IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワングローブ ホールディングス リミテッドの特許一覧

特表2024-533532コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用
<>
  • 特表-コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用 図1
  • 特表-コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用 図2
  • 特表-コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用 図3
  • 特表-コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用 図4
  • 特表-コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用 図5
  • 特表-コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用 図6
  • 特表-コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用 図7
  • 特表-コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用 図8
  • 特表-コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用 図9
  • 特表-コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】コロナウイルス感染症を処置するための新規の併用薬物、医薬組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/426 20060101AFI20240905BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240905BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240905BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/7056 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K31/426
A61P31/14
A61P43/00 121
A61K31/122
A61K9/12
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/20
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/24
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/22
A61P29/00
A61K31/7056
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516628
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2022119159
(87)【国際公開番号】W WO2023040990
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111082439.X
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111466166.9
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523313458
【氏名又は名称】ワングローブ ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, チャン ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC04
4C076DD41
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD55
4C076DD63
4C076DD66
4C076EE06
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE38
4C076EE49
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF15
4C076FF16
4C076FF43
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC82
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZB33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB27
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA43
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB11
4C206ZB33
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、ニタゾキサニド、アトバコンおよび/またはリバビリンを含む新規の併用薬物または新規の医薬組成物、ならびにコロナウイルス感染症の処置または予防のためのそれらの使用、特にSARS-CoV-2およびその変異体によって引き起こされる感染症の処置または予防のための使用を提供する。本発明は、コロナウイルス感染症を処置または予防するための新規の医薬組成物および新規の併用薬物レジメンを提供し、抗原虫感染症薬物ニタゾキサニドまたはチゾキサニド、ヌクレオシド類似体リバビリンおよび/または抗寄生生物薬物アトバコンを含む医薬組成物または併用薬物、ならびにコロナウイルス感染症を阻害する、肺炎を緩和もしくは逆転させる、またはコロナウイルス感染症を予防するためのそのような医薬組成物もしくは併用薬物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つの薬物、少なくとも1つのアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩、および少なくとも1つのリバビリンまたはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを含む、併用薬物。
【請求項2】
ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つの薬物、および少なくとも1つのアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩を含む、併用薬物。
【請求項3】
少なくとも1つの抗ウイルス抗体薬物もしくは抗ウイルス抗体薬物の組み合わせ、または他の抗ウイルス薬物をさらに含む、請求項1または2に記載の併用薬物。
【請求項4】
コロナウイルス感染症またはそれに関連する疾患もしくは状態を処置または予防するための医薬組成物の調製における請求項1~3のいずれか一項に記載の併用薬物の使用。
【請求項5】
前記コロナウイルス感染症またはそれに関連する疾患もしくは状態が、以下の症状:咳、食欲不振、喘息、呼吸困難、発熱、全身倦怠感、めまい、吐き気、嗅覚の減退または喪失、および肺炎のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2またはその変異体株、SARS、MERS、229E、NL63、OC43および/またはHKU1である、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2またはその変異体株であり、関連する前記疾患または状態が、SARS-CoV-2またはその変異体株の感染によって引き起こされる肺炎(COVID-19)である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはそれに関連する疾患もしくは状態を処置または予防するための方法であって、前記方法は、それを必要とする対象に、ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される治療有効量の少なくとも1つの薬物、治療有効量の少なくとも1つのアトバコンもしくはその薬学的に許容され得る塩、および治療有効量の少なくとも1つのリバビリンまたはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを投与することを含み、前記ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩、アトバコンもしくはその薬学的に許容され得る塩およびリバビリンまたはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルは、それを必要とする対象に同時にまたは逐次的に投与され得る、方法。
【請求項9】
コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはそれに関連する疾患もしくは状態を処置または予防するための方法であって、前記方法は、それを必要とする対象に、ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される治療有効量の少なくとも1つの薬物、および治療有効量の少なくとも1つのアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩を投与することを含み、前記ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩およびアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩は、それを必要とする対象に同時にまたは逐次的に投与され得る、方法。
【請求項10】
それを必要とする対象に、治療有効量の少なくとも1つの他の治療剤を投与することをさらに含み、前記他の治療剤が、抗ウイルス抗体薬物もしくは他の抗ウイルス薬物、またはコロナウイルス感染症によって引き起こされる症状に対する他の対症処置薬物である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2またはその変異体株、SARS、MERS、229E、NL63、OC43および/またはHKU1である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2またはその変異体株であり、前記関連する疾患または状態が、SARS-CoV-2またはその変異体株の感染によって引き起こされる肺炎(COVID-19)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはそれに関連する疾患もしくは状態の前記処置または予防が、以下の症状:咳、食欲不振、喘息、呼吸困難、発熱、全身倦怠感、めまい、吐き気、嗅覚の減退または喪失、および肺炎のうちの少なくとも1つを含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項14】
ニタゾキサニドが経口製剤で投与される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項15】
アトバコンが経口製剤で投与される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項16】
リバビリンが、経口製剤、吸入製剤または注射製剤で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンを、それを必要とする対象に投与することを含み、ニタゾキサニドは、それを必要とする対象に、約100mg~約3000mgの範囲の総1日用量で投与され、アトバコンは、それを必要とする対象に、約20mg~約3000mgの範囲の総1日用量で投与され、リバビリンは、それを必要とする対象に、約20mg~約2500mgの範囲の総1日用量で投与され;好ましくは、ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンはそれぞれ、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で投与され得る、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはコロナウイルス感染症に関連する疾患もしくは状態を予防するための前記方法が、化学的予防または薬物予防を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項19】
有効医薬成分と少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤とを含む医薬組成物であって、前記有効医薬成分が、a)ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つの薬物、b)少なくとも1つのアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩、およびc)少なくとも1つのリバビリンまたはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを含む、医薬組成物。
【請求項20】
前記有効医薬成分が、ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンを含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
ニタゾキサニド:アトバコン:リバビリンの重量比が約(0.1~10):(0.1~10):1である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
ニタゾキサニド:アトバコン:リバビリンの重量比が、約1.5:1.5:1、約2:2:1、約2.5:2.5:1、約3:3:1、約10:10:3、約3.5:3.5:1、約4:4:1、約4.5:4.5:1、約5:5:1、または任意の2つの比の間の任意の範囲値である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記有効医薬成分と、前記薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤とが、約(0.1~4):1の重量比である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記医薬組成物が、錠剤、カプセル剤または懸濁剤である、請求項19~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記医薬組成物が、単位製剤当たり約50mg~約1200mgのニタゾキサニド、単位製剤当たり約50mg~約1200mgのアトバコン、および単位製剤当たり約1mg~約500mgのリバビリンを含有する、請求項19~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記医薬組成物が、単位製剤当たり約60mg~約600mgのニタゾキサニド、単位製剤当たり約60mg~約600mgのアトバコン、および単位製剤当たり約10mg~約200mgのリバビリンを含有する、請求項19~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記医薬組成物が、単位製剤当たり約111mgのニタゾキサニド、単位製剤当たり約111mgのアトバコン、および単位製剤当たり約33mgのリバビリンを含有する、請求項19~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
有効医薬成分と、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤とを含む医薬組成物であって、前記有効医薬成分が、a)治療有効量のニタゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩およびb)治療有効量のアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩を含む、医薬組成物。
【請求項29】
前記有効医薬成分が、固定比のニタゾキサニドおよびアトバコンから構成される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
ニタゾキサニドおよびアトバコンの前記固定比が、約1:0.1~約1:10であるニタゾキサニド:アトバコンの重量比である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
ニタゾキサニドおよびアトバコンの前記固定比が、約1:0.1、約1:0.2、約1:0.5、約1:0.8、約1:1、約1:1.2、約1:1.5、約1:2、約1:5、約1:10、または任意の2つの比の間の任意の範囲値であるニタゾキサニド:アトバコンの重量比である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
ニタゾキサニドおよびアトバコンとの前記固定比が、約1:1であるニタゾキサニド:アトバコンの重量比である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記医薬組成物が、錠剤、カプセル剤または懸濁剤として製剤化される、請求項29~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記医薬組成物が、単位製剤当たり約50mg~1200mgのニタゾキサニド、および単位製剤当たり約50mg~1200mgのアトバコンを含有する、請求項29~33のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記医薬組成物が、単位製剤当たり約60mg~500mgのニタゾキサニド、および単位製剤当たり約100mg~500mgのアトバコンを含有する、請求項29~33のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記医薬組成物が、単位製剤当たり約165mgのニタゾキサニド、および単位製剤当たり約165mgのアトバコンを含有する、請求項29~33のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記医薬組成物が、必要とする対象に毎回1~5単位の製剤で1日当たり1~4回投与される、請求項19~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記医薬組成物が、必要とする対象に毎回2~4単位製剤で1日当たり2~4回投与される、請求項19~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記医薬組成物中の前記薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤の重量含有量が約0.1~90%w/wである、請求項19~38のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤が、希釈剤、可溶化剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、流動促進剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記医薬組成物中の前記可溶化剤の重量含有量が約0.1~3%w/wであり、前記医薬組成物中の前記希釈剤の重量含有量が約1~40%w/wであり、前記医薬組成物中の前記崩壊剤の重量含有量が約1~20%w/wであり、前記医薬組成物中の前記結合剤の重量含有量が約1~20%w/wであり、前記医薬組成物中の前記滑沢剤の重量含有量が約0.1~3%w/wであり、前記医薬組成物中の前記流動促進剤の重量含有量が約0.1~5%w/wである、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記可溶化剤が、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ポロキサマー188(ポロキサマー188、Pluronic(登録商標) F68)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標) 80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標) 20)およびジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)のうちの少なくとも1つを含み、前記希釈剤が、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム、セルロース、圧縮性糖、無水リン酸一水素カルシウム、ラクトース、ラクトース一水和物、マンニトール、デンプン、リン酸三カルシウムのうちの少なくとも1つを含み、前記崩壊剤が、カルボキシメチルデンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、微結晶性セルロース、変性コーンスターチ、ポビドン、アルファ化デンプンのうちの少なくとも1つを含み、前記結合剤が、ポビドン、コポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースおよびアルファ化デンプンのうちの少なくとも1つを含み、前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリビニルアルコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルクのうちの少なくとも1つを含み、前記流動促進剤が、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、デンプン、デンプン誘導体のうちの少なくとも1つを含む、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項43】
コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはコロナウイルス感染症に関連する疾患もしくは状態を処置または予防するための方法であって、治療有効量の請求項19~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項44】
前記医薬組成物を、それを必要とする対象に、毎回1~5単位の製剤で1日1~4回投与することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記医薬組成物を、それを必要とする対象に、毎回2~4単位の製剤で1日2~4回投与することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記必要とする対象が、コロナウイルス感染症によって引き起こされる一般的な患者、重度の患者、または重症患者である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
それを必要とする対象に、治療有効量の少なくとも1つの他の治療剤を同時にまたは逐次的に投与することをさらに含み、前記他の治療剤が、抗ウイルス抗体薬物もしくは他の抗ウイルス薬物、またはコロナウイルス感染症によって引き起こされる症状に対する他の対症処置薬物である、請求項43~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2またはその変異体株、SARS、MERS、229E、NL63、OC43および/またはHKU1である、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはそれに関連する疾患もしくは状態が、SARS-CoV-2またはその変異体株の感染症によって引き起こされる肺炎(COVID-19)である、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
前記SARS-CoV-2変異体株が、アルファ株(B.1.1.7)、ベータ株(B.1.351)、ガンマ株(P.1)、デルタ株(B.1.617.2)、イプシロン株(B.1.427/B.1.429)、ゼータ株(P.2)、イータ株(B.1.525)、シータ株(P.3)、イオタ株(B.1.526)、カッパ株(B.1.617.1)、ラムダ株(C.37)、ミュー株(B.1.621)およびオミクロン株(B.1.1.529およびその子孫系統BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.2.75、BA.3、BA.4、BA.4.6、BA.5、XE)を含む、請求項49に記載の方法。前記方法が、前記疾患または状態の少なくとも1つの症状を緩和し、少なくとも1つの症状が、咳、食欲不振、喘息、呼吸困難、発熱、全身倦怠感、めまい、吐き気、嗅覚の減退または喪失、および肺炎から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはコロナウイルス感染症に関連する疾患もしくは状態を予防するための前記方法が、化学的予防または薬物予防を含む、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、コロナウイルス感染症、特にSARS-CoV-2感染症およびSARS-CoV-2感染症によって引き起こされる急性呼吸器感染疾患または肺炎(COVID-19)を処置または予防するための新規の医薬組成物、併用薬レジメンおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
2019年末に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症によって引き起こされたCOVID-19は、2年超にわたって世界的規模のパンデミックとなっており、2022年9月現在、世界中で650万人を超える死者を出している。伝染性が高いなどのSARS-CoV-2の特徴は、感染者の処置、ならびに流行の予防および制御に大きな困難をきたしている。それはまた、様々な国の国家経済、社会および人々の健康に大きな損失を引き起こしている。ワクチンおよび特異的薬物は、新型コロナウイルスの世界的規模のパンデミックを終結させるための鍵である。流行が広がり続けるにつれて、既存の予防ワクチンおよび治療薬の機序から逃れるSARS-CoV-2の新しい変異体株が絶えず進化している。アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、イプシロン株、ゼータ株、イータ株、シータ株、イオタ株、カッパ株、ラムダ株およびオミクロン株を含む多くの変異体株が出現している。これらの中で、5つの変異体株、すなわち、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株およびオミクロン株は、WHO(https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/)により「懸念される変異体株」(VOC)として列挙されている。ここで、BA.1、BA.4、BA.5および他の子孫系統を含むオミクロン変異体株は、感染力が強く、現在最も主要な感染性株となっている。現段階での流行を予防および制御するための主な手段としてのワクチンは、SARS-CoV-2変異体株に対する防御が実質的に低下しており、産生される有効な中和抗体のレベルおよび持続時間が減少している。ウイルスがワクチンによる免疫防御を突破した後、患者はさらに重度の疾患に進行し得る。急速に変異する新型コロナウイルスへの対処は、世界的規模の流行の予防および制御が直面する一般的な問題である。疾患進行のあらゆる段階(重度の症状の患者の処置、軽度の症状から重度の症状への進行の予防、感染後の発症の予防、および感染の予防を含む)で流行と闘うための効果的で利用可能な手段が求められている。したがって、安全で効果的な広域スペクトル抗SARS-CoV-2特異的薬物が緊急に必要とされている。
【0003】
現在、新型コロナウイルス治療薬物は、主に3種類、すなわち中和抗体、小分子抗ウイルス薬物および抗サイトカインストームを含む。
【0004】
中和抗体:中和抗体は、米国FDAによって最も多くの緊急使用許可(EUA)を取得している薬物の一種であって、GSK社のソトロビマブ、Eli Lilly社のバムラニビマブ/エテセビマブの組み合わせ、Regeneron社のカシリビマブ/イムデビマブの組み合わせ、およびAstraZeneca社のAZD7442、Brii Bioscience社のBRII-196/BRII-198などを含む研究中の他の薬物が含まれる。中和抗体は、ウイルススパイクタンパク質に特異的に結合することによって正常細胞へのウイルス感染を阻害し、それによって予防および処置の目的を達成することができる。この種の薬物の利点は、新型コロナウイルスの抗原を正確に認識することができるその高い抗原特異性、および低いオフターゲット効果にある。しかしながら、それはまさにその高い特異性のためであり、変異体株への応答に対する中和抗体の有効性は実質的に減少している。市場の観点から、モノクローナル抗体は生産能力および生産コストによって制約され、したがってモノクローナル抗体薬は高価である。例えば、米国政府によるRegeneron社の中和抗体の購入価格は、単回容量で2,100ドルである。政府調達および個人使用の両方で、圧力は非常に高い。さらに、モノクローナル抗体薬物は、静脈内注入または皮下注射により投与される必要があり、また専門の医療従事者の管理下に置かれる必要があり、したがって患者は通院して処置を受けることが求められており、これは不便であり、高リスク群における促進および使用などのパンデミック状況には適していない。EUAによって認可されている3つのモノクローナル抗体薬物はすべて、軽度の症状から中程度の症状の患者を対象としており、これは、入院の必要がない軽度から中等度の症状の患者も薬物投与のために通院が求められていることを意味する。また、重度の症状および入院を必要とする重症患者については、新型コロナウイルスによる重度の症状および重症患者に対する中和抗体の臨床試験で治療効果も抗炎症効果も示されていないため、モノクローナル抗体薬物は、重度の症状および重症患者にも利用できない。
【0005】
小分子抗ウイルス薬物:主にヌクレオシドおよび3CLプロテアーゼ阻害剤を含む。前者には、主にGilead社のレムデシビル、Merck社のモルヌピラビル、Genuine Biotech社のアズブジン、Junshi Bio社のVV116などが含まれ、後者には、主にPfizer社のパキロビッド(PF-07321332およびリトナビルから構成される)、塩野義製薬株式会社のS-217622、中国科学院上海薬物研究所(Shanghai Institute of Material Medica Chinese Academy of Sciences)のDC402234およびSIM0417が含まれる。ヌクレオシド薬物は、低い経口バイオアベイラビリティ、高い毒性などの欠点を有する。例えば、レムデシビルは、そのバイオアベイラビリティが低く、有効濃度を達成することが困難であるため、静脈内注入によって投与される。Merck社の抗コロナウイルス薬物の遺伝毒性および変異原性リスクは依然として議論の余地があり、長期安全性は不明である。3CLプロテアーゼを標的とするPfizer社の経口抗SARS-CoV-2薬物の長期安全性データは不明であり、安全性を保証することはできない。小分子抗ウイルス薬物はウイルスそのものしか標的とせず、抗炎症効果を有せず、適用可能な集団は軽度から中等度の症状を有する患者に限定される。中和抗体と同様に、SARS-CoV-2ポリメラーゼおよびプロテアーゼを標的とする小分子抗ウイルス薬物の変異株に対する効果ははっきりしておらず、ウイルス学の観点から、連続的に変異する株は一般にウイルス酵素を標的とする薬物から逃れる。
【0006】
第3の種類の薬物、抗サイトカインストーム:これらの薬物は、中和抗体および小分子抗ウイルス薬物と比較してあまり注目されておらず、なぜなら、主にその作用機序が特定の炎症性因子を標的とし、ウイルスを直接阻害せず、炎症性因子の全部または大部分を標的とすることもできないためである。FDAおよびEUAによって承認されている2つの薬物は、JAK阻害剤バリシチニブおよびIL-6阻害剤トシリズマブであり、これらは関節リウマチなどの適応症について以前に承認されており、重度の症状およびCOVID-19の重症入院患者にのみ適しており、治療効果は非常に限られている。
【0007】
上記の薬物の中で、第2の種類の薬物-小分子抗ウイルス薬物は、複数の利点を有し、安全性および抗炎症特性などのいくつかの問題も有する。したがって、既存の小分子抗ウイルス薬物の安全性および抗炎症性の問題を克服するために、そのような特異的薬物研究のさらなる調査が緊急に必要とされている。
【0008】
ニタゾキサニド(NTZ)は、Cryptosporidium parvumおよびGiardia lamblia感染症の処置のために米国で承認された安全で経口投与可能なチアゾリドであり、伝染性胃腸炎の処置に適応される。この薬物は、アフリカおよび南米におけるなど多くの国で使用されており、良好な安全性で寄生生物感染症に対して有効であることが示されている。チゾキサニド(TIZ)は、インビボでのニタゾキサニドの主要な活性代謝産物である。ニタゾキサニドおよびチゾキサニドは、原虫感染症を処置するための薬物として使用され、その後の研究で、COX-2(シクロオキシゲナーゼ)、NF-κB、p65、IκBα、ERK1/2またはp38MAPKを含む細胞炎症関連タンパク質の活性を阻害することが見出されており、したがってリポ多糖(LPS)および他の細菌性エンドトキシン誘発性炎症性疾患を含む炎症関連疾患を処置するために使用された。別の研究は、ニタゾキサニドがHepG2細胞におけるアセチル-CoAカルボキシラーゼの活性に及ぼす阻害効果を有し、肥満を減少させ、血中脂質レベルを低下させ、脂肪肝を予防し、アテローム性動脈硬化症を予防する効果を有し得ることを明らかにした(中国特許出願公開第110478357号)。さらに、ニタゾキサニドおよびチゾキサニドはヒト呼吸器合胞体ウイルスに関連する症状の持続期間を短縮できることが証明されており、他の細胞実験結果は、ニタゾキサニドまたはチゾキサニドがインビトロでロタウイルス、HBV、HCV、デングウイルス、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルスおよびHIVの抗ウイルス活性を有することを示している(Jean-Francois Rossignol,Romark Laboratories,L.C.,2014年;中国特許出願公開第108289961号)。しかしながら、インビボでのその抗ウイルス活性を支持するデータはない。ウイルス感染に対するニタゾキサニドに基づく機序はまだ明らかではない。今日まで、ニタゾキサニドは、ヒトにおけるいかなるウイルス感染症の処置についても承認されていない。
【0009】
アトバコン(ATQ)は、寄生生物性肺炎の処置のために米国、欧州、日本および他の国で承認された経口投与可能なキノン化合物である。それは、インビボでマラリア原虫、Pneumocystis carinii、Babesiaおよびtoxoplasma gondiiに対して有効である。これまでのところ、アトバコンは、ヒトにおけるいかなるウイルス感染症の処置についても承認されていない。
リバビリンは、C型肝炎、ウイルス性出血熱、および呼吸器合胞体ウイルス(RSV)によって引き起こされる重度の下気道感染症(エアロゾル吸入のみ)の処置のために米国食品医薬品局(FDA)によって承認された抗ウイルス性ヌクレオシド類似体薬剤である。インビトロで様々な他のDNAおよびRNAウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルスなど)に対して阻害効果を有することが示されているが、その適応症は一般に、決定的な臨床エビデンスがないために限定されている。FDAは、リバビリンがインフルエンザその他(COPEGUS(登録商標)(リバビリン)錠剤、最初の米国承認:2002年)の処置に適していないことを、承認された薬物ラベルに明記している。リバビリンは、単独でまたは全身性グルココルチコイドと組み合わせて、SARS-CoV感染によって引き起こされる重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験的処置のために試みられてきたが、その臨床的利益は期待外れであった(WHO.Management of severe acute respiratory syndrome(SARS)2003年4月11日)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国特許出願公開第110478357号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第108289961号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、コロナウイルス感染症を処置または予防するための新規の医薬組成物および新規の併用薬物レジメンを提供し、抗原虫感染症薬物ニタゾキサニドまたはチゾキサニド、ヌクレオシド類似体リバビリンおよび/または抗寄生生物薬物アトバコンを含む医薬組成物または併用薬物、ならびにコロナウイルス感染症を阻害する、肺炎を緩和もしくは逆転させる、またはコロナウイルス感染症を予防するためのそのような医薬組成物もしくは併用薬物の使用に関する。
【0012】
第1の態様では、本発明は、コロナウイルス感染症、またはその関連する疾患もしくは状態、特にSARS-CoV-2およびその変異体株感染症、ならびにそれが引き起こす肺炎の処置または予防における新規の併用薬物およびその使用に関する。
【0013】
一実施形態では、併用薬物は、ニタゾキサニド、チゾキサニドおよびその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される少なくとも1つの薬物;ならびにリバビリン、そのプロドラッグ、代謝産物、誘導体、エナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体もしくはラセミ体からなる群より選択される少なくとも1つの薬物、ならびに前述の任意の薬学的に許容され得る塩もしくはエステル、および/またはアトバコン、そのプロドラッグ、代謝産物、誘導体、エナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体もしくはラセミ体からなる群より選択される少なくとも1つの薬物、または前述の任意の薬学的に許容され得る塩を含む。
【0014】
一実施形態では、併用薬物は、ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つの薬物、アトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つの薬物、およびリバビリンまたはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルから選択される少なくとも1つの薬物を含む。
【0015】
一実施形態では、併用薬物は、少なくとも1つの他の治療剤またはその組み合わせをさらに含み、他の治療剤またはその組み合わせは、他の抗ウイルス薬物、またはコロナウイルス感染症によって引き起こされる症状に対する他の対症処置薬物である。一実施形態では、併用薬物は、少なくとも1つの他の治療剤またはその組み合わせをさらに含み、他の治療剤の非限定的な例は、抗ウイルス抗体薬物および他の抗ウイルス薬物、例えばファビピラビル、アルビドール、ダルナビル、またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルから選択される。
【0016】
一実施形態では、本発明に開示される併用薬物は、コロナウイルス感染症またはその関連する疾患もしくは状態の処置または予防のための医薬組成物を調製するために使用され、コロナウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体株、SARS、MERS、229E、NL63、OC43および/またはHKU1、特にSARS-CoV-2またはその変異体株である。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体株である。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2の変異体株としては、アルファ株(B.1.1.7)、ベータ株(B.1.351)、ガンマ株(P.1)、デルタ株(B.1.617.2)、イプシロン株(B.1.427/B.1.429)、ゼータ株(P.2)、イータ株(B.1.525)、シータ株(P.3)、イオタ株(B.1.526)、カッパ株(B.1.617.1)、ラムダ株(C.37)、ミュー株(B.1.621)およびオミクロン株(B.1.1.529およびその子孫系統BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.2.75、BA.3、BA.4、BA.4.6、BA.5、XE)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、関連する疾患または状態は肺炎である。
【0017】
一実施形態では、本明細書に開示される併用薬物は、上記の疾患またはそれに関連する状態の少なくとも1つの症状(そのような症状の非限定的な例としては、咳、食欲不振、喘息、呼吸困難、発熱、全身倦怠感、めまい、吐き気、嗅覚の減退または喪失、および肺炎から選択されるものを含む)を処置、緩和または軽減するために使用される。
【0018】
第2の態様では、本発明は、コロナウイルス(特にSARS-CoV-2およびその変異体株)感染症または関連する疾患もしくは状態を処置または予防するための方法であって、治療有効量の上述の第1の態様の新規の併用薬物を、必要とする対象に投与することを含む方法に関する。いくつかの実施形態では、関連する疾患または状態は、急性呼吸器感染症または肺炎である。ここで、併用薬物のそれぞれの有効成分は、それを必要とする対象に同時にまたは逐次的に投与され得る。
【0019】
一実施形態では、本方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の、ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つの薬物、治療有効量の少なくとも1つのアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩、および治療有効量の少なくとも1つのリバビリンまたはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを投与することを少なくとも含む。いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩、アトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩およびリバビリンまたはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルは、それを必要とする対象に同時にまたは逐次的に投与され得る。
【0020】
一実施形態では、必要とする対象は、コロナウイルス感染症によって引き起こされる一般的な患者、重度の患者または重症患者である。一実施形態では、必要とする対象は、コロナウイルス感染症によって引き起こされる軽度から中等度の症状の患者または重度の症状の患者である。
【0021】
一実施形態では、本方法は、必要とする対象に治療有効量の少なくとも1つの他の治療剤を投与することをさらに含み、他の抗ウイルス剤は、コロナウイルス感染症によって引き起こされる症状の他の抗ウイルス薬物または他の対症処置薬物である。
【0022】
一実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体、SARS、MERS、229E、NL63、OC43および/またはHKU1、特にSARS-CoV-2またはその変異体である。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2の変異体株としては、アルファ株(B.1.1.7)、ベータ株(B.1.351)、ガンマ株(P.1)、デルタ株(B.1.617.2)、イプシロン株(B.1.427/B.1.429)、ゼータ株(P.2)、イータ株(B.1.525)、シータ株(P.3)、イオタ株(B.1.526)、カッパ株(B.1.617.1)、ラムダ株(C.37)、ミュー株(B.1.621)およびオミクロン株(B.1.1.529およびその子孫系統BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.2.75、BA.3、BA.4、BA.4.6、BA.5、XE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態では、コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはコロナウイルス感染症に関連する疾患もしくは状態を予防する方法は、化学的予防/薬物予防を指す。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明によって開示される併用薬物の投与は、上記の疾患または状態の少なくとも1つの症状を緩和するために使用することができ、少なくとも1つの症状の非限定的な例は、咳、食欲不振、喘息、呼吸困難、発熱、全身倦怠感、めまい、吐き気、嗅覚の減退または喪失、および肺炎からなる群より選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは経口製剤で投与される。
【0026】
いくつかの実施形態では、アトバコンは経口製剤で投与される。
【0027】
いくつかの実施形態では、リバビリンは、経口製剤、吸入製剤または注射製剤で投与され得る。いくつかの実施形態では、リバビリンは、気道を介して直接エアロゾル吸入製剤で投与される。いくつかの実施形態では、リバビリンは、経口製剤で投与される。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明は、コロナウイルス(特にSARS-CoV-2およびその変異体株)感染症またはその関連する疾患または状態を処置または予防するための方法を提供し、本方法は、ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンを、それを必要とする対象に投与することを含み、ニタゾキサニドは、それを必要とする対象に約100mg~約3000mgの総1日用量で投与され、アトバコンは、それを必要とする対象に約20mg~約3000mgの総1日用量で投与され、リバビリンは、それを必要とする対象に約20mg~約2500mgの総1日用量で投与され、ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンは、それぞれ、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で投与され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、約100mg~約2500mgまたは約300mg~約1800mgの総1日用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)、または1日4回(QID)で投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、約100mg~約1000mgの単回用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で対象に投与される。
【0031】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、約100mg~約550mgの単回用量、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で対象に投与される。
【0032】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、約100mg~約600mg BID、約100mg~約600mg TIDおよび約100mg~約500mg QIDの用量で対象に投与される。
【0033】
いくつかの実施形態では、アトバコンは、約20mg~約2500mg、または約300mg~約1800mgの総1日用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、アトバコンは、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で投与され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、アトバコンは、約60mg~約1000mgの単回用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、アトバコンは、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で投与される。
【0035】
いくつかの実施形態では、アトバコンは、約100mg~約540mgの単回用量、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で対象に投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、アトバコンは、約60mg~約600mg BID、約60mg~約600mg TID、および約100mg~約500mg QIDの用量で対象に投与される。
【0037】
いくつかの実施形態では、リバビリンは、約20mg~約1500mgの総1日用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、リバビリンは、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で投与され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、リバビリンは、約20mg~約500mgの単回用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、リバビリンは、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で投与される。
【0039】
いくつかの実施形態では、リバビリンは、約20mg~約400mgの単回用量、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で対象に投与される。
【0040】
いくつかの実施形態では、リバビリンは、約20mg~約500mg BID、約20mg~約400mg TIDおよび約20mg~約400mg QIDの用量で対象に投与される。
【0041】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンは、初回用量のために同時に投与され得る。いくつかの実施形態では、逐次的に投与されるニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンの初回投与間の間隔期間は、約0時間~約16時間の範囲である。いくつかの実施形態では、逐次的に投与されるニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンの初回投与間の間隔期間は、少なくとも0時間、少なくとも0.1時間、少なくとも0.2時間、少なくとも0.3時間、少なくとも0.4時間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間および/または少なくとも16時間である。
【0042】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンは、それぞれ1日2回(BID)で対象に投与される。ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンの初回用量は、同時に投与され得るか、またはニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンの初回用量は、約0時間~約8時間の範囲内で互いに間隔を空けて逐次的に投与され得、ニタゾキサニドは、約100mg~約550mgの単回用量で投与され、アトバコンは、約100mg~約550mgの単回用量で投与され、リバビリンは、約30mg~約400mgの単回用量で投与される。
【0043】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンは、それぞれ1日3回(TID)で対象に投与される。ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンの初回用量は、同時に投与され得るか、またはニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンの初回用量は、約0時間~約4時間の範囲内で互いに間隔を空けて逐次的に投与され得、ニタゾキサニドは、約100mg~約550mgの単回用量で投与され、アトバコンは、約100mg~約550mgの単回用量で投与され、リバビリンは、約30mg~約200mgの単回用量で投与される。
【0044】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンは、それぞれ1日4回(QID)で対象に投与される。ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンの初回用量は同時に投与され得るか、またはニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンの初回用量は、約0時間~約3時間の範囲内で互いに間隔を空けて逐次的に投与され得、ニタゾキサニドは、約100mg~約550mgの単回用量で投与され、アトバコンは、約100mg~約550mgの単回用量で投与され、リバビリンは、約30mg~約200mgの単回用量で投与される。
【0045】
第3の態様では、本発明は、コロナウイルス感染症、またはその関連する疾患もしくは状態、特にSARS-CoV-2感染症およびその変異体株感染症ならびにそれが引き起こす肺炎を処置または予防するための新規の医薬組成物およびその使用に関する。医薬組成物は、有効医薬成分a)治療有効量のニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩、b)治療有効量のアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩、およびc)治療有効量のリバビリンまたはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、有効医薬成分と少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤とを含む。有効医薬成分は、a)ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つ、b)少なくとも1つのアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩、およびc)少なくとも1つのリバビリンまたはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを含む。いくつかの実施形態では、有効医薬成分は、ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンを含む。いくつかの実施形態では、ニタゾキサニド:アトバコン:リバビリンの重量比は、約(0.1~10):(0.1~10):1である。いくつかの実施形態では、ニタゾキサニド:アトバコン:リバビリンの重量比は、約1.5:1.5:1、約2:2:1、約2.5:2.5:1、約3:3:1、約10:10:3、約3.5:3.5:1、約4:4:1、約4.5:4.5:1または約5:5:1であり、任意の2つの前述の比の間の任意の範囲値である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単位製剤当たり約50mg~約1200mgのニタゾキサニド、単位製剤当たり約50mg~約1200mgのアトバコン、および単位製剤当たり約1mg~約500mgのリバビリンを含有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物の単位製剤は、約60mg~約600mgのニタゾキサニド、約60mg~約600mgのアトバコン、および約10mg~約200mgのリバビリンを含有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物の単位製剤は、約111mgのニタゾキサニド、約111mgのアトバコン、および約33mgのリバビリンを含有する。いくつかの実施形態では、有効医薬成分と薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤との重量比は、約(0.1~4):1である。いくつかの実施形態では、医薬組成物の、薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤の重量含有量は、約0.1~90%(w/w)である。
【0047】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤、カプセル剤または懸濁剤である。
【0048】
第4の態様では、本発明は、コロナウイルス感染症またはそれに関連する疾患もしくは状態を処置または予防するための方法であって、上述の第3の態様における新規の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。いくつかの実施形態では、関連する疾患または状態は肺炎である。
【0049】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口投与される。
【0050】
いくつかの実施形態では、コロナウイルス感染症または関連する疾患もしくは状態を処置または予防するための方法は、医薬組成物を、それを必要とする対象に、毎回1~5単位の製剤で1日1~4回投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、医薬組成物を、それを必要とする対象に、毎回2~4単位の製剤で1日2~4回投与することを含む。
【0051】
一実施形態では、それを必要とする対象は、コロナウイルス感染症によって引き起こされる一般的な患者、重度の患者または重症患者である。一実施形態では、必要とする対象は、コロナウイルス感染症によって引き起こされる軽度から中等度の症状の患者または重度の症状の患者である。
【0052】
一実施形態では、本方法は、必要とする対象に治療有効量の少なくとも1つの他の治療剤を投与することをさらに含み、他の治療剤は、別の抗ウイルス剤またはコロナウイルス感染症によって引き起こされる症状の他の対症処置薬物である。一実施形態では、他の治療剤の非限定的な例は、抗ウイルス抗体薬物、他の抗ウイルス薬物、例えばファビピラビル、アルビドール、ダルナビル、またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルから選択される。
【0053】
一実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体株、SARS、MERS、229E、NL63、OC43および/またはHKU1、特にSARS-CoV-2またはその変異体株である。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2の変異体株としては、アルファ株(B.1.1.7)、ベータ株(B.1.351)、ガンマ株(P.1)、デルタ株(B.1.617.2)、イプシロン株(B.1.427/B.1.429)、ゼータ株(P.2)、イータ株(B.1.525)、シータ株(P.3)、イオタ株(B.1.526)、カッパ株(B.1.617.1)、ラムダ株(C.37)およびオミクロン株(B.1.1.529およびその子孫系統BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.2.75、BA.3、BA.4、BA.4.6、BA.5、XE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
いくつかの実施形態では、コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはコロナウイルス感染症に関連する疾患もしくは状態を予防する方法は、化学的予防/薬物予防を指す。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明によって開示される併用薬物の投与は、それに関連する上記の疾患または状態の少なくとも1つの症状を緩和するために使用することができ、少なくとも1つの症状の非限定的な例は、咳、食欲不振、喘息、呼吸困難、発熱、全身倦怠感、めまい、吐き気、嗅覚の減退または喪失、および肺炎からなる群より選択される。
【0056】
第5の態様では、本発明は、新規の併用薬物およびコロナウイルス感染症、またはその関連する疾患もしくは状態、特にSARS-CoV-2およびその変異体株感染症ならびにそれが引き起こす肺炎の処置または予防におけるその使用に関し、併用薬物は、ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つの薬物、およびアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つの薬物を含む。
【0057】
一実施形態では、併用薬物は、ヌクレオシド類似体またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルから選択される少なくとも1つをさらに含み得る。一特徴では、ヌクレオシド類似体は、ソホスブビル、リバビリン、レムデシビルまたはそれらの組み合わせからなる群より選択される化合物である。
【0058】
一実施形態では、併用薬物は、少なくとも1つの他の治療剤またはその組み合わせを含み、他の治療剤またはその組み合わせは、他の抗ウイルス薬物、またはコロナウイルス感染症によって引き起こされる症状に対する他の対症処置薬である。一実施形態では、併用薬物は、少なくとも1つの他の治療剤またはその組み合わせをさらに含み、他の治療剤の非限定的な例は、抗ウイルス抗体薬物および他の抗ウイルス薬物、例えばファビピラビル、アルビドール、ダルナビル、またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルから選択される。
【0059】
一実施形態では、本発明に開示される併用薬物は、関連する疾患または状態の少なくとも1つの症状(そのような症状の非限定的な例としては、咳、食欲不振、喘息、呼吸困難、発熱、全身倦怠感、めまい、吐き気、嗅覚の減退または喪失、および肺炎から選択されるものを含む)の非限定的な例を処置、緩和または軽減するために使用される。
【0060】
一実施形態では、本発明に開示される併用薬物は、コロナウイルス感染症またはその関連する疾患もしくは状態を処置または予防するための医薬組成物を調製するために使用され、コロナウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体株、SARS、MERS、229E、NL63、OC43および/またはHKU1、特にSARS-CoV-2またはその変異体株である。いくつかの実施形態では、関連する疾患または状態は肺炎である。
【0061】
第6の態様では、本発明は、コロナウイルス(特にSARS-CoV-2およびその変異体株)感染症または関連する疾患もしくはその状態を処置または予防するための方法であって、治療有効量の上述の第5の態様の新規の併用薬物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。関連する疾患または状態は、急性呼吸器感染症または肺炎である。ここで、併用薬物のそれぞれの有効成分は、それを必要とする対象に同時にまたは逐次的に投与され得る。
【0062】
一実施形態では、本方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の、ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つの薬物、および治療有効量の少なくとも1つのアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩を投与することを少なくとも含む。いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩、およびアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩は、それを必要とする対象に同時にまたは逐次的に投与され得る。
【0063】
一実施形態では、それを必要とする対象は、コロナウイルス感染症によって引き起こされる一般的な患者、重度の患者または重症患者である。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明は、コロナウイルス(特にSARS-CoV-2)感染症またはその関連する疾患または状態の処置または予防のための方法を提供し、本方法は、ニタゾキサニドおよびアトバコンを、それを必要とする対象に投与することを含み、ニタゾキサニドは、それを必要とする対象に約100mg~約3000mgの総1日用量の範囲で投与され、アトバコンは、それを必要とする対象に約20mg~約3000mgの総1日用量の範囲で投与され、ニタゾキサニドおよびアトバコンは、それぞれ、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で投与され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、約100mg~約2500mgまたは約300mg~約1800mgの総1日用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)、または1日4回(QID)で投与され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、約100mg~約1000mgの単回用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)、または1日4回(QID)で投与される。
【0067】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、約100mg~約550mgの単回用量、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で対象に投与される。
【0068】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、約100mg~約600mg BID、約100mg~約600mg TIDおよび約100mg~約500mg QIDの用量で対象に投与される。
【0069】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドは、約100mg~約500mg TIDまたは約100mg~約500mg QIDの用量で対象に投与される。
【0070】
いくつかの実施形態では、アトバコンは、約20mg~約2500mg、または約300mg~約1800mgの総1日用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、アトバコンは、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で対象に投与され得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、アトバコンは、約60mg~約1000mgの単回用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、アトバコンは、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で投与される。
【0072】
いくつかの実施形態では、アトバコンは、約100mg~約540mgの単回用量、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)で対象に投与される。
【0073】
いくつかの実施形態では、アトバコンは、約60mg~約600mg BID、約60mg~約600mg TIDまたは100mg~約500mg QIDの用量で対象に投与される。
【0074】
いくつかの実施形態では、アトバコンは、約100mg~約540mg TIDまたは100mg~約540mg QIDの用量で対象に投与される。
【0075】
いくつかの実施形態では、ニタゾキサニドおよびアトバコンは、初回用量のために同時に投与され得る。いくつかの実施形態では、逐次的に投与されるニタゾキサニドおよびアトバコンの初回投与間の間隔期間は、約0時間~約16時間の範囲である。いくつかの実施形態では、逐次的に投与されるニタゾキサニドおよびアトバコンの初回投与間の間隔期間は、少なくとも0時間、少なくとも0.1時間、少なくとも0.2時間、少なくとも0.3時間、少なくとも0.4時間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間および/または少なくとも16時間である。
【0076】
一実施形態では、本方法は、それを必要とする対象に治療有効量の少なくとも1つの他の治療剤を投与することをさらに含み、他の治療剤は、コロナウイルス感染症によって引き起こされる症状の別の抗ウイルス剤または他の対症処置薬物である。
【0077】
一実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体株、SARS、MERS、229E、NL63、OC43および/またはHKU1、特にSARS-CoV-2またはその変異体株であり、関連する疾患または状態は肺炎である。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2の変異体株としては、アルファ株(B.1.1.7)、ベータ株(B.1.351)、ガンマ株(P.1)、デルタ株(B.1.617.2)、イプシロン株(B.1.427/B.1.429)、ゼータ株(P.2)、イータ株(B.1.525)、シータ株(P.3)、イオタ株(B.1.526)、カッパ株(B.1.617.1)、ラムダ株(C.37)、ミュー株(B.1.621)およびオミクロン株(B.1.1.529およびその子孫系統BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.2.75、BA.3、BA.4、BA.4.6、BA.5、XE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
いくつかの実施形態では、コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはコロナウイルス感染症に関連する疾患もしくは状態を予防する方法は、化学的予防/薬物予防を指す。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明によって開示される併用薬物の投与は、上記の疾患またはそれに関連する状態の少なくとも1つの症状を緩和するために使用することができ、少なくとも1つの症状の非限定的な例は、咳、食欲不振、喘息、呼吸困難、発熱、倦怠感、めまい、吐き気、嗅覚の減退または喪失、および肺炎からなる群より選択される。
【0080】
第7の態様では、本発明は、コロナウイルス感染症、またはその関連する疾患もしくは状態、特にSARS-CoV-2感染症およびその変異体株感染症ならびにそれが引き起こす肺炎の処置または予防のための新規の医薬組成物およびその使用に関し、医薬組成物は、有効医薬成分と少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤とを含む。有効医薬成分は、a)治療有効量のニタゾキサニドもしくはチゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩、およびb)治療有効量のアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2の変異体株としては、アルファ株(B.1.1.7)、ベータ株(B.1.351)、ガンマ株(P.1)、デルタ株(B.1.617.2)、イプシロン株(B.1.427/B.1.429)、ゼータ株(P.2)、イータ株(B.1.525)、シータ株(P.3)、イオタ株(B.1.526)、カッパ株(B.1.617.1)、ラムダ株(C.37)、ミュー株(B.1.621)およびオミクロン株(B.1.1.529およびその子孫系統BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.2.75、BA.3、BA.4、BA.4.6、BA.5、XE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
一実施形態では、有効医薬成分は、固定比のニタゾキサニドおよびアトバコンから構成される。一実施形態では、固定比とは、約1:0.1~約1:10であるニタゾキサニドとアトバコンとの重量比を指す。一実施形態では、固定比とは、約1:0.1、約1:0.2、約1:0.5、約1:0.8、約1:1、約1:1.2、約1:1.5、約1:2、約1:5、約1:10、または任意の2つの前述の比の間の任意の範囲値であるニタゾキサニドとアトバコンとの重量比を指す。好ましい実施形態では、固定比とは、約1:1であるニタゾキサニドとアトバコンとの重量比を指す。
【0082】
一実施形態では、医薬組成物は、錠剤として製剤化される。
【0083】
一実施形態では、医薬組成物は、カプセル剤として製剤化される。
【0084】
一実施形態では、医薬組成物は、懸濁剤として製剤化される。
【0085】
一実施形態では、医薬組成物の単位製剤は、単位製剤当たり約50mg~約1200mgのニタゾキサニドおよび単位製剤当たり約50mg~約1200mgのアトバコンを含有する。一実施形態では、医薬組成物の単位製剤は、単位製剤当たり約60mg~約500mgのニタゾキサニドおよび単位製剤当たり約100mg~約500mgのアトバコンを含有する。好ましい実施形態では、医薬組成物の単位製剤中、ニタゾキサニドは単位製剤当たり165mgであり、アトバコンは単位製剤当たり165mgである。
【0086】
一実施形態では、医薬組成物は、それを必要とする対象に、毎回1~5単位の製剤で1日1~4回投与される。具体的な一実施形態では、医薬組成物は、それを必要とする対象に、毎回2~4単位の製剤で1日2~4回投与される。
【0087】
第8の態様では、本発明は、コロナウイルス(特にSARS-CoV-2およびその変異体株)感染症またはその関連する疾患もしくは状態の処置または予防のための方法であって、上述の第7の態様の新規の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。関連する疾患または状態は、急性呼吸器感染症または肺炎である。
【0088】
一実施形態では、本方法は、医薬組成物を、それを必要とする対象に、毎回1~5単位の製剤で1日当たり1~4回投与することを含み、医薬組成物の単位製剤では、ニタゾキサニド:アトバコンの固定重量比は、約1:0.1~約1:10、好ましくは約1:1である。
【0089】
一実施形態では、本方法は、医薬組成物を、それを必要とする対象に、毎回1~5単位の製剤で1日当たり1~4回投与することを含み、医薬組成物の単位製剤は、約50mg~約1200mgのニタゾキサニドおよび約50mg~約1200mgのアトバコンを含有する。
【0090】
好ましい実施形態では、本方法は、医薬の組み合わせを、それを必要とする対象に、毎回2単位の製剤で1日3回投与することを含み、医薬組成物の単位製剤は、約165mgのニタゾキサニドおよび約165mgのアトバコンを含有する。
【0091】
一実施形態では、必要とする対象は、コロナウイルス感染症によって引き起こされる一般的な患者、重度の患者または重症患者である。
【0092】
一実施形態では、本方法は、別の抗ウイルス薬物、例えばヌクレオシド類似体またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを、それを必要とする対象に同時にまたは逐次的に投与することをさらに含む。一実施形態では、ヌクレオシド類似体は、ソホスブビル、リバビリン、レムデシビルまたはそれらの組み合わせからなる群より選択される化合物である。
【0093】
一実施形態では、本方法は、それを必要とする対象に治療有効量の少なくとも1つの他の治療剤を投与することをさらに含み、他の治療剤は、コロナウイルス感染症によって引き起こされる症状に対する別の抗ウイルス薬物、または他の対症処置薬物である。一実施形態では、他の治療剤の非限定的な例は、抗ウイルス抗体薬物、および他の抗ウイルス薬物、例えばファビピラビル、アルビドール、ダルナビル、またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルから選択される。
【0094】
一実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体株、SARS、MERS、229E、NL63、OC43および/またはHKU1、特にSARS-CoV-2またはその変異体株であり、関連する疾患または状態は肺炎である。
【0095】
いくつかの実施形態では、コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはコロナウイルス感染症に関連する疾患もしくは状態を予防する方法は、化学的予防/薬物予防を指す。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明によって開示される医薬組成物の投与は、上記の疾患またはそれに関連する状態の少なくとも1つの症状を緩和するために使用することができ、少なくとも1つの症状の非限定的な例は、咳、食欲不振、喘息、呼吸困難、発熱、および肺炎からなる群より選択される。
【0097】
本発明の上記および他の目的、態様、特徴および利点は、以下の説明および特許請求の範囲からさらに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1図1は、新型コロナウイルスに対する本発明の医薬組成物(Anticov-1)の阻害活性を示す。
【0099】
図2図2は、異なる濃度のVero E6細胞におけるSARS-CoV-2に対する6つの実験薬物の阻害率を示す。
【0100】
図3図3は、異なる濃度でのVero E6細胞に及ぼすAnticov-1の細胞毒性効果を示す。Vero E6細胞と24時間インキュベートしたAnticov-1の観察結果を図3(a)に示す。細胞と48時間インキュベートしたAnticov-1の観察結果を図3(b)に示す。
【0101】
図4図4は、単回投与後の経時的な異なる試験群におけるニタゾキサニドの血漿濃度である。1-NTZ、4-NTZおよび5-NTZはそれぞれ、第1群、第4群および第5群におけるNTZの血漿濃度を表す。
【0102】
図5図5は、単回投与後の経時的な異なる試験群におけるアトバコンの血漿濃度である。2-ATQ、4-ATQおよび5-ATQはそれぞれ、第2群、第4群および第5群におけるATQの血漿濃度を表す。
【0103】
図6図6は、単回投与後の経時的な異なる試験群におけるリバビリンの血漿濃度である。3-RBV、4-RBVおよび5-RBVはそれぞれ、第3群、第4群および第5群におけるRBVの血漿濃度を示す。
【0104】
図7図7は、新型コロナウイルスの病理学的機序における、炎症性ストームのマスタースイッチであるSTAT3の活性化を阻害することにおける本発明の医薬組成物の役割(新型コロナウイルスを処置するための本発明の医薬組成物の作用機序の1つ)の概略図である。
【0105】
図8図8は、ヒト血液細胞におけるSTAT3のIL-6媒介活性化を遮断するAnticov-1の試験結果である。
【0106】
図9図9は、ヒト血液細胞におけるTNF-αのIL-6媒介活性化を遮断するAnticov-1の試験結果である。
【0107】
図10図10は、SARS-CoV-2のAnticov-1~4株(WIV04株、オミクロン株、デルタ株、ベータ株)の阻害率および異なる濃度下でのVero E6細胞における各株のEC50を示す。
【発明を実施するための形態】
【0108】
発明の詳細な説明
I.I.定義
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、または「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「細胞」という用語は、それらの混合物を含む複数の細胞を含む。
【0109】
本明細書で使用される場合、「約」は、本明細書では、記載された値の上下の数値を10%のばらつきで修正するために使用される。例えば、「約1」は「0.9~1.1」を意味し、「約30」は「27~33」を意味し、「約2%」は「1.8%~2.2%」を意味し、「約2%~3%」は「1.8%~3.3%」を意味し、「約3%~約4%」は「2.7%~4.4%」を意味し、「約1:1」は「1.1:1~1:1.1」を意味する。
【0110】
本明細書で使用される場合、「2つの比の間の範囲値」とは、2つの比において、同じ値部分をベースとし、異なる値部分をそれぞれ任意選択の値の範囲の上限および下限として使用することを意味する。例えば、約1.5:1.5:1と約2:2:1との2つの比の間の範囲値は、ベースとして同じ値「1」をとることを意味し、異なる値を有する成分は、任意選択の値の範囲、すなわち、任意選択の範囲値の上限および下限として異なる値部分を有し、すなわち、約(1.5~2):(1.5~2):1の範囲に含まれる任意の特定の比を意味する。別の例では、約1:0.8~約1:1.2の範囲値は、約1:(0.8~1.2)の範囲に含まれる任意の特定の比を指す。
【0111】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0112】
本明細書に記載される場合、「軽度症状患者」または「軽度患者」、「中等症状患者」または「一般的な患者」、「重篤中等症患者」または「重篤患者」は、それぞれ臨床診断および処置実施で採用される判断基準に対応し、「または」で接続された前後の2つの用語は同じ意味を有し、互換的に使用することができる。本明細書で使用される「軽度から中等度の症状の患者」は、軽度の症状から中等度の症状を有する患者を指す。いくつかの実施形態では、患者の診断基準は以下のとおりである:
(一)軽度:軽度の臨床症状を有し、肺炎の画像所見を有しないもの。
(二)一般的:発熱、気道症状など、および肺炎の画像所見を有するもの。
(三)重度:以下のいずれかを満たす成人:
1.息切れ、RR≧30回/分;
2.安静状態では、吸気時の酸素飽和度が≦93%;
3.動脈酸素分圧(PaO)/吸入酸素濃度(FiO)≦300mmHg(1mmHg=0.133kPa);高地(海抜1000メートル超)の領域では、PaO/FiOを以下の式に従って補正すべきである:PaO/FiO×[760/大気圧(mmHg)];
4.臨床症状の進行性増悪および肺画像化は、病変が24~48時間以内に50%超で著しく進行したことを示す。
【0113】
活性薬剤の「有効量」という用語は、必要な生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。当業者に理解されるように、有効量の本発明の化合物は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、処置される疾患、投与様式、および患者などの要因に応じて変化する。
【0114】
化合物と共に投与される「担体」という用語は、非限定的な希釈剤、可溶化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルなどを指す。
【0115】
本明細書で使用される場合、「可溶化剤」という用語は、任意の薬学的に許容され得る界面活性剤を指す。可溶化剤の非限定的な例としては、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー(例えば、ポロキサマー188、Pluronic(登録商標) F68)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート、好ましくはポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標) 80))またはポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標) 20、特定の脂質、例えばレシチン(例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
「希釈剤」という用語は、送達前に目的の化合物を希釈するために使用される化合物を指す。希釈剤を使用して、化合物を安定化することもできる。希釈剤の非限定的な例としては、デンプン、炭水化物、二糖類、スクロース、ラクトース、ラクトース一水和物、多糖類、圧縮性糖類、セルロース、セルロースエーテル、ヒドロキシプロピルセルロース、糖アルコール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、微結晶性セルロース、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸一水素カルシウムおよびリン酸三カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
「結合剤」という用語は、本明細書で使用される場合、凝集性部分および不連続部分を維持するために担体の活性成分および不活性成分を一緒に結合するために使用することができる任意の薬学的に許容され得るフィルムを指す。結合剤の非限定的な例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、コポビドン、およびエチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
「崩壊剤」という用語は、固形製剤に添加されると、投与後にその分解または崩壊を促進し、有効成分が可能な限り効果的に放出されて急速に溶解することを可能にする物質を指す。崩壊剤の非限定的な例としては、コーンスターチ、カルボキシメチルデンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、微結晶性セルロース、変性コーンスターチ、ポビドン、アルファ化デンプンおよびアルギン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
「滑沢剤」という用語は、打錠または包装プロセス中に圧縮された粉末物質がデバイスに付着するのを防ぐために粉末混合物に添加される賦形剤を指す。これは、鋳型からの錠剤の排出を容易にし、粉末の流動性を改善する。滑沢剤の非限定的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、二酸化ケイ素、脂肪、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウムまたはタルクが挙げられるが、これらに限定されず、「可溶化剤」には、脂肪酸、ラウリン酸、オレイン酸およびC8/C10脂肪酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
「流動促進剤」という用語は、流動性を改善し、固化防止効果をもたらすために錠剤またはカプセル製剤に使用される物質を指す。流動促進剤の非限定的な例としては、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、噴霧化シリカ、デンプン、デンプン誘導体および膨張性土壌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
「フィルムコーティング」という用語は、基材(例えば錠剤)の表面上の薄く均一なフィルムを指す。フィルムコーティングは、有効成分を光分解から保護するのに特に有用である。フィルムコーティングの非限定的な例としては、ポリビニルアルコール系、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000およびフタル酸セルロースフィルムコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
疾患もしくは障害の「処置」または疾患もしくは障害を「処置すること」という用語は、そのような状態をその発生前または発生後に軽減、遅延または改善する方法を指す。処置は、疾患および/または基礎となる病態の1つまたはそれを超える影響または症状に指向され得る。処置は任意の減少であり得、限定されないが、疾患または状態の症状の完全な排除であり得る。同等の未処置の対照と比較して、任意の標準的な技術によって測定されるような減少または予防の程度は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%である。
【0123】
「治療有効量」という用語は、当該技術分野で一般的に受け入れられているものを意味する。この用語は、一般に、細胞、組織、系、動物またはヒトの身体において必要な生物学的または医学的応答を誘発する化合物または組成物の量を指す。例えば、所与の臨床処置が、疾患または障害に関連する測定可能なパラメータが少なくとも約25%減少した場合に有効であると考えられる場合、疾患または障害を処置するために使用される薬物治療の有効量は、パラメータを少なくとも約25%減少させるのに必要な量である。
【0124】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、特定の処置または予防スキームのレシピエントとなるヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含むがこれらに限定されない任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。典型的には、「対象」、「患者」および「感染からの予防的保護を必要とする個体または高リスクの集団」という用語は、本明細書では互換的に使用され、ヒト対象を指す。
【0125】
本明細書で使用される「複合(組み合わせた)」または「組み合わせ(併用)」治療または処置は、障害、状態または症状、例えばウイルス性肺炎、ウイルス感染、コロナウイルス性肺炎などの処置のための少なくとも2つの異なる薬物の投与を指す。そのような組み合わせ治療は、一方の薬物を他方の薬物の投与前、投与時、および/または投与後に投与することを含む。異なる薬物の投与間の間隔期間は数週間までであるが、より一般的には48時間以内、最も一般的には24時間以内である。
【0126】
本発明の化合物は塩を形成し得るが、これも本発明の範囲内である。本明細書における本発明の化合物への言及は、特に指示しない限り、その塩への言及を含むと理解される。本明細書で用いられる「塩」という用語は、無機および/または有機の酸および塩基で形成された酸性塩および/または塩基性塩を示す。さらに、本発明の化合物が塩基性部分(例えば、限定されないが、ピリジンまたはイミダゾール)および酸性部分(例えば、限定されないが、カルボン酸)の両方を含む場合、双性イオン(「分子内塩」)が形成され得、本明細書で使用される「塩」という用語に含まれる。薬学的に許容され得る(すなわち、非毒性であり、生理学的に許容され得る)塩が好ましいが、他の塩も、例えば、調製中に採用され得る単離または精製ステップにおいて有用である。
【0127】
本明細書で使用される「化学的予防」は、ウイルス感染症を有する無症候性の人、またはウイルス感染検査が陰性であるが、疫学的病歴分析によってウイルス感染の可能性があると考えられる人、またはウイルス感染検査が陰性であるが、他の医学的診断(例えば、医用画像解析など)によって肺炎のようなウイルス感染症を有すると考えられる人に、ウイルス感染症の病原性を予防または緩和するための予防措置として、本明細書で提供される併用薬物レジメンの投与を指す。本明細書で使用される「EC50」という用語は、最大効果の50%の濃度を指し、これは最大効果の50%を引き起こすことができる濃度を指す。本明細書で使用される「CC50」という用語は、細胞の50%が罹患する薬物濃度を指す。
【0128】
II.併用薬物
本発明は、新規の併用薬物、ならびにコロナウイルス(例えばSARS-CoV-2)感染またはその関連する疾患もしくは状態(例えば肺炎、COVID-19)の処置または予防におけるその使用を提供する。本発明はまた、コロナウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2およびその変異体)、またはその関連する疾患もしくは状態(例えば肺炎、COVID-19)を処置または予防するための方法であって、治療有効量の本明細書に記載される併用薬物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0129】
本発明によって提供される新規の併用薬物は、ニタゾキサニド(NTZ)、チゾキサニドもしくはその誘導体、および前述の任意の薬学的に許容され得る塩もしくはエステルまたは前述の任意の溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つのチアゾリド化合物;アトバコン(ATQ)もしくはその誘導体、前述の任意の薬学的に許容され得る塩もしくはエステルまたは前述の任意の溶媒和物から選択される少なくとも1つのキノン化合物;および/またはリバビリン(RBV)もしくはその誘導体、前述の任意の薬学的に許容され得る塩もしくはエステルまたは前述の任意の溶媒和物から選択される少なくとも1つのヌクレオシド類似体を含む。
【0130】
一実施形態では、新規の併用薬物は、ニタゾキサニド(NTZ)、チゾキサニドもしくはその誘導体、および前述の任意の薬学的に許容され得る塩もしくはエステルまたは前述の任意の溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つのチアゾリド化合物;アトバコン(ATQ)もしくはその誘導体、前述の任意の薬学的に許容され得る塩もしくはエステルまたは前述の任意の溶媒和物から選択される少なくとも1つのキノン化合物;およびリバビリン(RBV)もしくはそのプロドラッグ、代謝産物、誘導体、エナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、ラセミ体または前述の任意の薬学的に許容され得る塩もしくはエステルから選択される少なくとも1つのヌクレオシド類似体を含む。
【0131】
一実施形態では、本発明によって提供される新規の併用薬物は、ニタゾキサニド(NTZ)、チゾキサニドもしくはその誘導体、および前述の任意の薬学的に許容され得る塩もしくはエステルまたは前述の任意の溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つのチアゾリド化合物、およびアトバコン(ATQ)もしくはその誘導体、前述の任意の薬学的に許容され得る塩もしくはエステルまたは前述の任意の溶媒和物から選択される少なくとも1つのキノン化合物を含む。
【0132】
一実施形態では、併用薬物は、少なくとも1つの他の治療剤またはその組み合わせをさらに含み、他の治療剤またはその組み合わせは、他の抗ウイルス薬物、またはコロナウイルス感染症によって引き起こされる症状に対する他の対症処置である。一実施形態では、他の治療剤の非限定的な例は、抗ウイルス抗体薬物、およびファビピラビル、アルビドール、ダルナビルまたはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルなどの他の抗ウイルス薬物から選択される。
【0133】
一実施形態では、本発明は、コロナウイルス感染症またはその関連する疾患もしくは状態を処置または予防するための医薬組成物の調製における併用薬物の使用を提供し、コロナウイルスには、SARS-CoV-2またはその変異体株、SARS、MERS、229E、NL63、OC43およびHKU1、特にSARS-CoV-2またはその変異体株が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アルファ株(B.1.1.7)、ベータ株(B.1.351)、ガンマ株(P.1)、デルタ株(B.1.617.2)、イプシロン株(B.1.427/B.1.429)、ゼータ株(P.2)、イータ株(B.1.525)、シータ株(P.3)、イオタ株(B.1.526)、カッパ株(B.1.617.1)、ラムダ株(C.37)、ミュー株(B.1.621)およびオミクロン株(B.1.1.529およびその子孫系統BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.2.75、BA.3、BA.4、BA.4.6、BA.5、XE)。いくつかの実施形態では、関連する疾患または状態は肺炎である。
III.医薬組成物
【0134】
本発明は、新規の医薬組成物、ならびにコロナウイルス(例えばSARS-CoV-2)感染またはその関連する疾患もしくは状態(例えば肺炎、COVID-19)の処置または予防におけるその使用を提供する。本発明はまた、コロナウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2およびその変異体)、またはその関連する疾患もしくは状態(例えば肺炎、COVID-19)を処置または予防するための方法であって、治療有効量の本明細書に記載される医薬組成物を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0135】
一態様では、本発明の新規の医薬組成物は、有効医薬成分と少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤とを含む。有効医薬成分は、a)ニタゾキサニドもしくはその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つ、b)少なくとも1つのアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩、およびc)少なくとも1つのリバビリンまたはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、有効医薬成分は、ニタゾキサニド、アトバコンおよびリバビリンを含む。いくつかの実施形態では、ニタゾキサニド:アトバコン:リバビリンの重量比は、約(0.1~10):(0.1~10):1である。必要に応じて、ニタゾキサニド:アトバコン:リバビリンの重量比は、約1.5:1.5:1、約2:2:1、約2.5:2.5:1、約3:3:1、約10:10:3、約3.5:3.5:1、約4:4:1、約4.5:4.5:1、約5:5:1であり、任意の2つの前述の比の間の任意の範囲値である。
【0137】
一実施形態では、有効医薬成分と薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤との重量比は、約(0.1~4):1である。
【0138】
一実施形態では、医薬組成物中の、薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤の重量含有量は、約0.1~90%(w/w)である。
【0139】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤、カプセル剤または懸濁剤として製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤として製剤化される。
【0140】
いくつかの実施形態では、医薬組成物の単位製剤は、単位製剤当たり約50mg~約1200mgのニタゾキサニド、単位製剤当たり約50mg~約1200mgのアトバコン、および単位製剤当たり約1mg~約500mgのリバビリンを含有する。必要に応じて、医薬組成物の単位製剤は、単位製剤当たり約60mg~約600mgのニタゾキサニド、単位製剤当たり約60mg~約600mgのアトバコン、および単位製剤当たり約10mg~約200mgのリバビリンを含有する。必要に応じて、医薬組成物の単位製剤は、単位製剤当たり約111mgのニタゾキサニド、単位製剤当たり約111mgのアトバコン、および単位製剤当たり約33mgのリバビリンを含有する。
【0141】
一実施形態では、医薬組成物は、それを必要とする対象に、毎回1、2、3、4または5単位で、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)投与され得る。
【0142】
別の態様では、本発明の新規の医薬組成物は、有効医薬成分a)治療有効量のニタゾキサニドまたはその薬学的に許容され得る塩、b)治療有効量のアトバコンまたはその薬学的に許容され得る塩、および少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤を含む。
【0143】
一実施形態では、有効医薬成分は、固定比のニタゾキサニドおよびアトバコンから構成される。固定比とは、ニタゾキサニド:アトバコンの重量比が約1:0.1~約1:10であることを指す。好ましくは、固定比とは、ニタゾキサニド:アトバコンの重量比が、約1:0.1、約1:0.2、約1:0.5、約1:0.8、約1:1、約1:1.2、約1:1.5、約1:2、約1:5、約1:10、または任意の前述の2つの比の間の任意の範囲値であることを指す。特に好ましい固定比は、ニタゾキサニド:アトバコンの重量比が約1:1であることを指す。
【0144】
医薬組成物は、錠剤、カプセル剤または懸濁剤として製剤化される。
【0145】
一実施形態では、医薬組成物の単位製剤は、単位製剤当たり約50mg~約1200mgのニタゾキサニドおよび単位製剤当たり約50mg~約1200mgのアトバコンを含有する。好ましくは、医薬組成物の単位製剤は、単位製剤当たり約60mg~約500mgのニタゾキサニドおよび単位製剤当たり約60mg~約500mgのアトバコンを含有する。好ましくは、医薬組成物の単位製剤は、単位製剤当たり約80mg~約250mgのニタゾキサニドおよび単位製剤当たり約80mg~約250mgのアトバコンを含有する。好ましくは、医薬組成物の単位製剤は、単位製剤当たり約100mg~約200mgのニタゾキサニドおよび単位製剤当たり約100mg~約200mgのアトバコンを含有する。好ましくは、医薬組成物の単位製剤は、単位製剤当たり約111mgのニタゾキサニド、単位製剤当たり約111mgのアトバコンを含有する。医薬組成物の単位製剤が、単位製剤当たり約165mgのニタゾキサニド、単位製剤当たり約165mgのアトバコンを含有する場合が特に好ましい。
【0146】
一実施形態では、医薬組成物は、それを必要とする対象に、毎回1、2、3、4または5単位で、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)または1日4回(QID)投与され得る。
【0147】
賦形剤
【0148】
本発明によって提供される医薬組成物は、経口投与される。本発明は、固体分散物を含む医薬組成物であって、固体分散物は、本明細書に記載されるニタゾキサニド、アトバコン、リバビリンと、1つもしくはそれを超える薬学的に許容され得る賦形剤または担体とを含有する、固体分散物を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、薬学的に許容され得る賦形剤または担体には、希釈剤、可溶化剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、流動促進剤、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。この組成物は、製薬分野において周知の方法により調製することができる。
【0149】
医薬組成物は、単回または複数回用量で経口投与され得る。投与は、錠剤、カプセル剤、懸濁剤などによって行うことができる。一実施形態では、本発明の医薬組成物は化合物製剤であり、化合物製剤は錠剤の形態である。別の実施形態では、錠剤は圧縮錠剤である。本明細書に記載される固体を含む医薬組成物を調製する場合、有効成分は通常賦形剤で希釈され、かつ/または担体にカプセル化され、担体は、カプセル剤、錠剤、サシェ、紙または他の容器の形態であり得る。賦形剤が希釈剤として作用する場合、賦形剤は、有効成分のためのビヒクル、担体または媒体として作用する固体、半固体または液体材料(上記のとおり)であり得る。
【0150】
一実施形態では、医薬組成物は、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、ポロキサマー188(Pluronic(登録商標) F68)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標) 80)またはポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標) 20)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される可溶化剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の可溶化剤の重量含有量は、約0.1~3%w/wである。
【0151】
実施形態の1つでは、医薬組成物はSLSを含有し、SLSの量は、約0.1%~約3%w/w、または約0.1%~約2.5%w/w、または約0.5%~約3%w/w、または約0.5%~約2.5%w/w、または約0.5%~約2%w/w、または約1%~約3%w/w、または約1%~約2%w/wである。特定の実施形態では、SLSの量は、約0.1%、または約0.5%、または約1%、または約2%、または約2.5%、または約3%w/wである。
【0152】
別の実施形態では、医薬組成物は、ポロキサマー188を含有し、ポロキサマー188の量は、約0.1%~約3%w/w、または約0.1%~約2.5%w/w、または約0.5%~約3%w/w、または約0.5%~約2.5%w/w、または約0.5%~約2%w/w、または約1%~約3%w/w、または約1%~約2%w/wである。特定の実施形態では、ポロキサマー188の量は、約0.1%、または約0.43%、または約0.5%、または約1%、または約2%、または約2.5%、または約3%w/wである。
【0153】
一実施形態では、医薬組成物は、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム、セルロース、圧縮性糖、無水リン酸一水素カルシウム、ラクトース、ラクトース一水和物、マンニトール、デンプン、リン酸三カルシウム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される希釈剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の希釈剤の重量含有量は、約1~40%w/wである。
【0154】
別の実施形態では、医薬組成物は、微結晶性セルロースを含有し、微結晶性セルロースの量は、約1%~約40%w/w、または約1%~約35%w/w、または約1%~約25%w/w、または約5%~約25%w/w、または約10%~約25%w/w、または約15%~約25%w/wである。特定の実施形態では、微結晶性セルロースの量は、約5%w/w、または約10%w/w、または約15%w/w、または約19.46%w/w、または約20%w/w、または約21%w/w、または約22%w/w、または約23%w/w、または約24%w/w、または約24.04%w/w、または約25%w/w、または約30%w/w、または約35%w/w、または約40%w/wである。
【0155】
一実施形態では、医薬組成物は、カルボキシメチルデンプンナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、微結晶性セルロース、変性コーンスターチ、ポビドン、アルファ化デンプン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される崩壊剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の崩壊剤の重量含有量は、約1~20%w/wである。
【0156】
別の実施形態では、医薬組成物は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの量は、約0.1%~約3%w/w、または約0.1%~約2.5%w/w、または約0.5%~約3%w/w、または約0.5%~約2.5%w/w、または約0.5%~約2%w/w、または約1%~約3%w/w、または約1%~約2%w/wである。特定の実施形態では、低置換度ヒドロキシプロピルの量は、約0.1%、または約0.43%、または約0.5%、または約1%、または約2%、または約2.29%、または約2.5%、または約3%w/w、または約3.5%、または約4%w/wである。
【0157】
一実施形態では、医薬組成物は、カルボキシメチルデンプンナトリウムを含有し、カルボキシメチルデンプンナトリウムの量は、約1%~約20%w/w、または約1%~約15%w/w、または約1%~約10%w/w、または約1%~約8%w/w、または約2%~約8%w/wである。特定の実施形態では、カルボキシメチルデンプンナトリウムの量は、約1%、または約2%、または約3%、または約4%、または約4.86%、または約5%、または約6%、または約7%w/w、または約8%、または約9%、または約10%、または約13%、または約15%w/wである。
【0158】
一実施形態では、医薬組成物は、アルファ化デンプンを含有し、アルファ化デンプンの量は、約1%~約20%w/w、または約1%~約15%w/w、または約1%~約10%w/w、または約5%~約9%w/wである。特定の実施形態では、アルファ化デンプンの量は、約1%、または約2%、または約3%、または約4%、または約5%、または約6%、または約7%w/w、または約8%、または約8.27%、または約9%、または約10%、または約13%、または約15%w/wである。
【0159】
一実施形態では、医薬組成物は、ポビドン、コポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースおよびアルファ化デンプン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される結合剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の結合剤の重量含有量は、約1~20%w/wである。
【0160】
一実施形態では、医薬組成物は、コポビドンをさらに含有し、コポビドンの量は、約1%~約20%w/w、または約1%~約15%w/w、または約1%~約10%w/w、または約1%~約8%w/w、または約2%~約5%w/wである。特定の実施形態では、コポビドンの量は、約1%、または約2%、または約3%、または約3.80%、または約4%、または約5%、または約10%、または約15%w/wである。
【0161】
一実施形態では、医薬組成物は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリビニルアルコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される滑沢剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の滑沢剤の重量含有量は、約0.1~5%w/wである。
【0162】
一実施形態では、医薬組成物は、ステアリン酸マグネシウムを含有し、ステアリン酸マグネシウムの量は、約0.1%~約5%w/w、または約0.1%~約4%w/w、または約0.1%~約3%w/w、または約0.1%~約2.5%w/w、または約0.5%~約3%w/w、または約0.5%~約2.5%w/w、または約0.5%~約2%w/w、または約1%~約3%w/w、または約1%~約2%w/wである。特定の実施形態では、ステアリン酸マグネシウムの量は、約0.1%、または約0.42%、または約0.5%、または約1%、または約2%、または約2.5%、または約3%、または約3.5%、または約4%、または約4.5%、または約5%w/wである。
【0163】
他の実施形態では、医薬組成物は、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、デンプン、デンプン誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される流動促進剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の流動促進剤の重量含有量は、約0.1~5%w/wである。
【0164】
他の実施形態では、医薬組成物は、コロイド状二酸化ケイ素を含有し、コロイド状二酸化ケイ素の量は、約0.1%~約5%w/w、または約0.1%~約4.5%w/w、または約0.1%~約4%w/w、または約0.5%~約5.0%w/w、または約0.5%~約3%w/w、または約0.5%~約2%w/w、または約0.5%~約1.5%w/wである。特定の実施形態では、コロイド状二酸化ケイ素の量は、約0.1%w/w、または約0.5%w/w、または約0.75%w/w、または約1.25%w/w、または約1.5%w/w、または約2%w/wである。
【0165】
一実施形態では、医薬組成物は、a)約30%~約50%w/wのニタゾキサニドおよびb)約30%~約50%w/wのアトバコンを含む。関連する実施形態では、組成物は、a)約33%w/wのニタゾキサニドおよびb)約33%w/wのアトバコンを含む。別の関連する実施形態では、組成物は、a)約0.5%~約2%w/wのSLS、b)約15%~約25%w/wの微結晶性セルロース、c)約1%~約10%w/wのカルボキシメチルデンプンナトリウム、d)約3%~約4%w/wのポビドン、およびe)約0.1%~約3%w/wのステアリン酸マグネシウムをさらに含む。別の実施形態では、医薬組成物は、a)約33%w/wのニタゾキサニド、b)約33%w/wのアトバコン、c)約1%w/wのSLS、d)約23%w/wの微結晶性セルロース、e)約5%w/wのカルボキシメチルデンプンナトリウム、f)約4%w/wのポビドン、およびg)約1%w/wのステアリン酸マグネシウムを含む。
【0166】
別の実施形態では、医薬組成物は、a)約30%~約50%w/wのニタゾキサニドおよびb)約30%~約50%w/wのアトバコンを含む。関連する実施形態では、組成物は、a)約35%w/wのニタゾキサニドおよびb)約35%w/wのアトバコンを含む。別の関連する実施形態では、組成物は、a)約0.5%~約2%w/wのポロキサマー188、b)約15%~約25%w/wの微結晶性セルロース、c)約1%~約10%w/wのカルボキシメチルデンプンナトリウム、d)約3%~約4%w/wのポビドン、およびe)約0.1%~約3%w/wのステアリン酸マグネシウムをさらに含む。別の実施形態では、医薬組成物は、a)約35.11%w/wのニタゾキサニド、b)約35.11%w/wのアトバコン、c)約0.5%w/wのポロキサマー188、d)約20%w/wの微結晶性セルロース、e)約5.18%w/wのカルボキシメチルデンプンナトリウム、f)約3.6%w/wのポビドン、およびg)約0.5%w/wのステアリン酸マグネシウムを含む。
【0167】
一実施形態では、医薬組成物は、a)約15.86%w/wのニタゾキサニド、b)約15.86%w/wのアトバコン、c)約4.71%w/wのリバビリン、d)約19.46%w/wの微結晶性セルロースPH101、e)約0.43%w/wのポロキサマー188、f)約24.04%w/wの微結晶性セルロースPH102、g)約4.86%w/wのカルボキシメチルデンプンナトリウム、h)約3.80%w/wのコポビドン、i)約0.42%w/wのステアリン酸マグネシウム、j)約8.27%w/wのアルファ化デンプン、k)約2.29%w/wの低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む。
【0168】
ニタゾキサニド(NTZ)の化学名は、o-[N-(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェノールアセテート)、CAS:55981-09-4、分子式:C12S、分子量:307.28であり、その化学式は以下のとおりである:
【化1】
【0169】
チゾキサニド(TIZ)の化学名は、2-ヒドロキシ-N-(5-ニトロ-2-チアゾリル)ベンズアミド、CAS:1246817-56-0、分子式:C10S、分子量:265.24528であり、その化学式は以下のとおりである:
【化2】
【0170】
アトバコン(ATQ)の化学名は、2-(trans-4-(4-クロロフェニル)シクロヘキシル)-3-ヒドロキシ-1,4-ナフタレンジオン、CAS:95233-18-4、分子式:C2219ClO、分子量:366.84であり、その化学式は以下のとおりである:
【化3】
【0171】
リバビリンの化学名は、1-[(2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド、1-(β-D-リボフラノシル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドとしても知られ、CAS番号:36791-04-5、分子式:C12、分子量:244.21であり、その化学式は以下のとおりである:
【化4】
【0172】
本発明は、コロナウイルス感染症を阻害するための、ニタゾキサニド、アトバコンおよび/またはリバビリンの新規の医薬組成物を提供する。
【0173】
本発明はまた、コロナウイルス感染症、例えばSARS-CoV-2感染症およびその変異体株感染症の相乗的阻害のためのニタゾキサニド、アトバコンおよび/またはリバビリンの組み合わせを提供する。
【0174】
上記の研究は、SARS-CoV-2または他のコロナウイルス感染症およびその関連する疾患または状態、例えば肺炎の処置のための少なくとも1つの新規の医薬組成物または少なくとも1つの新規の利用可能な治療レジメンを提供し、それは、ウイルス感染症の効果的な処置、またはそれに関連する状態の迅速な緩和、または臨床症状の持続期間の短縮、ならびにウイルス感染および再伝播の可能性の減少を達成することができる。
【0175】
一実施形態では、本発明によって開示される医薬組成物または併用薬物は、新たな有害事象を示さず、単独で使用される場合、併用薬物の各薬物と比較して同様の安全性プロファイルを有し、負の薬物-薬物相互作用はない。
【0176】
一実施形態では、本発明に開示される医薬組成物または併用薬物は、関連する疾患または状態の少なくとも1つの症状(そのような症状の非限定的な例としては、咳、食欲不振、喘息、呼吸困難、発熱、全身倦怠感、めまい、吐き気、および肺炎から選択されるものを含む)を軽減するために使用される。
【0177】
さらなる実施形態では、本発明に開示される医薬組成物または併用薬物はまた、サイトカインストームの発生を減少させる可能性を有し、患者のサイトカインストームに拮抗し、炎症応答を低減させ、患者の肺組織および複数の器官に対する炎症応答の損傷を減少させることが予想される。
【0178】
本発明によって提供される医薬組成物または併用薬物レジメンは、ニタゾキサニドまたはチゾキサニド、およびリバビリンおよび/またはアトバコンを含むコロナウイルス感染症の処置または予防、特にチゾキサニド、リバビリンおよびアトバコンを含む医薬組成物(以下、本発明の医薬組成物、または医薬組成物Anticov-1と呼ぶ)を指し、既存の新型コロナウイルス処置薬と比較して、以下の4つの重要な特徴である:簡便な経口投与、保証された安全性、強力な抗ウイルス効果および抗ウイルス機序がウイルス変異によって影響されないこと、非常に効果的な抗炎症性ストームを同時に有する新型コロナウイルスの唯一の特異的処置薬物である。本発明によって提供される医薬組成物のこれらの特徴は、新規のコロナウイルスの流行状況を制御するための大きな可能性を有しており、Merck社のモルヌピラビルおよびPfizer社のパキロビッド(PF-07321332およびリトナビルから構成される)抗コロナウイルス薬物を含む他の新規のコロナウイルス処置薬物は、上記の特徴の一部のみを有する。したがって、本発明によって提供される医薬組成物は、密接な接触後の高リスク群の予防から、軽度および中等度から重度の疾患の進行、ならびに重度の患者および重症患者の処置まで、プロセス全体および集団全体を網羅することが期待され、新型コロナウイルスの世界的規模のパンデミックの制御に寄与することが期待される。
【0179】
第1に、簡便な経口投与。確認された症例の家族、地域社会の隣人、部署の同僚などの新型コロナウイルスまたは高リスクの濃厚な接触に感染した人々は、自ら薬を服用するだけでよく、注射薬のために通院する必要はなく、伝染および恐怖のリスクを減らし、医療費を削減し、人々は簡単な保護で通常の社会的活動を維持することができる。本発明の医薬組成物は、運搬および服用が容易であり、症候性患者および無症候性感染患者の両方に使用することができる錠剤である。新型コロナウイルス症例および高リスクの濃厚接触は、感染の予防および制御の効果を達成するために、自宅隔離または指定された隔離場所で薬物を摂取することができる。さらに、経口薬の生産能力およびコストにも利点があり、これは流行の制御にとって非常に重要である。
【0180】
第2に、保証された安全性。作用機序の観点から、新型コロナウイルスのためのほとんどの経口薬物は、ウイルスRNA複製プロセスを標的とするか、またはウイルス遺伝子に変異を引き起こす。このクラスの薬物の長期安全性データ、特に遺伝毒性のリスクおよび新しいウイルスバリアントの促進には注意が必要である。研究により、Merck社の抗コロナウイルス薬物が哺乳動物細胞の遺伝物質に組み込まれ得、細胞複製中に変異を引き起こし、理論的にはがんおよび新生児の奇形をさらに誘発するリスクがあることが報告されている(J.Biol.Chem.(2021)297 100867)。3CLプロテアーゼ阻害剤はこれまでいかなる適応症についても承認されておらず、長期安全性データは不明である。本発明によって提供される新規の特異的抗コロナウイルス医薬組成物に含まれる3成分薬物は、FDAなどの規制当局によって承認されており、数十年にわたって世界中で臨床的に使用されており、世界中の数十万人またはさらに多くの患者に安全に使用されているので、臨床的安全性が保証される。前臨床的に有意な抗新型コロナウイルス活性データに基づいて、新型コロナウイルスの処置のための本発明の医薬組成物の用量は、FDAによって承認された薬物用量よりもはるかに低い。例えば、新型コロナウイルスおよびその変異体株による感染症の処置または予防のための、本発明によって提供される医薬組成物(Anticov-1)の通常の臨床投与量は、有効成分NTZが約999mg/日であり、臨床診療で安全に使用されるNTZの最大投与量(MAD)のほんの1/4であり、通常の臨床用量以下である。有効成分RBVは約297mg/日であり、これは臨床的に安全なRBVの最大投与量(MAD)の1/8であり、臨床的に通常用いられる用量のわずか1/4である。有効成分ATQは約999mg/日であり、これは臨床診療で安全に使用されるATQの最大投与量(MAD)の1/3であり、これは臨床的に一般的に使用される用量のわずか2/3である。本発明によって提供される医薬組成物は、安全性リスクを最小限に抑えながら、新型コロナウイルスに効果的に対抗することができる。数千万人、さらには数億人の処置ニーズに直面して、治療薬または予防薬の安全性を完全に保証することは非常に重要な利点である。安全性が時間をかけて証明されている薬物は、患者の処置をより容易にし、流行を打破することをより確信させる。
【0181】
さらに、アトバコンおよびニタゾキサニドの血漿タンパク質結合率が高いため、両方とも約99%(Beerahee M.Clinical pharmacology of atovaquone and proguanil hydrochloride.[J].Journal of Travel Medicine,1999,6 suppl 1:S13-7.;Alinia(商標)PRESCRIBING INFORMATION-FDAを参照)である。本出願はまた、アトバコンとニタゾキサニドとの組み合わせ投与および別個投与のインビボ血漿タンパク質結合率を研究および比較した。結果は、ニタゾキサニドと組み合わせたアトバコンの投与が、別個投与(組み合わせ投与群におけるアトバコンとニタゾキサニドとの平均血漿タンパク質結合率はそれぞれ99.86%と99.84%であり、別個投与群におけるアトバコンとニタゾキサニドとの平均血漿タンパク質結合率は99.84%と98.95%である)と比較して血漿タンパク質結合に有意差がないこと、すなわち、血漿タンパク質への結合についてアトバコンとニタゾキサニドとの間に競合がないことを実証している。単独投与と比較して、組み合わせ投与はインビボでの2つの薬物の分布および排除に影響せず、1つの薬物による血漿タンパク質結合部位の競合は別の薬物の遊離形態の増加をもたらさない。本出願に関与する医薬組成物または併用薬物レジメンの安全性がさらに証明される。
【0182】
第3に、それは強力な抗ウイルス効果を有し、抗ウイルス機序はウイルス変異の影響を受けない。WHOは、新型コロナウイルスのアルファ、ベータ、ガンマ、デルタおよびオミクロン変異体を「懸念されるバリアント」と命名した。新しい変異体株は、細胞受容体を認識し、細胞に侵入するために使用されるスパイクタンパク質のいくつかの重要な部位に変異を有し、ウイルス量、ウイルス伝染能力および再感染のリスクを増加させ、これは世界的な流行の再発の重要な理由となっている。同時に、新たな変異株はまた、ワクチン有効性の低下および中和抗体の有効性の低下をもたらし得る。例えば、新型コロナウイルス変異体株の処置の有効性が不十分であったため、FDAは2021年6月にLilly社の中和抗体薬の使用を緊急停止し、再開後、薬物耐性株の有病率が5%未満の地域でのみ使用が許可されている。本発明の医薬組成物は、広域スペクトル抗ウイルス活性機序を有し、抗ウイルス目的は主に、身体の細胞の天然の抗ウイルス遺伝子および天然の抗ウイルス性免疫バリアを活性化することによって達成されるので、その抗ウイルス作用機序はウイルス変異によって影響されない。
【0183】
第4に、高い抗炎症性ストーム効果。サイトカインストームとしても知られる炎症性ストームは、新型コロナウイルスに対する身体の免疫系の過剰反応である。体内でのサイトカインの大量放出は、急性炎症応答および器官損傷をもたらし、これは、新型コロナウイルス性肺炎の軽度/中等度から重度、重篤、さらには死亡への変換の重要な因子である。身体の細胞において、炎症性因子を制御する「マスタースイッチ」はSTAT3であり、新型コロナウイルスの大流行以来、多くの科学論文で、STAT3が新型コロナウイルスの病理学的機序における炎症性ストームを制御するマスタースイッチとして作用することを報告している(Microbial Pathogenesis 154(2021)104836,Cell Death&Differentiation(2020)27:3209-3225)。STAT3は、新型コロナウイルス感染中の炎症応答の誘導に関与し、抗ウイルス性インターフェロン応答を阻害し、抗ウイルス性適応免疫応答の不均衡をもたらす(図7)。したがって、STAT3経路の活性化を阻害することは、炎症性ストームの供給源スイッチからの新型コロナウイルス感染症を処置するための強力な戦略である。本発明の医薬組成物は、炎症性因子の「マスタースイッチ」であるSTAT3の活性化を阻害し、炎症性因子(例えばTNF-α)の放出を阻害して、炎症応答(図8および図9)を低下させ、炎症性ストームの発生を予防することができる。その抗炎症性ストーム効果は、新型コロナウイルス性肺炎の処置および新型コロナウイルス感染が体内で疾患を引き起こすことの予防のための強力な武器である。新型コロナウイルス性肺炎の患者において炎症性サイトカインを阻害し、肺および他の器官における炎症性損傷を軽減することが予想され、これはまた、新型コロナウイルス自体を阻害するだけでなく、疾患の経過に及ぼす炎症性ストームの影響にも作用する、市場で開発中の唯一の薬物である。本発明の医薬組成物は、軽度および中等度~重度の疾患の転換を予防するため、ならびに重度の患者および重症患者を処置するために同時に使用することができる。
【0184】
要約すると、本発明の医薬組成物は、4つの利点(簡便な経口投与、保証された安全性、強力な抗ウイルス効果および抗ウイルス機序がウイルス変異によって影響されないこと、および非常に効果的な抗炎症性ストーム)を同時に有する、世界中で開発中の唯一の革新的な新規の特異的抗コロナウイルス薬物である。本発明の医薬組成物は、濃厚接触後の高リスク群の予防から、軽度および中程度から重度の疾患の進行、ならびに重度の患者および重症患者の処置まで、プロセス全体および集団全体を網羅し、ヌクレオシドおよびプロテアーゼ阻害剤などの他の薬物が直面し得る実施上の制約を回避することが期待され、それは世界的な促進および使用を助長し、新型コロナウイルスの世界的規模のパンデミックの制御に寄与することが期待される。
【0185】
一方、本発明はまた、本発明の共製剤または併用薬物の新しい医薬組成物を投与することによって、患者のコロナウイルス感染症またはそれに関連する疾患もしくは状態を処置または予防するための方法を提供する。ある実施形態では、コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはコロナウイルス感染症に関連する疾患もしくは状態の予防には、化学的予防または薬物予防が含まれる。コロナウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体株、SARS、MERS、229E、NL63、OC43またはHKU1である。一実施形態では、関連する疾患または状態は肺炎である。本方法は、疾患または状態のうちの少なくとも1つの症状を軽減し、少なくとも1つの症状の非限定的な例は、咳、食欲不振、喘息、呼吸困難、発熱、全身倦怠感、めまい、吐き気、嗅覚の減退または喪失、および肺炎からなる群より選択される。
【0186】
いくつかの実施形態では、コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはそれに関連する疾患もしくは状態の処置または予防の方法に使用するための医薬組成物であって、医薬組成物を、それを必要とする対象に、毎回1~5単位の製剤で1日1~4回投与することを含む医薬組成物。いくつかの実施形態では、本方法は、医薬組み合わせを、各々2~4単位の製剤で、それを必要とする対象に1日当たり2~4回投与することを含む。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、軽度の患者、一般的な患者、重度の患者、またはコロナウイルス感染症によって引き起こされる重体患者である。いくつかの実施形態では、本方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の少なくとも1つの他の治療剤を同時にまたは逐次的に投与することをさらに含み、他の治療剤は、抗ウイルス抗体薬物、または他の抗ウイルス薬、またはコロナウイルス感染症によって引き起こされる症状に対する他の対症処置薬である。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体株、SARS、MERS、229E、NL63、OC43および/またはHKU1、特にSARS-CoV-2またはその変異体株である。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2の変異体株としては、アルファ株(B.1.1.7)、ベータ株(B.1.351)、ガンマ株(P.1)、デルタ株(B.1.617.2)、イプシロン株(B.1.427/B.1.429)、ゼータ株(P.2)、イータ株(B.1.525)、シータ株(P.3)、イオタ株(B.1.526)、カッパ株(B.1.617.1)、ラムダ株(C.37)、ミュー株(B.1.621)およびオミクロン株(B.1.1.529およびその子孫系統BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.2.75、BA.3、BA.4、BA.4.6、BA.5、XE)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、コロナウイルス感染症によって引き起こされるまたはそれに関連する疾患もしくは状態は、SARS-CoV-2感染症およびその変異体株の感染症によって引き起こされる肺炎(COVID-19)である。
【実施例
【0187】
IV.実施例
【0188】
実施例1:細胞培養
Vero E6アフリカミドリザル腎臓細胞株(ATCC、No.1586)を、American Type Culture Collectionから入手し、1%(v/v)ペニシリン+ストレプトマイシンを添加したDMEM培地(Gibco Invitrogen社)中、37℃、5%CO2雰囲気で継代培養した。
【0189】
実施例2:ウイルス株の単離
【0190】
SARS-CoV-2の元の株(hCoV-19/中国/CAS-B001/2020)は、中国科学院微生物研究所からのものである。SARS-CoV-2のもう1つの元の株であるWIV04(nCoV-2019 BetaCoV/武漢/WIV04/2019)は、中国科学院武漢ウイルス研究所からのものである。SARS-CoV-2ベータ変異体株は、National Pathogen Resource Center(NPRC)(2.062100001)から入手した。SARS-CoV-2デルタ変異体株は、NPRC(China Science and Technology Resource.16698.06.NPRC 6.CCPM-B-V-049-2105-8)から入手した。SARS-CoV-2オミクロン変異体株は、中国科学院武漢ウイルス研究所から入手した。異なる変異体株をVero E6細胞中で培養し、免疫蛍光アッセイによって50%組織培養感染量(TCID50)を測定することによってウイルス力価を決定した。「TCID50」の正式名称は、メジアン組織培養感染量、組織メジアン感染量、または50%組織細胞感染量であり、これは、培養プレートウェルまたは試験管において半分の細胞変性効果(CPE)または半分の細胞死を引き起こすのに必要なウイルスの量を指し、ウイルスの力価を特徴付けるために使用される。すべての感染実験は、バイオセーフティーレベル3(BLS-3)実験室で行った。
【0191】
実験薬物:ニタゾキサニド(NTZ)APIをZhejiang Cheng Yi Pharmaceutical Co.,Ltd.社(ロット番号0501-2020-03901)から購入し、リバビリン(RBV)APIをAZICO Biophore India Pvt.Ltd.社(ロット番号4038/3/006/21)から購入し、アトバコン(ATQ)APIをNURAY Chemicals Pvt.Ltd.社(ロット番号ATORD210001)から購入した。「Anticov-1」は、有効成分NTZ、ATQおよびRBVを含有する医薬組成物である。
【0192】
実施例3:薬物の抗ウイルス活性試験
【0193】
本発明の医薬組成物の抗ウイルス効果を評価するために、細胞を異なる濃度の本発明の抗コロナウイルス薬物で8時間または一晩前処置し、同時にDMSOを陰性対照として設定した。次いで、ウイルスを添加して、合計100 TCID50(TCID50=107.0/mL)のSARS-CoV-2でVero E6細胞を感染させた。感染の72時間後、細胞変性効果(CPE)が観察された。次いで、ウイルス-薬物混合物を除去し、細胞を薬物を含有する新鮮な培地でさらに培養する。48時間のインキュベーション後に細胞上清を回収し、定量分析のために溶解緩衝液(タカラバイオ株式会社、カタログ番号9766)に溶解した。
【0194】
キットの指示に従い、100μLの細胞培養上清を回収し、MiniBEST Viral RNA/DNA抽出キット(タカラバイオ株式会社、カタログ番号9766)を使用してウイルスRNAを抽出した。RNAを30μLのRNase非含有水に溶出した。gDNA Eraserを有する逆転写キット(タカラ株式会社、品番RR047A)を使用して用いて逆転写を行い、TB Green Premix Ex Taq II(タカラバイオ株式会社、カタログ番号RR820A)を用いたStepOne Plus Real-time PCR System(Applied Biosystem社)でqRT-PCRを行った。GraphPad Prism 6ソフトウェアを使用して、薬物濃度に対するウイルスRNAコピーの用量応答曲線をプロットした。
【0195】
薬物濃度に対するSARS-CoV-2ウイルス阻害率の用量応答曲線の結果を図1に示し、Anticov-1の抗コロナウイルス阻害活性EC50は0.47μMである。
【0196】
実施例4:Anticov-1の抗SARS-CoV-2ウイルス活性の相乗効果
【0197】
SARS-Cov-2の野生株(hCoV-19/中国/CAS-B001/2020株、TCID50=107.0/mL)を使用して、Vero-E6細胞に感染させた。6つの異なる実験薬物組み合わせ(Anticov-1、NTZ+RBV、NTZ+ATQ、ATQ+RBV、NTZ、ATQ)をそれぞれ、20μM、10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.625μM、0.31μM、0.16μMの濃度で96ウェルプレートに添加し(溶媒DMSO)、薬物を含まないDMSO溶媒をブランク対照として使用した。細胞をインキュベータ内で2時間インキュベートした。インキュベーション後、薬物を吸引し、100μLのSARS-CoV-2の野生株(hCoV-19/中国/CAS-B001/2020)希釈物(合計100 TCID50)を陰性対照以外のウェルに添加し、陰性対照にはウイルス非含有DMEM培地を添加し、インキュベータ内で2時間培養した。ウイルス溶液を吸引および除去し、新しい薬物希釈物を再添加した。細胞プレートをインキュベータに入れて72時間培養して細胞変性効果(CPE)を観察し、CPEの観察結果(結果を表1に示す)に従ってEC50値を算出し、図2に示すように、希釈濃度点における阻害率を曲線でフィッティングした。
【表1】
【0198】
図2および表1の結果は、NTZ+ATQの組み合わせが有意な相乗的抗SARS-CoV-2ウイルス効果を示すことを示している。さらにいっそう驚くべきことは、NTZ、ATQおよびRBVの3剤併用であるAnticov-1が、任意の2剤併用レジメンまたは単剤治療レジメンと比較して、SARS-CoV-2に対して極めて驚くべき有意な相乗的抗ウイルス効果を示し、優れたEC50レベルが達成され、抗ウイルス相乗効果が他の併用薬物レジメンよりも有意に優れていたことである。
【0199】
実施例5:Anticov-1の細胞毒性研究
【0200】
Vero E6細胞を96ウェルプレートに播種し、5%CO2/37℃のインキュベータ内で24時間培養した。Anticov-1を96ウェルプレートにそれぞれ、20μM、10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.63μM、0.31μMおよび0.16μMの濃度で添加し、対照ウェルとしてDMEM培地を添加した。同時に、DMEM培地を添加したが細胞を播種していないウェルをブランクウェルとして使用した。24時間後および48時間後、各濃度でのVero E6細胞に対する細胞傷害効果(Cytotoxic Effect)がそれぞれ観察された(結果をそれぞれ図3(a)、図3(b)に示す)。結果は、24時間または48時間のインキュベーション後、少なくとも5μMおよびそれ未満の濃度のAnticov-1試験製品について明らかな細胞傷害は観察されず、Vero E6細胞におけるAnticov-1のCC50は≧5μMであることを示している。
【0201】
72時間のインキュベーション後、Vero E6細胞に及ぼすAnticov-1の細胞増殖抑制効果を試験した。96ウェルプレートにCCK-8溶液10μLを添加し、1時間後にマイクロプレートリーダを使用して主波長450nmでO.D.値を測定した。各濃度におけるAnticov-1の細胞阻害率を算出したところ、Vero E6細胞におけるAnticov-1のAP50(50%抗増殖効果の濃度)は1.988μMであった。
【0202】
実施例6:ラットにおけるAnticov-1錠剤のPK
【0203】
実験薬物Anticov-1錠剤の仕様:錠剤当たりNTZ111mg/ATQ111mg/RBV33mg。
【0204】
ラットにおける等価用量をヒトにおける臨床用量に従って変換し、5つの実験用量群を設計した(詳細については表2を参照されたい)。これらのうち、第4群は3錠の臨床投与に従って変換し、残りの実験群は4錠の臨床投与に従って変換した。
【表2】
【0205】
健常SDラットに単回用量を投与し、血液採取計画に従って採血した。サンプル処理、分析およびデータ処理の後、各群の血漿濃度-時間曲線をそれぞれ描いた。ラットにおける各群の薬剤の薬物動態パラメータを、WinNonlin 6.1ソフトウェアによって計算した。
【0206】
第1群、第4群および第5群における単回投与後のNTZ血漿濃度の変化を図4に示す。46.6mg/kgの用量で単独で投与されたNTZ(第1群)のNTZ血漿濃度と、同じ用量で組み合わせて投与されたNTZ(第5群)のNTZ血漿濃度との間に明らかな差はない。経時的な血漿濃度の全体的な変化傾向に有意差はない。
【0207】
第2群、第4群および第5群における単回投与後のATQ血漿濃度の変化を図5に示す。経時的な血漿濃度の全体的な変化傾向に有意差はなく、その中でATQ血漿濃度は、ATQ単独投与の16~24時間後に減少傾向を示し、ATQ血漿濃度は、組み合わせ投与の16~24時間後に平坦または上昇傾向を示す。すべての実験群において、単独で投与されたATQの曝露レベル(AUC0~24h)は、同じ用量で組み合わせて投与された曝露レベルと同様であり、曝露レベルは、組み合わせ投与用量が減少するにつれて減少する。
【0208】
第3群、第4群および第5群における単回投与後のRBV血漿濃度の変化を図6に示す。ニタゾキサニドおよびアトバコンの結果と比較して、投与後0.5~4時間以内に、13.9mg/kgで単独で投与されたRBV血漿濃度(第3群)は、同じ用量で組み合わせて投与されたRBV血漿濃度(第5群)よりも高く、10.4mg/kgで組み合わせて投与されたRBV血漿濃度(第4群)よりも高い。すべての実験群において、単独で投与されたRBVの曝露レベル(AUC0~24h)は、同じ用量での組み合わせ投与の曝露レベルよりもわずかに高く、曝露レベルは、組み合わせ投与の用量が減少するにつれてさらに減少した。
【0209】
全体として、ラットでのインビボPK実験の結果は、3剤併用レジメンが、単独で投与された各有効成分のPKにほとんど影響を及ぼさず、各薬物の血漿濃度レベルは、単回投与の少なくとも4時間後にほぼ同じであり、組み合わせ投与は、単剤治療と比較して、16時間後に特定の薬物(例えばATQ)の血漿濃度を維持する上で有利でさえあることを示している。
【0210】
抗ウイルス薬物の有効性を評価するために、主に薬物のウイルス阻害活性(EC50)と血漿濃度がEC50に達し得るかどうかとを比較することによっても測定される。血漿濃度がEC50よりもはるかに高い場合、それは薬物の抗ウイルス臨床効果が期待できることを意味する。薬物の血漿濃度がEC50に達することができない場合、EC50値がいくら低くても、臨床的意義はない。現在開発中または承認されている抗新型コロナウイルス薬(Pfizer社のパキロビッドおよびMerck社のモルヌピラビル)と比較して、Anticov-1には多くの利点がある。抗新型コロナウイルスの効果における明らかな利点を以下の表3に示す。本発明の抗コロナウイルス薬の有効成分は、良好な薬物動態特性を有し、薬物を服用した後、血漿濃度は、パキロビッドまたはモルヌピラビルよりもはるかに高い数十倍の新型コロナウイルス阻害の有効量を超え続けることができる。
【表3】
a.Owen et al.,Science,2021;*p-糖タンパク質阻害剤CP-100356と組み合わせたプロテアーゼ阻害剤PF-07321332のEC50は0.074μMであり、単独投与したPF-07321332のEC50は4.48μMである
b.ラゲブリオの製品特性のまとめ
【0211】
実施例7:抗炎症試験:ヒト血液細胞におけるSTAT3のIL-6媒介活性化の遮断
【0212】
Anticov-1をヒト骨髄腫細胞U266で共インキュベートし、IL-6を使用して過剰な炎症を誘導し、pSTAT3およびSTAT3の発現を測定した。
【0213】
試験結果を図8に示すが、Anticov-1により処置されたU266細胞のリン酸化STAT3(pSTAT3)レベルは、IL-6により誘導されない対照群のレベルと同様またはそれ未満である;Anticov-1処置なしでIL-6によって直接誘導されたU266細胞におけるpSTAT3の発現レベルと比較して、前者におけるpSTAT3の発現レベルは、3時間後および6時間後に後者におけるpSTAT3の発現レベルの約4分の1にすぎない。結果は、Anticov-1がSTAT3の活性化を有意に阻害し、それによって炎症性ストームを阻害できることを示唆している。
【0214】
実施例8:抗炎症試験:IL-6によって媒介されるヒト血液細胞におけるTNF-αの放出を遮断する
【0215】
Anticov-1をヒト骨髄腫細胞U266で共インキュベートした後、IL-6を使用して過剰な炎症を誘導し、TNF-αの発現を決定した。
【0216】
試験結果を図9に示す。Anticov-1で2時間処置した細胞におけるTNF-αの発現は、IL-6誘導のない対照群の発現と著しくは異ならないか、またはそれよりも低い。しかしながら、Anticov-1で処置しなかった細胞における3時間および6時間でのTNF-αの発現レベルは、Anticov-1処置後のTNF-αの発現レベルのそれぞれ約3倍および4倍である。結果は、Anticov-1が炎症性因子の放出を有意に阻害することができ、炎症性ストームを効果的に阻害できることを証明している。
【0217】
実施例9:広域スペクトル新型コロナウイルス株に対するAnticov-1の阻害活性
【0218】
主な流行性新型コロナウイルス株に対するAnticov-1の阻害活性を評価するために、Vero E6細胞を5000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、一晩培養した。Anticov-1を20μM、10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.63μM、0.31μMおよび0.16μMの濃度で96ウェルプレートに添加し、それぞれ2時間インキュベートする。その後、100μLの野生株WIV04、ベータ変異体、デルタ変異体またはオミクロン変異体毒素(各株の合計100 TCID50)をそれぞれ添加して、2時間感染させた(DMEM培地をウイルスなしのブランク対照ウェルに添加した)。2時間後、ウイルス-薬物混合物を除去し、薬物含有培地をインキュベーションのために再添加した。72時間後、細胞上清を回収した。細胞プレートをPBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドに浸し、固定した。細胞上清を回収し、逆転写リアルタイム定量PCR(RT-qPCR)のためにウイルスRNAを抽出した。異なる濃度での各SARS-CoV-2株に対するAnticov-1の阻害率を計算し、阻害率および薬物濃度の用量-応答曲線をGraphPad Prism 6ソフトウェアによって処理および描画し、結果を図10に示す。
【0219】
結果は、0.63μMの濃度で、Anticov-1がオミクロン株およびデルタ株に対して>95%の阻害率を有し、ベータ株およびWIV04株に対する阻害率がそれぞれ78.57%および87.97%であることを示した。1.25μMの濃度で、Anticov-1は、4株すべてに対して>99%の阻害率を達成する。Anticov-1は、すべての主要な流行性ウイルス株、特に現在の主要な流行性オミクロン株に対して強い阻害効果を有し、デルタ株および野生型よりも高い阻害活性さえ有する。本発明の医薬組成物または併用薬物レジメンは、広域スペクトル抗SARS-CoV-2特異的治療効果を有することが改めて証明される。
【0220】
選択指数
【0221】
Vero E6細胞におけるAnticov-1試験サンプルCC50および抗4種ウイルス株のEC50によれば、Anticov-1抗4種ウイルス株の選択指数(SI)をそれぞれ算出することができ、その結果は表4のとおりである。
【0222】
【表4】
【0223】
結果は、Anticov-1が異なる新型コロナウイルス変異体株に対して広い安全性治療指数を有することを示しており、その臨床使用がより広い安全性範囲を有することを示唆している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】