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特表2024-533505血糖応答を低下させて睡眠の質及び/又はその後の行動アウトカムを改善する組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】血糖応答を低下させて睡眠の質及び/又はその後の行動アウトカムを改善する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240905BHJP
【FI】
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516482
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022076156
(87)【国際公開番号】W WO2023046713
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/246,408
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】マーティン, フランソア‐ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ダリモント‐ニコラウ, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】マンタンツィス, コンスタンティノス
(72)【発明者】
【氏名】フランシー, セリア
(72)【発明者】
【氏名】ムーラン, ノーマン
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD03
4B018MD05
4B018MD08
4B018MD19
4B018MD20
4B018MD21
4B018MD23
4B018MD33
4B018MD34
4B018MD36
4B018MD47
4B018MD52
4B018MD57
4B018MD71
4B018MD90
4B018ME14
4B018MF01
(57)【要約】
一態様は、睡眠の質及び/又はその後の行動アウトカムを改善する方法である。別の態様は、睡眠の質の改善が有益である少なくとも1つの状態のリスク、発生率、又は重症度のうちの少なくとも1つを治療、予防、及び/又は低減する方法である。本方法は、食事の摂取前の予め定められた時点で、及び/又は食事の摂取と同時に、組成物を個体に経口投与することを含む。組成物と食事との組合せは、食事のグリセミック負荷よりも低く、約0.0~約45.0のグリセミック負荷を有する。組成物は、トリプトファン、グルコシダーゼ阻害剤、アルギニン-プロリン(AP)ジペプチド、繊維、難消化性デンプン、β-グルカン、A-シクロデキストリン、グルコシダーゼ、ポリフェノール、又はアミラーゼ阻害剤のうちの1つ以上を含有することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠の質及び/又はその後の行動アウトカムを改善する方法であって、前記方法が、食事の摂取前の予め定められた時点で、及び/又は食事の摂取と同時に、組成物を個体に経口投与することを含み、前記組成物と前記食事との組合せが、前記食事のグリセミック負荷よりも低いグリセミック負荷を有する、方法。
【請求項2】
睡眠の質の改善が有益である少なくとも1つの状態のリスク、発生率、又は重症度のうちの少なくとも1つを治療、予防、及び/又は低減する方法であって、前記方法が、食事の摂取前の予め定められた時点で、及び/又は食事の摂取と同時に、組成物を個体に経口投与することを含み、前記組成物と前記食事との組合せが、前記食事のグリセミック負荷よりも低いグリセミック負荷を有する、方法。
【請求項3】
前記組成物と前記食事との食事の組合せが、前記食事のグリセミック負荷よりも低く、約0.0~約45のグリセミック負荷を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物と前記食事との食事の組合せが、約11~約45、好ましくは約20.0~約45.0のグリセミック負荷を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記食事が、夕食、好ましくはバランスの取れた夕食である、請求項1又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、血糖応答を低下させる原材料を含み、トリプトファン、グルコシダーゼ阻害剤、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)、アルギニン-プロリン(AP)ジペプチド、繊維、難消化性デンプン、β-グルカン、A-シクロデキストリン、グルコシダーゼ、ポリフェノール、又はアミラーゼ阻害剤のうちの1つ以上を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、約120mg~約250mgのトリプトファンを含む単位剤形で投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、マルベリー抽出物、好ましくはマルベリーリーフ抽出物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、メラトニン、ビタミンB3、ビタミンB6、マグネシウム、亜鉛、γ-アミノ酪酸(GABA)、α-カソゼピン、又はテアニンのうちの1つ以上を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、タンパク質を含み、前記タンパク質が、トリプトファンのミクロゲル、好ましくは乳清タンパク質ミクロゲル等の乳清タンパク質;乳清タンパク質分離物、乳清タンパク質とカゼインの混合物;又は大豆タンパク質のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、液体飲料、好ましくはレディ・トゥ・ドリンク飲料、又は希釈液で粉末を再構成することによって形成される飲料であり、好ましくは約100mL~250mLの体積を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、(i)睡眠に関する愁訴を有する成人に投与される飲料である;及び/又は(ii)前記組成物が、シリアルスナック、シリアルを含有する飲料(例えば、RTD飲料)、スープ、ポリッジ、ブロス、又はフランであり、成人に投与される;又は(iii)前記組成物が幼児に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記個体が、哺乳動物であり、好ましくはコンパニオンアニマル又はヒトである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも2週間、1日1回前記個体に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物と前記食事との組合せが、前記食事単独のグリセミック負荷よりも少なくとも約10%低いグリセミック負荷を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物と前記食事との組合せが、前記食事単独のグリセミック負荷よりも少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%低いグリセミック負荷を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記個体が、代謝異常を有さない、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
睡眠の質及び/若しくはその後の行動アウトカムを改善すること、並びに/又は睡眠の質の改善が有益である少なくとも1つの状態のリスク、発生率、又は重症度のうちの少なくとも1つを治療、予防、及び/若しくは低減すること、における使用のための組成物の単位剤形であって、前記組成物がマルベリー抽出物を含み、食事の摂取前の予め定められた時点及び/又は食事の摂取と同時に個体に提供され、前記食事が前記食事単独のグリセミック負荷よりも低いグリセミック負荷を有する、単位剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、血糖応答を低下させて睡眠の質及び/又はその後の行動アウトカムを改善する組成物及び方法に関する。より詳細には、本開示は、食事の摂取前の予め定められた時点における、及び/又は食事の摂取と同時の、組成物の投与に関する。組成物と食事との組合せは、食事単独のグリセミック負荷よりも低いグリセミック負荷を有する。例えば、組成物と食事との組合せは、約0.0~約45.0であるグリセミック負荷を有する。好ましくは、食事はバランスのとれた夕食であり、好ましくは、組成物は血糖応答を低下させる原材料を含有する。
【背景技術】
【0002】
睡眠は重要な生理機能であり、生涯にわたる健康及び幸福の重要な原動力であると考えられている。良質な睡眠は、脳機能、気分及び精神能力、心臓-代謝の健康、並びに免疫に対する恩恵と関連付けられるが(Alvarez et al.,2004)、睡眠の質が乏しいと、健康及び幸福に対して負の結果がもたらされ得る(Hublin et al.,2007)。
【0003】
典型的な睡眠構築は、ノンレム睡眠(NREM;徐波睡眠-SWS)及びレム(REM、急速眼球運動)睡眠の2つの要素からなる。全体として、睡眠の質は、SWSの総持続時間によって高められると考えられているが、認知の改善など翌日に得られる恩恵(next-day benefits)には、SWS及びREMの両方が協働して寄与することが見出されている。SWS及びREMは、夜間のエネルギー代謝、基質酸化、及び血糖管理における異なる要件を含む、さまざまな生理学的状態に関連する。
【0004】
睡眠の質は、認知機能、気分、及び翌日の活力及び活力感と強く関連している。科学的観点から、睡眠は、ヒトの認知及び気分における恩恵と一貫して関連付けられている(総説については、Palmer & Alfano,2017;Rasch & Born,2013;Walker,2009を参照)。さまざまな睡眠段階の中でも、特にSWS持続時間は、より密接に宣言的記憶に関連していることが示唆されている一方、REM睡眠は、新たに取得された情報におけるパターンを検出するなどの抽象的な情報を合成する能力の根底にある(non-declarative;Rasch & Born,2013;Walker,2009)。各睡眠段階の役割に関するより最近の見解では、SWS及びREMが、新たに獲得された情報の統合において相補的な役割を有し得ることが示唆されている(さまざまな理論については、Rasch & Born,2013を参照されたい)。
【0005】
翌日のパフォーマンスに対する睡眠の役割におけるエビデンスの殆どは睡眠遮断研究に由来しており、睡眠遮断研究には、睡眠中断及び睡眠遮断のいずれもが、宣言的記憶、記憶の符号化、及び想起を含む認知態様と、既知の情報を組み合わせてあたらしい用途に使用する認知の柔軟性とに負の影響を与え得ることを示唆するエビデンスがある(Walker, 2009)。睡眠によって強く影響を受ける認知領域の中でも、日中のヴィジランス及び主観的アラートネスのレベルは、睡眠持続時間と高度に相関している(Jewett et al.,1999)。実際に、ヴィジランスタスクは、睡眠不足の高感度評価尺度として一貫して使用されてきた(Basner & Dinges,2011)。更に、睡眠困難は、扁桃体活性化を負の情報へと下方調節する能力の低下を含む、一連の機序を介した情動調節に対して著しい負の影響を有し得る。詳細には、参加者にネガティブなイメージが示されると、睡眠遮断により扁桃体活性のほぼ60%の増加がもたらされ得ることが複数の研究により判明している(review,Palmer & Alfano,2017)。
【0006】
夜間血糖と翌日に得られる恩恵との間の関連性は十分に解明されていない。インスリン注入によって血糖値を2.2mmol/L(40mg/dL)で安定させて、熟睡中の夜間低血糖を実験的に誘導すると、翌日の記憶は悪化するという関連はある(Jauch-Chara et al.,2007)。同様に、熟睡中に2.3~2.7mmol/L(42~48mg/dL)の範囲内に留まるように血糖値を操作する他の研究では、自己申告性の活力及び満足感として概念化した幸福度がより低レベルであることが明らかになった(minor symptom evaluation profile;King et al.,1998)。夜間血糖を認知/気分に関する恩恵と関連付ける殆どの研究は、糖尿病患者で行われていることに留意されたい。したがって、健康な集団において、夜間血糖が、翌日に得られる恩恵とどのように関連しているかの理解には、顕著なギャップがある。
【0007】
今日まで、翌日に得られる恩恵に対する夕食の組成の働き、並びに夕食の組成が主観的及び客観的な認知パフォーマンス及び気分に影響し得る機序に関する明確な証拠は存在しない。
【0008】
[発明の概要]
血糖、炭水化物代謝、及び睡眠に関する因果研究には不足がある。夕食の炭水化物と睡眠の質との間の関連の根底にある機序は、未だ不明である。制御された食事下又は治療的なグルコース管理状況下での耐糖能と睡眠パラメータとの関連を報告した研究は殆どなく、殆どの研究は、空腹時のパラメータを使用して、睡眠パラメータと血糖特性との間の関係を調査している。
【0009】
全体として、脳に対する栄養素の直接的な効果及び睡眠を促進するそれらの作用様式に関する知識が蓄積されているが、食事面での不足と栄養補給(例えば、食物、飲料、又は栄養補助食品による)とが睡眠の質に示す影響には依然としていくらかの科学的ギャップがある。改善されたグルコース制御とより良好な睡眠とを関連付ける製品はない。したがって、本発明者らは、健康な成人における睡眠及び代謝についての現在の技術水準での評価尺度を用いた臨床研究を通して、夜間グルコース/炭水化物プロファイルをより良く定義するために、夜間グルコース代謝と、睡眠の質と、翌日に得られる恩恵との間の関係を調査した。
【0010】
睡眠の質に影響すると考えられる因子の中には、リラクゼーションを促し、寝付きを促進することができるアミノ酸である、トリプトファンのアベイラビリティがある。夕食の主要栄養素の組成、特に炭水化物対タンパク質比は、血液脳関門を通過する、及びメラトニン合成を増強して入眠を促進し得る、トリプトファンの能力に密接に関連している。
【0011】
実際に、炭水化物が多い食事は、競合するアミノ酸の筋肉中への取り込みを刺激することによって、トリプトファン対大型中性アミノ酸比をより高くすることを促進し、トリプトファンに血液脳関門をより容易に通過させる(Gangwisch et al.,2020;Yokogoshi & Wurtman,1986)。この現象は、睡眠4時間前の高炭水化物食摂取による寝付きに対する正の影響を説明することができるかもしれない(Afaghi et al.,2007)。しかしながら、高炭水化物食が睡眠へのより容易な移行を促進するにもかかわらず、代償性高インスリン血症及び拮抗ホルモン応答は睡眠断片化を生じさせ、睡眠の質を低下させ得る。
【0012】
健康な個体における睡眠を改善することを目的とした複数の臨床試験において、リラクゼーション、落ち着き、及びより良好な睡眠を促進するために、睡眠困難を経験する個体を主として、500mg~7.5gの範囲の用量のトリプトファンの日中又は睡眠前のいずれかでの定期的な投与が行われている(Silber & Schmitt,2010)。
【0013】
しかしながら、低血糖応答を有する夕食と共にトリプトファンを摂取して、睡眠の質をより良好に高め及び/又はその後の行動アウトカムを促進することを実証した研究はない。
【0014】
本明細書において後でより詳細に記載されるように、本発明者らは、夕方の主要栄養組成及び睡眠の健康に関する新規の科学的証拠に基づいて、夕方に摂取して睡眠の質を高めるための栄養溶液を特定した。特に、新しく発展している科学は、睡眠覚醒サイクルに関与する夜間の炭水化物代謝及び脳機能が介在する睡眠の質に関し、食品のタンパク質及び炭水化物プロファイルの重要性を示している。
【0015】
低血糖指数(GI)であり、繊維が豊富な夕食、又は夕食に対する血糖応答の低下(例えば、夕食のグリセミック負荷(GL)を55から38.5に低下させて血糖応答を30%低減させる)は、睡眠に関する愁訴を有する一般集団において、睡眠の質をより良好に高め及び翌日に得られる恩恵を高める。しかし現在のところ、作用機序はまだ十分に解明されていない。特定された作用様式のうちあるものは、夕食に対する高血糖応答が、睡眠の質を低下させ得る夜間のグルコース及び炭水化物代謝の混乱をどのようにもたらし得るかに関連し得る。高い食事グリセミック負荷と、結果としての代償性高インスリン血症とによる食後高血糖は、血漿中グルコースを、脳グルコースを損なう濃度(3.8mmol/L;68mg/dL)に減少させて、アドレナリン、コルチゾール、グルカゴン、及び成長ホルモンなどの自律神経拮抗ホルモンの分泌を誘導する場合がある。拮抗ホルモン応答の症状には、心臓の動悸、振戦、冷汗、不安、易刺激性、及び空腹感が含まれ得る。更に、低血糖事象は、健康な成人であっても覚醒を招き、睡眠効率を実質的に低下させることが示されている(Gais et al.,2003)。
【0016】
したがって、非限定的な実施形態では、本発明は、睡眠の質及び/又はその後の行動アウトカムを改善する方法を提供する。本方法は、食事の摂取前の予め定められた時点で、及び/又は食事の摂取と同時に、組成物を個体に経口投与することを含む。組成物と食事との組合せは、食事単独のグリセミック負荷よりも低いグリセミック負荷を有する。例えば、組成物と食事との組合せは、約0.0~約45.0、好ましくは約11~約45、好ましくは約20~約45であり、食事単独のグリセミック負荷よりも低いグリセミック負荷を有する。
【0017】
別の実施形態では、本開示は、睡眠の質の改善が有益である少なくとも1つの状態のリスク、発生率、又は重症度のうちの少なくとも1つを治療、予防、及び/又は低減する方法を提供する。本方法は、食事の摂取前の予め定められた時点で、及び/又は食事の摂取と同時に、組成物を個体に経口投与することを含む。組成物と食事との組合せは、食事単独のグリセミック負荷よりも低いグリセミック負荷を有する。例えば、組成物と食事との組合せは、約0.0~約45.0、好ましくは約11~約45、好ましくは約20~約45であり、食事単独のグリセミック負荷よりも低いグリセミック負荷を有する。
【0018】
本明細書に開示される任意の実施形態では、好ましくは、食事は、夕食、例えばバランスの取れた夕食である。好ましくは、組成物は、個体における血糖応答を低下させる原材料を含む。任意に、組成物中の原材料、及び食事中の任意の原材料の総量は、個体の睡眠の質をより良好に高めるのに有効である。
【0019】
いくつかの実施形態では、血糖応答を低下させる原材料は、トリプトファン(例えば、遊離のアミノ酸として、及び/又は乳清タンパク質などのタンパク質中)、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)などのグルコシダーゼ阻害剤(例えば、単離された、又はマルベリーリーフもしくは果物抽出物中)又はフロリジン(例えば、単離されたもの、又はリンゴ抽出物中)、アルギニン-プロリン(AP)ジペプチド(例えば、単離されたもの、又は乳タンパク加水分解物中)、繊維、難消化性デンプン、β-グルカン、A-シクロデキストリン、グルコシダーゼ(例えば、単離されたもの、及び/又はマルベリーリーフ抽出物などの組成物の一部として)、ポリフェノール(アントシアニンなど)、又はアミラーゼ阻害剤(例えば、単離されたもの、及び/又は白インゲン豆もしくはコムギアルブミンなどの組成物中)のうちの1つ以上である。
【0020】
いくつかの実施形態では、原材料は、トリプトファンを含み、任意で、マルベリー抽出物(ME)、好ましくはマルベリーリーフ抽出物(MLE)を更に含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、組成物は、約120mg~約250mgのトリプトファンを含む単位剤形で投与される。任意に、組成物中のトリプトファンと、任意の食事中のトリプトファンとの総量は、個体に対して、睡眠の質をより良好に高めるのに有効である。
【0022】
本発明者らは、毎日摂取されるホールミールリプレイスメント(whole meal replacement)では、睡眠を改善するにあたっての消費者コンプライアンスの低下が生じ得ることを認識した。代わりに、本明細書に開示される特に有利な実施形態は、夕食と共に消費するための組成物(例えば、食品、飲料粉末もしくは液体飲料などの飲料、又は栄養補助食品)を提供し、この組成物は、夕食に対する血糖応答を低減して睡眠の質を促進する。本明細書に開示される組成物及び方法は、睡眠(例えば、徐波睡眠(SWS))の最初の数時間の間の夜間血糖を改善することによって睡眠の質を改善することができ、この改善は睡眠による回復効果を高めるために最も重要である。
【0023】
特定の非限定的な実施形態では、本開示は、低カロリー、任意に低容量(好ましくは約100mL~250mL)の栄養溶液である製品を提供し、本製品は、(i)夕食に対する血糖応答を低下させて睡眠の質を高める1つ以上の原材料、(ii)生体利用可能なトリプトファンが豊富であることで睡眠の質を高めるタンパク質源、及び(iii)寝付き寄与する1つ以上の補助原材料、を組み合わせる。
【0024】
いくつかの実施形態では、製品は、水/乳系希釈液で再構成される乳製品粉末スティック(dairy powder stick)として提供されるか、又は粉末製品もしくはRTDとして、又は植物性飲料として提供され、製品は、標準化された夕食と一緒に経口摂取される。製品及び食事は、就寝時刻の約3時間前から就寝時刻の少なくとも約4時間前までの間に摂取することができる。
【0025】
追加の特徴及び利点は、以降の発明の詳細な説明及び図面に記載され、これらにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本明細書に開示される実験例における試験品のタンパク質分析を示す表である。WPI:乳清タンパク質分離物;WPM:乳清タンパク質マイクロゲルプレミール(pre-meal);及びCGMP:カゼイノグリコマクロペプチド。
図2】本明細書中に開示される実験例における、乳清タンパク質飲料及びマルベリーリーフ抽出物を添えた標準的な食事の主要栄養素組成(kcal%)を示す表である。試験1:乳清タンパク質プレミール。試験2:マルベリーリーフ抽出物。
図3】本明細書に開示される実験例における全ての介入についてのPPGRパラメータの平均値及びSEM値を示す表である。
図4A】本明細書に開示される実験例における、食事の30分前の乳清タンパク質摂取による食後グルコースの変動を示す。具体的には、3群:対照(白丸)、WPI(灰色三角)、又はWPM(黒丸)の経時的な(分単位)食後グルコースの変動(mM単位)を示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(means and standard error of mean、SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、WPI群とWPM群との間の有意差(p<0.05)を示す。
図4B】本明細書に開示される実験例における、食事の30分前の乳清タンパク質摂取による食後グルコースの変動を示す。具体的には、3群の2時間の上昇曲線下面積(iAUC 2h)を示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、WPI群とWPM群との間の有意差(p<0.05)を示す。
図4C】本明細書に開示される実験例における、食事の30分前の乳清タンパク質摂取による食後グルコースの変動を示す。具体的には、3群のグルコースのiCmax(incremental maximal glucose concentration)をmMで示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、WPI群とWPM群との間の有意差(p<0.05)を示す。
図4D】本明細書に開示される実験例における、食事の30分前の乳清タンパク質摂取による食後グルコースの変動を示す。具体的には、食後のグルコース最高値到達時間(Tmax、分)を示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、WPI群とWPM群との間の有意差(p<0.05)を示す。
図5A】食事の10分前の乳清タンパク質摂取による食後グルコースの変動を示す。3群:対照(白丸)、WPI(灰色三角)、又はWPM(黒丸)についての経時的な(分単位)食後グルコースの変動(mM単位)を示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、WPI群とWPM群との間の有意差(p<0.05)を示す。
図5B】食事の10分前の乳清タンパク質摂取による食後グルコースの変動を示す。3群の2時間の上昇曲線下面積(iAUC 2h)を示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、WPI群とWPM群との間の有意差(p<0.05)を示す。
図5C】食事の10分前の乳清タンパク質摂取による食後グルコースの変動を示す。3群のグルコースのiCmax(incremental maximal glucose concentration)をmMで示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、WPI群とWPM群との間の有意差(p<0.05)を示す。
図5D】食事の10分前の乳清タンパク質摂取による食後グルコースの変動を示す。図5Dは、食後グルコースの最高値到達時間(分)を示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、WPI群とWPM群との間の有意差(p<0.05)を示す。
図6A】食事の前にMLEを加えること又は食事に混ぜ合わせることによる食後グルコースの変動を示す。3群:標準化されたバランスの取れた食事の5分前に水、「対照(白丸)」;標準化されたバランスの取れた食事の5分前に、水で希釈したMLEを摂取、「MLE食前(灰色三角)」;標準化されたバランスの取れた食事と共にMLEを摂取、「MLE食事中(黒丸)」;の経時的な(分単位)食後グルコースの変動(mM単位)を示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、「食前」群と「食事中」群との間の有意差(p<0.05)を示す。
図6B】食事の前にMLEを加えること又は食事に混ぜ合わせることによる食後グルコースの変動を示す。3群の2時間の上昇曲線下面積(iAUC 2h)を示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、「食前」群と「食事中」群との間の有意差(p<0.05)を示す。
図6C】食事の前にMLEを加えること又は食事に混ぜ合わせることによる食後グルコースの変動を示す。3群のグルコースのiCmax(incremental maximal glucose concentration)をmMで示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、「食前」群と「食事中」群との間の有意差(p<0.05)を示す。
図6D】食事の前にMLEを加えること又は食事に混ぜ合わせることによる食後グルコースの変動を示す。食後グルコースの最高値到達時間(分)を示すグラフである。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示す。アスタリスク()は、対照群と介入群との間の有意差(p<0.05)を示し、$は、「食前」群と「食事中」群との間の有意差(p<0.05)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
以下、いくつかの定義を示す。しかしながら定義が以下の「実施形態」の項にある場合もあり、上記の見出し「定義」は、「実施形態」の項におけるそのような開示が定義ではないことを意味するものではない。
【0028】
パーセンテージはすべて、特に明記しない限り組成物の総重量に対する重量によるものとする。同様に、比はすべて、特に明記しない限り重量によるものとする。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値のある範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは参照数字の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。「間(between)」を使用して定義される範囲は、範囲の上端及び下端を含む。
【0029】
更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内のすべての整数又は分数を含む。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲に対応するものと解釈されたい。「~の間(between)」を使用して定義される範囲は、参照される端点を含む。
【0030】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、別途文脈が明らかに示していない限り、単数形の単語は複数形を含む。したがって、「1つの」、「ある」、及び「当該」(「a」、「an」及び「the」)の言及には、概してそれぞれの用語の複数形が包含される。例えば、「原材料(an ingredient)」又は「方法(a method)」と言及する際は、複数の、そのような「原材料」又は「方法」が含まれる。「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。同様に、「X又はYのうちの少なくとも1つ」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びYの両方」と解釈されるべきである。
【0031】
同様に、「含む/構成される(comprise)」、「含む/構成される(comprises)」、及び「含む/構成される(comprising)」という用語は、排他的ではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。しかしながら、本開示により提供される実施形態は、本明細書で具体的に開示されない任意の要素を含まない場合がある。したがって、用語「含む(comprising)」を用いて規定される実施形態の開示は、開示される構成要素「から本質的になる」、及び「からなる」実施形態の開示でもある。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「例(example)」は、特に、後に用語の列挙が続く場合には、単に例示的なものであり、かつ説明のためのものであり、排他的又は包括的なものであるとみなすべきではない。本明細書で開示されるすべての実施形態は、特に明示的に示されない限り、本明細書で開示される任意の別の実施形態と組み合わせることができる。
【0033】
「動物」としては、限定されるものではないが、齧歯類、水棲哺乳動物、イヌ及びネコなどの飼育動物(「コンパニオンアニマル」)、ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマなどの家畜、並びにヒトを含むがこれらに限定されない、哺乳動物が挙げられる。「動物」、「哺乳動物」、又はこれらの複数形が使用される場合、これらの用語はまた、その文脈の状況により、例えば、睡眠の質の改善からの動物の受益により、効果を発揮し得る又は効果の発揮が意図され得る任意の動物にも適用される。用語「個体」又は「対象」は、本明細書において多くの場合にヒトを指すのに用いられるが、本開示はそのように限定されない。したがって、用語「個体」又は「対象」は、本明細書に開示される方法及び組成物から利益を得ることができる任意の動物、哺乳動物又はヒトを指す。
【0034】
相対的な用語「改善する」、「促進する/高める」、「増強する」などは、本明細書中に開示される方法の、睡眠の質に対する効果、特に、夕食の摂取前の予め定められた時点での、及び/又は夕食の消費と同時での、個体における血糖応答を低下させる原材料(例えば、約120mg~約250mgのトリプトファン)を含む組成物の投与の、本発明の組成物により提供される血糖応答を低下させる原材料は含めずに同一に処方された食事の摂取と比較しての効果を指す。いくつかの実施形態では、睡眠の質は、(a)徐波睡眠(SWS)の総持続時間及び/又は(b)レム睡眠(急速眼球運動、REM)の総持続時間の一方又は両方によって定量することができる。例えば、睡眠の質の改善は、より長いSWS合計持続時間及び/又はREM合計持続時間の一方又は両方によって実現することができる。いくつかの実施形態では、睡眠の質の改善は、i)睡眠効率(例えば、アクティグラフィーのデータによって評価される);ii)睡眠潜時の変化(例えば、アクティグラフィーのデータ);iii)入眠後の覚醒の変化(例えば、アクティグラフィーによる);iv)総睡眠持続時間の変化(分、アクティグラフィー);v)就床時間;vi)起床後に寝台で過ごした時間(分)、のうちの1つ以上における改善である。他の実施形態では、睡眠の質は、自己申告(例えば、カロリンスカ眠気尺度(KSS)又はエプワース眠気尺度(ESS))によって評価されてもよい。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「処置/治療する」及び「処置/治療」とは、ある状態を有する対象に対して、その状態に関連する少なくとも1つの症状を減弱、低減若しくは改善することを目的として、並びに/又はその状態の進行を遅延、低下若しくは阻止することを目的として、本明細書に開示される組成物を投与することを意味する。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」には、予防的治療又は抑止的治療(対象とする病的状態又は障害を予防する及び/又は発症を遅らせる治療)と、治癒的治療、治療的治療、又は疾患修飾的治療との両方が含まれ、例えば、診断された病的状態又は障害の治癒、遅延、症状の軽減、及び/又は進行の停止のための治療的手段、並びに、疾患に罹患する危険性がある患者、又は疾患に罹患した疑いのある患者、及び体調不良の患者、又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された患者の治療が含まれる。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」は、対象が全快するまで治療することを必ずしも意味するものではない。「処置/治療」及び「処置/治療する」という用語はまた、疾患に罹患してはいないが不健康な状態を招きやすい可能性のある個体の健康を維持及び/又は促進することも指す。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」はまた、1つ以上の主たる予防手段又は治療手段の相乗作用、又はそうでない場合強化を含むことも目的としている。非限定的な例として、処置/治療は、患者、介護者、医師、看護師、又は別の医療専門家が行うことができる。
【0036】
用語「予防する」及び「予防」とは、その状態の症状を何ら示していない対象に対して、その状態に関連する少なくとも1つの症状の発生を抑える又は予防するために本明細書に開示される組成物を投与することを意味する。更に、「予防」には、状態又は障害の危険性、発生率、及び/又は重症度の低減が含まれる。本明細書で使用するとき、「有効量」とは、個体における、欠乏を治療若しくは予防する、疾患若しくは医学的状態を治療若しくは予防する、又は、更に一般的には、個体に対して、症状を軽減する、疾患の進行を管理する、若しくは栄養学的、生理学的若しくは医学的利益を提供する量である。
【0037】
本明細書で使用するとき、「投与すること」は、言及されている組成物を個体が摂取できるよう別の人が当該組成物を個体に提供することを含み、また、言及されている組成物を摂取する個体自身の行為のみも含む。
【0038】
用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」とは、ヒトなどの個体による摂取が意図されており、個体に少なくとも1つの栄養素を提供する、組成物を意味する。「食品」及びその関連用語には、ヒトを対象とするものであっても又は動物を対象とするものであっても、任意の食品、餌、スナック、補助食品、トリート、食事代用物、又は代替食が含まれる。栄養補助食品は、蛍光栄養補助食品(ONS)であることができ、固体粉末、粉末スティック、カプセル、又は溶液の形態であり得る。動物用食品には、任意の飼育種又は野生種を対象とした食品又は餌が含まれる。好ましい実施形態では、動物用食品は、ペレット化された、押出成形された、又は乾燥させた食品、例えば、犬及び猫用食品などの押出成形されたペットフードを表す。
【0039】
本開示の文脈において、用語「飲料」、「飲料製品」及び「飲料組成物」は、ヒトなどの個体による摂取のための持ち運び可能な液体製品又は組成物であって、水分を提供し、かつ個体のための、1つ以上の栄養素、及びヒトによる摂取に安全な他の原材料も含み得る、液体製品又は組成物を意味する。
【0040】
用語「サービング」又は「単位剤形」は、本明細書で使用するとき、互換可能であり、ヒト対象及び動物対象のための投与量の単位として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、本明細書に開示されるように、血糖応答を減少させる原材料を含む、予め定められた量の組成物を、好ましくは製薬上許容される希釈剤、担体、又はビヒクルを伴い、所望の効果をもたらすのに十分な量で含有する。単位剤形の仕様は、使用される具体的な化合物、達成しようとする効果、及び宿主体内の各化合物に関連する薬力学によって決まる。本明細書に開示される組成物の「追加の」原材料という用語は、組成物と共に摂取される食事が、血糖応答を低下させる原材料の一部を含むことを必ずしも意味しない。代わりに、組成物と共に摂取される食事のいくつかの実施形態は、血糖応答を低下させる原材料の一部を含み、組成物と共に摂取される食事のいくつかの実施形態は、いくつかの実施形態において、血糖応答を低下させる原材料を含まない。
【0041】
実施形態
本開示の一態様は、睡眠の質及び/又はその後の行動アウトカムを改善する方法である。本方法は、食事の摂取前の予め定められた時点(例えば、食事の約30分前~食事の約1時間前)に、及び/又は個体による食事の摂取と同時に、組成物を個体に経口投与することを含む。マルベリー抽出物を含む組成物が食事前に投与される場合、食事と同時の消化を可能にする形態(例えば、カプセル、液体)で供給することができる。
【0042】
組成物と食事との組合せは、食事単独のグリセミック負荷よりも低いグリセミック負荷を有する。例えば、組成物と食事との組合せは食事のグリセミック負荷を低下させ、グリセミック負荷は約11~約45、好ましくは約20~45である。
【0043】
睡眠の質の改善によって増強される、その後の行動アウトカムは、(a)より少ない頻度及び/又はより重症度の低い眠気、ストレス、緊張/不安、疲労/無気力若しくは抑うつ/落ち込み、怒り/敵意、主観的なフラストレーション、及び/又は(b)より多くの及び/又はより良好な寝付き、リラクゼーション、落ち着き、覚醒(アラートネス)、活気/活力、友好、認知、記憶、作業記憶、注意、ヴィジランス、処理速度、脂肪の利用、体重管理、免疫、精神的、身体的、経時的要求の主観的知覚、主観的なパフォーマンス知覚、又は翌日の気分のうちの1つ以上を含む。
【0044】
別の実施形態では、本開示は、睡眠の質の改善が有益である少なくとも1つの状態のリスク、発生率、又は重症度のうちの少なくとも1つを治療、予防、及び/又は低減する方法を提供する。本方法は、食事の摂取前の予め定められた時点(例えば、食事の約30分前~食事の約1時間前)に、及び/又は個体による食事の摂取と同時に、組成物を個体に経口投与することを含む。組成物と食事との組合せは、食事単独のグリセミック負荷よりも低いグリセミック負荷を有する。例えば、組成物と食事との組合せは食事より低いグリセミック負荷を有し、グリセミック負荷は約11~約45、好ましくは約20~約45である。
【0045】
本明細書に開示される任意の実施形態では、好ましくは、食事は、夕食、例えばバランスの取れた夕食である。
【0046】
食事は、約26.0~約58.5、例えば少なくとも約27.0、少なくとも約28.0、少なくとも約29.0、少なくとも約30.0、少なくとも約31.0、少なくとも約32.0、少なくとも約33.0、少なくとも約34.0、少なくとも約35.0、少なくとも約36.0、少なくとも約37.0、少なくとも約38.0、少なくとも約39.0、又は少なくとも約40.0のグリセミック負荷を有する。いくつかの実施形態では、食事のグリセミック負荷は、約58.0以下、約57.0以下、約56.0以下、約55.0以下、約54.0以下、約53.0以下、約52.0以下、約51.0以下、約50.0以下、約49.0以下、約48.0以下、約47.0以下、約46.0以下、又は約45.0以下である。
【0047】
組成物と食事との組合せは、食事単独のグリセミック指数よりも低く、約11.0~約45.0の範囲、例えば少なくとも約21.0、少なくとも約22.0、少なくとも約23.0、少なくとも約24.0、少なくとも約25.0、少なくとも約26.0、少なくとも約27.0、少なくとも約28.0、少なくとも約29.0、又は少なくとも約30.0のグリセミック負荷を有する。いくつかの実施形態では、組成物と食事との組合せのグリセミック負荷は、約44.0以下、約43.0以下、約42.0以下、約41.0以下、約40.0以下、約39.0以下、約38.0以下、約37.0以下、約36.0以下、又は約35.0以下である。
【0048】
別の例として、食事のグリセミック負荷は、少なくとも約10%低減され得、例えば、食事と組成物との組合せにおいて、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30.0%、最も好ましくは少なくとも約40.0%低減され得る。
【0049】
好ましくは、組成物は、個体における血糖応答を低下させる原材料を含む。任意に、組成物中の原材料、及び食事中の任意の原材料の総量は、個体の睡眠の質をより良好に高めるのに有効である。
【0050】
いくつかの実施形態では、血糖応答を低下させる原材料は、トリプトファン(例えば、遊離のアミノ酸として、及び/又は乳清タンパク質などのタンパク質中)、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)などのグルコシダーゼ阻害剤(例えば、単離された、又はマルベリーリーフもしくは果物抽出物中)又はフロリジン(例えば、単離されたもの、又はリンゴ抽出物中)、アルギニン-プロリン(AP)ジペプチド(例えば、単離されたもの、又は乳タンパク加水分解物中)、繊維、難消化性デンプン、β-グルカン、A-シクロデキストリン、グルコシダーゼ(例えば、単離されたもの、及び/又はマルベリーリーフ抽出物などの組成物の一部として)、ポリフェノール(アントシアニンなど)、又はアミラーゼ阻害剤(例えば、単離されたもの、及び/又は白インゲン豆もしくはコムギアルブミンなどの組成物中)のうちの1つ以上である。
【0051】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも2週間の総継続期間にわたって、1日1回(例えば、夕食と共に、好ましくは他の食事ではなく、及び/又は1日の他の時間ではない)投与される。
【0052】
いくつかの実施形態では、組成物は、睡眠に関する愁訴を有する成人に投与される飲料である。いくつかの実施形態では、組成物は、シリアルスナック、シリアルを含有する飲料(例えば、RTD飲料)、スープ、ポリッジ、ブロス、又はフラン(flan)であり、成人に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、幼児に投与される。
【0053】
いくつかの実施形態では、組成物は、約120mg~約5gのトリプトファン、好ましくは約120mg~約1gのトリプトファン、より好ましくは約120mg~約250mgのトリプトファン、最も好ましくは約120mg~約210mgのトリプトファンを含む単位剤形で投与される。
【0054】
このような実施形態では、組成物は、好ましくは、トリプトファンの天然源、例えば、高いトリプトファン/大型中性アミノ酸比(TRP/LNAA比)を有するトリプトファンの天然源を含む。いくつかの実施形態では、組成物中のトリプトファンの少なくとも一部は、(i)組成物中のタンパク質(例えば、乳タンパク質などの動物性タンパク質及び/又は植物性タンパク質)及び/又は(ii)組成物中の遊離型トリプトファンの一方又は両方によって提供される。
【0055】
例えば、組成物のいくつかの実施形態は、夕食の前(例えば、夕食の約30分前~夕食の約1時間前)に投与される。このような実施形態では、組成物は、約9.0g~約20.0gの乳清タンパク質ミクロゲル、好ましくは約9.0g~約15.0gの乳清タンパク質ミクロゲル、より好ましくは約9.0g~約11.0gの乳清タンパク質ミクロゲル、最も好ましくは約10.0gの乳清タンパク質ミクロゲルなどの乳清タンパク質ミクロゲルを含む単位剤形で投与され得る。乳清タンパク質ミクロゲルのこれらの量は、約200mgトリプトファン~約220mgトリプトファン、例えば約210mgを含み得る。
【0056】
別の例として、組成物のいくつかの実施形態は、夕食中に投与される。このような実施形態では、組成物は、約5.0g~約20.0gの乳清タンパク質、好ましくは約5.0g~約15.0gの乳清タンパク質、より好ましくは約5.0g~約10.0gの乳清タンパク質、更により好ましくは約5.0g~約5.5gの乳清タンパク質、最も好ましくは約5.1gの乳清タンパク質などの乳清タンパク質を含む単位剤形で投与され得る。
【0057】
夕食中に投与される組成物の他の特定の実施形態では、組成物は、約8:2の乳清:カゼインの混合物、好ましくは約5.0g~約20.0gの乳清タンパク質とカゼインとの混合物、より好ましくは約5.0g~約15.0gの乳清タンパク質とカゼインとの混合物、更により好ましくは約5.0g~約10.0gの乳清タンパク質とカゼインとの混合物、更により好ましくは約5.5g~約6.0gの乳清タンパク質とカゼインとの混合物、最も好ましくは約5.6gの乳清タンパク質とカゼインとの混合物などの、乳清タンパク質とカゼインとの混合物を含む、単位剤形で投与され得る。
【0058】
夕食中に投与される組成物の更に他の特定の実施形態では、組成物は、約5.0g~約20.0gの大豆タンパク質、好ましくは約5.0g~約15.0gの大豆タンパク質、更により好ましくは約5.0g~約10.0gの大豆タンパク質、更により好ましくは約5.5g~約10.0gの大豆タンパク質、組成物中約5.6gの大豆タンパク(例えば、50.0mgのトリプトファンを含む夕食中に投与される)など又は約9.6gの大豆タンパク質(例えば、内因性トリプトファンの不足している夕食中に投与される)など、大豆タンパク質を含む単位剤形で投与され得る。
【0059】
追加的に又は代替的に、タンパク質の少なくとも一部は、乳清タンパク質分離物であり得る。
【0060】
本明細書で使用するとき、「食事」は、好ましくは、1種類以上のタンパク質、1種類以上の炭水化物、1種類以上の脂質、及び少なくとも1種類の微量栄養素が、食事を摂取することによって提供されるような、より好ましくは、1種類以上のタンパク質、1種類以上の炭水化物、1種類以上の脂質、1種類以上のビタミン及び1種類以上のミネラルが、食事を摂取することによって提供されるような、それぞれが実質的に同時に摂取される1つ以上の食品製品を指す。好ましくは、食事は、複数の食品製品を含む。本明細書で使用される場合、「バランスのとれた食事」は、個体の健康又は発育を維持するのに好適な量及び割合で、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、及びミネラルの全てを提供する食事を指す。健康又は発育を維持するのに好適なタンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、及びミネラルの量及び割合は、現行の食品及び栄養規制、並びに例えば、年齢、身体活動、及び/又は性別に基づく個体の任意の特定の要件に沿って決定することができる。
例えば、米国医学研究所(IOM)の食品栄養委員会による現行のエネルギー、主要栄養素、及び水分に関する提言は、活動的な個体に関しては、許容主要栄養素分布範囲を、炭水化物(エネルギーの45~65%)、タンパク質(エネルギーの10~35%)、脂質(エネルギーの20~35%)として推奨している。一実施形態では、バランスのとれた食事は、総カロリーの45~65%を炭水化物から、総カロリーの20~35%を脂質から、総カロリーの10~35%をタンパク質から提供する。一実施形態では、食事は、200kcal~1,000kcal、好ましくは250kcal~900kcal、より好ましくは300kcal~850kcal、最も好ましくは350kcal~800kcalを個体に提供する。
【0061】
いくつかの実施形態では、「夕食」は、入眠の約1.0時間~約6.0時間前に摂取される食事、好ましくは入眠の約2.0時間~約5.0時間前の食事、より好ましくは入眠の約2.5時間~約4.5時間前の食事、最も好ましくは入眠の約3.0時間~約4.0時間前の食事を意味する。
【0062】
いくつかの実施形態では、「夕食」は、個体が所在する地域において約4:30pm~約11:30pmに摂取される食事、好ましくは個体が所在する地域において約5:00pm~約11:00pmに摂取される食事、より好ましくは個体が所在する地域において約5:30pm~約10:30pmに摂取される食事、最も好ましくは個体が所在する地域において約6:00pm~約10:00pmに摂取される食事を意味する。
【0063】
本明細書で使用される場合、血糖応答を低下させる原材料を含む組成物は、血糖応答を低下させる原材料を含む該組成物が、食事中の最初の食品の一口目の摂取と、最後の食品の最後の一口の摂取との間に投与されるのであれば、夕食と「同時に」投与される。血糖応答を低下させる原材料を含む組成物はまた、血糖応答を低下させる原材料を含む該組成物が、食事中の最初の食品の一口目を摂取する前の約5分以内に、好ましくは、食事中の最初の食品の一口目を摂取する前の約1以内に、最後の食品の最後の一口の摂取後約5分以内に、好ましくは最後の食品の最後の一口の摂取後約1分以内に投与されるのであれば、夕食と「同時に」投与される。
【0064】
いくつかの実施形態では、組成物は、トリプトファンを含み、好ましくは、マルベリー抽出物(ME)、好ましくはマルベリーリーフ抽出物(MLE)を更に含む。そのような実施形態では、組成物中のトリプトファン及びバランスのとれた食事中の任意のトリプトファンの総量は、個体に対して睡眠の質をより良好に高めるのに有効である。
【0065】
好ましくは、組成物は、乳飲料及び非乳飲料からなる群から選択される形態で個体に経口投与され、単位剤形は、予め定められた量の飲料(例えば、約120mg~約250mgのトリプトファンを含む予め定められた量の飲料)である。
【0066】
いくつかの実施形態では、組成物は、容器中のレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料であり得、単位剤形は、経口投与のために開封される容器中に密封された予め定められた量のRTD飲料である。例えば、予め定められた量のRTD飲料は、約120mg~約250mgのトリプトファンを含むことができる。RTD飲料は、更なる原材料を添加することなく経口的に摂取することができる液体である。RTD飲料は、低カロリー及び/又は低容量(例えば、約100mL~約250mL)とすることができる。
【0067】
他の実施形態では、本方法は、血糖応答を低下させる原材料を含む粉末の単位剤形を水又は乳で再構成して、その後個体に経口投与される組成物を形成することで、組成物を形成することを含む(例えば、再構成後約10分以内、再構成後約5分以内、又は再構成後約1分以内)。粉末の単位剤形は、再構成及びその後の経口投与のために開封することができるサシェ又は他のパッケージ中に密封することができる。例えば、予め定められた量の粉末は、約120mg~約250mgのトリプトファンを含むことができる。粉末から再構成された飲料は、低カロリー及び/又は低容量(例えば、約100mL~約250mL)とすることができる。
【0068】
任意のマルベリー抽出物は、ホワイトマルベリー(Morus alba L.)、ブラックマルベリー(Morus nigra L.)、アメリカンマルベリー(Morus celtidifolia Kunth)、レッドマルベリー(Morus rubra L.)、ホワイトマルベリーとレッドマルベリーの交雑種、ヤマグワ(Morus australis)、ヒマラヤマルベリー(Morus laevigata)、及びこれらの組合せを含むがこれらに限定されない任意のクワ属(Morus)由来のものであり得る。
【0069】
マルベリー抽出物は、樹皮(幹、小枝、又は根)、根、芽、小枝、若芽、葉、果実、又はこれらの組合せを含む桑の木の様々な部分に由来し得る。マルベリー抽出物は、例えば、乾燥粉末、例えば、木の様々な部分から粉砕された乾燥粉末などの形態であることができる。マルベリー抽出物の植物原材料は、新鮮な、凍結した、又は乾燥したマルベリー材料であり得る。抽出物は、液体又は乾燥濃縮固体として使用され得る。典型的には、そのような抽出物は、少なくとも約1%w/vの1-DNJを含み、約7.5mgの1-DNJ~約12.5mgの1-DNJの量で単位剤形で投与され得る。
【0070】
例えば、組成物の特定の非限定的な単位剤形は、約1.0%w/vの1-DNJを含む約750mgの抽出物又は約5.0%w/vの1-DNJを含む約250mgの抽出物を含み得る。
【0071】
好ましい実施形態では、マルベリー抽出物(ME)は、マルベリーリーフ抽出物(MLE)である。組成物の単位剤形は、約400mg~約800mgの用量のマルベリーリーフ抽出物(MLE)を含むことができる。
【0072】
マルベリー抽出物は、当技術分野において周知の手順によって調製することができる。この態様において、Chao Liu et al.,Comparative analysis of 1-deoxynojirimycin contribution degree to α-glucosidase inhibitory activity and physiological distribution in Morus alba L,Industrial Crops and Products,70(2015)p309-315;Wenyu Yang et al.,Studies on the methods of analyzing and extracting total alkaloids in mulberry,Lishizhen Medicine and Material Medical Research,2008(5);及び中国特許第CN104666427号を参照することができる。
【0073】
マルベリーリーフ抽出物は、例えば、Karallief Inc,USA;ET-Chem.com,China;Nanjing NutriHerb BioTech Co.,Ltd,China;又はPhynova Group Ltdなどからも商用利用可能である。
【0074】
いくつかの実施形態では、血糖応答を低下させる原材料を含む組成物の単位剤形は、例えば、ピスタチオ粉末としてのメラトニン(例えば、約0.1~約0.3mgのメラトニン)、ビタミンB3及びビタミンB6(例えば、約15%NRV~約2mg)、マグネシウム(例えば、約40mgのマグネシウム)、及び/又は亜鉛(例えば、約15%NRV~約15mg)のうちの1つ以上を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、γ-アミノ酪酸(GABA)、α-カソゼピン、又はテアニンのうちの1つ以上を更に含むことができる。
【0075】
血糖応答を低下させる原材料を含む組成物の単位剤形は、賦形剤、乳化剤、安定剤、及びそれらの混合物を更に含むことができる。組成物は、かさを増やす、そして殆どの場合、実質的に不活性であろう、また組成物の血糖効果を著しく無効にすることはない、任意の栄養成分又は非栄養成分を含み得る。充填剤材料は、最も典型的には、繊維、及び/又は低グリセミック・インデックスを有する炭水化物を含む。
【0076】
本発明で開示される組成物に含有させるのに好適な炭水化物源としては、フルクトース及び低DEマルトデキストリンなどの、低グリセミック・インデックスを有するものが挙げられる。これらの原材料は、組成物に高いグリセミック負荷を導入しない。他の好適な組成物の成分は、可溶性遷移及び不溶性繊維、特に可溶性繊維を含む、ヒト又は動物の使用に好適な任意の食物繊維を含む。グルコース応答に対する可溶性繊維の有益な効果は広く報告されている。好適な可溶性繊維の非限定的な例としては、FOS、GOS、イヌリン、難消化性マルトデキストリン、部分加水分解グアーガム、ポリデキストロース、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
組成物の市販の繊維の非限定的な例としては、グアー豆の酵素加水分解によって製造される水溶性食物繊維であるSunfiber(登録商標)(Taiyo International,Inc.);難消化性マルトデキストリンであるFibersol2(商標)(Archer Daniels Midland Company);及びポリデキストロースが挙げられる。
【0078】
一実施形態では、組成物は、トリプトファン、マルベリー抽出物、及び可溶性繊維を含むことができる。好ましい実施形態では、組成物は、ポリデキストロース、難消化性マルトデキストリン(可溶性トウモロコシ繊維Fibersol-2など)及びこれらの組合せから選択される可溶性繊維を含む。
【0079】
組成物はまた、他の充填剤、安定剤、固結防止剤、酸化防止剤、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0080】
組成物は、ミネラル類;ビタミン類;塩類;又は、機能性添加物、例えば、食味増強剤(palatant)、着色剤、乳化剤、抗菌剤、若しくは他の保存料などの、1種類以上の追加成分を更に含んでもよい。本明細書に開示される組成物に好適なミネラル類の非限定的な例としては、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、鉄、塩化物、ホウ素、銅、亜鉛、マグネシウム、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、フッ化物、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。本明細書に開示される組成物に好適なビタミンの非限定例としては、水溶性ビタミン(チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ビオチン(ビタミンB7)、ミオイノシトール(ビタミンB8)、葉酸(ビタミンB9)、コバラミン(ビタミンB12)及びビタミンCなど)及び脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、及びビタミンKなど)が、これらの塩、エステル又は誘導体を含め、挙げられる。
【0081】
個体は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、シカ、又は霊長類などの哺乳動物であってよい。好ましくは、個体はヒトである。
【0082】
治療についての本明細書の全参照は、治癒的治療、緩和的治療、及び予防的治療を含む。治療には、疾患の重症度の進行を抑止することも含まれ得る。ヒトと動物の両方の治療が本開示の範囲内にある。好ましくは、組成物は、血糖応答を低下させる治療有効量又は予防有効量の原材料を含む、サービング又は単位剤形で投与される。
【0083】
非限定的な実施例:
実施例1
次の非限定的な例は、本開示によって提供される実施形態の概念を発展させ及びサポートする実験データを提示する。
概要
序論
乳清タンパク質プレミール及びマルベリーリーフ抽出物(MLE)を含む栄養補助食品は、食事のグルコース応答を減少させることが報告されている。本試験では、非糖尿病対象において、これらの2つの栄養補助食品の有効性が、摂取のタイミングを変えることによって、又は異なる乳清タンパク質構造によって影響され得るかどうかを評価した。
【0084】
調査の設計及び方法
2つの無作為化クロスオーバー症例対照試験を行った。最初に、14名の過体重参加者が、標準食の30分前又は10分前に10gの乳清タンパク質分離物調製物(WPI)又は乳清タンパク質ミクロゲル溶液(WPM)を摂取した。次に、30名の健康な対象が、完全にバランスの取れた食事の前に又は完全にバランスの取れた食事と共に、250mgのマルベリーリーフ抽出物(MLE)を摂取した。急性の食後血糖応答(PPGR)を持続血糖測定システム(CGM)の装置でモニターした。
【0085】
結果
両試験において、異なる栄養補助食品は、全ての摂取時点で標準食の血糖応答を有意に減少させた。食事の30分前又は10分前のタイミングでのWPI又はWPMの摂取では、PPGRを低下させる有効性に影響はなかったが、食事と共にMLEを摂取すると、食事前にMLEを摂取した場合と比較して、PPGRがより大きく減少した(iAUC-16%、p=0.03)。タンパク質プレミールについて、WPMは、特に食事の30分前に摂取した場合に、WPIと比較してPPGRのより大きな減少を示した(iAUC-19%、p=0.04)。
【0086】
結論
本試験は、MLE及び乳清タンパク質のプレミールが、食事一式の血糖応答を低下させるための効率的な解決策であり、プレミールの有効性は、最良の投与タイミング又はタンパク質構造を選択することによって最適化され得ることを確認した。
【0087】
詳細な試験の設計及び方法
試験の設計及び対象
両試験は、クロスオーバー、無作為化、及び非盲検設計を有する単一施設(monocentric)試験とした。試験1及び試験2の実験条件の数はそれぞれ6及び3とした(下記参照)。生じ得る偏りを最小限にするために、治験場所(position)及びキャリーオーバー効果のバランスをとった一連のWilliamsラテン方格に、対象を無作為に割り当てた。健康状態に関するアンケート及び医学的スクリーニングのための来診が完了した後、適格な対象を募集した。登録後、試験のための来診を開始する前に、CGMセンサを対象の利き腕ではない腕に配置した。試験の各来診日の前日に、対象には、アルコールの摂取及び激しい運動の実施を控えるように求めた。対照には、CGM測定に影響し得るアスピリン又はビタミンC含有栄養補助食品の医薬品は一切服用しないことも求めた。対象は、すべての実験条件で同じCGMセンサを使用して試験することができるので、ブロック化などの制限はなんらなく無作為化を行うことができる。
【0088】
試験1:乳清タンパク質ミクロゲルプレミール
食事一式の血糖応答に対する乳清タンパク質プレミールショットの効果を評価するために、40歳~65歳の15名の過体重又は肥満の男性及び女性を募集した。重要な組み入れ基準は、27kg/m2より高いBMI、座りがちな生活様式(歩行は1日あたり30分以下)、及びインフォームドコンセントの内容を理解し署名する能力とした。重要な除外基準は、糖尿病又は慢性的な薬物摂取を含む任意の代謝疾患があること、試験製品の成分に対するアレルギー及び不耐性が判明していること、喫煙者であること、及びCGMセンサーの配置に禁忌があること(例えば、皮膚高感受性)とした。有望な参加者のスクリーニングは、試験看護師によって行われ、医療従事者の責任に基づき確認された。10名の健康な若い男性を含み、標準的な食事のPPGRに対する10gの乳清タンパク質プレロードの有意な効果を示した、既報の研究からサンプルサイズを推定した。同様の効果の大きさを仮定し、但し、対象のBMIの増加に起因した変動性の増加を仮定して、サンプルサイズをN=15に設定した。
【0089】
試験2:マルベリーリーフ抽出物
MLE摂取後の血糖応答を試験するために、18歳~45歳の30名の健康なボランティアを募集した。重要な組み入れ基準は、健康な状態、20~29.9kg/m2のBMI、及びインフォームドコンセント内容を理解し署名する能力とした。主要な除外基準は、被験製品に対し食品アレルギー及び不耐性があること、喫煙者であること、及びCGMセンサー配置に禁忌があること(例えば、皮膚高感受性)とした。有望な参加者のスクリーニングは試験看護師によって行われ、医療従事者の責任に基づき確認された。サンプルサイズは、米ベースの標準食又は50gのマルトデキストリン負荷のいずれかに関してPPGRの25%減少を報告している2つの既報の研究から推定した。同様の効果サイズ及び変動性を仮定して、計算した効果サイズは、80%の効力(a power of)に達するためにはN=30であった。
【0090】
被験食
試験1:乳清タンパク質ミクロゲルプレミール
10gの総タンパク質を含有する2つの飲料を水の対照飲料と比較した。第1の飲料(WPI)は、100mLの水で再構成した乳清タンパク質調製物とした。第2の飲料(WPM)は、天然の乳清タンパク質分離物から製造された100mLのWPM溶液とした。この試験のために、従来の蒸発によって濃縮工程を行った。WPI及びWPMの乳清タンパク質含量を図1の表に記載する。各対象は、試験製品を摂取した10分後又は30分後に標準的な朝食を摂取した。朝食は、2枚の食パン(56g)、25gのジャム、及び1杯のオレンジジュース(330mL)から構成された。標準食の主要栄養素組成を図2の表に記載する。
【0091】
試験2:マルベリーリーフ抽出物
12.5mgのDNJを含有する250mgのマルベリー(Morus alba)リーフ抽出物(5%Reducose(登録商標)、Phynova/DSM)を、150gの炊いたホワイトジャスミンライス、25gの食パン、80gのカレーソース、及び80gの鳥むねスライスから構成される標準食の前(水に混合)又は間(食物上に振りかける)のいずれかで摂取した。200mLの水を標準食の前に摂取した。標準食の主要栄養素組成を図2の表に報告する。
【0092】
介入
両試験において、参加者は、試験日に、空腹状態で8時(8h00)に研究センターに到着した。CGM装置によるグルコース読み取りを、試験製品の摂取の直前及び直後に実施し、間質液中グルコースレベルを、15分ごとに食後2時間まで連続的かつ自動的に測定した。
【0093】
試験1:乳清タンパク質ミクロゲルプレミール
乳清タンパク質の効果を評価する試験では、対象が全ての試験介入を完了するためには試験施設への合計6回の来院を必要とした。
1.対照10:標準食の10分前に100mLの水
2.対照30:標準食の30分前に100mLの水
3.WPI10:標準食の10分前に100mLの乳清タンパク質分離物
4.WPI30:標準食の30分前に100mLの乳清タンパク質分離物
5.WPM10:標準食の10分前に100mLの乳清タンパク質ミクロゲル
6.WPM30:標準食の30分前に100mLの乳清タンパク質ミクロゲル
【0094】
試験2:マルベリーリーフ抽出物
MLE摂取の効果を見る試験において、対象には、次の3群のうちの1群により、標準化された食事一式を15分以内に摂取するように求めた。
1.対照:標準食の5分前に200mLの水
2.MLE食前:標準食の5分前に、200mLの水に溶解した250mgのMLE粉末
3.MLE食事中:標準食の5分前に、200mLの水に混合した250mgのMLE粉末
【0095】
測定
グルコース応答をCGM装置で測定し、15分毎に間質液中グルコース濃度を測定した。1回目の来院の少なくとも24時間前に、各対象の利き腕でない方の腕にセンサーを取り付け、リーダー並びにその使用説明書を渡した。センサーを試験中になくした場合、センサーは取り替えられ、対象は、センサー挿入の少なくとも24時間後に、次の試験訪問で試験を再開することができた。センサーは、試験の終わりに治験スタッフによって取り外された。
【0096】
統計解析
これらの試験では、台形法を使用して標準食後の個々のそれぞれのPPGRを計算した、2h-PPGR上昇曲線下面積(iAUC)を主要評価項目とした。追加の目的とする評価項目は、血糖のiCmax(incremental maximal glucose concentration))、この値に達する時間(Tmax)、及びT0後15分毎の全てのクロスセクション時点とした。各来診の開始時に、対象は、試験製品の摂取の直前及び直後にリーダーでセンサーをスキャンし、平均を計算してベースライン血糖(T0)を決定した。記述統計学(平均、SEM)を表にし、可視化した。確立された標準に従って、有意水準を5%(両側)に設定した対応のあるt検定を用いて平均を比較した。混合モデルを使用して感度分析を実行し、可能性のある欠損データを帰属させ(impute)、可能性のある体系的な治験場所またはキャリーオーバー効果を考慮した。これらの効果はいずれも統計上有意に近いものではなかったので、この分析はこれ以上提示しない。
【0097】
結果
ベースライン特性
試験1:乳清タンパク質ミクロゲルプレミール
15名の過体重/肥満対象(6名の男性、9名の女性)をこの試験のために募集した(平均年齢±SEM:49±8歳、平均BMI±SEM:31.2±2.8kg/m2)。対象は、正常な空腹時血糖(平均空腹時血糖値±SEM:5.4±0.6mM)を示していた。1名の参加者は、腕に装着した全てのセンサを失ったため脱落し、6名の参加者は、センサーの紛失により84回の来診のうち7回を逃した。脱落により、及び逃したすべての来診が混合モデルのおかげで帰属され得るという事実により、分析において考慮すべき対象数はN=14であった。
【0098】
試験2:マルベリーリーフ抽出物
参加者(男性11名、女性19名)は、若く(平均年齢±SEM:31±1.3歳)、痩せており(平均BMI±SEM:22.9±0.4kg/m2)、正常血糖(平均空腹時血糖値±SEM:5±0.09mM)であった。来診の欠落はなかったが、CGMセンサーの問題により、データポイントは2つ失われた。介入の副作用を報告した対象はいなかった。分析において考慮すべき対象数はN=30であった。
【0099】
グルコース応答
平均PPGRパラメータは、図3の表において全ての介入について表にされている。
【0100】
試験1:乳清タンパク質ミクロゲルプレミール
図4Aは、標準的な朝食の30分前にWPM及びWPIを摂取した後、CGM装置を用いて120分間測定したPPGRの絶対値を示す。対照と比較して、WPM30プレミールは、グルコースiAUCを有意に減少させたが、WPIではiAUCを低下させる傾向のみが観察された(平均±SEM効果量;WPI30:-14±8%、p=0.10;WPM30:-30±7%、p<0.01;図4B)。図4Cに示すように、WPM及びWPIはいずれも、水と比較して間質液中グルコース曲線のiCmaxを有意に減少させた(WPI30:-0.70±0.26mM、p=0.02;WPM30:-1.09±0.24mM、p<0.01)。興味深いことに、WPM30のグルコースのiAUCは、WPI30で観察されたものより有意に低かった(-19±8%、p=0.04)。
【0101】
図5Aは、標準的な朝食の10分前にWPM及びWPIを摂取した後、CGM装置を用いて120分間測定された食後グルコースの絶対値を示す。グルコースのiAUCは、WPM摂取後に低減し、WPIの後では低減傾向のみを示した(WPI10:-18±9%、p=0.08;WPM10:-25±9%、p=0.02;図5B)。朝食の30分前に取られたプレミールの観察と同様に、標準食の10分前にWPM及びWPIが摂取された場合、グルコースのiCmaxは、水摂取後よりも有意に低かった(WPI10:-0.94±0.31mM、p=0.01;WPM10:-1.13±0.33mM、p<0.01;図5C)。WPM10及びWPI10間では、グルコースのiCmax及びiAUCについて有意差は観察されなかった。
【0102】
食事の30分前及び10分前の乳清タンパク質投与を比較すると、WPMでもWPIでも、グルコースのiCmax又はiAUCに有意差は観察されなかった。しかしながら、食事の30分前のWPM又はWPI摂取後に間質液中グルコース応答がTmaxに達したのは、10分前に摂取された場合よりも遅かった(WPI:+14±6分、p=0.04;WPM:+13±5分、p=0.03;図5D図4Dとを比較)。
【0103】
試験2:マルベリーリーフ抽出物
対照群及び2つのMLE群においてCGM装置を用いて測定した食後間質液中グルコースの絶対値を図6Aに示す。食事前又は食事中にMLEを摂取すると、対照と比較してPPGRが減少した。2h-iAUCのプロット(図6B)は、食事前にMLEを摂取するとグルコース応答が22±7%(p=0.01)有意に減弱したが、食事中にMLEを摂取するとグルコース応答が34±7%(p<0.01)減少したことを示している。興味深いことに、標準化されたバランスのとれた食事と共に投与されたMLEのPPGR iAUCは、標準化されたバランスのとれた食事の前に投与されたMLEで観察された食後グルコースのiAUCよりも有意に低かった(-16±7%、p=0.03)。
【0104】
最大間質PPGR濃度を比較すると(図6C)、iCmaxは対照群で最も高かった(2.44±0.14mM)。標準化された食事の直前及び食事中のMLE投与は、いずれもPPGR曲線のiCmaxを対照と比較して有意に低減させた:MLE食前群(-0.56±0.12mM、p<0.01)及びMLE食事中群(-0.84±0.15mM、p<0.01)。最大グルコース濃度に達する時間(Tmax)は、対照群が最も早く(59±7分)(図6D)、標準化食群の食事の直前及び食事中に投与されたMLEのいずれも、対象と比較して有意に遅延した:MLE食前群(+26±9分、p<0.01)及びMLE食事中群(+28±9分、p<0.01)。標準化食の食事中又は食事前にMLEを摂取した群のiCmax及びTmaxを比較すると、食事中MLE群のiCmaxは、食前MLE群と比較して有意に減少していたが(-0.29±0.12mM、p=0.02)、Tmaxに差はなかった。
【0105】
議論
試験により、摂取のタイミング又はタンパク質構造が、PPGR低下における、MLE又は乳清タンパク質のそれぞれの有効性を改善できることを実証した。摂取時間(食事の10分前又は30分前)は、WPIプレミール又はWPMプレミールがその後の食事のグルコース応答(iAUC及びiCmax)に示す効果になんら影響しなかった。これらの結果は、脂肪が豊富な食事の15分前又は30分前に17.6gのWPIを摂取しても、メタボリックシンドロームを罹患している対象においてPPGRを示差的に変化させなかったことを示す以前の結果と一致する。この試験で観察された食後間質液中グルコースの減少は、ピザを食べる30分前の10gのWPIの摂取後に血糖応答に対して観察された効果と同様であった(iCmaxで約-30%)。この観察は、CGMデバイスによる間質液中グルコースの測定が、血液サンプリングに対する良好で低侵襲性の代替として使用され得ることを示唆する。興味深いことに、WPMは、いずれの摂取時間でもWPIの事前投与よりもiAUC及びCmaxのより大きな減少を誘導したが、30分前に摂取した場合の誘導がより重要であった。WPMのタンパク質消化はWPIと比較して遅延されることにより、WPMはWPIよりも強いGLP-1刺激を誘導し得ると推測することができる。
【0106】
MLEのPPGR効果を評価する第2試験は、MLEが食事一式のPPGRを減少させることができることを確認した。マルトデキストリンとの同時摂取において、同一用量の12.5mgのDNJ(カプセル中)がPPGRの14%の減少をもたらした以前の試験と比較して、本試験では、MLEが食前に溶液で摂取された場合に、同様の16%のPPGRの減少を観察した。同様に、MLE(8mgのDNJ)をポリッジと共に摂取した場合には、PPGRの24%の減少が報告された。興味深いことに、本試験は、投与のタイミングが、PPGRに対するMLEの最適な効果を得る際の重要な態様であることを実証した。実際に、MLEは、食事前の摂取と比較して、食事と混合した場合にグルコース応答のより強い低減を誘導した。MLE中の活性化合物であるDNJは競合的α-グルコシダーゼ阻害剤として作用するので、DNJが小腸に到達すると同時に、食物中の炭水化物とα-グルコシダーゼ酵素への結合について競合したときに最大効果が観察されると予想することは合理的である。総PPGRを減弱させることに加えて、本試験は、MLEの摂取が最大のグルコースピークの遅延(Tmaxの遅延)をもたらすことも観察した。この観察は、MLEが胃腸管におけるグルコースの吸収を遅延させ、おそらくGLP-1分泌を刺激する可能性があることを意味し得る。この効果は、別のα-グルコシダーゼ阻害剤であるアカルボースで観察されており、該観察では吸収の遅延及びGLP-1分泌の増加が実証されている。
【0107】
実施例2
次の試験は、健康な成人における睡眠の質に対する栄養介入の有効性を調査した。この試験は、二重盲検、対照、無作為化、2群、クロスオーバー、グループ逐次デザイン臨床試験である。対象は、無作為化された順序で2通りの異なる栄養介入を受ける。
【0108】
試験目的:
主要目的 睡眠に関する愁訴を有する健康な成人間で客観的な睡眠の質を改善する際の栄養介入の有効性を評価すること。主要評価項目:アクティグラフィーのパラメーターを利用して、客観的な睡眠の質を評価する:i)睡眠効率(SE)の変化、(全睡眠時間/就床時間)×100として計算;ii)睡眠潜時(SOL)の変化、対象が就寝した後に入眠までにかかる時間の量(分単位)として測定。
【0109】
副次目的:主観的な睡眠の質の改善における栄養介入の有効性を評価すること。評価項目:質問表(例えば、カロリンスカ眠気尺度(KSS)、全睡眠時間、中途覚醒(WASO)を通して測定された自己申告の睡眠の質の変化。
【0110】
試験集団:45名の対象。次のように評価された、睡眠に関する自覚症状及び他覚的所見を有する25~50歳の男性及び女性の両方。
睡眠に関する自覚症状は、睡眠の質の質問表を通して定量する(PSQI>5)。
睡眠に関する他覚的所見は、14日間のスクリーニングにわたって睡眠効率<85%を意味する。この目的のために、客観的な睡眠モニタリングデバイス(アクティグラフィー)を使用して、2週間のスクリーニング期間中に対象をスクリーニングする。
【0111】
被験製品の投与(Treatment administration):被験製品(investigational product、IP)を、標準化された夕食(グリセミック負荷55)と組み合わせて摂取し、就寝時刻の少なくとも4時間前及び30分以内に経口摂取した。1日1回、合計2週間、即ち14日間(試験製品及び対照製品の両方について合計28日間)、被験製品を摂取する。
【0112】
試験製品 夕食の間に摂取される飲料であり、サービング当たり、
1%(m/m)の1-デオキシノジリマイシンを含有する、750mgのマルベリーリーフ抽出物と、
5.4gの乳清タンパク質(120mgのトリプトファンを提供する)と、
微量栄養素の栄養強化:亜鉛(1.337mg)、マグネシウム(12.39mg)、ビタミンB3(1.96mg)、及びビタミンB6(0.13mg)と、
を含む飲料。
【0113】
対照製品:夕食中に摂取される飲料であり、1サービング当たりのタンパク質当量のトリプトファン含量が低い(4gのグルテン加水分解物)飲料。
【0114】
試験製品及び対照製品は、水で200~250mLの最終体積に再構成される粉末の入った小袋として提供される。
【0115】
処置及び持続時間:被験製品を食事中に摂取し、1日1回、合計2週間、即ち14日間(試験製品及び対照製品の両方について合計28日間)投与する。
【0116】
2つの介入期間は、少なくとも4週間のウォッシュアウト期間によって分離し、対象がベースラインの睡眠状態に戻ることを確保し、キャリーオーバーの影響がないことを確保し、並びに少なくとも6週間のウォッシュアウト期間によって分離し、女性対象が月経周期の同じ時期にあることを確保する。
【0117】
介入期間中、対象には、夕食、夕食前の間食、及び夕食後の飲料からなるカスタマイズされた食事が提供される。アジアの要素と西洋の要素とを組み合わせた、地域で一般的に消費されている食品から用意される、その地域の食生活指針に基づき、夕食を設計する。総エネルギー摂取量(TEI)は、Oxford式(Henry,2005)に基づいて、成人男性及び女性について計算された推定エネルギー必要量(EER)に基づく。サービングサイズは男性及び女性に合わせて調整して、他の点は主要栄養素含有量に対して標準化して、合計4通りの異なる献立の夕食が対象に提供される。この夕食のために、炭水化物のプロファイルは、55±10%のグリセミック負荷を提供するように設計される。
【0118】
統計分析:連続変数は、観察数(n)、平均、標準偏差(SD)、中央値、最小値、及び最大値を含むがこれらに限定されない適切な記述統計を使用して要約される。
主要評価項目:睡眠の質パラメータのベースライン値について補正した線形混合効果モデルによって、主要な睡眠の質パラメータ(睡眠効率及び睡眠潜時)に対する介入の効果を評価する。
副次評価項目:主要な睡眠評価項目と同様に、副次的な睡眠の質パラメータを分析する。
【0119】
結果
睡眠効率及び睡眠開始潜時
本発明者らは、睡眠の懸念を有する被験者集団によって説明される、合計で81%の睡眠効率を観察した。投与後に、本発明者らは、睡眠効率について、対照と比較して1.4%の改善(p=0.09)があるという統計上の傾向を観察した。
【0120】
更に、次の表1は、処置後4~6日目及び処置後13~14日目の「入眠潜時」値を報告しており、これらの日数での有意な正の変化を示している。
【0121】
【表1】
【0122】
副次アウトカム
全睡眠時間の点推定値は、3.3分まで正である(p=0.8)。睡眠効率は全睡眠時間を総就床時間で除したものであるので、正の/安定した全睡眠時間は、睡眠効率における所見を強調する。13~14日後に、睡眠開始後の覚醒の処置差及び総就床時間は、それぞれ約15分(p=0.08)、50分(p=0.048)、有意に減少した(表2及び表3)。
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
全体として、睡眠の質に関する睡眠アクティグラフィーの所見は、夜間のより早い入眠及びより短い覚醒時間により睡眠効率の改善を示唆している。
【0126】
また結果は、処置が、当日の眠気を測定するカロリンスカ眠気尺度(KSS)を統計的に減少させたことを示し(-0.46;p=0.002)、製品摂取が睡眠の質の改善による副次的効果に対し効果を有することを示す。
【0127】
本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。そのような変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、なされ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
【国際調査報告】