(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】リテーナおよびデータマトリックス付き流体ラインクイックコネクタ
(51)【国際特許分類】
F16L 37/14 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
F16L37/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515555
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022045183
(87)【国際公開番号】W WO2023055898
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524090127
【氏名又は名称】ノルマ ユーエス ホールディング エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ティーズリー, リー
(72)【発明者】
【氏名】ベネット, ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】マウルヴィ, ジーシャン
(72)【発明者】
【氏名】ガイザー, ブランドン
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AA01
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106EB05
3J106EC02
3J106EC07
3J106ED33
3J106EE01
3J106EF04
(57)【要約】
流体ラインのクイックコネクタは、リテーナとデータマトリックスを備える。リテーナは、流体ラインクイックコネクタ内にスピゴットが挿入されると、スピゴットを介して移動するようになっている。データマトリックスは、スピゴットが流体ラインクイックコネクタに挿入されていないときはリテーナによって遮られ、スピゴットが流体ラインクイックコネクタに挿入されると露出される。遮られると、データマトリックスの適切な読み取りと走査ができなくなる。一方、露出されると、データマトリックスの適切な読み取りと走査が可能になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ラインクイックコネクタであって、
主通路と少なくとも1つの窓とを有するハウジングと、
データマトリックスと、
前記少なくとも1つの窓に配置可能なリテーナであって、スピゴットが前記ハウジングの前記主通路に挿入されていないときに、前記リテーナの一部が前記データマトリックスを少なくとも部分的に遮り、スピゴットが前記ハウジングの前記主通路に完全に挿入されているときに、前記リテーナの前記一部による前記データマトリックスの少なくとも部分的な遮りがない、リテーナと、を備える流体ラインクイックコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングに対して移動可能なスライダをさらに備え、前記データマトリックスが前記スライダによって運ばれる、請求項1に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項3】
前記スライダは、前記リテーナの前記一部が前記データマトリックスを少なくとも部分的に遮るときに、前記ハウジングに対して軸方向前方の位置を有し、前記スライダは、前記リテーナによる前記データマトリックスの少なくとも部分的な遮りがないときに、前記ハウジングに対して軸方向後方の位置を有する、請求項2に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項4】
前記データマトリックスが、前記スライダの外面に存在する、請求項2に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングがスロットを有し、前記スライダが前記スロット内に受容され、その中で並進可能である、請求項2に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項6】
前記スライダが、前記リテーナと相互作用して、前記スライダを前記ハウジングに対して第1の位置に維持し、代替的に、前記スライダを前記ハウジングに対して第2の位置に維持する戻り止めを有する、請求項2に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項7】
前記戻り止めが、前記スライダの半径方向外側に延びる突出部であり、前記第1の位置が軸方向前方位置であり、前記第2の位置が軸方向後方位置であり、前記スライダが軸方向前方位置にあるときに、前記リテーナが、前記突出部の第1側部に突き当たり、前記スライダが軸方向後方位置にあるとき、前記突出部の反対の第2側部に突き当たる、請求項6に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項8】
前記ハウジングが少なくとも1つの第1戻り止め面を有し、前記スライダが少なくとも1つの第2戻り止め面を有し、前記少なくとも1つの第1戻り止め面と前記少なくとも1つの第2戻り止め面との間の係合が、前記リテーナの前記一部が前記データマトリックスを少なくとも部分的に遮るときに、前記スライダの軸方向前方への移動を阻止し、または、前記リテーナによる前記データマトリックスの少なくとも部分的な遮りがないときに、前記スライダの軸方向前方への移動を阻止し、または、前記リテーナの前記一部が前記データマトリックスを少なくとも部分的に遮るときに、前記スライダの軸方向前方への移動を防止し、かつ、前記リテーナによる前記データマトリックスの少なくとも部分的な遮りがないときに、前記スライダの軸方向前方への移動を阻止する、請求項2に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項9】
前記スライダは、前記スピゴットが前記ハウジングの前記主通路に挿入されたときに前記スピゴットによって係合可能な当接壁を有する、請求項2に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項10】
前記リテーナは、前記ハウジングに対して第1の位置を有し、前記ハウジングに対して第2の位置を有し、前記第1の位置は、前記第2の位置に対して軸方向前方にあり、前記第1の位置から前記第2の位置への前記リテーナの変位は、前記ハウジングの前記主通路内への前記スピゴットの挿入によって促され、前記第1の位置において、前記リテーナの前記一部が前記データマトリックスを少なくとも部分的に遮り、前記第2の位置において、前記リテーナによる前記データマトリックスの少なくとも部分的な遮りがない、請求項1に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項11】
前記データマトリックスが、前記ハウジングの外面にあって、前記リテーナが前記第1の位置から前記第2の位置に移動するときに、前記データマトリックスが前記ハウジングに対して静止したままである、請求項10に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項12】
前記ハウジングが、そこから半径方向外側に突出する少なくとも1つのリブを有し、前記第1の位置において、前記リテーナの隣接部分が、前記少なくとも1つのリブの軸方向前方に位置し、前記第2の位置において、前記リテーナの前記隣接部分が、前記少なくとも1つのリブの軸方向後方に位置する、請求項10に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項13】
請求項1に記載の流体ラインクイックコネクタと、前記スピゴットとを備える、流体ラインクイックコネクタ組立体。
【請求項14】
流体ラインクイックコネクタであって、
ハウジングと、
該ハウジングに対して第1の位置から第2の位置まで移動可能なスライダと、
該スライダと共に移動可能なデータマトリックスと、
前記スライダが前記第1の位置にあるときに、前記データマトリックスを少なくとも部分的に遮る一部を有するリテーナであって、前記スライダが前記第2の位置にあるときに、前記リテーナの前記一部による前記データマトリックスの部分的な遮りが存在しないリテーナとを備える、流体ラインクイックコネクタ。
【請求項15】
前記第1の位置が、前記ハウジングに対する前記スライダの軸方向前方の位置であり、前記第2の位置が、前記ハウジングに対する前記スライダの軸方向後方の位置である、請求項14に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項16】
前記スライダが、前記リテーナと相互作用して前記スライダを前記第1の位置に維持するか、または前記スライダを前記第2の位置に維持する突出部を有する、請求項14に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項17】
前記スライダが、前記スライダと前記ハウジングとの間に作用するガイドレールおよびチャネル嵌合を介して、前記第1の位置から前記第2の位置まで軸方向に並進可能である、請求項14に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項18】
前記ハウジングが少なくとも1つの第1戻り止め面を有し、前記スライダが少なくとも1つの第2戻り止め面を有し、前記少なくとも1つの第1戻り止め面と前記少なくとも1つの第2戻り止め面との間の係合が、前記スライダの前記第1の位置からの移動を阻止し、または前記スライダの前記第2の位置からの移動を阻止し、または前記スライダの前記第1の位置からの移動を阻止し、かつ前記スライダの前記第2の位置からの移動を阻止する、請求項14に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【請求項19】
流体ラインクイックコネクタであって、
主通路、スロット、および少なくとも1つの窓を有するハウジングと、
前記スロット内に受容され、前記スロット内で第1の位置から第2の位置まで並進可能なスライダであって、戻り止めを有するスライダと、
該スライダによって運ばれるデータマトリックスと、
前記少なくとも1つの窓に位置決め可能なリテーナであって、前記スライダが前記第1の位置にあるときに、前記リテーナの一部が前記データマトリックスを少なくとも部分的に遮り、前記スライダが前記第2の位置にあるとき、前記リテーナの前記一部による前記データマトリックスの部分的な遮りがなく、前記リテーナと前記戻り止めとの間の当接は、前記スライダが前記第1の位置にあるときに、前記スライダの少なくとも1つの方向への移動を阻止し、前記リテーナと前記戻り止めとの間の当接は、前記スライダが前記第2の位置にあるとき、前記スライダの少なくとも1つの方向への移動を阻止する、リテーナとを備える、流体ラインクイックコネクタ。
【請求項20】
前記スライダが、前記スロット内において軸方向に並進可能であり、前記第1の位置が、前記ハウジングに対する前記スライダの軸方向前方の位置であり、前記第2の位置が、前記ハウジングに対する前記スライダの軸方向後方の位置である、請求項19に記載の流体ラインクイックコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、出願日が2021年9月29日の米国仮特許出願第63/249,800号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、流体ラインを結合するために使用されるクイックコネクタおよびクイックコネクタによって適切な接続が行われたことを確認する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
クイックコネクタは、車両用途において流体ラインを結合するため、または流体ラインと部品ラインとを結合するために一般的に使用されている。クイックコネクタは、流体密な接合を確立する。一例として、電気自動車およびハイブリッド車のバッテリの冷却液ラインがある。さらに、自動車用途だけでなく、工業生産、航空宇宙産業、海洋産業、農業などの非自動車用途にも他の例がある。クイックコネクタは、最初の組立てや検査、その後の整備において、適切な接続が行われたことを確認するために、目視による確認が行われることがある。これらの措置は通常、意図された接続が確立されていることを確認するために、組立工、検査工、整備工による物理的な相互作用と視認を必要とする。言い換えれば、確認のための手段はしばしば人に依存する。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態において、流体ラインクイックコネクタは、ハウジング、データマトリックスおよびリテーナを含むことができる。ハウジングは、主通路と1つ以上の窓とを有する。リテーナは窓内に配置される。スピゴットがハウジングの主通路に挿入されていないとき、リテーナの一部がデータマトリックスを部分的にまたはそれ以上に遮る。スピゴットがハウジングの主通路に完全に挿入されている場合には、リテーナの一部によってデータマトリックスが部分的またはそれ以上に遮られることはない。
【0005】
別の実施形態では、流体ラインクイックコネクタは、ハウジング、スライダ、データマトリックスおよびリテーナを含むことができる。スライダは第1の位置から第2の位置まで移動可能である。第1の位置および第2の位置はハウジングに対してである。データマトリックスはスライダとともに移動することができる。リテーナは、スライダが第1の位置にあるときにデータマトリックスを部分的にまたはそれ以上に遮る一部を有する。リテーナの一部によるデータマトリックスの部分的またはそれ以上の遮りは、スライダが第2の位置にあるときには存在しない。
【0006】
さらに別の実施形態では、流体ラインクイックコネクタは、ハウジング、スライダ、データマトリックスおよびリテーナを含むことができる。ハウジングは、主通路、スロットおよび1つ以上の窓を有する。スライダはスロット内に受容される。スライダはスロット内で第1の位置から第2の位置まで移動できる。スライダは戻り止めを有する。データマトリックスはスライダによって運ばれる。リテーナは窓内に配置される。スライダが第1の位置にあるとき、リテーナの一部がデータマトリックスを部分的にまたはそれ以上遮る。スライダが第2の位置にあるとき、リテーナの一部によるデータマトリックスの部分的またはそれ以上の遮りはない。スライダが第1の位置にあるときに、リテーナとスライダの戻り止めとの間の当接は、スライダの1つまたは複数の方向への移動を妨げる。また、スライダが第2の位置にあるときに、リテーナとスライダの戻り止めとの間の当接は、スライダの1つまたは複数の方向への動きを妨げる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【
図1】流体ラインクイックコネクタの一実施形態の斜視図であり、第1の位置および第2の位置にあるリテーナを示す。
【
図2】クイックコネクタの別の斜視図であり、第1の位置および第2の位置にあるリテーナを示す。
【
図3】クイックコネクタの側面図であり、第1および第2の位置にあるリテーナを示す。
【
図4】クイックコネクタの上面図であり、第1および第2の位置にあるリテーナを示す。
【
図5】
図4の矢視線5-5で切断したクイックコネクタの縦断面図である。
【
図6】
図3の矢視線6-6で切断したクイックコネクタの縦断面図である。
【
図7】クイックコネクタと共に使用することができるリテーナの実施形態の斜視図である。
【
図8A】クイックコネクタに対するリテーナの第1の位置を示す図である。
【
図8B】クイックコネクタに対するリテーナのその後の位置を示す図である。
【
図8C】クイックコネクタに対するリテーナの第2の位置を示す図である。
【
図9】クイックコネクタの他の実施形態を示す図である。
【
図10】クイックコネクタの他の実施形態を示す斜視図である。
【
図12】
図10のクイックコネクタのスライダの実施形態の拡大図である。
【
図15】スライダと相互作用するハウジングの一部分の実施形態の拡大図である。
【
図17】スライダと共に使用することができるスロットの実施形態の拡大図である。
【
図21】スピゴットがその中に挿入されておらず、スライダが第1の位置にある
図10のクイックコネクタを示す図である。
【
図22】スピゴットがその中に挿入され、スライダが第2の位置にある
図10のクイックコネクタを示す図である。
【
図23】スピゴットがその中に挿入され、スライダが第2の位置にある
図10のクイックコネクタの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
リテーナとデータマトリックスとを備えた流体ラインクイックコネクタ(以下、クイックコネクタ)の実施形態が、本明細書で詳細に説明され、図に描かれている。リテーナは、その保持機能に加えて、以下に詳細に説明するように、クイックコネクタの使用中にデータマトリックスを遮ったり、露出したりすることによって、データマトリックスと相互作用する。クイックコネクタとそのデータマトリックスは、クイックコネクタの締結部位から離れた位置にある装置を介して、適切な接続の有無の判定を可能にし、その装置は、判定のために必ずしも締結部位と物理的に接触する必要はない。そのため、接続の検出および検証は遠隔で、場合によっては物理的および視覚的検証の他の手段に加えて実施することができる。クイックコネクタは、その遠隔確認機能により、初期組立、その後の品質検査、および少なくとも部分的に自動化されロボット化されたその後の整備技術に対応している。この説明では、クイックコネクタを、電気自動車やハイブリッド車のバッテリの冷却液ラインなどの自動車用流体ラインの関連において示しているが、クイックコネクタはより広い用途を有し、工業生産用流体ライン、航空機用流体ライン、船舶用流体ライン、農業用流体ライン、およびその他の流体ラインでの使用に適している。
【0009】
さらに、特に明記しない限り、半径方向、軸方向、および円周方向という用語、およびそれらの文法的変化は、図に示すように、クイックコネクタおよびその構成部品の概ね円形および円筒形に関する方向を指す。
図3において、軸方向前方Fと軸方向後方Rが、本明細書で使用されるこれらの方向の参照として示されている。
【0010】
クイックコネクタは、場合によっては、クイックコネクタが設置される用途、関連するスピゴット、ホース、および/またはチューブ、並びに他の可能な要因の中でも特に確立された接続およびジョイントの所望の属性に応じて、異なる実施形態において様々な設計、構造および部品を有することができる。
図1~
図8Cは、流体ラインクイックコネクタ10の一実施形態を示す。クイックコネクタ10は、スピゴット12との接続および切り離し動作のための迅速接続機能を有し、例えば、ゴムホースまたはプラスチックチューブと接続することができる。クイックコネクタ10とスピゴット12が一緒になると、より大きな流体ラインクイックコネクタ組立体14が形成される。スピゴット12は、クイックコネクタ10の第1開放端16に挿入されるクイックコネクタ10とは別個の独立した部品である。この意味で、クイックコネクタ10は雌型であり、スピゴットは雄型である。クイックコネクタ10に挿入されるスピゴットの端部形状は、用途に応じて異なる設計および構造を有することができる。特に、
図5および
図6を参照すると、この例では、スピゴット12は、スピゴットの末端から離れた傾斜面18を有している。傾斜面18は、スピゴットの末端に近い位置から、スピゴットの末端から遠い位置まで、その軸方向範囲にわたって直径が拡大する。傾斜面18の遠位端には溝20がある。溝20は、クイックコネクタ10とスピゴット12とを互いに固定するためのリテーナ(後述する)を受け入れることができる。さらに、一対のキーイングリッジ22がスピゴット本体の半径方向外側に突出しており、挿入時にスピゴット12とクイックコネクタ10とを周方向に相対的に位置決めするためのインデックス部材として機能する。キーイングリッジ22は、クイックコネクタ10の相補的な内部溝(後述する)に受け入れられている。キーイングリッジ22は、この例では、互いに円周方向に180°離れて配置されている。さらに、スピゴット12は、一実施例につき、付随する車両のより大きな部品の一部とすることができる。それでもなお、他の実施例において、スピゴット12は他の端部形状を有することができ、例えば、他の種類の割り出し(インデックス)構造を、異なる位置に設けることができ、または全くなくてもよい。
【0011】
クイックコネクタ10は、図ではインライン構成で示されているが、他の実施形態ではエルボまたはL字形状を有することができる。
図1から
図6をより一般的に参照すると、この実施形態において、クイックコネクタ10は、ハウジング24、データマトリックス26およびリテーナ28を含むが、他の実施形態では、クイックコネクタ10は、より多くの、より少ない、かつ/または異なる部品を有していてもよい。ハウジング24は、クイックコネクタ10の本体として機能し、通常、プラスチック材料から構成される。ハウジング24は外面30を有する。主通路32は、使用中にクイックコネクタ10を通る流体の流れを可能にするために、ハウジング24を端から端まで完全に貫通して画定されている。主通路32は、第1開放端16と反対側の第2開放端34との間でハウジング24を軸方向に貫通している。主通路32は、スピゴット12の挿入を受け入れる。内面36が、主通路32を部分的にまたはそれ以上に画定している。一対の溝38が、主通路32と第1開放端16の近傍とに存在する。溝38はキーイングリッジ22の挿入を受け入れる。シールを形成し、クイックコネクタ10とスピゴット12とが組み合わされる際の固定を容易にするために、1つ以上のOリング、スペーサおよび/またはブッシュ(いずれも図示せず)を主通路32内に配置することができる。
【0012】
さらに、リテーナ28と協働するために、ハウジング24は窓およびリブを有する。この実施形態において、第1窓40がハウジング24の一側に存在し、第2窓42がハウジング24の反対側に存在する。第1および第2窓40,42は、通過口として機能し、クイックコネクタ10の使用中にリテーナ28の脚部(後述する)を受け入れることができる。第1および第2窓40,42は、全体がハウジング24を貫通して画定され、その周縁がハウジングの壁によって囲まれている。第1および第2窓40,42は、主通路32に対して開口しており、第1開放端16に隣接して位置し、それらの主要な延長部を構成する円周方向の延長部を有する。ここでの実施形態において、第1および第2窓40,42の各々は、前方領域44および後方領域46を有する。前方および後方領域44,46は、より大きな第1および第2窓40,42の軸方向および周方向の領域によって確立される。特に
図3、
図8Aおよび
図8Cを参照すると、リテーナ28の脚部は、リテーナ28がその第1の位置にあるときに、前方領域44に位置するか、またはその近傍に位置するか、またはそれを通過し、リテーナの脚部は、リテーナ28がその第2の位置にあるとき、同様に、後方領域46に位置するか、またはその近傍に位置するか、またはそれを通過する。
【0013】
リブは、異なる実施形態において、その量、位置、および目的を変えることができる。実施形態において、特に
図1から
図4を参照すると、第1リブ48、第2リブ50、第3リブ52および第4リブ54の合計4つのリブがある。第1リブ48は、リテーナ28が第1の位置にあるときにリテーナ28の位置を維持するのに役立ち、出荷時や部品の取り扱い時にリテーナ28が不注意に接触して不所望に外れるのを防ぐのに役立つ。第1リブ48はリテーナ28のブリッジ部(後述する)と相互作用する。第1リブ48は、ハウジングの外面30から半径方向外側に突出し、第1の位置にあるときおよび第2の位置にあるときにリテーナ28の半径方向外側の位置を超えて半径方向外側に延びている。さらに、第1リブ48は、データマトリックス26のすぐ軸方向後方に位置している。一方、第2リブ50は、リテーナ28が第2の位置にあるときにリテーナ28の位置を維持するのに役立ち、使用中の不注意な接触や不所望な外れからリテーナ28を保護するのに役立つ。第2リブ50は、ハウジングの外面30から半径方向外側に突出し、第1リブ48よりも小さく半径方向外側に延びている。第2リブ50は、第1リブ48の軸方向後方に間隔をあけて配置されている。
【0014】
第1リブ48と同様に、第3および第4リブ52,54は、リテーナ28が第1の位置にあるときにリテーナ28の位置を維持するのに役立ち、出荷中および部品の取り扱い中にリテーナ28が不注意に接触したり不所望に外れたりしないように保護するのに役立つ。第3リブ52は、第1リブ48に対して第1窓40の周方向遠位端で半径方向外側に突出しており、第4リブ54は、第1リブ48に対して第2窓42の周方向遠位端で半径方向外側に突出している。第3および第4リブ52,54はリテーナの脚部と相互作用する。相互作用を容易にするために、第3リブ52の一部を第1窓40に吊り下げ、第4リブ54の一部を第2窓42に吊り下げることができる。なお、
図9の実施形態を含む他の実施形態においては、第3および第4リブ52,54を設ける必要はなく、なくてもよい。さらに、第2の位置にあるときにリテーナ28の脚部(後述する)を不注意な接触や不要な外れから保護するのに役立ち、リテーナの第2の位置への移動を確認することができるように、カバー、サブハウジング、または他の何らかの構造56をハウジング24の各側に設けることができる。
【0015】
データマトリックス26は、クイックコネクタ10とスピゴット12との間の意図された適切な接続、またはその欠如の検出および検証を支援する。リテーナ28が第1の位置から動かされたときにのみ、データマトリックス26は装置によって適切に読み取られ、走査されることができる。リテーナ28が第1の位置にあるとき、または第1の位置に近接しているときなど、その状態がないと、装置はデータマトリックス26を適切に読み取り、走査することができない。データマトリックス26を読み取れる場合には、リテーナ28が第2の位置にあり、最終的にクイックコネクタ10とスピゴット12との間で接続が行われたことを示すものとして機能することができる。逆に、データマトリックス26を読み取れない場合には、リテーナ28が第1の位置にあり、最終的にクイックコネクタ10とスピゴット12との接続が行われていないことを示すものとして機能する。さらに、データマトリックス26によって提供される検出および検証は、特定の実施形態によっては、クイックコネクタ10によって示される物理的および視覚的検証の他の手段を補足することができる。例えば、
図1から
図9の実施形態においては、接続の検証は、そのような観察が可能な用途では、ハウジング24上のリテーナ28の位置を観察することによっても行われる。データマトリックス26を介した追加的な検証は、意図された接続を行うことが重要性を増す用途および/または検証目的のためにクイックコネクタ10へのアクセスが容易でない用途(例えば、囲い、電気自動車の閉じたバッテリパック)において所望され、有用であり得る。さらに、この装置は、クイックコネクタ10から離れた、物理的に離れたデータマトリックス26を読み取り、走査することができ、クイックコネクタ10と物理的に接触することなくこれを行うことができる。この装置は、データマトリックススキャナまたはリーダとすることができる。例えば、製造環境では、装置は、組立、検査および/または設置の生産ラインの間だけでなく、他の場所にも配置することができる。この装置は、オペレータ、組立工、または検査工が携帯する手持ち装置とすることもできる。
【0016】
データマトリックス26は、異なる実施形態において様々な形態を有することができる。データマトリックス26は、例えば、白黒のパターンからなる2次元の機械可読コードであってもよい。例としては、クイックレスポンス(QR)コード、バーコード、ショットコード、カラーコード、ビジュアルコード、および他の多くのコードが挙げられ、この点に関して、本明細書では、「データマトリックス」という語句は、これらの形態の全てをカバーするために広義に使用される。その形態に応じて、データマトリックス26は、文字および/または数字で情報およびデータを符号化することができ、部品表示、設置場所表示、設置日表示、または他の何らかの情報を伝達することができる。データマトリックス26は、ラベルまたは他の基材にマーキングされ、その後所定の位置に接着されるか、またはクイックコネクタ10の所定の位置に直接マーキングされるか、または印刷またはレーザーエッチングなどの方法でその部品にマーキングされてもよい。
図1から
図9の実施形態において、データマトリックス26はハウジング24の外面30上に存在し、一般にハウジングの外部からアクセス可能である。データマトリックス26は、第1開放端16に隣接し、その近傍に位置する。第1リブ48に関して、データマトリックス26は、第1リブ48の軸方向前方に位置しており、実際、
図8Cによって最もよく示されているように、データマトリックス26は、軸方向において第1リブ48の全域に及ぶことができる。データマトリックス26と第1リブ48は、それらの交差部で隣接させることができる。リテーナ28との相互作用を容易にするために、この実施形態では、データマトリックス26は、ハウジング24の隆起したプラットフォーム58上に存在する。プラットフォーム58は、ハウジングの外面30においてその周囲領域から半径方向外側に突出している。プラットフォーム58は、データマトリックス26の設置または配置を受け入れるための概して平面であるプラットフォーム表面60を有する。さらに、隆起したリッジ形状部62は、プラットフォーム58の対向する側面から円周方向に広がることができる。リテーナ28が第1の位置にあるとき、リテーナのブリッジ部はリッジ形状部62上に位置する。最後に、第1の位置から第2の位置へのリテーナ28の移動の間、およびそれ以外の場合においても、データマトリックス26は、プラットフォーム58上で、ハウジング24に対して静止したままであり、プラットフォーム58は静止したままである-つまり、これまでの構造とは異なり、
図1から
図9の実施形態におけるデータマトリックス26の露出は、それ自体の移動または変位に依存しない。
【0017】
リテーナ28は、スピゴット12がクイックコネクタ10に適切に挿入され、リテーナ28が第2の位置にあると、スピゴット12を保持し続ける。クイックコネクタ10とスピゴット12とはリテーナ28を介して一体に固定される。従来のクイックコネクタとは対照的に、リテーナ28はさらに、リテーナ28が第1の位置にあるときにデータマトリックス26を部分的またはそれ以上に遮って読み取りおよび走査から妨げ、リテーナ28が第2の位置にあるときにデータマトリックス26を露出して好適な読み取りおよび走査を行う役割を果たす。データマトリックス26の読み取りおよび走査の可否は、その第1の位置と第2の位置との間のリテーナ28の動きと協調して行われる。
【0018】
リテーナ28は、異なる実施形態において様々な形態を有することができる。
図1から
図9の実施形態において、特に
図7を参照すると、リテーナ28は線ばね64の形態である。全体として、リテーナ28は一体型であり、金属材料で構成され、概してU字形状に類似している。リテーナ28は、ブリッジ部66、第1脚部68、第2脚部70、および一対の足部72を有する。ブリッジ部66は、使用中、ハウジングの外側で主通路32の外部に留まることができ、リテーナ28を分解して取り外すための構造を呈する。ブリッジ部66は、リテーナ28が第1の位置にあるときには第1リブ48の軸方向前方に位置し、リテーナ28が第2の位置にあるときには逆に第1リブ48の軸方向後方に位置する。第1リブ48の軸方向前方にあるときには、ブリッジ部66は、データマトリックス26の一部またはそれ以上と物理的に重なり合い、遮り、ブロックする。遮られた部分は、この実施形態によれば、データマトリックス26の横方向の範囲および部分である。ブリッジ部66および第1リブ48は、図示のように、組立時および使用時に概ね一致する周方向位置を有する。第1および第2脚部、または、プロング68,70は、ブリッジ部66の一体の延長部であり、ブリッジ部66の対向する側面から延びている。第1および第2脚部68,70は互いに鏡像である。第1脚部68は第1窓40内に存在し、第1窓40を通過することができ、第2脚部70も同様に第2窓42内に存在し、第2窓42を通過することができる。第1および第2脚部68,70は、ある程度の弾性を有し、半径方向外側に撓み、半径方向内側に戻ることができるため、スピゴット12の溝20にはめ込んで固定することができる。足部72は、第1および第2脚部68,70の一体の延長部であり、そこから延びている。足部72はリテーナ28の末端を構成する。
【0019】
組立ておよび取付け並びに使用の間、リテーナ28は、スピゴット12の挿入と協調して、データマトリックス26を隠したり露出したりするように働く特定の位置および動きを有する。
図8Aから
図8Cは、リテーナ28の一連の位置と動きを示している。
図8Aでは、リテーナ28は第1の位置または中間位置にある。これは、例えばクイックコネクタ10が製造施設に出荷されている最中のリテーナ28の状態とすることができる。スピゴット12はここでは挿入されていない。リテーナ28はハウジング24の所定位置に保持され、スピゴット12が挿入されるまでその状態を維持することができる。第1および第2脚部68,70は、第1の位置では主通路32内に露出している。ここでも、ブリッジ部66は、データマトリックス26の読み取り可能性および走査可能性を物理的に妨害し、ブロックする。
図8Aによって示されるように、ブリッジ部66は、第1の位置においてデータマトリックス26を部分的に遮りし、ブロックする。テストにより、この部分的な遮りが効果的であることが判明した-カメラは、データマトリックスに対して垂直方向から(すなわち、
図4の上面図から)データマトリックスを読み取ろうとしたとき、および垂直方向と角度をなす方向から読み取ろうとしたときに、データマトリックスを読み取ることができなかった。なお、他の実施形態では、ブリッジ部66は、データマトリックス26をより完全にまたは全体的に遮り、ブロックすることができる。さらに、第1の位置は、
図1から
図6において矢印Fにより表されている。
【0020】
図8Bにおいて、リテーナ28は、第1の位置から第2の位置へ移動されている最中である。スピゴット12は、ハウジング24内および主通路32内に部分的に挿入されている。スピゴットの傾斜面18は、第1および第2脚部68,70と表面対表面で係合する。第1および第2脚部68,70は、順に半径方向外側に付勢されて主通路32から外れ、リテーナ28は、以前の位置から半径方向外側に変位する。ブリッジ部66は、データマトリックス26から持ち上げられ、データマトリックス26から離れる。ブリッジ部66は、第1リブ48の半径方向外側に変位し、同様にして、第1および第2脚部68,70は、第3および第4リブ52,54の半径方向外側に変位する。傾斜面18による係合はさらに、ハウジング24に対して、および第1、第3および第4リブ48,52,54に対してリテーナ28の軸方向後方への移動および軸方向後方への変位を引き起こす。この軸方向後方への移動および変位は、クイックコネクタ10におけるスピゴット12の挿入方向と一致している。
【0021】
最後に、
図8Cにおいて、リテーナ28は第2の位置または取り付け位置にある。スピゴット12はここで完全に挿入されている。第1および第2脚部68,70は溝20内に受容され、その中に留まり、クイックコネクタ10とスピゴット12を一緒に固定した状態に保つ。ブリッジ部66は、第2の位置においてデータマトリックス26の軸方向後方に位置し、データマトリックス26を完全に露出させて適切な読み取りと走査を行う。第2の位置への移動は、データマトリックス26を遮らず、ブロックを解除する。さらに、第2の位置は、
図1から
図6において矢印Sで表されている。リテーナ28の第1の位置から第2の位置への移動は瞬間的であり、リテーナ28は、第2の位置に到達するために、第1、第3および第4リブ48,52,54を効果的に跳ね上げる。この実施形態では、データマトリックス26を明らかにする動作は、スピゴット12のキーイングリッジ22の直接的かつ局所的な関与を欠き、その代わりに、主として、スピゴットの傾斜面18との相互作用および傾斜面18による係合のみを伴う。言い換えれば、読み取りと走査のためにデータマトリックス26を露出させることは、スピゴット12のキーイングリッジまたは他のインデックス部材とは無関係に行われ、異なる種類のそのような構造を有するか、あるいはそのような構造が全くないスピゴットと共にクイックコネクタ10を使用する準備が整う。
【0022】
クイックコネクタ10の他の実施形態が
図9に示されている。この実施形態においてはハウジング24が異なる。第1および第2窓40,42は、後方側76に対して傾斜している前方側74によって部分的に構成されている。前方側74は、
図9において半径方向に対して軸方向前方に傾斜している。この配置により、リテーナ28は、第1の位置では軸方向前方に傾斜して着座し、第2の位置では半径方向と一直線上に位置する。さらに、先の実施形態と比較して、
図9では、第3および第4リブ52,54が存在せず、第1リブ48のみが、第1の位置におけるリテーナ28の位置を維持するのに役立つように設けられている。したがって、第1の位置から第2の位置まで、
図9の実施形態におけるリテーナ28は、第1リブ48を効果的に跳ね上げるだけでよい。
【0023】
クイックコネクタ110のさらに他の実施形態が、
図10から
図23に示されている。この実施形態は、
図1から
図9の実施形態との類似点を示し、類似点はここでは繰り返さない。実際、対応する部品および部材には同様の番号が付されているが、
図10から
図23の実施形態を示すものとして数字1xxが付されている。
図14および
図23を最初に参照すると、スピゴット12のキーイングリッジ22の1つは、クイックコネクタ110へのスピゴットの端部形状の挿入を介してスライダの移動を促すことにより、クイックコネクタ110のスライダ(後述する)と相互作用する役割を果たす。このキーイングリッジ22(キーまたは突起78とも呼ばれる)は、クイックコネクタ110内へのスピゴット12の挿入時にスライダと接触し、スライダの移動を促す。突起78は、スライダとの相互作用を意図しない他のキーイングリッジ22と比較して、設計、サイズおよび/または構造が異なっていてもよく、その正確な設計、サイズおよび/または構造は、スライダの設計、サイズおよび/または構造によって部分的またはそれ以上に規定されてもよい。
【0024】
前述の実施形態と同様に、
図10から
図23のクイックコネクタ110は、図ではインライン構成で示されているが、他の実施形態ではエルボまたはL字形形状を有していてもよい。
図10から23をより全般的に参照すると、この実施形態では、クイックコネクタ110は、ハウジング124、データマトリックス126、リテーナ128およびスライダ130を含むが、それでも、これと同様の他の実施形態では、クイックコネクタ110は、より多くの、より少ない、かつ/または異なる構成部品を有していてもよい。特に
図15から
図17を参照すると、ハウジング124は、第1開放端116に存在するスロット180を有する。スロット180は、クイックコネクタ110の組立においてスライダ130の挿入を受ける。スロット180は、そのような受け入れおよび挿入のための開放端182を有する。第1側壁184、第2側壁186、および端部壁188がスロット180を形成し、規定する。スロット180内のスライダ130の制御された並進可能な移動を提供するために、スロット180は、ガイドレールおよびチャネル嵌合部190の対応物を備えることができる。なお、このような移動を提供するための他の手段は、他の実施形態において可能である。ここでの実施形態では、スロット180は、ガイドレールおよびチャネル嵌合部190の第1レール192および第2レール194を有する。第1レール192および第2レール194は、おそらく
図17に最もよく示されているように、スロット180の内側に円周方向に突出し、互いに向かっている。第1レール192は第1側壁184から突出し、第2レール194は第2側壁186から突出している。さらに、他の実施形態では、スロット180は、ガイドレールおよびチャネル嵌合部190のチャネルを有するか、または他の構造を有することができる。
【0025】
スライダ130が組み立てられたクイックコネクタ110の出荷時および取り扱い時、リテーナ128が第1の位置から第2の位置へ移動している最中、および他の時と同様に、スロット180内に受容されたときのスライダ130の望ましくない意図しない移動を阻止し、防止するために、ハウジング124およびスライダ130の戻り止め面を、面対面の係合および付勢のために設けることができる。対向する戻り止め面間の干渉は、ハウジング124に対するスライダ130の動きおよびスライダ130に対するスライダ130の動きを拘束する。戻り止め面は、異なる方法および異なる構造で設けることができる。
【0026】
図15および
図16を参照すると、この実施形態においては、ハウジング124は、第1突起196、第2突起198、第1傾斜面200および第2傾斜面202を有する。第1および第2突起196,198は、スライダ130を第1の位置に維持するのを助け、ハウジング124の半径方向外側に突出する。第1突起196の第1戻り止め面204は、スライダ130の対峙し協働する戻り止め面(後述する)と係合する。同様に、第2突起198の第2戻り止め面206は、スライダ130の対峙し協働する戻り止め面(後述する)と係合する。第1突起196は、スロット180の一方の側の開放端182に位置し、第2突起198は、スロット180の反対側の開放端182に位置する。第1傾斜面200は、スライダ130を第1の位置(例えば、
図21)に維持するのを補助し、第2傾斜面202は、スライダ130を第2の位置(例えば、
図22)に維持するのを補助する。第1および第2傾斜面200,202は、ハウジング124の半径方向外側に突出している。第1傾斜面200の第3戻り止め面208は、スライダ130の対峙し協働する戻り止め面(後述する)と係合し、同様に、第2傾斜面202の第4戻り止め面210は、スライダ130の対峙し協働する戻り止め面(後述する)と係合する。第1および第2傾斜面200,202は、互いに対してタンデムに配置され、第1傾斜面200は、第2傾斜面202の軸方向前方に配置され、第2傾斜面202は、順に、第1傾斜面200の軸方向後方に配置される。第1および第2傾斜面200,202は、スロット180の軸方向後方に位置し、端部壁188に隣接している。第1および第2傾斜面200,202の垂直方向上向きの傾斜は、軸方向後方にわたる。
【0027】
前述の実施形態と同様に、データマトリックス126は、クイックコネクタ110とスピゴット12との間の意図された適切な接続の検出および検証を支援する。スピゴットの端部形状がハウジング124内に完全に挿入されている場合にのみ、データマトリックス126を装置によって適切に読み取り、走査することができる。スピゴット12が完全に挿入されていない場合など、その状態がないと、装置はデータマトリックス126を適切に読み取り、走査することができない。さらに、
図10~
図23の実施形態においては、スライダ130がその第2の位置にある場合にのみ、データマトリックス126を装置によって適切に読み取り、走査することができる。スライダ130がその第1の位置にあるときなど、その状態がないと、装置はデータマトリックス126を適切に読み取り、走査することができない。データマトリックス126を読み取れるということは、クイックコネクタ110とスピゴット12との間で接続が行われ、スライダ130が第2の位置にあることを示すものとして機能することができる。逆に、データマトリックス126を読み取れない場合は、クイックコネクタ110とスピゴット12との間の接続が行われておらず、スライダ130が第1の位置にあることを示すものとして機能する。さらに、前述と同様に、データマトリックス126によって提供される検出および検証は、特定の実施形態によっては、クイックコネクタ110によって示される物理的および視覚的検証の他の手段を補足することができる。例えば、
図10~
図23の実施形態において、接続の検証は、そのような観察が可能な用途において、ハウジング24に対するスライダ130の位置を観察することによっても行われる。
【0028】
図10から
図23の実施形態においては、データマトリックス126はスライダ130によって運ばれ、スライダ130がその第1の位置からその第2の位置へ移動するように促されるとき、スライダ130とともに移動する。言い換えれば、
図1から
図9の前の実施形態とは異なり、データマトリックス126はスライダ130に固定され、したがってそれに対して静止したままであるが、スライダ130の移動時にハウジング124に対してスライダ130と共に移動する。データマトリックス126はスライダ130の外面212上に存在する。外面212は、組み立て状態では、一般にハウジングの外側にアクセス可能である。スライダ130の戻り止め(後述する)に対して、データマトリックス126は、その軸方向後方に位置し、実際、おそらく
図19および
図22によって最もよく示されるように、データマトリックス126は、軸方向前方の戻り止めにまたがることができる。
【0029】
先の実施形態と同様に、リテーナ128は、スピゴット12がクイックコネクタ110内に適切に挿入されると、スピゴット12を保持し続ける。リテーナ128はさらに、スライダ130が第1の位置にあり、かつクイックコネクタ110とスピゴット12との間の接続が欠けているときには、データマトリックス126を読み取りおよび走査から部分的にまたはそれ以上を遮って妨げ、スライダ130が第2の位置にあり、かつクイックコネクタ110とスピゴット12との間の接続がなされたときには、データマトリックス126を好適な読み取りおよび走査のために露出する役割を果たす。データマトリックス126の読み取りおよび走査の可否は、リテーナ128の動きおよびスライダ130の動きと協調して行われる。これまでの実施形態とは異なり、リテーナ128は、データマトリックス126を露出させるための傾斜面18によって係合される際に意図的に軸方向に変位させられることはなく、むしろ、データマトリックス126が妨げられて露出される際にハウジング124に対して同じ軸方向位置にもたらされる。この点で、リテーナの位置および動きは、一般に、半径方向外側および半径方向内側の変位動作に限定される。読み取りと走査のためのデータマトリックス126の露出は、この実施形態によれば、スライダ130の移動により依存する。リテーナのブリッジ部66は、スライダ130が第1の位置にあるとき(例えば、
図13および
図21)、スライダの戻り止めの軸方向後方に位置し、スライダ130が第2の位置にあるとき(例えば、
図22)、逆にスライダの戻り止めの軸方向前方に位置する。スライダの戻り止めの軸方向後方にあるとき、ブリッジ部66は、データマトリックス126の部分またはそれ以上に物理的に重なり、遮り、ブロックする。ブロックされた部分は、この実施形態によれば、データマトリックス126の横方向の範囲および部分である。スライダの戻り止めの軸方向前方にあるとき、ブリッジ部66はもはやデータマトリックス126の部分をブロックしない。
【0030】
スライダ130は、クイックコネクタ110内にスピゴット12が完全に挿入されると、読み取りおよび走査のためにデータマトリックス126を露出させるために、スピゴット12の挿入およびリテーナ128の移動動作と協調して移動する。スライダ130はデータマトリックス126を担持する。スライダ130は、その意図される動き、ハウジング124の構造および/または他の要因に一部または複数に応じて、異なる実施形態において様々な設計、構造、および部品を有することができる。ここで
図12および
図18から
図20を参照すると、この実施形態においては、スライダ130はハウジング124の所定の位置に組み立てられ、スロット180に挿入される。スライダ130は、ハウジング124に対して、かつスロット180に対して相対的に並進可能である。スライダ130は、プラスチック材料からなる単一の一体型本体である。スライダ130は、前方の第1端部214から後方の第2端部216まで長さ方向に延びている。協働する戻り止め構造および表面は、スロット180内に受容されたときのスライダ130の意図しない移動を防止する。この実施形態では、スライダ130は、第1突起218、第2突起220および第3突起222を有する。第1突起218はハウジングの第1突起196と相互作用し、第2突起220はハウジングの第2突起198と相互作用し、第3突起222はハウジングの第1および第2傾斜面200,202と選択的に相互作用する。第1および第2突起218,220は、スライダ130をその第1の位置に維持するのを助け、スライダ130の半径方向内側に突出する。第1突起218の第1戻り止め面224は、第1突起196の第1戻り止め面204と係合し、表面と表面とが密着し、第2突起220の第2戻り止め面226は、第2突起198の第2戻り止め面206と係合し、表面と表面とが密着する。第1突起218はスライダ130の一側で第1端部214に位置し、第2突起220はスライダ130の反対側で第1端部214に位置する。
【0031】
第1傾斜面200と係合すると、第3突起222はスライダ130を第1の位置に維持するのを助ける。逆に、第2傾斜面202と係合すると、第3突起222はスライダ130を第2の位置に維持するのを助ける。第3突起222はスライダ130の半径方向内側に突出している。第3突起222の第3戻り止め面228は、スライダ130が第1の位置にあるとき、第1傾斜面200の第3戻り止め面208と係合し、表面対表面で突き当たる。同様に、第3突起222の第3戻り止め面228は、スライダ130が第2の位置にあるとき、第2傾斜面202の第4戻り止め面210と係合し、表面対表面で突き当たる。第3突起222は、スライダ130の第2端部216に位置し、実際に、本実施形態によるスライダ130の末端を構成する。
【0032】
引き続き
図12および
図18から20を参照すると、スロット180内でのスライダ130の制御された並進可能な移動をもたらすために、本実施形態におけるスライダ130は、ガイドレールおよびチャネル嵌合部190の第1チャネル230および第2チャネル232を有する。第1チャネル230は、スロット180において第1レール192を受容し、第2チャネル232は、スロット180において第2レール194を受容する。第1チャネル230は、第1側壁234、第1底壁236、および第1頂壁238を介して設けられる。第2チャネル232も同様に、第2側壁240、第2底壁242、第2頂壁244を介して設けられる。第1および第2チャネル230,232は、スライダ130の互いに相対する反対側に位置する。なお、他の実施形態では、スライダ130は、ガイドレールおよびチャネル嵌合部190のレール、または他の構造を有していてもよい。さらに、スライダ130は、スピゴット12がクイックコネクタ110に挿入されたときにスピゴット12の突起78を受容するための凹部246をその底面に有する。突起78は、
図23において凹部246に受容されて示されている。凹部246は、第1および第2チャネル230,232の内側に設けられ、開端248から閉端250まで軸方向および長手方向に広がっている。閉端250において、スライダ130は当接壁252を有する。スピゴット12がクイックコネクタ110に挿入されると、突起78の先端面が当接壁252に係合し、表面対表面で突き当たる。この係合は、スピゴット12とハウジング124との相対的なスライダ130の移動を促し、一旦係合が生じると、スライダ130はスピゴット12によって移動される。
【0033】
図12、
図13、
図18および
図19を参照すると、スライダ130の第1および第2の位置での移動および位置決めを容易にするため、およびリテーナ128の半径方向変位動作と協調するため、クイックコネクタ110の使用中にリテーナ128と相互作用するための戻り止め254がスライダ130の上側に配置されている。戻り止め254は、スライダ130を第1の位置に保持するのに役立ち、逆にスライダ130を第2の位置に保持するのに役立つ。戻り止め254は、異なる実施形態に従って様々な設計および構造をとることができる。この実施形態では、戻り止め254は突出部256の形をしている。突出部256は、スライダ130の長さ方向および軸方向の範囲のほぼ中間に位置し、スライダ130の外面212から半径方向外側に突き出ている。その位置は、少なくとも部分的には、スライダ130が第1の位置と第2の位置にあるときに、スライダ130上のリテーナ128の予想される近接によって決定される。リテーナ128は、スライダ130が第1の位置にあるとき(例えば、
図21)、突出部256の軸方向後方側に位置し、リテーナ128は、スライダ130が第2の位置にあるとき(例えば、
図22)、逆に突出部256の軸方向前方側に位置する。
【0034】
さらに、突出部256は、第1側面258および第2側面260を有する。第1側面258は概して軸方向前方に向けられており、第2側面260は概して軸方向後方に向けられている。リテーナ128は、スライダ130が第1の位置にあるときに第1側面258に突き当たり、スライダ130を第1の位置に保つのに役立ち、リテーナ128は、スライダ130が第2の位置にあるときに第2側面260に突き当たり、スライダ130を第2の位置に保つのに役立つ。この実施形態では、第1側面258は軸方向前方に傾斜している。この傾斜は、スライダ130の第2の位置への意図された移動を容易にする。例えば、リテーナ128およびブリッジ部66が、その半径方向内側への変位動作時に傾斜した第1側面258と係合する場合、その係合は、スライダ130を軸方向後方へ、第2の位置へ促すことができる。同様に、この実施形態によれば、突出部256に傾斜面262が設けられている。傾斜面262は、描かれているように、第1および第2側面258,260の間にまたがっている。傾斜面262は、軸方向後方に傾斜している。傾斜面262は、スピゴット12の挿入が部分的で不完全な場合に、スライダ130を第1の位置に再位置決めする役割を果たす。例えば、スピゴットの傾斜面18が第1および第2脚部68,70に係合し、リテーナ128が半径方向外側に変位するが、第1および第2脚部68,70がスピゴットの溝20内に受容されていない場合である。次いで、リテーナ128およびブリッジ部66は、傾斜面262と係合し、スライダ130を軸方向前方に付勢し、第1の位置に戻すことができる。最後に、この実施形態によれば、第2側面260は平面状に構成されている。
【0035】
図10から
図23のクイックコネクタ110の組立、取付け、および使用の間、スライダ130は、スピゴット12の挿入およびリテーナ128の動きと協調して、データマトリックス126を隠したり露出したりするように働く特定の位置および動きを有する。スライダ130は、
図21に示す第1の位置を有する。第1の位置は、軸方向に前進した位置でもあり、スライダ130の中間位置でもある。これは、例えばクイックコネクタ110が製造施設に出荷されている最中のスライダ130およびリテーナ128の状態とすることができる。ここでは、スピゴット12はクイックコネクタ110に挿入されていない。リテーナ128は、ハウジング124とスライダ130上の所定位置に保持される。リテーナ128からの付勢は、スライダ130を所定の位置に保持するのに役立つ。ブリッジ部66は、スライダ130が第1の位置にあるとき、データマトリックス126の読み取り可能性および走査可能性を物理的に遮り、ブロックする。
【0036】
さらに、スライダ130は、
図22に示す第2の位置を有する。第2の位置も、軸方向後方の位置であり、スライダ130の設置位置である。第1の位置から第2の位置まで、スライダ130は軸方向後方に並進する。スライダ130は、スロット180を中心に、ハウジング124に対して軸方向に並進変位可能である。スライダ130は、ブリッジ部66がスライダ130から瞬間的に持ち上げられ、スライダ130から離れると、第2の位置に移動することができる。スピゴットの突起78がスライダ130の当接壁252に係合する前に、スピゴットの傾斜面18がリテーナ128に係合する。スライダ130が第2の位置にあるとき、スピゴット12はクイックコネクタ110内に完全に挿入される。第2の位置では、リテーナ128およびブリッジ部66は、この実施形態によれば、データマトリックス126の軸方向前方および戻り止め254の軸方向前方に位置し、適切な読み取りおよび走査のためにデータマトリックス126を完全に露出させる。
【0037】
なお、特定の実施形態では、クイックコネクタおよび/またはスライダは、好適な態様で機能しながらも、本明細書に示され説明された設計、構造、および構成要素の全てを必ずしも示す必要はない。例えば、幾つかの実施形態につき、1つ以上の戻り止め構造および表面のみがスライダに提供されるか、またはそれらのいずれも提供されなくてもよい。
【0038】
前述の説明は、本発明の定義ではなく、本発明の1つ以上の好ましい例示的な実施形態の説明であることを理解されたい。本発明は、本明細書に開示された特定の実施形態(複数可)に限定されるものではなく、むしろ、以下の特許請求の範囲によってのみ定義される。さらに、前述の説明に含まれる記載は、特定の実施形態に関するものであり、用語または語句が上記で明示的に定義されている場合を除き、本発明の範囲または特許請求の範囲で使用される用語の定義に対する限定として解釈されるものではない。開示された実施形態(単数または複数)に対する様々な他の実施形態ならびに様々な変更および修正は、当業者には明らかになるであろう。そのような他の実施形態、変更および修正は全て、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0039】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、用語「例えば」、「例えば」、および「そのような」、ならびに動詞「からなる」、「有する」、「含む」、およびそれらの他の動詞形は、1つまたは複数の構成要素または他の項目の記載と組み合わせて使用される場合、それぞれ、オープンエンドとして解釈され、その記載は、他の追加の構成要素または項目を除外すると見なされないことを意味する。その他の用語は、異なる解釈を必要とする文脈で使用されない限り、最も広範で合理的な意味を用いて解釈されるものとする。
【国際調査報告】