(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】3-フェノキシアゼチジン-1-イル-ヘテロアリールピロリジン誘導体及び医薬としてのその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 403/14 20060101AFI20240905BHJP
C07D 417/14 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/433 20060101ALI20240905BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
C07D417/14
A61K31/497
A61K31/433
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516833
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022075107
(87)【国際公開番号】W WO2023041432
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】524099533
【氏名又は名称】アリーナ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ゲルラッハ カイ
(72)【発明者】
【氏名】ベルタ ダニエラ ガヴィーナ
(72)【発明者】
【氏名】フェッラーラ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】グッチェ キルステン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー-ヴィエイラ ウルズラ
(72)【発明者】
【氏名】ホブソン スコット
(72)【発明者】
【氏名】ルンゲ フランク
(72)【発明者】
【氏名】センプル グレイム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィントニャック ヴィクトル
(72)【発明者】
【氏名】ション イフェン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC48
4C086BC85
4C086GA07
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、中枢神経系疾患及びその他の疾患の治療に有用な、GPR52のアゴニストである一般式(I)の(3)-フェノキシアゼチジン-(1)-イル-ヘテロアリールピロリジン誘導体に関する。また、本発明は、医薬として使用するための一般式(I)の(3)-フェノキシアゼチジン-(1)-イル-ヘテロアリールピロリジン誘導体、一般式(I)の少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物及び医薬組成物の調製方法、並びに本発明による化合物の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその塩。
【化1】
(I)
(式中、
Aは、-CH=CH-及び-S-からなる群A
aから選択され;
Bは、
【化2】
からなる群B
aから選択され;
R
1は、H-及びF-からなる群R
1aから選択され;
R
2は、H-及びF-からなる群R
2aから選択され;
R
3は、F-、Cl-、F
2HCO-、F
3CO-、F
2HC-及びF
3C-からなる群R
3aから選択され;
R
4は、H-及びF-からなる群R
4aから選択され;
R
5は、H-及びF-からなる群R
5aから選択され;
R
6は、H-、C
1-3-アルキルカルボニル-及びC
1-3-アルキルスルホニルからなる群R
6aから選択され;
ここで、前記C
1-3-アルキルカルボニル-基は、アセチル、エタンカルボニル、プロパンカルボニル、イソプロパンカルボニル、及びシクロプロパンカルボニルからなる群から選択され、
ここで、前記C
1-3-アルキルスルホニル-基は、メタンスルホニル、エタンスルホニル、プロパンスルホニル、イソプロパンスルホニル、及びシクロプロパンスルホニルからなる群から選択され、
ここで、前記C
1-3-アルキルカルボニル-基及びC
1-3-アルキルスルホニル-基は、フッ素及び重水素からなる群から独立して選択される1~5つの置換基で置換されていてもよい)
【請求項2】
Aが-CH=CH-からなる群A
bから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが-S-からなる群A
cから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Bが
【化3】
からなる群B
bから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R
3がF-、Cl-、及びF
2HC-からなる群R
3bから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R
3がF-からなる群R
3cから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R
6がC
1-3-アルキルカルボニル-からなる群R
6bから選択され、
ここで、前記C
1-3-アルキルカルボニル-基がアセチル、エタンカルボニル、プロパンカルボニル、イソプロパンカルボニル、及びシクロプロパンカルボニルからなる群から選択され、
ここで、前記C
1-3-アルキルカルボニル-基が、1、2又は3つの重水素で置換されていてもよい、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
【表1】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物、又はその薬学的に許容される塩を、少なくとも1種の薬学的に許容される補助剤、希釈剤及び/又は担体と一緒に含む、医薬組成物。
【請求項11】
医薬として使用するための請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
統合失調症;統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、統合失調症型障害、治療抵抗性統合失調症、減弱精神病症候群及び自閉症スペクトラム障害に伴う陽性症状;統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、統合失調症型障害、治療抵抗性統合失調症、減弱精神病症候群並びに自閉症スペクトラム障害に伴う陽性症状を治療するための抗精神病薬の増強;統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、統合失調症型障害、治療抵抗性統合失調症、減弱精神病症候群及び自閉症スペクトラム障害に伴う陰性症状;統合失調症(CIAS)、統合失調感情障害、統合失調症様障害、統合失調症型障害、治療抵抗性統合失調症、減弱精神病症候群及び自閉症スペクトラム障害に伴う認知障害;治療抵抗性統合失調症;統合失調感情障害;統合失調症様障害;統合失調症型障害;医薬品誘発性精神障害;双極性障害I及び双極性障害II;減弱精神病症候群;アルツハイマー病、パーキンソン病、血管性認知症、及び前頭側頭型認知症に伴う神経精神医学的症状;自閉症スペクトラム障害(ASD);強迫性障害(OCD);衝動制御障害;ギャンブル障害;トゥレット症候群;アルツハイマー病、パーキンソン病、血管性認知症及び前頭側頭型認知症に伴う認知欠損;うつ病;注意欠陥多動性障害;大うつ病性障害;薬物嗜癖;不安;双極性障害における躁病;急性躁病;激越;離隔;視床下部障害;プロラクチン関連障害、高プロラクチン血症;前頭葉機能低下に伴う症状及び薬物乱用に伴う前頭葉機能低下;並びに運動過多症状からなる群から選択される障害の予防及び/又は治療に使用するための、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
化合物が、少なくとも1種の抗精神病薬での治療に加えて投与されることを特徴とする、請求項12に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中枢神経系疾患及びその他の疾患の治療に有用な、GPR52のアゴニストである一般式(I)の3-フェノキシアゼチジン-1-イル-ヘテロアリールピロリジン誘導体に関する。
また、本発明は、医薬として使用するための一般式(I)の3-フェノキシアゼチジン-1-イル-ヘテロアリールピロリジン誘導体、一般式(I)の3-フェノキシアゼチジン-1-イル-ヘテロアリールピロリジン誘導体を含む医薬組成物及び医薬組成物の調製方法、並びに本発明による化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトGPR52は、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)である。ヒトの中枢神経系(CNS)内での最も高い発現レベルは、線条体で見られる(WO2016/176571)。それより低いが、顕著な発現レベルは、皮質など、CNSのその他の多くの構造で見られる。GPR52は、ヒト及び齧歯類の線条体においてほぼ排他的にD2受容体と共局在し、ヒト及び齧歯類の皮質においてほぼ排他的にD1受容体と共局在する(WO2016/176571)。
D1受容体は、一般的にGs共役型であるため、セカンドメッセンジャーであるcAMPの産生及びPKAの活性を刺激する。それとは対照的に、D2受容体は、一般的にGi共役型であるため、cAMPの産生を負に制御し、PKAの活性を低下させることになる。
GPR52は皮質においてD1受容体と共局在し、GPR52及びD1受容体は両方ともGs共役型であるため、GPR52アゴニストは、機能的にD1アゴニストに類似しており、したがって、皮質機能及び前頭葉機能低下に影響を及ぼすはずである。いくつかの化合物は、皮質においてD1アゴニストとして機能することが知られており、皮質機能を向上させ、前頭葉機能低下を回復させる。
【0003】
既存の抗精神病薬の有効性は、線条体の中型有棘ニューロン(MSN)に対するD2アンタゴニスト活性によって媒介されると報告されている。しかしながら、D2アンタゴニストは、運動症状や高プロラクチン血症などの副作用を生じる。GPR52は線条体においてほぼ排他的にD2受容体と共局在し、GPR52はGs共役型であり、D2はGi共役型であるため、GPR52アゴニストは、機能的にD2アンタゴニストに類似しており、したがって、抗精神病の有効性を示すはずである。また、D2アンタゴニストに伴う副作用の多くは、D2受容体によって媒介されるため、GPR52アゴニストは、既存のD2アンタゴニストに伴う副作用を回避しうる。
発現パターン、共局在、細胞内シグナル伝達、及び機能的特性に基づいて、GPR52は、以下に述べる障害など、いくつかの神経学的障害及び精神医学的障害の治療に関連する脳機能の重要な調節因子であることが示唆される。
【0004】
(1)前頭葉機能低下
前頭前皮質における血流の低下(前頭葉機能低下)は、統合失調症に伴う認知症状及び陰性症状、注意欠陥多動性障害(ADHD)、双極性障害、大うつ病性障害、並びに物質乱用に伴う前頭葉機能低下など、いくつかの神経学的状態の症状である。前頭前皮質におけるドーパミン作動性伝達は、主にD1受容体によって媒介されており、D1機能障害は、統合失調症における認知障害及び陰性症状と関連している(Goldman-Rakic PS, Castner SA, Svensson TH, Siever LJ, Williams GV (2004) Targeting the dopamine D1 receptor in schizophrenia: insights for cognitive dysfunction. Psychopharmacology 174, 3-16)。したがって、GPR52アゴニストを用いて前頭前皮質の機能を向上させることは、前頭葉機能低下に伴う症状の治療に有用である。
【0005】
(2)運動障害
線条体は、運動の制御に関与している。線条体の病態は、過剰な異常不随意運動を特徴とする運動過多障害(運動過多症として知られている)など、運動障害の多くと関連している。運動過多障害としては、例えば、振戦、ジストニア、舞踏病、バリズム、アテトーシス、チック・トゥレット症候群、ハンチントン病、ミオクローヌス及び驚愕症候群、常同症、並びにアカシジアなどが挙げられる。
【0006】
線条体では、GPR52は、線条体の間接路ニューロン上でほぼ排他的に発現される。運動過多症は、この経路の阻害性D2発現ニューロンの機能障害と関連している。この機能障害により、運動を抑制することができなくなり、結果として、チック、舞踏病、発声、振戦及びその他の運動過多症状がもたらされる。例えば、ハンチントン病の初期の運動過多症状は、D2を含む間接路への選択的損傷の結果である(Albin RL, Reiner A, Anderson KD, Penney JB, Young AB. (1990) Striatal and nigral neuron subpopulations in rigid Huntington's disease: implications for the functional anatomy of chorea and rigidity-akinesia. Ann Neurol. 27, 357-365)。さらに、線条体におけるD2受容体結合は、トゥレット症候群の重症度と関連している(Wolf SS, Jones DW, Enable MB, Gorey JG, Lee KS, Hyde TM, Coppola R, Weinberger DR (1996) Tourette syndrome: prediction of phenotypic variation in monozygotic twins by caudate nucleus D2 receptor binding. Science 273, 1225- 1227)。
アゴニストでGPR52を刺激することにより、線条体の間接路が活性化され、運動に対してより抑制的に制御し、運動過多症状を回復させる。したがって、本明細書に開示されるGPR52アゴニストは、そのような症状の治療に有用である。
【0007】
(3)精神病性障害
統合失調症の精神病性症状は、線条体における過剰なシナプス前ドーパミン活性に起因する(Howes OD, Kapur S (2009) The dopamine hypothesis of schizophrenia: version III-the final common pathway. Schizophr Bull. 35, 549-562)。精神病性症状を治療するための既存の抗精神病薬の臨床有効性は、D2受容体の遮断に依存する。精神病の治療に有効な公知の抗精神病薬は全て、ドーパミンD2受容体のアンタゴニスト又は部分アゴニストのいずれかである(Remington G, Kapur S (2010) Antipsychotic dosing: how much but also how often? Schizophr Bull. 36, 900-903)。これらの抗精神病薬は、統合失調症の陽性(又は精神病性)症状を治療することができる一方で、例えば陰性症状又は認知障害など、統合失調症のその他の態様を治療しない。GPR52及びドーパミンD2受容体の共発現に基づけば、GPR52アゴニストは、統合失調症に伴う精神病性症状を治療するはずである。また、GPR52アゴニストの作用機序は、公知のD2受容体に関連する抗精神病薬に特有であるため、GPR52アゴニストは、公知の神経遮断薬の抗精神病有効性を増強すると見込まれる。これにより、抗精神病有効性が向上するだけでなく、抗精神病薬の投与量を減らし、それにより抗精神病薬に伴う副作用を低減するのに使用しうる。血清プロラクチンのレベルが上昇するのは、公知のD2Rアンタゴニスト抗精神病薬の顕著な副作用プロファイルの1つである一方で、GPR52アゴニストは、血清プロラクチンのレベルを下げることが実証されており、したがって、GPR52アゴニストとD2Rアンタゴニスト抗精神病薬との併用は、血清プロラクチンのレベルを正常化し、それにより、D2Rアンタゴニスト抗精神病薬に伴う副作用を低減する可能性がある。また、GPR52アゴニストは、統合失調感情障害、統合失調症型障害、統合失調症様障害、治療抵抗性統合失調症、医薬品誘発性精神障害、双極性障害、自閉症スペクトラム障害、及び減弱精神病症候群など、様々な精神医学的徴候に伴う精神病性症状を治療するはずである。さらに、GPR52アゴニストは、パーキンソン病、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、血管性認知障害、及びレビー小体型認知症など、様々な神経変性の徴候に伴う精神病性症状及び神経精神医学的症状を治療するはずである。これらの抗精神病薬は、体重増加、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血糖、インスリン抵抗性、錐体外路症状、高プロラクチン血症、及び遅発性ジスキネジアなどの重大な副作用プロファイルも伴う。GPR52アゴニストは、機能的にD2アンタゴニストに類似しているはずであるため、本明細書に開示されるGPR52アゴニストは、精神病性障害の治療に有用である。
【0008】
(4)その他のD1関連障害
いくつかの神経治療薬及び精神治療薬は、D1アゴニストとして機能することが公知であり、そのような薬としては、A-86929、ジナプソリン、ドキサントリン、SKF-81297、SKF-82958、SKF-38393、フェノルドパム、6-Br-APB、及びステホロイジンなどが挙げられる。GPR52アゴニストは、機能的にD1アゴニストに類似している(かつ、共局在している)はずであるため、本明細書に開示されるGPR52アゴニストは、D1アゴニストにより治療可能な障害の治療に有用であり、そのような障害としては、嗜癖(例えば、コカイン嗜癖)、高血圧、下肢静止不能症候群、パーキンソン病、及びうつ病などが挙げられるが、これらに限定されない。また、GPR52アゴニストは、その発現パターン及び機能的共役に基づいて、統合失調症、統合失調症様障害、治療抵抗性統合失調症減弱精神病症候群及び統合失調症型障害、双極性疾患、自閉症スペクトラム障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症(ピック病)、レビー小体型認知症、血管性認知症、脳卒中後の認知症、並びにクロイツフェルト・ヤコブ病などに伴う認知欠損の治療に有用である。
【0009】
(5)その他のD2関連障害
いくつかの神経性障害、例えば強迫性障害及び衝動制御障害は、ドーパミン受容体シグナル伝達における変化を伴うため、GPR52アゴニストはこれらの徴候(Lopez AM, Weintraub D, Claassen DO (2017) Impulse control disorders and related complications of Parkinson's Disease Therapy. Semin Neurol. 37, 186-192)の治療に有用である(Koo MS, Kim EJ, Roh D, Kim CH (2014) Role of dopamine in the pathophysiology and treatment of obsessive-compulsive disorder. Exp. Rev. Neurotherap. 10, 275-290)。また、いくつかの神経治療薬及び精神治療薬は、D2アンタゴニストとして機能することが公知であり、そのような薬としては、非定型抗精神病薬(例えば、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、及びジプラシドン)、ドンペリドン、エチクロプリド、ファルプリド、デスメトキシファルプリド、L-741、626、ラクロプリド、ヒドロキシジン、イトプリド、SV293、定型抗精神病薬、ヨヒンビン、アミスルプリド、及びUH-232などが挙げられる。GPR52アゴニストは、機能的にD2アンタゴニストに類似しているはずであるため、本明細書に開示されるGPR52アゴニストは、D2アンタゴニストによって治療可能な障害の治療に有用であり、そのような障害としては、精神病性障害、離隔、不安、精神神経症に伴う不安/緊張、急性躁病、激越、双極性障害における躁病、気分変調症、悪心、嘔吐、胃腸疾患、消化不良、及び嗜癖(例えば、コカイン嗜癖、アンフェタミン嗜癖など)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
したがって、GPR52アゴニストは、中枢神経系の疾患を治療する有望な候補であると考えられる。
このように、GPR52に対するアゴニスト作用を有しうる、精神障害の予防及び/又は治療するための化合物を開発するための需要が存在する。
特に、GPR52に対するアゴニスト作用及び統合失調症などの精神障害の予防及び/又は治療するための薬剤として有用でありうる最適化された薬物特性を有しうる化合物を開発するための需要が存在する。
国際特許出願第2009/157196号、国際特許出願第2009/107391号、国際特許出願第2011/078360号、国際特許出願第2011/093352号、国際特許出願第2011/145735号、国際特許出願第2012/020738号、国際特許出願第2016/176571号並びに国際特許出願第2021/090030号、国際特許出願第2021/198149号及び国際特許出願第2021/216705号は、中枢神経系の疾患及びその他の疾患を治療するためのGPR52を調節する化合物を開示している。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的
この度、一般式(I)による本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、GPR52の有効なアゴニストであることが分かった。
GPR52に対するアゴニスト特性に加えて、本発明の化合物は、ヒトの治療、例えば低い血漿タンパク結合率、ヒト肝細胞内の高い安定性、加水分解酵素を介した経路等のCYP以外の酵素代謝に及ぶ薬物代謝、低いhERGチャネル阻害(又は相互作用)、及び/又は薬物として使用される化合物の十分な水溶性に対して実行可能であるさらに有効な特性を提供する。
一般式(I)による本発明の化合物は、ヒト肝細胞内で代謝的に安定である。したがって、本発明の化合物は好ましいin vivoクリアランス及び結果として所望のヒトにおける作用持続期間を有することが期待されている。多くの薬物を代謝する主要な部位は肝臓であるため、肝細胞はin vitro薬物代謝を検討するためのモデルシステムを代表する。ヒト肝細胞内の安定性の向上は、生物学的利用能の向上及び/又は患者の投与量の低減及び/又は投与頻度の低減を可能としうるより長い半減期を含むいくつかの薬物動態学的利点が関連している。疾患治療のための化合物の有効投与量の低減及び/又は有効な投与頻度の低減は、潜在的な副作用を最小化する。このように、ヒト肝細胞内の代謝的安定性の向上は、薬物として使用される化合物の好ましい特性である。
【0012】
さらに、一般式(I)による本発明の化合物は、低い血漿タンパク結合率、その結果として血漿中で高い非結合形分率(fraction unbound)を示し、それは、疾患治療のための化合物の十分に低い有効投与量、その結果として副作用の最小化等のさらなる潜在的な利点を表す。結果的に、本発明の化合物、特に高/中程度の代謝的安定性及び低い血漿タンパク結合率の両方を有する一般式(I)の化合物は、ヒトの治療に実行可能である。
一般式(I)による本発明の化合物、但し、群R6がC1-3-アルキルカルボニル部位であるものは、CYP以外の酵素代謝、特に加水分解酵素を介した代謝を示し、そのことが代謝全体の多様化に寄与し、シトクロムP450酵素を介した薬物動態学的薬物-薬物相互作用のリスクを低減する結果をもたらす。
【0013】
薬物-薬物相互作用は、ある薬物が別の薬物に影響を及ぼすことを指し、典型的には、薬物が代謝酵素又は輸送体の機能又は発現に影響を及ぼす場合に起こる。最も重大な薬物動態学的相互作用は、第2の薬物が第1の薬物のクリアランスを変化させるものである。例えば、ある薬物の代謝を同時投与した薬物が阻害する場合であり、第1の薬物の血漿中濃度が上昇し、その結果、治療反応が臨床的に関連して増加するか、又は、毒性が増加することになりうる。
薬物の代謝は、主に肝臓と腸で行われる。これらの臓器は、多種多様な薬物代謝酵素を発現しており、多くの薬物の生体内変換を担っている。第I相の酸化的代謝は、主に、肝小胞体に存在するシトクロムP450(CYP)ファミリーの酵素によって起こるが、加水分解酵素などのCYP以外の酵素によっても媒介されうる。これらの官能基化反応に続いて、生体異物の排泄性を高めるために、抱合反応(第II相)が起こることが多い。
シトクロムP450(CYP)酵素は、ほとんどの薬物及びその他の親油性生体異物の酸化的生体内変換(第1相代謝)を触媒することができる主要な酵素ファミリーと考えられており、その一方で、CYP以外の酵素を介した経路を介した薬物代謝はあまり目立たない。もしCYPに依存しない経路が薬物の酸化、加水分解又は抱合に関与している場合、アルデヒド酸化酵素、エステラーゼ/加水分解酵素、及びウリジン二リン酸グルクロン酸転移酵素(UGT)は、それぞれ、上記代謝を触媒する主な酵素である。例えば、アミド加水分解を担う主な酵素は、薬物のN-脱アシル化を生成するが、アリールアセトアミド脱アセチル酵素等のセリン加水分解酵素である。
肝ミクロソームは、主な代謝産物の解明を含む上記CYP以外の代謝経路を特定するための優れたin vitroツールを提供する。
【0014】
精神科の臨床では、精神疾患や身体疾患を併発した患者を治療したり、特定の薬物の副作用を抑制したり、又は薬物効果を増加させるために、併用薬物療法が一般的に用いられる。しかしながら、前記のような多剤併用の手法では、CYPを介した薬物-薬物相互作用のリスクが高くなる。したがって、特に複数の薬物を同時に服用する可能性が高い高齢の患者には、薬物-薬物相互作用の可能性が低い薬物の使用が望ましい(Spina E, de Leon, J. (2007) Metabolic Drug Interactions with Newer Antipsychotics: A Comparative Review. Basic Clin. Pharmacol. Toxicol. 100, 4-22)。
したがって、群R6がC1-3-アルキルカルボニル部位である一般式(I)による本発明の化合物により示されるような、代謝がより多様化し、薬物-薬物相互作用のリスクを低減する結果をもたらす、CYP以外の酵素に依存する経路を介した代謝全体のクリアランス、例えば加水分解酵素を介した代謝へのさらなる寄与が非常に望ましい。結果的に、本発明の化合物は、ヒトの治療に実行可能である。
【0015】
hERGチャネルの阻害とそれに続く心臓再分極遅延は、特異的な多形性の心室性頻脈性不整脈であるトルサード・ド・ポアントのリスク増加と関連しており、このことは、Sanguinetti et al. (1995, Cell, 81 (2): 299-307)及びその後の証拠によって立証された通りである。このリスクを最小化するために、hERGチャネルの異種発現を用いたin vitro系でのhERGチャネル阻害に対するスクリーニングが一般的な方法であり、ICHガイドラインS 7 B(International Conference on Harmonization (2005): ICH Topic S 7 B; The nonclinical Evaluation of the Potential for delayed Ventricular Repolarization (QT Interval Prolongation) by Human Pharmaceuticals)で推奨されるような後期の前臨床プロファイリングの重要な部分である。したがって、本発明の化合物により示されるような低/中程度のhERGチャネル阻害又は相互作用が非常に望ましい。結果的に、本発明の化合物は、ヒトの治療に実行可能である。
式(I)による本発明の化合物は、薬物として使用される化合物の許容される水溶解度を示す。化合物の溶解度の向上は薬物製品の開発可能性の向上をもたらす。さらに、当技術で公知である通り、難溶性化合物はヒト曝露が不十分となる可能性がある。
【0016】
したがって、本発明の一態様は、GPR52のアゴニストとしての一般式(I)による化合物又はその塩、好ましくはその薬学的に許容される塩を指す。
本発明の別の態様は、高/中程度のヒト肝細胞の安定性を有するGPR52のアゴニストとしての一般式(I)による化合物又はその塩、好ましくはその薬学的に許容される塩を指す。
本発明の別の態様は、低/中程度のヒト血漿タンパク結合率を有するGPR52のアゴニストとしての一般式(I)による化合物又はその塩、好ましくはその薬学的に許容される塩を指す。
本発明の別の態様は、加水分解酵素を介した代謝等のCYP以外の酵素に依存する代謝経路を含む多様化した代謝を有するGPR52のアゴニストとしての、群R6がC1-3-アルキルカルボニル部位である一般式(I)による化合物又はその塩、好ましくはその薬学的に許容される塩を指す。
本発明の別の態様は、hERGチャネルを低/中程度に阻害するGPR52のアゴニストとしての一般式(I)による化合物又はその塩、好ましくはその薬学的に許容される塩を指す。
【0017】
本発明の別の態様は、薬物として使用される化合物に対する十分な水溶性を有する、GPR52のアゴニストとしての一般式(I)による化合物又はその塩、好ましくはその薬学的に許容される塩を指す。
本発明の別の態様は、高/中程度のヒト肝細胞の安定性及び低/中程度のヒト血漿タンパク結合率を有する、GPR52のアゴニストとしての一般式(I)による化合物又はその塩を指す。
本発明の別の態様は、高/中程度のヒト肝細胞の安定性、低/中程度のヒト血漿タンパク結合率を有し、加水分解酵素を介した代謝等のCYP以外の酵素に依存する代謝経路を含む多様化した代謝を有するGPR52のアゴニストとしての一般式(I)による化合物又はその塩を指す。
本発明の別の態様は、高/中程度のヒト肝細胞の安定性、低/中程度のヒト血漿タンパク結合率、加水分解酵素を介した代謝(群R6がC1-3-アルキルカルボニル部位である化合物についてのみ)等のCYP以外の酵素に依存する代謝経路を含む多様化した代謝、低/中程度のhERGチャネル阻害及び、任意で、薬物として使用される化合物の十分な水溶性を有する、GPR52のアゴニストとしての一般式(I)による化合物又はその塩を指す。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、任意に1つ又は複数の不活性補助剤、希釈剤及び/又は担体と一緒に、一般式(I)による少なくとも1つの化合物若しくはその薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物に関する。
本発明のさらなる態様は、GPR52活性が不十分であることに関連する障害の予防及び/又は治療に使用するための一般式(I)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は式(I)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。
本発明の別の態様は、一般式(I)による本発明の化合物又はその塩、特に薬学的に許容される塩の製造方法に関する。
本発明のその他の目的は、上記及び下記の記載から直接的に当業者にとって明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の態様では、本発明は、一般式(I)の化合物又はその塩
【化1】
(I)
(式中、
Aは、-CH=CH-及び-S-からなる群A
aから選択され;
Bは、
【化2】
からなる群B
aから選択され;
R
1は、H-及びF-からなる群R
1aから選択され;
R
2は、H-及びF-からなる群R
2aから選択され;
R
3は、F-、Cl-、F
2HCO-、F
3CO-、F
2HC-及びF
3C-からなる群R
3aから選択され;
R
4は、H-及びF-からなる群R
4aから選択され;
R
5は、H-及びF-からなる群R
5aから選択され;
R
6は、H-、C
1-3-アルキルカルボニル-及びC
1-3-アルキルスルホニル-からなる群R
6aから選択され、
ここで、上記C
1-3-アルキルカルボニル-基及びC
1-3-アルキルスルホニル-基は、フッ素及び重水素からなる群から独立して選択される1~5つ(例えば2、3又は4つ)の置換基で置換されていてもよい)
好ましくは薬学的に許容される塩に関する。
別段に明記しない限り、基、残基及び置換基、特にA、B、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、上記及び下記の通り定義される。残基、置換基又は基が、化合物中に複数回出現する場合、それらは同一の又は異なる意味を有してもよい。本発明による化合物の基及び置換基の好ましい意味のいくつかを、以下に述べる。
【0020】
本発明のさらなる実施形態では、Bは、
【化3】
からなる群B
bから選択される。
【0021】
本発明のさらなる実施形態では、Bは、
【化4】
からなる群B
cから選択される。
【0022】
本発明のさらなる実施形態は、一般式(I.I)の化合物
【化5】
(I.I)
(式中、
A、B、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、本発明に記載の通りの置換基である)であって、一般式(I.I)の化合物は、群B、R
4及びR
5の意味による単一のエナンチオマー又は複数種のジアステレオアイソマー若しくは単一のジアステレオアイソマーであることを特徴とする化合物に関する。
【0023】
一般式(I.I)は、一般式(I.I.B
b)及び(I.I.B
c)
【化6】
を包含する。
【0024】
本発明のさらなる実施形態は、一般式(I.II)の化合物
【化7】
(I.II)
(式中、
A、B、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、本発明に記載の通りの置換基である)であって、一般式(I.II)の化合物は、群B、R
4及びR
5の意味による単一のエナンチオマー又は複数種のジアステレオアイソマー若しくは単一のジアステレオアイソマーであることを特徴とする化合物に関する。
【0025】
一般式(I.II)は、一般式(I.II.B
b)及び(I.II.B
c)
【化8】
を包含する。
【0026】
一般式(I.I)(例えば一般式(I.I.Bb)又は(I.I.Bc))は、群B、R4及びR5の意味、及び該当する場合に、R4及びR5を有するキラル炭素原子の配置による単一のエナンチオマー又は複数種のジアステレオアイソマー若しくは単一のジアステレオアイソマーを包含することは、当業者により理解されうる。同様のことが一般式(I.II)(例えば一般式(I.II.Bb)又は(I.II.Bc))にも適用される。
例えば、一般式(I.I.Bb)は、R4及びR5が同じ意味(例えばR4及びR5がいずれもH-である、或いは、R4及びR5がいずれもF-である)を有する場合に、1種類の単一のエナンチオマーを包含する。同様のことが一般式(I.II.Bb)にも適用される。
例えば、一般式(I.I.Bb)は、R4及びR5が異なる意味(例えばR4がH-であり、R5がF-である)を有する場合に、複数種のジアステレオアイソマーを包含する。同様のことが一般式(I.II.Bb)にも適用される。
例えば、一般式(I.I.Bb)は、R4及びR5が異なる意味(例えばR4がH-であり、R5がF-である)を有し、R4及びR5を有するキラル炭素原子が規定の配置(すなわち(S)又は(R))を有する場合に、単一のジアステレオアイソマーを包含する。同様のことが一般式(I.II.Bb)にも適用される。
【0027】
本発明のさらなる実施形態は、一般式(I.I.Bb)の化合物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、一般式(I.II.Bb)の化合物に関する。
本発明のさらなる実施形態では、Aは、-CH=CH-からなる群Abから選択される。
本発明のさらなる実施形態では、Aは、-S-からなる群Acから選択される。
本発明のさらなる実施形態では、R3は、F-、Cl-、及びF2HC-からなる群R3bから選択される。
本発明のさらなる実施形態では、R3は、F-からなる群R3cから選択される。
本発明のさらなる実施形態では、
R6は、C1-3-アルキルカルボニル-からなる群R6bから選択され、
ここで、上記C1-3-アルキルカルボニル-基は、1から5つの(例えば2、3又は4つの)重水素で置換されていてもよい。
本発明のさらなる実施形態では、
R6は、アセチルからなる群R6cから選択され、
ここで、上記アセチル-基は、1、2又は3つの重水素で置換されていてもよい。
【0028】
Ax、Bx、R1x、R2x、R3x、R4x、R5x及びR6xのそれぞれは、上記の通り、対応する置換基について特徴づけられた個々の実施形態を表す。よって、上記定義が与えられると、本発明の第1の態様の個々の実施形態は、用語(Ax、Bx、R1x、R2x、R3x、R4x、R5x及びR6x)によって完全に特徴づけられ、ここで、各添え字「x」については、「a」からアルファベット順序が最後の上記文字までを範囲とする個々の文字が定められている。上記の定義を参照し、添え字「x」を完全置換した括弧内の用語によって説明される全ての個々の実施形態が、本発明を構成するものとする。
下記表1は、好ましいと考えられる、そのような一般式(I)の化合物の実施形態E-1~E-50又はその塩、好ましくは薬学的に許容される塩を示す。表1の実施形態E-8、E-9、E-26、E-27、E-45、及びE-46は、より好ましい実施形態である。表1の実施形態E-1~E-50の全ては、一般式(I.I)又は一般式(I.II)による配置、例えば一般式(I.I.Bb)、(I.I.Bc)、(I.II.Bb)又は(I.II.Bc)による配置、好ましくは一般式(I.I)による配置を有していてもよい。
【0029】
【表1】
したがって、例えばE-2は一般式(I)の化合物
(式中、
Aは、-CH=CH-及び-S-からなる群A
aから選択され;
Bは、
【化9】
からなる群B
aから選択され;
R
1は、H-及びF-からなる群R
1aから選択され;
R
2は、H-及びF-からなる群R
2aから選択され;
R
3は、F-、Cl-、F
2HCO-、F
3CO-、F
2HC-及びF
3C-からなる群R
3aから選択され;
R
4は、H-及びF-からなる群R
4aから選択され;
R
5は、H-及びF-からなる群R
5aから選択され;
R
6は、C
1-3-アルキルカルボニル-、からなる群R
6bから選択され、
ここで、C
1-3-アルキルカルボニル-基は1から5つの重水素で置換されていてもよい)
又はその塩、好ましくは薬学的に許容される塩を包含する。
【0030】
したがって、例えばE-26は一般式(I)の化合物
(式中、
Aは、-CH=CH-からなる群A
bから選択され;
Bは、
【化10】
からなる群B
bから選択され;
R
1は、H-及びF-からなる群R
1aから選択され;
R
2は、H-及びF-からなる群R
2aから選択され;
R
3は、F-からなる群R
3cから選択され;
R
4は、H-及びF-からなる群R
4aから選択され;
R
5は、H-及びF-からなる群R
5aから選択され;
R
6は、C
1-3-アルキルカルボニル-、からなる群R
6bから選択され、
ここで、C
1-3-アルキルカルボニル-基は1から5つの重水素で置換されていてもよい)
又はその塩、好ましくは薬学的に許容される塩を包含する。
【0031】
したがって、例えばE-45は一般式(I)の化合物
(式中、
Aは、-S-からなる群A
cから選択され;
Bは、
【化11】
からなる群B
bから選択され;
R
1は、H-及びF-からなる群R
1aから選択され;
R
2は、H-及びF-からなる群R
2aから選択され;
R
3は、F-からなる群R
3cから選択され;
R
4は、H-及びF-からなる群R
4aから選択され;
R
5は、H-及びF-からなる群R
5aから選択され;
R
6は、C
1-3-アルキルカルボニル-からなる群R
6bから選択され、
ここで、C
1-3-アルキルカルボニル-基は1から5つの重水素で置換されていてもよい)
又はその塩、好ましくは薬学的に許容される塩を包含する。
【0032】
さらに好ましいのは、表2に示す以下の化合物若しくはその塩又はその立体異性体である(番号は、実験の項の化合物に割り振られた番号を指す)。表2の各化合物は、もしその立体化学が存在する場合、それを示すことなく表される。表2の化合物の立体化学の特性を考慮した特定の情報は、実験の項から取得することができる。上記実験の項による最終的な化合物が塩形態である場合、それらを従来の方法により中性の化合物に転化してもよい。
【0033】
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、一般式(I)の化合物、特に表2に示される化合物の薬学的に許容されるそれらの塩の形態を包含する。
さらなる態様では、本発明は、一般式(I)による少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、少なくとも1種の不活性補助剤、希釈剤及び/又は担体を一緒に含んでもよい、医薬組成物に関する。
さらなる実施形態では、本発明は、医薬として使用するための本発明の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は一般式(I)による少なくとも1つの化合物若しくはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。
さらなる実施形態では、本発明は、GPR52の活性化によって影響を受けうる疾患又は状態の予防及び/又は治療に使用するための一般式(I)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は一般式(I)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。
【0035】
使用される用語及び定義
以下、本発明による化合物を説明するために上記及び下記で使用するいくつかの用語について、より詳細に定義する。
本明細書で具体的に定義されていない用語は、本開示及びその文脈を考慮して、当業者がその用語に与えるはずの意味を与えられるべきである。しかしながら、本明細書で使用する場合、別段に明記しない限り、以下の用語は示されている意味を有し、以下の慣例が順守される。
用語「C1-3-アルキル」は、単独で又は別のラジカルと組み合わせてのいずれかで、1、2又は3つのC原子を有する非環式、環式、飽和、分岐鎖又は直鎖の炭化水素ラジカルを示す。例えば、用語C1-3-アルキルは、H3C-、H3C-CH2-、H3C-CH2-CH2-、H3C-CH(CH3)-、(CH2)2-CH-のラジカルを包含する。
【0036】
一般に、2つ以上のサブ基を含む基では、最後に命名されているサブ基がラジカルの付着点であり、例えば、置換基「C1-3-アルキル-カルボニル-」は、カルボニル基に結合しているC1-3-アルキル基であって、その後者のC1-3-アルキル基が、当該置換基が付着しているコア分子又は基に結合していることを意味する。同様のことが置換基「C1-3-アルキル-スルホニル-」にも適用される。例えば、「C1-3-アルキルカルボニル-」基は、アセチル(すなわちCH3C(O)-)、エタンカルボニル(すなわちCH3CH2C(O)-)、プロパンカルボニル(すなわちCH3(CH2)2C(O)-)、イソプロパンカルボニル(すなわちCH3CH(CH3)C(O)-)、及びシクロプロパンカルボニル(すなわち(CH2)2CHC(O)-)からなる群から選択され、例えば、「C1-3-アルキルスルホニル-基」は、メタンスルホニル(すなわちCH3S(O)2-)、エタンスルホニル(すなわちCH3CH2S(O)2-)、プロパンスルホニル(すなわちCH3(CH2)2S(O)2-)、イソプロパンスルホニル(すなわちCH3CH(CH3)S(O)2-)、及びシクロプロパンスルホニル(すなわち(CH2)2CHS(O)2-)からなる群から選択される。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「置換されている」は、指定された原子の可能な原子価数を超えず、置換によって安定な化合物が得られる限り、指定された原子/基上の任意の1つ又は複数の水素が、指示された群から選択されるもので置き換えられていることを意味する。さらに、本明細書で用いられる用語「1~5つの置換基で置換されている」は、1、2、3、4又は5つの換基が、指定された原子/基上に存在していてもよいことを意味する。
上記で定めた用語の多くは、式又は基の定義において反復して使用してよく、それぞれの場合において、上記の意味のうちの1つを互いに独立して有してよい。
本発明の化合物が、化学名の形態で、かつ式として表されている場合、何らかの矛盾がある場合は式が優先されるものとする。
点線
【化12】
は、分子の残りの部分であるコア分子に接続される結合若しくは付着点、又は定義の通り結合される置換基に接続される結合若しくは付着点を示すために、サブ式で使用される。
【0038】
特段指示のない限り、明細書及び添付の特許請求の範囲の全体を通して、所与の化学的な式(例えば表2の全ての化合物)又は名称は、回転異性体、互変異性体及び全ての立体異性体、光学異性体並びに幾何異性体(例えば一般式(I.I)又は(I.II)によるジアステレオマー、エナンチオマー、E/Z、トランス/シス異性体等)及びそれらのラセミ体、並びに別々のエナンチオマーの比率が異なる混合物、ジアステレオマーの混合物、又は上記異性体が存在する前述の形態のあらゆる混合物、並びに例えば水和物等のその溶媒和物を包含するものとする。
例えば、表2の化合物1番は、混合物(例えばラセミ体混合物)として、又は単一のエナンチオマー(例えば(S)又は(R))として2種類のエナンチオマーを包含することは、当業者により理解されうる。
さらに、表2の化合物3番(又は14番又はH-2番)が、2種類の又は4種類の立体異性体(例えばシス-ラセミ体混合物及び/又はトランス-ラセミ体混合物)の混合物として、又は単一の立体異性体として、2種類のシス-立体異性体及び2種類のトランス-立体異性体を包含することは、当業者により理解されうる。
特段指示のない限り、以下でより詳細に定義されている「薬学的に許容される塩」も、例えば水和物等のその溶媒和物を包含するものとする。
【0039】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物がその酸塩又は塩基塩を生成することにより修飾される開示の化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩としては、例えば、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
そのような塩としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、4-メチル-ベンゼンスルホン酸、リン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸及び酒石酸に由来する塩などが挙げられる。
また、薬学的に許容される塩は、アンモニア、L-アルギニン、カルシウム、2,2’-イミノビスエタノール、L-リジン、マグネシウム、N-メチル-D-グルカミン、カリウム、ナトリウム及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンに由来する陽イオンで生成されうる。
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性部分又は酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、遊離酸形態又は遊離塩基形態のこれらの化合物を、水中、又は、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール若しくはアセトニトリル若しくはそれらの混合物のような有機希釈剤中で、十分な量の適切な塩基又は酸と反応させることにより調製することができる。
【0040】
例えば、本発明の化合物を精製又は単離するのに有用な上記以外の酸の塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩)も、本発明の一部を構成する。
語句「薬学的に許容される補助剤、希釈剤及び/又は担体」は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応若しくはその他の問題又は合併症を伴わず、ヒトの組織と接触して使用するのに適しており、合理的なベネフィット/リスク比に見合う材料を指すために用いられる。
【0041】
調製
本発明による化合物は、原則として公知の合成方法を用いて得ることができる。好ましくは、化合物は、本発明による下記の方法によって得られるものであり、その方法を以下でより詳細に説明する。
以下のスキームは、一般的に、本発明の化合物を製造する方法を例として説明する。略されている置換基は、スキームの文脈内で別段に定義しない限り、上記で定義されている通りでよい。
本発明は、式(I)の化合物の製造方法も提供する。別段に明記しない限り、下記式中、A、B、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、上記発明の詳細な説明において、式(I)について定義した通りの意味を有するものとする。
最適な反応条件及び反応時間は、使用される反応物に応じて異なっていてもよい。別段に明記しない限り、溶媒、温度、圧力、及びその他の反応条件は、当業者が容易に選択することができる。具体的な手順は、実験の項で示す。通常、反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、所望により液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)によりモニターすることができ、中間体及び生成物は、クロマトグラフィー及び/又は再結晶により精製することができる。
【0042】
以下の実施例は例示であり、当業者が認識するように、特定の試薬又は条件は、過度の実験を行うことなく、個々の化合物に対して必要に応じて改変されうる。下記の方法で使用される出発材料及び中間体は、市販されているか、又は当業者によって市販の材料から容易に調製される。
【化13】
スキーム1
スキーム1は、化合物(I)の合成の中間体としてのアミン(V)の合成を示す。第1ステップでは、適切に保護され(PGは保護基であり、例えば、CO
2tBu(BOC)、CO
2Bnである)、適切に活性化された(スルホニルエステル、置換基R、例えば、メチル、CF
3又はトリル)アゼチジン(II)を、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-ピロリジノン、アセトニトリル、DMSO、ジクロロメタン、トルエンなどの適切な溶媒、及び、炭酸セシウム、炭酸カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水酸化ナトリウム、N-エチル-ジイソプロピルアミン、ピリジンなどの適切な塩基を用いて、フェノール(III)と反応させて、3-フェノキシアゼチジン(IV)を生成する。この中間体を第2ステップで脱保護し、アミン(V)を得る。脱保護は、BOCで保護された中間体(IV)に対して、例えば塩酸などの鉱酸を用いることにより、又はベンジルオキシカルボニルで保護された中間体(IV)に対して水素雰囲気下でパラジウム炭などの触媒を用いて接触水素化することにより行うことができる。その他の脱保護反応については、'Protective Groups in Organic Synthesis', 3' edition, T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Wiley-Interscience (1999)に記載されている。反応条件やワークアップによっては、アミン(V)が塩として得られる場合がある。
【0043】
【化14】
スキーム2
スキーム2に示すように、式(V)のアミンを、ジオキサン、THF、DMA又はDMFなどの適切な溶媒中、カリウムtert-ブトキシド又はNaHなどの適切な塩基の存在下で、ハロエステル(VI)(X=ハロゲン化物、R
x=アルキル)と芳香族求核置換反応(ステップ1)で反応させることにより、式(VII)のエステル化合物を得る。また、バックワルド-ハートウィッグ(Buchwald-Hartwig)型のクロスカップリング条件を用いて、化合物(VII)を生成することができる。例えば、化合物(IV)(X=Cl、Br、I;R
x=アルキル)を、トルエンなどの適切な溶媒中、酢酸パラジウム(II)などの適切な触媒と、ブチル-ジ-1-アダマンチル-ホスフィンなどの適切な配位子と、炭酸セシウムなどの適切な塩基との存在下で、アミン(V)と反応させて、一般式(VII)の化合物を得ることができる。
【0044】
或いは、DMAなどの適切な溶媒中、トリエチルアミンなどの適切な塩基の存在下で、ハロエステル(VI)をヒドロキシアゼチジンと芳香族求核置換反応で反応させて、一般式(VIII)のアルコールを得ることができる。次のステップでは、「光延」法(例えば、Tet. Lett. 1994, 35, 2819又はSynlett 2005, 18, 2808を参照)を用いて、アルコール(VIII)を式(VII)のフェニルエーテル化合物に転化することができる。適切な溶媒(例えば、THF又はトルエン)中、適切なフェノール(III)の存在下で、トリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィン(例えば、トリブチルホスフィン若しくはトリフェニルホスフィンなど)又はポリマー結合トリフェニルホスフィンなどの固体に担持させた類似体及び適切なジアルキルアザジカルボキシレート(例えば、DIAD、DEAD)を一般式(VIII)の化合物に加えて、一般式(VII)のアリールエーテルを生成する。
【0045】
【化15】
スキーム3
一般式(I)の化合物の調製をスキーム3に示す。第1ステップでは、カルボン酸エステル(VII)を、アセトン/水、1,4-ジオキサン/水、THF/水などの溶媒/水混合物中、適切な水酸化物塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウムなど)で加水分解して酸性化すると、対応するカルボン酸(IX)を生成することができる。
【0046】
当業者にとって公知のペプチドカップリング反応(例えば、M. Bodanszky, 1984, The Practice of Peptide Synthesis, Springer-Verlag参照)を適用して、式(X)のアミンとカルボン酸(IX)を反応させて、一般式(I)の化合物を得ることができる。例えば、アミン(X)及びカルボン酸(IX)を、アセトニトリル、NMP、DMA又はDMFなどの適切な溶媒中、DIPEA又は1-メチルイミダゾールなどの適切な塩基の存在下で、カップリング剤2-クロロ-4,5-ジヒドロ-1,3-ジメチル-1H-イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(CIP)、向山試薬、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(TCFH)又は1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)で処理すると、式(I)の化合物を生成する。
【0047】
或いは、カルボン酸(IX)を、DCM、DMF又はトルエンなどの適切な溶媒中、1-クロロ-N,N-2-トリメチルプロペニルアミン、塩化チオニル又は塩化オキサリルで処理すると、中間体である酸塩化物が得られ、続いて、これを例えばDCM、THF又はDMFなどの適切な溶媒中、TEAなどの適切な塩基の存在下、式(X)のアミンで処理して、式(I)の化合物を得る。
或いは、トリメチルアルミニウムで予め活性化したアミン(X)を、DCM、ジクロロエタン、THF又はトルエンなどの適切な溶媒中で、カルボン酸エステル(VII)と直接反応させて、一般式(I)のアミドを得ることができる。
【0048】
【化16】
スキーム4
或いは、一般式(I)の化合物は、スキーム4に示されるように合成することができる:当業者にとって公知のペプチドカップリング反応(例えば、M. Bodanszky, 1984, The Practice of Peptide Synthesis, Springer-Verlag参照)を第1ステップに適用し、式(X)のアミンをカルボン酸(XI)(X=ハロゲン化物、Y=OH)と反応させて、一般式(XII)(X=ハロゲン化物)のハロアミドを得ることができる。例えば、アミン(X)及びカルボン酸(XI)(X=ハロゲン化物、Y=OH)を、アセトニトリル、NMP、DMA又はDMFなどの適切な溶媒中、DIPEA又は1-メチル-イミダゾールなどの適切な塩基の存在下で、カップリング剤である2-クロロ-4,5-ジヒドロ-1,3-ジメチル-1H-イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(CIP)、向山試薬、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(TCFH)又は1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)で処理すると、一般式(XII)のハロアミド(X=ハロゲン化物)を生成する。或いは、カルボン酸(XI)(X=ハロゲン化物、Y=OH)を、DCM、DMF又はトルエンなどの適切な溶媒中、1-クロロ-N,N-2-トリメチルプロペニルアミン、塩化チオニル又は塩化オキサリルで処理すると、中間体である酸塩化物(XI)(Y=Cl)が得られ、続いて、これをDCM、THF又はDMFなどの適切な溶媒中、TEAなどの適切な塩基の存在下、式(X)のアミンで処理して、一般式(XII)のハロアミド(X=ハロゲン化物)を得る。或いは、トリメチルアルミニウムで予め活性化したアミン(X)を、DCM、ジクロロエタン、THF又はトルエンなどの適切な溶媒中で、カルボン酸エステル(XI)(X=ハロゲン化物、Y=アルキルオキシ)と直接反応させて、一般式(XII)のハロアミド(X=ハロゲン化物)を得ることができる。
【0049】
第2ステップでは、式(V)のアミンを、2-プロパノール、ジオキサン、THF、NMP、DMA、DMF又はトルエン/水混合物などの適切な溶媒中、カリウムtert-ブトキシド、NaH、炭酸カリウム、ピリジン、トリエチルアミン又はN-エチル-ジイソプロピルアミンなどの適切な塩基の存在下で、ハロアミド(XII)(X=ハロゲン化物)と芳香族求核置換反応で反応させて、一般式(I)の化合物を得る。また、バックワルド・ハートウィッグ(Buchwald-Hartwig)型のクロスカップリング条件を用いて、最終化合物(I)を生成してもよい。例えば、化合物(XII)(X=Cl、Br、I)を、トルエンなどの適切な溶媒中、酢酸パラジウム(II)などの適切な触媒と、ブチル-ジ-1-アダマンチル-ホスフィンなどの適切な配位子と、炭酸セシウムなどの適切な塩基との存在下で、アミン(V)と反応させて、一般式(I)の化合物を得ることができる。
【0050】
或いは、DMAなどの適切な溶媒中、トリエチルアミンなどの適切な塩基の存在下で、ハロアミド(XII)をヒドロキシアゼチジンと芳香族求核置換反応で反応させて、一般式(XIII)のアルコールを得ることができる。次のステップでは、「光延」法(例えば、Tet. Lett. 1994, 35, 2819又はSynlett 2005, 18, 2808参照)を用いて、アルコール(XIII)を一般式(I)の化合物に転化することができる。適切な溶媒(例えば、THF又はトルエン)中、適切なフェノール(III)の存在下で、トリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィン(トリブチルホスフィン若しくはトリフェニルホスフィンなど)又はポリマー結合トリフェニルホスフィンなどの固体に担持させた類似体及び適切なジアルキルアザジカルボキシレート(例えば、DIAD、DEAD)を一般式(XIII)の化合物に加えて、一般式(I)の化合物を生成する。
【0051】
スキーム5及びスキーム6は、一般式(I)の化合物を合成するための中間体としての一般式(X)のアミンの合成を説明している。
【化17】
【0052】
スキーム5
一般式(XVII)又は一般式(XXI)のモノ-フッ素化されたアミノピロリジンは、スキーム5に示されるように調製することができる。適切に保護された6-オキサ-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(XIV)(PG=保護基、例えば、CO2tBu又はアセチル)を、DMF又はDMA等の適切な溶媒中でアジ化ナトリウム又はテトラブチルアンモニウムアジド等のアジド源と反応させてラセミ体のトランス-置換アジドアルコール(XV)を生成する。第2のステップでは、アルコール(XV)は、ジクロロメタン等の溶媒中で(ジエチルアミノ)硫黄トリフルオリド(DAST)又はビス(2-メトキシエチル)アミノ硫黄トリフルオリド(Deoxo-Fluor)等のフッ素化剤でフッ素化されて対応するトランス-置換アジドフルオライドを生成する。第3のステップでは、アジド(XVI)の還元は、接触水素化により(例えば、メタノール又はエタノール中でパラジウム炭を使用する水素を用いた水素化)、又はトリフェニルホスフィン(シュタウディンガー反応)を添加した後にTHF中で水と共に中間体イミノホスホランを加熱することにより行うことができ、ラセミ体のトランス-置換モノフルオロアミノピロリジン(XVII)を生成する。
対応するシス-置換モノフルオロアミノピロリジン(XXI)は、従来技術(例えば、スルホニルエステルの活性化の後に酢酸カリウムを用いて求核置換(例えば、R=CH3)し、その後けん化する;例えば:Tet. Asymm. 2001, 12, 1793-1799を参照)を用いて、化合物(XV)のヒドロキシ基の立体化学を反転することにより調製することができるラセミ体のシス-置換アジドアルコール(XVIII)から出発して同様の順序(ステップ6及びステップ7)により合成することができる。
【0053】
キラル金属サレン錯体及びトリメチルシリルアジドを用いる6-オキサ-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(XIV)のエナンチオ選択性のエポキシド開環(J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 5897)は、一般式(XV)のトランス-エナンチオマー純度の高い前駆体へのアクセスをもたらし、それはキラルフッ素化されたアミノピロリジン(XVII)及び(XXI)のそれぞれに転化することができる(例えば、Synlett 2019, 30, 1228-1230を参照)。
【0054】
【化18】
スキーム6
一般式(XXX)のジフッ素化アミノピロリジンは、スキーム6に示される通りに調製することができる。6-オキサ-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(XIV)(PG=保護基、例えば、CO
2tBu(BOC)又はアセチル)は、1ステップ又は2ステップ手順で非対称化させて、一般式(XXII)のモノ保護ピロリジンジオールを生成しうる。例えば、ナトリウムベンジルアルコラートを用いた求核エポキシド開環は、1-ステッププロセスで一般式(XXII)のラセミ体の化合物(例えば、PG
1=ベンジル)を生成することができる(例えば、国際特許出願第1999/64399号,20ページを参照)。或いは、水酸化ナトリウム等の水酸化物源を用いるエポキシド開環は、中間体ピロリジンジオールを生成でき、それは通常の保護基戦略(protecting group strategies)を用いて選択的にモノ-保護してもよい(例えば、DMF等の溶媒中でイミダゾール等の塩基の存在下で化学量論量のtert-ブチルジメチルシリルクロリドを用いる反応は、ラセミ体の化合物(XXII)(PG
1=tert-ブチルジメチルシリル)を生成しうる。一般式(XXII)のアルコールは、一般式(XXIII)のケトンに転化することができる。例えば、化合物(XXII)をデス・マーチンパーヨージナンを用いて、又はジクロロメタン等の不活性溶媒中で塩化オキサリルとDMSO(スワーン酸化、例えば、国際特許出願第2010/111057号,28ページを参照)との組合せを用いることにより酸化することができる。第3のステップでは、ケトン(XXIII)は、ジクロロメタン等の溶媒中で(ジエチルアミノ)硫黄トリフルオリド(DAST)又はビス(2-メトキシエチル)アミノ硫黄トリフルオリド等の脱酸素-フッ素化剤で反応させて対応するジフルオリド(XXIV)を得ることができる(Deoxo-Fluor、例えば、国際特許出願第2014/075392,72ページを参照)。これらの中間体を第4のステップで脱保護してアルコール(XXVII)を得る。脱保護は、シリルで保護された中間体(XXIV)に対してテトラブチルアンモニウムフルオライドを用いることにより、又はベンジルで保護された中間体(XXIV)に対して水素雰囲気下でパラジウム炭などの触媒を用いて接触水素化することにより行うことができる。追加の脱保護反応は、'Protective Groups in Organic Synthesis', 3' edition, T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Wiley-Interscience (1999)に記載されている。
【0055】
ピロリジン(XXVII)のヒドロキシ基は、第5のステップで、ジクロロメタン、THF等の溶媒中で、トリエチルアミン又はピリジン等の塩基の存在下で適切なスルホニル酸誘導体(例えば、メチルスルホニルクロリド、トリフルオロメチルスルホニル酸無水物、p-トシルクロリド等)を用いた反応により、適切に活性化された脱離基(例えば、LG=メチルスルホネート、トリフルオロメチルスルホネート、又はp-トシレート)に変換して一般式(XXVIII)の対応するスルホニルエステルを生成することができる。
第6のステップでは、適切に活性化されたピロリジン(XXVIII)をDMF又はDMA等の適切な溶媒中でアジ化ナトリウム又はテトラブチルアンモニウムアジド等のアジド源を用いて求核置換により反応させてアジドピロリジン(XXIX)を生成することができ、それは後続のステップで、接触水素化により(例えば、メタノール又はエタノール中でパラジウム炭を使用する水素を用いた水素化)、又はトリフェニルホスフィン(シュタウディンガー反応)を添加した後にTHF中で水と共に中間体イミノホスホランを加熱することにより還元することができ、一般式(XXX)のジフルオロアミノピロリジンを生成する。
【0056】
個々のエナンチオマーの調製/単離のための従来技術は、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成を含む。例えば、適切な光学的に純粋な前駆体は、酒石酸から得ることができ、それは一般式(XXII)のキラルモノ-保護ピロリジンジオールに転化でき、(例えば:Tet. Asymm. 2001, 12, 1793-1799又はOrg. Process Res. Dev. 2019, 23, 1970-1978を参照)、前述の反応順序に沿って、一般式(XXX)又は(XVII)のキラルフッ素化されたアミノピロリジンを生成しうる。
キラルアミノピロリジン(XXX)を合成するための別の方法は、配位子としてN-(p-トルエンスルホニル)-1,2-ジフェニルエチレンジアミン、及び還元剤としてギ酸ナトリウムと共にイリジウムで触媒された条件を用いた不斉水素化による一般式(XXVI)のケトン水和物の不斉還元が関与してもよく(例えば、J. Org. Chem. 2016, 81, 4359-4363を参照)、それは一般式(XXVII)の光学的に活性なアルコールを生成しうる。ケトン水和物前駆体(XXVI)は、2-ヨードキシベンゼン硫酸の存在下でパーオキシ一硫酸カリウム(例えばOxone(商標))を用いること(例えば、J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 251を参照)による、ジクロロメタン中でデス・マーチンパーヨージナンを用いること(例えば、J. Org. Chem. 2010, 75, 929-932を参照)による、又は触媒としてTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル)と共に次亜塩素酸ナトリウムを用いること(例えば、Org. Process Res. Dev. 2015, 19, 270-283を参照)によるアルコール(XXV)の酸化により得られうる。キラルアルコール(XXVII)を、スキーム6に記載された通りの反応ステップと同様の順序に沿って、対応するキラルアミン(XXX)に転化してもよい。
【0057】
キラルアミノピロリジン(XXX)を合成するためのさらなる別の方法は、例えばトランスアミナーゼを用いた不斉酵素反応による一般式(XXVI)のケトン/水和物形態のキラル変換が関与しうる(例えば、Green Chem. 2019, 21, 75-86を参照)。
或いは、ラセミ体のアミン(又はそのラセミ体の前駆体)を適切な光学的に活性な化合物、例えば、フェニルコハク酸又はジベンゾイル酒石酸等の酸と、イソプロパノール又はエタノール/水混合物中で反応させてもよい。得られたジアステレオマー混合物はクロマトグラフィー及び/又は分別晶析により分離することができ、当業者に公知の手法により1つ又は両方のジアステレオアイソマーが対応する純粋なエナンチオマーに転化した。(例えば、一般式(XVII)のアミノピロリジンの分割:米国特許出願第2015/141402号、48ページを参照)。
【0058】
一般式(I)の本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)は、不斉固定相を有し、例えば15%~35%メタノール(%v/v)及び20mM濃縮アンモニア水溶液を含有する超臨界CO2からなる移動相を有する樹脂を担持したクロマトグラフィー、通常には、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を用いてエナンチオマー純度の高い形態で得ることができる。溶離液の濃縮は、濃度の高い混合物を生成する。立体異性体の混合物は、当業者に公知の従来技術により分離することができる[例えば、”Stereochemistry of Organic Compounds” by E L Eliel (Wiley, New York, 1994)を参照]。
【0059】
生体のアッセイ及びデータ
表3~表7の番号は、以下の実験の項に開示された本発明(すなわち実施例又は中間体)の化合物を指す。
cAMPを直接測定するための均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイ
市販のアッセイキット(cAMP Dynamic 2 Assay Kit;#62AM4PEJ、Cisbio Bioassays、Bedford、MA)を用いて、メーカーの指示書に従って、HTRF cAMPアッセイを行った。組換えヒトGPR52を安定的に発現しているCHO-K1細胞のアリコートを解凍し、細胞緩衝液(1× PBS(w/o Ca2+/Mg2+))にmLあたり4×105個の細胞の密度で再懸濁させた。試験化合物をDMSOに溶解させて10mMのストック溶液とし、6倍希釈を用いてDMSOで段階希釈し、8点用量反応曲線を作成した。その後、これらの段階希釈した試料を化合物希釈緩衝液(1× PBS(w/o Ca2+/Mg2+)、0.5mM IBMX、0.1%BSA含有)で1:50希釈して4×ストックを得た。希釈した化合物を384ウェルのアッセイプレート(Optiplate #6007290、PerkinElmer、Waltham、MA)に二連で移した(ウェルあたり5μL)。陽性対照(基準化合物)と陰性対照(非刺激性の媒体)は両方とも、各アッセイ実行のカラム23に含めた。続いて、化合物が1×に希釈されるように、細胞懸濁液を384ウェルのアッセイプレートにウェルあたり15μL(6000個の細胞)で分注した。プレートのカラム24には細胞を入れず、cAMP標準曲線用に確保した。室温で1時間インキュベートした後、各ウェルに10μLのcAMP D2試薬と、次いで10μLのクリプテート試薬(Cisbioのキットに付属)とを加えた。その後、読み取りの前に室温で1時間、プレートをインキュベートした。時間分解蛍光測定は、EnVision(登録商標)HTRFプレートリーダー(PerkinElmer、Waltham、MA)で収集した。プレートリーダーからの計数を各プレートに含まれるcAMP標準曲線にフィットさせて、各試験ウェル中のcAMP量を測定した。対照パーセント(%)は、陽性対照を200%に設定し、陰性対照を100%に設定して算出した。cAMPデータから用量反応曲線を作成し、非線形最小二乗法によるカーブフィッティングのプログラムを用いて解析して、EC50値を取得した。EC50値の平均を表3に示す。
【0060】
【0061】
in vitro代謝産物プロファイリング
CYPを介した代謝経路に加え、加水分解等のCYP以外の酵素を介した代謝経路の関与を評価するためのin vitro代謝産物プロファイリングは、肝ミクロソーム(ベータ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート、すなわちNADPHがある場合とない場合)、初代ヒト肝細胞(pan-CYP阻害剤プロアジフェンがある場合とない場合)及び組換えCYP酵素を用いたインキュベーションの典型的な代謝産物の生成を半定量的に分析することに基づいている。
【0062】
加水分解酵素、例えばカルボキシシルエステラーゼ又はアリールアセトアミド脱アセチル酵素の関与は、R6がアセチル基である一般式(I)の本発明の化合物のアミド加水分解に起因する代謝産物、すなわちその脱アセチル化された化合物が関連するヒト組換え薬物代謝CYP酵素の存在下で生成しないがNADPHの非存在下でヒト肝ミクロソーム中に生成する場合に想定される。加水分解酵素は、肝ミクロソーム中に非常に豊富に存在する。しかし、CYP-関連代謝プロセスとは対照的に、加水分解酵素の触媒活性は、NADPHと無関係である。このように、脱アセチル化された代謝産物は、NADPHを欠くヒト肝ミクロソームのインキュベーション中に生成しうる。
【0063】
化合物の代謝変換を担うCYP酵素を特定するために、表現型アッセイを行った。試験化合物の代謝低下及び代謝産物の生成の評価をSupersomes(バキュロウイルスに感染した昆虫細胞で発現したヒトのCYP)及びヒト肝ミクロソームのそれぞれを用いて行った。特にCYPアイソエンザイム1A1、1A2、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、3A4及び3A5による化合物の転化を試験した。(0.1M,pH7.6,5mMの塩化マグネシウムを補充した)TRIS緩衝液中のインキュベーション物は、200pmol/mlのSupersomesのそれぞれのタンパク又は4mg/mlのヒト肝ミクロソーム調製物及び10μMの試験化合物からなるものであった。
37℃で15分間の短い予備インキュベーションの後、NADPH(還元型、1mM)の添加により反応を開始した。ヒト肝ミクロソームを用いた追加のインキュベーションをNADPHの非存在下で行った。37℃で60分後、サンプルのアリコートをアセトニトリルに移すことによりインキュベーションを終了した。液体クロマトグラフィー-高分解能質量分析計により、推定代謝産物の生成のためにサンプルを分析した。
【0064】
CYPに依存しない代謝経路の特定のための追加の測定は、ヒト肝細胞を用いる試験化合物のインキュベーション物中のpan-CYP阻害剤プロアジフェンの使用である。プロアジフェンの存在下で、CYP-関連経路は阻害され、代謝産物は主にCYP以外の経路を経由して生成しうる。
懸濁液中の初代ヒト肝細胞を用いて、pan-CYP阻害剤プロアジフェン(50μM最終インキュベーション濃度)であるヒドララジンの存在下又は非存在下での試験化合物の代謝変換におけるCYP以外の酵素の関与をさらに調査した。ヒト肝細胞を凍結保存から回復させた後、5%(v/v)のヒト血清を含む、グルカゴン3.5μg/500mL、インスリン2.5mg/500ml及びヒドロコルチゾン3.75mg/500mlを補充したダルベッコ改変イーグル培地で、そのヒト肝細胞をインキュベートした。
細胞培養インキュベーター(37℃,10%CO2)内で50μMのプロアジフェンの存在下又は非存在下で30分間プレインキュベーションした後、最終細胞密度が細胞1.0×106~4.0×106個/ml(初代ヒト肝細胞で観察される化合物の代謝回転速度に応じて変わる)、最終試験化合物濃度が1μm,かつ最終DMSO濃度が0.05%(v/v)となるように、試験化合物溶液を肝細胞懸濁液に加えた。
細胞を6時間インキュベートし(インキュベーター、水平シェーカー)、代謝回転速度に応じて0、0.5、1、2、4又は6時間後にインキュベーターから試料を取り出した。試料はアセトニトリルでクエンチし、遠心分離によりペレット化した。上清を96ディープウェルプレートに移し、窒素下で蒸発させて、推定代謝産物を同定するために液体クロマトグラフィー-高分解能質量分析計による生体分析を行う前に再懸濁させた。
加水分解の寄与率は、ヒト肝細胞を用いたインキュベーションで観測された全ての代謝産物に対する本発明の化合物の脱アセチル化されたそれぞれの代謝産物の存在量に基づき算出した。
【0065】
【0066】
hERG(ヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子)チャネルアッセイ
以下のように、本発明の化合物のhERGチャネル阻害を調査した。
細胞:
HEK(ヒト胎児腎)293細胞をhERG cDNAで安定的にトランスフェクトした。パッチクランプ実験に使用するために決定した細胞を抗生物質なしで培養した。
【0067】
ピペット及び溶液:
細胞を、NaCl(137)、KCl(4.0)、MgCl2(1.0)、CaCl2(1.8)、グルコース(10)、HEPES(10)(括弧内はmM)を含み、NaOHでpH7.4とした浴液に注いだ。パッチピペットは、ピペットを用いてホウケイ酸ガラス管から作製し、アスパラギン酸K(130)、MgCl2(5.0)、EGTA(5.0)、K2ATP(4.0)、HEPES(10.0)(括弧内はmM)を含み、KOHでpH7.2としたピペット溶液を充填した。微小電極の抵抗は、通常、2MΩ~5MΩの範囲であった。
【0068】
刺激及び記録:
EPC-10パッチクランプ増幅器(HEKA Electronics、Lambrecht、FRG)及びPatchMasterソフトウェア(HEKA)を用いて、膜電流を記録した。hERGを介した膜電流の記録は、パッチクランプ技法のホールセル構成を用いて、通常、28℃で行われた。トランスフェクトされたHEK293細胞を-60mVの保持電位でクランプ処理し、固定振幅のパルスパターン(活性化/不活性化:40mVで2000ms;回復:120mVで2ms;2msで40mVまで傾斜させる;不活性化テール電流:40mVで50ms)を用いて、hERGを介した不活性化テール電流を誘発し、15秒間隔で繰り返した。P/nリーク減算手順のため、各パルス間隔の間に、0.2倍に縮小した4個のパルスを記録した。Rs補正は、リンギングを発生させずに安全に記録できるレベル以下で行った。残りの補正していないRsを実際の温度及び保持電流と共に記録した。
【0069】
化合物の調製及び適用:
調査した様々な細胞のそれぞれに対して、試験品の濃度を順次適用した。最初の試験品濃度を適用する前に、ベースライン電流の定常レベルを少なくとも5回の掃引の間に測定した。試験品をDMSOに溶解し、最も高い最終濃度の1000倍のストック溶液を得た。さらに、このストックをDMSOで希釈し、残っている最終濃度の1000倍の溶液をストックした。実験を開始する前に、これらのストックからそれぞれ1:1000の希釈ステップで、細胞外緩衝液での最終希釈液を新たに調製した。
【0070】
データ解析:
ピーク電流の振幅を+40mVへの傾斜の3ms後に測定した。ベースラインと各濃度について、次の濃度を適用する前の最後の3回の掃引のピーク電流を平均化した。残留電流(I/I0)を、実際の平均ピーク電流とベースラインの平均ピーク電流の割合として、各細胞について算出した。電流阻害は、(1-I/I0)×100%で表された。全ての細胞の電流阻害は、平均±標準偏差(SD)として報告された。可能であれば、平均電流阻害のデータから、Hillの式に基づき、最小二乗法を用いてIC50を推定した。
【0071】
【表5】
ヒト血漿タンパク結合率アッセイ
試験化合物の血漿タンパクに対する擬似in vitro結合形分率(fractional binding)を測定するため、平衡透析(ED)法を使用した。Dianorm Teflon透析細胞(0.2μm)を使用した。透析細胞のそれぞれはドナーチャンバー及びアクセプターチャンバーからなり、5kDaの分子量カットオフを有する極薄半透過性メンブレンにより分離されている。それぞれの試験化合物のストック溶液をDMSO中で1mMに調製し、連続的に希釈して最終的な試験濃度を1μMとした。(抗凝固薬としてNaEDTAを補充した)血漿中で次の透析液を調製し、血漿中の200μLの試験化合物透析液のアリコートをドナー(血漿)チャンバー内に分注した。200μLの透析緩衝液(100mMのリン酸カリウム,pH7.4)のアリコートを緩衝液(アクセプター)チャンバー内に分注した。均衡状態とするため、インキュベーションを回転下で37℃で2時間実施した。
透析期間の終点で、ドナーチャンバー及びアクセプターチャンバーから得られたアリコートのそれぞれを反応チューブ内に移し、内部標準液を加えてHPLC-MS/MS分析のために処理した。外部検量線に対するHPLC-MS/MSによりアリコートのサンプル内の分析物の濃度を定量化した。
下記式を用いてパーセント結合を算出した:
パーセント結合=(血漿濃度-緩衝液濃度/血漿濃度)X100
【0072】
【0073】
ヒト肝細胞の代謝的安定性
ヒト肝細胞懸濁液中の試験化合物の代謝低下をアッセイした。試験化合物の代謝回転速度に応じて、最終的な細胞密度が細胞1.0x106個/mL又は細胞4.0x106個/mLとなるように、ヒト肝細胞を凍結保存から回復させた後、(グルカゴン3.5μg/500mL,インスリン2.5mg/500mL,ヒドロコルチゾン3.75mg/500mL,5%のヒト血清を補充した)ダルベッコ改変イーグル培地で、ヒト肝細胞を希釈した。
細胞培養インキュベーター(37℃,10%CO2)内で30分間プレインキュベーションした後、最終試験化合物濃度が1μm,かつ最終DMSO濃度が0.05%(v/v)となるように、試験化合物溶液を肝細胞懸濁液に加えた。
細胞懸濁液を37℃でインキュベートし(細胞培養インキュベーター、水平シェーカー)、0、0.5、1、2、4及び6時間後にインキュベーターから試料を取り出した。試料を(内部標準液を含有する)アセトニトリルでクエンチし、遠心分離によりペレット化した。上清を96ディープウェルプレートに移し、HPLC-MS/MSによる親化合物の減少の分析のために調製した。
0時点でのピーク面積比に対する各インキュベーション時点のピーク面積比(試験化合物/内部標準)を用いて残留試験化合物のパーセンテージを算出した。対数変換されたデータをインキュベーション時間に対してプロットし、線形回帰分析により得られた傾きの絶対値を用いてin vitro半減期(T1/2)を推測した。
【0074】
in vitroT1/2からin vitro固有クリアランス(CLint)を算出し、下記方程式を適用して、肝細胞性:細胞120x106個/g肝臓、体重あたりのヒトの肝臓:25.7g肝臓/kg、並びにin vitroインキュベーションパラメーターを用いて、全肝臓にスケール化した。
CL_INTRINSIC_IN VIVO[mL/分/kg]=(CL_INTRINSIC[μL/分/細胞106個]x肝細胞性[細胞106個/g肝臓]x肝臓因子[g/kg体重])/1000
平均肝血流量(QH)が20.7mL/分/kgであることを考慮しながら、ウェルスタード(well-stirred)肝臓モデルに従い、in vivo肝血中クリアランス(CL)を予測した:
CL[mL/分/kg]=CL_INTRINSIC_IN VIVO[mL/分/kg]x肝血流量[mL/分/kg]/(CL_INTRINSIC_IN VIVO[mL/分/kg]+肝血流量[mL/分/kg])
【0075】
結果は、肝血流量のパーセンテージとして表された:
QH[%]=CL[mL/分/kg]/肝血流量[mL/分/kg])
【表7】
【0076】
溶解度評価
下記の通り、高スループット溶解度アッセイにより、本発明の化合物の溶解度を調査した。
試験化合物をDMSOに溶解させて10mMのストック溶液とし、96-ウェルプレートフォーマットでアセトニトリル/水(1:1 v/v)溶液、マッキルベイン緩衝溶液pH2.2、マッキルベイン緩衝溶液pH4.5、及びマッキルベイン緩衝溶液pH6.8(マッキルベイン緩衝液は、クエン酸-リン酸緩衝液である)を40倍希釈でさらに希釈した。希釈サンプルを含むウェルプレートを密封し、上下逆さまにして24時間室温でシェイクした。
遠心濾過により溶解していない粒子を除去し、得られたサンプル溶液をHPLC(デフォルト波長:254nm)で自動UV吸収により分析した。吸収があまりに低い場合、検出の改善のため、別の波長である280nm又は230nmを使用した。
分析物の濃度をHPLC-UVにより定量した。較正点としてアセトニトリル/水に溶解したサンプルを用いて、1点校正で定量化を行った。
【0077】
本発明のいくつかの化合物の溶解度は、下記の通り、固体状態溶解度アッセイによっても測定した。
飽和した溶液をウェルプレート内で(フォーマットはロボットに依存する)適切量の選択された水性媒体(通常、0.25ml~1.5mlの範囲内)を既知量の固体薬物物質(通常、0.5mg~5.0mgの範囲内)を含有する各ウェル中に加えることにより調製した。ウェルを所定の時間(通常、2時間~24時間の範囲内)シェイク又は撹拌した後、適切なフィルターメンブレン(通常、0.45μm孔径を有するPTFE-フィルター)を用いて濾過した。最初の数滴の濾液を廃棄することによりフィルター吸収を回避した。UV分光法により溶解した薬物物質の量を測定した。さらに、ガラス-電極pHメーターを用いて飽和水溶液のpHを測定した。
GPR52を活性化し、疾患治療のための化合物の適度に低い有効投与量、その結果として副作用の潜在的な最小化を潜在的に表すヒトタンパク結合率を低下させ、ヒト肝細胞安定性を高め、hERGチャネルを低/中程度に阻害し、加水分解酵素を介した経路(該当する場合)を含む代謝をより多様化し、続いてCYPを介した薬物-薬物相互作用のリスクを低減するという能力を鑑みると、本発明による一般式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩は、GPR52の活性化によって影響を受けうる全ての疾患又は状態、好ましくは本明細書に開示された中枢神経系の疾患又は状態の治療及び/又は予防的治療、に適している。
【0078】
治療における使用/使用方法
したがって、本発明による化合物、又は本発明の少なくとも1種の化合物を含む組成物は、その薬理学的に許容される塩も含め、精神医学的障害、精神病性障害、認知障害、大うつ病性障害、不安障害、強迫性障害(OCD)、衝動-制御障害、物質関連障害、及び運動症状及び運動障害等のGPR52の活性化によって影響を受けうる疾患の予防及び/又は治療における使用に特に適している。
【0079】
さらなる態様では、本発明は、統合失調症;統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、統合失調症型障害、治療抵抗性統合失調症、減弱精神病症候群及び自閉症スペクトラム障害に伴う陽性症状;統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、統合失調症型障害、治療抵抗性統合失調症、減弱精神病症候群及び自閉症スペクトラム障害に伴う陽性症状を治療するため、又は抗精神病薬の投与量(及びそれによる副作用)を減らすための抗精神病薬の増強;統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、統合失調症型障害、治療抵抗性統合失調症、減弱精神病症候群及び自閉症スペクトラム障害に伴う陰性症状;統合失調症(CIAS)、統合失調感情障害、統合失調症様障害、統合失調症型障害、治療抵抗性統合失調症、減弱精神病症候群及び自閉症スペクトラム障害に伴う認知障害;治療抵抗性統合失調症;統合失調感情障害;統合失調症様障害;統合失調症型(パーソナリティ)障害;医薬品誘発性精神障害;双極性障害I型及び双極性障害II型;減弱精神病症候群;アルツハイマー病、パーキンソン病、血管性認知症、及び前頭側頭型認知症に伴う神経精神医学的症状;自閉症スペクトラム障害(ASD);強迫性障害(OCD);衝動-制御障害(例えばD2受容体アゴニストによって誘発される衝動制御障害);ギャンブル障害(例えばD2受容体アゴニストによって誘発されるギャンブル障害);トゥレット症候群;アルツハイマー病、パーキンソン病、血管性認知症及び前頭側頭型認知症に伴う認知欠損;うつ病;注意欠陥多動性障害(ADHD);大うつ病性障害(MDD);薬物嗜癖;不安;双極性障害における躁病;急性躁病;激越;離隔;視床下部障害;高プロラクチン血症等のプロラクチン関連障害;前頭葉機能低下に伴う症状(例えば薬物乱用に伴う前頭葉機能低下)及び運動過多症状からなる群から選択される疾患又は状態の予防及び/又は治療において使用するための、一般式(I)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は一般式(I)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。
【0080】
好ましくは、本発明による化合物は、統合失調症;統合失調症に伴う陽性症状;統合失調症に伴う陽性症状を治療するため、又は抗精神病薬の投与量を減らし、それにより抗精神病薬の副作用を低減するための抗精神病薬の増強;統合失調症に伴う陰性症状;統合失調症に伴う認知障害(CIAS);治療抵抗性統合失調症;統合失調感情障害;統合失調症様障害;統合失調症型障害;医薬品誘発性精神障害;双極性障害I型及び双極性障害II型;減弱精神病症候群;アルツハイマー病、パーキンソン病、血管性認知症、及び前頭側頭型認知症に伴う神経精神医学的症状;自閉症スペクトラム障害(ASD);衝動制御障害(例えばD2受容体アゴニストによって誘発される衝動制御障害);ギャンブル障害(例えばD2受容体アゴニストによって誘発されるギャンブル障害);高プロラクチン血症等のプロラクチン関連障害の予防又は治療に適している。
さらなる態様では、本発明は、上記の疾患及び状態の治療及び/又は予防のための医薬を調製するための一般式(I)の化合物の使用に関する。
本発明のさらなる態様において、本発明は、上記の疾患及び状態の治療方法及び/又は予防方法に関し、当該方法は、有効量の一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、ヒトに投与することを含む。
【0081】
一般式(I)の化合物の1日あたりに適用可能な投与量の範囲は、経口で、通常、0.1mg~1000mg、好ましくは1mg~500mgであり、それぞれの場合で1日1~4回投与される。1回の投薬単位はそれぞれ、扱いやすいように、0.1mg~500mg、好ましくは1mg~100mgを含んでよい。
もちろん、実際の薬学的有効量又は治療投与量は、患者の年齢及び体重、投与経路、並びに疾患の重症度など、当業者に公知の要因によって決まる。いずれの場合も、患者特有の状態に基づく薬学的有効量が送達できるような投与量及び方法で、その組合せが投与される。
一般式(I)の化合物(その薬学的に許容される塩を含む)を投与するための適した製剤は、当業者にとって明らかであり、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、サシェ剤、注射剤、吸入剤、散剤などが挙げられる。薬学的に活性な化合物の含有量は、組成物全体に対して0.1~95質量%、好ましくは5.0~90質量%の範囲であるべきである。
【0082】
適切な錠剤は、例えば、式Iによる1種又は複数種の化合物を公知の賦形剤、例えば、不活性希釈剤、担体、崩壊剤、補助剤、界面活性剤、結合剤及び/又は潤滑剤と混合することによって得ることができる。また、錠剤は、複数の層からなっていてもよい。
この目的のため、本発明によって調製される一般式(I)の化合物は、任意にその他の活性物質と一緒に、1種又は複数種の従来の不活性担体及び/又は希釈剤、例えば、コーンスターチ、ラクトース、グルコース、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、クエン酸、酒石酸、水、ポリビニルピロリドン、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース、若しくは硬脂肪などの脂肪性物質、又はそれらの適切な混合物と一緒に、製剤化することができる。
【0083】
組合せ治療
また、本発明による化合物は、統合失調症に伴う陽性症状に加えて、さらに認知症状及び/又は陰性症状を治療するための、現在処方されている抗精神病薬との併用療法(すなわち組合せ、付加的治療)として特に適している。陽性症状の治療に関し、抗精神病薬との併用療法は、抗精神病有効性の改善(例えば統合失調症に伴う陽性症状の治療の改善)だけでなく、抗精神病薬の減量と組み合わせて、その関連の副作用、例えば、体重増加、メタボリックシンドローム、糖尿病、錐体外路症状、高プロラクチン血症、インスリン抵抗性、高脂質症、高血糖及び/又は遅発性ジスキネジアなどを低減する結果をもたらしうる。特に、血清プロラクチンのレベルが上昇するのは、抗精神病薬の顕著な副作用プロファイルである一方で、GPR52の活性化剤は血清プロラクチンのレベルを下げることが実証されている。したがって、GPR52アゴニストと抗精神病薬との併用は、血清プロラクチンのレベルを正常化するため、抗精神病薬に伴う副作用を低減する可能性がある。
したがって、本発明による一般式(I)の化合物は、特に上記(すなわち段落「治療における使用/使用方法」)の疾患及び状態の治療及び/又は予防のための、他の活性物質(すなわち組合せパートナー)と組み合わせて(例えば付加的治療として)使用してもよい。そのような組合せに適したその他の活性物質としては、例えば、BACE阻害剤;アミロイド凝集阻害剤(例えば、ELND-005);直接的又は間接的に作用する神経保護物質及び/又は疾患修飾物質;抗酸化剤(例えば、ビタミンE若しくはギンコライド);抗炎症物質(例えば、COX阻害剤、追加的又は独占的にアミロイドβ低下特性を有するNSAID);HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン);アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジル、リバスチグミン、タクリン、ガランタミン);NMDA受容体アンタゴニスト(例えば、メマンチン、ケタミン、エスケタミン、NR2bアンタゴニスト);AMPA受容体アゴニスト;AMPA受容体の正の調節因子、アンパキン(AMPAkine)、モノアミン受容体再取込阻害剤、神経伝達物質の濃度又は放出を調節する物質;成長ホルモン分泌誘導物質(例えば、イブタモレンメシル酸塩及びカプロモレリン);CB-1受容体アンタゴニスト又はインバースアゴニスト;抗生物質(例えば、ミノサイクリン又はリファンピシン);PDE1、PDE2、PDE4、PDE5、PDE9、PDE10阻害剤、GABAA受容体アゴニスト又は正の調節因子、GABAA受容体インバースアゴニスト、GABAA受容体アンタゴニスト、ニコチン受容体アゴニスト若しくは部分アゴニスト若しくは正の調節因子、α4β2ニコチン受容体アゴニスト若しくは部分アゴニスト若しくは正の調節因子、α7ニコチン受容体アゴニスト若しくは部分アゴニスト若しくは正の調節因子;ソマトスタチン受容体4アゴニスト若しくは部分アゴニスト若しくは正の調節因子、ヒスタミンH3アンタゴニスト、5HT-4アゴニスト若しくは部分アゴニスト、5HT-6アンタゴニスト、α2-アドレナリン受容体アンタゴニスト、カルシウムアンタゴニスト、ムスカリン受容体M1アゴニスト若しくは部分アゴニスト若しくは正の調節因子、ムスカリン受容体M2アンタゴニスト、ムスカリン受容体M4アゴニスト若しくは部分アゴニスト若しくは正の調節因子、ムスカリン受容体M4アンタゴニスト、代謝型グルタミン酸受容体1の正の調節因子、代謝型グルタミン酸受容体2の正の調節因子、代謝型グルタミン酸受容体3の正の調節因子、代謝型グルタミン酸受容体5の正の調節因子、グリシントランスポーター1阻害剤、抗うつ剤(例えば、シタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン及びトラゾドンなど);抗不安薬(例えば、ロラゼパム及びオキサゼパムなど);抗精神病薬(例えば、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、ハロペリドール、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン、ルラシドン、ルマテペロン、ブレクスピプラゾール及びカリプラジンなど);気分安定薬(例えば、リチウム及びバルプロ酸塩)、並びに、本発明による化合物の有効性及び/又は安全性を増加させる及び/又は望ましくない副作用を減少させるように受容体又は酵素を調節するその他の物質からなる群から選択されうる。また本発明による化合物は、上記の疾患及び状態の治療のために、免疫療法(例えば、アミロイドβ若しくはタウ若しくはその部分による能動免疫、又はヒト化抗アミロイドβ抗体若しくは抗タウ抗体若しくはナノボディによる受動免疫)と組み合わせて使用することもできる。
【0084】
上記組合せのパートナー物質の投与量は、通常推奨される投与量の最低量の1/5~通常推奨される投与量の1/1までが有用である(例えば1/4、1/3、又は1/2)。
その他の活性物質と組み合わせた本発明による化合物の使用は、同時に行われてもよく、又は時間をずらして行われてもよいが、特に、短い時間内に行われてもよい。同時に投与する場合は、2つの活性物質を一緒に患者に投与する;時間をずらして使用する場合は、2つの活性物質を12時間以下(例えば1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、8時間、9時間、10時間、又は11時間)、特に6時間以下の時間内に患者に投与する。
【0085】
別の態様では、本発明は、GPR52のアゴニストによって影響を受けうる疾患又は状態の治療及び/又は予防に適した医薬組成物を調製するための、組合せのパートナー物質として上記活性物質の少なくとも1種と組み合わせた、本発明による化合物又はその薬学的に許容される塩の使用に関する。好ましくは、これらはGPR52活性の不足に関する病態であり、特には、上記で挙げた疾患又は病態の1つである。
【0086】
本発明の別の態様では、本発明は、本発明による一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び組合せのパートナー物質として上記活性物質の少なくとも1種を含み、少なくとも1種の不活性補助剤、希釈剤及び/又は担体を一緒に含んでもよい、医薬組成物に関する。
本発明による一般式(I)の化合物及び少なくとも1種の上記の活性物質は、両方とも1つの製剤(例えば、錠剤又はカプセル剤)に一緒に存在してもよいし、或いは、2つの同一の若しくは異なる製剤(例えば、いわゆるキット・オブ・パーツ)に別々に存在してもよい。
【実施例】
【0087】
【0088】
HPLC-方法:
移動相の調製:
移動相「H2O 0.1%TFA」は、1mlの市販のTFA溶液を水999mlに加えることにより調製した。移動相「H2O 0.1%NH3」は、4mlの市販の濃水酸化アンモニウム溶液(25質量%)を水996mlに加えることにより調製した。
【0089】
方法名:A
機器の説明:DA及びMSの検出器を備えるWaters Acquity
カラム:XBridge、BEH C18、2.1×30mm、2.5μm
カラムのサプライヤ:Waters
【表9】
【0090】
方法名:B
機器の説明:DA及びMSの検出器を備えるWaters Acquity
カラム:XBridge、BEH C18、2.1×30mm、2.5μm
カラムのサプライヤ:Waters
【表10】
【0091】
方法名:C
機器の説明:DA及びMSの検出器を備えるAgilent 1200
カラム:XBridge C18,3.0x30mm,2.5μm
カラムのサプライヤ:Waters
【表11】
【0092】
方法名:D
機器の説明:DA及びMSの検出器を備えるWaters Acquity
カラム:Sunfire、C18、3.0×30mm、2.5μm
カラムのサプライヤ:Waters
【表12】
【0093】
方法名:E
機器の説明:DA及びMSの検出器を備えるAgilent 1200
カラム:Sunfire C18,3.0x50mm,2.5μm
カラムのサプライヤ:Waters
【表13】
【0094】
方法名:F
機器の説明:DA及びMSの検出器を備えるWaters Acquity
カラム:XBridge BEH C18,2.1x30mm,1.7μm
カラムのサプライヤ:Waters
【表14】
【0095】
方法名:G
機器の説明:DA及びMSの検出器を備えるAgilent 1260 SFC、背圧2175psi
カラム:CHIRAL ART(登録商標)セルロースSB,4.6x250mm,5μm
カラムのサプライヤ:YMC
【表15】
【0096】
方法名:H
機器の説明:DAの検出器を備えるAgilent 1260Infinity II SFC、背圧2175psi
カラム:Lux(登録商標)Cellulose-4,3x100mm,3μm
カラムのサプライヤ:Phenomenex
【表16】
【0097】
方法名:I
機器の説明:DA及びMSの検出器を備えるAgilent 1260 SFC、背圧2175psi
カラム:CHIRAL ART(登録商標)セルロースSB,4.6x250mm,5μm
カラムのサプライヤ:YMC
【表17】
【0098】
方法名:J
機器の説明:DAの検出器を備えるAgilent 1260Infinity II SFC、背圧2175psi
カラム:Lux(登録商標)Cellulose-3,3x100mm,3μm
カラムのサプライヤ:Phenomenex
【表18】
【0099】
方法名:K
機器の説明:DAの検出器を備えるAgilent 1260 Infinity II SFC、背圧2175psi
カラム:CHIRAL ART(登録商標)Amylose-SA,3x100mm,3μm
カラムのサプライヤ:YMC
【表19】
【0100】
方法名:L
機器の説明:DAの検出器を備えるAgilent 1260Infinity II SFC、背圧2175psi
カラム:Lux(登録商標)Cellulose-2,4.6x250mm,5μm
カラムのサプライヤ:Phenomenex
【表20】
【0101】
方法名:M
機器の説明:DAの検出器を備えるAgilent 1260Infinity II SFC、背圧2175psi
カラム:Lux(登録商標)Cellulose-2,3x100mm,3μm
カラムのサプライヤ:Phenomenex
【表21】
【0102】
構造の表記に関する一般注釈:
ステレオジェン中心を有する化合物:実験の項で表されている構造は、化合物の全ての立体化学の可能性を必ずしも示していない場合がある。実験の項の化合物の構造表記は、絶対立体化学が既知のケースにのみ立体化学結合を示しうる。
絶対立体化学が未知である実験の項の化合物の構造表記は、平面結合に加えて、記載された化合物がラセミ体混合物、単一の立体異性体、及び該当する場合は相対立体化学であるかを示唆する注釈を示す。
2つの例が以下に示される。
【0103】
例I:表記された化学構造は以下の通りに表される
【化19】
付記「ラセミ体混合物」(図中又は実験の記載中)は2つの立体化学の選択肢を指すため、製造された化合物は、
【化20】
の混合物である。
【0104】
上記で表された構造のラセミ体混合物が分離される場合、単一の立体異性体は、その絶対立体化学が既知の場合、それに従って表される。或いは、単一の立体異性体は、
【化21】
の通りに表される。
付記「単一の立体異性体」及び平面結合は、絶対配置が未知であることを示している。用語「単一の立体異性体a」は、キラルHPLCの第1の溶出異性体に割り当てられ、「単一の立体異性体b」は、キラルHPLCの第2の溶出異性体に割り当てられる。
【0105】
例II:表記された化学構造は以下の通りに表される
【化22】
付記「トランス-ラセミ体混合物」(図中又は実験の記載中)は2つの立体化学の選択肢を指すため、製造された化合物は、
【化23】
の混合物である。
上記で表された構造のラセミ体混合物が分離される場合、単一の立体異性体は
【化24】
の通りに表される。
付記「トランス-単一の立体異性体」は既知の相対配置(trans)を示し、平面結合は未知の絶対配置を示す。「トランス-単一の立体異性体a」は、キラルHPLCの第1の溶出異性体に割り当てられ、「トランス-単一の立体異性体b」は、キラルHPLCの第2の溶出異性体に割り当てられる。
同様の原理は、用語「シス-ラセミ体混合物」、「シス-単一の立体異性体a」及び「シス-単一の立体異性体b」にも適用される。
【0106】
実施例8a、8b、10a、10b、11a、11b、13a、13b、15a及び15bの絶対配置は、光学的に純粋な前駆体から出発する実施例8b、10a、11b、13b及び15aの不斉合成の後、上記の不斉合成により得られた単一のエナンチオマーと、そのラセミ体のキラルクロマトグラフィーでの分離により得られた2種類の単一のエナンチオマーとの間の複数種のエナンチオマーのそれぞれのキラルクロマトグラフィーでの比較により割り当てられた(実験の項を参照)。
当業者は、本発明の化合物の絶対配置が、X線結晶構造解析により、例えば、それらの結晶性生成物又は必要に応じて誘導体化されたそれらの結晶性中間体の単結晶X線回折により測定でき、又はさらに確定させうることを理解するはずである。
【0107】
実施例
中間体及び実施例の調製:
以下の実施例及び中間体は、本発明を説明するためのものであり、その範囲を限定するものではない。
中間体A-1:
【化25】
DMA(558mL)中の3,4-ジフルオロ-フェノール(10.0g、76.9mmol)及び炭酸セシウム(37.6g、115.3mmol)の混合物を室温で5分間撹拌し、その後tert-ブチル-3-メタンスルホニルオキシ)アゼチジン-1-カルボキシレート(19.3g、76.9mmol)を加えた。100℃で5時間撹拌した後、混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。水及び酢酸エチルを加えた。相を分離した。水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相をNa
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物をMPLC(シリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル 9:1)で精製して、生成物A-1を得た。
ESI-MS:286[M+H]
+;HPLC(Rt):0.72分(方法A)
【0108】
中間体A-2:
【化26】
DMA(5mL)中の3,5-ジフルオロ-フェノール(1.0g、8.0mmol)及び炭酸セシウム(5.2g、15.9mmol)の混合物を室温で10分間撹拌し、その後tert-ブチル-3-メタンスルホニルオキシ)アゼチジン-1-カルボキシレート(2.0g、8.0mmol)を加えた。90℃で16時間撹拌した後、混合物を室温まで冷却し、水及び酢酸エチルを加えた。相を分離した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、生成物A-2を得た。
ESI-MS:286[M+H]
+;HPLC(Rt):1.02分(方法D)
【0109】
中間体A-3:
【化27】
DMA(465mL)中の3,4,5-トリフルオロ-フェノール(10.0g、64.2mmol)及び炭酸セシウム(31.4g、96.2mmol)の混合物を室温で10分間撹拌し、その後tert-ブチル-3-メタンスルホニルオキシ)アゼチジン-1-カルボキシレート(16.1g、64.2mmol)を加えた。100℃で6時間撹拌した後、混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。水及び酢酸エチルを加えた。相を分離した。水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相をNa
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物をMPLC(シリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル 9:1)で精製して、生成物A-3を得た。
ESI-MS:304[M+H]
+;HPLC(Rt):0.75分(方法A)
【0110】
中間体A-4:
【化28】
DMA(10mL)中の3-クロロ-4-フルオロ-フェノール(1.5g、10.2mmol)及び炭酸セシウム(6.7g、20.5mmol)の混合物を室温で10分間撹拌し、その後tert-ブチル-3-メタンスルホニルオキシ)アゼチジン-1-カルボキシレート(2.6g、10.2mmol)を加えた。100℃で16時間撹拌した後、混合物を室温まで冷却した。水及びDCMを加えた。相を分離した。有機相をNa
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、生成物A-4を得た。
ESI-MS:302/304[M+H]
+;HPLC(Rt):0.78分(方法A)
【0111】
中間体A-5:
【化29】
DMF(20mL)中の3-クロロ-5-フルオロ-フェノール(4.8g、33.0mmol)及び炭酸セシウム(21.5g、66.1mmol)の混合物を室温で10分間撹拌し、その後tert-ブチル-3-メタンスルホニルオキシ)アゼチジン-1-カルボキシレート(2.5g、10.1mmol)を加えた。90℃で16時間撹拌した後、混合物を室温まで冷却し、水及び酢酸エチルを加えた。相を分離し、水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相をNa
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、生成物A-5を得た。
ESI-MS:302/304[M+H]
+;HPLC(Rt):0.77分(方法A)
【0112】
中間体A-6:
【化30】
DMA(10mL)中の3-フルオロ-5-(ジフルオロメチル)-フェノール(2.5g、10.0mmol)及び炭酸セシウム(6.5g、20.0mmol)の混合物を室温で10分間撹拌し、その後tert-ブチル-3-メタンスルホニルオキシ)アゼチジン-1-カルボキシレート(2.5g、10.0mmol)を加えた。90℃で16時間撹拌した後、混合物を室温まで冷却し、水及び酢酸エチルを加えた。相を分離した。水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、生成物A-6を得た。
ESI-MS:318[M+H]
+、262[M+H-イソブテン]
+;HPLC(Rt):1.03分(方法D)
【0113】
中間体A-7:
【化31】
DMA(2.5mL)中の3-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロ-フェノール類(0.4g,2.2mmol)及び炭酸セシウム(1.4g,4.4mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した後、tert-ブチル-3-メタンスルホニルオキシ)アゼチジン-1-カルボキシレート(0.6g,2.2mmol)を加えた。90℃で16時間撹拌した後、混合物を室温まで冷却し、水及び酢酸エチルを加えた。相を分離した。水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄して、Na
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、生成物A-7を得た。
ESI-MS:334[M+H]
+、278[M+H-イソブテン]
+;HPLC(Rt):1.05分(方法D)
【0114】
中間体B-1:
【化32】
ジイソプロピルエーテル(200mL)中の中間体A-1(19.0g,66.6mmol)の混合物に、HClのジオキサン溶液(4N,83.3mL,333.0mmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、混合物を減圧下で濃縮した。沈殿物をジエチルエーテルで洗浄して、乾燥して、生成物B-1をHCl塩として得た。
ESI-MS:186[M+H]
+;HPLC(Rt):0.38分(方法A)
【0115】
中間体B-2:
【化33】
中間体A-2(1.85g、6.49mmol)に、HClのジオキサン溶液(4N、15.0mL、60.0mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、混合物を減圧下で濃縮して、生成物B-2をHCl塩として得た。
ESI-MS:186[M+H]
+;HPLC(Rt):0.38分(方法D)
【0116】
中間体B-3:
【化34】
中間体A-3(3.24g、10.68mmol)に、HClのジオキサン溶液(4N、25.0mL、100.0mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、混合物を減圧下で濃縮して、生成物B-3をHCl塩として得た。
ESI-MS:204[M+H]
+;HPLC(Rt):0.45分(方法A)
【0117】
中間体B-4:
【化35】
中間体A-4(2.3g,7.6mmol)に、HClのジオキサン溶液(4N,9.5mL,37.9mmol)を加えた。室温で45分間撹拌した後、混合物を減圧下で濃縮して、生成物B-4をHCl塩として得た。
ESI-MS:202/204[M+H]
+;HPLC(Rt):0.51分(方法B)
【0118】
中間体B-5:
【化36】
中間体A-5(8.3g,27.5mmol)に、HClのジオキサン溶液(4N,34.4mL,137.5mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、混合物を減圧下で濃縮して、生成物B-5をHCl塩として得た。
ESI-MS:202/204[M+H]
+;HPLC(Rt):0.52分(方法A)
【0119】
中間体B-6:
【化37】
中間体A-6(2.6g,8.0mmol)に、HClのジオキサン溶液(4N,12.1mL,48.2mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、混合物を減圧下で濃縮して、生成物B-6をHCl塩として得た。
ESI-MS:218[M+H]
+;HPLC(Rt):0.45分(方法D)
【0120】
中間体B-7:
【化38】
中間体A-7(625.0mg,1.9mmol)に、HClのジオキサン溶液(4N,5.0mL,20.0mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、混合物を減圧下で濃縮して、生成物B-7をHCl塩として得た。
ESI-MS:234[M+H]
+;HPLC(Rt):0.45分(方法D)
【0121】
中間体C-1.1:
【化39】
アセトニトリル(2mL)中のトランス-(3-tert-ブチルオキシカルボニル-アミノ)-4-フルオロピロリジン(500.0mg,244.8μmol)及びDIPEA(2.12mL,12.24mmol)の混合物に、塩化アセチル(261.1μL,367.2μmol)を加えた。室温で10分間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮して、残留物を分取HPLCで精製して、中間体C-1.1をトランス-ラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:247[M+H]
+;HPLC(Rt):0.44分(方法B)
【0122】
中間体C-1:
【化40】
1,4-ジオキサン(2.2mL)中の中間体C-1.1(550.0mg,223.3μmol,トランス-ラセミ体混合物)の混合物に、塩酸溶液(1,4-ジオキサン中で4N,4.47mL,17.87mmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、反応混合物をジエチルエーテルで希釈した。沈殿物を濾過により収集して、ジエチルエーテルで洗浄して、アセトニトリル/水混合物に溶解し、凍結乾燥して、中間体C-1をHCl塩としてトランス-ラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:147[M+H]
+;HPLC(Rt):0.13分(方法B)
【0123】
中間体C-2.1:
【化41】
アセトニトリル(1.6mL)及びDMF(0.8mL)の混合物中のtert.-ブチルN-(2-アザビシクロ[2.1.1]ヘキサン-4-イル)カルバメート(200.0mg,1.0mmol)及びDIPEA(0.87mL,5.04mmol)の混合物に、塩化アセチル(107.59μL,1.51mmol)を加えた。反応混合物を室温で15分間撹拌した後、NaHCO
3飽和水溶液を加え、混合物を酢酸エチルで抽出した。水相を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相をブライン溶液で洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥して、減圧下で濃縮して、中間体C-2.1を得た。
ESI-MS:241[M+H]
+;HPLC(Rt):0.54分(方法D)
【0124】
中間体C-2:
【化42】
中間体C-2.1(211.4mg,880.0μmol)に、塩酸溶液(1,4-ジオキサン中で4N,0.88mL,3.52mmol)及び数滴のメタノールを加えた。室温で1.5時間撹拌した後、追加の塩酸溶液(1,4-ジオキサン中で4N,0.45mL,1.80mmol)を0.45mL加え、撹拌を30分間続けた。反応混合物を減圧下で濃縮した。残留物をジエチルエーテルで粉砕して、乾燥して、中間体C-2をHCl塩として得た。
ESI-MS:141[M+H]
+;HPLC(Rt):0.12分(方法D)
【0125】
中間体D-1:
【化43】
DMF(9.2mL)中のメチル3-クロロピラジン-2-カルボキシレート(1.5g、8.7mmol)、中間体B-3(HCl塩、2.5g、10.4mmol)及びTEA(2.93mL、20.86mmol)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を水で希釈した。沈殿物を吸引濾過で収集し、50℃で乾燥して、中間体D-1を得る。
ESI-MS:340[M+H]
+;HPLC(Rt):0.63分(方法A)
【0126】
中間体D-2:
【化44】
DMA(10mL)中のメチル3-クロロピラジン-2-カルボキシレート(1.0g、5.8mmol)、中間体B-1(HCl塩、1.5g、7.0mmol)及びTEA(1.95mL、13.91mmol)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を水で希釈した。沈殿物を吸引濾過で収集し、50℃で乾燥して、中間体D-2を得た。
ESI-MS:322[M+H]
+;HPLC(Rt):0.60分(方法A)
【0127】
中間体D-3:
【化45】
DMF(8mL)中のメチル4-ブロモ-1,2,5-チアジアゾール-3-カルボキシレート(300.0mg,1.3mmol)、中間体B-3(HCl塩,322.3mg,1.3mmol)、炭酸セシウム(525.9mg,1.6mmol)及びヨウ化ナトリウム(302.4mg,2.0mmol)の混合物を80℃で2.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を水で希釈した。混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を水で、及びブラインで洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥して、減圧下で濃縮した。残留物を分取MPLC(勾配石油エーテル/酢酸エチル95:5~65:35)で精製して、中間体D-3を得た。
ESI-MS:346[M+H]
+;HPLC(Rt):1.11分(方法C)
【0128】
中間体D-4:
【化46】
DMF(45mL)中のメチル4-ブロモ-1,2,5-チアジアゾール-3-カルボキシレート(2.0g,9.0mmol)、中間体B-1(HCl塩,2.0g,9.0mmol)、炭酸セシウム(3.5g,10.8mmol)及びヨウ化ナトリウム(2.0g,13.5mmol)の混合物を80℃で1.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を水で希釈した。沈殿物を濾別して、減圧下で乾燥して、粗中間体D-4を得た。
ESI-MS:328[M+H]
+;HPLC(Rt):1.01分(方法D)
【0129】
中間体D-5:
【化47】
DMF(45mL)中のメチル4-ブロモ-1,2,5-チアジアゾール-3-カルボキシレート(2.0g,9.0mmol)、中間体B-2(HCl塩,2.0g,9.0mmol)、炭酸セシウム(3.5g,10.8mmol)及びヨウ化ナトリウム(2.0g,13.5mmol)の混合物を80℃で1.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を水で希釈した。沈殿物を濾別して、減圧下で乾燥して、粗中間体D-5を得た。
ESI-MS:328[M+H]
+;HPLC(Rt):1.00分(方法D)
【0130】
中間体E-1:
【化48】
アセトン(40mL)中の中間体D-1(4.15g、12.23mmol)の混合物に、水酸化リチウム水溶液(水40mL中に585.9mg、24.5mmol)を加えた。反応混合物を2時間撹拌し、その後水で希釈し、塩酸(4N)でpH4に酸性化した。沈殿物を吸引濾過で収集し、50℃で乾燥して、中間体E-1を得た。
ESI-MS:326[M+H]
+;HPLC(Rt):0.31分(方法A)
【0131】
中間体E-2:
【化49】
アセトン(15mL)中の中間体D-2(1.6g、4.9mmol)の混合物に、水酸化リチウム水溶液(水15mL中に230.0mg、9.8mmol)を加えた。反応混合物を室温で1.5時間撹拌し、その後水で希釈し、塩酸(4N)でpH4に酸性化した。沈殿物を吸引濾過で収集し、50℃で乾燥して、中間体E-2を得た。
ESI-MS:308[M+H]
+;HPLC(Rt):0.27分(方法A)
【0132】
中間体E-3:
【化50】
THF(10mL)中の中間体D-3(438.0mg,1.3mmol)の混合物に、水酸化リチウム(135.0mg,5.6mmol)の水(5mL)溶液を加えた。混合物を室温で2時間撹拌した後、4N塩酸で酸性化した。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、減圧下で濃縮して、粗中間体E-3を得た。
ESI-MS:332[M+H]
+;HPLC(Rt):1.03分(方法E)
【0133】
中間体E-4:
【化51】
THF(60mL)及び水(35mL)中の中間体D-4(2.2g,6.7mmol)の混合物に、水酸化リチウム(858.9mg,35.9mmol)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した後、減圧下で濃縮して、THFを除去した。水溶性の残留物を4N塩酸で酸性化した。沈殿物が生成し、濾過により収集して、減圧下で40℃で乾燥して、粗中間体E-4を得た。
ESI-MS:314[M+H]
+;HPLC(Rt):0.85分(方法D)
【0134】
中間体E-5:
【化52】
THF(60mL)及び水(35mL)中の中間体D-5(2.3g,6.9mmol)の混合物に、水酸化リチウム(858.9mg,35.9mmol)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した後、減圧下で濃縮して、THFを除去した。水溶性の残留物を4N塩酸で酸性化した。沈殿物が生成し、濾過により収集して、減圧下で40℃で乾燥して、粗中間体E-5を得た。
ESI-MS:314[M+H]
+;HPLC(Rt):0.84分(方法D)
【0135】
中間体F-1.1:
【化53】
アセトニトリル(3mL)中の3-クロロピラジン-2-カルボン酸(380.0mg,2.4mmol)、tert-ブチル-4-アミノ-3,3-ジフルオロピロリジン-1-カルボキシレート(532.7mg,2.4mmol)及び1-メチルイミダゾール(386.0μL,4.8mmol)の混合物に、TCFH(739.8mg,2.6mmol)を加えた。混合物を室温で15分間撹拌した。混合物をその量の半分に濃縮して、直接、分取HPLCで精製して、中間体F-1.1をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:307/309[M+H-tert-ブチル]
+;HPLC(Rt):0.81分(方法D)
【0136】
中間体(S)-F-1.1:
【化54】
アセトニトリル(5mL)中の3-クロロピラジン-2-カルボン酸(300.0mg,1.9mmol)、(S)-tert-ブチル-4-アミノ-3,3-ジフルオロピロリジン-1-カルボキシレート(CAS番号2381400-91-3,420.5mg,1.9mmol)及び1-メチルイミダゾール(304.7μL,3.8mmol)の混合物に、TCFH(584.0mg,2.1mmol)を加えた。室温で3日間撹拌した後、水及びアンモニア水溶液を加えた。混合物を濾過して、直接、分取HPLCで精製して、中間体(S)-F-1.1を得た。
ESI-MS:307/309[M+H-tert-ブチル]
+;HPLC(Rt):0.80分(方法D)
【0137】
中間体F-1.2:
【化55】
1,4-ジオキサン(2.9mL)中の中間体F-1.1(736.0mg,2.0mmol)の混合物に、塩酸(1,4-ジオキサン中で4N,8.0mL,32.0mmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、混合物をジエチルエーテルで希釈した。沈殿物を濾過により収集して、ジエチルエーテルで洗浄して、乾燥して中間体F-1.2をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:263/265[M+H]
+;HPLC(Rt):0.28分(方法D)
【0138】
中間体(S)-F-1.2:
【化56】
1,4-ジオキサン(1.5mL)中の中間体(S)-F-1.1(570.0mg,1.6mmol)の混合物に塩酸(1,4-ジオキサン中で4N,1.6mL,6.3mmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、メタノール(3mL)を加え、撹拌を室温で2時間続けた。混合物を減圧下で濃縮して、残留物をtert.-ブチルメチルエーテルで粉砕して、濾過により収集して、乾燥して中間体(S)-F-1.2を得た。
ESI-MS:263/265[M+H]
+;HPLC(Rt):0.28分(方法D)
【0139】
中間体F-1:
【化57】
ジクロロメタン(30mL)中の中間体F-1.1(1.3g,3.6mmol)及びメタノール(287.3μL,7.2mmol)の混合物に、ジクロロメタン(7mL)の臭化アセチル溶液(1.06mL,14.34mmol)を室温で滴下添加した。30分間撹拌した後、反応混合物を0~5℃に冷却した。トリエチルアミン(1.51mL,10.75mmol)のジクロロメタン溶液(5mL)を滴下添加した。5分間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残留物を水/メタノール(v/v 5/5mL)の混合物に溶解した後、TFAで酸性化して、分取HPLCで精製して中間体F-1をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:305/307[M+H]
+;HPLC(Rt):0.43分(方法D)
【0140】
中間体(S)-F-1
【化58】
アセトニトリル(4mL)中の中間体(S)-F-1.2(455.0mg,1.5mmol)及びトリエチルアミン(640.7μL,4.6mmol)の混合物に、塩化アセチル(162.2μL,2.3mmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、水を加えた。混合物を濾過して、直接、分取HPLCで精製して、中間体(S)-F-1を得た。
ESI-MS:305/307[M+H]
+;HPLC(Rt):0.44分(方法D)
【0141】
中間体F-2:
【化59】
DMF(2mL)中の中間体F-1.2(50.0mg,167.0μmol)、D4-酢酸(10.5μL,184.0μmol)、HATU(66.7mg,176.0μmol)の混合物に、DIPEA(57.5μL,334.0μmol)を室温で加えた。室温で1時間撹拌した後、反応混合物を直接、分取HPLCで精製して、中間体F-2をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:308/310[M+H]
+;HPLC(Rt):0.28分(方法B)
【0142】
中間体G-1:
【化60】
アセトニトリル(5mL)中の中間体E-2(300.0mg,976.0μmol)、tert-ブチル-4-アミノ-3,3-ジフルオロピロリジン-1-カルボキシレート(227.8mg,1.0mmol)及びDIPEA(663.9μL,3.9mmol)の混合物に、CIP(299.2mg,1.1mmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、反応混合物を水で希釈した。有機相を分離し、直接、分取HPLCで精製して、中間体G-1をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:512[M+H]
+;HPLC(Rt):1.05分(方法D)
【0143】
中間体G-2:
【化61】
アセトニトリル(4mL)中の中間体E-2(250.0mg,814.0μmol)、シス-tert-ブチル-4-アミノ-3-フルオロピロリジン-1-カルボキシレート(174.5mg,854.0μmol)及びDIPEA(553.3μL,3.3mmol)の混合物に、CIP(249.3mg,895.0μmol)を加えた。室温で2時間撹拌した後、反応混合物を水で希釈した。有機相を分離し、直接、分取HPLCで精製して、中間体G-2をシス-ラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:494[M+H]
+;HPLC(Rt):1.01分(方法D)
【0144】
中間体G-3:
【化62】
アセトニトリル(4mL)中の中間体E-1(250.0mg,715.0μmol)、tert-ブチル-4-アミノ-3,3-ジフルオロピロリジン-1-カルボキシレート(166.8mg,751.0μmol)及びDIPEA(486.1μL,2.9mmol)の混合物に、CIP(219.0mg,786.0μmol)を加えた。室温で2時間撹拌した後、反応混合物を水で希釈した。有機相を分離し、直接、分取HPLCで精製して、中間体G-3をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:530[M+H]
+;HPLC(Rt):1.11分(方法D)
【0145】
中間体G-4:
【化63】
アセトニトリル(5mL)中の中間体E-4(150.0mg,479.0μmol)、tert.-ブチル-4-アミノ-3,3-ジフルオロピロリジン-1-カルボキシレート(117.1mg,527.0μmol)及びDIPEA(248.5μL,1.4mmol)の混合物に、CIP(146.7mg,1.4mmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、混合物をDCMで2回抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、中間体G-4をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:518[M+H]
+;HPLC(Rt):0.88分(方法B)
【0146】
中間体(S)-G-4:
【化64】
アセトニトリル(2mL)中の中間体E-4(150.0mg,479.0μmol)、(S)-tert.-ブチル-4-アミノ-3,3-ジフルオロピロリジン-1-カルボキシレート(CAS番号2381400-91-3,123.2mg,527.0μmol)及びDIPEA(331.3μL,1.9mmol)の混合物に、CIP(146.7mg,527.0μmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、水を加え、混合物をDCMで抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製してキラル中間体(S)-G-4を得た。
ESI-MS:518[M+H]
+;HPLC(Rt):1.14分(方法D)
【0147】
中間体H-1:
【化65】
ジクロロメタン(4mL)中の中間体G-1(358.0mg,700.0μmol)の混合物に、TFA(1.0mL,13.0mmol)を加えた。室温で2時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残留物に、アセトニトリル及び水の混合物を加えた。混合物を凍結乾燥させて粗中間体H-1をTFA塩としてラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:412[M+H]
+;HPLC(Rt):0.57分(方法D)
【0148】
中間体H-2:
【化66】
ジクロロメタン(3.5mL)中の中間体G-2(283.0mg,573.0μmol,シス-ラセミ体混合物)の混合物に、TFA(0.8mL,10.3mmol)を加えた。室温で2.5時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮して、粗中間体H-2をTFA塩としてシス-ラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:394[M+H]
+;HPLC(Rt):0.54分(方法D)
【0149】
中間体H-3:
【化67】
ジクロロメタン(4mL)中の中間体G-3(161.0mg,304.0μmol)の混合物に、TFA(0.45mL,5.78mmol)を加えた。室温で1.5時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残留物をジクロロメタン/メタノール(9:1 v/v)の混合物に溶解し、NaHCO
3飽和水溶液で洗浄した。有機相を相分離カートリッジで分離し、減圧下で濃縮した。この材料の画分をHPLC(塩基性条件)で精製して中間体H-3をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:430[M+H]
+;HPLC(Rt):0.59分(方法B)
【0150】
中間体H-4:
【化68】
アセトニトリル(4mL)中の中間体G-4(200.0mg,386.0μmol)及びp-トルエン硫酸一水和物(257.3mg,1.4mmol)の混合物を3時間撹拌した。水及びアンモニア水溶液を加え、濾過して、分取HPLCで精製して中間体H-4をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:418[M+H]
+;HPLC(Rt):0.64分(方法D)
【0151】
中間体(S)-H-4:
【化69】
アセトニトリル(3mL)中の中間体(S)-G-4(155.0mg,300.0μmol)及びp-トルエン硫酸一水和物(199.4mg,1.1mmol)の混合物を室温で16時間撹拌した。水及びアンモニア水溶液を加え、混合物を濾過して、分取HPLCで精製して中間体(S)-H-4を得た。
ESI-MS:418[M+H]
+;HPLC(Rt):0.64分(方法D)
【0152】
(実施例1)
【化70】
DMA(2mL)中の中間体F-1(50.0mg,164.0μmol)、中間体B-4(46.9mg,197.0μmol)及びトリエチルアミン(49.8mg,492.0μmol)の混合物を85℃で1時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を直接、分取HPLCで精製して、実施例1をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:470/472[M+H]
+;HPLC(Rt):0.65分(方法B)
【0153】
(実施例2)
【化71】
アセトニトリル(1mL)中の中間体H-1(粗TFA塩、100.0mg,129.0μmol)及びDIPEA(56.0μL,324.0μmol)の混合物に、塩化プロピオニル(13.6μL,155.0μmol)を加えた。室温で30分間撹拌した後、アンモニア水溶液及び水の添加により混合物をアルカリ性にした。混合物を濾過して、直接、分取HPLCで精製して、実施例2をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:468[M+H]
+;HPLC(Rt):0.86分(方法D)
【0154】
(実施例3)
【化72】
アセトニトリル(3mL)中の中間体H-2(粗TFA塩、548.0mg,573.0μmol,シス-ラセミ体混合物)及びDIPEA(0.4mL,2.3mmol)の混合物に、塩化アセチル(44.8μL,631.0μmol)を0℃で加えた。0℃で30分間撹拌した後、アンモニア水溶液及び水の添加により混合物をアルカリ性にした。混合物を濾過して、直接、分取HPLCで精製して、実施例3をシス-ラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:436[M+H]
+;HPLC(Rt):0.75分(方法D)
【0155】
(実施例4)
【化73】
DMA(2mL)中の中間体F-1(50.0mg,164.0μmol)、中間体B-1(46.9mg,197.0μmol)及びトリエチルアミン(49.8mg,492.0μmol)の混合物を85℃で1時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を直接、分取HPLCで精製して、実施例4をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:457[M+H]
+;HPLC(Rt):0.80分(方法D)
【0156】
(実施例5)
【化74】
DMA(0.5mL)中の中間体F-1(23.0mg,75.0μmol)、中間体B-5(19.8mg,83.0μmol)及びトリエチルアミン(21.2μL,151.0μmol)の混合物を80℃で30分間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を直接、分取HPLCで精製して、実施例5をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:470/472[M+H]
+;HPLC(Rt):0.91分(方法D)
【0157】
(実施例6)
【化75】
DMA(1.5mL)中の中間体F-1(85.0mg,179.0μmol)、中間体B-6(58.4mg,214.0μmol)及びトリエチルアミン(50.1μL,357.0μmol)の混合物を100℃で1.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を直接、分取HPLCで精製して、実施例6をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:486[M+H]
+;HPLC(Rt):0.63分(方法B)
【0158】
(実施例7)
【化76】
DMA(0.5mL)中の中間体F-1(23.0mg,75.0μmol)、中間体B-7(22.4mg,83.0μmol)及びトリエチルアミン(21.2μL,151.0μmol)の混合物を80℃で30分間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を直接、分取HPLCで精製して、実施例7をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:502[M+H]
+;HPLC(Rt):0.87分(方法D)
【0159】
(実施例8、実施例8a及び実施例8b)
【化77】
DMA(1.5mL)中の中間体F-1(80.0mg,263.0μmol)、中間体B-1(69.8mg,315.0μmol)及びトリエチルアミン(73.7μL,525.0μmol)の混合物を100℃で1.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相をNa
2SO
4で乾燥し、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物を直接、分取HPLCで精製して、実施例8をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:454[M+H]
+;HPLC(Rt):0.58分(方法B)
【0160】
分取キラル分離:ラセミ体のアミド8(90.0mg,199.0μmol)を分取キラル SFC分離(Sepiatec basic,Chiral pak ART(登録商標)Cellulose-SB,10x250mm,5μm,移動相:溶離液A:超臨界CO2,溶離液B:メタノール含有20mM濃縮アンモニア水,勾配A:B 75:25,流速10mL/分,温度40℃,波長220nm,システム背圧150bar,サンプル濃度25mg/mL,注入量200μL)に付し、下記を得た:
実施例8a(単一の立体異性体a):Rt=2.72分(方法G)。エナンチオマー純度:99.1%ee。
実施例8b(単一の立体異性体b):Rt=3.42分(方法G)。エナンチオマー純度:96.8%ee。
【0161】
キラル中間体(S)-F-1からの実施例8bの合成
DMA(0.5mL)中の中間体(S)-F-1(70.0mg,230.0μmol)、中間体B-1(61.1mg,276.0μmol)及びトリエチルアミン(80.6μL,574.0μmol)の混合物を100℃で1.5時間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物をアセトニトリル/水混合物及びアンモニア水溶液で希釈した。混合物を濾過して、直接、分取HPLCで精製して、実施例8bを得た。
ESI-MS:454[M+H]+;HPLC(Rt):0.81分(方法D)
キラルHPLC:Rt=3.48分(方法G)。エナンチオマー純度:>98%ee。
【0162】
(実施例9)
【化78】
THF(2mL)中の中間体H-3(粗TFA塩、100.0mg,114.0μmol)及びトリエチルアミン(96.8μL,685.0μmol)の混合物に、メタンスルホニルクロリド(8.8μL,114.0μmol)を0℃で加えた。0℃で2時間撹拌した後。水を加え、反応混合物をジクロロメタンで抽出した。有機相を分離して減圧下で濃縮した。残留物をアセトニトリル/水/濃縮アンモニア水溶液の混合物に溶解し、分取HPLCで精製して実施例9をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:508[M+H]
+;HPLC(Rt):0.93分(方法D)
【0163】
(実施例10、実施例10a及び実施例10b)
【化79】
DMA(1.5mL)中の中間体F-1(100.0mg,210.0μmol)、中間体B-2(60.1mg,252.0μmol)及びトリエチルアミン(59.0μL,420.0μmol)の混合物を100℃で1.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を直接、分取HPLCで精製して、実施例10をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:454[M+H]
+;HPLC(Rt):0.63分(方法B)
【0164】
分取キラル分離:ラセミ体のアミド10(30.0mg,66.0μmol)を分取キラル SFC分離(Sepiatec basic,Lux(登録商標)Cellulose-4,10x250mm,5μm,移動相:溶離液A:超臨界CO2,溶離液B:メタノール含有20mM濃縮アンモニア水,勾配A:B 80:20,流速10mL/分,温度40℃,波長220nm,システム背圧150bar,サンプル濃度10mg/mL,注入量100μL)に付し、下記を得た:
実施例10a(単一の立体異性体a):Rt=1.42分(方法H)。エナンチオマー純度:100.0%ee。
実施例10b(単一の立体異性体b):Rt=1.62分(方法H)。エナンチオマー純度:96.0%ee。
【0165】
キラル中間体(S)-F-1からの実施例10aの合成
DMA(0.5mL)中の中間体(S)-F-1(70.0mg,230.0μmol)、中間体B-2(61.1mg,276.0μmol)及びトリエチルアミン(80.6μL,574.0μmol)の混合物を100℃で1.5時間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物をアセトニトリル/水混合物及びアンモニア水溶液で希釈した。混合物を濾過して、直接、分取HPLCで精製して、実施例10aを得た。
ESI-MS:454[M+H]+;HPLC(Rt):0.83分(方法D)
キラルHPLC:Rt=1.39分(方法H)。エナンチオマー純度:>98%ee。
【0166】
(実施例11、実施例11a及び実施例11b)
【化80】
DMA(1.5mL)中の中間体F-1(85.0mg,179.0μmol)、中間体B-3(55.2mg,214.0μmol)及びトリエチルアミン(50.1μL,357.0μmol)の混合物を100℃で1.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相をNa
2SO
4で乾燥し、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物を直接、分取HPLCで精製して、実施例11をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:472[M+H]
+;HPLC(Rt):0.65分(方法B)
【0167】
分取キラル分離:ラセミ体のアミド11(207.0mg,439.0μmol)を分取キラル SFC分離(Sepiatec basic,Chiral pak ART(登録商標)Cellulose-SB,10x250mm,5μm,移動相:溶離液A:超臨界CO2,溶離液B:メタノール含有20mM濃縮アンモニア水,勾配A:B 80:20,流速10mL/分,温度40℃,波長220nm,システム背圧150bar,サンプル濃度25mg/mL,注入量100μL)に付し、下記を得た:
実施例11a(単一の立体異性体a):Rt=3.33分(方法I)。エナンチオマー純度:>98%ee。
実施例11b(単一の立体異性体b):Rt=4.32分(方法I)。エナンチオマー純度:n.d.。
【0168】
キラル中間体(S)-F-1からの実施例11bの合成
DMA(0.5mL)中の中間体(S)-F-1(70.0mg,230.0μmol)、中間体B-3(66.1mg,276.0μmol)及びトリエチルアミン(80.6μL,574.0μmol)の混合物を100℃で1.5時間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物をアセトニトリル/水混合物及びアンモニア水溶液で希釈した。混合物を濾過して、直接、分取HPLCで精製して、実施例11bを得た。
ESI-MS:472[M+H]+;HPLC(Rt):0.86分(方法D)
キラルHPLC:Rt=4.33分(方法I)。エナンチオマー純度:>98%ee。
【0169】
(実施例12)
【化81】
アセトニトリル(0.7mL)中の中間体E-3(50.0mg,151.0μmol)、DIPEA(104.4μL,604.0μmol)及び中間体C-2(HCl塩,30.9mg,166.0μmol)の混合物にCIP(46.3mg,166.0μmol)を加えた。室温で2時間撹拌した後、混合物をアンモニア水溶液及び水で希釈した。混合物を濾過した後、直接、分取HPLCで精製して、実施例12を得た。
ESI-MS:454[M+H]
+;HPLC(Rt):0.66分(方法B)
【0170】
(実施例13、実施例13a及び実施例13b)
【化82】
アセトニトリル(2mL)中の中間体H-4(75.0mg,180.0μmol)及びDIPEA(123.1μL,719.0μmol)の混合物に、塩化アセチル(18.4μL,270.0μmol)を加えた。1時間撹拌した後、追加量の塩化アセチル(9.0μL)及びDIPEA(30.8μL)を加え、30分間撹拌し続けた。水を加え、反応混合物を濾過して、直接、HPLCで精製して、生成物13をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:460[M+H]
+;HPLC(Rt):0.90分(方法D)
【0171】
分取キラル分離:ラセミ体のアミド13(60.0mg,131.0μmol)を分取キラル SFC分離(Sepiatec basic,Lux(登録商標)Cellulose-3,10x250mm,5μm,移動相:溶離液A:超臨界CO2,溶離液B:メタノール含有20mM濃縮アンモニア水,勾配A:B 85:15,流速10mL/分,温度40℃,波長220nm,システム背圧150bar,サンプル濃度11mg/mL,注入量200μL)に付し、下記を得た:
実施例13a(単一の立体異性体a):Rt=0.86分(方法J)。エナンチオマー純度:>99%ee。
実施例13b(単一の立体異性体b):Rt=1.07分(方法J)。エナンチオマー純度:99.2%ee。
【0172】
キラル中間体(S)-H-4からの実施例13bの合成
アセトニトリル(0.75mL)中の中間体(S)-H-4(30.0mg,68.0μmol)及びDIPEA(46.8μL,273.0μmol)の混合物に、塩化アセチル(7.0μL,102.0μmol)を加えた。室温で2.5時間撹拌した後、水を加え、反応混合物を濾過して、直接、HPLCで精製して、実施例13bを得た。
ESI-MS:460[M+H]+;HPLC(Rt):0.90分(方法D)
キラルHPLC:Rt=1.10分(方法J)。エナンチオマー純度:>98%ee。
【0173】
(実施例14、実施例14a及び実施例14b)
【化83】
アセトニトリル(5mL)中の中間体E-4(150.0mg,479.0μmol)、DIPEA(248.5μL,1.4mmol)及び中間体C-1(HCl塩,96.2mg,527.0μmol,トランス-ラセミ体混合物)の混合物に、CIP(146.7mg,527.0μmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、混合物を1N水酸化ナトリウム水溶液で希釈し、DCMで2回抽出した。合わせた有機相を水で洗浄した後、乾燥して、減圧下で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、実施例14をトランス-ラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:442[M+H]
+;HPLC(Rt):0.65分(方法B)
【0174】
分取キラル分離:トランス-ラセミ体のアミド14(135.0mg,306.0μmol)を分取キラル SFC分離(Sepiatec 2 Prep SFC 100,CHIRAL ART(登録商標)Amylose-SA,20x250mm,5μm,移動相:溶離液A:超臨界CO2,溶離液B:メタノール含有20mM濃縮アンモニア水,勾配A:B 75:25,流速40mL/分,温度40℃,波長220nm,システム背圧150bar,サンプル濃度23mg/mL,注入量100μL)に付し、下記を得た:
実施例14a(トランス-単一の立体異性体a):Rt=0.93分(方法K)。エナンチオマー純度:>98%ee。
実施例14b(トランス-単一の立体異性体b):Rt=1.24分(方法K)。エナンチオマー純度:>98%ee。
【0175】
(実施例15、実施例15a及び実施例15b)
【化84】
アセトニトリル(3mL)中の中間体E-5(200.0mg,575.0μmol)、DIPEA(248.5μL,1.4mmol)及びN-アセチル-ピロリジン-3-イルアミン(83.5mg,632.0μmol)の混合物にCIP(176.1mg,632.0μmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、混合物を水で希釈して、酢酸エチルで2回抽出した。水相を濾過して、分取HPLCで精製して、実施例15をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:424[M+H]
+;HPLC(Rt):0.84分(方法D)
【0176】
分取キラル分離:ラセミ体のアミド15(128.6mg,304.0μmol)を分取キラル SFC分離(Sepiatec 1 Prep SFC 100,Lux(登録商標)Cellulose-2,21.2x250mm,5μm,移動相:溶離液A:超臨界CO2,溶離液B:エタノール含有20mM濃縮アンモニア水,勾配A:B 70:30,流速60mL/分,温度40℃,波長220nm,システム背圧150bar,サンプル濃度20mg/mL,注入量200μL)に付し、下記を得た:
実施例15a(単一の立体異性体a):Rt=3.74分(方法L)。エナンチオマー純度:>98%ee。
実施例15b(単一の立体異性体b):Rt=4.27分(方法L)。エナンチオマー純度:96.8%ee。
【0177】
キラル出発材料からの実施例15aの合成
アセトニトリル(60mL)中の中間体E-5(2.5g,8.0mmol)、DIPEA(248.5μL,1.4mmol)及び(R)-1-アセチル-ピロリジン-3-イルアミン塩酸塩(CAS番号1286208-55-6,1.3g,8.0mmol)の混合物に、CIP(2.2g,8.0mmol)を加えた。室温で45分間撹拌した後、混合物を濾過して、直接、分取HPLCで精製して、実施例15aを得た。
ESI-MS:424[M+H]+;HPLC(Rt):0.99分(方法C)
キラルHPLC:Rt=3.73分(方法L)。エナンチオマー純度:>98%ee。
【0178】
(実施例16、実施例16a及び実施例16b)
【化85】
アセトニトリル(3mL)中の中間体E-4(220.0mg,702.0μmol)、DIPEA(303.7μL,1.8mmol)及びN-アセチル-ピロリジン-3-イルアミン(102.1mg,772.0μmol)の混合物に、CIP(215.2mg,772.0μmol)を加えた。室温で2時間撹拌した後、混合物を水で希釈し、濾過して、直接、分取HPLCで精製して、実施例16をラセミ体混合物として得た。
ESI-MS:424[M+H]
+;HPLC(Rt):0.83分(方法D)
【0179】
分取キラル分離:ラセミ体のアミド16(128.6mg,304.0μmol)を分取キラル SFC分離(Sepiatec 2 Prep SFC 100,Lux(登録商標)Cellulose-2,21.2x250mm,5μm,移動相:溶離液A:超臨界CO2,溶離液B:エタノール含有20mM濃縮アンモニア水,勾配A:B 65:35,流速60mL/分,温度40℃,波長220nm,システム背圧150bar,サンプル濃度20mg/mL,注入量250μL)に付し、下記を得た:
実施例16a(単一の立体異性体a):Rt=1.46分(方法M)。エナンチオマー純度:>98%ee。
実施例16b(単一の立体異性体b):Rt=1.65分(方法M)。エナンチオマー純度:96%ee。
【国際調査報告】