(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】バルク弾性波共振構造およびその製造方法、弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/17 20060101AFI20240905BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518395
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 CN2022121117
(87)【国際公開番号】W WO2023061190
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519340020
【氏名又は名称】ウーハン イエンシー マイクロ コンポーネンツ カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン リー-チン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ダーポン
(72)【発明者】
【氏名】リアオ ペイ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ウェイ-ション
(72)【発明者】
【氏名】コー ジーウェイ
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108DD01
5J108DD06
5J108EE03
5J108EE04
5J108EE06
5J108EE13
(57)【要約】
本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造およびその製造方法、弾性波デバイスを提供する。バルク弾性波共振構造は、基板と、前記基板上に順次配置された反射構造、第1電極、圧電層および第2電極であって、共振領域の有効領域は、第1重畳領域である、反射構造、第1電極、圧電層および第2電極と、前記第1重畳領域を包囲する第1包囲構造であって、間隔を置いて配列された第1突出構造と第1不連続構造を含む第1包囲構造と、を備え、前記第1突出構造は、前記圧電層と前記第1電極との間、および/または前記圧電層と前記第2電極との間に配置され、且つ各前記第1突出構造の、前記第1重畳領域に隣接する一端は、前記第1電極および/または前記第2電極によって被覆される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク弾性波共振構造であって、
基板と、
前記基板上に順次配置された反射構造、第1電極、圧電層および第2電極であって、共振領域の有効領域は、第1重畳領域である、反射構造、第1電極、圧電層および第2電極と、
前記第1重畳領域を包囲する第1包囲構造であって、間隔を置いて配列された第1突出構造と第1不連続構造を含む、第1包囲構造と、を備え、
前記第1突出構造は、前記圧電層と前記第1電極との間、および/または前記圧電層と前記第2電極との間に配置され、各前記第1突出構造の、前記第1重畳領域に隣接する一端は、前記第1電極および/または前記第2電極によって被覆される、前記バルク弾性波共振構造。
【請求項2】
前記第1突出構造が、前記圧電層と前記第2電極との間にのみ配置される場合、前記バルク弾性波共振構造はさらに、前記第1包囲構造を包囲する第2包囲構造を備え、
前記第2包囲構造は、前記圧電層の前記反射構造から相対的に離れた側壁を部分的に被覆する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項3】
前記第2包囲構造と前記第1突出構造の材料は同じであり、且つ前記第2包囲構造と前記第1突出構造とが接続されて一体化構造となっている、
請求項2に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項4】
前記第2包囲構造は、間隔を置いて配列された第2突出構造と第2不連続構造を含み、前記第1不連続構造と前記第2不連続構造は、隙間であり、前記第2突出構造と前記第1突出構造の材料は同じであり、且つ前記第2突出構造と前記第1突出構造とが接続されて一体化構造となっている、
請求項2に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項5】
前記第1突出構造が、前記圧電層と前記第2電極との間にのみ配置される場合、各前記第1突出構造の、前記第1重畳領域に隣接する一端と、前記第1重畳領域から離れた他端とは、両方とも前記第2電極によって被覆され、
各前記第1突出構造は、前記基板に垂直な方向に沿って対向する頂部と底部とを含み、前記頂部は、前記第2電極と直接接触し、前記底部は、前記圧電層と直接接触する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項6】
前記第1突出構造が、前記圧電層と前記第1電極との間にのみ配置される場合、各前記第1突出構造の、前記第1重畳領域に隣接する一端と、前記第1重畳領域から離れた他端とは、両方とも前記第1電極によって被覆され、
各前記第1突出構造は、前記基板に垂直な方向に沿って対向する頂部と底部とを含み、前記頂部は、前記圧電層と直接接触し、前記底部は、前記第1電極と直接接触する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項7】
前記第1突出構造は、第1サブ構造と第2サブ構造を含み、
前記第1サブ構造は、前記圧電層と前記第2電極との間にのみ配置され、各前記第1サブ構造の、前記第1重畳領域に隣接する一端と、前記第1重畳領域から離れた他端とは、両方とも前記第2電極によって被覆され、
前記第2サブ構造は、前記圧電層と前記第1電極との間にのみ配置され、各前記第2サブ構造の、前記第1重畳領域に隣接する一端と、前記第1重畳領域から離れた他端とは、両方とも前記第1電極によって被覆され、
前記基板における前記第1サブ構造の正投影は、前記基板における前記第2サブ構造の正投影と少なくとも部分的に重なる、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項8】
前記第1重畳領域に隣接する前記第1突出構造の一端と、前記第1重畳領域の縁部との間の第1方向における距離は0~10μmであり、前記第1方向は、前記第1重畳領域の縁部から前記第1重畳領域の中心に向かう方向である、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項9】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、第1電極リードと第2電極リードを備え、前記第1電極リードは、前記第1電極に接続され、前記第2電極リードは、前記第2電極に接続され、
前記基板における前記第1電極リードと前記第2電極リードの正投影は、前記第1重畳領域以外の領域に位置し、
前記基板における前記第1不連続構造の正投影は、前記基板における前記第1電極リードと前記第2電極リードの正投影以外の領域に入る、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項10】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、周波数変調層を備え、前記周波数変調層は、前記第2電極上に配置され、
前記第1包囲構造は、前記周波数変調層と前記第2電極との間に配置される、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項11】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、シード層を備え、前記シード層は、前記第1電極と前記基板との間に配置され、
前記第1包囲構造は、前記シード層と前記第1電極との間に配置される、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項12】
前記第1不連続構造は溝であり、
前記溝は、前記基板に垂直な方向に沿って、前記第2電極、前記第1突出構造、前記圧電層、前記第1電極のうちの少なくとも1つを貫通する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項13】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、縞状構造を備え、前記縞状構造は、前記第2電極上に配置され且つ前記第2電極に接続され、
前記基板における前記縞状構造の正投影は、前記第1重畳領域以外の領域に入り、前記縞状構造は、前記第1重畳領域を包囲して間隔を置いて配列される、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載のバルク弾性波共振構造を備える、弾性波デバイス。
【請求項15】
バルク弾性波共振構造の製造方法であって、
基板を提供し、前記基板の表面に犠牲層を形成することと、
前記犠牲層を被覆する第1電極と圧電層を形成することと、
前記圧電層の前記基板から相対的に離れた側に突出材料層を形成することと、
前記突出材料層を被覆する第2電極を形成することであって、共振領域の有効領域は、第1重畳領域である、ことと、
前記第1重畳領域の縁部の前記第2電極と前記突出材料層をエッチングして、間隔を置いて配列された第1突出構造と第1不連続構造を形成することであって、前記第1突出構造と前記第1不連続構造は、前記第1重畳領域を包囲する第1包囲構造を形成し、各前記第1突出構造の、前記第1重畳領域に隣接する一端は、前記第2電極によって被覆されることと、
少なくとも1つのエッチングホールを形成し、前記エッチングホールを介して前記犠牲層を除去して、反射構造を形成することと、を含む、前記バルク弾性波共振構造の製造方法。
【請求項16】
バルク弾性波共振構造の製造方法であって、
基板を提供し、前記基板の表面に犠牲層を形成することと、
前記犠牲層を被覆する第1電極を形成することと、
前記第1電極上に突出材料層を形成することと、
前記突出材料層と前記第1電極を被覆する圧電層を形成することと、
前記圧電層を被覆する第2電極を形成することであって、共振領域の有効領域は、第1重畳領域であることと、
前記第1重畳領域の縁部の前記第2電極、前記圧電層および前記突出材料層をエッチングして、間隔を置いて配列された第1突出構造と第1不連続構造を形成することであって、前記第1突出構造と前記第1不連続構造は、前記第1重畳領域を包囲する第1包囲構造を形成し、各前記第1突出構造の、前記第1重畳領域に隣接する一端は、前記第1電極によって被覆されることと、
少なくとも1つのエッチングホールを形成し、前記エッチングホールを介して前記犠牲層を除去して、反射構造を形成することと、を含む、前記バルク弾性波共振構造の製造方法。
【請求項17】
バルク弾性波共振構造の製造方法であって、
基板を提供し、前記基板の表面に犠牲層を形成することと、
前記犠牲層を被覆する第1電極と圧電層を形成することと、
前記圧電層の前記基板から相対的に離れた側に、間隔を置いて配列された犠牲材料構造と第1不連続構造を形成することと、
前記犠牲材料構造と前記第1不連続構造を被覆する第2電極を形成することであって、共振領域の有効領域は、第1重畳領域であることと、
少なくとも1つのエッチングホールを形成し、前記エッチングホールを介して犠牲材料構造と前記犠牲層を除去して、第1突出構造と反射構造をそれぞれ形成することであって、前記第1突出構造と前記第1不連続構造は、前記第1重畳領域を包囲する第1包囲構造を形成し、各前記第1突出構造の、前記第1重畳領域に隣接する一端は、前記第2電極によって被覆される、ことと、を含む、前記バルク弾性波共振構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2021年10月15日に提出された、出願番号が63/262,586である米国仮特許出願に基づいて提出されるものであり、当該米国仮特許出願の優先権を主張し、当該米国仮特許出願のすべての内容が参照によって本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、半導体技術分野に関し、特に、バルク弾性波共振構造およびその製造方法、弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
携帯電話などの広く普及している通信機器には、通常、弾性波を使用する弾性波デバイスを通信機器とするフィルタが含まれる。弾性波デバイスの一例として、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)を使用するデバイス、またはバルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)を使用するデバイスなどがある。弾性波デバイスの性能は、通信機器の通信効果に影響を与える。
【0004】
通信技術の発展に伴い、通信機器の集積化と小型化の進展に合わせて、弾性波デバイスの性能を如何に向上させるかは、解決すべき課題となっている。
【発明の概要】
【0005】
第1態様によれば、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造を提供し、前記構造は、
基板と、
基板上に順次配置された反射構造、第1電極、圧電層および第2電極であって、共振領域の有効領域は、第1重畳領域である、反射構造、第1電極、圧電層および第2電極と、
第1重畳領域を包囲する第1包囲構造であって、間隔を置いて配列された第1突出構造と第1不連続構造を含む、第1包囲構造と、を備え、
第1突出構造は、圧電層と第1電極との間、および/または圧電層と第2電極との間に配置され、各第1突出構造の第1重畳領域に隣接する一端は、第1電極および/または第2電極によって被覆される。
【0006】
第2態様によれば、本発明の実施例は、上記の実施例に係るバルク弾性波共振構造を備える、弾性波デバイスを提供する。
【0007】
第3態様によれば、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を提供し、前記方法は、
基板を提供し、基板の表面に犠牲層を形成することと、
犠牲層を被覆する第1電極と圧電層を形成することと、
圧電層の基板から相対的に離れた側に突出材料層を形成することと、
突出材料層を被覆する第2電極を形成することであって、共振領域の有効領域は、第1重畳領域である、ことと、
第1重畳領域の縁部の第2電極と突出材料層をエッチングして、間隔を置いて配列された第1突出構造と第1不連続構造を形成することであって、第1突出構造と第1不連続構造は、第1重畳領域を包囲する第1包囲構造を形成し、各第1突出構造の、第1重畳領域に隣接する一端は、第2電極によって被覆されることと、
少なくとも1つのエッチングホールを形成し、エッチングホールを介して犠牲層を除去して、反射構造を形成することと、を含む。
【0008】
第4態様によれば、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を提供し、前記方法は、
基板を提供し、基板の表面に犠牲層を形成することと、
犠牲層を被覆する第1電極を形成することと、
第1電極上に突出材料層を形成することと、
突出材料層と第1電極を被覆する圧電層を形成することと、
圧電層を被覆する第2電極を形成することであって、共振領域の有効領域は、第1重畳領域であることと、
第1重畳領域の縁部の第2電極、圧電層および突出材料層をエッチングして、間隔を置いて配列された第1突出構造と第1不連続構造を形成することであって、第1突出構造と第1不連続構造は、第1重畳領域を包囲する第1包囲構造を形成し、各第1突出構造の第1重畳領域に隣接する一端は、第1電極によって被覆されることと、
少なくとも1つのエッチングホールを形成し、エッチングホールを介して犠牲層を除去して、反射構造を形成することと、を含む。
【0009】
第5態様によれば、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を提供し、前記方法は、
基板を提供し、基板の表面に犠牲層を形成することと、
犠牲層を被覆する第1電極と圧電層を形成することと、
圧電層の基板から相対的に離れた側に、間隔を置いて配列された犠牲材料構造と第1不連続構造を形成することと、
犠牲材料構造と第1不連続構造を被覆する第2電極を形成することであって、共振領域の有効領域は、第1重畳領域であることと、
少なくとも1つのエッチングホールを形成し、エッチングホールを介して犠牲材料構造と犠牲層を除去して、第1突出構造と反射構造をそれぞれ形成することであって、第1突出構造と第1不連続構造は、第1重畳領域を包囲する第1包囲構造を形成し、各第1突出構造の、第1重畳領域に隣接する一端は、第2電極によって被覆される、ことと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の例示的な上面図を示す。
【
図2】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第1概略図を示す。
【
図3】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第2概略図を示す。
【
図4】本発明の実施例に係る別のバルク弾性波共振構造の例示的な上面図を示す。
【
図5】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第3概略図を示す。
【
図6】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第4概略図を示す。
【
図7】本発明の実施例に係るさらに別のバルク弾性波共振構造の例示的な上面図を示す。
【
図8】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第5概略図を示す。
【
図9】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第6概略図を示す。
【
図10】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第7概略図を示す。
【
図11】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第8概略図を示す。
【
図12】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第9概略図を示す。
【
図13】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第10概略図を示す。
【
図14】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第11概略図を示す。
【
図15】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第12概略図を示す。
【
図16】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第13概略図を示す。
【
図17】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第14概略図を示す。
【
図18】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第15概略図を示す。
【
図19】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第16概略図を示す。
【
図20】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第17概略図を示す。
【
図21】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法の例示的なフローチャートを示す。
【
図22a】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第1概略図を示す。
【
図22b】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第1概略図を示す。
【
図22c】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第1概略図を示す。
【
図22d】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第1概略図を示す。
【
図23a】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第2概略図を示す。
【
図23b】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第2概略図を示す。
【
図23c】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第2概略図を示す。
【
図23d】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第2概略図を示す。
【
図24】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造のスミスチャート試験結果の概略図を示す。
【
図25】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の別のスミスチャート試験結果の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面において、特に明記しない限り、複数の図面における同じ参照番号は、同じまたは類似した部品または要素を示す。これらの図面は、必ずしも縮尺通りに描かれたものではない。理解すべきこととして、これらの図面は、本願に係るいくつかの実施形態のみを示しており、本願の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0012】
以下では、添付の図面および具体的な実施例を参照して、本発明の技術的解決策についてさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明の実施例において、「第1」、「第2」等の用語は、類似した対象を区別するためのものであり、特定の順番または先後順序を説明するために使用されるものではない。
【0014】
本発明の実施例において、「AはBと接触する」という用語は、AがBと直接接触する場合、またはA、Bの両者の間に他の部品が介在して間接的に接触する場合を含む。
【0015】
本発明の実施例において、「層」という用語は、厚さを有する領域を含む材料部分を指す。層は、下方または上方構造の全体にわたって延在してもよいし、または下方または上方構造の範囲よりも小さい範囲を有してもよい。さらに、層は、連続構造の厚さよりも薄い厚さを有する均質または不均質の連続構造の領域であってもよい。例えば、層は、連続構造の頂面と底面の間に配置されてもよいし、または層は、連続構造の頂面と底面の任意の水平面の間に配置されてもよい。層は、水平、垂直および/または傾斜面に沿って延在してもよい。また、層は、複数のサブ層を含んでもよい。
【0016】
理解できるように、本発明における「…上」、「…上にある」や「…上方にある」の意味は、最も広範に解釈されるべきであり、「…上」は、中間特徴や層を介さずに何かの「上」にある(即ち、直接に何かの上にある)ことを含むだけでなく、何かの「上」にあり且つその間に介在する中間特徴や層があることも含む。
【0017】
共振器は、誘電体共振器、表面弾性波共振器およびバルク弾性波共振器を含む。誘電体共振器は、電力容量が大きいという利点があるが、その体積が大きいためチップの小型化と集積化の進展にうまく対応できず、さらに、現在のモバイル通信分野では、異なる周波数帯域間の周波数差がますます小さくなるにつれて、フィルタの信号選択性に対する要求が高まっているため、デバイスは、より高い品質係数(Q値)を備える必要がある。
【0018】
表面弾性波共振器は、動作周波数が高く、位相ノイズが低く、Q値が高く、挿入損失が低く、2GHz周波数帯域以下での製造工程が簡単であるため、商用製品に広く使用されている。しかし、5G通信の発展に伴い、櫛形電極のサイズ制限により、高周波数通信分野における表面弾性波共振器の応用は制限されている。
【0019】
バルク弾性波共振器の共振周波数は、圧電材料、異なる製造方法および製造プロセスの影響などの様々な要因、特に圧電材料の材料厚さに依存する。バルク弾性波共振器は、表面弾性波共振器よりもはるかに高い動作周波数を達成することができ、そのサイズも周波数が高くなるにつれて小さくなるため、体積が小さいという利点があり、通信分野で重要な役割を果たし、その中で、バルク弾性波共振器の一種である薄膜バルク弾性波共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)は、通信技術の発展に伴い大幅に改良され、関連するフィルタやデュプレクサなどは、高周波数通信分野で大規模に商業応用されている。
【0020】
薄膜バルク弾性波共振器の性能を測定するための多くのパラメータかあり、主なパラメータとしては、品質係数(Q値)を含む。バルク弾性波共振器の上部電極および下部電極に電気エネルギが印加されると、上部電極および下部電極に位置する圧電層が圧電効果により弾性波を発生する。圧電層内では、縦波に加えて、横方向剪断波(横方向剪断波は、横波またはせん断波とも呼ばれる)も発生する。横方向剪断波の存在は、主縦波のエネルギに影響を与え、横方向剪断波は、エネルギの損失を引き起こし、バルク弾性波共振器のQ値を悪化させる。
【0021】
例えば、モバイル端末では、複数の周波数帯域が同時に使用される場合があるため、モバイル端末におけるフィルタまたはデュプレクサには、急峻なスカートとより小さな插入損失が必要になる。フィルタの性能は、それを構成する共振器によって決まり、共振器のQ値を高くすることで、急峻なスカートと小さな插入損失を実現することができる。さらに、共振器の過剰な寄生共振も、フィルタまたはデュプレクサの性能に悪影響を及ぼす。
【0022】
これを鑑み、バルク弾性波共振器の寄生共振を如何に低減し、バルク弾性波共振器のQ値を高めるかは、解決すべき課題となっている。
【0023】
図1は、本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造100の例示的な上面図を示し、
図2は、
図1に示すバルク弾性波共振構造100のA-A’方向に沿った断面の概略図である。
図2を参照すると、バルク弾性波共振構造100は、
基板101と、
基板101上に順次配置された反射構造102、第1電極103、圧電層104および第2電極105であって、共振領域の有効領域は、第1重畳領域106である、反射構造102、第1電極103、圧電層104および第2電極105と、
第1重畳領域106を包囲する第1包囲構造107であって、間隔を置いて配列された第1突出構造171と第1不連続構造172を含む、第1包囲構造107と、を備え、
第1突出構造171は、圧電層104と第1電極103との間、および/または圧電層104と第2電極105との間に配置され、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端は、第1電極103および/または第2電極105によって被覆される。
【0024】
なお、第1包囲構造107の各部分の位置を直観的に説明するために、
図2に示すバルク弾性波共振構造100は、第1包囲構造107を強調表示した部分断面の概略図である。
図2に示すバルク弾性波共振構造は、本発明の実施例の一例に過ぎず、本発明の実施例におけるバルク弾性波共振構造の特徴を限定するためのものではなく、後続の実施例には、本発明の実施例のバルク弾性波共振構造の他の例も示されている。
図2は、第1突出構造171が圧電層104と第2電極105との間に配置される例を示す。
【0025】
実際の適用において、基板101の構成材料は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)などを含んでもよい。
【0026】
例示的に、第1電極103は、下部電極とも呼ばれ、それに対応して、第2電極105は、上部電極とも呼ばれ、電気エネルギは、当該上部電極と下部電極を介してバルク弾性波共振構造100に印加されることができる。第1電極103と第2電極105の構成材料は、同じであってもよく、当該構成材料は、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)またはプラチナ(Pt)などの導電金属または上記の導電金属の合金からなる導電材料を含んでもよい。例示的に、第1電極103と第2電極105の構成材料は、いずれもモリブデン(Mo)である。
【0027】
実際の適用において、圧電層104は、逆圧電特性に従って振動を生成し、第1電極103と第2電極105に負荷された電気信号を弾性波信号に変換し、電気エネルギから機械エネルギへの変換を実現するために使用されることができる。
【0028】
例示的に、圧電層104の構成材料は、圧電特性を有する材料を含む。例えば、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、タンタル酸リチウム、チタン酸ジルコン酸鉛またはチタン酸バリウムなどを含む。圧電層104の構成材料は、ドーピングにより圧電特性を有する材料を含んでもよく、ドーピングされたものは、遷移金属または希少金属であってもよく、例えば、スカンジウムをドーピングした窒化アルミニウムなどが挙げられる。
【0029】
ここで、反射構造102は、弾性波信号を反射するように構成される。圧電層104によって生成された弾性波信号が反射構造102に向かって伝播するとき、弾性波信号は、第1電極103と反射構造102とが接触する界面で全反射され、これにより、弾性波信号を圧電層104に反射させることができる。このようにして、圧電層104によって生成された弾性波信号のエネルギを圧電層104内に局在化させることができ、弾性波信号のエネルギ損失を低減し、バルク弾性波共振構造の主共振モードの弾性波エネルギを増加させることができる。
【0030】
なお、
図2に示すバルク弾性波共振構造は、本発明の一例に過ぎず、実際の適用において、バルク弾性波共振構造は、反射構造102の形態の違いに応じて、第1タイプのキャビティ型FBAR、第2タイプのキャビティ型FBAR、SMR(Solid Mounted Resonator)型の共振構造などに具体的に分類することができる。本発明の実施例による解決策は、上記の異なる種類のバルク弾性波共振構造に適用することができる。
【0031】
例示的に、バルク弾性波共振構造100が第1タイプのキャビティ型FBARを含む場合、反射構造102は、第1電極103の上向き突出部と基板101の表面との間に形成される第1キャビティを含む。バルク弾性波共振構造100が第2タイプのキャビティ型FBARを含む場合、反射構造102は、基板101の表面の下向き凹部と第1電極103との間に形成される第2キャビティを含む。ここで、バルク弾性波共振構造100が第1タイプのキャビティ型FBARを含むことを例として説明する。
【0032】
実際の適用において、
図2に示すように、共振領域は、基板101における反射構造102の正投影、基板101における第1電極103の正投影、基板101における圧電層104の正投影および基板における第2電極105の正投影の4つの正投影の重畳領域である。ここで、共振領域の有効領域(または主共振領域)は、第1重畳領域106であり、第1重畳領域106内に、バルク弾性波共振構造の主共振モードが生成される。
【0033】
図1を参照すると、第1包囲構造107は、間隔を置いて配列された第1突出構造171と第1不連続構造172を含み、なお、
図1の第1突出構造171は、第2電極105によって被覆されており、第1突出構造171は透視して表示されていない。
図1に示すように、第1重畳領域106の縁部近傍に、第1突出構造171が間欠的に設けられており、第1突出構造171は、第1重畳領域106を包囲する。
【0034】
例示的に、
図2に示すように、第1突出構造171は、圧電層104と第2電極105との間に配置されており、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端は、第2電極105によって被覆される。第1突出構造171を設けることにより、第1突出構造171の正投影範囲内で、基板101に垂直な方向における第2電極105から第1電極103までの距離が長くなり、これにより、第2電極105から第1電極103までの電気力線が長くなり、第1重畳領域106の縁部近傍の電界強度が小さくなる。電界強度が小さくなると、電気的変位が減少し、圧電共振の効果が小さくなるため、第1重畳領域106の縁部近傍(即ち、第1重畳領域106の内側に位置する可能性もあるし、第1重畳領域106の外側に位置する可能性もある)の寄生共振が低減され、第1重畳領域への寄生共振の伝播が低減され、それにより、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0035】
図3は、
図1に示すバルク弾性波共振構造100のB-B’方向に沿った部分断面の概略図である。例示的に、
図3に示すように、第1不連続構造172は、第2電極105、第1突出構造171、圧電層104および第1電極103を貫通する溝であってもよい。第1重畳領域106を包囲する第1不連続構造172を設けることにより、第1重畳領域106内の横方向剪断波を反射することができ、エネルギを第1重畳領域106内の縦波に集中させ、これにより、横方向の寄生モードを抑制し(即ち、寄生共振を抑制する)、品質係数(Q値)を高めるという効果を達成することができる。
【0036】
なお、いくつかの実施例において、バルク弾性波共振構造の第1突出構造171は、圧電層104の斜面上にのみ存在してもよい(未図示)。
【0037】
本実施例では、第1重畳領域106を包囲し、間隔を置いて配列された第1突出構造171と第1不連続構造172を含む第1包囲構造107を設けることにより、第1重畳領域106の縁部の第1電極103と第2電極105との間の距離を増加させることができ、それにより、第1重畳領域106の縁部における電界強度を小さくすることができる。電界強度が小さくなると、電気的変位が減少し、圧電共振の効果が小さくなるため、第1重畳領域106の縁部における寄生共振が低減され、第1重畳領域106への寄生共振の伝播が低減され、それにより、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。さらに、第1重畳領域106を包囲する第1不連続構造172を設けることにより、第1重畳領域106内の横方向剪断波を反射することができ、エネルギを第1重畳領域106内の縦波に集中させ、これにより、横方向の寄生モードを抑制し(即ち、寄生共振を抑制する)、品質係数(Q値)を高めるという効果を達成することができる。
【0038】
いくつかの実施例において、
図4を参照すると、第1突出構造171が圧電層104と第2電極105との間にのみ配置される場合、バルク弾性波共振構造はさらに、第1包囲構造107を包囲する第2包囲構造108を備え、
第2包囲構造108は、圧電層104の反射構造102から相対的に離れた側壁を部分的に被覆する。
【0039】
図4を参照すると、第1包囲構造107は、間隔を置いて配列された第1突出構造171と第1不連続構造172を含み、なお、
図4の第1突出構造171は、第2電極105によって被覆されており、第1突出構造171は透視して表示されていない。
図4に示すように、第1重畳領域106の縁部近傍に、第1突出構造171が間欠的に設けられており、第1突出構造171は、第1重畳領域106を包囲する。第2包囲構造108は、第1包囲構造107を包囲する。
【0040】
例示的に、
図5は、
図4に示すバルク弾性波共振構造のA-A’方向に沿った部分断面の概略図である。
図5に示すように、第1突出構造171は、圧電層104と第2電極105との間に配置されており、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端は、第2電極105によって被覆される。第2包囲構造108は、第1突出構造171に接続され、且つ第2包囲構造108は、基板101の表面に対して傾斜角度を有する。例示的に、第2包囲構造108の傾斜角度は、10°~80°を含む。バルク弾性波共振構造の設計サイズに応じて傾斜角度を改善することもできる。第2包囲構造108と第1突出構造171は、第1重畳領域106に近接する突出構造を形成する。第2包囲構造108と第1突出構造171を設けることにより、第2包囲構造108と第1突出構造171の正投影範囲内で、基板101に垂直な方向における第2電極105から第1電極103までの距離が長くなり、これにより、第2電極105から第1電極103までの電気力線が長くなり、第1重畳領域106近傍の電界強度が小さくなる。電界強度が小さくなると、電気的変位が減少し、圧電共振の効果が小さくなるため、第1重畳領域106の縁部近傍(即ち、第1重畳領域の内側に位置する可能性もあるし、第1重畳領域の外側に位置する可能性もある)の寄生共振が低減され、第1重畳領域への寄生共振の伝播が低減され、それにより、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0041】
1つの実施例において、第2包囲構造108と第1突出構造171の構成材料は同じであり、例えば、第2包囲構造108と第1突出構造171の構成材料は、二酸化ケイ素(SiO2)を含む。別の1つの実施例において、第2包囲構造108と第1突出構造171の構成材料は異なり、例えば、第2包囲構造108の構成材料は、二酸化シリコン(SiO2)を含み、第1突出構造171の構成材料は、炭化シリコン(SiC)を含む。
【0042】
図6は、
図4に示すバルク弾性波共振構造のB-B’方向に沿った部分断面の概略図である。例示的に、
図6に示すように、第1不連続構造172は、第2電極105、第1突出構造171、圧電層104および第1電極103を貫通する溝であってもよい。第1重畳領域106を包囲する第1不連続構造172を設けることにより、第1重畳領域106内の横方向剪断波を反射することができ、エネルギを第1重畳領域106内の縦波に集中させ、これにより、横方向の寄生モードを抑制し(即ち、寄生共振を抑制する)、品質係数(Q値)を高めるという効果を達成することができる。
【0043】
本実施例では、第1重畳領域106を包囲する第1包囲構造107と第2包囲構造108を設けることにより、第1重畳領域106の縁部の第1電極103と第2電極105との間の距離をさらに増加させ、第1重畳領域106の縁部における寄生共振を低減させることで、第1重畳領域106への寄生共振の伝播を低減し、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0044】
いくつかの実施例において、
図5を参照すると、第2包囲構造108と第1突出構造171の材料は同じであり、且つ第2包囲構造108と第1突出構造171とが接続されて一体化構造となっている。
【0045】
例示的に、第2包囲構造108と第1突出構造171の構成材料は同じであり、例えば、第2包囲構造108と第1突出構造171の構成材料は、二酸化シリコン(SiO2)を含み、または第2包囲構造108と第1突出構造171の構成材料は、炭化シリコン(SiC)または窒化アルミニウム(AlN)を含む。本発明は、これに対して限定しない。
【0046】
なお、第2包囲構造108と第1突出構造171とが接続されて一体化構造となり、当該一体化構造は、第1重畳領域106に近い突出構造であり、
図5に示すように、当該突出構造の第1突出構造171は、第2電極105によって被覆されており、当該突出構造の第2包囲構造108は、圧電層104の斜面上に配置され且つ第2電極105によって被覆されない。
【0047】
いくつかの実施例において、
図7を参照すると、第2包囲構造108は、間隔を置いて配列された第2突出構造181と第2不連続構造182を含み、第1不連続構造172と第2不連続構造182は間隙であり、第2突出構造181と第1突出構造171の材料は同じであり、且つ第2突出構造181と第1突出構造171とが接続されて一体化構造となっている。
【0048】
なお、
図7における第1突出構造171と第1不連続構造172(未図示)は、第2電極105によって被覆され、第2電極105が透視して表示されている。第1重畳領域106の縁部近傍に、間隔を置いて配列された第1突出構造171と第1不連続構造172が配置される。第2包囲構造108は、第1包囲構造107を包囲し(未図示)、
図7における第1包囲構造107は、第2電極105によって被覆される。第2包囲構造108は、間隔を置いて配列された第2突出構造181と第2不連続構造182を含む。
【0049】
図7に示すように、第1不連続構造172と第2不連続構造182は間隙であり、第1重畳領域106を包囲する間隙を設けることにより、第1重畳領域106内の横方向剪断波を反射することができ、エネルギを第1重畳領域106内の縦波に集中させ、これにより、横方向の寄生モードを抑制し(即ち、寄生共振を抑制する)、Q値を高めるという効果を達成することができる。
【0050】
図8は、
図7に示すバルク弾性波共振構造のA-A’方向に沿った部分断面の概略図である。
図8に示すように、第1突出構造171は、圧電層104と第2電極105との間に配置されており、第1突出構造171は、第2電極105によって被覆され、第2突出構造181は、第2電極105に接続された上部電極リードによって被覆される。第2突出構造181は、第1突出構造171に接続され、第2突出構造181は、基板101の表面に対して傾斜角度を有する。例示的に、第2突出構造181の傾斜角度は、10°~80°を含む。バルク弾性波共振構造の設計サイズに応じて傾斜角度を改善することもできる。
【0051】
図8を参照すると、第2突出構造181と第1突出構造171の材料は同じであり、且つ第2突出構造181と第1突出構造171とが接続されて一体化構造となっている。例示的に、第2突出構造181と第1突出構造171の構成材料は、二酸化シリコン(SiO
2)を含む。第2突出構造181と第1突出構造171が、第1重畳領域106に近接する突出構造を形成し、第2突出構造181と第1突出構造171を設けることにより、第2突出構造181と第1突出構造171の正投影範囲内で、基板101に垂直な方向における第2電極105から第1電極103までの距離が長くなり、これにより、第2電極105から第1電極103までの電気力線が長くなり、第1重畳領域106近傍の電界強度が小さくなる。電界強度が小さくなると、電気的変位が減少し、圧電共振の効果が小さくなるため、第1重畳領域106の縁部近傍(即ち、第1重畳領域の内側に位置する可能性もあるし、第1重畳領域の外側に位置する可能性もある)の寄生共振が低減され、第1重畳領域への寄生共振の伝播が低減され、それにより、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0052】
図9は、
図7に示すバルク弾性波共振構造のB-B’方向に沿った部分断面の概略図である。例示的に、
図9に示すように、第1突出構造171は、圧電層104と第2電極105との間に配置されており、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端は、第2電極105によって被覆される。第2突出構造181の一部は、第2電極105に接続された上部電極リードによって被覆され、第2突出構造181の一部は、第2電極105によって被覆される。
【0053】
図4に示すバルク弾性波共振構造と比較して、本実施例では、
図7に示すバルク弾性波共振構造は、間欠的な突出構造を含み、エッチングにより溝を形成する必要がないため、製造工程において、エッチング工程が削減され、コストを節約することができる。
【0054】
いくつかの実施例において、
図2を参照すると、第1突出構造171が圧電層104と第2電極105との間にのみ配置される場合、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106から離れた他端とは、両方とも第2電極105によって被覆され、
各第1突出構造171は、基板101に垂直な方向に沿って対向する頂部と底部とを含み、頂部は、第2電極105と直接接触し、底部は、圧電層104と直接接触する。
【0055】
図2に示すように、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106から離れた他端とは、いずれも第2電極105によって被覆されている。第1突出構造171が、圧電層104の基板101から相対的に離れた側に配置され且つ基板101から離れる方向に向けて突出しているため、第1突出構造171を被覆する第2電極105は、基板101に垂直な方向において、基板101から離れる方向に突出し、第1突出構造171を設けることにより、第1突出構造171の正投影範囲内で、基板101に垂直な方向における第2電極105から第1電極103までの距離が長くなる。
【0056】
本実施例では、第2電極105から第1電極103までの電気力線が長くなり、第1重畳領域106近傍の電界強度が小さくなる。電界強度が小さくなると、電気的変位が減少し、圧電共振の効果が小さくなるため、第1重畳領域106の縁部近傍(即ち、第1重畳領域の内側に位置する可能性もあるし、第1重畳領域の外側に位置する可能性もある)の寄生共振が低減され、第1重畳領域への寄生共振の伝播が低減され、それにより、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0057】
いくつかの実施例において、
図10を参照すると、第1突出構造171が圧電層104と第1電極103との間にのみ配置される場合、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106から離れた他端とは、いずれも第1電極103によって被覆され、
各第1突出構造171は、基板101に垂直な方向に沿って対向する頂部と底部とを含み、頂部は、圧電層104と直接接触し、底部は、第1電極103と直接接触する。
【0058】
図10に示すように、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106から離れた他端とは、いずれも第1電極103によって被覆されている。第1突出構造171が、圧電層104の基板101に相対的に近接する側に配置され且つ基板101に接近する方向に向けて突出しているため、第1突出構造171を被覆する第1電極103は、基板101に垂直な方向に沿って、基板101に接近する方向に向けて突出し、第1突出構造171を設けることにより、第1突出構造171の正投影範囲内で、基板101に垂直な方向における第2電極105から第1電極103までの距離が長くなる。
【0059】
本実施例では、第2電極105から第1電極103までの電気力線が長くなり、第1重畳領域106近傍の電界強度が小さくなる。電界強度が小さくなると、電気的変位が減少し、圧電共振の効果が小さくなるため、第1重畳領域106の縁部近傍(即ち、第1重畳領域の内側に位置する可能性もあるし、第1重畳領域の外側に位置する可能性もある)の寄生共振が低減され、第1重畳領域への寄生共振の伝播が低減され、それにより、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0060】
いくつかの実施例において、
図11を参照すると、第1突出構造171は、第1サブ構造1711と第2サブ構造1712を含み、
第1サブ構造1711は、圧電層104と第2電極105との間にのみ配置され、各第1サブ構造1711の、第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106から離れた他端とは、いずれも第2電極105によって被覆され、
第2サブ構造1712は、圧電層104と第1電極103との間にのみ配置され、各第2サブ構造1712の、第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106から離れた他端とは、いずれも第1電極103によって被覆され、
ここで、基板101における第1サブ構造1711の正投影は、基板101における第2サブ構造1712の正投影と少なくとも部分的に重なる。
【0061】
図11に示すように、圧電層104と第2電極105との間に複数の第1サブ構造1711が配置されており、圧電層104と第1電極103との間に複数の第2サブ構造1712が配置されている。本実施例は、
図11において、基板101における第1サブ構造1711の正投影と、基板101における第2サブ構造1712の正投影が重なることを例として説明する。なお、第1サブ構造1711と第2サブ構造1712の位置を変更してもよく、本発明は、これに対して限定しない。
【0062】
例示的に、各第1サブ構造1711の、第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106から離れた他端とは、いずれも第2電極105によって被覆される。第1サブ構造1711が、圧電層104の基板101から相対的に離れた側に配置され且つ基板101から離れる方向に向けて突出しているため、第1サブ構造1711を被覆する第2電極105は、基板101に垂直な方向に沿って、基板101から離れる方向に向けて突出し、第1サブ構造1711を設けることにより、第1サブ構造1711の正投影範囲内で、基板101に垂直な方向における第2電極105から第1電極103までの距離が長くなる。各第2サブ構造1712の、第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106から離れた他端とは、いずれも第1電極103によって被覆される。第2サブ構造1712が、圧電層104の基板101に相対的に近接する側に配置され且つ基板101に接近する方向に向けて突出しているため、第2サブ構造1712を被覆する第1電極103は、基板101に垂直な方向に沿って、基板101に接近する方向に向けて突出し、第2サブ構造1712を設けることにより、第2サブ構造1712の正投影範囲内で、基板101に垂直な方向における第2電極105から第1電極103までの距離が長くなる。
【0063】
本実施例では、第1サブ構造1711と第2サブ構造1712を設けることにより、第2電極105から第1電極103までの電気力線の長さがさらに長くなり、第1重畳領域106近傍の電界強度が小さくなる。電界強度が小さくなると、電気的変位が減少し、圧電共振の効果が小さくなるため、第1重畳領域106の縁部近傍(即ち、第1重畳領域の内側に位置する可能性もあるし、第1重畳領域の外側に位置する可能性もある)の寄生共振が低減され、第1重畳領域への寄生共振の伝播が低減され、それにより、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0064】
いくつかの実施例において、第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106の縁部との第1方向における距離は、0~10μmであり、ここで、第1方向は、第1重畳領域106の縁部から第1重畳領域106の中心に向かう方向である。
【0065】
1つの例において、第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端は、第1重畳領域106の縁部と面一であり、つまり、第1突出構造171の第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106の縁部との第1方向における距離は0である。別の1つの例において、
図2に示すように、第1突出構造171の第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106の縁部との第1方向における距離は、5μmであってもよい。好ましくは、第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106の縁部との第1方向における距離が0μmである。
【0066】
なお、バルク弾性波共振構造の設計サイズに応じて、第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端と、第1重畳領域106の縁部との第1方向における距離を改善してもよく、本発明は、これに対して限定しない。
【0067】
いくつかの実施例において、
図1を参照すると、バルク弾性波共振構造はさらに、第1電極リード1031と第2電極リード1051を備え、第1電極リード1031は、第1電極103に接続され、第2電極リード1051は、第2電極105に接続され、
基板101における第1電極リード1031と第2電極リード1051の正投影は、第1重畳領域106以外の領域に位置し、
基板101における第1不連続構造172の正投影は、基板101における第1電極リード1031と第2電極リード1051の正投影以外の領域に入る。
【0068】
実際の適用において、バルク弾性波共振器はさらに、第1電極リード1031と第2電極リード1051を備える。第1電極リード1031は、下部電極リードとも呼ばれ、第2電極リード1051は、上部電極リードとも呼ばれる。第1電極リード1031(下部電極リード)と第1電極103(下部電極)は、同層に配置され、且つ第1電極リード1031は、第1電極103に接続される。第2電極リード1051(上部電極リード)と第2電極105(上部電極)は、同層に配置され、且つ第2電極リード1051は、第2電極105に接続される。
【0069】
図1または
図4に示すように、基板101における第1不連続構造172の正投影は、基板101における第1電極リード1031と第2電極リード1051の正投影以外の領域に入る。
【0070】
いくつかの実施例において、バルク弾性波共振構造はさらに、周波数変調層109を備え、周波数変調層109は、第2電極105上に配置され、
第1包囲構造107は、周波数変調層109と第2電極105との間に配置される。
【0071】
実際の適用において、バルク弾性波共振構造はさらに、周波数変調層109を備え、周波数変調層109は、調整層とも呼ばれる。周波数変調層109は、バルク弾性波共振構造の周波数を調整するために使用されることができる。
【0072】
第1包囲構造107は、間隔を置いて配列された第1突出構造171と第1不連続構造172を含む。1つの例において、
図12に示すように、周波数変調層109は、第2電極105を被覆し、第1突出構造171は、圧電層104と第2電極105との間に配置されている。別の1つの例において、周波数変調層109は、第2電極105を被覆し、第1突出構造171は、周波数変調層109と第2電極105との間に配置される(未図示)。
【0073】
図13は、
図12に示すバルク弾性波共振構造の第1不連続構造方向に沿った部分断面の概略図である。例示的に、
図13に示すように、第1不連続構造172は、周波数変調層109、第2電極105、第1突出構造171、圧電層104および第1電極103を貫通する溝であってもよい。第1重畳領域106を包囲する第1不連続構造172を設けることにより、第1重畳領域106内の横方向剪断波を反射することができ、エネルギを第1重畳領域106内の縦波に集中させ、これにより、横方向の寄生モードを抑制し(即ち、寄生共振を抑制する)、Q値を高めるという効果を達成することができる。
【0074】
例示的に、
図14に示すように、周波数変調層109は、第2電極105の一部を被覆しており、基板101における周波数変調層109の正投影は、第1重畳領域106内に入り、第1突出構造171は、圧電層104と第2電極105との間に配置されている。
【0075】
なお、バルク弾性波共振構造の設計サイズに応じて、周波数変調層109の位置を改善してもよく、本発明は、これに対して限定しない。
【0076】
いくつかの実施例において、バルク弾性波共振構造はさらに、シード層110を備え、シード層110は、第1電極103と基板101との間に配置され、
第1包囲構造107は、シード層110と第1電極103との間に配置される。
【0077】
実際の適用において、バルク弾性波共振構造は、シード層110をさらに含み、シード層110は、第1電極103と基板101との間に配置される。なお、
図14に示すように、第1電極103を堆積する前に、まず、下部電極材料の結晶軸配向を改善するための、一層のシード層110を堆積することにより、結晶格子を圧電層104に近づけ、後続で堆積される圧電層104の格子欠陥を低減することができる一方、シード層110は、第1電極103のエッチング阻止層として機能することもできる。シード層110の構成材料は、圧電層104の構成材料と同じである。
【0078】
1つの例において、
図14に示すように、シード層110は、第1電極103と基板101との間に配置されており、第1突出構造171は、圧電層104と第2電極105との間に配置される。別の1つの例において、シード層110は、第1電極103と基板101との間に配置され、第1突出構造171は、シード層110と第1電極103との間に配置される(未図示)。
【0079】
いくつかの実施例において、第1不連続構造172は、溝であり、
溝は、基板101に垂直な方向に沿って、第2電極105、第1突出構造171、圧電層104、第1電極103のうちの少なくとも1つを貫通する。
【0080】
例示的に、
図3に示すように、第1不連続構造172は、第2電極105、第1突出構造171、圧電層104および第1電極103を貫通する溝であってもよい。第1重畳領域106を包囲する溝を設けることにより、第1重畳領域106内の横方向剪断波を反射することができ、エネルギを第1重畳領域106内の縦波に集中させ、これにより、横方向の寄生モードを抑制し(即ち、寄生共振を抑制する)、Q値を高めるという効果を達成することができる。なお、溝が、第2電極105、圧電層104および第1電極103を貫通して犠牲層と接触する場合、溝をエッチングホールとして使用して、犠牲層をエッチングしてキャビティ型の反射構造102を形成することができる。
【0081】
1つの実施例において、
図15に示すように、一部の第1突出構造171は、第2電極105および第2電極リードによって被覆される。一部の第1突出構造171の、第1重畳領域106から離れた一端は、第2電極105の縁部と面一である。
図16は、
図15に示すバルク弾性波共振構造の第1不連続構造の方向に沿った部分断面の概略図である。例示的に、
図16に示すように、第1不連続構造172は、第2電極105、第1突出構造171、および圧電層104の一部を貫通している。
図17は、
図15に示すバルク弾性波共振構造の第1不連続構造方向に沿った部分断面の概略図である。例示的に、
図17に示すように、第1不連続構造172は、第2電極105、第1突出構造171、圧電層104および第1電極103を貫通する。
【0082】
なお、第1不連続構造172が溝である場合、溝は少なくとも第1突出構造171を貫通する。第1重畳領域106を包囲する溝は、第1重畳領域106内の横方向剪断波を反射することができ、エネルギを第1重畳領域106内の縦波に集中させ、これにより、横方向の寄生モードを抑制し(即ち、寄生共振を抑制する)、品質係数(Q値)を高めるという効果を達成することができる。
【0083】
いくつかの実施例において、バルク弾性波共振構造はさらに、縞状構造111を備え、縞状構造111は、第2電極105に配置され且つ第2電極105に接続され、
基板101における縞状構造111の正投影は、第1重畳領域106以外の領域に入り、且つ縞状構造111は、第1重畳領域106を包囲して間隔を置いて配列される。
【0084】
1つの例において、
図18を参照すると、バルク弾性波共振構造は、縞状構造111(Frame)を備え、縞状構造111は、第2電極105上に配置され且つ第2電極105に接続される。例示的に、縞状構造111と第2電極105の構成材料は同じである。縞状構造111は、質量負荷構造を形成する。縞状構造111と第2電極105との重畳領域に剪断波が伝播すると、当該領域に伝播された横方向剪断波を反射することができ、横方向剪断波の漏洩が抑制され、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0085】
別の1つの例において、
図19を参照すると、バルク弾性波共振構造は、第1突出構造171と縞状構造111(Frame)を備え、なお、
図19では、第1突出構造171の図示は省略されている。第1突出構造171は、圧電層104と第2電極105との間に配置され、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端は、第2電極105によって被覆される。縞状構造111は、第2電極105上に配置され且つ第2電極105に接続され、基板101における縞状構造111の正投影は、基板101における第1突出構造171の正投影と少なくとも部分的に重なる。第1突出構造171と縞状構造111を設けることにより、第1突出構造171と縞状構造111の正投影範囲内で、基板101に垂直な方向における第2電極105から第1電極103までの距離が長くなり、これにより、第2電極105から第1電極103までの電気力線が長くなり、第1重畳領域106の縁部近傍の電界強度が小さくなる。電界強度が小さくなると、電気的変位が減少し、圧電共振の効果が小さくなるため、第1重畳領域106の縁部近傍(即ち、第1重畳領域106の内側に位置する可能性もあるし、第1重畳領域106の外側に位置する可能性もある)の寄生共振が低減され、第1重畳領域への寄生共振の伝播が低減され、それにより、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0086】
別の例において、
図20を参照すると、バルク弾性波共振構造は、第1包囲構造107と縞状構造111(Frame)を備え、なお、第1包囲構造107は、間隔を置いて配列された第1突出構造171と第1不連続構造172を含み、
図20では、第1突出構造171の図示は省略されている。例示的に、
図20に示すように、第1不連続構造172は、縞状構造111、第2電極105、第1突出構造171、圧電層104および第1電極103を貫通する溝であってもよい。第1重畳領域106を包囲する第1不連続構造172を設けることにより、第1重畳領域106内の横方向剪断波を反射することができ、エネルギを第1重畳領域106内の縦波に集中させ、これにより、横方向の寄生モードを抑制し(即ち、寄生共振を抑制する)、Q値を高めるという効果を達成することができる。
【0087】
本発明の実施例は、上記の実施例に係るバルク弾性波共振構造を備える、弾性波デバイスを提供する。弾性波デバイスは、フィルタ、デュプレクサおよびマルチプレクサなどを含むが、これらに限定されない。
【0088】
本発明の実施例において、弾性波デバイスにおけるバルク弾性波共振構造の具体的な説明については、前述した実施例におけるバルク弾性波共振構造を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0089】
図21は、本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法の例示的なフローチャートを示す。上記のバルク弾性波共振構造に基づいて、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を提供し、前記方法は、以下のステップを含む。
【0090】
S10において、基板を提供し、基板の表面に犠牲層を形成する。
【0091】
S20において、犠牲層を被覆する第1電極と圧電層を形成する。
【0092】
S30において、圧電層の基板から相対的に離れた側に突出材料層を形成する。
【0093】
S40において、突出材料層を被覆する第2電極を形成し、共振領域の有効領域は、第1重畳領域である。
【0094】
S50において、第1重畳領域の縁部の第2電極と突出材料層をエッチングして、間隔を置いて配列された第1突出構造と第1不連続構造を形成し、第1突出構造と第1不連続構造は、第1重畳領域を包囲する第1包囲構造を形成し、各第1突出構造の、第1重畳領域に隣接する一端は、第2電極によって被覆される。
【0095】
S60において、少なくとも1つのエッチングホールを形成し、エッチングホールを介して犠牲層を除去して、反射構造を形成する。
【0096】
基板、第1電極、圧電層、第2電極、反射構造の構成材料については、上記のバルク弾性波共振構造の各実施例の関連説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0097】
図22a~
図22dは、1つの例示的な実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の概略図を示す。
図22aを参照すると、ステップS10が実行される。いくつかの実施例において、基板101上に犠牲材料を堆積し、犠牲材料をエッチングして犠牲層102aを形成する。例示的に、犠牲層102aの構成材料は、リンケイ酸ガラス(PSG:Phospho Silicate Glass)または二酸化シリコンなどを含むが、これらに限定されない。犠牲層102aの構成材料が二酸化シリコンであることを例として説明すると、反応ガスとしてシラン(SiH
4)と酸素(O
2)を使用して、化学気相堆積工程によって、基板101の第1表面に犠牲層102aを形成することができる。
【0098】
図22aに示すように、犠牲層102aは、基板101上に形成されることができ、犠牲層102aは、基板101の上面から突出している。犠牲層102aは、後続の工程プロセスで除去されて、突起したキャビティ型の反射構造102を形成することができる(
図22dを参照)。
【0099】
図22bを参照すると、ステップS20が実行される。犠牲層102aと基板101を被覆する第1電極材料を形成し、第1電極材料をパターニングして第1電極103を形成する。
図22bに示すように、第1電極103を被覆する圧電層104を形成する。
【0100】
なお、第1電極103を堆積する前に、まず、下部電極材料の結晶軸配向を改善するための、一層のシード層を堆積することにより、結晶格子を圧電層に近づけ、後続で堆積される圧電層の格子欠陥を低減することができる一方、シード層は、第1電極103のエッチング阻止層として機能することもできる。例示的に、シード層の構成材料は、圧電層104の構成材料と同じである。
【0101】
図22cを参照すると、ステップS30~S40が実行される。圧電層104の基板101から相対的に離れた側に、犠牲材料を堆積して突出材料層107aを形成する。突出材料層107aと圧電層104を被覆する第2電極材料を形成し、第2電極材料をパターニングして第2電極105を形成する。例示的に、突出材料層107aの構成材料は、犠牲層102aの構成材料と同じである。なお、1つの例において、突出材料層107aは、後続の工程プロセスで除去され、空気型の第1突出構造171を形成することができる。別の1つの例において、突出材料層107aは、後続の工程プロセスで除去されずに、第1突出構造171を形成することができる(
図22dを参照)。
【0102】
図22dを参照すると、ステップS50が実行される。実際の適用において、共振領域の有効領域は、第1重畳領域106である。なお、
図22dでは、第1不連続構造172は示されず、
図1と
図3を参照すると、第1重畳領域106の縁部の第2電極105と突出材料層107aをエッチングすることで、間隔を置いて配列された第1突出構造171と第1不連続構造172を形成し、ここで、第1突出構造171と第1不連続構造172が、第1重畳領域106を包囲する第1包囲構造107を形成し、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端は、第2電極105によって被覆される。
【0103】
図22dを参照すると、ステップS60が実行される。少なくとも1つエッチングホールを形成し、エッチングホールを介して犠牲層102aを除去して、反射構造102を形成する。1つの実施例において、エッチングホールを利用してエッチング剤を放出して犠牲層102aを除去する。ここで、エッチングホールは、基板101の表面が露出されるまで、圧電層104および犠牲層102aを貫通することができる。別の1つの実施例において、エッチングホールは、犠牲層102aの表面が露出されるまで、圧電層104のみを貫通することができ、即ち、エッチングホールは、犠牲層102aを貫通する必要がない。
【0104】
例示的に、適切なエッチング剤を選択し、エッチングホール内にエッチング剤を注入することにより、エッチング剤が、露出した犠牲層102aと接触して化学反応して、ガス状生成物を生成するようにして、犠牲層102aを除去することができる。
【0105】
具体的には、犠牲層102aの構成材料が二酸化シリコンである場合、ドライエッチング工程を採用して、エッチング剤としてフッ化水素(HF)を選択して犠牲層102aを除去することができる。フッ化水素がエッチングホールから露出した犠牲層102aと反応すると、ガス状のフッ化シリコン(SiF4)とガス状の水が生成される。
【0106】
いくつかの実施例において、当該方法は、第2電極105を薄くするステップをさらに含む。薄くすることにより、バルク弾性波共振構造に対してさらに周波数変調することができる。
【0107】
本発明の実施例では、第1重畳領域106を包囲する第1突出構造171によって、第1重畳領域106の縁部の第1電極103と第2電極105との間の距離を増加させることができ、それにより、第1重畳領域106の縁部における電界強度を小さくすることができる。電界強度が小さくなると、電気的変位が減少し、圧電共振の効果が小さくなるため、第1重畳領域106の縁部における寄生共振が低減され、第1重畳領域106への寄生共振の伝播が低減され、それにより、バルク弾性波共振構造の品質係数(Q値)を高めることができる。さらに、第1重畳領域106を包囲する第1不連続構造172は、第1重畳領域106内の横方向剪断波を反射することができ、エネルギを第1重畳領域106内の縦波に集中させ、これにより、横方向の寄生モードを抑制し(即ち、寄生共振を抑制する)、Q値を高めるという効果を達成することができる。
【0108】
上記のバルク弾性波共振構造に基づいて、本発明の実施例は、別のバルク弾性波共振構造の製造方法を提供し、前記方法は、以下のステップを含む。
【0109】
ステップ1において、基板を提供し、基板の表面に犠牲層を形成する。
【0110】
ステップ2において、犠牲層を被覆する第1電極を形成する。
【0111】
ステップ3において、第1電極上に突出材料層を形成する。
【0112】
ステップ4において、突出材料層と第1電極を被覆する圧電層を形成する。
【0113】
ステップ5において、圧電層を被覆する第2電極を形成し、共振領域の有効領域は、第1重畳領域である。
【0114】
ステップ6において、第1重畳領域の縁部の第2電極、圧電層および突出材料層をエッチングして、間隔を置いて配列された第1突出構造と第1不連続構造を形成し、第1突出構造と第1不連続構造は、第1重畳領域を包囲する第1包囲構造を形成し、各第1突出構造の第1重畳領域に隣接する一端は、第1電極によって被覆される。
【0115】
ステップ7において、少なくとも1つのエッチングホールを形成し、エッチングホールを介して犠牲層を除去して、反射構造を形成する。
【0116】
なお、ステップ1~ステップ7において、基板101、反射構造102、第1電極103、圧電層104および第2電極105を形成する具体的なプロセスについては、上記のステップS10~ステップS60の例示的なフローチャートにおける説明を参照することができる。
【0117】
図23a~
図23dは、本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の概略図を示す。
図23aを参照すると、ステップ1が実行される。いくつかの実施例において、基板101上に犠牲材料を堆積し、犠牲材料をエッチングして犠牲層102aを形成し、エッチングにより犠牲層102aに第1溝H1を形成する。
図23aに示すように、犠牲層102aは、基板101上に形成されることができ、犠牲層102aは、基板101の上面から突出している。犠牲層102aは、後続の工程プロセスで除去され、突起したキャビティ型の反射構造102を形成することができる(
図23dを参照)。
【0118】
図23bを参照すると、ステップ2が実行される。第1電極材料を堆積し、第1電極材料をパターニングして第1電極103を形成する。エッチングにより第1電極103に第2溝H2を形成する。エッチング手法は、ドライエッチングとウェットエッチングを含むが、これらに限定されない。
図23bに示すように、1つの例において、エッチングによって、第1電極103に第2溝H2を形成する。別の1つの例において、犠牲層102aにおける第1溝H1の形態的特徴により、第2溝H2は、堆積により第1電極103を形成すると同時に形成される。
【0119】
図23cを参照すると、ステップ3が実行される。第2溝H2内に犠牲材料を堆積し、犠牲材料をエッチングして、突出材料層107aを形成する。例示的に、突出材料層107aの構成材料は、犠牲層102aの構成材料と同じである。なお、1つの例において、突出材料層107aは、後続の工程で除去され、空気からなる第1突出構造171(未図示)を形成することができる。別の1つの例において、突出材料層107aは、後続の工程で除去されずに、犠牲材料(例えば、二酸化シリコン)からなる第1突出構造171を形成することができる(
図23dを参照)。
【0120】
図23cを参照すると、ステップ4~ステップ5が実行される。突出材料層107aと第1電極103を被覆する圧電層104を形成する。圧電層104を被覆する第2電極材料を形成し、第2電極材料をパターニングして第2電極105を形成する。
【0121】
図23dを参照すると、ステップ6が実行される。実際の適用において、共振領域の有効領域は、第1重畳領域106である。なお、
図23dでは、第1不連続構造172は示されず、
図1と
図10を参照すると、第1重畳領域106の縁部の第2電極105、圧電層104および突出材料層107aがエッチングされて、間隔を置いて配列された第1突出構造171と第1不連続構造172が形成され、ここで、第1突出構造171と第1不連続構造172が、第1重畳領域106を包囲する第1包囲構造107を形成し、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端は、第1電極103によって被覆される。
【0122】
図23dを参照すると、ステップ7が実行される。少なくとも1つのエッチングホールを形成し、エッチングホールを介して犠牲層102aを除去して、反射構造102を形成する。ステップ7の具体的なプロセスは、
図21に示す例示的なフローチャートのステップS60の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0123】
本発明の実施例では、第1重畳領域106を包囲する第1突出構造171によって、第1重畳領域106の縁部の第1電極103と第2電極105との間の距離を増加させることができ、それにより、第1重畳領域106の縁部における電界強度を小さくすることができる。電界強度が小さくなると、電気的変位が減少し、圧電共振の効果が小さくなるため、第1重畳領域106の縁部における寄生共振が低減され、第1重畳領域106への寄生共振の伝播が低減され、それにより、バルク弾性波共振構造の品質係数(Q値)を高めることができる。さらに、第1重畳領域106を包囲する第1不連続構造172は、第1重畳領域106内の横方向剪断波を反射することができ、エネルギを第1重畳領域106内の縦波に集中させ、これにより、横方向の寄生モードを抑制し(即ち、寄生共振を抑制する)、Q値を高めるという効果を達成することができる。
【0124】
上記のバルク弾性波共振構造に基づいて、本発明の実施例は、さらに別のバルク弾性波共振構造の製造方法を提供し、前記方法は、以下のステップを含む。
【0125】
ステップ1において、基板を提供し、基板の表面に犠牲層を形成する。
【0126】
ステップ2において、犠牲層を被覆する第1電極と圧電層を形成する。
【0127】
ステップ3において、圧電層の基板から相対的に離れた側に、間隔を置いて配列された犠牲材料構造と第1不連続構造を形成する。
【0128】
ステップ4において、犠牲材料構造と第1不連続構造を被覆する第2電極を形成し、共振領域の有効領域は、第1重畳領域である。
【0129】
ステップ5において、少なくとも1つのエッチングホールを形成し、エッチングホールを介して犠牲材料構造と犠牲層を除去して、第1突出構造と反射構造をそれぞれ形成し、第1突出構造と第1不連続構造は、第1重畳領域を包囲する第1包囲構造を形成し、各第1突出構造の、第1重畳領域に隣接する一端は、第2電極によって被覆される。
【0130】
なお、ステップ1~ステップ5において、基板101、反射構造102、第1電極103、圧電層104および第2電極105を形成する具体的なプロセスは、上記のステップS10~ステップS60の例示的なフローチャートにおける説明を参照することができる。
【0131】
図22aを参照すると、ステップ1が実行される。いくつかの実施例において、基板101上に犠牲材料を堆積し、犠牲材料をエッチングして犠牲層102aを形成する。
図22aに示すように、犠牲層102aは、基板101上に形成されることができ、犠牲層102aは、基板101の上面から突出している。犠牲層102aは、後続の工程で除去されて、突起したキャビティ型の反射構造102を形成することができる。
【0132】
図22bを参照すると、ステップ2が実行される。第1電極材料を堆積し、第1電極材料をパターニングして第1電極103を形成する。第1電極103を被覆する圧電層104を形成する。
【0133】
ステップ3が実行される。圧電層104の基板101から相対的に離れた側に、間隔を置いて配列された犠牲材料構造と第1不連続構造172を形成する(
図7を参照)。なお、1つの例において、犠牲材料構造は、後続の工程で除去されて、空気型の第1突出構造171を形成することができる。別の1つの例において、突出材料層107aは、後続の工程で除去されずに、第1突出構造171を形成することができる(
図7を参照)。なお、間欠的な第1突出構造171を形成することにより、第1不連続構造172を形成するためのエッチング工程を削減することができる。間欠的な第1突出構造171の構成材料は空気であってもよく、突起は空気であり、第1不連続構造172の上部は、上部電極(第2電極105)の材料である。
【0134】
ステップ4が実行される。犠牲材料構造と第1不連続構造172を被覆する第2電極材料を形成し、第2電極材料をパターニングして第2電極105を形成する。実際の適用において、共振領域の有効領域は、第1重畳領域106である。
【0135】
ステップ5が実行される。少なくとも1つのエッチングホールを形成し、エッチングホールを介して犠牲材料構造と犠牲層102aを除去して、第1突出構造171と反射構造102をそれぞれ形成し、第1突出構造171と第1不連続構造172は、第1重畳領域106を包囲する第1包囲構造107を形成し、各第1突出構造171の、第1重畳領域106に隣接する一端は、第2電極105によって被覆される。ステップ5におけるエッチングホールを介する除去の具体的なプロセスは、
図21に示す例示的なフローチャートのステップS60の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0136】
本発明の実施例では、第1重畳領域106を包囲する第1突出構造171によって、第1重畳領域106の縁部の第1電極103と第2電極105との間の距離を増加させ、第1重畳領域106の縁部における寄生共振を低減させ、第1重畳領域106への寄生共振の伝播を低減させることができ、それにより、バルク弾性波共振構造の品質係数(Q値)を高めることができる。第1重畳領域106を包囲する第1不連続構造172は、第1重畳領域106内の横方向剪断波を反射することができ、これにより、横方向の寄生モードを抑制し(即ち、寄生共振を抑制する)、Q値を高めるという効果を達成することができる。さらに、間欠的な第1突出構造171を形成することにより、第1不連続構造172を形成するためのエッチング工程を削減することができ、それにより、工程ステップを減少し、製造プロセスを簡略化し、コストを節約することができる。
【0137】
なお、シミュレーション試験によると、
図24は、
図1に示すバルク弾性波共振構造と、通常のカンチレバー構造が配置されたバルク弾性波共振構造のスミスチャート試験結果をそれぞれ示している。
図24に示すように、
図1に示すバルク弾性波共振構造のスミス円がより円滑であるため、通常のカンチレバー構造が配置されたバルク弾性波共振構造と比較して、本発明の実施例、例えば
図1に示すバルク弾性波共振構造は、より優れたデバイス性能を有する。
【0138】
シミュレーション試験によると、
図25は、
図20に示すバルク弾性波共振構造と、normalバルク弾性波共振構造のスミスチャート試験結果をそれぞれ示している。normalバルク弾性波共振構造は、カンチレバー構造、Frame構造および溝を持たないバルク弾性波共振構造を意味する。
図25に示すように、
図20に示すバルク弾性波共振構造のスミス円がより円滑であるため、normalバルク弾性波共振構造と比較して、本発明の実施例、例えば
図20に示すバルク弾性波共振構造は、より優れたデバイス性能を有する。
【0139】
本明細書の全篇に言及された「1つの実施例」または「いくつかの実施例」は、実施例に関連する特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味することを理解されたい。したがって、本明細書における「1つの実施例において」または「いくつかの実施例において」は、必ずしも同じ実施例を指すものではない。さらに、これらの特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施例において任意の適切な方式で組み合わせることができる。本発明の各実施例において、上述の各プロセスの番号は、実行の前後順序を意味せず、各プロセスの実行順序は、その機能と固有の論理によって決定されるべきであり、本発明の実施例の実施プロセスに対するいかなる限定を構成すべきではないことを理解されたい。本発明の実施例の上記の番号は、説明の便宜を図るためのものに過ぎず、実施例の優劣を表すものではない。
【0140】
上記の内容は、本発明の特定の実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されない。本発明で開示された技術的範囲内で、当業者が容易に想到し得る変更または置換は、すべて本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】