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特表2024-533454階層構造及び材料を有するスマート歯科矯正装具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】階層構造及び材料を有するスマート歯科矯正装具
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A61C7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515846
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 US2022036122
(87)【国際公開番号】W WO2023278894
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/218,232
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524093106
【氏名又は名称】リー,ダニエル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リー,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ01
(57)【要約】
本出願は、歯を再配置するための歯科矯正装置、システム、及び方法に関する。歯科矯正装置は歯科矯正装具の一体片を含み、前記歯科矯正装具は目標歯配列を画定し、少なくとも補強部分及びシェル部分を有する。前記歯科矯正装具は、複数の歯を抱持し、長期間内に漸次的に前記複数の歯を現在の歯配列から前記目標歯配列に弾性的に再配置するように構成される。前記補強部分は第1剛性レベルを有する。前記シェル部分は前記補強部分から延在し、第2剛性レベルを有し、前記第2剛性レベルが前記第1剛性レベルより低い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標歯配列を画定し少なくとも補強部分及びシェル部分を有する歯科矯正装具の一体片を備え、
前記歯科矯正装具は、複数の歯を抱持し、長期間内に漸次的に前記複数の歯を現在の歯配列から前記目標歯配列に弾性的に再配置するように構成され、
前記補強部分は第1剛性レベルを有し、
前記シェル部分は前記補強部分から延在し、第2剛性レベルを有し、前記第2剛性レベルが前記第1剛性レベルより低い、歯を再配置するための歯科矯正装置。
【請求項2】
前記歯科矯正装具の一体片は、
それぞれが前記補強部分及び前記シェル部分の少なくとも一方によって囲まれる1つ又は複数の開口を更に備え、前記歯科矯正装具は、前記各開口を介して前記複数の歯の一部を口腔環境に露出させ、前記各開口を通って水を循環できるようにするように構成される、請求項1に記載の歯科矯正装置。
【請求項3】
前記歯科矯正装具の一体片は、前記シェル部分上に形成された1つ又は複数のスリットを更に備え、前記1つ又は複数のスリットは前記1つ又は複数のスリットの周囲で前記第2剛性レベルを局所的に修正するように構成される、請求項1又は2に記載の歯科矯正装置。
【請求項4】
前記歯科矯正装具の一体片は、第1歯の表面を掴み、前記第1歯の前記表面に接する剪断方向に沿って前記第1歯の前記表面に力を加えるように構成された取り付け構造を更に備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項5】
前記取り付け構造はミクロンレベルの複数の取り付け歯を含み、前記取り付け構造の前記複数の取り付け歯の表面はナノメートルレベルで多孔質である、請求項4に記載の歯科矯正装置。
【請求項6】
前記取り付け構造は、前記補強部分及び前記シェル部分の一方の内面に取り付けられ、前記歯科矯正装具が前記複数の歯を抱持するために装着される時に、歯の各サブセットに接触しているように構成される、請求項4又は5に記載の歯科矯正装置。
【請求項7】
前記取り付け構造は、前記補強部分又は前記シェル部分の本体から延在し、それと同じタイプの材料を含む、請求項4から6のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項8】
前記取り付け構造は、第1取り付け構造を含み、前記補強部分及び前記シェル部分の一方を介して第2取り付け構造に物理的に結合される、請求項置4から7のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項9】
前記補強部分は延在アームを有し、前記取り付け構造は前記延在アームの先端エリアに位置する、請求項4から7のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項10】
前記取り付け構造は、第1取り付け構造を含み、前記第1歯の前記表面は第1表面を含み、前記歯科矯正装具の一体片は、
前記第1歯上で前記第1表面に対向する前記第1歯の第2表面を掴むように構成された第2取り付け構造を更に備え、
前記第2取り付け構造は、前記第1歯の前記第2表面に接する第2剪断方向に沿って前記第1歯の前記第2表面上に第2引張力を加えるように構成され、前記第1及び第2引張力が前記長期間内に漸次的に前記第1歯を回転させるように構成される、請求項4から7のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項11】
前記取り付け構造は、第1取り付け構造を含み、前記歯科矯正装具の一体片は、
前記第1歯に直ぐ隣接する第2歯の表面を掴むように構成された第2取り付け構造を更に備え、前記第1及び第2取り付け構造の両方とも前記補強部分から延在し、前記第1と第2歯を互いに向かって引っ張るように構成される、請求項4から7のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項12】
前記補強部分及び前記シェル部分は第1装具材料を含み、前記補強部分は、前記シェル部分の第2厚さを上回る第1厚さを有する、請求項1から11のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項13】
前記補強部分は第1装具材料を含み、前記シェル部分は前記第1装具材料と異なる第2装具材料を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項14】
前記補強部分は、前記歯科矯正装具が前記複数の歯を抱持するために装着される時に第1歯と整列し、接触するように構成され、
前記補強部分は前記歯科矯正装具の一体片上の第1位置に位置し、
前記第1位置及び第1剛性レベルは、前記第1歯上に加える力を生成することで、前記現在の歯配列から前記目標歯配列への前記複数の歯の再配置を容易にするように構成される、請求項1から13のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項15】
前記補強部分は第1エリアを有し、
前記シェル部分は前記第1エリアより大きい第2エリアを有し、
前記シェル部分は少なくとも部分的に前記補強部分に重なる、請求項1から14のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項16】
前記シェル部分は完全に前記補強部分に重なり、前記補強部分は、前記歯科矯正装具が前記複数の歯を抱持するために装着される時に、歯の各サブセットに接触しているように構成される、請求項15に記載の歯科矯正装置。
【請求項17】
前記シェル部分は完全に前記補強部分に重なり、前記補強部分は、前記歯科矯正装具が前記複数の歯を抱持するために装着される時に、前記シェル部分によって前記複数の歯から分離されるように構成される、請求項15に記載の歯科矯正装置。
【請求項18】
前記補強部分は、固体片、複数のリブを有する骨格、フレーム、グリッド、及びリングのうちの1つ又は複数を含む、請求項1から17のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項19】
多角形構造が、前記複数の歯のうちの1つの表面に取り付けられ、前記複数の歯のうちの前記1つの前記表面に実質的に垂直な複数の受け面を有し、前記歯科矯正装具の一体片は、
それぞれが、前記多角形構造の前記複数の受け面の各々を掴み、そこに引張力又は押圧力を加えるように構成された1つ又は複数の取り付け構造を更に備える、請求項1から18のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項20】
前記歯科矯正装具の一体片は、前記補強部分又はシェル部分の外面に結合されたアクチュエータを更に備え、前記アクチュエータが前記複数の歯のサブセットに加える刺激を生成するように構成される、請求項1から19のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項21】
前記複数の歯は2つの対向する端部の歯の間に位置する多数の連続した歯を含み、前記歯科矯正装具の一体片は、
それぞれ前記2つの端部の歯を抱持するように構成された2つの端部部分と、
前記2つの端部部分に結合され、前記2つの端部部分の相対位置を制御するために刺激を加えるように構成されたアクチュエータと、を更に備える、請求項1から20のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項22】
前記歯科矯正装具の一体片はセンサを更に備え、前記センサが前記歯科矯正装具の境界面又は外面に取り付けられ、複数の歯の特徴を監視するように構成される、請求項1から21のいずれか1項に記載の歯科矯正装置。
【請求項23】
歯科矯正装具によって達成される中間歯配列を患者の歯の幾何学的情報に基づいて決定するステップと、
歯科矯正装具の一体片を提供するステップであって、前記歯科矯正装具は、複数の歯を抱持し、長期間内に漸次的に前記複数の歯を現在の歯配列から目標歯配列に弾性的に再配置するように構成されるステップと、を含み、前記提供は、
患者の歯の解剖学的情報に基づいて前記中間歯配列を前記目標歯配列に調整するステップと、
前記患者の歯の前記解剖学的情報に基づいて前記目標歯配列上で補強部分及びシェル部分を特定するステップと、
第1剛性レベルを有する前記補強部分を形成するステップと、
前記補強部分から延在し第2剛性レベルを有する前記シェル部分を形成するステップであって、前記第2剛性レベルが前記第1剛性レベルより低いステップと、を更に含む、歯を再配置するための方法。
【請求項24】
前記歯科矯正装置は請求項1から22のいずれか1項に記載のように提供される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
歯科矯正装具によって達成される目標歯配列を決定するステップと、
患者の歯の解剖学的情報に基づいて前記目標歯配列上で補強部分及びシェル部分を特定するステップと、
歯科矯正装具の一体片を提供するステップであって、前記歯科矯正装具は、複数の歯を抱持し、長期間内に漸次的に前記複数の歯を現在の歯配列から前記目標歯配列に弾性的に再配置するように構成されるステップと、を含み、前記提供は、
第1剛性レベルを有する前記補強部分を形成するステップと、
前記補強部分から延在し第2剛性レベルを有する前記シェル部分を形成するステップであって、前記第2剛性レベルが前記第1剛性レベルより低いステップと、を更に含む、歯を再配置するための方法。
【請求項26】
前記歯科矯正装置は請求項1から22のいずれか1項に記載のように提供される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年7月2日に出願した、発明の名称が「階層構造及び材料を有するスマート歯科矯正装具」である米国仮特許出願第63/218,232号の優先権を主張し、その全ての内容は参照によって本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、一般に歯科矯正に関し、より具体的には、局所的な目標を定めた力を加えて効率的に歯を目標歯配列に再配置するための装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
歯アライナ(例えば、歯列矯正具)は、歯の位置及び顎のアライメントの漸次的な調整に広く応用されている。既存の歯アライナは、患者の歯の目標とされた幾何学的変化に応じて設計され、目標歯配列が一連の漸増的なステップを経て達成される。歯科矯正医は、離散的で段階的な距離で歯列矯正具を巨視的に且つ漸次的に調整して歯を所望の位置に移動させる。歯列矯正具の調整は、歯科矯正医の経験に大きく依存し、歯科矯正プロセスの結果及び時間的長さは歯科矯正医によって大きく異なる。
【0004】
あるいは、取り外し可能なポリマー装具も、目標配列に関連付けられた一連の漸増的な配列と共に使用されている。患者が該一連の漸増的な配列を有するポリマー装具を装着すると、患者の歯は該ポリマー装具によって漸次的に目標配列に再配置される。しかし、該ポリマー装具の該一連の漸増的な配列は力の分布を考慮せずに幾何学的結果を優先するように設計され、即ち、歯科矯正医は、装具と歯の間の正確な接触点を考慮せずに巨視的な歯移動を計画する。各ポリマー装具によって生成される力は、多くの場合不正確でランダムである。局所的な力は、強すぎる又は弱すぎる場合があり、望ましくない方式で相殺される可能性すらあり、それにより、歯の再配置の全コースで装具と歯の間の接触点がランダムに変化する可能性がある。歯の再配置のこのようなランダムさ(「エントロピー」)は、新しいポリマー装具が最初に装着される時にピークに達し、歯が該ポリマー装具の指定された形態学的配列に強制されるにつれて、漸次的に減少し安定する。よって、既存の歯を整列する解決策は、効率的でも生物学的に最適でもない。現在のやり方よりも効率的に歯を再配置するメカニズムがあれば有益であろう。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、歯を再配置するための歯科矯正装置、システム、及び方法に関する。一連の歯科矯正装具は、歯を抱持し、前記歯を初期歯配列から最終の目標歯配列に再配置するように連続的に適用される。各歯科矯正装具は、歯科矯正装具の一体片を含み、前記歯を第1歯配列から第2歯配列に弾性的に再配置するように構成される。各歯科矯正装具について、目標を定めた力を受ける選択エリアが特定され、1つ又は複数の選択エリア及び前記目標を定めた力を作るために前記歯科矯正装具上に補強部分及びシェル部分が形成される。前記補強部分は前記シェル部分より高い剛性レベルを有する。加えて、取り付け構造が前記補強部分又はシェル部分の表面上に形成され、前記歯科矯正装具が患者に装着される時に歯の表面を掴んで前記目標を定めた力を伝達する。いくつかの実施形態において、前記選択エリア及び取り付け構造に関連付けられた異なる部分は三次元印刷技術によって形成される。このように、前記一連の歯科矯正装具が前記歯の幾何学的特徴に基づいて設計されるため、各歯科矯正装具の部分は、目標を定めた力を伝達するように選択的に設計されることで、歯の再配置を容易に且つ迅速にする。
【0006】
一態様において、歯を再配置するための歯科矯正装置は、目標歯配列を画定し少なくとも補強部分及びシェル部分を有する歯科矯正装具の一体片を含む。前記歯科矯正装具は、複数の歯を抱持し、長期間内に漸次的に前記複数の歯を現在の歯配列から前記目標歯配列に弾性的に再配置するように構成される。前記補強部分は第1剛性レベルを有する。前記シェル部分は前記補強部分から延在し、第2剛性レベルを有し、前記第2剛性レベルが前記第1剛性レベルより低い。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記歯科矯正装具の一体片は、1つ又は複数の開口を更に含む。各開口は前記補強部分及び前記シェル部分の少なくとも一方によって囲まれ、前記歯科矯正装具は、前記各開口を介して前記複数の歯の一部を口腔環境に露出させ、前記各開口を通って水を循環できるようにするように構成される。更に、いくつかの実施形態において、前記1つ又は複数の開口は、前記シェル部分上に形成された1つ又は複数のスリット又は細孔を含み、前記1つ又は複数の開口は、前記1つ又は複数の開口の周囲で前記第2剛性レベルを局所的に修正するように構成される。前記1つ又は複数のスリット又は細孔はアレイとして配置される。いくつかの実施形態において、前記1つ又は複数の開口は、前記補強部分上に形成された1つ又は複数のスリット又は細孔を含み、前記1つ又は複数の開口は、前記1つ又は複数の開口の周囲で前記第1剛性レベルを局所的に修正するように構成される。前記1つ又は複数のスリット又は細孔はアレイとして配置される。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記歯科矯正装具の一体片は、前記シェル部分上に形成された1つ又は複数のスリットを更に含む。前記1つ又は複数のスリットは前記1つ又は複数のスリットの周囲で前記第2剛性レベルを局所的に修正するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記歯科矯正装具の一体片は、取り付け構造を更に含む。前記取り付け構造は、第1歯の表面を掴み、前記第1歯の前記表面に接する剪断方向に沿って前記第1歯の前記表面上に力を加えるように構成される。前記力は任意に引張力又は押圧力である。更に、いくつかの実施形態において、前記取り付け構造はミクロンレベルの複数の取り付け歯を含み、前記取り付け構造の前記複数の取り付け歯の表面はナノメートルレベルで多孔質である。いくつかの実施形態において、前記取り付け構造は、前記補強部分及び前記シェル部分の一方の内面に取り付けられ、前記歯科矯正装具が前記複数の歯を抱持するために装着される時に、歯の各サブセットに接触しているように構成される。いくつかの実施形態において、前記取り付け構造は、前記補強部分又は前記シェル部分の本体から延在し、それと同じタイプの材料を含む。いくつかの実施形態において、前記取り付け構造は、第1取り付け構造を含み、前記補強部分及び前記シェル部分の一方を介して第2取り付け構造に物理的に結合される。いくつかの実施形態において、前記補強部分は延在アームを有し、前記取り付け構造は前記延在アームの先端エリアに位置する。いくつかの実施形態において、前記取り付け構造は、第1取り付け構造を含み、前記第1歯の前記表面は第1表面を含む。前記歯科矯正装具の一体片は、前記第1歯上で前記第1表面に対向する前記第1歯の第2表面を掴むように構成された第2取り付け構造を更に含む。前記第2取り付け構造は、前記第1歯の前記第2表面に接する第2剪断方向に沿って前記第1歯の前記第2表面上に第2引張力を加えるように構成され、前記第1及び第2引張力が前記長期間内に漸次的に前記第1歯を回転させるように構成される。いくつかの実施形態において、前記取り付け構造は、第1取り付け構造を含む。前記歯科矯正装具の一体片は、前記第1歯に直ぐ隣接する第2歯の表面を掴むように構成された第2取り付け構造を更に含む。前記第1及び第2取り付け構造の両方とも前記補強部分から延在し、前記第1と第2歯を互いに向かって引っ張るように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記補強部分及び前記シェル部分は第1装具材料を含み、前記補強部分は、前記シェル部分の第2厚さを上回る第1厚さを有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記補強部分は第1装具材料を含み、前記シェル部分は前記第1装具材料と異なる第2装具材料を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記補強部分は、前記歯科矯正装具が前記複数の歯を抱持するために装着される時に第1歯と整列し、接触するように構成される。前記補強部分は前記歯科矯正装具の一体片上の第1位置に位置する。前記第1位置及び第1剛性レベルは、前記第1歯上に加える力を生成することで、前記現在の歯配列から前記目標歯配列への前記複数の歯の再配置を容易にするように構成される。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記補強部分は第1エリアを有する。前記シェル部分は前記第1エリアより大きい第2エリアを有し、前記シェル部分は少なくとも部分的に前記補強部分に重なる。更に、いくつかの実施形態において、前記シェル部分は完全に前記補強部分に重なり、前記補強部分は、前記歯科矯正装具が前記複数の歯を抱持するために装着される時に、歯の各サブセットに接触しているように構成される。いくつかの実施形態において、前記シェル部分は完全に前記補強部分に重なり、前記補強部分は、前記歯科矯正装具が前記複数の歯を抱持するために装着される時に、前記シェル部分によって前記複数の歯から分離されるように構成される。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記補強部分は、固体片、複数のリブを有する骨格、フレーム、グリッド、及びリングのうちの1つ又は複数を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、多角形構造が、前記複数の歯のうちの1つの表面に取り付けられ、前記複数の歯のうちの前記1つの前記表面に実質的に垂直な複数の受け面を有する。前記歯科矯正装具の一体片は、それぞれが、前記多角形構造の前記複数の受け面の各々を掴み、そこに引張力又は押圧力を加えるように構成された1つ又は複数の取り付け構造を更に含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記歯科矯正装具の一体片は、前記補強部分又はシェル部分の外面に結合されたアクチュエータを更に含み、前記アクチュエータが前記複数の歯のサブセットに加える刺激を生成するように構成される。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記複数の歯は2つの対向する端部の歯の間に位置する多数の連続した歯を含む。前記歯科矯正装具の一体片は、それぞれ前記2つの端部の歯を抱持するように構成された2つの端部部分と、前記2つの端部部分に結合され、前記2つの端部部分の相対位置を制御するために刺激を加えるように構成されたアクチュエータと、更に含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記歯科矯正装具の一体片は、センサを更に含む。前記センサは前記歯科矯正装具の境界面又は外面に取り付けられ、複数の歯の特徴を監視するように構成される。
【0019】
別の態様において、歯を再配置するための方法が実施される。前記方法は、歯科矯正装具によって達成される中間歯配列を患者の歯の幾何学的情報に基づいて決定するステップと、歯科矯正装具の一体片を提供するステップと、を含む。前記歯科矯正装具は、複数の歯を抱持し、長期間内に漸次的に前記複数の歯を現在の歯配列から目標歯配列に弾性的に再配置するように構成される。前記歯科矯正装具の一体片の提供は、患者の歯の解剖学的情報に基づいて前記中間歯配列を前記目標歯配列に調整するステップと、前記患者の歯の前記解剖学的情報に基づいて前記目標歯配列上で補強部分及びシェル部分を特定するステップと、第1剛性レベルを有する前記補強部分を形成するステップと、前記補強部分から延在し第2剛性レベルを有する前記シェル部分を形成するステップであって、前記第2剛性レベルが前記第1剛性レベルより低いステップと、を含む。
【0020】
更に別の態様において、歯を再配置するための方法が実施される。前記方法は、歯科矯正装具によって達成される目標歯配列を決定するステップと、患者の歯の解剖学的情報に基づいて前記目標歯配列上で補強部分及びシェル部分を特定するステップと、歯科矯正装具の一体片を提供するステップと、を含む。前記歯科矯正装具は、複数の歯を抱持し、長期間内に漸次的に前記複数の歯を現在の歯配列から前記目標歯配列に弾性的に再配置するように構成される。前記歯科矯正装具の一体片の提供は、第1剛性レベルを有する前記補強部分を形成するステップと、前記補強部分から延在し第2剛性レベルを有する前記シェル部分を形成するステップと、を含む。前記第2剛性レベルが前記第1剛性レベルより低い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
実施形態の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、明細書の一部を構成する添付図面は、記載された実施形態を示し、説明と共に基礎原理を解釈するためのものである。
【0022】
図1】いくつかの実施形態に係る、一連の歯科矯正装具を使用して歯を再配置するプロセスの例のフロー図である。
【0023】
図2】いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具202を装着した上歯の列の図である。
【0024】
図3】いくつかの実施形態に係る、歯の列の物理モデルに基づいて作られた歯科矯正装具の一体片の図である。
【0025】
図4】いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具の取り付け構造及び前記取り付け構造のマイクロレベルの断面図を示す図である。
【0026】
図5】いくつかの実施形態に係る、前記取り付け構造のマイクロレベルの断面図及び取り付け歯のナノレベルの断面図を示す図である。
【0027】
図6】いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具の取り付け構造を形成するプロセスのフロー図である。
【0028】
図7】いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具の取り付け構造によって歯208上に加えられる力を示す。
【0029】
図8】いくつかの実施形態に係る、歯の挺出、傾斜、及び回転に関連する力のパターンを示す。
【0030】
図9】いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具のシェル部分206を形成するためのハニカムアクチュエータの例である。
【0031】
図10】いくつかの実施形態に係る、通常の材料、オーゼチック材料、及び半オーゼチック材料における力の構成である。
【0032】
図11】いくつかの実施形態に係る、複数の力コンポーネントを有する歯科矯正装具である。
【0033】
図12】いくつかの実施形態に係る、第1歯及び第2歯を含む複数の歯を抱持する歯科矯正装具202である。
【0034】
図13】いくつかの実施形態に係る、補強部分とシェル部分との間の異なる配置を有する歯科矯正装具の例である。
【0035】
図14】いくつかの実施形態に係る、複数の開口を有する歯科矯正装具の例である。
【0036】
図15】いくつかの実施形態に係る、開口を有さない歯科矯正装具を装着した上歯の列の図である。
【0037】
図16】いくつかの実施形態に係る、前歯平面に実質的に平行な平面内の歯を傾斜させるための2つの力のパターンを示す。
【0038】
図17】いくつかの実施形態に係る、2つの力コンポーネントによって押圧される歯の2つの異なる断面図である。
【0039】
図18】いくつかの実施形態に係る、1つ又は2つの歯を回転させるための力のパターンを示す。
【0040】
図19】いくつかの実施形態に係る、歯中心軸808に沿って歯を引っ張るための力のパターンを示す。
【0041】
図20】いくつかの実施形態に係る、前記歯の前面に垂直な方向に歯の全体を移動させるための力のパターンを示す。
【0042】
図21】いくつかの実施形態に係る、2つの直ぐ隣接する歯の間の空間を開くための3つの力のパターンを示す。
【0043】
図22】いくつかの実施形態に係る、2つの直ぐ隣接する歯の間の空間を閉じるための3つの力のパターンを示す。
【0044】
図23】いくつかの実施形態に係る、固定源に対して1組の直ぐ隣接する歯を移動させるための力のパターンを示す。
【0045】
図24
図25】いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具の取り付け構造と相互作用するために歯上に取り付けられる多角形構造の斜視図である。
【0046】
図26】いくつかの実施形態に係る、前記歯科矯正装具の前記取り付け構造402の力のパターンの6つの例を示す。
【0047】
図27】いくつかの実施形態に係る、前記歯科矯正装具の前記取り付け構造402の力のパターンの別の例を示す。
【0048】
図28】いくつかの実施形態に係る、その咀嚼面に実質的に平行な歯の断面図である。
【0049】
図29】いくつかの実施形態に係る、歯の表面(歯メッシュとも呼ばれる)との2つの異なる接触形態を有する2つの力コンポーネントを示す。
【0050】
図30】いくつかの実施形態に係る、デジタル彫刻におけるネガ形状修正のためのプロセスのフロー図である。
【0051】
図31】いくつかの実施形態に係る、ネガ彫刻によって生成される力コンポーネントの3つの例を示す。
【0052】
図32】いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具と歯208との過剰適合を示す。
【0053】
図33】いくつかの実施形態に係る、仮想形状修正のプロセスの2つの例を示す。
【0054】
図34】いくつかの実施形態に係る、歯の固定源を可能にするために適用されるベクトル方向転換を示す。
【0055】
図35】いくつかの実施形態に係る、アーチ拡張用に適用される歯科矯正装具を示す。
【0056】
図36】いくつかの実施形態に係る、1つ又は複数のアクチュエータに結合された歯科矯正装具を示す。
【0057】
図37】いくつかの実施形態に係る、アクチュエータに結合された別の歯科矯正装具を示す。
【0058】
図38】いくつかの実施形態に係る、ツインブロックを有する1組の歯科矯正装具を示す。
【0059】
図39】いくつかの実施形態に係る、舌ブロック構造3902を有する1組の歯科矯正装具を示す。
【0060】
図40】いくつかの実施形態に係る、舌刺激装置又は位置決め装置を有する歯科矯正装具を示す。
【0061】
図41】いくつかの実施形態に係る、シート材料上に作られ、補強部分として適用される補強構造の例である。
【0062】
図42】いくつかの実施形態に係る、1つ又は複数のセンサに結合された2列の歯を示す。
【0063】
図43】いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具で適用されるセンサ及びアクチュエータに電力を供給する方法を示す。
【0064】
図44】いくつかの実施形態に係る、歯を再配置するための歯科矯正装具を形成する方法のフロー図である。
【0065】
図45】いくつかの実施形態に係る、歯を再配置するための歯科矯正装具を形成するための別の方法のフロー図である。
【0066】
同様の参照番号は、図面のいくつかの図を通じて対応する部品を指す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
ここで、その例が添付図面に示された特定の実施形態を詳細に参照する。以下の詳細な説明において、本明細書に提示される主題の理解を助けるために、多数の非限定的な特定の詳細が記載される。しかし、特許請求の範囲から逸脱することなく様々な代替案を使用でき、これらの特定の詳細なしに前記主題を実施できることは、当業者に自明であろう。例えば、本明細書に提示される主題がデジタルビデオ機能を有する多くのタイプの電子デバイスで実施できることは、当業者に自明であろう。
【0068】
本出願の様々な実施形態は、歯を再配置するための歯科矯正装置、システム、及び方法に関する。一連の歯科矯正装具は、歯を初期歯配列から最終の目標歯配列に再配置するように連続的に適用される。各歯科矯正装具は、少なくとも補強部分及びシェル部分を有する歯科矯正装具の一体片を含む。前記補強部分は前記シェル部分より高い剛性レベルを有する。異なる部分は、患者の歯の生物学的及び解剖学的特徴に基づいて設計される。例えば、補強部分は、歯を治療前の位置及び向きから目標の向き及び位置に移動させるように歯冠に作用する正確な力ベクトルを生成することができる。対応する移動経路及び速度は、生理学的限界及び最適な力プロファイルに基づいて最適化される。力ベクトルは、生成されて回転中心及び抵抗中心に適用されることで、歯移動のランダムさを低減し、望ましくない力を排除する。このように、対応する歯再配置プロセスは、効率的な歯移動によって推進され(例えば、結果に過度に着目せずに)、患者のために迅速化及び短縮することができる。
【0069】
図1は、いくつかの実施形態に係る、一連の歯科矯正装具を使用して歯を再配置するプロセス100の例のフロー図である。便宜上、プロセス100はコンピュータシステムによって実施又は制御されるように説明される。一連の歯科矯正装具は、患者に連続的に装着され、患者の歯を治療前の歯配列102Aから治療後の歯配列102Bに再配置するように構成される。入力102は、治療前歯配列102Aの情報及び治療後歯配列102Bの情報を含む。コンピュータシステムは、治療前歯配列102Aから治療後歯配列102Bまでの複数の幾何学的配列を含む経路を幾何学的に計算する(104)。複数の幾何学的配列は、患者の歯の根、骨、及び力ベクトルのグラフ分析マップ108を生成するために、患者の歯の根モフォロジー及び有効抵抗に基づいて分析される(106)。コンピュータシステムは、歯の抵抗中心、回転中心、及び/又はピボットに基づいて歯冠上の集約力ベクトルを決定し(110)、ベクトル最適化グラフ112を生成する。コンピュータシステムは、歯科矯正装具によって再配置された複数の歯の集約力ベクトルが、異なる時点で、及び全治療コース中に、最適化されているか否かを決定し(114)、そして、一連の歯科矯正装具の歯配列を調整し、これはいくつかの実施形態において繰り返し実施する。このため、経路は、歯科矯正装具によって再配置された複数の歯の集約力ベクトルについて所望の性能を提供するように調整される(116)。
【0070】
いくつかの実施形態において、力最適化(114)に続いて、コンピュータシステムは物理特徴生成器に1つ又は複数の力を加え、例えば、物理特徴生成器118に直接三次元(3D)印刷-複数材料力を加え、物理特徴生成器120に直接3D印刷-単一材料力を加え、物理特徴生成器122に熱成形力を加える。1つ又は複数の補強部分及び1つ又は複数のシェル部分は、複数の歯の力ベクトルを可能にするために、一連の歯科矯正装具の各々上で特定される(124)。一連の歯配列は、一連の歯科矯正装具について決定され(126)、特定された補強部分及びシェル部分を含む各歯配列を含む。コンピュータシステムは、患者の歯に許容される距離限界を患者の歯の解剖学的情報に基づいて決定する(128)。一連の歯科矯正装具の各々は、患者の歯の解剖学的情報に基づいてカスタマイズ・調整された一連の歯配列を提供するために更に調整される(130)。
【0071】
コンピュータシステムは、各患者の歯の解剖学的情報に基づいてカスタマイズされた一連の歯科矯正装具の一連の歯配列に、コンピュータ支援設計(CAD)出力を出力する。出力は、任意に、直接3D印刷複数材料出力132、直接3D印刷単一材料出力134、及び熱成形出力136のうちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態において、3D印刷は、直接3D印刷複数材料出力132に基づいて一連の歯科矯正装具を作るために実施され、複数材料は、各歯科矯正装具の補強部分及びシェル部分を印刷するために適用される。あるいは、いくつかの実施形態において、3D印刷は、直接3D印刷単一材料出力134に基づいて一連の歯科矯正装具を作るために実施され、単一材料は、各歯科矯正装具の補強部分及びシェル部分を形成するために異なる厚さで適用される。あるいは、いくつかの実施形態において、熱成形プロセスは、熱成形出力136に基づいて一連の歯科矯正装具を形成するために適用される。
【0072】
プロセス100は、任意に、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に記憶され、電子システムの1つ又は複数のプロセッサによって実行される命令によって管理される。図1に示す動作の各々は、コンピュータシステムのコンピュータメモリ又は非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に記憶された命令に対応し得る。コンピュータ可読記憶媒体は、磁気もしくは光ディスク記憶装置、フラッシュメモリなどの固体記憶装置、又は他の不揮発性メモリ装置(複数可)を含み得る。コンピュータ可読記憶媒体に記憶された命令は、ソースコード、アセンブリ言語コード、オブジェクトコード、又は1つ又は複数のプロセッサによって解釈実行される他の命令フォーマットのうちの1つ又は複数を含み得る。プロセス100におけるいくつかの動作は、組み合わせられてもよく、及び/又はいくつかの動作の順序は変更されてもよい。
【0073】
歯科矯正装具に対応する患者の歯の移動経路及び速度は、生理的限界及び最適な力プロファイル138に基づいて最適化される。生理的限界は骨リモデリング速度を規定し、生理的速度限界は科学的発見であり、証拠ベースの研究によって定量化される。最適な力プロファイル138は、科学的研究から得られ、骨の内部で歯を所望の速度で移動させるために使用される。いくつかの実施形態において、最適な力プロファイル138は一次入力(f)として提供され、ここでfは、任意の特定の時点で歯移動方向に平行な歯根表面に作用するベクトルである。いくつかの実施形態において、治療コース中の任意の時点で、ランダムにサンプリングされた根表面に加えられる任意の力の値は、最適な力プロファイル138(f)を超えることはなく、このため、該最適な力プロファイル138(f)は歯科矯正装具の制限要因となる。いくつかの実施形態において、治療コース中の任意の時点で、ランダムにサンプリングされた任意の根表面上の任意の力の値は、最適な力プロファイル138(f)からの所定のオフセット以下及び以内にある。最適な力プロファイル138(f)は、骨の生理機能、細胞活性、バイオモジュレーションの有無、及び他の生物学的制限(例えば、周囲の構造(頬側歯槽骨)に影響を与える力のレベル、根端吸収)の影響を受ける。
【0074】
いくつかの実施形態において、最適な力プロファイル138(f)は、骨の生理機能に対する科学的理解及び証拠ベースの定量化が利用可能になるにつれて更新される。最適な力プロファイル138(f)は、任意のバイオモジュレーションの有無に応じて調整され、ここでバイオモジュレーションパラメータが科学的に且つ確証的に定量化される。いくつかの実施形態において、最適化は以下の優先順位に従って行われる。
・任意の時間及び歯の向きで、根の前進面(移動方向に垂直な表面)はfにできるだけ近いベクトル(ft→f)を受け取る。
・冠に作用する根表面上の全てのfの集合体はVと定義される。
・ベクトルV(冠を介して作用)は、歯が前後左右にぐらつくことなく歯を(fの制約下で)その治療前O&Pからその目標o&pに移動させるために必要なベクトルである。Vは純粋でノイズがない。
・治療前の歯の向き及び配列と目標の歯の向き及び配列との間の経路は3D空間で最短である必要がある。
・移動先に向かう歯の移動は、できるだけ同時に並進と回転を行う必要がある(類似:並列処理)。
・ベクトルVは、所望のVを生成するために歯表面に加える必要がある力に変換され、その後、任意の特定の時刻でのVの歯表面上における印加点が決定される。
【0075】
歯移動は力コンポーネントに対応する。いくつかの実施形態において、力コンポーネントは、歯科矯正装具の一部としての又は歯に取り付けられた物理構造によって、作られ、1つ又は複数の歯の位置に影響を与える。いくつかの実施形態において、歯科矯正装具の力コンポーネントのトポロジー又は歯形状の変化により、所望のVが生成される。何らかの状況では、歯が望ましくない湾曲位置及び向きから目標の位置及び向きに変化するにつれて、歯表面上の最適な力印加点は常に変化する。いくつかの実施形態において、力ベクトルVは、歯の生体力学的パラメータ、根表面積、根表面モフォロジー、及び根の空間的配列のうちの1つ又は複数により影響され、回転中心、抵抗中心、及びピボットに応じて加えられる。力コンポーネントのトポロジーは、力ベクトルVと、装具材料の物性と、アライナ材料の相互作用に変換される目標歯配列における歯間の形態学的関係(例えば、ニュートンの第三法則に基づく)と、の影響を受ける。
【0076】
いくつかの実施形態において、一連の歯科矯正装具はエントロピーを減少させるように設計される。力コンポーネント設計のトポロジーは、(1)最適な回転中心及び抵抗中心に作用する最適なベクトルを生成し、(2)力コンポーネントを注意深く整列させることでランダムさを低減し、それによってベクトルをその最適な位置にあるようにし、及び(3)望ましくない漂遊力(ベクトル)及びニュートンの第三法則による干渉の排除を十分に考慮しながら、力コンポーネントを適宜相殺させ及び/又はバランスさせることを目的とする。歯の移動量はプロセス主導で、力の計画から得られるため、歯をどのように効果的に且つ効率的に移動させるかを配慮せずに歯の目的位置を設計し歯を前記目的位置に強制させる数多くの結果主導の解決策よりも効率的な歯再配置の解決策を提供する。
【0077】
図2は、いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具202を装着した上歯の列の図200である。歯科矯正装具202は、目標歯配列を画定し少なくとも補強部分204(骨格部分とも呼ばれる)及びシェル部分206を有する歯科矯正装具の一体片を含む。歯科矯正装具202は、複数の歯208(例えば、図2中の上歯の列)を抱持し、長期間内(例えば、10日以内)に漸次的に複数の歯208を現在の歯配列から目標歯配列に弾性的に再配置するように構成される。補強部分204は第1剛性レベルを有する。シェル部分206は、補強部分204から延在し、第2剛性レベルを有する。第2剛性レベルは第1剛性レベルより低い。いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202は、歯208を初期歯配列から最終歯配列に再配置するように構成された一連の歯科矯正装具の1つである。再配置プロセス中、一連の歯科矯正装具(例えば、歯科矯正装具202)の各々が歯208を現在の歯配列から目標の歯位置に再配置するにつれて、歯208は複数の中間歯配列を通過する。
【0078】
いくつかの実施形態において、歯科矯正装具の一体片は、複数の開口210(例えば、210A、210B)を更に含む。各開口210は、補強部分204及びシェル部分206の少なくとも一方に隣接する。歯科矯正装具202は、各開口210を介して複数の歯を口腔環境に露出させ、各開口210を通って水を循環できるようにするように構成される。例えば、第1開口210Aは、補強部分204A及びシェル部分206に直ぐ隣接し、歯208Aの先端を露出させる。第2開口210Bは、シェル部分206に直ぐ隣接し、歯208Bの表面を露出させる。いくつかの実施形態において、開口のサブセットは、シェル部分又は補強部分のグリッドに形成される。シェル構造及び補強構造の柔軟性及び強度は切削によって任意に修正される。いくつかの実施形態において、開口210はスリット220又は孔を含む。これらの開口210は、唾液の循環を可能にすることによって口腔の健康を改善し、咬合干渉を排除し、歯科矯正装具202の構造特性を修正し、咬合力を利用して歯を移動させる。
【0079】
別の言い方をすれば、いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202の一体片は、補強部分204又はシェル部分206上に形成された1つ又は複数のスリット220を更に含む。1つ又は複数のスリット220は1つ又は複数のスリット220の周囲で第2剛性レベルを局所的に修正するように構成される。
【0080】
いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202は、開口を有する水力変位構造(例えば、樹木状又はトラック状)を含む。開口により、唾液は水力変位構造に流入又はそこから流出可能になる。水力変位構造と対応する歯表面との間に空間が生じると、唾液は水力変位構造と歯表面との間をも流れる。水力変位構造は車のタイヤのトレッド模様のように機能する。トレッドにより、車が濡れた路面を走行している時に水は逃がすことができ、そのため、タイヤと路面との接触が効果的に改善される。水力変位構造は、歯接触構造(樹木状、トラック状)及び上記構造間の溝又は開口(タイヤのトレッドに相当)の2つの部分からなってもよい。この設計は、構造と歯表面の間に溜まることなく開口を介して唾液を逃がすことを可能にすることによって、第1構造と歯表面の接触を改善する。
【0081】
いくつかの実施形態において、補強部分204Aは固体片を含む。いくつかの実施形態において、補強部分204Bは、直ぐ隣接する一対の歯208に重なる。いくつかの実施形態において、補強部分204Cは、中央片に接続された複数のフィンガを有し、複数のフィンガは開口210によって分離される。いくつかの実施形態において、補強部分は、複数のリブを有する骨格204D(補強アレイとも呼ばれる)、フレーム204E、グリッド、ビーディング構造204F、リング204G、樹木状構造204H、及びバー204Iを含む。一例において、固体片の補強部分は、円形(204J)又は不規則な形状(204A)を有する。
【0082】
いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202の一体片として、補強部分204及びシェル部分202は、同じ材料又は異なるタイプの材料で形成され、一方又は両方を損傷することなく互いに分離することはできない。いくつかの実施形態において、補強部分204及びシェル部分202は3D印刷によって共に印刷される。いくつかの実施形態において、補強部分204及びシェル部分202は2ピースとして別々に製造され、接着剤又は締結構造を使用して一体片に組み合わせられる。
【0083】
図3は、いくつかの実施形態に係る、歯208の列の物理モデル320に基づいて作られた歯科矯正装具202の一体片の図である。歯科矯正装具202は、物理モデル320に基づいて熱成形によって形成される。相補的な取り付け構造は、歯科矯正装具202上に取り付け構造を形成するようにこの物理モデル320内で構築される。いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202の一体片は歯科矯正装具202Aの第1一体片である。歯科矯正装具202Aの第1一体片は歯科矯正装具202Bの第2一体片と対になる。いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202Aの第1一体片及び歯科矯正装具202Bの第2一体片の各々は、互いに独立してそれ自体で適用される。いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202Aの第1一体片及び歯科矯正装具202Bの第2一体片は、上歯と下歯が整列し互いに適切に噛み合うことができるように、共に設計・適用される。
【0084】
図4は、いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具202の取り付け構造402、及び前記取り付け構造402のマイクロレベルの断面図404を示す図である。図5は、いくつかの実施形態に係る、取り付け構造402のマイクロレベルの断面図404、及び取り付け歯406のナノレベルの断面図502を示す図である。図2における歯科矯正装具202の一体片は、歯208の表面208Sを掴み、歯208の表面208Sに接する剪断方向に沿って歯208の表面208Sに引張力を加えるように構成された取り付け構造402を更に含む。いくつかの実施形態において、取り付け構造402は、補強部分204及びシェル部分206の一方の内面に取り付けられ、歯科矯正装具202が複数の歯208を抱持するために装着される時に、歯208の各サブセットと接触しているように構成される。
【0085】
いくつかの実施形態において、取り付け構造402は、第1特徴サイズを有する第1レベルの複数の取り付け歯406を含む。図5を参照し、いくつかの実施形態において、取り付け構造402の複数の取り付け歯406の表面504は、第2レベルで多孔質であり、第2特徴サイズを有する。第1特徴サイズは第2特徴サイズを上回る。例えば、取り付け構造402は、ミクロンレベルの複数の取り付け歯406を含み、複数の取り付け歯406の表面504はナノメートルレベルの多孔質構造を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、取り付け構造402は、補強部分204又はシェル部分206の本体から延在し、それと同じタイプの材料(例えば、第1材料)を含む。例えば、図2中、補強部分204Cは延在アームを有し、取り付け構造402は、延在アームの先端エリアに位置する。いくつかの実施形態において、取り付け構造402は3D印刷機を使用して印刷される。3D印刷機は、複数の取り付け歯406及び対応する多孔質表面構造504を含む取り付け構造402を直接印刷する。いくつかの実施形態において、3D印刷機は、第1材料及び第2材料を使用して複数の取り付け歯406及び対応する多孔質構造504を印刷する。第2材料は、第1材料を攻撃しない溶液を使用して更に溶解される。第2材料が溶解された後、取り付け歯406及び多孔質表面構造504を有する取り付け構造402が形成される。
【0087】
別の言い方をすれば、いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202で適用される取り付け構造402は、マクロ、メソ、マイクロ、及び/又はナノ構造レベルでヤモリ接着システムを模倣する。歯科矯正装具320の歯との接触エリアは、ヤモリの指先の剛毛エリアに相当する。ヤモリの指先の剛毛エリアは、100万本の足毛を含み、各足毛は1000個のへら状の先端を有する。
【0088】
図6は、いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具の取り付け構造402を形成するプロセス600のフロー図である。歯表面に接触するように構成された材料602は、可溶性ナノ粒子604を含むように製造される。ナノ粒子注入材料602は、熱成形のためにシェル材料と積層され、又は直接3D印刷技術で直接印刷される。熱成形又は3D印刷後、露出したナノ粒子604は、ナノ粒子606によって前に占有されたナノピット606を露出させるように化学的又は物理的手段を使用して除去されることで、取り付け構造402を形成する。
【0089】
図7は、いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具202の取り付け構造402によって歯208に加えられる力を示す。各取り付け構造402は、歯208の各位置に取り付けられ、歯208の各力位置で目標を定めた力を提供するように構成される。目標を定めた力は任意に押圧力702又は引張力704である。引張力704は、歯208の各力位置に対応する湾曲歯表面上に接線的に加えられる。押圧力702は、歯208の各力位置に対応する湾曲歯表面上に垂直に加えられる。
【0090】
図8は、いくつかの実施形態に係る、歯の挺出、傾斜、及び回転に関連する力のパターン800を示す。力802は歯に加えようとされる。いくつかの実施形態において、突出構造804は、歯を形態学的に修正するために、例えば接着剤を使用して歯の表面に取り付けられる。突出構造804の表面は、歯208に装着された歯科矯正装具202によって加えられる押圧力802を受けるように構成される。いくつかの実施形態において、突出構造804は手動で除去できず、歯の表面から研磨しなければならない。あるいは、いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202の取り付け構造402は、歯科矯正装具202が歯208に装着される時に、目標位置806で歯の表面を掴み、力802を生成するように歯を引っ張る。取り付け構造402によって生成される力802は、目標位置806で歯の表面の接線方向と平行な方向を有する。言い換えれば、目標位置806は、力802に応じて選択される。
【0091】
前歯平面に実質的に平行な平面内に歯が実質的に傾斜される。複数の力は、例えば、前歯平面に実質的に平行な平面上で、同じ歯に加えられて該歯を傾斜させる。いくつかの実施形態において、2つの突出構造804A及び804Bは、歯を形態学的に修正するために、2つの異なる位置で歯の表面に取り付けられる。突出構造804A又は804Bの各表面は、歯208に装着された歯科矯正装具202によって加えられる押圧力802A又は802Bを受けることで、押圧力802Bの方向に歯を傾斜させるように構成される。あるいは、いくつかの実施形態において、取り付け構造402A及び402Bは、歯科矯正装具202上に形成される。取り付け構造402A及び402Bは、歯科矯正装具202が歯208に装着される時に、それぞれ、2つの目標位置で歯の表面を掴み、引張力802A及び802Bを生成するように歯を引っ張る。力802A及び802Bは押圧力802Bの方向に歯を傾斜させる。目標位置は、効率的に歯の傾斜を可能にするように選択される。
【0092】
加えて、いくつかの実施形態において、1つ又は複数の力は、同じ歯208に加えられて、例えば、歯の冠及び根を含めて歯を通過する歯軸808に対して、歯を回転させる。いくつかの実施形態において、突出構造810は、歯を形態学的に修正するために、例えば接着剤を使用して歯の表面に取り付けられる。突出構造810の表面は、歯208に装着された歯科矯正装具202によって加えられる押圧力812を受けるように構成される。押圧力812は、歯を回転させ(814)、歯軸808を横方向にシフトさせる(814)。あるいは、いくつかの実施形態において、取り付け構造402C及び402Dは歯科矯正装具202上に形成される。取り付け構造402C及び402Dは、歯科矯正装具202が歯208に装着される時に、それぞれ、2つの目標位置で歯の表面を掴み、引張力802C及び802Dを生成するように歯を引っ張る。力802A及び802Bは、歯軸808に対して歯を回転させる。目標位置は、歯軸808を横方向にシフトさせることなく歯の回転を可能にするように選択される。
【0093】
歯科矯正装具202は、歯208上に形成された異なる突出構造804と共に作動し、突出構造804に対して押圧力を生成することができる。突出構造804の形状及び得られた有効な力ベクトルは、患者が容易に歯科矯正装具202を挿入及び除去できるようにする要件によって更に損なわれる。逆に、歯科矯正装具202は、得られたベクトルがきれいで有効であるように、歯208の表面を掴み、歯表面に沿って引張作用を加える取り付け構造402を提供し、これにより突出構造804は不要になる。
【0094】
図9は、いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具202のシェル部分206を形成するために使用されるハニカムアクチュエータ900の例である。補強部分204は骨格構造として機能し、構造的安定性及び柔軟性を提供し、正確で制御された力を伝達するように構成される。いくつかの実施形態において、シェル部分206はスキン又はシェルとして機能し、基底構造にカバレッジ及び保護を提供し、例えば、歯科矯正装具202を手動で頻繁に着脱するなど、人的管理を容易にするために構造と材料をリンクするように構成される。いくつかの実施形態において、シェル部分206は、全体的に又は部分的に開放されたハニカムアクチュエータ900を少なくとも部分的に含む。これにより、歯表面のカバレッジが減少し、更に唾液の流動が促進され、歯科矯正装具202が口腔の自己治癒を妨げることが回避される。特に、ハニカムアクチュエータ900は、咬合エリアにおける歯表面のカバレッジを減少させることで、咬合界面を減少させ、咬合と発音の効率を高める。
【0095】
いくつかの実施形態において、シェル部分206は、筋肉として機能し、中間又は組み合わせ材料及び/又は構造を含む。例えば、シェル部分206の材料は歪みを蓄積し、歯を移動させる力を生成するように緩和される。このため、自己作動材料(例えば、ハニカムアクチュエータ900)がシェル部分206の製作に適用される。
【0096】
図10は、いくつかの実施形態に係る、通常の材料1020、オーゼチック材料1040、及び半オーゼチック材料1060における力の構成である。通常の材料1020、オーゼチック材料1040、及び半オーゼチック材料1060の各々は、それぞれの材料シートを含み、第1面内方向1002及び該第1面内方向1002に垂直な第2面内方向1004に対応する。第1及び第2面内方向1002及び1004の両方とも、それぞれの材料シートの平面表面に実質的に平行である。通常の材料1020について、材料シートが伸長されて第1面内方向1002に沿った引張力を有する場合、第2面内方向1004は圧縮され、圧縮力を有する。逆に、材料シートが圧縮されて第1面内方向1002に沿った圧縮力を有する場合、第2面内方向1004は伸長され、引張力を有する。オーゼチック材料1040について、材料シートが伸長されて第1面内方向1002に沿った第1引張力を有する場合、第2面内方向1004も伸長され、第2引張力を有する。逆に、材料シートが圧縮されて第1面内方向1002に沿った第1圧縮力を有する場合、第2面内方向1004は圧縮され、第2圧縮力を有する。半オーゼチック材料1060について、材料シートが伸長されて第1面内方向1002に沿った第1引張力を有する場合、第2面内方向1004も伸長され、第2引張力を有する。逆に、材料シートが圧縮されて第1面内方向1002に沿った圧縮力を有する場合、第2面内方向1004は伸長され、第3引張力を有する。
【0097】
オーゼチック材料1040及び半オーゼチック材料1060の各々は、それぞれの自己作動材料として機能する。いくつかの実施形態において、製造中、オーゼチック材料1040又は半オーゼチック材料1060の第1寸法は、通常のサイズより小さくされる。患者の口内に配置される時、第1寸法は拡張される。あるいは、いくつかの実施形態において、製造中、オーゼチック材料1040又は半オーゼチック材料1060の第1寸法は通常のサイズより大きくされる。患者の口内に配置される時、第1寸法は圧縮される。オーゼチック材料1040又は半オーゼチック材料1060について、結果として、垂直方向の拡張又は収縮が生じ、これにより、接触表面又は取り付け構造を所望の方向に移動させる力が生じる。
【0098】
図11は、いくつかの実施形態に係る、複数の力コンポーネント1102を有する歯科矯正装具202である。いくつかの実施形態において、補強部分204は第1エリアを有し、シェル部分206は、第1エリアにより大きい第2エリアを有する。シェル部分206は、少なくとも部分的に補強部分206に重なる。更に、いくつかの実施形態において、シェル部分206は完全に補強部分204に重なる。補強部分204は、歯科矯正装具202が複数の歯208を抱持するために装着される時に、歯208の各サブセットと接触しているように構成される。シェル部分206は、歯科矯正装具202に対して外側シェルを提供する。シェル部分206は、歯科矯正装具202に構造的安定性を提供する骨格構造を任意に含む補強部分204と部分的にマージされる。
【0099】
いくつかの実施形態において、補強部分204及びシェル部分206は同じ装具材料を含み、補強部分204はシェル部分206の第2厚さを上回る第1厚さを有する。いくつかの実施形態において、装具材料は実質的に透明であり、又は患者の歯の色に実質的に近い色を有する。逆に、いくつかの実施形態において、補強部分204は第1装具材料を含み、シェル部分は第1装具材料と異なる第2装具材料を含む。補強部分204の厚さはシェル部分206の厚さより大きい、等しい、又は小さいが、補強部分204の第1剛性レベルはシェル部分206の第2剛性レベルより高い。いくつかの実施形態において、第1及び第2装具材料の各々は実質的に透明であるか、又は患者の歯の色に実質的に近い色を有する。いくつかの実施形態において、第1装具材料及び補強部分204の構造は、対応する歯208上に伝達される力に関連する歪みを蓄積するように選択される。
【0100】
3つの力コンポーネント1102は、シェル部分204と歯208の間に位置する3つの補強部分204を含む。各補強部分204は、歯科矯正装具202が複数の歯208を抱持するために装着される時に、各歯と整列し、接触するように構成される。各補強部分204は、歯科矯正装具202の一体片上の第1位置に位置する。第1位置及び第1剛性レベルは、各歯上に加える力を生成することで、複数の歯の現在の歯配列から目標歯配列への再配置を容易にするように構成される。一例において、力コンポーネント1102Aの補強部分204Aは、補強構造のアレイを含む。いくつかの実施形態において、図11中の補強部分204のサブセットの表面は、歯208の対応する表面を掴むように構成された各取り付け構造406を有する。いくつかの実施形態において、シェル部分206の内面は、歯208の対応する表面を掴むように構成された各取り付け構造406を有する。
【0101】
図12は、いくつかの実施形態に係る、第1歯208A及び第2歯208Bを含む複数の歯を抱持する歯科矯正装具202である。シェル部分204が、歯科矯正装具202においてコネクタ、保護カバー及び力印加器として使用される。第1歯208Aについて、対応するシェル部分206Aは、外側シェルを提供し、2つの力コンポーネント1102Aを第1歯208Aに接触して保持する。第2歯208Bの外面について、対応するシェル部分206Bは、部分的な外側シェルを提供し、3つの力コンポーネント1102Bを第2歯208Bに接触して保持する。別の言い方をすれば、3つの力コンポーネント1102Bは、第1力コンポーネント1102B-1、第2力コンポーネント1102B-2、及び第3力コンポーネント1102B-3を含む。第1力コンポーネント1102B-1は、対応するシェル部分206Bの一部を介して第2力コンポーネント1102B-2に物理的に結合され、第2力コンポーネント1102B-2は、対応するシェル部分206Bの別の一部を介して第3力コンポーネント1102B-3に物理的に結合される。
【0102】
逆に、第2歯208Aの内面について、3つの力コンポーネント1102Cは、対応する補強部分204によって第2歯208Bに接触して保持される。対応する補強部分204は、3つの力コンポーネント1102Cを互いに接続する。別の言い方をすれば、3つの力コンポーネント1102Cは、第1力コンポーネント1102C-1、第2力コンポーネント1102C-2、及び第3力コンポーネント1102C-3を含む。第1力コンポーネント1102C-1は、対応する補強部分204の一部を介して第2力コンポーネント1102C-2に物理的に結合され、第2力コンポーネント1102C-2は、対応する補強部分204の別の一部を介して第3力コンポーネント1102C-3に物理的に結合される。
【0103】
図13は、いくつかの実施形態に係る、補強部分204とシェル部分206との間の異なる配置を有する歯科矯正装具202の例である。歯科矯正装具1400は、シェル部分206及び第1補強部分204A、第2補強部分204B、並びに第3補強部分204Cを含む。いくつかの実施形態において、シェル部分204は完全に第2補強部分204Bに重なり、第2補強部分204Bは、歯科矯正装具202が複数の歯208を抱持するために装着される時に、シェル部分206によって複数の歯から分離されるように構成される。
【0104】
いくつかの実施形態において、シェル部分204は完全に第1補強部分204Aに重なる。第1補強部分204Aのアンカー端がシェル部分206にマージされ、第1歯208A上に着くように構成される。第1補強部分204Aは、延在アームを有する。取り付け構造402が延在アームの先端エリアに位置し、第1歯208Aに直ぐ隣接する第2歯208Bに接触するように構成される。第1補強部分204Aは、第2歯208Bを第1歯208Aに引っ張るように構成される。いくつかの実施形態において、シェル部分204は第3補強部分204Cに重ならない。第3補強部分204Cのアンカー端は、第1歯208A上に着くように構成される。第3補強部分204Cは延在アームを有する。別の取り付け構造402が第3補強部分204Cの延在アームの先端エリアに位置し、第2歯208Bに接触するように構成される。第3補強部分204Cは、第1補強部分204Aと共同して第2歯208Bを第1歯208Aに引っ張るように構成される。
【0105】
図13を参照し、いくつかの実施形態において、シェル部分206は歯にかかる望ましくない力を排除するために適用される。シェル部分204は歯表面に接触せず、補強部分204A又は空気によって歯208から物理的に分離される。力コンポーネント1102は、目標歯エリアで歯表面と直接接触し、目標向きで目標歯エリアに力を加える。所望の力はシェル部分206によって妨げられることなく加えられる。
【0106】
図14は、いくつかの実施形態に係る、複数の開口210を有する歯科矯正装具202の例である。歯科矯正装具202は、メゾスコピックレベルの骨格-シェル構造又は開放-シェル構造を有する。補強部分204は、硬くて剛直な骨格構造を含み、歯科矯正装具202に構造的支持を提供する。シェル部分206は、任意に歯208の表面に接触するか又は接触せず、歯科矯正装具202に構造的保護及び補強を提供する。開口210を作るために、不要なシェル領域が除去される。残ったシェル部分206は、基底力コンポーネント1102への損傷を回避する保護シールドとして、また他の構造に反力を散逸させるベース支持体として機能する。
【0107】
残ったシェル部分206及び補強部分は異なる位置の様々なサイズの複数の穿孔に対応する。シェル部分206は2つの方式で、例えば、図13中の補強部分204Aの延在アームのアンカーで又は補強部分204Bの構造全体に沿って、補強部分204及び/又は力コンポーネント(例えば、図11中の1102)に接続する。開口210は歯表面カバレッジを減少させ、唾液の流動を促進する。
【0108】
図15は、いくつかの実施形態に係る、開口を有さない歯科矯正装具202を装着した上歯の列の図1500である。歯科矯正装具202は、歯208の露出部分を実質的に覆い、複数の補強部分204に関連付けられた複数の力コンポーネントを含む。いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202の複数のシェル部分206は歯208と直接接触し、複数の補強部分204は、図13中の補強部分204Bのように、複数のシェル部分206の外面上に形成される。いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202の複数のシェル部分206のサブセット又は全ては、歯208に接触せず、補強部分204のサブセットは、図13中の補強部分204Aのように、シェル部分206のサブセット又は全ての内面上に形成される。
【0109】
一連の歯科矯正装具202が、歯208を初期歯配列から最終歯配列に再配置するために適用される。一連の歯科矯正装具202の各々は、独立して設計され、即ち、歯科矯正装具202の第1サブセットは開口210を有するが、歯科矯正装具202の第2サブセットは、歯科矯正装具202の第1サブセットとは独立して、開口210を有さない。第1の一連の歯科矯正装具202が上歯で適用されると同時に、第2の一連の歯科矯正装具202が下歯で適用される。上歯で適用される各歯科矯正装具202は、それと同時に下歯で適用される各歯科矯正装具202とは独立して、開口110を有するか又は有さない。一例において、上歯用の第1歯科矯正装具は開口210を有さず、下歯用の第2歯科矯正装具は複数の開口210を有する。
【0110】
図16は、いくつかの実施形態に係る、前歯平面に実質的に平行な平面内で歯を傾斜させるための2つの力のパターン1600及び1650を示す。複数の力が、例えば、前歯平面に実質的に平行な平面上で、同じ歯上に加えられて該歯を傾斜させる。第1の力のパターン1600に従って、1つ又は複数の第1平行引張力1602が歯中心208CRの第1側における第1エリア1604上に加えられ、1つ又は複数の第2平行引張力1606が歯中心208CRの第2側における第2エリア1608上に加えられ、これによって、歯先端208Tが1つ又は複数の第2平行引張力1606の方向に一致する方向に向かって傾斜する。第2の力のパターンに従って、1つ又は複数の第1平行押圧力1610が歯中心208CRの第1側における第1エリア1604上に加えられ、1つ又は複数の第2平行引張力1606が歯中心208CRの第2側における第2エリア1608上に加えられ、これによって、歯先端208Tが1つ又は複数の第2平行引張力1606の方向に一致する方向に向かって傾斜する。
【0111】
第1平行引張力1602、第2平行引張力1606、及び第1平行押圧力1610の各々は、取り付け構造402によって提供される。1つ又は複数の第1平行引張力1602は、同一の方向を有し、1つ又は複数の第1平行押圧力1610と同じ歯運動をもたらす。しかし、第1平行引張力1602を提供する取り付け構造402は第1方向から延在して第1エリア1604に到達し、第1平行押圧力1610を提供する取り付け構造402は第2方向から延在して第1エリア1604に到達する。第2方向は第1エリア1604の対向する両側にある。
【0112】
図17は、いくつかの実施形態に係る、2つの力コンポーネント1702及び1704によって押圧される歯の異なる断面図1700及び1720である。歯208が歯科矯正装具202を装着すると、歯科矯正装具202は各歯208の冠を包み、抱持する。断面図1700は、歯の咀嚼面208CSに実質的に平行な平面から取得される。歯科矯正装具202は、歯の内面から歯に接触するように構成された2つの力コンポーネント1702及び1704を含む。2つの力コンポーネント1702及び1704によって加えられる力は、組み合わせられ、歯208を外側へ押圧する総合的な力1706を生成するように構成される。総合的な力1706は歯208の前面1708に実質的に垂直である。断面図1720によれば、歯208は、2つの力コンポーネント1702及び1704によって押圧されて歯208の根において歯208の中心に対して回転し、即ち、総合的な力によって歯208の中心に対してトルクが形成される。断面図1720は歯軸808を含み、歯208の前面1708に実質的に垂直である。
【0113】
図18は、いくつかの実施形態に係る、1つ又は2つの歯208を回転させるための力のパターン1800、1820、1840、及び1860を示す。力のパターン1800で、第1補強部分204-1が、2つの隣接する歯208A及び208Bの同じ表面(例えば、前面)から歯を抱持する。第1補強部分204-1は任意に、2つの端部に位置する取り付け構造402を介して2つの隣接する歯208A及び208Bに取り付けられる2つの端部を有する。第1取り付け構造402Aが、第1歯208Aの表面を掴み、第2取り付け構造402Bが、第2歯208Bの表面を掴む。第1及び第2取り付け構造402A及び402Bは第1補強部分204-1から延在し、第1及び第2歯208A及び208Bを互いに向かって引っ張る。いくつかの実施形態において、第1及び第2歯208A及び208Bは、互いに向かって回転するように引っ張られる。一例において、第1補強部分204-1は、第1及び第2取り付け構造402A及び402Bを接続するアームを含む。任意に、図18において、このアームは第1及び第2歯208A及び208Bと共形である。任意に、図21に示すように、アームは第1及び第2歯208A及び208Bに架かるブリッジを形成し、第1及び第2歯208A及び208Bの表面を接続する。
【0114】
更に、力パターン1820に関連するいくつかの実施形態において、第2補強部分204-2が、例えばそれ自体で、第1補強部分204-1と共同して適用される。第2補強部分204-2は、歯208A及び208B上の互いに直ぐ隣接する表面上に定置するように構成される。歯208A及び208Bの直ぐ隣接する表面は、第1補強部分が近く配置される同じ表面に対向する。第2補強部分204-2は、任意に、2つの隣接する歯208A及び208Bの直ぐ隣接する表面に取り付けられた2つの取り付け構造402C及び402Dを有する。第3取り付け構造402Cが、第1歯208Aの表面を掴み、第4取り付け構造402Dが第2歯208Bの表面を掴む。第1及び第2取り付け構造402A及び402Bは、第2補強部分204-2から延在し、2つの隣接する歯208A及び208Bの直ぐ隣接する表面から第1及び第2歯208A及び208Bを互いに遠ざけるように押圧する。いくつかの実施形態において、第1及び第2歯208A及び208Bは、押圧されて直ぐ隣接する表面上で互いに離れるように回転する(1804)ことで、第1補強部分が近く配置される表面上での第1及び第2歯208A及び208Bの互いに向かう回転1802が容易になる。各歯208A又は208Bは、それぞれ時計回り又は半時計回りの方向に沿った押圧力及び引張力の両方を受ける。このように、歯208A及び208Bは、反対方向、例えば、時計回り及び半時計回りに回転するように制御される。
【0115】
力のパターン1840及び1860は、第3歯208Cの咀嚼面から観察される。力のパターン1840で、2つの力コンポーネント1808及び1810が、取り付け構造を有する2つの補強部分から形成される。各力コンポーネント1808又は1810が、各取り付け構造402を介して第3歯208Cの各表面を掴み、第3歯208C上に押圧力を加える。力コンポーネント1808及び1910の押圧力は、第3歯208Cの根から冠まで延在する歯中心軸808に対して第3歯208Cを回転させる。力のパターン1860で、2つの力コンポーネント1808及び1810に加えて、第3力コンポーネント1812が、第3歯208C上に加えられる。第3力コンポーネントは、延在長さを有し端部で取り付け構造402を有する補強部分204から形成される。力コンポーネント1812の取り付け構造は、第3歯208Cの異なる表面を掴み、第3歯208Cに押圧力を加えて、第3歯208Cを構成する力コンポーネント1808及び1910の押圧力によって引き起こされる回転を容易にする。
【0116】
図19は、いくつかの実施形態に係る、歯中心軸808に沿って歯208を引っ張るための力のパターン1900及び1950を示す。歯中心軸808は、第3歯208の根から冠まで延在する。力のパターン1900で、2つの力コンポーネント1902及び1904が、取り付け構造402を有する2つの補強部分から形成される。2つの力コンポーネント1902及び1904は、各取り付け構造402を介して歯208の冠の2つの対向する表面を掴み、2つの引張力1906及び1908を歯208上に加える。2つの引張力1906及び1908は実質的に平行である。力のパターン1950で、歯208の冠の2つの対向する表面の位置は、歯208の先端に向かってシフトされる。2つの力コンポーネント1902及び1904は、各取り付け構造402を介して歯208の冠の2つの対向する表面のシフトされた位置を掴み、2つの引張力1906’及び1908’を歯208上に加える。歯208の冠の2つの対向する表面は、シフトされた位置で平行でなく、2つの引張力1906’及び1908’も平行ではない。
【0117】
図20は、いくつかの実施形態に係る、歯208の前面2004に垂直な方向2002に歯208の全体を移動させるための力のパターン2000を示す。歯中心軸808が、第3歯208の根から冠まで延在し、方向2002も歯中心軸808に垂直である。歯208は、歯中心軸808に垂直で歯208の前面2004に平行なピボット軸2006を有する。ピボット軸2006は、歯208の冠ではなく歯208の根を通過する。2つの力コンポーネント2010及び2012が、取り付け構造402を有する2つの補強部分204から形成される。2つの力コンポーネント2010及び2012は、各取り付け構造402を介して歯208の冠の2つの対向する表面を掴み、それぞれ、引張力2014及び押圧力2016を歯208上に加える。
【0118】
図21は、いくつかの実施形態に係る、2つの直ぐ隣接する歯208の間の空間を開くための3つの力のパターン2100、2120、及び2140を示す。力のパターン2100に関連するいくつかの実施形態において、歯科矯正装具202は、2つの直ぐ隣接する歯208A及び208Bの2つの縁エリアに配置された2つの補強部分204A及び204Bの少なくとも一方を含む。各補強部分204A又は204Bに対応する縁エリアは、歯208A又は208Bの各縁エリアを含み、歯208A及び208Bの各縁エリアは、互いに直ぐ隣接する。更に、いくつかの実施形態において、2つの補強部分204A及び204Bの一方又は両方が、歯208A及び208Bの縁エリアに接触するように構成された取り付け構造402を含む。各補強部分204A又は204Bについて、力(例えば、引張力)が取り付け構造402によって生成されて歯208Aと208Bを分離する。更に、力のパターン2140に関連するいくつかの実施形態において、各補強部分(例えば、204A、204B)が、2つの補強部分(例えば、204A-1と204A-2、204B-1と204B-2)に分割され、それらそれぞれが取り付け構造402を含み、独立して歯208A又は208Bに力を加える。
【0119】
力のパターン2120に関連するいくつかの実施形態において、歯科矯正装具202は、2つの直ぐ隣接する歯208A及び208Bの2つの別個エリアに配置された2つの補強部分204A及び204Bの少なくとも一方を含む。各補強部分204A又は204Bに対応する別個エリアは、歯208A上の1つのエリア又は歯208B上の別のエリアを含み、各補強部分204A又は204Bは、歯208A及び208Bの別個エリアを接続するブリッジである。更に、いくつかの実施形態において、2つの補強部分204A及び204Bの各々の2つの端部が、歯208A及び208Bの別個エリアに接触するように構成された取り付け構造402を含む。各補強部分204A又は204Bについて、力(例えば、引張力)が取り付け構造402によって生成されて歯208Aと208Bを分離する。いくつかの示されない実施形態において、各補強部分(例えば、204A)が2つの補強部分に分割され、それらそれぞれが取り付け構造を含み、独立して歯に力を加える。
【0120】
図22は、いくつかの実施形態に係る、2つの直ぐ隣接する歯208の間の空間を閉じるための3つの力のパターン2200、2220、及び2240を示す。
【0121】
図23は、いくつかの実施形態に係る、1組の直ぐ隣接する歯208を固定源に対して移動させるための力のパターン2300、2320、及び2340を示す。いくつかの実施形態において、固定源補強が力のパターン2300に適用されない。大臼歯2320及び2304が前歯を後方に移動させる固定源として使用される場合、ニュートンの法則により、大臼歯2320及び2304は前方に傾斜する。力のパターン2320に関連するいくつかの実施形態において、受動的補強部分2306が、シェル部分206を1つの寸法(例えば、周方向寸法)で剛性化し、大臼歯2320及び2304の前方傾斜を阻止する。力のパターン2340に関連するいくつかの実施形態において、能動的補強部分2308及び2310が、大臼歯2320及び2304を後方に傾斜させる反時計回りの力を構築することによって達成される。後方傾斜力は、大臼歯2320及び2304の前方への傾斜傾向に効果的に対抗する「切り返すような(plowing-like)」作用を生み出す。
【0122】
図24及び25は、いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具202の取り付け構造402と相互作用するために歯208上に取り付けられる多角形構造2400及び2500の斜視図である。図26は、いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具202の取り付け構造402の6つの力のパターン2600~2650の例を示す。各多角形構造2400又は2500が、平面寸法lを下回る高さhを有する。多角形構造2400は、六芒星の断面であり、6つの尖端の各々が切り取られ平坦化され、多角形構造2500は、四芒星の断面であり、4つの尖端の各々が切り取られ平坦化される。各多角形構造2400又は2500が、複数の歯208のうちの1つの表面に取り付けられ、複数の歯208のうちの1つの表面に実質的に垂直な複数の受け面2402又は2502を有する。歯科矯正装具202は、それぞれが多角形構造の複数の受け面2402又は2502のそれぞれを掴み、そこに引張力又は押圧力を加えるように構成された1つ又は複数の取り付け構造402を更に含む。
【0123】
図26を参照し、多角形構造2500の各受け面(側面とも呼ばれる)2502は、歯科矯正装具202の力コンポーネントによって加えられる各引張力又は押圧力を受けるように構成される。力コンポーネントは任意に、補強部分204又はシェル部分206上に形成された取り付け構造402を含む。何らかの状況では、各引張力又は押圧力は、該各引張力又は押圧力が加えられる各受け面2502に実質的に垂直である。力のパターン2600~2650で、2つ又は3つの押圧力が、対応する歯208に実装された多角形構造2500の個々の受け面2502に加えられて、回転(力のパターン2600及び2610で)、横方向押圧(力のパターン2620で)、押圧-引抜混合力(力のパターン2630で)、根からの引抜力(力のパターン2640で)、及び根に向かう圧縮力(力のパターン2650で)を引き起こす。
【0124】
図27は、いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具202の取り付け構造402の力のパターン2700の例を示す。3つの押圧力が、対応する歯208上に実装された多角形構造2500の3つの異なる受け面2502上に加えられて、回転力を引き起こす。回転力は望ましくない前方移動を抑える。具体的には、多角形構造2500が、複数の歯208のうちの1つの表面に取り付けられ、複数の歯208のうちの1つの表面208Sに実質的に垂直な複数の受け面2502を有し、歯科矯正装具202は、それぞれが多角形構造2500の複数の受け面2502のそれぞれを掴み、そこに引張力又は押圧力を加えるように構成された1つ又は複数の取り付け構造を更に含む。
【0125】
この力のパターン2700は、生理的固定源に対応する。固定源が、計画外の歯移動に対する抵抗具として定義される。固定源及び固定源計画がニュートンの第三法則、即ち、作用及び反作用は等しく反対であることに基づく。いくつかの実施形態において、歯の群が単一の歯を移動させるために使用される。いくつかの実施形態において、固定源の様々な分類/タイプは、口腔外、口腔内、群A、群B、及び群Cを含むが、それらに限定されない。絶対的な固定源が任意に、基本的に固定源として機能するミニインプラントである一時的な固定装置(TAD)を適用する。何らかの状況では、計画された固定源は、歯科矯正医が移動したい目標歯(又は複数の歯)によって及ぼされるニュートンの第三法則に抵抗・対抗するのに十分ではない。何らかの状況では、計画された固定源の動きは達成できない。固定源強化戦略は、ベクトル方向転換(例えば、図34中)、分散型固定源、受動的固定源、及び能動的な生理的固定源(例えば、図27中の力のパターン2700)を含むが、それらに限定されない。
【0126】
固定源は歯208の不要な移動に対する抵抗具である。大臼歯が前歯を後退させるアンカーとして使用される場合、大臼歯上の固定源が重要である。前方引張力(例えば、前方後退による反力)に応じて、大臼歯は前方に傾斜する。一般に、このような前方傾斜を阻止するために、歯肉に平行な水平アタッチメントが使用される。しかし、水平バーは常に効果的であるわけではない。前方への傾斜力に対する抵抗を増大させるために、本発明は取り付け表面にネガ彫刻を施し、それによって大臼歯に反対方向の回転力を生じさせる。この逆回転力は前方への傾斜力に対抗する追加の固定源を提供する。
【0127】
図28は、いくつかの実施形態に係る、その咀嚼面に実質的に平行な歯208の断面図2800である。受動的ディンプル構造2802が歯208の側面に実装される。対応する歯科矯正装具202が歯208で適用される間に、押圧力2804がディンプル構造2802上に生じる。押圧力2804は、歯208の根から冠まで延在する歯中心軸808に対して、歯208を回転させる(2806)。
【0128】
3D空間において回転中心及び軸のシフトを伴う回転を生成する力が歯に作用する場合、システムのバランスが取れていないと言われる。力が回転中心を通じて回転軸に垂直に作用すると、該力は回転を引き起こさない。上からのいかなるずれも、3D空間における歯の回転中心及び軸のシフトを伴う歯の回転を生じさせる。自己バランスとは、回転中心及び軸のシフトを所望の方向に制御するシステムのことをいう。自己バランスしたシステムは、力が回転軸に接線的に作用したとしても、純粋な回転を生じることができる。自己バランスしたシステムは、最小1つの能動的コンポーネント及び最小1つの受動的コンポーネントを含む。能動的コンポーネントは、形状変形の有無に関わらず、正又は負にすることができる。受動的コンポーネントは、一般的な幾何学的形態(円形、長方形、三角形など)を採用するが、それらに限定されない。受動的コンポーネントは反応的に力を及ぼす。受動的コンポーネントは歯に接着されない。受動的コンポーネントは歯表面の滑走・摺動を可能にする。受動的コンポーネントは、歯の移動を明確に画定された空間に制限するコンポーネントとして想像できる。自己バランスしたシステムは、能動的コンポーネント及び受動的コンポーネントを選択的に配置することで3D空間において所望の回転を生じさせるために使用される。
【0129】
図29は、いくつかの実施形態に係る、歯表面(歯メッシュとも呼ばれる)との2つの異なる接触形態を有する2つの力コンポーネント2900及び2920を示す。力コンポーネント2900及び2920は、歯メッシュに対する2つの異なる接触形態(例えば、正の接触形態、負の接触形態)に対応する異なる形状を有する。正の接触形態によれば、歯208の対応する表面は凸形状を有し、力コンポーネント2900は歯208の外側にある。負の接触形態によれば、歯208の対応する表面は、凹形状を有し(例えば、凹んでいる)、力コンポーネント2920は、歯表面の一部を削り取り、全体的なアライメントの点から(例えば、巨視的レベルで)歯科矯正装具202と患者の歯208の間に幾何学的差異がなかったとしても、即ち、歯科矯正装具202が受動的であると考えられている場合でも、歯208の特定のスポット/エリアに力を加える。いくつかの実施形態において、歯208の対応する表面の凹形状は、力コンポーネント2920の凹形状に実質的に一致する。更に、いくつかの実施形態において、力コンポーネント2920は、歯科矯正装具202の真空形成前に、石の模型上に手動で層を削り取るか又は溝を作ることによって形成される。
【0130】
図30は、いくつかの実施形態に係る、デジタル彫刻におけるネガ形状修正のプロセス3000のフロー図である。デジタル彫刻は正確なネガ修正の方法の1つである。デジタル彫刻では、歯列矯正用途における歯208の歯モデル内の歯表面上の設計エリアを仮想的に彫り取る(3010)。歯モデルの彫刻部分3002のサイズ、形状、深さ、及び位置はコンピュータシミュレーションによって決定される(3200)。歯208の修正された歯モデルに応じてアライナ(即ち、歯科矯正装具202)が製造される(3030)。歯208自体が物理的修正を受けていない結果、歯科矯正装具202は歯208に適合しない、即ち、歯208に過剰適合する。過剰適合した歯科矯正装具202は、歯モデルの彫刻部分3002に対応する歯の部分に余分な力を加える(3040)。歯科矯正アライナ202は、歯208が目標歯配列に移動したとしても、継続的に力を加える(3050)ため、過剰な力が生じる。別の言い方をすれば、(偶然に又は設計により)相殺されないと、歯モデルの彫刻部分3002から生じる力は歯208の過剰矯正を引き起こす。
【0131】
いくつかの実施形態において、デジタル彫刻は、選択された位置で正確な力ベクトルを伝達するように選択又は決定された様々なパラメータを用いて、カスタマイズされた余分な量のアライナ材料を追加するために適用される。歯モデルの彫刻部分3002は、デジタル彫刻量を有し、歯208に関係する形状、サイズ、深さ、及び位置といった少なくとも4つのパラメータを含む。いくつかの実施形態において、歯モデルの彫刻部分3002は、規則的な幾何学的形状を有さず、不均一の厚さを含む。歯モデルの彫刻部分3002の形状は、力に基づいて決定され、コンピュータシミュレーションによって出力される。歯モデルの彫刻部分3002の形状は、デジタル及び生体力学ベースのものであり、ステップ3200及び3030で正確な力ベクトルを伝達するために採用される様々な構造で完全にカスタマイズされる。形状、サイズ、深さ、及び位置は、コンピュータシミュレーション及び生成アルゴリズムによってデジタル的に制御される。ネガ形状は、様々な幾何学的形状の1つ又は組み合わせ、流体形状であり得、歯形状の一部又は全部の仮想変形を有するか又は有さない。ネガ形状は、偶力を形成するか又は不要な力ベクトルを排除するために、正又は負の1つ又は複数の形状に合わせて実現してもよい。形状パラメータは、各ステップに必要な力ベクトルに応じて変化するため、その特定のステップについて最適化される。形状は、次のステップ及び全ての後続ステップに合わせて変化し、最適化される。
【0132】
図31は、いくつかの実施形態に係る、ネガ彫刻によって作り出される力コンポーネント3100の4つの例を示す。ネガ彫刻は歯表面又はポジ形状のいずれにも適用でき、つまり、アタッチメントに適用できる。ネガ形状修正は、ポジ形状に能動的に力(複数可)を加えて、歯を移動させ、及び/又は製造上の欠陥(特に熱成形技術の場合)によるアライナの適合不足を補うために使用することができる。ネガ彫刻の1つの臨床例は、固定源、特に能動的固定源(生理的固定源)上の適用である。例えば、仮想彫刻は、長方形の力コンポーネント3110、ディンプル力コンポーネント3130のアレイ、樹木状の力コンポーネント3150、ビーディング構造3160(図41中)、又は球面の力コンポーネントなどに適用される。力コンポーネント3110、3130、及び3150の各々は任意に、可変の厚さを有する。
【0133】
図32は、いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具202と歯208との過剰適合3200を示す。過剰適合した歯科矯正装具202は、歯208に接触しないように緩んでいる。「シェル内の過剰適合」及び「シェル-オフセット」は、交換可能に使用される。過剰適合は、歯科矯正アプリケーションにおける歯科矯正装具202の目標歯配列の仮想拡張又は拡大3202によって達成される。そして、得られた歯科矯正装具202は、過大で過剰適合になる。いくつかの実施形態において、デジタル彫刻は、歯モデル上で仮想拡張又は拡大と併せて適用される。歯科矯正装具202が歯208と比較して過大であるか又は過剰に適合するが、歯モデル3204の彫刻部分は、少なくとも部分的に歯科矯正装具202で満たされる。
【0134】
図33は、いくつかの実施形態に係る、仮想形状修正の2つのプロセス3300及び3350の例を示す。歯科矯正装具202の熱成形アライナの厚さはプロセス3300又は3350によって制御される。いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202の形状は、形状修正によって生成される。具体的には、歯科矯正装具202を決定するための歯科矯正アプリケーションにおいて、仮想材料3320又は3352は患者の歯のモデル結果に追加される。いくつかの実施形態において、歯3304の一部は歯科矯正アプリケーションにおいて仮想的に削減される。患者の歯のモデル結果は、仮想材料3320又は3352又は歯3304の削減部分を反映するように修正される。これは、歯科矯正装具202が修正されたモデル結果に基づいて熱成形されるためである。歯科矯正装具202は、修正されたモデル結果に基づいて歯208を共形的に抱持し、仮想材料3320又は3352のための空間を残し、歯3304の削減部分で突出する。仮想材料3320又は3352及び/又は歯3304の削減部分は、熱成形歯科矯正装具202の厚さ及び/又は特性を修正するために使用される。いくつかの実施形態において、自己作動力コンポーネント及び機構は、このような形状及び群シフト修正によって作られる。
【0135】
図34は、いくつかの実施形態に係る、歯固定源を可能にするように適用されるベクトル方向転換3400を示す。固定源は計画外の歯移動に対する抵抗具として定義される。1つ又は複数の歯が単一の歯を移動させる群を形成する。歯208の咀嚼面に実質的に平行な断面3410上において、歯科矯正装具202は、2つの別個の延在補強部分204A及び204Bを含む。各補強部分204A又は204Bは、第1端部、第1端部に対向する第2端部、及び第1端部を第2端部に接続するアームを含む。各補強部分204A又は204Bの第1端部は、第1歯208A上に着く。各補強部分204A又は204Bの第2端部は、第1歯208Aに直ぐ隣接する第2歯208Bを掴むように構成された取り付け構造402を有する。アームは第2歯208Bの本体を横切って延在し、第2端部が第2歯208Bの表面を掴むことができるようにする。一例において、補強部分204Aは歯208と唇の皮膚との間に位置し、補強部分204Bは歯208の後ろであって口の内部空間内に位置する。いくつかの実施形態において、補強部分204A及び204Bのアームは、歯科矯正装具202のシェル部分206によって更に圧縮され、それぞれ、第1歯208A及び第2歯208Bを反対方向3406及び3408に移動させる。
【0136】
正面図又は背面図3420、3430、及び3440上において、補強部分204Cは、第1端部、1つ又は複数の第2端部、及び第1端部を1つ又は複数の第2端部に接続する1つ又は複数のアームを有する。1つ又は複数の第2端部及びアームは第2歯208Bに加えられる力に応じて設計される。各補強部分204Cの第1端部は、第1歯208Aに着く。補強部分204Cの各第2端部は、第2歯208Bを掴むように構成された取り付け構造402を有する。アームは、第2歯208Bの本体を横切って延在して補強部分204Cの1つ又は複数の第2端部を接続するように配置され、各第2端部が第2歯208Bの表面を掴むことができるようにする。いくつかの実施形態において、補強部分204Cのアーム(複数可)は、歯科矯正装具202のシェル部分206によって更に圧縮される。このように、第1歯208Aは第2歯208Bから傾斜するように押圧され、第2歯208Bは、第1歯208Aから傾斜するように制御される。
【0137】
図35は、いくつかの実施形態に係る、アーチ拡張に適用される歯科矯正装具202を示す。複数の歯208は、2つの対向する端部の歯208E1と208E2の間に位置する多数の連続した歯を含む。歯科矯正装具202は、それぞれ2つの対向する端部の歯に接触(例えば、抱持)するように構成された2つの端部部分を含む。アクチュエータ3510又は3520が、2つの端部部分に結合され、歯科矯正装具202の2つの端部部分の相対位置を制御するために刺激を加えるように構成される。例えば、アクチュエータ3510は、2つの端部部分の相対位置を制御するための刺激(例えば、熱、振動、力)を生成するように構成された1つ又は複数の自己作動層を含む。別の例において、アクチュエータ3520は、歯科矯正装具202の2つの端部部分の間でブリッジを形成する自己作動構造を含む。自己作動構造は、刺激(例えば、熱、振動、力)を生成するように構成される。
【0138】
図36は、いくつかの実施形態に係る、1つ又は複数のアクチュエータに結合された歯科矯正装具202を示す。いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202は、2つの直ぐ隣接する歯208A及び208Bの2つの縁エリア上に配置された2つの補強部分204A及び204Bの少なくとも1つを含む。更に、いくつかの実施形態において、2つの補強部分204A及び204Bの一方又は両方とも、歯208A及び208Bの縁エリアに接触するように構成された取り付け構造402を含む。あるいは、いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202は、歯208A及び208Bの2つの縁エリア上に配置された2つのシェル部分206A及び206Bの少なくとも一方を含む。更に、いくつかの実施形態において、シェル部分206A及び206Bの一方又は両方とも、歯208A及び208Bの縁エリアに接触するように構成された取り付け構造402を含む。アクチュエータ3610又は3620が、対応する補強部分又はシェル部分の外面に結合され、歯208A及び208B上に加えられる刺激(例えば、熱、振動、力)を生成するように構成される。何らかの状況では、補強部分又はシェル部分は、歯208Aと208Bの間で空間を開くように構成され、刺激は空間の開放を促進する。
【0139】
図37は、いくつかの実施形態に係る、アクチュエータ3702に結合された別の歯科矯正装具202を示す。アクチュエータ3702は、歯科矯正装具202の補強部分204又はシェル部分206の内面上に取り付け又は一体化される。歯208が歯科矯正装具202を装着する時、アクチュエータ3702は、歯208の冠と接触し、歯208の冠上に加えられる刺激を生成する。刺激は歯208に加えられるトルクを生成する。
【0140】
図38は、いくつかの実施形態に係る、ツインブロック3802及び3804を有する1組の歯科矯正装具202を示す。ツインブロック3802及び3804は、第1方向に互いにマッチし、1組の歯科矯正装具202を装着した2列の歯208の第1方向での相対移動を阻止するように構成される。第1方向は、任意に、歯208がそれに沿って整列する歯方向と整列するか、又はそれに垂直である。例えば、第1方向は前方方向に沿い、歯208の下列は前方への移動が阻止される。
【0141】
図39は、いくつかの実施形態に係る、舌ブロック構造3902を有する1組の歯科矯正装具202を示す。底部歯科矯正装具202の各端部部分は、舌ブロック構造3902を含む。舌ブロック構造3902は、舌のために残された空間を減少させることで、舌を、任意に歯科矯正装具202に対して追加の力を生成し歯再配置を容易にする特定の位置に強制させる。
【0142】
図40は、いくつかの実施形態に係る、舌刺激装置又は位置決め装置4002を有する歯科矯正装具202を示す。歯科矯正装具202が、複数の歯208によって装着されるように構成される。舌刺激装置又は位置決め装置4002は、任意に、歯科矯正装具202内に一体化されるか、又はそこに取り外し可能に取り付けられる。いくつかの実施形態において、舌刺激装置又は位置決め装置4002は、歯科矯正装具202上及び口の内部空間内にバンプを形成し、舌がバンプに触れて刺激を受けることができるようにする。いくつかの実施形態において、舌刺激装置又は位置決め装置4002は、歯科矯正装具202の縁から延在し、口の内部空間の上天井近く又は舌の下に位置する。
【0143】
図41は、いくつかの実施形態に係る、シート材料4104上で作られ、補強部分204として適用される補強構造4102(ビーディング構造とも呼ばれる)の例を示す。いくつかの実施形態において、補強部分204のビーディング構造204Fは、シェル部分206の形態学的配置によって作製される。一例において、補強部分204は、シート材料中のビーディング構造4102によって形成され、即ち、同じ厚さのシート材料4104は、曲率を有する補強部分204の補強構造を作製するために折り畳まれる。別のビーディング構造4106はシェル又は補強構造の不連続性の範囲として定義される。
【0144】
図42は、いくつかの実施形態に係る、1つ又は複数のセンサ4210に結合された2列の歯208を示す。歯208の各列が、1つ又は複数のセンサ4210を含む歯科矯正装具202を装着する。いくつかの実施形態において、各センサ4210が、歯科矯正装具202の境界面又は外面に取り付けられ、歯208の特徴を監視するように構成される。あるいは、いくつかの実施形態において、各センサ4210が、歯科矯正装具202の境界面上、外面上、本体内に一体化される。何らかの状況では、センサ4210(例えば、4210B)が、2つの歯208間の空間内に突出する。各センサ4210が、化学センサ4210A、光電検出器4210B、及び変位又は圧力センサ4210Cのうちの1つである。
【0145】
図43は、いくつかの実施形態に係る、歯科矯正装具202で適用されるセンサ及びアクチュエータに電力を供給するための方法4300及び4320を示す。いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202は、生体力学的エネルギーハーベスティング及び自己電力供給型感知用に構成された防水性及び伸縮性のタービン電気ナノ発電機4320に結合される。あるいは、いくつかの実施形態において、歯科矯正装具202は、バイオ触媒燃料電池4322を含む。例えば、患者の唾液(例えば、ブドウ糖、水)又は空気(例えば、酸素ガス)中の化学物質が、アクチュエータを駆動して歯科矯正歯の移動を促進する電力の生成に利用される。
【0146】
図44は、いくつかの実施形態に係る、歯208を再配置するための歯科矯正装具202を形成する方法4400のフロー図である。方法4440は、部分的にコンピュータシステムによって実行される。コンピュータシステムは、歯科矯正装具202を設計するための歯科矯正アプリケーションを実行するように構成される。コンピュータシステムは、歯科矯正装具によって達成される中間歯配列を患者の歯の幾何学的情報に基づいて決定する(4402)。歯科矯正装具202の一体片を提供し(4404)、該歯科矯正装具202の一体片は複数の歯208を抱持し(4406)、長期間内に漸次的に複数の歯208を現在の歯配列から目標歯配列に弾性的に再配置するように構成される。コンピュータシステムは、患者の歯208の解剖学的情報に基づいて中間歯配列を目標歯配列に調整し(4408)、患者の歯の解剖学的情報に基づいて目標歯配列上で補強部分204及びシェル部分206を特定する。補強部分204及びシェル部分206は目標歯配列に基づいて形成される(4412及び4414)。補強部分204は第1剛性レベルを有する。シェル部分206は補強部分204から延在し、第2剛性レベルを有する。第2剛性レベルが第1剛性レベルより低い。
【0147】
図45は、いくつかの実施形態に係る、歯208を再配置するための歯科矯正装具202を形成する別の方法4500のフロー図である。コンピュータシステムが、歯科矯正装具202によって達成される目標歯配列を決定し(4502)、患者の歯208の解剖学的情報に基づいて目標歯配列上で補強部分204及びシェル部分206を特定する(4504)。歯科矯正装具202の一体片が、複数の歯208を抱持し(4508)、長期間内に漸次的に複数の歯208を現在の歯配列から目標歯配列に弾性的に再配置するために提供される(4506)。具体的には、補強部分204及びシェル部分206は目標歯配列に基づいて形成される(4510及び4512)。補強部分204は第1剛性レベルを有する。シェル部分206は補強部分204から延在し、第2剛性レベルを有する。第2剛性レベルが第1剛性レベルより低い。
【0148】
1つ又は複数の例において、記載された機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせによって実施され得る。ソフトウェアで実施される場合、前記機能は、1つ又は複数の命令又はコードとしてコンピュータ可読媒体上で記憶又は伝送され、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行されてもよい。コンピュータ可読媒体は、データ記憶媒体のような有形媒体に対応するコンピュータ可読記憶媒体、又は(例えば、通信プロトコルに従って)コンピュータプログラムをある場所から別の場所へ転送しやすくする任意の媒体を含む通信媒体を含み得る。このように、コンピュータ可読媒体は、一般に、(1)非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体又は(2)信号もしくは搬送波のような通信媒体に対応し得る。データ記憶媒体は、本出願に記載の実施形態を実施するための命令、コード及び/又はデータ構造を検索するために1つ又は複数のコンピュータ又は1つ又は複数のプロセッサによってアクセスできる任意の利用可能な媒体であり得る。コンピュータプログラム製品はコンピュータ可読媒体を含み得る。
【0149】
本明細書の実施形態の説明で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、特許請求の範囲を限定することを意図しない。実施形態の説明及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1(a)」、「1つ(an)」及び「前記(the)」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形をも含むことを意図する。また、本明細書で使用される用語「及び/又は」は、関連する列挙項目の1つ又は複数の任意の及び全ての可能な組み合わせを指し、包含することも理解されるであろう。更に、本明細書で使用される場合、用語「備える(comprises)及び/又は(comprising)」は、主張された特徴、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、要素、構成要素、及び/又はそれらの組み合わせの存在又は追加を排除するものではないことが理解されるであろう。
【0150】
また、第1及び第2といった用語は様々な要素を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、単にある要素を別の要素と区別するためのものに過ぎない。例えば、実施形態の範囲から逸脱することなく、第1電極は第2電極と呼ぶことができ、同様に、第2電極は第1電極と呼ぶことができる。第1電極及び第2電極は両方とも電極であるが、同じ電極ではない。
【0151】
本出願の記述は、例示及び説明の目的で提示されたものであるが、網羅的であること、又は開示された形態の本発明に限定することを意図するものではない。前述した説明及び関連する図面に提示された教示の恩恵を受ける当業者には、様々な変更、変形、及び代替実施形態が自明であろう。実施形態は、本発明の原理、実際の応用を最良に説明し、他の当業者が本発明の様々な実施形態を理解できるようにし、考慮される特定の使用に適する様々な変更をもって基礎原理及び様々な実施形態を最良に利用するために、説明される。従って、特許請求の範囲は、開示された実施形態の特定の例に限定されるものではない。変更及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれるよう意図される。
【0152】
追加情報は、2021年7月2日に出願された、発明の名称が「階層構造及び材料を有するスマート歯科矯正装具」である米国仮特許出願第63/218,232号から、以下のように組み込まれる。
前書き:生物学的指向性とエントロピー低減
従来の配列ベースのもの及びその限界
【0153】
従来のアライナは、幾何学的配置の変化によって主導される。技工士は、離散的且つ段階的な距離及び回転(例えば、1つの一般的な処方-1ステップ当たり0.2mm及び1度)で、巨視的に歯を新しい所望位置に移動させる。歯の目標配列(治療後配列)は、一連のこのような漸増的なステップを経て達成される。アライナは、これらの段階的な歯配列の変化に合わせて製作される。アライナが歯に適用される時、アライナ(次のステップでの所望の歯配列)と既存の歯配列(現在のステップ)との差異により、3D空間に不一致が生じる。このような不一致(不適合)により、アライナ内部に内部歪みが生じる。アライナ材料が元のバランスの取れた歪みなしの状態に戻る間、解放された力はアライナと歯の間の接触表面を介して歯に作用する。前記力によって歯が新しい位置に移動する。しかし、この不適合によって生成された前記力は、非常に不正確でランダムである。不正確について、前記力が前記距離に次ぐものであり、アライナによって生成された前記力がアライナの歪みによって生じる歪みに関係するため、歪み量及び生じた力は、過大(強すぎ)又は過小(不足)である場合がある。任意の「ちょうど正確な」力は、全く運によるものであり、決して慎重な設計及び計算の結果ではない。ランダムについて、ランダムさは、技工士が巨視的な歯移動のみを計画し、アライナと歯の間の正確な接触点を計画していないという事実によるものである。そのため、歯間の接触点及びそれらの迎え角は、ランダムで、歯の移動の全過程で変化する。1つの歯に作用するアライナ材料は、別の歯に作用する材料と相互接続されるため、ニュートンの第三法則に従う。この相互接続の相互作用により、歯に作用する力(複数可)が更に複雑になる。そのため、歯に作用する初期力は、歯移動の早期段階で、ランダムに方向付けられ、複雑で互いに反作用的である。目標歯は、ランダムな接触によって及ぼされる様々な力、及びニュートンの第三法則により隣接する歯によって生じる反力で、押圧されて回る。歯のこのような移動は、歯が新しい位置に向かう途中でランダムに「振動」又はぐらついていると想像してもよい。同様に、目標歯の反力は、隣接する歯に望ましくない力/干渉力を及ぼす(ニュートンの第三法則)。システムのランダムさ(エントロピー)は漸次的に減少し、全ての歯がその特定の治療ステップのアライナの指定された形態学的配列に強制された後、安定する。プロセス全体は、別の新しいステップのためのアライナの挿入をもって再び開始する。結論:現在のアライナは非効率的で、生物学的に健全ではない。
生物学ベースのもの及びエントロピー低減
【0154】
生物学的主導:新しいアライナは、冠に作用して歯を治療前向き及び位置から目標向き及び位置に移動させる正確なベクトルVに基づいて設計される。治療前向き及び位置から目標向き及び位置に移動する歯の経路及び速度は、生理的限界-骨リモデリング速度という原理及び順序に基づいて最適化される。生理的速度限界は、科学的発見であり、証拠ベースの研究によって定量化される(この特許の範囲外)。科学研究からの最適な力は、最適な速度で歯を骨内で移動させるための最適な力として知られる。最適な力はこのシステムによって一次入力(f)として使用される。ここで、fは任意の特定の時点で歯移動の方向に平行な歯根表面に作用するベクトルである。治療コース中の任意の時点で、ランダムにサンプリングされた根表面上の任意のft値は、fを超えてはならない。そのため、fはシステムの制限要因となる。治療コース中の任意の時点で、ランダムにサンプリングされた任意の根表面上のft値はfに近付くように最適化されるものとする。注1:fは、宿主の骨の生理機能及び細胞活性、任意の形態のバイオモジュレーションの有無、周囲の構造(頬側歯槽骨)に影響を与える力レベルのような現時点では確証的に定量化できない他の生物学的制限、根端吸収などの影響を受ける可能性がある。注2:fは、骨の生理機能の新しい科学的理解及び証拠ベースの定量化が利用可能になるたびに更新できるパラメータである。fは任意のバイオモジュレーションの有無に応じて調整され、ここでバイオモジュレーションパラメータが科学的に且つ確証的に定量化される。ここで、最適化は以下の優先順位に従って行われる。任意の時間及び歯の向きで、根の前進面(移動方向に垂直な表面)はfにできるだけ近いベクトル(ft→f)を受け取る。冠に作用する根表面上の全てのfの集合体はVと定義される。ベクトルV(冠を介して作用)は、歯が前後左右にぐらつくことなく歯を(fの制約下)その治療前O&Pからその目標o&pに移動させるために必要なベクトルであり、即ち、Vは純粋でノイズがない。治療前の歯の向き及び配列と目標の歯の向き及び配列との間の経路は3D空間で最短である必要がある。移動先に向かう歯の移動は、できるだけ同時に並進と回転を行う必要がある(類似:並列処理)。ベクトルVは、所望のVを生成するために歯表面に加える必要がある力に変換され、その後、任意の特定の時刻でのVの歯表面上における印加点が決定される。力コンポーネントは、本発明で定義されるように、歯に取り付けられるか、又はアライナに取り付けられるか、又はアライナの一部として、歯及び/又は多数の歯の位置に影響する力を生成する任意の物理構造又は構造又は構造の任意の組み合わせである。それと対応的に、アライナの力コンポーネントのトポロジー又は所望のVを生成できる歯-形状の任意の変更が生成される。注:歯表面上の最適な印加点は、歯が望ましくない湾曲位置及び向きから所望の位置及び向きに変化するにつれて常に変化できる。任意の時点で最適なfを最適に維持するために必要なVは、根表面積、根表面モフォロジー、及び根の空間的配列という生体力学的パラメータ、回転中心、抵抗中心、ピボットという物理法則の影響を受ける。アライナの力コンポーネントのトポロジーは、Vアライナ材料の物性、アライナ材料の相互作用に変換される目標歯とその隣の歯の形態学的関係(ニュートンの第三法則)、エントロピー低減の影響を受ける。力コンポーネント設計のトポロジーは、最適な回転中心及び抵抗中心に作用する最適なベクトルを生成すること、力コンポーネントを注意深く整列させることでランダムさを低減し(エントロピー低減)、それによってベクトルをその最適な位置にあるようにすること、及び望ましくない漂遊力(ベクトル)及びニュートンの第三法則による干渉の排除を十分に考慮しながら、力コンポーネントを適宜対抗させ及び/又はバランスさせることを目的とする。歯の移動量は力を注意深く計画した結果であり、その逆ではない(即ち、歯をどのようにより適切に移動させるかを考慮せずに歯の目的位置を設計して歯をその位置に強制させるのではない)。本方法は、結果主導ではなくプロセス主導であると見なしてもよい。
生物学的ベースのアライナのフロー
【0155】
図1
歯の移動効率(TME)及びTME指標
【0156】
上述したように、従来のアライナは歯を移動させるのに効率的ではない。効率を定量化するために、本発明は、歯移動効率という新しい概念を導入する。新しいアプローチ及びそれによるアライナ効率オプティマイザ(AEO)という新しいツールは、歯移動効率を高めるために開発される。歯移動効率(TME)及びその出力結果である歯移動効率指標(TMEI)により、任意のアライナ設計における効率定量化が可能になる。TMEIは様々なアライナ設計を比較するための基本的ベンチマークとして機能する。コンピュータ支援設計アライナは、手動、自動又はAI最適化のいずれであっても、比較、評価及び改善が可能である。
目的に合わせた構造及び材料の配置
【0157】
新世代のアライナはTMEを高めることを目的とするため、治療時間を短縮させ、副作用の可能性を低下させ、コストを削減すると同時に、より迅速でより良好な治療結果を提供する。新しいアライナは、アライナ構造及びコンポーネントの再定義、再設計と、単一又は複数の材料を使用した新しいアライナの構築との組み合わせによって改善されたTMEを実現する。新しく定義及び設計された構造及びコンポーネントはそれらの機能目標に応じて配置される(次のセクションを参照)。新しいタイプの力コンポーネントは、より良好な流体制御のために開発される(結果主導型アプローチではなく4Dアプローチである)。コンピュータアルゴリズムの力を十分に利用して配列を最適化して、歯を移動させるのに必要な力を計算し(骨モデルなど)、力を最良に生じさせる構造/材料を計算し、アライナの機能を拡張し及び/又は同時に歯移動を加速する他の付加構造を十分に利用する。目的に合わせた配置の一般的な説明は以下のとおりである。構造及びコンポーネントは主にその機能によって定義される。*以下、機能構造及びコンポーネントは交換可能な用語として扱われる。機能構造は、一次構造と二次構造、能動的構造と受動的構造のように分類できる。一次構造について、一次構造は歯表面と相互作用(接触)する構造であり、一次構造は能動的(力を生成)でも受動的(力に反応)でもよい。二次構造について、二次構造は歯に接触しない構造である。二次構造は力を生成することもできるが、前記力は一次構造を介して加えられる。能動的構造について、能動的構造は、歯表面に接触する時に力を生成し、歯を所望の経路に沿って能動的に移動させるように設計された構造である。能動的構造は、標的とされた歯が指定された位置に到達した時にのみ受動的になる。受動的構造は、歯移動の全過程を通じて反応的な構造であり、即ち、設計により力を生成することはなく、他のコンポーネントからのベクトルがそれに作用する時にのみ反力を生成する(例えば、スマートディンプル。後のスライドを参照)。能動的構造と受動的構造を組み合わせると、浮遊/干渉ベクトルのない純粋なベクトル(複数可)を生成する自己バランス型又は自己対抗型の結合構造を製作することができる。構造及びコンポーネントの形態学的記述について、本発明における構造及びコンポーネントは必ずしも特定の形状に従う必要はない。構造又はコンポーネントのいかなる形状も、二次的なものであり、歯を目標位置に移動させるのに必要な力の機能のみとされる。必要な力は、生物学的/生理学的に実現可能な速度限界の理論的限界であるコンピュータシミュレーションモデルによって計算される。構造はその材料又は材料の組み合わせに固有のコンピュータシミュレーションモデルによって順に生成される。構造及びそれらの配置は、歯を最適な(殆どの場合は最短であるが、常に最短ではない)経路で指定された位置に向かって移動させる最良で且つ最純粋なベクトルを生成する形状及び配置とする。材料について、結果物の構造は単一材料から複数材料まで多岐にわたる。結果物の構造は、離散的なものから連続的なものまで多岐にわたる。図2又は15。
目的に応じた構造及び材料の配置方法
階層的配置
【0158】
概要:構造及び材料の階層的配置:メガ:頭頸部、口腔外領域。口腔外装置、口腔を越えて延在する構造。マクロ:口腔内領域-アーチ内、アーチのセグメントを含む上顎弓又は下顎弓。従来:アライナ、機能的装具、取り外し可能装具、固定式装具。メソ:各側に最大1つの余分な歯を含み得る個別の歯レベル-フィンガスプリングはメソ構造の例の1つと考えられる。マイクロ:ヤモリの足の剛毛に似るマイクロメートルレベルの構造。ナノ:ヤモリの足のへらに似るナノメートルレベルの構造。https://people.eecs.berkeley.edu/~ronf/Gecko/Hierarchy3.jpg
【0159】
メガ:顎顔面レベル。筋機能性、TMJ。成長修正、アーチ間(咬合力)。特性:人間による操作のためのバルク構造を提供する大きな構造。硬く、非伸縮性の材料。構造的完全性。長距離力伝達。力を効果的に伝達する(バイオモジュレーション用、例えば、低強度パルス超音波LIPUS)。光透過/波長修正(フォトバイオモジュレーション用)。比較的均一。患者の快適性、薬物放出などを改善するための、様々な材料及び表面処理による表面改質。マクロ:歯列弓レベル(複数の歯)。比較的硬く、力伝達用の基礎を形成する(主に等方性で非適合性)。マクロスケール(ミリメートルからサブミリメートルレベル)で歯のアンダーカットに関与するのに十分な柔軟性を有する。歯列弓への繰り返し挿入と除去に十分耐えられる構造的完全性を提供する。人間による操作のためのハンドリング構造を提供する。離散的-自立した構造を形成できる。拡散的-十分に薄く広がり、周囲の材料と混合して材料間の明らかな境界面のない連続的な材料スペクトルを形成することができる。図3。メソ:単一歯レベル(複数の歯にまたがる可能性がある-例えば、歯間腔)。正確な力伝達のために比較的硬い(異方性、方向性、非適合性)。マイクロ及びナノレベル接着剤が歯表面から脱着できるように非適合性である。必要に応じてサブミリメートルレベルで歯アンダーカットに関与するのに十分な柔軟性を有する。歯列弓への繰り返し挿入と除去に十分耐えられる構造的完全性を提供する。離散的-自立した構造を形成できる。拡散的-十分に薄く広がり、周囲の材料と混合して材料間の明らかな境界面のない連続的な材料スペクトルを形成することができる。円滑な移行及びマイクロレベルの材料及び構造との融合。マイクロ:歯表面の小さな領域(複数の三角形/四面体メッシュレベル)。歯表面に最大限の適合性を提供するように柔らかい。離散的-自立したマイクロ構造をマイクロレベルで形成できる。拡散的-十分に薄く広がり、周囲の材料と混合して材料間の明らかな境界面のない連続的な材料スペクトルを形成することができる。円滑な移行及びナノレベルの材料及び構造との融合。図4。ナノ:ナノスケール。歯表面に最大限の適合性を提供するように柔らかい。目標接触表面との最大接触面積。離散的-自立したナノ構造を形成できる。円滑な移行及びマイクロレベルの材料及び構造との融合。図5図6
生体模倣-新しいタイプの力伝達
【0160】
ナノ構造による接着力。ヤモリ模倣構造による接着力。面沿い/曲面接線方向の接着->引張力。表面に垂直な垂直力によって解放される->剥離。アマガエル模倣構造による接着力。歯表面に垂直な接着-取り付け表面に垂直な引張力。接線力によって解放される。マイクロピラーアレイ。ナノピット。湿潤条件での接着。図7
生体模倣-接着による力伝達
【表1】
【0161】
図8も参照されたい。
生体模倣-スキン、筋肉及び骨格
【0162】
骨格構造は構造的安定性を提供し、構造的柔軟性を提供し、正確で制御された力/ベクトルを伝達するためのものである。スキン-シェルは、基底構造へのカバレッジ及び保護を提供し、全ての構造及び材料を一体にリンクして人間による管理(患者によるアライナの取り外しと挿入)を容易にする。シェルは、歯表面のカバレッジを減少させ->唾液の流動を促進し、それによって口腔の自己治癒を妨げる人工物による影響を軽減し、及び、咬合エリアにおける歯表面のカバレッジを減少させ->咬合干渉を低減し|咬合/発音の効率を高めるように、開く又は部分的に開くように設計されてもよい。シェルは従来のアライナみたいに閉じるように設計されてもよい。詳細については以下のセクションを参照されたい。図9
【0163】
筋肉:中間又は組み合わせ材料及び構造(複数可)。歯を移動させる力を生成するための歪み及び緩和を蓄積する材料の本体。自己作動材料は肉体の1つの形態として見なしてもよい(以下のセクションを参照)。
【0164】
自己作動コンポーネント。自己水力|熱|電気|化学|機械作動。親水性材料。通常、唾液又は表面のマイクロフィルムに接触する外層。水を吸収し体積が膨張する。チューブとして力-伸び線に沿って配置する。力-開/閉動作線に対して角度を有して配置する。より広い面積の塗布のためにハニカム状に配置する。熱感受性の材料。内因性体熱に反応して伸縮する。外因性の熱(電気、音響、誘導、直接接続又は内因性エネルギー収集による自己給電のいずれかによって誘導される-以下を参照)に反応して伸縮する。構造の表面又は深部に埋め込まれる。水力作動。水の存在下でのハニカム構造伸縮。親水性材料。通常、唾液又は歯表面のマイクロフィルムに接触する外層。水を吸収し体積が膨張する。チューブとして力-伸び線に沿って配置する。力-開/閉動作線に対して角度を有して配置する。より広い面積の塗布のためにハニカム状に配置する。熱感受性の材料。外因性体熱に反応して伸縮する。外因性の熱(電気、音響、誘導、直接接続又は内因性エネルギー収集による自己給電のいずれかによって誘導される-以下を参照)に反応して伸縮する。構造の表面又は深部に埋め込まれる。電気材料。電気エネルギーを収集するために埋め込まれた導電回路。これによって収集された電気エネルギーは、機械装置を作動させる(拡張、収縮、伸長、回転)ために使用される。化学材料。口腔環境における特定の化学物質の濃度=カルシウムレベルなど。機械材料。機械的伸張は、半オーゼチック又はオーゼチック材料の膨張を引き起こす。そのため、力を生成する。Pdで装飾された二次元ホウ素シートにおける半オーゼチック及び異方性輸送。https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.nanolett.0c04154。図10
新しいアライナフレームワークの機能及び例
機能コンポーネント(参照2.3 生体模倣)
【0165】
シェル。外側保護性。骨格との部分的なマージ。骨格。構造的安定性を提供する。比較的強いビア。異なる又は様々なブランドの複数材料。異なる厚さの単一材料。力を提供するか又は力を散逸させる。図11。力コンポーネント。歪みを蓄積し力を伝達するために特に構造を変化させる。単純な構造から複雑な構造まで多岐にわたる。図2
シェル及びその新しい設計
【0166】
全体的。従来、アライナは単一のプラスチック片である。任意の追加の機能、ディンプル、バーなどはシェル固有の歪みによって力を加える。そのため、シェルは実際に力コンポーネントである。以下に、本発明はシェルを以下の役割を果たす別個の構造と見なす。
【0167】
コネクタ。保護カバー。力コンポーネント。図12。シェル-オフセット。基本概念-歯にかかる望ましくない力を排除する。説明:巨視的アライナシェルは、歯表面に接触しない又は選択的に接触するように設計・製造される。シェルは歯の周りを浮かんでいると想像/視覚化できる。そして、力を及ぼすように設計された力コンポーネントは特定の向きで設計されたエリアにおいて歯表面に直接接触する。それにより、シェルからの力の干渉を受けることなく、所望の力を及ぼすことができる。シェルから何らかの力が発生すると予想される場合、これらの力は歯-接触力コンポーネントを介して及ぼされる。力コンポーネントのナノ構造(表面処理又は他の方法によって製作される)は歯表面との直接接触により有効になるが、オフセットしたシェルの同じナノ処理は歯表面との接触がないため受動的になる。図13。開放-シェル設計。開放シェル-不要なシェル領域が除去された。シェルのうち、上記で言及した機能を果たす部分のみが残される。例えば、基底力コンポーネントへの損傷を回避するための保護シールドとして機能する。他の構造に反力を散逸させるためのベース支持体として機能する。結果物のシェルは、複数の位置で様々なサイズの複数の穿孔を有するシェルである。シェルは、2つの方式、即ちベース(離間自在の端部構造)で又は(シェルから「突出した」構造)全体に沿って、骨格及び/又は力コンポーネントに接続する。開放-シェルは、シェル-オフセットの有無に関わらず実装できる。図14。閉鎖設計。全ての歯を完全に覆う従来の熱成形アライナに似る。穿孔又は細孔はない。他の機能は開放-シェル設計と同様である。閉鎖-シェルは、シェル-オフセットの有無に関わらず実装できる。図15。段階的な実装。上記の全ての設計は、他のステップから独立してステップごとに実装できる。例:ステップ1=開放シェル、ステップ2=閉鎖シェル。上記の全ての設計は、他のアーチから独立してアーチごとに実装できる。例:上アーチ=開放シェル、下アーチ=閉鎖シェル。概念については4D最適化を参照されたい。力コンポーネント。形態学的分類:腕状:1回又は複数回伸長され、先端に手のひら及び指があるか又はない。樹木状:樹木状で、主幹があるか又はなく、対称構造又は繰り返し構造がある又はない。組み合わせ:樹木状構造の先端は手のひら及び/又は指があるか又はない腕状であってもよい。流体:土が歯であり池の水が力コンポーネントである池状構造。骨格状:骨格又は非対称に配置された場合にエリアン骨格を形成する相互連結構造。図案とアレイ:幾何学的形状のアレイ。例えば、丸いドット及びディンプルのアレイ。幾何学:最も伝統的な円形/楕円形。正方形/長方形/台形。ペアの幾何学的形状(2つの半楕円形)。いずれも何らかのオフセットカットを有するか又は有さない。巨視的:シェル。自己作動。コンポーネント:ハニカム、ストリップ、バルーン、設計例。チップ。図16。トルク。図17。回転。仮。アプリケーション。図18。挺出。図19。歯体の移動。図20。空間開口。図21。閉じる。図22。固定源。図23。歯メッシュに基づく分類。様々な形状の力コンポーネントは、歯メッシュ(歯表面)と正又は負の関係で設計・製造できる。正:力コンポーネントは、歯表面に関して「歯の外側」に定置するように設計される。負:力コンポーネントは、歯表面の一部を仮想的に「削り取る」ことで設計されることから、全体的なアライメントの点から(巨視的レベルで)アライナと患者の間に幾何学的差異がなかったとしても、即ち、アライナが受動的であると考えられている場合でも、歯の特定のスポット/エリアに力を加える。注:ネガ方法は、デジタル時代以前に、アライナ/再配置装置の真空形成前に石の模型上に手動で層を削り取るか又は溝を作ることによって実施されていた。図29。形状修正力コンポーネント。ポジ形状修正。ポジ修正は、歯表面に材料を追加することによって行われる。従来は、複合材料を使用して歯表面にアタッチメントを追加することによって行われている。アタッチメントは歯のモフォロジーを効果的に変化させ、それによってその受けた力を変化させる。従来のアタッチメント設計。従来のアタッチメントの殆どは、アライナが力を及ぼすことができるようにする1つの平らな表面を有する。従来のアタッチメントは、取り付けられると、殆どの治療ステップでそのままであり続けるようになる。そのため、歯が移動すると力受け面は変化する。表面に作用する力は、最適でなくなる。特定のポジ形状修正設計-ユニバーサルアタッチメント。本発明は、事前に計算された角度で平坦表面に作用する複数の力を利用した。複数平坦表面の設計は、全治療プロセス中の歯位置の変化を考慮するが、システムは依然として別の表面及び/又は複数の表面の組み合わせを介して最適な力を及ぼすことができる。複数の平坦表面は、自己バランス及び自己対抗力を可能にし、所望の方向に沿って能動的に純粋なベクトルを加える。複数の平坦表面は、全治療プロセスの事前計算、事前最適化を可能にする(4D最適化を参照)。
【0168】
ユニバーサル4Dアタッチメントの例。注:表面間の角度は、最適化アルゴリズムによる処方に従って変化してもよい。複数表面のユニバーサル4Dアタッチメントの更なる詳細については、4D最適化、図24及び25、図26を参照されたい。ネガ形状修正-デジタル彫刻。デジタル彫刻は、精度のネガ修正方法である。デジタル彫刻は歯表面上の特別に設計されたエリアを仮想的に彫り取る。サイズ、形状深さ及び位置は、コンピュータシミュレーションによって決定される。アライナは修正された歯形状に応じて製造される。実際の歯はいかなる物理的修正も受けないため、結果物のアライナは歯に適合せず、そのため過剰適合になる。過剰適合したアライナは、歯のデジタル的に彫刻された領域に余分な力を及ぼす。アライナは、歯が指定された位置に移動した時でも力を継続的に及ぼすため、「過剰印加」が発生する。彫刻による力が(偶然にも設計によっても)対抗しないと、目標歯の「過剰矯正」をもたらす。デジタル彫刻は、その特定のステップで正確な力ベクトルを伝達するために計算された様々なパラメータを有する、アライナ材料のカスタマイズされた「余分な」量と想像してもよい。デジタル彫刻量は、歯に関係する形状、サイズ、深さ及び位置といった4つのパラメータからなる。実用で、形状は良好に定義された幾何学的形状ではないため、厚さの変化がない流体である可能性が高い。本発明と従来の彫刻の比較の概要:従来:幾何学的形状、主に手動及び作業者の経験に基づく任意のサイズ及び任意の深さを有する任意の形状。本発明:力主導及びコンピュータシミュレーションによる出力。完全デジタル、生体力学ベース、その特定のステップで正確な力ベクトルを伝達するために計算された様々な構造の完全にカスタマイズされた形状。形状、サイズ、深さ及び位置はコンピュータシミュレーション及び生成アルゴリズムによってデジタル的に制御される。ネガ形状は、様々な幾何学的形状のうちの1つ又は組み合わせ、流体であり得、歯形状の一部又は全部の仮想変形を有するか又は有さない。ネガ形状は、偶力を形成するか又は不要な力ベクトルを排除するために、正又は負の1つ又は複数の形状に合わせて実現してもよい。4D形状:形状パラメータは各ステップに必要な力ベクトルに応じて変化するため、その特定のステップに合わせて最適化される。形状は、次のステップ及び全ての後続のステップに合わせて変化し、最適化される。従って、全体的な最適化となる。図30。特定のネガ形状修正設計。ネガ彫刻は歯表面又はポジ形状、つまり、アタッチメントに適用できる。ネガ形状修正は、能動的に力(複数可)をポジ形状に加えて歯を移動させ、製造上の欠陥(特に熱成形技術の場合)によるアライナの適合不足を補うために僅かに彫られるという目的で使用できる。ネガ彫刻の1つの臨床例は、固定源、特に能動的固定源(生理的固定源)上の適用である。任意の力コンポーネントの仮想彫刻、長方形、球形、樹木状、アレイ又は所望の力コンポーネントを作製するための任意の所望の形状。ネガ彫刻によって作製された力コンポーネントの例。図31。形状修正を使用して作られる他の機能。過剰適合の定義:アライナが緩みすぎるため、歯に接触しない。シェルにおける過剰適合はシェル-オフセットであり、それと交換可能に使用される。過剰適合は、目標歯又は形状の仮想的拡張又は拡大によって達成され、そして、結果物のアライナは、過大で過剰適合になる。図32。熱成形アライナの厚さ修正。熱成形アライナの厚さは形状修正によって制御できる。図33。様々なアライナ形状構造は形状修正によって生成できる。モデルに仮想材料を追加すると、実際の患者とは異なるモデルが生成され、修正されたモデルから製造されるアライナは、実際の歯列ではなく修正されたモデルに従う。歯科モデルに追加又はそこから除去された仮想材料は、熱成形アライナの厚さ及び特性を修正するために使用できる。自己作動力コンポーネント及び機構は形状及び群シフト修正によって作られる。
【0169】
新しいフレームワークの特別な特徴。自己バランス。定義。本発明の文脈では、3D空間において回転中心及び軸のシフトを伴う回転を生成する力が歯に作用する場合、システムのバランスが取れていないと言われる。機能の例示:力が回転中心を通じて回転軸に垂直に作用すると、該力は回転を引き起こさない。上からのいかなるずれも、3D空間における歯の回転中心及び軸のシフトを伴う歯の回転を生じさせる。自己バランスとは、回転中心及び軸のシフトを所望の方向に制御するシステムのことをいう。自己バランスしたシステムは、力が回転軸に接線的に作用したとしても、純粋な回転を生じることができる。説明。自己バランスしたシステムは、最小1つの能動的コンポーネント及び最小1つの受動的コンポーネントを含む。能動的コンポーネントは、形状変形の有無に関わらず、正又は負にすることができる。受動的コンポーネントは、一般的な幾何学的形態(円形、長方形、三角形など)を採用するが、それらに限定されない。受動的コンポーネントは反応的に力を及ぼす。受動的コンポーネントは歯に接着されない。受動的コンポーネントは歯表面の滑走・摺動を可能にする。受動的コンポーネントは、歯の移動を明確に画定された空間に制限するコンポーネントとして想像できる。自己バランスしたシステムは、能動的コンポーネント及び受動的コンポーネントを選択的に配置することで3D空間において所望の回転を生じさせるために使用される。例:図28。自己対抗。定義。3D空間において力が歯作用して意図しない方向に沿って歯の並進運動を発生させる場合、力は逸脱し、システムは対抗しないと言われる。自己対抗とは、所望の方向での並進運動を制御するシステムのことをいう。説明。自己対抗システムは、最小1つの能動的コンポーネント及び最小1つの受動的コンポーネントを含む。能動的コンポーネントは、形状変形の有無に関わらず、正又は負にすることができる。受動的コンポーネントは、一般的な幾何学的形態(円形、長方形、三角形など)を採用するが、それらに限定されない。受動的コンポーネントは反応的に力を及ぼす。受動的コンポーネントは歯に接着されない。受動的コンポーネントは歯表面の滑走・摺動を可能にする。受動的コンポーネントは、歯の移動を明確に画定された空間に制限するコンポーネントとして想像できる。適用。自己対抗システムは、能動的コンポーネント及び受動的コンポーネントを選択的に配置することで3D空間において所望の並進を発生させるために使用される。自己対抗システムは、3D空間における望ましくない並進に抵抗するために使用される。例:特定の適用例:固定源。固定源の概念。固定源は、計画外の歯移動に対する抵抗として定義される。固定源及び固定源計画は、作用と反作用は等しく反対であるというニュートンの第三法則の原因で、必要である。歯科矯正における一般的な固定源戦略:歯群を使用して単一の歯を移動させる。固定源の様々な分類/タイプ:口腔外、口腔内、群A、群B、群Cなど。絶対的な固定源-TAD(一時的な固定装置)の使用-基本的に固定源として機能するミニインプラント。単一でない固定源機構は理想的である(そのため、非常に多くの異なる戦略、手段及びタイプが存在する)。固定源損失の問題。計画された固定源は、目標(歯科矯正医が移動させたい歯)歯/複数の歯によって及ぼされるニュートンの第三法則に抵抗・対抗するのに十分ではない。計画された固定源が移動する(上記の定義を参照)->臨床的に=固定源損失-そのため->計画された結果は達成できない。固定源を強化する戦略:図27。ベクトル方向転換。分散固定源。受動的固定源。能動的生理的固定源。例1:能動的な生理的固定源。固定源は不要な歯移動に対する抵抗である。大臼歯上の固定源は、大臼歯が前歯を後退させるアンカーとして使用される場合、特に重要である。前方引張力(前方後退からの反力)に反応して、臼歯は、前方に傾斜する。一般的には、歯肉に平行な水平アタッチメントはこのような前方傾斜を阻止するために使用される。しかし、水平バーは常に有効であるわけではない。前方傾斜力に対する抵抗を増大させるために、本発明は、アタッチメント表面にネガ彫刻を施し、そのため、大臼歯上で反対方向の回転力を生成する。その逆回転力は、前方傾斜力に対抗する追加の固定源を提供する。例示:例2:ベクトル方向転換固定源。図34
【0170】
歯科矯正における自己作動の例。自己作動構造によるアーチ拡張。図35。自己作動構造による開放空間。図36。自己作動構造によるトルク。図37
【0171】
マクロ構造一体化の例。図38図39図40
歯科矯正の最適化
【0172】
背景。上記で説明したように、従来のアライナは歯を移動させるのに効率的ではない。歯移動効率を高めるために、新しいツールを開発する必要がある。歯移動効率(TME)及び歯移動効率指標が開発される。TMEは、全ての患者に証拠ベースの歯科医療をもたらす新紀元に歯科矯正を導く定量的な尺度である。TMEIは、様々なアライナ設計を比較するための定量可能な基本的ベンチマークとして機能する。コンピュータ支援設計アライナは、手動、自動又はAI最適化のいずれであっても、比較、評価及び改善が可能である。
TMEの一般概念
【0173】
歯科矯正は力/トルクを使用して歯を変位させ、回転させる。実用において、歯科矯正装具の制限により、各歯に加えられる実際の力/トルクは方向及び大きさで所望の力/トルクと一致しない場合がある。TMEは、-1と1の間のこのような不一致を定量化しようとする。OFEMにおける力/トルクベクトルからの予期される変位/回転が目標変位/回転の方向に完全に一致し、予期される変位/回転の大きさが目標変位/回転の大きさに厳密に比例する場合、TMEは1に等しい。予期される方向が目標と完全に反対であり、予期される大きさが目標に完全に比例する場合、TMEは-1に等しい。予期される方向が目標に直交する場合、TMEは0に等しい。アタッチメントを有さないアライナの平均TMEは、約10~20%である。アタッチメントを有するアライナの平均TMEは、約35~45%である。
TMEの計算
【0174】
歯移動効率は、変位/回転と力/トルクの間の方向アライメントだけでなく、各歯の力/トルク及び変位/回転の大きさ間の比例性も定量化する。TMEは、力-変位(TFD)及びトルク-回転(TTR)といった2つのコンポーネントで構成される。ここで、TME=TDF+TTRである。力-変位は、力の量、その得られたベクトル及びそれらがもたらすモーメント及び変位に関係する。ここで、意図しない望ましくない力/ベクトルは負の値である(浮遊力-Fs)。所望の力/ベクトルは正の値である(得られた力-Fr)。得られた力Fr=F-Fsである。生成された変位の大きさは得られた純粋な力/ベクトルに比例する。
【数1】
【0175】
変位の大きさは、コンピュータ骨モデルで表される、骨抵抗から生じる移動の抵抗に影響される。トルク-回転は、トルクを与えることで生成された回転の量に関係する。回転は、初期力F、回転中心及び抵抗中心とのその距離及び角度で構成される。ここで、意図しない望ましくないTTRは、負の値である(浮遊トルク-Ts)。所望のトルクは正の値である(得られたトルク-Tr)。得られたトルクTr=T-Tsである。生成された回転の大きさは、得られた純粋なトルクに比例する。最適化。最適化の目的。目的。治療時間の短縮。副作用(歯吸収、歯周問題)の軽減。患者負担の軽減。ヒューマンエラーの排除。DOF内最適化。各歯に及ぼされる力/トルクは、目標変位/回転の方向に突出できる。それらの残差は、望ましくない変位/回転を生じさせるため、最小化する必要がある。説明:実施フロー。例。歯間の最適化。総力/トルクの保存により、単一の歯のTME最適化は他の歯に影響せずに達成することはできない。複数の歯のTMEを共最適化するために協調が必要である。説明:方法。実施フロー。例。最適化フロー。4D最適化
【0176】
従来のアプローチの問題。アタッチメントによる歯形状修正は、「永久的」であり、複数のステップにわたる全治療コースを通じて持続する場合が多い。それゆえ、アライナのTMEは、アタッチメントの力受け面の向きが常に変化するため、修正された歯の向きに従って変化する。それにより、アライナのTMEは、特定の時間ステップで最適な効率を有する曲線に従うが、大部分の時間ステップでは決してそうではない。4D最適化:4D最適化は、全て又は大部分の時間ステップにわたってTMEを最適化することを目的とする。全て/大部分の時間タイプで効率を維持することで、4D最適化は治療時間を有意に短縮できる。TMEシステム=TME1+TME2+TME3…TMEnである。説明。本発明の新しい設計はアタッチメントを低減又は排除する。力コンポーネント(正又は負。後のスライドを参照)は主にアライナに組み込まれるように設計される。ユニバーサルアタッチメントは、歯表面接着ポジ形状修正が不可避な場合に備えて、全治療時間ステップを通じて持続的に最適化するための複数の力受け面を提供する。力コンポーネント(形状、サイズ、深さ/厚さ、位置及び対抗-コンポーネント)は、正確な3D空間内の歯の向きに応じて必要な力ベクトルに従って設計され、それによってその特定のステップに合わせて最適化される。力コンポーネントは、次のステップ及び全ての後続のステップに合わせて変化・最適化する。それによって、全体的な最適化が達成される。ユニバーサル4Dアタッチメントによる4D最適化。複数の力受け面及び案内/滑走面を有するユニバーサルアタッチメントは、目標の歯/複数の歯の位置及び配列が変化したとしても、継続的にその最適化を維持できる。
他の機能コンポーネントの一体化
マイクロ|ナノピット及びカプセルを介した継続的な化学物質放出
【0177】
ナノカプセルの埋め込みにより、連続的な化学物質放出が可能になる。ナノ-カプセル内の化学物質は、様々な活性化メカニズム(熱活性化、水力活性化、物理的活性化)によって制御下で放出できる。ナノカプセルは、特定のエリアに均一に分布させ又は埋め込んで所望の効果を生み出すことができる。ナノカプセルには、ナノ又はマイクロレベルの材料を埋め込むことができる。ナノカプセルの効果的な埋め込みにより、巨視的な「プール」が不要になる。ナノカプセル埋め込みは、開口又は閉鎖シェルの設計に適用できる。埋め込み可能な化学物質は、グルコン酸クロルヘキシジン(歯周病、殺菌)、フッ化ナトリウム(虫歯)、カルシウム(歯修復)、漂白剤(歯美白)、及びその他としての抗生物質などを含むが、それらに限定されない。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32295336/歯科医療における新興ナノ技術||微生物学及び歯科医療におけるナノ診断。
化学物質リザーバとしてのシェル-オフセット。
【0178】
シェル-オフセット設計は、化学処理のための天然のリザーバである。シェル-オフセットリザーバは、シェルを閉じるために適用できる。化学物質は上記5.1のとおりである。シェル-オフセットリザーバはマイクロ|ナノピット及び/又はカプセルと組み合わせることができる。
ナノ-センサ。
【0179】
ナノセンサ埋め込み。ナノセンサのタイプ。phセンサ。変位センサ。圧力センサ。化学センサ。https://www.cell.com/matter/pdfExtended/S2590-2385(20)30671-8。多機能超薄MoS2トランジスタに基づく一体化コンタクトレンズセンサシステム。多機能レンズセンサシステムはスマートコンタクトを革新する可能性がある。https://techxplore.com/news/2021-01-multifunctional-lens-sensor-revolutionize-smart.html。https://www.cell.com/matter/pdfExtended/S2590-2385(20)30671-8。多機能レンズセンサシステムはスマートコンタクトを革新する可能性がある。https://techxplore.com/news/2021-01-multifunctional-lens-sensor-revolutionize-smart.html。図42
バイオモジュレーション
【0180】
歯科矯正における光通信、電気、機械、光、ナノ技術。生体電位を修正することで1520μAの低直流電流(dc)が歯槽骨に印加され、骨芽細胞及び歯根膜細胞が第2メッセンジャcAMP及びcGMPの濃度増加を示した。設計された発光タトゥー-https://www.sciencedaily.com/releases/2021/02/210226121319.htm。超薄、超適合、及び自立型タトゥー可能有機発光ダイオード-https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/aelm.202001145。
エネルギーハーベスティング
【0181】
自己給電型センサ用。ナノ-センサに給電するためのエネルギーハーベスティング。化学エネルギーによるエネルギーハーベスティング。機械式ナノ発電機によるエネルギーハーベスティング。図43
【0182】
高レベルの整列:主に生物学主導型であり骨リモデリングの生理的限界に基づく(経路主導型又は配置主導型ではない)アライナ。更新されたモデルを通じて更新可能な任意のアライナ作成アルゴリズム。本発明の最適化フローに基づく又は主にそれに類似する任意のアライナ作成アルゴリズム。(形態学主導の代わりに)正確な力伝達によって設計・作成される任意のアライナ。歯移動効率(TME)を測定すると主張する任意のアルゴリズム。TMEを客観的な定量化として使用すると主張する任意のアライナ又はアルゴリズム。TME又はTMEIをそれらのアライナ及びアライナ製品のマーケティングに関連して使用する任意のアルゴリズム。TME/TMEI又は類似の効率測定ツールを採用してアライナ設計、作成及び出力を比較、フィルタ、選択及び改善する任意のアルゴリズム。上記のメカニズムに基づく任意の自動アライナ作成。
アライナ設計
【0183】
構造及び材料の階層的配置に基づく任意のアライナ。生体模倣の性質を持ち、メガ、マクロ、メソ、マイクロ及びナノ構造を階層的に配置した任意の階層的構造。シェル、骨格、力コンポーネント及び付加コンポーネントを明確に定義・分離する任意のアライナ。全て又は一部の選択エリア及び/又は能動的コンポーネントに対して接着力を生成する任意のアライナ。歯に接触しないシェルを有する任意のアライナ。歯に接触する力コンポーネントを有する任意のアライナ。1つ又は複数の案内/滑走/摺動構造又はコンポーネントを有する任意のアライナ。アライナの他の部分の干渉なしに所望の力コンポーネントが正確な表面接触を達成できるように設計された任意のアライナ。アライナ上の1つ又は複数の開口を有する任意のアライナ。ハイドロプレーニング回避及び唾液排出機構を有する任意のアライナ。
力コンポーネント設計
【0184】
アライナ材料の物性に応じて力コンポーネントのサイズ、形状及び構造を計算し出力するアルゴリズム。複数材料アライナにおける個別及び組み合わせた物性に応じてサイズ、形状、構造を計算するアルゴリズム。正確なベクトルを生成する歯表面又は歯の複数表面上の特定の位置にサイズ、形状及び構造を配置するアルゴリズム。階層構造及び材料を有する力コンポーネント。自己バランスする力コンポーネント。回転中心を所望の3D空間内に維持し、及び/又は回転中心を設計に従って所望の経路にシフトさせるように、能動的又は受動的のいずれであっても他の正又は負及び/又は他の力コンポーネントによってバランスされた正又は負又は他の力コンポーネントを有する任意のアライナ。自己対抗する力コンポーネント。所望の方式で設計に従って並進の経路及びピボット中心と抵抗中心のシフトを維持するように、能動的又は受動的のいずれであっても他の正又は負及び/又は他の力コンポーネントによって対抗された正又は負又は他の力コンポーネントを有する任意のアライナ。設計目的又は正確な力伝達を他の力の干渉から守る目的のいずれであっても力をバランスするための任意の機構。設計目的又は正確な力伝達を他の力の干渉から守る目的のいずれであっても力に対抗するための任意の機構。正及び負のアタッチメントを採用するアライナ。アライナ全体が受動的な場合でも負のアタッチメントを採用して能動的な力を生成するアライナ。仮想彫刻で力コンポーネントを生成するアライナ。仮想形状修正を使用して厚さを変化させるアライナ。仮想彫刻及び/又は形状修正を使用する作動機構を有するアライナ。群シフトを使用し及び/又は仮想彫刻及び/又は形状修正を用いる作動/力コンポーネントを有するアライナ。引張動作を生成するアライナ。引張及び押圧及び/又は動作の任意の組み合わせを生成するアライナ。
オールインワンアタッチメント
【0185】
任意の形態のオールインワンアタッチメントを利用するアライナ。複数の力受け面で構成されたアタッチメント。1つ又は複数の力受け面に力を順序的に又は同時に作用できるアタッチメント。カスタム向きにあり互いに角度を形成する力受け面を有する、治療コース中に歯の向きの変化に従って及びそれに適応して最適な力を継続的に及ぼすことができるアタッチメント。歯が移動する時に力コンポーネントの摺動を可能にし、且つ同じベクトルを維持する表面を有するアタッチメント。把持。把持機構を採用するアライナ。歯間アライナ材料を力源として採用する任意のアライナ。歯冠エリアで把持機構を採用する任意のアライナ。(例示及び説明:グリップがブラケットであり歯間アライナ材料がワイヤである固定装具と同様)。自己作動。構造的又は材質を問わず、任意種類の任意の自己作動機構を組み込む任意のアライナ。水力、熱、電気、化学、機械又は任意の他の手段によって作動する自己作動機構を組み込む任意のアライナ。熱成形アライナ。仮想形状修正を使用するシェル-オフセットを有する任意の熱成形アライナ。仮想彫刻によって及び/又はシェル-オフセットを用いて製作された力コンポーネントを有する任意の熱成形アライナ。仮想形状修正を採用してアライナの形態、厚さ及び物性を変更する任意の熱成形アライナ。仮想形状修正を採用して自己作動機構を生成する任意の熱成形アライナ。群を採用する任意の熱成形アライナ。上記の効果を生み出す任意の熱成形技術。
4D最適化及び複数レベル最適化
【0186】
歯内。所望の移動方向と整列させるように力を最適化する、歯に対して実行される任意のアルゴリズム。歯の向きが変化した時に最適化するように自己調整及び事前調整する任意のこのような最適化。歯間。歯間の相互作用及びニュートンの第三法則の効果を考慮した任意の最適化アルゴリズム及びそれが作成するアライナ。歯間の相互作用及びニュートンの第三法則の効果を考慮し、歯間配置が変化した時に自己最適化する任意の最適化アルゴリズム及びそれが作成するアライナ。ステップ間最適化。治療コース中に歯の向きの変化に従って及びそれに適応して最適な力を継続的に及ぼすことができるアライナ。複数レベル。上記のアルゴリズムの1つ又は任意の組み合わせを使用して作成される任意のアライナ。
ナノ技術-接触表面設計。
【0187】
歯表面に対して接着力を生成するために接着技術を採用する任意のアライナ。歯とアライナの間の微視的又はナノスケールの表面接触エリアを変更して歯に対して接着力を生成するために採用される任意の接着技術。階層構造及び材料を採用する任意のこのような接着技術。歯に対して引張動作を生成する任意のこのような接着技術。歯表面に垂直又は接線的な、及び/又は上方の任意の角度での引張動作を生成する任意のこのような接着技術。(歯表面に沿って滑ることなく接触を相対的に安定させる)押圧動作を生成する任意のこのような接着技術。歯表面に対して接着力を生成する任意の技術。接着力を生成する任意のナノ技術。接着力を生成するアライナ上の任意の表面処理。自浄表面を生成するアライナ上の任意の表面処理。複数の製造技術をサポートするアルゴリズム。単一材料熱成形、複数材料熱成形、単一材料直接3D印刷、複数材料3D印刷に限定されない複数の製造技術をサポートする任意のアルゴリズム。単一材料熱成形、複数材料熱成形、単一材料直接3D印刷、複数材料3D印刷に限定されない特定の製造技術に最適化された任意のアルゴリズム。
自己作動コンポーネントの一体化
【0188】
任意の形態の自己作動機構を組み込む任意のアライナ。拡張、収縮、撓み及びカール動作に限定されない6つの次元で3D移動を生成する任意の自己作動機構。水力、熱、化学、電気又は機械に限定されない方式で活性化される任意の自己作動機構。他のコンポーネントの一体化。化学物質リザーバ。化学物質用のマイクロ又はナノリザーバを含む任意のアライナ。マイクロ又はナノリザーバは、マイクロ/ナノピット及びマイクロ-ナノカプセルを含むが、それらに限定されない。一部又は全部又は複数の歯に局在化されたマイクロ又はナノリザーバの任意の選択的分布。マイクロ又はナノリザーバの密度の任意の選択的分布。化学リザーバとして機能する任意のシェル-オフセット設計。上記の任意の組み合わせ。
エネルギーハーベスティング
【0189】
内蔵エネルギーハーベスティング装置を有する任意のアライナ。熱駆動、化学駆動又は機械駆動に限定されない任意のエネルギーハーベスティング装置。ナノ-センサへの電力供給及び/又はバイオモジュレーションのための内蔵エネルギーハーベスティング装置を有する任意のアライナ。
マイクロ及び/又はナノ-センサ
【0190】
ナノ-センサを埋め込む任意のアライナ。pHセンサ、変位センサ、圧力センサ、化学センサ又は任意種類の他のセンサを埋め込む任意のアライナ。受動的又は能動的である任意のマイクロ及び/又はナノ-センサ。内蔵エネルギーハーベスティング装置を利用する任意のマイクロ及び/又はナノ-センサ。
バイオモジュレーション
【0191】
バイオモジュレーションモジュールを統合した任意のアライナ。バイオモジュレーションは、機械、フォトニック及び電気のものを含むが、それらに限定されない。
図1
図2
図3
図4-5】
図6
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図40
図41
図42
図43
図44
図45
【国際調査報告】