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特表2024-533512リアクター及びアンモニアを分解する装置と方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】リアクター及びアンモニアを分解する装置と方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20240905BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240905BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C01B3/04 B
F28D1/053 A
F28F1/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516516
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2021085270
(87)【国際公開番号】W WO2023041190
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】21196507.4
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509322247
【氏名又は名称】ベーエス-ベルメプロツェステクニーク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム アー.ブニング
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ゲー.ブニング
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA35
(57)【要約】
本発明は、初期ガスを供給するための入口(12)と分解ガスを搬出するための出口(13)及び触媒(2)によって充填されたリアクター室(14)並びにリアクター(1)内に配置されたフラットパイプ熱交換器(3)を有する、特にアンモニアを分解するための、オートサーマル又はエンドサーマル反応のためのリアクターに関するものであって、その場合にフラットパイプ熱交換器(3)が次のように、すなわちリアクター室(14)へ流れる初期ガスとリアクター室(14)から流出する分解ガスとによって貫流可能であるように、配置されているので、流出する分解ガスのエネルギが供給される初期ガスへ伝達可能である。本発明は、さらに、オートサーマル又はエンドサーマル反応のための装置(100)、モジュール(700)及びオートサーマル又はエンドサーマル反応のための方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期ガスを供給するための入口(12)と分解ガスを搬出するための出口(13)を有し、かつ触媒(2)によって満たされたリアクター室(14)を有する、特にアンモニアを分解するための、オートサーマル又はエンドサーマル反応のためのリアクターにおいて、
前記リアクター(1)内に、前記供給される初期ガスと前記流出する分解ガスのための流れ通路(31、32)をフラットパイプ(30)内及び間に有する、前記フラットパイプ(30)を備えたフラットパイプ熱交換器(3)が、配置されており、前記フラットパイプ熱交換器(3)が次のように、すなわち前記リアクター室(14)へ流れる初期ガスと前記リアクター室(14)から流出する分解ガスとによって貫流可能であるように、配置されているので、前記流出する分解ガスのエネルギが前記供給される初期ガスへ伝達可能である、ことを特徴とするリアクター。
【請求項2】
前記流れ通路(31、32)のギャップ幅が、3mmより小さい、ことを特徴とする請求項1に記載のリアクター。
【請求項3】
熱交換面積が、前記リアクターの加熱される面積の約2倍から約4倍である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリアクター。
【請求項4】
前記リアクター(1)が、前記入口(12)と前記出口(13)が配置されている、第1の端部(101)と閉鎖された第2の端部(102)とを有するアウターパイプ(10)を有し、前記フラットパイプ熱交換器(3)が円筒状のフラットパイプ熱交換器(3)であって、前記アウターパイプ(10)内において前記第1の端部(101)と前記リアクター室(14)との間に配置されている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリアクター。
【請求項5】
前記リアクターが、前記リアクター室(14)内に配置されている1つのインナーパイプ(11)、好ましくは前記リアクター室(14)内に配置されている2つのインナーパイプ(11)を有し、前記リアクター室(14)内に配置されている前記1つのインナーパイプ(11)又は前記リアクター室(14)内に配置されている前記複数のインナーパイプ(11)が、前記熱交換器(3)の第1の流れ通路(31)を介して前記入口(12)と接続されている、ことを特徴とする請求項4に記載のリアクター。
【請求項6】
前記アウターパイプ(10)が、過圧、特に最大20バールまでの過圧用に設計されている、ことを特徴とする請求項4又は5に記載のリアクター。
【請求項7】
前記触媒(2)を供給するための通路(4)が設けられており、好ましくは前記フラットパイプ熱交換器(3)が前記通路を包囲している、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のリアクター。
【請求項8】
少なくとも前記リアクター室(14)が、エンドサーマル反応及び/又は始動のために、外部から加熱可能である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のリアクター。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のリアクター(1)と前記リアクター(1)を包囲する熱絶縁(8)とを有する、オートサーマル反応用の装置。
【請求項10】
蒸発器が設けられており、前記蒸発器が、フラットパイプ熱交換器(3)へ流れる前記初期ガスと前記フラットパイプ熱交換器(3)から流出する前記分解ガスとによって貫流可能である、ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
熱絶縁する燃焼室(5)と請求項1~8のいずれか一項に記載のリアクター(1)とを有し、前記リアクター(1)の前記リアクター室(14)が前記燃焼室(5)内に、燃焼室から材料的に分離して配置されている、エンドサーマル反応用の装置。
【請求項12】
前記分解ガス、燃料電池のアノード残留ガス及び/又は圧力スイング設備の洗浄ガスによって駆動可能なバーナー(6)が設けられており、前記バーナーが、特に回復的又は再生的バーナーとして形成されている、ことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記リアクター室(14)が前記燃焼室(5)内に次のように、すなわち前記リアクター室(14)を通るガス流(140)が前記リアクター室(14)の外側に接して流れる加熱ガス(62)によって並流原理で加熱可能であるように、配置されている、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記燃焼室(5)が、電気エネルギによって加熱可能である、ことを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記リアクター(1)が、前記燃焼室(5)用のカバーとして用いられるホルダ(7)内に挿入されている、ことを特徴とする請求項11~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか一項に記載の複数のリアクター(1)、特に4つのリアクター(1)とバーナー(6)を有し、前記リアクター(1)と前記バーナー(6)が、ホルダ(7)に取り付けられている、モジュール。
【請求項17】
前記ホルダ(7)が、少なくとも領域的に熱絶縁する材料から形成されており、かつ前記リアクター(1)を前記フラットパイプ熱交換器(3)の領域内で包囲している、ことを特徴とする請求項16に記載のモジュール。
【請求項18】
触媒によって満たされたリアクター室、初期ガスを供給するための入口と分解ガスを搬出するための出口及びリアクター内で前記リアクター室の上流に配置されたフラットパイプ熱交換器を有する前記リアクター内で、オートサーマル又はエンドサーマル反応を実施するため、特にアンモニアを分解するための方法であって、前記フラットパイプ熱交換器が供給される初期ガスと流出する分解ガスとによって貫流されるので、流出する分解ガスのエネルギが供給される初期ガスへ伝達される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にアンモニアを分解するための、リアクター並びに、オートサーマル又はエンドサーマル反応を実施する装置、モジュール及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、世界で年に約1億5千万トンのアンモニアが、第1に肥料工業のために、製造されている。
【0003】
アンモニアは、窒素と水素からなる。アンモニアの取り扱い、移送及び貯蔵は、水素の取り扱いよりもずっと簡単であるので、アンモニアは水素貯蔵器としても、水素を移送するためにも、使用される。
【0004】
合成のために必要な水素は、現在でもまだ圧倒的に天然ガスの蒸気改質によって得られ、その場合に大量のCOが放出される。しかし実際に、大型設備内で、分離された空気窒素と緑の水素から、すなわち太陽光発電又は風力発電に基づく水素から、触媒合成を用いていわゆる緑のアンモニアを形成する、多数のプロジェクトが存在する。
【0005】
この緑のアンモニアは、未来のエネルギ経済のためにも興味深い。というのは、それによって緑の水素を好ましいコストで液状の形式で、最終消費者へ移送することができるからである。水素へ逆変換するために、アンモニアを分解する装置(通常、アンモニアクラッカーと称される)が使用され、その装置がアンモニアを75%のHと25%のNに分解する。この分解ガスは、直接燃料電池内の電流に変換することができ、あるいは、たとえばバス車両、トラック及び船舶に供給するために、水素に加工することができる。
【0006】
大規模設備内でアンモニアを、特に緑のアンモニアも、形成するのとは異なり、アンモニアを水素に逆変換することは、分散して、特に消費者において直接行われなければならない。
【0007】
アンモニアの逆変換又は分解をエンドサーマル反応として実施することが知られており、それにおいては必要なエネルギは外部から供給しなければならない。
【0008】
エンドサーマルのアンモニア分解は、特に、たとえば燃料電池のアノード残留ガス又は純粋な水素を獲得するための圧力スイング設備の洗浄ガスのような、残留ガスが、加熱のために提供される場合に、有意義である。
【0009】
代替的に、アンモニア分解をオートサーマルで実施することが知られている。その場合に液状又はガス状で供給されるアンモニアに酸化剤を混合することが、知られている。酸素供給は、触媒におけるアンモニア分解のために好ましい、たとえば850℃の温度が生じるように、定められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2584301(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、特にアンモニアを分解するために、高い温度におけるオートサーマル又はエンドサーマルの反応のために、高い効率を有する小型のリアクターを提供することである。本発明の他の課題は、エンドサーマル反応のためのリアクターを有する装置とモジュール及び高い効率でエンドサーマル反応を実施する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの課題は、請求項1、8、13及び15の特徴を有する対象によって解決される。他の好ましい形態が、下位請求項から明らかにされる。
【0013】
第1の視点によれば、初期ガスを供給するための入口と分解ガスを搬出するための出口、触媒で満たされたリアクター室を有する、特にアンモニアを分解するための、オートサーマル又はエンドサーマル反応用のリアクターが提供され、その場合にリアクター内に、供給される初期ガスと流出する分解ガスのための流れ通路をフラットパイプ内及びそれらの間に有する、フラットパイプを備えたフラットパイプ熱交換器が次のように、すなわちフラットパイプ熱交換器がリアクター室へ流れる初期ガスとリアクター室から流出する分解ガスとによって貫流可能であるように、配置されているので、流出する分解ガスのエネルギが供給される初期ガスへ伝達可能である。
【0014】
「1つ」などの概念は、本出願に関連して不定冠詞として使用され、数を表す言葉としては使用されない。同様に、「第1」と「第2」という概念は、本出願に関連して、区別するためだけに用いられており、順序を示すものではない。また、「第1の」などという概念は、必ずしも同じ構造又は類似の第2の部材が存在することを必要とするものではない。
【0015】
本出願に関連して、初期ガスと称されるのは、リアクターへ供給されるガス又は混合ガスである。分解ガスと称されるのは、反応によって得られる混合ガスであって、それは特にエンドサーマル反応によって得られる水素を有している。
【0016】
リアクターは、高い温度におけるオートサーマル又はエンドサーマル反応に適している。本出願に関連して、高い温度と証されるのは、600℃を上回る温度である。
【0017】
フラットパイプ熱交換器を用いて、高い温度において実施されたオートサーマル又はエンドサーマル反応の後に残留する、分解ガスの熱を回収することができる。その場合にある形態においては、オートサーマル反応のために、リアクター室への外部からの熱の供給を省くことができる。エンドサーマル反応の場合には、リアクター室内で実施されるエンドサーマル反応のための加熱エネルギの需要を削減することができる。フラットパイプ熱交換器は、特に、比較的小さい組立て空間における大きい熱交換面積を特徴としている。さらにフラットパイプ熱交換器は、迅速な負荷変化又は温度変化に基づいて、機械的応力に対して抵抗力がある。フラットパイプ熱交換器は、リアクター内に統合されているので、コンパクトな解決が形成される。
【0018】
初期ガスは、特にアンモニアである。その場合にそれぞれフラットパイプ熱交換器とリアクター室の形態に応じて、少なくとも80%、特に少なくとも85%の効率(発熱量H/発熱量NH)を有する、アンモニアのエンドサーマル反応のためのリアクターを得ることが可能である。オートサーマル反応のためには、初期ガスに酸化剤、特に酸素又は空気が混合されている。酸化剤として使用される酸素は、ある形態において、緑の余剰電流による水の電気分解によって得られ、その場合に生じる水素を分解ガスに混合することができる。
【0019】
オートサーマルアンモニア分解の場合には、85%を上回る、特に90%までの効率を得ることが、可能である。エンドサーマルアンモニア分解に比較して効率をさらに改良することは、エンドサーマル反応用のエネルギ供給のためのバーナーの排ガス損失をなくすことに基づいて、可能である。さらに、リアクターをよりコンパクトに形成することができるので、壁損失などを減少させることができる。したがってオートサーマルアンモニア分解用のリアクターの使用は、20kWまでの小出力、たとえば緑のアンモニアによる住宅建造物のCOなしの電流及び熱供給にも、適している。
【0020】
しかしこのリアクターは、他の初期ガスのためにも使用可能であって、その場合にその初期ガスは、混合ガスとすることができる。たとえばリアクターを、特に天然ガスの、蒸気改質のために使用することが、考えられる。その場合に、ある形態においては、改質器へ複数の初期ガスを案内することもでき、その場合にそれぞれ形態に応じて、すべての初期ガス、あるいは初期ガスの一部のみが、フラットパイプ熱交換器内で加熱される。
【0021】
フラットパイプ熱交換器は、当業者によってそれぞれ適用場合に応じて適切に設計することができるので、このフラットパイプ熱交換器は高い温度に適する。熱交換器は、好ましい形態において、向流熱交換器であって、その場合にフラットパイプ熱交換器は、リアクター室へ流れる初期ガスとリアクター室から流出する反応ガスとによって逆方向に貫流可能であるように、配置されている。しかし、他の構造形状も考えられる。
【0022】
その場合にオートサーマル又はエンドサーマル反応、特にアンモニアの分解は、リアクター内で行われるので、リアクターから流出する分解ガスは、それぞれ必要に応じて燃焼内で利用することができ、あるいは他の目的のために使用可能である。たとえば分解ガスの水素は、燃料電池内で電流に変換可能であり、かつ/又は、たとえば圧力スイング設備内で、純粋な水素に形成可能である。特にエンドサーマル反応は、リアクターを加熱するための燃焼室から分離して、行われる。
【0023】
液状のアンモニアは、ある適用においては、リアクターへ供給する前に蒸発される。蒸発する際に生じる冷却出力は、好ましい形態において他のように使用することができる。
【0024】
ガス状媒体のための高温フラットパイプ熱交換器は、たとえば特許文献1から知られており、これをもってそれを内容全体で参照する。しかし本発明は、特許文献1から知られた熱交換器の使用に限定されるものではない。
【0025】
ある形態において、流れ通路のギャップ幅は、3mmより小さい。フラットパイプの狭い配置によって、小さい構造空間における良好な熱伝達が保証される。
【0026】
ある形態において、フラットパイプ熱交換器は、熱交換器面積がリアクターの加熱される面積の約2倍から約4倍であるように、形成されている。たとえばアンモニアを分解するためのリアクターにおいて、熱交換器面積はmにおいて、kg/hにおけるアンモニアの流量の約0.06倍から0.1倍、特に0.08倍である。
【0027】
リアクターは、ある形態において、第1の端部と閉鎖された第2の端部を備えたアウターパイプを有しており、その第1の端部に入口と出口が配置されており、その場合にフラットパイプ熱交換器は円筒状のフラットパイプ熱交換器であって、それがアウターパイプ内で第1の端部とリアクター室との間に配置されている。
【0028】
円筒状のフラットパイプ熱交換器と称するのは、本出願に関連して、フラットパイプが同心円上に配置されている、フラットパイプ熱交換器である。その場合に、ある形態において、各円上に同じ数のフラットパイプが設けられている。ある形態において、パイプの間には波形のスペースホルダが配置されており、それを用いて熱交換面積がさらに増大される。
【0029】
リアクター室とフラットパイプ熱交換器は、適切なやり方で互いに結合されているので、入口を介して供給された初期ガスが熱交換器の第1の流れ通路を介してリアクター室へ供給され、かつリアクター室から流出する分解ガスが熱交換器の第2の流れ通路を介して出口へ案内される。
【0030】
ある形態において、リアクターは、リアクター室内に配置された1つのインナーパイプ、好ましくはリアクター室内に配置された2つのインナーパイプを有しており、その場合にリアクター室内に配置されたその/それらのインナーパイプは、熱交換器の第1の流れ通路を介して入口と接続されている。アンモニアを分解するための使用において、リアクターは、好ましくは、フラットパイプ熱交換器がリアクター室の上方に配置されるように、方向づけされている。インナーパイプを用いて、フラットパイプ熱交換器内で予熱されたアンモニアが、リアクター室内に配置されている触媒の下方へ案内され、かつアンモニアを分解するための触媒を介してアウターパイプ内でインナーパイプの回りを上方へ流れることができ、その場合にアウターパイプは外部から加熱可能である。
【0031】
リアクターの使用において、リアクターから流出する分解ガスは、次に混合ガスを分離するための圧力スイング設備内で処理される。ある形態において、リアクター、特にリアクターのアウターパイプは、この目的のために、過圧用に、特に最大20バールまでの過圧用に、設計されている。
【0032】
リアクターのある形態において、触媒を供給するための通路が設けられており、その場合に好ましくは、フラットパイプ熱交換器がこの通路を包囲している。それによってコンパクトな組立て方法が可能であり、その場合にリアクターの第1の端部からの触媒の供給が可能である。これが、組み立てられた状態においても、触媒の供給を許す。
【0033】
ある形態において、少なくともリアクター室は、エンドサーマル反応及び/又は始動のために外部から加熱可能である。リアクターのアウターパイプは、ある形態において、良好な熱伝達を有する適切な材料からなる。アウターパイプは、ある形態において、リアクター室の領域内で加熱装置、特に電気エネルギによって駆動可能な加熱装置によって包囲されており、その場合にリアクター室は、オートサーマル反応の始動のために外側を加熱可能である。他の形態においては、リアクター室は、特にエンドサーマル反応のための、熱供給のために、燃焼室内に配置されている。
【0034】
第2の視点によれば、リアクターを有する、オートサーマル反応のため、特にアンモニアを分解するための、装置が提供され、その場合にリアクターを包囲する熱絶縁が設けられている。この装置は、90%までの高い効率を特徴としている。熱絶縁がリアクター及び場合によっては始動のために設けられている加熱装置を包囲しており、その場合にコンパクトな構造によって壁損失を小さく抑えることができる。
【0035】
ある形態において、蒸発器が設けられており、その蒸発器がフラットパイプ熱交換器へ流れる初期ガスとフラットパイプ熱交換器から流出する分解ガスとによって貫流可能である。後段に接続された蒸発器によって、分解ガスを室温まで冷却することができる。オートサーマルアンモニア分解の場合に、分解ガスは水素、窒素及び酸素を有し、その場合に反応水を凝縮して分離することができる。
【0036】
第3の視点によれば、熱絶縁された燃焼室とリアクターとを有する、エンドサーマル反応のため、特にアンモニアを分解するための、装置が提供され、その場合にリアクターのリアクター室が燃焼室内に、その燃焼室から材料的に分離されて、配置されている。
【0037】
説明したように、「1つ」などという概念は、本出願に関連して、不定冠詞として使用され、数を表す言葉としては使用されない。装置は特に、ある形態において、1つより大きい、たとえば2、3、4又は10より多い、特に2つ又はそれ以上のリアクターを有しており、その場合にリアクターの数にしたがって、装置の出力は需要のために、たとえば100kg/hの水素に適合可能である。
【0038】
その場合に燃焼室とバーナーは、それぞれ適用場合に応じて当業者によって適切に形成可能であるので、燃焼室内に、リアクター室内でエンドサーマル反応のために必要な温度が発生可能である。
【0039】
ある形態において、分解ガス、燃料電池のアノード残留ガス及び/又は圧力スイング設備の洗浄ガスによって駆動可能なバーナーが設けられている。このバーナーは、回復的あるいは再生的バーナーであるので、エネルギ効率をそれ以上向上させるために、排ガス熱回収が可能である。
【0040】
ある形態において、リアクター室が燃焼室内に次のように、すなわちリアクター室を通るガス流が、リアクター室の外側に接して流れる加熱ガスによって並流原理で加熱可能であるように、配置されている。
【0041】
バーナーの代わりに、あるいはそれに加えて、ある形態において、燃焼室は電気エネルギを用いて加熱可能である。電気エネルギによる加熱は、特に、バーナーの駆動のためにいかなるガスも発生されず、かつリアクターの温度を維持しなければならない場合、リアクターの駆動休止内で、あるいは駆動休止後の装置の始動の際に、考えられる。
【0042】
リアクターは、ある形態において、燃焼室のカバーとして用いられるホルダ内に挿入されている。その場合に複数のリアクターを有する構造において、ある形態において、複数のリアクターと1つのバーナーが共通のホルダ内に挿入されている。このように形成されたモジュールは、それぞれ適用場合に応じて単独で、あるいは他のモジュールと組み合わせて、使用することができる。
【0043】
同様に、第4の視点によれば、複数のリアクター、特に4つのリアクターと1つのバーナーを有するモジュールが提供され、その場合にこれらのリアクターとバーナーが1つのホルダに取りつけられている。
【0044】
ホルダは、ある形態において、少なくとも領域的に熱絶縁する材料から形成されており、かつ熱交換器の領域内でリアクターを包囲している。このモジュールは、好ましくは上から燃焼室上へ取りつけられ、その場合に入口、出口及び-存在する限りにおいて-触媒を供給するための通路が、上から接近できる。
【0045】
第5の視点によれば、初期ガスを供給するための入口と分解ガスを搬出するための出口、触媒によって充填されたリアクター室及びリアクター内でリアクター室の上流に配置されたフラットパイプ熱交換器を有するリアクター内で、オートサーマル又はエンドサーマル反応を実施する方法が提供され、その場合にフラットパイプ熱交換器が供給される初期ガスと流出する分解ガスとによって貫流されるので、流出する分解ガスのエネルギが供給される初期ガスへ伝達される。
【0046】
特に、アンモニアを供給するための入口と分解ガスを搬出するための出口、触媒によって充填されたリアクター室及びリアクター内でリアクター室の上流に配置されたフラットパイプ熱交換器を有するリアクター内で、アンモニアを分解する方法が提供され、その場合にフラットパイプ熱交換器が供給されるアンモニアと流出する分解ガスとによって貫流されるので、流出する分解ガスのエネルギが供給されるアンモニアへ伝達される。
【0047】
その場合にある形態において、アンモニアにオートサーマル分解のために酸化剤、たとえば空気又は酸素が供給される。酸素供給は、触媒におけるNH分解のために好ましい温度、たとえば850℃が生じるように、定められる。たとえば、ある形態において、約1m/kgNHの比率の空気又は約0.2m/kgNHの比率を有する酸素が混合される。
【0048】
本発明の他の利点と視点が、請求項から、かつ本発明の実施例についての以下の説明から明らかにされ、それらの実施例を以下で図を用いて説明する。その場合に:
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、リアクター室とフラットパイプ熱交換器とを備えたリアクターを縦断面で示している。
図2図2は、図1に示すリアクターを、図1の切断線II-IIに沿って横断面で示している。
図3図3は、図1に示すリアクターを、図1の切断線III-IIIに沿って横断面で示している。
図4図4は、図1に示すリアクターを有する、エンドサーマル反応のための装置を縦断面で示している。
図5図5は、図4に示す装置内のガス流の温度推移を示している。
図6図6は、図1に示す4つのリアクターを有するモジュールを、斜視図で示している。
図7図7は、図6に示す4つのモジュールを有する装置を、斜視図で示している。
図8図8は、図1に示すリアクターを有するオートサーマル反応のための装置を縦断面で示している。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1から3は、特にアンモニアを分解するための、オートサーマル又はエンドサーマル反応のためのリアクター1を、縦断面、図1の切断線II-IIに沿った横断面及び図1の切断線III-IIIに沿った横断面で示している。
【0051】
図示されるリアクター1は、アウターパイプ10とインナーパイプ11を有している。アウターパイプ10は、図示される使用位置において上に配置された第1の端部101を有し、その第1の端部に初期ガスを供給するための入口12と分解ガスを排出するための出口13が設けられている。アウターパイプ10のそれとは逆の第2の端部102は、閉鎖されている。
【0052】
アウターパイプ10内には、触媒2で満たされたリアクター室14が設けられており、その場合に図示される実施例において、リアクター室14は、両方の端部において閉鎖プレート141によって画成されている。インナーパイプ11は、リアクター室14を通って延びており、その場合にインナーパイプ11の回りに触媒2が配置されている。図示される実施例において、2つのインナーパイプ11が設けられている。他の実施例においては、1つだけのインナーパイプが設けられ、あるいは2つより多いインナーパイプが設けられている。
【0053】
第1の端部101とリアクター室14の間において、アウターパイプ10内にフラットパイプ熱交換器3が配置されている。図示される実施例において、フラットパイプ熱交換器3は、アウターパイプ10内でリアクター室14の上方に配置されている。図示されるフラットパイプ熱交換器3は、複数のフラットパイプ30を有する円筒状のフラットパイプ熱交換器として形成されており、それらのフラットパイプが同心円の回りに配置されている。
【0054】
フラットパイプ熱交換器3の領域内で、中央に触媒2を供給するための通路4が設けられており、その場合にこれらのフラットパイプ30は、図示される実施例において、通路4の回りに配置されている。
【0055】
フラットパイプ30内及びフラットパイプ30の回りに、流れ通路が形成されており、これらの流れ通路は第1の流れ通路31もしくは第2の流れ通路32と称される。
【0056】
フラットパイプ熱交換器3は、図示される実施例において、入口12及びリアクター室14と次のように、すなわち第1の流れ通路31がリアクター室14へ供給される初期ガスによってリアクター室14の上流で貫流され、第2の流れ通路32がリアクター室14から流出する反応ガスによって貫流されるので、流出する反応ガスのエネルギが供給される初期ガスへ伝達可能であるように、接続されている。
【0057】
他の形態においては、供給される初期ガスのための第1の流れ通路がフラットパイプ30の回りに、そして流出する分解ガスのための第2の流れ通路がフラットパイプ30内に設けられている。
【0058】
供給される初期ガスのための第1の流れ通路31がインナーパイプ11と接続されているので、フラットパイプ熱交換器3内で予熱された初期ガスがインナーパイプ11を介して、リアクター室14内に配置されている触媒2の下方へ案内される。
【0059】
リアクター1は、たとえばアンモニアを水素に分解するように、オートサーマル又はエンドサーマル反応を実施するために用いられる。使用中、リアクター室14はエンドサーマル反応のために外側から、特に600℃を越える温度に、加熱される。オートサーマル駆動のためには、ある形態において、リアクター室の加熱は、始動時のみに行われる。初期ガスに、酸化剤が混合される。その後の推移において、リアクター内でエクソサーマル及びエンドサーマル反応が並行して遂行されるので、外部からの熱供給は省くことができる。
【0060】
分解によって生成されて、リアクター室から流出する分解ガスは、熱を有している。熱交換器3を用いて、分解ガスの熱を回収し、そのようにしてリアクター室14内で実施される、特にアンモニアを分解するための、オートサーマル又はエンドサーマル反応のための加熱エネルギの需要を削減することが、可能である。
【0061】
図4は、特にアンモニアを分解するための、熱絶縁燃焼室5、バーナー6及び図1に示すリアクター1を有する、エンドサーマル反応のための装置100を縦断面で図式的に示している。バーナー6とリアクター1は、図示される実施例において、共通のホルダ7内に配置されている。図示される実施例において、ホルダ7はカバーするために用いられ、そのホルダによって燃焼室5が上から閉鎖可能である。その場合にリアクター1とバーナー6のすべての接続端は、上から接近することができる。
【0062】
ホルダ7を用いてリアクター1を燃焼室5に、リアクター1のリアクター室14が燃焼室5内に配置されるように、位置決めすることができ、その場合にリアクター室14は材料的に燃焼室5から分離して配置されており、かつ燃焼室5内に発生される熱を介して外部から加熱される。
【0063】
リアクター1のフラットパイプ熱交換器3は、図示される実施例において、ホルダ7によって完全に包囲されている。その場合にホルダ7は、ある形態においては、フラットパイプ熱交換器3の熱絶縁としても用いられる。
【0064】
バーナー6は、当業者によって適切に形成可能であり、その場合にバーナー6は好ましくは矢印で示すように回復的又は再生的なバーナーとして形成されており、かつ燃焼の排熱を利用する。図示される実施例において、火炎パイプ60が設けられており、その場合に火炎パイプ60内で燃焼が行われて、加熱ガスがリアクター室14に沿って還流される。
【0065】
図4に示す実施例において、リアクター1が1つだけ設けられている。他の形態においては、装置100は複数のリアクター1を有する。
【0066】
図5は、フラットパイプ熱交換器3と燃焼室5内のガス流の温度推移を摂氏で図式的に示している。図5に図式的に示唆されるように、フラットパイプ熱交換器3は向流で貫流され、その場合に供給された初期ガスが、流出する分解ガスによって加熱される。図示される温度推移において、初期ガスが600℃を上回る高い温度に加熱される。リアクター室14(図4を参照)を通って流れるガス流は、リアクター室14の外側に沿って上昇する加熱ガス62によって加熱され、その場合にフラットパイプ熱交換器3内で初期ガスが予熱されることに基づいて、加熱が必要とするのは、従来の装置の場合よりも小さい温度差である。これが、図5に図式的に示されるように、上昇する加熱ガス62による並流原理の熱伝達も許す。
【0067】
図6は、ホルダ7、バーナー6及び複数の、図示される実施例においては4つの、リアクター1を有するモジュールを、斜視図で示している。その場合にリアクター1とバーナー6は、ホルダ7に取りつけられており、かつホルダ7を用いて燃焼室5(図4を参照)に取りつけ可能である。
【0068】
その場合にモジュール700の寸法は、複数の実施形態において、モジュール700が前もって組み立てられたアッセンブリとして準備可能であり、かつ道路経路を介して使用場所へ移送可能であるように、選択されている。
【0069】
ある形態において、リアクター1は2mの長さを有し、その場合に4つのリアクター1が、幅Bx奥行T=0.5mx0.8mの寸法をもつ外側寸法を備えたホルダ7内に前もって取りつけ可能である。
【0070】
モジュール700は、それぞれ適用場合に応じて単独で、あるいは他のモジュール700と組み合わせて、使用可能である。
【0071】
図7は、図6に示す4つのモジュール700を有する熱絶縁された燃焼室5を備えた、特にアンモニアを分解するための、エンドサーマル反応用の装置を、斜視図で示している。図7に示すように、これらのモジュール700は共通の燃焼室5に取りつけられており、その場合に燃焼室5はモジュール700によって上から閉鎖される。図示される配置は、単なる例であって、4つより多いか、あるいは少ないモジュール700を有する多数の変形が考えられる。
【0072】
図8は、図1と同様のリアクター1を有する、特にアンモニアを分解するための、オートサーマル反応を実施する装置200を縦断面で図式的に示している。その場合に同一の構成部分には、一致する参照符号が使用される。図1に示すリアクター1とは異なり、図8に示すリアクター1は付加的に加熱装置15を有しており、その加熱装置がリアクター14を包囲している。この加熱装置15は、特に電気的な加熱装置である。加熱装置15によってリアクター14に始動のために熱が外部から供給可能である。それ以降の駆動において、燃焼室5内でエンドサーマル及びエクソサーマル反応が遂行されるので、外部からの熱供給を省くことができる。
【0073】
この目的のために、初期ガスに、入口12と接続された供給接続端120を介して酸化剤、特に酸素又は空気が供給される。
【0074】
図示される装置200は、リアクター1を包囲する熱絶縁を有している。
【0075】
さらに、装置200は、供給される初期ガスに関して上流に配置された蒸発器9を有しており、その蒸発器が、フラットパイプ熱交換器3へ流れる初期ガスとフラットパイプ熱交換器3から流出する分割ガスとによって貫流される。
【0076】
初期ガス、特にアンモニアは、供給接続端90を介して蒸発器9へ供給される。リアクター1から流出する分解ガスは、供給接続端92を介して蒸発器9へ供給されて、蒸発器9内で冷却される。それぞれ形態に応じて、室温までの冷却が可能であって、その場合に分解ガス内に含まれる水素が凝縮される。蒸発器の出口接続端94において凝縮物を分離することができる。
【0077】
図4から7に示す装置100及びモジュール700とは異なり、図8に示す装置200においてはバーナー6を省くことができる。したがってこの装置200は、よりコンパクトかつより少ない壁損失で形成することができる。したがって図8に示す装置200は、特に20kWまでの小出力に適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】