(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】4重偏波ダイバーシティアンテナシステム
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/40 20060101AFI20240905BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240905BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20240905BHJP
H04B 7/10 20170101ALI20240905BHJP
【FI】
H01Q3/40
H01Q21/06
H01Q21/24
H04B7/10 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518289
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 KR2022013147
(87)【国際公開番号】W WO2023048421
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0127532
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0110163
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン ホヮン ソ
(72)【発明者】
【氏名】オ ソー チェ
(72)【発明者】
【氏名】フン ジュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ウン セオ
(72)【発明者】
【氏名】キョ ジン ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ソー ビン チョ
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA07
5J021AA09
5J021AA12
5J021AB03
5J021CA03
5J021CA06
5J021DB03
5J021FA29
5J021FA34
5J021GA02
5J021HA02
5J021HA06
5J021JA05
(57)【要約】
【課題】アンテナの利得を高めるために、それぞれ異なる偏波を有するビームを介して空間を分離するのに適したアンテナアレイ、アンテナアレイが配列されたアンテナパネルの構成とそれを用いたビームの空間多重化を提供する。
【解決手段】偏波ダイバーシティアンテナシステムは、2重偏波アンテナユニットの第1の列と、2重偏波アンテナユニットの第2の列と、を含むアンテナアレイを含む。2重偏波アンテナユニットのそれぞれは、互いに垂直交差する第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子を備える。各列で、前記第1のアンテナ素子は伝導的につながって第1のサブアレイを形成し、前記第2のアンテナ素子は伝導的につながって第2のサブアレイを形成する。アンテナシステムは、さらに、RF入力信号の位相を選択的に調整し、前記サブアレイに提供されるRF出力信号を生成するRFマトリックスを含む。前記RF出力信号が前記2重偏波アンテナユニットによって放射されるとき、+/-45°偏波を有する第1のビーム及び0°/90°偏波を有する第2のビームが形成され、前記第1のビーム及び前記第2のビームは互いに空間的に異なる方向に向かって形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2重偏波アンテナユニットの第1の列と2重偏波アンテナユニットの第2の列を含むアンテナアレイ、およびRFマトリックスを備え、
前記2重偏波アンテナユニットのそれぞれは互いに垂直交差する第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子を備え、各列で、前記第1のアンテナ素子は伝導的につながって第1のサブアレイを形成し、前記第2のアンテナ素子は伝導的につながって第2のサブアレイを形成するものであり、
前記RFマトリックスは、RF入力信号のそれぞれを複数の分岐信号に分岐し、前記複数の分岐信号の位相を選択的に調整し、前記第1の列の前記第1のサブアレイ、前記第1の列の前記第2のサブアレイ、前記第2の列の前記第1のサブアレイ、及び前記第2の列の前記第2のサブアレイに提供されるRF出力信号を生成するものであり、
前記RF出力信号が前記2重偏波アンテナユニットによって放射されるとき、+/-45°偏波を有する第1のビーム及び0°/90°偏波を有する第2のビームが形成され、前記第1のビーム及び前記第2のビームは互いに空間的に異なる方向に向かって形成される、偏波ダイバーシティアンテナシステム。
【請求項2】
前記RFマトリックスは、PCBに形成されたクアドレイチャハイブリッドカプラ(quadrature hybrid coupler: QHC)で具現された、請求項1に記載の偏波ダイバーシティアンテナシステム。
【請求項3】
前記RFマトリックスは、
第1のQHC、第2のQHC、及び第3のQHCと、
前記第1のQHCの第1のアームにつながった第1の入力ポート、前記第2のQHCの第1のアームにつながった第2の入力ポート、前記第3のQHCの第4のアームにつながった第3の入力ポート、そして前記第3のQHCの第2のアームにつながった第4の入力ポートと、
前記第1のQHCの第2のアームにつながった第1の出力ポート、前記第1のQHCの第3のアームにつながった第2の出力ポート、前記第2のQHCの第2のアームにつながった第3の出力ポート、そして前記第2のQHCの第3のアームにつながった第4の出力ポートと、
を含み、
前記第3のQHCの第2のアームは第1のQHCの第4のアームにつながり、前記第3のQHCの第3のアームは前記第2のQHCの第4のアームにつながった、請求項2に記載の偏波ダイバーシティアンテナシステム。
【請求項4】
前記第1の入力ポート、前記第2の入力ポート、前記第3の入力ポート、及び前記第4の入力ポートは、前記第1の列の前記第1のサブアレイ、前記第2の列の前記第1のサブアレイ、前記第1の列の前記第2のサブアレイ、及び前記第2の列の前記第2のサブアレイにそれぞれつながった、請求項3に記載の偏波ダイバーシティアンテナシステム。
【請求項5】
前記第1の入力ポート、前記第2の入力ポート、前記第3の入力ポート、及び前記第4の入力ポートは、前記RF入力信号を供給するRFチェーンにそれぞれつながった、請求項3に記載の偏波ダイバーシティアンテナシステム。
【請求項6】
前記RFマトリックスは、
前記第1のビーム及び前記第2のビームを形成するための位相差と、前記第1のビームと前記第2のビームの偏波を決定する位相差に基づき、前記複数の分岐信号の位相を選択的に調整する、請求項1に記載の偏波ダイバーシティアンテナシステム。
【請求項7】
前記RF入力信号の中で、前記第1のビームによって伝播される一対のRF入力信号に対して前記RFマトリックス回路によって調整された位相は、前記第1のビームが形成される所望の空間方向を達成するために定義されたものである、請求項6に記載の偏波ダイバーシティアンテナシステム。
【請求項8】
前記RF入力信号の中で、前記第2のビームによって伝播される一対のRF入力信号に対して前記RFマトリックス回路によって調整された位相は、前記第2のビームが形成される所望の空間方向及び偏波合成を達成するために定義されたものである、請求項6に記載の偏波ダイバーシティアンテナシステム。
【請求項9】
前記2重偏波アンテナユニットは+/-45°偏波特性を有する、請求項1に記載の偏波ダイバーシティアンテナシステム。
【請求項10】
前記第2のビームの0°/90°偏波は、偏波合成(Polarization Synthesis)によって得られるものである、請求項9に記載の偏波ダイバーシティアンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間的に隣接するビームが互いに異なる2重偏波(dual-polarization)特性を有するようにビームの偏波を調整することで、無線チャネルの直交性を向上させてシステムのチャネル容量を増大させることができる4重偏波ダイバーシティアンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この部分に記述された内容は単に本発明に関する背景情報を提供するだけで従来技術を構成するものではない。
【0003】
アンテナの偏波は、地球表面に対する電波の電界(E平面)方向を言い、アンテナ素子の物理的構造と方向に少なくとも部分的に依存して決定される。例えば、簡単な直線型アンテナ素子は、垂直に取り付けられたときに1つの偏波を有し、水平に取り付けられたときに異なる偏波を有する。電波の磁界は電場と直角をなすが、慣例的にアンテナ素子の偏波は電界の方向を指すものと理解される。
【0004】
移動通信で、MIMO(multiple-input multiple-output)アンテナは、マルチパスによるフェージング(fading)効果を減少させ、偏波ダイバーシティ(diversity)機能を遂行するために2重偏波アンテナ(dual-polarized antenna)として設計されるのが一般的である。しかしながら、多重ビームを使用するマッシブマイモ(Massive MIMO)システムでは、互いに隣接するビーム間の干渉によって無線チャネルの相関係数が高くなり、これによって空間リソースを効率的に使用し難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、アンテナの利得を高めるために、それぞれ異なる偏波を有するビームを介して空間(あるいはセクタ)を分離するのに適したアンテナアレイ、アンテナアレイが配列されたアンテナパネルの構成とそれを用いたビームの空間多重化を提示したい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施例によると、アンテナシステムは、2重偏波アンテナユニットの第1の列と2重偏波アンテナユニットの第2の列を含むアンテナアレイを含む。前記2重偏波アンテナユニットのそれぞれは、互いに垂直交差する第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子を備える。各列で、前記第1のアンテナ素子は伝導的につながって第1のサブアレイを形成し、前記第2のアンテナ素子は伝導的につながって第2のサブアレイを形成する。アンテナシステムは、RF入力信号の位相を選択的に調整し、前記サブアレイに提供されるRF出力信号を生成するRFマトリックスをさらに含む。前記RF出力信号が前記2重偏波アンテナユニットによって放射されるとき、+/-45°偏波を有する第1のビーム及び0°/90°偏波を有する第2のビームが形成され、前記第1のビーム及び第2のビームは、互いに空間的に異なる方向に向かって形成される。
【0007】
前記RFマトリックスは、PCBに形成されたクアドレイチャハイブリッドカプラ(quadrature hybrid coupler: QHD)で具現される。前記RFマトリックスは、前記第1のビーム及び前記第2のビームを形成するための位相差と、前記第1のビームと前記第2のビームの偏波を決定する位相差に基づき、前記複数の分岐信号の位相を選択的に調整するように構成される。
【0008】
前記RF入力信号の中で、前記第1のビームによって伝播される一対のRF入力信号に対して前記RFマトリックス回路によって調整された位相は、前記第1のビームが形成される所望の空間方向に対して定義される。前記RF入力信号の中で、前記第2のビームによって伝播される一対のRF入力信号に対して前記RFマトリックス回路によって調整された位相は前記第2のビームが形成される所望の空間方向及び偏波合成のために定義される。
【0009】
前記2重偏波アンテナユニットは+/-45°偏波特性を有し、前記第2のビームの0°/90°偏波は偏波合成(Polarization Synthesis)によって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】+45°/-45°の2重偏波アンテナアレイを利用する従来の4T4R偏波ダイバーシティアンテナシステムを示す。
【
図2】
図1のアンテナシステムによって形成される空間多重化されたビームパターンを示す。
【
図3】+/-45°の2重偏波アンテナアレイを用いる、本発明の一実施例に係る4T4R偏波ダイバーシティアンテナシステムを示す。
【
図4a】説明の便宜のために
図3のアンテナシステムのRFドメインを簡略に表現した概念図である。
【
図4b】
図3のアンテナシステムが形成できる一対のビームと、これらのビーム形成に関与された入力信号を例示する。
【
図4c】
図4bに示される一対のビームを形成するために、入力信号T1、T2、T3、T4がRFマトリックスを経てアンテナアレイのサブアレイに到達する間に受けることになる位相偏移を示すテーブルである。
【
図5a】本開示の一側面に係る、クアドレイチャハイブリッドカプラ(quadrature hybrid coupler: QHC)を用いて具現したRFマトリックスの一例である。
【
図5b】
図5aに例示されたRFマトリックス500を用いて形成されるビームのパターンとビームの2重偏波特性を示す。
【
図6a】異種(heterogeneous)の2重偏波アンテナユニットを含むアンテナアレイを用いる、本発明の別の実施例に係る4T4R偏波ダイバーシティアンテナシステムを示す。
【
図6b】
図6aのアンテナシステムで採用される例示的なアンテナパネルの上面図(top view)である。
【
図6c】
図6bのアンテナパネルの構造を示す正面図(front view)である。
【
図6d】
図6bのアンテナパネルの構造を示す正面図(front view)である。
【
図6e】互いに異なる列に位置する同一偏波のサブアレイが異なる長さのRF経路でRFチェーンにつながれた構成を示す。
【
図7a】本発明のまた別の実施例に係る、異種(heterogeneous)の2重偏波アンテナユニットが配列されたアンテナパネルを示す。
【
図7b】
図7aに例示されたアンテナパネルを用いてカバーされるメインカバレッジとサブカバレッジを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一部の実施例を例示的な図面を介して詳しく説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたり、同一の構成要素に対しては、たとえ他の図面上に表示されても可能な限り同一の符号を有するようにしていることに留意されたい。なお、本発明を説明するにあたり、関連された公知の構成又は機能に関する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、その詳しい説明は省く。
【0012】
本開示は、アンテナの利得を高めるために、それぞれ異なる偏波を有するビームを介して空間(セクタ)を分離するのに適した偏波ダイバーシティアンテナシステムに関する。
【0013】
提案された技術の技術的有用性をよりよく理解させるために、2重偏波アンテナアレイを用いるアンテナシステムで、異なる偏波特性を有するビームを形成するために考慮されるソリューションに関する説明から始めることが有用である。
【0014】
図1は、+45°/-45°の2重偏波アンテナアレイを用いる従来の4T4R偏波ダイバーシティアンテナシステムを図示する。
図1のアンテナシステムは、デジタルドメインでの偏波合成を通じて4重偏波ダイバーシティを達成することができる。
図2は、
図1のアンテナシステムによって形成される空間多重化されたビームパターンを示す。
【0015】
図1を参照すると、アンテナシステムに採用されたアンテナアレイは、2重偏波アンテナユニットの2つの列で構成される。各2重偏波アンテナユニットは、+45°偏波の第1のアンテナ素子101a及び-45°偏波の第2のアンテナ素子101bを含む。すなわち、+45°の線形放射素子と-45°の線形放射素子を含む2重偏波アンテナユニットの2つの列がアンテナアレイを形成する。各列で、アンテナ素子101a、101bが偏波ごとにフィーダライン(feeder line)111a、111bにつながる。すなわち、各列で、+45°偏波の第1のアンテナ素子101aが第1のフィーダライン111aに伝導的につながって第1のサブアレイを形成し、-45°偏波の第2のアンテナ素子 101bが第2のフィーダライン111bに伝導的につながって第2のサブアレイを形成する。したがって、
図1に図示された2重偏波アンテナアレイで、アンテナ素子101a、101bは4つのサブアレイに分割される。
【0016】
4つのサブアレイは、フィーダライン111a、111bを通じて4つのアンテナポートにそれぞれつながる。各アンテナポートにはそれぞれのRFチェーン130がつながる。RFチェーン130の各々は、LNA(low noise amplifier)及びPA(power amplifier)、フィルタなどのRF素子を含み、RF送信経路とRF受信経路を提供する。したがって、
図1のアンテナシステムは4T4Rである。
【0017】
同じ偏波特性を有するアンテナ素子間の間隔距離は0.5λであることが一般的であり、ここでλはアンテナアレイの周波数帯域の中心周波数地点の波長である。弱い相関関係を保証するために、間隔距離は大きいほど良い。すなわち、図示された図で、隣接する列間の間隔距離は0.5λ~1λである。
【0018】
図1のアンテナシステムは、信号T1~T4に対する偏波合成と所望のビーム方向のためのデジタルドメイン(例えば、デジタルユニット120)での位相調整を通じ、2重偏波アンテナアレイから、互いに異なる2重偏波特性を有する2つのビーム(すなわち、+/-45°直交偏波(orthogonal polarizations)の第1のビームとV/H直交偏波を有する第2のビーム)を異なる空間方向に形成する。
【0019】
図2に例示されたように、水平面を基準にして約40°のビーム幅を有するビームが、互いに異なる空間方向(spatial direction;
図2では10時方向と2時方向)に向かって形成される。10時方向のビームと2時方向のビームの2重偏波特性は互いに異なる。特に、これらのビームは相当なサイドローブ(sidelobe)を有する。
【0020】
図2で各ビームの2重偏波特性を示すために表記された±45°は、そのビームが+45°線形偏波と-45°線形偏波で構成された2つの直交偏波を有することを示し、V/Hは、そのビームが90°(V)線形偏波と0°(H)線形偏波で構成された2つの直交偏波を有することを示す。例えば、10時方向に向かって形成されたビームは、+45°偏波の電波(radio wave)と-45°偏波の電波(radio wave)を有し、2時方向に向かって形成されたビームは、90°偏波の電波と0°偏波の電波を有する。これは他の図でも同じである。ただし、厳密に言うと、「10時方向に+/-45°直交偏波のビームが形成される」とは、+45°線形偏波のビームと-45°線形偏波のビームが10時方向に向かって形成されることを意味し、「2時方向にV/H直交偏波のビームが形成される」とは、90°(V)線形偏波のビームと0°(H)線形偏波のビームが2時方向に向かって形成されることを意味する。
【0021】
図2で+/-45°直交偏波の10時方向のビームは、異なる位相を有するT1信号を第1のアンテナポートと第3のアンテナポートに提供し、異なる位相を有するT2信号を第2のアンテナポートと第4のアンテナポートに提供することで形成される。
【0022】
図2で、V/H直交偏波の2時方向のビームは、異なる位相を有するT3信号と異なる位相を有するT4信号を第1ないし第4のアンテナポートに提供することで形成される。異なる位相を有するT3信号がアンテナアレイの4つのサブアレイから放射されると、偏波合成の結果として90°(V)偏波が形成される。同様に、異なる位相を有するT4信号がアンテナアレイの4つのサブアレイから放射されると、偏波合成の結果として0°(H)偏波が形成される。
【0023】
図2に例示されたものとは逆に、10時方向のビームがV/H直交偏波を、2時方向のビームが+/-45°直交偏波を有するようにデジタルユニットでの位相調整がなされてもよいことに留意されたい。
【0024】
図1に図示されたアンテナシステムは、RRH(Remote Radio Head)が統合されたアンテナシステムである、AAS(Active Antenna System)あるいはRRA(Remote Radio Antenna)システムに、デジタルドメインで偏波分離/合成及びビームフォーミングを遂行するためのデジタルプロセス機能を追加することで具現される。
図1に図示されたアンテナシステムは、デジタルドメインで遂行されるビームフォーミングと偏波の合成/分離を具現するためのハードウェアが求められ、それによって発熱が増加する。デジタルドメイン(例えば、デジタルユニット)における位相調整を通じ、2重偏波アンテナアレイから+/-45°直交偏波とV/H直交偏波を有するビームを形成する具体的な方法は、例えば、 本願出願人により2020年04月16日付にて出願された韓国特許出願番号第10-2020-0046256号に開示されている。
【0025】
図3は、+/-45°の2重偏波アンテナアレイを用いる、本発明の一実施例に係る4T4R偏波ダイバーシティアンテナシステムを図示する。
図3に図示されたアンテナシステムは、RFドメインにおける信号に対する位相調整を含むRF信号処理を通じ、異なる空間方向に2つの独立されたビーム(すなわち、+/-45°直交偏波を有するビームと、V/H直交偏波を有するビーム)を生成する。
【0026】
図3のアンテナシステムに採用されたアンテナアレイは、
図1のアンテナシステムに採用されたアンテナアレイと実質的に同一である。すなわち、
図3で、アンテナアレイは2重偏波アンテナユニットの2つの列で構成される。各2重偏波アンテナユニットは、+45°偏波の第1のアンテナ素子301a及び-45°偏波の第2のアンテナ素子301bを含む。各列で、アンテナ素子301a、301bは偏波ごとにフィーダライン(feeder line)311a、311bにつながる。したがって、
図3に図示された2重偏波アンテナアレイで、アンテナ素子301a、301bは4つのサブアレイに分割される。
【0027】
デジタルユニット320から送信信号T1、T2、T3、T3が4つのRFチェーン330に供給され、RFチェーン330から出力されたRF信号はRFマトリックス(RF matrix)340での信号処理を経た後、アンテナアレイの4つのサブアレイに供給される。したがって、
図3のアンテナシステムは4T4Rである。
【0028】
RFマトリックス340は、RFチェーン330から入力されたRF信号に対し、信号分岐及び位相調整を含む信号処理を遂行するように構成される。RFマトリックス340は、ハイブリッドカプラ、方向性結合器、位相シフターのような受動素子によって具現される。RFマトリックス340から出力された信号処理されたRF信号は、アンテナアレイの4つのサブアレイを通じて空間上に放射され、その結果、
図2に例示されたような異なる空間方向に2つの独立されたビーム(すなわち、+/-45°直交偏波を有するビームとV/H直交偏波を有するビーム)が生成される。
図2に例示されたのとは逆に、10時方向のビームがV/H直交偏波を、2時方向のビームが+/-45°直交偏波を有するようにRFマトリックス340での位相調整がなされてもよいことに留意されたい。
【0029】
図3のアンテナシステムは、RFマトリックス340が形成されたRF回路を有するAAS/RRAシステムで具現されるだけでなく、RFマトリックス340が形成されたRF回路基板をレガシーアンテナ(legacy Antenna)システムとRRHとの間に配置する形態で具現されてもよい。したがって、既存のレガシーアンテナシステムも、4重偏波ダイバーシティをサポートするように簡単に変更される。ただ、RFマトリックス340によるRF損失が伴い、正確なビーム間の間隔維持が困難である。
【0030】
一方、
図3に例示されたアンテナアレイは、2重偏波アンテナユニットの2つの列(column)を有するが、他の具現でより多くのビームを形成するために、あるいはより狭いビーム幅を形成するために、アンテナアレイはより多くの列を有してもよい。
【0031】
ここで、
図4a、
図4b、及び
図4cを参照し、
図3の4T4R偏波ダイバーシティアンテナシステムにおける偏波合成及び所望のビーム方向のためにRFマトリックス340がRF信号に提供し、位相偏移を含む信号処理を説明する。
【0032】
図4aは、説明の便宜のために、
図3のアンテナシステムのRFドメインを簡略に表現した概念図である。
図4bは、
図3のアンテナシステムが形成する一対のビームと、これらのビーム形成に関与された入力信号を例示する。
図4cの表は、
図4bに示された一対のビームを形成するために入力信号T1、T2、T3、T4がRFマトリックス340を経てアンテナアレイのサブアレイに到達する間に受ける位相偏移を示す。
【0033】
図4a及び
図4bを参照すると、入力信号T1、T2は、RFマトリックス340を経て+/-45°直交偏波を有する第1のビームを形成し、入力信号T3、 T4はRFマトリックス340を経てV/H偏波を有する第2のビームを形成する。上の2つのビームは異なる空間方向を有する。
図4bには、+/-45°直交偏波を有する第1のビームが10時方向を向いており、V/H直交偏波を有するビームが2時方向を向いている。
【0034】
このような
図4bに例示されたビームパターンを形成するために、RFマトリックス340が入力信号T1、T2、T3、T4に対して遂行する信号処理、言い換えれば、入力信号T1、 T2、T3、T4がRFマトリックス340を通じてアンテナアレイのサブアレイに到達する間に受ける位相偏移(phase shift)は次の通りである。
【0035】
入力信号T1のターゲット偏波は+45°偏波であり、RFマトリックス340を経て第1の列(C1;左側列)の+45°偏波アンテナ素子のサブアレイ(これは
図4bのテーブルで「C1 +45」と表記される)と第2の列(C2;右側列)の+45°偏波アンテナ素子のサブアレイ(これは、
図4bのテーブルで「C2 +45」と表記される)に提供される。
【0036】
入力信号T2のターゲット偏波は-45°偏波であり、RFマトリックス340を経て第1の列C1の-45°偏波アンテナ素子のサブアレイ(これは
図4bのテーブルで「C1 -45」と表記される)と第2の列C2の-45°偏波アンテナ素子のサブアレイ(C2 -45)に提供される。
【0037】
入力信号T3のターゲット偏波はH偏波であり、入力信号T4のターゲット偏波はV偏波である。入力信号T3と入力信号T4は、RFマトリックス340を経て2重偏波アレイの4つのサブアレイ(C1 +45; C1 -45; C2 +45; C2 -45)にそれぞれ提供される。
【0038】
入力信号T1は、RFマトリクス340により、2つの分岐信号に分岐され、1つの分岐信号は位相偏移なしに第1の列の+45°偏波を有するサブアレイ(C1 +45)に到達し、もう1つの分岐信号は、-90°の位相偏移を受けた後、第2の列の+45°偏波を有するサブアレイ(C2 +45)に到達する。入力信号T1のターゲット偏波は+45°偏波であるので、-90°の位相偏移はもっぱらビームフォーミングのためのものである。入力信号T1に対応する2つの分岐信号は、互いに-90°の位相差を有するままでサブアレイ(C1 +45、C2 +45)によって放射されるので、アンテナアレイの法線を基準にして左側に約30°傾いた空間方向に+45°の偏波を有するビームを形成する。
【0039】
入力信号T2は、RFマトリックス340により、2つの分岐信号に分岐され、1つの分岐信号は位相偏移なしに第1の列の-45°偏波を有するサブアレイ(C1 -45)に到達し、もう1つの分岐信号は、-90°の位相偏移を受けた後、第2の列の-45°偏波を有するサブアレイ(C2 -45)に到達する。入力信号T2のターゲット偏波は-45°偏波であるので、-90°の位相偏移はもっぱらビームフォーミング(beamforming)のためのものである。
【0040】
入力信号T2に対応する2つの分岐信号は、互いに-90°の位相差を有するままでサブアレイ(C1 -45、C2 -45)によって放射されるので、アンテナアレイの法線を基準に左側に約30°傾いた空間方向に-45°偏波を有するビームを形成する。
【0041】
入力信号T3は、RFマトリクス340により、4つの分岐信号に分岐され、第1の分岐信号は位相偏移なしに第1の列のサブアレイ(C1 +45)に到達し、第2の分岐信号、第3の分岐信号、及び第4の分岐信号は、それぞれ180°、90°及び270°の位相偏移を受けた後、第1の列のサブアレイ(C1 -45)、第2の列のサブアレイ(C2 +45)、及び第2の 列のサブアレイ(C2 -45)に到達する。第2の分岐信号の位相偏移(180°)はもっぱら偏波合成のためのものであり、第3の分岐信号の位相偏移(90°)はもっぱらビームフォーミングのためのものであり、第4の分岐信号の位相偏移(270°)はビームフォーミングのための位相偏移(90°)と偏波合成のための位相偏移(180°)の和である。
【0042】
入力信号T3に対応する第1の分岐信号と第2の分岐信号は、180°の位相差を有するままで第1の列C1のサブアレイ(C1 +45、C1 -45)によって放射されるので 、0°(H)偏波を有するビームを形成する(すなわち、偏波合成が発生する)。第3の分岐信号と第4の分岐信号は、180°の位相差を有するままで第1の列(C1)のサブアレイ(C1 +45、C1 -45)によって放射されるので、0°(H)偏波を有するビームを形成する(すなわち、偏波合成が発生する)。また、第1の列のサブアレイ(C1 +45)によって放射される第1の分岐信号と第2の列のサブアレイ(C2 +45)によって放射される第3の分岐信号は互いに+90°の位相差を有し、 第1の列のサブアレイ(C1 -45)によって放射される第2の分岐信号と第2の列のサブアレイ(C2 -45)によって放射される第4の分岐信号は互いに+90°の位相差を有するので、アンテナアレイの法線を基準にして右側に約30°傾いた空間方向に0°(H)偏波を有するビームを形成する。
【0043】
入力信号T4は、RFマトリクス340により、4つの分岐信号に分岐され、第1の分岐信号は位相偏移なしに第1の列のサブアレイ(C1 +45)に到達し、第2の分岐信号 、第3の分岐信号、及び第4の分岐信号は、それぞれ180°、90°及び270°の位相偏移を受けた後、第1の列のサブアレイ(C1 -45)、第2の列のサブアレイ(C2 +45)、及び第3の列のサブアレイ(C2 -45)に到達する。
【0044】
入力信号T4に対応する第1の分岐信号と第2の分岐信号は、0°の位相差を有したままで第1の列C1のサブアレイ(C1 +45、C1 -45)によって放射されるので、 、90°(V)偏波を有するビームを形成する(すなわち、偏波合成が発生する)。第3の分岐信号と第4の分岐信号は、0°の位相差を有したままで第1の列C1のサブアレイ(C1 +45、C1 -45)によって放射されるので、90°(V)偏波を有するビームを形成する(すなわち、偏波合成が発生する)。また、第1の列のサブアレイ(C1 +45)によって放射される第1の分岐信号と第2の列のサブアレイ(C2 +45)によって放射される第3の分岐信号は互いに+90°の位相差を有し、 第1の列のサブアレイ(C1 -45)によって放射される第2の分岐信号と第2の列のサブアレイ(C2 -45)によって放射される第4の分岐信号は互いに+90°の位相差を有するので、アンテナアレイの法線を基準にして右側に約30°傾いた空間方向に90°の偏波を有するビームを形成する。
【0045】
図5aは、本開示の一側面に係る、クアドレイチャハイブリッドカプラ(quadrature hybrid coupler: QHC)を用いて具現したRFマトリックス500の一例である。QHCは、「ブランチラインカプラ(branch-line coupler)」あるいは「90°ハイブリッドカプラ(90°Hybrid coupler)」とも称される。
図5bは、
図5aに例示されたRFマトリックス500を用いて形成されるビームのパターンとビームの2重偏波特性を示す。
図5bに例示されたビームの偏波特性は、
図4bに示される偏波特性が逆であることに留意されたい。すなわち、
図4bでは、10時方向のビームが+45°/-45°直交偏波を有し、
図5bでは、2時方向のビームが+45°/-45°直交偏波を有する。
図2に関連して言及したように、厳密に言うと、「2時方向に+/-45°直交偏波のビームが形成される」とは、+45°線形偏波のビームと-45°線形偏波のビームが2時方向に向かって形成されることを意味し、「10時方向にV/H直交偏波のビームが形成される」とは、90°(V)線形偏波のビームと0°(H)線形偏波のビームが10時方向に向かって形成されることを意味する。
【0046】
図5aに例示されたRFマトリックス500は、PCB上に4つの入力ポート(白丸で表示される)と、導電性ストリップで形成された3つのQHC510a、510b、510cと、4つの出力ポート(黒丸で表示される)を有する。
【0047】
図5aの拡大図のように、各QHC510a、510b、510cは4つのアーム(すなわち、第1のアームないし第4のアーム)を有し、第1のアームに信号が入力されると第2のアームと第3のアームに出力が現れ、第4のアームには出力が現れない。また、第2のアームと第3のアームの出力信号間には90°(すなわちλ/4)の位相差が存在する。QHC510a、510b、510cは上下/左右対称の形態をしており、第2のアームに信号を入力すると第1のアームと第4のアームに出力が現れ、第3のアームでは出力されない。すなわち、完全対称構造で動作する。
【0048】
入力信号T1は、「第1の入力ポート-第1のQHC510aの第1のアーム-第1のQHC510aの第2のアーム-第1の出力ポート」を経て、第1の列のサブアレイ(C1 +45)に到達する。また、入力信号T1は、「第1の入力ポート-第1のQHC510aの第1のアーム-(90°の位相遅延)-第1のQHC510aの第3のアーム-第3の出力ポート」を経て、第2の列のサブアレイ(C2 +45)に到達する。したがって、入力信号T1の観点から、第1の列のサブアレイ(C1 +45)から放射された無線信号に比べて第2の列のサブアレイ(C2 +45)から放射された無線信号は90°の位相遅延を有し、
図5bに図示されたように、アンテナアレイの法線を基準にして右側に約30°傾いた空間方向に+45°の偏波を有するビームが形成される。
【0049】
入力信号T2は、「第2の入力ポート-第2のQHC510bの第1のアーム-第2のQHC510bの第2のアーム-第2の出力ポート」を経て、第1の列のサブアレイ(C1 -45)に到達する。また、入力信号T2は、「第2の入力ポート-第2のQHC510bの第1のアーム-(90°の位相遅延)-第2のQHC510bの第3のアーム-第4の出力ポート」を経て、第2の列のサブアレイ(C1 -45)に到達する。したがって、入力信号T2の観点から、第1の列のサブアレイ(C1 -45)から放射された無線信号に比べて第2の列のサブアレイ(C2 -45)から放射された無線信号は90°の位相遅延を有し、
図5bに図示されたように、アンテナアレイの法線を基準にして右側に約30°傾いた空間方向に+45°の偏波を有するビームが形成される。
【0050】
入力信号T3は、「第3の入力ポート-第3のQHC510cの第4のアーム-(90°の位相遅延)-第3のQHC510cの第2のアーム-第1のQHC510aの第4のアーム-(90°の位相遅延)-第1のQHC510aの第2のアーム-第1の出力ポート」を経て、第1の列のサブアレイ(C1 +45)に到達する。また、入力信号T3は、「第3の入力ポート-第3のQHC510cの第4のアーム-(90°の位相遅延)-第3のQHC510cの第2のアーム-第1のQHC510aの第4のアーム-第1のQHC510aの第3のアーム-第3の出力ポート」を経て、第2の列のサブアレイ(C2 +45)に到達する。また、入力信号T3は、「第3の入力ポート-第3のQHC510cの第4のアーム-第3のQHC510cの第3のアーム-(90°の位相遅延)-第2のQHC510bの 第4のアーム-(90°の位相遅延)-第2のQHC510bの第2のアーム-第2の出力ポート」を経て、第1の列のサブアレイ(C1 -45)に到達される。また、入力信号T3は、「第3の入力ポート-第3のQHC510cの第4のアーム-第3のQHC510cの第3のアーム-(90°の位相遅延)-第2のQHC510bの第4のアーム-第2のQHC510bの第3のアーム-第4の出力ポート」を経て、第2の列のサブアレイ(C2 -45)に供給する。
【0051】
したがって、入力信号T3の観点から、第1の列のサブアレイ(C1 +45)から放射された無線信号に比べて第1の列のサブアレイ(C1 -45)から放射された無線信号は0°の位相遅延を有し、第2の列のサブアレイ(C2 +45)から放射された無線信号と比べて第1の列のサブアレイ(C2 -45)から放射された無線信号は0°の位相遅延を有する。結果的に、90°(V)の偏波を有するビームが形成される(すなわち、偏波合成が発生する)。また、第2の列のサブアレイ(C2 +45)から放射された無線信号に比べて第1の列のサブアレイ(C1 +45)から放射された無線信号は90°の位相遅延を有し、第2の列のサブアレイ(C2 -45)から放射された無線信号に比べて第1の列のサブアレイ(C1 -45)から放射された無線信号は90°の位相遅延を有するので、
図5bに図示されたように、アンテナアレイの法線を基準にして左側に約30°傾いた空間方向に90°(V)の偏波を有するビームが形成される。
【0052】
入力信号T4は、「第4の入力ポート-第3のQHC510cの第1のアーム-第3のQHC510cの第2のアーム-第1のQHC510aの第4のアーム-(90°の位相遅延)-第1のQHC510aの第2のアーム-第1の出力ポート」を経て、第1の列のサブアレイ(C1 +45)に到達する。また、入力信号T4は、「第4の入力ポート-第3のQHC510cの第1のアーム-第3のQHC510cの第2のアーム-第1のQHC510aの第4のアーム-第1のQHC510aの第3のアーム-第3の出力ポート」を経て、第2の列のサブアレイ(C2 +45)に到達する。また、入力信号T4は、「第4の入力ポート-第3のQHC510cの第1のアーム-(90°の位相遅延)-第3のQHC510cの第3のアーム-(90°の位相遅延)-第2のQHC510bの第4のアーム-(90°の位相遅延)-第2のQHC510bの第2のアーム-第2の出力ポート」を経て、第1の列のサブアレイ(C1 -45)に到達される。また、入力信号T4は、「第4の入力ポート-第3のQHC510cの第1のアーム-(90°の位相遅延)-第3のQHC510cの第3のアーム-(90°の位相遅延)-第2のQHC510bの第4のアーム-第2のQHC510bの第3のアーム-第4の出力ポート」を経て、第2の列のサブアレイ(C2 -45)に供給する。
【0053】
したがって、入力信号T4の観点から、第1の列のサブアレイ(C1 +45)から放射された無線信号に比べて第1の列のサブアレイ(C1 -45)から放射された無線信号は180°の位相遅延を有し、第2の列のサブアレイ(C2 +45)から放射された無線信号と比べて第1の列のサブアレイ(C2 -45)から放射された無線信号は180°の位相遅延を有する。結果的に、0°(H)偏波を有するビームが形成される(すなわち、偏波合成が発生する)。また、第2の列のサブアレイ(C2 +45)から放射された無線信号に比べて第1の列のサブアレイ(C1 +45)から放射された無線信号は90°の位相遅延を有し、第2の列のサブアレイ(C2 -45)から放射された無線信号に比べて第1の列のサブアレイ(C1 -45)から放射された無線信号は90°の位相遅延を有するので、
図5bに図示されたように、アンテナアレイの法線を基準にして左側に約30°傾いた空間方向に0°(H)偏波を有するビームが形成される。
【0054】
図6aは、異種(heterogeneous)の2重偏波アンテナユニットを含むアンテナアレイを利用する、本発明の別の実施例に係る4T4R偏波ダイバーシティアンテナシステムを図示する。
【0055】
図6aに図示されたアンテナシステムは、デジタルドメインやRFドメインでの信号処理を要せず、異種の2重偏波アンテナユニットを用いて
図1あるいは
図3と同様の空間多重化された直交偏波ビームを生成する。したがって、
図6aに表示されたTx信号T1、T2、T3、T4が、デジタルドメインでの偏波合成が適用されない信号である。同様に、Rx信号にもデジタルドメインにおける偏波合成が適用されない。
【0056】
図6aを参照すると、異種の2重偏波アンテナユニットが4つの列に配列されたアンテナアレイが図示される。左側の2つの列は+45°/-45°の2重偏波アンテナユニットで構成され、右側の2つの列はV/Hの2重偏波アンテナユニットで構成される。
【0057】
各列で、アンテナ素子601a、601b、602a、602bが偏波別にフィーダライン611a、611b、612a、612bにつながる。例えば、1番目の列と2番目の列のそれぞれで、+45°偏波の第1のアンテナ素子601aが第1のフィーダライン611aにつながって第1のサブアレイを形成し、-45°偏波の第2のアンテナ素子601bが第2のフィーダライン611bにつながって第2のサブアレイを形成する。3番目の列と4番目の列のそれぞれで、90°(V)偏波の第1のアンテナ素子602aが第1のフィーダライン612aにつながって第1のサブアレイを形成し、0°(H)偏波の第2のアンテナ素子602bが第2のフィーダライン612bにつながって第2のサブアレイを形成する。したがって、
図6aに図示された2重偏波アンテナアレイで、アンテナ素子601a、601b、602a、602bは8つのサブアレイに分割される。
【0058】
図6aに例示されたアンテナアレイを用いて各偏波ごとにビームを形成するために、同じ偏波を有するサブアレイがRFドメインで互いにつながる。すなわち、各偏波ごとに一対のサブアレイが1つのRFチェーン630につながるようにRFドメインで互いに結合される。これにより、アンテナシステムは4T4Rである。サブアレイの結合は、RFドメイン上で簡単なRFコンバインナ(combiner)を構成することによって達成される。
【0059】
後述するように、+45°/-45°偏波を有するアンテナユニットが配列されたアンテナパネル(antenna panel)の第1の領域(あるいは第1の面)とV/H偏波を有するアンテナユニットが配列されたアンテナパネルの第2の領域(あるいは第2の面)が所定の鈍角(90°<θ<180°)をなすようにアンテナパネルが形成される。第1の領域と第2の領域は、例えば120°をなす。したがって、長手方向に折り曲げられたアンテナパネルにより、+45°/-45°の2重偏波アンテナアレイとH/Lの2重偏波アンテナアレイは空間的に異なる方向を指向するように配列される。このような構成で、+45°/-45°偏波を有するビームとV/H偏波を有するビームは、アンテナパネルの2つの領域が臨む空間方向に機械的にステアリング(steering)され、したがってアンテナパネルの2つの領域がなす角度θを適切に調整することで、
図6aのアンテナシステムは、
図1あるいは
図3と同様の空間多重化された直交偏波ビームを生成することができる。
【0060】
図6aのアンテナシステムは、空間多重化されたビームパターンの形成にRFコンバインナ(combiner)のような単純なRFコンポーネントが要求されるだけで、(
図1のアンテナシステムに要求される)デジタルドメインでの信号処理のためのハードウェアが要求されず、それによる発熱問題も改善される。さらに、
図6aのアンテナシステムは、
図3に図示されたアンテナシステムに比べて正確なビーム間の間隔維持が可能であり、特にSINR性能に影響を及ぼす、異なる2重偏波を有するビームが互いにオーバーラップされる領域を最小化することができる。
【0061】
図6bないし
図6dを参照し、
図6aのアンテナシステムで採用される、異種(heterogeneous)の2重偏波アンテナユニットが配列されたアンテナパネルの構造及びその構造の有用性を説明するための図である。
【0062】
図6bは、
図6aのアンテナシステムで採用される例示的なアンテナパネル600の平面図である。
図6bを参照すると、アンテナパネル600の左半面610に+45°/-45°の2重偏波アンテナユニット601が配列され、アンテナパネル600の右半面620にH/Vの2重偏波アンテナユニット602が配列される。
【0063】
もし、左半面610と右半面620が1つの平坦な面を成すと(
図6c(a)の正面図参照)、同じ偏波特性を有する2重偏波アンテナユニットに印加されるRF信号間に位相差を置くことで、
図6c(b)に例示されたような空間多重化された一対のビームパターンが得られる。一方、アンテナパネル600の左側面610とアンテナパネルの右側面620が所定の鈍角θをなすと(
図6d(a)の正面図参照)、同じ偏波特性を有する2重偏波アンテナユニットに印加されるRF信号の位相調整なしでも、
図6d(b)に例示されたような一対のビームパターンが得られる。
図6c(b)のビームパターンではメインローブの周辺にかなりのサイドローブ(sidelobe)が存在するが、
図6d(b)のビームパターンでは無視できるサイドローブが存在する。すなわち、
図6d(a)のようなアンテナパネルの構造及び異種(heterogeneous)の2重偏波アンテナユニットの配列が空間的な偏波多重化に相対的に有用であることが分かる。
【0064】
さらに、
図6d(a)のようなアンテナパネル600の構造とRFビームフォーミングを結合し、アンテナパネルの2つの領域がなす角度θによって提供される空間方向よりも大きい空間方向にビームを指向させてもよい。例えば、
図6d(a)に例示されたアンテナパネル600の左半面610で、1番目の列のサブアレイからRFチェーン630までのRF経路が2番目の列のサブアレイからRFチェーン630までのRF経路よりも長くなるようにすることで、アンテナパネル600の左半面610が臨む空間方向よりもより左に向かって+45°/-45°の直交偏波を有するビームが形成される。したがって、
図6d(a)に例示されたアンテナパネル600の構造とRFビームフォーミングを結合することで、アンテナパネル600の左半面610と右半面620のなす角度θをより大きく(すなわち、180°に近い)してもよい。このような脈絡から、
図6eには、互いに異なる列に位置する同じ偏波のサブアレイが異なる長さのRF経路でRFチェーン630につながった構成が例示される。
【0065】
図7aは、本発明のまた別の実施例に係る、長手方向に折り曲げられ、幅方向でも折り曲げられた、異種(heterogeneous)の2重偏波アンテナユニットが配列されたアンテナパネル700を図示する。
【0066】
図7aを参照すると、長手方向xでの折り曲げはアンテナパネルを左側領域と右側領域に区分し、幅方向yでの折り曲げはアンテナパネルを上側領域と下側領域にさらに区分する。言い換えれば、アンテナ素子が配列されたアンテナパネルは、互いに異なる方向を臨む4つの領域(面)に区分される。
【0067】
同じ2重偏波を有するアンテナ素子がアンテナパネルの水平方向あるいは垂直方向の隣接する2つの面に配置されないように、+/-45°アンテナ素子701とV/Hアンテナ素子702が4つの領域(面)に交互に配列されていることに注目されたい。例えば、アンテナパネルの左上面にはV/Hの2重偏波アンテナユニット702が配列され、右上面には+/-45°の2重偏波アンテナユニット701が配列され、左下面には+/-45°の2重偏波アンテナユニット701が配列され、右下面にはV/Hの2重偏波アンテナユニット702が配列される。
【0068】
図6aに示すアンテナパネル600と同様に、
図7aに例示されたアンテナパネル700の各領域(面)ごとに、各列のアンテナ素子が偏波別にフィーダライン(feeder line)につながり、サブアレイを形成する。さらに、同じ偏波を有する異なる列に位置するサブアレイがRFドメインで互いにつながる。すなわち、アンテナパネル700の所与の領域(面)で、各偏波ごとに異なる列に位置する一対のサブアレイが1つのRFチェーンにつながるようにRFドメインで互いに結合される。これにより、
図7aに例示されたアンテナパネル700を用いたアンテナシステムは、8T8Rをサポートする。
【0069】
代案として、アンテナパネル700の右上面及び左下面に配列された+/-45°の2重偏波アンテナユニット701が一対のRFチェーンにつながり、アンテナパネルの左上面及び右下面に配列されたV/Hの2重偏波アンテナユニット702が他の一対のRFチェーンにつながってもよい。これにより、
図7aに例示されたアンテナパネル700を用いたアンテナシステムは、4T4Rをサポートすることもできる。
【0070】
右上面に配列された+/-45°の2重偏波アンテナユニット701は、+45°/-45°直交偏波を有する第1のビームを形成し、左上面に配列されたV/Hの2重偏波アンテナユニット702は、V/H直交偏波を有する第2のビームを形成し、左下面に配列された+/-45°の2重偏波アンテナユニット701は+45°/-45°直交偏波を有する第3のビームを形成し、右下面に配列されたV/Hの2重偏波アンテナユニットは、V/H直交偏波を有する第4のビームを形成する。第1のビームないし第4のビームが向かうそれぞれの空間方向は、アンテナパネルの対応する面が臨む空間方向と一致する。したがって、第1のビームないし第4のビームが互いに異なる空間方向に形成される。
【0071】
一方、
図7bに例示されるように、左下側領域及び右下側領域に配列された2重偏波アンテナユニットによって形成された第3のビームと第4のビームは、右上側領域及び左上側領域に配列されたアンテナ素子によって形成された第1のビームと第2のビームによってカバーされない陰影地域をカバーすることができる。したがって、左下側領域及び右下側領域には(アンテナシステムの主なカバレッジを提供する)右上側領域及び左上側領域よりも少ない数の2重偏波アンテナユニットが配列される。
【0072】
以上の説明は、本発明の実施例の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能である。したがって、本実施例は、本発明の技術思想を限定するものではなく説明するためのものであり、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0073】
[CROSS-REFERENCE TO RELATED APPLICATION]
本特許出願は、本明細書にその全体が参考として含まれる、2021年9月27日付にて韓国に出願した特許出願番号第10-2021-0127532号及び2022年9月1日付にて韓国に出願した特許出願番号第10-2022-0110149号に対して優先権を主張する。
【国際調査報告】