(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】糖誘導体の薬物コンジュゲート及び老化細胞除去剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
C07H 3/08 20060101AFI20240905BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240905BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240905BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240905BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240905BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240905BHJP
C07H 13/06 20060101ALI20240905BHJP
C07H 13/00 20060101ALI20240905BHJP
C07H 5/02 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/4045 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240905BHJP
C07H 15/203 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07H3/08
A61P43/00 123
A61P43/00 105
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P11/00
A61P19/02
A61P19/08
A61P29/00
A61P37/06
A61P25/00
A61P17/00
A61P3/00
A61P35/04
A61K47/54
C07H13/06 CSP
C07H13/00
C07H5/02
A61K31/4045
A61K31/5377
C07H15/203
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515577
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 US2022076360
(87)【国際公開番号】W WO2023039600
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520512328
【氏名又は名称】ルベド ライフ サイエンシズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】RUBEDO LIFE SCIENCES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】クアルタ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ギャロップ, マーク エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャスパー, ジェフリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】キーツ, ポール
(72)【発明者】
【氏名】バーグネス, ガス
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057BB05
4C057CC02
4C057DD01
4C057DD03
4C057HH03
4C057HH10
4C057JJ23
4C076AA94
4C076CC01
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC09
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC42
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC13
4C086BC73
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA15
4C086ZA01
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC21
4C086ZC52
(57)【要約】
本明細書において提供するのは、年齢に関連する病態及び疾患を含めた多数の病態及び疾患と関連性のある老化細胞を選択的に死滅させるための薬剤及び方法である。本明細書に開示されているように、老化細胞に関連する疾患及び障害は、少なくとも1種の老化細胞除去剤又はその医薬組成物を投与することによって処置又は予防し得る。本明細書に記載されている薬剤及び方法によって処置又は予防される老化細胞に関連する疾患若しくは障害には、これらに限定されないが、心血管疾患若しくは障害、動脈硬化症、例えば、アテローム性動脈硬化症と関連性のある心血管疾患及び障害、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨関節炎、炎症性若しくは自己免疫疾患若しくは障害、肺の疾患若しくは障害、神経系疾患若しくは障害、皮膚疾患若しくは障害、化学療法の副作用、放射線療法の副作用、転移及び代謝性疾患が含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)若しくは式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
R
1は、R
18C(O)NH-であり、R
18は、ヒドロキサム酸ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の残基、Hsp90阻害剤の残基、トポイソメラーゼ阻害剤の残基、Akt1阻害剤の残基、DNAアルキル化剤の残基、プロテオソーム阻害剤の残基又はBcl2阻害剤の残基であり;
Lは、リンカーであり;
nは、0又は1であり;
R
2は、-H、-F、-OH、-OC(O)R
9又は-OC(O)OR
10であり;
R
3は、-H、-F、-OH、-OC(O)R
11又は-OC(O)OR
12であり;
R
4は、-H、-F、-OH、-OC(O)R
13又は-OC(O)OR
14であり;代わりに、R
3及びR
4の両方は、それらが結合している原子と一緒になって、アセタール炭素原子においてR
17で置換されている5員環状アセタールを形成し;
代わりに、R
3及びR
4の両方は、それらが結合している原子と一緒になって、5員環状カーボネートを形成し;
R
5は、-CH
3、-CH
2F、-CHF
2、-CF
3、-CH
2OH、-CH
2OC(O)R
15又は-CH
2OC(O)OR
16であり;
R
6は、-H又は-Fであり;
R
7は、-H又は-Fであり;
R
8は、-H又は-Fであり;
R
9~R
17は、独立に、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールであり;
ただし、R
5が-CH
2F、-CHF
2又は-CF
3であるとき、R
2、R
3又はR
4の1つは、-H又は-Fであり;
ただし、R
5が-CH
3、-CH
2OH、-CH
2OC(O)R
15又は-CH
2OC(O)OR
16であるとき、R
2、R
3又はR
4の1つ若しくは2つは、-H又は-Fであり;
ただし、R
4が-F又は-Hの場合に限り、R
6は、-Fであり;R
3が-F又は-Hの場合に限り、R
7は、-Fであり;R
2が-F又は-Hの場合に限り、R
8は、-Fであり;R
6が-F又は-Hの場合に限り、R
4は、-Fであり;R
7が-F又は-Hの場合に限り、R
3は、-Fであり;R
8が-F又は-Hの場合に限り、R
2は、-Fである]
又はその薬学的に利用可能な塩、水和物及び溶媒和物。
【請求項2】
R
5が、-CH
3であり、R
2が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
5が、-CH
3であり、R
3が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
5が、-CH
3であり、R
4が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R
5が、-CH
3であり、R
2が、-Fであり、R
8が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R
5が、-CH
3であり、R
3が、-Fであり、R
7が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R
5が、-CH
3であり、R
4が、-Fであり、R
6が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
R
5が、-CH
2OH、-CH
2OC(O)R
15又は-CH
2OC(O)OR
16であり、R
2が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
R
5が、-CH
2OH、-CH
2OC(O)R
15又は-CH
2OC(O)OR
16であり、R
3が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
R
5が、-CH
2OH、-CH
2OC(O)R
15又は-CH
2OC(O)OR
16であり、R
4が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
R
5が、-CH
2OH、-CH
2OC(O)R
15又は-CH
2OC(O)OR
16であり、R
2が、-Fであり、R
8が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
R
5が、-CH
2OH、-CH
2OC(O)R
15又は-CH
2OC(O)OR
16であり、R
3が、-Fであり、R
7が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
R
5が、-CH
2OH、-CH
2OC(O)R
15又は-CH
2OC(O)OR
16であり、R
4が、-Fであり、R
6が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
R
5が、-CH
2F、-CHF
2又は-CF
3であり、R
2が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
R
5が、-CH
2F、-CHF
2又は-CF
3であり、R
3が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
R
5が、-CH
2F、-CHF
2又は-CF
3であり、R
4が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
R
5が、-CH
2F、-CHF
2又は-CF
3であり、R
2が、-Fであり、R
8が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
R
5が、-CH
2F、-CHF
2又はCF
3であり、R
3が、-Fであり、R
7が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
R
5が、-CH
2F、-CHF
2又はCF
3であり、R
4が、-Fであり、R
6が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
R
2が、-H又は-Fであり、R
3が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
R
2が、-H又は-Fであり、R
4が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
R
3が、-H又は-Fであり、R
4が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
R
2が、-H又は-Fであり、R
3が、-Fであり、R
7が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
R
2が、-H又は-Fであり、R
4が、-Fであり、R
6が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
R
3が、-H又は-Fであり、R
4が、-Fであり、R
6が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
R
2が、-Fであり、R
8が、-Fであり、R
3が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
R
2が、-Fであり、R
8が、-Fであり、R
4が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
R
3が、-Fであり、R
7が、-Fであり、R
4が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項29】
R
2が、-Fであり、R
8が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
R
3が、-Fであり、R
7が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項31】
R
4が、-Fであり、R
6が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項32】
R
2が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項33】
R
3が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項34】
R
4が、-H又は-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項35】
R
9~R
17が、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル又はヘテロアリールである、請求項1~34のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項36】
R
9~R
17が、独立に、アルキル、アルケニル、アリール、置換アリール又はシクロヘテロアルキルである、請求項1~34のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項37】
R
9~R
17が、独立に、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルケニル、フェニル、置換フェニル又は(C
5~C
7)シクロヘテロアルキルである、請求項1~34のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項38】
アノマー炭素が、S立体異性体である、請求項1~37のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項39】
R
1が、R
18C(O)NH-であり、R
17が、ヒドロキサム酸ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の残基である、請求項1~38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項40】
R
1が、Hsp90阻害剤の残基である、請求項1~38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項41】
R
1が、トポイソメラーゼ阻害剤の残基である、請求項1~38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項42】
R
1が、Akt1阻害剤の残基である、請求項1~38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
R
1が、DNAアルキル化剤の残基である、請求項1~38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項44】
R
1が、プロテオソーム阻害剤の残基である、請求項1~38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項45】
R
1が、Bcl2阻害剤の残基である、請求項1~38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項46】
請求項1~38のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物。
【請求項47】
老化と関連性のある疾患若しくは障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に治療的有効量の請求項1~38のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項48】
老化と関連性のある疾患若しくは障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に治療的有効量の請求項46に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が組み込まれている、米国特許法第119号(e)の元で2021年9月13日に出願された米国仮特許出願第63/243,539号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
本明細書において提供するのは、年齢に関連する病態及び疾患を含めた多数の病態及び疾患と関連性のある老化細胞を選択的に死滅させるための老化細胞除去剤である。本明細書に開示されているように、老化細胞に関連する疾患及び障害は、少なくとも1種の老化細胞除去剤又はその医薬組成物を投与することによって処置又は予防し得る。本明細書に記載の方法によって処置又は予防される老化細胞に関連する疾患若しくは障害には、これらに限定されないが、心血管疾患若しくは障害、動脈硬化症、例えば、アテローム性動脈硬化症と関連性のある心血管疾患及び障害、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨関節炎、炎症性若しくは自己免疫疾患若しくは障害、肺の疾患若しくは障害、神経系疾患若しくは障害、皮膚疾患若しくは障害、化学療法の副作用、放射線療法の副作用、転移及び代謝性疾患が含まれる。
【背景技術】
【0003】
加齢は、大部分の慢性疾患、能力障害、及び健康の衰えについての危険因子である。複製停止している細胞である老化細胞は老齢の個人において蓄積し、部分的に又は相当に細胞及び組織の悪化に寄付し得、これは加齢及び年齢に関連する疾患の根底にある(例えば、Childs et al.,Nat.Rev.Drug Discov.16(2017)718-735を参照されたい)。細胞はまた、環境的、化学的、若しくは生物学的侵襲への曝露の後で、又は疾患の結果として老化し得る(例えば、Demaria et al.,Cancer Discovery 7(2017)165-176;Schafer et al.,Nat.Commun.8(2017)doi:10.1038/ncommsl4532を参照されたい)。
【0004】
多用な薬理学的機序を有する老化細胞除去剤は、当技術分野で従前から説明されてきた。老化細胞除去剤は、1つ若しくは複数のBcl-2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの特異的阻害剤であり得、ここで、この阻害剤は、少なくともBcl-xL(例えば、Bcl-2/Bcl-xL/Bcl-w阻害剤;選択的Bcl-xL阻害剤;Bcl-xL/Bcl-w阻害剤(例えば、ナビトクラックス、ABT-737、A1331852、A1155463);例えば、Childs et al.、上述;Zhu et al.,Aging 9(2017)955-965;Yosef et al.,Nature Commun.(2016)doi:10.1038を参照されたい);Aktキナーゼ特異的阻害剤(例えば、MK-2206);受容体チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ダサチニブ、Zhu et al.,Aging Cell 14(2015)654-658を参照されたい);CDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、Whittaker et al.,Pharmacol.Ther.173(2017)83-105を参照されたい);mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、Laberge et al.,Nat.Cell Biol.17(2015)1049-1061を参照されたい);MDM2阻害剤(例えば、ナトリン-3、RG-7112、米国特許出願公開第2016/0339019号明細書を参照されたい);Hsp90阻害剤(例えば、17-DMAG、ガネテスピブ、Fuhrmann-Stroissnigg et al.,Nat.Commun.8(2017)doi:10.1038/s41467-017-00314-zを参照されたい);フラボン(例えば、ケルセチン、フィセチン、Zhu et al.,Aging Cell 14(2015)654-658;Zhu et al.,Aging 9(2017)955-965を参照されたい);又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、パノビノスタット、例えば、Samaraweera et al.,Sci.Rep.7(2017)1900.doi:10.1038/s41598-017-01964-lを参照されたい)を阻害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かなりの難問であるのは、非老化細胞を残す一方で老化細胞を選択的に死滅させる老化細胞除去剤の同定であった。さらに、多くの公知の老化細胞除去剤は、細胞毒性の抗がん剤として最初に開発され、それに続いて老化細胞集団の「選択的」除去のために再度目的を持った。増殖細胞は抗腫瘍剤の細胞毒性又は細胞増殖抑制効果に対してより感受性であることが多いため、造血細胞における用量規定毒性は、抗老化治療の臨床的有用性を制限する頻繁に観察される副作用である(例えば、好中球減少は、抗アポトーシス性Bcl-2ファミリータンパク質阻害剤の使用と関連性のある特徴がはっきりした毒性である、Leverson et al.,Sci.Transl.Med.(2015)7:279ra40.doi:10.1126/scitranslmed.aaa4642を参照されたい)。このような老化細胞除去薬のパルス状投与は、これらの分子への非老化細胞の曝露を最小化し、オフターゲット効果を潜在的に制限する機序として提案されてきた。したがって、必要とされているものは、非老化細胞に対する最小の毒性を有する、老化細胞を死滅させるための改善された選択性を有する老化細胞除去剤である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これら及び他の必要性は、老化細胞中で優先的に蓄積するヒドロラーゼ酵素によって活性化される老化細胞除去剤の無毒性プロドラッグを提供することによって満足される。一態様において、ヒドロラーゼ酵素はグリコシダーゼであり、これらの老化と関連性のある上昇した細胞内グリコシダーゼ活性は、アポトーシス促進剤の無毒性のプロドラッグ誘導体(I)を毒性のアポトーシス促進性親化合物(II)へと変換するように利用され、老化細胞の特異的死滅がもたらされる。
【化1】
【0007】
一部の実施形態では、化合物(II)は、非増殖細胞においてアポトーシスを促進することができる。
【0008】
一態様において、老化細胞内の活性老化細胞除去剤に付着したとき、老化細胞死を特異的にもたらす、毒性老化細胞除去剤の無毒性プロドラッグを提供する。一部の実施形態では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤のプロドラッグを提供する。他の実施形態では、Hsp90阻害剤のプロドラッグを提供する。また他の実施形態では、トポイソメラーゼ1阻害剤のプロドラッグを提供する。また他の実施形態では、DNAアルキル化剤のプロドラッグを提供する。また他の実施形態では、Akt1阻害剤のプロドラッグを提供する。また他の実施形態では、プロテアソーム阻害剤のプロドラッグを提供する。また他の実施形態では、Bcl2阻害剤のプロドラッグを提供する。本明細書に記載されているプロドラッグの塩、溶媒和物、水和物、代謝物を含めた誘導体をまた提供する。本明細書において提供するプロドラッグ及びビヒクルを含む医薬組成物をさらに提供する。
【0009】
別の態様において、対象において医学的障害、例えば、心血管疾患若しくは障害、動脈硬化症、例えば、アテローム性動脈硬化症と関連性のある心血管疾患及び障害、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨関節炎、炎症性若しくは自己免疫疾患若しくは障害、肺の疾患若しくは障害、神経系疾患若しくは障害、皮膚疾患若しくは障害、化学療法の副作用、放射線療法の副作用、転移及び代謝性疾患の症状を処置、予防、又は回復させる方法をまた、本明細書において提供する。方法の実行において、治療的有効量の化合物又はその医薬組成物を対象に投与する。
【0010】
また別の態様において、年齢に関連する疾患若しくは状態を処置する方法を提供する。この方法は、本明細書において提供する治療的有効量の1種若しくは複数の老化細胞除去剤を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0011】
また別の態様において、対象において加齢の少なくとも1つの特色を遅延させるための方法を提供する。この方法は、本明細書において提供する治療的有効量の1種若しくは複数の老化細胞除去剤を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0012】
また別の態様において、治療によって誘導される老化細胞を死滅させる方法を提供する。この方法は、本明細書において提供する治療的有効量の1種若しくは複数の老化細胞除去剤を含む組成物を、DNA損傷治療を受けた対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】代表的なIMR90画像を例示する(左から右へ:SA-β-Gal、SA-α-Fuc、EdUの組込みアッセイ[FITCチャネルにおいて可視化したEdUフルオロフォア、DAPIで対比染色])。
【
図2】代表的なA549画像組込みアッセイを例示する[FITCチャネルにおいて可視化したEdUフルオロフォア、DAPIで対比染色]。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
他に定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。ある用語について複数の定義が本明細書において存在する場合、このセクションにおける定義が他に断りのない限り優先する。
【0015】
本明細書において使用する場合、及び他に特定しない限り、用語「約」及び「概ね」は、数値又は値の範囲を伴う特性に関連して使用するとき、特定の特性をやはり説明する一方で、値又は値の範囲が当業者には合理的であると見なされる程度まで逸脱し得ることを示す。具体的には、用語「約」及び「概ね」は、この文脈において使用されるとき、数値又は値の範囲が、列挙した値又は値の範囲の5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%又は0.1%で変動し得ることを示す。また、単数形「a」及び「the」は、文脈によって明らかにそれ以外のことの指示がない限り、複数の参照を含む。このように、例えば、「化合物」への言及は、複数のこのような化合物を含み、「アッセイ」への言及は、1つ若しくは複数のアッセイ及び当業者には公知のその等価物への言及を含む。
【0016】
2つの文字又は記号の間ではないダッシュ(「-」)は、置換基についての付着点を示すために使用される。例えば、-C(O)NH2は、炭素原子を介して付着している。化学基の前又は後におけるダッシュは、便宜上のものである;化学基は、それらの通常の意味を失うことなしに、1つ若しくは複数のダッシュを伴って若しくは伴わずに示し得る。構造においてラインを通して描かれる波線は、基の付着点を示す。化学的又は構造的に必要とされない限り、化学基が記載又は命名される順序によって、方向性は示されないか、又は暗示されない。
【0017】
接頭辞「Cu~v」は、下記の基がu~v個の炭素原子を有することを示す。u~v個の炭素は、u+1からv、u+2からv、u+3+vなどの炭素、u+1からu+3からv、u+1からu+4からv、u+2からu+4からvなどを含み、u及びvの全ての可能な順列をカバーすることを理解すべきである。
【0018】
「加齢の特色」は、本明細書において使用する場合、これらに限定されないが、免疫系の全身的低下、筋萎縮及び筋肉強度の低下、皮膚の弾力の低下、創傷治癒の遅延、網膜萎縮、水晶体透明度の低減、聴覚の低減、骨粗鬆症、サルコペニア、白髪交じりの髪、皮膚のしわ、視覚低下、虚弱、及び認知機能低下を含む。
【0019】
「年齢に関連する疾患若しくは状態」は、本明細書において使用するように、これらに限定されないが、変性疾患又は機能低下障害、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、白内障、黄斑変性症、緑内障、虚弱、筋肉衰弱、認知機能低下、アテローム性動脈硬化症、急性冠症候群、心筋梗塞、脳卒中、高血圧症、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨関節炎、2型糖尿病、肥満症、脂肪機能障害、冠動脈疾患、脳血管疾患、歯周疾患、がん治療に関連する能力障害、例えば、様々な組織における萎縮及び線維症、脳及び心臓傷害、治療に関連する骨髄異形成症候群、並びに促進加齢並びに/又はDNA損傷修復及びテロメア維持における欠陥と関連性のある疾患、例えば、早老性症候群(すなわち、ハッチンソン-ギルフォード早老症候群、ウェルナー症候群、ブルーム症候群、ロスムンド・トムソン症候群、コケイン症候群、色素性乾皮症、硫黄欠乏症育毛発育異常、色素性乾皮症-コケイン症候群複合体、拘束性皮膚障害)、毛細血管拡張性運動失調症、ファンコニ貧血、フリートライヒ運動失調症、先天性角化不全症、再生不良性貧血などを含む。
【0020】
「アルキル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、親アルカンの単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、飽和又は不飽和の分岐状、直鎖状又は環状の一価炭化水素ラジカルを指す。典型的なアルキル基には、これらに限定されないが、メチル;エチル;プロピル、例えば、プロパン-1-イル、プロパン-2-イルなど;ブチル、例えば、ブタン-1-イル、ブタン-2-イル、2-メチル-プロパン-1-イル、2-メチル-プロパン-2-イルなどが含まれる。一部の実施形態では、アルキル基は、1~20個の炭素原子を含む(C1~C20アルキル)。他の実施形態では、アルキル基は、1~10個の炭素原子を含む(C1~C10アルキル)。また他の実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子を含む(C1~C6アルキル)。
【0021】
「アルケニル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、親アルケンの単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する不飽和分岐状、直鎖状又は環状のアルキルラジカルを指す。基は、二重結合の周りのシス又はトランス配座であり得る。典型的なアルケニル基には、これらに限定されないが、エテニル;プロペニル、例えば、プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル(アリル)、プロパ-2-エン-2-イル、シクロプロパ-1-エン-1-イル;シクロプロパ-2-エン-1-イル;ブテニル、例えば、ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブタ-1-エン-1-イル、シクロブタ-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イルなどが含まれる。一部の実施形態では、アルケニル基は、1~20個の炭素原子を含む(C1~C20アルケニル)。他の実施形態では、アルケニル基は、1~10個の炭素原子を含む(C1~C10アルケニル)。また他の実施形態では、アルケニル基は、1~6個の炭素原子を含む(C1~C6アルケニル)。
【0022】
「アルキニル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、親アルキンの単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する不飽和分岐状、直鎖状又は環状のアルキルラジカルを指す。典型的なアルキニル基には、これらに限定されないが、エチニル;プロピニル、例えば、プロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イルなど;ブチニル、例えば、ブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-3-イン-1-イルなどが含まれる。一部の実施形態では、アルキニル基は、1~20個の炭素原子を含む(C1~C20アルキニル)。他の実施形態では、アルキニル基は、1~10個の炭素原子を含む(C1~C10アルキニル)。また他の実施形態では、アルキニル基は、1~6個の炭素原子を含む(C1~C6アルキニル)。
【0023】
「アリール」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、本明細書に定義されているような親芳香族環系の単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、一価芳香族炭化水素基を指す。典型的なアリール基は、これらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどに由来する基を含む。一部の実施形態では、アリール基は、6~20個の炭素原子を含む(C6~C20アリール)。他の実施形態では、アリール基は、6~15個の炭素原子を含む(C6~C15アリール)。また他の実施形態では、アリール基は、6~10個の炭素原子を含む(C6~C10アリール)。
【0024】
「アリールアルキル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、炭素原子、典型的には、末端又はsp3炭素原子に結合している水素原子の1つが、本明細書に定義されているようにアリール基で置き換えられている非環状アルキル基を指す。典型的なアリールアルキル基には、これらに限定されないが、ベンジル、2-フェニルエタンー1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタンー1-イルなどが含まれる。一部の実施形態では、アリールアルキル基は、(C6~C30)アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルキル部分は、(C1~C10)アルキルであり、アリール部分は、(C6~C20)アリールである。他の実施形態では、アリールアルキル基は、(C6~C20)アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルキル部分は、(C1~C8)アルキルであり、アリール部分は、(C6~C12)アリールである。また他の実施形態では、アリールアルキル基は、(C6~C15)アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルキル部分は、(C1~C5)アルキルであり、アリール部分は、(C6~C10)アリールである。
【0025】
「アリールアルケニル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、炭素原子に結合している水素原子の1つが、本明細書に定義されているようにアリール基で置き換えられている非環状アルケニル基を指す。一部の実施形態では、アリールアルケニル基は、(C6~C30)アリールアルケニルであり、例えば、アリールアルケニル基のアルケニル部分は、(C1~C10)アルケニルであり、アリール部分は、(C6~C20)アリールである。他の実施形態では、アリールアルケニル基は、(C6~C20)アリールアルケニルであり、例えば、アリールアルケニル基のアルケニル部分は、(C1~C8)アルケニルであり、アリール部分は、(C6~C12)アリールである。また他の実施形態では、アリールアルケニル基は、(C6~C15)アリールアルケニルであり、例えば、アリールアルケニル基のアルケニル部分は、(C1~C5)アルケニルであり、アリール部分は、(C6~C10)アリールである。
【0026】
「アリールアルキニル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、炭素原子に結合している水素原子の1つが、本明細書に定義されているようにアリール基で置き換えられている非環状アルキニル基を指す。一部の実施形態では、アリールアルキニル基は、(C6~C30)アリールアルキニルであり、例えば、アリールアルキニル基のアルキニル部分は、(C1~C10)アルキニルであり、アリール部分は、(C6~C20)アリールである。他の実施形態では、アリールアルキニル基は、(C6~C20)アリールアルキニルであり、例えば、アリールアルケニル基のアルキニル部分は、(C1~C8)アルキニルであり、アリール部分は、(C6~C12)アリールである。また他の実施形態では、アリールアルキニル基は、(C6~C15)アリールアルキニルであり、例えば、アリールアルキニル基のアルキニル部分は、(C1~C5)アルキニルであり、アリール部分は、(C6~C10)アリールである。
【0027】
「炭水化物誘導体」は、化合物の基に付着している一般式CnH2nOnの炭水化物を指す。一部の実施形態では、炭水化物誘導体は典型的には、5個若しくは6個の炭素原子を含有する。他の実施形態では、炭水化物誘導体は、単糖(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース)である。また他の実施形態では、炭水化物誘導体は、二糖(例えば、ラクトース、スクロース、マルトース、セロビオース、キトビオース、ゲントビオースなど)を含む。また他の実施形態では、炭水化物誘導体は、オリゴ糖(例えば、オリゴフルクトース、オリゴガラクトース、ラフィノース、プラントース、ベラコースなど)を含む。また他の実施形態では、炭水化物誘導体は、多糖(例えば、セルロース、アミロース、デンプン、キチン、ペクチン、ガラクトゲンなど)を含む。
【0028】
「シクロアルキル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、親シクロアルカンの単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、飽和環状一価炭化水素ラジカルを指す。典型的なシクロアルキル基には、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニルなどが含まれる。一部の実施形態では、シクロアルキル基は、3~20個の炭素原子を含む(C1~C15シクロアルキル)。他の実施形態では、シクロアルキル基は、3~10個の炭素原子を含む(C1~C10シクロアルキル)。また他の実施形態では、シクロアルキル基は、3~8個の炭素原子を含む(C1~C8シクロアルキル)。用語「環状一価炭化水素ラジカル」はまた、単一のラジカル及び3~12個の炭素原子を有する多環式炭化水素環系を含む。例示的な多環式シクロアルキル環は、例えば、ノルボルニル、ピニル、及びアダマンチルを含む。
【0029】
「シクロアルケニル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、親シクロアルケンの単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、不飽和環状一価炭化水素ラジカルを指す。典型的なシクロアルケニル基には、これらに限定されないが、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテンなどが含まれる。一部の実施形態では、シクロアルケニル基は、3~20個の炭素原子を含む(C1~C20シクロアルケニル)。他の実施形態では、シクロアルケニル基は、3~10個の炭素原子を含む(C1~C10シクロアルケニル)。また他の実施形態では、シクロアルケニル基は、3~8個の炭素原子を含む(C1~C8シクロアルケニル)。用語「環状一価炭化水素ラジカル」はまた、単一のラジカル及び3~12個の炭素原子を有する多環式炭化水素環系を含む。
【0030】
「シクロヘテロアルキル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、炭素原子(及び任意選択で任意の関連する水素原子)の1つ若しくは複数が、それぞれ互いに独立に、下記の「ヘテロアルキル」において定義されているような同じ又は異なるヘテロ原子又はヘテロ原子団で置き換えられている、本明細書に定義されているようなシクロアルキル基を指す。一部の実施形態では、シクロヘテロアルキル基は、3~20個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~20シクロヘテロアルキル)。他の実施形態では、シクロヘテロアルキル基は、3~10個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~10シクロヘテロアルキル)。また他の実施形態では、シクロヘテロアルキル基は、3~8個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~8シクロヘテロアルキル)。用語「環状一価ヘテロアルキルラジカル」はまた、単一のラジカル及び3~12個の炭素及び少なくとも1個のヘテロ原子を有する多環式ヘテロアルキル環系を含む。
【0031】
「シクロヘテロアルケニル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、炭素原子(及び任意選択で任意の関連する水素原子)の1つ若しくは複数が、それぞれ互いに独立に、下記の「ヘテロアルケニル」において定義されているような同じ又は異なるヘテロ原子又はヘテロ原子団で置き換えられている、本明細書に定義されているようなシクロアルケニル基を指す。一部の実施形態では、シクロヘテロアルケニル基は、3~20個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~20シクロヘテロアルケニル)。他の実施形態では、シクロヘテロアルケニル基は、3~10個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~10シクロヘテロアルケニル)。また他の実施形態では、シクロヘテロアルケニル基は、3~8個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~8シクロヘテロアルケニル)。用語「環状一価ヘテロアルケニルラジカル」はまた、単一のラジカル及び3~12個の炭素及び少なくとも1個のヘテロ原子を有する多環式ヘテロアルケニル環系を含む。
【0032】
「化合物」は、本明細書において開示されている構造式によって包含される化合物を指し、その構造が本明細書において開示されているこれらの式内の任意の特定の化合物を含む。化合物は、それらの化学構造及び/又は化学名によって同定し得る。化学構造は、化合物の同一性を決定するものである。本明細書に記載されている化合物は、1個若しくは複数のキラル中心及び/又は二重結合を含有し得、したがって、立体異性体、例えば、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、エナンチオマー又はジアステレオマーとして存在し得る。したがって、本明細書において示される化学構造は、構造において示されている立体異性体的に純粋な形態(例えば、幾何異性体的に純粋、鏡像異性的に純粋又はジアステレオ異性的に純粋)を包含する。本明細書において示されている化学構造はまた、示されている化合物の鏡像異性及び立体異性誘導体を包含する。鏡像異性及び立体異性混合物は、当業者には周知の分離技術又はキラル合成技術を使用して、それらの構成要素であるエナンチオマー又は立体異性体へと分解することができる。化合物はまた、エノール形、ケト形及びこれらの混合物を含めたいくつかの互変異性形態で存在し得る。したがって、本明細書において示されている化学構造は、例示された化合物の全ての可能な互変異性形態を包含する。記載されている化合物はまた、1個若しくは複数の原子が天然に従来見出される原子質量と異なる原子質量を有する同位体標識化合物を含む。本明細書において開示されている化合物へと組込み得る同位体の例には、これらに限定されないが、2H、3H、11C、13C、14C、15N、18O、17Oなどが含まれる。化合物は、非溶媒和形態、及び水和形態を含めた溶媒和形態で存在し得る。一般に、化合物は、水和又は溶媒和し得る。ある特定の化合物は、複数の結晶性又はアモルファスの形態で存在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本明細書において意図される使用のために同等であり、本開示の範囲内であることを意図する。さらに、化合物の部分的構造が例示されているとき、括弧は分子の残部への部分的構造の付着点を示すことを理解すべきである。
【0033】
「DNA損傷治療」には、本明細書において使用する場合、これらに限定されないが、g-照射、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロランブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン)、ニトロソ尿素(ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン)、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、トリアジン(ダカルバジン、テモゾロミド)及びエチレンイミン(例えば、チオテパ、アルトレタミン)、白金薬物、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサラプラチン、代謝拮抗剤、例えば、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ペメトレキセド、ペントスタチン、チオグアニン、アントラサイクリン、例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、抗腫瘍抗生物質、例えば、アクチノマイシン-D、ブレオマイシン、マイトマイシン-C、ミトキサントロン、トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、トポテカン、イリノテカン)及びトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、ミトキサントロン)、有糸分裂阻害剤、例えば、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル)、エポチロン(例えば、イキサベピロン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン)及びエストラムスチンが含まれる。
【0034】
「ハロ」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、ラジカル-F、-Cl、-Br又は-Iを指す。
【0035】
「ヘテロアルキル」は、炭素原子(及び任意選択で任意の関連する水素原子)の1つ若しくは複数が、それぞれ互いに独立に、同じ又は異なるヘテロ原子又はヘテロ原子団で置き換えられているアルキル基を指す。炭素原子を置き換えることができる典型的なヘテロ原子又はヘテロ原子団には、これらに限定されないが、-O-、-S-、-N-、-Si-、-NH-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)NH-、-S(O)2NH-など及びこれらの組合せが含まれる。ヘテロ原子又はヘテロ原子団は、アルキル、アルケニル又はアルキニル基の任意の内部の位置において位置し得る。これらの基において含むことができる典型的なヘテロ原子団には、これらに限定されないが、-O-、-S-、-O-O-、-S-S-、-O-S-、-NR501R502、=N-N=、-N=N-、-N=N-NR503R404、-PR505-、-P(O)2-、-POR506-、-O-P(O)2-、-SO-、-SO2-、-SnR507R508などが含まれ、式中、R501、R502、R503、R504、R505、R506、R507及びR508は、独立に、水素、アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、1~20個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~20ヘテロアルキル)。他の実施形態では、ヘテロアルキル基は、1~10個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~10ヘテロアルキル)。また他の実施形態では、ヘテロアルキル基は、1~6個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~6ヘテロアルキル)。
【0036】
「ヘテロアルケニル」は、炭素原子(及び任意選択で任意の関連する水素原子)の1つ若しくは複数が、それぞれ互いに独立に、同じ又は異なるヘテロ原子又はヘテロ原子団で置き換えられているアルケニル基を指す。炭素原子を置き換えることができる典型的なヘテロ原子又はヘテロ原子団には、これらに限定されないが、-O-、-S-、-N-、-Si-、-NH-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)NH-、-S(O)2NH-など及びこれらの組合せが含まれる。ヘテロ原子又はヘテロ原子団は、アルキル、アルケニル又はアルキニル基の任意の内部の位置において位置し得る。これらの基において含むことができる典型的なヘテロ原子団には、これらに限定されないが、-O-、-S-、-O-O-、-S-S-、-O-S-、-NR501R502、=N-N=、-N=N-、-N=N-NR503R404、-PR505-、-P(O)2-、-POR506-、-O-P(O)2-、-SO-、-SO2-、-SnR507R508などが含まれ、式中、R501、R502、R503、R504、R505、R506、R507及びR508は、独立に、水素、アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである。一部の実施形態では、ヘテロアルケニル基は、1~20個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~20ヘテロアルケニル)。他の実施形態では、ヘテロアルケニル基は、1~10個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~10ヘテロアルケニル)。また他の実施形態では、ヘテロアルケニル基は、1~6個の炭素及びヘテロ原子を含む(1~6ヘテロアルケニル)。
【0037】
「ヘテロアリール」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、本明細書に定義されているように親ヘテロ芳香族環系の単一の原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、一価ヘテロ芳香族ラジカルを指す。典型的なヘテロアリール基には、これらに限定されないが、アクリジン、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどに由来する基が含まれる。一部の実施形態では、ヘテロアリール基は、5~20個の環原子を含む(5~20員ヘテロアリール)。他の実施形態では、ヘテロアリール基は、5~10個の環原子を含む(5~10員ヘテロアリール)。例示的なヘテロアリール基は、フラン、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、インドール、ピリジン、ピラゾール、キノリン、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール及びピラジンに由来するものを含む。
【0038】
「ヘテロアリールアルキル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、炭素原子、典型的には、末端又はsp3炭素原子に結合している水素原子の1つが、ヘテロアリール基で置き換えられている非環状アルキル基を指す。一部の実施形態では、ヘテロアリールアルキル基は、6~21員ヘテロアリールアルキルであり、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルキル部分は、(C1~C6)アルキルであり、ヘテロアリール部分は、5~15員ヘテロアリールである。他の実施形態では、ヘテロアリールアルキルは、6~13員ヘテロアリールアルキルであり、例えば、アルキル部分は、(C1~C3)アルキルであり、ヘテロアリール部分は、5~10員ヘテロアリールである。
【0039】
「ヘテロアリールアルケニル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、炭素原子に結合している水素原子の1つが、ヘテロアリール基で置き換えられている非環状アルケニル基を指す。一部の実施形態では、ヘテロアリールアルケニル基は、6~21員ヘテロアリールアルキルであり、例えば、ヘテロアリールアルケニルのアルケニル部分は、(C1~C6)アルケニルであり、ヘテロアリール部分は、5~15員ヘテロアリールである。他の実施形態では、ヘテロアリールアルケニルは、6~13員ヘテロアリールアルケニルであり、例えば、アルケニル部分は、(C1~C3)アルキルであり、ヘテロアリール部分は、5~10員ヘテロアリールである。
【0040】
「ヘテロアリールアルキニル」は、それ自体で又は別の置換基の部分として、炭素原子に結合している水素原子の1つが、ヘテロアリール基で置き換えられている非環状アルケニル基を指す。一部の実施形態では、ヘテロアリールアルキニル基は、6~21員ヘテロアリールアルキルであり、例えば、ヘテロアリールアルキニルのアルキニル部分は、(C1~C6)アルキニルであり、ヘテロアリール部分は、5~15員ヘテロアリールである。他の実施形態では、ヘテロアリールアルキニルは、6~13員ヘテロアリールアルキニルであり、例えば、アルキニル部分は、(C1~C3)アルキルであり、ヘテロアリール部分は、5~10員ヘテロアリールである。
【0041】
「水和物」は、付加体の形成をもたらす、本明細書に記載されている化合物の結晶格子への水の化学量論的割合での組込みを指す。水和物を作製する方法は、これらに限定されないが、水蒸気を含有する雰囲気中の貯蔵、水を含む剤形、又は通例の医薬処理ステップ、例えば、結晶化(すなわち、水又は混合水性溶媒からの)、凍結乾燥、湿式造粒、水性フィルムコーティング、若しくは噴霧乾燥を含む。水和物はまた、特定の状況下で、水蒸気への曝露によって、又は水への無水材料の懸濁によって結晶性溶媒和物から形成し得る。水和物はまた、複数の形態で結晶化して、水和物多形をもたらし得る。例えば、(Guillory,K.,Chapter 5,pp.202205 in Polymorphism in Pharmaceutical Solids,(Brittain,H.ed.),Marcel Dekker,Inc.,New York,NY,1999)を参照されたい。水和物を調製するための上記の方法は、十分に当業者の領域の範囲内であり、完全に通常のものであり、当技術分野で典型的なものを超えた実験法を必要としない。水和物は、当業者には周知である方法、例えば、単結晶X線回折、X線粉末回折、偏光光学顕微鏡法、熱顕微鏡法、熱重量分析、示差熱分析、示差走査熱量測定法、IR分光法、ラマン分光法及びNMR分光法によって特性決定及び/又は分析し得る。(Brittain,H.,Chapter 6,pp.205208 in Polymorphism in Pharmaceutical Solids,(Brittain,H.ed.),Marcel Dekker,Inc.New York,1999)。さらに、多くの営利会社、例えば、HOLODIAG、Pharmaparc II、Voie de 1’Innovation、27100 Val de Reuil、France(http://www.holodiag.com)は、水和物の調製及び/又は特性決定を含むサービスを日常的に提供している。
【0042】
「親芳香族環系」は、共役p電子系を有する不飽和環式若しくは多環式環系を指す。「親芳香族環系」の定義内に特に含まれるのは、環の1つ若しくは複数が芳香族であり、環の1つ若しくは複数が飽和又は不飽和である縮合環系、例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレンなどである。典型的な親芳香族環系には、これらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどが含まれる。
【0043】
「親ヘテロ芳香族環系」は、1個若しくは複数の炭素原子(及び任意選択で任意の関連する水素原子)が同じ又は異なるヘテロ原子でそれぞれ独立に置き換えられている親芳香族環系を指す。炭素原子を置き換える典型的なヘテロ原子には、これらに限定されないが、N、P、O、S、Siなどが含まれる。「親ヘテロ芳香族環系」の定義の中に特に含まれるのは、環の1つ若しくは複数が芳香族であり、環の1つ若しくは複数が飽和又は不飽和である縮合環系、例えば、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどである。典型的な親ヘテロ芳香族環系には、これらに限定されないが、アルシンドール、カルバゾール、b-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが含まれる。
【0044】
「薬学的に許容される塩」は、親化合物の望ましい薬理活性を有する化合物の塩を指す。このような塩は、(1)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などと共に形成される;又は有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などと共に形成される酸付加塩;或いは(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンで置き換えられるか;又は有機塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどと配位するとき形成される塩を含む。
【0045】
「予防すること」又は「予防」は、疾患若しくは障害を得る危険性の低減(すなわち、疾患に曝露されるか、又はかかりやすいことがあるが、疾患の症状をまだ経験又は示していない患者において、疾患の臨床症状の少なくとも1つが発生しないことをもたらすこと)を指す。疾患若しくは障害を予防すること又は予防のための治療の適用は、「予防法」として知られている。一部の実施形態では、本明細書において提供する化合物は、長期間に亘る長期のより低い副作用によって優れた予防法を提供する。
【0046】
「プロドラッグ」は、本明細書において使用する場合、活性薬物を放出するために体内での変換を必要とする薬物分子の誘導体を指す。プロドラッグは、必ずしもではないが頻繁に、親薬物へと変換されるまでは薬理学的に不活性である。
【0047】
「プロ部分」は、本明細書において使用する場合、薬物分子内の官能基をマスクするために使用されるとき、薬物をプロドラッグへと変換する保護基の一形態を指す。典型的には、プロ部分は、in vivoで酵素的又は非酵素的手段によって切断される結合を介して薬物へと付着する。
【0048】
「保護基」は、分子中の反応性官能基に付着しているとき、化学合成の間の官能基の反応性をマスク、低減又は防止する原子の分類を指す。保護基の例は、Green et al.,“Protective Groups in Organic Chemistry”,(Wiley,2nd ed.1991)及びHarrison et al.,“Compendium of Synthetic Organic Methods”,Vols.1-8(John Wiley and Sons,1971-1996)において見出すことができる。代表的なアミノ保護基には、これらに限定されないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert-ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(「SES」)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などが含まれる。代表的なヒドロキシ保護基は、これらに限定されないが、ヒドロキシ基がアシル化又はアルキル化されているもの、例えば、ベンジル、及びトリチルエーテル、並びにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル及びアリルエーテルを含む。
【0049】
「老化」又は「老化細胞」は、本明細書において使用する場合、いくつかの細胞ストレスに応答した老化についての1つ若しくは複数のマーカーを細胞が獲得している状態を指す。このようなマーカーは典型的には、細胞周期からの永続的な離脱、炎症性因子の生理活性セクレトームの発現、変化したメチル化、老化関連ヘテロクロマチン構造(SAHF)、酸化ストレスについての発現マーカー、DNA損傷についてのマーカーの発現、タンパク質及び脂質の修飾、老化の形態的特色、変化したリソソーム/空胞、及び老化関連b-ガラクトシダーゼの発現を含み得る(Lorenzo Galluzzi et al.(eds.),Cell Senescence:Methods and Protocols,Methods in Molecular Biology,vol.965,DOI10.1007/978-1-62703-239-l_4,(著作権)Springer Science+Business Media,LLC2013を参照されたい)。
【0050】
「老化細胞除去剤」は、本明細書において使用するように、老化細胞を「選択的に」(優先的に又はより多くの程度まで)破壊するか、死滅させるか、除去するか、又は老化細胞の選択的破壊を促進する薬剤を指す。言い換えると、老化細胞除去剤は、非老化細胞を破壊又は死滅させるその性能と比較して、老化細胞を生物学的に、臨床的に、及び/又は統計的に有意な様式で破壊又は死滅させる。老化細胞除去剤は確立された老化細胞を選択的に死滅させるのに十分な量及び時間で使用されるが、臨床的に意味がある又は生物学的に意味ある様式で非老化細胞を死滅させるのに不十分である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されている老化細胞除去剤は、老化細胞の死を誘導する(すなわち、開始させ、刺激し、トリガーし、活性化し、促進する)ことをもたらす様式で少なくとも1つのシグナル伝達経路を変化させる。
【0051】
「溶媒和物」は、付加体の形成をもたらす、本明細書に記載されている化合物の結晶格子中への溶媒の化学量論的割合での組込みを指す。溶媒和物を作製する方法は、これらに限定されないが、溶媒を含有する雰囲気中の貯蔵、溶媒を含む剤形、又は通例の医薬処理ステップ、例えば、結晶化(すなわち、溶媒又は混合溶媒から)、蒸気拡散などを含む。溶媒和物はまた、特定の状況下で、溶媒への曝露によって、又は溶媒への材料の懸濁によって、他の結晶性溶媒和物又は水和物から形成し得る。溶媒和物は、複数の形態で結晶化して、溶媒和物多形をもたらし得る。例えば、(Guillory,K.,Chapter 5,pp.205208 in Polymorphism in Pharmaceutical Solids,(Brittain,H.ed.),Marcel Dekker,Inc.,NewYork,NY,1999)を参照されたい。溶媒和物を調製するための上記の方法は、十分に当業者の領域の範囲内であり、完全に通常のものであり、当技術分野で典型的なものを超えた実験法を必要としない。溶媒和物は、当業者には周知である方法、例えば、単結晶X線回折、X線粉末回折、偏光光学顕微鏡法、熱顕微鏡法、熱重量分析、示差熱分析、示差走査熱量測定法、IR分光法、ラマン分光法及びNMR分光法によって特性決定及び/又は分析し得る。(Brittain,H.,Chapter 6,pp.205208 in Polymorphism in Pharmaceutical Solids,(Brittain,H.ed.),Marcel Dekker,Inc.New York,1999)。さらに、多くの営利会社、例えば、HOLODIAG、Pharmaparc II、Voie de l’Innovation、27100 Val de Reuil、France(http://www.holodiag.com)は、溶媒和物の調製及び/又は特性決定を含むサービスを日常的に提供している。
【0052】
「置換されている」は、特定の基又はラジカルを修飾するために使用されるとき、特定の基又はラジカルの1個若しくは複数の水素原子が、それぞれ互いに独立に、同じ又は異なる置換基で置き換えられていることを意味する。特定の基又はラジカルにおける飽和炭素原子を置換するのに有用な置換基は、Ra、ハロ、-O-、=O、-ORb、-SRb、-S-、=S、-NRcRc、=NRb、=N-ORb、トリハロメチル、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、-N-ORb、-N-NRcRc、-NRbS(O)2Rb、=N2、-N3、-S(O)2Rb、-S(O)2NRbRb、-S(O)2O-、-S(O)2ORb、-OS(O)2Rb、-OS(O)2O-、-OS(O)2ORb、-OS(O)2NRcNRc、-P(O)(O-)2、-P(O)(ORb)(O-)、-P(O)(ORb)(ORb)、-C(O)Rb、-C(O)NRb-ORb-C(S)Rb、-C(NRb)Rb、-C(O)O-、-C(O)ORb、-C(S)ORb、-C(O)NRcRc、-C(NRb)NRcRc、-OC(O)Rb、-OC(S)Rb、-OC(O)O-、-OC(O)ORb、-OC(O)NRcRc、-OC(NCN)NRcRc-OC(S)ORb、-NRbC(O)Rb、-NRbC(S)Rb、-NRbC(O)O-、-NRbC(O)ORb、-NRbC(NCN)ORb、-NRbS(O)2NRcRc、-NRbC(S)ORb、-NRbC(O)NRcRc、-NRbC(S)NRcRc、-NRbC(S)NRbC(O)Ra、-NRbS(O)2ORb、-NRbS(O)2Rb、-NRbC(NCN)NRcRc、-NRbC(NRb)Rb及び-NRbC(NRb)NRcRcを含み、ここで、各Raは、独立に、アリール、置換アリール、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールであり;各Rbは、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル又は置換ヘテロアリールアルキルであり;各Rcは、独立に、Rbであるか、或いは代わりに、2個のRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、1~4個のO、N及びSからなる群から選択される同じ又は異なるさらなるヘテロ原子を任意選択で含み得るアリール基と縮合している、4員、5員、6員若しくは7員シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル又はシクロヘテロアルキルを形成する。具体例として、-NRcRcは、-NH2、-NH-アルキル、N-ピロリジニル及びN-モルホリニルを含むことを意味する。他の実施形態では、特定の基又はラジカルにおける飽和炭素原子を置換するのに有用な置換基は、Ra、ハロ、-ORb、-NRcRc、トリハロメチル、-CN、-NRbS(O)2Rb、-C(O)Rb、-C(O)NRb-ORb、-C(O)ORb、-C(O)NRcRc、-OC(O)Rb、-OC(O)ORb、-OS(O)2NRcRc、-OC(O)NRcRc、及び-NRbC(O)ORbを含み、ここで、各Raは、独立に、アルキル、アリール、ヘテロアリールであり、各Rbは、独立に、水素、Ra、ヘテロアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルであり;各Rcは、独立に、Rbであるか、或いは代わりに、2個のRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4員、5員、6員若しくは7員シクロヘテロアルキル環を形成する。
【0053】
特定の基又はラジカルにおける不飽和炭素原子を置換するのに有用な置換基は、-Ra、ハロ、-O-、-ORb、-SRb、-S-、-NRcRc、トリハロメチル、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、-N3、-S(O)2O-、-S(O)2ORb、-OS(O)2Rb、-OS(O)2ORb、-OS(O)2O-、-P(O)(O-)2、-P(O)(ORb)(O-)、-P(O)(ORb)(ORb)、-C(O)Rb、-C(S)Rb、-C(NRb)Rb、-C(O)O-、-C(O)ORb、-C(S)ORb、-C(O)NRcRc、-C(NRb)NRcRc、-OC(O)Rb、-OC(S)Rb、-OC(O)O-、-OC(O)ORb、-OC(S)ORb、-OC(O)NRcRc、-OS(O)2NRcNRc、-NRbC(O)Rb、-NRbC(S)Rb、-NRbC(O)O-、-NRbC(O)ORb、-NRbS(O)2ORa、-NRbS(O)2Ra、-NRbC(S)ORb、-NRbC(O)NRcRc、-NRbC(NRb)Rb及び-NRbC(NRb)NRcRcを含み、ここで、Ra、Rb及びRcは、従前に定義した通りである。他の実施形態では、特定の基又はラジカルにおける不飽和炭素原子を置換するのに有用な置換基は、-Ra、ハロ、-ORb、-SRb、-NRcRc、トリハロメチル、-CN、-S(O)2ORb、-C(O)Rb、-C(O)ORb、-C(O)NRcRc、-OC(O)Rb、-OC(O)ORb、-OS(O)2NRcNRc、-NRbC(O)Rb及び-NRbC(O)ORbを含み、ここで、Ra、Rb及びRcは、従前に定義した通りである。
【0054】
ヘテロアルキル及びシクロヘテロアルキル基における窒素原子を置換するのに有用な置換基には、これらに限定されないが、-Ra、-O-、-ORb、-SRb、-S-、-NRcRc、トリハロメチル、-CF3、-CN、-NO、-NO2、-S(O)2Rb、-S(O)2O-、-S(O)2ORb、-OS(O)2Rb、-OS(O)2O-、-OS(O)2ORb、-P(O)(O-)2、-P(O)(ORb)(O-)、-P(O)(ORb)(ORb)、-C(O)Rb、-C(S)Rb、-C(NRb)Rb、-C(O)ORb、-C(S)ORb、-C(O)NRcRc、-C(NRb)NRcRc、-OC(O)Rb、-OC(S)Rb、-OC(O)ORb、-OC(S)ORb、-NRbC(O)Rb、-NRbC(S)Rb、-NRbC(O)ORb、-NRbC(S)ORb、-NRbC(O)NRcRc、-NRbC(NRb)Rb及び-NRbC(NRb)NRcRcが含まれ、ここで、Ra、Rb及びRcは、従前に定義した通りである。一部の実施形態では、ヘテロアルキル及びシクロヘテロアルキル基における窒素原子を置換するのに有用な置換基は、Ra、ハロ、-ORb、-NRcRc、トリハロメチル、-CN、-S(O)2ORb、-OS(O)2Rb、-OS(O)2ORb、-C(O)Rb、-C(NRb)Rb、-C(O)ORb、-C(O)NRcRc、-OC(O)Rb、-OC(O)ORb、-OS(O)2NRcNRc、-NRbC(O)Rb及び-NRbC(O)ORbを含み、ここで、Ra、Rb及びRcは、従前に定義した通りである。
【0055】
他の特定の基又は原子を置換するのに有用な上記のリストからの置換基は当業者には明らかであろう。
【0056】
特定の基を置換するために使用される置換基は典型的には、上記で特定した様々な基から選択される同じ又は異なる基の1つ若しくは複数でさらに置換することができる。
【0057】
「対象」、「個人」又は「患者」は、本明細書において互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは、哺乳動物を指す。哺乳動物には、これらに限定されないが、マウス、げっ歯類、サル、ヒト、家畜、スポーツ動物及びペットが含まれる。
【0058】
任意の疾患若しくは障害を「処置すること」又は「処置」は、一部の実施形態では、疾患若しくは障害を回復させること(すなわち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発生を抑止又は低減させること)を指す。処置はまた、疾患、又は臨床症状の少なくとも1つの発生を回復、抑止又は予防するための、先制的又は予防的投与を含むと考えられ得る。さらなる特色において、与えられた処置は、複数年に亘る長期の副作用についてより低い可能性を有する。他の実施形態では、「処置する」又は「処置」は、患者によって識別可能でないことがあり得る少なくとも1つの身体的パラメーターを回復させることを指す。また他の実施形態では、「処置する」又は「処置」は、身体的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、物理的パラメーターの安定化)又は両方で、疾患若しくは障害を阻害することを指す。また他の実施形態では、「処置する」又は「処置」は、疾患若しくは障害の開始を遅延させることを指す。
【0059】
「治療的有効量」は、疾患を処置するために患者に投与されたとき、疾患を処置するのに十分である化合物の量を意味する。「治療的有効量」は、化合物、疾患及びその重症度、並びに処置される患者の年齢、体重、吸着、分布、代謝及び排泄などによって変化する。
【0060】
「ビヒクル」は、それと共に化合物が対象に投与される賦形剤、添加剤又は担体を指す。一部の実施形態では、ビヒクルは薬学的に許容される。
【0061】
ここで、化合物及び方法の特定の実施形態について詳細に言及する。開示された実施形態は、特許請求の範囲を限定するものではない。それとは反対に、特許請求の範囲は全ての代替形態、修正形態及び同等物をカバーすることを意図する。
【0062】
老化細胞除去剤
本明細書において提供するのは、老化細胞中で優先的に蓄積するヒドロラーゼ酵素によって活性化される老化細胞除去剤の無毒性プロドラッグである。一部の実施形態では、ヒドロラーゼ酵素はグリコシダーゼであり、老化関連の上昇した細胞内グリコシダーゼ活性が利用されて、アポトーシス促進剤の無毒性プロドラッグ誘導体が毒性のアポトーシス促進親化合物へと変換され、これは老化細胞の特異的死滅をもたらす。
【0063】
一部の実施形態では、式(III)若しくは式(IV)の化合物、又はその薬学的に利用可能な塩、水和物及び溶媒和物を提供し、式中、
【化2】
R
1は、R
18C(O)NH-であり、式中、R
18は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の残基、Hsp90阻害剤の残基、トポイソメラーゼ阻害剤の残基、Akt1阻害剤の残基、DNAアルキル化剤の残基、プロテオソーム阻害剤の残基又はBcl2阻害剤の残基であり;Lは、リンカーであり;nは、0又は1であり;R
2は、-H、-F、-OH、-OC(O)R
9又は-OC(O)OR
10であり;R
3は、-H、-F、-OH、-OC(O)R
11又は-OC(O)OR
12であり;R
4は、-H、-F、-OH、-OC(O)R
13又は-OC(O)OR
14であり;代わりに、R
3及びR
4の両方は、それらが結合している原子と一緒になって、アセタール炭素原子においてR
17で置換されている5員環状アセタールを形成し;代わりに、R
3及びR
4の両方は、それらが結合している原子と一緒になって、5員環状カーボネートを形成し;R
5は、-CH
3、-CH
2F、-CHF
2、-CF
3、-CH
2OH、-CH
2OC(O)R
15又は-CH
2OC(O)OR
16であり;R
6は、-H又は-Fであり;R
7は、-H又は-Fであり;R
8は、-H又は-Fであり;R
9~R
17は、独立に、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールであり;ただし、R
5が-CH
2F、-CHF
2又は-CF
3であるとき、R
2、R
3又はR
4の1つは、-H又は-Fであり;ただし、R
5が-CH
3、-CH
2OH、-CH
2OC(O)R
15又は-CH
2OC(O)OR
16であるとき、R
2、R
3又はR
4の1つは、-H又は-Fであり;ただし、R
4が-F又は-Hの場合に限り、R
6は、-Fであり;R
3が-F又は-Hの場合に限り、R
7は、-Fであり;R
2が-F又は-Hの場合に限り、R
8は、-Fであり;R
6が-F又は-Hの場合に限り、R
4は、-Fであり;R
7が-F又は-Hの場合に限り、R
3は、-Fであり;R
8が-F又は-Hの場合に限り、R
2は、-Fである。
【0064】
一部の実施形態では、R4が-Fの場合に限り、R6は、-Fであり;R3が-Fの場合に限り、R7は、-Fであり;R2が-Fの場合に限り、R8は、-Fである。
【0065】
リンカーLは、本明細書に定義されているように、糖基をR1へと任意選択で連結する部分である。リンカーは、化学的に開裂可能なリンカー、感光性リンカー又は酵素的に切断可能なリンカーであり得る(例えば、米国特許第5,208,020号明細書;同第5,475,092号明細書;同第6,441,163号明細書;同第6,716,821号明細書;同第6,913,748号明細書;同第7,276,497号明細書;同第7,276,499号明細書;同第7,368,565号明細書;同第7,388,026号明細書及び同第7,414,073号明細書を参照されたい)。リンカーは、構造及び長さが変動し得る。リンカーは、疎水性又は親水性、長い又は短い、剛性、半剛性又は可撓性などでよく、唯一の必要条件は、リンカーが糖部分の加水分解の後で老化細胞除去剤の残基から切断されて、遊離老化細胞除去剤を遊離することである。
【0066】
リンカーLは、これらに限定されないが、下記で例示した構造を含む。一部の実施形態では、Lは、
【化3】
であり、式中、Xは、-O-又は-NH-であり、oは、1~20である。他の実施形態では、Lは、
【化4】
である。
【0067】
【0068】
一部の実施形態では、Lは、
【化6】
であり、式中、X及びYは、独立に、O、S又はNR
20であり、R
20は、アルキルである。他の実施形態では、X及びYは、独立に、O又はNR
20である。
【0069】
一部の実施形態では、Lは、
【化7】
であり、式中、X、Y及びZは、独立に、O、S又はNR
21であり、R
21は、アルキルである。他の実施形態では、X、Y及びZは、独立に、O又はNR
21である。
【0070】
一部の実施形態では、R5は、-CH3であり、R2は、-H又は-Fである。他の実施形態では、R5は、-CH3であり、R3は、-H又は-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH3であり、R4は、-H又は-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH3であり、R2は、-Fであり、R8は、-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH3であり、R3は、-Fであり、R7は、-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH3であり、R4は、-Fであり、R6は、-Fである。
【0071】
一部の実施形態では、R5は、-CH2OH、-CH2OC(O)R15又は-CH2OC(O)OR16であり、R2は、-H又は-Fである。他の実施形態では、R5は、-CH2OH、-CH2OC(O)R15又は-CH2OC(O)OR16であり、R3は、-H又は-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH2OH、-CH2OC(O)R15又は-CH2OC(O)OR16であり、R4は、-H又は-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH2OH、-CH2OC(O)R15又は-CH2OC(O)OR16であり、R2は、-Fであり、R8は、-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH2OH、-CH2OC(O)R15又は-CH2OC(O)OR16であり、R3は、-Fであり、R7は、-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH2OH、-CH2OC(O)R15又は-CH2OC(O)OR16であり、R4は、-Fであり、R6は、-Fである。
【0072】
一部の実施形態では、R5は、-CH2F、-CHF2又は-CF3であり、R2は、-H又は-Fである。他の実施形態では、R5は、-CH2F、-CHF2又は-CF3であり、R3は、-H又は-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH2F、-CHF2又は-CF3であり、R4は、-H又は-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH2F、-CHF5又は-CF3であり、R2は、-Fであり、R8は、-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH2F、-CHF2又は-CF3であり、R3は、-Fであり、R7は、-Fである。また他の実施形態では、R5は、-CH2F、-CHF2又は-CF3であり、R4は、-Fであり、R6は、-Fである。
【0073】
一部の実施形態では、R2は、-H又は-Fであり、R3は、-H又は-Fである。他の実施形態では、R2は、-H又は-Fであり、R4は、-H又は-Fである。また他の実施形態では、R3は、-H又は-Fであり、R4は、-H又は-Fである。また他の実施形態では、R2は、-H又は-Fであり、R3は、-Fであり、R7は、-Fである。また他の実施形態では、R2は、-H又は-Fであり、R4は、-Fであり、R6は、-Fである。また他の実施形態では、R3は、-H又は-Fであり、R4は、-Fであり、R6は、-Fである。また他の実施形態では、R2は、-Fであり、R8は、-Fであり、R3は、-H又は-Fである。また他の実施形態では、R2は、-Fであり、R8は、-Fであり、R4は、-H又は-Fである。
【0074】
一部の実施形態では、R2は、-Fであり、R8は、-Fである。他の実施形態では、R3は、-Fであり、R7は、-Fである。また他の実施形態では、R4は、-Fであり、R6は、-Fである。
【0075】
一部の実施形態では、R2は、-H又は-Fである。一部の他の実施形態では、R3は、-H又は-Fである。
【0076】
また他の実施形態では、R4は、-H又は-Fである。
【0077】
上記の実施形態のいくつかにおいて、R9~R17は、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル又はヘテロアリールである。上記の実施形態の他において、R9~R17は、独立に、アルキル、アルケニル、アリール、置換アリール又はシクロヘテロアルキルである。上記の実施形態のまた他において、R9~R17は、独立に、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)アルケニル、フェニル、置換フェニル又は(C5~C7)シクロヘテロアルキルである。
【0078】
上記の実施形態のいくつかにおいて、アノマー炭素は、S立体異性体である。上記の実施形態の他において、アノマー炭素は、R立体異性体である。
【0079】
上記の実施形態のいくつかにおいて、R1は、R18C(O)NH-であり、式中、R18は、ヒドロキサム酸阻害剤の残基である。上記の実施形態の他において、R18は、ダシノスタット、パノビノスタット、キシノスタット又はCUDC-907の残基である。上記の実施形態のまた他において、R1は、HSP阻害剤の残基である。上記の実施形態のまた他において、R1は、トポイソメラーゼ阻害剤の残基である。上記の実施形態のまた他において、R1は、Akt1阻害剤の残基である。上記の実施形態のまた他において、R1は、DNAアルキル化剤の残基である。上記の実施形態のまた他において、R1は、Bcl2阻害剤の残基である。
【0080】
ヒドロキサム酸誘導体HDAC阻害剤には、これらに限定されないが、ボリノスタット(スベロイルアニリドヒドロキサム酸又はSAHA(1))、ベリノスタット(2)及びパノビノスタット(3)が含まれる。いくつかの他のヒドロキサム酸誘導体HDAC阻害剤(例えば、化合物(4)~(13))は、単一の薬剤として又は他の腫瘍退縮性化合物との併用療法において血液及び固形腫瘍の両方の処置について調査されてきた。HDACクラスI、II及びIV内の様々な酵素を阻害することに加えて、ヒドロキサム酸誘導体は、他の治療標的、例えば、CUDC-101(12)(EGFR及びHER-2キナーゼを強力に阻害する)及びCUDC-907(13)(様々なPI3Kアイソフォームをさらに阻害する)を併行的に阻害するように設計されてきた。ストレプトマイセス属(Streptomyces)から単離された天然物トリコスタチンA(14)、及び多数の合成由来の化合物を含めて多くの他のヒドロキサム酸誘導体HDAC阻害剤が、開示されてきたが、これらの代表例は、化合物(15)~(21)、並びにRoche及びBertrand(上述)において開示されているその他のもの;又は米国特許第5,369,108号明細書、同第5,932,616号明細書、同第6,087,367号明細書及び同第6,511,990号明細書において開示されているヒドロキサム酸のいずれかを含む。
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【0081】
老化細胞除去活性は汎HDAC阻害剤パノビノスタット(3)について従前に報告されてきており(Samaraweeraら、上述)、老化はグローバルなヒストンアセチル化の減少と関連性のあることが示されてきた(Li et al.,Proteomics 13(2013)2585-2596)。いくつかの報告は、HDAC阻害剤によって媒介されるBcl-xL発現の低減について考証してきた(例えば、Cao et al.,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.25(2001)562-568;Rada-Iglesias et al.,Genome Res.17(2007)708-719;Frys et al.,Br.J.Haematol.169(2015)506-519を参照されたい)。理論に束縛されるものではないが、HDAC阻害剤の老化細胞除去活性についての1つの薬理学的ベースは、抗アポトーシス性Bcl-xLタンパク質レベルの低減によって媒介されることが可能である。
【0082】
式(III)又は(IV)の化合物(式中、R
1は、R
18C(O)NH-である)は、アシルカップリング試薬、例えば、カルボジイミド(例えば、EDC)の存在下で、又は代わりに、塩化アシル若しくは混合無水アシル化剤としての従前の活性化の後に、ヒドロキサム酸HDAC阻害剤のカルボン酸前駆体RCO
2H(V)と、それぞれ、糖オキシム化合物(VI)及び(VII)とをカップリングすることによって好都合に合成される。
【化9】
糖アルコキシアミン(VI)及び(VII)は、従来の方法によって、例えば、それぞれ、ハロ化合物(VIII)及び(IX)(X=Cl、Br又はF)から調製し得る(Thomas et al.Bioorg.Med.Chem.Lett.17(2007)983-986)。
【化10】
【0083】
ヒドロキサム酸誘導体化合物のHDAC阻害活性は通常、遊離ヒドロキサム酸部分の亜鉛キレート化活性によって決まる(例えば、Roche及びBertrand、上述を参照されたい)。このように、式(III)又は(IV)の化合物中のグリコシド誘導体としてヒドロキサム酸官能基をマスクすることは、これらのプロドラッグがHDAC阻害剤として不活性であるが、老化細胞のリソソーム内の加水分解によって活性化することを確実にする。
【0084】
Hsp90阻害剤には、これらに限定されないが、レソルシノール化合物AT13387(オナレスピブ、(22))、NYP-AUY922(ルミネスピブ、(23))、ガネテスピブ(24)、VER-50589(25)、VER-49009(26)、CCT018159(27)及びKW-2478(28)、SNX-2112によって例示される2-(4-アミノシクロヘキサノール)-ベンズアミド誘導体(29)及び(SNX-7081)(30)が含まれる。式(III)及び(IV)の化合物によって例示されるHsp90阻害剤の糖コンジュゲートは、老化細胞除去化合物であることを当業者は認識する。
【化11】
【0085】
式(III)及び(IV)の化合物(式中、R
1は、Hsp90阻害剤である)は、古典的なBF
3によって媒介されるグリコシル化又はKoenigs-Knorrカップリング条件下で式(X)の化合物と保護されたドナー部分との反応によって調製することができ(R
2~R
8は、-OHではない)(Shie et al.,Carbohydrate Res.341(2006)443-456;Brough et al.,J.Med.Chem.51(2008)196-218)、このように得られた位置異性体はクロマトグラフィー手段によって分離される。代わりに、レソルシノール化合物(X)のフェノールヒドロキシルは最初に選択的に保護されて、位置選択的グリコシル化を可能とし得る。
【化12-1】
【化12-2】
【0086】
トポイソメラーゼI(TOPI)阻害性化合物には、これらに限定されないが、カンプトテシン(31)、SN-38(32)、トポテカン(33)(例えば、Jain et al.,Current Genomics 18(2017)75-92;Liu et al.,Med.Res.Rev.35(2015)753-789を参照されたい)、インデノイソキノリン(化合物(34)~(39)によって例示される(Cineili et al.,J.Med.Chem.55(2012)10844-10862;Lv et al.,J.Med.Chem.59(2016)4890-4899))及びジベンゾナフチリドン(化合物(40)~(42)によって例示される、(例えば、Sooryakumar et al.,Mol.Cancer Ther.10(2011)1490-1499を参照されたい))が含まれる。
【化13】
【0087】
式(III)及び式(IV)の化合物(式中、R1は、トポイソメラーゼI(TOPI)阻害剤である)は、本明細書において従前に開示されている方法によって調製し得る。
【0088】
DNAアルキル化剤は、化合物、例えば、デュオカルマイシンSA(43)に由来するDNA反応性スピロシクロプロピルシクロヘキサジエノン(46)を含む。式(III)の化合物(44)(例えば、Tietze et al.,Angew.Chem.Int.Ed.45(2006)6574-6577;Tietze et al.,J.Med.Chem.52(2009)537-543を参照されたい)は、加水分解されたseco生成物(45)より相当により細胞毒性でなくてもよく、これはin situでいわゆるWinstein環化を受けて、DNA反応性スピロシクロプロピルシクロヘキサジエノン(46)が得られる(式(IV)の化合物はまた式(III)の化合物の代わりに使用することができることを当業者は認識する)
【化14】
【0089】
式(III)の化合物、化合物(44)は、化合物(47)(Tietzeら、前掲書の方法によって調製)から合成される。
【化15】
【0090】
他のDNAアルキル化剤は、例えば、老化細胞除去剤として細胞毒性ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン(PBD)のコンジュゲートを含む。PBDは、それらのN10-C11イミン官能基を介してDNAの副溝におけるグアニン残基の環外NH
2基に共有結合することによって細胞毒性効果を発揮する天然物アントラマイシン(53)を含む抗腫瘍抗生物質のファミリーである(例えば、Antonow and Thurston,Chem.Rev.111(2011)2815-2864;Mantaj et al.,Angew.Chem.Int.Ed.56(2017)462-488を参照されたい)。PBDモノマーは、かなりの細胞毒性を示し、リンカーを介して2つのPBDモノマーを結合することによって、鎖間DNA架橋をすることができるPBDダイマーを生じさせる。SJG-136(54)は、臨床的有用性を有する抗体-薬物コンジュゲートを構築するために使用されてきた高い細胞毒性効力を有する1つのこのようなダイマーである。
【化16】
【0091】
式(III)の化合物、化合物(55)は、化合物(56)(Kamal et al.,ChemMedChem 3(2008)794-802の方法によって調製される)から調製される:
【化17】
【0092】
式(XII)の化合物をまた式(XI)の化合物の代わりに使用して、式(IV)の化合物を提供することができることを当業者は認識する。
【0093】
式(III)の化合物である化合物(58)は、類似のアプローチを使用して調製し得る。式(IV)の化合物は同様の様式で調製し得ることを当業者は認識する。
【化18】
【0094】
Akt阻害剤には、これらに限定されないが、イパタセルチブ(又はGDC-0068)(59)、AZD5363(60)及びトリシリビン(61)が含まれる。
【化19】
【0095】
式(III)及び式(IV)の化合物(式中、R1は、Akt阻害剤である)は、本明細書において従前に開示されている方法によって調製し得る。
【0096】
プロテアソーム阻害剤には、これらに限定されないが、デランゾミブ(62)が含まれる。
【化20】
【0097】
Bcl2阻害剤には、これらに限定されないが、下記で例示する化合物が含まれる。
【化21】
【0098】
老化細胞除去化合物は、下記の表1において例示するものを含む。
【化22-1】
【化22-2】
【化22-3】
【化22-4】
【化22-5】
【化22-6】
【化22-7】
【0099】
老化細胞除去化合物は、下記のスキーム1~7において例示する方法によって作製することができる。老化細胞除去化合物を作製するための他の手順は、当業者の領域の範囲内である。
【0100】
老化細胞除去剤を特性決定し、かつ、同定する方法
老化細胞除去剤を特性決定することは、本明細書又は当技術分野で記載されており、当業者が精通している、1つ若しくは複数のセルベースアッセイ及び1つ若しくは複数の動物モデルを使用して決定することができる。老化細胞除去剤は、1つ若しくは複数のタイプの老化細胞(例えば、老化前脂肪細胞、老化内皮細胞、老化線維芽細胞、老化ニューロン、老化上皮細胞、老化間葉細胞、老化平滑筋細胞、老化マクロファージ、又は老化軟骨細胞)を選択的に死滅し得る。ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、少なくとも老化線維芽細胞を選択的に死滅させることができる。
【0101】
薬剤を老化細胞除去剤として特性決定することは、本明細書又は当技術分野で記載されている1つ若しくは複数のセルベースアッセイ及び1つ若しくは複数の動物モデルを使用して達成することができる。薬剤を老化細胞除去剤として特性決定し、薬剤による死滅のレベルを決定することは、試験薬剤の活性と、適当な陰性対照(例えば、ビヒクル若しくは賦形剤のみ、及び/又は老化細胞を死滅させない当技術分野において公知の組成物若しくは化合物)並びに適当な陽性対照とを比較することによって達成することができることを当業者は容易に認識する。老化細胞除去剤を特性決定するためのin vitroでのセルベースアッセイはまた、非老化細胞(例えば、静止状態の細胞又は増殖細胞)に対する薬剤の効果を決定するための対照を含む。老化細胞除去剤は、1つ若しくは複数の陰性対照と比較して、複数の老化細胞の生存パーセントを低減させる(すなわち、減少させる)(すなわち、いくつかの様式では、動物又はセルベースアッセイにおける生存老化細胞の量を低減させる)。特定のin vitroでのアッセイについての条件は、温度、緩衝液(塩、カチオン、媒体を含めた)、及びアッセイにおいて使用される試験薬剤及び試薬の完全性を維持する他の構成要素を含み、当業者が精通しており、且つ/又は通例の実験法によって容易に決定することができる。
【0102】
アッセイにおいて使用するための老化細胞の源は、初代細胞培養物、又はこれらに限定されないが、染色体に組み込まれた核酸配列若しくはエピソームの組換え核酸配列を含有し得る遺伝子操作されている細胞株、不死化若しくは不死化可能な細胞株、体細胞雑種細胞株、分化若しくは分化可能な細胞株、形質転換細胞株を含めた培養適応細胞株などであり得る。一部の実施形態では、老化細胞は、老化細胞と関連性のある疾患若しくは障害を有する宿主又は対象から得た生体試料から単離される。他の実施形態では、非老化細胞は、対象から得てもよいか、又は培養適応株でよく、老化は、本明細書及び当技術分野で記載されている方法によって、例えば、照射又は化学療法剤(例えば、ドキソルビシン)への曝露によって誘導される。生体試料は、例えば、対象から得た血液試料、組織診標本、体液(例えば、肺洗浄液、腹水、粘膜洗浄液、滑液など)、骨髄、リンパ節、組織外植片、器官培養物、又は任意の他の組織若しくは細胞調製物でよい。生体試料は、形態的完全性又は物理的状態が、例えば、切開、解離、可溶化、分割、均一化、生物化学的若しくは化学的抽出、微粉化、凍結乾燥、超音波処理、又は対象若しくは生物源に由来する試料を加工するための任意の他の手段によって乱されてきた、組織若しくは細胞調製物であり得る。対象は、ヒト若しくはヒトではない動物であり得る。
【0103】
本明細書及び当技術分野に記載のようなトランスジェニック動物モデルを使用して、老化細胞の死滅又は除去を決定し得る(例えば、Baker et al.,supra;Nature,479(2011)232-236;国際出願国際公開第2012/177927号パンフレット;国際出願国際公開第2013/090645号パンフレットを参照されたい)。例示的なトランスジェニック動物モデルは、陽性対照として、老化細胞(例えば、p16INK4a陽性老化細胞)の制御された排除を可能とする核酸を含む導入遺伝子を含有する。トランスジェニック動物における老化細胞の存在及びレベルは、動物の老化細胞において発現されている検出可能な標識又は標識のレベルを測定することによって決定することができる。導入遺伝子ヌクレオチド配列は、検出可能な標識、例えば、赤色蛍光タンパク質;緑色蛍光タンパク質の1つ若しくは複数;及び老化細胞の排除を検出するための1種若しくは複数のルシフェラーゼを含む。
【0104】
本明細書又は当技術分野で記載されている動物モデルは、特定の老化と関連性のある疾患若しくは障害、例えば、アテローム性動脈硬化症モデル、骨関節炎モデル、COPDモデル、IPFモデルなどを処置又は予防する(すなわち、その出現の可能性を低減させる)、老化細胞除去剤の有効性を決定するための当技術分野で認められているモデルを含む。本明細書に記載のように、肺疾患マウスモデル、例えば、ブレオマイシン肺線維症モデル、及び慢性巻きタバコ喫煙モデルは、疾患、例えば、COPDに適用可能であり、当業者が日常的に実行し得る。化学療法及び放射線療法の副作用モデルを処置及び/又は予防する(すなわち、その出現の可能性を低減させる)、或いは転移を処置又は予防する(すなわち、その出現の可能性を低減させる)老化細胞除去剤の有効性を決定するための動物モデルは、国際出願国際公開第2013/090645号パンフレット及び同第2014/205244号パンフレットにおいて記載されている。眼疾患、特に、加齢黄斑変性症を処置するための薬剤の有効性を決定するための動物モデルはまた、当技術分野で日常的に使用されている(例えば、Pennesi et a.,Mol.Aspects Med.33(2012)487-509;Zeiss et al.,Vet.Pathol.47(2010)396-413;Chavala et al.,J.Clin.Invest.123(2013)4170-4181を参照されたい)。
【0105】
非限定的例として及び本明細書に記載のように、骨関節炎動物モデルが開発されてきた。例えば、前十字靱帯の外科的切断(不完全又は完全)によって、関節、例えば、膝に損傷を誘導することによって、骨関節炎を動物において誘導し得る。骨関節炎動物モデルは、骨関節炎を処置又は予防し(すなわち、その出現の可能性を低減させ)、プロテオグリカン侵食の減少をもたらし、コラーゲン(例えば、2型コラーゲン)産生を誘導(すなわち、刺激、増進)し、ACL手術を受ける動物における疼痛を低減させる、老化細胞除去剤の有効性をアセスメントするために使用し得る。免疫組織学を行って、関節における組織及び細胞の完全性及び組成を検査し得る。免疫化学及び/又は分子生物学技術、例えば、当業者が日常的に実行し得る本明細書に記載されている方法及び技術を使用した、炎症性分子(例えば、IL-6)のレベルを決定するためのアッセイ、及び上で述べたような老化マーカーのレベルを決定するためのアッセイをまた実施し得る。
【0106】
別の非限定的例として及び本明細書に記載のように、アテローム性動脈硬化症動物モデルが開発されてきた。アテローム性動脈硬化症は、例えば、動物に高脂肪食を摂食させることによって、又はアテローム性動脈硬化症の発生を高度に起こしやすいトランスジェニック動物を使用することによって、動物において誘導し得る。動物モデルは、アテローム性動脈硬化症の動脈においてプラークの量を低減させるか、又はプラークの形成を阻害し、アテローム動脈硬化性プラークの脂質含量を低減させ(すなわち、プラークにおける脂質の量を低減、減少させ)、プラークの線維性被膜厚さの増加をもたらすか、又は増進する、老化細胞除去剤の有効性を決定するために使用し得る。スダン染色を使用して、アテローム性動脈硬化症の血管における脂質のレベルを検出し得る。免疫組織学及び免疫化学及び分子生物学アッセイ(例えば、炎症性分子(例えば、IL-6)のレベルを決定するため、及び上で述べたような老化マーカーのレベルを決定するため)は全て、当技術分野で日常的に実行されている本明細書に記載されている方法によって実施し得る。
【0107】
また別の非限定的例では、本明細書に記載のように、動物がブレオマイシンで処置されるマウスモデルは、IPFを処置するための薬剤の有効性を決定するために記載されてきた(例えば、Peng et al.,PLoS One 8(4)(2013)e59348.doi:10.1371/journal.pone.0059348;Mouratis et al.,Curr.Opin.Pulm.Med.17(2011)355-361を参照されたい)。肺疾患動物モデル(例えば、ブレオマイシン動物モデル、喫煙曝露動物モデルなど)において、呼吸測定を行って、エラスタンス、コンプライアンス、静的コンプライアンス、及び末梢毛細血管酸素飽和(SpO2)を決定し得る。免疫組織学及び免疫化学及び分子生物学アッセイ(例えば、炎症性分子(例えば、IL-6)のレベルを決定するための、及び上で述べたような老化マーカーのレベルを決定するための)は全て、当技術分野で日常的に実行されている本明細書に記載されている方法によって実施し得る。
【0108】
動物モデルにおいて本明細書に記載のような老化細胞を選択的に死滅させる老化細胞除去剤の有効性を決定することは、当業者が精通している1つ若しくは複数の統計分析を使用して行い得る。例として、統計分析、例えば、二元配置分散分析法(ANOVA)は、薬剤で処置された動物群及び薬剤で処置されていない群(すなわち、ビヒクルのみ及び/又は非老化細胞除去剤を含み得る陰性対照群)の間の差異の統計的有意性を決定するために使用し得る。統計パッケージ、例えば、SPSS、MINITAB、SAS、Statistika、Graphpad、GLIM、Genstat、及びBMDPは容易に利用可能であり、動物モデルの技術分野における当業者は日常的に使用する。
【0109】
老化細胞除去剤を特性決定すること、及び老化細胞除去剤による死滅のレベルを決定することは、適当な陰性対照(例えば、ビヒクルのみ、及び/又は老化細胞を死滅させないことが当技術分野において公知の組成物、薬剤、若しくは化合物)及び適当な陽性対照による試験薬剤の活性を比較することによって達成することができることを当業者は容易に認識する。薬剤を特性決定するためのin vitroでのセルベースアッセイはまた、非老化細胞(例えば、静止状態の細胞又は増殖細胞)に対する薬剤の効果を決定するための対照を含む。有用な老化細胞除去剤は、1つ若しくは複数の陰性対照と比較して、老化細胞の生存パーセントを低減(すなわち、減少)させる(すなわち、いくつかの様式において、動物又はセルベースアッセイにおける生存老化細胞の量を低減させる)。したがって、老化細胞除去剤は、非老化細胞の死滅と比較して老化細胞を選択的に死滅させる(これは本明細書において、非老化細胞より老化細胞を選択的に死滅させると言及し得る)。
【0110】
ある特定の実施形態では(in vitroでのアッセイにおいて、又はin vivoで(ヒト若しくはヒトではない動物において))、少なくとも1種の老化細胞除去剤は、老化細胞の少なくとも20%を死滅させ、非老化細胞の5%以下を死滅させる。他の実施形態では(in vitroでのアッセイにおいて、又はin vivoで(ヒト若しくはヒトではない動物において))、少なくとも1種の老化細胞除去剤は、老化細胞の少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は65%を死滅させ、非老化細胞の約5%以下又は10%以下を死滅させる。また他の実施形態では(in vitroでのアッセイにおいて、又はin vivoで(ヒト若しくはヒトではない動物において))、少なくとも1種の老化細胞除去剤は、老化細胞の少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は65%を死滅させ、非老化細胞の約5%以下、10%以下、又は15%以下を死滅させる。また他の実施形態では(in vitroでのアッセイにおいて、又はin vivoで(ヒト若しくはヒトではない動物において))、少なくとも1種の老化細胞除去剤は、老化細胞の少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、又は65%を死滅させ、非老化細胞の約5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、又は25%以下を死滅させる。また他の実施形態では(in vitroでのアッセイにおいて、又はin vivoで(ヒト若しくはヒトではない動物において))、少なくとも1種の老化細胞除去剤は、老化細胞の少なくとも約50%、55%、60%、又は65%を死滅させ、非老化細胞の約5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、又は30%以下を死滅させる。別の言い方をすれば、老化細胞除去剤は、非老化細胞より老化細胞を死滅させるための少なくとも5~25、10~50、10~100又は100~1000倍大きな選択性を有する。
【0111】
老化と関連性のある疾患若しくは障害を処置するための本明細書に記載の方法の特定の実施形態に関して、死滅した老化細胞パーセントは、疾患若しくは障害の開始、進行、及び/又は増悪に寄与する老化細胞を含む組織又は器官における死滅した老化細胞パーセントを指し得る。非限定的例として、脳の組織、目の組織及び部分、肺の組織、心臓組織、動脈、関節、皮膚、並びに筋肉は、本明細書に記載されている老化細胞除去剤によって上記のようなパーセントで低減し得る老化細胞を含み得、それによって、治療効果を実現する。さらに、冒された組織又は器官から老化細胞の少なくとも20%又は少なくとも25%を選択的に除去することは、臨床的に意味がある治療効果を有することができる。
【0112】
本明細書に記載の方法の特定の実施形態、例えば、老化細胞除去剤を投与する(すなわち、上記のin vivoでの方法に関連して)ことによって、動脈硬化症、例えば、アテローム性動脈硬化症と関連性のある心血管疾患若しくは障害を処置することに関して、死滅した老化細胞パーセントは、動脈プラークにおいて死滅した非老化細胞に対する、プラークを含有する冒された動脈における死滅した老化細胞パーセントを指し得る。ある特定の実施形態では、心血管疾患、例えば、本明細書に記載のようなアテローム性動脈硬化症を処置するための方法において、少なくとも1種の老化細胞除去剤は、老化細胞の少なくとも20%を死滅させ、動脈における非老化細胞の5%以下を死滅させる。他の実施形態では、老化細胞除去剤は、動脈硬化性動脈において老化細胞の少なくとも25%を選択的に死滅させる。
【0113】
一部の実施形態では、老化細胞除去剤を投与することによって骨関節炎を処置するための本明細書に記載の方法に関して、死滅した老化細胞パーセントは、骨関節炎の関節において死滅した非老化細胞に対する、骨関節炎の関節において死滅した老化細胞パーセントを指し得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のような骨関節炎を処置するための方法において、少なくとも1種の老化細胞除去剤は、老化細胞の少なくとも20%を死滅させ、骨関節炎の関節における非老化細胞の5%以下を死滅させる。他の実施形態では、老化細胞除去剤は、骨関節炎の関節における老化細胞の少なくとも25%を選択的に死滅させる。
【0114】
一部の実施形態では、少なくとも1種の老化細胞除去剤を投与することによって老化関連肺の疾患若しくは障害(例えば、COPD、IPF)を処置するための本明細書に記載の方法に関して、死滅した老化細胞パーセントは、肺の冒された肺組織における死滅した非老化細胞に対する、冒された肺の組織における死滅した老化細胞パーセントを指し得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のような老化関連肺の疾患及び障害を処置するための方法において、老化細胞除去剤は、老化細胞の少なくとも20%を死滅させ、冒された肺組織における非老化細胞の5%以下を死滅させる。他の実施形態では、老化細胞除去剤は、冒された肺組織において老化細胞の少なくとも25%を選択的に死滅させる。
【0115】
ある特定の実施形態では、老化と関連性のある疾患若しくは障害を処置又は予防する(すなわち、その出現の可能性を低減させる)ための有用な老化細胞除去剤である薬剤を同定する(すなわち、スクリーニング)ための方法を提供する。一部の実施形態では、このような疾患及び障害を処置するための老化細胞除去剤を同定するための方法は、細胞が老化することを誘導し、確立した老化細胞を提供することを含む。細胞が老化することを誘導するための方法は、本明細書及び当技術分野で記載されており、例えば、放射線への曝露(例えば、10Gyが典型的には十分である)又は化学療法剤(例えば、ドキソルビシン又は他のアントラサイクリン)を含む。薬剤への曝露の後で、適当な時間及び適当な条件(例えば、所与の細胞型又は細胞株に適当である培地、温度、CO2/O2レベル)下で細胞を培養し、老化が確立することを可能とする。本明細書で考察するように、細胞の老化は、任意の数の特徴、例えば、形態学の変化(例えば、顕微鏡によって見るような);例えば、老化と関連性のあるガラクトシダーゼ(SA-gal)、pl6INK4a、p21、又は任意の1つ若しくは複数のSASP因子(例えば、IL-6、MMP3)の産生を決定することによって決定し得る。次いで、老化細胞の試料を、候補薬剤と接触させる(すなわち、混合するか、合わせるか、又はいくつかの様式では、細胞及び薬剤が相互作用することを可能とする)。アッセイは、ヒストリカル、又は併行的に行われる、適当な対照(陰性及び陽性)を含むことを当業者は認識する。例えば、老化細胞と同様に培養されてきたが、老化誘導剤に曝露されていない対照非老化細胞の試料を、候補薬剤と接触させる。老化細胞の生存のレベルを決定し、非老化細胞の生存のレベルと比較する。老化細胞の生存のレベルが非老化細胞の生存のレベル未満であるとき、老化細胞除去剤が同定される。
【0116】
一部の実施形態では、老化細胞除去剤を同定する上記の方法は、老化細胞除去剤が骨関節炎を処置するのに有用かどうかを同定するためのステップをさらに含み得る。この方法は、同定された老化細胞除去剤とコラーゲンを産生することができる細胞とを接触させることと;細胞によって産生されたコラーゲンのレベルを決定することとをさらに含み得る。一部の実施形態では、細胞は、軟骨細胞であり、コラーゲンは、2型コラーゲンである。この方法は、候補老化細胞除去剤を関節において関節炎病変を有するヒトではない動物に投与することと、(a)関節における老化細胞のレベル;(b)動物の身体機能;(c)炎症の1つ若しくは複数のマーカーのレベル;(d)関節の組織像;及び(e)産生された2型コラーゲンのレベルの1つ若しくは複数を決定し、それによって、老化細胞除去剤の治療有効性を決定することとをさらに含み得、ここで、下記の1つ若しくは複数は、老化細胞除去剤で処置されていない動物と比較して処置された動物において観察される:(i)処置された動物の関節における老化細胞のレベルにおける減少;(ii)処置された動物の改善された身体機能;(iii)処置された動物における炎症の1つ若しくは複数のマーカーのレベルにおける減少;(iv)処置された動物の関節における組織学的正常性の増加;及び(v)処置された動物において産生された2型コラーゲンのレベルにおける増加。本明細書及び当技術分野で記載のように、動物の身体機能は、誘導された又は自然の骨関節炎状態に対する足の感受性を決定する技術によって、例えば、冒された手足上のウェイトを耐える動物の耐性、又は動物が不快な刺激、例えば、熱若しくは冷たさから移動して離れる能力によって決定し得る。動物モデルにおける本明細書に記載のような老化細胞を死滅させる薬剤の有効性を決定することは、当業者が精通している1つ若しくは複数の統計分析を使用して行い得る。本明細書に記載の通りであり、当技術分野で日常的に実行されている統計分析を適用してデータを分析し得る。
【0117】
他の実施形態では、老化細胞除去剤を同定する上記の方法は、老化細胞除去剤が動脈硬化症によってもたらされるか、若しくはそれと関連性のある心血管疾患を処置するのに有用であるかどうかを同定するためのステップをさらに含み得る。したがって、この方法は、プラークの量を低減させ、アテローム性動脈硬化症の動脈におけるプラークの形成を阻害し、アテローム動脈硬化性プラークの脂質含量を低減させ(すなわち、プラークにおける脂質の量を低減、減少させ)、且つ/又はプラークの線維性被膜厚さの増加をもたらすか、若しくは増進させる薬剤の有効性を決定するために、ヒトではない動物又は動物モデルにおいて老化細胞除去候補薬剤を投与することをさらに含み得る。スダン染色を使用して、アテローム性動脈硬化症の血管における脂質のレベルを検出し得る。炎症性分子(例えば、IL-6)のレベルを決定するための免疫組織学アッセイ、及び/又は上で述べたような老化マーカーのレベルを決定するためのアッセイは全て、本明細書に記載されており、当技術分野で日常的に実行されている方法によって実施し得る。
【0118】
特定の実施形態では、老化細胞除去剤を同定するための本明細書に記載されている方法は、候補老化細胞除去剤を、アテローム動脈硬化性プラークを有するヒトではない動物に投与することと、(a)動脈における老化細胞のレベル;(b)動物の身体機能;(c)炎症の1つ若しくは複数のマーカーのレベル;(d)冒された血管(例えば、動脈)の組織像の1つ若しくは複数を決定し;それによって、老化細胞除去剤の治療有効性を決定することとをさらに含み得、ここで、下記の1つ若しくは複数は、老化細胞除去剤で処置されていない動物と比較して、処置された動物において観察される:(i)処置された動物の動脈における老化細胞のレベルの減少;(ii)処置された動物の身体機能の改善;(iii)処置された動物における炎症の1つ若しくは複数のマーカーのレベルの減少;(iv)処置された動物の動脈における組織学的正常性の増加。本明細書及び当技術分野で記載のように、動物の身体機能は、身体活動を測定することによって決定し得る。本明細書に記載の通りであり、当技術分野で日常的に実行されている統計分析を適用してデータを分析し得る。
【0119】
一部の実施形態では、老化細胞除去剤を同定するための本明細書に記載されている方法は、候補老化細胞除去剤をヒトではない動物肺疾患モデル、例えば、ブレオマイシンモデル又は喫煙曝露動物モデルに投与することと、(a)肺における老化細胞のレベル;(b)動物の肺機能;(c)炎症の1つ若しくは複数のマーカーのレベル;(d)肺組織の組織像の1つ若しくは複数を決定し、それによって、老化細胞除去剤の治療有効性を決定することとを含み得、ここで、下記の1つ若しくは複数は、老化細胞除去剤で処置されていない動物と比較して、処置された動物において観察される:(i)処置された動物の肺及び肺組織における老化細胞のレベルの減少;(ii)処置された動物の改善された肺機能;(iii)処置された動物における炎症の1つ若しくは複数のマーカーのレベルにおける減少;及び(iv)処置された動物の肺組織における組織学的正常性の増加。呼吸測定を行って、エラスタンス、コンプライアンス、静的コンプライアンス、及び末梢毛細血管酸素飽和(SpO2)を決定し得る。肺機能は、多数の測定の任意の1つ、例えば、予備呼気量(ERV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気肺活量(FEV)(例えば、1秒でのFEV、FEV1)、FEV1/FEV比、25%~75%の努力呼気流量、及び最大随意換気量(MVV)、最大呼気流量(PEF)、ゆっくり排気して測定する肺活量(SVC)を決定することによって評価し得る。総肺気量は、総肺気量(TLC)、肺活量(VC)、残気量(RV)、及び機能残余容量(FRC)を含む。肺胞毛細管膜を横切るガス交換は、一酸化炭素についての拡散容量(DLCO)を使用して測定することができる。末梢毛細血管酸素飽和(SpO2)をまた測定することができる。本明細書に記載の通りであり、当技術分野で日常的に実行されている統計分析を適用してデータを分析し得る。
【0120】
老化と関連性のある疾患及び障害の処置及び予防の方法
それを必要とする対象において、年齢に関連する疾患及び障害を含めた細胞の老化と関連する、関連性のある、又はそれによってもたらされる状態、疾患、又は障害を処置するための方法を本明細書において提供する。老化と関連性のある疾患若しくは障害はまた、本明細書において、老化細胞に関連する疾患若しくは障害と称し得る。老化と関連性のある疾患及び障害は、例えば、心血管疾患及び障害、炎症性疾患及び障害、自己免疫疾患及び障害、肺の疾患及び障害、目の疾患及び障害、代謝性疾患及び障害、神経系疾患及び障害(例えば、神経変性疾患及び障害);老化によって誘導される年齢に関連する疾患及び障害;皮膚状態;年齢に関連する疾患;皮膚疾患及び障害;並びに移植関連疾患及び障害を含む。加齢の顕著な特色は、段階的な機能喪失、又は分子、細胞、組織、及び生命体レベルで起こる変性である。年齢に関連する変性は、よく認識された病態、例えば、サルコペニア、アテローム性動脈硬化症及び心不全、骨粗鬆症、肺機能不全、腎不全、神経変性(黄斑変性症、アルツハイマー病、及びパーキンソン病を含めた)、並びに多くの他のものを生じさせる。異なる哺乳動物種は特定の年齢に関連する病態に対するそれらの感受性において変動するが、まとめると、年齢に関連する病態は一般に、種特異的な寿命の概ね中間点(例えば、ヒトについて50~60歳)において始まる概ね指数関数的動態で起こる(例えば、Campisi,Annu.Rev.Physiol.75(2013)685-705;Naylor et al.,Clin.Pharmacol.Ther.93(2013)105-116を参照されたい)。
【0121】
本明細書に記載の方法によって本明細書に記載されている老化細胞除去剤の任意の1つを投与することによって処置し得る老化と関連性のある状態、障害、又は疾患の例は、認知疾患(例えば、軽度認知機能低下(MCI)、アルツハイマー病及び他の認知症;ハンチントン病);心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、心臓拡張機能障害、大動脈瘤、狭心症、不整脈、心筋症、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、心内膜炎、高血圧症、頸動脈疾患、末梢血管疾患、心臓ストレス耐性、心臓線維症);代謝性疾患及び障害(例えば、肥満症、糖尿病、代謝症候群);運動機能疾患及び障害(例えば、パーキンソン病、運動ニューロン機能障害(MND);ハンチントン病);脳血管疾患;気腫;骨関節炎;良性前立腺肥大症;肺疾患(例えば、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、閉塞性細気管支炎、喘息);炎症性/自己免疫疾患及び障害(例えば、骨関節炎、湿疹、乾癬、骨粗鬆症、粘膜炎、移植関連疾患及び障害);眼の疾患若しくは障害(例えば、加齢黄斑変性症、白内障、緑内障、失明、老視);糖尿病性潰瘍;転移;化学療法の副作用、放射線療法の副作用;加齢に関連する疾患及び障害(例えば、脊柱後弯症、腎機能障害、虚弱、脱毛、聴力損失、筋肉疲労、皮膚状態、サルコペニア、及び椎間板ヘルニア)、並びに老化によって誘導される他の年齢に関連する疾患(例えば、照射、化学療法、タバコの喫煙、脂肪の多い/糖分の多い食事を食すること、及び環境因子に起因する疾患/障害);創傷治癒;皮膚母斑;線維性疾患及び障害(例えば、嚢胞性線維症、腎線維症、肝線維症、肺線維症、口腔粘膜下線維症、心臓線維症、及び膵線維症)を含む。ある特定の実施形態では、上記又は本明細書において記載されている疾患若しくは障害の任意の1つ若しくは複数を除外し得る。
【0122】
一部の実施形態では、老化細胞除去剤を投与することによって、疾患若しくは障害を有する対象において疾患若しくは障害と関連性のある老化細胞(すなわち、確立した老化細胞)を死滅させることによって、老化と関連性のある疾患若しくは障害を処置するための方法を提供し、ここで、疾患若しくは障害は、骨関節炎;特発性肺線維症;慢性閉塞性肺疾患(COPD);又はアテローム性動脈硬化症である。
【0123】
心血管疾患及び障害
他の実施形態では、本明細書に記載の方法によって処置される老化と関連性のある疾患若しくは障害は、心血管疾患である。心血管疾患は、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、心筋症、うっ血性心不全、冠動脈疾患(CAD)、頸動脈疾患、心内膜炎、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞[MI])、高血圧/高血圧症、大動脈瘤、脳動脈瘤、心臓線維症、心臓拡張機能障害、高コレステロール血症/高脂血症、僧帽弁逸脱症、末梢血管疾患(例えば、末梢動脈疾患(PAD))、心臓ストレス耐性及び脳卒中の任意の1つ若しくは複数であり得る。
【0124】
ある特定の実施形態では、動脈硬化症(すなわち、動脈の硬化)と関連性があるか、それによってもたらされる老化関連心血管疾患を処置するための方法を提供する。心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症(例えば、冠動脈疾患(CAD)及び頸動脈疾患);狭心症、うっ血性心不全、及び末梢血管疾患(例えば、末梢動脈疾患(PAD))の任意の1つ若しくは複数であり得る。動脈硬化症と関連性があるか、それによってもたらされる心血管疾患を処置するための方法は、高血圧/高血圧症、狭心症、脳卒中、及び心臓発作(すなわち、冠状動脈血栓症、心筋梗塞(MI))の出現の可能性を低減し得る。ある特定の実施形態では、対象の血管(例えば、動脈)におけるアテローム動脈硬化性プラークを安定化し、それによって、出現の可能性を低減させるか、又は血栓性事象、例えば、脳卒中又は心筋梗塞の出現を遅延させるための方法を提供する。ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤の投与を含むこれらの方法は、対象の血管(例えば、動脈)におけるアテローム動脈硬化性プラークの脂質含量を低減させ(すなわち、その減少をもたらし)、且つ/又は線維性被膜厚さを増加させる(すなわち、線維性被膜の肥厚を増加、増進若しくは促進させる)。
【0125】
アテローム性動脈硬化症は、中動脈及び大動脈の内腔上を侵害する斑状の内膜プラーク(アテローム)によって特性決定される;プラークは、脂質、炎症性細胞、平滑筋細胞、及び結合組織を含有する。アテローム性動脈硬化症は、冠状動脈、頸動脈及び大脳動脈を含めた大動脈及び中動脈、大動脈及びその分枝、並びに四肢の主要な動脈に影響を与え得る。一部の実施形態では、老化細胞除去剤を投与することによって、アテローム動脈硬化性プラークの形成を阻害する(又はアテローム動脈硬化性プラークの形成を低減、低下、減少をもたらす)ための方法を提供する。他の実施形態では、プラークの量(すなわち、レベル)を低減(減少、低下)するための方法を提供する。血管(例えば、動脈)におけるプラークの量の低減は、例えば、プラークの表面積の減少によって、又は血管(例えば、動脈)の閉塞の程度若しくは度合い(例えば、パーセント)の減少によって決定し得、これは、血管造影法又は心血管の技術分野において使用される他の可視化方法によって決定することができる。また本明細書において提供するのは、対象の1つ若しくは複数の血管(例えば、1つ若しくは複数の動脈)において存在するアテローム動脈硬化性プラークの安定性を増加させる(又は安定性を改善、促進、増進する)方法であり、この方法は、対象に本明細書に記載されている老化細胞除去剤の任意の1つを投与することを含む。
【0126】
心血管疾患を患っている対象は、心血管疾患についての当技術分野において公知の標準的な診断方法を使用して同定することができる。一般に、アテローム性動脈硬化症及び他の心血管疾患の診断は、患者の症状(例えば、胸痛若しくは胸部圧迫感(狭心症)、腕若しくは足におけるしびれ若しくは脱力、話すことが困難であること若しくは不明りょうな発語、顔の筋肉の垂れ下がり、下肢痛、高血圧、腎臓の不全及び/又は勃起機能障害)、病歴、及び/又は身体検査に基づく。診断は、血管造影法、超音波検査、又は他の画像検査によって確認し得る。心血管疾患を発生する危険性のある対象は、準備因子、例えば、心血管疾患の家族歴の任意の1つ若しくは複数を有するもの、並びに他の危険因子(すなわち、準備因子)、例えば、高血圧、異脂肪血症、高コレステロール、糖尿病、肥満及び巻きタバコ喫煙、座ることの多い生活形態、及び高血圧を有するものを含む。ある特定の実施形態では、老化細胞と関連性のある疾患/障害である心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症である。
【0127】
心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症)を処置又は予防する(すなわち、その発生又は出現の可能性を低減又は減少させる)ための1種若しくは複数の老化細胞除去剤の有効性は、医学及び臨床の技術分野における当業者が容易に決定することができる。身体検査、臨床症状のアセスメント及びモニタリング、並びに本明細書に記載されており、当技術分野で実行されている分析試験及び方法の実行(例えば、血管造影、心電図検査、ストレス試験、非ストレス試験)を含めた診断法の1つ又は任意の組合せを使用して、対象の健康状態をモニターし得る。老化細胞除去剤、又はそれを含む医薬組成物の処置の効果は、当技術分野で公知の技術、例えば、処置を受けてきた心血管疾患を患っているか、若しくはその危険性がある患者の症状と、このような処置を受けていないか、若しくはプラセボ処置を受けている患者の症状とを比較することを使用して分析することができる。
【0128】
炎症性及び自己免疫性の疾患及び障害
ある特定の実施形態では、老化と関連性のある疾患若しくは障害は、炎症性疾患若しくは障害、例えば、非限定的例として、骨関節炎であり、これは、老化細胞除去剤の投与を含む本明細書に記載の方法によって処置又は予防(すなわち、出現の可能性を低減)し得る。老化細胞除去剤、例えば、本明細書に記載されている阻害剤及びアンタゴニストを投与することによって処置し得る他の炎症性若しくは自己免疫疾患若しくは障害は、骨粗鬆症、乾癬、口腔粘膜炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、湿疹、脊柱後弯症、椎間板ヘルニア、及び肺疾患、COPD及び特発性肺線維症を含む。
【0129】
骨関節炎、変性性関節疾患は、高い機械的応力の部位における軟骨組織の細線維化、骨硬化、並びに滑膜及び関節包の肥厚によって特性決定される。細線維化は、軟骨組織の表層の分裂が関与する局所表面の組織崩壊である。早期の分裂は軟骨組織表面と関連性が薄く、優勢なコラーゲン束の軸に従う。軟骨組織内のコラーゲンは組織崩壊し、プロテオグリカンは軟骨組織表面から失われる。関節におけるプロテオグリカンの保護効果及び潤滑効果の非存在下で、膠原線維は分解の影響を受けやすくなり、機械的破壊が結果として起こる。骨関節炎が発生するための準備危険因子は、加齢、肥満、従前の関節傷害、関節の酷使、弱い大腿筋肉、及び遺伝学を含む。骨関節炎の症状は、ヒリヒリする又はこわばった関節、特に、不活動又は酷使の後の腰、膝、及び腰;動作の後で消失する安静の後のこわばり;及び活動の後又は1日の終わりに向かって悪化する疼痛を含む。骨関節炎はまた、首、小指関節、親指の付け根、足首、及び足の親指に影響を与え得る。慢性炎症は、骨関節炎に寄与する、年齢に関連する主要な因子であると考えられる。加齢と相まって、関節の酷使及び肥満は骨関節炎を促進するように思われる。
【0130】
老化細胞を選択的に死滅させることによって、老化細胞除去剤は、関節におけるプロテオグリカン層の喪失又は侵食を予防(すなわち、出現の可能性を低減)、低減又は阻害し、冒された関節における炎症を低減させ、コラーゲン(例えば、2型コラーゲン)の産生を促進(すなわち、刺激、増進、誘導)する。老化細胞の除去は、関節において産生される炎症性サイトカイン、例えば、IL-6の量(すなわち、レベル)における低減をもたらし、炎症を低減させる。少なくとも1種の老化細胞除去剤(少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤と合わせて、医薬組成物を形成し得る)を対象に投与することによって、骨関節炎を処置するための、対象の骨関節炎の関節において老化細胞を選択的に死滅させ、且つ/又は対象の関節におけるコラーゲン(例えば、2型コラーゲン)産生を誘導するための方法を本明細書において提供する。老化細胞除去剤はまた、関節におけるコラーゲンを分解するメタロプロテイナーゼ13(MMP-13)の産生を減少(阻害、低減)させるために、並びにプロテオグリカン層を修復するか、又はプロテオグリカン層の喪失及び/若しくは分解を阻害するために使用し得る。老化細胞除去剤による処置は、それによってまた、びらんを予防(すなわち、その出現の可能性を低減)、阻害、若しくは減少させるか、又は骨のびらんを減速する(すなわち、割合を減少させる)。本明細書において詳細に記載するように、ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、骨関節炎の関節に直接投与される(例えば、関節内、局所、経皮的、皮内、又は皮下送達によって)。老化細胞除去剤による処置はまた、関節の強度の悪化を修復、改善、又は阻害することができる。さらに、老化細胞除去剤を投与することを含む方法は関節痛を低減させることができ、したがって、骨関節炎の関節の疼痛管理のために有用である。
【0131】
対象における骨関節炎の処置又は予防法のための1種若しくは複数の老化細胞除去剤の有効性、及び1種若しくは複数の老化細胞除去剤を受ける対象のモニタリングは、医学及び臨床の技術分野における当業者が容易に決定することができる。身体検査(例えば、冒された関節の圧痛、腫脹又は発赤を決定すること)、臨床症状(例えば、疼痛、こわばり、可動性)のアセスメント及びモニタリング、並びに本明細書に記載されており、当技術分野で実行されている分析試験及び方法の実行(例えば、炎症性サイトカイン又はケモカインのレベルを決定すること;関節における骨の間の空間の狭窄によって示されるような軟骨組織の喪失を決定するX線像;磁気共鳴イメージング(MRI)、軟骨組織を含めた骨及び軟部組織の詳細な画像を提供すること)を含めた診断法の1つ又は任意の組合せは、対象の健康状態をモニターするために使用し得る。1種若しくは複数の老化細胞除去剤の処置の効果は、処置を受けてきた、炎症性疾患若しくは障害、例えば、骨関節炎を患っているか、又はその危険性のある患者の症状と、このような処置を受けてこなかったか、又はプラセボ処置を受けてきた患者の症状とを比較することによって分析することができる。
【0132】
ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、関節リウマチ(RA)を処置及び/又は予防する(すなわち、出現の可能性を減少又は低減させる)ために使用し得る。自然免疫応答及び適応的免疫応答の調節不全は、その発生頻度が年齢と共に増加する自己免疫疾患である関節リウマチ(RA)を特性決定する。関節リウマチは、典型的には手及び足における小関節に影響を与える慢性炎症性障害である。骨関節炎は関節の損耗から少なくとも部分的にもたらされる一方で、関節リウマチは、関節の内層に影響を与え、骨びらん及び関節変形をもたらし得る痛みを伴う腫脹を引き起こす。RAはまた、体の他の器官、例えば、皮膚、目、肺及び血管に時折影響を与え得る。RAはいずれの年齢の対象において起こり得る;しかし、RAは通常40歳以降に発生し始める。障害は女性において非常により一般である。本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、RAは、除外される。
【0133】
慢性炎症はまた、他の年齢に関連する又は加齢に関連する疾患及び障害、例えば、脊柱後弯症及び骨粗鬆症に寄与し得る。脊柱後弯症は脊柱における重度の湾曲であり、これは正常な老化及び早期老化によって見られることが多い(例えば、Katzman et al.,J.Orthop.Sports Phys.Ther.40(2010)352-360を参照されたい)。年齢に関連する脊柱後弯症は、骨粗鬆症によって脊髄骨にひびが入り、圧迫するに至るほど弱くなった後に起こることが多い。いくつかのタイプの脊柱後弯症は、乳児又は十代の若者を標的とする。いくつかの脊柱後弯症は肺、神経、並びに他の組織及び器官に影響を与え、疼痛及び他の問題をもたらし得る。脊柱後弯症は、細胞の老化と関連付けられてきた。脊柱後弯症を処置するための老化細胞除去剤の性能を特性決定することは、当技術分野で使用される前臨床動物モデルにおいて決定し得る。例として、TTDマウスは、脊柱後弯症を発生する(例えば、de Boer et al.,Science 296(2002)1276-1279を参照されたい);使用し得る他のマウスは、脊柱後弯症を発生することがまた知られているBubR1マウスを含む(例えば、Baker et al.,Nature 479(2011)232-236を参照されたい)。脊柱後弯症形成は、時間と共に視覚的に測定される。老化細胞除去剤による処置によって減少した老化細胞のレベルは、1つ若しくは複数の老化細胞と関連性のあるマーカーの存在を検出することによって、例えば、SA-□-Gal染色によって決定することができる。
【0134】
骨粗鬆症は、骨折の危険性の増加をもたらし得る、骨量及び密度の減少によって特性決定される進行性の骨疾患であり、これは本明細書に記載されている老化細胞除去剤の投与によって処置又は予防し得る。骨塩密度(BMD)は低減し、骨の微小構造は悪化し、骨におけるタンパク質の量及び種類は変化する。骨粗鬆症は典型的には骨塩密度検査によって診断及びモニターされる。閉経後の女性又は低減したエストロゲンを有する女性は最も危険性がある。75歳超の男性及び女性の両方は危険性がある一方、女性は骨粗鬆症を発生する可能性が男性の2倍である。老化細胞除去剤による処置によって減少した老化細胞のレベルは、1つ若しくは複数の老化細胞と関連性のあるマーカーの存在を検出することによって、例えば、SA-□-Gal染色によって決定することができる。
【0135】
また他の実施形態では、本明細書に記載されている老化細胞除去剤で処置又は予防し得る(すなわち、出現の可能性が低減する)炎症性/自己免疫障害は、過敏性腸症候群(IBS)及び炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む。炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の全て又は部分の慢性炎症が関与する。IBDからもたらされる生命を脅かす合併症に加えて、この疾患は、有痛性及び衰弱させるものであり得る。潰瘍性大腸炎は、消化管の部分において長続きする炎症をもたらす炎症性腸疾患である。症状は通常、突然よりはむしろ経時的に発生する。潰瘍性大腸炎は通常、大腸(結腸)及び直腸の最内側の内層のみに影響を与える。クローン病は、消化管の内層に沿ってどこにでも炎症をもたらし、冒された組織中に深く広がることが多い、炎症性腸疾患である。これは、腹痛、重度の下痢及び栄養不良を引き起こし得る。クローン病によってもたらされる炎症は、消化管の異なる領域が関与し得る。疾患の診断及びモニタリングは、血液検査、結腸内視鏡検査、軟性S状結腸鏡検査、バリウム浣腸、CTスキャン、MRI、内視鏡検査、及び小腸イメージングを含めた、当技術分野で日常的に実行される方法及び診断テストによって実施される。
【0136】
老化細胞除去剤を使用することによって処置又は予防し得る(すなわち、出現の可能性を低減させる)他の炎症性若しくは自己免疫疾患は、湿疹、乾癬、骨粗鬆症、及び肺疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、喘息)、炎症性腸疾患、及び粘膜炎(場合によって、放射線によって誘導される口腔粘膜炎を含めた)を含む。器官のある特定の線維症又は線維性状態、例えば、腎線維症、肝線維症、膵線維症、心臓線維症、皮膚創傷治癒、及び口腔粘膜下線維症は、本明細書に記載されている老化細胞除去剤で処置し得る。
【0137】
ある特定の実施形態では、老化細胞と関連性のある障害は、老化細胞除去剤の投与を含む本明細書に記載の方法によって処置又は予防(すなわち、出現の可能性を低減)し得る皮膚の炎症性障害、例えば、非限定的例として、乾癬及び湿疹である。乾癬は、皮膚の表皮層の異常に過剰及び急速な成長によって特性決定される。乾癬の診断は通常皮膚の外観に基づく。乾癬に典型的な皮膚の特徴は、有痛性及びかゆみであり得る皮膚の落屑性紅斑、丘疹、又は斑点である。乾癬において、様々な炎症促進性サイトカイン、例えば、SASPの重要な構成要素であるIL-6の皮膚及び全身の過剰発現が観察される。湿疹は、発赤、皮膚腫脹、そう痒及び乾燥、痂皮、剥離、水疱形成、ひび割れ、滲出、又は出血によって特性決定される皮膚の炎症である。乾癬及び湿疹の処置についての老化細胞除去剤の有効性、並びにこのような老化細胞除去剤を受ける対象のモニタリングは、医学又は臨床の技術分野における当業者は容易に決定することができる。身体検査(例えば、皮膚の外観)、臨床症状(例えば、そう痒、腫脹、及び疼痛)のアセスメント又はモニタリング、並びに本明細書に記載されており、当技術分野で実行されている分析試験及び方法の実行(すなわち、炎症促進性サイトカインのレベルを決定すること)を含めた診断法の1つ又は任意の組合せ。
【0138】
本明細書に記載されている老化細胞除去剤で処置又は予防(すなわち、出現の可能性を低減)し得る他の免疫障害又は状態は、器官移植(例えば、腎臓、骨髄、肝臓、肺、又は心臓移植)への宿主免疫応答、例えば、移植された器官の拒絶からもたらされる状態を含む。本明細書に記載されている老化細胞除去剤はまた、移植片対宿主病を処置又はその出現の可能性を低減させるために使用し得る。
【0139】
肺の疾患及び障害
一部の実施形態では、本明細書に記載されている老化細胞除去剤を投与することによって、疾患若しくは障害を有する対象において疾患若しくは障害と関連性のある老化細胞(すなわち、確立した老化細胞)を死滅させることによって、肺の疾患若しくは障害である老化と関連性のある疾患若しくは障害を処置又は予防する(すなわち、その出現の可能性を低減させる)ための方法を提供する。老化と関連性のある肺の疾患及び障害は、例えば、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症、及び気腫を含む。
【0140】
COPDは、肺組織の崩壊(気腫)及び末梢気道の機能障害(閉塞性細気管支炎)からもたらされる、持続的に乏しい空気の流れによって定義される肺疾患である。COPDの一次症状は、息切れ、喘鳴、胸苦しさ、慢性咳嗽、及び過剰な痰が生じることを含む。巻きタバコの煙によって活性化した好中球及びマクロファージからのエラスターゼは、肺胞構造の細胞外マトリックスを崩壊し、拡大した気腔、及び呼吸容量の喪失をもたらす(例えば、Shapiro et al.,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.32(2005)367-372を参照されたい)。COPDは、タバコの煙(巻きタバコの煙、葉巻喫煙、二次喫煙、パイプ喫煙を含めた)、職業曝露(例えば、ほこり、煙又は煙霧への曝露)、及び汚染によって最も一般にもたらされ、これは、数十年に亘って起こり、それによって、加齢がCOPDを発生するための危険因子として関連付けされる。
【0141】
肺損傷をもたらすことに関与しているプロセスは、例えば、タバコの煙における高濃度のフリーラジカルによって産生される酸化ストレス;気道における刺激物質に対する炎症応答によるサイトカイン放出;並びにプロテアーゼが肺を損傷することを可能とする、タバコの煙及びフリーラジカルによる抗プロテアーゼ酵素の機能低下を含む。遺伝的感受性はまた、疾患に寄与し得る。COPDを有する人の約1%パーセントにおいて、この疾患は、肝臓におけるα-1-アンチトリプシンの低レベルの産生をもたらす遺伝性障害に起因する。この酵素は通常、血流中に分泌されて、肺を保護することを助ける。
【0142】
肺線維症は、肺の硬化及び瘢痕によって特性決定される慢性及び進行性の肺疾患であり、これは、呼吸不全、肺がん、及び心不全をもたらし得る。線維症は、上皮の修復と関連性がある。線維芽細胞は活性化され、細胞外マトリックスタンパク質の産生は増加し、収縮性筋線維芽細胞への分化転換は創傷収縮に寄与する。一時的マトリックスは傷害された上皮を塞ぎ、上皮間葉転換(EMT)が関与する上皮細胞移動のための足場を提供する。上皮の傷害と関連性のある失血は、血小板活性化、成長因子の産生、及び急性炎症応答を誘導する。通常、上皮性関門は治癒し、炎症応答は消散する。しかし、線維性疾患において、線維芽細胞応答は継続し、創傷治癒は未解決のままである。線維芽細胞巣の形成はこの疾患の特色であり、進行中の線維形成の場所を反映する。名称が暗示するように、IPFの病因は未知である。IPFにおける細胞の老化の関与は、疾患の発生頻度が年齢と共に上昇し、IPF患者における肺組織がSA-□-Gal-陽性細胞について濃縮されており、上昇したレベルの老化マーカーp21を含有するという観察によって示唆されている(例えば、Minagawa et al.,Am.J.Physiol.Lung Cell.Mol.Physiol.300(2011)L391-L401を参照されたい;例えば、Naylor et al.、上述をまた参照されたい)。短いテロマーは、IPF及び細胞の老化の両方に共通している危険因子である(例えば、Alder et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105(2008)13051-13056を参照されたい)。理論に束縛されるものではないが、IPFに対する細胞の老化の寄与は、老化細胞のSASP構成要素、例えば、IL-6、IL-8、及びIL-1□が線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化及び上皮間葉転換を促進し、肺胞及び間質腔の細胞外マトリックスの広範なリモデリングをもたらすことが報告によって示唆されている(例えば、Minagawaら、上述を参照されたい)。
【0143】
肺線維症を発生する危険性のある対象は、環境又は職業汚染物質、例えば、石綿症及びケイ肺症に曝露しているもの;巻きタバコを吸うもの;いくつかの典型的な結合組織病、例えば、関節リウマチ、SLE及び強皮症を有するもの;結合組織が関与する他の疾患、例えば、サルコイドーシス及びウェゲナー肉芽腫症を有するもの;感染症を有するもの;ある特定の医薬(例えば、アミオダロン、ブレオマイシン、ブスルファン、メトトレキサート、及びニトロフラントイン)を摂取しているもの;胸部への放射線療法に供されたもの;並びに家族が肺線維症を有するものを含む。
【0144】
COPDの症状は、特に身体活動の間の息切れ;喘鳴;胸苦しさ;肺における過剰な粘液によって朝一番に咳払いをしなければならないこと;透明、白色、黄色若しくは緑がかった色であり得る痰を生じさせる慢性咳嗽;唇又は爪床の青さ(チアノーゼ);頻繁な気道感染症;エネルギーの欠乏;意図されない体重減少(疾患の後期の段階において観察される)のいずれか1つを含み得る。COPDを有する対象はまた増悪を経験し得、その間に、症状は悪化し、数日若しくはそれより長く持続する。肺線維症の症状は当技術分野において公知であり、特に運動の間の息切れ;乾いた激しい咳;速く浅い呼吸;段階的な意図されない体重減少;疲労;痛む関節及び筋肉;並びにばち状指(手指又は足指の先端が拡張し丸くなること)を含む。
【0145】
COPD又は肺線維症を患っている対象は、当技術分野で日常的に実行されている標準的な診断法を使用して同定することができる。肺疾患を有するか、又は肺疾患を発生する危険性がある対象へと投与された1種若しくは複数の老化細胞除去剤の効果をモニタリングすることは、診断のために典型的には使用される方法を使用して行い得る。一般に、下記の検査又は試験の1つ若しくは複数を実施し得る:身体検査、患者の病歴、患者家族の病歴、胸部X線、肺機能検査(例えば、肺活量測定)、血液検査(例えば、動脈血液ガス分析)、気管支肺胞洗浄、肺組織診、CTスキャン、及び運動試験。
【0146】
老化細胞除去剤を使用することによって処置し得る他の肺の疾患若しくは障害は、例えば、気腫、喘息、気管支拡張症、及び嚢胞性線維症(例えば、Fischer et al.,Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.304(6)(2013)L394-400を参照されたい)を含む。これらの疾患はまた、タバコの煙(巻きタバコの煙、葉巻喫煙、二次喫煙、パイプ喫煙を含めた)、職業曝露(例えば、ほこり、煙若しくは煙霧への曝露)、感染、及び/又は汚染物質によって増悪し得、これらは、細胞を老化へと誘導し、それによって、炎症の一因となる。気腫は、時にはCOPDの部分群であると考えられる。
【0147】
気管支拡張症は、気道への損傷に起因し、これによって気道は拡大し、たるみ、損なわれる。気管支拡張症は通常、気道壁を傷害するか、又は気道が粘液を除去することを阻害する医学的状態によってもたらされる。このような状態の例は、嚢胞性線維症及び原発性線毛機能不全(PCD)を含む。肺の一部のみが影響を受けるとき、障害は医学的状態よりむしろ閉塞によってもたらし得る。
【0148】
老化関連肺の疾患若しくは障害を処置又は予防する(すなわち、その可能性又は出現を低減させる)ための本明細書に記載の方法はまた、老齢であり、且つ肺機能の喪失(若しくは変性)(すなわち、より若い対象と比較して低下した若しくは損なわれた肺機能)及び/又は肺組織の変性を有する対象を処置するために使用し得る。呼吸器系は、年齢と共に様々な解剖学的、生理学的及び免疫学的変化を受ける。構造的変化は、呼吸するのにさらなる努力を引き起こす総呼吸器系コンプライアンスを損ない得る胸壁及び胸椎の変形を含む。呼吸器系は、年齢と共に構造的、生理学的、及び免疫学的変化を受ける。好中球の割合の増加及びマクロファージのより低い百分率は、より若い成人と比較して高齢者の気管支肺胞洗浄液(BAL)において見出すことができる。下気道における持続性の軽度の炎症は、肺マトリックスへのタンパク質分解傷害及び酸化体によって媒介される傷害をもたらし、加齢と共に見られる、肺胞単位の喪失及び肺胞膜を横切るガス交換の障害を生じさせ得る。下気道の持続性の炎症は、高齢者を毒性環境曝露への感受性の増加、及び加速された肺機能低下に傾かせ得る。(例えば、Sharma et al.,Clinical Interventions in Aging 1(2006)253-260を参照されたい)。酸化ストレスは、加齢の間に炎症を増悪させる(例えば、Brod,Inflamm.Res.49(2000)561-570;Hendel et al.,Cell Death and Differentiation 17(2010)596-606を参照されたい)。加齢における酸化還元バランスにおける変化、及び酸化ストレスの増加は、サイトカイン、ケモカイン、及び接着分子、及び酵素の発現を促進する(例えば、Chung et al.,Ageing Res.Rev.8(2009)18-30を参照されたい)。マクロファージ、T細胞、及び肥満細胞の恒常的活性化及び動員は、プロテアーゼの放出を促進し、細胞外マトリックス分解、細胞死、リモデリング、並びに慢性炎症の間の組織及び臓器損傷をもたらし得る他の事象を引き起こす(例えば、Demedts et al.,Respir.Res.7(2006)53-63を参照されたい)。老化細胞除去剤を老齢の対象(無症候性である中年の成人を含む)に投与することによって、肺機能の低下は、気道から老化細胞を死滅及び除去することによって進行を遅らせるか、又は阻害し得る。
【0149】
老化細胞除去剤の有効性は、医学及び臨床の技術分野における当業者が容易に決定することができる。身体検査、臨床症状のアセスメント及びモニタリング、並びに本明細書に記載されている分析試験及び方法の実行を含めた診断法の1つ又は任意の組合せを使用して、対象の健康状態をモニターし得る。老化細胞除去剤、又は薬剤を含む医薬組成物の処置の効果は、当技術分野で公知の技術を使用して、例えば、処置を受けてきた肺疾患を患っているか、又はその危険性がある患者の症状と、このような処置を受けないか、又はプラセボ処置を受けている患者の症状とを比較して分析することができる。さらに、肺の機械的機能を評価する方法及び技術、例えば、肺容量、エラスタンス、及び気道過敏症を測定する技術を行い得る。肺機能を決定し、処置の間中の肺機能をモニターするために、多数の測定の任意の1つ、予備呼気量(ERV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気肺活量(FEV)(例えば、1秒でのFEV、FEV1)、FEV1/FEV比、25%~75%の努力呼気流量、及び最大随意換気量(MVV)、最大呼気流量(PEF)、ゆっくり排気して測定する肺活量(SVC)を得てもよい。総肺気量は、総肺気量(TLC)、肺活量(VC)、残気量(RV)、及び機能残余容量(FRC)を含む。肺胞毛細管膜を横切るガス交換は、一酸化炭素についての拡散容量(DLCO)を使用して測定することができる。末梢毛細血管酸素飽和(SpO2)をまた測定することができる;正常な酸素レベルは典型的には95%~100%である。90%未満のSpO2レベルは、対象が低酸素血を有することを示唆する。80%未満の値は重大であると考えられ、脳及び心機能を維持し、心停止又は呼吸停止を回避するために介入治療を必要とする。
【0150】
神経系疾患及び障害
本明細書に記載されている老化細胞除去剤を投与することによって処置可能な老化と関連性のある疾患若しくは障害は、神経系疾患若しくは障害を含む。このような老化と関連性のある疾患及び障害は、パーキンソン病、アルツハイマー病(及び他の認知症)、運動ニューロン機能障害(MND)、軽度認知機能低下(MCI)、ハンチントン病、並びに目の疾患及び障害、例えば、加齢黄斑変性症を含む。加齢と関連性のある目の他の疾患は、緑内障、失明、老視、及び白内障である。
【0151】
パーキンソン病(PD)は、第2の最も一般的な神経変性疾患である。これは、動作の緩慢さ(動作緩慢)、揺れ、こわばり、及び後期の段階において、平衡感覚障害によって特性決定される脳の障害を引き起こす状態である。これらの症状の多くは脳におけるある特定の神経の喪失によるものであり、これはドパミンの欠乏をもたらす。この疾患は、神経変性、例えば、黒質緻密部におけるドパミンニューロンの約50%~70%の喪失、線条体におけるドパミンの深刻な喪失並びに/又はアルファ-シヌクレイン及びユビキチンから主に構成される細胞質内封入体(レビー小体)の存在によって特性決定される。パーキンソン病はまた、自発運動障害、例えば、振戦、固縮、動作緩慢及び/又は姿勢の不安定を特色とする。パーキンソン病を発生する危険性のある対象は、パーキンソン病の家族歴を有する者、及び殺有害生物剤(例えば、ロテノン又はパラコート)、除草剤(例えば、エージェントオレンジ)、又は重金属に曝露したものを含む。ドパミン産生ニューロンの老化は、活性酸素種の産生を介した、PDにおける観察される細胞死に寄与すると考えられる(例えば、Cohen et al.,J.Neural Transm.Suppl.19(1983)89-103を参照されたい);したがって、本明細書に記載されている方法及び老化細胞除去剤は、パーキンソン病の処置及び予防法のために有用である。
【0152】
パーキンソン病と関連性のある神経変性欠損及び/又は自発運動障害を検出、モニタリング又は定量化するための方法、例えば、組織学的研究、生化学試験、及び行動アセスメントは、当技術分野において公知である(例えば、米国特許出願公開第2012/0005765号明細書を参照されたい)。パーキンソン病の症状は当技術分野において公知であり、これらに限定されないが、随意運動を開始若しくは終了することの困難、ぎくしゃくしこわばった動作、筋萎縮、揺れ(振戦)、及び心拍数の変化、正常反射、動作緩慢、及び姿勢の不安定が含まれる。パーキンソン病と診断された人は、それらの身体症状に加えて、軽度認知機能低下を含めた認知機能低下を有し得るという認識が広がりつつある。
【0153】
アルツハイマー病(AD)は、記憶の減退、見当識障害、及び混乱を伴う緩徐進行性の精神衰退を示す神経変性疾患であり、深刻な認知症がもたらされる。年齢は、ADを発生するための単一の最も大きな素因になる危険因子であり、これは高齢者における認知症の主要原因である(例えば、Hebert,et al.,Arch.Neural.60(2003)1119-1122を参照されたい)。早期臨床症状は、軽度認知機能低下との著しい類似性を示す(下記を参照されたい)。疾患が進行するにつれ、判断力の衰え、混乱、行動変化、見当識障害、並びに歩行困難及び嚥下困難が起こる。
【0154】
アルツハイマー病は、組織学的標本における神経原線維変化及びアミロイド(老人)斑の存在によって特性決定される。この疾患は脳の辺縁系及び皮質領域が主に関与する。アミロイド前駆体タンパク質(APP)のアミロイド形成的ADフラグメントを含有する好銀性プラークは、大脳皮質及び海馬中に散在している。神経原線維変化は、新皮質、海馬、及びマイネルト基底核に主に位置する錐体ニューロンにおいて見出される。他の変化、例えば、海馬の錐体細胞における顆粒空胞変性、並びにニューロン喪失、並びに皮質及び海馬におけるグリオーシスが観察される。アルツハイマー病を発生する危険性のある対象は、高齢のもの、アルツハイマー病の家族歴を有するもの、遺伝的危険遺伝子(例えば、ApoE4)又は決定的な遺伝子変異(例えば、APP、PSI、若しくはPS2)を有するもの、及び頭部外傷又は心臓/血管の状態(例えば、高血圧、心疾患、脳卒中、糖尿病、高コレステロールなど)の病歴を有するものを含む。
【0155】
いくつかの行動及び病理組織学的アッセイは、アルツハイマー病の表現型を評価するために、治療剤を特性決定し、処置をアセスメントするために当技術分野において公知である。組織学的分析は典型的には、死後に行われる。A□レベルの組織分析は、チオフラビン-S、コンゴーレッド、又は抗A□染色(例えば、4G8、10D5、若しくは6E10抗体)を使用して実施して、切開した脳組織上のA□沈着を可視化し得る(例えば、Holcomb et al.,Nat.Med.4(1998)97-100;Borchelt et al.,Neuron 19(1997)939-945;Dickson et al.,Am.J.Path.132(1998)86-101を参照されたい)。トランスジェニックマウスにおいてA□沈着を可視化するIn vivoでの方法がまた記載されている。BSB((trans、trans)-1-ブロモ-2,5-ビス-(3-ヒドロキシカルボニル-4-ヒドロキシ)スチリルベンゼン)及びPETトレーサー11C-標識されたPittsburgh化合物-B(PIB)は、APプラークに結合する(例えば、Skovronsky et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97(2000)7609-7614;Klunk et al.,Ann.Neurol.55(2004)306-319を参照されたい)。19F-含有アミロイド親和性コンゴーレッドタイプ化合物であるFSB((E,E)-1-フルオロ-2,5-ビス-(3-ヒドロキシカルボニル-4-ヒドロキシ)スチリルベンゼン)は、MRIによるA□プラークの可視化を可能とする(例えば、Higuchi et al.,Nature Neurosci.8(2005)527-533を参照されたい)。放射標識されたプトレシン修飾アミロイド-ベータペプチドは、アルツハイマー病のマウスモデルにおいてアミロイド沈着をin vivoで標識する(例えば、Wengenack et al.,Nat.Biotechnol.18(2000)868-872を参照されたい)。
【0156】
アストロサイトによるグリア線維酸性タンパク質(GFAP)の増加は、神経変性の間のアストログリアの活性化及びグリオーシスについてのマーカーである。APプラークは、GFAP陽性活性化アストロサイトと関連性があり、GFAP染色によって可視化し得る(例えば、Nagele et al.,Neurobiol.Aging 25(2004)663-674;Mandybur et al.,Neurology 40(1990)635-639;Liang et al.,J.Biol.Chem.285(2010)27737-27744を参照されたい)。神経原線維変化は、チオフラビン-S蛍光顕微鏡法及びガリアス銀染色を使用して免疫組織化学によって同定し得る(例えば、Gotz et al.,J.Biol.Chem.276(2001)529-534;米国特許第6,664,443号明細書を参照されたい)。電子顕微鏡法による軸索染色及び軸索輸送研究を使用して、ニューロン変性を可視化し得る(例えば、Ishihara et al.,Neuron 24(1999)751-762を参照されたい)。
【0157】
アルツハイマー病を患っている対象は、アルツハイマー病についての当技術分野において公知の標準的な診断方法を使用して同定することができる。一般に、アルツハイマー病の診断は、患者の症状(例えば、記憶機能の進行性の低下、正常な活動から徐々に後退すること及び正常な活動にいらだつこと、感情鈍麻、激越又は易刺激性、攻撃性、不安、睡眠障害、神経不安、異常な運動行動、脱抑制、社会的引きこもり、食欲減退、幻覚、認知症)、病歴、神経心理学的試験、神経学的検査及び/又は身体検査に基づく。tau、アミロイドベータペプチド、及びAD7C-NTPを含めたアルツハイマー病態と関連付けられてきた様々なタンパク質について、脳脊髄液をまた試験し得る。早期発症型家族性アルツハイマー病(eFAD)、常染色体優性遺伝性疾患について遺伝子検査がまた利用可能である。AD症状を有する個人又は早期発症型疾患を有する患者の潜在的に危険な状態にある家族について、臨床遺伝子検査が利用可能である。米国において、PS2、及びAPPにつての変異は、Clinical Laboratory Improvement Amendmentsの元で臨床実験室又は連邦政府によって承認されている実験室において検査し得る。PS1変異についての商用検査がまた利用可能である(Elan Pharmaceuticals)。
【0158】
本明細書に記載されている1種若しくは複数の老化細胞除去剤の有効性、及び1種若しくは複数の老化細胞除去剤を受けている対象のモニタリングは、医学及び臨床の技術分野における当業者が容易に決定することができる。身体検査、臨床症状のアセスメント及びモニタリング、並びに本明細書に記載されている分析試験及び方法の実行を含めた診断法の1つ又は任意の組合せを、対象の健康状態をモニターするために使用し得る。1種若しくは複数の老化細胞除去剤を投与することの効果は、当技術分野で公知の技術を使用して、例えば、処置を受けてきたアルツハイマー病を患っているか、若しくはその危険性のある患者の症状と、このような処置を受けていないか、若しくはプラセボ処置を受けている患者の症状とを比較して分析することができる。
【0159】
軽度認知機能低下(MCI)は、個人の年齢及び教育に基づいて予想されるものを超えるが、個人の毎日の活動を妨げるのには十分ではない、認知機能低下の開始及び進化が関与する脳機能症候群である。MCIは、通常の加齢、及びそれが転換し得る認知症の間の移行状態である考えられる、認知の加齢の一態様である(Pepeu,Dialogues in Clinical Neuroscience 6(2004)369-377を参照されたい)。記憶に主に影響を与えるMCIは、「健忘性MCI」として知られている。健忘性MCIを有する人は、従前には容易に思い出した重要な情報、例えば、最近の事象を忘れ始め得る。健忘性MCIは、アルツハイマー病の前駆症状的段階として見られることが多い。記憶以外の思考の能力に影響を与えるMCIは、「非健忘性MCI」として知られている。このタイプのMCIは、思考の能力、例えば、正しい判断を行い、複雑なタスクを完了するのに必要とされるステップの時間若しくは順序を判断する能力、又は視覚認知に影響を与える。非健忘性MCIを有する個人は、他のタイプの認知症(例えば、レビー小体を伴う認知症)に転換する可能性がより高いと考えられる。
【0160】
医学の技術分野における人は、パーキンソン病と診断された人が、それらの身体症状に加えてMCIを有し得るという認識の高まりを有する。パーキンソン病を有する人の20~30%がMCIを有し、それらのMCIが非健忘性である傾向にあることを最近の研究は示す。MCIを有するパーキンソン病患者は本格的な認知症(認知症を有するパーキンソン病)を発生することへと進むことがある。
【0161】
MCIと関連性のある神経病理的欠損を検出、モニタリング、定量化又はアセスメントするための方法は、アストロサイトの形態学的分析、アセチルコリンの放出、神経変性をアセスメントするための銀染色、及びベータアミロイド沈着を検出するためのPiB PETイメージングを含めて当技術分野において公知である(例えば、米国特許出願公開第2012/0071468号明細書;Pepeu,(2004)、上述を参照されたい)。MCIと関連性のある行動上の欠損を検出、モニタリング、定量化又はアセスメントするための方法はまた、8本アーム放射状迷路パラダイム、非見本合わせ課題、水迷路における他人中心性場所決定課題、モリス迷路検査、視空間課題、遅延反応空間記憶課題、及び嗅覚新規検査を含めて当技術分野において公知である。
【0162】
運動ニューロン機能障害(MND)は、重要な随意筋活動、例えば、話すこと、歩行、呼吸及び嚥下を制御する細胞である運動ニューロンを破壊する進行性神経障害の群である。これは、変性が上位運動ニューロン、下位運動ニューロン、又は両方に影響を与えるかどうかによって分類される。MNDの例には、これらに限定されないが、ルーゲーリック病としてまた知られている筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性球麻痺、偽球麻痺、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮症、下位運動ニューロン疾患、及び脊髄性筋萎縮症(SMA)(例えば、ヴェルドニッヒ・ホフマン病とまた称されるSMA1、SMA2、クーゲルベルク・ヴェランデル病とまた称されるSMA3、及びケネディ病)、ポリオ後症候群、及び遺伝性痙性対麻痺が含まれる。成人において、最も一般のMNDは、上位運動ニューロン及び下位運動ニューロンの両方に影響を与える筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。これは腕、足、又は顔面の筋肉に影響を与え得る。原発性側索硬化症は上位運動ニューロンの疾患であり、一方、進行性筋萎縮症は脊髄における下位運動ニューロンのみに影響を与える。進行性球麻痺において、脳幹の最も下位の運動ニューロンが最も影響を受け、不明りょうな発語、並びに咀嚼及び嚥下の困難がもたらされる。腕及び足における穏やかに異常な徴候が殆どの場合存在する。MNDを有する患者は、パーキンソン病の表現型を示す(例えば、振戦、固縮、動作緩慢、及び/又は姿勢の不安定を有する)。自発運動、及び/又はパーキンソン病と関連性のある他の欠陥、例えば、MNDを検出、モニタリング又は定量化するための方法は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許出願公開第2012/0005765号明細書を参照されたい)。
【0163】
MNDと関連性のある運動障害及び病理組織学的欠損を検出、モニタリング、定量化又はアセスメントするための方法は、病理組織学的、生物化学的、及び電気生理学的研究、並びに運動活性分析を含めて当技術分野において公知である(例えば、Rich et al.,J.Neurophysiol.88(2002)3293-3304;Appel et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88(1991)647-651を参照されたい)。病理組織学的に、MNDは、運動ニューロンの死、SOD1及びユビキチンを含有する洗剤耐性の凝集体の進行性蓄積、並びに変性運動ニューロンにおける異常なニューロフィラメント蓄積によって特性決定される。さらに、反応性のアストログリア及びミクログリアは、患部組織において検出されることが多い。MNDを有する患者は、筋肉衰弱及び消耗、制御できない単収縮、痙縮、遅く努力を要する動作、及び過剰な腱反射を含めた1つ若しくは複数の運動障害を示す。
【0164】
眼の疾患及び障害
ある特定の実施形態では、老化と関連性のある疾患若しくは障害は、目の疾患、障害、又は状態、例えば、老視、黄斑変性症、又は白内障である。他のある特定の実施形態では、老化と関連性のある疾患若しくは障害は、緑内障である。黄斑変性症は、網膜黄斑と称される網膜の中央部における光受容体細胞の喪失をもたらす神経変性疾患である。黄斑変性症は一般に、2つのタイプ:ドライ型及びウエット型に分類される。ドライ形態はウエットより一般であり、加齢黄斑変性症(ARMD又はAMD)患者の約90%は、ドライ形態と診断される。疾患のウエット形態は通常より重大な失明をもたらす。加齢黄斑変性症の正確な原因は未だ未知である一方、老化網膜色素上皮(RPE)細胞の数は年齢と共に増加する。年齢並びにある特定の遺伝因子及び環境因子は、ARMDを発生するための危険因子である(例えば、Lyengar et al.,Am.J.Hum.Genet.74(2004)20-39;Kenealy et al.,Mol.Vis.10(2004)57-61;Gorin et al.,Mol.Vis.5(1999)29を参照されたい)。環境準備因子は、オメガ-3脂肪酸摂取(例えば、Christen et al.,Arch.Ophthalmol.129(2011)921-929を参照されたい);エストロゲン曝露(例えば、Feshanich et al.,Arch.Ophthalmol.126(4)(2008)519-524を参照されたい);及びビタミンDの血清レベルの増加(例えば、Millen,et al.,Arch.Ophthalmol.129(4)(2011)481-89を参照されたい)を含む。遺伝的素因危険因子は、ドライAMDを有する患者の目における低減したレベルのDicer1(マイクロRNAの成熟に関与する酵素)を含み、減少したマイクロRNAは老化細胞プロファイルに寄与する。
【0165】
ドライARMDは、光受容体細胞の喪失をもたらすRPE層の萎縮と関連性がある。ARMDのドライ形態は、加齢及び黄斑組織の菲薄化に、並びに網膜黄斑における色素の沈着に起因し得る。老化はRPEの複製及び移動の両方を阻害し、ドライAMD患者の網膜黄斑における永続的なRPEの減少をもたらすようである(例えば、Iriyama et al.,J.Biol.Chem.283(2008)11947-11953を参照されたい)。ウエットARMDでは、新規な血管が網膜の下で成長し、血液及び体液が漏出する。この異常な漏出性の脈絡膜血管新生は網膜細胞の死亡をもたらし、中心視力において盲点を生じさせる。黄斑変性症の異なる形態はまた、より若い患者において起こり得る。年齢に関係しない病因は、遺伝、糖尿病、栄養不足、頭部傷害、感染症、又は他の因子とリンクし得る。
【0166】
患者、又は通例の目の検査の間に眼科医が気付く視覚の衰えは、黄斑変性症の最初の指標であり得る。網膜黄斑のブルッフ膜の下の浸出物、又は「ドルーゼン」の形成は、黄斑変性症が発生し得る最初の身体的徴候であることが多い。症状は直線が歪むことの認知を含み、場合によって、視覚中心は光景の残りの部分より歪んだように見え;暗く、ぼやけた領域若しくは「ホワイトアウト」が視覚中心において現れ;且つ/又は色知覚が変化若しくは減少する。黄斑変性症を有する対象の診断及びモニタリングは、当技術分野で一般に認められた定期的な目の検査手順及び対象による症状の報告によって眼の技術分野における当業者が達成し得る。
【0167】
正常な目の遠近調節速度及び遠近調節力は年齢が進むと減少するため、老視は、目が近くの物体に焦点を合わせる進行的に減退した能力を示す、年齢に関連する状態である。水晶体の弾性の喪失及び毛様体筋の収縮力の喪失は、その原因として仮定されてきた(例えば、Heys et al.,Mol.Vis.10(2004)956-963;Petrash,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.54(2013)ORSF54-ORSF59を参照されたい)。前部水晶体嚢及び後部水晶体嚢の機械的特性における年齢に関連する変化は、後部水晶体嚢の機械的強度が年齢と共に相当に減少することを示唆する(例えば、Krag et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.44(2003)691-696;Krag et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.38(1997)357-363を参照されたい)。
【0168】
嚢の薄層状構造はまた変化し、少なくとも部分的に、組織の組成における変化に起因し得る(例えば、Krag et al.,1997、上述、及びその中で引用されている参照文献を参照されたい)。水晶体嚢の主要な構造的構成要素は、三次元の分子ネットワークへと組織化される基底膜IV型コラーゲンである(例えば、Cummings et al.,Connect.Tissue Res.55(2014)8-12;Veis et al.,Coll.Relat.Res.1(1981)269-286を参照されたい)。IV型コラーゲンは、それぞれが、□112、□345、又は□556の特定の鎖の組合せを含むヘテロ三量体のコラーゲンIVプロトマーへと会合する6つの相同な□鎖(□1-6)から構成される(例えば、Khoshnoodi et al.,Microsc.Res.Tech.71(2008)357-370を参照されたい)。プロトマーは、非コラーゲン性1(NC1)ドメインと称される球状C末端領域で終端する、Gly-X-Yのトリプレットペプチド配列を有する三重らせんコラーゲン性ドメインの構造的類似性を共有する(Timpl et al.,Eur.J.Biochem.95(1979)255-263)。N末端は、7Sドメインと称されるらせんドメインから構成され(例えば、Risteli et al.,Eur.J.Biochem.108(1980)239-250を参照されたい)、これはまたプロトマー-プロトマー相互作用において関与する。
【0169】
コラーゲンIVは、上皮層の下の基底膜の位置付けから推察される細胞機能に影響を与え、組織安定化におけるコラーゲンIVの役割をデータは支持するすることを研究は示唆してきた(例えば、Cummingsら、上述を参照されたい)。後部嚢混濁(PCO)は、白内障手術の後の後年において患者の概ね20~40%において合併症として発生する(例えば、Awasthi et al.,Arch.Ophthalmol.127(2009)555-562を参照されたい)。PCOは、創傷治癒と同種の応答において後部嚢に沿った残留する水晶体上皮細胞の増殖及び活性に起因する。成長因子、例えば、線維芽細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子-□、上皮成長因子、肝細胞成長因子、インスリン様成長因子、並びにインターロイキンIL-1及びIL-6はまた、上皮細胞移動を促進し得る(例えば、Awasthiら、上述;Rajら、上述を参照されたい)。本明細書で考察するように、これらの因子、及び老化細胞によるサイトカインの産生は、SASPに寄与する。対照的に、in vitroでの研究は、コラーゲンIVが水晶体上皮細胞の接着を促進することを示す(例えば、Olivero et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.34(1993)2825-2834を参照されたい)。眼内水晶体へのコラーゲンIV、フィブロネクチン、及びラミニンの接着は、細胞移動を阻害し、PCOの危険性を低減し得る(例えば、Raj et al,Int.J.Biomed.Sci.3(2007)237-250を参照されたい)。
【0170】
任意の特定な理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載されている老化細胞除去剤による老化細胞の選択的死滅は、IV型コラーゲンネットワークの組織崩壊を減速又は妨害(遅延、阻害、遅延)し得る。老化細胞の除去、したがって、SASPの炎症性効果を除去することは、上皮細胞移動を減少若しくは阻害し得、また老視の開始を遅延(抑制)するか、又は状態の進行的な重症度を減少若しくは減速し得る(例えば、軽度から中等度への又は中等度から重度への発展を減速する)。本明細書に記載されている老化細胞除去剤はまた、PCOの出現の可能性を低減させる白内障手術後のために有用であり得る。
【0171】
白内障の発生について細胞の老化の関与についての直接証拠はヒト研究から得られてこなかった一方で、BubR1矮小体型マウスは、後嚢下白内障を若年期に両側的に発生し、これは老化が役割を果たし得ることを示唆する(例えば、Baker et al.,Nat.Cell Biol.10(2008)825-836を参照されたい)。白内障は目の水晶体の混濁であり、かすみ目をもたらし、未処置のままである場合、失明をもたらし得る。手術は有効であり、白内障を除去するために日常的に実施される。本明細書に記載されている老化細胞除去剤の1つ若しくは複数の投与は、白内障の出現の可能性の減少をもたらし得るか、又は白内障の進行を減速若しくは阻害し得る。白内障の存在及び重症度は、眼科の技術分野における当業者が日常的に実施する方法を使用して、目の検査によってモニターすることができる。
【0172】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されている少なくとも1種の老化細胞除去剤は、老視、白内障、又は黄斑変性症を発生する危険性のある対象に投与し得る。ヒト対象が少なくとも40歳であるとき、老化細胞除去剤による処置を開始して、白内障、老視、及び黄斑変性症の開始又は発生を遅延又は阻害し得る。殆ど全てのヒトは老視を発生するため、ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、対象が40歳に達した後で、本明細書に記載のような様式でヒト対象に投与し、老視の開始又は発生を遅延又は阻害し得る。
【0173】
ある特定の実施形態では、老化と関連性のある疾患若しくは障害は、緑内障である。緑内障は、他の優勢な症状を伴わないことが多い、視野喪失をもたらす疾患の群を説明するために使用される広範な用語である。症状がないことは、疾患の末期段階まで緑内障の診断に遅延をもたらすことが多い。緑内障を患っている対象がたとえ盲目とならなくても、それらの視覚は激しく損なわれることが多い。通常、透明な液体が、前眼房として知られている目の前部分を流入及び流出する。広隅角緑内障を有する個人において、この液体はゆっくりと排出され、目内の圧力の増加をもたらす。未処置のままである場合、この高い圧力は視神経をその後に損傷し、完全な失明をもたらし得る。周辺視覚の喪失は、網膜における神経節細胞の死亡に起因する。神経節細胞は、目と脳を接続する特定のタイプの投射ニューロンである。液体の排出のために必要とされる細胞のネットワークがSA-□-Gal染色に供されたとき、老化の4倍の増加が緑内障患者において観察された(例えば、Liton et al.,Exp.Gerontol.40(2005)745-748を参照されたい)。
【0174】
緑内障の進行を阻害することに対する治療の効果をモニターするために、標準的な自動視野測定(視野検査)は、最も広範に使用される技術である。さらに、進行検出のためのいくつかのアルゴリズムが開発されてきた(例えば、Wesselink et al.,Arch.Ophthalmol.127(3)(2009)270-274、及びその中の参照文献を参照されたい)。さらなる方法は、隅角鏡検査(小柱網及び液体が目から排出される角度を検査する);イメージング技術、例えば、走査型レーザー断層撮影法(例えば、HRT3)、レーザー旋光分析(例えば、GDX)、及び目のコヒーレンス断層撮影法);検眼鏡検査;並びに角膜中央厚さを決定するパキメーター測定を含む。
【0175】
代謝性疾患若しくは障害
老化細胞除去剤を投与することによって処置可能な老化と関連性のある疾患若しくは障害は、代謝性疾患若しくは障害を含む。このような老化細胞と関連性のある疾患及び障害は、糖尿病、代謝症候群、糖尿病性潰瘍、及び肥満症を含む。
【0176】
糖尿病は、インスリン産生、インスリン作用、又は両方における欠陥によってもたらされる高レベルの血中グルコースによって特性決定される。成人における糖尿病の全ての診断された症例の大多数(90~95%)は、膵臓によるインスリン産生の段階的な喪失によって特性決定される2型糖尿病である。糖尿病は、腎臓の不全、非外傷性の下肢の切断、及び米国の成人における失明の新規症例の主要原因である。糖尿病は心疾患及び脳卒中の主な原因であり、米国における7番目の主要な死因である(例えば、Centers for Disease Control and Prevention,National diabetes fact sheet:national estimates and general information on diabetes and pre-diabetes in the United States,2011(「糖尿病ファクトシート」)を参照されたい)。本明細書に記載されている老化細胞除去剤は、2型糖尿病、特に、年齢、食事及び肥満と関連性のある2型糖尿病を処置するために使用し得る。
【0177】
代謝性疾患、例えば、肥満症及び2型糖尿病における老化細胞の関与は、傷害又は代謝機能不全への応答として示唆されてきた(例えば、Tchkonia et al.,Aging Cell 9(2010)667-684を参照されたい)。肥満マウスからの脂肪組織は、老化マーカーSA-□-Gal、p53、及びp21の誘導を示した(例えば、Tchkonia et al.、上述;Minamino et al.,Nat.Med.15(2009)1082-1087を参照されたい)。炎症促進性サイトカイン、例えば、腫瘍壊死因子-□□及びCcl2/MCPlの同時のアップレギュレーションは、同じ脂肪組織において観察された(例えば、Minaminoら、上述を参照されたい)。炎症促進性SASP構成要素はまた2型糖尿病の一因となることが示唆されるため、肥満症における老化細胞の誘導は潜在的に臨床上の意義を有する(例えば、Tchkoniaら、上述を参照されたい)。老化マーカー及びSASP構成要素のアップレギュレーションの同様のパターンは、マウス及びヒトの両方における糖尿病と関連性がある(例えば、Minaminoら、上述を参照されたい)。したがって、老化細胞除去剤を投与することを含む本明細書に記載の方法は、2型糖尿病、並びに肥満症及び代謝症候群の処置又は予防法のために有用であり得る。理論に束縛されるものではないが、老化細胞除去剤との老化脂肪前駆細胞の接触、それによって、老化した前脂肪細胞を死滅させることは、糖尿病、肥満症、又は代謝症候群のいずれか1つを有する人への臨床上及び健康上の利益を提供し得る。
【0178】
2型糖尿病を患っている対象は、2型糖尿病についての当技術分野において公知の標準的な診断方法を使用して同定することができる。一般に、2型糖尿病の診断は、患者の症状(例えば、口渇の増加及び頻尿、空腹感の増加、体重減少、疲労、かすみ目、ゆっくりと治癒する痛み若しくは頻繁な感染、及び/又は黒っぽくなった皮膚の領域)、病歴、及び/又は身体検査に基づく。2型糖尿病を発生する危険性のある対象は、2型糖尿病の家族歴を有するもの、並びに他の危険因子、例えば、過剰な体重、脂肪分布、不活動、人種、年齢、糖尿病前症、及び/又は妊娠糖尿病を有するものを含む。
【0179】
老化細胞除去剤の有効性は、医学及び臨床の技術分野における当業者が容易に決定することができる。身体検査、臨床症状のアセスメント及びモニタリング、並びに分析試験及び方法の実行、例えば、本明細書に記載されているものを含めた診断法の1つ又は任意の組合せは、対象の健康状態のモニタリングのために使用し得る。糖尿病の処置又は予防法のために本明細書に記載されている1種若しくは複数の老化細胞除去剤を受けている対象は、例えば、グルコース及びインスリン耐性、エネルギー消費、体組成、脂肪組織、骨格筋、肝炎、並びに/又は脂肪毒性(in vivoでのイメージングによる筋肉及び肝臓脂質、並びに組織診断による筋肉、肝臓、骨髄、及び膵臓の□-細胞の脂質集積及び炎症)をアッセイすることによってモニターすることができる。2型糖尿病の他の特徴的な特色又は表現型は公知であり、本明細書に記載のように、当技術分野で公知であり、日常的に実行されている他の方法及び技術を使用することによってアッセイすることができる。
【0180】
肥満症及び肥満症に関連する障害は、測定可能な程度に身長及び体格に理想的であるもの超であるボディマスを有する対象の状態を指すために使用される。肥満度指数(BMI)は、過剰な体重を決定するために使用される測定ツールであり、対象の身長及び体重から計算される。ヒトは、25~29のBMIを有するとき、過体重であると考えられる;人は、30~39のBMIを有するとき、肥満であると考えられ、人は、>40のBMIを有するとき、重度に肥満であると考えられる。したがって、肥満症及び肥満症関連という単語は、30超、35超、又は40超の肥満度指数値を有するヒト対象を指す。BMIによって捕捉されない肥満症のカテゴリーは、当技術分野で「腹部肥満」と称され、これは対象の胴周りの余分な脂肪に関連しており、これは、BMIから独立して、健康における重要な因子である。腹部肥満の最も単純及び最も頻繁に使用される尺度は、ウエストサイズである。一般に、女性における腹部肥満はウエストサイズ35インチ若しくはそれ超として定義され、男性において40インチ若しくはそれ超のウエストサイズとして定義される。肥満症を決定するためのより複雑な方法は、特化した設備、例えば、磁気共鳴イメージング又は二重エネルギーX線吸収測定法機器を必要とする。
【0181】
糖尿病及び老化と関連性のある状態又は障害は、糖尿病性潰瘍(すなわち、糖尿病性創傷)である。潰瘍は、皮膚の崩壊であり、これは皮下組織又はそれどころか筋肉若しくは骨を巻き込むことまで及び得る。これらの病変は、特に、下肢に起こる。糖尿病性静脈潰瘍を有する患者は、慢性創傷の部位において細胞の老化の高められた存在を示す(例えば、Stanley et al.,J.Vas.Surg.33(2001)1206-1211を参照されたい)。慢性炎症はまた、慢性創傷、例えば、糖尿病性潰瘍の部位において観察され(例えば、Goren et al.,Am.J.Pathol.168(2006)65-77を参照されたい)、これは、老化細胞の炎症促進性サイトカイン表現型が病態において役割を有することを示唆する。
【0182】
2型糖尿病を有するか、又は2型糖尿病を発生する危険性がある対象は、代謝症候群を有し得る。ヒトにおける代謝症候群は典型的には肥満症と関連性があり、心血管疾患、肝脂肪症、高脂血症、糖尿病、及びインスリン抵抗性の1つ若しくは複数によって特性決定される。代謝症候群を有する対象は、例えば、高血圧症、2型糖尿病、高脂血症、異脂肪血症(例えば、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症)、インスリン抵抗性、肝脂肪症(脂肪性肝炎)、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、及び他の代謝性障害の1つ若しくは複数を含み得る、代謝性障害又は異常のクラスターを示し得る。
【0183】
腎機能障害
腎臓の病態、例えば、糸球体疾患は高齢者において生じ、本明細書に記載されている老化細胞除去化合物を投与することによって処置し得る。糸球体腎炎は、腎臓の炎症、並びに2つのタンパク質、IL1□及びIL1□の発現によって特性決定される(例えば、Niemir et al.,Kidney Int.52(1997)393-403を参照されたい)。IL1□及びIL1□は、SASPのマスター調節物質であると考えられる(例えば、Coppe et al.,PLoS.Biol.6(2008)2853-2868を参照されたい)。糸球体疾患は、特に線維性腎臓における老化細胞の存在の上昇と関連性がある(例えば、Sis et al.,Kidney Int.71(2007)218-226を参照されたい)。
【0184】
皮膚疾患若しくは障害
本明細書に記載されている老化細胞除去剤を投与することによって処置可能である老化と関連性のある疾患若しくは障害は、皮膚疾患若しくは障害を含む。このような老化細胞と関連性のある疾患及び障害は、乾癬及び湿疹を含み、これらはまた炎症性疾患であり、上記でより詳細に考察する。老化と関連性のある他の皮膚疾患及び障害は、しわ(加齢によるしわ);そう痒症(糖尿病及び加齢とリンクする);知覚異常(糖尿病及び多発性硬化症とリンクする化学療法副作用);乾癬(記載の通り)及び他の丘疹鱗屑性障害、例えば、紅皮症、扁平苔癬、及び苔癬状皮膚病;アトピー性皮膚炎(湿疹の一形態であり、炎症と関連性がある);湿疹性発疹(老齢の患者において観察されることが多く、ある特定の薬物の副作用とリンクする)を含む。老化と関連性のある他の皮膚疾患及び障害は、好酸球性皮膚病(ある特定の種類の血液がんとリンクする);反応性好中球性皮膚病(根底にある疾患、例えば、炎症性腸症候群と関連性がある);天疱瘡(自己抗体がデスモグレインに対して形成される自己免疫疾患);類天疱瘡及び他の免疫性水疱性皮膚病(皮膚の自己免疫性水疱形成);皮膚の線維組織球増殖(加齢とリンクする);並びに高齢の集団においてより一般である皮膚リンパ腫を含む。本明細書に記載の方法によって処置可能であり得る別の皮膚疾患は、エリテマトーデスの症状である皮膚ループスを含む。晩期発症型ループスは、加齢と関連性のあるT細胞及びB細胞及びサイトカイン(免疫老化)の減少した(すなわち、低減した)機能とリンクし得る。
【0185】
転移
一部の実施形態では、転移である、老化細胞と関連性のある疾患(又は障害若しくは状態)を処置又は予防する(すなわち、その出現又は発生の可能性を低減させる)ための方法を提供する。本明細書に記載されている老化細胞除去剤はまた、体内の1つの器官又は組織から別の器官又は組織への転移(すなわち、がん又は腫瘍細胞の伝播及び転移)を処置又は予防する(すなわち、その出現の可能性を低減させる)ための本明細書に記載の方法によって使用し得る。
【0186】
老化細胞に関連する疾患若しくは障害は転移を含み、がんを有する対象は、転移を阻害するための本明細書に記載のような老化細胞除去剤の投与から恩恵を受け得る。このような老化細胞除去剤は、本明細書に記載の方法によってがんを有する対象に投与されるとき、腫瘍増殖を阻害し得る。がんの転移は、がん細胞(すなわち、腫瘍細胞)が解剖学的出現位置及び対象の体全体に亘る他の領域への最初のコロニー形成を超えて広がるときに起こる。腫瘍増殖は、腫瘍サイズによって決定し得、これは当業者が精通している様々な方法で、例えば、PETスキャニング、MRI、CATスキャン、組織診によって測定することができる。腫瘍増殖に対する治療剤の効果はまた、腫瘍細胞の分化を検査することによって評価し得る。
【0187】
本明細書において及び当技術分野で使用されるように、がん又は腫瘍という用語は、典型的には異常な細胞増殖を示す細胞によって特性決定される疾患を包含する臨床的記述用語である。がんという用語は一般に、悪性腫瘍、又は腫瘍から生じる病態を説明するために使用される。代わりに、異常な成長は、当技術分野で新生物と称し得る。例えば、組織に関して腫瘍という用語は一般に、少なくとも部分的に過剰及び異常な細胞増殖によって特性決定される任意の異常な組織成長を指す。腫瘍は、転移性であり得、その解剖学的出現位置及び対象の体全体に亘る他の領域への最初のコロニー形成を超えて広がることができる。がんは、固形腫瘍を含み得るか、又は「液体」腫瘍(例えば、白血病及び他の血液がん)を含み得る。
【0188】
細胞は、がん療法、例えば、放射線及びある特定の化学療法の薬剤によって老化を誘導される。老化細胞の存在は、炎症性分子の分泌を増加させ、腫瘍進行を促進させ、これは、腫瘍成長を促進すること、及び腫瘍サイズを促進すること、転移を促進すること、及び分化を変化させることを含み得る。老化細胞が破壊されるとき、腫瘍進行は相当に阻害され、小さなサイズの僅かな転移性成長を伴うか、若しくは観察される転移性成長がない腫瘍がもたらされる(例えば、国際出願国際公開第2013/090645号パンフレットを参照されたい)。
【0189】
一部の実施形態では、本明細書に記載のような老化細胞除去剤を投与することによって、がんを有する対象において転移を予防する(すなわち、その出現の可能性を低減させる)か、阻害するか、又は遅延させるための方法を提供する。他の実施形態では、老化細胞除去剤は、7日以下又は14日以下の処置可能時間(すなわち、処置コース)以内の1日若しくは複数日に投与される。また他の実施形態では、処置コースは、2日以下、3日以下、4日以下、5日以下、6日以下、7日以下、8日以下、9日以下、10日以下、11日以下、12日以下、13日以下、14日以下、15日以下、16日以下、17日以下、18日以下、19日以下、20日以下、又は21日以下である。また他の実施形態では、処置コースは、単一の日である。また他の実施形態では、老化細胞除去剤は、7日以下又は14日以下の処置可能時間以内で2日若しくはそれより多い日に投与される。
【0190】
細胞はがん療法、例えば、放射線及びある特定の化学療法の薬剤(例えば、ドキソルビシン;パクリタキセル;ゲムシタビン;ポマリドマイド;レナリドミド)によって老化を誘導され得るため、本明細書に記載されている老化細胞除去剤は、化学療法若しくは放射線療法の後で投与して、これらの老化細胞を死滅(又は死滅を促進)し得る。本明細書において考察され、当技術分野で理解されているように、例えば、老化関連分泌表現型(SASP)の存在によって示される老化の確立は、数日に亘り起こる;したがって、老化細胞除去剤を投与して、老化細胞を死滅させ、それによって、出現の可能性を低減させるか、又は転移の程度を低減させることは、老化が確立されたときに開始される。本明細書で考察するように、老化細胞除去剤の投与のための下記の処置コースは、化学療法若しくは放射線療法の副作用を処置又は予防する(すなわち、出現の可能性を低減させるか、又は重症度を低減させる)ための本明細書に記載されている方法において使用し得る。
【0191】
ある特定の実施形態では、化学療法若しくは放射線療法が、少なくとも1日の治療実行(すなわち、化学療法若しくは放射線療法))、それに続く、少なくとも3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日(若しくは約2週間)、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日(若しくは約3週間)、又は約4週間(約1カ月)の治療休止(すなわち、化学療法若しくは放射線療法休止)の処置サイクルで投与されるとき、老化細胞除去剤は、治療休止の時間間隔の2日目若しくはそれより後に開始し、治療休止の時間間隔の最終日若しくはそれより前に終了する、治療休止の時間間隔(期間)の間に1日若しくは複数日に投与される。説明に役立つ実例として、nが治療休止の日数である場合、老化細胞除去剤は、治療休止の時間間隔の少なくとも1日及びn-1日以下に投与される。一部の実施形態では、化学療法若しくは放射線療法が、少なくとも1日の治療実行(すなわち、化学療法若しくは放射線療法)、それに続く少なくとも1週間の治療休止の処置サイクルにおいて投与されるとき、老化細胞除去剤は、治療休止の時間間隔の2日目若しくはそれより後に開始し、治療休止の時間間隔の最終日若しくはそれより前に終了する、治療休止の時間間隔の間に1日若しくは複数日に投与される。
【0192】
化学療法は、化学療法、化学療法剤、又は化学療法薬と称し得る。多くの化学療法剤は、小有機分子と称される化合物である。化学療法は、特定のがんを処置するために投与される化学療法薬の組合せを説明するためにまた使用される用語である。当業者が理解するように、化学療法はまた、協調的に投与される2つ若しくはそれより多い化学療法分子の組合せを指し得、これは多剤併用化学療法と称し得る。多数の化学療法薬が腫瘍学の技術分野において使用され、これらに限定されないが、アルキル化剤;代謝拮抗剤;アントラサイクリン、植物アルカロイド;及びトポイソメラーゼ阻害剤が含まれる。
【0193】
転移し得るがんは、固形腫瘍であり得るか、又は液性腫瘍(例えば、血液がん、例えば、白血病)であり得る。液性腫瘍であるがんは、血液、骨髄、及びリンパ節において生じるものとして当技術分野で分類され、一般に、白血病(骨髄性及びリンパ球性)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫)、及び黒色腫(多発性骨髄腫を含めた)を含む。白血病は、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、及び有毛細胞白血病を含む。固形腫瘍であり、ヒトにおいてより頻繁に起こるがんには、例えば、前立腺がん、睾丸がん、乳がん、脳がん、膵臓がん、結腸がん、甲状腺がん、胃がん、肺がん、卵巣がん、カポジ肉腫、皮膚がん(扁平上皮細胞皮膚がんを含めた)、腎臓がん、頭頸部がん、咽喉がん、鼻、口、喉などの湿った粘膜内層上に形成される扁平上皮癌、膀胱がん、骨肉腫(骨がん)、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、肝臓がん、及び腎臓がんが含まれる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法によって処置又は予防する(すなわち、出現又は発生の可能性が低減する)老化細胞に関連する疾患若しくは障害は、黒色腫細胞、前立腺がん細胞、睾丸がん細胞、乳がん細胞、脳がん細胞、膵臓がん細胞、結腸がん細胞、甲状腺がん細胞、胃がん細胞、肺がん細胞、卵巣がん細胞、カポジ肉腫細胞、皮膚がん細胞、腎臓がん細胞、頭頸部がん細胞、咽喉がん細胞、扁平上皮癌細胞、膀胱がん細胞、骨肉腫細胞、子宮頸がん細胞、子宮内膜がん細胞、食道がん細胞、肝臓がん細胞、又は腎臓がん細胞の転移である。
【0194】
本明細書に記載の方法はまた、医学の技術分野において説明されているタイプの腫瘍の任意の1つの転移性がんの進行を阻害、遅延又は減速するのに有用である。がん(腫瘍)のタイプは、下記:副腎皮質癌、小児副腎皮質癌、エイズ関連がん、肛門がん、虫垂がん、基底細胞癌、小児基底細胞癌、膀胱がん、小児膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、小児星状細胞腫、小児脳幹神経膠腫、小児中枢神経系非定型奇形/ラブドイド腫瘍、小児中枢神経系胚芽腫、小児中枢神経系生殖細胞腫瘍、小児頭蓋咽頭腫脳腫瘍、小児上衣腫脳腫瘍、乳がん、小児気管支腫瘍、カルチノイド腫瘍、小児カルチノイド腫瘍、胃腸カルチノイド腫瘍、原発不明癌腫、原発不明小児癌腫、小児心臓性(心臓)腫瘍、子宮頸がん、小児子宮頸がん、小児脊索腫、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、結腸直腸がん、小児結腸直腸がん、肝外胆管がん、上皮内腺管癌(DCIS)、子宮内膜がん、食道がん、小児食道がん、小児感覚神経芽細胞腫、眼のがん、骨の悪性線維性組織球腫、胆嚢がん、胃の(胃)がん、小児胃の(胃)がん、胃腸間質腫瘍(GIST)、小児胃腸間質腫瘍(GIST)、小児頭蓋外生殖細胞腫瘍、性腺外生殖細胞腫瘍、妊娠性トロホブラスト腫瘍、神経膠腫、頭頸部がん、小児頭頸部がん、肝細胞(肝臓)がん、下咽頭がん、腎臓がん、腎細胞腎臓がん、ウィルムス腫瘍、小児腎臓腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、小児喉頭がん、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、口唇がん、肝臓がん(原発性)、小児肝臓がん(原発性)、上皮内小葉癌(LCIS)、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、リンパ腫、エイズ関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系原発リンパ腫(CNS)、黒色腫、小児黒色腫、眼球内(目)黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、小児悪性中皮腫、原発不明の転移性扁平上皮頸部がん、NUT遺伝子が関与する正中管癌、口腔がん、小児多発性内分泌腺腫瘍症候群、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成新生物、骨髄増殖性新生物、多発性骨髄腫、鼻腔がん、上咽頭がん、小児上咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔がん、小児口腔がん、中咽頭がん、卵巣がん、小児卵巣がん、上皮性卵巣がん、低悪性度腫瘍卵巣がん、膵臓がん、小児膵臓がん、膵臓神経内分泌腫瘍(島細胞腫瘍)、小児乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞新生物、小児胸膜肺芽腫、前立腺がん、直腸がん、腎盂移行細胞がん、網膜芽細胞腫、唾液腺がん、小児唾液腺がん、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、カポジ肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、小児横紋筋肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、小児皮膚がん、非メラノーマ皮膚がん、小腸がん、扁平上皮細胞癌、小児扁平上皮細胞癌、睾丸がん、小児睾丸がん、咽喉がん、胸腺腫及び胸腺癌、小児胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺がん、小児甲状腺がん、尿管移行細胞がん、尿道がん、子宮内膜子宮がん、腟がん、外陰部がん、及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む。
【0195】
化学療法及び放射線療法の副作用
他の実施形態では、老化細胞と関連性のある障害若しくは状態は、化学療法の副作用又は放射線療法の副作用である。非がん細胞が老化することを誘導する化学療法剤の例は、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン);タキソール(例えば、パクリタキセル);ゲムシタビン;ポマリドマイド;及びレナリドミドを含む。本明細書に記載のように投与される老化細胞除去剤の1つ若しくは複数は、化学療法の副作用又は放射線療法の副作用を処置及び/又は予防する(すなわち、その可能性又は出現を低減させる)ために使用し得る。老化細胞の除去又は破壊は、化学療法若しくは放射線療法のエネルギーの不均衡を含む急性毒性を含めた急性毒性を回復し得る。急性毒性の副作用には、これらに限定されないが、胃腸毒性(例えば、悪心、嘔吐、便秘、食欲不振、下痢)、末梢性ニューロパチー、疲労、倦怠感、低い身体活動、血液毒性(例えば、貧血)、肝細胞毒性、脱毛症(脱毛)、疼痛、感染症、粘膜炎、体液うっ滞、皮膚毒性(例えば、発疹、皮膚炎、色素沈着過剰、じんま疹、光感受性、爪の変化)、口(例えば、口腔粘膜炎)、歯ぐき若しくはのどの問題、又は化学療法若しくは放射線療法によってもたらされる任意の毒性の副作用が含まれる。例えば、放射線療法又は化学療法によってもたらされる毒性の副作用は、本明細書に記載の方法によって回復し得る。したがって、ある特定の実施形態では、治療を受けている対象における、急性毒性を回復させる(出現を低減、阻害、若しくは予防する(すなわち、出現の可能性を低減させる))か、又は化学療法若しくは放射線療法若しくは両方の毒性の副作用(すなわち、有害な副作用)の重症度を低減させるための方法を本明細書において提供し、ここで、方法は、対象に、老化細胞を選択的に死滅させるか、除去するか、又は破壊するか、又はその選択的破壊を促進する薬剤を投与することを含む。化学療法若しくは放射線療法の副作用を処置するか、又は出現の可能性を低減させるか、又はその重症度を低減させるための本明細書に記載されている老化細胞除去剤の投与は、転移の処置/予防のための上記の同じ処置コースによって達成し得る。転移を処置又は予防する(すなわち、その出現の可能性を低減させる)ために説明されているように、老化細胞除去剤は、化学療法休止若しくは放射線療法休止の時間間隔の間に、又は化学療法若しくは放射線療法の処置レジメンが完了した後に投与される。
【0196】
より特定の実施形態では、急性毒性は、エネルギーの不均衡を含む急性毒性であり、体重減少、内分泌変化(例えば、ホルモンの不均衡、ホルモンシグナル伝達の変化)、及び体組成の変化の1つ若しくは複数を含み得る。ある特定の実施形態では、エネルギーの不均衡を含む急性毒性は、エネルギーの消費の減少又は減退によって示されるように、薬物療法を受けなかった対象において観察されるより、対象が身体的に活発である能力の減少又は低減を指す。非限定的例として、エネルギーの不均衡を含むこのような急性毒性効果は、低い身体活動を含む。他の実施形態では、エネルギーの不均衡は、疲労又は倦怠感を含む。
【0197】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている老化細胞除去剤によって処置又は予防する(すなわち、出現の可能性が低減する)化学療法の副作用は、心毒性である。アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン)で処置されているがんを有する対象は、アントラサイクリンの心毒性を低減、回復、又は減少させる本明細書に記載されている1種若しくは複数の老化細胞除去剤で処置し得る。医学の技術分野においてよく理解されているように、アントラサイクリンと関連性のある心毒性によって、対象が受けることができる最大の生涯用量は、たとえがんが薬物に対して応答性であっても制限される。老化細胞除去剤の1つ若しくは複数の投与は心毒性を低減し得、さらなる量のアントラサイクリンを対象に投与することができ、がん疾患に関連する改善された予後がもたらされる。一部の実施形態では、心毒性は、アントラサイクリン、例えば、ドキソルビシンの投与に起因する。ドキソルビシンは、白金ベース治療の失敗の後の卵巣がん;一次全身性化学療法の失敗若しくは治療への不耐性の後のカポジ肉腫;又はボルテゾミブを従前に受けていないか、若しくは少なくとも1回の従前の治療を受けた患者におけるボルテゾミブと組み合わせた多発性骨髄腫を有する患者を処置するために承認されているアントラサイクリントポイソメラーゼ阻害剤である。患者への総生涯用量が550mg/m2を超える場合、ドキソルビシンは心筋損傷をもたらし得、これはうっ血性心不全を引き起こし得る。患者がまた縦隔放射線照射又は別の心毒性薬物を受けている場合、心毒性はより低い用量においてでさえ起こり得る。
【0198】
他の実施形態では、本明細書に記載されている老化細胞除去剤は、慢性又は長期の副作用を回復させるために、本明細書において提供するような方法において使用し得る。慢性毒性の副作用は典型的には、より長期間に亘る化学療法若しくは放射線療法への複数の曝露又は投与からもたらされる。特定の毒性効果は処置のずっと後に出現し(遅発性毒性効果とまた称される)、治療による器官又は系への損傷からもたらされる。臓器機能障害(例えば、神経、肺、心血管、及び内分泌の機能障害)は、小児期の間にがんについて処置された患者において観察されてきた(例えば、Hudson et al.,JAMA 309 92013)2371-2381を参照されたい)。任意の特定な理論に束縛されるものではないが、老化細胞、特に、化学療法若しくは放射線療法によって老化へと誘導されてきた正常細胞を破壊することによって、慢性副作用の出現の可能性は低減し得るか、又は慢性副作用の重症度は低減若しくは減退し得るか、又は慢性副作用の開始の時間は遅延させ得る。化学療法若しくは放射線療法を受けた対象において起こる慢性及び/又は遅発性の毒性副作用は、非限定的例として、心筋症、うっ血性心疾患、炎症、早期閉経、骨粗鬆症、不妊、認知機能障害、末梢性ニューロパチー、二次がん、白内障及び他の視覚の問題、聴力損失、慢性疲労、肺気量の低減、及び肺疾患を含む。
【0199】
さらに、老化細胞除去剤を投与することによって、がんを有する対象における老化細胞を死滅又は除去することによって、化学療法若しくは放射線療法に対する感受性は、老化細胞除去剤が投与されない場合より、臨床的に又は統計的に有意な様式で増進し得る。言い換えると、老化細胞除去剤がそれぞれ化学療法若しくは放射線療法で処置された対象に投与されるとき、化学療法若しくは放射線療法耐性の発生は阻害し得る。
【0200】
年齢に関連する疾患及び障害
本明細書に記載されている老化細胞除去剤は、老化細胞を選択的に死滅させる。このようにして、加齢の過程において老化細胞を標的とすることは、予防的戦略であり得る。したがって、対象への本明細書に記載されている老化細胞除去剤の投与は、高齢の対象において共存疾患を予防し、死亡を遅延し得る。さらに、老化細胞の選択的死滅は、対象において免疫系をブーストし、健康寿命を延長し、生活の質を改善させ得る。
【0201】
老化細胞除去剤はまた、自然な加齢過程の部分として起こるか、又は対象が老化誘導剤又は因子(例えば、照射、化学療法、タバコの喫煙、脂肪の多い/糖分の多い食事、他の環境因子)に曝露されたときに起こる、年齢に関連する疾患若しくは障害を処置又は予防する(すなわち、出現の可能性を低減させる)のに有用であり得る。年齢に関連する障害若しくは疾患、また年齢感受性の特質は、老化誘導刺激と関連し得る。本明細書に記載されている処置の方法の有効性は、老化誘導刺激と関連性のある年齢に関連する障害もしく年齢感受性の特質の症状の数を低減させるか、1つ若しくは複数の症状の重症度を減少させるか、又は老化誘導刺激と関連性のある年齢に関連する障害もしく年齢感受性の特質の進行を遅延させることによって顕性化し得る。他の実施形態では、老化誘導刺激と関連性のある年齢に関連する障害もしく年齢感受性の特質を予防することは、老化誘導刺激と関連性のある年齢に関連する障害もしく年齢感受性の特質の開始、又は1つ若しくは複数の老化誘導刺激と関連性のある年齢に関連する障害もしく年齢感受性の特質の再出現を予防(すなわち、出現の可能性を低減)又は遅延させることを指す。年齢に関連する疾患若しくは状態は、例えば、腎機能障害、脊柱後弯症、椎間板ヘルニア、虚弱、脱毛、聴力損失、失明(失明又は視覚障害)、筋肉疲労、皮膚状態、皮膚母斑、糖尿病、代謝症候群、及びサルコペニアを含む。失明は、対象が従前に視覚を有したとき、視覚がないことを指す。視力に基づいた視覚の程度及び失明を説明するために様々なスケールが開発されてきている。年齢に関連する疾患及び状態はまた、皮膚科学的状態、例えば、これらに限定されないが、下記の状態:表面の縮緬しわを含めたしわ;色素沈着過剰;瘢痕;ケロイド;皮膚炎;乾癬;湿疹(脂漏性湿疹を含めた);酒さ;白斑;尋常性魚鱗癬;皮膚筋炎;及び光線性角化症の1つ若しくは複数を処置することを含む。虚弱は、毎日又は急性ストレス要因に対処する対象の能力を損なう複数の生理学系に亘る余力及び機能における加齢と関連性のある低下からもたらされる、脆弱性の増加の臨床的に認識可能な状態であると定義されてきた。虚弱は、損なわれたエネルギー特徴、例えば、低握力、低エネルギー、ゆっくりとした歩行速度、低い身体活動、及び/又は意図していない重量減少によって特性決定し得る。5つの上記の特徴のうちの3つが観察されるとき、患者は虚弱と診断し得ることを研究は示唆してきた(例えば、Fried et al.,J.Gerontol.A Biol.Sci.Med,Sci.56(3)(2001)M146-M156;Xue,Clin.Geriatr.Med.27(1)(2001)1-15を参照されたい)。ある特定の実施形態では、加齢、並びに加齢と関連している疾患及び障害は、老化細胞除去剤を投与することによって処置又は予防(すなわち、その出現の可能性を低減)し得る。老化細胞除去剤は、成体幹細胞の老化を阻害するか、又は蓄積を阻害し、老化した成体幹細胞を死滅させるか、若しくはその除去を促進し得る。組織の再生能を維持するために幹細胞における老化を防止する重要性は、例えば、Park et al.,J.Clin.Invest.113(2004)175-179;及びSousa-Victor,Nature 506(2014)316-321において考察されている。
【0202】
加齢を測定する方法は、当技術分野において公知である。例えば、加齢は、偶発的非脊椎骨折、偶発的股関節骨折、偶発的総骨折、偶発的脊椎骨折、偶発的繰り返し骨折、骨折の後の機能回復、腰椎及び臀部における骨塩密度の減少、膝折れの割合、NSAIDの使用、疼痛を有する関節の数、及び骨関節炎によって、骨において測定し得る。加齢はまた、機能の低下、転倒の割合、反応時間及び握力、上肢及び下肢における筋肉量の減少、並びに二重課題10メートル歩行スピードによって、筋肉において測定し得る。さらに、加齢は、収縮期及び拡張期血圧の変化、偶発的高血圧症、主要な心血管事象、例えば、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心疾患、及び心血管死亡率によって、心血管系において測定し得る。さらに、加齢は、認知低下、偶発的うつ、及び偶発的認知症によって、脳において測定し得る。また、加齢は、感染症の割合、上気道感染症の割合、インフルエンザ様疾病の割合、入院をもたらす偶発的重症感染症、偶発的がん、インプラント感染の割合、及び胃腸感染症の割合によって、免疫系において測定し得る。加齢の他の徴候には、これらに限定されないが、口腔保健の低下、歯を失うこと、GI症状の割合、空腹時グルコース及び/又はインスリン値の変化、体組成、腎臓機能の低下、生活の質、日常生活の活動に関する偶発的能力障害、及び偶発的養護施設への入所が含まれ得る。皮膚老化を測定する方法は当技術分野において公知であり、経皮水分蒸散量(TEWL)、皮膚保湿、皮膚の弾力、目尻のしわの面積比分析、感受性、輝き、粗さ、しみ、弛緩、肌の色合いの均一性、柔らかさ、及び起伏(深さの変動)を含み得る。
【0203】
本明細書に記載されている老化細胞除去剤の投与は、対象が処置を受けていない場合の予想される生存と比較したとき、延長する生存を延長させることができる。処置を必要としている対象は、疾患若しくは障害を既に有しているもの、及び疾患若しくは障害を有しがちであるか、又は発生する危険性のある対象、及び疾患、状態、又は障害が予防的に処置されるものを含む。対象は、老化細胞の排除から利益を得る、疾患若しくは障害を発生する遺伝的素因を有し得るか、又はある特定の年齢のものであり得、ここで老化細胞除去剤を受けることは、年齢に関連する疾患若しくは障害を含めた疾患の発生を遅延させるか、又はその重症度を低減させる臨床上の利益を提供する。
【0204】
他の実施形態では、本明細書に記載されている老化細胞除去剤による処置から利益を得る対象を同定すること(すなわち、表現パターンの検査;個別化処置)をさらに含む、老化と関連性のある疾患若しくは障害を処置するための方法を提供する。この方法は、例えば、対象の特定の器官又は組織における、対象における老化細胞のレベルを最初に検出することを含む。生体試料は、対象、例えば、対象からの血液試料、血清又は血漿試料、組織診標本、体液(例えば、肺洗浄液、腹水、粘膜洗浄液、滑液、硝子体液、脊髄液)、骨髄、リンパ節、組織外植片、器官培養物、又は任意の他の組織若しくは細胞調製物から得てもよい。老化細胞のレベルは、in vitroでの本明細書に記載されているアッセイ又は技術のいずれかによって決定し得る。例えば、老化細胞は、形態学(例えば、顕微鏡によって見るような);老化関連マーカー、例えば、老化関連□-ガラクトシダーゼ(SA-□-gal)、pl6INK4a、p21、PAI-1、又は任意の1つ若しくは複数のSASP因子(例えば、IL-6、MMP3)の産生によって検出し得る。生体試料の老化細胞及び非老化細胞はまた、in vitroでの細胞アッセイにおいて使用し得るが、ここで、細胞は、本明細書に記載されている老化細胞除去剤のいずれか1つに曝露され、非老化細胞に対する望ましくない毒性を伴わずに対象の老化細胞を死滅させる老化細胞除去剤の性能を決定する。さらに、老化細胞除去剤による処置の前、間、及び後に、これらの方法を使用して、対象における老化細胞のレベルをモニターし得る。ある特定の実施形態では、老化細胞の存在を検出し得(例えば、mRNAの老化細胞マーカー発現のレベルを決定することによって)、処置コース及び/又は非処置間隔は、それに応じて調節することができる。
【0205】
併用療法
本明細書において開示されている老化細胞除去剤及び組成物はまた、1種若しくは複数の他の活性成分と組み合わせて使用し得る。ある特定の実施形態では、化合物は、組み合わせて、又は逐次的に、別の治療剤と共に投与し得る。このような他の治療剤は、本明細書に記載されている1つ若しくは複数の症状又は障害の処置、予防、又は回復のために公知のものを含む。
【0206】
上記の治療剤の1つ若しくは複数、及び任意選択で1種若しくは複数のさらなる薬理学的活性物質との本明細書において提供する化合物及び医薬組成物の任意の適切な組合せは、本開示の範囲内であると考えられることを理解すべきである。一部の実施形態では、本明細書において提供する化合物及び医薬組成物は、1つ若しくは複数のさらなる活性成分の前に、又はそれに続いて投与される。
【0207】
医薬組成物及び投与の方法
本明細書においてまた提供するのは、本明細書に記載のような老化細胞除去剤、及び薬学的に適切な添加剤又は担体(すなわち、活性成分の活性と干渉しない無毒性材料)とまた称し得る少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物である。医薬組成物は、無菌の水性若しくは非水性溶液、懸濁液又は乳剤(例えば、マイクロエマルジョン)であり得る。本明細書に記載されている添加剤は例であり、決して限定的ではない。有効量又は治療的有効量は、望ましい治療効果を生じさせるのに有効な、単回用量として、又は一連の用量の部分として対象に投与される1種若しくは複数の老化細胞除去剤の量を指す。
【0208】
2種若しくはそれより多い老化細胞除去剤が本明細書に記載されている疾患若しくは障害の処置のために対象に投与されるとき、老化細胞除去剤のそれぞれは、別々の医薬組成物へと製剤化し得る。別々の医薬組成物のそれぞれを含む医薬調製物を調製し得る(これは便宜上、例えば、それぞれ、第1及び第2の老化細胞除去剤のそれぞれを含む第1の医薬組成物及び第2の医薬組成物と称し得る)。調製物中の医薬組成物のそれぞれは、同時に(すなわち、併行的に)及び同じ投与経路を介して投与し得るか、又は同じ若しくは異なる投与経路によって異なる時間において投与し得る。代わりに、2種若しくはそれより多い老化細胞除去剤は、単一の医薬組成物中で一緒に製剤化し得る。
【0209】
他の実施形態では、少なくとも1種の老化細胞除去剤、及びmTOR、NF-□B、又はPI3K経路の少なくとも1種の阻害剤の組合せを、それを必要とする対象に投与し得る。少なくとも1種の老化細胞除去剤、及びmTOR、NF-□B、又はPI3K経路の1つ若しくは複数の阻害剤が、老化細胞を選択的に死滅させるための本明細書に記載の方法において一緒に両方が使用されるとき、薬剤のそれぞれは、同じ医薬組成物中へと製剤化されるか、又は別々の医薬組成物中で製剤化し得る。別々の医薬組成物(便宜上、例えば、それぞれ、老化細胞除去剤、及びmTOR、NF-□B、又はPI3K経路の1つ若しくは複数の阻害剤のそれぞれを含む、第1の医薬組成物及び第2の医薬組成物と称し得る)のそれぞれを含む医薬調製物を調製し得る。調製物中の医薬組成物のそれぞれは、同時に及び同じ投与経路を介して投与し得るか、又は異なる時間において同じ若しくは異なる投与経路によって投与し得る。
【0210】
対象に投与された老化細胞除去剤(又は1種若しくは複数のその代謝物)の薬物動態は、対象からの生体液、例えば、血液、血液画分(例えば、血清)、及び/又は尿、及び/又は他の生体試料若しくは生物組織中の老化細胞除去剤のレベルを決定することによってモニターし得る。薬剤を検出するための当技術分野で実行されており、本明細書に記載されている任意の方法を使用して、処置コースの間の老化細胞除去剤のレベルを測定し得る。
【0211】
老化細胞と関連性のある疾患若しくは障害を処置するための本明細書に記載されている老化細胞除去剤の用量は、対象の状態、すなわち、疾患の段階、疾患によってもたらされる症状の重症度、身体全体の健康状態、並びに年齢、性別、及び体重、並びに医学の技術分野における当業者には明らかな他の因子によって決まり得る。医薬組成物は、医学の技術分野における当業者が決定するように、処置される疾患に適切である様式で投与し得る。老化と関連性のある疾患若しくは障害を処置するための老化細胞除去剤の使用に関係する本明細書及び上記に記載されている因子に加えて、老化細胞除去剤の適切な投与の期間及び頻度はまた、患者の状態、患者の疾患のタイプ及び重症度、活性成分の特定の形態、並びに投与方法などの因子によって決定又は調節し得る。薬剤の最適用量は一般に、実験モデル及び/又は臨床治験を使用して決定し得る。最適用量は、対象のボディマス、体重、又は血液容量によって決まり得る。有効な治療を実現するのに十分な最小用量の使用が通常好ましい。本明細書に記載されている老化細胞除去剤についての前臨床及び臨床研究の設計及び実行(予防的利益のために投与するときを含めた)は、関連性のある技術分野における当業者の技能の十分に範囲内である。老化と関連性のある疾患若しくは障害を処置するために2つ若しくはそれより多い老化細胞除去剤が投与されるとき、各老化細胞除去剤の最適用量は、いずれかの薬剤が、単一の薬剤治療として単独で投与されるときより異なり得、例えば、より少なくあり得る。ある特定の実施形態では、組み合わせた2つの老化細胞除去剤は、相乗的又は相加的に作用し、いずれかの薬剤は、単独で投与された場合よりより少ない量で使用し得る。1日当たり投与し得る老化細胞除去剤の量は、例えば、約0.01mg/kg~100mg/kg(例えば、約0.1~1mg/kg、約1~10mg/kg、約10~50mg/kg、約50~100mg/kg体重)であり得る。他の実施形態では、1日当たり投与し得る老化細胞除去剤の量は、約0.01mg/kg~1000mg/kg、約100~500mg/kg、又は約500~1000mg/kg体重である。最適用量(1日当たり又は処置コース当たり)は、処置される老化と関連性のある疾患若しくは障害について異なり得、また投与経路及び治療レジメンによって変動し得る。
【0212】
老化細胞除去剤を含む医薬組成物は、当技術分野で日常的に実行されている技術を使用することによって送達方法に適した様式で製剤化することができる。組成物は、固体(例えば、錠剤、カプセル剤)、半固体(例えば、ゲル剤)、液体、又は気体(エアゾール)の形態であり得る。他の特定の実施形態では、老化細胞除去剤(又はそれを含む医薬組成物)は、大量注入として投与される。ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤が注入によって送達されるとき、老化細胞除去剤は、日常的に実施されている技術によって医学の技術分野における当業者が、血管を介して死滅される老化細胞を含む器官又は組織に送達する。
【0213】
薬学的に許容される添加剤は製薬技術において周知であり、例えば、Rowe et al.,Handbook of Pharmaceutical Excipients:A Comprehensive Guide to Uses,Properties,and Safety,5th Ed.,2006、及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro,21st Ed.Mack Pub.Co.,Easton,Pa.(2005))に記載されている。例示的な薬学的に許容される添加剤は、無菌食塩水及び生理学的pHでのリン酸緩衝食塩水を含む。保存剤、安定剤、染料、緩衝液などを、医薬組成物中に提供し得る。さらに、抗酸化剤及び懸濁化剤をまた使用し得る。一般に、添加剤のタイプは、投与のモード、及び活性成分の化学組成に基づいて選択される。代わりに、本明細書に記載されている組成物は、凍結乾燥物として製剤化し得る。本明細書に記載されている組成物は、投与によって組成物の薬剤を可溶化及び/又は希釈するための1種若しくは複数の適当な添加剤溶液を使用して、凍結乾燥するか、又は凍結乾燥した生成物として他に製剤化し得る。他の実施形態では、薬剤は、当技術分野で公知であり、実行されている技術を使用してリポソーム内にカプセル化し得る。医薬組成物は、本明細書及び当技術分野で記載されている投与の任意の適当な様式のために製剤化し得る。
【0214】
医薬組成物は、当業者には公知であるいくつかの経路のいずれか1つによって、それを必要とする対象に送達し得る。非限定的例として、組成物は、経口的、静脈内、腹腔内、注入(例えば、大量注入)による、皮下、腸内、直腸、鼻腔内、吸入による、口腔内頬側、舌下、筋内、経皮的、皮内、局所的、眼球内、膣、直腸、若しくは頭蓋内注射による、又は任意のこれらの組合せによって送達し得る。ある特定の実施形態では、上記のような用量の投与は、静脈内、腹腔内、標的組織若しくは器官へと直接、又は皮下経路による。ある特定の実施形態では、送達方法は、薬物をコーティング又は浸透したステントを含み、薬物は老化細胞除去剤である。このような送達方法に適した製剤を、本明細書においてより詳細に記載する。
【0215】
ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤(少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤と合わせて、医薬組成物を形成し得る)は、疾患若しくは障害の顕在化に寄与する老化細胞を含む標的組織又は器官に直接投与される。特定の実施形態では、骨関節炎を処置するとき、少なくとも1種の老化細胞除去剤は、それを必要とする対象の骨関節炎の関節(すなわち、関節内)に直接投与される。他の特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、局所、経皮的、皮内、又は皮下経路によって関節に投与し得る。他のある特定の実施形態では、動脈へと直接投与することによって、動脈硬化症、例えば、アテローム性動脈硬化症と関連性のある心血管疾患若しくは障害を処置するための方法を本明細書において提供する。他の実施形態では、老化と関連性のある肺の疾患若しくは障害を処置するための老化細胞除去剤(少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤と合わせて、医薬組成物を形成し得る)は、吸入によって、鼻腔内、挿管によって、又はくも膜下腔内で投与して、例えば、冒された肺組織へと老化細胞除去剤をより直接提供し得る。別の非限定的例として、老化細胞除去剤(又は老化細胞除去剤を含む医薬組成物)は、注射(例えば、眼球内若しくは硝子体内)によって、又はまぶたの下のクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、若しくは点眼薬の結膜適用によって、目へと直接送達し得る。より特定の実施形態では、老化細胞除去剤、又は老化細胞除去剤を含む医薬組成物は、持続性放出(また持続放出、制御放出と称される)組成物として製剤化し得るか、又は大量注入として投与し得る。
【0216】
医薬組成物(例えば、経口投与のため、又は注射、注入、皮下送達、筋内送達、腹腔内送達のため、又は他の方法)は、液体の形態であり得る。液体医薬組成物は、例えば、下記の1つ若しくは複数:無菌賦形剤、例えば、水、食塩水、好ましくは、生理食塩水、リンガー液、等張塩化ナトリウム、溶媒又は懸濁媒としての役割を果たし得る不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒;抗菌剤;抗酸化剤;キレート剤;緩衝液及び浸透圧の調節のための薬剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロースを含み得る。非経口組成物は、ガラス若しくはプラスチックでできているアンプル、使い捨て注射器又は複数回投与バイアル中に封入することができる。生理食塩水の使用が好ましく、注射可能な医薬組成物は好ましくは無菌である。他の実施形態では、眼科の状態又は疾患の処置のために、液体医薬組成物は、点眼薬の形態で目に適用し得る。液体医薬組成物は、経口的に送達し得る。
【0217】
経口製剤について、本明細書に記載されている老化細胞除去剤の少なくとも1つを、単独で又は適当な添加物と組み合わせて使用して、必要に応じて、賦形剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、着色剤、及び香味剤と共に、錠剤、散剤、顆粒剤又はカプセル剤を作製することができる。化合物は、胃の環境の低pHから化合物の保護を実現する緩衝剤及び/又は腸溶性コーティングと共に製剤化し得る。医薬組成物中に含まれる老化細胞除去剤は、例えば、液体、固体若しくは半固体製剤中で香味剤と共に、及び/又は腸溶性コーティングと共に、経口送達のために製剤化し得る。
【0218】
本明細書に記載されている老化細胞除去剤の任意の1つを含む医薬組成物は、持続放出又は遅延放出のために製剤化し得る(持続型放出又は制御放出とまた称される)。このような組成物は一般に、周知の技術を使用して調製し、例えば、経口、直腸、皮内、若しくは皮下埋込によって、又は望ましい標的部位における埋込によって投与し得る。持続放出製剤は、担体マトリックスに分散しており、且つ/又は律速膜によって囲まれているリザーバ内に含有されている化合物を含有し得る。このような製剤内で使用するための添加剤は、生体適合性であり、また生分解性であり得る;好ましくは、製剤は、相対的に一定のレベルの活性構成要素の放出を実現する。持続放出製剤内に含有される活性剤の量は、埋込の部位、放出の速度及び予想される期間、並びに処置又は予防される状態、疾患若しくは障害の性質によって決まる。
【0219】
ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤を含む医薬組成物は、経皮的、皮内、又は局所投与のために製剤化される。組成物は、シリンジ、包帯、経皮パッチ、インサート、又はシリンジ様アプリケーターを使用して、散剤/タルク又は他の固体、液体、スプレー剤、エアゾール、軟膏剤、フォーム剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤として投与することができる。これは好ましくは、局所的に投与されるか、又は処置される領域に隣接した若しくはその領域内の皮膚(皮内若しくは皮下)中に直接注入される制御放出製剤又は持続放出製剤の形態である。活性組成物はまた、イオン泳動を介して送達することができる。保存剤を使用して、真菌及び他の微生物の成長を防止することができる。適切な保存剤には、これらに限定されないが、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、チメロサール、及びこれらの組合せが含まれる。
【0220】
老化細胞除去剤を含む医薬組成物は、局所適用のための乳剤として製剤化することができる。乳剤は、第2の液体中に分布した1種の液体を含有する。乳剤は、水中油型乳剤又は油中水型乳剤であり得る。油相及び水相のいずれか又は両方は、1種若しくは複数の界面活性剤、乳化剤、乳化安定剤、緩衝液、及び他の添加剤を含有し得る。油相は、他の油性の薬学的に承認されている添加剤を含有し得る。適切な界面活性剤には、これらに限定されないが、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が含まれる。局所適用のための組成物はまた、少なくとも1種の適切な懸濁化剤、抗酸化剤、キレート剤、皮膚軟化剤、又は保湿剤を含み得る。
【0221】
軟膏剤及びクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えて、水性又は油性基剤と共に製剤化し得る。ローション剤は、水性又は油性基剤と共に製剤化し得、一般にまた1種若しくは複数の乳化剤、安定化剤、分散化剤、懸濁化剤、増粘剤、又は着色剤を含有する。液体スプレー剤は、例えば、特別な形状にされたクロージャーを介して加圧したパックから送達し得る。水中油型乳剤はまた、組成物、パッチ、包帯及び物品において使用することができる。これらの系は、半固形乳剤、マイクロエマルジョン、又はフォーム乳剤系である。
【0222】
制御放出又は持続放出の経皮的又は局所製剤は、当技術分野で利用可能な時間放出添加物、例えば、ポリマー構造、マトリックスの添加によって達成することができる。例えば、組成物は、ホットメルト押出物品、例えば、生体付着性ホットメルト押出成形フィルムの使用によって投与し得る。製剤は、架橋ポリカルボン酸ポリマー製剤を含むことができる。架橋剤は、系が標的上皮細胞又は内皮細胞表面に化合物の望ましい放出を可能とする十分な時間付着したままであることを可能とする適正な接着を実現する量で存在し得る。
【0223】
インサート、経皮パッチ、包帯又は物品は、長期間に亘り一定の割合で、活性剤の放出を実現するポリマーの混合物又はコーティングを含むことができる。一部の実施形態では、物品、経皮パッチ又はインサートは、インサートの耐久性を増加させ、活性成分の放出を延長する水不溶性ポリマーと混合することができる、水溶性細孔形成剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0224】
ポリマー製剤をまた利用して、制御放出又は持続放出を実現することができる。当技術分野で記載されている生体付着性ポリマーを使用し得る。例として、持続放出ゲル及び化合物は、ポリマーマトリックス、例えば、疎水性ポリマーマトリックスに組み込み得る。ポリマーマトリックスの例は、微粒子を含む。微粒子は、ミクロスフィアでよく、コアは、ポリマーシェルとは異なる材料のものであり得る。代わりに、ポリマーは、薄い平板若しくは薄膜、粉砕若しくは他の標準的な技術によって生成された粉末、又はゲル、例えば、ヒドロゲルとして流し込み成形し得る。ポリマーはまた、コーティング、又は包帯、ステント、カテーテル、血管移植片、若しくは老化細胞除去剤の送達を促進する他の装置の部分の形態でよい。マトリックスは、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出及び当業者には公知の他の方法によって形成することができる。
【0225】
通常、経口又は注射可能な用量での単位用量の本明細書に記載されている薬剤の1つ若しくは複数を有するキットを提供する。このようなキットは、単位用量、老化細胞と関連性のある疾患の処置における薬物の使用及び付随的利益を説明する情報添付文書、並びに任意選択で組成物の送達のための器具又は装置を含有する容器を含み得る。
【0226】
全ての参照文献及び特許文献は、全ての目的のためにその内容全体が本明細書中に組み込まれている。
【0227】
下記の実施例は、例示の目的のためのみに提供し、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0228】
【化23】
スキーム1は、重要中間体203の調製を例示する。
【0229】
(E)-3-(4-(((2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル)アミノ)メチル)フェニル)アクリル酸(202)
【化24】
THF:DCM:MeOH(200mL:200mL:25mL)中の2-メチルインドール-3-エチルアミン(200)(15.0g、86.1mmol)及び4-ホルミルケイ皮酸(201)(15.2g、86.1mmol)の混合物に、酢酸(1.0mL)を加えた。次いで、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(43.8g、206.6mmol)を周囲温度にて少しずつ加えた。反応混合物を周囲温度にて一晩撹拌し、焼結ガラス漏斗を通して濾過した。沈殿物を酢酸エチル(300mL)、水(300mL)及び飽和NaHCO
3溶液(150mL)で洗浄し、それに続いて、高真空下にて乾燥させ、望ましい生成物(E)-3-(4-(((2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル)アミノ)メチル)フェニル)アクリル酸(202)(26g、70%収率)を得た。LC/MS(方法A):RT=2.41分;m/z=334.41、実測値=335.4[M+H]。
【0230】
(E)-3-(4-(((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)(2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル)アミノ)メチル)フェニル)アクリル酸(203)
【化25】
(E)-3-(4-(((2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル)アミノ)メチル)フェニル)アクリル酸(202)(260mg、0.77mmol、1.0当量)及び炭酸水素ナトリウム(245mg、2.92mmol、3.8当量)を、ジオキサン-水(3:1)(5.1mL、0.15M)に懸濁した。Fmocクロリドを0℃にて少しずつ加えた(230mg、0.89mmol、1.15当量)。反応混合物を室温に温めた。LCMSによる分析は、所望の生成物を示した。pHがpH約2となるまで希釈HClを加えた。水溶液を酢酸エチルで2回抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃度し、オレンジ色の固体を得た。粗生成物を順相精製(ヘキサン中の10~100%酢酸エチルで溶出)に供した。生成物画分を合わせ、濃縮乾燥し、(E)-3-(4-(((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)(2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル)アミノ)メチル)フェニル)アクリル酸(203)をオフホワイト色の固体(240mg、56%収率)として得た。LC/MS(方法A):RT=3.91分;m/z=556.6、実測値=557.6[M
+H]、総時間=6分。
【0231】
【化26】
スキーム2は、重要中間体211の調製を例示する。
【0232】
1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-L-フコース(205)
【化27】
L-フコース(204)(50g、0.3mol)を、無水酢酸(400mL、4.23mol)及びピリジン(800mL、9.9mol)の溶液に溶解した。反応混合物を室温にて一晩撹拌し、減圧下で濃縮し、残渣をEtOAc(2000mL)で希釈し、水(1000mL)、10%クエン酸水溶液(3×700mL)、水(1000mL)及びブライン(1000mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をトルエン(200mL)で共沸混合し、高真空下にて乾燥させ、粗生成物1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-L-フコース(205)(100g、定量的)を得て、さらに精製をせずにこれを次のステップにおいて使用した。
【0233】
(2S,3R,4R,5S)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-ブロモ-2-メチルオキサン-3-イルアセテート(206)
【化28】
1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-L-フコース(205)(101g、0.3mol)を、無水ジクロロメタン(500mL)に溶解し、0℃に冷却した。次いで、HBr(AcOH中33%、135mL)を加え、反応混合物を撹拌しながら2時間室温に温めた。反応混合物を氷/水混合物中に注ぎ、有機層を分離した。水相をCH
2Cl
2(200mL)で抽出した。有機層を飽和NaHCO
3(100mL)、ブライン(150mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、(2S,3R,4R,5S)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-ブロモ-2-メチルオキサン-3-イルアセテート、化合物(206)(115g、定量的)を黄色の油として得た。粗材料を、それ以上精製することなく次のステップで使用した。
【0234】
(2S,3R,4S)-4-(アセチルオキシ)-2-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-3-イルアセテート(207)
【化29】
撹拌したZn(111g、1.7mol)及び1-メチル-イミダゾール(25mL、0.31mol)の無水酢酸エチル(1200mL)溶液に還流させながら、(2S,3R,4R,5S)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-ブロモ-2-メチルオキサン-3-イルアセテート(206)(100g、0.28mol)の無水酢酸エチル(200mL)溶液を滴下で40分で加えた。TLC分析が反応が完了したことを示すまで、反応混合物を3時間加熱還流させた。反応混合物を室温に冷却し、さらに30分間撹拌し、次いで、celiteのパッドを通して濾過した。減圧下での濃縮によって粗生成物を得て、これをシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中の0~10%EtOAc)によって精製し、望ましい生成物(2S,3R,4S)-4-(アセチルオキシ)-2-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-3-イルアセテート、化合物(207)(38g、63%収率)を得た。
【0235】
(2S,3R,4S)-4,6-ビス(アセチルオキシ)-2-メチルオキサン-3-イルアセテート(208)
【化30】
冷たい(2S,3R,4S)-4-(アセチルオキシ)-2-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-3-イルアセテート、化合物(207)(75g、0.35mol)の無水ジクロロメタン(500mL)溶液(氷/水浴)に、酢酸(190mL、3.3mol)及び無水酢酸(290mL、3mol)を加えた。反応混合物を15分間撹拌し、AcOH(19mL)中の33%HBr溶液を加えた。反応混合物をさらに30分間撹拌し、この時点で、溶液は淡黄色となった。TLC分析は出発材料の完全な消費を示した(より低いスポット、25%EtOAc/ヘキサン)。氷/水混合物を加えて、反応物をクエンチした。水(2×1L)、それに続いて冷たい飽和NaHCO
3水溶液(1L)、水(1L)及びブライン(1L)で有機層を徹底的に洗浄した。有機層を無水Na
2SO
4上で乾燥させ、真空中で濃縮し、粗生成物を得て、これをシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中0~20%EtOAc)によって精製し、望ましい生成物(2S,3R,4S)-4,6-ビス(アセチルオキシ)-2-メチルオキサン-3-イルアセテート、化合物(208)を白色の固体(83g、86.2%収率)として得た。
【0236】
(2S,3R,4S,6S)-4-(アセチルオキシ)-6-ブロモ-2-メチルオキサン-3-イルアセテート(209)
【化31】
(2S,3R,4S)-4,6-ビス(アセチルオキシ)-2-メチルオキサン-3-イルアセテート(208)(82g、0.3mol)の無水ジクロロメタン(700mL)溶液に、AcOH(80mL)中の33%HBrを0℃にて加えた。反応混合物を15分間撹拌し、次いで、氷冷水(300mL)を加え、反応物をクエンチした。水相をジクロロメタン(3×700mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(2×500mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で濃縮し、(2S,3R,4S,6S)-4-(アセチルオキシ)-6-ブロモ-2-メチルオキサン-3-イルアセテート、化合物(209)を粘着性油として得た。粗材料をさらなる精製を伴わずにできるだけ早く次のステップへと進めた。
【0237】
(2S,3R,4S,6S)-4-(アセチルオキシ)-6-[(1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)オキシ]-2-メチルオキサン-3-イルアセテート(210)
【化32】
粗(2S,3R,4S,6S)-4-(アセチルオキシ)-6-ブロモ-2-メチルオキサン-3-イルアセテート(209)及びN-ヒドロキシフタルイミド(54g、0.33mol)の無水ジクロロメタン(600mL)溶液に、トリエチルアミン(55mL、0.33mol)、それに続いてBF
3・OEt
2(92mL、0.75mol)を0℃にて加えた。反応混合物を室温とし、色が緑色がかった灰色となるまで1時間撹拌した。冷たい飽和NaHCO
3水溶液(500mL)を加え、有機層を分離した。水層をジクロロメタン(3×500mL)で抽出し、合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、粗材料を得た。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中の10%~60%EtOAc)によって、(2S,3R,4S,6S)-4-(アセチルオキシ)-6-[(1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)オキシ]-2-メチルオキサン-3-イルアセテート(210)を白色の泡状固体(75g、2ステップに亘り66%収率)として得た。LC/MS(方法B):RT=4.32分;m/z=377.1、実測値=378.2[M
+H]
+。総時間=12分。
1H NMR(500MHz、クロロホルムd)δ7.85(ddd、J=5.5、3.3、0.6Hz、2H)、7.76(ddd、J=5.9、2.9、0.8Hz、2H)、5.62-5.52(m、IH)、5.43(ddd、J=12.5、5.3、3.0Hz、IH)、5.38-5.23(m、IH)、4.97(td、J=6.7、6.7、5.6Hz、IH)、2.35-2.18(m、2H)、2.17(s、3H)、2.03(d、J=0.6Hz、3H)、1.14(dd、J=6.5、0.6Hz、3H)。
【0238】
(2S,3R,4S,6S)-4-(アセチルオキシ)-6-(アミノオキシ)-2-メチルオキサン-3-イルアセテート(211)
【化33】
(2S,3R,4S,6S)-4-(アセチルオキシ)-6-[(1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)オキシ]-2-メチルオキサン-3-イルアセテート(210)(25g、0.066mol)のメタノール(500mL)溶液を、氷/水浴下で0℃に冷却した。ヒドラジン水化物(5.5mL、0.066mol)をゆっくりと加え、このように得られた反応混合物を0℃にてさらに30分間撹拌した。沈殿物を濾過し、濾液をジクロロメタン(500mL)で希釈し、冷たいNaHCO
3水溶液(2×350mL)、水(350mL)及びブライン(350mL)で洗浄した。有機層を無水Na
2SO
4上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、粗(2S,3R,4S,6S)-4-(アセチルオキシ)-6-(アミノオキシ)-2-メチルオキサン-3-イルアセテート、化合物(211)(12g、78%収率)をオフホワイト色の泡状固体として得た。LC/MS(方法A):RT=1.22分;m/z=247.2、実測値=248.3[M+H]
+。総時間=6分。
【0239】
【化34】
スキーム3は、化合物101の調製を例示する。
【0240】
(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-6-{[(2E)-3-[4-({[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル][2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]プロパ-2-エナミド]オキシ}-2-メチルオキサン-4-イルアセテート(212)の調製
【化35】
(E)-3-(4-(((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)(2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル)アミノ)メチル)フェニル)アクリル酸(203)(710mg、1.27mmol、1.0当量)を、DMF(7mL)に溶解した。EDCI(277mg、1.77mmol)及びHOBt(240mg、1.77mmol)を加え、このように得られた混合物を室温にて10分間撹拌し、それに続いて、(2S,3R,4S,6S)-4-(アセチルオキシ)-6-(アミノオキシ)-2-メチルオキサン-3-イルアセテート(211)(437mg、1.4mmol)のジクロロメタン(1.0mL)及びDIPEA(0.29mL)溶液を加えた。2時間後、反応混合物を飽和塩化アンモニウム(5mL)を加えることによってクエンチし、EtOAc(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(25mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮し、粗生成物を得た。フラッシュシリカゲルカラム(ヘキサン中の10~70%EtOAc)上の精製によって、(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-6-{[(2E)-3-[4-({[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル][2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]プロパ-2-エナミド]オキシ}-2-メチルオキサン-4-イルアセテート(212)(540mg、54%収率)を得た。LC/MS(方法B):RT=6.19分;m/z=785.3、実測値=786.7[M
+H]、総時間=12分。
【0241】
実施例1:(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-2-メチル-6-{[(2E)-3-[4-({[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]プロパ-2-エナミド]オキシ}オキサン-4-イルアセテート、(101)
【化36】
(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-6-{[(2E)-3-[4-({[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル][2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]プロパ-2-エナミド]オキシ}-2-メチルオキサン-4-イルアセテート(212)(700mg、0.89mmol、1.0当量)のDMF(3.0mL)溶液に、トリエチルアミン(3.0mL)を加えた。出発材料の完全な消費がLCMSによって示されるまで、反応混合物を室温にて撹拌した。冷たい飽和炭酸水素ナトリウム溶液(20mL)を加え、反応混合物を酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮し、粗生成物を得て、これを炭酸水素アンモニウム緩衝液を使用した逆相HPLCによって精製し、(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-2-メチル-6-{[(2E)-3-[4-({[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]プロパ-2-エナミド]オキシ}オキサン-4-イルアセテート(101)を得た。LC/MS(方法C):RT=1.98分;m/z=563.2、実測値=564.4[M
+H]
+。総時間=6分。
【0242】
【化37】
スキーム4は、化合物102の調製を例示する。
【0243】
実施例2:(2E)-N-{[(2S,4S,5S,6S)-4,5-ジヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-3-[4-({[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]プロパ-2-エナミド(102)
【化38】
(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-2-メチル-6-{[(2E)-3-[4-({[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]プロパ-2-エナミド]オキシ}オキサン-4-イルアセテート(101)(230mg、0.4mmol、1.0当量)のメタノール(4.0mL)溶液に、メタノール中の25%ナトリウムメトキシド(0.06mL、0.28mmol)を氷/水浴上で加えた。反応混合物を徐々に室温とし、LCMSによって完了が示されるまで撹拌した。反応混合物を氷/水浴において冷却し、pH約7が達成されるまで1NのHCl水溶液(0.1mL)の添加によってクエンチした。反応混合物を減圧下で濃縮し、粗材料を炭酸水素アンモニウム緩衝液を使用した逆相HPLCによって精製し、望ましい生成物(2E)-N-{[(2S,4S,5S,6S)-4,5-ジヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-3-[4-({[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]プロパ-2-エナミド(102)(70mg、36%収率)を得た。LC/MS(方法C):RT=1.44分;m/z=479.2、実測値=480.1[M+H]
+。総時間=6分。
1H NMR(500MHz、DMSO-d
6)δ11.10(d、J=62.0Hz、1H)、10.64(s、1H)、7.53-7.40(m、3H)、7.34(dd、J=8.0、2.7Hz、3H)、7.19(d、J=7.9Hz、1H)、6.97-6.91(m、1H)、6.90-6.84(m、1H)、6.44(d、J=15.9Hz、1H)、5.01(d、J=3.8Hz、1H)、4.64(d、J=6.0Hz、1H)、4.37(d、J=4.7Hz、1H)、4.04(d、J=7.0Hz、1H)、3.73(s、2H)、3.42(d、J=8.0Hz、1H)、2.77(t、J=7.4、7.4Hz、2H)、2.66(t、J=7.4、7.4Hz、2H)、2.29(s、3H)、1.83(td、J=12.7、12.5、4.0Hz、1H)、1.76-1.64(m、1H)、1.11(d、J=6.5Hz、3H)。
【0244】
【化39】
スキーム5は、化合物109の調製を例示する。
【0245】
tert-ブチルN-({4-[(1E)-2-({[(4S,5S,6S)-4,5-ジヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}カルバモイル)エタ-1-エン-1-イル]フェニル}メチル)-N-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]カルバメート(213)
【化40】
(2E)-N-{[(2S,4S,5S,6S)-4,5-ジヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-3-[4-({[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]プロパ-2-エナミド(101)、(100mg、0.208mmol)のDCM(2mL)溶液に、(Boc)
2O(64mg、0.292mmol)及びトリエチルアミン(0.072mL、0.416mmol)を加えた。反応混合物を40℃にて3時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去し、粗tert-ブチルN-({4-[(1E)-2-({[(4S,5S,6S)-4,5-ジヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}カルバモイル)エタ-1-エン-1-イル]フェニル}メチル)-N-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]カルバメート(213)を得て、これを次のステップにおいてさらなる精製をせずに使用した。LC/MS(方法A):RT=2.81分;m/z=579.6、実測値=580.5[M
+H]、総時間=6分。
【0246】
tert-ブチルN-({4-[(1E)-2-({[(3aR,4S,7aS)-4-メチル-2-オキソ-ヘキサヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-c]ピラン-6-イル]オキシ}カルバモイル)エタ-1-エン-1-イル]フェニル}メチル)-N-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]カルバメート(214)
【化41】
tert-ブチルN-({4-[(1E)-2-({[(4S,5S,6S)-4,5-ジヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}カルバモイル)エタ-1-エン-1-イル]フェニル}メチル)-N-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]カルバメート、(213)(従前のステップからの粗製物、0.208mmol)のTHF(2mL)溶液に、CDI(50mg、0.308mmol)を加えた。反応混合物を55℃にて18時間撹拌し、減圧下で濃縮し、粗tert-ブチルN-({4-[(1E)-2-({[(3aR,4S,7aS)-4-メチル-2-オキソ-ヘキサヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-c]ピラン-6-イル]オキシ}カルバモイル)エタ-1-エン-1-イル]フェニル}メチル)-N-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]カルバメート(214)を得て、これを次のステップのために精製をせずに使用した。LC/MS(方法A):RT=3.2分;m/z=605.7、実測値=606.7[M+H]
+。総時間=6分。
【0247】
実施例3:(2E)-N-{[(3aR,4S,7aS)-4-メチル-2-オキソ-ヘキサヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-c]ピラン-6-イル]オキシ}-3-[4-({[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]プロパ-2-エナミド(109)
【化42】
従前のステップにおいて得た粗tert-ブチルN-({4-[(1E)-2-({[(3aR,4S,7aS)-4-メチル-2-オキソ-ヘキサヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-c]ピラン-6-イル]オキシ}カルバモイル)エタ-1-エン-1-イル]フェニル}メチル)-N-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]カルバメート(214)(0.208mmol)を、DCM(2mL)中の20%TFAに溶解した。反応混合物を50℃にて1時間加熱し、減圧下で濃縮した。粗残渣を逆相HPLCによって精製し、(2E)-N-{[(3aR,4S,7aS)-4-メチル-2-オキソ-ヘキサヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-c]ピラン-6-イル]オキシ}-3-[4-({[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]プロパ-2-エナミド(109)を白色の固体として得た(12.5mg、3ステップについて12%収率)。LC/MS(方法C):RT=2.1分;m/z=505.2、実測値=506.2[M+H]
+。総時間=6分。
1H NMR(500MHz、DMSO-d
6)δ10.63(s、1H)、7.48(t、J=14.8、14.8Hz、3H)、7.36-7.31(m、3H)、7.19(d、J=7.9Hz、1H)、6.96-6.90(m、1H)、6.87(t、J=7.0、7.0Hz、1H)、6.44(d、J=16.0Hz、1H)、5.13(d、J=8.5Hz、1H)、5.04(t、J=7.0、7.0Hz、1H)、4.74(dd、J=8.7、1.8Hz、1H)、4.18(d、J=6.1Hz、1H)、3.72(s、2H)、2.77(t、J=7.4、7.4Hz、2H)、2.66(t、J=7.4、7.4Hz、2H)、2.28(s、3H)、1.91(d、J=17.4Hz、1H)、1.16(d、J=6.6Hz、3H)。
【0248】
【化43】
スキーム6は、化合物107の調製を例示する。
【0249】
2-[4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-ピペリジン-1-イル]-ピリミジン-5-カルボン酸メチルエステル(217)
【化44】
ジオキサン(90mL)中のTert-ブチル(ピペリジン-4-イルメチル)カルバメート(215)(5g、23mmol、1.0当量)及びメチル2-クロロピリミジン-5-カルボキシレート(216)(4.8g、28mmol)を、炭酸セシウム(18g、57mmol)及びPd(dba)
2アセトン(1.56g、1.7mmol)で処理した。溶液を窒素(3×)でパージし、キサントホス(1.99g、3.45mmol)を一度に加えた。懸濁液は数分以内に暗赤色から黄緑色となった。次いで、反応混合物を70℃にて30分間加熱し、その時点で、LCMS分析は所望の生成物の存在を示した。混合物を室温に冷却し、Celiteのパッドを通して濾過し、ジクロロメタン(3×40mL)で洗浄した。溶媒を除去し、残渣をヘキサン-酢酸エチル(40~100%)で溶出する順相精製に供した。生成物画分を集め、合わせ、濃縮し、2-[4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-ピペリジン-1-イル]-ピリミジン-5-カルボン酸メチルエステルをオフホワイト色の固体(217)(5g、61%収率)として得た。LC/MS(方法A):RT=3.23分;m/z=350.4、実測値=351.6[M+H]
+。総時間=6分。
【0250】
2-(4-アミノメチル-ピペリジン-1-イル)-ピリミジン-5-カルボン酸メチルエステル塩酸塩(218)
【化45】
2-[4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-ピペリジン-1-イル]-ピリミジン5-カルボン酸メチルエステル(217)(2.8g、8mmol)を、THF(30mL)に溶解した。4NのHCl/ジオキサン(10mL)を加え、溶液を70℃にて2時間加熱し、この間に、固体が沈殿した。沈殿物を濾過し、エーテル/ヘキサン(3×)で洗浄し、高真空下にて乾燥させ、2-(4-アミノメチル-ピペリジン-1-イル)-ピリミジン-5-カルボン酸メチルエステル塩酸塩(218)を白色の固体(2.3g、定量的)として得た。LC/MS(方法A):RT=1.89分;m/z=250.3、実測値=251.4[M
+H]、総時間=6分。
【0251】
メチル2-(4-((((1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル)アミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-カルボキシレート(220)
【化46】
THF:DCE(1:1)5%メタノール(30mL)中の2-(4-アミノメチル-ピペリジン-1-イル)-ピリミジン-5-カルボン酸メチルエステル(218)(2.3g、8mmol)及びトリエチルアミン(4mL、28mmol、3.5当量)に、1-メチル-1H-インドール-3-カルバルデヒド(219)(1.2g、7.6mmol)を一度に加えた。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(9.8g、48mmol)、それに続いて酢酸(0.5mL)を加えた。次いで、NMP(1.1mL)を加え、LCMS分析が所望の生成物の形成を示すまで、混合物を室温にて2日間撹拌した。水を加え、pHを炭酸水素ナトリウムで7に調節し、白色の固体を濾過し、水(10mL)及び酢酸エチル(20mL)で洗浄した。生成物を高真空下にて乾燥し、メチル2-(4-((((1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル)アミノ)メチル)ピペリジン1-イル)ピリミジン-5-カルボキシレート(220)を白色の固体(3g、95%収率)として得た。この材料を、次のステップにおいてそれ以上精製することなく使用した。LC/MS(方法A):RT=2.3分;m/z=393.4、実測値=394.5[M
+H]、総時間=6分。
【0252】
2-(4-((((1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル)アミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-カルボン酸(221)
【化47】
粗メチル2-(4-((((1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル)アミノ)メチル)ピペリジン1-イル)ピリミジン-5-カルボキシレート(220)(3.3g、8.4mmol)及び水酸化ナトリウム(2.76mg、69mmol)を、ジオキサン/水(3:1)(30.0mL)に懸濁した。LCMS分析が完全な反応を示すまで、溶液を70℃にて2時間加熱した。ジオキサンを除去し、混合物をpH約5に酸性化した。沈殿物を水、それに続いてヘキサンで洗浄した。灰色の固体を高真空下にて乾燥させ、純粋な2-(4-((((1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル)アミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-カルボン酸(221)(2.1g、66%収率)を得た。LC/MS(方法A):RT=2.41分;m/z=379.4、実測値=380.6[M
+H]、総時間=6分
【0253】
2-(4-(((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)((1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル)アミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-カルボン酸(222)
【化48】
2-(4-((((1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル)アミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-カルボン酸(221)(1.3g、3.43mmol)及び炭酸水素ナトリウム(720mg、8.5mmol)を、THF:水(3:1)(20mL)に懸濁した。Fmoc-OSu(1.21g、3.63mmol)、それに続いてN-メチル-2-ピロリドン(1.2mL)を1時間の間に少しずつ加えた。LCMS分析が、反応が完了したことを示すまで、反応物を撹拌し、真空中で濃縮し、水(10mL)で希釈した。固体炭酸水素ナトリウムを加え、pHを約8に調節し、水溶液を酢酸エチル(2×25mL)で抽出した。合わせた有機層を廃棄した。水層を1NのHClでpH約2に酸性化し、酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、望ましい生成物2-(4-(((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)((1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル)アミノ)-メチル)ピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-カルボン酸(222)を白色の泡(1.55g、76%収率)として得た。LC/MS(方法A):RT=3.96分;m/z=601.7、実測値=602.3[M
+H]、総時間=6分。
【0254】
(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-6-[({2-[4-({[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル][(1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル]アミノ}メチル)ピペリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル}ホルムアミド)オキシ]-2-メチルオキサン-4-イルアセテート(223)
【化49】
2-(4-(((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)((1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル)アミノ)-メチル)ピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-カルボン酸(222)(250mg、0.41mmol)のDMF(1.3mL)溶液に、EDCI(109mg、0.57mmol)及びHOBt(87mg、0.41mmol)を加えた。このように得られた混合物を室温にて15分間撹拌した。(2S,3R,4S,6S)-4-(アセチルオキシ)-6-(アミノオキシ)-2-メチルオキサン-3-イルアセテート、化合物(211)(100mg、0.404mmol)のDCM/DMF(1:1;0.4mL)及びDIPEA(0.1mL)溶液を加え、反応混合物を2時間撹拌した。反応物を塩化アンモニウムの飽和水溶液(5mL)を加えることによってクエンチし、酢酸エチル(2×15mL)で抽出した。合わせた有機層を炭酸水素ナトリウムの10%水溶液(10mL)及びブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で濃縮し、粗生成物を得て、これをシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中の30~70%酢酸エチル)によって精製し、(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-6-[({2-[4-({[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル][(1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル]アミノ}メチル)ピペリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル}ホルムアミド)オキシ]-2-メチルオキサン-4-イルアセテート(223)を黄色の泡として得た(200mg、58%収率)。LC/MS(方法B):RT=7.06分;m/z=830.4、実測値=831.1[M+H]
+。総時間=12分。
【0255】
実施例4:(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-2-メチル-6-[({2-[4-({[(1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル]アミノ}メチル)ピペリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル}ホルムアミド)オキシ]オキサン-4-イルアセテート(107)
【化50】
(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-6-[({2-[4-({[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル][(1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル]アミノ}メチル)ピペリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル}ホルムアミド)オキシ]-2-メチルオキサン-4-イルアセテート(223)(200mg、0.24mmol)を、DMF(2.0mL)に溶解した。トリエチルアミン(2.0mL)を一度に加え、このように得られた反応混合物を室温にて一晩撹拌した。次いで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)を加え、反応混合物を酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、粗生成物(120mg)を得た。40mgポーションのこの粗材料を炭酸水素アンモニウム緩衝液を使用した逆相HPLCによって精製し、(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-2-メチル-6-[({2-[4-({[(1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル]アミノ}メチル)ピペリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル}ホルムアミド)オキシ]オキサン-4-イルアセテート(107)(19mg、39%収率)を得た。LC/MS(方法C):RT=2.31分;m/z=608.3、実測値=609.4[M
+H]、総時間=6分。
1H NMR(500MHz、DMSO-d
6)δ8.62(s、2H)、7.59(dt、J=7.9、1.0、1.0Hz、1H)、7.35(dd、J=8.2、0.9Hz、1H)、7.17(s、1H)、7.11(ddd、J=8.3、7.1、1.3Hz、1H)、6.98(ddd、J=7.9、7.0、1.1Hz、1H)、5.21(t、J=2.7、2.7Hz、1H)、5.14(ddd、J=11.0、6.8、3.0Hz、1H)、5.11-5.07(m、1H)、4.68(d、J=13.2Hz、2H)、4.46(q、J=6.2、6.2、6.2Hz、1H)、3.81(s、2H)、3.72(s、3H)、2.91(td、J=13.1、12.8、2.7Hz、2H)、2.44(d、J=6.5Hz、2H)、2.10(s、3H)、1.99-1.94(m、2H)、1.93(s、3H)、1.81-1.70(m、3H)、1.09-1.02(m、2H)、1.01(d、J=6.5Hz、3H)。
【0256】
【化51】
スキーム7は、化合物108の調製を例示する。
【0257】
実施例5:N-{[(2S,4S,5S,6S)-4,5-ジヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-[4-({[(1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル]アミノ}メチル)ピペリジン-1-イル]ピリミジン-5-カルボキサミド(108)
【化52】
(2S,3R,4S,6S)-3-(アセチルオキシ)-2-メチル-6-[({2-[4-({[(1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル]アミノ}メチル)ピペリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル}ホルムアミド)オキシ]オキサン-4-イルアセテート(107)(80mg、0.131mmol)を、メタノール:水(2:1;2.0mL)に懸濁した。トリエチルアミン(0.4mL)を加え、このように得られた混合物を55℃にて6時間加熱した。反応混合物を真空中で濃縮し、炭酸水素アンモニウム緩衝液を使用した逆相HPLCによってそれに続いて精製し、N-{[(2S,4S,5S,6S)-4,5-ジヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-[4-({[(1-メチル-1H-インドール-3-イル)メチル]アミノ}メチル)ピペリジン-1-イル]ピリミジン-5-カルボキサミド(108)(60.5mg、88%収率)を得た。LC/MS(方法C):RT=1.82分;m/z=524.3、実測値=525.7[M
+H]、総時間=6分。
1H NMR(500MHz、DMSO4)δ8.62(s、2H)、7.59(dt、J=7.9、1.1、1.1Hz、1H)、7.35(dd、J=8.3、1.0Hz、1H)、7.17(s、1H)、7.11(ddd、8.2、7.0、1.3Hz、1H)、6.98(ddd、J=8.1、7.0、1.1Hz、1H)、5.05(d、J=3.5Hz、1H)、4.68(dt、J=12.3、3.0、3.0Hz、2H)、4.64(d、J=6.3Hz、1H)、4.35(d、J=4.6Hz、1H)、4.11(d、J=6.6Hz、1H)、3.81(s、2H)、3.79-3.74(m、1H)、3.72(s、3H)、3.42(t、J=3.9、3.9Hz、1H)、2.92(td、J=13.1、12.9、2.7Hz、2H)、2.44(d、J=6.5Hz、2H)、1.88-1.66(m、5H)、1.08(d、J=6.6Hz、3H)、1.02(ddd、J=15.6、8.4、3.6Hz、2H)。
【0258】
【化53】
スキーム8は、化合物121の調製を例示する。
【0259】
(1S,2R,6R,8S,9R)-8-(フルオロメチル)-4,4,11,11-テトラメチル-3,5,7,10,12-ペンタオキサトリシクロ[7.3.0.02,6]ドデカン(225)
【化54】
1,2:3,4-ジ-O-イソプロピリデン-アルファ-D-ガラクトピラノース(224)(1.7mL、7.68mmol、1.00当量)のジクロロメタン(20mL)溶液に、2,4,6-トリメチルピリジン(2.4mL、18.4mmol、2.40当量)を加えた。混合物を0℃に冷却し、(ジエチルアミノ)硫黄トリフルオリド(1.2mL、9.22mmol、1.20当量)で処理した。反応混合物を室温にて窒素下で撹拌し、TLC(酢酸エチル:シクロヘキサン1:1)によってモニターした。18時間後、反応混合物をジクロロメタンで希釈し、飽和NaHCO
3、ブライン(25mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、揮発性物質を蒸発させた。残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン(0~20%)で溶出)によって精製し、表題化合物(225)(913mg、45%)を無色のシロップとして得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3):d、5.55(d、J=4.9Hz、1H)、4.69-4.58(m、2H)、4.48(dq、J=6.1、8.9Hz、1H)、4.35(ddd、J=2.5、2.5、2.5Hz、1H)、4.27(dd、J=2.0、8.0Hz、1H)、4.13-4.03(m、1H)、1.55(s、3H)、1.45(s、3H)、1.34(s、6H)。
【0260】
(3R,4S,5R,6S)-6-(フルオロメチル)テトラヒドロピラン-2,3,4,5-テトロール(226)
【化55】
(1S,2R,6R,8S,9R)-8-(フルオロメチル)-4,4,11,11-テトラメチル-3,5,7,10,12-ペンタオキサトリシクロ[7.3.0.02,6]ドデカン(225)(913mg、3.48mmol、1.00当量)を、トリフルオロ酢酸(8.0mL、0.104mol、30.0当量)及び水(0.92mL)の混合物で処理した。反応混合物を室温にて撹拌し、TLC(酢酸エチル:シクロヘキサン1:1)によってモニターした。0.5時間後、反応物をトルエンで希釈し、減圧下で濃縮し、粗表題化合物(226)(1.0g)を淡いベージュ色のシロップとして得て、これを次の合成ステップへと直接進めた。
【0261】
[(2S,3R,4S,5R)-4,5,6-トリアセトキシ-2-(フルオロメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(227)
【化56】
(3R,4S,5R,6S)-6-(フルオロメチル)テトラヒドロピラン-2,3,4,5-テトロール(634mg、3.48mmol、1.00当量)(226)を、乾燥ピリジン(10mL)に溶解し、0℃に冷却し、無水酢酸(3.3mL、34.8mmol、10.0当量)で処理した。反応混合物を室温にて窒素下で撹拌し、TLC(1:4酢酸エチル:ジクロロメタン)によってモニターした。5時間後、反応物をトルエン(3×)で希釈し、減圧下で濃縮し、過剰な試薬を除去した。油性残渣をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:ジクロロメタン(1:9)で溶出する12gカートリッジ)によって精製し、表題化合物(227)(960mg、79%)(アノマーの混合物)を無色の油として得た。
【0262】
[(2S,3R,4S,5R,6R)-4,5-ジアセトキシ-6-ブロモ-2-(フルオロメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(228)
【化57】
光から保護された反応槽において、[(2S,3R,4S,5R)-4,5,6-トリアセトキシ-2-(フルオロメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(227)(300mg、0.856mmol、1.00当量)の乾燥ジクロロメタン(7mL)溶液を、0℃にて窒素雰囲気下にて酢酸(33%)(1.4mL)中の臭化水素でゆっくりと処理した。反応物を室温へと温め、TLCによってモニターした。1時間後、反応混合物をNaHCO
3(2.10g)の氷水(15mL)溶液中にゆっくりと注ぎ、15分間撹拌した。有機層を相分離カートリッジに通過させ、濃縮し、表題化合物(229)(300mg、94%)を白色の固体として得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3):d6.72(d、J=4.2Hz、1H)、5.58(d、J=3.5Hz、1H)、5.42(dd、J=3.2、10.9Hz、1H)、5.08(dd、J=4.6、10.6Hz、1H)、4.58-4.49(m、2H)、4.39-4.35(m、1H)、2.15(s、3H)、2.12(s、3H)、2.02(s、3H)。
【0263】
[(2S,3R,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ-2-(フルオロメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(229)
【化58】
赤色のN-ヒドロキシフタルイミド(114mg、0.700mmol、1.00当量)、臭化テトラブチルアンモニウム(113mg、0.350mmol、0.500当量)のジクロロメタン(0.8mL)懸濁液を、炭酸カリウム(106mg、0.770mmol、1.10当量)の水(0.8mL)溶液、及び[(2S,3R,4S,5R,6R)-4,5-ジアセトキシ-6-ブロモ-2-(フルオロメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(228)(260mg、0.700mmol、1.00当量)のジクロロメタン(0.8mL)溶液に加えた。反応混合物を室温にて24時間撹拌し、LCMSによってモニターした。次いで、反応混合物をジクロロメタン及び飽和NaHCO
3水溶液に分配した。有機層を分離し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、揮発性物質を蒸発させ、粗生成物を得て、フラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル(2~60%)で溶出)によって精製し、不純な固体(85mg)を得て、これをジクロロメタンに溶解し、不純物を濾過によって分離することによってこれをさらに精製した。濾液を濃縮し、表題化合物(229)(65mg、18%)をちり状の固体として得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3)d7.88-7.83(m、2H)、7.81-7.75(m、2H)、5.53-5.46(m、2H)、5.14(dd、J=3.7、9.9Hz、1H)、5.03(d、J=8.8Hz、1H)、4.66-4.36(m、2H)、4.04-3.95(m、1H)、2.23(s、3H)、2.20(s、3H)、2.03(s、3H)。LC/MS:Rt=1.53分;m/z=476[M+Na]+。
【0264】
[(2S,3R,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-アミノオキシ-2-(フルオロメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(230)
【化59】
[(2S,3R,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ-2-(フルオロメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(229)(280mg、0.618mmol、1.00当量)のメチルアルコール(4mL)懸濁液に、0℃にてヒドラジン一水和物(98%、0.031mL、0.618mmol、1.00当量)をゆっくりと加えた。反応混合物を0℃にて30分間撹拌し、TLC(1:1酢酸エチル:シクロヘキサン)によってモニターした。固体を濾過によって除去し、廃棄した。濾液をジクロロメタンで希釈し、冷たいNaHCO
3水溶液、水及びブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、揮発性物質を蒸発させ、固体(169mg)を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル(5~80%)で溶出する12gカートリッジ)によって精製し、表題化合物(230)(158mg、79%)を白色の固体として得た。
1H NMR:(300MHz、CDCl
3):5.84(s、2H)、5.46(d、J=3.2Hz、1H)、5.27(dd、J=8.3、10.4Hz、1H)、5.06(dd、J=3.4、10.4Hz、1H)、4.72(d、J=8.5Hz、1H)、4.64-4.34(m、2H)、4.06-3.96(m、1H)、2.17(s、3H)、2.09(s、3H)、2.00(s、3H)。
【0265】
[(2S,3R,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[[(E)-3-[4-[[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-2-(フルオロメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(231)
【化60】
(E)-3-[4-[[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エン酸(189mg、0.340mmol、1.00当量)(203)のN,N-ジメチルホルムアミド(6.0mL)溶液に、一度に1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(69mg、0.453mmol、1.33当量)及びN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド塩酸塩(87mg、0.453mmol、1.33当量)を加えた。15分後、混合物を0℃に冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.079mL、0.453mmol、1.33当量)を含有する[(2S,3R,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-アミノオキシ-2-(フルオロメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(110mg、0.340mmol、1.00当量)(230)のN,N-ジメチルホルムアミド(1mL)溶液をゆっくりと加えた。このように得られた混合物を室温にし、さらに18時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、冷たい飽和NH
4Cl水溶液をゆっくりと加えることによってクエンチし、浅黄色の沈殿物を得て、これを濾過によって集め、水ですすいだ。集めた固体を酢酸エチルに溶解し、水、飽和NaHCO
3水溶液及びブラインで洗浄した。有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、揮発性物質を蒸発させ、粗生成物(254mg)を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル(0~70%)で溶出する12gシリカカートリッジ)によって精製し、表題化合物(231)(182mg、62%)を黄色の固体として得た。LC/MS:Rt=1.92分;m/z=862[M+H]
+。
【0266】
実施例6:[(2S,3R,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-2-(フルオロメチル)-6-[[(E)-3-[4-[[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチルアミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(121)
【化61】
[(2S,3R,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-2-(フルオロメチル)-6-[[(E)-3-[4-[[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチルアミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(231)(85mg、0.120mmol、57%)のN,N-ジメチルホルムアミド(1.6mL)溶液に、0℃にてトリエチルアミン(0.81mL、5.82mmol、27.5当量)を加えた。反応混合物を0℃にて10分間、次いで、室温にて24時間撹拌した。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮し、油性残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和NH
4Cl水溶液で洗浄した。相分離器カートリッジを通過させた有機層、及び濾液を濃縮し、ベージュ色の固体(140mg)を得て、これをシリカクロマトグラフィー12g(ジクロロメタン:MeOH(0~10%)で溶出するシリカカートリッジ(50ミクロン))によって精製し、ベージュ色の固体(110mg)を得た。c-ヘキサン:(酢酸エチル:IPA3:1)で溶出するシリカクロマトグラフィー(12gシリカカートリッジ、15ミクロン)によるさらなる精製によって、表題化合物(121)(85mg、57%)を白色の固体として得た。
1H NMR(400MHz、DMSO)d10.68-10.65(m、1H)、7.54-7.47(m、3H)、7.39-7.34(m、3H)、7.22-7.19(m、1H)、6.97-6.86(m、2H)、6.50-6.40(m、1H)、5.34-5.25(m、2H)、5.07-5.02(m、2H)、4.62-4.35(m、3H)、3.78-3.75(m、2H)、3.33(m、2H、水シグナル下)、2.79(t、J=7.2Hz、2H)、2.69(t、J=7.0Hz、2H)、2.30(s、3H)、2.13(s、3H)、2.10(s、3H)、1.95-1.94(m、3H)。LC/MS:Rt=3.37分、m/z=640.2[M+H]
+。
【0267】
【化62】
スキーム8は、化合物122の調製を例示する。
【0268】
実施例7:(E)-N-[(2S,3R,4S,5R,6S)-6-(フルオロメチル)-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-イル]オキシ-3-[4-[[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチルアミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エナミド(122)
【化63】
[(2S,3R,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-2-(フルオロメチル)-6-[[(E)-3-[4-[[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチルアミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(121)(90%、75mg、0.106mmol、1.00当量)のメチルアルコール(2.50mL)溶液に、水(0.35mL)及びトリエチルアミン(0.37mL、2.65mmol、25.1当量)を加えた。反応混合物を室温にて24時間撹拌した。粗生成物を濃縮乾燥させ、CH
3CN:水1:1に溶解し、一晩凍結乾燥し、表題化合物(122)(57mg、99%)をオフホワイト色の固体として得た。
1H NMR(400MHz、MeOD):d7.60-7.49(m、3H)、7.38(d、J=7.8Hz、1H)、7.29(d、J=8.0Hz、2H)、7.24-7.21(m、1H)、7.00(ddd、J=1.0、7.1、8.1Hz、1H)、6.92(ddd、J=1.0、7.0、7.8Hz、1H)、6.49(d、J=15.3Hz、1H)、4.68-4.65(m、1H)、4.60(d、J=8.3Hz、1H)、4.57-4.53(m、1H)、3.92-3.85(m、1H)、3.84(s、3H)、3.69(dd、J=7.9、9.7Hz、1H)、3.58(dd、J=3.4、9.7Hz、1H)、2.98-2.92(m、2H)、2.89-2.85(m、2H)、2.34(s、3H)。19F NMR(400MHz、MeOD)231.52ppm。LC/MS:Rt=2.61分;m/z=514[M+H]
+。
【0269】
【化64】
スキーム9は、化合物123の調製を例示する。
【0270】
(2R,3R,4S,6S)-6-(アセトキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4-トリイルトリアセテート(233)
【化65】
(3R,4S,6S)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン-2,3,4-トリオール(232)(500mg、3.05mmol、1.00当量)及び4-(ジメチルアミノ)ピリジン(37mg、0.305mmol、0.100当量)のピリジン(10mL)溶液に、0℃にて無水酢酸(4.3mL、45.7mmol、15.0当量)を10分の期間に亘り加え、反応混合物を0℃にて2.5時間撹拌した。反応混合物を最小容量に濃縮し、残存するピリジンをトルエンと同時蒸発させた。油性残渣をトルエンに再溶解し、1MのHCl、水及びブラインで洗浄した。有機相を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮し、表題化合物(233)(993mg、98%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3):d、5.69-5.65(m、1H)、5.09-4.99(m、2H)、4.19-4.15(m、2H)、3.96-3.87(m、1H)、2.23-2.16(m、1H)、2.12(s、3H)、2.10(s、3H)、2.06(s、6H)、1.73-1.59(m、1H)。
【0271】
(2R,3R,4S,6S)-6-(アセトキシメチル)-2-ブロモテトラヒドロ-2H-ピラン-3,4-ジイルジアセテート(234)
【化66】
光から保護された反応槽に、[(2S,4S,5R)-4,5,6-トリアセトキシテトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(233)(200mg、0.602mmol、1.00当量)及びジクロロメタン(5mL)を加えた。フラスコを0℃にて維持し、酢酸(33%)(0.6mL)中の臭化水素を窒素雰囲気下にてゆっくり加えた。反応混合物を室温にて撹拌し、TLCによってモニターした。3時間後、TLC(1:1シクロヘキサン:酢酸エチル)は、R
f0.60にて予想された生成物を示した。粗反応混合物を炭酸水素ナトリウム(1.1g)及び氷水(8mL)の混合物を含有するビーカー中に少しずつ加え、5分間激しく(放出気体)混合した。有機相を分離し、水相をジクロロメタン(30mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、揮発性物質を蒸発させ、表題化合物(234)(200mg、94%)を無色の油として得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3):d、6.66(d、J=3.9Hz、1H)、4.79(dd、J=3.9、9.9Hz、1H)、4.43-4.34(m、1H)、4.18(d、J=4.6Hz、2H)、2.34-2.25(m、1H)、2.13(s、3H)、2.12(s、3H)、2.07(s、3H)、1.71(ddd、J=12.0、12.0、12.0Hz、1H)。
【0272】
[(2S,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(235)
【化67】
N-ヒドロキシフタルイミド(93mg、0.570mmol、0.950当量)及び臭化テトラブチルアンモニウム(97mg、0.300mmol、0.500当量)のジクロロメタン(0.6mL)溶液に、炭酸カリウム(91mg、0.660mmol、1.10当量)の水(1.2mL)溶液、それに続いて[(2S,4S,5R,6R)-4,5-ジアセトキシ-6-ブロモ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(234)(212mg、0.600mmol、1.00当量)のジクロロメタン(1.0mL)溶液を加えた。反応混合物を暗中24時間撹拌し、LCMSによってモニターした。次いで、反応混合物をジクロロメタン及び飽和NaHCO
3水溶液に分配した。有機層を分離し、水層をさらなるジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出物を相分離カートリッジを使用して分離し、揮発性物質を蒸発させ、薄茶色の油(322mg)を得て、これをシリカクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル(2~50%)で溶出する12gカートリッジ)によって精製し、表題化合物(235)(172mg、66%)を白色の泡として得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3)d7.88-7.83(m、2H)、7.81-7.74(m、2H)、5.21(dd、J=7.7、9.1Hz、1H)、5.13-5.03(m、1H)、5.01(d、J=7.9Hz、1H)、4.28(dd、J=5.9、11.6Hz、1H)、4.13(d、J=5.1Hz、1H)、3.85-3.76(m、1H)、2.25-2.17(m、1H)、2.21(s、3H)、2.07(s、3H)、2.04(s、3H)、1.76(ddd、J=12.2、12.2、12.2Hz、1H)。LC/MS:Rt=1.49分;m/z=458[M+Na]
+。
【0273】
[(2S,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(236)
【化68】
[(2S,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(235)(270mg、0.620mmol、1.00当量)のメチルアルコール(2mL)懸濁液に、ヒドラジン一水和物(98%、0.031mL、0.620mmol、1.00当量)を加えた。反応混合物を0℃にて撹拌し、TLCによってモニターした。35分後、結果として生じた固体を濾過し、冷たいメタノールで洗浄し、廃棄した。濾液をジクロロメタンで希釈し、飽和NaHCO
3水溶液、水及びブラインで洗浄した。有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、揮発性物質を蒸発させ、粗生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィー、(シクロヘキサン:酢酸エチル(10~70%)で溶出する12gシリカカートリッジ)による精製によって、表題化合物(236)(180mg、95%)を白色の固体として得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3):d、5.76-5.74(m、2H)、5.04-4.95(m、2H)、4.62(d、J=8.8Hz、1H)、4.20-4.16(m、2H)、3.85-3.76(m、1H)、2.18-2.11(m、1H)、2.10(s、3H)、2.08(s、3H)、2.03(s、3H)、1.66-1.57(m、1H)。
【0274】
[(2S,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[[(E)-3-[4-[[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(237)
【化69】
(E)-3-[4-[[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エン酸(237mg、0.426mmol、1.00当量)(203)のN,N-ジメチルホルムアミド(4.5mL)溶液に、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(87mg、0.566mmol、1.33当量)及びN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド塩酸塩(109mg、0.566mmol、1.33当量)を加えた。室温にて10分間撹拌した後、溶液を0℃に冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.099mL、0.566mmol、1.33当量)を含有する[(2S,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-アミノオキシ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(236)(130mg、0.426mmol、1.00当量)のN,N-ジメチルホルムアミド(1.5mL)溶液をゆっくりと加えた。このように得られた溶液を室温にて一晩撹拌した。次いで、反応混合物を最小容量へと濃縮し、0℃に冷却し、飽和NH
4Cl水溶液でクエンチした。黄色の沈殿物を濾過によって集め、水で洗浄し、酢酸エチルに再溶解し、水、NaHCO
3水溶液(飽和)、及びブラインで洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、揮発性物質を蒸発させ、粗生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル(5~70%)で溶出する12gシリカカートリッジ)による精製によって、表題化合物(237)(270mg、75%)を黄色の固体として得た。LC/MS:Rt=1.93分;m/z=844[M+H]
+。
【0275】
実施例8:[(2S,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[[(E)-3-[4-[[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチルアミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(123)
【化70】
[(2S,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[[(E)-3-[4-[[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(237)(250mg、0.296mmol、1.00当量)のN,N-ジメチルホルムアミド(2.25mL)溶液に、0℃にてトリエチルアミン(1.1mL、8.15mmol、27.5当量)をゆっくりと加えた。反応混合物を室温にて24時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチル及び飽和NH
4Cl水溶液に分配した。有機層を分離し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮し、粗生成物を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(12g、50umシリカカートリッジ、[シクロヘキサン:(EA:IMS3:1)](1~60%)で溶出する)によって精製し、表題化合物(123)(142mg、77%)を白色の固体として得た。
1H NMR(400MHz、MeOD):d7.58-7.47(m、3H)、7.38(d、J=7.8Hz、1H)、7.29(d、J=8.8Hz、2H)、7.22(d、J=7.7Hz、1H)、7.02-6.89(m、2H)、6.49-6.42(m、1H)、5.16-5.09(m、1H)、4.97-4.88(m、2H)、4.20-4.17(m、2H)、3.97-3.92(m、1H)、3.84-3.82(m、2H)、2.97-2.84(m、4H)、2.35-2.34(m、3H)、2.17-2.00(m、10H)、1.63(ddd、J=12.1、12.1、12.1Hz、1H)。LC/MS:Rt=3.34分;m/z=622.2[M+H]
+。
【0276】
【化71】
スキーム10は、化合物124の調製を例示する。
【0277】
実施例9:(E)-N-[(2S,3R,4S,6S)-3,4-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン-2-イル]オキシ-3-[4-[[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチルアミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エナミド
【化72】
[(2S,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[[(E)-3-[4-[[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチルアミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(110mg、0.177mmol、1.00当量)のメチルアルコール(4.40mL)(123)溶液に、水(0.60mL)及びトリエチルアミン(0.62mL、4.42mmol、25.0当量)を加えた。反応混合物を室温にて24時間撹拌した。LCMSは、出発材料及び中間体を示した。反応混合物を室温にて48時間撹拌した。さらなるトリエチルアミン(148uL)及び水(148uL)を加え、混合物をさらに6時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:MeOH(1~20%)で溶出する12g、15ミクロンカートリッジ)によって精製し、表題(124)化合物(49mg、53%)を白色の固体として得た。
1H NMR(400MHz、DMSO):d10.68(s、1H)、7.56-7.50(m、3H)、7.36(d、J=7.9Hz、3H)、7.20(d、J=7.9Hz、1H)、6.97-6.86(m、2H)、6.48(d、J=16.0Hz、1H)、5.05-4.99(m、1H)、4.72(s、1H)、4.50(d、J=7.9Hz、1H)、3.75-3.73(m、2H)、3.57-3.43(m、3H)、3.43-3.39(m、1H)、3.03-2.98(m、1H)、2.78(t、J=7.3Hz、2H)、2.67(t、J=7.4Hz、2H)、2.30(s、3H)、1.81(dd、J=4.3、12.1Hz、1H)、1.18(ddd、J=12.0、12.0、12.0Hz、1H)。LC/MS:RT=2.47分;m/z=496.2[M+H]
+。
【0278】
【化73】
スキーム11は、化合物125の調製を例示する。
【0279】
(1R,2R,6S,7R,8R)-4,4-ジブチル-3,5,10,11-テトラオキサ-4-スタンナトリシクロ[6.2.1.02,6]ウンデカン-7-オール(239)
【化74】
トルエン(150mL)中の1,6-アンヒドロ-β-D-グルコース(238)(5.00g、30.8mmol、1.00当量)及びジブチルスズ(IV)オキシド(7.68g、30.8mmol、1.00当量)の混合物を、水の共沸除去のために装備されている装置において12時間還流させた(Grindley et al.,C-arbohydrate Res.1988,172,311を参照されたい)。冷却した混合物を減圧下で蒸発させ、粗スタンニレン誘導体(239)を白色の半固体として得て、これを精製せずに使用した。
【0280】
1,6-アンヒドロ-4-O-p-トリルスルホニル-β-D-グルコピラノース(240)
【化75】
(1R,2R,6S,7R,8R)-4,4-ジブチル-3,5,10,11-テトラオキサ-4-スタンナトリシクロ[6.2.1.02,6]ウンデカン-7-オール(239)(12.54g、31.9mmol、1.00当量)のテトラヒドロフラン(300mL)溶液に、トリエチルアミン(4.9mL、35.1mmol、1.10当量)及び粉末化4A分子篩(3g)を加えた。p-トルエンスルホニルクロリド(6.69g、35.1mmol、1.10当量)を加え、混合物を2日間激しく撹拌し、次いで、Celiteを通して濾過した。濾液を蒸発させ、残渣をジクロロメタン(150mL)で希釈した。有機溶液を水(2×50mL)で洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、蒸発させた。粗材料を、7:3のジクロロメタン:2-メチルテトラヒドロフランを溶離液として使用したシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって精製した。溶出する第1の構成要素は1,6-アンヒドロ-2,4-ジ-O-p-トリルスルホニル-β-D-グルコピラノースであったが、これは容易に分離した。第2の構成要素は所望の生成物(240)(約8gの無色の油)であったが、これは他の位置異性体1,6-アンヒドロ-2-O-p-トリルスルホニル-β-D-グルコピラノースで汚染されており、これは分離することが困難であった。混合物をアセトン、エーテル、及び石油エーテルの混合物(沸点30~60℃)から再結晶化し、所望の生成物(240)を白色の針状物質として得た。第2の再結晶化によって、純粋な生成物(2.2g、22%)を単一の位置異性体として得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):d7.83(d、J=8.3Hz、2H)、7.38(d、J=8.1Hz、2H)、5.48(s、1H)、4.65(d、J=5.4Hz、1H)、4.42(s、1H)、4.13(d、J=8.1Hz、1H)、3.79-3.71(m、2H)、3.49(dd、J=0.9、11.3Hz、1H)、2.50(d、J=7.5Hz、1H)、2.47(s、3H)、2.32(d、J=11.4Hz、1H)。
【0281】
1,6-アンヒドロ-2,3-ビス(O-メトキシメチル)-4-O-(4-トルエンスルホニル)-β-D-グルコピラノース(241)
【化76】
撹拌した[(1R,2S,3R,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-2-イル]4-メチルベンゼンスルホネート(240)(2.20g、6.95mmol、1.00当量)のジクロロメタン(50mL)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(13mL、76.5mmol、11.0当量)及びクロロメチルメチルエーテル(5.3mL、69.5mmol、10.0当量)を加えた。混合物を40℃にて4時間撹拌し、茶色の溶液を得た。溶液を冷却し、次いで、水(50mL)でクエンチした。混合物をジクロロメタン(2×50mL)で抽出し、合わせた有機相をブライン(100mL)で洗浄した。有機溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル40g、酢酸エチル/ヘキサン、(5~50%))によって精製し、[(1R,2R,3R,4R,5R)-3,4-ビス(メトキシメトキシ)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-2-イル]4-メチルベンゼンスルホネート(241)(2.10g、5.19mmol、75%)を無色の油として得た。Rf=0.5(シリカ、酢酸エチル/シクロヘキサン1:1)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):d7.84(d、J=8.3Hz、2H)、7.36(d、J=8.1Hz、2H)、5.46(s、1H)、4.68-4.63(m、2H)、4.59(s、2H)、4.58-4.53(m、1H)、4.44(s、1H)、4.04(d、J=7.7Hz、1H)、3.86-3.84(m、1H)、3.71(dd、J=6.0、7.5Hz、1H)、3.52-3.50(m、1H)、3.37(s、3H)、3.32(s、3H)、2.45(s、3H)。
【0282】
1,6-アンヒドロ-4-デオキシ-4-フルオロ-2,3-ビス(O-メトキシメチル)-β-D-ガラクトピラノース)(242)
【化77】
[(1R,2R,3R,4R,5R)-3,4-ビス(メトキシメトキシ)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-2-イル]4-メチルベンゼンスルホネート(241)(2.10g、5.19mmol、1.00当量)を、フッ化テトラブチルアンモニウム(THF中1M、55mL、10当量)中で還流させながら5日間撹拌した。黒色の混合物を冷却し、蒸発させた。残渣を水(100mL)で希釈し、混合物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗材料をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/シクロヘキサン、0~30%)によって精製し、(1R,2S,3R,4R,5R)-2-フルオロ-3,4-ビス(メトキシメトキシ)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン(242)を浅黄色の油として得た(470mg、25%収率、70%純度)。望ましいフルオロ生成物及び未知の他の生成物を含有するこの分離できない混合物を、次のステップのためにそれ以上精製することなく使用した。Rf=0.51(シリカ、酢酸エチル/シクロヘキサン2:3)。NMR(400MHz、CDCl
3)は、主要な構成要素(約70%純度)として生成物(242)と一致した。
【0283】
1,2,3,6-テトラ-O-アセチル-4-デオキシ-4-フルオロ-α/β-D-ガラクトピラノース(243)
【化78】
無水酢酸(5.3mL、55.9mmol、30.0当量)中の化合物(1R,2S,3R,4R,5R)-2-フルオロ-3,4-ビス(メトキシメトキシ)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン(242)(470mg、1.86mmol、1.00当量)(70%純度)を含有する混合物の撹拌した溶液に、0℃にて硫酸(0.99mL、18.6mmol、10.0当量)を滴下で加えた。混合物を室温にて72時間撹拌した。次いで、混合物を0℃に冷却し、酢酸ナトリウム(3.06g、37.3mmol、20.0当量)を加え、さらに20分間撹拌し、次いで、水(20mL)でクエンチした。混合物をジクロロメタン(3×15mL)で抽出した。合わせた有機相を水(3×30mL)及びブライン(30mL)で連続的に洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、12g、15μm、シクロヘキサン中の酢酸エチル、1~40%)によって精製し、生成物[(2R,3S,4R,5R)-4,5,6-トリアセトキシ-3-フルオロ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(243)(360mg、0.925mmol、50%)のアノマーの混合物(α/β=4:1)を無色の油として得た(360mg、90%純度、約50%収率)。Rf=0.4(シリカ、AcOEt/ヘキサン、1:1)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ6.39(d、J=3.5Hz、1H)、5.43-5.39(m、1H)、5.32-5.21(m、1H)、4.97(dd、J=2.7、50.2Hz、1H)、4.32-4.16(m、3H)、2.16(s、3H)、2.14(s、3H)、2.09(s、3H)、2.03(s、3H)。
【0284】
[(2R,3S,4R,5R)-4,5-ジアセトキシ-6-ブロモ-3-フルオロ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(244)
【化79】
撹拌した[(2R,3S,4R,5R)-4,5,6-トリアセトキシ-3-フルオロ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(243)(360mg、1.03mmol、1.00当量)のジクロロメタン(6.00mL)溶液に、0℃にて6Mの臭化水素(4.0mL、24.0mmol、23.4当量)をAcOH中の33重量%溶液として加えた。混合物を室温にて1時間撹拌し、次いで、0℃にて飽和NaHCO
3水溶液(20mL)でクエンチした。ジクロロメタン層を疎水性フリットを通して濾過し、蒸発させなかった。TLC(50:50酢酸エチル:シクロヘキサン)はより極性でないスポットを示したが、SMの殆どは反応した。粗ブロミド(244)を、それ以上精製することなく次のステップのためにジクロロメタン中の溶液として使用した。
【0285】
[(2R,3S,4R,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ-3-フルオロ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(245)
【化80】
N-ヒドロキシフタルイミド(224mg、1.37mmol、0.950当量)、臭化テトラブチルアンモニウム(233mg、0.721mmol、0.500当量)、ジクロロメタン(2.0mL)及び炭酸カリウム(219mg、1.59mmol、1.10当量)の水(3.9mL)溶液に、[(2R,3S,4R,5R)-4,5-ジアセトキシ-6-ブロモ-3-フルオロ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(244)(535mg、1.44mmol、1.00当量)のジクロロメタン(2.0mL)溶液を加えた。溶液を室温にて撹拌し、LCMSによってモニターした。24時間後、反応混合物をジクロロメタン及び飽和NaHCO
3水溶液に分配した。有機層を分離し、水層をさらなるジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、揮発性物質を蒸発させ、粗生成物を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー、(シクロヘキサン:酢酸エチル(2~40%)で溶出する20gシリカカートリッジ)によって精製し、表題化合物(245)(443mg、68%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3):d7.91-7.77(m、4H)、5.55(dd、J=8.6、9.8Hz、1H)、5.14-4.80(m、3H)、4.45(dd、J=6.0、11.3Hz、1H)、4.28(dd、J=7.3、11.2Hz、1H)、3.92-3.78(m、1H)、2.24(s、3H)、2.17(s、3H)、2.06(s、3H)。LC/MS;Rt=1.58分;m/z=476[M+Na]
+。
【0286】
[(2R,3S,4R,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-アミノオキシ-3-フルオロ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(246)
【化81】
[(2R,3S,4R,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ-3-フルオロ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(246)(440mg、0.971mmol、1.00当量)のメチルアルコール(6.00mL)懸濁液に、0℃にてヒドラジン一水和物(0.047mL、0.971mmol、1.00当量)をゆっくりと加えた。反応混合物を0℃にて45分間撹拌し、TLC(1:1酢酸エチル:シクロヘキサン)及びLCMSによってモニターした。固体を濾過によって分離し、乾燥させ、別に保持した。濾液をジクロロメタンで希釈し、冷たい飽和NaHCO
3水溶液及び水で洗浄した。有機層を相分離カートリッジに通過させ、濃縮し、原油を得た。不純な固体及び原油の両方をフラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル(10~80%)で溶出する12gシリカカートリッジ)によって精製し、表題化合物(247)(230mg、73%)を白色の固体として得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3):d、5.82(s、2H)、5.39(t、J=8.7Hz、1H)、5.07-4.78(m、2H)、4.71(d、J=8.2Hz、1H)、4.43-4.25(m、2H)、3.87(ddd、J=6.7、6.7、26.3Hz、1H)、2.14(s、3H)、2.12(s、3H)、2.10(s、3H)。
【0287】
[(2R,3S,4R,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[[(E)-3-[4-[[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-3-フルオロ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(247)
【化82】
(E)-3-[4-[[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エン酸(203)(250mg、0.449mmol、1.00当量)のN,N-ジメチルホルムアミド(4.0mL)溶液に、室温にて一度に1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(91mg、0.597mmol、1.33当量)及びN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド塩酸塩(114mg、0.597mmol、1.33当量)を加えた。10分間撹拌した後、溶液を0℃に冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.10mL、0.597mmol、1.33当量)を含有する[(2R,3S,4R,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-アミノオキシ-3-フルオロ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(246)(145mg、0.449mmol、1.00当量)のN,N-ジメチルホルムアミド(2.0mL)溶液をゆっくりと加えた。このように得られた溶液を室温にて一晩撹拌した。反応混合物を最小容量へと濃縮し、0℃に冷却し、飽和NH
4Cl水溶液(15mL)をゆっくりと加えることによってクエンチした。結果として生じた黄色の沈殿物を濾過によって集め、水で洗浄した。固体を酢酸エチルに再溶解し、水、NaHCO
3水溶液(飽和)及びブラインで洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、揮発性物質を蒸発させ、粗生成物(443mg)を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル(5~50%)で溶出する12gシリカカートリッジ)によって精製し、表題化合物(247)(236mg、61%)を白色の固体として得た。LC/MS:Rt=1.97分;m/z=862[M+H]
+。
【0288】
実施例10:[(2S,3R,4S,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-2-(フルオロメチル)-6-[[(E)-3-[4-[[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチルアミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(125)
【化83】
[(2R,3S,4R,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[[(E)-3-[4-[[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル-[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-3-フルオロ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(247)(236mg、0.274mmol、1.00当量)のN,N-ジメチルホルムアミド(2.5mL)溶液に、0℃にてトリエチルアミン(1.1mL、7.54mmol、27.5当量)を加えた。反応混合物を室温にて撹拌し、18時間後、溶液を少容量へと濃縮した。油性残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和NH
4Cl水溶液で洗浄した。有機層を相分離器カートリッジを通過させ、濾液を濃縮し、粗生成物を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(12gシリカカートリッジ、15ミクロン、シクロヘキサン:酢酸エチル(15~60%)で溶出)によって精製し、表題化合物(125)(48mg、26%)を白色の固体として得た。
1H NMR(400MHz、DMSO):d10.65(s、1H)、7.52-7.46(m、3H)、7.37-7.33(m、3H)、7.21-7.18(m、1H)、6.97-6.86(m、2H)、6.45-6.40(m、1H)、5.41-5.29(m、1H)、5.09-4.92(m、3H)、4.24-4.19(m、3H)、3.75-3.73(m、2H)、3.33(m、2H、水シグナル下)、2.78(t、J=7.3Hz、2H)、2.67(t、J=7.2Hz、2H)、2.30(s、3H)、2.09-2.03(m、9H)。LC/MS:Rt=3.37分;m/z=640[M+H]
+。
【0289】
【化84】
スキーム12は、化合物126の調製を例示する。
【0290】
実施例11:(E)-N-[(2S,3R,4S,5R,6S)-6-(フルオロメチル)-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-イル]オキシ-3-[4-[[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチルアミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エナミド(126)
【化85】
[(2R,3S,4R,5R,6S)-4,5-ジアセトキシ-3-フルオロ-6-[[(E)-3-[4-[[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチルアミノ]メチル]フェニル]プロパ-2-エノイル]アミノ]オキシ-テトラヒドロピラン-2-イル]メチルアセテート(125)(58mg、0.0907mmol、1.00当量)のメチルアルコール(2.50mL)溶液に、水(0.35mL)及びトリエチルアミン(0.32mL、2.27mmol、25.1当量)を加えた。反応混合物を室温にて撹拌し、LCMSによってモニターした。48時間後、粗反応混合物を濃縮乾燥し、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:MeOH(1~20%)で溶出する12gシリカカートリッジ、15ミクロン)によって精製し、表題化合物(126)(18mg、38%)を白色の固体として得た。
1H NMR(400MHz、DMSO):d10.65(s、1H)、7.57-7.48(m、3H)、7.38-7.34(m、3H)、7.20(d、J=7.9Hz、1H)、6.98-6.86(m、2H)、6.48(d、J=16.2Hz、1H)、5.38-5.38(m、1H)、4.95-4.88(m、1H)、4.72-4.51(m、2H)、3.76-3.53(m、6H)、3.43(t、J=8.9Hz、1H)、3.33(m、2H、水シグナル下)、2.79(t、J=7.3Hz、2H)、2.67(t、J=7.3Hz、2H)、2.31-2.29(m、3H)、1.25-1.22(m、1H)。LC/MS:Rt=2.52分;m/z=514[M+H]
+。
【0291】
【化86】
スキーム13は、化合物127の調製を例示する。
【0292】
[(2S,3R,4R,5S,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-(4-ホルミルフェノキシ)-2-メチル-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(248)
【化87】
1,2,3,4-テトラ-o-アセチル-アルファ-1-フコピラノース(205)(3.00g、9.03mmol、1.00当量)及び4-ヒドロキシベンズアルデヒド(2.20g、18.1mmol、2.00当量)の混合物を、1,2-ジクロロエタン(40ml)にアルゴン下で懸濁し、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(4.41g、36.1mmol、4.00当量)を加え、混合物を15分間撹拌し、溶解を確実にした。溶液を氷水中でアルゴン下で冷却した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(14mL、0.112mol、12.4当量)を滴下で加え、薄茶色の溶液を得た。このように得られた溶液を、TLC(トルエン中の20%酢酸エチル)が生成物を示すまで、63℃(外部)にて3時間加熱した。茶色の溶液を冷却し、泡立ちが終わるまで飽和NaHCO
3水溶液にゆっくりと加えることによって中和した。生成物をジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出物を1NのNaOHで洗浄し、未反応のフェノールをブラインと共に除去し、乾燥させ(PTFE)、濃縮した。粗生成物をシリカ上のクロマトグラフィー((40g、50μm)、トルエン中の0~20%酢酸エチルで溶出)によって精製し、第1の所望の生成物(248)(1.30g、2.64mmol、29%)を黄色の油として溶出し、これは静置すると半結晶化した。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)d9.93(s、1H)、7.86(d、J=9.0Hz、2H)、7.21-7.17(m、2H)、5.86(d、J=3.7Hz、1H)、5.58(dd、J=3.3、11.0Hz、1H)、5.37(dd、J=0.8、3.3Hz、1H)、5.31(dd、J=3.5、11.0Hz、1H)、4.22(q、J=6.5Hz、1H)、2.20(s、3H)、2.06(s、3H)、2.04(s、3H)、1.13(d、J=6.5Hz、3H)。
【0293】
[(2S,3R,4R,5S,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[4-(ヒドロキシメチル)フェノキシ]-2-メチル-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(249)
【化88】
[(2S,3R,4R,5S,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-(4-ホルミルフェノキシ)-2-メチル-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(248)(80%、1.30g、2.64mmol、1.00当量)のジクロロメタン(2.00mL)及びメチルアルコール(18.00mL)溶液を、氷水中で冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(100mg、2.64mmol、1.00当量)を加え、溶液を30分間撹拌した;黄色の呈色が消失した。TLC(酢酸エチル:シクロヘキサン1:1)は、より極性スポットの出現と共に、出発材料の消失を示した。混合物を、1Mの塩化水素(2.6mL、2.64mmol、1.00当量)を加えることによってクエンチした。溶媒を蒸発させ、粗材料を水及びジクロロメタンの間に分散させた。有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(PTFE)、蒸発させ、生成物を白色の泡として得て、真空中で乾燥させた。粗材料をシクロヘキサン中の0~50%酢酸エチルを使用してシリカ上で精製し、生成物(249)(880mg、2.22mmol、84%)を白色の泡として得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)d7.32(d、J=8.4Hz、2H)、7.05(d、J=8.7Hz、2H)、5.74(d、J=3.7Hz、1H)、5.58(dd、J=3.4、10.9Hz、1H)、5.36(d、J=3.1Hz、1H)、5.28(dd、J=3.6、10.9Hz、1H)、4.64(d、J=5.8Hz、2H)、4.27(q、J=6.6Hz、1H)、2.20(s、3H)、2.06(s、3H)、2.03(s、3H)、1.60(t、J=5.9Hz、1H)、1.12(d、J=6.5Hz、3H)。
【0294】
[(2S,3R,4R,5S,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[4-(ブロモメチル)フェノキシ]-2-メチル-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(250)
【化89】
[(2S,3R,4R,5S,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[4-(ヒドロキシメチル)フェノキシ]-2-メチル-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(249)(200mg、0.505mmol、1.00当量)の乾燥ジエチルエーテル(14mL)溶液を0℃に冷却し、三臭化リン(0.024mL、0.252mmol、0.500当量)を加えた。溶液を0℃にて撹拌し、TLC(酢酸エチル:シクロヘキサン1:1)によってモニターした。45分後、反応物を飽和NaHCO
3水溶液でクエンチした。生成物をジエチルエーテル中に抽出し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、溶媒を蒸発させ、表題化合物(250)(185mg、80%)を白色の固体として得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3)d7.35(td、J=2.5、9.5Hz、2H)、7.04(td、J=2.5、9.6Hz、2H)、5.76(d、J=3.6Hz、1H)、5.59(dd、J=3.4、10.9Hz、1H)、5.38(dd、J=1.2、3.5Hz、1H)、5.29(dd、J=3.7、10.8Hz、1H)、4.50(s、2H)、4.26(q、J=6.4Hz、1H)、2.21(s、3H)、2.07(s、3H)、2.04(s、3H)、1.14(d、J=6.5Hz、3H)。
【0295】
実施例12:[(2S,3R,4R,5S,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[4-[[[4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-シクロヘキセン-1-イル]メチル]ピペラジン-1-イル]ベンゾイル]-[4-[[3-モルホリノ-1-(フェニルスルファニルメチル)プロピル]アミノ]-3-(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル]スルホニル-アミノ]メチル]フェノキシ]-2-メチル-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(127)
【化90】
水酸化カリウム(36mg、0.637mmol、1.80当量)を、乾燥トルエン(14mL)中の4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-シクロヘキセン-1-イル]メチル]ピペラジン-1-イル]-N-[4-[[3-モルホリノ-1-(フェニルスルファニルメチル)プロピル]アミノ]-3-(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル]スルホニル-ベンズアミド(251)(345mg、0.354mmol、1.00当量)、[(2S,3R,4R,5S,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[4-(ブロモメチル)フェノキシ]-2-メチル-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(250)(183mg、0.398mmol)及び臭化テトラブチルアンモニウム(23mg、0.0708mmol、0.200当量)の撹拌した混合物に加えた。混合物を窒素下で80℃にて一晩撹拌し、LCMS及びTLC(ジクロロメタン:メタノール9.5:0.5)によってモニターした。48時間後、反応混合物を室温に冷却し、トルエンを蒸発によって除去した。残渣を水及び酢酸エチルに分配した。有機層を相分離カートリッジを通過させ、揮発性物質を蒸発させ、粗生成物(450mg)を得た。フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:MeOH0~3%で溶出する40g、15ミクロンシリカカートリッジ)による精製によって、不純な生成物を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン:[EA:IMS(3:1)]0~50%)で溶出する25g、15ミクロンシリカカートリッジ)によって再精製し、不純な生成物を得て、これをYMCセルロース-SC、10×250mmカラム、5um、55/45MeOH(0.1%NH
4OH)/CO
2、15ml/分、120バール、40C、DAD330nmを使用したSFCによって精製し、表題化合物(127)を2つのバッチ:白色の固体として(19mg、99%純度)、及びベージュ色の固体として(50mg、80%純度)で得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)d7.89-7.84(m、2H)、7.54(d、J=9.0Hz、2H)、7.40-7.36(m、5H)、7.35-7.27(m、5H)、7.10(d、J=9.2Hz、2H)、7.04(d、J=9.2Hz、1H)、6.99(d、J=8.4Hz、2H)、6.93(d、J=8.4Hz、2H)、6.78-6.74(m、2H)、6.57(d、J=9.3Hz、1H)、5.64(d、J=3.7Hz、1H)、5.54(dd、J=3.4、10.9Hz、1H)、5.34(dd、J=0.9、3.4Hz、1H)、5.26(dd、J=3.6、10.9Hz、1H)、4.85(s、2H)、4.22(q、J=6.5Hz、1H)、3.94-3.85(m、1H)、3.68-3.63(m、4H)、3.26(t、J=4.9Hz、4H)、3.13-3.00(m、2H)、2.79(s、2H)、2.43-2.22(m、12H)、2.16-2.07(m、1H)、2.02(d、J=8.2Hz、8H)、1.72-1.63(m、1H)、1.46(t、J=6.5Hz、2H)、1.10-1.08(m、3H)、0.99(s、6H)。LC/MS:Rt=6.87分;m/z=677.6[M+H]
+。
【0296】
【化91】
スキーム14は、化合物128の調製を例示する。
【0297】
実施例13:4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-シクロヘキセン-1-イル]メチル]ピペラジン-1-イル]-N-[4-[[3-モルホリノ-1-(フェニルスルファニルメチル)プロピル]アミノ]-3-(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル]スルホニル-N-[[4-[rac-(2S,3S,4R,5S,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチル-テトラヒドロピラン-2-イル[オキシフェニル]メチル]ベンズアミド
【化92】
[rac-(2S,3R,4R,5S,6S)-4,5-ジアセトキシ-6-[4-[[[4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-シクロヘキセン-1-イル]メチル]ピペラジン-1-イル]ベンゾイル]-[4-[[3-モルホリノ-1-(フェニルスルファニルメチル)プロピル]アミノ]-3-(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル]スルホニル-アミノ]メチル]フェノキシ]-2-メチル-テトラヒドロピラン-3-イル]アセテート(127)(40mg、0.0296mmol、1.00当量)のメチルアルコール(1.6mL)懸濁液に、0℃にて水(228uL)及びトリエチルアミン(25uL、0.177mmol、6.00当量)を加えた。反応をTLC1:1シクロヘキサン:[3:1EA:IMS]によってモニターし、室温にて一晩撹拌し、溶液に懸濁した固体を得た。反応物を濃縮し、揮発性物質の大部分を除去し、フラッシュクロマトグラフィー(12g、15ミクロンシリカカートリッジ、シクロヘキサン:[3:1EA:IMS](5~100%)で溶出)による精製のために残渣をHMN中に乾燥充填し、未反応の出発材料(10mg)を白色の固体として、及び表題化合物(11.6mg)(128)を白色の固体として得た。
1H NMR(400MHz、DMSO)d7.97(d、J=2.3Hz、1H)、7.79(dd、J=2.1、9.4Hz、1H)、7.43(d、J=8.9Hz、2H)、7.39-7.26(m、6H)、7.23-7.18(m、1H)、7.12-7.05(m、3H)、7.01(d、J=9.9Hz、1H)、6.97(d、J=8.7Hz、2H)、6.90-6.83(m、4H)、5.29(d、J=2.8Hz、1H)、4.84(s、2H)、4.77(d、J=5.9Hz、1H)、4.64(d、J=5.4Hz、1H)、4.55(d、J=4.5Hz、1H)、4.17-4.08(m、1H)、3.83(q、J=6.5Hz、1H)、3.76-3.67(m、2H)、3.56-3.43(m、5H)、3.41-3.32(m、2H)、3.27-3.20(m、4H)、2.75-2.71(m、2H)、2.34-2.19(m、10H)、2.17-2.12(m、2H)、2.01-1.87(m、3H)、1.78-1.70(m、1H)、1.43(t、J=6.4Hz、2H)、1.02(d、J=6.6Hz、3H)、0.97(s、6H)。LC/MS:Rt=1.41分;m/z=614[M+H]
+/2。
【0298】
LCMS方法:
方法A:Chromlith、C-18、50×4.6mm;1.5mL/分の流量、ELSD及び254nmでのUV検出;移動相A:水中の0.1%TFA;移動相B:アセトニトリル中の0.1%TFA;6分に亘る5~100%移動相B;周囲温度。
【0299】
方法B:Chromlith、C-18、50×4.6mm;1.5mL/分の流量、ELSD及び254nmでのUV検出;移動相A:水中の0.1%TFA;移動相B:アセトニトリル中の0.1%TFA;12分に亘る5~100%移動相B;周囲温度。
【0300】
方法C:Water Cortex、C18、3.0mm×50mm、2.7umカラム、3uL注入、1.2mL/分の流量、220及び254nmでのUV検出、4分に亘り5%ACN(0.1%TFA)から100%水(0.1%TFA)、100%(ACN、0.1%TFA)で0.5分間留まる、次いで、1.5分に亘り5%(ACN、0.1%TFA)へと平衡化。
【0301】
細胞加水分解アッセイ
T47D乳がん細胞を、10%加熱不活性化ウシ胎仔血清を含有するRPMI1640培地中で培養した。目的の遺伝子を標的とするストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9及びsgRNAを含有するレンチウイルスのコンストラクトで細胞株を感染させた。感染細胞は抗生物質処理によって選択した。化合物の細胞加水分解をアセスメントするために、細胞を96ウェルプレートに播種した。翌日、30uMの化合物を細胞に加えた。相対的蛍光(励起330nm/発光450nm)をベースラインにおいて記録し、Molecular Devices SpectraMax M5プレートリーダーを使用して24時間毎に2日~4日間モニターした。各時点での細胞を伴わない培地中の各化合物の平均相対的蛍光を、細胞を含有するウェルによって生じた相対的蛍光から減算した。生成物のラダー
【0302】
CRISPR操作されたがん細胞株生存率アッセイのための実験手順
T47D及びHCC1954乳がん細胞を、10%加熱不活性化ウシ胎仔血清を含有するRPMI1640培地中で培養した。目的の遺伝子を標的とするストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9及びsgRNAを含有するレンチウイルスのコンストラクトで細胞株を感染させた。感染細胞を抗生物質処理によって選択した。化合物処理を受けた細胞生存率をアセスメントするために、細胞を96ウェルプレート中に播種した。翌日、化合物の10の濃度をカバーする段階希釈物を細胞に加えた。細胞を3日間処理した。細胞生存率はミトコンドリアのデヒドロゲナーゼ活性(XTTアッセイ、Cayman Chemical)によって決定した。用量応答曲線を生じさせるために、データを4パラメーターヒル関数にフィットさせ、絶対IC50をY=0.5生存度で決定した。
【0303】
細胞毒性アッセイ
増殖細胞及び老化細胞を、約90%密集度に達すると継代して、下記で特定した条件下でT175フラスコ中に維持した。細胞毒性アッセイにおける使用の前に、細胞を汚染及び健康について位相差顕微鏡下で外観検査した;汚染又はかなりの細胞デブリが留意された場合、細胞を使用しなかった。健康な細胞を96ウェルプレートの中央の60ウェル中に5,000個又は10,000個の細胞/ウェルの濃度(それぞれ、増殖及び老化条件のため)で蒔いた。各プレートにおける外側の36ウェルは、内部ウェルの乾燥及び分光測定読み取りによるエッジ効果の両方を防止するためにDPBSを含有した。細胞を96ウェルプレート中に播種した後、薬物の添加の前に付着するように24時間与えた。薬物を、概ね4Log10単位にまたがる10の異なる濃度に亘り三連で加えた。プレートを薬物と共に72時間インキュベートし、その時点で薬物含有培地を吸引し、XTT培地で置き換えた。XTT試薬は、NAD(P)H依存性代謝反応による還元によって吸光度シフトを受け、このように得られたシフトを使用して、薬物処理後の残存する細胞の生存度を定量化することができる。ひとたび適切なダイナミックレンジが達成されると、各試験物品についての吸光度読み取りを行った(一般に、0.7~1.4吸光度単位)。次いで、このように得られたデータをバックグラウンド補正し、対数を得て、濃度応答曲線を生じさせた。
【0304】
A549老化誘導プロトコル
野生型A549細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン抗菌カクテルを補充したDMEM(高グルコース、4mMのL-グルタミン、ピルビン酸ナトリウムは非含有)中に解凍した。細胞を37C、5%CO
2、及び空気中の酸素で培養した。老化誘導のために、20継代若しくはそれ未満におけるA549のみを使用した。細胞を60~70%密集度まで成長させ、その後、培地を吸引し、25μMのゲムシタビンを含有する新鮮な培地で置き換えた。培地を新しくすることなしに細胞を72時間培養した。処理の後、薬物含有培地を吸引し、細胞を1×DPBSで穏やかに洗浄し、新鮮な薬物非含有培地をフラスコに加え、この時点で、細胞をさらに72時間静置した。この静置期間に続いて、老化誘導について形態学、SA-β-gal活性、及びEdU組込みによってアセスメントした。注:ゲムシタビンによる老化誘導は、A549における細胞周期への自発的な再進入を時折引き起こし得る。この理由のために、細胞は、非老化集団の成長を回避するために、様々なアッセイにおいて誘導の14日以内に使用すべきである。細胞毒性アッセイにおいて、継代20若しくはそれ未満の増殖細胞を比較対照として含めた。代表的なA549画像EdU組込みアッセイ[FITCチャネルにおいて可視化したEdUフルオロフォア、DAPIで対比染色])を、
図2において例示する。
【0305】
IMR90老化誘導プロトコル
IMR90一次肺線維芽細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン抗菌カクテルを補充したDMEM(高グルコース、4mMのL-グルタミン、ピルビン酸ナトリウムは非含有)中で解凍した。細胞を低酸素(5%O
2)条件下で37C及び5%CO
2にて培養した。老化誘導のために、概ね50の集団倍加若しくはそれ未満でのIMR90のみを使用して、複製老化の結果としての交絡効果を回避した。細胞を60~70%密集度まで成長させ、その後、培地を吸引し、300nMのドキソルビシンを含有する新鮮な培地と置き換えた。細胞を薬物含有培地中で48時間培養し、それに続いて培地の3分の1を吸引し、これを薬物非含有培地と置き換えた。次いで、細胞をさらに24時間培養し、その後、全ての培地を吸引し、1×DPBSで穏やかに洗浄し、薬物非含有培地でリフレッシュし、細胞をインキュベーターに戻し、72時間静置した。この静置期間に続いて、老化誘導を形態学、SA-β-gal活性、及びEdU組込みによってアセスメントした。誘導の21日以内に細胞を下流のアッセイのために使用した。代表的なIMR90画像(左から右へ:SA-β-Gal、SA-α-Fuc、EdUの組込みアッセイ[FITCチャネルにおいて可視化したEdUフルオロフォア、DAPIで対比染色])を
図1において例示する。
【0306】
下記の表2は、T47/DsgNTC、T47D/sgFUCAl、T47D/sgGLBsgGALC、IMR90SEN0、A549SENによって測定したような、選択した化合物の生物活性を報告する。
【0307】
【国際調査報告】