(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 6/62 20060101AFI20240905BHJP
D01F 6/84 20060101ALI20240905BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
D01F6/62 306
D01F6/62 305
D01F6/84 301G
C08L67/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515558
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2022075084
(87)【国際公開番号】W WO2023036919
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524090150
【氏名又は名称】オーシャンセーフ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シュバイツァー マニュエル
【テーマコード(参考)】
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4J002CF03X
4J002CF05W
4J002CF07W
4J002CF18Y
4J002DH006
4J002EN136
4J002FD136
4J002GK01
4L035AA05
4L035BB56
4L035DD03
4L035DD08
4L035DD12
4L035EE05
4L035EE07
4L035EE11
4L035EE14
4L035JJ04
4L035JJ05
4L035JJ10
(57)【要約】
本発明は、- 脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルを通して紡糸して前駆体繊維を得る工程;ならびに - 前駆体繊維を温度勾配下で冷却し、これによって繊維を得る、工程を含む方法によって得ることができるかまたは得られる、繊維に関する。本発明はまた、そのような繊維から作製される糸および衣類、ならびにそのような繊維を調製する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を調製する方法であって、
- 脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルを通して紡糸して、前駆体繊維を得る、工程;ならびに
- 該前駆体繊維を温度勾配下で冷却し、これによって該繊維を得る、工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記温度勾配が、1つまたは複数の温度制御要素によって生成され、好ましくは、該1つまたは複数の温度制御要素が、前記前駆体繊維の長手方向に対して実質的に垂直な方向に該温度勾配が生成されるように配置される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の温度制御要素が、前記前駆体繊維が一方の側から冷却されるように配置され、好ましくは該冷却が空冷によって行われる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステルが、脂肪族C
2~C
20ジカルボン酸および脂肪族C
2~C
12ジオールを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンマロネート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンオキサレート、ポリプロピレンマロネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンマロネート、ポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-コ-アゼレート(PBSAz)、ポリブチレンサクシネート-コ-ブラシレート(PBSBr)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-コ-アゼレート(PBSAz)、ポリブチレンサクシネート-コ-ブラシレート(PBSBr)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネート(PBS)である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記繊維が、前記脂肪族ポリエステル、前記脂肪族-芳香族ポリエステル、および前記ポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~70重量%の量の該脂肪族ポリエステルを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記脂肪族-芳香族ポリエステルが、C
2~C
12脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、および脂肪族C
2~C
12ジオールを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記脂肪族-芳香族ポリエステルが、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記脂肪族-芳香族ポリエステルが、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記繊維が、前記脂肪族ポリエステル、前記脂肪族-芳香族ポリエステル、および前記ポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、10~60重量%の量の該脂肪族-芳香族ポリエステルを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記ポリヒドロキシアルカノエートがC
3~C
18ヒドロキシアルキルカルボン酸を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレレート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリ-3-ヒドロキシバレレート(PHV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記ポリヒドロキシアルカノエートがポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエートである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記ポリヒドロキシアルカノエートがポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記繊維が、前記脂肪族ポリエステル、前記脂肪族-芳香族ポリエステル、および前記ポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、1~25重量%の量の該ポリヒドロキシアルカノエートを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記繊維が、前記脂肪族ポリエステル、前記脂肪族-芳香族ポリエステル、および前記ポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、42~62重量%の量の該脂肪族ポリエステル、26~46重量%の量の該脂肪族-芳香族ポリエステル、および2~22重量%の量の該ポリヒドロキシアルカノエートを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネート(PBS)であり、前記脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、前記ポリヒドロキシアルカノエートがポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記繊維が、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの添加剤が、難燃剤、艶消剤、蛍光マーカー、抗菌剤、充填剤、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記難燃剤が、リン酸二水素アンモニウム([NH
4][H
2PO
4])、リン酸水素二アンモニウム([NH
4]
2[HPO
4])、リン酸三アンモニウム([NH
4]
3[PO
4])、ポリリン酸アンモニウム、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるホスフェートである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物から作製される繊維であって、
該繊維が長手方向に2種類の部分を含み、ここで、一方の種類の部分が厚肉部分でありかつ他方の種類の部分が薄肉部分であり、該厚肉部分および該薄肉部分が該繊維の長手方向に対して垂直方向に延在し、厚肉部分の該垂直方向の延在範囲が薄肉部分の該垂直方向の延在範囲よりも大きく;
該厚肉部分の少なくとも一部が空洞を有し、該薄肉部分の少なくとも一部が緻密な構造を有する、繊維。
【請求項25】
前記厚肉部分および前記薄肉部分が、前記繊維の長手方向に沿って交互のパターンで配置されている、請求項24記載の繊維。
【請求項26】
前記脂肪族ポリエステルが、脂肪族C
2~C
20ジカルボン酸および脂肪族C
2~C
12ジオールを含む、請求項24または25記載の繊維。
【請求項27】
前記脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンマロネート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンオキサレート、ポリプロピレンマロネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンマロネート、ポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-コ-アゼレート(PBSAz)、ポリブチレンサクシネート-コ-ブラシレート(PBSBr)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項24~26のいずれか一項記載の繊維。
【請求項28】
前記脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-コ-アゼレート(PBSAz)、ポリブチレンサクシネート-コ-ブラシレート(PBSBr)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項24~27のいずれか一項記載の繊維。
【請求項29】
前記脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネート(PBS)である、請求項24~28のいずれか一項記載の繊維。
【請求項30】
前記脂肪族ポリエステル、前記脂肪族-芳香族ポリエステル、および前記ポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~70重量%の量の該脂肪族ポリエステルを含む、請求項24~29のいずれか一項記載の繊維。
【請求項31】
前記脂肪族-芳香族ポリエステルが、C
2~C
12脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、および脂肪族C
2~C
12ジオールを含む、請求項24~30のいずれか一項記載の繊維。
【請求項32】
前記脂肪族-芳香族ポリエステルが、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項24~31のいずれか一項記載の繊維。
【請求項33】
前記脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)である、請求項24~32のいずれか一項記載の繊維。
【請求項34】
前記脂肪族ポリエステル、前記脂肪族-芳香族ポリエステル、および前記ポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、10~60重量%の量の該脂肪族-芳香族ポリエステルを含む、請求項24~33のいずれか一項記載の繊維。
【請求項35】
前記ポリヒドロキシアルカノエートがC
3~C
18ヒドロキシアルキルカルボン酸を含む、請求項24~34のいずれか一項記載の繊維。
【請求項36】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレレート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項24~35のいずれか一項記載の繊維。
【請求項37】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリ-3-ヒドロキシバレレート(PHV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項24~36のいずれか一項記載の繊維。
【請求項38】
前記ポリヒドロキシアルカノエートがポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエートである、請求項24~37のいずれか一項記載の繊維。
【請求項39】
前記ポリヒドロキシアルカノエートがポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である、請求項24~38のいずれか一項記載の繊維。
【請求項40】
前記脂肪族ポリエステル、前記脂肪族-芳香族ポリエステル、および前記ポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、1~25重量%の量の該ポリヒドロキシアルカノエートを含む、請求項24~39のいずれか一項記載の繊維。
【請求項41】
前記脂肪族ポリエステル、前記脂肪族-芳香族ポリエステル、および前記ポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、42~62重量%の量の該脂肪族ポリエステル、26~46重量%の量の該脂肪族-芳香族ポリエステル、および2~22重量%の量の該ポリヒドロキシアルカノエートを含む、請求項24~40のいずれか一項記載の繊維。
【請求項42】
前記脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネート(PBS)であり、前記脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、前記ポリヒドロキシアルカノエートがポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である、請求項24~41のいずれか一項記載の繊維。
【請求項43】
少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項24~42のいずれか一項記載の繊維。
【請求項44】
前記少なくとも1つの添加剤が、難燃剤、艶消剤、蛍光マーカー、抗菌剤、充填剤、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項43記載の繊維。
【請求項45】
前記難燃剤が、リン酸二水素アンモニウム([NH
4][H
2PO
4])、リン酸水素二アンモニウム([NH
4]
2[HPO
4])、リン酸三アンモニウム([NH
4]
3[PO
4])、ポリリン酸アンモニウム、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるホスフェートである、請求項44記載の繊維。
【請求項46】
生分解性であり、好ましくはEN 13432に準拠している、請求項24~45のいずれか一項記載の繊維。
【請求項47】
脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物から作製される、中空繊維。
【請求項48】
生分解性であり、好ましくはEN 13432に準拠している、請求項47記載の中空繊維。
【請求項49】
脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物であって、該脂肪族ポリエステル、該脂肪族-芳香族ポリエステル、および該ポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~70重量%の量の該脂肪族ポリエステル、10~60重量%の量の該脂肪族-芳香族ポリエステル、および1~25重量%の量の該ポリヒドロキシアルカノエートを含む、混合物。
【請求項50】
前記脂肪族ポリエステル、前記脂肪族-芳香族ポリエステル、および前記ポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、42~62重量%の量の該脂肪族ポリエステル、26~46重量%の量の該脂肪族-芳香族ポリエステル、および2~22重量%の量の該ポリヒドロキシアルカノエートを含む、請求項49記載の混合物。
【請求項51】
前記脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネート(PBS)であり、前記脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、前記ポリヒドロキシアルカノエートがポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である、請求項49または50記載の混合物。
【請求項52】
前記脂肪族ポリエステル、前記脂肪族-芳香族ポリエステル、および前記ポリヒドロキシアルカノエートが顆粒の形態である、請求項49~51のいずれか一項記載の混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2021年9月10日に欧州特許庁に出願の欧州特許出願第21196170.1号の優先権を主張し、該出願の全内容はあらゆる目的で本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む繊維と、そのような繊維を調整するための方法と、糸または織物におけるそのような繊維の使用とに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
持続可能な織物は、生態学的、経済的、および社会的な持続可能性に基づいているべきである。持続可能な製品は、原料から加工、仕上げ、販売、およびリサイクルに至るまで、これらの要素を考慮しているべきである。
【0004】
今日、持続可能な織物に用いられている繊維は、例えば、綿、羊毛、リネン、シーセル(SeaCell)(商標)(Smartfiber AGが製造する、藻類から得られるセルロース繊維)などの天然繊維、リサイクルポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルからの)、エコニール(Econyl)(登録商標)(リサイクルナイロン繊維)などのリサイクル繊維、またはリヨセル(Lyocell)(例えば、Lenzingからの商品名テンセル(Tencel)(商標)として公知)もしくはモダール(Modal)などの再生繊維(再生繊維とは、木材などの天然材料から化学処理によって調製された繊維の名称である)を含む。
【0005】
しかしながら、これらの繊維は、持続可能な織物に用いられているが、依然として様々な欠点がある。例えば、綿および羊毛の製造は、大量の水の消費を必要とし、かつ広大な土地の利用と関連している。例えば、リサイクルPETなどのリサイクル繊維は、通常、大量のエネルギー、水、および化学物質を必要とする。
【0006】
持続可能な織物および繊維は循環経済という概念の下での使用に適していることがさらに望ましい。特に、織物および繊維は、適切な生分解性を示し、ひいては非分解性廃棄物を生じないことによって生物学的サイクルにおいて、例えば、ゆりかごからゆりかごまで(cradle-to-cradle)の設計の下で、用い得ることが望ましい。織物製品はそのライフサイクルの終了後に回収され、工業的堆肥化に供されると、生物学的サイクルへの繊維または織物の有益な導入が達成される。これはバイオマスおよびバイオガス(CH4、CO2、水)を生じ、これらは生物学的サイクルに直接的に供給され得る。
【0007】
よって、特に生態学的要件に対処した繊維に対する継続的な必要性がある。故にそのような繊維を提供することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0008】
概要
この目的は、独立請求項の特徴を有する繊維、糸、衣類、および方法によって達成される。
【0009】
第1の局面では、本発明は、
- 脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルを通して紡糸して前駆体繊維を得る工程;ならびに
- 前駆体繊維を温度勾配下で冷却し、これによって繊維を得る、工程
を含む方法によって得ることができるかまたは得られる繊維に関する。
【0010】
第2の局面では、本発明は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物から作製される繊維に関し、
繊維は長手方向に2種類の部分を含み、一方の種類の部分は厚肉部分(より厚い部分)でありかつ他方の種類の部分は薄肉部分(より薄い部分)であり、厚肉部分および薄肉部分は繊維の長手方向に対して垂直方向に延在し、厚肉部分の垂直方向の延在範囲は薄肉部分の垂直方向の延在範囲よりも大きく;
厚肉部分の少なくとも一部は空洞を有し、薄肉部分の少なくとも一部は緻密な構造を有する。
【0011】
第3の局面では、本発明は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物から作製される中空繊維に関する。
【0012】
第4の局面では、本発明は、本発明の繊維を含む糸に関する。
【0013】
第5の局面では、本発明は、本発明の繊維または本発明の糸を含む織物に関する。
【0014】
第6の局面では、本発明は、
- 脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルを通して紡糸して前駆体繊維を得る工程;ならびに
- 前駆体繊維を温度勾配下で冷却し、これによって繊維を得る、工程
を含む、本発明に係る繊維を調製する方法に関する。
【0015】
第7の局面では、本発明は、本明細書において規定される繊維の調製のための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物の使用に関する。
【0016】
第8の局面では、本発明は、中空繊維の調製のための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物の使用に関する。
【0017】
第9の局面では、本発明は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物に関する。
【0018】
第10の局面では、本発明は、本明細書において規定される繊維の調製のための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物の使用に関する。
【0019】
第11の局面では、本発明は、中空繊維の調製のための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、非限定的な実施例および図面と共に検討された場合に、詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるであろう:
【
図1】
図1は、前駆体繊維が温度勾配下で冷却される、本発明の態様に係る繊維を調製するための溶融紡糸装置の概略図を示す。
【
図2】
図2Aは、本発明の態様に係る繊維を調製するために用いることができる溶融紡糸装置の写真を示す。楕円は溶融紡糸装置の空冷集合体を強調表示している。
図2Bは、本発明の態様に係る繊維を調製するために用いることができる別の溶融紡糸装置の写真を示す。ここでも楕円は溶融紡糸装置の空冷集合体を強調表示している。
【
図3】
図3は、本発明の態様に係る処理ライン後の繊維に対する繊維のさらなる処理を含む、繊維の製造プロセスの概略図を示す。
【
図4】
図4は、織物の製造のために従来から用いられている様々な繊維を示す。左から右に、コースウール、ファインウール、アルパカ、カシミア、絹、リネン、綿、およびポリエステルの繊維を示す。
【
図5A】
図5Aは、本発明の態様に係る繊維の概略図を示す。この繊維は、空洞を有する厚肉部分と、緻密なまたは凝縮した構造を有する薄肉部分とを含む。
【
図5B】
図5Bは、(互いに対して) より厚い部分(厚肉部分)およびより薄い部分(薄肉部分)を有する、本発明の態様に係る繊維の電子顕微鏡写真を示す。
【
図5C】
図5Cは、本発明の態様に係る繊維の2つの厚肉部分の間に配置された薄肉部分の電子顕微鏡写真を示す。
【
図5D】
図5Dは、本発明の態様に係る繊維の断面の電子顕微鏡写真を示しており、空洞が見られる。
【
図5E】
図5Eは、本発明の態様に係る繊維の断面のさらなる電子顕微鏡写真を示す。上パネルの3つの顕微鏡写真および下パネルの中央の顕微鏡写真は、空洞を含む、繊維の厚肉部分の断面を示す。下パネルの左右の顕微鏡写真は、緻密なまたは凝縮した構造を有する、繊維の薄肉部分の断面を示す。
【
図5F】
図5Fは、本発明の態様に係る繊維の空洞の外壁の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【
図6A】
図6Aは、(左から右へ) 綿繊維、(温度勾配下での冷却を用いることによって得られる) 本発明の態様に係る繊維、ポリエステル繊維、およびポリブチレンサクシネート繊維の吸湿試験の構成を示す。
【
図6B】
図6Bは、(左から右へ) 試験直前の綿繊維、(温度勾配下での冷却を用いることによって得られる) 本発明の態様に係る繊維、ポリエステル(PES)繊維、およびポリブチレンサクシネート(PBS)繊維の吸湿試験の構成を示す。4つの繊維球を同時に着色液におよそ1cm浸漬させる。時間の測定は、繊維球を液体に浸漬させた時点から開始する。
【
図6C】
図6Cは、繊維球を液体に浸漬させてから約13秒後の試験を示す。
【
図6D】
図6Dは、繊維球を液体に浸漬させてからおよそ3.5分後では、綿繊維および (温度勾配下での冷却を用いることによって得られる) 本発明の態様に係る繊維では染色が認められることを示す。概して、綿繊維および本発明の態様に係る繊維の染色は、繊維球を液体に浸漬させてから2分後に観察することができる。
【
図6E】
図6Eは、繊維球を液体に浸漬させてから6分後では、液体に浸漬させた綿繊維および (温度勾配下での冷却を用いることによって得られる) 本発明の態様に係る繊維は部分的に著しく膨潤していることを示す。PBS繊維球は中央に非常にわずかな染色を示す。
【
図6F】
図6Fは、繊維球を液体に浸漬させてから15分後に停止させる直前の試験を示す。(温度勾配下での冷却を用いることによって得られる) 本発明の態様に係る繊維を含む繊維球 (左から2つ目) は、その形状を実質的に維持していることが分かる。本発明の態様に係る繊維球 (左から2つ目) では、綿繊維球 (左側の1つ目) よりも高くまで液体が移動している。綿繊維球の底部には、膨潤に起因する凝集を観察することができる。
【
図7】
図7は、ペトリ皿における40℃で10分間の繊維球の乾燥を示す。
【
図8】
図8は、連続的な空洞を有する本発明の態様に係る中空繊維の概略図を示す。
【
図9】
図9Aは、温度勾配下での冷却を用いて得られた本発明の態様に係る繊維 (特に、繊維から作製された糸) を用いて製造されたシャツの写真を示す。
図9Bは、本発明の態様に係る繊維 (特に繊維から作製された糸) を用いて製造されたシャツの別の図面を示す。
図9Cは、得られた本発明の態様に係る繊維 (特に繊維から作製された糸) を用いて製造されたシャツのさらなる図面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
上記のように、第1の態様では、本発明は、
- 脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルを通して紡糸して前駆体繊維を得る工程;ならびに
- 前駆体繊維を温度勾配下で冷却し、これによって繊維を得る、工程
を含む方法によって得ることができるかまたは得られる、繊維に関する。
【0022】
驚くべきことに、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルを通して紡糸して前駆体繊維を得る工程および前駆体繊維を温度勾配下で冷却して繊維を得る工程を含む方法によって得ることができるかまたは得られる繊維が、綿と比較して同等以上の優れた吸湿特性を有することが分かった (本明細書の下の実施例3を参照されたい)。換言すると、本発明の繊維は綿と同様の親水性を有する。驚くべきことに、本発明の繊維の乾燥に必要な時間は綿よりも著しく短いことも分かった (実施例3を参照されたい)。したがって、本発明の繊維は、例えば、湿気を吸収しかつ綿よりも少ないエネルギーで再度乾燥させることが可能な表面、特に織物を製造するために用いることができる。よって、利点として、本発明の繊維は綿と比較して親水性および乾燥挙動に関して同等またはそれ以上の特性を有する。しかしながら、大きなさらなる利点として、同時に該繊維の調製に必要な水および土地の利用は綿よりもはるかに少ない (実施例4を参照されたい)。またさらなる利点として、繊維の製造は、例えば、アンチモンなどの有害な物質を使用せずに実施することができる (実施例2を参照されたい)。さらに、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを用いることによって、生分解性でありかつ欧州整合規格EN 13432をも満たし、ひいては工業用堆肥化プラントで処理できる繊維を得ることができる。本発明の繊維は、例えば、シャツなどの衣類を製造するための、織物繊維として用いることができる (実施例5ならびに
図9A、9Bおよび9Cを参照されたい)。ここで、そのような衣類は有機廃棄物に投入された後わずか2週間以内に完全に分解する/劣化する程に生分解性であることが分かった。これに関連して、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、および/またはポリヒドロキシアルカノエートのうちの1つまたは複数を含む、例えば、板および箔だけでなく繊維などの様々な製品が、例えば、EP 3 626 767、WO 2010/034689、WO 2010/034711、WO 2015/169660、EP 1 966 419、EP 2 984 138、CN 103668540、CN 103668541、WO 2014/173055、およびCN 104120502に記載されていることに留意されたい。しかしながら、これらの文献はこれらのポリマーの従来の加工方法を記載しているのみである。
【0023】
本明細書において用いられる「前駆体繊維」という用語は概して、本発明の製造プロセス時に、中空繊維紡糸ノズルを出た後かつ温度勾配下での冷却時に中間体として生じる、繊維を指す。特に温度勾配下での冷却後に、該方法によって得ることができるかまたは得られる本発明の(最終)繊維は、概して、単に「繊維」と呼ばれる。
【0024】
驚くべきことに、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルを通して紡糸して前駆体繊維を得る工程と前駆体繊維を温度勾配下で冷却して繊維を得る工程とを含む方法によって得ることができるかまたは得られる繊維は、厚肉部分および薄肉部分を含む特定の構造を有しており、厚肉部分は空洞を有し得、薄肉部分は緻密なまたは凝縮した構造を有し得ることも分かった。したがって、本発明は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物から作製される繊維であって、繊維は長手方向に2種類の部分を含み、一方の種類の部分は厚肉部分であり、他方の種類の部分は薄肉部分であり、厚肉部分および薄肉部分は繊維の長手方向に対して垂直方向に延在し、厚肉部分の垂直方向の延在範囲は薄肉部分の垂直方向の延在範囲よりも大きく;厚肉部分の少なくとも一部は空洞を有し、薄肉部分の少なくとも一部は緻密な構造を有する、繊維にも関する。当該繊維は、空洞を有する厚肉部分と緻密な構造を有する薄肉部分とを含むため、当該繊維はセグメント化繊維またはセグメント化中空繊維とも呼ばれ得る。空洞を有する厚肉部分と薄肉部分とを有する本発明の態様に係る繊維は、例えば、
図5Aおよび5Bに示されている (厚肉部分15、薄肉部分17、および空洞19)。理論に束縛されることを望むものではないが、本明細書においては、空洞を有する厚肉部分と緻密な構造を有する薄肉部分とを含むこの構造は、温度勾配下での前駆体繊維の冷却時の隣接する中空繊維部分の部分的な融着に起因すると考えられる。
【0025】
本明細書において用いられるように、「空洞」という用語は概して、例えば
図5A、5B、5D、5Eの上パネルおよび下パネルの中央、ならびに5Fに示す、繊維の断面内に存在する中空の空間を意味する。空洞は、気体、例えば空気で充填され得る。「凝縮した構造」とも呼ばれる場合がある「緻密な構造」という用語は概して、特に、繊維の空洞(例えば
図5Eの下パネルの左側および右側に示される構造など)と比較した場合に、繊維の材料が実質的に高密度または凝縮した形態で存在することを意味する。しかしながら、「緻密な構造」または「凝縮した構造」という用語は、それぞれの構造が、例えば
図5Eの下パネルの左側および右側に示されるように、細孔を含有することを含む場合もある。
【0026】
繊維を紡糸するための溶融物は、当業者に公知の繊維を紡糸するための溶融物を製造するための任意の方法を用いて製造することができる。例示としては、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートは、例えば、任意で1つまたは複数のさらなる添加剤を加えて、ポリマーの顆粒を混合することによって、未溶融状態で混合することができる。任意で、ポリマーと、存在する場合は添加剤とを、混合および溶融物の調製の前に乾燥させてもよい。次いで、溶融物を調製するために、混合物をポリマーの融点以上まで加熱することができる。例示として、混合および加熱は押出機内で実施してもよい。例示として、溶融物を250℃の温度まで加熱してもよい。次いで、溶融物を中空繊維紡糸ノズルに通す。例示として、溶融物を中空繊維紡糸ノズルに通すために押出機を用いてもよい。当技術分野で一般的に知られている任意の中空繊維紡糸ノズル、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられるEP 2 112 256に記載の中空繊維紡糸ノズルを用いてもよい。脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルに通して紡糸することによって、高温の前駆体繊維が得られる。溶融物を中空繊維紡糸ノズルに通して紡糸することによって得られる高温の前駆体繊維は温度勾配下で冷却され、これによって繊維が得られる。
【0027】
温度勾配は、本発明で用いられる温度勾配を生成することが可能な任意の好適な手段/デバイスによって生じさせ得る。温度勾配は、例えば、1つまたは複数の温度制御要素によって生じさせ得る。例示として、温度勾配は、紡糸装置内または紡糸装置の近傍に温度制御要素を配置しかつ/または動作させることによって生じさせることができる。溶融紡糸のための装置は概して当業者に公知である (例えば、従来の溶融紡糸装置を示す
図2Aおよび2Bも参照されたい)。温度制御要素は、前駆体繊維に加熱または冷却効果を能動的または受動的のいずれかでもたらすことができる加熱および/または冷却要素であり得る。そのような温度制御要素によって、例えば、前駆体繊維の一方の選択された側/表面領域を冷却することが可能になるため、前駆体繊維の一方の側/表面領域が、例えば冷却される一方で、別の表面領域(典型的には、選択された側/表面領域の反対側の表面領域)が加熱されるか、または少なくとも紡糸装置のノズルを出た後に存在する温度に維持される。冷却要素である温度制御要素の例示的であるが非限定的な例は空冷集合体である。温度勾配の例示として、前駆体繊維は約250℃の温度の紡糸ノズルから出てきてもよい。次いで、例えば、一方の側からの前駆体繊維の空冷によって、温度勾配が発生し得る。したがって、空冷は、前駆体繊維の一方の側に配置された空冷集合体を用いることによって、前駆体繊維の長手方向に対して実質的に垂直な方向に前駆体繊維の一方の側のみから前駆体繊維に空気流を供給することによってもたらされ得る (例えば、
図1、前駆体繊維3、および空気流7を参照されたい)。空冷に用いられる空気は、周囲温度、好ましくは室温、より好ましくは+20℃+/-5℃の温度を有し得る。
【0028】
1つまたは複数の温度制御要素は、前駆体繊維の長手方向に対して実質的に垂直な方向に温度勾配が生成されるように配置され得る。1つまたは複数の温度制御要素は、前駆体繊維の断面に対して実質的に平行な方向に温度勾配が生成されるように配置されることも同様に好適である。
【0029】
好ましくは、1つまたは複数の温度制御要素は、前駆体繊維のある外表面の温度が反対側の外表面の温度よりも低くなるように配置される。特に、1つまたは複数の温度制御要素は、前駆体繊維が一方の側から冷却されるように配置され得る。好ましくは、冷却は空冷によって行われる。好ましくは、空冷は、前駆体繊維の一方の側に配置された空冷集合体を用いることによって、前駆体繊維の長手方向に対して実質的に垂直な方向に一方の側から前駆体繊維に空気流を供給することによって行い得る (例えば、
図1、前駆体繊維3および空気流7を参照されたい)。前記一方の側とは反対側からの空気流は、前駆体繊維の反対側に配置された空冷集合体をオフにすることによって防止され得る。前記一方の側とは反対側からの空気流は、前駆体繊維の反対側に配置された空冷集合体と前駆体繊維との間に1つまたは複数のバッフルを配置することによっても防止され得る (例えば、
図1、前駆体繊維3、バッフル5、および空気流9を参照されたい)。したがって、前駆体繊維とその反対側に配置された空冷集合体、すなわち、前駆体繊維に空気流が供給される一方の側とは反対側に配置される空冷集合体との間に1つまたは複数のバッフルを配置することによって、少なくとも前駆体繊維の長手方向に沿った一部にわたって、反対側からの前駆体繊維上への空気流を防止することができる。
【0030】
本明細書において用いられる「脂肪族ポリエステル」という用語は、概して、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物との縮重合を通じて典型的に合成されるポリエステルを指す。例示として、本明細書において用いられる脂肪族ポリエステルは脂肪族C2~C20ジカルボン酸および脂肪族C2~C12ジオールを含み得る。好ましくは、脂肪族ジオールは脂肪族C2~C8ジオールである。より好ましくは、脂肪族ジオールは脂肪族C2~C6ジオールである。さらに好ましくは、脂肪族ジオールは脂肪族C3ジオールまたは脂肪族C4ジオールである。脂肪族ポリエステルに用いられる脂肪族ジオールは、例示として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールを含み得る。好ましくは、脂肪族ジオールは1,3-プロパンジオールまたは1,4-ブタンジオールである。より好ましくは、脂肪族ジオールは1,4-ブタンジオールである。好ましくは、脂肪族ジカルボン酸は脂肪族C2~C12ジカルボン酸である。より好ましくは、脂肪族ジカルボン酸は脂肪族C2~C8ジカルボン酸であり、さらに好ましくは脂肪族C4ジカルボン酸である。脂肪族ポリエステルに用いられる脂肪族ジカルボン酸は、例示として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、およびアジピン酸を含み得る。好ましくは、脂肪族ジカルボン酸はマロン酸またはコハク酸である。より好ましくは、脂肪族ジカルボン酸はコハク酸である。任意で、ジカルボン酸が脂肪族C2~C12ジカルボン酸である場合、脂肪族ポリエステルはC2~C12ジカルボン酸とは異なる追加の脂肪族C6~C20ジカルボン酸をさらに含み得る。任意の脂肪族C6~C12ジカルボン酸は、例示として、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸およびアラキドン酸を含み得る。好ましくは、任意の脂肪族C6~C12ジカルボン酸はアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびブラシル酸を含み得る。任意の脂肪族C2~C12ジカルボン酸は、脂肪族ポリエステル中の脂肪族ジカルボン酸の総量100モル%に対して、0~10モル%の割合で脂肪族ポリエステル中に存在し得る。任意で、脂肪族ポリエステルは鎖延長剤および/または分岐剤をさらに含み得る。任意の鎖延長剤および/または分岐剤は、例示として、多官能性イソシアネート、イソシアヌレート、オキサゾリン、カルボン酸無水物、例えば、無水マレイン酸など、エポキシド (特にエポキシ含有ポリ(メタ)アクリレート)、少なくとも三価のアルコール、および少なくとも三塩基性のカルボン酸を含み得る。任意の鎖延長剤および/または分岐剤は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの合計量100重量%に対して、0~1重量%の割合で脂肪族ポリエステル中に存在し得る。「脂肪族ポリエステル」という用語は2つ以上の異なる脂肪族ポリエステルの混合物も含み得る。脂肪族ポリエステルは、2,500~150,000g/mol、好ましくは5,000~100,000g/mol、より好ましくは7,500~75,000g/mol、さらに好ましくは10,000~65,000g/mol、よりさらに好ましくは12,000~60,000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有し得る。脂肪族ポリエステルは、5,000~300,000g/mol、好ましくは10,000~250,000g/mol、より好ましくは20,000~220,000g/mol、さらに好ましくは50,000~200,000g/mol、よりさらに好ましくは60,000~190,000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有し得る。脂肪族ポリエステルは、1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1.0~3.0、さらに好ましくは1.2~2.0、よりさらに好ましくは1.4~1.8の範囲の多分散性指数 (すなわち、重量平均分子量と数平均分子量との比率(Mw/Mn)) を有し得る。
【0031】
本発明で用いることができる脂肪族ポリエステルの実例は、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンマロネート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンオキサレート、ポリプロピレンマロネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンマロネート、ポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-コ-アゼレート(PBSAz)、ポリブチレンサクシネート-コ-ブラシレート(PBSBr)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される脂肪族ポリエステルを含み得る。脂肪族ポリエステルは、好ましくは、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-コ-アゼレート(PBSAz)、ポリブチレンサクシネート-コ-ブラシレート(PBSBr)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択し得る。1つの好ましい態様では、脂肪族ポリエステルはポリブチレンサクシネートである。本明細書において用いられる「ポリブチレンサクシネート」という用語は、特に、脂肪族ジカルボン酸であるコハク酸と脂肪族ジオールである1,4-ブタンジオールとの縮合生成物を意味する。脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネート(PBS)およびポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)は、例えば、昭和高分子からBlanche(登録商標)として、および三菱からGSPIa(登録商標)として市販されている。脂肪族ポリエステル、特にポリブチレンサクシネート(PBS)は、再生可能資源からまたは化石資源から取得し得る。好ましくは、再生可能資源からの脂肪族ポリエステルが用いられる。より好ましくは、例えば、BioPBS(商標) FZ71という商品名で三菱ケミカルから市販されている、生物由来のコハク酸と1,4-ブタンジオールとから製造される生物由来ポリブチレンサクシネート(PBS)を用いることができる。好ましくは、脂肪族ポリエステルは生分解性である。特に、ポリブチレンサクシネート(PBS)は生分解性の脂肪族ポリエステルである。
【0032】
好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~70重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。より好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、35~65重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。さらに好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、40~60重量%または42~62重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。よりさらに好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、45~55重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。特に、これらの範囲は脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネートである場合に適用することができる。好ましい態様では、繊維は、ポリブチレンサクシネート、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、52重量%のポリブチレンサクシネートを含む。
【0033】
本明細書において用いられる「脂肪族-芳香族ポリエステル」という用語は、概して、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、および芳香族ジカルボン酸から典型的に合成される、ポリエステルを指す。例示として、脂肪族-芳香族ポリエステルは、脂肪族C2~C20ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、および脂肪族C2~C12ジオールを含み得る。好ましくは、脂肪族ジオールは脂肪族C2~C8ジオールである。より好ましくは、脂肪族ジオールは脂肪族C2~C6ジオールである。さらに好ましくは、脂肪族ジオールは、脂肪族C3ジオールまたは脂肪族C4ジオールである。脂肪族-芳香族ポリエステルに用いられる脂肪族ジオールは、例示として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールを含み得る。好ましくは、脂肪族ジオールは、1,3-プロパンジオールまたは1,4-ブタンジオールである。より好ましくは、脂肪族ジオールは1,4-ブタンジオールである。好ましくは、脂肪族ジカルボン酸は脂肪族C2~C12ジカルボン酸である。より好ましくは、脂肪族ジカルボン酸は、脂肪族C4-C10ジカルボン酸であり、さらに好ましくは脂肪族C6ジカルボン酸である。脂肪族-芳香族ポリエステルに用いられる脂肪族ジカルボン酸は、例示として、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、スベリン酸、およびイタコン酸を含み得る。好ましくは、脂肪族ジカルボン酸はアジピン酸、アゼライン酸、またはセバシン酸である。より好ましくは、脂肪族ジカルボン酸はアジピン酸である。好ましくは、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸である。芳香族ジカルボン酸、特にテレフタル酸は、脂肪族-芳香族ポリエステル中に、それぞれ脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸との合計量100モル%に対して、例えば、30~70モル%、好ましくは40~60モル%、より好ましくは40~55モル%の量で存在し得る。任意で、脂肪族ポリエステルは、鎖延長剤および/または分岐剤をさらに含み得る。任意の鎖延長剤は、例示として、二または多官能性イソシアネート、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートを含み得る。任意の分岐剤は、例示として、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、および好ましくはグリセロールを含み得る。任意の鎖延長剤および/または分岐剤は、脂肪族ポリエステル中に、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、および脂肪族ジオールの合計量100重量%に対して、0~1重量%の割合で存在し得る。「脂肪族-芳香族ポリエステル」という用語は、2つ以上の異なる脂肪族-芳香族ポリエステルの混合物も含み得る。脂肪族-芳香族ポリエステルは、1,000~500,000g/mol、好ましくは5,000~300,000g/mol、より好ましくは5,000~100,000g/mol、さらに好ましくは10,000~75,000g/mol、よりさらに好ましくは15,000~50,000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有し得る。脂肪族-芳香族ポリエステルは、10,000~500,000g/mol、好ましくは20,000~400,000g/mol、より好ましくは30,000~300,000g/mol、さらに好ましくは60,000~200,000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有し得る。脂肪族-芳香族ポリエステルは、1~6、好ましくは2~4、より好ましくは1.0~3.0、さらに好ましくは1.2~2.0、よりさらに好ましくは1.4~1.8の範囲の多分散性指数 (すなわち、重量平均分子量と数平均分子量との比率(Mw/Mn)) を有し得る。
【0034】
本発明に用いることができる脂肪族-芳香族ポリエステルは、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される脂肪族-芳香族ポリエステルを非限定的に含み得る。1つの好ましい態様では、脂肪族-芳香族ポリエステルはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)である。本明細書において用いられる「ポリブチレンアジペートテレフタレート」という用語は、脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、および脂肪族ジオールである1,4-ブタンジオールを含む脂肪族-芳香族ポリエステルを意味する。脂肪族-芳香族ポリエステル、特にポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)は、再生可能資源または化石資源から取得し得る。好ましくは、再生可能資源からの脂肪族-芳香族ポリエステルが用いられる。ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)は、例えば、BASFによりEcoflex(登録商標)、例としてはEcoflex(登録商標) F Blend C1200もしくはEcoflex(登録商標)FBX 7011、または昭和電工によりBionolle(登録商標)として市販されている。好ましくは、脂肪族-芳香族ポリエステルは生分解性である。特に、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)は生分解性の脂肪族-芳香族ポリエステルである。
【0035】
好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、10~60重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。より好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、20~50重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。さらに好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、25~40重量%または26~46重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。よりさらに好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~40重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。これらの範囲は、特に、脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)である場合に適用できる。好ましい態様では、繊維は、脂肪族ポリエステル、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、36重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む。
【0036】
本明細書において用いられる「ポリヒドロキシアルカノエート」という用語は、概して、ヒドロキシアルカンカルボン酸モノマーからのポリエステルを指す。ポリヒドロキシアルカノエートは、糖または脂質の細菌発酵を介することを含む、多くの微生物によって製造することができる。好ましくは、ヒドロキシアルカンカルボン酸は、C
4~C
18ヒドロキシアルカンカルボン酸であり、すなわち、好ましくはヒドロキシアルカンカルボン酸は炭素原子を4~18個含む。より好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートは以下の式(I)を有するモノマー単位を含み、
式中、Rは式C
nH
2n+1を有するアルキル基であり、nは1~15、好ましくは1~6の整数である。いくつかの態様では、ポリヒドロキシアルカノエートはホモポリマーである。いくつかの好ましい態様では、ポリヒドロキシアルカノエートはコポリマーである。ポリヒドロキシアルカノエートがコポリマーである場合、コポリマーは式(I)のうちの2つの異なるモノマー単位を含み得る。「ポリヒドロキシアルカノエート」という用語は、2つ以上の異なるポリヒドロキシアルカノエートの混合物も含み得る。ポリヒドロキシアルカノエートは、70,000~1,000,000g/mol、好ましくは100,000~1,000,000g/mol、より好ましくは300,000~600,000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0037】
本開示に用いることできるポリヒドロキシアルカノエートの実例は、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるポリヒドロキシアルカノエートを含み得る。好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリ-3-ヒドロキシバレレート(PHV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。より好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(PHB)
、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)
、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)
、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。さらに好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートはポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエートである。非常に好ましい態様では、ポリアルコキシアルカノエートはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である。好ましくは、上の構造式におけるモル比m:nは、95:5~85:15、より好ましくは90:10~88:12である。好ましくは、それぞれポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)中のモノマーの合計量100モル%を基準として、5~15モル%、好ましくは7~13モル%、より好ましくは10~13モル%のモル比を有する3-ヒドロキシヘキサン酸を有する、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)が用いられる。ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)は、例えば、P&Gまたはカネカによって市販されている。ポリヒドロキシアルカノエート、特にポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)は、再生可能資源または化石資源から取得し得る。好ましくは、再生可能資源に由来するポリヒドロキシアルカノエートが用いられる。より好ましくは、例えば、カネカから商品名AONILEX X 151 Aとして市販されている生物由来ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を用いることができる。好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートは生分解性である。特に、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)は生分解性ポリヒドロキシアルカノエートである。
【0038】
好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、1~25重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。より好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、2~22重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。さらに好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、3~20重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。さらに好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、3~18重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。よりさらに好ましくは、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、5~15重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。特に、これらの範囲はポリヒドロキシアルカノエートがポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である場合に適用することができる。好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートがポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である場合、繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)の合計量100重量%に対して、20重量%以下、より好ましくは18重量%以下の、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含む。ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)の比率が18重量%を超える場合、事前堆肥化または工業的堆肥化をせずに生分解性に関するEN 13432規格を達成することが困難になることがあり、20重量%を超えるとさらに困難になる。好ましい態様では、繊維は、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)の合計量100重量%に対して、12重量%のポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含む。
【0039】
1つの非常に好ましい態様では、脂肪族ポリエステルはポリブチレンサクシネート(PBS)であり、脂肪族-芳香族ポリエステルはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、ポリアルコキシアルカノエートはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である。したがって、1つの非常に好ましい態様では、繊維はポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含む。
【0040】
脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの量に関する範囲も互いに組み合わせ得る。したがって、例示として、それぞれ脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、繊維は、42~62重量%、好ましくは45~55重量%の量の脂肪族ポリエステルを含み得、繊維は、26~46重量%、好ましくは30~40重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含み得、繊維は、2~22重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは3~18重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含み得る。当業者であれば、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量が100重量%を超えないように、本明細書において提供される範囲内で1つまたは複数のポリマーの好適な量を容易に選択するであろう。特に、これらの範囲は、脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネートであり、脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレートであり、ポリヒドロキシアルカノエートがポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である場合に、適用することができる。非常に好ましい態様では、繊維は、それぞれポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、およびポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)の合計量の100重量%に対して、52重量%のポリブチレンサクシネート、36重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート、12重量%のポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含む。
【0041】
好ましくは、繊維は織物繊維である。本明細書において用いられる「織物繊維」という用語は、概して、織物を製造するのに好適な繊維を指す。非限定的な例示として、織物繊維は糸、織物、または織物表面を調製するのに好適な場合がある。
【0042】
任意で、繊維は少なくとも1つの添加剤(1つまたは複数の添加剤)をさらに含み得る。例えば、繊維は、織物繊維に用いられることが概して公知である少なくとも1つの添加剤(または1つまたは複数の添加剤)を含み得る。任意の添加剤は、難燃剤、艶消剤、認証用マーカー(例えば、蛍光マーカー)、抗菌剤、充填剤、およびこれらの任意の組み合わせなどの添加剤を非限定的に含み得る。
【0043】
好ましくは、繊維は、難燃剤、例えば、ホスフェートなどの難燃剤をさらに含む。本明細書において用いられる「ホスフェート」という用語は、[H2PO4]-、[HPO4]2-、および[PO4]3-からなる群より選択されるアニオンを含む、塩を指す。好ましくは、カチオンはアンモニウム[NH4]+である。したがって、好ましい態様では、難燃剤は、リン酸二水素アンモニウム([NH4][H2PO4])、リン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])、リン酸三アンモニウム([NH4]3[PO4])、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。より好ましくは、難燃剤は、リン酸二水素アンモニウム([NH4][H2PO4])、リン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。より好ましくは、難燃剤はリン酸二水素アンモニウム([NH4][H2PO4])またはリン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])である。さらに好ましくは、難燃剤はリン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])である。あるいは、またはさらに、難燃剤はポリホスフェートであり得る。「ポリホスフェート」は、酸素原子を共有することによって共に結合した四面体PO4(ホスフェート)構造単位から形成されるポリマーオキシアニオンの塩またはエステルである。好ましくは、難燃剤がポリホスフェートである場合、難燃剤はポリリン酸アンモニウムである。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書においては、ホスフェートまたはポリホスフェート難燃剤、特にリン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])を加えることが、温度勾配下での前駆体繊維の冷却時に隣接する中空繊維部分の部分的な融着を促進し得、これが本明細書において記載される空洞を有する厚肉部分と緻密な構造を有する薄肉部分とを含む繊維の構造を取得するのに寄与し得ると考えられる。
【0044】
繊維は、繊維の総重量100重量%に対して0.01~5重量%の量の難燃剤を含み得る。好ましくは、繊維は、繊維の総重量100重量%に対して0.1~4重量%の量の難燃剤を含む。より好ましくは、繊維は、繊維の総重量100重量%に対して0.2~3重量%の量の難燃剤を含む。さらに好ましくは、繊維は、繊維の総重量100重量%に対して0.3~3重量%の量の難燃剤を含む。よりさらに好ましくは、繊維は、繊維の総重量100重量%に対して0.3~2重量%の量の難燃剤を含む。特に、上記範囲は、難燃剤がホスフェートまたはポリホスフェートである場合、好ましくは難燃剤がリン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])である場合に適用することができる。
【0045】
任意で、繊維は艶消剤を(も)含み得る。繊維に用いられる典型的な艶消剤など、当業者に公知の任意の艶消剤を用いることができる。例示として、艶消剤は硫化亜鉛であり得る。
【0046】
任意で、繊維は、認証に適したマーカーを(も)含み得る。例示的な非限定例として、認証に適したマーカーは蛍光マーカーであり得る。繊維の蛍光は好適なデバイスによって検出されて、繊維の認証に利用することができる。例えば、Polysecure, Freiburg im Breisgau, Germanyから入手可能な蛍光マーカーを用いることができる。認証に適したマーカーは、概して、通常は繊維の特性を変更させることのない少量でのみ用いられる。典型的には、認証に適したマーカーの繊維内での量はppb(10億分の1)の範囲である。
【0047】
任意で、繊維は抗菌剤を(も)含み得る。繊維における使用に適した当業者には公知の任意の抗菌剤を用いることができる。例示的な非限定例として、抗菌剤は、ポリエチレンテレフタレートでカプセル化された亜鉛であり得る。そのような艶消剤は、例えば、Smartpolymer GmbH, Rudolstadt, Germany,からSMARTZINC 213 PET Hot Meltの商品名で市販されている。
【0048】
任意で、繊維は充填剤を(も)含み得る。繊維における使用に適した当業者に公知の任意の充填剤を用い得、生分解性充填剤が好ましい。例示として、(生分解性)充填剤はリグニンであり得るか、またはリグニンを含み得る。
【0049】
当業者であれば繊維に含まれる添加剤の好適な量を容易に選択するであろう。例示として、繊維は、繊維の総重量100重量%に対して15重量%以下の総量の添加剤を含み得る。繊維は、繊維の総重量100重量%に対して10重量%以下の総量の添加剤を含み得る。好ましくは、繊維は、繊維の総重量100重量%に対して7重量%以下の総量の添加剤を含む。より好ましくは、繊維は、繊維の総重量100重量%に対して5重量%以下の総量の添加剤を含む。さらに好ましくは、繊維は、繊維の総重量100重量%に対して4重量%以下の総量の添加剤を含む。よりさらに好ましくは、繊維は、繊維の総重量100重量%に対して3~4重量%の総量の添加剤を含む。織物繊維に有用な繊維の剛性を実現するために、繊維は、それぞれ繊維の総重量100重量%に対して、好ましくは7重量%以下、より好ましくは3~4重量%の総量の添加剤を含む。
【0050】
繊度は特に限定されない。例えば、繊維産業で一般的に用いられる任意の繊度を適用することができる。例示として、繊度は0.5~8denであり得る。好ましくは、繊度は0.8~6denである。より好ましくは、繊度は0.9~3denである。さらに好ましくは、繊度は1.0~2denである。さらに好ましくは、繊度は1.0~1.5denである。よりさらに好ましくは、繊度は1.1~1.2denである。
【0051】
繊維はステープル繊維であり得る。本明細書において用いられる「ステープル繊維」という用語は、概して、不連続な長さの繊維を指す。ステープル長は特に限定されない。例えば、繊維産業で一般的に用いられる任意の安定した長さを適用することができる。したがって、例示として、繊維は2~80mmのステープル長を有し得る。好ましくは、繊維は5~70mmのステープル長を有する。より好ましくは、繊維は10~60mmのステープル長を有する。さらに好ましくは、繊維は15~50mmのステープル長を有する。よりさらに好ましくは、繊維は20~40mmのステープル長を有する。よりさらに好ましくは、繊維は22~35mmのステープル長を有する。よりさらに好ましくは、繊維は25~32mmのステープル長を有する。「ステープル長」という用語は、概して、試料中の繊維の平均長を指す。
【0052】
繊維はフィラメントであり得る。「フィラメント」または「フィラメント繊維」という用語は、概して、事実上長さが無制限の繊維を指す。したがって、「フィラメント」または「フィラメント繊維」という用語は、概して、連続繊維を指す。
【0053】
好ましくは、繊維は生分解性である。より好ましくは、繊維は、EN 13432に準拠した生分解性を有する。したがって、繊維が所定の期間後にDIN EN 13432の生分解度の少なくとも90%に等しい生分解度を有する場合、繊維は、EN 13432に準拠した生分解性があるとみなし得る。生分解性の一般的な効果は繊維が適切かつ検証可能な期間内で分解することである。分解は酵素的に、加水分解的に、酸化的に、および/または電磁放射、例えば、UV放射の作用を通じて引き起こされ得、主に、細菌、酵母、菌類および藻類などの微生物の作用によるものであり得る。生分解性は、例えば、繊維を堆肥と混合し、一定期間保存することによって定量することができる。例えば、堆肥化時に、CO2を含まない空気を熟成堆肥に流し、熟成堆肥を規定の温度プログラムに供することができる。生分解性は、例えば、試料から放出された正味のCO2(試料を含まない堆肥から放出されたCO2を減じた後)と、試料から放出可能なCO2の最大量(試料の炭素含有量から判断)との比をパーセント生分解度として規定することができる。生分解性繊維は、典型的には、わずか数日の堆肥化後に、真菌の増殖、ひび割れおよび穴あきなどの明らかな分解の兆候を示す。生分解性を決定する他の方法は、例えば、ASTM D 5338およびASTM D 6400に記載されている。
【0054】
好ましくは、繊維の厚肉部分と薄肉部分は、繊維の長手方向に沿って交互のパターンで配置される。繊維の長手方向に沿った厚肉部分および薄肉部分の長さは不規則であってもよい。
【0055】
繊維において、繊維の長手方向における空洞の延在範囲は、繊維の長手方向に対して垂直な方向における該空洞の延在範囲よりも大きくてもよい。空洞は、(例えば、
図5Eに示されるように) 不規則な外周を有してもよい。特に、外周は、繊維の長手方向に対して垂直な方向において考えられる平面において不規則であってもよい。
【0056】
好ましくは、繊維は捲縮繊維である。
【0057】
本発明は、脂肪族ポリエステルおよび脂肪族-芳香族ポリエステルおよびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物から作製される、中空繊維にも関する。本明細書において用いられかつ当技術分野において公知の「中空繊維」という用語は、概して、断面内に1つまたは複数、特に1つの連続した空洞を有する繊維を指す (例えば、連続的な空洞23を有する中空繊維21の例示については
図8を参照されたい)。1つまたは複数の空洞は、例えば、空気が充填され得る。そのような中空繊維は、中空繊維を調製するのに適した当該技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。
【0058】
例示として、中空繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルを通して紡糸して前駆体繊維を得る工程を含む方法によって取得可能であり得るかまたは得ることができる。例示として、本明細書において既に上記したように、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートは、例えば、任意で1つまたは複数のさらなる添加剤を加えて、ポリマーの顆粒を混合することによって、未溶融状態で混合することができ、混合物はポリマーの融点以上まで加熱することができる。例示として、混合および加熱は押出機内で実施してもよい。次いで溶融物を中空繊維紡糸ノズルに通す。例示として、溶融物に中空繊維紡糸ノズルを通過させるために押出機を用いてもよい。当技術分野で一般的に知られている任意の中空繊維紡糸ノズル、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられるEP 2 112 256に記載の中空繊維紡糸ノズルを用いてもよい。脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルに通して紡糸することによって、高温の前駆体繊維が得られる。しかしながら、紡糸ノズルを通過後、従来の中空繊維を得るためには、前駆体繊維は従来の手段を用いて冷却される。従来の手段を用いた冷却は、例えば、前駆体繊維の冷却が繊維全体に実質的に均一な温度分布の下で行われることを想定している可能性がある。したがって、本明細書において上記した温度勾配が実質的に回避される可能性がある。実質的に均一な温度分布は、1つまたは複数の温度制御要素によって生じさせ得る。例示として、均一な温度分布は、好適な様式で紡糸装置内または紡糸装置の近傍に温度制御要素を配置しかつ/または動作させることによって生じさせることができる。温度制御要素は、前駆体繊維に加熱または冷却効果を能動的または受動的のいずれかでもたらすことができる加熱および/または冷却要素(例えば、空冷集合体)であり得る。そのような温度制御要素によって、前駆体繊維の各側/表面領域上の温度分布が実質的に均一になるように、各側/表面領域を冷却することが可能である。当業者であれば、前駆体繊維にわたって均一な温度分布を達成するために、1つまたは複数の温度制御要素を好適な様式で容易に配置するであろう。例えば、前駆体繊維は空冷を用いて冷却し得る。好ましくは、空冷は、前駆体繊維の両側に配置された空冷集合体を用いることによって、前駆体繊維の長手方向に対して実質的に垂直方向に、両側から前駆体繊維に空気流を供給することによって行い得る。単なる例示として、
図1に示される前駆体繊維3と空気流9との間のバッフル5を取り除くことによって、両側からの前駆体繊維への空気流の供給を達成することができる。
【0059】
中空繊維は、任意の繊維について本明細書において記載されているようにさらに規定され得る。したがって、例示として、中空繊維は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエート、ポリマーの比率、ならびに/または少なくとも1つの添加剤に関連して、任意の繊維について本明細書において記載されているようにさらに規定され得る。
【0060】
任意で、本明細書において記載される任意の繊維は、例えば、繊維後処理ラインを用いた、繊維後処理に供し得る。後処理は、繊維の処理に従来から用いられる工程、例えば、筬(reed)、吸気構造、浸漬、ドラフト、延伸、水蒸気処理、活性化(reviving)、捲縮、乾燥、および/またはステープル切断を含み得る。
【0061】
本発明は、本明細書において記載される繊維を含む糸にも関する。任意の種類の糸が検討され得る。非例示的な例として、糸は紡績糸、カードまたはコーマ糸、メリヤス糸、オープンエンド糸、飾り糸、フィラメント糸、またはテクスチャード糸であり得る。糸は、糸を調製するのに適した任意の方法によって、本明細書において記載される繊維から調製し得る。糸を調製するための方法は概して公知であり、当業者によって容易に選択される。
【0062】
本発明は、本明細書において記載される繊維を含む織物表面にも関する。本発明は、糸を含む織物表面にも関しており、糸は本明細書において記載される繊維を含む。例示であり非限定的な例として、織物表面は布地、編布地、および不織布からなる群より選択し得る。繊維または繊維を含む糸はフリースを調製するために用いることもできる。
【0063】
本発明は、本明細書において記載される繊維を含む織物にも関する。本発明は、糸を含む織物にも関しており、糸は本明細書において記載される繊維を含む。織物は衣類であり得る。例示であり非限定的な例として、衣類はシャツ、ポロシャツ、ズボン、ジャケット、下着、靴下、コート、靴および靴紐からなる群より選択し得る。特に、衣類はシャツまたはポロシャツ、好ましくはシャツであり得る。織物は家庭用織物であり得る。例示であり非限定的な例として、家庭用織物はカーテン、敷物、毛布、ベッドシーツ、布団、布団カバー、クッション、クッションカバーおよびタオルからなる群より選択し得る。
【0064】
本発明は、
- 脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルを通して紡糸して前駆体繊維を得る工程;ならびに
- 前駆体繊維を温度勾配下で冷却し、これによって繊維を得る、工程
を含む、本発明に係る繊維を調製する方法にも関する。繊維は本明細書において記載されるようにさらに規定され得る。
【0065】
好ましくは、温度勾配は、前駆体繊維を一方の側から冷却することによって生じる。
【0066】
好ましくは、冷却は空冷によって行われる。
【0067】
好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~70重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。より好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、35~65重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。さらに好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、40~60重量%または42~62重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。よりさらに好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、45~55重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。特に、これらの範囲は脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネートである場合に適用することができる。好ましい態様では、溶融物は、ポリブチレンサクシネート、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、52重量%のポリブチレンサクシネートを含む。
【0068】
好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、10~60重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。より好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、20~50重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。さらに好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、25~40重量%または26~46重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。よりさらに好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~40重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。特に、これらの範囲は脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)である場合に適用することができる。好ましい態様では、溶融物は、脂肪族ポリエステル、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、36重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む。
【0069】
好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、1~25重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。より好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、2~22重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。よりさらに好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、3~20重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。よりさらに好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、3~18重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。またさらに好ましくは、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、5~15重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。特に、これらの範囲はポリヒドロキシアルカノエートがポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である場合に適用することができる。好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートがポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である場合、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステルおよびポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)の合計量100重量%に対して、20重量%以下、より好ましくは18重量%以下の、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含む。
【0070】
脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの量に関する範囲も互いに組み合わせ得る。したがって、例示として、それぞれ脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、溶融物は、42~62重量%、好ましくは45~55重量%の量の脂肪族ポリエステルを含み得、溶融物は、26~46重量%、好ましくは30~40重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含み得、溶融物は、2~22重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは3~18重量%の量のポリヒドロキシブチレートを含み得る。当業者であれば、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量が100重量%を超えないように、本明細書において提供される範囲内で1つまたは複数のポリマーの好適な量を容易に選択するであろう。特に、これらの範囲は、脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネートであり、脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレートであり、ポリヒドロキシアルカノエートがポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である場合に適用することができる。非常に好ましい態様では、溶融物は、それぞれポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレートおよびポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)の合計量の100重量%に対して、52重量%のポリブチレンサクシネート、36重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート、12重量%のポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含む。
【0071】
任意で、溶融物は、少なくとも1つの添加剤をさらに含み得る。例えば、溶融物は、織物繊維に用いられることが概して公知である少なくとも1つの添加剤を含み得る。任意の添加剤は、難燃剤、艶消剤、認証用マーカー(例えば、蛍光マーカー)、抗菌剤、充填剤、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される添加剤を非限定的に含み得る。
【0072】
好ましくは、溶融物は難燃剤をさらに含む。より好ましくは、難燃剤はホスフェート(リン酸塩またはリン酸エステル)である。好ましい態様では、難燃剤は、リン酸二水素アンモニウム([NH4][H2PO4])、リン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])、リン酸三アンモニウム([NH4]3[PO4])、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。より好ましくは、難燃剤は、リン酸二水素アンモニウム([NH4][H2PO4])、リン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。より好ましくは、難燃剤はリン酸二水素アンモニウム([NH4][H2PO4])またはリン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])である。さらに好ましくは、難燃剤はリン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])である。あるいは、またはさらに、難燃剤はポリホスフェートであってもよい。好ましくは、難燃剤がポリホスフェートである場合、難燃剤はポリリン酸アンモニウムである。
【0073】
溶融物は、溶融物の総重量100重量%に対して0.01~5重量%の量の難燃剤を含み得る。好ましくは、溶融物は、溶融物の総重量100重量%に対して0.1~4重量%の量の難燃剤を含む。より好ましくは、溶融物は、溶融物の総重量100重量%に対して0.2~3重量%の量の難燃剤を含む。さらに好ましくは、溶融物は、溶融物の総重量100重量%に対して0.3~3重量%の量の難燃剤を含む。よりさらに好ましくは、溶融物は、溶融物の総重量100重量%に対して0.3~2重量%の量の難燃剤を含む。特に、上記範囲は、難燃剤がホスフェートまたはポリホスフェートである場合、好ましくは難燃剤がリン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])である場合に適用することができる。
【0074】
当業者であれば溶融物に含まれる添加剤の好適な量を容易に選択するであろう。例示として、溶融物は、溶融物の総重量100重量%に対して添加剤を15重量%以下の総量で含み得る。溶融物は、溶融物の総重量100重量%に対して添加剤を10重量%以下の総量で含み得る。好ましくは、溶融物は、溶融物の総重量100重量%に対して添加剤を7重量%以下の総量で含む。より好ましくは、溶融物は、溶融物の総重量100重量%に対して添加剤を5重量%以下の総量で含む。さらに好ましくは、溶融物は、溶融物の総重量100重量%に対して添加剤を4重量%以下の総量で含む。よりさらに好ましくは、溶融物は、溶融物の総重量100重量%に対して添加剤を3~4重量%の総量で含む。織物繊維に有用な繊維の剛性を実現するために、溶融物は、添加剤を好ましくは7重量%以下、より好ましくは3~4重量%の総量で、それぞれ溶融物の総重量100重量%に対して含む。
【0075】
繊維はステープル繊維として調製し得る。
【0076】
繊維はフィラメントとして調製し得る。
【0077】
本発明は、本明細書において規定される繊維の調製のための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物の使用にも関する。
【0078】
本発明は、中空繊維の調製のための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物の使用にも関する。
【0079】
本発明は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物にも関する。そのような混合物は、例えば、本発明に係る繊維の調製のために用いることができる。
【0080】
混合物に含まれる脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートは、本明細書において記載されるように、特に任意の繊維について本明細書において記載されるように、さらに規定され得る。1つの非常に好ましい態様において、脂肪族ポリエステルはポリブチレンサクシネート(PBS)であり、脂肪族-芳香族ポリエステルはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、ポリアルコキシアルカノエートはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である。したがって、本発明は、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含む混合物にも関する。
【0081】
いくつかの態様では、混合物は脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートから本質的になる。いくつかの態様では、混合物はポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)から本質的になる。いくつかの態様では、混合物は脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートからなる。いくつかの態様では、混合物はポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)からなる。
【0082】
混合物中では、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートは粒子の形態で存在し得る。混合物に用いることができる粒子の例示は、顆粒、ペレット、押出物、ビーズ、プリル(prill)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択し得る。好ましくは、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートは顆粒の形態である。非常に好ましい態様では、混合物は顆粒の形態のポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含む。本発明は、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含む顆粒にも関する。繊維を調製するために、ポリマーの粒子を含む混合物をポリマーの融点より高く加熱することができる。いくつかの態様では、よって混合物は溶融物の形態で存在することができる。溶融物は、本明細書において記載されているように、紡糸に供することができる。
【0083】
好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~70重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。より好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、35~65重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。さらに好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、40~60重量%または42~62重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。よりさらに好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、45~55重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む。特に、これらの範囲は脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネートである場合に適用することができる。好ましい態様では、混合物は、ポリブチレンサクシネート、脂肪族-芳香族ポリエステルおよびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、52重量%のポリブチレンサクシネートを含む。
【0084】
好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、10~60重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。より好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、20~50重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。さらに好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、25~40重量%または26~46重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。よりさらに好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~40重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。特に、これらの範囲は脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)である場合に適用することができる。好ましい態様では、混合物は、脂肪族ポリエステル、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、36重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む。
【0085】
好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、1~25重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。より好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、2~22重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。よりさらに好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、3~20重量の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。さらに好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、3~18重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。またさらに好ましくは、混合物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、5~15重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む。特に、これらの範囲は、ポリヒドロキシアルカノエートがポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である場合に適用することができる。好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートがポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である場合、溶融物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステルおよびポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)の合計量100重量%に対して、20重量%以下、より好ましくは18重量%以下の、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含む。
【0086】
脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの量に関する範囲も互いに組み合わせ得る。したがって、例示として、それぞれ脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、溶融物は、42~62重量%、好ましくは45~55重量%の量の脂肪族ポリエステルを含み得、溶融物は、26~46重量%、好ましくは30~40重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含み得、溶融物は、2~22重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは3~18重量%の量のポリヒドロキシブチレートを含み得る。当業者であれば、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量が100重量%を超えないように、本明細書において提供される範囲内で1つまたは複数のポリマーの好適な量を容易に選択するであろう。特に、これらの範囲は、脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネートであり、脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレートであり、ポリヒドロキシアルカノエートがポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である場合に適用することができる。非常に好ましい態様では、混合物は、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、およびポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)の合計量100重量%をそれぞれ基準として、52重量%のポリブチレンサクシネート、36重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート、12重量%のポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含む。
【0087】
任意で、混合物は、少なくとも1つの添加剤をさらに含み得る。例えば、混合物は、織物繊維に用いられることが概して公知である少なくとも1つの添加剤を含み得る。任意の添加剤は、難燃剤、艶消剤、認証用マーカー(例えば、蛍光マーカー)、抗菌剤、充填剤、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される添加剤を非限定的に含み得る。
【0088】
好ましくは、混合物は難燃剤をさらに含む。より好ましくは、難燃剤はホスフェートである。好ましい態様では、難燃剤は、リン酸二水素アンモニウム([NH4][H2PO4])、リン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])、リン酸三アンモニウム([NH4]3[PO4])、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。より好ましくは、難燃剤は、リン酸二水素アンモニウム([NH4][H2PO4])、リン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。より好ましくは、難燃剤はリン酸二水素アンモニウム([NH4][H2PO4])またはリン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])である。さらに好ましくは、難燃剤はリン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])である。あるいは、またはさらに、難燃剤はポリホスフェートであってもよい。好ましくは、難燃剤がポリホスフェートである場合、難燃剤はポリリン酸アンモニウムである。
【0089】
混合物は、溶融物の総重量100重量%に対して0.01~5重量%の量の難燃剤を含み得る。好ましくは、混合物は、混合物の総重量100重量%に対して0.1~4重量%の量の難燃剤を含む。より好ましくは、混合物は、混合物の総重量100重量%に対して0.2~3重量%の量の難燃剤を含む。さらに好ましくは、混合物は、混合物の総重量100重量%に対して0.3~3重量%の量の難燃剤を含む。よりさらに好ましくは、混合物は、混合物の総重量100重量%に対して0.3~2重量%の量の難燃剤を含む。特に、上記範囲は、難燃剤がホスフェートまたはポリホスフェートである場合、好ましくは難燃剤がリン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])である場合に適用することができる。
【0090】
当業者であれば、混合物に含まれる添加剤の好適な量を容易に選択するであろう。例示として、混合物は、溶融物の総重量100重量%に対して添加剤を15重量%以下の総量で含み得る。混合物は、溶融物の総重量100重量%に対して添加剤を10重量%以下の総量で含み得る。好ましくは、混合物は、混合物の総重量100重量%に対して添加剤を7重量%以下の総量で含む。より好ましくは、混合物は、混合物の総重量100重量%に対して添加剤を5重量%以下の総量で含む。さらに好ましくは、混合物は、混合物の総重量100重量%に対して添加剤を4重量%以下の総量で含む。よりさらに好ましくは、混合物は、混合物の総重量100重量%に対して添加剤を3~4重量%の総量で含む。織物繊維に有用な繊維の剛性を実現するために、混合物は、添加剤を、それぞれ混合物の総重量100重量%に対して、好ましくは7重量%以下、より好ましくは3~4重量%の総量で含む。
【0091】
本発明は、本明細書において規定される繊維を調製するための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物の使用にも関する。
【0092】
本発明は、中空繊維の調製のための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物の使用にも関する。
【0093】
本明細書において用いられるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明らかに示している場合を除いて、複数の指示対象を含むことに留意されたい。よって、例えば、「試薬(a reagent)」への言及は、1つまたは複数のそのような異なる試薬を含み、「方法(the method)」への言及は、本明細書において記載される方法に関連して修飾できるかまたはそれと置き換えることができる、当業者には公知の均等な工程および方法への言及を含む。
【0094】
特に示されていない限り、一連の要素の前にある「少なくとも」という用語は一連の要素それぞれに言及していると理解されたい。当業者であれば、本明細書において記載される本発明の具体的な態様に対する多くの均等物を認識するか、または通常の実験を用いて確認することができるであろう。そのような均等物は本発明に包含されることが意図されている。
【0095】
「および/または」という用語は、本明細書においてどこで用いられていても、「および」、「または」、および「該用語によって接続される要素のあらゆるまたは任意の他の組み合わせ」の意味を含む。
【0096】
「未満」、翻って「より大きい」、という用語は明示された数値を含まない。例えば、「20未満」とは示された数値より小さいことを意味する。同様に、「より大きい」とは示された数値よりも大きいことを意味し、例えば、80%より大きいとは示された80%という数値よりも大きいことを意味する。
【0097】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体を通じて、「含む(comprise)」という単語ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形は、文脈上他の意味に解する場合を除き、記載された実体(integer)もしくは工程または実体もしくは工程の群を含むが、任意の他の実体もしくは工程または実体または工程の群を除外しないことを暗示していると理解される。本明細書において用いられる場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」または「含む(including)」という用語で、本明細書で用いられる場合に時には「有する(having)」という用語で置き換えることができる。
【0098】
本明細書において用いられる場合、「からなる」は特許請求の範囲の要素において特定されていない要素、工程、または成分を除外する。本明細書において用いられる場合、「から本質的になる」は特許請求の範囲の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えない材料または工程を除外しない。本明細書におけるどの場合でも、「を含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という用語のいずれも他の2つの用語のいずれかと置き換えられることがある。
【0099】
「を含む」という用語は「を非限定的に含む」を意味する。「を含む」および「を非限定的に含む」は互換的に用いられる。
【0100】
本明細書において用いられる場合、「約」という用語は、それぞれの値または範囲(pH、濃度、パーセンテージ、モル濃度、時間など)において所与の値の5%まで、10%までの変動があり得ることを意味すると理解される。例えば、配合物が化合物を約5mg/ml含む場合、これは配合物がそれを4.5~5.5mg/mlの間で有し得ることを意味すると理解される。
【0101】
本発明は、本明細書において記載される特定の方法論、プロトコル、材料、試薬、および物質などに限定されず、したがって、それらは変動し得ると理解すべきである。本明細書において用いられる用語は特定の態様のみを説明することを目的としており、特許請求の範囲によってのみ規定される本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0102】
前記または下記に関わらず本明細書の本文全体にわたって引用されるすべての文献(すべての特許、特許出願、科学文献、説明書などを含む)はそれらの全体において参照により本書に組み入れられる。本明細書におけるいかなる部分も先発明に基づいて本発明がそのような開示に先行する権利がないことを認めているとは解釈されない。参照により組み入れられる資料が本明細書と矛盾するかまたは食い違う場合には本明細書がそのような資料に優先する。
【0103】
本明細書において引用されるすべての文献および特許文献の内容は、それらの全体が参照により組み入れられる。
【0104】
本発明およびその利点は例示目的にのみ提供される以下の実施例によってよりよく理解されるであろう。実施例は本発明の範囲を限定することを何ら意図していない。
【実施例】
【0105】
実施例1:本発明の態様に係る繊維の調製
本発明の態様に係る繊維の調製のために、以下の成分 (ポリマーI、ポリマーII、ポリマーIII、および添加剤のマスターバッチ) を用いた:
ポリマーI:ポリブチレンサクシネート (PBS、三菱ケミカルBio PBS FZ71、生物由来)
ポリマーII:ポリブチレンアジペートテレフタレート (PBAT、BASF ECOFLEX PBAT)
ポリマーIII:ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート) (PBHB、カネカAONILEX X151A、生物由来)
マスターバッチ:マスターバッチは、以下の表1に示す量の添加剤を含む。
【0106】
【0107】
本発明の態様に係る繊維は、マスターバッチ添加剤のサイドフローを可能にする後付けモジュールと、中空繊維紡糸ノズル (例えば、EP2112256 B1に記載の中空繊維紡糸ノズルを用いることができる) と、繊維後処理ラインとを備えたFourne Pilot Melt Spintester (Fourne Maschinenbau GmbH, Alfter-Impekoven, Germany) を用いて調製した。Fourne Pilot Melt Spintesterは
図2Bに示す。筬、吸気構造、浸漬槽、ドラフトシステムI、延伸槽、ドラフトシステムII、水蒸気処理、ドラフトシステムIII、活性化ローラー、捲縮、乾燥およびステープル切断機の工程を用いて、繊維後処理ライン上でさらなる外部処理を実施した。あるいは、別の溶融紡糸装置を用いることもでき;代替的な溶融紡糸装置の例を
図2Aに示す。
【0108】
ポリマーI (15,600g、ポリブチレンサクシネート(PBS))、ポリマーII (10,800g、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)) およびポリマーIII (3,600g、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)) を顆粒としてメルトスピンテスターに加えた。さらに、サイドフローを可能にするために1.650kgの粉末状のマスターバッチ(添加剤)を単純なスクリューフィーダーを介してモジュールに加えた。含水量は約0.1重量%であった。ポリマーI、IIおよびIII、ならびにマスターバッチ(添加剤)は、添加前に真空乾燥キャビネット内で60℃にて24時間乾燥させた。
【0109】
以下のプロセスパラメータを用いた:
流量:2.5kg/hから最大で5.12m/minのトウ;
処理温度:250℃;
中空繊維紡糸ノズルとゴデットの間の距離:200cm;
テイクオフゴデット:85℃ 800m/min;
ゴデットローラー1:80℃ 980m/min;
ゴデットローラー2:80℃ 1350m/min;
前駆体繊維の一方の側で空冷集合体を作動させて、前記一方の側から前駆体繊維に空気流を供給し;かつ
空冷集合体と前駆体繊維との間にバッフルを設けることによって前駆体繊維の反対側では空冷を停止させることによって、前記一方の側とは反対側からの空気流を防止する。したがって、前駆体繊維を温度勾配下で冷却した。
【0110】
溶融紡糸装置および繊維の調製のためのプロセスを
図1に概略的に示す。
図1の溶融紡糸装置は中空繊維紡糸ノズル1を含む。本実施例では処理温度が250℃である3つのポリマーを含む溶融物を、押出機を用いて中空繊維紡糸ノズル1に通して紡糸して、高温の前駆体繊維3を得る。前駆体繊維3に、左側から前駆体繊維3の長手方向に対して略垂直方向に空気流7を供給し、前駆体繊維3を冷却する。空気流7は、左側の雪の結晶によって概略的に示されている空冷集合体によって供給されてもよい。本実施例では、空気流7に用いられる空気は周囲温度(約20℃)である。空気流9は右側から供給される。また、空気流9は、右側の雪の結晶によって概略的に示されている空冷集合体によって供給されてもよい。バッフル5は空気流9と前駆体繊維3との間に配置される。よって、バッフル5は、前駆体繊維3のバッフル5によって覆われた部分にわたって右からの空気流9が前駆体繊維3に到達するのを防止する。したがって、左側からの空気流7のみが前駆体繊維3に到達する。その結果、前駆体繊維3は、空気流7が前駆体繊維3に衝突する左側では、空気流9がバッフル5によって阻止された右側よりも温度が低い。それ故、前駆体繊維3は温度勾配下で冷却される。温度勾配下での冷却により繊維11が得られる。次いで繊維11は、ゴデットロール13によって巻き取られる。
【0111】
あるいは、バッフルを用いる代わりに溶融紡糸装置の2つの空冷集合体のうちの1つを停止させてもよく、これにより、この場合も同様に、一方の側からのみ空気流が前駆体繊維3に供給される。
【0112】
本実施例では、
図2Bに示すFourne Pilot Melt Spintester (Fourne Maschinenbau GmbH, Alfter-Impekoven, Germany)を用いる。あるいは、例えば、
図2Aに示すより大型の溶融紡糸装置などの、任意の他の好適な溶融紡糸装置を用いることもできる。
図2Aおよび
図2Bのいずれも、グリッドを備えた空冷集合体を示すために楕円が描かれている。
【0113】
図3は、本発明の態様に係る、繊維の調製および後処理による繊維のさらなる処理の拡張スキームを示す。
図3に示すように、繊維は、例えば、仕上げ、切断、およびベールへの圧縮を受けてもよい。
【0114】
図4は、織物を製造するために一般的に用いられる繊維を示す。左から右に、コースウール、ファインウール、アルパカ、カシミア、絹、リネン、綿、およびポリエステルの繊維を示す。
【0115】
図5A、5B、5C、5D、5E、および5Fは、本発明の態様に係る繊維を示しており、これらは、例えば、本実施例1に記載される温度勾配下での前駆体繊維の冷却を用いて製造されたものである。
図5Aは、本発明の態様に係る繊維の概略図を示す。繊維11は厚肉部分15と薄肉部分17とを含む。厚肉部分は空洞19を含む。
図5Bは、本発明の態様に係る繊維の電子顕微鏡写真を示す。厚肉部分および薄肉部分を区別することができる。
図5Cは、本発明の態様に係る繊維の電子顕微鏡写真を示す。この顕微鏡写真は、2つの厚肉部分の間に配置された、繊維の薄肉部分を示す。この繊維は、実質的に平滑な外表面を有する。
図5Dは、本発明の態様に係る繊維の断面の電子顕微鏡写真を示す。空洞が見られる。
図5Eは、本発明の態様に係る繊維の断面のさらなる電子顕微鏡写真を示す。上パネルの3つの顕微鏡写真と下パネルの中央の顕微鏡写真は、繊維の厚肉部分の断面を示す。空洞が見られる。空洞は、繊維の外壁に向かって不規則な外周を有し得る。外壁は細孔を含む。下パネルの左右の顕微鏡写真は、繊維の薄肉部分の断面を示す。厚肉部分の空洞と比較して、薄肉部分は、緻密なまたは凝縮された構造を有する。見てわかるように、薄肉部分は細孔を有する。
図5Fは、本発明の態様に係る繊維の空洞の外壁の断面の電子顕微鏡写真を示す。ここでも、外壁が多孔質構造を有することがわかる。
【0116】
図8は、本発明の態様に係る中空繊維21の概略図を示す。中空繊維21は連続的な空洞23を有する。そのような中空繊維は、温度勾配を適用することなく、従来の溶融紡糸プロセスを用いて調製することができる。
【0117】
実施例2:アンチモン含有量試験
例えば、実施例1のような温度勾配下での冷却を用いて得られる繊維のアンチモン含有量は、Laboratory Dr. Matt, Schaan, Liechtensteinによって試験した。原理上、有毒元素であるアンチモンは、ポリマーの製造プロセス時に用いられる触媒からの残渣として存在し得る。
アンチモン含有量は以下のように試験した:
実施例1の繊維を水に入れ、(a)水の沸点まで加熱し;(b)水中で8週間保存し;(c)水および空気を入れたグラス(密閉、空気1/3、水2/3)で4週間さらに保存する。
繊維中および水中にアンチモンは検出できなかった(アンチモンS6 < 0.1mg/kg ICP-MS)。よって、この試験は有毒なアンチモンを用いずに繊維を製造できることを示している。
【0118】
実施例3:吸湿試験
この実施例では、例えば、実施例1のように温度勾配下での冷却を用いて得られた本発明の態様に係る繊維の吸湿を、市販の綿繊維および2つのさらなる市販の合成繊維、すなわち、ポリエステル(PES)繊維およびポリブチレンサクシネート(PBS)繊維と比較して試験した。さらに、繊維の乾燥特性も試験した。繊維および供給源を以下の表2に記載する。
【0119】
【0120】
吸湿試験の構成を
図6Aに示す。それぞれ長さ約4cmの4つの繊維球(左から右に:綿、本発明の態様に係る繊維 (温度勾配下での冷却を用いて得られる)、ポリエステル(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)をクランプ付きの棒に取り付ける。繊維球は、目視検査でほぼ同じ長さおよび体積を有するように調製される。
【0121】
図6Bは、試験直前の試験の構成を示す。本明細書において「着色水」、「液体」、または「着色液」とも呼ばれる青色の水を提供するために、4つのペトリ皿を水および約3体積%の青インクで満たす。試験を次のように行う:試験を開始する前に均等な水分含有量を提供するために4つの繊維球を水噴霧器でわずかに湿らせる。繊維球の重量を着色液への浸漬前に測定する。繊維球の重量を下の表3に記載する。次いで、4つの繊維球(左から右に:綿、本発明の態様に係る繊維 (温度勾配下での冷却を用いて得られる)、ポリエステル(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)を付けた棒を吊り下げて、4つの繊維球を着色液に同時に約1cm浸漬させる。時間の計測は繊維球を液体に浸漬させた際に開始する。
【0122】
経時的な染色を撮影用カメラで記録する。
図6Cは、繊維球を液体に浸漬させてから約13秒後の試験を示す。
図6Dは、繊維球を液体に浸漬させてからおよそ3.5分後に、綿繊維(左から1つ目)および本発明の態様に係る繊維(温度勾配下での冷却を用いて得られる、左から2つ目)に染色が見られることを示す。概して、綿繊維および本発明の態様に係る繊維の染色は、繊維球を着色液に浸漬させてから2分後以降に観察することができる。
図6Eは、繊維球を液体に浸漬させてから6分後では、綿繊維および本発明の態様に係る繊維 (温度勾配下での冷却を用いて得られる) の液体と直接接触する部分が著しく膨潤していることを示す。PBS繊維球(左から4つ目)も中央に非常にわずかな着色を示すが、これは、しかしながら、試験を繰り返すと見えなくなった。
図6Fは、繊維球を液体に浸漬させてから15分後に停止させる直前の試験を示す。青い液体中での15分後、繊維球を液体から同時に引き上げる。繊維球をペトリ皿の上方に1分間吊るして水気を切る。繊維球を目視検査により比較し、秤量した (この点について、繊維球の重量を、着色水に浸漬させる前に測定し、繊維を取り出した後および水切り後に比較した)。次いで繊維球を40℃で10分間乾燥させ、再び秤量する。
図7は、ペトリ皿における40℃で10分間の繊維球の乾燥を示す。結果を表3に示す。
【0123】
【表3】
*例えば、実施例1に記載のように、温度勾配下での冷却を用いて得られた繊維。
**1回の試験ランでは部分的に最大で8mmまでであるが、これは再現できなかった (この結果は消毒剤で汚染された繊維で得られたと考えられる)。
【0124】
図6Fに見られるように、青色の液体への15分間の浸漬後、本発明の態様に係る繊維球 (左から2つ目、温度勾配下での冷却を用いて得られる) は、その形状を実質的に維持している。本発明の態様に係る繊維球 (左から2つ目) では、綿繊維球 (左側の1つ目) よりも高くまで液体が移動している。綿繊維球の底部には、膨潤に起因する凝集を観察することができる。
【0125】
本発明の態様に係る繊維 (温度勾配下での冷却を用いて得られる) および綿は、液体の大部分を吸収しており、表3「液体中で15分後の、乾燥繊維球との重量差」を参照されたい。水切り段階の後では、本発明の態様に係る繊維は、絶対値およびパーセント値のいずれにおいても、綿よりも多くの液体を保持しており、表3「液体中で15分および約1分の水切り後の乾燥繊維球に対する重量差」を参照されたい。本発明の態様に係る繊維の乾燥に要する時間は、綿の場合よりも著しく短く、これは表3と一致しており、「40℃で10分間の乾燥後の重量差」を参照されたい。他の2つの合成繊維 (PESおよびPBS) とは対照的に、本発明の態様に係る繊維は液体を吸収することができる。
【0126】
結論として、本発明の態様に係る繊維 (温度勾配下での冷却を用いて得られる) は、綿よりも僅かに優れた吸湿性を有する。さらに、本発明の態様に係る繊維は、乾燥時に著しく良好な特性を有する。したがって、本発明の態様に係る繊維は、水分を吸収し、綿に必要なエネルギーよりも少ないエネルギーで再び乾燥させることが可能な表面を生成するために用いることができる。
【0127】
実施例4:本発明の態様に係る繊維のさらなる特徴
織物の製造に用いられる公知の市販繊維と比較した本発明の態様に係る繊維 (例えば、実施例1のように、温度勾配下での冷却を用いて得られる) のさらなる特性を、下の表4に記載する。
【0128】
【表4】
*例えば、実施例1に記載のように、温度勾配下での冷却を用いて得られた繊維。
「X」は各特性が達成されていることを示す。
【0129】
表4からわかるように、本発明の態様に係る繊維 (温度勾配下での冷却を用いて得られる) は、難燃剤を用いて調製することができ、親水性であり、アンチモンを用いずに調製することができ、EN 13432に準拠した生分解性があり、防汚性であり、シワになりにくく、一定の割合の再生可能原料を用いて調製することができる。本発明の態様に係る繊維の調製に必要な水の消費量は、綿の場合よりもはるかに少ない。さらに、本発明の態様に係る繊維1トン(1000kg)の調製に必要な面積も、綿の場合よりもはるかに小さい。したがって、本発明の態様に係る繊維は、綿と比較して生態学的観点から有益である。
【0130】
実施例5:本発明の態様に係る繊維を含む衣類
本発明の態様に係る繊維 (例えば、実施例1のように、温度勾配下での冷却を用いて得られる)、特に該繊維から作製された糸は、シャツを製造するために用いられた。シャツの様々な図を
図9A、9B、および9Cに示す。このシャツは、本発明の態様に係る繊維を約40%、および綿を約60%含む。
【0131】
本発明は、以下の項によってさらに特徴付けられる:
1.- 脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルを通して紡糸して、前駆体繊維を得る、工程;ならびに
- 前駆体繊維を温度勾配下で冷却し、これによって繊維を得る、工程
を含む方法によって得ることができるかまたは得られる、繊維。
2.温度勾配が、1つまたは複数の温度制御要素によって生成される、項1記載の繊維。
3.1つまたは複数の温度制御要素が、前駆体繊維の長手方向に対して実質的に垂直な方向に温度勾配が生成されるように配置される、項2記載の繊維。
4.1つまたは複数の温度制御要素が、前駆体繊維の断面に対して実質的に平行な方向に温度勾配が生成されるように配置される、項2または3記載の繊維。
5.1つまたは複数の温度制御要素が、前駆体繊維のある外表面の温度が反対側の外表面の温度よりも低くなるように配置される、項2~4のいずれか一項記載の繊維。
6.1つまたは複数の温度制御要素が、前駆体繊維が一方の側から冷却されるように配置される、項2~5のいずれか一項記載の繊維。
7.冷却が空冷によって行われる、項6記載の繊維。
8.空冷が、前駆体繊維の一方の側に配置された空冷集合体を用いることによって、前駆体繊維の長手方向に対して実質的に垂直な方向に該一方の側から前駆体繊維に空気流を供給することによって行われる、項6または7記載の繊維。
9.前記一方の側とは反対側からの空気流が、前駆体繊維の反対側に配置された空冷集合体をオフにすることによって防止される、項8記載の繊維。
10.前記一方の側とは反対側からの空気流が、前駆体繊維の反対側に配置された空冷集合体の間に1つまたは複数のバッフルを配置することによって防止され、これによって少なくとも前駆体繊維の長手方向に沿った一部分にわたって、反対側からの前駆体繊維への空気流が防止される、項8記載の繊維。
11.脂肪族ポリエステルが、脂肪族C2~C20ジカルボン酸および脂肪族C2~C12ジオールを含む、前記項のいずれか一項記載の繊維。
12.脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンマロネート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンオキサレート、ポリプロピレンマロネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンマロネート、ポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-コ-アゼレート(PBSAz)、ポリブチレンサクシネート-コ-ブラシレート(PBSBr)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、前記項のいずれか一項記載の繊維。
13.脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-コ-アゼレート(PBSAz)、ポリブチレンサクシネート-コ-ブラシレート(PBSBr)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、前記項のいずれか一項記載の繊維。
14.脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネート(PBS)である、前記項のいずれか一項記載の繊維。
15.繊維が、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~70重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む、前記項のいずれか一項記載の繊維。
16.脂肪族-芳香族ポリエステルが、C2~C12脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、および脂肪族C2~C12ジオールを含む、前記項のいずれか一項記載の繊維。
17.脂肪族-芳香族ポリエステルが、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、前記項のいずれか一項記載の繊維。
18.脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)である、前記項のいずれか一項記載の繊維。
19.繊維が、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、10~60重量%の量の脂肪族-芳香族を含む、前記項のいずれか一項記載の繊維。
20.ポリヒドロキシアルカノエートがC3~C18ヒドロキシアルキルカルボン酸を含む、前記項のいずれか一項記載の繊維。
21.ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、前記項のいずれか一項記載の繊維。
22.ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリ-3-ヒドロキシバレレート(PHV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、前記項のいずれか一項記載の繊維。
23.ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である、前記項のいずれか一項記載の繊維。
24.繊維が、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、1~25重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む、前記項のいずれか一項記載の繊維。
25.繊維が、脂肪族ポリエステル、芳香族-脂肪族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、42~62重量%の量の脂肪族ポリエステル、26~46重量%の量の芳香族-脂肪族ポリエステル、および2~22重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む、前記項のいずれか一項記載の繊維。
25a.脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネート(PBS)であり、脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、ポリヒドロキシアルカノエートがポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である、前記項のいずれか一項記載の繊維。
26.織物繊維である、前記項のいずれか一項記載の繊維。
27.少なくとも1つの添加剤をさらに含む、前記項のいずれか一項記載の繊維。
28.少なくとも1つの添加剤が、難燃剤、艶消剤、蛍光マーカー、抗菌剤、充填剤、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項27記載の繊維。
29.添加剤が難燃剤である、項28記載の繊維。
30.難燃剤が、リン酸二水素アンモニウム([NH4][H2PO4])、リン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])、リン酸三アンモニウム([NH4]3[PO4])、ポリリン酸アンモニウム、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるホスフェートである、項29記載の繊維。
31.ホスフェートがリン酸水素二アンモニウム([NH4]2[HPO4])である、項30記載の繊維。
32.繊維の総重量100重量%に対して、0.01~5重量%、好ましくは0.1~4重量%、より好ましくは0.2~3重量%、さらに好ましくは0.3~2重量%の量の難燃剤を含む、項27~31のいずれか一項記載の繊維。
33.添加剤が艶消剤である、項27~32のいずれか一項記載の繊維。
34.艶消剤が硫化亜鉛である、項33記載の繊維。
35.添加剤が蛍光マーカーである、項27~34のいずれか一項記載の繊維。
36.添加剤が抗菌剤である、項27~35のいずれか一項記載の繊維。
37.抗菌剤が、ポリエチレンテレフタレートでカプセル化された亜鉛である、項36記載の繊維。
38.添加剤が充填剤である、項27~37のいずれか一項記載の繊維。
39.充填剤が、リグニンであるかまたはリグニンを含む、項38記載の繊維。
40.繊維の総重量100重量%に対して、15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、よりさらに好ましくは4重量%以下、よりさらに好ましくは3~4重量%の総量の添加剤を含む、項27~39のいずれか一項記載の繊維。
41.繊度が、0.5~8den、好ましくは0.8~6den、より好ましくは0.9~3den、さらに好ましくは1.0~2den、よりさらに好ましくは1.0~1.5den、よりさらに好ましくは1.1~1.2denである、前記項のいずれか一項記載の繊維。
42.ステープル繊維である、前記項のいずれか一項記載の繊維。
43.2~80mm、好ましくは5~70mm、より好ましくは10~60mm、さらに好ましくは15~50mm、よりさらに好ましくは20~40mm、よりさらに好ましくは22~35mm、よりさらに好ましくは25~32mmのステープル長を有する、項42記載の繊維。
44.フィラメントである、項1~43のいずれか一項記載の繊維。
45.EN 13432に準拠した生分解性を有する、前記項のいずれか一項記載の繊維。
46.脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物から作製される繊維であって、
該繊維が長手方向に2種類の部分を含み、ここで、一方の種類の部分が厚肉部分でありかつ他方の種類の部分が薄肉部分であり、厚肉部分および薄肉部分が繊維の長手方向に対して垂直方向に延在し、厚肉部分の垂直方向の延在範囲が薄肉部分の垂直方向の延在範囲よりも大きく;
厚肉部分の少なくとも一部が空洞を有し、薄肉部分の少なくとも一部が緻密な構造を有する、繊維。
47.厚肉部分および薄肉部分が、繊維の長手方向に沿って交互のパターンで配置されている、項46記載の繊維。
48.繊維の長手方向に沿った厚肉部分および薄肉部分の長さが不規則である、項46または47記載の繊維。
49.繊維の長手方向における空洞の延在範囲が、繊維の長手方向に対して垂直な方向の延在範囲よりも大きい、項46~48のいずれか一項記載の繊維。
50.空洞が、不規則な外周を有する、項46~49のいずれか一項記載の繊維。
51.外周が、繊維の長手方向に対して垂直な方向と考えられる平面において不規則である、項50記載の繊維。
52.捲縮繊維である、項46~51のいずれか一項記載の繊維。
53.項1~45のいずれか一項記載の繊維である、項46~52のいずれか一項記載の繊維。
54.脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物から作製される、中空繊維。
55.項4~39のいずれか一項のようにさらに規定された、項55記載の中空繊維。
56.項1~55のいずれか一項記載の繊維を含む、糸。
57.項1~55のいずれか一項記載の繊維または項56記載の糸を含む、織物。
58.衣類または家庭用織物である、項57記載の織物。
59.衣類が、シャツ、ポロシャツ、ズボン、ジャケット、下着、靴下、コート、靴、および靴紐からなる群より選択される、項58記載の織物。
60.家庭用織物が、カーテン、敷物、毛布、ベッドシーツ、布団、布団カバー、クッションカバー、およびタオルからなる群より選択される、項58記載の織物。
61. - 脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物を中空繊維紡糸ノズルを通して紡糸して、前駆体繊維を得る、工程;ならびに
- 前駆体繊維を温度勾配下で冷却し、これによって繊維を得る、工程
を含む、項1~54のいずれか一項記載の繊維を調製する方法。
62.温度勾配が、前駆体繊維を一方の側から冷却することによって生成される、項61記載の方法。
63.冷却が空冷によって行われる、項61または62記載の方法。
64.溶融物が、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~70重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む、項61~64のいずれか一項記載の方法。
65.溶融物が、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、10~60重量%の量の脂肪族-芳香族を含む、項61~64のいずれか一項記載の方法。
66.溶融物が、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、1~25重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む、項61~65のいずれか一項記載の方法。
67.溶融物が、脂肪族ポリエステル、芳香族-脂肪族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、42~62重量%の量の脂肪族ポリエステル、26~46重量%の量の芳香族-脂肪族ポリエステル、および2~22重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む、項61~66のいずれか一項記載の方法。
68.溶融物が少なくとも1つの添加剤をさらに含む、項61~67のいずれか一項記載の方法。
69.少なくとも添加剤が、難燃剤、艶消剤、蛍光マーカー、抗菌剤、充填剤、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項68記載の方法。
70.添加剤が難燃剤である、項69記載の方法。
71.溶融物が、溶融物の総重量100重量%に対して、0.01~5重量%、好ましくは0.1~4重量%、より好ましくは0.2~3重量%、さらに好ましくは0.3~2重量%の量の難燃剤を含む、項70記載の方法。
72.添加剤の総重量が、溶融物の総重量100重量%に対して、15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、よりさらに好ましくは4重量%以下、よりさらに好ましくは3~4重量%である、項68~71のいずれか一項記載の方法。
73.繊維がステープル繊維として調製される、項61~72のいずれか一項記載の方法。
74.繊維がフィラメントとして調製される、項61~72のいずれか一項記載の方法。
75.項1~53のいずれか一項に規定される繊維の調製のための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物の使用。
76.中空繊維の調製のための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む溶融物の使用。
77.脂肪族ポリエステル、および脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む、混合物。
78.脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートが項11~25のいずれか一項のようにさらに規定される、項77記載の混合物。
79.脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネート(PBS)であり、脂肪族-芳香族ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、ポリヒドロキシアルカノエートがポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)である、項77または78記載の混合物。
80.脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートが粒子の形態で存在する、項77~79のいずれか一項記載の混合物。
81.粒子が、顆粒、ペレット、押出物、ビーズ、プリル、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項80記載の混合物。
82.脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートが顆粒の形態である、項80または項81記載の混合物。
83.脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、30~70重量%の量の脂肪族ポリエステルを含む、請求項77~82のいずれか一項記載の混合物。
84.脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、10~60重量%の量の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む、請求項77~83記載の混合物。
85.脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、1~25重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む、請求項77~84のいずれか一項記載の混合物。
86.脂肪族ポリエステル、芳香族-脂肪族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートの合計量100重量%に対して、42~62重量%の量の脂肪族ポリエステル、26~46重量%の量の芳香族-脂肪族ポリエステル、および2~22重量%の量のポリヒドロキシアルカノエートを含む、項77~85のいずれか一項記載の混合物。
87.少なくとも1つの添加剤をさらに含む、項77~86のいずれか一項記載の混合物。
88.少なくとも添加剤が、難燃剤、艶消剤、蛍光マーカー、抗菌剤、充填剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項87記載の混合物。
89.添加剤が難燃剤である、項88記載の混合物。
90.混合物の総重量100重量%に対して、0.01~5重量%、好ましくは0.1~4重量%、より好ましくは0.2~3重量%、さらに好ましくは0.3~2重量%の量の難燃剤を含む、項89記載の混合物。
91.添加剤の総量が、混合物の総重量100重量%に対して、15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、よりさらに好ましくは4重量%以下、よりさらに好ましくは3~4重量%である、項87~90のいずれか一項記載の混合物。
92.項1~76のいずれか一項に規定される繊維の調製のための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物の使用。
93.中空繊維の調製のための、脂肪族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエートを含む混合物の使用。
【国際調査報告】