(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】クライオ・ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 37/08 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
F04B37/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516361
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 US2022043272
(87)【国際公開番号】W WO2023043707
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518414306
【氏名又は名称】チャート・エナジー・アンド・ケミカルズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】デュコート,ダグラス・エイ,ジュニア
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA30
3H076BB10
3H076BB21
3H076CC28
3H076CC31
3H076CC42
3H076CC99
(57)【要約】
極低温液体を圧送するためのポンプ(10)は、その中にピストン(34)が摺動可能に配置されているシリンダ(32)を有するポンプ・ハウジング(20)を含む。中間流体を受け入れる中間流体チャンバ(54)は、シリンダ(32)内にピストン(34)の第1の端部と隣り合って画定され、流体圧送チャンバ(52)は、シリンダ内にピストン(34)の第2の端部と隣り合って画定される。中間流体シール(36)は、ピストン(34)に取り付けられ、シリンダ(32)と係合する。圧送流体シール(38)は、ピストン(34)に取り付けられ、シリンダ(32)と係合するように構成され、上記圧送流体シール(38)は、シリンダ(32)内で中間流体シール(36)と圧送流体シール(38)との間に差圧空間(62)が画定されるように、中間流体シール(36)から離間される。差圧排気弁(66)は、差圧空間(62)に流体連通している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.シリンダを画定しているポンプ・ハウジングと、
b.ピストンであって、中間流体を受け入れるように構成されている中間流体チャンバが前記シリンダ内に前記ピストンの第1の端部と隣り合って画定され、流体圧送チャンバが前記シリンダ内に前記ピストンの第2の端部と隣り合って画定されるように、前記シリンダ内に摺動可能に配置されており、前記流体圧送チャンバは、入口および出口を含む、ピストンと、
c.前記ピストンに取り付けられており、前記シリンダに係合するように構成されている中間流体シールと、
d.前記ピストンに取り付けられており、前記シリンダに係合するように構成されている圧送流体シールであって、前記シリンダ内で前記中間流体シールと前記圧送流体シールとの間に差圧空間が画定されるように前記中間流体シールから離間されている、圧送流体シールと、
e.前記差圧空間と流体連通している差圧排気弁と、
f.前記差圧排気弁に動作可能に接続されており、前記差圧空間内の圧力を感知するように、および前記差圧空間内の前記圧力が予め定められた圧力レベルに達したときに前記差圧排気弁を開くように構成されている差圧スイッチと、
を備える、極低温液体を圧送するためのポンプ。
【請求項2】
前記ポンプ・ハウジングの一部がその中に配置される槽を更に備え、前記槽は、前記ポンプ・ハウジングの前記一部を前記極低温液体内に受け入れ、沈めさせるように、および、圧送するために前記圧送チャンバの前記入口に極低温液体を供給するように構成されている、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記差圧空間が中間流体差圧空間と圧送流体差圧空間とに分割されるように、前記中間流体シールと前記圧送流体シールとの間で前記ピストンに取り付けられている補助シールを更に備える、請求項1に記載のポンプ。
【請求項4】
前記差圧排気弁は、前記中間流体差圧空間と流体連通している中間流体排気弁と、前記圧送流体差圧空間と流体連通している圧送流体排気弁とを含み、前記差圧スイッチは、前記中間流体差圧排気弁に動作可能に接続されている中間流体差圧スイッチと、前記圧送流体差圧排気弁に動作可能に接続されている圧送流体差圧スイッチとを含み、前記中間圧力差圧スイッチは、前記中間流体差圧空間内の圧力を感知するように、および、前記中間流体差圧空間内の前記圧力が第1の予め定められた圧力レベルに達したときに前記中間流体差圧排気弁を開くように構成されており、前記圧送流体圧力差圧スイッチは、前記圧送流体差圧空間内の圧力を感知するように、および、前記圧送流体差圧空間内の前記圧力が第2の予め定められた圧力レベルに達したときに前記圧送流体差圧排気弁を開くように構成されている、請求項3に記載のポンプ。
【請求項5】
前記第1の予め定められた圧力レベルおよび前記第2の予め定められた圧力レベルは、前記中間流体チャンバ内の中間流体の圧力未満である、請求項4に記載のポンプ。
【請求項6】
前記予め定められた圧力レベルは、前記中間流体チャンバ内の中間流体の圧力未満である、請求項1に記載のポンプ。
【請求項7】
前記差圧空間は、環状の空間である、請求項1に記載のポンプ。
【請求項8】
前記ピストンが作動して前記極低温液体を前記圧送チャンバから圧送するように、前記中間流体チャンバに中間流体を周期的に供給するための駆動システムを更に備える、請求項1に記載のポンプ。
【請求項9】
前記駆動システムは、
i)供給された中間流体を収容するように構成されている中間流体容器と、
ii)前記中間流体容器から中間流体を受け入れ、圧送するように構成されている高圧ポンプと、
iii)前記高圧ポンプから中間流体を受け入れるように、および、開放構成にあるときに中間流体を前記ポンプ・シリンダの前記中間流体チャンバへと導くように構成されている第1の作動弁と、
iv)前記ポンプ・シリンダの前記中間流体チャンバから中間流体を受け入れ、開放構成にあるときに中間流体を前記中間流体容器へと導くように構成されている第2の作動弁と、
を含む、請求項8に記載のポンプ。
【請求項10】
前記駆動システムは、開放構成にあるときに中間流体流を前記高圧ポンプから前記中間流体容器へと導くように構成されている高圧再循環弁を更に含む、請求項9に記載のポンプ。
【請求項11】
前記中間流体容器は、前記中間流体容器内の供給された中間流体を冷却するように構成されている冷凍コイルを含む、請求項9に記載のポンプ。
【請求項12】
前記ピストンに動作可能に接続されており、前記ピストンの位置が検出され得るように構成されている近接スイッチを更に備える、請求項1に記載のポンプ。
【請求項13】
前記極低温液体は、水素液体である、請求項1に記載のポンプ。
【請求項14】
前記中間流体は、プロパンである、請求項1に記載のポンプ。
【請求項15】
前記中間流体は、1-ブテンである、請求項1に記載のポンプ。
【請求項16】
g.前記ポンプ・ハウジングの一部がその中に配置される槽であって、前記ポンプ・ハウジングの前記一部を前記極低温液体内に受け入れ、沈めさせるように、および、圧送するために前記圧送チャンバの前記入口に極低温液体を供給するように構成されている、槽と、
h.前記槽との間に槽断熱空間が画定されるように前記槽を取り囲む槽ジャケットと、
i.前記ポンプ・ハウジングとの間にポンプ断熱空間が画定されるように前記ポンプ・ハウジングを取り囲むポンプ・ジャケットと、
を更に備える、請求項1に記載のポンプ。
【請求項17】
極低温液体を圧送するための方法であって、
a.前記シリンダ内に摺動可能に配置され、中間流体チャンバおよび流体圧送チャンバを画定しているピストン、中間流体シール、ならびに圧送流体シールを有するポンプを提供し、その結果、前記中間流体シールと前記圧送流体シールとの間に差圧空間が画定されるステップと、
b.前記ポンプの前記中間流体チャンバに中間流体を周期的に導くことによって、前記極低温液体が前記ポンプの前記流体圧送チャンバによって受け入れられ、圧送されるように、前記ピストンを作動させるステップと、
c.前記差圧空間の圧力を検出するステップと、
d.前記検出された圧力が予め定められた圧力レベルに達したときに前記差圧空間を排気するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記予め定められた圧力レベルは、前記中間流体チャンバ内の前記中間流体の圧力未満の圧力である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記極低温液体を用いて槽内で前記ポンプを冷却するステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記極低温液体は、液体水素である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記中間流体は、プロパンである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記中間流体は、1-ブテンである、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]優先権の主張
本出願は、2021年9月14日に出願された米国仮出願第63/243,922号の利益を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本発明は、一般に、極低温液体用ポンプに関し、より詳細には、中間流体を使用し、ポンプのシールを挟んだ差圧を低減するクライオ・ポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]液化天然ガスおよび水素といった極低温流体は、沸点が-130°F/-90°C未満の流体である。極低温流体は、エネルギー源として重要性を増しており、多くの重要な産業用途もある。
【0004】
[0004]例えば、燃料電池技術および家庭用発電での水素利用が進歩するなかで、水素は代替のクリーン・エネルギー源として重要性を増してきている。更に、燃料電池駆動車両においてなど、燃料電池技術の利用も拡大している。
【0005】
[0005]液化天然ガスなどの他の極低温流体と同様、水素の輸送および貯蔵には、液体形態である方が効率的である。また更に、実用的な水素インフラストラクチャの確立を助けるために、水素を高密度で貯蔵すること、ならびに、水素を体積を減らし低コストで輸送および利用することが望ましい。更に、他の極低温液体を、使用および輸送ならびに効率的な貯蔵のために加圧する必要のある場合も多い。クライオ・ポンプはしたがって、極低温液体の貯蔵および輸送において極めて重要な構成要素である。
【0006】
[0006]特に高圧用途の場合、クライオ・ポンプのシールは漏れが発生しやすく、このことはクライオ・ポンプの性能を損なう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本主題にはいくつかの態様があり、それらは以下に記載され、特許請求されるデバイスおよびシステムにおいて、個別にまたはまとめて具現化され得る。これらの態様は単独で採用されても、本明細書に記載する主題の他の態様と組み合わせて採用されてもよく、これらの態様をまとめて記載することは、これらの態様を個別に使用すること、または、そのような態様を個別に、もしくは本明細書に添付されている特許請求の範囲に規定されている異なる組合せで特許請求することの排除を意図するものではない。
【0008】
[0008]一態様では、極低温液体を圧送するためのポンプは、シリンダを画定しているポンプ・ハウジングを含む。ピストンは、シリンダ内に摺動可能に配置されており、その結果、中間流体を受け入れるように構成されている中間流体チャンバがシリンダ内にピストンの第1の端部と隣り合って画定され、流体圧送チャンバがシリンダ内にピストンの第2の端部と隣り合って画定される。流体圧送チャンバは、入口と出口とを含む。中間流体シールは、ピストンに取り付けられており、シリンダと係合するように構成されている。圧送流体シールも、ピストンに取り付けられ、シリンダと係合するように構成される。圧送流体シールは、シリンダ内で中間流体シールと圧送流体シールとの間に差圧空間が画定されるように、中間流体シールから離間される。差圧排気弁は、差圧空間と流体連通している。差圧スイッチは、差圧排気弁に動作可能に接続されており、差圧空間内の圧力を感知し、差圧空間内の圧力が予め定められた圧力レベルに達したときに差圧排気弁を開くように構成されている。
【0009】
[0009]別の態様では、極低温液体を圧送するための方法は、シリンダ内に摺動可能に配置され、中間流体チャンバおよび流体圧送チャンバを画定しているピストン、中間流体シール、ならびに圧送流体シールを有するポンプを提供し、その結果、中間流体シールと圧送流体シールとの間には差圧空間が画定されるステップと、ポンプの中間流体チャンバに中間流体を周期的に導くことによって、極低温液体がポンプの流体圧送チャンバによって受け入れられ圧送されるように、ピストンを作動させるステップと、差圧空間の圧力を検出するステップと、検出された圧力が予め定められた圧力レベルに達したときに差圧空間を排気するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】[0010]本開示のクライオ・ポンプの一実施形態を含むシステムを示す処理フローおよび概略図である。
【
図2】[0011]本開示のクライオ・ポンプの代替の実施形態を含むシステムを示す処理フローおよび概略図である。
【
図3】[0012]
図1および
図2のシステムのクライオ・ポンプに使用され得る断熱システムの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0013]以下に説明し提示する実施形態は、液体水素の圧送の観点から記載されているが、本発明は他のタイプの極低温液体の圧送にも使用され得ることに留意すべきである。
【0012】
[0014]
図1には液体水素を高圧にして圧送するためのシステムが図示されている。単に一例として、システムは液体水素を約10
8Pa(1000バール)にして圧送することができる。システムは、全体に10で示されている第1のクライオ・ポンプと、全体に12で示されている第2のクライオ・ポンプと、を含む。以下でより詳細に説明するように、ポンプ10および12は、プロパン、1-ブテン、または当技術分野で知られている他の流体などの中間流体によって駆動される。2つのクライオ・ポンプが図示されているが、システムは単一のクライオ・ポンプを含んでもよく、または3つ以上のクライオ・ポンプを含んでもよい。
【0013】
[0015]
図1の実施形態では、ポンプ10および12を駆動するための中間流体としてプロパンを使用する。プロパンは、適度に暖かい温度(約-25.56°C(-14°F))で、およびしたがって低圧で、液体として維持され得る。液体水素は約-248.3°C(-415°F)である。以下でより詳細に説明するように、プロパンを非常に高圧(10
8Pa(1000バール=14,500psi))にして圧送するために、フラック型ポンプ(frac style pump)が使用され得る。高圧プロパンがポンプ10および12のピストンを駆動して、液体水素を10
8Pa(1000バール)近くにして圧送する。中間流体の使用はシールの問題を軽減し、シールを挟んだ差圧が最小限に維持され得る。その結果、いずれも水素ポンプ全体の性能に悪影響を及ぼす、水素シールの漏れおよび摩擦が低減され得る。
【0014】
[0016]1-ブテンを含むがこれに限定されないプロパン以外の流体が、ポンプ10および12を駆動するための中間流体として代わりに使用され得る。
【0015】
[0017]
図1を参照すると、クライオ・ポンプ10および12は、それぞれ対応する槽(sump)14および16内に配置されている。槽14は水素液体入口18を含み、これを通して液体水素が槽に流入し、その結果ポンプ10のハウジング20の底部が沈む。その結果、ポンプ10は液体水素によって低温に維持され、そのため圧送中のポンプ10内での蒸気形成が排除される(または少なくとも最小化される)。槽14は液体水素出口22も含み、液体水素を供給源に戻して、槽14を通して液体水素を再循環させられるようになっている(ポンプがアイドル状態で使用されていない場合など)。槽16も同様に、ポンプ・ハウジング23、水素液体入口24、水素液体出口26を備えている。
【0016】
[0018]ポンプ10のポンプ・ハウジング20は、中にピストン34が摺動可能に配設されるシリンダ32を画定している。ピストンは、中間流体シールまたはプロパン・シール36と、圧送流体シールまたは水素シール38と、を含む。ポンプ12のポンプ・ハウジング23も同様に、ピストン44を収容するシリンダ42を画定している。ポンプ10のピストン34およびポンプ12のピストン44は、
図1のポンプ10で図示されている下死点位置と、
図1のポンプ12で図示されている上死点位置との間を移動する。各ポンプのピストンは、下死点位置から上死点位置へと移動するとき、
図1のポンプ12では矢印46で示されているアップストローク方向または水素吸入方向に移動し、上死点位置から下死点位置へと移動するとき、
図1のポンプ10では矢印48で示されているダウンストローク方向または水素排出方向に移動する。
【0017】
[0019]ピストン34は、ポンプ10のシリンダ32を圧送チャンバ52および中間流体チャンバ54へと分割する。圧送チャンバ52には、ピストン34のアップストローク中に槽14からの液体水素が圧送チャンバに入るように、
図1でポンプ10について矢印56で示されている圧送入口が形成されている。圧送チャンバ52内の液体水素は、ピストン34のダウンストローク中にポンプ排出ライン58を通って圧送チャンバから出る。単に一例として、液体水素はポンプ排出ライン58を通って約10
8Pa(1000バール)の圧力でポンプ10を出て、液体水素貯蔵タンクまたはプロセスに至る。ポンプ12は同様の構造および機能性を特徴としている。
【0018】
[0020]引き続き
図1を参照すると、ピストン34の側壁、中間流体シール、圧送流体シール、およびポンプ・ハウジング34の内面との間に、ポンプ10の環状の差圧(「dP」)空間62が画定されている。環状のdP空間62は、dPスイッチ68によって制御されるdP排気弁66を有する排気ライン64に接続されており、dPスイッチ68は、環状のdP空間内の圧力と中間流体ポンプ・ライン72内の中間流体圧力との間の差に基づいて開閉する。
【0019】
[0021]環状のdP空間内の圧力は、(
図1に示されているように)排気ライン64を介して、またはdPスイッチ68と環状のdP空間との間の専用接続部を介して測定され得る。更に、中間流体の圧力は別法として、dPスイッチ68によって、(ライン72の代わりに)中間流体チャンバ54との流体接続部を介して検出されてもよい。ポンプ12は同様の構造および機能性を特徴としている。dPスイッチ68は圧力を感知するスイッチであってもよく、または代替として、圧力を感知する圧力センサもしくは制御装置と、このセンサまたは制御装置によって感知された圧力に基づいて作動される別個のスイッチと、を含み得る。
【0020】
[0022]
図1のクライオ・ポンプ10および12は駆動システム、例えば全体に80で示されている中間流体回路によって駆動される。中間流体回路は、冷凍コイル84を収容している冷却容器82を含む。冷却容器82にはライン86を介してプロパンを再充填することができ、同様に、液体プロパンの充填に対処するための排気ライン88が設けられている。当技術分野で知られているように、排気ライン88には、冷却容器82内の圧力が予め定められたレベルに達したときに自動的に開く排気弁を設けてもよい。
【0021】
[0023]冷凍コイル84は冷凍システムまたは他の供給源から冷媒を受け入れ、冷却容器82内のプロパンを冷却する。冷凍システムおよびコイル84は好ましくは、冷却容器内のプロパンを、水素槽14(または16)内の圧力よりも低い圧力に対応する温度まで冷却するように構成される。
【0022】
[0024]冷却容器82からの液体プロパンは、1つまたは複数の高圧中間流体ポンプ92を介して、ポンプ10用のクライオ・ポンプ作動弁94aおよび94bならびにポンプ12用のポンプ作動弁96aおよび96bに圧送される。単に一例として、高圧ポンプ92は、プロパンを108Pa(1000バール)など非常に高圧にして圧送するフラック型ポンプであってもよい。当技術分野で知られている代替の高圧ポンプを代わりに使用してもよい。
【0023】
[0025]
図1に図示されている位置(すなわち下死点および上死点)にあるポンプ10および12のピストン34および44から始めると、作動弁94aは閉じており、作動弁94bは開いている。その結果、ピストン34がそのアップストローク方向または吸入方向(
図1の矢印48の方向とは反対)に移動するにつれ、中間流体チャンバ54内の液体プロパンは、弁94bを通り、再循環ライン98を通って冷却容器82に戻るように導かれる。一方、作動弁96aは開いており、また作動弁96bは閉じられており、その結果、高圧中間流体ポンプ92からの加圧されたプロパンがクライオ・ポンプ12の中間流体チャンバ102に供給される。その結果、ピストン44はそのダウンストローク方向または水素排出方向(
図1の矢印46の方向の反対)に駆動されて、ポンプ12の圧送チャンバ104内の液体水素を、クライオ・ポンプ排出ライン106を通して液体水素貯蔵部またはプロセスへと押し出す/圧送する。ピストン34が上死点に達しピストン44が下死点に達すると、作動弁94aおよび96bが開くとともに作動弁94bおよび96aが閉じ、その結果、加圧された液体プロパンが中間流体ポンプ92からポンプ10の中間流体チャンバ54内へと導かれ得るようになると同時に、液体プロパンがポンプ12の中間流体チャンバ102から再循環ライン108を介して冷却容器82へと駆動されるようになる。
【0024】
[0026]前段落のサイクルが繰り返され、その結果、クライオ・ポンプ10および12はポンプに送達される中間流体によって周期的に駆動され、このとき液体水素は、ポンプ10および12のダウンストローク/排出ストロークの間、ポンプ排出ライン58および106を通して、高圧で周期的に圧送される。このことが起こっているとき、中間流体/プロパンは、ポンプ10および12のアップストローク/吸入ストロークの間、循環ライン98および108を通して冷却容器82に周期的に押し戻される。
【0025】
[0027]中間流体ポンプ92の出口とは、高圧再循環弁112も流体連通している。高圧再循環弁112は、クライオ・ポンプ10および12の各々においてピストンが底に達した/下死点に達したときに、対応するピストンがアップストローク/吸入方向への移動に移行する際にシステムの過圧を防止するために、一時的に開く。作動弁へと導かれない中間流体ポンプ92からのプロパン流は、弁112が開いているときに、再循環ライン108を通して(ただし専用の戻りラインが使用されてもよい)、冷却容器82に戻るように導かれる。
【0026】
[0028]プロパン流の圧力は作動弁94a、94b、96a、および96bによって設定され、ポンプ10および12のピストンを、液体水素を貯蔵部またはプロセスに圧送するための108Pa(1000バール)の水素圧にするのに必要な圧力によって決定される。
【0027】
[0029]中間流体を使用してクライオ・ポンプ10および12を駆動するために、
図1の中間流体回路80の代わりに、当技術分野で知られている代替の駆動システムを使用してもよい。
【0028】
[0030]クライオ・ポンプ10および12のピストン34および44の位置を示すために、任意選択の近接スイッチ114および116を、ピストン位置ロッド115および117と組み合わせて使用してもよい。これらのスイッチは、中間流体の流量およびピストンの速さを制御するために、ならびに、シリンダ内でピストンが、ポンプ内のクリアランス容積が最小になるように損傷を伴わずに底に到達可能となることを保証するために、使用され得る。
【0029】
[0031]中間流体シール36および122、ならびに圧送流体シール38および124は通常、ポンプ10の環状のdP空間62およびポンプ20の環状のdP空間132を、水素およびプロパンのない状態に維持する。
【0030】
[0032]ポンプ10のdPスイッチ68およびポンプ12のdPスイッチ118は、プロパン中間流体が液体水素中に漏れることおよび液体水素がプロパン中間流体中に漏れることを防止するように、ならびに、あらゆる場合において、中間流体シール36、122および圧送流体シール38、124を挟んだ差圧を好ましくは最小に減少させるように設定される。
【0031】
[0033]
図1の実施形態では、各クライオ・ポンプ10および12のdPスイッチ68および118の圧力設定は、中間流体圧力が水素槽圧力よりも必然的に高くなるダウンストローク(矢印48)時に中間流体が水素生成物中へと漏れるのを防止するために、(中間流体ポンプ・ライン72および126を通して測定された場合の)中間流体圧力よりもわずかに低い。各dPスイッチのこの圧力設定はまた、水素槽圧力が中間流体圧力よりも必然的に高くなるアップストローク(矢印46)時に水素が中間流体中に漏れるのも防止する。
【0032】
[0034]動作時には、
図1のクライオ・ポンプ10を参照すると、ポンプ10によって完了されつつあるピストンのダウンストローク中、プロパンの圧力は水素槽内の圧力よりも必然的に高くなる(このことによりピストン34を駆動し水素を圧送する)。プロパンはこのため、中間流体シール36を通して環状のdP空間62内へと漏れる可能性がある。dPスイッチ68は、環状のdP空間62内の圧力が中間流体/プロパン圧力よりもわずかに低くなり、中間流体/プロパン圧力がまた水素が圧送されている間の槽14および圧送チャンバ52内の水素の圧力よりも低くなるように、排気弁66を制御するものである。その結果、環状のdP空間62内に漏れたプロパンは、環状のdP空間62内の圧力が中間流体チャンバ54(およびライン72)内のプロパンの圧力をわずかに下回るレベルまで上昇すると、シール38を通って液体水素中に入る代わりに、開いたdP排気弁66から押し出されることになる。開いたdP排気弁66から出るプロパンは排気されてもよく、または中間流体回路80においてなどで使用するために回収されてもよい。
【0033】
[0035]対照的に、クライオ・ポンプ12を参照すると、ポンプ12によって完了されつつあるピストンのアップストローク中、ポンプ12の圧送チャンバ104内の水素の圧力は、中間流体チャンバ102(およびライン126)内の中間流体圧力よりも高くなる。その結果、水素が圧送流体シール124を通って環状のdP空間132内に漏れる可能性がある。ポンプ10の場合のように、dPスイッチ118は、環状のdP空間132内の圧力が中間流体/プロパンの圧力よりもわずかに低くなるように、dP排気弁136を制御するものである。その結果、環状のdP空間132内に漏れた水素は、環状のdP空間122内の圧力が中間流体チャンバ102(およびライン126)内のプロパンの圧力をわずかに下回るレベルまで上昇すると、シール122を通ってプロパン中間流体中に入る代わりに、開いたdP排気弁136から押し出されることになる。開いたdP排気弁136から出る水素は排気されてもよく、または槽14および16に水素を供給するシステムにおいてなどで使用するために回収されてもよい。
【0034】
[0036]ポンプ10はその後、そのアップストローク段においてポンプ12について上記したように動作し、一方でポンプ12はその後、そのダウンストローク段においてポンプ10について上記したように動作し、ポンプ10および12は、液体水素が圧送される際に各段を循環する。
【0035】
[0037]
図2に図示されているように、クライオ・ポンプ210の中間流体シール236と圧送流体シール238との間、およびポンプ212の中間流体シール222と圧送流体シール224との間で、漏れた中間流体を漏れた水素から分離するために、1つまたは複数の任意選択の補助シール202および204が使用されてもよい。
図2に図示されているように、補助シール202および204は、ポンプ210および212の環状のdP空間を環状の中間流体dP空間242および244と、圧送流体dP空間246および248とに分割する。ポンプ210および212の各々のdP環状空間のいずれか、または各ポンプの両方のdP環状空間に、
図1を参照して上記したdPスイッチおよびdP排気弁の機構を設けてもよい。
【0036】
[0038]
図2には専用のdPスイッチおよびdP弁を備えた実施形態も図示されている。より詳細には、既に指摘したように、クライオ・ポンプ210は、環状の中間流体dP空間242と、圧送流体dP空間246と、を含む。環状の中間流体dP空間242には中間流体dP排気弁252が流体連通している。中間流体dP排気弁252は中間流体dPスイッチ254によって制御され、中間流体dPスイッチ254は、環状の中間流体dP空間242内の圧力と中間流体ポンプ・ライン256内の圧力との間の差に基づいて開閉する。クライオ・ポンプ212は同様の構成を特徴とする。
【0037】
[0039]同様に、環状の圧送流体dP空間246には圧送流体dP排気弁262が流体連通している。圧送流体dP排気弁262は圧送流体dPスイッチ264によって制御され、圧送流体dPスイッチ264は、環状の圧送流体dP空間246内の圧力と中間流体ポンプ・ライン256内の圧力との間の差に基づいて開閉する。クライオ・ポンプ212は同様の構成を特徴とする。
【0038】
[0040]
図1の実施形態におけるように、
図2のdPスイッチ254および264(ならびにポンプ212の対応するdPスイッチ)の設定は、中間流体圧力が水素貯蔵槽圧力よりも必然的に高くなるダウンストローク(ポンプ210の矢印248によって示されている)時に中間流体が水素生成物中へと漏れるのを防止するために、(中間流体ポンプ・ライン256を通して測定された場合の)中間流体圧力よりもわずかに低い。各dPスイッチのこの圧力設定はまた、水素槽圧力が中間流体圧力よりも必然的に高くなるアップストローク(ポンプ212の矢印256によって示されている)時に水素が中間流体中に漏れるのも防止する。
【0039】
[0041]
図1のクライオ・ポンプ10および12、または
図2のクライオ・ポンプ210および212は、
図3に図示されている断熱実施形態に示されているように断熱されてもよい。ポンプ10に関して示されているように、槽14の周囲には真空空間304が提供されるように、槽ジャケット302が形成されている。更に、ポンプ・ハウジング20の周囲には真空空間308が形成されるようにポンプ・ジャケット306が設けられている。真空空間304と308はネック・ジャケット312によって接合されてもよい。ネック・ジャケット312は、ポンプ・ジャケットを槽内に吊り下げるために使用されてもよく、真空空間304および308に対して開かれていてもよい真空空間を画定する。ネック・ジャケット312はまた、槽内にピストン位置ロッド115(
図1)とともにポンプ・ハウジング20を吊り下げるために使用される構造も取り囲み得る。ポンプ12は同様の断熱を特徴としている。
【0040】
[0042]本主題にはいくつかの態様があり、それらは以下に記載され特許請求される方法、デバイス、およびシステムにおいて、個別にまたはまとめて具現化され得る。これらの態様は単独で採用されても本明細書に記載する主題の他の態様と組み合わせて採用されてもよく、これらの態様をまとめて記載することは、これらの態様を個別に使用すること、または、そのような態様を個別に、もしくは本明細書に添付されている特許請求の範囲に規定されている異なる組合せで特許請求することの排除を意図するものではない。
【0041】
[0043]本発明の好ましい実施形態を示し記載してきたが、本発明の精神から逸脱することなく変更および修正が行われ得ることが当業者には明らかであろう。本発明の範囲は、付属の特許請求の範囲において規定されている。
【国際調査報告】