(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ポリマー廃棄物を利用して炭化水素を生産する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20240905BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20240905BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C10G1/10
C08J11/12 ZAB
B29B17/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024518596
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 RU2022050298
(87)【国際公開番号】W WO2023048600
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524110757
【氏名又は名称】ヴィップス エンジニアリング リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】VIPS ENGINEERING LIMITED LIABILITY COMPANY
【住所又は居所原語表記】vn.ter.g. munitsipalny okrug Ligovka-Yamskaya, ul. Kremenchugskaya, d. 19, k. 1, pomesch./r.m. No.172-N/2 Saint-Petersburg, 191167 RU
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ペンフェロフ, アンドレイ アナトリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】オロノフ, マルク イゴレヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】スミルノフ, ドミトリー エヴケニエヴィッチ
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA27
4F401BA03
4F401CA14
4F401CA22
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4H129NA21
4H129NA22
4H129NA43
4H129NA45
4H129NA46
(57)【要約】
本発明はポリマー廃棄物を利用して炭化水素を生産する方法に関し、a)液体炭化水素混合物の存在下で、予め粉砕したポリマー廃棄物を、ポリマー廃棄物における少なくとも1種の標的ポリマーが溶液に転化するのに十分な温度であるが、ポリマー廃棄物における残りの成分が溶液に転化するより低い温度まで加熱して、ポリマー含有混合物を生成し、該混合物は液体炭化水素混合物中に少なくとも1種の標的ポリマーを含む溶液である;b)超微細触媒の存在下、少なくとも360℃の温度下でポリマー含有混合物を接触分解して、液体及び気体炭化水素混合物を生成する、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)液体炭化水素混合物の存在下、予め粉砕したポリマー廃棄物を、少なくとも1種の標的ポリマーが前記ポリマー廃棄物から溶液に変化するのに十分な温度であるが、前記ポリマー廃棄物における残りの組成が溶液に転化するより低い温度まで加熱して、ポリマー含有混合物を得、前記ポリマー含有混合物が前記液体炭化水素混合物中に少なくとも1種の前記標的ポリマーを含む溶液である;
B)超微細触媒の存在下、少なくとも360℃の温度下で前記ポリマー含有混合物を接触分解して、液体及び気体炭化水素混合物を生成し、前記触媒の粒度が8オングストローム又はより小さく、ホモジナイザ中で前記液体炭化水素混合物中に触媒前駆体を分散させることにより前記触媒を提供し、前記触媒前駆体が有機金属化合物である;
C)前記ポリマー含有混合物及び導入する前記触媒を閉鎖循環させ、混合物が繰り返し焙焼炉を通過することを確実に保証する;
を含むことを特徴とする、ポリマー廃棄物から炭化水素を得る方法。
【請求項2】
前記標的ポリマーがポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含むポリオレフィンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含むポリマー廃棄物画分が液相に変化する温度が200~250℃の範囲内に保持される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
溶解しない不純物がフッ素及び窒素化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー含有混合物を接触分解段階に輸送する前にろ過及び/又は分離し、前記液体炭化水素混合物における機械的不純物及び溶解しない不純物を含む残りのポリマー廃棄物画分を分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有機金属化合物が、C16-C32カルボン酸の金属含有塩及びその混合物からなる群から選択され、金属がニッケル、コバルト、モリブデンからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程B)の接触分解が、温度380~425℃、圧力-0.1~0.5MPa、触媒濃度0.005~0.02%Macの条件下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程B)で生成された少なくとも一部の前記液体炭化水素混合物を工程A)に戻す工程C)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記液体炭化水素混合物が、工程B)の液体炭化水素の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
A)液体炭化水素混合物中に少なくとも1種のポリマーを含む溶液であるポリマー含有混合物を提供する;
B)少なくとも360℃の温度下、超微細触媒の存在下で前記ポリマー含有混合物を接触分解させ、液体及び気体炭化水素の混合物を生成し、前記触媒粒度が8オングストローム又はより小さく、触媒前駆体を前記液体炭化水素混合物に分散させるホモジナイザ中で前記触媒が提供され、前記触媒前駆体が有機金属化合物である;
C)前記ポリマー含有混合物及び導入する前記触媒を閉鎖循環させ、混合物が繰り返し焙焼炉を通過することを確実に保証する;
を含むことを特徴とする、ポリマー廃棄物からポリマー含有混合物を得る接触分解方法。
【請求項11】
前記炭化水素混合物が前記ポリマー含有混合物を接触分解して得られるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記液体炭化水素混合物が前記ポリマー含有混合物の接触分解により得られる重質炭化水素画分である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
工程B)の接触分解が、温度380~425℃、圧力-0.1~0.5MPa、触媒濃度0.005~0.02%Macの条件下で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
液体炭化水素混合物の存在下、予め粉砕したポリマー廃棄物を、少なくとも1種の標的ポリマーが前記ポリマー廃棄物から溶液に変化するのに十分な温度であるが、ポリマー廃棄物の残りの成分が溶液に変化するより低い温度まで加熱して、ポリマー含有混合物を得るように配置され、前記ポリマー含有混合物が前記液体炭化水素混合物中に少なくとも1種の前記標的ポリマーを含む溶液である混合反応器と;
前記混合反応器からの前記ポリマー含有混合物を受けるのに用いられ、粒径が8オングストローム又はより小さな超微細触媒の存在下、少なくとも360℃の温度下で前記ポリマー含有混合物を接触分解し、液体及び気体炭化水素の混合物を生成する蒸発反応器と;
触媒前駆体を前記液体炭化水素混合物中に分散させ、その後前記蒸発反応器に送ることができるホモジナイザと;
前記触媒を含む前記ポリマー含有混合物を受けるのに用いられる焙焼加熱炉であって、前記触媒を含む前記ポリマー含有混合物に、前記蒸発反応器から前記焙焼加熱炉に至り、さらに前記蒸発反応器に戻る1つの循環回路が提供される焙焼加熱炉と、
を含むことを特徴とする、ポリマー廃棄物を利用して炭化水素を生産する装置。
【請求項15】
前記混合反応器から前記ポリマー含有混合物を受け、この中の不純物を分離するのに用いられるフィルタ及び/又は第1セパレータをさらに含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
混合反応器からの蒸気-気体混合物を受けるのに用いられる異性化反応器をさらに含む、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記混合反応器及び/又は前記異性化反応器からの蒸気-気体混合物を受けて、追加の加熱を行うのに用いられる熱交換器をさらに含む、請求項14または15に記載の装置。
【請求項18】
熱交換器が前記蒸発反応器及び/又は前記異性化反応器からの蒸気-気体混合物を受けて、これを冷却するように配置される、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記蒸発反応器からの蒸気-気体混合物を受け、これを画分に分離するのを確実に保証し、これにより前記液体炭化水素混合物を得る第2セパレータをさらに含み;セパレータにおける蒸気-気体混合物から分離された液体炭化水素混合物を混合反応器に送るための主回路が提供され、さらにセパレータにおける蒸気-気体混合物から分離された前記液体炭化水素混合物を前記蒸発反応器に送るための第2供給回路が提供される、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー含有混合物の接触分解によりポリマー廃棄物から炭化水素を得る方法に関し、該方法はまずポリマー廃棄物からポリマー含有混合物を生産し、該混合物は液体炭化水素混合物中に標的ポリマーを含有する溶液である。
【背景技術】
【0002】
ポリマーを浪費する量は多く、浪費したポリマーを回収して環境汚染の問題を防止することは、現在急務である。ポリマー廃棄物からさらに各種技術分野に用いることができる生成物を得ることも期待されている。
【0003】
米国特許第4175211号明細書(IPC.073,3/26、1979年11月20日公開)はポリマー廃棄物を処理するための方法を説明しており、重質サイクルガスオイルの存在下でポリマー廃棄物を溶融し、その後、分散する触媒を使用して接触分解を行うことを含む。該方法の欠点の1つは、標的ポリマー及び標的でない生成物の効果的な分離が不十分なことである。既存技術の方法のもう1つの欠点は、高温下で接触分解する必要があり、これにより工程のエネルギ需要が顕著に増加し、さらに最終的な商業的生成物の収率が低下することである。該方法のもう1つの欠点は、顆粒形式の分散触媒を接触分解反応器に直接入れると、この工程と関係する触媒の損失が避けられず、より高い触媒の消費を必要とし、さらに工程の全体的効率に通常不利に影響を及ぼすことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ポリマー廃棄物から炭化水素を得る方法を創造することである。標的ポリマー及び標的でない生成物を効果的に分離し、さらに低温下で接触分解を行うことができる触媒を使用することにより、該方法は工程のエネルギに対する要求を顕著に低下させ、最終的な商業的生成物の生産量を高めることができる。
【0006】
本発明の技術的成果の1つは、ポリマー廃棄物に含まれるポリマーを転化させることにより、ポリマー廃棄物から炭化水素を高効率で得る方法を提供することである。
【0007】
本発明のもう1つの技術的成果は、ポリマー含有混合物の接触分解過程で触媒を高効率で使用することを確実に保証することである。
【0008】
本発明のもう1つの技術的成果は、ポリマー廃棄物から効果的に標的ポリマーを精製/選択することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のポリマー廃棄物から炭化水素を得る方法に基づいて、この課題を解決し、さらに技術的成果を得た。
【0010】
本発明はポリマー廃棄物を利用して炭化水素を生産する方法に関する。以下の
A)液体炭化水素混合物の存在下で、予め粉砕したポリマー廃棄物を、少なくとも1種の標的ポリマーがポリマー廃棄物から溶液に変化するのに十分な温度であるが、ポリマー廃棄物における残りの成分が溶液に変化するより低い転化温度まで加熱して、ポリマー含有混合物を得、該混合物は液体炭化水素混合物中に少なくとも1種の標的ポリマーを含有する溶液である;
B)超微細触媒の存在下、少なくとも360℃の温度下でポリマー含有混合物を接触分解して、液体及び気体炭化水素の混合物を得る;を含む。
【0011】
1つの実施案において、標的ポリマーはポリオレフィンである方法を提供している。
【0012】
1つの実施案において、ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリマー廃棄物画分が液相に変化する温度は200~250℃の範囲内に保持される方法を提供している。
【0013】
1つの実施案において、溶解しない不純物はフッ素及び窒素化合物を含んでいる方法を提供している。
【0014】
1つの実施案において、ポリマー含有混合物を接触分解段階に輸送する前にろ過及び/又は分離し、液体炭化水素混合物における機械的不純物及び溶解しない不純物を含む残りのポリマー廃棄物画分を分離することをさらに含む方法を提供している。
【0015】
1つの実施案において、触媒はホモジナイザ中で触媒前駆体を液体炭化水素混合物中に分散して生産されるものであり、前駆体は有機金属化合物である方法を提供している。
【0016】
1つの実施案において、液体炭化水素混合物は工程B)の液体炭化水素混合物でよい。
【0017】
1つの実施案において、有機金属化合物はC16-C32カルボン酸の金属含有塩及びその混合物からなる群から選択され、金属はニッケル、コバルト、モリブデンからなる群から選択される方法を提供している。
【0018】
1つの実施案において、触媒の粒径が8オングストロームより小さい方法を提供している。
【0019】
1つの実施案において、ポリオレフィンがポリエチレン又はポリプロピレンである方法を提供している。
【0020】
1つの実施案において、提供する方法は、工程(b)で生成された少なくとも一部の液体炭化水素混合物を工程(a)に戻す工程(c)をさらに含む。
【0021】
1つの実施案において、工程b)において、触媒を添加したポリマー含有混合物に循環回路が提供されている方法を提供している。
【0022】
本発明は、ポリマー廃棄物から標的ポリマーを分離する方法も提供し、以下の工程を含む。
A)粉砕したポリマー廃棄物を提供する。
B)液体炭化水素混合物が存在する状況下、粉砕したポリマー廃棄物を、少なくとも1種の標的ポリマーがポリマー廃棄物から溶液に変化するのに十分な温度であるが、ポリマー廃棄物における残りの成分が溶液に変化するより低い転化温度まで加熱し、これによりポリマー含有混合物を得、該混合物は液体炭化水素混合物中に少なくとも1種の標的ポリマーを含有する液体である。
【0023】
1つの実施案において、液体炭化水素混合物はポリマー含有混合物を接触分解することにより得られるものである方法を提供している。
【0024】
1つの実施案において、ポリマー含有混合物をろ過及び/又は分離し、ここから液体炭化水素混合物における機械的不純物及び溶解しない不純物を含む残りのポリマー廃棄物画分を分離することをさらに含む方法を提供している。
【0025】
1つの実施案において、液体炭化水素混合物はポリマー含有混合物を接触分解して生成される重質炭化水素画分である方法を提供している。
【0026】
1つの実施案において、標的ポリマーはポリオレフィンである方法を提供している。
【0027】
このほか、本発明はポリマー廃棄物から得られたポリマー含有混合物の接触分解方法も提供している。該方法は以下の工程を含む。
A)少なくとも1種のポリマーを含むポリマー含有混合物を提供する。
B)少なくとも360℃の温度下、超微細触媒の存在下でポリマー含有混合物の接触分解を行い、液体及び気体炭化水素混合物を得る。
このほか、触媒はホモジナイザ中で液体炭化水素混合物中に触媒前駆体を分散させることにより得られる。
【0028】
1つの実施案において、液体炭化水素混合物はポリマー含有混合物の接触分解により得られるものである方法を提供している。
【0029】
1つの実施案において、液体炭化水素混合物はポリマー含有混合物の接触分解により生成された重質炭化水素画分である方法を提供している。
【0030】
1つの実施案において、ポリマー含有混合物及び導入する触媒を再循環させるための1つの循環回路をさらに含む方法を提供している。
【0031】
このほか、本発明はさらにポリマー廃棄物を利用して炭化水素を生産する装置に関し、
液体炭化水素混合物が存在する状況下、予め粉砕したポリマー廃棄物を、少なくとも1種の標的ポリマーがポリマー廃棄物から溶液に変化するのに十分な温度であるが、ポリマー廃棄物の残りの成分が溶液に変化するより低い温度まで加熱して、ポリマー含有混合物を得るように配置され、該混合物が液体炭化水素混合物中に少なくとも1種の標的ポリマーを含有する溶液である1つの混合反応器と、
混合反応器からポリマー含有混合物を受けるのに用いられ、超分散触媒の存在下、少なくとも360℃の温度下で、ポリマー含有混合物の接触分解を行い、液体及び気体炭化水素混合物を生成する蒸発反応器と、
触媒の前駆体を液体炭化水素混合物中に分散させて、蒸発反応器に供給することができる1つのホモジナイザと、を含む。
【0032】
1つの実施案において、混合反応器からポリマー含有混合物を受けて、この中の不純物を分離するように配置されるフィルタ及び/又は第1セパレータをさらに含む装置を提供している。
【0033】
1つの実施案において、提供する設備は、混合反応器からポリマー含有混合物を受けて、追加の加熱を行うのに用いられる1つの熱交換機をさらに含む。熱交換器は蒸発反応器から蒸気-気体混合物を受けて、その冷却を確実に保証するのに用いられる。
【0034】
1つの実施案において、他にも火炎加熱炉を含む装置を提供している。該火炎加熱炉は、導入する触媒を有するポリマー含有混合物を受けるように配置される。該装置は該導入する触媒を有する該ポリマー含有混合物に、該蒸発反応器から該加熱炉に至り、さらに該蒸発反応器まで戻る再循環回路が提供される。
【0035】
1つの実施案に基づくと、第2セパレータをさらに含む設備を提供している。該セパレータは蒸発反応器から蒸気-気体混合物を受け、さらにこれを画分に分離して液体炭化水素混合物を得ることができる。該設備は、セパレータにおける蒸気-気体混合物から分離された液体炭化水素混合物を反応器-混合器に送るための第1回路と、セパレータにおける蒸気-気体混合物から分離された液体炭化水素混合物を蒸発反応器に送るための第2供給回路とが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明のポリマー廃棄物を利用して炭化水素を生産する方法における簡略化したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の方法に用いる原料は、各種タイプ及び用途のポリマー廃棄物であり、限定されないが、各種用途のポリマー容器、各種製品の包装、並びにその他の家庭的及び工業的ポリマー廃棄物を含む。
【0038】
原材料は初期浄化により、大きな塊の有害成分及び不純物を除去し、その後粉砕機中で粉砕する。このほか、粉砕後の原材料は細かな金属不純物を除去する必要もあり、例えば磁気分離機などの分離機で分離する。その後プレス機及び破砕機で処理して、例えば回転ドラム式カスケード乾燥機で乾燥させる。熱風で水分を除去し、さらに比較的低い水分含量、特に5%(重量に基づく)を超えず、最も好ましくは3%(重量に基づく)より低いことを確実に保証する。
【0039】
上記処理を行った原料は、例えばスクリュコンベアで生産ライン11に沿って少なくとも1つの反応器1、特に混合反応器1に輸送される。上記方法の工程は当業者に熟知及び理解されているため、ここでは詳しく述べない。
【0040】
反応器1において、ポリマー原料は液体炭化水素混合物中で溶解され、ポリマー含有混合物が生成される。該混合物は、液体炭化水素混合物中に少なくとも1種の標的ポリマーを含む溶液である。
【0041】
特に、液体炭化水素混合物の存在下で、予め粉砕したポリマー廃棄物を、少なくとも1種の標的ポリマーがポリマー廃棄物から溶液に変化するのを十分に許容する温度であるが、ポリマー廃棄物の残りの成分(標的ポリマー以外のポリマーを含む)が溶液に変化するより低い温度まで加熱し、液体混合物中に少なくとも1種の標的ポリマーを含む溶液であるポリマー含有混合物を得る。非制限的な実施案において、反応器中を200~250℃の温度で加熱する。反応器中の加熱温度範囲は、標的ポリマー及びポリマー廃棄物の性質及び組成に基づいて変化することができることを理解するべきである。
【0042】
本発明の発明者は、液体炭化水素混合物中でポリマー廃棄物を溶解し、液体炭化水素混合物中に標的ポリマーを含む溶液であるポリマー含有混合物を提供し、選択的に少なくとも1種の標的ポリマーを液体炭化水素混合物中に溶解することにより、標的ポリマーを選択することができることを発見し、これにより標的でない成分から原料を精製することを確実に保証する。この種の温度を使用して、少なくとも1種の標的ポリマーを選択することを確実に保証することもできる。
【0043】
一般的に、本発明に基づくと、ポリマー含有混合物は、基本的に少なくとも1種の標的ポリマー及び液体炭化水素混合物からなる溶液である。特に、ポリマー含有混合物は溶解物でよく、その粘度は液体炭化水素混合物を添加することにより低下する。液体炭化水素混合物の添加により、ポンプを用いてポリマー含有混合物を輸送することができ、その後機械的にろ過して、不必要な不純物、例えば紙、ボール紙、金属顆粒及びこれらの条件下で溶解しないその他のポリマー顆粒を分離する。
【0044】
一般的に、本発明に基づくと、標的ポリマーはポリオレフィン、特にポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの混合物である。しかしながら、本発明はこれらのポリマーに限定されず、ポリマー廃棄物の性質及び組成に基づいて、その他のポリオレフィンポリマー、例えばポリブチレンを使用することもできる。一般的に、本発明に基づくと、液体炭化水素混合物は、ポリマー含有混合物を接触分解することにより得られる重質炭化水素画分である。本発明の工程の開始段階において、単一溶剤を液体炭化水素混合物として使用することができ、例えば軽油、特に低硫黄軽油である。
【0045】
火炎加熱炉3中で加熱される冷却剤の循環により、反応器1中の温度は必要な値に達して保持される。
【0046】
反応器1中で標的ポリマーを選択して、ポリマー含有混合物の純度を高めた後、ポリマー含有混合物を管路14に沿ってフィルタ4及び/又はセパレータ(図示せず)に送ってろ過し、不必要な不純物を分離する。
【0047】
ろ過後、反応器1中で生成されたポリマー含有混合物を、ポンプ(図示せず)などにより管路16及び12に沿って蒸発反応器2中に輸送し、接触分解を行う。
【0048】
蒸発反応器2中で、ポリマー含有混合物は接触分解される。
【0049】
ポリマー含有混合物と共に触媒を蒸発反応器2に入れる。本発明に基づくと、触媒はK触媒の前駆体であり、ホモジナイザ5により、液体炭化水素混合物中で超微細状態に分散される。以下、本発明において、超微細状態は粒径が100ナノメートルより小さな顆粒を指す。本技術分野で使用するこの用語は、例えばオープンソースのウィキペディアに由来する。
【0050】
触媒前駆体K及び液体炭化水素混合物の混合物は溶液、ゾル又は分散体でよい。液体炭化水素混合物中の触媒前駆体Kは蒸発反応器2中で高温に暴露されたとき、触媒顆粒に転化し、さらには接触分解過程に関与する。
【0051】
発明者は、この種の方法を使用して触媒が得られ、これを反応器に送り、触媒を直接反応器に送ることによる触媒の損失を防止することができることを発見した。他に、ホモジナイザ5を使用して正常な溶解過程で形成されるミセルをほとんど分解することができ、反対に触媒前駆体Kを熱分解した後に形成される触媒顆粒のサイズを8オングストローム以下、特に1~8オングストロームまで小さくすることができる。この種の小さなサイズの触媒顆粒を使用して、触媒活性部位の数量を増加させることができ、触媒の使用寿命を延長させる。これは、この種の顆粒の初期段階における凝集速度がかなり遅いためである。
【0052】
超分散触媒を使用し、触媒顆粒を基本的に反応器の動作容積全体に行き渡らせることができる。発明者は、これにより接触分解過程を低温下で行うことができることを発見したが、既存技術に基づくと、低温下では接触分解を行うことができないか、又は効率が極めて低い。
【0053】
本発明に基づくと、ポリマー含有混合物の接触分解は360~425℃の温度下、最も好ましくは400~425℃の温度下で行う。1つの非制限的な実施案において、接触分解反応の生成物はパラフィン、イソパラフィン、芳香族化合物、シクロアルカン、アルケンを含む。特に、接触分解反応の生成物の組成は30~50Mac.%のパラフィン、5~10Mac.%のイソパラフィン、20~30Mac.%の芳香族化合物、5~10Mac.%のシクロアルカン、5~10Mac.%のアルケンを含む。しかしながら、当業者は接触分解反応の生成物がポリマー廃棄物の性質及び組成、並びに工程の温度システムによって決まることがわかる。
【0054】
一般的に、本発明に基づくと、触媒を調製するのに用いられる液体炭化水素混合物は、ポリマー含有混合物を接触分解することにより得られる重質炭化水素画分である。しかし、その他の適した液体炭化水素、例えば軽油、特に低硫黄軽油を使用することもできる。
【0055】
蒸発反応器2の加熱は火炎加熱炉8により行うことができる。反応器1中で生成されたポリマー含有混合物は、焙焼炉8を介して蒸発反応器2に入り、加熱を行うことができる。当業者は、本分野で既知のその他の方法、例えば熱交換器により混合物を加熱することができることがわかる。焙焼炉8の後、ポリマー含有混合物は、例えば管路を通過して蒸発反応器2に導入され、触媒前駆体Kの混合物はここから管路に添加され、蒸発反応器2に送られる。触媒前駆体Kの混合物を蒸発反応器2に直接送ることもできる。蒸発反応器2中で接触分解処理され、さらに触媒顆粒を含有するポリマー混合物は焙焼炉8に送ることができ、その後循環回路を備えた管路28(該回路は閉じていてよい)を通過して蒸発反応器2に送られる。このほか、この種の再循環回路を使用した溶融体を過熱する案を採用し、混合物が焙焼炉8中で顕著に過熱されるのを防止することができ、さらにその他の案を採用して蒸発反応器2における立方体の残渣の温度を保持する必要はない。このほか、触媒顆粒は相当大きな粒度に達すれば、立方体の残渣を伴って蒸発反応器2から分離されることができる。従って、反応器2に1つの循環回路を設けることにより、触媒が凝集し、同じ触媒顆粒がその寿命の間に繰り返し焙焼炉8及び蒸発反応器2を通過する。従って、触媒の効率及び工程の効率を高めることができる。
【0056】
一般的に、触媒の前駆体Kは有機金属化合物、特にC16-C32カルボン酸の金属含有塩又はその混合物であり、金属はニッケル、コバルト、モリブデンからなる群から選択される。
【0057】
ポリマー廃棄物の溶解及び触媒の生産に用いられる液体炭化水素混合物は、ポリマー含有混合物を接触分解することにより得られる重質炭化水素画分でよく、該混合物の沸点は200℃、特に225℃より高く、初留点は300℃より低い。1つの非制限的な実施案において、ポリマー含有混合物を接触分解して得られる蒸気混合物は、少なくとも1つのセパレータ7により、管路27に沿って気相、軽質液体画分及び重質液体画分に分離される。これと同時に、一部の重質画分は管路(回路)71及び72に沿って上記用途の技術工程中に戻ることができ、残りは軽質液体画分と混合して炭化水素類の液体が得られ、すなわちさらに使用する生成物が提供される。1つの非制限的な実施案において、ポリマー含有混合物を接触分解して得られる蒸気-気体混合物は、管路26’に沿ってもう1つの2’異性化反応器に入ることができ、該反応器で触媒工程を行い、炭化水素構造を異性化成分に異性化する、及び/又は普通のパラフィンを脱パラフィン(破壊)する。2’異性化反応器は、ZSM型、MFI型及び類似の多孔不均一系触媒を備えた触媒反応器でよい。
【0058】
本発明の発明者は、追加の2’異性化反応器を使用して得られる生成物の性能をさらに高めることができ、さらにポリマー廃棄物から炭化水素を高効率で生産する助けになることを発見した。1つの非制限的な実施案において、ポリマー含有混合物から接触分解により生成され、異性化反応器2’で異性化された蒸気-気体混合物は、管路26を通過して熱交換器6に送られて熱交換することができる。反応器1からのポリマー含有混合物も熱交換器6に送られ、熱交換過程において、それぞれポリマー含有混合物に対して追加の加熱を行う。さらに蒸気-気体混合物を冷却して、単一画分に分離する効果を改善し、このように工程の効率をさらに高めることができる。異性化反応器2’がないか、又はこれと並列接続される状況で、ポリマー含有混合物が接触分解して生成された蒸気-気体混合物を直接熱交換器6に送ることもできる。
【0059】
本発明の発明者は、ポリオレフィン接触分解の最適条件が、温度380~425℃、圧力-0.1~5メガパスカル、最も好ましくは-0.1~0.5メガパスカル、触媒濃度0.005~0.02%Mac.(金属)であることも発見した。これらの条件は工程の効率をさらに高めることができる。
【0060】
1つの非制限的な実施案において、ポリマー含有混合物、特にポリオレフィン含有混合物を接触分解することにより、メタンから沸点が400℃を超える各種組成の炭化水素までを得ることができ、アルケン、パラフィン、芳香族化合物及び水素ガス、一酸化炭素及び二酸化炭素である。1つの非制限的な実施案において、画分の間の比率は、気体画分が5~15%Mac.、低沸点画分nk-225℃が20~30%Mac.、高沸点画分150-kk℃が50~80%Mac.である。
【0061】
以下は、本発明に基づくポリマー廃棄物から炭化水素を得る実施例である。
【実施例】
【0062】
ポリマーを含む原料を混合反応器に入れ、さらに液体炭化水素混合物中にポリマー原料を含む溶液を添加して溶解する。消化反応器の温度は200~250℃の間に保持される。粉砕したポリオレフィン原料は連続的に又は何回かに分けて混合反応器に入れられ、ポリオレフィンが液体炭化水素混合物中で完全に溶解すると、ろ過に送られ不純物が分離される。原料消費量は0.5時間-1である。ポリエチレン(PE)を含有するポリマー廃棄物は原料として用いられる。その後、得られた溶液は蒸発反応器に送られて接触分解を行う。接触分解の条件及び結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
nk-225℃--沸騰終了温度が225℃の画分
150kk℃--沸騰の開始が150℃の画分
【0064】
上記実例は、本発明の方法を使用することにより、効果的な方法を提供することができ、最適な方式で触媒を使用し、ポリマー廃棄物から炭化水素を得る(高ポリエチレン転化率)ことを明示している。
【国際調査報告】