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特表2024-533625冷間プレス固体凝集体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】冷間プレス固体凝集体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/08 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
C10B53/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024517533
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 BR2022050327
(87)【国際公開番号】W WO2023039652
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】BR1020210187166
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524102006
【氏名又は名称】テクノルド・ディセンヴォルヴィメント・テクノロジコ・エス・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ロペス・デ・オリヴェイラ
(72)【発明者】
【氏名】ギリェルメ・フランシスコ・ゴンサウヴェス
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・マイケル・ポッター
(72)【発明者】
【氏名】ルジミラ・ロペス・ナシメント・ブラジウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョジレーネ・ペレイラ・ベネヴィデス
(72)【発明者】
【氏名】アロルド・デ・ソウザ・タヴァレス
(72)【発明者】
【氏名】クラウデシル・シルヴァ・ゴンサウヴェス
(72)【発明者】
【氏名】セウソ・ラモス
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012KA03
4H012KA04
(57)【要約】
本発明は、有機バインダーを使用した冷間プレス固体凝集体に関する。これに関して、本発明は、少なくとも1つの主要コンパウンド及び少なくとも1つの有機バインダーを含む混合物を含有する冷間プレス固体凝集体であって、前記少なくとも1つの有機バインダーは、水性媒体中室温で、少なくとも1つのアルカリによって制御されたpH下でデンプンの化学反応によって得られる、冷間プレス固体凝集体を提供する。更に、本発明は、以下の工程:(i)少なくとも1つの主要コンパウンドを少なくとも1つの有機バインダーと混合する工程と;(ii)混合物を冷間プレスして、凝集体を形成する工程と、を含み、前記少なくとも1つの有機バインダーは、水性媒体中室温で、少なくとも1つのアルカリによって制御されたpH下で、デンプンの化学反応によって得られる、冷間プレス固体凝集体を製造する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの主要コンパウンド及び少なくとも1つの有機バインダーを含む混合物を含む冷間プレス固体凝集体であって、
前記少なくとも1つの有機バインダーは、水性媒体中室温で、少なくとも1つのアルカリを用いて制御されたpH下で、デンプンの化学反応によって得られたものであることを特徴とする、冷間プレス固体凝集体。
【請求項2】
炭素系コンパウンド又は二価鉄系コンパウンドで構成された凝集体であることを特徴とする、請求項1に記載の凝集体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの有機バインダーは、以下の質量割合の試薬:
水:83~87.5%;
デンプン:12~16%;
水酸化ナトリウム:0.5~1%
を用いて得られたものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の凝集体。
【請求項4】
前記デンプンが通常のトウモロコシデンプンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の凝集体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの有機バインダーが水に混和でき、室温で流体であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の凝集体。
【請求項6】
少なくとも1つの添加剤を更に含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の凝集体。
【請求項7】
少なくとも1つの主要コンパウンドを少なくとも1つの有機バインダーと混合する工程と;
混合物を冷間プレスして、凝集体を形成する工程と
を含む、冷間プレス固体凝集体を製造する方法であって、
前記少なくとも1つの有機バインダーを、水性媒体中室温で、少なくとも1つのアルカリを用いて制御されたpH下で、デンプンの化学反応によって得ることを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記化学反応の工程では、以下の質量割合の試薬:
水:83~87.5%;
デンプン:12~16%;
水酸化ナトリウム:0.5~1%
を使用することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物を冷間プレスする工程の前に、前記混合物に添加剤を添加する工程を含むことを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を冷間プレスする工程の後に、前記固体凝集体を乾燥する工程を更に含むことを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体凝集体に関する。特に、本発明は、有機バインダーを使用した冷間プレス固体凝集体に関する。
【背景技術】
【0002】
冷間凝集法は、微粒材料を寄せ集めて、バインダーの使用によってより大きな製品を得ることからなる。この方法は、例えば、通常は廃棄される小さな粒子で構成された分画を使用することにより、高品質の金属凝集体や石炭ブリケットを得ることができる。
【0003】
石炭のブリケット化は、業界で支持が増している様々な冷間凝集法の1つである。鉱物石炭と植物石炭の両方に使用できるこの技術は、通常、i)石炭又はバイオマス粒子の粒度的バランスを取る工程と;(ii)バインダー(凝集剤(agglomerant))を混合する工程と;(iii)機械的圧縮工程と;(iv)ブリケットを乾燥する工程とを含む。
【0004】
ブリケット化法で使用されるバインダーは、鉱物又は有機物起源のものであってもよい。これらのバインダーは、ブリケットの形成において重要な役割を果たし、未加工のブリケット(green briquette)及びその乾燥後に熱可塑性特性(可塑性、靭性、及び耐圧縮性)を与える。現在、石炭ブリケット化産業で最も広く使用されている有機バインダーの1つは、押出成形又はドラム乾燥機によって130~150℃の温度で熱処理されたトウモロコシ粉又はトウモロコシデンプンである。
【0005】
熱処理されたトウモロコシ粉とトウモロコシデンプンはいずれも、製造に比較的高価で複雑な機器と施設を必要とする。また、小麦粉及び/又はトウモロコシデンプンが受ける熱変性プロセスにより、それらの分子鎖が破壊され、それらの結合特性が大幅に低下する。これにより、ブリケット中のバインダー量が増えることを意味し、バインダーの割合がブリケット中で、木炭又はバイオマスの量の低減を引き起こすほど高くなると、最終製品がより高価になり、その発熱量が減少する。
【0006】
最後に、業界は、物理的ブリケットの形成(未加工)から炉やスチールリアクターでの燃焼に至るまでの物理的ブリケットの性能及び特性を改善するための代替品を開発し、模索していることにも注目すべきである。これに関して、特定のブリケット特性を改善するために、ブリケット組成物に粉末(又は液体)添加剤を使用することが、現在非常に一般的である。このシナリオでは、従来技術のバインダーには限界がある。凝集塊の水分(遊離水)のパーセンテージが、粉末形態の小麦粉及び熱処理デンプンを完全に糊化するのに必要な量よりも低くなる場合があるからである。この条件では、熱処理されたトウモロコシ粉又はデンプンバインダーの接着特性の発現が妨げられる。
【0007】
本発明は、前記の問題を実際的且つ効率的な方法で解決することを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、冷間プレス固体凝集体、及び、製造が容易なバインダーを使用し、バインダーを工業化するための機器、設備、及び熱エネルギーの使用を必要としない、その製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の第2の目的は、冷間プレス固体凝集体、及び、バインダーの使用量が少ないその製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の第3の目的は、冷間プレス固体凝集体、及び、室温で水に混和性で流動性があり、組み込みやすく、混合物中に添加剤を溶解しやすい液体バインダーを使用し、操作上の実用性をもたらす、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、少なくとも1つの主要コンパウンド及び少なくとも1つの有機バインダーを含む混合物を含有する冷間成形プレス体凝集体であって、少なくとも1つの有機バインダーは、水性媒体中室温で、少なくとも1つのアルカリを用いて、制御されたpH下でデンプンの化学反応によって得られたものである、冷間プレス固体凝集体を提供する。
【0012】
更に、本発明は、(i)少なくとも1つの主要コンパウンドを少なくとも1つの有機バインダーと混合する工程と;(ii)前記混合物を冷間プレスして、凝集体を形成する工程と、を含む、冷間プレス固体凝集体を製造する方法であって、少なくとも1つの有機バインダーは、水性媒体中室温で、少なくとも1つのアルカリによって制御されたpH下で、デンプンの化学反応によって得られたものである、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
事前に、以下の説明は本発明の好ましい実施形態から始まることに留意されたい。しかしながら、当業者には明らかなように、本発明はこれらの特定の実施形態に限定されない。
【0014】
本発明は、冷間プレス固体凝集体及びその製造方法を提供する。本発明の冷間プレス固体凝集体は、少なくとも1つの主要コンパウンド及び少なくとも1つの有機バインダーを含有する混合物を含む。
【0015】
主要コンパウンドは、例えば、バイオマス、木炭、及び鉱物炭のうちの少なくとも1つであってもよい。このようなコンパウンドは、おそらく組成や粒度が異なる、様々な石炭又はバイオマスの混合物であってもよい。或いは、主要コンパウンドは、少なくとも1つの金属であってもよく、金属凝集体を発生させる。
【0016】
少なくとも1つの有機バインダーは、水性媒体中室温で、少なくとも1つのアルカリを用いて制御されたpH下で、デンプンの化学反応によって得られたものであることが好ましい。少なくとも1つのアルカリは、水酸化ナトリウムであることがより好ましい。
【0017】
少なくとも1つの有機バインダーは、以下の質量割合の試薬:
水:83~87.5%;
デンプン:12~16%;
水酸化ナトリウム:0.5~1%、
を使用して得られたものであることが好ましい。
【0018】
本発明の反応に使用されるデンプンは、天然トウモロコシデンプンとしても知られる通常のトウモロコシデンプンであることが好ましい。本発明の反応に使用される水酸化ナトリウムは、10%~50%の水酸化ナトリウム(水酸化ナトリウム水溶液)であることが好ましい。
【0019】
化学反応で生成される少なくとも1つの有機バインダーは、添加剤を実用的な方法で希釈できるような形態であることが好ましい。
【0020】
本発明による冷間プレス固体凝集体を製造する方法は、(i)少なくとも1つの主要コンパウンドを少なくとも1つの有機バインダーと混合する工程と;(ii)前記混合物を冷間プレスして、凝集体を形成する工程と、を含み、そのために、少なくとも1つの有機バインダーを、水性媒体中室温で、少なくとも1つのアルカリによって制御されたpH下で、デンプンの化学反応によって得る。
【0021】
任意選択で、本発明の方法は、混合物を冷間プレスする工程の前に、混合物に添加剤を添加する工程を含む。
【0022】
任意選択で、本発明の方法は、混合物を冷間プレスする工程の後に、固体凝集体を乾燥する工程を含む。
【0023】
試験により、上記の方法によって得られた本発明による冷間プレス固体凝集体は、バインダーとして熱変性されたトウモロコシ粉及び/又はデンプンを、押し出し又はドラム乾燥させたものを使用する従来技術の凝集体と比較した場合、著しく優れた物理的特性を有することが示された。以下のTable 1(表1)は、本発明の凝集体、具体的には未加工の石炭ブリケット、及び従来技術の凝集体についての様々な試験の結果を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
見てわかるように、本発明による固体凝集体は、バインダーとして小麦粉及び/又は熱変性デンプンを使用する従来技術の凝集体よりもかなり良好な結果を示した。未加工のブリケットによって示された結果により、バインダーの化学反応によって促進される糊化の度合いが大きいほど、凝集体粒子間の接着力が大きくなり、その結果、強靭性(落下試験)とより大きい耐圧縮性の点で優れた性能が得られることが示された。
【0026】
上述の特性の向上に加えて、本発明の凝集体に使用される有機バインダーを得る方法は、熱機械的ではないため、デンプン分子の破壊がなく、その結合特性が低下することはない。結果として、従来技術の凝集体と比較した場合、本発明の凝集体の製造に使用されるバインダーの最大70%が節約される。これは、製品中の主要コンパウンド(例えば、石炭等)の分率を増加させることにより、凝集体の純度を大幅に向上させることにも貢献する。
【0027】
したがって、上で説明したように、本発明は、製造が容易なバインダーを使用した冷間プレス固体凝集体及びその製造方法を提供し、押出機の必要性及びデンプンを加工するための熱エネルギーの使用を排除する。更に、本発明は、液体バインダーを使用するため、添加剤を混合物中に容易且つ実用的に溶解することができる。最後に、本発明の技術は、従来技術の凝集体と比較した場合、使用するバインダーの量が大幅に少なく、固体凝集体の純度を高める。
【0028】
本願の保護範囲に影響を与える多くの変形が許容される。すなわち、本発明が上述の実施形態に限定されないことが強調される。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの主要コンパウンド及び少なくとも1つの有機バインダーを含む混合物を含む冷間プレス固体凝集体であって、
前記少なくとも1つの有機バインダーは、水性媒体中室温で、水酸化ナトリウムを用いて制御されたpH下で、デンプンの化学反応によって得られたものであることを特徴とする、冷間プレス固体凝集体。
【請求項2】
前記主要コンパウンドは、少なくとも1つの金属、又は、バイオマス、木炭、及び鉱物炭のうちの少なくとも1つ、で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の凝集体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの有機バインダーは、以下の質量割合の試薬:
水:83~87.5%;
デンプン:12~16%;
水酸化ナトリウム:0.5~1%
を用いて得られたものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の凝集体。
【請求項4】
前記デンプンが通常のトウモロコシデンプンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の凝集体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの有機バインダーが水に混和でき、室温で流体であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の凝集体。
【請求項6】
少なくとも1つの添加剤を更に含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の凝集体。
【請求項7】
少なくとも1つの主要コンパウンドを少なくとも1つの有機バインダーと混合する工程と;
混合物を冷間プレスして、凝集体を形成する工程と
を含む、冷間プレス固体凝集体を製造する方法であって、
前記少なくとも1つの有機バインダーを、水性媒体中室温で、水酸化ナトリウムを用いて制御されたpH下で、デンプンの化学反応によって得ることを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記化学反応の工程では、以下の質量割合の試薬:
水:83~87.5%;
デンプン:12~16%;
水酸化ナトリウム:0.5~1%
を使用することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物を冷間プレスする工程の前に、前記混合物に添加剤を添加する工程を含むことを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を冷間プレスする工程の後に、前記固体凝集体を乾燥する工程を更に含むことを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】