(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】流体輸送管および/または流体リザーバの漏れをシールする装置
(51)【国際特許分類】
F16L 55/17 20060101AFI20240905BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F16L55/17
F16J15/06 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517105
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2022076311
(87)【国際公開番号】W WO2023046808
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516031381
【氏名又は名称】スリーエックス エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブレ ドリア, スタニスラス
(72)【発明者】
【氏名】ドマス, ディディエ
【テーマコード(参考)】
3H025
3J040
【Fターム(参考)】
3H025EA01
3H025EB11
3H025EC13
3H025ED01
3J040BA01
3J040EA06
3J040EA16
3J040FA06
3J040HA30
(57)【要約】
穴(80)を有するパイプまたはリザーバの壁(70)の漏れをシールするための装置(10、100)であって、穴の箇所で壁に押し当てられるエラストマー・プレート(40)と、エラストマー・プレートに押し当てられるフォース・アプリケータ(12、14、16、50)およびフォース・ディストリビュータ(20)と、フォース・アプリケータに締め付けトルクを付与する手段とを含む装置(10、100)。本発明の主な特徴によれば、フォース・ディストリビュータ(20)は、エラストマー・プレート(40)に押し当てられるように構成された内面(28)を有し、この内面が、突出部(25)に対応する作動域と、突出部の周囲に位置する非作動域とを有し、Fフォース・アプリケータに締め付けトルクが付与されると、作動域は、フォース・ディストリビュータ(20)の非作動域がエラストマー・プレートに発生させる圧力よりも大きな圧力をエラストマー・プレートに発生させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴(80)を有するパイプまたはリザーバの壁(70)の漏れをシールするための装置(10、100)であって、前記穴の箇所で前記壁に押し当てられるエラストマー・プレート(40)と、前記エラストマー・プレートに押し当てられるフォース・アプリケータ(12、14、16、50)およびフォース・ディストリビュータ(20)と、締め付けベルトを形成するストラップ等の、前記フォース・アプリケータに締め付けトルクを付与する手段とを含む装置において、
前記フォース・ディストリビュータ(20)が、前記エラストマー・プレート(40)に押しつけられるように構成された内面(28)を有し、前記内面が、突出部(25)に対応する作動域と、前記突出部の周囲に位置する非作動域とを有し、前記フォース・アプリケータに前記締め付けトルクが付与されると、前記作動域は、前記フォース・ディストリビュータ(20)の非作動域が発生させる圧力よりも大きい圧力を前記エラストマー・プレートに発生させるようにされていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記フォース・アプリケータ(12、14、16)が、その外面に、軸ZZ’がパイプの長手方向を示すとき、方向ZZ’に垂直な平面に沿った第1の一連のスリット(23)と、長手方向の軸ZZ’に平行な方向に沿って第2の一連のスリット(21)との2方向のスリットを備え、前記スリットが複数の突出部(22)を画定する、請求項1に記載のシール装置(10)。
【請求項3】
前記フォース・アプリケータ(12、16)の前記突出部(22)が、前記フォース・ディストリビュータの幅において厚さの違いを有し、前記フォース・ディストリビュータの長さを軸ZZ’に沿って考慮すると、前記フォース・アプリケータの可変の厚さは、軸ZZ’を通る対称面で最大となり、前記フォース・アプリケータの側端に向かって減少する、請求項2に記載のシール装置(10)。
【請求項4】
前記突出部(25)に向かい合って位置する前記フォース・アプリケータ(12)のスリット(21)の深さが他のスリットよりも深い、請求項2または3に記載のシール装置(10)。
【請求項5】
前記フォース・アプリケータ(14)の前記突出部(22)が、前記長手方向の軸ZZ’に平行に位置する前記フォース・アプリケータの2つの縁部にある突出部を除いて同じ厚さであり、前記縁部にある前記突出部の厚さが前記フォース・アプリケータの長手方向の縁に向かって減少する、請求項2に記載のシール装置(10)。
【請求項6】
前記フォース・アプリケータ(50)が中実であり、その横壁に開口する3つの固定穴(53)によって前記軸ZZ’に沿って貫通されているシール装置であって、2個の保持フランジ(52)と、これらの保持フランジを前記フォース・アプリケータ(50)の前記横壁に対して締め付け保持する組立ねじ(56)等の手段とを含み、前記2個のフランジ(52)が、それらの個々の長手方向の軸を中心として自由に回転可能なシリンダの形状をとる2個のテンションバー(58)によって同様に接続され、ストラップ(60)の形状をとる前記締め付けベルトが、前記パイプ(70)の周囲への締め付け前に、前記2個のフランジ(52)の間および前記テンションバー(58)の下で前記フォース・アプリケータ(50)上に配置されるように取り付けられ、前記テンションバー(58)は、前記フォース・アプリケータ(50)の長手方向の壁から離隔され、ストラップの形状をとる前記締め付けベルトがこの壁と10~20度の角度アルファをなすようにされている、請求項1に記載のシール装置(100)。
【請求項7】
前記突出部(25)が円形で、前記フォース・ディストリビュータの前記内面(28)を中心としており、前記突出部(25)の最大高さが前記突出部の直径の二乗に等しく、その剛性が、サイズとは無関係に一定である、請求項1から6のいずれか一項に記載のシール装置(10、100)。
【請求項8】
前記フォース・ディストリビュータ(20)の前記突出部(25)が500N/m~5000N/mの剛性を有する、請求項7に記載のシール装置(10、100)。
【請求項9】
前記エラストマー・プレート(40)が、前記プレートの上部および縁を構成する第1の材料(41)と、前記プレートの中央部および下部を構成する第2の材料(42)とを含み、前記第2の材料は、その上部および側縁が前記第1の材料によって囲まれており、前記第2の材料が、前記第1の材料を構成するエラストマーの硬度よりも高い硬度のエラストマーであり、異なる材料の下面が同じ平面に位置して、前記穴(80)の箇所で前記パイプの壁(70)と接する前記プレートの下面を構成し、前記第2の材料が前記穴に押しつけられるように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のシール装置(10、100)。
【請求項10】
前記エラストマー・プレート(40)が、前記第2の材料(42)に含まれる第3の材料を含み、前記第3の材料が、その上部と側縁で前記第2の材料により囲まれており、前記第3の材料の下面が同じ平面に位置して、前記穴(80)の箇所で前記パイプの壁(70)と接する前記エラストマー・プレート(40)の下面を構成し、前記第3の材料が、前記穴(80)に押しつけられて前記穴を覆うように構成され、前記第3の材料が、前記第2の材料を構成する前記エラストマーの硬度よりも高い硬度のエラストマーである、請求項9に記載のシール装置(10、100)。
【請求項11】
前記フォース・アプリケータ(12、14、16、50)および前記フォース・ディストリビュータ(20)が2つの別個の部品である、請求項1から10のいずれか一項に記載のシール装置(10、100)。
【請求項12】
前記フォース・アプリケータ(12、14、16、50)および前記フォース・ディストリビュータ(20)を製造するために使用される材料が、ポリアミド、ポリプロピレン、またはポリカーボネート等の硬質プラスチック材料の中から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載のシール装置(10、100)。
【請求項13】
ポリアミドからなる前記フォース・ディストリビュータ(20)の前記突出部(25)が1400N/m~1700N/mの剛性を有する、請求項12に記載のシール装置(10、100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプの外面に押しつけられるリング、ストリップ、またはスリーブを用いてパイプを修理する装置の技術分野に関し、特に、流体輸送管および/または流体リザーバにおける漏れをシールする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体、特に石油やガスなどの加圧流体の輸送管は、壁の厚さが劣化してくると、それが亀裂になり、漏れが発生する可能性がある。漏れを有するパイプおよび/またはリザーバを修理する技術は、2つのハーフシェルをパイプの周囲に締め付けて形成されるスリーブの内側に位置する漏れの箇所に、エラストマーを塗布することからなる。このシール装置にはいくつかの欠点がある。一方では、パイプに対するスリーブの締め付け圧は、漏れを抑えるのに必要な圧力をエラストマーが付与するのに十分なものでなければならない。他方では、ハーフシェルは所定の直径のパイプに取り付けられるので、異なる直径のパイプと同数の異なる直径のシェルを提供する必要がある。2つのハーフシェルからなる装置は、数メートルに達しうるリザーバの直径には取り付けられない。
【0003】
欧州特許第1104532号に記載されている別の技術は、フォース・アプリケータとフォース・ディストリビュータとを使用してエラストマー・プレートを亀裂に当接させ、パイプの周囲に配置されたクランプ機構を用いてフォース・アプリケータに力を加えることからなる。フォース・アプリケータは、亀裂箇所でエラストマー・プレートに力を伝え、亀裂の形状に一致するようにエラストマーを強制的に変形させて、この亀裂をシールすることができる。この装置により、パイプ内に含まれる流体の内圧に対抗するように、エラストマーとパイプの境界面に逆圧を加えることができる。こうした逆圧は、パイプの周囲および装置の周囲に配置されたクランプ機構の機械的張力のおかげで発生する。
【0004】
このようなシール装置は、多数のパイプ直径に取り付けられるという利点を有する。しかしながら、このシール装置にはいくつかの欠点がある。
【0005】
一方では、エラストマー・プレートに大きな圧力が永続的にかかるのでプレートが圧縮され、穴の縁と穴の内部との圧力差によって穴の縁でエラストマーがせん断されてしまう。こうした永続的な高い振幅のせん断により、エラストマーが損傷し、漏れが発生する可能性がある。
【0006】
他方では、最大締め付けトルク40N.mを機構に付与すると、エラストマーにかかる圧力は、20℃のとき約80バールで頭打ちになる。これは、より高い圧力に到達するには締め付けトルクを増加する必要があることを意味している。ただし、40N.mの締め付けトルクを超えるとエラストマー・プレートが劣化し、効果がなくなる。
【0007】
さらに、40N.の最大締め付けトルクであっても、漏れの箇所にかかる逆圧が時間の経過とともに急激に低下して流体の内圧に十分に対抗できなくなり、設置後約10日でシール装置から漏れが発生する。
【発明の概要】
【0008】
このため、本発明は、エラストマー・プレートと、このプレートに圧力を付与して、漏れを永続的にシールするのに十分な逆圧をエラストマーとパイプの境界面に課すことができる手段とを備えた、パイプの漏れのシール装置を製造することを目的とする。
【0009】
解決手段
したがって、本発明は、穴を有するパイプまたはリザーバの壁の漏れをシールするための装置であって、穴の箇所で壁に押し当てられるエラストマー・プレートと、エラストマー・プレートに押し当てられるフォース・アプリケータおよびフォース・ディストリビュータと、フォース・アプリケータに締め付けトルクを付与する手段とを備えた装置を目的とする。本発明の主な特徴によれば、フォース・ディストリビュータは、エラストマー・プレートに押しつけられるように構成された内面を有し、その内面が、突出部に対応する作動域と、突出部の周囲に位置する非作動域とを有し、フォース・アプリケータに締め付けトルクが付与されると、作動域は、フォース・ディストリビュータの非作動域がエラストマー・プレートに発生させる圧力よりも大きい圧力をエラストマー・プレートに発生させる。
【0010】
本発明の目的、対象および特徴は、図面を参照してなされる以下の説明を読めば、いっそう明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明によるシール装置の第1の実施形態によるフォース・アプリケータおよびフォース・ディストリビュータの上面斜視図である。
【
図2】
図1のフォース・アプリケータおよびフォース・ディストリビュータの底面斜視図である。
【
図3】第2の実施形態によるフォース・アプリケータおよびフォース・ディストリビュータの断面図である。
【
図4】本発明によるシール装置のフォース・アプリケータおよびフォース・ディストリビュータの縦断面図である。
【
図5】本発明によるシール装置のフォース・アプリケータおよびフォース・ディストリビュータの正面図である。
【
図6】パイプに押し当てられたシール装置の締め付け前の断面図である。
【
図7】パイプに押し当てられたシール装置の締め付け後の断面図である。
【
図8】エラストマー・プレートの代替的な実施形態による
図6の断面図である。
【
図9】エラストマー・プレートの代替的な実施形態による
図7の断面図である。
【
図10】フォース・アプリケータおよびフォース・ディストリビュータが分離した状態の本発明によるシール装置を示す図である。
【
図11】本発明によるシール装置の第3の実施形態によるフォース・アプリケータおよびフォース・ディストリビュータの斜視図である。
【
図12】
図11のフォース・アプリケータおよびフォース・ディストリビュータの底面図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態によるシール装置がパイプの所定の位置にあるところを示す図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態によるシール装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般に、図示された様々な構成部品は縮尺どおりではなく、また、以下の説明では、便宜上、パイプという用語だけを使用するが、本発明によるシール装置は、パイプまたはリザーバに取り付け可能である。本発明によるシール装置10は、パイプの周囲に配置されて本発明によるシール装置を締め付けるクランプ手段の張力を伝えるように構成された、フォース・アプリケータ12を含む。したがって、フォース・アプリケータ12は、この張力を力に変換する。本発明によれば、クランプ手段は少なくとも1つのストラップから構成され、締め付けベルトを形成する。ストラップ状の締め付けベルトは、そのしなやかさと柔軟性によりパイプの凹凸欠陥を吸収することができ、数メートル級の大口径のパイプやリザーバにも取り付けることができる(直径4~5m、さらには直径10メートル)。
【0013】
フォース・アプリケータ12は、その外面に2方向のスリットを含む。フォース・アプリケータは、軸ZZ’がパイプの長手方向を示すとき、方向ZZ’に垂直な平面に沿って第1の一連のスリット23と、長手方向軸ZZ’に平行な方向に沿って第2の一連のスリット21とを備える。スリットは、半径方向に沿って厚さが可変の複数の突出部22を画定する。スリットにより、フォース・アプリケータを様々な直径のパイプに取り付けることができる。フォース・アプリケータ12の突出部22は、フォース・アプリケータの幅において厚さの違いを有し、フォース・アプリケータの長さを軸ZZ’に沿って考慮すると、フォース・アプリケータの可変の厚さは、軸ZZ’を通る対称面で最大となり、フォース・アプリケータの側縁に向かって減少する。突出部22の厚さの違いのおかげで、締め付けベルトによって伝達される力は、フォース・アプリケータの全幅にわたって均一に分散される。このフォース・アプリケータは、ごく小さな直径のパイプに非常に適している。
【0014】
したがって、フォース・アプリケータ12は締め付けベルトの張力を伝達し、この張力が各突出部で力に変換され、各突出部が、これらの圧力をフォース・ディストリビュータ20に伝達する。
【0015】
図2に示されているように、フォース・ディストリビュータ20は、フォース・アプリケータ12の、パイプ側に向いた内面に配置されており、この内面は凹面または平面形状である。フォース・アプリケータ12とフォース・ディストリビュータ20は可撓性であり、広い範囲のパイプ直径に取り付けられるように広げたり閉じたりすることができる。フォース・ディストリビュータ20は、内面28に位置する好ましくは円形の突出部25を含み、この突出部は好ましくは内面の中心にある。突出部の厚さは一定で、縁にフィレットまたは丸みが付いている。フォース・アプリケータ12、14とフォース・ディストリビュータ20とに使用される材料は、好ましくは、ポリアミド、ポリプロピレン、またはポリカーボネートなどの、硬質であるが変形可能なプラスチック材料である。
【0016】
図3は、パイプの長手方向を常に示す軸ZZ’に垂直な平面に沿った断面図であるが、この図で示した第2の実施形態によれば、フォース・アプリケータ14は、その外面に、軸ZZ’に垂直な平面に沿った第1の一連のスリット23と、長手方向の軸ZZ’に平行な方向に沿った第2の一連のスリット21との2方向のスリットを備えており、これらのスリット全体が複数の突出部22を画定している。突出部22は、長手方向の軸ZZ’に平行に位置するフォース・アプリケータの2つの縁部にある突出部を除いて同じ厚さであり、縁部にある突出部の厚さはフォース・アプリケータの長手方向の縁に向かって減少しているが、これは、縁部が鋭角にならないようにして、締め付けベルトを形成するストラップの摩耗を制限するためである。
【0017】
フォース・アプリケータ12と同様に、フォース・アプリケータ14は、内面28に突出部25を備えるフォース・ディストリビュータ20に結合される。したがって、フォース・アプリケータ14は締め付けベルトの張力を伝達し、この張力が各突出部で力に変換され、各突出部が、これらの圧力をフォース・ディストリビュータ20に伝達する。本発明によれば、実施形態の如何を問わず、クランプ手段は、フォース・アプリケータおよびフォース・ディストリビュータとは別個の部分である。
【0018】
図4によれば、フォース・アプリケータ12または14と、フォース・ディストリビュータ20は、軸ZZ’を通ってフォース・アプリケータとフォース・ディストリビュータを2つの等しい部分に切断する平面に沿った断面図で示されている。この断面図は長手方向の断面図である。図から分かるように、スリット23の幅は、パイプ表面がたとえば粗さによる隆起を含む場合、突出部22が相互に移動する余裕を有するのに十分である。突出部25に向かい合って位置するスリット23の深さは最大であり、他のスリットの深さよりも深い。深さの差は最大深さの10~20%であるこれは、
図4の断面図からはっきりと分かる。この特徴により、フォース・ディストリビュータの全面にわたって一定の柔軟性が得られる。内面28は、この面28が湾曲しているという事実により、その全周にわたって、
図4では長手方向の縁にのみ見えるリム26を備えるが、この湾曲は本発明による装置10を制限するものではない。
図5は、フォース・ディストリビュータ20の正面図である。
【0019】
円形の突出部25は、フォース・ディストリビュータの内面28の中心にある。突出部の最も厚い箇所では、突出部25の高さは突出部の直径によって決まり、突出部の直径のサイズは装置のサイズに適合する。より正確には、突出部25の最大高さは突出部の直径の二乗に等しいので、突出部の剛性は、そのサイズとは無関係に一定である。突出部25のエッジは、厚さ0.5mm~2mmのフィレットまたは丸み付けに代えられる。
【0020】
フォース・ディストリビュータ20の内面28は、突出部25の表面に対応する作動域と、リム26も含めて突出部25の周囲の内面28に位置する非作動域とから構成される。作動域の面積は、非作動域の面積の25%~40%に相当する。非作動域の分布の方が大きいのは、シール装置をパイプの壁に配置すると、作動域が穴の真上にきて、非作動域が穴の外周に対応する表面全体を覆うことによるものである。フォース・アプリケータとフォース・ディストリビュータのおかげで、締め付けベルトによって伝達される力が、パイプに接触するように構成されたフォース・ディストリビュータの表面全体に均一に分散される。この表面には、作動域と非作動域が含まれる。
【0021】
図6~
図9は、パイプの壁の漏れに対して所定の位置にあるシール装置10の、軸ZZ’を通る断面図である。
図4と同様に、パイプとの接触面の湾曲は示されていない。
図6と
図8は、締め付け前に所定の位置に設置された本発明によるシール装置10を示しており、
図7と
図9は、パイプの漏れ箇所に対して締め付け位置にあるときの、本発明によるシール装置10を示している。
【0022】
図6では、パイプの内容物の漏れの原因となる穴80を覆うように、エラストマー・プレート40がパイプの壁70に配置されている。エラストマー・プレート40は、1つ以上の材料を含む。
図6と
図7に示した第1の実施形態によれば、エラストマー・プレート40は単一の材料であり、均質な材料で作られている。エラストマー・プレート40は、フォース・ディストリビュータ20とフォース・アプリケータ12とで覆われている。本発明によるシール装置を構成するこれらの3つのパーツが、締め付けベルトを形成する少なくとも1つのストラップからなるクランプ手段のおかげで漏れの箇所80の位置でパイプ70に対して締め付けられると、フォース・ディストリビュータは、接触面に対してフォース・アプリケータが及ぼす圧力を倍増し、これらの接触面によって力がエラストマーに伝えられる。突出部の接触面、したがって作動域の接触面は、作動域と非作動域の面積全体に対応する取付面よりも小さいため、その結果、作動域によってエラストマーに及ぼされる圧力は、フォース・アプリケータによって及ぼされる圧力よりも大きい。
【0023】
図7は、本発明の第1の実施形態によるシール装置10が、1本以上のストラップによる締め付けベルト等の、図示されていないクランプ手段によってパイプに締め付けられた状態を示している。締め付けベルトの最大締め付けトルクは40N.mである。フォース・ディストリビュータ12は、エラストマー・プレートに締め付け圧を付与し、エラストマー・プレートは、その弾性により変形し、パイプの壁70に対して潰される。
図7に部分的に見られるように、作動域と接触しているエラストマーは、より多くの応力を受けるため、非作動域と接触しているエラストマーよりも変形が大きくなる。フォース・ディストリビュータの作動域に接するエラストマー・プレート40の部分は、材料の一部が穴80に入るまで変形する。エラストマー・プレート40の全体は、既存の弾性圧潰に関連する圧力を受ける。
【0024】
パイプの穴の位置では、エラストマーは内部流体の圧力を受け、また、フォース・ディストリビュータ20の突出部25に対応する作動域の圧潰を受ける。パイプの穴の周囲では、フォース・ディストリビュータ20の非作動域とパイプの壁70との間でエラストマーが押しつぶされる。穴の真上では、エラストマーが、穴の周囲に位置するエラストマーの部分が受けるものよりも大きな応力と変形を受ける。
【0025】
突出部25に対応するフォース・ディストリビュータ20の作動域は、フォース・ディストリビュータ20の非作動域が発生させる圧力よりも大きな圧力をエラストマー・プレートに発生させる。フォース・ディストリビュータの2つの領域は、エラストマーを損傷することなく本発明によるシール装置の永続的な封止性を保証するために、漏れの箇所では流体の内圧レベルに比例した大きな逆圧を課し、漏れの周囲ではそれより低いが必要かつ十分な圧力を課す圧力分布を生じさせる。本発明による装置は、フォース・アプリケータ、フォース・ディストリビュータの幾何学的形状およびエラストマーの特性を適切に選択することにより、エラストマーの損傷の応力値に達することなく流体の内圧に抵抗できる応力を発生させることができる。そのため、フォース・ディストリビュータ20の突出部25に対応する作動域は、そのサイズとは無関係に一定の剛性を有する。フォース・ディストリビュータに使用される材料に応じて、剛性は、500N/m~5000N/mであり、特にフォース・ディストリビュータがポリアミドで作られている場合は、1400N/m~1700N/mになる。パイプ内の流体の内圧は80バールに達することができる。
【0026】
図8と
図9に示す本発明の代替的な実施形態によれば、エラストマー・プレート40は、エラストマー・プレート40の上部および縁を構成する第1の材料41と、エラストマー・プレートの中央部および下部を構成する第2の材料42との少なくとも2つの異なる材料から構成される。第2の材料42は、その上部および側縁が第1の材料41によって囲まれており、各材料の下面が同じ平面に位置し、穴80の箇所でパイプの壁70と接するように構成されたエラストマー・プレート40の下面を構成する。第2の材料は、穴80に押しつけられて穴80を覆うように構成される。第2の材料は、第1の材料を構成するエラストマーの硬度よりも高い硬度を有するエラストマーである。たとえば、第1の材料41のエラストマーは70ショア未満の硬度を有し、第2の材料42のエラストマーは70ショアよりも大きい硬度を有する。エラストマー・プレートは、第1の材料を第2の材料上にオーバーモールドするか、または二重射出成形によって作成される。フォース・ディストリビュータ20は、その内面がパイプの壁70の曲率半径と一致して突出部25がエラストマー・プレート40の第2の部分42の中心にくるように、エラストマー・プレート40上に配置される。
【0027】
図9は、本発明によるシール装置10が、締め付けベルトを形成するストラップ等の、図示されていないクランプ手段によってパイプに締め付けられた状態を示している。締め付けベルトの最大締め付けトルクは40N.mである。フォース・ディストリビュータ20は、エラストマー・プレートに締め付け圧を付与し、エラストマー・プレートは、その弾性により変形し、パイプの壁70に対して潰される。第2の材料部分42は、材料の一部が穴80に入るまで変形される。穴の真上では、第2の材料部分42のエラストマーが、穴の周囲に位置する第1の材料部分41のエラストマーが受けるよりも大きな応力と変形を受ける。
【0028】
突出部25に対応する作動域は、フォース・ディストリビュータ20の非作動域が発生させる圧力よりも大きな圧力をエラストマー・プレートに発生させる。フォース・ディストリビュータのこれらの2つの領域は、エラストマーを損傷することなく本発明によるシール装置の永続的な封止性を保証するために、漏れの箇所では流体の内圧レベルに比例した大きな逆圧を課し、漏れの周囲ではそれより低いが必要かつ十分な圧力を課す圧力分布を生じさせる。40N.mの締め付けトルクの場合、本発明によるシール装置によって及ぼされる圧力は、突出部25のおかげで20℃で80バールを超えるが、突出部がない場合には80バールで頭打ちになる。したがって、及ぼされる圧力は、エラストマー・プレート40の中心で穴80に対して垂直に配置されたピストン状の突出部25のおかげで増加する。締め付けに際して、エラストマー・プレート40の第2の部分42は、第1の部分よりもさらに変形し、穴80のエッジの箇所で大きなせん断応力を受ける。第2の材料42は、より高い硬度のエラストマーで構成されており、経時的に良好な耐性を有し、より低い硬度の第1の材料のエラストマーよりも劣化が遅い。第1の材料41は、第2の材料よりもせん断応力がはるかに小さく、一段と柔らかく、いっそう防水性がある。第2の材料42に封止性の問題が発生した場合、第1の材料が第2のバリアとして機能し、封止性を確実にし、シール装置の寿命をさらに延長する。
【0029】
本発明の別の代替的な実施形態によれば、エラストマー・プレート40は、第2の材料42が第1の材料41に含まれるのと同様に、第2の材料42中に第3の材料を含むが、そのサイズはより小さい。第3の材料は、その上部および側縁が第2の材料42によって囲まれており、3つの材料の下面が同じ平面に位置し、穴80の箇所でパイプの壁70と接するように構成されたエラストマー・プレート40の下面を構成する。第3の材料は、穴80に押しつけられて穴80を覆うように構成される。第3の材料は、第2の材料を構成するエラストマーの硬度よりも高い硬度を有するエラストマーである。
【0030】
図10は、フォース・アプリケータとフォース・ディストリビュータが2つの別個の部品であることによって互いに分離されている、シール装置の代替的な実施形態を示している。この代替例によるシール装置は、先に示したシール装置と同じ技術的効果を有し、フォース・アプリケータとフォース・ディストリビュータが装置の唯一の部分を示している。この代替例は製造プロセスのみが異なる。
図10は、長手方向の軸ZZ’に垂直な横断面に沿った、シール装置10の横断面図である。フォース・アプリケータ16は、その外面に、軸ZZ’に垂直な平面に沿った第1の一連のスリット23と、長手方向の軸ZZ’に平行な方向に沿った第2の一連のスリット21との2方向のスリットを備えており、これらのスリット全体が複数の突出部22を画定している。フォース・アプリケータ16の突出部22は、フォース・ディストリビュータの幅において厚さの違いを有し、フォース・ディストリビュータの長さを軸ZZ’に沿って考慮すると、フォース・アプリケータの可変の厚さは、軸ZZ’を通る対称面で最大となり、フォース・アプリケータの側縁に向かって減少する。フォース・アプリケータ16は、フォース・アプリケータ12および14と同様に、締め付けベルトの締め付け力を分散させることを目的としている。
【0031】
フォース・ディストリビュータ20の内面28には、その中心に突出部25が設けられている。円形または楕円形の突出部25は、厚さが一定であるか、または中心で厚さが最大で縁に向かって減少する。フォース・ディストリビュータ20は、フォース・アプリケータ16とエラストマー・プレート40との間に挿入されるように構成される。フォース・アプリケータとは別にフォース・ディストリビュータを使用することは、エラストマー・プレートにおいて80バールの圧力を必要としない低圧流体を含むパイプでの使用に適している。フォース・アプリケータ16とフォース・ディストリビュータ20に使用される材料は、好ましくは、ポリアミド、ポリプロピレン、またはポリカーボネートなどの、硬質であるが変形可能なプラスチック材料である。
【0032】
図11から
図14に示す本発明の第3の実施形態によれば、シール装置100は、直径が1.50m以上のパイプに適している。シール装置100は、好ましくはフォース・アプリケータ50の横壁に開口する3つの固定穴53によって軸ZZ’に沿って貫通された、中実のフォース・アプリケータ50を備える。フォース・アプリケータ50は、パイプに向かって配向されたその内面に、フォース・ディストリビュータ20を有する。フォース・ディストリビュータ20は、内面28に位置する円形または楕円形の突出部25を含み、この突出部は好ましくは内面の中心にある。突出部は厚さが一定であるか、または、中心で厚さが最大で縁に向かって減少する。
【0033】
他の実施形態のシール装置10の場合と同様に、シール装置100のフォース・ディストリビュータ20は、突出部25の表面に対応する作動域と、リム26も含めて突出部25の外側の内面28上に位置する非作動域とから構成される。第1の実施形態および第2の実施形態で説明したフォース・ディストリビュータ20の特徴および効果は、第3の実施形態にも当てはまる。エラストマー・プレートに関して、また互いに異なるフォース・アプリケータおよびフォース・ディストリビュータに関して上述した代替的な実施形態は、この実施形態とも相いれる。
【0034】
フォース・アプリケータ50およびフォース・ディストリビュータ20に加えて、シール装置100は、ストラップ60からなる締め付けベルト支持体を含む。ストラップからなる締め付けベルト支持体は、2つの保持フランジ52と、これらの保持フランジをフォース・アプリケータ50の横壁に対して締め付け保持するための組立ねじ56等の手段とから構成される。2つのフランジ52はまた、それぞれの長手方向の軸を中心として自由に回転可能な円筒形の2つのテンションバー58によって接続されている。ストラップ60の形態をとる締め付けベルトは、パイプ70の周囲に締め付けられる前に、2つのフランジ52の間およびテンションバー58の下で、フォース・アプリケータ50の上に配置されるように取り付けられる。テンションバー58が自由に回転することにより、締め付け前に穴にシール装置100を配置しやすくなる。
【0035】
図14に見られるように、テンションバー58は、フォース・アプリケータの長手方向の壁から離隔され、ストラップの形状をとる締め付けベルトがこの壁と10~20度の角度アルファをなすようにされている。この角度は、ストラップの妨げとならないように十分に大きく、パイプに対するストラップの摩擦力を低減して締め付け力をフォース・アプリケータ50に集中させるのに十分小さい。これには、ストラップの締め付け力の一部が摩擦力によって吸収されるのを防ぐという利点もある。
【0036】
本発明による装置は、パイプに不必要な応力をかけずに漏れに応力を集中するため、脆くなったパイプに適応できるという長所を有する。
【国際調査報告】