(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20240905BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240905BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240905BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240905BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240905BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M4/525
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515486
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 KR2022015960
(87)【国際公開番号】W WO2023068807
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0139182
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0134631
(32)【優先日】2022-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ウォン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ユ・スン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ソル・ジ・パク
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ04
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H050AA10
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、リチウム塩、有機溶媒、化学式1で表される第1添加剤、および化学式2で表される第2添加剤を含む非水電解液と、遷移金属の全含量中のニッケルの含量が70モル%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、を含むリチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、有機溶媒、下記化学式1で表される第1添加剤、および下記化学式2で表される第2添加剤を含む非水電解液と、
遷移金属の全含量中のニッケルの含量が70モル%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極と、
負極活物質を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、を含む、リチウム二次電池:
【化1】
(前記化学式1中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、直接結合;または炭素数1~5のアルキレン基であり、
【化2】
前記化学式2中、
Aは、-NR3R4、炭素数3~5の含窒素ヘテロ環基、または炭素数3~5の含窒素ヘテロアリール基であり、
前記R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基であり、
R5は、炭素数1~3のアルキレン基である。)
【請求項2】
前記第2添加剤は、下記化学式2-1または化学式2-2で表されるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池:
【化3】
【化4】
(前記化学式2-1および2-2中、
R3~R5は、前記化学式2での定義のとおりである。)
【請求項3】
前記化学式1のR1は直接結合であり、R2は炭素数1~5のアルキレン基である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記化学式2のAは、炭素数3~5の含窒素ヘテロアリール基である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記第1添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として0.01重量%~5重量%である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記第2添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として0.01重量%~5重量%である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記非水電解液の全重量を基準として前記第1添加剤および第2添加剤の含量がそれぞれ1重量%以上5重量%以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記非水電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,3-プロパンスルトン(PS)、エチレンサルフェート(ESa)、スクシノニトリル(SN)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF
4)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiDFOB)、およびリチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)から選択される1種以上の第3添加剤をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記有機溶媒は、環状カーボネート系溶媒および直鎖状カーボネート系溶媒の混合物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式3で表されるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
[化学式3]
Li
1+x(Ni
aCo
bMn
cM
d)O
2
(前記化学式3中、
Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上であり、
0≦x≦0.2、0.70≦a<1、0<b≦0.25、0<c≦0.25、0≦d≦0.1、a+b+c+d=1である。)
【請求項11】
前記化学式3のa、b、c、およびdはそれぞれ、0.80≦a≦0.95、0.025≦b≦0.15、0.025≦c≦0.15、0≦d≦0.05である、請求項10に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月19日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0139182号および2022年10月19日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2022-0134631号に基づく優先権の利益を主張し、その全ての内容は本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、特定の添加剤の組み合わせを含む電解液、および高ニッケル正極材を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、一般に、リチウムを含有している遷移金属酸化物からなる正極活物質を含む正極と、リチウムイオンを貯蔵可能な負極活物質を含む負極との間にセパレータを介在して電極組立体を形成し、前記電極組立体を電池ケースに挿入した後、リチウムイオンを伝達する媒体となる非水電解液を注入してから密封する方法により製造される。
【0004】
リチウム二次電池は、小型化が可能であり、エネルギー密度および使用電圧が高いため、モバイル機器、電子製品、電気自動車などの多様な分野に適用されている。リチウム二次電池の適用分野が多様化するに伴い、求められる物性条件も益々高くなっており、特に、高温条件でも安定して駆動されることができるリチウム二次電池の開発が求められている。
【0005】
一方、高温条件でリチウム二次電池が駆動される場合、電解液に含まれているLiPF6などのリチウム塩からPF6
-アニオンが熱分解され、PF5などのルイス酸を発生させることがあり、これは、水分と反応してHFを生成させる。かかるPF5、HFなどの分解産物は、電極の表面に形成されている被膜を破壊する恐れがあるだけでなく、有機溶媒の分解反応を起こす恐れがある。
【0006】
また、電解液分解産物が正極活物質の分解産物と反応して遷移金属イオンを溶出させ、溶出された遷移金属イオンが負極に電着されて、負極の表面に形成されている被膜を破壊する恐れがあるため、電池の性能がさらに低下する恐れがある。
【0007】
特に、高容量の電池を実現するために、正極活物質中のニッケルの含量を増加させる場合、初期容量特性は改善されるが、充放電が繰り返されると、反応性の高いNi4+イオンが多量発生して正極活物質の構造が崩壊し、これにより、電池の劣化速度が激しくなるという問題がある。
【0008】
したがって、高ニッケル正極材を含み、且つ高温条件でも優れた性能を維持することができる二次電池の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであって、2種の特定の添加剤の組み合わせを含む非水電解液を導入することで、高温性能が向上した高ニッケル正極活物質を含むリチウム二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によると、本発明は、
リチウム塩、有機溶媒、下記化学式1で表される第1添加剤、および下記化学式2で表される第2添加剤を含む非水電解液と、
遷移金属の全含量中のニッケルの含量が70モル%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極と、
負極活物質を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、を含むリチウム二次電池を提供する。
【0011】
【0012】
前記化学式1中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、直接結合;または炭素数1~5のアルキレン基であり、
【化2】
前記化学式2中、
Aは、-NR3R4、炭素数3~5の含窒素ヘテロ環基、または炭素数3~5の含窒素ヘテロアリール基であり、
前記R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基であり、
R5は、炭素数1~3のアルキレン基である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るリチウム二次電池は、高ニッケル(High-Ni)正極活物質を含み、且つ特定の添加剤の組み合わせを含む電解液を含むことで、優れた高温安定性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
一般に、リチウム二次電池用電解液に広く用いられるLiPF6などのリチウム塩に含まれているアニオンは、熱分解または水分などにより、フッ化水素(HF)とPF5のような分解産物を形成することになる。かかる分解産物は酸(acid)の性質を有しており、電池内で被膜もしくは電極の表面を劣化させる。
【0016】
電解液の分解産物と、繰り返される充放電による正極の構造変化などにより、正極中の遷移金属が電解液の内部に溶出されやすく、溶出された遷移金属は正極にさらに再蒸着(Re-deposition)して正極の抵抗を増加させる。さらに、溶出された遷移金属が電解液を介して負極に移動する場合、負極に電着され、SEI(solid electrolyte interphase)膜の破壊、およびさらなる電解質分解反応の原因となり、これにより、リチウムイオンの消費および抵抗が増加するなどの問題が発生する。
【0017】
また、電池の初期活性化時に、電解液反応により正極および負極に保護被膜が形成されるが、被膜が上記の理由から不安定になる場合、充放電もしくは高温露出時にさらなる電解液の分解が起こり、電池の劣化を促進し、ガスを発生させる。
【0018】
特に、ニッケルの含量が高い正極活物質を含む電池は、初期容量特性は改善されるが、充放電が繰り返される場合、副反応によりリチウム副産物およびガス発生量が増加し、電解液の分解反応が深化する恐れがある。
【0019】
かかる問題を解決するために、本発明者らは、下記化学式1で表される第1添加剤、および前記第1添加剤に比べて高い電位で還元反応が起こる第2添加剤を非水電解液に含ませ、これにより、初期充電時に第2添加剤が先に被膜を形成することで、第1添加剤のガス低減効果が極大化されるようにした。また、第2添加剤は、PF5と結合してHFの生成を抑えることにより、第1添加剤により正極の表面に形成されるCEI(cathode electrolyte interphase)膜の破壊を防止し、第1添加剤の効果を極大化することができ、さらなる電解質分解反応を抑えることができる。
【0020】
以下では、本発明をなす各構成についてより詳細に説明する。
【0021】
非水電解液
本発明に係るリチウム二次電池は、リチウム塩、有機溶媒、下記化学式1で表される第1添加剤、および下記化学式2で表される第2添加剤を含む非水電解液を含む。
【0022】
以下で、非水電解液の各成分を具体的に説明する。
【0023】
(1)第1添加剤および第2添加剤
本発明の非水電解液は、下記化学式1で表される第1添加剤を含む。
【0024】
【0025】
前記化学式1中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、直接結合;または炭素数1~5のアルキレン基である。
【0026】
前記化学式1で表される第1添加剤は、コハク酸無水物(succinic anhydride)を含む構造により、初期充電時には負極に被膜を形成することになり、後には高電位状態の正極の表面で分解されながら被膜を形成することができる特性を有するため、電池のガス発生量を低減するのに効果的である。
【0027】
本発明の一実施態様において、前記化学式1のR1およびR2は、それぞれ独立して、直接結合;または炭素数1~5の直鎖状または分岐状のアルキレン基であってもよい。
【0028】
本発明の一実施態様において、前記化学式1のR1およびR2は、それぞれ独立して、直接結合;または炭素数1~5の直鎖状のアルキレン基であってもよい。
【0029】
本発明の一実施態様において、前記化学式1のR1およびR2は、それぞれ独立して、直接結合;またはメチレン基であってもよい。
【0030】
本発明の一実施態様において、前記化学式1のR1は直接結合であり、R2は炭素数1~5のアルキレン基であってもよい。
【0031】
本発明の一実施態様において、前記化学式1のR1は直接結合であり、R2はメチレン基であってもよい。
【0032】
本発明の一実施態様において、前記第1添加剤は、下記化学式1Aで表されるものであってもよい。
【0033】
【0034】
本発明の一実施態様において、前記第1添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として、0.01重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%、より好ましくは1.5重量%~2.5重量%であってもよい。第1添加剤の含量が5重量%以下であるものが、電池の駆動時に発生するガスを低減し、且つ電池抵抗の増加を最小化することができる点から好ましい。
【0035】
本発明の非水電解液は、下記化学式2で表される第2添加剤を含む。
【0036】
【0037】
前記化学式2中、
Aは、-NR3R4、炭素数3~5の含窒素ヘテロ環基、または炭素数3~5の含窒素ヘテロアリール基であり、
前記R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基であり、
R5は、炭素数1~3のアルキレン基である。
【0038】
前記化学式2で表される第2添加剤は、プロパルギル(Propargyl)官能基を含むため、かかる官能基が還元分解されながら、負極の表面に不動態能の高いSEI膜を形成し、負極自体の高温耐久性を改善するだけでなく、負極の表面における遷移金属の電着を防止することができる。また、前記プロパルギル基により、正極に含まれている金属性不純物の表面に吸着され、不純物が溶出しにくくする機能を果たすことができ、これにより、溶出された金属イオンが負極上に析出されて発生し得る内部短絡を抑えることができる。
【0039】
さらに、第2添加剤は、前記第1添加剤に比べて、負極で還元反応が起こる電位がより高いため、初期充電時に、負極上への被膜の形成に第2添加剤が先に消費される。これにより、初期充電時に還元されていない第1添加剤が多量に残ることとなり、後で高電位の正極表面で第1添加剤が酸化分解し、正極の表面に被膜を形成して正極と電解質の副反応を抑えることで、ガス低減効果を極大化する。
【0040】
具体的に、前記第1添加剤の還元電位は1.1V~1.3Vであり、前記第2添加剤の還元電位は1.5V~1.7Vであってもよい。本発明において、還元電位は還元分解電位であり、下記実験例1に記載の方法により測定された値を意味する。
【0041】
本発明の一実施態様において、前記第2添加剤は、下記化学式2-1または化学式2-2で表されるものであってもよい。
【0042】
【0043】
【0044】
前記化学式2-1および2-2中、
R3~R5は、前記化学式2での定義のとおりである。
【0045】
本発明の一実施態様において、前記化学式2のAは、炭素数3~5の含窒素ヘテロアリール基であってもよく、好ましくは、前記第2添加剤は、前記化学式2-2で表されるものであってもよい。
【0046】
本発明の一実施態様において、前記化学式2のR5は、炭素数1~3の直鎖状または分岐状のアルキレン基であってもよく、好ましくは、炭素数1~3の直鎖状のアルキレン基、より好ましくはメチレン基であってもよい。
【0047】
本発明の一実施態様において、前記第2添加剤は、下記化学式2Aで表されるものであってもよい。
【0048】
【0049】
本発明の一実施態様において、前記第2添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として、0.01重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%、より好ましくは1.5重量%~2.5重量%であってもよい。第2添加剤の含量が5重量%以下であることが、負極に被膜を形成するとともに、電池の抵抗増加を最小化できる点から好ましい。
【0050】
また、前記非水電解液の全重量を基準として、前記第1添加剤および第2添加剤の含量は、それぞれ1重量%以上、好ましくは1.5重量%以上、最も好ましくは2.0重量%以上であってもよい。この場合、ガスの発生量を低減するとともに、電圧降下現象を緩和することができる。但し、電池の抵抗増加を防止する点から、前記第1添加剤および第2添加剤の含量がそれぞれ5重量%以下であることが好ましい。
【0051】
本発明の一実施態様において、前記非水電解液中の第1添加剤および第2添加剤の重量比は、1:2~2:1、好ましくは1:1~2:1であってもよい。
【0052】
(2)第3添加剤
本発明の非水電解液は、高電圧環境で電解液が分解されて電極の崩壊が引き起こされることを防止するか、低温高率放電特性、高温安定性、過充電防止、高温での電池膨張抑制の効果などをさらに向上させるために、必要に応じて、第3添加剤をさらに含んでもよい。
【0053】
前記第3添加剤は、環状カーボネート系化合物、ハロゲン置換のカーボネート系化合物、スルトン系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系またはホスファイト系化合物、ニトリル系化合物、アミン系化合物、シラン系化合物、ベンゼン系化合物、およびリチウム塩系化合物から選択される1種以上であってもよい。
【0054】
前記環状カーボネート系化合物は、ビニレンカーボネート(VC)およびビニルエチレンカーボネート(VEC)から選択される1種以上であってもよく、具体的に、ビニレンカーボネートであってもよい。
【0055】
前記ハロゲン置換のカーボネート系化合物は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)であってもよい。
【0056】
前記スルトン系化合物は、負極の表面で還元反応による安定なSEI膜を形成することができる物質であって、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,4-ブタンスルトン、エテンスルトン、1,3-プロペンスルトン(PRS)、1,4-ブテンスルトン、および1-メチル-1,3-プロペンスルトンから選択される1種以上の化合物であってもよく、具体的に、1,3-プロパンスルトン(PS)であってもよい。
【0057】
前記サルフェート系化合物は、負極の表面で電気的に分解され、高温貯蔵時にもクラックが生じない安定なSEI膜を形成することができる物質であって、エチレンサルフェート(Ethylene Sulfate;Esa)、トリメチレンサルフェート(Trimethylene sulfate;TMS)、またはメチルトリメチレンサルフェート(Methyl trimethylene sulfate;MTMS)から選択される1種以上であってもよい。
【0058】
前記ホスフェート系またはホスファイト系化合物は、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート、およびトリス(トリフルオロエチル)ホスファイトから選択される1種以上であってもよい。
【0059】
前記ニトリル系化合物は、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、4-フルオロフェニルアセトニトリル、エチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル(ASA3)、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(HTCN)、1,4-ジシアノ2-ブテン(DCB)、および1,2,3-トリス(2-シアノエチル)プロパン(TCEP)から選択される1種以上であってもよい。
【0060】
前記アミン系化合物は、トリエタノールアミンおよびエチレンジアミンから選択される1種以上であってもよく、前記シラン系化合物はテトラビニルシランであってもよい。
【0061】
前記ベンゼン系化合物は、モノフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、およびテトラフルオロベンゼンから選択される1種以上であってもよい。
【0062】
前記リチウム塩系化合物は、非水電解液に含まれるリチウム塩と異なる化合物であり、リチウムジフルオロホスフェート(LiDFP;LiPO2F2)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB;LiB(C2O4)2)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムテトラフェニルボレート、およびリチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(LiDFOP)から選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0063】
好ましくは、本発明の一実施態様に係る非水電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,3-プロペンスルトン(PRS)、エチレンサルフェート(ESa)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、エチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル(ASA3)、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(HTCN)、1,4-ジシアノ2-ブテン(DCB)、1,2,3-トリス(2-シアノエチル)プロパン(TCEP)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiODFB)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(LiDFOP)、およびリチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)から選択される1種以上の第3添加剤をさらに含んでもよい。
【0064】
より好ましくは、本発明の一実施態様に係る非水電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,3-プロパンスルトン(PS)、エチレンサルフェート(ESa)、スクシノニトリル(SN)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiDFOB)、およびリチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)から選択される1種以上の第3添加剤をさらに含んでもよい。この場合、前記第1添加剤および第2添加剤による被膜形成効果に加えて、負極および正極に緻密な被膜を形成することで、イオン伝達特性およびサイクル性能の改善、および高温での副反応を抑えるシナジー効果がある。
【0065】
一方、前記第3添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として、0.1重量%~10重量%であってもよく、好ましくは、0.2重量%~2重量%であってもよい。前記第3添加剤の含量が上記の範囲である場合、正極および負極への緻密な被膜形成による副反応抑制、および電池の長期寿命耐久性の増大効果が得られる。
【0066】
(3)有機溶媒
本発明の非水電解液は、有機溶媒を含む。
【0067】
前記有機溶媒としては、リチウム電解質に通常用いられる種々の有機溶媒が制限されずに使用できる。例えば、前記有機溶媒は、環状カーボネート系溶媒、直鎖状カーボネート系溶媒、直鎖状エステル系溶媒、環状エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物であってもよく、好ましくは、環状カーボネート系溶媒および直鎖状カーボネート系溶媒の混合物を含んでもよい。
【0068】
前記環状カーボネート系溶媒は、高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高いため電解質中のリチウム塩を解離させやすく、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、およびビニレンカーボネートからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、エチレンカーボネート(EC)またはプロピレンカーボネート(PC)を含んでもよい。
【0069】
また、前記直鎖状カーボネート系溶媒は、低粘度および低誘電率を有する有機溶媒であって、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、またはジエチルカーボネート(DEC)を含んでもよい。
【0070】
前記有機溶媒は、高いイオン伝導率を有する電解液を製造するために、環状カーボネート系溶媒と直鎖状カーボネート系溶媒の混合物を用いることが好ましい。
【0071】
前記直鎖状エステル系溶媒は、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、およびブチルプロピオネートから選択される1種以上であってもよく、好ましくは、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、またはプロピルプロピオネートであってもよい。
【0072】
前記環状エステル系溶媒は、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、およびε-カプロラクトンから選択される1種以上であってもよい。
【0073】
前記ニトリル系溶媒は、スクシノニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、および4-フルオロフェニルアセトニトリルから選択される1種以上であってもよく、好ましくは、スクシノニトリルであってもよい。
【0074】
前記非水電解液の全重量中において、有機溶媒を除いた他の構成成分、例えば、前記化学式1で表される第1添加剤、前記化学式2で表される第2添加剤、前記第3添加剤、およびリチウム塩の含量を除いた残部は、別に断らない限り、全て有機溶媒である。
【0075】
(4)リチウム塩
本発明の非水電解液は、リチウム塩を含む。
【0076】
前記リチウム塩としては、リチウム二次電池用電解液に通常用いられるものなどが制限されずに使用でき、具体的に、前記リチウム塩は、カチオンとしてLi+を含み、アニオンとして、F-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、B10Cl10
-、AlCl4
-、AlO4
-、PF6
-、CF3SO3
-、CH3CO2
-、CF3CO2
-、AsF6
-、SbF6
-、CH3SO3
-、(CF3CF2SO2)2N-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、BF2C2O4
-、BC4O8
-、BF2C2O4CHF-、PF4C2O4
-、PF2C4O8
-、PO2F2
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、C4F9SO3
-、CF3CF2SO3
-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、CF3(CF2)7SO3
-、およびSCN-から選択される何れか1つ以上を含んでもよい。
【0077】
具体的に、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiN(FSO2)2(LiFSI)、LiTFSI、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Lithium bis(pentafluoroethanesulfonyl)imide、LiBETI)、LiSO3CF3、LiPO2F2、リチウムビス(オキサレート)ボレート(Lithium bis(oxalate)borate、LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(Lithium difluoro(oxalate)borate、LiFOB)、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(Lithium difluoro(bisoxalato) phosphate、LiDFOP)、リチウムテトラフルオロ(オキサレート)ホスフェート(Lithium tetrafluoro(oxalate) phosphate、LiTFOP)、およびリチウムフルオロマロナト(ジフルオロ)ボレート(Lithium fluoromalonato(difluoro) borate、LiFMDFB)から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、LiPF6であってもよい。
【0078】
本発明の一実施態様において、前記リチウム塩および有機溶媒を含む非水性有機溶液中のリチウム塩の濃度は、0.5M~4.0M、具体的に0.5M~3.0M、より具体的に0.8M~2.0Mであってもよい。リチウム塩の濃度が上記の範囲である場合、低温出力改善およびサイクル特性改善の効果を十分に確保するとともに、粘度および表面張力が過度に高くなることを防止し、適切な電解液含浸性が得られる。
【0079】
正極
本発明に係るリチウム二次電池は、遷移金属の全含量中のニッケルの含量が70モル%以上であるリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極を含む。
【0080】
遷移金属の全含量中のニッケルの含量が70モル%以上である、高ニッケル(High-Ni)の正極活物質は、構造的に不安定であるため、高温および高電位で正極活物質の崩壊および割れが発生し得る。このように崩壊された活物質は、表面積が増加することで、電解質と副反応が起こり得るサイト(site)が増加することになり、これにより、高温/高電位に露出された際に、多量のガスが発生する。このようにガスが持続して発生する場合、電池の内部圧力が高くなり、早期にベント(vent)が発生し、電池の寿命が終わる前に作動が止まることとなる。そのため、このような副反応およびガス発生を改善することが重要であるが、本発明の前記第1添加剤および第2添加剤を含む非水電解液により被膜の形成を強化することで、それを改善することができる。
【0081】
本発明の一実施態様において、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式3で表されるものであってもよい。
【0082】
[化学式3]
Li1+x(NiaCobMncMd)O2
【0083】
前記化学式3中、
Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上であり、
0≦x≦0.2、0.70≦a<1、0<b≦0.25、0<c≦0.25、0≦d≦0.1、a+b+c+d=1である。
【0084】
好ましくは、前記a、b、c、およびdは、それぞれ、0.80≦a≦0.95、0.025≦b≦0.15、0.025≦c≦0.15、0≦d≦0.05であってもよい。
【0085】
本発明に係る正極は、正極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む正極スラリーを正極集電体上にコーティングした後、乾燥および圧延することで製造することができる。
【0086】
前記正極集電体としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが用いられてもよい。
【0087】
前記正極活物質は、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として、80重量%~99重量%、具体的には90重量%~99重量%で含まれてもよい。この際、前記正極活物質の含量が80重量%以下である場合、エネルギー密度が低くなり、容量が低下する恐れがある。
【0088】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合、および集電体への結合を補助する成分であって、通常、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として、1重量%~30重量%の含量で添加されてもよい。かかるバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、またはこれらの種々の共重合体であってもよい。
【0089】
また、前記導電材は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を付与する物質であって、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として、0.5重量%~20重量%で添加されてもよい。
【0090】
前記導電材の例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、およびサーマルブラックなどのカーボンブラック;天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブおよびグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維および金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、およびニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛およびチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;およびポリフェニレン誘導体などの導電性素材から選択されてもよい。
【0091】
また、前記正極スラリーの溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone))などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、バインダー、および導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられることができる。例えば、正極活物質、バインダー、および導電材を含む正極スラリー中の固形分の濃度が40重量%~90重量%、好ましくは50重量%~80重量%となるように含まれてもよい。
【0092】
負極
本発明に係るリチウム二次電池は、負極活物質を含む負極を含み、前記負極は、負極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む負極スラリーを負極集電体上にコーティングした後、乾燥および圧延することで製造することができる。
【0093】
前記負極集電体は、一般に、3μm~500μmの厚さを有する。かかる負極集電体は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅;ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;銅またはステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの;またはアルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することで負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で用いられてもよい。
【0094】
また、前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質;金属またはこれらの金属とリチウムの合金;金属複合酸化物;リチウムをドープおよび脱ドープできる物質;リチウム金属;および遷移金属酸化物から選択される1つ以上を含んでもよい。
【0095】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質としては、リチウムイオン二次電池で一般に用いられる炭素系負極活物質であれば特に制限されずに使用可能であり、その代表例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらをともに用いてもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状、または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛などのような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)、ハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0096】
前記金属またはこれらの金属とリチウムの合金としては、Cu、Ni、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、およびSnからなる群から選択される金属またはこれらの金属とリチウムの合金が使用できる。
【0097】
前記金属複合酸化物としては、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、Bi2O5、LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、およびSnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族の元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)からなる群から選択される1種以上が使用できる。
【0098】
前記リチウムをドープおよび脱ドープできる物質としては、Si、SiOx(0<x<2)、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO2、Sn-Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらの少なくとも1つとSiO2を混合して用いてもよい。前記元素Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db(dubnium)、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0099】
前記遷移金属酸化物の例としては、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0100】
本発明の一実施態様において、前記負極活物質は黒鉛を含んでもよい。
【0101】
前記負極活物質は、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として、80重量%~99重量%で含まれてもよい。
【0102】
前記バインダーは、導電材、活物質、および集電体の間の結合を補助する成分であって、通常、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として、1重量%~30重量%の含量で添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、またはこれらの種々の共重合体などが挙げられる。
【0103】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として、0.5重量%~20重量%で添加されてもよい。このような導電材としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどのカーボンブラック;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブまたはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末またはニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
【0104】
前記負極スラリーの溶媒は、水;またはNMPおよびアルコールなどの有機溶媒を含んでもよく、前記負極活物質、バインダー、および導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられてもよい。例えば、負極活物質、バインダー、および導電材を含むスラリー中の固形分の濃度が30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%となるように含まれてもよい。
【0105】
セパレータ
本発明に係るリチウム二次電池は、前記正極と負極との間にセパレータを含む。
【0106】
前記セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、リチウム二次電池でセパレータとして通常用いられるものであれば特に制限されずに使用可能であり、特に、電解液のイオンの移動に対して低抵抗であり、且つ優れた電解液含浸能力および安全性を有するものが好ましい。
【0107】
具体的には、セパレータとして、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム;またはこれらの2層以上の積層構造体が使用可能である。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれた、コーティングされたセパレータが用いられてもよく、単層または多層構造として用いられてもよい。
【0108】
上記のような本発明に係るリチウム二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器;およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用に用いられることができる。
【0109】
これにより、本発明の他の実施形態によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール、およびそれを含む電池パックが提供される。
【0110】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;および電力貯蔵用システムの何れか1つ以上の中大型デバイスの電源として利用されることができる。
【0111】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)形、またはコイン(coin)形などであってもよい。
【0112】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用可能であるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールにおける単位電池としても好適に使用可能である。
【0113】
以下、具体的な実施例により本発明を具体的に説明する。
【0114】
<実施例>
実施例1.
(非水電解液の製造)
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を30:70の体積比で混合した後、LiPF6が1.2Mとなるように溶解させ、非水性有機溶液を製造した。前記化学式1Aで表される化合物0.5wt%、前記化学式2Aで表される化合物0.5wt%、ビニレンカーボネート(VC)1wt%、1,3-プロパンスルトン(PS)1wt%、および残部の前記非水性有機溶液を混合し、非水電解液100wt%を製造した。
【0115】
(リチウム二次電池の製造)
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に、正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、導電材(カーボンブラック)、およびバインダー(ポリビニリデンフルオライド)を98:1:1の重量比で添加し、正極スラリー(固形分の含量:60重量%)を製造した。前記正極スラリーを厚さ13.5μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行って正極を製造した。
【0116】
負極活物質(黒鉛)、バインダー(SBR-CMC)、および導電材(カーボンブラック)を97.6:2.2:0.2の重量比で、溶媒である水に添加して負極スラリー(固形分の含量:60重量%)を製造した。前記負極スラリーを厚さ6μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行って負極を製造した。
【0117】
前記正極、無機物粒子(Al2O3)が塗布されたポリオレフィン系多孔性セパレータ、および負極を順に積層して電極組立体を製造した。
【0118】
パウチ形の電池ケース内に上記で組み立てられた電極組立体を収納し、上記で製造された非水電解液を注液してリチウム二次電池を製造した。
【0119】
実施例2.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Aで表される化合物の含量を1.0wt%に変更したことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0120】
実施例3.
非水電解液の製造時に、前記化学式2Aで表される化合物の含量を1.0wt%に変更したことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0121】
実施例4.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Aで表される化合物の含量を1.0wt%に変更し、前記化学式2Aで表される化合物の含量を1.0wt%に変更したことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0122】
実施例5.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Aで表される化合物の含量を2.0wt%に変更し、前記化学式2Aで表される化合物の含量を2.0wt%に変更したことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0123】
比較例1.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Aで表される化合物および前記化学式2Aで表される化合物を添加しなかったことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0124】
比較例2.
非水電解液の製造時に、前記化学式2Aで表される化合物を添加しなかったことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0125】
比較例3.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Aで表される化合物を添加しなかったことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0126】
<実験例>
実験例1.還元電位の測定
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を20:80の体積比で混合した後、LiPF6が1.0Mとなるように溶解させて非水性有機溶液を製造した。前記非水性有機溶液99gに前記化学式1Aで表される化合物1gを投入して混合し、非水電解液を製造した。
【0127】
このように製造された非水電解液を、黒鉛電極とリチウム箔電極との間にポリエチレン(PE)セパレータが介在された構成の2032コインセルに注液した後、黒鉛電極の電位が0.05Vに達するまでリチウムイオンを黒鉛電極に挿入させながら、前記化学式1Aで表される化合物が反応する電位を測定した。測定された電位値を下記表1に還元電位範囲として記載し、これは基準電極であるLiに対する電位値である。
【0128】
前記化学式2Aで表される化合物の還元電位範囲も同様の過程により測定し、下記表1に記載した。
【0129】
【0130】
実験例2.ガス発生量の評価
前記実施例および比較例で製造されたそれぞれのリチウム二次電池を、25℃で0.2C CCで活性化した後、脱ガスを行った。次いで、常温でエージングした後、4.20Vまで0.33C CC/CVで充電した後、70℃で4週間保管した。高温保管後、リチウム二次電池内で発生したCOおよびCO2などのガス発生量を測定し、比較例1で測定されたガス発生量を100%としたときの各電池の相対的なガス発生量を計算し、下記表2に示した。
【0131】
実験例3.電圧降下の評価
前記実施例および比較例で製造されたそれぞれのリチウム二次電池を、0.1C CCで活性化した後、脱ガスを行った。次いで、25℃でのOCV(Open Circuit Voltage、mV)を測定し、この電池を60℃で8週間保管した後、OCVをさらに測定した。高温保管前と後のOCV値の差(dOCV)を下記表2に示した。
【0132】
【0133】
前記表2の結果から、化学式1で表される第1添加剤および化学式2で表される第2添加剤を両方とも含む電解液を使用した実施例1~5の電池は、高ニッケル正極活物質を含んでいるにもかかわらず、高温保管後におけるガス発生量およびOCV減少量が、比較例1~3の電池に比べて少ないことが確認できる。
【0134】
中でも、第1添加剤および第2添加剤の含量が何れも1重量%以上である実施例4および5は、ガス発生量およびOCV減少量が少なく測定されたことが確認できる。特に、実施例5は、最も少ないガス発生量およびOCV減少量が測定されたことが確認できる。
【0135】
これに対し、第1添加剤および第2添加剤を何れも含まない電解液を使用した比較例1の電池、第1添加剤のみを含む電解液を使用した比較例2の電池、および第2添加剤のみを含む電解液を使用した比較例3の電池は、実施例1の電池に比べて、高温保管後におけるガス発生量およびOCV減少量が何れもより高いことが確認できる。
【国際調査報告】