(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ラパマイシン組成物および小嚢胞性リンパ管奇形の治療におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/436 20060101AFI20240905BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240905BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240905BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240905BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240905BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240905BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240905BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K31/436
A61P17/00
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/14
A61K47/22
A61P7/04
A61P29/00
A61K9/06
A61P7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516348
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 US2022043627
(87)【国際公開番号】W WO2023043900
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519247626
【氏名又は名称】パルヴェラ セラピューティクス、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】マティーニ、ジェフリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC07
4C076CC18
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD43
4C076DD45
4C076DD47
4C076DD58
4C076EE23
4C076EE32
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA51
4C086ZA53
4C086ZA89
4C086ZB11
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 本明細書の実施形態は、小嚢胞性リンパ管奇形を治療するための方法および組成物、より具体的には、局所ラパマイシンゲルおよびその使用方法に向けられている。方法は、病変の大きさ、重症度、または数を減少させるのに有効であり、小嚢胞性リンパ管奇形を患う対象の生活の質および機能する能力を改善する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象における小嚢胞性リンパ管奇形を治療する方法であって、前記対象の小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変に、治療有効量の無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回局所投与する工程を含み、前記小嚢胞性リンパ管奇形が治療される、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変は約25cm
2より大きい、方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法において、前記小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変に関連する症状が、少なくとも週に1~2日発生する、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の方法において、対象において小嚢胞性リンパ管奇形を治療することは、漏出(リンパ漏)、出血、発赤、痂皮、過角化、隆起斑、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される前記小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変の症状を改善することである、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の方法において、前記無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.1%~約6%のラパマイシン、約80%~約99%の1つまたはそれ以上の溶媒、ゲル化剤、および抗酸化剤を含む、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の方法において、前記無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.1%~約6%のラパマイシン、約80%~約99%の1つまたはそれ以上の溶媒、約0.1%~約5%のゲル化剤、および約0.001%~約1%の抗酸化剤を含む、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の方法において、前記無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回、少なくとも12週間投与する、方法。
【請求項8】
請求項5、6、または7に記載の方法において、前記1つまたはそれ以上の溶媒が、アジピン酸ジイソプロピル、グリセロール、PEG、およびイソプロピルアルコールを含む、方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の方法において、前記無水ラパマイシンゲル組成物が、
約3.9%のラパマイシンと、
約15%のイソプロピルアルコールと、
約54.9%のポリエチレングリコール400と、
約15%のアジピン酸ジイソプロピルと、
約10%のグリセロールと、
約0.75%のヒドロキシプロピルセルロースと、
約0.05%の没食子酸プロピルと、
約0.02%のパルミチン酸アスコルビルと、
約0.002%のα-トコフェロールと、および
クエン酸と、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の方法において、投与する工程は、前記無水ラパマイシンゲル組成物を前記対象の皮膚に薄い層として適用することを含む、方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の方法において、前記対象は、患者全般的変化印象(PGI-C)、患者全般的重症度印象(PGI-S)、漏出に対する患者全般的重症度印象(PGI-SL)、出血に対する患者全般的重症度印象(PGI-SB)、臨床医全般的変化印象(CGI-C)、臨床医全般的重症度印象(CGI-S)、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される評価の1つまたはそれ以上のスコアにおいて改善を示す、方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の方法において、前記対象は、皮膚疾患QOL評価(DLQI)のスコアにおいて改善を示す、方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の方法において、前記対象は、病変漏出が報告される日数の減少を経験する、方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の方法において、前記対象は、病変出血が報告される日数の減少を経験する、方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の方法において、病変の大きさ、病変の厚さ、病変の高さ、または病変の数の1つまたはそれ以上が減少する、方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の方法において、小嚢胞性LM症状重症度(SS)尺度に基づく病変部疼痛、病変部痂皮、または病変部発赤の重症度が軽減される、方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の方法において、前記小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変に投与されるフィールド放射線(XRT)が必要でない、方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載の方法において、前記対象の皮膚への前記無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、前記対象の表皮におけるラパマイシンの最大表皮濃度を約120~990マイクロモルのラパマイシンで達成する、方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の方法において、前記対象の皮膚への前記無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、前記対象の真皮におけるラパマイシンの最大真皮濃度を約50~200マイクロモルのラパマイシンで達成する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年9月15日に出願された米国出願第63/244,391に対する35U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張する。各先行出願の開示は、本出願の開示の一部とみなされ、参照により本出願の開示に組み込まれる。
【背景】
【0002】
リンパ管奇形(LM)は、リンパ液で満たされた異常な血管、嚢、嚢胞を特徴とするリンパ系の稀な疾患である。International Society for the Study of Vascular Anomalies(ISSVA)によると、小嚢胞性LMは、個々の嚢胞の大きさ(LM全体の大きさに対する)に基づくLMの3つの形態学的類型:大嚢胞性(>2cm)、小嚢胞性(<2cm)、複合型、の1つである。
【0003】
LMの症状は、その現れ方や解剖学的部位(すなわち、小嚢胞性LMは皮膚、または大嚢胞性LMは深部組織)で異なるが、常に、局所的な腫瘤のびまん性浸潤と過剰増殖の結果である。大嚢胞性LMとは異なり、小嚢胞性LMは皮下組織に浸潤し、皮膚に臨床症状を呈する。小嚢胞性LMは、リンパ管網を有する身体のあらゆる解剖学的領域に発生することがある。小嚢胞性LMは、複数の小嚢胞が集まって病変を形成している。実際の病変の大きさは、個々の小嚢胞の総数によって異なる。
【0004】
小嚢胞性LMはリンパ管の発生過程で生じたと考えられるリンパ系の先天異常の結果であり、出生時に発症する。すべての小嚢胞性LMは、胚発生初期の接合後変異により生じ、その結果、リンパ管系の奇形、軟部組織へのリンパ液の持続的浸潤、病理学的後遺症を伴う局所浸潤性腫瘤が生じる。小嚢胞性LMは男女同程度の割合で発症するが、思春期のホルモンの変化に影響されるものもある。小嚢胞性LMの自然経過は進行性であり、嚢胞数の増加とともに生涯にわたって悪化し、全体的な大きさ、合併症、罹患率の増加につながる。
【0005】
小嚢胞性LMの自然経過は、病変の大きさ、数、合併症、罹患率の増加とともに、生涯を通じて進行性に悪化する。小嚢胞性LMは、しばしばLM病変と呼ばれ、皮膚に浸潤し、病理学的小胞からリンパ液や血液が自然に漏出する。このようなLM病変から細菌が侵入し、罹患した組織を通して急速に広がるため、重篤な感染症が再発する。その結果、機能が制限されることによりQOLが大きく損なわれ、敗血症のような生命を脅かす結果を招くこともある。さらに、かなりの出血を伴う場合、これらの病変は全身性貧血を引き起こすこともある。
【0006】
小嚢胞性LMの治療に有効な治療法の必要性に基づき、この第2相臨床試験は、小嚢胞性LMを有する参加者を対象に、PTX-022の安全性、PK、有効性を評価するために計画された。本試験では、シロリムス血漿中濃度の測定を含む安全性を評価する。有効性は、患者および臨床医による評価を用いて評価される。小嚢胞性LMが消失することはまれであるため、この非盲検試験では各参加者自身が対照となる。
【0007】
小嚢胞性LMの自然経過は、大きさ、数、合併症、罹患率の増加とともに、生涯を通じて進行性に悪化する。小嚢胞性LMは、リンパ管網を有する全身のどの解剖学的部位にも発生しうるが、約48%が頭頸部に発生する。
【0008】
罹患した患者は、小嚢胞性LM(LM病変とも呼ばれる)に関連した様々な合併症に悩まされる。合併症には、出血、漏出(リンパ漏)、疼痛、かゆみ、機能障害、感染、醜形などがある。出血と漏出は、LM病変の腫脹、疼痛、再発性感染を引き起こし、播種に至る可能性がある。さらに、LM病変は生活の質を大きく損ない、持続的に機能を制限する。
【0009】
LMは、初期の胚発生過程における血管およびリンパ管の形成における変異により生じ、血管およびリンパ管の構成および連結に異常をきたす。LMは先天性、散発性、体細胞生殖細胞系列変異に起因し、通常出生時に発症し診断される。思春期のホルモンの変化によって悪化するものもある。男女比は同じである。
【0010】
LMの効果的な管理には学際的な治療が必要である。多くの場合、治療開始前にCTやMRIによる画像診断を行い、治療法の選択や予後の予測に役立てる。残念なことに、多くの治療法(硬化療法、レーザー治療、手術)は侵襲的で痛みを伴い、さらに炎症/瘢痕を誘発する可能性がある。さらに、これらの治療法、特に小球性LMに対する有効性は、一般的に不完全で一過性であり、再発率が高い。そのため、小嚢胞性LM患者の多くは、生涯にわたって臨床的・心理社会的罹患を経験し続け、多くの場合、QOLの悪化がみられる。小嚢胞性LMに対してFDAが承認した薬剤はないが、この非常に病的な病態に対する第一選択療法として、経口シロリムスを推奨するものが多い。
【0011】
小嚢胞性LMは重篤で致死的であるにもかかわらず、FDAが承認した治療薬はない。実際、現在利用可能な治療法(手術、硬化療法、レーザー、凍結療法)は侵襲的であり、瘢痕化/炎症をさらに誘発する可能性がある。結局のところ、このような異常なリンパ管形成の根本原因に対処できる治療法が切実に求められているのである。
【発明の概要】
【0012】
一実施形態において、本発明は、対象の小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変に1日1回、治療有効量の無水ラパマイシンゲル組成物を局所投与する工程を用いて、それを必要とする対象において小嚢胞性リンパ管奇形を治療する方法を提供し、ここで小嚢胞性リンパ管奇形は治療される。
【0013】
一実施形態において、前記小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変は約25cm2より大きい。一実施形態において、前記小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変に関連する症状は、少なくとも週に1~2日発生する。一実施形態において、対象における小嚢胞性リンパ管奇形を治療することは、前記小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変の症状である漏出(リンパ漏)、出血、発赤、痂皮、過角化、隆起斑、またはそれらの組み合わせを改善することである。一実施形態において、前記無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.1%~約6%のラパマイシン、約80%~約99%の1つまたはそれ以上の溶媒、ゲル化剤、および抗酸化剤を含む。一実施形態において、前記無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.1%~約6%のラパマイシン、約80%~約99%の1つまたはそれ以上の溶媒、約0.1%~約5%のゲル化剤、および約0.001%~約1%の抗酸化剤を含む。一実施形態において、前記1つまたはそれ以上の溶媒は、アジピン酸ジイソプロピル、グリセロール、PEG、またはイソプロピルアルコールである。一実施形態において、前記無水ラパマイシンゲル組成物は、約3.9%のラパマイシン、約15%のイソプロピルアルコール、約54.9%のポリエチレングリコール400、約15%のアジピン酸ジイソプロピル、約10%のグリセロール、約0.75%のヒドロキシプロピルセルロース、約0.05%の没食子酸プロピル、約0.02%のパルミチン酸アスコルビル、約0.002%のα-トコフェロール、およびクエン酸を有する。
【0014】
一実施形態において、投与する工程は、前記無水ラパマイシンゲル組成物を前記対象の皮膚に薄い層として適用することを含む。一実施形態において、前記無水ラパマイシンゲル組成物は、1日1回、少なくとも12週間投与される。
【0015】
一実施形態において、前記対象は、患者全般的変化印象(PGI-C)、患者全般的重症度印象(PGI-S)、漏出に対する患者全般的重症度印象(PGI-SL)、出血に対する患者全般的重症度印象(PGI-SB)、臨床医全般的変化印象(CGI-C)、臨床医全般的重症度印象(CGI-S)、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される評価の1つまたはそれ以上のスコアにおいて改善を示す。一実施形態において、前記対象は、皮膚疾患QOL評価(DLQI)のスコアにおいて改善を示す。一実施形態において、前記対象は、病変の漏れが報告される日数の減少を経験する。一実施形態において、前記対象は、病変出血が報告される日数の減少を経験する。一実施形態において、病変の大きさ、病変の厚さ、病変の高さ、または病変の数の1つまたはそれ以上が減少する。一実施形態において、小嚢胞性LM症状重症度(SS)尺度に基づく病変部疼痛、病変部痂皮、または病変部発赤の重症度が軽減される。一実施形態において、前記小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変に投与されるフィールド放射線(XRT)が必要でない。
【0016】
一実施形態において、前記対象の皮膚への前記無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、前記対象の表皮におけるラパマイシンの最大表皮濃度を約120~990マイクロモルのラパマイシンで達成する。一実施形態において、前記対象の皮膚への前記無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、前記対象の真皮におけるラパマイシンの最大真皮濃度を約50~200マイクロモルのラパマイシンで達成する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】対象1~10の臨床医全般的変化印象(CGI-C)を示すグラフである。
【
図2】対象1~10の痂皮/過角化、紅斑、高さ、出血、漏出に対する臨床医全般的重症度印象変化(CGI-C)を示すグラフである。
【
図3】対象1~10の患者全般的変化印象(PGI-C)スコアを示すグラフである。
【
図4】対象1のベースライン、28日目、56日目、84日目における小嚢胞性LMの評価を示している。
【
図5】対象2のベースライン、28日目、56日目、84日目における小嚢胞性LMの評価を示している。
【
図6】対象3のベースライン、28日目、56日目における小嚢胞性LMの評価を示している。
【
図7】対象5のベースライン、28日目、56日目、84日目における小嚢胞性LMの評価を示している。
【
図8】対象6のベースライン、28日目、56日目における小嚢胞性LMの評価を示している。
【
図9】対象7のベースライン、28日目における小嚢胞性LMの評価を示している。
【
図10】対象8のベースライン、28日目における小嚢胞性LMの評価を示している。
【
図11】対象9のベースライン、28日目における小嚢胞性LMの評価を示している。
【
図12】対象10のベースライン、28日目における小嚢胞性LMの評価を示している。
【発明の詳細な説明】
【0018】
以下、様々な態様をより完全に説明する。しかしながら、そのような態様は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、当業者にその範囲を十分に伝えるように提供される。
【0019】
使用方法
本明細書において開示されるのは、対象において小嚢胞性リンパ管奇形(小嚢胞性LM)を治療する方法である。特に、提供される無水ラパマイシンゲル組成物は、リンパ漏頻度、出血頻度、病変の重症度、病変の大きさ、病変の高さ、病変の数、そう痒症の重症度および頻度、ならびに疼痛の重症度および頻度を含む、小嚢胞性LMの症状の1つまたはそれ以上を減少させる。
【0020】
本明細書に記載される実施形態は、それを必要とする対象における小嚢胞性リンパ管奇形を治療する方法であって、前記対象の小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変に、治療有効量の無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回局所投与する工程を含み、前記小嚢胞性リンパ管奇形が治療される、方法に向けられている。
【0021】
特定の実施形態において、前記小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変は約25cm2より大きい。
【0022】
特定の実施形態において、前記小嚢胞性LM皮膚病変に関連する症状は、少なくとも週に1~2日、または過去14日間で5日以上発生する。特定の実施形態において、前記小嚢胞性LM皮膚病変に関連する症状は、漏出、出血、発赤、痂皮、過角化、隆起斑、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0023】
このように、一態様において、本開示は、それを必要とする対象における小嚢胞性LMの治療方法を提供し、前記方法は、約0.1重量%~約6重量%のラパマイシン、約80重量%~約99重量%の1つまたはそれ以上の溶媒、ゲル化剤、および抗酸化剤を含む治療有効量の無水ラパマイシンゲル組成物を、前記対象の小嚢胞性LM皮膚病変に1日1回局所投与する工程を含む。任意の実施形態において、無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.1重量%~約6重量%のラパマイシン、約80重量%~約99重量%の1つまたはそれ以上の溶媒、約0.1重量%~約5重量%のゲル化剤、および約0.001重量%~約1重量%の抗酸化剤を含む。例えば、それを必要とする対象の小嚢胞性LMを治療する方法は、約0.1重量%~約6重量%のラパマイシン、約5重量%~約30重量%のアジピン酸ジイソプロピル、約5重量%~約30重量%のグリセロール、約40重量%~約60重量%のポリエチレングリコール(PEG)、約5重量%~約30重量%のイソプロピルアルコール、ゲル化剤、および選択的に抗酸化剤(クエン酸など)を含む治療有効量の無水ラパマイシンゲル組成物を、前記対象の小嚢胞性LM皮膚病変に1日1回局所投与する工程を含む。
【0024】
好ましい実施形態において、それを必要とする対象における小嚢胞性LMを治療する方法は、約3.9重量%のラパマイシン、約15重量%のアジピン酸ジイソプロピル、約10%のグリセロール、約54.9重量%のポリエチレングリコール(PEG)、約15重量%のイソプロピルアルコール、約0.75%のヒドロキシプロピルセルロース、約0.05%の没食子酸プロピル、約0.02%のパルミチン酸アスコルビル、約0.002%のα-トコフェロール、およびクエン酸を含む治療有効量の無水ラパマイシンゲル組成物を、前記対象の小嚢胞性LM皮膚病変に1日1回局所投与する工程を含む。
【0025】
本明細書において、「ラパマイシン(rapamycin)」または「シロリムス(sirolimus)」は互換的に使用され、イースター島(ラパ・ヌイ)の土壌サンプルから単離された生物Streptomyces hydroscopicusによって産生され、以下の構造を有する大環状ラクトンを指す:
【0026】
本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療における使用に適した無水ラパマイシンゲル組成物は、本明細書に開示される任意の方法によって局所的に投与される。例えば、投与は、本明細書中に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物を、小嚢胞性LM皮膚病変の1つまたはそれ以上の上に薄い層として局所的に適用することを含み、ここで、皮膚病変は、胸、首、頭皮、背中、または顔を含む身体上の任意の場所にある。本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与により、ラパマイシンは、吸収を介して皮膚の表皮層および真皮層の一方または両方に到達する。有利なことに、本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、ラパマイシンの全身吸収を生じないか、または最小にする。
【0027】
本明細書で開示する無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、夕方、少なくとも寝る1時間前に行う。本明細書に開示される無水ラパマイシンゲル組成物は、小嚢胞性LM皮膚病変に1日1回適用されるべきである。本明細書に開示する無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、1日1回、1日2回、または1日3回実施する。あるいは、本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物は、週3回、週2回、週1回、または1日おきに1回局所投与する。
【0028】
本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、または好ましくは少なくとも12週間の期間投与する。より好ましくは、本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、少なくとも24週間、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも12ヶ月、またはそれ以上の期間投与する。
【0029】
本明細書に開示される無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、本明細書に記載されるように、無水ラパマイシンゲル組成物が一定期間投与され、一定期間投与が中止され、その後、本明細書に記載されるように、別の期間投与が再び再開される、投与サイクルで実施される。本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物の投与の中止期間は、約1週間~約12週間である。
【0030】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の患部皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、対象の皮膚上の病変の厚さ、病変の高さ、または病変の大きさを減少させる。本明細書に記載の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の患部皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、小嚢胞性リンパ管奇形皮膚病変を約25cm2未満に減少させる。
【0031】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、対象の皮膚上の病変の数を減少させる。
【0032】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、対象の皮膚上の病変によって覆われる総表面積を減少させる。本明細書に記載される実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の患部皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、病変によって覆われる総表面積を約200cm2未満に減少させる。
【0033】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、対象の皮膚上の病変出血を減少させる。任意の実施形態において、病変出血は、週7日未満、週6日未満、週5日未満、週4日未満、週3日未満、週2日未満、週1日未満に減少するか、または病変出血が止まる。任意の実施形態において、病変出血は、14日間で13日未満、14日間で12日未満、14日間で11日未満、14日間で10日未満、14日間で9日未満、14日間で8日未満、14日間で7日未満、14日間で6日未満、14日間で5日未満、14日間で4日未満、14日間で3日未満、14日間で2日未満、14日間で1日未満に減少するか、または病変出血が止まる。
【0034】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、対象の皮膚上の病変リンパ漏、漏出、または滲出を減少させる。任意の実施形態において、病変漏出または滲出は、週7日未満、週6日未満、週5日未満、週4日未満、週3日未満、週2日未満、週1日未満に減少するか、または病変漏出もしくは滲出が止まる。任意の実施形態において、病変漏出または滲出は、14日間で13日未満、14日間で12日未満、14日間で11日未満、14日間で10日未満、14日間で9日未満、14日間で8日未満、14日間で7日未満、14日間で6日未満、14日間で5日未満、14日間で4日未満、14日間で3日未満、14日間で2日未満、14日間で1日未満に減少するか、または病変漏出もしくは滲出が止まる。
【0035】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、対象の皮膚のそう痒症を減少させる。任意の実施形態において、そう痒症は、週7日未満、週6日未満、週5日未満、週4日未満、週3日未満、週2日未満、週1日未満に減少するか、またはそう痒症が止まる。任意の実施形態において、そう痒症は、14日間で13日未満、14日間で12日未満、14日間で11日未満、14日間で10日未満、14日間で9日未満、14日間で8日未満、14日間で7日未満、14日間で6日未満、14日間で5日未満、14日間で4日未満、14日間で3日未満、14日間で2日未満、14日間で1日未満に減少するか、またはそう痒症が止まる。
【0036】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、対象の皮膚の発赤(または病変の色)を減少させる。任意の実施形態において、発赤は、週7日未満、週6日未満、週5日未満、週4日未満、週3日未満、週2日未満、週1日未満に減少するか、または発赤が消失する。任意の実施形態において、発赤は、14日間で13日未満、14日間で12日未満、14日間で11日未満、14日間で10日未満、14日間で9日未満、14日間で8日未満、14日間で7日未満、14日間で6日未満、14日間で5日未満、14日間で4日未満、14日間で3日未満、14日間で2日未満、14日間で1日未満に減少するか、または発赤が止まる。
【0037】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、対象の皮膚の痂皮を減少させる。任意の実施形態において、痂皮は、週7日未満、週6日未満、週5日未満、週4日未満、週3日未満、週2日未満、週1日未満に減少するか、または痂皮が消失する。任意の実施形態において、痂皮は、14日間で13日未満、14日間で12日未満、14日間で11日未満、14日間で10日未満、14日間で9日未満、14日間で8日未満、14日間で7日未満、14日間で6日未満、14日間で5日未満、14日間で4日未満、14日間で3日未満、14日間で2日未満、14日間で1日未満に減少するか、または痂皮が止まる。
【0038】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、対象の皮膚の過角化を減少させる。任意の実施形態において、病変の厚さが減少する。任意の実施形態において、隆起斑が減少する。
【0039】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、小嚢胞性LMの治療のための任意の追加の療法を排除する結果となり、このような療法には、フィールド放射線(XRT)、強膜療法、またはレーザー療法が含まれる。
【0040】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMを有する対象の皮膚への無水ラパマイシンゲル組成物の局所投与は、対象の皮膚の疼痛または発赤を減少させ、この疼痛または発赤は、0(症状なし)~10(重度)までの0~10段階の尺度を用いてランク付けして測定することができる。例えば、対象は、本明細書に開示される無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回局所投与した後、関連スコアにおいて少なくとも1点、少なくとも2点、少なくとも3点、少なくとも4点、少なくとも5点、少なくとも6点、少なくとも7点、少なくとも8点、または少なくとも9点の改善が見られる場合がある。
【0041】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMの症状の改善は、例えば、特定の状態の重症度に関する臨床医の認識を評価するために使用されるグローバル指標である臨床医全般的重症度印象(CGI-S)、または治療の有効性に関する臨床医の確信を反映する臨床医全般的変化印象(CGI-C)を介して、対象の臨床医によって報告される。例えば、対象は、本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回局所投与した後、CGI-Sスコアに少なくとも1点、少なくとも2点、少なくとも3点、少なくとも4点、または5点の改善が見られる場合がある。同様に、対象は、本明細書に開示されるように、無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回局所投与した後、CGI-Cスコアに少なくとも1点、少なくとも2点、少なくとも3点、少なくとも4点、少なくとも5点、または6点の改善が見られる場合がある。
【0042】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMの症状の改善は、例えば皮膚疾患QOL評価(DLQI)を通じて、対象自身によって報告される。例えば、対象は、本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回局所投与した後、DLQIスコアに少なくとも2点、少なくとも3点、少なくとも4点、少なくとも5点、少なくとも6点、少なくとも7点、少なくとも8点、少なくとも9点、少なくとも10点、少なくとも15点、少なくとも20点、少なくとも25点、または少なくとも30点の改善が見られる場合がある。
【0043】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMの症状の改善は、例えば、患者全般的重症度印象(PGI-S)を通じて、対象自身によって報告される。PGI-Sは、特定の状態の重症度に関する患者の認識を評価するために使用される全般的な指標であり、重症度を0(全くなし)~4(非常に重症)の尺度でランク付けする。例えば、本明細書に開示されるように、無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回局所投与した後、対象はPGI-Sのスコアにおいて少なくとも1点、少なくとも2点、少なくとも3点、または4点の改善が見られる場合がある。PGI-Sは、病変部の出血(PGI-SB)および/または漏出(PGI-SL)のような特定の症状の重症度を評価するために使用することができる。このように、任意の実施形態において、本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回局所投与した後、対象は、病変部の出血に関するPGI-SBのスコアにおいて、少なくとも1点、少なくとも2点、少なくとも3点、または4点の改善が見られる場合がある。同様に、対象は、本明細書に開示されるように、無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回局所投与した後、病変部の漏出に関して、PGI-SLのスコアに少なくとも1点、少なくとも2点、少なくとも3点、または4点の改善が見られる場合がある。
【0044】
任意の実施形態において、小嚢胞性LMの症状の改善は、例えば、-3(非常に悪化した)~3(非常に改善した)の尺度で治療の有効性に関する患者の考えを反映する患者全般的変化印象(PGI-C)を通じて、対象自身によって報告される。例えば、本明細書に開示されるように、無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回局所投与した後、PGI-Cのスコアに少なくとも1点、少なくとも2点、少なくとも3点、少なくとも4点、少なくとも5点、または6点の改善が見られる場合がある。
【0045】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物を1日1回局所投与した後、対象は、病変部の出血または漏出による支障がほとんどなく日常生活を行うことができる日数を増加させるなど、機能能力の全体的な改善が見られる場合がある。
【0046】
局所用組成物
本明細書に開示されているような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.1重量%~約6重量%のラパマイシン、約80重量%~約99重量%の1つまたはそれ以上の溶媒、約0.1重量%~約5重量%のゲル化剤、約0.001重量%~約1重量%の抗酸化剤、および選択的に緩衝剤を含む。
【0047】
任意の実施形態において、無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.1重量%~約5重量%、約0.1重量%~約4.5重量%、約0.1重量%~約4重量%、約0.1重量%~約3.5重量%、約0.1重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2.5重量%、約0.1重量%~約2重量%、約0.1重量%~約1.5重量%を含む。例えば、本明細書に開示される無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.1重量%~約1重量%、約1重量%~約5重量%、約1.5重量%~約5重量%、約2重量%~約5重量%、約2.5重量%~約5重量%、約3重量%~約5重量%、約3.5重量%~約5重量%、約4重量%~約5重量%、約4.5重量%~約5重量%の量のラパマイシンを含む。好ましくは、本明細書に開示される無水ラパマイシンゲル組成物は、約3.9重量%のラパマイシンを含む。
【0048】
溶剤システム
本明細書で開示する、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約80重量%~約99重量%、約80重量%~約98重量%、約80重量%~約97重量%、約80重量%~約96重量%、約80重量%~約95重量%、約80重量%~約90重量%、約80重量%~約85重量%の量の1つまたはそれ以上の溶媒を含む。好ましくは、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約95重量%の1つまたはそれ以上の溶媒を含む。より好ましくは、本明細書で開示する、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約94.9重量%の総量で存在する4つの溶媒を含む。
【0049】
本明細書に開示される、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物において使用するのに適した1つまたはそれ以上の溶媒は、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、DMSO、ジグリコール、プロピレングリコールモノカプリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、アジピン酸ジイソプロピル、イソプロピルアルコール、グリセロール、およびそれらの組み合わせから各々独立して選択される。好ましくは、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、イソプロピルアルコール、ポリエチレングリコール400、アジピン酸ジイソプロピル、およびグリセロールを含む4つの溶媒を含む。
【0050】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるように、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%の量のイソプロピルアルコールを含む。任意の実施形態において、無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の量のイソプロピルアルコールを含む。好ましくは、本明細書に開示されているような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約15重量%の量のイソプロピルアルコールを含む。
【0051】
任意の実施形態において、本明細書で開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約10重量%~約60重量%、約10重量%~約50重量%、約10重量%~約45重量%、約15重量%~約60重量%、約15重量%~約55重量%、約20重量%~約60重量%、約20重量%~約55重量%、約25重量%~約55重量%、約30重量%~約55重量%、または約40重量%~約60重量%の量のポリエチレングリコールを含む。好ましくは、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約54.9重量%の量のポリエチレングリコール400を含む。
【0052】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約10重量%の量のアジピン酸ジイソプロピルを含む。好ましくは、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約15重量%の量のアジピン酸ジイソプロピルを含む。
【0053】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%のグリセロールを含む。好ましくは、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約10重量%のグリセロールを含む。
【0054】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の量のプロピレングリコールを含む。
【0055】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の量のベンジルアルコールを含む。
【0056】
本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の量のDMSOを含む。しかしながら、任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、実質的にDMSOを含まないか、またはDMSOを含まない。
【0057】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の量のジグリコールを含む。
【0058】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の量のプロピレングリコールモノカプリレートを含む。
【0059】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルを含む。
【0060】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の量のテトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテルを含む。
【0061】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の量のブチレングリコールを含む。
【0062】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の量のジエチレングリコールを含む。
【0063】
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1つまたはそれ以上の溶媒の1つとして、約5重量%~約55重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%の量のトリエチレングリコールを含む。
【0064】
好ましくは、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、ポリエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アジピン酸ジイソプロピル、グリセロール、およびそれらの組み合わせから選択される1つまたはそれ以上の溶媒を含む。好ましくは、ポリエチレングリコールが含まれる場合、ポリエチレングリコールは約40重量%~約60重量%の量で存在する。好ましくは、イソプロピルアルコールが含まれる場合、イソプロピルアルコールは約10重量%~約20重量%の量で存在する。好ましくは、アジピン酸ジイソプロピルが含まれる場合、アジピン酸ジイソプロピルは約10重量%~約20重量%の量で存在する。好ましくは、グリセロールが含まれる場合、グリセロールは約5重量%~約20重量%の量で存在する。
【0065】
ゲル化剤
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.1重量%~約5重量%、約0.1重量%~約4.5重量%、約0.1重量%~約4重量%、約0.1重量%~約3.5重量%、約0.1重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2.5重量%、約0.1重量%~約2重量%、約0.1重量%~約1.5重量%のゲル化剤を含む。好ましくは、本明細書で開示される小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.1重量%~約1重量%のゲル化剤を含む。
【0066】
適切なゲル化剤の例としては、これに限定されるされるものではないが、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー981、カルボマー934P、グリセリルトリス-12-ヒドロキシステアレート、ヒドロキシステアリン、プロピレンカーボネート、ポリビニルピロリドン、およびそれらの組み合せを含む。任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、ポロキサマーおよびカルボマーなどのゲル化剤を含む。ポロキサマーの非限定的な例は、ポロキサマーP-188、ポロキサマーP-138、ポロキサマーP-237、ポロキサマーP-288、ポロキサマーP-124、ポロキサマーP-338、およびポロキサマーP-407である。他のブロックコポリマー、例えばポリ(エチレングリコール/D,L-ラクチド-コ-グリセリド)ポリ(.quadrature.-カプロラクタム)、およびヒドロキシプロピルセルロース(KLUCEL(商標))、グリセリルトリス-12-ヒドロキシステアレート、ヒドロキシステアリン、プロピレンカーボネート、ポリビニルピロリドンもゲル化剤として使用することができる。使用されるカルボマーの非限定的な例は、カルボマー981、カルボマー934、カルボマー934P、カルボマー940、カルボマー941、カルボマー1342、ポリカルボフィル、およびカルシウムポリカルボフィルである。好ましい実施形態において、ゲル化剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー981、カルボマー934P、グリセリルトリス-12-ヒドロキシステアレート、ヒドロキシステアリン、プロピレンカーボネート、ポリビニルピロリドン、およびそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、本明細書に開示される、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.1重量%~約1重量%のヒドロキシプロピルセルロースを含む。
【0067】
抗酸化剤
任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.001重量%~約1重量%、約0.001重量%~約0.5重量%、約0.001重量%~約0.1重量%、約0.001重量%~約0.05重量%、または約0.001重量%~約0.01重量%の量の抗酸化剤を含む。任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、アスコルビン酸、ビタミンEおよびその誘導体、α-トコフェロール、Ψ-トコフェロール、Δ-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸プロピル(PG)、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩、またはそれらの組み合わせなどの抗酸化剤を含む。好ましくは、本明細書に開示される、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、没食子酸プロピル(PG)、パルミチン酸アスコルビル、およびα-トコフェロールを含む抗酸化剤の混合物を含む。好ましくは、本明細書に開示されるような小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物中の抗酸化剤の総量は、約0.05重量%~約0.1重量%である。好ましくは、本明細書に開示される、小嚢胞性LMの治療における使用に適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.01重量%~約0.1重量%の量の没食子酸プロピル(PG)を含む。好ましくは、本明細書で開示される、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.01重量%~約0.05重量%のパルミチン酸アスコルビルを含む。好ましくは、本明細書に開示される、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約0.01重量%~約0.1重量%の量のα-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、および没食子酸プロピルの1つまたはそれ以上を含む。
【0068】
製剤
一例では、本明細書で開示される、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約2重量%~約6重量%のラパマイシン、約5重量%~約30重量%のイソプロピルアルコール、約40重量%~約60重量%のポリエチレングリコール400、約5重量%~約30重量%のアジピン酸ジイソプロピル、約5重量%~約0.重量%のポリエチレングリコール400、約5重量%~約30重量%のアジピン酸ジイソプロピル、約5重量%~約30重量%のグリセロール、約0.5重量%~約1.5重量%のヒドロキシプロピルセルロース、0.05重量%~約0.1重量%の合計量の1つまたはそれ以上の抗酸化剤、および緩衝剤を含む。例えば、緩衝剤は、約0.1重量%未満の量で存在するクエン酸である。
【0069】
一例では、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、約3.9重量%のラパマイシン、約15重量%のイソプロピルアルコール、約54.9重量%のポリエチレングリコール400、約15重量%のアジピン酸ジイソプロピル、約10重量%のグリセロール、約1重量%のヒドロキシプロピルセルロース、約0.05重量%の没食子酸プロピル、約0.02重量%のパルミチン酸アスコルビル、約0.002重量%のα-トコフェロール、および緩衝剤を含む。例えば、緩衝剤は、約0.1重量%未満の量で存在するクエン酸である。
【0070】
好ましくは、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療における使用に適した無水ラパマイシンゲル組成物は、水を含まない。任意の実施形態において、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療における使用に適した無水ラパマイシンゲル組成物は、1重量%未満の水、例えば0.5重量%未満の水、0.1重量%未満の水を含むか、または実質的に検出可能な水を含まない。
【0071】
好ましくは、本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、浸透促進剤を含まない。
【0072】
本明細書に開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物を分注する方法は、特に限定されない。例えば、ハンドポンプを用いて無水ラパマイシン組成物を分注する。例えば、ハンドポンプは、政府規制機関によって承認された対応するラベルによって指定された許容範囲内で、必要な用量のラパマイシンを分注するように構成される。ハンドポンプは、ポンプ動作当たり0.5~10mLの組成物、例えば、ポンプ動作当たり1、2、3、4、または5mLの組成物を送達する。任意の実施形態において、無水ラパマイシンゲル組成物は、薬学的に許容されるハンドポンプとともに包装される。
【0073】
別の例では、本明細書に開示されているように、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物を分注するために、液体薬ディスペンサーを使用する。液体薬ディスペンサーシステムには、一般的に、折り畳み可能なバッグタイプの設計を使用するか、またはフォロワーピストンタイプの設計を使用するかの2つの分注方法がある。折り畳み可能なバッグタイプの設計では、折り畳み可能なバッグが分注ポンプに取り付けられ、内容物が取り出されるにつれて徐々に折り畳まれる。ピストンタイプの設計では、通常は円筒形または楕円形の硬質容器が、分注ポンプによって製品が引き出されるにつれて容器の容積を徐々に減少させるフォロワーピストンを備えている。別の例では、無水ラパマイシンゲル組成物は、エアレスパウチ、ポンプ作動、容器システムを用いて分注される。
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の無水ラパマイシンゲル組成物の投与は、表皮において約120~990マイクロモル、約120~900マイクロモル、約600~900マイクロモルのCmaxを達成する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の無水ラパマイシンゲル組成物の投与は、真皮において約50~200マイクロモルのCmaxを達成する。
【0075】
本明細書で開示されるような、小嚢胞性LMの治療に使用するのに適した無水ラパマイシンゲル組成物は、一般に、濃厚な液体またはゲル状であるが、ペースト状の粘度に達することができる。一般に、粘度は、最小で約5,000cP、10,000cP、または15,000cP、好ましくは約20,000cPから最大で約12,000,000cP、2,000,000cP、またはさらに約600,000cPである。
【0076】
有利なことに、本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物中のラパマイシンは、長期間安定である。例えば、ラパマイシンは、本明細書に開示されるような無水ラパマイシンゲル組成物中で、約4℃~約50℃、4℃~約45℃、4℃~約40℃、4℃~約35℃、または4℃~約30℃の温度で、12~36ヶ月間安定である。
【0077】
定義および用語:以下の定義および説明は、特に明示しない限り、本明細書に記載される本発明のあらゆる実施形態および態様に適用される。
【0078】
本明細書において、ラパマイシンの「有効量(effective amount)」または「治療有効量(therapeutically effective amount)」とは、意図されたタスクを実行し、意図された結果を達成するのに十分な量の阻害剤を指す。例えば、治療有効量のラパマイシンは、特定の標的適応症、例えば、小嚢胞性LM、またはmTOR阻害剤が使用される他の状態を治療するのに十分な量である。様々な生物学的因子が、特定の薬剤がその意図された任務を遂行する能力に影響を及ぼす可能性があることが理解される。したがって、「有効量」または「治療有効量」は、そのような生物学的因子に依存する場合がある。さらに、治療効果の達成は、当該技術分野で知られている評価を用いて、医師または他の資格を有する医療従事者によって測定されるが、個人差および治療に対する応答が、治療効果の達成をやや主観的な決定とし得ることが認識されている。有効量の決定は、薬学および医学の分野における通常の技術の範囲内である。「対象(subject)」、「個体(individual)」または「患者(patient)」という用語は、互換的に使用され、本明細書で使用される場合、ヒトおよび非ヒト動物を含むことが意図される。非ヒト動物には、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ラット、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などの哺乳動物および非哺乳動物が含まれる。哺乳類の例としては、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどが含まれる。いくつかの例において、対象はヒトまたは人類である。本方法は、ウイルス感染または疾患を有するヒトを治療するのに適している。対象は、ウイルス感染に関して症候性であっても無症候性であっても良い。
【0079】
本明細書に記載される製剤は、重量%(wt. %)として報告される量の成分または成分を含む。特に断りのない限り、重量%(wt. %)は重量%(weight percent)、または記載される特定の成分の重量を製剤全体の重量で割ったものを示し、その配当に100を乗じてパーセントを算出する。本明細書のすべての製剤において、すべての成分を含む製剤は100%とみなされる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「約(about)」という用語は、所与の値が終点より「少し上」または「少し下」であっても良いことを規定することにより、数値範囲の終点に柔軟性を与えるために使用される。本明細書で使用される場合、数値の直前にある「約」という用語は、本開示の文脈がそうでないことを示すか、またはそのような解釈と矛盾しない限り、その数値のプラスマイナス10%の範囲を意味する。例えば、「約50」は45~55を意味し、「約25,000」は22,500~27,500を意味する。
【0081】
本開示において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数形の参照を含む。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本開示のいかなる内容も、本開示に記載された実施形態が、先行発明によりかかる開示に先行する権利を有していないことを認めるものとして解釈されるものではない。本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、「含むが、これに限定されない(including,but not limited to)」を意味する。
【0082】
「含む(Comprising)」は、本明細書において、「含むが、これに限定されない(including,but not limited to)」という意味で使用される。様々な組成物、方法、および装置は、様々な成分または工程を「含む(comprising)」という用語で記載されているが、任意の実施形態において、組成物もしくは方法はまた、記載された成分または工程「から本質的に成る(consist essentially of)」または「から成る(consist of)」ことができるが、そのような実施形態は、簡潔さ、明瞭さ、および効率のために、明示的に列挙されず、含まれない。いずれにせよ、「から成る」という用語は、完全に閉じたメンバー群と同様に、本質的に閉じたメンバー群を定義し、含むと解釈すべきである。本明細書において「含むが、これに限定されない」ことを示すために使用される他の用語は、「含む(including)」、「有する(having)」、「有する(have)」、「含む(contain)」などである。同様に、用語「有する(having)」は「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は「含むが、これに限定されない(includes,but is not limited to)」と解釈されるべきである。
【0083】
本明細書において、「実質的に(substantially)」という用語は、作用、特性、性質、状態、構造、品目、または結果の完全な、またはほぼ完全な範囲または程度を指す。例えば、「実質的に」囲まれている物体は、その物体が完全に囲まれているか、またはほぼ完全に囲まれていることを意味する。絶対的な完全性からの正確な逸脱の許容度は、場合によっては特定の文脈に依存することがある。しかし、一般的に言えば、絶対的な完全性が得られるのと同じような全体的な結果が得られるような完全性に近い状態である。ある作用、特性、性質、状態、構造、品目、または結果の完全な欠如、またはそれに近い欠如を意味する否定的な意味合いで使用される場合も、「実質的に」の使用は同様に適用可能である。例えば、所定の製剤中の特定の組成物または成分または成分の存在または欠如に言及する「実質的に含まない(substantially free of)」という用語は、その成分が存在するとしても、製剤のわずかな成分または不純物を形成するのみであるように、製剤からその成分が完全にまたはほぼ完全に存在しないことを意味する。ラパマイシンの溶媒または溶媒和物とは別に、「実質的に含まない」という表現が使用される場合、製剤の治療効果に悪影響を及ぼすほどラパマイシンの量を可溶化すべきではない、存在する成分の量を指す。
【0084】
当業者にはさらに、導入された請求項の引用の特定の数が意図される場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが理解されよう。例えば、理解の一助として、以下の添付の特許請求の範囲には、特許請求の範囲の記載を導入するために「少なくとも1つ(at least one)」および「1つまたはそれ以上(one or more)」という導入句が使用されている場合がある。しかしながら、このような語句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項の繰り返しの導入が、そのような導入された請求項の繰り返しを含む特定の請求項を、そのような繰り返しを1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではなく、たとえ同じ請求項が導入語句「1つまたはそれ以上」または「少なくとも1つ」および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つまたはそれ以上」を意味すると解釈されるべきである)。また、クレームの冒頭に使用される定冠詞の使用についても同様である。さらに、導入された請求項の繰り返しの特定の数が明示的に詳述されている場合であっても、当業者は、そのような詳述は、少なくとも詳述された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するだろう(例えば、他の修飾語なしの「2つの詳述」というありのままの詳述は、少なくとも2つの詳述、または2つ以上の詳述を意味する)。さらに、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」に類似する慣例が使用される場合、一般的に、そのような構成は、当業者がその慣例を理解するだろう意味で意図される(例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、AおよびB、AおよびC、BおよびC、ならびに/またはA、B、およびCを有するシステムを含むが、これらに限定されない)。A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」に類似する慣例が使用される場合、そのような構成は、当業者が慣例を理解するだろう意味で意図される(例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、AおよびB、AおよびC、BおよびC、ならびに/またはA、B、およびCを有するシステムを含むが、これらに限定されない)。当業者にはさらに、明細書、特許請求の範囲、または図面のいずれにおいても、2つ以上の代替的な用語を提示する実質的に任意の接続詞的な単語および/または語句は、用語の一方、用語のいずれか、または両方の用語を含む可能性を企図するものと理解されるべきであることが理解されよう。例えば、「AまたはB」という語句は、「A」または「B」、あるいは「AおよびB」の可能性を含むものと理解される。
【0085】
当業者には理解されるように、本明細書で開示されるすべての範囲は、書面による説明を提供するという観点など、あらゆる目的のために、あらゆる可能な部分範囲およびその部分範囲の組み合わせも包含する。どのような列挙された範囲も、同じ範囲が少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解されることを十分に説明し、可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で議論される各範囲は、下3分の1、中3分の1、上3分の1などに容易に分解することができる。また、当業者には理解されるだろうが、「最大(up to)」、「少なくとも(at least)」などのすべての文言は、言及された数を含み、上述したように、その後部分範囲に分解することができる範囲を指す。最後に、当業者には理解されるだろうが、範囲は個々の群を含む。従って、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、または3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を持つ群は、1、2、3、4、5個の細胞を持つ群などを指す。
【0086】
本開示は、記載された特定のシステム、装置、および方法に限定されるものではない。これらは変化する可能性があるからである。本明細書で使用される用語は、特定のバージョンまたは実施形態を説明するためだけのものであり、範囲を限定することを意図するものではない。上記開示された特徴および他の特徴および機能、またはそれらの代替物の変形は、他の多くの異なるシステムまたは用途に組み合わせることができる。当業者によって、現在予見されていない、または予期されていない様々な代替、修正、変形、または改良がその後なされる可能性があり、それらの各々もまた、開示された実施形態によって包含されることが意図される。
【0087】
以下の実施例は、本発明の実施形態をさらに説明するために提供されるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。これらは、使用されるものの典型であるが、当業者に公知の他の手順、方法論、または技術が、代替的に使用される。
【実施例】
【0088】
実施例1:ラパマイシン3.9%局所用ゲルの安全性および有効性を評価する多施設、第2相、非盲検試験
理論に束縛されることを望まないが、小嚢胞性LMを含むLMの特異的な病態生理学はよく理解されていない。しかし、最近の文献によると、LMの~90%は、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3KCA)の体細胞活性化変異、特にp110a触媒サブユニットをコードするセグメントの体細胞活性化変異が原因であることが示唆されている。これらの変異は、PI3KCA/AKT/mTORシグナル伝達経路の異常な活性化を引き起こし、その結果、リンパ管新生時のリンパ管過形成を引き起こす。メカニズム的には、PI3K経路の過活性化は、内皮細胞の増殖と遊走、壁細胞の欠損、異常なリンパ管網形成をもたらす。この過形成は最終的に、この疾患で見られるリンパ管路の解剖学的奇形をもたらし、その結果、出生時に疾患を呈することになる。
【0089】
小嚢胞性LMに関連するこれらの成長しすぎたリンパ管は、小水疱、丘疹、斑の形で表皮につながり、表面に漏出する(リンパ漏)。治癒した皮膚はしばしば過角化する。これらの病変は出血することがあるが、これは通常、過角化部位が外傷を受けた結果であり、鮮やかな赤色の血液を生じ、リンパ漏とは区別される。小嚢胞性LMは遺伝子の突然変異によって起こるため、時間の経過とともに病変は増殖し、再度の漏出と治癒に伴い、より丘疹状、角化性になる傾向がある。
【0090】
mTOR阻害剤であるシロリムスは、Streptomyces hygroscopicusという細菌によって産生される大環状ラクトン(マクロライド)である。前述したように、PI3KCAの体細胞活性化変異と下流経路の関連シグナル伝達が、すべてのLMの病因の根底にあると考えられており、その結果、内皮細胞が増殖し、異常なリンパ管が形成される。シロリムスはこの経路の下流の要素であるmTORを阻害する。そうすることで、シロリムスはPI3KCA/AKT/mTORの過剰活性化を抑制し、内皮細胞の増殖とそれに続く奇形リンパ管の形成を抑制すると考えられている。さらに、他のメカニズムにより、シロリムスは罹患組織におけるリンパ液の形成を減少させ、LMに伴う臨床症状を最小限に抑えるのに役立つと考えられている。
【0091】
小嚢胞性LMは重篤で致死的な結果をもたらす可能性があるにもかかわらず、この疾患に対してFDAが承認した薬剤はない。実際、現在可能な治療法(手術、硬化療法、レーザー、凍結療法)は侵襲的であり、さらなる瘢痕化/炎症を誘発する可能性があり、完全には有効ではなく、高い再発率をもたらしている。
【0092】
臨床研究では、LM患者におけるシロリムスの経口投与の安全性と有効性が評価されており、小嚢胞性LM患者に対するシロリムスの未承認配合外用療法(0.1~1%)の症例研究も報告されている。LM病変の治療に対するシロリムスの有効性と安全性に関する系統的評論では、シロリムスが予後を有意に改善することが示されており、ある評論ではLM患者におけるプールされた臨床的有効性(通常は3つの臨床的カテゴリーのうち1つの改善と定義される部分奏効、または通常は病変の完全消失と定義される完全奏効)は94.9%であり、別の評論では84.5%の有効性が報告されている。LM患者を対象とした発表された研究の評論では、研究対象となった患者の>90%が<18歳であった。このように、現在の文献は全体として、小児および成人患者におけるLMに対するシロリムス療法の有効性に関する情報を提供している。
【0093】
しかし、経口シロリムスは重篤な有害事象プロファイルを伴い、特に小児や思春期の患者には頻繁な患者モニタリングを必要とするため、その使用は制限される。シロリムスの副作用は、影響を受ける細胞経路と、承認された2つの適応症(腎移植を受けた患者(>13歳)に対する臓器拒絶反応予防およびリンパ脈管筋腫症患)の製品ラベルによって説明される。
【0094】
腎移植受容者における臓器拒絶反応の予防を目的とした臨床試験において、RAPAMUNE(登録商標)で観察された最も一般的(≧30%)な副作用は、末梢性浮腫、高トリグリセリド血症、高血圧、高コレステロール血症、クレアチニン増加、便秘、腹痛、下痢、頭痛、発熱、尿路感染、貧血、悪心、関節痛、疼痛、血小板減少症を含む。同様に、リンパ脈管筋腫症の臨床試験において、RAPAMUNE(登録商標)で観察された最も一般的(≧20%)な副作用は、口内炎、下痢、腹痛、吐き気、鼻咽頭炎、にきび、胸痛、末梢性浮腫、上気道感染、頭痛、めまい、筋肉痛、高コレステロール血症であった。両群で報告されたその他の一般的な副作用は、にきび、口内炎、鼻咽頭炎、上気道感染、めまいなどであった。RAPAMUNE(登録商標)の有害事象プロファイルのより詳細な説明は、製品添付文書に記載されている。
【0095】
LMにはFDAが承認した治療法がなく、経口シロリムスの有効性を示す臨床研究があるため、シロリムスはしばしば臨床で使用され、複雑なLMに対する第一選択療法として推奨されている。しかし、全身吸収を制限し、経口シロリムスと比較して有害事象を減少させる標的治療に対する大きなアンメットニーズが残っている。本研究の参加者は、全身への曝露を制限しながら、皮膚リンパ管奇形にシロリムスを送達することを目標として選択された。
【0096】
訪問時1における本試験の適格基準は、以下のとおりである。(1)スクリーニング訪問時の年齢が少なくとも13歳であること。(2)18歳未満の場合、参加者および法定後見人は、試験手技の前に書面によるインフォームド・コンセント/アセントを提供しなければならない。(3)参加者は、臨床的に確認された小嚢胞性リンパ管奇形(LM)を有していなければならない。(4)治療の対象となる小嚢胞性LM(病変)は、定義された総面積が約25cm2より大きく、約200cm2未満でなければならない(総面積内の病変は連続している必要はない)。(5)対象が安全性試験およびPK試験のために血液を採取することに同意する。(6)治験責任医師は、小嚢胞性LMに一致する小胞、丘疹、または斑の存在を確認しなければならない。(7)参加者は、過去14日間に5日以上の出血または漏出を報告している。(8)参加者は治験期間中、他の外用薬(処方薬または市販薬)の塗布を控える意思がある。病変部以外の保湿剤およびエモリエント剤の使用は許可される。(9)参加者は、治療の遅れが対象の健康を損なう可能性があると治験責任医師が考える場合を除き、試験IP以外による小嚢胞性LMの医学的介入治療(すなわち、薬物療法または硬化療法などの介入治療)を見合わせる意思がある。(10)参加者が大きな手術を受けてから少なくとも4週間が経過していること。(11)参加者が血小板、赤血球もしくは白血球の数または機能を支持する成長因子(GF)による治療を完了してから少なくとも14日が経過していること。(12)参加者は、無水ラパマイシンゲルによる治療を開始する前、および無水ラパマイシンゲルによる治療中に、4週間または半減期5回のいずれか長い方の期間内に治験薬または生物学的製剤の投与を受けてはならない(ただし、緊急時使用許可の下で承認されたCOVID-19用の薬剤、生物学的製剤またはワクチンは除く)。(13)研究対象となる小嚢胞性LMに投与されたフィールド放射線(XRT)から6ヶ月以上経過していること。スクリーニング期間中:(14)十分な臓器機能、LDLおよびコレステロール値を含む参加者の全体的な健康状態が、本試験への参加を許可するのに適切であると治験責任医師が判断している。(15)eGFRが90mL/分/1.73m2より大きく、またはCrClが90mL/分より大きく、参加者が十分な腎機能を有している。
【0097】
以下の場合、研究対象から除外される。訪問時1において:(1)過去6週間以内にシロリムスを使用したことがある。(2)参加者は過去3ヵ月以内に、小嚢胞性LMを含む血管異常の治療に関する治験薬を評価する臨床試験に参加したことがある。(3)参加者が、試験IPの評価に支障をきたす可能性のある外用薬、内服薬、または介入治療を使用している。これらの中には以下の使用が含まれる:(a)4週間以内の骨髄抑制化学療法、(b)3ヵ月以内の光線力学的療法(PDT)または病変を対象とした他のレーザー手術、(c)全身性ステロイドまたは他の免疫抑制剤による慢性治療、または(d)過去2ヵ月以内に抗生物質による治療を必要とする医学的に重大な感染症に罹患した者。(4)参加者が、CYP3A4活性を阻害/誘導する薬剤およびOTCサプリメントを、併発している病状のコントロールのために必要としている。(5)参加者の治療対象の病変が、主に湿潤粘膜または眼窩縁内にある。(6)参加者が試験薬製剤の成分に対して既知の過敏症である。(7)参加者が既知のHIV血清陽性の既往歴または既知の免疫不全である。(8)参加者が全身療法を必要とする重篤な全身症状を伴う複雑な血管異常を有する。(9)参加者が、シロリムスの安全性監視要件の遵守を損なう可能性のある重篤かつ/または管理されていない医学的疾患を併発している。(10)治験責任医師が癌の既往歴は安全性に交絡しないと結論づけた場合を除き、参加者が過去5年以内に浸潤性癌の治療を受けたことがある。(11)参加者が妊娠中、授乳中、または追跡期間を含む試験期間中に妊娠を計画している女性である。(12)妊娠の可能性がある参加者で、避妊措置を遵守する意思がない、または遵守できない。(13)参加者が、治験責任医師の見解において、対象を重大な危険にさらす可能性がある、試験結果を混乱させる可能性がある、または対象の試験参加を著しく妨害する可能性がある状態または状況にある。(14)治験責任医師が、全ての検査および手順、治験薬投与レジメンの遵守、その他治験実施計画書により要求される活動を遵守する意思がない、または遵守できないと判断した参加者である。(15)参加者が過去6週間以内にCOVID-19またはCOVID-19ワクチンのいずれかを接種している。
【0098】
非盲検治療期間の対象基準:1)スクリーニング期間の終了、2)ベースライン期間の終了:a)初日以前の過去14日間のうち、参加者が平均≧5日漏出または出血していた、またはb)14日間のうち9日以上漏出または出血していた、3)ベースライン期間中、PDDの完了に>70%のコンプライアンスを維持していた。非盲検治療期間の除外基準:1)治験責任医師が、試験薬投与レジメンおよびその他のプロトコールで要求される活動の遵守を含め、すべての検査および手順の遵守を維持する意思がない、または維持できないと判断した参加者。
【0099】
無水ラパマイシンゲルは、以下の表1に記載されているような製剤である。
【表1】
【0100】
対象全員が12週間の治療を完了し、夕方、少なくとも寝る1時間前に無水ラパマイシンゲルを局所投与する。無水ラパマイシンゲルは1日1回、病変部のみに塗布し、その範囲は200cm2を超えないようにする。具体的な使用方法は、参加者の使用説明書に記載されている。患部が200cm2未満の場合、ゲルは対象部位を覆うように塗布し、残ったゲルは廃棄する。
【0101】
安全性は有害事象(AE)評価により評価される。試験期間中、対象は新規および進行中のAEの発生について評価される。AEの説明には、発現日、消失日(消失した場合)、最大重症度、重篤度、試験薬に関して取られた処置、是正処置、結果、および治験責任医師による因果関係の評価が含まれる。いずれの来院時においても、AEは、治癒(正常またはベースライン状態に戻る)するまで、または治験責任医師が判断する臨床的に安定な状態まで追跡される。
【0102】
効能評価には以下が含まれる:
●臨床医全般的重症度印象(CGI-S)
●臨床医全般的変化印象(CGI-C)
●患者全般的重症度印象(PGI-S)
●患者全般的変化印象(PGI-C)
●漏出に対する患者全般的重症度印象(PGI-SL)
●出血に対する患者全般的重症度印象(PGI-SB)
●病変部からの漏出が報告された日数
●病変部からの出血が報告された日数
●病変部からの漏出または出血が報告された日数
●病変が機能に及ぼす影響の変化
●LM Symptom Severity Scaleに基づく病変部の疼痛、痂皮、発赤の重症度
●皮膚疾患QOL評価(DQLI)(≧16歳の参加者)または小児皮膚疾患QOL評価(≦15歳の参加者)
●病変の厚さ/高さまたは大きさ
●参加者全体の満足度
【0103】
分析集団:
安全性/治療意図(ITT)集団:少なくとも1回の試験介入を受けた全対象者。プロトコール集団:有効性評価項目に影響を及ぼす重大なプロトコール違反がなく治療を完了した全対象者。
【0104】
有効性評価項目は以下の通りである:
●ベースラインから84日目までのCGI-Sの変化。CGI-Sは以下の領域で個別に測定される:
○病変の高さ(小水疱、丘疹、斑を含む)
○リンパ漏の出現
○出血の出現
○痂皮/過角化の出現
○紅斑の出現
○全体的な重症度
●ベースラインから84日目までのCGI-C
●ベースラインから84日目までの漏出頻度の変化
●ベースラインから84日目までの出血頻度の変化
●ベースラインから84日目までの漏出に対するPGI-SLの変化
●ベースラインから84日目までの出血に対するPGI-SBの変化
●ベースラインから84日目までの漏出または出血の頻度の変化
●ベースラインから84日目までの参加者が報告した症状の変化。以下の症状が測定される:
○疼痛
○痂皮
●ベースラインから84日目までの全般的PGI-Sの変化
●PGI-C
●PGI-CL
●PGI-CB
●ベースラインから84日目までの病変の機能への影響の変化
●10項目の質問による皮膚疾患QOL評価(≧16歳の参加者)または小児皮膚疾患QOL評価(≦15歳の参加者)の変化。
●写真で測定した病変の高さまたは大きさの変化
●TSQMによる参加者の総合満足度
【実施例】
【0105】
実施例2:評価
臨床医全般的重症度印象(CGI-S)
CGI-Sは、臨床医が決定した疾患活動性の全般的な要約指標である。臨床医は各診察時にCGI-Sを5段階のリッカート尺度で記入する。臨床医は評価時に入手可能なデータを考慮する。
【0106】
以下は、臨床医に提示されるCGI-Sの質問と尺度である。各領域の質問にはそれぞれ独立して答えなければならない:
【0107】
臨床医全般的変化印象(CGI-C)
7段階のリッカート尺度である臨床医全般的変化印象(CGI-C)が使用される。
【0108】
CGI-Cは治験責任医師が様々な時点で紙に記入する。7段階のリッカート尺度は変わらないが、各時点で尋ねられる質問は異なり、同じベースライン期間を参照する。
【0109】
患者全般的変化印象(PGI-C)
7段階のリッカート尺度である患者全般的変化印象(PGI-C)が使用される。
【0110】
PGI-Cは治験責任医師が様々な時点で紙に記入する。7段階のリッカート尺度は変わらないが、各時点で尋ねられる質問は異なり、同じベースライン期間を参照する。
【0111】
患者全般的重症度印象(PGI-S)
参加者の病変の重症度に関する全般的な印象(患者全般的重症度印象)は自己申告とし、各受診時に5段階のリッカート尺度で把握する。以下は参加者に提示される質問と尺度である:
【0112】
参加者の重症度に関する全般的な印象に加えて、参加者はPDDにおいて毎週、漏出に対する患者全般的重症度印象(PGI-SL)と出血に対する患者全般的重症度印象(PGI-SB)も自己申告する。
【0113】
小嚢胞性LM症状重症度尺度
全般的な重症度の印象に加えて、参加者はPDDにおいて、疼痛の重症度(毎日)および痂皮と発赤の症状の重症度(毎週)を11段階のLM症状重症度尺度で評価するよう求められる:
【0114】
病変漏出の評価
参加者は、PDDにおいて、研究のために特定されたLM病変からの漏出を経験したかどうかを毎日質問される。
【0115】
病変出血の評価
参加者は、PDDにおいて、研究のために特定されたLM病変からの出血を経験したかどうかを毎日質問される。
【0116】
機能に対する病変の評価
参加者はPDDにおいて、LM病変からの出血や漏出が日常生活に影響を与えたかどうかを毎日質問される。
【0117】
病変の大きさの変化
病変の大きさと高さは、SoAおよび撮影マニュアルに従い、3Dデジタル写真を用いて測定する。
【0118】
皮膚疾患QOLおよび小児皮膚疾患QOL(DQLI)
【0119】
治療満足度質問票(TSQM)
薬物に対する治療満足度質問票(TSQM-9)は、治療満足度を測る尺度であり、異なる薬物の種類や健康状態間での比較が可能である。本試験におけるTSQM-9の目的は、試験薬に対する参加者の満足度を評価することである。質問票は84日目に参加者が記入する。
【実施例】
【0120】
実施例3:対象1の結果
対象1は中等度の小嚢胞性LMであった。
図4は、ベースラインの小嚢胞性LMの評価と、治療後28日目、56日目、84日目の評価を示している。臨床訪問時の臨床医による評価(表2)、臨床訪問時の患者による評価(表3)、患者による毎日または毎週の評価(表4)を以下に示す。
【実施例】
【0121】
実施例4:対象2の結果
対象2は重度の小嚢胞性LMであった。
図5は、ベースラインの小嚢胞性LMの評価と、治療後28日目、56日目、84日目の評価を示している。臨床訪問時の臨床医による評価(表5)、臨床訪問時の患者による評価(表6)、患者による毎日または毎週の評価(表7)を以下に示す。
【実施例】
【0122】
実施例5:対象3の結果
対象3は中等度の小嚢胞性LMであった。
図6は、ベースラインの小嚢胞性LMの評価と、治療後28日目、56日目の評価を示している。臨床訪問時の臨床医による評価(表8)、臨床訪問時の患者による評価(表9)、患者による毎日または毎週の評価(表10)を以下に示す。
【実施例】
【0123】
実施例6:対象4の結果
対象4は中等度の小嚢胞性LMであった。ベースラインの小嚢胞性LMの評価と、治療後28日目、56日目、84日目の評価はプロトコールに従って行われた。臨床訪問時の臨床医による評価(表11)、臨床訪問時の患者による評価(表12)、および患者による毎日または毎週の評価(表13)を以下に示す。
【実施例】
【0124】
実施例7:対象5の結果
対象5は中等度の小嚢胞性LMであった。
図7は、ベースラインの小嚢胞性LMの評価と、治療後28日目、56日目、84日目の評価を示している。臨床訪問時の臨床医による評価(表14)、臨床訪問時の患者による評価(表15)、および患者による毎日または毎週の評価(表16)を以下に示す。
【実施例】
【0125】
実施例8:対象6の結果
対象6は中等度の小嚢胞性LMであった。
図8は、ベースラインの小嚢胞性LMの評価と、治療後28日目、56日目の評価を示している。臨床訪問時の臨床医による評価(表17)、臨床訪問時の患者による評価(表18)、患者による毎日または毎週の評価(表19)を以下に示す。
【実施例】
【0126】
実施例9:対象7の結果
対象7は中等度の小嚢胞性LMであった。
図9は、ベースラインの小嚢胞性LMの評価と治療後28日目の評価を示している。臨床訪問時の臨床医による評価(表20)、臨床訪問時の患者による評価(表21)、および患者による毎日または毎週の評価(表22)を以下に示す。
【実施例】
【0127】
実施例10:対象8の結果
対象8は重度の小嚢胞性LMであった。
図10は、ベースラインの小嚢胞性LMの評価と治療後28日目の評価を示している。臨床訪問時の臨床医による評価(表23)、臨床訪問時の患者による評価(表24)、患者による毎日または毎週の評価(表25)を以下に示す。
【実施例】
【0128】
実施例11:対象9の結果
対象9は中等度の小嚢胞性LMであった。
図11に、ベースラインの小嚢胞性LMの評価と治療後28日目の評価を示している。臨床訪問時の臨床医による評価(表26)、臨床訪問時の患者による評価(表27)、患者による毎日または毎週の評価(表28)を以下に示す。
【実施例】
【0129】
実施例12:対象10の結果
対象10は重度の小嚢胞性LMであった。
図12は、ベースラインの小嚢胞性LMの評価と治療後28日目の評価を示している。臨床訪問時の臨床医による評価(表29)と臨床訪問時の患者による評価(表30)を以下に示す。
【実施例】
【0130】
実施例10:安全性
治療に関連した有害事象(TRAE)を表23に示す。対象1名が、痒み、結節の圧痛、ピリピリ感などの軽度のTRAEを報告した。対象2名が、塗布部位の疼痛、灼熱感、痒み、吐き気、発赤を含む中等度のTRAEを報告した。臨床的に重要な臨床検査値やバイタルサインの異常はなかった。
【0131】
本発明を上記の実施例を参照して説明したが、本発明の精神および範囲内に修正および変形が包含されることは理解されるだろう。従って、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【国際調査報告】