(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】分光計装置を校正する方法
(51)【国際特許分類】
G01J 3/06 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G01J3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516621
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022075497
(87)【国際公開番号】W WO2023041566
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517267802
【氏名又は名称】トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー,ゼバスティアン シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ツィマーマン,ヘンニンク
(72)【発明者】
【氏名】ホルサク,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ロフリンツィク,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】シンドラー,パトリク
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA03
2G020CB27
2G020CC02
2G020CC13
2G020CC27
2G020CC63
2G020CD39
2G020CD59
(57)【要約】
分光計装置(112)を校正する方法が開示される。前記方法は以下のステップ:
a)前記分光計装置(112)の少なくとも1つの検出器装置(118)を、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ(116)を通して、具体的には複数の所定の透過帯域を有する複数の狭帯域通過フィルタ(116)を通して、少なくとも1つの広帯域光源(114)で照射するステップと;
b)前記検出器装置(118)を使用することによって、ステップa)の照射に応じた複数の検出器信号(170)を生成するステップであって、前記検出器装置(118)は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学素子(120)を備え、複数の感光素子(122)をさらに備え、各感光素子は、構成波長成分のうちの少なくとも1つの部分を受け取り、それぞれの構成波長成分のうちの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光素子の照射に応じて、それぞれの検出器信号を生成するように構成されている、ステップと;
c)波長校正情報の少なくとも1つの項目を決定するステップであって、前記波長校正情報の項目は、入射光の波長、具体的には波長帯域をこれらの波長に応答する対応する感光素子に割り当て、具体的には前記感光素子の少なくとも1つを所定の透過帯域のそれぞれに割り当て、より具体的には前記感光素子のピクセル位置(174)及び/又は識別番号の1つ以上をそれぞれの所定の透過帯域に、具体的には所定の透過帯域のそれぞれに割り当てる、少なくとも1つの割り当てを含む、ステップと;
d)複数の検出器信号(170)に基づいて、少なくとも1つの迷光校正情報の項目を決定するステップであって、前記迷光校正情報の項目は、少なくとも1つの信号分布関数、具体的には少なくとも1つの信号分布行列を含み、前記信号分布関数は、特定の波長を有する入射光に対する前記感光素子の応答の分布を記述する、ステップと、
を含む。
さらに、分光計装置(112)を校正するためのシステム(110)、コンピュータプログラム、及びコンピュータ可読記憶媒体が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光計装置(112)を校正する方法であって、前記方法は以下のステップ:
a) 前記分光計装置(112)の少なくとも1つの検出器装置(118)を、複数の所定の透過帯域を有する少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ(116)を通して、少なくとも1つの広帯域光源(114)で照射するステップと;
b) 前記検出器装置(118)を使用することによって、ステップa)の照射に応じて複数の検出器信号(170)を生成するステップであって、前記検出器装置(118)は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学素子(120)を備え、さらに複数の感光素子(122)を備え、各感光素子は、構成波長成分のうちの少なくとも1つの部分を受け取り、それぞれの構成波長成分のうちの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光素子の照射に応じて、それぞれの検出器信号を生成するように構成されている、ステップと;
c) 波長校正情報の少なくとも1つの項目を決定するステップであって、前記波長校正情報の項目は、入射光の波長をこれらの波長に応答する対応する感光素子に割り当てる、少なくとも1つの割り当てを含む、ステップと;
d) 複数の検出器信号(170)に基づいて迷光校正情報の少なくとも1つの項目を決定するステップであって、前記迷光校正情報の項目は、少なくとも1つの信号分布関数を含み、前記信号分布関数は、特定の波長を有する入射光に対する前記感光素子の応答の分布を記述する、ステップと、
を含み、
前記波長校正情報の項目及び前記迷光校正情報の項目は、同じ複数の検出器信号(170)を使用して決定される、方法。
【請求項2】
前記広帯域光源(114)が、白熱ランプ;黒体放射体;電気フィラメント;LED;SLD;MEMS黒体放射体のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)が:
c.1)前記複数の検出器信号(170)において強度ピークを生成する前記複数の感光素子(122)のピクセル位置(174)及び識別番号の少なくとも1つを決定するステップと;
c.2)前記狭帯域通過フィルタ(116)の所定の透過帯域の少なくとも1つを複数の強度ピークに割り当てるステップと;
c.3)波長校正関数を決定するステップであって、前記波長校正関数は、前記感光素子の前記ピクセル位置(174)及び前記識別番号の少なくとも1つを波長位置に割り当てる、ステップ、
の少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップd)が:
d.1)オフセット補正とデジタルフィルタの少なくとも1つを複数の検出器信号(170)に適用することにより、前記複数の検出器信号(170)を処理するステップと;
d.2)複数の構成波長成分について、前記検出器装置(118)によって含まれる各感光素子における照射強度を得るために、複数の処理された検出器信号(188)を補間するステップと;
d.3)補間された検出信号(190)を使用することによって、複数の信号分布関数、具体的には信号分布行列に記録された複数の信号分布関数を生成するステップ、
の少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記波長校正情報の項目及び前記迷光校正情報の項目の少なくとも1つを、前記分光計装置(112)を使用することによって決定された測定スペクトルに適用することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、校正された分光計装置(112)を使用することによって、前記狭帯域通過フィルタ(116)の透過帯域を決定することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、青方偏移補正を決定することをさらに含み、前記青方偏移補正のために、複数の追加の検出器信号が、前記分光計装置(112)に前記検出器装置(118)が組み込まれた状態で生成され、前記青方偏移補正は、前記複数の追加の検出器信号を使用してステップc)を繰り返すことによって決定される波長校正情報の少なくとも1つのさらなる項目を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記検出装置(118)の少なくとも1つの温度を決定することを含み、複数の異なる温度について前記波長校正情報の項目と前記迷光校正情報の項目の少なくとも1つを決定することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記分光計装置(112)に組み込まれた前記少なくとも1つの検出器装置(118)を用いて基準サンプル(136)の複数の検出器信号を決定することにより、少なくとも1つの補正係数を決定することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分光計装置(112)を校正するためのシステム(110)であって、前記システム(110)は、少なくとも1つの広帯域光源(114)と、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ(116)、具体的には複数の所定の透過帯域を有する複数の狭帯域通過フィルタ(116)とを備え、前記システム(110)は、分光計装置(112)の少なくとも1つの検出器装置(118)をさらに備え、前記検出器装置(118)は、前記検出器装置(118)の照射に応じて複数の検出器信号(170)を決定するように構成され、前記検出器装置(118)は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学素子(120)を備え、複数の感光素子(122)をさらに備え、各感光素子は、構成波長成分の少なくとも一部分を受け取り、前記それぞれの構成波長成分の少なくとも一部分によるそれぞれの感光素子の照射に応じて、それぞれの検出器信号を生成するように構成され、前記システム(110)は、分光計装置(112)を校正するための方法を参照する請求項1~9のいずれか一項による分光計装置(112)を校正するための方法を実行するように構成される、分光計装置(112)を校正するためのシステム(110)。
【請求項11】
前記光学素子(120)は、少なくとも1つの波長選択素子(124)を備え、前記波長選択素子(124)は、プリズム;回折格子;線形可変フィルタ;光フィルタ、特に狭帯域通過フィルタ;干渉計、からなる群から選択される、請求項10に記載のシステム(110)。
【請求項12】
前記システム(110)は、少なくとも1つの評価ユニット(142)を備え、前記評価ユニット(142)は、1つ以上のプロセッサ(144)を備え、前記評価ユニット(142)は、分光計装置(112)を校正するための方法を参照する請求項1~9のいずれか一項による分光計装置(112)を校正するための方法を実行するように構成される、請求項10又は11に記載のシステム(110)。
【請求項13】
前記システム(110)は、少なくとも1つの検出器装置(118)を備える少なくとも1つの分光計装置(112)を備える、請求項10~12のいずれか一項に記載のシステム(110)。
【請求項14】
システム(110)を参照する請求項10~13のいずれか一項に記載のシステム(110)の評価ユニット(142)によってプログラムが実行されるときに、前記システム(110)に、分光計装置(112)を校正するための方法を参照する請求項1~9のいずれか一項による分光計装置(112)を校正するための方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光計装置を校正するための方法及び分光計装置を校正するためのシステムに関する。さらに、本発明は、分光計装置を校正するための方法を実行するためのコンピュータプログラム及びコンピュータ可読記憶媒体に関する。本発明の方法及び装置は、特に、赤外スペクトル領域、特に近赤外及び中赤外スペクトル領域での調査に使用される分光計装置の校正に使用されることができる。しかしながら、他の分光計装置も可能である。
【背景技術】
【0002】
分光法は、研究、産業及び顧客アプリケーションで広く使用されており、光学分析及び/又は品質管理などの複数のアプリケーションを可能にする。食品、農業、製薬、医療、ライフサイエンス、及びその他多くの分野での使用が見られる。測光法、吸収法、蛍光法、ラマン分光法など様々な方法が利用可能であり、定性的及び/又は定量的なサンプル分析が可能である。これらの方法は、通常、特定の波長におけるサンプルの放射照度などのスペクトル情報を、分光装置の特定の物理的セクション、例えば検出器ピクセル、時間間隔などにマッピングすることを含む。
【0003】
一般に、分光法は、特に、様々な分光装置からの測定値を互いに比較する場合、変動が無視できる分光装置のアプリケーションの信頼性の高い性能を必要とする。具体的には、特定のサンプルのスペクトルデータは、同じタイプの様々な分光装置において、少なくとも類似又は同一である必要がある。
【0004】
分光装置の場合、2つのシステム特性が一般的に信頼できる性能のために重要である:第一に、波長校正は非常に重要であり、表示された又は測定された波長が、少なくとも所定の許容範囲内で正しいことを意味する。特定の波長に割り当てられた感光性ピクセルを使用するピクセル化分光装置では、波長校正は、フーリエ変換ベースの分光法の個々のピクセル又は時間領域をそれぞれの波長にマッピングすることを含み得る。第二に、迷光校正としても知られるクロストーク校正が非常に重要であり得る。理想的な動作では、分光装置は、調査されるサンプルのスペクトル情報を複数の信号チャネルにマッピングする。理想的には、1つの単一チャネルは、非常に狭いスペクトル範囲のサンプルからの情報を含み得、このスペクトル範囲外のスペクトル情報を含まないのがよく、すなわち、スペクトル情報を出力チャネルに1対1でマッピングすることができる。しかし、表面上の拡散散乱及び/又は回折など、分光装置における望ましくない影響により、分光法の複数のチャネル間でクロストークが発生する可能性がある。このため、狭いスペクトル範囲のスペクトル情報が複数の出力チャネルに影響を及ぼす可能性がある。迷光校正は、ある波長の検出器信号が別の波長の別の信号によって受ける影響に関する情報を含み得る。
【0005】
分光装置の感度校正などの分光装置のさらなる校正は、特に相対的測定値すなわちサンプルの吸収及び/又は反射が決定される必要がある場合には、多くの場合必要ない。
【0006】
波長校正及び/又は迷光校正のための様々な方法が当該技術分野で知られている。例えば、M. E. SchaepmanとS. Dangelは、「非イメージング分光放射計の固体実験室校正(Solid laboratory calibration of a nonimaging spectroradiometer)」, Applied Optics, 第39巻、第21号、2000年において、測定計画に基づく非画像分光放射計の実験室校正について記述している。個々の校正ステップは、信号対雑音比、ノイズ等価信号、暗電流、波長校正、スペクトルサンプリング間隔、非線形性、方向及び位置効果、スペクトル散乱、視野、偏光、光源サイズ効果、特定の装置の温度依存性、の特性評価を含む。
【0007】
C.Tseng, J. F. Ford, C. K. Mann and T. J. Vickersによる:「マルチチャネル分光計の波長校正(Wavelength Calibration of a Multichannel Spectrometer)」、Applied Spectroscopy、第47巻、第11号、1993年は、マルチチャネル分光計の波長校正の自動化手順を開示している。この手順では、波長標準としてネオン原子線を使用している。
【0008】
A.K. Gaigalas, L. Wang, H.-J. He and P. DeRoseによる:「CCD アレイ分光計の波長校正とスペクトル応答補正の手順(Procedures for Wavelength Calibration and Spectral Response Correction of CCD Array Spectrometers)」Journal of Research of the National Institute of Standards and Technology,第114巻、第4号、2009年は、分析対象のスペクトルを広範な波長範囲で取得し、波長と強度の割り当てを検証する手順を記載している。
【0009】
US 2020/0056939 A1は、分光計モジュールを校正する方法を記載している。この方法は、分光計モジュールの波長対作動パラメータ校正データを生成するために分光計モジュールを使用して測定を実行することと、分光計モジュールの光クロストーク及びダークノイズ校正データを生成するために分光計モジュールを使用して測定を実行することと、既知の反射率標準に対して分光計モジュールの全システム応答校正データを生成するために分光計モジュールを使用して測定を実行することとを含む。本方法はさらに、波長対作動パラメータ校正データ、光クロストーク及びダークノイズ校正データ、ならびに全システム応答校正データを組み込んだ校正記録を、分光器モジュールに結合されたメモリに保存することと、分光計モジュールによる測定に校正記録を適用することとを含む。
【0010】
CN 103226095 Bは、DOAS排ガス分析計内に二酸化硫黄標準ガスを使用した分光計のリアルタイムオンライン波長校正方法を開示している。
【0011】
US 7,839,502 B2は、分光計の波長校正方法を記載している。この方法は、モデルと校正スペクトルの対応する測定値ブロックのステップ的な相対シフトの原理に基づいており、各シフトステップについて相関値が計算される。シフト値は、相関値が最適に達する測定値ブロックごとに決定される。測定値ブロックの位置マーカーと関連するシフト値とからなる値のペアが、各測定値ブロックについて決定される。これらの値の組は、適した割り当て関数に適合させるための設計点を表す。このようにして得られた係数は、波長割り当ての係数として直接使用されることもができ、又は、例えば既存の第1の波長割り当ての係数と置き換えて、又はそれに対してオフセットする、既存の第1の波長割り当ての係数と組み合わせることができる。
【0012】
C.Pope及びA. Baumgartnerによる:「EnMAP分光計の迷光特性評価用の光源(Light source for stray light characterisation of EnMAP spectrometers)」, SPIE 11151、センサ、システム、及び次世代衛星 XXIIIの議事録(Proceeding of SPIE 11151, Sensors, Systems, and Next-Generation Satellites XXIII), 1115123, 2019は、衛星の分光計の迷光特性評価のために開発された光源と、帯域内、インフィールドの迷光を特性評価するための使用を開示している。
【0013】
Y.Zong, S. W. Brown, B. C. Johnson, K. R. Lykke and Y. Ohnoによる:"アレイ分光放射計のための簡易スペクトル迷光補正法(Simple spectral stray light correction method for array spectroradiometers)"、Applied Optics、第45巻、第6号、2006年は、装置のスペクトル迷光から生じる測定誤差に対する分光放射計の応答を補正する方法について記載している。装置のスペクトル範囲をカバーする一連の単色レーザー光源に対する装置の応答を特徴付けることにより、装置内のスペクトル迷光信号の大きさを定量化するスペクトル迷光信号分布行列が得られる。これらのデータを使用することにより、スペクトル迷光補正行列が導出され、簡単な行列乗算で装置の応答を補正することができる。
【0014】
A.Kreuter及びM. Blumthalerによる:「アレイ分光計を使用した太陽光測定のための迷光補正(Stray light correction for solar measurements using array spectrometers)」, Review of Scientific Instruments, 80, 096108, 2009は、太陽光スペクトル測定に特別に調整された、アレイ分光計用の迷光マトリックス補正法を開示している。単一のレーザライン測定に基づく迷光分布関数は、3つのパラメータのみを使用する解析関数で近似される。この関数が迷光補正マトリックスの基礎となる。次に、一つのカットオフフィルタを使用して、迷光補正されたデータがスペクトル的に平坦になり、カットオフ波長より下ではゼロ付近になるように、オフセットパラメータを調整する。
【0015】
M.E. Feinholz, S. J. Flora, S. W. Brown, Y. Zong, K. R. Lykke, M. A. Yarbrough, B. C. Johnson and D. K. Clarkによる: 「マルチチャネルハイパースペクトル分光器のための迷光補正アルゴリズム(Stray light correction algorithm for multichannel hyperspectral spectrographs)」, Applied Optics, 第51巻、第16号、2012年は、マルチチャネルファイバー結合分光器をシステム内の迷光又は散乱光に対して補正するアルゴリズムを記載している。このアルゴリズムは、可変レーザーシステムを使用した特性測定に基づくもので、イメージングシステムにおける有限の点広がり応答を補正するために拡張することができる。
【0016】
Y.Zong, S. W. Brown, B. C. Johnson, K. R. Lykke及びY. Ohnoによる:「分光器における迷光の補正:リモートセンシングへの影響(Correction of stray light in spectrographs: implications for remote sensing)」, SPIE 5882 の議事録、地球観測システムX、588201, 2005年(Proceeding of SPIE 5882, Earth Observing Systems X, 588201, 2005)は、分光器の迷光エラーを補正する方法を開示している。装置のスペクトル範囲をカバーする一連の単色レーザー光源を測定することにより、装置の迷光特性が特徴付けられ、迷光補正行列が導出される。
【0017】
WO 2018/085841 A1は、ハイパースペクトルセンサ及びカメラシステムの校正を開示している。より具体的には、アクティブピクセルアレイに直接蒸着されたファブリペローフィルタを有するアクティブピクセルセンサに基づくカメラシステムの特性を測定し、農業、医療、及びより良好に校正されたハイパースペクトルシステムから恩恵を受ける他の使用分野を含む様々な用途におけるそのようなシステムに使用される装置及び方法が開示されている。
【0018】
US 2018/224334 A1は、サンプル処理中の連続的な応答補正にも提供することができる、スペクトル取得毎にインライン校正に提供することができる分光光度計及び分光プロセスを開示している。分光光度計は、環境要因に依存しない内部波長ドリフト校正システムとして使用するための、特徴的な発光スペクトルを含む複数の多色光源を含む。内部校正プロセスによって提供される補正関数は、連続的に、サンプルスペクトル全体にわたって適用されることができる。分光光度計の各分光計の強度応答を監視し、迷光、暗電流、読み出しノイズなどを連続的に補正することもできる。
【0019】
既知の方法と装置によって達成された利点にもかかわらず、いくつかの技術的課題が残っている。具体的には、既知の波長校正と迷光校正は、通常、ペンレイランプ、アルゴンを使用する標準ランプ、モノクロメーターシステムなどの繊細で高価な装置を使用して、実験室内又はファクタリング中に独立して実施される。各校正は、それぞれ独立したプロセスと独立した測定構成によって行われる。波長校正は通常、原子ゲージに基づいて行われ、すなわち、様々な原子種の放射線が波長校正のための普遍的な標準として使用されることができる。典型的な光源は、ヘリウムネオンレーザ、アルゴンランプ、水銀ランプである。あるいは、希土類校正標準器も利用できる。原子の放出スペクトルが記録され、その位置が、例えば中央標準化及び計測機関からの参照データと比較される。迷光補正は、一般に、モノクロメータ又は波長可変レーザからの光などの狭帯域光源を使用して識別及び/又は定量化されることができる。ほとんどの場合、分光装置の各出力チャネル用の別々の光源が使用される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】US 2020/0056939 A1
【特許文献2】CN 103226095 B
【特許文献3】US 7,839,502 B2
【特許文献4】WO 2018/085841 A1
【特許文献5】US 2018/224334 A1
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】M. E. Schaepman,S. Dangel「非イメージング分光放射計の固体実験室校正(Solid laboratory calibration of a nonimaging spectroradiometer)」, Applied Optics, 第39巻、第21号、2000年
【非特許文献2】C.Tseng, J. F. Ford, C. K. Mann and T. J. Vickers「マルチチャネル分光計の波長校正(Wavelength Calibration of a Multichannel Spectrometer)」、Applied Spectroscopy、第47巻、第11号、1993年
【非特許文献3】A.K. Gaigalas, L. Wang, H.-J. He and P. DeRose「CCD アレイ分光計の波長校正とスペクトル応答補正の手順(Procedures for Wavelength Calibration and Spectral Response Correction of CCD Array Spectrometers)」Journal of Research of the National Institute of Standards and Technology,第114巻、第4号、2009年
【非特許文献4】C.Pope及びA. Baumgartner「EnMAP分光計の迷光特性評価用の光源(Light source for stray light characterisation of EnMAP spectrometers)」, SPIE 11151、センサ、システム、及び次世代衛星 XXIIIの議事録(Proceeding of SPIE 11151, Sensors, Systems, and Next-Generation Satellites XXIII), 1115123, 2019
【非特許文献5】Y.Zong, S. W. Brown, B. C. Johnson, K. R. Lykke and Y. Ohno"アレイ分光放射計のための簡易スペクトル迷光補正法(Simple spectral stray light correction method for array spectroradiometers)"、Applied Optics、第45巻、第6号、2006年
【非特許文献6】A.Kreuter及びM. Blumthaler「アレイ分光計を使用した太陽光測定のための迷光補正(Stray light correction for solar measurements using array spectrometers)」, Review of Scientific Instruments, 80, 096108, 2009
【非特許文献7】M.E. Feinholz, S. J. Flora, S. W. Brown, Y. Zong, K. R. Lykke, M. A. Yarbrough, B. C. Johnson and D. K. Clark「マルチチャネルハイパースペクトル分光器のための迷光補正アルゴリズム(Stray light correction algorithm for multichannel hyperspectral spectrographs)」, Applied Optics, 第51巻、第16号、2012年
【非特許文献8】Y.Zong, S. W. Brown, B. C. Johnson, K. R. Lykke及びY. Ohno「分光器における迷光の補正:リモートセンシングへの影響(Correction of stray light in spectrographs: implications for remote sensing)」, SPIE 5882 の議事録、地球観測システムX、588201, 2005年(Proceeding of SPIE 5882, Earth Observing Systems X, 588201, 2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、分光計装置の校正に関する上述の技術的課題に少なくとも部分的に対処する方法及び装置を提供することが望ましい。具体的には、簡単な構成を低コストかつ少ない労力で使用することにより、分光計装置を正確に校正するための高い柔軟性を提供する、分光計装置を校正するための方法及びシステムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この問題は、及び独立請求項の特徴を有する分光計装置を校正するための方法、分光計装置を校正するためのシステム、コンピュータプログラム及びコンピュータ可読記憶媒体によって解決される。独立した態様で、又は任意の組み合わせで実現され得る有利な実施形態は、従属請求項及び明細書全体に記載されている。
【0024】
本明細書で使用される場合「有する」、「備える」、又は「含む」という用語、又はそれらの任意の文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入された特徴の他に、この文脈で説明されている実体にさらなる特徴が存在しない状況と、1つ以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を指し得る。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」、及び「AはBを含む」という表現は、B以外にAに他の要素が存在しない状況(つまり、Aは専らかつ排他的にBから構成される状況)と、Bに加えて、1つ以上のさらなる要素、例えば要素C、要素CとD、又はさらに要素などが実体Aに存在する状況の双方を指し得る。
【0025】
さらに、「少なくとも1つ」、「1つ以上」という用語、又は特徴もしくは要素が1回又は複数回存在する可能性があることを示す同様の表現は、通常、それぞれの特徴又は要素を導入する際に1回のみ使用されることに留意されたい。ほとんどの場合、それぞれの特徴又は要素に言及する際、それぞれの特徴又は要素が1回又は複数回存在する可能性があるという事実にかかわらず、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」という表現は繰り返されない。
【0026】
さらに、本明細書で使用される場合、「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」という用語、又は、同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴に関連して使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、任意の特徴であり、いかなる意味でも特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、当業者が認識するように、代替的な特徴を用いることによって実施されることができる。同様に、「本発明の一実施形態では」又は同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関するいかなる制限もなく、本発明の範囲に関するいかなる制限もなく、及び、そのような方法で導入される特徴を本発明の他の任意の又は非任意の特徴と組み合わせる可能性に関するいかなる制限もなく、任意の特徴であることが意図されている。
【0027】
本発明の第一の態様では、分光計装置を校正する方法が開示される。
【0028】
本明細書で使用される「分光計装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、少なくとも1つのサンプルを光学的に分析することができ、それによってサンプルの少なくとも1つのスペクトル特性に関する情報の少なくとも1つの項目を生成することができる装置を指し得る。具体的には、この用語は、スペクトルの対応する波長又はその分割、例えば波長間隔に関して信号強度を記録することができる装置を指すことができ、信号強度は、好ましくは、さらなる評価に使用できる電気信号として提供され得る。光学素子、具体的には光フィルタ及び/又は分散素子などの少なくとも1つの波長選択素子を備える光学素子は、入射光を、検出器を使用することによってそれぞれの強度が決定される構成波長成分のスペクトルに分離するために使用されることができる。さらに、入射光を受け取り、入射光を光学素子に伝達するように設計された光学素子が使用されることができる。分光計装置は、一般に、反射モードで作動可能、及び/又は透過モードで作動可能であり得る。分光計装置の可能な実施形態については、以下にさらに詳細に概説される分光計装置の説明を参照されたい。
【0029】
本明細書で使用される「校正」という用語(プロセス又はプロセスの結果も、「校正」とも呼ばれる。)は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、分光計装置における測定の不正確さの決定、補正、及び調整の少なくとも1つのプロセスを指し得る。したがって、しばしば「校正情報の項目」とも呼ばれる、校正プロセスの結果は、例えば、1つ以上の測定値を1つ以上の校正値又は「真の」値に変換するための、校正関数、校正係数、校正行列などの校正プロセスの結果に関する少なくとも1つの情報項目であるか、又はそれらを含み得る。測定の不正確さは、一例として、波長決定における不確実性、及び/又は分光計装置の測定信号に対する固有及び/又は外来の干渉から生じる可能性がある。したがって、以下でさらに詳細に概説するように、分光計装置の校正は、波長校正、迷光校正、暗電流校正、スペクトル帯域幅校正、強度分布校正、及び信号線形性校正のうちの少なくとも1つを含み得る。校正、具体的には、校正の各々は、少なくとも1つの2段階プロセスを含むことができ、第1ステップでは、分光計装置の測定信号の既知の標準からの偏差に関する情報が決定され、第2ステップでは、この情報が、偏差を低減、最小化及び/又は除去するために、分光計装置の測定信号を補正及び/又は調整するために使用される。したがって、校正は、例えば、分光計装置の測定信号及び/又は測定スペクトルに校正情報の項目を適用することを含み得る。分光計装置の校正は、校正された分光計装置を用いて実行される測定の精度を向上及び/又は維持することができる。
【0030】
本方法は、一例として、所定の順序で実施され得る以下のステップを含む。しかし、異なる順序も可能であることに留意されたい。さらに、1つ以上の方法ステップを1回又は繰り返し実行することも可能である。さらに、2つ以上の方法ステップを同時に又は適時に重複して実施することが可能である。本方法は、列挙されていないさらなる方法ステップを含んでいてよい。
【0031】
本方法は以下のステップ:
a)分光計装置の少なくとも1つの検出器装置を、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタを通して、具体的には複数の所定の透過帯域を有する複数の狭帯域通過フィルタを通して、少なくとも1つの広帯域光源で照射するステップと;
b)検出器装置を使用することによって、ステップa)の照射に応じた複数の検出器信号を生成するステップであって、検出器装置は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学素子を備え、複数の感光素子をさらに備え、各感光素子は、構成波長成分のうちの少なくとも1つの部分を受け取り、それぞれの構成波長成分のうちの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光素子の照射に応じて、それぞれの検出器信号を生成するように構成されている、ステップと;
c)波長校正情報の少なくとも1つの項目を決定するステップであって、波長校正情報の項目は、入射光の波長、具体的には波長帯域をこれらの波長に応答する対応する感光素子に割り当て、具体的には感光素子の少なくとも1つを所定の透過帯域のそれぞれに割り当て、より具体的には感光素子の1つ以上のピクセル位置及び/又は識別番号をそれぞれの所定の透過帯域に、具体的には所定の透過帯域のそれぞれに割り当てる、少なくとも1つの割り当てを含む、ステップと;
d)複数の検出器信号に基づいて、少なくとも1つの迷光校正情報の項目を決定するステップであって、前記迷光校正情報の項目は、少なくとも1つの信号分布関数、具体的には少なくとも1つの信号分布行列を含み、前記信号分布関数は、特定の波長を有する入射光に対する前記感光素子の応答の分布を記述する、ステップと、
を含む。
【0032】
本明細書で使用される「広帯域光源」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、少なくとも5nm、具体的には少なくとも10nm、例えば10nm~2000nmのスペクトル幅を有する光など、広いスペクトル範囲の光を放出する装置を指し得る。例えば、広帯域光源は、2000Kから3000Kの範囲の温度、具体的には2700Kの温度における黒体放射に対応する分光放射輝度を有する少なくとも1つの白熱ランプを備えることができる。しかしながら、以下にさらに詳細に概説するように、広帯域光源の他の例も可能である。広帯域光源の広いスペクトル範囲は、分光計装置のスペクトル範囲、具体的には分光計装置の完全なスペクトル範囲を少なくとも部分的にカバーすることができる。例えば、広帯域光源は、400nm~3000nmの広いスペクトル範囲の光を放出することができる。本明細書で使用される、「光」という用語は、一般に、通常、「光学スペクトル範囲」と呼ばれ、可視スペクトル範囲、紫外線スペクトル範囲及び赤外線スペクトル範囲のうちの1つ以上を含む、電磁放射線の区分を指す。「紫外線スペクトル」又は「UV」という用語は、一般に、1nm~380nm、好ましくは100nm~380nmの波長を有する電磁放射線を指す。「可視」という用語は、一般に、380nm~760nmの波長を指す。「赤外線」又は「IR」という用語は、一般に、760nm~1000μmの波長を指し、760nm~3μmの波長は、通常、「近赤外線」又は「NIR」と呼ばれ、3μm~15μmの波長は、通常、「中赤外線」又は「MidIR」と呼ばれ、15μm~1000μmの波長は、「遠赤外線」又は「FIR」と呼ばれる。広帯域光源の広いスペクトル範囲は、可視スペクトル範囲、紫外線スペクトル範囲及び赤外線スペクトル範囲の少なくとも1つを含み得る。本発明の典型的な目的のために使用される光は、特に、IRスペクトル範囲、具体的にはNIR又はMidIRスペクトル範囲の少なくとも1つ、より具体的には1μm~5μmの波長、さらにより具体的には1μm~3μmの波長を有する光を含むことができる。
【0033】
本明細書で使用される「バンドパスフィルタ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、「透過帯域」とも呼ばれる少なくとも1つの特定のスペクトル範囲内の波長を有する入射光を透過させ、特定のスペクトル範囲の上限閾値を超える波長及び/又は特定のスペクトル範囲の下限閾値を下回る波長など、少なくとも1つの特定のスペクトル範囲外の波長を有する入射光を反射、吸収及び/又は減衰させるように構成された光学素子を指し得る。「所定の透過帯域」の文脈で使用される「所定の」という用語は、狭帯域通過フィルタがステップa)を実行するために使用される場合、その透過帯域のスペクトル範囲が既知である状況を指し得る。具体的には、狭帯域通過フィルタの透過帯域のスペクトル範囲は、例えば、狭帯域通過フィルタのデータシートからの既知の透過特性を有する標準を使用することによって、及び/又は、例えば、校正された分光計装置を使用することによるスペクトル範囲の事前の決定によって、既知であってよい。
【0034】
バンドパスフィルタのスペクトル範囲の幅、すなわち透過帯域のスペクトル帯域幅は、分光計装置のスペクトル分解能よりも低くてよく、したがって、バンドパスフィルタは「狭帯域通過フィルタ」となる。本発明による方法では、複数の透過帯域を有する1つの狭帯域通過フィルタ、又は、その代わりに、それぞれが1つの透過帯域を有し、具体的には他の狭帯域通過フィルタの透過帯域とは異なる、複数の狭帯域通過フィルタを使用することができる。
【0035】
上記で概説したように、本方法は、狭帯域通過フィルタを通して、具体的には複数の狭帯域通過フィルタを通して、広帯域光源で検出装置を照射することを含む。本明細書で使用される「照射する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、広帯域光源から放出された光を検出器装置に能動的又は受動的に導く動作を指し得る。具体的には、狭帯域通過フィルタを通して、具体的には複数の狭帯域通過フィルタを通して検出器装置を照射することは、検出器装置が照射される前に、広帯域光源から放出された光が少なくとも部分的に狭帯域通過フィルタを通して、具体的には複数の狭帯域通過フィルタを通して透過される状況を指し得る。
【0036】
本明細書で使用される「検出器装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、入射光を記録及び/又は監視することができる任意の装置又は装置の組み合わせを指し得る。検出器装置は、入射照射に応答し、照射の強度を示す電気信号を生成するように構成されることができる。検出器装置は、可視スペクトル範囲、紫外線スペクトル範囲、又は赤外線スペクトル範囲、具体的には近赤外線スペクトル範囲(NIR)のうちの1つ以上に感度を有していてよい。検出器装置は、具体的には、少なくとも1つの光センサ、例えば光半導体センサであってよく、又は光半導体センサを備えていてよい。一例として、具体的には、検出器装置が近赤外線スペクトル範囲などの、赤外スペクトル範囲において感度を有する場合、半導体センサは、PbS、PbSe、InGaAs、及び拡張InGaAsからなる群から選択される少なくとも1つの材料を備える少なくとも1つの半導体センサであってよく、又はこれらを備えていてよい。一例として、検出器装置は、少なくとも1つのCCD又はCMOSデバイスなどの少なくとも1つの光検出器を備えていてよい。検出器装置は、具体的には、複数のピクセル化センサを備える少なくとも1つの検出器アレイを備え得、ピクセル化センサの各々は、構成波長成分の少なくとも1つの少なくとも一部を検出するように構成される。検出器装置は、少なくとも1つの光学素子と複数の感光素子とを備える。
【0037】
本明細書で使用される「光学素子」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、波長に依存して光を透過、反射、偏向、又は散乱させるうちの1つ以上に適した任意の要素又は要素の組み合わせを指し得る。光学素子はさらに、具体的には、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離した後、スペクトルを複数の感光性波長素子に透過させるように構成されることができる。具体的には、光学素子における入射光の波長依存的な透過、反射、偏向又は散乱は、スペクトルの構成波長成分の空間的分離をもたらし、したがって、複数の感光素子上に直接的又は間接的に透過され得る。
【0038】
上記のように、光学素子は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成されている。本明細書で使用される「スペクトル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、分光計装置によって調査される、光学スペクトル範囲、特にIRスペクトル範囲、特にNIRスペクトル範囲又はMidIRスペクトル範囲の少なくとも1つの区分(partition)を、指し得る。スペクトルの各部分は、信号波長と対応する信号強度によって定義される光信号によって構成され得る。したがって、本明細書で使用される「構成波長成分」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、スペクトルの一部を形成する光信号を指し得る。具体的には、光信号は、それぞれの波長又は波長間隔に対応する信号強度を含み得る。
【0039】
本明細書で使用される「感光素子」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、検出装置によって含まれる個々の光センサを指し得、各光センサは、特定の感光領域に入射する構成波長成分のうちの一部の強度に依存する少なくとも1つの出力信号を生成することによって感光素子の光応答を記録するように構成された少なくとも1つの感光領域を有する。それぞれの個別の光センサによって構えられた少なくとも1つの感光領域は、特に、感光領域に入射する入射光を受け取るように指定された単一の均一な領域であってよい。少なくとも1つの出力信号は、特に、検出器信号として使用され得、好ましくは、さらなる評価のために外部の評価ユニットに提供されることができる。
【0040】
したがって、本明細書で使用される「検出器信号」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、少なくとも1つの検出器によって生成される信号、具体的には、感光素子の少なくとも1つの出力信号を指し得る。少なくとも1つの出力信号は、電子信号及び光信号の少なくとも1つから選択され得る。少なくとも1つの出力信号は、アナログ信号及び/又はデジタル信号であってよい。隣接する感光素子の出力信号は、同時に、又は時間的に連続して生成されることができる。一例として、行スキャン又はラインスキャンの間に、一列に配列され得る一連の感光素子に対応する一連の出力信号を生成することが可能であり得る。さらに、個々の感光素子は、好ましくは、外部評価ユニットに検出信号として供給する前に出力信号を増幅するように適合された、アクティブピクセルセンサであってよい。この目的のために、感光素子は、電子信号を処理及び/又は前処理するための1つ以上のフィルタ及び/又はアナログ-デジタル変換器などの1つ以上の信号処理装置を備え得る。
【0041】
上記で概説したように、本方法は、波長校正情報の少なくとも1つの項目を決定することを含む。本明細書で使用される「波長校正情報の項目」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、分光計装置における波長不正確さの決定、補正及び調整の少なくとも1つのプロセスによって生成される少なくとも1つの情報項目を指し得る。少なくとも1つの情報の項目は、具体的には、校正関数、校正係数、及び校正行列のうちの少なくとも1つであってもよく、又はこれらを含んでよい。波長校正情報の項目は、入射光の波長、具体的には波長帯域を、これらの波長に応答する対応する感光素子に割り当てる少なくとも1つの割り当てを含む。本明細書で使用される「波長帯域」という用語は、感光素子に割り当てられる波長間隔(wavelength interval)を指し得る。具体的には、波長校正情報の項目を決定することによって、具体的には、光学素子によって分離されそれぞれの感光素子に透過される、スペクトルの構成波長成分によって照射される感光素子の少なくとも1つに、具体的には、感光素子のそれぞれに、波長及び/又は波長間隔を割り当てることが可能であり得る。波長校正情報の項目、特に割り当ては、感光素子の少なくとも1つを、狭帯域通過フィルタ、具体的には複数の狭帯域通過フィルタの所定の透過帯域にマッピングすることによって決定されることができる。
【0042】
波長校正情報の項目は、具体的には、感光素子の少なくとも1つを所定の透過帯域の各々に割り当てる少なくとも1つの割り当て、具体的には、感光素子の1つ以上のピクセル位置及び/又は識別番号を、それぞれの所定の透過帯域に、具体的には、所定の透過帯域の各々に対して割り当てる少なくとも1つの割り当てを含むことができる。本明細書で使用される「ピクセル位置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、検出装置内の感光素子の位置情報の任意の項目を指し得る。ピクセル情報は、絶対位置情報及び相対位置情報のうちの1つ以上を使用することによって、具体的には、1次元、2次元、又は3次元さえ、の形で検出装置内の感光素子の位置を記述することができる。本明細書で使用される「識別番号」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、検出器装置によって含まれる各感光素子を一意に識別する数値又は英数字の情報項目を指し得る。例えば、検出器装置の感光素子は、検出器装置における出現順序に関して番号付けされてよい。しかし、検出器装置の感光素子を識別するための他の選択肢も可能である。
【0043】
本明細書で使用される「割り当て」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、例えば、連続関数及び/又は離散関数などの数学的関係を使用することによって、第1情報項目を第2情報項目に関連付ける情報項目を指し得る。その結果、「割り当てる」プロセスは、第1情報項目を第2情報項目に関連付けるプロセスを指し得る。具体的には、割り当ては、感光素子、特に、感光素子の1つ以上のピクセル位置及び/又は識別番号を、当該感光素子を照射する波長及び/又は波長帯域に関連付けることができる。
【0044】
上記でさらに概説したように、本方法は、迷光校正情報の少なくとも1つの項目を決定することを含む。本明細書で使用される「迷光校正情報の項目」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、分光計装置における迷光の不正確さの決定、補正及び調整の少なくとも1つのプロセスによって生成される少なくとも1つの情報の項目を指し得る。少なくとも1つの情報項目は、具体的には、校正関数、校正係数、及び校正行列のうちの少なくとも1つであってもよく、又はそれらを含んでよい。迷光は、表面でのデビュース散乱(diffuse scattering)、回折、例えば光学素子での回折、及び/又は他の望ましくない影響により、分光計装置で生じる可能性がある。迷光校正情報の項目は、検出器装置上の、具体的には複数の感光素子上の迷光の信号分布を含むことができる。さらに、迷光校正情報の項目は、測定信号、特に分析対象サンプルの測定信号が、測定信号に対する迷光の悪影響を最小化及び/又は除去するように補正及び/又は調整され得るようなフォーマットで、決定された信号分布を含めることができる。
【0045】
迷光校正情報の少なくとも1つの項目は、少なくとも1つの信号分布関数、具体的には、少なくとも1つの信号分布行列を含み、該信号分布関数は、特定の波長を有する入射光に対する感光素子の応答の分布を記述する。本明細書で使用される「信号分布関数」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、連続関数及び/又は離散関数などの数学的関数であって、検出器装置上の迷光の分布、具体的には迷光の信号分布を記述する関数を指し得る。具体的には、信号分布関数は、スペクトルの構成波長成分のうちの1つについての、複数の感光素子上の信号分布を含むことができる。迷光校正情報の項目は、スペクトルの構成波長成分の各々についての少なくとも1つの信号分布関数を含むことができる。複数の信号分布関数、具体的には、構成波長成分の各々についての1つの信号分布関数を含む信号分布関数は、信号分布行列に記録されてよい。
【0046】
したがって、本明細書で使用される「信号分配行列」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、行列要素ai,j(i番目の感光素子を表すi=1,…,nと、スペクトルのj番目の構成波長成分を表すj=1,…,n )を有する行列を指し得、ここで、行列要素ai,jはi番目の感光素子におけるj番目の構成波長成分の信号強度を記述する。一例として、信号分布行列の計算及び/又は適用は、Y. Zong, S. W. Brown, B. C. Johnson, K. R. Lykke and Y. Ohnoによる:「アレイ分光放射計のための簡単なスペクトル迷光補正方法(Simple spectral stray light correction method for array spectroradiometers)」、応用光学、第45巻、第6号、2006年にさらに詳しく説明されている。
【0047】
広帯域光源は、白熱ランプ;黒体放射体;電気フィラメント;発光ダイオード(LED);スーパールミネッセントダイオード(SLD);微小電気機械システム(MEMS)黒体放射体のうちの少なくとも1つを備え得る。代替的又は付加的に、広帯域光源は、前述の発光デバイスの2つ以上の組み合わせ、及び/又は前述の発光デバイスの少なくとも1つと他の発光デバイスの少なくとも1つとの組み合わせ、例えば、それぞれ異なる波長を有する2つ以上のLEDの組み合わせ、及び/又は少なくとも1つの白熱ランプと少なくとも1つのLEDとの組み合わせを備えることができる。広帯域光源は、分光計装置によって備えられる内部光源であってよく、あるいは外部光源であってよい。
【0048】
狭帯域通過フィルタの透過帯域のスペクトル帯域幅は、分光計装置、具体的には検出器装置のスペクトル分解能よりも低くてよい。例えば、狭帯域通過フィルタの透過帯域のスペクトル帯域幅は、10nm、具体的には5nm、より具体的には1nmを超えないことができる。分光計装置、特に検出器装置のスペクトル分解能は、100nmより低く、具体的には10nmより低く、より具体的には5nmより低くてよい。
【0049】
本方法では、複数の検出器信号は、狭帯域通過フィルタ、具体的には複数の狭帯域通過フィルタのスペクトルに対応することができ、スペクトルは、所定の透過帯域の波長位置を含む。本明細書で使用される「対応する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、2つ以上の物体、情報項目、特性などの部分的及び/又は完全な等価性を指し得る。具体的には、複数の検出器信号は、特定のスペクトル範囲など、例えば、可視スペクトル範囲、紫外スペクトル範囲及び/又は赤外スペクトル範囲のうちの1つ以上の少なくとも一部において、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタのスペクトルと少なくとも部分的に等価であってよい。代替的に又は追加的に、複数の検出器信号は、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタのスペクトルと完全に等価であってよく、例えば、複数の検出器信号は、可視スペクトル範囲、紫外スペクトル範囲及び赤外スペクトル範囲のうちの1つ以上において、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタの全スペクトル範囲をカバーし得る。
【0050】
本方法、具体的にはステップc)は、さらに:
c.1)複数の検出器信号において強度ピークを生成する前記複数の感光素子のピクセル位置及び識別番号の少なくとも1つを決定するステップと;
c.2)狭帯域通過フィルタの所定の透過帯域の少なくとも1つを複数の強度ピークに割り当てるステップと;
c.3)波長校正関数を決定するステップであって、波長校正関数は、感光素子のピクセル位置及び識別番号の少なくとも1つを波長位置に割り当てる、ステップ、
の少なくとも1つを含むことができる。
【0051】
具体的には、波長校正関数は、次数Nの多項式関数を含むことができ、ここで、複数の少なくともN+1強度ピークが使用され得る。多項式関数は、
【数1】
であってもよく、又はそれを含んでよく、ここでfは、ピクセル位置又は識別番号xを有する感光素子の波長又は波長帯域を表し、ここでa
nは、例えば回帰分析を使用することによって決定される多項式係数を示す。例えば、波長校正関数は、N=3次の多項式関数を含んでよい。
【0052】
さらに、本方法、具体的にはステップd)は、さらに:
d.1)オフセット補正とデジタルフィルタの少なくとも1つ、具体的にはノイズフィルタリング技術を複数の検出器信号に適用することにより、複数の検出器信号を処理するステップと;
d.2)複数の構成波長成分について、具体的には各構成波長成分について、検出器装置によって含まれる各感光素子における照射強度を得るために、複数の処理された検出器信号を補間するステップと;
d.3)補間された検出信号を使用することによって、複数の信号分布関数、具体的には信号分布行列に記録された複数の信号分布関数を生成するステップ、
の少なくとも1つを含むことができる。
【0053】
本方法は、波長校正情報の項目及び迷光校正情報の項目の少なくとも1つを、分光計装置を使用することによって決定された測定スペクトルに適用することをさらに含むことができる。測定スペクトルは、分光計装置を使用することによって決定された分析対象サンプルのスペクトルを指し得る。具体的には、迷光校正情報の項目を適用することは、信号分布行列の逆行列を測定スペクトルに適用することを含むことができる。
【0054】
本方法は、具体的には、ステップa)の前に、校正された分光計装置を使用することによって、狭帯域通過フィルタ、具体的には複数の狭帯域通過フィルタの透過帯域を決定することをさらに含むことができる。
【0055】
本方法は、青方偏移補正を決定することをさらに含むことができる。本明細書で使用される「青方偏移補正」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、波長校正情報の追加項目、具体的には分光計装置における青方偏移を定性化及び/又は定量化することを指し得る。青方偏移は、一例として、光学素子における入射光の入射角に応じて、入射光を構成波長成分のスペクトルに異なって分離する光学素子における効果に起因して生じ得る。具体的には分光計装置から分離された検出装置が分光計装置の校正方法に使用された場合、分光計装置の校正に使用される入射光は、分光計装置に組み込まれた検出装置の入射光と比較して、光学素子で異なる入射角を有する場合がある。そのため、校正された検出器装置を分光計装置に組み込んだ状態で、青方偏移が発生する場合がある。青方偏移補正のために、複数の追加の検出器信号が、分光計装置に検出器装置を組み込んだ状態で生成されることができる。青方偏移補正は、複数の追加の検出器信号を使用してステップc)を繰り返すことによって決定される波長校正情報の少なくとも1つのさらなる項目を含んでよい。青方偏移補正は、特に光学素子における角度依存性の影響を補償することによって、組み立てられた検出器装置の青方偏移を補償する、補正情報の少なくとも1つの項目を含み得る。
【0056】
追加的に又は代替的に、本方法は、検出装置の少なくとも1つの温度を決定することを含んでよい。本方法は、複数の異なる温度について波長校正情報の項目と迷光校正情報の項目の少なくとも1つを決定することを含んでよい。環境作動条件によっては、検出器装置の異なる温度が必要になる場合がある。しかし、波長校正情報の項目及び/又は迷光校正情報の項目は、温度に依存する場合がある。したがって、複数の異なる温度において波長校正情報の項目及び/又は迷光校正情報の項目を決定することにより、これらの温度の影響を考慮することが可能になり得る。
【0057】
本方法において、波長校正情報の項目と迷光校正情報の項目は、同じ複数の検出器信号を使用して決定され得る。したがって、本方法は、校正情報の2つの項目、具体的には、波長校正情報の項目と迷光校正情報の項目とを決定するために、複数の検出器信号を1度生成することを含んでよい。原理的には、分光計装置を校正するためのさらなる測定は必要でなくてよい。
【0058】
本方法は、ユーザサイト及び製造者サイトの少なくとも1つにおいて実行されることができる。具体的には、本方法は、インフィールド、すなわちユーザサイトで直接、及び/又はインラボ、すなわち製造者サイトで実行されることができる。
【0059】
本方法は、取り外された検出器装置と組み込まれた検出器装置の少なくとも1つを使用して実行されることができる。例えば、分光計装置が透過モードで作動される場合、本方法は、検出器装置を分光計装置に組み込んだ状態で実行されることができる。分光計装置が反射モードで作動する場合、本方法は、検出器装置を分光計装置から取り外した状態で実行されることができる。しかしながら、代替的又は追加的に、反射モードで作動される分光計装置の検出器装置は、分光計装置に組み込まれた状態で使用されることもできる。さらに、本方法は、分光計装置に組み込まれた少なくとも1つの検出器装置を用いて基準サンプルの複数の検出器信号を決定することにより、少なくとも1つの補正係数を決定することをさらに含むことができる。具体的には、分光計装置から取り外された検出器装置を使用して本方法を実行する場合、本方法は、分光計装置に組み込まれた検出器装置を使用して少なくとも1つの補正係数を決定することをさらに含んでよい。一例として、補正係数は、基準サンプルの複数の検出器信号を基準サンプルの既知の検出器信号と比較することによって決定されることができる。
【0060】
本方法は、具体的にはコンピュータで実施され、具体的にはコンピュータで支援され、又はコンピュータで制御されることができる。本発明のコンピュータ実装された態様を参照すると、本明細書に開示された1つ以上の実施形態による方法の方法ステップの1つ以上、あるいは方法ステップのすべてでさえも、具体的には少なくとも1つのプロセッサを備えるシステムの評価ユニットを使用することによって実行されてよく、又は少なくともサポート又は制御されてよい。したがって、一般に、データの提供及び/又は操作を含む方法ステップのいずれもが、評価ユニットを使用することによって実行され得る。一般に、これらの方法ステップは、典型的には、サンプルの提供及び/又は実際の測定の実行の特定の態様のような手作業を必要とする方法ステップを除く、任意の方法ステップを含むことができる。したがって、具体的には、少なくとも方法ステップc)及びd)は、コンピュータ実装されてよく、任意で、ステップa)及びb)は、少なくとも部分的に、コンピュータ制御されてよい。本発明のコンピュータ実装態様に関するさらなる態様については、以下にさらに詳細に概説する。
【0061】
本発明のさらなる態様では、分光計装置を校正するためのシステムが開示される。このシステムは、少なくとも1つの広帯域光源と、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ、具体的には複数の所定の透過帯域を有する複数の狭帯域通過フィルタとを備える。システムは、分光計装置の少なくとも1つの検出器装置をさらに備え、検出器装置は、検出器装置の照射に応じて複数の検出器信号を決定するように構成され、検出器装置は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学素子を備え、複数の感光素子をさらに備える。各感光素子は、構成波長成分の少なくとも一部分を受け取り、それぞれの構成波長成分の少なくとも一部分によるそれぞれの感光素子の照射に応じて、それぞれの検出器信号を生成するように構成される。システムは、例えば、上記に開示された実施形態のいずれか1つに従って、及び/又は以下にさらに詳細に開示される実施形態のいずれか1つに従って、本発明による分光計装置を校正するための方法を実行するために構成される。
【0062】
システムの定義及び実施形態については、分光計装置の校正方法に言及した定義及び実施形態を参照されたい。
【0063】
光学素子は、少なくとも1つの波長選択素子を備えてよい。波長選択素子は、プリズム;回折格子;線形可変フィルタ;光フィルタ、特に狭帯域通過フィルタ;干渉計、からなる群から選択され得る。
【0064】
検出装置は、具体的には、線形アレイに配置された複数の感光素子を備え得、感光素子のアレイは、10~1000の数、具体的には100~500の数、具体的には200~300の数、より具体的には256の数の感光素子を備え得る。各感光素子は、具体的には互いに独立して、ピクセル化された無機カメラ素子、具体的にはピクセル化された無機カメラチップ、より具体的にはCCDチップ又はCMOSチップ;モノクロカメラ要素、具体的にはモノクロカメラチップ;少なくとも1つの光導電体、具体的には無機光導電体、より具体的にはPbS、PbSe、Ge、InGaAs、拡張InGaAs、InSb又はHgCdTeからなる群から選択され得る。
【0065】
各感光素子は、具体的には、760nm~1000μmの波長範囲、具体的には、760nm~15μmの波長範囲、より具体的には、1μm~5μmの波長範囲、より具体的には、1μm~3μmの波長範囲の電磁放射線に対して感度を有することができる。
【0066】
システムは、少なくとも1つの評価ユニットを備えることができる。評価ユニットは、具体的には、1つ以上のプロセッサを備えることができる。評価ユニットは、上記に開示された実施形態のいずれか1つ及び/又は以下にさらに詳細に開示される実施形態のいずれか1つによるような、本発明による分光計装置を校正するための方法を実行するように構成されてよい。評価ユニット、具体的にはプロセッサは、コンピュータ又はシステムの基本動作を実行するように構成された任意の論理回路、及び/又は、一般に、計算又は論理演算を実行するように構成された装置を指し得る。特に、評価ユニットは、コンピュータ又はシステムを駆動する基本命令を処理するように構成されることができる。一例として、評価ユニットは、少なくとも1つの算術論理演算ユニット(ALU)と、数学コプロセッサ又は数値コプロセッサなどの少なくとも1つの浮動小数点演算ユニット(FPU)と、複数のレジスタ、具体的には、オペランドをALUに供給し、演算結果を保存するように構成されたレジスタと、L1キャッシュメモリ及びL2キャッシュメモリなどのメモリを備えることができる。特に、評価ユニットは、マルチコアプロセッサであってよい。具体的には、評価ユニットは、中央処理装置(CPU)であってよく、又は中央処理装置(CPU)を備えてよい。追加的に又は代替的に、評価ユニットは、マイクロプロセッサであってよく、又はマイクロプロセッサを備えてよく、したがって、具体的には、評価ユニットの要素は、1つの単一の集積回路(IC)チップに含まれてよい。追加的に又は代替的に、評価ユニットは、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)及び/又は1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)及び/又は1つ以上のテンソルプロセッシングユニット(TPU)及び/又は専用の機械学習最適化チップなどの1つ以上のチップであるか、又はそれらを備えてよい。評価ユニットは、具体的には、ソフトウェアプログラミングなどによって、方法ステップの1つ以上、特にすべてを実行、制御、及び/又はサポートするように構成され得る。
【0067】
システムは、少なくとも1つの検出器装置を備える少なくとも1つの分光計装置、具体的にはハンドヘルド分光計装置を備えることができる。したがって、一例として、システムは、その中に組み込まれた検出器装置を含む分光計装置を備えてよく、本方法は、組み込まれた分光計装置を用いて実行されてよい。しかし、その代わりに、システムは分光計装置の検出器装置のみを備えていてよく、本方法は取り取り外された検出器装置を用いて実行されてよい。
【0068】
分光計装置は、具体的には、ハンドヘルド分光計装置であってよい。分光計装置の文脈で使用される「ハンドヘルド」という用語は、具体的には、限定されることなく、人間のユーザによって移動可能及び/又は移動させることができる分光計装置の特性、具体的には、人間のユーザによって持ち運ぶことができる特性、具体的には、人間のユーザによって片手で持ち運ぶことができる特性を指し得る。具体的には、ハンドヘルド分光計装置は、例えば、500mmを超えない任意の寸法、具体的には300mmを超えない任意の寸法の延長部を有することによって、人間のユーザによって持ち運ばれる寸法にすることができる。追加的に又は代替的に、ハンドヘルド分光計装置は、人間のユーザによって持ち運ばれるために、5kgを超えない質量、具体的には3kgを超えない質量、さらには0.5kgを超えない質量を有することができる。
【0069】
一例として、分光計装置は、具体的には、少なくとも1つの広帯域光源を備えることができる。代替的又は追加的に、システムの広帯域光源は、外部の広帯域光源であってよい。上記で概説したように、広帯域光源は、少なくとも5nmのスペクトル幅、具体的には少なくとも10nmのスペクトル幅、例えば10nm~2000nmのスペクトル幅を有する光など、広いスペクトル範囲の光を放出することができる。例えば、広帯域光源は、400nm~3000nmの広いスペクトル範囲の光を放出することができる。例えば、広帯域光源は、白熱ランプ;黒体放射体;電気フィラメント;LED;SLD;MEMS黒体放射体のうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0070】
分光計装置は、少なくとも1つの光学的に透明な入口窓を有する少なくとも1つのハウジングを備えることができる。分光計装置のハウジングは、分光計装置の1つ以上の他の要素を完全に又は部分的に取り囲み、及び/又は機械的なカバーを提供するように構成された要素又は要素の組み合わせを指し得る。したがって、一例として、ハウジングは、プラスチック材料又は金属材料の少なくとも1つで作られた少なくとも1つの剛性ハウジングなど、少なくとも1つの剛性ハウジングであってよく、又はそれを含んでよい。入射窓は、ガラス、石英、サファイア、又はプラスチック材料のうちの1つ以上で作られた光学的に透明な要素などの要素、又は光がハウジングに入射することを可能にする分光計装置の開口部を指し得る。
【0071】
さらに、分光計装置は、入口窓と検出器装置との間に配置された少なくとも1つのさらなる光学素子、具体的には、光学レンズ;ミラー;反射器;絞り;回折光学素子;分散素子;光変調器;偏光フィルタ;帯域フィルタ;液晶ディスプレイ(LCD)からなる群から選択される少なくとも1つの光学素子を備えることができる。さらなる光学素子は、具体的には、入射窓から光学素子への入射光を収集及び/又は透過するように構成され得る。
【0072】
本発明のさらなる態様では、プログラムがシステムの評価ユニットによって実行されると、本明細書に記載のシステム、具体的にはシステムの評価ユニットに、例えば、上記に開示された実施形態のいずれか1つ及び/又は以下にさらに詳細に開示される実施形態のいずれか1つによるような、本発明による分光計装置を校正するための方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムが開示される。
【0073】
本発明のさらなる態様では、本明細書に記載のシステムの評価ユニットによって実行されると、システム、具体的にはシステムの評価ユニットに、上記で開示した実施形態のいずれか1つ及び/又は以下でさらに詳細に開示する実施形態のいずれか1つによるような、本発明による分光計装置を校正するための方法を実行させる命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体が開示される。
【0074】
本明細書で使用される、「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、具体的には、コンピュータ実行可能命令をその上に保存したハードウェア記憶媒体などの非一時的なデータ記憶手段を指し得る。コンピュータ可読記憶媒体は、具体的には、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び/又は読取専用メモリ(ROM)などの記憶媒体であってよく、又はこれを備えていてよい。
【0075】
本発明による方法及び装置は、既知の方法及び装置よりも多くの利点を提供することができる。具体的には、本発明による方法及び装置は、分光計装置を校正する目的で、広帯域光源、例えば白熱光源、電球、黒体放射体及び/又は細い電気フィラメントを使用することを含むことができる。これらの広帯域光源は、一般的に低コストで容易に入手可能である。広帯域光源は、分光計装置自体の一部であってよい。さらに、本発明による方法及び装置は、分光計装置を校正する目的で、特定の狭いスペクトル範囲においてのみ広帯域光源からの光を透過させるように具体的に構成され得る一組の狭帯域通過フィルタを使用することを含むことができる。狭帯域通過フィルタのそれぞれは、異なるスペクトル範囲をカバーすることができる。各狭帯域通過フィルタのスペクトル範囲は、例えば、校正された標準分光計装置を用いて得られたスペクトル高分解能データに基づいて、予め決定されてよい。複数の狭帯域通過フィルタは、既知のスペクトル放射照度を有する広帯域光源から狭い波長帯域の光を生成するために、1つ以上の減光フィルタ(neutral density filter)を組み合わせることができる。続けて、検出器装置は、複数の狭帯域通過フィルタから生じる信号を決定することができる。続けて、狭帯域通過フィルタの所定の透過帯域に基づいて、分光計装置の波長校正情報の項目と迷光校正情報の項目とが、具体的には同じデータに基づいてコンピュータプログラムを用いて決定されてよい。
【0076】
さらに、分光計装置を校正するための方法は、具体的には、波長校正情報の項目を決定するための狭帯域通過フィルタを使用することと、同じデータに基づいて迷光校正情報の項目を決定するための計算方法とを含むことができる。校正は、製造者のサイトにおけるインラボ及び/又はユーザのサイトにおけるインフィールドのいずれかで実行され得る。このシステムは、具体的には、波長校正と迷光校正の両方の校正測定を最終的な分光計装置で実行できるセットアップを指し得、あるいは、後に分光計装置に組み込まれる検出器装置での校正測定を可能にするセットアップを指し得る。追加の方法ステップは、ピクセル位置に依存する青方偏移補正を決定及び/又は補正することを含むことができる。場合によっては、分光計装置の環境動作条件に応じて検出器装置の温度を変更する必要があるため、すべての校正は検出器装置の異なる温度で実行されることができる。このように、波長校正情報の項目と迷光校正情報の項目は、検出器の温度に依存する場合があり、異なる温度で複数の校正を実行する場合に考慮されることができる。
【0077】
既知の方法及び装置とは対照的に、本発明による方法及び装置は、単一の測定サイクルから、堅牢で信頼性の高いコンポーネントを使用することによって、校正情報の両方の項目、すなわち波長校正情報の項目及び迷光校正情報の項目を決定することを可能にし得る。分光計装置の校正は、2つのコンポーネント:広帯域光源と、狭帯域通過フィルタ、具体的には、複数の所定の透過帯域を有する複数の狭帯域通過フィルタのみを必要とし得る。分光計装置を校正する方法は、単純で信頼性の高い工場校正だけでなく、単純で信頼性の高い現場校正を可能にすることができる。したがって、分光計装置のユーザは、製造業者を介することなく、分光計装置を校正又は再校正することができる。
【0078】
具体的には、既知の方法とは対照的に、本発明による方法は、アルゴンペン光線ランプなど、原子ゲージ標準器も、モノクロメータ又はレーザーなどの狭帯域光源も必要としない。したがって、分光計装置の校正方法は、容易にアクセスできるコンポーネントを使用して適用されることができ、低コストかつ低労力で校正を行うことができる。さらに、分光計装置を現場で校正又は再校正することができ、これは分光法の大量適用にとって特に重要である。さらに、迷光校正ステップは、ノイズフィルタリング技術を使用することによって、迷光効果を校正する既知の方法を改善することができる。
【0079】
分光計装置は、透過モードで操作されてよく、具体的には、サンプル界面を照射するための光源を使用し、サンプルから相対透過信号を得るための少なくとも1つのさらなる光学素子を使用する。この構成では、分光計を含むシステムは透過モードで動作させられ、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタは、校正を実行するための複数の検出器信号を得るためにサンプルを置き換えてよい。波長校正情報の項目及び迷光校正情報の項目を決定するための複数の検出器信号は、一度に収集されてよい。この単純な構成では、分光計装置を校正するための方法は、さらなる後処理又は追加情報なしで使用されることができる。
【0080】
あるいは、分光計装置は反射モードで動作させてよい。分光計装置を校正する方法を実行するために、分光計装置は最終的に組み立てられなくてよい。分光計装置を校正するためのシステムは、分光計装置の検出器装置のみを備えていてよい。本方法は、検出器装置上の生の信号分布を決定するために、反射モードで動作している分光計装置の基準サンプルの基準測定を含むことができる。本方法を実行するために、システムは、修正されたさらなる光学素子を含んでいてよい。システムの配置は、分光計装置の光路と比較して変化しないが、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタは、光路に挿入されてよい。少なくとも1つの狭帯域通過フィルタは、交換可能なスロットのシステム内で自動的に変更されてよい。代替的又は追加的に、他の透過基準サンプルを交換可能なスロットに挿入してよい。交換可能なスロットにサンプル又はフィルタを挿入しないことによって、本来の分光計装置構成を使用した測定も可能である。
【0081】
代替的又は追加的に、システムは、分光計装置を反射モードで動作させ、組み立てられた検出器装置を備えることができる。この例では、分光計装置の広帯域光源は使用されない場合がある。広帯域光源は常時オフにされ、外部の広帯域光源を使用して分光計装置を校正する方法が実行されることができる。この広帯域光源からの光は、波長校正情報の項目及び迷光校正情報の項目を決定するために必要な少なくとも1つの狭帯域通過フィルタを用いてフィルタリングされてよい。他の基準サンプルなどを測定するように構成されてよい。
【0082】
要約すると、さらなる可能な実施形態を排除することなく、以下の実施形態が想定され得る:
実施形態1: 分光計装置を校正する方法であって、前記方法は以下のステップ:
a)前記分光計装置の少なくとも1つの検出器装置を、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタを通して、具体的には複数の所定の透過帯域を有する複数の狭帯域通過フィルタを通して、少なくとも1つの広帯域光源で照射するステップと;
b)前記検出器装置を使用することによって、ステップa)の照射に応じた複数の検出器信号を生成するステップであって、前記検出器装置は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学素子を備え、複数の感光素子をさらに備え、各感光素子は、構成波長成分のうちの少なくとも1つの部分を受け取り、それぞれの構成波長成分のうちの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光素子の照射に応じて、それぞれの検出器信号を生成するように構成されている、ステップと;
c)波長校正情報の少なくとも1つの項目を決定するステップであって、前記波長校正情報の項目は、入射光の波長、具体的には波長帯域をこれらの波長に応答する対応する感光素子に割り当て、具体的には前記感光素子の少なくとも1つを所定の透過帯域のそれぞれに割り当て、より具体的には前記感光素子の1つ以上のピクセル位置及び/又は識別番号をそれぞれの所定の透過帯域に、具体的には所定の透過帯域のそれぞれに割り当てる、少なくとも1つの割り当てを含む、ステップと;
d)複数の検出器信号に基づいて、少なくとも1つの迷光校正情報の項目を決定するステップであって、前記迷光校正情報の項目は、少なくとも1つの信号分布関数、具体的には少なくとも1つの信号分布行列を含み、前記信号分布関数は、特定の波長を有する入射光に対する前記感光素子の応答の分布を記述する、ステップと、
を含む、方法。
【0083】
実施形態2: 前記広帯域光源が、白熱ランプ;黒体放射体;電気フィラメント;LED;SLD;MEMS黒体放射体のうちの少なくとも1つを備える、先行する実施形態に記載の方法。
【0084】
実施形態3: 前記狭帯域通過フィルタの透過帯域のスペクトル帯域幅が、前記分光計装置のスペクトル分解能よりも低い、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施形態4: 前記複数の検出器信号は、前記狭帯域通過フィルタ、具体的には前記複数の狭帯域通過フィルタのスペクトルに対応し、前記スペクトルは、前記所定の透過帯域の波長位置を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施形態5: ステップc)が:
c.1)前記複数の検出器信号において強度ピークを生成する前記複数の感光素子のピクセル位置及び識別番号の少なくとも1つを決定するステップと;
c.2)前記狭帯域通過フィルタの所定の透過帯域の少なくとも1つを複数の強度ピークに割り当てるステップと;
c.3)波長校正関数を決定するステップであって、前記波長校正関数は、前記感光素子の前記ピクセル位置及び前記識別番号の少なくとも1つを波長位置に割り当てる、ステップ、
の少なくとも1つを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態6: 前記波長校正関数が次数Nの多項式関数を含み、複数の少なくともN+1個の複数の強度ピークが使用される、先行する実施形態に記載の方法。
【0088】
実施形態7: ステップd)が:
d.1)オフセット補正とデジタルフィルタの少なくとも1つ、具体的にはノイズフィルタリング技術を複数の検出器信号に適用することにより、前記複数の検出器信号を処理するステップと;
d.2)複数の構成波長成分について、具体的には各構成波長成分について、前記検出器装置によって含まれる各感光素子における照射強度を得るために、複数の処理された検出器信号を補間するステップと;
d.3)補間された検出信号を使用することによって、具体的には信号分布行列に記録された複数の信号分布関数を生成するステップ、
の少なくとも1つを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態8: 前記方法は、前記波長校正情報の項目及び前記迷光校正情報の項目の少なくとも1つを、前記分光計装置を使用することによって決定された測定スペクトルに適用することをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
実施形態9: 前記迷光校正情報の項目を適用することは、前記信号分布行列の逆行列を前記測定スペクトルに適用することを含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0091】
実施形態10: 前記方法は、具体的には、ステップa)の前に、校正された分光計装置を使用することによって、前記狭帯域通過フィルタ、具体的には前記複数の狭帯域通過フィルタの透過帯域を決定することをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
実施形態11: 前記方法は、青方偏移補正を決定することをさらに含み、前記青方偏移補正のために、複数の追加の検出器信号は、前記分光計装置に前記検出器装置を組み込んだ状態で生成される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態12: 前記青方偏移補正は、前記複数の追加の検出器信号を使用してステップc)を繰り返すことによって決定される波長校正情報の少なくとも1つのさらなる項目を含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0094】
実施形態13: 前記方法は、前記検出装置の少なくとも1つの温度を決定することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
実施形態14: 前記方法は、複数の異なる温度について前記波長校正情報の項目と前記迷光校正情報の項目の少なくとも1つを決定することを含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0096】
実施形態15: 前記波長校正情報の項目及び前記迷光校正情報の項目は、同じ複数の検出器信号を使用して決定される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態16: 前記方法は、ユーザサイト及び製造者サイトの少なくとも1つにおいて実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
実施形態17: 前記方法は、取り外された検出器装置と組み込まれた検出器装置の少なくとも1つを使用して実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施形態18: 前記方法は、前記分光計装置に組み込まれた前記少なくとも1つの検出器装置を用いて基準サンプルの複数の検出器信号を決定することにより、少なくとも1つの補正係数を決定することをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施形態19: 前記方法はコンピュータ実装される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0101】
実施形態20: システムは、少なくとも1つの広帯域光源と、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ、具体的には複数の所定の透過帯域を有する複数の狭帯域通過フィルタとを備え、前記システムは、分光計装置の少なくとも1つの検出器装置をさらに備え、前記検出器装置は、前記検出器装置の照射に応じて複数の検出器信号を決定するように構成され、前記検出器装置は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学素子を備え、複数の感光素子をさらに備え、各感光素子は、構成波長成分の少なくとも一部分を受け取り、前記それぞれの構成波長成分の少なくとも一部分によるそれぞれの感光素子の照射に応じて、それぞれの検出器信号を生成するように構成され、前記システムは、分光計装置を校正するための方法を参照する先行する実施形態のいずれか1つに従って分光計装置を校正するための方法を実行するために構成される、分光計装置を校正するためのシステム。
【0102】
実施形態21: 前記光学素子は、少なくとも1つの波長選択素子を備える、先行する実施形態に記載のシステム。
【0103】
実施形態22: 前記波長選択素子は、プリズム;回折格子;線形可変フィルタ;光フィルタ、特に狭帯域通過フィルタ;干渉計、からなる群から選択される、先行する実施形態に記載のシステム。
【0104】
実施形態23: 前記検出装置は、線形アレイに配置された前記複数の感光素子を備え、前記感光素子のアレイは、10~1000の数、具体的には100~500の数、具体的には200~300の数、より具体的には256の数の感光素子を備える、先行する3つの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0105】
実施形態24: 各感光素子は、ピクセル化された無機カメラ素子、具体的にはピクセル化された無機カメラチップ、より具体的にはCCDチップ又はCMOSチップ;モノクロカメラ要素、具体的にはモノクロカメラチップ;少なくとも1つの光導電体、具体的には無機光導電体、より具体的にはPbS、PbSe、Ge、InGaAs、拡張InGaAs、InSb又はHgCdTeからなる群から選択される、先行する4つの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0106】
実施形態25: 各感光素子は、760nm~1000μmの波長範囲、具体的には、760nm~15μmの波長範囲、より具体的には、1μm~5μmの波長範囲、より具体的には、1μm~3μmの波長範囲の電磁放射線に対して感度を有する、先行する5つの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0107】
実施形態26: 前記システムは、少なくとも1つの評価ユニットを備え、前記評価ユニットは、1つ以上のプロセッサを備え、前記評価ユニットは、分光計装置を校正するための方法を参照する先行する実施形態のいずれか1つに従って分光計装置を校正するための方法を実行するために構成される、先行する6つの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0108】
実施形態27: 前記システムは、少なくとも1つの検出器装置を備える少なくとも1つの分光計装置、具体的にはハンドヘルド分光計装置を備える、先行する7つの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0109】
実施形態28: 前記分光計装置は、少なくとも1つの広帯域光源を備える、先行する実施形態に記載のシステム。
【0110】
実施形態29: 前記分光計装置は、少なくとも1つの光学的に透明な入口窓を有する少なくとも1つのハウジングを備える、先行する2つの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0111】
実施形態30: 前記分光計装置は、入口窓と前記検出器装置との間に配置された少なくとも1つのさらなる光学素子、具体的には、光学レンズ;ミラー;反射器;絞り;回折光学素子;分散素子;光変調器;偏光フィルタ;帯域フィルタ;液晶ディスプレイ(LCD)からなる群から選択される少なくとも1つの光学素子を備える、先行する実施形態に記載のシステム。
【0112】
実施形態31: システムを参照する先行する実施形態のいずれか1つに記載のシステムの評価ユニットによってプログラムが実行されるとき、システム、具体的にはシステムの評価ユニットに、分光計装置を校正するための方法を参照する先行する実施形態のいずれか1つに従って分光計装置を校正するための方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【0113】
実施形態32: システムを参照する先行する実施形態のいずれか1つに記載のシステムの評価ユニットによって実行されるとき、システム、具体的にはシステムの評価ユニットに、分光計装置を校正するための方法を参照する先行する実施形態のいずれか1つに従って分光計装置を校正するための方法を実行させる命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体。
【図面の簡単な説明】
【0114】
さらなるオプションの特徴及び実施形態は、好ましくは従属請求項と併せて、以降の実施形態の説明でより詳細に開示される。ここで、当業者が理解するように、それぞれのオプションの特徴は、独立した方法で実現されることも、任意の実行可能な組み合わせで実現されることもできる。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって制限されるものではない。実施形態は、図に概略的に示されている。そこでは、これらの図における同一の参照番号は、同一の要素又は機能的に同等の要素を指す。
【
図1】分光計装置を校正するためのシステムの実施形態を概略図で示す図である。
【
図2】分光計装置を校正するためのシステムの実施形態を概略図で示す図である。
【
図3】分光計装置を校正するためのシステムの実施形態を概略図で示す図である。
【
図4】分光計装置を校正する方法の実施形態のフローチャートを示す図である。
【
図5】分光計装置を校正する方法の実施形態のフローチャートを示す図である。
【
図7】
図2によるシステムを使用することによって分光計装置を校正する方法の一実施形態のフローチャートを示す図である。
【
図8】
図3によるシステムを使用することによって分光計装置を校正する方法の一実施形態のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
実施形態の詳細な説明
図1から
図3は、分光計装置112を校正するためのシステム110の例示的な実施形態を概略図で示す。以下では、
図1から
図3を組み合わせて説明する。システム110は、少なくとも1つの広帯域光源114と、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ116、具体的には複数の所定の透過帯域を有する複数の狭帯域通過フィルタ116と、分光計装置112の少なくとも1つの検出器装置118とを備える。
【0116】
システム110は、一例として、分光計装置112を備え得る。
図1に示すシステム110の例示的な実施形態は、検出器装置118を備え、透過モードで作動する分光計装置112を備えることができる。
図3に示すシステム110の例示的な実施形態は、検出器装置118を備え、反射モードで作動する分光計装置112を備えることができる。しかしながら、代替的に、
図2に示すシステム110の例示的な実施形態は、分光計装置112から取り外された検出器装置118のみを備えることができる。
【0117】
検出器装置118は、検出器装置118の照射に応じて複数の検出器信号を決定するように構成されている。検出器装置118は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学素子120を備え、さらに複数の感光素子122を備える。各感光素子(図示せず)は、構成波長成分の少なくとも一部分を受け取り、それぞれの構成波長成分の少なくとも一部によるそれぞれの感光素子の照射に応じてそれぞれの検出器信号を生成するように構成されている。
【0118】
光学素子120は、少なくとも1つの波長選択素子124を備え得る。波長選択素子124は、プリズム;回折格子;線形可変フィルタ;光フィルタ、特に狭帯域通過フィルタ;干渉計からなる群から選択され得る。
【0119】
図1及び
図3に示すように、分光計装置112は、少なくとも1つの光学的に透明な入口窓128を有する少なくとも1つのハウジング126を備えることができる。分光計装置112のハウジング126は、分光計装置112の1つ以上の他の要素を完全に又は部分的に取り囲み、及び/又は機械的なカバーを提供するように構成された要素又は要素の組み合わせを指し得る。したがって、一例として、ハウジング126は、プラスチック材料又は金属材料のうちの少なくとも1つで作られた少なくとも1つの剛性ハウジングなど、少なくとも1つの剛性ハウジングであるか、又はそれらを備え得る。入口窓128は、ガラス、石英、サファイア又はプラスチック材料のうちの1つ以上で作られた光学的に透明な要素などの要素、又は光がハウジング126に入射することを可能にする分光計装置112の開口部を指し得る。
【0120】
さらに、分光計装置112は、入口窓128と検出器装置118との間に配置された少なくとも1つのさらなる光学素子130、具体的には、光学レンズ;ミラー;反射器;絞り;回折光学素子;分散素子;光変調器;偏光フィルタ;帯域フィルタ;液晶ディスプレイ(LCD)からなる群から選択される少なくとも1つの光学素子を備えることができる。さらなる光学素子130は、具体的には、入口窓128からの入射光を光学素子120に集め及び/又は透過させるように構成され得る。
【0121】
広帯域光源114は、分光計装置112に含まれていてよく、代替的又は追加的に、外部の広帯域光源であってよい。広帯域光源114は、白熱ランプ;黒体放射体;電気フィラメント;LED;SLD;MEMS黒体放射体のうちの少なくとも1つを備えることができる。
図1~
図3に示すように、広帯域光源114は、狭帯域通過フィルタ116を介して、具体的には複数の狭帯域通過フィルタ116を介して検出器装置118を照射するようにシステム110に配置されることができる。
【0122】
図2及び
図3の例示的な実施形態からわかるように、広帯域光源114を備える分光計装置112及び/又はシステム110は、広帯域光源114を駆動するための少なくとも1つの電子駆動装置132と、広帯域光源114から基準サンプル136のサンプル界面134に光を収集及び/又は透過するための少なくとも1つのさらなる光学素子130とをさらに備えることができる。
【0123】
システム110が
図1及び
図3に示すような分光計装置112を備える場合、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ116、具体的には複数の狭帯域通過フィルタ116は、広帯域光源114と分光計装置112、具体的には入口窓128との間に配置されてよい。この例では、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ116、具体的には複数の狭帯域通過フィルタ116は、分析対象サンプル138に置き換えることができる。代替的に、しかしながら、システム110が、
図2に示されるような取り外された検出器装置118のみを備える場合、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ116、具体的には複数の狭帯域通過フィルタ116は、さらなる光学素子130、具体的には、基準サンプル、サンプルなし、及び/又は少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ116などの交換可能なサンプルを挿入するためのスロット140内によって、置換されてよい。
【0124】
システム110は、
図4、
図5、
図7及び
図8に記載される実施形態のいずれか1つに従って、及び/又は本明細書に開示される他の実施形態に従ってなど、本発明による分光計装置112を校正するための方法を実行するように構成される。具体的には、システム110は、少なくとも1つの評価ユニット142を備え得る。評価ユニット142は、具体的には、1つ以上のプロセッサ144を備え得る。評価ユニット142は、
図4、
図5、
図7及び
図8に記載される実施形態のいずれか1つに従って、及び/又は本明細書に開示される他の実施形態に従ってなど、本発明による分光計装置112を校正するための方法を実行するように構成される。評価ユニット142はさらに、光学データ、例えば測定された光学データなどのデータを、有線インターフェース及び/又は無線インターフェースを介して、コンピュータ装置146に送信するように構成され得る。
【0125】
図4は、分光計装置112を校正するための方法の第1の例示的な実施形態のフローチャートを示す。本方法は、一例として、所定の順序で実施され得る以下のステップを含む。しかし、異なる順序も可能であることに留意されたい。さらに、1つ以上の方法ステップを1回又は繰り返し実行することも可能である。さらに、2つ以上の方法ステップを同時に又は適宜に重複して実施することが可能である。本方法は、列挙されていないさらなる方法ステップを含んでいてよい。
【0126】
本方法は以下のステップ:
a) (参照番号148で示される)分光計装置112の少なくとも1つの検出器装置118を、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ116を通して、具体的には複数の所定の透過帯域を有する複数の狭帯域通過フィルタ116を通して、少なくとも1つの広帯域光源114で照射するステップと;
b) (参照番号150で示される)検出器装置118を使用することによって、ステップa)の照射に応じた複数の検出器信号を生成するステップであって、検出器装置118は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学素子120を備え、複数の感光素子122をさらに備え、各感光素子は、構成波長成分のうちの少なくとも1つの部分を受け取り、それぞれの構成波長成分のうちの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光素子の照射に応じて、それぞれの検出器信号を生成するように構成されている、ステップと;
c) (参照番号152で示される)波長校正情報の少なくとも1つの項目を決定するステップであって、波長校正情報の項目は、入射光の波長、具体的には波長帯域をこれらの波長に応答する対応する感光素子に割り当て、具体的には感光素子の少なくとも1つを所定の透過帯域のそれぞれに割り当て、より具体的には感光素子の1つ以上のピクセル位置及び/又は識別番号をそれぞれの所定の透過帯域に、具体的には所定の透過帯域のそれぞれに割り当てる、少なくとも1つの割り当てを含む、ステップと;
d) (参照番号154で示される)複数の検出器信号に基づいて、少なくとも1つの迷光校正情報の項目を決定するステップであって、前記迷光校正情報の項目は、少なくとも1つの信号分布関数、具体的には少なくとも1つの信号分布行列を含み、前記信号分布関数は、特定の波長を有する入射光に対する前記感光素子の応答の分布を記述する、ステップと、
を含む。
【0127】
方法のさらなる可能な実施形態については、
図5、7及び8を参照されたい。
【0128】
図5では、分光計装置112を校正するための方法の第2の例示的な実施形態のフローチャートが示されている。
図5に示されるように、本方法は、具体的にはステップa)の前に、校正された分光計装置112を使用することによって、狭帯域通過フィルタ116、具体的には複数の狭帯域通過フィルタ116の透過帯域を決定すること(参照番号156で示される)をさらに含んでよい。例えば、狭帯域通過フィルタ116の透過帯域を決定することは、校正された分光計装置112を使用して狭帯域通過フィルタ116のスペクトルを決定すること(参照番号158で示される)と、狭帯域通過フィルタ116の少なくとも1つのスペクトル範囲を決定すること(参照番号160で示される)とを含んでよい。
【0129】
この方法は、ステップa)(参照番号148で示される)、すなわち、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ116を介して少なくとも1つの広帯域光源114で分光計装置112の少なくとも1つの検出器装置118を照射するステップと、ステップb)(参照番号150で示される)、すなわち、検出器装置118を使用することによって、ステップa)の照射に応じた複数の検出器信号を生成するステップとをさらに含む。
【0130】
図5に示すように、この方法、具体的にはステップc)(参照番号152で示される)は、さらに:
c.1)複数の検出器信号において強度ピークを生成する前記複数の感光素子のピクセル位置及び識別番号の少なくとも1つを決定するステップと;
c.2)狭帯域通過フィルタの所定の透過帯域の少なくとも1つを複数の強度ピークに割り当てるステップと;
c.3)波長校正関数を決定するステップであって、波長校正関数は、感光素子のピクセル位置及び識別番号の少なくとも1つを波長位置に割り当てる、ステップ、
の少なくとも1つを含むことができる。
【0131】
具体的には、波長校正関数は、次数Nの多項式関数を含むことができ、ここで、複数の少なくともN+1強度ピークが使用され得る。多項式関数は、
【数2】
であってもよく、又はそれを含んでよく、ここでfは、ピクセル位置又は識別番号xを有する感光素子の波長又は波長帯域を表し、ここでa
nは、例えば回帰分析を使用することによって決定される多項式係数を示す。例えば、波長校正関数は、次数N=3の多項式関数を含んでよい。
【0132】
上記で概説したように、本方法は、ステップd)(参照番号154で示される)、すなわち、複数の検出器信号に基づいて迷光校正情報の少なくとも1つの項目を決定することをさらに含む。
図5からわかるように、本方法は、波長校正情報の項目及び迷光校正情報の項目の少なくとも1つを、分光計装置112を使用することによって決定された測定スペクトルに適用するステップ(参照番号168で示される)をさらに含むことができる。測定スペクトルは、分光計装置112を使用することによって決定された分析対象サンプル138のスペクトルを指し得る。具体的には、迷光校正情報の項目を適用することは、信号分布行列の逆行列を測定スペクトルに適用することを含むことができる。
【0133】
図6A~
図6Dでは、ステップd)で実行される迷光校正情報の項目を決定するさまざまなサブステップに具体的に対応する迷光校正の図が示されている。
図6Aでは、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ116を介した広帯域光源114で検出器装置118の照射に応じて、検出器装置118を使用することによって生成される複数の検出器信号170を見ることができる。具体的には、
図6Aの図において、複数の検出器信号170の信号強度172が、ピクセル位置174の関数として示されている。この例では、複数の狭帯域通過フィルタ116は、6つの狭帯域通過フィルタ116を備え得る。しかしながら、他の数の狭帯域通過フィルタ116も可能である。狭帯域通過フィルタ116の1つに対する複数の検出器信号170は、狭帯域通過フィルタ116の線広がり関数(LSF)と呼ばれることもある。
図6の例では、1456nmの透過帯域を有する狭帯域通過フィルタ116に対する(参照番号176で示される)、1664nmの透過帯域を有する狭帯域通過フィルタ116に対する(参照番号178で示される)、1840nmの透過帯域を有する狭帯域通過フィルタ116に対する(参照番号180で示される)、2057nmの透過帯域を有する狭帯域通過フィルタ116に対する(参照番号182で示される)、2241nmの透過帯域を有する狭帯域通過フィルタ116に対する(参照番号184で示される)、及び2446nmの透過帯域を有する狭帯域通過フィルタ116に対する(参照番号186で示される)、複数の検出器信号170が示される。狭帯域通過フィルタ116の透過帯域のスペクトル帯域幅は、好ましくは、分光計装置112のスペクトル分解能よりも低くてもよい。
図6Aに示されるような複数の検出器信号170は、波長校正情報の項目及び/又は迷光校正情報の項目を決定するための入力データとして使用され得る。
【0134】
本方法、具体的にはステップd)は、ステップd.1)、すなわち、オフセット補正及びデジタルフィルタのうちの少なくとも1つを、具体的にはノイズフィルタリング技術を、複数の検出器信号170に適用することによって複数の検出器信号170を処理することをさらに含んでよい。
図6Bにおいて、図は、処理された複数の検出器信号188を示し、具体的には、
図6Aに示されるように、オフセット補正及びデジタルフィルタ、例えばサビツキー-ゴレイフィルタ(Savitzky-Golay filter)を複数の検出器信号170に適用した後である。具体的には、
図6Bの図において、処理された複数の検出器信号188の信号強度172は、ピクセル位置174の関数として示されている。したがって、方法ステップd.1)は、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ116の線広がり関数を処理することを含んでよい。
【0135】
本方法、具体的にはステップd)は、ステップd.2)、すなわち、複数の構成波長成分について、具体的には構成波長成分の各々について、検出器装置118によって含まれる各感光素子における照射強度を得るために、複数の処理された検出器信号188を補間することをさらに含み得る。
図6Cは、補間された検出器信号190、具体的には、ピクセル位置174の関数としての補間された検出器信号190の強度172を示す。したがって、方法ステップd.2)は、スペクトル形状の補間及び隣接する透過ピークの線形補間を使用するピーク振幅の補間を使用して、任意のピクセル位置174におけるスペクトル応答を決定することを含み得る。補間された検出器信号190の値は、いわゆる信号分布関数(SDF)行列に格納されることができる。
【0136】
したがって、本方法、具体的にはステップd)は、ステップd.3)、すなわち、補間された検出器信号190を使用することによって、複数の信号分布関数を生成すること、具体的には、信号分布行列に記録されることをさらに含んでよい。複数の信号分布関数、具体的には信号分布行列は、Y.Zong, S. W. Brown, B. C. Johnson, K. R. Lykke and Y. Ohno:"アレイ分光放射計のための簡易スペクトル迷光補正法(Simple spectral stray light correction method for array spectroradiometers)"、Applied Optics、第45巻、第6号、2006年にさらに詳細に説明されているように、信号分布関数、具体的には信号分布行列の逆数を測定スペクトルに適用することによって、迷光について分光計装置112の測定スペクトルを補正するために使用され得る。迷光校正情報の項目を測定スペクトルに適用した場合の効果を
図6Dに示す。
図6Dでは、PETサンプルの補正されていない測定スペクトル192と、迷光校正情報の項目を補正されていない測定スペクトル192に適用することによって得られる対応する補正された測定スペクトル194が示されている。
図6Dからわかるように、迷光校正情報を適用することにより、スペクトル分解能が向上し、迷光の影響を低減することができる。
【0137】
図7では、
図2によるシステム110を使用することによって分光計装置112を校正する方法の一実施形態のフローチャートが示されている。
図7に示される例示的な実施形態では、方法は、検出器装置118が分光計装置112から取り外され、
図2によるシステム110に配置された状態で、方法ステップa)~d)を実行することを含んでよい。したがって、本方法は、第1のステップ(参照番号196で示される)として、検出器装置118をシステム110に挿入するステップを含んでよい。この第1の方法ステップの後に、a)(参照番号148で示される)、すなわち、少なくとも1つの狭帯域通過フィルタ116を介して少なくとも1つの広帯域光源114で分光計装置112の少なくとも1つの検出器装置118を照射するステップと、b)(参照番号150で示される)、すなわち、検出器装置118を使用することによって、ステップa)の照射に応じた複数の検出器信号170を生成するステップとが続いてよい。さらにこの例示的な実施形態では、方法ステップc)(参照番号152で示される)、すなわち波長校正情報の少なくとも1つの項目を決定すること、及びd)(参照番号154で示される)、すなわち迷光校正情報の少なくとも1つの項目を決定することが、引き続いて実行されてよい。
【0138】
図7に示すように、本方法は、検出器装置118を分光計装置112に組み立てること(参照番号198で示される)をさらに含んでよい。さらに、本方法は、波長校正の項目及び迷光校正情報の項目の少なくとも1つを、分光計装置112を使用することによって決定された測定スペクトルに適用すること(参照番号168で示される)を含んでよい。続いて、本方法は、校正された検出器装置118を用いて、少なくとも1つの基準サンプル136の複数の検出器信号を決定すること(参照番号200で示される)を含んでよい。同じ基準サンプル136を、後続の方法ステップに使用することができる。本方法は、分光計装置112に組み込まれた検出器装置118を用いて基準サンプル136の複数の検出器信号を決定すること(参照番号204で示される)により、少なくとも1つの補正係数を決定すること(参照番号202で示される)をさらに含んでよい。一例として、補正係数は、基準サンプル136の複数の検出器信号を基準サンプル136の既知の検出器信号と比較することによって決定されてよい。補正係数は、後続の校正測定に適用されてよい(参照番号206で示される)。補正係数により、迷光校正情報の項目の精度を向上させることができる。
【0139】
図8は、
図3によるシステム110を使用することによって分光計装置112を校正する方法の実施形態のフローチャートを示す。
図8の例示的な実施形態は、
図7に示される例示的な実施形態に広く対応し得る。したがって、
図8の説明については、
図7の説明を参照されたい。
【0140】
さらに、
図8に示されるような方法は、青方偏移補正を決定すること(参照番号208で示される)を含んでよく、ここで、青方偏移補正のために、分光計装置112に組み込まれた検出器装置118を有する複数の追加検出器信号が生成され得る。青方偏移補正は、複数の追加の検出器信号を使用してステップc)を繰り返すことによって決定される波長校正情報の少なくとも1つのさらなる項目を含んでよい(参照番号210で示される)。青方偏移補正は、外部広帯域光源114による検出器装置118の照射の角度効果を考慮することによって、特に反射モードで動作する分光計装置112の波長校正を改善することができる。
【符号の説明】
【0141】
110 システム
112 分光計装置
114 広帯域光源
116 狭帯域通過フィルタ
118 検出器装置
120 光学素子
122 複数の感光素子
124 波長選択素子
126 ハウジング
128 入口窓
130 さらなる光学素子
132 電子駆動装置
134 サンプル界面
136 基準サンプル
138 分析対象サンプル
140 スロット
142 評価ユニット
144 プロセッサ
146 コンピュータ装置
148 少なくとも1つの検出器装置を照射すること
150 複数の検出器信号を生成すること
152 波長校正情報の少なくとも1つの項目を決定すること
154 少なくとも1つの迷光校正情報を決定すること
156 狭帯域通過フィルタの透過帯域を決定すること
158 狭帯域通過フィルタのスペクトルを決定すること
160 狭帯域通過フィルタの少なくとも1つのスペクトル範囲を決定すること
162 複数の感光素子のピクセル位置及び識別番号の少なくとも1つを決定すること
164狭帯域通過フィルタの所定の透過帯域の少なくとも1つを複数の強度ピークに割り当てること
166 波長校正関数を決定すること
168 波長校正情報の項目と迷光校正情報の項目の少なくとも1つを測定スペクトルに適用すること
170 複数の検出器信号
172 信号強度
174 ピクセル位置
176 1456nmの透過帯域
178 1664nmの透過帯域
180 1840nmの透過帯域
182 2057nmの透過帯域
184 2241nmの透過帯域
186 2446nmの透過帯域
188 複数の処理された検出器信号
190 補間された検出器信号
192 補正されていない測定スペクトル
194 補間された測定スペクトル
196 検出器装置を挿入すること
198 分光計装置に検出器装置を組み込むこと
200 校正された検出器装置を用いて、基準サンプルの複数の検出器信号を決定すること
202 少なくとも1つの補正係数を決定すること
204 分光計装置に組み込まれた検出器装置を用いて、基準サンプルの複数の検出器信号を決定すること
206 補正係数を適用すること
208 青方偏移補正を決定すること
210 波長校正情報のさらなる項目を決定すること
【国際調査報告】