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特表2024-533412波形の整数倍に基づく電気機械トルク調節
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】波形の整数倍に基づく電気機械トルク調節
(51)【国際特許分類】
   H02P 31/00 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H02P31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515534
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 US2022040153
(87)【国際公開番号】W WO2023038760
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,888
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520347203
【氏名又は名称】トゥラ イーテクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ユンキンズ,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルカッツ,マーク
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501CC04
5H501CC06
5H501DD01
5H501DD04
5H501DD06
5H501DD09
5H501GG04
5H501HB07
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ17
5H501LL51
(57)【要約】
波形の整数倍に基づく電気機械トルク調節のための方法、システム、およびデバイスを本明細書に開示する。電気機械のパルス動作を指示するように構成されたある電気機械コントローラは、パルス波形の波形サイクルの整数倍に対応する期間に基づいて平均トルクを計算するパルスコントローラを利用することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械のパルス動作を指示するように構成された電気機械コントローラであって、前記電気機械コントローラは、パルス波形の波形サイクルまたはサブサイクルの整数倍に対応する期間に基づいて平均トルクを計算するパルスコントローラを利用する、
電気機械コントローラ。
【請求項2】
前記機械コントローラは、動作速度、トルク、および回転速度のうちの少なくとも1つにおける変化と、前記電気機械の極の数とを乗算したものに応じて、第1の出力レベルを変化させるように構成される、
請求項1に記載の電気機械コントローラ。
【請求項3】
連続する第1の出力レベルパルス間の期間が前記波形サイクルであり、前記波形サイクルは、電気機械の動作時に変化する、
請求項1に記載の電気機械コントローラ。
【請求項4】
前記波形サイクルは、前記電気機械の回転速度の関数として変化する、
請求項3に記載の電気機械コントローラ。
【請求項5】
所望の出力を発揮するように電気機械にパルス動作させる電気機械コントローラであって、前記電気機械の前記パルス動作によって、前記電気機械の出力が第1の出力レベルと、前記第1の出力レベルよりも低い第2の出力レベルとの間で交互に変化し、
前記電気機械コントローラは、特定の期間にわたりパルス波形にしたがって前記電気機械のパルス化のタイミングを指示するパルスコントローラを含み、前記パルス波形は、ある数の波形サイクルから構成され、
前記パルスコントローラは、前記パルス波形の波形サイクルの整数倍に対応する期間に基づいて平均トルクを計算する、
電気機械コントローラ。
【請求項6】
前記第1および第2の出力レベルは、前記電気機械が、前記所望の出力を発揮するように前記電気機械を連続的に駆動するために必要とされる第3の出力レベルで動作する場合に前記電気機械が有するエネルギー変換効率よりも高いエネルギー変換効率を前記電気機械の前記パルス動作時に有するように選択される、
請求項5に記載の電気機械コントローラ。
【請求項7】
前記第2の出力レベルは、ゼロトルクである、
請求項6に記載の電気機械コントローラ。
【請求項8】
前記電気機械のパルス動作時に、前記電気機械がゼロトルクを出力する時間の少なくとも一部の間前記電気機械をオフにする、
請求項7に記載の電気機械コントローラ。
【請求項9】
連続する第1の出力レベルパルスの始点間の期間が前記波形サイクルであり、前記波形サイクルは、前記電気機械の動作時に変化する、
請求項5に記載の電気機械コントローラ。
【請求項10】
前記波形サイクルは、前記電気機械の回転速度の関数として変化する、
請求項9に記載の電気機械コントローラ。
【請求項11】
電気機械と、
電力コンバータと、
所望の出力を発揮するように電気機械にパルス動作させる電気機械コントローラであって、前記電気機械の前記パルス動作によって、前記電気機械の出力が第1の出力レベルと、前記第1の出力レベルよりも低い第2の出力レベルとの間で交互に変化し、前記電気機械コントローラは、特定の期間にわたりパルス波形にしたがって前記電気機械のパルス化のタイミングを指示するパルスコントローラを含み、前記パルス波形は、ある数の波形サイクルから構成され、前記パルスコントローラは、前記パルス波形の波形サイクルの整数倍に対応する期間に基づいて平均トルクを計算する、電気機械コントローラと
を備える、システム。
【請求項12】
前記電気機械は、モータとして動作し、前記電力コンバータは、インバータを含む、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気機械は、発電機として動作し、前記電力コンバータは、整流器またはインバータを含む、
請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記電気機械は、モータおよび発電機の少なくとも一方として動作するように構成される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記パルスコントローラは、前記電気機械が少なくとも10回/秒の周波数でパルス化されるように構成される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記パルスコントローラは、前記電気機械が前記第1出力レベルと前記第2出力レベルとの間で1秒あたり少なくとも100回切り替わるように構成される、
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記電気機械は、
同期リラクタンス機械と、
永久磁石同期リラクタンス機械と、
ハイブリッド永久磁石同期リラクタンス機械と、
スイッチトリラクタンス機械と、
外部励磁AC同期機械と、
永久磁石同期機械と
を含む群から選択される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記電気機械は、ブラシレスDC電気機械である、
請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記電気機械は、
外部励磁DC電気機械と、
永久磁石DC電気機械と、
直列巻きDC電気機械と、
分流DC電気機械と、
ブラシ付DC電気機械と、
複合DC電気機械と
を含む群から選択される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
前記電気機械は、
渦電流機械と、
ACリニア機械と、
ACおよびDC機械式整流機械と、
軸方向磁束機械と
を含む群から選択される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項21】
電気機械のトルクフィードバック信号を、安全プロセスが開始される必要があるかどうかを判断するコントローラに送ることを制御する電気機械コントローラであって、前記判断は、前記トルクフィードバック信号および命令されたトルク信号の差と閾値との比較に基づき、前記電気機械コントローラは、安全プロセスが開始される必要があるかどうかを判断する前記コントローラにトルクフィードバック信号を送る前に、故障検出閾値より下の正常動作下で、前記命令された値との真の差が表されるように平均値を補正するために、前記トルクフィードバック信号を調節する、
電気機械コントローラ。
【請求項22】
電気機械と、
電力コンバータと、
電気機械のトルクフィードバック信号を、安全プロセスが開始される必要があるかどうかを判断するコントローラに送ることを制御する電気機械コントローラであって、前記判断は、前記トルクフィードバック信号と閾値との比較および命令されたトルク信号と閾値との比較に基づき、前記電気機械コントローラは、正常動作下に、前記命令された値との真の差が表されるように平均値を補正するために、トルクフィードバック信号を調節し、前記電気機械コントローラは、安全プロセスが開始される必要があるかどうかを判断する前記コントローラに前記トルクフィードバック信号を送る前に、前記トルクフィードバック信号を前記閾値より下の値に調節する、電気機械コントローラと
を備える、システム。
【請求項23】
電気機械の電源からのフィードバック信号を、安全プロセスが開始される必要があるかどうかを判断するコントローラに送ることを制御する電気機械コントローラであって、前記判断は、前記フィードバック信号と閾値との比較および命令されたトルク信号と閾値との比較に基づき、前記電気機械コントローラは、正常動作下に、前記命令された値との真の差が表されるように平均値を補正するために、トルクフィードバック信号を調節し、前記電気機械コントローラは、安全プロセスが開始される必要があるかどうかを判断する前記コントローラに前記フィードバック信号を送る前に、前記フィードバック信号を前記閾値より下の値に調節する、電気機械コントローラ。
【請求項24】
前記電気機械コントローラは、前記フィードバック信号を調節するためのローパスフィルタを含む、
請求項23に記載の電気機械コントローラ。
【請求項25】
前記電気機械コントローラは、前記電気機械コントローラによって実行可能な、パルス幅変調波形の一期間にわたる平均値を決定するための命令を含む、
請求項23に記載の電気機械コントローラ。
【請求項26】
前記電源は、電力コンバータまたはバッテリのうちの1つであり、前記電気機械コントローラは、前記フィードバック信号を調節するためのローパスフィルタを含む、
請求項23に記載の電気機械コントローラ。
【請求項27】
前記電力コンバータは、インバータである、
請求項26に記載の電気機械コントローラ。
【請求項28】
前記電源は、電力コンバータまたはバッテリのうちの1つであり、前記電気機械コントローラは、前記電気機械コントローラによって実行可能な、パルス幅変調波形の一期間にわたる平均値を決定するための命令を含む、
請求項23に記載の電気機械コントローラ。
【請求項29】
電気機械と、
電力コンバータと、
電気機械の電源からのフィードバック信号を、安全プロセスが開始される必要があるかどうかを判断するコントローラに送ることを制御する電気機械コントローラであって、前記判断は、前記フィードバック信号と閾値との比較および命令されたトルク信号と閾値との比較に基づき、前記電気機械コントローラは、正常動作下に、前記命令された値との真の差が表されるように平均値を補正するために、トルクフィードバック信号を調節し、前記電気機械コントローラは、安全プロセスが開始される必要があるかどうかを判断する前記コントローラに前記フィードバック信号を送る前に、前記フィードバック信号を前記閾値より下の値に調節する、電気機械コントローラと
を備える、システム。
【請求項30】
電気機械と、
電力コンバータと、
電気機械の電源からのフィードバック信号を、安全プロセスが開始される必要があるかどうかを判断するコントローラに送ることを制御する電気機械コントローラであって、前記判断は、測定された電流と推定されたトルクに基づく電流推定値との比較に基づき、前記電気機械コントローラは、安全プロセスが開始される必要があるかどうかを判断する前記コントローラに前記フィードバック信号を送る前に、前記フィードバック信号を閾値より下の値に調節する、電気機械コントローラと
を備える、システム。
【請求項31】
前記電流は、インバータバス電流である、
請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記電流は、バッテリ電流である、
請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記推定されたトルクは、少なくとも1つの電気機械-インバータ組み合わせ効率特性値に基づく、
請求項30に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気機械マネジメント方法、デバイス、およびシステム、ならびに、特に、波形の整数倍に基づく電気機械トルク調節に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において使用する「電気機械」という用語は、電気モータおよび発電機の一方または両方として動作する機械を含むように広く解釈されることが意図される。電気機械は、モータとして動作する場合、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する。電気機械は、発電機として動作する場合、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0003】
電気モータおよび発電機は、多様な用途において、および、多様な動作条件下において使用される。一般に、多くの最近の電気機械は、比較的高いエネルギー変換効率を有する。しかし、ほとんどの電気機械のエネルギー変換効率は、動作負荷に応じて大きく変化し得る。多くの用途では、電気機械が様々に異なる動作負荷条件下において動作することが要求されるが、このことは、電気機械が連続的に動作する場合、その動作効率は、その電気機械が発揮可能な動作効率に達しない場合が多い。
【0004】
例えば、任意の所与のモータ速度に対して、モータの効率は、モータの負荷が最も効率的な負荷よりも高くても低くても、多少低下する傾向にある。性能領域によっては、モータの効率は、比較的短時間で低下する傾向にある。
【0005】
モータがほとんど常に最大効率点またはその近くで動作するように動作条件を制御できれば、モータのエネルギー変換効率は、かなり良くなるであろう。電気機械が最大効率で動作することがより多くなるような条件を達成するために、電気機械の動作時にパルス化することが提案されてきた。
【0006】
機械をパルス動作で制御する場合、トルク出力の測定または推定を一期間にわたって決定する必要がある。このトルク出力を決定する従来の方法は、例えば、トルクの最近の推定値または測定値の平均化またはデジタルフィルタを使用することによって、測定または推定されたトルクを時間の関数として処理することである。パルス動作を使用する電気機械に対してこれらの方法を使用しようとする場合、これらの方法は矛盾した結果を生じさせ得るため、トルク値が不正確になり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の実施形態に係る電気機械制御アーキテクチャを図式的に例示する機能ブロック図である。
図2図2は、本開示の実施形態とともに使用され得る電気機械に対するパルス駆動信号を例示するグラフである。
図3図3は、本開示の実施形態に係るモータ制御方式を例示するフローチャートである。
図4図4は、本開示の実施形態を用いて使用され得るパルス電力に対する所望の電力推定方法論を図式的に表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、パルス波形の整数倍でパルス出力を平均化することによって、パルス電気機械マネジメントを利用するためのより良い方法を提供する。これは、新しい電気機械パルス化制御方法論を実装することによって達成できる。
【0009】
電気機械制御の従来のやり方は、連続可変トルク制御にしたがってモータを動作させるために開発されてきた。例えば、電気機械を連続的な電力印加方式で動作させる場合、100ニュートン・メートル(Nm)のトルクが発揮されることが所望されるならば、電気機械を制御する制御システムは、100Nmの起電力トルクを発揮する。しかし、いくつかの実装において、より大量のトルクをより短時間にわたって発揮する(断続的にトルク発揮をパルス化する)ことに利点を見出し得る。このパルス化動作は、より効率的であり、したがって、より望ましくあり得る。
【0010】
そのような状況において、所望のトルク出力が一期間にわたって100Nmのトルクである場合および、最も効率的なトルク生成が200Nmにおいて生じる場合、制御システムは、当該期間の50%の間200Nmのトルクを発揮する。これは、当該期間にわたって100Nmを集計したものと同じになるが、100Nmを全期間にわたって提供する場合よりも効率的である。200Nmのトルクの発揮は、時間間隔をあけてパルス状に発揮できる。例えば、一期間は、20個のセグメントを有することができ、そのうちの10個のセグメントが200Nmであり、10個のセグメントが0Nmである(例えば、交互に200Nm、0Nm、200Nm、0Nm、...)。他の実装スケジュールが可能であり、より望ましい動作を提供し得る。例えば、より効果的な振動制御を提供し得る。
【0011】
このパルス化技術は、一般に、連続的に動作し得る電気機械(例えば、電気モータおよび発電機)のパルス制御に関する。そのようなパルス技術は、動作条件が適切な場合、電気機械のエネルギー変換効率を向上させることができる。より具体的には、選択された動作条件下で、電気機械は、より効率的なエネルギー変換動作レベルで断続的に駆動(パルス化)され、従来の連続モータ制御で達成され得るよりも良いエネルギー効率で所望の平均トルクを発揮する。
【0012】
パルスは、パルス幅変調(電気機械がオン状態にある持続時間を変化させる)またはパルス密度変調(特定の期間におけるパルスの数)に基づいて調節できる。パルスは、これらのやり方で、トルク出力の要求ならびに性能および効率の考慮に基づいて調節できる。そのようなパルス化技術のいくつかの目標は、トルクを正確にかつ応答性良く発揮させることであるが、トルク制御もまた達成可能でなければいけない。例えば、電気機械が動作するように設計されていない性能領域で電気機械を動作させるようにトルクを発揮させることは、とりわけ、トルクが制御不能となる例となり得るが、これは、安全性または機器のダメージ問題を生じさせ得る。
【0013】
従来、多くのタイプの電気機械は、当該機械をモータとして使用し所望のトルク出力を発揮させる場合、連続的な(場合によっては変動するが)駆動電流によって駆動される。駆動電流は、モータに入力される電圧となる電力コンバータ(例えば、インバータ)の出力電圧を制御することによってマネジメントされることが多い。逆に、多くのタイプの発電機の電力出力は、磁場の強さを制御することによってマネジメントされる。これは、例えば、励磁器によって回転子コイルに供給される励磁電流を制御することによって達成され得る。
【0014】
パルス制御を用いると、機械の出力は「トルクオン」状態と「低トルク」状態との間でインテリジェントにかつ断続的に変調される。これは、(1)動作要求を満たすとともに、(2)全体的な効率を向上させるように行われる。言い換えると、選択された動作条件下に、電気機械は、より効率的なエネルギー変換動作レベル(「トルクオン」状態)で断続的に駆動され、所望の出力を発揮する。
【0015】
パルス間の期間において、機械は、理想的には、トルクを生成もしないし、消費もしない(「低(例えば、ゼロ)トルク」状態)。これは、概念的には、電気機械を「オフ」にすることと考えることができる。いくつかの実装において、これは、例えば、モータへの駆動電流または発電機のための励磁電流を遮断することによって、電気機械を実質的に「オフ」にすることによって達成できる。しかし、他の実装において、電気機械は、「低トルク」状態の間、電気機械によって生成されるトルクをゼロにしようとするか、または特定の機械に対して実用的または適切であり得る程度にゼロに近づけようとするやり方で制御され得る。特に、固定子における電磁場を介して回転子において電場が誘導されるモータ(「AC誘導モータ」)に対して、磁場生成の時定数は、電動モータにおけるあるレベルの連続した「磁場」電流を維持することを必要とし得る。いくつかの実装において、電気機械とともに使用される任意の電力コンバータも、「低トルク」期間の少なくとも一部の間、実質的にオフにされ得る。
【0016】
電気機械の制御(例えば、フィードバック、フィードフォワードなど)は、連続的または実質的に連続的な制御方針に基づく。すなわち、電気機械の使用中のどの時点においても、その制御システムは、電気機械を作動させるか否かを決定するために制御方針を利用している。現在のパルス制御プロセス下において、瞬間的なトルクのサンプリングまたは連続的な平均化を利用する場合には、トルク要求を満たすかどうかの推定などが不正確になり得る。さらに、トルクサンプルのみがトルクセキュリティが適切に実装されているかどうかの指標として使用される場合、トルクセキュリティプロセスは、不正確になり得る。
【0017】
例えば、パルスイベントがいつ発生すべきかを決定するために、実際の時間または将来における予測された時間のいずれかの時間にわたって「連続平均」が取られる。しかし、パルスイベントを用いると、電気機械の出力は、オン(例えば、図4においては、1によって示される)またはオフ(図4においては、ゼロによって示される)のいずれかである。現在、連続的な平均化は、波形サイクル(波形サイクルは、波形が特定の値(例えば、0.5)において始まり、その同じ値に戻るサイクル)よりも小さい増分で平均を取る。いくつかの場合において、増分は、ミリ秒増分やマイクロ秒増分などの、波形サイクルよりも非常に小さい増分であることが可能である。平均化という観点からは、連続的な平均化を使用すると、電気機械がパルス式にオンにされるか、または、オフにされるかに基づいてその値が上昇したり、下降したりする。
【0018】
発生し得る潜在的な不正確さの例として、1.5個の波形サイクルがサンプリングされた場合に、各波形サイクル中に電気機械がパルス式にゼロから1に、次いで再びゼロにされると、トルク値は、ゼロから1に、そしてゼロに、次いで再び1になり、推定されるトルク出力は、実際の出力値の0.5ではなく、約0.66となり得る。次いで、この誤った値は、後続のパルスにおいてどれだけのトルクを提供するか、および/または、時間にわたって必要となるパルスの数を計算するために使用され得、その結果、誤った計算が生じ、これは、性能および/または効率に影響を与え得る。
【0019】
別の例において、コントローラは、ミリ秒またはマイクロ秒ごとに平均化を行っているが、パルスが50Hzであるパルス密度方針と組み合わされる場合、ミリ秒の例について、100Nmが所望のトルク出力であり、実際の出力であるので平均が100Nmであることが所望されるときは、平均トルクが0Nmである平均化された期間、および、平均トルクが200Nmである他の時間が存在し得る。最大誤差は、平均化された波形の数に基づくので、整数ベースのアプローチと相関のないほんの少数の波形に基づく平均化は、高い誤差レベル有し得る。
【0020】
この問題を解決するための1つの方法は、より長い期間(例えば、10秒)にわたって平均をとることである。そのような方法は、100Nmに近いか、または、100Nmである平均値を提供し得るが、推定器は、トルク入力システムへの変化に対する応答性を失い得る(例えば、任意の意味のある変化を反映するのに約10秒かかり得る)。
【0021】
これに対して、本開示の実施形態は、パルス化周期(すなわち、波形サイクル)の倍数に対応する平均化周期を利用する方法論を提供する。さらに、本開示の実施形態において、制御方針は、波形サイクルまたはそのサイクルのセグメントの整数倍の間隔に基づく平均化を利用する。このやり方において、平均化は、その期間にわたる実際の出力により正確に対応する。例えば、波形サイクルまたはその倍数に対応する間隔において、周期的な平均化/フィードバック条件は、正確である(すなわち、電気機械がサイクルの半分に対して0、サイクルの半分に対して1で動作する場合に、1サイクルにわたって0.5)。
【0022】
本明細書で教示される実施形態は、トルクまたは速度が比較的頻繁に変化しているなどの動的環境において、特に有益であり得る。また、当該実施形態は、システムが高度に正確であることを可能にするとともに、システムが異なるトルク要求に対して応答可能であることを可能にする。
【0023】
電気機械(例えば、電気モータおよび発電機)のパルス制御を容易にして、動作条件が適切な場合に電気機械のエネルギー変換効率を向上させる様々な方法、コントローラ、おおび電気機械システムを記載する。より具体的には、選択された動作条件下で、電気機械コントローラが電気機械のパルス動作を指示するように構成される。ここで、電気機械コントローラは、パルス波形の波形サイクルまたは当該サイクルのセグメントの整数倍に対応する時間周期に基づいて平均トルクを計算するパルスコントローラを利用する。
【0024】
さらに、いくつかの実施形態において、電気機械コントローラは、所望の出力を発揮するように電気機械にパルス動作させることができる。ここで、電気機械のパルス動作によって、電気機械の出力は、第1の出力レベルと、第1の出力レベルよりも低い第2の出力レベルとの間で交互するようにされる。ここで、電気機械コントローラは、特定の期間にわたってパルス波形にしたがって電気機械のパルス化のタイミングを指示するパルスコントローラを含む。ここで、パルス波形は、ある数の波形サイクルで構成され、パルスコントローラは、パルス波形の波形サイクルまたは当該サイクルのセグメントの整数倍に対応する期間に基づいて平均トルクを計算する。
【0025】
いくつかの実施形態において、電気機械は、所望の出力が所与のモータ速度に対して指定された出力レベル未満である場合にはパルス方式で駆動され、所望のモータ出力が指定された出力レベル以上である場合には連続方式で駆動される。
【0026】
いくつかの実施形態において、電気機械の出力を制御するために電力コンバータが使用される。用途に応じて、電力コンバータは、インバータ、整流器、または他の適切な電力コンバータの形態をとり得る。
【0027】
パルス化の周波数は、任意の特定の用途の要件に応じて大きく変化し得る。例として、様々な実施形態において、電気機械は、1秒当たり少なくとも10回、100回、または1000回、第1出力レベルと第2出力レベルとの間で交互する。
【0028】
いくつかの実施形態において、システムは、電気機械と、電力コンバータと、所望の出力を発揮するように電気機械にパルス動作させる電気機械コントローラとを含むことができる。ここで、電気機械のパルス動作によって、電気機械の出力は、第1の出力レベルと、第1の出力レベルよりも低い第2の出力レベルとの間で交互するようにされる。ここで、電気機械コントローラは、特定の期間にわたってパルス波形にしたがって電気機械のパルス化のタイミングを指示するパルスコントローラを含む。ここで、パルス波形は、ある数の波形サイクルで構成される。ここで、パルスコントローラは、パルス波形の波形サイクルまたは当該サイクルのセグメントの整数倍に対応する期間に基づいて平均トルクを計算する。
【0029】
他の実施形態において、電気機械のパルス化を制御するためにパルス幅変調コントローラが使用される。そして、いくつかの他の実施形態において、デルタ-シグマ変調コントローラが使用される。
【0030】
いくつかの実施形態において、第1の出力レベルは、電気機械の現在の動作速度における変化に応じて変化する。様々な実施形態において、第1の出力レベルは、電気機械の現在の動作速度において最も高いシステムまたは電気機械のエネルギー変換効率であるか、または、それに近い電気機械出力レベルに対応し得る。いくつかの実施形態において、パルス化のデューティサイクルは、所望の出力の変化に応じて変化する。いくつかの実施形態において、パルス化のデューティサイクルは、動作速度、トルク、および回転速度のうちの少なくとも1つにおける変化と、極の数とを乗算したものに応じて変化する(例えば、4極電気機械は、1回転あたり4回調節し得る)。
【0031】
上記の機能のすべてを実装するための機械コントローラおよび電気機械システムを記載する。様々な実施形態において、当該システムは、モータ、発電機、またはモータ/発電機として動作するように構成され得る。
【0032】
様々な実施形態において、電気機械は、誘導機械、スイッチトリラクタンス電気機械、同期AC電気機械、同期リラクタンス機械、スイッチトリラクタンス機械、永久磁石同期リラクタンス機械、ハイブリッド永久磁石同期リラクタンス機械、外部励磁AC同期機械、永久磁石同期機械、ブラシレスDC電気機械、電気励磁DC電気機械、永久磁石DC電気機械、直列巻きDC電気機械、分流DC電気機械、ブラシ付DC電気機械、複合DC電気機械、渦電流機械、ACリニア機械、ACまたはDC機械式整流機械、または軸方向磁束機械であり得る。
【0033】
以下の詳細な説明において、その一部をなす添付の図面を参照する。図面は、例示として、本開示の1つ以上の実施形態がどのように実施され得るかを示す。
【0034】
これらの実施形態は、当業者が本開示の1つ以上の実施形態を実施できるように十分に詳細に説明される。他の実施形態を使用し得ること、および、本開示の範囲から逸脱せずに、プロセス、コンピュータ化、および/または構造的な変更がなされ得ることが理解される。
【0035】
本明細書の様々な実施形態において示される要素は、本開示の多くのさらなる実施形態を提供するために、追加、交換、組み合わせ、および/または削除できることが理解されるであろう。図面に提供された要素のプロポーションおよび相対的なスケールは、本開示の実施形態を例示することが意図され、限定的な意味で解釈されるべきでない。
【0036】
本明細書における図は、最初の1つまたは複数の数字が図面の図番号に対応し、残りの複数の数字が図面における要素または構成要素を識別する番号付け規則にしたがう。
【0037】
本明細書において使用される「1つの」(「a」)または「ある数の」(「a number of」)何かは、1つまたは複数のそのようなものを指すことができる。例えば、「ある数のバルブ」は、1つまたは複数のバルブを指すことができる。本明細書では、「複数の」は、2つ以上のものを意味する。
【0038】
図1は、本開示の実施形態に係る電気機械制御アーキテクチャを図式的に例示する機能ブロック図である。様々に異なる電気機械が存在し、各機械は、それ自体の固有の効率特性を有する。したがって、パルス制御が効率性の向上を提供できる動作領域は、特定の電気機械の特性および現在の動作回転子速度を含む要因に基づいて著しく異なることになり得る。
【0039】
電気機械の多くの用途において、電源へまたは電源からの電力を電気機械によって要求とされる電圧、電流、および波形に変換するために、典型的には、電力コンバータ(例えば、インバータ)が使用され得る。例えば、インバータは、バッテリまたはコンデンサなどのDC電源から受け取った電力を、モータに印加される適切なAC入力電力に変換するために使用される。
【0040】
また、電力コンバータのエネルギー変換効率は、典型的には、コンバータの動作範囲にわたって変化し得る。したがって、インバータ/電気モータの組み合わせの一部である電気モータの制御を最適化する際に、モータ単独のエネルギー変換効率とは対照的に、インバータ/電気モータシステム全体のエネルギー変換効率を考慮することが望ましい。好ましくは、電気機械のパルス制御は、パルス化中にエネルギー変換に影響を与える構成要素のうちのいかなるすべての効率をも考慮するようにモデル化され得る。例えば、電気モータのための電力がバッテリから引き出される場合、最良のエネルギー変換効率を発揮するモータ駆動信号を決定する際に、インバータおよびモータの効率に加えて、バッテリの電力発揮効率、構成要素間の配線損失、および他の損失要因を考慮できる。
【0041】
一般に、電力コンバータ/電気機械システムの総エネルギー変換効率は、コンバータ変換効率と、電気機械変換効率と、他の構成要素の発揮効率とを乗算したものの関数である。したがって、最大のシステムエネルギー変換効率を有するパルス駆動信号のパラメータは、モータ自体に対して最良のエネルギー変換効率を提供し得るパラメータとは異なり得ることが理解されるべきである。
【0042】
図1は、電気機械を上記のように制御するのに適した制御アーキテクチャを例示する。この実施形態において、システム100は、機械コントローラ110と、パルスコントローラ(パルス生成器)120と、電源/シンク130と、電力コントローラ/コンバータ140と、電気機械160とを含む。
【0043】
パルスコントローラ120は、パルス動作が要求された際に、電気機械160のパルス化のタイミングを制御/指示する役割を担う。図1に例示された実施形態において、パルスコントローラは、その機能の説明を容易にするために、機械コントローラ110とは別個の構成要素として示す。しかしながら、様々な実施形態において、パルスコントローラは、機械コントローラ110の一部として、別個の構成要素として、電力コントローラ/コンバータ140の一部として、または他の適切な形態で実装されてもよい。
【0044】
動作する電気機械160がモータである場合、機械コントローラは、モータコントローラとして機能し、電力コントローラ/コンバータ140は、電源130から受け取った電力132をモータ160の駆動に適した形態に変換する役割を担う。電源/シンクが、電気機械によって要求または出力される形態で電力を直接供給または受け取りできる実施形態において、電力コントローラ140は、概念的に、所望のパルス化を容易にするためにモータを単純にオン/オフするスイッチまたは論理乗算器の形態をとることができる。
【0045】
電源/シンク130は、任意の適切な形態をとることができる。いくつかの実装において、電源/シンクは、バッテリまたはコンデンサの形態をとってもよい。他の実装において、電源は、電力網(例えば、「壁電源」)、太陽光発電システム、または他の利用可能な電源であってもよい。同様に、シンクは、電気負荷(電気で動作する機械または機器、建物、工場、家庭など)、電力網、または電力を使用または貯蔵する任意の他のシステムであってもよい。
【0046】
また、電力コントローラ/コンバータ140は、様々に異なる形態をとることができる。電源/シンク130がDC電源であり、電気機械160がACモータである場合、電力コントローラ/コンバータ140は、インバータの形態をとることができる。逆に、電源/シンク130がDC電源シンクであり、電気機械160がAC発電機である場合、電力コントローラ/コンバータ140は、整流器の形態をとることができる。電源/シンク130および電気機械の両方がAC構成要素である場合、電力コントローラ/コンバータ140は、双方向または4象限電力コンバータを含み得る。
【0047】
図1において、要求された出力は、113と標識され、電気機械によって発揮または受け取られるトルクは、161と標識され、モータ/発電機速度は、164と標識されている。いくつかの実施形態において、機械コントローラ110は、パルスモータ制御が所望されるか、および/または、適切である動作領域、ならびに特定の動作条件に適切な特定のデューティサイクルを定義するパルス動作マップとして機能するデータ構造115(例えば、ルックアップテーブルとして)を含む。
【0048】
所望のデューティサイクルが一旦決定されると、モータを駆動するために使用されるパルスの持続時間および性質を多様なやり方で決定/生成できる。下記により詳細に説明するように、1つの比較的単純なアプローチは、パルス幅変調(PWM)コントローラをパルスコントローラ120として使用することである。
【0049】
図1において、論理乗算器123は、パルス制御信号125と、機械コントローラ110によって出力された電力レベル信号119とを乗算して、電力コンバータ制御信号128を生成するものとして示される。論理乗算器123は、説明の目的のために示されており、実際においては、乗算器123の機能は、機械コントローラ110によって、電力コンバータ140によって、または他の適切なやり方で達成できることが理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態において、機械コントローラ110は、デューティサイクルの「オフ」相の間、電力コンバータ140の出力を単純にゼロに設定し、デューティサイクルの「オン」相の間、所望の動作出力レベル(例えば、現在の機械速度に対して最も効率的な出力レベル)に設定し得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、電気機械制御システムまたは車両制御システムは、そのようなシステムがデータ(例えば、電力コンバータフィードバック信号、トルク値、電気機械によって取り込まれた電流の分析)をモニタして、安全でない可能性のあるトルクの印加を生じ得るようなシステム内の動作不良があるかどうかを判断することを可能にする、安全プロセスを含むことができる。安全上の問題が判断された場合、コントローラは、電気機械および/または車両の乗員を保護するためにトルクの上限をさらに制限する「リンプモード(limp mode)」に車両を設定する命令を実行できる。上記条件が継続する場合、命令は、電力コンバータ140を動作不可にし(例えば、電力コンバータが電力を変換できないように電源へのリレーを開く)、それにより、ダメージまたは損傷のリスクをさらに低減できる。
【0051】
この安全プロセスは、機械コントローラ110によって、および/または、車両および/または電気機械の機能をマネジメントするために車両または電気機械に設けられた別の車両コントローラ(例えば、監視電子制御ユニット(ECU)またはシステムレベルECU)によって実行される命令によって達成できる。したがって、本開示の実施形態を利用する場合、パルスコントローラ120は、パルス波形(例えば、パルス幅変調(PWM))が上記の安全対策のいずれについても不正確に開始させないように、安全限界を考慮する必要がある。
【0052】
例えば、機械コントローラ110は、50ニュートン/メートルのトルクが必要であると判断し、当該命令要求が電力コンバータ140に送られる。しかし、電力コンバータは、0と100との間で変化するPWMを示すフィードバックメッセージを用いて応答する。そのような例において、機械コントローラおよび/または他のコントローラは、次いで、提供された応答が要求された結果ではないと判断し、その結果に基づいて、安全プロセスを開始するための行動をとるという命令を実行できる。
【0053】
しかし、本開示の実施形態において、機械コントローラおよび/または車両コントローラがそのような安全プロセス機能を有する場合、フィードバックメッセージにおいて搬送される情報は、安全プロセスの閾値を満たさないように変更できる。例えば、いくつかの実施形態において、安全プロセスが開始されるかどうかを判断するコントローラにフィードバック信号が送信される前に、トルクデータは、安全プロセス閾値(例えば、50Hz)よりも高い信号データを除去するローパスフィルタ(例えば、5Hz)に通すことができる。様々な他の実施形態において、特定のデューティサイクルを有するPWMが生成され、PWM波形の期間にわたる平均値を決定するための命令がコントローラ(例えば、マシンコントローラ110)によって実行される(例えば、PWM=50Hzであり、その期間にわたる値が平均化された後に、その平均化された値は、安全プロセスの目的のために安全プロセス閾値と比較されるべきフィードバック信号として提供できる)。
【0054】
いくつかの他の実施形態において、安全プロセスは、トルク値と電流値の組み合わせを所与のトルク値に対する期待値と比較して、電流が期待される値の範囲内にあるかどうかを判断し得る。ある数のトルク値に対するそのような電流期待値を、例えば、メモリに格納できる。
【0055】
例えば、電力コンバータは、50N/mのトルクの出力を示すフィードバック信号を送ることができるが、感知される電流(例えば、電力コンバータ、バッテリなどの電源にて感知される電流)は、500Aである。感知されたトルクおよび電流を対応するトルクの電流値または値の範囲と比較することによって、コントローラは、安全プロセスを開始する必要があるかどうかを判断できる。
【0056】
したがって、上記実施形態と同様に、ここで、いくつかの実施形態において、電流値を安全プロセスの開始閾値よりも下に維持するためにローパスフィルタを電流値に適用でき、または、他の実施形態において、上記PWM波形に適用されるものと同様の平均化処理を電流に適用できる。
【0057】
図2は、本開示の実施形態を用いて使用され得る電気機械に対するパルス駆動信号を例示するグラフである。図2は、パルス電気機械動作222の例を例示する。この特定の例において、所望の電気機械トルクは10Nmであるが、現在の動作モータ速度に対する最も効率的なトルク出力は50Nmである。概念的には、電気機械に期間の20%の間50Nmのトルクを発揮させ、期間の残りの80%の間トルクを発揮させない(ゼロトルク)ようにすることによって、10Nmの正味トルク221を発揮するように電気機械を駆動できる。モータは、10Nmのトルクを発揮するときよりも50Nmのトルクを発揮するときの方がより効率的に動作するため、電気機械の動作を上記のやり方でパルス化することにより、電気機械の総効率を向上できる。図2に例示された例において、電気機械は、5つの時間単位ごとに1つの時間単位の間50Nmの機械出力(224と標識)を生成し、次いで、電気機械は、その間の4つの時間単位の間ゼロトルクを生成するように制御される。
【0058】
所望の電気機械出力が50Nmを超えない限り、理論的には、50Nmで動作する電気機械のデューティサイクルを変更するだけで、所望の機械出力を達成できる。例えば、所望の電気機械出力を20Nmに変更する場合、50Nmで動作する電気機械のデューティサイクルを40%に増加させることができ、所望の電気機械出力を40Nmに変更する場合、デューティサイクルを80%に増加させることができ、所望の電気機械出力を5Nmに変更する場合、デューティサイクルを10%に低減させることができるなどである。より一般的には、所望の電気機械トルクが最大効率を下回る場合はいつでも、電気機械のパルス化を有利に使用できる可能性がある。
【0059】
上記のように、いくつかの実施形態において、波形周波数は、変化可能である。そのような場合、波形サイクルも変化し得る。これにより、コントローラに対して非常に応答性の良い、高忠実性フィードバック応答が可能になり得る。
【0060】
例えば、実際に使用される時間単位のスケールは、任意の特定のシステムのサイズ、性質、および設計上の必要事項に基づいて広く変化し得る。実際には、指定されたデューティサイクルを達成するために電気機械が「トルクオン」状態から「低トルク」状態に比較的急速に切り替えられる場合、電気機械がこれらの状態の間で実際に行ったり来たり切り替えられているという事実は、動作上の観点からは、電気機械の性能を実質的には劣化させないこともあり得る。いくつかの実施形態において、各オン/オフサイクルの期間のスケールは、例えば、20~1000Hz、または20~100Hzの範囲のように、100μ秒~10秒のオーダー(すなわち、0.1~10,000Hzの範囲の周波数でパルス化する)であると予想される。
【0061】
波形サイクルの低トルク部分は、概念的には、電気機械を停止させることと見され得るが、多くの場合、モータは、実際にはその期間中に停止させなくてもよいし、または、「低トルク」間隔の一部だけ停止させてもよい。
【0062】
図3は、本開示の実施形態に係るモータ制御方式を例示するフローチャートである。図3は、電気機械(160)に所望のトルクを効率的に発揮させるために機械コントローラ(例えば、図1の110)によって行われ得る制御フローを例示する。説明を簡単にするために、電気機械(160)がモータとして機能する実施形態を記載する。この構成において、電源/シンク(130)は、電源として機能し、機械コントローラ(110)は、モータコントローラとして機能する。
【0063】
まず、モータコントローラ(110)は、ブロック371によって表されるように、現在要求されているモータ出力(113)、および、現在のモータ速度(164)などの任意の必要なモータ状態情報を受け取る。次いで、モータコントローラ(110)は、決定ブロック372によって表されるように、要求された出力がパルス制御範囲内にあるかどうかを判断する。この決定は、任意の所望のやり方で行うことができる。
【0064】
例として、いくつかの実施形態において、ルックアップテーブル(115)または他の適切なデータ構造を使用して、パルス制御が適切かどうかを判断できる。いくつかの実装において、単純なルックアップテーブルによって、パルス制御が様々なモータ速度に対して適切となる最大トルクレベルを特定し得る。そのような実装において、現在のモータ速度をルックアップテーブルに対するインデックスとして使用して、現在の動作条件下でパルス制御が適切となる最大トルクレベルを取得することができる。次いで、取り出された最大トルク値を要求トルクと比較して、要求出力がパルス制御範囲内にあるかどうかを判断できる。
【0065】
他の実施形態において、ルックアップテーブルは、現在の動作条件に基づくパルス動作のための所望のデューティサイクルなどのさらなる情報を提供し得る。1つのそのような実施形態において、ルックアップテーブルに対するインデックスとして、モータ速度およびトルク要求が使用されてもよく、ルックアップテーブル内の各エントリが所望のデューティサイクルを示し、実際のトルクおよび/またはモータ速度がテーブル内で表されたインデックス値の間にある場合に、補間を使用して動作デューティサイクルを決定する。
【0066】
要求されたトルク/電流動作条件が何らかの理由でパルス制御範囲の外側にある場合、ブロック372から進む「いいえ(no)」分岐によって表されるように、従来の(すなわち、連続/非パルス)モータ制御が使用される。したがって、パルス化は、使用されず、電力コンバータは、ブロック374によって表されるように、従来のやり方で、要求された出力を発揮するようにモータを駆動するのに適したレベルでモータに電力を供給するように指示される。
【0067】
反対に、要求されたトルク/電流動作条件がパルス制御範囲内にある場合、ブロック372から進む「はい(yes)」分岐によって表されるように、パルス制御が利用される。そのような実施形態において、モータコントローラは、パルス化方式でモータに電力を供給するように電力コンバータに指示し得る。
【0068】
「オン」パルスの間、電力コンバータは、典型的には(必ずしもそうではないが)、現在のモータ速度に対する最大効率動作レベルであり得るか、または、その近くであり得る好適な出力レベルで電力を供給するように指示される。「オフ」パルスの間,モータは、理想的にはゼロトルクを出力する。いくつかの実施形態において、パルス化のタイミングは、パルスコントローラによって制御される。
【0069】
パルス動作を容易にするために、モータコントローラは、現在のモータ速度(好ましくは、現在のモータ速度でのシステムの最大効率エネルギー変換出力レベルであるか、または、それに近いが、他のエネルギー効率レベルを適宜使用できる)でのパルス動作に対して、ブロック375において所望の出力レベルを決定し、ブロック376において所望のデューティサイクルを決定する。次いで、モータコントローラおよびパルスコントローラは、ブロック378において、指定された電力レベルで所望のデューティサイクルを実装するように電力コンバータを指示する。
【0070】
概念的に、これは、電力がモータに供給される時間の一部分が所望のデューティサイクルに対応し、電力レベルが好適な出力レベルに対応するように、比較的高い周波数で電源を有効にオン/オフすることによって達成され得る。いくつかの実施形態において、デューティサイクルの「オフ」部分は、ゼロトルクを発揮するようにモータを駆動するように電力コントローラ/コンバータに指示することによって実装され得る。
【0071】
電力がパルス化される周波数は、好ましくは、機械コントローラまたはパルスコントローラによって決定される。いくつかの実施形態において、パルス化周波数は、モータのすべての動作に対して固定できるが、他の実施形態においては、モータ速度、トルク要件などの動作条件に基づいて変化し得る。例えば、いくつかの実施形態において、パルス化周波数は、ルックアップテーブルの使用を介して決定できる。
【0072】
そのような実施形態において、現在のモータ動作条件に対して適切なパルス化周波数は、モータ速度、トルク要件などの適切なインデックスを使用して参照できる。他の実施形態において、パルス化周波数は、いずれの動作条件に対しても必ずしも固定されておらず、パルスコントローラによって指図されるように変化し得る。いくつかの具体的な実施形態において、パルス化周波数は、少なくともモータのいくつかの動作領域において、モータ速度の関数として比例的に変化し得る。
【0073】
さらに、所望のパルス化レベル375および所望のデューティサイクル376を決定するために、モータの動作時に複数のトルク値を決定する必要がある。これは、本明細書に記載される整数倍に基づくトルク平均化方法論を利用して達成できる。開示の方法論を用いていることにより、378におけるパルス電力の発揮は、従来達成され得たであろうものよりも正確な電力レベルおよび/またはデューティサイクルでなされ得る。なお、可能な電力推定方法論を表す際、パルス化の詳細は、最適な効率を与えながら振動および/またはノイズに適切に対処するためのいくつかの解決策を含み得る。
【0074】
図4は、本開示の実施形態を用いて使用され得るパルス電力に対する可能な電力推定方法論を図式的に表すグラフである。図4は、実際のトルク出力450、連続的な平均化452、および波形サイクルの期間に基づく平均化454の違いを例示する。
【0075】
図4に例示されるように、実際のトルク450が、グラフの左側で、トルクの発揮を開始し、したがって、波形サイクルの半分(すなわち、0~0.5、ここで、波形サイクル期間は、下軸上で0~1である)の間、「1」(左軸上で)のトルク値を有することを示している。「1」の値を有するこのセグメントは、トルクパルスを表す。また、約1~1.5、2~2.5、3~3.5、4~4.5においてトルクパルスを示しており、そして約5から始まっている。これらのパルスの間では、トルクは、0になり、次のパルスが始まるまでそこに留まる。これが提供される実際のトルクである。
【0076】
また、図4において、連続平均化方法論に基づく連続平均452が示される。この実装において、平均化は、コントローラによって1ミリ秒間隔でなされる。この例では、トルク値が一定の1である場合に平均化が開始されるため、平均値も1である。しかし、トルクが0になると、連続平均値は、0.5に向かって下降し始める(これは、以下で詳細に記載するように、より正確な周期的平均値である)。次いで、一期間後に、トルクの発揮が開始され、トルク値は、再び1に跳ね上がる。したがって、連続平均は、再び増大し始める。例示からわかるように、連続平均は、時間の経過とともに改善され、より多くのデータポイントが平均化されるほど、平均をトルクの正確な描写までにするのに要する時間が長くなり、トルクの正確な変化を行うことが可能になるまでの遅延が長くなる。
【0077】
本明細書の記載のように、本開示に記載の整数倍方法論に基づく周期的平均454は、著しくより正確であり、電気機械の性能および効率を改善でき、平均化がわずか1波形サイクルで起こることができるため、レイテンシー(latency)は、低い。図4からわかるように、この平均は、示された波形全体および各波形サイクルにおいてトルク正味出力が0.5であるため、正確である。
【0078】
さらに、図4の例は、1、2、3、4、および5(横軸上)における点451で起こる平均化を示すが、平均が波形の長さの整数倍である限り(例えば、1.25~2.25(1の整数倍)または1.4~3.4(2の整数倍)からの平均化)、サイクル内の実際の始点および終点は、変化可能である。実施形態によっては、上記範囲の始点と終点との間(例えば、1.25と2.25との間)のすべてのデータ点の平均をとることができる。加えて、平均化された点451を集めて、別のより長い平均の生成に使用できる。
【0079】
いくつかの実施形態において、時間0.0~0.5(1.0~1.5、2.0~2.5...)または0.5~1.0(1.5~2.0、2.5~3.0、3.5~4.0...)などの、波形サイクル全長よりも短い波形サイクルの一部分について平均をとることができるが、波形の整数期間で行われる。また、これらの期間に関する情報は、電気機械のマネジメント決定を行う際に有益である。
【0080】
様々な実施形態において、トルク値は、推定(例えば、制御中の特定の電気機械または1つ以上の他の電気機械から集められ、例えばコントローラによってアクセス可能なメモリに格納されたデータに基づく)できるか、または、制御中の特定の電気機械に関係するセンサを介して測定できる。トルクは、例えば、電気機械の回転子の速度を感知することによって測定できる。また、実装によっては、電気機械に流れ込む電流または電圧を測定して、それに対応するトルク値を決定できる。
【0081】
本開示の実施形態は、波形の整数倍に基づく電気機械のトルク調節のための方法、システム、および装置を提供する。これらの実施形態は、パルス波形の波形サイクルの整数倍の使用を介してより正確な推定トルク値を提供することによって、電気機械の性能および/または効率を改善し、ならびに故障の誤検出を防止できる。
【0082】
本明細書において特定の実施形態を図示し説明したが、当業者であれば、同じ技術を達成するように計算されたいずれの構成も上記の特定の実施形態を代替できることを理解するであろう。本開示は、本開示の様々な実施形態の任意またはすべての改変または変形を含むことが意図される。
【0083】
上記説明は、例示となるようになされたものであり、限定するものではないことが理解されるべきである。上記の説明を検討すれば、当業者にとって、上記の実施形態の組み合わせや本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態が明らかとなるであろう。
【0084】
本開示の様々な実施形態の範囲は、上記の構造および方法が使用される任意の他の用途を含む。したがって、本開示の様々な実施形態の範囲は、特許請求の範囲が適用される等価物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0085】
上記詳細な説明において、本開示を簡単にする目的で、図面に図示した例示的な実施形態において、様々な特徴をまとめている。この開示方法は、本開示の実施形態が、各請求項に明示的に記載されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。
【0086】
むしろ、添付の特許請求の範囲に反映されるように、発明の主題は、開示する1つの実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に援用されており、各請求項は、それ自体で別個の実施形態である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】