(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲートの使用、並びに併用薬物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240905BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240905BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20240905BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240905BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K47/68
C07K16/28 ZNA
A61K38/07
A61K39/395 N
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516794
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 CN2022118964
(87)【国際公開番号】W WO2023040941
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111088584.9
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519058745
【氏名又は名称】シャンハイ ミラコーケン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】リー フー
(72)【発明者】
【氏名】フー チャオホン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ウェンチャオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA10
4C084BA14
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4C084NA14
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4C084ZB262
4C085AA14
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4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、抗体-薬物コンジュゲートの使用、並びに併用薬物及びその使用に関する。具体的には、抗体-薬物コンジュゲートの使用、併用薬物、及びその使用が提供される。前記抗体-薬物コンジュゲートは、EGFR変異発現を伴うさまざまなNSCLC細胞株、及びEGFR変異発現を伴うAZD9291薬剤耐性のさまざまなヒトNSCLC PDX腫瘍モデルにおいて、腫瘍細胞の増殖を阻害する顕著な薬動力学的効果を示す。さらに、抗体-薬物コンジュゲートと抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体の併用投与は、EGFR変異発現を有する、AZD9291薬剤耐性のヒトNSCLC PDX腫瘍モデルにおいて、腫瘍細胞増殖を阻害する顕著な相乗的な薬動力学的効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)非小細胞肺癌阻害剤の調製における使用、及び
2)非小細胞肺癌を治療及び/又は予防するための医薬の調製における使用、
からなる群から選択される1つ又はそれ以上である、抗体-薬物コンジュゲート、前記抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物の使用であって、
ここで、前記非小細胞肺癌は、
1)EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌、及び
2)EGFR変異非小細胞肺癌からなる群
から選択される1つ又はそれ以上であり、そして任意選択的に前記EGFR変異非小細胞肺癌はまた、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上も有し、
ここで、前記抗体-薬物コンジュゲートは式I:
Ab-(LD)
p
式I
[式中、
Abは抗EGFR抗体を表し、ここで前記抗EGFR抗体は重鎖及び軽鎖を含み、ここで重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号5~7に示される配列又はそれらの変異体を含み、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号12~14に示される配列又はそれらの変異体を含み;
Lはリンカーを表し;
好ましくは、前記リンカーは、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロピオニル(MP)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)吉草酸塩(SPP)、4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-ホルミル(MCC)、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸塩(SIAB)、及び6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)からなる群から選択され;
より好ましくは、前記リンカーは6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)から選択され;
Dは細胞傷害性薬剤を表し;
好ましくは、前記細胞傷害性薬剤は、毒素、例えばSN-38、ゲムシタビン、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、メイタンシノイド(例えば、メイタンシンDM1及びメイタンシンDM4)、カリケアマイシン、MGBA(例えば、デュオカルマイシン)、ドキソルビシン、リシン及びジフテリア毒素、I131、インターロイキン類、腫瘍壊死因子、ケモカイン類、及びナノ粒子からなる群から選択され;
より好ましくは、前記細胞傷害性薬剤はMMAEであり;
pは、1~9、好ましくは2~6、より好ましくは3~5を表す]
の構造を有する、使用。
【請求項2】
前記抗EGFR抗体が以下の特徴:
1)前記抗EGFR抗体の重鎖可変領域中のFR1、FR2、FR3、及びFR4領域は、それぞれ、配列番号8~11に示される配列又はそれらの変異体を含む;
2)前記抗EGFR抗体の軽鎖可変領域中のFR1、FR2、FR3、及びFR4領域は、それぞれ、配列番号15~18に示される配列又はそれらの変異体を含む;
3)前記抗EGFR抗体の重鎖定常領域は、ヒトIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgA定常領域又はそれらの変異体から選択される;
好ましくは、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択される;並びに
4)前記抗EGFR抗体の軽鎖定常領域は、ヒトのラムダ定常領域及びカッパ定常領域又はそれらの変異体から選択される、
の1つ又はそれ以上を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抗EGFR抗体が以下の特徴:
1)前記抗EGFR抗体の重鎖可変領域の配列は、配列番号1に示される配列、あるいは配列番号1に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む;
好ましくは前記抗EGFR抗体の重鎖可変領域の配列は配列番号1に示される;
2)前記抗EGFR抗体の軽鎖可変領域の配列は、配列番号2示される配列、あるいは配列番号2に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む;
好ましくは、前記抗EGFR抗体の軽鎖可変領域の配列は配列番号2に示される;
3)前記抗EGFR抗体の重鎖定常領域の配列は、配列番号3示される配列、あるいは配列番号3に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む;
好ましくは、前記抗EGFR抗体の重鎖定常領域の配列は配列番号3に示される;並びに
4)前記抗EGFR抗体の軽鎖定常領域の配列は、配列番号4示される配列、あるいは配列番号4に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む;
好ましくは、前記抗EGFR抗体の軽鎖定常領域の配列は配列番号4に示される、
の1つ又はそれ以上を有する、請求項1~2のいずれか1項に記載の使用。
【請求項4】
前記EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌が、EGFR変異、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上を有し;
好ましくは、前記EGFR変異は、エクソン18、エクソン19、エクソン20、及びエクソン21からなる群から選択される1つ又はそれ以上の部位における変異であり;
より好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、C797S、G719S、L861Q、G719C、G719A、T854A、及びD761Yからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異であり;
さらに好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、及びT790Mからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異であり;
最も好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、又はL858R/T790M二重変異である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の使用であって、ここで、前記EGFR-TKIが、オシメルチニブ(AZD9291)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ダコチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ナザルチニブ、ロシレチニブ、ナコチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、ペリチニブ、カネルチニブ、ブリガチニブ、PKC412、Go6976、マベレルチニブ、オルムチニブ、WZ4002、TAS2913、セツキシマブ、パニツムマブ、アビチニブ、HS-10296、及びTQB3804からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり;
好ましくは、前記EGFR-TKIがオシメルチニブ(AZD9291)であり;
又は、前記非小細胞肺癌が、肺腺癌(好ましくは、気管支肺胞癌)、肺扁平上皮癌、肺の腺扁平上皮癌、及び肺大細胞癌からなる群より選択される、使用。
【請求項6】
抗体-薬物コンジュゲート、前記抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、あるいは前記塩の溶媒和物である第1の薬物と、PD-1/PD-L1阻害剤である第2の薬物とを含む併用薬物であって、
ここで、前記抗体-薬物コンジュゲートは、請求項1~3のいずれか1項に記載のように定義され、
好ましくは、第1の薬物と第2の薬物は互いに分離されている、併用薬物。
【請求項7】
前記PD-1/PD-L1阻害剤が、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である、請求項6に記載の併用薬物であって、
好ましくは、抗PD-1抗体は、AK103、トリパリマブ(JS-001)、シンチリマブ(IBI308)、カムレリズマブ、ティスレリズマブ(BGB-A317)、オプジーボ又はニボルマブ、キイトルーダ又はペンブロリズマブ、CS1003、セルプルリマブ(HLX10)、AK104、ゲプタノリマブ(GB226)、リズマブ(例えば、LZM009)、BAT-1306、SCT-I10A、F520、SG001、GLS-010、PDR001、REGN2810、及びSTI-A1110からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり;
より好ましくは、前記抗PD-1抗体はAK103であり;
好ましくは、前記抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、又はそれらの組み合わせである、併用薬物。
【請求項8】
前記第1の薬物と前記第2の薬物との重量比は15:1~1:15であり、好ましくは、第1の薬物と第2の薬物の重量比は1:1~1:10である、請求項6~7のいずれか1項に記載の併用薬物。
【請求項9】
1)非小細胞肺癌阻害剤の調製における使用、及び
2)非小細胞肺癌を治療及び/又は予防するための医薬の調製における使用、からなる群から選択される1つ以上である、請求項6~8のいずれか1項に記載の併用薬物の使用であって、
ここで、前記非小細胞肺癌は、
1)EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌、及び
2)EGFR変異非小細胞肺癌からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり、そして任意選択的に、前記EGFR変異非小細胞肺癌はまた、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上も有する、使用。
【請求項10】
前記EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌が、EGFR変異、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上を有する、請求項9に記載の使用であって、
好ましくは、前記EGFR変異は、エクソン18、エクソン19、エクソン20、及びエクソン21からなる群から選択される1つ又はそれ以上の部位における変異であり;
より好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、C797S、G719S、L861Q、G719C、G719A、T854A、及びD761Yからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異であり;
さらに好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、及びT790Mからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異であり;
最も好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、又はL858R/T790M二重変異であり;
又は、前記EGFR-TKIは、オシメルチニブ(AZD9291)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ダコチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ナザルチニブ、ロシレチニブ、ナコチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、ペリチニブ、カネルチニブ、ブリガチニブ、PKC412、Go6976、マベレルチニブ、オルムチニブ、WZ4002、TAS2913、セツキシマブ、パニツムマブ、アビチニブ、HS-10296、及びTQB3804からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり;
好ましくは、前記EGFR-TKIはオシメルチニブ(AZD9291)であり、
又は、前記非小細胞肺癌は、肺腺癌(好ましくは、気管支肺胞癌)、肺扁平上皮癌、肺の腺扁平上皮癌、及び肺大細胞癌からなる群から選択される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生物医学の分野、特に抗体-薬物コンジュゲートの使用、併用薬物、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
上皮成長因子受容体(EGFR)は、EGF受容体ファミリーの膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(RTK)であり、4つの密接に関連したRTK(ErbB1/EGFR、ErbB2/HER2/neu、ErbB3/HER3、及びErbB4/HER4)から構成される。EGFRは、結腸直腸癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、腎臓癌、膵臓癌、卵巣癌、脳癌、膀胱癌を含むさまざまなヒトの腫瘍で過剰発現される。これらの腫瘍では、EGFRは、癌細胞の増殖、シグナル伝達、分化、接着、遊走、及び生存を調節するシグナル伝達カスケードに関与している。
【0003】
EGFRは癌における多次元的な役割により、魅力的な治療標的となっている。EGFRを標的とする多くの小分子チロシンキナーゼ阻害剤(TKI、例えばゲフィチニブ、エルロチニブ、及びオシメルチニブ)及びモノクローナル抗体(例えばセツキシマブ及びパニツムマブ)が、単独療法又は化学療法との併用薬として承認されている。これらの既存の標的療法は成功しているにもかかわらず、患者は、EGFRキナーゼドメイン内の変異により、小分子EGFR阻害剤に対する耐性を発症することがよくある。さらに、これまでのところ、セツキシマブなどの市販のモノクローナル抗体は、KRAS野生型転移性結腸直腸癌(RAS wt mCRC)及び/又は頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)の治療薬としてのみ承認されており、パニツムマブは転移性結腸癌の治療に承認されている。
【0004】
ヒトEGFR遺伝子は染色体7p12-14に位置し、24個のエクソンから構成される。エクソン18~24はTK機能領域をコードし、ここで、エクソン18~20はNローブをコードし、エクソン21~24はCローブをコードする。TKI薬剤感受性に関連する変異は、エクソン18~21に集中している。変異の約49%は、エクソン19のコドン746~752の領域の欠失変異(例えば、DelE746-A750)であり、その80%超はロイシン(L)-アルギニン(R)-グルタミン酸(E)-アラニン(A)モチーフがない。変異の約45%はエクソン21の点突然変異L858R(858位のロイシンからアルギニンへの変異)であり、その他の頻度の低い変異には、エクソン18のG719S及びエクソン21のL861Qが含まれる。
【0005】
研究では、後天性TKI耐性NSCLC患者の約50~60%はT790M変異を有し、ゲフィチニブやエルロチニブに応答しないことが示されている。T790M変異を特異的に標的とする第3世代TKIであるオシメルチニブで治療した場合でも、NSCLC患者は約10か月の治療後に依然として疾患の進行を経験する。
【0006】
非小細胞肺癌(NSCLC)の場合、TKIの発明は治療状況を大きく変え、これらの患者に利益をもたらしたが、EGFRキナーゼドメインで突然変異が起きる速度は、これらの突然変異によって引き起こされる耐性を克服するための新しいTKIの開発をはるかに上回っている。EGFR変異によって引き起こされる薬剤耐性は、現在のEGFRを標的とするTKIの主な課題の1つである。従って、現在利用可能なEGFR標的治療は患者のニーズを完全に満たすことができず、新しいメカニズムによる治療に対する明らかに満たされていない医療ニーズが存在する。
【0007】
PD-1/PD-L1経路を標的とする免疫チェックポイント阻害剤は、NSCLCを含むいくつかの癌の患者において顕著かつ持続的な臨床応答を示している。PD-1/PD-L1チェックポイントの遮断は劇的な応答をもたらす可能性があるが、この治療法は一部の患者にしか効果がなく、多くの患者は治療に対して部分的にしか応答しない。臨床試験では、扁平上皮NSCLC患者における抗PD-1抗体に対する客観的応答率は約33%で、非扁平上皮NSCLC患者における抗PD-1抗体に対する客観的応答率は12%であることが示されている。さらに、EGFR活性化変異を有するNSCLCにおけるPD-1/PD-L1阻害剤の適用は、現時点ではまだ不明である。EGFR変異NSCLCがPD-1/PD-L1阻害剤から恩恵を受けられるかどうかは不明である。
【0008】
既存の標的化EGFR-TKI薬に存在する上記薬剤耐性の問題とPD-1/PD-L1チェックポイント遮断療法の限界を考慮すると、有効性がより高く、毒性や副作用及び薬剤耐性がより少ない治療法の提供が依然として急務となっている。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
本発明の抗体-薬物コンジュゲート(MYK-3など)は、EGFR変異を発現する様々なNSCLC細胞株、及びEGFR変異を発現する様々なAZD9291(オシメルチニブ)耐性ヒトNSCLC PDX腫瘍モデルにおける腫瘍細胞の増殖の阻害において、顕著な薬動力学的効果を示すことが分かっている。
【0010】
さらに、本発明の抗体-薬物コンジュゲート(MYK-3など)と抗PD-1抗体(AK103など)を併用すると、EGFR変異を発現するAZD9291(オシメルチニブ)耐性ヒトNSCL CPDX腫瘍モデルにおける腫瘍細胞の増殖阻害において顕著な相乗的な薬動力学的効果を示すこともわかっている。
【0011】
これを考慮して、本発明の第1の態様において、抗体-薬物コンジュゲート、前記抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物の使用が提供され、この使用は、
【0012】
1)非小細胞肺癌阻害剤の調製における使用;及び
【0013】
2)非小細胞肺癌を治療及び/又は予防するための医薬の調製における使用、からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり、
【0014】
ここで、前記非小細胞肺癌は、
【0015】
1)EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌、及び
【0016】
2)EGFR変異非小細胞肺癌からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり、そして任意選択的にEGFR変異非小細胞肺癌はまた、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上も有し、
【0017】
ここで、前記抗体-薬物コンジュゲートは式I:
Ab-(LD)p
式I
の構造を有し、
【0018】
式中、
【0019】
Abは抗EGFR抗体を表し、ここで抗EGFR抗体は重鎖及び軽鎖を含み、ここで重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号5~7に示される配列又はそれらの変異体を含み、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号12~14に示される配列又はそれらの変異体を含み、
【0020】
Lはリンカーを表し、
【0021】
Dは細胞傷害性薬剤を表し、
【0022】
pは、1~9(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、若しくは9、又は例えば1~7)、例えば2~6、3~5、具体的には、例えば3.9、4.0、又は4.1を表す。
【0023】
本発明の第2の態様において、以下の1つ又はそれ以上に使用するための、抗体-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物が提供される:
【0024】
1)非小細胞肺癌腫瘍の増殖の阻害、及び
【0025】
2)非小細胞肺癌の治療及び/又は予防、
【0026】
ここで、非小細胞肺癌は、
【0027】
1)EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌、及び
【0028】
2)EGFR変異非小細胞肺癌からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり、及び任意選択的にEGFR変異非小細胞肺癌はまた、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上も有し、
【0029】
ここで、前記抗体-薬物コンジュゲートは式I:
Ab-(LD)p
式I
の構造を有し、
【0030】
式中、
【0031】
Abは抗EGFR抗体を表し、ここで抗EGFR抗体は重鎖及び軽鎖を含み、ここで重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号5~7に示される配列又はそれらの変異体を含み、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号12~14に示される配列又はそれらの変異体を含み、
【0032】
Lはリンカーを表し、
【0033】
Dは細胞傷害性薬剤を表し、
【0034】
pは、1~9(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、若しくは9、又は例えば1~7)、例えば、2~6、3~5、具体的には、例えば3.9、4.0、又は4.1を表す。
【0035】
本発明の第3の態様において、非小細胞肺癌腫瘍の増殖を阻害する方法、及び/又は非小細胞肺癌を治療及び/又は予防する方法が提供され、この方法は、それを必要とする対象に、有効量の抗体-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物を投与する工程を含み、
【0036】
ここで、非小細胞肺癌は、
【0037】
1)EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌、及び
【0038】
2)EGFR変異非小細胞肺癌からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり、そして任意選択的にEGFR変異非小細胞肺癌は、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上も有し、
【0039】
ここで、前記抗体-薬物コンジュゲートは式I:
Ab-(LD)p
式I
の構造を有し、
【0040】
式中、
【0041】
Abは抗EGFR抗体を表し、ここで抗EGFR抗体は重鎖及び軽鎖を含み、ここで重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号5~7に示される配列又はそれらの変異体を含み、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号12~14に示される配列又はそれらの変異体を含み、
【0042】
Lはリンカーを表し、
【0043】
Dは細胞傷害性薬剤を表し、
【0044】
pは、1~9(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、若しくは9、又は例えば1~7)、例えば、2~6、3~5、具体的には、例えば3.9、4.0、又は4.1を表す。
【0045】
いくつかの実施態様において、抗体-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物の用量は、0.1~10.0mg/kg(例えば、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kg、2.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、2.5mg/kg、2.6mg/kg、2.7mg/kg、2.8mg/kg、2.9mg/kg、3.0mg/kg、3.2mg/kg、3.4mg/kg、3.6mg/kg、3.8mg/kg、4.0mg/kg、4.2mg/kg、4.4mg/kg、4.6mg/kg、4.8mg/kg、5.0mg/kg、6.2mg/kg、6.4mg/kg、6.6mg/kg、6.8mg/kg、7.0mg/kg、7.2mg/kg、7.4mg/kg、7.6mg/kg、7.8mg/kg、8.0mg/kg、8.2mg/kg、8.4mg/kg、8.6mg/kg、8.8mg/kg、9.0mg/kg、9.2mg/kg、9.4mg/kg、9.6mg/kg、9.8mg/kg、又は10.0mg/kg、又は0.1~0.3mg/kg、0.3~0.5mg/kg、0.5~0.7mg/kg、0.7~0.9mg/kg、0.9~1.0mg/kg、1.0~1.3mg/kg、1.3~1.5mg/kg、1.5~1.7mg/kg、1.7~1.9mg/kg、1.9~2.0mg/kg、2.0~2.3mg/kg、2.3~2.5mg/kg、2.5~2.7mg/kg、2.7~2.9mg/kg、2.9~3.0mg/kg、3.0~3.3mg/kg、3.3~3.5mg/kg、3.5~3.7mg/kg、3.7~3.9mg/kg、3.9~4.0mg/kg、4.0~4.3mg/kg、4.3~4.5mg/kg、4.5~4.7mg/kg、4.7~4.9mg/kg、又は4.9~5.0mg/kg)である。
【0046】
いくつかの実施態様において、抗体-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物の用量は、0.5~2.5mg/kgである。
【0047】
いくつかの実施態様において、抗体-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物の用量は、2.0~2.5mg/kgである。
【0048】
さらに、上記の「抗体-薬物コンジュゲート」とは、同じか又は異なるDARを有するADC分子を含む組成物を指すことに注意されたい。
【0049】
具体的には、本発明は、複数の抗EGFR ADC分子を含む組成物を提供する。場合によっては、本明細書に記載の組成物中の各ADCは、同数の1つ又はそれ以上の細胞傷害性薬剤を含む。他の場合には、本明細書に記載の組成物中の各ADCは、異なる数の1つ又はそれ以上の細胞傷害性薬剤を含む。
【0050】
本明細書に記載される抗体-薬物コンジュゲートにおいて、各抗EGFR抗体は、1、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上の細胞傷害性薬剤とコンジュゲートすることができる。
【0051】
上記の薬物対抗体比(DAR)は、抗EGFR抗体にコンジュゲートした細胞傷害性薬剤の分子数を指す。本明細書に記載のADCに含まれる細胞傷害性薬剤の分子数は一般的に整数であるが、本明細書に記載のADCに含まれる細胞傷害性薬剤の数(例えば、式Iのp)が分数である場合、その分数は、複数のADC分子を含む組成物中の各抗EGFR抗体にコンジュゲートした細胞傷害性薬剤の平均の数を指す。
【0052】
いくつかの実施態様において、リンカーは、6-マレイミドプロピオニル(MP)、マレイミドプロピオニル(MP)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)吉草酸塩(SPP)、4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-ホルミル(MCC)、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸塩(SIAB)、及び6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)からなる群から選択される。
【0053】
いくつかの実施態様において、リンカーは6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)である。
【0054】
いくつかの実施態様において、細胞傷害性薬剤は、毒素、例えばSN-38、ゲムシタビン、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、メイタンシノイド(例えば、メイタンシンDM1及びメイタンシンDM4)、カリケアマイシン、MGBA(例えば、デュオカルマイシン)、ドキソルビシン、リシン及びジフテリア毒素、I131、インターロイキン類、腫瘍壊死因子、ケモカイン類、及びナノ粒子からなる群から選択される。
【0055】
いくつかの実施態様において、細胞傷害性薬剤はモノメチルオーリスタチンE(MMAE)である。
【0056】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖可変領域中のFR1、FR2、FR3、及びFR4領域は、それぞれ、配列番号8~11に示される配列又はそれらの変異体を含む。
【0057】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖可変領域中のFR1、FR2、FR3、及びFR4領域は、それぞれ配列番号15~18に示される配列又はそれらの変異体を含む。
【0058】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖定常領域は、ヒトIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgA定常領域又はそれらの変異体から選択される。
【0059】
いくつかの実施態様において、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択される。
【0060】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖定常領域は、ヒトのラムダ定常領域及びカッパ定常領域又はそれらの変異体から選択される。
【0061】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖可変領域の配列は、配列番号1に示される配列、あるいは配列番号1に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む。
【0062】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖可変領域の配列は、配列番号1に示される。
【0063】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖可変領域の配列は、配列番号2に示される配列、あるいは配列番号2に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む。
【0064】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖可変領域の配列は、配列番号2に示される。
【0065】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖定常領域の配列は、配列番号3に示される配列、あるいは配列番号3に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む。
【0066】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖定常領域の配列は配列番号3に示される。
【0067】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖定常領域の配列は、配列番号4に示される配列、あるいは配列番号4に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む。
【0068】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖定常領域の配列は配列番号4に示される。
【0069】
いくつかの実施態様において、EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌は、EGFR変異、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上を有する。
【0070】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、エクソン18、エクソン19、エクソン20、及びエクソン21からなる群から選択される1つ又はそれ以上の部位における変異である。
【0071】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、C797S、G719S、L861Q、G719C、G719A、T854A、及びD761Yからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異である。
【0072】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、及びC797Sからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異である。
【0073】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、及びT790Mからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異である。
【0074】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、C797S、又はL858R/T790M二重変異である。
【0075】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、又はL858R/T790M二重変異である。
【0076】
いくつかの実施態様において、EGFR-TKIは、オシメルチニブ(AZD9291)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ダコチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ナザルチニブ、ロシレチニブ、ナコチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、ペリチニブ、カネルチニブ、ブリガチニブ、PKC412、Go6976、マベレルチニブ、オルムチニブ、WZ4002、TAS2913、セツキシマブ、パニツムマブ、アビチニブ、HS-10296、及びTQB3804からなる群から選択される1つ又はそれ以上である。
【0077】
いくつかの実施態様において、EGFR-TKIはオシメルチニブ(AZD9291)である。
【0078】
いくつかの実施態様において、非小細胞肺癌は、肺腺癌(好ましくは、気管支肺胞癌)、肺扁平上皮癌、肺の腺扁平上皮癌、及び肺大細胞癌からなる群から選択される。
【0079】
本発明の第4の態様において、
【0080】
抗体-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物である第1の薬物、及び
【0081】
PD-1/PD-L1阻害剤である第2の薬物を含む併用薬物が提供され、
【0082】
ここで、前記抗体-薬物コンジュゲートは式I:
Ab-(LD)p
式I
の構造を有し、
【0083】
式中、
【0084】
Abは抗EGFR抗体を表し、ここで抗EGFR抗体は重鎖及び軽鎖を含み、ここで重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号5~7に示される配列又はそれらの変異体を含み、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号12~14に示される配列又はそれらの変異体を含み、
【0085】
Lはリンカーを表し、
【0086】
Dは細胞傷害性薬剤を表し、
【0087】
pは、1~9(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、若しくは9、又は例えば1~7)、例えば、2~6、3~5、具体的には、例えば3.9、4.0、又は4.1を表す。
【0088】
いくつかの実施態様において、第1の薬物と第2の薬物は互いに分離されている。互いに分離されているとは、第1の薬物と第2の薬物は混合して使用されるのではなく、分離した状態で使用されることを意味する。例えば、第1の薬物と第2の薬物は、併用投与(同時投与、逐次投与、又は交差投与など)に使用される。
【0089】
いくつかの実施態様において、リンカーは、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロピオニル(MP)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)吉草酸塩(SPP)、4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-ホルミル(MCC)、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸塩(SIAB)、及び6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)からなる群から選択される。
【0090】
いくつかの実施態様において、リンカーは6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)である。
【0091】
いくつかの実施態様において、細胞傷害性薬剤は、毒素、例えばSN-38、ゲムシタビン、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、メイタンシノイド(例えば、メイタンシンDM1及びメイタンシンDM4)、カリケアマイシン、MGBA(例えば、デュオカルマイシン)、ドキソルビシン、リシン及びジフテリア毒素、I131、インターロイキン類、腫瘍壊死因子、ケモカイン類、及びナノ粒子からなる群から選択される。
【0092】
いくつかの実施態様において、細胞傷害性薬剤はモノメチルオーリスタチンE(MMAE)である。
【0093】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖可変領域中のFR1、FR2、FR3、及びFR4領域は、それぞれ、配列番号8~11に示される配列又はそれらの変異体を含む。
【0094】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖可変領域中のFR1、FR2、FR3、及びFR4領域は、それぞれ配列番号15~18に示される配列又はそれらの変異体を含む。
【0095】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖定常領域は、ヒトIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgA定常領域又はそれらの変異体から選択される。
【0096】
いくつかの実施態様において、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択される。
【0097】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖定常領域は、ヒトのラムダ定常領域及びカッパ定常領域又はそれらの変異体から選択される。
【0098】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖可変領域の配列は、配列番号1に示される配列、あるいは配列番号1に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む。
【0099】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖可変領域の配列は、配列番号1に示される。
【0100】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖可変領域の配列は、配列番号2に示される配列、あるいは配列番号2に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む。
【0101】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖可変領域の配列は、配列番号2に示される。
【0102】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖定常領域の配列は、配列番号3に示される配列、あるいは配列番号3に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む。
【0103】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の重鎖定常領域の配列は配列番号3に示される。
【0104】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖定常領域の配列は、配列番号4に示される配列、あるいは配列番号4に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む。
【0105】
いくつかの実施態様において、抗EGFR抗体の軽鎖定常領域の配列は配列番号4に示される。
【0106】
いくつかの実施態様において、PD-1/PD-L1阻害剤は抗PD-1抗体である。
【0107】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は、AK103(HX008)、トリパリマブ(JS-001)、シンチリマブ(IBI308)、カムレリズマブ、ティスレリズマブ(BGB-A317)、オプジーボ又はニボルマブ、キイトルーダ又はペンブロリズマブ、CS1003、セルプルリマブ(HLX10)、AK104、ゲプタノリマブ(GB226)、リズマブ(例えば、LZM009)、BAT-1306、SCT-I10A、F520、SG001、GLS-010、PDR001、REGN2810、及びSTI-A1110からなる群から選択される1つ又はそれ以上である。
【0108】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体はAK103(HX008)である。
【0109】
いくつかの実施態様において、PD-1/PD-L1阻害剤は抗PD-L1抗体である。
【0110】
いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、又はそれらの組み合わせである。
【0111】
いくつかの実施態様において、第1の薬物対第2の薬物の重量比は、15:1~1:15(例えば、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、又は1:15、又は15:1~14:1、14:1~12:1、12:1~10:1、10:1~8:1、8:1~6:1、6:1~4:1、4:1~2:1、2:1~1:2、1:2~1:4、1:4~1:6、1:6~1:8、1:8~1:10、1:10~1:12、1:12~1:14、又は1:14~1:15)である。
【0112】
いくつかの実施態様において、第1の薬物と第2の薬物の重量比は1:1~1:10である。
【0113】
いくつかの実施態様において、第1の薬物対第2の薬物の重量比は、1:1~1:9、1:2~1:8、1:3~1:7、又は1:4~1:6である。
【0114】
いくつかの実施態様において、第1の薬物と第2の薬物の重量比は1:5である。
【0115】
本発明の第5の態様において、
【0116】
1)非小細胞肺癌阻害剤の調製における使用;及び
【0117】
2)非小細胞肺癌を治療及び/又は予防するための医薬の調製における使用、からなる群から選択される1つ又はそれ以上である上記併用薬物の使用が提供され;
【0118】
ここで、前記非小細胞肺癌は、
【0119】
1)EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌、及び
【0120】
2)EGFR変異非小細胞肺癌からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり、そして任意選択的に、EGFR変異非小細胞肺癌はまた、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上も有する。
【0121】
本発明の第6の態様において、
【0122】
1)非小細胞肺癌腫瘍の増殖の阻害、及び
【0123】
2)非小細胞肺癌の治療及び/又は予防、の1つ又はそれ以上で使用するための上記の併用薬物が提供され;
【0124】
ここで、非小細胞肺癌は、
【0125】
1)EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌、及び
【0126】
2)EGFR変異非小細胞肺癌からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり、そして任意選択的に、EGFR変異非小細胞肺癌は、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上も有する。
【0127】
いくつかの実施態様において、EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌は、EGFR変異、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上を有する。
【0128】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、エクソン18、エクソン19、エクソン20、及びエクソン21からなる群から選択される1つ又はそれ以上の部位における変異である。
【0129】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、C797S、G719S、L861Q、G719C、G719A、T854A、及びD761Yからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異である。
【0130】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、及びT790Mからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異である。
【0131】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、又はL858R/T790M二重変異である。
【0132】
いくつかの実施態様において、EGFR-TKIは、オシメルチニブ(AZD9291)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ダコチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ナザルチニブ、ロシレチニブ、ナコチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、ペリチニブ、カネルチニブ、ブリガチニブ、PKC412、Go6976、マベレルチニブ、オルムチニブ、WZ4002、TAS2913、セツキシマブ、パニツムマブ、アビチニブ、HS-10296、及びTQB3804からなる群から選択される1つ又はそれ以上である。
【0133】
いくつかの実施態様において、EGFR-TKIはオシメルチニブ(AZD9291)である。
【0134】
いくつかの実施態様において、非小細胞肺癌は、肺腺癌(好ましくは、気管支肺胞癌)、肺扁平上皮癌、肺の腺扁平上皮癌、及び肺大細胞癌からなる群から選択される。
【0135】
本発明の第7の態様において、非小細胞肺癌腫瘍の増殖を阻害する方法、及び/又は非小細胞肺癌を治療及び/又は予防する方法が提供され、この方法は、それを必要とする対象に、有効量の第1の薬物及び有効量の第2の薬物を投与する工程を含み、ここで第1の薬物は上記の抗体-薬物コンジュゲート、又は抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物であり、ここで、第2の薬物はPD-1/PD-L1阻害剤であり;
【0136】
ここで、非小細胞肺癌は、
【0137】
1)EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌、及び
【0138】
2)EGFR変異非小細胞肺癌からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり、そして任意選択的にEGFR変異非小細胞肺癌は、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上も有する。
【0139】
いくつかの実施態様において、PD-1/PD-L1阻害剤は抗PD-1抗体である。
【0140】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は、AK103(HX008)、トリパリマブ(JS-001)、シンチリマブ(IBI308)、カムレリズマブ、ティスレリズマブ(BGB-A317)、オプジーボ又はニボルマブ、キイトルーダ又はペンブロリズマブ、CS1003、セルプルリマブ(HLX10)、AK104、ゲプタノリマブ(GB226)、リズマブ(例えば、LZM009)、BAT-1306、SCT-I10A、F520、SG001、GLS-010、PDR001、REGN2810、及びSTI-A1110からなる群から選択される1つ又はそれ以上である。
【0141】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体はAK103(HX008)である。
【0142】
いくつかの実施態様において、PD-1/PD-L1阻害剤は抗PD-L1抗体である。
【0143】
いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、又はそれらの組み合わせである。
【0144】
いくつかの実施態様において、第1の薬物と第2の薬物の用量比は、15:1~1:15(例えば、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、又は1:15、又は15:1~14:1、14:1~12:1、12:1~10:1、10:1~8:1、8:1~6:1、6:1~4:1、4:1~2:1、2:1~1:2、1:2~1:4、1:4~1:6、1:6~1:8、1:8~1:10、1:10~1:12、1:12~1:14、又は1:14~1:15)である。
【0145】
いくつかの実施態様において、第1の薬物と第2の薬物の用量比は1:1~1:10である。
【0146】
いくつかの実施態様において、第1の薬物と第2の薬物の用量比は、1:1~1:9、1:2~1:8、1:3~1:7、又は1:4~1:6である。
【0147】
いくつかの実施態様において、第1の薬物と第2の薬物の用量比は1:5である。
【0148】
当業者であれば、第1の薬物と第2の薬物の用量が、疾患を予防及び治療するための総用量であることを理解できることに注意されたい。総用量が変わらない場合、異なる投与方法が可能であり、例えば、X日に1回投与及びY回投与などである。
【0149】
いくつかの実施態様において、第1の薬物の用量は1mg/kgである。いくつかの実施態様において、第2の薬物の用量は5mg/kgである。
【0150】
いくつかの実施態様において、第1の薬物と第2の薬物は交差投与される。
【0151】
いくつかの実施態様において、第1の薬物の投与様式は、0日目から4日ごとに1回、合計3回である。
【0152】
いくつかの実施態様において、第2の薬物の投与様式は、0日目から3日に1回、合計10回である。
【0153】
いくつかの実施態様において、第1の薬物と第2の薬物の投与経路は静脈内注射である。
【0154】
いくつかの実施態様において、EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌は、EGFR変異、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上を有する。
【0155】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、エクソン18、エクソン19、エクソン20、及びエクソン21からなる群から選択される1つ又はそれ以上の部位における変異である。
【0156】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、C797S、G719S、L861Q、G719C、G719A、T854A、及びD761Yからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異である。
【0157】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、及びT790Mからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異である。
【0158】
いくつかの実施態様において、EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、又はL858R/T790M二重変異である。
【0159】
いくつかの実施態様において、EGFR-TKIは、オシメルチニブ(AZD9291)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ダコチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ナザルチニブ、ロシレチニブ、ナコチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、ペリチニブ、カネルチニブ、ブリガチニブ、PKC412、Go6976、マベレルチニブ、オルムチニブ、WZ4002、TAS2913、セツキシマブ、パニツムマブ、アビチニブ、HS-10296、及びTQB3804からなる群から選択される1つ又はそれ以上である。
【0160】
いくつかの実施態様において、EGFR-TKIはオシメルチニブ(AZD9291)である。
【0161】
いくつかの実施態様において、非小細胞肺癌は、肺腺癌(好ましくは、気管支肺胞癌)、肺扁平上皮癌、肺の腺扁平上皮癌、及び肺大細胞癌からなる群から選択される。
【0162】
有益な効果:
【0163】
1.本発明の抗体-薬物コンジュゲート(例えば、MYK-3)は、EGFR変異を発現する様々なNSCLC細胞株、並びにEGFR変異を発現する様々なAZD9291耐性ヒトNSCLC PDX腫瘍モデルの増殖の阻害において、顕著な薬動力学的効果を示した。
【0164】
2.本発明の抗体-薬物コンジュゲート(例えば、MYK-3)と抗PD-1抗体(例えば、AK103)又は抗PD-L1抗体との併用は、EGFR変異を発現するAZD9291耐性ヒトNSCLC DX腫瘍モデルにおける腫瘍細胞の増殖の阻害において顕著な相乗的な薬動力学的効果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【
図1】
図1は、抗体-薬物コンジュゲートの薬物/抗体比を決定するためのHIC-HPLCクロマトグラムである。
【0166】
【
図2】
図2は、ヒト肺癌細胞株NCI-H1975におけるMYK-3及びErbitux(登録商標)の代表的な細胞死滅曲線を示す。
【0167】
【
図3】
図3は、ヒト肺癌細胞株NCI-H1650におけるMYK-3及びErbitux(登録商標)の代表的な細胞死滅曲線を示す。
【0168】
【
図4】
図4は、ヌードマウスにおけるヒト肺癌NCI-H1975皮下異種移植腫瘍に対するADC-3及びErbitux(登録商標)の有効性を示す。
【0169】
【
図5】
図5は、AZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルLUN#2005-143における腫瘍体積に対する様々な試験薬物の効果を示す。
【0170】
【
図6】
図6は、AZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルLUN#2210-4aにおける腫瘍体積に対する様々な種試験薬物の効果を示す。
【0171】
【
図7】
図7は、AZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルLUN#2210-106における腫瘍体積に対する様々な試験薬物の効果を示す。
【0172】
【
図8】
図8は、AZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルLUN#2355-128における腫瘍体積に対する様々な試験薬物の効果を示す。
【0173】
【
図9】
図9は、AZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルLUN#2441-118における腫瘍体積に対する様々な試験薬物の効果を示す。
【0174】
【
図10】
図10は、ヒト肺癌PDXモデルLUN#2210-106における腫瘍体積に対する様々な試験薬物の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0175】
実施態様の詳細な説明
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を詳細に説明する。しかしながら、当業者であれば、以下の実施例は本発明を説明するためにのみ使用されるものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。実施例中に特別な条件を記載していないものは、通常、従来の条件又は製造業者が推奨する条件で実施される。製造業者を特定せずに使用した試薬や器具は、いずれも市販されている従来品である。
【0176】
本発明において、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、特に明記しない限り、当業者に一般的に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用されるタンパク質化学及び核酸化学、分子生物学、細胞培養及び組織培養、微生物学、免疫学、及び実験室手順の関連用語はすべて、対応する技術分野で広く使用されている用語及び日常的な手順である。さらに、本発明をよりよく理解するために、関連する用語の定義及び説明を以下に提供する。
【0177】
特に明記しない限り、本発明においては、濃度範囲、パーセント範囲、比率範囲、又は数値範囲は、記載された範囲内の任意の整数値、及び必要に応じて、記載された範囲内の分数値を含むものと理解されるべきである。
【0178】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子を指し、これは、通常2対の同一のポリペプチド鎖から構成され、各対が「軽」(L)鎖と「重」(H)鎖を有する。抗体の軽鎖は、κとλの2つのカテゴリーに分類できる。重鎖は、μ、δ、γ、α、εの5つのカテゴリーに分類できる。重鎖の違いにより、抗体はIgM、IgD、IgG、IgA、IgEの5つのカテゴリーに分類できる。軽鎖と重鎖内では、可変領域と定常領域は約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって接続されており、重鎖はまた約3個以上のアミノ酸の「D」領域を有する。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び補体系の成分C1qを含む宿主組織又は因子への、免疫グロブリンの結合を媒介することができる。VH及びVLはまた、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる可変性の高い領域に細分することもでき、ここには、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が点在する。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、3つのCDRと4つのFRが以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VH及びVL)は、それぞれ抗体結合部位を形成する。各領域又は構造ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991)), 又は Chothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917; Chothia et al. (1989) Nature 342:878-883 の定義に従う。
【0179】
本明細書に記載のモノクローナル抗体変種は、伝統的な遺伝子工学的方法を通じて得ることができる。当業者は、核酸変異を使用してDNA分子を修飾する方法を十分に知っている。さらに、重鎖及び軽鎖の変種をコードする核酸分子は、化学合成によっても入手することができる。
【0180】
本発明において、配列同一性(相同性)及び配列類似性パーセントを決定するために使用されるアルゴリズムは、例えば、BLAST及びBLAST2.0であり、それぞれ Altschul et al., (1977) Nucl. Acid. Res. 25: 3389-3402 及び Altschul et al., (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410 に記載されている。BLAST及びBLAST2.0を使用して、例えば参考文献に記載されているパラメータ又はデフォルトパラメータを使用して、本発明のアミノ酸配列同一性のパーセントを決定することができる。BLAST分析を実行するために使用されるソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information を通じて公的に入手可能である。
【0181】
本明細書に記載されるように、あるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有する前記アミノ酸配列には、前記アミノ酸配列と実質的に同一であるポリペプチド配列、例えば、本明細書に記載の方法(標準パラメータを使用するBLAST分析など)を使用する場合、本発明のポリペプチド配列に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列が含まれる。
【0182】
本明細書で使用される前記アミノ酸配列の変異体は、前記アミノ酸配列に対して70%を超える同一性、例えば75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%を超える同一性を有する配列、例えば、アミノ酸の3、2、又は1個の置換、欠失、又は付加を有する配列を指す。好ましくは、3つ以下のアミノ酸が置換、付加、又は欠失される。より好ましくは、2つ以下のアミノ酸が置換、付加、又は欠失される。最も好ましくは、1つ以下のアミノ酸が置換、付加、又は欠失される。
【0183】
「置換」変種は、天然配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、異なるアミノ酸がその同じ位置に挿入されたものである。置換は、分子内で1つのアミノ酸のみが置換される単一の置換、又は同じ分子内で2つ又はそれ以上のアミノ酸が置換される複数の置換であってもよい。連続した部位で複数の置換を行うことができる。同様に、1つのアミノ酸が複数の残基で置換されていてもよく、そのような変種には置換と挿入の両方が含まれる。「挿入」(又は「付加的」)変種は、1つ又はそれ以上のアミノ酸が天然配列にすぐ隣接する特定の位置に挿入されるものである。アミノ酸のすぐ隣とは、アミノ酸のα-カルボキシル又はα-アミノ官能基への結合を意味する。「欠失」変種は、天然アミノ酸配列中の1つ又はそれ以上のアミノ酸が除去されているものである。通常、欠失変種では、分子の特定の領域で1つ又は2つのアミノ酸が欠失している。
【0184】
本発明において、MMAEの構造は、以下の通りである:
【0185】
【0186】
本発明において、式IのL-DはMMAEであり、すなわち、L-DがMC-vc-PAB-MMAEである場合、その構造は以下で表される:
【0187】
【0188】
本発明において、抗EGFR抗体Abは、自身のジスルフィド結合が還元された後に生成されるチオールを介してL-Dに結合される。例えば、L-DがMC-vc-PAB-MMAEである場合、AbがL-Dに結合した後の構造は以下で表される:
【0189】
【0190】
本発明において、薬物抗体比(DAR)又は薬物負荷は、p、すなわち、式I:Ab-(L-D)p の分子中の抗体当たりの薬物モジュール(すなわち、細胞傷害性薬剤)の平均数で表され、これは整数でも分数でもよい。一般式IのADCには、一連の薬物モジュールとコンジュゲートした抗体の集合が含まれる。コンジュゲーション反応によるADC配合物中の抗体当たりの薬物モジュールの平均数は、従来の手段、例えば質量分析法、ELISA、HIC、HPLCなどで証明することができる。p内のADCの定量的分布も決定することができる。場合によっては、他のDARを予測ADCから特定のp値を有する均質なADCの分離、精製、検証は、逆相HPLCや電気泳動などの手段によって行うことができる。
【0191】
特定の実施態様において、コンジュゲーション反応で、理論上の最大値未満の薬物部分が抗体にコンジュゲートされる。一般的に、抗体は、薬物部分を連結できる多くの遊離の反応性システインチオール基を含んでいない。実際、抗体内のほとんどのシステインチオール基はジスルフィド架橋として存在する。特定の実施態様において、抗体は、部分的又は完全な還元条件下で、ジチオスレイトール(DTT)又はトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などの還元剤を用いて還元されて、反応性システインチオール基を生成することができる。
【0192】
本発明において、「治療」とは、予防のため又は臨床病理の過程において、治療される個体又は細胞の自然な経過を変更しようとする臨床的介入を指す。治療の所望の効果には、疾患の発生又は再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的影響の軽減、転移の予防、疾患の進行の遅延、疾患状態の改善又は緩和、及び予後の解消又は改善が含まれる。いくつかの実施態様において、本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、疾患又は障害の発症を遅らせるため、又は疾患又は障害の進行を遅らせるために使用される。治療の成功及び疾患の改善を評価するための上述のパラメータは、医師が熟知してしている日常的な手順によって容易に測定することができる。癌治療の場合、有効性は、例えば、疾患進行までの時間(TTP)を評価すること、及び/又は奏効率(RR)を決定することによって測定することができる。
【0193】
本発明において、「対象」という用語は脊椎動物を指す。いくつかの実施態様において、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物には、限定されるものではないが、家畜(例えば、牛)、ペット(例えば、猫、犬、馬)、霊長類、マウス、ラットが含まれる。いくつかの実施態様において、哺乳動物はヒトを指す。
【0194】
本発明において、「有効量」とは、必要な用量及び時間で所望の治療効果又は予防効果を達成するのに有効な量を指す。本発明の物質/分子の「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の音を誘発する物質/分子の能力などの要因に応じて変化し得る。治療有効量はまた、物質/分子の毒性又は有害な結果を治療上有益な効果が凌駕している量も包含する。「予防有効量」とは、所望の予防効果を達成するために必要な用量及び時間で有効な量を指す。必ずしもではないが、通常、予防有効用量は、疾患の発症前又は疾患の初期段階で対象に投与されるため、治療有効量よりも少ないであろう。癌の場合、治療有効量の薬物は、癌細胞の数が減少させ、腫瘍サイズを縮小し、周囲の臓器への癌細胞の浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅くし、好ましくは停止させる)、腫瘍の転移を阻害し(すなわち、ある程度遅くし、好ましくは停止させる)、腫瘍の増殖をある程度阻害し、及び/又は癌に関連する1つ又はそれ以上の症状をある程度軽減する。
【0195】
疾患の予防又は治療について、本発明の抗体-薬物コンジュゲートの適切な用量(単独で使用する場合、又は化学療法剤などの1つ又はそれ以上の他の治療薬と併用する場合)は、治療する疾患の種類、抗体-薬物コンジュゲートの種類、疾患の重症度及び進行度、抗体-薬物コンジュゲートが予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、以前の治療法、患者の病歴、及び抗体-薬物コンジュゲートに対する反応性、及び主治医医師の判断に依存するであろう。適切には、抗体-薬物コンジュゲートは、1回又は一連の治療にわたって患者に投与される。
【0196】
本発明において、「相乗的」という用語は、成分又は薬剤の併用投与(例えば、MYK-3などの抗体-薬物コンジュゲートとAK103などの抗PD-1抗体、又は抗PD-L1抗体の併用投与)において、個々の成分の相加的な特性又は効果に基づいて期待される効果よりも大きいそのような効果(例えば、腫瘍増殖の阻害、生存時間の延長など)を生み出す観察された結果を指す。いくつかの実施態様において、相乗効果は、Bliss分析を行うことによって決定される(例えば、Foucquier et al., Pharmacol. Res. Perspect. (2015)3(3): e00149 を参照、この内容は、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。Bliss Independentモデルでは、薬物の効果は確率的プロセスの結果であり、薬物は完全に独立して作用する(つまり、薬物は互いに干渉しない(たとえば、薬物の作用部位が異なる)が、それぞれが共通の結果に寄与する)と仮定する。Bliss Independentモデルによると、2つの薬物の併用で期待される効果は次の式を使用して計算される:
【0197】
EAB=EA+EB-EA×EB、
【0198】
ここで、EAとEBはそれぞれ薬物AとBの効果を表し、EABは薬物AとBの併用の効果を表す。観察された併用の効果が期待される効果EABよりも高い場合、2つの薬物は相乗効果があると考えられる。観察された併用の効果がEABに等しい場合、2つの薬物の併用は相加的であるとみなされる。あるいは、観察された併用の効果がEABの効果よりも低い場合、2つの薬物の併用は拮抗的であると考えられる。
【0199】
薬物併用の観察された効果は、例えば、対象又は対象集団のTGI指数、腫瘍サイズ(例えば、体積、質量)、2つ又はそれ以上の時点間(例えば、治療の投与初日と治療の最初の投与後の特定の日数との間)の腫瘍サイズ(例えば、体積、質量)の絶対的変化、2つ又はそれ以上の時点間(例えば、治療の投与初日と治療の最初の投与後の特定の日数との間)の腫瘍サイズ(例えば、体積、質量)の変化率、又は生存時間に基づくことができる。TGI指数が薬物併用の観察された効果の尺度として使用される場合、TGI指数は1つ又はそれ以上の時点で決定され得る。TGI指数が2つ又はそれ以上の時点で決定される場合、場合によっては、複数のTGI指数の平均又は中央値が、観察された効果の尺度として使用される場合がある。さらに、TGI指数は、被験者又は被験者集団において決定され得る。集団においてTGI指数が決定される場合、集団における(例えば、1つ又はそれ以上の時点における)TGI指数の平均又は中央値が、観察された効果の尺度として使用され得る。観察された効果の尺度として腫瘍サイズ又は腫瘍増殖率が使用される場合、腫瘍サイズ又は腫瘍増殖率は、対象又は対象集団において測定され得る。場合によっては、平均又は中央値の腫瘍サイズ又は腫瘍増殖率は、対象について2つ又はそれ以上の時点で、又は対象集団について1つ又はそれ以上の時点で決定される。集団内の生存時間が決定される場合、観察された効果の尺度として平均又は中央値生存時間が使用される場合がある。
【0200】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」には一般的に、使用される用量及び濃度で曝露される細胞又は哺乳動物に対して、非毒性である薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤が含まれる。典型的には、生理学的に許容される担体とは、pH緩衝水溶液を指す。生理学的に許容される担体の例には、緩衝液、例えばリン酸塩、クエン酸塩、その他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化物質;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジン;単糖類、二糖類、及び他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース、スクロース、トレハロース、又はデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)が含まれる。
【0201】
いくつかの実施態様において、薬学的に許容される塩は無機酸塩又は有機酸塩であり、ここで、無機酸塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、硫酸塩、又はリン酸塩であり、有機酸塩は、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、α-グリセロリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、又はアリールスルホン酸塩であり;好ましくは、アルキルスルホン酸塩はメタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩である;アリールスルホン酸塩は、ベンゼンスルホン酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩である。
【0202】
薬学的に許容される塩は、当分野で周知の標準手順を使用して、例えば十分な量の塩基性化合物を、薬学的に許容されるアニオンを提供する適切な酸と反応させることによって得ることができる。
【0203】
本発明において、溶媒和物とは、本発明の抗体-薬物コンジュゲートのこれらの形態、すなわち、抗体-薬物コンジュゲートと溶媒分子との配位によって形成される固体又は液体形態のコンジュゲートを指す。水和物は、水分子が配位した溶媒和物の特定の形態である。本発明においては、水和物が好ましい溶媒和物である。
【0204】
本発明において、EGFRの過剰発現とは、正常上皮細胞の表面におけるEGFRの発現レベルと比較して、EGFRの発現レベルが増加することをいう。これは、高発現、中程度の発現、及び低発現に分類することができる(Wild, R., et al., Mol. Cancer Rher 2006:5(1), p104-113, Cetuximab preclinical antitumor activity (monotherapy and combination based) is not predicted by relative total or activated epidermal growth factor receptor tumor expression levels)。
【0205】
本発明において、20種類の従来のアミノ酸及びその略語は従来の用法に従う。参照により本明細書に組み込まれる、Immunology-A Synthesis (第2版, E.S. Golub and D.R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))を参照されたい。
【0206】
MYK-3は、vc(すなわち、6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル、MC-vc-PABとしても知られている)リンカーを介して、抗EGFRモノクローナル抗体(BA03)と強力な細胞傷害性小分子薬物MMAE(メチルオーリスタチンE)の結合によって形成される。MYK-3は、腫瘍細胞の表面にあるEGFR受容体に結合することにより、エンドサイトーシスを受けてMMAEを放出し、それによって、チューブリンが関与するさまざまな細胞生理学的機能(有糸分裂を含む)をブロックし、さらに腫瘍細胞の増殖を阻害して腫瘍細胞の死をもたらす。
【0207】
AK103は、抗PD-1モノクローナル抗体薬物であり、免疫チェックポイント阻害剤である。PD-1/PD-L1シグナル伝達経路をブロックすることにより、T細胞の活性化がアップレギュレートされ、内因性の抗腫瘍免疫応答が活性化され、それによって腫瘍に対する治療効果を発揮する。
【0208】
本発明における抗体BA03は、中国発明特許出願CN103772504AにおけるBA03である。その調製方法については、特許出願の実施例3を参照されたい。抗体の各部分の配列は次のとおりである:
【0209】
重鎖可変領域の配列は以下のとおりである:
【0210】
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGFSLSNYDVHWVRQAPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRLTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARALDYYDYEFAYWGQGTLVTVSS (配列番号1)。
【0211】
配列中、下線部はそれぞれCDR1(配列番号5)、CDR2(配列番号6)、及びCDR3(配列番号7)である。
【0212】
下線のない部分はそれぞれFR1(配列番号8)、FR2(配列番号9)、FR3(配列番号10)、及びFR4(配列番号11)である。
【0213】
軽鎖可変領域の配列は次のとおりである:
【0214】
EIVLTQSPDFQSVTPKEKVTITCRASQSIGTNIHWYQQKPDQSPKLLIKYASESISGIPSRFSGSGSGTDFTLTINSLEAEDAATYYCQQNNEWPTSFGQGTKLEIK (配列番号2)。
【0215】
配列中、下線部はそれぞれCDR1(配列番号12)、CDR2(配列番号13)、及びCDR3(配列番号14)である。
【0216】
下線のない部分はそれぞれFR1(配列番号15)、FR2(配列番号16)、FR3(配列番号17)、及びFR4(配列番号18)である。
【0217】
重鎖定常領域の配列は次のとおりである:
【0218】
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号3)。
【0219】
軽鎖定常領域の配列は次のとおりである:
【0220】
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号4)。
【0221】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0222】
本発明及び以下の実施例において、ADC-3又はMRG003はMYK-3を指すことに注意されたい。
【0223】
実施例1:抗体-薬物コンジュゲートの調製方法
15mLの30KD限外濾過装置を使用して、10mgの抗体BA03を還元緩衝液(25mMホウ酸ナトリウム、pH8.0、25mM NaCl、5mM EDTA)に、合計3回緩衝液交換し(最終容量は約1mLであった)、新しいエッペンドルフ遠心管(秤量済み)に移し、秤量した。タンパク質の濃度を検出し、タンパク質の総量を算出した。2.5倍モル量のDTTを抗体に加え、混合物を室温で2時間インキュベートし、混合を続けた。混合物を、15mlの30KD限外濾過装置を使用して、結合緩衝液(50mMトリス、pH7.2、150mM NaCl、5mM EDTA)に、合計3回緩衝液交換した。濃縮液を採取し、A280によりタンパク質濃度を測定し、秤量して総タンパク質量を算出した。10μlの試料を採取し、エルマン試験により遊離チオール基の数を測定し;
そしてその遊離チオール基のモル濃度を以下の式に従って算出した:
【化4】
b:キュベットの光路長(通常1cm)。
【0224】
遊離チオール基のモル数は、遊離チオール基のモル濃度と総タンパク質溶液の体積から算出した。
【0225】
遊離チオール基のモル数の1.1倍のvc-MMAE(Shanghai Haoyuan Chemexpress Co., Ltd.から購入 、カタログ番号HY-15575)(DMSOに溶解されている)を還元抗体に加え、混合物をよく混合して、断続的に混合しながら室温で2時間反応させた。vc-MMAEのモル数の20倍のN-アセチルシステインを反応系に加えた。反応混合物をよく混合し、5分間放置した。15mlの30KD限外濾過装置を使用して、混合物を結合原液(20mMクエン酸Na、0.3%NaCl、5%トレハロース、0.05%ツイーン-80、pH6.0)に合計3回緩衝液交換して、抗体-薬物コンジュゲートMYK-3を得た。試料は4℃で保存した。
【0226】
薬物対抗体比の決定:
調製した抗体-薬物コンジュゲートをHIC-HPLCで分析(Jun Ouyang, Drug-To-Antibody (DAR) Ratio and Drug Distribution by Hydrophobic Interaction Chromatography and Reverse Phase High Performance Chromatography, Laurent Ducry (ed.), Antibody Drug Conjugates, Chapter 17, Methods in Molecular Biology, Vol 1045, p275-283)して、薬物対抗体比(DAR)を決定した。
図1に示すように、スペクトルのピーク面積に基づいて算出された平均DARは4.1であった。
【0227】
実施例2.EGFR変異を有する細胞株に対するMYK-3のインビトロ死滅活性
EGFR変異を有する細胞株に対するMYK-3の殺傷効果を研究するために、異なるEGFR変異を有する2つのヒト肺癌細胞株NCI-H1975及びNCI-H1650を選択し、MYK-3と市販の参照薬 Erbitux(登録商標)の殺傷効果を、CCK-8検査試薬を用いる細胞増殖阻害法により測定した。研究結果を表1及び
図2~3に示す。
【0228】
【表1】
注:EGFRの発現レベルと変異部位については参考文献を参照されたい。IC
50の値は、2つの96ウェルプレートで計算されたIC
50の平均である。NDは、最も高い増殖阻害%が50%未満であり、従ってIC
50値は計算できないことを示す。
【0229】
実験結果は、MYK-3が、異なるEGFR変異を有する2つのヒト肺癌細胞株に対して顕著な細胞死滅効果を示し、その効果は市販の参照薬Erbitux(登録商標)よりも大幅に優れていることを示す。
【0230】
実施例3.CDXモデルにおけるMYK-3の腫瘍阻害効果
ヒト由来腫瘍細胞異種移植モデル(CDXモデル)は、免疫不全マウスのヒト腫瘍細胞を用いて確立された腫瘍モデルである。将来の臨床適応症におけるMYK-3の有効性を効果的に評価するために、EGFR変異ヒトNSCLC CDXモデルで実験を行った。すべての実験において、市販のEGFR標的モノクローナル抗体薬(登録商標)を参照薬物として使用し、腫瘍阻害活性を比較した。
【0231】
【0232】
ヌードマウスにヒト肺癌細胞H1975を皮下接種した。腫瘍が100~200mm
3に成長した後、動物をランダムに群別した(D0)。MYK-3は0.3mg/kg、1mg/kg、及び3mg/kgの用量で投与され、14日目(D14)の腫瘍阻害率はそれぞれ34%、128%、141%であった。1mg/kg及び3mg/kg用量群では、8匹中7匹のマウスが部分的な腫瘍退縮を示した。26日目(D25)までに、1mg/kg群では8匹中5匹のマウスが部分的に腫瘍退縮を示したが、3mg/kg群では8匹中5匹のマウスが部分的に腫瘍退縮を示し、8匹中2匹のマウスが完全な腫瘍退縮を示した。H1975に対する参照薬Erbitux(登録商標)(3mg/kg、IV)の腫瘍阻害率は82%(D14)であった。上記の薬物に対して腫瘍担持マウスは良好な耐容性を示した。H1975に対する1mg/kgの用量で投与されたADC-3の有効性は、3mg/kgの用量で投与されたErbitux(登録商標)の有効性よりも有意に優れていた。実験結果を
図4に示す。
【0233】
実施例4.PDXモデルにおけるMYK-3の腫瘍抑制効果
ヒト由来腫瘍組織異種移植モデル(PDXモデル)は、ヒト腫瘍組織を用いて免疫不全マウスで樹立された腫瘍モデルであり、原発腫瘍の不均一性、分子多様性、組織学的特徴が最大限に保持されている。これは、薬物の臨床治療効果の予測値が高く、近年癌研究での使用が増えている(Hidalgo-2014)。将来の臨床適応症におけるMYK-3の有効性を効果的に評価するために、5つのAZD9291耐性ヒトNSCLC PDXモデルで実験が行われた。すべての実験において、市販の第3世代EGFR阻害剤AZD9291を参照薬物として使用し、腫瘍阻害活性を比較した。この研究で使用された5つのPDXモデルの情報を表3に示す。
【0234】
【0235】
1)AZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルLUN#2005-143におけるMYK-3の有効性に関する試験
LUN#2005-143は、AZD9291耐性ヒト肺腺癌(NSCLCの一種)PDXモデルである。この実験は、ビヒクル群(ADC-3ビヒクル)、AZD9291投与群(5mg/kg)、及びADC-3投与群(1mg/kg及び3mg/kg)の合計4群で実施した。実験全体を通じて、ADC-3は0日目、4日目、8日目、及び12日目に合計4回、尾静脈注射により投与され、そしてAZD9291は1日1回胃内投与により合計29回投与された。実験結果を
図5に示す。29日目におけるAZD9291(5mg/kg)投与群の相対腫瘍増殖率T/C(%)は36.90%(P<0.0001)で、腫瘍増殖阻害率TGI%は63.10%であり;ADC-3(1mg/kg)投与群のT/C(%)は69.86%(P<0.001)で、TGI%は30.14%であり;ADC-3(3mg/kg)投与群のT/C(%)は25.27%(P<0.0001)で、TGI%は74.73%であった。29日目に、ADC-3(3mg/kg)群では、8匹中1匹で完全な腫瘍退縮が観察された。体重に関しては、試験した薬物群のすべての動物が良好な耐容性を示した。実験結果は、AZD9291(5mg/kg)とADC-3(3mg/kg)の両方が腫瘍増殖を有意に阻害する可能性があり、ADC-3(3mg/kg)はAZD9291(5mg/kg)よりも腫瘍に対して優れた阻害効果を有し;ADC-3(1mg/kg)は一定の抗腫瘍活性を示すが、腫瘍に対して有意な阻害効果はない[T/C(%)>40%]ことを示した。この実験では、腫瘍担持マウスは試験した薬物に対して良好な耐容性を示した。
【0236】
2)AZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルLUN#2210-4aにおけるMYK-3の有効性に関する試験
LUN#2210-4aは肺PDXモデルのAZD9291耐性ヒト腺扁平上皮癌である。この実験は、ビヒクル群(ADC-3ビヒクル)、AZD9291投与群(5mg/kg)、ADC-3投与群(1mg/kg及び3mg/kg)の合計4群で実施した。実験全体を通じて、ADC-3は0日目、4日目、8日目、12日目の合計4回、尾静脈注射により投与され、AZD9291は1日1回胃内投与により合計28回投与された。実験結果を
図6に示す。28日目に、AZD9291(5mg/kg)投与群のT/C(%)は68.99%(P<0.0001)で、TGI%は31.01%であり;ADC-3(1mg/kg)投与群のT/C(%)は13.10%(P<0.0001)で、TGI%は86.90%であり;ADC-3(3mg/kg)投与群のT/C(%)は0.31%(P<0.0001)で、TGI%は99.69%であった。28日目には、ADC-3(1mg/kg)投与群とADC-3(3mg/kg)投与群では、それぞれ8匹中1匹及び8匹中7匹で完全な腫瘍退縮が観察された。腫瘍担持マウスは、試験した薬物に対して良好な耐容性を示した。
【0237】
3)AZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルLUN#2210-106におけるMYK-3の有効性に関する試験
LUN#2210-106は、肺PDXモデルのAZD9291耐性ヒト腺扁平上皮癌である。この実験は、ビヒクル群(ADC-3ビヒクル)、AZD9291投与群(5mg/kg)、ADC-3投与群(1mg/kg及び3mg/kg)の合計4群で実施した。実験全体を通じて、ADC-3は0日目、4日目、8日目、12日目の合計4回、尾静脈注射により投与され、AZD9291は1日1回胃内投与により合計30回投与された。実験結果を
図7に示す。30日目に、AZD9291(5mg/kg)投与群のT/C(%)は65.31%(P<0.0001)で、TGI%は34.69%であり;ADC-3(1mg/kg)投与群のT/C(%)は55.49%(P<0.0001)で、TGI%は44.51%であり;ADC-3(3mg/kg)投与群のT/C(%)は0.0%(P<0.0001)で、TGI%は100.00%であった。30日目に、ADC-3(3mg/kg)投与群では、8匹中1匹で完全な腫瘍退縮が観察された。実験結果からわかるように、ADC-3(3mg/kg)は実験期間全体を通じて腫瘍の増殖を有意に阻害できた。ADC-3(1mg/kg)は、投与期間中の腫瘍増殖を有意に阻害する可能性がある;4回の投与後(12日目)に投与を中止してから実験終了(30日目)まで、ある程度の抗腫瘍活性はあったものの、腫瘍に対する有意な阻害効果は見られなかった[T/C(%)>40%]。AZD9291(5mg/kg)は、実験期間全体を通じて一定の抗腫瘍活性を示したが、腫瘍に対して有意な阻害効果はなかった[T/C(%)>40%]。腫瘍担持マウスは、試験した薬物に対して良好な耐容性を示した。
【0238】
4)AZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルLUN#2355-128におけるMYK-3の有効性に関する試験
LUN#2355-128は、AZD9291耐性ヒト大細胞肺癌PDXモデルである。この実験は、ビヒクル群(ADC-3ビヒクル)、AZD9291投与群(5mg/kg)、ADC-3投与群(1mg/kg及び3mg/kg)の合計4群で実施した。実験全体を通じて、ADC-3は0日目、4日目、8日目、12日目の合計4回、尾静脈注射により投与され、AZD9291は1日1回胃内投与により合計27回投与された。実験期間は27日間であった。実験結果を
図8に示す。16日目に、AZD9291(5mg/kg)投与群のT/C(%)は33.61%(P<0.0001)で、TGI%は66.39%であり;ADC-3(1mg/kg)投与群のT/C(%)は45.32%(P<0.0001)で、TGI%は54.68%であり;ADC-3(3mg/kg)投与群のT/C(%)は3.60%(P<0.0001)で、TGI%は96.40%であり、8匹中1匹で完全な腫瘍退縮が観察された。27日目に、ADC-3(3mg/kg)投与群の8匹中1匹で完全な腫瘍退縮が観察された。実験結果は、AZD9291(5mg/kg)とADC-3(3mg/kg)の両方が腫瘍増殖を有意に阻害する可能性があり、ADC-3(3mg/kg)はAZD9291(5mg/kg)よりも腫瘍に対して優れた阻害効果を有し;ADC-3(1mg/kg)は一定の抗腫瘍活性を示したが、腫瘍に対して有意な阻害効果はない[T/C(%)>40%]ことを示した。腫瘍担持マウスは、試験した薬物に対して良好な耐容性を示した。
【0239】
5)AZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルLUN#2441-118におけるMYK-3の有効性に関する試験
LUN#2441-118は、肺PDXモデルのAZD9291耐性ヒト腺扁平上皮癌である。この実験は、ビヒクル群(ADC-3ビヒクル)、AZD9291投与群(5mg/kg)、ADC-3投与群(1mg/kg及び3mg/kg)の合計4群で実施した。実験全体を通じて、ADC-3は0日目、4日目、8日目、12日目に尾静脈注射により合計4回投与され、AZD9291は1日1回胃内投与により合計28回投与された。実験期間は28日間であった。実験結果を
図9に示す。25日目に、AZD9291(5mg/kg)投与群のT/C(%)は29.35%(P<0.0001)で、TGI%は70.65%であり;ADC-3(1mg/kg)投与群のT/C(%)は5.68%(P<0.0001)で、TGI%は94.32%であり;ADC-3(3mg/kg)投与群のT/C(%)は3.44%(P<0.0001)で、TGI%は96.56%であった。実験結果は、AZD9291(5mg/kg)、ADC-3(1mg/kg)、及びADC-3(3mg/kg)のすべてが腫瘍の増殖を有意に阻害することができ、ADC-3(1mg/kg)とADC-3(3mg/kg)は、AZD9291(5mg/kg)よりも有意に優れた抗腫瘍活性(P<0.05)を有することを示した。腫瘍担持マウスは、試験した薬物に対して良好な耐容性を示した。
【0240】
6)Hu-HSC-NPGマウス中のヒト肺癌PDXモデルLUN#2210-106におけるMYK-3とAK103並びにMYK-3とAK103の併用の有効性に関する試験
LUN#2210-106は、肺PDXモデルのAZD9291耐性ヒト腺扁平上皮癌である。この実験は、ビヒクル群(ADC-3ビヒクル)、ADC-3投与群(1mg/kg)、AK103投与群(5mg/kg)、ADC-3(1mg/kg)+AK103(5mg/kg)投与群の合計4群で実施した。実験全体を通じて、ADC-3単剤投与群には0日目、4日目、8日目に合計3回、尾静脈注射によりADC-3を投与した。そしてAK103単剤投与群にはAK103を尾静脈注射により3日おきに合計8回投与した。ADC-3+AK103投与群は、ADC-3を3回、AK103を合計10回投与し、投与形態は単剤投与群と同様であった。実験期間は34日間であった。実験結果を
図10に示す。20日目にADC-3(1mg/kg)投与群のT/C(%)は13.31%(P<0.05)で、TGI%は86.69%であり;AK103(5mg/kg)投与群のT/C(%)は93.61%(P>0.05)で、TGI%は6.39%であり;ADC-3(1mg/kg)+AK103(5mg/kg)投与群のT/C(%)は2.77%(P<0.005)で、TGI%は97.23%であり、6匹中3匹で腫瘍の完全な退縮が観察された。20日目から34日目までの期間中、ADC-3(1mg/kg)投与群の動物の平均腫瘍体積は徐々に増加を再開した(184mm
3から893mm
3まで)。ADC-3(1mg/kg)+AK103(5mg/kg)投与群の動物の平均腫瘍体積はゆっくり増加し(38mm
3から126mm
3まで)、34日目でも6匹の動物中1匹で完全な腫瘍退縮が観察された。
【0241】
ADC-3とAK103の併用による相乗効果の有無は、式EAB=EA+EB-EA×EBにより計算し、計算対象はTGI%とした。予測TGI%=0.8669+0.0639-0.8669×0.0639=87.54%。明らかに、予測されるTGI%(87.54%)は観察されたTGI%(97.23%)よりも小さかった。従って、ADC-3とAK103の併用には相乗効果があると判断できる。
【0242】
上記結果は、ビヒクル対照群と比較して、ADC-3(1mg/kg)とADC-3(1mg/kg)及びAK103(5mg/kg)の併用との両方が腫瘍増殖を有意に阻害できることを示したが、AK103(5mg/kg)には腫瘍増殖に対する明らかな阻害効果はなかった。ADC-3(1mg/kg)単独の投与と比較して、同用量のADC-3とAK103(5mg/kg)の併用は、より顕著な抗腫瘍効果を示した(20日目、P<0.05)を有し、相乗効果を発揮した。腫瘍担持マウスは、試験した薬物に対して良好な耐容性を示した。
【0243】
5つのAZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルにおけるMYK-3のインビボ有効性試験の結果が表4に要約される。
【0244】
【0245】
注:「/」は適用されないことを意味する。腫瘍体積(TV)を計算する式は次のとおりである:TV=l×w2/2、式中、lとwはそれぞれ腫瘍の測定された長さと幅を表す。測定結果に基づいて、相対腫瘍体積(RTV)は、RTV=Vf/V0で計算され、式中、V0は群投与時(すなわち、0日目)に測定された腫瘍体積であり、Vfは最終日に測定された腫瘍体積である。T/C(%)=(投与群のRTV/ビヒクル群のRTV)×100%。TGI%=(ビヒクル群の平均腫瘍体積-投与群の平均腫瘍体積)/ビヒクル群の平均腫瘍体積×100%。「++++」はT/C(%)≧0かつ≦10%を示す。「+++」は、T/C(%)>10%かつ≦20%を示す。「++」は、T/C(%)>20%かつ≦40%を示す。「+」はT/C(%)>40%を示す。試験薬物の腫瘍阻害活性は、モデルの最高用量でのT/C(%)に基づいて分類される。
【0246】
AZD9291耐性ヒト肺癌PDXモデルにおける抗PD-1抗体とMYK-3の併用のインビボ有効性試験の結果を表5に要約する。
【0247】
【0248】
注:「/」は適用されないことを意味する。腫瘍体積(TV)を計算する式は次のとおりである:TV=l×w2/2、式中、lとwはそれぞれ腫瘍の測定された長さと幅を表す。測定結果に基づいて、相対腫瘍体積(RTV)は、RTV=Vf/V0で計算され、式中、V0は群投与時(すなわち、0日目)に測定された腫瘍体積であり、Vfは最終日に測定された腫瘍体積である。T/C(%)=(投与群のRTV/ビヒクル群のRTV)×100%。TGI%=(ビヒクル群の平均腫瘍体積-投与群の平均腫瘍体積)/ビヒクル群の平均腫瘍体積×100%。「++++」はT/C(%)≧0かつ≦10%を示す。「+++」は、T/C(%)>10%かつ≦20%を示す。「++」は、T/C(%)>20%かつ≦40%を示す。「+」はT/C(%)>40%を示す。試験薬物の腫瘍阻害活性は、モデルの最高用量でのT/C(%)に基づいて分類される。
【0249】
インビボ有効性試験の結果は、5つのAZD9291耐性PDXモデル(すべてのモデルはNSCLCであった)において、MYK-3は顕著な腫瘍増殖阻害効果を示し、腫瘍担持マウスはMYK-3に対して良好な耐容性を有すること示した。これら5つのPDXモデルはすべて、中程度から高度のEGFR発現を示し、AZD9291に対して耐性があり、そのうちの2つはEGFR変異に対して耐性であったことに注意されたい。
【0250】
EGFR変異AZD9291耐性PDXモデルにおいて、MYK-3とAK103(抗PD-1抗体)の併用は、同用量の単剤(MYK-3又はPD-1)よりも顕著な腫瘍増殖阻害効果を示し、相乗効果を達成している。さらに、投与を中止した後に実験の終了まで、動物の平均腫瘍体積はゆっくりと成長し、完全な腫瘍退縮が6匹中1匹の動物で依然として観察された。単独療法で治療有効性を達成するのに必要な用量と比較して、併用療法ではより低用量のMYK-3又はPD-1が投与された。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体-薬物コンジュゲート、前記抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物を含む組成物であって、以下:
1)非小細胞肺癌
腫瘍の増殖を阻害するため、及び
2)非小細胞肺癌を治療及び/又は予防するため
、
の1つ又はそれ以上
のために使用される組成物であ
り、
ここで、前記非小細胞肺癌は、
1)EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌、及び
2)EGFR変異非小細胞肺癌からなる群
から選択される1つ又はそれ以上であり、そして任意選択的に前記EGFR変異非小細胞肺癌はまた、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上も有し、
ここで、前記抗体-薬物コンジュゲートは式I:
Ab-(LD)
p
式I
[式中、
Abは抗EGFR抗体を表し、ここで前記抗EGFR抗体は重鎖及び軽鎖を含み、ここで重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号5~7に示される配列又はそれらの変異体を含み、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号12~14に示される配列又はそれらの変異体を含み;
Lはリンカーを表し;
好ましくは、前記リンカーは、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロピオニル(MP)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)吉草酸塩(SPP)、4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-ホルミル(MCC)、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸塩(SIAB)、及び6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)からなる群から選択され;
より好ましくは、前記リンカーは6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)から選択され;
Dは細胞傷害性薬剤を表し;
好ましくは、前記細胞傷害性薬剤は、毒素、例えばSN-38、ゲムシタビン、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、メイタンシノイド(例えば、メイタンシンDM1及びメイタンシンDM4)、カリケアマイシン、MGBA(例えば、デュオカルマイシン)、ドキソルビシン、リシン及びジフテリア毒素、I131、インターロイキン類、腫瘍壊死因子、ケモカイン類、及びナノ粒子からなる群から選択され;
より好ましくは、前記細胞傷害性薬剤はMMAEであり;
pは、1~9、好ましくは2~6、より好ましくは3~5を表す]
の構造を有する、
組成物。
【請求項2】
前記抗EGFR抗体が以下の特徴:
1)前記抗EGFR抗体の重鎖可変領域中のFR1、FR2、FR3、及びFR4領域は、それぞれ、配列番号8~11に示される配列又はそれらの変異体を含む;
2)前記抗EGFR抗体の軽鎖可変領域中のFR1、FR2、FR3、及びFR4領域は、それぞれ、配列番号15~18に示される配列又はそれらの変異体を含む;
3)前記抗EGFR抗体の重鎖定常領域は、ヒトIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgA定常領域又はそれらの変異体から選択される;
好ましくは、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択される;並びに
4)前記抗EGFR抗体の軽鎖定常領域は、ヒトのラムダ定常領域及びカッパ定常領域又はそれらの変異体から選択される、
の1つ又はそれ以上を有する、請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
前記抗EGFR抗体が以下の特徴:
1)前記抗EGFR抗体の重鎖可変領域の配列は、配列番号1に示される配列、あるいは配列番号1に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む;
好ましくは前記抗EGFR抗体の重鎖可変領域の配列は配列番号1に示される;
2)前記抗EGFR抗体の軽鎖可変領域の配列は、配列番号2示される配列、あるいは配列番号2に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む;
好ましくは、前記抗EGFR抗体の軽鎖可変領域の配列は配列番号2に示される;
3)前記抗EGFR抗体の重鎖定常領域の配列は、配列番号3示される配列、あるいは配列番号3に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む;
好ましくは、前記抗EGFR抗体の重鎖定常領域の配列は配列番号3に示される;並びに
4)前記抗EGFR抗体の軽鎖定常領域の配列は、配列番号4示される配列、あるいは配列番号4に示される配列と、70%を超える、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を超える同一性を有する配列を含む;
好ましくは、前記抗EGFR抗体の軽鎖定常領域の配列は配列番号4に示される、
の1つ又はそれ以上を有する、請求項1
に記載の
組成物。
【請求項4】
前記EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌が、EGFR変異、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上を有し;
好ましくは、前記EGFR変異は、エクソン18、エクソン19、エクソン20、及びエクソン21からなる群から選択される1つ又はそれ以上の部位における変異であり;
より好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、C797S、G719S、L861Q、G719C、G719A、T854A、及びD761Yからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異であり;
さらに好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、及びT790Mからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異であり;
最も好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、又はL858R/T790M二重変異である、
請求項1
に記載の
組成物。
【請求項5】
請求項1
に記載の
組成物であって、ここで、前記EGFR-TKIが、オシメルチニブ(AZD9291)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ダコチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ナザルチニブ、ロシレチニブ、ナコチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、ペリチニブ、カネルチニブ、ブリガチニブ、PKC412、Go6976、マベレルチニブ、オルムチニブ、WZ4002、TAS2913、セツキシマブ、パニツムマブ、アビチニブ、HS-10296、及びTQB3804からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり;
好ましくは、前記EGFR-TKIがオシメルチニブ(AZD9291)であり;
又は、前記非小細胞肺癌が、肺腺癌(好ましくは、気管支肺胞癌)、肺扁平上皮癌、肺の腺扁平上皮癌、及び肺大細胞癌からなる群より選択される、
組成物。
【請求項6】
抗体-薬物コンジュゲート、前記抗体-薬物コンジュゲートの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、あるいは前記塩の溶媒和物である第1の薬物と、PD-1/PD-L1阻害剤である第2の薬物とを含む併用薬物であって、
ここで、前記抗体-薬物コンジュゲートは、請求項1~3のいずれか1項に記載のように定義され、
好ましくは、第1の薬物と第2の薬物は互いに分離されている、併用薬物。
【請求項7】
前記PD-1/PD-L1阻害剤が、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である、請求項6に記載の併用薬物であって、
好ましくは、抗PD-1抗体は、AK103、トリパリマブ(JS-001)、シンチリマブ(IBI308)、カムレリズマブ、ティスレリズマブ(BGB-A317)、オプジーボ又はニボルマブ、キイトルーダ又はペンブロリズマブ、CS1003、セルプルリマブ(HLX10)、AK104、ゲプタノリマブ(GB226)、リズマブ(例えば、LZM009)、BAT-1306、SCT-I10A、F520、SG001、GLS-010、PDR001、REGN2810、及びSTI-A1110からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり;
より好ましくは、前記抗PD-1抗体はAK103であり;
好ましくは、前記抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、又はそれらの組み合わせである、併用薬物。
【請求項8】
前記第1の薬物と前記第2の薬物との重量比は15:1~1:15であり、好ましくは、第1の薬物と第2の薬物の重量比は1:1~1:10である、請求項6
に記載の併用薬物。
【請求項9】
1)非小細胞肺癌
腫瘍の増殖を阻害するため、及び
2)非小細胞肺癌を治療及び/又は予防するため
、
の1つ
又はそれ以上のために使用される、請求項6
に記載の併用薬物
であって、
ここで、前記非小細胞肺癌は、
1)EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌、及び
2)EGFR変異非小細胞肺癌からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり、そして任意選択的に、前記EGFR変異非小細胞肺癌はまた、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上も有する、
併用薬物。
【請求項10】
前記EGFR-TKI耐性の非小細胞肺癌が、EGFR変異、CDKN2A/2B変異、STK11変異、c-Met増幅、及びHER3増幅からなる群から選択される1つ又はそれ以上を有する、請求項9に記載の
併用薬物であって、
好ましくは、前記EGFR変異は、エクソン18、エクソン19、エクソン20、及びエクソン21からなる群から選択される1つ又はそれ以上の部位における変異であり;
より好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、C797S、G719S、L861Q、G719C、G719A、T854A、及びD761Yからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異であり;
さらに好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、及びT790Mからなる群から選択される1つ又はそれ以上の変異であり;
最も好ましくは、前記EGFR変異は、DelE746-A750、L858R、T790M、又はL858R/T790M二重変異であり;
又は、前記EGFR-TKIは、オシメルチニブ(AZD9291)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ダコチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ナザルチニブ、ロシレチニブ、ナコチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、ペリチニブ、カネルチニブ、ブリガチニブ、PKC412、Go6976、マベレルチニブ、オルムチニブ、WZ4002、TAS2913、セツキシマブ、パニツムマブ、アビチニブ、HS-10296、及びTQB3804からなる群から選択される1つ又はそれ以上であり;
好ましくは、前記EGFR-TKIはオシメルチニブ(AZD9291)であり、
又は、前記非小細胞肺癌は、肺腺癌(好ましくは、気管支肺胞癌)、肺扁平上皮癌、肺の腺扁平上皮癌、及び肺大細胞癌からなる群から選択される、
併用薬物。
【国際調査報告】