(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】RHO関連タンパク質キナーゼ阻害剤の固体形態又はその溶媒和物、調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 403/14 20060101AFI20240905BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240905BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240905BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
A61K31/506
A61P1/00
A61P3/00
A61P7/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P25/00
A61P27/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516619
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2022119269
(87)【国際公開番号】W WO2023041026
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111103170.9
(32)【優先日】2021-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519464474
【氏名又は名称】ベイジン タイド ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing Tide Pharmaceutical Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ホンジュン
(72)【発明者】
【氏名】フェン, ズゥワン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン, ナナ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ, ヤンピン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ, ライ
(72)【発明者】
【氏名】カオ, シャンロン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ジエ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA11
4C086NA13
4C086ZA02
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA51
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC21
(57)【要約】
Rho関連タンパク質キナーゼ阻害剤(6-(4-((4-(1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-1-メチル-1H-インドール-2-イル)(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)メタノン又はその溶媒和物の固体形態、固体形態を調製する方法、固体形態を含む医薬組成物、及びRho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤、好ましくは選択的ROCK2阻害剤としての固体形態の使用が提供される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物A一水和物:
【化1】
の結晶形態Iであって、
前記結晶形態Iが、約4.5±0.2°、12.2±0.2°、20.1±0.2°、25.3±0.2°及び25.5±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含み;好ましくは、約4.5±0.2°、9.1±0.2°、10.3±0.2°、12.2±0.2°、16.1±0.2°、18.2±0.2°、20.1±0.2°、25.3±0.2°及び25.5±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含み;最も好ましくは、約4.5±0.2°、9.1±0.2°、10.3±0.2°、12.2±0.2°、12.5±0.2°、16.1±0.2°、16.9±0.2°、17.4±0.2°、18.2±0.2°、18.9±0.2°、20.1±0.2°、20.5±0.2°、21.2±0.2°、22.6±0.2°、24.3±0.2°、24.8±0.2°、25.3±0.2°、25.5±0.2°、26.8±0.2°及び27.2±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含む、XRPDパターンを有する、化合物A一水和物の結晶形態I。
【請求項2】
化合物A無水物:
【化2】
の結晶形態IIであって、
前記結晶形態IIが、約8.6±0.2°、12.5±0.2°及び21.9±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含み;好ましくは、約6.7±0.2°、8.6±0.2°、12.5±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、21.9±0.2°及び24.9±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含み;最も好ましくは、約6.2±0.2°、6.7±0.2°、8.6±0.2°、11.1±0.2°、12.5±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、15.2±0.2°、17.3±0.2°、18.2±0.2°、18.6±0.2°、21.0±0.2°、21.9±0.2°、24.3±0.2°、24.9±0.2°及び25.9±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含む、XRPDパターンを有する、化合物A無水物の結晶形態II。
【請求項3】
化合物A一水和物:
【化3】
の結晶形態IIIであって、
前記結晶形態IIIが、約8.7±0.2°、12.3±0.2°及び13.8±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含み;好ましくは、約8.7±0.2°、12.3±0.2°、13.8±0.2°、18.5±0.2°、19.5±0.2°、21.0±0.2°及び24.5±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含み;最も好ましくは、約8.7±0.2°、12.3±0.2°、13.8±0.2°、16.9±0.2°、17.6±0.2°、18.2±0.2°、18.5±0.2°、19.5±0.2°、19.9±0.2°、21.0±0.2°、22.5±0.2°、24.5±0.2°及び24.7±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含む、XRPDパターンを有する、化合物A一水和物の結晶形態III。
【請求項4】
化合物A一水和物:
【化4】
の結晶形態IVであって、
前記結晶形態IVが、約8.9±0.2°、11.4±0.2°及び17.9±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有し;好ましくは、前記結晶形態IVが、約8.3±0.2°、8.9±0.2°、9.2±0.2°、11.4±0.2°、15.3±0.2°、17.9±0.2°、22.0±0.2°及び26.9±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有し;最も好ましくは、前記結晶形態IVが、約5.7±0.2°、8.3±0.2°、8.9±0.2°、9.2±0.2°、10.2±0.2°、11.4±0.2°、12.4±0.2°、15.3±0.2°、16.4±0.2°、16.8±0.2°、17.2±0.2°、17.4±0.2°、17.9±0.2°、18.5±0.2°、19.6±0.2°、20.3±0.2°、20.8±0.2°、21.3±0.2°、22.0±0.2°、22.4±0.2°、23.0±0.2°、23.8±0.2°、24.8±0.2°、26.1±0.2°、26.9±0.2°、27.8±0.2°及び28.7±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する、化合物A一水和物の結晶形態IV。
【請求項5】
化合物A一水和物:
【化5】
の結晶形態Vであって、
前記結晶形態Vが、約8.7±0.2°、12.2±0.2°及び24.5±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含み;好ましくは、約8.7±0.2°、12.2±0.2°、13.7±0.2°、16.9±0.2°、20.0±0.2°、20.9±0.2°及び24.5±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含み;最も好ましくは、約8.7±0.2°、12.2±0.2°、12.8±0.2°、13.7±0.2°、15.5±0.2°、16.3±0.2°、16.9±0.2°、17.5±0.2°、20.0±0.2°、20.9±0.2°、22.2±0.2°、22.5±0.2°、24.5±0.2°、25.2±0.2°、29.4±0.2°及び30.3±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含む、XRPDパターンを有する、化合物A一水和物の結晶形態V。
【請求項6】
請求項1に記載の結晶形態I、請求項2に記載の結晶形態II、請求項3に記載の結晶形態III、請求項4に記載の結晶形態IV、及び請求項5に記載の結晶形態Vのうちのいずれか1つ又は複数、並びに1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項7】
Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤、好ましくは選択的ROCK2阻害剤としての医薬の製造における、請求項1に記載の結晶形態I、請求項2に記載の結晶形態II、請求項3に記載の結晶形態III、請求項4に記載の結晶形態IV、及び請求項5に記載の結晶形態Vのうちのいずれか1つ又は複数の使用。
【請求項8】
前記医薬が、自己免疫障害(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE;狼瘡)、乾癬、クローン病、アトピー性皮膚炎、湿疹、又は移植片対宿主病(GVHD)を含む);心血管障害(高血圧、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、心肥大、脳虚血、脳血管攣縮、又は勃起不全を含む);炎症(喘息、心血管炎症、潰瘍性大腸炎、又は腎臓の炎症を含む);中枢神経系障害(神経細胞の変性又は脊髄損傷を含み、中枢神経系障害は、好ましくはハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、又は多発性硬化症である);動脈血栓性障害(血小板凝集、又は白血球凝集を含む);線維性障害(肝臓線維症、肺線維症、又は腎臓線維症を含む);腫瘍性疾患(リンパ腫、癌腫(例えば、扁平上皮がん、小細胞肺がん、下垂体がん、食道がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、肝臓がん、乳がん、大腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌又は子宮体癌、唾液腺癌、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、脳腫瘍、子宮内膜がん、精巣がん、胆管癌、胆嚢癌、胃がん、黒色腫、又は頭頸部がん)、白血病、星細胞腫、軟部組織肉腫、肉腫、又は芽腫を含む);メタボリックシンドローム;インスリン抵抗性;高インスリン血症;2型糖尿病;耐糖能異常;骨粗鬆症;眼障害(高眼圧症、加齢黄斑変性症(AMD)、脈絡膜血管新生(CNV)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、虹彩血管新生、ぶどう膜炎、緑内障(原発性開放隅角緑内障、急性閉塞隅角緑内障、色素性緑内障、先天性緑内障、正常眼圧緑内障、続発性緑内障又は新生血管緑内障を含む)、又は未熟児網膜炎(ROP)を含む)を含む、前記Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)により媒介される疾患の予防又は処置のためのものである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記医薬が、ループス腎炎、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ(RA)、血管腫、血管線維腫、肺線維症、乾癬、角膜移植片拒絶反応、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症、重症筋無力症、クローン病、自己免疫性腎炎、原発性胆汁性肝硬変、急性膵炎、同種拒絶反応、アレルギー性炎症、接触皮膚炎、遅延型過敏症、炎症性腸疾患、敗血症性ショック、骨粗鬆症、変形性関節症、神経細胞炎症、オスラー・ウェーバー症候群、再狭窄、真菌感染症、寄生虫感染症、及びウイルス感染症を含む、前記Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)により媒介される疾患の予防又は処置のためのものである、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
請求項2に記載の化合物A無水物の結晶形態IIを調製する方法であって、
化合物Aを、2~10個の炭素原子を有するエステル溶媒中で撹拌し、濾過し、得られた固体を真空乾燥して結晶を得るステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、Rho関連タンパク質キナーゼ阻害剤(6-(4-((4-(1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-1-メチル-1H-インドール-2-イル)(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)メタノン(以降「化合物A」と称する)の固体形態又はその溶媒和物、固体形態を調製するための方法、固体形態を含む医薬組成物、及びRho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤、好ましくは選択的ROCK2阻害剤としての固体形態の使用に関する。
【発明の背景】
【0002】
Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)は、AGCキナーゼファミリーからのセリン/スレオニンキナーゼであり、2つのアイソフォームであるROCK1及びROCK2を含む。ROCK1及びROCK2は、特定の組織中で異なる発現と制御を受けている。例えば、ROCK1は、比較的高いレベルで至る所で発現する一方で、ROCK2は、心臓、脳及び骨格筋中で優先的に発現する。ROCKは、発見されたRhoタンパク質の最初の下流エフェクターであり、その生物学的機能は、下流エフェクタータンパク質(MLC、Lin-11、Isl-1、LIMK、ERM、MARCKS、CRMP-2等)をリン酸化することにより実現される。様々な疾患(例えば、肺線維症、心・脳血管疾患、神経疾患及びがん等)がROCKにより媒介されている経路と関連していることが研究により示されている。そのため、ROCKは、新規薬剤開発の重要なターゲットとして考えられている。
【0003】
本出願人は、(6-(4-((4-(1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-1-メチル-1H-インドール-2-イル)(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)メタノンが、有効なRho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤として使用できることを発見したが(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際出願PCT/CN2018/093713を参照)、この化合物の固体形態に関する報告はない。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本発明は、以下に示す化合物A((6-(4-((4-(1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-1-メチル-1H-インドール-2-イル)(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)メタノン)の結晶形態又はその溶媒和物を提供する。
【化1】
【0005】
本発明の好ましい結晶形態は、Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)により媒介されている疾患の予防又は処置に優れた効果を有するだけでなく、さらなる利点も有する。例えば、本発明の好ましい結晶形態は、優れた物理的特性(溶解度、溶解速度、耐光性、低吸湿性、高温耐性、高湿耐性、流動性等を含む)を有し、本発明の好ましい結晶形態は、バイオアベイラビリティ、物理的及び/又は化学的安定性、並びに調製の容易性に関してより優れた特性を有することができる。本発明の好ましい結晶形態は、良好な粉体特性を有し、大量生産及び製剤形成により好適及び簡便であり、刺激を低減し吸収を向上させ、代謝速度における課題を解決し、薬物の蓄積に起因する毒性を有意に低減し、安全性を改善し、医薬製品の品質及び有効性を効果的に保証することができる。
【0006】
別の態様では、本発明は、本発明の結晶形態を調製する方法を提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、本発明の結晶形態のいずれか1つ又は複数及び1つ又は複数の薬学的に許容できる担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤、好ましくは選択的ROCK2阻害剤としての医薬の製造における本発明の結晶形態の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】化合物A一水和物の結晶形態Iの粉末X線回折パターンである。
【
図2】化合物A一水和物の結晶形態Iの示差走査熱量測定(DSC)グラフである。
【
図3】化合物A一水和物の結晶形態Iの熱重量分析(TGA)グラフである。
【
図4】化合物A一水和物の結晶形態Iの走査型電子顕微鏡画像である。
【
図5】化合物A無水物の結晶形態IIの粉末X線回折パターンである。
【
図6】化合物A無水物の結晶形態IIの示差走査熱量測定(DSC)グラフである。
【
図7】化合物A無水物の結晶形態IIの熱重量分析(TGA)グラフである。
【
図8】化合物A無水物の結晶形態IIの走査型電子顕微鏡画像である。
【
図9】化合物A一水和物の結晶形態IIIの粉末X線回折パターンである。
【
図10】化合物A一水和物の結晶形態IIIの示差走査熱量測定(DSC)グラフである。
【
図11】化合物A一水和物の結晶形態IIIの熱重量分析(TGA)グラフである。
【
図12】化合物A一水和物の結晶形態IIIの走査型電子顕微鏡画像である。
【
図13】化合物A一水和物の結晶形態IVの粉末X線回折パターンである。
【
図14】化合物A一水和物の結晶形態IVの示差走査熱量測定(DSC)グラフである。
【
図15】化合物A一水和物の結晶形態IVの熱重量分析(TGA)グラフである。
【
図16】化合物A一水和物の結晶形態IVの走査型電子顕微鏡画像である。
【
図17】化合物A一水和物の結晶形態Vの粉末X線回折パターンである。
【
図18】化合物A一水和物の結晶形態Vの示差走査熱量測定(DSC)グラフである。
【
図19】化合物A一水和物の結晶形態Vの熱重量分析(TGA)グラフである。
【
図20】固体安定性試験における化合物A無水物の結晶形態IIの比較した粉末X線回折パターンである。
【
図21】熱処理前後の化合物A一水和物の結晶形態Iの比較した粉末X線回折パターンである。
【発明の詳細な説明】
【0010】
定義
文脈で他に定義されない限り、本明細書で使用されているすべての技術的及び科学的用語は、当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有することを意図している。本明細書で利用されている技術への言及は、当業者には明白であろうそれらの技術に対する変形又は等価の技術の代替を含む、当技術分野において一般的に理解されているような技術への言及を意図している。以下の用語の大半は、当業者により容易に理解されると考えられるが、それでもなお、本発明をより良く説明するために以下の定義を述べる。
【0011】
本明細書で使用されている用語「を含有する」、「を含む(include)」、「を含む(comprise)」、「を有する」、又は「に関連する」、及び他の変形は、包括的又は制限のないものであり、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。
【0012】
「約」という語は、本明細書で使用されている場合、当業者に理解されているように、値の許容される標準誤差内の範囲、例えば±0.05、±0.1、±0.2、±0.3、±1、±2又は±3等を指す。
【0013】
「固体形態」という用語は、本明細書で使用されている場合、化合物Aのすべての固体形態又はその任意の溶媒和物、例えば、結晶形態又は非晶質形態を含む。
【0014】
「非晶質」という用語は、本明細書で使用されている場合、三次元の秩序を失った任意の固体物質を指す。一部の事例では、非晶質固体は、XRPD結晶解析法、固体核磁気共鳴(ssNMR)分光法、DSC、又はこれらの技術のいくつかの組合せを含む、公知の技術により特徴付けることができる。以下に説明するように、非晶質固体は、典型的に1つ又は2つの幅広いピーク(すなわち、約5° 2θ又はそれより大きいベース幅(base width)を有するピーク)で構成された拡散XRPDパターンを与える。
【0015】
「結晶形態」又は「結晶」という用語は、本明細書で使用されている場合、非晶質固体物質とは対照的に、はっきりと確定されているピークを有する特有のXRPDパターンを与える三次元秩序を示す任意の固体物質を指す。
【0016】
「粉末X線回折パターン(XRPDパターン)」という用語は、本明細書で使用されている場合、実験的に観察されたディフラクトグラム又はそれに由来するパラメータを指す。XRPDパターンは通常、ピーク位置(横軸)及びピーク強度(縦軸)を特徴とする。
【0017】
「2θ」という用語は、本明細書で使用されている場合、X線回折実験の実験準備に基づく度単位のピーク位置を指し、回折パターンにおける共通の横軸単位である。実験準備は、入射光がある特定の格子面でシータ(θ)度を形成するときに反射が回折する場合、反射光が角度2シータ(2θ)度で記録されることを必要とする。本明細書において、特定の固体形態についての特定の2θ値への参照は、本明細書に記載されているX線回折実験条件を使用して測定された2θ値(度単位)を意味するように意図していることを理解すべきである。例えば、本明細書に記載されているように、Cu-Kα(Kα1(Å):1.540598及びKα2(Å):1.544426Å)を放射線源として使用した。
【0018】
本明細書で使用されている場合、「I%」は、ピーク強度のパーセンテージを指す。
【0019】
「示差走査熱量測定(DSC)グラフ」という用語は、本明細書で使用されている場合、示差走査熱量計で記録された曲線を指す。
【0020】
「熱重量分析(TGA)グラフ」という用語は、本明細書で使用されている場合、熱重量分析装置で記録された曲線を指す。
【0021】
本明細書で使用されている場合、X線回折ピーク位置に関する「本質的に同じ」という用語は、典型的なピーク位置及び強度の変動性が考慮されていることを意味する。例えば、当業者は、ピーク位置(2θ)が、回折の測定に使用されている装置と同様に、典型的には0.1~0.2度程度の幾分の変動性を示すことを理解する。さらに、当業者は、相対的なピーク強度が、装置間の変動性、並びに結晶化度、好ましい配向、調製された試料表面、及び当業者に公知の他の要因の程度による変動性を示すことを理解する。同様に、本明細書で使用されている場合、DSCグラフに関する「本質的に同じ」は、当業者に公知のこれらの分析技術に関連する変動性も包含することを意図している。例えば、示差走査熱量測定グラフは、典型的に、十分に確定されたピークについて最大±0.2℃の変動性、及び幅広線についてはさらにより大きな変動性を有する(例えば、最大±1℃)。
【0022】
本出願における液体核磁気共鳴スペクトルは、特に指示の無い限り、好ましくは、Bruker 400M核磁気共鳴分光計で、DMSO-d6を溶媒として用いて収集される。
【0023】
本出願における偏光顕微鏡法データは、好ましくは偏光顕微鏡ECLIPSE LV100POL(Nikon、JPN)で収集される。
【0024】
数値範囲(例えば、「1~10」、「1~6」、「2~10」、「2~6」、「3~10」、「5~10」、「3~6」)等は、本明細書で使用されている場合、数値範囲内の任意の点(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)を包含する。
【0025】
調製された結晶形態は、デカンテーション、遠心分離、蒸発、重力濾過、吸引濾過、又は加圧下若しくは減圧下で固体を回収するための任意の他の技術を含む方法により回収することができる。回収された固体は、任意選択で乾燥させることができる。本発明における「乾燥」は、減圧下(好ましくは真空)で、残留溶媒含量が、医薬品規制調和国際会議(「ICH」)ガイドラインに示されている限度内に低下するまで行われる。残留溶媒含量は、溶媒の種類に依存するが、約5000ppm、又は好ましくは約4000ppm、又はより好ましくは約3000ppmを超えない。乾燥は、箱形乾燥器、真空オーブン、エアーオーブン、コーン真空乾燥機(cone vacuum dryer)、ロータリー真空乾燥機、流動層乾燥機、回転式フラッシュ乾燥器(spin flash dryer)、フラッシュ乾燥機等で行うことができる。乾燥は、結晶形態の質が劣化しない限り、所望の結果が達成されるまで、約100℃未満、約80℃未満、約60℃未満、約50℃未満、約30℃未満、又は任意の他の好適な温度で、大気圧又は減圧下(好ましくは真空)で、任意の所望の期間(例えば、約1、2、3、5、10、15、20、24時間又は一晩)行うことができる。乾燥は、所望の生成物の質が達成されるまで、任意の所望の回数行うことができる。乾燥した生成物は、任意選択でサイズ減少手順に供されて、所望の粒子サイズを生成することができる。粉砕又は微粉砕は、乾燥の前、又は生成物の乾燥の完了後に行うことができる。粒子サイズ減少のために使用することができる技術としては、制限されることなく、ボール、ローラー及びハンマー粉砕、並びにジェット粉砕等が挙げられる。
【0026】
「無水物」という用語は、本明細書で使用されている場合、好ましくは、構造要素として水分子を含まない結晶形態を意味する。
【0027】
化合物Aの結晶形態及びその調製方法
一実施形態では、本発明は、化合物A一水和物:
【化2】
の結晶形態Iであって、
結晶形態Iが、約4.5±0.2°、12.2±0.2°、20.1±0.2°、25.3±0.2°及び25.5±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する、化合物A一水和物の結晶形態Iを提供する。
【0028】
好ましい実施形態では、結晶形態Iは、約4.5±0.2°、9.1±0.2°、10.3±0.2°、12.2±0.2°、16.1±0.2°、18.2±0.2°、20.1±0.2°、25.3±0.2°及び25.5±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する。
【0029】
より好ましい実施形態では、結晶形態Iは、約4.5±0.2°、9.1±0.2°、10.3±0.2°、12.2±0.2°、12.5±0.2°、16.1±0.2°、16.9±0.2°、17.4±0.2°、18.2±0.2°、18.9±0.2°、20.1±0.2°、20.5±0.2°、21.2±0.2°、22.6±0.2°、24.3±0.2°、24.8±0.2°、25.3±0.2°、25.5±0.2°、26.8±0.2°及び27.2±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する。
【0030】
より好ましい実施形態では、結晶形態Iは、以下の回折角度(2θ)にピークを含むXRPDパターンを有する。
【0031】
【0032】
より好ましい実施形態では、結晶形態Iは、
図1に示すものと本質的に同じ回折角度(2θ)にピークを含むXRPDパターンを有する。最も好ましい実施形態では、結晶形態IのXRPDパターンは、
図1に示すものと本質的に同じである。
【0033】
より好ましい実施形態では、結晶形態Iは、約103℃での幅広い吸熱ピーク、約177℃での幅広い吸熱ピーク、約191℃での発熱ピーク、及び約259℃での吸熱ピークを含むDSCグラフを有する。
【0034】
より好ましい実施形態では、結晶形態Iは、
図2に示すものと本質的に同じ特徴的なピークを含むDSCグラフを有する。最も好ましい実施形態では、結晶形態IのDSCグラフは、
図2に示すものと本質的に同じである。
【0035】
より好ましい実施形態では、熱重量分析において、結晶形態Iは、約68℃に加熱した場合に約1.5%の重量減少を有し、約68~147℃に加熱した場合に約2.2%の重量減少を有し、約147~200℃に加熱した場合に約0.3%の重量減少を有する。
【0036】
最も好ましい実施形態では、結晶形態IのTGAグラフは
図3に示すものと本質的に同じである。
【0037】
最も好ましい実施形態では、結晶形態Iの走査型電子顕微鏡画像は、
図4に示したものと本質的に同じである。
【0038】
一部の実施形態では、本発明は、結晶形態Iを調製する方法であって、化合物Aを、1~10個の炭素原子を有する炭化水素、1~10個の炭素原子を有するアミド、及び水を含む混合溶媒中で(例えば、室温で、約1~30時間、好ましくは約10~20時間)撹拌し、濾過し、濾過ケーキを水ですすぎ、真空乾燥して結晶を得るステップを含む、方法を提供する。
【0039】
好ましい実施形態では、化合物Aと混合溶媒との重量対体積比(g/mL)は、約1:(1~10)、好ましくは約1:3.5である。
【0040】
好ましい実施形態では、1~10個の炭素原子を有する炭化水素溶媒は、アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、アルキン、及び芳香族炭化水素を含み、詳細には、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、n-ヘキサン、n-ヘプタン、及びトルエンを含むが、これらに限定されない。
【0041】
好ましい実施形態では、1~10個の炭素原子を有するアミド溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド又はN,N-ジメチルアセトアミドである。
【0042】
好ましい実施形態では、混合溶媒中の1~10個の炭素原子を有する炭化水素と、1~10個の炭素原子を有するアミドと、水との体積比は、約5:1:1である。
【0043】
好ましい実施形態では、真空乾燥は、約20~50℃(好ましくは約40℃)で、約1~10時間(好ましくは6時間)行われる。
【0044】
一実施形態では、本発明は、化合物A無水物:
【化3】
の結晶形態IIであって、
結晶形態IIが、約8.6±0.2°、12.5±0.2°及び21.9±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する、化合物A無水物の結晶形態IIを提供する。
【0045】
好ましい実施形態では、結晶形態IIは、約6.7±0.2°、8.6±0.2°、12.5±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、21.9±0.2°及び24.9±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する。
【0046】
より好ましい実施形態では、結晶形態IIは、約6.2±0.2°、6.7±0.2°、8.6±0.2°、11.1±0.2°、12.5±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、15.2±0.2°、17.3±0.2°、18.2±0.2°、18.6±0.2°、21.0±0.2°、21.9±0.2°、24.3±0.2°、24.9±0.2°及び25.9±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する。
【0047】
より好ましい実施形態では、結晶形態IIは、以下の回折角度(2θ)にピークを含むXRPDパターンを有する。
【0048】
【0049】
より好ましい実施形態では、結晶形態IIは、
図5に示すものと本質的に同じ回折角度(2θ)にピークを含むXRPDパターンを有する。最も好ましい実施形態では、結晶形態IIのXRPDパターンは、
図5に示すものと本質的に同じである。
【0050】
より好ましい実施形態では、結晶形態IIは、約261℃での吸熱ピークを含むDSCグラフを有する。
【0051】
より好ましい実施形態では、結晶形態IIは、
図6に示すものと本質的に同じ特徴的なピークを含むDSCグラフを有する。最も好ましい実施形態では、結晶形態IIのDSCグラフは、
図6に示すものと本質的に同じである。
【0052】
より好ましい実施形態では、熱重量分析において、結晶形態IIは、約230℃に加熱した場合に、約1.0%以下、好ましくは約0.2%以下の重量減少を有する。
【0053】
最も好ましい実施形態では、結晶形態IIのTGAグラフは、
図7に示したものと本質的に同じである。
【0054】
最も好ましい実施形態では、結晶形態IIの走査型電子顕微鏡画像は、
図8に示したものと本質的に同じである。
【0055】
一部の実施形態では、本発明は、結晶形態IIを調製する方法であって、化合物Aを2~10個の炭素原子を有するエステル溶媒中で(例えば、約20~80℃(例えば、約55℃)で、約1~30時間、好ましくは約10~20時間)撹拌し、濾過し、得られた固体を真空乾燥して結晶を得るステップを含む、方法を提供する。
【0056】
好ましい実施形態では、化合物Aとエステル溶媒との重量対体積比(g/mL)は、約1:(1~10)、好ましくは約1:5である。
【0057】
好ましい実施形態では、2~10個の炭素原子を有するエステル溶媒は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、又はイソプロピオン酸エチルである。
【0058】
好ましい実施形態では、真空乾燥は、約20~50℃(好ましくは約40℃)で、約1~10時間(好ましくは6時間)行われる。
【0059】
一実施形態では、本発明は、化合物A一水和物:
【化4】
の結晶形態IIIであって、
結晶形態IIIが、約8.7±0.2°、12.3±0.2°及び13.8±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する、化合物A水和物の結晶形態IIIを提供する。
【0060】
好ましい実施形態では、結晶形態IIIは、約8.7±0.2°、12.3±0.2°、13.8±0.2°、18.5±0.2°、19.5±0.2°、21.0±0.2°及び24.5±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する。
【0061】
より好ましい実施形態では、結晶形態IIIは、約8.7±0.2°、12.3±0.2°、13.8±0.2°、16.9±0.2°、17.6±0.2°、18.2±0.2°、18.5±0.2°、19.5±0.2°、19.9±0.2°、21.0±0.2°、22.5±0.2°、24.5±0.2°及び24.7±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する。
【0062】
より好ましい実施形態では、結晶形態IIIは、以下の回折角度(2θ)にピークを含むXRPDパターンを有する。
【0063】
【0064】
より好ましい実施形態では、結晶形態IIIは、
図9に示すものと本質的に同じ回折角度(2θ)にピークを含むXRPDパターンを有する。最も好ましい実施形態では、結晶形態IIIのXRPDパターンは、
図9に示すものと本質的に同じである。
【0065】
より好ましい実施形態では、結晶形態IIIは、約84~131℃での幅広い吸熱ピーク及び約260℃での吸熱ピークを含むDSCグラフを有する。
【0066】
より好ましい実施形態では、結晶形態IIIは、
図10に示すものと本質的に同じ特徴的なピークを含むDSCグラフを有する。最も好ましい実施形態では、結晶形態IIIのDSCグラフは、
図10に示すものと本質的に同じである。
【0067】
より好ましい実施形態では、熱重量分析において、結晶形態IIIは、約150℃に加熱した場合に、約3.3%の重量減少を有する。
【0068】
最も好ましい実施形態では、結晶形態IIIのTGAグラフは、
図11に示したものと本質的に同じである。
【0069】
最も好ましい実施形態では、結晶形態IIIの走査型電子顕微鏡画像は、
図12に示したものと本質的に同じである。
【0070】
一部の実施形態では、本発明は、結晶形態IIIを調製する方法であって、化合物Aを、1~10個の炭素原子を有するアルコール及び水を含む混合溶媒中で(例えば、約20~80℃(例えば、約55℃)で、約1~30時間、好ましくは約10~20時間)撹拌し、濾過し、得られた固体を真空乾燥して結晶を得るステップを含む、方法を提供する。
【0071】
好ましい実施形態では、化合物Aと混合溶媒との重量対体積比(g/mL)は、約1:(1~15)、好ましくは約1:7.5である。
【0072】
好ましい実施形態では、1~10個の炭素原子を有するアルコール溶媒は、メタノール、エタノール、1-プロパノール(n-プロパノール)、2-プロパノール(イソプロパノール)、1-ブタノール、2-ブタノール、及びtert-ブタノールを含むがこれらに限定されない、1~6個の炭素原子を有するアルコールである。
【0073】
好ましい実施形態では、混合溶媒中の1~10個の炭素原子を有するアルコールと水との体積比は、約(1~5):1、好ましくは約2:1である。
【0074】
好ましい実施形態では、真空乾燥は、約20~50℃(好ましくは約40℃)で、約1~10時間(好ましくは6時間)行われる。
【0075】
一実施形態では、本発明は、化合物A一水和物:
【化5】
の結晶形態IVであって、
結晶形態IVは、約8.9±0.2°、11.4±0.2°及び17.9±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する、化合物A一水和物の結晶形態IVを提供する。
【0076】
好ましい実施形態では、結晶形態IVは、約8.3±0.2°、8.9±0.2°、9.2±0.2°、11.4±0.2°、15.3±0.2°、17.9±0.2°、22.0±0.2°及び26.9±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する。
【0077】
より好ましい実施形態では、結晶形態IVは、約5.7±0.2°、8.3±0.2°、8.9±0.2°、9.2±0.2°、10.2±0.2°、11.4±0.2°、12.4±0.2°、15.3±0.2°、16.4±0.2°、16.8±0.2°、17.2±0.2°、17.4±0.2°、17.9±0.2°、18.5±0.2°、19.6±0.2°、20.3±0.2°、20.8±0.2°、21.3±0.2°、22.0±0.2°、22.4±0.2°、23.0±0.2°、23.8±0.2°、24.8±0.2°、26.1±0.2°、26.9±0.2°、27.8±0.2°及び28.7±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する。
【0078】
より好ましい実施形態では、結晶形態IVは、以下の回折角度(2θ)にピークを含むXRPDパターンを有する。
【0079】
【0080】
より好ましい実施形態では、結晶形態IVは、
図13に示すものと本質的に同じ回折角度(2θ)にピークを含むXRPDパターンを有する。最も好ましい実施形態では、結晶形態IVのXRPDパターンは、
図13に示すものと本質的に同じである。
【0081】
より好ましい実施形態では、結晶形態IVは、約93℃での吸熱ピーク、約156℃での吸熱ピーク、約174℃での吸熱ピーク、約201℃での発熱ピーク、及び約260℃での吸熱ピークを含むDSCグラフを有する。
【0082】
より好ましい実施形態では、結晶形態IVは、
図14に示すものと本質的に同じ特徴的なピークを含むDSCグラフを有する。最も好ましい実施形態では、結晶形態IVのDSCグラフは、
図14に示すものと本質的に同じである。
【0083】
より好ましい実施形態では、熱重量分析において、結晶形態IVは、約63℃に加熱した場合に約0.8%の重量減少を有し、約63~165℃に加熱した場合に約3.8%の重量減少を有する。
【0084】
最も好ましい実施形態では、結晶形態IVのTGAグラフは、
図15に示すものと本質的に同じである。
【0085】
最も好ましい実施形態では、結晶形態IVの走査型電子顕微鏡画像は、
図16に示すものと本質的に同じである。
【0086】
一部の実施形態では、本発明は、結晶形態IVを調製する方法をであって、化合物Aを、1~10個の炭素原子を有する炭化水素及び1~10個の炭素原子を有するアルコールを含む混合溶媒中で(例えば、室温で約1~30時間、好ましくは約10~20時間)撹拌し、濾過し、得られた固体を真空乾燥して結晶を得るステップを含む、方法を提供する。
【0087】
好ましい実施形態では、化合物Aと混合溶媒との重量対体積比(g/mL)は、約1:(1~10)、好ましくは約1:5.5である。
【0088】
好ましい実施形態では、1~10個の炭素原子を有する炭化水素溶媒は、アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、アルキン、及び芳香族炭化水素を含み、詳細には、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、n-ヘキサン、n-ヘプタン、及びトルエンを含むが、これらに限定されない。
【0089】
好ましい実施形態では、1~10個の炭素原子を有するアルコール溶媒は、1~6個の炭素原子を有するアルコールであり、このアルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール(n-プロパノール)、2-プロパノール(イソプロパノール)、1-ブタノール、2-ブタノール、及びtert-ブタノールを含むが、これらに限定されない。
【0090】
好ましい実施形態では、混合溶媒中の1~10個の炭素原子を有する炭化水素と1~10個の炭素原子を有するアルコールとの体積比は、約(1~15):1、好ましくは約10:1である。
【0091】
好ましい実施形態では、真空乾燥は、約20~50℃(好ましくは約40℃)で、約1~10時間(好ましくは6時間)行われる。
【0092】
一実施形態では、本発明は、化合物A一水和物:
【化6】
の結晶形態であって、
結晶形態Vが、約8.7±0.2°、12.2±0.2°及び24.5±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する、化合物A一水和物の結晶形態Vを提供する。
【0093】
好ましい実施形態では、結晶形態Vは、約8.7±0.2°、12.2±0.2°、13.7±0.2°、16.9±0.2°、20.0±0.2°、20.9±0.2°及び24.5±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する。
【0094】
より好ましい実施形態では、結晶形態Vは、約8.7±0.2°、12.2±0.2°、12.8±0.2°、13.7±0.2°、15.5±0.2°、16.3±0.2°、16.9±0.2°、17.5±0.2°、20.0±0.2°、20.9±0.2°、22.2±0.2°、22.5±0.2°、24.5±0.2°、25.2±0.2°、29.4±0.2°及び30.3±0.2°の回折角度(2θ)に特徴的なピークを有する。
【0095】
より好ましい実施形態では、結晶形態Vは、以下の回折角度(2θ)にピークを含むXRPDパターンを有する。
【0096】
【0097】
より好ましい実施形態では、結晶形態Vは、
図17に示すものと本質的に同じ回折角度(2θ)にピークを含むXRPDパターンを有する。最も好ましい実施形態では、結晶形態VのXRPDパターンは、
図17に示すものと本質的に同じである。
【0098】
より好ましい実施形態では、結晶形態Vは、約113℃での吸熱ピーク、約215℃での発熱ピーク、及び約252℃での吸熱ピークを含むDSCグラフを有する。
【0099】
より好ましい実施形態では、結晶形態Vは、
図18に示すものと本質的に同じ特徴的なピークを含むDSCグラフを有する。最も好ましい実施形態では、結晶形態VのDSCグラフは、
図18に示すものと本質的に同じである。
【0100】
より好ましい実施形態では、熱重量分析において、結晶形態Vは、約130℃に加熱した場合に約3.5%の重量減少を有する。
【0101】
最も好ましい実施形態では、結晶形態VのTGAグラフは、本質的に
図19に示したものと同じである。
【0102】
一部の実施形態では、本発明は、化合物Aの酸付加塩を、1~10個の炭素原子を有するアルコール及び水を含む混合溶媒に加え、次いで、塩基を加え、混合物を(例えば、室温で約1~15時間、好ましくは約1~10時間)撹拌し、濾過し、得られた固体を真空乾燥して結晶を得るステップを含む、結晶形態Vの調製方法を提供する。
【0103】
好ましい実施形態では、化合物Aの酸付加塩(好ましくは化合物Aの塩酸塩)と混合溶媒との重量対体積比(g/mL)は、約1:(1~10)、好ましくは約1:5.5である。
【0104】
好ましい実施形態では、化合物Aの酸付加塩と塩基とのモル比は、約1:(1~5)、好ましくは約1:(1~2)である。
【0105】
好ましい実施形態では、塩基は、トリエチルアミン等の有機塩基である。
【0106】
好ましい実施形態では、1~10個の炭素原子を有するアルコール溶媒は、1~6個の炭素原子を有するアルコールであり、このアルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール(n-プロパノール)、2-プロパノール(イソプロパノール)、1-ブタノール、2-ブタノール、及びtert-ブタノールを含むが、これらに限定されない。
【0107】
好ましい実施形態では、混合溶媒中の1~10個の炭素原子を有するアルコールと水との体積比は、約(1~15):1、好ましくは約10:1である。
【0108】
好ましい実施形態では、真空乾燥は、約20~50℃(好ましくは約40℃)で、約1~10時間(好ましくは4時間)行われる。
【0109】
医薬組成物、治療方法及びその使用
一部の実施形態では、本発明は、本発明の結晶形態I、II、III、IV及びVのうちのいずれか1つ又は複数及び1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0110】
一部の実施形態では、本発明は、Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤、好ましくは選択的ROCK2阻害剤としての医薬の製造における、本発明の結晶形態I、II、III、IV及びVのうちのいずれか1つ又は複数の使用を提供する。
【0111】
一部の実施形態では、本発明は、Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤、好ましくは選択的ROCK2阻害剤として使用するための、本発明の結晶形態I、II、III、IV及びVのうちのいずれか1つ又は複数を提供する。
【0112】
一部の実施形態では、本発明は、Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)により媒介される疾患の予防又は処置のための方法であって、それを必要とする対象、好ましくは哺乳動物に、本発明の結晶形態I、II、III、IV及びVのうちのいずれか1つ又は複数の予防又は処置に有効な量を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0113】
一部の実施形態では、Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)により媒介される疾患は、自己免疫障害(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE;狼瘡)、乾癬、クローン病、アトピー性皮膚炎、湿疹、又は移植片対宿主病(GVHD)を含む);心血管障害(高血圧、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、心肥大、脳虚血、脳血管攣縮、又は勃起不全を含む);炎症(喘息、心血管炎症、潰瘍性大腸炎、又は腎臓の炎症を含む);中枢神経系障害(神経変性又は脊髄損傷を含み、中枢神経系障害は、好ましくはハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、又は多発性硬化症である);動脈血栓性障害(血小板凝集、又は白血球凝集を含む);線維性障害(肝臓線維症、肺線維症、又は腎臓線維症を含む);腫瘍性疾患(リンパ腫、癌腫(例えば、扁平上皮がん、小細胞肺がん、下垂体がん、食道がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、肝臓がん、乳がん、大腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌又は子宮体癌、唾液腺癌、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、脳腫瘍、子宮内膜がん、精巣がん、胆管癌、胆嚢癌、胃がん、黒色腫、又は頭頸部がん)、白血病、星細胞腫、軟部組織肉腫、肉腫、又は芽腫を含む);メタボリックシンドローム;インスリン抵抗性;高インスリン血症;2型糖尿病;耐糖能異常;骨粗鬆症;眼障害(高眼圧症、加齢黄斑変性症(AMD)、脈絡膜血管新生(CNV)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、虹彩血管新生、ぶどう膜炎、緑内障(原発性開放隅角緑内障、急性閉塞隅角緑内障、色素性緑内障、先天性緑内障、正常眼圧緑内障、続発性緑内障又は新生血管緑内障を含む)、又は未熟児網膜炎(ROP)を含む)を含む。
【0114】
一部の実施形態では、Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)によって媒介される疾患は、ループス腎炎、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ(RA)、血管腫、血管線維腫、肺線維症、乾癬、角膜移植片拒絶反応、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症、重症筋無力症、クローン病(Chron’s disease)、自己免疫性腎炎、原発性胆汁性肝硬変、急性膵炎、同種拒絶反応(allograph rejection)、アレルギー性炎症、接触皮膚炎、遅延型過敏症、炎症性腸疾患、敗血症性ショック、骨粗鬆症、変形性関節症、神経細胞炎症、オスラー・ウェーバー症候群(Osier-Weber syndrome)、再狭窄、真菌感染症、寄生虫感染症、及びウイルス感染症を含む。
【0115】
本明細書で使用されている場合、本発明における用語「薬学的に許容される担体」は、治療薬と共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指し、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴うことなくヒト及び動物の組織と接触するのに好適であり、合理的な利益/リスク比に見合うものである。
【0116】
本発明の医薬組成物に利用することができる薬学的に許容される担体としては、滅菌液、例えば水、及び石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等が挙げられるが、これらに限定されない。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合の例示的な担体である。生理食塩水並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液は、液体担体として、特に注射液に利用することもできる。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、マルトース、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等が挙げられる。組成物は、所望される場合、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することもできる。経口製剤としては、標準的な担体、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。好適な医薬用担体の例は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990年)に記載されている。
【0117】
本発明の組成物は、全身的及び/又は局所的に作用することができる。この目的のために、好適な経路、例えば、注射、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、若しくは経皮投与を通して投与することができ、又は経口、口腔内、鼻腔内、経粘膜、眼科用製剤としての局所により、若しくは吸入により投与することができる。
【0118】
これらの投与経路のために、本発明の組成物は、好適な剤形で投与することができる。
【0119】
剤形は、固体、半固体、液体、又はガス製剤であってもよく、詳細には、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、ロゼンジ、硬質キャンディ、粉末剤、噴霧剤、クリーム剤、膏薬、坐剤、ゲル剤、ペースト剤、ローション剤、軟膏剤、水性懸濁剤、注射液、懸濁剤、エリキシル剤、及びシロップ剤を含むが、これらに限定されない。
【0120】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野において周知の任意の方法により、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製(dragee-making)、湿式粉砕、乳化、凍結乾燥方法等の手段により、製造することができる。
【0121】
本明細書で使用されている場合、用語「治療に有効な量」は、処置される障害の1つ又は複数の症状をある程度緩和する、投与される化合物の量を指す。
【0122】
投与レジメンは、最適な所望の反応をもたらすために調整することができる。例えば、単回ボーラスを投与するか、いくつかの分割用量を時間と共に投与するか、又は治療状況の緊急性により示されるように用量を比例的に減少若しくは増大することができる。投与量値は、緩和されるべき状態の種類及び重症度に応じて変更することができ、単回用量又は複数回用量を含むことができることに留意されたい。さらに、いかなる特定の対象に対しても、特定の投与量レジメンは、個体の必要性及び組成物の投与を管理又は監督する者の専門的判断に従って、時間と共に調整されるべきであることを理解されたい。
【0123】
本発明の化合物の投与量は、治療される対象、障害又は状態の重症度、投与速度、化合物の性質及び処方医師の判断に依存する。一般に、有効な投与量は、単回用量又は分割用量で、1日当たり体重1kg当たり約0.0001~約50mg、例えば約0.01~約10mg/kg/日の範囲である。体重70kgのヒトの場合、有効な投与量は、約0.007mg~約3500mg/日、例えば約0.7mg~約700mg/日にのぼるだろう。一部の事例では、前述の範囲の下限を下回る投与量レベルが十分すぎることがある一方で、他の場合では、なおより多い用量がいずれの有害な副作用も引き起こすことなく利用されることがあり、但しそのようなより多い用量は、1日にわたる投与のために最初にいくつかの小用量に分けられることを条件とする。
【0124】
医薬組成物中の本発明の化合物の含有量又は投与量は、約0.01mg~約1000mg、好適には0.1~500mg、好ましくは0.5~300mg、より好ましくは1~150mg、特に好ましくは1~50mg、例えば1.5mg、2mg、4mg、10mg、及び25mg等である。
【0125】
別段の指示がない限り、「処置する」又は「処置」という用語は、本明細書で使用されている場合、そのような用語が適用される障害、状態、若しくは疾患、又はそのような障害、状態、若しくは疾患のうちの1つ若しくは複数の症状を回復するか、緩和するか、進行を抑制するか、又は予防することを意味する。
【0126】
本明細書で使用されている場合、「対象」という用語は、ヒト又は非ヒト動物を含む。例示的なヒト対象としては、疾患(本明細書に記載されているもの等)を有するヒト対象(患者と称される)、又は健常な対象が挙げられる。「非ヒト動物」という用語は、本明細書で使用されている場合、すべての脊椎動物、例えば非哺乳動物(例えば、鳥類、両生類、爬虫類)並びに哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、家畜及び/又は飼育動物(例えば、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ等)を含む。
【実施例】
【0127】
本発明は、実施例を参照して以下により詳細に説明され、実施例は、本発明の技術的解決策を説明するために使用されているに過ぎず、その範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、本発明の範囲内に依然として入る、いくつかの非本質的な改善及び調節を行うことができる。
【0128】
特に指定のない限り、以下の実施例で利用されている出発材料及び試薬はすべて市販の製品であるか、又は公知の方法を通じて調製することができる。
【0129】
以下の実施例において使用されている検出機器及び条件は、以下の通りである:
(1)粉末X線回折(XRPD)
装置モデル:LynxEye検出器を備えたBruker D8 advance
試験条件:アノードの標的材料は銅であり、ライトパイプは(40KV 40mA)に設定し、試料に対する2θ走査角度は3°から40°とし、走査ステップは0.02°とした。
(2)示差走査熱量測定(DSC)
装置モデル:TA Discovery DSC 250(TA Instruments、US)
試験条件:加熱速度を10℃/分とし、乾燥窒素をパージガスとして使用した。
(3)熱重量分析(TGA)
装置モデル:Discovery TGA 55(TA Instruments、US)
試験条件:加熱炉中の自動秤量、加熱速度を10℃/分とし、乾燥窒素をパージガスとして使用した。
(4)偏光顕微鏡分析(PLM)
装置モデル:偏光顕微鏡ECLIPSE LV100POL(Nikon、JPN)
【0130】
実施例1:(6-(4-((4-(1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-1-メチル-1H-インドール-2-イル)(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)メタノン(化合物A)の調製(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際出願PCT/CN2018/093713に従う)
【化7】
【0131】
ステップ1:
化合物A-1(20g、83.31mmol)及びエタノール(200mL)を500mLフラスコに加え、塩化チオニル(19.82g、166.63mmol)を加え、次いで、60℃で3時間反応させた。薄層クロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)アッセイにより、反応が完了したことを示した。反応液を濃縮して粗生成物を得、これをジクロロメタン(500mL)に溶解し、得られた溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(各150mL)で2回洗浄した。有機相を飽和ブラインで洗浄し、次いで、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して化合物A-2(21g、褐色固体、収率:94.01%)を得た。MS m/z (ESI): 266.1; 268.1 [M-H].
【0132】
ステップ2:
化合物A-2(21g、78.33mmol)及びビス(ピナコラト)ジボロン(26.85g、105.74mmol)を1,4-ジオキサン(200mL)に溶解し、酢酸カリウム(23.06g、234.98mmol)及びPd(dppf)Cl2(3.24g、3.91mmol)を加え、アルゴンでパージを3回行い、反応物を80℃の油浴に一晩置いた。LC-MSにより反応が完了したことを示した。反応液を室温まで冷却し、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=100:1~5:1)で精製して、化合物A-3(17.5g、白色固体、収率:70.89%)を得た。
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 8.92 (s, 1H), 7.92 (s,1H), 7.69 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.57 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.22 - 7.18 (m, 1H),4.42 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.42 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.37 (s, 12H). MS m/z(ESI): 316.2 [M+H].
【0133】
ステップ3:
化合物A-3(10.0g、31.8mmol)をテトラヒドロフラン(250mL)に溶解し、氷浴冷却下、水素化ナトリウム(1.91g、47.8mmol)を加え、次いで、30分間反応させた。反応液にヨードメタン(13.5g、95.4mmol)をゆっくりと加え、室温で一晩反応させた。薄層クロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=5:1)により反応が完了したことを示した。反応溶液を水(100mL)でクエンチし、酢酸エチル(150mL×2)で抽出した。合わせた有機相を塩化アンモニウムの飽和水溶液(200mL×2)及び飽和ブライン(300mL×2)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=15:1)で分離し、精製して、化合物A-4(6.5g、黄色固体、収率:62.5%)を得た。
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 7.91 (s, 1H), 7.68 - 7.65(m, 1H), 7.57 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.27 (s, 1H), 4.12 (s, 3H), 3.91 (s, 3H),1.38 (s, 12H).
【0134】
ステップ4:
化合物Reg-1-16(1.00g、2.70mmol)及びA-4(1.33g、4.04mmol)をエタノール/水(8:1)(120mL)の混合溶液に溶解し、炭酸ナトリウム(572mg、5.40mmol)及びPd(PPh3)Cl2(189mg、0.27mmol)を加え、アルゴンでパージを3回行い、反応物を110℃の油浴に一晩置いた。LC-MSにより反応が完了したことを示した。反応液を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。残渣を水(30mL)で希釈し、6N HClでpHを1に調整した。多量の固体が析出し、濾過した。固体をメタノールで洗浄して、化合物A-5(900mg、黄色固体、粗生成物)を得た。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 11.54 (s, 1H), 8.77 (s,1H), 8.38 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 8.14 (s, 2H), 8.03 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.92 (d,J = 8.4 Hz, 1H), 7.80 - 7.69 (m, 4H), 7.33 (s, 1H), 7.07 (d, J = 8.0 Hz, 1H),4.16 (s, 3H).
【0135】
ステップ5:
化合物A-5(300mg、0.73mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(6mL)に溶解し、HATU(335mg、0.88mmol)及びDIEA(377mg、2.92mmol)を加え、室温で30分間反応させた。次いで、化合物A-a(114mg、0.88mmol)を加え、室温で2時間反応を続けた。LC-MSにより反応が完了したことを示した。反応液を減圧下で濃縮し、粗生成物を高速液体クロマトグラフィーで精製し、化合物A(185mg、黄色固体、収率:52.1%)を得た。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 10.63 (s, 1H), 8.52 (s,1H), 8.41 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 8.09 (s, 2H), 8.06 (dd, J = 8.4, 1.2 Hz, 1H),7.83 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.72 (d, J = 8.4 Hz, 2H),7.13 (s, 1H), 6.86 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 4.91 (s, 2H), 4.57 (s, 2H), 4.05 (s,3H). MS m/z (ESI): 486.2 [M+H].
【0136】
実施例2:化合物A一水和物の結晶形態Iの調製
ジクロロメタン(5mL)、DMF(1mL)、及び水(1mL)の溶液に化合物A(2.0g)を加え、室温で18時間撹拌した。濾過後、固体を回収し、濾過ケーキを水(2mL)で洗浄し、次いで、40℃で6時間真空乾燥して結晶を得た(1.0g、収率48.2%)。粉末X線回折によりXRPDパターンを決定し、これを
図1に示す。DSC及びTGAにより分析したDSCグラフを
図2に、TGAグラフを
図3に示す。試料を走査型電子顕微鏡で観察し、結晶形態を
図4に示す。
【0137】
実施例3:化合物A無水物の結晶形態IIの調製
化合物A(2.0g)を酢酸エチル(10mL)に加え、55℃で18時間撹拌した。濾過後、固体を回収し、40℃で6時間真空乾燥して結晶を得た(1.4g、収率70.0%)。粉末X線回折によりXRPDパターンを決定し、これを
図5に示す。DSC及びTGAにより分析したDSCグラフを
図6に、TGAグラフを
図7に示す。試料を走査型電子顕微鏡で観察し、結晶形態を
図8に示す。
【0138】
実施例4:化合物A一水和物の結晶形態IIIの調製
化合物A(2.0g)をメタノール(10mL)及び水(5mL)の混合物に加え、55℃で18時間撹拌した。濾過後、固体を回収し、40℃で6時間真空乾燥して結晶を得た(1.2g、収率57.8%)。粉末X線回折によりXRPDパターンを決定し、これを
図9に示す。DSC及びTGAにより分析したDSCグラフを
図10に、TGAグラフを
図11に示す。試料を走査型電子顕微鏡で観察し、結晶形態を
図12に示す。
【0139】
実施例5:化合物A一水和物の結晶形態IVの調製
化合物A(2.0g)をジクロロメタン(10mL)及びメタノール(1mL)の混合物に加え、室温で18時間撹拌した。濾過後、固体を回収し、40℃で6時間真空乾燥して結晶を得た(1.3g、収率62.7%)。粉末X線回折によりXRPDパターンを決定し、これを
図13に示す。DSC及びTGAにより分析したDSCグラフを
図14に、TGAグラフを
図15に示す。試料を走査型電子顕微鏡で観察し、結晶形態を
図16に示す。
【0140】
実施例6:化合物A一水和物の結晶形態Vの調製
化合物A(3.7g)をフラスコに加え、アセトン(250mL)を加えた。反応溶液を50℃に加熱し、固体が完全に溶解するまで10分間撹拌した。水(26.7mL)を加え、溶液が透明になるまで撹拌した。次いで、濃塩酸(0.641mL)を加え、多量の固体を沈殿させた。混合物を50℃に保ち、18時間撹拌し、次いで、濾過して固体を回収し、これを50℃で8時間真空乾燥して化合物Aの塩酸塩(2.7g、収率67.9%)を得た。
【0141】
化合物Aの塩酸塩(2.0g)を無水エタノール(10mL)及び水(1mL)に加え、トリエチルアミン(0.4g)を加えた。混合物を室温で5時間撹拌し、次いで、濾過して固体を回収し、これを40℃で4時間真空乾燥して結晶を得た(1.4g、収率72.6%)。粉末X線回折により決定したXRPDパターンを
図17に示す。DSC及びTGAにより分析したDSCグラフを
図18に、TGAグラフを
図19に示す。
【0142】
実験例
実験例1:固体安定性試験
化合物A無水物の結晶形態IIの2つの試料を、40℃/75%RH及び60℃/90%RHの環境に7日間置いた。XRPD分析により、試料の結晶形態に変化がないことが示され、優れた安定性が示された。XRPDパターンの比較を
図20に示す。
【0143】
実験例2:固体熱安定性試験
示差走査熱量測定において、化合物A一水和物の結晶形態Iの試料を10℃/分の速度でそれぞれ150℃及び210℃に加熱し、次いで、粉末X線回折により分析した。出発試料及び熱処理試料のXRPDパターンを
図21に示す。210℃に加熱した後、試料の結晶形態は化合物A無水物の結晶形態IIに変化したが、150℃に加熱した後の試料は変わらないままであった。
【0144】
実験例3:固体吸湿性試験
化合物A無水和物の結晶形態IIを100mg、及び化合物A一水和物の結晶形態Iを100mg正確に秤量した。2つの試料を25℃±1℃及び相対湿度80%±2%で24時間置いた。次いで、試料の重量を測定し、重量増加百分率を算出した。
【0145】
計算によると、化合物A無水和物の結晶形態IIの重量増加百分率は0.69%であり、化合物A一水和物の結晶形態Iの重量増加百分率は3.62%であることが判明した。この結果は、化合物A無水和物の結晶形態IIの吸湿性は、化合物A一水和物の結晶形態Iと比べて低いことを示している。
【0146】
本明細書に記載されたものに加えて、本発明に対する様々な修正が、前述の説明から当業者に明らかとなる。このような修正は、添付の特許請求の範囲に入ることが意図される。本明細書で言及されるすべての特許、出願、雑誌論文、書籍及び任意のその他の開示を含む各参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】