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特表2024-533590官能化ポリチオフェンを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】官能化ポリチオフェンを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20240905BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20240905BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08G61/12
H01G9/028 C
H01G9/00 290H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517023
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022070733
(87)【国際公開番号】W WO2023041228
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】21197813.5
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523471312
【氏名又は名称】ヘレウス エプリオ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】シール,アルヌルフ
(72)【発明者】
【氏名】メルカー,ウド
(72)【発明者】
【氏名】サーダット,レザ
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032BA04
4J032BB01
4J032BC03
4J032BD07
4J032CG01
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物を製造するための方法であって、i)溶媒に溶解又は分散されている官能化π共役ポリチオフェンを含む液相を準備する方法工程であって、官能化π共役ポリチオフェンは、一般式(I)(式中、X、Yは、同一であるか又は異なり、O、S又はNRであり、Rは、水素であるか、又は1~18個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族残基であり、Aは、アニオン性官能基を有する有機残基である)の繰り返し単位を含み、液相は、2.5未満のpH値を有する、液相を準備する方法工程と、ii)方法工程i)で準備された液相のpH値を、塩基の添加によって、2.5~10の範囲の値に調整する方法工程と、を含む、方法に関する。本発明は、この方法によって得ることができる液体組成物と、官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物であって、乾燥後に、所与の最低温度におけるある一定の重量減少を特徴とする、液体組成物と、これらの液体組成物が導電層の形成のために使用される積層体の調製のための方法と、この方法によって得ることができる積層体と、電子デバイスにおける導電層の調製のための液体組成物の使用と、にも関する。
【化1】
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物を製造するための方法であって、
i)溶媒に溶解又は分散されている官能化π共役ポリチオフェンを含む液相を準備する工程であって、前記官能化π共役ポリチオフェンは、一般式(I)
【化1】
(式中、
X、Yは、同一であるか又は異なり、O、S、又はNRであり、Rは、水素であるか、又は1~18個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族残基であり、
Aは、アニオン性官能基を有する有機残基である)の繰り返し単位を含み、
前記液相は、2.5未満のpH値を有する、液相を準備する工程と、
ii)方法工程i)で準備された前記液相の前記pH値を、塩基の添加によって、2.5~10の範囲の値に調整する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
方法工程i)における前記液相の前記準備が、
ia)
a)一般式(I)
【化2】
(式中、X、Y及びAは、請求項1で定義した通りである)のチオフェンモノマーと、
b)酸化剤と、
c)溶媒と、を含む、液体反応混合物を準備する方法工程と、
ib)方法工程ia)で得られた前記液体反応混合物中、一般式(I)の前記チオフェンモノマーを酸化重合させて、官能化π共役ポリチオフェンを含む液相を得る方法工程と、
ic)任意選択的に、方法工程ib)で得られた前記液相を、好ましくはイオン濾過によって精製する方法工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CR -CR-(CR
(式中、
残基Rは、互いに独立して、水素であるか、又は-(CH-Z-(CR -SO であり、
は、-(CH-Z-(CR-SO であり、
Zは、O、S又は-CH-であり、
は、水素又はアルキル基であり、
は、カチオンであり、
m及びnは、同一であるか又は異なり、0~3の整数であり、
sは、0~10の整数であり、
pは、1~18の整数である)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CH-CR-(CH
(式中、
は、水素であり、
は、-(CH)-O-(CH-SO であり、
は、無機カチオン、好ましくはNa又はKであり、
nは、0又は1であり、
sは、0又は1であり、
pは、4又は5である)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CH-CR-(CH
(式中、
は、水素であり、
は、-(CH-O-CH-CH-CHR-SO であり、
は、無機カチオン、好ましくはNa又はKであり、
は、CH又はCHCH、好ましくはCHであり、
nは、0又は1であり、
sは、0又は1であり、
pは、4又は5である)である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、水である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基が、無機塩基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記無機塩基が、アルカリ金属水酸化物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物。
【請求項10】
2.5~10の範囲のpH値を有し、かつ溶媒に溶解又は分散されている官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物であって、前記ポリチオフェンは、一般式(I)
【化3】
(式中、X、Y及びAは、請求項1~5で定義した通りである)の繰り返し単位を含み、前記液体組成物を100℃の温度及び50mbarの圧力で16時間乾燥させた後に得られる組成物は、以下の条件(A)~(E):
(A)熱重量分析によって測定した場合、300℃以上の温度で、前記乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて10重量%の重量減少、
(B)熱重量分析によって測定した場合、330℃以上の温度で、前記乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて20重量%の重量減少、
(C)熱重量分析によって測定した場合、345℃以上の温度で、前記乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて30重量%の重量減少、
(D)微分プロットにおいて250℃~270℃の区間にピークが存在しないこと、
(E)261℃における微分値の第2のピークにおける微分値に対する比が0.1以下、のうちの少なくとも1つを満たす、液体組成物。
【請求項11】
積層体の調製のための方法であって、
I)基材を準備する方法工程と、
II)請求項9又は10に記載の液体組成物を、前記基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用する方法工程と、
III)任意選択的に、前記基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部を覆う導電層の形成のために前記溶媒を少なくとも部分的に除去する方法工程と、を含む、方法。
【請求項12】
前記基材が、電極材料(2)の電極本体(1)であり、誘電体(3)が、陽極本体(5)の形成下で、前記電極材料(2)の1つの表面(4)を少なくとも部分的に覆う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電子デバイスにおける導電層の調製のための、請求項9又は10に記載の液体組成物の使用。
【請求項14】
前記電子デバイスが、光導電性セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、IR検出器、光起電デバイス、太陽電池、メモリ記憶デバイス用コーティング材料、電界効果抵抗デバイス、帯電防止フィルム、バイオセンサ、エレクトロクロミックデバイス、電解コンデンサ、エネルギー貯蔵デバイス、タッチパネル及び電磁遮蔽体から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記導電層が、ポリマー電解コンデンサ又はハイブリッド電解コンデンサにおける固体電解質層である、請求項13又は14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物を製造するための方法と、この方法によって得ることができる液体組成物と、官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物であって、乾燥後に、所与の最低温度におけるある一定の重量減少を特徴とする、液体組成物と、これらの液体組成物が導電層の形成のために使用される積層体(layered body)の調製のための方法と、この方法によって得ることができる積層体と、電子デバイスにおける導電層の調製のための液体組成物の使用と、に関する。
【0002】
市販の電解コンデンサは、原則として、多孔質金属電極と、金属表面上の誘電体として機能する酸化物層と、多孔質構造に導入される通常は固体の電気伝導性材料と、例えば銀層などの外部電極(接点)と、更なる電気接点と、封止と、から作製される。頻繁に使用される電解コンデンサは、陽極電極がバルブ金属であるタンタルから作製され、その上に五酸化タンタルの均一な誘電体層が陽極酸化によって生成(「化成」とも呼ばれる)されている、タンタル電解コンデンサである。液体又は固体電解質は、コンデンサの陰極を形成する。陽極電極がバルブ金属であるアルミニウムから作製され、その上に均一な電気絶縁性酸化アルミニウム層が、陽極酸化によって誘電体として生成されているアルミニウムコンデンサが、更に頻繁に用いられる。ここでも、液体電解質又は固体電解質が、コンデンサの陰極を形成する。アルミニウムコンデンサは、通常、巻回型コンデンサ又は積層型コンデンサとして構築される。
【0003】
π共役ポリマーは、その高い導電性のために、上述のコンデンサにおける固体電解質として特に好適である。π共役ポリマーは、導電性ポリマー又は合成金属とも呼ばれる。ポリマーは、加工性、重量、及び化学修飾による特性の目標とする調整に関して金属よりも有利であるので、π共役ポリマーはますます経済的重要性を増している。既知のπ共役ポリマーの例は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、及びポリ(p-フェニレン-ビニレン)であり、工業的に使用される特に重要なポリチオフェンは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)、PEDOT)である。その理由は、その酸化形態において非常に高い導電率を有するからである。
【0004】
導電性ポリマーに基づく固体電解質は、様々な方法で酸化物層に適用することができる。例えば、欧州特許出願公開第0340512(A)号は、3,4-エチレンジオキシチオフェンからの固体電解質の製造及び電解コンデンサにおけるその使用について記載している。この刊行物の教示によれば、3,4-エチレンジオキシチオフェンは、in situで酸化物層上に重合される。in situ重合に加えて、既に重合されたチオフェンと、対イオンとしてのポリアニオンとを含む分散液、例えば、従来技術から既知のPEDOT/PSS分散液(PEDOT=ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン、PSS=ポリスチレンスルホン酸)が酸化物層に適用され、次いで分散剤が蒸発によって除去される、コンデンサにおける固体電解質の製造のための方法もまた従来技術から知られている。固体電解コンデンサの製造のためのそのような方法は、例えば、独国特許出願公開第102005043828(A)号に開示されている。
【0005】
しかしながら、PEDOT/PSS分散液は、非導電性不活性材料としてかなりの量のPSSを含むという欠点を特徴とする。更に、PSSの存在によって、分散液中のPEDOT/PSS粒子のサイズが大き過ぎて、多孔質金属電極のより小さい細孔にも確実に粒子が浸透できない場合がある。最後に、PEDOT/PSS分散液の最大固形分は、多くの場合、約3重量%の値に制限される。これらの欠点を克服するために、既知のPEDOT/PSS分散液の欠点を特徴としない、PEDOTの誘導体を含む液体組成物が調製された。スルホネート基で官能化されたポリチオフェンが、最初に開発された。スルホネート基によって、これらのポリチオフェンは、自己ドープされ、PSSなどの対イオンを必要としない。例えば、欧州特許出願公開第1122274(A1)号は、対応するモノマー4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸(4-(2,3-dihydrothieno[3,4-b][1,4]dioxin-2-ylmethoxy)-1-butanesulfonic acid、EDOT-S)の酸化重合によるポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸)(poly(4-(2,3-dihydrothieno[3,4-b][1,4]dioxin-2-ylmethoxy)-1-butanesulfonic acid)、PEDOT-S)などの官能化π共役ポリマーの調製を開示している。しかしながら、欧州特許出願公開第1122274(A1)号において得られたポリマー溶液によって調製された導電層の導電性は、通常は、低過ぎるため、これらのポリマー溶液を、例えば、固体電解コンデンサにおける固体電解質層の調製のために使用することはできない。有意に増した導電性を有するPEDOT-Sなどの官能化π共役ポリマー及びそれらの調製のための方法は、国際公開第2016/102129(A1)号に開示されている。
【0006】
電子部品における導電層、例えばコンデンサにおける固体電解質層を製造するために使用される導電性ポリマーは、十分に高い導電率のみならず、高い熱安定性も特徴とするべきである。この理由は、例えば、コンデンサのはんだ付け中に、又は、例えば自動車産業における電子部品のその後の使用において、高い熱応力が生じるためである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、π共役ポリマーの分野における従来技術の欠点を克服することであった。
【0008】
特に、本発明の目的は、π共役導電性ポリマー、好ましくは水溶性又は水分散性π共役導電性ポリマーを含む組成物であって、従来技術から既知の対応する組成物と比較して、高い導電性を示すのみならず、π共役導電性ポリマーの増した熱安定性も示すことを特徴とする、組成物を提供することであった。本明細書で使用される「熱安定性」という用語は、好ましくは、導電性ポリマーの、熱分解の結果としての重量減少に耐える能力を特徴付ける。
【0009】
また、本発明の目的は、π共役導電性ポリマー、好ましくは水溶性又は水分散性π共役導電性ポリマーを含む組成物であって、コンデンサにおける固体電解質層の形成のために使用される場合、コンデンサの有利な特性、特に、従来技術から既知の対応する組成物を使用して固体電解質層が調製されたコンデンサと比較して増した熱安定性をもたらす、組成物を提供することであった。
【0010】
上記目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、カテゴリを形成する独立請求項の主題によって提供され、それと従属関係にある従属請求項は、本発明の好ましい実施形態を表し、その主題は、同様に、少なくとも1つの目的を解決することに寄与する。
【0011】
|1a| 本発明による目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物を製造する方法1であって、
i)溶媒に溶解又は分散されている官能化π共役ポリチオフェンを含む液相を準備する工程であって、官能化π共役ポリチオフェンは、一般式(I)
【化1】
(式中、
X、Yは、同一であるか又は異なり、O、S、又はNRであり、Rは、水素であるか、又は1~18個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族残基であり、
Aは、アニオン性官能基を有する有機残基である)の繰り返し単位を含み、
液相は、2.5未満、好ましくは2.0未満のpH値を有する、液相を準備する工程と、
ii)方法工程i)で準備された液相のpH値を、塩基の添加によって、2.5~10の範囲、好ましくは3~8の範囲の値に調整する工程と、を含む、方法1の第1の実施形態によってなされる。
【0012】
|2a| 本発明による方法1の好ましい実施形態では、一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CR -CR-(CR
(式中、
残基Rは、互いに独立して、水素であるか、又は-(CH-Z-(CR -SO であり、
は、-(CH-Z-(CR-SO であり、
Zは、O、S又は-CH-であり、
は、水素又はアルキル基であり、
は、カチオンであり、
m及びnは、同一であるか又は異なり、0~3の整数であり、
sは、0~10の整数であり、
pは、1~18の整数である)である。
【0013】
「残基Rは、互いに独立して、水素であるか、又は-(CH-Z-(CR -SO である」という用語は、所与の炭素原子において、両方の残基Rが水素であり得るか、両方の残基Rが-(CH-Z-(CR -SO であり得るか、又は1つの残基Rが水素であり得、1つの残基Rが-(CH-Z-(CR -SO であり得ることを示している。更に、所与の官能化π共役ポリチオフェンにおいて、残基-(CH-Z-(CR -SO は、必ずしも同一である必要はない。
【0014】
この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第2の実施形態であり、好ましくは第1の実施形態に従属する。
【0015】
|3a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CH-CR-(CH
(式中、
は、水素であり、
は、-(CH)-O-(CH-SO であり、
は、無機カチオン、好ましくはNa又はKであり、
nは、0又は1であり、
sは、0又は1であり、
pは、4又は5である)である。
【0016】
この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第3の実施形態であり、好ましくは第2の実施形態に従属する。
【0017】
|4a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CH-CR-(CH
(式中、
は、水素であり、
は、-(CH-O-CH-CH-CHR-SO であり、
は、無機カチオン、好ましくはNa又はKであり、
は、CH又はCHCH、好ましくはCHであり、
nは、0又は1であり、
sは、0又は1であり、
pは、4又は5である)である。
【0018】
この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第4の実施形態であり、好ましくは第2の実施形態に従属する。
【0019】
|5a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、π共役ポリチオフェンは、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸)若しくはその塩、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-2-ブタンスルホン酸)若しくはその塩、又はこれらのポリマーの混合物である。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第5の実施形態であり、好ましくは第1~第4の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0020】
|6a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、溶媒は、水、脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール及びグリセロール、脂肪族ケトン、例えば、アセトン及びメチルエチルケトン、脂肪族ニトリット、例えば、アセトニトリル、グリコールエーテル、例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテル、並びにこれらの溶媒のうちの少なくとも2つの混合物、特に、水と水混和性溶媒との混合物からなる群から選択され、水の溶媒としての使用が最も好ましい。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第6の実施形態であり、好ましくは第1~第5の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0021】
|7a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、塩基は、無機塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、より好ましくは、アンモニア、水酸化リチウム、酸化リチウム、水酸化ナトリウム、酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化バリウム、酸化バリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸三ナトリウム及びこれらの塩基のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される無機塩基である。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第7の実施形態であり、好ましくは第1~第6の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0022】
|8a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、塩基は、アルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びこれらの塩基のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属水酸化物である。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第8の実施形態であり、好ましくは第7の実施形態に従属する。
【0023】
|9a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、方法工程i)で準備された液相は、官能化π共役ポリチオフェンを、いずれの場合も液相の総重量に基づいて、0.1~25重量%の範囲、好ましくは0.25~10重量%の範囲、最も好ましくは0.5~4重量%の範囲の量で含む。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第9の実施形態であり、好ましくは第1~第8の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0024】
|10a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、方法工程i)で準備された液相中の官能化π共役ポリチオフェンは、少なくとも6、好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも12、より好ましくは少なくとも14、より好ましくは少なくとも16、より好ましくは少なくとも18、より好ましくは少なくとも20の、質量平均分子量Mのモル平均分子量Mに対する比(M/M)を特徴とする。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第10の実施形態であり、好ましくは第1~第9の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0025】
|11a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、方法工程i)で準備された液相中の官能化π共役ポリチオフェンは、少なくとも50000g/mol、好ましくは少なくとも75000g/mol、より好ましくは少なくとも100000g/mol、最も好ましくは少なくとも125000g/molの質量平均分子量Mを特徴とする。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第11の実施形態であり、好ましくは第10の実施形態に従属する。
【0026】
|12a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、方法工程i)で準備された液相中の官能化π共役ポリチオフェンは、125000g/mol~240000g/molの範囲、好ましくは125000g/mol~210000g/molの範囲の質量平均分子量Mを特徴とする。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第12の実施形態であり、好ましくは第10又は第11の実施形態に従属する。
【0027】
|13a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、方法工程i)で準備された液相中の官能化π共役ポリチオフェンは、25000g/mol未満、好ましくは20000g/mol未満、より好ましくは15000g/mol未満のモル平均分子量Mを特徴とする。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第13の実施形態であり、好ましくは第10~第12の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0028】
|14a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、方法工程i)における液相の準備は、
ia)
a)一般式(I)
【化2】
(式中、X、Y及びAは、上で定義した通りに定義される)のチオフェンモノマーと、
b)酸化剤と、
c)溶媒と、を含む、液体反応混合物を準備する方法工程と、
ib)方法工程ia)で得られた液体反応混合物中、一般式(I)のチオフェンモノマーを酸化重合させて、官能化π共役ポリチオフェンを含む液相を得る方法工程と、
ic)任意選択的に、方法工程ib)で得られた液相を、好ましくはイオン濾過によって精製する方法工程と、を含む。
【0029】
この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第14の実施形態であり、好ましくは第1~第13の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0030】
|15a| 本発明による方法1の第14の実施形態の好ましい実施形態では、方法工程ia)で準備された液体反応混合物のpHは、有機酸又は無機酸、好ましくはギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、硫酸、スルホン酸、硝酸、ホスホン酸、リン酸又はこれらの酸のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される酸を使用して、2.5未満の値に調整され、硫酸の使用が特に好ましい。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第15の実施形態であり、好ましくは第14の実施形態に従属する。
【0031】
|16a| 本発明による方法1の第14の実施形態の更に好ましい実施形態では、方法工程ib)における酸化重合は、窒素、アルゴン、二酸化炭素又はこれらの混合物の不活性ガス雰囲気下で行われる。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第16の実施形態であり、好ましくは第14又は第15の実施形態に従属する。
【0032】
|17a| 本発明による方法1の第14の実施形態の更に好ましい実施形態では、方法工程ib)における酸化重合は、方法工程ib)における重合反応中の液体反応混合物の蒸気圧以上の圧力下で行われる。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第17の実施形態であり、好ましくは第14~第16の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0033】
|18a| 本発明による方法1の第14の実施形態の更に好ましい実施形態では、方法工程ib)における酸化重合は、0.8bar以下の減圧下で行われる。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第18の実施形態であり、好ましくは第14~第17の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0034】
|19a| 本発明による方法1の第14の実施形態の更に好ましい実施形態では、方法工程ib)で得られた液相は、更なる方法工程ic)で精製される。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第19の実施形態であり、好ましくは第14~第18の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0035】
|20a| 本発明による方法1の第14の実施形態の更に好ましい実施形態では、方法工程ic)における精製は、濾過によって及び/又はイオン交換体による処理によって達成される。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第20の実施形態であり、好ましくは第19の実施形態に従属する。
【0036】
|21a| 本発明による方法1の更に好ましい実施形態では、方法工程i)で準備された液相は、更なる添加剤、好ましくは、界面活性物質、接着促進剤、導電率を高める添加剤、有機結合剤又はこれらの更なる添加剤のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される更なる添加剤を含む。この好ましい実施形態は、本発明による方法1の第21の実施形態であり、好ましくは第1~第20の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0037】
|1b|本発明による目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、本発明による方法1によって、好ましくは第1~第20の実施形態のいずれか1つによる方法1によって得ることができる官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物1の第1の実施形態によってもなされる。
【0038】
|2b| 本発明による液体組成物1の好ましい実施形態では、液体組成物1を100℃の温度及び50mbarの圧力で16時間乾燥させた後に得られる組成物は、以下の条件(A)~(E):
(A)熱重量分析によって測定した場合、300℃以上、好ましくは310℃以上、更により好ましくは320℃以上の温度で、乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて10重量%の重量減少、
(B)熱重量分析によって測定した場合、330℃以上、好ましくは335℃以上、更により好ましくは340℃以上の温度で、乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて20重量%の重量減少、
(C)熱重量分析によって測定した場合、345℃以上、好ましくは350℃以上、更により好ましくは355℃以上の温度で、乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて30重量%の重量減少、
(D)微分プロットにおいて250℃~270℃の区間にピークが存在しないこと、
(E)261℃における微分値の第2のピークにおける微分値に対する比が0.1以下、好ましくは0.08以下、より好ましくは0.07以下、のうちの少なくとも1つを満たす。
【0039】
この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物1の第2の実施形態であり、好ましくは第1の実施形態に従属する。これに関連して、乾燥させた液体組成物1が、以下の条件又は条件の組み合わせ:A、B、C、D、E、AB、AC、AD、AE、BC、BD、BE、CD、CE、DE、ABC、ABD、ABE、ACD、ACE、ADE、BCD、BCE、BDE、CDE、ABCD、ABCE、ABDE、ACDE、BCDE及びABCDEを満たすことが特に好ましい。
【0040】
|3b| 本発明による液体組成物1の更に好ましい実施形態では、液体組成物によって作製された導電層は、25S/cmを超える導電率を有する。この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物1の第3の実施形態であり、好ましくは第1又は第2の実施形態に従属する。
【0041】
|4b| 本発明による液体組成物1の更に好ましい実施形態では、液体組成物は、更なる添加剤、好ましくは、界面活性物質、接着促進剤、導電率を高める添加剤、有機結合剤又はこれらの更なる添加剤のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される更なる添加剤を含む。この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物1の第4の実施形態であり、好ましくは第1~第3の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0042】
|1c|本発明による目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、2.5~10の範囲、好ましくは3~8の範囲のpH値を有し、かつ溶媒に溶解又は分散されている官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物2であって、ポリチオフェンは、一般式(I)
【化3】
(式中、
X、Yは、同一であるか又は異なり、O、S、又はNRであり、Rは、水素であるか、又は1~18個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族残基であり、
Aは、アニオン性官能基を有する有機残基である)の繰り返し単位を含み、
液体組成物2を100℃の温度及び50mbarの圧力で16時間乾燥させた後に得られる組成物は、以下の条件(A)~(E):
(A)熱重量分析によって測定した場合、300℃以上、好ましくは310℃以上、更により好ましくは320℃以上の温度で、乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて10重量%の重量減少、
(B)熱重量分析によって測定した場合、330℃以上、好ましくは335℃以上、更により好ましくは340℃以上の温度で、乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて20重量%の重量減少、
(C)熱重量分析によって測定した場合、345℃以上、好ましくは350℃以上、更により好ましくは355℃以上の温度で、乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて30重量%の重量減少、
(D)微分プロットにおいて250℃~270℃の区間にピークが存在しないこと、
(E)261℃における微分値の第2のピークにおける微分値に対する比が0.1以下、好ましくは0.08以下、より好ましくは0.07以下、のうちの少なくとも1つを満たす、液体組成物2の第1の実施形態によってもなされる。
【0043】
これに関連して、乾燥させた液体組成物2が、以下の条件又は条件の組み合わせ:A、B、C、D、E、AB、AC、AD、AE、BC、BD、BE、CD、CE、DE、ABC、ABD、ABE、ACD、ACE、ADE、BCD、BCE、BDE、CDE、ABCD、ABCE、ABDE、ACDE、BCDE及びABCDEを満たすことが特に好ましい。
【0044】
|2c|本発明による液体組成物2の好ましい実施形態では、一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CR -CR-(CR
(式中、
残基Rは、互いに独立して、水素であるか、又は-(CH-Z-(CR -SO であり、
は、-(CH-Z-(CR-SO であり、
Zは、O、S又は-CH-であり、
は、水素又はアルキル基であり、
は、カチオンであり、
m及びnは、同一であるか又は異なり、0~3の整数であり、
sは、0~10の整数であり、
pは、1~18の整数である)である。
【0045】
この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第2の実施形態であり、好ましくは第1の実施形態に従属する。
【0046】
|3c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CH-CR-(CH
(式中、
は、水素であり、
は、-(CH)-O-(CH-SO であり、
は、無機カチオン、好ましくはNa又はKであり、
nは、0又は1であり、
sは、0又は1であり、
pは、4又は5である)である。
【0047】
この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第3の実施形態であり、好ましくは第2の実施形態に従属する。
【0048】
|4c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CH-CR-(CH
(式中、
は、水素であり、
は、-(CH-O-CH-CH-CHR-SO であり、
は、無機カチオン、好ましくはNa又はKであり、
は、CH又はCHCH、好ましくはCHであり、
nは、0又は1であり、
sは、0又は1であり、
pは、4又は5である)である。
【0049】
この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第4の実施形態であり、好ましくは第2の実施形態に従属する。
【0050】
|5c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、π共役ポリチオフェンは、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸)若しくはその塩、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-2-ブタンスルホン酸)若しくはその塩、又はこれらのポリマーの混合物である。この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第5の実施形態であり、好ましくは第1~第4の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0051】
|6c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、溶媒は、水、脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール及びグリセロール、脂肪族ケトン、例えば、アセトン及びメチルエチルケトン、脂肪族ニトリット、例えば、アセトニトリル、グリコールエーテル、例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテル、並びにこれらの溶媒のうちの少なくとも2つの混合物、特に、水と水混和性溶媒との混合物からなる群から選択され、水が溶媒として最も好ましい。この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第6の実施形態であり、好ましくは第1~第5の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0052】
|7c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、液体組成物は、官能化π共役ポリチオフェンを、いずれの場合も液体組成物2の総重量に基づいて、0.1~25重量%の範囲、好ましくは0.25~10重量%の範囲、最も好ましくは0.5~4重量%の範囲の量で含む。この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第7の実施形態であり、好ましくは第1~第6の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0053】
|8c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、官能化π共役ポリチオフェンは、粒子の形態で存在し、これらの粒子の粒度分布は、
i)1~100nmの範囲、好ましくは1~80nmの範囲、より好ましくは1~60nmの範囲であり、5~40nmの範囲が最も好ましいd50値(重量平均粒径)、
及び
ii)3.5×d50未満、好ましくは3×d50未満、より好ましくは2×d50未満のd90値、を特徴とする。
【0054】
この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第8の実施形態であり、好ましくは第1~第7の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0055】
|9c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、液体組成物中の官能化π共役ポリチオフェンは、少なくとも6、好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも12、より好ましくは少なくとも14、より好ましくは少なくとも16、より好ましくは少なくとも18、より好ましくは少なくとも20の、質量平均分子量Mのモル平均分子量Mに対する比(M/M)を特徴とする。この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第9の実施形態であり、好ましくは第1~第8の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0056】
|10c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、液体組成物中の官能化π共役ポリチオフェンは、少なくとも50000g/mol、好ましくは少なくとも75000g/mol、より好ましくは少なくとも100000g/mol、最も好ましくは少なくとも125000g/molの質量平均分子量Mを特徴とする。この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第10の実施形態であり、好ましくは第9の実施形態に従属する。
【0057】
|11c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、液体組成物中の官能化π共役ポリチオフェンは、125000g/mol~240000g/molの範囲、好ましくは125000g/mol~210000g/molの範囲の質量平均分子量Mを特徴とする。この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第11の実施形態であり、好ましくは第9又は第10の実施形態に従属する。
【0058】
|12c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、液体組成物中の官能化π共役ポリチオフェンは、25000g/mol未満、好ましくは20000g/mol未満、より好ましくは15000g/mol未満のモル平均分子量Mを特徴とする。この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第12の実施形態であり、好ましくは第9~第11の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0059】
|13c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、液体組成物によって作製された導電層は、25S/cmを超える導電率を有する。この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第13の実施形態であり、好ましくは第1~第12の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0060】
|14c| 本発明による液体組成物2の更に好ましい実施形態では、液体組成物は、更なる添加剤、好ましくは、界面活性物質、接着促進剤、導電率を高める添加剤、有機結合剤又はこれらの更なる添加剤のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される更なる添加剤を含む。この好ましい実施形態は、本発明による液体組成物2の第14の実施形態であり、好ましくは第1~第13の実施形態のいずれか1つに従属する。
【0061】
|1d| 本発明による目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、積層体の調製のための方法2であって、
I)基材を準備する方法工程と、
II)本発明による液体組成物1又は液体組成物2、好ましくは液体組成物1の第1~第4の実施形態のいずれか1つによる液体組成物1又は液体組成物2の第1~第14の実施形態のいずれか1つによる液体組成物2を、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用する方法工程と、
III)任意選択的に、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部を覆う導電層の形成のために溶媒を少なくとも部分的に除去する方法工程と、を含む、方法2によってもなされる。
【0062】
|2d| 本発明による方法2の好ましい実施形態では、基材は、電極材料の電極本体であり、誘電体は、陽極本体の形成下でこの電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆う。この好ましい実施形態は、本発明による方法2の第2の実施形態であり、好ましくは第1の実施形態に従属する。
【0063】
|1e| 本発明による目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、本発明による方法2によって、好ましくは第1又は第2の実施形態による方法2によって得ることができる積層体によってもなされる。
【0064】
|1f| 本発明による目的のうちの少なくとも1つを解決することへの寄与は、電子デバイスにおける導電層の調製のための、本発明による液体組成物1又は液体組成物2、好ましくは液体組成物1の第1~第4の実施形態のいずれか1つによる液体組成物1又は液体組成物2の第1~第14の実施形態のいずれか1つによる液体組成物2の使用によってもなされる。
【0065】
|2f| 本発明による使用の好ましい実施形態では、電子デバイスは、光導電性セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、IR検出器、光起電デバイス、太陽電池、メモリ記憶デバイス用コーティング材料、電界効果抵抗デバイス、帯電防止フィルム、バイオセンサ、エレクトロクロミックデバイス、電解コンデンサ、エネルギー貯蔵デバイス、タッチパネル及び電磁遮蔽体から選択される。この好ましい実施形態は、本発明による使用の第2の実施形態であり、好ましくは第1の実施形態に従属する。
【0066】
|3f| 本発明による使用の更に好ましい実施形態では、導電層は、ポリマー電解コンデンサ又はハイブリッド電解コンデンサにおける固体電解質層である。この好ましい実施形態は、本発明による使用の第3の実施形態であり、好ましくは第1又は第2の実施形態に従属する。
【0067】
本発明による方法1
これらの目的を解決することへの寄与は、官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物を製造するための方法1であって、
i)溶媒に溶解又は分散されている官能化π共役ポリチオフェンを含む液相を準備する工程であって、官能化π共役ポリチオフェンは、一般式(I)
【化4】
(式中、
X、Yは、同一であるか又は異なり、O、S、又はNRであり、Rは、水素であるか、又は1~18個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族残基であり、
Aは、アニオン性官能基を有する有機残基である)の繰り返し単位を含み、
液相は、2.5未満、好ましくは2.0未満のpH値を有する、液相を準備する工程と、
ii)方法工程i)で準備された液相のpH値を、塩基の添加によって、2.5~10の範囲、好ましくは3~8の範囲の値に調整する工程と、を含む、方法1によってなされる。
【0068】
驚くべきことに、2.5未満のpHを有する、官能化π共役ポリチオフェン(例えば、PEDOT-S)を含む液体組成物のpH値を、塩基の添加によって、好ましくはアルカリ金属水酸化物の添加によって、2.5~10の範囲の値に調整することによって、有意に増した熱安定性を特徴とする官能化π共役ポリチオフェンが得られることが発見された。
【0069】
方法工程i)で準備された液相に含まれる(か又は本発明による液体組成物に含まれる)官能化π共役ポリチオフェンでは、一般式(I)の繰り返し単位は、以下の式(I’)
【化5】
(式中、アスタリスク(*)は、隣接する繰り返し単位への結合を示す)において示されるように互いに結合している。好ましくは、官能化π共役ポリチオフェンは、ポリマー鎖(式(I’)には示されていない)に沿って正電荷を有し、これらの正電荷は、有機残基A中のアニオン性官能基によって少なくとも部分的に相殺されている。
【0070】
本発明による方法1の方法工程i)では、溶媒に溶解又は分散されている官能化π共役ポリチオフェンを含む液相が準備される。好ましくは、方法工程i)は、
ia)
a)一般式(I)
【化6】
(式中、X、Y及びAは、上で定義した通りに定義される)のチオフェンモノマーと、
b)酸化剤と、
c)溶媒と、を含む、液体反応混合物を準備するサブ工程と、
ib)方法工程ia)で得られた液体反応混合物中、一般式(I)のチオフェンモノマーを酸化重合させて、官能化π共役ポリチオフェンを含む液相を得るサブ工程と、
ic)任意選択的に、方法工程ib)で得られた液相を、好ましくはイオン濾過によって精製するサブ工程と、を含む。
【0071】
本発明による方法及び液体組成物において使用される好ましい官能化π共役ポリチオフェンの中に、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸)又はその塩があり、したがって、好ましいチオフェンモノマーa)の1つは、4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸である。本発明による方法及び液体組成物において使用される更に好ましい官能化π共役ポリチオフェンは、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-2-ブタンスルホン酸)又はその塩であり、したがって、更に好ましいチオフェンモノマーa)は、4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-2-ブタンスルホン酸である。
【0072】
方法工程ib)で行われる酸化反応は、化学酸化剤によって、電気化学的酸化によって、又は両方法の組み合わせによって、触媒することができる。電気化学的酸化の場合、電極は、酸化剤b)として機能する。
【0073】
化学酸化剤として使用される好適な酸化剤b)は、重金属の塩、好ましくは鉄塩、より好ましくはFeCl、並びに芳香族及び脂肪族スルホン酸の鉄(III)塩、H、KCr、パーオキソジサルフェートの塩の塩、例えば、K、Na、KMnO、アルカリ金属パーボレート、及びアルカリ金属若しくはアンモニウムパーサルフェート、又はこれらの酸化性物質の混合物である。重金属の塩、パーオキソジサルフェートの塩又はこれらの混合物が特に好ましい。更なる好適な酸化性物質は、例えば、Handbook of Conducting Polymers(Ed.Skotheim,T.A.),Marcel Dekker:New York,1986,Vol.1,pages 46-57に記載されている。特に好ましい酸化剤b)は、パーオキソジサルフェートの塩、特に、K、Na、鉄塩、特に、塩化鉄(III)、又はパーオキソジサルフェートの塩とパーオキソジサルフェートの開裂を触媒する少なくとも1種の更なる化合物との混合物、例えば、パーオキソジサルフェートの塩と鉄塩との混合物である。本発明による方法の特に好ましい実施形態によれば、酸化剤は、Fe(SOとNaとの混合物である。
【0074】
本発明による方法1において使用することができる好適な溶媒c)は、水、水混和性溶媒、特に、脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール及びグリセロール、脂肪族ケトン、例えば、アセトン及びメチルエチルケトン、脂肪族ニトリット、例えば、アセトニトリル、グリコールエーテル、例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテル、又はこれらの溶媒のうちの少なくとも2つの混合物、特に、水と水混和性溶媒との混合物からなる群から選択されるものである。しかしながら、最も好ましい溶媒は水である。したがって、チオフェンモノマーa)としての4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸又は4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-2-ブタンスルホン酸の場合、本発明による方法1は、官能化π共役ポリチオフェンを含む水溶液の製造を可能にする。
【0075】
方法工程ia)で準備される液体反応混合物中のチオフェンモノマーa)の濃度は、好ましくは0.1~40重量%の範囲、好ましくは5~15重量%の範囲である。
【0076】
方法工程ia)で準備される液体反応混合物を調製する様々な方法がある。チオフェンモノマーa)を溶媒c)に溶解又は分散させ、続いて酸化剤b)を添加してもよく(酸化剤もまた溶媒に別々に溶解又は分散させることができる)、最初に酸化剤b)を溶媒c)に溶解又は分散させ、続いてチオフェンモノマーa)を添加してもよい(チオフェンモノマーもまた溶媒に別々に溶解又は分散させることができる)。Fe(SOとNaとの混合物のような2種以上の酸化剤を使用する場合は、これらの成分のうちの1つを最初にチオフェンモノマーa)及び溶媒c)と混合し、最後に第2の酸化剤を添加することが更に可能である。
【0077】
液体反応混合物を方法工程ia)で調製する方法に関係なく、液体反応混合物を調製するために使用される成分中の酸素含有量を、いずれの場合も液体反応混合物の総重量に基づいて、液体反応混合物中の酸素含有量が、1,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満、より好ましくは1ppm未満、より好ましくは0.5ppm未満、最も好ましくは0.25ppm未満となる程度に低減させることが特に好ましい。本発明による方法1の特に好ましい実施形態によれば、液体反応混合物を調製するために使用される成分は、酸素を全く含まない(すなわち、酸素含有量は0ppmである)。
【0078】
酸素含有量の低減は、例えば、液体反応混合物を調製するために使用される成分を減圧下で撹拌することによって、超音波を使用することによって、又はN、アルゴン、CO若しくはこれらの混合物などの不活性ガスを使用してこれらの成分を脱気することによって、又は上記のアプローチの組み合わせによって、達成することができる。
【0079】
方法工程ib)における重合反応は、好ましくは、-20℃~200℃の範囲、好ましくは0℃~100℃の範囲の温度で、好ましくは1~48時間、より好ましくは5~20時間にわたって行われる。
【0080】
重合反応が完了した後、官能化π共役ポリマーを含む液相、好ましくは官能化π共役ポリマーを含む水溶液は、更なる精製の目的で、例えば、濾過によって、特に、限外濾過によって、並びに/又は更なる方法工程ic)におけるイオン交換体による処理によって、特に、アニオン交換体及びカチオン交換体による処理によって、更に精製され得る。本発明による方法2に関連して以下に記載するように、更なる添加剤を添加することも可能である。
【0081】
更に、方法工程ib)における重合後に得られる官能化π共役ポリチオフェンは、通常、粒子の形態で存在するため、方法工程ib)で得られた液相中の官能化π共役ポリチオフェンの粒度分布、又は方法工程ic)で得られた、更なる精製後の、液相中の官能化π共役ポリチオフェンの粒度分布は、エネルギー入力が好ましくは10~1000ワット/リットル(W/l)、より好ましくは20~500W/lであり、超音波周波数が好ましくは20~200kHzである超音波による液相の処理によって、100bar超、好ましくは500bar超、最も好ましくは1500bar超の圧力が好ましくは複数回加えられる高圧均質化による液相の処理によって、又は熱処理が好ましくは40~100℃の範囲、好ましくは50~95℃の範囲の温度での、5分~100時間、好ましくは1~10時間、より好ましくは2~8時間にわたる液相の処理を含む熱による液相の処理によって、調整することができる。
【0082】
本発明による方法1は、方法工程i)で準備された液相のpHが2.5未満であることを特徴とする。そのようなpHは、例えば、方法ia)で準備された液体反応混合物のpHを、2.5未満、好ましくは2.0未満、より好ましくは1.5未満の値に調整することによって得ることができ、pHは20℃の温度で測定される。
【0083】
pH値を2.5未満の値に調整することは、好ましくは、無機酸又は有機酸、好ましくは実質的に塩化物を含まない有機酸又は無機酸を使用して達成される。好適な有機酸としては、ギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸又はこれらの混合物などのカルボン酸が挙げられる。好適な無機酸は、特に、硫酸、スルホン酸、硝酸、ホスホン酸、リン酸又はこれらの混合物である。本発明による方法の特に好ましい実施形態によれば、硫酸がpHの調整のために使用される。
【0084】
本発明による方法1の特に好ましい実施形態によれば、方法工程ia)で準備された液体反応混合物の酸素含有量が、いずれの場合も液体反応混合物の総重量に基づいて、1,000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満、より好ましくは1ppm未満、より好ましくは0.5ppm未満、最も好ましくは0.25ppm未満であることも有利である。本発明による方法1の特に好ましい実施形態によれば、方法工程ia)で準備された液体反応混合物の酸素含有量は、酸素を全く含まない(すなわち、酸素含有量は0ppmである)。
【0085】
方法工程ia)で準備される液体反応混合物中の酸素含有量を調整し、また方法工程ib)における重合反応中にこの低い酸素含有量を維持するための異なるアプローチが存在する。
【0086】
1つのアプローチによれば、方法工程ia)で準備された液体反応混合物(又は液体反応混合物を調製するために使用される液体成分)は、例えば、N、アルゴン、CO又はこれらの混合物などの不活性ガスを方法工程ia)で準備された液相に導入して、液相中の初期酸素含有量を低減することによって、脱気することができる。あるいは、方法工程ia)で準備された液体反応混合物(又は液体反応混合物を調製するために使用される液体成分)は、初期酸素含有量を低減させるために、例えば、真空を適用しながら液体反応混合物を撹拌することによって、減圧による処理に供されてもよく、超音波による処理に供されてもよく、減圧による処理と超音波による処理との組み合わせに供されてもよい。
【0087】
方法工程ib)における重合反応中に低い酸素含有量が確実に維持されるために、重合反応を、不活性ガス雰囲気下、好ましくはN雰囲気下、CO雰囲気下、アルゴン雰囲気下又はこれらの不活性ガスのうちの少なくとも2つの混合物の雰囲気下で行うことが有利であり得、方法工程ib)における酸化重合を、方法工程ib)における重合反応中の液体反応混合物の蒸気圧以上の圧力下で行うことも有利であり得る。好ましくは、方法工程ib)における酸化重合は、方法工程ib)における重合反応中の液体反応混合物の蒸気圧よりも、少なくとも0.1mbar、より好ましくは少なくとも0.5mbar、最も好ましくは少なくとも1mbar高い圧力下で行われる。方法工程ib)における重合反応中に低い酸素含有量が確実に維持されるために、方法工程ib)における酸化重合を、減圧下で、好ましくは0.8bar以下の圧力下で、最も好ましくは0.5bar以下の圧力下で行うことも可能である。
【0088】
本発明による方法1の方法工程ii)では、方法工程i)で準備された液相のpH値は、塩基の添加によって、2.5~10の範囲、好ましくは3~8の範囲の値に調整され、pHはこの場合も20℃の温度で測定される。
【0089】
これに関連して、塩基は、無機塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、より好ましくは、アンモニア、水酸化リチウム、酸化リチウム、水酸化ナトリウム、酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化バリウム、酸化バリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸三ナトリウム及びこれらの塩基のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される無機塩基であることが特に好ましく、アルカリ金属水酸化物、特に、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びこれらの塩基のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属水酸化物が、方法工程ii)においてpHを調整する塩基として最も好ましい。
【0090】
本発明による方法2
上述の目的の達成への寄与はまた、積層体の調製のための方法2であって、
I)基材を準備する方法工程と、
II)本発明による液体組成物1又は液体組成物2、好ましくは液体組成物1の第1~第5の実施形態のいずれか1つによる液体組成物1又は液体組成物2の第1~第15の実施形態のいずれか1つによる液体組成物2を、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用する方法工程と、
III)任意選択的に、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部を覆う導電層の形成のために溶媒を少なくとも部分的に除去する方法工程と、を含む、方法2によってもなされる。
【0091】
本発明による方法2の特に好ましい実施形態によれば、基材は、電極材料の電極本体であり、誘電体は、陽極本体の形成下で、この電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆う。したがって、そのような実施形態では、方法工程II)は、
I)電極材料の電極本体を準備する方法工程であって、誘電体は、陽極本体の形成下で、この電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆う、電極本体を準備する方法工程と、
II)本発明による液体組成物1又は2、好ましくは液体組成物1の第1~第4の実施形態のいずれか1つによる液体組成物1又は液体組成物2の第1~第14の実施形態のいずれか1つによる液体組成物2を、電極本体の少なくとも一部に導入する方法工程と、を含む。
【0092】
方法工程I)では、電極材料の電極本体(誘電体がこの電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆って陽極本体を形成する)を、最初に準備する。
【0093】
原則として、電極本体は、高表面積のバルブ金属粉末をプレスし、それを焼結して多孔質電極本体を得ることによって製造することができる。好ましくは、例えばタンタルなどのバルブ金属の電気接触線も、ここで従来通り電極本体にプレスされる。次いで、電極本体は、例えば、電気化学的酸化によって、誘電体、すなわち酸化物層でコーティングされる。あるいは、多孔質領域を有する陽極箔を得るために、金属箔をエッチングし、電気化学的酸化によって誘電体でコーティングすることもできる。巻回型コンデンサでは、電極本体を形成する多孔質領域を有する陽極箔と陰極箔とは、セパレータによって分離され、巻回される。
【0094】
本発明の文脈において、バルブ金属は、酸化物層が両方向に等しく電流を流すことができない金属を意味するものとして理解されるべきである。陽極に電圧が印加される場合、バルブ金属の酸化物層が電流を遮断する一方、陰極に電圧が印加される場合、多量の電流が発生し、酸化物層を破壊する可能性がある。バルブ金属としては、Be、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、及びW、並びにこれらの金属のうちの少なくとも1つと他の元素との合金又は化合物が挙げられる。バルブ金属の最も周知の代表例は、Al、Ta、及びNbである。バルブ金属と同等の電気的特性を有する化合物は、金属導電性を有し、酸化することができ、その酸化物層が上述の特性を有するものである。例えば、NbOは、金属導電性を有するが、概してバルブ金属と見なされない。しかしながら、酸化したNbOの層は、バルブ金属酸化物層の典型的な特性を有するため、NbO又はNbOと他の元素との合金若しくは化合物は、バルブ金属と同等の電気的特性を有する化合物の典型的な例である。タンタル、アルミニウムの電極材料、及びニオブ又は酸化ニオブに基づく電極材料が好ましい。タンタル及びアルミニウムは、電極材料として非常に特に好ましい。
【0095】
多孔質領域を有することが多い電極本体を製造するために、バルブ金属は、例えば、粉末形態で焼結されて、通常は多孔質の電極本体を得ることができるか、又は多孔質構造が金属体上に刻印される。後者は、例えば、箔をエッチングすることによって行うことができる。
【0096】
簡便のために、多孔質領域を有する本体は、以下では多孔質とも呼ばれる。したがって、例えば、多孔質領域を有する電極本体は、多孔質電極本体とも呼ばれる。一方で、多孔質本体は複数のチャネルが全体に広がっている場合があり、したがってスポンジ様であり得る。このことは、タンタルがコンデンサの構築に使用される場合に当てはまることが多い。更に、表面のみが細孔を有し、表面細孔の下に続く領域が中実構造であることが可能である。このような状況は、アルミニウムがコンデンサの構築に使用される場合に観察されることが多い。好ましくは、電極本体は多孔質である。
【0097】
次いで、このように製造された、多くの場合多孔質の電極本体は、例えばリン酸又はアジピン酸アンモニウム水溶液などの好適な電解質中で、電圧を印加することによって酸化されて、誘電体を形成する。この化成電圧のレベルは、達成されるべき酸化物層の厚さ、又はその後のコンデンサの使用電圧に応じて異なる。好ましい化成電圧は、1~1000Vの範囲、特に好ましくは2~500Vの範囲、非常に特に好ましくは1~300Vの範囲にある。コンデンサの製造のための方法の第1の特定の実施形態によれば、化成電圧は1~20Vの範囲であり、コンデンサの製造のための方法の第2の特定の実施形態によれば、化成電圧は30~100Vの範囲である。
【0098】
用いられる原則として多孔質の電極本体は、好ましくは10~90%、好ましくは30~80%、特に好ましくは50~80%の有孔率、及び10~10000nm、好ましくは20~5,000nm、特に好ましくは50~3000nmの平均細孔直径を有する。
【0099】
本発明による方法2の特定の実施形態によれば、製造される電解コンデンサは、アルミニウム巻回型コンデンサである。この場合、多孔質アルミニウム箔が電極材料として陽極形成され、酸化アルミニウムコーティングが誘電体として形成される。次いで、このようにして得られたアルミニウム箔(陽極箔)に接触線が設けられ、これは、同様に接触線が設けられた更なる任意選択的に多孔質のアルミニウム箔(陰極箔)と巻回され、これらの2つの箔は、例えばセルロース又は好ましくは合成紙に基づく1つ以上のセパレータによって互いに分離される。巻回後、このようにして得られた陽極本体は、例えば接着テープによって固定される。セパレータは、オーブン内で加熱することによって炭化させることができる。このアルミニウム巻回型コンデンサ用の陽極本体を製造する方法及び様式は、従来技術から十分に知られており、例えば、米国特許第7,497,879(B2)号に記載されている。
【0100】
本発明による方法2の更なる特定の実施形態によれば、製造される電解コンデンサは、アルミニウム積層型コンデンサ又はタンタル電解コンデンサ(「タンタルエルコ(tantalum elco)」)、特に、独国特許出願公開第102009007594(A)号に記載されているものなどのポリマー外層を有するタンタル電解コンデンサである。
【0101】
本発明による方法2の方法工程II)では、本発明による液体組成物1又は2を、陽極本体の少なくとも一部に導入する。これに関連して、液体組成物1又は2を陽極本体の少なくとも一部に導入する前に、PEDOT/PSS分散液などの電気伝導層を形成するための他の組成物が陽極本体に導入され得ることに留意すべきである。したがって、陽極本体の誘電体層の少なくとも一部に液体組成物1又は2を直接適用することは必ずしも必要ではない。
【0102】
液体組成物1又は2は、既知の方法、例えば、含浸、浸漬、注入、滴下、噴霧、霧吹き、ナイフコーティング、ブラッシング又は印刷、例えば、インクジェット、スクリーン、若しくはタンポン印刷によって、多孔質領域に導入される。好ましくは、導入は、陽極本体を液体組成物に浸漬することと、それによって陽極本体にこの液体組成物を含浸させることとによって行われる。液体組成物への浸漬又は液体組成物の含浸は、好ましくは1秒~120分の範囲、特に好ましくは5秒~60分の範囲、最も好ましくは10秒~15分の範囲にわたって行われる。陽極本体への液体組成物の導入は、例えば、圧力、振動、超音波又は熱を増減させることによって、促進することができる。
【0103】
方法工程II)で用いられる液体組成物1又は2は、官能化π共役ポリマーa)、溶媒c)、及び任意選択的に還元型の酸化剤b)の残部の他に、更なる添加剤、例えば、界面活性物質、例えば、アニオン性界面活性剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸及び塩、パラフィンスルホネート、アルコールスルホネート、エーテルスルホネート、スルホサクシネート、リン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸若しくはカルボキシレートなど、カチオン性界面活性剤、例えば、第四級アルキルアンモニウム塩など、非イオン性界面活性剤、例えば、直鎖アルコールエトキシレート、オキソアルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート若しくはアルキルポリグルコシドなど、特に、Dynol(登録商標)及びZonyl(登録商標)の商標で市販されている界面活性剤、又は接着促進剤、例えば、有機官能性シラン若しくはその加水分解物など、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノ-プロピル-トリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン若しくはオクチルトリエトキシシラン、架橋剤、例えば、メラミン化合物、マスクドイソシアネート、官能性シラン(例えば、テトラエトキシシラン、アルコキシシラン加水分解物、例えば、テトラエトキシシランに基づくもの、エポキシシラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン)、ポリウレタン、ポリアクリレート又はポリオレフィン分散液を更に含む。
【0104】
好ましくは、方法工程II)で用いられる液体組成物1又は2は、導電率を任意選択的に高める更なる添加剤、例えば、エーテル基を含有する化合物、例えばテトラヒドロフランなど、ラクトン基を含有する化合物、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなど、アミド基若しくはラクタム基を含有する化合物、例えば、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(N-methylpyrrolidone、NMP)、N-オクチルピロリドン、ピロリドンなど、スルホン及びスルホキシド、例えば、スルホラン(テトラメチレンスルホン)、ジメチルスルホキシド(dimethylsulphoxide、DMSO)など、糖若しくは糖誘導体、例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトースなど、糖アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトールなど、フラン誘導体、例えば、2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸など、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール又はテトラグリセロールを含む。
【0105】
方法工程II)で用いられる液体組成物1又は2は、更なる添加剤として、国際公開第2009/141209(A1)号、12頁、16~34行に記載されているように、有機溶媒に可溶性である1種以上の有機結合剤を更に含むことができる。
【0106】
しかしながら、これに関連して、上記の更なる添加剤が、液体組成物に添加された後、本発明による方法1の方法工程ii)において、塩基の添加によってpH値が2.5~10の範囲内に調整されることが特に好ましい。
【0107】
方法工程II)で用いられる液体組成物1又は2の粘度は、適用方法に応じて、0.01~1,000mPa×s(20℃及び100s-1の剪断速度でレオメータを用いて測定した)であり得る。好ましくは、粘度は、1~500mPa×sであり、特に好ましくは1~250mPa×sである。アルミニウム巻回型コンデンサの製造の場合、粘度は、非常に特に好ましくは1~200mPa×sの範囲であり、一方、タンタル電解コンデンサ又はアルミニウム積層型コンデンサの製造の場合、粘度は、非常に特に好ましくは1~50mPa×sの範囲である。粘度の調整は、例えば、更なる添加剤として適切なレオロジー調整剤を添加することによって、達成することができる。
【0108】
方法工程II)で用いられる液体組成物1又は2の固形分は、いずれの場合も液体組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.01~20重量%の範囲、特に好ましくは0.1~15重量%の範囲、最も好ましくは0.25~10重量%の範囲である。液体組成物の固形分は、溶媒c)を除去するのに十分に高い温度で液体組成物を乾燥させることによって測定される。
【0109】
本発明による方法2の特に好ましい実施形態によれば、コンデンサ本体に導入される液体組成物1又は2は、官能化π共役ポリマーのみならず、(この自己ドープ導電性ポリマーに加えて)異種ドープ導電性ポリマー、好ましくは、国際公開第2014/048562(A2)号に開示されているようなPEDOT/PSSも含む。固体電解質の形成のための、PEDOT-Sのような自己ドープポリマーと、PEDOT/PSSのような異種ドープポリマーとの併用に関する国際公開第2014/048562(A2)号の開示は、参照により本明細書に組み込まれ、本出願の開示の一部を形成する。
【0110】
上述したように、本発明による液体組成物1又は2に陽極本体を含浸させた後、後続の方法工程III)において、液体組成物に含有されている溶媒c)を少なくとも部分的に除去して、誘電体を、したがってコンデンサ本体を、完全に又は部分的に覆う固体電解質を形成することが有利である。これに関連して、固体電解質による誘電体の被覆は、好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも50%であることが好ましく、この被覆は、独国特許出願公開第102005043828(A)号に記載されているように、120Hzでの乾燥した状態及び湿った状態におけるコンデンサの静電容量の測定によって測定可能である。
【0111】
除去又は硬化は、好ましくは、電極本体を液体組成物から取り出し、乾燥させることによって行われ、乾燥は、好ましくは20℃~260℃の範囲、特に好ましくは50℃~220℃の範囲、最も好ましくは80℃~200℃の範囲の温度で行われる。当然、凍結乾燥によって溶媒c)を少なくとも部分的に除去することも可能である。方法工程II)及びIII)を1回、又はこのようにして順に数回繰り返し、誘電体上に堆積された固体電解質の層の厚さ又は電極本体中の電解質の充填度を特定の要件に適合させることもできる。
【0112】
コンデンサ本体がこのようにして製造された後、それらは、当業者に知られている方法及び様式によって更に修正することができる。タンタル電解コンデンサの場合、コンデンサ本体は、例えば、独国特許出願公開第102004022674(A)号若しくは同第102009007594(A)号に記載されているポリマー外層で、並びに/又は独国特許出願公開第102005043828(A)号から既知のグラファイト層及び銀層で覆うことができ、米国特許第7,497,879(B2)号の教示によるアルミニウム巻回型コンデンサの場合、コンデンサ本体は、密閉ガラスを備えたアルミニウムビーカーに組み込まれ、圧着によって機械的に強固に閉鎖される。次いで、コンデンサは、既知の方法でエージングによって誘電体中の欠陥部をなくすことができる。
【0113】
ここで、非限定的な図及び実施例を使用して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0114】
図1図1は、コンデンサを製造するための本発明による方法によって得ることができるコンデンサの一部の断面図である。これは、アルミニウム又はタンタルなどの多孔質電極材料2で通常作製される電極本体1を有する。電極材料2の表面4には、誘電体3が薄層として形成され、それにより、電極材料2の電極本体1と誘電体3とを含む多孔質のままの陽極本体5が形成される。誘電体3の後に、任意選択的に更なる層が続いた後、固体電解質の層6(例えば、本発明による液体組成物1又は2を使用して調製された層)が続き、これにより、電極材料2の電極本体1と、誘電体3と、固体電解質6とを含むコンデンサ本体7が形成される。
図2図2は、上の図は、試料#1~#7に関して、温度に対する重量減少を示すTGA図である。下の図は、重量対時間スキャンの微分を示す。
図3図3は、上の図は、試料#4、#8、#9及び#10に関して、温度に対する重量減少を示すTGA図である。下の図は、重量対時間スキャンの微分を示す。
図4図4は、上の図は、試料#5、#11、#12及び#13に関して、温度に対する重量減少を示すTGA図である。下の図は、重量対時間スキャンの微分を示す。
【0115】
試験方法
等価直列抵抗(equivalent series resistance、ESR)
等価直列抵抗(単位mΩ)は、LCRメータ(Agilent 4284A)によって、20℃、100kHzで測定した。各コンデンサ実験において、少なくとも5つのコンデンサを調製し、平均ESR値を測定した。
【0116】
熱安定性
熱安定性は、熱重量分析(thermogravimetric analysis、TGA)によって測定する。
【0117】
固体試料のTGAは、Mettler Toledo製のTGA/DSC 2 LF/1100を用いて行う。目的のポリマー分散液約10gを、少なくとも3cmの直径を有するビーカーで、50mbarの真空オーブン内で、100℃で16時間乾燥させて、全ての溶媒を除去する。約15mgの固体導電性ポリマーを測定バイアルに導入し、そのバイアルを機器の支持体に配置する。
【0118】
最初に、試料を室温から100℃に加熱する。次いで、試料を、N下、100℃で30分間保持して、試料を乾燥させる。続いて、試料を空気に曝露することなく、5K/分の一定加熱速度で100℃から600℃まで第2の加熱スキャンにおいて試料を加熱する。加熱しながら同時に試料の重量をモニターする。
【0119】
経時的にモニターされた試料の重量減少を、温度に対する重量減少の図に変換する。データを、100℃で100重量%に正規化する。更に、重量%単位の質量の差分変化と単位時間との比を形成することによって、データの微分を計算する。
【0120】
導電率
洗浄したガラス基材をスピンコータ上に置き、本発明による液体組成物10mLを基材にわたって分布させた。次いで、残りの溶液をプレートの回転によって振り落とした。その後、こうしてコーティングした基材を、ホットプレート上で、130℃で15分間乾燥させた。次いで、層厚さを、層厚さ測定デバイスによって測定した。(Tencor,Alphastep 500)。導電率については、長さ2.5cmのAg電極を、シャドーマスクを介して10mmの距離で蒸着させることで測定した。比電気抵抗率を得るために、電位計(Keithly 614)で測定された表面抵抗に層厚さを掛けた。導電率は、比電気抵抗率の逆数である。
【0121】
平均
特に言及しない限り、平均は、算術平均値に対応する。
【実施例
【0122】
実施例1(PEDOT-S分散液の調製)
ステンレス鋼製の3Lジャケット付きタンクに、メカニカルスターラー、通気弁(上蓋に)、閉じることができる材料入口、及び温度計を備え付ける。
【0123】
成分A
このタンクに、2000gの脱イオン水、16.0gの10重量%硫酸鉄(III)水溶液、5.7gの硫酸(95重量%)及び100gのEDOT-Sナトリウム塩(0.29mol)を導入した。スターラーを50rpmで運転し、温度を20℃に調整し、内圧を100hPaに低下させた。続いて、タンク内の圧力を大気圧まで上昇させ、続いて、酸素を追い出すために圧力を25hPaまで更に低下させた。
【0124】
成分B
別個のガラスビーカー中で、パーオキソ二硫酸ナトリウム78.5gを水200mLに溶解し、酸素含有量が0.25mg/l未満になるまで、撹拌しながら窒素を溶液に30分間吹き込んだ。
【0125】
次いで、成分Bをタンクに吸引した。次いで、材料入口を閉じ、真空ポンプによってタンクの内圧を25hPaに調整した。反応溶液の初期pHは1.9であり、この減圧下で反応を19時間続けた。反応完了後、脱イオン水を添加することによって反応混合物を10Lの体積にフィルアップし、続いて限外濾過(Pall Microza SLP 1053、カットオフ10000g/mol)によって処理し、それにより8Lの水を除去した。無機塩を除去するために、この手順を6回繰り返した。
【0126】
このようにして得られた組成物は、72S/cmの導電率及び1.22重量%の固形分を特徴とした。その組成物を、固形分が2.4重量%に達するまで、限外濾過によって更に濃縮した。このようにして得られたPEDOT-S分散液を、以下では、「試料#1」)と呼ぶ。
【0127】
実施例2(NaOHによるpH値の調整、試料#2~#7、#21~#25)
100mLビーカーに約50mLの試料#1を入れる。10重量%NaOH水溶液を調製し、溶液が所望のpHに達するまで撹拌しながら試料#1に滴下する。塩基を添加しながら、溶液のpHをpHメータ(Model 766 Calimatic,Knick)でモニターする。
【0128】
実施例3(LiOHによるpH値の調整、試料#8)
10重量%LiOH水溶液を添加してpHを調整する点が異なる以外は、実施例2と同様に調製。
【0129】
実施例4(KOHによるpH値の調整、試料#9及び#11)
10重量%KOH水溶液を添加してpHを調整する点が異なる以外は、実施例2と同様に調製。
【0130】
実施例5(NHOHによるpH値の調整、試料#10及び#12)
10重量%NHOH水溶液を添加してpHを調整する点が異なる以外は、実施例2と同様に調製。
【0131】
実施例6(DMAHによるpH値の調整、試料#13)
10重量%ジメチルアミノエタノール(dimethylaminoethanol、DMAE)水溶液を添加してpHを調整する点が異なる以外は、実施例2と同様に調製。
【0132】
試料#1~#13のTGA図は、図2図3及び図4に概略が示されており、各々、上の図において温度に対する重量損失を示す。下の図は、重量対時間スキャンの微分を示す。
【0133】
表1は、列5~8において、図2図4の重量対温度データから抽出された100%、90%、80%及び70%の試料重量に対応する温度を示す。約261℃における第1のピーク及び約345℃における第2のピークのピーク位置は、特定可能な場合、図2~4の微分プロットから抜き出される。
【表1】
1)T1=第1のピークにおける温度
2)DV1=261℃における微分値
3)T2=第2のピークにおける温度
4)DV2=第2のピークにおける微分値
【0134】
実施例7(コンデンサの調製)
比容量30000CV/gを有するタンタル粉末を、タンタル線を含めてペレットにプレスし、焼結して、寸法1.4mm×2.8mm×3.9mmの多孔質陽極本体を形成した。これらの多孔質電極本体のうちの5つを、60Vにおいてリン酸電解液中で陽極酸化して誘電体を形成して、陽極本体を得た。
【0135】
試料#3に陽極本体を1分間含浸させた。その後、120℃で10分間乾燥させた。
【0136】
次に、陽極本体を、PEDOT:PSS分散液(Clevios K Nano LV,Heraeus)に1分間含浸させた。その後、120℃で10分間乾燥させた。含浸及び乾燥を、更に9回行った。
【0137】
次に、陽極本体を架橋剤溶液(Clevios K Primer W5,Heraeus)に浸漬し、120℃で10分間乾燥させ、その後、PEDOT:PSS分散液(Clevios K V2 HV,Heraeus)に浸漬し、120℃で10分間乾燥させた。この一連の架橋剤及びPEDOT:PSS分散液への浸漬及び乾燥を、更に2回繰り返した。
【0138】
最後に、陽極本体をグラファイト層で覆い、その後に銀層で覆って、このようにして完成コンデンサを得た。
【0139】
コンデンサを125℃に100時間曝露する前後に、ESRの平均値を測定した。ESRの相対的増加は、相対的ESR増加=[ESR(125℃への曝露後)-ESR(125℃への曝露前)]/ESR(125℃への曝露前)として計算される。相対的ESR増加の値(%)を表2に示す。
【0140】
実施例8
試料#3の代わりに試料#4を使用した以外は、実施例7と同様にしてコンデンサを調製した。
【0141】
実施例9
試料#3の代わりに試料#5を使用した以外は、実施例7と同様にしてコンデンサを調製した。
【0142】
実施例10
試料#3の代わりに試料#6を使用した以外は、実施例7と同様にしてコンデンサを調製した。
【0143】
実施例11
試料#3の代わりに試料#8を使用した以外は、実施例7と同様にしてコンデンサを調製した。
【0144】
実施例12
試料#3の代わりに試料#11を使用した以外は、実施例7と同様にしてコンデンサを調製した。
【0145】
実施例13
試料#4の代わりに試料#12を使用した以外は、実施例7と同様にしてコンデンサを調製した。
【0146】
実施例14
試料#3の代わりに試料#1を使用した以外は、実施例7と同様にしてコンデンサを調製した。
【表2】
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物を製造するための方法であって、
i)溶媒に溶解又は分散されている官能化π共役ポリチオフェンを含む液相を準備する工程であって、前記官能化π共役ポリチオフェンは、一般式(I)
【化1】
(式中、
X、Yは、同一であるか又は異なり、O、S、又はNRであり、Rは、水素であるか、又は1~18個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族残基であり、
Aは、アニオン性官能基を有する有機残基である)の繰り返し単位を含み、
前記液相は、2.5未満のpH値を有する、液相を準備する工程と、
ii)方法工程i)で準備された前記液相の前記pH値を、塩基の添加によって、2.5~10の範囲の値に調整する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
方法工程i)における前記液相の前記準備が、
ia)
a)一般式(I)
【化2】
(式中、X、Y及びAは、請求項1で定義した通りである)のチオフェンモノマーと、
b)酸化剤と、
c)溶媒と、を含む、液体反応混合物を準備する方法工程と、
ib)方法工程ia)で得られた前記液体反応混合物中、一般式(I)の前記チオフェンモノマーを酸化重合させて、官能化π共役ポリチオフェンを含む液相を得る方法工程と、
ic)任意選択的に、方法工程ib)で得られた前記液相を、好ましくはイオン濾過によって精製する方法工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CR -CR-(CR
(式中、
残基Rは、互いに独立して、水素であるか、又は-(CH-Z-(CR -SO であり、
は、-(CH-Z-(CR-SO であり、
Zは、O、S又は-CH-であり、
は、水素又はアルキル基であり、
は、カチオンであり、
m及びnは、同一であるか又は異なり、0~3の整数であり、
sは、0~10の整数であり、
pは、1~18の整数である)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CH-CR-(CH
(式中、
は、水素であり、
は、-(CH)-O-(CH-SO であり、
は、無機カチオン、好ましくはNa又はKであり、
nは、0又は1であり、
sは、0又は1であり、
pは、4又は5である)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
一般式(I)において、
X、Yは、Oであり、
Aは、-(CH-CR-(CH
(式中、
は、水素であり、
は、-(CH-O-CH-CH-CHR-SO であり、
は、無機カチオン、好ましくはNa又はKであり、
は、CH又はCHCH、好ましくはCHであり、
nは、0又は1であり、
sは、0又は1であり、
pは、4又は5である)である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、水である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基が、無機塩基である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記無機塩基が、アルカリ金属水酸化物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の方法によって得ることができる官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物。
【請求項10】
2.5~10の範囲のpH値を有し、かつ溶媒に溶解又は分散されている官能化π共役ポリチオフェンを含む液体組成物であって、前記ポリチオフェンは、一般式(I)
【化3】
(式中、X、Y及びAは、請求項1で定義した通りである)の繰り返し単位を含み、前記液体組成物を100℃の温度及び50mbarの圧力で16時間乾燥させた後に得られる組成物は、以下の条件(A)~(E):
(A)熱重量分析によって測定した場合、300℃以上の温度で、前記乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて10重量%の重量減少、
(B)熱重量分析によって測定した場合、330℃以上の温度で、前記乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて20重量%の重量減少、
(C)熱重量分析によって測定した場合、345℃以上の温度で、前記乾燥させた液体組成物の総重量に基づいて30重量%の重量減少、
(D)微分プロットにおいて250℃~270℃の区間にピークが存在しないこと、
(E)261℃における微分値の第2のピークにおける微分値に対する比が0.1以下、のうちの少なくとも1つを満たす、液体組成物。
【請求項11】
積層体の調製のための方法であって、
I)基材を準備する方法工程と、
II)請求項10に記載の液体組成物を、前記基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用する方法工程と、
III)任意選択的に、前記基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部を覆う導電層の形成のために前記溶媒を少なくとも部分的に除去する方法工程と、を含む、方法。
【請求項12】
前記基材が、電極材料(2)の電極本体(1)であり、誘電体(3)が、陽極本体(5)の形成下で、前記電極材料(2)の1つの表面(4)を少なくとも部分的に覆う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電子デバイスにおける導電層の調製のための、請求項10に記載の液体組成物の使用。
【請求項14】
前記電子デバイスが、光導電性セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、IR検出器、光起電デバイス、太陽電池、メモリ記憶デバイス用コーティング材料、電界効果抵抗デバイス、帯電防止フィルム、バイオセンサ、エレクトロクロミックデバイス、電解コンデンサ、エネルギー貯蔵デバイス、タッチパネル及び電磁遮蔽体から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記導電層が、ポリマー電解コンデンサ又はハイブリッド電解コンデンサにおける固体電解質層である、請求項13に記載の使用。

【国際調査報告】