(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】全粒穀物ベースの抽出物を提供する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20240905BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240905BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A23L2/38 J
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L2/00 B
A23L2/52 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517433
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2022076431
(87)【国際公開番号】W WO2023046859
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ワイング, セイン ラエ
(72)【発明者】
【氏名】アナンタ, エドウィン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン, ヴィシスト クマール
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LC04
4B117LE01
4B117LG13
4B117LG15
4B117LG16
4B117LG17
4B117LG24
4B117LK11
4B117LK13
4B117LK18
4B117LK24
(57)【要約】
本発明は、全粒穀物ベースの抽出物を調製する方法に関し、方法は、(i)全粒穀物と穀物粕とを用意する工程であって、好ましくは全粒穀物と穀物粕との合計を基準にして50~90重量%の全粒穀物と10~50重量%の穀物粕とを用意する工程と、(ii)全粒穀物を単回の磨砕に供し、その後、全粒穀物と、穀物粕と、水とを合わせる工程と、(iii)磨砕全粒穀物、穀物粕及び水を、全粒穀物及び穀物粕中の高分子要素の酵素加水分解に供して、変性全粒穀物を用意する工程と、(iv)酵素を不活性化する工程と、(v)変性全粒穀物の可溶性画分を変性全粒穀物の不溶性画分から分離して、全粒穀物及び穀物粕からの可溶性画分を含む変性全粒穀物抽出物を得る工程と、を含む。本発明はまた、本方法によって得られる濃縮物を含む飲料原材料に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全粒穀物ベースの抽出物を調製する方法であって、
(i)全粒穀物と穀物粕とを用意する工程であって、好ましくは前記全粒穀物と前記穀物粕との合計を基準にして50~90重量%の全粒穀物と10~50重量%の穀物粕とを用意する工程と、
(ii)前記全粒穀物を単回の磨砕に供し、その後、前記全粒穀物と、前記穀物粕と、水とを合わせる工程と、
(iii)前記磨砕全粒穀物、前記穀物粕及び水を、前記全粒穀物及び前記穀物粕中の高分子要素の酵素加水分解に供して、変性全粒穀物を用意する工程と、
(iv)前記酵素を不活性化する工程と、
(v)前記変性全粒穀物の可溶性画分を前記変性全粒穀物の不溶性画分から分離して、全粒穀物及び穀物粕からの可溶性画分を含む変性全粒穀物抽出物を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記全粒穀物が、モルト化されていない全粒穀物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記穀物粕が、モルト化されている又はモルト化されていない穀物の処理から得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記穀物粕が、オオムギ、ソルガム、米、コムギ、オートムギ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される穀物に由来する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(v)における前記分離から得られた前記可溶性画分が、好ましくは40%(w/w)未満、好ましくは30%(w/w)未満の残留デンプンレベルまで、濃縮される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記濃縮物が、濃縮前に少なくとも10%から97.5%(w/w)までの前記可溶性画分を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記加水分解が、α-アミラーゼ、プロテアーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、β-グルカナーゼ、プルラナーゼ、リパーゼ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、異なる機能を有する酵素の混合物を使用して実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記残留デンプンが、30%(w/w)未満のデンプン、好ましくは5%(w/w)未満、より好ましくは2%未満(w/w)のデンプンである、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法で得られる濃縮物を含む、飲料原材料。
【請求項9】
前記原材料が、乾物基準で、25~45%(w/w)、好ましくは34~38%(w/w)の、濃縮された変性穀物ベースの画分;15~25%(w/w)、好ましくは18~22%(w/w)の脱脂粉乳;10~20%(w/w)、好ましくは14~18%(w/w)の炭水化物;10~20%(w/w)、好ましくは12~15%(w/w)のココア、及び5~15%(w/w)、好ましくは8~12%(w/w)の脂肪成分
を含む、請求項8に記載の飲料原材料。
【請求項10】
改善された官能特性、及び/又は改善された栄養価を有する飲料を調製する方法であって、
(a)請求項8及び9に記載の飲料原材料を用意する工程と、
(b)工程(a)の飲料原材料を液体成分と混合し、飲料を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項11】
前記液体成分が、水、乳、果汁、野菜汁又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
飲料であって
(1)液体成分;及び
(2)請求項8及び9に記載の飲料原材料
からなる、飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全粒穀物ベースの抽出物を調製する方法に関する。特に、本発明は、全粒穀物ベースの抽出物を含む飲料原材料を含む飲料の調製に関し、この全粒穀物抽出物は、全粒穀物の栄養価を維持し、飲料に所望される官能特性を提供することを可能にする。
【0002】
[背景技術]
モルト抽出物などの穀物の抽出物は、ココア・モルト飲料などの飲料に原材料として使用されてきた。モルト抽出物、例えば穀物抽出物は、ビールを製造するために醸造所が使用している昔ながらのプロセスに基づいて製造される。このプロセスでは、オオムギ又はコムギなどの穀物を収穫し、乾燥させることで、使用に必要となるまで保存することができる。従来のモルト製造プロセスは、穀物を水に浸漬し、穀物を数日間発芽させ、典型的には水分約5%の低含水量まで注意深く乾燥させることによって穀物を安定化させることを伴う。モルト製造プロセス中に、デンプン質胚乳を可溶性成分に変換するための酵素が生成される。α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、β-グルカナーゼ、プロテアーゼ、アラビノキシラナーゼなどの酵素が、発芽中の穀物内で合成される。モルト製造中、これらの酵素はまた、細胞壁の構造を変性させ、プロセスにおける後工程中の、穀物の可溶性画分のより容易かつより完全な抽出を可能にする。
【0003】
モルト化された全粒穀物は、典型的には、ミリングによって不均一な粉末に磨砕され、この粉末は、穀物1部に対して水3~10部の(又は場合によっては更に多くの)比率で水と混合される。プロテアーゼ及び細胞壁加水分解酵素に加水分解させるために、水の初期温度は、約40℃~50℃であり得る。この加水分解が十分に完了したら、温度を60℃~70℃に上昇させて、α-アミラーゼ及びβ-アミラーゼにデンプンを加水分解させる。加水分解が完了してから、スラリーの温度を約80℃に上昇させて酵素を不活性化させる。スラリーは、ロータータン、デカンタ、プレートアンドフレームフィルタなどの分離装置に通される。液体部分は、濾過及び浸出のプロセスによって不溶性/部分的可溶性の材料から分離される。浸出は、易溶性材料の全てが除去されるまで不溶性穀物を洗浄することを伴う。乾燥させて粉末にすることによって、又は蒸発させて典型的な乾燥物含有量が78%(w/w)を超えるペーストにすることによって、液体部分が安定化される。
【0004】
得られた粉末又はペーストは、原材料として飲料に使用されてもよい。残留不溶性物質(穀物粕(spent grain))は、典型的には、動物用飼料として販売される、又は埋立処分される。
【0005】
最近、微細にミリングされた穀物、穀粉、及びフレーク、ペレットのように物理的に変性させた穀物を単に添加することによって穀物を利用する飲料が報告されている。これらの飲料中の穀物含有量は、官能特性への影響、及び飲料中への穀物の溶解又は懸濁の困難さから制限される。得られた飲料は、ドリンクよりもスムージーに似た高粘度になる可能性があり、又は沈殿物若しくは表面上に浮遊する穀物の層を生じる可能性がある。
【0006】
米国特許第5,135,765号には、タンパク質に富む製品及び/又は繊維製品を製造するための方法が記載されており、この方法は、湿った状態の醸造穀物粕を圧搾する工程と、圧搾された醸造用穀物粕から水を篩い分けて、タンパク質含有画分と繊維性画分とに分離する工程とを含む。米国特許第5,135,765号は、繊維性材料の微粉砕は、その後の繊維性画分からのタンパク質画分の分離を困難にする可能性があることから、回避すべきであると記載している。更に、米国特許第5,135,765号は、得られた繊維性画分が、供給物又は可燃性燃料として使用されることが記載されている。
【0007】
米国特許第4,282,319号は、全粒からの加水分解生成物、及びそのような誘導生成物の調製方法を記載している。米国特許第4,282,319号は、水不溶性タンパク質を水溶性生成物に変換するため、及び更にデンプン内容物をアミラーゼで処理して水溶性デンプン生成物を形成するための、タンパク質分解酵素の使用を記載している。生成物は、ふすま画分を除去し、水を除去することによって更に処理されて、乾燥、セミモイスト、又は液体である、濃縮された誘導生成物が得られる。この生成物を、パン、ドリンク、及びシリアル製品などの食品製品に甘味剤として添加することで、上述の得られたふすまを繊維添加物としてパンに使用することができる。したがって、米国特許第4,282,319号は、全粒穀物の栄養価を維持し、且つ改善された懸濁特性を有する、飲料原材料を含む繊維を記載していない。
【0008】
上記の製品及び方法は、次の欠点を伴う。
【0009】
上述したように、伝統的な穀物抽出アプローチでは、穀物の一部は飲料に使用されず、むしろ動物飼料として販売される。この未使用部分は、様々な付加価値栄養成分、例えば、繊維、タンパク質、ポリペプチド又はアミノ酸、ビタミン類及びミネラル類を含む。
【0010】
従来の穀物抽出の更なる欠点は、加水分解後に不溶性物質を大きな割合で生成するオオムギ及びコムギなどの穀物には特に適していないことである。
【0011】
なお更なる欠点は、例えばミリングされた穀物又は穀物フレークを単に添加することの影響にある。それというのも、これらの原材料には、繊維の膨潤により粘度が増大し、並びに穀物成分が沈降物及び/又は飲料の表面上の浮遊物として分離した飲料を生じる傾向がある。
【0012】
したがって、全粒穀物の栄養価が維持又はほぼ維持され、飲料原材料の懸濁特性が改善され、及び/又は所望の官能特性を有する飲料を提供することを可能にする、方法及び飲料原材料を提供することのニーズがある。
【0013】
[発明の概要]
本発明は、全粒穀物の栄養価が維持又はほぼ維持されることを提供し、飲料原材料の懸濁特性が改善され、及び/又は所望の官能特性を有する飲料を提供することを可能にする。
【0014】
本発明の第1の態様は、全粒穀物ベースの抽出物を調製する方法であって、上記方法は、
(i)全粒穀物と穀物粕とを用意する工程であって、好ましくは全粒穀物と穀物粕との合計を基準にして50~90重量%の全粒穀物と10~50重量%の穀物粕とを用意する工程と、
(ii)全粒穀物を単回の磨砕に供し、その後、全粒穀物と、穀物粕と、水とを合わせる工程と、
(iii)磨砕全粒穀物、穀物粕及び水を、全粒穀物及び穀物粕中の高分子要素の酵素加水分解に供して、変性全粒穀物(modified whole grain cereal)を用意する工程と、
(iv)酵素を不活性化する工程と、
(v)変性全粒穀物の可溶性画分を変性全粒穀物の不溶性画分から分離して、全粒穀物及び穀物粕からの可溶性画分を含む変性全粒穀物抽出物を得る工程と、
を含む、方法に関する。
【0015】
好ましくは、全粒穀物及び穀物粕は、50~60重量%の全粒穀物及び40~50重量%の穀物粕の範囲で存在する。
【0016】
驚くべきことに、最終製品において所望の口当たりを得るためには、全粒穀物の単回のミリングで十分であることが見出された。
【0017】
有利には、穀物ベースの画分は、100μm未満、好ましくは50μm未満、より好ましくは30μm未満の粒径を有する粒子を含む。
【0018】
更に、驚くべきことに、モルト化されていない全粒穀物、特にモルト化されていないオオムギの処理に穀物粕を組み込むことは、濾過時間に影響を与えないことが見出された。更に、変性モルト抽出物の栄養プロファイルは、100%緑色オオムギベースのモルト抽出物よりも良好であった。本発明による変性モルト抽出物を使用して製造された最終飲料の味は、全100%の緑色オオムギベースのモルト抽出物を使用して製造された飲料と同様であった。興味深いことに、かつ驚くべきことに、利用可能な総炭水化物もまた、変性モルト抽出物の方が、100%緑色オオムギベースのモルト抽出物と比較して低かった。更に驚くべきことに、50%の緑色オオムギと50%の穀物粕とを用いたプロセスの収率は、100%緑色オオムギのプロセスと同様であり、したがって、生産性に対する影響は見られないことが確認された。濾過速度は、100%の緑色オオムギを利用するプロセスと比較してなおも同じであることも判明した。
【0019】
更に、本発明による方法は、より単純な方法である。本発明による方法は、一般に緑色オオムギよりも価格が低いサイドストリーム又は廃棄物を利用する。しかしながら、最終製品は、繊維含有量が高く、タンパク質がより多いことから、栄養的に優れる。本発明による方法によって得られた濃縮物を用いて製造することができる最終飲料製品は、依然として良好なテクスチャー及び感覚的特性を有し、ざらつきがなく、味は100重量%の緑色オオムギ濃縮物と同様である。
【0020】
第2の態様において、本発明は、本発明による方法で得られた濃縮物を含む飲料原材料に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】100%緑色オオムギ抽出物を使用して作製された飲料と、50-50(重量%)の変性モルト抽出物を使用して作製された飲料とを比較した、比較プロファイリングを示す。
【
図2】図の左側に、穀物粕を生成する醸造プロセスの概略図を示し、図の右側に、変性全粒穀物抽出物の調製において穀物粕を使用する本発明による方法の実施形態を示す。
【0022】
以下に本発明をより詳細に説明する。
[発明を実施するための形態]
驚くべきことに、全粒穀物を特定の方法で処理することによって、官能特性を犠牲にすることなく不溶性画分の懸濁特性を改善することが可能になることが見出された。この懸濁特性の低下により、不溶性画分の飲料原材料としての適性が向上し得る。処理した不溶性画分を、全粒穀物ベースの抽出物を得るためのプロセスに再導入することによって、特に所望の官能特性を有する飲料を提供することが可能である。飲料原材料の懸濁特性が改善され、不溶性画分のサイズ低減が飲料の粘度に対する影響の低減をもたらすことから、より多量の全粒穀物を飲料に添加できる。
【0023】
全粒穀物ベースの抽出物を調製するための本発明による方法であって、上記方法は、
(i);全粒穀物と穀物粕とを用意する工程であって、好ましくは全粒穀物と穀物粕との合計を基準にして50~90重量%の全粒穀物と10~50重量%の穀物粕とを用意する工程と、
(ii)全粒穀物を単回の磨砕に供し、その後、全粒穀物と、穀物粕と、水とを合わせる工程と、
(iii)磨砕全粒穀物、穀物粕及び水を、全粒穀物及び穀物粕中の高分子要素の酵素加水分解に供して、変性全粒穀物を用意する工程と、
(iv)酵素を不活性化する工程と、
(v)変性全粒穀物の可溶性画分を変性全粒穀物の不溶性画分から分離して、全粒穀物及び穀物粕からの可溶性画分を含む変性全粒穀物抽出物を得る工程と、
を含む。
【0024】
本発明によるプロセスは、
図2のフローチャートに示された通りであり得る。例示のプロセスは全粒穀物から開始し、全粒穀物は磨砕にかけられる前にモルト化されてもよい。
【0025】
本文脈において、「磨砕」という用語は、全粒の高分子構造を、例えば水及び/又は酵素に対して接触可能なものにする目的での、全粒の任意の物理的破壊である。
【0026】
本明細書において、「穀物粕(cereal spent grain)」という用語は、酵素加水分解又はマッシング後に得られる全粒の不溶性画分である。
【0027】
穀物粕の不溶性部分は、本文脈において、穀物繊維、穀物ふすま、及び穀物粕、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0028】
次いで、磨砕された(モルト化された)全粒穀物を水及び任意選択で酵素と混合して、全粒穀物を変性させることができる。全粒穀物が十分に変性されると、酵素は不活性化され、全粒穀物の不溶性画分は、全粒穀物の可溶性画分から分離され得る。
【0029】
本発明の一実施形態では、可溶性画分(又はその一画分)及び穀物ベースの画分(又はその一画分)は、異なる全粒穀物に由来する。したがって、可溶性画分及び穀物ベースの画分は、必ずしも同じ全粒に由来する必要はない。
【0030】
本発明において、「全粒穀物ベースの抽出物」という用語は、本発明によるプロセスによって穀物を処理することから得られる抽出物に関する。好ましくは、全粒穀物ベースの抽出物は、全粒穀物の不溶性画分の少なくとも一部を含む。
【0031】
本発明において、「穀物ベースの画分」という用語は、本発明で提示されるプロセスによって変性全粒穀物の不溶性画分を処理することから得られる画分に関する。好ましくは、穀物ベースの画分は、全粒穀物の不溶性画分を含む。
【0032】
本文脈において、「不溶性画分」という用語は、不溶性繊維、すなわち、大腸で発酵されない、又は腸内微生物叢によってゆっくりとしか消化されない、不溶性食物繊維を含む、全粒穀物から得られた画分に関する。不溶性繊維の例としては、セルロース、ヘミセルロース、難消化性デンプン1型及びリグニンが挙げられる。不溶性繊維の更なる利点としては、蠕動の刺激による腸機能の促進が挙げられ、これにより、結腸の筋肉がより働き、より強くなり、より良好に機能するようになる。不溶性繊維の摂取が腸がんのリスク低減に関連し得るという証拠も存在する。
【0033】
食物繊維は、消化酵素によって分解されない植物の可食部である。食物繊維は、細菌叢によってヒト大腸において発酵される。繊維には、可溶性繊維及び不溶性繊維の2種類がある。可溶性食物繊維と不溶性食物繊維とは、いずれも、便秘の予防に役立つ良好な腸管通過、又は満腹感などの、多くのプラスの生理機能を促進し得る。保健機関は、体重、性別、年齢及びエネルギー摂取に応じて、1日当たり20~35gの繊維の摂取を推奨している。
【0034】
不溶性画分とは対照的に、本発明によって記載されるプロセスから得られる可溶性画分が存在する。可溶性画分は、可溶性繊維及び全粒穀物の他の可溶性部分、例えばタンパク質、ビタミン、ミネラル、糖などを含む。
【0035】
本文脈において、「可溶性繊維」は、大腸内で完全発酵又は部分発酵を受ける食物繊維も含み得る。穀物由来の可溶性繊維の例としては、β-グルカン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン、並びに難消化性デンプン2型及び3型、並びに後者に由来するオリゴ糖が挙げられる。他の供給源からの可溶性繊維としては、例えば、ペクチン、アカシアガム、ガム、アルギン酸塩、寒天、ポリデキストロース、イヌリン及びガラクトオリゴ糖が挙げられる。一部の可溶性繊維は、大腸に存在するプロバイオティクスのエネルギー源であることから、プレバイオティクスと呼ばれる。可溶性繊維の更なる利点としては、糖尿病予防、コレステロールのコントロール、又は心血管疾患のリスク低減において重要である、血糖コントロールが挙げられる。
【0036】
本発明の一実施形態では、可溶性画分はモルト抽出物であり得る。
【0037】
本プロセスにおける出発材料は、全粒穀物であり得る。全粒穀物は、穀物の食用部分全体、すなわち胚芽、胚乳及びふすまを含む穀物粒から作製された生成物である。
【0038】
本発明の一実施形態では、全粒穀物は、全粒穀物、欧州特許第0031050号に開示されているような穀物生成物、液体全粒穀物(LWG)、ミリングされた全粒穀物若しくは穀粉、又はこれらの任意の組み合わせから提供され得る。
【0039】
本文脈において、「穀物」という用語は、食用のデンプン質穀粒のために栽培されるイネ科(Poaceae family)(イネ科(grass family))の単子葉植物に関する。
【0040】
本発明の一実施形態では、全粒穀物は、オオムギ、玄米、ワイルドライス、ブルグル、トウモロコシ、キビ、オートムギ、ソルガム、スペルト、ライコムギ、ライムギ、コムギ、コムギ粒、テフ、カナリーグラス、はと麦、フォニオ及び擬穀類からなる群から選択される。イネ科(grass family)に属していないものの、穀物粒と同じように使用され得る同様のデンプン質の種子又は果実を産生する植物種は、擬穀類と呼ばれる。擬穀類の例としては、アマランス、ソバ、ダッタンソバ、及びキノアが挙げられる。
【0041】
好ましくは、穀物粕は、オオムギ、ソルガム、米、コムギ、オートムギ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される穀物に由来する。好ましくは、穀物粕はオオムギに由来する。
【0042】
本発明の更なる実施形態では、「穀物」及び/又は「全粒穀物」という用語は、穀物及び擬穀類の両方を含む。好ましくは、「穀物」及び/又は「全粒穀物」という用語は、擬穀類を含まない。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、全粒穀物は、モルト化された全粒穀物である。
【0044】
本発明に記載されたプロセスによってもたらされる不溶性画分の1つの利点は、不溶性画分の懸濁特性が改善されることであり得る。この改善は、例えば100μmを超える主粒径(main particle size)を有する未処理の不溶性画分の懸濁特性と比較して考慮される。
【0045】
本明細書において、「懸濁特性」という用語は、不溶性画分が液相中に懸濁される度合いに関する。通常、不溶性粒子は、機械的撹拌、撹拌又は振盪によって液相全体に分散され得る。懸濁液は、静置された場合、不溶性画分が最終的に沈降する、又は不溶性画分の少なくとも一部が最終的に時間の経過とともに沈降する溶液である。
【0046】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態では、全粒穀物は、モルト化されていない全粒穀物である。
【0047】
本プロセスで使用される穀物粕は、モルト化されている又はモルト化されていない穀物の処理から得られることが好ましい。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明による方法の工程(iv)における分離から得られる可溶性画分は、好ましくは40%(w/w)未満、好ましくは30%(w/w)未満の残留デンプンレベルまで濃縮される。
【0049】
有利には、飲料原材料は、残留デンプンが30%(w/w)未満のデンプン、好ましくは5%(w/w)未満のデンプン、より好ましくは2%(w/w)未満のデンプンである、本発明による方法で得られる濃縮物を含む。
【0050】
有利には、本発明による方法で得られる濃縮物は、濃縮前に少なくとも10%から97.5%(w/w)までの可溶性画分を含む。
【0051】
本発明による方法における加水分解は、α-アミラーゼ、プロテアーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、β-グルカナーゼ、プルラナーゼ、リパーゼ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、異なる機能を有する酵素の混合物を使用して実施されてもよい。
【0052】
本発明の別の態様は、上記方法から得られる全粒穀物ベースの抽出物に関する。
【0053】
本発明の更に別の態様は、改善された官能特性及び/又は改善された栄養価を有する飲料を調製する方法であって、
(a)本発明による飲料原材料を用意する工程と、
(b)工程(a)の飲料原材料を液体成分と混合し、飲料を得る工程と、
を含む、方法を提供する。
【0054】
本発明の更に別の態様は、
(1)液体成分;及び
(2)本発明による飲料原材料
からなる飲料を提供することである。
【0055】
本発明はまた、全粒穀物及び穀物粕からの可溶性画分を含む変性全粒穀物抽出物の、料理用ソース、チョコレート、シリアルバー用バインダー、及び朝食用シリアルにおける使用に関する。
【0056】
既存のモルト抽出物と比較して、本発明による方法を用いて得られた濃縮物は、穀物由来の可溶性タンパク質及び食物繊維がより多く、穀粉又は穀物のマッシングプロセスからの副生成物又はサイドストリーム又は穀物粕の使用により、糖が少なく、よりサステイナブルである。したがって、この製品は、副生成物と、より少量の穀物とを使用することにより、製造コストも通常のモルト抽出物と比較して低くなる可能性がある。
【0057】
飲料の官能特性を制御するため、及び/又は飲料の栄養価を改善するために、不溶性画分の少なくとも50%が上述の粒径を有する粒子を含むこと、例えば不溶性画分の少なくとも75%が上述の粒径を有する粒子を含むこと、例えば不溶性画分の少なくとも90%が上述の粒径を有する粒子を含むこと、例えば不溶性画分の少なくとも95%が上述の粒径を有する粒子を含むこと、例えば不溶性画分の少なくとも98%が上述の粒径を有する粒子を含むことが好ましい。
【0058】
本発明の一実施形態では、工程における磨砕は、ミリング、超音波、微粉化、高圧均質化、押出及びこれらの組み合わせからなる群から選択される方法の使用によって実施される。
【0059】
更に、磨砕プロセスをより効果的にするために、全粒穀物の磨砕に水を添加してもよい。
【0060】
磨砕プロセスに続いて、磨砕された全粒穀物は全粒穀物の高分子要素の加水分解に供されてもよい。例えば、磨砕された全粒穀物は、炭水化物及び/又はタンパク質、及び/又は脂質、及び/又は他の有機成分(例えば、ポリフェノール)の加水分解に供されてもよい。
【0061】
本発明の一実施形態では、例えば炭水化物及び/又はタンパク質の加水分解(工程(iii)における)は、酵素による変性であってもよい。好ましくは、酵素による変性は、10℃~122℃の範囲、好ましくは20℃~100℃の範囲、例えば20~40℃の範囲又は40℃~65℃の範囲の温度で実施され得る。
【0062】
本発明の更なる実施形態では、例えば炭水化物及び/又はタンパク質の加水分解(工程(iii)における)は、デンプンの実質的に完全な変性が起こるまで行われ得る。「実質的に完全な変性」という用語は、元のデンプン含有量の多くとも10%が変性後に残存し得ること、例えば、元のデンプン含有量の多くとも5%など、例えば多くとも2%、例えば多くとも1%、例えば多くとも0.5%が、変性後に残存し得ることに関する。
【0063】
例えば、工程(iii)における炭水化物及び/又はタンパク質の加水分解は、1つ以上の内因性酵素によって、及び/若しくは1つ以上の外因性酵素の添加によって、又はこれらの組み合わせによって、行われ得る。
【0064】
1つ以上の外因性酵素に関して、このような外因性酵素は、プロテアーゼ、デキストリナーゼ、細胞壁加水分解酵素、アミラーゼ及びアミログルコシダーゼ、これらの断片、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。好ましくは、上記酵素のいくつかの混合物を使用することができる。
【0065】
全粒穀物の栄養価を維持するために、1つ以上の外因性酵素の少なくとも1つは、活性状態にあるときに食物繊維に対する変性活性を示さない酵素であってもよい。
【0066】
本発明の一実施形態では、内因性酵素及び/又は外因性酵素の少なくとも1つは、プロテアーゼ及び/又はアミラーゼである。プロテアーゼは、アルカリ性、中性及び/又は酸性のpH条件で活性であり得る。
【0067】
本発明の更なる実施形態では、プロテアーゼは、メタロプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0068】
アミラーゼは、好ましくは、1,4-α-D-グルカングルカノヒドロラーゼ若しくはグリコゲナーゼなどのα-アミラーゼ、1,4-α-D-グルカンマルトヒドロラーゼ若しくはサッカロゲンアミラーゼなどのβ-アミラーゼ、アミログルコシダーゼ若しくはエクソ-1,4-α-グルコシダーゼなどのグルコアミラーゼ、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0069】
例えば炭水化物及び/又はタンパク質の加水分解が実質的に完全な変性に達した場合、プロセスは、酵素活性を不活性化する工程を更に含んでもよい。この不活性化は、温度を40~130℃の範囲、好ましくは75~85℃の範囲の温度に変化させることによって行うことができる。好ましくは、不活性化は、少なくとも15秒間、例えば少なくとも30秒間、例えば少なくとも1分間、例えば少なくとも5分間、例えば少なくとも10分間、例えば少なくとも20分間、例えば少なくとも30分間行われてもよい。
【0070】
全粒穀物の異なる高分子要素の加水分解は、化学的変性、例えば、酸加水分解などの当該技術分野で公知の任意の他の手段によっても達成することができる。
【0071】
加水分解が終了し、全粒穀物の可溶性部分が不溶性部分から遊離すると、可溶性画分と不溶性画分とを分離することができる。したがって、本発明の一実施形態では、不溶性画分からの可溶性画分の分離(工程(iv)における)は、濾過、遠心分離、デカンテーション及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0072】
可溶性画分の用途に応じて、特定の成分を含む異なる画分を用意するために可溶性画分を更に処理してもよく、又は可溶性画分を濃縮してもよい。好ましくは、分離(工程(iv)における)から得られた可溶性画分は濃縮される。濃縮物は、濃縮前に少なくとも10%から97.5%(w/w)までの可溶性画分を含み得る。最終濃縮物は、液体、ゲル又は粉末の形態であり得る。
【0073】
得られた不溶性画分を、更なる処理に供してもよい。
【0074】
本発明の一実施形態では、(分離工程(v)から得られた)変性全粒穀物の不溶性画分を、(工程(v)における)第2の磨砕の前、最中又は後に、第2の酵素処理、化学処理、発酵、又はこれらの組み合わせに供してもよい。
【0075】
更なる処理工程は、第2の酵素処理であってもよい。好ましくは、第2の酵素処理は、1つ以上の外因性酵素によって実施される。本発明の一実施形態では、1つ以上の外因性酵素は、細胞壁加水分解酵素であり、好ましくは、アラビノキシラナーゼ、β-グルカナーゼ、セルラーゼ、エンドキシラナーゼ(エンド-1,4-β-キシラナーゼ、E.C.3.2.1.8を含む)、β-キシロシダーゼ(キシラン1,4-β-キシロシダーゼ、E.C.3.2.1.37を含む)、α-グルクロニダーゼ(α-グルコシデュロナーゼ(α-glucosiduronase)、E.C.3.2.1.139を含む)、α-アラビノフラノシダーゼ(α-L-アラビノフラノシダーゼ、E.C.3.2.1.55を含む)、アセチルキシランエステラーゼ(E.C.3.1.1.72、β-キシロシダーゼ及びその断片を含む)からなる群から選択される。
【0076】
1つ以上の外因性酵素の効果は、全粒穀物及び/もしくは不溶性画分の構造特性の変化並びに/又は味覚及び栄養特性などの機能性の改善であり得る。
【0077】
本明細書に記載のプロセスから得られた処理後不溶性画分は、穀物ベースの画分と呼ばれる。この穀物ベースの画分は、好ましくは飲料原材料として直接使用してもよい。
【0078】
本発明の一実施形態では、飲料原材料は、穀物ベースの画分を含む。磨砕及び加水分解された全粒穀物の不溶性部分の変性から生じる穀物ベースの画分は、最大で100μm、例えば最大で50μm、例えば最大で30μmの粒径と、多くとも20%(w/w)のデンプン、例えば多くとも5%(w/w)のデンプン、例えば多くとも3%(w/w)のデンプン、例えば多くとも2%(w/w)のデンプン、例えば多くとも1%(w/w)デンプンの残留デンプンレベルとを有する粒子を含む。
【0079】
本文脈において、「全粒穀物ベースの抽出物」という用語は、不溶性画分、又は可溶性画分と不溶性画分との組み合わせ、を含む全粒穀物ベースの抽出物に関する。
【0080】
本発明の別の実施形態では、飲料原材料は、5~30%(w/w)の食物繊維、例えば8~25%(w/w)の食物繊維、例えば10~20%(w/w)の食物繊維、例えば12~17%(w/w)の食物繊維を含む。
【0081】
変性穀物ベースの画分の更に別の実施形態は、25~75%(w/w)の食物繊維;10~35%(w/w)のタンパク質及び10~35%(w/w)の炭水化物を含む。
【0082】
上述のように、全粒穀物ベースの抽出物は、可溶性画分と不溶性画分の両方の組み合わせであってもよい。本発明の一実施形態では、飲料原材料は、変性全粒穀物の可溶性画分を少なくとも15%(w/w)、例えば少なくとも25%(w/w)、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも75%含む。
【0083】
本発明の一実施形態では、飲料原材料は、多くとも70%(w/w)のタンパク質又はその断片、例えば多くとも50%(w/w)のタンパク質又はその断片、例えば多くとも20%(w/w)のタンパク質又はその断片、例えば多くとも2%(w/w)のタンパク質又はその断片、例えば多くとも1%(w/w)のタンパク質又はその断片を含む。
【0084】
本発明の別の実施形態では、飲料原材料は、少なくとも5%(w/w)のタンパク質又はその断片、例えば少なくとも10%(w/w)のタンパク質又はその断片、例えば少なくとも25%(w/w)のタンパク質又はその断片、例えば少なくとも50%(w/w)のタンパク質又はその断片、例えば少なくとも60%(w/w)のタンパク質又はその断片を含む。
【0085】
本発明の飲料原材料は、高糖飲料原材料又は低糖飲料原材料であってもよいことが有利であり得る。飲料が高糖飲料原材料である場合、飲料原材料は、50%(w/w)超から95%(w/w)までのスクロース、例えば最大で85%(w/w)のスクロース、例えば最大で75%(w/w)のスクロース、例えば最大で65%(w/w)のスクロースを含む。飲料原材料が低糖飲料原材料である場合、飲料原材料は、多くとも50%(w/w)のスクロース、例えば多くとも40%のスクロース、例えば多くとも25%のスクロース、例えば多くとも15%のスクロース、例えば多くとも10%のスクロース、例えば多くとも5%のスクロース、例えば0%のスクロースを含む。
【0086】
飲料及び飲料原材料の官能印象を制御及び/又は改善するために、飲料原材料は風味成分を含む。本発明の一実施形態では、風味成分は、ココア、コーヒー、果実、モルト、大豆、茶、野菜、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0087】
飲料原材料はまた、脂肪成分を含んでもよい。本発明の一実施形態では、脂肪成分は、植物性脂肪成分、魚油成分又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0088】
飲料原材料は、脱脂乳成分及び/又は乳成分などの乳成分を更に含んでもよい。
【0089】
飲料原材料の用途及び製造条件に応じて、飲料原材料は、液体、濃縮物、ピューレ又は粉末の形態であってもよい。
【0090】
本発明の場合、モルト抽出物は、変性全粒穀物の可溶性画分とみなすことができる。
【0091】
本発明の別の実施形態では、飲料原材料は、乾物基準で、10~50%(w/w)、好ましくは約30%(w/w)の変性穀物ベースの画分;15~45%(w/w)、好ましくは約20%(w/w)の脱脂粉乳;8~30%(w/w)、好ましくは約15%(w/w)のスクロースを含む。
【0092】
飲料原材料の好ましい実施形態では、飲料原材料は、10~15重量%のタンパク質と、5~10重量%の繊維とを有する。
【0093】
飲料原材料は、好ましくは、飲料の調製のために使用され得る。特に、飲料原材料は、改善された官能特性及び/又は改善された栄養価を有する飲料の調製のために使用されてもよい。
【0094】
この飲料は、
(a)本発明に記載の飲料原材料を用意する工程と、
(b)工程(a)の飲料原材料を液体成分と混合して、飲料を得る工程と、
によって調製され得る。
【0095】
液体成分は、摂取可能な任意の種類の液体成分であってもよい。好ましくは、液体成分は、水、乳、果汁、野菜汁又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0096】
乳成分は、全乳、乳清画分、カゼイン、これらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0097】
したがって、
(1)液体成分;及び
(2)本発明に記載の飲料原材料
からなる飲料が提供され得る。
【0098】
本文脈において、「飲料」という用語は、乾燥粉末、スラリー又は液体の形態の組成物を指す。乾燥粉末は、摂取に適した任意の適用可能な液体中で再構成され得ることが理解されるべきである。スラリー又は液体は、摂取に適した任意の適用可能な液体を使用して更に希釈されてもよい。
【0099】
上記飲料は、レディ・トゥ・ドリンクベースで少なくとも5%(w/w)の変性全粒穀物の可溶性画分、例えばレディ・トゥ・ドリンクベースで少なくとも10%(w/w)の変性全粒穀物の可溶性画分、例えばレディ・トゥ・ドリンクベースで少なくとも20%(w/w)の変性全粒穀物の可溶性画分、例えばレディ・トゥ・ドリンクベースで少なくとも30%(w/w)の変性全粒穀物の可溶性画分、例えばレディ・トゥ・ドリンクベースで少なくとも50%(w/w)の変性全粒穀物の可溶性画分を含み得る。
【0100】
穀物ベースの画分の濃度は、レディ・トゥ・ドリンクベースで飲料の少なくとも5%(w/w)、例えばレディ・トゥ・ドリンクベースで飲料の少なくとも10%(w/w)、例えばレディ・トゥ・ドリンクベースで飲料の少なくとも20%(w/w)、例えばレディ・トゥ・ドリンクベースで飲料の少なくとも20%(w/w)、例えばレディ・トゥ・ドリンクベースで飲料の少なくとも30%(w/w)、例えばレディ・トゥ・ドリンクベースで飲料の少なくとも50%(w/w)、例えばレディ・トゥ・ドリンクベースで飲料の少なくとも75%(w/w)であってもよい。
【0101】
更に、飲料は、飲料の少なくとも5%(w/w)、例えば飲料の少なくとも10%(w/w)、例えば飲料の少なくとも15%(w/w)、例えば飲料の少なくとも20%(w/w)、例えば飲料の少なくとも25%(w/w)のタンパク質又はその断片の濃度を有してもよい。
【0102】
飲料中の全粒穀物の含有量を増加させることが可能であることから、当該飲料は消費者に健康効果をもたらすことができると考えられる。
【0103】
このような健康効果は、胃腸の健康を改善すること、より良好な免疫系を提供すること、健康的な老化を提供すること、便秘を低減すること、コレステロールを低下させること、心血管疾患の発生率を低減すること、肥満を低減すること、糖尿病の発生率を低減すること、又はこれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0104】
本文脈において、「(w/w)」という用語は、別段の記載がない限り、乾燥物ベースでの化合物又は産物の重量対重量比に関する。
【0105】
本発明の一態様の文脈で記載されている実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも当てはまることに注意が必要である。
【0106】
本出願に引用されている全ての特許文献及び非特許文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0107】
改善された懸濁特性を有する穀物ベースの画分を有することには、いくつかの利点が存在する。
I.製品の官能パラメータに実質的に影響を生じさせずに、最終製品、例えば飲料における全粒穀物及び繊維含量を増加させることもできる。
II.全粒穀物の栄養価が維持され得る。
III.製品の官能パラメータに実質的に影響を生じさせずに満腹感が大きくなり、消化が遅くなる。現在、飲料を全粒で強化することには、非流動性粘度、ざらついたテクスチャー(grainy texture)、及び味の問題から限界がある。しかしながら、本発明に従って処理された全粒穀物を飲料に使用することにより、所望の粘度、所望の官能パラメータ、滑らかなテクスチャー、風味への最小限の影響、並びに栄養による健康価値及びウェルネス価値の追加をもたらすことが可能になる。
IV.更なる利点は、グルコースシロップ、高フルクトースコーンシロップ、転化糖、マルトデキストリン、スクロース、繊維濃縮物などの従来の外部から供給される甘味料を、より健康的な甘味料源に置き換えることによって、最終製品の炭水化物プロファイルを改善することであり得る。
【0108】
本発明を、以下の非限定的な実施例により更に詳細に記載する。
[実施例]
実施例1 100%緑色オオムギ抽出物を使用して作製された飲料と、50-50(重量%)の変性モルト抽出物を使用して作製された飲料とを比較した、比較プロファイリング。
表1は、100%緑色オオムギベースのモルト抽出物の処理と変性モルト抽出物の処理との間の濾過、浸出速度及び収率の比較を示す。本文脈において、浸出プロセスは、濾過プロセスの後に実施されて、水が穀物粕を通過して、穀物粕中に捕捉された可溶性物質を更に抽出して、プロセス全体の収率を最大化する。本文脈における収率は、原材料の乾物100g当たりの抽出された乾物の量として定義される。
【0109】
【0110】
表2は、全固形分80%における、100%の緑色オオムギベースのモルト抽出物と、変性モルト抽出物との栄養プロファイルの比較を示す。タンパク質及び繊維は、変性モルト抽出物では、100%緑色オオムギモルト抽出物と比較して有意に多く、かつ利用可能な炭水化物は減少している。
【0111】
【0112】
図1は、100%緑色オオムギ抽出物を使用して作製された飲料と、50-50(重量%)の変性モルト抽出物を使用して作製された飲料とを比較した比較プロファイリングを示す。
【0113】
11名のテイスターがテイスティングに参加した。データは、相分離を除いて、いずれの属性も+1/-1を超える偏差がないことを示唆し、差異が有意ではないことを示す。
【0114】
実施例2 抽出物の栄養特性を改善するための湿潤穀物粕の酵素加水分解
モルト化オオムギの濾過処理から不溶物として得られた湿潤穀物粕を、モルト化オオムギ粒(barley grist)と、1:1の割合で合わせ、酵素加水分解工程に供する。この処理は、湿潤穀物粕中に存在する不溶性物質を更に溶解して濾液を得るためのものであり、濾液は蒸発工程を経て全固形分が増加される。湿潤穀物粕を更に溶解する目的は、変性モルト抽出物と呼ばれる抽出物の栄養プロファイルを調節することである。この変性モルト抽出物は、より高いタンパク質及び食物繊維含量を有し得る。
【0115】
実施例3 変性全粒穀物とふすまモルト抽出物とを有するカカオ飲料
粉末は、水100mL当たり15gで投入され、1回分が28~30グラムであるとして定められる。粉末は30~40%の変性全粒及びふすまモルト抽出物(好ましくは約38%)、15%~40%の脱脂粉乳(好ましくは~約21%)、10~20%の砂糖(好ましくは15%)、10~20%のココア(好ましくは12%)及び5~15%の脂肪(10%)を含有し、かかる全粒及びふすまモルト抽出物は、約1~5%の、利用済み穀物粕を含有し、この穀物粕は約50%の不溶性繊維、約25%のタンパク質及び約25%炭水化物からなる。飲料は、1回分当たり255kcal未満のカロリー値を有し、食事(例えば朝食)の大部分として摂取されることが意図される。
【国際調査報告】