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特表2024-533457がんの治療のためのCD33×Vδ2多重特異性抗体
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  • 特表-がんの治療のためのCD33×Vδ2多重特異性抗体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】がんの治療のためのCD33×Vδ2多重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240905BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07K16/46
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/62
C12N15/13
A61K39/395 N
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515863
(86)(22)【出願日】2022-09-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 IB2022058572
(87)【国際公開番号】W WO2023037333
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/243,493
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21202685.0
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ドーナン,パトリック ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ラ ポルテ,シェリー リン
(72)【発明者】
【氏名】シン,サンジャヤ
(72)【発明者】
【氏名】パレン,ポール ウィレム ヘンリ イダ
(72)【発明者】
【氏名】ムラ,サブリナ ジュリア ルイーザ
(72)【発明者】
【氏名】ルーヴァーズ,ロベルツス コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】エラシュカル,サラ モハメド エー
(72)【発明者】
【氏名】フィリッパー,ウルリケ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA24
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、多重特異性抗体及び当該抗体を含む医薬組成物、当該抗体を調製するためのプロセス、並びにCD33を標的とする当該抗体の使用、並びに疾患、例えば、がんの治療におけるそれらの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD33に結合することができる第1の抗原結合領域と、ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる第2の抗原結合領域と、を含む、単離された多重特異性抗体であって、
前記第1の抗原結合領域が、
a)それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、及び6、
a)それぞれ、配列番号7、8、9、10、11、及び12、
d)それぞれ、配列番号13、14、15、16、17、及び18、又は
e)それぞれ、配列番号19、20、21、22、23、及び24、のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記第2の抗原結合領域が、前記Vγ9Vδ2 T細胞受容体のVδ2鎖に結合する、単離された多重特異性抗体。
【請求項2】
前記第2の抗原結合領域が、単一ドメイン抗体であり、
a)それぞれ、配列番号28、29、及び30、
b)それぞれ、配列番号25、26、及び27、
c)それぞれ、配列番号31、32、及び33、
d)それぞれ、配列番号34、35、及び36、
e)それぞれ、配列番号37、38、及び39、
f)それぞれ、配列番号40、41、及び42、
g)それぞれ、配列番号43、44、及び45、又は
h)それぞれ、配列番号46、47、及び48、のCDR1、CDR2及びCDR3を含む、請求項1に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項3】
前記第1の抗原結合領域が、それぞれ、配列番号1、2、3、4、5及び6の前記HCDR1、前記HCDR2、前記HCDR3、前記LCDR1、前記LCDR2及び前記LCDR3を含む、請求項2に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項4】
前記第1の抗原結合領域が、それぞれ、配列番号1、2、3、4、5及び6の前記HCDR1、前記HCDR2、前記HCDR3、前記LCDR1、前記LCDR2及び前記LCDR3を含み、前記第2の抗原結合領域が、単一ドメイン抗体であり、それぞれ、配列番号28、29及び30の前記CDR1、CDR2及びCDR3を含む、請求項2に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項5】
前記第1の抗原結合領域が、それぞれ、配列番号1、2、3、4、5及び6の前記HCDR1、前記HCDR2、前記HCDR3、前記LCDR1、前記LCDR2及び前記LCDR3を含み、前記第2の抗原結合領域が、単一ドメイン抗体であり、それぞれ、配列番号25、26及び27の前記CDR1、CDR2及びCD3を含む、請求項2に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項6】
前記第2の抗原結合領域が、単一ドメイン抗体であり、それぞれ、配列番号28、29、及び30の前記CDR1、CDR2及びCD3を含む、請求項1に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項7】
ヒトCD33に結合することができる第1の抗原結合領域と、ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる第2の抗原結合領域とを含み、
前記第1の抗原結合領域が、
a)配列番号51のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号52のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
b)配列番号49のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号50のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
d)配列番号53のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号54のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
e)配列番号55のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号56のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、を含むか、若しくはそれらからなり、又は
かつ
前記第2の抗原結合領域が、
a)配列番号58に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
b)配列番号57に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
c)配列番号59に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
d)配列番号60に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
e)配列番号61に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
f)配列番号62に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
g)配列番号63に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
h)配列番号64に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
i)配列番号65に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、若しくは
j)配列番号66に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、を含むか、若しくはそれらからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項8】
a)前記単離された多重特異性抗体が、Fab、scFv、(scFv)、Fv、F(ab’)若しくはFdを含み、前記Fab、scFv、(scFv)、Fv、F(ab’)若しくはFdが、ヒトCD33に結合することができる前記第1の抗原結合領域を含むか、又は
b)前記単離された多重特異性抗体が、
-ヒトCD33に結合することができる前記第1の抗原結合領域を含むFabと、
-ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる前記第2の抗原結合領域を含む単一ドメイン抗体と、を含むか、又は、
c)前記単離された多重特異性抗体が、
-ヒトCD33に結合することができる前記第1の抗原結合領域を含むscFvと、
-ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる前記第2の抗原結合領域を含む単一ドメイン抗体と、を含む、請求項1に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項9】
前記単離された多重特異性抗体が、ヒトCD33に結合することができる前記第1の抗原結合領域を含むscFvと、ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる前記第2の抗原結合領域を含むVHHと、を含み、前記scFvが、配列番号67~99に記載のリンカーの群から任意選択的に選択されるペプチドリンカーを含む、請求項8に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項10】
前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が、ペプチドリンカーを介して直接的又は間接的に共有結合で連結されており、任意選択的に、前記ペプチドリンカー配列番号100に記載のリンカー、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項11】
前記第1の抗原結合領域が、前記第2の抗原結合領域のN末端に位置している、請求項10に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項12】
第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項13】
前記単離された多重特異性抗体が、ヒトCD33に結合することができる前記第1の抗原結合領域を含むFab、ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる前記第2の抗原結合領域を含むVHHを含み、前記単離された多重特異性抗体が、Fc領域を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項14】
IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプからなる群から選択されるIg定常領域又はその断片を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項15】
前記Fc領域が、不活性である、請求項12~14のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項16】
前記第1のFcポリペプチド及び前記第2のFcポリペプチドのうちの一方又は両方における前記Fc領域が、234に対応する位置にAla、235に対応する位置にAla、及び265に対応する位置にSerを含み、番号付けがEuに従う、請求項15に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項17】
前記第1のFcポリペプチドが、366に対応する位置にTrpを含み、前記第2のFcポリペプチドが、366に対応する位置にSer、368に対応する位置にAla、及び407に対応する位置にValを含むか、又はその逆であり、番号付けがEuに従う、請求項12~16のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項18】
前記第1のFcポリペプチド及び前記第2のFcポリペプチドのうちの一方又は両方における前記Fc領域が、252に対応する位置にTyr、254に対応する位置にThr、及び256に対応する位置にGluを含み、番号付けがEuに従う、請求項12~17のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項19】
前記第1のFcポリペプチド及び前記第2のFcポリペプチドのうちの一方における前記Fc領域が、435に対応する位置にArg、及び436に対応する位置にPheを含み、番号付けがEuに従う、請求項12~18のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項20】
前記多重特異性抗体が、二重特異性抗体である、請求項1~19のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項21】
a)配列番号101、102及び103に記載のポリペプチド、
b)配列番号104、105及び106に記載のポリペプチド、
c)配列番号107、108及び109に記載のポリペプチド、
d)配列番号110、111及び112に記載のポリペプチド、
e)配列番号113、114及び115に記載のポリペプチド、
f)配列番号116、117及び118に記載のポリペプチド、
g)配列番号119、120及び121に記載のポリペプチド、又は
h)配列番号122、123及び124に記載のポリペプチド、を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項23】
医薬としての使用のための、請求項1~21のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体。
【請求項24】
血液がんの治療に使用するための、請求項1~21のいずれか一項に記載の単離された多重特異性抗体であって、任意選択的に、前記血液がんが、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、急性骨髄白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性リンパ球性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性骨髄白血病(CML)、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(DPDCN)、骨髄増殖性新生物(MPN)、及び混合表現型急性白血病からなる群から選択される、単離された多重特異性抗体。
【請求項25】
請求項1~21のいずれか一項に記載の多重特異性抗体をコードする、核酸構築物又は核酸構築物の組み合わせ。
【請求項26】
請求項25に記載の核酸構築物又は核酸構築物の組み合わせを含む、発現ベクター。
【請求項27】
請求項25に記載の核酸構築物若しくは核酸構築物の組み合わせ、又は請求項26に記載の発現ベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項28】
請求項1~21のいずれか一項に記載の多重特異性抗体の、それを必要とするヒト対象への投与を含む、疾患を治療する方法。
【請求項29】
前記疾患が、血液がんであり、任意選択的に、前記血液がんが、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、急性骨髄白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性リンパ球性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性骨髄白血病(CML)、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(DPDCN)、骨髄増殖性新生物(MPN)、及び混合表現型急性白血病からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(配列表)
本出願は、ASCII形式で電子的に提出済みである、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2022年03月08日に作成された当該ASCIIコピーの名称はSEQLTXT-1.txtであり、サイズは212キロバイトである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、多重特異性抗体及び当該抗体を含む医薬組成物、当該抗体を調製するためのプロセス、及びCD33を標的とする当該抗体の使用、及び疾患、例えばがんの治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)における標的化免疫療法には、AML芽球の不均一性及びAML特異的抗原の欠如に起因して、依然として実質的な臨床的課題がある。CD33を標的とするいくつかの免疫療法、例えば、CD33xCD3 T細胞リダイレクト分子及び複数の自己又は同種異系CAR T又はNK細胞療法は、現在、AMLにおける第1相又は第2相臨床試験を受けている。
【0004】
Vγ9Vδ2 T細胞は、腫瘍細胞の免疫療法を探索するためのT細胞の興味深いサブセットである。それらは、循環T細胞集団の1~5%に相当し、広範ながん群において優勢であり、それらは、変異負荷とは無関係に浸潤する。これらのT細胞は、標的細胞上のリガンドのブチロフィリン(butyrophilin、BTN)ファミリーにおけるリン酸化抗原媒介性コンフォメーション変化を感知し、これらの細胞を効率的に死滅させる。Vγ9Vδ2 T細胞は、腫瘍細胞に対するPDL1による阻害の影響をあまり受けず、Vγ9Vδ2 T細胞集団はTregを含まない。これは、CD3二重特異性T細胞エンゲージャによるTregの活性化に関連する後者の活性を制限することが示されている。加えて、リン酸化抗原活性化ブチロフィリン(BTN3A、CD227)の差次的発現は、正常細胞よりもがん細胞に対するγδT細胞のより大きな抗腫瘍活性に寄与し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、CD33依存性γδT細胞リダイレクションが可能な多重特異性又は二重特異性抗体を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、高親和性又は低親和性Vδ2結合部のいずれかと対になった異なるCD33結合部から構成される多重特異性又は二重特異性抗体を提供することである。
【0007】
本発明の目的は、Vγ9Vδ2 T細胞と併せて、CD33+がん細胞及び初代AML芽球に対して細胞傷害性である多重特異性又は二重特異性抗体を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、様々な細胞株において強力かつ選択的なT細胞媒介性細胞傷害を誘導する多重特異性又は二重特異性抗体を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、既存の療法と比較して安全性及び有効性に関して利点を示す多重特異性又は二重特異性抗体を提供することである。
【0010】
本発明の目的は、Vγ9Vδ2 T細胞の標的依存性脱顆粒、活性化及び増殖を誘導する多重特異性又は二重特異性抗体を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、健康なCD14+細胞(単球)よりもTHP-1がん細胞の優先的な死滅を示す多重特異性又は二重特異性抗体を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】CD33xVδ2二重特異性抗体はCD33発現細胞に結合する。THP-1細胞を様々な濃度のCD33xVδ2二重特異性抗体又は陰性対照抗体(RSV(B21M)xVδ2二重特異性抗体)とともにインキュベートした。Alexa Fluor(登録商標)647コンジュゲートF(ab’)2ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson)を使用して、FACSによって結合を検出した。(A)CD33結合ドメインとしてJL2、JL3、JL5、又はJL6、及びVδ2結合ドメインとして6H4を含有するCD33xVδ2二重特異性抗体。(B)CD33結合ドメインとしてJL2、JL3、JL5又はJL6、及びVδ2結合ドメインとして5D3を含有するCD33xVδ2二重特異性抗体。
図2】CD33xVδ2二重特異性抗体はVγ9Vδ2 T細胞に結合する。健常ドナーから単離して増殖させたポリクローナルVγ9Vδ2 T細胞を、様々な濃度のCD33xVδ2二重特異性抗体、RSV(B21M)xVδ2二重特異性抗体又は陰性対照抗体(LAVA-188、2つの無関係な標的に対する二重特異性抗体)とともにインキュベートした。Alexa Fluor(登録商標)647コンジュゲートF(ab’)2ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson)を使用して、FACSによって結合を検出した。(A)CD33結合ドメインとしてJL2、JL3、JL5、又はJL6、及びVδ2結合ドメインとして6H4、及びLAVA-188を含有するCD33xVδ2二重特異性抗体。(B)CD33結合ドメインとしてJL2、JL3、JL5又はJL6、及びVδ2結合ドメインとして5D3、及びLAVA-188を含有するCD33xVδ2二重特異性抗体。
図3】CD33xVδ2二重特異性抗体は健常なCD14+細胞よりも腫瘍細胞の死滅を優先的に媒介する。THP-1標的細胞(パネルA)又はCD14+標的細胞(パネルB)を、様々な濃度のCD33xVδ2二重特異性抗体(JL3x6H4、JL5x6H4、JL6x6H4若しくはJL5x5D3)又は陰性対照抗体(RSV(B21M)x6H4若しくはRSV(B21M)x5D3)とともにインキュベートした。ドナーPBMC(エフェクタ細胞)を5:1のエフェクタ細胞対標的細胞比で添加し、インキュベーション後、特異的溶解を決定した。
図4】CD33xVδ2二重特異性抗体はVγ9Vδ2 T細胞の増殖を誘導する。Vγ9Vδ2 T細胞(エフェクタ細胞)及びTHP-1細胞(標的細胞)を、1nMのCD33xVδ2二重特異性抗体(JL3x6H4、JL5x6H4、JL6x6H4又はJL5x5D3)とともに、1:20のエフェクタ細胞対標的細胞比でインキュベートした。Vγ9Vδ2 T細胞数の増加倍率を、インキュベーションの1、4、7、11及び14日後に決定した。パネルA及びBは、2人の異なるドナーからのVγ9Vδ2 T細胞を表す。陰性対照は、抗体RSV(B21M)x6H4及びRSV(B21M)x5D3並びに培地であった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
「第1の」及び「第2の」抗原結合領域という用語は、本明細書で使用される場合、抗体におけるそれらの配向/位置を指さず、すなわち、それらは、N末端又はC末端に関しても意味を有さない。「第1」及び「第2」という用語は、特許請求の範囲及び説明における2つの異なる抗原結合領域を正確かつ一貫して指すためにのみ役立つ。
【0014】
「CD33」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトCD33を指し、その配列はUniProtKB-P20138に記載されている。
【0015】
「ヒトVδ2」という用語は、本明細書で使用される場合、Vγ9Vδ2-T細胞受容体(T cell receptor、TCR)の再構成されたδ2鎖を指す。GenBank:CAA51166.1は、δ2配列の例を与える。TRDV2(T cell receptor delta variable 2)、T細胞受容体デルタ可変2は、可変領域を表す(UniProtKB-A0JD36(A0JD36_HUMAN)は、TRDV2配列の例を与える)。「Vγ9Vδ2-TCRのVδ2鎖に結合する」とは、抗体が、別個の分子として及び/又はVγ9Vδ2-TCR(T細胞受容体)の一部としてδ2鎖に結合することができることを意味する。しかし、抗体は、別個の分子としてγ9鎖に結合しない。
【0016】
「ヒトVγ9」という用語は、本明細書で使用される場合、Vγ9Vδ2-T細胞受容体(TCR)の再構成されたγ9鎖を指す。GenBank:NG_001336.2は、γ9配列の例を与える。TRGV9(T cell receptor gamma variable 9)、T細胞受容体ガンマ可変9は、可変領域を表す(UniProtKB-Q99603_HUMANは、TRGV9配列の例を与える)。
【0017】
免疫グロブリンのFc(断片結晶化可能)領域は、抗体の断片として定義され、これは典型的にはパパインによる抗体の消化後に生成され、免疫グロブリンの2つのCH2-CH3領域及び連結領域、例えばヒンジ領域を含む。抗体重鎖の定常ドメインは、抗体アイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、又はIgEを定義する。Fc領域は、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体及び補体系のタンパク質を有する抗体のエフェクタ機能を媒介する。
【0018】
本明細書で使用される「ヒンジ領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指すことが意図される。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、EU番号付けによるアミノ酸216~230に対応する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「CH2領域」又は「CH2ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指すことが意図される。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、EU番号付けによるアミノ酸231~340に対応する。しかしながら、CH2領域はまた、本明細書に記載の他の抗体アイソタイプのいずれであってもよい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「CH3領域」又は「CH3ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指すことが意図される。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、EU番号付けによるアミノ酸341~447に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載の他の抗体アイソタイプのいずれであってもよい。
【0021】
しかしながら、いくつかの実施形態では、抗体のFc領域は、不活性になるように修飾されている。「不活性」は、任意のFcガンマ受容体に結合する能力、FcRのFc媒介性架橋を誘導する能力、又は個々の抗体の2つのFc領域を介して標的抗原のFcR媒介性架橋を誘導する能力が最小限であるか、又は全くないFc領域を意味する。不活性Fc領域は、更に、C1qに結合することができなくてもよい。
【0022】
「アイソタイプ」という用語は、本明細書で使用される場合、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリン(サブ)クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、IgM、又はそれらの任意のアロタイプ、例えば、以下の表2のアロタイプ)を指す。各重鎖アイソタイプは、カッパ(κ)又はラムダ(λ)軽鎖のいずれかと組み合わせることができる。本発明の抗体は、任意のアイソタイプを有し得る。
【0023】
本発明の文脈において、「競合」又は「競合することができる」又は「競合する」は、結合パートナーに結合する別の分子(例えば、同じ標的に結合する異なる抗体)の存在下で、特定の結合分子(例えば、抗体)が特定の結合パートナー(例えば、標的)に結合する傾向の任意の検出可能な有意な低減を指す。典型的には、競合は、例えば、十分な量の2つ又は3つ以上の競合分子、例えば、抗体を使用するELISA分析又はフローサイトメトリによって決定されるような、抗体などの別の分子の存在によって引き起こされる結合の少なくとも約25パーセントの減少、例えば少なくとも約50パーセント、例えば少なくとも約75パーセント、例えば少なくとも90パーセントの減少を意味する。競合阻害によって結合特異性を決定するための更なる方法は、例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988)、Colligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc,and Wiley InterScience N.Y.,(1992,1993)、及びMuller,Meth.Enzymol.92,589-601(1983))に見出すことができる。
【0024】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、その内容について別途明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ又は3つ以上の細胞の組み合わせ等が含まれる。
【0025】
「備える/含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting)」という移行句は、特許用語において概ね受け入れられている意味を含意することを意図しており、すなわち、(i)「備える/含む(comprising)」は、「含む」、「含有する」、又は「特徴とする」と同義であり、包括的又は非制限的なものであり、その他の列挙されていない要素又は方法工程を除外するものではなく、(ii)「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲において特定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外し、並びに(iii)「から本質的になる」は、特定される材料又は工程、及び、特許請求される発明の「基本的かつ新しい特徴に実質的に影響しないもの」に、特許請求の範囲を制限する。「備える/含む」という語句(又はその同義語)を伴って記載される実施形態はまた、「からなる」及び「から本質的になる」を伴って独立して記載される実施形態を実施形態として提供する。
【0026】
「約」は、当業者によって求められた特定の値について許容される誤差範囲内であることを意味し、これは、その値が測定又は決定される方法、すなわち、測定システムの制限事項にある程度依存する。特定のアッセイ、結果、又は実施形態の文脈において、実施例又は本明細書の他の箇所に別途明示的に記載されない限り、「約」は、当該技術分野の慣行による1標準偏差、又は5%までの範囲のうちのいずれか大きい方の範囲内であることを意味する。
【0027】
「活性化」又は「刺激」又は「活性化された」又は「刺激された」は、活性化マーカーの発現、サイトカイン産生、増殖、又は標的細胞の細胞傷害の媒介をもたらす、細胞の生物学的状態の変化の誘導を指す。細胞は、一次刺激シグナルによって活性化されてもよい。共刺激シグナルは、一次シグナルの大きさを増幅し、初期刺激後の細胞死を抑制し得、その結果、より耐久性のある活性化状態、ひいてはより高い細胞傷害能をもたらす。
【0028】
「代替足場」は、立体配座許容度が高い可変ドメインに会合する構造化コアを含有する、単鎖タンパク質フレームワークを指す。可変ドメインは、足場の完全性を損なうことなく、導入される多型を許容するため、可変ドメインは、特異的抗原に結合するように操作及び選択され得る。
【0029】
「抗原」は、免疫応答を媒介することができる抗原結合ドメイン又はT細胞受容体が結合することができる任意の分子(例えば、タンパク質、ペプチド、多糖類、糖タンパク質、糖脂質、核酸、それらの部分、又はそれらの組み合わせ)を指す。例示的な免疫応答には、抗体産生、及びT細胞、B細胞又はNK細胞などの免疫細胞の活性化が含まれる。抗原は、組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞、又は他の生物学的成分を有する流体、生物、タンパク質/抗原のサブユニット、死滅若しくは不活性化された全細胞又は溶解物などの生体サンプルからの遺伝子によって発現し得るか、当該サンプルから合成され得るか、又は当該サンプルから精製され得る。
【0030】
「抗原結合領域」又は「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合部位」とは、抗原に結合する抗体の部分を指す。抗原結合領域は、合成ポリペプチド、酵素的に入手可能なポリペプチド、又は遺伝的に操作されたポリペプチドであってよく、これには、抗原に結合する免疫グロブリンの一部、例えば、VH、VL、VH及びVL、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd及びFv断片、1つのVHドメイン又は1つのVLドメインからなる単一ドメイン抗体(domain antibodies、dAb)、サメ可変IgNARドメイン、ラクダ化VHドメイン、VHHドメイン、FR3-CDR3-FR4部分などの抗体のCDRを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識ユニット、HCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2、及び/又はLCDR3、抗原に結合する代替足場、並びに抗原結合領域を含む多重特異性タンパク質が挙げられる。抗原結合ドメイン(VH及びVLなど)は、合成リンカーを介して一緒に連結して、VH及びVLドメインが別々の一本鎖により発現された場合に、VH/VLドメインが分子内又は分子間で対合して一価の抗原結合ドメイン、例えば一本鎖Fv(scFv)又はダイアボディを形成し得る、様々な種類の単一抗体設計を形成してもよい。抗原結合領域はまた、二重特異性タンパク質及び多重特異性タンパク質を操作するために、単一特異性又は多重特異性であり得るその他の抗体、タンパク質、抗原結合断片、又は代替足場にコンジュゲートさせてもよい。
【0031】
「抗体」は、広義の意味を有し、マウス、ヒト、ヒト化、及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗原結合断片、二重特異性、三重特異性、四重特異性などの多特異性抗体、二量体、四量体、又は多量体抗体、一本鎖抗体、ドメイン抗体、及び必要とされる特異性の抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された形態を含む免疫グロブリン分子を含む。重鎖は、重鎖可変領域(heavy chain variable region、VH)、及び重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3からなる)で構成される。軽鎖は、存在する場合、軽鎖可変領域(light chain variable region、VL)及び軽鎖定常領域(light chain constant region、CL)で構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(framework region、FR)が散在しており相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と呼称される超可変領域に更に細分化され得る。VH又はVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で配置された、3つのCDR及び4つのFRセグメントで構成される。免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。どのような脊椎動物種の抗体軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に異なるタイプ、すなわち、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てることができる。
【0032】
「二重特異性」は、同じ抗原内の2つの異なる抗原、又は2つの異なるエピトープに特異的に結合する分子(抗体など)を指す。二重特異性分子は、他の関連抗原、例えば、ヒト、サル、又は類人猿、例えば、Macaca fascicularis(カニクイザル、cynomolgus monkey,cyno)又はチンパンジー(Pan troglodytes)などの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有する場合もあり、あるいは、2つ又は3つ以上の異なる抗原間で共有されているエピトープに結合する場合もある。
【0033】
異なるクラスの二重特異性抗体の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(i)ヘテロ二量体化を強制するための相補的CH3ドメインを有するIgG様分子、(ii)組換えIgG様二重標的化分子(この分子の2つの側面は各々、少なくとも2つの異なる抗体のFab断片又はFab断片の一部を含む)、(iii)完全長IgG抗体が、余分のFab断片又はFab断片の一部に融合されているIgG融合分子、(iv)一本鎖Fv分子若しくは安定化されたダイアボディが、重鎖定常ドメイン、Fc領域、若しくはその一部に融合されているFc融合分子、(v)異なるFab断片は一緒に融合され、重鎖定常ドメイン、Fc領域又はその一部に融合される、Fab融合分子、及び(vi)異なる一本鎖Fv分子又は異なるダイアボディ又は異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、Nanobodies(登録商標))が、互いに、又は重鎖定常ドメイン、Fc領域若しくはその一部に融合された別のタンパク質若しくは担体分子に融合されている、scFv及びダイアボディに基づく重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、Nanobodies (登録商標))。
【0034】
相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例としては、Triomab(登録商標)(Trion Pharma/Fresenius Biotech)、Knobs-into-Holes(Genentech)、CrossMAbs (Roche)及び静電的にマッチさせたもの(Amgen、Chugai、Oncomed)、LUZ-Y(Genentech,Wranik et al.J.Biol.Chem.2012,287(52):43331-9,doi:10.1074/jbc.M112.397869.Epub 2012 Nov 1)、DIG-body及びPIG-body(Pharmabcine、国際公開第2010134666号、国際公開第2014081202号)、鎖交換組換えドメインボディ(Strand Exchange Engineered Domain body(SEEDbody)(EMD Serono)、Biclonics(Merus、国際公開第2013157953号)、FcΔAdp(Regeneron)、二重特異性IgG1及びIgG2(Pfizer/Rinat)、Azymetric scaffold(Zymeworks/Merck)、mAb-Fv(Xencor)、二価二重特異性抗体(Roche、国際公開第2009080254号)及びDuoBody(登録商標)分子(Genmab)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
組換えIgG様二重標的化分子の例としては、二重標的化(Dual Targeting、DT)-Ig(GSK/Domantis、国際公開第2009058383号)、ツーインワン抗体(Genentech、Bostrom et al.2009。Science 323,1610-1614)、架橋Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star)、Zybodies(商標)(Zyngenia、LaFleur et al.MAbs.2013 Mar-Apr;5(2):208-18)、共通軽鎖を用いるアプローチ、κλボディ(NovImmune、国際公開第2012023053号)及びCovX-body(登録商標)(CovX/Pfizer、Doppalapudi、V.R.,et al 2007.Bioorg.Med.Chem.Lett.17,501-506)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
IgG融合分子の例としては、二重可変ドメイン(DVD)-Ig(Abbott)、二重ドメインダブルヘッド抗体(Unilever;Sanofi Aventis)、IgG様二重特異性(ImClone/Eli Lilly、Lewis et al.Nat Biotechnol.2014 Feb;32(2):191-8)、Ts2Ab(MedImmune/AZ、Dimasi et al.J Mol Biol.2009 Oct 30;393(3):672-92)及びBsAb(Zymogenetics、国際公開第2010111625号)、HERCULES(Biogen Idec)、scFv融合体(Novartis)、scFv融合体(Changzhou Adam Biotech Inc)及びTvAb(Roche)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
Fc融合分子の例としては、scFv/Fc融合体(Academic Institution,Pearce et al Biochem Mol Biol Int.1997 Sep;42(6):1179)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion、Blankenship JW,et al.AACR 100th Annual meeting 2009(Abstract#5465);Zymogenetics/BMS、国際公開第2010111625号)、Dual Affinity Retargeting Technology(Fc-DARTTM)(MacroGenics)、及びDual(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine-China)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
Fab融合二重特異性抗体としては、F(ab)(Medarex/AMGEN)、Dual-Action or Bis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(登録商標)(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)、及びFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
scFv-、ダイアボディベースの及びドメイン抗体の例としては、Bispecific T Cell Engager(BiTE(登録商標))(Micromet、Tandem Diabody(Tandab)(Affimed)、二重親和性再標的化技術(Dual Affinity Retargeting Technology、DARTTM)(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Academic、Lawrence FEBS Lett.1998 Apr 3;425(3):479-84)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack、国際公開第2010059315号)及びCOMBODY分子(Epigen Biotech、Zhu et al.Immunol Cell Biol.2010 Aug;88(6):667-75)、二重標的化ナノボディ(dual targeting nanobodies)(登録商標)(Ablynx、Hmila et al.、FASEB J.2010)、二重標的化重鎖単独ドメイン抗体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の多重特異性抗体は、VHH-Fc形式であってもよく、すなわち、抗体は、ヒトFc領域二量体を介して互いに連結された2つ又は3つ以上の単一ドメイン抗原結合領域を含む。この形式において、各単一ドメイン抗原結合領域は、Fc領域ポリペプチドに融合され、2つの融合ポリペプチドは、ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋を介して二量体二重特異性抗体を形成する。このような構築物は、典型的には、完全なCH1配列又は軽鎖配列を含まないか、又は全く含まない。国際公開第06064136号の図12Bは、この形式の例の説明図を提供する。
【0040】
二重特異性抗体は、混合形式であってもよい。例えば、一方の抗原結合領域は、Fab又はscFv形式であってもよく、他方の抗原結合領域は、単一ドメイン抗体で構成されるか、又は単一ドメイン抗体からなってもよい。このような構築物は、ヒンジ領域を介してFcポリペプチドを連結するFc領域を更に含んでもよい。
【0041】
「相補性決定領域」(Complementarity determining region、CDR)は、抗原に結合する抗体の領域である。VHには3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)が存在し、VLには、存在する場合、3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する。CDRは、Kabat(Wu et al.(1970)J Exp Med 132:211-50;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)、Chothia(Chothia et al.(1987)J Mol Biol 196:901-17)、IMGT(Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55-77)、AbM(Martin and Thornton J Bmol Biol 263:800-15,1996)、又はContactなどの様々な記述を使用して定義することができ、これらは利用可能な複合体結晶構造の解析に基づいている(MacCallum,R.M.,Martin,A.C.R.and Thornton,J.T.「Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography」J.Mol.Biol.262:732-745)。様々な記述と、可変領域の番号付けとの対応が記載されている(例えば、Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55-77;Honegger and Pluckthun,J Mol Biol(2001)309:657-70;International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース;ウェブリソース、www_imgt_orgを参照されたい)。UCL Business PLCによるabYsisなどの利用可能なプログラムを使用して、CDRを記述することができる。「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書に別途明示的に記載のない限り、上述したKabat、Chothia、IMGT、AbM、又はContactの方法のいずれかにより定義されるCDRを含む。配列番号1~48を有する配列のCDRは、上記Kabatに従って定義される。
【0042】
「発現ベクター」は、発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドの翻訳を指示するために、生物系又は再構成された生物系で利用することができるベクターを指す。
【0043】
「単一ドメイン抗体」、「dAb」、「VHH」、又は「dAb断片」は、VHドメインで構成される抗体断片を指す(Ward et al.,Nature 341:544 546(1989))。本発明の第2の抗原結合領域は、単一ドメイン抗体であってもよい。単一ドメイン抗体(sdAb、Nanobody(登録商標)又はVHHとも呼ばれる)は、当業者に周知であり、例えば、Hamers-Casterman et al.(1993)Nature 363:446、Roovers et al.(2007)Curr Opin Mol Ther 9:327及びKrah et al.(2016)Immunopharmacol Immunotoxicol 38:21を参照されたい。単一ドメイン抗体は、単一のCDR1、単一のCDR2及び単一のCDR3を含む。単一ドメイン抗体の例は、重鎖のみの抗体、天然に軽鎖を含まない抗体、従来の抗体に由来する単一ドメイン抗体、及び操作された抗体の可変断片である。単一ドメイン抗体は、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、サメ、ヤギ、ウサギ、及びウシを含む任意の種に由来し得る。例えば、天然に存在するVHH分子は、ラクダ科種、例えばラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、及びグアナコで産生された抗体に由来し得る。全抗体と同様に、単一ドメイン抗体は、単一の特異的抗原に選択的に結合することができる。単一ドメイン抗体は、免疫グロブリン鎖の可変ドメイン、すなわち、CDR1、CDR2及びCDR3並びにフレームワーク領域のみを含有し得る。
【0044】
「Fab」又は「Fab断片」は、VH、CH1、VL、及びCLドメインで構成される抗体断片を指す。
【0045】
「F(ab’)」又は「F(ab’)断片」は、ヒンジ領域内のジスルフィド架橋によって接続された2つのFab断片を含有する抗体断片を指す。
【0046】
「Fd」又は「Fd断片」は、VH及びCH1ドメインで構成される抗体断片を指す。
【0047】
「Fv」又は「Fv断片」は、抗体の単一のアーム由来のVHドメイン及びVLドメインで構成される抗体断片を指す。
【0048】
「宿主細胞」は、異種核酸を含有する任意の細胞を指す。例示的な異種核酸は、ベクター(例えば、発現ベクター)である。
【0049】
「ヒト抗体」は、ヒト対象に投与されたときに免疫応答が最小限になるように最適化された抗体を指す。ヒト抗体の可変領域は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体が定常領域又は定常領域の一部を含む場合、その定常領域もヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合、ヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。このような例示的な系は、ファージにディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばマウス又はラットである。「ヒト抗体」は、典型的には、ヒト抗体及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を得るために使用した系の違い、フレームワーク、CDR、若しくは定常領域への体細胞変異の導入若しくは置換の意図的な導入により、ヒトで発現した免疫グロブリンと比較したときにアミノ酸の違いを含有する。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされているアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。場合によっては、「ヒト抗体」は、例えばKnappik et al.,(2000)J Mol Biol 296:57-86に記載されるヒトフレームワーク配列分析に由来するコンセンサスフレームワーク配列、又は例えばShi et al.,(2010)J Mol Biol 397:385-96及び国際公開第2009/085462号に記載される、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含有し得る。少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0050】
「ヒト化抗体」は、少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来し、少なくとも1つのフレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を指す。ヒト化抗体は、フレームワークに置換を含むことができるため、フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又はヒト免疫グロブリン生殖細胞系列遺伝子配列の厳密なコピーではない場合がある。
【0051】
「単離された」は、組換え細胞などにおいて分子が産生される系の他の成分から離して実質的に分離及び/又は精製された分子の均質な集団(例えば、合成ポリヌクレオチド又はポリペプチド)に加えて、少なくとも1つの精製又は単離工程に供されているタンパク質を指す。「単離された」とは、その他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない分子を指し、より高い純度、例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の純度まで単離された分子を包含する。
【0052】
「多重特異性」は、2つ若しくは3つ以上の異なる抗原、又は同じ抗原内の2つ若しくは3つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する、抗体などの分子を指す。多重特異性分子は、他の関連抗原、例えば、ヒト、サル、又は類人猿、例えば、Macaca fascicularis(カニクイザル(cynomolgus)、cyno)又はチンパンジー(Pan troglodytes)などの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有する場合もあり、2つ又は3つ以上の異なる抗原間で共有されているエピトープに結合する場合もある。
【0053】
「動作可能に連結された」及び類似の語句は、核酸又はアミノ酸に関して使用される場合、それぞれ、互いに機能的な関係で配置された核酸配列又はアミノ酸配列の動作上の連結を指す。例えば、動作可能に連結されたプロモータ、エンハンサエレメント、オープンリーディングフレーム、5’及び3’UTR、並びにターミネータ配列は、核酸分子(例えば、RNA)の正確な産生をもたらし、場合によっては、ポリペプチドの産生(すなわち、オープンリーディングフレームの発現)をもたらす。動作可能に連結されたペプチドは、ペプチドの機能ドメインが互いに適切な距離で配置されて、各ドメインの意図された機能を付与するペプチドを指す。
【0054】
「医薬組成物」は、活性成分と医薬的に許容される担体とを組み合わせて得られる組成物を指す。
【0055】
「医薬的に許容される担体」又は「賦形剤」は、対象に対して毒性のない、活性成分以外の医薬組成物中の成分を指す。例示的な医薬的に許容される担体は、緩衝液、安定剤、又は防腐剤である。
【0056】
疾患又は障害を「予防する」、「予防すること」、「予防」、又は「予防法」は、対象において障害が発生するのを防ぐことを意味する。
【0057】
2つの配列間の「配列同一性」のパーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した、配列により共有される同一の位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数×100)である。2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、E.Meyers and W.Miller(Comput.Appl.Biosci 4:11-17(1988))のアルゴリズムを使用して決定されてもよく、同アルゴリズムは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、PAM120重み付け残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用する。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(www_gcg_comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman及びWunsch(J Mol Biol 48:444-453(1970))のアルゴリズムを使用して、Blossum 62マトリクス又はPAM250マトリクスのいずれかと、ギャップ重み付け16、14、12、10、8、6、又は4、及び長さ重み付け1、2、3、4、5、又は6を使用して決定することもできる。
【0058】
「一本鎖Fv」又は「scFv」は、軽鎖可変領域(VL)を含む少なくとも1つの抗体断片と、重鎖可変領域(VH)を含む少なくとも1つの抗体断片と、を含む融合タンパク質を指し、VL及びVHは、ポリペプチドリンカーを介して連続的に連結され、一本鎖ポリペプチドとして発現することができる。特に指定されない限り、本明細書で使用される場合、scFvは、VL及びVH可変領域を、例えばポリペプチドのN末端及びC末端を基準として、いずれの順序で有してもよく、scFvは、VL-リンカー-VHを含んでも、VH-リンカー-VLを含んでもよい。
【0059】
「特異的に結合する」、「特異的結合」、「特異的に結合すること」、又は「結合する」は、タンパク質性分子が、抗原又は抗原内のエピトープに、他の抗原に対する親和性よりも高い親和性で結合すること、又は結合することができることを指す。典型的には、タンパク質性分子は、約1×10-7M以下、例えば約5×10-8M以下、約1×10-8M以下、約1×10-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、又は約1×10-12M以下の平衡解離定数(K)で、典型的には、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合についてのKよりも少なくとも100倍小さいKで、抗原又は抗原内のエピトープに結合する。
【0060】
「対象」は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」としては、あらゆる脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳類及び非哺乳類が挙げられる。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され得る。
【0061】
「T細胞」及び「Tリンパ球」は、互換的であり、本明細書では同義的に使用される。T細胞には、胸腺細胞、ナイーブTリンパ球、メモリT細胞、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、静止Tリンパ球、又は活性化Tリンパ球が含まれる。T細胞は、Tヘルパー(T helper、Th)細胞、例えば、Tヘルパー1(Th1)又はTヘルパー2(Th2)細胞であり得る。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL、CD4T細胞)、CD4T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL、CD8T細胞)、腫瘍浸潤細胞傷害性T細胞(TIL、CD8T細胞)、CD4CD8T細胞、ガンマ-デルタT細胞、又はT細胞の任意の他のサブセットであり得る。また、「NKT細胞」も挙げられるが、これは、半不変異体αβT細胞受容体を発現するだけでなく、NK1.1などの、典型的にはNK細胞と関連する様々な分子マーカーもまた発現する、T細胞の特殊な集団を指す。NKT細胞には、NK1.1及びNK1.1、並びにCD4、CD4、CD8、及びCD8細胞が含まれる。NKT細胞のTCRは、MHCI様分子CD1dによって提示される糖脂質抗原を認識するという点で、独特である。NKT細胞は、炎症又は免疫寛容のいずれかを促進するサイトカインを産生する能力により、保護効果又は有害効果のいずれかを有し得る。「ガンマ-デルタT細胞(γδT細胞)」も含まれ、これは、非古典的T細胞抗原を認識する能力を有する別個のTCRをその表面上に有するT細胞の特殊化された集団を指し、TCRがα-及びβ-TCR鎖と称される2つの糖タンパク質鎖から構成されるT細胞の大部分とは異なり、γδT細胞におけるTCRは、γ鎖及びδ鎖から構成される。異なるタイプのγ鎖及びδ鎖、例えば、Vγ9Vδ2 T細胞上で同時発現されるVγ9及びVδ2鎖などが存在する。γδT細胞は、免疫監視及び免疫調節において役割を果たすことができ、また、IL-17の重要な供給源でありかつ強力なCD8+細胞傷害性T細胞応答を誘導することが見出された。また、「調節性T細胞」又は「Treg」も含まれ、これは、異常又は過剰な免疫応答を抑制し、免疫寛容における役割を果たす、T細胞を指す。Tregは、典型的には、転写因子Foxp3陽性CD4+T細胞であり、また、IL-10産生CD4+T細胞である転写因子Foxp3陰性制御性T細胞も含み得る。
【0062】
本明細書において互換的に使用される「治療有効量」又は「有効量」は、所望の治療結果を達成するのに必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。治療有効量は、個体の病状、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに個体において所望の応答を引き出す治療薬又は治療薬の組み合わせの能力によって様々であってもよい。有効な治療薬又は治療薬の組み合わせの例示的な指標としては、例えば、患者の健康状態の改善、腫瘍量の低減、腫瘍の増殖の停止若しくは鈍化、及び/又は体内の他の場所へのがん細胞の転移の非存在が含まれる。
【0063】
がんなどの疾患又は障害を「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、以下のうちの1つ若しくは2つ以上を達成することを指す:障害の重症度及び/若しくは期間を低減する、治療される障害の特徴的な症状の悪化を阻害する、以前障害を有していた対象における障害の再発を制限若しくは予防する、又は以前に障害の症状を有していた対象における症状の再発を制限若しくは予防する。
【0064】
「腫瘍細胞」又は「がん細胞」は、インビボ、エクスビボ、又は組織培養のいずれかにおいて、自発的な又は誘導された表現型の変化を有するがん性、前がん性、又は形質転換細胞を指す。これらの変化は、必ずしも新たな遺伝物質の取り込みを伴うものではない。形質転換は、形質転換ウイルスの感染及び新たなゲノム核酸の組み込み、外因性核酸の取り込みにより発生させることもでき、自然発生的に又は発がん物質に曝露した後に発生し、それによって内因性の遺伝子が変異する場合もある。形質転換/がんは、インビトロ、インビボ、及びエクスビボにおける、形態学的変化、細胞の不死化、異常な増殖制御、病巣の形成、増殖、悪性病変、腫瘍特異的マーカーレベルの調節、浸潤性、ヌードマウスなどの好適な動物宿主における腫瘍の増殖などによって例示される。
【0065】
「バリアント」、「変異体」、又は「変化した」は、1つ若しくは2つ以上の修飾、例えば、1つ若しくは2つ以上の置換、挿入、又は欠失によって参照ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチドとは異なる、ポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。
【0066】
本明細書全体を通して、抗体定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、本明細書に別途明示的に記載されない限り、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)に記載のEUインデックスに従う。
【0067】
【表1-1】
【0068】
【表1-2】
【0069】
【表1-3】
【0070】
【表1-4】
【0071】
【表1-5】
【0072】
【表1-6】
【0073】
【表1-7】
【0074】
【表1-8】
【0075】
【表1-9】
【0076】
本発明の更なる態様及び実施形態
上記のように、第1の態様では、本発明は、ヒトCD33に結合することができる第1の抗原結合領域と、ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる第2の抗原結合領域とを含む、単離された多重特異性抗体に関し、第1の抗原結合領域が、
a)それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、及び6、
a)それぞれ、配列番号7、8、9、10、11、及び12、
d)それぞれ、配列番号13、14、15、16、17、及び18、又は
e)それぞれ、配列番号19、20、21、22、23、及び24、のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
第2の抗原結合領域が、Vγ9Vδ2 T細胞受容体のVδ2鎖に結合する。
【0077】
第2の抗原結合領域は、単一ドメイン抗体であってもよく、
a)それぞれ、配列番号25、26及び27、
b)それぞれ、配列番号28、29及び30、
c)それぞれ、配列番号31、32及び33、
d)それぞれ、配列番号34、35及び36、
e)それぞれ、配列番号37、38及び39、
f)それぞれ、配列番号40、41及び42、
g)それぞれ、配列番号43、44、及び45、又は
h)それぞれ、配列番号46、47、及び48、のCDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0078】
第1の抗原結合領域が、それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、及び6のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含んでもよい。
【0079】
第1の抗原結合領域が、それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、及び6のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含んでもよく、第2の抗原結合領域が、単一ドメイン抗体であり、それぞれ、配列番号28、29、及び30のCDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0080】
第1の抗原結合領域が、それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、及び6のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含んでもよく、第2の抗原結合領域が、単一ドメイン抗体であり、それぞれ、配列番号25、26、及び27のCDR1、CDR2及びCD3を含む。
【0081】
第2の抗原結合領域が、単一ドメイン抗体であり、それぞれ、配列番号28、29、及び30のCDR1、CDR2及びCD3を含む。
【0082】
本発明の多重特異性抗体は、
a)配列番号49のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号50のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、
b)配列番号51のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号52のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、
c)配列番号53のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号54のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、
d)配列番号55のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号56のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、を含むか、若しくはそれらからなる、第1の抗原結合領域、
並びに
a)配列番号57に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
b)配列番号58に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
c)配列番号59に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
d)配列番号60に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
e)配列番号61に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
f)配列番号62に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
g)配列番号63に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
h)配列番号64に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
i)配列番号65に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、又は
j)配列番号66に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、を含むか、又はそれらからなる、第2の抗原結合領域、を含み得る。
【0083】
本発明の多重特異性抗体は、ヒトVδ2への結合について、配列番号57~66から選択される配列を有する抗体と競合する第2の抗原結合領域を含み得る。
【0084】
本発明の多重特異性抗体は、配列番号57~66から選択される配列を有する抗体と同じヒトVδ2上のエピトープに結合する第2の抗原結合領域を含み得る。
【0085】
本発明の多重特異性抗体は、
a)配列番号49のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号50のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、を含むか、又はそれらからなる、第1の抗原結合領域、
並びに
a)配列番号57に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
b)配列番号58に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
c)配列番号59に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
d)配列番号60に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
e)配列番号61に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
f)配列番号62に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
g)配列番号63に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
h)配列番号64に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
i)配列番号65に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、又は
j)配列番号66に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、を含むか、又はそれらからなる、第2の抗原結合領域、を含み得る。
【0086】
本発明の多重特異性抗体は、
b)配列番号51のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号52のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列を含むか、又はそれらからなる、第1の抗原結合領域、
並びに
a)配列番号57に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
b)配列番号58に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
c)配列番号59に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
d)配列番号60に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
e)配列番号61に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
f)配列番号62に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
g)配列番号63に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
h)配列番号64に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
i)配列番号65に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、又は
j)配列番号66に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、を含むか、又はそれらからなる、第2の抗原結合領域、を含み得る。
【0087】
本発明の多重特異性抗体は、
c)配列番号53のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号54のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列を含むか、又はそれらからなる、第1の抗原結合領域、
並びに
a)配列番号57に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
b)配列番号58に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
c)配列番号59に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
d)配列番号60に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
e)配列番号61に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
f)配列番号62に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
g)配列番号63に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
h)配列番号64に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
i)配列番号65に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、又は
j)配列番号66に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、を含むか、又はそれらからなる、第2の抗原結合領域、を含み得る。
【0088】
本発明の多重特異性抗体は、
d)配列番号55のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号56のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列を含むか、又はそれらからなる、第1の抗原結合領域、
並びに
a)配列番号57に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
b)配列番号58に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
c)配列番号59に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
d)配列番号60に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
e)配列番号61に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
f)配列番号62に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
g)配列番号63に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
h)配列番号64に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、
i)配列番号65に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、又は
j)配列番号66に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する配列、を含むか、又はそれらからなる、第2の抗原結合領域、を含み得る。
【0089】
本発明の多重特異性抗体は、
a)配列番号49のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号50のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、
b)配列番号51のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号52のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、
c)配列番号53のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号54のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、
d)配列番号55のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号56のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、を含むか、又はそれらからなる、第1の抗原結合領域、
並びに
b)配列番号58に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、を含むか、又はそれからなる、第2の抗原結合領域、を含み得る。
【0090】
本発明の多重特異性抗体は、
a)配列番号49のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号50のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、
b)配列番号51のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号52のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、
c)配列番号53のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号54のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、
d)配列番号55のVH配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、及び配列番号56のVL配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、を含み、又はそれらからなる、第1の抗原結合領域、
並びに
a)配列番号57に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列、を含むか、又はそれからなる、第2の抗原結合領域、を含み得る。
【0091】
本明細書中に開示される配列のバリアントは、好ましくは、開示される配列の保存的修飾を含む。「保存的修飾」は、アミノ酸修飾を含む抗体の結合特性に著しく影響を与えることも変化させることもないアミノ酸修飾を指す。保存的修飾は、アミノ酸の置換、付加、及び欠失を含む。保存的アミノ酸置換は、あるアミノ酸が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、明確に定義されており、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン)、芳香族側鎖(例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン)、脂肪族側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン)、アミド(例えば、アスパラギン、グルタミン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び含硫黄側鎖(システイン、メチオニン)を有するアミノ酸を含む。更に、ポリペプチド中の任意の天然残基はまた、アラニンスキャニング変異誘発(MacLennan et al.,(1988)Acta Physiol Scand Suppl 643:55-67;Sasaki et al.,(1988)Adv Biophys 35:1-24)について以前に記載されているように、アラニンで置換され得る。本発明の抗体に対するアミノ酸置換は、例えばPCR変異誘発(米国特許第4,683,195号)などの既知の方法によって行うことができる。代替的に、バリアントのライブラリは、例えば、ランダムコドン(NNK)又は非ランダムコドン(例えば、11個のアミノ酸(Ala、Cys、Asp、Glu、Gly、Lys、Asn、Arg、Ser、Tyr、Trp)をコードするDVKコドン)を用いて生成することもできる。得られるバリアントは、本明細書に記載のアッセイを用いて、その特徴について試験することができる。
【0092】
本発明の多重特異性抗体は、任意の適切な抗体形式を有し得る。多くの抗体形式が当技術分野において記載されている。
【0093】
多重特異性抗体は、ヒトCD33に結合することができる第1の抗原結合領域を含むFab、scFv、(scFv)、Fv、F(ab’)又はFdを含み得る。
【0094】
ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる第2の抗原結合領域は、任意の適切な形式、例えば、Fab、scFv、(scFv)、Fv、F(ab’)、Fd又は単一ドメイン抗体であり得る。多重特異性抗体は、ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる第2の抗原結合領域を含むか、又はそれからなる単一ドメイン抗体を含み得る。
【0095】
多重特異性抗体は、ヒトCD33に結合することができる第1の抗原結合領域を含むFabと、ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる第2の抗原結合領域を含む単一ドメイン抗体とを含み得る。
【0096】
多重特異性抗体は、ヒトCD33に結合することができる第1の抗原結合領域を含むscFvと、ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる第2の抗原結合領域を含む単一ドメイン抗体とを含み得る。
【0097】
抗体形式に応じて、抗原結合領域又はその一部は、同じポリペプチド鎖の一部であってもよく、単一のオープンリーディングフレームから発現されてもよい。そのような実施形態では、抗原結合領域配列間にリンカー配列を使用することができる。
【0098】
多重特異性抗体は、ヒトCD33に結合することができる第1の抗原結合領域を含むscFvと、ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる第2の抗原結合領域を含むVHHとを含んでもよく、scFvは、配列番号67~99、例えば配列番号67に記載のリンカーの群から任意選択的に選択されるペプチドリンカーを含む。
【0099】
第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、ペプチドリンカーを介して直接的又は間接的に共有結合で連結されてもよく、任意選択的にペプチドリンカーは、配列番号100に記載の配列を含むか、又はそれからなる。
【0100】
多重特異性抗体は、第1の抗原結合領域が第2の抗原結合領域のN末端側に位置する単一のオープンリーディングフレームによってコードされ得る。N末端からC末端への順序は、VL-第1のリンカー-VH-第2のリンカー-VHHであってもよく、ここでVLは第1の抗原結合ドメインの軽鎖可変領域であり、第1のリンカーはペプチドリンカーであり、VHは第1の抗原結合ドメインの重鎖可変領域であり、第2のリンカーはペプチドリンカーであり、VHHは第2の抗原結合領域を含む単一ドメイン抗体である。多重特異性抗体は、第1の抗原結合領域が第2の抗原結合領域のC末端側に位置する単一のオープンリーディングフレームによってコードされ得る。
【0101】
本発明の多重特異性抗体は、定常領域配列、例えば、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域を含み得る。したがって、多重特異性抗体は、ヒトCD33に結合することができる第1の抗原結合領域を含むFab、ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に結合することができる第2の抗原結合領域を含むVHH、及びFc領域を含み得る。
【0102】
多重特異性抗体は、
-配列番号49のVH及び重鎖定常配列を含む第1のポリペプチドと、
-配列番号50のVL及び軽鎖定常配列を含む第2のポリペプチドと、
-配列番号58のVHH及びFc配列を含む第3のポリペプチドと、を含み得る。
【0103】
多重特異性抗体は、
-配列番号49のVH及び重鎖定常配列を含む第1のポリペプチドと、
-配列番号50のVL及び軽鎖定常配列を含む第2のポリペプチドと、
-配列番号57のVHH及びFc配列を含む第3のポリペプチドと、を含み得る。
【0104】
多重特異性抗体は、
-配列番号51のVH及び重鎖定常配列を含む第1のポリペプチドと、
-配列番号52のVL及び軽鎖定常配列を含む第2のポリペプチドと、
-配列番号58のVHH及びFc配列を含む第3のポリペプチドと、を含み得る。
【0105】
多重特異性抗体は、
-配列番号51のVH及び重鎖定常配列を含む第1のポリペプチドと、
-配列番号52のVL及び軽鎖定常配列を含む第2のポリペプチドと、
-配列番号57のVHH及びFc配列を含む第3のポリペプチドと、を含み得る。
【0106】
多重特異性抗体は、
-配列番号53のVH及び重鎖定常配列を含む第1のポリペプチドと、
-配列番号54のVL及び軽鎖定常配列を含む第2のポリペプチドと、
-配列番号58のVHH及びFc配列を含む第3のポリペプチドと、を含み得る。
【0107】
多重特異性抗体は、
-配列番号53のVH及び重鎖定常配列を含む第1のポリペプチドと、
-配列番号54のVL及び軽鎖定常配列を含む第2のポリペプチドと、
-配列番号57のVHH及びFc配列を含む第3のポリペプチドと、を含み得る。
【0108】
多重特異性抗体は、
-配列番号55のVH及び重鎖定常配列を含む第1のポリペプチドと、
-配列番号56のVL及び軽鎖定常配列を含む第2のポリペプチドと、
-配列番号58のVHH及びFc配列を含む第3のポリペプチドと、を含み得る。
【0109】
多重特異性抗体は、
-配列番号55のVH及び重鎖定常配列を含む第1のポリペプチドと、
-配列番号56のVL及び軽鎖定常配列を含む第2のポリペプチドと、
-配列番号57のVHH及びFc配列を含む第3のポリペプチドと、を含み得る。
【0110】
本発明の単離された多重特異性抗体は、
a)配列番号101、102及び103に記載のポリペプチド、
b)配列番号104、105及び106に記載のポリペプチド、
c)配列番号107、108及び109に記載のポリペプチド、
d)配列番号110、111及び112に記載のポリペプチド、
e)配列番号113、114及び115に記載のポリペプチド、
f)配列番号116、117及び118に記載のポリペプチド、
g)配列番号119、120及び121に記載のポリペプチド、又は
h)配列番号122、123及び124に記載のポリペプチド、を含み得るか、又はそれらからなり得る。
【0111】
本発明の単離された多重特異性抗体は、二重特異性抗体であり得る。
【0112】
本発明の単離された多重特異性抗体は、CD33に一価で結合し得、ヒトVγ9Vδ2 T細胞受容体に一価で結合し得る。
【0113】
本発明の抗体の第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、ヒトであってもヒト化されていてもよい。
【0114】
多重特異性抗体は、例えば、本明細書に記載の実施例に記載されたように試験された場合、1nMの抗体濃度で10日後に10倍超又は50倍超の増加で、標的細胞の存在下でヒトVγ9Vδ2 T細胞の増殖を誘導することが可能であり得る。
【0115】
本発明の多重特異性抗体は、Vγ9Vδ2-T細胞の存在下で、低いエフェクタ対標的細胞比を含めて、THP-1細胞の死滅を媒介することが可能であり得る。したがって、本発明の多重特異性抗体は、例えば、本明細書の実施例に記載されるように試験した場合、E:T比は1:20にて、Vγ9Vδ2-T細胞(E)の存在下で、1nM未満、例えば0.5nM、例えば200pM未満、例えば150pM未満、例えば100pM未満のEC50で、THP-1細胞(T)の死滅を媒介することができ得る。
【0116】
本発明の多重特異性抗体は、血液がん患者由来のヒトCD33発現細胞の死滅を媒介することができ得る。
【0117】
本発明の多重特異性抗体は、例えば、本明細書の実施例に記載されるように試験した場合、非腫瘍細胞、例えば健常ドナー由来のCD14+細胞よりも、CD33陽性腫瘍細胞、例えばTHP-1細胞の死滅を優先的に媒介することができ得る。
【0118】
アイソタイプ、アロタイプ、及びFc操作
本開示の抗体中に存在するIg定常領域、Ig定常領域又は断片、例えばFc領域は、いずれのアロタイプ又はアイソタイプのものであってもよい。
【0119】
本開示の単離された多重特異性抗体は、Ig定常領域又はその断片、例えば、断片結晶化可能領域(「fragment crystallizable、Fc」領域)を含み得る。当該Ig定常領域又はその断片は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプからなる群から選択される。
【0120】
Ig定常領域又はIg定常領域の断片は、任意のアロタイプであり得る。アロタイプは結合又はFc媒介性エフェクタ機能などのIg定常領域の特性に影響を与えないことが予想される。その断片のIg定常領域を含む治療用抗体の免疫原性は、輸注反応のリスク増大及び治療応答の期間短縮と関連している(Baert et al.,(2003)N Engl J Med 348:602-08)。その断片のIg定常領域を含む治療用抗体が宿主において免疫応答を誘導する程度は、Ig定常領域のアロタイプによってある程度決定され得る(Stickler et al.,(2011)Genes and Immunity 12:213-21)。Ig定常領域のアロタイプは、抗体の定常領域配列における特定の位置のアミノ酸配列の変異に関連する。表2は、選択されたIgG1、IgG2、及びIgG4アロタイプを示す。
【0121】
【表2】
【0122】
C末端リジン(C-terminal lysine、CTL)は、Ig定常領域から、血流中の内因性循環カルボキシペプチダーゼによって除去され得る(Cai et al.,(2011)Biotechnol Bioeng 108:404-412)。製造中、米国特許出願公開第20140273092号に記載のとおり細胞外Zn2+、EDTA、又はEDTA-Fe3+の濃度を制御することによって、CTLの除去を最高レベル未満に制御することができる。タンパク質のCTL含量は、既知の方法を使用して測定することができる。
【0123】
抗原結合断片にコンジュゲートされたIg定常領域は、0%~100%、約10%~約90%、約20%~約80%、約40%~約70%、約55%~約70%、又は約60%のC末端リジン含量を有し得る。
【0124】
Ig定常領域又は抗原結合ドメインにコンジュゲートされたその断片に対してFc領域変異を行って、Fc受容体へのそれらの結合を調節し、それによってADCC、ADCP及び/若しくはADCPなどのそれらのエフェクタ機能並びに/又は薬物動態特性を調節することができる。これは、(i)変異Fcの活性化FcγR(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIII)、及び阻害性FcγRIIbへの結合を調節する、及び/又は(ii)C1q結合、補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity、CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)若しくは食作用(antibody-dependent cell-mediated phagocytosis、ADCP)などのFcエフェクタ機能を低下させ、Fc受容体陽性細胞への二重特異性抗体の結合を介する抗原非依存性T細胞活性化を減少させる、変異を、Fcに導入することによって達成され得る。
【0125】
本開示の単離された多重特異性抗体のFc領域は不活性であり得る。本開示の単離された多重特異性抗体の不活性Fc領域は、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドのうちの一方又は両方において、234に対応する位置にAla、235に対応する位置にAla、及び265に対応する位置にSerを含んでもよく、番号付けはEuに従う。
【0126】
Fc領域は、抗体のFcγ受容体(FcγR)への結合の低減をもたらす少なくとも1つの変異を含み得る。活性化FcγRへの抗体の結合を低減させ、続いて、エフェクタ機能を低減させるために変異させ得るFc位置としては、位置214、233、234、235、236、237、238、265、267、268、270、295、297、309、327、328、329、330、331、及び365が挙げられる。単独で、又は組み合わせで行われ得る例示的な変異は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4における、変異K214T、E233P、L234V、L234A、G236の欠失、V234A、F234A、L235A、G237A、P238A、P238S、D265A、S267E、H268A、H268Q、Q268A、N297A、A327Q、P329A、D270A、Q295A、V309L、A327S、L328F、A330S、及びP331Sである。ADCCが低減した抗体をもたらす例示的な組み合わせの変異は、IgG1におけるL234A/L235A、IgG1におけるL234A/L235A/D265S、IgG2におけるV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、IgG4におけるF234A/L235A、IgG4におけるS228P/F234A/L235A、全てのIgアイソタイプにおけるN297A、IgG2におけるV234A/G237A、IgG1におけるK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、IgG2におけるH268Q/V309L/A330S/P331S、IgG1におけるS267E/L328F、IgG1におけるL234F/L235E/D265A、IgG1におけるL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、IgG4におけるS228P/F234A/L235A/G237A/P238S、及び、IgG4におけるS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sの変異である。また、IgG2由来の残基117~260及びIgG4由来の残基261~447を有するFcなどのハイブリッドIgG2/4 Fcドメインを使用してもよい。
【0127】
CDCが低減した抗体をもたらす例示的な変異は、K322A変異である。
【0128】
周知のS228P変異をIgG4抗体に加えて、IgG4の安定性を増強することができる。
【0129】
任意選択的に、FcγRへの抗原の低減された結合をもたらす少なくとも1つの変異は、F234A/L235A、L234A/L235A、L234A/L235A/D265S、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、F234A/L235A、S228P/F234A/L235A、N297A、V234A/G237A、K214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、H268Q/V309L/A330S/P331S、S267E/L328F、L234F/L235E/D265A、L234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、S228P/F234A/L235A/G237A/P238S、及びS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sからなる群から選択され得、残基番号付けはEUインデックスに従う。
【0130】
本開示の抗体は、Fcγ受容体(FcγR)へのタンパク質の結合を増強し、かつ/又はC1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、及び/若しくは食作用(ADCP)などのFcエフェクタ機能を増強する、Fc領域における少なくとも1つの変異を含み得る。
【0131】
Fc領域は、FcγRへの抗体の増強された結合をもたらす少なくとも1つの変異を含み得る。タンパク質のFcγRへの増強された結合をもたらす少なくとも1つの変異は、S239D/I332E、S298A/E333A/K334A、F243L/R292P/Y300L、F243L/R292P/Y300L/P396L、F243L/R292P/Y300L/V305I/P396L、及びG236A/S239D/I332Eからなる群から選択され、残基番号付けは、EUインデックスに従う。
【0132】
抗体の活性化FcγRへの結合を増加させる、かつ/又はFcエフェクタ機能を増強するために変異させることが可能なFc位置としては、位置236、239、243、256,290,292、298、300、305、312、326、330、332、333、334、345、360、339、378、396、又は430(残基番号付けはEUインデックスに従う)が挙げられる。単一で又は組み合わせて行われ得る例示的な変異は、G236A、S239D、F243L、T256A、K290A、R292P、S298A、Y300L、V305L、K326A、A330K、I332E、E333A、K334A、A339T及びP396Lである。ADCC又はADCPが増加した抗体をもたらす例示的な組み合わせの変異は、S239D/I332E、S298A/E333A/K334A、F243L/R292P/Y300L、F243L/R292P/Y300L/P396L、F243L/R292P/Y300L/V305I/P396L及びG236A/S239D/I332Eである。
【0133】
CDCを増強させるように変異され得るFc位置としては、位置267、268、324、326、333、345及び430が挙げられる。単一で又は組み合わせで行われ得る例示的な変異は、S267E、F1268F、S324T、K326A、K326W、E333A、E345K、E345Q、E345R、E345Y、E430S、E430F及びE430Tである。CDCが増加した抗体をもたらす例示的な組み合わせの変異は、K326A/E333A、K326W/E333A、H268F/S324T、S267E/H268F、S267E/S324T、及びS267E/H268F/S324Tである。
【0134】
本明細書に記載の特異性変異は、配列番号125、126、及び127それぞれのIgG1、IgG2及びIgG4野生型アミノ酸配列と比較した場合の変異である。
【0135】
抗体のFcγR又はFcRnへの結合は、フローサイトメトリを使用して、各受容体を発現するように遺伝子操作された細胞にて評価することができる。例示的な結合アッセイでは、96ウェルプレートに2×10個/ウェルの細胞を播種し、BSA染色緩衝液(BD Biosciences、San Jose,USA)中、4℃で30分間ブロッキングする。細胞を、氷上で、4℃で1.5時間、試験抗体とともにインキュベートする。BSA染色緩衝液で2回洗浄した後、細胞を、R-PE標識抗ヒトIgG二次抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories)とともに4℃で45分間、インキュベートする。細胞を、染色緩衝液で2回洗浄し、次いで、1:200希釈したDRAQ7生/死細胞染色試薬(Cell Signaling Technology、Danvers,USA)を含有する150μLの染色緩衝液中に再懸濁する。染色された細胞のPE及びDRAQ7シグナルを、それぞれB2及びB4チャネルを使用してMiltenyi MACSQuantフローサイトメータ(Miltenyi Biotec、Auburn,USA)によって検出する。生細胞をDRAQ7除外でゲーティングし、収集された少なくとも10,000生細胞イベントについて、幾何平均蛍光シグナルを決定する。分析にはFlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用する。データを、平均蛍光シグナルに対する抗体濃度の対数としてプロットする。非線形回帰分析を実行する。
【0136】
半減期(例えば、FcRnへの結合)を調節するために変異させることが可能なFcの位置としては、位置250、252、253、254、256、257、307、376、380、428、434、及び435が挙げられる。単独で、又は組み合わせで行われ得る例示的な変異は、変異T250Q、M252Y、I253A、S254T、T256E、P257I、T307A、D376V、E380A、M428L、H433K、N434S、N434A、N434H、N434F、H435A、及びH435Rである。抗体の半減期を増加させるように行われ得る例示的な単独で又は組み合わせでの変異は、変異M428L/N434S、M252Y/S254T/T256E、T250Q/M428L、N434A及びT307A/E380A/N434Aである。半減期を低減させるように行われ得る例示的な単独で又は組み合わせでの変異は、変異H435A、P257I/N434H、D376V/N434H、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434F、T308P/N434A及びH435Rである。
【0137】
言い換えれば、本開示の単離された多重特異性抗体において、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドのうちの一方又は両方におけるFc領域は、252に対応する位置にTyr、254に対応する位置にThr、及び256に対応する位置にGluを含んでもよく、番号付けはEuに従う。
【0138】
本開示の抗原結合断片は、Fabアーム交換を使用して生成される完全長多重特異性抗体に遺伝子操作してもよく、インビトロでFabアーム交換を促進する、Ig定常領域CH3ドメイン内の2つの単一特異性二価抗体に置換が導入される。この方法では、ヘテロ二量体の安定性を促進する特定の置換をCH3ドメインに有するように、2つの単一特異性二価抗体を操作してもよい。これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合を異性化させるために十分な還元条件下において一緒にインキュベートされ、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、最適には、非還元条件に戻され得る。使用され得る例示的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-mercaptoethylamine、2-MEA)、ジチオスレイトール(dithiothreitol、DTT)、ジチオエリスリトール(dithiothreitol、DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine、TCEP)、L-システイン、及びベータ-メルカプトエタノールであり、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度で、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えばpH7.0又はpH7.4で、少なくとも90分間のインキュベートを使用することができる。
【0139】
使用され得るCH3変異としては、ノブインホール変異(Genentech)、静電的マッチ変異(Chugai、Amgen、NovoNordisk、Oncomed、Merus)、鎖交換組換えドメインボディ(Strand Exchange Engineered Domain body、SEEDbody)(EMD Serono)、Duobody(登録商標)変異(Genmab)、及び他の非対称変異(例えば、Zymeworks)などの技術が挙げられる。
【0140】
ノブインホール変異は、例えば、国際公開第1996/027011号に開示されており、小さい側鎖(ホール)を有するアミノ酸が第1のCH3領域に導入され、大きい側鎖(ノブ)を有するアミノ酸が第2のCH3領域に導入され、第1のCH3領域と第2のCH3領域との間に優先的な相互作用をもたらす、CH3領域の界面上の変異が含まれる。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3領域変異は、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである。言い換えれば、本開示の単離された多重特異性抗体において、第1のFcポリペプチドは、366に対応する位置にTrpを含んでもよく、第2のFcポリペプチドは、366に対応する位置にSer、368に対応する位置にAla、及び407に対応する位置にVal、又はその逆を含んでもよく、番号付けは、Euに従う。
【0141】
重鎖ヘテロ二量体形成は、米国特許出願公開第2010/0015133号、米国特許出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/028637号、又は米国特許出願公開第2011/0123532号に記載のように、第1のCH3領域上の正に荷電した残基及び第2のCH3領域上の負に荷電した残基を置換することにより、静電相互作用を使用することによって促進され得る。
【0142】
重鎖ヘテロ二量体化を促進するために使用することができる他の非対称変異は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は米国特許出願公開第2013/0195849号(Zymeworks)に記載のL351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wである。
【0143】
SEEDbody変異は、米国特許出願公開第20070287170号に記載のように、選択IgG残基をIgA残基と置換して、重鎖ヘテロ二量体化を促進することを伴う。
【0144】
使用され得る他の例示的な変異は、国際公開第2007/147901号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2013157954号、国際公開第2013096291号、及び米国特許出願公開第2018/0118849号に記載のR409D_K370E/D399K_E357K、S354C_T366W/Y349C_T366S_L368A_Y407V、Y349C_T366W/S354C_T366S_L368A_Y407V、T366K/L351D、L351K/Y349E、L351K/Y349D、L351K/L368E、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、K392D/D399K、K392D/E356K、K253E_D282K_K322D/D239K_E240K_K292D、K392D_K409D/D356K_D399Kである。
【0145】
Duobody(登録商標)変異(Genmab)は、例えば、米国特許第9150663号及び米国特許出願公開第2014/0303356号に開示されており、F405L/K409R、野生型/F405L_R409K、T350I_K370T_F405L/K409R、K370W/K409R、D399AFGHILMNRSTVWY/K409R、T366ADEFGHILMQVY/K409R、L368ADEGHNRSTVQ/K409AGRH、D399FHKRQ/K409AGRH、F405IKLSTVW/K409AGRH、及びY407LWQ/K409AGRHの変異が含まれる。
【0146】
追加の二重特異性又は多重特異性構造としては、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD)(国際特許公開第2009/134776号、DVDは、VH1-リンカー-VH2-CH構造を有する重鎖と、VL1-リンカー-VL2-CL構造を有する軽鎖とを含む完全長抗体であり、リンカーは任意選択的である)、異なる特異性を有する2つの抗体アームを結合するための様々な二量化ドメインを含む構造、例えば、ロイシンジッパー又はコラーゲン二量化ドメイン(国際公開第2012/022811号、米国特許第5,932,448号、同第6,833,441号)、一緒にコンジュゲートされた2つ又は3つ以上のドメイン抗体(dAb)、ダイアボディ、ラクダ科抗体及び遺伝子操作されたラクダ科抗体などの重鎖のみ抗体、二重標的化(DT)-Ig(GSK/Domantis)、ツーインワン抗体(Genentech)、架橋Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star)及びCovX-body(CovX/Pfizer)、IgG様二重特異性(InnClone/Eli Lilly)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)及びBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)及びTvAb(Roche)、ScFv/Fc融合体(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion,Zymogenetics/BMS))、二重親和性再標的化技術(Fc-DART)(MacroGenics)及びDual(ScFv)-Fab(National Research Center for Antibody Medicine--China)、Dual-Action又はBis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)並びにFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられる。ScFv抗体、ダイアボディに基づく抗体、及びドメイン抗体は、二重特異性T細胞エンゲージャ(Bispecific T Cell Engager、BiTE)(Micromet)、タンデムダイアボディ(Tandem Diabody、Tandab)(Affimed)、二重親和性再標的化技術(DART)(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Academic)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的ナノボディ(Ablynx)、二重標的重鎖のみドメイン抗体を含むが、これらに限定されない。
【0147】
本開示の単離された多重特異性抗体において第1のIg定常領域又は第1のIg定常領域の断片及び第2のIg定常領域又は第2のIg定常領域の断片は、プロテインAへの結合を調節する少なくとも1つの変異を含み得る。そのような修飾は、抗体産生中の精製目的に有利であり得る。そのような少なくとも1つの変異は、第1若しくは第2のFcポリペプチド、又はその両方に存在し得る。
【0148】
プロテインAへの結合を調節する少なくとも1つの変異は、H435R/Y436Fであり、残基番号付けは、EUインデックスに従う。第1のIg定常領域又は第1のIg定常領域の断片、及び第2のIg定常領域又は第2のIg定常領域の断片はL234A/L235A/D265S、M252Y/S254T/T256E及びH435R/Y436Fの変異を含み得、残基番号付けは、EUインデックスに従う。
【0149】
本開示の抗原結合ドメインはまた、3本のポリペプチド鎖を含む多重特異性抗体に操作してもよい。このような設計では、少なくとも1つの抗原結合ドメインが、scFvの形態である。例示的な設計としては以下が挙げられる(「1」は第1の抗原結合ドメインを示し、「2」は第2の抗原結合ドメインを示し、「3」は第3の抗原結合ドメインを示す。
設計1:鎖A)scFv1-CH2-CH3、鎖B)VL2-CL、鎖C)VH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3
設計2:鎖A)scFv1-ヒンジ-CH2-CH3、鎖B)VL2-CL、鎖C)VH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3
設計3:鎖A)scFv1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3、鎖B)VL2-CL、鎖C)VH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3
設計4:鎖A)CH2-CH3-scFv1、鎖B)VL2-CL、鎖C)VH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3
【0150】
CH3操作は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は米国特許出願公開第2013/0195849号(Zymeworks)に記載のL351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wの変異など、設計1~4に組み込まれ得る。
【0151】
糖鎖操作
Ig定常領域又はIg定常領域の断片にコンジュゲートした抗原結合ドメインのADCCを媒介する能力は、Ig定常領域又はIg定常領域の断片のオリゴ糖成分を操作することによって増強することができる。ヒトIgG1又はIgG3は、Asn297においてN-グリコシル化され得る。ここで、グリカンの大部分は、既知の二分岐G0、G0F、G1、G1F、G2、又はG2Fの形態である。操作されていないCHO細胞により産生され得るIg定常領域含有抗体は、典型的には、少なくとも約85%のグリカンフコース含量を有する。Ig定常領域又はIg定常領域の断片にコンジュゲートした抗原結合ドメインに結合した二分岐複合体型オリゴ糖からコアフコースを除去すると、抗原結合もCDC活性も変化させることなく、改善されたFcγRIIIa結合を介して抗体のADCCが増強される。そのような抗体は、二分岐の複雑なタイプのFcオリゴ糖を有する、比較的高い脱フコシル化免疫グロブリンの発現の成功をもたらすことが報告された種々の方法、例えば、培養物の浸透圧の制御(Konno et al.,Cytotechnology 64(:249-65,2012)、宿主細胞株としてのバリアントCHO株Lec13の適用(Shields et al.,J Biol Chem 277:26733-26740,2002)、宿主細胞株としてのバリアントCHO株EB66の適用(Olivier et al.,MAbs;2(4):405-415,2010;PMID:20562582)、宿主細胞株としてのラットハイブリドーマ細胞株YB2/0の適用(Shinkawa et al.,J Biol Chem 278:3466-3473,2003)、1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子に対して特異的な低分子干渉RNAの導入(Mori et al.,Biotechnol Bioeng 88:901-908,2004)、又はβ-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII及びゴルジα-マンノシダーゼII若しくは強力なアルファ-マンノシダーゼI阻害物質であるキフネンシンの同時発現(Ferrara et al.,J Biol Chem 281:5032-5036,2006、Ferrara et al.,Biotechnol Bioeng 93:851-861,2006、Xhou et al.,Biotechnol Bioeng 99:652-65,2008)を使用して達成することができる。
【0152】
本開示のIg定常領域又はIg定常領域の断片にコンジュゲートした抗原結合ドメインは、約1%~約15%、例えば、約15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%のフコース含量を有する二分岐グリカン構造を有し得る。代替的に、Ig定常領域又はIg定常領域の断片にコンジュゲートした抗原結合ドメインは、約50%、40%、45%、40%、35%、30%、25%、又は20%のフコース含量を有するグリカン構造を有し得る。
【0153】
「フコース含量」は、Asn297における糖鎖内のフコース単糖類の量を意味する。フコースの相対量は、フコース含有構造の全糖構造に対する割合である。これらの糖構造は、複数の方法、例えば、1)国際公開第2008/0775462号に記載されるような、N-グリコシダーゼF処理サンプル(例えば、複合体、ハイブリッド、及びオリゴ-並びに高マンノース構造)のMALDI-TOFの使用、2)Asn297グリカンの酵素放出、その後の誘導体化、並びに蛍光検出を備えたHPLC(UPLC)及び/又はHPLC-MS(UPLC-MS)による検出/定量化、3)第1のGlcNAc単糖類と第2のGlcNAc単糖類との間を切断し、フコースを第1のGlcNAcに付加されたままにさせる、Endo S又は他の酵素によるAsn297グリカンの処理を伴うか又はこの処理なしでの、天然又は還元mAbのインタクトプロテイン分析、4)酵素消化(例えば、トリプシン又はエンドペプチダーゼLys-C)によるmAbの構成ペプチドへの消化、その後のHPLC-MS(UPLC-MS)による分離、検出及び定量化、5)Asn 297にPNGase Fを有する特異的な酵素脱グリコシル化により、mAbタンパク質からmAbオリゴ糖を分離すること、により特性評価及び定量化され得る。このように放出されるオリゴ糖は、フルオロフォアで標識し、実測された質量の理論上の質量との比較によるマトリクス支援レーザ脱離イオン化(matrix-assisted laser desorption ionization、MALDI)質量分析によるグリカン構造の細かな特性評価、イオン交換HPLC(GlycoSep C)によるシアル化の程度の決定、順相HPLC(GlycoSep N)による親水性基準に準拠するオリゴ糖型の分離及び定量化、並びに高性能キャピラリ電気泳動-レーザ誘起蛍光(high performance capillary electrophoresis-laser induced fluorescence、HPCE-LIF)によるオリゴ糖の分離及び定量化、を可能にする様々な補足的技術によって分離及び同定することができる。
【0154】
「低フコース」又は「低フコース含量」は、本明細書で使用される場合、約1%~15%のフコース含量を有する、Ig定常領域又はIg定常領域の断片にコンジュゲートした抗原結合ドメインを指す。
【0155】
「正常フコース」又は「正常フコース含量」は、本明細書で使用される場合、約50%超、典型的には80%超又は85%超のフコース含量を有する、Ig定常領域又はIg定常領域の断片にコンジュゲートした抗原結合ドメインを指す。
【0156】
ポリヌクレオチド、宿主細胞、及びベクター
本開示はまた、本開示の多重特異性抗体のいずれかをコードする単離されたポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドの組み合わせも提供する。これらの多重特異性抗体は、CD33に結合する抗原結合ドメインと、Vγ9Vδ2 T細胞受容体のVδ2鎖に結合する抗原結合ドメインと、を含む。
【0157】
本発明はまた、CD33結合抗体又はその断片のいずれかをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0158】
本発明はまた、配列番号49、51、53、又は55のVHをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0159】
本発明はまた、配列番号50、52、54、又は56のVLをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0160】
本開示のいくつかの実施形態はまた、本開示のCD33及びVδ2結合二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドに相補的であるポリヌクレオチド、又は本開示のCD33及びVδ2結合二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む単離又は精製核酸を提供する。
【0161】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドは、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし得る。「高ストリンジェンシー条件」は、ポリヌクレオチドが、非特異的なハイブリダイゼーションよりも強い検出可能な量で標的配列(本明細書に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件は、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド又は点在するミスマッチをほんのわずかに含むポリヌクレオチドを、ヌクレオチド配列とマッチしたいくつかの小領域(例えば、3~12塩基)を有することになったランダム配列と識別する条件を含む。そのような相補的な小領域は、14~17以上の塩基の完全長相補体よりも容易に融解され、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションにより、それらが容易に識別可能となる。比較的高ストリンジェンシーな条件は、例えば、約50~70℃の温度で約0.02~0.1MのNaCl又は等価物によって提供されるものなど、低塩及び/又は高温条件を含む。このような高ストリンジェンシー条件は、ヌクレオチド配列と鋳型又は標的鎖との間の不一致を、たとえあったとしても、ほとんど許容しない。条件は、漸増量のホルムアミドの添加によって、よりストリンジェントになり得ることが、概ね理解される。
【0162】
本開示のポリヌクレオチド配列は、意図とする宿主細胞においてヌクレオチド配列を発現させる1つ又は2つ以上の調節エレメント(例えば、プロモータ又はエンハンサ)に動作可能に連結し得る。ポリヌクレオチドは、cDNAであってもよい。プロモータは、強い、弱い、組織特異的、誘導性、又は発生段階特異的なプロモータであってもよい。使用され得る例示的なプロモータは、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hypoxanthine phosphoribosyl transferase、HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチンなどである。加えて、多くのウイルスプロモータが、真核細胞中で構成的に機能し、記載される実施形態での使用に好適である。このようなウイルスプロモータとしては、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus、CMV)最初期プロモータ、SV40の初期及び後期プロモータ、マウス乳がんウイルス(Mouse Mammary Tumor Virus、MMTV)プロモータ、モロニー白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus、HIV)、エプスタインバーウイルス(Epstein Barr Virus、EBV)、ラウス肉腫ウイルス(Rous Sarcoma Virus、RSV)、及び他のレトロウイルスの長端末反復配列(long terminal repeat、LTR)、並びに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモータが挙げられる。メタロチオネインプロモータ、テトラサイクリン誘導性プロモータ、ドキシサイクリン誘導性プロモータ、タンパク質キナーゼR2’,5’-オリゴアデニル酸合成酵素、Mx遺伝子、ADAR1などの1つ又は2つ以上のインターフェロン刺激応答エレメント(interferon-stimulated response element、ISRE)を含むプロモータなどの誘導性プロモータを使用することもできる。
【0163】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。本開示はまた、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。そのようなベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バキュロウイルス発現用ベクター、トランスポゾンベースのベクター、又は任意の手段によって所与の生物又は遺伝子的バックグラウンドに本発明の合成ポリヌクレオチドを導入するのに好適な任意の他のベクターであってもよい。本開示のCD33及びVδ2結合抗体をコードするポリヌクレオチドは、CD33及びVδ2結合タンパク質の発現を確実にする発現ベクター中の制御配列に動作可能に連結され得る。そのような調節エレメントとしては、転写プロモータ、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終了を制御する配列を挙げることができる。発現ベクターはまた、1つ若しくは2つ以上の非転写エレメント、例えば、複製起点、発現する遺伝子に連結された好適なプロモータ及びエンハンサ、他の5’若しくは3’隣接非転写配列、5’若しくは3’非翻訳配列(例えば、必須リボソーム結合部位)、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及びアクセプタ部位、又は転写終結配列を含んでもよい。宿主において複製する能力を付与する複製の起点もまた、組み込まれ得る。
【0164】
発現ベクターは、天然に存在する若しくは天然に存在しないヌクレオチド間結合、又は両方の種類の結合を含み得る。天然に存在しない若しくは改変されたヌクレオチド又はヌクレオチド間連結は、ベクターの転写又は複製を阻害しない。
【0165】
ベクターを適切な宿主に組み込んだら、組み込まれたポリヌクレオチドによってコードされる本開示のCD33及びVδ2結合抗体を高レベルで発現させるのに好適な条件下で宿主を維持する。脊椎動物細胞を形質転換するのに使用される発現ベクター中の転写及び翻訳制御配列は、ウイルス源により提供することができる。例示的なベクターは、Okayama and Berg,3 Mol.Cell.Biol.280(1983)によって記載されるように構築され得る。
【0166】
本開示のベクターはまた、1つ又は2つ以上の内部リボソーム侵入部位(Internal Ribosome Entry Site、IRES)を含有してもよい。IRES配列を融合ベクターに含めることは、一部の抗体の発現を増強させるのに有益であり得る。いくつかの実施形態では、ベクター系は、1つ又は2つ以上のポリアデニル化部位(例えば、SV40)を含み、その部位は、前述の核酸配列のうちいずれかの上流又は下流にあってもよい。ベクターの成分は、近接して連結されてもよいか、又は遺伝子産物を発現させるのに最適な間隔を提供するように(すなわち、ORF間に「スペーサー」ヌクレオチドを導入することにより)配置されてもよいか、又は別の方式で位置付けられてもよい。また、調節エレメント、例えば、IRESモチーフが、発現に最適な間隔を提供するように配置されてもよい。
【0167】
本開示のベクターは、環状であっても線形であってもよい。これらは、原核生物又は真核生物の宿主細胞において機能的な複製系を含有するように調製され得る。複製系は、例えば、ColE1、SV40、2μプラスミド、λ、ウシパピローマウイルスなどに由来してもよい。
【0168】
組換え発現ベクターは、一過性の発現のため、安定な発現のためのいずれか、又はその両方のために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的発現又は誘導性発現のために作製され得る。
【0169】
更に、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作製され得る。本明細書で使用される場合、「自殺遺伝子」という用語は、自殺遺伝子を発現する細胞を死に至らしめる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、遺伝子を発現する細胞に、薬剤(例えば、薬物)に対する感受性を付与し、細胞が薬剤と接触したとき又は薬剤に曝露されたときに細胞を死に至らしめる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は、当該技術分野において既知であり、例えば、単純ヘルペスウイルス(Herpes Simplex Virus、HSV)チミジンキナーゼ(thymidine kinase、TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及びニトロレダクターゼが挙げられる。
【0170】
ベクターはまた、当技術分野において周知の選択マーカーを含んでいてもよい。選択マーカーは、陽性及び陰性選択マーカーを含む。マーカー遺伝子は、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質、重金属などに対する耐性)、栄養要求性宿主における原栄養を提供するための補完などを含む。例示的なマーカー遺伝子としては、抗生物質耐性遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ペニシリン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、ヒスチジノール×耐性遺伝子)、グルタミン合成酵素遺伝子、ガンシクロビル選択用のHSV-TK、HSV-TK誘導体、又は6-メチルプリン選択用の細菌プリンヌクレオシドホスホリラーゼ遺伝子が挙げられる(Gadi et al.,7 Gene Ther.1738-1743(2000))。選択マーカーをコードする核酸配列又はクローニング部位は、目的のポリペプチドをコードする核酸配列又はクローニング部位の上流にあっても下流にあってもよい。
【0171】
使用され得る例示的なベクターは、細菌:pBs、phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene、La Jolla,Calif.,USA);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、及びpRIT5(Pharmacia、Uppsala,Sweden)。真核生物:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXR1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG及びpSVL(Pharmacia)、pEE6.4(Lonza)並びにpEE12.4(Lonza)である。追加のベクターとしては、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences、Glen Burnie,Md.)、pBluescriptシリーズ(Stratagene、LaJolla,Calif.)、pETシリーズ(Novagen、Madison,Wis.)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech、Uppsala,Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech、Palo Alto,Calif.)が挙げられる。λGT10、λGT11、λEMBL4、及びλNM1149、λZapII(Stratagene)などのバクテリオファージベクターを使用することができる。例示的な植物発現ベクターとしては、pBI01、pBI01.2、pBI121、pBI101.3、及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。例示的な動物発現ベクターとしては、pEUK-Cl、pMAM、及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。発現ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、例えば、ガンマレトロウイルスベクターであってよい。
【0172】
ベクターは、(i)配列番号49、51、53、若しくは54のVHをコードするポリヌクレオチド、(ii)配列番号50、52、54、又は56のVLをコードするポリヌクレオチド、(iii)配列番号57若しくは58のVHHをコードするポリヌクレオチド、(iv)又はそれらの任意の組み合わせ、を含み得る。これらのポリヌクレオチドは、1つ又は2つ以上の発現ベクターから同じ宿主細胞において同時発現され得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、ベクターは、
a)配列番号49のVH及び配列番号50のVL、
b)配列番号51のVH及び配列番号52のVL、
c)配列番号53のVH及び配列番号54のVL、
d)配列番号55のVH及び配列番号56のVL、
e)配列番号67~100のいずれかのリンカー、
f)配列番号130~133のScFv、
g)配列番号57又は58のVHH、
h)配列番号128のFc領域、又は
i)それらの任意の組み合わせ、を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0174】
また、本発明は、本発明の1つ又は2つ以上のベクターを含む宿主細胞を提供する。「宿主細胞」は、ベクターが導入されている細胞を指す。宿主細胞という用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の後代、また特定の対象細胞から生成された安定な細胞株も指すことを意図すると理解される。変異又は環境の影響のいずれかに起因して、後続世代においてある特定の修飾が生じ得るため、そのような後代は、親細胞と同一ではない場合があるが、本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に依然として含まれる。そのような宿主細胞は、真核細胞、原核細胞、植物細胞、又は古細菌細胞であってもよい。原核宿主細胞の例は、Escherichia coli、Bacillus subtilisなどの桿菌、及びサルモネラ、セラチア、及び様々なシュードモナス種などの他の腸内細菌科である。酵母などの他の微生物も発現に有用である。好適な酵母宿主細胞の例は、Saccharomyces(例えば、S.cerevisiae)及びPichiaである。例示的な真核細胞は、哺乳動物、昆虫、鳥類、又は他の動物由来のものであってもよい。哺乳類真核細胞は、ハイブリドーマなどの不死化細胞株、又はSP2/0(American Type Culture Collection(ATCC)、Manassas、VA、CRL-1581)、NS0(European Collection of Cell Cultures(ECACC)、Salisbury、Wiltshire、UK、ECACC番号85110503)、FO(ATCC CRL-1646)、及びAg653(ATCC CRL-1580)マウス細胞株などの骨髄腫細胞株を含む。例示的なヒト骨髄腫細胞株は、U266(ATTC CRL-TIB-196)である。他の有用な細胞株としては、CHO-K1SV(Lonza Biologics(Walkersville,MD))、CHO-K1(ATCC CRL-61)、又はDG44などの、チャイニーズハムスターの卵巣(Chinese Hamster Ovary、CHO)細胞に由来するものが挙げられる。
【0175】
本開示はまた、本開示の抗体を産生する方法であって、K2結合タンパク質が発現される条件で本開示の宿主細胞を培養することと、宿主細胞によって産生された抗体を収集することと、を含む、方法を提供する。タンパク質を作製し、それを精製する方法は既知である。合成されたら(化学的に又は組換えによって)、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(high performance liquid chromatography、HPLC)精製、ゲル電気泳動などの標準的な手順に従って抗体を精製することができる(概して、Scopes,Protein Purification(Springer-Verlag,N.Y.,(1982)を参照)。対象タンパク質は、実質的に純粋、例えば、純度が少なくとも約80%~85%、純度が少なくとも約85%~90%、純度が少なくとも約90%~95%、又は純度が少なくとも約98%~99%、若しくはそれ以上であってよく、例えば、細胞残屑、対象タンパク質以外の巨大分子などの夾雑物を含んでいなくてよい。
【0176】
本開示の抗体をコードするポリヌクレオチドは、標準的な分子生物学的方法を使用してベクターに組み込まれ得る。宿主細胞の形質転換、培養、抗体発現、及び精製は、周知の方法を使用して行われる。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする本発明のヌクレオチドを発現させることを含む、ポリペプチドを産生する方法を提供する。
【0177】
ポリペプチドが異なる核酸によってコードされる別々の鎖から形成される場合、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする本発明のヌクレオチドを発現させることを含む、ポリペプチドを産生する方法を提供する。
【0178】
本発明の第1のポリヌクレオチドは、配列番号49のVH及び重鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第2のポリヌクレオチドは、配列番号50のVL及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第3のポリヌクレオチドは、配列番号58のVHH及びFcポリペプチドを含むポリペプチドをコードし得る。
【0179】
本発明の第1のポリヌクレオチドは、配列番号51のVH及び重鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第2のポリヌクレオチドは、配列番号52のVL及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第3のポリヌクレオチドは、配列番号58のVHH及びFcポリペプチドを含むポリペプチドをコードし得る。
【0180】
本発明の第1のポリヌクレオチドは、配列番号53のVH及び重鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第2のポリヌクレオチドは、配列番号54のVL及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第3のポリヌクレオチドは、配列番号58のVHH及びFcポリペプチドを含むポリペプチドをコードし得る。
【0181】
本発明の第1のポリヌクレオチドは、配列番号55のVH及び重鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第2のポリヌクレオチドは、配列番号56のVL及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第3のポリヌクレオチドは、配列番号58のVHH及びFcポリペプチドを含むポリペプチドをコードし得る。
【0182】
本発明の第1のポリヌクレオチドは、配列番号49のVH及び重鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第2のポリヌクレオチドは、配列番号50のVL及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第3のポリヌクレオチドは、配列番号57のVHH及びFcポリペプチドを含むポリペプチドをコードし得る。
【0183】
本発明の第1のポリヌクレオチドは、配列番号51のVH及び重鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第2のポリヌクレオチドは、配列番号52のVL及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第3のポリヌクレオチドは、配列番号57のVHH及びFcポリペプチドを含むポリペプチドをコードし得る。
【0184】
本発明の第1のポリヌクレオチドは、配列番号53のVH及び重鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第2のポリヌクレオチドは、配列番号54のVL及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第3のポリヌクレオチドは、配列番号57のVHH及びFcポリペプチドを含むポリペプチドをコードし得る。
【0185】
本発明の第1のポリヌクレオチドは、配列番号55のVH及び重鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第2のポリヌクレオチドは、配列番号56のVL及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドをコードし得、本発明の第3のポリヌクレオチドは、配列番号57のVHH及びFcポリペプチドを含むポリペプチドをコードし得る。
【0186】
修飾ヌクレオチドを使用して、本開示のポリヌクレオチドを生成することができる。例示的な修飾ヌクレオチドは、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、N-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン、5”-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ウィブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、及び2,6-ジアミノプリンである。
【0187】
医学的使用及び治療方法
本開示の単離された多重特異性又は二重特異性抗体は、特にがんの処置のための薬剤として使用され得る。
【0188】
本発明の二重特異性CD33/δ2抗体による治療に適した例示的ながんとしては、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、急性骨髄白血病(acute myeloid leukemia、AML)、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome、MDS)、急性リンパ球性白血病(acute lymphocytic leukemia、ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma、DLBCL)、慢性骨髄白血病(chronic myeloid leukemia、CML)、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm、DPDCN)、骨髄増殖性新生物(myeloproliferative neoplasm、MPN)、及び混合表現型急性白血病からなる群から選択される血液がんが挙げられる。
【0189】
本発明の別の態様は、治療有効量の本発明の単離された二重特異性CD33/δ2抗体を、それを必要とする患者に、がんを治療するのに十分な時間にわたって投与することを含む、がんを有する対象を治療する方法において使用するための、特許請求の範囲で定義される多重特異性又は二重特異性抗体である。
【0190】
投与/医薬組成物
本開示は、本明細書に開示される多重特異性又は二重特異性CD33/δ2抗体及び医薬的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。治療用途では、本発明の多重特異性又は二重特異性CD33/δ2抗体は、医薬的に許容される担体中に活性成分として有効量の抗体を含有する医薬組成物として調製することができる。「担体」という用語は、それとともに活性化合物が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。このようなビヒクルは、水、及び石油、動物、植物、又は合成物由来のものを含む油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの液体であってもよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを用いることができる。これらの溶液は滅菌され、概して粒子状物質を含まない。これらは、従来の周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされる医薬的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤などを含有し得る。このような医薬製剤中の本開示の分子又は本発明の抗体の濃度は、約0.5重量%未満から通常少なくとも約1重量%まで、最大で15又は20重量%まで大きく変動し得、また、選択される具体的な投与方法に従って、必要とされる用量、流体体積、粘度などに主に基づいて選択され得る。好適なビヒクル及び製剤(他のヒトタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含む)は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp 691-1092に記載されており、特にpp.958~989を参照されたい。
【0191】
本発明の二重特異性CD33/δ2抗体を治療的に使用するための投与方法は、宿主に薬剤を送達する任意の好適な経路であり得、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤、粉剤、ゲル、粒子の、注射器、埋め込み式装置、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプに入れられた製剤を使用する非経口投与、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、又は皮下、肺内、経粘膜(経口、鼻腔内、膣内、直腸)投与であり、又は当該技術分野において周知の、当業者によって認識される他の手段に収容されていてもよい。部位特異的投与は、例えば、関節内、気管支内、腹内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、血管内、膀胱内、病巣内、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮送達によって達成され得る。
【0192】
したがって、筋肉内注射用の本発明の医薬組成物は、1mLの滅菌緩衝水と、約1ng~約100mg/kg、例えば約50ng~約30mg/kg、又はより好ましくは約5mg~約25mg/kgの本発明の二重特異性CD33/δ2抗体と、を含むように調製することができる。
【0193】
本発明の二重特異性CD33/δ2抗体は、例えば、静脈内(intravenous、IV)注射又はボーラス注射により非経口的に、筋肉内又は皮下又は腹腔内になど任意の好適な経路によって患者に投与することができる。IV注射は、15分ほどで投与してもよいが、多くの場合、30分、60分、90分、又は更には2、3、4、5、6若しくは7時間にわたって投与することができる。本発明の二重特異性CD33/δ2抗体は、疾患の部位(例えば、腫瘍自体)に直接注射することもできる。がんを有する患者に投与される用量は、治療される疾患を緩和するか又は少なくとも部分的に抑制するうえで十分な量(「治療有効量」)であり、しばしば、0.1~10mg/kg体重、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8,9、又は10mg/kgであるが、更に高くてもよく、例えば、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100mg/kgであってもよい。例えば、50、100、200、500、又は1000mgの固定単位用量が与えられるか、又は用量は、患者の表面積、例えば、400、300、250、200、若しくは100mg/mに基づいてもよい。がんを治療するには、通常、1~8回の用量(例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8回)を投与することができるが、10、12、20回以上の用量が投与される場合もある。本発明の二重特異性CD33/δ2抗体の投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月以上後に繰り返すことができる。また、治療過程を繰り返すことも、長期にわたる投与として可能である。繰り返し投与は、同一用量であっても異なる用量であってもよい。
【0194】
例えば、本発明の二重特異性CD33/δ2抗体を含む静脈内注入用の医薬組成物は、80kgの患者に投与する際には、約200mLの減菌リンガー液と、約8mg~約2400mg、約400mg~約1600mg、又は約400mg~約800mgの二重特異性CD33/δ2抗体とを含有するように調製することができる。非経口的に投与可能な組成物を調製する方法は周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA)に、より詳細に記載されている。
【0195】
本発明の二重特異性CD33/δ2抗体を、保管のために凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成させてもよい。この技術は、従来のタンパク質調製物に関して有効であることが示されており、周知の凍結乾燥及び再構成技術を用いることができる。
【0196】
本発明の二重特異性CD33/δ2抗体は、第2の治療剤と組み合わせて、同時、順次、又は別々に投与することができる。第2の治療剤は、化学療法剤又は標的化抗がん療法であり得る。
【0197】
二重特異性CD33/δ2抗体は、化学療法薬又は当業者に既知の他の抗がん治療薬のうちのいずれか1つ又は2つ以上と一緒に投与され得る。
【0198】
本発明の二重特異性CD33/δ2抗体が第2の治療剤と組み合わせて投与される場合、組み合わせは、任意の好都合な時間枠にわたって行われ得る。例えば、二重特異性CD33/δ2抗体及び第2の治療薬は、同日に、更に同じ静脈内注入で患者に投与されてよい。ただし、二重特異性CD33/δ2抗体及び第2の治療剤はまた、隔日又は隔週又は隔月などで投与されてもよい。いくつかの方法では、二重特異性CD33/δ2抗体及び第2の治療剤は、それらが、治療される患者内に感知可能な濃度で同時に(例えば、血清中に)存在する十分近接した時間内に投与される。いくつかの方法では、ある期間にわたる多数の投与回数からなる二重特異性CD33/δ2抗体による治療のコース全体は、多数の投与回数からなる第2の治療剤による治療のコースがその後に続くか、又はそれに先立って行われる。いくつかの方法では、2番目に投与される二重特異性CD33/δ2抗体による治療は、患者が最初に投与された第2の治療剤に対して耐性を有するか又は耐性を生じる場合に開始される。患者は、二重特異性CD33/δ2抗体及び第2の治療剤の一方又は両方による治療の単一コースのみを受けても又は複数コースを受けてもよい。1日、2日、若しくは数日、又は数週間の回復期間が、二重特異性CD33/δ2抗体の投与と第2の治療剤の投与との間に用いられてよい。第2の治療剤について適切な治療レジメンが既に確立されている場合、そのレジメンは、本発明の二重特異性CD33/δ2抗体と組み合わせて使用され得る。
【0199】
二重特異性CD33/δ2抗体は、任意選択的に、第2の治療薬と組み合わせて、任意の形態の放射線療法、及び任意の形態の放射線手術、及び/又は手術と一緒に投与され得るが、そのような放射線療法には、体外照射療法、強度変調放射線療法(intensity modulated radiation therapy、IMRT)が挙げられ、放射線手術には、ガンマナイフ、サイバーナイフ、リニアック、及び組織内放射線照射(例えば、放射性シードの埋め込み、GliaSiteバルーン)が挙げられる。
【0200】
表3は、AbM、Kabat、Chothia、IMGT及びContactシステムに従って定義されたJL5抗体(配列番号49のVH及び配列番号50のVLを有する抗体)のCDR配列のアミノ酸配列を示す。
【0201】
【表3】
【0202】
表4は、AbM、Kabat、Chothia、IMGT及びContactシステムに従って定義されたJL6抗体(配列番号51のVH及び配列番号52のVLを有する抗体)のCDR配列のアミノ酸配列を示す。
【0203】
【表4】
【0204】
表5は、AbM、Kabat、Chothia、IMGT及びContactシステムに従って定義されたJL2抗体(配列番号53のVH及び配列番号54のVLを有する抗体)のCDR配列のアミノ酸配列を示す。
【0205】
【表5】
【0206】
表6は、AbM、Kabat、Chothia、IMGT及びContactシステムに従って定義されたJL3抗体(配列番号55のVH及び配列番号56のVLを有する抗体)のCDR配列のアミノ酸配列を示す。
【0207】
【表6】
【0208】
本発明は一般論として記述されてきたが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲の範囲を限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
【実施例
【0209】
実施例1.CD33抗原生成
ヒトCD33細胞外ドメイン(extracellular domain、ECD)又はそのサブドメインをコードする発現構築物は、骨髄系細胞表面抗原CD33(Uniprotアクセッション番号P20138)の配列と、6X Hisタグ配列(配列番号246)、又はC末端に6X Hisタグ配列(配列番号246)を有するヒト血清アルブミン(human serum albumin、HSA)のC34Sバリアントとの融合タンパク質としてのドメインアノテーションに基づいて設計された。カニクイザル(Macaca fascicularis)由来のCD33(ECD)又はそのサブドメインをコードする同様の発現構築物を、NCBIアクセッション番号XP_005590138.1に基づいて設計した。生成された抗原のアミノ酸配列を表7に示す。
【0210】
製造元のプロトコルに従ってExpifectamineを使用して、HEK293由来細胞、Expi293(Gibco/Thermo Fisher Scientific)にヒト及びcyno CD33完全長ECD又はサブドメイン発現構築物を一過的にトランスフェクトした。細胞を採取前にオービタルシェーカー上で、8%CO、37℃で5日間インキュベートした。タンパク質を発現する細胞を遠心分離によって除去し、hisタグを有する可溶性CD33タンパク質を、Ni NTA Sepharose 6 Fast Flow樹脂(GE Healthcare)を使用する固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィ(immobilized metal-ion affinity chromatography、IMAC)を使用して培地から精製し、その後、Zeba(商標)Spin Desalting Columns、7K MWCO、10mL(ThermoScientificカタログ番号:製造業者の仕様書による89893)を使用して、カルシウム又はマグネシウムを含まない1XDubelcco’s Phosphate Saline緩衝液pH7.2に緩衝液交換した。
【0211】
【表7-1】
【0212】
【表7-2】
【0213】
【表7-3】
【0214】
実施例2.抗CD33xδ2抗体の生成
以下のようにAblexisトランスジェニックマウス技術を使用して抗体を生成した。AlivaMabマウスは、ヒト/マウス免疫グロブリンを産生するように操作された。AlivaMabトランスジェニックマウスを、組換えヒトCD33タンパク(表7からの抗原の選択)で免疫化した。リンパ球を二次リンパ器官から抽出し、ハイブリドーマ生成のためにFOマウス骨髄腫細胞株と融合させたか、又はFACSを介して単一細胞選別に供した。ハイブリドーマ上清を、ヒトCD33 ECDを過剰発現するヒト胚腎臓(human embryonic kidney、HEK)細胞への結合について、MSD電気化学発光によってスクリーニングした。スクリーニングから同定された試料を、親HEK細胞(陰性シグナル)と比較してヒトCD33 ECD(陽性シグナル)を過剰発現するHEK細胞への結合について、FACSで更にアッセイした。確認された細胞結合部は、ELISAを介してアイソタイプ分類された軽鎖であった。シングルセルソーティング上清を、組換えヒトCD33タンパク質への結合について、MSD電気化学発光によってスクリーニングした。所望の結合プロファイルを有するいくつかのヒットを選択し、配列決定した。
【0215】
V領域クローニングは以下のように行った。Qiagen(登録商標)RNeasy Plus Mini Kitによって精製されたRNA、及びB細胞溶解物の両方を使用し、Smarter cDNA合成キット(Clontech、Mount View,CA)を使用して、cDNA合成を行った。cDNA合成を容易にするために、oligodTを使用して、全てのメッセンジャーRNAの逆転写をプライムし、続いて、Smarter IIA oligonucleotideを用いた「5’キャッピング」を行った。VH及びVL断片の後続の増幅を、Smarter IIAキャップを標的とする5’プライマー及びCH1内のコンセンサス領域を標的とする3’プライマーを使用して、2段階PCR増幅により実施した。簡潔には、各50μLのPCR反応物は、20μMのフォワード及びリバースプライマミックス、25μLのPrimeStar Max DNAポリメラーゼプレミックス(Clontech)、2μLの未精製cDNA、並びに21μLの2回蒸留H2Oからなる。サイクリングプログラムは、94℃で3分間で開始し、続いて35サイクル(94℃で30秒間、55℃で1分間、68℃で1分間)であり、72℃で7分間で終了する。第2ラウンドのPCRは、それぞれのLonzaマザーベクター(VH及びVL)中のそれぞれの領域と「重複する」15bpの相補的伸長を含む、VL及びVH第2ラウンドプライマーを用いて行った。第2ラウンドのPCRを次のプログラムで実施した:94℃で3分間、35サイクル(94℃で30秒間、55℃で1分間、68℃で1分間)、72℃において7分間で終了する。In-Fusion(登録商標)HD Cloning Kit(Clonetech、U.S.A.)を、VL遺伝子のLonza huIgK又はLambdaベクターへの、及びVH遺伝子のLonza huIgG1ベクターへの方向性クローニングのために使用した。In-Fusion(登録商標)HD Cloningを容易にするために、In-Fusion(登録商標)HD Cloningの前に、Cloning EnhancerでPCR生成物を処理した。製造業者のプロトコル(Clonetech、U.S.A.)に従って、クローニング及び形質転換を実施した。Mini-prep DNAをサンガー配列決定に供して、完全なV遺伝子断片が得られたことを確認した。
【0216】
抗CD33抗体をExpiCHO-S(商標)細胞(ThermoFisher ScientificWaltham,MA、カタログ番号A29127)において、製造業者の推奨に従って、タンパク質をコードする精製プラスミドDNAを用いた一過性トランスフェクションによって発現させた。簡潔に述べると、ExpiCHO-S(商標)細胞を、37℃、8%CO2、及び125RPMに設定された軌道振動インキュベータ内で、ExpiCHO(商標)発現培地(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A29100)中に懸濁させて維持した。細胞を継代し、トランスフェクションの前に、6.0×106細胞/mLに希釈し、細胞生存率を99.0%以上で維持した。一過性トランスフェクションは、ExpiFectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A29131)を使用して行った。トランスフェクトされるべき各mLの希釈細胞について、0.5マイクログラムのDNAをコードするscFv-Fc融合物、及び0.5マイクログラムのpAdVAntage DNA(Promega、カタログ番号E1711)を使用して、OptiPRO(商標)SFM複合体化培地中に希釈した。ExpiFectamine(商標)CHO試薬を、1:4比(v/v、DNA:試薬)で使用し、OptiPRO(商標)に希釈した。希釈したDNA及びトランスフェクション試薬を1分間組み合わせ、DNA/脂質複合体を形成させ、次いで細胞に添加した。一晩インキュベートした後、ExpiCHO(商標)フィード及びExpiFectamine(商標)CHOエンハンサを、製造業者の標準プロトコルのとおり、細胞に添加した。細胞を軌道振盪(125rpm)により、37℃で7日間インキュベートした後、培養ブロスを採取した。一過的にトランスフェクトされたExpiCHO-S(商標)細胞からの培養上清を、遠心分離(30分、3000rcf)、続いて濾過(0.2μmのPES膜、Corning;Corning,NY)によって浄化した。
【0217】
タンパク質精製を以下のように実施した。濾過した細胞培養上清を、AKTAXpressクロマトグラフィシステムを使用して、予め平衡化した(1×DPBS、pH7.2)MabSelect Sure Protein Aカラム(GE Healthcare)に充填した。充填後、カラムを10カラム体積の1×DPBS(pH7.2)で洗浄した。タンパク質を、10カラム体積の0.1Mの酢酸ナトリウム(Na)、pH3.5で溶出した。タンパク質画分を、2.5MのTris HCl(pH7.5)を溶出分画量の20%(v/v)まで添加することによって完全に中和した。ピーク画分をプールし、濾過した(0.2μm)。精製したタンパク質の量を、分析サイズ排除HPLC(Agilent HPLCシステム)によって評価した。
【0218】
実施例3.二重特異性CD33×Vデルタ2抗体の生成
Fcに融合したCD33結合部及びFcに融合したVHH Vデルタ2結合部のヘテロ二量体を生成するためにノブインホール変異を使用して二重特異性分子を作製した。使用したVデルタ2結合VHH配列は、国際公開第2015156673号に記載されている抗体6H4及び抗体5D3であった。6H4配列は、配列番号58に記載される。5D3配列は、配列番号57に記載される。
【0219】
CD33結合FabはホールFc上にあり、Vデルタ2結合VHHはノブFc上にあった。CD33 VH及びヒトCH1定常領域を、いくつかの変異L234A/L235A/D265S_M252Y/S254T/T256E_T366S/L368A/Y407V_H435R/Y436Fを含有するFc上でヒンジと融合させた。Fc受容体をサイレントにするために、AAS変異を両方の重鎖のFc部分に導入した。YTE(M252Y/S254T/T256E)変異をJL5の両方の重鎖のFc部分に導入して、半減期を増加させた。デルタ2結合VHHを、次の変異を含むヒンジ及びノブFcに融合させた:C220S_L234A/L235A/D265S_M252Y/S254T/T256E_T366W。
【0220】
精製を助けるために、RF変異をホール重鎖に導入した。
【0221】
以下のFab(CD33)xVHH(Vδ2)構築物を調製した。
配列番号101、102及び103の配列に対応する、Vデルタ2抗体6H4と組み合わせたCD33抗体JL5(JL5x6H4)。
配列番号104、105及び106の配列に対応する、Vデルタ2抗体5D3と組み合わせたCD33抗体JL5(JL5x5D3)。
配列番号107、108及び109の配列に対応する、Vデルタ2抗体6H4と組み合わせたが、YTE変異を有しない、CD33抗体JL6(JL6x6H4)。
配列番号110、111及び112の配列に対応する、Vデルタ2抗体5D3と組み合わせたが、YTE変異を有しない、CD33抗体JL6(JL6x5D3)。
配列番号113、114及び115の配列に対応する、Vデルタ2抗体6H4と組み合わせたが、YTE変異を有しない、CD33抗体JL2(JL2x6H4)。
配列番号116、117及び118の配列に対応する、Vデルタ2抗体5D3と組み合わせたが、YTE変異を有しない、CD33抗体JL2(JL2x5D3)。
配列番号119、120及び121の配列に対応する、Vデルタ2抗体6H4と組み合わせたが、YTE変異を有しない、CD33抗体JL3(JL3x6H4)。
配列番号122、123及び124の配列に対応する、Vデルタ2抗体5D3と組み合わせたが、YTE変異を有しない、CD33抗体JL3(JL3x5D3)。
【0222】
分子をCHO細胞株で発現させ、ProA捕捉、続いてCH1親和性捕捉によって精製した。簡単に説明すると、抗体を、最初にMab Select SuRe Protein Aカラム(GE Healthcare)によって精製した。カラムをPBS pH7.2で平衡化し、2mL/分の流速で発酵上清を充填した。充填後、カラムを4カラム容量のPBSで洗浄し、続いて、30mM酢酸ナトリウム、pH3.5で溶出した。280nmでの吸光度によってモニターされるようなタンパク質ピークを含有する画分をプールし、1%の3M酢酸ナトリウムpH9.0を添加することによってpH5.0に中和した。抗体をCH1捕捉によって更に精製し、ヒスチジン緩衝液中に溶出した。
【0223】
実施例4:二重特異性CD33×Vδ2抗体は、CD33発現細胞及びVγ9Vδ2細胞に結合する。
導入
CD33発現細胞及びVγ9Vδ2細胞に結合する二重特異性CD33×Vδ2抗体の能力を試験した。
【0224】
材料及び方法
細胞株
CD33発現急性単球性白血病(acute monocytic leukemia、AML)細胞株THP-1(ECACC、Sigma)を、RPMI 1640 ATCC mod(Gibco)、10%加熱不活性化FBS、50μg/mLゲンタマイシン、及び2-メルカプトエタノール中で培養した。精製されたVγ9Vδ2-T細胞株を、以前に記載されたように生成した(de Bruin et al.(2017),Oncoimmunology 7(1):e1375641)。簡単に説明すると、FITC結合抗Vδ2TCR(Beckman coulter、クローンIMMU389)を抗マウスIgGマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)と組み合わせて使用して、健常ドナー(healthy donor、HD)PBMCからVδ2-T細胞を単離し、2人の健常ドナー由来のPBMC、JY細胞、IL-7(10U/mL)、IL-15(10ng/mL、R&D Systems)及びフィトヘマグルチニン(50ng/mL PHA、Thermo Fisher Scientific)からなる照射済みフィーダーミックスで毎週培養した。Vγ9Vδ2-T細胞株の純度は>90%及び<5%CD4+で維持された。
【0225】
二重特異性抗体結合
CD33結合を評価するために、THP-1細胞を、316~0.00316nMの濃度範囲の二重特異性抗体JL2x6H4、JL3x6H4、JL5x6H4、JL6x6H4、B21Mx6H4、JL2x5D3、JL3x5D3、JL5x5D3、JL6x5D3又はB21Mx5D3とともに、4℃で45~60分間インキュベートした。
【0226】
Vδ2結合を評価するために、Vγ9Vδ2細胞を、316~0.00316nMの濃度範囲の二重特異性抗体JL2x6H4、JL3x6H4、JL5x6H4、JL6x6H4、B21Mx6H4、JL2x5D3、JL3x5D3、JL5x5D3、JL6x5D3若しくはB21Mx5D3とともに、又はgp120及び別の無関係な標的に結合する二重特異性抗体とともに、4℃で45~60分間インキュベートした。
【0227】
結合した二重特異性抗体を、Alexa Fluor(登録商標)647コンジュゲートF(ab’)2ヤギ抗ヒトIgG抗体(H+L)(Jackson)とともに4℃で30分間インキュベートすることによって検出した。
【0228】
FACS
試料をFACS Celesta(BD)によって測定し、FlowJoソフトウェア(FlowJo)を使用してデータを分析した。
【0229】
結果
全ての二重特異性CD33xVδ2抗体は、CD33発現THP-1細胞に結合することが見出された(図1)。予想通り、CD33結合ドメインの代わりに呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory syncytial virus、RSV)結合ドメイン(B21M)を有する陰性対照抗体は、THP-1細胞に結合しなかった。
【0230】
更に、全ての二重特異性CD33xVδ2抗体は、Vγ9Vδ2 T細胞に結合することが見出された(図2)。予想通り、RSVxVδ2抗体はVγ9Vδ2 T細胞にも結合したが、Vδ2結合ドメインを含まない陰性対照抗体はこれらの細胞に結合しなかった。Vδ2結合ドメインとして6H4を含有する二重特異性CD33xVδ2抗体は、Vδ2結合ドメインとして5D3を含有する二重特異性抗体よりも高い親和性でVγ9Vδ2 T細胞に結合した。
【0231】
実施例5:二重特異性CD33xVδ2抗体は、CD33発現細胞に対する細胞傷害を媒介することができる。
導入
実施例4に記載されるように、二重特異性CD33xVδ2抗体は、CD33発現細胞及びVγ9Vδ2-T細胞の両方に結合する。続いて、二重特異性抗体がCD33発現腫瘍細胞に対する細胞傷害を誘導することができるかどうかを試験した。
【0232】
材料及び方法
細胞株
CD33発現THP-1細胞(標的細胞)及びVγ9Vδ2-T細胞(エフェクタ細胞)を、実施例4に記載のように増殖させた。
【0233】
細胞傷害性アッセイ
THP-1標的細胞をセルトレースバイオレット(CTV)で標識し、二重特異性CD33xVδ2抗体又は陰性対照抗体(RSVxVδ2)及びVγ9Vδ2-Tエフェクタ細胞(E)の存在下で、1:1~1:20(E:T)比で(1:20比の場合、エフェクタ細胞2,500個及び標的細胞50,000個)、37℃でインキュベートした。5nMで開始する9つの5倍希釈の抗体濃度系列を試験した。22及び94時間後、7-アミノアクチノマイシンD(7-Aminoactinomycin D、7AAD)を使用して死細胞を染色した。CTV+7AAD細胞の割合を決定することによって、THP-1細胞死滅を決定した。EC50を、Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して非直線回帰によって決定した。
【0234】
結果
THP-1細胞の死滅を測定し、EC50を決定した。陰性対照抗体の存在下では死滅は観察されなかった。しかしながら、全ての二重特異性CD33xVδ2抗体は、THP-1腫瘍細胞の死滅を媒介することができた。概して、6H4ベースのVδ2結合ドメインを含む抗体は、5D3ベースの結合ドメインを含む抗体よりも強力であった(より低いEC50)(表8)。JL3又はJL5 CD33結合ドメインを有する二重特異性抗体は、JL2又はJL6ドメインを含むものよりも強力であった。エフェクタ対標的細胞比が1:20であっても、効率的な死滅が見られた。
【0235】
【表8】
推定、最高濃度についてプラトーなし。
【0236】
実施例6:二重特異性CD33xVδ2抗体は健常細胞よりも腫瘍細胞の死滅を優先的に誘導する
導入
実施例5に記載されるように、二重特異性CD33xVδ2抗体は、CD33発現腫瘍細胞に対する細胞傷害性を誘導することができる。続いて、エフェクタ細胞として新鮮な血液からのPBMCを用いて細胞傷害性を得ることもできるかどうか、及びCD33xVδ2抗体が健康なCD33陽性CD14+細胞に対する細胞傷害性も誘導するかどうかを試験した。
【0237】
材料及び方法
細胞株
CD33発現THP-1細胞(標的細胞)を実施例5に記載したように増殖させた。健康なドナーボランティアからの全ヘパリン処理血液を血液供給サービスSanquinから入手し、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)の単離に使用した。Lymphoprep(商標)密度勾配遠心分離を使用してPBMCを単離した。
【0238】
Vγ9Vδ2-T細胞の割合を決定するために、PBMCをPerCP-Cy5.5標識抗CD3mAb(BiolegendクローンSK7)、PE標識抗TCR Vγ9mAb(BiolegendクローンB6)及びFITC標識抗TCRVδ2mAb(Beckman CoulterクローンIM1464)で染色した。THP-1及びCD14+単球細胞上のCD33発現を、PE-Cy7標識抗CD14mAb(Biolegendクローン63D3)、APC標識抗CD33mAb(BiolegendクローンWM53)を使用して決定した。
【0239】
細胞傷害性アッセイ
THP-1標的細胞をセルトレースバイオレット(cell trace violet、CTV)で標識し、二重特異性CD33xVδ2抗体又は陰性対照抗体(RSVxVδ2)及びPBMCエフェクタ細胞(E)の存在下で、5:1(E:T)比で(エフェクタ細胞250,000個及び標的細胞50,000個)、37℃でインキュベートした。5nMで開始する6つの5倍希釈の抗体濃度系列を試験した。94時間後、細胞をPE-Cy7標識抗CD14mAb及び7AADで染色した。THP-1細胞死滅は、CTV+7AAD-細胞の割合に基づいて決定し、一方、単球の死滅は、CTV-CD14+7AAD細胞の割合に基づいて決定した。
【0240】
結果
標的細胞の死滅を図3に示す。PBMC(全PBMCの1.84%のVγ9+Vδ2+T細胞を含有する)は、二重特異性CD33xVδ2抗体の存在下でTHP-1腫瘍細胞の死滅を媒介することができることが見出された(パネルA)。一方、健康なCD14+標的細胞の溶解はほとんど起こらなかった(パネルB)。これは、二重特異性CD33xVδ2抗体が、健常細胞よりも腫瘍細胞の死滅を優先的に媒介することを示す。CD33発現は、THP-1細胞と比較してCD14+細胞上で約2倍高いことが見出されたので、この差は、THP-1標的細胞とCD14+標的細胞との間のCD33発現の差によるものではないようである。
【0241】
実施例7:二重特異性CD33xVδ2抗体は、Vγ9Vδ2 T細胞の増殖を誘導する
導入
続いて、二重特異性CD33xVδ2抗体が、CD33陽性標的細胞の存在下でVγ9Vδ2 T細胞の増殖を誘導するかどうかを試験した。
【0242】
材料及び方法
細胞株
CD33発現THP-1細胞(標的細胞)を実施例4に記載したように増殖させた。2人の異なるドナーからのVγ9Vδ2 T細胞(エフェクタ細胞)を、実施例4に記載のように培養した。
【0243】
増殖アッセイ
THP-1標的細胞をセルトレースバイオレット(CTV)で標識した。Vγ9Vδ2エフェクタ細胞を、50IU/mLのIL-2の存在下でセルトレース遠赤(cell trace far red、CTFR)で標識した。標的細胞及びエフェクタ細胞を、1nMの二重特異性抗体の存在下で、1:20のエフェクタ細胞対標的細胞比で(標的細胞50,000個、エフェクタ細胞2,500個)、37℃、5%COで共インキュベートした(200uL/ウェル)。123カウントeBeads(商標)カウンティングビーズ(Invitrogen)を使用して、0日目、1日目、4日目、7日目、11日目及び14日目に細胞数を評価した。
【0244】
結果
Vγ9Vδ2エフェクタ細胞の増殖を図4に示す。全ての二重特異性CD33xVδ2抗体が、2人の異なるドナーからのVγ9Vδ2エフェクタ細胞の増殖を誘導することができることが見出された。二重特異性RSVxVδ2抗体の存在では増殖は見られず、増殖が標的細胞の存在に依存していることが示された。
【0245】
実施例8:二重特異性scFv CD33xVδ2抗体はCD33発現細胞に対する細胞傷害性を媒介することができる
導入
CD33結合アームがscFv形式で提供された場合に、二重特異性抗体がCD33発現腫瘍細胞に対する細胞傷害性を誘導することができるかどうかを試験した。
【0246】
材料及び方法
細胞株
2人の異なるドナー(ドナー104及びドナー156)からのCD33発現THP-1細胞(標的細胞)及びVγ9Vδ2-T細胞(エフェクタ細胞)を、実施例5に記載のように増殖させた。
【0247】
scFv-VHH二重特異性分子の産生
scFv-VHH二重特異性分子を以下のように生成した。VLとVHとの間に「バード」リンカー、scFvとVHHとの間に固定された短い5アミノ酸リンカー(GGGGS(配列番号100))、及びC末端タンパク質にCタグを有するscFv(VL-L-VH)-L-VHHの固定設計を使用した。二重特異性scFv VHH分子のアミノ酸配列をcDNAに逆翻訳し、次いで、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化した。調節エレメント:N末端Kozak配列及びC末端停止コドンを加え、cDNAを合成遺伝子として作製した。cDNAを好適なベクターにクローニングし、それらの配列を確認した。得られたプラスミドをHEK293_E細胞に一過性トランスフェクションすることにより、タンパク質の発現を行った。培養上清からC-tagアフィニティクロマトグラフィ及びゲル濾過によりタンパク質を精製した。
【0248】
【表9-1】
【0249】
【表9-2】
【0250】
細胞傷害性アッセイ
THP-1標的細胞をセルトレースバイオレット(CTV)で標識し、二重特異性CD33xVδ2抗体又は陰性対照抗体(RSVxVδ2)及びVγ9Vδ2-Tエフェクタ細胞(E)の存在下で、1:1(E:T)比で(エフェクタ細胞50,000個及び標的細胞50,000個)、37℃でインキュベートした。3.16nMで開始する10の半対数希釈の抗体濃度系列を試験した。24時間後、フローサイトメトリを使用して7AAD-CTV+細胞の割合を決定することによって、THP-1細胞死滅を決定した。
【0251】
結果
THP-1細胞の死滅を測定し、EC50値を決定した。陰性対照抗体の存在下では死滅は観察されなかった。全ての二重特異性scFv CD33xVδ2抗体は、THP-1腫瘍細胞の死滅を媒介することができた。
【0252】
【表10】
*#推定、最高濃度又は最低濃度についてプラトーなし
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2024533457000001.xml
【国際調査報告】