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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】水性ゲル組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/10 20170101AFI20240905BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K47/24
A61K31/165
A61K9/06
A61K31/381
A61P27/16
A61K47/32
A61K47/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518279
(86)(22)【出願日】2023-05-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2023063320
(87)【国際公開番号】W WO2023222795
(87)【国際公開日】2023-11-23
(31)【優先権主張番号】22174123.4
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519311695
【氏名又は名称】アコージア セラピューティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】スベン ヘイマンス
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル ヤン ロベルト コール
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア エバ ディエデリッチス
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス ディルフイェルト-ヨンセン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB11
4C076BB26
4C076CC10
4C076DD03
4C076DD08
4C076DD09
4C076DD38
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE08
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE24
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BB03
4C086GA03
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA56
4C086MA66
4C086NA12
4C086ZA34
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206GA07
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA48
4C206MA76
4C206MA86
4C206ZA34
(57)【要約】
本発明は、医薬活性剤の投与、特に医薬活性剤の経鼓膜投与に有用な水性ゲル組成物を開示する。水性ゲル組成物は、組成物の総重量に基づいて、10重量%~30重量%の量の少なくとも1つの第1の界面活性剤と、組成物の総重量に基づいて、5重量%~20重量%の量の少なくとも1つの第2の界面活性剤と、組成物の総重量に基づいて、5重量%~20重量%の量の少なくとも1つのアルコールと、組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%の量の水と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ゲル組成物であって、
-前記組成物の総重量に基づいて、10重量%~30重量%の量の少なくとも1つの第1の界面活性剤と、
-前記組成物の総重量に基づいて、5重量%~20重量%の量の少なくとも1つの第2の界面活性剤と、
-前記組成物の総重量に基づいて、5重量%~20重量%の量の少なくとも1つのアルコールと、
-前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%の量の水と、を含む、
水性ゲル組成物。
【請求項2】
25℃の温度での前記組成物の粘度が、1400mPas~2300mPas、好ましくは1600mPas~2000mPasである、請求項1に記載の水性ゲル組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の界面活性剤が、少なくとも1つのコポリマー、特に少なくとも1つのブロックコポリマーを含む、請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのブロックコポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)ブロック、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)ブロック、ポリ(l-カプロラクトン)ブロック、ポリ(L-乳酸)ブロック、ポリ(エーテルエステルアミド)ブロック、ポリ(プロピレンオキシド)ブロック、ポリ(N-イソプロリルアクリルアミド)ブロック、ポリ(エチレングリコール)ブロック、ポリ(プロピレングリコール)ブロック、ポリ(メタクリル酸)ブロック、ポリ(ビニルアルコール)ブロック、ポリ(ビニルピロリドン)ブロック、及び前記ポリマーブロックの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される少なくとも2つの異なるポリマーブロックを含む、請求項3に記載の水性ゲル組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、少なくとも1つのリン脂質を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性ゲル組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのリン脂質が、ホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、及び前記リン脂質の少なくとも2つの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の水性ゲル組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアルコールが、少なくとも1つのポリオール、特に少なくとも1つのジオールを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性ゲル組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのジオールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1,2-へキシレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、1,2-オクチレングリコール、オクタメチレングリコール、エチルヘキシレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ラウリルグリコール及び前記ジオールの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるアルカンジオールである、請求項7に記載の水性ゲル組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の界面活性が、前記組成物の総重量に基づいて、10重量%~25重量%、好ましくは12重量%~22重量%、より好ましくは14重量%~16重量%の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の水性ゲル組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~20重量%、好ましくは6重量%~15重量%、より好ましくは6重量%~10重量%の量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の水性ゲル組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアルコールが、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~20重量%、好ましくは6重量%~15重量%、より好ましくは6重量%~10重量%の量で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の水性ゲル組成物。
【請求項12】
-前記少なくとも1つの第1の界面活性剤が、ポロキサマーであり、
-前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、リン脂質、好ましくは天然ホスファチジルコリンであり、
-前記少なくとも1つのアルコールが、プロピレングリコールである、
請求項1~11のいずれか一項に記載の水性ゲル組成物。
【請求項13】
-前記少なくとも1つの第1の界面活性剤が、ポロキサマーであり、特に、前記組成物の総重量に基づいて、14重量%~16重量%の量で存在し、
-前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、リン脂質、好ましくは天然ホスファチジルコリンであり、特に、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~10重量%の量で存在し、
-前記少なくとも1つのアルコールが、プロピレングリコールであり、特に、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~10重量%の量で存在する、
請求項1~12のいずれか一項に記載の水性ゲル組成物。
【請求項14】
前記水性ゲル組成物が、少なくとも1つの薬学的活性剤を更に含み、好ましくは、前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、前記組成物の総重量に基づいて、0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、より好ましくは2重量%~10重量%の量で存在する、請求項1~13のいずれか一項に記載の水性ゲル組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、0.01μm~100μm、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは20μm~50μmの平均粒径を有する、請求項14に記載の水性ゲル組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、式Iを有し、
【化1】
式中、
-n=1であり、
-RLが、置換シクロペンタチエニル基(前記置換シクロペンタチエニル基が、少なくとも1個のF原子又はCl原子で置換される)、及び非置換又は置換インダニル基(前記置換インダニル基が、少なくとも1個のF原子又はCl原子で置換される)からなる群から選択される置換基であり、
-RRが、置換フェニル基(前記置換フェニル基が、F、SF、CF、及びOCFから選択される少なくとも1つの置換基を含む)である、
請求項14又は15に記載の水性ゲル組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、及び
(S)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1-H-インデン-1-イル)-1-メチル-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)尿素、
並びに前記薬学的活性剤の少なくとも2つの混合物、
からなる群から選択される、請求項16に記載の水性ゲル組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、式IIを有し、
【化2】
式中、
-Rが、非置換シクロアルキル基、特にビシクロアルキル基、非置換若しくは置換フェニル基、又は非置換若しくは置換チエニル基(前記置換チエニル基又はフェニル基が、少なくとも1つのハロゲン、好ましくは少なくとも1つのF原子又は少なくとも1つのCl原子で置換される)であり、
-Rが、F、SF、CF又はOCFである、
請求項14又は15に記載の水性ゲル組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
p-クロロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド、
p-クロロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド、
p-クロロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド、
及び前記薬学的活性剤の少なくとも2つの混合物、
からなる群から選択される、請求項18に記載の水性ゲル組成物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の水性ゲル組成物を含む、医薬組成物又は医薬品。
【請求項21】
内耳疾患の予防若しくは治療における使用のための、請求項1~19のいずれか一項に記載の水性ゲル組成物、又は内耳疾患の予防若しくは治療における使用のための、請求項18に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水性ゲル組成物、特に薬学的活性剤の担体として有用な水性ゲル組成物に関する。本発明はまた、この水性ゲル組成物を含む、特に薬学的活性剤の持続放出を伴う薬学的組成物又は薬剤、及び内耳疾患の予防又は治療におけるこの水性ゲル組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
それらの粘度特性から、ゲル組成物は、薬学的活性剤の局所投与及び経口投与のための担体として使用されることが多い。ゲル組成物の投与に重要なのは、例えば、1つには、注射器による容易な適用、特に十分な注射針通過性(syringeability)、すなわち注射器から分注されかつ/若しくは注射器に取り込まれる能力、又はスパチュラによる容易な適用を可能にする比粘度特性であり、もう1つには、有機組織への単回投与後、特に少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間の薬学的活性剤の持続放出及び有機組織での組成物の良好な接着を伴うデポ剤としてゲル組成物が機能することを可能にする、薬学的活性剤の良好な可溶化である。
【0003】
したがって、体温付近のゲル化温度を提供するのに十分な量の粘度増加増粘剤と共に、主に粒子状ゲルマトリックスを含み、特性温度で粘度が変化する、熱可逆性非水性ゲル組成物が使用されることが多い。
【0004】
しかしながら、非水性粒子状ゲル組成物は、比較的乏しい水溶性特性を有する薬学的活性剤の良好な担体であるにもかかわらず、粒子の沈殿により、長期間にわたって粒子の粘度特性及び均一な分布を維持することができないという欠点を示す。特に、溶解しないままである油性マトリックス及び増粘剤を含有するゲル組成物(例えばオレオゲル)は、この欠点を示す。更に、増粘剤の沈殿は、不均一に分布した薬学的活性剤をもたらし、薬学的活性剤の一貫性のない放出のリスクを伴う。したがって、適用直前に薬学的活性剤の再ホモジネーションを確立するために、特に加熱及び超音波処理を伴う後続の前処理が使用されることが多い。しかしながら、この前処理は、毎日の臨床診療において実施することが困難であり、したがって望ましくない。
【0005】
水性ゲル組成物は、持続的な良好な注射針通過性及び有機組織での良好な接着を可能にする粘度特性を有するゲルとして良好な代替物を提供する。更に、水性ゲル組成物中のほとんどの薬学的活性剤の均一な分布及び良好な溶解性から、水性ゲル組成物は、薬学的活性剤の一定した持続放出を可能にする。
【0006】
しかしながら、比較的乏しい水溶性特性を有する薬学的活性剤については、従来の水性ゲル組成物は、これらの特性を欠き、好適な担体ではない。
【0007】
特に、内部器官でのゲル組成物の投与のために、比較的乏しい水溶性特性を有する薬学的活性剤を含む薬学的組成物を、注射器で投与する必要がある。更に、目、耳、鼻、口、唇、膣、尿道口及び肛門などの内部器官は、ほとんどが粘液又は粘膜によって覆われているため、接着(粘膜接着)が困難になっている。
【0008】
したがって、従来の水性ゲル組成物は、有機組織での良好な接着に加えて良好な注射針通過性を可能にする適切な粘度と、比較的乏しい水溶性特性を有する薬学的活性剤の持続放出に加えて良好な投与と、の両方を促進することはできない。
【0009】
熱可逆性水性ゲル組成物は、欧州特許第3501521(A1)号及び国際公開第2019/210107号から公知である。対応する組成物は、薬物誘発性中毒性難聴の治療又は予防のために、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン又はコルチコステロイド、特にデキサメタゾン(Dexamethason)又はJNK(c-Jun N末端キナーゼ)阻害剤のような薬学的活性剤を含む。
【0010】
米国特許出願公開第2018/0000950(A1)号は、治療剤、トリグリセリド及び少なくとも1つの粘度調節剤を含む、非水性ゲル組成物を記載している。トリグリセリドは、耳に注射するための治療剤を安定化するのに十分な量で存在する。好ましくは、少なくとも1つの粘度調整剤は、二酸化ケイ素である。
【0011】
様々な疾患の治療における使用のための非水性熱可逆性ゲルを含むいくつかの特許文献、例えば国際公開第2014/076569(A2)号及び欧州特許第0530965(A1)号が存在する。
【0012】
欧州特許第0530965(A1)号は、少なくとも1つの性ホルモン薬、少なくとも1つの親油性担体及び界面活性剤を含む、経鼻適用のための組成物を記載している。更に、この組成物は、コロイド状二酸化ケイ素である粘度調節剤を含む。
【0013】
米国特許出願公開第2013/150410(A1)号は、メニエール病、内リンパ水腫、進行性難聴、立ちくらみ、眩暈及び耳鳴からなる群から選択される耳障害を治療する方法であって、滅菌薬学的組成物を耳内に経鼓膜投与することを含む、方法を記載している。組成物は、耳へのイオンチャネル調節剤の持続放出が少なくとも5日間にわたって行われるように、多粒子イオンチャネル調節剤を含む。
【0014】
米国特許出願公開第2019/038469(A1)号は、内耳に治療用組成物を送達するためのシステムを特許請求している。更に、管腔を有する送達シースと、送達シースの管腔を通して挿入されるように構成されるカニューレと、を含む、システムが記載されている。カニューレは、治療用組成物を送達するための管腔と、組成物を蝸牛窓膜に付着させるように蝸牛窓膜に治療用組成物を送達するために鼓膜を穿刺するための遠位先端と、を有する。更に、組成物は、内耳障害を治療するための治療剤と、治療組成物がカニューレを通して注入される間に液体形態で存在することを可能にするチキソトロピー材料と、を含む。
【0015】
本発明の目的は、従来のゲル組成物と比較して優れた特性を有する新規なゲル組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0016】
上記目的及び更なる目的は、請求項1に記載の水性ゲル組成物、請求項20に記載の薬学的組成物又は薬剤、及び請求項21に記載の内耳疾患の予防又は治療における使用のための水性ゲル組成物によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項で規定される。好ましくは、ただし必須ではないが、当該水性ゲル組成物は、経鼓膜投与に特に適しており、従属請求項で規定されるように、比較的乏しい水溶性特性を有する薬学的活性剤を含む。
【0017】
第1の態様によれば、本発明は、水性ゲル組成物であって、
-組成物の総重量に基づいて、10重量%~30重量%の量の少なくとも1つの第1の界面活性剤と、
-組成物の総重量に基づいて、5重量%~20重量%の量の少なくとも1つの第2の界面活性剤と、
-組成物の総重量に基づいて、5重量%~20重量%の量の少なくとも1つのアルコールと、
-組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%の量の水と、
を含むか、又はそれからなる、水性ゲル組成物に関する。
【0018】
本発明は、特に以下の驚くべき所見に基づいている:
-本出願に記載される水性ゲル組成物は、従来の熱可逆性ゲルとは対照的に、少なくとも1つの第1の界面活性剤と、少なくとも1つの第2の界面活性剤と、少なくとも1つのアルコールと、の量及び比率を変化させることによって、そのゾル(液体)ゲル転移温度を比較的広い範囲で調整することができる好適な熱可逆性ゲルであり、
-本出願に記載される水性ゲル組成物は、本発明の水性ゲル組成物の生分解性化合物のために、副作用がないか、又はわずかの副作用をもたらす患者による忍容性の増加を示し、
-本出願に記載される水性ゲル組成物の全ての化合物が生分解性であり、したがって、投与後、特に経鼓膜投与後に、副作用をもたらし得る残留物、特に非分解性残留物を残さず、したがって医薬適用にプラスの影響を与え、
-本出願に記載される水性ゲル組成物は、従来のゲル組成物と比較して改善された安定性を有し、したがって、その成分、好ましくは薬学的活性剤、より好ましくは低い溶解度を有する薬学的活性剤の粘度特性及び均一な分布を長期間にわたって維持することができ、
-本出願に記載される水性ゲル組成物は、異なる成分及びその比率の選択によるゲルの物理化学的特性の適合によって、薬学的活性剤のその溶液、ひいては薬学的活性剤のその持続放出に関して容易に調整可能である。
【0019】
好ましくは、本発明の水性ゲル組成物は、好ましくは少なくとも1つの第1の界面活性剤及び少なくとも1つの第2の界面活性剤を含む疎水性部分と、好ましくは水及び少なくとも1つのアルコールを含む親水性部分と、を含むか、又はそれからなる。
【0020】
好ましくは、本発明の水性ゲル組成物は、無菌である。
【0021】
更に、本発明の水性ゲル組成物は、界面活性剤ゲルであってもよい。
【0022】
特許請求の範囲及び明細書全体において使用される用語は、以下のように定義される。
【0023】
本明細書で使用される「水性組成物」という用語は、水を含む組成物を意味する。
【0024】
本明細書で使用される「界面活性剤ゲル」という用語は、界面活性剤に基づく、特に水和又は溶媒和界面活性剤分子の凝集によって形成される、粘弾性特性を有する半固体水性ゲル組成物を意味する。
【0025】
本明細書で使用される「界面活性剤」という用語は、組成物中の2つの液体間又は液体と固体との間の表面張力を低下させ、分散体の形成を可能にするか又は支持し、組成物の湿潤性を改善する化合物を意味する。界面活性剤は、洗剤、乳化剤、及び発泡剤としても作用することができる。
【0026】
本明細書で使用される「耳の領域又は構造」という用語は、耳の領域、特に耳の中耳領域、又は耳の構造、特に耳の蝸牛窓構造を意味し、耳の当該構造は耳の当該領域の一部である。
【0027】
本明細書で使用される「経鼓膜投与」という用語は、中耳、特に蝸牛窓膜への投与のための、鼓膜を通した中耳への注射を意味する。蝸牛窓膜への当該投与は、蝸牛窓膜を通過する拡散を促進するためである。
【0028】
本明細書で使用される「持続放出ゲル」という用語は、体内、特にヒトの体及びその組織への少なくとも1つの薬学的活性剤の等しく、持続的かつ制御された遊離、特に放出を提供する少なくとも1つの薬学的活性剤を含む、ゲル組成物を意味する。
【0029】
本明細書で使用される「多粒子」という用語は、少なくとも1つの薬学的活性剤の複数の粒子を意味し、粒子は同じ直径又は異なる直径のものである。
【0030】
本明細書で使用される「微粉化」という用語は、μmで測定される粒子に直径が縮小された物質、特に薬学的活性剤を意味する。
【0031】
本明細書で使用される「無菌」という用語は、生きている細菌又は微生物がないこと、特に無菌性であることを意味する。
【0032】
本明細書で使用される「粘膜接着」という用語は、目、耳、鼻、口、唇、膣、尿道口及び肛門などの粘液又は粘膜によって大部分が覆われている有機組織における接着を意味する。
【0033】
本明細書で使用される「熱可逆性ゲル」という用語は、粘度が特性温度で変化するゲル組成物を意味する。この熱挙動には、ゲルの特性が加熱及び冷却の繰り返しによって影響を受けないこと、並びにゲルの粘度がその初期状態まで可逆的であることが含まれる。熱可逆性ゲル、特に熱可逆性水性ゲルは、疎水性成分及び親水性成分の両方を含有し、熱可逆性効果は、組成物の疎水性部分と親水性部分との間の精巧なバランスに由来する。温度は、親水性セグメントと疎水性セグメントとの間の水分子との相互作用を変化させ、したがって、架橋ネットワークの溶解度の変化を誘導することができ、ゾル相からゲル相への転移又はゲル相からゾル相への転移を引き起こす。親水性及び疎水性のバランスを変化させることによって、水溶液中の架橋ネットワークの巨視的な溶解状態を決定する。
【0034】
本発明に従って使用される「ゾル相」という用語は、流動流体を指し、一方、本発明に従って使用される「ゲル相」という用語は、その完全性を維持する非流動組成物を指す。
【0035】
本発明に従って使用される「生分解性」という用語は、光、熱、水分、風、化学的条件又は生物学的活性を含む任意の環境因子によって引き起こされる、水性ゲル組成物における任意の物理的又は化学的変化を指す。典型的には、本発明の水性ゲル組成物は、水及び/又は生物及び/又は酵素の作用の結果として、二酸化炭素、水、及びバイオマスに分解される。
【0036】
したがって、本発明の水性ゲル組成物のほとんど又は全ての化合物は、好ましくは、「GRAS」ステータス(FDA(食品医薬品局)によって確立されたGenerally Recognized As Safeステータス)を有しかつ/又はFDA承認され、米国及び欧州薬局方(European collection of recognized medicinal substances)に記載されている。
【0037】
本発明によれば、9℃~15℃、特に10℃の温度での本発明の水性ゲル組成物の粘度は、好ましくは100mPas~250mPas、より好ましくは150mPas~200mPasである。
【0038】
本発明の一実施形態において、25℃の温度での本発明の水性ゲル組成物の粘度は、1400mPas~2300mPas、より好ましくは1600mPas~2000mPasである。最後に述べた範囲内では、1700mPas~1800mPasの粘度が更により好ましい。
【0039】
本発明によれば、37℃の温度での本発明の水性ゲル組成物の粘度は、好ましくは500~1200mPas、より好ましくは700~1000mPasである。
【0040】
あるいは、37℃の温度での本発明の水性ゲル組成物の粘度は、好ましくは1400mPas~2300mPas、より好ましくは1600mPas~2000mPasである。最後に述べた範囲内では、1700mPas~1800mPasの粘度が更により好ましい。
【0041】
代替的に及び/又は組み合わせて、25℃の温度での本発明の水性ゲル組成物の粘度は、好ましくは500~1200mPas、より好ましくは700~1000mPasである。
【0042】
好ましくは、10℃の温度での本発明の水性ゲル組成物の粘度は25℃での粘度よりも低く、25℃の温度での本発明の水性ゲル組成物の粘度は37℃での粘度よりも低く、より好ましくは、粘度は10℃から37℃まで上昇する。
【0043】
好ましくは、本発明の水性ゲル組成物は、室温(15℃~25℃)でゲル化するが、室温未満(15℃未満)、特に4℃~15℃、好ましくは5℃~14℃で液体である。更に好ましくは、本発明の水性ゲル組成物は、室温(15℃~25℃)でゲル化し、体温(約37℃)でこの状態を維持するが、室温未満(15℃未満)で液体である。
【0044】
従来のゲル組成物とは対照的に、本発明の水性ゲル組成物は、特性温度で粘度が変化する熱可逆性ゲル組成物を提供するという利点を有する。
【0045】
上記の熱可逆性粘度特性は、薬学的組成物又は局所投与用医薬において特に有用になる粘度を有する水性ゲル組成物を提供する。15℃~25℃の(薬学的)室温での注射針通過性(syringeability)、すなわち、注射器から分注されかつ/又は注射器に取り込まれる能力に十分である粘度、並びに通常35℃~38℃の体温付近で、特に少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間、例えば有機組織への単回投与後に、有機組織での局所投与用組成物の良好な接着を可能にする粘度が提供される。特に、本発明の水性ゲル組成物は、液体状態、好ましくは<10℃で注射器に吸い上げられ、室温で分注され、投与後に体温でゲル化するのに特に有用である。
【0046】
これは、注射器で組成物を投与する必要性、及び良好な接着、特に良好な粘膜接着の必要性の両方を考慮する場合、内部器官及び/又は隔壁でのゲル組成物の投与に特に有利である。
【0047】
本発明の水性ゲル組成物は、好ましくは、18~27ゲージ(バーミンガムゲージ)、より好ましくは20~23ゲージ、特に20ゲージの好適な針直径を介して適用されるのに有用な粘度及びゲル構造を含む。本発明の水性ゲル組成物はまた、20μL~300μL、好ましくは30μL~300μL、より好ましくは30μL~200μLの少量で、例えば内耳に、特に薬学的活性剤を内耳に拡散させるために中耳に適用するのに適している。
【0048】
粘度は、通常、粘度計、特にレオメーターで測定される。レオメーターは通常、加えられた力に応答して液体、懸濁液又はスラリーの流動特性を測定する実験装置である。一般的な装置タイプは、剪断応力が対応する材料に加えられる、いわゆる剪断レオメーターである。本発明による水性ゲル組成物の粘度を測定するために使用することができる装置は、Brookfield製のレオメーター(AMETEK Brookfield)である。
【0049】
好ましくは、本発明の水性ゲル組成物は、ヒドロキシエチルセルロース、コロイド状固体粒子、好ましくは無機コロイド状固体粒子、コロイド状シリカ、エチレングリコール、ジオキシド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム及び/又は有機変性ヘクトライト(Bentone)などの有機高分子を含まないことが好ましい。
【0050】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つの第1の界面活性剤は、少なくとも1つのコポリマー、特に少なくとも1つのブロックコポリマーを含むか、又はそれからなる。
【0051】
好ましくは、少なくとも1つの第1の界面活性剤は、少なくとも1つの第2の界面活性剤とは異なる界面活性剤である。
【0052】
好ましくは、少なくとも1つの第1の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、より好ましくは非イオン性コポリマー、更に好ましくは非イオン性ブロックコポリマーである。
【0053】
更に、少なくとも1つの第1の界面活性剤は、好ましくは両親媒性界面活性剤、より好ましくは両親媒性コポリマー、更に好ましくは両親媒性ブロックコポリマーである。
【0054】
好ましくは、少なくとも1つの第1の界面活性剤は、非イオン性両親媒性界面活性剤、より好ましくは非イオン性両親媒性コポリマー、更に好ましくは非イオン性両親媒性ブロックコポリマーである。
【0055】
本発明に従って使用される「コポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるポリマーを含むか又はそれからなるポリマーを指す。
【0056】
本発明に従って使用される「コポリマーブロック」という用語は、少なくとも2つの異なるポリマーブロックを含むか、又はそれからなるポリマーを指す。好ましくは、ポリマーブロックは、ホモポリマーブロック又はコポリマーブロックである。ホモポリマーブロックは、1つのモノマー化合物を含むか又はそれからなるポリマーブロックである。少なくとも2つの異なるモノマーが1つのブロックにおいて連結される場合、その構造はブロックコポリマーと呼ばれる。
【0057】
コポリマー、特にブロックコポリマーは、極性溶媒及び非極性溶媒の両方に溶解する特性を有する両親媒性構造を作り出すことができるという利点を有する。したがって、コポリマーは、親水性及び親油性の両方であり得る。コポリマーの両親媒性特性は、疎水性ブロックによって構成される内部コア及び親水性単位によって構成される外部シェルを有するミセルへのコポリマーの自己凝集をもたらし得る。
【0058】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つのブロックコポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)ブロック、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ブロック、ポリ(l-カプロラクトン)ブロック(PCL)、ポリ(L-乳酸)(PLA)ブロック、ポリ(エーテルエステルアミド)(PEEA)ブロック、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)ブロック、ポリ(N-イソプロリルアクリルアミド)(pNiPAAm)ブロック、ポリ(エチレングリコール)ブロック(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)ブロック、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)ブロック、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)ブロック、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)ブロック、及び前述のポリマーブロックの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される少なくとも2つの異なるポリマーブロックを含むか、又はそれからなる。
【0059】
好ましくは、少なくとも1つのブロックコポリマーは、少なくとも1つのポリ(エチレンオキシド)ブロック及び少なくとも1つのポリ(プロピレンオキシド)ブロックを含むか、又はそれからなる。
【0060】
より好ましくは、少なくとも1つのブロックコポリマーは、ポロキサマー、特にポロキサマー407であり、最後の桁(7)に10の係数を掛けたものは、パーセントでのポリ(エチレンオキシド)ブロックの相対質量分率を示し、前の桁(40)に100の係数を掛けたものは、ポリ(プロピレンオキシド)ブロックの相対分子量を符号化している。
【0061】
ポロキサマー407は、Pluronic(登録商標)F 127、Kolliphor P 407又はLutrol F 127としても知られており、好ましくは、中心ポリ(エチレンオキシド)ブロックの両端でポリ(プロピレンオキシド)ブロックに連結された中心ポリ(エチレンオキシド)ブロックを含むか、又はそれからなる。
【0062】
好ましくは、中心ポリ(エチレンオキシド)ブロックは、15~67個のポリ(エチレンオキシド)モノマー、好ましくは56個のポリ(エチレンオキシド)モノマーを含むか又はそれからなり、中心ポリ(エチレンオキシド)ブロックの両端に連結されたポリ(プロピレンオキシド)ブロックは、各々又は一緒に、2~130個のポリ(エチレンオキシド)モノマー、好ましくは101個のポリ(エチレンオキシド)モノマーを含むか、又はそれからなる。好ましくは、各ポリ(エチレンオキシド)ブロック中のモノマーの数は、異なっていても同じであってもよい。
【0063】
ポロキサマー407は、極性溶媒及び非極性溶媒の両方に溶解する特性を有する両親媒性構造であり、したがって親水性及び親油性の両方であるという利点を有する。
【0064】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つの第2の界面活性剤は、少なくとも1つのリン脂質を含むか、又はそれからなる。
【0065】
好ましくは、少なくとも1つの第2の界面活性剤は、少なくとも1つの第1の界面活性剤とは異なる界面活性剤である。
【0066】
更に、少なくとも1つの第1の界面活性剤及び少なくとも1つの第2の界面活性剤は、好ましくは、両方とも両親媒性界面活性剤である。
【0067】
少なくとも1つの第1の界面活性剤及び少なくとも1つの第2の界面活性剤は、好ましくは、イオン性、非イオン性及び双性イオン性界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤を含むか、又はそれからなる。
【0068】
更に、少なくとも1つの第2の界面活性剤は、好ましくは両親媒性界面活性剤、特に両親媒性リン脂質、更に好ましくは両親媒性ホスファチジルコリンである。
【0069】
更に、少なくとも1つの第2の界面活性剤は、好ましくはイオン性界面活性剤、特に双性イオン性界面活性剤、より好ましくは双性イオン性リン脂質、更に好ましくは双性イオン性ホスファチジルコリンである。
【0070】
好ましくは、少なくとも1つの第2の界面活性剤は、双性イオン性両親媒性界面活性剤、より好ましくは双性イオン性両親媒性リン脂質、更に好ましくは双性イオン性両親媒性ホスファチジルコリンである。
【0071】
好ましくは、リン脂質は、少なくとも1つ、好ましくは2つの脂肪酸、リン酸基及び親水性残基にエステル化されたグリセロール骨格又はアミノ-アルコールスフィンゴシン骨格を含むか、又はそれらからなる。2つのエステル化脂肪酸を有するリン脂質は、ジアシルリン脂質と呼ばれ、一方、1つの脂肪酸を有するリン脂質は、モノアシルリン脂質又はリゾリン脂質と呼ばれる。
【0072】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つのリン脂質は、ホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、及び前述のリン脂質の少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
【0073】
好ましくは、少なくとも1つのリン脂質は、少なくとも1つのホスファチジルコリンである。
【0074】
更に、ホスファチジルコリンは、好ましくはジアシル-ホスファチジルコリン又はモノアシル-ホスファチジルコリン、より好ましくは天然ホスファチジルコリン又は合成ホスファチジルコリン、特に天然ジアシル-ホスファチジルコリン若しくは天然モノアシル-ホスファチジルコリン又は合成ジアシル-ホスファチジルコリン若しくは合成モノアシル-ホスファチジルコリンである。
【0075】
本明細書で使用される「天然ホスファチジルコリン」という用語は、植物、特に大豆植物に由来するホスファチジルコリンを意味する。
【0076】
ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール及びホスファチジルイノシトールは、生理学的pHで負に荷電し、ホスファチジルエタノールアミンは塩基性pHで負に荷電し、生理学的pHで両性イオン性であるが、ホスファチジルコリンは、極性及び非極性溶媒の両方に溶解する特性を有し、生理学的pHで両性イオン性及び両親媒性であるという利点を有する。したがって、ホスファチジルコリンは、親水性及び親油性の両方である。
【0077】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つのアルコールは、少なくとも1つのポリオール、特に少なくとも1つのジオールを含むか、又はそれからなる。
【0078】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つのジオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1,2-へキシレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、1,2-オクチレングリコール、オクタメチレングリコール、エチルヘキシレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ラウリルグリコール及び前述のジオールの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるアルカンジオールである。
【0079】
ジオール、特にアルカノールの最も重要な共通の有利な特徴は、親水性である。この特性は、アルキル基の長さの増加と共に減少し、ヒドロキシル基の数と共に増大する。ジオールは、一価(1つのヒドロキシル基)アルコール、特に一価アルカノールよりも高い親水性を有する。特に、短鎖ジオール、特にプロピレングリコールなどのアルカノールは、その両親媒性から、特に溶媒として有利である。
【0080】
好ましくは、少なくとも1つのジオールは、少なくとも1つのプロピレングリコールである。
【0081】
更に、プロピレングリコールは、水と混和性であり、両親媒性であり、これは、両親媒性の少なくとも1つの第1の界面活性剤及び両親媒性の少なくとも1つの第2の界面活性剤と組み合わせて特に有利であり、本発明の水性ゲル組成物中の少なくとも1つの第1の界面活性剤及び少なくとも1つの第2の界面活性剤との最適な相互作用をもたらし、ひいてはゲル構造に寄与する。
【0082】
好ましくは、少なくとも1つのアルコール及び少なくとも1つの第2の界面活性剤は、プレミックス組成物の形態である。有用なプレミックス組成物は、例えば、Phosal(登録商標)、好ましくはPhosal(登録商標)50PGの名称で市販されている。Phosal(登録商標)50PGは、ホスファチジルコリン、特に大豆植物由来のホスファチジルコリンと、プロピレングリコールとを、好ましくは1:1の質量比で含むか、又はそれからなる。
【0083】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つの第1の界面活性は、組成物の総重量に基づいて、10重量%~25重量%、好ましくは12重量%~22重量%、より好ましくは14重量%~16重量%の量で存在する。
【0084】
水性ゲル組成物中の少なくとも1つの第1の界面活性剤の量は、ゾル相からゲル相への要件転移温度を有する熱可逆性ゲルの形成、本発明の水性ゲル組成物中の薬学的活性剤の良好な担持、特に本発明の水性ゲル組成物中の薬学的活性剤の良好な封入容量、粘膜接着特性、及び本発明の水性ゲル組成物からの薬学的活性剤の持続放出、特に良好な持続放出動態を確保するために重要であることが見出された。
【0085】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つの第2の界面活性剤は、組成物の総重量に基づいて、6重量%~20重量%、好ましくは6重量%~15重量%、より好ましくは6重量%~10重量%の量で存在する。
【0086】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つのアルコールは、組成物の総重量に基づいて、6重量%~20重量%、好ましくは6重量%~15重量%、より好ましくは6重量%~10重量%の量で存在する。
【0087】
好ましくは、少なくとも1つのアルコールと少なくとも1つの第2の界面活性剤とは、1:1、30:70、又は70:30の質量比で組成物中に存在する。
【0088】
水性ゲル組成物中の少なくとも1つの第2の界面活性剤及び少なくとも1つのアルコールの量は、ゾル相からゲル相への要件転移温度を有する熱可逆性ゲルの形成、本発明の水性ゲル組成物中の薬学的活性剤の良好な担持、特に本発明の水性ゲル組成物中の薬学的活性剤の良好な封入容量、粘膜接着特性、及び本発明の水性ゲル組成物からの薬学的活性剤の持続放出、特に良好な持続放出動態を確保するのに特に有利であることが見出された。
【0089】
本発明の更なる実施形態において、水性ゲル組成物は、以下が好ましい:
-少なくとも1つの第1の界面活性剤は、ポロキサマーであり、特に、組成物の総重量に基づいて、14重量%~16重量%の量で存在すること、
-少なくとも1つの第2の界面活性剤は、リン脂質、好ましくは天然ホスファチジルコリンであり、特に、組成物の総重量に基づいて、6重量%~10重量%の量で存在すること、及び
-少なくとも1つのアルコールは、プロピレングリコールであり、特に、組成物の総重量に基づいて、6重量%~10重量%の量で存在すること。
【0090】
本発明の水性ゲル組成物は、投与後、治療有効量の薬学的活性剤のインビボ持続放出を、好ましくは内部器官及び/又は隔壁で提供するのに、特に経鼓膜投与後、有機組織への単回投与後、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間、薬学的活性剤を内耳に拡散させるために中耳に適用するのに、特に有用であることが見出された。
【0091】
本発明の更なる実施形態において、水性ゲル組成物は、少なくとも1つの薬学的活性剤を更に含む。
【0092】
好ましくは、本発明の水性ゲル組成物は、少なくとも1つの薬学的活性剤を含む持続放出ゲルであり、これは、特に有機組織における単回投与後、少なくとも3日、好ましくは少なくとも5日、より好ましくは少なくとも1ヶ月の期間にわたって、体、特にヒトの体への少なくとも1つの薬学的活性剤の等しく、持続的かつ制御された遊離、特に放出を提供する。
【0093】
少なくとも1つの薬学的活性剤は、好ましくは、組成物の総重量に基づいて、0.05重量%~10重量%、好ましくは0,1重量%~10重量%、より好ましくは2重量%~10重量%、更に好ましくは2重量%~5重量%の量で存在する。
【0094】
上記の少なくとも1つの薬学的活性剤の量は、有機組織への単回投与後、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間、持続可能な放出ゲルを提供し、本発明の水性ゲル組成物から薬学的活性剤を放出するのに、特に有用であることが見出された。
【0095】
更に、少なくとも1つの薬学的活性剤は、特に粒子の形態であってもよく、かつ/又は0,01μm~100μm、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは20μm~50μmの平均粒径を有してもよい。
【0096】
本明細書で使用される「平均粒径」という用語は、その寸法、特にその直径、好ましくは平均直径が、0.01μm~100μm、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは20μm~50μmの範囲にある、少なくとも1つの薬学的活性剤の粒子又は全粒子の50%(D50)を意味する。これに関連して、「直径」という用語は、球状粒子の場合、球の直径、すなわち球の半径の2倍を意味すると理解されるべきである。非球状粒子の場合、「直径」という用語は、粒子の周に沿った2つの点が互いに取ることができる最大可能距離として理解されるべきである。
【0097】
より好ましくは、少なくとも1つの薬学的活性剤は、粒子の形態であり、少なくとも1つの薬学的活性剤の全粒子の90%(D90)は、0.01μm~100μm、好ましくは1μm~50μm、より好ましくは5μm~20μm、更により好ましくは11μm又は7μmの粒径、特に平均粒径より小さい。
【0098】
更に好ましくは、少なくとも1つの薬学的活性剤は、粒子の形態であり、少なくとも1つの薬学的活性剤の全粒子の50%(D50)は、0.01μm~100μm、好ましくは1μm~50μm、より好ましくは5μm~10μm、更により好ましくは5μmの粒径、特に平均粒径より小さい。
【0099】
平均粒径分布は、好ましくはレーザー回折法により得られる。レーザー回折測定中、レーザービームは、分散された粒子状試料を通過し、散乱光の強度の角度変化が測定される。大きな粒子は、レーザービームに対して小さな角度で光を散乱し、小さな粒子は、大きな角度で光を散乱する。次いで、角度散乱強度データを分析して、光散乱のMie理論を用いて、散乱パターンを生じた粒子の直径を計算する。粒径は、体積相当球径として報告される。特に測定に使用されたMastersizer3000(Malvern Panalytical製)における折り返し光学設計は、単一の光学測定経路を使用して10nmから3.5mmまでの粒径範囲を提供する。Mastersizer3000は、粒径範囲全体にわたって測定するために、赤色光源及び青色光源による測定の連続的な組み合わせを使用する。
【0100】
少なくとも1つの薬学的活性剤の上記の平均粒径は、水性ゲル組成物中の少なくとも1つの薬学的活性剤の均一な分布を得るのに特に有用であることが見出された。
【0101】
好ましくは、少なくとも1つの薬学的活性剤の所望の粒径は、粉砕、ボールミル粉砕、高圧ホモジネーション、ホモジネーション、微粉化、又は記載された方法の少なくとも2つの組み合わせによって得られたものである。
【0102】
更に、少なくとも1つの薬学的活性剤の上記の粒径により、有機組織への投与後の本発明の組成物から体への少なくとも1つの薬学的活性剤の取り込みは、薬学的活性剤を含む他の従来のゲル組成物と比較して特に有利である。本発明の水性ゲル組成物から体への薬学的活性剤の有利な取り込みにより、従来のゲル組成物と同じ治療効果を達成するために必要とされる組成物中の薬学的活性剤の量はより少ない。
【0103】
あるいは、少なくとも1つの薬学的活性剤は、特に微粉化されていなくてもよい。
【0104】
本明細書で使用される「薬学的活性剤の体への取り込み」という用語は、哺乳動物の体、特にヒト及び/又は動物の体への、特に哺乳動物の体、特にヒト及び/又は動物の体の外リンパ及び/又は内リンパへの薬学的活性剤の取り込みを意味する。
【0105】
好ましくは、本発明の水性ゲル組成物は、薬学的活性剤の濃度に基づいて、薬学的活性剤の多粒子懸濁液を含む。
【0106】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の水性ゲル組成物は、好ましくは、薬学的活性剤の溶液を含む。
【0107】
好ましくは、少なくとも1つの薬学的活性剤は、室温(22~26℃)の水中で、1mg/mL未満、好ましくは0,1mg/mL未満、より好ましくは0.01mg/mL未満、特に0.01mg/mL~1mg/mLの(低)溶解度を有する。
【0108】
薬学的活性剤の低溶解度は、投与後、特に内部器官で、例えば経鼓膜投与後、体への、特に体の外リンパ及び/又は内リンパへの薬学的活性剤の取り込みに悪影響を及ぼす。結果として、治療効果は単回投与によって達成することができないが、所望の時間間隔にわたって薬学的活性剤の持続的な取り込みを得るために、好適なゲル組成物中の薬学的活性剤の固有の低溶解度を使用する局所デポ製剤が開発されるべきである。
【0109】
本発明の水性ゲル組成物は、特に局所投与のために、上記のような(低)溶解度を有する薬学的活性剤を担持するのに特に有用であるという利点を示す。
【0110】
好ましくは、少なくとも1つの第1の界面活性剤、特にポロキサマー、及び少なくとも1つの第2の界面活性剤、特にリン脂質は両方とも、界面活性剤として作用し本発明の水性ゲル組成物中で一緒になってラメラ構造を形成する、両親媒性化合物である。少なくとも1つの第1の界面活性剤、特にポロキサマー、及び少なくとも1つの第2の界面活性剤、特にリン脂質の異なる炭素鎖長により、好ましくは、薬物物質がインターカレートされ得る空洞が、ラメラ構造中に生成される。したがって、薬学的活性剤は、好ましくは、本発明の水性ゲル組成物中に封入される。これは、製剤の可溶化効果を増大させ、薬学的活性剤、特に低水溶性特性を有する薬学的活性剤の薬物担持量を増加させることができ、本発明の水性ゲル組成物中の更に水溶性に乏しい薬学的活性剤の可溶化を可能にする。
【0111】
本明細書で使用される「ラメラ構造」という用語は、異なる材料、特に少なくとも1つの第1の界面活性剤、好ましくはポロキサマー、及び少なくとも1つの第2の界面活性剤、好ましくはリン脂質の交互層を含む、微細構造を意味する。
【0112】
更に、本発明の水性ゲル組成物は、特に有機組織への単回投与後、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間、薬学的活性剤の持続的な取り込みを得るために、局所デポを形成するように投与することができる。
【0113】
好ましくは、少なくとも1つの薬学的活性剤は、低溶解度特性及び高浸透性特性を含む物質である。
【0114】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つの薬学的活性剤は、好ましくは式Iを有し、
【化1】
式中、
-n=1であり、
-RLが、置換シクロペンタチエニル基(当該置換シクロペンタチエニル基が、少なくとも1個のF原子又はCl原子で置換される)、及び非置換又は置換インダニル基(当該置換インダニル基が、少なくとも1個のF原子又はCl原子で置換される)からなる群から選択される置換基であり、
-RRが、置換フェニル基(当該置換フェニル基が、F、SF、CF、及びOCFから選択される少なくとも1つの置換基からなる)である。
【0115】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つの薬学的活性剤は、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、及び
(S)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1-H-インデン-1-イル)-1-メチル-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)尿素、
並びに前述の薬学的活性剤の少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
【0116】
好ましくは、少なくとも1つの薬学的活性剤は、(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素である。
【0117】
上に列挙した薬学的活性剤は、好ましくはカリウムチャネルオープナーとして、特にKv7.4カリウムチャネルのオープナーとして機能し、ひいてはアルツハイマー病及びパーキンソン病のようなカリウム活性異常に関連する障害の治療において特に有用である、化合物のクラスに属する。更なる障害は、てんかんなどの神経学的状態、又はうつ病、躁病及び統合失調症のような認知精神障害である。特に、カリウムチャネルは、蝸牛のコルチ器官における外有毛細胞(OHC)の正常な機能に重要な役割を果たすことが知られている。したがって、上に列挙した薬学的活性剤は、難聴の治療及び/又は例えば、中毒性難聴を誘導する薬物による治療前の難聴の予防のための有望な候補である。
【0118】
本発明の更なる実施形態において、少なくとも1つの薬学的活性剤は、好ましくは式IIを有し、
【化2】
式中、
-Rが、非置換シクロアルキル基、特にビシクロアルキル基、非置換若しくは置換フェニル、又は非置換若しくは置換チエニル基であり、当該置換チエニル基又はフェニルが、好ましくは少なくとも1つのF原子、Cl原子、Br原子又はI原子、より好ましくは少なくとも1つのF原子又は少なくとも1つのCl原子からなる群から選択される少なくとも1つのハロゲンで置換されており、
-Rが、F、SF、CF又はOCFである。
【0119】
本発明によれば、少なくとも1つの薬学的活性剤は、好ましくは、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
又は
(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミドの立体異性体若しくは互変異性体、
特に
鏡像異性体(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、又は
ラセミ混合物(1SR,2SR,4RS)-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド)、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
p-クロロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド、
p-クロロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド、
p-クロロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド、
及び前述の薬学的活性剤の少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
【0120】
好ましくは、少なくとも1つの薬学的活性剤は、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
又は(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミドである。
【0121】
上に列挙した薬学的活性剤は、好ましくはカリウムチャネルオープナーとして、特にKv7.4カリウムチャネルのオープナーとして機能し、ひいてはアルツハイマー病及びパーキンソン病のようなカリウム活性異常に関連する障害の治療において特に有用である、化合物のクラスに属する。更なる障害は、てんかんなどの神経学的状態、又はうつ病、躁病及び統合失調症のような認知精神障害である。特に、カリウムチャネルは、蝸牛のコルチ器官における外有毛細胞(OHC)の正常な機能に重要な役割を果たすことが知られている。したがって、上に列挙した薬学的活性剤は、難聴の治療及び/又は例えば、中毒性難聴を誘導する薬物による治療前の難聴の予防のための有望な候補である。
【0122】
上記の薬学的活性剤、特に(1SR,2SR,4RS)-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]へプタン-2-カルボキサミド(以下、化合物Aと呼ぶ)、鏡像異性体(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]へプタン-2-カルボキサミド(以下、化合物Bと呼ぶ)は、室温(22~26℃)で、1mg/mL未満、好ましくは0.1mg/mL未満、より好ましくは0.01mg/mL未満、特に0.01mg/mL~1mg/mLの(低)溶解度を示す。
【0123】
更に、水性ゲル組成物は、以下が好ましい:
-少なくとも1つの第1の界面活性剤は、ポロキサマーであり、特に、組成物の総重量に基づいて、14重量%~16重量%の量で存在すること、
-少なくとも1つの第2の界面活性剤は、リン脂質、好ましくは天然ホスファチジルコリンであり、特に、組成物の総重量に基づいて、6重量%~10重量%の量で存在すること、
-少なくとも1つのアルコールは、プロピレングリコールであり、特に、組成物の総重量に基づいて、6重量%~10重量%の量で存在すること、
-特に、25℃又は37℃の温度での組成物の粘度は、1400~2300mPas、好ましくは1600~2000mPasであること、並びに
-少なくとも1つの薬学的活性剤は、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、及び
(S)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1-H-インデン-1-イル)-1-メチル-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)尿素、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
又は
(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミドの立体異性体若しくは互変異性体、
特に、
鏡像異性体(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド又は
ラセミ混合物(1SR,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド)、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
p-クロロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド、
p-クロロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド、
p-クロロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド
並びに前述の薬学的活性剤の少なくとも2つの混合物からなる群から選択されること。
【0124】
上記の組成物は、接着特性及び粘度特性、並びに有機組織への単回投与後、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間、化合物の持続放出を提供する本発明の水性ゲル組成物から体への薬学的活性剤の取り込みに関して特に有利であることが見出された。
【0125】
第2の態様によれば、本発明は、容器、特に排出装置に関し、容器は、好ましくは水性ゲル組成物、特に本発明の第1の態様による水性ゲル組成物を収容し、好ましくは充填される。
【0126】
容器は、バイアル又は注射器の形態であってよい。
【0127】
好ましくは、排出装置は、経鼓膜投与に適した針、好ましくは18~27ゲージ(バーミンガムゲージ)、より好ましくは20~23ゲージ、特に20ゲージの直径を有し、特に経鼓膜投与のために20μL~200μLの少量の本発明の水性ゲル組成物を適用するのに適した針に接続される。
【0128】
更に、排出装置は、好ましくはシクロオレフィンポリマー(COP)注射器であり、これは、製造プロセスからのあらゆる残留ガラス粒子が含まれるリスクがないという利点を示す。
【0129】
好ましくは、排出装置は、ストッパー及びプランジャーを含む。
【0130】
更に、排出装置は、好ましくは、注射器ホルダー、特にプラスチック又は厚紙注射器ホルダーを含み、これは、輸送中の注射器のあらゆる損傷を回避するのに特に有用である。
【0131】
更に、排出装置、特に注射器は、好ましくは無菌条件下で、無菌の本発明の水性ゲル組成物で充填される。
【0132】
排出装置の更なる特徴及び利点に関して、特に水性ゲル組成物に関して、本発明の第1の態様による水性ゲル組成物に関して記載された特徴及び利点が全体として参照される。本発明の第1の態様に基づいて記載された特徴及び利点は、本発明の第2の態様による排出装置に関して、必要な変更を加えて適用される。
【0133】
第3の態様によれば、本発明は、水性ゲル組成物を含む、特に本発明の第1の態様による水性ゲル組成物を含む、薬学的組成物又は薬剤に関する。
【0134】
薬学的組成物又は薬剤の更なる特徴及び利点に関して、特に水性ゲル組成物に関して、本発明の第1の態様による水性ゲル組成物に関して、及び本発明の第4の態様による使用に関して記載された特徴及び利点が全体として参照される。本発明の第1、第2及び第4の態様に基づいて記載された特徴及び利点は、本発明の第4の態様による薬学的組成物又は薬剤に関して、必要な変更を加えて適用される。
【0135】
第4の態様によれば、本発明は、内耳疾患の予防若しくは治療に使用するための水性ゲル組成物、特に本発明の第1の態様による水性ゲル組成物、又は内耳疾患の予防若しくは治療に使用するための薬学的組成物若しくは薬剤に関する。好ましくは、当該水性ゲル組成物又は当該薬学的組成物若しくは当該薬剤は、経鼓膜投与のために提供される。
【0136】
好ましくは、少なくとも1つの薬学的活性剤を含む水性ゲル組成物は、特に単回投与後、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間、耳、好ましくは内耳への薬学的活性剤の持続放出を提供する経鼓膜投与を介して投与される。上記のその粘度特性から、本発明の水性ゲル組成物は、薬学的活性剤の持続放出に、特に限定されないが、誘発性難聴、特に感音難聴、及び薬物誘発性中毒性難聴を含む耳障害の治療のための経鼓膜投与に特に有用である。
【0137】
更に、本発明の水性ゲル組成物は、有利には、液滴として投与するのに特に適した十分に調節された粘度及びゲル構造を示す。経鼓膜投与後、組成物は、好ましくは、特に液滴、好ましくは本発明の水性ゲル組成物を20μL~300μL、好ましくは30μL~300μL、より好ましくは30μL~200μLの体積で含む液滴の形態で、蝸牛窓膜又はアジュバント粘膜に接着し、中耳及び/又は蝸牛窓膜から洗い流されず、ひいては有機組織への単回投与後、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間、薬学的活性剤の持続放出を提供し、それによって患者の耳への頻繁な経鼓膜投与を回避する。
【0138】
薬学的組成物又は薬剤における使用の更なる特徴及び利点に関して、特に水性ゲル組成物に関して、本発明の第1の態様による水性ゲル組成物に関して記載された特徴及び利点が全体として参照される。本発明の第1及び第2の態様に基づいて記載された特徴及び利点は、本発明の第4の態様による使用に関して、必要な変更を加えて適用される。
【0139】
本発明の更なる特徴及び利点は、従属請求項の主題と併せて、実施例の形態での好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。個々の特徴は、本発明の一実施形態において、単独で又は組み合わせてのいずれかで実現することができる。好ましい実施形態は、単に本発明の例示及びより良い理解のために役立つものであり、決して本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【0140】
図は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0141】
図1a】異なるポロキサマー407含有量を有する、薬学的活性剤を含まない本発明の水性ゲル組成物の粘度の温度誘導性上昇。
図1b】異なるポロキサマー407含有量を有する、薬学的活性剤を含まない本発明の水性ゲル組成物の粘度の温度誘導性上昇。
図1c】異なるポロキサマー407含有量を有する、薬学的活性剤を含まない本発明の水性ゲル組成物の粘度の温度誘導性上昇。
図1d】異なるポロキサマー407含有量を有する、薬学的活性剤を含まない本発明の水性ゲル組成物の粘度の温度誘導性上昇。
図2a】(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド(ACOU085)である2%の薬学的活性剤(API)を含有する同じ本発明の水性ゲル組成物(b、右)と比較した、15%のポロキサマー407を含む本発明の水性ゲル組成物(a、左)の粘度の温度誘導性上昇。
図2b】(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド(ACOU085)である2%の薬学的活性剤(API)を含有する同じ本発明の水性ゲル組成物(b、右)と比較した、15%のポロキサマー407を含む本発明の水性ゲル組成物(a、左)の粘度の温度誘導性上昇。
図3a】接着性試験:顕微鏡対物スライドに適用されたゲル製剤の写真。
図3b】接着性試験:顕微鏡対物スライドに適用されたゲル製剤の写真。
図4】インビトロ薬物放出試験:3連の2%のACOU085及び3%のACOU085(200μL用量)を含有する表1(新規)の組成物の時間-放出関係。
図5】インビトロ薬物放出試験:3連の2%のACOU085(300μL適用)を含有する表1(新規)の組成物及び3%のACOU085(200μL適用)を含有する参照製剤(ref)の時間-放出関係。
図6】インビトロ薬物放出試験:3連の3%のACOU085(200μL適用)を含有する表1(新規)の組成物及び2%のACOU085(300μL適用)を含有する参照製剤(ref)の時間-放出関係。
図7】表1の組成物300μL又は200μLの比較を適用する。
図8】参照製剤300μL又は200μLの比較を適用する。
【実施例
【0142】
粘度試験:
懸濁液の粘度の温度誘導性上昇を、薬学的活性剤を含まず、13.9%、15%、17.9%及び20%のポロキサマー407を含有する本発明の水性ゲル組成物(表1による)を用いて試験した(図1a~d及び図2a)。
【0143】
注:最大粘度は全ての製剤について同一である(本試験方法による)。
図1a~図1dは、温度上昇時に粘度が急速に増加する転換点が、ポロキサマーの百分率(パーセンテージ)に依存することを示す。15%のポロキサマーを含む組成物は、粘度が20℃で急速に上昇するので、最適な粘度特性を示し、これは医業での適用に好ましい。
【0144】
図2a、図2bは、薬学的活性剤(API)が製剤の粘度-温度関係に影響を及ぼさなかったことを示す。
【0145】
接着性試験:
初期接着性試験では、14%、15%、17.9%及び20%のポロキサマー407を含有する本発明の水性ゲル組成物(表1による)を各々指に適用した。14%のポロキサマー407を含有する組成物は、指からの組成物の滴りを示した。この滴りは、15%、17.9%及び20%では観察されなかった。
【0146】
薬学的活性剤を含まず、14%のポロキサマーを含有する本発明の水性ゲル組成物(表1による)を用いて、最終的なより正確な接着性試験を実施した。300μLの本組成物を室温で顕微鏡対物スライド上に水平に適用した。スライドを37℃のオーブンに入れ、いくつかの時点(30秒、1分、1.5分、2分、3分、5分、6分)でスライドを垂直にした。その後の目視検査により、組成物が37℃で所定の位置に留まり、全ての時点で滴りが検出されなかったことが示された(図3a、図3b参照)。
【0147】
薬学的活性剤を含まず、14%のポロキサマーを含有する本発明の水性ゲル組成物(表1による)は、最終的なより正確な接着性試験において滴りを全く示さなかったので、より高いポロキサマー含有量がより低い温度で粘性組成物を与えることから、より高いポロキサマー濃度を有する製剤も顕微鏡対物スライド上に留まると推測することができる。
【0148】
組成
【表1】
本発明の水性ゲル組成物の組成。表に記載された百分率又は成分から逸脱する実施例で使用される組成物は、水を充填又は省略することによって適宜調節した。
:正確な百分率は四捨五入された数ではない。
**:製剤に使用される+(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド(ACOU085)は、以下の粒径を有するGMP材料である:
-D90:32μm。D90は、全粒子の90%がこの直径よりも小さいことを意味する。
-D50:13μm。D50は、全粒子の50%がこの直径よりも小さいことを意味する。
-D10:3.5μm。D10は、全粒子の10%がこの直径よりも小さいことを意味する。
【0149】
550mgの1つのバイアルのための組成:
【表2】
本発明の水性ゲル組成物の組成(mg)。
**:+(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
【0150】
調製
1.Phosal 50PG(予め混合したホスファチジルコリン及びプロピレングリコール、1:1)を(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド(ACOU085)と混合する。
2.オーバーヘッドスターラーで撹拌しながら水をゆっくり添加する(油中水型エマルジョンから水中油型エマルジョンへの相反転)。
3.混合物を氷上で冷却する。
4.Kolliphor P407(ポロキサマー407)粉末をオーバーヘッドスターラーで撹拌中にゆっくり添加する。
5.撹拌及びポロキサマーの添加中、混合物を冷却し続ける。
6.全てのKolliphor P407が溶解するまで、混合物を少なくとも1時間撹拌し続ける。
【0151】
安定性(応力)試験:
表1から調製した組成物を室温で6ヶ月間貯蔵し、外観について視覚的に試験した。分解及び/又は沈殿の徴候を示さなかった。
【0152】
a)分析方法
インビトロ薬物放出試験:
最適な媒体及び膜材料が決定された:
i)膜:
a.ポリスルホン膜は、本試験において優れた拡散特性を示したので、最適性能の膜として特定された(図4図7参照)。
【0153】
ii)媒体:
a.いくつかの媒体が試験され、最適な媒体が選択された。PBS緩衝液pH7.4及び3%SDSを、特性及び良好なACOU085溶解度により、また気泡が膜の下に容易に形成されないことから、最適な媒体として選択した(図4図7参照)。
【0154】
b)注射針通過性:
表1の本発明の水性ゲル組成物の、21G、25G針を有する1mL注射器での注射針通過性が実現可能である。
【0155】
インビトロ放出データ:
インビトロ放出データ(図4図8及び表2~表6)は、とりわけ、浸透実験のためにフランツ拡散セルを用いて行った。この装置は、間に固定膜(拡散バリア)を有する2つの区画からなる。試験される物質は、膜の上部に直接適用され、浸透化合物の濃度は、反対側の(アクセプター)区画で検出することができる。
【0156】
参照組成物を使用した場合、参照組成物は以下の非水性オレオゲル組成である:
-2重量%又は3重量%の量で存在するACOU085、
-92.5重量%又は91.5重量%の量で存在するヒマシ油、
-3.50重量%の量で存在するLabrafil(登録商標)(オレオイルマクロゴールグリセリド)、及び
-2.00重量%の量で存在するシリカ、コロイド状無水物。
【0157】
【表3】
【0158】
図4及び表2は、製剤が、試験膜を通過して媒体への持続的な用量依存的放出をもたらすことを示す。144時間にわたって、放出は、製剤化された薬学的活性剤の76.5~80.5%(2%のACOU085製剤)から82.2~88.4%(3%のACOU085製剤)までの範囲であった。
【0159】
【表4】
【0160】
【表5】
【0161】
図5、表3、及び表4は、両方の製剤が、試験膜を通過して媒体への持続放出をもたらすことを示す。しかしながら、144時間にわたって、本発明の水性ゲル組成物からの放出は、薬学的活性剤の全体的に同一の量にもかかわらず、参照製剤からよりも、受容媒体中の有意に高い薬物濃度及びより完全な放出をもたらす。参照及び本発明の水性ゲル組成物(新たに開発された製剤)のインビトロ放出は、同様の曲線を示す。しかしながら、最初に(12時間まで)、参照は、わずかにより速い放出を示すが、最後に、本発明の水性ゲル組成物は、最も高い濃度を与える(図5)。
【0162】
【表6】
【0163】
【表7】
【0164】
図6並びに表5及び表6は、両方の製剤が、試験膜を通過してレシピエント媒体への持続放出をもたらすことを示す。しかしながら、144時間にわたって、本発明の水性ゲル組成物からの放出は、薬学的活性剤の全体的に同一の量にもかかわらず、参照製剤からよりも、受容媒体中の有意に高い薬物濃度及びより完全な放出をもたらす。この利点は、本発明の水性ゲル組成物と参照オレオゲル製剤との間で製剤体積/薬学的活性剤含有量(300μL/2%のACOU085対200μL/3%のACOU085)をそれぞれ変化させることによって影響を受けなかった。図7及び図8は、受容媒体中のより高い達成された薬学的活性剤濃度及び担持された薬学的活性剤のより完全な放出が、参照組成物と比較して、本発明の水性ゲル組成物に特異的であり、各製剤について、一定した薬物担持量での体積/薬学的活性剤濃度の組み合わせに依存しなかったことを示す。
【0165】
比較的乏しい水溶性特性を有する薬学的活性剤に対する、可溶化剤対水の比率の影響
溶解度増強剤が、水中で比較的乏しい水溶性特性を有する薬学的活性剤の溶解度を改善するために調査される。
【0166】
水中で比較的乏しい溶解度特性を有する薬学的活性剤として、(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド(ACOU085)を使用した。
【0167】
最初に、水中にACOU085を有するエマルジョンが実現可能なアプローチであるかどうかを知るために、6つの混合物を調製する。安定なエマルジョンが形成されるとすぐに、水相に添加された他の化合物、特にポロキサマー407で混合物を更に安定化することができる。ポロキサマー407は、混合物に熱可逆特性を導入する。
【0168】
【表8】
【0169】
混合物1:組成 1滴のプレミックスPhosal 50PG+ACOU085+10mLのMilliQ水。
【0170】
調製方法:1.ACOU085を含むPhosal 50PGを、10mLの水中に1滴ピペットで移す。2.フレークを形成するが、安定していない。3.10分間の超音波処理により、マイクロ/ナノエマルジョンに典型的な白色又は淡青色の濁りが形成される。
【0171】
プレミックスを水に添加した後、フレーク形成が行われた。これらのフレークを10分間の超音波処理によって除去した。超音波処理後、マイクロ/ナノエマルジョンに典型的な白色又は淡青色の濁りが形成された。
【0172】
混合物2:組成 1mLのプレミックスPhosal 50PG+ACOU085+10mLのMilliQ水。
【0173】
調製方法:1.ACOU085を含むPhosal 50PGを、10mLの水中に1mLピペットで移す。2.大きなフレークを形成するが、安定していない。3.10分間の超音波処理により、乳白色のエマルジョンが形成された。4.数日後に沈殿したが、安定していなかった。
【0174】
プレミックスを水に添加した後、フレーク形成が行われる。10分間の超音波処理後、乳白色のエマルジョンが形成されるが、数日後に沈殿が生じた。したがって、混合物は安定していない。更に、混合物2の顕微鏡写真は、大きなACOU085粒子を示し、これは、形成されたエマルジョン中に組み込まれていないか、又は調製直後に沈殿していない。
【0175】
混合物3:組成 40℃で1滴のプレミックスPhosal 50PG+ACOU085+10mLのMilliQ水+1滴のCremophor RH40。
【0176】
調製方法:1.Cremophorを含む40℃の水。2.1滴のPhosal+ACOU085を撹拌中の混合物にピペットで移す。3.フレークを形成するが、更に撹拌すると、フレークは溶解する。
【0177】
プレミックスを水及びCremophor混合物に添加した後、フレークが生じるが、撹拌後、これらのフレークは溶解する。混合物は不透明であり、安定なままである。顕微鏡写真には、目に見えるACOU085粒子は存在しない。
【0178】
混合物4:組成 1gのプレミックスPhosal 50PG+ACOU085+0.25gのPolysorbate80+9gのMilliQ水。
【0179】
調製方法:1.Phosal 50PG+ACOU085を0.25gのPolysorbate80と混合する。2.撹拌下、水をゆっくり添加する。3.相反転、w/oエマルジョンの最初の形成、更なる水の添加 o/w(水中油)エマルジョンの形成。混合物は、相反転技術を用いて調製した。最初に油中水型エマルジョンが形成され、更に水を添加した後、水中油型エマルジョンが形成される。製剤は、最初は安定なままであるが10日後には沈殿する、乳白色のエマルジョンである。顕微鏡写真では、ACOU085の数個の粒子が見える。
【0180】
混合物5:組成 1mLのPhosal 50PG+20mLのMilliQ水。
【0181】
調製方法:1.水を撹拌する。2.水相にPhosal 50PGをゆっくり添加する。3.各滴下後、均質になるまで撹拌する。混合物5は、Phosal 50PG及び水を用いて安定なエマルジョンを調製することが実現可能である場合の最初の考えを得るために、ACOU085なしで調製された。4.水を混合し、Phosal 50PGをゆっくり添加する。
【0182】
混合物6:組成 1mLのPhosal 50PG+5gのMilliQ水。
【0183】
調製方法:1.Phosal 50PGを撹拌する。2.水をゆっくり添加する。3.w/oエマルジョンからo/wエマルジョンへの相反転、生成物は液体である。
【0184】
混合物5において安定なエマルジョンを調製する試みは成功しなかった。したがって、安定なエマルジョンを調製するために別のアプローチが使用される。この混合物はまた、相反転技術が機能し得る場合の最初の考えを得るために、ACOU085なしで調製された。最初にPhosal 50PGを添加し、Phosal 50PGを撹拌中、水をゆっくり添加する。混合物は粘性の油中水型エマルジョンになり、更なる水の添加後、水中油型エマルジョンが形成される。混合物は、安定したままである乳白色のエマルジョンである(図10参照)。顕微鏡写真において、エマルジョンの典型的な画像が、小さな均一に分布した液滴と共に示されている。
【0185】
結論
これらの6つの混合物のうち、混合物6のエマルジョンが最良の安定性を示し、作業可能な最終製剤を作製するために十分な量のACOU085を乳化することが可能であると結論付けることができる。この混合物は、相反転技術を用いて調製され、小さな均一に分布した液滴が得られる。この混合物は、熱可逆性特性を有する製剤を更に開発するための基礎として使用される。明らかに、Phosal:水の比率1:5、好ましくは1:1~1:10、より好ましくは1:1.5~1:3が、最良の安定性を示した。
【0186】
ACOU085及び熱可逆特性を有する化合物を含む混合物6
熱可逆特性を有する、安定かつ均質な懸濁液が可能であるかどうかを知るために、混合物6に記載のPhosal 50Gと水との比に従って3つの製剤を調製した。
【0187】
【表9】
【0188】
これらの製剤は、所望の熱可逆特性を有する安定な製剤をもたらす。しかしながら、Labrafillを含む製剤は、Kolliphor P407(ポロキサマー407としても知られる)を含む製剤と比較して、損なわれた熱可逆特性を示した。
【0189】
インビボ放出データ
18匹の雌Sprague Dawleyラットが薬物動態試験に参加して、末梢血漿、内耳、外リンパ、脳及びCSFにおける片側経鼓膜投与後の1.2mg/動物の用量での、6%の熱可逆性ACOU085製剤の分布を決定した。投与の4時間後、24時間後、48時間後、96時間後、168時間後及び336時間後に、全ての群からn=3のラットを二酸化炭素で安楽死させ、末梢及び最終血液試料並びに脳を採取し、内耳を切開してACOU085濃度を分析した。体重を1~4日目、7日目及び14日目に評価した。動物を、試験物質の毒性に関連するあらゆる臨床徴候について確認した。
【0190】
スポンサー試験物質での処置後に、疼痛、行動変化又は有害反応の目に見える徴候は認められず、全ての動物が、予定された試験期間を生き延びた。注射直後には、頭部引っ掻きなどのわずかな防御反応しか観察されなかった。この反応は、注射後に中耳に残った液体によるものと考えられる。明らかな肉眼的に検出可能な反応のこの欠如は、1.2mg/動物の用量で雌のSprague Dawleyラットの中耳に経鼓膜的に適用された場合、動物応答(疼痛、不快感、平衡感覚喪失)につながる有害作用が、スポンサー試験物質によって引き起こされなかったことを示唆する。
【0191】
【表10】
【0192】
【表11】
【0193】
脳及び血漿へのACOU085の取り込みは、内耳組織及び外リンパと比較して、これらの器官において測定された低濃度によって示されるように低かった。実際、測定された最大平均濃度は、血漿においてわずか45nmol/Lであり、脳において82nmol/Lであった。
【0194】
【表12】
【0195】
【表13】
【0196】
ACOU085は、7日後に血漿中に検出可能なレベル(26nmol/L)で依然として存在したが、濃度は着実に減少し、投与の14日後に4nmol/Lに達した。脳では、ACOU085濃度は処置後に一貫して増加し(図3)、注射後96時間でピークに達した。96時間後、ACOU085濃度は、血漿と同様に、投与14日後にほとんど検出できなくなるまで着実に減少した(8nmol/L)。
【0197】
結論
雌Sprague Dawleyラットに片側経鼓膜投与された本発明の熱可逆性水性ゲル組成物中の6%のACOU085を使用した薬学的活性剤の血漿薬物動態(PK)及び分布は、他の製剤と比較して改善された忍容性及び放出プロファイルを示し、副作用がないか又はわずかしかなく、薬学的活性剤の持続放出をもたらした。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0197
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0197】
結論
雌Sprague Dawleyラットに片側経鼓膜投与された本発明の熱可逆性水性ゲル組成物中の6%のACOU085を使用した薬学的活性剤の血漿薬物動態(PK)及び分布は、他の製剤と比較して改善された忍容性及び放出プロファイルを示し、副作用がないか又はわずかしかなく、薬学的活性剤の持続放出をもたらした。以下の項目[態様1]~[態様21]に本発明の実施形態の例を列記する。
[態様1]
水性ゲル組成物であって、
-前記組成物の総重量に基づいて、10重量%~30重量%の量の少なくとも1つの第1の界面活性剤と、
-前記組成物の総重量に基づいて、5重量%~20重量%の量の少なくとも1つの第2の界面活性剤と、
-前記組成物の総重量に基づいて、5重量%~20重量%の量の少なくとも1つのアルコールと、
-前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%の量の水と、を含む、
水性ゲル組成物。
[態様2]
25℃の温度での前記組成物の粘度が、1400mPas~2300mPas、好ましくは1600mPas~2000mPasである、態様1に記載の水性ゲル組成物。
[態様3]
前記少なくとも1つの第1の界面活性剤が、少なくとも1つのコポリマー、特に少なくとも1つのブロックコポリマーを含む、態様1又は2に記載の水性ゲル組成物。
[態様4]
前記少なくとも1つのブロックコポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)ブロック、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)ブロック、ポリ(l-カプロラクトン)ブロック、ポリ(L-乳酸)ブロック、ポリ(エーテルエステルアミド)ブロック、ポリ(プロピレンオキシド)ブロック、ポリ(N-イソプロリルアクリルアミド)ブロック、ポリ(エチレングリコール)ブロック、ポリ(プロピレングリコール)ブロック、ポリ(メタクリル酸)ブロック、ポリ(ビニルアルコール)ブロック、ポリ(ビニルピロリドン)ブロック、及び前記ポリマーブロックの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される少なくとも2つの異なるポリマーブロックを含む、態様3に記載の水性ゲル組成物。
[態様5]
前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、少なくとも1つのリン脂質を含む、態様1~4のいずれか一態様に記載の水性ゲル組成物。
[態様6]
前記少なくとも1つのリン脂質が、ホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、及び前記リン脂質の少なくとも2つの混合物からなる群から選択される、態様5に記載の水性ゲル組成物。
[態様7]
前記少なくとも1つのアルコールが、少なくとも1つのポリオール、特に少なくとも1つのジオールを含む、態様1~6のいずれか一態様に記載の水性ゲル組成物。
[態様8]
前記少なくとも1つのジオールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1,2-へキシレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、1,2-オクチレングリコール、オクタメチレングリコール、エチルヘキシレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ラウリルグリコール及び前記ジオールの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるアルカンジオールである、態様7に記載の水性ゲル組成物。
[態様9]
前記少なくとも1つの第1の界面活性が、前記組成物の総重量に基づいて、10重量%~25重量%、好ましくは12重量%~22重量%、より好ましくは14重量%~16重量%の量で存在する、態様1~8のいずれか一態様に記載の水性ゲル組成物。
[態様10]
前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~20重量%、好ましくは6重量%~15重量%、より好ましくは6重量%~10重量%の量で存在する、態様1~9のいずれか一態様に記載の水性ゲル組成物。
[態様11]
前記少なくとも1つのアルコールが、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~20重量%、好ましくは6重量%~15重量%、より好ましくは6重量%~10重量%の量で存在する、態様1~10のいずれか一態様に記載の水性ゲル組成物。
[態様12]
-前記少なくとも1つの第1の界面活性剤が、ポロキサマーであり、
-前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、リン脂質、好ましくは天然ホスファチジルコリンであり、
-前記少なくとも1つのアルコールが、プロピレングリコールである、
態様1~11のいずれか一態様に記載の水性ゲル組成物。
[態様13]
-前記少なくとも1つの第1の界面活性剤が、ポロキサマーであり、特に、前記組成物の総重量に基づいて、14重量%~16重量%の量で存在し、
-前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、リン脂質、好ましくは天然ホスファチジルコリンであり、特に、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~10重量%の量で存在し、
-前記少なくとも1つのアルコールが、プロピレングリコールであり、特に、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~10重量%の量で存在する、
態様1~12のいずれか一態様に記載の水性ゲル組成物。
[態様14]
前記水性ゲル組成物が、少なくとも1つの薬学的活性剤を更に含み、好ましくは、前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、前記組成物の総重量に基づいて、0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、より好ましくは2重量%~10重量%の量で存在する、態様1~13のいずれか一態様に記載の水性ゲル組成物。
[態様15]
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、0.01μm~100μm、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは20μm~50μmの平均粒径を有する、態様14に記載の水性ゲル組成物。
[態様16]
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、式Iを有し、
【化3】
式中、
-n=1であり、
-RLが、置換シクロペンタチエニル基(前記置換シクロペンタチエニル基が、少なくとも1個のF原子又はCl原子で置換される)、及び非置換又は置換インダニル基(前記置換インダニル基が、少なくとも1個のF原子又はCl原子で置換される)からなる群から選択される置換基であり、
-RRが、置換フェニル基(前記置換フェニル基が、F、SF 、CF 、及びOCF から選択される少なくとも1つの置換基を含む)である、
態様14又は15に記載の水性ゲル組成物。
[態様17]
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、及び
(S)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1-H-インデン-1-イル)-1-メチル-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)尿素、
並びに前記薬学的活性剤の少なくとも2つの混合物、
からなる群から選択される、態様16に記載の水性ゲル組成物。
[態様18]
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、式IIを有し、
【化4】
式中、
-Rが、非置換シクロアルキル基、特にビシクロアルキル基、非置換若しくは置換フェニル基、又は非置換若しくは置換チエニル基(前記置換チエニル基又はフェニル基が、少なくとも1つのハロゲン、好ましくは少なくとも1つのF原子又は少なくとも1つのCl原子で置換される)であり、
-R が、F、SF 、CF 又はOCF である、
態様14又は15に記載の水性ゲル組成物。
[態様19]
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
p-クロロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド、
p-クロロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド、
p-クロロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド、
及び前記薬学的活性剤の少なくとも2つの混合物、
からなる群から選択される、態様18に記載の水性ゲル組成物。
[態様20]
態様1~19のいずれか一態様に記載の水性ゲル組成物を含む、医薬組成物又は医薬品。
[態様21]
内耳疾患の予防若しくは治療における使用のための、態様1~19のいずれか一態様に記載の水性ゲル組成物、又は内耳疾患の予防若しくは治療における使用のための、態様18に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ゲル組成物であって、
-前記組成物の総重量に基づいて、10重量%~30重量%の量の少なくとも1つの第1の界面活性剤と、
-前記組成物の総重量に基づいて、5重量%~20重量%の量の少なくとも1つの第2の界面活性剤と、
-前記組成物の総重量に基づいて、5重量%~20重量%の量の少なくとも1つのアルコールと、
-前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%の量の水と、を含む、
水性ゲル組成物。
【請求項2】
25℃の温度での前記組成物の粘度が、1400mPas~2300mPas、好ましくは1600mPas~2000mPasである、請求項1に記載の水性ゲル組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の界面活性剤が、少なくとも1つのコポリマー、特に少なくとも1つのブロックコポリマーを含む、請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのブロックコポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)ブロック、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)ブロック、ポリ(l-カプロラクトン)ブロック、ポリ(L-乳酸)ブロック、ポリ(エーテルエステルアミド)ブロック、ポリ(プロピレンオキシド)ブロック、ポリ(N-イソプロリルアクリルアミド)ブロック、ポリ(エチレングリコール)ブロック、ポリ(プロピレングリコール)ブロック、ポリ(メタクリル酸)ブロック、ポリ(ビニルアルコール)ブロック、ポリ(ビニルピロリドン)ブロック、及び前記ポリマーブロックの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される少なくとも2つの異なるポリマーブロックを含む、請求項3に記載の水性ゲル組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、少なくとも1つのリン脂質を含む、請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのリン脂質が、ホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、及び前記リン脂質の少なくとも2つの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の水性ゲル組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアルコールが、少なくとも1つのポリオール、特に少なくとも1つのジオールを含む、請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのジオールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1,2-へキシレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、1,2-オクチレングリコール、オクタメチレングリコール、エチルヘキシレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ラウリルグリコール及び前記ジオールの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるアルカンジオールである、請求項7に記載の水性ゲル組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の界面活性が、前記組成物の総重量に基づいて、10重量%~25重量%、好ましくは12重量%~22重量%、より好ましくは14重量%~16重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~20重量%、好ましくは6重量%~15重量%、より好ましくは6重量%~10重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアルコールが、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~20重量%、好ましくは6重量%~15重量%、より好ましくは6重量%~10重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物。
【請求項12】
-前記少なくとも1つの第1の界面活性剤が、ポロキサマーであり、
-前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、リン脂質、好ましくは天然ホスファチジルコリンであり、
-前記少なくとも1つのアルコールが、プロピレングリコールである、
請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物。
【請求項13】
-前記少なくとも1つの第1の界面活性剤が、ポロキサマーであり、特に、前記組成物の総重量に基づいて、14重量%~16重量%の量で存在し、
-前記少なくとも1つの第2の界面活性剤が、リン脂質、好ましくは天然ホスファチジルコリンであり、特に、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~10重量%の量で存在し、
-前記少なくとも1つのアルコールが、プロピレングリコールであり、特に、前記組成物の総重量に基づいて、6重量%~10重量%の量で存在する、
請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物。
【請求項14】
前記水性ゲル組成物が、少なくとも1つの薬学的活性剤を更に含み、好ましくは、前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、前記組成物の総重量に基づいて、0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、より好ましくは2重量%~10重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、0.01μm~100μm、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは20μm~50μmの平均粒径を有する、請求項14に記載の水性ゲル組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、式Iを有し、
【化1】
式中、
-n=1であり、
-RLが、置換シクロペンタチエニル基(前記置換シクロペンタチエニル基が、少なくとも1個のF原子又はCl原子で置換される)、及び非置換又は置換インダニル基(前記置換インダニル基が、少なくとも1個のF原子又はCl原子で置換される)からなる群から選択される置換基であり、
-RRが、置換フェニル基(前記置換フェニル基が、F、SF、CF、及びOCFから選択される少なくとも1つの置換基を含む)である、
請求項14に記載の水性ゲル組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)-1-メチル尿素、及び
(S)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1-H-インデン-1-イル)-1-メチル-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)尿素、
並びに前記薬学的活性剤の少なくとも2つの混合物、
からなる群から選択される、請求項16に記載の水性ゲル組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、式IIを有し、
【化2】
式中、
-Rが、非置換シクロアルキル基、特にビシクロアルキル基、非置換若しくは置換フェニル基、又は非置換若しくは置換チエニル基(前記置換チエニル基又はフェニル基が、少なくとも1つのハロゲン、好ましくは少なくとも1つのF原子又は少なくとも1つのCl原子で置換される)であり、
-Rが、F、SF、CF又はOCFである、
請求項14に記載の水性ゲル組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの薬学的活性剤が、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1R,2R,4S)-rel-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド、
p-クロロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド、
p-クロロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド、
p-クロロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド、
p-フルオロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド、
及び前記薬学的活性剤の少なくとも2つの混合物、
からなる群から選択される、請求項18に記載の水性ゲル組成物。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物を含む、医薬組成物又は医薬品。
【請求項21】
内耳疾患の予防若しくは治療における使用のための、請求項1又は2に記載の水性ゲル組成物、又は内耳疾患の予防若しくは治療における使用のための、請求項18に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】