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特表2024-533562SN38を含む抗体-薬物コンジュゲートの中間体及びその調製方法
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  • 特表-SN38を含む抗体-薬物コンジュゲートの中間体及びその調製方法 図1
  • 特表-SN38を含む抗体-薬物コンジュゲートの中間体及びその調製方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】SN38を含む抗体-薬物コンジュゲートの中間体及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/10 20060101AFI20240905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20240905BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
C07K5/10
A61P35/00
A61K39/395 C
A61K39/395 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516810
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2022128912
(87)【国際公開番号】W WO2023078230
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】202111285580.X
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524098695
【氏名又は名称】煙台邁百瑞国際生物医薬股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MABPLEX INTERNATIONAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 60, Beijing Middle Road, Yantai Development Zone, Yantai District, China (Shandong) Pilot Free Trade Zone, Yantai, Shandong 264006, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】黄 長江
(72)【発明者】
【氏名】熊 就凱
(72)【発明者】
【氏名】▲ヤン▼ 新新
(72)【発明者】
【氏名】于 紅霞
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA26
4C085DD36
4C085DD41
4C085DD52
4C085GG02
4H045AA10
4H045BA13
4H045BA72
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、そのリンカーに生物活性のある水溶性基PEGを導入しかつPEGを構造的に修飾した、SN38含有の抗体-薬物コンジュゲートの中間体及びその調製方法を提供する。この調製方法は、手順が簡単でコストが低い、かつ、反応時に重金属イオンを導入せず、より環境にやさしい。そして、この調製方法によって合成された抗体-薬物コンジュゲートの中間体は、従来の技術におけるSN38を毒素とする抗体-薬物コンジュゲートの中間体に比べて、より高い安定性と薬効を持っている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)で表される抗体-薬物コンジュゲートの中間体。
【化1】
(式中、
は、アルカン鎖又はPEG鎖であり、
は、H又は-C(O)NRであり、かつ、
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、置換又は非置換のC1-6アルキル基、置換又は非置換のC1-6ヒドロキシアルキル基、置換又は非置換のC1-6アミノアルキル基、置換又は非置換のC1-6アルコキシル基、置換又は非置換のC1-6アルキルアシル基、及び置換又は非置換のC1-6アルキルアルデヒド基からなる群より選択され、
は、水素或いは置換されていないか又はそれぞれに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、5-10員ヘテロシクリル基(ここには、該5-10員ヘテロシクリル基は、酸素、窒素、及び硫黄からなる群より選択された1~3個のヘテロ原子を有する)、及びC1-6ハロアルキル基からなる群より選択された1~5個の置換基で任意選択的に置換されたC1-6アルキル基である。)
【請求項2】
前記Xは、
【化2】
であり(ただし、mは1、2、3、4、5、又は6であり、好ましくは、mは5であり、pは1、2、3、4、5、又は6であり、好ましくは、pは2である)、
好ましくは、前記Xは、
【化3】
からなる群より選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲートの中間体。
【請求項3】
前記R又はRは、独立してH、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、メトキシル基、エトキシル基、Cl、Br、
【化4】
からなる群より選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲートの中間体。
【請求項4】
前記Xは、
【化5】
からなる群より選択されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートの中間体。
【請求項5】
前記抗体-薬物コンジュゲートの中間体が下記の式(1)~(16)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲートの中間体:
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】
【請求項6】
【化10】
の式(ただし、前記Rは、水素、置換又は非置換のC1-6アルキル基、置換又は非置換のC1-6ヒドロキシアルキル基、置換又は非置換のC1-6アミノアルキル基、置換又は非置換のC1-6アルコキシル基、置換又は非置換のC1-6アルキルアシル基及び置換又は非置換のC1-6アルキルアルデヒド基からなる群より選択され、
前記Rは、水素、或いは、置換されていないか又はそれぞれに独立してハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、5-10員ヘテロシクリル基(ここには、該5-10員ヘテロシクリル基は、酸素、窒素および硫黄からなる群より選択された1~3個のヘテロ原子を有する)及びC1-6ハロアルキル基からなる群より選択された1~5個の置換基で任意選択的に置換されたC1-6アルキル基であり、
好ましくは、R又はRはH、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、メトキシル基、エトキシル基、Cl、Br、
【化11】
である)で表される抗体-薬物コンジュゲートの中間体の調製方法であって、
前記調製方法は、下記の反応過程1~4:
反応過程1:
【化12】
又は
反応過程2:
【化13】
又は
反応過程3:
【化14】
又は
反応過程4:
【化15】
から選択される抗体-薬物コンジュゲートの中間体の調製方法。
【請求項7】
前記化合物(I-1)は、
【化16】

【化17】
からなる群より選択され、又は、前記化合物(I-2)は、
【化18】

【化19】
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記反応過程1が、以下の条件:
反応A:化合物aと化合物bを溶剤に溶解し、室温下で適当な時間に撹拌した後、低温条件下で還元剤を加え、適当な時間に撹拌した後、室温下で一晩撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして抽出、乾燥、及び精製を行うことと、
反応B:SN38とDNPCを溶剤に溶解し、有機アルカリを加えて、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そしてトリチュレーション及び濾過を行うことと、
反応C:反応Bで得られた生成物を溶剤に溶解し、反応Aで得られた生成物と有機アルカリを加え、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応D:反応Cで得られた生成物を溶剤に溶解し、酸を加え、低温条件下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、Mc-VC-PAB-PNPとともに溶剤に溶解し、また低温条件下で適当な時間に撹拌し、有機アルカリを加え、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、を含むことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項9】
前記反応過程2が、以下の条件:
反応A:化合物aと化合物bを溶剤に溶解し、室温下で適当な時間に撹拌した後、低温条件下で還元剤を加え、その後適当な時間に撹拌し、また室温下で一晩撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして抽出、乾燥、及び精製を行うことと、
反応B:SN38とDNPCを溶剤に溶解し、有機アルカリを加えて、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そしてトリチュレーション及び濾過を行うことと、
反応C:反応Bで得られた生成物を溶剤に溶解し、反応Aで得られた生成物と有機アルカリを加え、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応D:反応Cで得られた生成物を溶剤に溶解し、酸を加え、低温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させた後、MP2-VC-PAB-PNPとともに溶剤に溶解し、低温条件下で適当な時間に撹拌し、有機アルカリを加え、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うこと、を含むことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項10】
前記反応過程3が、以下の操作条件:
反応A:化合物aと化合物bを溶剤に溶解し、室温下で適当な時間に撹拌した後、低温条件下で還元剤を加え、その後、適当な時間に撹拌し、また室温下で一晩撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして抽出、乾燥、及び精製を行うことと、
反応B:SN38とDNPCを溶剤に溶解し、有機アルカリを加えて、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そしてトリチュレーション及び濾過を行うことと、
反応C:反応Bで得られた生成物を溶剤に溶解し、反応Aで得られた生成物と有機アルカリを加え、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応D:反応Cで得られた生成物を溶剤に溶解し、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)酸及び有機アルカリを加え、固定温度下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応E:反応Dで得られた生成物とアミン系化合物を溶剤に溶解し、有機アルカリを加え、低温条件下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応F:反応Eで得られた生成物を溶剤に溶解し、酸を加え、低温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させた後、Mc-VC-PAB-PNPとともに溶剤に溶解し、低温条件下で適当な時間に撹拌し、有機アルカリを加え、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、を含むことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項11】
前記反応過程4が、以下の操作条件:
反応A:化合物aと化合物bを溶剤に溶解し、室温下で適当な時間に撹拌した後、低温条件下で還元剤を加え、その後、適当な時間に撹拌し、また室温下で一晩撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして抽出、乾燥、及び精製を行うことと、
反応B:SN38とDNPCを溶剤に溶解し、有機アルカリを加えて、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そしてトリチュレーション及び濾過を行うことと、
反応C:反応Bで得られた生成物を溶剤に溶解し、反応Aで得られた生成物と有機アルカリを加え、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応D:反応Cで得られた生成物を溶剤に溶解し、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)酸及び有機アルカリを加え、固定温度下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応E:反応Dで得られた生成物とアミン系化合物を溶剤に溶解し、有機アルカリを加え、低温条件下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応F:反応Eで得られた生成物を溶剤に溶解し、酸を加え、低温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させた後、MP2-VC-PAB-PNPとともに溶剤に溶解し、低温条件下で適当な時間に撹拌し、有機アルカリを加え、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、を含むことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項12】
前記「低温条件下」を氷水浴中でのことにする、請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項13】
前記溶媒がTHF、DMF、DMA、NMP及びそれらの組み合わせからなる群より選択された極性溶媒及び/又はジクロロメタン、四塩化炭素及びそれらの組み合わせからなる群より選択された非極性溶媒である、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項14】
前記有機アルカリは、N、N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、好ましくは、N、N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項15】
前記酸が塩酸、トリフルオロ酢酸、及びクエン酸の中の一種又は2種である、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項16】
前記アミン系化合物が一級アミン又は二級アミンである、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項17】
前記反応Aにおいて、前記抽出が酢酸エチルを用いて行われ、前記精製がジクロロメタンとメタノールを溶離剤としてカラムクロマトグラフィーにより行われる、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項18】
前記反応Bにおいて、前記トリチュレーションが、酢酸エチル、n-ヘキサン、ジクロロメタンの中の1種又は複数種の組合せを用いて行われる、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項19】
前記反応Cにおいて、前記精製が、ジクロロメタンとメタノールを溶離剤としてカラムクロマトグラフィーにより行われる、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項20】
前記反応Dにおいて、前記精製が、ジクロロメタンとメタノールを溶離剤としてカラムクロマトグラフィーにより行われる、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項21】
前記反応Eにおいて、前記精製が、ジクロロメタンとメタノールを溶離剤としてカラムクロマトグラフィーにより行われる、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項22】
前記反応Fにおいて、前記精製が、移動相AとしてMeCN及び0.1%HCOOH、移動相BとしてHO及び0.1%HCOOHを用いて分取液体クロマトグラフィー法により行われる、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項23】
前記反応のいずれも窒素ガス保護下で行われることを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体-薬物コンジュゲートの分野に関し、具体的には、抗体-薬物コンジュゲートの中間体及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate、ADC)は、新規な生物学的標的薬として、モノクローナル抗体の標的効果と小分子薬物細胞毒性の強力な組み合わせを実現し、腫瘍標的療法の分野で最も急速に成長している分野の1つである。ADCの三つの構成ユニット(抗体、細胞毒素及びリンカー)は、一緒になって標的化薬物送達システムを形成する。その中で、抗体は、標的化を達成し、リンカーは、ADCの血液輸送中の安定性を保証し、毒素は、標的点に到達した後、癌細胞に殺傷効果を発揮する。現在、抗腫瘍治療の臨床試験中になっている60種類以上のADCにおいては、ほとんどの毒素はチューブリン阻害剤であり、少数はDNA阻害剤である。DNA阻害剤は、チューブリン阻害剤に比べて、1)DNA阻害剤(picomolar IC 50 values)はチューブリン阻害剤(sub-nanomolar IC 50 values)よりも活性が高く、抗原の少ない腫瘍の治療により優れた効果を発揮することと、2)分裂期になってない癌細胞を殺すことができ、固形腫瘍に対する治療の優位性があること、二つのメリットを有する。
【0003】
カンプトテシン系化合物は、臨床的に用いられているトポイソメラーゼ1(TOP1)阻害剤であり、臨床における緩徐に増殖する固形腫瘍に対して良好な効果を有する。しかしながら、カンプトテシンの特殊な構造はその水溶性および脂質溶解性が悪くなる要因であるので、水溶性を改善する必要がある。カンプトテシンを「弾頭」とするADC薬物は上記の欠点に対する新しい解決策を提供する。
【0004】
現在、カンプトテシン誘導体を弾頭とするADC薬物として、既にエンヘルトゥ(trastuzumab deruxtecan)とトロデルヴィ(サシツズマブ・ゴビテカン)2剤が承認されている。これらは、腫瘍、特に悪性腫瘍の治療における臨床ニーズに応えるものである。アストラゼネカ社/第一三共社が開発したエンヘルトゥは、カテプシンBで活性化されたGGFGテトラペプチドをリンカーとして用い、自己切断構造の小断面を導入して、エキサテカンの誘導体であるDxdを放出するものである。HER2陽性転移性乳癌に対して、エンヘルトゥが使用された99例の患者は、客観的寛解率が54.5%であり、病勢コントロール率が93.9%であった。サシツズマブ・ゴビテカンは、リンカーがMcc-トリアゾールスペーサー-PEG7-x-リジン-PABCであり、細胞内のリソソーム(pH約5)で分解してカンプトテシン(SN38)を放出する。トリプルネガティブ乳癌は臨床的にほぼ「不治の病」と言われているが、トリプルネガティブ乳癌に対するサシツズマブ・ゴビテカンの臨床第II相試験の結果では、その有効率が30%と高く、69.5%の患者で腫瘍縮小が認められた。また、複数の治療法を使用しても無効になった小細胞肺がんに対して、サシツズマブ・ゴビテカンは60%の患者の腫瘍を縮小させることができる。化学療法、分子標的治療及びPD-1治療をすべて使用しても無効になった非小細胞肺癌に対しては、サシツズマブ・ゴビテカンによるコントロール率が43%と高い。しかし、臨床試験において、治療効果が顕著であるものの、その一方で、例えば、血液システム毒性、神経毒性、肺毒性、皮膚毒性、肝毒性、眼毒性、代謝異常、心毒性などの、ADC毒性に起因する重大な安全性の問題もある。そのため、ADC薬物の安全性を向上させることは、現在の薬物開発中で強く懸念され、解決されなければならない問題である。
【0005】
また、一部のADCのリンカーと載荷の合成には、金属イオン反応の生成物の除去が困難であるという問題もある。例えば、サシツズマブ・ゴビテカンに用いられるCL2A-SN38が合成過程でクリックケミストリー反応(Click反応)を伴うため(中国特許出願公開第CN102448494A号の明細書50頁の段落[0273]を参照)、この反応生成物中にCu2+が含有し、容易に除去できない。
【0006】
リンカー(linker)はADC構造において、重要な役割を果たし、ADCの薬物動態パラメータ、治療指標および有効性に影響を及ぼす。リンカーは、血流中でADCコンジュゲートの安定性を維持することができる。リンカーの設計にあたっては、まず安定性を考慮しなければならない。ADC薬剤は半減期が長いため、リンカーが血液中で分解されて毒素が放出されるのを防ぐために、リンカーの安定性が必要となる。リンカーは血液中で十分に安定しないと、ADCが腫瘍細胞に入る前に分解されてしまく、腫瘍に対する薬効が低下する恐れがあり、誤って他の細胞を殺してしまった場合もある。そして、ADCが腫瘍細胞に内在化する過程で、リンカーは細胞毒性薬物を速やかに放出できると要求される。このように、リンカーは開発されたADC薬品の安全性と有効性に重要な決定的役割を果たす。そして、リンカーの異なる構造は、ADCの調製過程の易しさ、調製コスト及び環境に優しさに大きく影響し、また、ADC薬品の品質、例えばADCの安定性などに大きく影響し、さらにADC薬物の安全性に影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、SN38を含む抗体-薬物コンジュゲートの中間体及びその調製方法を提供する。この調製方法は、工程が簡便であり、コストが低く、かつ、反応時に重金属イオンを導入することがなく,環境によりやさしく、さらに、この調製方法によって合成された抗体-薬物コンジュゲートの中間体が良好な安定性を有し、ADC薬物の安全性が著しく向上する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式(I)で表れる抗体-薬物コンジュゲートの中間体に関する。
【化1】
式中:
はアルカン鎖又はPEG鎖であり、
はH又は-C(O)NRであり、かつ、
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、置換又は非置換のC1-6アルキル基、置換又は非置換のC1-6ヒドロキシアルキル基、置換又は非置換のC1-6アミノアルキル基、置換又は非置換のC1-6アルコキシル基、置換又は非置換のC1-6アルキルアシル基及び置換又は非置換のC1-6アルキルアルデヒド基からなる群より選択され、
は、水素、或いは、置換されていないか又はそれぞれに独立してハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、5-10員ヘテロシクリル基(ここには、該5-10員ヘテロシクリル基は、酸素、窒素および硫黄からなる群より選択された1~3個のヘテロ原子を有する。)及びC1-6ハロアルキル基からなる群より選択された1~5個の置換基で任意選択的に置換されたC1-6アルキル基である。
【0009】
好ましくは、上記X
【化2】
から選択される。ただし、mは、1、2、3、4、5、及び6から選択され、好ましくは5であり;pは1、2、3、4、5、及び6から選択され、好ましくは2である。
【0010】
好ましくは、上記Xは、
【化3】
から選択される。
【0011】
好ましくは、上記R又はRは、H、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、Cl、Br、
【化4】
である。
【0012】
好ましくは、上記Xは以下の基から選択される:
【化5】
【0013】
好ましくは、上記抗体-薬物コンジュゲートの中間体の構造が以下の(1)-(16)式で表れる:
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】
【0014】
また、本発明は抗体-薬物コンジュゲートの中間体の調製方法も提供する。
【0015】
さらに、上記抗体-薬物コンジュゲートの中間体は以下の構造を有する:
【化10】
【0016】
上記Rは、水素、置換又は非置換のC1-6アルキル基、置換又は非置換のC1-6ヒドロキシアルキル基、置換又は非置換のC1-6アミノアルキル基、置換又は非置換のC1-6アルコキシル基、置換又は非置換のC1-6アルキルアシル基、及び置換又は非置換のC1-6アルキルアルデヒド基からなる群より選択される。
【0017】
上記Rは、水素、或いは、置換されていないか又はそれぞれに独立してハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、5~10員ヘテロシクリル基(ここには、該5~10員ヘテロシクリル基は、酸素、窒素および硫黄からなる群より選択された1~3個のヘテロ原子を有する)及びC1-6ハロアルキル基からなる群より選択された1~5個の置換基で任意選択的に置換されたC1-6アルキル基である。
【0018】
好ましくは、R又はRはH、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、メトキシル基、エトキシル基、Cl、Br、
【化11】
である。
【0019】
さらに、上記式(4)化合物の調製方法は、下記の反応過程1に示すように、
反応A:化合物aと化合物bを溶剤に溶解し、室温下で適当な時間に撹拌した後、低温下で還元剤を加えて、適当な時間に撹拌した後、室温下で一晩撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして抽出、乾燥、及び精製を行うことと、
反応B:SN38とDNPCを溶剤に溶解し、有機アルカリを加えて、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そしてトリチュレーション及び濾過を行うことと、
反応C:反応Bで得られた生成物を溶剤に溶解し、反応Aで得られた生成物と有機アルカリを加え、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応D:反応Cで得られた生成物を溶剤に溶解し、酸を加え、低温条件下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、Mc-VC-PAB-PNPとともに溶剤に溶解し、また低温条件下で適当な時間に撹拌し、有機アルカリを加え、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、を含む。
【0020】
反応過程1:
【化12】
【0021】
さらに、上記式(12)化合物の調製方法は、下記の反応過程2に示すように、
反応A:化合物aと化合物bを溶剤に溶解し、室温下で適当な時間に撹拌した後、低温下で還元剤を加え、その後適当な時間に撹拌し、また室温下で一晩撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして抽出、乾燥、及び精製を行うことと、
反応B:SN38とDNPCを溶剤に溶解し、有機アルカリを加えて、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そしてトリチュレーション及び濾過を行うことと、
反応C:反応Bで得られた生成物を溶剤に溶解し、反応Aで得られた生成物と有機アルカリを加え、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応D:反応Cで得られた生成物を溶剤に溶解し、酸を加え、低温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させた後、MP2-VC-PAB-PNPとともに溶剤に溶解し、低温条件下で適当な時間に撹拌し、有機アルカリを加え、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、を含む。
【0022】
反応過程2:
【化13】
【0023】
さらに、上記化合物(I-1)の調製方法は、下記の反応過程3に示すように、
反応A:化合物aと化合物bを溶剤に溶解し、室温下で適当な時間に撹拌した後、低温下で還元剤を加え、その後、適当な時間に撹拌し、また室温下で一晩撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして抽出、乾燥、及び精製を行うことと、
反応B:SN38とDNPCを溶剤に溶解し、有機アルカリを加えて、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そしてトリチュレーション及び濾過を行うことと、
反応C:反応Bで得られた生成物を溶剤に溶解し、反応Aで得られた生成物と有機アルカリを加え、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応D:反応Cで得られた生成物を溶剤に溶解し、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)酸及び有機アルカリを加え、固定温度下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応E:反応Dで得られた生成物とアミン系化合物を溶剤に溶解し、有機アルカリを加え、低温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応F:反応Eで得られた生成物を溶剤に溶解し、酸を加え、低温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させた後、Mc-VC-PAB-PNPとともに溶剤に溶解し、低温下で適当な時間に撹拌し、有機アルカリを加え、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、を含む。
【0024】
反応過程3:
【化14】
【0025】
さらに、上記化合物(I-2)の調製方法は、下記の反応過程4に示すように、
反応A:化合物aと化合物bを溶剤に溶解し、室温下で適当な時間に撹拌した後、低温下で還元剤を加え、その後、適当な時間に撹拌し、また室温下で一晩撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして抽出、乾燥、及び精製を行うことと、
反応B:SN38とDNPCを溶剤に溶解し、有機アルカリを加えて、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そしてトリチュレーション及び濾過を行うことと、
反応C:反応Bで得られた生成物を溶剤に溶解し、反応Aで得られた生成物と有機アルカリを加え、室温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応D:反応Cで得られた生成物を溶剤に溶解し、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)酸及び有機アルカリを加え、固定温度下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応E:反応Dで得られた生成物とアミン系化合物を溶剤に溶解し、有機アルカリを加え、低温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、
反応F:反応Eで得られた生成物を溶剤に溶解し、酸を加え、低温下で適当な時間に撹拌し、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させた後、MP2-VC-PAB-PNPとともに溶剤に溶解し、低温下で適当な時間に撹拌し、有機アルカリを加え、反応終了後、溶剤を除去するように回転乾燥させ、そして精製を行うことと、を含む。
【0026】
反応過程4:
【化15】
【0027】
さらに、上記化合物(I-1)は、
【化16】

【化17】
から選択される。
上記化合物(I-2)は、
【化18】

【化19】
から選択される。
【0028】
さらに、上記いずれの反応過程に記載の「低温条件下」は氷水浴中である。
【0029】
さらに、上記いずれの反応過程中で、上記溶媒は独立して極性溶媒及び/又は非極性溶媒である。上記極性溶媒はTHF、DMF、DMA、及びNMPの中の1種また複数種である。上記非極性溶媒はジクロロメタン及び四塩化炭素中の1種また複数種である。
【0030】
さらに、上記いずれの反応過程に記載の有機アルカリは、独立して、N、N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、およびピリジンの中の1種また複数種であってよく、好ましくはN、N-ジイソプロピルエチルアミン、及びピリジンの中の一種又は2種である。
【0031】
さらに、上記の酸は塩酸、トリフルオロ酢酸、及びクエン酸の中の一種又は2種である。
【0032】
さらに、上記のアミン系化合物は第一アミン又は第二アミンである
【0033】
さらに、上記の反応Aにおいて、酢酸エチルで抽出を行い、ジクロロメタン及びメタノールを溶離剤としてカラムクロマトグラフィーにより上記の精製を行う。
【0034】
さらに、上記の反応Bにおいて、酢酸エチル、n-ヘキサンおよびジクロロメタンの中の一種、又は多種を組み合わせたものを用いてトリチュレーションを行う。
【0035】
さらに、上記の反応Cにおいて、ジクロロメタン及びメタノールを溶離剤としてカラムクロマトグラフィーにより精製を行う。
【0036】
さらに、上記の反応Dにおいて、ジクロロメタン及びメタノールを溶離剤としてカラムクロマトグラフィーにより精製を行う。
【0037】
さらに、上記の反応Eにおいて、ジクロロメタン及びメタノールを溶離剤としてカラムクロマトグラフィーにより精製を行う。
【0038】
さらに、上記の反応Fにおいて、移動相AとしてMeCN及び0.1%HCOOH、移動相BとしてH2O及び0.1%HCOOHを用いて分取液体クロマトグラフィー法により精製を行う。
【0039】
さらに、上記の反応はすべて窒素ガス保護下で行われる。
【発明の効果】
【0040】
本発明で提供される抗体-薬物コンジュゲートの中間体(具体的には、リンカー-SN38共有結合体)の調製方法は、工程が簡単であることに加えて、該方法により重金属の残留による安全性の問題の低減が図れる。さらに、この抗体-薬物コンジュゲートの中間体を用いて調製された抗体-薬物コンジュゲートは生体内でより高い安定性を有する。
【0041】
さらに、驚くべきことに、発明人は本発明におけるリンカーとSN38を組み合わせて調製された抗体-薬物コンジュゲートが有意な阻害効果を示すことを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、マウスの体重の変化を示す。
図2図2は、腫瘍の体積の変化を示す。
図3図3は、相対的腫瘍体積を示す。 [略語]
【0043】
なお、特に断らない限り、本発明で使用されている全ての略語は、当業者によって理解されるのと同じ意味を有する。本発明で使用されている一般的な略語及びその定義は以下に示されている。
【表1】

【表2】
[定義]
【0044】
明細書の様々な側面に関連する様々な用語は、明細書及び特許請求の範囲全体で使用されている。特に明記しない限り、そのような用語は、当技術分野においてそれらの通常の意味を有する。その他の具体的に定義された用語は、本明細書で提供されている定義と一致ものと理解する必要がある。
【0045】
本明細書で使用される「1つ」、「1種」及び「前記」という用語は、標準的な慣習に従って使用され、文脈上別段の指示がない限り、1つ又は複数を意味する。従って、例えば、「抗体-薬物コンジュゲート」が言及されている場合は、2つ又はそれ以上の抗体-薬物コンジュゲートの組み合わせなどを含む。
【0046】
本明細書において「含む」という言葉を使用して説明する場合以外は、さらに「...からなる」及び/又は「基本に...からなる」という言葉で説明する類似の場合があることを理解されたい。
【0047】
本発明で使用されている用語「抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体/抗体の機能断片、リンカー及び薬物部分が化学反応による結合した化合物を指し、通常、その構造は、抗体又は抗体様リガンド、薬物部分、及び抗体又は抗体様リガンドと薬物を連結するリンカー(linker)の三つの部分からなる。現在、抗体-薬物コンジュゲートの調製は、通常、リンカーと薬物部分とを化学反応により「リンカー-薬物」コンジュゲートを形成する第1のステップと、「リンカー-薬物」コンジュゲートのリンカー部分を抗体/抗体機能性断片とチオール基又はアミノ基を介して共有結合する第2のステップという2つのステップに分けられる。本発明に係る「抗体-薬物コンジュゲートの中間体」という用語は、以上に係る「リンカー-薬物」コンジュゲートを意味し、さらに、本発明に係る「抗体-薬物コンジュゲートの中間体」とは、「リンカー」とSN38との共有結合コンジュゲートを一般に指す。
【0048】
本発明で使用されている「抗体-薬物コンジュゲート」は、当該技術分野における通常の方法により調製される。例えば、本発明で使用されている抗体-薬物コンジュゲートの調製方法には、抗体をpH=7.4のPBS緩衝液で10mg/mLの溶液に調製し、適切な当量のTCEPを添加して1時間振とうしてよく混合した後、また、5.0モル当量のリンカー-毒素(すなわち、1式-16式で示される化合物)を添加して振とうしてよく混合し、1時間反応させ、反応終了後、限外濾過によって残留小分子を除去し、疎水性相互作用高速液体クロマトグラフィー(HIC-HPLC)にロードして、DAR、薬物分布、および抗体比を測定した。
【0049】
本発明は新規な薬物コンジュゲートの中間体を提供することを目的としており、例として、技術の効果を検証するためにヘーセプチン(Heceptin)を使用して複数のADCを調製したが、抗体の選択は本発明を限定するものではなくいことは、理解されたい。以下、具体的なADCの構造を例示的に挙げる。ここには、ADC-1では、リンカー及び毒素が用いられた(1)式の化合物に対応じ、ヘーセプチンを利用して当該技術分野における一般的な「抗体-薬物コンジュゲート」の調製方法により製造される(以下同様に、ADC-2におけるリンカー及び毒素は(2)式の化合物に対応する;ADC-3におけるリンカー及び毒素は(3)化合物に対応する;ADC-4におけるリンカー及び毒素は(4)式の化合物に対応する;ADC-5におけるリンカー及び毒素は(5)式の化合物に対応する;ADC-6におけるリンカー及び毒素は(6)式の化合物に対応する;ADC-7におけるリンカー及び毒素は(7)式の化合物に対応する;ADC-8におけるリンカー及び毒素は(8)式の化合物に対応する;ADC-9におけるリンカー及び毒素は(9)式の化合物に対応する;ADC-10におけるリンカー及び毒素は(10)式の化合物に対応する;ADC-11におけるリンカー及び毒素は(11)式の化合物に対応する;ADC-12におけるリンカー及び毒素は(12)式の化合物に対応する;ADC-13におけるリンカー及び毒素は(13)式の化合物に対応する;ADC-14におけるリンカー及び毒素は(14)式の化合物に対応する;ADC-15におけるリンカー及び毒素は(15)式の化合物に対応する;ADC-16におけるリンカー及び毒素は(16)式の化合物に対応する;ADC-17におけるリンカー及び毒素はCL2A-SN38に対応する)。ただし、qは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から選択してよい。
【化20】

【化21】

【化22】

【化23】
【0050】
本発明に係る用語「リンカー」とは、2官能又は多官能を有する分子であって、タンパク質/抗体分子及びSN38反応とそれぞれ反応することができるため、タンパク質/抗体をSN38に結合する「架橋」として機能する。本発明に係るリンカーは特に構造中にアシルを含む基を指す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、具体的な実施例を挙げながら本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するために使用されているものにすぎなく、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。次の実施例に具体的な条件が明示されていない実験方法は、一般的に、通常の条件又はメーカーが推奨する条件に従って実行する。具体的な来源が明示されていない試薬は、市販として購入された通常の試薬である。すべての百分率、比率、割合又は部は、断りがない限り、重量によるものである。
【0052】
本明細書で用いられるすべての専門及び科学的用語は、断りがない限り、当業者に周知である意味と同じである。なお、記載された内容に類似又は等しい任意の方法及び材料は、本発明の方法に使用されることができる。本明細書に記載されている好ましい実施形態及び材料は、例示としてのみ使用される。
【0053】
実施例1 式(12)化合物の調製方法
【化24】
【0054】
1)化合物c(2-Boc-N-メチルエチレングリコール)の合成方法
【0055】
0.6gの化合物a(アミノエチレングリコール)と1.0gの化合物b(N-Boc-アセトアルデヒド)を20mLのメタノールに溶解し、室温下で6時間撹拌した。反応系を氷水浴に入れ、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを加え、氷水浴で1時間撹拌した後、室温に戻し、一晩撹拌した。生成物をLC-MS法により検出したところたところ、UV吸収が見られなかった。回転乾燥して溶媒を除去し、酢酸エチルで2回抽出し、無水NaSOで乾燥し、回転乾燥し、ジクロロメタン:メタノール=20:1を溶離剤として、カラムクロマトグラフィーにより精製し、水洗して、1.0gの生成物を収率66%で得た。LC-MS:(M+H)=262.6
【0056】
2)SN38-PNP(10-p-ニトロフェニルカーボネート-カンプトテシン)の合成方法
【0057】
SN38(カンプトテシン)1.0gとDNPC(炭酸ビス(4-ニトロフェニル))1.6gをテトラヒドロフラン100mLに溶解し、トリエチルアミン2mLを加え、室温下で1.5時間撹拌した。LC-MS法による検出を通じて、反応が終了したことを確認した。反応終了後、回転乾燥して溶媒を除去し、酢酸エチル:n-ヘキサン=20mL:100mLの混合溶剤を使用してトリチュレーションした後、ろ過して固形物を得た。この固形物をジクロロメタン20mLトリチュレーションし、ろ過し、LC-MSでモニターしながら生成物を回収し、700mgのSN38-PNP固形物を収率49.3%で得た。LC-MS:(M+H)=557.4。
【0058】
3)化合物d(Boc-N-メチルエチルグリコール-カンプトテシン)の合成方法
【0059】
SN38-PNP250mgをN,N-ジメチルホルムアミド30mLに溶解し、Boc-DMEDA-PEG235mg及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン233uLを加え、室温下で16時間撹拌した。LC-MS法による検出を通じて、反応が終了したことを確認した。反応終了後、回転乾燥して溶媒を除去し、ジクロロメタン:メタノール=20:1を溶離液とするカラムクロマトグラフィーにより精製した後、水洗した。LC-MSでモニタリングしながら生成物を収集し、213mgのBoc-DMEDA-PEG-SN38固形物を收率70%で得た。LC-MS:(M+H)=680.5。
【0060】
4)化合物g(10-(2-N-メチルエチレングリコール)-カンプトテシントリフルオロ酢酸塩)の合成方法
【0061】
化合物d73.0mgをジクロロメタン3mLとトリフルオロ酢酸3mLに溶解し、氷水浴に入れ、恒温下で1時間撹拌1した。LC-MS法による検出を通じて、反応が終了したことを確認した。反応終了後、回転乾燥して溶媒を除去し、その後、メチルベンゼン2mLとジクロロメタン2mLを加え、2回で回転乾燥した。LC-MSでモニターしながら生成物を回収し、SN38-DMEDA-TFAを得た。そのままに次の反応に使用した。LC-MS:(M+H)=580.6
【0062】
5)式(12)化合物(マレイミドジエトキシ-L-バリル-L-シトルリン-p-アミノベンジル-(2-N-メチルエチレングリコール)-カンプトテシン)の合成方法
【0063】
MP2-VC-PAB-PNP50mgをN,N-ジメチルホルムアミド4mLに溶解し、氷水浴に置いて温度を一定に保ち、窒素で保護した。反応系に化合物g 38mgを加え、また、トリエチルアミン42uLを加えて恒温下で0.5時間撹拌した後、室温に戻し、0.5時間反応させた。LC-MS法による検出を通じて、反応が終了したことを確認した。反応終了後、低温下で回転乾燥して溶剤を除去し、SunFire(登録商標)PrepC18OBDTM5um、19×250mmColumnを分取カラムとし、MeCNを移動相Aとし、HOを移動相Bとして分取精製クロマトグラフィーを行った。LC-MSによりモニターしながら純品を収集し、式(12)の化合物固形物18mgを收率22%で得た。LC-MS:(M+H)=1197.2
【0064】
実施例2 式(4)化合物の調製方法
【化25】
【0065】
実施例1での合成経路に従って化合物g(10-(2-N-メチルエチレングリコール)-カンプトテシントリフルオロ酢酸塩)を調製した。化合物d(73.0mg)をジクロロメタン3mLとトリフルオロ酢酸3mLに溶解し、氷水浴に置いて恒温下で1時間撹拌した。LC-MS法による検出を通じて、反応が終了したことを確認した。反応終了後、回転乾燥して溶媒を除去した。また、ジクロロメタン2mLを加えて2回で回転乾燥した。LC-MSによりモニターしながら生成物を収集して化合物g(70mg)を得た。そのままに次の反応に使用した。LC-MS:(M+H)=580.6。
【0066】
実施例1での合成経路に従って式(4)化合物(マレイミドヘキサン酸-L-バリル-L-シトルリン-p-アミノベンジル-(2-N-メチルエチレングリコール)-カンプトテシン)を調製した。具体的には、Mc-VC-PAB-PNP(マレイミドヘキサン酸-L-バリル-L-シトルリン-p-アミノベンジルーニトロフェニルカーボネート)(58mg)と化合物g(42mg)をN,N-ジメチルホルムアミド2.5mLに溶解した後、氷水浴で30分間撹拌し、DIPEA(42mg)を滴下して氷水浴で1時間撹拌した。LC-MS法により検出されたところ、反応は終了していなかった。次に、トリエチルアミン(10mg)を加え、室温下で1時間撹拌したところ、反応液が黄色に変化し、LC-MS法による検出を通じて反応終了を確認した。反応終了後、低温下で回転乾燥して溶剤を除去し、SunFire(登録商標)PrepC18OBDTM5um、19×250mmColumnを分取カラムとし、MeCN、0.1%HCOOHを移動相Aとし、HO、0.1%HCOOHを移動相Bとして分取精製クロマトグラフィーを行った。LC-MSによりモニターしながら純品を収集し、式(4)の化合物34mgを收率40.5%で固形物として得た。LC-MS:(M+H)=1179.2
【0067】
実施例3 式(1)の化合物の調製方法
【化26】
【0068】
1)化合物c(2-Boc-N-メチルエチレングリコール)の合成方法
【0069】
化合物a(アミノエチレングリコール)0.6gと化合物b(N-Boc-(メチルアミド)アセトアルデヒド)1.0gをメタノール20mLに溶解し、室温下で6時間撹拌した。反応系を氷水浴に置いてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを加え、氷水浴で1時間撹拌した後、室温に戻して一晩撹拌した。生成物をLC-MS法により検出したところ、UV吸収が見られなかった。回転乾燥して溶媒を除去し、酢酸エチルで2回抽出し、無水NaSOで乾燥し、有機相を注き出し、回転乾燥した後、ジクロロメタン:メタノール=20:1を溶離剤として、カラムクロマトグラフィーにより精製し、水洗して、1.0gの生成物を収率66%で得た。LC-MS:(M+H)=262.6
【0070】
2)SN38-PNP(10-p-ニトロフェニルカーボネート-カンプトテシン)の合成方法
【0071】
SN381.0gとDNPC(炭酸ビス(4-ニトロフェニル)酸)1.6gをテトラヒドロフラン100mLに溶解し、トリエチルアミン2mLを加え、室温下で1.5時間撹拌した。LC-MS法による検出を通じて、反応が終了したことを確認した。反応終了後、回転乾燥して溶媒を除去し、酢酸エチル:n-ヘキサン=20mL:100mLの混合溶剤を使用してトリチュレーションした後、ろ過して固形物を得た。この固形物をジクロロメタン20mLトリチュレーションし、ろ過し、LC-MSでモニターしながら生成物を回収し、700mgのSN38-PNP固形物を収率49.3%で得た。LC-MS:(M+H)=557.4
【0072】
3)化合物d (Boc-N-メチルエチルグリコール-カンプトテシン)の合成方法
【0073】
SN38-PNP500mgをN,N-ジメチルホルムアミド30mLに溶解し、化合物c370mgとN,N-ジイソプロピルエチルアミン233uLを加え、室温下で3時間撹拌した。LC-MS法による検出を通じて、反応が終了したことを確認した。反応終了後、回転乾燥して溶媒を除去し、ジクロロメタン:メタノール=20:1を溶離液とするカラムクロマトグラフィーにより精製した後、水洗した。LC-MSでモニターしながら生成物を回収し、化合物d固体を収率45%で250mg得た。LC-MS:(M+H)=680.5。
【0074】
4)化合物h(Boc-N-メチルエチレンジトキシp-ニトロ活性エステル-カンプトテシン)の合成方法
【0075】
化合物d220.0mgをジクロロメタン5mLに溶解し、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)酸150mg及びDIPEA86mgを加え、恒温下で16時間撹拌した。LC-MS法による検出を通じて、反応が終了したことを確認した。反応終了後、回転乾燥して溶媒を除去し、ジクロロメタン:メタノール=50:1を溶離剤として、カラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物を回収して化合物hを收率68.5%で固形物として220mg得た。そのままに次の反応に使用した。LC-MS:(M+H)=845.6
【0076】
5)化合物i(Boc-N-メチルジエトキシ-N,N,N-トリメチルエチレンジアミン-カンプトテシン)の合成方法
【0077】
化合物h(Boc-N-メチルジエトキシp-ニトロ活性エステル-カンプトテシン)220mgとN,N,N-トリメチルエチレンジアミン50mgをN,N-ジメチルホルムアミド5mLに溶解した後、DIPEA(65mg)を滴下して氷水浴で1時間撹拌した。反応終了はLC-MS法により検出された後、回転乾燥して溶媒を除去し、ジクロロメタン:メタノール=20:1を溶離剤として、カラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物を収集して收率75%で化合物iを157mg固形物として得たまま次の反応に使用した。LC-MS:(M+H)=808.6
【0078】
6)化合物j(N-メチルジエトキシ-N,N,N-トリメチルエチレンジアミン-カンプトテシン-トリフルオロ酢酸塩)の合成方法
【0079】
化合物i(Boc-N-メチルジエトキシ-N,N,N-トリメチルエチレンジアミン-カンプトテシン)157.0mgをジクロロメタン3mL及び1.3mLトリフルオロ酢酸に溶解し、氷水浴に置いて、恒温下で1時間撹拌した。LC-MS法による検出を通じて、反応が終了したことを確認した。反応終了後、回転乾燥して溶媒を除去した。また、ジクロロメタン2mLを加えて2回で回転乾燥した。化合物j120mgを得た。そのままに次の反応に使用した。LC-MS:(M+H)=708.3。
【0080】
7)式(1)の化合物(マレイミドヘキサン酸-L-バリル-L-シトルリン-p-アミノベンジル-(N-メチルジエトキシ-N,N,N-トリメチルエチレンジアミン)-カンプトテシン)の合成方法
【0081】
Mc-VC-PAB-PNP(マレイミドヘキサン酸-L-バリル-L-シトルリン-p-アミノベンジル-p-ニトロフェニル基カーボネート)52mgと化合物j35mgをN,N-ジメチルホルムアミド2.5mLに溶解した後、氷水浴で30分間撹拌し、DIPEA129mgを滴下して氷水浴で0.5時間撹拌した。LC-MS法により検出されたところ、反応は終了していなかった。次に、DIPEA129mgを加え、室温下で0.5時間撹拌したところ、反応液が黄色に変化し、LC-MS法により反応終了を確認した。反応終了後、低温下で回転乾燥して溶剤を除去し、SunFire(登録商標)PrepC18OBDTM5um、19×250mmColumnを分取カラムとし、MeCN、0.1%HCOOHを移動相Aとし、HO、0.1%HCOOHを移動相Bとして分取精製クロマトグラフィーを行った。LC-MSによりモニターしながら純品を収集し、式(1)の化合物20mgを收率20.5%で固形物として得た。LC-MS:(M+H)=1307.6。
【0082】
実施例4 式(9)化合物の調製方法
【化27】
【0083】
実施例3での合成経路に従って式(9)化合物(マレイミディエトキシ-L-バリル-L-シトルリン-p-アミノベンジル-(N-メチルジエトキシ-N,N,N-トリメチルエチレンジアミン)-カンプトテシン)調製した。具体的には、MP2-VC-PAB-PNP(マレイミドジエトキシ-L-バリル-L-シトルリン-p-アミノベンジル-p-ニトロフェニル基カーボネート)(52mg)と化合物j(34mg)jをN,N-ジメチルホルムアミド2.5mLに溶解した後、氷水浴で30分間撹拌し、DIPEA(36mg)を滴下して氷水浴で0.5時間撹拌した。LC-MS法により検出されたところ、反応は終了していなかった。次に、DIPEA(8mg)を加え、室温下で1.5時間撹拌したところ、反応液が黄色に変化し、LC-MS法により反応終了を確認した。反応終了後、低温下で回転乾燥して溶剤を除去し、SunFire(登録商標)PrepC18OBDTM5um、19×250mmColumnを分取カラムとし、MeCN、0.1%HCOOHを移動相Aとし、HO、0.1%HCOOHを移動相Bとして分取精製クロマトグラフィーを行った。LC-MSによりモニターしながら純品を収集し、式(9)の化合物23mgを收率35.2%で固形物として得た。LC-MS:(M+H)=1325.4。
【0084】
実施例5 NCI-N87細胞に対するADC-1の阻害効果
【0085】
式(1)の化合物とCL2A-SN38中間体を、それぞれ本技術分野での常法によりヘーセプチンにスルフヒドリル基コンジュゲートし(例えば、中国特許出願公開第CN102448494A号明細書の実施例12を参照)、平均DAR値8のADC-1及びHER2-CL2A-SN38(ADC-17)抗体-薬物コンジュゲートを調製した。NCI-N87細胞をトリプシンで消化し、細胞密度50000個/mlに調整した後、100μL/ウェルで細胞培養プレートに加え、37℃、5%COのインキュベーターで14~20時間培養した。それぞれ基礎培地でサンプル群及び対照群(被験試料の組成は表1を参照のこと)を勾配希釈し、100μL/ウェルで細胞をプレートした細胞培養プレートに移し、37℃、5%COのインキュベーターで70~74時間培養した。CCK-8を培地で10倍希釈し、96ウェルプレートの古い培地を捨て、希釈したCCK-8溶液を各ウェルに100μL加え、5%COで2~4時間発色させ、遠心して気泡を除去した後、プレートをマイクロプレートリーダーで検出波長450nm/655nmで検出して読み取った。結果を表2に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
試験の結果、ADC-1群とADC-17群はNCI-N87細胞に対して同等の阻害効果を示したことが明らかになった。
【0089】
実施例6 安定性に関する実験研究
【0090】
1)式(1)の化合物(2.1mg)とCL2A-SN38(2.1mg)を精密に秤量し、それぞれDMSO700μLに溶解した
【0091】
2)pHが6、7、8であるPB(0.2M)緩衝液をそれぞれ調製した。
【0092】
3)式(1)の化合物のDMSO溶液50μLを取って遠心チューブに加え、化合物濃度が60μg/mLとなるようにpH=6のPB(0.2M)緩衝液950μLを加えた。37℃の恒温系に置かれた。CL2A-SN38のDMSO溶液50μLを取って遠心チューブに加え、化合物濃度が60μg/mLとなるようにpH=6のPB(0.2M)緩衝液950μLを加えた。37℃の恒温系に置かれた。
【0093】
4)0h、2h、4h、6h、24h、48hにそれぞれ40μLの試料を採取し、120μLのアセトニトリルを加え、遠心分離した。上清をLC-MSによる定量に供した。
【0094】
5)結果の処理:
【0095】
T=0hのLC-MS濃度を基準とし、T/T ×100%で算出した。結果をそれぞれ表3及び表4に示す。
【0096】
【表5】
【0097】
pHが6である場合は、式(1)の化合物は48時間後に21.2%分解した。
【0098】
pHが7である場合は、式(1)の化合物は48時間後に87.8%分解した。
【0099】
pHが8である場合は、式(1)の化合物は48時間後に98.7%分解した。
【0100】
【表6】
【0101】
pHが6である場合は、CL2A-SN38は48時間後に98.0%分解した。
【0102】
pHが7である場合は、CL2A-SN38は48時間後に98.1%分解した。
【0103】
pHが8である場合は、CL2A-SN38は48時間後に98.1%分解した。
【0104】
表3~表4の結果から、以下のことが分かった。
【0105】
1)弱酸性条件下では、式(1)の化合物の方がCL2A-SN38よりも安定であった。
【0106】
2)式(1)の化合物は中性条件下で6hで18%分解し、24hで75%分解し、CL2A-SN38は中性条件で6hで43%分解し、24hで98%分解した。
【0107】
3)アルカリ性条件下では、式(1)の化合物は24hで97%分解し、CL2A-SN38は24hで98%分解した。
【0108】
したがって、CL2A-SN38と比較して、本発明で調製された式(1)の化合物は、生体内の弱酸性又は中性条件下でより高い安定性を有しており、ADC医薬品の安全性を著しく向上させることが期待される。
【0109】
実施例7 同所性乳癌の発症に対する抗Her2薬物コンジュゲートの阻害効果の評価
【0110】
1.試験方法
【0111】
BT474細胞株を1~2世代復活増殖させ、細胞増殖状態が安定した後、拡大培養を行い、腫瘍細胞懸濁液を調製し、BT474細胞をヌードマウスクリームパッドに0.2×10個接種し、合計60匹の雌BALB/cヌードマウスに接種した。平均腫瘍体積が約70mm達した時点で、42匹のマウスを選択し、腫瘍体積に応じて無作為に各群7匹ずつ6群に分けた:陰性対照群である対照群1(通常生理食塩水群)、対照群2(ADC-17)、実験群1(ADC-4)、実験群2(ADC-12)、実験群3(ADC-1)、実験群4(ADC-9)。モデルの確立に成功した後、上記のグループ分けに従って、対照群1には通常の生理食塩水を静脈内投与し、残りの群には対照群2には5mg/kg、実験群1には5mg/kg、実験群2には5mg/kg、実験群3には5mg/kg、実験群4には5mg/kgの用量の薬剤を週1回、21週間静脈内投与した。マウスの体重と腫瘍体積を週3回測定し、21日目にマウスの体重と腫瘍体積を測定した。
【0112】
2.試験結果と解析
【0113】
1)マウス体重の変化:
【0114】
【表7】
【0115】
試験中に死亡したマウスはいなかった。試験終了時、対照群1と比べて、対照群2(ADC-17群)、実験群1(ADC-4)、実験群2(ADC-12)、実験群3(ADC-1)、実験群4(ADC-9)の各群は、体重に有意差は認められなかった。詳細は表5および図1を参照のこと。
【0116】
2)マウス腫瘍体積:
【0117】
【表8】
注:各群を対照群1である生理食塩水群と比較した場合、「」はP<0.05を表し、「**」はP<0.01を表す。
各群を対照群2と比較した場合、「」はP<0.05を表し、「##」はP<0.01を表す。
【0118】
対照群1における腫瘍体積は投与後21日目に107±19.30mmに達し、対照群2、実験群1、実験群2、実験群3、実験群4の五つの群における腫瘍体積はそれぞれ49.17±13.29、57.12±20.28、66.26±21.37、61.32±12.82、75.76±46.18、75.19±25.99mm(表6を参照)に達した。対照群2、実験群1、実験群2、実験群3の四つの群は対照群1(生理食塩水群)と比べると統計学的に非常に有意な差(P<0.01)を示し、実験群4は対照群1と比べると統計学的に有意な差(P<0.05)を示した。実験群1、実験群2、実験群3の四つの群における腫瘍体積は対照群2と比べると統計学的に有意な差(P>0.05)を示さなく、また相対腫瘍体積も有意な差(P>0.05)を示さなかったので、効果は同等であったと言える。また、対照群2、実験群1、実験群2、実験群3、実験群4の五つの群における相対腫瘍増殖率(T/C)は、それぞれ49.30%、55.00%、62.58%、62.48%、67.19%及び63.20%であった。以上のデータから、本実験で試験された対照群2、実験群1、実験群2、実験群3に対応する四つの抗体-薬物コンジュゲートはいずれも、BT474腫瘍の増殖を同等の効果で非常的有意に抑制することができ、実験群4もBT474腫瘍の増殖を抑制することができたことがわかる。試験中の各群の腫瘍体積および相対腫瘍体積の変化をそれぞれ図2および図3に示す。
【0119】
要するに、本発明の薬物コンジュゲートの中間体を用いて構築されたADCは、乳癌BT474細胞モデルに対して有意な抗腫瘍活性を示した。好ましいADC-1、ADC-4、およびADC-12は、明らかな利点を有し、体内の条件下での安全性を大幅に改善するとともに、ADC-17群に匹敵する腫瘍抑制効果を提供することが期待された。
【0120】
本発明については、様々な具体例を挙げながら説明したが、本発明は諸具体例に限定されず、通常の技術者が本発明の範囲内で様々な変更または修正を行い得、また、本明細書に言及された各技術的特徴は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、互いに組み合わせる可能性があり、そのような変更や修正も本発明の範囲内にあることが、当業者であれば理解される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】