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特表2024-533587PA10T成形複合材料、その製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】PA10T成形複合材料、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20240905BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240905BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240905BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20240905BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240905BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K3/34
C08K3/04
C08J5/00 CFG
F21S2/00 421
F21S2/00 440
F21S2/00 484
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517015
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2022118968
(87)【国際公開番号】W WO2023040942
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111098360.6
(32)【優先日】2021-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517438181
【氏名又は名称】珠海万通特種工程塑料有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】517393787
【氏名又は名称】金発科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100221512
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 誠司
(72)【発明者】
【氏名】楊匯▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】黄険波
(72)【発明者】
【氏名】麦傑鴻
(72)【発明者】
【氏名】姜蘇俊
(72)【発明者】
【氏名】蒋智強
(72)【発明者】
【氏名】閻昆
(72)【発明者】
【氏名】李建偉
(72)【発明者】
【氏名】徐顕駿
【テーマコード(参考)】
3K244
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
3K244AA01
3K244BA18
3K244BA50
3K244CA01
3K244DA01
3K244DA25
4F071AA55
4F071AA81
4F071AA87
4F071AB03
4F071AB26
4F071AC11
4F071AE05
4F071AF29Y
4F071AF34Y
4F071BA01
4F071BB05
4F071BC03
4F071BC12
4J002CF031
4J002DA037
4J002DJ006
4J002EN038
4J002FD078
4J002FD097
4J002FD206
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、主に、結晶ピーク半値幅ΔT1/2を3~10℃に調整すること、白色度を26未満に調整すること、460nmでの光源反射率を6.5%未満に調整することなどによって、青色光の低減、高コントラスト、高階調の利点を有し、パッケージプロセスと長期信頼性のニーズを満たすことができる、LEDディスプレイの光源反射ブラケットの生産に利用可能なPA10T成形複合材料を提供する。本発明のPA10T成形複合材料によるパッケージ製品は、マルチシナリオ用途向けの高コントラストLEDディスプレイの光源反射ブラケットの製造に使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PA10T成形複合材料であって、
成分として、PA10T樹脂40~70重量部と、ウォラストナイト30~60重量部と、トナー0.4~5重量部と、を含み、
PA10T成形複合材料の樹脂マトリックスにおいて、ウォラストナイトは、平均直径4~20μm、平均長さ10~250μmであり、
示差走査熱量測定法により、345℃に昇温して20℃/minの降温速度で測定した結晶ピーク半値幅ΔT1/2が3~10℃であり、
白色度は26未満であり、460nm光源反射率は6.5%未満である、ことを特徴とするPA10T成形複合材料。
【請求項2】
示差走査熱量測定法により、345℃に昇温して20℃/minの降温速度で測定した結晶ピーク半値幅ΔT1/2は、4.5~7℃である、ことを特徴とする請求項1に記載のPA10T成形複合材料。
【請求項3】
前記PA10T樹脂の数平均分子量が1500~26000である、ことを特徴とする請求項1に記載のPA10T成形複合材料。
【請求項4】
PA10T成形複合材料の樹脂マトリックス中の前記ウォラストナイトは、平均直径6~13μm、平均長さ80~120μmである、ことを特徴とする請求項1に記載のPA10T成形複合材料。
【請求項5】
前記トナーは、カーボンブラック、ブラックマスタバッチ、アモルファスカーボントナーから選択される少なくとも1種又は複数の色の混合トナーである、ことを特徴とする請求項1に記載のPA10T成形複合材料。
【請求項6】
前記トナーは、アモルファスカーボントナーから選択される、ことを特徴とする請求項5に記載のPA10T成形複合材料。
【請求項7】
好ましくは、460nm光源反射率は5%未満であり、より好ましくは、460nm光源反射率は2.5~4%である、ことを特徴とする請求項1に記載のPA10T成形複合材料。
【請求項8】
酸化防止剤0~3重量部をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載のPA10T成形複合材料。
【請求項9】
各成分をミキサーに加えて均一に混合し、次に、スクリューの温度範囲が280~330℃、回転数が400~500r/minの二軸押出機により押し出して造粒し、PA10T成形複合材料を得るステップを含む、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のPA10T成形複合材料の製造方法。
【請求項10】
LEDディスプレイの光源反射ブラケットの製造に用いられる、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のPA10T成形複合材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料の技術分野に関し、特に、PA10T成形複合材料、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
LED光源は、半導体チップ、LED光源反射ブラケット、金線、パッケージ接着剤から主に構成される。LED光源反射ブラケットは、LED光源の「骨格」であり、機能部品でもある。LEDパッケージプロセスでは、ダイアタッチ、ワイヤボンディング、パッケージ接着剤の硬化を必要とし、その他の材料や部品はすべて反射ブラケットに集積されている。LED反射ブラケットは、LEDチップが発する光を一定の角度で反射して、光損失を減らし、エポキシ樹脂やシリコーンなどのパッケージ材料を透過し、LED照明や表示の光源を形成する必要がある。LED反射ブラケット材料はLED照明のコア材料であり、LED光源の性能と寿命に直接関係している。
【0003】
現在、LED反射ブラケットの材料選択には以下の点を考慮する必要がある。
【0004】
第1に、パッケージ過程に亘って、LED反射ブラケットは、150~200℃の温度に6~10時間曝され、また、パッケージ後のランプビーズは、ディスプレイにした場合、SMTを必要とし、LEDブラケットやランプビーズは、パッケージ及びSMTを受けるときに、変形がなく、荷重がある場合に破壊されないことが必要であり、LEDブラケットの材料の密着性への要件が高い。
【0005】
第2に、近年、LEDディスプレイ光源は、点ピッチがP2.5以下の狭ピッチディスプレイに徐々に開発されており、その結果、その過程でLEDディスプレイの研究開発と製造は引き続き大きな課題に直面している。小ピッチディスプレイのブラケットの製造は、薄肉化、マルチキャビティ化、及び小型化に徐々に発展しており、LED反射ブラケット材料の流動性、超マルチキャビティの成形性、及び機械的強度についてより厳しい要件が求められている。
【0006】
第3に、LED照明器具やディスプレイは、使用の過程で、環境の違いにより、高温、台風、豪雨、雷などの悪天候の影響を受ける場合が多く、照明器具やディスプレイを悪天候から保護するため、使用する材料の寸法安定性などの性能への要件が高い。
【0007】
第4に、LEDディスプレイの応用分野では、画質を鮮明に表示するために、ディスプレイの輝度とコントラストは非常に重要な指標である。現在、市場で主に使用されている形態は純白のLED反射材料で生産されたLEDブラケットで、表面に黒色インクをシルク印刷する必要があるので、工程が煩雑で、効率に悪影響を及ぼし、コストが高いが、側面と反射カップの表面は依然として白色のままであり、LEDディスプレイの表示のコントラストと階調を低下させている。
【0008】
第5に、光源については、一般の人の目が知覚できる波長は780~400nmである。このうち、波長400~450nmの短波青色光は網膜への危害が最も大きく、この波長の青色光は目の中の黄斑領域の毒素量を増加させ、人々の目の健康を深刻に脅かす。一方、LEDフルカラーディスプレイ光源には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3種類のチップがパッケージされており、このうち青色のチップが発する光の輝度が最も低い、すなわちコントラストが最も高いので、LED光源ブラケットは、使用されるチップの青色に対する反射率がLEDディスプレイ全体のコントラストに直接影響を与える。LEDスクリーンによるブルーライト防止は、各種携帯電話、テレビのLEDスクリーンに普及しているが、スクリーン表面にブルーライト防止フィルムをコーティングするのが一般的な対策であるが、それぞれ薄膜が脆弱でコストが高いという欠点を有している。
【0009】
当業者は主にLED反射ブラケット材料の改良を上述の第1、第2の点に集中している。ポリアミド成形複合材料のパッケージ安定性に注目することは少なく、材料自体のコントラスト及び階調を改善することによってLEDディスプレイブラケットのコントラスト及び階調が改善されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の技術的欠陥を解決して、高コントラスト、高階調を持ち、パッケージプロセスと長期信頼性のニーズを満たすことができる、ポリアミド成形複合材料を提供することである。
本発明の別の目的は、上記のポリアミド成形複合材料の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の技術的解決手段によって達成される。
【0012】
PA10T成形複合材料であって、
成分として、PA10T樹脂40~70重量部と、ウォラストナイト30~60重量部と、トナー0.4~5重量部と、を含み、
PA10T成形複合材料の樹脂マトリックスにおいて、ウォラストナイトは、平均直径4~20μm、平均長さ10~250μmであり、
示差走査熱量測定法により、345℃に昇温して20℃/minの降温速度で測定した結晶ピーク半値幅ΔT1/2が3~10℃であり、
白色度は26未満であり、460nm光源反射率は6.5%未満である。
【0013】
好ましくは、前記PA10T成形複合材料は、示差走査熱量測定法により、345℃に昇温して20℃/minの降温速度で測定した結晶ピーク半値幅ΔT1/2は、4.5~7℃である。
【0014】
本発明のPA10T樹脂は、市販品であってもよいし、以下の方法により合成されてもよい。より正確な実験のために、本発明の実施例及び比較例に使用されたPA10Tは、自作のサンプルであり、モノマー、キャッピング剤等の原材料は市販品である。
【0015】
(1)予備重合:機械撹拌を備えたステンレス高圧反応釜にテレフタル酸、1,10-セバジアミン、キャッピング剤の安息香酸、及び脱イオン水を投入する。真空吸引してN置換を3回行った後、昇温撹拌を開始し、昇温速度5℃/minで180℃まで昇温し、60min保温した後、昇温速度2℃/minで270℃まで昇温し、ゆっくり撹拌し、4h保温し、予備重合反応を十分に進行させた。保温終了後、280℃まで緩やかに昇温し、常圧まで排水を開始した。常圧になったら排水弁を閉じて反応を終了し、室温に下げて、材料を排出する。
【0016】
(2)固相増粘:予備重合過程で製造された材料を真空回転ドラムに投入し、回転ドラムの回転速度を10r/min、真空度を30Paとする。20℃/minの速度で昇温し、温度が265℃に達した時にサンプリングして粘度を測定し、粘度(あるいは数平均分子量)の結果によって材料の終点を判定する。
【0017】
本発明では、PA10T樹脂の数平均分子量の範囲は、特に限定されるものではなく、1500~26000であっては、本発明の目的を達成することができる。数平均分子量の測定方法は、従来の方法であり、具体的には、PA10T樹脂サンプルの数平均分子量(Mn)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)により測定する。Agilent HPLC-1260 高速液体クロマトグラフの構成:Eppendorfカラムオーブン、Shodex KF-801、802、802.5及び803ゲル浸透クロマトグラフカラム、示差検出器、G7129Aオートサンプラー。ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相とし、カラム温度40℃の条件で樹脂の分子量を測定する。このデータをクロマトグラフィーワークステーションcirrusソフトウェアで処理して、数平均分子量分布Mnを得る。
【0018】
好ましくは、PA10T成形複合材料の樹脂マトリックス中の前記ウォラストナイトは、平均直径6~13μm、平均長さ80~120μmである。ウォラストナイトは、一定のアスペクト比を有する粉体であり、微細構造は繊維状であり、スクリュー内での溶融せん断時に長さや直径がほとんど変化しない。実験により、PA10T、ウォラストナイト(平均直径17μm、平均長さ180μm)の2種類の物質は、生産プロセスを経て溶融せん断してブレンドし、さらに溶剤を用いて樹脂を溶解し、ウォラストナイトの平均直径と平均長さを測定したところ、ウォラストナイトはスクリューによるせん断中に直径が変化せず、平均長さが約0.5%変化することが分かった。
【0019】
前記トナーは、カーボンブラック、ブラックマスタバッチ、アモルファスカーボントナーから選択される少なくとも1種又は複数の色の混合トナーである。黒を主とし、紫、青、赤など、他の色のトナーを少量加えて調色してもよい。
【0020】
好ましくは、前記トナーは、アモルファスカーボントナーから選択される。
【0021】
好ましくは、前記PA10T成形複合材料の460nm光源反射率は5%未満であり、より好ましくは、前記PA10T成形複合材料の460nm光源反射率は2.5~4%である。
【0022】
酸化防止剤0~3重量部をさらに含み、前記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤、チオジプロピオン酸エステル系酸化防止剤から選択される少なくとも1種である。
【0023】
本発明のPA10T成形複合材料の使用であって、LEDディスプレイの光源反射ブラケットの製造に用いられる。
【0024】
本発明のPA10T成形複合材料の製造方法であって、各成分をミキサーに加えて均一に混合し、次に、スクリューの温度範囲が280~330℃、回転数が450r/minの二軸押出機により押し出して造粒し、PA10T成形複合材料を得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明は以下の有益な効果を有する。
【0026】
460nm光源の反射率は、主に材料の表面粗さ(物体表面の粗さが一定の範囲内で数値が大きいほど、光源から放出された光が物体表面で乱反射し、最後に光の受光端で受ける光のエネルギーが少なくなる)、材料の白色度(白色度が低いほど反射率が低くなる)と相関する。LEDディスプレイの光源反射ブラケットが、LEDディスプレイの階調とコントラストに与える影響は、主に光源反射ブラケットの白色度と反射率にある。この原理によれば、本発明のPA10T成形複合材料は、以下の3つの点で、白色度を26未満、460nm光源の反射率を6.5%未満に制御し(階調とコントラストの向上)、長期パッケージ安定性(密着性)を有し、それでパッケージされたLEDスクリーンの青色光が低いという利点を有する。
【0027】
第1に、ウォラストナイトは、他の無機フィラーと比較して、PA10T成形複合材料製部品の表面粗さを光反射を低減する合理的な範囲にすることができ、460nm光源の反射率を低下させる。樹脂マトリックス中のウォラストナイトの好ましい分布寸法は、460nm光源の反射率をさらに低下させる(LEDディスプレイの青色光を低減する)ことができる。
【0028】
第2に、トナーにより材料の色を調整することで、光吸収効果の良い黒色が得られ、好ましくはアモルファスカーボントナーが白色度をさらに低下させ、光吸収性を向上させ、460nm光源の反射率を低下させる。
【0029】
第3に、PA10T成形複合材料の結晶ピーク半値幅も複合材料の460nm光源の反射率に明らかに影響し、複合材料の結晶ピーク半値幅ΔT1/2が3.5~10℃の時に製造した製品の表面粗さは460nm光源の反射率を下げる需要をより満たすことができることを実験により発見した。本発明の技術的解決手段では、PA10T成形複合材料の結晶ピーク半値幅は、主として、トナー及びウォラストナイトの添加量、仕様、及びPA10Tの数平均分子量を調整することにより調整される。
【0030】
第4に、一方、PA10T成形複合材料の結晶ピーク半値幅、ウォラストナイトの仕様、表面粗さを調整することにより、優れた密着性を得る。
【0031】
本発明のPA10T成形複合材料は、光吸収塗料の追加の噴霧又はつや消しを必要とせず、それによってLEDディスプレイの光源ブラケットのコストを削減する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、具体的な実施例を参照して本発明を詳細に説明する。以下の実施例は、当業者が本発明をさらに理解することを容易にするが、いかなる形態でも本発明を限定するものではない。なお、当業者にとっては、本発明の概念から逸脱することなく、若干の変形及び改良が加えられてもよい。これらはいずれも本発明の保護範囲に属する。
【0033】
実施例及び比較例に使用される原材料は以下の通りである。
【0034】
以下のポリアミド重合用モノマーは市販品であり、重合グレードで純粋である。
PA10T-A:数平均分子量は3000、結晶ピーク半値幅ΔT1/2は8.5℃であり、発明の概要に記載の方法を参照して自作したものである。
PA10T-B:数平均分子量は3400、結晶ピーク半値幅ΔT1/2は5.6℃であり、発明の概要に記載の方法を参照して自作したものである。
PA10T-C:数平均分子量は5500、結晶ピーク半値幅ΔT1/2は5.9℃であり、発明の概要に記載の方法を参照して自作したものである。
PA10T-D:数平均分子量は6500、結晶ピーク半値幅ΔT1/2は6.5℃であり、発明の概要に記載の方法を参照して自作したものである。
PA10T-E:数平均分子量は10000、結晶ピーク半値幅ΔT1/2は11.2℃であり、発明の概要に記載の方法を参照して自作したものである。
PA10T-F:数平均分子量は12000、結晶ピーク半値幅ΔT1/2は12.4℃であり、発明の概要に記載の方法を参照して自作したものである。
PA10T-G:数平均分子量は25000、結晶ピーク半値幅ΔT1/2は15.3℃であり、発明の概要に記載の方法を参照して自作したものである。
ウォラストナイトA:平均直径4μm、平均長さ60μm;
ウォラストナイトB:平均直径6μm、平均長さ120μm;
ウォラストナイトC:平均直径13μm、平均長さ80μm;
ウォラストナイトD:平均直径17μm、平均長さ180μm。
本発明に使用されるウォラストナイトは、市販品をスクリーニングして所望の平均直径、平均長さの範囲にするものである。
タルカムパウダー:AH-1250、広西龍勝華美滑石開発有限公司。
トナーA:アモルファスカーボントナーN774、天津天陽秋実化工科技有限公司;
トナーB:カーボンブラック M570、キャボットケミカル社;
トナーC:ブラックマスタバッチUN2014、キャボットケミカル社;
トナーD:Mazcol Blue 153K、深セン市鼎泰化工有限公司。
酸化防止剤:Irganox1098、ヒンダードフェノール系酸化防止剤。
実施例及び比較例ポリアミド成形複合材料の製造方法:PA10T、ウォラストナイト、トナー、酸化防止剤をミキサーに加えて均一に混合し、次に、スクリューの温度範囲が280~330℃、回転数が450r/minの二軸押出機により押し出して造粒し、PA10T成形複合材料を得る。
【0035】
テスト方法:
(1)密着性:PA10T成形複合材料のサンプルについて、赤インクテストを通じてブラケットプラスチックと金物の密着性を表す。LEDディスプレイの光源ブラケット材料とメッキ金物帯材を型内射出成形したLED反射カップを、赤インクに浸漬して、赤インクにピンが浸漬するように配置し、赤インクが反射カップの内部に浸透するかどうかを観察する。
赤インクが5min内で反射カップ内に浸透しない場合、密着等級はA級と判定される。
赤インクが3min内で反射カップ内に浸透しなかったが、5min内で浸透した場合、密着等級はB級と判定される。
赤インクが1min内で反射カップ内に浸透しなかったが、3min内で浸透した場合、密着等級はC級と判定される。
赤インクが1min内で反射カップ内に浸透した場合、密着等級はD級と判定される。
密着等級がD級である場合、プラスチックと金物の密着性が悪く、ランプビーズの故障を招くリスクがあることが示されている。逆に、密着等級がA、B、Cである場合、パッケージされたランプビーズは、気密性が優れて、信頼性が良い。
【0036】
(2)白色度:材料のコントラストの評価は、材料の白色度を指標として表される。PA10T成形複合材料を射出成形した長さ60mm、幅60mm、厚さ1mmの試験片について、Color Eye 7000A色差計を使用して、L、a、b値を測定し、白色度を計算する。
=100-[(100-L)+a+b1/2
【0037】
(3)反射率:PA10T成形複合材料を射出成形して作製した長さ60mm、幅60mm、厚さ1mmの試験片について、Color Eye 7000A色差計を使用して、波長460nmの光に対する試験片の反射率を測定する。
【0038】
(4)PA10T成形複合材料の結晶ピーク半値幅ΔT1/2:NETZSCH社製の示差走査熱量分析装置を用い、窒素雰囲気下で30℃から345℃へ20℃/分で昇温し、2min保温後、20℃/minで降温し、この時に現れる結晶ピーク温度を結晶化温度Tc(℃)とし、測定したピーク幅の半分の温度を結晶ピーク半値幅ΔT1/2とする。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1~6より、ウォラストナイトの添加量を増やすことにより、結晶ピーク半値幅を好ましい範囲に制御した場合、密着等級は上昇しており、白色度、反射率ともに低いことが分かった。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例4、7、8、9、及び10より、トナーの使用量を調整することで白色度と反射率が低下することが分かった。
【0043】
【表3】
【0044】
実施例4、11~15より、ウォラストナイトは、好ましくは、平均直径6~13μm、平均長さ80~120μmであり、トナーは、好ましくはアモルファスカーボントナーであることが分かった。
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
実施例4、16~24より、ウォラストナイトとトナーを添加することにより、PA10Tの結晶ピーク半値幅を調整することが、成形複合材料の密着度、白色度、及び反射率に影響を与えることが分かった。具体的には、実施例16~21より、実施例18、19の結晶ピーク半値幅は、好ましい範囲で密着等級と反射率の両方が優れていることが分かった。
【0048】
【表6】
【0049】
比較例1より、ウォラストナイトの含有量が高すぎると、結晶ピーク半値幅が低すぎ、密着等級が劣るだけでなく、PA10T成形複合材料製部品の表面構造も破壊されて、反射率が悪くなることがわかった。
比較例2より、ウォラストナイトの含有量が低すぎると、結晶ピーク半値幅を10℃以内に下げることができないため、密着等級が劣るだけでなく、反射率も高いことが分かった。
【0050】
比較例3より、ウォラストナイトを過剰に添加したPA10T成形複合材料は、結晶ピーク半値幅が3~10℃の範囲であっても、高着等級が優れ、反射率が低いという目的を達成できなかったが、これは、ウォラストナイトの過剰により複合材料の表面構造が破壊されてしまうことや、ウォラストナイトが白色粉末であるため、添加量の過剰により白色度が上昇することが原因であることが分かった。
【0051】
比較例4より、タルクパウダーはウォラストナイトの代わりにはならないことが分かった。
【0052】
比較例5より、ウォラストナイトの含有量が低すぎると、結晶ピーク半値幅が3-10℃の範囲であっても、密着等級が高く、反射率が低いという目的は達成できないことが分かった。
【0053】
比較例6より、トナーの添加量が低すぎると、白色度が高すぎて、反射率が高くなることが分かった。
【0054】
比較例7より、トナーの添加量が多すぎると、表面にトナーが過剰に濃縮され、密着度と反射率に影響を与えることが分かった。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
460nm光源の反射率は、主に材料の表面粗さ(物体表面の粗さが一定の範囲内で数値が大きいほど、光源から放出された光が物体表面で乱反射し、最後に光の受光端で受ける光のエネルギーが少なくなる)、材料の白色度(白色度が低いほど反射率が低くなる)と相関する。LEDディスプレイの光源反射ブラケットが、LEDディスプレイの階調とコントラストに与える影響は、主に光源反射ブラケットの白色度と反射率にある。この原理によれば、本発明のPA10T成形複合材料は、以下のつの点で、白色度を26未満、460nm光源の反射率を6.5%未満に制御し(階調とコントラストの向上)、長期パッケージ安定性(密着性)を有し、それでパッケージされたLEDスクリーンの青色光が低いという利点を有する。
【国際調査報告】