(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ヒンダードエーテルアミンポリウレタン触媒
(51)【国際特許分類】
C08G 18/18 20060101AFI20240905BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240905BHJP
C08G 18/34 20060101ALI20240905BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08G18/18
C08G18/00 F
C08G18/34 080
C08G18/34
C08G18/32 003
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516879
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 US2022043768
(87)【国際公開番号】W WO2023043980
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505318547
【氏名又は名称】ハンツマン ペトロケミカル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Huntsman Petrochemical LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メレディス,マシュー・ティー
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ジンジュン
(72)【発明者】
【氏名】シャン,ジーピン
(72)【発明者】
【氏名】ファム,ディアン
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034CA02
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA22
4J034CA24
4J034CB02
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034CC12
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA02
4J034QC01
(57)【要約】
硬質発泡体用途に適したポリオール樹脂ブレンドであって、1種又は複数の活性ヒドロキシル化合物と、シリコーン界面活性剤と、ハロゲン化オレフィン発泡剤と、及びアミン触媒とを有する。本ポリオール樹脂ブレンドは、約0.3重量%~約7重量%のアミン触媒を含むことができる。本ポリオール樹脂ブレンドは、ポリウレタン及び/又はポリイソシアヌレート発泡体を形成するのに使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質発泡体用途に適したポリオール樹脂ブレンドであって、1種又は複数の活性ヒドロキシル化合物と、シリコーン界面活性剤と、ハロゲン化オレフィン発泡剤と、及び以下の構造を有するアミン触媒:
【化1】
式中、R
1は、エチル、イソペンタン、イソプロピル、又はイソブチル基であり、R
2は、メチル、エチル、又はイソプロピル基であり、及びn=1、2、又は3である、と、
を含む、前記ポリオール樹脂ブレンド。
【請求項2】
さらに、式(OH)
a-R-(COOH)
bを有する化合物を含み、式中、Rは、水素、アルキル基、アルケニル基、脂環式基、芳香族基、又はアルキル芳香族基のうちの1つであり、a及びbは、0~3の整数であり、ただしa+b≧1であり、及びa=1かつb=0の場合、Rは、芳香族基及びアルキル芳香族基から選択される、請求項1に記載のポリオール樹脂ブレンド。
【請求項3】
Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、プロピル、ブチル、イソブチル、フェニル、エチレニル、n-アミル、n-デシル、又は2エチルヘキシル基である、請求項2に記載のポリオール樹脂ブレンド。
【請求項4】
n=1又は2である、請求項1に記載のポリオール樹脂ブレンド。
【請求項5】
R
1は、イソプロピル又はイソブチル基である、請求項1に記載のポリオール樹脂ブレンド。
【請求項6】
R
2は、メチル基である、請求項1に記載のポリオール樹脂ブレンド。
【請求項7】
R
1及びR
2は、エチルである、請求項1に記載のポリオール樹脂ブレンド。
【請求項8】
イソシアネートと、及びHFO含有ポリオール樹脂ブレンドとを含むポリウレタン発泡体組成物であって、前記HFO含有ポリオール樹脂ブレンドは、以下の構造を有する触媒
【化2】
式中、R
1は、エチル、イソペンタン、イソプロピル、又はイソブチル基であり、R
2は、メチル、エチル、又はイソプロピル基であり、及びn=1、2、又は3である、
を含む、前記ポリウレタン発泡体組成物。
【請求項9】
さらに、式(OH)
a-R-(COOH)
bを有する化合物を含み、式中、Rは、水素、アルキル基、アルケニル基、脂環式基、芳香族基、又はアルキル芳香族基のうちの1つであり、a及びbは、0~3の整数であり、ただしa+b≧1であり、及びa=1かつb=0の場合、Rは、芳香族基及びアルキル芳香族基から選択される、請求項8に記載のポリウレタン発泡体組成物。
【請求項10】
Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、プロピル、ブチル、イソブチル、フェニル、エチレニル、n-アミル、n-デシル、又は2エチルヘキシル基である、請求項9に記載のポリウレタン発泡体組成物。
【請求項11】
n=1又は2である、請求項8に記載のポリウレタン発泡体組成物。
【請求項12】
R
1は、イソプロピル又はイソブチル基である、請求項8に記載のポリウレタン発泡体組成物。
【請求項13】
R
2は、メチル基である、請求項8に記載のポリウレタン発泡体組成物。
【請求項14】
HFO含有ポリオール樹脂ブレンドの安定性及び反応性を改善する方法であって、以下の構造を有する触媒
【化3】
式中、R
1は、エチル、イソペンタン、イソプロピル、又はイソブチル基であり、R
2は、メチル、エチル、又はイソプロピル基であり、及びn=1、2、又は3である、
を、前記HFO含有ポリオール樹脂ブレンドの合計重量に基づき0.3~7重量%、前記HFO含有ポリオール樹脂ブレンドに組み込むことを含む、前記方法。
【請求項15】
R
1及びR
2は、エチルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
n=1である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ポリウレタンアミン触媒組成物であって、(a)10~60重量%のイミダゾール触媒と、及び(b)10~60重量%の以下の構造を有する触媒
【化4】
式中、R
1は、エチル、イソペンタン、イソプロピル、又はイソブチル基であり、R
2は、メチル、エチル、又はイソプロピル基であり、及びn=1、2、又は3である、
との混合物を含み、前記重量%は、前記混合物の合計重量に基づいており、並びに前記イミダゾール触媒の量+前記上記構造を有する触媒の量は100%に等しい、前記ポリウレタンアミン触媒組成物。
【請求項18】
n=1又は2である、請求項17に記載の前記ポリウレタンアミン触媒組成物。
【請求項19】
イソシアネートと請求項1に記載のポリオール樹脂ブレンドの反応から得られる発泡体を含む、ポリウレタン発泡体。
【請求項20】
イソシアネートと請求項17に記載のポリウレタンアミン触媒の反応から得られる発泡体を含む、ポリウレタン発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願番号第63/244,972号、出願日2021年9月16日、及び米国仮出願番号第63/351,091号、出願日2022年6月10日、の優先権を主張する。言及される出願は、本明細書中参照として援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、概して、熱硬化性ポリウレタン及び/又はポリイソシアヌレート発泡体の生成に使用するための触媒に関する。より詳細には、本開示は、エーテル基と、及び立体障害のあるアミン基と、を有するポリウレタン触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
熱硬化性発泡体は、限定するものではないが、断熱をはじめとする多種多様な材料用途に有用性を有し得る。そのような発泡体は、ポリイソシアネートを、少なくとも発泡剤と、ポリオールと、及びアミン触媒との組み合わせを含むポリオール樹脂ブレンドと混合することにより、製造することが可能である。産業的に実行可能な発泡体を製造するためには、ポリオール樹脂ブレンドは、発泡体に十分な強度を付与するものでなければならず、及び発泡体が所望の気泡構造を維持できるほどに十分な速さで形成されることを可能にするものでなければならない。例えば、組成物が十分な強度を付与できるほどの十分な迅速さを持っていない又は十分な強度を付与しない場合、発泡体は、形成中に崩壊する又はその完成形において物理的強度が欠けている可能性があり、完成した発泡体が不適切なものになる。ポリオール樹脂ブレンドの組成は、得られる発泡体に望まれる特性を達成するように調整することができる。
【0004】
近年、前世代発泡剤であるクロロフルオロカーボン(CFC)及びハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)とは対照的に、オゾン破壊又は地球温暖化に対してほとんど又は全く影響を及ぼさない新規発泡剤が、ポリウレタン及び/又はポリイソシアヌレート発泡体市場に導入されてきた。こうした発泡剤は、ハロゲン化オレフィン発泡剤、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)又はハイドロコロロフルオロオレフィン(HCFO)として知られるが、これらは、スプレー熱硬化性発泡体に広く採用されている。スプレー熱硬化性発泡体の性能は、ポリイソシアネートと水含有ポリオール樹脂ブレンドの間の発熱反応に依存し、この発熱反応は、熱及び二酸化炭素(CO2)を放出して、発泡剤の沸騰を引き起こし、並びに急速な重合及び気泡構造形成を同時進行でもたらす。金属及びアミン触媒は、この反応を許容できる速度へと加速することができ、これは、どのようなスプレー熱硬化性発泡体配合物であっても、必要部分である。
【0005】
従来のスプレー熱硬化性発泡体アミン触媒は、複数のメチルアミン基を有しており、これらは、アミン基周囲の立体障害を最小化して、触媒添加量を最小限に抑えつつ、ポリウレタン及び/又はポリイソシアヌレート発泡体形成反応の触媒反応をより早くすることを可能にしている。一般的なスプレー熱硬化性発泡体触媒のいくつかの構造を、以下に提示する:
【化1】
【0006】
しかしながら、そのようなアミン触媒をHFO含有ポリオール樹脂に使用すると、アミン、発泡剤、及び界面活性剤の間で望ましくない反応を引き起こして、ポリオール樹脂ブレンドの分解又は失敗をもたらす可能性がある。望ましくない反応は、限定するものではないが、塩素及び/又はフッ素イオンの放出を引き起こす可能性がある。こうした反応は、存在する触媒の活性を低下させる可能性があり、及び発泡剤を破壊する可能性がある。また、HFO分子から切り離されたフッ素イオンは、シリコーン界面活性剤のケイ素元素を攻撃して界面活性剤を分解し、このことが、界面活性剤性能を低下させ、及び得られる発泡体の気泡構造を弱化する。上記の反応の組み合わせは、不安定なポリオール系をもたらす可能性があり、もし不安定な系を用いて発泡体がスプレーされる場合、発泡体は、適切に立ち上がらずに、不規則で一貫性のない気泡構造を有する可能性がある。
【0007】
当該分野の現状に関わらず、イソシアネートとポリオール樹脂ブレンドの迅速な反応を促進することが可能であるが、HFO発泡剤を使用する場合にブレンドの貯蔵安定性に顕著な影響を及ぼさないアミン触媒の開発が、継続的に必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の特長は、本発明のより具体的な説明において詳細に理解することができ、実施形態を参照することにより知ることができ、それらの一部は、添付の図面において図説される。しかしながら、注記すべきは、添付の図面が、本開示の典型的な実施形態のみを図説しており、したがって、本開示が他の等しく有効な実施形態を認めることが可能であるように、その範囲を限定すると解釈されるべきではないことである。
【
図1】本開示によるアミン触媒の経時的安定性を示すグラフである。
【
図2】クリームタイム及び触媒速度の測定を示す上昇速度曲線を示すグラフである。
【
図3】各種触媒のドリフト、硬化速度、及びクリームタイムを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の態様を詳細に説明する前に、当然のことながら、本開示は、その応用において、以下の説明に表記される要素又は工程又は方法の構成及び配置の詳細に限定されない。本開示は、他の実施形態であること、又は様々なやり方で実践若しくは実行することが可能である。同じく、当然のことながら、本明細書中使用される表現及び用語は、説明を目的とするものであって、限定と見なされるべきではない。
【0010】
本明細書中特に定義されない限り、本開示に関連して使用される技術用語は、当業者が一般的に解釈する意味を有するものとする。さらに、文脈から特に要求されない限り、単数の用語は複数を含み、複数の用語は単数を含むものとする。
【0011】
本明細書中言及される全ての特許、公開特許出願、及び非特許刊行物は、本開示が関連する技術分野の当業者の技術レベルを示す。本出願のいずれかの箇所で参照される全ての特許、公開特許出願、及び非特許刊行物は、個々の特許又は刊行物がそれぞれ、具体的及び個別に、本開示と矛盾しない限り参照として援用されると示されたとするのと同じ度合いで、本明細書中明白に、そのまま全体が参照として援用される。
【0012】
本明細書中開示される組成物及び/又は方法は全て、本開示に照らして、不必要な実験を行わずに作る及び実行することができる。本開示の組成物及び方法は、好適な実施形態に関して記載されているものの、当業者には明らかだろうが、改変形態を、本開示の概念、趣旨、及び範囲から逸脱することなく、本明細書中記載される組成物及び/又は方法に、並びに方法の工程又は工程順序に適用することができる。当業者に明らかであるそのような類似の代用及び修飾は全て、本開示の概念、趣旨、及び範囲内にあるものと見なされる。
【0013】
本開示に従って使用される場合、以下の用語は、特に記載がない限り、以下の意味を有すると解釈されることになる。
【0014】
「a」又は「an」という語の使用は、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」、又は「含有する(containing)」という用語(又はそのような用語の変形語)と一緒に使用される場合、「1つ」を意味することができるが、「1つ又は複数」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は1つより多い」という意味とも矛盾しない。
【0015】
「又は」という用語の使用は、代替選択肢だけを指しており代替選択肢が相互に排他的である場合に限ると明白に示されない限り、「及び/又は」を意味するのに使用される。
【0016】
本明細書中、ある要素若しくは特長が、含まれている又はある特徴を有することを記述するのに、「may」、「can」、「could」、又は「might」が使用される場合、その特定の要素若しくは特長は、含まれている又はある特徴を有することを必須としない。
【0017】
本開示全体を通じて、「約」という用語は、ある値が、定量装置、機構、又は方法の固有の誤差変動を含むこと、あるいは測定される対象(複数可)間に存在する固有の変動を含むことを示すのに使用される。例であって、限定ではないが、「約」という用語が使用される場合、その用語が指す指定値は、プラスマイナス10%、又は9%、又は8%、又は7%、又は6%、又は5%、又は4%、又は3%、又は2%、又は1%、又はそれらの間の1つ又は複数の分数で変動する可能性がある。
【0018】
「少なくとも1つ」の使用は、1つ並びに1つより多い任意の量を含むと解釈されることになり、そのような量として、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100等が挙げられるが、これらに限定されない。「少なくとも1つ」という用語は、これが指す用語に応じて、最大100まで又は1000以上まで拡張することができる。また、100/1000という量は、限度として解釈されるべきではない。なぜなら、これより低い又は高い限度もまた、申し分ない結果をもたらすことができるからである。
【0019】
また、「X、Y、及びZのうち少なくとも1つ」という語句は、X単独、Y単独、及びZ単独、並びにX、Y、及びZの任意の組み合わせを含むと解釈されることになる。同様に、「X及びYのうち少なくとも1つ」という語句は、X単独、Y単独、並びにX及びYの任意の組み合わせを含むと解釈されることになる。また、当然のことながら、「~のうち少なくとも1つ」という語句は、任意の個数の要素に用いることができ、上記に表示したのと同様な意味を有する。
【0020】
本明細書中使用される場合、「含む(comprising)」(並びにその任意の形、例えば、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)、「有する(having)」(並びにその任意の形、例えば、「有する(have)」及び「有する(has)」)、「含む(including)」(並びにその任意の形、例えば、「含む(includes)」及び「含む(include)」)、又は「含有する(containing)」(並びにその任意の形、例えば、「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」)という語は、包括的又は非限定的であり、記載されていない追加の要素又は方法工程を排除しない。
【0021】
「1つの実施形態において」、「ある実施形態において」、「1つの実施形態に従って」等の語句は、概して、その語句に続く特定の特長、構造、又は特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれているとともに、本開示の1つより多い実施形態に含まれている可能性があることを意味する。重要なことは、そのような語句が、非限定的であり、必ずしも同一実施形態を指す必要はなく、むしろ当然ながら、1つ又は複数の先行実施形態及び/又は後続実施形態を指すことが可能であるということである。例えば、添付の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態のどれであっても、任意の組み合わせで使用可能である。
【0022】
本明細書中使用される場合、「重量%」、「wt%」、「重量パーセンテージ」、又は「重量によるパーセンテージ」という用語は、同義で使用される。
【0023】
イソシアネートと水の間で生じる初期段階の「発泡」反応は、ある種のポリウレタン触媒により加速され、実行可能なスプレー発泡体系を製造するために極めて重要なものである。驚くべきことに、ある狭い範囲のアミン触媒群が、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)含有ポリオール樹脂ブレンドに使用された場合に、安定かつ強力なスプレー熱硬化性発泡体を生成することが、発見された。少なくとも1つの例において、本明細書中記載されるポリオール樹脂ブレンドは、1種又は複数の活性ヒドロキシル化合物と、シリコーン界面活性剤と、ハロゲン化オレフィン発泡剤と、及びアミン触媒と、を含むことができる。ポリオール樹脂ブレンドは、イソシアネートと上記のポリオール樹脂ブレンドを組み合わせることによりスプレー熱硬化性発泡体を生成させるのに使用することができる。
【0024】
多くのアミン触媒及びアミン触媒配合物をHFO含有ポリオール樹脂ブレンドに使用することができるが、産業的に有用であるものはほとんどない。様々な問題が生じる可能性があり、そのような問題として、限定するものではないが、触媒安定性と触媒速度の間の不均衡が挙げられる。例えば、一般にHFO発泡剤と共にあってより安定である触媒は、典型的には、崩壊もドリップもしない発泡体を生成できるほど速くなく、又は系に必要とされるそれらの量が、経済的に実行可能なものではない。同様に、実行可能なスプレー熱硬化性発泡体を生成できるほど速い触媒は、一般に、HFO含有ポリオール樹脂ブレンドで使用するのに十分な安定性ではない。例えば、ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE、別名JEFFCAT(登録商標)DMDEE、販売元Huntsman)触媒は、HFO発泡剤の存在下で非常に安定であることが可能である(米国特許公開第2020/012650号及び米国特許公開第2012/0313035号に記載)。しかしながら、化合物の構造を理由に、DMDEEは、スプレーされた熱硬化性発泡体系の一次触媒として使用するのに十分な速さの触媒ではない。他の標準的なスプレー発泡体触媒として、限定するものではないが、JEFFCAT(登録商標)ZF-20、JEFFCAT(登録商標)PMDETA、JEFFCAT(登録商標)ZF-10、JEFFCAT(登録商標)Z-130、JEFFCAT(登録商標)Z-110、及びJEFFCAT(登録商標)ZR-70が挙げられ、これらは、十分に速い触媒であるので、スプレー熱硬化性発泡体に従来使用されてきたが、HFO発泡剤を含むポリオール樹脂ブレンドに入れられた場合に非常に不安定であり、数週間の貯蔵時間内で配合剤をだめにする可能性がある。
【0025】
イミダゾール化合物は、HFO発泡剤を含むポリオール樹脂ブレンドに使用した場合に安定であることが知られている(米国特許公開第2016/0130416号、米国特許公開第9,556,303号、WO 2020146442に記載)が、ゲル反応及びスプレー熱硬化性発泡体反応の初期段階に向かって強く偏向している。代替樹脂ブレンドにおいて、触媒を、貯蔵中アミンを「ブロック」することによりHFO系の安定性を向上させることが知られている酸と、前反応させ、そのアミンを「アンブロック」することによりスプレー熱硬化性発泡体反応の発熱を許容することが可能である(米国特許第9,453,115号、米国特許第10,023,681号、米国特許第10,066,071号、米国特許公開第2020/0255581号、米国特許公開第2019/0062515号に記載)。しかしながら、ポリオール樹脂ブレンドに酸を導入することは、マイナスの副作用の発生を増加させる可能性があり、そのような副作用として、限定するものではないが、他の触媒を遅める、クリームタイムを減少させる、必要な触媒添加量を増加させる、及びブレンドの腐食性を高めることが挙げられる。ブレンドの腐食性は、スプレー熱硬化性発泡体設備の金属部品に損傷を及ぼす可能性がある。副作用の増加を理由に、酸ブロック添加剤は、一般に、スプレー熱硬化性発泡体配合剤において回避される。
【0026】
他の用途において、速いクリームタイムは、極めて重要ではないかもしれないが、それでもなお望ましい。そのような場合、酸ブロックされた発泡アミンを、HFO系内での樹脂安定性を高めるのに使用することができる。本開示は、ポリオール樹脂ブレンド(本明細書中、「Bサイド」とも称する)を提供し、本ブレンドは、(a)立体障害のあるアミン触媒と、及び(b)式(OH)a-R-(COOH)bを有する化合物と、を含み、式中、Rは、水素、アルキル基、アルケニル基、脂環式基、芳香族基、及びアルキル芳香族基から選択され、a及びbは、0~3の整数であるが、ただし、a+b≧1であり、及びa=1かつb=0の場合、Rは、芳香族基及びアルキル芳香族基から選択される。式(OH)a-R-(COOH)bを有する化合物は、1~12個の炭素原子を有することができ、カルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、フェノール酸、置換フェノール酸、又はそれらのヒドロキシ置換誘導体であることが可能である。Rアルキル基の例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、プロピル、ブチル、イソブチル、フェニル、エチレニル、n-アミル、n-デシル、又は2エチルヘキシル基を挙げることができるが、これらに限定されない。上記のアルキル基は2つの利用可能な置換部位を有することができるが、炭化水素の更なる水素を、更にカルボキシル及び/又はヒドロキシル基で置換可能であることが企図される。少なくとも1つの例において、(OH)a-R-(COOH)bを有する化合物として、ヒドロキシル-カルボン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、ギ酸、酢酸、マロン酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、クエン酸、ポリアクリル酸、アジピン-グルタル-コハク(AGS)酸、フェノール、クレゾール、ヒドロキノン、又はそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。AGSは、ジカルボン酸(すなわち、アジピン酸、グルタル酸、及びコハク酸)の混合物であり、これは、アジピン酸製造プロセスにおけるシクロヘキサノール及び/又はシクロヘキサノン酸化の副生成物として得ることができる。使用可能な適切なAGS酸として、RHODIACID(登録商標)酸(Solvay S.A.から入手可能)、二塩基酸(Invista S.a.r.lから入手可能)、FLEXATRAC(商標)-AGS-200酸(Ascend Performance Materials LLCから入手可能)、及びグルタル酸、技術的な等級(AGS)(Lanxess A.G.から入手可能)が挙げられる。
【0027】
代替例では、立体障害のある触媒が、HFO系の安定性を向上させるのに使用されてきた。分析から、アミンの周囲に加えるアルキル基が嵩高いほど、HFO分子の反応性分解が遅くなり、それにより系の安定性が向上するように見えることが示されている。例えば、米国特許第9,550,854号において、ヒンダード触媒として、限定するものではないが、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、及びジシクロヘキシルアミン等を使用することが、HFO発泡剤の分解を大きく減少させることが開示されている。しかしながら、この研究で強調される触媒は、現場注入発泡体に適していることが確定しただけである、というのも、それらは、約100秒未満のゲル化時間をもたらしたからである。そのため、これらの触媒は、反応性の遅さ故に、スプレー発泡体に適していない。ヒンダード触媒としてジシクロヘキシルメチルアミンが、HFO系に使用されてきた(米国特許公開第2017/0066867号及び米国特許公開第2019/0092920号)が、そのような触媒が、スプレー発泡体系での使用に十分なクリームタイムを提供することが可能であるという証拠は何も提供されていなかった。事実、米国特許公開第2019/0136005号は、遅いヒンダードアミンを触媒として使用する場合、アミンの遅い反応性を補う目的で、高レベルの金属触媒(限定するものではないが、スズ、ビスマス、鉛、亜鉛が挙げられる)を使用しなければならいことを示している。
【0028】
全てのアミン触媒は、この「発泡」反応をある度合いまで促進するが、ある種の分子構造が、最も速くかつ最も選択的な触媒作用をもたらすことが知られている。具体的には、以下に示すとおり、2個の炭素でエーテル基に結合した第三級アミンを有する触媒が、発泡反応の触媒作用に優れている。
【化2】
このカテゴリーの市販の触媒の例として、限定するものではないが、JEFFCAT(登録商標)ZF-20、JEFFCAT(登録商標)ZF-10、JEFFCAT(登録商標)LE-30、及びJEFFCAT(登録商標)ZR-70が挙げられる。詳細には、ビスアミノエチルエーテル(BAEE)部分を有する触媒、例えば、JEFFCAT(登録商標)ZF-20等は、非常に強力な発泡触媒となる可能性があり、これは、以下の構造で示すとおり、化合物が水分子と錯体を形成し、イソシアネートとの反応に向けてそれらを活性化する能力による可能性が高い。
【化3】
【0029】
しかしながら、BAEE部分を有する市販の触媒は、アミンの強力な求核性を理由に、HFO系で使用された場合に不安定である。一部のBAEE部分含有アミンが分析されている。具体的には、米国特許公開第2019/0315905号は、一般式R1R2N-[A-NR3]nR4を持つ立体障害のあるアミンをHFO発泡剤と合わせて使用することを記載しており、式中、R1~R4は、(とりわけ)アルキル基を含むことができ、Aは、(とりわけ)エーテル基であり、nは、0~3である。しかしながら、実際に製造及び試験されたのは、開示される構造体のうち非常に小さなサブセットのみであり、それらのどれも、スプレーされた発泡体系において速い反応性をもたらさなかった。
【0030】
いくつかのHFO安定配合物が記載された(米国特許第10,308,783号)。それらは、抗酸化剤及び一般式R1R2N(CH2)2Xを持つ触媒を用いて作られたもので、式中、R1及びR2は、同じであるか異なっており、それぞれ、C1-C6アルキル基及び/又はアルカノール基から選択され;Xは、O(CH2)2Y、OH、又はNR3(CH2)2Yであり、式中、R3は、C1-C6アルキル基又はアルカノール基であり、並びにYは、OH又はNR4R5であり、式中、R4及びR5は、同じであるか異なっており、それぞれ、C1-C6アルキル基又はアルカノール基であり、ただし、化合物は、少なくとも1つのエーテル及び/又はヒドロキシル基を含有するものとする。しかしながら、記載される構造は、非常に大きな化合物セットを表し、そのセットのうちごくわずかしか、例証及び/又は試験されていなかった。試験された化合物のうち、反応性の顕著なシフトは、7日後になって初めて観察され、このことは、これらの系を産業的に無用なものにしている。この研究は、C1より大きいアルキルアミノ基を持つどのような生成物も合成しなかったし、試験しなかった。
【0031】
最後に、以下の構造を有する触媒組成物が、記載されている(WO 2020174030):
【化4】
式中、AはOであり、Xは0~6であり、n及びmは、それぞれ独立して、1~6であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、C
2-C
8アルキルであり、R
4及びR
5は、-CH
3基である。この一般構造により記載される多数の可能な化合物が、HFO発泡剤を含むポリウレタン配合剤に応用可能であるとして検討されたが、相当する配合物として合成されたもの、例証されたもの、HFO配合物で試験されたものは、いずれもない。
【0032】
示したとおり、先行技術において様々なマーカッシュ構造体が開示されているものの、(a)BAEE構造を有する、(b)スプレー発泡体用触媒として十分速い、及び(c)HFO発泡剤と共にあって安定であるそのような構造体の例として、合成されたものも、試験されたものもない。これらのマーカッシュ構造体に包含される可能な化合物は非常に多数存在し、どの触媒が、産業的に有用なバランスの触媒速度とHFO安定性をもたらすことになるかは、当業者にとって明白ではない。驚くべきことに、以下の構造を有するアミン触媒は、産業的に実行可能なスプレー発泡体を提供することが、見出された。
【化5】
少なくとも1つの例において、上記構造中、R
1がエチル、イソペンタン、イソプロピル、又はイソブチル基であり、R
2がメチル、エチル、又はイソプロピル基であり、nが1、2、又は3から選択されるアミンは、強力かつ安定な発泡体を生成することができる。そのような触媒は、ポリオール樹脂ブレンドの合計重量のうち約0.1%~約10重量%の量で使用した場合、有効なスプレー熱硬化性発泡体を生成することが確定された。更なる例において、触媒使用量は、ポリオール樹脂ブレンドの合計重量に基づいて、約0.3重量%~約7重量%が可能である。更に別の例において、触媒使用量は、ポリオール樹脂ブレンドの合計重量に基づいて、約0.5重量%~約5重量%が可能である。
【0033】
一部の例において、アミン触媒は、本明細書中開示される触媒2種以上の組み合わせであることが可能である。例えば、アミン触媒は、イミダゾール触媒と立体障害のあるアミン触媒、例えば、以下の構造を有する触媒の組み合わせを含むことができる。
【化6】
少なくとも1つの例において、アミン触媒は、約10重量%~約80重量%のイミダゾール触媒と約20重量%~約90重量%の上記構造を有する触媒の混合物を含むことができ、重量%は、この混合物の合計重量に基づき、イミダゾール触媒の量+上記構造を有する触媒の量の合計は100%に等しい。代替例において、アミン触媒は、約10重量%~約70重量%のイミダゾール触媒と約30重量%~約90重量%の上記構造を有する触媒の混合物を含むことができ、又はアミン触媒は、約10重量%~約60重量%のイミダゾールと約40重量%~約90重量%の上記構造を有する触媒の混合物を含むことができ、重量%は、この混合物の合計重量に基づき、イミダゾール触媒の量+上記構造を有する触媒の量の合計は100%に等しい。
【0034】
多数のエーテルアミン及びBAEE系化合物が合成及び試験され、驚くべきことに、これらの化合物のうち狭い範囲の自明ではないサブセットのみが、産業的に有用なバランスで触媒速度、クリームタイム、及びHFO安定性を有することが示された。本発明の合成反応の例を、以下に提示する。しかしながら、本開示は、その応用において、本明細書中以下に開示される具体的な実験、結果、及び実験手順に限定されないと理解されるべきである。そうではなくて、実施例は、単純に、様々な実施形態のうちの1つとして提供されるものであり、例示であることを意味し、排他的であることを意味しない。
【実施例】
【0035】
実施例1:N,N-イソプロピルメチルエタノールアミンの合成
反応容器中、N-イソプロピルエタノールアミン100グラムを、わずかにモル過剰のギ酸及びホルムアルデヒドと混合し、温度80℃に加熱した。反応中、Eschweiler/Clarkeメチル化反応に典型的であるとおりCO
2ガスが発生した。得られる混合物を水性水酸化ナトリウムで中和し、アミンを減圧蒸留(22mmHgでの沸点69℃)して、以下の構造の化合物(I)としてN,N-イソプロピルメチルエタノールアミンを純度99%超で得た。
【化7】
【0036】
実施例2:2-(2-(イソプロピル(メチル)アミノ)エトキシ)エタン-1-オールの合成
反応容器中、ジグリコールアミン(DGA)を最小量のメタノールに溶解させ、等モル量のアセトン及び水素ガスとともに、150~190℃及び圧2000psigで連続高圧水素化反応器に同時供給した。還元用にパラジウム炭素(Pd/C)触媒を使用した。次いで、得られる生成物を、同じ容器を通じて、今度は、モル過剰のホルムアルデヒド及び水素ガスとともに、100~140℃及び2000psigで、担持型多金属触媒越しに供給した。この粗物質を減圧蒸留して、以下の化合物(II)の生成物を純度99%超で得た。
【化8】
【0037】
実施例3:2-((2-(イソプロピル(メチル)アミノ)エトキシ)エチル(メチル)アミノ)エタン-1-オール及び2-(イソプロピル(2-(2-(イソプロピル(メチル)アミノ)エトキシ)エチル)アミノ)エタン-1-オールの合成
反応容器中、2-((2-(2-アミノエトキシ)エチル)アミノ)エタン-1-オールを最小量のメタノールに溶解させ、アミン基1モルあたり1モルのアセトン及び水素ガスとともに、150~190℃及び圧2000psigで連続高圧水素化反応器に同時供給した。還元用にPd/C触媒を使用した。次いで、得られる生成物を、同じ容器を通じて、今度は、モル過剰のホルムアルデヒド及び水素ガスとともに、100~140℃及び2000psigで、担持型多金属触媒越しに供給した。得られる粗生成物を蒸留して、2種類の主要画分として以下の化合物(III)及び(IV)を得た。
【化9】
【化10】
【0038】
実施例4:N,N’-ジイソプロピル-N,N’-ジメチル-ビス(アミノエチル)エーテル及びN,N,N’-トリイソプロピル-N-メチル-ビス(アミノエチル)エーテルの合成
反応容器中、ビス(アミノエチル)エーテル(BAEE)を最小量のメタノールに溶解させ、アミン基あたり1.3モルのアセトン及び水素ガスとともに、150~190℃及び圧2000psigで連続高圧水素化反応器に同時供給した。還元用にPd/C触媒を使用した。次いで、得られる生成物を、同じ容器に、今度は、過剰のホルムアルデヒド及び水素ガスとともに、100~140℃及び2000psigで、担持型多金属触媒越しに戻して供給した。得られる粗混合物を蒸留して、2種類の生成物として以下の化合物(V)及び(VI)を純度99%超で得た。
【化11】
【化12】
【0039】
実施例5:2-((2-(イソプロピル(メチル)アミノ)エチル)(メチル)アミノ)エタン-1-オールの合成
反応容器中、アミノエチルエタノールアミン(AEEA)を最小量のメタノールに溶解させ、メタノールの連続高圧水素化反応器に同時供給し、アミン基あたり0.6モルのアセトン及び水素ガスとともに、150~190℃及び圧2000psigで連続高圧水素化反応器に同時供給した。還元用にPd/C触媒を使用した。得られる生成物を、同じ容器に、今度は、過剰のホルムアルデヒド及び水素ガスとともに、100~140℃及び2000psigで、担持型多金属触媒越しに戻して供給した。次いで、粗混合物を蒸留して、以下の化合物(VII)の生成物を純度99%超で得た。
【化13】
【0040】
実施例6:N-メチル-2-モルホリノ-N-(2-モルホリノエチル)エタン-1-オールの合成
反応容器中、ヒドロキシエチルモルホリンを、連続高圧水素化反応器に供給し、アンモニア(15~30倍モル過剰)と水素(10倍モル過剰)の混合物を用いて、150~200℃及び圧2000psigで、担持型多金属触媒越しに還元的アミノ化を行った。得られる生成物を、減圧蒸留して、軽物質を除去し、残存する重物質を、同じ容器に、今度は、過剰のホルムアルデヒド及び水素ガスとともに、100~140℃及び2000psigで、担持型多金属触媒越しに戻して供給した。次いで、粗混合物を蒸留して、以下の化合物(VIII)の生成物を純度99%超で得た。
【化14】
【0041】
実施例7:N,N’-((エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(N-メチルプロパン-2-アミン)の合成
反応容器中、2,2’-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(エタン-1-アミン)を最小量のメタノールに溶解させ、アミン基あたり1.3モルのアセトン及び水素ガスとともに、150~190℃及び圧2000psigで高圧水素化反応器に同時供給した。還元用にPd/C触媒を使用した。得られる生成物を、同じ容器に、過剰のホルムアルデヒド及び水素ガスとともに、100~140℃及び2000psigで、担持型多金属触媒越しに戻して供給した。得られる粗混合物を蒸留して、以下に示す化合物XVIを純度約99%で得た。
【化15】
【0042】
実施例8:N,N’-(オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(N-メチルブタン-2-アミン)の合成
反応容器中、BAEEを最小量のメタノールに溶解させ、アミン基あたり1.3モルのメチルエチルケトン(MEK)及び水素ガスとともに、150~190℃及び圧2000psigで高圧水素化反応器に同時供給した。還元用にPd/C触媒を使用した。得られる生成物を、同じ容器に、今度は過剰のホルムアルデヒド及び水素ガスとともに、100~140℃及び2000psigで、担持型多金属触媒越しに戻して供給した。得られる粗混合物を蒸留して、以下に示す化合物XVIIを純度99%超で得た。
【化16】
【0043】
実施例9:テトラエチル-ビス-ジメチルアミノエチルエーテルの合成
反応容器中、BAEEを最小量のメタノールに溶解させ、過剰のアセトアルデヒド及び水素ガスとともに、150~190℃及び圧2000psigで高圧水素化反応器に同時供給した。還元用にPd/C触媒を使用した。得られる粗混合物を蒸留して、以下に示す化合物XVIIIを純度99%超で得た。
【化17】
【0044】
化合物XVIIIの安定性を、数週間の期間にわたり追跡したところ、表1に示したとおりであり、
図1に図示したとおりであった。
【表1】
示したとおり、化合物の安定性は、6週間かけても顕著に低下することはなかった。
【0045】
実施例10
反応容器中、BAEEを最小量のメタノールに溶解させ、アミン基あたり1.2~3モルのイソブチルアルデヒド及び水素ガスとともに、140~190℃及び圧2000psigで高圧水素化反応器に同時供給した。還元用にPd/C触媒を使用した。得られる生成物を、同じ容器に、今度は過剰のホルムアルデヒド及び水素ガスとともに、100~140℃及び2000psigで、担持型多金属触媒越しに戻して供給した。得られる粗混合物を蒸留して、以下に示す化合物を得た。
【化18】
【0046】
比較例
HFO安定性及び発泡体反応性試験で比較するため、以下の化合物を含む他の化合物を生成させた:
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
本明細書中記載される触媒を用いた本明細書中記載されるスプレー発泡体系について3つの要因、安定性、クリームか時間、及び触媒速度を評価した。安定性は、触媒を、触媒濃度5%で含有する系を期間6週間、温度50℃で貯蔵することにより特定した。系の反応性を、6週間の期間の前後で測定し、当初のゲル化時間のパーセントとして記録した。記録された情報を用いて、各系の安定性を定量化する。パーセンテージが高い(ドリフトが大きい)方が、パーセンテージが低い方より、有効性が低い。有用な系は、産業的に実行可能であるために、ドリフトが約50%以下であることが必要である。クリームタイム及び触媒速度は、超音波上昇速度測定システムを用いて測定した。各触媒を1%含有するポリオールブレンドを、カップ中でイソシアネートと迅速に混合し、装置の下に配置する。クリームタイムは、発泡体混合物が上昇を開始する変曲点とした。触媒「硬化速度」は、発泡体成長曲線が直線部分にある間の線の傾きとして特定した。触媒が産業的に実行可能であるためには、5mm/秒以上の傾きが必要である。この分析を、
図2に例示する。
【0047】
クリームタイム、触媒速度、及び触媒安定性データは、データの値それぞれを組み合わせて「バブル」グラフとしてプロットすることができ、最も有望な触媒化合物を示すことができる。上記の実施例触媒の例示バブルグラフを
図3に提示する。グラフに示すとおり、x軸は、触媒の安定性を、ゲル化時間のドリフトとして表す。ドリフトが大きいほど、HFO系における触媒の安定性は悪化する。y軸は、硬化速度を表し、これは、発泡体がそのクリーム後の上昇期間中にどれだけ速く上昇するかを表す。バブルの大きさは、触媒のクリームタイムの逆数を表し、したがって、バブルの大きさが大きいほどクリームタイムが速いことを示す。HFO系において産業的に実行可能であるためには、クリームタイムが速いほど、より安定な触媒であることを示す。いずれのカテゴリーのどれか1つでも欠損している触媒は、安定ではないか、HFO系の発泡触媒として使用できるほど強くない、ということになる。比較例X~XIIIは、安定性のドリフトが300%を超えていたので、グラフに示していない。
【0048】
最も産業的に実行可能な触媒は、
図3のグラフの左上象限、破線Aで囲んだ中に存在する。2種類の触媒、化合物V及びXVIIIのみが、産業的に実行可能な象限内に完全に存在する。グラフに示すとおり、化合物Vは、このクラスの触媒として最も速いクリームタイムを有する。グラフは、予期せぬことに、化合物V及びXVIIIが、速度、クリームタイム、及び安定性の非常に優れた組み合わせを有することを示す。イソプロピル修飾した化合物だけで再検討すると、化合物Vは、他者よりも顕著に良好な性能を示し、このことは、構造がお互いにどれだけ似ているかを考慮すると驚くべきことである。同じ窒素にイソプロピル/メチルの組み合わせを有する複数の他の実施例には、化合物I、II、III、IV、VII、及びXVIが含まれるが、しかしこれらの化合物のいずれも、化合物Vの非常に優れた特性を提示しなかった。HFO系に使用した場合に化合物Vが提示する予期せぬ特性は、本明細書中記載される先行技術に基づいて明確であったとは言えない。明白に例示されるとおり、同様な構造の触媒が、同じ利益をもたらすわけではない。
【0049】
上記の記載から、本開示は、本目的を実行し、並びに本明細書中言及される利点及び本開示に内在する利点を獲得するのに十分適合している。開示を目的として本開示の例示の実施形態を記載してきたものの、当然のことながら、多数の変更を成すことが可能であり、それらは、当業者に容易に示唆されることになり、本開示及び添付の特許請求の範囲から逸脱することなく達成可能である。
【国際調査報告】