(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】持続性能が向上したフレグランス
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20240905BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20240905BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240905BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C11B9/00 Z
A61Q13/00 100
A61K8/34
A61K8/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515544
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022075075
(87)【国際公開番号】W WO2023036914
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オード ドジュロン-ジュオ
(72)【発明者】
【氏名】アルノー ストリュイゥ
(72)【発明者】
【氏名】アディ ファデル
(72)【発明者】
【氏名】マドリーヌ ファム
(72)【発明者】
【氏名】アーテム キルション
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC341
4C083DD23
4C083EE06
4C083KK01
(57)【要約】
本発明は、ハンセン溶解度パラメータに基づいて選択された少なくとも1つの保香剤と、中程度および/または高揮発性を有する香料原料とに基づく、持続的なフレグランス性能を有するフレグランス、消費者製品およびその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)トップノートを有する香気性成分、ミドルノートを有する香気性成分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの香気性成分;ならびに
(b)以下を有する少なくとも1つの保香剤:
iii. 22℃で0.08Torrを超える蒸気圧を有する化合物との溶液において、12~20の原子分散力(δ
d)、1~7の双極子モーメント(δ
p)、および2.5~11の水素結合(δ
h)からなる第1の群から選択される少なくとも2つのハンセン溶解度パラメータ;および
iv. 22℃で0.0008~0.08Torrの蒸気圧範囲を有する化合物との溶液において、14~20の原子分散力(δ
d)、1~8の双極子モーメント(δ
p)、および4~11の水素結合(δ
h)からなる第2の群から選択される少なくとも2つのハンセン溶解度パラメータ
を含む、フレグランス。
【請求項2】
群(i)が、15.84±3.56の原子分散力(δ
d)、4.15±2.65の双極子モーメント(δ
p)、および6.72±4.11の水素結合(δ
h)からなる群から選択され、群(ii)が、16.86±2.72の原子分散力(δ
d)、4.61±3.10の双極子モーメント(δ
p)、および7.66±3.29の水素結合(δ
h)からなる群から選択される、請求項1記載のフレグランス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの保香剤が、オクタン-1-オール、オクタン-2-オール、2-ブチルオクタン-1-オール、11-メチルドデカン-1-オール、2-ヘキシルドデカン-1-オール、14-メチルペンタデカン-1-オール、16-メチルヘプタデカン-1-オール、2-オクチルデカン-1-オール、2-オクチルドデカン-1-オール、2-デシルテトラデカン-1-オール、2-ドデシルヘキサデカン-1-オール、2-テトラデシルオクタデカン-1-オール、[3-(2-エチルヘキサノイルオキシ)-2,2-ジメチルプロピル]2-エチルヘキサノエート、3-テトラデコキシプロパン-1-オール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載のフレグランス。
【請求項4】
前記保香剤が無香性である、請求項1記載のフレグランス。
【請求項5】
揮発性溶媒および水をさらに含む、請求項1記載のフレグランス。
【請求項6】
前記保香剤が、前記フレグランスの0.1重量%以上を構成する、請求項1記載のフレグランス。
【請求項7】
前記保香剤が、前記少なくとも1つの香気性成分に対して少なくとも1/10の比で存在する、請求項1記載のフレグランス。
【請求項8】
前記保香剤が、前記少なくとも1つの香気性成分に対して少なくとも1/4の比で存在する、請求項7記載のフレグランス。
【請求項9】
前記保香剤が、式(I):
CH
3-(CH
2)
x-CHZ-(CH
2)
y-(CH
3) (I)
で表され、ここで、
Zは、CH
2OH、CHO、CO
2H、CH
2NH
2またはCH
2SH基であり;
xは、3~15の整数であり;
yは、3~15の整数であり;
ただし、|x-y|は、8未満である、請求項1から8までのいずれか1項記載のフレグランス。
【請求項10】
前記保香剤がプロフレグランスである、請求項1記載のフレグランス。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載のフレグランスを含む、消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月11日に出願された欧州出願第21201805.5号、2021年10月8日に出願された米国仮出願第63/253,723号、および2021年9月9日に出願された米国仮出願第63/242,366号の優先権の利益を主張する。これらの出願の全内容は、この参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、フレグランスの分野に関する。より詳細には、本発明は、持続性能が向上したフレグランスに関する。
【0003】
背景
持続性能は、フレグランス業界で長い間求められてきた。フレグランスの持続性および粘り強さは、フレグランス性能の重要な要素であり、ファインフレグランスや制汗剤/制臭剤などの用途において消費者に望まれる有益性である。この特性は一般的に、揮発性の低い香気性成分(ベースノート)を大量に選択し、揮発性が中程度の香気性成分(ミドルノート)を中間量選択し、揮発性が高い香気性成分(トップノート)を最低量選択する、ピラミッド型のフレグランス構成を用いて追求されてきた。
【0004】
発明の概要
本発明は、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づく保香剤の選択と、ミドルノートおよび/またはトップノートを有する香気性成分とを独自に組み合わせることで、フレグランスの持続性、直線性、およびフレッシュさの持続可能性が向上した、優れた性能を有する保香剤を特定するものである。
【0005】
本発明は、例えば、オードトワレ、オードパルファム、ボディスプレー、制臭剤、制汗剤、およびエアーケア製品などのリーブオン製品のための、HSP値に基づくフレグランス保香剤の選択を包含する。
【0006】
本発明によるフレグランスは、以下のものを含むことができる:
(a)トップノートを有する香気性成分、ミドルノートを有する香気性成分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの香気性成分;ならびに
(b)以下を有する少なくとも1つの保香剤:
i. 22℃で0.08Torrを超える蒸気圧を有する化合物との溶液において、12~20の原子分散力(δd)、1~7の双極子モーメント(δp)、および2.5~11の水素結合(δh)からなる第1の群から選択される少なくとも2つのハンセン溶解度パラメータ;および
ii. 22℃で0.0008~0.08Torrの蒸気圧範囲を有する化合物との溶液において、14~20の原子分散力(δd)、1~8の双極子モーメント(δp)、および4~11の水素結合(δh)からなる第2の群から選択される少なくとも2つのハンセン溶解度パラメータ。
【0007】
フレグランスは、アルコールおよび水をさらに含むことができる。
【0008】
本発明の一態様では、群(i)は、15.84±3.56の原子分散力(δd)、4.15±2.65の双極子モーメント(δp)、および6.72±4.11の水素結合(δh)からなる群から選択することができ;群(ii)は、16.86±2.72の原子分散力(δd)、4.61±3.10の双極子モーメント(δp)、および7.66±3.29の水素結合(δh)からなる群から選択される。
【0009】
本発明による保香剤は、例えば、オクタン-1-オール、オクタン-2-オール、2-ブチルオクタン-1-オール、11-メチルドデカン-1-オール、2-ヘキシルドデカン-1-オール、14-メチルペンタデカン-1-オール、16-メチルヘプタデカン-1-オール、2-オクチルドデカン-1-オール、2-オクチルドデカン-1-オール、2-デシルテトラデカン-1-オール、2-ドデシルヘキサデカン-1-オール、2-テトラデシルオクタデカン-1-オール、[3-(2-エチルヘキサノイルオキシ)-2,2-ジメチルプロピル]2-エチルヘキサノエート、3-テトラデコキシプロパン-1-オール、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0010】
本発明による保香剤は、香りがほとんどないか、または無香性であることができる。
【0011】
本発明の一態様では、保香剤は、フレグランスの0.1重量%以上を構成する。
【0012】
さらなる態様では、保香剤は、少なくとも1つの香気性成分に対して少なくとも1/10の比で存在する。保香剤は、少なくとも1つの香気性成分に対して少なくとも1/4の比で存在することもできる。
【0013】
本発明の複数の態様では、保香剤は、式(I):
CH3-(CH2)x-CHZ-(CH2)y-(CH3) (I)
で表され、ここで、
Zは、CH2OH、CHO、CO2H、CH2NH2またはCH2SH基であり;
xは、3~15の整数であり;
yは、3~15の整数であり;
ただし、|x-y|は、8未満である。
【0014】
本発明による保香剤は、プロフレグランスであってもよい。
【0015】
本発明は、本発明のフレグランスを含む消費者製品を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】各相互作用(D、PおよびH)によって3方向で定められるハンセン空間の説明を示す図であり、R0は、溶質に特徴的な溶解球の半径である。
【
図2】異なるレベルのPPG-20メチルグルコースエーテル(EDT B)と異なるレベルのイソセチルアルコール(EDT C)の1時間蒸発時の総面積和を示す図である。
【
図3】異なるレベルのPPG-20メチルグルコースエーテル(EDT B)と異なるレベルのイソセチルアルコール(EDT C)の2時間蒸発時の総面積和を示す図である。
【
図4】異なるレベルのPPG-20メチルグルコースエーテル(EDT B)と異なるレベルのイソセチルアルコール(EDT C)の4時間蒸発時の総面積和を示す図である。
【
図5】RAHT1単独(EDT A)とRAHT1を含む5%PPG-20メチルグルコースエーテル(EDT B)とRAHT1を含む5%イソセチルアルコール(EDT C)の2時間蒸発時の各化合物の直接注入データを示す図である。
【
図6】EDT D(プロフレグランス1)、EDT E(プロフレグランス2)およびEDT F(プロフレグランス3)と対照のEDT Aの4時間蒸発時のフレグランス面積和を示す図である。
【
図7】RAHT2単独(EDT1 RAHT2)とRAHT2を含む5%ヘキシルデカノール(EDT2 RAHT2)とRAHT2を含む5%オクチルドデカノール(EDT3 RAHT2)の蒸発全体を通じた総面積和を示す図である。
【
図8】RAHT2単独(EDT1 RAHT2)とRAHT2を含む5%ヘキシルデカノール(EDT2 RAHT2)とRAHT2を含む5%オクチルドデカノール(EDT3 RAHT2)の2時間蒸発時の各化合物の直接注入データを示す図である。
【
図9】RAHT2単独(EDT1 RAHT2)とRAHT2を含む5%ヘキシルデカノール(EDT2 RAHT2)とRAHT2を含む5%オクチルドデカノール(EDT3 RAHT2)の4時間蒸発時の各化合物の直接注入データを示す図である。
【
図10】RAHT2単独(EDT1 RAHT2)とRAHT2を含む5%ヘキシルデカノール(EDT2 RAHT2)とRAHT2を含む5%オクチルドデカノール(EDT3 RAHT2)の6時間蒸発時の各化合物の直接注入データを示す図である。
【
図11】ヘキシルデカノール(Jarcol I-16 N)を含むフレグランスが、イソセチルアルコール(ICA)を含むフレグランスと比較して、2時間および4時間のドライダウン後に、より強く知覚されたことを示す図である。
【0017】
詳細な説明
本発明による「保香剤」または「変調剤」は、香気性成分の蒸気圧を調節し、香気性成分の蒸発プロファイルを遅延させる材料である。保香剤または変調剤は、無香性であってもよいし、保香特性を有するプロフレグランスであってもよい。
【0018】
「プロパフューム」または「プロフレグランス」は、外部からの影響を受けて、PRM(香料原料)とも呼ばれる香気性成分を、PRMの香気効果を延長するように1つ、2つまたはそれ以上放出することができる化合物である。本発明では、「プロパフューム」または「プロフレグランス」という用語は、互換的に用いられる。香料原料は、1つ以上の機構によってプロパフューム化合物から放出可能である。例えば、香料原料は、プロパフューム化合物の(化学的な)開裂によりプロパフューム化合物から放出可能である。プロパフューム化合物の開裂につながる外部からの影響は、光であり得る。「光」とは、特定の波長に限定されないあらゆる形態の電磁放射線を意味する。このようなプロパフューム化合物からのPRMの放出は、通常、より低い波長(より高いエネルギー入力)でより効果的である。ある種のプロパフューム化合物の開裂は、空気/酸素によっても誘発可能である。その際、PRMは、空気(周囲空気)または酸素の存在下での酸化によりプロパフューム化合物から放出可能である。さらに、PRMは、ある種のプロパフューム化合物から熱によって放出可能である。「熱」とは、温度の上昇によって生じるあらゆるエネルギー入力を意味する。さらに、PRMは、ある種のプロパフューム化合物から水分によって放出可能である。そのようなプロパフューム化合物は、水による開裂を受けやすい化学結合を示すことがあり、したがって水の存在下で開裂可能である。場合によっては、あるpH値が、開裂を誘発および/または支持することがある。さらに、PRMは、酵素への曝露時にある種のプロパフューム化合物から放出可能である。そのようなプロパフューム化合物は、酵素の存在下で効率的に開裂できる化学結合を示すことができる。場合によっては、PRMは、1種類の放出機構だけでなく、例えば空気/酸素および水分による放出など、2種類以上の上記の放出機構を同時にベースとして、ある種のプロパフューム化合物から放出可能である。典型的には、プロパフューム自体は揮発性が低く、理想的には(ほとんど)香りを有しない。プロパフュームは、有利には、EPIwin v. 3.10ソフトウェア(2000年、米国環境保護庁にて入手可能)を用いた計算によって得られる0.01Pa未満の蒸気圧を特徴とし得る。一実施形態によれば、蒸気圧は0.001Pa未満である。プロパフュームはまた、有利には、270を超える、さらには300を超える、さらには350を超える分子量を特徴とし得る。「プロパフューム」または「プロフレグランス」という用語は、例えばA. Herrmann, Angew. Chem. Int. Ed., 2007, 46, 5836-5863に報告されているような、当技術分野における通常の意味を有する。プロフレグランスは、α-ケトエステル、α-ケト酸、エノールエーテル、クネーフェナーゲル付加物、マイケル付加物、エステル、α,β-不飽和エステル、ジエステル、シロキサン、イミン、シンナミルエーテル、複素環式化合物、例えば、アミナール、イミダゾリジノンまたはオキサゾリジンの形態であってよく、適切なプロパーフュームの非限定的な例としては、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン、トランス-3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-ブタノン、3-(ドデシルスルホニル)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン、(3-メルカプトプロピル)(メチル)ジメトキシシランの線状ポリシロキサン共重合体、2-(ドデシルチオ)オクタン-4-オン、2-(ドデシルスルホニル)オクタン-4-オン、4-オキソオクタン-2-イルドデカノエート、2-フェニルエチルオキソ(フェニル)アセテート、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イルオキソ(フェニル)アセテート、(Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルオキソ(フェニル)アセテート、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-イルヘキサデカノエート、ビス(3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イル)スクシネート、(2E,6Z)-2,6-ノナジエニルヘキサデカノエート、(2E,6Z)-2,6-ノナジエン-1-イルテトラデカノエート、(2E,6Z)-2,6-ノナジエン-1-イルドデカノエート、(2-((2-メチルウンデカ-1-エン-1-イル)オキシ)エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(3-メチル-4-フェネトキシブタ-3-エン-1-イル)ベンゼン、(3-メチル-4-フェネトキシブタ-3-エン-1-イル)ベンゼン、1-(((Z)-ヘキサ-3-エン-1-イル)オキシ)-2-メチルウンデカ-1-エン、(2-((2-メチルウンデカ-1-エン-1-イル)オキシ)エトキシ)ベンゼン、2-メチル-1-(オクタン-3-イルオキシ)ウンデカ-1-エン、1-メトキシ-4-(1-フェネトキシプロパ-1-エン-2-イル)ベンゼン、1-メチル-4-(1-フェネトキシプロパ-1-エン-2-イル)ベンゼン、2-(1-フェネトキシプロパ-1-エン-2-イル)ナフタレン、(2-フェネトキシビニル)ベンゼン、2-(1-((3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イル)オキシ)プロパ-1-エン-2-イル)ナフタレン、(2-((2-ペンチルシクロペンチリデン)メトキシ)エチル)ベンゼン、4-アリル-2-メトキシ-1-((2-メトキシ-2-フェニルビニル)オキシ)ベンゼン、(2-((2-ヘプチルシクロペンチリデン)メトキシ)エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(1-フェネトキシプロパ-1-エン-2-イル)ベンゼン、(2-((2-メチル-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタ-1-エン-1-イル)オキシ)エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(2-メチル-3-フェネトキシアリル)ベンゼン、(2-((2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシリデン)メトキシ)エチル)ベンゼン、1-イソプロピル-4-メチル-2-((2-ペンチルシクロペンチリデン)メトキシ)ベンゼン、2-メトキシ-1-((2-ペンチルシクロペンチリデン)メトキシ)-4-プロピルベンゼン、2-エトキシ-1-((2-メトキシ-2-フェニルビニル)オキシ)-4-メチルベンゼン、3-メトキシ-4-((2-メトキシ-2-フェニルビニル)オキシ)ベンズアルデヒド、1-イソプロピル-2-((2-メトキシ-2-フェニルビニル)オキシ)-4-メチルベンゼン、4-((2-(ヘキシルオキシ)-2-フェニルビニル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒドまたはそれらの混合物を挙げることができる。特に、保香特性を有するプロフレグランスは、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン、トランス-3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-ブタノンまたは(2-((2-メチルウンデカ-1-エン-1-イル)オキシ)エチル)ベンゼンであり得る。
【0019】
本発明による保香剤は、揮発性香料原料(PRM)との穏やかな相互作用を可能にすると考えられる溶解度パラメータに基づいて選択された材料を含む。保香剤の香気寄与は、それらが含まれるフレグランス混合物に与える嗅覚的影響を最小限とするために、低香性ないし無香性である。
【0020】
本発明の態様では、本発明による配合物は、以下のものを含む:
【表1】
【0021】
他の態様では、本発明による配合物は、以下のものを含む:
【表2】
【0022】
a.ハンセン溶解度パラメータ
本発明による保香剤は、トップノートおよびミドルノートへの親和性を最適化したHSPを有する。HSPは、物質間の相容性の原因となる相互作用力のタイプを推定するために使用される物理化学的パラメータである。HSPの完全な説明およびフレグランス設計へのその応用は、国際公開第2020/234154号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
HSPの基本は、凝集エネルギー(E)が、原子分散(Ed)、双極子の分子間相互作用(Ep)および水素結合の相互作用(Eh)に対応する3つの部分に分けられるという仮定である。同様に、全溶解度パラメータは、上記の異なるタイプの分子間相互作用に対応する3つの成分、すなわち、分散(δd)、極性(δp)および水素結合(δh)に分けることができる。
【0024】
ハンセン溶解度パラメータは、以下のとおりである
1.原子分散力δd
HSPの分散項は、分散エネルギーに基づいていると考えられている。酸素や窒素のようなヘテロ原子を持たない系でも、電子の移動によって電荷分布が生じ得る。これらの電荷分布によって発生する電場が、分子間の分散引力を作り出す。
【0025】
このファンデルワールスおよび屈折率に基づくパラメータは、対象となる分子が脂肪族、脂環式、または芳香族のいずれであるかを定めるために使用され、BlanksおよびPrausnitzで言及されている方法にしたがって計算される。分散パラメータは、原子力をベースとし、主に臨界温度Tcを用いて計算され、この臨界温度Tcは、Lydersen原子団寄与率を用いて推定できる。
【0026】
2.極性溶解度パラメータ(双極子モーメント)δp
極性溶解度パラメータは、永久双極子-永久双極子相互作用に基づいている。これは、HansenおよびBeerbowerにより開発された式:
δp=37.4(DM)/V1/2
によるものであり、ここで、DMは、分子の双極子モーメントであり、Vは、モル体積である。
【0027】
3.水素結合δh
水素結合力は、極性分子間で起こる特殊な双極子-双極子相互作用とみなすことができ、ある電気陰性原子に結合した水素原子が、窒素や酸素など別の極性分子内の別の電気陰性原子に引き寄せられる。水素と電気陰性元素との電気陰性度の差が大きいため、水素結合力は、最も強い分子間相互作用となる。
【0028】
原子団寄与法(GSMs)は、溶解度パラメータを理論的に推定するために使用することができる。この方法は、分子の各官能基が加成性であることに加えて、全体の熱力学的特性に寄与するという仮定に基づいている。以下の式に示すように、3つのハンセン成分は、Hoftyzerおよびvan Krevelenの方法で推定できる。
【数1】
【0029】
ここで、Fdは、分散性官能基価であり、Fpは、極性官能基価であり、Ehは、水素結合性官能基価であり、Vは、モル体積である。
【0030】
理想的な保香剤の選択は、ハンセンの溶解球に基づいている。
【0031】
ハンセンは、相互作用エネルギー加成性の考え方に基づき、凝集エネルギーは、3つの異なるタイプの相互作用、すなわち、原子分散力(D)、永久双極子-永久双極子の分子間相互作用(P)、および電子交換水素結合相互作用(H)に対応する3つの成分の和として表すことができると提案した。そのためハンセンは、ヒルデブランド溶解度パラメータを以下の式にしたがって3つの要素に分解した。
【0032】
【0033】
図1は、各相互作用(D、PおよびH)によって3方向で定められるハンセン空間の説明図であり、R0は、溶質に特徴的な溶解球の半径である。Raは、溶質の溶解度パラメータ(溶解球の中心)と溶媒の溶解度パラメータとの間の距離を表す。
【0034】
フレグランス混合物に関して、該混合物のHSPを計算する最も簡単な方法は、各化合物の理想的な混合を仮定することである:
【数3】
【0035】
【0036】
HSPは、「HSPiP」というソフトを使って正確に計算できる。比RED(Relative Energy Difference、相対エネルギー差)は、次のように定義される:
【数5】
【0037】
RED値は、ある化合物と別の化合物との親和性を測る基準として使用される。
【0038】
・RED<1の場合、選択された保香剤は、他のPRMに対して「良好な」親和性を有する。親和性の限界は、RED=1の際に達成される。
【0039】
・RED>1の保香剤は、前記PRMに対する親和性がないと考えられる。
【0040】
本発明は、香料の含水アルコール溶液中の無香性保香剤の使用を包含する。保香剤は、香料溶液の重量に対して0.1%以上の濃度で存在し、HSP値に基づいてトップノートおよびミドルノートに対して親和性を有する。保香剤は、フレグランス添加量に対して少なくとも1/10、または好ましくは少なくとも1/4の比を有する。
【0041】
本発明によれば、PRMSの揮発度は、Torrで表される絶対蒸気圧に基づいている。そのため、トップノートおよびミドルノートは、それに応じて定義される:
【表3】
【0042】
したがって、特定の態様では、保香剤は、次のように選択される:
i. 保香剤は、保香剤分子を含むフレグランスを0.5%~95%含む最終消費者製品中に、0.05%以上、1%以上、またはおよび3%以上の添加量で存在する。保香剤添加量とフレグランス添加量との比は、1:4であってもよい。
【0043】
ii. 溶解度パラメータは、以下に記載する範囲に基づいて、トップノートおよびミドルノートを対象とすることができる。保香剤は、トップノートおよびミドルノートとして定められた各クラスについて、3つのハンセン溶解度パラメータのうち少なくとも2つを有する。
【0044】
【0045】
一態様では、少なくとも1つの保香剤は、以下を有する化合物を含む:
i. 22℃で0.08Torrを超える蒸気圧を有する化合物との溶液において、12~20の原子分散力(δd)、1~7の双極子モーメント(δp)、および2.5~11の水素結合(δh)からなる群から選択される少なくとも2つのHSP;および
ii. 22℃で0.0008~0.08Torrの蒸気圧範囲を有する化合物との溶液において、14~20の原子分散力(δd)、1~8の双極子モーメント(δp)、および4~11の水素結合(δh)からなる第2の群から選択される少なくとも2つのHSP。
【0046】
一態様では、群(i)は、15.84±3.56の原子分散力(δd)、4.15±2.65の双極子モーメント(δp)、および6.72±4.11の水素結合(δh)からなる群から選択される少なくとも2つのHSPを含む。
【0047】
さらなる態様では、群(ii)は、16.86±2.72の原子分散力(δd)、4.61±3.10の双極子モーメント(δp)、および7.66±3.29の水素結合(δh)からなる群から選択される少なくとも2つのHSPを含む。
【0048】
少なくとも1つの変調剤は、例えば、下表に列挙する化合物から選択することができる。
【0049】
【0050】
本発明の複数の態様では、保香剤は脂肪族アルコールであり、アルコール官能基は非末端官能基である。例えば、アルコール官能基は、末端炭素から少なくとも2個、少なくとも3個、または少なくとも4個の炭素で生じ得る。このような保香剤の一例は、2-ヘキシルデカン-1-オール:
【化1】
である。
【0051】
本発明による脂肪族アルコールは、直鎖状であっても分枝状であってもよい。脂肪族アルコール中の最も長い鎖は、少なくとも5個の炭素長である。脂肪族アルコールは、例えば、最大32個の炭素長であってもよい。
【0052】
驚くべきことに、炭素鎖の中ほどにアルコール部分を有する本発明による保香剤は、末端アルコール官能基を有する同様の分子と比較して、より優れた性能を有する。上記範囲内の2~3個のHSP値を有しない既知の保香剤は、本発明の保香剤よりも効果が低いことが判明した。
【0053】
本発明によれば、プロフレグランスは、HSP基準を満たすことで保香剤となりうる。プロフレグランスは、本発明の保香剤と組み合わせて使用することもできる。プロフレグランスは、適用時にその香気性化合物を放出することによりフレグランスのフレッシュさを延長することができ、かつ/または香気性成分の放出前に保香剤として作用することができる。
【0054】
b.香気性成分
本明細書で使用される「香気性成分」または「香料原料」とは、香料製造に使用するための化合物であって、心地よい香りを放ち、かつそれが組み込まれる製品、またはそれが適用される皮膚や毛髪などの表面に、それ自体で、または他のそのような成分と混合して、快楽的効果または心地よい香りを付与することができるその能力のために使用される化合物を意味する。香気性成分は、組成物または表面の香りを、ポジティブにまたは快いように付与または修正する能力を有する。組成物または表面が悪臭を有する場合、香気性成分はまた、知覚される全体的な香りを心地よいものにするように、そのような悪臭を覆うこともできる。
【0055】
「香気性成分」または「香料原料」は、例えばアルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン系炭化水素、含窒素または含硫複素環式化合物、および精油などの材料を含む、フレグランス用途に適したあらゆる香料原料を包含することができる。様々な化学成分の複雑な混合物を含む天然由来の動植物性の油や滲出物も包含される。既知の天然油を含む個々の香料原料は、「Perfume and Flavourist」または「Journal of Essential Oil Research」のような当業者が一般的に使用する雑誌を参照することにより見つけることができ、またはS. Arctander著、Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USA、および最近ではAllured Publishing Corporation Illinois (1994)により再出版された書籍のような参考文献に挙げられている。さらに、一部の香料原料は、フレグランスハウスが独自の特殊なアコードの形態で混合物として供給している。
【実施例】
【0056】
[実施例1 - HSP基準のうち3つを満たす保香剤と1つのHSP基準を満たす保香剤との比較]
Jarcol I16N(ヘキシルデカノール)(Jarchem)は、本発明のHSP基準のうち3つを満たしている。Glucam P20(PPG-20メチルグルコースエーテル)(Lubricol)は、本発明のHSP範囲内で1つのHSPパラメータを満たす(下表参照)。
【0057】
【0058】
(EDT A - 参照)
参照EDT配合物(EDT A)を調製し、フレグランス性能を評価するための対照として使用した。エタノールに水を加えた。撹拌後、この溶液にフレグランスを加えた。最終混合物を均一になるまで撹拌した。
【0059】
【0060】
(PPG-20メチルグルコースエーテルを含むEDT B)
PPG-20メチルグルコースエーテル(MGE)を、エタノールおよび水に混合した。撹拌後、この混合物にフレグランスを加えた。最終溶液を均一になるまで撹拌した。
【0061】
【0062】
* ICAの試験濃度を、以下:0.5%、2%、5%および10%のように変化させ、96°のエタノールの量を、それぞれ以下:79.5%、78%、75%および70%のように調整した。
【0063】
(イソセチルアルコールを含むEDT C)
イソセチルアルコール(ICA)を、エタノールおよび水に混合した。撹拌後、この混合物にフレグランスを加えた。最終溶液を均一になるまで撹拌した。
【0064】
【0065】
* MGEの試験濃度を、以下:0.5%、2%、5%および10%のように変化させ、96°のエタノールの量を、それぞれ以下:79.5%、78%、75%および70%のように調整した。
【0066】
実験1および1Bで使用したリサーチ・アコードHT1(RAHT1)は、表10Aに示す等濃度の高揮発性成分から低揮発性成分までの成分からなっていた。
【0067】
【0068】
【0069】
蒸発を、Tzeroの蓋で行った。Prazitherm PZ72スライドウォーマーを30分間かけて32℃に予熱した。各るつぼを精密ホットプレート上に置いた。容量調整可能なピペットを用いて、10μLのフレグランスをるつぼの中心に直接添加し、32℃で5分間(時間ゼロとみなす)、30分間、1時間、2時間、4時間、および6時間にわたって精密ホットプレート上で蒸発させた。各試料および各試験条件について、二重反復試験のセットを実施した。各時点に達したら、各るつぼを2mLのAgilent GCバイアル(Agilent 5183-2068)に入れ、600μLのエタノールを加えて蒸発を停止した。バイアルを閉鎖し、少なくとも1分間振とうして混合した。試料をGC-MS直接注入法で分析した。
【0070】
図2~
図4は、異なるレベルのPPG-20メチルグルコースエーテル(EDT B)と異なるレベルのイソセチルアルコール(EDT C)の1時間蒸発、2時間蒸発および4時間蒸発時の総面積和を示している。
【0071】
このデータは、4時間蒸発時に逆の効果を示した0.5%を除くすべてのレベルで、PPG-20メチルグルコースエーテル(EDT B)よりも、蒸発全体を通してすべてのレベルでイソセチルアルコール(EDT C)の方が、すべての化合物の合計の保持率が高いことを示している。
【0072】
図5は、RAHT1単独(EDT A)とRAHT1を含む5%PPG-20メチルグルコースエーテル(EDT B)とRAHT1を含む5%イソセチルアルコール(EDT C)の2時間蒸発時の各化合物の直接注入データを示す。
【0073】
このデータは、2時間蒸発時に、対照よりも、5%イソセチルアルコール(EDT C)の方が、すべての化合物の保持率が高いことを示している。同じ結果がPPG-20メチルグルコースエーテル(EDT B)でも観察されたが、その程度は低かった。
【0074】
[実施例1B - HSPの基準のうち2つを満たすプロフレグランスは保香特性を有する]
【0075】
プロフレグランス1~3は、本発明のHSP基準のうち2つを満たしている。
【0076】
【0077】
(プロフレグランス1を含むEDT D)
プロフレグランス1を、エタノールおよび水に混合した。撹拌後、この混合物にフレグランスを加えた。最終溶液を均一になるまで撹拌した。
【0078】
【0079】
(プロフレグランス2を含むEDT E)
プロフレグランス2を、エタノールおよび水に混合した。撹拌後、この混合物にフレグランスを加えた。最終溶液を均一になるまで撹拌した。
【0080】
【0081】
(プロフレグランス3を含むEDT F)
プロフレグランス3を、エタノールおよび水に混合した。撹拌後、この混合物にフレグランスを加えた。最終溶液を均一になるまで撹拌した。
【0082】
【0083】
蒸発を、Tzeroの蓋で行った。Prazitherm PZ72スライドウォーマーを30分間かけて32℃に予熱した。各るつぼを精密ホットプレート上に置いた。容量調整可能なピペットを用いて、10μLのフレグランスをるつぼの中心に直接添加し、32℃で5分間(時間ゼロとみなす)、30分間、1時間、2時間、4時間、および6時間にわたって精密ホットプレート上で蒸発させた。各試料および各試験条件について、二重反復試験のセットを実施した。各時点に達したら、各るつぼを2mLのAgilent GCバイアル(Agilent 5183-2068)に入れ、600μLのエタノールを加えて蒸発を停止した。バイアルを閉鎖し、少なくとも1分間振とうして混合した。試料をGC-MS直接注入法で分析した。
【0084】
図6は、EDT D(プロフレグランス1)、EDT E(プロフレグランス2)およびEDT F(プロフレグランス3)と対照のEDT Aの4時間蒸発時のフレグランス面積和を示す。
【0085】
このデータは、4時間蒸発時に、対照のEDT Aよりも、EDT D(プロフレグランス1)、EDT E(プロフレグランス2)およびEDT F(プロフレグランス3)の方が、フレグランスの保持率が高いことを示している。
【0086】
[実施例2 -非末端アルコール官能基を有する保香剤は保香剤として効率的である]
【0087】
(EDT1 - 参照)
参照EDT配合物を調製し、フレグランス性能を評価するための対照として使用した。エタノールに水を加えた。撹拌後、この溶液にフレグランスを加えた。最終混合物を均一になるまで撹拌した。
【0088】
【0089】
(ヘキシルデカノールを含むEDT2)
ヘキシルデカノールを、エタノールおよび水に混合した。撹拌後、この混合物にフレグランスを加えた。最終溶液を均一になるまで撹拌した。
【0090】
【0091】
(オクチルドデカノールを含むEDT3)
オクチルドデカノールを、エタノールおよび水に混合した。撹拌後、この混合物にフレグランスを加えた。最終溶液を均一になるまで撹拌した。
【0092】
【0093】
蒸発GC-MSキネティクス
以下の蒸発キネティクスの研究を行った。本実験で使用したリサーチ・アコードHT2(RAHT2)は、等濃度の高揮発性成分から低揮発性成分までの成分からなっていた。
【0094】
【0095】
【0096】
RAHT2を、EDT1、EDT2、およびEDT3で可溶化させた。
【0097】
蒸発を、Tzeroの蓋で行った。Prazitherm PZ72スライドウォーマーを30分間かけて32℃に予熱した。各るつぼを精密ホットプレート上に置いた。容量調整可能なピペットを用いて、10μLのフレグランスをるつぼの中心に直接添加し、32℃で5分間(時間ゼロとみなす)、30分間、1時間、2時間、4時間、および6時間にわたって精密ホットプレート上で蒸発させた。各試料および各試験条件について、二重反復試験のセットを実施した。各時点に達したら、各るつぼを2mLのAgilent GCバイアル(Agilent 5183-2068)に入れ、600μLのエタノールを加えて蒸発を停止した。バイアルを閉鎖し、少なくとも1分間振とうして混合した。試料をGC-MS直接注入法で分析した。
【0098】
図7は、RAHT2単独(EDT1 RAHT2)とRAHT2を含む5%ヘキシルデカノール(EDT2 RAHT2)とRAHT2を含む5%オクチルドデカノール(EDT3 RAHT2)の蒸発全体を通じた総面積和を示す。
【0099】
このデータは、蒸発全体を通じて、対照よりも、5%ヘキシルデカノール(EDT2)の方が、すべての化合物の合計の保持率が高いことを示している。同じ結果が5%オクチルドデカノール(EDT3)でも観察された。
【0100】
図8~
図10は、RAHT2単独(EDT1 RAHT2)とRAHT2を含む5%ヘキシルデカノール(EDT2 RAHT2)とRAHT2を含む5%オクチルドデカノール(EDT3 RAHT2)の2時間蒸発、4時間蒸発、および6時間蒸発時の各化合物の直接注入データを示す。
【0101】
このデータは、すべての化合物、最も顕著には中程度の揮発性および低揮発性のノートの保持率が高いことを示している。
【0102】
[官能評価]
以下の成分からなるフレグランスCFについて、全体的な強度の官能評価を行った。
【0103】
【0104】
Prazitherm PZ72スライドウォーマーを30分間かけて32℃に予熱した。ガラスプレートを精密ホットプレート上に置いた。容量調整可能なピペットを用いて、20μLのEDTをガラスプレートの中央に直接添加し、32℃で蒸発させた。異なる時間(t=0分(フレッシュ)、2時間、4時間、および6時間)で、無作為化したガラスプレートを7名のパネリストが評価した。
【0105】
三肢強制選択法(3-AFC)試験を用いた。各時点で、パネリストに3つの試料を提示し、そのうち2つはフレグランスCF(EDT1)であり、1つは本発明によるフレグランスCF(EDT2またはEDT3)であった。パネリストは、全体的な強度の点でより強く知覚した試料を示した。
【0106】
仮説:
- H0:2つの試料に違いはない。
- H1:全体的な強度の点で、技術を有する試料は技術を有しない試料より強い。
【0107】
関連するリスク:
- H0棄却=αリスク:
- 実際には生成物が異ならない場合に、異なると結論づける誤警告を伴うリスク。
【0108】
データを、二項統計を用いて分析した。
【0109】
データの解釈:
- p値がα≦0.05で得られた場合、技術を有する試料の方が、技術を有しない試料よりも全体的な強度が強く、
- p値が0.05<α≦0.10で得られた場合、傾向差があると判定され、
- p値がα>0.10で得られた場合、試料に有意差はない。
【0110】
下表に示す官能パネルの結果は、5%ヘキシルデカノール(EDT2)存在下ではフレッシュ時および4時間の蒸発後、5%オクチルドデカノール(EDT3)存在下ではすべての時点において、本発明による配合物の性能がより高いことを示している。
【0111】
【0112】
[実施例3:ヘキシルデカノールはICAよりも官能性の点でより持続的な有益性を有する]
【0113】
(ヘキシルデカノールを含むEDT2)
ヘキシルデカノールを、エタノールおよび水に混合した。撹拌後、この混合物にフレグランスを加えた。最終溶液を均一になるまで撹拌した。
【0114】
【0115】
(イソセチルアルコールを含むEDT4)
イソセチルアルコールを、エタノールおよび水に混合した。撹拌後、この混合物にフレグランスを加えた。最終溶液を均一になるまで撹拌した。
【0116】
【0117】
[官能評価]
フレグランスCFについて、全体的な強度の官能評価を行った。
【0118】
Prazitherm PZ72スライドウォーマーを30分間かけて32℃に予熱した。ガラスプレートを精密ホットプレート上に置いた。容量調整可能なピペットを用いて、20μLのEDTをガラスプレートの中央に直接添加し、32℃で蒸発させた。異なる時間(t=0分(フレッシュ)、2時間、4時間、および6時間)で、無作為化したガラスプレートを7名のパネリストが評価した。
【0119】
三肢強制選択法(3-AFC)試験を用いた。各時点で、パネリストに3つの試料を提示し、そのうち2つはフレグランスCF(EDT3)であり、1つは本発明によるフレグランスCF(EDT2)であった。パネリストは、全体的な強度の点でより強く知覚した試料を示した。
【0120】
仮説:
- H0:2つの試料に違いはない。
- H1:全体的な強度の点で、技術を有する試料は技術を有しない試料より強い。
【0121】
関連するリスク:
- H0棄却=αリスク:
- 実際には生成物が異ならない場合に、異なると結論づける誤警告を伴うリスク。
【0122】
データを、二項統計を用いて分析した。
【0123】
データの解釈:
- p値がα≦0.05で得られた場合、技術を有する試料の方が、技術を有しない試料よりも全体的な強度が強く、
- p値が0.05<α≦0.10で得られた場合、傾向差があると判定され、
- p値がα>0.10で得られた場合、試料に有意差はない。
【0124】
以下の官能パネルデータの結果は、5%ヘキシルデカノール(EDT2)存在下では、2時間および4時間の蒸発後に本発明による配合物の性能がより高いことを示している。
【0125】
【0126】
図11は、ヘキシルセカノールを含むフレグランスが、ICAを使用したフレグランスと比較して、2時間および4時間のドライダウン後に、より強く知覚されたことを示している。
【国際調査報告】