(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】送達デバイスおよび組成物
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20240905BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240905BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240905BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240905BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240905BHJP
A61K 31/465 20060101ALI20240905BHJP
A61P 25/34 20060101ALI20240905BHJP
A61P 25/26 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61K9/12
A61K9/72
A61K45/00
A61K9/08
A61K47/10
A61K31/465
A61P25/34
A61P25/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515834
(86)(22)【出願日】2022-09-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 US2022043262
(87)【国際公開番号】W WO2023039266
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524092615
【氏名又は名称】ニコノックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベラガ,シタラム
(72)【発明者】
【氏名】スタダーマン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ゴンダ,イゴール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA25
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC01
4C076CC21
4C076CC44
4C076DD37
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA56
4C084NA07
4C084NA10
4C084ZA01
4C084ZC39
4C086AA01
4C086AA10
4C086BC20
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA56
4C086NA07
4C086NA10
4C086ZA01
4C086ZC39
(57)【要約】
ニコチンまたはその塩を含むAPIのエアロゾル化のための送達デバイスおよび製剤。送達デバイスは、エアロゾル状のAPIを送達するための吸入器を含んでいてもよい。吸入器は、APIおよび1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;エアロゾルを送達するためにその容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;そのノズル、バルブまたは出口の下流に位置するインサートを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル状のAPIを送達するための吸入器であって:
(a)APIおよび1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;
(b)エアロゾルを送達するために前記容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;
(c)前記ノズル、バルブまたは出口の下流に位置するインサート
を含む、吸入器。
【請求項2】
前記インサートが、前記ノズル、バルブ、または出口から約1mmから約10mm下流に位置している、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記インサートが、中央に位置するオリフィスを含む、請求項1に記載の吸入器。
【請求項4】
前記インサートが、前記ノズル、バルブ、または出口の下流の空気通路に沿った総断面積の約10%から約90%に沿って障害物を提供する、請求項1に記載の吸入器。
【請求項5】
前記容器が、乾燥粉末の形態でAPIを含む、請求項1に記載の吸入器。
【請求項6】
前記容器が、水溶液中にあるAPIを含む、請求項1に記載の吸入器。
【請求項7】
前記水溶液が、アルコールを含む、請求項6に記載の吸入器。
【請求項8】
前記アルコールが、エタノールである、請求項7に記載の吸入器。
【請求項9】
前記吸入器が、前記APIを含むエアロゾル用量を放出し、前記放出された用量の少なくとも30%が、0.5~3.5マイクロメートルの空気力学的直径を有する、請求項1に記載の吸入器。
【請求項10】
前記エアロゾル用量が、5~140L/分の吸気流量で放出される、請求項1に記載の吸入器。
【請求項11】
少なくとも40%の放出された用量が、約4ミクロン未満の空気力学的サイズを有する液滴に含まれる、請求項1に記載の吸入器。
【請求項12】
前記APIが、ニコチンまたはその塩である、請求項1から11のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項13】
前記APIが、ニコチン塩の形態である、請求項12に記載の吸入器。
【請求項14】
前記ニコチン塩が、クエン酸塩または硫酸塩である、請求項13に記載の吸入器。
【請求項15】
約0.01mgから約1mgのニコチン(遊離塩基基準で)が、1回あたりの作動で送達される、請求項12に記載の吸入器。
【請求項16】
対象の肺へのAPIの標的化送達の方法であって、前記対象に:
(a)APIおよび1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;
(b)エアロゾルを送達するために前記容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;
(c)前記ノズル、バルブまたは出口の下流に位置するインサートであって、吸入器のマウスピース内に配置されるインサート
を含む前記吸入器を投与することを含む、方法。
【請求項17】
前記APIが、ニコチンまたはその塩である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
紙巻きタバコおよび他の形態のタバコの消費を低減または防止するために対象に対してニコチン代替療法(NRT)を実行するための方法であって、前記対象に:
(a)ニコチンまたはその塩および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;
(b)エアロゾルを送達するために前記容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;
(c)吸入器のマウスピース内で前記ノズル、バルブまたは出口の下流に位置するインサート
を含む前記吸入器を投与することを含む、方法。
【請求項19】
エアロゾルが放出される位置から下流に位置する1つまたは複数のインサートを含む、前記エアロゾルを生成することができる吸入器。
【請求項20】
前記1つまたは複数のインサートが、前記吸入器のマウスピース内に位置している、請求項19に記載の吸入器。
【請求項21】
前記吸入器が、ソフトミスト吸入器(SMI)である、請求項19に記載の吸入器。
【請求項22】
前記SMIが、エアロゾル液滴を形成するために交差する噴流を形成する、請求項21に記載の吸入器。
【請求項23】
前記吸入器が、加圧式吸入器である、請求項19に記載の吸入器。
【請求項24】
前記吸入器が、乾燥粉末吸入器(DPI)である、請求項19に記載の吸入器。
【請求項25】
前記吸入器が、ネブライザーを含む、請求項19に記載の吸入器。
【請求項26】
前記ネブライザーが、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、メッシュ式ネブライザーから選択される、請求項25に記載の吸入器。
【請求項27】
前記インサートが、前記エアロゾルが生成される位置から約1mmから約10mm下流に位置している、請求項19に記載の吸入器。
【請求項28】
前記インサートが、中央に位置するオリフィスを含む、請求項19から27のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項29】
前記インサートが、前記エアロゾルが放出される位置の下流の空気通路に沿った総マウスピース断面積の約10%から約90%に沿って障害物を提供する、請求項19から27のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項30】
吸入器であって:
(a)ニコチンまたはその塩および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;
(b)ヒトへの経肺投与に適したエアロゾルを送達するために、前記容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;ならびに
(c)前記ヒトの口への投与に適したサイズのマウスピース
を含む、吸入器。
【請求項31】
前記吸入器が、ソフトミスト吸入器(SMI)である、請求項30に記載の吸入器。
【請求項32】
前記SMIが、エアロゾル液滴を形成するために交差する噴流を形成する、請求項30に記載の吸入器。
【請求項33】
前記吸入器が、加圧式吸入器である、請求項30に記載の吸入器。
【請求項34】
前記吸入器が、乾燥粉末吸入器(DPI)である、請求項30に記載の吸入器。
【請求項35】
前記吸入器が、ネブライザーを含む、請求項30に記載の吸入器。
【請求項36】
前記ネブライザーが、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、メッシュ式ネブライザーから選択される、請求項35に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主題の開示は、吸入用の、医薬品有効成分(API)、例えば、ニコチンおよびニコチン塩のエアロゾルを送達するためのデバイスおよび製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タバコ煙の吸入によるニコチンの送達は、紀元前5000年頃から人類により行われてきており、それ以前ではなくても、少なくとも16世紀から広まっている。喫煙の有害な影響は、ニコチンそれ自体が主な原因ではなく、むしろタバコ煙の燃焼から得られる多くの他の成分による結果である。ニコチンは、使用者が、幸福感、抑うつ状態の抑制、食欲低下、集中力の改善および記憶の呼び起こしの改善を含む魅力を見つけることができるといったいくつかの効果を誘発する、ニコチンの非常に高い中毒性のために、禁煙は困難である。
【0003】
ニコチンは、禁煙を支援するためおよび/または紙巻きタバコもしくはニコチンの渇望を低減するための薬物療法-ニコチン代替療法(NRT)-として承認されている。承認された製品の投与の経路には、経口、経鼻、経皮、口腔内および吸入が含まれる。これらの製品は、ニコチンの多種多様の全身の血液薬物動態を示すが、それらのうちいずれも、紙巻きタバコを吸うのと同様の、初期に高濃度のニコチンになる速度を達成しない。NRTはまた、禁煙した喫煙者の再発の防止に成功する可能性がある。
【0004】
禁煙ができない喫煙者にとって重要な理由が、紙巻きタバコを吸うという生理反応を満足させているニコチン渇望に屈することであることが知られている。この渇望が急速に満たされない限り、NRTは失敗する可能性がある。ニコチンの送達が遅いと、最終的に得られるニコチンの血中濃度が非常に高くなる可能性があっても、紙巻きタバコに対する渇望を効果的に防ぐことができないように見える。中枢神経系(CNS)の影響を誘発するニコチンの能力に対する急性耐性は、非常に急速に開発されていることが報告されている(Benowitz,1996;Porchet et al.,1987)。これは、NRTの初期薬物動態(PK)プロファイルの重要性、すなわち、付随するCNSの影響のために脳に到達するニコチンにおける初期ピークのための明らかな必要性を説明することができる。
【0005】
ニコチンと有機溶媒との混合物の気化の原理に基づく電子タバコの中には、紙巻きタバコからのニコチンの急速な薬物動態に近づくものもあるが、 報告されたバッテリー爆発事故ならびに有機溶媒、それらの汚染物質、および貯蔵やエアロゾル化からの分解生成物の混合物を含有する排出物の毒性のために、これらの製品の安全性について大きな懸念がある。また、電子タバコの使用者の中には、ベイピングでは自分たちが伝統的な紙巻きタバコを吸う場合と同じような生理反応を感じない人もいる。
【0006】
したがって、効果的で安全なNRTの必要性が依然としてある。
【0007】
さらに、APIとしてのニコチンは、多種多様の状態を処置することが知られている。ニコチン療法のためにニコチンを送達する別の方法の必要性が依然としてある。
【0008】
さらに、ニコチンは、吸入器を使った経肺経路を介して投与することができるAPIの単なる一例である。そのようなAPIを投与する、安全な別の方法の必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0009】
開示された主題の1つの態様は、エアロゾル状のAPIを送達するための吸入器を提供する。吸入器は、APIおよび1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;エアロゾルを送達するためにその容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;そのノズル、バルブまたは出口の下流に位置するインサートを含む。
【0010】
代表的な実施形態において、インサートは、ノズル、バルブ、または出口から約1mmから約10mm下流に位置している。一実施形態において、インサートは、中央に位置するオリフィスを含む。一実施形態において、インサートは、ノズル、バルブ、または出口の下流の空気通路に沿った総断面積の約10%から約90%、または約25%から約75%に沿って障害物を提供する。
【0011】
代表的な実施形態において、容器は、乾燥粉末の形態でAPIを含む。代表的な実施形態において、容器は、水溶液中にあるAPIを含む。代表的な実施形態において、水溶液は、アルコール(例えば、約25~約75v/v%のエタノール)を含む。
【0012】
代表的な実施形態において、吸入器は、APIを含むエアロゾル用量を放出し、放出された用量の少なくとも30%は、0.5~3.5マイクロメートルの空気力学的直径を有する。別の代表的な実施形態において、エアロゾル用量は、5~140L/分の吸気流量で放出される。別の代表的な実施形態において、少なくとも40%の放出された用量は、約4ミクロン未満の空気力学的サイズを有する液滴に含まれる。
【0013】
代表的な一実施形態において、APIは、ニコチンまたはその塩である。代表的な一実施形態において、APIは、クエン酸塩または硫酸塩などのニコチン塩の形態である。代表的な一実施形態において、約0.01mgから約1mgのニコチン(遊離塩基基準で)が、1回あたりの作動で送達される。
【0014】
主題の開示の別の態様は、APIの対象の肺への標的化送達の方法を提供する。その方法は、対象に、APIおよび1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;エアロゾルを送達するためにその容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;そのノズル、バルブまたは出口の下流に位置するインサートであって、吸入器のマウスピース内に配置されるインサートを含む吸入器を投与することを含む。代表的な一実施形態において、APIは、ニコチンまたはその塩である。
【0015】
主題の開示の別の態様は、紙巻きタバコおよび他の形態のタバコの消費を低減または防止するために対象に対してニコチン代替療法(NRT)を実行するための方法を提供する。その方法は、対象に、ニコチンまたはその塩および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;エアロゾルを送達するためにその容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;ならびに吸入器のマウスピース内でノズル、バルブまたは出口の下流に位置するインサートを含む吸入器を投与することを含む。
【0016】
主題の開示の別の態様は、エアロゾルが放出される位置から下流に位置する1つまたは複数のインサートを含む、エアロゾルを生成することができる吸入器を提供する。一実施形態において、1つまたは複数のインサートは、吸入器のマウスピース内に位置している。一実施形態において、吸入器は、ソフトミスト吸入器(SMI)である。一実施形態において、SMIは、エアロゾル液滴を形成するために交差する噴流を形成する。一実施形態において、吸入器は、加圧式吸入器である。一実施形態において、吸入器は、乾燥粉末吸入器(DPI)である。一実施形態において、吸入器は、ネブライザーを含む。一実施形態において、ネブライザーは、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、メッシュ式ネブライザーから選択される。
【0017】
一実施形態において、インサートは、エアロゾルが生成される位置から約1mmから約10mm下流に位置している。一実施形態において、インサートは、中央に位置するオリフィスを含む。一実施形態において、インサートは、エアロゾルが放出される位置の下流の空気通路に沿った総マウスピース断面積の約10%から約90%に沿って障害物を提供する。
【0018】
主題の開示の別の態様は、ニコチンまたはその塩および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;ヒトへの経肺投与に適したエアロゾルを送達するために、その容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;ならびにヒトの口への投与に適したサイズのマウスピースを含む吸入器を提供する。一実施形態において、吸入器は、ソフトミスト吸入器(SMI)である。一実施形態において、SMIは、エアロゾル液滴を形成するために交差する噴流を形成する。一実施形態において、吸入器は、加圧式吸入器である。一実施形態において、吸入器は、乾燥粉末吸入器(DPI)である。一実施形態において、吸入器は、ネブライザーを含む。一実施形態において、ネブライザーは、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、メッシュ式ネブライザーから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、主題の開示の代表的な実施形態による吸入器を表す。
【
図3】
図3は、主題の開示のインサートを使用する、実施例3に記載の0%エタノール製剤についての送達の種々の段階で回収された総投与量の割合を表す。
【
図4】
図4は、主題の開示のインサートを使用する、実施例3に記載の25%エタノール製剤についての送達の種々の段階で回収された総投与量の割合を表す。
【
図5】
図5は、主題の開示のインサートを使用する、実施例3に記載の75%エタノール製剤についての送達の種々の段階で回収された総投与量の割合を表す。
【
図6】
図6は、インサートを使用しない、送達面積によりグループ分けされた種々のエタノール製剤について回収された総量を要約する。
【
図7】
図7は、インサート4を使用する、送達面積によりグループ分けされた種々のエタノール製剤について回収された総量を要約する。
【
図8】
図8は、インサート5を使用する、送達面積によりグループ分けされた種々のエタノール製剤について回収された総量を要約する。
【
図9】
図9は、インサート7を使用する、送達面積によりグループ分けされた種々のエタノール製剤について回収された総量を要約する。
【
図10】
図10は、実施例3に記載のノズルからのインサート4の配置に基づいて沈着したAPIの質量を表す。
【
図11】
図11は、実施例3に記載のノズルからのインサート5の配置に基づいて沈着したAPIの質量を表す。
【
図12】
図12は、実施例3に記載のノズルからのインサート7の配置に基づいて沈着したAPIの質量を表す。
【
図13】
図13は、実施例3に記載の種々のエタノール濃度で種々のインサート(およびインサートなし)について、肺/咽喉沈着比を表す。
【
図14】
図14は、種々の強度のAPIを含有する製剤を使用する種々の段階で回収されたAPIの量を表す。
【
図15】
図15は、種々の強度のAPIを含有する製剤を使用する種々の段階で回収されたAPIの割合を表す。
【
図16】
図16は、実施例6に記載のニコチン濃度の関数としての微粒子分布を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
簡潔にするために、現在開示されている主題は、代表的なAPIとしてニコチンに関連して説明される。しかし、本開示の主題がAPIのいずれにも適用できることが理解される。
【0021】
吸入製品におけるAPIに加えて、現在開示されている製剤は、ある特定の実施形態において、製品の性能にとって有益である1つまたは複数の他の成分を含むことができる。これらの物質は、一般的に、生理活性には積極的に関与していないが、治療用物質のための担体として必要である場合がある。例えば、噴霧された治療剤およびワクチンの場合、担体は、有効成分の酸性度、オスモル濃度、風味または安定性などの特性を調節または安定化させるための水および種々の物質であり得る。エタノールおよび他のアルコールなどの他の溶媒も、界面活性剤と同様に使用してもよい。いくらかの状況において、細菌防腐剤を使用する必要性がある場合がある。
【0022】
治療用物質のカプセル化、例えばリポソームならびに当技術分野で既知の他のリン脂質含有小胞、ナノ粒子および他のそのような配合成分でのカプセル化はまた、その薬物動態学を標的化し、調節する薬物を改善するために使用され得る。液体中の固体粒子の懸濁液または乳剤もまた、使用され得るが、界面活性剤での安定化を必要とする場合があるか、沈降もしくはクリーミングが製品の不安定性を引き起こさないように密度が調節される。
【0023】
主題の開示の製剤は、活性剤としてニコチン(遊離塩基)および/またはニコチン塩を含むことができる。ニコチン塩は、遊離塩基のニコチンを硫酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、レブリン酸、フマル酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸、リンゴ酸、酒石酸、およびクエン酸などの酸でプロトン化することにより形成される。参照により本明細書に組み込まれる、Nicotine Tob Res.2020 Jul;22(7):1239-1243を参照されたい。これは、遊離塩基のニコチンと比較して製剤のpHを下げる(例えば、pH<6.0)。これは、より高濃度のニコチンを投与することを可能にし、必要があれば、その間、刺激性の「スロートヒット」を誘導しない。ニコチン塩は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,215,895号明細書で説明されている。
【0024】
ニコチンはまた、クロロフルオロカーボン類およびハイドロフルオロアルカン類ならびにそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない加圧推進剤の使用で投与され得る。そのような製剤はまた、エタノールなどの他の液体も含む場合がある。あるいは、他の実施形態において、製剤は、加圧推進剤を含まず、ニコチンおよび水または水性エタノール溶液などの適切な溶媒からなるか、本質的にそれらからなる。
【0025】
吸入製品はまた、乾燥粉末の形で、乾燥粉末吸入器により投与される場合がある。これらは、有効成分、すなわちニコチンおよび/またはニコチン塩を含有する粒子を含むことができるが、それらはまた、製品を改善するために組み込まれた他の物質(例えば、溶媒、担体および他の種類の賦形剤)を有する場合があり、製品の最適な性能のために、粒径分布、形態、密度、形状、分散性および安定性などの望ましい性能に寄与する。例えば、担体粒子は、少量の呼吸に適した有効成分の正確な量での気道の望ましい部分への送達を支援するために使用され得る。そのような乾燥粉末の成分には、ラクトース、マンニトール、スクロースまたはトレハロースなどの糖、ロイシンおよびイソロイシンなどのアミノ酸、リン脂質、コレステロール、ステアリン酸マグネシウムなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0026】
NRTに加えて、本開示の製剤は、代わりに、気道から体循環へのニコチンの吸収を介して全身疾患を処置するために投与することができる。一般的に、浸透性を有する気管支肺胞領域の大きい表面積は、この目的にとって望ましい沈着領域である。全身疾患の処置および予防の例には、パーキンソン病、アルツハイマー病、抑鬱症、不安症、統合失調症、注意欠陥多動性障害、疼痛、および肥満症が含まれるがこれらに限定されない。他の代表的な実施形態は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を活性化する方法を提供し、投与される製剤は、NAChR受容体の活性化で改善されるか、寛解する状態を処置するために使用される。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Nicotine as Therapy,PLoS Biol.2004 Nov;2(11):e404を参照されたい。
【0027】
初期の高いニコチンピークにつながる形での吸入によるニコチンの送達は、喫煙者が禁煙するのを支援するのと同様に、抑鬱症、記憶喪失、集中力の欠如および食欲亢進を処置するなどの他の治療目的でニコチンを送達する魅力的な方法である。また、アルツハイマー病およびパーキンソン病を含む神経変性(neurogenerative)疾患を処置するためのニコチンの潜在的な利益についての心強い報告もある。そのような送達は、良好な耐容性を示し、安全である必要がある。製品は、その製品の構成要素であるか、製造中またはその製品の貯蔵および使用の結果としてのいずれかで製品に入る可能性がある、潜在的に有害な成分をいずれも最小含有量で有するべきである。
【0028】
ニコチンは、非常に刺激性の高い物質であり得る。喫煙者は、自己限定性咳反射を含むニコチンの副作用への耐性を生じることが知られているが、それにもかかわらず、紙巻きタバコの煙の吸入に続いて沈着したニコチンの局所的な分布と似た形で、ニコチンの送達を可能な限り模倣するニコチン吸入器を設計することが優先される。これはまた、タバコの禁煙に役立つように、喫煙者に紙巻きタバコを吸うのと同様の感覚を提供する場合がある。
【0029】
ニコチンへの渇望を満たすことは、脳に対するニコチンの生化学的および生理学的効果だけでなく、気道に入るニコチンがもたらすものを含む他の感覚的知覚を含む多くの要因に左右される複雑な現象である。それにもかかわらず、一般的に、血流中の高ニコチンピークの急速な達成は、紙巻きタバコへの渇望のより良好でより速い除去または低減と関連する。使用者の血流におけるこの種のニコチンの動態プロファイルを達成するため、ニコチンが高透過膜および非常に大きい表面積を有する小気道および肺胞に主に沈着する粒子または液滴の形で存在することが望ましい。気道の末梢部におけるこの種の優先的な沈着を制御する一方で、口咽頭腔および大気道における沈着を最小化する主な属性は、液滴または粒子のサイズ、形状および速度であり、同様に、吸入した空気の体積中のニコチンを含有するエアロゾルの配置;例えば、ゆっくりとした吸気の始まりの早い段階で少量のニコチンを小滴で放出することは、小気道および肺胞における沈着をもたらすことができる。逆に、吸気の後半で吸入器から放出されるニコチンエアロゾルの大きい液滴を急速に吸入することは、中咽頭および大気道での沈着を促進することができる。
【0030】
主題の開示の代表的な実施形態は、ニコチン溶液の液滴の投与によるそのような沈着パターンを達成し、そこでは、放出された用量の少なくとも10%または20%が、1~300L/分の吸気流量で吸入される0.05~40マイクロメートルの空気力学的直径を有する。主題の開示の他の代表的な実施形態は、ニコチン溶液の液滴の投与によりそのような優先的な沈着パターンを達成し、そこでは、放出された用量の少なくとも30%、40%、または50%が、10~60または5~140L/分の吸気流量で吸入される0.5~3.99マイクロメートルの空気力学的直径を有する。
【0031】
これは、より少ない口および咽喉の沈着およびより高いディープランチ(deep lunch)沈着を可能にし、より少ない副作用およびより高い有効性ならびに使用者による製品受容につながる。吸入後に息を止めると、気道で吸入したニコチンの用量の多くを保持することに役立つこともできる。
【0032】
喫煙者は、通常、再現可能な感覚的知覚、ニコチンの治療形態の望ましいエアロゾルプルームの形状の再現性を達成するために強力な「ブランド・ロイヤルティ」を生じるので、製品が受け入れられる、したがって禁煙に効果的であることも重要である。良好なプルームの質は、動きが遅く、均質で均一に発達し、一貫性のあるエアロゾル雲により定義される。
【0033】
代表的な実施形態において、ニコチン、またはその塩は、デバイスのスプレーノズルにより生成された規定の粒径分布を示す吸入可能な小液滴の形で送達される。望ましいプルームは、比較的低速で移動する微液滴からなる。さらに、良好なプルームは、一貫性のある均一に発達した形状により特徴づけられる。
【0034】
ある特定の代表的な実施形態において、デバイスは、液滴/粒子を投与し、そこでは、放出された用量の少なくとも30%、40%、または50%が、5ミクロンより小さい空気力学的直径を有する。そのような製剤は、肺に入ることができる。代表的な実施形態において、放出された用量の少なくとも30%、40%、または50%は、大部分の放出された用量が、実際、肺に入ることを保証するように、3.99ミクロンより小さい空気力学的直径を有する。これに対して、5ミクロンより大きい液滴/粒子は、中咽頭にさらに沈着しやすく、そのため、胃腸(GI)管を介して系に飛沫同伴される。GI管による薬物吸収は、一般的に、肺による薬物吸収よりも遅い。紙巻きタバコ喫煙者の禁煙を支援して禁煙させるには、ニコチンが迅速に吸収されることが明らかに重要であるので、胃腸管への用量は最小化されるべきであるが、肺沈着は最大化されるべきである。
【0035】
他の代表的な実施形態において、例えば、葉巻およびパイプまたはある特定の種類のベイピングデバイスからの浅い吸い込みにより、例えば自分の望ましい感覚的知覚を得ることに慣れているタバコ喫煙者に適しており、同様の呼吸法を使用して、口腔の沈着および吸収を促進するために、比較的大きい粒子または液滴を用いて投与して送達させることができる。したがって、ある特定の実施形態において、少なくとも30%、40%、または50%の放出された用量は、>4.0、または>5.0、または>10ミクロンの空気力学的直径を有する液滴に含まれている。
【0036】
ソフトミスト吸入器
ソフトミスト吸入器として当技術分野で既知の吸入器は、本明細書に記載されるように設計され、API(例えば、ニコチン)の送達用の現在開示されているデバイスの構成要素として使用することができる。
【0037】
主題の開示の代表的な一実施形態によれば、ソフトミスト吸入器は、エアロゾル液滴を形成するために交差する噴流を使用するソフトミスト吸入器である。
【0038】
そのような吸入器の非限定例は、ベーリンガーインゲルハイム(インゲルハイム・アム・ライン、ドイツ)から市販されているレスピマット吸入器であり、それぞれそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Development of Respimat Soft Mist Inhaler and its clinical utility in respiratory disorders,Med.Devices(Auckl.).2011;4:145-155、およびImproving usability and maintaining performance:human-factor and aerosol-performance studies evaluating the new reusable Respimat inhaler,International Journal of COPD,Vol.14:509-523(March 2019)に記載されている。
【0039】
主題の開示によるAPI(例えば、ニコチン)を含有するカートリッジ(示さず)を分配するための代表的なデバイス(100)を、
図1に示す。デバイス100は、カートリッジを挿入する前に使用者により取り外される取外し可能な透明な基部102、および吸入器本体104を含む。吸入器本体のこの末端部は、吸入器により受け取られてクリックされた係合時に固定されるように適合されているカートリッジを受け取る。透明な基部102を元の位置に戻し、APIをロードするために透明な基部が反時計回りに回転し、キャップ106を開いてアクチュエータボタン(
図1に示すように吸入器本体の反対側に位置する)を押すとAPIが分配され、その間、マウスピース108から吸入される。この代表的な実施形態によれば、インサート110は、マウスピース108の内部に配置される。ノズル109は、エアロゾルを送達するためにマウスピース内の末端位置に位置する。
【0040】
図1に示すデバイスは、代表的であり、限定されない。他の代表的な実施形態によれば、他のソフトミスト吸入器を使用することができる。例えば、AERx Essence(登録商標)(アラダイム)水性液滴吸入器[ADI(登録商標)](Pharmaero)プレフィルドシリンジ吸入器(Resyca BV)、PulmosprayおよびEcomyst(Aero Pump and Medspray)は、主題の開示の製剤とともに投与され得る。
【0041】
各インサートは、この代表的な実施形態では楕円形であるマウスピース108によりぴったり受け止められるのに適した断面形状を有する外枠112を備えている。インサート110の末端部114には、稼働時、デバイスの空気通路116内に障害物がさらに設けられており、
図2A~
図2Hに最もよく示されている。
【0042】
図2A~
図2Hは、代表的な実施形態によるインサート110として組み込まれ得るインサートを開示し、ここではそれぞれインサート1~8として識別されている。設計、特に、例えば、インサート1は、放出された大部分を中咽頭ではなく肺に送達することに加えて、収縮補償に使用することができる。
【0043】
より具体的には、
図2Aは、インサート110(インサート1)の1つのバージョンを開示しており、そこでは、デバイスの空気通路の中央にあり、2本の横木により拘束されている文字「KENOX」を有する障害物が、楕円の長径からオフセットされた2本の横木により定義される。
【0044】
図2Bは、別の実施形態(インサート2)を開示しており、そこでは、障害物は、それぞれ楕円の長径および直径に配置された、単に交差した2本の棒により定義され、各棒は、この代表的な実施形態においては、約2mmの幅を有する。
【0045】
図2Cは、別の実施形態(インサート3)を開示しており、そこでは、障害物は、障害円盤から約1mm離れた第1の絞りリング120、および第1の絞りリングから約1mm離れた第2の絞りリング122を有する、直径が約3mmの中央の障害円盤118により定義される。2本の横木もまた、インサート2と同様に与えられるが、中央の障害円盤118まで与えられる。
【0046】
図2Dは、別の実施形態(インサート4)を開示しており、そこでは、障害物は、直径が約10mmであるが、障害円盤の中央に与えられた中央のオリフィス126を有する、中央の比較的大きい障害円盤124により定義される。中央のオリフィス126は、直径が約3mmである。2本の横木もまた、インサート2と同様に与えられるが、中央の障害円盤124まで与えられる。
【0047】
図2Eは、別の実施形態(インサート5)を開示している。インサート5は、インサート4と同様であり、そこでは、障害物は、直径が約10mmで、障害円盤の中央に与えられた中央のオリフィス130を有する中央の比較的大きい障害円盤128により、同様に定義される。中央のオリフィス130は、直径が約3mmである。障害物は、インサート4とは区別され、インサート5はさらに、障害円盤128に切り込まれた、中央のオリフィス130から半径方向に1mm離れた幅1mmの輪である第2の開口132により定義される。2本の横木はまた、インサート2と同様に与えられるが、長軸に沿って中央のオリフィス130まで与えられた横木と、短軸に沿って障害円盤128まで与えられた横木とを有する。
【0048】
図2Fは、別の実施形態(インサート6)を開示している。インサート6は、インサート4と同様であり、直径が約9mmの障害円盤124を有する。インサート6には、インサート4での3mmの代わりに直径が5mmの中央のオリフィス134が与えられる。
図2Hは、別の実施形態(インサート8)を開示している。インサート8は、中央のオリフィス136が9mmであることを除いて、インサート4と同様である。2本の横木もまた、インサート2と同様にインサート6および8に与えられるが、中央の障害円盤まで与えられる。
【0049】
図2Gは、別の実施形態(インサート7)を開示しており、そこでは、障害物は、インサートの外周に沿って等間隔に位置する複数の成形オリフィス138により定義される。一対の比較的大きい矢尻型のオリフィス140は、中央のダイアモンド型のオリフィス143から離れて長軸に沿って与えられる。オリフィスは、空気通路116に沿った総マウスピース断面積の50%に沿って障害物を与えるようなサイズになっている(
図1)。
【0050】
他の代表的な実施形態において、他の機構は、主題の開示の製剤(例えば、溶液)からゆっくりと動くジェントルミストのエアロゾルを作るために使用される。これらの機構には、衝突噴流、レイリー不安定性、圧電振動、熱電効果および電気流体力学的現象が含まれるがこれらに限定されない。
【0051】
実施例
本開示は、以下の非限定例によりさらに説明されるであろう。これらの実施例は、代表的なものであるのみと理解され、それらは、1つまたは複数の実施形態の範囲を限定すると解釈されるべきではなく、添付の特許請求の範囲により定義される。
【0052】
実施例1
ニコチンの送達を最適化するために、経口吸入用の多数の異なるニコチン溶液をテストした(表1)。レスピマット(商標)デバイスからの用量あたりの計量および送達した量と一致するように、1吹あたり液体約11μL中、およそ0.1、0.25および0.5mgのニコチン塩基を送達することを目指して標的の組成物を調製した。
【0053】
この開発の目的は、刺激の可能性を低減するために中咽頭および大気道での沈着を最小化しながら、紙巻きタバコへの渇望を低減するための急速な吸収のために、1回の呼吸でニコチンの十分な用量を小気道および肺胞に送達するための、製剤パラメータとデバイス設計との最適な組み合わせを見つけることであった。製剤の組成、エアロゾル化の方法ならびにデバイス設計および構成要素は、健康への悪影響の可能性を最小化するように注意深く選択された。
【0054】
【0055】
配合後、製剤のアッセイは、内部RP-HPLC法を使用して測定された。アッセイ結果を、表2に示す。
【0056】
【0057】
開発活動中、改造レスピマット(登録商標)デバイスを使用した。改造は、レスピマット(登録商標)デバイスに後付けされたマウスピースインサートに関して実行された。
【0058】
口咽頭の沈着をさらに低減するため、デバイスのマウスピースを出る大きい液滴の割合を選択的に最小化するように、マウスピースインサートを試作した。フィラメント溶融積層型(FFF)3D印刷方式によりマウスピースインサートを製造した。FFFが熱溶解積層法(FDM)と表記される場合があることに注意されたい。インサートは、ぴったりフィットするように設計され、スプレーノズルからの距離に関して異なる位置を可能にする。
【0059】
8つの異なるインサート-すなわち、インサート1~8-をテストした。インサート設計は、
図2A~2Hに表す通りである。
【0060】
その後、インサートをデバイスのマウスピースに取り付け、目視評価およびレーザー回折に基づく液滴粒度分布(DSD)に供した。目視評価およびDSD測定の結果に基づいて、さらなるNGIテストのためにインサート4、5および7を選択した。
【0061】
製剤が充填されたデバイスおよびキャニスターを含む医薬品は、最初にプルーム品質の目視品質評価、続いてレスピマット(登録商標)に基づくデバイスの種々のバージョンを使用する製剤、DSDおよびAPSDのアッセイに関して特徴づけられた。スプレーノズルからの様々な距離でマウスピースインサートを配置することから生じる種々の構成について、DSDも評価された。
【0062】
分析手順
このセクションにおいて、開発中の医薬品の特性評価に使用される分析手順を示す。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
実施例2
最初に、充填した後、デバイスを直立位置で噴射させることにより、プルームを目視で評価した。低強度製剤を使用して、この評価を行った。目視/定性評価の結果を表6に示す。
【0067】
【0068】
レーザー回折を使用して、製剤のDSDを測定した。 d10、d50、d90およびスパンに対して、DSDを三連(n=3)で評価した。最初に、インサートが、スプレーノズルのオリフィスと6mmのインサートとの間の距離に相当するマウスピースと同一平面にある(先頭位置)状態でDSDを測定した。%RSDを含む結果を、表7、表8、表9および表10に示す。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
実施例3
DSDは、カスケードインパクター(CI)を使用して測定された空気力学的粒径分布(APSD)により置き換えられた。
【0074】
DSD結果に基づいて、インサートが、最初にマウスピース内の同一平面にある(先頭位置)状態で0%、50%および75%EtOH(v/v)を使用するAPSDテストのために、インサート4、5および7を選択した。CopleyのCITDASバージョン3.10を使用して、微粒子薬物量FPD、微粒子割合FPF、GSDおよびMMADを算出した。よりよい比較のために、 グラフの結果は、回収された総量に対して正規化されており、
図3、
図4、および
図5を参照されたい。 そして最後に、異なるサイズのクラスの割合と、デバイスから放出される総量に対するそれらの寄与として結果を算出しており、
図6、
図7、
図8および
図9を参照されたい。
【0075】
その後、75%EtOH製剤を使用して、インサート位置の影響を評価した。インサート4、5および7を、スプレーノズルのオリフィスから6mmまたは4mmまたは2mmの距離で配置した。結果を
図10、
図11、および
図12に表す。
【0076】
結果は、マウスピースインサートが、APSDに対して大きな影響を有していることを示す。例えば、デバイスから放出された総量ではなく、噴霧1回あたりの肺に送達された用量が好ましい場合(例えば、紙巻きタバコ喫煙者において禁煙を支援するため)、デバイスからの総量で近似させる(デバイスの沈着なしで)と比較して、「肺用量」を吸引性画分の割合(ここでは段階3からNGIカスケードインパクターのフィルタに沈着した薬物として定義される)ことは、重要な性能の指標である。咽喉沈着を最小にする開発目標と組み合わせると、75%EtOHおよびインサート4を使用することが最適な組み合わせである(
図13)。明確にするために、ここで報告された実験との関連で、用語「肺沈着」および「肺用量」は、NGIの4.0ミクロンおよびそれより低いカットオフ段階で沈着した質量を説明するために使用されるが、「咽喉」沈着は、質量の4.0ミクロンを超えるカットオフ段階を表す。
【0077】
したがって、同一平面位置内のインサート4(6mm)と、75%EtOH(低強度ニコチン)との組み合わせは、総量のおよそ21%の「咽喉」沈着の結果となるが、<4.0ミクロンの「肺用量」のサイズ範囲内で沈着した総量(デバイスから)のおよそ53%を表す。
【0078】
純粋な水溶液と比較して、75%EtOHを使用することが、静菌媒体として作用し、それによって、製品内の微生物増殖のリスクを軽減すると考えられることに、さらに注意されたい。
【0079】
実施例4
低強度製剤を使用する異なる位置でのインサートの影響を調べた。
【0080】
カスケードインパクションによるAPSDテストの使用。これは、スプレーノズルとインサートとの間の距離の重大な影響を示した。インサートによっては、スプレーノズルとインサートとの間の距離に対する反応が異なることが観察され得る。
【0081】
特に、インサート4(
図10)について、インサートがノズルから4mmの距離になると、「咽喉沈着」が増大する。また、段階4の沈着の減少を観察することができる。インサート4がノズルにさらに近くなる(2mm)と、「咽喉沈着」はさらに増大し、6mmと同様のAPSD(すなわち、同一平面/先頭位置)を観察することができる。
【0082】
4mmの距離になるインサート5(
図11)について、咽喉沈着は、6mmと比較してさらに減少するが、段階6およびそれ以降の沈着は増大する。インサートが2mmの距離になると、6mmと比較して同様のAPSDを観察することができる。
【0083】
インサート7(
図12)について、咽喉沈着は、さらに減少するが、段階4から段階6の沈着は、4mmのインサート位置で増大する。しかし、インサート4およびインサート5とは逆に、咽喉沈着は、さらに減少するが、段階4およびそれ以降のAPSDは、2mmのインサート距離でさらに増大する。
【0084】
全体では、ノズルから2mmの距離でのインサート7は、設計の目標が、主に小気道および肺胞でニコチン液滴または粒子沈着により治療効果を引き起こす一方で、中咽頭での沈着を最小化することである場合、好ましい組み合わせである。
【0085】
実施例5
低強度について、ならびに中および高強度のリード製剤について、0%、25%、50%および75%(v/v)EtOHを含有する製剤を使用するUSP<601>にしたがって省略した形態で、ニコチン組成物の送達された用量(DD)を測定した。簡潔に言うと、30lpmの流量を使用し、1つのDUSAで10ショットを二連で、すなわちn=2×10で、用量単位サンプリング装置(Dose Unit Sampling Apparatus)(DUSA)チューブによってDDを測定した。送達された用量は、デバイスから送達された、すなわちデバイス/インサート沈着がない薬物物質として提示される。さらに、デバイスを10回の作動の前後で計量し、ショット重量を決定した。結果を表11に示す。
【0086】
【0087】
実施例6
低(製剤G)、中(製剤H)および高(製剤J)強度製剤を、ノズルから2mmに配置されたインサート7と比較した。FPD、FPF、GSDおよびMMADを、CopleyのCITDASバージョン3.10を使用して算出した。主要パラメータの概要を、表12に示す。異なる強度のAPSDのオーバーレイを、絶対値および正規化されたものの両方で、それぞれ
図14および
図15に表す。デバイスから送達された用量およびFPDを、それぞれ表12および
図16に、製剤の濃度の関数として表す。
【0088】
【0089】
表13では、水性製剤/インサートなし;ノズルから2mmの位置のインサート7を使用する3つの異なる強度について、75%エタノール-水(v/v)を使用するエアロゾル特性評価の結果の比較を示す。
【0090】
【0091】
これらの結果は、現在開示されている主題が、エタノールと水との様々な組み合わせ、様々な種類のマウスピースインサートおよびエアロゾル生成ノズルからのそれらの距離を使用して送達するために、肺用量対上気道および中枢気道に送達された用量の様々な比率を与えることを示す。特に、実施例は、紙巻きタバコ喫煙者の禁煙を支援し、再発を防止し、紙巻きタバコへの渇望を緩和するなどの治療目的のためにニコチンを送達するための、代表的な製剤、インサート設計およびマウスピースにおけるエアロゾル化ノズルからのその距離を説明する。
【0092】
実施形態(デバイス/インサート)
1.エアロゾルが、吸入器により生成される領域から下流に挿入されているインサート(例えば、
図2A~
図2Hのインサート)を含む、デバイス。
2.吸入器が、ソフトミスト吸入器である、実施形態1のデバイス。
3.吸入器が、エアロゾル液滴を形成するために交差する噴流を使用するソフトミスト吸入器(例えば、レスピマット(登録商標)ソフトミスト吸入器(SMI)またはレスピマット(登録商標)と類似もしくは同様の設計の機能的に等価の吸入器)である、実施形態2のデバイス。
4.吸入器(inhaled)は、加圧式吸入器(例えば、ハイドロフルオロアルカン(HFA)、クロロフルオロカーボン(CFC)およびそれらの混合物から選択される推進剤を含む定量噴霧式吸入器(MDA))である、実施形態1のデバイス。
5.吸入器が、乾燥粉末吸入器(DPI)である、実施形態1のデバイス。
6.吸入器が、ネブライザーを含む、実施形態1のデバイス。
7.ネブライザーが、ジェットネブライザーである、実施形態6のデバイス。
8.ネブライザーが、超音波ネブライザーである(us)、実施形態6のデバイス。
9.ネブライザーが、メッシュ式ネブライザーである、実施形態6のデバイス。
10.吸入器が、エアロゾルを形成するために1つまたは複数のオリフィス(例えば、オリフィスの配列)を通る液体の高圧押出を使用する、実施形態1のデバイス。
11.吸入器によるエアロゾルの生成点から1~10mm下流に配置される、実施形態1~10のいずれか1つのデバイス。
12.吸入器のマウスピース内に配置される、実施形態11のデバイス。
【0093】
実施形態(アルコール/水製剤)
A.API(医薬品有効成分)、および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む、治療的および予防的物質のエアロゾル化のための製剤。
B.哺乳動物への投与に適している、実施形態Aの製剤(例えば、薬事公定書の要件が存在する成分の性質が満たされている、実施形態Aの製剤)。
C.APIが、粉末の形態(例えば、懸濁液中での乾燥粉末の形態)である、実施形態AまたはBのいずれか1つの製剤。
D.APIが、水溶液中にある、実施形態AまたはBのいずれか1つの製剤。
E.水溶液が、アルコールを含む、実施形態Dの製剤。
F.アルコールが、エタノールである、実施形態Eの製剤。
G.APIが、ニコチンまたはその塩を含む、実施形態A~Fのいずれか1つの製剤。
H.ニコチンが、ニコチン塩の形態である、実施形態Gの製剤。
I.塩が、クエン酸塩である、実施形態Hの製剤。
J.塩が、硫酸塩である、実施形態Hの製剤。
K.アルコール(例えば、エタノール)の濃度が、10~90%v/vである、実施形態A~Jのいずれか1つの製剤。
【0094】
実施形態(デバイスを有する製剤)
I.実施形態A~Kのいずれか1つの製剤が装填された実施形態1~12のいずれか1つのデバイスを含む、APIの送達のための吸入器。
II.APIが、ニコチンまたはその塩である、実施形態Iの吸入器。
III.デバイスが、APIを含むエアロゾル用量を放出し、放出された用量の少なくとも30%が、0.5~3.5マイクロメートルの空気力学的直径を有する、実施形態IまたはIIのいずれか1つの吸入器。
IV.エアロゾル用量が、5~140L/分の吸気流量で放出される、実施形態I、II、またはIIIのいずれか1つの吸入器。
V.APIが、ニコチンまたはその塩であり、エアロゾル用量が、0.01~1mgのニコチンを含む、先行の実施形態のいずれか1つの吸入器。
VI.放出される用量の少なくとも40%が、約4ミクロン未満(例えば、<3.99ミクロン)の空気力学的サイズを有する液滴に含まれる、先行の実施形態のいずれかの吸入器。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル状のAPIを送達するための吸入器であって:
(a)APIおよび
液体製剤用の1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;
(b)
前記液体製剤から作られたエアロゾルを送達するために前記容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;
(c)前記ノズル、バルブまたは出口の下流に位置するインサート
を含む、吸入器。
【請求項2】
前記インサートが、前記ノズル、バルブ、または出口から約1mmから約10mm下流に位置している、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記インサートが、中央に位置するオリフィスを含む、請求項1に記載の吸入器。
【請求項4】
前記インサートが、前記ノズル、バルブ、または出口の下流の空気通路に沿った総断面積の約10%から約90%に沿って障害物を提供する、請求項1に記載の吸入器。
【請求項5】
前記容器が、水溶液中にあるAPIを含む、請求項1に記載の吸入器。
【請求項6】
前記水溶液が、アルコールを含む、請求項
5に記載の吸入器。
【請求項7】
前記アルコールが、エタノールである、請求項
6に記載の吸入器。
【請求項8】
前記吸入器が、前記APIを含むエアロゾル用量を放出し、前記放出された用量の少なくとも30%が、0.5~3.5マイクロメートルの空気力学的直径を有する、請求項1に記載の吸入器。
【請求項9】
前記エアロゾル用量が、5~140L/分の吸気流量で放出される、請求項1に記載の吸入器。
【請求項10】
少なくとも40%の放出された用量が、約4ミクロン未満の空気力学的サイズを有する液滴に含まれる、請求項1に記載の吸入器。
【請求項11】
前記APIが、ニコチンまたはその塩である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項12】
前記APIが、ニコチン塩の形態である、請求項
11に記載の吸入器。
【請求項13】
前記ニコチン塩が、クエン酸塩または硫酸塩である、請求項
12に記載の吸入器。
【請求項14】
約0.01mgから約1mgのニコチン(遊離塩基基準で)が、1回あたりの作動で送達される、請求項
11に記載の吸入器。
【請求項15】
対象の肺へのAPIの標的化送達の方法であって、前記対象に:
(a)APIおよび
液体製剤用の1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;
(b)
前記液体製剤の分散によりエアロゾルを送達するために前記容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;
(c)前記ノズル、バルブまたは出口の下流に位置するインサートであって、吸入器のマウスピース内に配置されるインサート
を含む前記吸入器を投与することを含む、方法。
【請求項16】
前記APIが、ニコチンまたはその塩である、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
紙巻きタバコおよび他の形態のタバコの消費を低減または防止するために対象に対してニコチン代替療法(NRT)を実行するための方法であって、前記対象に:
(a)ニコチンまたはその塩および
液体製剤を製造するための1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;
(b)
前記液体製剤から作られたエアロゾルを送達するために前記容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;
(c)吸入器のマウスピース内で前記ノズル、バルブまたは出口の下流に位置するインサート
を含む前記吸入器を投与することを含む、方法。
【請求項18】
液体製剤から液滴にエアロゾルを生成することができる吸入器であって、前記エアロゾルが放出される位置から下流に位置する1つまたは複数のインサートを含む
、吸入器。
【請求項19】
前記1つまたは複数のインサートが、前記吸入器のマウスピース内に位置している、請求項
18に記載の吸入器。
【請求項20】
前記吸入器が、ソフトミスト吸入器(SMI)である、請求項
18に記載の吸入器。
【請求項21】
前記SMIが、エアロゾル液滴を形成するために交差する噴流を形成する、請求項
20に記載の吸入器。
【請求項22】
前記吸入器が、加圧式吸入器である、請求項
18に記載の吸入器。
【請求項23】
前記吸入器が、ネブライザーを含む、請求項
18に記載の吸入器。
【請求項24】
前記ネブライザーが、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、メッシュ式ネブライザーから選択される、請求項
23に記載の吸入器。
【請求項25】
前記インサートが、前記エアロゾルが生成される位置から約1mmから約10mm下流に位置している、請求項
18に記載の吸入器。
【請求項26】
前記インサートが、中央に位置するオリフィスを含む、請求項
18から
25のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項27】
前記インサートが、前記エアロゾルが放出される位置の下流の空気通路に沿った総マウスピース断面積の約10%から約90%に沿って障害物を提供する、請求項
18から
25のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項28】
吸入器であって:
(a)ニコチンまたはその塩および
液体製剤を形成する1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器;
(b)ヒトへの経肺投与に適したエアロゾルを送達するために、前記容器と連絡するノズル、バルブ、または出口;ならびに
(c)前記ヒトの口への投与に適したサイズのマウスピース
を含む、吸入器。
【請求項29】
前記吸入器が、ソフトミスト吸入器(SMI)である、請求項
28に記載の吸入器。
【請求項30】
前記SMIが、エアロゾル液滴を形成するために交差する噴流を形成する、請求項
29に記載の吸入器。
【請求項31】
前記吸入器が、加圧式吸入器である、請求項
28に記載の吸入器。
【請求項32】
前記吸入器が、ネブライザーを含む、請求項
28に記載の吸入器。
【請求項33】
前記ネブライザーが、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、メッシュ式ネブライザーから選択される、請求項
32に記載の吸入器。
【国際調査報告】