技用動物および伴侶動物が挙げられるが、これらに限定されない。用語「動物」に含まれるのは、イヌ、ネコ、魚、アレチネズミ、モルモット、ハムスター、ウマ、ウサギ、ブタ、マウス、サル(例えば、類人猿、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン)、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウシおよびトリである。
【0023】
「処置(treatment)」、「処置する(treat)」などの用語は、本明細書において、全般的に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ること、例えば、障害の発症もしくは進行を停止もしくは阻害すること、または停止もしくは阻害を試みること、ならびに/または障害および/もしくはその症状の低減、抑制、退行、もしくは寛解を引き起こすこと、もしくは引き起こすことを試みることを意味するために使用される。効果は、疾患もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防するという点で予防的であってもよく、ならびに/または疾患および/もしくは疾患に起因する有害作用の部分的もしくは完全な治癒という点で治療的であってもよい。当業者によって理解されるように、種々の臨床的および科学的な方法論およびアッセイが、障害の発症または進行を評価するために使用され得、同様に、種々の臨床的および科学的な方法論およびアッセイが、障害またはその症状の低減、退行、または寛解を評価するために使用され得る。加えて、処置は、対象または細胞培養物に(in vivoまたはin vitroで)適用され得る。
【0024】
用語「阻害する」、「阻害すること」、および「阻害」は、疾患、感染、状態、細胞群、タンパク質またはその発現の成長または進行を遅延、停止、または逆転させることを指す。阻害は、例えば、処置または接触の非存在下で生じる成長または進行と比較して、約20%、40%、60%、80%、90%、95%または99%超であり得る。
【0025】
「発現」は、DNAからのRNAの産生および/または遺伝物質(例えば、RNA(mRNA))によって指示されるタンパク質の産生を指す。誘導性発現は、構成的発現(常に発現される)とは対照的に、特定の条件下、例えば、特定の分子(例えば、アラビノース)または環境条件の存在下でのみ生じる発現である。
【0026】
核酸(またはタンパク質)および宿主に関して本明細書で使用される「外因性」という用語は、天然に見出されたままの特定のタイプの細胞中に発生しない(そしてそこから得ることができない)核酸、またはそのような核酸によってコードされるタンパク質を指す。したがって、天然に存在しない核酸は、宿主内に入ると宿主に対して外因性であるとみなされる。天然に存在しない核酸は、核酸が全体として天然に存在しない場合に天然に見出される核酸配列の核酸部分配列またはフラグメントを含み得ることに留意することが重要である。例えば、発現ベクター内にゲノムDNA配列を含有する核酸分子は天然に存在しない核酸であり、したがって、その核酸分子は全体(ゲノムDNA+ベクターDNA)として天然には存在しないため、宿主に導入されると宿主細胞に対して外因性である。したがって、全体として天然に存在しない任意のベクター、自律複製プラスミド、またはウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)は、天然に存在しない核酸であるとみなされる。PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処置によって産生されたゲノムDNAフラグメントおよびcDNAは、天然に見出されない別個の分子として存在するため、天然に存在しない核酸であるとみなされるということになる。したがって、外因性配列は、宿主のゲノムに組み込まれ得る。天然に見出されない配置でプロモーター配列およびポリペプチドコード配列を含む任意の核酸(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)は、天然に存在しない核酸であるということにもなる。天然に存在する核酸は、特定の宿主微生物に対して外因性であり得る。例えば、酵母xの細胞から単離された染色体全体は、その染色体が酵母yの細胞に導入されると、酵母yの細胞に対して外因性核酸である。
【0027】
対照的に、核酸(例えば、遺伝子)(またはタンパク質)および宿主に関して本明細書で使用される用語「内因性」は、天然に見出されたままの特定の宿主において発生する(そしてそこから得ることができる)核酸(またはタンパク質)を指す。更に、核酸(またはタンパク質)を「内因的に発現する」細胞は、天然に見出されるのと同じ特定の型の宿主が発現するように、その核酸(またはタンパク質)を発現する。更に、核酸、タンパク質または他の化合物を「内因的に産生する(endogenously producing)」または「内因的に産生する(endogenously produces)」宿主は、天然に見出されるのと同じ特定の型の宿主が産生するように、その核酸、タンパク質または化合物を産生する。
【0028】
用語「接触」は、例えば、溶液中、反応混合物中、in vitroまたはin vivoにおいて、例えば、生理学的反応、化学反応、または物理的変化を引き起こすために、細胞レベルまたは分子レベルを含めて、触れる、接触させる、またはすぐ近くもしくは近くに接近させる行為を指す。
【0029】
「有効量」は、前臨床または臨床結果などの有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与することができる。本明細書に記載される化合物、生物製剤、および医薬組成物に適用される「有効量」という用語は、所望の治療結果をもたらすのに必要な量を意味する。例えば、有効量は、治療用化合物、生物製剤または組成物が投与される障害および/または疾患の症状を処置、治癒または緩和するのに有効なレベルである。求められる特定の治療目標に有効な量は、処置される障害ならびにその重症度および/または発生/進行の段階;使用される特定の化合物、生物製剤または医薬組成物の生物学的利用能および活性;投与の経路または方法ならびに対象における導入部位;特定の化合物または生物製剤のクリアランス速度および他の薬物動態学的特性;処置期間;接種レジメン;特定の化合物、生物製剤または組成物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;処置される対象の年齢、体重、性別、食事、生理機能および全体的な健康状態;ならびに関連する科学分野の当業者に周知の同様の因子、を含む様々な因子に応じて異なる。処置される対象の状態に応じて、投薬量のいくらかの変動が生じ得、処置を施す医師または他の個人が、いかなる場合においても、個々の患者に対する適切な用量を決定する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「障害」は、障害、疾患もしくは状態、または健康もしくは正常な生物学的活性からの他の逸脱を指し、これらの用語は互換的に使用することができる。この用語は、正常な機能を損なう任意の状態を指す。この状態は、散発性または遺伝性の遺伝子異常によって引き起こされ得る。この状態はまた、非遺伝子異常によっても引き起こされ得る。この状態はまた、限定されないが、対象の細胞、組織、器官、系などを切断、粉砕、燃焼、穿刺、伸長、剪断、注入、または他の方法で改変するなど、環境因子による対象への傷害によって引き起こされ得る。
【0031】
本明細書で使用される「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養物」という用語は、互換的に使用され得る。これらの用語の全てはまた、それらの子孫も含み、それらは、ありとあらゆる後続の世代である。意図的な変異または偶発的な変異によって、全ての子孫が同一でなくてもよいということが理解される。
【0032】
遺伝子の「コード領域」は、遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基と、遺伝子の転写によって産生されるmRNA分子のコード領域とそれぞれ相同または相補的である遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドとからなる。
【0033】
本明細書で使用される「相補的」は、2つの核酸間、例えば、2つのDNA分子間のサブユニット配列相補性の広い概念を指す。両方の分子におけるヌクレオチド位置が、通常互いに塩基対合することができるヌクレオチドによって占められている場合、核酸は、この位置で互いに相補的であるとみなされる。したがって、2つの核酸は、分子の各々における相当な数(少なくとも50%)の対応する位置が、通常互いに塩基対合するヌクレオチドによって占められている場合、互いに相補的である(例えば、A:TおよびG:Cヌクレオチド対)。したがって、第1の核酸領域のアデニン残基は、残基がチミンまたはウラシルである場合、第1の領域に対して逆平行である第2の核酸領域の該残基と、特異的水素結合を形成(「塩基対合」)し得ることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基は、残基がグアニンである場合、第1の鎖に対して逆平行である第2の核酸鎖の該残基と、塩基対合し得ることが知られている。核酸の第1の領域が、同じまたは異なる核酸の第2の領域に相補的であるのは、その2つの領域が逆平行様式で配置される場合に、第1の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が第2の領域の残基と塩基対合することができる場合である。好ましくは、第1の領域は第1の部分を含み、第2の領域は第2の部分を含み、該第1の部分および第2の部分が逆平行様式で配置される場合、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が、第2の部分中のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。より好ましくは、第1の部分の全てのヌクレオチド残基が、第2の部分中のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。
【0034】
「コードする」は、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチドにおける特定のヌクレオチド配列が、規定されたヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、およびmRNA)または規定されたアミノ酸配列のいずれかによる生物学的プロセスにおいて、他のポリマーおよび巨大分子を合成するための鋳型として機能する固有の特性、ならびにそこから生じる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子がタンパク質をコードするのは、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的系においてタンパク質を産生する場合である。コード鎖(そのヌクレオチド配列は、mRNA配列と同一であり、通常、配列表に提供される)および非コード鎖(遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される)の両方が、タンパク質またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードすると言われ得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、特定のタンパク質またはペプチドの「本質的に純粋な」調製物は、調製物中のタンパク質またはペプチドの少なくとも約95重量%、好ましくは少なくとも約99重量%が特定のタンパク質またはペプチドである、調製物である。
【0036】
「フラグメント」または「セグメント」は、少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列の一部分、または少なくとも1つのヌクレオチドを含む核酸配列の一部分である。「フラグメント」および「セグメント」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「機能的」生物学的分子は、それが特徴付けられる特性を示す形態の生物学的分子である。機能的酵素は、例えば、酵素が特徴付けられる特徴的な触媒活性を示す、酵素である。
【0038】
本明細書で使用される「相同」は、2つのポリマー分子間、例えば、2つの核酸分子間、例えば、2つのDNA分子もしくは2つのRNA分子間、または2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の類似性を指す。2つの分子の両方におけるサブユニット位置が同じ単量体サブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子の各々における位置がアデニンによって占められている場合、それらはその位置で相同である。2つの配列間の相同性は、一致するまたは相同である位置の数の直接関数であり、例えば、2つの化合物配列における位置の半分(例えば、10サブユニット長のポリマー中の5つの位置)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり、位置の90%、例えば、10のうちの9が一致するまたは相同である場合、2つの配列は90%の相同性を共有する。例として、DNA配列3’ATTGCC5’および3’TATGGC5’は、50%の相同性を共有する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「相同性(homology)」は、「同一性(identity)」と同義で使用される。
2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。例えば、2つの配列を比較するのに有用な数学的アルゴリズムは、KarlinおよびAltschul(1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268)のアルゴリズムであり、これはKarlin およびAltschul(1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877)において改変されている。このアルゴリズムは、Altschulら(1990,J.Mol.Biol.215:403-410)のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれており、例えば、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイトでBLASTツールを使用してユニバーサルリソースロケータを有するNCBIのワールドワイドウェブサイトでアクセスすることができる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム(NCBIウェブサイトで「blastn」と命名されている)で、以下のパラメータ:ギャップペナルティ=5;ギャップ伸長ペナルティ=2;ミスマッチペナルティ=3;マッチリワード=1;期待値10.0;およびワードサイズ=11を使用して行い、本明細書に記載される核酸に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム(NCBIウェブサイトで「blastn」と命名されている)またはNCBI「blastp」プログラムで、以下のパラメータ:期待値10.0、BLOSUM62スコアリングマトリックスを使用して行い、本明細書に記載されるタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較のためギャップ付きアラインメントを得るには、Altschulら(1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402)に記載されているGapped BLASTを利用することができる。あるいは、PSI-BlastまたはPHI-Blastを用いて、繰り返し検索を行い、分子間の遠縁関係(同上)および共通パターンを共有する分子間の関係を検出することができる。BLAST、Gapped BLAST、PSI-Blast、およびPHI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。
【0040】
2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップを許容してまたは許容せずに、上記のものと同様の技術を使用して決定することができる。同一性パーセントを計算する際に、典型的には、正確な一致がカウントされる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的核酸の対合に関して使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸間の会合の強度)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、形成されたハイブリッドの長さ、および核酸内のG:C比などの因子によって影響を受ける。
【0042】
本明細書で使用される場合、「説明資料(instructional material)」は、本明細書に列挙される種々の疾患または障害の緩和をもたらすためのキットにおける本発明のペプチドの有用性を伝達するために使用され得る、刊行物、記録、図表、または任意の他の表現媒体を含む。任意選択で、または代替的に、説明資料は、哺乳動物の細胞または組織における疾患または障害を緩和する1つ以上の方法を記載し得る。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の同定された化合物を収容する容器に添付されてもよく、または同定された化合物を収容する容器と一緒に出荷されてもよい。あるいは、説明資料は、説明資料および化合物がレシピエントによって協同的に使用されることを意図して、容器とは別個に出荷され得る。
【0043】
用語「核酸」は、通常、大きなポリヌクレオチドを指す。「核酸」とは、デオキシリボヌクレオシドまたはリボヌクレオシドから構成されるか否かにかかわらず、そしてホスホジエステル結合または修飾結合、例えば、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエーテル、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロアミデート、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオエート、架橋ホスホロチオエートまたはスルホン結合、およびこのような結合の組み合わせから構成されるか否かにかかわらず、任意の核酸を意味する。核酸という用語はまた、5つの生物学的に生じる塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシル)以外の塩基から構成される核酸も具体的に含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「核酸」は、RNAならびに一本鎖および二本鎖のDNAおよびcDNAを包含する。更に、用語「核酸」、「DNA」、「RNA」、および類似の用語はまた、核酸アナログ、すなわち、ホスホジエステル骨格以外を有するアナログを含む。例えば、当該技術分野において知られており、そして骨格においてホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を有する、いわゆる「ペプチド核酸」は、本発明の範囲内であるとみなされる。「核酸」とは、デオキシリボヌクレオシドまたはリボヌクレオシドから構成されるか否かにかかわらず、そしてホスホジエステル結合または修飾結合、例えば、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエーテル、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロアミデート、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオエート、架橋ホスホロチオエートまたはスルホン結合、およびこのような結合の組み合わせから構成されるか否かにかかわらず、任意の核酸を意味する。核酸という用語はまた、5つの生物学的に生じる塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン、およびウラシル)以外の塩基から構成される核酸を具体的に含む。本明細書では、ポリヌクレオチド配列を記載するのに以下の従来の表記法が使用されている:一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は5’末端である;二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は、5’方向と呼ばれる。新生RNA転写産物への5’から3’へのヌクレオチド付加方向は、転写方向と呼ばれる。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は、「コード鎖」と呼ばれる;DNA上の基準点の5’側に位置するDNA鎖上の配列は、「上流配列」と呼ばれる;DNA上の基準点の3’側にあるDNA鎖上の配列は、「下流配列」と呼ばれる。
【0045】
本明細書で使用される用語「核酸構築物」は、ゲノム法によって得られたものであるか合成法によって得られたものであるかにかかわらず、所望の特定の遺伝子または遺伝子フラグメントをコードするDNA配列およびRNA配列を包含する。
【0046】
別段の指定がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする、全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含み得る。
【0047】
用語「オリゴヌクレオチド」は、典型的には、短いポリヌクレオチドを意味し、概ね、約50ヌクレオチド以下である。ヌクレオチド配列が、DNA配列(すなわち、A、T、G、C)で表される場合、これは「U」が「T」を置き換えるRNA配列(すなわち、A、U、G、C)も含むと理解される。
【0048】
「実質的に相同な核酸配列」とは、参照核酸配列に対応する核酸配列であって、該対応する配列が、参照核酸配列によってコードされるペプチドと実質的に同じ構造および機能を有するペプチドをコードする、例えば、ペプチド機能に有意には影響を及ぼさないアミノ酸の変化のみが生じるペプチドをコードする、核酸配列を意味する。好ましくは、実質的に同一の核酸配列は、参照核酸配列によってコードされるペプチドをコードする。実質的に類似の核酸配列と参照核酸配列との間の同一性のパーセンテージは、少なくとも約50%、65%、75%、85%、95%、99%またはそれ以上である。核酸配列の実質的同一性は、例えば、物理的/化学的方法(すなわち、ハイブリダイゼーション)によって、またはコンピュータアルゴリズムを介した配列アラインメントによって、2つの配列の配列同一性を比較することにより決定することができる。ヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列と実質的に類似しているかどうかを判定するための好適な核酸ハイブリダイゼーション条件は、以下の通りである:50℃での7%ドデシル硫酸ナトリウムSDS、0.5M NaPO4、1mM EDTAであり、50℃での2×標準クエン酸生理食塩水(SSC)、0.1%SDS中で洗浄する;好ましくは、50℃での7%(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中であり、50℃での1×SSC、0.1%SDS中で洗浄する;好ましくは、50℃での7%SDS、0.5M NaPO4、1mM EDTAであり、50℃での0.5×SSC、0.1%SDS中で洗浄する;より好ましくは、50℃での7%SDS、0.5M NaPO4、1mM EDTA中であり、65℃での0.1×SSC、0.1%SDS中で洗浄する。2つの核酸配列間の実質的な類似性を決定するための好適なコンピュータアルゴリズムとしては、GCSプログラムパッケージ(Devereuxら,1984 Nucl.Acids Res.12:387)、およびBLASTNまたはFASTAプログラム(Altschulら,1990 Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1990 87:14:5509-13;Altschulら,J.Mol.Biol.1990 215:3:403-10;Altschulら,1997 Nucleic Acids Res.25:3389-3402)が挙げられる。これらのプログラムで提供されるデフォルト設定は、本発明の目的のための核酸配列の実質的な類似性を決定するのに好適である。
【0049】
2つのポリヌクレオチドを「作動可能に連結された」と記載することは、一本鎖または二本鎖の核酸部分が、2つのポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、それが特徴とする生理学的効果を他方に対して及ぼすことができるような様式で核酸部分内に配置された2つのポリヌクレオチドを含むことを意味する。例として、遺伝子のコード領域に作動可能に連結されたプロモーターは、コード領域の転写を促進することができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、適切な化合物または誘導体と組み合わせることができ、組み合わせた後に適切な化合物を対象に投与するために使用することができる化学的組成物を意味する。「薬学的に許容される」とは、ヒトまたは獣医学的適用のいずれかについて、生理学的に耐容されることを意味する。本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、ヒトおよび獣医学的使用のための製剤を含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「精製された」および類似の用語は、分子または化合物の、天然環境において通常その分子または化合物に伴う他の成分に対する濃縮(富化)(enrichment)に関する。用語「精製された」は、特定の分子の完全な純度がプロセス中に達成されたことを必ずしも示さない。本明細書で使用される「高度に精製された」化合物は、純度が90%を超える化合物を指す。具体的には、精製された精子細胞DNAは、精製された精子細胞DNAのPCR増幅と、その増幅されたDNAのその後の分析の際に、有意な検出可能レベルの非精子細胞DNAを産生しないDNAを指す。「有意な検出可能レベル」は、提示されたデータにおいて視認でき、法医学的証拠の分析中に対処/説明が必要となる夾雑物質の量である。
【0052】
「組換えポリヌクレオチド」は、天然では一緒に連結されていない配列を有するポリヌクレオチドを指す。増幅または組み立てられた組換えポリヌクレオチドは、好適なベクターに含まれ得、そしてこのベクターは、好適な宿主細胞を形質転換するために使用され得る。
【0053】
組換えポリヌクレオチドは、非コード機能(例えば、プロモーター、複製起点、リボソーム結合部位など)も果たし得る。
組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」と呼ばれる。遺伝子が組換えポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞において発現される遺伝子は、「組換えポリペプチド」を産生する。
【0054】
「組換えポリペプチド」は、組換えポリヌクレオチドの発現の際に産生されるものである。
「組換え細胞」は、導入遺伝子を含む細胞である。そのような細胞は、真核細胞であっても原核細胞であってもよい。また、トランスジェニック細胞は、導入遺伝子を含む胚性幹細胞、細胞が導入遺伝子を含むトランスジェニック胚性幹細胞由来のキメラ哺乳動物から得られた細胞、トランスジェニック哺乳動物またはその胎児もしくは胎盤組織から得られた細胞、および導入遺伝子を含む原核細胞を包含するが、これらに限定されない。
【0055】
「調節する」という用語は、目的の機能または活性を、刺激することまたは阻害することを指す。
本明細書で使用される「標準」という用語は、比較するために使用されるものを指す。例えば、それは、試験化合物を投与する場合に結果を比較するために投与および使用される公知の標準的な薬剤もしくは化合物であってもよく、パラメータもしくは機能に対する薬剤もしくは化合物の効果を測定する場合に対照値を得るために測定される標準的なパラメータもしくは機能であってもよい。標準はまた、「内部標準」、例えば、試料に既知の量で添加され、そして試料が処理された、または精製もしくは抽出手順に供された後に目的のマーカーが測定される際に、精製率または回収率などを決定するのに有用である薬剤または化合物も指し得る。内部標準は、多くの場合、放射性同位体などで標識された目的の精製マーカーであり、内因性マーカーと区別することができる。
【0056】
従来の分子生物学技術を伴う方法が本明細書に記載されている。そのような技法は、当該技術分野において概ね知られており、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1-3,ed.Sambrookら,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989;およびCurrent Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubelら.,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York,1992(定期的更新あり)などの方法論の論文で詳細に記述されている。核酸の化学合成のための方法は、例えば、BeaucageおよびCarruthers,Tetra.Letts.22:1859-1862,1981、およびMatteucciら,J.Am.Chem.Soc.103:3185,1981で考察されている。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、またはそれらの変形は、用語「含む(comprising)」と同様に包括的であることが意図される。
【0058】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」などは、米国特許法に基づく意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味することができる。本明細書で使用される場合、「含む(including)」または「含む(includes)」などは、限定なしに含むことを意味する。
【0059】
細菌
本発明において有用な細菌としては、サルモネラ菌が挙げられるが、これに限定されない。
【0060】
本発明で使用することができるサルモネラ菌株の例としては、Salmonella typhi(ATCC No.7251)およびS.typhimurium(ATCC No.13311)が挙げられる。弱毒化サルモネラ菌株としては、S.typhi-aroC-aroD(Honeら、Vacc.9:810(1991)、S.typhimurium-aroA変異型(mutant)(Mastroeniら、Micro.Pathol.13:477(1992))およびSalmonella typhimurium 7207が挙げられる。本発明で使用することができる更なる弱毒化サルモネラ菌株には、1つ以上の他の弱毒化変異(mutation)、例えば、(i)栄養要求性変異、例えば、aro(Hoisethら、Nature,291:238-239(1981))、gua(McFarlandら、Microbiol.Path.,3:129-141(1987))、nad(Parkら、J.Bact,170:3725-3730(1988)、thy(Nnalueら、Infect.Immun.,55:955-962(1987))、およびasd(Curtiss,上記)変異;(ii)全体的な調節機能を不活性化する変異、例えばcya(Curtissら、Infect.Immun.,55:3035-3043(1987))、crp(Curtissら(1987)、上記)、phoP/phoQ(Groismanら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86:7077-7081(1989);およびMillerら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86:5054-5058(1989))、phop.sup.c(Millerら、J.Bact,172:2485-2490(1990))またはompR(Dormanら、Infect.Immun.,57:2136-2140(1989))変異;(iii)ストレス応答を改変する変異、例えば、recA(Buchmeierら、MoI.Micro.,7:933-936(1993))、htrA(Johnsonら、MoI.Micro.,5:401-407(1991))、htpR(Neidhardtら、Biochem.Biophys.Res.Com.,100:894-900(1981))、hsp(Neidhardtら、Ann.Rev.Genet,18:295-329(1984))およびgroEL(Buchmeierら、Sci.,248:730-732(1990))変異;特定の病原性因子における変異、例えば、IsyA(Libbyら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91:489-493(1994))、pagまたはprg(Millerら(1990)、上記;およびMillerら(1989)、上記)、iscAまたはvirG(d’Hautevilleら、MoI.Micro.,6:833-841(1992))、plcA(Mengaudら、Mol.Microbiol.,5:367-72(1991);Camilliら、J.Exp.Med,173:751-754(1991))、およびact(Brundageら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,90:11890-11894(1993))変異;(v)DNAトポロジーに影響を及ぼす変異、例えば、topA(Galanら、Infect.Immun.,58:1879-1885(1990));(vi)細胞周期を破壊または改変する変異、例えば、min(de Boerら、Cell,56:641-649(1989));(vii)自殺システムをコードする遺伝子の導入、例えば、sacB(Recorbetら、App.Environ.Micro.,59:1361-1366(1993);Quandtら、Gene,127:15-21(1993))、nuc(Ahrenholtzら、App.Environ.Micro.,60:3746-3751(1994))、hok、gef、kil、またはphlA(Molinら、Ann.Rev.Microbiol.,47:139-166(1993));(viii)リポ多糖および/またはリピドAの生合成を改変する変異、例えば、rFb(Raetz in Esherishia coli and Salmonella typhimurium,Neidhardtら,Ed.,ASM Press,Washington D.C.pp1035-1063(1996))、galE(Honeら、J.Infect.Dis.,156:164-167(1987))およびhtrB(Raetz、上記)、msbB(Reatz、上記;および米国特許第7,514,089号);ならびに(ix)バクテリオファージ溶解系、例えば、P22によってコードされる溶原菌(Rennellら、Virol,143:280-289(1985))、ラムダムレイントランスグリコシラーゼ(Bienkowska-Szewczykら、Mol.Gen.Genet.,184:111-114(1981))またはS-遺伝子(Readerら、Virol,43:623-628(1971))の導入が含まれる。
【0061】
弱毒化変異は、構成的に発現されるか、または誘導性プロモーターの制御下のいずれかであり得、誘導性プロモーターとしては、例えば以下である:温度感受性熱ショックファミリーのプロモーター(Neidhardtら、上記)、または嫌気的に誘導されたnirBプロモーター(Harbome et al.Mol.Micro.,6:2805-2813(1992))、または抑制的プロモーター、例えば、uapA(Gorfinkielら、J.Biol.Chem.,268:23376-23381(1993))もしくはgcv(Staufferら、J.Bact.,176:6159-6164(1994))。
【0062】
一実施形態において、細菌株は、VNP20009、Salmonella typhimuriumの派生株である。その遺伝子msbBおよびpurIの2つの欠失は、その完全な弱毒化(動物宿主における毒性ショックを防止することによる)と、生存のためのプリンの外部供給源への依存と、をもたらした。この依存性により、この生命体は肝臓や脾臓などの正常組織では複製できなくなるが、プリン体が利用可能な腫瘍では依然として増殖可能である。別の実施形態において、細菌株はSL3261またはχ11091である。
【0063】
ベクター/プラスミド
本発明の組成物および/または方法において、DNA、RNAおよび/またはタンパク質は、組換え法によって産生され得る。核酸は、発現のために複製可能なベクターに挿入される。多くのこのようなベクターが利用可能である。ベクター成分としては、概して、以下:複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、ならびに転写終結配列およびコード配列、のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、例えば、サルモネラ菌において、遺伝子および/またはプロモーター(目的の配列)は、宿主細胞染色体に組み込まれてもよく、または例えばプラスミド/ベクター上に存在してもよい。
【0064】
発現ベクターは通常、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有する。この遺伝子は、選択培養培地中で成長させた形質転換宿主細胞の生存または成長に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞は、培養培地中で生存しない。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するか、(b)栄養要求性欠損を補完するか、または(c)複合培地から入手することができない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
【0065】
発現ベクターは、宿主生命体によって認識され、核酸配列、例えば、オープンリーディングフレームをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターを含み得る。プロモーターは、それらが作動可能に連結されている特定の核酸配列の転写を制御する構造遺伝子(概ね約100~1000bp以内)の開始コドンの上流(5’)に位置する非翻訳配列である。細菌細胞では、全体的な調節を制御する領域はオペレーターと呼ばれ得る。プロモーターは、典型的には、誘導性および構成的の2つのクラスに分類される。誘導性プロモーターは、それらの制御下で、培養条件のいくらかの変化、例えば、栄養素の存在もしくは非存在または温度の変化に応答して、DNAからの増加したレベルの転写を開始するプロモーターである。種々の潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。
【0066】
原核生物宿主での使用に好適なプロモーターとしては、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、ハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター、ならびに飢餓プロモーター(Matin,A.(1994)Recombinant DNA Technology II,Annals of New York Academy of Sciences,722:277-291)が挙げられる。しかしながら、他の既知の細菌プロモーターも適している。そのようなヌクレオチド配列は公開されており、それによって当業者がそれらをDNAコード配列に作動可能にライゲートすることを可能にする。細菌系における使用のためのプロモーターはまた、コード配列に作動可能に連結されたシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を含み得る。
【0067】
1つ以上の上記成分を含む好適なベクターの構築は、標準的なライゲート技術を使用する。単離されたプラスミドまたはDNAフラグメントは、必要とされるプラスミドを生成するために所望の形態で切断され、調整され(tailored)、そして再ライゲートされる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態において、発現ベクターは、サルモネラ菌における使用に好適なプラスミドまたはバクテリオファージベクターであり、DNA、RNAおよび/またはタンパク質は、患者に投与された操作されたサルモネラ菌(一態様において減弱化された)による発現を通じて対象に提供される。本明細書で使用される「プラスミド」という用語は、発現可能な遺伝子をコードする任意の核酸を指し、鎖状または環状核酸および二本鎖または一本鎖核酸を含む。核酸は、DNAまたはRNAであってよく、修飾ヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含んでもよく、メチル化、または保護基もしくはキャップもしくはテール構造の包含によって化学的に修飾されてもよい。
【0069】
がんの処置
サルモネラ菌などの細菌は、固形腫瘍などのがんに対して天然の向性を有する。本発明の方法を使用して処置することができるがんの種類としては、固形腫瘍、例えば、肉腫および癌腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌腫、基底細胞癌種、腺癌腫、汗腺癌腫、脂腺癌腫、乳頭癌腫、乳頭腺癌腫、嚢胞腺癌腫、髄様癌腫、気管支原性癌腫、腎細胞癌腫、肝臓癌、胆管癌腫、絨毛癌腫、精上皮腫、胎児性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮体癌、精巣癌、肺癌腫、小細胞肺癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫(oligodenroglioma)、神経鞘腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽種、および網膜芽腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
いくつかの態様において、対象は、本明細書に記載される細菌細胞の投与前、投与後、または投与中に、放射線、手術、および/または化学療法で処置される。
投与
本発明は、本明細書に記載される弱毒化サルモネラ菌株の投与、および医薬組成物を調製し、それを投与する方法も含む。このような方法は、薬学的に許容される担体を、本明細書に記載される1つ以上の弱毒化サルモネラ菌株と共に製剤化することを含む。
【0071】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化される。非経口、皮内、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度を調整するための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投与バイアルに封入することができる。
【0072】
静脈内投与の場合、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF;Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。それは、製造および貯蔵の条件下で安定であることが必要とされ、また、他の(望まない)微生物の夾雑作用から保護されることが必要とされる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0073】
注射液は、上述した成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み込むことによって調製することができる。概して、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒および上記の様々な他の成分を含有するビヒクルに組み込むことによって調製される。注射液を調製するための粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、活性成分にこれまでに得られた任意の更なる所望の成分を加えた粉末が得られる。
【0074】
経口組成物は、概して、不活性希釈剤または食用担体を含む。例えば、それらはゼラチンカプセルに封入することができる。経口治療投与の場合、活性化合物は、賦形剤と共に組み込まれ得、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用され得る。
【0075】
薬学的に適合性の結合剤、および/または補助材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分または同様の性質の化合物:微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogelもしくはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香味料などの香味剤、のいずれかを含有することができる。
【0076】
吸入による投与の場合、細菌は、好適な噴射剤(例えば、二酸化炭素などのガス)を収容する加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザからのエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0077】
全身投与は、経粘膜または経皮手段によるものであってもよい。経粘膜または経皮投与の場合、透過される障壁に対して適切な浸透剤が、製剤において使用される。このような浸透剤は、当該技術分野において概ね知られており、例えば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、点鼻スプレーまたは坐剤の使用を通じて達成することができる。経皮投与の場合、細菌は、当該技術分野において概ね知られているように軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリームに製剤化される。
【0078】
投与の容易さおよび投与量の均一性のために、単位剤形で組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、処置される対象に対する単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と共同して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、活性化合物の固有の特性および達成されるべき特定の治療効果、ならびにそのような活性化合物を個体の処置のために配合する技術に固有の制限によって規定され、直接左右される。
【0079】
患者に投与される場合、弱毒化サルモネラ菌は、単独で使用され得るか、または任意の生理学的担体と組み合わせられ得る。概して、投与量は、約1.0c.f.u./kg~約1×1012c.f.u./kg、任意選択で、約1.0c.f.u./kg~約1×1010c.f.u./kg;任意選択で、約1.0c.f.u./kg~約1×10c.f.u./kg;任意選択で、約1×10c.f.u./kg~約1×10c.f.u./kg;任意選択で、約1×10c.f.u./kg~約1×10c.f.u./kg;任意選択で、約1×10c.f.u./kg~約1×1012c.f.u./kg;任意選択で、約1×10c.f.u./kg~約1×1010c.f.u./kg;任意選択で、約1×10c.f.u./kg~約1×10c.f.u./kgの範囲である。
【実施例
【0080】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態および態様を実証し、更に例示するために提供されるものであり、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例I
自然発症腫瘍の非毒性の全身的な定着のために操作されたSalmonella Enterica Typhimurium
序論
前臨床研究では、多数の抗がん機構を発現するように遺伝子操作され病原性を弱められたSalmonella enterica serovar Typhimurium(S.Typhimurium)の株が、有効性を示した(1)。前臨床研究は、主に、予め形成されたがん組織の移植またはがん細胞株の注入から腫瘍が発生するマウスモデルに依存している。これらの腫瘍はげっ歯類において急速に発生し、腫瘍発生から数週間以内に安楽死させることが要求される。これらの腫瘍の定着は強固であり、多くの場合、腫瘍組織1グラム当たり1×10コロニー形成単位(cfu)を超える細菌に達する(2)。
【0081】
残念ながら、S.Typhimuriumがんの静脈内治療の初期の臨床試験は期待外れであり、その一因は自然発症(自然発生)ヒト腫瘍の細菌定着が乏しかったことである(3~5)。前臨床移植腫瘍モデルとは対照的に、自然発生腫瘍は数ヶ月から数年にわたって発達し、より成熟した脈管構造および限定された壊死空間を伴い(6、7)、これは、臨床試験において見られた細菌による比較的乏しい定着を説明し得る。サルモネラ菌の多くの弱毒株が前臨床の細菌がん治療研究に用いられてきたが、いずれも全身送達による自然発症腫瘍の定着に最適化されたものではなかった。発表されているサルモネラ菌がん治療の研究のほとんどは、移植されたがん組織またはがん細胞のボーラス投与から発生した腫瘍を伴う動物モデルにおけるものであった。最近の例としては、VNP20009(8、9)、A1-R(10、11)、SL3261(12、13)およびv4550(14、15)が挙げられる。また、これらの研究の多くは、必然的に免疫不全動物において行われている。例えば、患者由来の同所性異種移植マウスモデル(16)においてSalmonella Typhimurium株A1-Rを用いた実験は、自然発症腫瘍の定着を再現しておらず、インタクトな免疫系の患者において免疫応答を正確に評価できない。
【0082】
これまでの研究では、遺伝子操作されたマウスモデル(GEMM)における自然発症腫瘍の強固な細菌定着は、脈管構造破壊剤(VDA)で腫瘍をプレコンディショニングして壊死空間の増加を確立することによって改善され得ることが示されている(17)。しかしながら、細菌の投与を増加させることによって、VDAでコンディショニングされた自然発症腫瘍の一貫した広範囲にわたる定着を達成しようとする試みは、毒性によって制限された。この制限を克服するために、本明細書では、免疫原性がより低いS.Typhimuriumの操作された株が提供された。本明細書では、全身毒性が低減され、VDAでコンディショニングされた自然発症腫瘍の強固な定着が可能なS.Typhimuriumの株の発生についての報告が記載される。
【0083】
材料および方法
プラスミドの特徴を表1に列挙する。プラスミドpYA292(18)のEcoRI/HindIII消化、および平滑化末端のライゲーションによる再環状化によってプラスミドpNGを構築し、LacZ-αペプチドの発現を除去した。プライマーLacFwdおよびLacRevを用いてLacUV5プロモーター配列を含有するpYA292からのPCR生成フラグメントを、プライマーLuxFwdおよびLuxRevを用いてプラスミドpAKlux2(19)からPCRによって増幅されたluxCDABEオペロンにライゲートすることによって、プラスミドpLuxを構築した。プラスミドpLux中のLacUV5プロモーターを腫瘍特異的プロモーターPflEP(20)およびFF+20(21)で置き換えることによって、プラスミドpPflEPLuxおよびpFF+20Luxを構築した。PflEPおよびFF+20配列を有するgBlocksをDraIIIおよびBlpIで消化した。得られたフラグメントを、DraIIIおよびBlpIで消化され、アルカリホスファターゼで処置されたpLuxにライゲートした。制限酵素消化、ライゲーションおよびアルカリホスファターゼ処置は、製造業者(New England Biolabs,Ipswich,MA)のガイドラインに従った。プライマーおよびgBlocksは、Integrated DNA Technologies(Coralville,IA)から入手した。プラスミド構築に使用した全ての合成分子のDNA配列については表2を参照されたい。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
細菌株
関連する遺伝子型および供給源を含め、細菌株を表1に列挙する。S.Typhimurium株VNP20009は、American Type Culture Collectionから入手した(ATCC#202165)。株SL3261は、Salmonella Genetic Stock Centreから入手した(SGSC#439)。ファージk Redリコンビナーゼ法(22)ならびに2つのPCRプライマーDSfwdおよびDSrev(表2)を使用して、SL3261の染色体からアスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(asd)遺伝子を欠失することによって、株BCT1を構築した。腫瘍定着を測定する場合、細菌は生物発光のためのluxオペロン(23)を含むプラスミドで形質転換された。χ11091からfliC、fljB、fimH、およびrfaL遺伝子を欠失させ(24)、χ11091染色体内のpgtEプロモーターに一ヌクレオチド変化を導入することによって、S.Typhimurium株BCT2を構築した。DIRex法(25)によってχ11091にこれらの変異を導入するために使用したオリゴヌクレオチドプライマーを表2に列挙する。
【0087】
細菌成長条件
BCT1を伴う実験では、株をプラスミドpNGで形質転換し、新鮮な対数増殖期中期の溶原培地Miller(LB)培養液から細菌注射剤を調製した。培養物を、3,500×g、4℃で5分間の遠心分離によって回収した。細胞ペレットを冷却したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁し、ペレット化し、必要な濃度で再度再懸濁した。株BCT2またはVNP20009を伴う実験では、株BCT1(pNG)について示したように培養物を成長させることによって細菌注射剤を調製したが、最終細胞再懸濁は冷却した20%グリセロール/PBS(体積/体積)中で行い、細胞試料を-80℃で保存した。凍結グリセロールストックを解凍し、使用前に所望の濃度までPBS中に希釈した。動物注射後、注射された細菌の1mL当たりのコロニー形成単位(cfu)を、37℃でLB寒天上に希釈プレーティングすることによって検証した。
【0088】
動物実験
以前に記載されたように(26)、BALB-neuTコロニーの維持および管理を行った。各データポイントに使用したマウスの数は、図のキャプションに提供される。腫瘍を外部キャリパーによって測定し、腫瘍体積を0.5(長さ×幅)として算出した。全ての薬剤を、個々の実験で示された濃度および投与スケジュールで、PBS中100マイクロリットルの注射によってマウスに非経口投与した。細菌を尾静脈(IV)に注射した。血管破壊剤(VDA)を、示されるように、IVまたは腹腔内(IP)のいずれかで注射した。VDAコンブレタスタチンA4ホスフェート(CA4P;SF204、Selleck)をIV投与し、VDA CKD-516(A07.020.548、Aurora Fine Chemicals)をIP投与した。抗インターロイキン-6(IL-6)モノクローナル抗体(MP5-20F3、BioXCell)をIP注射した。発光細菌で処置したマウスにおける腫瘍の放射輝度(radiance)を測定するために、マウスを酸素中3%のイソフルラン吸入によって麻酔し、Living Imageソフトウェア(PerkinElmer)でIVIS Spectrum in vivoイメージングシステムを使用して画像化した。全光束(ルミネセンス)を60秒間取得し、目的の腫瘍の放射輝度(光子/秒/cm/sr)として記録した。
【0089】
略語
S.Typhimurium:Salmonella enterica serovar Typhimurium;GEMM:遺伝子操作されたマウスモデル;VDA:血管破壊剤;LB:溶原培地Miller;PBS:リン酸緩衝生理食塩水;cfu:コロニー形成単位;IV:静脈内;IP:腹腔内;CA4P:コンブレタスタチンA-4ホスフェート;IL-6:インターロイキン-6;CRS:サイトカイン放出症候群;PAMP:病原体関連分子パターン。
【0090】
結果
S.Typhimuriumの内在性毒性の除去
ヒトの臨床試験における最大耐容量を推定する場合、毒物学文献では、げっ歯類における医薬品の短期(7日間)投与試験における急性体重減少の上限が10%と定義されている(27)。S.Typhimurium株BCT1(pNG)をVDAと共にIV投与した際に観察された毒性は、サイトカイン放出症候群(CRS)によるものではないかと疑い、インターロイキン-6(IL-6)受容体活性化に拮抗する抗体の投与を伴う、CRSによる毒性を軽減することが報告されている治療法を適用した(28)。抗IL-6抗体で処置したマウスは、1×10cfuのS.Typhimurium株BCT1(pNG)+VDAのIV投与に無害な毒性(<10%の体重減少)で耐容性を示したのに対して、抗IL-6抗体なしのマウス3匹のうち2匹では、許容できない18%の体重減少および死亡が認められた(図1の第4列および第5列)。5×10cfuの細菌の投与は毒性が低かったが、抗IL-6抗体を用いてまたは用いずに処置したマウスと比較した場合、体重減少百分率(%)において同様の差が見られた(図1の第2列および第3列)。
【0091】
IL-6シグナル伝達の遮断による毒性の低下が観察された場合、免疫細胞からのIL-6分泌を誘導することが知られているS.Typhimurium表面分子をコードする遺伝子を変異させて、無害な毒性で増加させた細菌量の投与を可能にし、CRSが回避された。葉酸栄養要求性によって病原性が弱められ、toll様受容体4のリポ多糖活性化の低減のために操作された株であるS.Typhimuriumχ11091(24)から開始し、IL-6分泌の誘導に関与する更なる表面分子をコードする遺伝子を欠失させた。フラジェリン遺伝子fliCおよびfljBを欠失させ(29)、同様に、フィンブリアのマルトース受容体結合アドヘシンサブユニットをコードするfimHも欠失させた(30)。加えて、O抗原は、rfaLの欠失によって排除された(31,32)。最後に、pgtEの転写プロモーター配列を改変して、補体活性化を阻害するPgtE外膜プロテアーゼの発現を増加させた(33)。得られた株をBCT2と名付けた(図2)。
【0092】
BCT2株の毒性
非腫瘍負荷マウスを使用して、多くの前臨床研究およびS.Typhimuriumがん治療のいくつかの臨床試験で使用されている株であるVNP20009株と比較して、BCT2株の毒性を試験した(1、3~5)。非腫瘍負荷マウスを1×10cfuのこれらの株で処置することにより、BCT2(pPflEPLux)で5%未満の体重減少、VNP20009で10%未満の体重減少をもたらした(図3)。pPflEPLuxプラスミドを、この実験において、染色体asd変異を補完するためのasd遺伝子の供給源として使用し、非抗生物質平衡致死性プラスミド維持をもたらした(34)。1×10cfuのBCT2(pPflEPLux)による処置は、3日後に約12%の体重減少をもたらしたが、7日後に約10%の体重減少に回復した。1×10cfuの株VNP20009の同一の投与は、3日後に15%の体重減少、そして7日後に25%近くの体重減少をもたらした(図3)。これらの結果は、株BCT2が株VNP20009よりも有意に毒性が低いことを示す。
【0093】
細菌定着のための腫瘍脈管構造のコンディショニング
腫瘍負荷マウスをVDAで前処置して、S.Typhimuriumなどの通性嫌気性菌による定着のために腫瘍内の低酸素壊死空間を増加させた場合、3×10cfuの株BCT2(pFF+20Lux)の投与は、全ての処置マウスにおいて少なくとも1つの腫瘍の定着をもたらさなかった(データは示さず)。pFF+20Luxプラスミドは、染色体asd変異を補完するためのasd遺伝子と、全身の生物発光によって細菌を追跡するための発現luxオペロンとを含有する。したがって、VDA前処置に加えて、VDAの細菌後投与を追加して、腫瘍内の細菌を「トラップ」した。-4、-3、-2および-1日目にVDAを投与した後0日目に投与された3×10cfuの株BCT2(pFF+20Lux)の毒性および定着を、3×10cfuの細菌をパルス注射した1時間後のVDAのIP投与と共に試験した。このプロトコルは、全てのマウスにおいて無害な(benign)毒性および腫瘍定着のみをもたらした(図4)。
【0094】
考察
細菌は多くの医療用途に使用されてきたが、標的組織に細菌を送達し、抗細菌免疫応答から生じる毒性を回避することは困難であった。細菌治療の1つの用途は、ヒトおよび他の動物におけるサルモネラ症の処置のためのワクチン株としてのサルモネラ菌ベースの株の開発であった(35)。これらの場合、細菌が全身に投与されると、毒性は重大な問題となる。毒性を低減する試みでは、リポ多糖エンドトキシンまたは鞭毛の免疫原性を弱毒化することに焦点が当てられてきた(35~37)。株χ11091におけるようにリピドA合成をコードする遺伝子を変異させることによって(図2)、S.Typhimuriumの毒性は大幅に減少した。
【0095】
ワクチン株の開発に加えて、細菌の別の用途は、固形腫瘍の処置におけるものであった(38)。がん治療に特異なものとして、微生物ベースのがん治療の「究極の目標」は、非毒性様式で固形腫瘍の強固な定着を伴う全身送達である(39)。これらの実験で使用した細菌としては、S.Typhimurium、Escherichia coli、およびClostridium perfringensが挙げられ、これらは腫瘍の低酸素壊死空間で増殖することができる。細菌の抗がん能力の前臨床研究では、主に、マウスの移植腫瘍モデルにおけるS.Typhimuriumの使用に焦点が当てられてきた(38)。これらの実験において、腫瘍定着は強固であり、したがって、処置に必要な細菌の数が少なく、結果として毒性はほとんどないか全くない。これらの前臨床研究において、いくつかの異なるタイプの固形腫瘍で、有効性に関する非常に有望な結果が報告された。
【0096】
S.Typhimuriumのがん治療の初期の臨床試験において、アミノ酸栄養要求性によって病原性が弱められ、リポ多糖毒性が低減された株であるVNP20009が静脈内投与された(4)。本研究者らは、有効性に乏しいことを報告し、腫瘍の定着を増加させるためには細菌用量の増加が必要となるが、細菌の毒性は克服されるべきであることを示唆した。その試験において観察された用量制限毒性は、その免疫原性の高い病原体関連分子パターン(PAMP)分子、例えば、鞭毛およびフィンブリアのほとんどがインタクトなままであったため、生命体に対する全身性免疫応答の過剰刺激によるものであり得る(40)。移植された腫瘍を使用する前臨床試験におけるVNP20009株の適用の成功にもかかわらず、臨床試験において腫瘍定着および毒性が制限となっており、このことは、前臨床結果をヒト試験に応用することの難しさを示している。
【0097】
前臨床研究において使用された移植腫瘍モデルとは対照的に、ヒト腫瘍は、時間、脈管構造および壊死空間に関して異なって発達し、このことは、前臨床マウス研究からヒト試験への応用の障害の原因である可能性がある。免疫応答性であるBALB-neuTマウスなどの自然発症腫瘍モデルを前臨床研究に使用することは、ヒトで発生する腫瘍によりよく似ているため、より適切である。これはまさに、本発明者らが本発明者らの研究において自然発症モデルを使用した理由である。しかしながら、マウスにおける移植腫瘍との比較のために自然発症腫瘍の定着を使用した場合、腫瘍の壊死空間を増加させるためにVDAを使用しない限り、定着が数桁少ないことが観察された(17)。したがって、自然発症腫瘍の強固な定着を達成するために、処置に使用される細菌数および腫瘍内の壊死空間の量を最適化する必要があり、また結果として生じる毒性に対処する必要がある。
【0098】
S.Typhimuriumを使用して自然発症腫瘍を全身的に標的化する場合、毒性の過剰刺激された全身性抗菌免疫応答の誘導は回避されるべきである。細菌の表面上のPAMP分子は、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫応答を効果的に刺激するが、許容できない毒性をもたらす全身性免疫応答も誘発する。免疫刺激PAMPをコードする遺伝子の破壊による細菌の改変は、最小限の毒性で治療分子を腫瘍微小環境に分泌するための生物学的工場としての細菌の使用を可能にする。
【0099】
IV投与されたS.Typhimuriumによって引き起こされる毒性に対処することは、PAMPの発現に関与するいくつかの遺伝子の破壊(29~31)および補体の活性化を低減するための変異(33)を伴う、遺伝子操作された生命体BCT2の構築をもたらした。血管破壊剤と組み合わせた場合、この株は、前臨床研究において自然発症腫瘍の強固な非毒性定着を促進する。
【0100】
文献
【0101】
【表3-1】
【0102】
【表3-2】
【0103】
【表3-3】
【0104】
【表3-4】
【0105】
実施例II
免疫調節因子を分泌するように操作された病原性を弱めたサルモネラ菌が、乳癌の自然発症モデルマウスにおいて腫瘍の増殖を低減し、生存率を向上させる
序論
最近まで、がん治療の主流は手術、放射線、および化学療法であった。第4の治療戦略である免疫療法が急速に台頭し、広く採用されつつある。しかしながら、免疫系を刺激してがんを攻撃し、その再発を防ぐよう用心することは、全身免疫応答の危険な過剰活性化によって妨げられており、これは、健康な組織が許容できないほど破壊され、重大な全身毒性を引き起こす可能性がある[1]。免疫系を調節する分子を腫瘍微小環境に標的化することで、全身毒性を回避し、抗がん免疫療法の可能性を高めることが実現され得る[2]。本明細書では、腫瘍の非毒性定着および免疫調節因子の送達のために、Salmonella enterica serovar Typhimurium(S.Typhimurium)の病原性を弱めた株[18]が提供される。
【0106】
このアプローチの治療可能性を実証するために、本明細書ではサイトカインおよび2つの免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせ送達が提供される。インターロイキン-15スーパーアゴニストであるIL-15Ra-IL-15(RLI)[3]は、その毒性制限能力から選択され、抗CTLA4および抗PD-L1免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせ[5]と同様に、強力な抗がん有効性[4]を提供する。更に、この治療は、臨床応用が成功する可能性をより厳密に試験するため、移植がんモデルではなく自然発症乳癌のモデルにおいて試験した。自然発症腫瘍の発生は、より成熟した脈管形成を可能にし、その結果、壊死空間が少なくなる。したがって、脈管構造破壊剤(VDA)が、壊死空間を増加させて、投与された細菌が定着することを可能にするよう、含まれた[6]。VDA誘導性壊死空間を拡張および維持し、任意の急性細菌誘導性全身性炎症応答を低減するために、カンナビジオール(CBD)がその抗血管新生作用および抗炎症作用のために含まれた[7、8]。
【0107】
本明細書では、腫瘍微小環境への直接的な免疫調節因子の標的化分泌のために操作された、非病原性S.Typhimuriumの抗がん有効性の報告が開示される。これらの細菌は、免疫刺激分子の全身投与からもたらされるがん免疫療法に固有の毒性応答を誘発しない。
【0108】
材料および方法
プラスミド
本研究で使用したプラスミドは、抗がん治療について試験することができる様々な免疫調節因子を発現および分泌するように設計した(表1)。プラスミドは、FF+20[10]促進型オペロンでプラスミドpYA292中のTrcプロモーターおよびLacZα配列を置き換えること[9]によって構築した。FF+20プロモーターを腫瘍特異的遺伝子発現に使用した。オペロンは、FF+20プロモーター、C末端に60アミノ酸のE.Coli HlyA分泌シグナルとインフレームである免疫調節因子cDNA配列[11]、続いてE.coli溶血素分泌タンパク質HlyBおよびHlyDをコードするcDNA配列からなっていた(図6)。プラスミドpFF+20IL15Hly、pFF+20αCTLA4HlyおよびpFF+20αPDL1Hlyは、それらの完全なDNA配列を含めて、Addgeneに寄託された。pFF+20IL15Hly中のIL-15配列は、RLI[3]からモデル化される。プラスミドpORF9-mIL15RAa(InvivoGen cat.porf-mil15raa)からPCRによって単離されたマウスIL-15Raスシドメインを、20アミノ酸RLIフレキシブルリンカーを介して、プラスミドpORF9-mIL15(InvivoGen cat.porf-mil15)からPCRによって単離されたマウスIL-15遺伝子をコードするcDNAに連結した。第2の18アミノ酸のグリシン/セリンリッチのフレキシブルリンカーGQSSRSSGGGGSSGGGGS[12]を使用して、IL-15のC末端アミノ酸をHlyAシグナル配列のC末端の60アミノ酸に連結した。C末端6×ヒスチジンおよびヘマグルチニンタグを含む抗CTLA-4および抗PD-L1 scFv cDNA配列を、以前に記載されたように[13]、免疫化ニワトリ抗体ライブラリーから単離した。それらは、それらのC末端アミノ酸で、C末端60アミノ酸HlyAシグナル配列に直接連結された。各免疫調節因子プラスミド中のE.coli溶血素オペロン配列を、プラスミドpNirB-PAop-hlyA[14]から、フォワードおよびリバースプライマーTTAGCCTATGGAAGTCAGGGTAATCおよびTTAACGCTCATGTAAACTTTCTGTTACをそれぞれ使用してPCRによって単離した。免疫調節因子発現および分泌のウェスタン分析のために、FF+20プロモーターおよびコンセンサスAGGAGGシャイン・ダルガーノ配列のすぐ上流の配列を、pLacUV5IL15Hly中のLacUV5プロモーター[15]を含む配列AGATCTTCCGGAAGACCTTCCATTCTGAAATGAGCTGTTTACACTTTATGCTTCCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACAATならびにpTrcaCTLA4HlyおよびpTrcaPDL1Hly中のTrcプロモーター[16]を含む配列AGATCTTCCGGAAGACCTTCCATTCTGAAATGAGCTGTTGACAATTAATCATCCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACAATによって置き換えた。
【0109】
全てのプラスミドは、株χ4550およびBCT2におけるDasd変異を補完するasd遺伝子を含んでいた。
【0110】
【表4】
【0111】
細菌株
関連する遺伝子型および供給源を含む細菌株を表1に列挙する。株χ4550をpLacUV5IL15Hly、pTrcαCTLA4HlyまたはpTrcαPDL1Hlyで形質転換することによって、3つの免疫調節因子タンパク質の発現および分泌を試験するために、3つの株を樹立した。株BCT2をプラスミドpFF+20Lux、pFF+20IL15Hly、pFF+20αCTLA4Hly、またはpFF+20αPDL1Hlyで形質転換することによって、有効性および毒性実験のために4つの株を樹立した。単一のpFF+20Lux形質転換株(BCT2pLux)、またはBCT2pLuxを含む4つ全ての株を組み合わせたもの(BCT2pQuad)のいずれかを用いて実験を行い、腫瘍定着をモニターした。
【0112】
タンパク質発現の分析
免疫調節因子プラスミドで形質転換された株χ4550の単一コロニーを用いて、50mLの溶原培地Miller(LB)に接種した。培養物を通気しながら37℃で約17時間、600nmでの光学密度が約6.0になるまで増殖させた。20mLの培養物を4000×g、4℃で20分間採取し、培養培地を保存しておいた。細菌ペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁し、再遠心分離し、2mLのPBS+1×Haltプロテアーゼ阻害剤(Thermo Fisher cat.78430)に再懸濁した。培養培地を、0.2μmフィルターを通して真空濾過し、10kDaのカットオフMillipore(登録商標)Amicon遠心分離フィルター(Millipore、UFC901024)を通して遠心分離することによって約400μlに濃縮し、次いで、PBSで2mLの最終容量に希釈した。再懸濁した細菌細胞(元の2mLのうち0.5mL)を、Sonic Dismembrator(Dynatech Laboratories,Model 300)を使用して、氷上で15秒間、40%の出力で6回超音波処理し、21,000×gで12分間遠心分離した。10μlの6×ローディングバッファー(Boston Bioproducts cat.BP-111R)を50μlアリコートの超音波処理上清(可溶性細胞タンパク質を表す)および濃縮培養培地に添加し、試料を沸騰水浴中で10分間インキュベートした。煮沸した各試料(25μl)を、トリス-トリシン10%から20%勾配ポリアクリルアミドゲル上で分析した。タンパク質を電気泳動によりPVDF膜に転写し、ウェスタン分析に供した。これらの実験で使用した一次抗体は、マウス抗DnaK(Enzo Life Sciences cat.ADI-SPA-880)、ラット抗マウス-IL15(R&D Systems cat.MAB447)またはマウス抗Hisタグ(BioLegend cat.65201)であった。二次抗体は、ヤギ抗マウス(LI-COR IRDye 680RD cat.926-68070)またはヤギ抗ラット(LI-COR IRDye 800CW cat.926-32219)であった。
【0113】
動物実験
動物実験のために、注射に使用される細菌培養物を、pFF+20Lux、pFF+20IL15Hly、pFF+20aCTLA4HlyまたはpFF+20aPDL1Hlyのいずれかを含有する株BCT2の新鮮な対数増殖期中期LB培養物から調製した。培養物を、3,500×g、4℃で5分間の遠心分離によって回収した。細胞ペレットを冷却したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に再懸濁し、ペレット化し、次いで冷却した20%グリセロール/PBS(体積/体積)に再懸濁した。細胞試料を-80℃で保存した。凍結グリセロールストックを解凍し、使用前に所望の濃度までPBS中に希釈した。-80℃で保存する前および動物注射後に、注射された細菌の1mL当たりのコロニー形成単位(cfu)を、37℃でLB寒天上に希釈プレーティングすることによって検証した。
【0114】
以前に記載されたように[20]、BALB-neuTコロニーの維持および管理を行った。毒性の判定のために、マウスの体重を測定し、運動性の低下および毛羽立ちについて観察した。腫瘍を外部キャリパーによって測定し、腫瘍体積を0.5(長さ×幅2)として計算した。マウスは腫瘍が2cmを超えるたびに安楽死させた。全ての薬剤を、個々の実験で示された濃度および投与スケジュールで、PBS中100μlの注射によってマウスに非経口投与した。-2日目に、マウスに4mg/kgのVDA(CKD-516、Aurora Fine Chemicals cat.A07.020.548)および50mg/kgのCBD(純度99%の結晶CBD、Endoca USA)を単回腹腔内注射した。0日目に、マウスに1.5×10cfuの細菌を外側尾静脈(IV)に注射し、その3時間後に1.5×10cfuの細菌をもう1度IV注射した。この手順の1時間後に、2mg/kg VDA+50mg/kg CBDをIP注射した。マウスを、対照としてBCT2pLux単独で、またはBCT2pQuadで処置した。BCT2pQuadを使用した場合、4つの細菌株の各々を等量で混合し、1.5×10cfuの注射濃度になるようにした。
【0115】
発光細菌で処置したマウスにおける腫瘍の放射輝度を測定するために、マウスを酸素中3%のイソフルラン吸入によって麻酔し、Living Imageソフトウェア(PerkinElmer)でIVIS Spectrum in vivoイメージングシステムを使用して画像化した。全光束(ルミネセンス)を60秒間取得し、目的の腫瘍の放射輝度(光子/秒/cm/sr)として記録した。
【0116】
略語
S.Typhimurium:Salmonella enterica serovar Typhimurium;VDA:血管破壊剤;LB:溶原培地Miller;PBS:リン酸緩衝生理食塩水;cfu:コロニー形成単位;IV:静脈内;IP:腹腔内;IL-15:インターロイキン-15;CBD:カンナビジオール;MTD:最大耐容量。
【0117】
結果
免疫調節因子の分泌。
I型溶血素分泌装置による免疫調節因子の分泌を試験した。プラスミドpLacUV5IL15HlyまたはpTrcαCTLA4HlyまたはpTrcαPD-L1Hlyで形質転換されたS.Typhimurium株χ4550において発現された免疫調節因子タンパク質のウェスタン分析により、3つ全ての免疫調節因子の分泌が確認された(図7)。細胞内DnaKタンパク質が細菌超音波処理物(B)には存在するが、培地(M)には存在しないことは、培地(M)で観察された免疫調節因子タンパク質バンドが細菌溶解ではなく分泌によるものであることを示した。更に、これらの分泌された免疫調節因子が生物学的に活性であることが確認された(データは示さず)。
【0118】
以前に、luxオペロンの転写を構成的に促進するLacUV5プロモーターを腫瘍特異的FF+20プロモーター[10]で置き換えると、luxオペロン[19]の腫瘍特異的発現がもたらされることが観察された。したがって、in vitroで免疫調節因子タンパク質の分泌を確認した後、これらのプラスミド中のLacUV5およびTrcプロモーターをFF+20プロモーターで置き換えた。がん免疫療法の実現可能な有効性を制限することが多いサイトカイン放出症候群を引き起こす可能性のある全身性免疫細胞の炎症刺激による毒性を回避するため、免疫調節因子の発現を腫瘍微小環境に限定することを利用した[21]。
【0119】
有効性。
pFF+20Luxで、または3種類の免疫調節因子タンパク質のうちの1つの産生をコードするプラスミドのうちの1つで株BCT2を形質転換することによって、4種類の個々の株を樹立した。腫瘍負荷マウスを、細菌を投与する2日前にVDAで処置し、細菌定着のための壊死空間を生成させた。VDAは細菌の1時間後にも投与され、以前の実験で示されたように、腫瘍定着の増加をもたらした(データは示さず)。-2日目に、4mg/kgのVDAを、体表面積換算で、ヒト臨床試験で決定された最大耐容量(MTD)に等しい用量でIP注射した[22]。0日目に、3時間間隔で2回の尾静脈注射によってマウスに細菌を投与した。細菌のこの「パルス」投与は、単回ボーラス用量の注射と比較して腫瘍の細菌定着を増加させることが実証されており[23]、この戦略は実験によって確認された(データは示さず)。0日目に注射されたVDAは、MTD VDAが細菌の後に投与された場合に観察された毒性により、50%MTD(2mg/kg)に低減された(下記参照)。VDA誘導性壊死に続く急性血管新生を一時的に阻害し[24]、細菌に対する任意の初期の全身性炎症応答を抑制するために、CBDを全てのVDA注射に含めた。投与されたCBD用量50mg/kgは、体表面積換算で、ヒト臨床試験で決定されたMTDに等しい[25]。4日目または5日目の生物発光イメージングにより、15匹のBCT2pLux注射マウスのうち10匹、14匹のBCT2pQuad注射マウスのうち9匹において、少なくとも1つの腫瘍が細菌によって定着されたことが明らかとなった(データは示さず)。
【0120】
細菌を含まないVDA+CBDで処置したマウスにおける腫瘍の増殖は、増殖が遅い傾向はあったが、非処置マウスにおいて観察された腫瘍増殖と有意に異ならなかった(図8、28日目、A対B、P=0.1)。株BCT2pLuxを処置に加えた場合、28日目までの腫瘍の増殖は、非処置マウスにおける腫瘍増殖と比較して40%有意に減少した(図8、28日目、A対C、P=0.02)。このことは、BCT2pLuxを伴うVDA+CBDと伴わないVDA+CBDとの間に有意差は観察されなかったが(図8、28日目、B対C、P=0.2)、免疫調節因子発現を伴わないBCT2がこの治療にわずかな有効性を付加し得ることを示唆する。BCT2pQuadで処置したマウスにおいて、非処置動物と比較して、64%の腫瘍増殖の有意な減少が観察された(図8、A対D、P=0.0004)。それぞれBCT2pLuxを伴うまたは伴わないVDA+CBDを注射されたマウスにおいて観察されたものと比較して、BCT2pQuadを注射されたマウスにおける腫瘍増殖の41%および51%の更なる遅延(図8、28日目、C対D、P=0.004またはB対D、P=0.0006)は、免疫調節因子の腫瘍特異的発現が、細菌単独によって提供される任意の抗腫瘍有効性に加えて抗腫瘍免疫応答を誘導することを示唆している。
【0121】
細菌処置後9週間、マウスの生存を追跡した(図9)。VDA+CBD単独での処置は、95%未満の有意性ではあるが(図9、A対B、P=0.09)、未処置マウスと比較して生存期間が12%減少する傾向があった。このことは、CBDの抗炎症特性による抗がん免疫の阻害の可能性を示唆している[8]。BCT2pLuxの添加は、非処置と比較して生存に有意な影響を及ぼさなかった(図9、A対C、P=0.6)が、VDA+CBD単独と比較して生存率は15%増加した(図9、B対C、P=0.01)。BCT2pQuadが治療戦略に含まれた場合、マウスは非処置マウスよりも25%長く生存し(図9、A対D、P=0.0002)、VDA+CBDのみで処置したマウスよりも33%長く生存し(図9、B対D、P=0.00002)、BCT2pLuxが治療戦略に含まれた唯一の株である場合よりも21%長く生存した(図9、C対D、P=0.0001)。このデータは、細菌が送達する免疫調節因子が腫瘍微小環境において有効な抗がん免疫応答を引き起こすという結論を更に支持する。
【0122】
毒性。
VDA+CBD+BCT2pQuadによる処置の有害作用は最小限であった。毒性は、体重減少によって経験的に決定され、BCT2pQuad投与の2日後に最大の-6.9%±2.0%に達した(図10)。3日目の体重は、マウスが未処置動物と比較して正常な体重増加を再開したことを示した。この結果は、げっ歯類で試験された医薬品をヒト臨床試験に応用するための上限であると考えられる7日間10%の体重減少の範囲内である[26]。加えて、この経験的に決定された無害な毒性は、最大耐容量の化学療法で観察されたものよりもはるかに低かった(図10、MTDドキソルビシン)。MTDドキソルビシンを注射されたマウスは、14日目までに25%を超える体重減少が続き、21日目まで体重増加が再開されなかった(以前に公開されたデータ)[27]。毒性はまた、以下の0~3のスケールで活動性および被毛の滑らかさを観察することによって主観的に決定した:0)未処置動物との活動性の差がなく、滑らかで光沢のある毛羽立ちのない被毛、1)わずかに動きが少なく、わずかに毛羽立ちのある被毛、2)明らかに遅い動きおよび毛羽立ちのある被毛、ならびに3)強制なしでは動きがなく、鈍く極端に毛羽立ちのある被毛。この運動性/被毛スケールでは、BCT2pQuad注射マウスの全てが、1日目~4日目に0/0、1/0または0/1のいずれかであることが観察され、7日目に全てが0/0とスコア付けされた。したがって、この治療戦略ではある程度の毒性が明らかであったが、それは無害の性質であり、十分にヒト臨床応用に適した限界内である。
【0123】
考察
本明細書では、がん免疫療法の潜在的有効性を制限してきた毒性を伴わずに、腫瘍微小環境への複数の免疫調節因子タンパク質の送達を標的化する方法が提供される。細菌の静脈内投与を使用するこれまでに報告された研究では、グラム陰性菌によって誘発される多くの炎症カスケードの過剰活性化によると思われる有意な毒性が示されており(28、29)、これはその後、この治療戦略の採用を制限してきた。毒性の問題に対処するために、本発明者らは、これらの細菌の非毒性静脈内投与を可能にするS.Typhimuriumの株を開発することに成功し(18)、また、ステルス性、および免疫調節因子の腫瘍特異的発現のために細菌を操作した。重要なことに、これらの細菌は、移植腫瘍を使用するモデルよりもより臨床的に関連性がある自然発症乳癌のマウスモデルにおいて非毒性抗がん有効性を実証している(30)。
【0124】
腫瘍定着は、細菌を投与する前後にVDAで壊死空間を確立することによって増強された。低分子VDAはチューブリンに結合し、未成熟血管内皮細胞における細胞骨格に干渉して、腫瘍における血流の破壊を引き起こす。その結果、低酸素および虚血の領域が生じ、周囲の腫瘍細胞の死および壊死空間の形成をもたらす(31)。本発明者らは、これらの形成された壊死空間によって、これらの細菌が増殖し、続いて免疫調節因子を放出するための培養環境がもたらされると考える。VDAコンブレタスタチンを使用して自然発症腫瘍のS.Typhimurium定着の増強を実証したことから[6]、本発明者らは、より安定なVDAであるCKD-516(32)を使用して、本研究における投薬を最適化した。本発明者らは、細菌の投与の2日前のMTD VDAによる単回前処置が、細菌の投与の最大4日前までの1日1回のVDAによる投与と同程度の腫瘍の細菌定着をもたらすことを見出した。このことは、単回MTDのVDAが、利用可能な未成熟腫瘍内脈管構造の大部分を破壊し得ることを示唆している(33)。更に、-1日目にVDAを投与することが、定着の量を減少させたことから(未発表の結果)、VDAが細菌処置に近すぎる時間に投与された場合、血管から腫瘍への細菌の通過を妨害し得ることを示唆している。循環CKD-516の半減期は、約5時間であり(34)、したがって、VDAのクリアランスのために2日間の猶予を与えることは、新生脈管構造の成長のための時間を確保することによって細菌定着を促進し得る。細菌で処置した後、この研究で報告された治療戦略で使用される1時間の間隔ではなく、VDAを投与する前に2時間待ち、脈管構造をもう一度破壊して腫瘍内で細菌を潜在的に捕捉することにより腫瘍定着を増加させることが有益であり得る。
【0125】
CBDの抗血管新生および抗炎症特性は、血管新生を一時的に阻害し、壊死空間を維持し、細菌刺激された全身性炎症による急性毒性を低減するために利用された。VDA処置は、脈管構造を破壊し、それによって腫瘍における血管新生応答を刺激することが知られているので(35)、循環における24時間の半減期(36)および抗血管新生特性(7)を有するCBDは、VDA誘導性壊死の時間を延長し、それによって腫瘍の細菌定着のための壊死空間を拡大し得る。
【0126】
腫瘍微小環境は、抗がん免疫の抑制をもたらす相互作用する細胞および分子の複雑なアレイである[38]。単一の免疫調節因子を用いるいくつかの単剤治療は、抗がん有効性を実証したが、単一の治療において免疫調節因子を組み合わせることは、はるかに有効である。例えば、抗PD-1および抗CTLA4モノクローナル抗体の組み合わせの投与は、いずれかの処置が単独で投与された場合の2倍を超えて生存する患者をもたらした[39]。より多くの細胞機能に影響を及ぼすために追加の免疫調節因子で治療を増強することは、腫瘍微小環境の免疫抑制の性質を更に克服し、ますます活性化される抗腫瘍免疫応答を誘導し得る[40]。しかしながら、全ての全身送達された免疫調節因子の場合と同様に、免疫関連有害事象による毒性は、特に免疫調節因子が組み合わされる場合、現在の抗がん免疫療法の達成可能な有効性を制限する[41]。全身送達された抗がん免疫療法の有効性を制限する有害作用を克服することが、本研究において組み合わされたIL-15サイトカインならびに抗PD-L1および抗CTLA4免疫チェックポイント阻害剤以外の免疫調節因子の追加の組み合わせの送達を可能とする。免疫原性ステルス性S.Typhimurium(BCT2)の本発明者らの系、および免疫調節因子の腫瘍特異的発現は、自然発症乳癌のマウスモデルにおいて有意な有効性を維持しながら全身毒性を回避し、ヒトにおいてがんを処置するための臨床応用が成功する可能性を高める。
【0127】
文献
【0128】
【表5-1】
【0129】
【表5-2】
【0130】
【表5-3】
【0131】
【表5-4】
【0132】
実施例III
プラスミド構築
溶血素分泌系
プラスミドpYA292中のTrcプロモーターおよびLacZα配列をFF+20プロモーター配列で置き換える(1)ことによって、プラスミドを構築し、FF+20プロモーター配列は腫瘍特異的遺伝子発現のために使用された(2)。オペロンは、FF+20プロモーター、C末端に60アミノ酸のE.Coli HlyA分泌シグナルとインフレームである免疫調節因子cDNA配列(3)、続いてE.coli溶血素分泌タンパク質HlyBおよびHlyDをコードするcDNA配列からなっていた。これらの構築物に使用される免疫調節cDNA配列には、IL-15、αCTLA-4 scFv、およびαPD-L1 scFvが含まれる。これらの免疫調節因子遺伝子を含むプラスミドの構築は、以前に記載された(4)。
【0133】
同様のアプローチ(4)を用いて、以下の免疫調節因子のcDNAをクローニングした。
pFF+20-CXCL9-10。
【0134】
pFF+20-CXCL9-10を構築するために、pFF+20-IL15およびCXCL9-10 gBlockをBsrGIおよびEsp3Iで切断した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFF+20-CXCL9-10構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT2を形質転換するのに使用した。
【0135】
CXCL9-10 gBlock配列(1126bp):
GATCCTTGTACATCAAATGGATCCAGATCGATGTTTAAAGATCCCCCCTCACTCCTGCCATCATTCTGATATTGAAATAAGAGAGGAGGAACATAAATGAAGTCCGCTGTTCTTTTCCTCTTGGGCATCATCTTCCTGGAGCAGTGTGGAGTTCGAGGAACCCTAGTGATAAGGAATGCACGATGCTCCTGCATCAGCACCAGCCGAGGCACGATCCACTACAAATCCCTCAAAGACCTCAAACAGTTTGCCCCAAGCCCCAATTGCAACAAAACTGAAATCATTGCTACACTGAAGAACGGAGATCAAACCTGCCTAGATCCGGACTCGGCAAATGTGAAGAAGCTGATGAAAGAATGGGAAAAGAAGATCAGCCAAAAGAAAAAGCAAAAGAGGGGGAAAAAACATCAAAAGAACATGAAAAACAGAAAACCCAAAACACCCCAAAGTCGTCGTCGTTCAAGGAAGACTACAGTTCCCGGGGTAGGAGTTCCAGGTGTTGGTGGGATCCCTCTCGCAAGGACGGTCCGCTGCAACTGCATCCATATCGATGACGGGCCAGTGAGAATGAGGGCCATAGGGAAGCTTGAAATCATCCCTGCGAGCCTATCCTGCCCACGTGTTGAGATCATTGCCACGATGAAAAAGAATGATGAGCAGAGATGTCTGAATCCGGAATCTAAGACCATCAAGAATTTAATGAAAGCGTTTAGCCAAAAAAGGTCTAAAAGGGCTCCTGGTCAGTCCTCTAGATCTTCCGGCGGTGGTGGCAGCTCCGGTGGTGGCGGTTCCTTAGCCTATGGAAGTCAGGGTAATCTTAATCCATTAATTAATGAAATCAGCAAAATCATTTCAGCTGCAGGTAATTTTGATGTTAAAGAGGAAAGAGCTGCAGCTTCTTTATTGCAGTTGTCCGGTAATGCCAGTGATTTTTCATATGGACGGAACTCAATAACTTTGACAGCATCAGCATAATTTATTAATTTAAATAATAGCAATCTTACTGGGCTGTGCCACATAAGATTGCTATTTTTTTGGAGTCATAATGGATTCTTGTCATAAAATTGATTATGGGTTATACGCCCTGGAGATTTTAGCCCAATACCATAACGTCTCTGTTAACCCG
pFF+20-αPD-L1N(N=ナノボディ)
pFF+20-αPD-L1Nを構築するために、pFF+20-IL15およびPDL1N gBlockをBamHIおよびPacIで切断した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFF+20-αPD-L1N構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT2を形質転換するのに使用した。
【0136】
PDL1N gBlock配列(557bp):
TCAAATGGATCCAGATCGATGTTTAAAGATCCCCCCTCACTCCTGCCATCATTCTGATATTGAAATAAGAGAGGAGGAACATAAATGGCTCAAGTTCAATTAGTAGAAACAGGGGGAGGCTTAGTTCAGCCTGGAGGATCTCTTCGCTTATCTTGCACTGCTTCAGGCTTCACATTCTCGATGCACGCGATGACCTGGTACCGTCAAGCGCCGGGGAAGCAGCGTGAATTGGTGGCAGTTATTACGAGTCATGGGGACCGGGCGAACTACACTGATAGCGTCCGTGGGCGTTTCACGATTAGCCGCGACAATACCAAAAACATGGTATACTTACAGATGAATAGCTTAAAACCGGAAGATACGGCTGTGTATTACTGTAACGTTCCACGGTACGATTCATGGGGGCAGGGTACTCAAGTCACTGTCAGCAGTGGCGGCTTACCGGAAACAGGGGGTCACCACCACCATCATCACGGTGCGTACCCCTATGATGTGCCTGACTATGCGAGCTTAGCCTATGGAAGTCAGGGTAATCTTAATCCATTAATTAACCTCTC
鞭毛分泌系(Flagellar Secretion System)
鞭毛分泌系(5)を利用するため、FliCプロモーター配列、および免疫調節DNA配列に融合したFliC分泌シグナルを含むようにプラスミドを構築した。プラスミドFliCプロモーターの活性は、染色体鞭毛遺伝子座によって制御され、これは、免疫調節因子の発現および分泌を腫瘍微小環境に限定するために腫瘍特異的FF+20プロモーター(2)によって駆動される。株BCT14の説明を参照されたい。
【0137】
これらの構築物に使用される免疫調節cDNA配列は以下のものを含む。
pFliC-IL-15
pFliC-IL15を作製するために、FLIC-IL15 gBlock-2およびプラスミドpLacUV5-mIL15Ra-mIL15(4)をDraIIIおよびSphIで消化した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFliC-IL15構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT13を形質転換するのに使用した。
【0138】
FLIC-IL15 gBlock-2配列(380bp):
CCAGTCCACAGTGTGCGGAATAATGATGCATAAAGCGGCTATTTCGCCGCCTAAGAAAAAGATCGGGGGAAGTGAAAAATTTTCTAAAGTTCGAAATTCAGGTGCCGATACAAGGGTTACGGTGAGAAACCGTGGGCAACAGCCCAATAACATCAAGTTGTAATTGATAAGGAAAAGATCATGGCACAAGTCATTAATACAAACAGCCTGTCGCTGTTGACCCAGAATAACCTGAACAAATCCCAGTCCGCTCTGGGCACCGCTATCGAGCGTCTGTCTTCCGGTCTGCGTATCAACAGCGCGAAAGACGATGCGGCAGGTCCGCTGGGCCTGGCGGGAACCACGTGTCCACCTCCCGTATCTATTGAGCATGCTTCCAG
以下の免疫調節因子遺伝子を有するpFliCプラスミドの構築は、pFliC-IL15の構築と同様のプロトコルに従った。
【0139】
pFliC-αPD-L1 scFv
pFliC-αPD-L1 scFvを作製するために、pLacUV5-OmpA-αPD-L1プラスミドおよびαPD-L1 gBlockをBstEIIおよびAvrIIで消化した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFliC-αPD-L1構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT13を形質転換するのに使用した。
【0140】
FLIC-αPDL1 gBlock(1053bp):
GACTGAGGTGACCGGCACGTTGACTACGCCGGTTGGTCGTCTGCGTAAGCTGAACATGGGGCCAGAGTTCTTGTCGGCGTTTACCGTAGGCGACCAGTTGTTATGGGGCGCCGCCGAGCCGCTGCGTCGAATGCTGCGCCAGTTGGCGTAGTGGCTATTGCAGCGCTTATCGGGCCTGCGTGTGGTTCTGTAGGCCGGATAAGGCGCGTCAGCGCCGCCATCCGGCGGGGAAATTTGTGTTAAACCAGGGGTGCATCGTCACCCTTTTTTTGCGTAATACAGGAGTAAACGCAGATGTTTCATTTTTATCAGGAGTTAAGCAGAGCATTGGCTATTCTTTAAGGGTAGCTTAATCCCACGGGTATTAAGCCTAACCTGAAGGTAGGACGACGCAGATAGGATGCACAGTGTGCGGAATAATGATGCATAAAGCGGCTATTTCGCCGCCTAAGAAAAAGATCGGGGGAAGTGAAAAATTTTCTAAAGTTCGAAATTCAGGTGCCGATACAAGGGTTACGGTGAGAAACCGTGGGCAACAGCCCAATAACATCAAGTTGTAATTGATAAGGAAAAGATCATGGCACAAGTCATTAATACAAACAGCCTGTCGCTGTTGACCCAGAATAACCTGAACAAATCCCAGTCCGCTCTGGGCACCGCTATCGAGCGTCTGTCTTCCGGTCTGCGTATCAACAGCGCGAAAGACGATGCGGCAGGTCCGCTGGGCCTGGCGGGACTGACTCAGCCGTCCTCGGTGTCAGCAAACCTGGGAGGAACCGTCAAGATCACCTGCTCCGGGGGTAGTGGCAGCTACGGCTGGTATCAGCAGAAGGCACCTGGCAGTGCCCCTGTCAGTCTGATCTATGACAACACCAACAGACCCTCGGACATCCCTTCACGATTCTCCGGTGCCCTATCCGGCTCCACAGCCACATTAACCATCACTGGGGTCCAAGCCGAGGACGAGGCTGTCTATTACTGTGGGAGCAGGGACAGCAGTAATGCTGGTTCTGTATTTGGGGCCGGGACAACCCTGACCGTCCTAGGTCAGTC
pFliC-αCTLA-4 scFv
pFliC-αCTLA-4 scFvを作製するために、pFliC-αPD-L1 scFvプラスミドおよびαCTLA4 gBlockをNsiIおよびSpeIで消化した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFliC-αCTLA4構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT13を形質転換するのに使用した。
【0141】
FLIC-aCTLA4 gBlock(1070bp):
TGGTTGATGCATAAAGCGGCTATTTCGCCGCCTAAGAAAAAGATCGGGGGAAGTGAAAAATTTTCTAAAGTTCGAAATTCAGGTGCCGATACAAGGGTTACGGTGAGAAACCGTGGGCAACAGCCCAATAACATCAAGTTGTAATTGATAAGGAAAAGATCATGGCACAAGTCATTAATACAAACAGCCTGTCGCTGTTGACCCAGAATAACCTGAACAAATCCCAGTCCGCTCTGGGCACCGCTATCGAGCGTCTGTCTTCCGGTCTGCGTATCAACAGCGCGAAAGACGATGCGGCAGGTCCGCTGGGCCTGGCGGGACTGACTCAGCCGTCCTCGGTGTCAGCGAACCCGGGAGAAACCGTCGAGATCACCTGCTCCGGGGGTAGCAACTACTATGGCTGGTACCAGCAGAAGTCACCTGGCAGTGCCCCTGTCACTCTGATCTATAGCAGCACCAACAGACCCTCAAACATCCCTTCACGATTCTCCGGTTCCAAATCCGGCTCCACACACACATTAACCATCACTGGGGTCCAAGCCGACGACGAGGCTGTCTATTACTGTGGGAGTGTAGACAGCAGCTATGTTGGTGTATTTGGGGCCGGGACAACCCTGACCGTCCTAGGTCAGTCCTCTAGATCTTCCGGCGGTGGTGGCAGCTCCGGTGGTGGCGGTTCCGCCCTGACGTTGGACGAGTCCGGGGGCGGCCTCCAGACACCGAAAGGAGGGCTCAGCCTCGTCTGCAAGGCCTCCGGGTTCACCTTCAGCAGCTTCAACATCTACTGGGTGCGACAGGCGCCCGGCAAGGGGCTGGAATACGTCGCTGAAATTAGCGGCACTGGCAGTTACACAAACTACGGGCCGGCGGTGGATGGCCGTGCCACCATCTCGAGGGACAACGGGCAGAGCACAGTGAGGCTGCAGCTGAGCAATCTCAGGGCAGAGGACACCGCCACCTACTACTGCGCCAAAGCTGCTGGCGGTTGTAGTGGTTATGGTTGGTGTCCTGCTGGCATCGACGCATGGGGCCACGGGACCGAAGTCATCGTCTCCTCCACTAGTTGCTAG
pFliC-CXCL9-10
pFliC-CXCL9-10を作製するために、pFliC-IL15プラスミドおよびCXCL9-10 pFlic gBlockをHindIIIおよびDraIIIで消化した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFliC-CXCL9-10構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT13を形質転換するのに使用した。
【0142】
CXCL9-10 pFlic gBlock(991bp):
CCAGTCCACAGTGTGCGGAATAATGATGCATAAAGCGGCTATTTCGCCGCCTAAGAAAAAGATCGGGGGAAGTGAAAAATTTTCTAAAGTTCGAAATTCAGGTGCCGATACAAGGGTTACGGTGAGAAACCGTGGGCAACAGCCCAATAACATCAAGTTGTAATTGATAAGGAAAAGATCATGGCACAAGTCATTAATACAAACAGCCTGTCGCTGTTGACCCAGAATAACCTGAACAAATCCCAGTCCGCTCTGGGCACCGCTATCGAGCGTCTGTCTTCCGGTCTGCGTATCAACAGCGCGAAAGACGATGCGGCAGGTCCGTTAGGACTTGCAGGCAAATCCGCCGTTTTATTTTTACTGGGGATTATCTTTCTGGAGCAATGCGGCGTACGCGGGACCCTGGTCATCCGCAACGCACGCTGCTCGTGCATCTCTACTTCCCGGGGAACAATTCATTATAAGTCCTTGAAGGACTTGAAGCAGTTTGCGCCGTCACCTAACTGCAATAAGACTGAGATTATTGCAACCCTTAAAAATGGGGACCAAACCTGCTTGGACCCTGACAGCGCAAATGTCAAGAAACTGATGAAAGAATGGGAAAAGAAAATTTCCCAGAAAAAGAAACAAAAACGGGGTAAGAAGCATCAGAAAAATATGAAAAATCGTAAACCAAAGACCCCACAGAGCCGTCGGCGTAGTCGTAAAACGACAGTGCCAGGCGTTGGTGTACCGGGAGTCGGGGGCATCCCATTAGCCCGGACGGTTCGGTGCAACTGCATTCACATCGACGATGGCCCTGTACGTATGCGGGCCATTGGAAAATTGGAAATCATCCCAGCCAGTCTTTCCTGCCCACGGGTTGAAATCATTGCGACTATGAAGAAGAATGATGAGCAACGTTGCCTTAACCCGGAATCCAAAACTATCAAAAACCTGATGAAGGCTTTCAGTCAAAAACGTTCTAAGCGGGCACCTTAAGCTTGACACG
pFliC-αCTLA-4N(N=ナノボディ)
pFliC-αCTLA-4Nを作製するために、pFliC-IL15プラスミドおよびαCTLA4N pFliC gBlockをHindIIIおよびDraIIIで消化した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFliC-αCTLA-4N構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT13を形質転換するのに使用した。
【0143】
αCTLA4N pfliC gBlock(727bp):
CCAGTCCACAGTGTGCGGAATAATGATGCATAAAGCGGCTATTTCGCCGCCTAAGAAAAAGATCGGGGGAAGTGAAAAATTTTCTAAAGTTCGAAATTCAGGTGCCGATACAAGGGTTACGGTGAGAAACCGTGGGCAACAGCCCAATAACATCAAGTTGTAATTGATAAGGAAAAGATCATGGCACAAGTCATTAATACAAACAGCCTGTCGCTGTTGACCCAGAATAACCTGAACAAATCCCAGTCCGCTCTGGGCACCGCTATCGAGCGTCTGTCTTCCGGTCTGCGTATCAACAGCGCGAAAGACGATGCGGCAGGTCCGCTTGGTTTGGCTGGTCAGGTTCAACTTGTTGAAAGCGGAGGCGGATTAGCTCAACCCGGCGGCTCTTTACGTCTTTCCTGCGCTGCCTCTGGGTCCACTATTAGCTCCGTTGCCGTGGGTTGGTACCGTCAAACCCCAGGCAACCAACGTGAATGGGTTGCAACATCCAGCACCAGTAGCACAACCGCCACCTATGCAGACTCGGTAAAGGGGCGCTTCACGATTAGTCGTGACAACGCAAAAAACACCATCTACCTTCAAATGAACTCTCTGAAGCCAGAGGACACAGCCGTGTACTATTGCAAGACGGGACTTACAAATTGGGGGCGCGGAACGCAAGTTACCGTAAGCTCGGGTGGTGGCTACCCGTATGACGTGCCTGACTACGCCTAAGCTTGACACG
pFliC-αPD-L1N(N=ナノボディ)
pFliC-αPD-L1Nを作製するために、pFliC-IL15プラスミドおよびαPDL1N pFlic gBlockをHindIIIおよびDraIIIで消化した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFliC-αPDL1N構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT13を形質転換するのに使用した。
【0144】
αPDL1N pFLic gBlock(730bp):
CCAGTCCACAGTGTGCGGAATAATGATGCATAAAGCGGCTATTTCGCCGCCTAAGAAAAAGATCGGGGGAAGTGAAAAATTTTCTAAAGTTCGAAATTCAGGTGCCGATACAAGGGTTACGGTGAGAAACCGTGGGCAACAGCCCAATAACATCAAGTTGTAATTGATAAGGAAAAGATCATGGCACAAGTCATTAATACAAACAGCCTGTCGCTGTTGACCCAGAATAACCTGAACAAATCCCAGTCCGCTCTGGGCACCGCTATCGAGCGTCTGTCTTCCGGTCTGCGTATCAACAGCGCGAAAGACGATGCGGCAGGTCCATTAGGTTTAGCCGGCCAAGTCCAGCTTGTCGAAACCGGAGGTGGACTGGTGCAGCCTGGAGGGTCACTGCGCCTTTCCTGTACCGCATCTGGTTTCACTTTCAGTATGCACGCTATGACTTGGTATCGTCAGGCTCCTGGTAAGCAACGTGAACTTGTCGCGGTCATTACGAGCCATGGAGATCGCGCGAACTATACGGACTCAGTACGTGGTCGCTTTACAATCTCCCGCGACAACACTAAGAATATGGTCTATTTGCAAATGAATAGCCTGAAGCCTGAAGATACAGCGGTCTATTATTGTAACGTACCTCGTTACGACAGTTGGGGCCAGGGGACTCAAGTAACGGTTTCATCTGGTGGAGGCTATCCCTATGATGTGCCAGATTACGCGTAAGCTTGACACG
pFliC-αCD47N(N=ナノボディ)
pFliC-αCD47Nを作製するために、pFliC-IL15プラスミドおよびαCD47 pFliC gBlockをHindIIIおよびDraIIIで消化した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFliC-αCD47N構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT13を形質転換するのに使用した。
【0145】
αCD47 pFliC gBlock(751bp):
CCAGTCCACAGTGTGCGGAATAATGATGCATAAAGCGGCTATTTCGCCGCCTAAGAAAAAGATCGGGGGAAGTGAAAAATTTTCTAAAGTTCGAAATTCAGGTGCCGATACAAGGGTTACGGTGAGAAACCGTGGGCAACAGCCCAATAACATCAAGTTGTAATTGATAAGGAAAAGATCATGGCGCAGGTAATCAATACAAACTCCTTAAGTCTTTTAACTCAAAATAATCTTAACAAGAGTCAATCTGCGCTTGGCACTGCTATCGAGCGGTTGTCTAGCGGGTTACGCATCAATTCTGCCAAGGATGATGCGGCGGGTCCACTTGGCTTAGCGGGCCAAGTGCAGTTGGTGGAATCTGGCGGCGGTTTGGTCGAGCCGGGTGGATCGTTACGGTTATCTTGTGCTGCATCGGGAATCATCTTCAAGATCAACGACATGGGGTGGTACCGGCAGGCACCAGGTAAACGTCGTGAATGGGTAGCAGCGTCGACTGGTGGGGATGAAGCCATTTATCGCGATTCCGTTAAGGACCGTTTTACTATTAGTCGCGACGCCAAGAATTCCGTTTTTTTACAGATGAATAGTTTGAAACCGGAGGATACCGCCGTCTATTACTGTACTGCTGTAATCTCAACAGACCGGGATGGTACAGAGTGGCGTCGCTATTGGGGCCAGGGGACGCAGGTTACAGTGAGTTCTGGTGGTGGCTATCCGTACGATGTCCCGGATTACGCGTAAGCTTGACACG
免疫調節遺伝子の組み合わせを含むプラスミドの構築
1.pFliC-IL15-αPDL1N(N=ナノボディ)バイシストロン性オペロン
バイシストロン性プラスミドであるpFliC-IL15-αPDL1Nを作製するために、IL15-αPDL1N gBlockおよびpFliC-IL15プラスミド(上記参照)をDraIIIおよびHindIIIで消化した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFliC-IL15-αPDL1N構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT13を形質転換するのに使用した。
【0146】
IL15-αPDL1N gBlock(1555bp):
CCAGTCCACAGTGTGCGGAATAATGATGCATAAAGCGGCTATTTCGCCGCCTAAGAAAAAGATCGGGGGAAGTGAAAAATTTTCTAAAGTTCGAAATTCAGGTGCCGATACAAGGGTTACGGTGAGAAACCGTGGGCAACAGCCCAATAACATCAAGTTGTAATTGATAAGGAAAAGATCATGGCACAAGTCATTAATACAAACAGCCTGTCGCTGTTGACCCAGAATAACCTGAACAAATCCCAGTCCGCTCTGGGCACCGCTATCGAGCGTCTGTCTTCCGGTCTGCGTATCAACAGCGCGAAAGACGATGCGGCAGGTCCGTTAGGACTGGCTGGTACGACCTGTCCTCCCCCAGTTTCAATCGAGCACGCGGATATCCGCGTTAAAAACTACTCCGTCAATAGTCGTGAACGTTATGTATGCAATTCCGGTTTCAAGCGTAAAGCTGGGACATCTACCTTGATTGAGTGCGTAATCAACAAAAACACCAACGTGGCCCACTGGACGACGCCGTCCTTGAAGTGCATTCGGGATCCCTCTTTAGCGCATTACAGTCCGGTGCCAACGTCAGGTGGTAGTGGCGGAGGCGGTTCAGGCGGCGGGTCTGGAGGTGGTGGGAGCTTACAGAACTGGATCGATGTGCGGTATGATTTAGAGAAGATTGAATCCTTGATCCAATCTATTCACATTGACACAACCTTGTATACTGATTCAGATTTTCACCCCTCTTGCAAGGTTACGGCTATGAATTGTTTTCTGCTGGAGTTACAAGTGATTCTTCACGAGTACTCTAATATGACTTTGAATGAAACAGTCCGCAATGTGTTGTATCTTGCTAACTCCACCCTGAGCAGTAACAAGAACGTTGCTGAAAGCGGTTGCAAAGAATGTGAGGAGCTTGAGGAGAAGACCTTCACGGAGTTCCTGCAGTCATTCATTCGCATTGTTCAAATGTTTATTAACACTTCCTGATTGTTGGAATACGCCATAAACTGGGCGGGTATGGCGCAGGTCATTAACACTAATAGTCTGAGTCTGTTGACACAGAACAACTTAAATAAGTCTCAGAGCGCTTTAGGCACCGCTATTGAACGTCTGAGTTCGGGGCTTCGCATCAATTCAGCAAAAGATGACGCAGCGGGACCTTTAGGGTTGGCAGGTCAAGTCCAGCTTGTTGAAACCGGCGGCGGCTTAGTTCAGCCCGGCGGTTCCCTGCGTTTAAGTTGCACTGCCTCGGGATTTACCTTCAGCATGCACGCAATGACTTGGTATCGGCAAGCTCCAGGAAAGCAGCGGGAATTAGTCGCAGTAATTACTAGCCATGGAGACCGGGCAAATTACACAGACTCCGTGCGCGGACGGTTCACAATTTCCCGCGACAATACTAAGAACATGGTTTATTTACAAATGAATTCATTAAAGCCTGAGGACACCGCCGTCTACTACTGCAATGTCCCACGGTATGACAGTTGGGGGCAAGGCACCCAAGTAACGGTCTCCTCGGGTGGCGGTTATCCTTACGATGTCCCCGATTATGCGTAAGCTTGACACC
2.pFliC-Pは、IL12、IL18、IL15、αPDL1N、およびαCTLA4N(N=ナノボディ)を有するペンタシストロン性オペロンを含有する
ペンタシストロン性オペロンを有するpFliC-Pプラスミドを作製するために、2つのステップを使用した。第1のステップは、IL12遺伝子のクローニングを伴っていた。第2のステップでは、残りの4つの遺伝子配列をpFliC-IL12プラスミドに付加した。
【0147】
ステップ1:pFliC-IL12D gBlockおよびpFliC-IL15プラスミド(上記参照)をDraIIIおよびHindIIIで消化した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFliC-IL12D構築物を確認した。
【0148】
pFliC-IL12D gBlock(1960bp):
CCAGTCCACAGTGTGCGGAATAATGATGCATAAAGCGGCTATTTCGCCGCCTAAGAAAAAGATCGGGGGAAGTGAAAAATTTTCTAAAGTTCGAAATTCAGGTGCCGATACAAGGGTTACGGTGAGAAACCGTGGGCAACAGCCCAATAACATCAAGTTGTAATTGATAAGGAAAAGATCATGGCACAAGTCATTAATACAAACAGCCTGTCGCTGTTGACCCAGAATAACCTGAACAAATCCCAGTCCGCTCTGGGCACCGCTATCGAGCGTCTGTCTTCCGGTCTGCGTATCAACAGCGCGAAAGACGATGCGGCAGGTCCGCTCGGGCTGGCGGGGATGTGGGAACTCGAAAAGGATGTGTACGTTGTTGAAGTTGACTGGACTCCCGACGCTCCAGGGGAAACAGTAAACTTAACTTGTGATACTCCCGAAGAGGACGATATCACGTGGACTTCCGACCAACGGCACGGCGTAATCGGCTCCGGGAAGACCCTTACTATTACAGTTAAGGAATTCCTGGACGCTGGTCAGTATACTTGTCACAAAGGCGGTGAAACTCTGTCCCATAGCCATTTACTGCTGCACAAAAAGGAAAACGGCATTTGGAGCACTGAGATCCTTAAAAATTTCAAGAATAAAACCTTTCTGAAATGCGAAGCGCCTAACTATAGCGGTCGGTTTACTTGTTCCTGGTTGGTACAGCGTAACATGGACTTGAAATTCAATATCAAGTCGTCTTCCTCGAGCCCTGATTCGCGTGCAGTAACGTGCGGCATGGCGTCGTTATCCGCCGAGAAAGTCACATTAGATCAGCGGGACTATGAGAAGTATAGCGTTAGTTGTCAAGAGGACGTGACGTGCCCCACGGCTGAGGAAACGTTACCGATTGAATTAGCGCTTGAAGCCCGCCAACAGAATAAATACGAAAACTATAGCACGTCTTTCTTTATCCGCGATATCATTAAACCTGATCCCCCGAAAAATTTACAGATGAAACCGTTGAAAAACTCACAGGTTGAGGTATCCTGGGAATATCCGGACTCTTGGAGTACACCGCATTCGTACTTTTCGCTTAAGTTCTTTGTACGTATTCAACGGAAAAAGGAGAAGATGAAGGAGACCGAGGAGGGATGCAATCAAAAGGGAGCTTTCTTAGTCGAGAAGACATCTACGGAAGTGCAGTGCAAGGGGGGCAACGTCTGTGTACAGGCACAGGATCGCTACTACAATTCGTCTTGCAGCAAGTGGGCGTGTGTTCCCTGCCGTGTACGGAGTGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGGGGGGGCAGCGGCGGGGGCGGCTCAAACCACCTTTCCTTAGCACGGGTGATCCCGGTAAGCGGCCCAGCGCGCTGTCTGTCCCAAAGTCGGAATCTGTTAAAGACCACAGACGACATGGTCAAGACCGCCCGTGAGAAGTTAAAGCACTATAGTTGTACAGCTGAAGACATTGACCACGAAGACATCACTCGCGACCAAACATCAACACTTAAAACCTGCTTACCGTTAGAACTTCATAAAAATGAGAGCTGCTTGGCGACCCGTGAAACGTCAAGCACTACTCGGGGAAGTTGCTTGCCCCCACAGAAGACTTCGTTAATGATGACCCTGTGCTTAGGTAGTATCTATGAGGACCTTAAGATGTACCAAACTGAGTTCCAAGCAATCAACGCAGCGTTACAAAATCATAACCATCAACAAATCATTCTTGATAAGGGGATGCTGGTGGCTATTGACGAACTTATGCAGTCACTTAATCATAATGGCGAAACCCTCCGACAAAAGCCGCCGGTGGGAGAAGCGGATCCTTACCGTGTGAAGATGAAACTGTGCATTCTTCTTCATGCCTTTTCCACGCGTGTGGTGACGATCAATCGGGTGATGGGATATTTGTCCAGTGCGGGTGGTGGCCATCATCACCATCACCATTAAGCTTGACACG
ステップ2:「penta gBlock 2 M-H」gBlockおよびプラスミドpFliC-IL12DをMluIおよびHindIIIで消化した。消化したプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてFliC-P構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT13を形質転換するのに使用した。
【0149】
「penta gBlock 2 M-H」gBlock(2663bp):
GATAAGACGCGTGTGGTGACGATCAATCGGGTGATGGGATATTTGTCCAGTGCGTAATTTGCCAGTCTGAGGCGGTAGATCTATGGCTCAAGTAATTAACACAAACTCGCTTTCCCTGTTGACGCAGAATAACCTGAATAAATCACAGTCCGCATTGGGTACCGCCATTGAGCGGTTAAGCTCTGGTTTACGGATCAACTCTGCGAAAGATGATGCTGCGGGCCCGCTCGGATTGGCGGGCCACTTTGGTCGTTTGCACTGTACGACTGCCGTTATACGGAACATCAATGACCAAGTCCTATTTGTGGACAAGCGCCAGCCAGTTTTTGAAGACATGACCGACATCGATCAGTCAGCGTCCGAACCTCAGACGCGGCTTATTATCTATGCGTATGGTGACTCTCGAGCCCGCGGAAAAGCTGTGACGCTGAGTGTAAAGGACAGCAAGATGTCAACATTGTCATGTAAGAACAAGATCATCTCTTTCGAAGAAATGGACCCCCCTGAAAACATTGATGACATCCAGAGCGATCTTATCTTCTTCCAGAAACGGGTGCCCGGTCATAATAAGATGGAATTTGAGTCGAGCCTGTATGAGGGCCATTTCCTTGCTTGCCAAAAGGAGGACGATGCCTTCAAATTGATCCTGAAGAAAAAGGATGAAAACGGAGATAAATCAGTAATGTTTACCCTTACCAACTTACACCAGTCTTAACCCGTAAGGTAAGGAACTAACAAATATGGCACAGGTCATTAACACGAATAGTCTGTCTCTGTTAACGCAAAATAACTTGAATAAGTCCCAGTCGGCTTTGGGGACCGCAATCGAGCGCTTGTCAAGTGGTCTTCGTATTAACTCTGCAAAAGACGATGCAGCAGGTCCGTTAGGACTGGCTGGTACGACCTGTCCCCCCCCAGTTTCAATCGAGCACGCGGATATCCGCGTTAAAAACTACTCCGTCAATAGTCGTGAACGTTATGTATGCAATTCCGGTTTCAAGCGTAAAGCTGGGACATCTACCTTGATTGAGTGCGTTATCAACAAAAACACCAACGTGGCCCACTGGACGACGCCGTCCTTGAAGTGCATTCGGGATCCCTCTTTAGCGCATTACAGTCCGGTGCCAACGTCAGGGGGCAGTGGAGGCGGCGGTTCGGGTGGAGGCTCTGGAGGTGGTGGGAGCTTACAGAACTGGATAGATGTGCGGTATGATTTAGAGAAGATTGAATCCTTGATCCAATCTATTCACATTGACACAACCTTGTATACTGATTCAGATTTTCACCCCTCTTGCAAGGTTACGGCTATGAATTGTTTTCTGCTGGAGTTACAAGTGATTCTTCACGAGTACTCTAACATGACTCTGAATGAAACGGTTCGCAACGTGTTGTATCTTGCTAACTCCACCCTGAGCAGTAACAAGAACGTTGCTGAGAGCGGTTGCAAAGAATGTGAGGAGCTTGAGGAGAAGACCTTCACGGAGTTCCTGCAGTCATTCATTCGCATCGTTCAAATGTTTATTAATACTTCATGATTGTAACGTTTAAGAAAGCCTCCCAATGGCGCAAGTGATTAACACTAATAGTCTGAGTCTGTTGACACAGAACAACTTAAATAAGTCTCAGAGCGCTTTAGGCACCGCTATTGAACGTCTGAGTTCGGGGCTTCGCATCAATTCAGCAAAAGATGACGCAGCGGGACCTTTAGGGTTGGCAGGTCAGGTCCAGCTTGTAGAAACAGGCGGCGGCTTAGTTCAGCCTGGCGGTTCCCTGCGTTTAAGTTGCACTGCCTCGGGATTTACCTTCAGCATGCACGCAATGACTTGGTATCGGCAAGCTCCAGGAAAGCAGCGGGAATTAGTCGCAGTAATTACTTCGCATGGAGACCGGGCGAATTACACAGACTCCGTGCGCGGACGCTTCACAATTTCCCGCGACAATACCAAAAACATGGTTTATCTGCAAATGAATTCCCTGAAACCAGAGGATACCGCTGTTTACTACTGCAATGTCCCACGGTATGACAGTTGGGGGCAGGGCACCCAAGTAACGGTCTCCTCGGGTGGCGGTTATCCTTACGATGTCCCCGATTATGCGTAAATCGTAAGATTAAGCCGAGACTCTCATGGCGCAGGTAATCAACACCAATTCCCTTAGCCTTCTGACGCAAAACAATCTTAACAAATCTCAGTCTGCCTTGGGCACGGCTATTGAGCGCCTGTCATCTGGCTTAAGAATCAATTCTGCGAAGGATGATGCGGCGGGTCCGCTTGGTTTGGCTGGTCAGGTTCAACTTGTTGAAAGCGGAGGCGGATTAGCTCAACCCGGCGGCTCTTTACGTCTTTCCTGCGCTGCCTCTGGGTCCACTATTAGCTCCGTTGCCGTGGGTTGGTACCGTCAAACCCCAGGCAACCAACGTGAATGGGTTGCGACATCCAGCACCAGTAGCACAACCGCCACGTATGCAGACTCGGTAAAGGGGCGCTTCACGATTAGTCGTGACAACGCAAAGAACACGATCTACCTTCAGATGAACTCTCTGAAGCCAGAGGACACAGCCGTGTACTATTGTAAGACGGGACTTACAAATTGGGGGCGCGGAACGCAGGTTACCGTAAGCTCGGGTGGTGGCCATCATCACCATCACCATTAAGCTTGACACC
3.pFliC-P-Luxは、IL12、IL18、IL15、αPDL1N、およびαCTLA4Nを有するペンタシストロン性オペロンと、luxオペロンとを含有する(N=ナノボディ)
生物発光により腫瘍定着を追跡するために、luxオペロンをpFliC-Pプラスミドに挿入した。
【0150】
pGRG36-LacUV5-Luxを、LacUV5-Luxオペロンの供給源として使用した。
LacUV5-Luxオペロンを、以下のプライマーを用いてpLux(6)から増幅した。
【0151】
Lux PacI Fwd 60.2:
5’ACT GTT AAT TAA GAA GAC CTT CCA TTC TG 3’
Lux XhoI Rev 60.4:
5’-AGG ATT CTC GAG TTA TCA ACT ATC AAA CGC TTC GGT TAA G-3’
PCR産物をPacIおよびXhoIで消化し、同じ酵素で切断したpGRG36(7)にライゲートした。組換えpGRG36-LacUV5-Luxプラスミドを、プラスミドの制限消化およびこのプラスミドを含む細菌の生物発光によって確認した。pGRG36-LacUV5-LuxプラスミドをPacIおよびXhoIで切断し、末端を平滑にした。pFliC-PをHindIIIで切断し、末端を平滑化し、アルカリホスファターゼで処置した。これらの2つの切断プラスミドをライゲートし、株χ6212を形質転換するのに使用した。得られたコロニーを生物発光についてスクリーニングし;プラスミドを陽性クローンから単離し、構築物をPCR及シークエンシングによって確認した。このプラスミドを使用して株χ3730Aを形質転換し、プラスミドを形質転換体から単離した。このプラスミドを使用して株BCT14を形質転換し、Lux発現をコロニー生物発光によって再び確認した。
【0152】
文献
【0153】
【表6】
【0154】
実施例IV
株の構築
BCT2(χ11091+fliC-fljB-fimH-rfaL-pgtE
Salmonella enterica Typhimurium株χ11091を出発点として使用し、毒性低減のために以下の変更を行ったBCT2株を作製した:fliC遺伝子の欠失;fljB遺伝子の欠失;fimH遺伝子の欠失;rfaL遺伝子の欠失;および発現を増加させるために、pgtEプロモーターにおける一ヌクレオチド変更
これらの変更は全て、DIRexプロトコル(1)を用いて行った。これらの実験の詳細は、以前に記載された(2)。
【0155】
BCT2E(BCT2+eca-)
腸内細菌共通抗原(3)遺伝子座(eca)を、DIRexプロトコル(1)および以下のプライマーを使用して、毒性を低減するためにBCT2において欠失させた:
eca FP1:
AAGTGTAATGTTCTAACAGGTCTCTTCTAGGAGCTGGCGTTCTCCCTTCTGATGAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
eca RP1:
CCATAAGCACAATCCGCTGCTCAAGTCATCAGAAGGGAGAACGCCAGCTCCTAGAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
【0156】
【表7】
【0157】
表1.株BCT2およびBCT2Eの毒性。各々9匹のマウスの2つのコホートからのデータに基づいて、非腫瘍負荷Balb/Cマウスの尾静脈に注射された株BCT2Eは、株BCT2で観察された毒性の半分未満をもたらす。全てのマウスは、以前に記載されたように(2、11)100マイクロリットルの注射を受け、以下のように改変された。2日目:(4mg/kg VDA+50mg/kg CBD)IP。0日目:4×10cfuのBCT2(pLux)またはBCT2E(pLux)-3時間-4×10cfuのBCT2(pLux)またはBCT2E(pLux)-2時間-(1mg/kg VDA+50mg/kg CBD)。0~3=正常~不良のスケールで被毛/運動性を観察した。BCT2コホートのうち、極度の体重減少を起こし瀕死になったマウス1匹と、1日目に死亡が確認されたBCT2Eコホートのマウス1匹は異常値とみなし、解析には含めなかった。
【0158】
BCT5(BCT2+rpoS-+viaB)
rpoS遺伝子は、RNAポリメラーゼシグマ因子をコードする(4)。この遺伝子を、DIRexプロトコル(1)および以下のプライマーを用いて欠失させた。
【0159】
rpoS FP1:
TTGCTAGTTCCGTCAAGGGATCACGGGTAGGAGCCACCTTGTACCCTTGTCAAAAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
rpoS RP1:
AAGGCCAGTCGACAGACTGGCCTTTTTTTGACAAGGGTACAAGGTGGCTCCTACCGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
Salmonella Typhi Ty2(5、6)からViaB莢膜をコードする遺伝子座をPCR増幅し、λred組換え(7)を用いてattTn7部位でBCT2染色体に挿入した。
【0160】
viaB PCRフォワードプライマー:5’-CGGGGTACCAGTATGACGTTCTGACGGTT-3’
viaB PCRリバースプライマー:5’-CGGGGTACCATTTTCAGCTCTGAAGTACA-3’
BCT14(BBCT2+fljA-rflP-flgKL-motAB-;flhDp→FF+20;eca-)
細菌から発現された免疫調節因子を腫瘍微小環境に分泌するために鞭毛III型分泌系(8)を利用し、毒性を更に低減するために、BCT2株にいくつかの欠失を作製した。全ての変更は、DIRexプロトコル(1)および示されたプライマーを用いて行った。
【0161】
fljA遺伝子の欠失
fljA FP1:
ATTCGGGGCTTTTTCATTTAGCATAGATGAATATATATTTCGCCTACGGTAATAAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
fljA RP1:
AGTTTTACTTTTCTCACGGAATTTTTTATTACCGTAGGCGAAATATATATTCATCGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
rflP遺伝子の欠失
rflP FP1:
ACTGGATGGCGAATAGCGCCCTAACCATGGGACTGGCGTA CCTTTCTGTTTGCCGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
rflP RP1:
AGACGGTTAATCACCGGTTAAACACCGGCAAACAGAAAGG TACGCCAGTCCCATGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
flgKL遺伝子の欠失
flgKL FP1:
GCCGATAACAACGAGTATTGAAGGATTAAAAGGAACCATCCACCTCTTTTTGAAAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
flgKL RP1:
AAAACATATCCAGTTTCGTGATATGTTTCAAAAAGAGGTGGATGGTTCCTTTTAAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
motAB遺伝子の欠失
motAB FP1:
CTGCGCATCCTGTCATAGTCAACAGCGGAAGGATGATGTCTAGCGTGAGCATGGAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
motAB RP1:
AAATGTCTGATAAAAATCGCTAATATCCATGCTCACGCTA GACATCATCCTTCCGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
鞭毛遺伝子の発現のためのflhDpプロモーター配列を腫瘍特異的FF+20プロモーターで置き換えて(9)、これらの遺伝子の発現を腫瘍微小環境に限定した。
【0162】
プロモーター置き換え:flhDp→FF+20
flhDp→FF+20FP1-2:
GGATGCTTCATTTAAATGGGTGAACAAGGAAAGCTAAAAGGGATCAGGTAAATTTGATGTACATCAAATGGATCCAGATCGATGTTTAAAGATCCCCCCTCACTCCTGCCATCATTCTGATATTGAAAT AAGAGAGGAGGAACATAAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
flhDp→FF+20RP1:
AAATGTGTTTTAGCAACTCGGATGTATGCATTGTTCCCATTTATGTTCCTCCTCTCTTATTTCAATATCAGAATGATGGCAGGAGTGAGGGGGGATCTTTAAACATCGATCTGGATCCATTTGATGTACATCAAATTTACCTGATCCGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
BCT2E株に関して毒性を低減するためのeca遺伝子座(3)の欠失
eca FP1:
AAGTGTAATGTTCTAACAGGTCTCTTCTAGGAGCTGGCGTTCTCCCTTCTGATGAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
eca RP1:
CCATAAGCACAATCCGCTGCTCAAGTCATCAGAAGGGAGAACGCCAGCTCCTAGAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC
BCT14-PL-Lux
PL-Luxオペロンを、λred組換えを用いて染色体のattTn7部位に挿入した(7)。この構築物において、luxオペロンはλPLプロモーターによって駆動される(10)。luxオペロンを、PLプロモーター配列および関連する制限酵素部位を含む以下のプライマーを用いてpLux(2)から増幅した。
【0163】
PL-Lux PacI Fwd:
5’-ACT GTT AAT TAA TTA TCT CTG GCG GTG TTG ACA TAA ATA CCA CTG GCG GTG ATA CTG AGC ACA TCA GCA GGA CGC ACT GAC CCA CAA TAG GAG GAA CAT AAA TGA CTA AA-3’
Lux XhoI Rev 60.4:
5’-AGG ATT CTC GAG TTA TCA ACT ATC AAA CGC TTC GGT TAA G-3’
PCR産物をPacIおよびXhoIで消化し、同じ酵素で切断したpGRG36(7)にライゲートした。組換えpGRG36-PL-Luxプラスミドを、プラスミドの制限消化およびこのプラスミドを含む細菌の生物発光によって確認した。次いで、pGRG36-PL-LuxからのPL-Luxオペロンを、λred組換え(7)を用いてBCT13染色体のattTn7部位に挿入し、続いてBCT2Eについて記載されるようにeca遺伝子座(3)を欠失させた。
【0164】
文献
【0165】
【表8-1】
【0166】
【表8-2】
【0167】
実施例V
株:
BCT15(BCT14+viaB遺伝子座)
Salmonella Typhi Ty2(χ8073)(1、2)からViaB莢膜をコードする遺伝子座をPCR増幅し、λred組換え(3)を用いてBCT14染色体のattTn7部位に挿入した。
【0168】
viaB PCRフォワードプライマー:5’-CGGGGTACCAGTATGACGTTCTGACGGTT-3’
viaB PCRリバースプライマー:5’-CGGGGTACCATTTTCAGCTCTGAAGTACA-3’
BCT16(BCT14+glmS-)
株χ6212、χ3730A、およびBCT14においてglmS遺伝子(4)を欠失させ、asd欠失に加えて別の平衡致死性選択をもたらした。DIRexプロトコル(5)を、BCT14における欠失のために以下のプライマーを用いて使用した。
【0169】
glmS FP1
【0170】
【化1】
【0171】
glmS RP1
【0172】
【化2】
【0173】
プラスミド:
pGlmS
pGlmSは、BCT16におけるglmS染色体欠失を補完するglmS遺伝子を含有する。pGlmSを構築するために、pNG.1プラスミドをBspH1およびBspE1で消化し、BspH1およびEcoR1-HFで切断したpGlmS gBlock1、ならびにEcoR1-HFおよびBspE1で切断したpGlmS gBlock2にライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212 glmS-を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミドをシークエンシングしてpGlmS構築物を確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730A glmS-を形質転換し、プラスミドを形質転換体から単離した。
【0174】
pGlmS gBlock1(1058bp)
【0175】
【化3】
【0176】
pGlmS gBlock2(2404bp)
【0177】
【化4】
【0178】
pGlmS-CXCL9-10
pGlmS-CXCL9-10を作製するために、pGlmSプラスミドをNheIで消化し、平滑末端化し、アルカリホスファターゼで処置した。pFliC-CXCL9-10をHindIIIおよびDraIIIで消化し、平滑末端化し、消化したpGlmSプラスミドにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212glmS-を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミド構築物をシークエンシングによって確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730AglmSを形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT16を形質転換するのに使用した。
【0179】
pGlmS-aCD47N(N=ナノボディ)
pGlmS-aCD47を作製するために、pGlmSプラスミドをNheIで消化し、平滑末端化し、アルカリホスファターゼで処置した。pFliC-aCD47をHindIIIおよびDraIIIで消化し、平滑末端化し、消化したpGlmSプラスミドにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212glmS-を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミド構築物をシークエンシングによって確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730AglmS-を形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT16を形質転換するのに使用した。
【0180】
pGlmS-INF(インターフェロンα+λバイシストロン性オペロン)
pGlmS-INFを作製するために、pGlmSプラスミドおよびpGmsS-INF gBlockをNheIおよびBsaIで消化した。消化したpGlmSプラスミドをアルカリホスファターゼで処置し、消化したgBlockにライゲートした。ライゲーションを使用して株χ6212glmS-を形質転換し、プラスミドDNAを単離し、プラスミド構築物をシークエンシングによって確認した。正しいプラスミドを使用して株χ3730AglmS-を形質転換し;プラスミドを形質転換体から単離し、株BCT16を形質転換するのに使用した。
【0181】
pGlmS-INF gBlock(1710bp)
【0182】
【化5】
【0183】
文献
【0184】
【表9】
【0185】
いくつかの実施形態
1.弱毒化サルモネラ菌細胞であって、
a)IL-6分泌を誘導する細胞表面タンパク質をコードする1以上のサルモネラ菌遺伝子における変異または欠失であって、該1以上の細胞表面タンパク質の発現が減少するかまたは全く発現しなくなる、変異または欠失と、任意選択で、
b)対照細胞と比較して、補体活性化を阻害する1以上の外膜プロテアーゼの発現の増加、および/または細胞表面リポ多糖タンパク質(LPS)の発現の減少と、
を含む、細胞。
【0186】
2.S.Typhimurium細胞である、実施形態1に記載の細胞。
3.1以上のサルモネラ菌遺伝子が、フラジェリン、フィンブリア、O抗原、および/またはリポ多糖タンパク質(LPS)をコードする、実施形態1または2に記載の細胞。
【0187】
4.1以上のサルモネラ菌遺伝子が、fliC、fljB、fimH、および/またはrfaLである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の細胞。
5.1以上の外膜プロテアーゼがPgtEである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の細胞。
【0188】
6.腸内細菌共通抗原遺伝子座(eca)の欠失を更に含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の細胞。
7.rpoS遺伝子の欠失、glmSの欠失、および/またはviaB遺伝子座の付加を更に含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の細胞。
【0189】
8.fljA、rflP、flgKL、および/またはmotAB遺伝子の1つ以上の欠失を更に含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の細胞。
9.flhDPプロモーターが腫瘍特異的発現プロモーターで置き換えられている、実施形態1~8のいずれか1つに記載の細胞。
【0190】
10.腫瘍特異的発現プロモーターが、FF+20プロモーターである、実施形態9に記載の細胞。
11.細胞は、外因性免疫調節因子タンパク質を発現する1以上の外因性免疫調節因子遺伝子を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の細胞。
【0191】
12.免疫調節因子遺伝子が、IL-12、IL-18、IL-15、CXCL9-10、αCTLA-4単鎖可変フラグメント(scFv)、αPD-L1 scFv、αCTLA-4単一ドメイン抗体(sdAb)、αPD-L1 sdAbおよび/またはαCD47 sdAbを発現する、実施形態11に記載の細胞。
【0192】
13.免疫調節因子タンパク質が細胞から分泌されている、実施形態11~12のいずれか1つに記載の細胞。
14.1以上の外因性免疫調節因子遺伝子が、腫瘍特異的発現プロモーターの制御下にある、実施形態11~13のいずれか1つに記載の細胞。
【0193】
15.腫瘍特異的発現プロモーターが、FF+20である、実施形態14に記載の細胞。
16.実施形態1~15のいずれか1つに記載の細胞集団またはその組み合わせと、薬学的に許容される担体と、を含む組成物。
【0194】
17.がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の実施形態1~15のいずれか1つに記載の細胞集団、その組み合わせ、または実施形態16に記載の組成物を、がんを処置するように投与することを含む、方法。
【0195】
18.腫瘍成長/増殖を阻害するか、または腫瘍の体積/サイズを減少させる方法であって、それを必要とする対象に、腫瘍成長を抑制するか、または腫瘍の体積を減少させるように、有効量の実施形態1~15のいずれか1つに記載の細胞集団、その組み合わせ、または実施形態16に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【0196】
19.転移を処置する、転移の形成/数を減少させる、または転移の広がりを阻害する方法であって、それを必要とする対象に、転移を処置する、転移の形成/数を減少させる、または転移の広がりを阻害するように、有効量の実施形態1~15のいずれか1つに記載の細胞集団、その組み合わせ、または実施形態16に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【0197】
20.腫瘍、がん、または転移が、肺、肝臓、腎臓、乳房、前立腺、膵臓、結腸、頭頸部、卵巣、および/もしくは消化器系腫瘍、腫瘍関連細胞、がん、または転移である、実施形態17~19のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
21.細胞または組成物が、全身投与、例えば静脈内投与される、実施形態17~20のいずれか1つに記載の方法。
22.細胞が2回以上投与される、実施形態17~21のいずれか1つに記載の方法。
【0199】
23.血管破壊剤(VDA)および/またはカンナビジオール(CBD)を投与することを更に含む、実施形態17~22のいずれか1つに記載の方法。
24.VDAおよび/またはCBDが、処置前および/または処置中に(細胞の少なくとも1回の投与後に)投与される、実施形態24に記載の方法。
【0200】
25.VDAおよび/またはCBDが2回以上投与される、実施形態23または24に記載の方法。
26.VDAが、VDAコンブレタスタチンA4ホスフェートおよび/またはVDA CKD-516である、実施形態23~25のいずれか1つに記載の方法。
【0201】
27.抗インターロイキン-6(IL-6)が投与される、実施形態17~26のいずれか1つに記載の方法。
28.サルモネラ菌の毒性を低減する方法であって、該サルモネラ菌が、
a)IL-6分泌を誘導する細胞表面タンパク質をコードする1以上のサルモネラ菌遺伝子の欠失であって、該1以上の細胞表面タンパク質の発現が減少するかまたは全く発現しなくなる、欠失と、任意選択で、
b)対照細胞と比較して、補体活性化を阻害する1以上の外膜プロテアーゼの発現の増加、および/または細胞表面リポ多糖タンパク質(LPS)の発現の減少と、
を含む、方法。
【0202】
29.サルモネラ菌が、S.Typhimurium細胞である、実施形態28に記載の方法。
30.1以上のサルモネラ菌遺伝子が、フラジェリン、フィンブリア、O抗原、および/またはリポ多糖タンパク質(LPS)をコードする、実施形態28または29に記載の方法。
【0203】
31.1以上のサルモネラ菌遺伝子が、fliC、fljB、fimH、および/またはrfaLである、実施形態28~30のいずれか1つに記載の方法。
32.1以上の外膜プロテアーゼがPgtEである、実施形態28~31のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
33.腸内細菌共通抗原遺伝子座(eca)の欠失を更に含む、実施形態28~32のいずれか1つに記載の方法。
34.rpoS遺伝子の欠失および/またはviaB遺伝子座の付加を更に含む、実施形態28~33のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
35.fljA、rflP、flgKL、および/またはmotAB遺伝子の1つ以上の欠失を更に含む、実施形態28~34のいずれか1つに記載の方法。
36.flhDPプロモーターが腫瘍特異的発現プロモーターで置き換えられている、実施形態28~35のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
37.腫瘍特異的発現プロモーターが、FF+20プロモーターである、請求項36に記載の方法。
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、個別の刊行物、特許、または特許出願の各々が、具体的かつ個別に、参照により組み込まれるように示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる用語の定義が、本明細書で定義される用語と矛盾する場合、本明細書が優先するものとする。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
【国際調査報告】