(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】電極組立体、円筒形バッテリー、それを含むバッテリーパック及び自動車
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20240905BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240905BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240905BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240905BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240905BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240905BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240905BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240905BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20240905BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20240905BHJP
H01M 50/56 20210101ALI20240905BHJP
H01M 50/152 20210101ALI20240905BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240905BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20240905BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20240905BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/131
H01M4/62 Z
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M50/107
H01M50/545
H01M50/56
H01M50/152
H01M4/38 Z
H01M50/533
H01M50/538
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515667
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 KR2022016195
(87)【国際公開番号】W WO2023068885
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0142192
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-シク・パク
(72)【発明者】
【氏名】クァン-ヒ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ミュン-アン・イ
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC06
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029BJ15
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ05
5H043AA04
5H043CA03
5H043CA12
5H043DA03
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050DA10
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA12
5H050FA05
5H050FA06
5H050FA16
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA09
(57)【要約】
本発明の一実施形態による電極組立体は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在された分離膜とが巻取軸を中心に巻き取られた電極組立体であって、前記第1電極は巻取方向に沿って無地部と有地部との境界を覆う絶縁層を含む。前記第1電極の無地部は、巻取方向に沿って繰り返して形成された切断線によって分離された複数の分切片を含む。前記複数の分切片は、前記電極組立体の半径方向に沿って折り曲げられて折曲面を形成する。前記第1電極の無地部の領域のうち最も低い高さに対応する地点を通過する線を基準線とし、前記折曲面を形成する分切片のうち最も低い高さを有する分切片を最小分切片とするとき、前記分離膜の巻取軸方向の一端部と前記基準線との離隔距離は前記最小分切片の高さの30%以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在された分離膜とが巻取軸を中心に巻き取られることでコア及び外周面が画定された電極組立体であって、
前記第1電極及び前記第2電極は、それぞれ、長辺端部に活物質層がコーティングされていない無地部と、前記無地部を除いた領域に活物質層がコーティングされている有地部とを含み、
前記第1電極は、巻取方向に沿って無地部と有地部との境界を覆う絶縁層を含み、
前記第1電極の無地部は、巻取方向に沿って繰り返して形成された切断線によって分離された複数の分切片を含み、
前記複数の分切片の少なくとも一部は、前記電極組立体の半径方向に沿って折り曲げられて前記電極組立体の巻取軸方向の端部に折曲面を形成し、
前記第1電極の無地部の領域のうち最も低い高さに対応する地点を前記巻取方向と平行に通過する線を基準線とし、前記折曲面を形成する分切片のうち最も低い高さを有する分切片を最小分切片とするとき、前記分離膜の巻取軸方向の一端部と前記基準線との離隔距離は、前記最小分切片の高さの30%以下である、電極組立体。
【請求項2】
前記基準線の位置が前記切断線の下端位置に対応する、請求項1に記載の電極組立体。
【請求項3】
前記分離膜の巻取軸方向の一端部と前記基準線との離隔距離が1.5mm以下である、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項4】
前記絶縁層は、前記第1電極の両面に備えられ、
前記絶縁層の巻取軸方向の一端部は、前記分離膜の巻取軸方向の一端部と同じ高さ又は一端部よりも外側に位置している、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項5】
前記分離膜を介在して前記絶縁層と対向する前記第2電極の巻取軸方向の一端部は、前記分離膜の巻取軸方向の一端部よりも外側に突出していない、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項6】
前記第1電極の有地部と無地部との境界領域に活物質層の厚さが減少している第1スライディング部を含み、
前記第2電極の有地部と無地部との境界領域に活物質層の厚さが減少している第2スライディング部を含み、
前記第1スライディング部と前記第2スライディング部とは、巻取軸方向において互いに反対方向に位置している、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項7】
前記第1電極の有地部は、活物質のローディング量が減少するローディング減少部を含み、
前記ローディング減少部の位置は、前記第2スライディング部の位置に対応する、請求項6に記載の電極組立体。
【請求項8】
前記絶縁層が前記第1スライディング部の少なくとも一部を覆っている、請求項6に記載の電極組立体。
【請求項9】
前記第1電極の無地部の両面のうち前記コアに向かう面に形成された絶縁層は、前記第1電極の無地部の巻取軸方向の末端まで延在している、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項10】
前記第1電極の無地部の両面のうち前記コアに向かう面の反対面に形成された絶縁層は、前記第1電極の無地部の折曲地点まで延在している、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項11】
前記第1電極の有地部の巻取軸方向の長さは、前記第2電極の有地部の巻取軸方向の長さよりも短く、
前記第2電極の有地部の巻取軸方向の一端部及び他端部は、前記第1電極の有地部の巻取軸方向の一端部及び他端部よりも外側に位置している、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項12】
前記複数の分切片の巻取軸方向の高さ及び巻取方向の幅のうち少なくとも一つは、個別的に又はグループ毎にコア側から外周側に向かって段階的に増加する、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項13】
前記複数の分切片は、コア側から外周側に向かって複数の分切片グループを形成し、同一分切片グループに属した分切片は、巻取方向の幅、巻取軸方向の高さ及び巻取方向の離隔ピッチのうちの少なくとも一つが互いに同一である、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項14】
同一分切片グループに属した分切片は、コア側から外周側に向かって巻取方向の幅、巻取軸方向の高さ及び巻取方向の離隔ピッチのうちの少なくとも一つが段階的に増加する、請求項13に記載の電極組立体。
【請求項15】
前記複数の分切片は、前記半径方向に折り曲げられながら前記巻取軸方向に沿って多重に重なっている、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項16】
前記第1電極の無地部は、前記電極組立体のコアに隣接したコア側無地部、前記電極組立体の外周表面に隣接した外周側無地部、及び前記コア側無地部と前記外周側無地部との間に介在された中間無地部を含み、
前記コア側無地部及び前記外周側無地部のうちの少なくとも一つは、巻取軸方向の高さが前記中間無地部よりも相対的に低く、
前記コア側無地部の半径方向の長さは、前記中間無地部の最内側分切片の折曲長さと同一であるか又は大きい、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項17】
前記分切片の切断線の下端と前記活物質層との間にギャップが設けられている、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項18】
前記第1電極の活物質層は、単粒子、疑似単粒子、又はこれらの組み合わせを含む正極活物質を含み、
前記正極活物質の体積累積分布で現れる最小粒子サイズであるD
minが1.0μm以上であり、
前記正極活物質の体積累積分布において体積累積量が50%であるときの粒子サイズであるD
50が5.0μm以下であり、
前記正極活物質の体積累積分布で現れる最大粒子サイズであるD
maxが12μm~17μmである、請求項1または2に記載の電極組立体。
【請求項19】
前記正極活物質は、体積累積粒度分布グラフにおいて単一ピークが現れるユニモーダル粒度分布を有し、下記の数式1:
[数式1]
粒度分布(PSD)=(D
max-D
min)/D
50
で表される粒度分布(PSD)が3以下である、請求項18に記載の電極組立体。
【請求項20】
前記単粒子、疑似単粒子、又はこれらの組み合わせは、前記第1電極の活物質層に含まれた正極活物質の全体重量を基準にして95wt%~100wt%の量で含まれる、請求項18に記載の電極組立体。
【請求項21】
前記正極活物質は、遷移金属の全体モル数を基準にしてNiを80モル%以上で含むリチウムニッケル系酸化物を含む、請求項18に記載の電極組立体。
【請求項22】
前記第1電極の活物質層の空隙率は15%~23%であり、
前記第1電極の活物質層は0.05wt%~5wt%の重量比率で鱗片状黒鉛を含む、請求項18に記載の電極組立体。
【請求項23】
前記第1電極の活物質層がカーボンナノチューブをさらに含む、請求項18に記載の電極組立体。
【請求項24】
前記第2電極の活物質層は、シリコン系負極活物質及び炭素系負極活物質を含み、
前記シリコン系負極活物質と炭素系負極活物質とは、1:99~20:80の重量比で含まれる、請求項18に記載の電極組立体。
【請求項25】
請求項1または2に記載の電極組立体と、
一側に形成された開放部を通して前記電極組立体を収容し、前記第2電極の無地部と電気的に接続されるバッテリーハウジングと、
前記第1電極の無地部と電気的に接続され、少なくとも一部が外側に露出している端子と、
前記バッテリーハウジングの開放部を覆う密封体とを含む円筒形バッテリー。
【請求項26】
請求項25に記載の円筒形バッテリーを複数個含む、バッテリーパック。
【請求項27】
請求項26に記載のバッテリーパックを含む、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極組立体、円筒形バッテリー、それを含むバッテリーパック及び自動車に関する。また、本発明は、電気化学的特性が向上した電気化学素子用電極及び該電極を含む電極組立体に関する。
【0002】
本出願は、2021年10月22日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0142192号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
製品群毎の適用性が高く、高いエネルギー密度などの電気的特性を有する二次電池は、携帯用機器だけでなく、電気的駆動源によって駆動する電気自動車(EV:Electric Vehicle)又はハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)などに普遍的に適用されている。以下、バッテリーとは、繰り返して充放電可能な二次電池を指すものとする。
【0004】
このようなバッテリーは、化石燃料の使用を画期的に減少させるという一次的な長所だけでなく、エネルギーの使用による副産物が全く発生しないという点で環境にやさしく、エネルギー効率向上のための新たなエネルギー源として注目されている。
【0005】
現在、リチウムイオンバッテリー、リチウムポリマーバッテリー、ニッケルカドミウムバッテリー、ニッケル水素バッテリー、ニッケル亜鉛バッテリーなどのバッテリーが広く使用されている。単位バッテリーの作動電圧は約2.5V~4.5Vである。より高い出力電圧が求められる場合、複数のバッテリーを直列に接続してバッテリーパックを構成する。また、バッテリーパックに求められる充放電容量に合わせて、複数のバッテリーを並列に接続してバッテリーパックを構成することもある。したがって、バッテリーパックに含まれるバッテリーの個数及び電気的接続形態は、求められる出力電圧及び/又は充放電容量によって多様に設定され得る。
【0006】
一方、単位バッテリーの種類としては、円筒形、角形及びパウチ型バッテリーが知られている。円筒形バッテリーの場合、正極と負極との間に絶縁体である分離膜を介在し、これを巻き取ってゼリーロール(jelly-roll)型の電極組立体を形成し、これをバッテリーハウジングの内部に挿入してバッテリーを構成する。そして、前記正極及び負極のそれぞれの無地部にはストリップ状の電極タブが連結され、電極タブは電極組立体と外側に露出する電極端子との間を電気的に接続させる。参考までに、正極端子はバッテリーハウジングの開放口を密封する密封体のキャッププレートであり、負極端子はバッテリーハウジングである。ところが、このような構造を有する従来の円筒形バッテリーによれば、正極無地部及び/又は負極無地部と結合されるストリップ状の電極タブに電流が集中されるため、抵抗が大きくて発熱が多く、集電効率が良くないという問題がある。
【0007】
1865や2170のフォームファクタ(form factor)を有する小型円筒形バッテリーでは抵抗と発熱が大した問題にならない。しかし、円筒形バッテリーを電気自動車に適用するためフォームファクタを増加させる場合、急速充電過程で電極タブの周辺で多量の熱が発生しながら円筒形バッテリーが発火する問題が発生し得る。
【0008】
このような問題を解決するため、ゼリーロール型の電極組立体の上端及び下端にそれぞれ正極無地部及び負極無地部が位置するように設計し、このような無地部に集電板を溶接して集電効率が改善された構造を有する円筒形バッテリー(いわゆる、タブレス(tab-less)円筒形バッテリー)が提示されている。
【0009】
図1~
図3は、タブレス円筒形バッテリーの製造過程を示した図である。
図1は電極の構造を示し、
図2は電極の巻取工程を示し、
図3は無地部の折曲面に集電板が溶接される工程を示している。
【0010】
図1~
図3を参照すると、正極P及び負極Nは、シート状の集電体Fに活物質層Mがコーティングされた構造を有し、巻取方向(X軸)に沿って一方の長辺側に無地部Uを含む。
【0011】
電極組立体Aは、正極Pと負極Nとを、
図2に示されたように、2枚の分離膜Sと一緒に順次に積層させた後、一方向(X軸方向)に巻き取って製作する。このとき、正極Pの無地部と負極Nの無地部とは反対方向に配置される。
【0012】
巻取工程の後、正極Pの無地部PU及び負極Nの無地部NUはコア側に折り曲げられる。その後、無地部PU、NUに集電板30、31をそれぞれ溶接して結合させる。
【0013】
正極無地部PU及び負極無地部NUには、別途の電極タブが結合されておらず、集電板30、31が外部の電極端子と連結され、電流経路が電極組立体Aの巻取軸方向(矢印参照)に沿って大きい断面積で形成されるため、バッテリーの抵抗を低減できるという長所がある。抵抗は電流が流れる通路の断面積に反比例するためである。
【0014】
タブレス円筒形バッテリーにおいて、無地部PU、NUと集電板30、31との溶接特性を向上させるためには、無地部PU、NUの溶接地点に強い圧力を加えて最大限に扁平に無地部PU、NUを折り曲げなければならない。
【0015】
ところが、無地部PU、NUの溶接地点を折り曲げるとき、無地部PU、NUの模様が不規則に歪みながら変形されることがある。この場合、変形された部位が反対極性の電極と接触して内部短絡を起こすか、又は、無地部PU、NUに微細なクラックを誘発するおそれがある。また、電極組立体Aのコアに隣接した無地部32が折り曲げられながら電極組立体Aのコアにある空洞33を全部又は相当部分閉塞する。この場合、電解液注液工程で問題が生じる。すなわち、電極組立体Aのコアにある空洞33は電解液が注入される通路として使用される。しかし、該通路が閉塞されれば、電解液を注入し難い。また、電解液注入器が空洞33に挿入される過程でコア付近において無地部32と干渉を起こし、無地部32が破れる問題が生じ得る。
【0016】
また、集電板30、31が溶接される無地部PU、NUの折曲部位は多重に重なっており、空いた空間(間隙)が存在してはならない。それによって、十分な溶接強度が得られ、レーザー溶接などの最新技術を使用する際にも、レーザーが電極組立体Aの内部に浸透して分離膜や活物質を溶融させる問題を防止することができる。
【0017】
従来のタブレス円筒形バッテリーは、電極組立体Aの上部に全体的に正極無地部PUが形成されている。したがって、バッテリーハウジングの上端の外周面を内部に押し込んでビーディング部を形成するとき、電極組立体Aの上端の周縁領域34がバッテリーハウジングによる圧迫を受けるようになる。このような圧迫は、電極組立体Aを部分的に変形させ、このとき、分離膜Sが破れながら内部短絡が発生し得る。バッテリーの内部で短絡が発生すれば、バッテリーの発熱や爆発につながるおそれがある。
【0018】
一方、分離膜Sは、多孔性高分子基材の熱収縮特性を改善するため、基材の一面のみにコーティング層を形成した片面無機物コーティング分離膜であり得る。分離膜Sの一面は多孔性基材、他面は無機物コーティング層であるため、電解液含浸特性が非対称になる。電解液含浸特性の非対称のため、電極組立体に電解液を含浸させるとき加圧/真空条件を高めなければならず、コスト上昇の問題がある。また、適切な含浸工程が適用されないと、バッテリーの性能が低下する問題も発生する。
【0019】
従来の分離膜Sは一面で生地が露出しているため、耐熱特性の限界を有する。特に、130℃以上の高温で分離膜の収縮が大きい。したがって、バッテリー内で130℃以上の熱衝撃が発生すれば、分離膜の収縮によって電極短絡が引き起こされ、この過程でバッテリーの内部温度が急激に上昇しながら発火事故につながり得る。
【0020】
電極組立体Aの上面及び下面は、無地部PU、NUの折り曲げによって閉鎖されている。無地部PU、NUの折曲面は、電解液の流動に干渉を起こして含浸時間を増加させ、電解液の含浸均一性を低下させる。含浸均一性が低下すれば不安定な固体電解質界面(SEI)層が形成され、それによって同一生産ラインで製造されたバッテリーであっても抵抗のバラツキが増加する問題がある。
【0021】
電極組立体Aの巻取工程において、正極及び/又は負極は蛇行(lateral motion)現象によって巻取軸方向に動くことがある。電極が巻取軸方向に動くと、分離膜の末端付近に正極及び/又は負極の末端が位置し得る。特に、正極及び/又は負極が分離膜の末端よりも外側に突出する場合、正極と負極との電気的接触によってバッテリーの内部で短絡が発生するおそれがある。バッテリーの内部短絡は爆発事故を起こすため、正極と負極との電気的接触を防止するための絶縁構造の設計が必要となる。
【0022】
一方、近年、電気自動車関連技術の発展に伴って高容量の大型円筒形バッテリーに対する要求が増加している。1865や2170のフォームファクタを有する小型円筒形バッテリーは容量が小さいため、内部抵抗によって生じる発熱がバッテリーの性能に大きい影響を及ぼすことがない。しかし、従来の小型円筒形バッテリーの設計仕様を大型円筒形バッテリーにそのまま適用する場合、バッテリーの安全性に深刻な問題が生じるおそれがある。
【0023】
バッテリーが大きくなれば、バッテリーの発熱量も増加する。発熱量の増加はバッテリーの発火可能性を高める。バッテリーの発火を防止するためには、熱の排出通路であるバッテリー表面の面積がバッテリーの体積増加に応じて増加する必要がある。しかし、バッテリー表面の面積増加分が体積増加分に及ばないため、バッテリーが大型化されるほど熱の排出効率が低下し、それによって爆発の危険性が大きくなってバッテリー出力も低下する問題が発生する。そこで、当業界では、高容量を実現できるように大きい体積を有しながらも高い安全性を有する円筒形バッテリーの開発が求められている。
【0024】
さらに、従来の二次粒子を含む正極活物質を用いて電極を製造すると、粒子割れが生じ、充放電時の内部クラックの発生によるガス発生量が増加して、電池安定性の問題が発生するおそれがある。
【0025】
それを解決しようよして、一次粒子の大きさが比較的に大きい単粒子又は疑似単粒子形態の正極活物質が開発されているが、前記単粒子又は疑似単粒子形態の正極活物質を高ローディング電極に適用して圧延する場合、電極の孔隙率が目標とするレベルまで達しない状態で電極が割れ、リチウム二次電池の抵抗特性及び充放電効率が良くないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、電極組立体を製造するとき、電極の蛇行によって発生する内部短絡を効果的に防止できる構造を含む電極組立体を提供することを目的とする。
【0027】
また、本発明は、電極組立体の両端に露出した無地部を折り曲げるとき無地部に加えられる応力ストレスを緩和できるように分切構造が適用された無地部を有する電極組立体を提供することを他の目的とする。
【0028】
また、本発明は、無地部が折り曲げられても電解液注入通路が閉塞されない電極組立体を提供することをさらに他の目的とする。
【0029】
また、本発明は、無地部の分切構造を中心にして分離膜の位置を最適化させることで、電解液含浸特性が改善された電極組立体を提供することをさらに他の目的とする。
【0030】
また、本発明は、バッテリーハウジングの上端がビーディングされるとき電極組立体の上端周縁とバッテリーハウジングの内面とが接触することを防止可能な構造を含む電極組立体を提供することをさらに他の目的とする。
【0031】
また、本発明は、エネルギー密度が向上して抵抗が減少した電極組立体を提供することをさらに他の目的とする。
【0032】
また、本発明は、改善された構造の電極組立体を含む円筒形バッテリー、それを含むバッテリーパック、及び該バッテリーパックを含む自動車を提供することをさらに他の目的とする。
【0033】
また、本発明は、正極活物質として単粒子又は疑似単粒子を適用することで優れた熱安定性を実現でき、電気伝導性が高くて圧延特性が高い電極及びそれを含む電極組立体を提供することをさらに他の目的とする。
【0034】
また、本発明は、負極にシリコン系負極活物質を含ませることで、エネルギー密度が改善された電極組立体を提供することをさらに他の目的とする。
【0035】
また、本発明は、リチウム析出の心配なく、正極活物質部の区間が増加した電極組立体を提供することをさらに他の目的とする。
【0036】
また、本発明は、フォームファクタの増加によってバッテリーの体積が増加しても、優れた熱安定性を示すことができる円筒形バッテリーを提供することをさらに他の目的とする。
【0037】
本発明が解決しようとする技術的課題は上述した課題に制限されず、他の課題は下記の発明の説明から通常の技術者に明らかに理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記の課題を達成するため、本発明の一態様による電極組立体は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在された分離膜とが巻取軸を中心に巻き取られることでコア及び外周面が画定された電極組立体であって、前記第1電極及び前記第2電極は、それぞれ、長辺端部に活物質層がコーティングされていない無地部と、前記無地部を除いた領域に活物質層がコーティングされている有地部とを含み、前記第1電極は巻取方向に沿って無地部と有地部との境界を覆う絶縁層を含み、前記第1電極の無地部は巻取方向に沿って繰り返して形成された切断線によって分離された複数の分切片を含み、前記複数の分切片の少なくとも一部は前記電極組立体の半径方向に沿って折り曲げられて前記電極組立体の巻取軸方向の端部に折曲面を形成し、前記第1電極の無地部の領域のうち最も低い高さに対応する地点を前記巻取方向と平行に通過する線を基準線とし、前記折曲面を形成する分切片のうち最も低い高さを有する分切片を最小分切片とするとき、前記分離膜の巻取軸方向の一端部と前記基準線との離隔距離は前記最小分切片の高さの30%以下である。
【0039】
前記基準線の位置は、前記切断線の下端位置に対応し得る。
【0040】
前記分離膜の巻取軸方向の一端部と前記基準線との離隔距離は、1.5mm以下であり得る。
【0041】
前記絶縁層は、前記第1電極の両面に備えられ、前記絶縁層の巻取軸方向の一端部は、前記分離膜の巻取軸方向の一端部と同じ高さ又は一端部よりも外側に位置し得る。
【0042】
前記分離膜を介在して前記絶縁層と対向する前記第2電極の巻取軸方向の一端部は、前記分離膜の巻取軸方向の一端部よりも外側に突出しなくてもよい。
【0043】
前記電極組立体は、前記第1電極の有地部と無地部との境界領域に活物質層の厚さが減少している第1スライディング部を含み、前記第2電極の有地部と無地部との境界領域に活物質層の厚さが減少している第2スライディング部を含み得る。前記第1スライディング部と前記第2スライディング部とは、巻取軸方向において互いに反対方向に位置し得る。
【0044】
前記第1電極の有地部は、活物質のローディング量が減少するローディング減少部を含み、前記ローディング減少部の位置は、前記第2スライディング部の位置に対応し得る。
【0045】
前記絶縁層は、前記第1スライディング部の少なくとも一部を覆い得る。
【0046】
前記第1電極の無地部の両面のうち前記コアに向かう面に形成された絶縁層は、前記第1電極の無地部の巻取軸方向の末端まで延在し得る。
【0047】
前記第1電極の無地部の両面のうち前記コアに向かう面の反対面に形成された絶縁層は、前記第1電極の無地部の折曲地点まで延在し得る。
【0048】
前記第1電極の有地部の巻取軸方向の長さは、前記第2電極の有地部の巻取軸方向の長さよりも短く、前記第2電極の有地部の巻取軸方向の一端部及び他端部は、前記第1電極の有地部の巻取軸方向の一端部及び他端部よりも外側に位置し得る。
【0049】
前記複数の分切片の巻取軸方向の高さ及び巻取方向の幅のうち少なくとも一つは、個別的に又はグループ毎にコア側から外周側に向かって段階的に増加し得る。
【0050】
前記複数の分切片は、コア側から外周側に向かって複数の分切片グループを形成し、同一分切片グループに属した分切片は、巻取方向の幅、巻取軸方向の高さ及び巻取方向の離隔ピッチのうちの少なくとも一つが互いに同一であり得る。
【0051】
同一分切片グループに属した分切片は、コア側から外周側に向かって巻取方向の幅、巻取軸方向の高さ及び巻取方向の離隔ピッチのうちの少なくとも一つが段階的に増加し得る。
【0052】
前記複数の分切片は、前記半径方向に折り曲げられながら前記巻取軸方向に沿って多重に重なり得る。
【0053】
前記第1電極の無地部は、前記電極組立体のコアに隣接したコア側無地部、前記電極組立体の外周表面に隣接した外周側無地部、及び前記コア側無地部と前記外周側無地部との間に介在された中間無地部を含み、前記コア側無地部及び前記外周側無地部のうちの少なくとも一つは、巻取軸方向の高さが前記中間無地部よりも相対的に低く、前記コア側無地部の半径方向の長さは、前記中間無地部の最内側分切片の折曲長さと同一であるか又は大きくなり得る。
【0054】
前記分切片の切断線の下端と前記活物質層との間にはギャップが設けられ得る。
【0055】
前記第1電極の活物質層は、単粒子、疑似単粒子、又はこれらの組み合わせを含む正極活物質を含み得る。
【0056】
前記正極活物質の体積累積分布で現れる最小粒子サイズであるDminは、1.0μm以上であり得る。
【0057】
前記正極活物質の体積累積分布において体積累積量が50%であるときの粒子サイズであるD50は、5.0μm以下であり得る。
【0058】
前記正極活物質の体積累積分布で現れる最大粒子サイズであるDmaxは、12μm~17μmであり得る。
【0059】
前記正極活物質は、体積累積粒度分布グラフにおいて単一ピークが現れるユニモーダル(unimodal)粒度分布を有し、下記の数式1で表される粒度分布(PSD:Particle Size Distribution)が3以下であり得る。
[数式1]
粒度分布(PSD)=(Dmax-Dmin)/D50
【0060】
前記単粒子、疑似単粒子、又はこれらの組み合わせは、前記第1電極の活物質層に含まれた正極活物質の全体重量を基準にして95wt%~100wt%の量で含まれ得る。
【0061】
前記正極活物質は、遷移金属の全体モル数を基準にしてNiを80モル%以上に含むリチウムニッケル系酸化物を含み得る。
【0062】
前記第1電極の活物質層は、空隙率が15%~23%であり得る。
【0063】
前記第1電極の活物質層は、0.05wt%~5wt%の重量比率で鱗片状黒鉛を含み得る。
【0064】
前記第1電極の活物質層は、カーボンナノチューブ(CNT)をさらに含み得る。
【0065】
前記第2電極の活物質層は、シリコン系負極活物質及び炭素系負極活物質を含み得る。
【0066】
前記シリコン系負極活物質と炭素系負極活物質とは、1:99~20:80の重量比で前記第2電極の活物質層に含まれ得る。
【0067】
上記の課題を達成するため、本発明の他の一態様による円筒形バッテリーは、上述した特徴のうちの少なくとも一つを含む電極組立体と、一側に形成された開放部を通して前記電極組立体を収容し、前記第2電極の無地部と電気的に接続されるバッテリーハウジングと、前記第1電極の無地部と電気的に接続され、少なくとも一部が外側に露出している端子と、前記バッテリーハウジングの開放部を覆う密封体とを含む。
【0068】
上記の課題は、前記円筒形バッテリーを複数個含むバッテリーパック、及びそれを含む自動車によっても達成される。
【発明の効果】
【0069】
本発明の一態様によれば、電極組立体の正極と負極との間の電気的接触を防止することで、円筒形バッテリーの内部短絡を効果的に防止することができる。
【0070】
また、本発明の一態様によれば、電極組立体の上側及び下側に突出した無地部自体を電極タブとして使用することで、バッテリーの内部抵抗を下げてエネルギー密度を増加させることができる。
【0071】
また、本発明の一態様によれば、電極組立体の無地部の構造を改善することで、バッテリーハウジングのビーディング部を形成する過程で電極組立体とバッテリーハウジングの内周面とが干渉せず、電極組立体の部分的変形による円筒形バッテリーの内部短絡を防止することができる。
【0072】
また、本発明の一態様によれば、電極組立体の無地部の構造を改善することで、無地部の折り曲げ時に無地部が破れる現象を防止し、無地部の重畳層数を十分に増加させて溶接強度を向上させることができる。
【0073】
また、本発明の一態様によれば、電極組立体のコアに隣接した無地部の構造を改善することで、無地部の折り曲げ時に電極組立体のコアにある空洞が閉塞されることを防止し、電解液注入工程及びバッテリーハウジングと集電板との溶接工程を容易に行うことができる。
【0074】
また、本発明の一態様によれば、電極組立体の無地部に分切構造を適用し、分切片の切断溝を基準にして分離膜の位置を調節することで、電解液含浸性を改善することができる。
【0075】
また、本発明の一態様によれば、内部抵抗が低く、内部短絡が防止され、集電板と無地部との溶接強度が向上した構造を有する円筒形バッテリー、それを含むバッテリーパック及び自動車を提供することができる。
【0076】
また、本発明の一態様によれば、Dminが1.0μm以上である正極活物質粉末を正極に含ませることで、電池の熱安定性をさらに改善することができる。本発明者らの研究によれば、正極活物質として単粒子及び/又は疑似単粒子を適用しても、正極活物質粉末の粒度に応じて圧延後の粒子破れの抑制及び熱安定性の改善効果が異なることが確認された。特に、正極活物質粉末内に粒径1.0μm未満の粒子が含まれる場合、圧延工程で線圧が増加することで、粒子割れが増加して熱安定性が低下し、大型円筒形電池への適用時に熱安定性を十分に確保することができなかった。したがって、本発明では、最小粒子サイズDminが1.0μm以上に制御された正極活物質粉末を使用することで、熱安定性の改善効果を極大化できるようにした。
【0077】
また、本発明の一態様によれば、D50、Dmax及び粒度分布(PSD)が適切に調節された正極活物質粉末を正極に含ませることで、単粒子の適用による抵抗増加を最小化できるため、優れた容量特性及び出力特性を実現することができる。
【0078】
また、本発明の一態様によれば、正極が導電性コーティング層で被覆された単粒子系正極活物質を含むか又は新規CNTを導電材として含むことで、電極の導電性を改善することができる。
【0079】
また、本発明の一態様によれば、正極活物質層に鱗片状黒鉛が含まれるため、正極活物質層を圧延する場合、前記鱗片状黒鉛が前記正極活物質に滑り効果を提供して電極の圧延特性が向上し、電極孔隙率を目標とするレベルまで下げることができる。これにより、円筒形バッテリーの安定性、初期抵抗特性、及び充放電効率が改善される。
【0080】
また、本発明の一態様によれば、負極に容量の大きいシリコン系負極活物質が含まれることで、より高いエネルギー密度を実現することができる。
【0081】
また、本発明の一態様によれば、正極活物質のローディング量が少ないローディング減少部が正極に含まれるため、リチウム析出の心配なく、正極活物質部の区間を増加させることができる。
【0082】
また、本発明の一態様によれば、ストリップ状の電極タブを備えた従来のバッテリーと比べて、バッテリーの内部発熱を効果的に減少させることができるため、バッテリーの熱安定性を改善することができる。
【0083】
他にも本発明は多様な効果を奏し、それについては実施形態を挙げて後述する。但し、通常の技術者が容易に類推可能な効果などについては、該説明を省略することにする。
【0084】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割のためのものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】従来のタブレス円筒形バッテリーの製造に使用される電極の構造を示した平面図である。
【
図2】従来のタブレス円筒形バッテリーの電極巻取工程を示した図である。
【
図3】従来のタブレス円筒形バッテリーにおいて、無地部の折曲面に集電板が溶接される工程を示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態による円筒形バッテリーの外観を示した斜視図である。
【
図6】
図4の円筒形バッテリーに含まれた電極組立体の構造を示した図である。
【
図7】
図6の電極組立体の縦断面図の一部を示した図である。
【
図8】本発明の他の実施形態による電極組立体の外観を示した斜視図である。
【
図9】
図8の電極組立体の縦断面図の一部を示した図である。
【
図11】従来技術による電極組立体の構造(比較例)を示した図である。
【
図12】バッテリー内の多様な短絡ケースにおける電力分布を示したグラフである。
【
図13a】本発明の一実施形態による円筒形バッテリーを含むバッテリーパックを示した概略図である。
【
図13b】
図13aのバッテリーパックを含む自動車を示した概略図である。
【
図14】本発明の第1実施形態による電極の構造を示した平面図である。
【
図15】本発明の第2実施形態による電極の構造を示した平面図である。
【
図16】本発明の第3実施形態による電極の構造を示した平面図である。
【
図17a】本発明の第4実施形態による電極の構造を示した平面図である。
【
図17b】本発明の第4実施形態による電極を基準にして、基準線と分離膜の末端との間の位置関係の一例を示した図である。
【
図17c】本発明の第4実施形態による電極を基準にして、基準線と分離膜の末端との間の位置関係の他の例を示した図である。
【
図18】本発明の第4実施形態による電極に含まれた分切片の幅、高さ及び離隔ピッチの定義を示した図である。
【
図19a】本発明の第5実施形態による電極の構造を示した平面図である。
【
図19b】本発明の第5実施形態による電極を基準にして、基準線と分離膜の末端との間の位置関係の一例を示した図である。
【
図19c】本発明の第5実施形態による電極を基準にして、基準線と分離膜の末端との間の位置関係の他の例を示した図である。
【
図20】本発明の第5実施形態による電極に含まれた分切片の幅、高さ及び離隔ピッチの定義を示した図である。
【
図21】第1実施形態の電極を第1電極(正極)及び第2電極(負極)に適用したゼリーロール型の電極組立体をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【
図22】第2実施形態の電極を第1電極(正極)及び第2電極(負極)に適用したゼリーロール型の電極組立体をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【
図23】第3実施形態~第5実施形態(これらの変形形態)の電極のうちのいずれか一つを第1電極(正極)及び第2電極(負極)に適用したゼリーロール型の電極組立体をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【
図24】本発明のさらに他の実施形態による電極組立体をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【
図25】本発明のさらに他の実施形態による電極組立体をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【
図26】本発明のさらに他の実施形態による電極組立体をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【
図27】本発明の一実施形態による円筒形バッテリーをY軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図28】本発明の他の実施形態による円筒形バッテリーをY軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図29】本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリーをY軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図30】本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリーをY軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図31】本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリーをY軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図32】本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリーをY軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図33】本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリーをY軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図34】本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリーをY軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図35】本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリーをY軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図36】本発明の一実施形態による新規CNTのSEM写真である。
【
図37】一般に使用されている従来のカーボンナノチューブ(従来CNT)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図38】従来CNTの物性と新規CNTの物性とを比較した表である。
【
図39】正極活物質として単粒子系活物質粒子が適用された場合、導電材の比率に応じた面抵抗を示したグラフである。
【
図40】正極活物質として単粒子系活物質粒子が適用された場合、導電材の比率に応じた高温寿命特性を示したグラフである。
【
図41】正極活物質として単粒子系活物質粒子が適用された場合、導電材の比率に応じた高温寿命特性を示したグラフである。
【
図42】正極活物質として単粒子系活物質粒子が適用された場合、導電材の比率に応じた高温寿命特性を示したグラフである。
【
図43】BET比表面積が300m
2/g~500m
2/gであるカーボンナノチューブ(新規CNT)を適用した場合及びBET比表面積が200m
2/g以上300m
2/g未満のカーボンナノチューブ(従来CNT)を適用した場合において、正極スラリーの固形分含量、粘度、MPコーティング層における抵抗値、及びMP界面層における抵抗値を比較した表である。
【
図44a】本発明の実施例2-1で使用された正極活物質のSEM写真である。
【
図44b】本発明の実施例2-2で使用された正極活物質のSEM写真である。
【
図44c】本発明の比較例2-2で使用された正極活物質のSEM写真である。
【
図45a】本発明の実施例1によって製造された4680セルに対するホットボックステストの結果を示したグラフである。
【
図45b】本発明の比較例1によって製造された4680セルに対するホットボックステストの結果を示したグラフである。
【
図45c】本発明の実施例2-1のサンプル1及び比較例2-1によって製造された4680セルに対するホットボックステストの結果を示したグラフである。
【
図45d】本発明の実施例2-1のサンプル2、3、実施例2-2のサンプル1、2及び比較例2-2によって製造された4680セルに対するホットボックステストの結果を示したグラフである。
【
図46a】本発明の実施例2-1で製造された正極の断面SEM写真である。
【
図46b】比較例2-1で製造された正極の断面SEM写真である。
【
図47a】本発明の実施例3-3、比較例3-1及び比較例3-2による正極を含むコイン型ハーフセルを4.2Vまで充電しながら、SOCに応じた抵抗特性を測定した結果を示したグラフである。
【
図47b】本発明の実施例3-1、実施例3-3及び比較例3-1による4680セルに対する充放電サイクル実験を通じて得た、容量維持率及び抵抗増加率の測定結果を示したグラフである。
【
図48】本発明の一実施形態による電極組立体を示した図である。
【
図50】本発明の一実施形態によって負極を製造する工程を示した図である。
【
図51】本発明の一実施形態によって負極を製造する工程を示した図である。
【
図52】本発明の一実施形態による負極を示した斜視図である。
【
図53】本発明の一実施形態によって正極を製造する工程を示した図である。
【
図54】本発明の一実施形態によって正極を製造する工程を示した図である。
【
図55】本発明の一実施形態による正極を示した斜視図である。
【
図56】本発明の比較形態による電極組立体を示した図である。
【
図58】本発明の比較形態によって負極を製造する工程を示した図である。
【
図59】本発明の比較形態によって正極を製造する工程を示した図である。
【
図60】シリコン系負極活物質と炭素系負極活物質との混合物を負極活物質として使用したバッテリーにおいて、シリコン系負極活物質の含量とシリコン系負極活物質のドーピング有無に応じたエネルギー密度の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲において使用された用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されるものではなく、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されるものである。したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを表すものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解されたい。
【0087】
また、発明の理解の補助のため、添付された図面は実際の縮尺通りに図示されず、一部構成要素の寸法を誇張して図示することがある。また、異なる実施形態における同じ構成要素に対しては同じ参照番号が付され得る。
【0088】
図示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上任意に示されたものであり、本発明が必ずしも図示によって限定されることはない。図面において、多くの層及び領域を明確に示すため、厚さを拡大して示している。また、図面において、説明の便宜上、一部の層及び領域の厚さを誇張して示している。
【0089】
また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」又は「上側に」あるとするとき、これは他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。反対に、ある部分が他の部分の「真上に」あるとするときは、中間に他の部分が存在しないことを意味する。また、基準になる部分の「上に」又は「上側に」あるとは、基準になる部分の上方又は下方に位置することを意味し、必ずしも重力との反対向きの「上に」又は「上側に」位置することを意味するものではない。
【0090】
また、明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0091】
また、明細書の全体において、「平面図」とするとき、これは対象部分を上方から眺めた場合を意味し、「断面図」とするとき、これは対象部分を垂直に切った断面を側方から眺めた場合を意味する。
【0092】
図4~
図6を参照すると、本発明の一実施形態による円筒形バッテリー1は、電極組立体A、バッテリーハウジングBH、密封体40及び端子50を含む。
【0093】
前記円筒形バッテリー1は、上述した構成要素の他にも、第1集電板36及び/又は絶縁体37及び/又は絶縁ガスケット35及び/又は第2集電板38及び/又はシーリングガスケット39をさらに含み得る。
【0094】
図4~
図6を参照すると、前記電極組立体Aは、第1極性を有する第1電極11、第2極性を有する第2電極12、第1電極11と第2電極12との間に介在される分離膜13、及び第1電極11の少なくとも一部を覆う絶縁層14を含む。
【0095】
前記第1電極11は正極又は負極であり、第2電極12は第1電極11と反対極性を有する電極に該当する。前記第1電極11及び前記第2電極12はシート状であり得る。前記電極組立体Aは、例えばゼリーロール構造を有し得る。すなわち、前記電極組立体Aは、第1電極11、分離膜13、第2電極12、分離膜13を順次に少なくとも1回積層して形成された積層体を、巻取中心Cを基準にして巻き取ることで製造され得る。この場合、前記電極組立体Aの外周面上にはバッテリーハウジングBHとの絶縁のために分離膜13がさらに備えられ得る。分離膜13は、多孔性基材、及び多孔性基材の少なくとも一面に形成された耐熱性コーティング層を含み得る。耐熱性コーティング層は、無機物粒子及び/又は耐熱性高分子粒子、そしてバインダーを含み得る。
【0096】
前記第1電極11及び前記第2電極12は、長辺端部に活物質層がコーティングされていない無地部11a、12aを含み得る。前記第1電極11及び前記第2電極12は、前記無地部11a、12aを除いた領域に、活物質層がコーティングされている有地部11b、12bを含み得る。
【0097】
具体的には、前記第1電極11は、第1電極集電体、及び第1電極集電体の片面又は両面上に塗布された第1電極活物質を含む。第1電極集電体上に第1電極活物質が塗布された領域を、第1電極11に備えられた第1有地部11bと称する。前記第1電極集電体の幅方向(Z軸方向)の一側端部には、第1電極活物質が塗布されていない第1無地部11aが存在し得る。前記第1無地部11aの少なくとも一部はそれ自体が電極タブとして使用される。前記第1電極11に備えられた第1無地部11aは、バッテリーハウジングBH内に収容された電極組立体Aの高さ方向(Z軸方向)の上側に備えられる。
【0098】
前記第2電極12は、第2電極集電体、及び第2電極集電体の片面又は両面上に塗布された第2電極活物質を含む。第2電極集電体上に第2電極活物質が塗布された領域を、第2電極12に備えられた第2有地部12bと称する。前記第2電極集電体の幅方向(Z軸方向)の他側端部には、第2電極活物質が塗布されていない第2無地部12aが存在し得る。前記第2無地部12aの少なくとも一部はそれ自体が電極タブとして使用される。前記第2電極12に備えられた第2無地部12aは、バッテリーハウジングBH内に収容された電極組立体Aの高さ方向(Z軸方向)の下側に備えられる。
【0099】
前記第1電極11に備えられた第1無地部11aと、前記第2電極12に備えられた第2無地部12aとは、互いに反対方向に突出した形態であり得る。例えば、
図6及び
図7を参照すると、第1電極11に備えられた第1無地部11aは電極組立体Aの高さ方向(Z軸方向)の上側に突出し、第2電極12に備えられた第2無地部12aは電極組立体Aの高さ方向(Z軸方向)の下側に突出し得る。これにより、前記第1電極に備えられた第1無地部11aと第2電極に備えられた第2無地部12aとは、電極組立体Aの幅方向、すなわち円筒形バッテリー1の高さ方向(Z軸方向)に沿って互いに反対方向に延びて突出した形態であり得る。
【0100】
一方、前記第1有地部11b及び第2有地部12bは、前記第1有地部11b及び第2有地部12bの中央領域に比べて前記活物質層の厚さが減少しているスライディング部を含み得る。例えば、
図7を参照すると、前記第1電極11及び第2電極12のそれぞれは、活物質層の厚さが減少した領域であるスライディング部を一端部又は他端部に備え得る。
【0101】
スライディング現象とは、電極活物質を含むスラリーの広がりによって、スラリー塗布の境界領域の他の領域よりも、スラリー塗布の境界領域において電極活物質がさらに少なく塗布されることで、塗布境界領域のスラリーが略傾斜した形態を有する現象を意味する。ここで、電極を全体的に乾燥すると、スラリーに含まれた溶媒が蒸発しながらスラリーの体積が減少することにより、電極活物質が塗布された領域と塗布されていない領域との境界付近でスライディング現象が一層深化し得る。
【0102】
前記スライディング部は、前記第1有地部11bと第1無地部11aとの境界領域、及び第2有地部12bと第2無地部12aとの境界領域に形成され得る。例えば、前記スライディング部は、前記第1電極11の一端部及び前記第2電極12の他端部にそれぞれ備えられ得る。すなわち、前記第1電極11に備えられた第1有地部11bのスライディング部と前記第2電極12に備えられた第2有地部12bのスライディング部とは、互いに反対方向に備えられ得る。例えば、
図7を参照すると、第1電極11のスライディング部は巻取軸方向(Z軸方向)の上側に形成され得、第2電極12のスライディング部はその反対方向である、巻取軸方向(Z軸方向)の下側に形成され得る。
【0103】
前記第1電極11に備えられた第1有地部11bの巻取軸方向(Z軸方向)の長さは、前記第2電極12に備えられた第2有地部12bの巻取軸方向(Z軸方向)の長さよりも短くなり得る。また、前記第1電極11に備えられた第1有地部11bは、前記第2電極12に備えられた第2有地部12bよりも、巻取軸方向(Z軸方向)において内側に位置し得る。例えば、
図7を参照すると、第1電極11に備えられた第1有地部11bの巻取軸方向(Z軸方向)の長さに比べて、第2電極12に備えられた第2有地部12bの巻取軸方向(Z軸方向)の長さが長く形成され得る。さらに、
図7を参照すると、第1電極11に備えられた第1有地部11bの巻取軸方向(Z軸方向)の長さは、第2電極12に備えられた第2有地部12bからスライディング部を除いた領域の巻取軸方向(Z軸方向)の長さよりも短く形成され得る。このような構造は、正極/負極のNP比が100%以下に減少してリチウム金属が析出することを防止するためである。
【0104】
一方、前記第1有地部11b及び第2有地部12bは、前記分離膜13よりも巻取軸方向(Z軸方向)にさらに突出することがない。すなわち、前記第1有地部11b及び第2有地部12bが巻取軸方向(Z軸方向)において分離膜13よりも突出していると、第1電極11と第2電極12とが接触する可能性が大きくなる。すると、接触領域で内部短絡が発生し、発火のリスクが高くなる。したがって、前記第1有地部11b及び第2有地部12bは、分離膜13よりも巻取軸方向(Z軸方向)に突出していないことが重要である。すなわち、前記第1有地部11b及び第2有地部12bは、前記分離膜13の内側に位置することが望ましい。
【0105】
第1電極11と第2電極12との接触可能性を最小化するため、本発明の第1電極11は、前記第1無地部11aの少なくとも一部及び前記第1有地部11bの少なくとも一部を同時に覆う少なくとも一つの絶縁層14を含み得る。前記絶縁層14によって、第1電極11と第2電極12との電気的接触が効果的に防止される。より具体的には、第1電極11に備えられた第1無地部11aと第2電極12に備えられた第2有地部12bとの電気的接触を効果的に防止することができる。
【0106】
前記絶縁層14は、前記第1電極11の少なくとも一面に備えられ得る。例えば、前記絶縁層14は、前記第1電極11の両面に備えられ得る。
図7において、第1電極11の右側だけでなく、左側にも分離膜13が位置しており、左側に位置した分離膜13の左側にはさらに他の第2電極12が位置している。したがって、左側及び右側に位置した第2電極12との電気的接触を防止するため、絶縁層14は第1電極11の両面にすべて備えられることが望ましい。
【0107】
前記絶縁層14は、第1電極11の領域のうち、第2電極12に備えられた第2有地部12bと対面する可能性のある全体領域に備えられ得る。例えば、前記絶縁層14の巻取軸方向(Z軸方向)の一端部は、前記分離膜13の巻取軸方向(Z軸方向)の一端部と同じ高さ又は一端部の外側に位置し得る。より具体的には、
図7を参照して説明すると、前記絶縁層14の巻取軸方向(Z軸方向)の一端部は、前記分離膜13の巻取軸方向の一端部と同じ高さに位置し得る。分離膜13が第1電極11と第2電極12との間で巻取軸方向(Z軸方向)に突出しているため、第1電極11と第2電極12との間の電気的接触をある程度は防止可能である。しかし、円筒形バッテリー1の内部で第1電極11又は第2電極12の蛇行などのような動きが発生する可能性があるため、分離膜13の末端付近に第2電極12が位置する可能性を排除し難い。したがって、蛇行などの動きの発生によって第2電極12が分離膜13の末端まで位置するか又は第2電極12が分離膜13の末端よりも外側に突出する場合は、第1電極11と第2電極12との電気的接触を避けられなくなる。或いは、何らかの理由で分離膜13が損傷される場合、第1電極11と第2電極12との電気的接触は避けられない。したがって、このような場合でも第1電極11と第2電極12との電気的接触を防止するため、第1電極11に備えられた絶縁層14は、少なくとも分離膜13の一端部と同じ高さまで又は一端部の外側まで延びることが望ましい。
【0108】
但し、前記絶縁層14が第1電極11に備えられた第1無地部11aの全体を覆うと、第1電極11が電極の役割を果たせなくなるため、絶縁層14は第1電極11に備えられた第1無地部11aの一部のみを覆わなければならない。すなわち、前記第1無地部11aは、前記絶縁層14の外側にさらに突出する形態を有することになる。
【0109】
前記絶縁層14は、前記第1無地部11aと前記第1有地部11bとの境界領域上に備えられる絶縁コーティング層又は絶縁テープであり得る。但し、絶縁層14の形態がこれらに限定されるものではなく、絶縁層14が絶縁性能を確保しながら第1電極11に付着可能な形態であれば、本発明に採用され得る。一方、前記絶縁層14は、絶縁性能を確保するため、例えば有機SBRバインダー及びアルミナ酸化物を含み得る。
【0110】
前記絶縁層14は、前記第1無地部11aの少なくとも一部及び前記第1有地部11bの少なくとも一部を同時に覆い得る。例えば、前記絶縁層14は、前記第1有地部11bと前記第1無地部11aとの境界領域上に備えられ得る。例えば、前記絶縁層14は、前記スライディング部の少なくとも一部を覆い得る。
【0111】
例えば、前記絶縁層14は、前記第1電極11に備えられた第1無地部11aの全体領域のうち、前記第1無地部11aと第1有地部11bとの境界地点から約0.3~5mm地点まで延在し得る。より望ましくは、前記絶縁層14は、前記第1電極11に備えられた第1無地部11aの全体領域のうち、前記第1無地部11aと第1有地部11bとの境界地点から約1.5~3mm地点まで延在し得る。
【0112】
もし、絶縁層14がない場合、第1電極11と第2電極12との接触によって内部短絡が発生する可能性があるため、第1電極11と第2電極12との電気的接触が起きない程度の位置まで絶縁層14が延びていることが望ましい。
【0113】
一方、前記絶縁層14は、前記第1電極11に備えられた第1有地部11bの全体領域のうち、前記第1無地部11aと第1有地部11bとの境界地点から約0.1~3mm地点まで延在し得る。より望ましくは、前記絶縁層14は、前記第1電極11に備えられた第1有地部11bの全体領域のうち、前記第1無地部11aと第1有地部11bとの境界地点から約0.2~0.5mm地点まで延在し得る。
【0114】
絶縁層14が第1電極11に備えられた第1有地部11bの一部を覆う場合、バッテリーの容量損失が発生するため、絶縁層14が有地部を覆う長さを最小化する必要がある。しかし、第1電極11に備えられた第1有地部11bが第2電極12と接触する可能性があることから、それを防止するため、絶縁層14は第1電極11に備えられた第1有地部11bの少なくとも一部を覆う必要がある。
【0115】
図7を説明すると、前記分離膜13は、前記第1電極11の他端部及び前記第2電極12の一端部よりも外側に突出している形態を有し得る。一端部とは、図面において巻取軸方向(Z軸方向)の上側の端部を意味し、他端部とは、図面において巻取軸方向(Z軸方向)の下側の端部を意味する。したがって、前記分離膜13は、第1電極11の下端部よりも外側に突出し、第2電極12の上端部よりも外側に突出している形態を有し得る。一方、前記分離膜13は、第1電極11の上端部よりは突出していない。これは、第1電極11の上端部、すなわち第1無地部11aそれ自体が第1電極11の電極タブとして機能するためである。同様に、前記分離膜13は、第2電極12の下端部より突出していない。これは、第2電極12の下端部、すなわち第2無地部12aそれ自体が第2電極12の電極タブとして機能するためである。
【0116】
前記分離膜13を介在して前記絶縁層14と対向する前記第2電極12の一端部は、前記分離膜13の一端部よりも外側に突出していない形態を有し得る。例えば、
図7を参照して説明すると、前記第1電極11の一端部には絶縁層14が備えられており、前記絶縁層14と対向する第2電極12の一端部は前記分離膜13よりも内側に位置している。したがって、第1電極11の一端部が分離膜13の外側に突出していても、第2電極12の一端部が分離膜13の内側に位置しているため、第1電極11と第2電極12との接触可能性が著しく減少する。
【0117】
図4~
図6を参照すると、前記バッテリーハウジングBHは、下端に開放部が形成された略円筒形の収容体であり、例えば金属のような導電性を有する材料からなる。前記バッテリーハウジングBHの材料は、例えばアルミニウムや鋼鉄であり得る。開放部が備えられた前記バッテリーハウジングBHの底部を開放端(opened end)と称する。前記バッテリーハウジングBHの側面(外周面)と上面とは一体に形成され得る。前記バッテリーハウジングBHの上面(X-Y平面に平行な面)は略平坦(flat)な形態を有する。前記開放端の反対側に位置する上面を閉鎖端(closed end)と称する。前記バッテリーハウジングBHは、下方に形成された開放部を通して電極組立体Aを収納し、電解質も一緒に収容する。
【0118】
前記バッテリーハウジングBHは、電極組立体Aと電気的に接続される。前記バッテリーハウジングBHは、前記第1電極11及び前記第2電極12の一方と電気的に接続され得る。例えば、前記バッテリーハウジングは、電極組立体Aの第2電極12と電気的に接続され得る。この場合、前記バッテリーハウジングBHは、第2電極12と同一極性を有し得る。
【0119】
図5を参照すると、前記バッテリーハウジングBHは、その下端に形成されたビーディング部23及びクリンピング部24を備え得る。前記ビーディング部23は、電極組立体Aの下部に位置する。前記ビーディング部23は、バッテリーハウジングBHの外周面の周りを押し込んで形成される。前記ビーディング部23は、バッテリーハウジングBHの幅と略対応するサイズを有する電極組立体AがバッテリーハウジングBHの下端に形成された開放部から抜け出ないようにし、密封体40が載置される支持部として機能することができる。
【0120】
前記クリンピング部24は、ビーディング部23の下部に形成される。前記クリンピング部24は、ビーディング部23の下方に配置される密封体40の外周面、また密封体40の下面の一部を包むように延びて折り曲げられた形態を有する。
【0121】
但し、本発明は、バッテリーハウジングBHがこのようなビーディング部23及び/又はクリンピング部24を備えない場合を排除しない。すなわち、本発明の一実施例において、バッテリーハウジングBHがビーディング部23及び/又はクリンピング部24を備えない場合、電極組立体Aの固定及び/又はバッテリーハウジングBHの密封は、例えば電極組立体Aに対するストッパとして機能可能な部品の追加的な適用などを通じて実現可能である。また、もし本発明の一実施例の円筒形バッテリー1が密封体40を含む場合、電極組立体Aの固定及び/又はバッテリーハウジングBHの密封は、例えば密封体40を載置可能な構造物の追加的な適用及び/又はバッテリーハウジングBHと密封体40との溶接などを通じて実現可能である。すなわち、前記密封体は、前記バッテリーハウジングの開放端を密封することができる。
【0122】
図5を参照すると、前記密封体40は、剛性を確保するため、例えば金属材料からなり得る。前記密封体40は、バッテリーハウジングBHの下端に形成された開放端を覆い得る。すなわち、前記密封体40は、円筒形バッテリー1の下面を成す。本発明の一実施例の円筒形バッテリー1において、前記密封体40は、伝導性を有する金属材料である場合にも極性を持たない。極性を持たないとは、前記密封体40がバッテリーハウジングBH及び端子50と電気的に絶縁されていることを意味する。したがって、前記密封体40は、正極端子E1又は負極端子Eとして機能しない。したがって、前記密封体40は、電極組立体A及びバッテリーハウジングBHと電気的に接続される必要がなく、その材料が必ずしも伝導性金属である必要もない。
【0123】
本発明の一実施例によるバッテリーハウジングBHがビーディング部23を備える場合、前記密封体40は、バッテリーハウジングBHに形成されたビーディング部23上に載置され得る。また、本発明の一実施例によるバッテリーハウジングBHがクリンピング部24を備える場合、前記密封体40はクリンピング部24によって固定され得る。前記密封体40とバッテリーハウジングBHのクリンピング部24との間には、バッテリーハウジングBHの気密性を確保するため、シーリングガスケット39が介在され得る。一方、上述したように、本発明の一実施例によるバッテリーハウジングBHは、ビーディング部23及び/又はクリンピング部24を備えなくてもよく、この場合、前記シーリングガスケット39は、バッテリーハウジングBHの気密性確保のため、バッテリーハウジングBHの開放部側に備えられた固定のための構造物と密封体40との間に介在され得る。
【0124】
図4及び
図5を参照すると、前記端子50は、前記第1電極11及び前記第2電極12の他方と電気的に接続され得る。すなわち、前記端子50は、前記バッテリーハウジングBHと反対極性を有し得る。例えば、前記端子50は、電極組立体Aの第1電極11と電気的に接続され得る。そして、前記端子50は表面が外側に露出し得る。
【0125】
前記端子50は、伝導性を有する金属材料からなり得る。前記端子50は、例えばバッテリーハウジングBHの上端に形成された閉鎖端の略中心部を貫通し得る。前記端子50の一部はバッテリーハウジングBHの上側に露出し、残りの一部はバッテリーハウジングBHの内部に位置し得る。前記端子50は、例えばリベット加工(riveting)によってバッテリーハウジングBHの閉鎖端の内側面上に固定され得る。端子50は、絶縁体37を貫通して第1集電板36又は第1電極11に備えられた無地部11aと結合し得る。この場合、前記端子50は第1極性を有し得る。したがって、前記端子50は、本発明の一実施例による円筒形バッテリー1において、第1電極端子E1として機能することができる。前記端子50がこのように第1極性を有する場合、端子50は、第2極性を有するバッテリーハウジングBHとは電気的に絶縁される。前記端子50とバッテリーハウジングBHとの間の電気的絶縁は、多様な方式で実現可能である。例えば、前記端子50とバッテリーハウジングBHとの間に、後述する絶縁ガスケット35を介在させることで絶縁を実現し得る。これと異なり、前記端子50の一部に絶縁性コーティング層を形成させることで絶縁を実現してもよい。又は、前記端子50とバッテリーハウジングBHとが接触できないように、端子50を構造的に堅固に固定する方式を適用してもよい。又は、上述した方式のうちの複数の方式を組み合わせて適用してもよい。
【0126】
図5を参照すると、前記第1集電板36は、電極組立体Aの上部に結合され得る。例えば、前記第1集電板36は、前記電極組立体Aの上部で第1電極11に備えられた第1無地部11aに結合され得る。前記第1集電板36は、導電性を有する金属材料からなり得る。図示されていないが、前記第1集電板36は、その下面に放射状に形成された複数の凹凸を備え得る。凹凸が形成された場合、第1集電板36を押し付けて凹凸に、第1電極11に備えられた第1無地部11aに押し込み得る。
【0127】
本発明の他の実施例による円筒形バッテリー1は、第1集電板36を備えないこともある。この場合、第1電極11に備えられた第1無地部11aは、直接に端子50と電気的に接続され得る。
【0128】
図5を参照すると、前記第1集電板36は、第1電極11に備えられた第1無地部11aの端部に結合され得る。前記第1電極11に備えられた第1無地部11aと第1集電板36との結合は、例えばレーザー溶接によって行われ得る。前記レーザー溶接は、第1集電板36の母材を部分的に溶融させる方式で行われ得、第1集電板36と第1無地部11aとの間に溶接のための半田を介在させた状態で行われてもよい。この場合、前記半田は、第1集電板36及び第1無地部11aと比べて低い融点を有するものが望ましい。一方、レーザー溶接の他にも、抵抗溶接、超音波溶接などが用いられ得るが、溶接方法がこれらに限定されるものではない。
【0129】
図8を参照すると、前記第1集電板36は、第1電極11に備えられた第1無地部11aの端部が第1集電板36と平行な方向に折り曲げられて形成された折曲面上に結合され得る。前記第1無地部11aの折曲方向は、例えば電極組立体Aの巻取中心Cに向かう方向であり得る。前記第1無地部11aがこのように折り曲げられた形態を有する場合、第1無地部11aの占有空間が減少してエネルギー密度を向上させることができる。また、前記第1無地部11aと第1集電板36との間の結合面積の増加により、結合力の向上及び抵抗減少の効果を奏することができる。
【0130】
図5を参照すると、前記絶縁体37は、電極組立体Aの上端とバッテリーハウジングBHの内側面との間、又は電極組立体Aの上部に結合された第1集電板36とバッテリーハウジングBHの内側面との間に備えられ得る。前記絶縁体37は、第1電極11に備えられた第1無地部11aとバッテリーハウジングBHとの間の接触、及び/又は、第1集電板36とバッテリーハウジングBHとの間の接触を防止する。すなわち、前記絶縁体37は、前記バッテリーハウジングBHの内部に収容され、前記第1電極11に備えられた第1無地部11aと前記バッテリーハウジングBHとの間の電気的接続を遮断するように構成される。したがって、前記絶縁体37は、絶縁性能を有する材料からなり得る。例えば、前記絶縁体37はポリマー材料を含み得る。
【0131】
図4及び
図5を参照すると、前記絶縁ガスケット35は、バッテリーハウジングBHと端子50との間に介在されて、互いに反対極性を有するバッテリーハウジングBHと端子50との接触を防止する。すなわち、前記絶縁ガスケット35は、バッテリーハウジングBHと端子50との電気的接続を遮断する。これにより、略平坦な形状を有するバッテリーハウジングBHの上面が円筒形バッテリー1の第2電極端子E2として機能することができる。
【0132】
図5を参照すると、前記第2集電板38は、電極組立体Aの下部に結合され得る。前記第2集電板38は、導電性を有する金属材料からなり得る。前記第2集電板38は、第2電極12に備えられた第2無地部12aと連結され得る。また、前記第2集電板38は、バッテリーハウジングBHと電気的に接続され得る。前記第2集電板38は、
図5に示されたように、バッテリーハウジングBHの内側面とシーリングガスケット39との間に介在され固定され得る。これと異なり、前記第2集電板38は、バッテリーハウジングBHの内壁面に溶接されてもよい。
【0133】
図示されていないが、前記第2集電板38は、その一面上に放射状に形成された複数の凹凸を備え得る。凹凸が形成された場合、第2集電板38を押し付けて凹凸に、第2電極12に備えられた第2無地部12aに押し込み得る。
【0134】
図5を参照すると、前記第2集電板38は、第2電極12に備えられた第2無地部12aの端部に結合され得る。前記第2電極12に備えられた第2無地部12aと第2集電板38との結合は、例えばレーザー溶接によって行われ得る。前記レーザー溶接は、第2集電板38の母材を部分的に溶融させる方式で行われ得、第2集電板38と第2無地部12aとの間に溶接のための半田を介在させた状態で行われてもよい。この場合、前記半田は、第2集電板38及び第2無地部12aと比べて低い融点を有するものが望ましい。一方、レーザー溶接の他にも、抵抗溶接、超音波溶接などが用いられ得るが、溶接方法がこれらに限定されるものではない。
【0135】
図8の図示と同様に、前記第2集電板38は、第2電極12に備えられた第2無地部12aの端部が第2集電板38と平行な方向に折り曲げられて形成された結合面上に結合され得る。前記第2電極12に備えられた第2無地部12aの折曲方向は、例えば電極組立体Aの巻取中心Cに向かう方向であり得る。前記第2電極12に備えられた第2無地部12aがこのように折り曲げられた形態を有する場合、第2無地部12aの占有空間が減少してエネルギー密度を向上させることができる。また、前記第2無地部12aと第2集電板38との間の結合面積の増加により、結合力の向上及び抵抗減少の効果を奏することができる。
【0136】
図5を参照すると、前記シーリングガスケット39は、前記密封体40を覆い包む略リング形状であり得る。前記シーリングガスケット39は、密封体40の下面、上面及び側面を同時に覆い得る。シーリングガスケット39のうちの密封体40の上面を覆う部位の半径方向の長さは、シーリングガスケット39のうちの前記密封体40の下面を覆う部位の半径方向の長さよりも短いか又は同一であり得る。シーリングガスケット39のうちの密封体40の上面を覆う部位の半径方向の長さが長過ぎると、バッテリーハウジングBHを上下に圧縮するサイジング工程においてシーリングガスケット39が第2集電板38を押し付けて、第2集電板38又はバッテリーハウジングBHが損傷されるおそれがある。したがって、シーリングガスケット39のうちの密封体40の上面を覆う部位の半径方向の長さを一定水準に小さく維持する必要がある。
【0137】
図8の実施形態による電極組立体Aは、上述した
図7の実施形態の電極組立体Aと類似するため、上述した実施形態と実質的に同一であるか又は類似の構成については重なる説明を省略し、以下、上述した実施形態との相違点を中心に説明する。
【0138】
図8を参照すると、本発明の他の実施形態による電極組立体Aは、第1無地部11a及び第2無地部12aの少なくとも一部がコア側に折り曲げられている構造を有し得る。例えば、
図8を参照すると、前記第1無地部11a及び第2無地部12aの少なくとも一部区間は、複数の分切片に分割され得る。ここで、前記複数の分切片は、コア側に折り曲げられながら多重に重なる構造を有し得る。例えば、複数の分切片はレーザーでノッチングされたものであり得る。分切片は、超音波カッティングや打ち抜きなどの公知の金属箔カッティング工程で形成し得る。
【0139】
第1無地部11a及び第2無地部12aの折曲加工の際、活物質層及び/又は絶縁層14の損傷を防止するため、分切片同士の間の切断線の下端と活物質層との間に所定のギャップを設けることが望ましい。第1無地部11a及び第2無地部12aが折り曲げられるとき、切断線の下端付近に応力が集中されるためである。ギャップは0.2mm~4mmであることが望ましい。ギャップが上記の数値範囲に調節されれば、第1無地部11a及び第2無地部12aの折曲加工時に生じる応力によって切断線の下端付近の活物質層及び/又は絶縁層14が損傷されることを防止することができる。また、ギャップは、分切片のノッチング又はカッティング時の公差による活物質層及び/又は絶縁層14の損傷を防止することができる。
【0140】
前記第1無地部11a及び第2無地部12aの折曲方向は、例えば電極組立体Aの巻取中心Cに向かう方向であり得る。前記第1無地部11a及び第2無地部12aがこのように折り曲げられた形態を有する場合、第1無地部11a及び第2無地部12aの占有空間が減少してエネルギー密度を向上させることができる。また、前記第1無地部11aと第1集電板36との結合面積及び第2無地部12aと第2集電板38との結合面積の増加により、結合力の向上及び抵抗減少の効果を奏することができる。
【0141】
図8及び
図9を参照すると、第1電極11に備えられた第1無地部11aは一方向に折り曲げられ得る。例えば、
図9において、+X方向がコア側に向かう方向であり得る。このように第1無地部11aがコア側に折り曲げられている場合、第1電極11の第1無地部11aは、分離膜13を越えて第2電極12側に近接し得る。したがって、前記第1電極11に備えられた第1無地部11aの両面のうちコア側に向かう面には、前記絶縁層14が前記第1無地部11aの末端又は前記末端の隣接位置まで延在し得る。このような構造によれば、第1無地部11aがコア側に折り曲げられて分離膜13を越えて第2電極12側に近接しても、第1電極11と第2電極12との電気的接触を防止可能である。したがって、円筒形バッテリー1の内部短絡を効果的に防止することができる。
【0142】
図9を参照すると、前記第1無地部11aの両面のうちコア側に向かう面の反対面には、一部領域のみに絶縁層14が備えられ得る。すなわち、前記第1無地部11aの両面のうちコア側に向かう面の反対面の残りの一部領域では、第1無地部11aが外側に露出し得る。したがって、コア側に向かう面の反対面の露出した第1無地部11aを通じて、隣接した第1電極11に備えられた第1無地部11a又は第1集電板36と電気的に接触可能である。すなわち、前記第1無地部11aは、前記第1無地部11aの全体領域のうち前記絶縁層14によって覆われていない領域で、前記第1集電板36と電気的に結合され得る。さらに、前記第1無地部11aは、前記第1無地部11aの全体領域のうち前記絶縁層14によって覆われていない領域で、前記第1集電板36と溶接によって結合され得る。前記溶接は、例えばレーザー溶接であり得る。前記レーザー溶接は、第1集電板36の母材を部分的に溶融させる方式で行われ得、第1集電板36と第1無地部11aとの間に溶接のための半田を介在させた状態で行われてもよい。この場合、前記半田は、第1集電板36及び第1無地部11aと比べて低い融点を有するものが望ましい。一方、レーザー溶接の他にも、抵抗溶接、超音波溶接などが用いられ得るが、溶接方法がこれらに限定されるものではない。
【0143】
図10aを参照すると、前記絶縁層14は、前記第1無地部11aの末端を包む形態を有し得る。具体的には、前記絶縁層14は、前記第1無地部11aの末端面を包む構造を有し得る。例えば、折り曲げられた第1無地部11aが長いと、第2電極12と接触する可能性が高くなる。さらに、折り曲げられた第1無地部11aが動きや外圧によってさらに折り曲げられる可能性がある。このとき、第1無地部11aの末端面が第2電極12と接触する可能性が高くなる。しかし、本発明の上記のような構造によれば、第1無地部11aがさらに折り曲げられるか又は変形されても、絶縁層14が第1無地部11aの末端面まで覆っているため、第1電極11と第2電極12との電気的接触を防止できる。
【0144】
図10bを参照すると、前記第1無地部11aの両面のうちコア側に向かう面の反対面では、前記絶縁層14が前記第1無地部11aの折曲地点まで延在し得る。第1電極11の左側には他の分離膜13及びさらに他の第2電極12が位置している。すなわち、第1電極11は、第1電極11の右側に位置した第2電極12だけでなく、第1電極11の左側に位置した第2電極12とも電気的に接触可能である。しかし、本発明の上記のような構造によれば、第1電極11の両側に位置した第2電極12との電気的接触を確実に防止することができる。
【0145】
図11は、本発明の比較例であって、絶縁層14が備えられていない電極組立体Aの断面を示した図である。
図11を参照すると、第1電極11の第1無地部11aと第1有地部11bとの境界領域には別途の絶縁層14が備えられていない。このような構造によれば、第1電極11又は第2電極12の蛇行などで動きが発生する場合、第2電極12が分離膜13の末端まで位置するか又は第2電極12が分離膜13の末端よりも外側に突出することで、第1電極11と第2電極12との電気的接触が発生し得る。或いは、何らかの理由で分離膜13が損傷される場合、第1電極11と第2電極12との電気的接触が発生し得る。この場合、
図11のような構造を有する電極組立体Aでは、第1電極11と第2電極12との電気的接触によって内部短絡の発生を避けられなくなり、発火リスクが増加する。
【0146】
図12は、円筒形バッテリー1内の多様な短絡ケースにおける電力分布を示したグラフである。
図12を参照すると、円筒形バッテリー1内で発生し得る短絡ケースを下記の四つに想定可能である。
【0147】
(i)正極に備えられた有地部と負極に備えられた有地部とが電気的に接触する場合、(ii)正極に備えられた有地部と負極に備えられた無地部とが電気的に接触する場合、(iii)負極に備えられた有地部と正極に備えられた無地部とが電気的に接触する場合、(iv)正極に備えられた無地部と負極に備えられた無地部とが電気的に接触する場合である。
【0148】
図12を参照すると、負極に備えられた有地部と正極に備えられた無地部とが電気的に接触する(iii)番ケースで電力が最も高いことが確認できる。すなわち、負極に備えられた有地部と正極に備えられた無地部とが電気的に接触する(iii)番ケースにおいて、発火が発生する可能性が非常に高くなる。これは、抵抗が非常に低くて短絡電流が大きく、それにより温度が急激に上昇するためである。
【0149】
したがって、本発明の電極組立体Aの構造を考慮するとき、負極に備えられた有地部と正極に備えられた無地部との電気的接触を防止できる構造が求められる。
【0150】
そこで、鋭意検討したところ、本発明者らは、正極に備えられた無地部の少なくとも一部領域に絶縁層14を備えることで、負極に備えられた有地部との電気的接触を効果的に防止できるという結果を導出し、本発明の完成に至った。すなわち、前記第1電極11は正極であり得る。但し、第1電極11が必ずしも正極に限定されるものではなく、負極であってもよい。そして、本発明から第2電極12に絶縁層14が備えられるものを排除することもない。すなわち、正極と負極の両方に前記絶縁層14が備えられてもよい。この場合、発生可能なすべての短絡ケースを防止することができる。
【0151】
望ましくは、円筒形バッテリーは、例えばフォームファクタの比(円筒型バッテリーの直径を高さで除した値、すなわち高さ(H)対比直径(Φ)の比で定義される)が約0.4よりも大きい円筒形バッテリーであり得る。
【0152】
ここで、フォームファクタ(form factor)とは、円筒形バッテリーの直径及び高さを示す値を意味する。本発明の一実施形態による円筒形バッテリーは、例えば46110バッテリー、4875バッテリー、48110バッテリー、4880バッテリー、4680バッテリーであり得る。フォームファクタを示す数値において、前方の二桁はセルの直径を示し、残り数字はバッテリーの高さを示す。
【0153】
本発明の一実施形態によるバッテリーは、略円柱状のバッテリーであって、直径が約46mmであり、高さが約110mmであり、フォームファクタの比が約0.418である円筒形バッテリーであり得る。
【0154】
他の実施形態によるバッテリーは、略円柱状のバッテリーであって、直径が約48mmであり、高さが約75mmであり、フォームファクタの比が約0.640である円筒形バッテリーであり得る。
【0155】
さらに他の実施形態によるバッテリーは、略円柱状のバッテリーであって、直径が約48mmであり、高さが約110mmであり、フォームファクタの比が約0.436である円筒形バッテリーであり得る。
【0156】
さらに他の実施形態によるバッテリーは、略円柱状のバッテリーであって、直径が約48mmであり、高さが約80mmであり、フォームファクタの比が約0.600である円筒形バッテリーであり得る。
【0157】
さらに他の実施形態によるバッテリーは、略円柱状のバッテリーであって、直径が約46mmであり、高さが約80mmであり、フォームファクタの比が約0.575である円筒形バッテリーであり得る。
【0158】
従来、フォームファクタの比が約0.4以下であるバッテリーが用いられている。すなわち、従来は、例えば1865バッテリー、2170バッテリーなどが用いられている。1865バッテリーの場合、直径が約18mmであり、高さが約65mmであり、フォームファクタの比が約0.277である。2170バッテリーの場合、直径が約21mmであり、高さが約70mmであり、フォームファクタの比が約0.300である。
【0159】
上述した実施形態によるバッテリーは、バッテリーパックの製造に使用可能である。
【0160】
図13aは、本発明の一実施形態によるバッテリーパックの構成を概略的に示した図である。
【0161】
図13aを参照すると、本発明の一実施形態によるバッテリーパック3は、円筒形バッテリー1が電気的に接続された集合体、及びそれを収容するパックハウジング2を含む。円筒形バッテリー1は、上述した実施形態によるバッテリーであり得る。図示の便宜上、円筒形バッテリー1同士の電気的接続のためのバスバー、冷却ユニット、外部端子などの部品は示されていない。
【0162】
バッテリーパック3は、自動車に搭載され得る。自動車は、一例として、電気自動車、ハイブリッド自動車又はプラグインハイブリッド自動車であり得る。自動車は、四輪自動車又は二輪自動車を含む。
【0163】
図13bは、
図13aのバッテリーパック3を含む自動車を概略的に示した図である。
【0164】
図13bを参照すると、本発明の一実施形態による自動車5は、本発明の一実施形態によるバッテリーパック3を含む。自動車5は、本発明の一実施形態によるバッテリーパック3から電力の供給を受けて動作する。
【0165】
本発明において、電極の無地部は多様な構造を有し得る。また、無地部が巻取方向に沿って複数の分切片に分割されているとき、巻取軸方向における分離膜の末端位置は電解液の含浸性を考慮して分切片の構造と関連して設定され得る。以下、電極の多様な構造及び分離膜の位置設定に関連する実施形態を詳しく説明する。
【0166】
図14は、本発明の第1実施形態による電極60aの構造を示した平面図である。
【0167】
図14を参照すると、第1実施形態の電極60aは、金属ホイルからなる集電体61、及び活物質層62を含む。金属ホイルはアルミニウム又は銅であり得、電極60aの極性に合わせて適切に選択される。活物質層62は、集電体61の少なくとも一面に形成され、巻取方向Xの長辺端部に無地部63を含む。無地部63は、活物質がコーティングされていない領域である。活物質層62と無地部63との境界には絶縁コーティング層64が形成され得る。絶縁コーティング層64は、少なくとも一部が活物質層62と無地部63との境界と重なるように形成される。絶縁コーティング層64は高分子樹脂を含み、Al
2O
3のような無機物フィラーを含み得る。
【0168】
無地部63は、電極組立体のコア側と隣接したコア側無地部B1、電極組立体の外周側と隣接した外周側無地部B3、及びコア側無地部B1と外周側無地部B3との間に介在された中間無地部B2を含む。
【0169】
コア側無地部B1、外周側無地部B3及び中間無地部B2は、電極60aがゼリーロール型の電極組立体として巻き取られたとき、それぞれコア側に隣接した領域の無地部、外周側に隣接した領域の無地部、及びこれらを除いた他の領域の無地部として定義され得る。コア側無地部B1と中間無地部B2との境界は、電極組立体のコア側から外周側に向かって無地部の高さ(又は変化パターン)が実質的に変わる地点、若しくは、電極組立体の半径を基準にして所定%の地点(例えば、半径の5%、10%、15%地点など)で適切に定義され得る。中間無地部B2と外周側無地部B3との境界は、電極組立体の外周側からコア側に向かって無地部の高さ(又は変化パターン)が実質的に変わる地点、若しくは、電極組立体の半径を基準にして所定%の地点(例えば、半径の85%、90%、95%地点など)で定義され得る。コア側無地部B1と中間無地部B2との境界及び中間無地部B2と外周側無地部B3との境界が特定されると、中間無地部B2は自動に特定され得る。もし、コア側無地部B1と中間無地部B2との境界のみが特定される場合、中間無地部B2と外周側無地部B3との境界は電極組立体の外周側付近の地点で適切に選択され得る。反対に、中間無地部B2と外周側無地部B3との境界のみが特定される場合、コア側無地部B1と中間無地部B2との境界は電極組立体のコア側付近の地点で適切に選択され得る。第1実施形態において、無地部63の高さは一定ではなく、巻取方向Xにおいて相対的に差がある。すなわち、外周側無地部B3の高さ(Y軸方向の長さ)は、コア側無地部B1及び中間無地部B2よりも相対的に低い。
【0170】
図15は、本発明の第2実施形態による電極60bの構造を示した平面図である。
【0171】
図15を参照すると、第2実施形態の電極60bは、第1実施形態と比較して、外周側無地部B3の高さが外周側に向かって徐々に減少する点のみで異なり、他の構成は実質的に同一である。
【0172】
一変形形態において、外周側無地部B3は、高さが段階的に減少する階段形状(点線を参照)で変形可能である。
【0173】
図16は、本発明の第3実施形態による電極60cの構造を示した平面図である。
【0174】
図16を参照すると、第3実施形態の電極60cは、コア側無地部B1及び外周側無地部B3の高さが中間無地部B2よりも相対的に低い。また、コア側無地部B1の高さと外周側無地部B3の高さとは同一であるか又は相異なり得る。
【0175】
望ましくは、中間無地部B2の高さは、コア側から外周側に向かって段階的に増加する階段形状であり得る。
【0176】
パターン1~パターン7は、無地部63の高さが変化する位置を中心にして中間無地部B2を区分したものである。望ましくは、パターンの個数、各パターンの高さ(Y軸方向の長さ)と幅(X軸方向の長さ)は、無地部63の折曲過程で応力を最大限に分散できるように調節可能である。応力の分散は無地部63が破れることを防止するためものである。
【0177】
コア側無地部B1の幅dB1は、中間無地部B2のパターンをコア側に折り曲げたとき、電極組立体のコアの空洞を塞がない条件を適用して設計する。
【0178】
一例において、コア側無地部B1の幅dB1は、パターン1の折曲長さに比例して増加し得る。折曲長さは、パターンの折曲地点を基準にしたパターンの高さに該当する。
【0179】
具体的な例において、電極60cがフォームファクタ4680の円筒形バッテリーの電極組立体を製造するのに使用される場合、コア側無地部B1の幅dB1は電極組立体のコアの直径に応じて180mm~350mmに設定され得る。
【0180】
一例において、それぞれのパターンの幅は、電極組立体の同一巻回ターンを構成するように設計され得る。
【0181】
他の例において、中間無地部B2の高さはコア側から外周側に向かって増加してから減少する階段形状であり得る。
【0182】
さらに他の例において、外周側無地部B3は第2実施形態と同じ構造を有するように変形され得る。
【0183】
さらに他の例において、中間無地部B2に適用されたパターン構造が外周側無地部B3まで拡張され得る(点線を参照)。
【0184】
図17aは、本発明の第4実施形態による電極60dの構造を示した平面図である。
【0185】
図17aを参照すると、第4実施形態の電極60dは、コア側無地部B1及び外周側無地部B3の高さが中間無地部B2よりも相対的に低い。また、コア側無地部B1の高さと外周側無地部B3の高さとは同一であるか又は相異なり得る。
【0186】
望ましくは、中間無地部B2は、少なくとも一部区間が複数の分切片66を含み得る。複数の分切片66は、コア側から外周側に向かって高さが段階的に増加し得る。
【0187】
分切片66は、レーザーでノッチングされたものであり得る。分切片66は、超音波カッティングや打ち抜きなどの公知の金属箔カッティング工程で形成し得る。
【0188】
第4実施形態において、無地部63の折曲加工の際、活物質層62及び/又は絶縁コーティング層64の損傷を防止するため、分切片66同士の間の切断線の下端と活物質層62との間に所定のギャップを設けることが望ましい。無地部63が折り曲げられるとき、切断線の下端付近に応力が集中されるためである。ギャップは0.2mm~4mmであることが望ましい。ギャップを上記の数値範囲に調節することで、無地部63の折曲加工時に生じる応力によって切断線の下端付近の活物質層62及び/又は絶縁コーティング層64が損傷されることを防止することができる。また、ギャップは、分切片66のノッチング又はカッティング時の公差による活物質層62及び/又は絶縁コーティング層64の損傷を防止することができる。望ましくは、電極60dが電極組立体として巻き取られたとき、絶縁コーティング層64の少なくとも一部は分離膜の外側に露出し得る。この場合、分切片66が折り曲げられるとき、絶縁コーティング層64が折曲地点を支持可能である。
【0189】
複数の分切片66は、コア側から外周側に向かって複数の分切片グループを成し得る。同一分切片グループに属した分切片の幅、高さ及び離隔ピッチは実質的に同一であり得る。
【0190】
第4実施形態の電極60dがゼリーロール型の電極組立体の正極又は負極として含まれるとき、分離膜SPが活物質層62及び/又は絶縁コーティング層64と対面し得る。
【0191】
電解液を電極組立体に含浸させる工程で電解液の含浸性を改善するため、巻取軸方向における分離膜SPの末端位置を以下のように設定し得る。
【0192】
一例として、電極60dのコア側無地部、外周側無地部、及び中間無地部のうちの最も低い地点を巻取方向(X軸)と平行に通過する線を基準線DLとし、折曲面を形成する分切片66のうちの最も低い高さHaを有する分切片を最小分切片とするとき、分離膜SPの幅方向の末端SLは、基準線DLを基準にして前記最小分切片の高さHaの30%以内で前記電極組立体の外側に位置し得る。ここで、前記電極組立体の外側とは、電極60dの活物質層62から無地部63に向かう側を意味する。図面において、参照符号Hbは、分離膜SPの幅方向の末端と基準線DLとの間の距離を示す。
【0193】
一方、無地部63に含まれた分切片のうち一部の分切片が折曲面を形成しない場合、該分切片は最小分切片の選定対象から除外され得る。分切片66同士の間の切断線の下端に対応する無地部部分の高さが最も低ければ、基準線DLは切断線の下端を通過し得る。切断線に対応する空いた空間の下端はノッチング谷(notching valley)と称し得る。
【0194】
他の例として、前記分離膜SPの幅方向の末端SLは、前記基準線DLを基準にして前記最小分切片の高さHaの30%以内で前記電極組立体の内側に位置し得る。ここで、前記電極組立体の内側とは、電極60dの無地部63から活物質層62に向かう側を意味する。
【0195】
本発明の一具現例によれば、分離膜SPの幅方向の末端が前記基準線DLに近接して位置するようにその位置が調節される。その結果、電解液がノッチング谷に沿って電極組立体内へと流入されるため、電解液含浸性が改善される。具体的には、電解液が電極組立体に投入されれば、電解液は分切片66同士の間のノッチング谷に移動する。その後、電解液は、ノッチング谷(又は前記基準線DL)に近接して位置する分離膜SPの末端にさらに含浸され、最終的に電極の活物質層内へと含浸されるようになる。その結果、電極組立体内における電解液含浸の均一性が増加する。
【0196】
前記分離膜SPの幅方向の末端が電極組立体の外側に位置するほど、溶接特性に否定的な影響を与える。逆に、前記分離膜SPの幅方向の末端が電極組立体の内側に位置するほど、正極と負極との短絡危険性が高くなり得る。
【0197】
したがって、本発明では、前記分離膜SPの幅方向の末端が前記基準線DLを基準にして前記最小分切片の高さHaの30%以内で前記電極組立体の外側に位置するか、又は、前記分離膜SPの幅方向の末端が前記基準線DLを基準にして前記最小分切片の高さHaの30%以内で前記電極組立体の内側に位置するように制御する。
【0198】
本発明の一具現例によれば、前記分離膜SPの幅方向の末端が前記基準線DLを基準にして1.5mm以内で前記電極組立体の外側に位置するか、又は、前記分離膜SPの幅方向の末端が前記基準線DLを基準にして1.5mm以内で前記電極組立体の内側に位置し得る。
【0199】
図18は、本発明の実施形態による分切片Pの幅、高さ及び離隔ピッチの定義を示した図である。
【0200】
図18を参照すると、分切片66の幅C1、高さC2及び離隔ピッチC3は、無地部63の折曲加工時に無地部63が破れることを防止し且つ溶接強度を向上させるため、無地部63の重畳層数を十分に増加させながら無地部63の異常な変形を防止できるように設計される。異常な変形とは、折曲地点C4の下部の無地部が直線状態を維持できずに崩れて不規則に変形されることを言う。
【0201】
望ましくは、分切片66の幅C1は1mm~6mmの範囲で調節され得る。C1が1mm未満であると、分切片66がコア側に折り曲げられたとき、溶接強度を十分に確保可能な程度に重ならない領域又は空いた空間(間隙)が発生する。一方、C1が6mmを超えると、分切片66が折り曲げられるとき、折曲地点C4付近の無地部63が応力によって破れるおそれがある。また、分切片66の高さは2mm~10mmの範囲で調節され得る。C2が2mm未満であると、分切片66がコア側に折り曲げられたとき、溶接強度を十分に確保可能な程度に重ならない領域又は空いた空間(間隙)が発生する。一方、C2が10mmを超えると、巻取方向Xにおける無地部の平坦度を均一に維持しながら電極を製造することが困難である。すなわち、無地部63が高くなってうねり(swell)が生じる。また、分切片66の離隔ピッチC3は0.05mm~1mmの範囲で調節され得る。C3が0.05mm未満であると、分切片66が折り曲げられるとき、応力によって折曲地点C4付近の無地部63が破れるおそれがある。一方、C3が1mmを超えると、分切片66が折り曲げられたとき、溶接強度を十分に確保可能な程度に分切片66が重ならないか、又は、空いた空間(間隙)が発生するおそれがある。
【0202】
図17aをさらに参照すると、コア側無地部B1の幅d
B1は、中間無地部B2の分切片66をコア側に折り曲げたとき、電極組立体のコアの空洞を塞がない条件を適用して設計する。
【0203】
一例において、コア側無地部B1の幅d
B1は、グループ1の分切片66の折曲長さに比例して増加し得る。折曲長さは、折曲地点(
図18のC4)を基準にした分切片66の高さに該当する。
【0204】
具体的な例において、電極60dがフォームファクタ4680の円筒形バッテリーの電極組立体を製造するのに使用される場合、コア側無地部B1の幅dB1は電極組立体のコアの直径に応じて180mm~350mmに設定され得る。
【0205】
一例において、各分切片グループの幅は、電極組立体の同一巻回ターンを構成するように設計され得る。
【0206】
他の例において、同一分切片グループに属した分切片66の幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチは、グループ内で徐々に及び/又は段階的に及び/又は不規則的に増加又は減少し得る。
【0207】
グループ1~グループ7は分切片グループの一例に過ぎない。グループの個数及び各グループに含まれる分切片66の個数は、無地部63の折曲過程で応力を最大限に分散させ、溶接強度を十分に確保できるように、分切片66が多重に重なるように調節され得る。
【0208】
さらに他の例において、外周側無地部B3の高さは第1実施形態及び第2実施形態と同様に、徐々に又は段階的に減少し得る。また、中間無地部B2の分切構造は外周側無地部B3まで拡張可能である(点線を参照)。この場合、外周側無地部B3も中間無地部B2と同様に、複数の分切片を含み得る。この場合、外周側無地部B3の分切片は、幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチが中間無地部B2よりも大きくなり得る。
【0209】
具体的な例において、電極60dがフォームファクタ4680の円筒形バッテリーの電極組立体を製造するのに使用される場合、8個のグループで分切片が形成され得る。このとき、グループ1~7の分切片は中間無地部B2に形成され、グループ8の分切片は上述した例のように外周側無地部B3に形成され得る。
【0210】
具体的な例において、コア側無地部B1の幅dB1は180mm~350mmであり得る。グループ1の幅はコア側無地部B1の幅対比35%~40%であり得る。グループ2の幅はグループ1の幅対比130%~150%であり得る。グループ3の幅はグループ2の幅対比120%~135%であり得る。グループ4の幅はグループ3の幅対比85%~90%であり得る。グループ5の幅はグループ4の幅対比120%~130%であり得る。グループ6の幅はグループ5の幅対比100%~120%であり得る。グループ7の幅はグループ6の幅対比90%~120%であり得る。グループ8の幅はグループ7の幅対比115%~130%であり得る。
【0211】
グループ1~グループ8の幅が一定の増加又は減少パターンを見せない理由は、分切片の幅はグループ1からグループ8に行くほど徐々に増加するが、グループ内に含まれる分切片の個数は整数個に制限されるためである。したがって、特定の分切片グループでは分切片の個数が減少し得る。したがって、グループの幅は、コア側から外周側に向かって上記の例示のように不規則な変化様相を示し得る。
【0212】
すなわち、電極組立体の半径方向において連続して隣接する三つの分切片グループのそれぞれに対する巻取方向の幅をそれぞれW1、W2及びW3としたとき、W2/W1よりもW3/W2が小さい分切片グループの組み合わせを含み得る。
【0213】
上述した具体的な例において、グループ4~グループ6がこれに該当する。グループ4に対するグループ5の幅比率は120%~130%であり、グループ5に対するグループ6の幅比率は100%~120%であって、その値が120%~130%よりも小さい。
【0214】
図19aは、本発明の第5実施形態による電極60eの構造を示した平面図である。
図19b及び
図19cは、基準線DLを基準にして分離膜SPの幅方向の末端の位置を設定する実施例を示した図である。
【0215】
図19a~
図19cを参照すると、第5実施形態の電極60eは、第4実施形態と比較して、分切片66’の形状が方形から台形に変更された点を除き、他の構成は第4実施形態(又は変形形態)と実質的に同一である。
【0216】
図20は、台形状の分切片66’の幅、高さ及び離隔ピッチの定義を示した図である。
【0217】
図20を参照すると、分切片66’の幅D1、高さD2及び離隔ピッチD3は、無地部63の折曲加工時に折曲地点D4付近の無地部63が破れることを防止し且つ十分な溶接強度を確保するため、無地部63の重畳層数を十分に増加させながら無地部63の異常な変形を防止できるように設計される。
【0218】
望ましくは、分切片66’の幅D1は1mm~6mmの範囲で調節され得る。D1が1mm未満であると、分切片66’がコア側に折り曲げられたとき、溶接強度を十分に確保可能な程度に分切片66’が重ならない領域又は空いた空間(間隙)が発生するおそれがある。一方、D1が6mmを超えると、分切片66’が折り曲げられるとき、折曲地点D4付近の無地部63が応力によって破れるおそれがある。また、分切片66’の高さは2mm~10mmの範囲で調節され得る。D2が2mm未満であると、分切片66’がコア側に折り曲げられたとき、溶接強度を十分に確保可能な程度に分切片66’が重ならない領域又は空いた空間(間隙)が発生するおそれがある。一方、D2が10mmを超えると、巻取方向における無地部63の平坦度を均一に維持しながら電極を製造することが困難である。また、分切片66’の離隔ピッチD3は0.05mm~1mmの範囲で調節され得る。D3が0.05mm未満であると、分切片66’が折り曲げられるとき、応力によって折曲地点D4付近の無地部63が破れるおそれがある。一方、D3が1mmを超えると、分切片66’が折り曲げられたとき、溶接強度を十分に確保可能な程度に分切片66’が重ならない領域又は空いた空間(間隙)が発生するおそれがある。
【0219】
第5実施形態において、複数の分切片66’はコア側から外周側に向かって台形の下部内角θが増加し得る。電極組立体の半径が増加すれば、曲率が減少する。もし、分切片66’の下部内角θが電極組立体の半径の増加とともに増加すれば、分切片66’が折り曲げられるとき半径方向及び円周方向で生じる応力を緩和させることができる。また、下部内角θが増加すれば、分切片66’が折り曲げられたとき内側の分切片66’と重なる面積及び重畳層数もともに増加することで、半径方向及び円周方向で溶接強度を均一に確保でき、折曲面を平坦に形成することができる。
【0220】
一例において、電極60eがフォームファクタ4680の円筒形バッテリーの電極組立体を製造するのに使用される場合、電極組立体の半径が4mmから22mmまで増加するとき、分切片66’の内角は60°~85°の区間で段階的に増加し得る。
【0221】
他の例において、外周側無地部B3の高さは、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、徐々に又は段階的に減少し得る。また、中間無地部B2の分切構造は外周側無地部B3まで拡張可能である(点線を参照)。この場合、外周側無地部B3も中間無地部B2と同様に複数の分切片を含み得る。この場合、外周側無地部B3の分切片は、幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチが中間無地部B2よりも大きくなり得る。
【0222】
第4実施形態及び第5実施形態のように、中間無地部B2が複数の分切片66、66’を含むとき、それぞれの分切片66、66’の形状は三角形、半円形、半楕円形、平行四辺形などに変更可能である。
【0223】
また、中間無地部B2の領域毎に分切片66、66’の形状を変更することも可能である。一例において、応力が集中される区間には応力分散に有利なラウンド形状(例えば、半円形、半楕円形など)を適用し、応力が相対的に低い区間には面積が最大限に広い多角形状(例えば、方形、台形、平行四辺形など)を適用し得る。
【0224】
第4実施形態及び第5実施形態において、中間無地部B2の分切構造はコア側無地部B1にも適用可能である。但し、コア側無地部B1に分切構造が適用されれば、コアの曲率半径によって、中間無地部B2の分切片66、66’が折り曲げられるときコア側無地部B1の端部が外周側に曲がる逆フォーミング(reverse forming)現象が発生するおそれがある。したがって、コア側無地部B1には分切構造を適用しないか、又は、分切構造を適用してもコアの曲率半径を考慮して分切片66、66’の幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチを逆フォーミングが発生しない水準に調節することが望ましい。
【0225】
上述した実施形態(変形形態)の電極構造は、ゼリーロール型の電極組立体に含まれた極性の異なる第1電極及び第2電極の少なくとも一つに適用され得る。また、第1電極及び第2電極の一方に実施形態(変形形態)の電極構造が適用される場合、他方には従来の電極構造が適用され得る。また、第1電極及び第2電極に適用された電極構造は同一ではなく、相異なり得る。
【0226】
一例として、第1電極及び第2電極がそれぞれ正極及び負極であるとき、第1電極には実施形態(変形形態)のいずれか一つが適用され、第2電極には従来の電極構造(
図1を参照)が適用され得る。
【0227】
他の例として、第1電極及び第2電極がそれぞれ正極及び負極であるとき、第1電極には実施形態(変形形態)のいずれか一つが選択的に適用され、第2電極には実施形態(変形形態)のいずれか一つが選択的に適用され得る。
【0228】
以下、本発明の実施形態による電極組立体の構造について詳しく説明する。
【0229】
図21は、第1実施形態の電極60aを第1電極(正極)及び第2電極(負極)に適用したゼリーロール型の電極組立体A1をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【0230】
電極組立体A1は、
図2を参照して説明した巻取工法で製造可能である。説明の便宜上、分離膜の外側に延在した無地部43a、43bの突出構造を詳細に示し、第1電極、第2電極及び分離膜の巻取構造の図示は省略されている。上側に突出した無地部43aは第1電極から延在したものであり、下側に突出した無地部43bは第2電極から延在したものである。
【0231】
無地部43a、43bの高さが変化するパターンは概略的に示した。すなわち、断面の切断位置によって無地部43a、43bの高さは不規則に変化し得る。一例として、台形状の分切片66、66’の側辺が切断されれば、断面における無地部の高さは分切片66、66’の高さよりも低くなる。したがって、電極組立体の断面を示した図面に示された無地部43a、43bの高さは、それぞれの巻回ターンに含まれた無地部の高さ(
図18のC2、
図20のD2)の平均に対応すると理解されたい。
【0232】
図21を参照すると、第1電極の無地部43aは、電極組立体A1のコアに隣接したコア側無地部B1、電極組立体A1の外周表面に隣接した外周側無地部B3、及びコア側無地部B1と外周側無地部B3との間に介在された中間無地部B2を含む。
【0233】
外周側無地部B3の高さ(Y軸方向の長さ)は中間無地部B2の高さよりも相対的に低い。したがって、バッテリーハウジングのビーディング部に外周側無地部B3が押し付けられて内部短絡が起きる現象を防止することができる。
【0234】
下部無地部43bは上部無地部43aと同じ構造を有する。一変形形態において、下部無地部43bは従来の電極構造や他の実施形態(変形形態)の電極構造を有してもよい。
【0235】
上部無地部43a及び下部無地部43bの端部81は、電極組立体A1の外周側からコア側に折り曲げられ得る。このとき、外周側無地部B3は実質的に折り曲げられなくてもよい。
【0236】
図22は、第2実施形態の電極60bを第1電極(正極)及び第2電極(負極)に適用したゼリーロール型の電極組立体A2をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【0237】
図22を参照すると、第1電極の無地部43aは、電極組立体A2のコアに隣接したコア側無地部B1、電極組立体A2の外周表面に隣接した外周側無地部B3、及びコア側無地部B1と外周側無地部B3との間に介在された中間無地部B2を含む。
【0238】
外周側無地部B3の高さは中間無地部B2の高さよりも相対的に低く、コア側から外周側に向かって徐々に又は段階的に減少する。したがって、バッテリーハウジングのビーディング部に外周側無地部B3が押し付けられて内部短絡が起きる現象を防止することができる。
【0239】
下部無地部43bは上部無地部43aと同じ構造を有する。一変形形態において、下部無地部43bは従来の電極構造や他の実施形態(変形形態)の電極構造を有してもよい。
【0240】
上部無地部43a及び下部無地部43bの端部91は、電極組立体A2の外周側からコア側に折り曲げられ得る。このとき、外周側無地部B3の最外側92は実質的に折り曲げられなくてもよい。
【0241】
図23は、第3実施形態~第5実施形態(これらの変形形態)の電極60c、60d、60eのうちのいずれか一つを第1電極(正極)及び第2電極(負極)に適用したゼリーロール型の電極組立体A3をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【0242】
図23を参照すると、第1電極の無地部43aは、電極組立体A3のコアに隣接したコア側無地部B1、電極組立体A3の外周表面に隣接した外周側無地部B3、及びコア側無地部B1と外周側無地部B3との間に介在された中間無地部B2を含む。
【0243】
コア側無地部B1の高さは中間無地部B2の高さよりも相対的に低い。また、中間無地部B2において最内側に位置した無地部43aの折曲長さは、コア側無地部B1の半径方向長さRと同一であるか又は短い。折曲長さHは、無地部43aが折り曲げられる地点(
図18のC4、
図20のD4)を基準にした無地部43aの高さに該当する。
【0244】
したがって、中間無地部B2が折り曲げられても、折曲部位が電極組立体A3のコアの空洞102を閉塞することがない。空洞102が閉塞されないと、電解質注液工程に差し支えがなく、電解液注液の効率が向上する。また、空洞102を通して溶接治具を挿入して負極側の集電板とバッテリーハウジングとの間の溶接工程を容易に行うことができる。
【0245】
外周側無地部B3の高さは中間無地部B2の高さよりも相対的に低い。したがって、バッテリーハウジングのビーディング部に外周側無地部B3が押し付けられて内部短絡が起きる現象を防止することができる。
【0246】
一変形形態において、外周側無地部B3の高さは、
図23と異なり、徐々に又は段階的に減少し得る。また、
図23では、中間無地部B2の高さが外周側一部分で等しいが、中間無地部B2の高さはコア側無地部B1と中間無地部B2との境界から中間無地部B2と外周側無地部B3との境界まで徐々に又は段階的に増加し得る。
【0247】
下部無地部43bは上部無地部43aと同じ構造を有する。一変形形態において、下部無地部43bは従来の電極構造や他の実施形態(変形形態)の電極構造を有してもよい。
【0248】
上部無地部43a及び下部無地部43bの端部101は、電極組立体A3の外周側からコア側に折曲加工され得る。このとき、コア側無地部B1及び外周側無地部B3は実質的に折り曲げられない。
【0249】
中間無地部B2が複数の分切片を含む場合、折曲応力が緩和されるため、折曲地点付近の無地部43aが破れるか又は異常に変形することを防止することができる。また、分切片の幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチが上述した実施形態の数値範囲で調節される場合、分切片がコア側に折り曲げられながら溶接強度を十分に確保可能な程度に多重に重なり、折曲面(Y軸方向から眺めた表面)に空いた空間(間隙)を形成しない。
【0250】
図24は、本発明のさらに他の実施形態による電極組立体A4をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【0251】
図24を参照すると、電極組立体A4は、
図23の電極組立体A3と比較して、外周側無地部B3の高さが中間無地部B2の最外側の高さと実質的に同一である点を除き、他の構成は実質的に同一である。
【0252】
外周側無地部B3は複数の分切片を含み得る。複数の分切片の構成については第4実施形態及び第5実施形態(変形形態)の説明が実質的に同様に援用される。
【0253】
電極組立体A4において、コア側無地部B1の高さは中間無地部B2の高さよりも相対的に低い。また、中間無地部B2において最内側に位置した無地部の折曲長さHは、コア側無地部B1の半径方向長さRと同一であるか又は短い。
【0254】
したがって、中間無地部B2が折り曲げられても、折曲部位が電極組立体A4コアの空洞112を閉塞することがない。空洞112が閉塞されないと、電解質注液工程に差し支えがなく、電解液注液の効率が向上する。また、空洞112を通して溶接治具を挿入して負極側の集電板とバッテリーハウジングとの間の溶接工程を容易に行うことができる。
【0255】
一変形形態において、中間無地部B2の高さがコア側から外周側に向かって徐々に又は段階的に増加する構造は、外周側無地部B3まで拡張され得る。この場合、無地部43aの高さはコア側無地部B1と中間無地部B2との境界から電極組立体A4の最外側表面まで徐々に又は段階的に増加し得る。
【0256】
下部無地部43bは上部無地部43aと同じ構造を有する。一変形形態において、下部無地部43bは従来の電極構造や他の実施形態(変形形態)の電極構造を有してもよい。
【0257】
上部無地部43a及び下部無地部43bの端部111は、電極組立体A4の外周側からコア側に折曲加工され得る。このとき、コア側無地部B1は実質的に折り曲げられない。
【0258】
中間無地部B2及び外周側無地部B3が複数の分切片を含む場合、折曲応力が緩和されるため、折曲地点付近の無地部43a、43bが破れるか又は異常に変形することを防止することができる。また、分切片の幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチが上述した実施形態の数値範囲で調節される場合、分切片がコア側に折り曲げられながら溶接強度を十分に確保可能な程度に多重に重なり、折曲面(Y軸方向から眺めた表面)に空いた空間(間隙)を形成しない。
【0259】
図25は、本発明のさらに他の実施形態による電極組立体A5をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【0260】
図25を参照すると、電極組立体A5は、
図23の電極組立体A3と比較して、中間無地部B2の高さが徐々に又は段階的に増加してから減少するパターンを有する点のみで異なり、他の構成は実質的に同一である。
【0261】
このような中間無地部B2の高さ変化は、中間無地部B2に含まれた階段パターン(
図16を参照)や分切片(
図17a又は
図19bを参照)の高さを調節することで実現可能である。
【0262】
電極組立体A5において、コア側無地部B1の高さは中間無地部B2の高さよりも相対的に低い。また、中間無地部B2において最内側に位置した無地部の折曲長さHは、コア側無地部B1の半径方向長さRと同一であるか又は短い。
【0263】
したがって、中間無地部B2がコア側に向かって折り曲げられても、折曲部位が電極組立体A5コアの空洞122を閉塞することがない。空洞122が閉塞されないと、電解質注液工程に差し支えがなく、電解液注液の効率が向上する。また、空洞122を通して溶接治具を挿入して負極側の集電板とバッテリーハウジングとの間の溶接工程を容易に行うことができる。
【0264】
また、外周側無地部B3の高さは中間無地部B2の高さよりも相対的に低い。したがって、バッテリーハウジングのビーディング部に外周側無地部B3が押し付けられて内部短絡が起きる現象を防止することができる。一変形形態において、外周側無地部B3の高さは外周側に向かって徐々に又は段階的に減少し得る。
【0265】
下部無地部43bは上部無地部43aと同じ構造を有する。変形形態において、下部無地部43bは従来の電極構造や他の実施形態(変形形態)の電極構造を有してもよい。
【0266】
上部無地部43a及び下部無地部43bの端部121は、電極組立体A5の外周側からコア側に折曲加工され得る。このとき、コア側無地部B1及び外周側無地部B3は実質的に折り曲げられない。
【0267】
中間無地部B2が複数の分切片を含む場合、折曲応力が緩和されるため、無地部43a、43bが破れるか又は異常に変形することを防止することができる。また、分切片の幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチが上述した実施形態の数値範囲で調節される場合、分切片がコア側に折り曲げられながら溶接強度を十分に確保可能な程度に多重に重なり、折曲面(Y軸方向から眺めた表面)に空いた空間(間隙)を形成しない。
【0268】
図26は、本発明のさらに他の実施形態による電極組立体A6をY軸方向(巻取軸方向)に沿って切断した断面図である。
【0269】
図26を参照すると、電極組立体A6は、
図25の電極組立体A5と比較して、外周側無地部B3の高さが外周側無地部B3と中間無地部B2との境界地点から電極組立体A6の最外側表面に向かって徐々に又は段階的に減少するパターンを有する点で異なり、他の構成は実質的に同一である。
【0270】
このような外周側無地部B3の高さ変化は、中間無地部B2に含まれた階段パターン(
図16を参照)を外周側無地部B3まで確張するとともに、パターンの高さを外周側に向かって徐々に又は段階的に減少させることで実現可能である。また、他の変形形態において、外周側無地部B3の高さ変化は、中間無地部B2の分切片構造を外周側無地部B3まで確張するとともに、分切片の高さを外周側に向かって徐々に又は段階的に減少させることで実現可能である。
【0271】
電極組立体A6において、コア側無地部B1の高さは中間無地部B2の高さよりも相対的に低い。また、中間無地部B2において最内側に位置した無地部の折曲長さHは、コア側無地部B1の半径方向長さRと同一であるか又は短い。
【0272】
したがって、中間無地部B2がコア側に向かって折り曲げられても、折曲部位が電極組立体A5コアの空洞132を閉塞することがない。空洞132が閉塞されないと、電解質注液工程に差し支えがなく、電解液注液の効率が向上する。また、空洞132を通して溶接治具を挿入して負極側の集電板とバッテリーハウジングとの間の溶接工程を容易に行うことができる。
【0273】
下部無地部43bは上部無地部43aと同じ構造を有する。一変形形態において、下部無地部43bは従来の電極構造や他の実施形態(変形形態)の電極構造を有してもよい。
【0274】
上部無地部43a及び下部無地部43bの端部131は、電極組立体A6の外周側からコア側に折曲加工され得る。このとき、コア側無地部B1は実質的に折り曲げられない。
【0275】
中間無地部B2及び外周側無地部B3が複数の分切片を含む場合、折曲応力が緩和されるため、折曲地点付近の無地部43a、43bが破れるか又は異常に変形することを防止することができる。また、分切片の幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチが上述した実施形態の数値範囲で調節される場合、分切片がコア側に折り曲げられながら溶接強度を十分に確保可能な程度に多重に重なり、折曲面(Y軸方向から眺めた表面)に空いた空間(間隙)を形成しない。
【0276】
本発明の実施形態による多様な電極組立体の構造は、ゼリーロール型の円筒形バッテリーに適用可能である。
【0277】
望ましくは、円筒形バッテリーは、例えばフォームファクタの比(円筒型バッテリーの直径を高さで除した値、すなわち高さ(H)対比直径(Φ)の比で定義される)が約0.4よりも大きい円筒形バッテリーであり得る。
【0278】
本発明の一実施形態による円筒形バッテリーは、例えば46110バッテリー、4875バッテリー、48110バッテリー、4880バッテリー、4680バッテリーであり得る。
【0279】
フォームファクタの比が0.4を超過する円筒形バッテリーにタブレス構造を有する電極組立体を適用する場合、無地部の折り曲げ時に半径方向に加えられる応力が大きく、無地部が破れ易い。また、無地部の折曲面に集電板を溶接するとき、溶接強度を十分に確保して抵抗を下げるためには、無地部の重畳層数を十分に増加させなければならない。このような要求条件は、本発明の実施形態(変形形態)による電極と電極組立体によって達成され得る。
【0280】
以下、本発明の実施形態による円筒形バッテリーについて詳しく説明する。
【0281】
図27は、本発明の一実施形態による円筒形バッテリー140をY軸方向に沿って切断した断面図である。
【0282】
図27を参照すると、本発明の一実施形態による円筒形バッテリー140は、第1電極、分離膜及び第2電極を含む電極組立体141、電極組立体141を収納するバッテリーハウジング142、及びバッテリーハウジング142の開放部を密封する密封体143を含む。
【0283】
バッテリーハウジング142は、上端に開放部が形成された円筒形の容器である。バッテリーハウジング142は、アルミニウム又は鋼鉄のような導電性を有する金属材料からなる。バッテリーハウジング142は、上端開放部を通して内側空間に電極組立体141を収容し、電解質も一緒に収容する。
【0284】
電極組立体141はゼリーロール構造であり得る。電極組立体141は、
図2に示されたように、下部分離膜、第1電極、上部分離膜及び第2電極を順次に少なくとも1回積層して形成された積層体を巻取中心Cを基準にして巻き取ることで製造され得る。
【0285】
第1電極と第2電極とは極性が異なる。すなわち、一方が正の極性を有すれば、他方は負の極性を有する。第1電極及び第2電極の少なくとも一つは、上述した実施形態(変形形態)による電極構造を有し得る。また、第1電極及び第2電極の他方は、従来の電極構造又は実施形態(変形形態)による電極構造を有し得る。
【0286】
電極組立体141の上部と下部からは、それぞれ第1電極の無地部146a及び第2電極の無地部146bが突出する。第1電極は第1実施形態(変形形態)の電極構造を有する。したがって、第1電極の無地部146aは、外周側無地部B3の高さが他の部分の無地部の高さよりも低い。外周側無地部B3はバッテリーハウジング142の内周面、特にビーディング部147と所定の間隔だけ離隔している。したがって、第1電極の外周側無地部B3が第2電極と電気的に接続されたバッテリーハウジング142と接触しないため、バッテリー140の内部短絡が防止される。
【0287】
第2電極の無地部146bは高さが等しい。変形形態において、第2電極の無地部146bは、第1電極の無地部146aと同じ構造を有し得る。他の変形形態において、第2電極の無地部146bは、実施形態(変形形態)による電極の無地部の構造を選択的に有し得る。
【0288】
密封体143は、キャッププレート143a、キャッププレート143aとバッテリーハウジング142との間に気密性を提供し、絶縁性を有する第1ガスケット143b、及び前記キャッププレート143aと電気的に及び機械的に結合された連結プレート143cを含み得る。
【0289】
キャッププレート143aは、伝導性を有する金属材料からなる部品であり、バッテリーハウジング142の上端開放部を覆う。キャッププレート143aは、第1電極の無地部146aと電気的に接続され、バッテリーハウジング142とは第1ガスケット143bを通じて電気的に絶縁される。したがって、キャッププレート143aは、円筒形バッテリー140の第1電極端子として機能することができる。
【0290】
キャッププレート143aは、バッテリーハウジング142に形成されたビーディング部147上に載置され、クリンピング部148によって固定される。キャッププレート143aとクリンピング部148との間には、バッテリーハウジング142の気密性の確保及びバッテリーハウジング142とキャッププレート143aとの間の電気的絶縁のため、第1ガスケット143bが介在され得る。キャッププレート143aは、その中心部から上方に突出して形成された突出部143dを備え得る。
【0291】
バッテリーハウジング142は、第2電極の無地部146bと電気的に接続される。したがって、バッテリーハウジング142は第2電極と同じ極性を有する。もし、第2電極が負の極性を有すれば、バッテリーハウジング142も負の極性を有する。
【0292】
バッテリーハウジング142は、上端にビーディング部147及びクリンピング部148を備える。ビーディング部147は、バッテリーハウジング142の外周面の周りを押し込んで形成する。ビーディング部147は、バッテリーハウジング142の内部に収容された電極組立体141がバッテリーハウジング142の上端開放部から抜け出ないようにし、密封体143が載置される支持部として機能することができる。
【0293】
ビーディング部147の内周面は、第1電極の外周側無地部B3と所定の間隔だけ離隔している。より具体的には、ビーディング部147の内周面の下端が第1電極の外周側無地部B3と所定の間隔だけ離隔している。また、外周側無地部B3は高さが低いため、ビーディング部147を形成するためバッテリーハウジング142を外側から押し込むときにも、外周側無地部B3は実質的に影響を受けない。したがって、外周側無地部B3がビーディング部147などの他の構成要素によって押し付けられることがなく、これにより電極組立体141の部分的変形の発生が防止され、円筒形バッテリー140の内部短絡を防止することができる。
【0294】
望ましくは、ビーディング部147の押し込み深さをD1とし、バッテリーハウジング142の内周面から外周側無地部B3と中間無地部B2との境界地点までの半径方向長さをD2とすると、関係式「D1≦D2」が満たされ得る。この場合、ビーディング部147を形成するためバッテリーハウジング142を押し込むとき、外周側無地部B3の損傷が実質的に防止される。
【0295】
クリンピング部148は、ビーディング部147の上部に形成される。クリンピング部148は、ビーディング部147上に配置されるキャッププレート143aの外周面、及びキャッププレート143aの上面の一部を包むように延在して折り曲げられた形態を有する。
【0296】
円筒形バッテリー140は、第1集電板144及び/又は第2集電板145及び/又は絶縁体146をさらに含み得る。
【0297】
第1集電板144は、電極組立体141の上部に結合される。第1集電板144は、アルミニウム、銅、ニッケルなどのような導電性を有する金属材料からなり、第1電極の無地部146aと電気的に接続される。第1集電板144にはリード149が連結され得る。リード149は、電極組立体141の上方に延在して連結プレート143cに結合されるか、又は、キャッププレート143aの下面に直接結合され得る。リード149と他の部品との結合は溶接を通じて行われ得る。
【0298】
望ましくは、第1集電板144は、リード149と一体的に形成され得る。この場合、リード149は、第1集電板144の中心部から外側に延在した長いプレート形状であり得る。
【0299】
第1集電板144は、その下面に放射状に形成された複数の凹凸(図示せず)を備え得る。放射状の凹凸が備えられた場合、第1集電板144を押し付けて凹凸に第1電極の無地部146aを押し込み得る。
【0300】
第1集電板144は、第1電極の無地部146aの端部に結合される。無地部146aと第1集電板144との結合は、例えばレーザー溶接によって行われ得る。レーザー溶接は、集電板の母材を部分的に溶融させる方式で行われ得る。変形形態において、第1集電板144と無地部146aとの溶接は、半田を介在させた状態で行われ得る。この場合、半田は第1集電板144及び無地部146aと比べて低い融点を有し得る。レーザー溶接は、抵抗溶接、超音波溶接などで代替可能である。
【0301】
電極組立体141の下面には第2集電板145が結合され得る。第2集電板145の一面は第2電極の無地部146bと溶接によって結合され、他面はバッテリーハウジング142の内側底面上に溶接によって結合され得る。第2集電板145と第2電極の無地部146bとの結合構造は、第1集電板144と第1電極の無地部146aとの結合構造と実質的に同一であり得る。
【0302】
無地部(第1無地部146a、第2無地部146b)は図示された構造のみに限定されない。したがって、無地部146a、146bは、従来の無地部の構造だけでなく、実施形態(変形形態)による電極の無地部の構造を選択的に有し得る。
【0303】
絶縁体146は、第1集電板144を覆い得る。絶縁体146は、第1集電板144の上面で第1集電板144を覆うことで、第1集電板144とバッテリーハウジング142の内周面との間の直接接触を防止することができる。
【0304】
絶縁体146は、第1集電板144から上方に延在するリード149が引き出されるように、リード孔151を備える。リード149は、リード孔151を通って上方に引き出され、連結プレート143cの下面又はキャッププレート143aの下面に結合される。
【0305】
絶縁体146の周縁領域は、第1集電板144とビーディング部147との間に介在され、電極組立体141と第1集電板144との結合体を固定し得る。これにより、電極組立体141と第1集電板144との結合体は、バッテリー140の高さ方向の移動が制限され、バッテリー140の組み立て安定性が向上できる。
【0306】
絶縁体146は、絶縁性のある高分子樹脂からなり得る。一例として、絶縁体146は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド又はポリブチレンテレフタレートからなり得る。
【0307】
バッテリーハウジング142は、その下面に形成されたベンティング部152をさらに備え得る。ベンティング部152は、バッテリーハウジング142の下面において周辺領域と比べてより薄い厚さを有する領域に該当する。ベンティング部152は、周辺領域と比べて構造的に脆弱である。したがって、円筒形バッテリー140に異常が発生して内圧が一定水準以上に増加すれば、ベンティング部152が破裂してバッテリーハウジング142の内部に発生したガスが外部に排出され得る。
【0308】
ベンティング部152は、バッテリーハウジング142の下面に円を描いて連続的に又は不連続的に形成され得る。変形形態において、ベンティング部152は、直線パターン又はその外の他のパターンで形成され得る。
【0309】
図28は、本発明の他の実施形態による円筒形バッテリー150をY軸方向に沿って切断した断面図である。
【0310】
図28を参照すると、円筒形バッテリー150は、
図27の円筒形バッテリー140と比べて第1電極の無地部146aに第2実施形態(変形形態)の電極構造が採用された点を除き、他の構成は実質的に同一である。
【0311】
図28を参照すると、第1電極の無地部146aは、外周側無地部B3の高さがバッテリーハウジング142の内周面を向かって徐々に又は段階的に低くなる形態であり得る。望ましくは、外周側無地部B3の最上端を連結した仮想の線は、ビーディング部147の内周面と同一又は類似の形状を有し得る。
【0312】
外周側無地部B3は傾斜面を形成している。したがって、ビーディング部147を形成するためバッテリーハウジング142を押し込むとき、外周側無地部B3がビーディング部147によって押し付けられて損傷されることを防止することができる。また、外周側無地部B3が反対極性のバッテリーハウジング142と接触して内部短絡を起こす現象を抑制することができる。
【0313】
円筒形バッテリー150の他の構成は、上述した実施形態(変形形態)と実質的に同一である。
【0314】
無地部(第1無地部146a、第2無地部146b)は図示された構造のみに限定されない。したがって、無地部146a、146bは、従来の無地部の構造だけでなく、実施形態(変形形態)による電極の無地部の構造を選択的に有し得る。
【0315】
図29は、本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリー160をY軸方向に沿って切断した断面図である。
【0316】
図29を参照すると、円筒形バッテリー160は、上述した円筒形バッテリー140、150と比べて、第1集電板144に連結されたリード149が絶縁体146のリード孔151を通って密封体143のキャッププレート143aに直接連結され、絶縁体146及び第1集電板144がキャッププレート143aの下面に密着した構造を有する点を除き、他の構成は実質的に同一である。
【0317】
円筒形バッテリー160において、第1集電板144の直径及び中間無地部B2の最外側直径はバッテリーハウジング142の最小内径よりも小さい。また、第1集電板144の直径は、中間無地部B2の最外側直径と同一であるか又はより大きくなり得る。
【0318】
具体的には、バッテリーハウジング142の最小内径は、ビーディング部147が形成された位置におけるバッテリーハウジング142の内径に該当し得る。このとき、第1集電板144及び中間無地部B2の最外側直径は、ビーディング部147が形成された位置におけるバッテリーハウジング142の内径よりも小さい。また、第1集電板144の直径は、中間無地部B2の最外側直径と同一であるか又はより大きくなり得る。絶縁体146の周縁領域は、下部に折り曲げられた状態で外周側無地部B3とビーディング部147との間に介在され、電極組立体141と第1集電板144との結合体を固定することができる。
【0319】
望ましくは、絶縁体146は、外周側無地部B3を覆う部分、及び第1集電板144を覆う部分を含み、これら二つの部分を連結する部分はビーディング部147の屈曲形状に対応して一緒に屈曲した形態を有し得る。絶縁体146は、外周側無地部B3とビーディング部147の内周面とを絶縁させると同時に、第1集電板144とビーディング部147の内周面とを絶縁させることができる。
【0320】
第1集電板144は、ビーディング部147の下端よりも高く位置し得、コア側無地部B1及び中間無地部B2に結合され得る。このとき、ビーディング部147の押し込み深さD1は、バッテリーハウジング142の内周面から外周側無地部B3と中間無地部B2との境界までの距離D2よりも小さいか又は同一である。したがって、コア側無地部B1及び中間無地部B2、そしてこれらに結合された第1集電板144は、ビーディング部147の下端よりも高く位置し得る。ビーディング部147の下端とは、バッテリーハウジング142において電極組立体141が収容された部分とビーディング部147との間の折曲地点Bを意味する。
【0321】
コア側無地部B1及び中間無地部B2がビーディング部147の半径方向の内側空間を占めるため、電極組立体141とキャッププレート143aとの間の空いた空間は最小化される。また、電極組立体141とキャッププレート143aとの間の空いた空間に位置していた連結プレート143cが省略されている。したがって、第1集電板144のリード149がキャッププレート143aの下面と直接結合可能である。このような構造によれば、バッテリー内の空いた空間が減少し、減少した空いた空間だけエネルギー密度が極大化可能である。
【0322】
円筒形バッテリー160において、第1集電板144及び第2集電板145は、上述した実施形態と同様に、第1無地部146a及び第2無地部146bの端部にそれぞれ溶接され得る。
【0323】
無地部146a、146bは図示された構造のみに限定されない。したがって、無地部146a、146bは、従来の無地部の構造だけでなく、実施形態(変形形態)による電極の無地部の構造を選択的に有し得る。
【0324】
図30は、本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリー170をY軸方向に沿って切断した断面図である。
【0325】
図30を参照すると、円筒形バッテリー170は、
図27に示された円筒形バッテリー140と比べて、電極組立体の構造は実質的に同一であり、電極組立体を除いた他の構造が変更された点で相違する。
【0326】
具体的には、円筒形バッテリー170は、外部端子172が貫設されたバッテリーハウジング171を含む。外部端子172は、バッテリーハウジング171の閉鎖面(図面において上面)に取り付けられる。外部端子172は、絶縁性の第2ガスケット173が介在された状態でバッテリーハウジング171の貫通孔にリベッティングされる。外部端子172は、重力方向の反対方向に向かって外部に露出する。
【0327】
外部端子172は、端子露出部172a及び端子挿入部172bを含む。端子露出部172aは、バッテリーハウジング171の閉鎖面の外側に露出する。端子露出部172aは、バッテリーハウジング171の閉鎖面の略中心部に位置し得る。端子露出部172aの最大直径は、バッテリーハウジング171に形成された貫通孔の最大直径よりも大きく形成され得る。端子挿入部172bは、バッテリーハウジング171の閉鎖面の略中心部を貫通して第1電極の無地部146aと電気的に接続され得る。端子挿入部172bは、バッテリーハウジング171の内側面上にリベット(rivet)結合され得る。すなわち、端子挿入部172bの下縁部は、バッテリーハウジング171の内側面に向かって曲げられた形態を有し得る。端子挿入部172bの下部の最大直径は、バッテリーハウジング171の貫通孔の最大直径よりも大きくなり得る。
【0328】
端子挿入部172bの下端面は、第1電極の無地部146aに連結された第1集電板144に溶接され得る。第1集電板144とバッテリーハウジング171の内側面との間には絶縁物質からなる絶縁体174が介在され得る。絶縁体174は、第1集電板144の上部と電極組立体141の上端周縁部分を覆う。これにより、電極組立体141の外周側無地部B3が反対極性を有するバッテリーハウジング171の内側面と接触して短絡を起こすことを防止することができる。外部端子172の端子挿入部172bは、絶縁体174を貫通して第1集電板144に溶接され得る。
【0329】
第2ガスケット173は、バッテリーハウジング171と外部端子172との間に介在され、反対極性を有するバッテリーハウジング171と外部端子172とが電気的に接触することを防止する。これにより、略扁平な形状を有するバッテリーハウジング171の上面が円筒形バッテリー170の第2電極端子として機能することができる。
【0330】
第2ガスケット173は、ガスケット露出部173a及びガスケット挿入部173bを含む。ガスケット露出部173aは、外部端子172の端子露出部172aとバッテリーハウジング171との間に介在される。ガスケット挿入部173bは、外部端子172の端子挿入部172bとバッテリーハウジング171との間に介在される。ガスケット挿入部173bは、端子挿入部172bのリベッティング(reveting)時に一緒に変形されてバッテリーハウジング171の内側面に密着され得る。第2ガスケット173は、例えば絶縁性を有する高分子樹脂からなり得る。
【0331】
第2ガスケット173のガスケット露出部173aは、外部端子172の端子露出部172aの外周面を覆うように延在した形態を有し得る。第2ガスケット173が外部端子172の外周面を覆う場合、バスバーなどの電気的接続部品をバッテリーハウジング171の上面及び/又は外部端子172に結合させる過程で短絡が発生することを防止することができる。図示していないが、ガスケット露出部173aは、端子露出部172aの外周面だけでなく、上面の一部も一緒に覆うように延在した形態を有してもよい。
【0332】
第2ガスケット173が高分子樹脂からなる場合において、第2ガスケット173は熱融着によってバッテリーハウジング171及び外部端子172と結合され得る。この場合、第2ガスケット173と外部端子172との結合界面及び第2ガスケット173とバッテリーハウジング171との結合界面における気密性が強化される。一方、第2ガスケット173のガスケット露出部173aが端子露出部172aの上面まで延在した形態を有する場合において、外部端子172はインサート射出によって第2ガスケット173と一体に結合されてもよい。
【0333】
バッテリーハウジング171の上面において外部端子172及び第2ガスケット173が占める領域を除いた他の領域175が外部端子172と反対極性を有する第2電極端子に該当する。
【0334】
第2集電板176は、電極組立体141の下部に結合される。第2集電板176は、アルミニウム、鋼鉄、銅、ニッケルなどの導電性を有する金属材料からなり、第2電極の無地部146bと電気的に接続される。
【0335】
望ましくは、第2集電板176は、バッテリーハウジング171と電気的に接続される。そのため、第2集電板176は、周縁部分の少なくとも一部がバッテリーハウジング171の内側面と第1ガスケット178bとの間に介在されて固定され得る。一例において、第2集電板176の周縁部分の少なくとも一部は、バッテリーハウジング171の下端に形成されたビーディング部180の下端面に支持された状態で溶接によってビーディング部180に固定され得る。変形例において、第2集電板176の周縁部分の少なくとも一部は、バッテリーハウジング171の内壁面に直接溶接され得る。
【0336】
第2集電板176は、無地部146bに対向する面上に放射状に形成された複数の凹凸(図示せず)を備え得る。凹凸が形成された場合、第2集電板176を押し付けて凹凸に無地部146bを押し込み得る。
【0337】
望ましくは、第2集電板176と無地部146bの端部とは溶接、例えばレーザー溶接によって結合され得る。
【0338】
バッテリーハウジング171の下部開放部を密封する密封体178は、キャッププレート178a及び第1ガスケット178bを含む。第1ガスケット178bは、キャッププレート178aとバッテリーハウジング171とを電気的に分離する。クリンピング部181は、キャッププレート178aの周縁と第1ガスケット178bとを一緒に固定する。キャッププレート178aにはベント部179が備えられる。ベント部179の構成は、上述した実施形態(変形形態)と実質的に同一である。
【0339】
望ましくは、キャッププレート178aは導電性のある金属材料からなる。しかし、キャッププレート178aとバッテリーハウジング171との間に第1ガスケット178bが介在されているため、キャッププレート178aは電気的極性を持たない。密封体178は、バッテリーハウジング171下部の開放部を密封して、バッテリー170の内圧が臨界値以上増加したときにガスを排出させる機能をする。
【0340】
望ましくは、第1電極の無地部146aと電気的に接続された外部端子172は第1電極端子として使用される。また、第2集電板176を通じて第2電極の無地部146bと電気的に接続されたバッテリーハウジング171の上面のうち外部端子172を除いた部分175は、第1電極端子と反対極性の第2電極端子として使用される。このように、二つの電極端子が円筒形バッテリー170の上部に位置する場合、バスバーなどの電気的接続部品を円筒形バッテリー170の一側のみに配置することが可能である。これは、バッテリーパック構造の単純化及びエネルギー密度の向上をもたらすことができる。また、第2電極端子として使用される部分175は略扁平な形態を有するため、バスバーなどの電気的接続部品を接合する際に十分な接合面積を確保することができる。これにより、円筒形バッテリー170は、電気的接続部品の接合部位における抵抗を望ましい水準に下げることができる。
【0341】
電極組立体141の構造及び無地部の構造は図示されたものに限定されず、上述した実施形態(変形形態)の構造で代替可能である。
【0342】
図31は、本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリー180をY軸方向に沿って切断した断面図である。
【0343】
図31を参照すると、円筒形バッテリー180は、
図28に示された円筒形バッテリー150と電極組立体141の構造が実質的に同一であり、電極組立体141を除いた他の構成は
図30に示された円筒形バッテリー170と実質的に同一である。
【0344】
したがって、円筒形バッテリー150、170の実施形態(変形形態)の構成が円筒形バッテリー180においても同様に適用され得る。
【0345】
また、電極組立体141の構造及び無地部の構造は図示されたものに限定されず、上述した実施形態(変形形態)の構造で代替可能である。
【0346】
図32は、本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリー190をY軸方向に沿って切断した断面図である。
【0347】
図32を参照すると、円筒形バッテリー190は
図24に示した電極組立体A4を含み、電極組立体A4を除いた他の構成は
図27に示した円筒形バッテリー140と実質的に同一である。
【0348】
図32を参照すると、電極組立体A4の無地部146a、146bは外周側からコア側に折り曲げられる。このとき、コア側無地部B1は他の部分よりも高さが低いため、実質的に折り曲げられない。第1集電板144は無地部146aの折曲面に溶接され、第2集電板145は無地部146bの折曲面に溶接され得る。折曲面は、無地部146a、146bが折り曲げられるとき、Y軸方向に沿って多重に重なりながら電極組立体A4の上部及び下部にそれぞれ形成され得る。
【0349】
電極組立体A4は、コア側無地部B1の高さが他の部分よりも相対的に低い。また、
図24に示されたように、中間無地部B2において最内側に位置した無地部の折曲長さHは、コア側無地部B1の半径方向長さRと同一であるか又は短い。
【0350】
したがって、無地部146aをコア側に向かって折り曲げても、電極組立体A4のコアの空洞112は閉塞されず、上部で開放され得る(一点鎖線円を参照)。
【0351】
空洞112が閉塞されないと、電解質注液工程に差し支えがなく、電解液注液の効率が向上する。また、空洞112を通して溶接治具を挿入して第2集電板145とバッテリーハウジング142との溶接工程を容易に行うことができる。
【0352】
無地部146a、146bが分切構造を有する場合、分切片の幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチを上述した実施形態の数値範囲を満たすように調節すると、分切片が折り曲げられるとき、分切片が溶接強度を十分に確保可能な程度に多重に重なり、折曲面上に空いた空間(間隙)を形成しない。
【0353】
無地部146a、146bの構造は、図示と異なり、上述した実施形態(変形形態)による構造に制限なく変更され得る。また、無地部146a、146bのいずれか一方に従来の無地部の構造が適用されることを制限しない。
【0354】
図33は、本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリー200をY軸方向に沿って切断した断面図である。
【0355】
図33を参照すると、円筒形バッテリー200は、
図24に示した電極組立体A4を含み、電極組立体A4を除いた他の構成は
図31に示した円筒形バッテリー180と実質的に同一である。
【0356】
図33を参照すると、電極組立体A4の無地部146a、146bは、外周側からコア側に折り曲げられる。このとき、コア側無地部B1は高さが他の部分よりも低いため、実質的に折り曲げられない。第1集電板144は無地部146aの折曲面に溶接され、第2集電板176は無地部146bの折曲面に溶接され得る。
【0357】
電極組立体A4は、コア側無地部B1の高さが他の部分よりも相対的に低い。また、
図24に示されたように、中間無地部B2において最内側に位置した無地部の折曲長さHは、コア側無地部B1の半径方向長さRと同一であるか又は短い。
【0358】
したがって、無地部146a、146bをコア側に向かって折り曲げても、電極組立体A4のコアの空洞112は閉塞されず、上部で開放され得る(点線円を参照)。
【0359】
空洞112が閉塞されないと、電解質注液工程に差し支えがなく、電解液注液の効率が向上する。また、空洞112を通して溶接治具を挿入して第2集電板176とバッテリーハウジング171との間の溶接工程を容易に行うことができる。
【0360】
無地部146a、146bが分切構造を有する場合、分切片の幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチを上述した実施形態の数値範囲を満たすように調節すると、分切片が折り曲げられるとき、分切片が溶接強度を十分に確保可能な程度に多重に重なり、折曲面上に空いた空間(間隙)を形成しない。
【0361】
無地部146a、146bの構造は、図示と異なり、上述した実施形態(変形形態)による構造に制限なく変更され得る。また、無地部146a、146bのいずれか一方に従来の無地部の構造が適用されることを制限しない。
【0362】
図34は、本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリー210をY軸方向に沿って切断した断面図である。
【0363】
図34を参照すると、円筒形バッテリー210は、
図23に示した電極組立体A3を含み、電極組立体A3を除いた他の構成は
図27に示した円筒形バッテリー140と実質的に同一である。
【0364】
望ましくは、電極組立体A3の無地部146a、146bは外周側からコア側に折り曲げられる。このとき、無地部146aのコア側無地部B1及び外周側無地部B3は他の部分よりも高さが低いため、実質的に折り曲げられない。これは無地部146bの場合も同様である。第1集電板144は無地部146aの折曲面に溶接され、第2集電板145は無地部146bの折曲面に溶接され得る。
【0365】
コア側無地部B1の高さは中間無地部B2よりも相対的に低い。また、
図23に示されたように、中間無地部B2において最内側に位置した無地部の折曲長さHは、コア側無地部B1の半径方向長さRと同一であるか又は短い。
【0366】
したがって、無地部146a、146bをコア側に向かって折り曲げても、電極組立体A3のコアの空洞102は閉塞されず、上部で開放され得る(点線円を参照)。
【0367】
空洞102が閉塞されないと、電解質注液工程に差し支えがなく、電解液注液の効率が向上する。また、空洞を通して溶接治具を挿入して第2集電板145とバッテリーハウジング142との間の溶接工程を容易に行うことができる。
【0368】
また、外周側無地部B3の高さは中間無地部B2よりも相対的に低い。したがって、無地部146aが折り曲げられるとき、外周側無地部B3は実質的に折り曲げられない。また、外周側無地部B3はビーディング部147と十分に離隔しているため、ビーディング部147が押し込まれる過程で外周側無地部B3が損傷される問題を解決することができる。
【0369】
無地部146a、146bが分切構造を有する場合、分切片の幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチを上述した実施形態の数値範囲を満たすように調節すると、分切片が折り曲げられるとき、分切片が溶接強度を十分に確保可能な程度に多重に重なり、折曲面上に空いた空間(間隙)を形成しない。
【0370】
無地部146a、146bの構造は、図示と異なり、上述した実施形態(変形形態)による構造に制限なく変更され得る。また、無地部146a、146bのいずれか一方に従来の無地部の構造が適用されることを制限しない。
【0371】
図35は、本発明のさらに他の実施形態による円筒形バッテリー220をY軸方向に沿って切断した断面図である。
【0372】
図35を参照すると、円筒形バッテリー220は
図23に示した電極組立体A3を含み、電極組立体A3を除いた他の構成は
図31に示した円筒形バッテリー180と実質的に同一である。
【0373】
望ましくは、電極組立体A3の無地部146a、146bは外周側からコア側に折り曲げられる。このとき、無地部146aのコア側無地部B1は高さが他の部分よりも低いため、実質的に折り曲げられない。これは無地部146bの場合も同様である。第1集電板144は無地部146aの折曲面に溶接され、第2集電板176は無地部146bの折曲面に溶接され得る。
【0374】
電極組立体A3は、コア側無地部B1の高さが中間無地部B2よりも相対的に低い。また、
図23に示されたように、中間無地部B2において最内側に位置した無地部の折曲長さHは、コア側無地部B1の半径方向長さRと同一であるか又は短い。
【0375】
したがって、無地部146aをコア側に向かって折り曲げても、電極組立体A3のコアの空洞102は閉塞されず、上部で開放され得る(点線円を参照)。
【0376】
空洞102が閉塞されないと、電解質注液工程に差し支えがなく、電解液注液の効率が向上する。また、空洞102を通して溶接治具を挿入して第2集電板176とバッテリーハウジング171との間の溶接工程を容易に行うことができる。
【0377】
また、無地部146aの外周側無地部B3の高さは中間無地部B2よりも相対的に低い。したがって、無地部146aが折り曲げられるとき、外周側無地部B3は実質的に折り曲げられない。これは無地部146bにおいても同様である。
【0378】
無地部146a、146bが分切構造を有する場合、分切片の幅及び/又は高さ及び/又は離隔ピッチを上述した実施形態の数値範囲を満たすように調節すると、分切片が折り曲げられるとき、分切片が溶接強度を十分に確保可能な程度に多重に重なり、折曲面上に空いた空間(間隙)を形成しない。
【0379】
無地部146a、146bの構造は、図示と異なり、上述した実施形態(変形形態)による構造に制限なく変更され得る。また、無地部146a、146bのいずれか一方に従来の無地部の構造が適用されることを制限しない。
【0380】
上述した実施形態(変形形態)による円筒形バッテリーはバッテリーパックの製造に使用することができ(
図13aを参照)、バッテリーパックは自動車に搭載できる(
図13bを参照)。
【0381】
本発明の実施形態によれば、電極組立体を製造するとき、電極の蛇行によって発生する内部短絡を効果的に防止することができる。
【0382】
また、本発明の実施形態によれば、電極組立体の上側及び下側に突出した無地部自体を電極タブとして使用することで、円筒形バッテリーの内部抵抗を下げてエネルギー密度を増加させることができる。
【0383】
また、本発明の実施形態によれば、電極組立体の無地部の構造を改善することで、バッテリーハウジングのビーディング部を形成する過程で電極組立体とバッテリーハウジングの内周面とが干渉せず、電極組立体の部分的変形による円筒形バッテリーの内部短絡を防止することができる。
【0384】
また、本発明の実施形態によれば、電極組立体の無地部の構造を改善することで、無地部の折り曲げ時に折曲地点付近の無地部が破れる現象を防止し、無地部の重畳層数を十分に増加させて溶接強度を向上させることができる。
【0385】
また、本発明の実施形態によれば、電極組立体のコアに隣接した無地部の構造を改善することで、無地部の折り曲げ時に電極組立体のコアにある空洞が閉塞されることを防止し、電解液注入工程及びバッテリーハウジングと集電板との溶接工程を容易に行うことができる。
【0386】
また、本発明の実施形態によれば、無地部の分切構造を中心にして分離膜の位置を最適化させることで、電解液含浸特性が改善された電極組立体を提供することができる。
【0387】
また、本発明の実施形態によれば、内部抵抗が低く、内部短絡が防止され、集電板と無地部との溶接強度が向上した構造を有する円筒形バッテリー、それを含むバッテリーパック及び自動車を提供することができる。
【0388】
以下、本発明の一実施例による円筒形バッテリーに使用される正極活物質の実施形態について説明する。
【0389】
実施形態において、「一次粒子」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)又は電子線後方散乱回折(EBSD:Electron Back Scatter Diffraction)パターン分析機を用いて5,000倍~20,000倍の視野で観察したとき、外観上粒界が存在しない粒子単位を意味する。「一次粒子の平均粒径」は、SEM又はEBSDのイメージで観察される一次粒子の粒径を測定した後、計算されたこれらの算術平均値を意味する。
【0390】
「二次粒子」とは、複数個の一次粒子が凝集して形成された粒子である。本発明においては、一次粒子が数十~数百個凝集して形成される従来の二次粒子と区別するため、10個以下の一次粒子が凝集した二次粒子を疑似単粒子と称することにする。
【0391】
本発明において「比表面積」は、BET法によって測定したものであって、具体的には日本ベル社製のBelsorp-mini IIを用いて液体窒素温度(77K)下での窒素ガス吸着量から算出され得る。
【0392】
本発明において「Dmin」、「D50」及び「Dmax」は、レーザー回折法を用いて測定された正極活物質の体積累積分布の粒度値である。具体的には、Dminは体積累積分布における最小粒子サイズであり、D50は体積累積量が50%であるときの粒子サイズであり、Dmaxは体積累積分布における最大粒子サイズである。正極活物質が単粒子である場合、D50は一次粒子の平均粒径を意味する。また、正極活物質が疑似単粒子である場合、D50は一次粒子が凝集して形成された粒子の平均粒径を意味する。
【0393】
前記体積累積分布の粒度値は、例えば、正極活物質を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、マイクロトラック社製のMT3000)に導入し、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、体積累積粒度分布グラフを得て測定し得る。
【0394】
本発明において「本質的にAからなる(consist essentially of A)」とは、A成分と本発明の基本的且つ新規な特徴に実質的に影響を及ぼすことのない言及されていない任意の成分とを含むことを意味する。本発明の基本的且つ新規な特徴は、電池製造時の粒子割れを最小化すること、このような粒子割れによって発生するガスを最小化すること、及び内部クラックの発生を最小化することのうちの少なくとも一つを含む。当技術分野の通常の技術者であれば、このような特性の物質的影響を認知可能である。
【0395】
本発明者らは、高い容量を実現しながらも安全性に優れた電気化学素子用正極及びそれを含む電気化学素子を開発するために研究を重ねた結果、正極活物質として1個の一次粒子からなる単粒子又は10個以下の一次粒子の凝集体である疑似単粒子形態の正極活物質を単独で使用する場合、大型円筒形バッテリーの安全性を画期的に向上できることを確認した。
【0396】
一形態によれば、正極は、正極集電体、及び前記正極集電体の少なくとも一側面上に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は正極活物質を含み得、選択的には導電材及び/又はバインダーを含み得る。
【0397】
正極は、長いシート状の正極集電体の少なくとも一面又は両面に正極活物質層が形成された構造であり得、前記正極活物質層は正極活物質及びバインダーを含み得る。
【0398】
具体的には、前記正極は長いシート状の正極集電体の一面又は両面に、正極活物質、導電材及びバインダーをジメチルスルホキシド(DMSO)、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などのような溶媒に分散させて製造した正極スラリーを塗布し、乾燥工程を経て正極スラリーの溶媒を除去した後、圧延する方法で製造され得る。一方、前記正極スラリーの塗布時に正極集電体の一部領域、例えば正極集電体の一端部に正極スラリーを塗布しない方法で、無地部(非コーティング部)を含む正極を製造し得る。
【0399】
他の形態において、前記正極活物質は単粒子系活物質粒子を含む。一実施形態において、前記単粒子系活物質粒子は、前記正極活物質100wt%に対して90wt%以上、95wt%以上、98wt%以上、又は99wt%以上で含まれ得る。具体的な実施形態において、前記正極活物質は前記単粒子系活物質粒子のみから構成され得る。
【0400】
本明細書において、前記単粒子系活物質粒子は単粒子、疑似単粒子、又はこれら両方をすべて含むものを称する。前記単粒子は1個の一次粒子からなる粒子であり、前記疑似単粒子は10個以下の一次粒子の凝集体である。
【0401】
従来、リチウムバッテリーの正極活物質としては、数十~数百個の一次粒子が凝集した球状の二次粒子を一般に使用している。しかし、このように多くの一次粒子が凝集した二次粒子形態の正極活物質の場合、正極製造時の圧延工程で一次粒子が離れ落ちて粒子割れが発生し易く、充放電過程で粒子内部にクラックが発生するという問題がある。正極活物質の粒子割れや粒子内部のクラックが発生する場合、電解液との接触面積が増加するため、電解液との副反応によるガス発生が増加するという問題がある。円筒形バッテリーの内部でガス発生が増加すれば、電池内圧が増加して電池が爆発する危険性がある。特に、円筒形バッテリーの体積を増やす場合、体積増加によって電池内部の活物質量が増加し、これによってガス発生量も著しく増加するため、電池の発火及び/又は爆発の危険性がさらに大きくなる。
【0402】
一方、1個の一次粒子からなる単粒子又は10個以下の一次粒子が凝集した疑似単粒子形態の単粒子系活物質粒子は、一次粒子が数十~数百個凝集している従来の二次粒子形態の正極活物質に比べて粒子強度が高いため、圧延時の粒子割れが殆ど発生しない。また、単粒子系活物質粒子の場合、粒子を構成する一次粒子の個数が少ないため、充放電時に一次粒子の体積膨張、収縮による変化が少なく、これによって粒子内部のクラック発生も著しく減少する。
【0403】
したがって、本発明の一実施例によるように単粒子系活物質粒子を使用する場合、粒子割れ及び内部クラックの発生によるガス発生量を著しく減少させることができる。これにより、大型円筒形バッテリーに適用される場合、優れた安全性を実現することができる。
【0404】
一方、前記単粒子及び/又は疑似単粒子は、正極に含まれる全体正極活物質の重量を基準にして95wt%~100wt%、望ましくは98wt%~100wt%、より望ましくは99wt%~100wt%、さらに望ましくは100wt%の量で含まれることが望ましい。
【0405】
単粒子及び/又は疑似単粒子の含量が上記の範囲を満足すると、大型電池への適用時に十分な安全性が得られる。二次粒子形態の正極活物質が全体正極活物質中に5wt%を超える量で含まれる場合、電極の製造及び充放電時に二次粒子から発生する微粉によって電解液との副反応が増加して、ガス発生を抑制する効果が低下し、これにより大型電池への適用時に安定性を改善する効果が低下するためである。
【0406】
一方、本発明の一実施例による単粒子及び/又は疑似単粒子を含む正極活物質は、Dminが1.0μm以上、1.1μm以上、1.15μm以上、1.2μm以上、1.25μm以上、1.3μm以上、又は1.5μm以上であり得る。正極活物質のDminが1.0μm未満であると、正極の圧延工程で線圧が増加して粒子割れが発生し易く、熱安定性が低下して大型円筒形電池への適用時に熱安定性を十分に確保することができない。
【0407】
一方、抵抗及び出力特性を考慮すると、前記正極活物質のDminは3μm以下、2.5μm以下、又は2μm以下であり得る。Dminが大き過ぎれば、粒子内のリチウムイオン拡散距離が増加して抵抗及び出力特性が低下するおそれがある。
【0408】
例えば、前記正極活物質のDminは1.0μm~3μm、1.0μm~2.5μm、又は1.3μm~2.0μmであり得る。
【0409】
一方、前記正極活物質は、D50が5μm以下、4μm以下、又は3μm以下であり得、例えば0.5μm~5μm、望ましくは1μm~5μm、より望ましくは2μm~5μmであり得る。
【0410】
単粒子及び/又は疑似単粒子形態の正極活物質は、粒子の内部においてリチウムイオンの拡散経路になる一次粒子同士の間の界面が少ないため、二次粒子形態の正極活物質よりもリチウム移動性が低下し、これにより抵抗が増加するという問題がある。このような抵抗の増加は粒子の大きさが大きくなるほどもっと酷くなり、抵抗が増加すれば容量及び出力特性が悪影響を及ぼす。したがって、正極活物質のD50を5μm以下に調節することで、正極活物質の粒子内部でのリチウムイオン拡散距離を最小化することによって抵抗増加を抑制することができる。
【0411】
また、前記正極活物質は、Dmaxが12μm~17μm、望ましくは12μm~16μm、より望ましくは12μm~15μmであり得る。正極活物質のDmaxが上記の範囲を満足すると、抵抗特性及び容量特性にさらに優れる。正極活物質のDmaxが大き過ぎる場合は、単粒子同士の間で凝集が発生した場合であって、凝集した粒子内部でのリチウム移動経路が長くなってリチウム移動性が低下し、これにより抵抗が増加するおそれがある。一方、正極活物質のDmaxが小さ過ぎる場合は、過度な解砕が行われた場合であって、過度な解砕によってDminが1μm未満に小さくなり得るため、圧延時の粒子割れが誘発されて熱安定性が低下するおそれがある。
【0412】
一方、前記正極活物質は、下記の数式1で表される粒度分布(PSD)が3以下、望ましくは2~3、より望ましくは2.3~3であり得る。
[数式1]
粒度分布(PSD)=(Dmax-Dmin)/D50
【0413】
正極活物質が上記のような粒度分布を有すると、正極の電極密度を適切に維持でき、粒子割れ及び抵抗増加を効果的に抑制することができる。
【0414】
一方、前記正極活物質は、一次粒子の平均粒径が5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であり得、例えば0.5μm~5μm、望ましくは1μm~5μm、より望ましくは2μm~5μmであり得る。一次粒子の平均粒径が上記の範囲を満足する場合、電気化学的特性に優れた単粒子及び/又は疑似単粒子形態の正極活物質を形成可能である。一次粒子の平均粒径が小さ過ぎると、正極活物質を形成する一次粒子の凝集個数が多くなって、圧延時の粒子割れ発生を抑制する効果が低下するおそれがある。また、一次粒子の平均粒径が大き過ぎると、一次粒子内部でのリチウム拡散経路が長くなって抵抗が増加し、出力特性が低下するおそれがある。
【0415】
本発明の一実施例において、前記正極活物質は、ユニモーダル(unimodal)粒度分布を有することが望ましい。従来は、正極活物質層の電極密度を向上させるため、平均粒径の大きい大粒径正極活物質と平均粒径の小さい小粒径正極活物質とを混合して使用するバイモーダル(bimodal)正極活物質が多く使用されている。しかし、単粒子又は疑似単粒子形態の正極活物質の場合、粒径が増加すればリチウム移動経路が長くなって抵抗が著しく増加するため、大粒径粒子を混合して使用する場合、容量及び出力特性が低下する問題が生じるおそれがある。したがって、本発明ではユニモーダル分布を有する正極活物質を使用することで、抵抗増加を最小化できるようにした。
【0416】
一方、前記正極活物質は、リチウムニッケル系酸化物を含むものであり得、具体的には、遷移金属の全体モル数を基準にしてNiを80モル%以上で含むリチウムニッケル系酸化物を含むものであり得る。望ましくは、前記リチウムニッケル系酸化物は、Niを80モル%以上100モル%未満、82モル%以上100モル%未満、又は83モル%以上100モル%未満で含み得る。上記のようにNi含量が高いリチウムニッケル系酸化物を使用する場合、高い容量を実現することができる。
【0417】
より具体的には、前記正極活物質は、下記の化学式1で表されるリチウムニッケル系酸化物を含むものであり得る。
[化学式1]
LiaNibCocM1
dM2
eO2
【0418】
化学式1において、前記M1はMn、Al又はこれらの組み合わせであり得、望ましくはMn、又はMn及びAlであり得る。
【0419】
前記M2は、Zr、W、Y、Ba、Ca、Ti、Mg、Ta及びNbからなる群より選択される1種以上であり、望ましくはZr、Y、Mg及びTiからなる群より選択された1種以上であり得、より望ましくはZr、Y又はこれらの組み合わせであり得る。M2元素は必須に含まれるものではないが、適切な量で含まれる場合、焼成時の粒子成長を促進するか、又は、結晶構造の安定性を向上させる役割を果たすことができる。
【0420】
前記aは、リチウムニッケル系酸化物内のリチウムモル比を示し、0.8≦a≦1.2、0.85≦a≦1.15、又は0.9≦a≦1.2であり得る。リチウムのモル比が上記の範囲を満足すると、リチウムニッケル系酸化物の結晶構造を安定的に形成可能である。
【0421】
前記bは、リチウムニッケル系酸化物においてリチウムを除いた全体金属中のニッケルのモル比を示し、0.8≦b<1、0.82≦b<1、0.83≦b<1、0.85≦b<1、0.88≦b<1、又は0.90≦b<1であり得る。ニッケルのモル比が上記の範囲を満足すると、高いエネルギー密度を示して高容量を実現可能である。
【0422】
前記cは、リチウムニッケル系酸化物においてリチウムを除いた全体金属中のコバルトのモル比を示し、0<c<0.2、0<c<0.18、0.01≦c≦0.17、0.01≦c≦0.15、0.01≦c≦0.12、又は0.01≦c≦0.10であり得る。コバルトのモル比が上記の範囲を満足すると、良好な抵抗特性及び出力特性を実現可能である。
【0423】
前記dは、リチウムニッケル系酸化物においてリチウムを除いた全体金属中のM1元素のモル比を示し、0<d<0.2、0<d<0.18、0.01≦d≦0.17、0.01≦d≦0.15、0.01≦d≦0.12、又は0.01≦d≦0.10であり得る。M1元素のモル比が上記の範囲を満足すると、正極活物質の構造安定性に優れる。
【0424】
前記eは、リチウムニッケル系酸化物においてリチウムを除いた全体金属中のM2元素のモル比を示し、0≦e≦0.1又は0≦e≦0.05であり得る。
【0425】
一方、本発明の一実施例による正極活物質は、必要に応じて、前記リチウムニッケル系酸化物粒子の表面に、Al、Ti、W、B、F、P、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、Bi、Si及びSからなる群より選択される1種以上のコーティング元素を含むコーティング層をさらに含み得る。望ましくは、前記コーティング元素はAl、B、Co、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0426】
リチウムニッケル系酸化物粒子の表面にコーティング層が存在する場合、コーティング層によって電解質とリチウムニッケル系酸化物との接触が抑制され、これにより電解質との副反応による遷移金属の溶出又はガス発生を減少させる効果が得られる。
【0427】
前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80wt%~99wt%、望ましくは85wt%~99wt%、より望ましくは90wt%~99wt%で含まれ得る。
【0428】
一方、前記正極集電体としては、当技術分野で使用される多様な正極集電体が使用され得る。例えば、前記正極集電体としては、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、アルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。前記正極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有し得、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めてもよい。前記正極集電体は、例えばフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使用され得る。
【0429】
一方、本発明の一実施形態において、前記単粒子系活物質粒子の全部又は一部は、粒子の表面が伝導性コーティング層で被覆されたコア-シェル(core-shell)構造を有し得る。前記伝導性コーティング層は粒子の少なくとも一部又は全部を被覆し得る。前記伝導性コーティング層は伝導性ナノ物質を含むものである。
【0430】
前記単粒子系活物質粒子の場合、従来の二次粒子形態の正極活物質に比べて抵抗が高く、導電材との接触面積が小さいため、電気伝導度が低下するという問題がある。電気伝導度を改善しようとして導電材を過量投入すると、正極スラリー内で凝集が発生して粘度が増加し、これによりコーティング性が低下する問題が発生する。したがって、円滑なコーティング性を実現するためには固形分の含量を減少させて正極スラリーの粘度を下げる必要があるが、正極スラリー内の固形分の含量が減少すれば活物質の含量が減少し、容量特性が低下する問題がある。本発明は、このような問題を解決するため、単粒子系活物質粒子の表面を伝導性ナノ物質でコーティングすることで、正極スラリーに別途の導電材を添加しなくても、優れた電気伝導性を実現可能にした。
【0431】
本発明の実施形態において、前記単粒子系活物質粒子の表面に伝導性ナノ物質をコーティングした正極活物質を適用する場合、前記正極活物質層は導電性コーティング層を除いた部分に導電材を使用しなくてもよい。このように正極スラリーの凝集を誘発する導電材を追加的に使用しなくてもよいため、正極スラリーの粘度が減少して固形分の含量が増加し、電極コーティングの工程性及び電極接着力が改善される効果を奏することができる。
【0432】
本発明の一実施例において前記伝導性ナノ物質は、粒子上に円滑にコーティングされるようにナノサイズの大きさを有し、伝導性を有する物質であればよく、その種類は特に限定されない。例えば、前記伝導性ナノ物質は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子などであり得る。
【0433】
前記伝導性ナノ物質は多様な形態を有し得、例えば、球状、鱗片状、又は繊維状などであり得る。
【0434】
一方、前記伝導性コーティング層は、コア部である単粒子系活物質粒子と伝導性ナノ物質とを混合した後、熱処理する方法で形成され得る。このとき、前記混合は固相混合又は液相混合で行われ得る。
【0435】
本発明の一実施形態において、前記正極活物質層は鱗片状黒鉛を含む。正極活物質として前記単粒子系活物質を使用するとき、正極活物質層が鱗片状黒鉛を含むと、正極活物質層を圧延する場合、前記鱗片状黒鉛が前記正極活物質に滑り効果を提供して電極の圧延特性が向上し、電極の空隙率を目標とするレベルまで下げることができる。これにより、本発明の一実施例による正極が適用されたバッテリーは安定性、初期抵抗特性、及び充放電効率が改善可能である。
【0436】
本発明の一実施形態において、前記鱗片状黒鉛は、前記正極活物質層100wt%に対して0.1wt%~5wt%で含まれ得、望ましくは0.1wt%~3wt%で含まれ得る。
【0437】
鱗片状黒鉛の含量が上記の範囲を満足すると、正極の圧延特性が改善されて優れた電極密度を実現することができる。鱗片状黒鉛の含量が少ないと圧延特性の改善効果が低く、過剰であればスラリー粘度の上昇及び相安定性の低下を誘発し得、導電材との結合によって電極均一性が低下し、抵抗が増加するおそれがある。
【0438】
一方、本発明で使用される鱗片状黒鉛は、平均粒径が1μm~20μm、望ましくは2μm~10μm、より望ましくは3μm~5μmであり得るが、これによって制限されることはない。鱗片状黒鉛が小さ過ぎれば、所望の空隙率を実現し難く、電流密度を下げて容量が低下するおそれがある。このとき、前記鱗片状黒鉛の平均粒径はレーザー回折方法(ISO 13320)で測定され得る。
【0439】
また、前記鱗片状黒鉛は、アスペクト比が0.1~500、望ましくは1~100、より望ましくは1~30であり得る。鱗片状黒鉛のアスペクト比が上記の範囲を満足する場合、伝導性を改善して電極抵抗を下げる効果を奏する。
【0440】
また、前記鱗片状黒鉛は、密度が2.0g/cm3~2.5g/cm3、望ましくは2.1g/cm3~2.4g/cm3、より望ましくは2.2g/cm3~2.3g/cm3であり得る。
【0441】
一方、本発明の一実施例において、前記正極活物質層の空隙率は15%~23%、望ましくは17%~23%、より望ましくは18%~23%であり得る。正極活物質層の空隙率が上記の範囲を満足すると、電極密度が増加して優れた容量を実現することができ、抵抗が減少する。空隙率が低過ぎると、電解液含浸性が低下して電解液の未含浸によるリチウム析出が発生するおそれがあり、空隙率が高過ぎると、電極間の接触が良くなくて抵抗が増加し、エネルギー密度が減少して、容量改善の効果が低い。
【0442】
前記正極活物質層の空隙率数値は、i)前記正極活物質が単粒子系活物質粒子を含むこと、及びii)前記正極活物質に鱗片状黒鉛を添加することによって達成可能である。
【0443】
正極活物質層のローディング量が比較的に高い高ローディング電極を実現する際に、本発明の一実施例によるように単粒子又は疑似単粒子形態の正極活物質を使用すると、従来の二次粒子形態の正極活物質に比べて圧延時の活物質の粒子割れが著しく減少し、正極集電体(Alホイル)の損傷が減少するため、相対的に高い線圧で圧延可能になり、正極活物質層の空隙率が上記のような数値範囲まで減少してエネルギー密度を高めることができる。
【0444】
また、本発明の一実施例によるように正極活物質層に鱗片状黒鉛が含まれると、圧延時に前記鱗片状黒鉛が滑り効果を提供し、前記正極活物質層の空隙を満たすことができるため、正極活物質層の空隙率が上記のような数値範囲まで減少し得る。
【0445】
また、前記正極は、ローディング量が570mg/25cm2以上、望ましくは600mg/25cm2~800g/25m2、より望ましくは600mg/25cm2~750mg/25cm2であり得る。具体的には、本発明の一実施例によるリチウム二次電池の場合、単粒子及び/又は疑似単粒子形態の正極活物質及び鱗片状黒鉛を適用することで電極の圧延特性が向上するため、前記正極のローディング量を比較的に高いレベルに確保でき、これによって高容量特性を実現することができる。
【0446】
本発明の一実施形態において、前記正極活物質層は導電材をさらに含み得る。前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、バッテリーの内部で化学変化を引き起こさず電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末又は金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうちの1種単独で又は2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、通常、正極活物質層の総重量に対して1wt%~30wt%、望ましくは1wt%~20wt%、より望ましくは1wt%~10wt%で含まれ得る。
【0447】
本発明の一実施例による具体的な一実施形態において、前記導電材はカーボンナノチューブを含み得る。
【0448】
本発明の一実施形態において、前記正極活物質は、導電材として比表面積が高くて層数(wall number)が小さい多層カーボンナノチューブを含み得る。前記多層カーボンナノチューブは、導電材100wt%に対して50wt%以上、70wt%以上、90wt%以上又は99wt%以上で含まれ得る。本発明の具体的な実施形態において、前記導電材は前記多層カーボンナノチューブのみから構成され得る。
【0449】
本発明の一実施例において、前記多層カーボンナノチューブは、300m2/g~500m2/gのBET比表面積を有するものである。これを従来技術と区別するため、「新規CNT」と称する。
【0450】
従来、一般に使用されているカーボンナノチューブ(従来CNT)は、BET比表面積が300m
2/g未満である。本発明で使用される新規CNT(
図36)と従来CNT(
図37)との走査型電子顕微鏡イメージ及び物性を比較(
図38)すると、以下のようである。
【0451】
SEMイメージから分かるように、本発明の一実施例に適用される新規CNTは、バンドル型(bundled type)であって、多層(multi wall)構造であるが、従来CNTと比べてBETが高く、層数及び直径が小さい。
【0452】
二次粒子形態の正極活物質を使用する場合、従来CNTを0.4wt%~0.6wt%程度で使用しても十分な電気伝導性を実現できる。しかし、単粒子又は疑似単粒子形態の正極活物質の場合、従来の二次粒子形態の正極活物質に比べて抵抗が高く、導電材との接触面積が小さくて電気伝導度が低下するため、BET比表面積が300m2/g未満の従来CNTを使用して十分な電気伝導性を実現するためには、導電材の含量が0.9wt%以上にならねばならない。
【0453】
図39~
図42は、正極活物質として単粒子又は疑似単粒子を適用する場合、導電材の比率に応じた面抵抗及び高温寿命特性を示したグラフである。
【0454】
グラフから、正極活物質として単粒子又は疑似単粒子を適用する場合、従来の二次粒子形態の正極活物質を適用する場合に比べて、導電材の使用量を増加させる必要があることが分かる。
【0455】
しかし、カーボンナノチューブの含有量が0.9wt%以上に増加すれば、正極スラリー内で凝集が発生して粘度が増加し、これによりコーティング性が低下する。したがって、円滑なコーティング性を実現するためには、正極スラリー内の固形分含量を減少させて正極スラリーの粘度を下げなければならないが、正極スラリー内の固形分含量が減少すると活物質含量が減少して容量特性が低下するという問題がある。
【0456】
本発明者らはこのような問題を解決するために研究を重ねた結果、単粒子系活物質粒子である正極活物質とともに、導電材としてBET比表面積が300m2/g~500m2/gであるカーボンナノチューブを適用する場合、相対的に少量のカーボンナノチューブだけでも十分な電気伝導性を確保でき、これによって正極スラリーの固形分含量を70wt%~80wt%程度に高く形成しても、スラリー粘度を低く維持できることを確認した。
【0457】
具体的には、本発明で使用される前記カーボンナノチューブは、BET比表面積が300m2/g~500m2/g、望ましくは300m2/g~450m2/gである多層カーボンナノチューブであり得る。BET比表面積が上記の範囲を満足すると、少量のカーボンナノチューブだけでも十分な電気伝導性を確保することができる。
【0458】
また、前記カーボンナノチューブは、層数(wall number)が2~8、望ましくは2~6、より望ましくは3~6である多層カーボンナノチューブであり得る。
【0459】
また、前記カーボンナノチューブは、直径が1nm~8nm、望ましくは3nm~8nm、より望ましくは3nm~6nmであり得る。
【0460】
前記カーボンナノチューブは、正極活物質層の総重量に対して0.7wt%以下、望ましくは0.3wt%~0.7wt%、より望ましくは0.4wt%~0.6wt%で含まれ得る。カーボンナノチューブの含量が上記の範囲を満足すると、十分な電気伝導性を実現でき、正極スラリー内における固形分含量を高く維持できるため、正極活物質層内で正極活物質の含量を高く形成可能であり、これにより優れた容量特性を実現することができる。
【0461】
図43に示された表は、BET比表面積が300m
2/g~500m
2/gであるカーボンナノチューブ(新規CNT)を適用した場合及びBET比表面積が200m
2/g以上300m
2/g未満のカーボンナノチューブ(従来CNT)を適用した場合において、正極スラリーの固形分含量、粘度、MPコーティング層における抵抗値、及びMP界面層における抵抗値を比較したものである。表から、新規CNTを適用する場合、従来CNTに比べて正極スラリーの固形分含量が高い場合にもより低い粘度を示し、電気伝導性も優れることを確認できる。
【0462】
前記バインダーは、正極活物質粒子同士の付着及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を果たすものであって、具体的な例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、又はこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうちの1種単独又は2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して1wt%~30wt%、望ましくは1wt%~20wt%、より望ましくは1wt%~10wt%で含まれ得る。
【0463】
本発明の他の一実施形態は、前記正極を含む電極組立体、及びそれを含むバッテリーに関する。前記電極組立体は負極及び正極を含み、前記正極は上述したような構成的特徴を有する。
【0464】
前記電極組立体は、例えば分離膜が負極と正極との間に介在された状態で積層されて積層型又は積層/折り畳み型の構造体を形成するか、又は、巻き取られてゼリーロール型の構造体を形成し得る。ゼリーロール型の構造体を形成したとき、負極と正極との接触を防止するため、外側に分離膜がさらに配置され得る。
【0465】
前記負極は、負極集電体、及び前記負極集電体の少なくとも一面上に形成された負極活物質層を含む。前記負極は、長いシート状の負極集電体の一面又は両面に負極活物質層が形成された構造であり得、前記負極活物質層は負極活物質、導電材及びバインダーを含み得る。
【0466】
具体的には、前記負極は長いシート状の負極集電体の一面又は両面に、負極活物質、導電材及びバインダーをジメチルスルホキシド(DMSO)、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などのような溶媒に分散させて製造した負極スラリーを塗布し、乾燥工程を経て負極スラリーの溶媒を除去した後、圧延する方法で製造され得る。前記負極スラリーの塗布時に負極集電体の一部領域、例えば負極集電体の一端部に負極スラリーを塗布しない方法で、無地部を含む負極を製造し得る。
【0467】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な化合物が使用され得る。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Si-Me合金(ここで、MeはAl、Sn、Mg、Cu、Fe、Pb、Zn、Mn、Cr、Ti、及びNiからなる群より選択される1種以上)、SiOy(ここで、0<y<2)、Si-C複合体などのようなシリコン系物質;リチウム金属薄膜;Sn、Alなどのようにリチウムと合金化可能な金属物質;などが挙げられ、これらのうちのいずれか一つ又は二つ以上の混合物が使用され得る。
【0468】
本発明の一実施例において、前記負極はシリコン系負極活物質を含み得る。前記シリコン系負極活物質は、Si、Si-Me合金(ここで、MeはAl、Sn、Mg、Cu、Fe、Pb、Zn、Mn、Cr、Ti、及びNiからなる群より選択される1種以上)、SiOy(ここで、0<y<2)、Si-C複合体、又はこれらの組み合わせであり得、望ましくはSiOy(ここで、0<y<2)であり得る。シリコン系負極活物質は高い理論容量を有するため、シリコン系負極活物質を含む場合、容量特性を向上させることができる。
【0469】
前記シリコン系負極活物質は、Mb金属でドーピングされたものであり得、このとき、前記Mb金属は1族金属元素、2族金属元素であり得、具体的には、Li、Mgなどであり得る。具体的には、前記シリコン系負極活物質はMb金属でドーピングされたSi、SiOy(ここで、0<y<2)、Si-C複合体などであり得る。金属ドーピングされたシリコン系負極活物質の場合、ドーピング元素によって活物質容量は多少低下するが高い効率を有するため、高いエネルギー密度を実現することができる。
【0470】
図60は、シリコン系負極活物質と炭素系負極活物質との混合物を負極活物質として使用したバッテリーにおいて、シリコン系負極活物質の含量とシリコン系負極活物質のドーピング有無に応じたエネルギー密度の変化を示したグラフである。
【0471】
図60において、低効率SiOは非ドーピングSiOであり、超高効率SiOはMg/LiドーピングSiOを意味する。
図60から、全体負極活物質中のシリコン系負極活物質の含量が増加するほどエネルギー密度が向上することが確認できる。また、シリコン系負極活物質中における、ドーピングされたシリコン系負極活物質の比率が増加するほど、エネルギー密度の改善効果がさらに優れることが確認できる。
【0472】
前記シリコン系負極活物質は、粒子の表面に炭素コーティング層をさらに含み得る。このとき、前記炭素コーティング量は、シリコン系負極活物質の全体重量を基準にして20wt%以下、望ましくは1~20wt%であり得る。前記炭素コーティング層は、乾式コーティング、湿式コーティング、化学気相成長(CVD)、物理気相成長(PVD)、原子層成長(ALD)などの方式を通じて形成し得る。
【0473】
本発明の一実施形態において、前記シリコン系負極活物質は1,000~4,000mAh/gの容量を有し得、初期効率が60~95%程度であり得る。
【0474】
本発明の他の実施形態において、前記シリコン系負極活物質のD50は3μm~8μmであり得、Dmin~Dmaxは0.5μm~30μmの範囲に含まれ得る。
【0475】
前記負極は、必要に応じて、負極活物質として炭素系負極活物質をさらに含み得る。前記炭素系負極活物質は、例えば人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素、軟質炭素(soft carbon)、硬質炭素(hard carbon)などであり得るが、これらに限定されることはない。
【0476】
負極活物質としてシリコン系負極活物質と炭素系負極活物質との混合物を使用する場合、前記シリコン系負極活物質と炭素系負極活物質との混合比は重量比率で1:99~20:80、望ましくは1:99~15:85、より望ましくは1:99~10:90であり得る。
【0477】
前記負極活物質は、負極活物質層の総重量に対して80wt%~99wt%、望ましくは85wt%~99wt%、より望ましくは90wt%~99wt%で含まれ得る。
【0478】
必要に応じて、前記負極活物質は、リチウム金属、及びSn、Alなどのようにリチウムと合金化可能な金属物質から選択された1種以上をさらに含み得る。
【0479】
前記負極集電体としては、当技術分野で一般に使用される負極集電体が使用され得、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよい。例えば、負極集電体は、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用され得る。
【0480】
前記導電材は、負極に導電性を付与するために使用されるものであって、バッテリーの内部で化学変化を引き起こさず電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な導電材の例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末又は金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうちの1種単独で又は2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、通常、負極活物質層の総重量に対して1wt%~30wt%、望ましくは1wt%~20wt%、より望ましくは1wt%~10wt%で含まれ得る。
【0481】
前記バインダーは、負極活物質粒子同士の付着及び負極活物質と負極集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的なバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、又はこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうちの1種単独又は2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、負極活物質層の総重量に対して1wt%~30wt%、望ましくは1wt%~20wt%、より望ましくは1wt%~10wt%で含まれ得る。
【0482】
前記電極組立体は分離膜をさらに含み、前記分離膜は負極と正極との間に介在される方式で電極組立体内に配置される。前記分離膜は、負極と正極とを分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常リチウムバッテリーでセパレータとして使用されるものであれば特に制限なく使用可能である。
【0483】
前記分離膜としては、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルム、又は、これらの2層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性又は機械的強度の確保のため、セラミックス成分又は高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜が使用されてもよい。
【0484】
本発明のさらに他の一実施形態は、前記電極組立体を含むバッテリーに関する。前記バッテリーは、電池ケースに電極組立体及び電解液が一緒に収納されているものである。前記電池ケースとしては、パウチ型又は金属缶型などの当技術分野で通常使用されるものであれば、特に制限なく適切なものが選択され得る。
【0485】
本発明で使用される電解質としては、リチウムバッテリーに使用可能な多様な電解質、例えば、有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが使用され得、その種類が特に限定されることはない。
【0486】
具体的には、前記電解質は有機溶媒及びリチウム塩を含み得る。
【0487】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たせるものであれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどのエステル系溶媒;ジブチルエーテル又はテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ベンゼン、ベンゼン、フルオロベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(RはC2~C20の直鎖状、分枝状又は環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環又はエーテル結合を含み得る)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;又はスルホラン類などが使用され得る。中でも、カーボネート系溶媒が望ましく、電池の充放電性能を向上可能な高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートなど)との混合物がより望ましい。
【0488】
前記リチウム塩は、リチウムバッテリーで使用されるリチウムイオンを提供可能な化合物であれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、又はLiB(C2O4)2などが使用され得る。前記リチウム塩の濃度は、0.1~5.0M、望ましくは0.1M~3.0M範囲内であり得る。リチウム塩の濃度が上記の範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を示し、リチウムイオンが効果的に移動可能である。
【0489】
前記電解質には、上述した電解質構成成分の外にも、電池寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量向上などを目的として添加剤をさらに含み得る。例えば、前記添加剤としては、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、又は三塩化アルミニウムなどを単独で又は混合して使用し得るが、これらに限定されることはない。前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1wt%~10wt%、望ましくは0.1wt%~5wt%で含まれ得る。
【0490】
本発明のさらに他の実施形態において、前記正極は、隣接領域よりも正極活物質のローディング量が少ないローディング減少部を含み得る。正極がこのような構造を有すると、リチウム析出の心配なく、正極活物質部の区間を増加させることができる。これにより、電極組立体のエネルギー密度を向上させることができる。
【0491】
近年、高いエネルギー密度の実現及びコスト節減のため、バッテリーのサイズを増加させる方向で開発が進んでいる。バッテリーのサイズに応じてエネルギーが増加するほど、バッテリー当たりの抵抗は減少しなければならない。抵抗の減少のため、電極に電極タブを付着する方式ではなく、電極の集電体を電極タブとして活用する方式を使用可能である。このとき、電極集電体上に電極スラリーを塗布する電極製造工程の特性上、負極スラリーが塗布された負極活物質部と負極集電体との境界部分にローディング量が減少する部分が発生する。N/P比を考慮すると、前記ローディング量が減少する部分と対面する正極活物質部に金属リチウムが析出するおそれがある。ここで、N/P比とは、負極の面積及び質量当たりの容量に基づいて算出した負極の容量を、正極の面積及び質量当たりの容量に基づいて得た正極の容量で除した値であるが、一般に1以上の値を有する。すなわち、負極の容量をより大きく製作する。参考までに、N/P比が1にならないと、充放電時に金属リチウムが析出し易く、これは高率充放電時に電池の安全性を急激に劣化させる原因になる。換言すると、N/P比は電池の安全性及び容量に多大な影響を及ぼす。このように金属リチウムの析出危険のため、負極のローディング量が減少する部分と対面する正極部分に正極活物質部を位置させることができない。これはバッテリーのエネルギー密度を高められなくする原因になる。そこで本発明は、正極活物質部の区間を増やしてエネルギー密度を改善した。
【0492】
図48は本発明の一実施形態による電極組立体を示した図であり、
図49は
図48のA-A’線に沿って切断した断面図である。
【0493】
図48及び
図49を参照すると、本発明の一実施形態による電極組立体300は、負極400、正極500及び分離膜600を含む。分離膜600は、負極400と正極500との間に位置する。負極400、正極500及び分離膜600が一緒に巻き取られてゼリーロール構造体300Sを形成する。ここで、ゼリーロール構造体300Sは、負極400、正極500及び分離膜600が巻き取られて形成された構造物を称する。また、ゼリーロール構造体300Sを形成したとき、負極400と正極500とが接することを防止するため、外側に分離膜600がさらに配置されることが望ましい。
【0494】
負極400は、負極集電体410、及び負極集電体410上に負極活物質が塗布されて形成された負極活物質部420を含む。特に、図示されたように負極集電体410の両面ともに負極活物質が塗布されて負極活物質部420が形成され得る。また、負極集電体410において負極活物質が塗布されていない負極無地部430が第1方向d1に延びる。負極無地部430は、巻き取られる負極400の一端部に沿って延在される。また、負極無地部430は第1方向d1に向かって分離膜600よりも長く延在する。これにより、ゼリーロール構造体300Sの第1方向の一端部には負極無地部430が露出し得る。
【0495】
正極500は、正極集電体510、及び正極集電体510上に正極活物質が塗布されて形成された正極活物質部520を含む。特に、図示されたように正極集電体510の両面ともに正極活物質が塗布されて正極活物質部520が形成され得る。また、正極集電体510において正極活物質が塗布されていない正極無地部530が第2方向d2に延びる。正極無地部530は、巻き取られる正極500の一端部に沿って延在される。また、正極無地部530は第2方向d2に向かって分離膜600よりも長く延在する。これにより、ゼリーロール構造体300Sの第2方向の一端部には正極無地部530が露出し得る。
【0496】
ここで、第1方向d1と第2方向d2とは対向する方向である。また、第1方向d1及び第2方向d2は、ゼリーロール構造体300Sの高さ方向と平行な方向であり得る。
【0497】
本実施形態による電極組立体300は、別途の電極タブを付着する形態ではなく、抵抗減少のために負極集電体410の負極無地部430及び正極集電体510の正極無地部530自体を電極タブとして活用する形態である。
【0498】
図示していないが、負極無地部430及び/又は正極無地部530は、上述した電極の無地部の構造を実質的に同様に備え得る。
【0499】
一実施形態において、正極活物質部520は、隣接領域よりも正極活物質のローディング量が少ないローディング減少部500Dを含み、ローディング減少部500Dは、正極500の第1方向d1の一端部に位置する。より具体的には、ローディング減少部500Dは、第1方向d1に向かって前記正極活物質のローディング量が徐々に減少し得る。
【0500】
ここで、ローディング量とは、単位面積当たりの活物質の塗布量を意味する。ローディング量が多い部分は、単位面積に多量の負極活物質又は正極活物質が塗布されて負極活物質部又は正極活物質部の厚さが相対的に厚くなり得る。ローディング量が少ない部分は、単位面積に少量の負極活物質又は正極活物質が塗布されて負極活物質部又は正極活物質部の厚さが相対的に薄くなり得る。
【0501】
活物質を含むスラリーを塗布して活物質部を形成するが、このような工程で無地部と活物質部との間には徐々にローディング量が減少する境界部が形成され得る。
【0502】
具体的には、負極活物質部420は、負極活物質部420と負極無地部430との間の境界を形成する負極境界部420Bを含み得る。負極境界部420Bは、負極無地部430が位置する方向に向かって徐々にローディング量が減少し得る。
【0503】
同様に、正極活物質部520は、正極活物質部520と正極無地部530との間の境界を形成する正極境界部520Bを含み得る。正極境界部520Bは、正極無地部530が位置する方向に向かって徐々にローディング量が減少し得る。
【0504】
このようにローディング量が徐々に減少する負極境界部420B及び正極境界部520Bは、活物質を含むスラリーを負極集電体410及び正極集電体510に塗布する過程で自然に発生する。
【0505】
このとき、第2方向d2と垂直な方向を基準にして、正極境界部520Bに対応する領域では正極活物質の量が負極活物質の量よりも少なくなる。これにより、N/P比が1よりも大きい値になるため、金属リチウムが析出する問題などが発生しない。
【0506】
しかし、負極境界部420Bと対応する領域では問題がある。第1方向d1と垂直な方向を基準にして、負極境界部420Bに対応する領域では負極活物質の量が正極活物質の量よりも少なくなる。これにより、N/P比が1よりも小さい値になるため、金属リチウムが析出する問題が発生するおそれがある。
【0507】
そこで、本実施形態では、正極500にローディング減少部500Dを設け、第1方向d1と垂直な方向を基準にして、ローディング減少部500Dと対応する部分に負極活物質部420を位置させている。より具体的には、第1方向d1と垂直な方向を基準にして、ローディング減少部500Dと対応する部分に負極境界部420Bが位置し得る。
【0508】
ローディング量が徐々に減少する負極境界部420Bと対応する位置に、隣接領域よりも正極活物質のローディング量が少ないローディング減少部500Dを設けることで、リチウム析出の心配なく、正極活物質が塗布された区間を増加させることができる。特に、負極無地部430に向かってローディング量が徐々に減少する負極境界部420Bの形状と対応するように、ローディング減少部500Dは第1方向d1に向かって前記正極活物質のローディング量が徐々に減少する形態を有し得る。したがって、負極境界部420Bが形成された領域における負極400と正極500とに対するN/P比を高く維持することができ、リチウムの析出を防止することができる。
【0509】
以下、
図50~
図55を参照して本発明の一実施形態による電極組立体の製造方法を詳しく説明する。
【0510】
図50及び
図51は、本発明の一実施形態によって負極を製造する過程を示した図である。具体的には、
図50は負極シートの上面図であり、
図51は
図50の負極シートの正面図である。
【0511】
図50及び
図51を参照すると、本発明の一実施形態による電極組立体の製造方法は、負極集電体410上に負極活物質が塗布された負極活物質部420と負極活物質が塗布されていない負極無地部430とが交互に位置するように負極シート400Sを製造する段階を含む。
【0512】
具体的には、負極活物質を第3方向d3に延びるように塗布して負極活物質部420を形成し得る。また、第3方向d3と垂直な第4方向d4に沿って塗布領域を離隔させることで、複数の負極活物質部420を第4方向d4に沿って離隔させて位置させ得る。すなわち、複数の負極活物質部420同士の間に負極無地部430が位置するように塗布工程を行い得る。
【0513】
ここで、第3方向d3及び第4方向d4は、負極シート400Sを基準にして説明するための方向であって、上述したゼリーロール構造体300Sにおける第1方向d1及び第2方向d2とは関係のない方向である。
【0514】
その後、負極無地部430及び負極活物質部420をスリッティング(slitting)して負極400を製造する段階を含み得る。
図52は、本発明の一実施形態による負極を示した斜視図である。
【0515】
図50~
図52を参照すると、
図50及び
図51に点線で示した部分のように、負極無地部430及び負極活物質部420のそれぞれに対して第3方向d3と平行な方向にスリッティングを行い得る。これにより、負極シート400Sから
図52に示されたような負極400を複数個製造し得る。すなわち、
図52の負極400は、
図50及び
図51の負極シート400Sをスリッティングして製造された複数の負極のうちの一つに該当する。負極シート400Sにおいて負極無地部430及び負極活物質部420をそれぞれスリッティングすることで、一側に負極無地部430が延在した負極400が製造され得る。
【0516】
負極活物質部420を形成するとき、負極活物質を含むスラリーを負極集電体410上に塗布するが、このようなスラリー塗布過程において、負極活物質部420と負極無地部430との間の境界には負極無地部430が位置する方向に向かって徐々にローディング量が減少する負極境界部420Bが形成され得る。
【0517】
図53及び
図54は、本発明の一実施形態によって正極を製造する工程を示した図である。具体的には、
図53は正極シートの上面図であり、
図54は
図53の正極シートを正面図である。
【0518】
図53及び
図54を参照すると、本発明の一実施形態による電極組立体の製造方法は、正極集電体510上に正極活物質が塗布された正極活物質部520と正極活物質が塗布されていない正極無地部530とが交互に位置するように正極シート500Sを製造する段階を含む。
【0519】
具体的には、正極活物質を第3方向d3に延びるように塗布して正極活物質部520を形成し得る。また、第3方向d3と垂直な第4方向d4に沿って塗布間隔を調節することで、複数の正極活物質部520を離隔させて位置させ得る。すなわち、複数の正極活物質部520同士の間に正極無地部530が位置するように塗布工程を行い得る。
【0520】
ここで、第3方向d3及び第4方向d4は、正極シート500Sを基準にして説明するための方向であって、上述したゼリーロール構造体300Sにおける第1方向d1及び第2方向d2とは関係のない方向である。
【0521】
その後、正極無地部530及び正極活物質部520をスリッティングして正極500を製造する段階を含み得る。
図55は、本発明の一実施形態による正極500を示した斜視図である。
【0522】
図53~
図55を参照すると、
図53及び
図54に点線に示した部分のように、正極無地部530及び正極活物質部520のそれぞれに対して第3方向d3と平行な方向にスリッティングを行い得る。これにより、正極シート500Sから
図55に示されたような正極500を複数個製造し得る。すなわち、
図55の正極500は、
図53及び
図54の正極シート500Sをスリッティングして製造された複数の正極のうちの一つに該当する。正極シート500Sにおいて正極無地部530及び正極活物質部520をそれぞれスリッティングすることで、一側に正極無地部530が延在した正極500が製造され得る。
【0523】
正極活物質部520を形成するとき、正極活物質を含むスラリーを正極集電体510上に塗布するが、このようなスラリー塗布過程において、正極活物質部520と正極無地部530との間の境界には正極無地部530が位置する方向に向かって徐々にローディング量が減少する正極境界部520Bが形成され得る。
【0524】
図48、
図52及び
図55をともに参照すると、製造された負極400及び正極500を分離膜600と一緒に巻き取ってゼリーロール構造体300Sを形成する段階が続いて行われ得る。このとき、ゼリーロール構造体300Sにおいて、負極無地部430は第1方向d1に向かって分離膜600よりも長く延在し、正極無地部530は第1方向d1と反対の第2方向d2に向かって分離膜600よりも長く延在し得る。
【0525】
図53~
図55をさらに参照すると、本発明の一実施形態による電極組立体の製造方法において、正極シート500Sは、隣接領域よりも前記正極活物質のローディング量が少ないローディング減少領域500DAを含む。ローディング減少領域500DAを形成する方法には特に制限がなく、一例としてスラリーの塗布程度を調節して形成し得る。
【0526】
前記正極500を製造する段階において、正極活物質部520からローディング減少領域500DAをスリッティングする。スリッティングされたローディング減少領域500DAが、
図48及び
図49に示されたゼリーロール構造体300Sにおいて隣接領域よりも正極活物質のローディング量が少ないローディング減少部500Dを形成する。
【0527】
具体的には、正極シート500Sに形成された正極活物質部520に、隣接領域よりも前記正極活物質のローディング量が少ないローディング減少領域500DAが形成される。
図54に示されたように、ローディング減少領域500DAは正極活物質部520の中央に形成され得る。一方、ローディング減少領域500DAは、ローディング減少領域500DAの中央部500Cに向かって前記正極活物質のローディング量が徐々に減少するように構成され得、前記正極500を製造する段階において、ローディング減少領域500DAの中央部500Cをスリッティングすることによって、本実施形態によるローディング減少部500Dを形成し得る。
【0528】
すなわち、正極活物質を含むスラリーを塗布することでローディング減少領域500DAを形成し、ローディング減少領域500DAの中央部500Cをスリッティングすることで、ローディング減少部500Dが形成された正極500を複数個製造し得る。
【0529】
図55を参照すると、製造された正極500の一端部にはローディング減少部500Dが設けられ、前記一端部と対向する前記正極500の他端部には正極無地部530が設けられ得る。
【0530】
図48及び
図49を参照すると、このような正極500が巻き取られてゼリーロール構造体300Sを形成するとき、ローディング減少部500Dは正極500の第1方向d1の一端部に位置し、正極無地部530は正極500の第2方向d2の一端部に位置し得る。
【0531】
また、ローディング減少領域500DAの中央部500Cをスリッティングすることによって、ローディング減少部500Dは、第1方向d1に向かって正極活物質のローディング量が徐々に減少し得る。
【0532】
また、ゼリーロール構造体300Sにおいて、第1方向d1と垂直な方向を基準にして、ローディング減少部500Dと対応する部分に負極活物質部420が位置し得る。より具体的には、ゼリーロール構造体300Sにおいて、第1方向d1と垂直な方向を基準にして、ローディング減少部500Dと対応する部分に負極境界部420Bが位置し得る。
【0533】
ローディング減少部500Dと負極境界部420Bとの対応する位置関係については、上述した説明と同様であるため省略する。
【0534】
以下、
図56~
図59を参照して本発明の比較形態による電極組立体を説明し、本発明の実施形態による電極組立体が比較形態による電極組立体に比べて持っている長所を説明する。
【0535】
図56は本発明の比較形態による電極組立体を示した図であり、
図57は
図56のB-B’線に沿って切断した断面図である。
【0536】
図56及び
図57を参照すると、本発明の比較形態による電極組立体600は、負極700、正極800及び分離膜900を含み、負極700、正極800及び分離膜900が巻き取られてゼリーロール構造体600Sを形成する。
【0537】
負極700は、負極集電体710、負極活物質部720及び負極無地部730を含み得る。また、負極無地部730は、第1方向d1に向かって延在し得、負極活物質部720は、負極活物質部720と負極無地部730との境界を形成しながらローディング量が徐々に減少する負極境界部720Bを含み得る。
【0538】
図58は、本発明の比較形態によって負極700を製造する工程を示した図である。
【0539】
図58を参照すると、負極活物質部720と負極無地部730とが第4方向d4に沿って交互に位置するように負極シート700Sが製造された後、負極無地部730及び負極活物質部720をスリッティング(slitting)して複数の負極700を製造し得る。
【0540】
一方、
図56及び
図57をさらに参照すると、正極800は、正極集電体810、正極活物質部820及び正極無地部830を含み得る。また、正極無地部830は、第1方向d1と対向する第2方向d2に向かって延在し得、正極活物質部820は、正極活物質部820と正極無地部830との境界を形成しながらローディング量が徐々に減少する正極境界部820Bを含み得る。
【0541】
図59は、本発明の比較形態によって正極800を製造する工程を示した図である。
【0542】
図59を参照すると、正極活物質部820と正極無地部830とが第4方向d4に沿って交互に位置するように正極シート800Sが製造された後、正極無地部830及び正極活物質部820をスリッティング(slitting)して複数の正極800を製造し得る。
【0543】
その後、製造された負極700及び正極800を分離膜900と一緒に巻き取って本発明の比較形態による電極組立体600を製造し得る。
【0544】
すなわち、本発明の比較形態による電極組立体600は、ローディング減少部500D(
図49を参照)を除いて、本発明の実施形態による電極組立体300と類似の構造を有し得る。
【0545】
図56及び
図57を参照すると、比較形態による電極組立体600の場合、第1方向d1と垂直な方向を基準にして、負極境界部720Bと対応する部分に正極活物質部820が位置できない。もし、正極活物質部820が負極境界部720Bと対応する部分にまで延在すると、該当部分は低いN/P比を有する部分になり、金属リチウムが析出する可能性が高い。したがって、リチウム析出を防止するためには正極活物質部820の長さを制限するしかない。すなわち、図示されたB1領域のみに正極活物質部820を形成でき、B2領域には正極活物質部820を形成できず、負極境界部720Bによって正極活物質部820の長さが縮小される結果につながる。
【0546】
一方、
図48及び
図49を参照すると、本発明の実施形態による電極組立体300の場合、第1方向d1と垂直な方向を基準にして、負極境界部420Bと対応する部分に正極活物質部520、特にローディング減少部500Dが位置し得る。負極境界部420Bと対応する位置に隣接領域よりも正極活物質のローディング量が少ないローディング減少部500Dが設けられるため、該当部分でのN/P比を高く維持でき、リチウムの析出を防止することができる。これにより、A1領域にわたって正極活物質部520を形成でき、正極活物質部520を形成できないA2領域を減らすことができる。一例として、高さ方向における負極400の幅に対する高さ方向における正極500の幅を98%以上に高めることができる。
【0547】
図48及び
図49のA1領域と
図56及び
図57のB1領域とを比べると、本実施形態による電極組立体300は、正極活物質部の長さをローディング減少部500Dだけ増やすことができるため、比較形態による電極組立体600よりも、限定された空間でさらに高いエネルギー密度を実現可能である。
【0548】
本発明のさらに他の一実施形態は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜が一方向に巻き取られた構造を有するゼリーロール型の電極組立体と、前記電極組立体が収納される円筒形バッテリーハウジングと、前記バッテリーハウジングの上部に配置されて前記バッテリーハウジングを密封する密封体である電池キャップとを含む円筒形バッテリーに関する。ここで、前記正極は本発明の一実施例によるものであって、正極活物質として平均粒径D50が5μm以下の単粒子系活物質粒子を含むものである。前記円筒形バッテリーは、電解液をさらに含み得、電解液については上述した説明を参照可能である。
【0549】
前記電極組立体は、上述したような積層型、積層/折り畳み型、又はゼリーロール型の構造を有し得る。本発明の具体的な一実施形態において、前記電極組立体は上述したように正極がローディング減少部を有するものであり得る。
【0550】
従来の円筒形バッテリーの場合、ストリップ状の電極タブに電流が集中されて抵抗が大きく、多量の熱が発生し、集電効率が良くないという問題がある。
【0551】
近年、電気自動車関連技術の発展に伴って高容量電池に対する要求が増加するにつれて、体積が大きい大型円筒形バッテリーの開発が要求されている。従来一般に使用されている小型円筒形バッテリー、すなわち、1865や2170のフォームファクタを有する円筒形バッテリーの場合、容量が小さいため、抵抗や発熱が電池性能に深刻な影響を及ぼすことがない。しかし、従来の小型円筒形バッテリーの仕様を大型円筒形バッテリーにそのまま適用する場合、電池安全性に深刻な問題が生じるおそれがある。
【0552】
電池が大きくなれば、電池内部で発生する熱とガスの量も一緒に増加するが、このような熱とガスによって電池内部の温度及び圧力が上昇し、電池が発火するか又は爆発することがあるためである。これを防止するためには、電池内部の熱とガスが外部へと適切に排出されねばならず、そのためには電池外部への熱の排出通路になる電池の断面積が体積の増加に応じて増加する必要がある。しかし、通常、断面積の増加分は体積の増加分に及ばないため、電池が大型化されるほど電池内部の発熱量が増加し、それによって爆発の危険性が大きくなって出力が低下するなどの問題が発生する。また、高電圧で急速充電を行う場合、短時間で電極タブの周辺で多量の熱が発生しながら電池が発火するおそれもある。そこで本発明は、高容量を実現できるように大きい体積を有しながらも高い安全性を有する円筒形バッテリーを提案する。
【0553】
また、前記単粒子又は疑似単粒子形態の正極活物質が適用された高ローディング電極が円筒形バッテリーに適用されるため、円筒形バッテリーの初期抵抗特性と充放電効率を改善することができる。
【0554】
本発明の一実施例による円筒形バッテリーは、単粒子又は疑似単粒子形態の正極活物質を適用することで従来に比べてガス発生量を著しく減少させ、これによってフォームファクタの比が0.4以上である大型円筒形バッテリーにおいても優れた安全性を実現することができる。
【0555】
本発明の一実施例による円筒形バッテリーは、望ましくは、電極タブを含まないタブレス構造のバッテリーであるが、これに限定されるものではない。
【0556】
前記タブレス構造のバッテリーは、例えば、正極及び負極がそれぞれ活物質層が形成されていない無地部を含み、電極組立体の上端及び下端にそれぞれ正極無地部及び負極無地部が位置し、前記正極無地部及び負極無地部に集電板が結合されており、前記集電板が電極端子と連結されている構造であり得る。
【0557】
円筒形バッテリーを上記のようにタブレス構造で形成する場合、電極タブを備える従来の電池に比べて電流集中が低減するため、電池内部の発熱を効果的に減少させることができ、これによって電池の熱安定性が改善される効果を奏することができる。
【0558】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
【0559】
<実施例1>
平均粒径D50が3μmであるユニモーダル粒度分布を有し、単粒子形態である正極活物質Li[Ni0.9Co0.06Mn0.03Al0.01]O2とカーボンナノチューブとPVDFバインダーとを97.8:0.6:1.6の重量比でN-メチルピロリドン中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体シートの一面に塗布した後、120℃で乾燥してから圧延して正極を製造した。
【0560】
負極活物質(黒鉛:SiO=95:5(重量比)混合物)と導電材(スーパーC)とスチレン-ブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを96:2:1.5:0.5の重量比で水中で混合して負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを銅集電体シートの一面に塗布した後、150℃で乾燥してから圧延して負極を製造した。
【0561】
製造された正極と負極との間に分離膜を介在して分離膜/正極/分離膜/負極の順に積層した後、巻き取ってゼリーロール型の電極組立体を製造した。上記のように製造された電極組立体を円筒形電池缶に挿入した後、電解液を注入して4680セルを製造した。
【0562】
<比較例1>
正極活物質として、大粒径平均粒径D50が9μmであって、小粒径平均粒径D50が4μmであるバイモーダル粒度分布を有し、二次粒子形態であるLi[Ni0.9Co0.05Mn0.04Al0.01]O2を使用したことを除き、実施例1と同様の方法で4680セルを製造した。
【0563】
<実験例1>
実施例1及び比較例1によって製造された4680セルに対し、ホットボックステスト(hot box test)を実施した。
【0564】
具体的には、実施例1及び比較例1によって製造された4680セルをそれぞれ常温でホットボックスチャンバーに入れ、5℃/分の昇温速度で130℃まで昇温させた後、30分間維持するホットボックス評価を行い、時間に応じた電池の温度変化を測定した。正確な評価のため、実施例1のセルに対しては2回のホットボックス評価を行った。測定結果を
図45a及び
図45bに示した。
【0565】
図45aは実施例1によって製造された4680セルに対するホットボックステストの結果を示したグラフであり、
図45bは比較例1によって製造された4680セルに対するホットボックステストの結果を示したグラフである。
【0566】
図45a及び
図45bから、単粒子形態の正極活物質を使用した実施例1のリチウム二次電池の場合、65分が経過するまで電池の電圧及び温度が安定的に維持される一方、比較例1のリチウム二次電池は35分経過後に電池温度が急激に上昇したことが確認できる。
【0567】
<実施例2-1>
ユニモーダル粒度分布を有してD
min=1.78μm、D
50=4.23μm、D
max=13.1μmであり、単粒子と疑似単粒子とが混合されている正極活物質(組成:Li[Ni
0.9Co
0.06Mn
0.03Al
0.01]O
2)を用意した。
図44aに実施例2-1で使用された正極活物質のSEM写真を示した。
【0568】
正極活物質とカーボンナノチューブとPVDFバインダーとを97.8:0.6:1.6の重量比でN-メチルピロリドン中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体シートの一面に塗布した後、120℃で乾燥してから圧延して正極を製造した。
【0569】
負極活物質(黒鉛:SiO=95:5(重量比)混合物)と導電材(スーパーC)とスチレン-ブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを96:2:1.5:0.5の重量比で水中で混合して負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを銅集電体シートの一面に塗布した後、150℃で乾燥したから圧延して負極を製造した。
【0570】
製造された正極と負極との間に分離膜を介在して分離膜/正極/分離膜/負極の順に積層した後、巻き取ってゼリーロール型の電極組立体を製造した。上記のように製造された電極組立体を電池缶に挿入した後、電解液を注入して4680セルを製造した。
【0571】
<実施例2-2>
正極活物質として、ユニモーダル粒度分布を有してD
min=1.38μm、D
50=4.69μm、D
max=18.5μmであり、単粒子と疑似単粒子とが混合されている正極活物質(組成:Li[Ni
0.9Co
0.06Mn
0.03Al
0.01]O
2)を使用したことを除き、実施例2-1と同様の方法で4680セルを製造した。
図44bに実施例2-2で使用された正極活物質のSEM写真を示した。
【0572】
<比較例2-1>
大粒径平均粒径D50が9μmであって、小粒径平均粒径D50が4μmであるバイモーダル粒度分布を有し、二次粒子形態である正極活物質(組成:Li[Ni0.9Co0.05Mn0.04Al0.01]O2)を使用したことを除き、実施例2-1と同様の方法で4680セルを製造した。
【0573】
<比較例2-2>
ユニモーダル粒度分布を有してDmin=0.892μm、D50=3.02μm、Dmax=11μmであり、単粒子と疑似単粒子とが混合されている正極活物質(組成:Li[Ni0.9Co0.06Mn0.03Al0.01]O2)を使用したことを除き、実施例2-1と同様の方法で4680セルを製造した。
【0574】
図44cに比較例2-2で使用された正極活物質のSEM写真を示した。
【0575】
<実験例2-1>
実施例2-1、2-2及び比較例2-1、2-2によって製造された4680セルに対し、ホットボックステストを実施した。
【0576】
具体的には、実施例2-1及び比較例2-1によって製造された4680セルをそれぞれ常温でホットボックスチャンバーに入れ、5℃/分の昇温速度で130℃まで昇温させた後、30分間維持してから電池の温度変化を測定した。テスト中に熱暴走及び発火が発生しない場合をパス(pass)、熱暴走及び/又は発火が発生した場合をフェイル(fail)で示した。また、テストの正確度のため、実施例2-1及び2-2のセルに対してはテストを2回以上行った。
【0577】
測定結果を下記の表1及び
図45c、
図45dに示した。
図45cは実施例2-1のサンプル1及び比較例2-1によって製造された4680セルに対するホットボックステストの結果を示したグラフであり、
図45dは実施例2-1のサンプル2、3、実施例2-2のサンプル1、2及び比較例2-2によって製造された4680セルに対するホットボックステストの結果を示したグラフである。
【0578】
【0579】
表1、
図45c及び
図45dを参照すると、D
minが1.0μm以上である単粒子/疑似単粒子形態の正極活物質を適用した実施例2-1の4680セルの場合、65分が経過するまで電池の電圧及び温度が安定的に維持される一方、正極活物質として二次粒子を適用した比較例2-1及びD
minが1.0μm未満である単粒子/疑似単粒子形態の正極活物質を適用した比較例2-2の4680セルは、電池温度が急激に上昇したことが確認できる。
【0580】
<実験例2-2>
実施例2-1及び比較例2-1で製造された正極に対し、圧延後の正極活物質粒子の割れ程度を確認するため、イオンミリング装置で正極を切断した後、断面をSEMで撮影した。
図46aに実施例2-1で製造された正極の断面SEM写真を示し、
図46bに比較例2-1で製造された正極の断面SEM写真を示した。
【0581】
図46a及び
図46bから、実施例2-1の正極は圧延後にも正極活物質の粒子割れが殆どない一方、二次粒子を使用した比較例2-2の正極は圧延後に正極活物質の粒子割れが多数観察される。
【0582】
<実施例3-1>
ユニモーダル粒度分布を有してDmin=1.78μm、D50=4.23μm、Dmax=13.1μmであり、単粒子と疑似単粒子とが混合されている正極活物質粉末(組成:Li[Ni0.9Co0.06Mn0.03Al0.01]O2)と鱗片状黒鉛(SFG6L)と導電材(多層カーボンナノチューブ)とPVDFバインダーとを96.3:1.5:0.4:1.8の重量比でN-メチルピロリドン中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体シートの一面に塗布した後、乾燥して3.0ton/cmの線圧で圧延して正極を製造した。製造された正極の正極活物質層の空隙率を測定した。空隙率は17.5%であった。
【0583】
<実施例3-2>
正極活物質と鱗片状黒鉛と導電材とバインダーとを97.2:0.6:0.4:1.8の重量比で混合したことを除き、実施例3-1と同様に正極を製造して正極活物質層の空隙率を測定した。空隙率は19%であった。
【0584】
<実施例3-3>
正極活物質と鱗片状黒鉛と導電材とバインダーとを97.4:0.4:0.4:1.8の重量比で混合したことを除き、実施例3-1と同様に正極を製造して正極活物質層の空隙率を測定した。空隙率は20%であった。
【0585】
<実施例3-4>
正極活物質と鱗片状黒鉛と導電材とバインダーとを97.6:0.2:0.4:1.8の重量比で混合したことを除き、実施例3-1と同様に正極を製造して正極活物質層の空隙率を測定した。空隙率は21%であった。
【0586】
<比較例3-1>
鱗片状黒鉛を添加せず、正極活物質と導電材とバインダーとを97.8:0.4:1.8の重量比でN-メチルピロリドン中で混合して正極スラリーを製造したことを除き、実施例3-1と同様に正極を製造して正極活物質層の空隙率を測定した。空隙率は24%であった。
【0587】
<比較例3-2>
鱗片状黒鉛を添加せず、正極活物質と導電材とバインダーとを97.8:0.4:1.8の重量比でN-メチルピロリドン中で混合して正極スラリーを製造し、2.0ton/cmの線圧で圧延したことを除き、実施例3-1と同様に正極を製造して正極活物質層の空隙率を測定した。空隙率は30%であった。
【0588】
<実験例3-1.充放電容量及び充放電効率の測定>
実施例3-1~3-4、比較例3-1及び3-2による正極を含むコイン型ハーフセルを製造し、0.2C電流条件で4.25Vまで充電した後、0.2C電流条件で2.5Vまで放電して、各コイン型ハーフセルの充電容量(mAh/g)及び放電容量(mAh/g)測定した。測定結果を下記の表2に示した。
【0589】
【0590】
表2から、鱗片状黒鉛を添加した正極を使用した実施例3-1~3-4の場合、比較例3-1及び3-2に比べて低い空隙率を示し、優れた容量特性を示すことが確認できる。
【0591】
<実験例3-2.抵抗特性の確認>
実施例3-3、比較例3-1及び比較例3-2による正極を含むコイン型ハーフセルを4.2Vまで充電しながら、SOCに応じた抵抗特性を測定した。実験の結果を
図47aに示した。
【0592】
図47aを参照すると、SOC10%を基準にして、正極活物質層に鱗片状黒鉛を添加した実施例3-3の抵抗値が鱗片状黒鉛を含まない比較例3-1及び比較例3-2よりも低いことが確認できる。これは、正極活物質層に鱗片状黒鉛を添加する場合、低いSOCにおける抵抗特性を改善する効果があることを示す。
【0593】
<実験例3-3.高温寿命特性及び抵抗増加率の測定>
実施例3-1、実施例3-3及び比較例3-1による正極と負極との間に分離膜を介在して分離膜/正極/分離膜/負極の順に積層した後、巻き取ってゼリーロール型の電極組立体を製造した。製造された電極組立体を円筒形電池缶に挿入した後、電解液を注入して4680セルを製造した。
【0594】
このとき、前記負極は、負極活物質(黒鉛:SiO=95:5(重量比)混合物)と導電材(スーパーC)とスチレン-ブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを96:2:1.5:0.5の重量比で水中で混合して負極スラリーを製造した後、該負極スラリーを銅集電体シートの一面に塗布し、150℃で乾燥してから圧延して製造した。
【0595】
このように製造された4680セルを、40℃で0.5Cで4.2Vまで充電してから0.5Cで2.5Vまで放電することを1サイクルとして、50サイクルの充放電を行った後、容量維持率及び抵抗(DCIR)増加率を測定した。測定結果を
図47bに示した。
【0596】
図47bを参照すると、実施例3-1及び3-3の二次電池の場合、比較例3-1の二次電池に比べてサイクル数に応じた容量維持率の変化が少なく、サイクル数に応じた抵抗増加率の変化も少ないことが分かる。
【0597】
最後に、分離膜の幅方向の末端と基準線との離隔距離が電解液含浸性に及ぼす影響を評価した。
【0598】
<電極のデザイン条件>
図17aに示された電極構造を有するように正極及び負極を製作した。正極集電体としては厚さ15μmのアルミニウム薄膜を使用し、負極集電体としては厚さ10μmの銅薄膜を使用した。
【0599】
正極集電体は、巻取方向の長さが4000mmであり、巻取軸方向の幅が75mmである。負極集電体は、巻取方向の長さが4000mmであり、巻取軸方向の幅が80mmである。
【0600】
正極及び負極において、コア側無地部B1の長さは350mmであり、中間無地部B2の長さは3500mmであり、外周側無地部B3の長さは150mmである。
【0601】
正極及び負極において、各グループの巻取方向の長さは500mmであり、グループ1に含まれた分切片の高さは5mmであり、グループ2~グループ7に含まれた分切片の高さは6mmと同一である。
【0602】
中間無地部B2において、分切片の巻取方向の幅は5mmと同一であり、分切片同士の離隔ピッチは0.5mmである。
【0603】
<負極の製造>
平均粒径D
50が11μmである土状の天然黒鉛とカーボンブラックとカルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジエンゴム(SBR)とを94:1.5:2:2.5の重量比で水と混合し、水を除いた残りの成分の濃度が50wt%である負極活物質層用スラリーを用意した。用意したスラリーを銅薄膜の有地部に対応する領域に、スロットダイを用いて走行速度40m/分で塗布した。有地部領域の巻取軸方向の幅は70mmであり、無地部の巻取軸方向の幅は10mmである。負極活物質のローディング量は電極面積を基準にして16mg/cm
2である。負極活物質層用スラリーが塗布された銅薄膜を長さ60mの熱風オーブンに通過させて乾燥した。オーブンの温度は130℃を維持するように調節された。乾燥した電極をロールプレスして負極活物質層がコーティングされた負極を得た。最後に、負極無地部をレーザーでノッチング加工して上述した条件で分切片を形成したが、ノッチング谷の下端が基準線(
図17bのDLを参照)に実質的に対応するようにノッチング深さを調節した。
【0604】
<正極の製造>
正極活物質としてのLi(Ni
0.6Mn
0.2Co
0.2)O
2(NCM-622)と、導電材としてのカーボンブラックと、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを96:2:2の重量比で分散媒である水に添加し、正極活物質スラリーを用意した。用意したスラリーをアルミニウム薄膜の表面にコーティングし、負極と同じ条件で乾燥及び圧延を行って正極を製造した。有地部の巻取軸方向の幅は65mmであり、無地部の巻取軸方向の幅は10mmである。正極活物質層は、前記NMC-622の理論放電容量を考慮して、電池のNP比が1.18(118%、約27.7cm
2)になるように形成した。最後に、正極無地部をレーザーでノッチング加工して上述した条件で分切片を形成したが、ノッチング谷の下端が基準線(
図17bのDL参照)に実質的に対応するようにノッチング深さを調節した。
【0605】
<分離膜の製造>
ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)高分子をテトラヒドロフラン(THF)に約5wt%添加した後、50℃の温度で約12時間以上溶解させて高分子溶液を製造した。該高分子溶液に粒径が約400nmであるBaTiO3粉末を、全体固形分が20wt%になるように添加し分散させて混合溶液(BaTiO3/PVDF-HFP=80:20(重量比))を製造した。ドクターブレード法を用いて製造された混合溶液をポリプロピレン素材の基材の両面にコーティングした。コーティングの後、THFを乾燥させ、最終的な有機/無機複合多孔性分離膜を得た。最終分離膜の厚さは約30μmであった。気孔率測定装置(ポロシメーター)で測定した結果、最終的な有機/無機複合多孔性分離膜の気孔の大きさ及び気孔度はそれぞれ0.4μm及び60%であった。
【0606】
<電極組立体の準備>
分離膜、負極、分離膜及び正極を順に積層した後、巻き取ってゼリーロール型の電極組立体を製造した。
【0607】
実施例4-1では、分離膜の幅方向の末端が基準線を基準にして最小折曲分切片(グループ1)の高さの30%(1.5mm)だけ電極組立体の外側に位置するように巻取条件を調節した。
【0608】
実施例4-2では、分離膜の幅方向の末端が基準線を基準にして最小折曲分切片(グループ1)の高さの10%(0.5mm)だけ電極組立体の外側に位置するように巻取条件を調節した。
【0609】
比較例4-1では、分離膜の幅方向の末端が基準線を基準にして最小折曲分切片(グループ1)の高さの50%だけ電極組立体の外側に位置するように巻取条件を調節した。
【0610】
<4680セルの製造>
実施例4-1の電極組立体の上側及び下側に露出したグループ1~7の分切片をコア側に折り曲げた後、上側折曲面及び下側折曲面に正極集電板及び負極集電板をそれぞれ溶接した。その後、
図35に示された構造の円筒形セルを製作した。すなわち、正極集電板及び負極集電板が溶接された電極組立体を外部端子が予め設けられたバッテリーハウジングに挿入し、正極集電板と外部端子とを溶接し、負極集電板の周縁をビーディング部に溶接した。その後、バッテリーハウジングを電解液注入装置のチャンバーに導入し、バッテリーハウジングの開放部が重力と反対方向に向かうようにバッテリーハウジングを起立させた。次いで、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを1:2:1(体積比)の組成で混合した有機溶媒に、LiPF
6を1.0Mの濃度になるように溶解させて非水性電解液を製造した。その後、バッテリーハウジングの開放部から電解液を注入した後、20秒間800kPaまでチャンバーの圧力を上昇させて150秒間維持し、再び20秒間-90kPaまでチャンバーの圧力を下げて実質的な真空状態を20秒間維持した。電解液含浸工程が完了した後、ガスケットを用いてバッテリーハウジングの開放部を密封体にシーリングし、円筒形セルの製作を完了した。
【0611】
実施例4-2及び比較例4-1の4680セルも上記のような製造工程を実質的に同様に適用して製作した。
【0612】
次いで、実施例4-1、実施例4-2及び比較例4-1の4680セルを分解してそれぞれの正極及び負極を得た。その後、負極と正極に対し、総9ヶ所で大きさ10cm2の試料を切り取って得た。9個の試料は、電極を広げたとき、電極組立体のコアと隣接した領域から3個、電極組立体の外周側と隣接した領域から3個、巻取方向において電極の中央領域から3個を取得した。各試料取得領域において3個の試料を取得するときは、巻取軸方向に沿って活物質層の下端、中央及び上端からそれぞれ一つずつ取得した。
【0613】
電解液含浸量は、対照試料の重量と取得試料の重量との差から決定した。対照試料は、実施例4-1、実施例4-2及び比較例4-1の電極と同一に製作され、電解液を含浸させていない正極及び負極から同じ位置から取得した。
【0614】
電極組立体の電解液含浸量は、正極から取得した9個の試料の電解液含浸量の平均値(A)と、負極から取得した9個の試料の電解液含浸量の平均値(B)とを合算して算出した合算平均値(A+B)で決定した。
【0615】
実施例4-1の電極組立体の電解液含浸量は60.3mgであり、実施例4-2の電極組立体の電解液含浸量は59.6mgであり、比較例4-1の電極組立体の電解液含浸量は56.3mgであった。実施例4-1及び実施例4-2の電解液含浸量が比較例4-1に比べて高いことが確認された。
【0616】
また、電極組立体のコアに隣接した試料取得領域のうち、巻取軸方向において活物質層の中央地点から取得した正極試料及び負極試料に対する電解液含浸量の合算値は、実施例4-1の電極組立体が55.1mgであり、実施例4-2の電極組立体が59mgであり、比較例4-1の電極組立体が47.7mgであった。このことから、電解液含浸量が相対的に少ない電極組立体のコア付近においても、実施例4-1及び実施例4-2が比較例4-1よりも電解液含浸量が多いことが分かる。
【0617】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0618】
11 第1電極
11a 第1無地部
11b 第1有地部
12 第2電極
12a 第2無地部
12b 第2有地部
13 分離膜
14 絶縁層
23 ビーディング部
24 クリンピング部
30 集電板
31 集電板
32 無地部
33 空洞
34 周縁領域
35 絶縁ガスケット
36 第1集電板
37 絶縁体
38 第2集電板
39 シーリングガスケット
40 密封体
43a 上部無地部
43b 下部無地部
50 端子
61 集電体
62 活物質層
63 無地部
64 絶縁コーティング層
66、66’ 分切片
140 円筒形バッテリー
141 電極組立体
142 バッテリーハウジング
143 密封体
143a キャッププレート
143b 第1ガスケット
143c 連結プレート
143d 突出部
144 第1集電板
145 第2集電板
146 絶縁体
146a 第1無地部
146b 第2無地部
147 ビーディング部
148 クリンピング部
149 リード
150 円筒形バッテリー
151 リード孔
152 ベンティング部
160 円筒形バッテリー
170 円筒形バッテリー
171 バッテリーハウジング
172 外部端子
172a 端子露出部
172b 端子挿入部
173 第2ガスケット
173a ガスケット露出部
173b ガスケット挿入部
174 絶縁体
176 第2集電板
178 密封体
178a キャッププレート
178b 第1ガスケット
179 ベント部
180 円筒形バッテリー
180 ビーディング部
181 クリンピング部
190 円筒形バッテリー
200 円筒形バッテリー
210 円筒形バッテリー
220 円筒形バッテリー
300 電極組立体
300S ゼリーロール構造体
400 負極
400S 負極シート
410 負極集電体
420 負極活物質部
420B 負極境界部
430 負極無地部
500 正極
500C 中央部
500D ローディング減少部
500DA ローディング減少領域
500S 正極シート
510 正極集電体
520 正極活物質部
520B 正極境界部
530 正極無地部
600 電極組立体
600S ゼリーロール構造体
700 負極
700S 負極シート
710 負極集電体
720 負極活物質部
720B 負極境界部
730 負極無地部
800 正極
800S 正極シート
810 正極集電体
820 正極活物質部
820B 正極境界部
830 正極無地部
900 分離膜
【国際調査報告】