(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】サンプリング間隔調整分類ツール
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516929
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022075713
(87)【国際公開番号】W WO2023041678
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509223977
【氏名又は名称】ウニベルジテート ハイデルベルク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト,ゲーザ
(72)【発明者】
【氏名】ジャニシス,エヴァンゲロス
(72)【発明者】
【氏名】ホルシュ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】フント,ハウケ
(72)【発明者】
【氏名】カトゥス,フーゴ
(72)【発明者】
【氏名】ストヤノフ,キリル
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045FB03
2G045JA01
2G045JA03
(57)【要約】
本発明は、急性冠症候群の疑いを呈する対象を評価するための方法に関する。具体的には、本発明は、急性冠症候群が疑われる患者を分類するための方法に関する。本発明の方法は、コンピュータ実装方法として行われてもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性冠症候群が疑われる患者を分類するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)処理ユニットにおいて、診察時に前記患者から第1のサンプルが得られた第1の時点に関する情報を受信する工程、
(b)ディスプレイ上に、
b1)前記患者から第2のサンプルを得るべき第2の時点の提案であって、前記第2の時点が前記第1の時点の約1時間又は約2時間後の間隔内である、第2の時点の提案、及び
b2)前記患者の前記分類に適用されるACS分類アルゴリズムの提案であって、前記ACS分類アルゴリズムが、工程b1)で提案された前記第2の時点に基づく、ACS分類アルゴリズムの提案
を提供する工程、
(c)処理ユニットにおいて、
c1)前記第2のサンプルが得られた実際の時点に関する情報、
c2)前記第1のサンプル中の心臓トロポニンの量に関する値、及び
c3)前記第2のサンプル中の心臓トロポニンの量に関する値
を受信する工程、
(d)前記処理ユニットによって、前記第2のサンプルがb1)の下で前記間隔内に得られたかどうかの分析を行う工程であって、前記サンプルが、前記第1のサンプルの30~90分後に得られた場合、約1時間の間隔内に得られたとみなされ、及び/又は前記第2のサンプルが、前記第1のサンプルの91~150分後に得られた場合、約2時間の間隔内に得られたとみなされる、前記第2のサンプルがb1)の下で前記間隔内に得られたかどうかの分析を行う工程、並びに
(e)前記処理ユニットによって前記患者を分類する工程であって、
e1)工程b1)で提案された前記間隔内に前記第2のサンプルが得られた場合、工程b2)で提案された前記ACS分類アルゴリズムに基づいて前記患者が分類されるか、又は
e2)工程b1)で提案された前記間隔内に前記サンプルが得られなかった場合、工程b2)で提案された前記ACS分類アルゴリズムとは異なるACS分類アルゴリズムによって前記患者が分類される、前記処理ユニットによって前記患者を分類する工程、並びに、任意に、
(f)前記患者の前記分類に関する情報をディスプレイ上に提供する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記サンプルが、血液、血清、又は血漿のサンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b1)で提案された前記第2の時点が、前記第1のサンプルの約1時間後の間隔内にあり、工程b2)で提案される前記ACS分類アルゴリズムが0/1時間アルゴリズムである、請求項1及び2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のサンプルが、前記第1のサンプルの91~150分後以内に得られた場合、工程e2)で適用される前記ACS分類アルゴリズムが0/2時間アルゴリズムである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のサンプルが、前記第1のサンプルの151~210分後以内に得られた場合、工程e2)で適用される前記ACS分類アルゴリズムが0/3時間アルゴリズムである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
工程b)が、前記ディスプレイ上に、第2のサンプルが必要か否かに関する情報を提供することを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
b1)及びb2)の下での前記提案が、前記患者が前記第1のサンプルのみに基づいて分類できない場合に行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、急性冠症候群に罹患している(「ルールイン」)、急性冠症候群に罹患していない(「ルールアウト」)、又は心筋梗塞をルールイン若しくはルールアウトするために更なる分類を必要とする(「観察区域」又は観測区域)として分類される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程f)が、前記ディスプレイ上に、前記患者の更なる分類のために第3のサンプルが必要であるかどうかに関する情報を提供することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のサンプルの後に、前記患者が前記「観察的区域」に分類される場合、第3のサンプルが必要である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程f)が、前記ディスプレイ上に、前記患者から第3のサンプルを得るべき第3の時点の提案を提供することを更に含み、前記第3の時点が前記第1のサンプルの3時間後又はそれ以降である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
処理ユニットにおいて、
g1)前記第3のサンプルが得られた実際の時点に関する情報、及び
g2)前記第3のサンプル中の前記心臓トロポニンの前記量に関する値
を受信することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第3のサンプル中の前記心臓トロポニンの前記値に基づいて、特に前記第1のサンプル中の前記値と前記第3のサンプル中の前記値との間の差に基づいて、前記処理ユニットによって前記患者をルールアウト又はルールインとして分類することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1日当たり複数のACSが疑われる患者を有する救急科における患者管理のための方法であって、前記患者の各々について請求項1に記載の方法の工程a)~f)を行い、それにより患者を
i)心筋梗塞の診断がルールインされ得る(ルールイン)、
ii)心筋梗塞の診断がルールアウトされ得る(ルールアウト)、及び
iii)心筋梗塞をルールイン又はルールアウトするために更なる検査を必要とする(観測区域)
と特定することを含む、方法。
【請求項15】
ACSが疑われる複数の患者のうち心筋梗塞のルールアウト診断を受けた患者の割合を増加させるための方法であって、前記複数の患者に対して請求項1の工程a)~f)を行うことを含む、方法。
【請求項16】
前記対象が、ヒト対象である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記心臓トロポニンが、心臓トロポニンTである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記心臓トロポニンが、心臓トロポニンIである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、工程a)を行う前に、前記対象の前記分類に適した診断プロトコルを選択する工程を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記プロトコルの違反がある場合に、情報が提供される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
急性冠症候群が疑われる患者を分類するための装置であって、前記装置が、処理ユニットと、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムとを含み、前記命令が、前記処理ユニットによって実行されると、前記処理ユニットに、請求項1~20のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法を実施させる、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性冠症候群の疑いを呈する対象を評価するための方法に関する。具体的には、本発明は、急性冠症候群が疑われる患者を分類するための方法に関する。本発明の方法はまた、コンピュータ実装方法として行われてもよい。
【背景技術】
【0002】
背景
米国では、2014年の国立病院救急医療調査1によると、合計690万人の患者が胸痛(CP)のために救急科(ED)を訪問し、更に340万人が息切れのために訪問した。これらの患者の一部のみがACSの最終診断を受け、入院及び侵襲的処置戦略を必要とする。診断的精密検査には、EDへの入院、12誘導心電図(ECG)の登録、心筋損傷を診断又は除外するための血液検査、臨床症候及び病歴の評価、身体検査、並びにACS又は鑑別診断を診断するための他の診断検査が必要である。現在の2020年の欧州心臓病学会(ESC)ガイドライン2は、心筋損傷がルールアウトされない限り、ECG及びバイタルサインについて患者をモニタリングすることを推奨している。傾向分析では、胸痛のためにEDで医学的注意を求めようとする患者の数は増加しているが、確認されたMIの割合は安定しているか、又はわずかに減少している。この傾向は、監視能力、対応のための医師の時間を含むスタッフ能力、及び診察を待っている患者の数の間に不均衡を生じさせる。この不均衡は、しばしば、混雑又は過密とよばれるが、混雑を記述する確立された定義又は数学的方程式は利用できない。EDの混雑は、患者の有害な転帰、患者の満足度、及びケアの質の低下に関連している1。混雑を軽減又は克服するための1つの可能な選択肢は、より早期の患者の処置、すなわち、入院又は退院の決定、並びに再灌流療法を伴う又は伴わない冠動脈造影の決定及びタイミングの促進につながる精密検査の加速である。侵襲的戦略の決定及びタイミングは、死亡又はMIの非常に高い、高い又は低いリスクに関連する変数の考慮を含む個々のリスク層別化に依存する。GRACEスコア等の臨床的多変量スコアの使用は、ESCガイドライン2によって推奨されている。
【0003】
高感度トロポニンアッセイの導入は、小さな心筋梗塞のより正確な診断、並びに分析感度及びアッセイ精度の改善によるより早期の診断を可能にした。呈示時及び6~9時間後に心臓トロポニンI又はTを収集するという以前の推奨は、hs-cTnアッセイが利用可能である場合、診察時に及び3時間後にcTnT又はcTnIを測定するという推奨に置き換えられている3、4。より最近では、120分以内のcTnT又はcTnIの再試験を推奨するより速いプロトコルが、この目的のために検証されたhs-cTnアッセイが使用される場合の代替選択肢としてESCガイドライン2によって推奨されている。hs-cTnアッセイの使用は、診断を加速するだけでなく、血液中のhs-cTnの大きさが心筋損傷の量を反映するので、死亡の短期及び長期リスクを改善することが示された。検証された高速プロトコルの使用、小さな濃度変化を伴う低いhs-cTn値の測定、又は症候の最後のエピソードの3時間超後にEDに示した患者の診察時に検出不能なhs-cTn値(検出限界未満)は、1%以下の誤分類率でMIをルールアウトすることを可能にする4。高速プロトコルはまた、1%未満のフォローアップ死亡のリスク5、及び死亡又はMI等の複合主要有害事象のリスクが低いことを示す。しかしながら、高速プロトコルには、心筋梗塞及び病院からの不当な退院を逃すリスクがある。胸痛発症後3時間以内にACSの疑いを呈する患者は、関連する濃度で血液中に現れる心臓トロポニンの遅延のためにMIを見逃すリスクが特に高い(「トロポニンブラインド期間」)。したがって、患者が症候の発症後3時間以内に存在する場合、60分後の2回目の採血が正しい分類のために必須である。心臓トロポニンのカットオフ及び高速プロトコルにおける濃度変化は、ルールアウト及びルールインに最適な性能をもたらすように構築されており、それによって患者がルールアウトにもルールインにも分類されないグレーゾーンを形成する。この群は、心臓トロポニンの中程度の上昇及び中程度の濃度変化のみを特徴とする。最終的な分類のために、2020 ESCガイドラインは、3時間での3回目の採血を推奨している。加速診断プロトコルの利点は興味深いものであるが、hs-cTnアッセイの世界的な採用及び高速プロトコルの実施は遅れている4。実施の欠如の最も妥当な理由には、特に2017年2月に最初のhs-cTnアッセイとしてhs-cTnTがFDAによって認可されなかった米国における周知の欠如、及びMIを逃した場合又は死亡した場合の訴訟の恐れが含まれる。さらに、ルールアウト後の退院の安全性に関するデータは、主に、医師がhs-cTnアッセイ及びプロトコルの結果を知らされておらず、患者が主治医の裁量で処置された観測記録から生じる3~5。逆に、検証された臨床スコアと組み合わせてhs-cTnの安全性を試験した無作為化介入試験からは、わずかなデータしか入手できない4。最近、従来のリスク指標及び臨床スコアの値の有用性(2020 ESCガイドライン6によるリスク層別化及び侵襲的戦略の指針のために現在推奨されている)は、99パーセンタイル値未満の決定カットオフでhs-cTnアッセイを使用する場合に疑問視されている3、4。したがって、TRAPID AMI試験、APACE試験及びHigh-STEACS試験は、安全性の改善を報告しなかったが、ルールアウト戦略に適格な患者数の減少に起因して、それぞれの迅速なプロトコルの有効性の減少を報告した4。
【0004】
NSTE-ACSの診断のための現在利用可能なプロトコルは、診察時及び後の時点におけるバイオマーカー濃度を組み合わせる。2015 ESCガイドライン6は、ベースライン試験の3時間後にhs-cTnの再試験を推奨しているが、より速いプロトコルが、1又は2時間後に再試験する2020 ESCガイドライン2によって推奨されている。急性心筋損傷の存在及び重症度は、ベースライン値の大きさ及び関連する濃度変化によって反映されるため、血液サンプル間の経過時間は重要である。ベースラインでのカットオフ及び濃度変化基準はプロトコルに依存し、各市販のcTnアッセイ及び再試験の各時点で異なる。
【0005】
例えば、処置する医師は、標準プロトコルとしてED(救急科)にESC 0/1時間アルゴリズムを実装してもよい。予期しない作業負荷、緊急事態、技術的エラー、又はスタッフの休憩を含むいくつかの理由から、再試験の時間は、約60分後ではなく、許容可能な時間遅延、例えば>90分後であり得る。別の例では、看護師は2時間で再検査するが、検査間の実際の時間間隔について医師に通知しない。ESC 0/1時間プロトコルによる濃度変化の解釈は、より長い時間間隔(hs-cTnTの1時間のデルタx対2時間のデルタy)内に発生する場合、より大きな濃度変化は関連性がないとして受け入れられるため、誤りである。したがって、小さな濃度変化に基づいてルールアウトに適格な患者の数は減少するであろう。
【0006】
EDにおける主治医の第2の課題は、hs-cTnIアッセイの標準化がなく、カットオフ値及び濃度変化を市販の各アッセイについて検証しなければならないことを考えると、トロポニン結果の解釈である。したがって、3つの診断カテゴリ(ルールアウト、観察、ルールイン)の定義基準は、使用されるアッセイ及びプロトコルに応じて異なって指定される3。さらに、迅速診断プロトコルは、2回目の採血のタイミング、及び迅速プロトコルを構造化されていない臨床評価の代わりに臨床スコア(加速診断プロトコル、ADP)と一緒に使用しなければならないかどうかに関して異なる。診断のための男性及び女性の性別特異的カットオフ、並びに年齢の上昇、既存のCAD、基礎構造的心疾患、又は慢性腎臓疾患等のベースラインhs-cTn濃度に影響を及ぼし得る他の患者特性を考慮する推奨に関しても違いが存在する。現在、臨床ルーチンにおいて少なくとも5つの異なる診断戦略が使用されている。
【0007】
EDの医師の第3の課題は、医師及び医療スタッフの作業負荷を増加させ、長い待ち時間に起因して患者の満足度を低下させる非特異的な胸痛を有する患者の数の増加に対処することである。高速プロトコルは、個別化された、より速くより正確な分類を可能にし、これにより、より早期の患者の配置、より高いガイドライン順守、及びコスト効率を改善することによって、忙しいEDにおける過密(「混雑」)を減少させるのに特に役立つ。
【0008】
採血間の時間間隔が混雑又はインフラストラクチャの問題によって混乱する可能性があるため、個々のEDにおける戦略の数を減らすという考えは困難である。ヒューマンエラー又は意識不明の結果による連続cTnの誤った解釈のために診断を見逃す可能性は、医師がポケットカード、ポスター、又は電子支援の形で解釈支援を受けない限り、かなり高い。したがって、以前の刊行物は、ベースライン及びフォローアップのhs-TnT又はhs-cTnIに関する連続値を用いてMACEの診断及び予後判定を可能にするハードウェア及び電子ツールを導入した7。他のものは、ツリーベースの機械学習に基づいてACSの個別化診断及びタイプ1MIの予測を可能にするソフトウェアアプリケーション上の機械学習アルゴリズムを公開している84。入力変数は、年齢、性別、対になった高感度心臓トロポニンI濃度及び心臓トロポニン濃度の変化率を含む8。
【0009】
本発明の基礎となる研究では、ACSの疑いを呈する患者の評価を改善する方法が開発された(実施例セクションも参照)。具体的には、異なる採血スキームに基づいてACSのルールイン、観察、及びルールアウトの分類を可能にする分類方法(本明細書では「本発明の方法」ともよばれる)が確立された。この方法は、異なるルールの計算を統合するだけでなく、次の採血のための対応する上限及び下限の間隔を有する最適な時点を提案し、意図されたプロトコルではなく使用された実際のプロトコルに基づいて所見の正しい方法解釈を提供する。さらに、それは、追加の採血が必要であるかどうか、例えば、診断用の第1のサンプルの後の第2の採血、又は2回の採血後に分類が不可能である場合の第3の採血を提供する。このツールにより、ACS分類がガイドラインの推奨(品質管理及びガイドラインの遵守)に従って正しく実施されたかどうかを追跡し、どの時点でプロトコル違反が発生したかを開示することができる。したがって、ツールは、意図されたプロトコルのステップアップ又はステップダウン、例えば0/1時間から0/2時間若しくは0/3時間又はその逆を提供する。分類方法は、心筋梗塞のルールアウト診断を受けた患者の割合を増加させることができるので有利である。結果として、ルールアウトされた患者の割合が高くなると、かなりの割合の低リスク患者を退院させる機会が増加し、ルールイン又は観察区域カテゴリに誤って割り当てられた患者における正当でない処置及び不必要な侵襲的処置が減少する(
図2Aを参照、
図2Bには棒グラフが示される)。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明は、急性冠症候群が疑われる患者を分類するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)処理ユニットにおいて、診察時に患者から第1のサンプルが得られた第1の時点に関する情報を受信する工程、
(b)ディスプレイ上に、
b1)患者から第2のサンプルを得るべき第2の時点の提案であって、第2の時点が第1の時点の約1時間又は約2時間後の間隔内である、第2の時点の提案、及び
b2)患者の分類に適用されるACS分類アルゴリズムの提案であって、ACS分類アルゴリズムが、工程b1)で提案された第2の時点に基づく、ACS分類アルゴリズムの提案
を提供する工程、
(c)処理ユニットにおいて、
c1)第2のサンプルが得られた実際の時点に関する情報、
c2)第1のサンプル中の心臓トロポニンの量に関する値、及び
c3)第2のサンプル中の心臓トロポニンの量に関する値
を受信する工程、
(d)処理ユニットによって、第2のサンプルがb1)の下で間隔内に得られたかどうかの分析を行う工程であって、サンプルが、第1のサンプルの30~90分後に得られた場合、約1時間の間隔内に得られたと見なされ、及び/又は第2のサンプルが、第1のサンプルの91~150分後に得られた場合、約2時間の間隔内に得られたと見なされる、第2のサンプルがb1)の下で間隔内に得られたかどうかの分析を行う工程、並びに
(e)処理ユニットによって患者を分類する工程であって、
e1)工程b1)で提案された間隔内に第2のサンプルが得られた場合、工程b2)で提案されたACS分類アルゴリズムに基づいて患者が分類されるか、又は
e2)工程b1)で提案された間隔内にサンプルが得られなかった場合、工程b2)で提案されたACS分類アルゴリズムとは異なるACS分類アルゴリズムによって患者が分類される、処理ユニットによって患者を分類する工程、並びに、任意に、
(f)患者の分類に関する情報をディスプレイ上に提供する工程
を含む、方法に関する。
【0011】
本発明の方法は、更なる工程を含むことができる。このような工程は、工程f)の後の工程a)~f)のうち、工程a)の前に行うことができる。
【0012】
患者を分類するための適切なプロトコルの選択
例えば、本発明の方法の工程a)を行う前に、患者の分類に適した診断プロトコルを、例えばユーザによって選択することができる。診断プロトコルの選択に関する情報(並びに診断プロトコルに関する情報)は、典型的には、処理ユニットによって受信される。当業者に知られているように、急性冠症候群が疑われる患者の分類のための異なる診断プロトコルが存在する。そのようなプロトコルは当技術分野で周知であり、本発明の方法で実施することができる。好ましくは、診断プロトコルは、0/1時間、0/2時間、又は0/3時間プロトコル、特に0/1時間又は0/2時間プロトコルである。プロトコルには、例えば、トロポニン検査の時期の違いに関する情報、分類のためのトロポニンのカットオフ値及び濃度変化に関する値に関する情報が含まれる。さらに、プロトコルは、最後の症候性エピソードのタイミング(及び分類にこのタイミングをどのように使用するか)に関する情報を含む。カットオフ値及び濃度変化値は、プロトコルに依存し得る。いくつかの実施形態において、分類を示すカットオフ値及び濃度変化値は、アッセイに依存し、例えば、アッセイ特異的値が存在し得る。さらに、プロトコルは、男性及び女性に関する性別特異的カットオフ値を有し得る。あるいは、診断プロトコルは、心臓トロポニンに関する性別に依存しないカットオフ値を含み得る。
【0013】
米国アプリケーションのため、FDAは、不適切な精度のために検出の限界で高感度心臓トロポニンの報告を拒絶する。したがって、報告できる最低濃度は、10%以下の不正確さで心臓トロポニンの測定を可能にするブランクの限界である。さらに、FDAは、一般的な性別に依存しない正常値の99パーセンタイル上限の代わりに、男性及び女性のための性別特異的カットオフの使用を推奨している。例えば、報告の限界、正常の単一の99パーセンタイル上限、男性及び女性の性別特異的カットオフに関する値は、Roche Diagnosticsの高感度心臓トロポニンTアッセイについて、それぞれ6ng/L、19ng/L、22及び14ng/Lである。高感度心臓トロポニンTは、そのFDA認可2017の前に多くの米国の病院で使用されていたため、多くの臨床医は、ESCによって提案された基準に従って患者をトリアージすることを好む。他の人々は、通常のカットオフの性別特異的な99パーセンタイル上限の不都合な実施を嫌うが、FDAによって提案されている単一のカットオフの使用を好む。したがって、米国特異的診断プロトコルの実施に関してだけでなく、米国における単一の性別非依存的カットオフに対する性別特異的カットオフの使用に関しても不均一性がある。
【0014】
したがって、本発明の方法は、対象の分類に適したプロトコルの選択から開始することができる。この工程は、典型的には工程a)の前に行われる。例えば、米国バージョン(FDAが推奨するプロトコル等)又は非米国バージョン(ESCが推奨するプロトコル等)である。さらに、性別特異的カットオフ又は性別非依存的カットオフを選択することができる。上記のように、そのようなプロトコルは当技術分野で周知である。例示的なプロトコルを以下の表C1、C2及びC3に示す。いくつかの実施形態において、プロトコルは、これらの表に示されるプロトコルである。
患者の更なる分類(「観察的区域」に分類された場合)
【0015】
さらに、上記方法を行った後に、追加の工程を行うことができる。例えば、第2のサンプル(工程e)の後に「観察的区域」に分類された患者には、第3の採血が必要とされ得る。そのような患者は、(好ましくは処理ユニットによって)第3の血液サンプルに基づいて更に分類することができる。
【0016】
したがって、工程f)は以下の通りであり得る。
【0017】
f)患者の分類に関する情報をディスプレイ上に提供し、任意に、患者の更なる分類に第3のサンプルが必要であるかどうかに関する情報を提供する。典型的には、情報は処理ユニットによって提供される。
【0018】
典型的には、患者が第2のサンプルの後に「観察的区域」に分類される場合、すなわち、患者がルールアウト基準又はルールイン基準を満たさないために第2の血液サンプルの後にACS分類が不可能である場合、第3のサンプルが必要である。典型的には、第2のサンプルの後に患者がルールアウト又はルールインとして分類される場合、第3のサンプルは不要である。
【0019】
患者が「観察的区域」に分類される場合、工程f)は、例えばディスプレイ上に、第3のサンプルを患者から得るべき第3の時点の提案を提供することを更に含んでもよく、第3の時点は第1のサンプルの3時間後以降である。
【0020】
後続の工程g)は、好ましくは、(その)処理ユニットにおいて、
g1)第3のサンプルが得られた実際の時点に関する情報、及び
g2)第3のサンプル中の心臓トロポニンの量に関する値
を受信することを含む。
【0021】
後続の工程h)は、好ましくは、
(h)処理ユニットによって患者をルールアウト又はルールインとして分類することを含む。好ましくは、患者は、第3のサンプル中の心臓トロポニンの値に基づいて、特に第1のサンプル中の値と第3のサンプル中の値との間の差に基づいて、ルールアウト又はルールインとして分類される。
【0022】
好ましくは、分類は、第1のサンプルの3時間後又はそれ以降に第3のサンプルが得られた場合にのみ行われる。これは、処理ユニットによって計算することができる。第3のサンプルが第1のサンプルの後よりも少なく取得された場合、更なる分類が不可能であるという情報をディスプレイに提供することができる(プロトコルの違反、次の段落も参照)。
【0023】
プロトコルの不遵守に関する情報の提供
一実施形態において、ツール、すなわち本発明の方法は、プロトコル/ガイドラインの遵守及びプロトコル違反に関する透明な情報を提供し、すなわち、a)ガイドラインによって要求され推奨される2回目又は3回目の採血を行わないこと、及びb)プロトコル要件を超える過剰な採血は、より高い労働コスト及び検査室コスト、追加の不必要な観測時間、処置までの不必要な遅延、すなわち入院、退院又は紹介、冠動脈造影の指示及びタイミング、追加の精密検査を引き起こす。プロトコルに違反している場合、例えば、必要な第2又は第3のサンプルがないため、医師に違反を知らせることができる(例えば、ディスプレイ上の警告標識及び/又は音声警告によって)。例えば、初期の提示者(第1のサンプルを採取する前の胸痛の発症後3時間未満)のルールアウトに必要な2回目の採血が欠落している可能性がある。例えば、第2のサンプル後に「観察的区域」に分類された患者に必要な第3の採血が欠落している可能性がある。対照的に、プロトコル要件を超える追加の採血は回避することができる。注目すべきことに、追加の採血は必ずしも不適切ではなく、標準的なプロトコルによる正しい分類についての疑いが残るときはいつでも主治医の裁量で指示されるべきである。
【0024】
追加の工程
好ましくは、本発明の方法の工程(b)は、患者を分類するために第2のサンプルが必要であるか否かに関する情報をディスプレイ上に提供する工程を更に含むことができる。例えば、第1のサンプル中の心臓トロポニン濃度がLoD未満であり、かつ、第1のサンプルが得られる3時間以上前に胸痛の発症が分かっている場合、患者は「ルールアウト」として分類され、すなわち、心筋梗塞はルールアウトされる。対照的に、サンプル中の52ng/L以上のトロポニンは、患者を「ルールイン」として瞬時に分類する。したがって、第1のサンプル中の心臓トロポニンの量に基づいて患者を分類することができない場合、第2のサンプルのみが必要である。言い換えれば、患者が第1のサンプルに基づいて「ルールアウト」又は「ルールイン」として分類され得る場合、第2のサンプルは不要である。第2のサンプルが必要であるか否かに関する情報は、不要な第2の採血を回避することを可能にし、それによってスタッフの時間及び検査室のコストを削減し、EDの滞在時間を短縮し、ルールアウト後の早期退院を促進し、又はルールインの場合の侵襲的戦略(冠動脈造影等)の指示を容易にする。
【0025】
好ましくは、工程b1)及びb2)の提案は、第2のサンプルが必要な場合、すなわち、第1のサンプル中の心臓トロポニンの量に基づいて患者を(「ルールアウト」又は「ルールイン」として)分類することができない場合に行われる。第1のサンプルの量に基づいて患者がルールイン又はルールアウトされる場合、患者の分類に関する情報をディスプレイ上に提供することができる。この場合、本発明の方法の更なる工程を行う必要はない。しかしながら、一実施形態において、検査される患者は、第1のサンプルに基づいて「ルールイン」又は「ルールアウト」として分類することができない患者である。
【0026】
したがって、本発明の方法の工程b)は、好ましくは、第1のサンプルのみに基づいて患者を分類することができない場合にのみ行われる。したがって、工程bは以下の通りであり得る。
b)ディスプレイ上に、
b1)第1のサンプルのみに基づいて患者を分類することができない場合に患者から第2のサンプルを得るべき第2の時点の提案であって、第2の時点が第1の時点の約1時間又は約2時間後の間隔内である、第2の時点の提案、及び
b2)患者が第1のサンプルのみに基づいて分類することができない場合に、患者の分類に適用されるACS分類アルゴリズムの提案であって、ACS分類アルゴリズムが、工程b1)で提案された第2の時点に基づく、ACS分類アルゴリズムの提案
を提供する。
【0027】
したがって、場合によっては、患者は、既に第1のサンプルに基づいて分類することができる(ただし、既に第1のサンプルに基づいて試験対象を分類することはできないことが想定される)。
【0028】
したがって、本発明の方法の工程e)は以下の通りであり得る:
(e)処理ユニットによって患者を分類する工程であって、
e1)c2)の下で導出されたhs-cTn値がアッセイ特異的即時ルールアウトカットオフ未満であるか、若しくはアッセイ特異的即時ルールインカットオフを超える場合、患者はACS分類0/1時間アルゴリズムに基づいて分類されるか、
e2)工程b1)で提案された間隔内に第2のサンプルが得られた場合、工程b2)で提案されたACS分類アルゴリズムに基づいて患者が分類されるか、又は
e3)工程b1)で提案された間隔内にサンプルが得られなかった場合、工程b2)で提案されたACS分類アルゴリズムとは異なるACS分類アルゴリズムによって患者が分類される。
【0029】
前述の方法の好ましい実施形態では、工程b1)で提案された第2の時点は、第1のサンプルの約1時間後の間隔内にあり、工程b2)で提案されたACS分類アルゴリズムは0/1時間アルゴリズムである。
【0030】
上記方法の好ましい実施形態において、第2のサンプルが、第1のサンプルの91~150分以内の後に得られた場合、工程e2)で適用されるACS分類アルゴリズムは0/2時間アルゴリズムである。
【0031】
上記方法の好ましい実施形態において、第2のサンプルが、第1のサンプルの151~210分以内の後に得られた場合、工程e2)で適用されるACS分類アルゴリズムは0/3時間アルゴリズムである。
【0032】
前述の方法の好ましい実施形態では、適用されるACS分類アルゴリズムは、0/1又は0/2時間アルゴリズムの第2の測定がルールアウト又はルールインできない場合、第1のサンプルの3時間後又はそれ以降の第3のサンプルのサンプリングである。
【0033】
好ましい実施形態では、対象は、ヒト対象である。
【0034】
好ましい実施形態では、サンプルは、血液、血清又は血漿サンプルである。
【0035】
好ましい実施形態では、対象は、救急科でACSの症候を呈する対象である。
【0036】
本発明は更に、1日に複数のACSが疑われる患者を有する救急科における患者管理のための方法であって、前記方法が、前記患者の各々について請求項1に記載の方法の工程a)~f)を行い、それにより患者を
i)心筋梗塞の診断がルールインされ得る(ルールイン)、
ii)心筋梗塞の診断がルールアウトされ得る(ルールアウト)、及び
iii)心筋梗塞をルールイン又はルールアウトするために更なる検査を必要とする(観測区域)
と特定することを含む、方法に関する。
【0037】
本発明は更に、ACSが疑われる複数の患者のうち心筋梗塞のルールアウト診断を受けた患者の割合を増加させるための方法であって、前記方法が、前記複数の患者に対して請求項1の工程a)~f)を行うことを含む、方法に関する。
【0038】
定義
以上のように、本発明は、予後診断法、予測法及び分類法の3つの方法を包含する。上記で提供された定義及び説明は、別段の指定がある場合を除き、全ての方法に適用されるものとする。
【0039】
本明細書及び請求項において使用される場合、「a」又は「an」は、それが使用される文脈に依存して、1つ以上を意味することができることが理解されるべきである。したがって、例えば、「細胞」への言及は、少なくとも1つの細胞が利用され得ることを意味し得る。
【0040】
更に、本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの」という用語は、この用語に続いて言及される項目の1つ以上が本発明に従って使用され得ることを意味することが理解されよう。例えば、この用語が、少なくとも1つの供給液が使用されるべきであることを示す場合、これは、1つの供給液又は1を超える供給液、すなわち、2つ、3つ、4つ、5つ又は任意の他の数の供給液として理解され得る。この用語が言及する項目に応じて、当業者は、上限が存在する場合、この用語がどの上限を指し得るかについて理解する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当該用語の後に記載された任意の数に関して、その中で技術的効果を達成することができる区間精度が存在することを意味する。よって、本明細書において言及されている約は、好ましくは、精密な数値又は前記精密な数値の辺りの±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、及びよりいっそう好ましくは±5%の範囲を指す。一実施形態において、この用語は正確な値を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、限定的な意味で理解されるべきではない。この用語は、むしろ、言及された実際のアイテムよりも多くのアイテムが存在し得ることを示し、例えば、特定の工程を含む方法を指す場合、更なる工程の存在は除外されない。しかし、「含む(comprising)」という用語はまた、言及される要素のみが存在する実施形態を包含し、すなわちそれは「からなる(consisting of)」の意味において限定的な意味を有する。
【0043】
本発明による方法は、好ましくはエクスビボ法であり、すなわちヒト又は動物の体で実施する必要はないことが理解されよう。むしろ、本方法は、以前に収集された既存の患者データに基づく。例えば、本方法はインビトロ法であることが想定される。さらに、それらは、上記で明示的に述べられたものに加えて、工程を含んでもよい。例えば、更なる工程は、処置前のサンプルを採取すること、若しくは上記方法で得られた結果を評価することに関する場合がある。本方法は、手動で行われてもよく、又は自動化によって支援されてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、コンピュータ実装方法である。コンピュータ実装方法では、通常、本発明のコンピュータ実装方法の全ての工程は、コンピュータ又はコンピュータネットワークの1つ以上の処理ユニットによって実施される。しかしながら、コンピュータ実装方法は、第1及び第2のサンプル中の心臓トロポニンの量等のサンプル中のマーカーの量の決定等の追加の工程を含み得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「分類する」という用語は、患者をa)急性冠症候群に罹患している患者の群(「ルールイン」)、b)急性冠症候群に罹患していない患者の群(「ルールアウト」)、又は心筋梗塞をルールイン若しくはルールアウトするために更なる評価を必要とする患者の群(「観察区域」又は観測区域)に割り当てることを指す。したがって、「観察する」と分類された患者は、更なる評価を必要とする。例えば、第1のサンプルの約3時間後又はそれ以降に得られたサンプル等の第3のサンプル中の心臓トロポニンの値が提供され得る。
【0046】
分類に基づいて、診断又は治療手段等の適切な手段、例えば、2020のESCガイドライン2(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているもの(例えば、ルールインされる患者に対する特定の侵襲的手段)を開始することができる。
【0047】
当業者によって理解されるように、本発明の方法、すなわち分類によって行われる上述の評価は、通常、調査された個体の100%に対して正しいことを意図していない。この用語は、典型的には、評価が個体の統計的に有意な部分(例えば、コホート研究におけるコホート)に対して正しいことを必要とする。リスク又は尤度の差、コホートの一部又は値の他の差を示す値が統計的に有意であるかどうかは、様々な周知の統計学的評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー検定等を使用して、当業者によって更に難なく決定することができる。詳細は、Dowdy and Wearden,Statistics for Research,John Wiley&Sons,New York 1983に見出される。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、又は0.0001である。
【0048】
「サンプル」という用語は、体液のサンプル、分離された細胞のサンプル、又はパラメータとして決定される必要がある分析物を含むことが知られている若しくは疑われる組織若しくは器官からのサンプルを指す。サンプルは、決定される分析物に依存し得ることが理解されよう。例えば、心臓トロポニンが、本明細書で言及される第1及び/又は第2のサンプル中で決定されるべきである場合、前記サンプルは、典型的には、前記心臓トロポニンを含有するか又は含有すると疑われるサンプルであり得る。典型的なサンプルは、全血サンプル又はその誘導体、例えば血漿又は血清のサンプルであり得る。他の分析物の場合、サンプルは、尿サンプル、あるいは他の体液又は細胞若しくは組織のサンプルであり得る。当業者は、本発明に従って言及されるパラメータを決定するために、所与の分析物にどのサンプルを使用することができるかを十分に認識している。さらに、当業者はまた、例えばランセット、生検等の従来の採血機器によって、そのようなサンプルを患者からどのように採取できるかをよく知っている。「サンプル」及び「採血」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0049】
好ましい実施形態では、サンプルは、血液、血清又は血漿サンプルである。
【0050】
「心臓トロポニン」という用語は、典型的には、ヒト心臓トロポニンT又は心臓トロポニンIを指す。しかしながら、この用語は、前述の特定のトロポニンの変異体、すなわち、好ましくは心臓トロポニンIの変異体、より好ましくは心臓トロポニンTの変異体も含む。このような変異体は、特定の心臓トロポニンと少なくとも同じ本質的な生物学的及び免疫学的特性を有する。特に、それらが本明細書で言及される同じ特異的アッセイによって、例えば前記心臓トロポニンを特異的に認識するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を使用するELISAアッセイによって検出可能である場合、それらは同じ本質的な生物学的及び免疫学的特性を共有する。さらに、本発明に従って言及される変異体は、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加のために異なるアミノ酸配列を有するものとし、変異体のアミノ酸配列は、依然として、好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%、特有のトロポニンのアミノ酸配列と同一であると理解されるべきである。変異体は、対立遺伝子変異体又は任意の他の種特異的ホモログ、パラログ若しくはオルソログであり得る。さらに、本明細書で言及される変異体は、特有の心臓トロポニンの断片、又はこれらの断片が上記で言及される本質的な免疫学的及び生物学的特性を有する限り、上述の種類の変異体を含む。好ましくは、心臓トロポニン変異体は、ヒトトロポニンT又はトロポニンIに匹敵する免疫学的特性(すなわち、エピトープ組成)を有する。したがって、変異体は、心臓トロポニンの濃度の決定のために使用される上述の手段又はリガンドにより認識可能である。したがって、変異体は、心臓トロポニンの濃度を決定するために使用される上述の手段又はリガンドによって認識可能であるものとする。そのような断片は、例えば、トロポニンの分解産物であり得る。リン酸化又はミリスチル化等の翻訳後修飾のために異なる変異体が更に含まれる。好ましくは、トロポニンI及びその変異体の生物学的特性は、アクトミオシンATPアーゼを阻害するか、又はインビボ及びインビトロで血管新生を阻害することができることであり、これは例えば、Moses et al.1999 PNAS USA 96(6):2645-2650により記載されるアッセイに基づいて検出され得る。好ましくは、トロポニンT及びその変異体の生物学的特性は、トロポニンC及びIと複合体を形成するか、カルシウムイオンに結合するか、又は、好ましくは存在する場合にトロポニンC、I及びTの複合体若しくはトロポニンC、トロポニンI及びトロポニンTの変異体により形成される複合体として、トロポミオシンに結合することができることである。トロポニンT又はトロポニンIは、当該分野で周知であり、市販されているイムノアッセイ、例えばELISAによって決定することができる。本発明に従って特に好ましいのは、例えば商業的に利用可能なhs-cTn Tアッセイを使用する、高い感度でのトロポニンTの決定である。あるいは、高感度トロポニンI(hs-cTnI)を用いてもよい。hs-cTnT及びhs-cTnIアッセイは当技術分野で公知であり、例えば、Shah et al(Lancet.2018 Sep 15;392(10151):919-928.doi:10.1016/S0140-6736(18)31923-8.Epub 2018 Aug 28.PMID:30170853;PMCID:PMC6137538)及びMueller C,et al.(Ann Emerg Med.2016;68:76-87)によって開示されており、これらは両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
好ましい実施形態では、心臓トロポニンは心臓トロポニンTである。別の好ましい実施形態では、心臓トロポニンは心臓トロポニンIである。
【0052】
本明細書で使用される場合、「量」という用語は、本明細書で言及される化合物の絶対量、前記化合物の相対量又は濃度の他、それらと相関するか又はそれらから導出することができる任意の値又はパラメータを指す。このような値又はパラメータは、直接的な測定により前記化合物から得られる、全ての具体的な物理的又は化学的特性に由来する強度シグナル値、例えば、質量スペクトル又はNMRスペクトルにおける強度値を含む。さらに、本明細書の他の箇所で明示される間接測定により得られる値又はパラメータ全て、例えば、特異的に結合したリガンドから得られる化合物又は強度シグナルに応答して生物学的読み出しシステムにより決定される応答レベルが包含される。上述の量又はパラメータと相関する値は、全ての標準的な数学的演算によっても得ることができるということを理解されたい。
【0053】
本明細書で言及されるマーカーのレベルを「決定する」又は「測定する」という用語は、本明細書の他の箇所に記載されている適切な検出方法を用いて、バイオマーカーの定量、例えばサンプル中のバイオマーカーのレベルを決定することを指す。一実施形態において、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルは、サンプルをそれぞれのマーカーに特異的に結合する検出剤と接触させ、それによって薬剤と前記マーカーとの間に複合体を形成し、形成された複合体のレベルを検出し、それによって前記マーカーのレベルを測定することによって測定される。
【0054】
本明細書で言及される「患者」又は「対象」は、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。好ましくは、本発明による患者又は対象はヒトである。本発明に従って言及される患者は、好ましくは救急科において、急性冠症候群(ACS)の疑いを呈する患者であるものとする。典型的には、そのような患者は、ACSに罹患しているか、又はACSに伴う少なくとも1つ以上の症候、好ましくは胸痛を示す。特に、対象は急性胸痛を患う。
【0055】
本明細書で使用される場合、「急性冠症候群(ACS)」という用語は、複数の相互に関連する機構を含む冠動脈に影響を及ぼす閉塞性事象を指す。好ましくは、ACSにおいて、プラークは、炎症に応答して破裂又は侵食し、局所的な閉塞性又は非閉塞性血栓症をもたらし得る。この動的閉塞の程度及び可逆性に応じて、ACSの臨床症状は、不安定狭心症(UA)から非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に進行する連続的な一連のリスクを含む。NSTEMIは、心筋損傷の最も感度が高く特異的なバイオマーカーである心臓トロポニンの検出によって認識される、筋細胞壊死を引き起こすのに十分な強度及び持続時間の虚血によってUAと区別される。ACSは、典型的には、好ましくは20分以上の長期の胸痛エピソードを伴う。
【0056】
好ましい実施形態では、試験対象の患者は非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)に罹患していると疑われる。したがって、患者はST上昇型心筋梗塞(STEMI)に罹患していない。STEMIは、少なくとも2つの連続したリード又は新しい束分岐ブロック(右又は左の束分岐ブロック)又は恒久的にペースをつけられたリズムにおける持続的なST部分の上昇の存在下で定義される。NSTEMIに罹患していると疑われる対象は、好ましくは、ECGが陰性であり、したがって、そのようなST上昇を有しない。
【0057】
本明細書で使用される場合、「データ」という用語は、本発明に従ってデータが受信されるパラメータのセットのパラメータを示す数値等のデジタル情報を指す。好ましくは、デジタル数値は、考慮すべき化合物の量、又は血球若しくは血小板レベルの計数を表すものとする。
【0058】
上記のように、分類方法は、工程a)~f)を含む。本発明の方法は、コンピュータ実装方法である。通常、本発明のコンピュータ実装方法の全ての工程は、コンピュータ又はコンピュータネットワークの1つ以上の処理ユニットによって実施される。しかしながら、コンピュータ実装方法は、第1及び第2のサンプル中の心臓トロポニンの量の決定等の追加の工程を含み得る。この方法を、
図1A又は
図1Bに示すように行うことができる。
【0059】
分類方法によれば、試験対象の患者は、例えば救急科で急性冠症候群が疑われる患者である。診察時に、患者からサンプルを採取する。
【0060】
分類方法の工程a)は、診察時に患者から第1のサンプルが得られた第1の時点に関する情報を処理ユニットで受信することを含む。したがって、第1のサンプルは、好ましくは、診察時に得られている。
【0061】
工程b)において、ディスプレイ上に以下の情報が提供される:
b1)患者から第2のサンプルを得るべき第2の時点の提案であって、第2の時点が第1の時点の約1時間又は約2時間後の間隔内である、第2の時点の提案、
b2)患者の分類に適用されるACS分類アルゴリズムの提案であって、ACS分類アルゴリズムが、工程b1)で提案された第2の時点に基づく、ACS分類アルゴリズムの提案。
【0062】
好ましい実施形態では、工程b1)において約1時間の間隔が提案される。したがって、第1のサンプルを得て約1時間(60分)後に第2のサンプルを得ることが提案される。この場合、工程b2)において0/1時間プロトコル、例えば、Collet JP,et al.(Eur Heart J.2020 Aug 29:ehaa575.doi:10.1093/eurheartj/ehaa575及びPickering et al.Circulation.2016;134:1532-1541(両方とも本開示内容全体に関して参照により組み込まれる)に開示されているような欧州心臓病学会(ESC)の0/1時間プロトコルが提案される。
【0063】
分類を示すカットオフ値又は濃度変化(第1及び第2、又は第2及び第3のサンプル間)は、分類のために選択されたプロトコルに依存し得る。表C1、C2及びC3は、それぞれESC及びFDAによって推奨される異なるプロトコル(例えば、0/1時間、0/2時間のプロトコル)に関する値を示す。値は、Roche hs-cTnTアッセイの値である。他のトロポニンアッセイに関する適切な値が確立されているか、又は更なる困難なしに確立され得る。
【0064】
心臓トロポニンTに関して、好ましくは、0/1時間プロトコルについて以下が適用される。
【0065】
第1のサンプル中の12ng/l未満の心臓トロポニンTの量、及び第1のサンプル中の量に対する第2のサンプル中の量の差が3ng/l未満であることは、ACSのルールアウトを示す。第1のサンプルと第2のサンプルの心臓トロポニンTの量の差が5ng/l以上であることは、ACSのルールインを示す。
【0066】
更に、対象が第1のサンプルにおいて12ng/l以上の心臓トロポニンTの量を有し、第2のサンプルと第1のサンプルとの量の差が3ng/l以上5ng/l未満である場合、対象は分類(観測区域)のための更なる評価を必要とすると考えられる。
【0067】
上記の値は、例えば、Roche製のElecsys(登録商標)Troponin T-high sensitive(Roche hsTnt)に適用される。
【0068】
Abbott Architect高感度心臓トロポニンIに関して、好ましくは、以下が0/1時間プロトコルに適用される。
【0069】
第1のサンプル中の5ng/l未満の心臓トロポニンIの量、及び第2のサンプル中の量と第1のサンプル中の量の差が2ng/l未満であることは、ACSのルールアウトを示す。第1のサンプルと第2のサンプルの心臓トロポニンIの量の差が6ng/l以上であることは、ACSのルールインを示す。
【0070】
更に、対象が第1のサンプル中5ng/l以上のトロポニンIの量、例えばAbbott Architect高感度心臓トロポニンIを有する場合、及び第2のサンプル中の量と第1のサンプル中の量との差が2ng/l以上6ng/l未満である場合、対象は分類のための更なる評価(観測区域)を必要とすると考えられる。
【0071】
上記の値は、例えば、Abbott(Architect)からのトロポニンI高感度アッセイに適用される。
【0072】
心臓トロポニンTの0/1時間プロトコルを以下の表C1、C2及びC3に更に記載する。
【0073】
0/1時間間隔についても、他のアッセイを同様に使用することができる。ここで、以下が適用される。
【0074】
第1のサンプル中のAng/l未満の心臓トロポニンの量、及び第2のサンプル中の量と第1のサンプル中の量の差がBng/l未満であることは、ACSのルールアウトを示す。第1のサンプルと第2のサンプルの心臓トロポニンIの量の差がCng/l以上であることは、ACSのルールインを示す。
【0075】
更に、対象が第1のサンプルにおいてAng/l以上の心臓トロポニンの量を有し、第2のサンプルと第1のサンプルとの量の差がBng/l以上Cng/l未満である場合、対象は分類(観測区域)のための更なる評価を必要とすると考えられる。
【0076】
個々のアッセイのパラメータA、B及びCに関する値を以下の表Aに示す。
【表1】
【0077】
別の好ましい実施形態では、工程b1)において約2時間の間隔が提案される。したがって、第1のサンプルを得て約2時間(120分)後に第2のサンプルを得ることが提案される。この場合、Reichlin(Am J Med.2015 Apr;128(4):369-79)に記載される0/2時間プロトコル等の0/2時間プロトコルが、工程b2)において提案される。TnTの0/2時間プロトコルは、Collet JP et al.(2020).Eur Heart J 00,1-79からの適合された下表C1、C2及びC3に更に記載されている。
【0078】
パラメータに関する値は、表Bに見出すことができる。
【表2】
【0079】
心臓トロポニンTに関して、好ましくは、以下が0/2時間アルゴリズムに適用される。
【0080】
第1のサンプル中の14ng/l未満の心臓トロポニンTの量、及び第1のサンプル中の量に対する第2のサンプル中の量の差が4ng/l未満であることは、ACSのルールアウトを示す。第1のサンプルと第2のサンプルの心臓トロポニンTの量の差が10ng/l以上であることは、ACSのルールインを示す。
【0081】
更に、対象が第1のサンプルにおいて14ng/l以上の心臓トロポニンTの量を有し、第2のサンプルと第1のサンプルとの量の差が4ng/l以上10ng/l未満である場合、対象は分類(観測区域)のための更なる評価を必要とすると考えられる。
【0082】
第1のサンプルの後、第2のサンプルを対象から得るものとする。一実施形態において、第2のサンプルは、工程b1)で提案された時間間隔内に得られる。しかしながら、好ましくは、第2のサンプルは、工程b2)で提案された時間間隔内に得られない。
【0083】
分類方法の工程c)では、処理ユニットにおいて以下の情報が取得される:
c1)第2のサンプルが得られた実際の時点に関する情報、
c2)第1のサンプル中の心臓トロポニンの量に関する値、及び
c3)第2のサンプル中の心臓トロポニンの量に関する値。
【0084】
続いて、b1)の間隔内に第2のサンプルが得られたか否かを処理ユニットが解析する工程d)を行う。好ましくは、サンプルは、第1のサンプルの30~90分後、すなわち60分(+30分又は-30分)後に得られた場合、約1時間間隔以内に得られたと見なされる。また、好ましくは、第2のサンプルは、第1のサンプルの91~150分後に得られた場合、約2時間間隔以内に得られたと見なされる。
【0085】
したがって、第1のサンプルの90分後を超えて(例えば、第1のサンプルの91~150分後に)得られた第2のサンプルは、約1時間の間隔以内に得られなかったと見なされる。さらに、第1のサンプルの150分後を超えて(例えば、第1のサンプルの151~210分後に)得られた第2のサンプルは、約2時間の間隔以内に得られなかったと見なされる。
【0086】
本発明によれば、試験対象は、工程b)で提案された時間間隔内に第2のサンプルが得られなかったと見なされる患者であることが特に想定される。例えば、第2のサンプルは、工程b)で提案された時点よりも後の時点で取得されていてもよい。
【0087】
好ましくは、0/1時間アルゴリズムが工程b1で提案されている場合、試験対象は、第2のサンプルが第1のサンプル後の第1のサンプルの90分後(例えば、91~150分)を超えて得られた対象であり得る。
【0088】
好ましくは、試験される対象は、151分後に第2のサンプルが得られた対象であり得る(工程b1で0/2時間アルゴリズムが提案されている場合)。
【0089】
30分未満の間隔は、血液サンプル間の不十分な時間間隔である。
【0090】
分類方法の工程e)は、処理ユニットによって患者を分類することを含む。好ましくは、工程b1)で提案された間隔内に第2のサンプルが得られた場合、工程b2)で提案されたACS分類アルゴリズムに基づいて患者が分類される。
【0091】
より好ましくは、工程b1)で提案された間隔内にサンプルが得られなかった場合、工程b2)で提案されたACS分類アルゴリズムとは異なるACS分類アルゴリズムによって患者が分類される。したがって、本発明は、工程b1)で提案された時間間隔内に第2のサンプルが得られなかった患者を選択する工程を含んでもよい。
【0092】
例えば、工程b1)で提案された第2の時点は、第1のサンプルの約1時間後の間隔内であり得、工程b2)で提案されたACS分類アルゴリズムは0/1時間アルゴリズムである。上記のように、サンプルは、第1のサンプルの30~90分(したがって、60分(-30~+30分を許容))後に得られた場合、約1時間間隔以内に得られたと見なされる。
【0093】
しかしながら、サンプルは、第1のサンプルの90分後を超えて得られた場合、この時間間隔内に得られたとはみなされない。例えば、第2のサンプルは、第1のサンプルの91~150分後以内に得られたものであってもよい。この場合、工程e2)で適用されるACS分類アルゴリズムは、0/2時間アルゴリズムである。あるいは、第2のサンプルは、第1のサンプルの151~210分後以内に得られたものであってもよい。この場合、工程e2)で適用されるACS分類アルゴリズムは、0/3時間アルゴリズムである。
【0094】
0/1時間、0/2時間、及び0/3時間のACS分類アルゴリズムは、当技術分野で公知である。好ましいACS分類アルゴリズムを、表C1、C2及びC3に開示する。
【0095】
好ましくは、本発明の方法は、第1のサンプル中の心臓トロポニンの量に基づいて既にルールイン又はルールアウトされ得る対象を除外する。
【0096】
例えば、対象が3時間以上前に胸痛の最後のエピソードを経験している場合、及び対象が第1のサンプルにおいて検出限界(LoD)未満の心臓トロポニンの量を有する場合、ACSの診断をルールアウトすることができる。したがって、対象は、3時間以上前に胸痛の最後のエピソードを経験したことがある対象ではなく、対象が第1のサンプルにおいて検出限界(LoD)未満の心臓トロポニンの量を有する場合である。心臓トロポニンTのLoDは、5ng/lであり得る。したがって、第1のサンプル中の5ng/l未満の心臓トロポニンの量は、(3時間超前の最後の胸痛エピソードに関連して)ACSのルールアウトを示す。心臓トロポニンIのLoDは、2ng/lであり得る。
【0097】
例えば、第1のサンプル中のACSを示す量の心臓トロポニンを有する対象であれば、ACSの診断をルールアウトすることができる。したがって、対象は、第1のサンプル中のACSを示す量の心臓トロポニンを有する対象ではない。例えば、第1のサンプル中の50ng/l以上の量等、52ng/l以上の量の心臓トロポニン(TnT又はTnI等)が、ACSのルールインを示す。
【表3】
【表4】
【0098】
表C2は、FDAの推奨が考慮される場合の、ESC 0/1、ESC 0/2及びESC 0/3プロトコルを含む2020 ESCガイドラインによって推奨される診断プロトコルの具体的な修正を示す。この実施例は、Roche hs-cTnTアッセイの使用に言及しているが、hs-cTnIアッセイに特異的なアッセイである。この表では、男性(22ng/L)及び女性(14ng/L)についての性別特異的なhs-cTnTの99パーセンタイルカットオフの代わりに、19ng/Lの単一の99パーセンタイルカットオフを適用する。さらに、FDAによって提案された下限値(6ng/L)が適用されている。
【表5-1】
【表5-2】
【0099】
表C3は、FDAの推奨が考慮される場合の、ESC 0/1、ESC 0/2及びESC 0/3プロトコルを含む2020 ESCガイドラインによって推奨される診断プロトコルの具体的な修正を示す。この実施例は、Roche hs-cTnTアッセイの使用に言及しているが、hs-cTnIアッセイに特異的なアッセイである。この表では、19ng/Lの単一カットオフの代わりに、男性(22ng/L)及び女性(14ng/L)の性別特異的hs-cTnT99パーセンタイルカットオフを使用する。さらに、FDAによって提案された下限値(6ng/L)が適用されている。
【0100】
スコア又は分類に関する情報等の本発明の方法で行われた評価の結果を、ディスプレイに表示してもよい。代替的又は追加的に、結果はプリンタによって印刷されてもよい。
【0101】
本発明の方法の一実施形態において、本方法は、本発明の方法で得られた結果を個人の電子医療記録に転送する更なる工程を含んでもよい。
【0102】
本発明の一実施形態において、本発明の方法は、対象が分類されると(例えば、患者がMIに罹患しているとルールインされた場合)、対象の適切な処置の推奨又は開始を更に包含する。適切な処置は当技術分野で公知であり、例えば、本開示内容全体に関して参照により組み込まれるESCガイドラインに記載されている(Roffi M,Patrono C,Collet JP,Mueller C,Valgimigli M,Andreotti F,Bax JJ,Borger MA,Brotons C,Chew DP,Gencer B,Hasenfuss G,Kjeldsen K,Lancellotti P,Landmesser U,Mehilli J,Mukherjee D,Storey RF,Windecker S;ESC Scientific Document Group.2015 ESC Guidelines for the management of acute coronary syndromes in patients presenting without persistent ST-segment elevation:Task Force for the Management of Acute Coronary Syndromes in Patients Presenting without Persistent ST-Segment Elevation of the European Society of Cardiology(ESC).Eur Heart J.2016 Jan 14;37(3):267-315)。
【0103】
本明細書での上記の定義は、好ましくは、以下に準用する。
【0104】
本発明は更に、1日に複数のACSが疑われる患者を有する救急科における患者管理のための方法であって、前記方法が、前記患者の各々について分類方法の工程a)~f)を行い、それにより患者を
i)心筋梗塞の診断がルールインされ得る(ルールイン)、
ii)心筋梗塞の診断がルールアウトされ得る(ルールアウト)、及び
iii)心筋梗塞をルールイン又はルールアウトするために更なる検査を必要とする(観測区域)
と特定することを含む、方法を企図する。
【0105】
本発明は更に、ACSが疑われる複数の患者のうち心筋梗塞のルールアウト診断を受けた患者の割合を増加させるための方法であって、前記方法が、前記複数の患者に対して分類方法の工程a)~f)を行うことを含む、方法を企図する。
【0106】
本発明は更に、コンピュータ又はコンピュータネットワーク上でプログラムが実行される際に、本発明によるコンピュータ実装方法の工程を実施するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムに関する。典型的には、コンピュータプログラムは、具体的には、本明細書に開示される方法の工程を実施するためのコンピュータ実行可能命令を含むことができる。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データキャリアに記憶され得る。
【0107】
本発明は更に、本発明による方法を実施するために、コンピュータプログラムの関連で検討した上述の1つ以上の工程等、プログラムがコンピュータ又はコンピュータネットワーク上で実行される際に、機械可読キャリアに記憶されたプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品に関する。本明細書で使用される場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマット等の任意のフォーマットで、又はコンピュータ可読データキャリア上に存在する。フォーマット具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク上で配信されてもよい。
【0108】
本発明は更に、少なくとも1つの処理ユニットを備えるコンピュータ又はコンピュータネットワークに関し、処理ユニットは、本発明による方法の全ての工程、特に工程a)、b)、c)、及びd)を実施するように適合される。
【0109】
本発明はまた、原理的に、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品、又はコンピュータプログラムが有形的に組み込まれたコンピュータ可読記憶媒体も企図し、前記コンピュータプログラムは、データ処理装置又はコンピュータで実行されると上記のような本発明の方法を実行する、命令を含む。具体的には、本開示は、以下を更に包含する:
- 少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成されるコンピュータ又はコンピュータネットワーク。
- コンピュータ上で実行されているときに本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成されたコンピュータロード可能データ構造。
- コンピュータスクリプトであって、コンピュータプログラムが、プログラムがコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つの方法を実行するように適合されている、コンピュータスクリプト、
- コンピュータプログラムがコンピュータ上又はコンピュータネットワーク上で実行されているときに本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するためのプログラム手段を備えるコンピュータプログラム。
- 先行の実施形態に記載のプログラム手段をコンピュータにとって読み取り可能な記憶媒体上に格納して備えているコンピュータプログラム。
- データ構造が記憶媒体に記憶され、データ構造が、コンピュータ若しくはコンピュータネットワークの主記憶装置及び/又は作業記憶装置にロードされた後、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合された、記憶媒体、
- コンピュータ又はコンピュータネットワーク上でプログラムコード手段が実行された場合に、この明細書に記載された実施形態のうちの1つによる方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶されることができる、又は記憶媒体上に記憶されることができる、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品、
- 本明細書の他の箇所において定義されているパラメータについてのデータを含む、典型的には暗号化された、データストリーム信号、並びに
- 本発明の方法によって計算されたスコアを含み、好ましくは分類の情報を提供する、典型的には暗号化されたデータストリーム信号。
【0110】
本発明は更に、急性冠症候群が疑われる患者を分類するための装置に関し、前記装置は、処理ユニットと、コンピュータ実行可能命令(上記のコンピュータプログラム等)を含むコンピュータプログラムとを含み、前記命令は、処理ユニットによって実行されると、処理ユニットに、本発明によるコンピュータ実装方法を実施させる、すなわち前記方法の工程を実施させる。装置は、ユーザインターフェース及びディスプレイを更に備えることができ、処理ユニットは、ユーザインターフェース及びディスプレイに連結される。典型的には、装置は出力として分類を提供する。一実施形態において、分類はディスプレイ上に提供される。典型的には、装置は、前記装置に有形的に組み込まれたソフトウェアを含み、前記装置上で実行されると、本発明の方法を行う。
【0111】
以下では、標準的な分類と比較した本発明の分類方法の利点を要約する。
【0112】
1.ACSの疑いを呈する患者のトリアージプロセスを通じたED医師処理の対話的指導
【0113】
2.2020 ESCガイドラインの推奨に従う2回目又は3回目の血液サンプルの最適な時点(29分の許容時間を含む)の必要性及び提案の表示。
【0114】
3.デフォルトによる0/1時間プロトコルの代わりに、第1の血液サンプルと第2の血液サンプルとの間の真に経過した時間間隔に従った血液結果(心臓トロポニンレベル)の解釈(
図2A及び2B、並びに実施例4の表)
【0115】
4.第2の採血が診断的でない場合、すなわちルールアウトもルールインも決定もされない場合、第3の採血のための正しい時点の必要性及び提案の表示。
【0116】
5.国特異的分類、例えば、性別特異的の99パーセンタイルの正常上限を考慮した又は考慮しないFDA推奨バージョンの選択。
【0117】
国特異的分類を使用すると、非USバージョンと比較して関連する数の再分類をもたらし、より高い報告下限(6ng/L対5ng/L)の使用、より高い単一の99パーセンタイルカットオフ(19ng/L対14ng/L)の使用、又は男性に対する女性の性別特異的カットオフ(14ng/L対22ng/L)の使用の影響はわずかである(
図3及び
図4)。
【0118】
要約すると、本発明は、ACSが疑われる患者のより正確な分類を可能にする(
図2A及び
図2B)。採血間の真に経過した間隔を考慮すると、かなりの割合の患者が再分類される。また、「観察的区域」は、1回目の採血の3時間後以降に3回目の採血を行った後、「ルールアウト」又は「ルールイン」のいずれかに再分類することで、解消され、患者の配置を改善する。有利には、全ての重要な時点におけるプロトコル遵守及びプロトコル逸脱は、診断プロセスのガイドライン遵守及びケアの質の透明性を高める可能性がある。例えば、胸痛の発症の時点が不明であるか、又は3時間未満である場合(実施例4の表を参照の)、2回目の採血の欠落(すなわち、第2のサンプル)を示すことができ、それにより、退院が単一の非常に低感度の心臓トロポニンに基づくルールアウトの分類に基づく場合、プロトコル順守が改善され、早期退院の安全性が高まる。さらに、診断セットを超える不要な追加の採血、すなわち診断用の0時間のサンプル後の2回目の採血、又は診断用の2回目の採血後の3回目の採血の回数を減らすことによって費用対効果を高めることができる(実施例4の表を参照)。不要な採血を伴わない早期の診断分類は、EDでの監視のためのスタッフの時間を短縮し、採血のための時間を短縮し、検査室のコストを低減する可能性が高いため、コスト効率は妥当である。さらに、本発明の方法は、ガイドラインの推奨が異なるか又は変化する場合、プロトコルを適合させる選択肢を提供する。
【0119】
本発明の実施形態
以下では、本発明の実施形態が開示される。上記の本明細書中に示される定義は、必要な変更を加えて以下に適用される。
【0120】
1.急性冠症候群が疑われる患者を分類するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)処理ユニットにおいて、診察時に患者から第1のサンプルが得られた第1の時点に関する情報を受信する工程、
(b)ディスプレイ上に、
b1)患者から第2のサンプルを得るべき第2の時点の提案であって、第2の時点が第1の時点の約1時間又は約2時間後の間隔内である、第2の時点の提案、及び
b2)患者の分類に適用されるACS分類アルゴリズムの提案であって、ACS分類アルゴリズムが、工程b1)で提案された第2の時点に基づく、ACS分類アルゴリズムの提案
を提供する工程、
(c)処理ユニットにおいて、
c1)第2のサンプルが得られた実際の時点に関する情報、
c2)第1のサンプル中の心臓トロポニンの量に関する値、及び
c3)第2のサンプル中の心臓トロポニンの量に関する値
を受信する工程、
(d)処理ユニットによって、第2のサンプルがb1)の下で間隔内に得られたかどうかの分析を行う工程であって、サンプルが、第1のサンプルの30~90分後に得られた場合、約1時間の間隔内に得られたと見なされ、及び/又は第2のサンプルが、第1のサンプルの91~150分後に得られた場合、約2時間の間隔内に得られたと見なされる、第2のサンプルがb1)の下で間隔内に得られたかどうかの分析を行う工程、並びに
(e)処理ユニットによって患者を分類する工程であって、
e1)工程b1)で提案された間隔内に第2のサンプルが得られた場合、工程b2)で提案されたACS分類アルゴリズムに基づいて患者が分類されるか、又は
e2)工程b1)で提案された間隔内にサンプルが得られなかった場合、工程b2)で提案されたACS分類アルゴリズムとは異なるACS分類アルゴリズムによって患者が分類される、処理ユニットによって患者を分類する工程、並びに、任意に、
(f)患者の分類に関する情報をディスプレイ上に提供する工程
を含む、方法。
【0121】
2.サンプルが、血液、血清、又は血漿のサンプルである、実施形態1に記載の方法。
【0122】
3.工程b1)で提案された第2の時点が、第1のサンプルの約1時間後の間隔内にあり、工程b2)で提案されるACS分類アルゴリズムが0/1時間アルゴリズムである、実施形態1及び2に記載の方法。
【0123】
4.第2のサンプルが、第1のサンプルの91~150分後以内に得られた場合、工程e2)で適用されるACS分類アルゴリズムが0/2時間アルゴリズムである、実施形態1~3に記載の方法。
【0124】
5.第2のサンプルが、第1のサンプルの151~210分後以内に得られた場合、工程e2)で適用されるACS分類アルゴリズムが0/3時間アルゴリズムである、実施形態1~4に記載の方法。
【0125】
6.工程b)が、ディスプレイ上に、第2のサンプルが必要か否かに関する情報を提供することを更に含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
7.b1)及びb2)の下での提案が、患者が第1のサンプルのみに基づいて分類できない場合に行われる、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
8.患者が、急性冠症候群に罹患している(「ルールイン」)、急性冠症候群に罹患していない(「ルールアウト」)、又は心筋梗塞をルールイン若しくはルールアウトするために更なる分類を必要とする(「観察区域」又は「観測区域」)として分類される、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
9.工程f)が、ディスプレイ上に、患者の更なる分類のために第3のサンプルが必要であるかどうかに関する情報を提供することを更に含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
10.第2のサンプルの後に、患者が「観察的区域」に分類される場合、第3のサンプルが必要である、実施形態9に記載の方法。
【0130】
11.工程f)が、ディスプレイ上に、患者から第3のサンプルを得るべき第3の時点の提案を提供することを更に含み、第3の時点が第1のサンプルの3時間後又はそれ以降である、実施形態10に記載の方法。
【0131】
12.1日当たり複数のACSが疑われる患者を有する救急科における患者管理のための方法であって、患者の各々について実施形態11に記載の方法の工程a)~f)を行い、それにより患者を
i)心筋梗塞の診断がルールインされ得る(ルールイン)、
ii)心筋梗塞の診断がルールアウトされ得る(ルールアウト)、及び
iii)心筋梗塞をルールイン又はルールアウトするために更なる検査を必要とする(観測区域)
と特定することを含む、方法。
【0132】
13.ACSが疑われる複数の患者のうち心筋梗塞のルールアウト診断を受けた患者の割合を増加させるための方法であって、複数の患者に対して実施形態11の工程a)~f)を行うことを含む、方法。
【0133】
14.対象がヒト対象である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
15.心臓トロポニンが、心臓トロポニンTである、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
16.心臓トロポニンが、心臓トロポニンIである、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
17.急性冠症候群が疑われる患者を分類するための装置であって、装置が、処理ユニットと、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムとを含み、命令が、処理ユニットによって実行されると、処理ユニットに、実施形態1~10のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法を実施させる、装置。
【図面の簡単な説明】
【0137】
図面は以下を示す:
【
図1A】A)急性冠症候群が疑われる患者のためのサンプリング間隔調整分類ツール。本発明の方法は、FDA又はESC診断プロトコル等の異なる診断プロトコルの実施を可能にする。さらに、米国における単一の性別非依存性カットオフに対する性別特異的カットオフ等、異なるカットオフを実施することができる。
【
図1B】B)急性冠症候群が疑われる患者のためのサンプリング間隔調整分類ツールに関する詳細な説明(LoD:検出限界、hsTn:トロポニンI又はT等の高感受性心臓トロポニン、hscTnT:高感受性心臓トロポニンT、ULN:基準値上限)。
【
図2A】A)NSTE-ACSが疑われる患者の分類ルールに対する時間遅延の効果。スケジュールされたルールの時間遅延を、x軸に示す。トロポニンの時間依存的増加を調整するために、30分超の遅延、すなわち、入院サンプルとフォローアップサンプルとの間の90分超の間隔が、0/1時間プロトコルではなく0/2時間プロトコルの適格性を開始し得る。したがって、ルールアウトに分類された患者の割合は減少し始める。結果として、ルールアウトされた患者の割合が誤って低くなると、かなりの割合の低リスク患者を退院させる機会が減少し、ルールイン又は観察区域カテゴリに誤って割り当てられた患者の不当な処置及び不必要な侵襲的処置が増加する。提案されたツールは、それらの検証されたプロトコルに基づいてルールの計算を統合するが、次の採血のための対応する上限及び下限の間隔を有する最適な時点も提案し、主に意図されたプロトコルではなく実際のプロトコルに基づいて所見の正しい解釈を提供する。したがって、ツールは、例えば0/1時間からESC又はADP 0/2時間への、又はその逆の、意図されたプロトコルのステップアップ又はステップダウンを提供する。ツールは、現在確立されているプロトコルに限定されず、将来のプロトコルを実装するように更新することができる。
【
図2B】B)1回目の採血と2回目の採血との間の真に経過した時間間隔を考慮した場合と考慮しない場合の疑わしいACSの分類。この図は、血液サンプル間の真に経過した時間を考慮した場合のACSが疑われる患者の分類の変化を示す。この実施例における計算は、Roche hs-cTnTアッセイの使用に基づく。 左側のパネルでは、医師はデフォルトで0/1時間アルゴリズムを使用すると仮定している。しかしながら、末梢血中の心臓トロポニン濃度は、虚血指数事象後の時間の増加と共に増加する。したがって、カットオフ値及び濃度変化は、0/2時間アルゴリズム及び0/3時間アルゴリズムにおいて次第に高くなる。1回目の採血と2回目の採血との間の真に経過した時間を考慮しないことは、誤分類のリスクを有する。パネルは、時間の調整がルールアウトと分類される患者の割合を増加させ、ルールイン又は観察的区域と分類される患者の割合を減少させることを実証している。
【
図3】14ng/Lを99パーセンタイルカットオフとして使用するESCアルゴリズムに対する、19ng/Lでの単一のhs-cTnTカットオフを用いるFDA推奨アルゴリズムに基づく疑わしいACSの分類。 この図は、ESC推奨アルゴリズムに対する、FDAが推奨する報告限界及び正常の単性独立99パーセンタイル上限を使用したFDAバージョンの場合のACSが疑われる患者の分類の変化を示す。両方の計算は、1回目の採血と2回目の採血との間の真に経過した時間間隔を調整した後に行われた。この実施例における計算は、Roche hs-cTnTアッセイを使用する場合のカットオフ及び報告下限に関するFDA推奨に基づく。 パネルは、FDAが推奨する変更の適用がルールアウトと分類された患者の割合を増加させ、ルールイン又は観察的区域と分類された患者の割合をわずかに減少させることを実証している。
【
図4A】性別特異的カットオフを適用するFDA推奨アルゴリズムに基づく疑わしいACSの分類-女性では14ng/L及び男性では22ng/L。A)全体コホート(女性及び男性)、B)女性の性別C)男性の性別。 図は、ESC推奨アルゴリズムに対して、性別特異的な99パーセンタイル上限正常値を使用するFDA推奨バージョンを適用した場合のACSが疑われる患者の分類の変化を示す。両方の計算は、1回目の採血と2回目の採血との間の真に経過した時間間隔を調整した後に行われた。この実施例における計算は、Roche hs-cTnTアッセイを使用する場合の性別特異的カットオフ及び報告下限に関するFDA推奨に基づく。 パネルは、FDAが推奨する性別特異的カットオフの適用が、男性では再分類にほぼ排他的に影響するが、女性では影響しないことを実証している。男性では、FDAバージョンを使用してルールアウトと分類された患者の割合はESCバージョンと比較して増加するが、ルールイン又は観察的区域に分類された患者の割合はわずかに減少する。
【
図5A】A)対照臨床試験に典型的な条件下でACSが疑われる患者を管理する「理想世界」を示す。この図は、2,146人の患者に対する観測試験からの所見を示しており、2回目の採血は、ストップウォッチを用いて1回目の採血の正確に60分後にタイミングを合わせた。
【
図5B】B)EDにおける「現実世界の証拠」は、1回目の採血と2回目の採血との間の時間間隔の不均一な右に歪んだ分布を示し、2回目の採血の大部分は60分の時間枠±30分の許容間隔を超えている。
【実施例】
【0138】
実施例は、本発明を例示するものである。実施例は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0139】
実施例1:コホート
導出コホート及び検証コホートは独立しており、募集期間又は患者が重複することなく連続的である。12ヶ月の募集期間は、一般的な診断のカレンダに依存する季節差に関連するバイアスを排除し、患者の管理に対する異なる混雑レベルの潜在的影響を低減する。研究集団は単一の救急科に登録されたが、標準化された診断プロトコルが使用され、非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)に関する最新のESCガイドライン推奨((Roffi et al.Eur Heart J 2016;37(3):267-315;Amsterdam et al.,Am Coll Cardiol 2014;64(24):e139-e228)の遵守及び鑑別診断は、DGK(Deutsche Gesellschaft fuer Kardiologie、ドイツ心臓病学会)によって定期的に監査されている。
【0140】
導出コホート及び検証コホートでは、呼吸困難、胃の不快感、背中又は肩の痛み、孤立性の放射状の腕の痛み、発汗を含む広範囲の主症状に基づいて、ACSが疑われる患者を登録し、したがって選択されていない患者へのアルゴリズムのより広範な外挿を可能にした。逆に、試験の性能は試験前の確率に依存するため、胸痛症候の典型性に基づく登録は、機械学習アルゴリズムの過度に楽観的な収率を有する。選択バイアスを最小限に抑えるために、患者を連続的に登録した。持続するST上昇又は新たな左束分岐ブロックの存在、最初のhs-cTnT又はトロポニン結果の診断対の完全なセットに関する臨床検査値の欠落、専用のサービス、例えば完全な診断プロトコルを回避する冠動脈造影又は再灌流療法のための他の病院からの照会を含む事前に指定された除外基準の存在下で患者を遡及的に除外した。さらに、患者が以下の条件のいずれかを有する場合、患者を分析から遡及的に除外した:
● 年齢18歳未満
● 末期腎疾患(ESRD)
● ACSの徴候又は症候がない急性非代償性心不全、及び基礎となる虚血性心疾患の検査前確率が低いこと
● ACSの徴候又は症候がない新しい心房性頻拍性不整脈(心房粗動、心房細動、心房性頻拍、房室結節リエントリー性頻拍)、及び基礎となる虚血性心疾患の検査前確率が低いこと
● ACSの徴候又は症候がない場合の心室頻拍性不整脈又はICDショック
● 鑑別診断についての検査前確率が非常に高い患者、例えば、肺炎又は胸膜炎痛を示唆する発熱、静脈血栓塞栓症(VTE)を示唆する下肢の腫脹又は疼痛、気胸の臨床的疑いのある症状を有する患者
● 活動性癌を呈し、余命1年未満であり、ACSの徴候又は症候がない患者
● 末期癌及び期待余命6ヶ月未満の患者
● 病院外で蘇生された患者
【0141】
過剰適合を回避し、過度に楽観的な予測モデルをもたらすために、全てのMLアルゴリズムを導出コホートで生成し、等しく長い募集期間中に登録された独立した代表的な検証コホートで検証し、したがって、患者の体積の季節的変化、疾患提示、及び混雑を考慮に入れた。
【0142】
実施例2:分類ツールの開発。
本発明の基礎となる研究では、ACSの疑いを呈する患者の分類又はACSの鑑別診断に対する電子的支援が確立された。分類アルゴリズムは、2回目の採血における対の高感度心臓トロポニンT濃度の補完及び心臓トロポニンT濃度の濃度変化、並びに症候の発症から最初の採血までの時間を必要とする。公開された文献に基づいて、ESCガイドラインの推奨によってサポートされている分類は、ESC 0/1時間、ESC 0/2時間、ADP 2時間、ESC 0/3時間、ESC 0/6~9時間のプロトコルについて報告され、対応する参照と共に分類が付随する。診断ルールは、採血間の時間間隔、すなわち、ESC 0/1時間プロトコルでは最初の採血後30~90分以内、ESC 0/2時間プロトコルでは91~150分以内、ESC 0/3時間プロトコルでは151~210分以内、ESC 0/6~9時間プロトコルでは210分超以内について計算される。ESC 0/3時間及び0/6~9時間プロトコルは、ユニバーサルMI定義及び99パーセンタイル値に基づく。ESC 0/3時間プロトコルでは、関連する濃度変化は、初期のhs-cTnTが99パーセンタイルを下回る場合には正常上限の50%のhs-cTnTの上昇として、初期のhs-cTnTが99パーセンタイルを上回る場合にはベースライン値から20%の上昇及び/又は下降として定義される。分類は、ESCの0時間プロトコル、すなわち、患者が症候の発症後3時間を超えて提示するならば、診察時にLoD(5ng/L)未満の単一のhs-cTnT値を有するMIをルールアウトすることを可能にするプロトコル、又は診察時に52ng/Lを超える非常に高いhs-cTnT濃度に基づいてルールインすることを含む。
【0143】
急性冠症候群(ACS)の病因は複雑であり、複数の相互に関連する機序を伴い、その多くはまだ完全には理解されていない。本発明者らの現在の理解は、プラークが炎症に応答して破裂又は侵食し、局所的な閉塞性又は非閉塞性の血栓症をもたらし得ることである(Braunwald,Circulation 1998;98(21):2219-22)。この動的閉塞の程度及び可逆性に応じて、ACSの臨床症状は、不安定狭心症(UA)から非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に進行する連続的な一連のリスクを含む。NSTEMIは、心筋損傷の最も感度が高く特異的なバイオマーカーである心臓トロポニン(cTn)の検出によって認識される、筋細胞壊死を引き起こすのに十分な強度及び持続時間の虚血によってUAと区別される。
【0144】
トロポニンT又はIの心臓アイソフォームは、収縮装置の細い筋フィラメント上の筋細胞において排他的に発現され、より低い程度(3~6%)では、筋細胞の細胞質における非結合タンパク質として発現されるため、cTnT及びcTnIは現在、心筋損傷の診断のための好ましいバイオマーカーであると考えられている。
【0145】
バイオマーカー検査の最近の成果は、ACSが疑われる患者における、従来の感度の低いトロポニンアッセイの代わりに、高感度トロポニン(hs-cTn)アッセイの実施である(Giannitsis et al.,Clin Chem 2010;56(2):254-61)。「好感度心臓トロポニンT(hs-cTnT、hsTnT、cTnThs)」という用語は、プロセッサアッセイと比較して、改善された分析感度及び不変の組織特異性を特徴とするcTnTの生成(第5世代以上)を示す。アッセイが、99パーセンタイル値以下のcTn濃度を正確に測定することができ、両方の性別の健康な参照集団において検出限界(LoD)を超える50%以上の検出可能な値のパーセンテージによって定義される分析感度によって測定することができる場合、高感度指定は、米国臨床化学学会(AACC)及び国際臨床化学・実験医学連合(IFCC)の基準に従って満たされる(Wu et al.,Clin Chem 2018;64(4):645-655)。本発明は、hs-cTnアッセイの使用に基づくが、現在高感度アッセイとして指定されているアッセイのリストに限定されず、IFCCリストに追加されているアッセイを含む。
【0146】
ユニバーサルMI定義(Thygesen et al.Eur Heart J 2019;40(3):237-269)によれば、cTnが心筋損傷の存在を示す健康な参照集団の参照上限を超えて上昇している場合、急性事象及び心筋虚血の根底にある状況を示す臨床徴候又は症候の存在を示すcTnの関連する急性濃度変化(上昇及び/又は下降)と共に、MIの診断が行われる。これらの特徴は、以下のうちの少なくとも1つを含むべきである:虚血の症候、新たな又は推定される新たな有意なST部分-T波(ST-T)の変化又は新たな左束枝ブロック、ECGにおける病理学的Q波の発生、生存心筋の新たな喪失又は新たな局所壁運動異常の画像化の証拠、血管造影又は剖検による冠動脈内血栓の証拠。MIの一般的な定義と共に、MIの5つのサブタイプがUDMIの第4のバージョンによって定義されており、その1~3型MIは自発性MIに関連し、4型~5型は処置関連MIを定義する(Thygesen et al.Eur Heart J 2019;40(3):237-269)。
【0147】
本導出及び検証研究では、NSTEMIの診断は、1型若しくは2型MI、又は他のサブタイプに更に細分化されなかった。
【0148】
全登録プロセス中、患者をルールアウト、観察的区域又はルールインに分類し、推奨閾値及び濃度変化を適用してhs-cTnTを日常的に使用した。
【0149】
UAは、UDMIによるMIの基準を満たさないバイオマーカー結果と共に心筋虚血を示唆する症候の存在下で診断された。UAの比率の変動は、普遍的に受け入れられているUAの定義の欠如によって説明される可能性が最も高い。ほとんどの定義(Roffi et al.Eur Heart J 2016;37(3):267-315;Amsterdam et al.,Am Coll Cardiol 2014;64(24):e139-e228)において、重要な特徴は、連続的なhs-cTn(Sandoval et al.Eur Heart J Acute Cardiovasc Care 2018;7(2):120-128)によって示される心筋損傷がないことである。しかしながら、hs-cTnアッセイの使用は、安静時の狭心症を伴う不安定な胸部不快感、又は99パーセンタイルを超える安定した(上昇及び/又は下降なしの)hs-cTn値上昇を有する狭心症の新たな発症若しくは悪化のために臨床的にUAと分類される一部の患者を最終的に同定するであろう(Braunwald,Circulation 2013;127(24):2452-7)。これらの上昇は、末期腎疾患又は根本的な構造的心疾患又は冠動脈疾患を反映する連続サンプルでは安定している39、40。このシナリオは、国際臨床化学連合(IFCC)がhs-cTnアッセイに関する2015年の教育文書において強調しているように、文献では無視されてきた重要な問題である(Apple et al.,Clin Biochem 2015;48(4-5):201-3)。UAにおける症候は、抗凝固剤(Morrow et al.,J Am Coll Cardiol 2000;36(6):1812-7)又は抗血小板療法(例えば、Wallentin et al.,Circulation 2014;129(3):293-303を参照)からの利益の欠如によって示唆されるように、おそらくプラーク破裂又は凝固の活性化を伴わない閉塞性冠動脈疾患(CAD)又は血管攣縮、更には上昇したcTnを有しない患者における早期血行再建によって説明される。一般に、UAを呈する患者の転帰は、NSTEMI患者の中よりも実質的に良性であると考えられる。したがって、非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)患者の管理に関する2015 ESCガイドラインは、日常的な冠動脈造影を思いとどまらせ、最適な医学的処置にもかかわらず症候を経験し続けている者、又は誘導可能な心筋虚血の客観的証拠を有する者のための選択的侵襲的戦略を推奨する。ガイドラインはまた、個々のリスク層別化後に低リスク患者を退院させることを推奨している。しかしながら、差し迫ったMIを見逃すという恐怖は、UAと推定される患者の急性冠動脈造影への自由な紹介行為をもたらす。レジストリは、UAの患者が頻繁に病院に入院し、不要な冠動脈造影を受けることを実証している。
【0150】
STEMIは、少なくとも2つの連続したリード又は新しい束分岐ブロック(右又は左の束分岐ブロック)又は恒久的にペースをつけられたリズムにおける持続的なST部分の上昇の存在下で定義される。
【0151】
診察時及び3時間後のhs-cTnの試験によるより速いプロトコルは、hs-cTnアッセイが使用される場合、ESCガイドライン、ACC/AHA及び他の国際的なガイドラインによって推奨される。この目的のために検証されたhs-cTnアッセイが利用可能である場合、診察時及び120分以内のhs-cTn試験によるより速いプロトコル及び加速診断プロトコル(臨床スコアリングシステムの使用を必要とする)がESCガイドライン(Eur Heart J 2016;37(3):267-315)及びAPACガイドライン(Circ J 2020;84(2):136-143)によって推奨されている。hs-cTnTの場合、ESC 0/3時間プロトコル及びより速いプロトコルが使用される場合の3レベル分類のルールイン及びルールアウトの分類を以下の表に列挙する。
【表6】
【0152】
USプロトコルによる対応する分類及び正常の99パーセンタイル上限に対する性別特異的カットオフあり/なしのサブカテゴリを、それぞれ表C2及びC3に示す(上記を参照)。
【0153】
心筋梗塞
MIは、心筋梗塞の第3の普遍的定義の基準に従って診断された。事象が研究施設外で発生した場合、フォローアップ時のMIの判断は主治医の裁量に委ねられた。そうでなければ、2人の心臓専門医によって、及び第3の心臓専門医による意見の不一致の場合には全ての利用可能な臨床情報に基づいて裁定が行われた。心筋梗塞は、1型、2型、4a~c型又は5型として特定されたが、最後に、任意の非致死性MIとして要約された。
【0154】
MLアルゴリズムを、ACSの疑いを呈する患者の正確で再現性のある証拠に基づいた分類をルールアウト区域、観察区域、及びルールイン区域に可能にするために構築した。
【0155】
実施例3:診断再分類
以下の表は、時間の調整後の再分類が、観察的区域からルールアウトへの再分類、及びあまり頻繁でないルールインへの再分類をもたらし得ることを示している。さらに、患者は、ルールインから観察的区域及びルールアウトに再分類されえる。ルールアウト群では再分類は行われなかった。注目すべきことに、この実施例における計算は、Roche hs-cTnTアッセイの使用に基づく。
【表7】
【0156】
実施例4:プロトコル順守(欠落及び過剰なトロポニン測定の回避)
必要な血液サンプルの正しい数に関するプロトコルの順守は、a)分類の信頼性、したがって例えば「ルールアウト」後に低リスク患者を退院させるという決定、及びb)症例管理の費用効果に非常に大きな意義がある。ED滞在及び観測期間が長くなり、追加の血液サンプルの採取には、看護師及び医師のためにより多くのスタッフ時間を必要とし、検査室コストが高くなる。さらに、ED滞在の延長は、全ての利害関係者の不満に関連する。
【0157】
次の表は、2回目の採血が必要であったにもかかわらず得られなかったために不適切な「ルールアウト」分類(n=55)の数を示している(胸痛発症の正確な時間は不明又は3時間未満)。誤診は、潜在的にMIの診断ミス及び不当な早期退院につながる可能性がある。さらに、2020 ESCガイドライン(2015 ESCガイドラインとは対照的に)は、最初に「観察的区域」に分類された患者の確定診断のために、最初の採血の3時間後に3回目の採血を行うことを義務付けている。表は、「観察的区域」の全患者の77.6%で3回目の採血が行われなかったことを示している。一方、最初の「ルールアウト」後(988回の追加測定)及び「ルールイン」後(442回の追加測定)の両方で、診断的な最初の採血にもかかわらず、多数の不要な採血が得られた。さらに、診断セットの2回の採血後に、176人の患者(9.9%)において1つ以上の追加の血液サンプルを採取した。
【表8】
【0158】
実施例5:症例研究(ルールアウト、観察、ルールインの分類)
患者1
患者の分類
入力:
最後の症候:
2019年10月18日 18:59
第1のhs-cTnTの値:
<5 ng/L
第1のhs-cTnTのタイミング:
2019年10月18日 19:32
第2のhs-cTnTの値:
7 ng/L
第2のhs-cTnTのタイミング:
出力:
ルールアウト(ESC 0/1h)
【0159】
症例解釈:ACSが疑われる患者は、胸痛発症後早期に病院に入院し、胸痛発症後33分で最初の採血を受ける。第1の心臓トロポニンはLoD未満である。しかしながら、CPOと1回目の採血との間の短い期間は、MIのルールアウトのために2回目の採血の収集を必要とする。対照的に、単一の非常に高い心臓トロポニンの結果に基づくルールインは、胸痛の発症から短期間の影響を受けない。
【0160】
患者2
患者の分類
入力:
最後の症候:
2019年10月18日 18:59
第1のhs-cTnTの値:
7 ng/L
第1のhs-cTnTのタイミング:
2019年10月18日 23:32
第2のhs-cTnTの値:
10 ng/L
第2のhs-cTnTのタイミング:
2019年10月18日 20:22
出力:
観測区域(ESC 0/1 h)
【0161】
症例解釈:第1の心臓トロポニンと第2の心臓トロポニンとの差は3ng/L未満ではなく、正確には3ng/Lである。したがって、この場合は、ルールアウトもルールインも適用されないため、「観察的区域」とラベル付けされる。2020 ESCのガイドラインは、患者を「ルールアウト」又は「ルールイン」に分類するために3時間で3回目の採血を必要とする。ツールは、第3のサンプルの必要性を示し、正しい(3時間で)又は可能な限り最良の時点(3時間後の任意の時点)を提案する。
【0162】
患者3
患者の分類
入力:
最後の症候:
2019年10月18日 11:19
第1のhs-cTnTの値:
<5 ng/L
第1のhs-cTnTのタイミング:
2019年10月18日 19:32
第2のhs-cTnTの値:
利用不可
第2のhs-cTnTのタイミング:
利用不可
出力:
ルールアウト(ESC 0 h)
【0163】
症例解釈:LoDを下回る心臓トロポニン値及び胸痛発症後3時間を超える期間が存在する場合、1回の採血により、「ルールアウト」への分類が可能になる。2020 ESCガイドラインにより、追加の採血は不要である。
【0164】
患者4
患者の分類
入力:
最後の症候:
2019年10月18日 18:59
第1のhs-cTnTの値:
5 ng/L
第1のhs-cTnTのタイミング:
2019年10月18日 19:32
第2のhs-cTnTの値:
利用不可
第2のhs-cTnTのタイミング:
利用不可
出力:
プロトコルは第2のhs-cTnTを要求する
【0165】
患者5
患者の分類
入力:
最後の症候:
2019年10月18日 18:59
第1のhs-cTnTの値:
15 ng/L
第1のhs-cTnTのタイミング:
2019年10月18日 19:32
第2のhs-cTnTの値:
19 ng/L
第2のhs-cTnTのタイミング:
2019年10月18日 22:32
出力:
ルールイン(ESC 0/3h)
【0166】
症例解釈:最初の採血では、15ng/Lの心臓トロポニンが得られ、これは12ng/L以上であり、このアッセイの正常値の99パーセンタイル上限(14ng/L)を超えている。1回目の採血と2回目の採血との間の時間遅延は180分であり、それによって0/1時間(最大89分)又は0/2時間プロトコル(最大149分)を適用するための最適な時点(+許容時間29分)を超え、0/3時間プロトコルを使用しなければならない。正常な99パーセンタイル上限を超える第1の心臓トロポニンの存在下では、20パーセント以上の上昇及び/又は下降がルールインに適格である。
【0167】
FDAバージョン
症例6は、そうでなければ症例5と同一であるが、非US基準の代わりにFDA基準を使用する。
【0168】
患者6
患者の分類
入力:
最後の症候:
2019年10月18日 18:59
第1のhs-cTnTの値:
15 ng/L
第1のhs-cTnTのタイミング:
2019年10月18日 19:32
第2のhs-cTnTの値:
19 ng/L
第2のhs-cTnTのタイミング:
2019年10月18日 22:32
出力:
単一の正常値上限:両方の性別について:ルールアウト(FDA 0/3h)
性別特異的カットオフ:男性の場合:ルールアウト(FDA 0/3h)
女性の場合:ルールイン(FDA 0/3h)
【0169】
症例解釈:この症例は、米国で提案されている単一の性別非依存性の99パーセンタイル上限基準限界(19ng/L)を下回る第1の心臓トロポニンを有する。1回目の採血と2回目の採血との間の3時間の時間間隔に起因して、0/3時間アルゴリズムが適用される。MIの診断は、正常値の上限の50%超、すなわち>9ng/Lの差を必要とするため、この症例は、男性及び女性の両方において「ルールアウト」としてトリアージされなければならない。性別特異的カットオフが適用される場合、「ルールアウト」への分類は男性に対して変化しない。しかしながら、症例が女性である場合、第1の心臓トロポニンは、正常の性別特異的上限の上限を超える。したがって、MIの診断には、20パーセント以上の上昇及び/又は下降を必要とする。2回目の採血は、4ng/L、したがって20%を超える上昇を示す。女性の場合、分類は「ルールイン」である。
【0170】
症例7:
患者の分類
入力:
最後の症候:
2019年10月18日 08:30
第1のhs-cTnTの値:
5 ng/L
第1のhs-cTnTのタイミング:
2019年10月18日 11:50
第2のhs-cTnTの値:
利用不可
第2のhs-cTnTのタイミング:
利用不可
出力:
ルールアウト(FDA 0h)
プロトコルは、非USバージョンごとに第2のhs-cTnTを要求する
【0171】
症例解釈:米国の報告限界未満、すなわち6ng/L及び胸痛発症後3時間を超える最初の採血までの間隔の第1の心臓トロポニンの存在下では、この症例は、単回採血を使用して「ルールアウト」としてトリアージされる。代わりに非US適用を使用すると、第1のトロポニンが後退の限界、すなわち5ng/L以上であるため、2回目の採血が必要になる。
【0172】
実施例7:「現実世界」の状況と「理想世界」との比較
ESC 0/1時間アルゴリズムは2015年という早い時期に導入され、その使用が奨励されていたが、提案された採血間の時間間隔は、現実の状況、特に混雑した状況では従うことができなかった。
【0173】
図5Aは、対照臨床試験に典型的な条件下でACSが疑われる患者を管理する「理想世界」を示す。この図は、2,146人の患者に対する観測試験からの所見を示しており、2回目の採血は、ストップウォッチを用いて1回目の採血の正確に60分後にタイミングを合わせた。
【0174】
現実の設定では、採血の正確なタイミングは実現可能ではない。4934人の患者の本発明者らの研究集団では、
図5Aに不均一な右に歪んだ分布が観察される。
【0175】
このように、MI後の経過時間に比例してhs-cTn濃度が増加し、全ての初期プロトコル並びにhs-cTnT及び各検証済みのhs-cTnIアッセイについて個別にカットオフ及び濃度変化が確立されているため、血液サンプル間の真に経過した時間の調整は、正確な分類を保証するために臨床ルーチン及び対照試験外で重要であることが明らかになる。
【0176】
実施例7:集団の試験
集団全体のルールアウト、観察区域、又はルールインへの分類に対するMLの収率を表に示す(匿名化された患者ID、hs-cTnTベースライン結果、及び適用可能な場合はフォローアップ結果、適用された明示的なルールでの分類及び注釈を示す)。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表9-5】
【表9-6】
【表9-7】
【表9-8】
【表9-9】
【表9-10】
【表9-11】
【表9-12】
【表9-13】
【表9-14】
【表9-15】
【表9-16】
【表9-17】
【表9-18】
【表9-19】
【表9-20】
【表9-21】
【表9-22】
【表9-23】
【表9-24】
【表9-25】
【表9-26】
【表9-27】
【表9-28】
【表9-29】
【表9-30】
【表9-31】
【表9-32】
【表9-33】
【表9-34】
【表9-35】
【表9-36】
【表9-37】
【表9-38】
【表9-39】
【表9-40】
【表9-41】
【表9-42】
【表9-43】
【表9-44】
【表9-45】
【表9-46】
【0177】
参考文献
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【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性冠症候群が疑われる患者を分類するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)処理ユニットにおいて、診察時に前記患者から第1のサンプルが得られた第1の時点に関する情報を受信する工程、
(b)ディスプレイ上に、
b1)前記患者から第2のサンプルを得るべき第2の時点の提案であって、前記第2の時点が前記第1の時点の約1時間又は約2時間後の間隔内である、第2の時点の提案、及び
b2)前記患者の前記分類に適用されるACS分類アルゴリズムの提案であって、前記ACS分類アルゴリズムが、工程b1)で提案された前記第2の時点に基づく、ACS分類アルゴリズムの提案
を提供する工程、
(c)処理ユニットにおいて、
c1)前記第2のサンプルが得られた実際の時点に関する情報、
c2)前記第1のサンプル中の心臓トロポニンの量に関する値、及び
c3)前記第2のサンプル中の心臓トロポニンの量に関する値
を受信する工程、
(d)前記処理ユニットによって、前記第2のサンプルがb1)の下で前記間隔内に得られたかどうかの分析を行う工程であって、前記サンプルが、前記第1のサンプルの30~90分後に得られた場合、約1時間の間隔内に得られたとみなされ、及び/又は前記第2のサンプルが、前記第1のサンプルの91~150分後に得られた場合、約2時間の間隔内に得られたとみなされる、前記第2のサンプルがb1)の下で前記間隔内に得られたかどうかの分析を行う工程、並びに
(e)前記処理ユニットによって前記患者を分類する工程であって、
e1)工程b1)で提案された前記間隔内に前記第2のサンプルが得られた場合、工程b2)で提案された前記ACS分類アルゴリズムに基づいて前記患者が分類されるか、又は
e2)工程b1)で提案された前記間隔内に前記サンプルが得られなかった場合、工程b2)で提案された前記ACS分類アルゴリズムとは異なるACS分類アルゴリズムによって前記患者が分類される、前記処理ユニットによって前記患者を分類する工程、並びに、任意に、
(f)前記患者の前記分類に関する情報をディスプレイ上に提供する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記サンプルが、血液、血清、又は血漿のサンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b1)で提案された前記第2の時点が、前記第1のサンプルの約1時間後の間隔内にあり、工程b2)で提案される前記ACS分類アルゴリズムが0/1時間アルゴリズムである、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のサンプルが、前記第1のサンプルの91~150分後以内に得られた場合、工程e2)で適用される前記ACS分類アルゴリズムが0/2時間アルゴリズムである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のサンプルが、前記第1のサンプルの151~210分後以内に得られた場合、工程e2)で適用される前記ACS分類アルゴリズムが0/3時間アルゴリズムである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
工程b)が、前記ディスプレイ上に、第2のサンプルが必要か否かに関する情報を提供することを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
b1)及びb2)の下での前記提案が、前記患者が前記第1のサンプルのみに基づいて分類できない場合に行われる、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、急性冠症候群に罹患している(「ルールイン」)、急性冠症候群に罹患していない(「ルールアウト」)、又は心筋梗塞をルールイン若しくはルールアウトするために更なる分類を必要とする(「観察区域」又は観測区域)として分類される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程f)が、前記ディスプレイ上に、前記患者の更なる分類のために第3のサンプルが必要であるかどうかに関する情報を提供することを更に含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のサンプルの後に、前記患者が前記「観察的区域」に分類される場合、第3のサンプルが必要である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程f)が、前記ディスプレイ上に、前記患者から第3のサンプルを得るべき第3の時点の提案を提供することを更に含み、前記第3の時点が前記第1のサンプルの3時間後又はそれ以降である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
処理ユニットにおいて、
g1)前記第3のサンプルが得られた実際の時点に関する情報、及び
g2)前記第3のサンプル中の前記心臓トロポニンの前記量に関する値
を受信することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第3のサンプル中の前記心臓トロポニンの前記値に基づいて、特に前記第1のサンプル中の前記値と前記第3のサンプル中の前記値との間の差に基づいて、前記処理ユニットによって前記患者をルールアウト又はルールインとして分類することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1日当たり複数のACSが疑われる患者を有する救急科における患者管理のための方法であって、前記患者の各々について請求項1に記載の方法の工程a)~f)を行い、それにより患者を
i)心筋梗塞の診断がルールインされ得る(ルールイン)、
ii)心筋梗塞の診断がルールアウトされ得る(ルールアウト)、及び
iii)心筋梗塞をルールイン又はルールアウトするために更なる検査を必要とする(観測区域)
と特定することを含む、方法。
【請求項15】
ACSが疑われる複数の患者のうち心筋梗塞のルールアウト診断を受けた患者の割合を増加させるための方法であって、前記複数の患者に対して請求項1の工程a)~f)を行うことを含む、方法。
【請求項16】
前記対象が、ヒト対象である、請求項1~
5、14、15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記心臓トロポニンが、心臓トロポニンTである、請求項1~
5、14、15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記心臓トロポニンが、心臓トロポニンIである、請求項1~
5、14、15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、工程a)を行う前に、前記対象の前記分類に適した診断プロトコルを選択する工程を含む、請求項1~
5、14、15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記プロトコルの違反がある場合に、情報が提供される、請求項1~
5、14、15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
急性冠症候群が疑われる患者を分類するための装置であって、前記装置が、処理ユニットと、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムとを含み、前記命令が、前記処理ユニットによって実行されると、前記処理ユニットに、請求項1~
5、14、15のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法を実施させる、装置。
【国際調査報告】