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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ピラゾロピリミジンエステル化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07D487/04 143
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516543
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 CN2022097873
(87)【国際公開番号】W WO2023045411
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111131059.0
(32)【優先日】2021-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524036860
【氏名又は名称】シャンハイ マイアス ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Maius Pharmaceutical Co. Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 913, Building 1, No.515, Huanke Road, Pudong New Area, Shanghai, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クオ イェクン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン トゥチエン
(72)【発明者】
【氏名】フー シアン
(72)【発明者】
【氏名】シー ミンフォン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB06
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、下記の一般式で示される構造を有するピラゾロピリミジンエステル化合物を提供する。また、本発明は、ピラゾロピリミジンエステル化合物の調製方法、および、ピラゾロピリミジンエステル化合物のリンパ腫やリンパ球性白血病等の血液疾患の治療薬物の調製における使用に関する。本発明のピラゾロピリミジンエステル化合物は、初回通過効果が比較的小さく、経口吸収後に速やかに血漿に入って薬効を発揮し、血中薬物濃度のピーク値が比較的平坦であるものの、AUCが比較的大きいため、高いバイオアベイラビリティや穏やかな血漿中薬物濃度、そして長い作用持続時間を得ることができ、従来のBTK阻害剤よりも臨床ニーズに適している。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表される構造を有する、ピラゾロピリミジンエステル化合物。
【化1】
(式中、Rは、-C、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCH、-CHCH(CH、-(CHCH、-Bn-(CH10CH、-(CH13CH、-CH(C、-CH(CH(CH、-(CHCHおよび-CHCH(Cから選ばれる。)
【請求項2】
前記Rは、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCH、-CHCH(CHおよび-(CHCHから選ばれる、
請求項1に記載のピラゾロピリミジンエステル化合物。
【請求項3】
前記Rは-(CHCHから選ばれる、
請求項2に記載のピラゾロピリミジンエステル化合物。
【請求項4】
前記Rは-(CHCHから選ばれる、
請求項2に記載のピラゾロピリミジンエステル化合物。
【請求項5】
前記Rは、-CH(CHおよび-CHCH(CHから選ばれる、
請求項2に記載のピラゾロピリミジンエステル化合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のピラゾロピリミジンエステル化合物の調製方法であって、
1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オンを出発原料とし、下記反応式に従い、目的化合物に対応するクロロホルメートとの反応によって目的化合物を得る、
ピラゾロピリミジンエステル化合物の調製方法。
【化2】
(式中、Rは、-C、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCH、-CHCH(CH、-(CHCH、-Bn-(CH10CH、-(CH13CH、-CH(C、-CH(CH(CH、-(CHCHおよび-CHCH(Cから選ばれる。)
【請求項7】
反応容器に原料である1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン、クロロホルメートおよび溶媒を仕込み、原料とクロロホルメートを溶媒に溶解させた後、塩基を加えて反応させるステップを含む、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
反応容器に原料である1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン、溶媒および塩基を仕込み、原料と塩基を溶媒に溶解させた後、クロロホルメートを加えて反応させるステップを含み、
原料基準で、塩基の添加量は6.0±0.5当量、クロロホルメートの添加量は2.0±0.5当量であり、クロロホルメートは溶媒に溶解させた後、0~10℃で反応系に加える、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載のピラゾロピリミジンエステル化合物の、リンパ腫およびリンパ球性白血病治療用の薬物の調製における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬技術分野に属し、具体的にはピラゾロピリミジンエステル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ腫は、骨髄で産生されて血液およびリンパ組織に存在する血液細胞のサブタイプであるリンパ球から発生する、血液の癌である。リンパ腫は、ホジキンリンパ腫(HL)と非ホジキンリンパ腫(NHL)の二種に大別され、このうちNHLが80%~90%を占める。NHLにはリンパ組織に由来する一群の不均一な悪性腫瘍が含まれ、中国で最もよく見られる亜型としてDLBCL(びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)、CLL/SLL(慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫)、FL(濾胞性リンパ腫)、MZL(節性辺縁帯B細胞リンパ腫)およびMCL(マントル細胞リンパ腫)が挙げられるが、リンパ球の由来の違いによって、このうち約85%がB細胞リンパ腫に区分される。
【0003】
BTK(ブルトン型チロシンキナーゼ、Bruton’s tyrosine kinase)は、Tecファミリーに属する、細胞質に存在する非受容体型のプロテインチロシンキナーゼであり、TLR、BAFF-R、BCRおよびCXCR4/5シグナルの伝達に関与し、また、制御性B細胞の増殖、分化、アポトーシスおよび遊走に関与する。BTKは、悪性B細胞リンパ腫の発症過程において重要な役割を果たす。BTK阻害剤は、B細胞リンパ腫の治療における重要な薬物である。
【0004】
最も発症率の高いリンパ腫である悪性B細胞リンパ腫に対し、現在の多くのBTK阻害剤が従来の化学療法よりも優れた治療効果を有することが臨床試験によって明確に実証されている。現在市販されているBTK阻害剤としては、イブルチニブ(Ibrutinib)、アカラブルチニブ(Acalabrutinib)、ザヌブルチニブ(Zanubrutinib)、チラブルチニブ(Tirabrutinib)およびオレラブルチニブ(Orelabrutinib)等が挙げられ、それぞれの構造式は下記の通りである。
【0005】
【化1】
【0006】
このうち、イブルチニブは世界で初めて上市されたBTK阻害剤であり、CLLやMCLの治療形態に変化をもたらした。イブルチニブによって経口投与による治療が可能となり、また、比較的持続的な寛解を獲得できるようになった。
【0007】
BTK阻害剤は長期的な治療効果が実証されているものの、いくつかの欠点も存在する。例えば、経口吸収後の初回通過効果が顕著であるため、絶対的バイオアベイラビリティが低下する。また、体内における血中薬物濃度のピーク到達までに要する時間と消失半減期がいずれも短いため、血中薬物濃度の変動が大きくなってしまう。
【0008】
BTK阻害剤の使用により出血、骨髄抑制等の副作用が現れた場合、投与量の調整、ひいては治療の中止が必要となる。イブルチニブは吸収、消失の速度が速いため血中薬物濃度の変動が大きく、また、その高い血中薬物濃度ピーク値は投与量の制限要因となり、薬効に直接の影響を与える。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、BTK阻害剤の実際の使用における上記の欠点や不足に鑑み、従来のBTK阻害剤の構造に対して一連の改変を行い、かつ改変後の各化合物の薬物動態等について研究を行った。その結果、ピラゾロピリミジンエステル化合物を見出すに至った。
【0010】
そこで、本発明の第1の態様は、一般式(I)で示される構造を有するピラゾロピリミジンエステル化合物を提供することである。
【0011】
【化2】
【0012】
式中、Rは、-C、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCH、-CHCH(CH、-(CHCH、-Bn、-(CH10CH、-(CH13CH、-CH(C、-CH(CH(CH、-(CHCHおよび-CHCH(Cから選ばれる。
【0013】
本発明の第2の態様は、上述したピラゾロピリミジンエステル化合物の調製方法を提供することである。
【0014】
市販の1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オンを出発原料として、目的化合物に対応するクロロホルメートとの反応によって目的化合物を得る。
【0015】
【化3】
【0016】
式中、Rは、-C、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCH、-CHCH(CH、-(CHCH、-Bn、-(CH10CH、-(CH13CH、-CH(C、-CH(CH(CH、-(CHCHおよび-CHCH(Cから選ばれる。
【0017】
ピラゾロピリミジンエステル化合物の調製方法には、さらに下記のステップが含まれる。
【0018】
反応容器に原料である1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン、クロロホルメートおよび溶媒を仕込み、出発原料とクロロホルメートを溶媒に溶解させた後、塩基を加えて反応させる。
【0019】
ピラゾロピリミジンエステル化合物の調製方法には、さらに下記のステップが含まれてもよい。
【0020】
反応容器に出発原料である1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン、溶媒および塩基を仕込み、出発原料と塩基を溶媒に溶解させた後、クロロホルメートを加えて反応させる。
【0021】
塩基とクロロホルメートの添加量は、出発原料基準でそれぞれ6.0±0.5当量、2.0±0.5当量とする。クロロホルメートは、溶媒に溶解させた後、0~10℃で反応系に加える。
【0022】
さらに、反応終了後、後処理により単離精製して、上記ピラゾロピリミジンエステル化合物を得る。
【0023】
本発明の第3の態様は、上述したピラゾロピリミジンエステル化合物の、リンパ腫やリンパ球性白血病等の血液疾患の治療薬物の調製における使用である。
【0024】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0025】
1、本発明のピラゾロピリミジンエステル化合物は、初回通過効果が比較的小さく、経口吸収後に速やかに血漿に入り、活性代謝物である1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン、即ち、現在臨床で活性物質として一般的に認められている4-アミノ活性代謝物(4-AAM)に加水分解されて、薬効を発揮する。
【0026】
吸収・代謝の挙動が異なるため、本発明の化合物は、上述した4-アミノ活性代謝物に比べて血中薬物濃度のピーク値が小さく、かつ、AUCが大きい。そのため、薬物動態学的特性が従来のBTK阻害剤よりも臨床ニーズに適している。化合物3の血漿中における加水分解速度は最も速く、また、得られる4-アミノ活性代謝物のAUCは最も高く、化合物3自体のAUCを遥かに上回る。
【0027】
2、本発明のピラゾロピリミジンエステル化合物のAUCは、同じモル量で投与したその4-アミノ活性代謝物の77%~180%に相当し、またピーク到達時間が最速で2時間、平均保持時間は2.5~4.3時間であり、4-アミノ活性代謝物と比較して顕著に優れている。
【0028】
化合物3は、加水分解速度が最も早く、得られる4-アミノ活性代謝物のAUCおよび血中薬物濃度はいずれも化合物3自体を上回った。また、そのAUCは、同じモル量で直接投与した4-アミノ活性代謝物の180%に相当し、ピーク到達時間は2時間、平均保持時間は2.9時間であった。化合物1は、そのAUCが同じモル量で投与した4-アミノ活性代謝物の137%に相当し、ピーク到達時間は1時間、平均保持時間は2.8時間であった。化合物4は、そのAUCが同じモル量で投与した前記4-アミノ活性代謝物の127%に相当し、ピーク到達時間は2時間、平均保持時間は2.5時間であった。化合物2は、そのAUCが、同じモル量で投与した前記4-アミノ活性代謝物の88%に相当し、ピーク到達時間は2時間、平均保持時間は4.3時間であった。
【0029】
3、本発明のピラゾロピリミジンエステル化合物は、より高いバイオアベイラビリティや、より穏やかな血中薬物濃度、そしてより長い作用持続時間を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ラットに4-アミノ活性代謝物を強制経口投与した後の薬物濃度-時間曲線を示す。
図2】ラットに化合物1を強制経口投与した後の薬物濃度-時間曲線を示す。
図3】ラットに化合物2を強制経口投与した後の薬物濃度-時間曲線を示す。
図4】ラットに化合物3を強制経口投与した後の薬物濃度-時間曲線を示す。
図5】ラットに化合物4を強制経口投与した後の薬物濃度-時間曲線を示す。
図6】ラットに化合物5を強制経口投与した後の薬物濃度-時間曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照しながら、具体的な実施形態により本発明の技術手段を明確かつ完全に説明する。なお、記載された実施形態は、本発明のすべての実施形態ではなく、一部の実施形態にすぎない。当業者が本発明の実施形態に基づいて創造を要することなくなし得る他のあらゆる実施形態は、すべて本発明の範囲に属する。
【0032】
本発明の文脈において、関連する用語の定義は下記の通りである。
【0033】
血中薬物濃度:薬物吸収後の血漿中における、血漿タンパク質に結合した薬物または血漿中に遊離した薬物として存在する血漿中の薬物の総濃度を指し、広く全血中の薬物濃度を指す場合もある。薬物の作用の強さは血漿中の薬物濃度に正比例し、体内の薬物濃度は経時的に変化する。
【0034】
ピーク到達時間:薬物の単回投与後に血中薬物濃度がピーク値に達するまでに要する時間を指す。この時間の経過後に血中薬物濃度は最も高くなる。ピーク到達時間は、適切な投与時間を分析的に決定するために使用され得る。
【0035】
AUCは血中薬物濃度-時間曲線の曲線下面積の略称である。現代の薬物動態研究において、AUCは、薬物のインビボ特性を評価するための重要なパラメータである。この面積は、単回投与から特定時間経過後の薬物吸収の総量を表し、薬物のバイオアベイラビリティの計算に使用され得る。
【0036】
消失半減期:分布平衡に達した後の薬物の血中濃度が50%減少するのに要する時間を指す。
【0037】
初回通過効果:投与された内服薬は、吸収されて血液循環に入る前に、消化管を介して腸粘膜と肝臓で代謝されるが、この代謝によって血液循環に入る親薬物の量が減少する現象をいう。
【0038】
本発明の文脈において、かかる一般式(I)の化合物の番号とR基との対応関係は、下記表1の通りである。
【0039】
【表1】
【実施例
【0040】
実施例1 化合物1の調製
窒素保護下で、500mlの三つ口フラスコに基質として10gの(1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン)と、200gの溶媒(塩化メチレン)と、10gのクロロギ酸イソプロピルとを加え、基質とクロロギ酸イソプロピルを溶媒に溶解させた後、10℃まで降温し、10~20分間かけて6.45gの塩基(ピリジン)を滴下し、3~4時間保温して反応させた。TLCによるモニタリングを行い、出発原料スポットがほぼ消失したことを確認した時点で反応を停止した。
【0041】
100gの氷水を加え、分液し、水層を50gの塩化メチレンで抽出し、分液後の有機層と抽出後の有機層を合一して水で洗浄し、濃縮して、カラムクロマトグラフイーにより5.0gの製品を得た。收率は41.9%であった。
【0042】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.78 (s, 1H), 8.33 (s, 1H), 7.76 (d, J = 5.6 Hz, 2H), 7.37- 7.40 (t, J = 5.2Hz, 2H), 7.15-7.18(m, 3H), 7.07-7.09(m, 2H), 6.54-6.65 (m, 1H), 6.27-6.33(t, J =12Hz, 1H), 5.66-5.74(dd, J = 25.2, 6.8Hz, 1H), 4.82-4.86(m, 1H), 4.01-4.61(m, 1H), 3.19-3.82(m, 1H) , 2.38-2.46(m, 1H), 2,27-2.29(m, 1H) , 2.00-2.04(m, 2H), 1.74-1.76(m, 1H) , 1.20-1.34(m, 8H)。
13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 171.19, 165.77, 158.51, 156.46, 155.13, 153.04, 150.88, 144.12, 129.94(2C), 129.70(2C), 128.19, 127.81, 127.56,123.98, 119.43(2C), 119.03(2C), 102.16, 70.41, 53.77, 52.75, 49.98, 46.01, 30.13(2C), 25.31。
【0043】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=527.3であり、分子式と一致した。
【0044】
実施例2 化合物2の調製
クロロギ酸イソプロピルをクロロギ酸プロピルに置き換えた以外は、実施例1と同様のステップで調製を行い、5.5gの目的化合物を得た。収率は46.1%であった。
【0045】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.77 (s, 1H), 8.26 (s, 1H), 7.60-7.67 (m, 2H), 7.37- 7.40 (t, J = 5.2Hz, 2H), 7.15-7.19(m, 3H), 7.07-7.10(m, 2H), 6.54-6.65 (m, 1H), 6.27-6.33(t, J =12Hz, 1H), 5.66-5.74(dd, J =26.4, 6.8Hz, 1H), 4.89-4.91(m, 1H), 4.04-4.61(m, 1H), 3.20-3.82(m, 1H) , 2.38-2.45(m, 1H), 2,27-2.29(m, 1H) , 2.02-2.04(m, 2H), 1.74-1.76(m, 1H) , 1.52-1.64(m, 3H) , 1.26-1.46(m, 1H) , 0.79-1.04(m, 4H)。
13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 165.78, 158.58, 156.45 155.22, 154.74, 152.79, 151.25, 143.97, 129.95(2C), 129.78(2C), 128.21, 127.55, 124.01, 119.42(2C), 119.14, 119.09(2C), 102.01, 53.79, 52.79, 49.99, 45.92, 42.20, 25.30, 23.88, 14.20。
【0046】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=527.3であり、分子式と一致した。
【0047】
実施例3 化合物3の調製
クロロギ酸イソプロピルをクロロギ酸ブチルに置き換えた以外は実施例1と同様のステップで調製を行い、5.8gの目的化合物を得た。収率は47.3%であった。
【0048】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.77 (s, 1H), 8.40 (s, 1H), 7.64-7.66 (m, 2H), 7.38- 7.44 (t, J = 5.2Hz, 2H), 7.16-7.19(m, 3H), 7.08-7.09(m, 2H), 6.54-6.65 (m, 1H), 6.27-6.33(t, J =12Hz, 1H), 5.66-5.74(dd, J =26.0, 6.4Hz, 1H), 4.89-4.90(m, 1H), 4.06-4.61(m, 1H), 3.19-3.81(m, 1H) , 2.35-2.45(m, 1H), 2,27-2.29(m, 1H) , 2.01-2.09(m, 2H), 1.74-1.76(m, 1H) , 1.52-1.60(m, 3H) , 1.14-1.38(m, 3H) , 0.81-0.95(m, 4H)。
13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 165.77, 158.64, 156.42, 155.29, 154.74, 152.81, 151.13, 143.84, 129.95(2C), 129.81(2C), 128.19, 127.56,124.02, 119.56, 119.44(2C), 119.12(2C), 106.47, 66.20, 53.80, 52.79, 49.98, 45.91, 42.19, 29.99, 25.29, 23.88。
【0049】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=541.3であり、分子式と一致した。
【0050】
実施例4 化合物4の調製
クロロギ酸イソプロピルをクロロギ酸イソブチルに置き換えた以外は実施例1と同様のステップで調製を行い、5.2gの目的化合物を得た。収率は42.4%であった。
【0051】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.78 (s, 1H), 8.06(s, 1H), 7.76-7.77 (d, J = 4.4Hz, 2H), 7.37- 7.40 (t, J = 5.2Hz, 2H), 7.15-7.18(m, 3H), 7.07-7.09(m, 2H), 6.54-6.65 (m, 1H), 6.27-6.33(t, J =12.6Hz, 1H), 5.66-5.74(dd, J =26.0, 6.4Hz, 1H), 4.89-4.91(m, 1H), 4.04-4.61(m, 1H), 3.20-3.80(m, 1H) , 2.38-2.45(m, 2H), 2,27-2.29(m, 1H) , 2.01-2.04(m, 2H), 1.88-1.92(m, 2H) , 0.76-1.02(m, 8H)。
13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 165.78, 158.63, 156.37, 155.32, 154.75, 152.77, 151.07, 143.77, 129.96(2C), 129.85(2C), 129.73, 128.21, 127.54, 124.06, 119.40(2C), 119.06(2C), 101.72, 72.23, 53.80, 52.79, 49.98, 46.09, 29.99(2C), 25.29, 23.87。
【0052】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=541.3であり、分子式と一致した。
【0053】
実施例5 化合物5の調製
クロロギ酸イソプロピルをクロロギ酸へキシルに置き換えた以外は実施例1と同様のステップで調製を行い、4.8gの目的化合物を得た。収率は37.3%であった。
【0054】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.77 (s, 1H), 8.11-8.13 (d, J = 8.4Hz, 1H), 7.64-7.67(m, 2H), 7.37- 7.40 (t, J = 5.2Hz, 2H), 7.15-7.18(m, 3H), 7.07-7.09(m, 2H), 6.54-6.63 (m, 1H), 6.27-6.33(t, J =12.8Hz, 1H), 5.66-5.74(dd, J =26.0, 6.8Hz, 1H), 4.89-4.91(m, 1H), 4.01-4.61(m, 1H), 3.19-3.81(m, 1H) , 2.35-2.45(m, 1H), 2,27-2.29(m, 1H) , 2.01-2.03(m, 2H), 1.74-1.76(m, 1H) , 1.50-1.59(m, 3H) , 1.24-1.37(m, 7H) , 0.84-0.90(m, 4H)。
13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 165.79, 158.56, 156.47, 155.27, 154.75, 152.79, 151.19, 143.78, 129.94(2C), 129.80(2C), 128.21, 127.54, 124.00, 119.56, 119.37(2C), 119.14(2C), 101.93, 66.51, 53.80, 52.79, 49.98, 45.92, 42.20, 32.77, 30.26, 29.98, 23.88, 14.20。
【0055】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=569.3であり、分子式と一致した。
【0056】
実施例6 化合物6の調製
クロロギ酸イソプロピルをクロロギ酸ベンジルに置き換えた以外は実施例1と同様のステップで調製を行い、6.5gの目的化合物を得た。収率は49.9%であった。
【0057】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.77(s, 1H), 7.85 (s, 1H), 7.63-7.65 (m, 2H), 7.34- 7.38 (m, 7H), 7.13-7.18(m, 3H), 7.06-7.07(d, J = 5.6Hz, 2H), 6.53-6.65 (m, 1H), 6.27-6.33(t, J =9.2Hz, 1H), 5.65-5.74(dd, J =26.8, 6.0Hz, 1H), 5.10(s, 2H), 4.88-4.90(m, 1H), 4.04-4.60(m, 1H), 3.19-3.80(m, 1H) , 2.36-2.42(m, 1H), 2,26-2.28(m, 1H) , 2.01-2.03(m, 1H), 1.70-1.75(m, 3H)。
13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 165.77, 158.69, 156.35, 154.72, 152.54, 150.72, 143.62, 135.14, 129.99(2C), 129.88(2C), 128.75 , 128.65(2C), 128.58, 128.42(2C), 128.22, 127.54, 124.09, 124.06, 119.50(2C), 119.14(2C), 101.75, 67.87, 53.82, 45.84, 42.19, 30.28, 25.29。
【0058】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=575.3であり、分子式と一致した。
【0059】
実施例7 化合物7の調製
5当量のn-ウンデカノール、7.5当量のトリエチルアミンおよび2.5当量のトリホスゲンを用いてクロロギ酸n-ウンデシル粗生成物を調製し、そのまま実施例1におけるクロロギ酸イソプロピルに代えて使用したこと以外は、実施例1と同様のステップで調製を行った。反応後にカラムクロマトグラフィーにより1.38gの目的化合物を得た。収率は19.1%であった。
【0060】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.48 (s, 1H), 8.84 (d, J = 10.4 Hz, 1H), 7.82 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.42 - 7.37 (m, 2H), 7.15 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.10 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.07 - 7.03 (m, 2H), 6.76 (ddd, J = 39.6, 16.3, 10.5 Hz, 1H), 6.07 (t, J = 15.7 Hz, 1H), 5.63 (dd, J = 32.5, 10.3 Hz, 1H), 4.45 -4.01 (m, 5H), 2.13 -1.98 (m, 2H), 1.86 (d, J = 11.1 Hz, 1H), 1.58 (dd, J = 13.6, 6.6 Hz, 2H), 1.43 (s, 1H), 1.24 (dd, J = 24.6, 8.0 Hz, 18H), 0.81 (dd, J = 9.0, 4.6 Hz, 3H)。
【0061】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=639.39であり、分子式と一致した。
【0062】
実施例8 化合物8の調製
5当量のn-テトラデカノール、7.5当量のトリエチルアミンおよび2.5当量のトリホスゲンを用いてクロロギ酸n-テトラデシル粗生成物を調製し、そのまま実施例1におけるクロロギ酸イソプロピルに代えて使用したこと以外は、実施例1と同様のステップで調製を行った。反応後にカラムクロマトグラフィーにより1.35gの目的化合物を得た。収率は17.5%であった。
【0063】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 11.47 (s, 1H), 8.88 -8.77 (m, 1H), 7.81 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.40 - 7.36 (m, 2H), 7.14 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.11 - 7.05 (m, 2H), 7.05 - 7.01 (m, 2H), 6.82 - 6.67 (m, 1H), 6.05 (dd, J = 23.3, 17.2 Hz, 1H), 5.61 (dd, J = 49.7, 10.5 Hz, 1H), 4.44 ,4.00(d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.30 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 4.19 - 4.05 (m, 3H), 3.50, 2.90 (t, J = 11.0 Hz, 1H), 3.12 -3.05 (m, 1H) , 2.02 -1.95 (m, 1H), 1.85 (d, J = 12.7 Hz, 1H), 1.60 - 1.53 (m, 2H), 1.28 - 1.16 (m, 24H), 0.79 (t, J = 6.9 Hz, 3H)。
【0064】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=681.23であり、分子式と一致した。
【0065】
実施例9 化合物9の調製
5当量の3-ペン夕ノール、7.5当量のトリエチルアミンおよび2.5当量のトリホスゲンを用いてクロロギ酸3-ペンチル粗生成物を調製し、そのまま実施例1におけるクロロギ酸イソプロピルに代えて使用したこと以外は、実施例1と同様のステップで調製を行った。反応後にカラムクロマトグラフィーにより1.11gの目的化合物を得た。収率は17.1%であった。
【0066】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 11.44 (s, 1H), 8.86 -8.47 (m, 1H), 7.82 -7.32 (m, 5H), 7.25 -6.89 (m, 6H), 6.74 (ddd, J = 25.8, 16.0, 10.2 Hz, 1H), 6.05 (dd, J = 23.7, 17.5 Hz, 1H), 5.61 (dd, J = 55.1, 10.5 Hz, 1H), 5.02 - 3.74 (m, 6H), 1.79 - 1.29 (m, 8H), 0.81 (dt, J = 27.6, 7.4 Hz, 6H)。
【0067】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=555.19であり、分子式と一致した。
【0068】
実施例10 化合物10の調製
5当量の2,4-ジメチル-3-ペンタノール、7.5当量のトリエチルアミンおよび2.5当量のトリホスゲンを用いてクロロギ酸-2,4-ジメチル-3-ペンチル粗生成物を調製し、そのまま実施例1におけるクロロギ酸イソプロピルに代えて使用したこと以外は、実施例1と同様のステップで調製を行った。反応後にカラムクロマトグラフィーにより1.07gの目的化合物を得た。収率は16.3%であった。
【0069】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.43 (s, 1H), 8.88 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 7.82 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.42 - 7.37 (m, 2H), 7.17 - 7.04 (m, 5H), 6.86 - 6.68 (m, 1H), 6.07 (t, J = 15.8 Hz, 1H), 5.69 -5.54 (m, 1H), 4.46 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 4.37 - 4.30 (m, 1H), 4.12 (d, J = 14.2 Hz, 1H), 3.99 (dd, J = 14.2, 7.1 Hz, 1H), 2.07 (dd, J = 13.2, 10.0 Hz, 2H), 1.96 - 1.82 (m, 4H), 1.44 (s, 1H), 1.26 -1.12 (m, 1H), 0.85 (d, J = 6.4 Hz, 12H)。
【0070】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=583.32であり、分子式と一致した。
【0071】
実施例11 化合物11の調製
5当量のn-オクタノール、7.5当量のトリエチルアミンおよび2.5当量のトリホスゲンを用いてクロロギ酸n-オクチル粗生成物を調製し、そのまま実施例1におけるクロロギ酸イソプロピルに代えて使用したこと以外は、実施例1と同様のステップで調製を行った。反応後にカラムクロマトグラフィーにより0.57gの目的化合物を得た。収率は8.4%であった。
【0072】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 11.49 (s, 1H), 8.84 (d, J = 17.2 Hz, 1H), 7.83 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.40 (dd, J = 8.2, 7.7 Hz, 2H), 7.16 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.11 (t, J = 9.6 Hz, 2H), 7.05 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 6.84 -6.69 (m, 1H), 6.08 (dt, J = 22.5, 11.3 Hz, 1H), 5.64 (dd, J = 49.0, 10.3 Hz, 1H), 4.38 (d, J = 85.6 Hz, 1H), 4.21 -3.95 (m, 4H), 3.52,2.92 (t, J = 11.2 Hz, 1H), 3.11 (dd, J = 22.3, 11.0 Hz, 1H), 2.10 - 1.85 (m, 4H), 1.65 - 1.56 (m, 2H), 1.27 - 1.20 (m, 10H), 0.83 (t, J = 6.8 Hz, 3H)。
【0073】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=597.35、[M+Na]=619.33であり、分子式と一致した。
【0074】
実施例12 化合物3の調製
実施例3と同様に、クロロギ酸ブチルを原料とした。実施例3との主な違いは、実施例3では先に基質とクロロギ酸ブチルを溶媒に溶解させてから塩基を滴下して反応させるという仕込み順としているのに対し、本実施例では基質と塩基を溶媒に溶解させてからクロロギ酸ブチルを滴下して反応させるという仕込み順としている点にある。本比較例の調製ステップは、具体的には下記の通りである。
【0075】
反応フラスコに、基質として0.5gの(1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン)と、7.5mLの溶媒(塩化メチレン)と、6.0当量の塩基(ピリジン)とを加え、基質と塩基を溶媒に溶解させた後、2.0当量のクロロギ酸ブチルを1mLの溶媒(塩化メチレン)に溶解させて0~10℃の温度下で反応フラスコにゆっくりと滴下し、10~20℃まで昇温させて攪拌した後、サンプルを採取して検査した。
【0076】
HPLC分析の結果、反応生成物には、0.97%の出発原料基質の残基と、1.31%の二置換生成物、即ち式(II)の構造を有する生成物とが含まれており、残りが目的生成物である化合物3であった。
【0077】
【化4】
【0078】
比較例1
原料は同様にクロロギ酸ブチルとし、仕込み順は、基質と塩基を溶媒に溶解させた後、クロロギ酸ブチルを滴下して反応させた。本比較例の調製ステップは、具体的には下記の通りである。
【0079】
窒素保護下で、500mlの三つ口フラスコに、基質として10gの(1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン)と、200gの溶媒(塩化メチレン)と、3.6当量の塩基(ピリジン)、即ち6.45gのピリジンとを加え、基質と塩基を溶媒に溶解させた後、25℃の温度下で3.2当量のクロロギ酸ブチル、即ち10gのクロロギ酸ブチルを滴下し、滴下完了後、室温で3~4時間反応させた。
【0080】
TLCモニタリングの結果、3~4時間反応させた後の主な生成物は、二置換生成物、即ち式(II)の構造を有する生成物であった。また、出発原料の一部については、反応が不完全であった。
【0081】
比較例2
原料は同様にクロロギ酸ブチルとし、仕込み順は、先に基質および塩基を溶媒に溶解させた後、クロロギ酸ブチルを滴下して反応させた。本比較例の調製ステップは、具体的には下記の通りである。
【0082】
反応フラスコに、基質として0.5gの(1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン)と、5mLの溶媒(塩化メチレン)と、2.0当量の塩基(トリエチルアミン)とを加え、0~10℃の温度下で2.0当量のクロロギ酸ブチルをゆっくりと滴下し、2時間攪拌した後、サンプルを採取して検査した。
【0083】
HPLC分析の結果、大量の原料が残っていることが確認された。
【0084】
比較例3
原料は同様にクロロギ酸ブチルとし、仕込み順は、先に基質と塩基を溶媒に溶解させた後、クロロギ酸ブチルを滴下して反応させた。本比較例の調製ステップは、具体的には下記の通りである。
【0085】
反応フラスコに、基質として0.5gの(1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン)と、7.5mLの溶媒(テトラヒドロフラン)と、5.0当量の塩基(ピリジン)とを加え、6.0当量のクロロギ酸ブチルを1mLの溶媒(テトラヒドロフラン)に溶解させて0~10℃の温度下で反応フラスコにゆっくりと滴下し、10~20℃まで昇温して攪拌した後、サンプルを採取して検査した。
【0086】
HPLC分析の結果、反応生成物には、53%の目的生成物、即ち化合物3と、32%の二置換生成物、即ち式(II)の構造を有する生成物が含まれていた。
【0087】
比較例4
原料は同様にクロロギ酸ブチルとし、仕込み順は、先に基質と塩基を溶媒に溶解させた後、クロロギ酸ブチルを滴下して反応させた。本比較例の調製ステップは、具体的には下記の通りである。
【0088】
反応フラスコに、0.5gの基質として(1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン)と、7.5mLの溶媒(塩化メチレン)と、6.0当量の塩基(ピリジン)を加え、3.0当量のクロロギ酸ブチルを1mLの溶媒(塩化メチレン)に溶解させて0~10℃の温度下で反応フラスコにゆっくりと滴下し、10~20℃まで昇温して攪拌した後、サンプルを採取して検査した。
【0089】
HPLC分析の結果、反応生成物には、74.4%の目的生成物、即ち化合物3と、18.6%の二置換生成物、即ち式(II)の構造を有する生成物が含まれていた。
【0090】
上記の実施例12および比較例1~4の分析によれば、先に基質と塩基を溶媒に溶解させてからクロロギ酸ブチルを滴下するという仕込み態様とする場合、塩基の添加割合、クロロホルメートの添加割合およびクロロホルメートの添加温度等の反応条件を厳密に制御する必要がある。実施例12の条件での反応の制御は一置換4-アミノ目的生成物の生成に好適であるが、そうでない場合は、反応の結果、二置換4-アミノ不純物が生成されたり、原料の反応が不完全となりやすく、一置換4-アミノ目的生成物を得ることができない。
【0091】
比較例1の結果によれば、前記塩基およびクロロホルメートの添加割合、クロロホルメートの添加温度を適切に制御できない場合は、一置換目的生成物を生成することができない。
【0092】
比較例2の結果によれば、前記塩基の添加割合を適切に制御できない場合は、置換反応が起こりにくくなる。
【0093】
比較例3および4の結果によれば、前記塩基およびクロロホルメートの添加割合を適切に制御できない場合は、二置換不純物がかなりの割合で、かつ、極めて容易に生成され、一置換目的生成物の含有量が大幅に低下する。
【0094】
実施例13 化合物の薬物動態測定
機器:超高速液体クロマトグラフ(Acquity UPLC、Waters社製)、トリプル四重極質量分析計(Qtrap 5500、SCIEX社製)、高速冷却遠心分離機(5430R、Eppendorf社製)。
【0095】
クロマトグラフィー条件:カラム:Waters社製BEH C18、2.1×50mm、1.7μm)、カラム温度:45℃。移動層:0.1%のギ酸水溶液(A)とアセトニトリル、勾配:下記表2の通り。
【0096】
【表2】
【0097】
質量分析条件:陽イオン多重反応モニタリングモード(MRM)。カーテンガス(Curtain Gas)、ガス1(Gas1)、およびガス2(Gas2)はいずれも45psi。イオン源温度:500℃、イオン源電圧:5000V。
【0098】
各化合物のプリカーサーイオン(Q1)、プロダクトイオン(Q3)および衝突エネルギー(CE)は下記表3の通り。
【0099】
【表3】
【0100】
実験動物:雄性SDラット、体重200~240グラム、実験前に一晩絶食させた。
【0101】
薬物の調製:上述した4-アミノ活性代謝物および各試験化合物(化合物1~5)を精秤し、投与量を30.0mg/kgとし、0.5%のCMC-Na溶液に分注して懸濁液を調製した。投与体積は2ml/200gとし、投与前に調製した。
【0102】
動物への投与および採血:ラットに強制経口投与を行い、投与前および投与後10分、20分、40分、1時間、1.5時間、4.5時間、7時間、9時間、10時間、22時間、24時間の時点で100μlの血液を採取し、氷浴上に置き、遠心分離して血漿を調製し、凍結保存した。
【0103】
血中薬物濃度データと薬物動態パラメータの算出:
血漿中薬物濃度データはMultiQuan3.0(SCIEX社製)で処理し、薬物動態パラメータの計算にあたっては、DAS 2.0ソフトウェアを用いて分析した。血漿中薬物濃度の単位はμg/Lである。
【0104】
図1図6は、それぞれ4-アミノ活性代謝物および化合物1~5試験群の血漿中薬物濃度と時間との関係のグラフを示す。化合物1~5は、吸収後、速やかに血漿に入り、前記4-アミノ活性代謝物(4-AAM)に加水分解されて薬効を発揮する。表4は薬物動態試験結果を示す。
【0105】
【表4】
【0106】
図1~6および表4の薬物動態試験結果によれば、本発明の化合物は初回通過効果が小さく、経口投与後に血漿中で薬効を発揮し、4-アミノ活性代謝物と比較して、同じモル量で投与した化合物1、3、4のAUCが顕著に高い。さらに、本発明の化合物は血漿中薬物濃度のピーク値がより小さく、ピーク到達時間がより遅く、平均保持時間がより長いため、薬物動態学的特性がより臨床ニーズに適している。
【0107】
このうち、化合物3は、加水分解速度が最も速く、得られる4-アミノ活性代謝物のAUCおよび血中薬物濃度がいずれも化合物3自体を上回った。また、AUCが、同じモル量で直接投与した4-アミノ活性代謝物の180%に相当し、ピーク到達時間は2時間、平均保持時間は2.9時間であった。
【0108】
化合物1は、そのAUCが、同じモル量で投与した4-アミノ活性代謝物の137%に相当し、ピーク到達時間は1時間、平均保持時間は2.8時間であった。化合物4は、そのAUCが、同じモル量で投与した4-アミノ活性代謝物の127%に相当し、ピーク到達時間は2時間、平均保持時間は2.5時間であった。化合物2は、そのAUCが、同じモル量で投与した4-アミノ活性代謝物の88%に相当し、ピーク到達時間は2時間、平均保持時間は4.3時間であった。
【0109】
本発明の化合物によれば、より高いバイオアベイラビリティや、より穏やかな血漿中薬物濃度、そしてより長い作用持続時間を得ることができ、そのいずれの点においても従来の薬物より格段に進化している。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表される構造を有する、ピラゾロピリミジンエステル化合物。
【化1】
(式中、Rは-(CH CH である。)
【請求項2】
請求項1に記載のピラゾロピリミジンエステル化合物の調製方法であ
1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オンを出発原料とし、下記反応式に従い、目的化合物に対応するクロロホルメートとの反応によって目的化合物を得る、
ピラゾロピリミジンエステル化合物の調製方法。
【化2】
(式中、Rは-(CH CH である。)
【請求項3】
反応容器に原料である1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン、クロロホルメートおよび溶媒を仕込み、原料とクロロホルメートを溶媒に溶解させた後、塩基を加えて反応させるステップを含む、
請求項2に記載の調製方法。
【請求項4】
反応容器に原料である1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]-1-ピぺリジニル]-2-プロペン-1-オン、溶媒および塩基を仕込み、原料と塩基を溶媒に溶解させた後、クロロホルメートを加えて反応させるステップを含み、
原料基準で、塩基の添加量は6.0±0.5当量、クロロホルメートの添加量は2.0±0.5当量であり、クロロホルメートは溶媒に溶解させた後、0~10℃で反応系に加える、
請求項2に記載の調製方法。
【請求項5】
請求項1に記載のピラゾロピリミジンエステル化合物の、リンパ腫およびリンパ球性白血病治療用の薬物の調製における使用。
【国際調査報告】