(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20240905BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20240905BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240905BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20240905BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240905BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240905BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240905BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20240905BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240905BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/30
C08K3/26
C08K3/40
C08K3/34
C08K3/22
C08L67/00
F21V7/00 510
F21Y115:10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516586
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2022117708
(87)【国際公開番号】W WO2023040735
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111113045.6
(32)【優先日】2021-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517438181
【氏名又は名称】珠海万通特種工程塑料有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】517393787
【氏名又は名称】金発科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100221512
【氏名又は名称】山中 誠司
(72)【発明者】
【氏名】閻昆
(72)【発明者】
【氏名】徐顕駿
(72)【発明者】
【氏名】姜蘇俊
(72)【発明者】
【氏名】曹民
(72)【発明者】
【氏名】麦傑鴻
(72)【発明者】
【氏名】楊匯▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】蒋智強
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF051
4J002CF101
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE187
4J002DE216
4J002DE236
4J002DG026
4J002DG046
4J002DJ007
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DL007
4J002FD017
4J002FD018
4J002FD028
4J002FD058
4J002FD078
4J002FD096
4J002FD098
4J002FD108
4J002FD138
4J002FD168
4J002FD178
4J002FD208
4J002FD338
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び使用に関する。該ポリエステル樹脂組成物は、PCT樹脂、白色顔料、補強材、ポリエステルエラストマー及びその他の添加剤を含む。本発明によるポリエステル樹脂組成物は、シリコーンとの結合力が強く、LED反射ブラケットとした場合に、高温高湿環境下においても、LED反射ブラケットとシリコーンとが分離しにくく、LEDランプビーズの長寿命化に有効であり、しかも、優れた靭性を有し、力を繰り返して受けた場合に粉落ちの問題が発生しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分として、PCT樹脂40~80重量部と、白色顔料10~40重量部と、補強材0~30重量部と、ポリエステルエラストマー0.5~5重量部と、その他の添加物0~10重量部と、を含み、
ポリエステルハードセグメントとポリエーテルソフトセグメントとを含み、ショア硬度が40~74であり、融点が191~221℃である、ことを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
成分として、PCT樹脂50~70重量部と、白色顔料20~35重量部と、補強材5~20重量部と、ポリエステルエラストマー1~4重量部と、その他の添加物2~8重量部と、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルエラストマーは、ポリエステル-エーテル型であり、ショア硬度が46~63であり、融点が195~212℃である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記PCT樹脂の極限粘度が0.65~0.75dL/gである、ことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記白色顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、又はアルミナの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記補強材は、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、カオリン、タルク、又はマイカの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記その他の添加剤は、酸化防止剤、耐衝撃性改良剤、難燃剤、蛍光増白剤、潤滑剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、造核剤、UV安定剤、離型剤、顔料、又は染料の1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
PCT樹脂、白色顔料、補強材、ポリエステルエラストマー及びその他の添加剤を混合し、溶融押出し、造粒して、前記ポリエステル樹脂組成物を得るステップを含む、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
LED製品の製造における請求項1~7のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物の使用。
【請求項10】
LED製品の製造における請求項9に記載のポリエステル樹脂組成物の使用であって、
前記LED製品はLED反射ブラケットである、ことを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂の技術分野に属し、具体的には、ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)の誕生により、照明業界は半導体照明の時代になった。LED光源は、信頼性が高く、発光パワーが高く、消費電力が低く、応答速度が速く、寿命が長く、価格が安く、色彩が豊富であるという利点がある。ガス照明、白熱灯、及び蛍光灯に続き、LEDは、新世代の主流照明技術になった。時代の発展と科学技術の進歩に伴い、LEDは、街路灯、屋内照明、バックライトディスプレイ、車のヘッドライト、景観照明灯などのさまざまな分野で広く使用されている。
【0003】
LEDブラケットは、チップキャリアとして、電気伝導と熱伝導の両方の役割を果たし、LEDデバイスにとって不可欠な重要な補助材料である。LEDブラケットとして使用される材料には、主に耐高温ポリアミド(PPA)や耐高温ポリエステル(ポリ(シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)、PCT)などがある。耐高温ポリアミド(主にPA46、PA6T、及びPA9T)は、初期白色度が高く、耐熱性に優れ、流動性が高く、射出成形プロセスに適しており、低コストであるため、現在、LEDブラケットの主流材料となっている。ただし、PPA材料は、光熱劣化と減衰が速いため、現在、PPA材料は、低出力製品でのみ使用できる。高電圧LEDの導入により、PCTは、高温変色耐性に優れたため、中出力及び高出力LED反射ブラケットへの適用には大きな利点がある。
【0004】
LEDパッケージ工程には、反射ブラケットのプリベーク、ダイボンディング、ワイヤーボンディング、接着剤ディスペンス、分離、分光、テーピングなどのステップが含まれており、そのうち、分離とは、ダイボンディング、ワイヤーボンディング、及び接着剤ディスペンスが完了したLEDランプビーズを含む金属ストリップを全自動剥離機に通して、全自動剥離機による押圧により各LEDビーズを金属ストリップから剥離するプロセスを指す。LED反射ブラケットの溝部に金属ストリップの凸部を埋め込み、全自動剥離機で繰り返し押圧し剥離する。この過程で、金属ストリップとLED反射ブラケットとの間に相互作用力が発生するが、PCT材料で製造されたLED反射ブラケットは、靭性に劣り、力を繰り返して受けると破壊し、粉落ちの問題が発生し、LED反射ブラケットの廃棄やその他の問題につながり、その後のパッケージプロセスに重大な影響を及ぼす。
【0005】
LEDパッケージ接着剤には、主にエポキシ樹脂とシリコーンが含まれており、シリコーンは、優れた機械的特性、耐老化性、優れた熱安定性、耐候性、柔軟性、高い光透過率、小さい内部応力や低い吸湿性などを備えており、エポキシ樹脂と比較して、その性能は、高出力、高輝度LED製品のパッケージのニーズに対応することができる。したがって、シリコーンは、急速にエポキシ樹脂に取って代わり、新世代のより理想的なLEDパッケージ材料になりつつある。しかし、PCT材料で製造されたLED反射ブラケットは、シリコーンとの結合力が弱く、実際の使用中にLED反射ブラケットとシリコーンとが分離し、この分離による隙間から空気中の酸素や水蒸気がLEDランプビーズの内部に侵入し、ランプビーズが切れてランプが故障し、寿命が短くなる。
【0006】
特許CN102471565Aは、特定のポリエステルエラストマーを添加することによって難燃剤を導入すると機械的特性(破断点伸びや耐摩耗性)が低下するという問題を解決する難燃性ポリマー組成物を開示している。得られた組成物は、優れた難燃性を有するとともに、優れた機械的特性(破断伸びや耐摩耗性)を有し、加熱老化後も機械的特性を高いレベルに維持する。しかし、この組成物は、主に、極細ケーブルを製造するために使用されており、ポリエステル樹脂組成物とシリコーンとの結合力や、LED発光基板とした場合のLEDパッケージの分離工程における粉落ちやLEDランプビーズの寿命などの問題は考慮されていない。
【0007】
したがって、シリコーンとの結合力が強く、LEDパッケージの分離工程中にLED反射ブラケットとシリコーンとの分離がなく、LEDランプビーズの長寿命化が可能で、また、靭性が強く、応力を繰り返して受けた場合にも破壊しないため、粉落ちの問題を回避できる、新しいポリエステル組成物材料を開発することには、重要な研究意義と応用価値がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ポリエステル樹脂組成物とシリコーンとの結合力が良好でなく、LEDパッケージの分離工程においてLED反射ブラケットとシリコーンとが分離しやすく、LEDランプビーズの寿命が短く、LEDパッケージの分離工程における粉落ち不良や不足を効果的に抑制することができないという従来の課題を克服する、ポリエステル樹脂組成物を提供することである。本発明によるポリエステル組成物は、シリコーンとの結合力が強く、LED反射ブラケットとした場合に、高温高湿環境下においても、LED反射ブラケットとシリコーンとが分離しにくく、LEDランプビーズの長寿命化に有効であり、しかも、優れた靭性を有し、力を繰り返して受けた場合に粉落ちの問題が発生しない。
【0009】
本発明の別の目的は、上記ポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、LED製品の製造における上記ポリエステル樹脂組成物の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の発明の目的を実現するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0012】
ポリエステル樹脂組成物であって、成分として、
PCT樹脂40~80重量部と、白色顔料10~40重量部と、補強材0~30重量部と、ポリエステルエラストマー0.5~5重量部と、その他の添加物0~10重量部と、を含み、
ポリエステルハードセグメントとポリエーテルソフトセグメントとを含み、ショア硬度が40~74であり、融点が191~221℃である。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、PCT樹脂をマトリックスとし、白色顔料を添加することで色を調整し、また、特定のポリエステルエラストマーを添加することでシリコーンとの結合力と靱性を高めて、LEDパッケージの分離工程において発生するLED反射ブラケットとシリコーンの分離を避けて、LEDランプビーズの長寿命化を図ることができ、また、力を繰り返して受けた場合に粉落ちの問題が発生することを回避する。具体的な動作原理は以下のとおりである。
【0014】
ポリエステルエラストマーは、ポリエステルハードセグメントとポリエーテルソフトセグメントとからなり、一方、ポリエステルハードセグメントは、ポリエステルマトリックスとの良好な相溶性を提供し、ポリエーテルソフトセグメントは、良好な靭性及び接着性を提供する。本発明者らは、繰り返し研究した結果、特定の硬度と融点の調整により、ポリエステルハードセグメントとポリエーテルソフトセグメントによる改善作用のバランスを取ることができ、得られたポリエステル組成物は、ノッチ付き衝撃強度が高く、ポリエステル組成物で製造されたLED反射ブラケットは、ビーズ剥離中に金属ストリップによる作用力を受けた場合、破壊されにくく、粉落ちの問題を回避することができることを発見した。
【0015】
一方、特定の硬度及び融点のポリエステルエラストマーのポリエーテルソフトセグメントは、水酸基とエーテル結合活性基とを多量に含み、シリコーン表面のケイ素水素基と化学反応を起こすことができ、さらにポリエステル樹脂組成物とシリコーンとの結合力を向上させ、高温高湿環境下においても、LED反射ブラケットとシリコーンとの分離の問題がなく、LEDランプビーズの長寿命化を図ることができる。
【0016】
また、適切な量の補強材を添加することにより、靭性をさらに向上させることができる。
【0017】
好ましくは、前記ポリエステル樹脂組成物は、成分として、
PCT樹脂50~70重量部と、白色顔料20~35重量部と、補強材5~20重量部と、ポリエステルエラストマー1~4重量部と、その他の添加物2~8重量部と、を含む。
【0018】
好ましくは、前記ポリエステルエラストマーは、ポリエステル-エーテル型であり、ショア硬度が46~63であり、融点が195~212℃である。
【0019】
当該分野の従来のPCT樹脂、白色顔料、補強材、及び適切な添加剤であれば、本発明に使用することができる。
【0020】
PCT樹脂は、テレフタル酸と1,4-シクロヘキサンジメタノールとを重縮合反応させて得られる構造式(下記化学式1参照)のものである。
【化1】
【0021】
好ましくは、前記PCT樹脂の極限粘度は0.65~0.75dL/gである。
【0022】
極限粘度の試験方法は、サンプル0.5gを計量し、60/40(wt/wt)のフェノール/テトラクロロエタン100mLに溶解した後、一定25℃の条件でウベローデ粘度計により極限粘度試験を行うことである。
【0023】
好ましくは、前記PCT樹脂の極限粘度が0.71~0.73dL/gである。
【0024】
好ましくは、前記白色顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、又はアルミナの1種又は複数種である。
【0025】
より好ましくは、前記白色顔料は二酸化チタンである。
【0026】
好ましくは、前記補強材は、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、カオリン、タルク、又はマイカの1種又は複数種である。
【0027】
好ましくは、前記その他の添加剤は、酸化防止剤(0~3重量部)、耐衝撃性改良剤(0~10重量部)、難燃剤(0~10重量部)、蛍光増白剤(0~5重量部)、滑剤(0~5重量部)、可塑剤(0~5重量部)、増粘剤(0~3重量部)、帯電防止剤(0~3重量部)、造核剤(0~3重量部)、UV安定剤(0~2重量部)、離型剤(0~3重量部)、顔料(0~10重量部)、又は染料(0~10重量部)の1種又は複数種である。
【0028】
上記のポリエステル樹脂組成物の製造方法は、PCT樹脂、白色顔料、補強材、ポリエステルエラストマー及びその他の添加剤を混合し、溶融押出し、造粒して、前記ポリエステル樹脂組成物を得るステップを含む。
【0029】
LED製品の製造における上記ポリエステル樹脂組成物の使用もまた、本発明の保護範囲内である。
【0030】
好ましくは、前記LED製品はLED反射ブラケットである。
【発明の効果】
【0031】
従来技術と比較して、本発明は以下のような有益な効果を有する。
【0032】
本発明によるポリエステル樹脂組成物は、シリコーンとの結合力が強く、LED反射ブラケットとした場合に、高温高湿環境下においても、LED反射ブラケットとシリコーンとが分離しにくく、LEDランプビーズの長寿命化に有効であり、しかも、優れた靭性を有し、力を繰り返して受けた場合に粉落ちの問題が発生しない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例を参照して本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するためには使用されない。以下の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常、当該分野の通常の条件又は製造業者の提案する条件に従ったものであり、使用する原料、試薬などは、特段の説明がない限り、通常の市場等の商業ルートから入手可能なものである。本発明に基づいて当業者が行う如何なる非実質的な変更及び置換も、本発明の保護範囲に属する。
【0034】
本発明の各実施例及び比較例に使用される試薬の一部について以下のように説明する。
【0035】
PCT樹脂1#:イーストマンTMケミカルプロダクツ社製(EastmanTM Chemical Products)、PCT 36296、極限粘度0.719dL/g(サンプル0.5gを計量し、60/40(wt/wt)のフェノール/テトラクロロエタン100mLに溶解した後、一定25℃の条件でウベローデ粘度計により極限粘度試験を行う。以下同様)。
【0036】
PCT樹脂2#:SKケミカル社製(SK Chemicals)、0302、極限粘度:0.65dL/g。
PCT樹脂3#:SKケミカル社(SK Chemicals)、0502、極限粘度:0.75dL/g。
PCT樹脂4#:イーストマンTMケミカルプロダクツ社製(EastmanTM Chemical Products)、PCT 36294、極限粘度0.625dL/g。
白色顔料:二酸化チタン(TiO2)、R105、デュポン社(DuPont Co.,Ltd)(米国);酸化亜鉛(ZnO)、UN3077、LANXESS化学(中国)有限公司製。
補強材:F7x28:NITTO BOSEKI Japan社製のCSG3PA-820、繊維径28μm、珪灰石、NYGLOS 8、米国NYCO鉱物社製。
ポリエステル-エーテル型ポリエステルエラストマー:オランダのRoyal DSM社製、型番Arnitel(登録商標)EM400(ショア硬度40、融点191℃)、EM460(ショア硬度46、融点195℃)、EM550(ショア硬度55、融点207℃)、EM630(ショア硬度63、融点212℃)、EM740(ショア硬度74、融点221℃)、デュポン社製(DuPont Co.,Ltd)(米国))、型番8238(ショア硬度82、融点221℃)、型番4056(ショア硬度40、融点150℃)。ショア硬度は、GB/T 2411-2008測定により得られた。融点はASTM D3418-2003により測定した。
ポリエステル-ポリエステル型ポリエステルエラストマー:オランダのRoyal DSM社製、Arnitel(登録商標)UM551(ショア硬度55、融点200℃)。
シリコーン:深セン永信仁科技有限公司から購入したLEDパッケージシリコーン、UH-6950-1(A接着剤とB接着剤からなる)
【0037】
本発明の実施例及び比較例におけるポリエステル樹脂組成物と試験に必要な試験片の製造方法は以下のとおりである。
【0038】
乾燥したPCT樹脂とポリエステルエラストマーとを高速ミキサーで均一に混合し、二軸押出機の主供給口から添加した後、白色顔料、強化充填剤、及びその他の添加剤(存在する場合)をサイドフィーダから二軸押出機に加え、設定温度230~300℃で二軸押出機を用いて溶融押出し、造粒して、粒状ポリエステル樹脂組成物を得る。
【0039】
本発明の実施例及び比較例の試験方法は以下のとおりである。
【0040】
衝撃強度試験:ノッチ付きアイゾッド衝撃強度はISO 180-2013に従って試験される。
【0041】
粉落ち試験:得られたポリエステル組成物を射出成形して28mm*35mmの正方形2835型番のLED反射ブラケットにし、1枚の金属ストリップにおけるLED反射ブラケットの数は36*22=792である。射出成形したLEDブラケットから全自動剥離機でビーズを剥離し、全てのLEDブラケットからのビーズ剥離が完了した後、破損したLEDブラケットの数を記録することによって、ランプビーズにパッケージした後の粉落ちをシミュレーションした。破損したLED反射ブラケットの数が100個以下の場合は、使用上の要件を満たすことができる。
【0042】
引張破壊力試験
試験片製造:寸法80×20×2.0mmのポリエステル樹脂組成物試験片を射出成形した。試験方法:A接着剤とB接着剤を質量比1:4で均一に混合した後、0.02gを1本の試験方表面の一端に滴下し、もう1本の試験片の一端をシリコーンに押さえ、クリップで固定した。その後、試験片をオーブンに入れ、80℃で1h予備硬化し、次いで150℃まで昇温して、4h硬化した後、終了した。硬化したスプラインを10mm/minの引張速度で引張試験を行い、引張破断力を記録した。本願では、引張破断力によってポリエステル組成物で製造された成形品とシリコーンとの結合力を表し、引張破断力が大きいほど、ポリエステル組成物で製造された成形品とシリコーンとの結合力が強いことを示している。引張破断力が350N以上であれば、実用上のニーズに応えることができる。
【0043】
実施例1~18
本実施例では、処方中の各成分の重量部が表1及び表2に示される一連のポリエステル樹脂組成物を提供する。
【0044】
【0045】
【0046】
比較例1~4
本比較例は、処方中の各成分の重量部が表3に示される一連のポリエステル樹脂組成物を提供する。
【0047】
【0048】
上記の性能試験方法により、各実施例及び比較例によるポリエステル樹脂組成物の性能を試験したところ、表1、表2及び表3のような結果が得られた。
【0049】
以上の結果から、実施例1~18によるポリエステル組成物は、靭性に優れ、ノッチ衝撃強度が高く、製造されたLED反射ブラケットの場合、ビーズを剥離するときに破損したLED反射ブラケットの数は100個未満であり、また、ポリエステル樹脂組成物は、シリコーンとの結合力が強く、引張破断力が324N以上である。実施例1~5では、異なるショア硬度の弾性ポリウレタンが使用され、硬度の増加に伴い、ノッチ衝撃強度が増加してから低下し、ポリエステル樹脂組成物とシリコーンとの結合力が増加してから低下し、ショア硬度が46~63の場合、ノッチ衝撃強度とシリコーンとの結合力が更に向上し、引張破断力が558N以上で、製造されたLED反射ブラケットは、ビーズ剥離時の破損数が20個未満である。実施例3、6~7では、弾性ポリウレタンの使用量を増加させると、ノッチ衝撃強度は向上してから低下し、実施例3の性能が最も優れた。
【0050】
比較例1では、弾性ポリウレタンを添加して変性していないため、ノッチ衝撃強度が低く、ポリエステル樹脂組成物とシリコーンとの結合力が悪く、LED反射ブラケットとした場合に、ビーズ剥離時の破損数が600個を超え、引張破断力が157Nしかない。比較例2では、ポリエステル-ポリエステル型のポリエステルエラストマーを用いて製造されたLED反射ブラケットは、ビーズ剥離時の破損数が580個を超え、引張破断力が167Nしかなく、比較例3では、硬度84、融点221℃のポリエステルエラストマーを用いて製造されたLED反射ブラケットは、ビーズ剥離時の破損数が393個であり、引張破断力が304Nであり、改善効果が悪かった。比較例4では、硬度40、融点150℃のポリエステルエラストマーを用いて製造されたLED反射ブラケットは、ビーズ剥離時の破損数が423個であり、引張破断力が281Nであり、改善効果が低かった。
【0051】
当業者であれば、以上の実施例は、読者が本発明の原理を理解するのを助けるためのものであり、本発明の保護範囲がそのような特定の記載及び実施形態に限定されないものとして理解されるべきであることを認識する。当業者は、本発明で開示されたこれらの技術的示唆に従って、本発明の本質から逸脱しない様々な他の特定の変形及び組み合わせを行うことができ、これらの変形及び組み合わせは依然として本発明の保護範囲内にある。
【国際調査報告】