(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】グルコキナーゼ活性化剤としてのピロリドン誘導体のプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
C07D 403/12 20060101AFI20240905BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240905BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240905BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240905BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/4155 20060101ALI20240905BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20240905BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61P3/10
A61P3/04
A61P9/12
A61P3/00
A61K31/4155
C07D401/14
A61K31/4439
C07D405/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516664
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2022118947
(87)【国際公開番号】W WO2023040937
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111079620.5
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211093895.9
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518150219
【氏名又は名称】フア・メディシン・(シャンハイ)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HUA MEDICINE (SHANGHAI) LTD.
【住所又は居所原語表記】275 Ai Di Sheng Road,Pudong,Shanghai 201203,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】タン, フーシン
(72)【発明者】
【氏名】シュア, ジン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, リー
(72)【発明者】
【氏名】リュ, グァンファ
(72)【発明者】
【氏名】ジン, シャンルー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC36
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA14
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA42
4C086ZA70
4C086ZC21
4C086ZC35
(57)【要約】
本開示は、一般式(I)の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩;一般式(I)の化合物を含む医薬組成物;ならびに真性糖尿病および関連する症状の治療における一般式(I)の化合物またはその医薬組成物の使用を提供する。
[化1]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【化1】
(式中、
*はキラル中心を示し、
R
1はH、-C(O)R
6、-C(O)OR
6、-C(O)NR
7R
8、-S(O)
mR
6、-S(O)
mOR
6、または-S(O)
mNR
7R
8より選択され、
R
2は-C(O)R
3、-C(O)OR
3、-C(O)NR
4R
5、-S(O)
mR
3、-S(O)
mOR
3、または-S(O)
mN
4R
5より選択されるか、
またはR
1およびR
2は結合して、-CHR
d-、-SiR
dR
e-、-C(O)-、-S(O)
1-2-、-P(O)OR
d-、または-CR
dR
e-CR
dR
e-を形成し、
R
3は独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6ハロアルキル、C
3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C
6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、1、2、3、4、または5個のR基で置換されていてもよく、
R
4およびR
5は独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、またはC
1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR
4およびR
5はN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
R
6は独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、またはC
1-6ハロアルキルより選択され、
R
7およびR
8は独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、またはC
1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR
7およびR
8はN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
Rは独立してH、-L-ハロゲン、-L-CN、-L-NO
2、-L-OR
a、-L-SR
a、-L-NR
bR
c、-L-C(O)OR
a、-L-C(O)NR
bR
c、-L-S(O)
mOR
a、-L-S(O)
mNR
bR
c、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6ハロアルキル、C
3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、または天然アミノ酸の側鎖より選択され、
ここで、mは1または2であり、
R
aは独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6ハロアルキル、C
3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C
6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、
R
bおよびR
cは独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6ハロアルキル、C
3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C
6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択されるか、あるいはR
bおよびR
cはN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
R
dおよびR
eは独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、またはC
1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR
dおよびR
eはC原子とともに=O、=S、C
3-7シクロアルキル、または3~7員ヘテロシクリルを形成し、
Lは化学結合、-C
1-6アルキレン-、-C
2-6アルケニレン-、または-C
2-6アルキニレン-より選択される)
【請求項2】
上記化合物は以下の構造であり、
【化2】
式中、
R
1はH、-C(O)R
6、-C(O)OR
6、または-C(O)NR
7R
8より選択され、
R
2は-C(O)R
3、-C(O)OR
3、または-C(O)NR
4R
5より選択されるか、
またはR
1およびR
2は結合して、-SiR
dR
e-、-C(O)-、-S(O)
1-2-、-P(O)OR
d-、または-CR
dR
e-CR
dR
e-を形成し、
R
3は独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、またはC
1-6ハロアルキルより選択され、
R
4およびR
5は独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、またはC
1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR
4およびR
5はN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
R
6は独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、またはC
1-6ハロアルキルより選択され、
R
7およびR
8は独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、またはC
1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR
7およびR
8はN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
R
dおよびR
eは独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、またはC
1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR
dおよびR
eはC原子とともに=O、=S、C
3-7シクロアルキル、または3~7員ヘテロシクリルを形成する、請求項1に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項3】
R
1はH、-COMe、または-COOEtより選択され、
R
2は-COMe、-COOEt、または-CONHMeより選択されるか、
またはR
1およびR
2は結合して、-CHMe-、-SiMe
2-、-C(O)-、-S(O)
1-2-、または-P(O)OEt-を形成する、請求項2に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項4】
上記化合物は、以下の構造であり、
【化3】
式中、
R
3はC
3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C
6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、1、2、3、4、または5個のR基で置換されていてもよく、
Rは独立してH、-L-ハロゲン、-L-CN、-L-NO
2、-L-OR
a、-L-SR
a、-L-NR
bR
c、-L-C(O)OR
a、-L-C(O)NR
bR
c、-L-S(O)
mOR
a、-L-S(O)
mNR
bR
c、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、C
2-6アルケニル、またはC
2-6アルキニルより選択され、
ここで、mは1または2であり、
R
aは独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6ハロアルキル、C
3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C
6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、
R
bおよびR
cは独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6ハロアルキル、C
3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C
6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択されるか、あるいはR
bおよびR
cはN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
Lは化学結合、-C
1-6アルキレン-、-C
2-6アルケニレン-、または-C
2-6アルキニレン-より選択される、請求項1に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項5】
R
3はC
6-10アリールまたは5~6員ヘテロアリールより選択され、1、2、3、4、または5個のR基で置換されていてもよく、
Rは独立してH、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OH、-SH、-NH
2、-C(O)OH、-C(O)NH
2、-S(O)
mOH、-S(O)
mNH
2、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、C
2-6アルケニル、またはC
2-6アルキニルより選択され、
ここで、mは1または2である、請求項4に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項6】
R
3はフェニル、ナフチル、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、またはテトラジニルより選択され、1、2、3、4、または5個のR基で置換されていてもよく、
Rは独立してH、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OH、-SH、-NH
2、-C(O)OH、-C(O)NH
2、-S(O)
mOH、または-S(O)
mNH
2より選択され、
ここで、mは1または2である、請求項4に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項7】
R
3はフェニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、またはテトラジニルより選択され、1、2、または3個のR基で置換されていてもよく、
Rは独立してH、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OH、-SH、または-NH
2より選択される、請求項4に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項8】
上記化合物は以下の構造であり、
【化4】
式中、
R
9はH、-L-ハロゲン、-L-CN、-L-NO
2、-L-OR
a、-L-SR
a、-L-NR
bR
c、-L-C(O)OR
a、-L-C(O)NR
bR
c、-L-S(O)
mOR
a、-L-S(O)
mNR
bR
c、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6ハロアルキル、C
3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、または天然アミノ酸の側鎖より選択され、
ここで、mは1または2であり、
R
aは独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6ハロアルキル、C
3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C
6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、
R
bおよびR
cは独立してH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6ハロアルキル、C
3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C
6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択されるか、あるいはR
bおよびR
cはN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
Lは化学結合、-C
1-6アルキレン-、-C
2-6アルケニレン-、または-C
2-6アルキニレン-より選択される、請求項1に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項9】
R
9はH、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6ハロアルキル、C
3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C
6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、または天然アミノ酸の側鎖より選択される、請求項8に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項10】
R
9は天然アミノ酸のグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、メチオニン、セリン、トレオニン、システイン、プロリン、ヒスチジン、およびアルギニンの側鎖より選択される、請求項8に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項11】
R
9はアラニン側鎖(Me)またはバリン側鎖(iPr)である、請求項8に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項12】
上記化合物は、
【化5】
より選択される、請求項1に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項13】
上記化合物の医薬的に許容可能な塩は、
【化6】
より選択される、請求項12に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩;および任意で1種以上の医薬的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖症、食後高血糖、過体重、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性、および代謝症候群より選択される1種以上の疾患の治療または予防のための薬剤の製造における請求項1~13の何れか一項に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは請求項14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項16】
I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖症、食後高血糖、過体重、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性、および代謝症候群より選択される1種以上の疾患の治療または予防に使用するための請求項1~13の何れか一項に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖症、食後高血糖、過体重、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性、および代謝症候群より選択される1種以上の疾患を治療または予防する方法であって、
請求項1~13の何れか一項に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは請求項14に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項18】
糖尿病を治癒させ、糖尿病の寛解または退行を誘導するための薬剤の製造における請求項1~13の何れか一項に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは請求項14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
糖尿病を治癒させ、糖尿病の寛解または退行を誘導する使用のための請求項1~13の何れか一項に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項20】
糖尿病を治癒させ、糖尿病の寛解または退行を誘導する方法であって、
請求項1~13の何れか一項に記載の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは請求項14に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願に対する相互参照>
本PCT出願は、2021年9月15日に提出された中国特許出願第202111079620.5号および2022年9月8日に提出された中国特許出願第202211093895.9号の優先権を主張するものである。これら中国特許出願第202111079620.5号および中国特許出願第202211093895.9号は、本出願の開示の一部として引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
<技術分野>
本開示は、グルコキナーゼ活性化剤(GKA)としてのピロリドン誘導体のプロドラッグ、その医薬組成物、ならびに真性糖尿病および関連する疾患の治療におけるこれらの使用に関する。より具体的には、本開示は、HMS5552の誘導体、これを含む医薬組成物、ならびに真性糖尿病および関連する疾患の治療のための薬剤の製造におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
真性糖尿病は世界中で広まっている疾患となっている。中国糖尿病学会(CDS)の第24回全国会議のデータによれば、中国は世界の中で糖尿病を患う患者の集団が最も大きく、約12980万人の成人が糖尿病を患っている。糖尿病を患う患者の90%超を占めるII型糖尿病、すなわちインスリン非依存性真性糖尿病(NIDDM)は、インスリン分泌障害およびインスリン抵抗性により生じる人体での血糖恒常性の不均衡による高血糖性の慢性代謝機能不全である。
【0004】
グルコキナーゼ(GK)の主な役割は、人体での血糖バランスを安定化させることである。GKは、血糖恒常性におけるグルコースセンサーとして作用するが、血糖の変化を感知し、メッセンジャーグルコース制御ホルモン、インスリン、グルカゴン、およびGLP-1の分泌を調節し、人体での血糖恒常性の調節のための感知系を構成する。GKは主に肝臓に分布し、そこで血糖の上昇に応じて素早くグルコースを貯蔵用の肝臓グリコーゲンに変換しつつ、血糖値を低下させる。グルコース摂取時のグルコース貯蔵および断食時のグルコース供給は、グルコース制御ホルモンによって制御され、人体での血糖恒常性の調節を構成している。
【0005】
グルコキナーゼの機能および発現が損なわれ、グルコースセンサーが機能不全となった結果、グルコース制御ホルモンの早期分泌の機能不全が起こり、グルコースの取り込みおよび放出に影響し、結果として食後高血糖および食前低血糖が生じる。グルコース制御ホルモンの異常シグナル伝達により、グルコースの取り込みおよび放出の実行システムにおいて主要タンパク質の異常な機能および発現が起こり、異常な動作状態を形成し、II型糖尿病に至る。
【0006】
グルコキナーゼ活性化剤は、標的としてのGKの特性に対して開発されたものであり、グルコース濃度の変化に対するα、β、およびL細胞の感度を高めることにより、グルコース調節のためのインスリン、グルカゴン、およびGLP-1の分泌機能を向上させることができる。
【0007】
WO2009/127546A1には、ピロリドン系のグルコキナーゼ活性化剤、特に(S)-2-[4-(2-クロロ-フェノキシ)-2-オキソ-2,5-ジヒドロ-ピロール-1-イル]-4-メチル-ペンタン酸[1-((R)-2,3-ジヒドロキシ-プロピル)-1H-ピラゾール-3-イル]-アミド(ドルザグリアチン(またはHMS5552)とも言う)が開示されている。
【0008】
人体での血糖恒常性の調節におけるグルコキナーゼ活性化剤の重要な役割という観点から、この分野でのグルコキナーゼ活性化剤に対する需要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の本発明者らは、HMS5552の誘導体である化合物群を開発した。これら化合物は、インビボ(特に、小腸)でHMS5552に効率的に変換する(例えば、酵素による変換および/または化学的変換を受ける)ことができ、よって、循環系に吸収されて代謝症候群疾患のいくつかを治療または予防するという目的を達成する。あるいは、本明細書で開示される化合物は、胃液中で安定であるということで特徴付けられ、腸細胞および小腸細胞において効率的にHMS5552に変換することが可能である。また、本明細書で開示されるHMS5552の誘導体は物理化学的安定性および溶解性が良好である。
【0010】
本開示は、一般式(I)の化合物、同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその医薬的に許容可能な塩に関する。
【化1】
【0011】
式中、
【0012】
*はキラル中心を示し、
【0013】
R1はH、-C(O)R6、-C(O)OR6、-C(O)NR7R8、-S(O)mR6、-S(O)mOR6、または-S(O)mNR7R8より選択され、
【0014】
R2は-C(O)R3、-C(O)OR3、-C(O)NR4R5、-S(O)mR3、-S(O)mOR3、または-S(O)mN4R5より選択されるか、
【0015】
またはR1およびR2は結合して、-CHRd-、-SiRdRe-、-C(O)-、-S(O)1-2-、-P(O)ORd-、または-CRdRe-CRdRe-を形成し、
【0016】
R3は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、1、2、3、4、または5個のR基で置換されていてもよく、
【0017】
R4およびR5は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR4およびR5はN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0018】
R6は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択され、
【0019】
R7およびR8は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR7およびR8はN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0020】
Rは独立してH、-L-ハロゲン、-L-CN、-L-NO2、-L-ORa、-L-SRa、-L-NRbRc、-L-C(O)ORa、-L-C(O)NRbRc、-L-S(O)mORa、-L-S(O)mNRbRc、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、または天然アミノ酸の側鎖より選択され、
【0021】
ここで、mは1または2であり、
【0022】
Raは独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、
【0023】
RbおよびRcは独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択されるか、あるいはRbおよびRcはN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0024】
RdおよびReは独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはRdおよびReはC原子とともに=O、=S、C3-7シクロアルキル、または3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0025】
Lは化学結合、-C1-6アルキレン-、-C2-6アルケニレン-、または-C2-6アルキニレン-より選択される。
【0026】
本開示はまた、治療有効量の本開示の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、および任意で1種以上の医薬的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0027】
本開示はまた、治療有効量の本開示の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、および少なくとも1種の他の血糖降下剤を含む合剤に関する。
【0028】
本開示はまた、I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖症、食後高血糖、過体重、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性、および代謝症候群より選択される1種以上の疾患の治療または予防のための薬剤の製造における本開示の化合物、あるいは同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその医薬的に許容可能な塩、あるいは本開示の医薬組成物の使用に関する。
【0029】
本開示はまた、I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖症、食後高血糖、過体重、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性、および代謝症候群より選択される1種以上の疾患の治療または予防に使用するための本開示の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは本開示の医薬組成物に関する。
【0030】
本開示はまた、I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖症、食後高血糖、過体重、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性、および代謝症候群より選択される1種以上の疾患を治療または予防する方法であって、本開示の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは本開示の医薬組成物を対象に投与することを含む方法に関する。
【0031】
本開示はまた、糖尿病を治癒させ、糖尿病の寛解または退行を誘導するための薬剤の製造における本開示の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは本開示の医薬組成物の使用に関する。
【0032】
本開示はまた、糖尿病を治癒させ、糖尿病の寛解または退行を誘導する使用のための本開示の化合物、またはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは本開示の医薬組成物に関する。
【0033】
本開示はまた、糖尿病を治癒させ、糖尿病の寛解または退行を誘導する方法であって、本開示の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは本開示の医薬組成物を対象に投与することを含む方法に関する。
【0034】
定義
【0035】
特段断りがなければ、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有するが、矛盾がある場合、本明細書の定義が優先する。
【0036】
明細書および請求項で用いられるように、文脈において明確に規定されない限り、単数形の「a」、「an」、および「the(said)」は複数形を含む。
【0037】
明細書および請求項で用いられる成分量に関するすべての数値または数的表現は、すべての場合で「約」により修飾されていると理解されるべきである。量または数値範囲に言及する場合、用語「約」は、言及された量または数値範囲が実験による変動性(または統計的な実験誤差)内の近似値であることを意味する。したがって、その量または数値範囲は、例えば、言及された量または数値範囲の±5%の間で変動し得る。
【0038】
値の範囲が示される場合、その範囲内のそれぞれの値および下位範囲を包含することが意図される。例えば、「C1-6アルキル」はC1、C2、C3、C4、C5、C6、C1-6、C1-5、C1-4、C1-3、C1-2、C2-6、C2-5、C2-4、C2-3、C3-6、C3-5、C3-4、C4-6、C4-5、およびC5-6アルキルを含むことが意図される。
【0039】
「C1-6アルキル」は1~6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基のラジカルを言う。実施形態によっては、C1-4アルキルが選択肢である。C1-6アルキルの例としてはメチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、iso-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、iso-ブチル(C4)、n-ペンチル(C5)、3-ペンチル(C5)、ペンチル(C5)、ネオペンチル(C5)、3-メチル-2-ブチル(C5)、tert-ペンチル(C5)、およびn-ヘキシル(C6)が挙げられる。また、用語「C1-6アルキル」は、1つ以上(例えば、1、2、3、または4個)の炭素原子がヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、ケイ素、リン)で置換されたヘテロアルキルを含む。アルキル基は、1つ以上の置換基、例えば、1~5個の置換基、1~3個の置換基、または1個の置換基で置換されていてもよい。アルキルの従来の略語としてはMe(-CH3)、Et(-CH2CH3)、iPr(-CH(CH3)2)、nPr(-CH2CH2CH3)、n-Bu(-CH2CH2CH2CH3)、またはi-Bu(-CH2CH(CH3)2)が挙げられる。
【0040】
「C2-6アルケニル」は、2~6個の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖状または分岐状の炭化水素基のラジカルを言う。実施形態によっては、C2-4アルケニルが選択肢である。C2-6アルケニルの例としてはビニル(C2)、1-プロペニル(C3)、2-プロペニル(C3)、1-ブテニル(C4)、2-ブテニル(C4)、ブタジエニル(C4)、ペンテニル(C5)、ペンタジエニル(C5)、ヘキセニル(C6)などが挙げられる。また、用語「C2-6アルケニル」は、1つ以上(例えば、1、2、3、または4個)の炭素原子がヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、ケイ素、リン)によって置換されたヘテロアルケニルを含む。上記アルケニル基は、1つ以上の置換基、例えば、1~5個の置換基、1~3個の置換基、または1個の置換基で置換されていてもよい。
【0041】
「C2-6アルキニル」は、2~6個の炭素原子、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合、および任意で1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する直鎖状または分岐状の炭化水素基のラジカルを言う。実施形態によっては、C2-4アルキニルが選択肢である。C2-6アルキニルの例としてはエチニル(C2)、1-プロピニル(C3)、2-プロピニル(C3)、1-ブチニル(C4)、2-ブチニル(C4)、ペンチニル(C5)、ヘキシニル(C6)などが挙げられるが、これらに限定されない。また、用語「C2-6アルキニル」は、1つ以上(例えば、1、2、3、または4個)の炭素原子がヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、ケイ素、リン)で置換されたヘテロアルキニルを含む。上記アルキニル基は、1つ以上の置換基、例えば、1~5個の置換基、1~3個の置換基、または1個の置換基で置換されていてもよい。
【0042】
「C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、またはC2-6アルキニレン」は、上で規定したように「C1-6アルキル、C2-6アルケニル、またはC2-6アルキニル」の二価の基を言う。
【0043】
「C1-6アルキレン」は、C1-6アルキルの別の水素を除去することによって形成された二価の基を言い、置換されていてもいなくてもよい。実施形態によっては、C1-4アルキレンも選択肢である。無置換のアルキレン基としてはメチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、ブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)、ペンチレン(-CH2CH2CH2CH2CH2-)、ヘキシレン(-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-)などが挙げられるが、これらに限定されない。置換されたアルキレン基(1つ以上のアルキル(メチル)基で置換されたものなど)の例としては置換されたメチレン(-CH(CH3)-、-C(CH3)2-)、置換されたエチレン(-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH2C(CH3)2-)、置換されたプロピレン(-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH2CH2CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2CH2-、-CH2C(CH3)2CH2-、-CH2CH2C(CH3)2-)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
「C2-6アルケニレン」は、C2-6アルケニル基の別の水素が除去されてアルケニレンの二価のラジカルを与えたものを言い、置換されていてもいなくてもよい。実施形態によっては、C2-4アルケニレンも選択肢である。例示的な無置換のアルケニレン基としてはエテニレン(-CH=CH-)およびプロペニレン(例えば、-CH=CHCH2-、-CH2-CH=CH-)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な置換されたアルケニレン基(1つ以上のアルキル(メチル)基で置換されたものなど)としては置換されたエテニレン(-C(CH3)=CH-、-CH=C(CH3)-)、置換されたプロペニレン(例えば、-C(CH3)=CHCH2-、-CH=C(CH3)CH2-、-CH=CHCH(CH3)-、-CH=CHC(CH3)2-、-CH(CH3)-CH=CH-、-C(CH3)2-CH=CH-、-CH2-C(CH3)=CH-、-CH2-CH=C(CH3)-)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
「C2-6アルキニレン」は、C2-6アルキニル基の別の水素が除去されてアルキニレンの二価のラジカルを与えたものを言い、置換されていてもいなくてもよい。実施形態によっては、C2-4アルキニレンも選択肢である。例示的なアルキニレン基としてはエチニレン(-C≡C-)、置換または無置換のプロピニレン(-C≡CCH2-)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
「ハロ」または「ハロゲン」はフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、およびヨウ素(I)を言う。
【0047】
よって、「C1-6ハロアルキル」は1つ以上のハロゲンで置換された上記の「C1-6アルキル」を言う。実施形態によっては、C1-4ハロアルキルも選択肢であり、さらにC1-2ハロアルキルも選択肢である。例示的なハロアルキル基としては-CF3、-CH2F、-CHF2、-CHFCH2F、-CH2CHF2、-CF2CF3、-CCl3、-CH2Cl、-CHCl2、2,2,2-トリフルオロ-1,1-ジメチル-エチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記ハロアルキルは、任意の利用可能な結合点にて、例えば、1~5個の置換基、1~3個の置換基、または1個の置換基で置換されていてもよい。
【0048】
「C3-10シクロアルキル」は、3~10個の環炭素原子およびゼロ個のヘテロ原子を有する非芳香族環状炭化水素基のラジカルを言う。実施形態によっては、C3-7シクロアルキルおよびC3-6シクロアルキルも選択肢であり、さらにC5-6シクロアルキルも選択肢である。また、上記シクロアルキルは、本明細書で記載するシクロアルキルが1つ以上のアリール基またはヘテロアリール基と縮合し、結合点がシクロアルキル環状にある環系を含む。この場合、炭素原子数は、引き続きシクロアルキル系の炭素原子数を表している。例示的なシクロアルキル基としてはシクロプロピル(C3)、シクロプロペニル(C3)、シクロブチル(C4)、シクロブテニル(C4)、シクロペンチル(C5)、シクロペンテニル(C5)、シクロヘキシル(C6)、シクロヘキセニル(C6)、シクロヘキサジエニル(C6)、シクロヘプチル(C7)、シクロヘプテニル(C7)、シクロヘプタジエニル(C7)、シクロヘプタトリエニル(C7)などが挙げられるが、これらに限定されない。上記シクロアルキルは、1つ以上の置換基、例えば、1~5個の置換基、1~3個の置換基、または1個の置換基で置換されていてもよい。
【0049】
「C3-10ハロシクロアルキル」は、1つ以上のハロゲンで置換された上記の「C3-10シクロアルキル」を言う。
【0050】
「3~12員ヘテロシクリル」は、環炭素原子および1~5個の環ヘテロ原子を有し、上記ヘテロ原子のそれぞれが独立して窒素、酸素、硫黄、ホウ素、リン、およびケイ素より選択される3~12員非芳香環系のラジカルを言う。1つ以上の窒素原子を含むヘテロシクリルでは、原子価が許す限り、結合点は炭素原子または窒素原子であり得る。実施形態によっては、環炭素原子および1~5個の環ヘテロ原子を有する4~12員非芳香環系のラジカルである4~12員ヘテロシクリルが選択肢である。実施形態によっては、環炭素原子および1~5個の環ヘテロ原子を有する3~10員非芳香環系のラジカルである3~10員ヘテロシクリルが選択肢である。実施形態によっては、環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する3~7員非芳香環系のラジカルである3~7員ヘテロシクリルが選択肢である。環炭素原子および1~3個の環ヘテロ原子を有する3~6員非芳香環系のラジカルである3~6員ヘテロシクリルが選択肢である。環炭素原子および1~3個の環ヘテロ原子を有する4~8員非芳香環系のラジカルである4~8員ヘテロシクリルが選択肢である。環炭素原子および1~3個の環ヘテロ原子を有する5~6員非芳香環系のラジカルである5~6員ヘテロシクリルでもあり得る。上記ヘテロシクリルはまた、上記のヘテロシクリルが1つ以上のシクロアルキル基と縮合し、結合点がシクロアルキル環上にあるか、あるいは上記のヘテロシクリルが1つ以上のアリール基またはヘテロアリール基と縮合し、結合点がヘテロシクリル環上にある環系を含む。そのような場合、環員数は引き続きヘテロシクリル環系における環員数を表す。1個のヘテロ原子を含む例示的な3員ヘテロシクリル基としてはアジリジニル、オキシラニル、およびチオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な4員ヘテロシクリル基としてはアゼチジニル、オキセタニル、およびチエタニルが挙げられるが、これらに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロシクリル基としてはテトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチエニル、ピロリジニル、ジヒドロピロリル、およびピロリル-2,5-ジオンが挙げられるが、これらに限定されない。2個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロシクリル基としてはジオキソラニル、オキサスルフラニル、ジスルフラニル、およびオキサゾリジン-2-オンが挙げられるが、これらに限定されない。3個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロシクリル基としてはトリアゾリニル、オキサジアゾリニル、およびチアジアゾリニルが挙げられるが、これらに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロシクリル基としてはピペリジル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピリジル、およびチアニルが挙げられるが、これらに限定されない。2個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロシクリル基としてはピペラジニル、モルホリニル、ジチアニル、およびジオキサニルが挙げられるが、これらに限定されない。3個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロシクリル基としてはトリアジナニルが挙げられるが、これに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な7員ヘテロシクリル基としてはアゼパニル、オキセパニル、およびチエパニルが挙げられるが、これらに限定されない。C6アリールと縮合した例示的な5員ヘテロシクリル基(本明細書では、5,6-ビシクリックヘテロシクリルとも言う)としてはインドリニル、イソインドリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリノニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。C6アリールと縮合した例示的な6員ヘテロシクリル基(本明細書では、6,6-ビシクリックヘテロシクリルとも言う)としてはテトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記ヘテロシクリルは、1つ以上の置換基、例えば、1~5個の置換基、1~3個の置換基、または1個の置換基で置換されていてもよい。
【0051】
「C6-10アリール」は、6~10個の環炭素原子およびゼロ個のヘテロ原子を有する(例えば、環状配列に6または10個の共有π電子を有する)単環状または多環状(例えば、二環状)4n+2芳香環系のラジカルを言う。実施形態によっては、上記アリール基は、6個の環炭素原子を有する(「C6アリール」、例えば、フェニル)。実施形態によっては、上記アリール基は10個の環炭素原子を有する(「C10アリール」、例えば、ナフチル、例えば、1-ナフチルおよび2-ナフチル)。上記アリール基はまた、上記のアリール環が1つ以上のシクロアルキル基またはヘテロシクリル基と縮合し、結合点がアリール環上にある環系を含む。その場合、炭素原子数は引き続きアリール環系の炭素原子数を表す。上記アリールは、1つ以上の置換基、例えば、1~5個の置換基、1~3個の置換基、または1個の置換基で置換されていてもよい。
【0052】
「5~10員ヘテロアリール」は、環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有し、各ヘテロ原子が独立して窒素、酸素、および硫黄より選択される5~10員単環状または二環状4n+2芳香環系(例えば、環状配列に6または10個の共有π電子を有する)のラジカルを言う。1つ以上の窒素原子を含むヘテロアリール基では、原子価が許す限り、結合点は炭素原子または窒素原子であり得る。ヘテロアリール二環系は、1つまたは2つの環に1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロアリールはまた、上記のヘテロアリール環が1つ以上のシクロアルキル基またはヘテロシクリル基と縮合し、結合点がヘテロアリール環上にある環系を含む。この場合、炭素原子数は引き続きヘテロアリール環系の炭素原子数を表す。実施形態によっては、環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する5~6員単環状または二環状4n+2芳香環系のラジカルである5~6員ヘテロアリール基も選択肢である。1個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基としてはピロリル、フリル、およびチエニルが挙げられるが、これらに限定されない。2個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基としてはイミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、およびイソチアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。3個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基としてはトリアゾリル、オキサジアゾリル(1,2,4-オキサジアゾリルなど)、およびチアジアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。4個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基としてはテトラゾリルが挙げられるが、これに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基としてはピリジルが挙げられるが、これに限定されない。2個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基としてはピリダジニル、ピリミジニル、およびピラジニルが挙げられるが、これらに限定されない。3個または4個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基としては、それぞれトリアジニルおよびテトラジニルが挙げられるが、これらに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な7員ヘテロアリール基としてはアゼピニル、オキセピニル、およびチエピニルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な5,6-ビシクリックヘテロアリール基としてはインドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、インドリジニル、およびプリニルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な6,6-ビシクリックヘテロアリール基としてはナフチリジニル、プテリジニル、キノリル、イソキノリル、シノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、およびキナゾリニルが挙げられるが、これらに限定されない。上記ヘテロアリールは1つ以上の置換基、例えば、1~5個の置換基、1~3個の置換基、または1個の置換基で置換されていてもよい。
【0053】
あるいは、ヘテロアリール基の具体例としては、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル(4H-1,2,4-トリアゾリル、1H-1,2,3-トリアゾリル、2H-1,2,3-トリアゾリル)、ピラニル、2-フラニル、3-フラニル、2-チエニル、3-チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル(1,2,4-オキサゾリル、1,3,4-オキサゾリル、1,2,5-オキサゾリル)、チアゾリル、チアジアゾリル(1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル)、トリアジニル、またはテトラジニルが挙げられる。
【0054】
用語「天然アミノ酸」は、タンパク質の基本的な構成単位であって、生物によるタンパク質の後修飾の基礎となるものである。合計20種類の天然アミノ酸がある。また、これら基本的なアミノ酸に基づいて、生物は、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジンなど、数種の派生アミノ酸を合成することもできる。ホタルでは、D体のアミノ酸さえも合成することができる。これらのバイオ合成アミノ酸をまとめて「天然アミノ酸」と呼ぶ。天然アミノ酸は一般にL体である。最も一般的な20種類の天然アミノ酸を以下の表に示す。
【表1】
【0055】
本明細書および請求項で用いられる際、「および/または」は、関連する要素の「いずれかまたは両方」を意味する、すなわち、これらの要素は、ある場合には共に存在し、別の場合には別々に存在すると解釈すべきである。「および/または」と共に列挙された複数の要素は、同様に解釈される、すなわち、関連する要素の「1つ以上」と解釈されるべきである。この「および/または」句によって具体的に特定された要素に加えて、これらの具体的に特定された要素に関連しているか否かにかかわらず、場合によっては他の要素が存在してもよい。よって、非限定的な例として、「comprising」などのオープンエンドの言語と併用された場合、「Aおよび/またはB」への言及は、一実施形態ではAのみ(B以外の要素を含んでいてもよい)、他の実施形態ではBのみ(A以外の要素を含んでいてもよい)、さらに他の実施形態ではAおよびBの両方(他の要素を含んでいてもよい)に言及することなどができる。
【0056】
本明細書で用いられる略語は、化学、生物学、および製剤の分野における通常の意味を有する。
【0057】
本開示の一般式(I)の化合物は1つ以上の不斉中心を含み、よって、様々な立体異性体形態、例えば、エナンチオマー形態および/またはジアステレオマー形態で存在してもよい。例えば、本開示の化合物は個々のエナンチオマー、ジアステレオマー、または幾何異性体(シス異性体およびトランス異性体など)であってもよく、あるいはラセミ混合物を含む立体異性体の混合物、および1種以上の立体異性体に富む混合物の形態であってもよい。異性体は、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)や、キラル塩の形成および結晶化を含む、当業者にとって既知の方法により混合物から分離することができる。あるいは、代替えの異性体を不斉合成により調製してもよい。
【0058】
本開示はまた、プロドラッグと同等であるが、1つ以上の原子が、自然界で一般的である原子のものとは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換された、同位体で標識された化合物を含む。本開示の化合物に導入してもよい同位体としては、例えば、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、および塩素の同位体、例えば、それぞれ2H、3H、13C、11C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clが挙げられる。上記同位体および/または他の原子の他の同位体を含む本開示の化合物、そのプロドラッグ、および上記化合物またはプロドラッグの医薬的に許容可能な塩はすべて、本開示の範囲内である。放射性同位体(例えば、3Hおよび14C)を組み込んだものなど、本開示の特定の同位体標識化合物を、組織における薬物および/または基質の分布の測定に用いることができる。3Hであるトリチウム、および14C同位体である炭素-14も選択肢である。というのは、これらは調製と検出が容易であるからである。さらに、2Hである重水素などのより重い同位体で置換されることで、インビボでの半減期の延長や、投与量要件の低減など、より高い代謝安定性による治療恩恵が得られることがあり、よって、場合によっては選択肢であってもよい。本開示の一般式(I)の同位体標識化合物は、一般に、以下のスキームおよび/または実施例と調製例で開示される手順において、容易に入手可能な同位体標識試薬を用いて非同位体標識試薬を置換することにより調製することができる。
【0059】
「医薬的に利用可能な」または「医薬的に許容可能な」とは、生物学的または他の点で望ましくないものではない材料、すなわち、その材料が、何ら望ましくない生物学的効果を起こすことなく、あるいはその材料を含む組成物の何れかの他の成分と有害なかたちで相互作用することなく、個体に投与できることを意味する。
【0060】
用語「医薬的に許容可能な塩」は、生物を著しく刺激せず、化合物の生物学的活性および特性を保持している塩を言う。
【0061】
用語「医薬的に許容可能な担体」は、生物を著しく刺激せず、投与された化合物の生物学的活性および特性を無効にしない不活性成分を言う。本明細書で用いられる際、「担体」および「賦形剤」は同じ意味を有する。
【0062】
用語「治療有効量」は、所望の生物学的結果をもたらすのに十分な薬剤の量を言う。その結果は、兆候、症状、または疾患の原因の低減および/または緩和、あるいは生物学的系のその他の何らかの望ましい変化であってもよい。例えば、治療での使用のための「治療有効量」は、疾患の臨床的に有意な低減をもたらすための薬効成分として本明細書で開示される化合物を含む組成物の必要量を言う。何れの個々の場合でも、適切な「治療有効量」は通常の実験を用いて一般の当業者によって決定できる。よって、「治療有効量」という表現は、一般に、治療効果を有する活性物質の量を言う。
【0063】
本明細書で用いられる際、用語「治療する」は、用語「防ぐ」および「軽減する」と同義であり、疾患の進行を遅らせる、疾患の進行を防ぐ、かつ/または発症するもしくは発症すると予想される症状の重症度を低減することを意味することが意図される。よって、これらの用語は、存在する疾患の症状を改善する、さらなる症状を防ぐ、根底にある症状の代謝性原因を改善するまたは防ぐ、障害または疾患を阻害する、例えば、障害または疾患の発症を防ぐ、障害または疾患を軽減する、障害または疾患の退行させる、疾患または障害によって生じた状態を軽減する、あるいは疾患または障害の症状を止めることを含む。
【0064】
本明細書で用いられる際、用語「対象」は哺乳類および非哺乳類を包含する。哺乳類の例としては、これらに限定されないが、哺乳綱の何れかのメンバー:ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、および他の類人猿およびサル種、畜牛、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜動物、ウサギ、イヌ、およびネコなどの飼育動物、ラット、マウス、およびモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物などが挙げられる。非哺乳類の例としては、鳥、魚などが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の一実施形態において、上記哺乳類はヒトである。用語「対象」は確認された患者を含むが、この「対象」は、病院、治療所、または研究所に対して何らかの特別な身元(例えば、確認された患者、研究参加者などとして)を有する必要はない。
【0065】
本明細書で採用された専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、限定する意図ではないことが理解されるべきである。さらに、代替の方法、装置、および材料が以下で説明されるが、本明細書で記載されるものと同様あるいは同等の何れの方法、装置、および材料も本発明の実施または試験に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
図1は、人工疑似胃液中での化合物3およびHMS5552の残留率/生成率-インキュベーション時間の比較を示すグラフである。
【0067】
【
図2】
図2は、人工疑似胃液中の化合物7およびHMS5552の残留率/生成率-インキュベーション時間の比較を示すグラフである。
【0068】
【
図3】
図3は、人工疑似腸液中の化合物3およびHMS5552の残留率/生成率-インキュベーション時間の比較を示すグラフである。
【0069】
【
図4】
図4は、人工疑似腸液中の化合物7およびHMS5552の残留率/生成率-インキュベーション時間の比較を示すグラフである。
【0070】
【
図5】
図5は、C57BL/6JマウスにおけるHMS5552、化合物3、化合物6、および化合物7を比べたOGTT血糖時間曲線およびAUC
0-120minを示すグラフである。このグラフでは、媒体対照群と比較して、*はP<0.05を意味し、**はP<0.01を意味する。対応するHMS5552投与群と比較して、#はP<0.05を意味し、##はP<0.01を意味する。
【0071】
【
図6】
図6は、C57BL/6JマウスにおけるHMS5552、化合物3、化合物6、および化合物7を比べたインスリン量(0分および15分)を示すグラフである。このグラフでは、媒体対照群と比較して、*はP<0.05を意味し、**はP<0.01を意味する。対応するHMS5552投与群と比較して、#はP<0.05を意味し、##はP<0.01を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0072】
一実施形態では、本開示は一般式(I)の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩に関する。
【化2】
【0073】
式中、
【0074】
*はキラル中心を示し、
【0075】
R1はH、-C(O)R6、-C(O)OR6、-C(O)NR7R8、-S(O)mR6、-S(O)mOR6、または-S(O)mNR7R8より選択され、
【0076】
R2は-C(O)R3、-C(O)OR3、-C(O)NR4R5、-S(O)mR3、-S(O)mOR3、または-S(O)mN4R5より選択されるか、
【0077】
またはR1およびR2は結合して、-CHRd-、-SiRdRe-、-C(O)-、-S(O)1-2-、-P(O)ORd-、または-CRdRe-CRdRe-を形成し、
【0078】
R3は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、1、2、3、4、または5個のR基で置換されていてもよく、
【0079】
R4およびR5は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR4およびR5はN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0080】
R6は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択され、
【0081】
R7およびR8は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR7およびR8はN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0082】
Rは独立してH、-L-ハロゲン、-L-CN、-L-NO2、-L-ORa、-L-SRa、-L-NRbRc、-L-C(O)ORa、-L-C(O)NRbRc、-L-S(O)mORa、-L-S(O)mNRbRc、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、または天然アミノ酸の側鎖より選択され、
【0083】
ここで、mは1または2であり、
【0084】
Raは独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、
【0085】
RbおよびRcは独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択されるか、あるいはRbおよびRcはN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0086】
RdおよびReは独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはRdおよびReはC原子とともに=O、=S、C3-7シクロアルキル、または3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0087】
Lは化学結合、-C1-6アルキレン-、-C2-6アルケニレン-、または-C2-6アルキニレン-より選択される。
【0088】
他の実施形態では、本開示は、以下の構造である上記化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩に関する。
【化3】
【0089】
式中、
【0090】
R1はH、-C(O)R6、-C(O)OR6、または-C(O)NR7R8より選択され、
【0091】
R2は-C(O)R3、-C(O)OR3、または-C(O)NR4R5より選択されるか、
【0092】
またはR1およびR2は結合して、-SiRdRe-、-C(O)-、-S(O)1-2-、-P(O)ORd-、または-CRdRe-CRdRe-を形成し、
【0093】
R3は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択され、
【0094】
R4およびR5は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR4およびR5はN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0095】
R6は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択され、
【0096】
R7およびR8は独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはR7およびR8はN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0097】
RdおよびReは独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、またはC1-6ハロアルキルより選択されるか、あるいはRdおよびReはC原子とともに=O、=S、C3-7シクロアルキル、または3~7員ヘテロシクリルを形成する。
【0098】
他の実施形態では、本開示は上記化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩に関し、ここで、
【0099】
R1はH、-COMe、または-COOEtより選択され、
【0100】
R2は-COMe、-COOEt、または-CONHMeより選択されるか、
【0101】
またはR1およびR2は結合して、-CHMe-、-SiMe2-、-C(O)-、-S(O)1-2-、または-P(O)OEt-を形成する。
【0102】
他の実施形態では、本開示は、以下の構造である上記化合物、あるいは同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその医薬的に許容可能な塩に関する。
【化4】
【0103】
式中、
【0104】
R3はC3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、1、2、3、4、または5個のR基で置換されていてもよく、
【0105】
Rは独立してH、-L-ハロゲン、-L-CN、-L-NO2、-L-ORa、-L-SRa、-L-NRbRc、-L-C(O)ORa、-L-C(O)NRbRc、-L-S(O)mORa、-L-S(O)mNRbRc、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C2-6アルケニル、またはC2-6アルキニルより選択され、
【0106】
ここで、mは1または2であり、
【0107】
Raは独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、
【0108】
RbおよびRcは独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択されるか、あるいはRbおよびRcはN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0109】
Lは化学結合、-C1-6アルキレン-、-C2-6アルケニレン-、または-C2-6アルキニレン-より選択される。
【0110】
他の実施形態では、本開示は、上記の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩に関し、ここで、
【0111】
R3はC6-10アリールまたは5~6員ヘテロアリールより選択され、1、2、3、4、または5個のR基で置換されていてもよく、
【0112】
Rは独立してH、ハロゲン、-CN、-NO2、-OH、-SH、-NH2、-C(O)OH、-C(O)NH2、-S(O)mOH、-S(O)mNH2、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C2-6アルケニル、またはC2-6アルキニルより選択され、
【0113】
ここで、mは1または2である。
【0114】
他の実施形態では、本開示は上記化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩に関し、ここで、
【0115】
R3はフェニル、ナフチル、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、またはテトラジニルより選択され、1、2、3、4、または5個のR基で置換されていてもよく、
【0116】
Rは独立してH、ハロゲン、-CN、-NO2、-OH、-SH、-NH2、-C(O)OH、-C(O)NH2、-S(O)mOH、または-S(O)mNH2より選択され、
【0117】
ここで、mは1または2である。
【0118】
他の実施形態では、本開示は上記化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩に関し、ここで、
【0119】
R3はフェニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、またはテトラジニルより選択され、1、2、または3個のR基で置換されていてもよく、
【0120】
Rは独立してH、ハロゲン、-CN、-NO2、-OH、-SH、または-NH2より選択される。
【0121】
他の実施形態では、本開示は、以下の構造である上記化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩に関する。
【化5】
【0122】
式中、
【0123】
R9はH、-L-ハロゲン、-L-CN、-L-NO2、-L-ORa、-L-SRa、-L-NRbRc、-L-C(O)ORa、-L-C(O)NRbRc、-L-S(O)mORa、-L-S(O)mNRbRc、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、または天然アミノ酸の側鎖より選択され、
【0124】
ここで、mは1または2であり、
【0125】
Raは独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択され、
【0126】
RbおよびRcは独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールより選択されるか、あるいはRbおよびRcはN原子とともに3~7員ヘテロシクリルを形成し、
【0127】
Lは化学結合、-C1-6アルキレン-、-C2-6アルケニレン-、または-C2-6アルキニレン-より選択される。
【0128】
他の実施形態では、本開示は、R9がH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、または天然アミノ酸の側鎖より選択される上記化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩に関する。
【0129】
他の実施形態では、本開示は、R9が天然アミノ酸のグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、メチオニン、セリン、トレオニン、システイン、プロリン、ヒスチジン、およびアルギニンの側鎖より選択される上記化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩に関する。
【0130】
他の実施形態では、本開示は、R9がアラニン側鎖(Me)またはバリン側鎖(iPr)である上記化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩に関する。
【0131】
上記の特定の実施形態の何れかまたはそれらの何れかの組み合わせにおける何れの技術的解決策も、他の特定の実施形態またはそれらの何れかの組み合わせにおける何れの技術的解決策と組み合わせてもよい。本開示は、紙面の限界のため、ひとつひとつ列挙してはいないが、これら技術的解決策のすべての組み合わせを含むことを意図する。
【0132】
他の実施形態では、本開示は上記化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩に関し、ここで、その代表的な化合物は、
【化6】
【0133】
またはその医薬的に許容可能な塩より選択される。
【0134】
合剤および/または医薬組成物
本開示の化合物は、単独または他の治療薬と組み合わせて用いて、様々な状態または疾患を治療してもよい。本開示の化合物および他の治療薬は同時(同じ投与形態または別々の投与形態で)または順次投与されてもよい。
【0135】
一実施形態では、本開示の薬物と組み合わせる他の治療薬は血糖降下剤である。
【0136】
他の実施形態では、本開示の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、および任意で1種以上の医薬的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物が本明細書で提供される。
【0137】
疾患の治療および/または予防のための使用
本開示のさらなる実施形態は、薬剤の製造における一般式(I)の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいはその医薬組成物の使用に関する。特に、
【0138】
本開示の特定の実施形態は、以下の疾患および医学的状態、特にI型真性糖尿病、II型真性糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖症、食後高血糖、過体重、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性、および代謝症候群より選択される1種以上の疾患の治療および/または予防のための薬剤の製造における本開示の一般式(I)の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいはその医薬組成物の使用に関する。
【0139】
本開示のさらなる実施形態は、糖尿病を治癒させ、糖尿病の寛解または退行を誘導するための薬剤の製造における本開示の一般式(I)の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいはその医薬組成物の使用に関する。
【0140】
疾患を治療および/または予防する方法
本開示のさらなる実施形態は、I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖症、食後高血糖、過体重、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性、および代謝症候群より選択される1種以上の疾患を治療および/または予防する方法であって、治療有効量の一般式(I)の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩を対象に投与すること、あるいは治療有効量の合剤または医薬組成物を上記対象に投与することを含む方法に関する。
【0141】
本開示の真性糖尿病および関連する疾患を治療および/または予防する方法は、以下を含む。
【0142】
・I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖症、食後高血糖、高血圧症、過体重、肥満、インスリン抵抗性、および代謝症候群からなる群より選択される代謝障害を予防する、その進行を遅くする、遅延させる、または治療すること;あるいは
【0143】
・糖尿病を治癒させ、糖尿病の寛解または退行を誘発すること;あるいは
【0144】
・血糖コントロールを向上させ、かつ/または空腹時血糖値、食後血糖値、および/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低減させること;あるいは
【0145】
・耐糖能異常、インスリン抵抗性、および/または代謝症候群からII型真性糖尿病への進行を予防する、遅くする、遅延させる、または逆進させること;あるいは
【0146】
・真性糖尿病の合併症、例えば、白内障ならびに微小血管および大血管疾患、例えば、腎症、網膜症、神経障害、学習および記憶機能障害、神経変性または認知障害、心臓または脳血管疾患、組織局所貧血、糖尿病足または潰瘍、動脈硬化、高血圧症、内皮機能障害、心筋梗塞、急性冠動脈症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害、および血管再狭窄からなる群より選択される状態または障害を予防する、その進行を遅くする、遅延させる、または治療すること;あるいは
【0147】
・体重および/または体脂肪を低減するか、体重および/または体脂肪の増加を防ぐか、または体重および/または体脂肪の低減を容易にすること;あるいは
【0148】
・膵臓β細胞の変性、および/または膵臓β細胞の機能低下を予防する、遅くする、遅延させる、または治療し、かつ/または膵臓β細胞の機能を向上および/または回復または保護し、かつ/または膵臓インスリン分泌の機能を回復すること;あるいは
【0149】
・肝または異所性脂肪の異常な蓄積に起因する疾患または状態を予防する、遅くする、遅延させる、または治療すること;あるいは
【0150】
・インスリン感度を維持および/または向上させ、かつ/または高インスリン血症および/またはインスリン抵抗性を治療または予防すること;あるいは
【0151】
・移植術後新規糖尿病(NODAT)および/または移植後代謝症候群(PTMS)を予防する、その進行を遅くする、遅延させる、または治療すること;あるいは
【0152】
・微小血管および大血管疾患および事象、移植片拒絶、感染、および死亡を含む、NODATおよび/またはPTMS関連合併症を予防、遅延、または低減すること;あるいは
【0153】
・高尿酸血症および高尿酸血症に関連する状態を治療すること。
【0154】
本開示の別の実施形態では、上記疾患は、I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖症、食後高血糖、過体重、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性、および代謝症候群を含む。
【0155】
他の実施形態によれば、本開示はまた、治療を必要とする対象に治療有効量の本開示の一般式(I)の化合物または医薬組成物を経口投与することによりII型真性糖尿病を治療する方法を提供する。一実施形態では、上記治療を必要とする対象はヒトである。他の実施形態では、上記医薬組成物は錠剤の形態である。
【0156】
他の実施形態によれば、本開示はまた、治療有効量の一般式(I)の化合物、あるいはその同位体標識生成物、エナンチオマー、ジアステレオマー、または医薬的に許容可能な塩、あるいは治療有効量の医薬組成物による治療と同時または順次に1種以上の他の併用薬物治療を対象に施す方法を提供する。
【0157】
本開示の一般式(I)の化合物および医薬組成物は1日1回(QD)、1日2回(BID)、または1日3回(TID)投与することができる。
【実施例】
【0158】
本明細書で用いられる材料または試薬は市販されているか、あるいは当該分野で一般に知られている合成方法により調製される。
【0159】
以下の例において、本開示の範囲内の実施形態をさらに説明し例示する。しかしながら、本開示はこれらの例に限定されず、本開示の技術的な基礎になされた如何なる修正および置換も本開示の保護範囲内に含まれる。
【0160】
以下の例では、表1に示す略語の意味が用いられることがある。
【0161】
【0162】
塩基および/または任意で縮合剤の存在下、化合物HMS5552を酸無水物、酸塩化物、クロロギ酸エステル、クロロホルムアミド、塩化スルホニル、酸、アミノ酸、またはスルホン酸などの試薬と反応させ、HMS5552の1級水酸基を従来のエステル化反応によりエステル化させる。任意で、HMS5552の2級水酸基を同じ試薬または異なる試薬(酸無水物、塩化アシル、クロロギ酸エステル、クロロホルムアミド、塩化スルホニル、酸、アミノ酸、またはスルホン酸など)とさらに反応させることによりエステル化してもよい。R
1がR
2と同じ場合、試薬の量を増やすことにより、1級水酸基および2級水酸基の両方がエステル化された生成物を一工程反応で得ることができる。
実施例1:化合物1の調製
【化8】
【0163】
合成工程:
【0164】
6g(13mmol、1.0当量)の化合物HMS5552を20mLのピリジンに溶解し、16mL(168mmol、13当量)の無水酢酸を滴下した。反応混合物を20℃で18時間撹拌した。水を加えて反応混合物をクエンチし、酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合わせ、順次に飽和クエン酸水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、および飽和塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液を乾燥するまで濃縮して、6gの化合物1(84.6%の収率、明るい黄色の固体)を得た。
【0165】
【0166】
合成工程:
【0167】
5.0g(10.8mmol、1.0当量)の化合物HMS5552を酢酸エチルに溶解し、6.8g(86mmol、8.0当量)のピリジンおよび4.7g(43.3mmol、4.0当量)のクロロギ酸エチルを0℃で加えた。反応混合物を室温で20時間撹拌した。水を加えて反応混合物をクエンチし、生成物を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合わせ、飽和塩水で洗浄し、乾燥するまで濃縮した。残部を分取クロマトグラフィーで精製して、4.5gの化合物2(68.6%の収率、白色の粉末)を得た。
【0168】
【0169】
合成工程:
【0170】
1.73g(14.1mmol、1.3当量)のニコチン酸をDMFに溶解し、4.19g(32.4mmol、3.0当量)のジイソプロピルエチルアミンおよび5.34gのHATU(14.0mmol、1.3当量)を0℃で加えた。反応物を0℃で30分間撹拌し、次いで5.0g(10.8mmol、1.0当量)の化合物HMS5552を分割添加した。反応物を室温で20時間撹拌した。水を加えて反応混合物をクエンチし、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を合わせ、飽和塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液を濃縮し、残部を分取クロマトグラフィーで精製して、3.3gの化合物3(53.7%の収率、ピンクがかった茶色の固体)を得た。
【0171】
【0172】
合成工程:
【0173】
10.0g(72.4mmol、1.0当量)の2-ヒドロキシ安息香酸をDMFに溶解し、14.8g(217.4mmol、3.0当量)のイミダゾールおよび24.0g(159.2mmol、2.2当量)のTBSClをそれぞれ0℃で加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した。水を加えて反応混合物をクエンチし、MTBEで2回抽出した。有機相を合わせ、飽和塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液を乾燥するまで濃縮して、27gのtert-ブチルジメチルシリル2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンゾアートを得た(101.7%の粗収率)。
【0174】
12g(32.7mmol、1.0当量)のtert-ブチルジメチルシリル2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンゾアートをジクロロメタンに溶解し、DMFを4滴加えた。4.8g(37.8mmol、1.2当量)の塩化オキサリルを0℃で滴下し、反応物を室温で18時間撹拌した。反応混合物をメタノールでクエンチし、次いで乾燥するまで濃縮して、8.2gの塩化2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンゾイルを得た(92.5%の粗収率)。
【0175】
6.0g(13.0mmol、1.0当量)の化合物HMS5552を酢酸エチルに溶解し、4.1g(51.8mmol、4.0当量)のピリジンを0℃で加え、次いで5.27g(19.5mmol、1.5当量)の塩化2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンゾイルを滴下した。反応混合物を室温で18時間撹拌した。水を加えて反応混合物をクエンチし、酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合わせ、飽和塩水で洗浄し、乾燥するまで濃縮した。残部を分取クロマトグラフィーで精製して、5.5gの(R)-3-(3-((S)-2-(4-(2-クロロフェノキシ)-2-オキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-4-メチルペンタンアミド)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシプロピル2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンゾアートを得た(60.8%の収率)。
【0176】
5.5g(7.89mmol、1.0当量)の(R)-3-(3-((S)-2-(4-(2-クロロフェノキシ)-2-オキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-4-メチルペンタンアミド)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシプロピル2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンゾアートをテトラヒドロフランに溶解し、TBAF(9mmol、1.14当量)の1Mテトラヒドロフラン溶液9mLを0℃で滴下した。反応物を室温で6時間撹拌した。水を加えて反応物をクエンチし、生成物を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を合わせ、飽和塩水で洗浄し、乾燥するまで濃縮した。残部を逆相分取クロマトグラフィーで精製して、1.0gの化合物4(21.7%の収率、白色の粉末)を得た。
【0177】
【0178】
合成工程:
【0179】
6.0g(13.0mmol、1.0当量)の化合物HMS5552を45mLのTHFおよび45mLのピリジンの混合物に溶解し、-10℃で24.24g(259mmol、20当量)のN-メチルクロロホルムアミドを分割添加した。反応混合物を室温で20時間撹拌した。水を加えて反応混合物をクエンチし、酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合わせ、飽和塩水で洗浄し、乾燥するまで濃縮した。残部を分取クロマトグラフィーで精製して、2.5gの化合物5(37.1%の収率、白色の粉末)を得た。
【0180】
【数5】
実施例6:化合物6およびそのクエン酸塩の調製
【化13】
【0181】
合成工程:
【0182】
4g(21mmol、1.4当量)の(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピオン酸をDMFに溶解し、7.8g(60.3mmol、4.0当量)のジイソプロピルエチルアミンおよび8.1g(21.3mmol、1.4当量)のHATUを0℃で加えた。この混合物を30分間撹拌し、次いで7.0g(15.1mmol、1.0当量)のHMS5552を分割添加した。反応混合物を室温で20時間撹拌した。水を加えて反応混合物をクエンチし、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を合わせ、飽和塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液を乾燥するまで濃縮した。残部を分取クロマトグラフィーで精製して、5.3gの(R)-3-(3-((S)-2-(4-(2-クロロフェノキシ)-2-オキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-4-メチルペンタンアミド)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシプロピル(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピオナートを得た(55.3%の収率)。
【0183】
5.3g(8.4mmol、1.0当量)の(R)-3-(3-((S)-2-(4-(2-クロロフェノキシ)-2-オキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-4-メチルペンタンアミド)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシプロピル(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピオナートをジクロロメタンに溶解し、20mLのトリフルオロ酢酸を0℃で加えた。反応物を室温で4時間撹拌した。反応液を乾燥するまで濃縮し、残部を飽和炭酸ナトリウムでpH8~9に調整した。生成物をジクロロメタンで抽出し、乾燥するまで濃縮して、4.2gの化合物6(94.1%の収率、白色の粉末)を得た。
【0184】
【0185】
4.2g(7.9mmol、1.0当量)の化合物6を50mLのTHFに溶解し、604mg(3.14mmol、0.4当量)のクエン酸のTHF(20mL)溶液を0℃で滴下した。反応液を0℃で1時間撹拌した。反応液を乾燥するまで濃縮し、次いで30mLの酢酸エチルを濃縮物に加えて、透明な溶液を得た。次いで、60mLのMTBEをゆっくり加え、多量の固体を析出させた。この混合物を濾過した。この固体を酢酸エチル/MTBEで再結晶させて、HPLCにより3.4gの化合物6のクエン酸塩を純度95.0%で得た。
【数7】
実施例7:化合物7およびそのクエン酸塩の調製
【化14】
【0186】
合成工程:
【0187】
3.7g(17mmol、1.3当量)の(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-メチルブタン酸をDMFに溶解し、5.0g(38.7mmol、3.0当量)のジイソプロピルエチルアミンおよび6.4g(16.8mmol、1.3当量)のHATUを0℃で加えた。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで6.0g(13.0mmol、1.0当量)の化合物HMS5552を分割添加した。反応物を室温で18時間撹拌した。水を加えて反応混合物をクエンチし、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を合わせ、飽和塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液を濃縮し、残部を分取クロマトグラフィーにより精製して、3.9gの(R)-3-(3-((S)-2-(4-(2-クロロフェノキシ)-2-オキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-4-メチルペンタンアミド)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシプロピル(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-メチルブチラートを得た(45.4%の収率)。
【0188】
3.9g(5.9mmol、1.0当量)の(R)-3-(3-((S)-2-(4-(2-クロロフェノキシ)-2-オキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-4-メチルペンタンアミド)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシプロピル(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-メチルブチラートをジクロロメタンに溶解した。13mLのトリフルオロ酢酸を0℃で加えた。反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応液を乾燥するまで濃縮し、残部を飽和炭酸ナトリウムでpH8~9に調整した。生成物をジクロロメタンで抽出し、乾燥するまで濃縮して、2.7gの化合物7(81.6%の収率、白色の粉末)を得た。
【0189】
【0190】
化合物7のクエン酸塩
2.3g(4.1mmol、1.0当量)の化合物7を30mLのテトラヒドロフランに溶解し、314mg(1.63mmol、0.4当量)のクエン酸のTHF(10mL)溶液を0℃で滴下した。反応液を0℃で1時間撹拌し、次いで乾燥するまで濃縮した。この濃縮物に20mLの酢酸エチルを加えて、透明な溶液を得た。次いで、40mLのメチルtert-ブチルエーテルをゆっくり加え、生成物を析出させた。析出物を濾過し、乾燥させて、HPLCにより2.1gの化合物7のクエン酸塩を純度94.8%で得た。
【数9】
実施例8:化合物8の調製
【化15】
【0191】
6.0g(13.0mmol、1.0当量)の化合物HMS5552をジクロロメタンに溶解し、493mg(2.9mmol、0.22当量)のp-トルエンスルホン酸を0℃で加えた。次いで、4.6g(38.9mmol、3.0当量)のアセトアルデヒドジエチルアセタールを滴下した。反応混合物を室温で96時間撹拌した。反応液を乾燥するまで濃縮し、分取クロマトグラフィーにより粗生成物を精製して、4.0gの化合物8(63.1%の収率、白色の粉末)を得た。
【0192】
【0193】
実施例9:疑似胃液(SGF)中での化合物の安定性試験
疑似胃液(SGF)の調製:0.04gのNaClおよび0.064gのペプシンを0.14mLのHClに溶解し、十分なH2Oを加えて、最終体積を20mLにした。試験溶液のpHは約1.20±0.05であった。
【0194】
試験化合物作業液の調製:5μLの30mMの試験化合物保存溶液を745μLのDMSOに入れて、200μMの試験化合物作業液を得た。
1)2μLの200μMの試験化合物作業液を96深型ウェルプレートのT0、T60、T120、T360、およびT1440の対応するウェルに入れた(同じものを2つ調製、n=2)。
2)198μLのSGF溶液を、T0を除く上記の対応するウェルに移して、それぞれの時点(60、120、360、および1440分)での最終試験化合物濃度を2μMとした。インキュベーション混合物中のDMSOの最終濃度は1%であった。
3)指定の時間の間、37℃、600rpmで試料をインキュベートした。
4)インキュベーション時間の終わりに、対応する時点(60、120、360、および1440分)の試料を取り出し、すぐに、200ng/mLのトルブタミド(内標準物質)を含む400μLの冷アセトニトリルと完全に混合した。
5)200μLの上澄みを取り出し、再度、200ng/mLのトルブタミド(内標準物質)を含む400μLの冷アセトニトリルと完全に混合した。
6)T0試料の調製:200ng/mLのトルブタミド(内標準物質)を含む400μLの冷アセトニトリルを加えた後、198μLのSGF溶液を対応するウェルに移し、完全に混合した。次いで、200μLの上澄みをピペットで取り、再度、200ng/mLのトルブタミド(内標準物質)を含む400μLの冷アセトニトリルと完全に混合した。
7)すべての試料を4℃、4000rpmで20分間遠心分離した。
8)60μLの上澄みをピペットで取り、180μLの超純水と混合し、LC-MS/MS分析のためにこの混合物を完全に混合した。
【0195】
試験化合物および変換された化合物HMS5552の濃度を測定し、インキュベーション時間に対する残留率/生成率をプロットして、疑似胃液(SGF)中の試験化合物の安定性を評価した。
【0196】
LC-MS/MSの条件:
【0197】
LC:島津LC30-AD
【0198】
MS:QTRAP6500+
【0199】
オートサンプラー:CTC PAL
【0200】
移動相:A:0.1%ギ酸水溶液、B:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液
【0201】
カラム:ACQUITY UPLC Protein BEH C4 300Å 2.1*50mm Part No.186004495
【0202】
総流量:600μL/分
【0203】
走査型:多重反応モニタリング(MRM)
【0204】
【0205】
【0206】
表2、
図1、および
図2の結果から、化合物3および化合物7はSGF中で24時間安定であり、何れもほんのわずかだけ親薬物HMS5552へと分解されたことが示された。
【0207】
実施例10:疑似腸液(SIF)中の化合物の安定性試験
疑似腸液(SIF)の調製:0.136gのKH2PO4および0.2gのパンクレアチンを水で溶解し、最終体積20mLにした。試験溶液のpHは約6.80±0.05であった。
【0208】
試験化合物作業液の調製:10μLの10mMの試験化合物保存溶液を490μLのDMSOに入れて、200μMの試験化合物作業液を得た。
1)2μLの200μMの作業液を96深型ウェルプレートのT0、T60、T120、T360、およびT1440の対応するウェルに入れた(同じものを2つ調製、n=2)。
2)198μLのSIF溶液を、T0を除く上記の対応するウェルに移して、それぞれの時点(60、120、360、および1440分)での最終試験化合物濃度を2μMとした。インキュベーション混合物中のDMSOの最終濃度は1%であった。
3)指定の時間の間、37℃、600rpmで試料をインキュベートした。
4)インキュベーション時間の終わりに、対応する時点(60、120、360、および1440分)の試料を取り出し、すぐに、200ng/mLのトルブタミド(内標準物質)を含む400μLの冷アセトニトリルと完全に混合した。
5)200μLの上澄みを取り出し、再度、200ng/mLのトルブタミド(内標準物質)を含む400μLの冷アセトニトリルと完全に混合した。
6)T0試料の調製:200ng/mLのトルブタミド(内標準物質)を含む400μLの冷アセトニトリルを加えた後、198μLのSIF溶液を対応するウェルに移し、完全に混合した。次いで、200μLの上澄みをピペットで取り、再度、200ng/mLのトルブタミド(内標準物質)を含む400μLの冷アセトニトリルと完全に混合した。
7)すべての試料を4℃、4000rpmで20分間遠心分離した。
8)60μLの上澄みをピペットで取り、180μLの超純水と混合し、LC-MS/MS分析のためにこの混合物を完全に混合した。
【0209】
試験化合物および変換された化合物HMS5552の濃度を測定し、インキュベーション時間に対する残留率/生成率をプロットして、疑似腸液(SIF)中の試験化合物の安定性を評価した。
【0210】
LC-MS/MSの条件:
【0211】
LC:島津LC30-AD
【0212】
MS:API4000
【0213】
オートサンプラー:CTC PAL
【0214】
移動相:A:0.1%ギ酸水溶液、B:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液
【0215】
カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm 2.1×50mm Part No.186002350
【0216】
走査型:多重反応モニタリング(MRM)
【0217】
【0218】
【0219】
表3、
図3、および
図4の結果から、化合物3および化合物7はSIF中で広く分解され、大部分がHMS5552に変換されたことが示された。
【0220】
実施例11:ヒト腸S9内での化合物の疑似代謝性試験
リン酸緩衝液(PB)の調製:73.21gのK2HPO4・3H2O(AR等級)および10.78gのKH2PO4(AR等級)を超純水に溶解して、最終体積を4000mL、最終濃度を100mMとした。H3PO4/KOHにて最終試験溶液のpHをpH7.40±0.10に調整した。
【0221】
試験化合物作業液の調製:5μLの試験化合物保存溶液(DMSO中10mM)を995μLのアセトニトリル(ACN)で希釈して、試験化合物作業液(中間体溶液濃度:50μM、99%のACN)を得た。
【0222】
試験の主要材料を表4に示し、ヒト腸S9(HIS9)溶液の調製成分のパラメータを表5に示す。
【0223】
【0224】
【0225】
Apricot自動化ワークステーションを用いて、50μL/ウェルのHIS9溶液をすべての反応プレートの対応するウェル(ブランク、T0、T5、T15、T30、T45、T60)に加えた。
【0226】
Apricot自動化ワークステーションを用いて、2μL/ウェルの試験化合物作業液を、ブランクを除くすべての96ウェル反応プレートの対応するウェル(T0、T5、T15、T30、T45、T60)に加えた。
【0227】
Apricot自動化ワークステーションを用いて、48μL/ウェルのPBをすべての反応プレートの対応するウェル(ブランク、T0、T5、T15、T30、T45、T60)に加えて、反応を開始した。
【0228】
反応プレートを37℃でインキュベートし、タイマーを始動した。Apricot自動化ワークステーションを用いて、300μL/ウェルの停止溶液(200ng/mLのトルブタミド(内標準物質)を含む冷アセトニトリル)を各反応プレートの対応するウェルにそれぞれ適切な終了時間に加えて、反応を停止させた。
【0229】
各プレートを密封し、10分間振とうした。振とう後、各プレートを4℃、4000rpmで20分間遠心分離した。遠心分離の後、100μLの上澄みを各反応プレートからそれぞれ対応するバイオ分析プレートに移し、300μLの超純水とよく混合した。
【0230】
LC-MS/MS分析のために各バイオ分析プレートを密封して、試験化合物および変換された化合物HMS5552の濃度を得て、ヒト腸S9中の試験化合物の代謝変換を評価した。
【0231】
LC-MS/MSの条件:
【0232】
LC:島津LC30-AD
【0233】
MS:API4000
【0234】
オートサンプラー:CTC PAL
【0235】
移動相:A:0.1%ギ酸水溶液、B:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液
【0236】
カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm 2.1×50mm Part No.186002350
【0237】
結果を表6に示す。
【0238】
【0239】
表6のヒト腸S9のシミュレーション結果から、化合物3および化合物7はヒト腸S9中でよく代謝され、これらのほとんどすべては60分以内に親薬物HMS5552へと変換されたことが示された。化合物3は5分以内で親薬物HMS5552へと完全に代謝され変換された。
【0240】
実施例12:Caco-2細胞を用いて化合物3の透過性を二方向に評価する試験
Caco-2細胞培養:Caco-2細胞(American Type Culture Collection(ATCC)より購入)を、1×105細胞/cm2の濃度で96ウェル培養プレートのポリエチレンフィルム(PET)上に播種した。細胞がコンフルエントになるまで培養培地を4日ごとに交換して、21日目または28日目に細胞単層を形成した。
【0241】
輸送試験:試験に用いた輸送緩衝液は、10mMの2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)を含むpH7.40±0.05のハンクス平衡塩溶液(HBSS)であった。インビトロの透過性研究をモデル透過成分としてナドロール、メトプロロール、およびジゴキシンを用いて行った。試験化合物3をそれぞれ2.00、10.0、および30.0μM(n=2)の試験濃度で二方向に評価した。ジゴキシンを試験濃度10.0μM(n=2)で二方向に評価した。ナドロールおよびメトプロロールを試験濃度2.00μM(n=2)で一方向に評価した。インキュベーション系中のDMSOの最終濃度を<1%に調整した。
【0242】
具体的な工程:
1)振とうせずにプレートを37±1℃のCO2インキュベーターにて5%CO2を用いて飽和湿度で2時間インキュベートした。
2)インキュベーションの終わりに、すべての試料を、内標準物質を含むアセトニトリルと混合し、3200gで10分間遠心分離した。
3)化合物3の10.0μMのおよび30.0μMの群について、T0試料および供与側試料をブランク試料の上澄みで10倍に希釈した。
4)ナドロールおよびメトプロロールについて、LC-MS/MS分析のために200μLの上澄みを600uLの超純水で希釈した。
5)ジゴキシンおよび試験化合物について、LC-MS/MS分析のために200μLの上澄みを200uLの超純水で希釈した。
6)初期溶液、供与側溶液、および受容側溶液中の化合物3、親薬物HMS5552、および対照化合物の濃度を、LC-MS/MSにより内標準物質に対する試験した物質のピーク面積比によって定量的に求めた。
【0243】
化合物の透過性試験の結果を表7に示す。
【0244】
【0245】
表7の結果から、AからBへの化合物3の透過性は低く、BからAへの透過性は高いことが示された。これにより、化合物3が排出輸送体の基質である可能性が高いことが示唆された。
【0246】
実施例13:薬物動態研究
18匹のオスSDラットを体重で3つの群(HMS5552群、化合物3群、および化合物7群)に分けた。各群を2つの下位群(静脈内ボーラス群(IV)および経管栄養群(PO))に分けた。静脈内ボーラス群(IV)に10mg/kgのHMS5552、10mg/kgの化合物3、または10mg/kgの化合物7を単回の静脈内ボーラス注入により投与した。経管栄養群(PO)に30mg/kgのHMS5552、30mg/kgの化合物3、または30mg/kgの化合物7を単回の経管栄養により投与した。
【0247】
頸静脈穿刺により全血試料(時点あたり約0.2mL)を投与前(0)、投与の0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、12、および24時間後に採取した。すぐにすべての血液試料を、4μLの0.5M EDTA-K2および10μLのカクテル安定剤を含む予め冷却した市販のラベル付き微小遠心管に移した。遠心分離まで(30分以内で)試料を湿らせた氷の上に置いた。次いで、血液試料を約4℃、3200×gで10分間遠心分離することにより、血漿試料を作製した。上澄みの血漿をピペットで取り、次いでドライアイスで急速に冷凍し、LC-MS/MS分析まで-60℃以下の温度で保持した。
【0248】
以下の表8に従ってカクテル安定剤を作製した。
【0249】
【0250】
WinNonlinTMソフトウェアプログラム(バージョン6.3)を用いて血漿濃度のノンコンパートメント薬物動態解析を行った。PKパラメータを得るのに線形/対数台形公式を適用した。結果を表9に示す。
【0251】
【0252】
*:Tmaxは中央値[Min、Max]である。
**:モルベースで変換(HMS5552、化合物3、および化合物7のMWはそれぞれ、462.93、568.03、および562.06である)。
【0253】
表9の結果から、化合物3および化合物7は静脈内注射によりラットにおいて非常に素早く代謝されることが示された。経口投与した場合、化合物3および化合物7の曝露量(Cmax、Cmax比、AUC、AUC比)は親薬物HMS5552と同等であった。上記の研究から、化合物3および化合物7は消化管および腸細胞でHMS5552へと代謝され、このHMS5552が吸収されて循環系に入ることが示された。
【0254】
実施例14:薬力学的研究
C57BL/6JマウスにおけるHMS5552、化合物3、化合物6、および化合物7の血糖降下効果を研究するため。
【0255】
方法
【0256】
104匹のC57BL/6Jマウスを体重によりランダムに13群に分け、1群あたり8匹のマウスとした。第1群に対照群として媒体溶媒(5mL/kg、PO)を投与し、他の群に対応する濃度の試験化合物(5mL/kg、PO)を投与した。化合物3、化合物6、および化合物7治療群の低、中、高投与量は5mg/kg、15mg/kg、および40mg/kgのHMS5552群と等価(等モル)である。経口グルコース負荷試験(OGTT)を試験化合物の投与の1時間後に行った。血糖(BG)を-60分(投与前)、0分(グルコース前)、グルコース治療の15分後、30分後、60分後、および120分後に測定した。尾静脈から血液試料(40μl)を0分(グルコース前)および15分(グルコース後)に採取して、インスリン検出用の血漿を分離した。
【0257】
データ処理および解析
【0258】
すべてのデータをExcelスプレッドシートに移した。血糖をmg/dLで表した。すべての値を平均値±SEMとして表した。GraphPad Prism8を用いて、各群の間の差異の有意性を一元配置分散分析または二元配置分散分析、次いでダネットの多重比較検定またはテューキーの多重比較検定により評価した。p値が0.05未満であると、統計的に有意であると見なす。
【0259】
結果
【0260】
体重(BW):実験中、すべての群のBW値は同様であり、各群の間で有意な差は見られなかった。
【0261】
OGTTの結果を
図5に示す。
図5から、-60分(投与前)でのすべての群のBG値が同様であり、各群の間で有意な差は見られなかったことが示された。
【0262】
HMS5552、化合物3、化合物6、および化合物7による治療の後、0分(グルコース前)でのすべての治療群のBG値は媒体対照群よりも全体的に低く、用量反応関係が見られた。
【0263】
グルコース治療の後、各群のBG値は有意に増加した。HMS5552-40mg/kg群のBG値は、30分、60分、および120分で媒体対照群よりも有意に低かった。化合物3-49.1mg/kg群のBG値は、15分、30分、60分、および120分で媒体対照群よりも有意に低く、30分、60分、および120分でHMS5552-40mg/kg群よりも有意に低かった。化合物6-46.1mg/kg群、化合物7-48.6mg/kg群のBG値は、15分、30分、60分、および120分でHMS5552-40mg/kg群よりも有意に低かった。
【0264】
HMS5552、化合物3、化合物6、および化合物7のすべての低、中、高投与量群のAUC0-120minは、媒体対照群よりも有意に低く、用量反応関係が見られた。中および高投与量での化合物3、化合物6、および化合物7治療群のAUC0-120minは、HMS5552の対応する群よりも有意に低かった(P<0.01)。
【0265】
OGTTの結果から、すべての試験化合物はマウスにおいて良好な血糖降下効果を示したことが分かる。
【0266】
インスリン試験の結果を
図6に示す。
図6は、媒体対照群のインスリン量が0分で0.13±0.02(μg/L)、15分で0.50±0.05(μg/L)であったことを示している。HM5S552群のインスリン量は、0分および15分で媒体対照群よりもわずかに高いが、有意な差はなかった。化合物3-49.1mg/kg群、化合物6-46.1mg/kg群、および化合物7-48.6mg/kg群のインスリン量は、0分で媒体対照群およびHMS5552-40mg/kg群よりも有意に高かった。化合物3-18.4mg/kg群、化合物3-49.1mg/kg群、化合物6-46.1mg/kg群、化合物7-18.2mg/kg群、および化合物7-48.6mg/kg群のインスリン量は、15分で媒体対照群よりも有意に高かった。化合物3-18.4mg/kg群、化合物6-46.1mg/kg群、および化合物7-48.6mg/kg群のインスリン量は、15分でHMS5552の対応する群よりも有意に高かった。
【0267】
この研究から、本発明の試験化合物はすべて、C57BL/6Jマウスにおいて良好な血糖降下効果を有することが示された。化合物3、化合物6、および化合物7では、HMS5552に比べてインスリン分泌の増加、およびより大きな血糖降下効果が得られる。
【0268】
上記は、具体的な代替の実施形態に関して本開示のさらに詳細な記載であり、本開示の具体的な実施形態は上記記載に限定されない。当業者であれば、本発明の概念から逸脱することなく、いくつかの単純な演繹または置換を行うことができるが、これらは本発明の保護範囲内であると見なすべきである。
【国際調査報告】