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特表2024-533573改善された流動特性を有するフマル酸ジロキシメル粒子及びその製造方法
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  • 特表-改善された流動特性を有するフマル酸ジロキシメル粒子及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】改善された流動特性を有するフマル酸ジロキシメル粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4015 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
A61K31/4015
A61K9/16
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/04
A61K47/12
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516903
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 US2022043837
(87)【国際公開番号】W WO2023044031
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/245,476
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/357,130
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514198367
【氏名又は名称】バイオジェン・エムエイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biogen MA Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リアン
(72)【発明者】
【氏名】アーダム,アーウィン
(72)【発明者】
【氏名】クウォク,ダウ-ロング,アルバート
(72)【発明者】
【氏名】マッデン,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】マッショ,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA32
4C076AA36
4C076AA45
4C076AA61
4C076CC01
4C076DD29
4C076DD41
4C076EE16
4C076EE31
4C076FF01
4C076FF33
4C076FF36
4C076GG02
4C076GG12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA41
4C086NA02
4C086NA03
4C086ZA01
(57)【要約】
多くの活性医薬成分(API)は錠剤形態で入手可能である。APIの粒子は、特にAPIが錠剤中に大きな重量パーセンテージで存在する場合、錠剤に圧縮するために好ましい圧縮プロファイルを有する必要がある。本明細書では、錠剤形成の改善された特徴を有するフマル酸ジロキシメルの粒子、及びその製造方法が開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.1~2.5のスパン、20~50μmのD10、70~130μmのD50、及び150~250μmのD90を有する、フマル酸ジロキシメル粒子。
【請求項2】
前記スパンが1.2~2.0である、請求項1に記載のフマル酸ジロキシメル粒子。
【請求項3】
前記スパンが1.3~1.8である、請求項1に記載のフマル酸ジロキシメル粒子。
【請求項4】
30~45μmのD10、80~120μmのD50、及び155~230μmのD90を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のフマル酸ジロキシメル粒子。
【請求項5】
36~42μmのD10、88~113μmのD50、及び160~225μmのD90を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のフマル酸ジロキシメル粒子。
【請求項6】
4~20の間の流れ関数係数を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のフマル酸ジロキシメル粒子。
【請求項7】
150~250パスカル(Pa)の間の凝集力を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のフマル酸ジロキシメル粒子。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のフマル酸ジロキシメル粒子と、1つ以上の添加剤、充填剤、及び/または賦形剤とを含むブレンドであって、15~40の間の流れ関数係数を有する、前記ブレンド。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載のフマル酸ジロキシメル粒子と、1つ以上の添加剤、充填剤、及び/または賦形剤とを含むブレンドであって、17~37の間の流れ関数係数を有する、前記ブレンド。
【請求項10】
請求項8または9に記載のブレンドであって、前記粉末ブレンドの総重量に基づいて60~92.5重量%のフマル酸ジロキシメル粒子を含む、前記ブレンド。
【請求項11】
前記添加剤、充填剤、または賦形剤が、微結晶セルロース、クロスポビドン、コロイダルシリカ、ステアリン酸マグネシウムである、請求項8~10のいずれか1項に記載のブレンド。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載のフマル酸ジロキシメル粒子、または請求項8~11のいずれか1項に記載の粉末ブレンドを含む、錠剤。
【請求項13】
高負荷錠剤での使用に好適なフマル酸ジロキシメル粒子を製造する方法であって、
スラリー溶媒中の前粉砕されたフマル酸ジロキシメル粒子のスラリーを湿式粉砕ステップに供して、粉砕フマル酸ジロキシメル粒子を製造すること;及び
前記粉砕フマル酸ジロキシメル粒子を熟成溶媒中で熟成ステップに供して、前記フマル酸ジロキシメル粒子を製造すること、を含む、前記方法。
【請求項14】
前記前粉砕されたフマル酸ジロキシメル粒子が、前記前粉砕されたジロキシメル粒子が粉砕される温度で前記スラリー溶媒に実質的に不溶性である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記湿式粉砕が、前記スラリー溶媒中の前粉砕されたフマル酸ジロキシメル粒子のスラリーを、11,500s-1~160,000s-1の剪断力、分当たり回転数(RPM)600~1500の混合速度での混合に供することを含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記湿式粉砕ステップが、前記スラリー溶媒中の前粉砕されたフマル酸ジロキシメル粒子の前記スラリーを、11,500s-1~25,000s-1の剪断力、分当たり回転数(RPM)1000~1300の混合速度での混合に供することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記スラリー溶媒が酢酸イソプロピルである、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記湿式粉砕ステップが0C~20Cの温度で行われる、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記湿式粉砕ステップが、前記湿式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子が35~70μmのD50に達するまで継続される、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記湿式粉砕ステップが、前記湿式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子が35~60μmのD50に達するまで継続される、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記熟成ステップが、前記湿式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子が、前記湿式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子が熟成される温度で部分的に可溶性である熟成溶媒中で、前記湿式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子を加熱することを含む、請求項13~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記熟成溶媒が酢酸イソプロピルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記湿式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子が熟成される温度が38C~50Cである、請求項13~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記湿式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子が熟成される温度が40C~48Cである、請求項13~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記熟成ステップが、前記熟成フマル酸ジロキシメル粒子が70~130μmのD50に達するまで継続される、請求項13~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記熟成ステップが2~10時間行われる、請求項13~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記前粉砕されたフマル酸ジロキシメルが前記湿式粉砕ステップの前に再結晶化される、請求項13~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記熟成ステップの後に冷却ステップをさらに含む、請求項13~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記冷却ステップの温度が-10C~10Cである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項13~29のいずれか1項に記載の方法により製造されるフマル酸ジロキシメル粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年9月17日出願の米国仮特許出願第63/245,476号及び2022年6月30日出願の米国仮特許出願第63/357,130号の利益を主張し、その教示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
フマル酸ジロキシメルは、Vumerityという商品名で販売されており、再発型の多発性硬化症の治療に使用される薬剤である。フマル酸ジロキシメルは米国特許第8,669,281号で初めて開示され、2019年10月に米国で医療用途が承認された。
【0003】
活性医薬成分(API)を錠剤として送達することは、投与が容易で患者にとって好都合であるため、非常に望ましい錠剤は、API粒子と添加剤とを含有する粉末ブレンドを圧縮することによって形成される。錠剤製剤を首尾よく調製するには、錠剤の形成に使用されるAPI粒子及び/またはAPI粒子と添加剤とを含むブレンドは、良好な流動性、圧縮性、機械的特性など、多くの特定の特性を有しなければならない。錠剤の調製は、薬物負荷が高い場合、例えば、APIが60重量%を超える錠剤において、特に困難になる場合がある。
【発明の概要】
【0004】
乾式粉砕などの標準的な粒子粉砕プロセスでは、錠剤形成にとってあまり望ましくない特性を有するフマル酸ジロキシメル粒子が製造されることが現在見出されている。湿式粉砕プロセスによって製造されたフマル酸ジロキシメル粒子は、乾式粉砕プロセスによって調製された粒子と比較して、機械的特性及び流動特性が大幅に改善していることも見出されている。例えば、湿式粉砕フマル酸ジロキシメルの圧縮後の錠剤硬度は、乾式粉砕フマル酸ジロキシメルの圧縮後よりも均一である(実施例5を参照のこと)。このことは、錠剤のコーティングプロセス及び溶解挙動に利益をもたらす。加えて、ニート湿式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子の流動特性を定量するために使用される流れ関数係数(flow function coefficients)は、ニート乾式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子と比較して高い(実施例3を参照のこと)。このより高い流れ関数係数は、湿式粉砕フマル酸ジロキシメルが、乾式粉砕フマル酸ジロキシメルと比較して優れた流動特性を有することを示している。開示された粒子の凝集力は、乾式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子の凝集力よりも低い(実施例3を参照のこと)。凝集力が低いほど、粒子はより滑らかに流れ、特性が保存用により良好となる。優れた流動特性及び圧縮特性を有するフマル酸ジロキシメル粒子は、粒径スパンで測定したときのサイズのばらつきが少ないこと、及びD10、すなわち、フマル酸ジロキシメル粒子の10%がより小さい体積直径を有する値の減少を特徴とする。それらはまた、滑らかさの増大を特徴とする。開示されたフマル酸ジロキシメル粒子は、このAPIに有利である改善された溶解特性を有することが見出されている(実施例7を参照のこと)。これらの発見に基づいて、優れた流動特性及び圧縮特性を有するフマル酸ジロキシメル粒子、優れた流動特性及び圧縮特性を有するジロキシメル粒子を調製する方法、ならびに優れた流動特性及び圧縮特性を有するフマル酸ジロキシメル粒子を含むブレンド、ならびにより均一な硬度を有するフマル酸ジロキシメル粒子を含む錠剤が、本明細書において開示される。
【0005】
一実施形態では、本発明は、1.1~2.5のスパン、20~50μmのD10、70~130μmのD50、及び150~250μmのD90を有するフマル酸ジロキシメル粒子である。
【0006】
本発明の別の実施形態は、開示されたフマル酸ジロキシメル粒子と、1つ以上の添加剤、充填剤及び/または賦形剤とを含むブレンドである。一態様では、ブレンドは、ブレンドの総重量に基づいて60~92.5重量%のフマル酸ジロキシメル粒子を含む。
【0007】
本発明の別の実施形態は、開示されたフマル酸ジロキシメル粒子または開示されたブレンドを含む錠剤である。
【0008】
本発明の別の実施形態は、開示されたフマル酸ジロキシメル粒子を製造する方法である。この粒子は高負荷錠剤での使用に好適である。この方法は、溶媒中で前粉砕されたフマル酸ジロキシメル粒子のスラリーを湿式粉砕ステップに供して、粉砕されたフマル酸ジロキシメル粒子を製造すること;及び粉砕されたフマル酸ジロキシメル粒子を熟成ステップに供して、フマル酸ジロキシメル粒子を製造することを含む。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態は、開示された方法によって調製されたフマル酸ジロキシメル粒子である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】乾式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子及び開示されたフマル酸ジロキシメル粒子の走査型電子顕微鏡画像を示す。
図2】ニート乾式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子と開示されたニートフマル酸ジロキシメル粒子とを比較した流れ関数係数の棒グラフである。
図3】ニート乾式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子と開示されたニートフマル酸ジロキシメル粒子とを比較した凝集力の棒グラフである。
図4】乾式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子を含むブレンドと開示されたフマル酸ジロキシメル粒子を含むブレンドとを比較した流れ関数係数の棒グラフである。
図5】乾式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子及び開示されたフマル酸ジロキシメル粒子から作製された錠剤の硬度対圧縮圧力のグラフである。
図6】乾式粉砕API(青色のひし形、正方形、及び三角形のプロット)と湿式粉砕API(赤色の正方形のプロット-左端の曲線)の両方から作製した錠剤の比較溶解プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書には、高流動性、一貫した圧縮性、及び低凝集性など、錠剤形成のための良好な機械的特性を備えたフマル酸ジロキシメル粒子が開示される。開示されたフマル酸ジロキシメル粒子は、粒径分布の減少、例えば粒子間のサイズのばらつきの減少、及び/または小さな粒子の数の減少を特徴とする。
【0012】
粒径は体積直径について表され、体積直径は非球形である粒子の寸法を表すために使用される。「体積直径」は、体積が非球形粒子と等しい球の直径を指す。粒径は、有効長または有効直径が計算される粒子体積に光散乱を相関させるレーザー回折技術を含む、当技術分野で周知の方法に従って測定することができる。
【0013】
粒径分布は、D50、D10、D90及びスパンで表される。「スパン」は粒径分布の尺度である。スパンは、以下の等式に従って計算される:
スパン=(D90-D10)/D50
スパン値が低いほど、粒子はサイズがより一貫しており、粒径のばらつきが少ないことを意味する。
【0014】
「D50」は、メジアン径としても知られ、粒子の50%がより小さい体積直径を有する値に相当する。「D90」は、粒子の90%がより小さい体積直径を有する値に相当する。「D10」は、粒子の10%がより小さい体積直径を有する値に相当する。
【0015】
開示されたフマル酸ジロキシメル粒子は、スパンが減少していることを特徴とし、試料中の粒子はサイズがより一貫していることを示している。開示されたフマル酸ジロキシメル粒子はまた、D10によって測定される小さな粒子(「微粉」と呼ばれる)が減少していることを特徴とする。より大きなD10値を有する試料は、より小さなD10値を有する試料よりも微粉粒子が少ない。
【0016】
第1の実施形態では、開示されたフマル酸ジロキシメル粒子は、1.1~2.5のスパン、20~50μmのD10、70~130μmのD50、及び150~250μmのD90を有する。第2の実施形態では、フマル酸ジロキシメル粒子は、1.2~2.0のスパン、20~50μmのD10、70~130μmのD50、及び150~250μmのD90を有する。第3の実施形態では、フマル酸ジロキシメル粒子は、1.3~1.8の粒径スパン、20~50μmのD10、70~130μmのD50、及び150~250μmのD90を有する。
【0017】
第4の実施形態では、開示されたフマル酸ジロキシメル粒子は、30~45μmのD10、80~120μmのD50、155~230μmのD90、及び第1、第2または第3の実施形態に記載のスパンを有する。第5の実施形態では、開示されたフマル酸ジロキシメル粒子は、36~42μmのD10、88~113μmのD50、160~225μmのD90、及び第1、第2または第3の実施形態に記載のスパンを有する。
【0018】
開示されたフマル酸ジロキシメル粒子及びジロキシメル粒子を含む開示された粉末ブレンドは、流れ関数係数及び凝集力によって測定される優れた流動特性を特徴とする。流れ関数係数と凝集力は両方とも、剪断試験によって測定される。この出願の目的では、「ブレンド」と「粉末ブレンド」は同義である。
【0019】
「流れ関数」、「流れ関数係数」、またはFFcは、ニートAPI粒子の試料、またはAPI粒子と添加剤を含有するブレンドの試料の場合があるが、粒子状試料の流動性をランク付けするために一般的に使用されるパラメータである。
【0020】
粉体の流動性は以下のようにランク付けされる:
FFc<1 流動性がない
1<FFc<2 非常に凝集性
2<FFc<4 凝集性
4<FFc<10 易流動性
FFc>10 自由流動性
【0021】
以下に概説するFFc及び凝集力の測定は、ASTMD6773-16に記載されている手順に従う。易流動性粉末のFFcは4以上であり、自由流動性粉末のFFcは10以上である。
【0022】
FFc及び凝集力を試験するには、Jenike-Johanson RST-XSリング剪断試験機などの市販のリング剪断試験装置に粒子状試料を加える。このような試験は当業者にはよく知られている。一般に、粉末は環状のトラフに装填され、固化した粉体層が形成される。固化した粉体層に垂直応力(σp)を加え、予備剪断応力(τp)を測定する。垂直応力は、環状の蓋を介して垂直荷重として加えられる。剪断セルが蓋に対して回転し、剪断に必要なトルクが測定される。垂直応力の一連の値により測定を繰り返す。測定された剪断応力値(Y軸)を、加えられた垂直応力値(X軸)の関数としてプロットする場合、それらの間の線形関係は破壊包絡線(yield locus)と呼ばれる。破壊包絡線(yield locus line)を使用すると、垂直応力と剪断応力との間の一意的関係を決定することができる;これはモール円(Mohr circle)として知られている。破壊包絡線は、すべてのモール円の接線を表す。外側の大きい半径の円は予備剪断状態(σp、τp)に対応し、最大主応力、すなわちMPS(σ1)を定義する。小さい半径の円は、単軸降伏応力、すなわちUYS(σc)を定義する。
【0023】
流れ関数係数、すなわちFFcは、最大主応力(MPS)対単軸降伏強度(UYS)の比である。
【0024】
FFc=MPS/UYS。
【表1】
【0025】
第6の実施形態では、開示されたフマル酸ジロキシメル(dioroximel fumarate)粒子(例えば、実施形態では、1、2、3、4、及び5)は、3.5~20の間の流れ関数係数を有する。第7の実施形態では、開示されたフマル酸ジロキシメル(dioroximel fumarate)粒子(例えば、実施形態1、2、3、4及び5)は、4.0~20の間、4.0~10の間、4.0~4.5の間、または4~5の間の流れ関数係数を有する。
【0026】
凝集力とは、試料内の粒子が自己会合する、または「くっつく」傾向のことである。リング剪断試験機では、FFcの測定と同時に凝集力も測定する。垂直応力がゼロのときの破壊包絡線の切片(すなわち、破壊包絡線の外挿がY軸と交差する位置)は、粉末凝集力として知られ、パスカル(Pa)単位で表される。凝集力が低いほど、粉末流動性はより良好である。さらに、凝集力は、粒子状試料が保存時、例えばサイロに保存されているときにどのように挙動するかを予測する。凝集力が250Paを超える試料は粒子の凝集力が高すぎるため、塊及び空隙が形成されるリスクがあるが、凝集力が250Pa以下の試料は、一般に、長期保存(例えば、1か月~1年)後でも、易流動性または自由流動性粉末のままである。
【0027】
第8の実施形態では、開示されたフマル酸ジロキシメル(dioroximel fumarate)粒子(例えば、実施形態では、1、2、3、4、5、6、及び7)は、150~250Pa、または175~250Pa、または200~250Pa、または225~250Pa、または175~230Pa、または180~230Pa、または200~225Pa、または215~225Paの凝集力を有する。
【0028】
第9の実施形態では、開示されたフマル酸ジロキシメル粒子を合わせて、1つ以上の賦形剤、充填剤、及び/または添加剤を含む粉末ブレンドにすることができる。「ブレンド」または「粉末ブレンド」は、錠剤に圧縮するために配合された添加剤、充填剤及び/または賦形剤とともにAPIの粒子を含む粉末である。本発明の粉末ブレンドは、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、または第8の実施形態において開示されたフマル酸ジロキシメル粒子を含む。開示された粉末ブレンド中に存在する添加剤としては、(これらに限定されないが)テクスチャライザー(texturizer)及び固結防止剤(例えば、微結晶セルロース)、崩壊剤(例えば、クロスポビドン)、流動化剤(例えば、コロイダルシリカ)、ならびに剥離剤及び潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)が挙げられる。第10の実施形態では、粉末ブレンドは、第1、第2、第3、第4、または第5の実施形態のフマル酸ジロキシメル粒子を含み、15~40の間の流れ関数係数を有する。第11の実施形態では、開示された粉末ブレンドは、第1、第2、第3、第4、または第5の実施形態のフマル酸ジロキシメル粒子を含み、17~37の間、17~25の間、18~22の間、または19~21の間の流れ関数係数を有する。第12の実施形態では、開示された粉末ブレンドは、第1、第2、第3、第4、または第5の実施形態のフマル酸ジロキシメル粒子を含み、20~35の間、または18~25の間の流れ関数係数を有する。
【0029】
第13の実施形態では、第9、第10、第11及び第12の実施形態に記載の粉末ブレンド中の開示されたフマル酸ジロキシメル粒子の重量パーセントは、粉末ブレンドの総重量に基づいて、87.5重量%である。第14の実施形態では、第9、第10、第11及び第12の実施形態に記載の粉末ブレンド中の開示されたフマル酸ジロキシメル粒子の重量パーセントは、粉末ブレンドの総重量に基づいて、87~88重量%である。第12の実施形態では、開示されたフマル酸ジロキシメル粒子の重量パーセントは、粉末ブレンドの総重量に基づいて、85~89重量%である。第15の実施形態では、第9、第10、第11及び第12の実施形態に記載の粉末ブレンド中の開示されたフマル酸ジロキシメル粒子の重量パーセントは、粉末ブレンドの総重量に基づいて、84~90重量%である。第16の実施形態では、第9、第10、第11及び第12の実施形態に記載の粉末ブレンド中の開示されたフマル酸ジロキシメル粒子の重量パーセントは、粉末ブレンドの総重量に基づいて、82~90重量%である。第17の実施形態では、第9、第10、第11及び第12の実施形態に記載の粉末ブレンド中の開示されたフマル酸ジロキシメル粒子の重量パーセントは、粉末ブレンドの総重量に基づいて、60~92.5重量%(例えば、70~92.5重量%、75~92.5重量%、80~92.5重量%、85~92.5重量%、または87.5重量%)である。
【0030】
第18の実施形態では、本発明は、実施形態1~8のいずれか1つに記載の開示されたフマル酸ジロキシメル粒子;または実施形態9~17のいずれか1つに記載の開示されたフマル酸ジロキシメルブレンドを含む錠剤である。開示された錠剤は「高負荷」である、すなわち、それらは、60重量%、60~65重量%、65~70重量%、70~75重量%、75~85重量%、85~87.5重量%、87.5重量%、87~88重量%、85~89重量%、84~90重量%、82~90重量%、70~92.5重量%、80~90重量%、60~92.5重量%または70~92.5重量%の開示されたフマル酸ジロキシメル粒子を含む。
【0031】
方法
開示されたフマル酸ジロキシメル粒子を製造する方法は、本発明に含まれる。これらの方法により、高負荷錠剤の調製に好適なフマル酸ジロキシメル粒子を製造する。この方法は、スラリー溶媒中で前粉砕されたフマル酸ジロキシメル粒子のスラリーを湿式粉砕ステップに供して、粉砕湿式フマル酸ジロキシメル粒子を製造すること;及び粉砕湿式フマル酸ジロキシメル粒子を熟成溶媒中で熟成ステップに供して、開示されたフマル酸ジロキシメル粒子を製造することを含む。粉砕及び熟成ステップは、高負荷錠剤化に好適な粒子を得るのに、例えば、開示されたフマル酸ジロキシメル粒子を得るのに好適な条件下で行われる。好適な条件には、粉砕ステップに好適な剪断及び混合、ならびに好適な溶媒、温度、及び粉砕及び熟成期間が含まれる。これらの条件を、以下でさらに詳細に説明する。
【0032】
「前粉砕されたフマル酸ジロキシメル粒子」とは、湿式粉砕及び熟成前のフマル酸ジロキシメル粒子を指す。任意選択で、湿式粉砕ステップの前に、前粉砕されたフマル酸ジロキシメル粒子を再結晶化する。例えば、前粉砕されたフマル酸ジロキシメルを、粒子が溶媒に溶解する温度(70~80Cなど)で、十分な量の酢酸イソプロピル(重量で1:3~1:4など)に溶解することができる。溶液は任意選択で濾過する。次に、溶液を好適な温度まで冷却して、前粉砕されたフマル酸ジロキシメルを沈殿させる。
【0033】
「ニートフマル酸ジロキシメル粒子」は、意図的に加えられた添加物を全く有していないフマル酸ジロキシメル粒子を指す。したがって、「ニートフマル酸ジロキシメル粒子」は、乾式粉砕または湿式粉砕及び粉砕物の熟成方法のいずれかから得ることができ、ブレンドに組み込む前にニート粒子として試験することができる。
【0034】
「湿式粉砕」とは、スラリー溶媒中のフマル酸ジロキシメル粒子のスラリーを、所望の粒径減少、例えば35~70μmのD50が達成されるまで、好適な剪断力、混合速度及び温度で混合に供することを指す。あるいは、所望の粒径は、D50が35~66μm;35-55μm;35-60μm;または55~66μmの間である。スラリー溶媒及び湿式粉砕温度は、フマル酸ジロキシメルがスラリー溶媒に実質的に不溶性となるように選択される。
【0035】
「実質的に不溶性」とは、粉砕温度でスラリー溶媒中にフマル酸ジロキシメルが実質的に溶解しないことを意味する。実質的な不溶性には、粒子が粉砕される温度でのスラリー溶媒中の溶解度が44mg/mL未満、好ましくは28mg/mL未満、及びさらにより好ましくは22mg/mL未満であるものが含まれる。酢酸イソプロピルは、-5C~30Cの間の湿式粉砕温度で前粉砕されたフマル酸ジロキシメル粒子に好適なスラリー溶媒である。使用することができる他の溶媒には、酢酸エチル、メチルエチルケトン、酢酸イソブチル、トルエン、及びアセトン、ならびに水、1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エタノール、ヘプタン、t-ブタノール、アセトニトリル、及びメチルtert-ブチルエーテル、などの貧溶媒と1つ以上の溶媒との組み合わせ、が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
湿式粉砕ステップは、スラリー溶媒中のフマル酸ジロキシメル粒子のスラリーを、11,500s-1~160,000s-1の剪断力、分当たり回転数(RPM)600~1500の混合速度での混合に供することを含む。あるいは、湿式粉砕ステップは、スラリー溶媒中のフマル酸ジロキシメル粒子のスラリーを、0C~20Cの温度で、11,500s-1~100,000s-1の剪断力、分当たり回転数(RPM)1000~1300の混合速度での混合に供することを含む。あるいは、湿式粉砕ステップは、スラリー溶媒中のフマル酸ジロキシメル粒子のスラリーを、11,500s-1~25,000s-1の剪断力、分当たり回転数(RPM)1000~1300の混合速度での混合に供することを含む。湿式粉砕は、市販の高剪断ミキサー、例えばインライン高剪断ミキサー(例えば、Silverson VersoインラインミキサーまたはIKA MagicLabインラインミキサー)を使用して実行することができる。
【0037】
湿式粉砕ステップは、-5C~30Cの温度で行うことができる。別の態様では、湿式粉砕ステップは、-5C~15C、15C~25C、または25C~30Cの温度で行う。
【0038】
「熟成」とは、粉砕フマル酸ジロキシメル粒子を、粉砕粒子が熟成される温度でフマル酸ジロキシメルが部分的に可溶性である熟成溶媒中で加熱することを指す。「部分的に可溶性」とは、熟成が起こる温度にて溶媒中でフマル酸ジロキシメル粒子が部分的に溶解し、その後再沈殿することを意味する。部分溶解度には、粒子が熟成される温度での熟成溶媒中の55mg/mL~107mg/mLの間の溶解度が含まれる。酢酸イソプロピルは、35C~50Cの間、あるいは38C~49C、別の代替では40C~48Cの間の温度での熟成プロセスに好適な溶媒である。使用することができる他の溶媒には、酢酸エチル、メチルエチルケトン、酢酸イソブチル、トルエン、及びアセトン;ならびに水、1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エタノール、ヘプタン、t-ブタノール、アセトニトリル、及びメチルtert-ブチルエーテル、などの貧溶媒と1つ以上の溶媒との組み合わせ、が含まれるが、これらに限定されない。熟成により、粒径が増加し、粒径分布(スパンなど)が減少する。熟成プロセスは、所望の粒径、例えば70~130μmのD50が達成されるまで継続する。あるいは、所望の粒径は、70~130μmのD50である。別の代替では、所望の粒径は、88~113μmのD50である。熟成に好適な時間には、2~10時間、または2~8時間、または2~4時間が含まれる。
【0039】
この方法は、熟成ステップの後に冷却ステップを任意選択で含む。熟成ステップの後、混合物を-10C~20Cの間、あるいは-5C~10Cの間に冷却することができる。次に、フマル酸ジロキシメル粒子を単離する。
【0040】
この方法を以下の実施例によって説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例
【0041】
実施例1:乾式粉砕粒子の比較
フマル酸ジロキシメル粒子は、ハンマー先端速度が47~62m/秒(3500~6000RPM)の範囲、送り速度が1.4~7.2kg/分の範囲である従来のハンマーミル乾式ミルを使用して処理した。2.9~3.4という比較的大きなスパンは、各試料内の粒子にはサイズの均一性がないことを示している。乾式粉砕粒子の4つの商用ロットの粒径分布データを表1に示す。
【表2】
【0042】
実施例2:湿式粉砕及び熟成粒子
507kgのフマル酸ジロキシメルAPIを、80Cで2771kgの酢酸イソプロピルに溶解し、研磨濾過した。次に、溶液を約3時間(h)で40Cに冷却してフマル酸ジロキシメルを部分的に結晶化し、次いで55Cに再加熱し、その温度で30分間保持し、その後0に冷却した。
【0043】
一定期間撹拌した後、スラリーを反応器の底部から高剪断ミキサー(IIKA、Staufen、Germanyから入手可能なIKA type DR2000-30)に通して再循環させ、反応器に戻した。ミキサーは、スラリー温度を、20を超えないように維持しながら、1000~1300RPMで、11,500s-1~25,000s-1内の剪断値で操作した。ミキサーを通過したスラリーの総質量または体積を質量流量計で監視し、少なくとも20体積回転後に粉砕機を停止した。粉砕は、粒径の中央値が35~60ミクロン以内になったときに完了したと考えた。PSDデータは、以下の表2に「湿式粉砕後のPSD」として示されている。
【0044】
粉砕ステップが完了した後、500kgの酢酸イソプロピルを加えて再循環ラインをすすぎ、反応器内の粉砕スラリーと合わせた。得られたスラリーを、38~50Cの範囲内の選択された温度で2時間以上熟成させ、10~30分間保持し、2~8時間かけて0Cに冷却した。生成物を濾過し、酢酸イソプロピル439kgで洗浄し、真空下40~50Cで乾燥させた。PSDデータを以下の表2に「最終PSD」として示す。
【表3】
【0045】
実施例1の比較乾式粉砕フマル酸ジロキシメルの粒径及び粒径分布(PSD)と比較すると、実施例1の比較粒子のD10(値:16~18μm)が、湿式粉砕及び熟成粒子の場合のより高いD10(値:37.2~41.0μm)と比較して低いことが明らかである。さらに、湿式粉砕及び熟成粒子のより低いスパン(値:1.4~1.7)と比較して、実施例1の比較粒子のスパンはより高い(値:2.9~3.4)。したがって、湿式粉砕及び熟成粒子は、乾式粉砕粒子よりも良好な錠剤形成特性を有することが予測される。
【0046】
走査型電子顕微鏡を使用して、乾式粉砕と湿式粉砕による粒子を図1に示した。走査型電子顕微鏡(SEM)(JEOL USA Inc. Peabody, MA Model JSM-6510LV]を350X~500Xの倍率で使用して、画像を収集した。フマル酸ジロキシメルの2つの乾式粉砕ロット(写真左及び中央)に粒子微粉が存在することに注目されたい;これらのロットには、非常に不規則な形状の粒子も含まれている。対照的に、フマル酸ジロキシメルの湿式粉砕バッチ(写真右)には粒子微粉がほとんどなく、粒子は規則正しく平らな立方体の形状をしている。
【0047】
実施例3:ニートフマル酸ジロキシメル粒子の流れ関数係数及び凝集力の比較
流れ関数係数(FFc)を上記のように測定して、実施例1(乾式粉砕)及び実施例2(湿式粉砕及び熟成)のニートフマル酸ジロキシメル粒子の流動特性を定量した。粒子は、製造業者の手順に従って、テスターに付属のソフトウェアを使用して、Jenike-Johanson RST-XSリング剪断試験機で試験した。各粒子状または粉末試料を、試験機の環状トラフに(一度に1つずつ)充填した。まず、粉末ブレンドに3kPaの予荷重力を加えた。続いて、0.5kPa~3kPaの範囲の荷重を加えて、各試料の流動特性を判定した。リング剪断試験機は、破壊包絡線、FFc(すなわち、破壊包絡線の傾き)、及び凝集力(すなわち、外挿された破壊包絡線のY切片)を算出する。
【0048】
当業者には理解されるように、FFc及び凝集力は粒子のロットごとに異なる;したがって、個々のロットの値と、所与の方法で処理されたさまざまなロットの材料から得られた測定値の均一性または厳密性の両方に注目することが重要である。
【0049】
図2は、実施例1の比較ニート乾式粉砕フマル酸ジロキシメルを用いて作製された4ロットのニートフマル酸ジロキシメル粒子(灰色の棒)と、実施例2の4ロットのニート湿式粉砕及び熟成フマル酸ジロキシメル(黒色の棒)とのFFcを比較する棒グラフである。4つの乾式粉砕ロットの平均FFcは4未満であったのに対し、4つの湿式粉砕ロットの平均FFcは約4であった。詳細な説明で上述したように、4は易流動性粉末の閾値範囲であるため、FFcが4であるのは重要である。したがって、ニート湿式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子は、比較ニート乾式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子よりも流動性が改善された。さらに重要なことには、開示された粒子は、FFcが4以上の自由流動性粉末として分類される。
【0050】
ハンマーミル乾式プロセスから得られた4ロットのニートフマル酸ジロキシメル粒子対4ロットのニート湿式粉砕及び熟成フマル酸ジロキシメル粒子の凝集力の比較を、図3に示す。凝集力が低いほど、凝集力が高い試料と比較して試料の流れが良好である。湿式粉砕粒子(黒色の棒)の平均凝集力は219Paであるため、平均凝集力が270Paの乾式粉砕粒子(灰色の棒)よりも凝集性が低くなる。フマル酸ジロキシメル粒子の凝集力が低下すると、粒子を含むブレンドの圧縮特性が向上し、保存特性が向上する。さらに、ロット間のばらつきは、比較ロットに対し本発明のロットの方が小さかった。
【0051】
実施例4:粒子の負荷が高い粉末ブレンドの流れ関数係数の比較
実施例2で製造された湿式粉砕及び熟成フマル酸ジロキシメル粒子を使用して、表3の粉末ブレンドの4ロットを作製した。実施例1からの比較乾式粉砕粒子を含有する4つのロットも調製した。
【表4】
【0052】
流れ関数係数はまた、表3に従って作製された粉末ブレンドの流動特性を定量するために使用した。図4は、実施例1の比較乾式粉砕フマル酸ジロキシメルを用いて作製された表3による4ロットのブレンドのFFc(灰色の棒)と、実施例2の湿式粉砕及び熟成フマル酸ジロキシメルを含有する4ロットのブレンドのFFc(黒色の棒)とを比較する棒グラフである。上で述べたように、10を超えるFFc値は、自由流動性粉末であることを示す。湿式粉砕及び熟成フマル酸ジロキシメルブレンドは、乾式粉砕フマル酸ジロキシメルブレンド(平均FFc値は約15)よりも一貫して高いFFc(平均FFc値は約20)を示しており、このことは、約15から約20へのFFcの改善によって証明されるように、湿式粉砕粒子を含有するブレンドが、乾式粉砕フマル酸ジロキシメルを含有する以外の点では同一のブレンドと比較して、より良好な流動特性を有することを意味する。
【0053】
実施例5:錠剤の圧縮プロファイル
配合された粉末ブレンドは、圧縮シミュレーター(Romaco Kilian STYL’ONE、Cologne、Germany)においてさまざまな圧縮力(4~20kN)で圧縮した;模擬打錠機はGEA-Courtoy Modul Pである。2mmの凹面パンチを備えた16チップの工具(Natoli Engineering Company、USA)を使用した。打錠速度は20rpmに設定し、目標錠剤重量は8.5(±0.5)mgであった。調製したミニ錠剤はすべて、さらなる特性評価のために密封されたビニール袋に入れて保存した。
【0054】
錠剤硬度は、テクスチャーアナライザー(Texture Technologies Corp.、USA)での直径圧縮試験の下で測定した。平均錠剤硬度を記録した(n=10)。ハンマーミル乾式プロセスロット対湿式粉砕及び熟成ロットから得られたフマル酸ジロキシメル粒子を使用して作製された錠剤の圧縮プロファイル(硬度対圧縮圧力)の比較を、図5に示す。乾式ミルロット(正方形)及び湿式ミルロット(星印)は、より低い圧縮圧力(10kN未満の圧縮圧力)で同等の圧縮プロファイルを示しており、これは、同じ圧縮圧力で同様の錠剤硬度を有することを意味する。ただし、湿式粉砕ロットのエラーバーは、両方のハンマーミルロットと比較してはるかに小さい。これは、錠剤硬度が乾式粉砕で作製された錠剤よりも均一であることを示している;より均一な硬度は、錠剤のコーティングプロセス及びプレス錠剤の溶解挙動にとって有益である。
【0055】
実施例6:酢酸イソプロピル(IPAC)及びイソプロピルアルコール(IPA)の溶媒混合物中の湿式粉砕及び熟成粒子
55.2kgのフマル酸ジロキシメルを、137.4kgのIPACと183.3kgのIPAからなる溶媒混合物に、75~85Cで溶解した。フマル酸ジロキシメルが完全に溶解した後、混合物を8時間かけて0~5Cに冷却した。次に、得られたフマル酸ジロキシメルのスラリーを、2600~4200rpm(30,000~50,000秒-1以内の剪断値)で操作されるIKA高剪断ミキサータイプDR-2000-10に通してスラリーを再循環させることによって湿式粉砕に供した。23回の体積回転後に再循環を停止し、その後、プロセス中の測定により粒径の中央値がD50=43ミクロンに減少したことが示された。45.8kgのIPA/IPac(6:4体積/体積)混合物をラインリンス液として加えた。合わせたラインリンス液及び反応器内容物を0~5Cで1時間撹拌し、続いて以下の条件で熟成させた:2時間で43Cに加熱し、43Cで2時間保持し、3~5時間で2Cに冷却し、0~5Cでさらに2時間撹拌した。生成物を濾過し、IPA/IPAc(6:4体積/体積)の混合物45.8kgで洗浄し、真空下、35~45Cで20~28時間乾燥させて、以下の粒径分布:D10=40μm、D50=92μm、D90=173μmを有する湿式粉砕フマル酸ジロキシメル生成物50.2kgを得た。
【0056】
実施例1の比較乾式粉砕フマル酸ジロキシメルの粒径及び粒径分布(PSD)と比較すると、実施例1の比較粒子のD10(値:16~18μm)が、この実施例の湿式粉砕及び熟成粒子の場合のより高いD10(値40μm)と比較して低いことが明らかである。さらに、この実施例の湿式粉砕及び熟成粒子のより低いスパン(値:1.4)と比較して、実施例1の比較粒子のスパンはより高い(値:2.9~3.4)。したがって、湿式粉砕及び熟成粒子は、乾式粉砕粒子よりも良好な錠剤形成特性を有することが予測される。
【0057】
実施例7:溶解性能の比較
マルチチップ工具(Natoli Engineering Company、USA)を備えた両面錠プレス(Fette Compacting GmbH、Germany)を使用して、配合された粉末ブレンドをミニ錠剤に圧縮した。ミニ錠剤を除塵して、金属探知機に通した。完成したミニ錠剤をビンに入れ、密封したビンを錠剤コーティング用に準備した。腸溶性コーティングの場合、コーティング溶液は2つの別々の成分で調製した:コーティングポリマーであるEudragitと可塑剤であるクエン酸トリエチル(TEC)の溶液を、60:40イソプロピルアルコール(IPA)/水の混合物のおよそ半分で調製した。タルク及びコロイド状二酸化ケイ素を、60:40イソプロピルアルコール(IPA)/水の混合物の残りの半分に懸濁させた。2つの溶液成分を一緒に混合して、腸溶性コーティング懸濁液を形成した。予熱段階の完了時に、コアの質量に対して15%の理論上の重量増加を達成するために、溶媒ベースの腸溶性コーティングを錠剤コアに適用した。IPA及び水は、フィルムコーティングプロセス中に除去した。胃腸管内でのAPIの放出を制御するために、この腸溶性コーティングの適用を実行した。
【0058】
コーティングミニ錠剤(33錠)を、サイズ0のカプセルにカプセル化した。カプセルをプローブシンカーに挿入し、750mLの脱気した0.1M HCl媒体を各容器に加え、これを酸段階溶解試験のために37C±0.5Cに加熱した。2時間後、さらに200mLの予熱した0.2M三塩基性リン酸ナトリウム溶解媒体を、緩衝液段階溶解試験のために各溶解容器に加えた。溶解分析には、HPLC(Waters Corp、USA)を使用した。
【0059】
ハンマーミル乾式プロセスロット対湿式粉砕及び熟成ロットから得られたフマル酸ジロキシメル粒子を使用して作製された錠剤の溶解プロファイルの比較を、図6に示す。左端の赤いひし形のプロット曲線(湿式粉砕)と青いひし形、正方形及び三角形のプロット曲線(乾式粉砕)は、酸性段階(0~120分)で同等の溶解挙動を示した。ただし、すべての乾式粉砕ロットと比較して、湿式粉砕APIロットから作製された錠剤の溶解(120~200分)は、はるかに速くなる。これは、湿式粉砕API粒子が医薬品に使用された場合に、より良好な溶解性能を有することを示している。このより速い溶解挙動は、均一な粒径分布、滑らかな表面、及び均一なコーティングに起因すると考えることができる。
【表5】
【0060】
図6の左端の曲線に示されているように、湿式粉砕フマル酸ジロキシメル粒子は、130分で50%を超える溶解、140分で70%を超える溶解、150分で90%を超える溶解を示し、160分までにほぼ100%の溶解を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】