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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ねじ切り切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23G 5/18 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B23G5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518090
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2022075501
(87)【国際公開番号】W WO2023046546
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】21198196.4
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506297474
【氏名又は名称】ヴァルター アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クデラー, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ビーラー, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルスタイン, マルティン
(57)【要約】
本発明は、金属切削用のねじ切り切削工具に関し、細長い本体を備え、本体(1)は、前端(2)から軸方向後方に延び、複数の歯(7)を備える切削セクション(5)を備える。複数の歯(7、22)は、少なくとも第1の組(6)の円周方向に離間した歯(7)を備え、少なくとも第1の組の各歯(7)は、前端まで同じ第1の軸方向距離(8)を有し、各歯(7)の逃げ面(14)は、半径方向逃げ角を有する。少なくとも第1の組(6)の歯の各歯(7)の逃げ面(14)は、回転方向前方部分(16)と、回転方向後方部分(17)とを備え、前方部分(16)は、刃先(15)から刃先(15)の回転方向後ろに延び、前方部分(16)の半径方向逃げ角(α)は、後方部分(17)の半径方向逃げ角(β)よりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属切削用のねじ切り切削工具であって、細長い本体を備え、前記本体(1)は、
前端(2)と、後端と、前記前端(2)から前記後端に延びる中央長手方向軸(3)とを有し、
前記中央長手方向軸(3)の周りで回転方向(4)に回転可能に構成され、
前記前端(2)から軸方向後方に延び、複数の歯(7)を備える切削セクション(5)を備え、
前記複数の歯(7、22)の各歯(7)は、すくい面(13)と、逃げ面(14)と、前記すくい面(13)と前記逃げ面(14)の交差部における刃先(15)とを備え、
前記複数の歯(7、22)は、少なくとも第1の組(6)の円周方向に離間した歯(7)を備え、
前記少なくとも第1の組の各歯(7)は、前記前端まで同じ第1の軸方向距離(8)を有し、
各歯(7)の前記逃げ面(14)は、半径方向逃げ角を有し、
前記少なくとも第1の組(6)の歯の各歯(7)の前記逃げ面(14)は、
回転方向前方部分(16)と、回転方向後方部分(17)と
を備え、
前記前方部分(16)は、前記刃先(15)から前記刃先(15)の回転方向後ろに延び、
前記前方部分(16)の前記半径方向逃げ角(α)は、前記後方部分(17)の前記半径方向逃げ角(β)よりも小さい
ことを特徴とする、
ねじ切り切削工具。
【請求項2】
前記前方部分(16)の前記半径方向逃げ角(α)は、少なくとも1°および5°未満である、請求項1に記載のねじ切り切削工具。
【請求項3】
前記前方部分(16)の前記半径方向逃げ角(α)は、少なくとも2°および最大3°である、請求項2に記載のねじ切り工具。
【請求項4】
断面で見たとき、前記前方部分(16)は、少なくとも1°および最大15°の角度(γ)を有する円セクタ内に円周方向延長部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のねじ切り切削工具。
【請求項5】
前記前方部分(16)は、少なくとも5°および最大10°の角度(γ)を有する円セクタ内に円周方向延長部を有する、請求項4に記載のねじ切り切削工具。
【請求項6】
前記後方部分(17)の前記半径方向逃げ角(β)は、少なくとも5°および最大10°である、請求項1~5のいずれか一項に記載のねじ切り切削工具。
【請求項7】
前記後方部分(17)の前記半径方向逃げ角(β)は、少なくとも6°および最大7°である、請求項6に記載のねじ切り切削工具。
【請求項8】
前記前方部分(16)と前記後方部分(17)の両方の前記半径方向逃げ角(α、β)は、一定である、請求項1~7のいずれか一項に記載のねじ切り切削工具。
【請求項9】
前記逃げ面(14)は、前記前方部分(16)および前記後方部分(17)からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載のねじ切り切削工具。
【請求項10】
前記複数の歯(7、22)は、いくつかの組(6)の円周方向に離間した歯(7)を備え、各組(6)の各歯(7)は、同じ組(6)のすべての他の歯(7)と同じ前記前端(2)までの軸方向距離(8)を有し、かつ他の組(6)のすべての前記歯(7)と異なる前記前端(2)までの軸方向距離(8)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のねじ切り切削工具。
【請求項11】
前記逃げ面(14)の前記半径方向逃げ角(α、β)は、すべての組(6)の円周方向に離間した歯(7)のすべての歯(7)について同じである、請求項10に記載のねじ切り切削工具。
【請求項12】
前記ねじ切り切削工具は、最大深さ(L)で公称ねじ径(D)を有するねじ山を切削するように構成され、前記最大深さ(L)と前記公称ねじ径の比(L/D)は、少なくとも2.5および最大5である、請求項1~11のいずれか一項に記載のねじ切り切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削用、好ましくは金属ワークピースの雌ねじを切削するためのねじ切り切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
雌ねじを含む金属構成要素は、例えばねじ継手などの多くの様々な分野で使用されている。その結果、金属ワークピースに雌ねじを設けるための様々な異なる切削工具、特に、ねじ切り切削工具が開発されている。そのようなねじ切り工具は、従来、細長い本体の軸方向平面に円周方向に間隔を置いて位置する切削歯を備えている。ねじ切り切削工具は、典型的には、ワークピースの予め穿孔された穴に雌ねじを切削するために使用され、ねじ切り切削工具の直径は、穴の直径よりも小さい。動作中、ねじ切りカッターが穴に挿入された後、ねじ切りカッターは工具の中央軸の周りを回転し、穴の中心軸の周りを穴壁に沿って移動する。同時に、ねじ切りカッターは、穴壁内に半径方向および軸方向に供給される。
【0003】
先行技術のねじ切り切削工具の問題は、いくつかの用途では、工具が振動を受けやすいことである。これは、不十分な表面仕上げまたは工具の損傷さえも引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、先行技術の欠点を軽減し、振動を受けにくい金属切削用のねじ切り切削工具を提供することである。
【0005】
この目的は、本発明によれば、請求項1に記載のねじ切り切削工具によって達成される。
【0006】
本発明は、金属切削用のねじ切り切削工具であって、細長い本体を備え、本体は、
前端と、後端と、前端から後端に延びる中央長手方向軸とを有し、
中央長手方向軸の周りで回転方向に回転可能に構成され、
前端から軸方向後方に延び、複数の歯を備える切削セクションを備え、
複数の歯の各歯は、すくい面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面の交差部における刃先とを備え、
逃げ面は、半径方向逃げ角を有し、
複数の歯は、少なくとも第1の組の円周方向に離間した歯を備え、少なくとも第1の組の各歯は、前端まで同じ第1の軸方向距離を有し、
少なくとも第1の組の歯の各歯の逃げ面は、回転方向前方部分(rotationally leading portion)と、回転方向後方部分(rotationally trailing portion)とを備え、
前方部分は、刃先から刃先の回転方向後ろに延び、
前方部分の半径方向逃げ角は、後方部分の半径方向逃げ角よりも小さい、
ねじ切り切削工具に関する。
【0007】
一般に、ねじ切り切削工具を設計する場合、より切削しやすい工具を得るためには逃げ角が大きいことが望ましい。しかし、大きな逃げ角は、工具をワークピース材料に深く食い込ませる傾向があり、それにより工具が不均一に切削して振動し始めることになる。この影響を回避するために工具を小さな逃げ角で設計することができるが、小さな逃げ角を有する工具は、多くの場合、高い切削力および摩擦力を受け、工具が意図された経路から逸脱する可能性がある。
【0008】
本発明によれば、本発明の逃げ面は、安定性を改善し、先行技術の工具の欠点を克服するように設計される。本発明の工具は、刃先の回転方向後ろに延びる逃げ面を有する第1の組の歯を備える。第1の組の各歯の逃げ面は、前方部分の刃先のすぐ後ろの方が、回転方向において後方部分の刃先のさらに後ろよりも小さい半径方向逃げ角を有する。刃先における半径方向逃げ角が小さいことにより、切削工具の支持が改善され、後方部分における半径方向逃げ角が大きいことにより、工具に対するワークピースからの圧力が低く保たれる。これにより、振動を受けにくく、より安定したねじ切り切削工具が得られる。
【0009】
本発明によるねじ切り切削工具は、ワークピースの内面から材料を除去することによって金属ワークピースの雌ねじを切削するのに適している。さらに、本発明のねじ切り切削工具は、ワークピースの予め穿孔された穴で動作するのに適しており、ねじ切り切削工具は、予め穿孔された穴の内径よりも小さい外径を有する。
【0010】
ねじ切り切削工具は、前端と、後端と、前端から後端に延びる中央長手方向軸とを有する細長い本体を備える。ねじ切り切削工具は、中央長手方向軸の周りで回転方向に回転可能に構成される。工具の部分は、中央長手方向軸の周りで回転方向に見て、回転方向に先行または後行している。工具の断面は、特に明記しない限り、長手方向軸に垂直なセクションである。好ましくは、本体は、全体的に円筒形状を有し、断面は、全体的に円形形状を有する。
【0011】
動作中、工具は、典型的には、ワークピースの予め穿孔された穴に挿入され、中央長手方向軸の周りを回転する。切削するとき、工具はさらに、穴の中心軸の周りで穴壁に沿って移動し、同時に穴壁内に半径方向に供給され、軸方向前方または後方に前進する。
【0012】
好ましくは、ワークピースは、ISO P材料などの金属製である。ワークピースは、例えば、構成要素のねじ穴にねじ込まれる雄ねじ、例えばねじを有する締結具によって別の構成要素に取り付けられる構成要素であってもよい。
【0013】
ねじ切り切削工具は、前端に切削セクションを有する。好ましくは、切削セクションは、細長い本体の軸方向長さ部分である。一実施形態によれば、ねじ切り切削工具は、装着インターフェース(mounting interface)を提供するための後端の結合セクションなどのさらなるセクションを備える。任意選択で、装着インターフェースは、回転可能な機械スピンドルまたは回転可能な機械スピンドル用のアダプタに結合されるように設計される。好ましくは、結合セクションは、本体と一体のシャフトである。
【0014】
一実施形態によれば、ねじ切り切削工具は、最大深さ(L)で公称ねじ径(D)を有するねじ山を切削するように構成される。任意選択で、最大深さは、切削セクション、または切削セクションと中間セクションの長さに対応し、これらは共に工具のネックセクションを形成することができる。好ましくは、最大深さ(L)と公称ねじ径の比(L/D)は、少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2.5、およびより好ましくは少なくとも3である。ねじ切り切削工具の逃げ面の設計は、振動の大幅な低減を達成するので、長い工具にとって特に有利である。好ましくは、比は、最大5、より好ましくは最大4である。いくつかの用途では、より長い工具は、先行技術の工具よりもかなり振動が少ないにもかかわらず、十分に安定しない場合がある。
【0015】
切削セクションは、少なくとも第1の組の歯を含む複数の歯を備える。第1の組の歯の各歯は、各々すくい面と逃げ面の交差部に刃先を提供するために、切削セクションの円周から突出する。任意選択で、各歯は、例えば立方体、円柱、またはプリズムなどの突出多面体として形成される。好ましくは、各歯は、隆起部として形成される。
【0016】
第1の組の歯の各歯は、ねじ切り切削工具の前端まで同じ第1の軸方向距離を有する。
【0017】
一実施形態によれば、第1の組の歯のすべての歯は、ねじ切り切削工具の円周の周りに等間隔に配置される。言い換えれば、2つの連続する歯の間の円周方向距離は、第1の組の歯のすべての歯について同じである。別の実施形態によれば、第1の組の2つの連続する歯の間の円周方向距離は、組の一部またはすべての歯について異なる。好ましくは、第1の組の歯のすべての歯は、同じ円周方向長さを有し、好ましくは、各歯の円周方向延長部は、前端まで一定の軸方向距離にある。好ましくは、第1の組の歯のすべての歯は、同一である。
【0018】
任意選択で、切削セクションは、本体の切削セクションの半径方向外方に面する周面に配置された軸方向に延びるチップフルートを備える。任意選択で、チップフルートは、中央長手方向軸と平行に、中央回転軸に対して傾斜して、または曲線、例えば螺旋に沿って配置される。軸方向に真っ直ぐなチップフルートとも呼ばれる、中央長手方向軸と平行なチップフルートは、チップをより小さな断片に分割するのに有利である。傾斜したまたは螺旋状のチップフルートは、工具に沿って後方にチップを搬送するため、および切削が容易な工具を得るために有利である。
【0019】
第1の組の歯は、少なくとも2つの歯を備える。任意選択で、ねじ切り切削工具は、少なくとも2つ、および最大10個、例えば4つのチップフルートと、第1の組の対応する数の円周方向に離間した歯とを備える。チップフルートおよび歯の数が少ない、例えば2つの場合、切削力の低い工具が提供される。チップフルートおよび歯の数が多い、例えば10個の場合、短いサイクル時間で動作可能であるが、より高い曲げ力を受ける工具が提供される。
【0020】
好ましくは、第1の組の歯の各歯は、円周方向距離に延びる隆起部として形成される。隆起部形状の歯の輪郭は、隆起部の円周方向延長部に垂直な断面、例えばねじ切り切削工具の長手方向セクションとして見ることができる。一実施形態によれば、隆起部形状の歯は各々、軸方向前方に面する側面と、軸方向後方に面する側面と、2つの側面を接続する頂部とを有する。回転方向先端部(rotationally leading end)において、隆起部は、すくい面を含む先端面(leading face)を有する。任意選択で、逃げ面は、頂部のみによって、またはさらに半径方向外側部分もしくは側面全体によって形成される。刃先は、先端面と側面および頂部の交差部に形成される。刃先は、頂部に沿って、かつ一方および/または両方の側面の一部に沿って、任意選択で側面全体に沿って延びる。
【0021】
逃げ面は、半径方向逃げ角を有する。ねじ切り切削工具の長手方向軸に垂直な断面で見たとき、半径方向逃げ角は、逃げ面への接線、および刃先の半径に垂直な線によって形成される。
【0022】
第1の組の歯の各歯の逃げ面は、回転方向前方部分と、回転方向後方部分とを有する。前方部分は、刃先の後ろから回転方向後方に延び、後方部分は、前方部分の回転方向後ろに続く。前方部分の半径方向逃げ角は、後方部分の半径方向逃げ角よりも小さい。好ましくは、前方部分の半径方向逃げ角は、少なくとも1°および5°未満、より好ましくは少なくとも2°および最大3°である。これらの範囲内の逃げ角は、刃先で工具に対して所望の支持を提供し、その結果、ほとんどの用途で振動を十分に低く保つことができる。前方部分の逃げ角が小さいと、いくつかの用途では、ねじ切り切削工具が重すぎる切削を引き起こす可能性がある。前方部分の逃げ角が大きいと、用途によっては十分な支持を提供しない場合があり、または工具が滑らかに動かないように刃先がワークピースに深く食い込みすぎる場合がある。
【0023】
後方部分の半径方向逃げ角は、好ましくは少なくとも5°および最大10°、より好ましくは少なくとも6°および最大7°である。これらの範囲内の後方部分の逃げ角は、工具の望ましくない押圧を回避するために刃先および前方部分のさらに後ろに十分な空間があることを保証し、その結果、ほとんどの用途で振動を十分に低く保つことができる。後方部分の逃げ角が小さいと、いくつかの用途では、ねじ切り切削工具がワークピースから高圧を受け、工具が意図された経路から逸脱する可能性がある。これにより、切削されたねじ山が円筒形ではなくわずかに円錐形になる場合がある。逃げ角が大きいと、歯の強度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0024】
好ましくは、前方部分と後方部分の両方の半径方向逃げ角は、一定である。好ましくは、前方部分のすべての位置は、同じ半径方向逃げ角を有する。好ましくは、後方部分のすべての位置は同じ逃げ角を有するが、これは前方部分の位置における半径方向逃げ角とは異なり、それよりも大きい。これにより、ねじ切り切削工具の製造が容易になる。
【0025】
ねじ切り切削工具の長手方向軸に垂直な断面で見たとき、第1の組の歯の歯は、中央長手方向軸を中心とする円の円セクタにわたって円周方向に延びる。好ましくは、逃げ面は、刃先および歯の後端部(trailing end)によって画定された円セクタ内に円周方向延長部を有する。これに対応して、逃げ面の前方部分は、刃先および前方部分の後端部によって画定された円セクタ内に円周方向延長部を有する。例えば歯、逃げ面、または逃げ面の一部の円周方向延長部は、円セクタの円弧長さとして定義されてもよい。好ましくは、断面で見たとき、前方部分は、少なくとも1°および最大15°の円セクタ内に、より好ましくは少なくとも5°および最大10°の円セクタ内に円周方向延長部を有する。より小さい角度のセクタにわたって延びる前方部分は、いくつかの用途では十分な支持を提供しない場合がある。より大きい角度のセクタにわたって延びる前方部分は、いくつかの用途では、ねじ切り切削工具が重すぎる切削を引き起こす可能性がある。
【0026】
チップフルートを有する一実施形態によれば、第1の組の歯の各歯は、1つのそれぞれの関連するチップフルートの後に回転方向に続く。すくい面を含む歯の先端面は、関連する前方チップフルート(leading chip flute)のチップフルート面の一部である。例えば、隆起部形状の歯は、歯の回転方向直前に位置するチップフルート、および歯の直後に位置するチップフルートによって画定されたセクタにわたって延びる。
【0027】
任意選択で、後方部分は、第1の組の歯の各歯の後端部から回転方向前方に延びるか、または前方部分の直後に続く。任意選択で、逃げ面は、1つまたはいくつかの中間部分を備えるか、または前方部分および後方部分のみからなる。前方部分および後方部分のみからなる逃げ面は、有利には両方とも、刃先端部において最適な必要な支持を提供し、回転方向において刃先のさらに後ろで最適な必要な空間を提供する。そのような実施形態では、前方部分の回転方向後端部は、後方部分の回転方向先端部である。チップフルートを有する対応する実施形態では、後方部分は、前方部分の後端部および後方チップフルート(trailing chip flute)の前縁によって画定された円セクタ内に円周方向延長部を有する。
【0028】
任意選択で、複数の歯は、いくつかの組の円周方向に離間した歯を備え、各組の各歯は、同じ組のすべての他の歯と同じ前端までの軸方向距離を有し、かつ他の組のすべての歯と異なる前端までの軸方向距離を有する。言い換えれば、ねじ切り切削工具は、円周方向に離間した歯の行を備え、各行のすべての歯は、1つのそれぞれの組に属する。例えば、ねじ切り切削工具は、1~3組の円周方向に離間した歯を備える。そのようなタイプのねじ切り切削工具の1つは、一般にネックを有する軌道工具と呼ばれる。本発明の逃げ面はまた、10~20組の円周方向に離間した歯を備える従来のスレッドミルに実装されてもよい。組の数は、工具の最大自由長と公称ねじ径との間の比(L/D)に従って調整することができる。
【0029】
任意選択で、組の歯は、軸方向列、例えば中央長手方向軸と平行な列、中央長手方向軸に対して傾斜した列、または曲線、例えば螺旋に沿って整列される。
【0030】
いくつかの組の円周方向に離間した隆起部形状の歯を備える一実施形態によれば、第1の組の歯の各歯はまた、その軸方向に直接前方および後方にある根元の一部を含む。軸方向に見て、各歯は、前方根元の中心から頂部を越えて後方根元の中心まで延びてもよい。軸方向に見て、第1の組の歯の軸方向後方にある根元部分は、軸方向の次の組の軸方向の次の歯の軸方向前方根元部分に接続する。回転方向先端部において、そのような歯の先端面は、根元の半径方向内方に延びる。さらに、刃先は、根元ならびに頂部および両方の側面に沿って延びる。したがって、実施形態による工具は、軸方向に連続した刃先を形成する歯を備える。軸方向に連続した刃先の数は、各組の歯の数に対応する。これに対応して、逃げ面は、頂部および側面全体に加えて根元も覆う。これにより、逃げ面は、軸方向に連続した表面を形成する。円周方向において、逃げ面は、チップフルートによって中断されている。
【0031】
任意選択で、異なる組の歯は異なっているか、またはすべての組のすべての歯は同一である。好ましくは、同じ組のすべての歯は、同一である。具体的には、すべての組のすべての歯の逃げ面は、前方部分および後方部分で同じ逃げ角を有してもよい。他の実施形態では、異なる組の歯は、異なっていてもよい。一実施形態によれば、異なる組からの歯の前方部分および/または後方部分の逃げ角は、異なっている。例えば、前方部分の逃げ角は、前端に近い組の歯の方が後端に近い別の組の歯よりも小さくてもよい。例えば、前端に近い組の歯の前方部分は、後端に近い組の歯の前方部分の対応する円セクションよりも大きい角度を有する円セクタにわたって延びてもよい。
【0032】
任意選択で、ねじ切り切削工具の複数の歯は、例えば前端面から突出する前歯など、軸方向レベルで組に含まれる円周方向に離間していない他のタイプの歯を備える。一実施形態では、前歯は、軸方向に切削するように設計された半径方向に延びる刃先を有する。前端歯を有するねじ切り切削工具を動作させ、ワークピースの穴と穴における雌ねじの両方を同時に切削することができる。
【0033】
以下、添付の図面を参照して、例示的な実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明によるねじ切り切削工具の第1の実施形態の側面図であり、軸方向後方結合セクションが部分的にのみ示されている。
図2】第1の実施形態の正面図である。
図3】第1の実施形態の第1の組の歯のうちの1つの歯の図2に対応する拡大図である。
図4】本発明の逃げ面および先行技術の逃げ面の一実施形態を表す曲線を基準円で示す図である。
図5】現在によるねじ切り切削工具の代替の実施形態を示す図である。
図6】現在によるねじ切り切削工具の代替の実施形態を示す図である。
図7】現在によるねじ切り切削工具の代替の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
すべての図は概略図であり、必ずしも縮尺通りではなく、一般に、それぞれの実施形態を解明するために必要な部分のみを示しているが、他の部分は省略または単に示唆されてもよい。別途指示がない限り、同様の参照符号は、異なる図の同様の部分を指す。
【0036】
図1図3を参照して、ねじ切り切削工具の第1の実施形態について説明する。ねじ切り切削工具の第1の実施形態は、ネックを有する軌道工具の形態である。工具は、前端2と、後端(図示せず)と、前端2から後端に延びる中央長手方向軸3とを有する細長い本体1を備える。工具は、回転方向4に軸3の周りで回転可能に構成される。
【0037】
切削セクション5が、前端2から軸方向後方に延びる。切削セクション5は、3組6の円周方向に離間した歯7を含む複数の歯を損傷させる。各組6は、6つの歯7を備える。各組6の各歯7は、前端2まで同じ軸方向距離を有し、図1では、前端2から数えた第2の組6の歯7の軸方向距離8が示されている。
【0038】
切削セクション5は、前端2から軸方向後方に延びる6つのチップフルート9をさらに備える。各チップフルート9は、長手方向軸3に対して傾斜している。15°の角度で。
【0039】
各組6の各歯7は隆起部の形状を有し、この隆起部は、関連する回転方向前方チップフルート9から関連する後方チップフルート9に円周方向に延びる。各組6のすべての歯7は、円周の周りに等間隔に配置され、2つの円周方向に連続する歯7の間の空間は、対象となる組6の軸方向位置におけるチップフルート9の幅に対応する。すべてのチップフルート9は、前端2に対して同じ軸方向距離で同じ幅を有する。例示的な実施形態では、すべての組6のすべての歯7は、同一である。各チップフルート9は、組6の歯のうちの1つのための関連する後方チップフルートであり、かつ組6の回転方向の次の歯7の関連する前方チップフルート9である。
【0040】
各隆起部形状の歯7は、軸方向前方に面する前方側面10と、軸方向後方に面する後方側面11と、2つの側面を接続する頂部12とを有する。加えて、各歯7は、その軸方向に直接前方にある根元23の一部と、その軸方向に後方にある根元23の一部とを備える。軸方向に見て、歯7は、前方根元23の中心から頂部12を越えて後方根元23の中心まで延びる。回転方向先端部において、隆起部形状の歯7は、根元23の両方の部分の半径方向内方に延びる先端面を有する。先端面は、すくい面13を含む。
【0041】
逃げ面14が、頂部上、側面10、11上、および根元23に位置する。刃先15が、すくい面13と逃げ面14の交差部に形成される。刃先15は連続しており、前端2における根元23から3組6の各々の1つの歯を越えて後端における根元23まで軸方向に延びる。例示的な実施形態のねじ切り切削工具は、6つのそのような連続した刃先15を備える。
【0042】
合理的には後端部において、各歯7は、後端面(trailing face)18を有する。後端面18は、後方チップフルート9内の先端面の一部である。
【0043】
逃げ面14は、刃先15の回転方向直後に続く前方部分16を備える。逃げ面14は、後方部分17をさらに備える。例示的な実施形態では、後方部分17は、前方部分16の直後に続き、後端面18に延びる。この場合、逃げ面は、前方部分16および後方部分17からなる。前方部分16と後方部分17の両方は、前方側面10の半径方向外側部分の上、頂部12の上、および後方側面11の半径方向外側部分の上に軸方向延長部を有する。
【0044】
図3では、第1の組の歯6の1つの歯7が、ねじ切り切削工具の長手方向軸3に垂直な断面で示されている。図から分かるように、逃げ面14の前方部分16は、長手方向軸3を中心とする円セクタ内に円周方向延長部を有する。例示的な実施形態では、前方部分は、5°の角度γを有する円セクタ内に延びる。
【0045】
逃げ面14は、半径方向逃げ角を有する。図3の断面で見たとき、半径方向逃げ角は、逃げ面への接線、および刃先の半径に垂直な線によって形成される。図3では、頂部12における逃げ面14の2つの位置について半径方向逃げ角が示されており、第1の位置は、前方部分16に位置し、半径方向逃げ角αを有し、第2の部分は、後方部分17に位置し、半径方向逃げ角βを有する。逃げ面14は、前方部分16のすべての位置で同じ半径方向逃げ角αを有し、かつ後方部分17のすべての位置で同じ半径方向逃げ角βを有する。例示的な実施形態では、角度αは、2°であり、角度βは、6.5°である。
【0046】
図4では、基準円19内の逃げ面14の一実施形態を表す曲線を示す図が、先行技術の逃げ面を表す曲線と共に示されている。基準円19は、中央長手方向軸3を中心とし、長手方向軸3から刃先15までの半径方向距離に対応する半径を有する。第1の曲線21が、中央長手方向軸3に垂直な断面で見た本発明の逃げ面14の形状を表す。第1の曲線21は、15°の角度γの円セクタにおいて2°の一定の逃げ角αを有する前方部分16と、6.5°の一定の逃げ角βを有する後方部分17とを備える逃げ面14を示す。第2の曲線20が、先行技術の工具の逃げ面を表し、逃げ面は、6.5°の唯一の一定の逃げ角を有する。
【0047】
図5図7では、主に内に工具タイプに関して図1図3を参照して説明した実施形態とは異なる、本発明の代替の実施形態が示されている。
【0048】
図5は、6組6の円周方向に離間した歯7を有する中断された歯のスレッドミルの形態のねじ切り切削工具の代替の実施形態を示しており、各組6は、組の第1の実施形態よりも軸方向に互いにさらに離間している。図5の実施形態は、刃先15および逃げ面14が軸方向に不連続であるねじ切り切削工具の一例である。2つの軸方向に連続する組6の2つの軸方向に連続する歯7の間の空間を形成する根元23は、刃先のない中央部分を有する。
【0049】
図6は、13組6の円周方向に離間した歯7を有するねじ切り切削工具の代替の実施形態を示す。実施形態は、本発明の逃げ面14が従来のスレッドミル上に実装された一例である。
【0050】
図7は、組6の円周方向に離間した歯7に加えて前端歯22を備える軌道ねじ切りドリルの形態のねじ切り切削工具の代替の実施形態を示す。前端歯を有するねじ切り切削工具を動作させ、ワークピースの穴と穴における雌ねじの両方を同時に切削することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】