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特表2024-533448化学修飾を有するガイドRNAを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】化学修飾を有するガイドRNAを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/52 20060101AFI20240905BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240905BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240905BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
C12N15/52 Z
C12N15/09 110
C12Q1/68
C12N5/10 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515702
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 US2022043553
(87)【国際公開番号】W WO2023043856
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/243,985
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/339,737
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,ダニエル,イー.
(72)【発明者】
【氏名】デリンジャー,ダグラス,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】カイザー,ロバート
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ52
4B063QR14
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR40
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA05
4B065BB21
(57)【要約】
1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを組み込んでいる修飾ガイドRNA(gRNA)を使用して、標的核酸(例えば、標的DNAもしくは標的RNA)のCRISPR/Casベースの編集を誘導するための、またはインビトロもしくは細胞内での標的核酸の発現をモジュレートするための組成物および方法が、本明細書に提供される。一部の態様では、これらの修飾gRNAは、困難な状況下で優れた性能を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内の核酸において、標的領域を編集する、または標的領域内の標的遺伝子の発現をモジュレートする方法であって、前記細胞に、
a)CRISPR関連(「Cas」)タンパク質;ならびに
b)5’末端および3’末端と、
前記標的領域内の前記標的配列とハイブリダイズできるガイド配列と、
前記Casタンパク質と相互作用する足場領域と、
前記5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾と、
前記3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾と
を含む修飾ガイドRNAを提供するステップを含み;
前記細胞が、ヌクレアーゼ含有液の存在下のエクスビボで存在し、またはインビボで存在し、
前記提供するステップが、前記標的領域の編集または前記標的遺伝子の発現のモジュレーションを結果としてもたらす、方法。
【請求項2】
前記ホスホロチオエート、ホスホノカルボキシレートおよびチオホスホノカルボキシレート修飾が、2’-O-メチルも含むヌクレオチド中に各々存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記修飾ガイドRNAが、前記5’末端の5ヌクレオチド内に少なくとも2つの連続する2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ホスホノカルボキシレートがホスホノアセテートであり、前記チオホスホノカルボキシレートがチオホスホノアセテートである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記修飾ガイドRNAが、前記3’末端の5つのヌクレオチド内に少なくとも2つの連続する2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(MP)または2’-O-メチル-3’-チオホスホノアセテート(MSP)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記修飾ガイドRNAが、前記5’末端および3’末端内の5つのヌクレオチドの外側に位置する修飾ヌクレオチドをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記修飾ガイドRNAが一本鎖ガイドRNAである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記Casタンパク質が、前記Casタンパク質をコードするmRNAとして提供される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記Casタンパク質および前記修飾ガイドRNAが、リボ核タンパク質複合体(RNP)として提供される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記Casタンパク質および/または修飾ガイドRNAが、ナノ粒子中に提供される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記編集またはモジュレーションが、修飾以外の点で前記修飾ガイドRNAと同一である未修飾gRNAによるものよりも高い効率で起こる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記効率が少なくとも10%高い、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ヌクレアーゼ含有液が血清である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ヌクレアーゼ含有液が脳脊髄液(CSF)である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヌクレアーゼ含有液が細胞培養培地である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ヌクレアーゼ含有液が体液である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞がインビボで存在する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞がヌクレアーゼ含有液の存在下でエクスビボで存在する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年9月14日に出願された米国特許仮出願第63/243,985号、および2022年5月9日に出願された同第63/339,737号の優先権の利益を主張し、それらの各々の全内容は、その全体が参照により本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
本開示は、分子生物学の分野に関する。特に、本開示は、規則的な配置の短い回文配列リピートのクラスター(CRISPR)技術に関する。
【背景技術】
【0003】
ネイティブな原核生物CRISPR-Casシステムは、一定長の介在可変配列を有する短いリピートのアレイ(すなわち、規則的な配置の短い回文配列リピートのクラスター、または「CRISPR」)と、CRISPR関連(「Cas」)タンパク質とを含む。転写されたCRISPRアレイのRNAは、Casタンパク質のサブセットによって低分子ガイドRNAにプロセシングされ、低分子ガイドRNAは、一般的に下記のような2つの構成要素を有する。I型、II型、III型、IV型、V型、およびVI型の少なくとも6つの異なるシステムがある。これらの6つのシステムでは、RNAの成熟crRNAへのプロセシングに関与する酵素が異なる。ネイティブな原核生物II型システムにおいて、ガイドRNA(「gRNA」)は、CRISPR RNA(「crRNA」)およびトランス作用性RNA(「tracrRNA」)と称される2つの短鎖ノンコーディングRNAを含む。ネイティブなV型システムでは、ガイドRNAは、Cas12(例えば、Cas12aはCpf1としても知られる)タンパク質と活性複合体を形成するのに十分なcrRNAを含み、tracrRNAセグメントを有しない。gRNAは、Casタンパク質(リボ核タンパク質「RNP」複合体)と複合体を形成する。gRNA:Casタンパク質複合体は、プロトスペーサー隣接モチーフ(「PAM」)とプロトスペーサーとを有する標的ポリヌクレオチド配列と結合し、プロトスペーサーはgRNAの一部分と相補的な配列を含む。gRNA:Casタンパク質複合体による標的ポリヌクレオチドの認識および結合は、標的ポリヌクレオチドの切断を誘導する。ネイティブなCRISPR-Casシステムは、原核生物において免疫システムとして機能し、そこで、gRNA:Casタンパク質複合体は、真核生物におけるRNAiと類似の様式で外因性遺伝要素を認識およびサイレンシングし、それにより、プラスミドおよびファージなどの外因性遺伝要素に対する抵抗性を付与する。
【0004】
CRISPR技術の多くの向上および洗練が進展しており、開発され続けている。初期のアプローチは、CRISPR-Casシステムを使用して標的DNAの両方の鎖を切断することを含み、編集は、二本鎖切断による相同組換えまたは非相同末端結合によって行われる。より新しい技術は、遺伝子発現および他の遺伝子編集方法のモジュレーションを含む。例えば、プライム編集は、DNA内の標的とされた配列を編集するためのCRISPRベースの技術であり、これは、トランスバージョンおよび対変異などの様々な形態の塩基置換を可能にする。これはまた、最大約700bp長の大きな欠失を含む正確な挿入および欠失を可能にする。注目すべきことに、プライム編集は外因性DNA修復鋳型を必要としない。その代わりに、所望の編集を含有する重合鋳型がガイドRNA内に含まれ、それが、ポリメラーゼ(逆転写酵素など)と融合したCasタンパク質と複合体を形成する。標的部位と結合すると、Casタンパク質は標的部位にニックを入れ、ポリメラーゼは、重合鋳型を使用してDNAの新しい鎖を合成することができる。塩基編集は、シチジンデアミナーゼなどの塩基エディター酵素が、Casタンパク質およびガイドRNAと共に送達される別の遺伝子編集技術である。塩基エディター酵素は、gRNA:Casタンパク質複合体によって標的部位に方向付けられ、標的部位での脱アミノを、したがってシチジン残基の変異を触媒する。遺伝子発現のモジュレーションは、例えば、転写アクティベーターまたは阻害剤を、切断活性を有しないがgRNAと複合体を形成して標的部位と結合することができるCasタンパク質と融合させることによって達成されうる。結果として、転写アクティベーターまたは阻害剤は、標的部位で遺伝子発現を調節することができる。したがって、この技術はそれぞれCRISPRaおよびCRISPRiと呼ばれ、ここで、「a」は活性化を表し、「i」は阻害を表す。
【0005】
これらの進歩にかかわらず、当技術分野において、CRISPR技術をさらに改善する、特に、CRISPRベースシステムの効率および安定性を改善する、例えばCRISPRベースの遺伝子編集またはモジュレーションの採用を支持する必要性が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】20万個のHepG2細胞へのトランスフェクションのために漸増する量のgRNAを一定量のCas9タンパク質と混合したタイトレーション研究の結果を示すグラフであり、トランスフェクションでは、標的部位でのインデルの創出のためにHBB遺伝子を標的とした。これらの結果は、量を漸増することで編集活性がプラトーに達し、一定数の細胞では量のさらなる増加が編集収率を増加させないという、編集のためのトランスフェクトされた構成要素の飽和量の概念を示している。
図2】残留した血清を除去するために細胞をPBS緩衝液で洗浄した後、飽和量未満のCas mRNAおよびgRNA(20万個の細胞について0.0625pmolのCas9 mRNAおよび10pmolのgRNA)をトランスフェクトされたHepG2細胞におけるHBBのオンターゲットおよびオフターゲット編集を示すグラフである。
図3】残留した血清を除去するために細胞をPBS緩衝液で洗浄した後、飽和量未満のCas mRNAおよびgRNA(20万個の細胞について0.0625pmolのCas9 mRNAおよび10pmolのgRNA)をトランスフェクトされたHepG2細胞におけるHBBのオンターゲットおよびオフターゲット編集を示すグラフである。
図4】トランスフェクションの前に残留した血清を除去するためのPBS緩衝液による細胞洗浄を行わなかった場合の、飽和量未満のCas mRNAおよびgRNA(20万個の細胞について0.5pmolのCas9 mRNAおよび30pmolのgRNA)をトランスフェクトされたHepG2細胞におけるHBBのオンターゲットおよびオフターゲット編集を示すグラフである。
図5】トランスフェクションの前に血清を除去するための緩衝液による細胞洗浄を行わなかった場合の、飽和量未満のCasタンパク質およびgRNA(20万個の細胞について12.5pmolのCas9タンパク質および30pmolのsgRNA)をトランスフェクトされたHepG2細胞におけるHBBのオンターゲットおよびオフターゲット編集を示すグラフである。
図6】5’および3’末端に3xMS(上)、または5’末端に3xMSおよび3’末端に3xMP(下)を組み込んでいる2つの例示的なgRNAを図示する。
図7】K562細胞における化学修飾gRNAの経時的な相対レベルを評価した実験の結果を示すグラフである。細胞をPBS緩衝液で洗浄して残留した血清を除去した後、Casタンパク質の非存在下で細胞にgRNAをトランスフェクトした。
図8】細胞をPBS緩衝液で洗浄して残留した血清を除去した後、飽和量未満のCas9 mRNAおよびgRNA(20万個の細胞について0.0625pmolのCas9 mRNAおよび5pmolのsgRNA)をトランスフェクトされた初代ヒトT細胞におけるHBBのオンターゲットおよびオフターゲット編集を示すグラフである。
図9】未修飾gRNAを使用する対照と比べて3’末端にMSまたはMPを有する化学修飾gRNAを使用するK562細胞におけるHBBのシチジン塩基編集の結果を示すグラフである。シチジンデアミナーゼと融合されたCas9ニッカーゼをコードするgRNAおよびmRNAを細胞に同時トランスフェクトした。
図10】例示的なCRISPR-Casシステムを使用するプライム編集を描写する図解である。
図11】化学修飾pegRNAの最初のセットを使用するK562細胞におけるEMX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。細胞にpegRNAと、逆転写酵素と融合されたCas9ニッカーゼをコードするmRNAとを共トランスフェクトした。
図12】化学修飾pegRNAの最初のセットを使用するJurkat細胞におけるEMX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。細胞にpegRNAと、逆転写酵素と融合されたCas9ニッカーゼをコードするmRNAとを共トランスフェクトした。
図13】化学修飾pegRNAの第2のセットを使用するK562細胞におけるEMX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。細胞にpegRNAと、逆転写酵素と融合されたCas9ニッカーゼをコードするmRNAとを共トランスフェクトした。
図14】化学修飾pegRNAの第2のセットを使用するJurkat細胞におけるEMX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。細胞にpegRNAと、逆転写酵素と融合されたCas9ニッカーゼをコードするmRNAとを共トランスフェクトした。
図15】化学修飾pegRNAの最初のセットを使用するK562細胞におけるRUNX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。細胞にpegRNAと、逆転写酵素と融合されたCas9ニッカーゼをコードするmRNAとを共トランスフェクトした。
図16】化学修飾pegRNAの最初のセットを使用するJurkat細胞におけるRUNX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。細胞にpegRNAと、逆転写酵素と融合されたCas9ニッカーゼをコードするmRNAとを共トランスフェクトした。
図17】本明細書に開示されたpegRNAに組み込まれることがある化学修飾ヌクレオチドの2つの例である2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)および2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(MP)の化学構造を図示する。
図18】例示的な標的配列を使用するEMX1およびRUNX1のプライム編集を図示する。
図19】K562細胞におけるEMX1のプライム編集を判定した実験の結果を示すグラフである。この場合、EMX1におけるPAMをノックアウトするためにプライム編集を使用した。細胞にpegRNAと、逆転写酵素と融合されたCas9ニッカーゼをコードするmRNAとを共トランスフェクトした。
図20】Jurkat細胞におけるEMX1のプライム編集を判定した実験の結果を示すグラフである。この場合、EMX1におけるPAMをノックアウトするためにプライム編集を使用した。細胞にpegRNAと、逆転写酵素と融合されたCas9ニッカーゼをコードするmRNAとを共トランスフェクトした。
図21】K562細胞におけるRUNX1のプライム編集を判定した実験の結果を示すグラフである。この場合、RUNX1に3塩基挿入を導入するためにプライム編集を使用した。細胞にpegRNAと、逆転写酵素と融合されたCas9ニッカーゼをコードするmRNAとを共トランスフェクトした。
図22】Jurkat細胞におけるRUNX1のプライム編集を判定した実験の結果を示すグラフである。この場合、RUNX1に3塩基挿入を導入するためにプライム編集を使用した。細胞にpegRNAと、逆転写酵素と融合されたCas9ニッカーゼをコードするmRNAとを共トランスフェクトした。
図23】sgRNAおよびCas9タンパク質をコードするmRNAを共トランスフェクトされた、未洗浄のHepG2細胞におけるHBB鎌状赤血球アレル(および公知の遺伝子間オフターゲット座位)の編集を判定した実験の結果を示すグラフである。
図24】Cas9タンパク質と予備複合体形成した化学修飾sgRNAから形成されたリボ核タンパク質(RNP)複合体をトランスフェクトされた未洗浄HepG2細胞におけるHBB鎌状赤血球アレル(および公知の遺伝子間オフターゲット座位)の編集を判定した実験の結果を示すグラフである。
図25】Cas9タンパク質と予備複合体形成した、化学修飾された163塩基長sgRNAによって形成されたリボ核タンパク質(RNP)複合体をトランスフェクトされた未洗浄HepG2細胞におけるHBB鎌状赤血球アレル(および公知の遺伝子間オフターゲット座位)の編集を判定した実験の結果を示すグラフである。CRISPRa SAMシステムのために163塩基長sgRNAを設計したが、CRISPRaによる遺伝子活性化のためにそれらを使用する代わりに、SpCas9タンパク質と共に使用してインデルを産生した。
【発明を実施するための形態】
【0007】
細胞(例えば、エクスビボ療法に使用するための初代細胞)またはインビボ細胞(例えば、ヒトなどの対象の臓器もしくは組織中の細胞)におけるCRISPR/Casベースのゲノム編集および/または遺伝子発現のモジュレーションのための方法が、本明細書に提供される。特に、本明細書に提供される方法は、対応する未修飾gRNAと比較して遺伝子編集または調節において高い活性または収率を有する化学修飾ガイドRNA(gRNA)を利用する。一部の態様では、本開示は、標的核酸とハイブリダイズする化学修飾gRNAを、Casタンパク質、Casタンパク質をコードするmRNA、またはCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターのいずれかと一緒に導入することによって、細胞において標的核酸の配列を編集するため、または標的核酸の発現をモジュレートするための方法を提供する。一部の態様では、Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性を欠如する(例えば、dCas9)、またはニッカーゼ活性を有するバリアントでありうる。一部の態様では、Casタンパク質は、Casポリペプチドと逆転写酵素ポリペプチドとを含む融合タンパク質である。一部の態様では、本開示は、化学修飾されたgRNAの十分量を投与して、疾患に関連する遺伝子変異を修正することによって(例えば、患者のゲノムDNAを編集することによって、または疾患に関連する遺伝子の発現をモジュレートすることによって)、対象における遺伝性疾患を予防または処置するための方法を提供する。
【0008】
本開示の態様は、当業者の技能の範囲内である、免疫学、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノミクスおよび組換えDNAの従来技術を利用する。Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、(1987))、the series Methods in Enzymology(Academic Press、Inc.):PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson、B.D.HamesおよびG.R.Taylor編(1995))、HarlowおよびLane編(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,and Animal Cell Culture(R.I.Freshney編(1987))を参照されたい。
【0009】
市販されていないオリゴヌクレオチドは、例えば、BeaucageおよびCaruthers、Tetrahedron Lett.22:1859~1862(1981)によって最初に記載された固相ホスホロアミダイトトリエステル法により、Van Devanterら、Nucleic Acids Res.12:6159~6168(1984)に記載された自動合成装置を使用して化学合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、当技術分野において承認されている任意の戦略、例えば、ネイティブなアクリルアミドゲル電気泳動またはPearsonおよびReanier、J.Chrom.255:137~149(1983)に記載される陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して行われる。
【0010】
[定義および略語]
別段の具体的な指示がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。加えて、本明細書に記載される方法または材料と類似または等価の任意の方法または材料を、本明細書に記載される方法の実施および組成物の調製に使用することができる。本開示のために、以下の用語が定義される。
【0011】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、または「the」という用語は、1つのメンバーによる態様を含むだけでなく、1つよりも多いメンバーによる態様も含む。例えば、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞」への参照は、複数のこのような細胞を含み、「薬剤」への参照は、当業者に公知の1つまたは複数の薬剤への参照を含むなどである。
【0012】
「CRISPR関連タンパク質」または「Casタンパク質」または「Casポリペプチド」という用語は、野生型Casタンパク質、その断片、またはその変異体もしくはバリアントを指す。「Cas変異体」または「Casバリアント」という用語は、野生型Casタンパク質のタンパク質またはポリペプチド誘導体、例えば、1つもしくは複数の点変異、挿入、欠失、短縮化を有するタンパク質、融合タンパク質、またはそれらの組合せを指す。ある特定の実施形態では、「Cas変異体」または「Casバリアント」は、Casタンパク質のヌクレアーゼ活性を実質的に保持する。ある特定の実施形態では、「Cas変異体」または「Casバリアント」は、一方または両方のヌクレアーゼドメインが不活性であるように変異している(このタンパク質は、それぞれCasニッカーゼまたはデッド型Casタンパク質と称されることがある)。ある特定の実施形態では、「Cas変異体」または「Casバリアント」はヌクレアーゼ活性を有する。ある特定の実施形態では、「Cas変異体」または「Casバリアント」は、その野生型対応物のヌクレアーゼ活性の一部またはすべてを欠如する。「CRISPR関連タンパク質」または「Casタンパク質」という用語はまた、原核生物の様々な種の、Cas12aとも称される野生型Cpf1タンパク質(ブレボテラ(Prevotella)およびフランシセラ(Francisella)由来のクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート1リボ核タンパク質またはCRISPR/Cpf1リボ核タンパク質にちなんで名付けられる)、その断片またはその変異体もしくはバリアントを含む。Casタンパク質は、以下に限定されないが、I型、II型、III型、IV型、V型、およびVI型の6つの異なるCRISPRシステムのいずれか1つを含む、CRISPR関連タンパク質のいずれかを含む。
【0013】
Casタンパク質の「ヌクレアーゼドメイン」という用語は、DNA切断のための触媒活性を有するタンパク質内のポリペプチド配列またはドメインを指す。Cas9は、典型的に、PAM配列上流の二本鎖切断を触媒する。ヌクレアーゼドメインがポリペプチド一本鎖に含有されることがあり、また、切断活性は、2つ(またはそれよりも多い)ポリペプチドの会合に起因することがある。単一ヌクレアーゼドメインは、所与のポリペプチド内のアミノ酸の1つよりも多い単離されたストレッチからなることがある。これらのドメインの例は、RuvC様モチーフ(配列番号1内のアミノ酸7~22、759~766および982~989)およびHNHモチーフ(アミノ酸837~863)を含む;Gasiunasら(2012)Proc.Natl.Acad.Set.USA 109:39、E2579~E2586およびWO/2013176772を参照されたい。
【0014】
「gRNAの機能性」を有する合成ガイドRNA(「gRNA」)は、Casタンパク質と会合してリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成すること、またはCasタンパク質と会合したガイドRNAによって実行される機能(すなわち、RNP複合体の機能)などの天然に存在するガイドRNAの機能のうち1つまたは複数を有するものである。ある特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドと結合することを含む。ある特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドをCasタンパク質またはgRNA:Casタンパク質複合体の標的とすることを含む。ある特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドにニックを入れることを含む。ある特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドを切断することを含む。ある特定の実施形態では、機能性は、Casタンパク質と会合または結合することを含む。例えば、Casタンパク質は、1つまたは複数のタンパク質またはその部分、例えば転写因子エンハンサーまたはリプレッサー、デアミナーゼタンパク質、逆転写酵素、ポリメラーゼなどと融合された「デッド型」Casタンパク質(dCa)であるように操作されることがあり、その結果、融合されたタンパク質またはその部分は、標的部位でその機能を発揮することができる。ある特定の実施形態では、機能性は、塩基編集の機能性を含む。他の実施形態では、機能性は、プライム編集の機能性を含む。ある特定の実施形態では、機能性は、遺伝子発現の活性化、抑制または干渉を含む。他の実施形態では、機能性は、エピジェネティック修飾を含む。ある特定の実施形態では、機能性は、操作Casタンパク質を用いた人工CRISPR-Casシステムを含む、Casタンパク質を用いたCRISPR-CasシステムにおけるガイドRNAの任意の他の公知の機能である。ある特定の実施形態では、機能性は天然ガイドRNAの任意の他の機能である。合成ガイドRNAは、天然に存在するガイドRNAよりも大きなまたは小さな程度でgRNAの機能性を有することがある。ある特定の実施形態では、合成ガイドRNAは、類似の天然に存在するガイドRNAと比較して1つの機能に関して大きな活性を有することがあり、別の機能に関して小さな活性を有することがある。
【0015】
一本鎖「ニッキング」活性を有するCasタンパク質は、野生型Casタンパク質と比較してdsDNAの2つの鎖のうち1つを切断する能力が低減している、Cas変異体またはCasバリアントを含むCasタンパク質を指す。例えば、ある特定の実施形態では、一本鎖ニッキング活性を有するCasタンパク質は、RuvCドメイン(またはHNHドメイン)の機能を低減し、結果として標的DNAの1つの鎖を切断する能力を低減する変異(例えば、アミノ酸置換)を有する。このようなバリアントの例は、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9におけるD10A、H839A/H840A、および/またはN863A置換を含み、他の種のCas9酵素における同等部位に同じまたは類似の置換も含む。
【0016】
「結合」活性を有する、または標的ポリヌクレオチドと「結合する」Casタンパク質は、ガイドRNAと複合体を形成するCasタンパク質を指し、このような複合体では、ガイドRNAはガイドRNAの塩基とその他のポリヌクレオチドとの間の水素結合を介して標的ポリヌクレオチド配列などの別のポリヌクレオチドとハイブリダイズして塩基対を形成する。水素結合は、ワトソン-クリックモデル塩基対形成によって、または任意の他の配列特異的な様式で起こりうる。ハイブリッドは、二重鎖を形成する2つの鎖、多重鎖の三重鎖を形成する3つ以上の鎖、またはこれらの任意の組合せを含むことがある。
【0017】
「CRISPRシステム」は、少なくとも1つのCasタンパク質および少なくとも1つのgRNAを利用して、以下に限定されないが、遺伝子編集、DNA切断、DNAニッキング、DNA結合、遺伝子発現の調節、CRISPR活性化(CRISPRa)、CRISPR干渉(CRISPRi)、およびCasタンパク質を別のエフェクターに連結することによって達成できる任意の他の機能を含む機能または効果を提供し、それにより、Casタンパク質によって認識される標的配列に対してエフェクター機能を果たすシステムである。例えば、ヌクレアーゼを含まないCasタンパク質は、転写因子、デアミナーゼ、メチラーゼ、逆転写酵素などと融合することができる。結果として生じる融合タンパク質を使用して、標的のためのガイドRNAの存在下で、標的を編集する、その転写を調節する、脱アミノする、またはメチル化することができる。プライム編集における別の例として、pegRNAの存在下で標的核酸を編集するためにCasタンパク質は逆転写酵素または他のポリメラーゼと共に(必要に応じて融合タンパク質として)使用される。
【0018】
「融合タンパク質」は、相互に共有結合的に連結している少なくとも2つのペプチド配列(すなわち、アミノ酸配列)を含むタンパク質であり、ここで、当該2つのペプチド配列は自然界で共有結合的に連結していない。2つのペプチド配列は、直接的に(結合が間に入る)または間接的に(リンカーが間に入る、ここでリンカーは、以下に限定されないが第3のペプチド配列を含む任意の化学構造を含むことがある)連結することができる。
【0019】
「プライムエディター」は、Casタンパク質活性と逆転写酵素活性との両方を有する分子または複数の分子の集合である。一部の実施形態では、Casタンパク質はニッカーゼである。一部の実施形態では、プライムエディターは、Casタンパク質と逆転写酵素との両方を含む融合タンパク質である。本開示の他の箇所に示すように、プライム編集に逆転写酵素の代わりに他のポリメラーゼを使用することができ、それでプライムエディターは、RTの代わりに逆転写酵素ではないポリメラーゼを含むことがある。種々のバージョンのプライムエディターが開発されており、PEI、PE2、PE3などと称される。例えば、「PE2」は、構造[NLS]-[Cas9(H840A)]-[リンカー]-[MMLV_RT(D200N)(T330P)(L603W)(T306K)(W313F)]を有するCas9(H840A)ニッカーゼおよびMMLV RTのバリアントを含む融合タンパク質(PE2タンパク質)と、所望のpegRNAとを含むPE複合体を指す。「PE3」は、細胞を標的領域の修復へと刺激するためにPE2タンパク質と複合体を形成し、未編集DNA鎖にニックを導入する、第2鎖ニッキングガイドRNAをPE2に加えたものを指し、これは、ゲノムへの編集の組入れを促進する(Anzaloneら 2019を参照;Liu、W02020191153を参照)。プライムエディターは、本開示の他の箇所に詳細に記載される、プライム編集gRNAまたは「pegRNA」と称される特化されたgRNAを使用する。
【0020】
「塩基エディター」または「BE」は、Casタンパク質(または変異型タンパク質)と、デアミナーゼまたはトランスグリコシル化活性との両方を有する分子または複数の分子の集合である。塩基エディター(BE)は、典型的にはCasドメインとヌクレオチド修飾ドメイン(例えば、シチジンデアミナーゼ、例えば、APOBEC1(「アポリポタンパク質B mRNA編集酵素触媒ポリペプチド1」)、CDA(「シチジンデアミナーゼ」)、およびAID(「活性化誘導シチジンデアミナーゼ」)またはアデノシンデアミナーゼ、例えば、TadA(細菌tRNA特異的アデノシンデアミナーゼ)などの天然または進化デアミナーゼ)との融合体である。今までに、標的C:G塩基対をT:A塩基対に変換するシトシン塩基エディター(「CBE」)、およびA:T塩基対をG:C塩基対に変換するアデノシン塩基エディター(「ABE」)の2つのクラスのデアミナーゼ塩基エディターが、一般的に記載されている。まとめると、これらの2つのクラスの塩基エディターは、すべての可能性のある対変異(CからT、GからA、AからG、TからC、CからU、およびAからU)の標的化された導入を可能にする。参照により本明細書に組み込まれているGaudelli,N.M.ら、Programmable base editing of A:T to G:C in genomic DNA without DNA cleavage.Nature 551、464~471(2017)を参照されたい。塩基編集に使用される別のヌクレオチド修飾ドメインは、野生型tRNAグアニントランスグリコシラーゼ(TGT)、またはそのバリアント、例えば、リボース-核塩基グリコシド結合での第2の核塩基の代わりに第1の核塩基(すなわち、チミン)に置換するTGTなどの、トランスグリコシラーゼドメインである。トランスグリコシラーゼエディターは、チミンからグアニンもしくは「TGBE」(またはアデニンからシトシンもしくは「ACBE」)トランスバージョン塩基エディターを提供する。場合によっては、塩基エディターはまた、細胞性DNA修復過程を変更して、結果として生じる単一ヌクレオチド変化の効率および/または安定性を増大させるタンパク質またはドメインを含むことがある。一部の実施形態では、塩基エディターは、1つまたは複数のNLS(核移行配列)を含み、1つまたは複数のウラシル-DNAグリコシラーゼ阻害剤(UGI)ドメインをさらに含むことがあり、それらは、ウラシル-DNAグリコシラーゼを阻害し、それにより、CからTへの塩基エディタータンパク質の塩基編集効率を改善することができる。一部の実施形態では、Casドメインはニッカーゼ(例えばnCas9)である。一部の実施形態では、Casタンパク質は完全ヌクレアーゼ不活性化タンパク質またはデッド型Cas9「dCas9」である。一部の実施形態では、塩基エディターは、Casタンパク質(またはその部分)とデアミナーゼ(またはその部分)との両方を含む融合タンパク質である。一部の実施形態では、塩基エディターは、Casタンパク質(またはその部分)とトランスグリコシラーゼ(またはその部分)との両方を含む融合タンパク質である。以前のシステムと比べて改善を示す異なるバージョンの塩基エディター、例えば、異なるまたは拡張されたPAM適合性を有する塩基エディター(Kim,Y.B.ら Increasing the genome-targeting scope and precision of base editing with engineered Cas9-cytidine deaminase fusions.Nature biotechnology 35、371~376(2017);Hu,J.H.ら Evolved Cas9 variants with broad PAM compatibility and high DNA specificity.Nature 556、57~63(2018);Li,X.ら Base editing with a Cpf1-cytidine deaminase fusion.Nature biotechnology 36、324~327(2018)を参照されたい)、オフターゲット活性が低減した高忠実度塩基エディター(Hu,J.H.ら Evolved Cas9 variants with broad PAM compatibility and high DNA specificity.Nature 556、57~63(2018);Rees,H.A.ら Improving the DNA specificity and applicability of base editing through protein engineering and protein delivery.Nat Commun 8、15790(2017);Kleinstiver,B.P.、Pattanayak,V.、Prew,M.S.& Nature,T.-S.Q.High-fidelity CRISPR-Cas9 nucleases with no detectable genome-wide off-target effects.Nature(2016);Chen,J.S.ら Enhanced proofreading governs CRISPR-Cas9 targeting accuracy.Nature 550、407~410(2017);Slaymaker,I.M.ら Rationally engineered Cas9 nucleases with improved specificity.Science 351、84~88(2016)を参照されたい)、より狭い編集ウインドウを有する塩基エディター(通常約5つのヌクレオチド幅)(Kim,Y.B.ら Increasing the genome-targeting scope and precision of base editing with engineered Cas9-cytidine deaminase fusions.Nature biotechnology 35、371~376(2017)を参照されたい)、および副産物が低減したシチジン塩基エディター(BE4)(Komor,A.C.ら Improved base excision repair inhibition and bacteriophage Mu Gam protein yields C:G-to-T:A base editors with higher efficiency and product purity.Sci Adv 3、eaao4774(2017)を参照されたい)が開発されている。異なるバージョンの塩基エディターは、BE1、BE2、BE3、BE4などと称される。プライムエディターとは異なり、塩基エディターは、核酸を所望の配列位置において標的とするための塩基エディターのCasエフェクター部分をプログラムする「従来の」gRNA(例えば、Cas9スタイルまたはCpf1スタイル)と協力して機能する。
【0021】
「ガイドRNA」(または「gRNA」)は、一般的に、Casタンパク質と結合し、標的ポリヌクレオチド(例えばDNA)内の特異的位置にCasタンパク質を標的とすることを助けることができるRNA分子(またはまとめてRNA分子の群)を指す。したがって、ガイドRNAは、標的配列とハイブリダイズできるガイド配列を含み、ガイドRNAの別の部分(「足場」)は、Casタンパク質と結合して、ガイドRNAおよびCasタンパク質のリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成するように機能する。以下に限定されないが、Cas9様式およびCpf1様式のガイドRNAを含む様々な様式のガイドRNAがある。「Cas9様式」のガイドRNAは、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントを含む。本明細書で使用される場合、「crRNA」または「crRNAセグメント」という用語は、ポリヌクレオチド標的化ガイド配列と;Casタンパク質との相互作用を助ける足場配列と;必要に応じて5’-オーバーハング配列とを含むRNA分子またはその部分を指す。本明細書で使用される場合、「tracrRNA」または「tracrRNAセグメント」という用語は、Cas9などのCRISPR関連タンパク質と相互作用できるタンパク質結合セグメントを含むRNA分子またはその部分を指す。Cas9に加えて、Cas9様式のガイドRNAを利用する他のCasタンパク質があり、「Cas9」という語句は、「Cas9様式」という用語の中でこの様式を利用する様々なCasタンパク質の代表的なメンバーを単に特定するために使用される。「Cpf1様式」は、ガイド配列の5’である足場を含む一分子ガイドRNAである。文献では、Cpf1ガイドRNAは、tracrRNAではなくcrRNAだけを有するとしばしば記載されている。用語法にかかわらず、すべてのガイドRNAは、標的と結合するためのガイド配列と、Casタンパク質と相互作用できる足場領域とを有することに注目すべきである。特化されたgRNA(pegRNA)を使用するプライム編集とは異なり、塩基編集は従来のgRNA(すなわちCas9スタイルおよびCpf1スタイル)を使用する。
【0022】
「ガイドRNA」という用語は、一分子中にすべての機能的部分を含有する単一ガイドRNA(「sgRNA」)を包含する。例えば、Cas9様式のsgRNAでは、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントは、同じRNA分子に位置する。別の例として、Cpf1ガイドRNAは、本来、単一ガイドRNA分子である。「ガイドRNA」という用語はまた、まとめて2つ以上のRNA分子の群を包含し;例えばcrRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントが、別々のRNA分子に位置することがある。さらに、本明細書で使用される場合の「gRNA」という用語は、プライム編集(pegRNA)、塩基編集および遺伝子発現モジュレーションおよびgRNAを採用する任意の他のCRISPR技術に使用されるガイドRNAを包含する。
【0023】
必要に応じて、「ガイドRNA」は、gRNAと会合したCasタンパク質の機能と一緒に分子機能を実行するコグネートポリペプチドまたは酵素による認識および結合を受けて1つまたは複数の補助機能を果たす、1つまたは複数の追加的なセグメントを含みうる。例えば、プライム編集のためのgRNA(一般に「pegRNA」と称される)は、プライマー結合部位および逆転写酵素の鋳型を含むことがある。別の例では、gRNAは、アプタマー結合ポリペプチドを認識しそれと結合する1つまたは複数のアプタマー(例えばMS2アプタマー)を形成する、1つまたは複数のポリヌクレオチドセグメントを含むことがある(アプタマー結合ポリペプチドは、必要に応じて、Casタンパク質またはCas融合タンパク質(例えばdCas9-VP64)と並んで転写活性化などの補助的機能を果たす他のポリペプチドと融合されており(例えばMS2-p65-HSF1)、これらのシステムは、相乗活性化メディエータ「SAM」システムとして知られる;S.Konermannら、Genome-scale transcriptional activation an engineered CRISPR-Cas9 complex.Nature.517、583~588(2015)参照、M.A.Horlbeckら、Compact and highly active next-generation libraries for CRISPR-mediated gene repression and activation.eLife.5、e19760(2016)参照)。
【0024】
必要に応じて、「ガイドRNA」は、例えばエンドヌクレアーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼなどのヌクレアーゼによって起こりうるように、その分解を妨げることによってgRNAの安定性を増大させることができる追加的なポリヌクレオチドセグメント(3’(または5’)-末端ポリウリジンテール、ヘアピン、ステムループ、トウループなど)を含むことがある。
【0025】
「ガイド配列」という用語は、標的ポリヌクレオチド中の標的配列と部分的または完全な相補性を有し、Casタンパク質によって促進される塩基対形成により標的配列とハイブリダイズできる、gRNA(またはpegRNA)におけるヌクレオチドの連続配列を指す。場合によっては、標的配列はPAM部位(PAM配列)と隣接する。場合によっては、標的配列は、PAM配列のすぐ上流に位置することがある。ガイド配列とハイブリダイズする標的配列は、PAM配列の相補体のすぐ下流にあってもよい。Cpf1などの他の例では、ガイド配列とハイブリダイズする標的配列の位置は、PAM配列の相補体の上流にあってもよい。
【0026】
ガイド配列は、約14ヌクレオチドと短いこともあれば、約30ヌクレオチドと長いこともある。典型的なガイド配列は、15、16、17、18、19、20、21、22、23および24ヌクレオチド長である。ガイド配列の長さは、上述の2つのクラスおよび6つの型のCRISPR-Casシステムによって異なる。Cas9のための合成ガイド配列は、通常20ヌクレオチド長であるが、より長いまたは短いことがある。ガイド配列が20ヌクレオチドよりも短い場合、これは、典型的には20ヌクレオチドガイド配列と比較して5’末端からの欠失である。例として、ガイド配列は、標的配列と相補的な20ヌクレオチドからなることがある。言い換えると、ガイド配列は、DNAとRNAとの間のA/Uの差異を除きPAM配列上流の20ヌクレオチドと同一である。このガイド配列が、5’末端から3つのヌクレオチドだけ切断された場合、20ヌクレオチドのガイド配列のヌクレオチド4は今や17塩基長のヌクレオチド1になり、20ヌクレオチドガイド配列のヌクレオチド5は今や17塩基長のヌクレオチド2になるなどである。17塩基長ガイド配列についての新しい位置は、本来の位置から3を引いたものである。
【0027】
本明細書で使用される場合、「プライム編集ガイドRNA」(または「pegRNA」)という用語は、核酸の標的配列への1つまたは複数の編集をコードする逆転写酵素の鋳型配列と、標的領域内の配列と結合できるプライマー結合部位(標的部位とも呼ばれる)とを含むガイドRNA(gRNA)を指す。例えば、pegRNAは、標的領域内の配列への1つまたは複数のヌクレオチドの置換、挿入または欠失を含む逆転写酵素の鋳型配列を含みうる。pegRNAは、Casタンパク質と複合体を形成し、通常は細胞のゲノムにおける標的領域内の標的配列とハイブリダイズして、結果として標的領域内の配列の編集をもたらす機能を有する。理論に縛られるわけではないが、一部の実施形態では、pegRNAは、Casタンパク質とRNP複合体を形成し、標的領域内の標的配列と結合し、Casタンパク質が標的領域の一本鎖にニックを作り、結果としてフラップを生じ、pegRNAのプライマー結合部位がフラップとハイブリダイズし、逆転写酵素が、ハイブリダイズしたpegRNAの逆転写酵素の鋳型上のプライマーとしてフラップを使用し、それがフラップのニック入り末端上で新しいDNA配列を合成するための鋳型として作用し、そのとき、この新しいDNA配列は所望の編集を含有し、最終的にこの新しいDNA配列が標的領域内の本来の配列と置き換わり、結果として標的の編集をもたらす。
【0028】
「pegRNA」は、その5’末端または3’末端近くに逆転写酵素の鋳型およびプライマー結合部位を含むことがある。「プライム編集末端」は、ガイド配列よりも逆転写酵素の鋳型およびプライマー結合部位に近い、5’または3’のいずれかのpegRNAの一方の末端である。pegRNAの他方の末端は、逆転写酵素の鋳型またはプライマー結合部位よりもガイド配列に近い「遠位末端」である。したがって、これらの構成要素の順序は、5’方向または3’方向に:
プライム編集末端-(プライマー結合部位および逆転写酵素の鋳型)-(ガイド配列および足場)-遠位末端
であり、この場合カッコは、pegRNAの様式(例えば、Cas9様式またはCpf1様式)のみならず、プライム編集末端の位置(すなわち、5’末端または3’末端)に応じて、中に記載した2つのセグメントの順序を相互に切り替えできることを示す。pegRNAが単一ガイドRNAではなく、1つよりも多いRNA分子を含むならば、プライム編集末端は、プライマー結合部位および逆転写酵素の鋳型を含有するRNA分子内でこれらの構成要素により近い末端を指すのに対し、このRNA分子の反対の末端は遠位末端であることに留意すべきである。ガイド配列は、プライム編集末端および遠位末端を有するRNA分子とは別個の、pegRNAの異なるRNA分子内にあってもよい。
【0029】
「ニッキングガイドRNA」または「ニッキングgRNA」は、必要に応じてプライム編集に追加されて、標的領域内またはその近くで未編集の鎖のニッキングを引き起こすことができるガイドRNA(pegRNAではない)である。このようなニッキングは、関連領域、すなわち標的領域を修復するためにプライム編集が行われる細胞を刺激することを助ける。
【0030】
「伸長テール」は、pegRNAなどのガイドRNAの5’末端または3’末端のいずれかに付加することができる1、2、3、4、5、6、7、8、9つ、または10個のヌクレオチドのヌクレオチドストレッチである。「ポリ(N)テール」は、同じ核酸塩基、例えばA、U、CまたはTを有する1~10個のヌクレオチドを含有するホモポリマー伸長テールである。「ポリウリジンテール」または「ポリUテール」は、1~10個のウリジンを含有するポリ(N)テールである。同様に、「ポリAテール」は1~10個のアデノシンを含有する。
【0031】
「核酸」、「ヌクレオチド」、または「ポリヌクレオチド」という用語は、一本、二本、または多重鎖形態のいずれかのデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)およびそれらのポリマーを指す。この用語は、以下に限定されないが、一本、二本、もしくは多重鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよび/もしくはピリミジン塩基または他の天然の、化学修飾された、生化学修飾された、非天然の、合成もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを含む。一部の実施形態では、核酸は、DNA、RNAおよびそれらの類似体の混合物を含みうる。具体的に限定しない限り、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有する、天然ヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。別段の指示がない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾されたバリアント(例えば、縮重コドンの置換)、アレル、オーソログ、一塩基多型(SNP)、および相補的配列を暗示的に包含するのみならず、明示された配列を包含する。具体的には、縮重コドンの置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの第3の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基により置換されている配列を生成することによって達成されることがある(Batzerら、Nucleic acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605~2608(1985);およびRossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91~98(1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によってコードされるmRNAと互換的に使用される。
【0032】
「ヌクレオチド類似体」または「修飾ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオシド(例えば、シトシン(C)、チミン(T)もしくはウラシル(U)、アデニン(A)またはグアニン(G))の含窒素塩基内/上に、ヌクレオシドの糖部分内/上に(例えば、リボース、デオキシリボース、修飾リボース、修飾デオキシリボース、六員糖類似体、もしくは開環糖類似体)、またはホスフェートに、1つもしくは複数の化学修飾(例えば、置換)を含有するヌクレオチドを指す。
【0033】
「遺伝子」または「ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列」という用語は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを意味する。DNAセグメントは、遺伝子産物の転写/翻訳および転写/翻訳の調節に関与するコード領域に先行および後続する領域(リーダーおよびトレーラー)のみならず、個別のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含むことがある。
【0034】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーのみならず、天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書で使用される場合、これらの用語は、完全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、ここで、アミノ酸残基は、共有ペプチド結合によって連結されている。
【0035】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」という用語は、DNA分子、RNA分子、またはそれらの類似体を指す。本明細書で使用される場合、「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、以下に限定されないが、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAなどのDNA分子、およびガイドRNA、メッセンジャーRNAまたは合成RNAなどのRNA分子を含む。そのうえ、本明細書で使用される場合、これらの用語は、一本鎖および二本鎖形態を含む。
【0036】
「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズすること」という用語は、完全または部分的に相補性のポリヌクレオチド鎖が適切なハイブリダイゼーション条件で一緒になって、2つの構成鎖が水素結合によってつながった二本鎖構造または領域を形成する過程を指す。本明細書で使用される場合、「部分的ハイブリダイゼーション」という用語は、二本鎖構造または領域が1つまたは複数のバルジまたはミスマッチを含有する場合を含む。水素結合は典型的にアデニンとチミン、またはアデニンとウラシル(それぞれAおよびT、またはAおよびU)またはシトシンとグアニン(CおよびG)の間で形成するものの、他の非定型の塩基対が形成することがある(例えば、Adamsら、「The Biochemistry of the Nucleic Acids」、第11版、1992を参照されたい)。修飾ヌクレオチドは、非定型的にハイブリダイゼーションを可能にするまたは促進する水素結合を形成しうることが考えられている。
【0037】
「相補性」という用語は、核酸が別の核酸配列と従来のワトソン-クリック型または他の非伝統型のいずれかによって水素結合を形成する能力を指す。相補性パーセントは、第2の核酸配列(例えば、10個のうちの5、6、7、8、9つ、10個は50%、60%、70%、80%、90%、および100%の相補性である)と水素結合(例えば、ワトソン-クリック塩基対形成)を形成することができる、核酸分子内の残基のパーセントを示す。「完全に相補性」は、核酸配列のすべての連続残基が第2の核酸配列内の同じ数の連続残基と水素結合することを意味する。「実質的に相補性」は、本明細書で使用される場合、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50個、もしくはそれよりも多いヌクレオチドの領域にわたり少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、もしくは100%である相補性の程度を指す、またはストリンジェントな条件でハイブリダイズする2つの核酸を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、配列の「部分」、「セグメント」、「エレメント」、または「断片」という用語は、完全な配列よりも短い、配列の任意の部分(例えば、ヌクレオチド部分配列またはアミノ酸部分配列)を指す。ポリヌクレオチドの部分、セグメント、エレメント、または断片は、1よりも大きな任意の長さ、例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、150、200、300もしくは500ヌクレオチド長またはそれよりも長いことがある。
【0039】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、ヌクレオチドのマルチマーを意味する。例えば、オリゴヌクレオチドは、約2~約200ヌクレオチド長、最大約50ヌクレオチド長、最大約100ヌクレオチド長、最大約500ヌクレオチド長、または2から500の間の任意の整数値のヌクレオチド長を有することがある。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、30~300ヌクレオチド長または30~400ヌクレオチド長の範囲でありうる。オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチドモノマー(すなわち、オリゴリボヌクレオチドでありうる)および/またはデオキシリボヌクレオチドモノマーを含有しうる。オリゴヌクレオチドは、10~20、21~30、31~40、41~50、51~60、61~70、71~80、80~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~350、または350~400ヌクレオチド長、例えばこれらの範囲の間の任意の整数値でありうる。
【0040】
「組換え発現ベクター」は、宿主細胞において特定のポリヌクレオチド配列の転写を許す一連の特定の核酸エレメントを有する、組換え的または合成的に生成された核酸構築物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスゲノム、または核酸断片の一部でありうる。典型的には、発現ベクターは、プロモーターと作動可能に連結された転写すべきポリヌクレオチドを含む。これに関連する「作動可能に連結された」は、コード配列の転写を指示するプロモーターなどのエレメントの適正な生物学的機能が発揮されるような相対位置に置かれた、ポリヌクレオチドコード配列およびプロモーターなどの2つ以上の遺伝エレメントを意味する。「プロモーター」という用語は、核酸の転写を指示する核酸制御配列のアレイを指すために本明細書において使用される。本明細書で使用される場合、プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATAエレメントなどの転写開始部位近くの必要な核酸配列を含む。プロモーターはまた、必要に応じて転写開始部位から数千塩基対ほど離れて位置しうる遠位のエンハンサーまたはリプレッサーエレメントを含む。発現ベクター内に存在しうる他のエレメントには、転写を高めるもの(例えば、エンハンサー)および転写を終止するもの(例えば、ターミネーター)のみならず、発現ベクターから産生された組換えタンパク質に、ある特定の結合親和性または抗原性を付与するものが含まれる。
【0041】
「組換え」は、遺伝的に修飾されたポリヌクレオチド、ポリペプチド、細胞、組織、または生物を指す。例えば、組換えポリヌクレオチド(または組換えポリヌクレオチドのコピーもしくは相補体)は、周知の方法を使用して操作されたものである。第2のポリヌクレオチド(例えば、コード配列)と作動可能に連結されたプロモーターを含む組換え発現カセットは、ヒトの操作の結果として(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning - A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、(1989)またはCurrent Protocols in Molecular Biology、第1~3巻、John Wiley & Sons,Inc.(1994~1998)に記載された方法により)第2のポリヌクレオチドに対して異種であるプロモーターを含みうる。組換え発現カセット(または発現ベクター)は、典型的には、ポリヌクレオチドを自然界に見出されない組合せで含む。例えば、ヒト操作制限部位またはプラスミドベクター配列は、プロモーターを他の配列と隣接させるまたは他の配列から分離することがある。組換えタンパク質は、組換えポリヌクレオチドから発現されるものであり、組換え細胞、組織、および生物は、組換え配列(ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド)を含むものである。
【0042】
核酸標的を「編集すること」は、標的のヌクレオチド配列に変化を起こすことを意味する。変化は、単一ヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドそれぞれの挿入、欠失または置換でありうる。複数のヌクレオチドが挿入、欠失または置換される場合、これらのヌクレオチドは、連続的または非連続的でありうる。変化は、上記のいずれかの組合せであってもよい。「編集」は、「塩基編集」および「プライム編集」技術を含む。
【0043】
「編集効率」は、1つまたは複数の細胞で達成されたCas誘導性編集の尺度である。標的でのゲノム編集の結果および潜在的オフターゲット部位は、当技術分野において公知の標準的な方法、例えば、標的部位および任意の目的のオフターゲット部位のゲノムDNAシーケンシング、RNAシーケンシング、またはPCRアンプリコンのディープシーケンシングを使用して測定することができる。また、ゲノムDNAにおけるインデル変異は、SURVEYOR(登録商標)変異検出キット(Integrated DNA Technologies、Coralville、Iowa)またはGuide-it(商標)インデル同定キット(Clontech、Mountain View、CA)を使用して同定することができる。加えて、タンパク質の存在または非存在を測定する技術、例えばゲルもしくはキャピラリー電気泳動、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、または質量分析技術を使用して、タンパク質コード遺伝子を導入またはノックアウトすることを目的とする編集の効率を定量することができる。これらの技術を、バルク調製において、または単一細胞レベルで細胞集団に適用することができる。一部の実施形態では、効率は、バルクにおいてまたは単一細胞レベルで測定された細胞集団内の正しい編集の数を使用して測定される。一部の実施形態では、効率は、正しく編集された標的のパーセント、または修正された遺伝子型もしくは表現型を示す細胞の数もしくはパーセントとして測定される。
【0044】
「遺伝子の発現をモジュレートすること」は、特異的遺伝子産物の発現を変更すること(減少させることまたは活性化すること)を意味する。CRISPR活性化または「CRISPRa」は、遺伝子の活性化を指すのに対し、CRISPR干渉または「CRISPRi」は、遺伝子発現の干渉を指す。両方のシステムは、転写エフェクター(アクティベーターまたはリプレッサー)と組み合わせて融合されたまたは相互作用するヌクレアーゼ欠損Casタンパク質(dCas9)を使用する。CRISPRaは、前記のようにSAMシステム(dCas9-VP64)で行われることがある。遺伝子特異的CRISPRaで使用される場合、MS2アプタマーを含むgRNAは、標的とされた遺伝子の転写開始部位(TSS)にMS2-p65-HSF1融合物を動員して活性化を開始する。CRISPRaおよびCRISPRiは、両方とも行われ、多重的に組み合わされることがある(例えば、複数の遺伝子を標的とする)。CRISPRoffは、遺伝子発現を遺伝的に変更できるDNAメチル化および抑制的ヒストン修飾を確立するデッド型Cas9融合タンパク質からなるプログラム可能なエピジェネティックメモリライタである(Nunezら、Genome-wide programmable transcriptional memory by CRISPR-based epigenome editing、Cell.(2021)184(9):2503~2519)。
【0045】
「遺伝子発現モジュレーション効率」は、例えば、異なるRNAの相対もしくは絶対レベルを測定する技術、例えばqRT-PCRもしくはRNAシーケンシングによって、またはタンパク質の相対もしくは絶対レベルを測定する様々な方法、例えばゲルもしくはキャピラリー電気泳動、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、もしくは質量分析技術によって測定することができる。これらの技術は、バルク調製物中の細胞の集団に、または単一細胞レベルで適用することができる。一部の実施形態では、効率は、バルクとして測定された細胞集団内の、または単一細胞レベルで標的遺伝子から発現されたタンパク質またはRNAの量を使用して測定される。
【0046】
「一塩基多型」または「SNP」という用語は、アレル内を含むポリヌクレオチドに関する単一ヌクレオチドの変化を指す。これは、1つのヌクレオチドの別のヌクレオチドによる交換のみならず、単一ヌクレオチドの欠失または挿入を含みうる。もっとも典型的には、SNPはバイアレル型マーカーであるが、トリおよびテトラアレル型マーカーが存在することもある。非限定的な例として、SNP A\Cを含む核酸分子は、多型位置にCまたはAを含みうる。
【0047】
「ヌクレアーゼ」は、本明細書で使用される場合、核酸のヌクレオチド間のホスホジエステル連結を切断できる酵素を意味する。ヌクレアーゼは、DNAおよび/またはRNA分子の一本鎖および/または二本鎖切断の両方を様々に引き起こすことができる。生きた生物では、それらは、DNA修復の多くの態様に不可欠な機構である。本明細書で使用される場合、ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼの両方を指し、リボヌクレアーゼのみならずデオキシリボヌクレアーゼを包含する。
【0048】
「初代細胞」という用語は、多細胞生物から直接単離された細胞を指す。初代細胞は、典型的には集団倍加をほとんど経ておらず、したがって、連続(腫瘍または人工的に不死化された)細胞株と比べて、それらが由来する組織の主要機能的構成要素をより大きく代表している。場合によっては、初代細胞は、単離されてから直ちに使用される細胞である。他の場合に、初代細胞は無制限に分裂することができず、したがって、インビトロで長期間培養することができない。
【0049】
「ヌクレアーゼ含有液」という用語は、ヌクレアーゼが存在する任意の培地を指すために本明細書において使用される。例えば培地は、細胞培養培地または細胞培養培地に由来する培地のことがあり、細胞を洗浄してまたは洗浄せずに、本来の培地中に含有されるすべての構成要素を除去するわけでなく、細胞が細胞培養培地から新しい培地に移動されたことを意味し、したがって、ヌクレアーゼをまだ含有しうる。例えば、細胞は、細胞を洗浄せずに、また、細胞培養培地の実質的にすべての構成要素の除去も行わずに、細胞培養培地から反応培地に移動されることがあり、したがって、細胞をgRNAおよびCasタンパク質(RNP)、またはgRNAおよび編集CasエフェクターをコードするmRNAもしくはDNAベクターと接触させるときにヌクレアーゼが存在することがある。液体は、血清、ヒト血清、動物血清、ウシ血清(BSA)、胎仔血清、脳脊髄液(CSF)または別の体液でありうる。
【0050】
細胞培養自体または培養過程を指す場合の「培養する」、「培養すること」、「成長する」、「成長すること」、「維持する」、「維持すること」、「拡大増殖させる」、「拡大増殖させること」などの用語を互換的に使用して、細胞(例えば、初代細胞)がその通常の環境外の制御された条件で、例えば生存に適した条件で維持されることを意味することができる。培養細胞を生存させ、培養することは、細胞の成長、静止、分化または分裂を結果としてもたらすことができる。一部の細胞は自然に死滅または老化しうるので、この用語は培養物中のすべての細胞が生存、成長、または分裂することを意味するわけでない。細胞は、典型的には、培養過程の間に交換することができる培地中で培養される。
【0051】
「対象」、「患者」、および「個体」という用語は、ヒトまたは動物を含むために本明細書において互換的に使用される。例えば、動物対象は、哺乳動物、霊長類の動物(例えば、サル)、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、またはヤギ)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ)、実験室試験動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、トリ)、獣医学的に意義のある動物、または経済的に意義のある動物でありうる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「投与すること」という用語は、対象への経口投与、局所接触、坐剤としての投与、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、くも膜下腔内、鼻腔内、または皮下投与を含む。投与は、非経口および経粘膜(例えば、頬間隙、舌下、口蓋、歯肉、経鼻、経腟、直腸、または経皮)を含む任意の経路による。非経口投与は、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、および頭蓋内を含む。他の送達様式は、以下に限定されないが、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチなどを含む。
【0053】
「処置すること」という用語は、以下に限定されないが、治療的利益および/または予防的利益を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療的利益によって、処置されている1つまたは複数の疾患、状態、または症状に対する任意の治療的に意義のある改善または効果が意味される。予防的利益のために、組成物は、特定の疾患、状態、もしくは症状を発生する危険のある対象に、または疾患の生理学的症状のうちの1つもしくは複数を報告している対象に、たとえ疾患、状態、または症状がまだ出現していないことがあるにしても投与されうる。
【0054】
「有効量」または「十分な量」という用語は、有益なまたは所望の結果を引き起こすのに十分な薬剤(例えば、Casタンパク質、修飾gRNA/pegRNAなど)の量を指す。治療有効量は、当業者が容易に決定できる、処置されている対象および病状、対象の体重および年齢、病状の重症度、投与方式などのうちの1つまたは複数に応じて変動しうる。特定の量は、選ばれた特定の薬剤、標的細胞の型、対象内の標的細胞の位置、従うべき投薬レジメン、それが他の薬剤と組み合わせて投与されるか、投与のタイミング、およびそれが運搬される物理送達システムのうちの1つまたは複数に応じて変動しうる。
【0055】
本明細書に開示される場合、いくつかの値の範囲が提供される。その範囲の上限と下限との間の各介在値もまた具体的に考えられることが理解されている。述べられた範囲によって包含される各々のより小さな範囲または介在値もまた、具体的に考えられる。「約」という用語は、一般的に、表示された数の±10%を指す。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲を示すことがあり、「約20」は、18~22を意味しうる。丸めることなどの「約」の他の意味は、文脈から明らかなことがあり、それで例えば「約1」は0.5~1.4も意味することがある。
【0056】
いくつかの化学修飾ヌクレオチドが本明細書に記載される。MS、MP、およびMSPの各々が、対応する修飾または対応する修飾を含むヌクレオチドを意味できることに留意されたい。以下の略語を関連する文脈で使用するものとする。
【0057】
「PACE」:ホスホノアセテート
【0058】
「MS」:2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート
【0059】
「MP」:2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート
【0060】
「MSP」:2’-O-メチル-3’-チオホスホノアセテート
【0061】
「2’-MOE」:2’-O-メトキシエチル
【0062】
用語の他の定義は、本明細書の全体にわたり出現することがある。
【0063】
本発明は、特異的位置でのガイドRNAの特定の修飾によって、ガイドRNAがヌクレアーゼによる分解に特に抵抗性になることを実証している。インビボでヌクレアーゼ活性は高いので、これは、CRISPR媒介遺伝子編集または遺伝子発現のモジュレーションのためのガイドRNAのインビボ送達に特に重要である。例えば、血清および脳脊髄液(CSF)などの体液は、相対的に豊富なヌクレアーゼを含有する。このような困難な環境で、ガイドRNAは分解される傾向にあり、したがってその濃度は、より高い性能を達成できるレベルに到達しない(すなわち、飽和未満)。したがって、ガイドRNA濃度における、したがって遺伝子編集の機会および遺伝子発現のモジュレーションにおける任意の増大が、この業界では重要である。本発明は、ある特定のガイドRNA、例えば、5’末端でのホスホロチオエート修飾のみならず、3’末端でのホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾を有するものが、未修飾であるまたは他の修飾を含有する対応物(例えば、ホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレートの代わりにホスホロチオエートを含有するが、その他の点で同じ)と比較して血清の存在下であっても高いCRISPR活性をもたらしたという、驚くべき発見を提供する。
【0064】
同様に、エクスビボ療法のためのCRISPR媒介編集/モジュレーションに供すべき細胞は、通常、血清を含有する細胞培養培地中にあるか、または、対象から回収したての場合であれば環境中の体液を含有する。そうであるから、血清または体液中に存在するヌクレアーゼが、細胞に送達されたガイドRNAを分解し、CRISPR媒介編集/モジュレーションの効率を低減する。CRISPR処置の前に血清または体液の量を減らすために細胞を洗浄できるものの、大規模な洗浄は細胞にとって有害でありうる。さらに、CRISPR媒介編集/モジュレーションは、ガイドRNAおよび他のCRISPRエフェクターが細胞に添加された直後には起こらず、細胞をある期間培養する必要がある。血清の非存在下での培養は、しばしば細胞に支障があり、その後、細胞が患者に送達されるのでエクスビボ療法にとってのリスク因子である。ヌクレアーゼ分解に対する抵抗性がより高い本発明の修飾ガイドRNAは、これらの問題を解決するための顕著な改善である。
【0065】
細胞に「ネイキッド」で導入され、ヌクレアーゼに直接曝された場合、例えば、Casタンパク質をコードするDNAまたはmRNAと共トランスフェクトされた、またはその他の方法で送達された場合、本発明の修飾ガイドRNAは有用である。しかし、たとえガイドRNAがネイキッドでなく、例えばCasタンパク質を有するリボ核タンパク質(RNP)中に、またはCasタンパク質を有するもしくは有しないナノ粒子中に存在する場合であっても、本明細書に記載される修飾は同様に有利である。
【0066】
本開示の一態様では、細胞内の核酸における標的領域を編集するため、または標的領域内の標的遺伝子の発現をモジュレートするための方法が提供される。本方法は、細胞に、a)CRISPR関連(「Cas」)タンパク質、ならびにb)5’末端および3’末端と、標的領域内の標的配列とハイブリダイズできるガイド配列と、Casタンパク質と相互作用する足場領域とを含む修飾ガイドRNAを提供することを含む。修飾ガイドRNAはまた、5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾、および3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾を含む。細胞は、ヌクレアーゼ含有液体の存在下でエクスビボで存在する、またはインビボで存在する。本方法では、Casタンパク質および修飾ガイドRNAを細胞に提供することは、標的領域の編集または標的遺伝子の発現のモジュレーションを結果としてもたらす。
【0067】
一部の実施形態では、修飾ガイドRNAは、3’末端の5つのヌクレオチド内に2、3、4、または5つのホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾を含む。gRNAの3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾は、少なくとも2、3、4、または5つのMPヌクレオチドを含むことがあり、それは、2つの連続する修飾ヌクレオチドおよび1もしくは2つの非連続の修飾ヌクレオチド、3つの連続する修飾ヌクレオチドおよび1つの非連続の修飾ヌクレオチド、2つの連続する修飾ヌクレオチドの2つのペア、または2つの連続する修飾ヌクレオチドの5つを含む任意の順序で配列されていることがある。一部の実施形態では、修飾ガイドRNAは、3’末端の5つのヌクレオチド内に少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または5つの連続するMPヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、修飾ガイドRNAは、5’末端の5つのヌクレオチド内に1、2、3、4、または5つのホスホロチオエート修飾を含む。gRNAの5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または5つのMSヌクレオチドを含むことがあり、それらは、連続的または非連続的を含む任意の順序で配列されていることがある。本方法の一部の実施形態では、修飾ガイドRNAは、5’末端の5つのヌクレオチド内に少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または5つの連続するMSヌクレオチドを含む。gRNAの3’または5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、独立して選択されることがある(例えば、修飾ヌクレオチドの数および/または順序は、gRNAの5’および3’末端で異なることがある)。
【0068】
一部の実施形態では、修飾ガイドRNAは、5’末端および3’末端内の5つのヌクレオチドの外側に位置する修飾ヌクレオチドをさらに含む。修飾ガイドRNAは、標的特異性を高めるガイド配列内に1つまたは複数の修飾を含むことがある(例えば、米国特許第10,767,175号に記載)。例えば、修飾ガイドRNAは、修飾されたガイド配列の位置5または位置11に修飾ヌクレオチドを含むことがある。
【0069】
一部の実施形態では、修飾ガイドRNAは一本鎖ガイドRNAである。一部の実施形態では、ガイドRNAは、正確に40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、もしくは200個のヌクレオチド、または少なくとも40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、もしくは200個のヌクレオチド、および/または最大180、179、178、177、176、175、174、173、172、171、170、169、168、167、166、165、164、163、162、161、159、158、157、156、155、154、153、152、151、150、149、148、147、146、145、144、143、142、141、140、139、138、137、136、135、134、133、132、131、130、129、128、127、126、125、124、123、122、121、もしくは120個のヌクレオチドを含む単一ガイドRNAである。最小が最大よりも小さい限り、前述の最小および最大のいずれかを組み合わせて範囲を形成できることが明示的に意図されている。
【0070】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質またはそのバリアントもしくは融合タンパク質をコードするmRNAとして細胞に提供される。一部の実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質またはそのバリアントもしくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターとして細胞に提供される。細胞に、Casタンパク質をコードするmRNAまたは発現ベクターを、修飾ガイドRNAと別々にまたは一緒にトランスフェクトすることができる。一部の実施形態では、細胞に、修飾ガイドRNAと、Casタンパク質をコードするmRNAまたは発現ベクターとが共トランスフェクトされる。共トランスフェクトした場合、修飾ガイドRNAと、Casタンパク質をコードするmRNAまたは発現ベクターとを、別々の送達システムで、または単一の送達システムで細胞に提供することができる。または、Casタンパク質をコードするmRNAまたは発現ベクターをトランスフェクトする前または後に、修飾ガイドRNAが細胞にトランスフェクトされることがある。細胞に、電気穿孔、微量注入、リポフェクションまたはナノ粒子もしくは他の送達システムへの曝露(以下により詳細に記載する)によってトランスフェクトすることができる。一部の実施形態では、Casタンパク質および/または修飾ガイドRNAをコードするmRNAまたは発現ベクターは、ナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子中に提供される。
【0071】
一部の実施形態では、Casタンパク質および修飾ガイドRNAは、リボ核タンパク質複合体(RNP)として提供される。修飾ガイドRNAをCasタンパク質またはそのバリアントもしくは融合タンパク質と複合体化して、細胞内に導入するためのRNPを形成させることができる。RNPは、電気穿孔、微量注入、ウイルス様粒子、リポフェクションまたはナノ粒子もしくは他の送達システムへの曝露(以下により詳細に記載する)などによって、送達システムにおける細胞に提供することができる。一部の実施形態では、Casタンパク質および/または修飾ガイドRNAは、ナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子中に提供される。
【0072】
一部の実施形態では、編集またはモジュレートすべき細胞はエクスビボである。他の実施形態では、編集またはモジュレートすべき細胞はインビボである。本方法は、血清を含む培地中で予め培養されたエクスビボ細胞内の核酸において標的領域を編集するため、または標的領域内の標的遺伝子の発現をモジュレートするために使用することができ、そこで細胞は、血清または1つもしくは複数の血清構成要素から不完全に分離されたものである。例えば、本方法は、細胞を洗浄せずに、細胞の大規模な洗浄もせずに、細胞を細胞培養培地から反応培地に移動させることを含むことがある。一部の実施形態では、修飾ガイドRNAおよびCasタンパク質は、血清または1つもしくは複数の血清構成要素の存在下で、細胞(例えば血液、血漿または血清中のインビボ細胞)に提供される。
【0073】
一部の実施形態では、細胞は、各々が標的領域を含む細胞の集団である。例えば、細胞の集団は、細胞培養物でもよいし、細胞培養物に由来してもよい。細胞または細胞の集団は、修飾ガイドRNAおよびCasタンパク質が細胞に提供される前に、細胞培養培地またはヌクレアーゼ含有液中にあってもよく、一部の実施形態では、編集構成要素の導入前に、細胞は洗浄されるが、細胞培養培地または細胞培養培地の1つもしくは複数の構成要素を完全に含まないわけではないため、ヌクレアーゼがまだ存在する。例えば、細胞を洗浄せずに、また、細胞培養培地の実質的にすべての構成要素を除去するわけでなく、細胞が細胞培養培地から反応培地に移動されてもよい。または、修飾ガイドRNAおよびCasタンパク質を提供する時点で、細胞または細胞の集団が細胞培養培地中に存在してもよい。このような実施形態では、細胞培養培地は、細胞内の標的配列を編集またはモジュレートするための反応培地として機能することができる。一部の実施形態では、細胞は、血清または1つもしくは複数の他の培地構成要素、例えば、ヒトもしくは動物起源の1つもしくは複数の天然タンパク質を含む細胞培養培地中にある、またはそれから移動される。一部の実施形態では、細胞は、ウシ血清アルブミン、ウマ血清、またはウシ胎仔血清を含む細胞培養培地中にある、またはそれから移動される。
【0074】
一部の実施形態では、修飾ガイドRNAを細胞に提供することに起因する編集または発現のモジュレーションは、その他の点で修飾ガイドRNAと同一である未修飾ガイドRNAによって引き起こされる編集またはモジュレーションよりも、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、または少なくとも50%、より効率的である。例えば本発明は、その他の点で修飾ガイドRNAと同一である未修飾ガイドRNAを採用する対応する方法で得られる収率よりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、または少なくとも50%高い平均インデル収率または平均編集収率を有する。一部の実施形態では、修飾ガイドRNAを細胞に提供することに起因する編集またはモジュレーションは、その他の点で修飾ガイドRNAと同一である未修飾ガイドRNAによって引き起こされる編集またはモジュレーションよりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、または少なくとも5倍効率的である。例えば、本方法は、その他の点で修飾ガイドRNAと同一である未修飾ガイドRNAを採用する対応する方法よりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、または少なくとも5倍高い平均インデル収率または平均編集収率を有する。
【0075】
本発明において、多重化は、複数の標的領域について複数の修飾gRNAを使用することにより企図される。一部の実施形態では、本出願の2つの修飾ガイドRNAは、同じ細胞内の2つの異なる標的領域を、好ましくは同時に、編集(またはモジュレート)するために使用される。一部の実施形態では、修飾ガイドRNAは、第1の標的領域を編集するために使用され、第2の修飾ガイドRNAは、標的領域(第1の標的領域と同じ場合または異なる場合がある)の発現を多重的にモジュレートするために使用される。
【0076】
近年、CRISPRベース技術は、潜在的に革新的な治療法として登場した(例えば、遺伝的欠陥を修正するため)。しかし、CRISPRシステムの使用は、実用上の問題のせいで限られている。特に、CRISPR-Cas構成要素のインビボ送達のためにガイドRNA(gRNA)を安定化する方法の必要性がある。以前の研究は、化学修飾ヌクレオチドを有するgRNAの使用を研究していた。本明細書に説明されるように、本開示は、一部には、gRNAの3’末端での特定の修飾ヌクレオチドの組入れが標的核酸のCas媒介編集またはモジュレーションの収率を改善することができ、gRNAと、Casタンパク質をコードするmRNAまたはDNAとが厳しい状況で細胞内に導入される場合(例えば共トランスフェクション)に顕著な改善を有するという驚くべき発見に基づく。
【0077】
一部の態様では、本明細書に開示されるガイドRNAは、ガイドRNAが1つまたは複数の厳しい状況で細胞に導入される適用、例えば、
i.細胞が血清(例えば、ウシ胎仔血清)を含む培地中にある;
ii.細胞が血清を含む培地中で予め培養されており、ガイドRNAが導入されるときに血清がまだ存在する;
iii.細胞が1つまたは複数のヌクレアーゼを含む培地中で予め培養されており、ガイドRNAが導入されるときにヌクレアーゼがまだ存在する;
iv.細胞が、相対的に高いレベルのヌクレアーゼ活性、例えば、1つまたは複数のヌクレアーゼの相対的に高い発現を有する;
v.細胞が相対的に低いレベルのヌクレアーゼ阻害剤活性、例えばヌクレアーゼ阻害剤の相対的に低い発現を有する;
vi.細胞内に送達する前に、修飾ガイドRNAがCasタンパク質と複合体化していない;
vii.細胞がインビボで存在する;および
viii.適用可能な場合はそれらの組合せ
において特に有利でありうる。
【0078】
飽和の概念は、当技術分野において周知である。物質がその「飽和レベル」にある場合、物質の量におけるいかなるさらなる増大も、結果としてより高い活性をもたらさない。「飽和未満のレベル」は、飽和レベルよりも低く、問題になっている物質をより多く添加することは、より高い活性をもたらす可能性がある。従来のアッセイを使用して飽和の閾値を経験的に決定してもよい。例えば、図1は、漸増する量の合成gRNAおよび一定量のCasタンパク質を共トランスフェクション後にCas編集活性を評価したアッセイの結果を示す。この図によって示されるように、Cas媒介編集活性は、25~31.25pmolのgRNAでプラトーに達し、そのとき、gRNAのレベルは20万個の細胞のトランスフェクションについての飽和点に達する。
【0079】
多くの場合に、化学反応によって必要とされる構成要素の飽和レベルを使用することが理想的である。しかし、このような条件は必ずしも実行可能でなく、特に、飽和レベルの1つまたは複数の化合物によりヒトまたは動物を処置することが可能でも安全でもないかもしれない治療法の場合に、実行可能でない。CRISPRベースの療法の場合、トランスフェクション効率は、典型的に治療法の有効性を制限するボトルネックである。例えば、現在のCRISRベースの療法は、通常、患者の1つまたは複数の細胞に、gRNAと、Casタンパク質をコードするmRNAとを共トランスフェクトする必要がする。トランスフェクション効率が低い場合、一方または療法の構成要素が、治療効果に必要とされる有効量未満のレベルで送達されることがある。本明細書に開示された修飾ガイドRNA構築物は、飽和未満のレベルでトランスフェクトされた場合に高レベルのCas編集活性を典型的に示す点で、当技術分野におけるこの必要性に取り組んでいる。実際に、合成gRNAの3’末端での1つまたは複数のホスホノカルボキシレート修飾の組込みは、Cas mRNAの合成gRNAとの共トランスフェクションを伴うCRISPRベースの方法に特に有利である。
【0080】
上述のように、本開示はまた、厳しい状況で、例えば飽和量未満をトランスフェクトした場合に、高レベルのプライム編集活性を保持する修飾pegRNA構築物および方法を提供する。伝統的なガイドRNA(gRNA)の構造が、プライム編集gRNA(pegRNA)の構造と非常に異なり、本開示の前に、pegRNAの化学修飾がその活性にどのように影響するのか不明であったので、この結果は特に驚くべきことである。特に、pegRNAは、典型的なgRNA(すなわち、逆転写酵素の鋳型およびプライマー結合部位の配列)と比較してその3’部分に追加的な配列を含有し、pegRNAの3’末端は他のCRISPR-Casシステムにおける典型的なgRNAの3’末端と異なる機能をプライム編集において果たす。したがって、pegRNAの3’終端でのホスホリボース(または他の化学)修飾は、プライマー結合部位配列の役割を妨害する潜在性を有する。プライマー結合部位配列は、DNA標的部位のニック入り鎖の3’末端とハイブリダイズし、それにより、逆転写酵素は、結果として生じたRNA:DNA二重鎖を、ニック入り3’末端のプライマー伸長に許容されうる基質として認識して、プライム編集を達成する。
【0081】
この理解に基づき、RNA:DNA二重鎖のRNAセグメント内のMSおよびMPなどの一部のホスホリボース修飾が、この二重鎖に対する逆転写酵素の親和性を妨害または低減し、したがってプライム編集活性を低減しうることが予期される。そのうえ、ホスホリボースが(例えばMSまたはMPによって)修飾される位置および/または位置の組合せは、プライム編集における逆転写酵素の機能を妨害し、したがって、プライム編集活性を低減することが予期される。RNA:DNA二重鎖と、異種指向性マウス白血病ウイルス関連ウイルス(その逆転写酵素がプライム編集に典型的に採用されるモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)の近縁である)由来の逆転写酵素の二重鎖複合体化ポリペプチド断片の部分との複合体の公表された共結晶構造は、RNA:DNA二重鎖内のRNA鎖の3’終端と相互作用する逆転写酵素の部分を欠如しており(Nowakら、Nucl.Acids Res.2013、3874~3887)、プライム編集においてpegRNAの3’終端で重要でありうるRNA-タンパク質接触に関する情報は当技術分野において欠如したままである。
【0082】
本開示は、一部には、3’末端での1つまたは複数のMP修飾を、必要に応じて5’末端での1つまたは複数の修飾と共に含む修飾gRNAまたはpegRNAが、特に、修飾ガイドRNAが飽和未満レベルで細胞内にトランスフェクトされた場合に、Cas媒介編集活性を高めることができるという驚くべき知見に基づく。下にさらに詳細に述べるように、約100nt長でありうる様々な設計の化学合成された一本鎖ガイドRNAおよび典型的により長いpegRNAを、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするmRNAと共に培養ヒト細胞に共トランスフェクトしたところ、MSまたはMP修飾をgRNA/pegRNAの3’末端でのホスホリボースに付加した場合に高い活性が観察された。
【0083】
様々な3’および/または5’末端修飾の影響を評価するために、表1に挙げるようにgRNAの3’末端にMSまたはMPホスホリボース修飾を系統的に組み込むことによって、HBB遺伝子を標的とする一連の合成gRNAを創出した。5’および3’末端修飾は、各々の合成gRNAの名称に示されている。例えば、HBB-101-3xMS,3xMPは、gRNAの5’末端に3つのMS修飾および3’末端に3つのMP修飾を有する、HBB遺伝子についてのガイドRNAを意味する。修飾の正確な位置は、図1に示される配列に下線付きで表記されている。この名称は、RNAの長さも示す。例えば、HBB-101-etc.は、101個のヌクレオチドから構成される、HBB遺伝子を標的とするsgRNA鎖を意味する。同様に、HBB-99-etcは、sgRNA鎖が99個のヌクレオチドから構成されることを意味する。これらの長さと、似たような長さの配列長の差は、表1に定義される配列によって特定されるように、sgRNAの3’終端での短いポリウリジン(ポリU)テール内のウリジン数が異なることにある。表1に挙げる例では、3’ポリUテールは、3、4、5、6または7つの連続するウリジンから構成される(評価の基準として、天然tracrRNA上の3’ポリUテールは、一般的に7つの連続するウリジンから構成される)。また、ガイド配列に修飾がもしあれば、それは標的遺伝子の名称およびRNAの長さの後に表示される。例えば、HBB-102-11MP-3xMS,3xMPは、102個のヌクレオチドから構成され、5’末端に3つのMS修飾および3’末端に3つのMP修飾を有し、ガイド配列内の位置11にMP修飾を含む、HBB遺伝子についてのガイドRNAを意味する。修飾の正確な位置は、表1(ならびにガイド配列内のMP修飾に太い下線を付けて注記した表2~4)に示される配列内に下線を付けて表記される。
【0084】
【表1】
【0085】
gRNAの3’末端での化学修飾の数および型は、飽和未満量のgRNAが細胞内に(例えば、ヌクレオフェクションにより)送達される状況でDNA編集についてのそれらの有効性を実質的に高めることができる。リボ核タンパク質(RNP)複合体としてCasタンパク質との複合体の状態で共トランスフェクトされる場合と対照的に、この利益は、Casタンパク質をコードするmRNAと共トランスフェクトされたgRNAを使用する方法で特に顕著である。gRNAに組み込まれた化学修飾の数および型もまた、血清(ヌクレアーゼを含有することが知られている)を含む成長培地中に懸濁された細胞のトランスフェクションに関して本明細書に提供されるデータによって説明されるCas RNP複合体の編集効率を改善することができる。例えば、図4および5を参照されたい。本明細書に記載される実験データはまた、トランスフェクトされたgRNA配列中のある特定の化学修飾およびある特定の配列位置が、例えばgRNAの3’末端上の連続する3’末端ホスホリボースに1つまたは複数のMP修飾を組み込むことによって編集収率を高めるために特に有利でありうることを示している。
【0086】
本明細書に記載される5’および3’末端修飾のいずれかは、標的特異性を高めるgRNAのガイド配列内の修飾と組み合わされることがある(例えば、米国特許第10,767,175号に記載されている)。例えば、表1に示され、図2~5に試験されたように、3’末端でのMP修飾(例えば、3’末端からの第1のヌクレオチド間連結がホスホノアセテートを含むことを意味する、3’末端からの第2のヌクレオチドでのMP)を、gRNAまたはpegRNAのガイド配列部分における位置5または11(ヌクレオチド20個のガイド配列内のガイド配列の5’末端から数える)でのMPまたは他の修飾と組み合わせてもよい。
【0087】
化学修飾は、アミダイトカップリングの選択サイクルに化学修飾ホスホロアミダイトを使用することによってgRNAの化学合成の間に組み込まれて、所望の配列を産生することができる。合成した後、化学修飾gRNAは、未修飾gRNAと同様に遺伝子編集または調節のために使用される。好ましい実施形態は、化学修飾された合成gRNAを、Casタンパク質をコードするmRNAまたはDNAと共トランスフェクトすることである。化学修飾は、電気穿孔、リポフェクションまたは生きた細胞もしくは組織の、Casタンパク質をコードするgRNAおよび/もしくはmRNAをチャージされたナノ粒子への曝露によって送達される場合を含め、トランスフェクトされた細胞におけるgRNAの活性を高める。
【0088】
例示的な合成pegRNAを下の表2および3に示す。3’末端にMSまたはMPホスホリボース修飾を系統的に組み込むことによってこれらのpegRNAを修飾した。各合成pegRNAの名称に5’および3’末端修飾を表示し、これは標的遺伝子も表示する。例えば、「EMX1-peg-3xMS,3xMP」は、pegRNAの5’末端に3つのMS修飾および3’末端に3つのMP修飾を有する、EMX1遺伝子についてのpegRNAを指す。修飾の正確な位置は、表2に示される配列に下線を付けて表記される。pegRNAの設計のいくつかは、pegRNAの名称の「+3’UU」、「+3’UUU」、または「+3’UUUU」によって表示されるように3’終端に付加された短いポリウリジン域(すなわち、ポリUテール)を有する。
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
下記実施例によって実証されるように、pegRNAの3’末端での化学修飾の使用は、プライムエディターを有する合成pegRNAの有効性を実質的に改善する(3’末端が未修飾のpegRNAと比べて)。文献に本来報告されたように、DNAベクターをトランスフェクトされた細胞内でpegRNAおよびプライムエディターが構成的に発現される場合の持続的編集活性とは対照的に(Anzaloneら 2019参照)、プライム編集のために合成pegRNAを使用することは、編集活性の持続時間を限定することを目指す場合に好ましい可能性がある。データから、3’終端でのプライマー結合セグメントで終止するpegRNA鎖上の連続する3’末端ホスホリボースに(3’終端に下流のポリUテールを付加せずに)2つのMP修飾を組み込むなどの一部の態様において、pegRNA配列内のある特定の化学修飾およびある特定の配列位置が特に有利でありうると、本開示はさらに実証している。
【0093】
A.例示的なCRISPR/Casシステム
ゲノム修飾のCRISPR/Casシステムは、Casタンパク質(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)と、標的DNAをCasタンパク質の標的とするガイド配列を含有するDNA標的化RNA(例えば、修飾gRNA)と、Casタンパク質と相互作用する足場領域(例えば、tracrRNA)とを含む。場合によっては、D10A、H840A、D839A、およびH863Aの変異のうちの1つまたは複数を含有するCas9変異体などのCasタンパク質のバリアントを使用することができる。他の例では、所望の特性(例えば、一本鎖もしくは二本鎖切断を生成するおよび/または遺伝子発現をモジュレートできる)を有するCasタンパク質(またはそのバリアント)の断片を使用することができる。例えば、蛍光タンパク質または抗生物質耐性マーカーなどのレポーターポリペプチドと、標的DNAと相同で遺伝子修飾部位に隣接するホモロジーアームとをコードするヌクレオチド配列を含みうるドナー修復鋳型が一部のCRISPR適用に使用されることがある。または、ドナー修復鋳型は、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)でありうる。一部の態様では、CRISPR/CASシステムは、プライムエディターとして作用できるCasタンパク質(例えば、逆転写酵素タンパク質またはそのドメインと融合された、ニッカーゼ活性を示すCasタンパク質を含む融合タンパク質)を含みうる。プライムエディターは、プライム編集と称される過程によって標的核酸の配列を修飾するために、標的核酸の配列への1つまたは複数の編集を含有する逆転写酵素の鋳型を組み入れているpegRNAと共に使用されることがある。
【0094】
1.Casタンパク質およびそのバリアント
CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)/Cas(CRISPR関連タンパク質)ヌクレアーゼシステムは細菌から発見されたが、遺伝子発現のゲノム編集/モジュレーションのために真核細胞(例えば哺乳動物)において使用されている。これは、多くの微生物および古細菌の適応免疫応答の部分に基づく。ウイルスまたはプラスミドがこのような微生物に侵入した場合、侵入体のDNAのセグメントが微生物ゲノム内のCRISPR座位(または「CRISPRアレイ」)に組み込まれる。CRISPR座位の発現は、ノンコーディングCRISPR RNA(crRNA)を産生する。II型CRISPRシステムでは、次いでcrRNAが部分相補性領域を介してtracrRNAと呼ばれる別の種類のRNAと会合して、Cas(例えば、Cas9)タンパク質を、「プロトスペーサー」と呼ばれる標的DNA内のcrRNAと相同な領域へと導く。Cas(例えば、Cas9)タンパク質は、DNAを切断して、crRNA転写物内に含有されるヌクレオチド20個のガイド配列によって特定される部位の二本鎖切断に平滑末端を生成する。Cas(例えば、Cas9)タンパク質は、部位特異的なDNA認識および切断のためにcrRNAおよびtracrRNAの両方を必要とする。このシステムは、crRNAおよびtracrRNAを組み合わせて一つの分子(一本鎖ガイドRNAまたは「sgRNA」)にできるように操作されている(例えば、Jinekら(2012)Science、337:816~821;Jinekら(2013)eLife、2:e00471;Segal(2013)eLife、2:e00563を参照されたい)。したがって、CRISPR/Casシステムを操作して、細胞ゲノム内の所望の標的に二本鎖切断を生成し、誘導された切断を相同組換え修復(HDR)または非相同末端結合(NHEJ)により修復する細胞内因性メカニズムを利用することができる。
【0095】
一部の実施形態では、Casタンパク質はDNA切断活性を有する。Casタンパク質は、標的DNA配列内の位置に一方または両方の鎖の切断を指示することができる。例えば、Casタンパク質は、標的DNA配列の一本鎖を切断する1つまたは複数の不活性化触媒ドメインを有するニッカーゼでありうる(例えば、プライムエディターCasタンパク質の場合と同様)。
【0096】
Casタンパク質の非限定的な例には、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas10、Cas11、Cas12、Cas13、Cas14、CasΦ、CasX、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Cpf1、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、それらのバリアント、それらの断片、それらの変異体、およびそれらの誘導体が含まれる。少なくとも6つの型のCasタンパク質(I~VI型)、および少なくとも33個の亜型がある(例えば、Makarovaら、Nat.Rev.Microbiol.、2020、18:2、67~83を参照されたい)。II型Casタンパク質は、Cas1、Cas2、Csn2、およびCas9を含む。Casタンパク質は、当業者に公知である。例えば、化膿性連鎖球菌野生型Cas9ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、NBCI参照配列番号NP_269215に示され、ストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)野生型Cas9ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、NBCI参照配列番号WP011681470に示される。本開示の態様に有用なCRISPR関連エンドヌクレアーゼは、例えば、米国特許第9,267,135号;同第9,745,610号;および同第10,266,850号に開示されている。
【0097】
Casタンパク質、例えばCas9ポリペプチドは、これらに限定されないが、ベイロネラ アティピカル(Veillonella atypical)、フソバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、フィリファクター アロシス(Filifactor alocis)、ソロバクテリウム モーレイ(Solobacterium moorei)、コプロコッカス カタス(Coprococcus catus)、トレポネーマ デンティコラ(Treponema denticola)、ペプトニフィルス デューデニイ(Peptoniphilus duerdenii)、カテニバクテリウム ミツオカイ(Catenibacterium mitsuokai)、ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans)、リステリア イノキュア(Listeria innocua)、スタフィロコッカス シューディンテルメディウス(Staphylococcus pseudintermedius)、アシダミノコッカス インテスティン(Acidaminococcus intestine)、オルセネラ ウリ(Olsenella uli)、オエノコッカス キタハラエ(Oenococcus kitaharae)、ビフィドバクテリウム ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)、ラクトバシルス ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシルス ガゼリ(Lactobacillus gasseri)、フィネゴルディア マグナ(Finegoldia magna)、マイコプラズマ モビレ(Mycoplasma mobile)、マイコプラズマ ガリセプティカム(Mycoplasma gallisepticum)、マイコプラズマ オビニューモニエ(Mycoplasma ovipneumoniae)、マイコプラズマ カニス(Mycoplasma canis)、マイコプラズマ シノビエ(Mycoplasma synoviae)、ユーバクテリウム レクタレ(Eubacterium rectale)、ストレプトコッカス サーモフィルス、ユーバクテリウム ドリカム(Eubacterium dolichum)、ラクトバシルス コリニフォルミス亜種トルケンス(Lactobacillus coryniformis subsp.Torquens)、イリオバクター ポリトロプス(Ilyobacter polytropus)、ルミノコッカス アルブス(Ruminococcus albus)、アッケルマンシア ムチニフィリア(Akkermansia muciniphila)、アシドテルムス セルロリティカス(Acidothermus cellulolyticus)、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム デンティウム(Bifidobacterium dentium)、コリネバクテリウム ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)、エルシミクロビウム ミヌタム(Elusimicrobium minutum)、ニトラティフラクター サルスギニス(Nitratifractor salsuginis)、スフェロキエータ グロブス(Sphaerochaeta globus)、フィブロバクター スクシノゲネス亜種スクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes subsp.Succinogenes)、バクテロイデス カプノサイトファーガ オクラセア(Bacteroides Capnocytophaga ochracea)、ロドシュードモナス パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、プレボテラ ミカンス(Prevotella micans)、プレボテラ ルミニコラ(Prevotella ruminicola)、フラボバクテリウム コルムナレ(Flavobacterium columnare)、アミノモナス ポーシボランス(Aminomonas paucivorans)、ロドスピリルム ルブラム(Rhodospirillum rubrum)、カンジデーテス プニセイスピリルム マリヌム(Candidates Puniceispirillum marinum)、ベルミネフロバクター アイゼニエ(Verminephrobacter eiseniae)、ラルストニア シジギイ(Ralstonia syzygii)、ディノロセオバクター シバエ(Dinoroseobacter shibae)、アゾスピリルム(Azospirillum)、ニトロバクター ハンブルゲンシス(Nitrobacter hamburgensis)、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)、ウォリネラ スクシノゲネス(Wolinella succinogenes)、カンピロバクター ジェジュニ亜種ジェジュニ(Campylobacter jejuni subsp.Jejuni)、ヘリコバクター ムステラエ(Helicobacter mustelae)、バシルス セレウス(Bacillus cereus)、アシドボラックス エブレウス(Acidovorax ebreus)、クロストリジウム パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)、パルビバキュラム ラバメンティボランス(Parvibaculum lavamentivorans)、ロセブリア インテスティナリス(Roseburia intestinalis)、ナイセリア メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、パスツレラ ムルトシダ亜種ムルトシダ(Pasteurella multocida subsp.Multocida)、スッテレラワズウォルテンシス(Sutterella wadsworthensis)、プロテオバクテリア(proteobacterium)、レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、パラスッテレラ エクスクレメンティホミニス(Parasutterella excrementihominis)、ウォリネラ サクシノゲネス(Wolinella succinogenes)、およびフランシセラ ノビシダ(Francisella novicida)を含む多様な細菌種に由来しうる。
【0098】
「Cas9」は、RNAガイド二本鎖DNA結合性ヌクレアーゼタンパク質またはニッカーゼタンパク質を指す。野生型Cas9ヌクレアーゼは、異なるDNA鎖を切断する2つの機能的ドメイン、例えばRuvCおよびHNHを有する。Cas9は、両方の機能的ドメインが活性の場合にゲノムDNA(標的DNA)に二本鎖切断を導入することができる。Cas9酵素は、コリネバクター(Corynebacter)、スッテレラ(Sutterella)、レジオネラ(Legionella)、トレポネーマ(Treponema)、フィリファクター(Filifactor)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトバシルス(Lactobacillus)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、バクテロイデス(Bacteroides)、フラビイボラ(Flaviivola)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、スフェロキエータ(Sphaerochaeta)、アゾスピリルム(Azospirillum)、グルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)、ナイセリア(Neisseria)、ロセブリア(Roseburia)、パルビバキュルム(Parvibaculum)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ニトラティフラクター(Nitratifractor)、およびカンピロバクター(Campylobacter)からなる群に属する細菌に由来するCas9タンパク質の1つまたは複数の触媒ドメインを含みうる。一部の実施形態では、2つの触媒ドメインは、異なる細菌種に由来する。
【0099】
「Cas12」(バリアントCas12a(Cpf1としても知られる)、Cas12b、c2c1、c2c3、CasX、およびCasYを含む)は、混合アルファ/ベータドメイン、RuvC-Iに続いて、ヘリックス領域、RuvC-IIと、ジンクフィンガー様ドメインまたはニッカーゼタンパク質とを含有するRNAガイド二本鎖DNA結合ヌクレアーゼタンパク質を指す。野生型Cas12ヌクレアーゼは、dsDNA標的配列にねじれ形の5’オーバーハングを作り、tracrRNAを必要としない。Cas12およびそのバリアントは、標的dsDNA上の5’ATリッチのPAM配列を認識する。Cas12aタンパク質のNucと呼ばれる挿入ドメインは、標的鎖の切断を担うことが実証されている。Cas12酵素は、フランシセラ(Francisella)およびプレボテラ(Prevotella)からなる群に属する細菌に由来するCas12タンパク質の1つまたは複数の触媒ドメインを含みうる。
【0100】
Cas9タンパク質の有用なバリアントは、両方ともニッカーゼであるRuvCまたはHNH酵素などの単一の不活性触媒ドメインを含みうる。このようなCasタンパク質は、例えばプライム編集の状況で有用である。Cas9ニッカーゼは、1つの機能的ドメインだけを有し、標的DNAの一本鎖だけを切断し、それにより、一本鎖切断またはニックを生成することができる。一部の実施形態では、Casタンパク質は、少なくともD10A変異を有する変異型Cas9ヌクレアーゼであり、かつCas9ニッカーゼである。他の実施形態では、Casタンパク質は、少なくともH840A変異を有する変異型Cas9ヌクレアーゼであり、かつCas9ニッカーゼである。Cas9ニッカーゼに存在する変異の他の例は、以下に限定されないが、N854AおよびN863Aを含む。二本鎖切断は、向かい合うDNA鎖を標的とする少なくとも2つのDNA標的化RNAを使用する場合にCas9ニッカーゼを使用して導入することができる。ずれた二重ニック導入二本鎖切断はNHEJまたはHDRによって修復することができる(Ranら、2013、Cell、154:1380~1389;Anzaloneら Nature 576:7785、2019、149~15)。この遺伝子編集戦略は、HDRに有利であり、副産物としてのインデル変異の頻度を減少させる。Cas9ヌクレアーゼまたはニッカーゼの非限定的な例は、例えば、米国特許第8,895,308号;同第8,889,418号;同第8,865,406号;同第9,267,135号;および同第9,738,908号;ならびに米国特許出願公開第2014/0186919号に記載されている。Cas9ヌクレアーゼまたはニッカーゼは、標的細胞または標的生物のためにコドン最適化することができる。
【0101】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、dCas9と称される、RuvClおよびHNHヌクレアーゼドメインの2つのサイレンシング変異(D10AおよびH840A)を含有するCas9ポリペプチドでありうる(Jinekら、Science、2012、337:816~821;Qiら、Cell、152(5):1173~1183)。一実施形態では、化膿性連鎖球菌由来のdCas9ポリペプチドは、位置D10、G12、G17、E762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、A987またはそれらの任意の組合せに少なくとも1つの変異を含む。このようなdCas9ポリペプチドおよびそのバリアントの説明は、例えば、国際特許公報番号WO2013/176772に提供されている。dCas9酵素は、D10、E762、H983またはD986での変異のみならず、H840またはN863での変異を含有しうる。場合によっては、dCas9酵素は、D10AまたはD10N変異を含有する。また、dCas9酵素は、H840A、H840Y、またはH840Nを含みうる。一部の実施形態では、本開示の態様に使用されるdCas9酵素は、D10AおよびH840A;D10AおよびH840Y;D10AおよびH840N;D10NおよびH840A;D10NおよびH840Y;またはD10NおよびH840N置換を含む。置換は、Cas9ポリペプチドを触媒的に不活性にし、標的DNAと結合できるようにするための保存的または非保存的置換でありうる。
【0102】
dCas9ポリペプチドは触媒的に不活性であり、ヌクレアーゼ活性を欠如する。場合によっては、dCas9酵素またはそのバリアントもしくは断片は、標的配列の転写を遮断し、場合によってはRNAポリメラーゼを遮断することができる。他の例では、dCas9酵素またはそのバリアントもしくは断片は、標的配列、例えば転写アクティベーターポリペプチドと融合した場合に、標的配列の転写を活性化することができる。一部の実施形態では、Casタンパク質またはタンパク質バリアントは、1つまたは複数のNLS配列を含む。
【0103】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、第2のタンパク質の1つまたは複数の異種機能性ドメインと必要に応じて介在リンカーにより融合した1つまたは複数のCasヌクレアーゼドメインを含む融合タンパク質であってよく、ここで、リンカーは、融合タンパク質の活性を妨害しない。これに関連する異種は、機能性ドメインがCasタンパク質以外のタンパク質由来であることを意味する。一部の実施形態では、異種機能性ドメインは、酵素ドメインおよび/または結合ドメインを含む。一部の実施形態では、異種酵素ドメインは、ヌクレアーゼ、ニッカーゼ、リコンビナーゼ、デアミナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、ポリメラーゼ、逆転写酵素、メチラーゼ、アセチラーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、転写アクティベーター、または転写リプレッサードメインである。一部の実施形態では、異種酵素ドメインは、塩基編集活性、ヌクレオチドデアミナーゼ活性、メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、翻訳活性化活性、翻訳抑制活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、クロマチン修飾もしくはリモデリング活性、ヒストン修飾活性、ヌクレアーゼ活性、一本鎖RNA切断活性、二本鎖RNA切断活性、一本鎖DNA切断活性、二本鎖DNA切断活性、核酸結合活性、検出可能な活性、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0104】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、例えば、アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、APOBEC1、APOBEC2、APOBEC3A、APOBEC3B、APOBEC3C、APOBEC3D/E、APOBEC3F、APOBEC3G、APOBEC3H、もしくはAPOBEC4を含む触媒ポリペプチド様(APOBEC)ファミリーのデアミナーゼ;活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)、例えば、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AICDA);シトシンデアミナーゼ1(CDA1)もしくはCDA2;またはtRNAに作用するシトシンデアミナーゼ(CDAT)由来のシチジンデアミナーゼドメインなどの塩基エディターである異種機能性ドメインを含む。一部の実施形態では、異種機能性ドメインは、アデノシンDNA塩基を修飾するデアミナーゼであり、例えば、デアミナーゼは、アデノシンデアミナーゼ1(ADA1)、ADA2;RNA1に作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR1)、ADAR2、ADAR3;tRNA1に作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAT1)、ADAT2、ADAT3;および天然に存在するまたは操作されたtRNA特異的アデノシンデアミナーゼ(TadA)である。一部の実施形態では、異種機能性ドメインは生物学的テザーである。一部の実施形態では、生物学的テザーは、MS2、Csy4またはラムダNタンパク質である。一部の実施形態では、異種機能性ドメインはFokIである。
【0105】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、内因性DNA修復または塩基切断修復(BER)経路を阻害または高める酵素、ドメイン、またはペプチド、例えば、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG、ウラシルN-グリコシラーゼ、もしくはUNGとしても知られる)が媒介するウラシルの切断を阻害してBERを開始するウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤(UGI);またはバクテリオファージMu由来のGamなどのDNA末端結合タンパク質である異種機能性ドメインを含む。
【0106】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、転写活性化ドメイン、例えば、VP64ドメイン、p65ドメイン、MyoD1ドメイン、またはHSF1ドメインである異種機能性ドメインを含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は、転写抑制ドメイン、例えば、Krueppel関連ボックス(KRAB)ドメイン、ERFリプレッサードメイン(ERD)、mSin3A相互作用ドメイン(SID)ドメイン、SID4Xドメイン、NuEドメイン、またはNcoRドメインである異種機能性ドメインを含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は、ヌクレアーゼドメイン、例えばFok1ドメインである異種機能性ドメインを含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は転写サイレンサードメイン、例えば、ヘテロクロマチンタンパク質1(HP1)、例えば、HP1aまたはHP1Dを含む。一部の実施形態では、Casタンパク質の異種機能性ドメインは、DNAのメチル化状態を修飾する酵素である。一部の実施形態では、DNAのメチル化状態を修飾する酵素は、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)またはTETタンパク質である。一部の実施形態では、TETタンパク質はTET1である。一部の実施形態では、Casタンパク質の異種機能性ドメインは、ヒストンサブユニットを修飾する酵素である。一部の実施形態では、ヒストンサブユニットを修飾する酵素はヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)、またはヒストンデメチラーゼである。
【0107】
遺伝子調節(例えば、標的DNAの転写をモジュレートする)のために、これらに限定されないが、dCas9などのヌクレアーゼ欠損Casタンパク質を、転写活性化または転写抑制のために使用することができる。ヌクレアーゼ-ヌルCasタンパク質を使用する遺伝子発現を不活性化する方法は、例えば、Larsonら、Nat.Protoc.、2013、8(11):2180~2196に記載されている。
【0108】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、1つまたは複数の核移行シグナル(NLS)ドメインを含む。1つまたは複数のNLSドメインは、エフェクタータンパク質(例えば、C2c2)の終端にまたはその近くにまたはそれに近接して位置することがあり、2つ以上のNLSがある場合、それら2つの各々は、エフェクタータンパク質(例えば、C2c2)の終端にまたはその近くにまたはそれに近接して位置することがある。
【0109】
一部の実施形態では、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、組換え発現ベクター中に存在する。場合によっては、組換え発現ベクターは、ウイルス構築物、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス構築物、組換えアデノウイルス構築物、組換えレンチウイルス構築物などである。例えば、ウイルスベクターは、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどに基づきうる。レトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス、脾壊死ウイルス、およびレトロウイルス、例えばラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、乳がんウイルスなどに由来するベクターに基づきうる。有用な発現ベクターは、当業者に公知であり、多くが市販されている。真核生物宿主細胞のための例として、pXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40のベクターが提供される。しかし、宿主細胞と適合するならば任意の他のベクターを使用してもよい。
【0110】
使用される標的細胞/発現系に応じて、プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどを含むいくつかの転写および翻訳制御エレメントのいずれかが、発現ベクターに使用されることがある。有用なプロモーターは、ウイルス、または任意の生物、例えば、原核生物もしくは真核生物から導出されうる。適切なプロモーターには、以下に限定されないが、SV40初期プロモーター、マウス乳がんウイルス長鎖末端反復配列(LTR)プロモーター;アデノウイルス主後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(U6)、強化(enhanced)U6プロモーター、ヒトH1プロモーター(H1)などが含まれる。
【0111】
Casタンパク質は、Casポリペプチド、CasポリペプチドをコードするmRNA、またはCasポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターとして、細胞(例えば、エクスビボ療法のための初代細胞などの細胞または患者内などのインビボ細胞)内に導入することができる。
【0112】
2.化学修飾ガイドRNA(gRNA)
ゲノム修飾のCRISPR/Casシステムに使用するための修飾されたgRNAは、典型的に、標的核酸配列と相補的なガイド配列と、Casタンパク質と相互作用する足場領域とを含む。
【0113】
修飾ガイドRNAのガイド配列は、標的配列とハイブリダイズし、CRISPR複合体の標的配列との配列特異的結合を指示するのに十分な相補性を標的ポリヌクレオチド配列(例えば、標的DNA配列)と有する任意のポリヌクレオチド配列でありうる。一部の実施形態では、適切なアライメントアルゴリズムを使用して最適にアライメントされた場合、修飾ガイドRNAのガイド配列とその対応する標的配列との相補性の程度は、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、もしくはそれ以上である、または約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、もしくはそれ以上よりも大きい。最適なアライメントは、配列をアライメントするための任意の適切なアルゴリズムを使用して決定されることがあり、その非限定的な例には、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えばBurrows Wheelerアライナー)、Clustal W、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies)、ELAND(Illumina、San Diego、Calif.)、SOAP(soap.genomics.org.cnで利用可能)、およびMaq(maq.sourceforge.netで利用可能)が含まれる。一部の実施形態では、ガイド配列は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75ヌクレオチド長、またはそれよりも長い。場合によっては、ガイド配列は約20ヌクレオチド長である。他の例では、ガイド配列は約15ヌクレオチド長である。他の例では、ガイド配列は約25ヌクレオチド長である。ガイド配列がCRISPR複合体の標的配列との配列特異的結合を指示する能力は、任意の適切なアッセイによって評価されることがある。結合は、例えば、代用として編集または切断を使用することによって直接的または間接的に判定することができる。例えば、被験ガイド配列を含むCRISPR複合体を形成するのに十分なCRISPRシステムの構成要素は、CRISPR配列の構成要素をコードするベクターのトランスフェクションに続く標的配列内の編集または切断の評価などにより、対応する標的配列を有する宿主細胞に提供されることがある。同様に、標的配列と、被験ガイド配列および被験ガイド配列と異なる対照ガイド配列を含むCRISPR複合体の構成要素とを提供し、試験ガイド配列反応物と対照ガイド配列反応物の間で標的配列での結合または切断速度を比較することによって、標的ポリヌクレオチド配列の切断が試験管内で評価されることがある。
【0114】
ガイドRNAのヌクレオチド配列は、上記のウェブベースのソフトウェアのいずれかを使用して選択することができる。DNA標的化RNAを選択するための考慮は、使用すべきCasタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)についてのPAM配列、およびオフターゲット修飾を最小化するための戦略を含む。CRISPR設計ツールなどのツールは、修飾gRNAを調製するため、標的修飾効率を判定するため、および/またはオフターゲット部位での切断を判定するための配列を提供することができる。修飾ガイドRNAの配列を選択するための別の考慮は、ガイド配列内の二次構造の程度を低減することを含む。二次構造は、任意の適切なポリヌクレオチドフォールディングアルゴリズムによって決定されることがある。一部のプログラムは、最小Gibbs自由エネルギーを計算することに基づく。適切なアルゴリズムの例には、mFold(ZukerおよびStiegler、Nucleic Acids Res、9(1981)、133~148)、UNAFoldパッケージ(Markhamら、Methods Mol Biol、2008、453:3~31)およびViennaRNAパッケージからのRNAfoldが含まれる。
【0115】
修飾ガイドRNAのガイド配列の1つもしくは複数のヌクレオチドおよび/または足場領域の1つもしくは複数のヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドでありうる。例えば、約20ヌクレオチド長のガイド配列は、1つ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを有することがある。場合によっては、ガイド配列は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9つ、10個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを含む。他の例では、ガイド配列は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、19、20個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドは、ガイド配列の任意の核酸位置に位置することがある。言い換えると、修飾ヌクレオチドは、ガイド配列の第1および/もしくは最後のヌクレオチドもしくはその近く、ならびに/またはそれらの間の任意の位置にありうる。例えば、20ヌクレオチド長であるガイド配列について、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、ガイド配列の核酸位置1、位置2、位置3、位置4、位置5、位置6、位置7、位置8、位置9、位置10、位置11、位置12、位置13、位置14、位置15、位置16、位置17、位置18、位置19、および/または位置20に位置しうる。場合によっては、ガイド配列の約10%~約30%、例えば、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%、約15%~約30%、約20%~約30%、または約25%~約30%が修飾ヌクレオチドを含むことがある。他の例では、ガイド配列の約10%~約30%、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、または約30%が修飾ヌクレオチドを含むことがある。
【0116】
一部の実施形態では、修飾ガイドRNAの足場領域は、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含有する。例えば、約80ヌクレオチド長の足場領域は、1つまたは複数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、76、77、78、79、80個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを有することがある。場合によっては、足場領域は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9つ、10個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを含む。他の例では、足場領域は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、19、20個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドは、足場領域の任意の核酸位置に位置することがある。例えば、修飾ヌクレオチドは、足場領域の第1および/もしくは最後のヌクレオチドもしくはその近く、ならびに/またはそれらの間の任意の位置にありうる。例えば、約80ヌクレオチド長である足場領域について、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、配列の核酸位置1、位置2、位置3、位置4、位置5、位置6、位置7、位置8、位置9、位置10、位置11、位置12、位置13、位置14、位置15、位置16、位置17、位置18、位置19、位置20、位置21、位置22、位置23、位置24、位置25、位置26、位置27、位置28、位置29、位置30、位置31、位置32、位置33、位置34、位置35、位置36、位置37、位置38、位置39、位置40、位置41、位置42、位置43、位置44、位置45、位置46、位置47、位置48、位置49、位置50、位置51、位置52、位置53、位置54、位置55、位置56、位置57、位置58、位置59、位置60、位置61、位置62、位置63、位置64、位置65、位置66、位置67、位置68、位置69、位置70、位置71、位置72、位置73、位置74、位置75、位置76、位置77、位置78、位置79、および/または位置80に位置しうる。場合によっては、足場領域の約1%~約10%、例えば、約1%~約8%、約1%~約5%、約5%~約10%、または約3%~約7%が修飾ヌクレオチドを含むことがある。他の例では、足場領域の約1%~約10%、例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%が修飾ヌクレオチドを含むことがある。
【0117】
ガイドRNAの修飾ヌクレオチドは、リボース(例えば、糖)基、リン酸基、核酸塩基、またはそれらの任意の組合せに修飾を含むことがある。一部の実施形態では、リボース基における修飾は、リボースの2’位に修飾を含む。
【0118】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2’フルオロ-アラビノ核酸、トリサイクル(tricycle)-DNA(tc-DNA)、ペプチド核酸、シクロヘキセン核酸(CeNA)、ロックド核酸(LNA)、エチレン架橋核酸(ENA)、ゼノ核酸(XNA)、ホスホジアミデートモルホリノ、またはそれらの組合せを含む。
【0119】
修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体は、糖修飾および/または骨格修飾リボヌクレオチド(すなわち、リン酸-糖骨格への修飾を含む)を含むことがある。例えば、ネイティブなまたは天然RNAのホスホジエステル連結は、窒素または硫黄ヘテロ原子のうちの少なくとも1つを含むように修飾されることがある。いくつかの骨格修飾されたリボヌクレオチドのうち、隣接リボヌクレオチドを接続しているホスホエステル基は、修飾基、例えば、ホスホロチオエート基によって置き換えられることがある。好ましい糖修飾リボヌクレオチドでは、2’部分は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH、NHR、NRまたはONから選択される基であり、ここで、Rは、C-Cアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロはF、Cl、BrまたはIである。
【0120】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオチドは糖修飾を含有する。糖修飾の非限定的な例には、2’-デオキシ-2’-フルオロ-オリゴリボヌクレオチド(2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸)、2’-デオキシ-2’-デアミンオリゴリボヌクレオチド(2’-アミノ-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、2’-アミノ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸)、2’-O-アルキルオリゴリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド(2’-O-メチルシチジン-5’-三リン酸、2’-メチルウリジン-5’-三リン酸)、2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド、およびそれらの異性体(2’-アラシチジン-5’-三リン酸、2’-アラウリジン-5’-三リン酸)、アジド三リン酸(2’-アジド-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、2’-アジド-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸)、およびそれらの組合せが含まれる。
【0121】
一部の実施形態では、修飾ガイドRNAは、1つまたは複数の2’-フルオロ、2’-アミノおよび/または2’-チオ修飾を含有する。場合によっては、修飾は、2’-フルオロ-シチジン、2’-フルオロ-ウリジン、2’-フルオロ-アデノシン、2’-フルオロ-グアノシン、2’-アミノ-シチジン、2’-アミノ-ウリジン、2’-アミノ-アデノシン、2’-アミノ-グアノシン、2,6-ジアミノプリン、4-チオ-ウリジン、5-アミノ-アリル-ウリジン、5-ブロモ-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、5-メチル-シチジン、リボ-チミジン、2-アミノプリン、2’-アミノ-ブチリル-ピレン-ウリジン、5-フルオロ-シチジン、および/または5-フルオロ-ウリジンである。
【0122】
96個よりも多い天然に存在するヌクレオシド修飾が哺乳動物RNAに見出される。例えば、Limbachら、Nucleic Acids Research、22(12):2183~2196(1994)を参照されたい。ヌクレオチドならびに修飾ヌクレオチドおよびヌクレオシドの調製は、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第4,373,071号、同第4,458,066号、同第4,500,707号、同第4,668,777号、同第4,973,679号、同第5,047,524号、同第5,132,418号、同第5,153,319号、同第5,262,530号、および同第5,700,642号に記載されている。本明細書に記載される使用に適した数多くの修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドは、市販されている。ヌクレオシドは、天然に存在するヌクレオシドの類似体でありうる。場合によっては、類似体は、ジヒドロウリジン、メチルアデノシン、メチルシチジン、メチルウリジン、メチルシュードウリジン、チオウリジン、デオキシシチジン(deoxycytodine)、およびデオキシウリジンである。
【0123】
場合によっては、本明細書に記載される修飾ガイドRNAは、核塩基修飾リボヌクレオチド、すなわち天然に存在する核塩基の代わりに少なくとも1つの天然に存在しない核塩基を含有するリボヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドに組み込むことができる修飾核塩基の非限定的な例には、m5C(5-メチルシチジン)、m5U(5-メチルウリジン)、m6A(N6-メチルアデノシン)、s2U(2-チオウリジン)、Um(2’-O-メチルウリジン)、m1A(1-メチルアデノシン)、m2A(2-メチルアデノシン)、Am(2-1-O-メチルアデノシン)、ms2m6A(2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン)、i6A(N6-イソペンテニルアデノシン)、ms2i6A(2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン)、io6A(N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン)、ms2io6A(2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン)、g6A(N6-グリシニルカルバモイルアデノシン)、t6A(N6-トレオニルカルバモイルアデノシン)、ms2t6A(2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン)、m6t6A(N6-メチル-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン)、hn6A(N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン)、ms2hn6A(2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン)、Ar(p)(2-O-リボシルアデノシン(リン酸))、I(イノシン)、m1I(1-メチルイノシン)、m’Im(1,2’-O-ジメチルイノシン)、m3C(3-メチルシチジン)、Cm(2T-O-メチルシチジン)、s2C(2-チオシチジン)、ac4C(N4-アセチルシチジン)、f5C(5-ホルミル(fonnyl)シチジン)、m5Cm(5,2-O-ジメチルシチジン)、ac4Cm(N4アセチル2TOメチルシチジン)、k2C(リシジン)、m1G(1-メチルグアノシン)、m2G(N2-メチルグアノシン)、m7G(7-メチルグアノシン)、Gm(2’-O-メチルグアノシン)、m22G(N2,N2-ジメチルグアノシン)、m2Gm(N2,2’-O-ジメチルグアノシン)、m22Gm(N2,N2,2’-O-トリメチルグアノシン)、Gr(p)(2’-O-リボシルグアノシン(リン酸))、yW(ワイブトシン)、o2yW(ペルオキシワイブトシン)、OHyW(ヒドロキシワイブトシン)、OHyW*(低修飾ヒドロキシワイブトシン)、imG(ワイオシン)、mimG(メチルグアノシン)、Q(キューオシン)、oQ(エポキシキューオシン)、galQ(ガラクトシル(galtactosyl)-キューオシン)、manQ(マンノシル-キューオシン)、preQo(7-シアノ-7-デアザグアノシン)、preQi(7-アミノメチル-7-デアザグアノシン)、G(アーキオシン)、D(ジヒドロウリジン)、m5Um(5,2’-O-ジメチルウリジン)、s4U(4-チオウリジン)、m5s2U(5-メチル-2-チオウリジン)、s2Um(2-チオ-2’-O-メチルウリジン)、acp3U(3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン)、ho5U(5-ヒドロキシウリジン)、mo5U(5-メトキシウリジン)、cmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸)、mcmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル)、chm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン))、mchm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル)、mcm5U(5-メトキシカルボニルメチルウリジン)、mcm5Um(S-メトキシカルボニルメチル-2-O-メチルウリジン)、mcm5s2U(5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン)、nm5s2U(5-アミノメチル-2-チオウリジン)、mnm5U(5-メチルアミノメチルウリジン)、mnm5s2U(5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン)、mnm5se2U(5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン)、ncm5U(5-カルバモイルメチルウリジン)、ncm5Um(5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン)、cmnm5U(5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン)、cnmm5Um(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-L-O-メチルウリジン)、cmnm5s2U(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン)、m62A(N6,N6-ジメチルアデノシン)、Tm(2’-O-メチルイノシン)、m4C(N4-メチルシチジン)、m4Cm(N4,2-O-ジメチルシチジン)、hm5C(5-ヒドロキシメチルシチジン)、m3U(3-メチルウリジン)、cm5U(5-カルボキシメチルウリジン)、m6Am(N6,T-O-ジメチルアデノシン)、m62Am(N6,N6,O-2-トリメチルアデノシン)、m2’7G(N2,7-ジメチルグアノシン)、m2’2’7G(N2,N2,7-トリメチルグアノシン)、m3Um(3,2T-O-ジメチルウリジン)、m5D(5-メチルジヒドロウリジン)、f5Cm(5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン)、m1Gm(1,2’-O-ジメチルグアノシン)、m’Am(1,2-O-ジメチルアデノシン)イリノメチルウリジン)、tm5s2U(S-タウリノメチル-2-チオウリジン))、imG-14(4-デメチルグアノシン)、imG2(イソグアノシン)、またはac6A(N6-アセチルアデノシン)、ヒポキサンチン、イノシン、8-オキソ-アデニン、その7-置換誘導体、ジヒドロウラシル、シュードウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-アミノウラシル、5-(C-C)-アルキルウラシル、5-メチルウラシル、5-(C-C)-アルケニルウラシル、5-(C-C)-アルキニルウラシル、5-(ヒドロキシメチル)ウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシシトシン、5-(C-C)-アルキルシトシン、5-メチルシトシン、5-(C-C)-アルケニルシトシン、5-(C-C)-アルキニルシトシン、5-クロロシトシン、5-フルオロシトシン、5-ブロモシトシン、N-ジメチルグアニン、7-デアザグアニン、8-アザグアニン、7-デアザ-7-置換グアニン、7-デアザ-7-(C-C)アルキニルグアニン、7-デアザ-8-置換グアニン、8-ヒドロキシグアニン、6-チオグアニン、8-オキソグアニン、2-アミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、2,4-ジアミノプリン、2,6-ジアミノプリン、8-アザプリン、置換7-デアザプリン、7-デアザ-7-置換プリン、7-デアザ-8-置換プリン、およびそれらの組合せが含まれる。
【0124】
一部の実施形態では、ガイドRNAのリン酸骨格は変更される。修飾gRNAは、1つまたは複数のホスホロチオエート、ホスホロアミデート(例えば、N3’-P5’-ホスホロアミデート(NP))、2’-O-メトキシ-エチル(2’MOE)、2’-O-メチル-エチル(2’ME)、および/またはメチルホスホネート連結を含むことがある。
【0125】
特定の実施形態では、ガイドRNAのガイド配列の修飾ヌクレオチドのうちの1つもしくは複数および/または足場領域の修飾ヌクレオチドの1つもしくは複数は、2’-O-メチル(M)ヌクレオチド、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)ヌクレオチド、2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(MP)ヌクレオチド、2’-O-メチル-3’チオPACE(MSP)ヌクレオチド、またはそれらの組合せを含む。場合によっては、ガイドRNAは、1つまたは複数のMSヌクレオチドを含む。他の例では、ガイドRNAは、1つまたは複数のMP/MSPヌクレオチドを含む。さらに他の例では、ガイドRNAは、1つまたは複数のMSヌクレオチドおよび1つまたは複数のMP/MSPヌクレオチドを含む。さらなる例では、ガイドRNAはMヌクレオチドを含まない。場合によっては、ガイドRNAは、1つもしくは複数のMSヌクレオチドおよび/または1つもしくは複数のMP/MSPヌクレオチドを含み、1つまたは複数のMヌクレオチドをさらに含む。ある特定の他の例では、MSヌクレオチドおよび/またはMP/MSPヌクレオチドだけが、ガイドRNAに存在する修飾ヌクレオチドである。
【0126】
一部の態様では、本明細書に記載される修飾ガイドRNA、およびCasタンパク質(またはそれをコードするmRNA)は、組成物(例えば、CRISPR/Cas反応混合物)中に、特定の量、比、または範囲で存在することがある。例えば、反応混合物は、a)1~200pmolのガイドRNA;b)1~100pmolのCasタンパク質、またはCasタンパク質をコードする0.01~3.0pmolのDNAもしくはmRNA;c)0.1:1~3:1のモル比のガイドRNAとCasタンパク質;ならびに/またはd)1:1~200:1のモル比のガイドRNAと、Casタンパク質をコードするDNAもしくはmRNAを含みうる。例えば、一部の態様では、反応混合物は複数の細胞と;i)細胞100,000個あたり1~100pmolのガイドRNA(もしくはpegRNA)、および/またはii)細胞100,000個あたり1~50pmolのCasタンパク質もしくはCasタンパク質をコードする0.01~3.0pmolのDNAもしくはmRNAとを含む。同様に、一部の態様では、反応混合物は、Casタンパク質をコードするDNAまたはmRNA 1pmolあたり少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200pmol、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200pmol、または最大で10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200pmolのガイドRNA、または前記値の任意の組合せによって境界が定められる範囲内の量を含みうる。一部の態様では、ガイドRNAの、Casタンパク質をコードするDNAまたはmRNAに対するモル比は、少なくとも200:1、190:1、180:1、170:1、160:1、150:1、140:1、130:1、120:1、110:1、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、もしくは10:1、約200:1、190:1、180:1、170:1、160:1、150:1、140:1、130:1、120:1、110:1、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、もしくは10:1、または最大で200:1、190:1、180:1、170:1、160:1、150:1、140:1、130:1、120:1、110:1、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、もしくは10:1、または前記比の任意の組合せによって境界が定められる範囲内の比である。一部の態様では、本開示による反応混合物は、1pmolのCasタンパク質あたり少なくとも1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9もしくは3.0pmol、約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9もしくは3.0pmol、または最大で1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9もしくは3.0pmolのガイドRNA、または前記値の任意の組合せによって境界が定められる範囲内の量を含む。
【0127】
修飾gRNAのガイド配列および/または足場領域内に、本明細書に記載される修飾のいずれかが組合せおよび組込みされうることに留意すべきである。
【0128】
場合によっては、ガイドRNAはまた、ステムループ、例えば、MS2ステムループまたはテトラループなどの構造修飾を含む。
【0129】
ガイドRNAは、当業者に公知の任意の方法によって合成することができる。修飾gRNAは、2’-O-チオノカルバメート保護ヌクレオシドホスホロアミダイトを使用して合成することができる。方法は、例えば、Dellingerら、J.American Chemical Society 133、11540~11556(2011);Threlfallら、Organic & Biomolecular Chemistry 10、746~754(2012);およびDellingerら、J.American Chemical Society 125、940~950(2003)に記載されている。
【0130】
化学修飾gRNAまたはpegRNAは、任意のCRISPR関連技術、例えば、RNAガイド技術を用いて使用することができる。本明細書に記載される場合、ガイドRNAは、任意の操作されたまたは人工のCas9ポリペプチドを含む任意のCasタンパク質またはそのバリアントもしくは断片のためのガイドとして役立ちうる。修飾gRNAまたはpegRNAは、エクスビボ療法またはインビボ(例えば、動物における)のための単離された初代細胞におけるDNAおよび/またはRNA分子を標的とすることができる。本明細書に開示される方法は、ゲノム編集、遺伝子調節、イメージング、および任意の他のCRISPRベースの適用に適用することができる。
【0131】
3.ドナー修復鋳型
一部の実施形態では、本開示は、Casタンパク質(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)切断部位の両側に、標的DNA配列(例えば、標的遺伝子または座位)の部分と相同の2つのホモロジーアームを含む組換えドナー修復の鋳型を提供する。場合によっては、組換えドナー修復鋳型は、レポーターポリペプチド(例えば、検出可能なポリペプチド、蛍光ポリペプチド、または選択マーカー)をコードするヌクレオチド配列を含むレポーターカセットと、レポーターカセットに隣接し、Casタンパク質切断部位の両側で標的DNAの部分と相同である2つのホモロジーアームとを含む。レポーターカセットは、自己切断ペプチド、1つもしくは複数の核移行シグナル、および/または蛍光ポリペプチド、例えばスーパーフォールダーGFP(sfGFP)をコードする配列をさらに含みうる。
【0132】
一部の実施形態では、ホモロジーアームは同じ長さである。他の実施形態では、ホモロジーアームは異なる長さである。ホモロジーアームは、少なくとも約10塩基対(bp)、例えば、少なくとも約10bp、15bp、20bp、25bp、30bp、35bp、45bp、55bp、65bp、75bp、85bp、95bp、100bp、150bp、200bp、250bp、300bp、350bp、400bp、450bp、500bp、550bp、600bp、650bp、700bp、750bp、800bp、850bp、900bp、950bp、1000bp、1.1キロ塩基(kb)、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kb、1.6kb、1.7kb、1.8kb、1.9kb、2.0kb、2.1kb、2.2kb、2.3kb、2.4kb、2.5kb、2.6kb、2.7kb、2.8kb、2.9kb、3.0kb、3.1kb、3.2kb、3.3kb、3.4kb、3.5kb、3.6kb、3.7kb、3.8kb、3.9kb、4.0kb、またはそれよりも長いことがある。ホモロジーアームは、約10bp~約4kb、例えば、約10bp~約20bp、約10bp~約50bp、約10bp~約100bp、約10bp~約200bp、約10bp~約500bp、約10bp~約1kb、約10bp~約2kb、約10bp~約4kb、約100bp~約200bp、約100bp~約500bp、約100bp~約1kb、約100bp~約2kb、約100bp~約4kb、約500bp~約1kb、約500bp~約2kb、約500bp~約4kb、約1kb~約2kb、約1kb~約2kb、約1kb~約4kb、または約2kb~約4kbのことがある。
【0133】
ドナー修復鋳型を、発現ベクター内にクローニングすることができる。当業者に公知の従来のウイルスおよび非ウイルスベースの発現ベクターを使用することができる。
【0134】
組換えドナー修復鋳型の代わりに、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)ドナー鋳型を、相同組換え媒介修復のために使用することができる。ssODNは、標的DNA内に短い修飾を導入するために有用である。例えば、ssODNは、SNPなどの遺伝子変異を正確に修正するために適している。ssODNは、Casタンパク質の切断の標的部位の各々の側に2つの隣接相同配列を含有することがあり、標的DNAに対してセンス方向またはアンチセンス方向に配向することがある。各隣接配列は、少なくとも約10塩基対(bp)、例えば、少なくとも約10bp、15bp、20bp、25bp、30bp、35bp、40bp、45bp、50bp、55bp、60bp、65bp、70bp、75bp、80bp、85bp、90bp、95bp、100bp、150bp、200bp、250bp、300bp、350bp、400bp、450bp、500bp、550bp、600bp、650bp、700bp、750bp、800bp、850bp、900bp、950bp、1kb、2kb、4kb、またはそれよりも長いことがある。一部の実施形態では、各ホモロジーアームは、約10bp~約4kb、例えば、約10bp~約20bp、約10bp~約50bp、約10bp~約100bp、約10bp~約200bp、約10bp~約500bp、約10bp~約1kb、約10bp~約2kb、約10bp~約4kb、約100bp~約200bp、約100bp~約500bp、約100bp~約1kb、約100bp~約2kb、約100bp~約4kb、約500bp~約1kb、約500bp~約2kb、約500bp~約4kb、約1kb~約2kb、約1kb~約2kb、約1kb~約4kb、または約2kb~約4kbである。ssODNは、少なくとも約25ヌクレオチド(nt)長、例えば、少なくとも約25nt、30nt、35nt、40nt、45nt、50nt、55nt、60nt、65nt、70nt、75nt、80nt、85nt、90nt、95nt、100nt、150nt、200nt、250nt、300nt、またはそれよりも長いことがある。一部の実施形態では、ssODNは、約25~約50;約50~約100;約100~約150;約150~約200;約200~約250;約250~約300;または約25nt~約300nt長である。
【0135】
一部の実施形態では、ssODN鋳型は、本明細書に記載される少なくとも1つ、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを含む。場合によっては、ssODNの配列の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または99%は、修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、ssODNの末端の一方または両方に位置する。修飾ヌクレオチドは、末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10番目のヌクレオチド、またはそれらの任意の組合せでありうる。例えば、修飾ヌクレオチドは、ssODN鋳型の両末端での3つの末端ヌクレオチドにありうる。追加的に、修飾ヌクレオチドは、末端に対して内部に位置することがある。
【0136】
一部の態様、例えばプライム編集では、外因性DNA修復鋳型は必要ない。例えば、本明細書に記載される修飾pegRNAは、標的核酸に対する1つまたは複数の編集を含有する逆転写酵素配列を(例えば、プライマー結合部位配列に近接した3’末端に)含み、それが、標的核酸のプライム編集を行う場合にプライムエディターCasタンパク質によって鋳型として使用される。
【0137】
4.標的DNA
CRISPR/Casシステムにおいて、標的DNA配列の直後に、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列がありうる。標的DNA部位は、使用されるCasタンパク質Cas9の細菌種に特異的なPAM配列の5’に直接位置することがある。例えば、化膿性連鎖球菌由来Cas9のPAM配列はNGGであり;ナイセリア メニンギティディス由来Cas9のPAM配列はNNNNGATTであり;ストレプトコッカス サーモフィルス由来Cas9のPAM配列はNNAGAAであり;トレポネーマ デンティコラ由来Cas9のPAM配列はNAAAACである。一部の実施形態では、PAM配列は、5’-NGG(Nは任意のヌクレオチドである);5’-NRG(Nは任意のヌクレオチドであり、Rはプリンである);または5’-NNGRR(Nは任意のヌクレオチドであり、Rはプリンである)でありうる。化膿性連鎖球菌システムについて、選択された標的DNA配列は、5’NGG PAMの直前(例えば5’に位置する)にあるべきであり(Nは任意のヌクレオチドである)、それにより、DNA標的化RNA(例えば、修飾gRNA)のガイド配列は、反対鎖と塩基対を形成して、PAM配列の約3塩基対上流で切断を媒介する。
【0138】
一部の実施形態では、DNA標的化RNA(例えば、ガイドRNA)のガイド配列とその対応する標的DNA配列との相補性の程度は、適切なアライメントアルゴリズムを使用して最適にアライメントされた場合、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上、または約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上よりも大きい。最適なアライメントは、配列をアライメントするために適した任意のアルゴリズムを使用して決定されることがあり、その非限定的な例には、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheelerアライナー)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies、Selangor、Malaysia)、およびELAND(Illumina、San Diego、Calif.)が含まれる。
【0139】
標的DNA部位は、ZiFiT Targeterソフトウェア(Sanderら、2007、Nucleic Acids Res、35:599~605;Sanderら、2010、Nucleic Acids Res、38:462~468)、E-CRISP(Heigwerら、2014、Nat Methods、11:122~123)、RGEN Tools(Baeら、2014、Bioinformatics、30(10):1473~1475)、CasFinder(Aachら、2014、bioRxiv)、DNA2.0 gNRA Design Tool(DNA2.0、Menlo Park、Calif.)、およびCRISPick Design Tool(Broad Institute、Cambridge、Mass.)などのウェブベースソフトウェアを使用して前定義されたゲノム配列(遺伝子)内から選択することができる。このようなツールは、ゲノム配列(例えば、目的の遺伝子または座位)を解析し、遺伝子編集に適した標的部位を特定する。各々のDNA標的化RNA(例えば、修飾gRNA)のためのオフターゲット遺伝子修飾を判定するために、オフターゲット部位のコンピュータ予測は、塩基対形成ミスマッチの同一性、位置および分布の量的特異性解析に基づき行われる。
【0140】
5.遺伝子発現をモジュレートする
CRISPR/Casシステムは、遺伝子発現を阻害することまたは遺伝子発現を活性化することなどの遺伝子発現を調節するために使用されることがある。非限定的な例として、Cas9バリアントまたは断片と、標的DNA配列と結合することができるgRNAとを含む複合体は、RNAポリメラーゼによる転写開始および/伸長を遮断または妨害することができる。これは、今度は、標的DNAの遺伝子発現を阻害または抑制することができる。または、異なるCas9バリアントまたは断片と、標的DNA配列と結合することができるgRNAとを含む複合体は、標的DNAの遺伝子発現を誘導または活性化することができる。
【0141】
遺伝子発現を不活性化または低減するためにCRISPR干渉(CRISPRi)を行うための方法の詳細な説明は、例えば、Larsonら、Nature Protocols、2013、8(11):2180~2196、およびQiら、Cell、152、2013、1173~1183に見出すことができる。CRISPRiでは、gRNA-Cas9バリアント複合体は、タンパク質-コード領域の非テンプレート鎖と結合し、転写伸長を遮断することができる。場合によっては、gRNA-Cas9バリアント複合体が遺伝子のプロモーター領域と結合する場合、複合体は、転写開始を防止または妨害する。
【0142】
遺伝子発現を増大させるためにCRISPR活性化を行うための方法の詳細な説明は、例えば、Chengら、Cell Research、2013、23:1163~1171、Konermanら、Nature、2015、517:583~588、および米国特許第8,697,359号に見出すことができる。
【0143】
遺伝子発現のCRISPRベースの制御のために、ヌクレオチド鎖内切断(endonucleolytic)活性を欠如するCasタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)の触媒不活性バリアントを使用することができる。一部の実施形態では、Casタンパク質は、RuvC様およびHNHヌクレアーゼドメインに少なくとも2つの点変異を含有するCas9バリアントである。一部の実施形態では、Cas9バリアントは、dCas9と称されるD10AおよびH840Aアミノ酸置換を有する(Jinekら、Science、2012、337:816~821;Qiら、Cell、152(5):1173~1183)。場合によっては、化膿性連鎖球菌由来のdCas9ポリペプチドは、位置D10、G12、G17、E762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、A987またはそれらの任意の組合せに少なくとも1つの変異を含む。このようなdCas9ポリペプチドおよびそれらのバリアントの説明は、例えば、国際特許出願公報番号WO2013/176772に提供される。dCas9酵素は、D10、E762、H983またはD986での変異のみならず、H840またはN863での変異を含有しうる。場合によっては、dCas9酵素は、D10AまたはD10N変異を含有する。また、dCas9酵素は、H840A、H840Y、またはH840Nを含むことがある。場合によっては、dCas9酵素は、D10AおよびH840A;D10AおよびH840Y;D10AおよびH840N;D10NおよびH840A;D10NおよびH840Y;またはD10NおよびH840N置換を含む。置換は、Cas9ポリペプチドを触媒的に不活性にし、標的DNAと結合できるようにするために保存的または非保存的置換でありうる。
【0144】
ある特定の実施形態では、dCas9ポリペプチドは、触媒的に不活性であり、例えばヌクレアーゼ活性を欠損する。場合によっては、dCas9酵素またはそのバリアントもしくは断片は、標的配列の転写を遮断し、場合によってはRNAポリメラーゼを遮断することができる。他の例では、dCas9酵素またはそのバリアントもしくは断片は、標的配列の転写を活性化することができる。
【0145】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド鎖内切断活性を欠如するCas9バリアント(例えば、dCas9)を転写抑制ドメイン、例えば、Kruppel関連ボックス(KRAB)ドメイン、または転写活性化ドメイン、例えば、VP16トランス活性化ドメインと融合することができる。一部の実施形態では、Cas9バリアントは、dCas9および転写因子、例えば、RNAポリメラーゼオメガ因子、熱ショック因子1、またはそれらの断片を含む融合ポリペプチドである。他の実施形態では、Cas9バリアントは、dCas9およびDNAメチラーゼ、ヒストンアセチラーゼ、またはその断片を含む融合ポリペプチドである。
【0146】
RNA結合および/またはRNA切断によって媒介される遺伝子発現のCRISPRベースの制御のために、例えば、O’Connellら、Nature、2014、516:263~266に記載されるようなエンドリボヌクレアーゼ活性を有する適切なCasタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)バリアントを使用することができる。他の有用なCasタンパク質(例えば、Cas9)バリアントは、例えば、米国特許第9,745,610号に記載されている。RNAを切断することができる他のCRISPR関連酵素には、Csy4エンドリボヌクレアーゼ、CRISPR関連Cas6酵素、Cas5ファミリーメンバー酵素、Cas6ファミリーメンバー酵素、I型CRISPRシステムエンドリボヌクレアーゼ、II型CRISPRシステムエンドリボヌクレアーゼ、III型CRISPRシステムエンドリボヌクレアーゼ、およびそれらのバリアントが含まれる。
【0147】
CRISPRベースのRNA切断の一部の実施形態では、PAM配列を含有するDNAオリゴヌクレオチド(例えば、PAMmer)は、一本鎖RNA転写物と結合し、それを切断するために、本明細書に記載される修飾gRNAおよびCasタンパク質(例えば、Cas9)バリアントと共に使用される。適切なPAMmer配列の詳細な説明は、例えば、O’Connellら、Nature、2014、516:263-266に見出される。
【0148】
一部の実施形態では、複数の修飾gRNAおよび/またはpegRNAは、標的遺伝子の異なる領域を標的として、その標的遺伝子の遺伝子発現を調節するために使用される。複数の修飾gRNAおよび/またはpegRNAは、各々の修飾されたgRNA単独と比較して単一の標的遺伝子の遺伝子発現の相乗的モジュレーション(例えば、阻害または活性化)を提供することができる。他の実施形態では、複数の修飾gRNA/pegRNAは、少なくとも2つの異なる標的遺伝子の遺伝子発現を調節するために使用される。
【0149】
B.エクスビボの細胞
本方法の一部の態様では、標的配列は細胞内にある。本方法を使用して、初代細胞、不死化細胞、細胞系由来の細胞、細胞培養物由来の細胞、およびその他を含む目的の任意の細胞内の核酸における標的配列を編集する、モジュレートする、切断する、それにニックを入れる、またはそれと結合させることができる。一部の実施形態では、細胞は、1つまたは厳しい状況を有する細胞型、例えば、高いヌクレアーゼ(例えば、リボヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、エキソリボヌクレアーゼ)の発現、濃度および/または活性を有する細胞、例えば、特定のヌクレアーゼが高い細胞型である。
【0150】
本明細書に開示される組成物および方法を使用して、目的の初代細胞における標的核酸の発現を編集または調節することができる。初代細胞は、任意の多細胞生物から単離された細胞、例えば、植物細胞(例えば、イネ細胞、コムギ細胞、トマト細胞、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)細胞、トウモロコシ(Zea mays)細胞など)、多細胞原生生物からの細胞、多細胞性真菌からの細胞、無脊椎動物(例えば、ショウジョウバエ、刺胞動物、棘皮動物、線虫など)からの細胞または脊椎動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)からの細胞、ヒトからの細胞、健康なヒトからの細胞、ヒト患者からの細胞、がん患者からの細胞などでありうる。場合によっては、ゲノム編集または誘導遺伝子調節を有する初代細胞を対象(例えば患者)に移植することができる。例えば、初代細胞は、処置すべき対象(例えば、患者)に由来することがある。
【0151】
任意の型の初代細胞、例えば、幹細胞、例えば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、成体幹細胞(例えば、間葉系幹細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、臓器幹細胞)、前駆細胞、体細胞(例えば、線維芽細胞、肝実質細胞、心臓細胞、肝細胞、膵臓細胞、筋細胞、皮膚細胞、血液細胞、神経細胞、免疫細胞)、および身体、例えばヒト身体の任意の他の細胞が、目的の細胞でありうる。初代細胞は、典型的には対象、例えば、動物対象またはヒト対象に由来し、限られた継代数の間、インビトロで成長させられる。一部の実施形態では、細胞は疾患細胞である、または疾患を有する対象に由来する。例えば、細胞はがん細胞または腫瘍細胞でありうる。
【0152】
初代細胞は、任意の標準的な方法によって対象から回収することができる。例えば、皮膚、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、腸、胃などの組織からの細胞を、組織生検または細針吸引によって回収することができる。血液細胞および/または免疫細胞は、全血、血漿または血清から単離することができる。場合によっては、適切な初代細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血リンパ球(PBL)、および他の血液細胞サブセット、例えば以下に限定されないが、T細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、ナチュラルキラーT細胞、単球前駆細胞、造血幹および前駆細胞(HSPC)、例えばCD34+ HSPC、または非多能性幹細胞が含まれる。場合によっては、細胞は、以下に限定されないが、任意のT細胞、例えば腫瘍浸潤細胞(TIL)、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、または任意の他の型のT細胞を含む任意の免疫細胞でありうる。T細胞はまた、メモリーT細胞、メモリー幹T細胞、またはエフェクターT細胞を含みうる。T細胞はまた、特定の集団および表現型に偏ることがある。例えば、表現型が偏ることがあるT細胞は、CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)および/またはIL-7Ra(+)を含む。CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)および/またはIL-7Ra(+)を含むリストから選択される1つまたは複数のマーカーを含む適切な細胞を選択することができる。人工多能性幹細胞は、例えば、米国特許第7,682,828号、同第8,058,065号、同第8,530,238号、同第8,871,504号、同第8,900,871号および同第8,791,248号に記載された標準的なプロトコールにより分化細胞から生成しうる。
【0153】
C.エクスビボ療法
本明細書に記載される方法は、エクスビボ療法に使用することができる。エクスビボ療法は、生物外で生成または改変された組成物(例えば、細胞)を対象(例えば、患者)に投与することを含むことがある。一部の実施形態では、本明細書に開示される方法によって組成物(例えば、細胞を含む)を生成または修飾することができる。例えば、エクスビボ療法は、生物の外側で生成または修飾された初代細胞を対象(例えば、患者)に投与することを含むことがあり、ここで、初代細胞は、初代細胞における標的核酸を、本明細書に記載される1つまたは複数の修飾gRNA、およびCasタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)またはそのバリアントもしくは断片、Casタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)またはそのバリアントもしくは断片をコードするmRNA、またはCasタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)またはそのバリアントもしくは断片をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターと接触させることを含む本開示の方法によりインビトロで培養され、編集/モジュレートされている。
【0154】
一部の実施形態では、組成物(例えば、細胞)は、エクスビボ療法により処置すべき対象(例えば、患者)に由来しうる。一部の実施形態では、エクスビボ療法は、養子免疫療法などの細胞ベースの療法を含みうる。
【0155】
一部の実施形態では、エクスビボ療法に使用される組成物は細胞でありうる。細胞は、以下に限定されないが、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血リンパ球(PBL)、および他の血液細胞サブセットを含む初代細胞でありうる。初代細胞は、免疫細胞でありうる。初代細胞は、T細胞(例えば、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、および/またはCD8+ T細胞)、ナチュラルキラー細胞、単球、ナチュラルキラーT細胞、単球前駆細胞、造血幹細胞もしくは非多能性幹細胞、幹細胞、または前駆細胞でありうる。初代細胞は、造血幹または前駆細胞(HSPC)、例えばCD34+ HSPCでありうる。初代細胞はヒト細胞でありうる。初代細胞は、単離、選択、および/または培養することができる。初代細胞は、エクスビボで拡大増殖させることができる。初代細胞は、インビボで拡大増殖させることができる。初代細胞は、CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)、および/またはIL-7Ra(+)でありうる。初代細胞は、細胞を受け入れている対象に対して自己でありうる。または初代細胞は、対象に対して非自己でありうる。初代細胞は、医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理規則(GMP)に適合する試薬でありうる。初代細胞は、がん、感染症、自己免疫障害、または移植片対宿主病(GVHD)を含む疾患を、このような疾患を有するまたはそのリスクのある対象において処置するための併用療法の一部でありうる。
【0156】
エクスビボ療法の非限定的な例として、初代細胞は、初代細胞内の標的核酸をCasタンパク質および修飾gRNAと接触させる前に、多細胞生物(例えば、植物、多細胞原生生物、多細胞真菌、無脊椎動物、脊椎動物、例えばヒトなど)から単離することができる。標的核酸をCasタンパク質およびガイドRNAと接触させた後、初代細胞またはその後代(例えば、初代細胞に由来する細胞)を多細胞生物に戻すことができる。
【0157】
一部の実施形態では、Casタンパク質およびガイドRNAは、生きた生物中またはそれに由来する血清含有液(例えば、全血、血漿または血清)への導入などによって、生きた生物に導入される。
【0158】
D.核酸および/またはポリペプチドを標的細胞に導入するための方法
ポリペプチドおよび核酸を標的細胞(宿主細胞)に導入するための方法は、当技術分野において公知であり、核酸(例えば、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列、修飾ガイドRNA、相同組換え修復(HDR)のためのドナー修復鋳型など)、ポリペプチド(Casタンパク質、ポリメラーゼ、デアミナーゼなど)、またはRNP(例えばgRNA/Casタンパク質複合体)を細胞、例えば、幹細胞、前駆細胞、または分化した細胞などの初代細胞に導入するために本方法に採用することができる。適切な方法の非限定的な例には、電気穿孔、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、微量注入、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注入、ナノ粒子媒介送達(例えば、脂質ナノ粒子媒介送達、ポリマーナノ粒子媒介送達、ハイブリッド脂質-ポリマーナノ粒子媒介送達)、その他が含まれる。
【0159】
一部の実施形態では、CRISPRシステムの構成要素は、送達システムを使用して細胞内に導入することができる。場合によっては、送達システムは、送達すべき構成要素を含むナノ粒子、マイクロ粒子(例えば、ポリマーマイクロポリマー)、リポソーム、ミセル、ビロソーム、ウイルス粒子、ウイルス様粒子(VLP)、核酸複合体、トランスフェクション剤、電気穿孔剤(例えば、NEONトランスフェクションシステムを使用する)、ヌクレオフェクション剤、リポフェクション剤、および/または緩衝剤システムを含む。例えば、構成要素は、陽イオン性サブミクロン水中油型エマルジョンに封入またはパッケージングされるようにリポフェクション剤と混合することができる。または、構成要素は、送達システムなしに、例えば水溶液として送達することができる。
【0160】
リポソームを調製し、ポリペプチドおよび核酸をリポソームに封入する方法は、例えば、Methods and Protocols、第1巻:Pharmaceutical Nanocarriers:Methods and Protocols、(Weissig編).Humana Press、2009およびHeyesら(2005)J Controlled Release 107:276~87に記載されている。マイクロ粒子を調製し、ポリペプチドおよび核酸を封入する方法は、例えば、Functional Polymer Colloids and Microparticles 第4巻(Microspheres、microcapsules & liposomes)、(ArshadyおよびGuyot編).Citus Books、2002およびMicroparticulate Systems for the Delivery of Proteins and Vaccines、(CohenおよびBernstein編).CRC Press、1996に記載されている。脂質、ポリマーまたはハイブリッド脂質-ポリマーナノ粒子などのナノ粒子の調製に関する総説についてはAdvanced Drug Delivery Reviews 2021、第168巻を参照されたい。
【0161】
E.ゲノム編集の効率を判定する方法
正しいゲノム編集修飾の存在を機能的に試験するために、標的DNAを当業者に公知の標準的な方法によって分析することができる。例えば、インデル変異は、SURVEYOR(登録商標)変異検出キット(Integrated DNA Technologies、Coralville、Iowa)またはGuide-it(商標)インデル同定キット(Clontech、Mountain View、Calif.)を使用する配列決定によって同定することができる。相同組換え修復(HDR)、塩基編集またはプライム編集媒介編集をPCRベースの方法によって、および配列決定またはRFLP解析と組み合わせて検出することができる。PCRベースのキットの非限定的な例には、Guide-it変異検出キット(Clontech)およびGeneArt(登録商標)ゲノム切断検出キット(Life Technologies、Carlsbad、Calif.)が含まれる。特に多数の試料または潜在的標的/オフターゲット部位についてディープシーケンシングも使用することができる。
【0162】
ある特定の実施形態では、ゲノム編集の効率(例えば、特異性)は、オンターゲットおよびオフターゲット事象を含むすべてのゲノム編集事象の数またはパーセントに対するオンターゲットゲノム編集事象の数またはパーセントに対応する。一部の実施形態では、標的領域の編集効率は、単一細胞または細胞集団のレベルでその標的領域の予期される編集数に対応する。
【0163】
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾gRNAは、対応する未修飾gRNAと比べて初代細胞などの細胞において標的DNA配列のゲノム編集を強化することができる。ゲノム編集は、相同組換え修復(HDR)(例えば、挿入、欠失、もしくは点変異)、プライム編集、塩基編集、または非相同末端結合(NHEJ)を含むことがある。
【0164】
ある特定の実施形態では、細胞における標的DNA配列のヌクレアーゼ媒介ゲノム編集効率は、対応する未修飾gRNA配列と比較して、本明細書に記載されるガイドRNAの存在下で少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍、0.9倍、1倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、またはそれよりも大きく高まる。一部の他の実施形態では、効率は、異なる修飾を有する対応するgRNAと比較され、上記の強化レベルを達成する。例えば、5’末端での1x、2x、または3xMSのみならず、3’末端に2x、3x、または4xMPまたはMSPを有するgRNAが、MP/MSPの代わりに同じ数のMSを有するgRNAと比較されることがある(すなわち、5’末端での1x、2x、または3xMSのみならず、3’末端での2x、3x、または4xMS)。
【0165】
F.対象における遺伝性疾患を予防または処置する方法
修飾gRNAを、遺伝性疾患の標的化されたヌクレアーゼベースの治療法に適用することができる。初代患者細胞のゲノムにおける遺伝子変異を正確に修正するための現行のアプローチは、非常に効率的でありうる(細胞の1%未満を正確に編集できるときがある)。本明細書に記載される修飾gRNAは、ゲノム編集の活性を高め、ゲノム編集ベース療法の有効性を増大させることができる。特定の実施形態では、修飾gRNAは、遺伝性疾患を有する対象における遺伝子のインビボ遺伝子編集のために使用されることがある。修飾gRNAは、任意の適切な投与経路を介して、ヌクレアーゼベースの療法の効果を高める(例えば、ゲノム編集効率を改善する)のに十分な用量または量で対象に投与することができる。
【0166】
遺伝性疾患に関連する遺伝子変異を修正することによって、それを必要とする対象における当該疾患を予防または処置する方法が、本明細書に提供される。方法は、変異を修正するのに十分な量の本明細書に記載される修飾ガイドRNAを対象に投与することを含む。遺伝性疾患に関連する遺伝子変異を修正することによって、それを必要とする対象における当該疾患を予防または処置するための医薬の製造への、本明細書に記載される修飾ガイドRNAの使用も、本明細書に提供される。修飾ガイドRNAは、Casタンパク質(例えば、Casポリペプチド)、Casタンパク質をコードするmRNA、またはCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターも含む組成物中に含有されうる。場合によっては、修飾ガイドRNAは、上記の送達システムに含まれる。
【0167】
方法によって修正されることがある遺伝性疾患には、これらに限定されないが、X連鎖重症複合免疫不全症、鎌状赤血球貧血、サラセミア、血友病、新形成、がん、加齢黄斑変性、統合失調症、トリヌクレオチド反復障害、脆弱X症候群、プリオン関連障害、筋萎縮性側索硬化症、薬物嗜癖、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病、嚢胞性線維症、血液および凝固疾患または障害、炎症、免疫関連疾患または障害、代謝性疾患、肝疾患および障害、腎疾患および障害、筋/骨格疾患および障害(例えば、筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、神経および神経細胞疾患および障害、心血管疾患および障害、肺疾患および障害、眼疾患および障害、ウイルス感染(例えば、HIV感染)などが含まれる。
【実施例
【0168】
本教示の態様は、以下の実施例に照らしてさらに理解することができるが、これらの実施例は、本教示の範囲を何らかの点で限定するものと理解すべきではない。
【0169】
本明細書における教示により、調製、試験および他の詳細において変形および代替が採用されうると理解すべきであるが、様々な一般的な方法および試薬が以下の実施例に使用され、実施例の理解を促すために下に説明される。
【0170】
gRNAおよびmRNAの調製。以前に記載された手順により、Dr.Oligo 48および96合成装置(Biolytic Lab Performance Inc.)を用いて、2’-O-チオノカルバメート保護ヌクレオシドホスホロアミダイト(Sigma-AldrichおよびHongene)を使用して制御孔ガラス(LGC)上にRNAオリゴマーを合成した。MP修飾されたRNAを合成するために使用した2’-O-メチル-3’-O-(ジイソプロピルアミノ)-ホスフィノ酢酸-1,1-ジメチルシアノエチルエステル-5’-O-ジメトキシトリチルヌクレオシドをGlen ResearchおよびHongeneから購入した。ホスホロチオエート含有オリゴマーについて、カップリング反応後のヨウ素酸化ステップを、3-((N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾール-5-チオンのピリジン-アセトニトリル(3:2)混液中0.05M溶液を使用する6分間の硫化ステップによって置き換えた。特に述べない限り、固相RNA合成のための試薬をGlen Research and Honeywellから購入した。以前の刊行物(例えば、Dellingerら、2003およびThrelfallら、2012、上記を参照されたい)から適合させたプロトコールを使用して、上記の市販の保護ヌクレオシドホスフィノアミダイトモノマーを使用することによって、MP修飾されたgRNAに組み込まれたホスホノアセテート修飾を合成した。逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を使用してすべてのオリゴヌクレオチドを精製し、Agilent 6545 Q-TOF(飛行時間型)質量分析機と結合されたAgilent 1290 InfinityシリーズLCシステムを使用する液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)によって分析した。すべての場合で、精製gRNAの質量スペクトルにおいて複数の荷電状態を含む一連のピークの逆畳み込みによって決定された質量は、較正された機器の誤差の範囲内で予想質量とマッチし(このアッセイに使用される品質保証のための規格は、精製gRNAの観測質量が計算質量の0.01%内であることである)、したがって、各合成gRNAの組成が確認された。
【0171】
5-メトキシウリジンで全置換されたCleanCap Cas9 mRNAをTriLink(L-7206)から購入した。提供したコード配列にTriLinkが独自の専売5’および3’UTRを付加することによって、それぞれBE4-Gamタンパク質およびPE2タンパク質をコードするBE4-Gam mRNAおよびPE2 mRNAを特注としてTriLinkから購入した。注文のmRNAは、5-メチルシチジンおよびシュードウリジンで完全に置換されており、CleanCap AGのキャップおよびポリAテールを有した。
【0172】
細胞培養およびヌクレオフェクション。ヒトK562細胞をATCCから得て、10%ウシ胎仔血清(gibco)を補充したRPMI 1640+GlutaMax培地(gibco)中で培養した。Lonza 4D-Nucleofector(96ウェルシャトルデバイス、プログラムFF-120)を製造業者の使用説明書により使用して、Lonza SF細胞系キット(V4SC-2960)を利用し、シチジン塩基編集のためのPBS緩衝液中125pmolのgRNAおよび1.87pmolのBE4-Gam mRNA 6μLと組み合わせた、またはプライム編集のためのPBS緩衝液中100pmolのニッキングgRNAおよび1.35pmolのPE2 mRNAを有する125pmolのpegRNA 8μLと組み合わせた、SF緩衝液20μL中でトランスフェクション1回あたり20万個の細胞を用いてK562細胞(継代数4~14以内)にヌクレオフェクションを行った。環境酸素および5%二酸化炭素中、37℃で細胞を培養し、トランスフェクションの48時間後に細胞を回収した。
【0173】
ヒトJurkatクローンE6-1細胞をATCCから得て、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640+GlutaMax培地中で培養した。PBS緩衝剤中125pmolのpegRNA、100pmolのニッキングgRNAおよび1.35pmolのPE2 mRNA 8μLと組み合わせたSE緩衝液20μL中で20万個の細胞を用いてLonza SE Cell Lineキット(V4SC-1960)を利用してJurkat細胞(継代数7~20以内)にヌクレオフェクションを行った(プログラムCL-120)。トランスフェクションの72時間後に培養細胞を回収した。
【0174】
ヒトHepG2細胞をATCCから得て、10%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)+L-グルタミン+4.5g/L D-グルコース培地(gibco)中で培養した。HepG2細胞(継代数4~13以内)を培地から遠心沈殿し、PBSによるすすぎを行うか、または行わず、再度遠心沈殿した。PBS緩衝液中10pmolのgRNAおよび0.0625pmolのCas9 mRNA 3μLと組み合わせたSF緩衝液20μL中20万個の細胞を用いて、Lonza SF細胞系キット(V4SC-2960)を利用して細胞にヌクレオフェクションを行った(プログラムEH-100)か、またはSF緩衝液20μL中20万個の細胞を、PBS緩衝液中30pmolのgRNAおよび0.5pmolのCas9 mRNAまたは12.5pmolの化膿性連鎖球菌Cas9(SpCas9)タンパク質(Aldeveron)5μLと組み合わせることによって残留血清の存在下でヌクレオフェクションを行った。163残基gRNAについて、これらを、PBS緩衝液中125pmolの163残基gRNAおよび50pmolのSpCas9タンパク質5μLと組み合わせることによって、残留血清およびSF緩衝液の存在下で20万個の細胞に同様にヌクレオフェクションを行った。すべてのRNPトランスフェクションについて、ヌクレオフェクションのためにSF緩衝液中で細胞と組み合わせる前に組み合わせ、室温で約20分間インキュベートすることによって、PBS緩衝液中でSpCas9タンパク質(Aldevron)とgRNAを予備複合体化した。mRNAトランスフェクションのために、gRNAをPBS緩衝液中でCas9 mRNA(TriLink)と同様に組み合わせて、ヌクレオフェクションのためにSF緩衝液中で細胞と組み合わせるまで約20分間氷上に保持した。トランスフェクションの約72時間後に培養HepG2細胞を回収した。
【0175】
AllCells(Alameda、CA)からヒト初代T細胞(LP、CR、CD3+、NS)を得て、10%ウシ胎仔血清、5ng/mLのヒトIL-7および5ng/mLのヒトIL-15(gibco)を補充したRPMI 1640+GlutaMax培地中で培養した。抗ヒトCD3/CD28磁気Dynabeads(Thermo Fisher)を用いて、3:1のビーズ:細胞濃度で初代T細胞を48時間活性化させた。Lonza P3初代細胞キット(V4SP-3960)を利用して、PBS緩衝液中5pmolのgRNAおよび0.0625pmolのCas9 mRNA 2.7μLと組み合わせた、P3緩衝液 20μL中20万個の細胞を用いて、ビーズを除去した初代T細胞にヌクレオフェクションを行った(プログラムEO-115)。トランスフェクション後7日目に培養細胞を回収した。培養期間全体にわたり、T細胞をおよそ100万個/mL培地の密度に維持した。電気穿孔後、追加的な培地を2日毎に添加した。
【0176】
qRT-PCRアッセイ。ヒトK562細胞を上記のように培養し、反復1つあたり20万個の細胞に、記載のような125pmolのgRNA(Cas9 mRNAもタンパク質も有しない)をヌクレオフェクションした。各時点で、1.7mLのエッペンドルフチューブに細胞を収集し、PBSですすぎ、次いで750μLのQiazol中に再懸濁し、-20℃のフリーザーに移す前に室温に5分間保った。miRNeasyキット(Qiagen)を使用してQiaCube HT上でQiazol+クロロホルム抽出物からPBS中に総RNAを単離し、その直後、Protoscript II第1鎖cDNA合成キット(NEB)を使用してそれを逆転写した。Applied Biosystems QuantStudio 6 Flex装置で、一方がFAMで標識されたgRNAに対し、他方がΔCtとして計算される単離された総RNA量に対する規準化のためのVICで標識されたU6 snRNAに対する、2つのTaqMan MGBプローブを用いるTaqPath ProAmpマスターミックス(Thermo Fisher)を使用してqRT-PCRを行った。3つ組試料についてのΔCt値を平均し、最低観測平均ΔCt値に対して規準化して、ΔΔCt値を計算した。相対gRNAレベルを2-ΔΔCtとして計算した。
【0177】
PCR標的化ディープシーケンシングおよび標的化ゲノム修飾の定量。ゲノムDNAの精製およびPCR標的化ディープシーケンシングライブラリーの構築を前記のように行った。Qubit dsDNA BRアッセイキット(Thermo Fisher)を使用してライブラリーの濃度を決定した。ペアードエンドの2×220bpのリードを、0.8ng/μLのPCR増幅されたライブラリーで、20.5% PhiXと共にMiSeq(Illumina)を用いて配列決定した。
【0178】
FLASHバージョン1.2.11ソフトウェアを使用してペアードエンドリードを併合し、次いでデフォルトのパラメーターに設定したBWA-MEMソフトウェア(bwa-0.7.10)を使用してヒトゲノムに対してマッピングした。挿入または欠失がCas9切断部位の10bp以内に見い出されたかにより、インデルを有するかまたは有しないとリードをスコア化した。プライム編集分析について、所望の編集がリード内から同定されたならば、編集を有するとリードをスコア化した。シチジン塩基編集分析について、シチジンがPAM部位の10~20bp上流のウインドウ内で編集されたならば、塩基が編集されたとしてリードをスコア化した。各実験での各反復について、マッピングしたアンプリコン座位に応じてマッピングリードを分離し、インデルまたは編集の存在または非存在によってビン分けした。ビンあたりのリードの集計を使用して、各座位で産生された%インデルまたは%編集を計算した。プロットのためにインデルまたは編集収率および標準偏差を、正規分布に近似するためにln(r/(1-r))として変換された%インデルまたは%編集のロジット変換によって計算した(式中、rは、特定の座位あたりの%インデルまたは%編集である)。3つ組モックトランスフェクションは平均モック対照(または陰性対照)を与えたが、対応する陰性対照よりも有意に高い(t検定でp<0.05)平均インデル収率または平均編集収率を示す3つ組試料を、バックグラウンドよりも高いと見なした。
【0179】
[実施例1]
本実施例は、3’末端に2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(MP)および2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)修飾を有するガイドRNAの安定性を評価した。トランスフェクトされた細胞における3’末端にMSまたはMP修飾を有する単一ガイドRNAの相対寿命を評価するために、5’末端の最初の3つのヌクレオチド間連結でのMS修飾と、3’末端の最後の3つのヌクレオチド間連結でのMS修飾(3xMS,3xMSと表示)または3’末端での末端ヌクレオチド間連結での2、3もしくは4つの連続するMP修飾のいずれかとを有するガイドRNA(それぞれ3xMS,2xMP;3xMS,3xMP;および3xMS,4xMPと表示)を合成した。各々の修飾gRNAをCas9の非存在下でヒトK562細胞に個別にトランスフェクトし、qRT-PCRを使用して、トランスフェクションの1~96時間後の一連の時点で収集した細胞内に残るsgRNAの相対量を測定した。
【0180】
図7に示すように、3’末端がMP(2、3、または4つの連続するMPのいずれか)で修飾されたgRNAのいずれかと比較して、トランスフェクションの1、6、および24時間後にわたり検出された3xMS,3xMS gRNAの相対レベルに、より急激な低下が観察された。具体的には、トランスフェクションの1時間後に、トランスフェクトされたgRNAの相対量は、わずかに2.6倍だけ異なり、エラーバーは、3’末端保護の全部で4つの変形の間で大きく重複していたが、一方で、トランスフェクションの6時間後にずっと大きな差が観察され、3xMS,3xMS保護gRNAの残量は、3xMS,3xMPおよび3xMS,4xMP保護gRNAの残量(0.341~0.351)の約1/10の相対レベル(0.039)に低下した。差異は、24時間の時点でいっそう大きくなり、そのとき、それらは、3’末端保護レベルに沿って、3’末端に3xMSを有することから、2xMP、3xMP、4xMPを有することへの論理的順序で変動し、約250倍に及ぶ残留gRNAレベルを結果として生じ、これは、3’末端保護のレベルと一致した。したがって、複合体を形成していないgRNAの3’末端にMP修飾を組み込むことは、MS修飾と比べてトランスフェクトされた細胞におけるそれらの安定性を有意に、具体的にはMSのみで修飾されたgRNAと平行して試験された3つの異なるMP修飾gRNAについて1~2桁高めることができることが見い出された。3’末端に3または4つの連続MPを有する設計は、いっそう長期の時点(トランスフェクションの72および96時間後)にわたり遊離gRNAの寿命を延長することができる。
【0181】
[実施例2]
ホスホネート修飾は、DNAおよびRNAオリゴヌクレオチドに安定的に組み込むことができ、ホスホロチオエートと比べてそれらのヌクレアーゼ抵抗性を増大させることが実証されている。MPを20ntガイド配列部分に組み込むことによってgRNAの特異性を高めるためのMPの使用を探究している以前の報告では、例えば、Ryanら、Nucleic Acids Research 46、792~803(2018)に記載のように、位置5または11(20個のヌクレオチドの5’末端から数える)などの特異的配列位置でのMPがオフターゲット編集を有意に低減することができ、一方で高いオンターゲット編集を維持することが見出された。しかし、gRNAの5’末端での最初の1、2または3つのヌクレオチド内にMP修飾を組み込むことが、いくつかのガイド配列で、それらのオンターゲット切断活性を減少させ、かつ/またはそれらのオフターゲット活性を増大させ、したがって特異性を低下させる可能性があることも報告された(例えば、Ryanら、2018を参照されたい)。
【0182】
ガイドRNAにおけるホスホネート修飾の潜在的有用性をさらに探究するために、3’末端に異なる数の連続する2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(2’-O-メチル-3’-PACE、または「MP」)修飾を含有するgRNAの性能を、その末端に2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(または「MS」)修飾を有するガイドRNAと比較して評価した。この研究の結果は、Ryanら「Phosphonoacetate Modifications Enhance the Stability and Editing Yields of Guide RNAs for Cas9 Editors.」Biochemistry(2022)doi.org/10.1021/acs.biochem.lc00768にさらに記載されている。
【0183】
標的遺伝子としてHBBを使用して、比較的低い(飽和未満)量の化学修飾ガイドRNAと、Casタンパク質をコードするmRNAとによるHepG2細胞の共トランスフェクション後のCas活性を評価するためにこの実験を計画した。このような飽和未満量は、細胞の標的領域を編集するための厳しい状況を構成する。
【0184】
試料の3つのセットについて、Cas9をコードするmRNAを、HBBを標的とする修飾gRNAと共にヒト肝実質細胞(HepG2細胞)に共トランスフェクトした(上の表1参照)。第4のセットのHepG2細胞について、HBB内の同じ部位を標的とする修飾gRNAを、精製組換えCas9タンパク質と予備複合体化してRNPを形成させ、次いでそれを細胞内にトランスフェクトした。別々に培養した細胞の3つ組試料で各トランスフェクションを行った。ゲノムDNAを回収し、それぞれHBB遺伝子および遺伝子間オフターゲット部位に特異的なプライマーを使用してHBB標的およびオフターゲット配列を増幅して、アンプリコンを産生し、それをシーケンシングし、標的およびオフターゲット部位での編集の程度(「%インデル」)をシーケンシングの結果から決定した。ONおよびOFFは、それぞれオンターゲット配列およびオフターゲット配列を示す。HBB遺伝子内の選ばれた標的配列を標的とした場合に高い副次的活性を受けることが知られていることから、遺伝子間オフターゲット座位をモニタリングした。表1に記載された修飾gRNAについての編集収率を図2~5に棒グラフとしてプロットした。
【0185】
図2~5によって実証されるように、HBBを標的とする飽和未満レベルの修飾ガイドRNAと、Casタンパク質をコードするmRNA(または修飾ガイドRNAのRNP複合体)との共トランスフェクションは、同等量の未修飾gRNAを共トランスフェクトされた試料と比べて高レベルの編集収率を結果としてもたらした。さらに、修飾gRNAの3’末端での2、3、または4つのMP修飾の付加は、修飾gRNAの3’末端に3つのMS修飾を含む修飾gRNAと比べた実質的な増大に加えて、編集収率における漸進的に高い増大を結果としてもたらした。例えば、図2および4を参照されたい。図3および5によって示されるように、位置5または11(gRNA中の20ntガイド配列の5’末端から数える)でのMP修飾の包含も、オフターゲット活性を低減した。特に、gRNA中の位置5でのMPの包含は、編集収率に最小限の影響を有したのに対し、オフターゲット活性を実質的に低減した。
【0186】
3’末端のMP修飾がHepG2細胞における編集収率を有意に高めたことがさらに観察された(図3)。例えば、3’末端に2、3または4つの連続するMP修飾を有する設計は、3’末端に3xMSを有する同等の設計よりも少なくとも2倍多いCas9媒介インデルを与えた(3’末端での2xMP、3xMPおよび4xMP修飾についてオンターゲット部位で81%~83%に対し、3xMSについて38%)。3’末端に3xMSを使用する場合よりも2xMP、3xMPおよび4xMP修飾が1.3倍高いレベルのオンターゲットインデルを与えた点で、増大は、より控えめであったものの、初代ヒトT細胞にトランスフェクトされた同じgRNAについて類似の傾向が観察された(図8)。gRNAの20ntガイド配列部分における位置5にさらなるMPを組み込むことで、両方の細胞型においてOFF1部位での編集が有意に低下した一方で、特異性を高めるための手段として以前に報告されたように高いオンターゲット編集効率は維持された(例えば、Ryanら、2018を参照されたい)。実際に、OFF1部位でのインデルは、位置5にMPを組み込むことによってHepG2細胞において1/7~1/10に低減し、同様に初代T細胞において1/6~1/7に低減した。
【0187】
図9によって示されるように、塩基エディターと組み合わせた場合の化学修飾されたgRNAの使用も評価した。塩基エディターは、二本鎖切断を作らずに細胞におけるゲノムDNAの編集を可能にする様々なデアミナーゼの1つと融合されたCas9ニッカーゼ(nCas9)またはデッド型Cas9(dCas9)を中心に作られた代替的なゲノム編集システムのクラスである。シチジン塩基エディター(CBE)およびアデノシン塩基エディター(ABE)の両方が報告されており、これらは、塩基編集のためのいくつかの変形を起こさせた。このようなgRNAの3’末端でのMS修飾と対照的にMP修飾を使用する潜在的利益を、CBE、すなわちBE4-Gam mRNAに関連して試験した。3’末端にMSを有する代替設計と比べて、3’末端がMPで修飾されたgRNAを共トランスフェクトされたK562細胞においてCBE mRNAを使用することによって1.4倍高いレベルのシチジン編集が観察された。
【0188】
[実施例3]
本実施例は、化学合成されたpegRNAの3’末端での2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(MP)および2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)修飾の使用を評価した。EMX1におけるPAMをノックアウトするまたはRUNX1に3塩基挿入を導入する、文献から採用されたプライム編集のための2つのアプローチを探究するための実験を行った。これらのアプローチのどちらも15個のヌクレオチドを含むプライマー結合配列を有するpegRNAを利用する。本実験で評価した特定の配列編集を図18に示す。プライムエディター(この場合、Cas9ニッカーゼとMMLV由来逆転写酵素とを含む融合タンパク質)をコードするmRNAを、EMX1遺伝子を標的とするpegRNAと共にK562またはJurkat細胞内に導入した。別々に培養した3つ組の細胞試料で各トランスフェクションを行った。ゲノムDNAを回収し、EMX1に特異的なプライマーを使用してEMX1標的配列を増幅してアンプリコンを産生し、アンプリコンを配列決定し、配列決定の結果からプライム編集度(「%編集」)を決定した。配列決定の結果から、EMX1標的配列内のニッカーゼ部位での望まれないインデル形成度(「%インデル」)も決定した。このようなインデルは、プライム編集の公知の副産物であり、一般的に望ましくないと見なされる(Anzaloneら 2019参照)。pegRNAあたりのプライム編集の収率およびインデル副産物の収率を図11~16に棒グラフとしてプロットする。このアッセイに使用した配列を、表2に示される配列から選択した。図11~12におけるデータを、EMX1を標的とするpegRNAの第1のバッチ合成を使用して得たが、一方で図13~14におけるデータは、EMX1を標的とするpegRNAの第2のバッチ合成を使用して得た。同じ配列のいくつかを第2のバッチ合成で再度合成したことに留意されたい。逆に、RUNX1を標的とするpegRNAを使用して図15~16におけるデータを得た(すなわち、表3に記載される配列を使用する)。
【0189】
図11~16に示す結果によって説明されるように、pegRNAのそれぞれ5’末端および3’末端での化学修飾としてのMSおよびMPヌクレオチドの包含は、プライム編集活性を増大させる。pegRNAの3’末端が追加的な機能性部位(例えば、プライマー結合部位および逆転写酵素の鋳型配列)を含有するという事実を考えると、pegRNAの3’末端に修飾ヌクレオチドを有する構築物の高い活性は、特に驚くべきことである。上述のように本開示の前には、この部位での化学修飾ヌクレオチド(例えば、MSおよび/またはMP)の包含が、pegRNAのこれらの他の3’末端構成要素によって提供される機能性に干渉することが予期されていた。
【0190】
[実施例4]
本実施例は、化学合成されたpegRNAの3’末端でのMPまたはMS修飾の組込みを評価した。本実験に使用した方法は、上記方法と一致する。手短に言えば、EMX1におけるPAMをノックアウトするまたはRUNX1に3塩基挿入を導入するためにプライム編集アプローチを採用した。EMX1またはRUNX1の編集のためにK562細胞に、プライムエディターmRNA(この場合、Cas9ニッカーゼとMMLV由来逆転写酵素とを含む融合タンパク質)と、5’末端で3xMSにより、および3’末端で様々な修飾スキームにより(表示のように)修飾された合成pegRNAとを共トランスフェクトした。EMX1またはRUNX1の編集のために、同じpegRNAを使用してJurkat細胞に同様にトランスフェクトした。所望の編集(%編集)および任意の夾雑インデル副産物(%By-インデル)の両方について、標的座位のPCRアンプリコンのディープシーケンシングによって編集効率を測定した。添付の図面中の棒線は、標準偏差付きの平均を表す(n=3)。
【0191】
図19~22によって示すように、本実験は、両方の標的について3’末端に3xMSを有するpegRNAを、3’末端に1、2または3つの連続するMPを有する代替的な設計と比較した。K562またはJurkat細胞において各pegRNAをPE2のmRNAと共トランスフェクトした、結果は、3’末端にMP修飾を有するpegRNAが良好な性能を示し、3xMSと類似の、または場合によっては幾分高い編集収率を達成できることを示している。ここで試験した2つのpegRNA配列について、3’末端に2×MPおよび/または3xMPを有する設計は、3’末端に1xMPを有する設計よりも一貫して良好な性能を示した(具体的には1.2~1.4倍良好)。
【0192】
[実施例5]
本実施例では、化学合成されたgRNAの3’末端でのMP修飾の使用が、血清の存在下で編集収率を最大化することを助けることを実証した。インビボで(ナノキャリアまたは他の細胞透過性製剤により)送達した場合にCRISPR-Cas構成要素が遭遇することがある、より厳しい細胞環境を刺激するために、培地から単離されたが残った血清を除去するためにPBS緩衝液ですすがなかった細胞内に、Cas9 mRNAをgRNAと共トランスフェクトする実験を行った。血清は、ヌクレアーゼを含有することが知られている。
【0193】
本実験に使用した方法は、上記方法と一致する。しかし、この実験条件下で、実質的な編集レベルを達成するためにより多量のgRNAおよびCas9 mRNAが必要であったことが注目される。具体的には、実験のためにトランスフェクション1回あたり3倍多いgRNAおよび8倍多いCas9を使用し、結果として図23に示されるデータがもたらされた。これを、CRISPR-Cas構成要素を導入する前にトランスフェクション1回あたり同数の細胞を緩衝液で洗浄した、図3に示されるデータをもたらした実験と比較した。
【0194】
本研究の結果に基づき、細胞からすすぎ切れなかった血清中の細胞外ヌクレアーゼが、トランスフェクトされたRNAを分解したように見える。本発明者らは、未洗浄のHepG2細胞にCas9 mRNAを共トランスフェクトした場合に、3’末端にMP修飾を有するgRNAが、3’末端にMS修飾を有するgRNAと比較して実質的に高い(1桁以上の)編集収率を与えたことを見出した(図23)。具体的には、3’末端に3xMSを有する場合の2%未満と比べて、3’末端に1つまたは複数のMPを有するgRNAについて15%~44%編集収率が観察された。
【0195】
並行する実験で、PBS緩衝液中のCas9タンパク質との予備複合体化によって各gRNAのRNPバージョンを調製し、未洗浄のHepG2細胞のアリコートにトランスフェクトした。予想通り、RNP製剤としての未修飾および3xMS修飾されたgRNAは、これらをCas9 mRNAと共トランスフェクトした場合よりも高いインデル収率を与えた。それは、RNPの状態でのgRNAのCas9タンパク質との予備複合体化が、gRNAを核酸分解から遮蔽することを助けるからである(図24および図23に示す結果を比較)。3’末端にMP修飾を有するgRNAを組み込んでいるRNPと、MS修飾を有するgRNAを組み込んでいるRNPとの間の編集効率における改善は、Cas9 mRNAとの共トランスフェクションにこれらの修飾を使用する場合ほど劇的でなかったにせよ、3’末端にMPを有する設計は、3’末端に3xMSを有する類似の設計よりも有意に高いCas9媒介インデルを与えた(ONターゲット部位で3’末端での3xMSについての52%と比べて、3’末端での2xMP、3xMPおよび4xMP修飾についての70%~73%のインデル、約1.3倍の差)(図24参照)。CRISPRaによる遺伝子活性化のためにそれらを使用する代わりにインデルを産生するために、CRISPRa SAMシステムのために設計されたがRNP製剤の状態でSpCas9タンパク質と共に使用した異なるセットの合成163残基gRNAについて、類似のアウトカムが観察された(図25)。
【0196】
[例示的な実施形態]
<改変セクションA>
実施形態A1. 1つまたは複数の困難な状況下で核酸中の標的領域を編集する方法であって、
細胞に、
a)CRISPR関連(「Cas」)タンパク質、ならびに
b)標的領域とハイブリダイズできるガイド配列と、Casタンパク質と相互作用する足場とを含む修飾ガイドRNAであって、修飾ガイドRNAが、5’末端および3’末端を含み、修飾ガイドRNAが、3’末端の5つのヌクレオチド内に1つまたは複数の修飾ヌクレオチドをさらに含み、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、2’修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドおよびヌクレオチド間連結修飾を含み、2’修飾が、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)および2’-デオキシから選択され、ヌクレオチド間連結修飾が、ホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレートである、修飾ガイドRNA
を提供するステップを含み;
前記1つまたは複数の困難な状況が、
i.標的領域または標的領域を含む細胞が血清(例えば、ウシ胎仔血清)を含む培地中にあること;
ii.標的領域を含む細胞が、血清を含む培地中で以前に培養されたものであり、細胞が、血清と不完全に分離されたものであること;
iii.標的領域を含む細胞が1つまたは複数のエキソリボヌクレアーゼを含む培地中で以前に培養されたものであり、細胞が、1つまたは複数のエキソリボヌクレアーゼと不完全に分離されたものであること;
iv.標的領域を含む細胞は、1つまたは複数のエキソリボヌクレアーゼの比較的高い発現などのエキソリボヌクレアーゼ活性の比較的高いレベルを有すること;
v.標的領域を含む細胞が、リボヌクレアーゼ阻害剤の比較的低い発現などのリボヌクレアーゼ阻害剤活性の比較的低いレベルを有すること;
vi.修飾ガイドRNAが、標的領域を含む細胞への送達前にCasタンパク質と複合体を形成していないこと;および
vii.それらの適用可能な組合せ
からなる群から選択され;
Casタンパク質と修飾ガイドRNAとが、標的領域の編集を結果としてもたらす複合体を形成する、方法。
実施形態A2. ヌクレオチド間連結修飾がホスホノカルボキシレートである、実施形態A1に記載の方法。
実施形態A3. ホスホノカルボキシレートがホスホノアセテートである、実施形態A2に記載の方法。
実施形態A4. チオホスホノカルボキシレートがチオホスホノアセテートである、実施形態A1に記載の方法。
実施形態A5. Casタンパク質が、Casタンパク質をコードするmRNAとして導入される、実施形態A1~4のいずれかに記載の方法。
実施形態A6. Casタンパク質が、Casタンパク質をコードする発現ベクターとして導入される、実施形態A1~4のいずれかに記載の方法。
実施形態A7. Casタンパク質をコードするmRNAまたは発現ベクターが、標的領域に導入される場合にナノ粒子中に含有される、実施形態A5またはA6に記載の方法。
実施形態A8. Casタンパク質およびガイドRNAが、リボ核タンパク質(RNP)複合体として導入される、実施形態A1~A4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態A9. 2’修飾が2’-O-メチルである、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A10. 2’修飾が2’-フルオロである、実施形態A1~A8のいずれかに記載の方法。
実施形態A11. 2’修飾が2’-MOEである、実施形態A1~A8のいずれかに記載の方法。
実施形態A12. 2’修飾が2’-デオキシである、実施形態A1~A8のいずれかに記載の方法。
実施形態A13. 1つまたは複数の編集が、1つもしくは複数の単一ヌクレオチド変化、1つもしくは複数のヌクレオチドの挿入、および/または1つもしくは複数のヌクレオチドの欠失を含む、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A14. 標的領域が無細胞アッセイに存在する、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A15. 細胞を溶解することなどによって細胞から核酸を抽出するステップ、抽出された核酸と、エキソリボヌクレアーゼまたは他の酵素などの1つまたは複数の他の細胞構成要素とを含むアッセイ混合物を形成するステップ、およびガイドRNAをアッセイ混合物に導入するステップをさらに含む、実施形態A14に記載の方法。
実施形態A16. 標的領域が、高いリボヌクレアーゼの発現、濃度および/または活性を有する細胞、例えば、高い特定のヌクレアーゼの細胞型にある、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A17. 細胞が初代細胞を含む、実施形態A16に記載の方法。
実施形態A18. 細胞がエクスビボで存在し、方法が、生きた生物から細胞を分離するための1つまたは複数のステップをさらに含む、実施形態A17に記載の方法。細胞は、反応混合物中に分離することができる、または分離された細胞を反応混合物中に移すことができる。
実施形態A19. 細胞が、修飾ガイドRNAおよびCasタンパク質を細胞内の標的領域に導入する前に多細胞生物から単離される、実施形態A16~A18のいずれかに記載の方法。
実施形態A20. 修飾ガイドRNAおよびCasタンパク質を細胞内の標的領域に導入した後に、細胞またはその子孫が多細胞生物に戻される、実施形態A19に記載の方法。
実施形態A21. 細胞が初代細胞である、実施形態A16~A20のいずれかに記載の方法。
実施形態A22. 初代細胞が幹細胞または免疫細胞である、実施形態A21に記載の方法。
実施形態A23. 幹細胞が、造血幹および前駆細胞(HSPC)、間葉系幹細胞、神経幹細胞、または臓器幹細胞である、実施形態A22に記載の方法。
実施形態A24. 免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、末梢血単核細胞(PBMC)、または末梢血リンパ球(PBL)である、実施形態A22に記載の方法。
実施形態A25. 細胞がT細胞である、実施形態A24に記載の方法。
実施形態A26. 細胞が肝実質細胞である、実施形態A16~A20のいずれかに記載の方法。
実施形態A27. 細胞が、各々標的領域を含む細胞の集団である、実施形態A16~A26のいずれかに記載の方法。
実施形態A28. 細胞が細胞培養物中にあり、細胞が、血清または1つもしくは複数の他の培地構成要素を含む細胞培養培地中にある、実施形態A16~A27のいずれかに記載の方法。
実施形態A29. Casタンパク質および修飾ガイドRNAが導入される前に、細胞が細胞培養培地から分離される、実施形態A28に記載の方法。
実施形態A30. Casタンパク質および修飾ガイドRNAが生きた生物に導入される、実施形態A1~13およびA16~A29のいずれかに記載の方法。
実施形態A31. Casタンパク質および修飾ガイドRNAが、生きた生物中または生きた生物からの血清含有液に導入される、実施形態A30に記載の方法。
実施形態A32. 編集がプライム編集であり、修飾ガイドRNAが、所望の編集を含む領域をさらに含む、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A33. 編集が、相同組換え修復(HDR)、非相同末端結合(NHEJ)、プライム編集、または塩基編集を含む、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A34. Casタンパク質がCas9またはCas12タンパク質である、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A35. Casタンパク質が、DNAの一本鎖にニックを入れることができるCasニッカーゼである、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A36. Casタンパク質が、Casドメインと異種機能性ドメインとを含む融合タンパク質であり、異種機能性ドメインが、塩基編集活性、ヌクレオチドデアミナーゼ活性、トランスグリコシラーゼ活性、メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、逆転写酵素活性、ポリメラーゼ活性、翻訳活性化活性、翻訳抑制活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、クロマチン修飾またはリモデリング活性、ヒストン修飾活性、ヌクレアーゼ活性、一本鎖RNA切断活性、二本鎖RNA切断活性、一本鎖DNA切断活性、二本鎖DNA切断活性、核酸結合活性、検出可能な活性、またはそれらの任意の組合せを含む、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A37. 融合タンパク質が、Casニッカーゼドメインおよびヌクレオチドデアミナーゼを含む、実施形態A36に記載の方法。
実施形態A38. ヌクレオチドデアミナーゼが、アデノシンデアミナーゼまたはシチジンデアミナーゼである、実施形態A36に記載の方法。
実施形態A39. 融合タンパク質が、1つまたは複数の核酸修飾ドメインを含む、実施形態A36に記載の方法。
実施形態A40. 核酸修飾ドメインが、DNAポリメラーゼドメイン、リコンビナーゼドメイン、リボヌクレオチドレダクターゼドメイン、メチルトランスフェラーゼドメイン、ジアデノシン四リン酸ヒドロラーゼドメイン、DNAヘリカーゼドメイン、またはRNAヘリカーゼドメインである、実施形態A36に記載の方法。
実施形態A41. 融合タンパク質が、Casニッカーゼドメインおよび逆転写酵素ドメインを含む、実施形態A36に記載の方法。
実施形態A42. ガイドRNAが単一ガイドRNAである、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A43. 修飾ガイドRNAが、少なくとも40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、or 139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、もしくは200個のヌクレオチド、および/または
最大180、179、178、177、176、175、174、173、172、171、170、169、168、167、166、165、164、163、162、161、159、158、157、156、155、154、153、152、151、150、149、148、147、146、145、144、143、142、141、140、139、138、137、136、135、134、133、132、131、130、129、128、127、126、125、124、123、122、121、もしくは120個のヌクレオチドを含む単一ガイドRNAである、実施形態A42に記載の方法。
実施形態A44. ガイドRNAが、5’末端の5つのヌクレオチド内に、または5’末端の3つのヌクレオチド内に1つまたは複数の修飾ヌクレオチドをさらに含む、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A45. 5’末端での1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、2’修飾およびヌクレオチド間連結修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含み、2’修飾が、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)および2’-デオキシから選択され、ヌクレオチド間連結修飾が、ホスホノカルボキシレート、チオホスホノカルボキシレート、およびホスホロチオエートから選択される、実施形態A44に記載の方法。
実施形態A46. ガイドRNAが、ガイドRNAの5’末端および3’末端の両方から少なくとも5つのヌクレオチド以外の1つまたは複数の位置に1つまたは複数の修飾ヌクレオチドをさらに含む、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態A47. 1つまたは複数の厳しい状況で、細胞内の核酸における標的領域内の標的遺伝子の発現をモジュレートする方法であって、細胞に
a)CRISPR関連(「Cas」)タンパク質、またはCasタンパク質をコードするDNAもしくはmRNA、ならびに
b)標的領域とハイブリダイズできるガイド配列と、Casタンパク質と相互作用する領域とを含む修飾ガイドRNAであって、修飾ガイドRNAが、5’末端および3’末端を含み、修飾ガイドRNAが、3’末端の5つのヌクレオチド内に1つまたは複数の修飾ヌクレオチドをさらに含み、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、2’修飾およびヌクレオチド間連結修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含み、2’修飾が、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)および2’-デオキシから選択され、ヌクレオチド間連結修飾が、ホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレートである、ガイドRNA
を提供することを含み;
Casタンパク質と修飾ガイドRNAとが、標的領域の発現のモジュレーションを結果としてもたらす複合体を形成する、方法。
実施形態A48. Casタンパク質または修飾ガイドRNAが、エピジェネティック修飾因子、または転写もしくは翻訳活性化もしくは抑制シグナルをさらに含む、実施形態A47に記載の方法。
実施形態A49. Casタンパク質が、不活性Casヌクレアーゼドメインと、転写活性化ドメインおよび転写抑制ドメインから選択される異種機能性ドメインとを含む融合タンパク質である、実施形態A47に記載の方法。
実施形態A50. 異種機能性ドメインが転写活性化ドメインである、実施形態A49に記載の方法。
実施形態A51. 転写活性化ドメインが、VP64ドメイン、p65ドメイン、MyoD1ドメイン、またはHSF1ドメインである、実施形態A50に記載の方法。
実施形態A52. 異種機能性ドメインが転写抑制ドメインである、実施形態A49に記載の方法。
実施形態A53. 転写抑制ドメインが、KRABドメイン、SIDドメイン、SID4Xドメイン、NuEドメイン、またはNcoRドメインである、実施形態A52に記載の方法。
実施形態A54. 1つまたは複数の厳しい状況で核酸内の標的領域をプライム編集する方法であって、
a)細胞に、
核酸の一本鎖にニックを入れることができるCasタンパク質と、
逆転写酵素と、
i)標的領域とハイブリダイズできるガイド配列、
ii)Casタンパク質と相互作用する領域、
iii)核酸の配列への1つまたは複数の編集を含む逆転写酵素の鋳型配列、および
iv)標的領域の相補体と結合することができるプライマー結合部位配列
を含む修飾プライム編集ガイドRNA(「pegRNA」)と
を提供するステップを含み;
修飾pegRNAが、5’末端および3’末端を含み、修飾pegRNAが、3’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドをさらに含み、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、2’修飾およびヌクレオチド間連結修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含み、2’修飾が、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)および2’-デオキシから選択され、ヌクレオチド間連結修飾がホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレートであり;
Casタンパク質および修飾ガイドRNAが、標的領域の編集を結果としてもたらす複合体を形成する、方法。
実施形態A55. Casタンパク質および逆転写酵素がリンカーによって接続されて融合タンパク質を形成する、実施形態A54に記載の方法。
実施形態A56. ガイドRNAが、5’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結と、3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレートヌクレオチド間連結とを含む、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態A57. ガイドRNAが、5’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結と、3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノアセテートまたはチオホスホノアセテートヌクレオチド間連結とを含む、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態A58. ガイドRNAが、5’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも1つのMSと、3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するMPまたはMSPとを含む、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態A59. ガイドRNAが、5’末端の5つのヌクレオチド内の3つのMSと、3’末端の5つのヌクレオチド内の3つのMPまたはMSPとを含む、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態A60. 標的遺伝子の発現の編集および/またはモジュレーションが、多重的に(すなわち、少なくとも2つの標的遺伝子または少なくとも2つの標的領域に対して)行われる、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
<セクションB>
実施形態B1. 細胞内の核酸における標的領域を編集する方法であって、細胞に、
a)CRISPR関連(「Cas」)タンパク質、ならびに
b)5’末端および3’末端と;
標的領域内の標的配列とハイブリダイズできるガイド配列と、
Casタンパク質と相互作用する足場領域と、
5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾、および3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾と
を含む修飾ガイドRNA
を提供するステップを含み;
前記細胞が、ヌクレアーゼ含有液の存在下のエクスビボで存在し、またはインビボで存在し、
前記提供するステップが、標的領域の編集を結果としてもたらす、方法。
実施形態B1.1. 細胞内の核酸における標的領域を編集する方法であって、細胞に、
a)CRISPR関連(「Cas」)タンパク質、ならびに
b)一方がプライム編集末端であり、他方が遠位末端である5’末端および3’末端を含むプライム編集ガイドRNA(pegRNA)である修飾ガイドRNAであって、
標的領域内の標的配列とハイブリダイズできるガイド配列と、
Casタンパク質と相互作用する足場領域と、
遠位末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾、およびプライム編集末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾と
をさらに含む修飾ガイドRNA
を提供するステップを含み;
細胞が、ヌクレアーゼ含有液の存在下のエクスビボで存在し、またはインビボで存在し、
前記提供するステップが、標的領域の編集を結果としてもたらす、方法。
実施形態B2. 前記編集が、その他の点で修飾ガイドRNAと同一である未修飾gRNAによるものよりも高い効率で起こる、実施形態B1またはB1.1に記載の方法。
実施形態B3. 細胞内の核酸における標的領域内の標的遺伝子の発現をモジュレートする方法であって、細胞に、
a)CRISPR関連(「Cas」)タンパク質、ならびに
b)5’末端および3’末端と;
標的領域内の標的配列とハイブリダイズできるガイド配列と、
Casタンパク質と相互作用する足場領域と、
5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾、および3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾と
を含む修飾ガイドRNAを提供するステップを含み;
前記細胞が、ヌクレアーゼ含有液の存在下のエクスビボで存在し、またはインビボで存在し、
前記提供するステップが、標的遺伝子の発現のモジュレーションを結果としてもたらす、方法。
実施形態B4. モジュレーションが、その他の点で修飾ガイドRNAと同一である未修飾gRNAによるものよりも高い効率で起こる、実施形態B3に記載の方法。
実施形態B5. 細胞がインビボで存在する、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B6. 細胞が、ヌクレアーゼ含有液の存在下でエクスビボで存在する、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B7. 修飾ガイドRNAが、5’末端の5つのヌクレオチド内に少なくとも2つの連続する2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)を含む、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法(例外:本実施形態が実施形態B1.1に従属する場合は「5’末端」の代わりに「遠位末端」)。
実施形態B8. ホスホノカルボキシレートがホスホノアセテートであり、チオホスホノカルボキシレートがチオホスホノアセテートである、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B9. 修飾ガイドRNAが、3’末端の5つのヌクレオチド内に少なくとも2つの連続する2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(MP)または2’-O-メチル-3’-チオホスホノアセテート(MSP)を含む、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法(例外:本実施形態が実施形態B1.1に従属する場合は「5’末端」の代わりに「プライム終止末端」)。
実施形態B10. 修飾ガイドRNAが、5’末端および3’末端内の5つのヌクレオチドの外側に位置する修飾ヌクレオチドをさらに含む、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B11. 修飾ガイドRNAが一本鎖ガイドRNAである、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B12. Casタンパク質が、Casタンパク質をコードするmRNAとして提供される、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B13. Casタンパク質が、Casタンパク質をコードするDNAとして提供される、実施形態B1~B11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B14. DNAがウイルス発現ベクターである、実施形態B13に記載の方法。
実施形態B15. Casタンパク質および修飾ガイドRNAが、リボ核タンパク質複合体(RNP)として提供される、実施形態B1~B11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B16. Casタンパク質および/または修飾ガイドRNAが、ナノ粒子中に提供される、実施形態B1~B11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B17. 効率が少なくとも5%高い、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B18. 効率が少なくとも10%高い、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B19. 効率が少なくとも15%高い、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B20. 効率が少なくとも20%高い、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B21. 効率が少なくとも25%高い、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B22. 効率が少なくとも30%高い、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B23. 効率が少なくとも35%高い、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B24. 効率が少なくとも40%高い、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B25. 効率が少なくとも45%高い、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B26. 効率が少なくとも50%高い、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B27. Casタンパク質がDNAの両方の鎖を切断することができる、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B28. Casタンパク質がニッカーゼである、実施形態B1~B26のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B29. Casタンパク質がヌクレアーゼ活性を有しない、実施形態B1~B26のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B30. Casタンパク質が、異種タンパク質をさらに含む融合タンパク質の一部である、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B31. Casタンパク質がII型Casタンパク質である、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B32. Casタンパク質が、Cas9タンパク質、またはそのバリアントもしくは断片である、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B33. Cas9タンパク質が化膿性連鎖球菌に由来する、実施形態B32に記載の方法。
実施形態B34. Casタンパク質が、Cpf1タンパク質、またはそのバリアントもしくは断片である、実施形態B1~B32のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B35. Casタンパク質が、少なくとも2つの異なる野生型Casタンパク質からの配列を有するハイブリッドタンパク質である、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B36. 修飾ガイドRNAが40~70ヌクレオチド長である、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B37. 修飾ガイドRNAが40~100ヌクレオチド長である、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B38. 修飾ガイドRNAが90~110ヌクレオチド長である、実施形態B1~B35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B39. 修飾ガイドRNAが90~130ヌクレオチド長である、実施形態B1~B35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B40. 修飾ガイドRNAが130~160ヌクレオチド長である、実施形態B1~B35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B41. 修飾ガイドRNAが160~200ヌクレオチド長である、実施形態B1~B35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B42. 修飾ガイドRNAがpegRNAである、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B43. ホスホロチオエート、ホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾が、各々、2’-O-メチル修飾も含むヌクレオチドに存在する、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B44. 5’末端および3’末端と、
第2の標的領域内の第2の標的配列とハイブリダイズできるガイド配列と、
5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾(本実施形態がB1.1に従属する場合はこれが遠位末端であることを除く)、および3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾(本実施形態がB1.1に従属する場合はこれがプライム編集末端であることを除く)と
を含む第2の修飾ガイドRNAを使用して細胞内の第2の標的領域を編集するステップをさらに含む、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B45. 5’末端および3’末端と、
第3の標的領域内の第3の標的配列とハイブリダイズできるガイド配列と、
5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾、および3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾と
を含む第3の修飾ガイドRNAを使用して細胞内の第3の標的領域における第3の標的遺伝子の発現をモジュレートするステップをさらに含む、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B46. ヌクレアーゼがエキソヌクレアーゼである、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態B47. ヌクレアーゼがリボヌクレアーゼである、前記のB実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
<セクションC>
実施形態C1. 細胞内の第1の標的領域および第2の標的領域を含む2つ以上の核酸標的領域を編集する方法であって、細胞に、
a)CRISPR関連(「Cas」)タンパク質;
b)5’末端および3’末端と、
第1の標的領域内の第1の標的配列とハイブリダイズできる第1のガイド配列と、
Casタンパク質と相互作用する足場領域と、
5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾、および3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾と
を含む第1の修飾ガイドRNA;ならびに
c)5’末端および3’末端と、
第2の標的領域内の第2の標的配列とハイブリダイズできる第2のガイド配列と、
Casタンパク質と相互作用する足場領域と、
5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾、および3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾と
を含む第2の修飾ガイドRNA
を提供するステップを含み;
前記細胞が、ヌクレアーゼ含有液の存在下のエクスビボで存在し、またはインビボで存在し、
前記提供するステップが、第1および第2の標的領域の編集を結果としてもたらす、方法。
実施形態C2. 細胞内の第2の標的領域における第1の標的領域および第2の標的遺伝子のうちの少なくとも第1の標的遺伝子の発現をモジュレートする方法であって、細胞に、
a)CRISPR関連(「Cas」)タンパク質;
b)5’末端および3’末端と、
第1の標的領域内の第1の標的配列とハイブリダイズできる第1のガイド配列と、
Casタンパク質と相互作用する足場領域と、
5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾、および3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾と
を含む第1の修飾ガイドRNA;ならびに
c)5’末端および3’末端と、第2の標的領域内の第2の標的配列とハイブリダイズできる第2のガイド配列と、
Casタンパク質と相互作用する足場領域と、
5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数のホスホロチオエート修飾、および3’末端の5つのヌクレオチド内の少なくとも2つの連続するホスホノカルボキシレートまたはチオホスホノカルボキシレート修飾と
を含む第2の修飾ガイドRNA
を提供するステップを含み;
前記細胞が、ヌクレアーゼ含有液の存在下のエクスビボで存在し、またはインビボで存在し、
前記提供するステップが、第1および第2の標的遺伝子の発現のモジュレーションを結果としてもたらす、方法。
実施形態C3. 第1の標的領域の編集または第1の標的遺伝子のモジュレーションが、第1の修飾ガイドRNAとその他の点で同一の未修飾ガイドRNAのものよりも高い第1の効率を有する、実施形態C1またはC2に記載の方法。
実施形態C4. 第2の標的領域の編集または第2の標的遺伝子のモジュレーションが、第2の修飾ガイドRNAとその他の点で同一の未修飾ガイドRNAのものよりも高い第2の効率を有する、実施形態C3に記載の方法。
実施形態C5. 細胞がインビボで存在する、前記のC実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態C6. 細胞が、ヌクレアーゼ含有液の存在下のエクスビボで存在する、実施形態C1~C4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態C7. A実施形態またはB実施形態の各々から適用可能な追加的な限定をさらに含む、前記のC実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0199】
例示的なまたは好ましい実施形態の前述の説明は、特許請求の範囲によって定義される場合の本開示を限定するのではなく、例示するものと見なすべきである。容易に認識されるように、上に示される特徴の多数の変形形態および組合せは、特許請求の範囲に示される本開示から逸脱せずに利用することができる。このような変形形態は、本開示の範囲からの逸脱と見なされず、すべてのこのような変形形態は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。本明細書に引用されるすべての参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれている。
【0200】
本明細書に言及するすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれていると具体的かつ個別に示された場合と同程度に参照により本明細書の一部をなすものとする。
図1
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【配列表】
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【国際調査報告】