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特表2024-533596トランスファーRNAの組成、及び非標準アミノ酸を含むタンパク質の生産における使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】トランスファーRNAの組成、及び非標準アミノ酸を含むタンパク質の生産における使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240905BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240905BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240905BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240905BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/113 130Z
C12P21/00 C
C12N1/21
C12N1/19
C12N5/10
C12N5/04
C12N5/071
C12N15/63 Z
C07K16/00
C12P21/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517054
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022076575
(87)【国際公開番号】W WO2023044431
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/245,789
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524101629
【氏名又は名称】アブサイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】チャン イ
(72)【発明者】
【氏名】ウェインストック マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ガンダー マイルズ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG13
4B064AG26
4B064CA01
4B064CA06
4B064CA10
4B064CA11
4B064CC24
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA72X
4B065AA87
4B065AA89X
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AB03
4B065AB04
4B065AB05
4B065AB06
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA09
4H045BA54
4H045CA11
4H045DA46
4H045DA75
4H045DA89
4H045EA60
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、非標準アミノ酸を含むタンパク質を効率的に生産するための改変tRNA及び対応するアミノアシルtRNA合成酵素を提供する。これらの改変された直交性tRNA(O-tRNA)/直交性アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)のペア(すなわち、直交性翻訳系(OTS))は、改変tRNAによって認識されるセレクターコドンに応じて、成長中のポリペプチドの特定の位置に非標準アミノ酸を組み込むために使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に記載の配列と少なくとも85%同一の核酸配列を含み、かつ直交性tRNA(O-tRNA)の核酸の16位に位置するシトシンの欠失を含む、O-tRNAであって、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものであり、前記O-tRNAが、直交性アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)によって少なくとも1つの非標準アミノ酸(nsAA)でアミノアシル化され得る、前記O-tRNA。
【請求項2】
前記核酸配列が、配列番号1に記載の配列と、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも98.7%同一である、請求項1に記載のO-tRNA。
【請求項3】
核酸の53位にアデニン、及び核酸の63位にウラシルを含み、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものである、請求項1または2に記載のO-tRNA。
【請求項4】
配列番号2に記載の配列からなる核酸配列を含む、請求項3に記載のO-tRNA。
【請求項5】
核酸の3位及び6位にシトシン、核酸の7位にウラシル、核酸の67位にアデノシン、及び核酸の68位及び71位にグアニンを含み、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものである、請求項1または2に記載のO-tRNA。
【請求項6】
配列番号3に記載の配列からなる核酸配列を含む、請求項5に記載のO-tRNA。
【請求項7】
配列番号4に記載の配列からなる核酸配列を含む、請求項1に記載のO-tRNA。
【請求項8】
核酸の13~23位に配列CAG-AGGGCAGを含み、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものである、請求項1または2に記載のO-tRNA。
【請求項9】
配列番号36に記載の配列からなる核酸配列を含むO-tRNAであって、前記配列が、配列番号1、配列番号37、または配列番号38を含まない、前記O-tRNA。
【請求項10】
3位にシトシンを含む、請求項9に記載のO-tRNA。
【請求項11】
4位にアデニンを含む、請求項9または10に記載のO-tRNA。
【請求項12】
5位にウラシルを含む、請求項9~11のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項13】
6位にシトシンを含む、請求項9~12のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項14】
7位にウラシルを含む、請求項9~13のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項15】
46位にグアニンを含む、請求項9~14のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項16】
48位にウラシルを含む、請求項9~15のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項17】
50位にアデニンを含む、請求項9~16のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項18】
51位にグアニンを含む、請求項9~17のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項19】
53位にアデニンを含む、請求項9~18のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項20】
63位にウラシルを含む、請求項9~19のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項21】
65位にシトシンを含む、請求項9~20のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項22】
66位にウラシルを含む、請求項9~21のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項23】
67位にアデニンを含む、請求項9~22のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項24】
68位にグアニンを含む、請求項9~23のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項25】
69位にアデニンまたはウラシルを含む、請求項9~24のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項26】
70位にウラシルを含む、請求項9~25のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項27】
71位にグアニンを含む、請求項9~26のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項28】
3位にシトシン、6位にシトシン、及び7位にウラシルを含む、請求項9~27のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項29】
46位にグアニン、及び48位にウラシルを含む、請求項9~28のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項30】
67位にアデニン、68位にグアニン、及び71位にグアニンを含む、請求項9~29のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項31】
配列番号2~16のいずれか1つに記載の配列からなる核酸配列を含む、O-tRNA。
【請求項32】
アミノアシル化されている、請求項1~31のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項33】
nsAAでアミノアシル化されている、請求項32に記載のO-tRNA。
【請求項34】
前記nsAAが、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、20種類の天然アミノ酸において使用される対応する置換基以外の任意の置換基である、請求項33に記載のO-tRNA。
【請求項35】
前記nsAAが、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、アルキル-、アリール-、アシル-、ケト-、アジド-、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項34に記載のO-tRNA。
【請求項36】
前記nsAAが、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、少なくとも1つの新規な官能基を含むアミノ酸、他の分子と共有結合または非共有結合を介して相互作用するアミノ酸、光ケージドアミノ酸、光異性化可能なアミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、炭水化物修飾アミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能なアミノ酸、光切断可能なアミノ酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項33~35のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項37】
前記nsAAが、チロシン類似体を含む、請求項33~36のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項38】
前記チロシン類似体が、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンからなる群から選択される、請求項37に記載のO-tRNA。
【請求項39】
前記置換チロシンが、ケト基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、分枝炭化水素、飽和もしくは不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、またはそれらの組み合わせを含む、請求項38に記載のO-tRNA。
【請求項40】
前記nsAAが、グルタミン類似体を含む、請求項33~36のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項41】
前記グルタミン類似体が、α-ヒドロキシ誘導体、γ-置換誘導体、環状誘導体、またはアミド置換グルタミン誘導体を含む、請求項40に記載のO-tRNA。
【請求項42】
前記nsAAが、フェニルアラニン類似体を含む、請求項33~36のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項43】
前記フェニルアラニン類似体が、アミノ含有、イソプロピル含有、またはO-アリル含有フェニルアラニン類似体である、請求項41に記載のO-tRNA。
【請求項44】
前記フェニルアラニン類似体が、パラ置換フェニルアラニン、オルト置換フェニルアラニン、及びメタ置換フェニルアラニンからなる群から選択される、請求項42または43に記載のO-tRNA。
【請求項45】
前記置換基が、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基、またはアセチル基を含む、請求項44に記載のO-tRNA。
【請求項46】
前記nsAAがパラ-アセチルフェニルアラニンを含む、請求項45に記載のO-tRNA。
【請求項47】
前記nsAAが、p-プロパルギルフェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチルフェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcB-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、及びイソプロピル-L-フェニルアラニンからなる群から選択される、請求項33~36のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項48】
前記nsAAが、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)、及び4-アミノフェニルアラニン(AmF)からなる群から選択される、請求項33~36のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項49】
前記nsAAが、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)を含む、請求項48に記載のO-tRNA。
【請求項50】
前記nsAAが、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)を含む、請求項48に記載のO-tRNA。
【請求項51】
前記nsAAが、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)を含む、請求項48に記載のO-tRNA。
【請求項52】
前記nsAAが、4-アミノフェニルアラニン(AmF)を含む、請求項48に記載のO-tRNA。
【請求項53】
化学的にアミノアシル化されている、請求項32~34のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項54】
酵素的にアミノアシル化されている、請求項32~34のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項55】
リボザイムによって酵素的にアミノアシル化されている、請求項54に記載のO-tRNA。
【請求項56】
古細菌tRNAに由来する、請求項1~55のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項57】
M.ヤンナスキイ(M.jannaschii)に由来する、請求項56に記載のO-tRNA。
【請求項58】
配列番号39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む、直交性tRNA合成酵素(O-RS)。
【請求項59】
請求項1~57のいずれか1項に記載のO-tRNAとO-RSとを含む、直交性翻訳系(OTS)。
【請求項60】
前記O-RSが、M.ヤンナスキイのチロシル-tRNA合成酵素のO-RSを含む、請求項59に記載のOTS。
【請求項61】
前記O-RSが、配列番号35または39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む、請求項60に記載のOTS。
【請求項62】
前記nsAAをさらに含む、請求項59または60に記載のOTS。
【請求項63】
前記nsAAが、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、20種類の天然アミノ酸において使用される対応する置換基以外の任意の置換基である、請求項59~62のいずれか1項に記載のOTS。
【請求項64】
前記nsAAが、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、アルキル-、アリール-、アシル-、ケト-、アジド-、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項62または63に記載のOTS。
【請求項65】
前記nsAAが、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、少なくとも1つの新規な官能基を含むアミノ酸、他の分子と共有結合または非共有結合を介して相互作用するアミノ酸、光ケージドアミノ酸、光異性化可能なアミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、炭水化物修飾アミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能なアミノ酸、光切断可能なアミノ酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項62~64のいずれか1項に記載のOTS。
【請求項66】
前記nsAAが、チロシン類似体を含む、請求項62~65のいずれか1項に記載のOTS。
【請求項67】
前記チロシン類似体が、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンからなる群から選択される、請求項66に記載のOTS。
【請求項68】
前記置換チロシンが、ケト基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、分枝炭化水素、飽和もしくは不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、またはそれらの組み合わせを含む、請求項67に記載のOTS。
【請求項69】
前記nsAAが、グルタミン類似体を含む、請求項62~65のいずれか1項に記載のOTS。
【請求項70】
前記グルタミン類似体が、α-ヒドロキシ誘導体、γ-置換誘導体、環状誘導体、またはアミド置換グルタミン誘導体を含む、請求項69に記載のOTS。
【請求項71】
前記nsAAが、フェニルアラニン類似体を含む、請求項62~65のいずれか1項に記載のOTS。
【請求項72】
前記フェニルアラニン類似体が、アミノ含有、イソプロピル含有、またはO-アリル含有フェニルアラニン類似体である、請求項71に記載のOTS。
【請求項73】
前記フェニルアラニン類似体が、パラ置換フェニルアラニン、オルト置換フェニルアラニン、及びメタ置換フェニルアラニンからなる群から選択される、請求項71または72に記載のOTS。
【請求項74】
前記置換基が、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基、またはアセチル基を含む、請求項73に記載のOTS。
【請求項75】
前記nsAAが、パラ-アセチルフェニルアラニンを含む、請求項74に記載のOTS。
【請求項76】
前記nsAAが、p-プロパルギルフェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチルフェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcB-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、及びイソプロピル-L-フェニルアラニンからなる群から選択される、請求項62~65のいずれか1項に記載のOTS。
【請求項77】
前記nsAAが、O-メチル-L-チロシンを含む、請求項76に記載のOTS。
【請求項78】
前記nsAAが、L-3-(2-ナフチル)アラニンを含む、請求項76に記載のOTS。
【請求項79】
前記O-tRNAがセレクターコドンを認識する、請求項59~78のいずれか1項に記載のOTS。
【請求項80】
前記セレクターコドンがアンバーコドンである、請求項79に記載のOTS。
【請求項81】
前記O-tRNAによって認識される少なくとも1つのセレクターコドンを含むポリヌクレオチドをさらに含む、請求項79または80に記載のOTS。
【請求項82】
変異体EF-Tuをさらに含む、請求項59~81のいずれか1項に記載のOTS。
【請求項83】
前記OTSが無細胞翻訳系である、請求項59~82のいずれか1項に記載のOTS。
【請求項84】
前記無細胞翻訳系が細胞ライセートである、請求項83に記載のOTS。
【請求項85】
前記無細胞翻訳系が、再構成された系である、請求項83に記載のOTS。
【請求項86】
前記OTSが細胞翻訳系である、請求項59~82のいずれか1項に記載のOTS。
【請求項87】
請求項59~86のいずれか1項に記載のOTSを含む、細胞。
【請求項88】
非真核細胞または原核細胞である、請求項87に記載の細胞。
【請求項89】
前記原核細胞が、大腸菌(Escherichia coli)である、請求項88に記載の細胞。
【請求項90】
真核細胞である、請求項84に記載の細胞。
【請求項91】
酵母細胞である、請求項90に記載の細胞。
【請求項92】
真菌細胞である、請求項90に記載の細胞。
【請求項93】
哺乳類細胞である、請求項90に記載の細胞
【請求項94】
昆虫細胞である、請求項90に記載の細胞。
【請求項95】
植物細胞である、請求項90に記載の細胞。
【請求項96】
EF-Tuの変異をコードする、請求項84~90のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項97】
翻訳終結因子1の発現が減少している以外は同一の野生型細胞と比較して、翻訳終結因子1の発現が減少している、請求項84~96のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項98】
少なくとも1つのnsAAを含むポリペプチドであって、請求項59~81のいずれか1項に記載のOTSまたは請求項84~90のいずれか1項に記載の細胞によって産生される、前記ポリペプチド。
【請求項99】
抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、請求項98に記載のポリペプチド。
【請求項100】
ヒト成長ホルモンを含む、請求項98に記載のポリペプチド。
【請求項101】
配列番号2~31のいずれか1項に記載の配列からなる核酸配列を含むO-tRNAの核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項102】
配列番号2~31のいずれか1つに記載の配列からなるO-tRNA配列に相補的な核酸配列をさらに含む、請求項101に記載のポリヌクレオチド。
【請求項103】
配列番号39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含むO-RSをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項104】
配列番号39に記載の配列からなる核酸配列を含むO-RSに相補的な核酸配列をさらに含む、請求項103に記載のポリヌクレオチド。
【請求項105】
配列番号2~31のいずれか1つに記載の核酸配列を含むO-tRNAの核酸配列と、M.ヤンナスキイのチロシル-tRNAのO-RSをコードする核酸配列とを含む、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセット。
【請求項106】
前記O-RSが、配列番号35または39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む、請求項105に記載のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセット。
【請求項107】
請求項101~105のいずれか1項に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項108】
発現ベクターである、請求項107に記載のベクター。
【請求項109】
プラスミド、コスミド、ファージ、及びウイルスからなる群から選択される、請求項108に記載のベクター。
【請求項110】
請求項101~105のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、または請求項107~109のいずれか1項に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項111】
請求項101~105のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド(複数可)、請求項107~109のいずれか1項に記載のベクター、または請求項84~90もしくは110のいずれか1項に記載の細胞のうちの1つ以上と、使用説明書と、を含む、キット。
【請求項112】
少なくとも1つの非標準アミノ酸(nsAA)を含むポリペプチドを生産する方法であって、
配列番号1に記載の配列と少なくとも85%同一の核酸配列を含み、かつO-tRNAの核酸の16位に位置するシトシンの欠失を含む、O-tRNAを、細胞内で発現させる工程であって、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものであり、前記O-tRNAが、O-RSによって前記少なくとも1つのnsAAでアミノアシル化され得る、前記工程
を含む、前記方法。
【請求項113】
前記核酸配列が、配列番号1に記載の配列と、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも98.7%同一である、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記O-tRNAが、核酸の53位にアデニン、及び核酸の63位にウラシルを含み、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものである、請求項112または113に記載の方法。
【請求項115】
前記O-tRNAが、配列番号2に記載の配列からなる核酸配列を含む、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記O-tRNAが、核酸の3位及び6位にシトシン、核酸の7位にウラシル、核酸の67位にアデノシン、及び核酸の68位及び71位にグアニンを含み、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものである、請求項112または113に記載の方法。
【請求項117】
前記O-tRNAが、配列番号3に記載の配列からなる核酸配列を含む、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記O-tRNAが、配列番号4に記載の核酸配列を含む、請求項112に記載の方法。
【請求項119】
前記O-tRNAが、核酸の13~23位に配列CAG-AGGGCAGを含み、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものである、請求項112または113に記載の方法。
【請求項120】
少なくとも1つのnsAAを含むポリペプチドを生産する方法であって、
配列番号36に記載の配列からなる核酸配列を含むO-tRNAであって、前記配列が、配列番号1、配列番号37、または配列番号38を含まない、前記O-tRNAを、細胞内で発現させる工程
を含む、前記方法。
【請求項121】
前記O-tRNAが3位にシトシンを含む、請求項118に記載の方法。
【請求項122】
前記O-tRNAが4位にアデニンを含む、請求項118または119に記載の方法。
【請求項123】
前記O-tRNAが5位にウラシルを含む、請求項118~120のいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
前記O-tRNAが6位にシトシンを含む、請求項118~121のいずれか1項に記載の方法。
【請求項125】
前記O-tRNAが7位にウラシルを含む、請求項118~122のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
前記O-tRNAが46位にグアニンを含む、請求項118~123のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
前記O-tRNAが48位にウラシルを含む、請求項118~124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
前記O-tRNAが50位にアデニンを含む、請求項118~125のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
前記O-tRNAが51位にグアニンを含む、請求項118~126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項130】
前記O-tRNAが53位にアデニンを含む、請求項118~127のいずれか1項に記載の方法。
【請求項131】
前記O-tRNAが63位にウラシルを含む、請求項118~128のいずれか1項に記載の方法。
【請求項132】
65位にシトシンを含む、請求項118~129のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項133】
前記O-tRNAが66位にウラシルを含む、請求項118~130のいずれか1項に記載の方法。
【請求項134】
前記O-tRNAが67位にアデニンを含む、請求項118~131のいずれか1項に記載の方法。
【請求項135】
前記O-tRNAが68位にグアニンを含む、請求項118~132のいずれか1項に記載の方法。
【請求項136】
前記O-tRNAが69位にアデニンまたはウラシルを含む、請求項118~133のいずれか1項に記載の方法。
【請求項137】
前記O-tRNAが70位にウラシルを含む、請求項118~134のいずれか1項に記載の方法。
【請求項138】
前記O-tRNAが71位にグアニンを含む、請求項118~135のいずれか1項に記載の方法。
【請求項139】
前記O-tRNAが、3位にシトシン、6位にシトシン、及び7位にウラシルを含む、請求項118~136のいずれか1項に記載の方法。
【請求項140】
前記O-tRNAが、46位にグアニン、及び48位にウラシルを含む、請求項118~137のいずれか1項に記載の方法。
【請求項141】
前記O-tRNAが、67位にアデニン、68位にグアニン、及び71位にグアニンを含む、請求項118~138のいずれか1項に記載の方法。
【請求項142】
前記O-tRNAが、配列番号2~16のいずれか1つに記載の配列からなる核酸配列を含む、請求項118~139のいずれか1項に記載の方法。
【請求項143】
前記細胞内でO-RSを発現させる工程をさらに含む、請求項112~140のいずれか1項に記載の方法。
【請求項144】
前記O-RSが、M.ヤンナスキイのチロシル-tRNA合成酵素のO-RSである、請求項112~141のいずれか1項に記載の方法。
【請求項145】
前記O-RSが、配列番号35または39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記O-tRNAが、配列番号2~16のいずれか1つに記載の核酸を含み、前記O-RSが、配列番号35または39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む、請求項142に記載の方法。
【請求項147】
前記O-RSが、前記O-tRNAを前記nsAAでアミノアシル化する、請求項112~146のいずれか1項に記載の方法。
【請求項148】
前記nsAAが、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、20種類の天然アミノ酸において使用される対応する置換基以外の任意の置換基である、請求項142~147のいずれか1項に記載の方法。
【請求項149】
前記nsAAが、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、アルキル-、アリール-、アシル-、ケト-、アジド-、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
前記nsAAが、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、少なくとも1つの新規な官能基を有するアミノ酸、他の分子と共有結合または非共有結合を介して相互作用するアミノ酸、光ケージドアミノ酸、光異性化可能なアミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、炭水化物修飾アミノ酸、及びポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能なアミノ酸、光切断可能なアミノ酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項110~149のいずれか1項に記載の方法。
【請求項151】
前記nsAAが、チロシン類似体を含む、請求項110~150のいずれか1項に記載の方法。
【請求項152】
前記チロシン類似体が、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンからなる群から選択される、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記置換チロシンが、ケト基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、分枝炭化水素、飽和もしくは不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、またはそれらの組み合わせを含む、請求項152に記載の方法。
【請求項154】
前記nsAAが、グルタミン類似体を含む、請求項110~150のいずれか1項に記載の方法。
【請求項155】
前記グルタミン類似体が、α-ヒドロキシ誘導体、γ-置換誘導体、環状誘導体、またはアミド置換グルタミン誘導体を含む、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
前記nsAAが、フェニルアラニン類似体を含む、請求項110~150のいずれか1項に記載の方法。
【請求項157】
前記フェニルアラニン類似体が、アミノ含有、イソプロピル含有、またはO-アリル含有フェニルアラニン類似体である、請求項153に記載の方法。
【請求項158】
前記フェニルアラニン類似体が、パラ置換フェニルアラニン、オルト置換フェニルアラニン、及びメタ置換フェニルアラニンからなる群から選択される、請求項156または157に記載の方法。
【請求項159】
前記置換基が、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基、またはアセチル基を含む、請求項110~158のいずれか1項に記載の方法。
【請求項160】
前記nsAAが、パラ-アセチルフェニルアラニンを含む、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
前記nsAAが、p-プロパルギルフェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチルフェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcB-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、及びイソプロピル-L-フェニルアラニンからなる群から選択される、請求項110~150のいずれか1項に記載の方法。
【請求項162】
前記nsAAが、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)、及び4-アミノフェニルアラニン(AmF)からなる群から選択される、請求項142~150のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項163】
前記nsAAが、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)を含む、請求項162に記載の方法。
【請求項164】
前記nsAAが、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)を含む、請求項162に記載の方法。
【請求項165】
前記nsAAが、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)を含む、請求項162に記載の方法。
【請求項166】
前記nsAAが、4-アミノフェニルアラニン(AmF)を含む、請求項162に記載の方法。
【請求項167】
前記nsAAが前記細胞によって生合成される、請求項110~166のいずれか1項に記載の方法。
【請求項168】
前記nsAAが前記細胞に外因的に与えられる、請求項110~166のいずれか1項に記載の方法。
【請求項169】
前記細胞が非真核細胞または原核細胞である、請求項142~168のいずれか1項に記載の方法。
【請求項170】
前記原核細胞が大腸菌である、請求項169に記載の方法。
【請求項171】
前記細胞が真核細胞である、請求項110~168のいずれか1項に記載の方法。
【請求項172】
前記真核細胞が酵母細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項173】
前記真核細胞が真菌細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項174】
前記真核細胞が哺乳動物細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項175】
前記真核細胞が昆虫細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項176】
前記真核細胞が植物細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項177】
前記O-tRNAがセレクターコドンを認識する、請求項110~171のいずれか1項に記載の方法。
【請求項178】
前記セレクターコドンがアンバーコドンである、請求項177に記載の方法。
【請求項179】
前記ポリペプチドが、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、請求項110~178のいずれか1項に記載の方法。
【請求項180】
前記ポリペプチドがヒト成長ホルモンを含む、請求項110~178のいずれか1項に記載の方法。
【請求項181】
少なくとも1つの非標準アミノ酸(nsAA)を含むポリペプチドを生産する方法であって、
i)配列番号1に記載の配列と少なくとも85%同一の核酸配列を含み、かつO-tRNAの核酸の16位に位置するシトシンの欠失を含む、O-tRNAであって、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものであり、前記O-tRNAが、O-RSによって少なくとも1つのnsAAでアミノアシル化され得る、前記O-tRNAと、
ii)nsAAでO-tRNAをアミノアシル化するO-RSと、
iii)前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、前記O-tRNAによって認識される少なくとも1つのセレクターコドンを含む、前記ポリヌクレオチドと、
を提供する工程
を含む、前記方法。
【請求項182】
前記核酸配列が、配列番号1に記載の配列と、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも98.7%同一である、請求項181に記載の方法。
【請求項183】
前記O-tRNAが、核酸の53位にアデニン、及び核酸の63位にウラシルを含み、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものである、請求項181または182に記載の方法。
【請求項184】
前記O-tRNAが、配列番号2に記載の配列からなる核酸配列を含む、請求項183に記載の方法。
【請求項185】
前記O-tRNAが、核酸の3位及び6位にシトシン、核酸の7位にウラシル、核酸の67位にアデノシン、及び核酸の68位及び71位にグアニンを含み、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものである、請求項181または182に記載の方法。
【請求項186】
前記O-tRNAが、配列番号3に記載の配列からなる核酸配列を含む、請求項185に記載の方法。
【請求項187】
前記O-tRNAが、配列番号4に記載の配列からなる核酸配列を含む、請求項181に記載の方法。
【請求項188】
前記O-tRNAが、核酸の13~23位に配列CAG-AGGGCAGを含み、前記核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものである、請求項181または182に記載の方法。
【請求項189】
少なくとも1つの非標準アミノ酸(nsAA)を含むポリペプチドを生産する方法であって、
i)配列番号36に記載の配列からなる核酸配列を含むO-tRNAであって、前記配列が、配列番号1、配列番号37、または配列番号38を含まない、前記O-tRNAと、
ii)nsAAでO-tRNAをアミノアシル化するO-RSと、
iii)前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、前記O-tRNAによって認識される少なくとも1つのセレクターコドンを含む、前記ポリヌクレオチドと、
を提供する工程
を含む、前記方法。
【請求項190】
前記O-tRNAが3位にシトシンを含む、請求項186に記載の方法。
【請求項191】
前記O-tRNAが4位にアデニンを含む、請求項186または187に記載の方法。
【請求項192】
前記O-tRNAが5位にウラシルを含む、請求項186~188のいずれか1項に記載の方法。
【請求項193】
前記O-tRNAが6位にシトシンを含む、請求項186~189のいずれか1項に記載の方法。
【請求項194】
前記O-tRNAが7位にウラシルを含む、請求項186~190のいずれか1項に記載の方法。
【請求項195】
前記O-tRNAが46位にグアニンを含む、請求項186~191のいずれか1項に記載の方法。
【請求項196】
前記O-tRNAが48位にウラシルを含む、請求項186~192のいずれか1項に記載の方法。
【請求項197】
前記O-tRNAが50位にアデニンを含む、請求項186~193のいずれか1項に記載の方法。
【請求項198】
前記O-tRNAが51位にグアニンを含む、請求項186~194のいずれか1項に記載の方法。
【請求項199】
前記O-tRNAが53位にアデニンを含む、請求項186~195のいずれか1項に記載の方法。
【請求項200】
前記O-tRNAが63位にウラシルを含む、請求項186~196のいずれか1項に記載の方法。
【請求項201】
65位にシトシンを含む、請求項186~197のいずれか1項に記載のO-tRNA。
【請求項202】
前記O-tRNAが66位にウラシルを含む、請求項186~198のいずれか1項に記載の方法。
【請求項203】
前記O-tRNAが67位にアデニンを含む、請求項186~199のいずれか1項に記載の方法。
【請求項204】
前記O-tRNAが68位にグアニンを含む、請求項186~200のいずれか1項に記載の方法。
【請求項205】
前記O-tRNAが69位にアデニンまたはウラシルを含む、請求項186~201のいずれか1項に記載の方法。
【請求項206】
前記O-tRNAが70位にウラシルを含む、請求項186~202のいずれか1項に記載の方法。
【請求項207】
前記O-tRNAが71位にグアニンを含む、請求項186~203のいずれか1項に記載の方法。
【請求項208】
前記O-tRNAが、3位にシトシン、6位にシトシン、及び7位にウラシルを含む、請求項186~204のいずれか1項に記載の方法。
【請求項209】
前記O-tRNAが、46位にグアニン、及び48位にウラシルを含む、請求項186~205のいずれか1項に記載の方法。
【請求項210】
前記O-tRNAが、67位にアデニン、68位にグアニン、及び71位にグアニンを含む、請求項186~206のいずれか1項に記載の方法。
【請求項211】
前記O-tRNAが、配列番号2~16のいずれか1つに記載の配列からなる核酸配列を含む、請求項186~207のいずれか1項に記載の方法。
【請求項212】
前記O-RSが、M.ヤンナスキイのチロシル-tRNA合成酵素のO-RSを含む、請求項186~208のいずれか1項に記載の方法。
【請求項213】
前記O-RSが、配列番号35または39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む、請求項212に記載の方法。
【請求項214】
前記nsAAが、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、20種類の天然アミノ酸において使用される対応する置換基以外の任意の置換基である、請求項186~209のいずれか1項に記載の方法。
【請求項215】
前記nsAAが、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、アルキル-、アリール-、アシル-、ケト-、アジド-、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項214に記載の方法。
【請求項216】
前記nsAAが、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、少なくとも1つの新規な官能基を有するアミノ酸、他の分子と共有結合または非共有結合を介して相互作用するアミノ酸、光ケージドアミノ酸、光異性化可能なアミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、炭水化物修飾アミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能なアミノ酸、光切断可能なアミノ酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項186~215のいずれか1項に記載の方法。
【請求項217】
前記nsAAが、チロシン類似体を含む、請求項186~216のいずれか1項に記載の方法。
【請求項218】
前記チロシン類似体が、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンからなる群から選択される、請求項217に記載の方法。
【請求項219】
前記置換チロシンが、ケト基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、分枝炭化水素、飽和もしくは不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、またはそれらの組み合わせを含む、請求項218に記載の方法。
【請求項220】
前記nsAAが、グルタミン類似体を含む、請求項186~216のいずれか1項に記載の方法。
【請求項221】
前記グルタミン類似体が、α-ヒドロキシ誘導体、γ-置換誘導体、環状誘導体、アミド置換グルタミン誘導体を含む、請求項220に記載の方法。
【請求項222】
前記nsAAが、フェニルアラニン類似体を含む、請求項186~216のいずれか1項に記載の方法。
【請求項223】
前記フェニルアラニン類似体が、アミノ含有、イソプロピル含有、またはO-アリル含有フェニルアラニン類似体である、請求項222に記載の方法。
【請求項224】
前記フェニルアラニン類似体が、パラ置換フェニルアラニン、オルト置換フェニルアラニン、及びメタ置換フェニルアラニンからなる群から選択される、請求項222または223に記載の方法。
【請求項225】
前記置換基が、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基、またはアセチル基を含む、請求項224のいずれか1項に記載の方法。
【請求項226】
前記nsAAが、パラ-アセチルフェニルアラニンを含む、請求項225に記載の方法。
【請求項227】
前記nsAAが、p-プロパルギルフェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチルフェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcB-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、及びイソプロピル-L-フェニルアラニンからなる群から選択される、請求項186~216のいずれか1項に記載の方法。
【請求項228】
前記nsAAが、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)、及び4-アミノフェニルアラニン(AmF)からなる群から選択される、請求項186~216のいずれか1項に記載の方法。
【請求項229】
前記nsAAが、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)を含む、請求項228に記載の方法。
【請求項230】
前記nsAAが、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)を含む、請求項228に記載の方法。
【請求項231】
前記nsAAが、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)を含む、請求項228に記載の方法。
【請求項232】
前記nsAAが、4-アミノフェニルアラニン(AmF)を含む、請求項228に記載の方法。
【請求項233】
前記セレクターコドンがアンバーコドンである、請求項186~232に記載の方法。
【請求項234】
前記ポリペプチドが、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、請求項186~233のいずれか1項に記載の方法。
【請求項235】
前記ポリペプチドがヒト成長ホルモンを含む、請求項186~234のいずれか1項に記載の方法。
【請求項236】
前記ポリペプチドが無細胞翻訳系によって産生される、請求項186~235のいずれか1項に記載の方法。
【請求項237】
前記無細胞翻訳系が細胞ライセートである、請求項236に記載の方法。
【請求項238】
前記無細胞翻訳系が、再構成された系である、請求項236に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全容を参照により本明細書に援用するところの2021年9月17日出願の米国特許仮出願第63/245,789号の利益及び当該出願に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
タンパク質はほぼすべての生物学的プロセスに遍在的に関与しているが、その大部分は、限られた官能基群(アミン、カルボン酸、アミド、アルコール、チオールなど)を有するわずか20種類の標準アミノ酸から生合成される。合成生物学の目標の1つは、生物によって利用される元素記号(chemical alphabet)を拡大することである。非標準アミノ酸(nsAA)をタンパク質に組み込むことができれば、従来製造が困難だった分子の製造を効率化する新しい化学的手法が可能となることから、タンパク質発現系において非常に望ましい特性である。例えば、穏やかな水性条件下で部位特異的結合を助けるnsAAを生物製剤に組み込むことで、半減期延長部分(例えば、PEG)、均一なグリカン構造、及び抗体薬物複合体(ADC)を結合させるための極めて単純化された経路が与えられると考えられる。
【0003】
タンパク質及びペプチドへのnsAAの組み込みは、一般的には、新規tRNA上に目的のnsAAをアミノアシル化できる改変トランスファーRNA(tRNA)/アミノアシルtRNA合成酵素のペア、すなわち、直交性翻訳系(OTS)の発現によって行われる。nsAAを含む目的のタンパク質の効率的な生産を行うには、改変tRNAがその同族のアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)によって選択的にアミノアシル化される一方でタンパク質発現系内のすべての内因性aaRSに対して不活性を維持する必要がある。得られたアミノアシルtRNAがリボソームのA部位に移動するには、伸長因子Tu(EF-Tu)によって効率的に認識されなければならない。すなわち、アミノアシルtRNAは、リボソームのA部位に結合した後、ペプチジルトランスフェラーゼの基質として翻訳において効率的に機能する必要があり、最後に、成長するペプチド鎖を保持するtRNAがP部位に転座し、別のアシル転移反応を受けて、リボソームから放出される必要がある。
【0004】
OTSのパフォーマンスは、忠実度と効率という2つの主要なパラメータの観点から定義できる。忠実度とは、再割り当てされたコドンがリボソームによって、他のアミノ酸として誤って読み取られるのではなく、nsAAとして読み取られる精度を指す。OTSの忠実度が低いと、再割り当てされた各コドンにnsAA及び1つ以上の他のアミノ酸を有するタンパク質の混合物が生成され、精製プロセスが大幅に複雑になり、さらには分離が不可能になる場合もある。効率は、OTS及びnsAAの存在下でリボソームが再割り当てされるコドンをどれだけ効果的に読み取ることができるかを反映する。nsAAの組み込み系の効率が低いと、目的のタンパク質の収量が低下する。望ましいOTSは、発酵の全過程を通じて忠実度と効率の両方の点でバランスの取れたプロファイルを備えている必要がある。理想的には、標準アミノ酸のミスチャージが無視できる程度であり、リードスルー効率が野生型DNA配列の翻訳と比較して良くないまでもそれに近いものであることである。
【0005】
さまざまな由来源のOTSが改変され、細菌タンパク質発現系において、nsAAを含むタンパク質の生産に使用されている。例えば、古細菌メタノコックス・ヤンナスキイ(Methanococcus jannaschii)由来のOTSが、光親和性標識及び光異性化可能なアミノ酸、光架橋性アミノ酸を含む、新規な化学的、物理的または生物学的特性を有する多くの新たなアミノ酸用に改変されており(Chin,J.W.,et al.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:11020-11024(非特許文献1);及びChin,J.W.,et al.,(2002)J.Am.Chem.Soc.124:9026-9027(非特許文献2)を参照)、ケトアミノ酸(Wang,L.,et al.,(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:56-61(非特許文献3)及びZhang,Z.et al.,Biochem.42(22):6735-6746(2003)(非特許文献4)を参照)、重原子含有アミノ酸、及びグリコシル化アミノ酸が、アンバーコドン(TAG)に応じて、大腸菌(Escherichia coli)内のタンパク質に効率的かつ高い忠実度で組み込まれている。グルタミニル系(例えば、Liu,D.R.,及びSchultz,P.G.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:4780-4785(非特許文献5)を参照)、アスパルチル系(例えば、Pastrnak,M.,et al.,(2000)Helv.Chim.Acta 83:2277 2286(非特許文献6)を参照)、チロシル系(例えば、Ohno,S.,et al.,(1998).J.Bio Chem.(Tokyo,Jpn.)124:1065-1068(非特許文献7);及びKowal,A.K.,et al.,(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98:2268-2273(非特許文献8)を参照)、及び酵母(S.cerevisiae)のtRNA及び合成酵素に由来する系が、大腸菌における非標準アミノ酸の潜在的な組み込みについて記載されている。
【0006】
非標準アミノ酸は通常、許容可能な効率と忠実度でタンパク質に組み込まれるが、タンパク質の収量を向上させるためには、さらなる体系的な最適化が強く望まれている。非標準アミノ酸の組み込みの程度はさまざまであるが、定量可能であることはごく稀であり、そのため、製品の量及び品質のプロファイルは最適とはいえない。従来知られているOTSでは、細菌発現系の高細胞密度の発酵中に忠実度または効率が低下することが示されている。これらの短所は、生物製剤の生産専用に高度に最適化された細菌発現系で特に顕著である。したがって、nsAAの応用範囲をさらに拡大するため、OTSの改良された、及び/またはさらなる構成成分、例えばtRNAの開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chin,J.W.,et al.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:11020-11024
【非特許文献2】Chin,J.W.,et al.,(2002)J.Am.Chem.Soc.124:9026-9027
【非特許文献3】Wang,L.,et al.,(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:56-61
【非特許文献4】Zhang,Z.et al.,Biochem.42(22):6735-6746(2003)
【非特許文献5】Liu,D.R.,及びSchultz,P.G.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:4780-4785
【非特許文献6】Pastrnak,M.,et al.,(2000)Helv.Chim.Acta 83:2277 2286
【非特許文献7】Ohno,S.,et al.,(1998).J.Bio Chem.(Tokyo,Jpn.)124:1065-1068
【非特許文献8】Kowal,A.K.,et al.,(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98:2268-2273
【発明の概要】
【0008】
概要
特定の態様では、本明細書において、配列番号1に記載の配列と少なくとも85%同一の核酸配列を含み、かつ直交性tRNA(O-tRNA)の核酸の16位に位置するシトシンの欠失を含む、O-tRNAであって、核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものであり、O-tRNAが、アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)によって少なくとも1つの非標準アミノ酸(nsAA)でアミノアシル化され得る、O-tRNAが開示される。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号1に記載の配列と、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも98.7%同一である。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の53位にアデニン、及び核酸の63位にウラシルを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号2に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の3位及び6位にシトシン、核酸の7位にウラシル、核酸の67位にアデノシン、及び核酸の68位及び71位にグアニンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号3に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号4に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の13~23位に配列CAG-AGGGCAGを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。
【0009】
特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号36に記載の配列からなる核酸配列を含み、配列は、配列番号1、配列番号37、または配列番号38を含まない。特定の実施形態では、O-tRNAは3位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは4位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは5位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは6位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは7位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは46位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは48位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは50位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは51位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは53位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは63位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは64位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは65位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは66位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは67位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは68位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは69位にアデニンまたはウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは70位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは71位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、3位にシトシン、6位にシトシン、及び7位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、46位にグアニン、及び48位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、67位にアデニン、68位にグアニン、及び71位にグアニンを含む。
【0010】
特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号2~16に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、アミノアシル化される。特定の実施形態では、O-tRNAは、nsAAでアミノアシル化される。特定の実施形態では、nsAAは、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、20種類の天然アミノ酸において使用される対応する置換基以外の任意の置換基である。特定の実施形態では、nsAAは、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、アルキル-、アリール-、アシル-、ケト-、アジド-、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミン、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、nsAAは、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、少なくとも1つの新規な官能基を含むアミノ酸、他の分子と共有結合または非共有結合を介して相互作用するアミノ酸、光ケージドアミノ酸、光異性化可能なアミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、炭水化物修飾アミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能なアミノ酸、光切断可能なアミノ酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、nsAAはチロシン類似体を含む。特定の実施形態では、チロシン類似体は、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンからなる群から選択される。特定の実施形態では、置換チロシンは、ケト基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、分枝炭化水素、飽和もしくは不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、nsAAは、グルタミン類似体を含む。特定の実施形態では、グルタミン類似体は、α-ヒドロキシ誘導体、γ-置換誘導体、環状誘導体、またはアミド置換グルタミン誘導体を含む。特定の実施形態では、nsAAは、フェニルアラニン類似体を含む。特定の実施形態では、フェニルアラニン類似体は、アミノ含有、イソプロピル含有、またはO-アリル含有フェニルアラニン類似体である。特定の実施形態では、フェニルアラニン類似体は、パラ置換フェニルアラニン、オルト置換フェニルアラニン、及びメタ置換フェニルアラニンからなる群から選択される。特定の実施形態では、置換基は、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基、またはアセチル基を含む。特定の実施形態では、nsAAは、パラ-アセチルフェニルアラニンを含む。
【0011】
特定の実施形態では、nsAAは、p-プロパルギルフェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチルフェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcB-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、及びイソプロピル-L-フェニルアラニンからなる群から選択される。特定の実施形態では、nsAAは、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)、及び4-アミノフェニルアラニン(AmF)からなる群から選択される。特定の実施形態では、nsAAは、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)を含む。特定の実施形態では、nsAAは、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)を含む。特定の実施形態では、nsAAは、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)を含む。特定の実施形態では、nsAAは、4-アミノフェニルアラニン(AmF)を含む。
【0012】
特定の実施形態では、O-tRNAは、化学的にアミノアシル化される。特定の実施形態では、O-tRNAは、酵素的にアミノアシル化される。特定の実施形態では、O-tRNAは、リボザイムによって酵素的にアミノアシル化される。特定の実施形態では、O-tRNAは、古細菌tRNAに由来する。特定の実施形態では、O-tRNAは、M.ヤンナスキイ(M.jannaschii)に由来する。
【0013】
特定の態様では、本明細書において、配列番号39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む直交性tRNA合成酵素(O-RS)が開示される。特定の態様では、本明細書に開示されるO-tRNAとO-RSとを含む直交翻訳系(OTS)が本明細書に開示される。
【0014】
特定の実施形態では、O-RSは、M.ヤンナスキイのチロシル-tRNA合成酵素のO-RSを含む。特定の実施形態では、O-RSは、配列番号35または39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、OTSは、nsAAをさらに含む。特定の実施形態では、nsAAは、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、20種類の天然アミノ酸において使用される対応する置換基以外の任意の置換基である。特定の実施形態では、nsAAは、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、アルキル-、アリール-、アシル-、ケト-、アジド-、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミン、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、nsAAは、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、少なくとも1つの新規な官能基を含むアミノ酸、他の分子と共有結合または非共有結合を介して相互作用するアミノ酸、光ケージドアミノ酸、光異性化可能なアミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、炭水化物修飾アミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能なアミノ酸、光切断可能なアミノ酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、nsAAはチロシン類似体を含む。特定の実施形態では、チロシン類似体は、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンからなる群から選択される。特定の実施形態では、置換チロシンは、ケト基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、分枝炭化水素、飽和もしくは不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、nsAAは、グルタミン類似体を含む。特定の実施形態では、グルタミン類似体は、α-ヒドロキシ誘導体、γ-置換誘導体、環状誘導体、またはアミド置換グルタミン誘導体を含む。特定の実施形態では、nsAAは、フェニルアラニン類似体を含む。特定の実施形態では、フェニルアラニン類似体は、アミノ含有、イソプロピル含有、またはO-アリル含有フェニルアラニン類似体である。特定の実施形態では、フェニルアラニン類似体は、パラ置換フェニルアラニン、オルト置換フェニルアラニン、及びメタ置換フェニルアラニンからなる群から選択される。特定の実施形態では、置換基は、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基、またはアセチル基を含む。特定の実施形態では、nsAAは、パラ-アセチルフェニルアラニンを含む。
【0015】
特定の実施形態では、OTSのnsAAは、p-プロパルギルフェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチルフェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcB-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、及びイソプロピル-L-フェニルアラニンからなる群から選択される。特定の実施形態では、nsAAは、O-メチル-L-チロシンを含む。特定の実施形態では、nsAAは、L-3-(2-ナフチル)アラニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAはセレクターコドンを認識する。特定の実施形態では、セレクターコドンはアンバーコドンである。
【0016】
特定の実施形態では、OTSは、O-tRNAによって認識される少なくとも1つのセレクターコドンを含むポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、OTSは、変異体EF-Tuをさらに含む。特定の実施形態では、OTSは、無細胞翻訳系である。特定の実施形態では、無細胞翻訳系は、細胞ライセートである。特定の実施形態では、無細胞翻訳系は、再構成された系である。
【0017】
特定の実施形態では、OTSは、細胞翻訳系である。
【0018】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるOTSを含む細胞に関する。特定の実施形態では、細胞は、非真核細胞または原核細胞である。特定の実施形態では、原核細胞は、大腸菌である。特定の実施形態では、細胞は、真核細胞である。特定の実施形態では、細胞は、酵母細胞である。特定の実施形態では、細胞は、真菌細胞である。特定の実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、細胞は、昆虫細胞である。特定の実施形態では、細胞は、植物細胞である。特定の実施形態では、細胞は、EF-Tuの変異をコードする。特定の実施形態では、細胞は、翻訳終結因子1の発現が減少している以外は同一の野生型細胞と比較して、翻訳終結因子1の発現が減少している。
【0019】
別の態様では、本開示は、少なくとも1つのnsAAを含むポリペプチドであって、本明細書に記載のOTSまたは細胞によって産生される、ポリペプチドに関する。特定の実施形態では、ポリペプチドは抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、ポリペプチドはヒト成長ホルモンを含む。
【0020】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2~31のいずれか1つに記載の配列からなる核酸配列を含むO-tRNAをコードする核酸配列を含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2~31のいずれか1つに記載の配列からなるO-tRNA配列に相補的な核酸配列をさらに含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットは、配列番号39に記載のアミノ酸配列を含むO-RSをコードする核酸配列を含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、O-RSをコードする核酸配列に相補的な核酸配列をさらに含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットは、配列番号2~31のいずれか1つに記載の核酸配列からなるO-tRNAの核酸配列と、M.ヤンナスキイのチロシル-tRNA合成酵素をコードする核酸配列とを含む。特定の実施形態では、O-RSは、配列番号35または39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む。
【0021】
別の態様では、本明細書に記載される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むベクターが本明細書に記載される。特定の実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。特定の実施形態では、ベクターは、プラスミド、コスミド、ファージ、及びウイルスからなる群から選択される。
【0022】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターを含む細胞に関する。
【0023】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のポリヌクレオチド(複数可)、ベクター、または細胞のうちの1つ以上と、使用説明書とを含むキットに関する。
【0024】
別の態様では、本明細書は、少なくとも1つの非標準アミノ酸(nsAA)を含むポリペプチドを生産するための方法であって、配列番号1に記載の配列と少なくとも85%同一の核酸配列を含み、かつO-tRNAの核酸の16位に位置するシトシンの欠失を含む、O-tRNAであって、核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものであり、O-tRNAが、O-RSによって少なくとも1つのnsAAでアミノアシル化され得る、O-tRNAを、細胞内で発現させる工程を含む、方法に関する。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号1に記載の配列と、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも98.7%同一である。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の53位にアデニン、及び核酸の63位にウラシルを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号2に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の3位及び6位にシトシン、核酸の7位にウラシル、核酸の67位にアデノシン、及び核酸の68位及び71位にグアニンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号3に記載の配列からなる核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、O-tRNAは、配列番号4に記載の核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の13~23位に配列CAG-AGGGCAGを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。別の態様では、本開示は、少なくとも1つのnsAAを含むポリペプチドを生産するための方法であって、配列番号36に記載の配列からなる核酸配列を含むO-tRNAであって、配列が、配列番号1、配列番号37、または配列番号38を含まない、O-tRNAを、細胞内で発現させる工程を含む、方法に関する。特定の実施形態では、O-tRNAは3位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは4位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは5位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは6位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは7位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは46位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは48位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは50位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは51位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは53位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは63位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは64位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは65位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは66位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは67位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは68位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは69位にアデニンまたはウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは70位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは71位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、3位にシトシン、6位にシトシン、及び7位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、46位にグアニン、及び48位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、67位にアデニン、68位にグアニン、及び71位にグアニンを含む。
【0025】
特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号2~16のいずれか1つに記載の配列からなる核酸配列を含む。
【0026】
特定の実施形態では、方法は、細胞内でO-RSを発現させる工程をさらに含む。特定の実施形態では、O-RSは、M.ヤンナスキイのチロシル-tRNA合成酵素のO-RSを含む。特定の実施形態では、O-RSは、配列番号35または39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは配列番号2~16のいずれか1つに記載の核酸を含み、O-RSは配列番号35または39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む。
【0027】
この方法の特定の実施形態では、O-RSは、O-tRNAをnsAAでアミノアシル化する。特定の実施形態では、nsAAは、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、20種類の天然アミノ酸において使用される対応する置換基以外の任意の置換基である。特定の実施形態では、nsAAは、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、アルキル-、アリール-、アシル-、ケト-、アジド-、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミン、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、nsAAは、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、少なくとも1つの新規な官能基を有するアミノ酸、他の分子と共有結合または非共有結合を介して相互作用するアミノ酸、光ケージドアミノ酸、光異性化可能なアミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、炭水化物修飾アミノ酸、及びポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能なアミノ酸、光切断可能なアミノ酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、nsAAはチロシン類似体を含む。特定の実施形態では、チロシン類似体は、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンからなる群から選択される。特定の実施形態では、置換チロシンは、ケト基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、分枝炭化水素、飽和もしくは不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、nsAAは、グルタミン類似体を含む。特定の実施形態では、グルタミン類似体は、α-ヒドロキシ誘導体、γ-置換誘導体、環状誘導体、またはアミド置換グルタミン誘導体を含む。特定の実施形態では、nsAAは、フェニルアラニン類似体を含む。特定の実施形態では、フェニルアラニン類似体は、アミノ含有、イソプロピル含有、またはO-アリル含有フェニルアラニン類似体である。特定の実施形態では、フェニルアラニン類似体は、パラ置換フェニルアラニン、オルト置換フェニルアラニン、及びメタ置換フェニルアラニンからなる群から選択される。特定の実施形態では、置換基は、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基、またはアセチル基を含む。特定の実施形態では、nsAAは、パラ-アセチルフェニルアラニンを含む。
【0028】
この方法の特定の実施形態では、nsAAは、p-プロパルギルフェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチルフェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcB-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、及びイソプロピル-L-フェニルアラニンからなる群から選択される。
【0029】
この方法の特定の実施形態では、nsAAは、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)、及び4-アミノフェニルアラニン(AmF)からなる群から選択される。特定の実施形態では、nsAAは、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)を含む。特定の実施形態では、nsAAは、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)を含む。特定の実施形態では、nsAAは、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)を含む。特定の実施形態では、nsAAは、4-アミノフェニルアラニン(AmF)を含む。特定の実施形態では、nsAAは細胞により生合成される。特定の実施形態では、nsAAは細胞に外因的に与えられる。
【0030】
この方法の特定の実施形態では、細胞は、非真核細胞または原核細胞である。特定の実施形態では、原核細胞は、大腸菌である。特定の実施形態では、細胞は、真核細胞である。特定の実施形態では、真核細胞は、酵母細胞である。特定の実施形態では、真核細胞は、真菌細胞である。特定の実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、真核細胞は、昆虫細胞である。特定の実施形態では、真核細胞は、植物細胞である。
【0031】
この方法の特定の実施形態では、O-tRNAはセレクターコドンを認識する。特定の実施形態では、セレクターコドンはアンバーコドンである。特定の実施形態では、ポリペプチドは抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、ポリペプチドはヒト成長ホルモンを含む。特定の態様では、本明細書において、少なくとも1つの非標準アミノ酸(nsAA)を含むポリペプチドを生産するための方法であって、i)配列番号1に記載の配列と少なくとも85%同一の核酸配列を含み、かつO-tRNAの核酸の16位に位置するシトシンの欠失を含む、O-tRNAであって、核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものであり、O-tRNAが、O-RSによって少なくとも1つのnsAAでアミノアシル化され得る、O-tRNAと、ii)nsAAでO-tRNAをアミノアシル化するO-RSと、iii)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、O-tRNAによって認識される少なくとも1つのセレクターコドンを含むポリヌクレオチドと、を提供する工程を含む、方法が開示される。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号1に記載の配列と、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも98.7%同一である。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の53位にアデニン、及び核酸の63位にウラシルを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号2に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の3位及び6位にシトシン、核酸の7位にウラシル、核酸の67位にアデノシン、及び核酸の68位及び71位にグアニンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号3に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号4に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の13~23位に配列CAG-AGGGCAGを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。
【0032】
別の態様では、本開示は、少なくとも1つの非標準アミノ酸(nsAA)を含むポリペプチドを生産する方法であって、i)配列番号36に記載の配列からなる核酸配列を含み、配列が、配列番号1、配列番号37、または配列番号38を含まない、O-tRNAと、ii)nsAAでO-tRNAをアミノアシル化するO-RSと、iii)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、O-tRNAによって認識される少なくとも1つのセレクターコドンを含む、ポリヌクレオチドと、を提供する工程を含む、方法に関する。特定の実施形態では、O-tRNAは3位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは4位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは5位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは6位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは7位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは46位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは48位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは50位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは51位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは53位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは63位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは64位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは65位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは66位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは67位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは68位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは69位にアデニンまたはウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは70位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは71位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、3位にシトシン、6位にシトシン、及び7位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、46位にグアニン、及び48位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、67位にアデニン、68位にグアニン、及び71位にグアニンを含む。
【0033】
特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号2~16のいずれか1つに記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-RSは、M.ヤンナスキイのチロシル-tRNA合成酵素のO-RSを含む。特定の実施形態では、O-RSは、配列番号35または39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む。
【0034】
この方法の特定の実施形態では、nsAAは、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、20種類の天然アミノ酸において使用される対応する置換基以外の任意の置換基である。特定の実施形態では、nsAAは、式Iに従う構造を有し、ここで、R基は、アルキル-、アリール-、アシル-、ケト-、アジド-、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミン、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、nsAAは、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、少なくとも1つの新規な官能基を有するアミノ酸、他の分子と共有結合または非共有結合を介して相互作用するアミノ酸、光ケージドアミノ酸、光異性化可能なアミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、炭水化物修飾アミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能なアミノ酸、光切断可能なアミノ酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、nsAAはチロシン類似体を含む。特定の実施形態では、チロシン類似体は、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンからなる群から選択される。特定の実施形態では、置換チロシンは、ケト基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、分枝炭化水素、飽和もしくは不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、nsAAは、グルタミン類似体を含む。特定の実施形態では、グルタミン類似体は、α-ヒドロキシ誘導体、γ-置換誘導体、環状誘導体、アミド置換グルタミン誘導体を含む。特定の実施形態では、nsAAは、フェニルアラニン類似体を含む。特定の実施形態では、フェニルアラニン類似体は、アミノ含有、イソプロピル含有、またはO-アリル含有フェニルアラニン類似体である。特定の実施形態では、フェニルアラニン類似体は、パラ置換フェニルアラニン、オルト置換フェニルアラニン、及びメタ置換フェニルアラニンからなる群から選択される。特定の実施形態では、置換基は、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基、またはアセチル基を含む。特定の実施形態では、nsAAは、パラ-アセチルフェニルアラニンを含む。
【0035】
特定の実施形態では、nsAAは、p-プロパルギルフェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチルフェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcB-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、及びイソプロピル-L-フェニルアラニンからなる群から選択される。特定の実施形態では、nsAAは、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)、及び4-アミノフェニルアラニン(AmF)からなる群から選択される。特定の実施形態では、nsAAは、4-アセチル-フェニルアラニン(AcF)を含む。特定の実施形態では、nsAAは、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)を含む。特定の実施形態では、nsAAは、4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)を含む。特定の実施形態では、nsAAは、4-アミノフェニルアラニン(AmF)を含む。
【0036】
この方法の特定の実施形態では、セレクターコドンはアンバーコドンである。特定の実施形態では、ポリペプチドは、抗体、その抗原結合フラグメントまたは成分、例えば、抗体重鎖可変ドメイン、抗体軽鎖可変ドメイン、抗体重鎖、抗体軽鎖、またはscFVを含む。特定の実施形態では、ポリペプチドはヒト成長ホルモンを含む。特定の実施形態では、ポリペプチドは、無細胞翻訳系により産生される。特定の実施形態では、無細胞翻訳系は、細胞ライセートである。特定の実施形態では、無細胞翻訳系は、再構成された系である。
【0037】
本発明のこれらの特徴、態様、及び利点、ならびに他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明文及び添付の図面に関してより深い理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本開示による候補OTSを含む例示的なコンストラクトのプラスミドマップの図である。
【0039】
図2】振盪フラスコ発酵条件下で産生された、さまざまな戦略的部位にnsAAが組み込まれたトラスツズマブのProA/PhyTip精製後のウエスタンブロットの画像である。
【0040】
図3】振盪フラスコ発酵条件下で産生された、S123がp-アセチルフェニルアラニンに置換されたトラスツズマブのAKTA(商標)精製後のSDS-PAGEの結果の画像である。
【0041】
図4】RFP-GFP融合タンパク質レポーターを使用して既知のF12、F13及びF14 OTSと比較したMG72、MG33及びMG24候補OTSの忠実度(平均最大誤組み込み頻度「MMF」)及び効率(平均リードスルー効率「RRE」)の評価を示すグラフである。平均ODも示されている。
【0042】
図5】MG72、MG33、MG24及びF12 tRNAのtRNAクローバーリーフ構造及び配列の図である。
【0043】
図6-1】本明細書に開示される候補tRNAのさらなるtRNAクローバーリーフ構造及び配列の図である。
図6-2】本明細書に開示される候補tRNAのさらなるtRNAクローバーリーフ構造及び配列の図である。
図6-3】本明細書に開示される候補tRNAのさらなるtRNAクローバーリーフ構造及び配列の図である。
図6-4】本明細書に開示される候補tRNAのさらなるtRNAクローバーリーフ構造及び配列の図である。
【0044】
図7】本明細書に開示される候補tRNA及びF12、F13、及びF14 tRNAの配列アラインメントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
定義
特許請求の範囲及び明細書において使用される用語は、特に断らない限り、以下に記載されるように定義される。
【0046】
本明細書で使用する場合、「直交性」という用語は、目的の系(例えば、翻訳系、例えば、細胞)によって利用される効率が低いか、または細胞の内因性成分では機能できない分子(例えば、直交性tRNA(O-tRNA)及び/または直交性アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS))を指す。tRNA及びアミノアシルtRNA合成酵素との関連において、直交性とは、直交性tRNA及び/または直交性RSが目的の翻訳系で機能できないか、または低い効率、例えば20%未満の効率、10%未満の効率、5%未満の効率、または例えば1%未満の効率で機能することを指す。直交性分子は、細胞内の機能的な内因性相補分子を欠いている。例えば、目的の翻訳系内の直交性tRNAは、内因性RSによる内因性tRNAのアミノアシル化と比較した場合、目的の翻訳系の任意の内因性RSによってアミノアシル化される効率が低いか、さらにはゼロである。別の例では、直交性RSは、内因性RSによる内因性tRNAのアミノアシル化と比較した場合、目的の翻訳系の任意の内因性O-tRNAをアミノアシル化する効率が低いか、さらにはゼロである。第1の直交性分子とともに機能する第2の直交性分子を細胞に導入することができる。例えば、直交性tRNA/RSペアは、tRNA/RS標準アミノ酸ペアの効率に対して細胞内で一定の効率(例えば、約50%の効率、約60%の効率、約70%の効率、約75%の効率、約80%の効率、約85%の効率、約90%の効率、約95%の効率、または約99%以上の効率)で共に機能する導入された相補的成分を含む。
【0047】
「同族」という用語は、一緒に機能する成分、例えば、tRNAとアミノアシルtRNA合成酵素を指す。これらの成分は、相補的ともいえる。
【0048】
「アミノアシル化する」という用語は、アミノアシルtRNA合成酵素によるアミノ酸のtRNAへの転移を指す。
【0049】
「選択的にアミノアシル化する」という用語は、O-RSが天然tRNAまたはO-tRNAを生産するために使用される出発物質をアミノアシル化する場合と比較して、O-RSが選択されたアミノ酸、例えばnsAAで、O-tRNAをアミノアシル化する効率、例えば約70%の効率、約75%の効率、約80%の効率、約85%の効率、約90%の効率、約95%の効率、または約99%以上の効率を指す。次いで、nsAAは、高い忠実度、例えば、約70%を超える忠実度、約75%を超える忠実度、約80%を超える忠実度、約85%を超える忠実度、約90%を超える忠実度、約95%を超える忠実度、または約99%を超える忠実度で、成長中のポリペプチド鎖に組み込まれる。
【0050】
「セレクターコドン」という用語は、翻訳プロセスにおいてO-tRNAによって認識されるが、内因性tRNAによっては認識されないコドンを指す。O-tRNAのアンチコドンループは、mRNA上のセレクターコドンを認識し、その非標準アミノ酸(nsAA)をポリペプチドのこの部位に組み込む。セレクターコドンとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、アンバー、オーカー、オパールコドン、4個以上の塩基からなるコドン、稀少コドン、天然または非天然の塩基対に由来するコドンなどを含む終止コドンなどのナンセンスコドンが挙げられる。特定の系では、セレクターコドンは、内因性の系によって使用されない(または稀にしか使用されない)天然の3塩基コドンの1つを含んでもよい。例えば、これには、天然の3塩基コドンを認識するtRNAが欠如している系、及び/または天然の3塩基コドンが稀少コドンである系が含まれる。
【0051】
「非標準アミノ酸」(nsAA)という用語は、タンパク質中に天然に存在しない任意のアミノ酸(例えば、天然に存在しない修飾アミノ酸またはアミノ酸類似体)を指す。言い換えると、非標準アミノ酸とは、セレノシステイン及び/またはピロリシン、ならびに遺伝暗号に用いられる以下の20種類のα-アミノ酸、すなわち、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン以外のアミノ酸のことである。
【0052】
本出願で使用される略語としては、非標準アミノ酸(nsAA)、トランスファーRNA(tRNA)、直交性tRNA(O-tRNA)、及び直交性アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)が挙げられる。
【0053】
「翻訳系」という用語は、天然に存在するアミノ酸を成長中のポリペプチド鎖(タンパク質)に組み込むために必要な構成成分を指す。翻訳系の構成成分には、例えば、リボソーム、tRNA、合成酵素、mRNAなどが含まれ得る。本開示の構成成分は、インビトロまたはインビボの翻訳系に添加することができる。翻訳系の例としては、これらに限定されるものではないが、非真核細胞、例えば細菌(大腸菌など)、真核細胞、例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、真菌細胞、昆虫細胞、無細胞翻訳系、例えば細胞ライセート、及び/またはこれらに類するものが挙げられる。
【0054】
2つ以上のポリペプチドまたは核酸の配列との関連での「同一率」(%)という用語は、下記の配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTN、または当業者が利用可能な他のアルゴリズム)のうちの1つを用いて、または目視により測定される、最大の一致について比較及び整列させた場合に、特定の比率(%)の同じヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有する2つ以上の配列または部分配列のことを指す。用途に応じて、「同一率」(%)は、比較される配列の領域にわたって、例えば、機能ドメインにわたって存在するか、あるいは、比較される2つの配列の完全長にわたって存在することができる。
【0055】
配列比較では、通常、1つの配列が、試験配列を比較する参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合には部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列(複数可)の配列同一率(%)を算出する。
【0056】
比較を行うための配列同士の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)のローカルホモロジーアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)のホモロジーアラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実施によって(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.)のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、または目視(一般的にAusubel et al.下記参照)によって行うことができる。
【0057】
配列同一率(%)及び配列類似率(%)を決定するのに適したアルゴリズムの1つの例として、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されるBLASTアルゴリズムがある。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公に入手可能である。
【0058】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈によってそうでない旨が明示されない限り、複数の指示対象を含む点に留意されなければならない。
【0059】
本開示は、非標準アミノ酸を含むタンパク質を効率的に生産するためのtRNA及び対応するアミノアシルtRNA合成酵素を提供する。これらの改変された直交性tRNA(O-tRNA)/直交性アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)のペア(すなわち、直交性翻訳系(OTS))は、tRNAによって認識されるセレクターコドンに応じて、成長中のポリペプチドの特定の位置にnsAAを組み込むために使用することができる。本開示は、既知の系と比較して、nsAAの組み込みにおいて優れた忠実度及び効率を有する直交性翻訳系(OTS)を提供する。
【0060】
直交性tRNA(O-tRNA)
本明細書では、非標準アミノ酸(nsAA)でアミノアシル化された直交性トランスファーRNA(O-tRNA)が記載される。O-tRNAは、O-tRNAによって認識されるセレクターコドンを含むポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質へのnsAAの組み込みを媒介する。
【0061】
特定の態様では、本明細書において、配列番号1に記載の配列と少なくとも85%同一の核酸配列を含み、かつ直交性tRNA(O-tRNA)の核酸の16位に位置するシトシンの欠失を含む、O-tRNAであって、核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものであり、O-tRNAが、直交性アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)によって少なくとも1つの非標準アミノ酸(nsAA)でアミノアシル化され得る、O-tRNAが記載される。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号1に記載の配列と、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも98.7%同一である。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の53位にアデニンを、核酸の63位にウラシルを含み、ここで、核酸の位置は配列番号1に記載の配列に対応する。いくつかの実施形態では、O-tRNAは、配列番号2に記載の核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、アミノ酸の3位及び6位にシトシン、核酸の7位にウラシル、核酸の67位にアデノシン、及び核酸の68位及び71位にグアニンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号3に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号4に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の13~23位に配列CAG-AGGGCAGを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。
【0062】
特定の実施態様では、本開示は、配列番号36に記載の配列からなる核酸配列を含むO-tRNAであって、配列が、配列番号1、配列番号37、または配列番号38を含まない、O-tRNAに関する。
【0063】
配列番号36は、以下のコンセンサス配列を提供する:
CCXUAGUUCAGXAGGGCAGAACGGCGGACUCUAAAUCCGCAXGXCX101112GUCAAAUCX131415161718192021GGACCA
ここで、Xは、CまたはGであり、Xは、AまたはGであり、Xは、A、UまたはCであり、Xは、CまたはGであり、Xは、UまたはGであり、Xは、Cまたはdelであり、Xは、GまたはUであり、Xは、GまたはUであり、Xは、AまたはGであり、X10は、GまたはCであり、X11は、G、C、AまたはUであり、X12は、GまたはAであり、X13は、CまたはUであり、X14は、G、C、AまたはUであり、X15は、GまたはCであり、X16は、UまたはCであり、X17は、AまたはCであり、X18は、GまたはCであり、X19は、A、GまたはUであり、X20は、UまたはCであり、X21は、CまたはGである。
【0064】
特定の実施形態では、O-tRNAは3位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは4位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは5位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは6位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは7位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは46位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは48位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは50位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは51位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは53位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは63位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは64位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは65位にシトシンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは66位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは67位にアデニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは68位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは69位にアデニンまたはウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは70位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは71位にグアニンを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、3位にシトシン、6位にシトシン、及び7位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、46位にグアニン、及び48位にウラシルを含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、67位にアデニン、68位にグアニン、及び71位にグアニンを含む。
【0065】
特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の52位にアデニン、核酸の62位にウラシルを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の52位にグアニン、核酸の62位にシトシンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の51位にグアニン、核酸の65位にシトシンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の3位及び6位にシトシン、核酸の7位にウラシル、核酸の66位にアデニン、及び核酸の67位及び70位にグアニンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の5位及び7位にウラシル、核酸の67位及び69位にアデニンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の4位及び67位にアデニン、核酸の7位及び70位にウラシル、核酸の6位にシトシン、及び核酸の68位にグアニンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の5位にアデニン、核酸の69位及び70位にウラシルを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の48位にウラシルを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の51位にグアニンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の46位にグアニン、核酸の48位にウラシルを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の51位にグアニン、核酸の48位にウラシルを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の46位及び51位にグアニン、核酸の48位にウラシルを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。
【0066】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるO-tRNAは、野生型M.ヤンナスキイのチロシル-tRNA(配列番号32)と比較して1つ以上の突然変異を含むか、または、F12 O-tRNA配列(配列番号1)、F13 O-tRNA配列(配列番号37)、またはF14 O-tRNA配列(配列番号38)と比較して1つ以上の変異を含む。例えば、特定の実施形態では、O-tRNAのTループのステムに存在するヌクレオチドが変異しており、例えば、G53とC63が、A52とU62に変異しており、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAのTループのステムに存在する対合ヌクレオチド、すなわち、C52とG64、またはU52とA64、またはA52とU64が、G52とC62に変異しており、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAのTループのステムに存在するヌクレオチド、すなわち、C51とG65が、G51とC65に変異しており、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAのアクセプターステムのステムに存在するヌクレオチド、すなわち、G3、G6、G7、C67、C68及びC71が、C3、C6、U7、A66、G67及びG70に変異しており、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAのアクセプターステムのステムに存在するヌクレオチド、すなわち、C5、G7、C67及びG69が、U5、U7、A67及びA69に変異しており、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAのアクセプターステムのステムに存在するヌクレオチド、すなわち、G4、G6、G7、C67、C68及びC70が、A4、C6、U7、A67、G68及びU70に変異しており、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAのアクセプターステムのステムに存在するヌクレオチド、すなわち、C5、G69及びC70が、A5、U69及びU70に変異しており、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAの可変ループに存在するヌクレオチド、すなわち、G48が、U48に変異しており、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、可変ループに存在するヌクレオチド、すなわち、C51が、G51に変異しており、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、可変ループに存在するヌクレオチド、すなわち、U46及びG48が、G46及びU48に変異しており、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、可変ループに存在するヌクレオチド、すなわち、G48及びC51が、U48及びG51に変異しており、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、可変ループに存在するヌクレオチド、すなわち、U46、G48、及びC51が、G46、U48、及びG51に変異している。
【0067】
特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号2~16のいずれか1つに記載の配列からなる核酸配列を含む。
【0068】
tRNAは、化学的または酵素的アミノアシル化を含むがこれらに限定されない任意の方法または技術によって所望のアミノ酸でアミノアシル化され得る。アミノアシル化は、アミノアシルtRNA合成酵素によって、またはリボザイムを含むがこれに限定されない他の酵素分子によって行われ得る。「リボザイム」という用語は、「触媒RNA」と同義である。したがって、特定の実施形態では、O-tRNAは、化学的にアミノアシル化される。特定の実施形態では、O-tRNAは、酵素的にアミノアシル化される。特定の実施形態では、O-tRNAは、リボザイムによって酵素的にアミノアシル化される。
【0069】
本明細書に記載されるO-tRNAは、さまざまな生物、例えば非脊椎動物、例えば、原核生物(例えば、大腸菌、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)など)、または古細菌、または例えば脊椎動物に由来するものであってよい。特定の実施形態では、O-tRNAは、古細菌tRNAに由来する。特定の実施形態では、O-tRNAは、メタノコックス・ヤンナスキイのtRNAに由来する。
【0070】
一態様では、O-tRNAは、セレクターコドンと対合するアンチコドンを有する。特定の実施形態では、セレクターコドンはアンバー終止コドン(TAG)であり、TAGコドンにおけるnsAAの組み込みを可能とする。TAGコドンは本来、翻訳終結因子I(タンパク質合成を終結させる)による認識を通じて終止コドンとして機能するため、nsAAの組み込みとタンパク質合成の終結との間で競合が起こる。
【0071】
OTSの機能は、アンバーコドンにおけるnsAAの組み込みと競合する翻訳終結因子Iの機能をノックアウトまたは低下させること、OTS tRNAをより効果的に適合させるようにタンパク質伸長因子を改変すること、及びOTS指向性進化の新しい方法によってさらに改善することができる。したがって、特定の実施形態では、OTSは、他の点では同一である野生型細胞と比較して、翻訳終結因子1の発現が減少している(例えば、約15~50%少ない、約25~75%少ない、約50~100%少ない、または約75~100%少ない)。特定の実施形態では、OTSは、翻訳終結因子Iを有さない。
【0072】
特定の実施形態では、O-tRNAは、細胞内で発現される際に転写後修飾される。
【0073】
直交性アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)
本明細書では、直交性tRNAをnsAAでアミノアシル化する直交性アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)について記載する。特定の実施形態では、O-RSは、メタノコックス・ヤンナスキイのチロシル-tRNA合成酵素に由来する。特定の実施形態では、O-RSは、配列番号35または39に示されるアミノ酸配列によってコードされる。特定の実施形態では、O-RSは、配列番号35または39に記載の配列からなるアミノ酸配列を含む。
【0074】
特定の実施形態では、O-RSは、nsAAでO-tRNAを選択的にアミノアシル化する。「選択的にアミノアシル化する」という用語は、O-RSが天然tRNAをアミノアシル化する場合と比較して、O-RSが選択されたアミノ酸、例えばnsAAで、O-tRNAをアミノアシル化する効率、例えば約70%の効率、約75%の効率、約80%の効率、約85%の効率、約90%の効率、約95%の効率、または約99%以上の効率を指す。特定の実施形態では、効率は、平均リードスルー効率「RRE」によって決定される。特定の実施形態では、TAGコドンの相対リードスルー効率(RRE)は、mcherryTAGアッセイプラスミドのGFP/RFP蛍光比をmcherryTAC対照プラスミドのGFP/RFP蛍光比で割ったものである。
【0075】
特定の実施形態では、その後、nsAAは、高い忠実度、例えば、特定のセレクターコドンについて約70%を超える忠実度、特定のセレクターコドンについて約75%を超える忠実度、特定のセレクターコドンについて約80%を超える忠実度、特定のセレクターコドンについて約85%を超える忠実度、特定のセレクターコドンについて約90%を超える忠実度、特定のセレクターコドンについて約95%を超える忠実度、または特定のセレクターコドンについて約99%を超える忠実度で、成長中のポリペプチド鎖に組み込まれる。特定の実施形態では、忠実度は、平均最大誤組み込み頻度「MMF」によって決定される。特定の実施形態では、最大誤組み込み頻度(MMF)は、nsAAが増殖培地に添加されなかった場合のRREを、nsAAが存在する場合のRREで割ることによって計算される。
【0076】
本明細書に記載されるO-RSは、さまざまな生物、例えば非脊椎動物、例えば、原核生物(例えば、大腸菌、バチルス・ステアロサーモフィルスなど)、または古細菌、または例えば脊椎動物に由来するものであってよい。特定の実施形態では、O-RSは古細菌メタノコックス・ヤンナスキイに由来する。
【0077】
特定の実施形態では、O-RSは、天然アミノ酸と比較して、nsAAに対して1つ以上の改善または増強された酵素特性を有する。例えば、天然アミノ酸と比較した場合のnsAAの改善または増強された特性には、例えば、より高いKm、より低いKm、より高いkcat、より低いkcat、より低いkcat/km、より高いkcat/kmなどのいずれかが含まれる。
【0078】
直交翻訳系(OTS)
本開示では、本明細書に記載の直交アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)及び直交性tRNA(O-tRNA)を含む直交翻訳系(OTS)について記載する。特定の実施形態では、OTSは、本明細書に記載のnsAAをさらに含む。場合により、nsAAはOTSに外因的に提供される。あるいは、例えば、OTSが細胞である場合、非標準アミノ酸はOTSによって生合成され得る。特定の実施形態では、OTSは、変異体EF-Tuをさらに含む。特定の実施形態では、OTSの翻訳終結因子Iが除去または改変されているか、または翻訳終結因子Iの発現が減少している。特定の実施形態では、OTSは、翻訳時にOTS tRNAをより効果的に適合させる(例えば、有効性及び/または忠実度を高める)ために操作または改変されたタンパク質伸長因子を含む。特定の実施形態では、修飾された伸長因子は、Haruna K.et al.Nucleic Acids Research,Vol 42,Issue 15,2 Sept 2014,9976-9983に記載されるようなEF-Tuである。
【0079】
O-tRNA/O-RSペアの個々の構成成分は、同じ生物に由来する場合もあれば、異なる生物に由来する場合もある。一実施形態では、O-tRNA/O-RSペアは同じ生物に由来する。あるいは、O-tRNA/O-RSペアのO-tRNAとO-RSは異なる生物に由来する。特定の実施形態では、O-tRNA及びO-RSは古細菌に由来する。特定の実施形態では、O-tRNA及びO-RSはM.ヤンナスキイに由来する。
【0080】
特定の実施形態では、本開示は、直交性アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)と、直交性tRNA(O-tRNA)と、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸と、場合により本明細書に記載のnsAAと、を含む細胞を提供する。一態様では、ポリヌクレオチドは、O-tRNAによって認識される少なくとも1つのセレクターコドンを含む。一態様では、O-RSは、細胞内のnsAAを用いて直交性tRNA(O-tRNA)を選択的にアミノアシル化し、細胞は、nsAAの非存在下では、nsAAの存在下でのポリペプチドの収率の例えば30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、2.5%未満、1%未満などの収率で目的のポリペプチドを生成する。
【0081】
翻訳系は細胞系でも無細胞系でもよく、原核生物のものでも真核生物のものでもよい。細胞翻訳系には、これらに限定されるものではないが、所望の核酸配列をmRNAに転写し、mRNAを翻訳することができる、透過処理細胞または細胞培養物などの全細胞調製物が含まれる。無細胞翻訳系は市販されており、多くの異なるタイプや系がよく知られている。
【0082】
特定の実施形態では、本開示は、直交性アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)と、直交性tRNA(O-tRNA)と、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸と、nsAAと、を含む無細胞OTSを提供する。
【0083】
無細胞系の例としては、これらに限定されるものではないが、大腸菌ライセートなどの原核生物ライセート、小麦胚芽抽出物、昆虫細胞ライセート、ウサギ網状赤血球ライセート、ウサギ卵母細胞ライセート、及びヒト細胞ライセートなどの真核生物ライセートが挙げられる。得られるタンパク質がグリコシル化、リン酸化、またはその他の修飾を受ける場合、そのような修飾の多くは真核生物系でのみ可能であることから、真核生物の抽出物またはライセートが好ましい場合がある。これらの抽出物及びライセートの一部は市販されている。分泌タンパク質の翻訳に有用である、ミクロソーム膜を含むイヌ膵臓抽出物のような膜抽出物も入手可能である。
【0084】
再構成した翻訳系を使用することもできる。精製された翻訳因子の混合物、ならびにライセートの組み合わせ、または開始因子-1(IF-1)、IF-2、IF-3(CまたはB)、伸長因子T(EF-Tu)、または終結因子などの精製された翻訳因子を添加したライセートも、mRNAをタンパク質に翻訳するうえで効果的に使用されている。
【0085】
無細胞系はまた、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.editors,Wiley Interscience,1993)に記載される、DNAが系に導入されてmRNAに転写され、mRNAが翻訳されるような転写/翻訳系と組み合わせることもできる。真核生物の転写系で転写されるRNAは、核内不均一RNA(hnRNA)または5’末端キャップ(7-メチルグアノシン)及び3’末端ポリAテールを有する成熟mRNAの形態を有することがあり、これは特定の翻訳系では利点となり得る。例えば、キャップが付加されたmRNAは、網状赤血球ライセート系で高効率で翻訳される。
【0086】
さらに、複合転写/翻訳系を使用することもできる。複合転写/翻訳系は、導入DNAが対応するmRNAに転写されることを可能とし、このmRNAが反応成分によって翻訳される。例えば、リボソーム及び翻訳因子などの翻訳成分を与えるための大腸菌ライセートを含む混合物を含む系を使用することができる。
【0087】
非標準アミノ酸(nsAA)
非標準アミノ酸(nsAA)は、本明細書に記載の直交性翻訳系によってポリペプチドに組み込まれる。αアミノ酸の一般構造は式Iで示される。
【0088】
非標準アミノ酸は、天然に存在しないアミノ酸であり、式Iを有する任意の構造を含み、ここで、R基は、非標準アミノ酸を天然アミノ酸から区別する、20種類の天然アミノ酸において使用される置換基以外の任意の置換基である。特定の実施形態では、式IのRは、アルキル-、アリール-、アシル-、ケト-、アジド-、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミンなど、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0089】
他の非標準アミノ酸としては、これらに限定されるものではないが、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、新規官能基を有するアミノ酸、他の分子と共有結合または非共有結合を介して相互作用するアミノ酸、光ケージドアミノ酸、光異性化可能なアミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、糖置換セリンなどのグリコシル化アミノ酸、他の炭水化物修飾アミノ酸、ケト含有アミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能なアミノ酸、光切断可能なアミノ酸、約5個を超える、または約10個を超える炭素を含む(ただし、これらに限定されない)、天然アミノ酸と比較してより長い側鎖を有するアミノ酸、炭素結合糖含有アミノ酸、レドックス活性アミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、及び1つ以上の毒性部分を含むアミノ酸が挙げられる。
【0090】
特定の実施形態では、非標準アミノ酸は、チロシン、グルタミン、フェニルアラニンなどの天然アミノ酸の誘導体である。特定の実施形態では、非標準アミノ酸はチロシン類似体である。特定の実施形態では、チロシン類似体には、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンが含まれ、置換チロシンは、ケト基(アセチル基を含むがそれに限定されない)、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、分枝炭化水素、飽和または不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基などを含む。複数置換されたアリール環も想到される。グルタミン類似体としては、これらに限定されるものではないが、α-ヒドロキシ誘導体、γ-置換誘導体、環状誘導体、及びアミド置換グルタミン誘導体が挙げられる。フェニルアラニン類似体の例としては、これらに限定されるものではないが、パラ置換フェニルアラニン、オルト置換フェニルアラニン、及びメタ置換フェニルアラニンが挙げられ、置換基は、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基(アセチル基を含むがそれに限定されない)などを含む。
【0091】
非標準アミノ酸の具体例としては、これらに限定されるものではないが、p-アセチル-L-フェニルアラニン(式II)、p-アジド-L-フェニルアラニン(式III)、p-プロパルギルフェニルアラニン(式IV)、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチルフェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcB-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、及びイソプロピル-L-フェニルアラニンが挙げられる。
【0092】
特定の実施形態では、非標準アミノ酸はO-メチル-L-チロシンである。特定の実施形態では、非標準アミノ酸はL-3-(2-ナフチル)アラニンである。特定の実施形態では、非標準アミノ酸は、アミノ-、イソプロピル-、またはO-アリル含有フェニルアラニン類似体である。特定の実施形態では、非標準アミノ酸はアセチルフェニルアラニン(AcF)である。特定の実施形態では、非標準アミノ酸は、4-アジド-フェニルアラニン(AzF)を含む。特定の実施形態では、非標準アミノ酸は4-プロパルギルオキシフェニルアラニン(PaF)である。特定の実施形態では、非標準アミノ酸は4-アミノフェニルアラニン(AmF)である。
【0093】
核酸
本開示は、本明細書に記載のO-tRNAの核酸配列を含む、及び/またはO-RSをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットを含む。本開示は、本明細書に記載されるO-tRNA及び/またはO-RSに相補的な核酸配列も含む。
【0094】
さらに、本開示は、1つ以上のセレクターコドンを含む、本明細書に記載の目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、核酸は、少なくとも1つのセレクターコドン、少なくとも2つのセレクターコドン、少なくとも3つのセレクターコドン、少なくとも4つのセレクターコドン、少なくとも5つのセレクターコドン、少なくとも6つのセレクターコドン、少なくとも7つのセレクターコドン、少なくとも8つのセレクターコドン、少なくとも9つのセレクターコドン、またはさらには10以上のセレクターコドンを含む。
【0095】
一態様では、本明細書において、配列番号1に記載の配列と少なくとも85%同一の核酸配列を含み、かつO-tRNAの核酸の16位に位置するシトシンの欠失を含む、ポリヌクレオチドであって、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである、ポリヌクレオチドが記載される。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号1に記載の配列と、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一である。一実施形態では、核酸配列は、核酸の52位にアデニン、及び核酸の62位にチミンまたはウラシルを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の配列からなる核酸配列を含む。一実施形態では、核酸配列は、アミノ酸の3位及び6位にシトシン、核酸の7位にチミンまたはウラシル、核酸の66位にアデノシン、及び核酸の67位及び70位にグアニンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号3に記載の配列からなる核酸配列を含む。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号4に記載の配列からなる核酸配列を含む。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、核酸の13~22位に核酸配列CAGAGGGCAGを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2~16のいずれか1つに記載の配列からなる核酸配列を含む。
【0096】
一態様では、本明細書において、配列番号2~31のいずれか1つに記載の核酸配列を含むO-tRNAの核酸配列を含むポリヌクレオチドについて記載する。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2~31のいずれか1つに記載の核酸配列を含むO-tRNAに相補的な核酸配列をさらに含む。
【0097】
一態様では、本明細書において、配列番号35または39に記載のアミノ酸配列を含むO-RSをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドについて記載する。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号35または39に記載のアミノ酸配列を含むO-RSをコードする核酸配列に相補的な核酸配列をさらに含む。
【0098】
一態様では、本明細書において、配列番号2~31のいずれか1つに記載の核酸配列を含むO-tRNAの核酸配列と、配列番号35または39に記載のアミノ酸配列を含むO-RSをコードする核酸配列とを含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットが記載される。
【0099】
ベクター
特定の実施形態では、ベクター(例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスなど)は、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。特定の実施形態では、発現ベクターは、本明細書に記載されるポリヌクレオチドの1つ以上と機能的に連結されたプロモーターを含む。特定の実施形態では、細胞は、本明細書に開示されるポリヌクレオチドを含むベクターを含む。
【0100】
細胞
特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載のO-tRNA、O-RS、nsAA、及び/またはOTSを含む細胞を含む。本明細書に記載される細胞には、例えば、原核細胞(例えば、大腸菌)、非原核細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞などのいずれかが含まれる。特定の実施形態では、細胞は、EF-Tuの変異をコードする。特定の実施形態では、細胞は、翻訳終結因子1の発現が減少している以外は同一の野生型細胞と比較して、翻訳終結因子1の発現が減少している。
【0101】
特定の実施形態では、本明細書に記載のO-tRNA、O-RS、nsAA、及び/またはOTSを含む細胞は、参照によって本明細書にそれらの全容を援用するところの米国特許第9,617,335号、米国特許第10,465,197号、米国特許第10,604,761号、及び米国特許出願第15/261,984号、米国特許出願第16/871,736号に記載されるような細胞である。
【0102】
特定の態様では、本明細書において、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を含む細胞であって、ポリヌクレオチドが、O-tRNAによって認識されるセレクターコドンを含む、細胞について記載する。一態様では、nsAAを含む目的のポリペプチドの収率は、ポリヌクレオチドがセレクターコドンを欠いている細胞から天然に存在する目的のポリペプチドについて得られる収率の例えば少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、50%またはそれ以上である。別の態様では、細胞は、nsAAの非存在下で目的のポリペプチドを、nsAAの存在下でのポリペプチドの収率の例えば50%未満、35%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、2.5%未満などの収率で産生する。
【0103】
直交性tRNA(O-tRNA)を含む細胞を含む組成物も本発明の特徴の1つである。一般的に、O-tRNAは、インビボでO-tRNAによって認識される選択コドンを含むポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質へのnsAAの組み込みを媒介する。一実施形態では、O-tRNAは、タンパク質へのnsAAの組み込みを、配列番号65に記載のポリヌクレオチド配列を含む、またはそのポリヌクレオチド配列から細胞内でプロセシングされるtRNAの効率の例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはさらには99%以上の効率で媒介する。別の実施形態では、O-tRNAは、配列番号65に記載のポリヌクレオチド配列、またはその保存的バリエーションを含むか、またはそれからプロセシングされる。さらに別の実施形態では、O-tRNAは、再使用可能なO-tRNAを含む。
【0104】
特定の実施形態では、本明細書に記載の細胞は、有用な大量のnsAAを含むタンパク質を合成する能力を有する。例えば、nsAAを含むタンパク質は、細胞抽出物、緩衝液、薬学的に許容される賦形剤及び/またはこれらに類するもので、例えば、少なくとも10μg/リットル、少なくとも50μg/リットル、少なくとも75μg/リットル、少なくとも100μg/リットル、少なくとも200μg/リットル、少なくとも250μg/リットル、または少なくとも500μg/リットル以上のタンパク質の濃度で産生させることができる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、例えば、少なくとも10μg、少なくとも50μg、少なくとも75μg、少なくとも100μg、少なくとも200μg、少なくとも250μg、または少なくとも500μg以上の、nsAAを含むタンパク質を含む。
【0105】
組換え宿主細胞株が確立された(すなわち、O-tRNA及び/またはO-RTのポリヌクレオチド配列を含む1つ以上の発現ベクターが宿主細胞に導入され、適切な発現コンストラクトを有する宿主細胞が単離された)時点で、組換え宿主細胞株を目的のポリペプチドの産生に適切な条件下で培養する。当業者には明らかなように、組換え宿主細胞株の培養方法は、使用される発現コンストラクトの性質及び宿主細胞の種類に依存する。組換え宿主細胞は、バッチ式または連続式で培養することができ、細胞の回収(目的のポリペプチドが細胞内に蓄積する場合)、またはバッチ式もしくは連続式のいずれかで培養上清の回収のいずれかを行う。原核生物宿主細胞での生産の場合、バッチ培養と細胞回収を行うことができる。特定の実施形態では、流加発酵培養条件が使用される。
【0106】
少なくとも1つのnsAAを含むポリペプチド
少なくとも1つのnsAAを含むタンパク質(または目的のポリペプチド)も本明細書に開示される。特定の実施形態では、少なくとも1つのnsAAを含むタンパク質は、少なくとも1つの翻訳後修飾を含む。一実施形態では、少なくとも1つの翻訳後修飾は、第1の反応基を含む少なくとも1つのnsAAへの[3+2]環化付加反応による第2の反応基を含む分子(例えば、色素、ポリマー、例えば、ポリエチレングリコールの誘導体、光架橋剤、細胞傷害性化合物、アフィニティー標識、ビオチンの誘導体、樹脂、第2のタンパク質またはポリペプチド、金属キレート剤、補因子、脂肪酸、炭水化物、ポリヌクレオチド(例えば、DNA、RNA)など)の結合を含む。例えば、第1の反応基はアルキニル部分(例えば、nsAAであるp-プロパルギルオキシフェニルアラニンの)(この基はアセチレン部分と呼ばれる場合もある)であり、第2の反応基はアジド部分である。別の例では、第1の反応基はアジド部分(例えば、nsAAであるp-アジド-L-フェニルアラニンの)であり、第2の反応基はアルキニル部分である。特定の実施形態では、本発明のタンパク質は、少なくとも1つの翻訳後修飾を含む少なくとも1つのnsAA(例えばケトnsAA)を含み、少なくとも1つの翻訳後修飾は糖部分を含む。特定の実施形態では、翻訳後修飾は、細胞内でインビボで行われる。したがって、特定の実施形態では、産生される非標準アミノ酸を含むタンパク質(複数可)は、細胞依存的にプロセシング及び修飾される。これにより、細胞によって安定的にフォールディングされ、グリコシル化され、または他の形で修飾されたタンパク質の産生が可能となる。
【0107】
特定の実施形態では、タンパク質は、細胞によってインビボで行われる少なくとも1つの翻訳後修飾を含み、翻訳後修飾は原核細胞によって行われない。翻訳後修飾の例としては、これらに限定されるものではないが、アセチル化、アシル化、脂質修飾、パルミトイル化、パルミチン酸付加、リン酸化、糖脂質結合修飾などが挙げられる。一実施形態では、翻訳後修飾は、GlcNAc-アスパラギン結合によるアスパラギンへのオリゴ糖の結合を含む(例えば、オリゴ糖が(GlcNAc-Man)-Man-GlcNAc-GlcNAcなどを含む場合)。別の実施形態では、翻訳後修飾は、GalNAc-セリン、GalNAc-スレオニン、GlcNAc-セリン、またはGlcNAc-スレオニン結合によるセリンまたはスレオニンへのオリゴ糖(例えば、Gal-GalNAc、Gal-GlcNAcなど)の結合を含む。特定の実施形態では、本発明のタンパク質またはポリペプチドは、分泌配列または局在化配列、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジンタグ、GST融合体及び/またはこれらに類するものを含むことができる。
【0108】
一般的には、タンパク質は、例えば、利用可能な任意のタンパク質(例えば、治療用タンパク質、診断用タンパク質、工業用酵素、またはそれらの一部、及び/またはそれらに類するもの)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、さらには少なくとも99%以上同一であり、これらのタンパク質は1つ以上のnsAAを含む。一実施形態では、本明細書において、少なくとも1つのnsAAを含む目的のタンパク質またはポリペプチドと、賦形剤(例えば、緩衝液、薬学的に許容される賦形剤など)とを含む組成物が本明細書に開示される。
【0109】
目的のタンパク質(またはポリペプチド)の例としては、これらに限定されるものではないが、例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント、サイトカイン、成長因子、成長因子受容体、インターフェロン、インターロイキン、炎症性分子、がん遺伝子産物、ペプチドホルモン、シグナル伝達分子、ステロイドホルモン受容体、転写調節タンパク質(例えば、転写活性化タンパク質(GAL4など)、または転写抑制タンパク質など)またはそれらの部分が挙げられる。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、治療用タンパク質、診断用タンパク質、工業用酵素、またはそれらの部分(複数可)を含む。
【0110】
一実施形態では、本明細書に記載の方法によって生産される目的のタンパク質は、1つ以上のnsAAによってさらに修飾される。例えば、nsAAは、例えば、求核求電子反応、[3+2]環化付加反応などにより修飾することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法によって生産されるタンパク質は、少なくとも1つの翻訳後修飾(例えば、N-グリコシル化、O-グリコシル化、アセチル化、アシル化、脂質修飾、パルミトイル化、パルミチン酸付加、リン酸化、糖脂質結合修飾など)によりインビボで修飾される。
【0111】
一態様では、目的のタンパク質またはポリペプチド(またはその部分)は、核酸によってコードされる。一般的に、核酸は、少なくとも1つのセレクターコドン、少なくとも2つのセレクターコドン、少なくとも3つのセレクターコドン、少なくとも4つのセレクターコドン、少なくとも5つのセレクターコドン、少なくとも6つのセレクターコドン、少なくとも7つのセレクターコドン、少なくとも8つのセレクターコドン、少なくとも9つのセレクターコドン、またはさらには10以上のセレクターコドンを含む。
【0112】
キット
キットも本開示の特徴の1つである。例えば、少なくとも1つのnsAAを含むタンパク質を生産するためのキットが提供される。特定の実施形態では、キットは、O-tRNAまたはO-tRNAをコードするもしくはO-tRNAを含むポリヌクレオチド配列、及び/またはO-RSもしくはO-RSをコードするポリヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、キットは、O-tRNAを含むポリヌクレオチド配列、及び/またはO-RSもしくはO-RSをコードするポリヌクレオチド配列を含む細胞を含む。特定の実施形態では、細胞は、目的のポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、キットは少なくとも1つのnsAAをさらに含む。特定の実施形態において、キットは、タンパク質を産生するための説明文書をさらに含む。
【0113】
nsAAをポリペプチドの特定の位置に組み込む方法
本明細書には、少なくとも1つの非標準アミノ酸(nsAA)を含むポリペプチドを生産するための方法であって、配列番号1に記載の配列と少なくとも85%同一の核酸配列を含み、かつO-tRNAの核酸の16位に位置するシトシンの欠失を含む、O-tRNAであって、核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものであり、O-tRNAが、O-RSによって少なくとも1つのnsAAでアミノアシル化され得る、O-tRNAを、細胞内で発現させる工程を含む、方法が含まれる。
【0114】
特定の態様では、少なくとも1つの非標準アミノ酸(nsAA)を含むポリペプチドを生産するための方法であって、i)配列番号1に記載の配列と少なくとも85%同一の核酸配列を含み、かつO-tRNAの核酸の16位に位置するシトシンの欠失を含む、O-tRNAであって、核酸位置が、配列番号1に記載の配列に対応するものであり、O-tRNAが、O-RSによって少なくとも1つのnsAAでアミノアシル化され得る、O-tRNAと、ii)nsAAでO-tRNAをアミノアシル化するO-RSと、iii)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、O-tRNAによって認識される少なくとも1つのセレクターコドンを含むポリヌクレオチドと、を提供する工程を含む、方法について記載する。
【0115】
特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号1に記載の配列と、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも98.7%同一である。
【0116】
特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の53位にアデニンを、核酸の63位にウラシルを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号2に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の3位及び6位にシトシン、核酸の7位にウラシル、核酸の67位にアデノシン、及び核酸の68位及び71位にグアニンを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号3に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号4に記載の配列からなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、O-tRNAは、核酸の13~23位に配列CAG-AGGGCAGを含み、核酸位置は、配列番号1に記載の配列に対応するものである。特定の実施形態では、O-tRNAは、配列番号2~16のいずれか1つに記載の核酸配列を含む。
【0117】
特定の実施形態では、方法は、細胞内で本明細書に記載のO-RSを発現させることをさらに含む。
【0118】
特定の実施形態では、目的のタンパク質またはポリペプチド(またはその部分)は、少なくとも1つのnsAA、少なくとも2つのnsAA、少なくとも3つのnsAA、少なくとも4つのnsAA、少なくとも5つのnsAA、少なくとも6つのnsAA、少なくとも7つのnsAA、少なくとも8つのnsAA、少なくとも9つのnsAA、または10以上のnsAAを含む。
【0119】
本開示はまた、少なくとも1つのnsAAを含む少なくとも1つの目的のタンパク質を細胞内で産生するための方法も提供する。方法は、例えば、少なくとも1つのセレクターコドンを含みかつタンパク質をコードする核酸を含む細胞を、適切な培地中で増殖させる工程を含む。
【0120】
一実施形態では、方法は、第1の反応基を含むnsAAを目的のタンパク質に組み込む工程と、タンパク質を第2の反応基を含む分子(例えば、色素、ポリマー、例えば、ポリエチレングリコールの誘導体、光架橋剤、細胞傷害性化合物、アフィニティー標識、ビオチンの誘導体、樹脂、第2のタンパク質またはポリペプチド、金属キレート剤、補因子、脂肪酸、炭水化物、ポリヌクレオチド(例えば、DNA、RNAなど)など)と接触させる工程と、をさらに含む。第1の反応基は第2の反応基と反応し、[3+2]環化付加反応によりnsAAに分子を結合する。一実施形態では、第1の反応基はアルキニルまたはアジド部分であり、第2の反応基はアジドまたはアルキニル部分である。例えば、第1の反応基はアルキニル部分(例えば、nsAAであるp-プロパルギルオキシフェニルアラニンの)であり、第2の反応基はアジド部分である。別の例では、第1の反応基はアジド部分(例えば、nsAAであるp-アジド-L-フェニルアラニンの)であり、第2の反応基はアルキニル部分である。
【0121】
本発明はまた、原核生物(例えば、真正細菌)または真核生物(例えば、酵母、原生哺乳動物、植物、または昆虫)の翻訳系で少なくとも1つのタンパク質を産生する方法を提供する。特定の実施形態では、本発明のtRNAを含む細胞、例えば大腸菌細胞は、そのような翻訳系を含む。翻訳系に少なくとも1つの非標準アミノ酸が与えられることにより、少なくとも1つの非標準アミノ酸を含む少なくとも1つのタンパク質が産生される。本明細書に記載の組成物及び方法は、非標準アミノ酸とともに使用することで、例えば、幅広い側鎖のいずれかを使用してタンパク質に特定の分光学的、化学的、または構造的特性を与えることができる。これらの組成物及び方法は、セレクターコドン、例えば、終止コドン、4塩基コドンなどを介した非標準アミノ酸の部位特異的組み込みに有用である。翻訳系には、翻訳系内で機能し、少なくとも1つのセレクターコドンを認識する直交性tRNA(O-tRNA)、及びO-tRNAを翻訳系内の少なくとも1つの非標準アミノ酸で選択的にアミノアシル化する直交性アミノアシルtRNA合成酵素(O-RS)も与えられる。
【実施例
【0122】
以下は、本発明を実施するための具体的な実施形態の例である。これらの例はあくまで例示の目的で示されるものにすぎず、本発明の範囲をいかなる意味においても限定しようとするものではない。用いられる数値(例えば、量、温度など)に関して精度を確実とするべく努力に努めてはいるが、ある程度の実験的誤差及び偏差は無論のこと許容されなければならない。
【0123】
本発明の実施は、特に断らない限り、当業者の技術の範囲内のタンパク質化学、生化学、組換えDNA手法、及び薬理学の従来の方法を用いる。かかる手法は、文献に十分に説明されている(例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照されたい)。
【0124】
実施例1:O-RSの指向性進化のための選択スキーム
本実施例では、タンパク質へのnsAAの組み込みは、1)適切なnsAAと、2)アンバーコドンを認識するように改変されたアンチコドンを有する、天然tRNA分子と直交するtRNA分子(すなわち、このtRNAは細胞内の天然tRNA合成酵素によって容易にアミノアシル化されない)と、3)nsAAを直交性tRNA上にアミノアシル化できる(かつnsAAを天然tRNA上には容易にアミノアシル化しない)直交性アミノアシルtRNA合成酵素という3つの構成成分を利用する。以下のセクションでは、大腸菌SoluPro(登録商標)のアンバーコドン(TAG)における安定したnsAAの組み込みに適した系の同定について説明する。
【0125】
候補アミノ酸と直交性tRNA/アミノアシルtRNA合成酵素のペアを、さらなる改変の開始点として機能するように選択した。
【0126】
アミノ酸の選択
パラ-アセチル-L-フェニルアラニン(pAcF)及びパラ-アジド-L-フェニルアラニン(pAzF)の2つのnsAAが候補として選択された。これらのアミノ酸は、1)市販されており、2)大腸菌に対して比較的非毒性であり、3)M.ヤンナスキイのtRNA合成酵素/tRNAペア(後述)と適合性があり、4)一旦タンパク質に組み込まれると、化学選択的ライゲーション反応を促進して、比較的穏やかな条件下でタンパク質に新たな部分を結合させることができるため、魅力的であった。コストが比較的低いことから、pAcFについてさらに研究を進めた。
【0127】
直交性tRNA/アミノアシルtRNA合成酵素ペア
M.ヤンナスキイのチロシル-tRNA合成酵素(MjtRNATyr CUA/MjYRS)ペアは、大腸菌において非標準アミノ酸を組み込む直交性翻訳系(OTS)の進化の出発点として最も広く使用されてきた。MjYRSは、いずれの内因性大腸菌tRNAもチロシンでアミノアシル化しないが、変異型チロシンアンバーサプレッサー(mutRNACUA)をアミノアシル化する。ハイスループットクローニング、FACS分別法、NGS分析、インビトロ進化、合成生物学、構造生物学、人工知能などの相乗的アプローチの組み合わせを適用することにより、MjtRNATyr CUA/MjYRSペアの一連のバリアントが、タンパク質への非標準アミノ酸の組み込み活性が大幅に高いものとして同定されている。実施例2で、候補MjtRNATyr CUA/MjYRSペアの組み込み効率を評価した。
【0128】
Mjチロシル-tRNA合成酵素は、対応するMjチロシル-tRNAに存在するアンチコドンと相互作用する。これらの系ではアンチコドンは、tRNAを天然のチロシンコドン(TAC)ではなくアンバーコドン(TAG)に誘導するように変異していることから、修飾はアミノアシルtRNA合成酵素とtRNAとの相互作用に影響し、tRNAチャージの効率が低下する。M.ヤンナスキイのアミノアシルtRNA合成酵素/tRNA複合体の結晶学的及び関連する生化学的研究により、tRNA合成酵素と変異型tRNAとの間の相互作用を大きく回復できる変異(D286R)が同定されている。D286R変異及びI15V変異を含む新たなE9合成酵素が、アンバーコドンにおけるnsAAの組み込みに効率的なtRNA合成酵素をもたらすことが見出された。
【0129】
最適なtRNAの進化
M.ヤンナスキイのチロシルtRNAから出発し、天然のCUAアンチコドンのスワップアウト(tRNAがTAGコドンと対合できるようにするため)、及び大腸菌内でMjチロシル-tRNAに高い直交性を与える、インビボスクリーニングで以前に同定されている5つの変異など、いくつかの特定の修飾を導入した。Mjチロシル-tRNAを大腸菌で使用する場合の課題は、これがリボソームに輸送されてタンパク質合成に利用されるためには、大腸菌の天然の伸長因子Tu(EF-Tu)と効率的に相互作用する必要があることである。大腸菌tRNAと古細菌tRNAとの間には大きな配列の違いが存在するため、Mjチロシル-tRNAと大腸菌EF-Tuの間の相互作用はさほど効率的ではない。この効率を高めるため、EF-Tu4と相互作用することが知られているヌクレオチドに多様性を組み込んだtRNA配列のライブラリーを生成した(「library_tRNA」配列番号34を参照)。
【0130】
このtRNAライブラリーを、最初に2段階の選択プロセスでスクリーニングした。tRNAライブラリーを、Mj E9_I15V_D286RアミノアシルtRNA合成酵素とともに、クロラムフェニコールアシルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子とウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)遺伝子との融合体を含むプラスミドに導入した。この融合タンパク質は、配列全体にわたって複数のTAGコドンを含んでいる。この融合タンパク質は、ポジティブ/ネガティブ選択カセットとして機能する。CATはクロラムフェニコール耐性タンパク質であり、クロラムフェニコール存在下での生存を可能にし、UPRTは5-フルオロウラシル(5-FU)を細胞を殺す毒性化合物に変換する。細胞をアミノ酸pAcFの非存在下及び5-FUの存在下で培養した。任意のアミノアシルtRNA合成酵素によって任意のアミノ酸をチャージできる(すなわち、完全に直交していない)ライブラリー内の任意のtRNAは、アンバーサプレッション、UPRTの発現、及びその後の細胞死を引き起こす。このようにして、非直交性tRNAをライブラリーから速やかに除去した。生存細胞をアミノ酸pAcF及びクロラムフェニコールの存在下で培養した。この場合、Mj E9_I15V_D286RによってpAcFをチャージできるtRNAは細胞にクロラムフェニコール耐性を与え、生存した。濃縮されたtRNAライブラリーを、Mj E9_I15V_D286RアミノアシルtRNA合成酵素と、アラビノースparaBADプロモーターの制御下にある内部TAGコドンを含むGFP遺伝子とを含む新たなプラスミドにサブクローニングした。誘導時にTAGコドンにpAcFが組み込まれると、蛍光タンパク質が生成された。細胞を分別して、最も効率的なnsAA組み込み体に対応する、集団の最も輝度の高いメンバーを回収した。
【0131】
さらなる検証のために、分別からの個別のtRNAの設計を使用して、pAcFをモデル分子(ハーセプチンまたはTRAST-Fabなど)に組み込んだ。組み込みの成功をSDS-PAGEでモニタリングし、ペプチドマッピングで確認した。これらの結果は、本明細書に記載のtRNAの設計が効率的かつ高い忠実度でnsAAを目的のタンパク質に組み込むことができることを示している。
【0132】
実施例2:候補OTSを使用した振盪フラスコまたは流加発酵条件下でのトラスツズマブのさまざまな戦略的部位へのnsAAの組み込み
生物製剤のnsAA組み込みにおける改変OTSの有用性を調べるために、MjtRNATyr CUA/MjYRSペアの候補バリアントを保有するコンストラクトをトラスツズマブ発現コンストラクトと同時形質転換した。各候補OTSを含む各コンストラクトには、低コピー数の複製起点pACYCとテトラサイクリン耐性カセットが含まれる。O-tRNAの発現は構成的プロモーターplppによって誘導され、rrnB1ターミネーターによって停止されるのに対して、O-RSの発現は構成的プロモーターpglnによって制御され、rrnC1ターミネーターによって停止される。
【0133】
細胞をLB(10g/Lトリプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L NaCl)中で培養した。テトラサイクリン(15μg/mL)、カナマイシン(50μg/mL)、アラビノース(250μM)、プロピオン酸塩(20mM)を必要に応じて加えた。アミノ酸としての4-アセチル-L-フェニルアラニン(A206865)、4-プロパルギルオキシ-L-フェニルアラニン(A721556)、4-アミノ-L-フェニルアラニン水和物(A943099)をAmbeedより購入した。4-アジド-L-フェニルアラニン(909564)はSigma-Aldrichより購入した。L-チロシンのストック溶液をdH2O中、500mMで調製した。4-アセチル-L-フェニルアラニン、4-プロパルギルオキシ-L-フェニルアラニン、4-アミノ-L-フェニルアラニン水和物及び4-アジド-L-フェニルアラニンについては、500mMストック溶液を1M NaOH溶液中で調製した。すべてのアミノ酸ストックを0.22μmフィルターを使用して滅菌した。すべてのnsAAのストック溶液は500倍として調製した。
【0134】
液体培養中に陽性/陰性株を接種するため、バイオセーフティキャビネット内で、血清ピペットを使用して各チューブに5mLのLBブロスを加え、各チューブに5μLの適切な抗生物質を加え、P1000チップを使用して凍結グリセロールストックをスタブ接種した。チップを5mL TB+KANチューブに入れ、3回よく混合した。培養チューブを、270rpmで30℃の振盪インキュベーターに20~24時間入れた。血清学的ピペットを使用して、24-DWプレート(複数可)のウェル当たり3mLの完全発酵生産培地を加えた。0.5mM nsAAを含む完全発酵培地。発酵培地に光学密度=3の培養物200μLを接種し、5回混合した。各プレートをエアロシールで覆い、培養物を270rpmで振盪しながら27℃で24時間インキュベートした。
【0135】
培養物の光学密度を回収時に測定した。インキュベーション後、各試料をインキュベーターから取り出し、氷上に置いた。ODプレートで50倍希釈液を調製した。各ウェルを、誘導プレートの各列につき1列ずつ、196μLのdH2Oで満たした。P-20またはP-10マルチチャンネルピペットを使用して、各誘導ウェルについて4μLの2つのアリコートをODプレートに加えた。ODプレートを、光路長補正とブランク減算の両方をオンにして、OD600プロトコールを使用してSpectraMaxプレートリーダーで測定した。
【0136】
回収時に、1100uLの60%グリセロール及び2200uLの培養物を、最終濃度20%グリセロールとなるように24DWプレートの新しいウェルに加え、混合した。500uLのグリセロール-試料混合物をチューブラック内の0.7mLマトリックスチューブに加えた。回収したグリセロールストックを-80℃で保管した。
【0137】
細胞を下流分析のためにペレット化した。各ライブラリーの残りの培養物を使用して、その後の分析用にチューブに回収した(「プレソート」試料の場合)。細胞ペレット試料をさらに溶解し、ウエスタンブロットによって分析した。より具体的には、各試料に加える溶解バッファー(50mM Tris、200mM NaCl、pH7.4、1%w/vオクチルグルコシド、0.08μL/mL rLysozyme、0.08μL/mLベンゾナーゼヌクレアーゼ)の量を変えることにより、試料をOD10に正規化した。各試料を1時間溶解した。ライセートを3300g、4℃で30分間遠心分離し、上清(可溶性画分)を回収した。可溶性画分を非還元試薬(1×LDS NuPAGE試料バッファー中、10mM IAA)及び還元試薬(1×LDS NuPAGE試料バッファー中、50mM DTT)で処理した。トラスツズマブ及びトラスツズマブFAb標準(Trast Fab標準)を、非還元試薬(1×LDS NuPAGE試料バッファー中、10mM IAA)及び還元試薬(1×LDS NuPAGE試料バッファー中の50mM DTT)の両方で処理した。振盪フラスコ発酵条件下で生成されたさまざまな戦略的部位にnsAAを組み込んだトラスツズマブのProA/PhyTip精製後にSDS-PAGEを行った(図2)。
【0138】
非標準アミノ酸であるパラ-アセチルフェニルアラニンの、トラスツズマブの戦略的部位HC_A122への組み込みの成功を実証するため、標準的なDasboxバイオリアクター発酵条件下でOTSを使用して発酵スケールアップを行った。候補アンバーコドン抑制系を保有するBR7株を、野生型トラスツズマブの産生に関して以前に検証されている最良の遺伝子型をコードするポジティブ対照株BR2と比較して、同等の力価のnsAA組み込みトラスツズマブを産生できるかどうかを確認するために試験した。
【0139】
スケールアップ発酵には以下のプロトコールを使用した。制御設定値、パラメータ設定値、及びバイオリアクタースクリプトを検証した。pH制御を開始させるか、設定値を適正な値に上げた。DO制御、pH制御、撹拌、ガス発生、温度制御、ポンプA~Cを含むすべての制御プロセスがオンになっていて、適切に動作していることを検証した。現在のプロセスパラメータの設定値をすべて検証した。種フラスコと供給物を滅菌層流フードに移した。接種したバイオリアクターごとに、20ゲージ針1本と10mLまたは5mLシリンジ1本を使用した。
【0140】
準備した種培養フラスコごとに、50mL血清ピペット1本、5mL血清ピペット1本、50mLコニカルチューブ1本、及び1.7mL微量遠心管1本を使用した。種培養のOD600を測定し、リアクター内でOD=0.1に達するのに必要な接種材料を計算した。1mLの培養物をフラスコから微量遠心管に移した。種フラスコのODと接種体積を記録した。50mL血清ピペットを使用して、種培養をラベル付きの50mLコニカルバイアルに等分した。
【0141】
以下のプロトコールを使用して装置及びバイオリアクターを接種用に準備した。pHプローブの両側の添加ポートから2個のルアーキャップを取り外した。接種培養物を、リアクターに添加する前にシリンジ中で静かに反転させた。接種培養物を、トリポートチューブまたはゴム製セプタムのいずれかから各バイオリアクター中に一度に1つずつ排出した。バイオリアクターの接種の完了後、直ちにDASware対照上の接種クロックを開始させた。
【0142】
回収時に、下流分析用に細胞をペレット化した。各バイオリアクターの培養物を使用して、その後の分析用にチューブに回収した(「プレソート」試料の場合)。細胞を3300×g、4℃で7分間遠心分離した。これらの細胞ペレット試料を、市販のPhyTipプロトコールを使用してさらに溶解及び精製し、ウエスタンブロットによって分析した。図3に、振盪フラスコ発酵条件下で産生された、S123がp-アセチルフェニルアラニンに置換されたトラスツズマブの、AKTA精製後のSDS-PAGEの結果を示す。
【0143】
これらの結果は、本明細書に記載のアンバーコドン直交性翻訳系を有する細胞が、振盪フラスコ発酵条件下でp-アセチルフェニルアラニンを有する抗体を効率的に産生できることを示している。
【0144】
実施例3:候補OTSの組み込み効率の評価
各直交性翻訳系(OTS)のパフォーマンスは、nsAAの組み込みの効率と精度の点で大きく異なる。これらの主要なパラメータの迅速かつ体系的な比較を可能にするために、アンバー終止コドン(TAG)を再割り当てする大腸菌OTSを特徴付けるためのツールキットを使用した。このツールキットは、目的のnsAAの存在下及び非存在下で効率(すなわち相対リードスルー効率(RRE))及び忠実度(すなわち最大誤組み込み頻度(MMF))を測定することによってOTS性能を評価するものである。TAGコドンの相対リードスルー効率(RRE)は、mcherryTAGアッセイプラスミドのGFP/RFP蛍光比をmcherryTAG対照プラスミドのGFP/RFP蛍光比で割ったものである。効率的なaaRS-tRNAペアでは、培地中にnsAAが存在する場合のRREは、値1に近づくか上回る必要がある。これは、この指標が、チロシンコドンTACと比較してアンバーコドンTAGがどの程度良好に翻訳されるかを反映しているためである。OTSの忠実度を、nsAAが存在する場合と存在しない場合で得られたRRE値を比較することによって評価した。具体的には、(非)忠実度の指標である最大誤組み込み頻度(MMF)を、nsAAが増殖培地に添加されていない場合のRREをnsAAが存在する場合のRREで割ることによって計算する。理想的なOTSのMMF値はゼロであり、nsAAが存在しない限りGFPが生成されないことを反映している。ただし、MMFは忠実度の極めて厳密な尺度である点に留意されたい。一部の改変aaRS/tRNAペアは、十分に高い濃度で提供された場合には主にnsAAを組み込むが、より豊富に存在する場合には代わりに標準アミノ酸でtRNAを非特異的にアミノアシル化することが知られている。
【0145】
各プラスミドは、柔軟なペプチドリンカーを介して単一のリーディングフレーム内に融合されたmRFP1とsfGFPをコードしていた。対照プラスミドmcherryTACでは、リンカーをコードするDNA配列にチロシンコドンTACが含まれていた。アッセイプラスミドmcherryTAGは、OTSによるnsAAの直接組み込みのためにTACをTAGアンバーコドンに変換した単一の点突然変異を除いて同じものであった。この構成では、GFPは焦点となるTAC/TAGコドンのリードスルーを示し、RFPは全体的なタンパク質産生における変動の内部対照としての役割を果たした。
【0146】
mcherryTAC(対照)及びmcherryTAG(アッセイ)プラスミドは、pBR骨格から作製されたものである。このベクターは、カナマイシン耐性カセット、araCリプレッサー遺伝子、及びpBaDプロモーターを含むものである。プラスミド構築は、野生型GFPをpSOLにクローニングし、pBADプロモーターによって制御するpSOL_GFPから始めた。mCherryのコーディング配列を、試験コドンTACまたはTAGを含むリンカー配列がさらに付加及び導入されたPCRプライマーを使用して増幅した。Gibsonアセンブリを使用して、mCherryインサートとpSOL_GFP骨格をアセンブルした。アセンブリ反応物をEPI300 大腸菌(Lucigen)に形質転換し、キットのプラスミドをNGSシークエンシングして検証した。
【0147】
図1に示されるように、各候補OTSを含む各コンストラクトには、低コピー数の複製起点pACYCとテトラサイクリン耐性カセットが含まれた。O-tRNAの発現は構成的プロモーターplppによって誘導され、rrnB1ターミネーターによって停止されたのに対して、O-RSの発現は構成的プロモーターpglnによって制御され、rrnC1ターミネーターによって停止された。wtGFPのコドンN149をアンバーコドンに変異させた。
【0148】
細胞をLB(10g/Lトリプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L NaCl)中で培養した。テトラサイクリン(15μg/mL)、カナマイシン(50μg/mL)、アラビノース(250μM)、プロピオン酸塩(20mM)を必要に応じて加えた。アミノ酸としての4-アセチル-L-フェニルアラニン(A206865)、4-プロパルギルオキシ-L-フェニルアラニン(A721556)、4-アミノ-L-フェニルアラニン水和物(A943099)をAmbeedより購入した。4-アジド-L-フェニルアラニン(909564)はSigma-Aldrichより購入した。L-チロシンのストック溶液をdH2O中、500mMで調製した。4-アセチル-L-フェニルアラニン、4-プロパルギルオキシ-L-フェニルアラニン、4-アミノ-L-フェニルアラニン水和物及び4-アジド-L-フェニルアラニンについては、500mMストックを1M NaOH溶液中で調製した。すべてのアミノ酸ストックを0.22μmフィルターを使用して滅菌した。すべてのnsAAのストック溶液は500倍として調製した。
【0149】
各OTS系は、Golden Gateアセンブリ(New England Biolabs)を使用して、それぞれのO-tRNA変異体をプラスミドにクローニングすることによって構築した。各OTSプラスミドを、mcherryTAC(対照)及びmcherryTAG(アッセイ)プラスミドのいずれかをすでに含み、10%グリセロール洗浄によってエレクトロコンピテントとした大腸菌株EB114に個別に形質転換した。これらのクローン内のaaRS及びtRNA遺伝子は、nsAA組み込み測定キットを使用して試験する前に、Illumina技術を使用してシークエンシングしてOTSカセットに変異が生じていないことを確認した。
【0150】
キットアッセイでは、カナマイシンとテトラサイクリンを加えた50mL三角フラスコ中の10mL LB中の-80℃のグリセロールストックから各株を復活させた。これらの培養物を、24時間にわたってRPMで直径1インチで回転振盪しながら37℃でインキュベートした。これらの前調整済み培養物から、4℃で遠心分離して500μLの培養物中の細胞を濃縮し、上清をデカントした後、抗生物質、アラビノースを加え、nsAAを加えた/加えない新鮮な培地10mLを添加することにより、希釈培養物を調製した。この手順により、新鮮な培地中、全体で1:100の希釈液が作成される。nsAAを含まない培養物に等量の滅菌dH2O水を添加して一貫したLB濃度とした。nsAAを含む/含まない試料ブランクも同様の方法で調製したが、細胞は省略した。
【0151】
蛍光及びODの読み取りは、Infinite Enspireマイクロプレートリーダー(PerkinElmer)を使用して行った。各候補OTSを試験するため、4つの生物学的複製物を比較した。各実験について、Costar番号3631の黒色透明底96ウェルプレートに、試験する各試料とブランクの150μLアリコートを満たした。30℃で継続的にインキュベートし、読み取りの前後に15秒間振盪しながら、マイクロプレートリーダーでアッセイを30時間行った。OD及びGFPの測定を20分ごとに行った。ODは600nm(OD600)で測定した。GFPの励起は、発光が509nmとなるよう395nmに設定した。次に、各時点でこれら4つのウェルのセットのそれぞれについて測定されたOD、RRE、及びMMF値をこの時間枠にわたって平均して、その複製物の要約スコアを生成した。図4は、RFP-GFP融合タンパク質ツールキットを使用した各OTSの忠実度及び効率の評価の結果を示す。例示的な候補tRNAであるMG72、MG33、及びMG24は、従来知られているtRNA(F12)と比較して、RREがより高く、MMFはより低い。
【0152】
図5及び図6は、MG72、MG33、及びMG24を含む、例示的な候補tRNAのクローバーリーフ構造及び配列を示す。図7は、例示的な候補tRNAの配列アラインメントを示す。これらの結果は、以前に同定されているF12、F13及びF14のO-tRNA配列と比較して、Dループ、Tループのステム、アクセプターステムのステム及び可変ループのいくつかの核酸位置が変化していることを示している。これらの以前に同定されているtRNAと比較して、候補tRNAで同定された重要な構造上の違いには次のものが含まれる。すなわち、a.Dループにおいて、インデル、すなわちtRNAのDループに存在する従来知られているO-tRNAであるF12、F13、及びF14のC16が、候補MG24、MG33、MG72、MG37、MG29、MG17、MG97、MG109、MG16、MG36、及びMG25で欠失している。b.Tループのステムに存在する異なる対合ヌクレオチド、すなわちF12、F13、及びF14のG53及びC63が、候補MG72ではA52及びT62に変異している。c.Tループのステムに存在する異なる対合ヌクレオチド、すなわち、F12のC52とG64、またはF13のT52とA64、またはF14のA52とT64が、候補MG37、MG29、MG17、MG35、MG97、MG109、MG16、及びMG22ではG52とC62に変異している。d.Tループのステムに存在する異なる対合ヌクレオチド、すなわち、F12、F13、及びF14のC51とG65が、候補MG29、MG17、MG35及びMG109ではG51とC65に変異している。e.アクセプターステムのステムに存在する異なる対合ヌクレオチド、すなわち、F12、F13、及びF14のG3、G6、G7、C67、C68、及びC71が、候補MG16、MG22、MG24、MG30、MG36ではC3、C6、T7、A66、G67、及びG70に変異している。f.アクセプターステムのステムに存在する異なる対合ヌクレオチド、すなわち、F12、F13、及びF14のC5、G7、C67、及びG69が、候補MG97ではT5、T7、A67、及びA69に変異している。e.アクセプターステムのステムに存在する異なる対合ヌクレオチド、すなわち、F12、F13、及びF14のG4、G6、G7、C67、C68、及びC70が、候補MG109ではA4、C6、T7、A67、G68、及びT70に変異している。g.アクセプターステムのステムに存在する異なる対合ヌクレオチド、すなわち、F12、F13、及びF14のC5、G69、及びC70が、候補MG62ではA5、T69、及びT70に変異している。h.可変ループに存在する異なるヌクレオチド、すなわち、F12、F13、及びF14のG48が、候補MG97ではT48に変異している。i.可変ループに存在する異なるヌクレオチド、すなわち、F12、F13、及びF14のC51が、候補MG17ではG51に変異している。j.可変ループ内に存在する異なるヌクレオチド、すなわち、F12、F13、及びF14のT46、G48が、候補MG37、MG22、MG30、及びMG36ではG46、T48に変異している。k.可変ループに存在する異なるヌクレオチド、すなわち、F12、F13、及びF14のG48、C51が、候補MG109ではT48、G51に変異している。及びl.可変ループに存在する異なるヌクレオチド、すなわち、F12、F13、及びF14のT46、G48、C51が、候補MG29ではG46、T48、G51に変異している。
【0153】
本発明は、好ましい実施形態及びさまざまな代替実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細におけるさまざまな変更が本明細書になされ得ることは、関連する技術分野の当業者には理解されよう。
【0154】
本明細書の本文中で引用したすべての参考文献、発行済特許、及び特許出願は、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0155】
非公式な配列表
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図7
【配列表】
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【国際調査報告】