(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】改良された低EMI変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 30/12 20060101AFI20240905BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01F30/12 A
H01F30/12 C
H01F30/12 H
H01F30/10 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518621
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 NO2022050199
(87)【国際公開番号】W WO2023048575
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524111536
【氏名又は名称】イーゾーン エナジー アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フリスヴォルド アーランド
(72)【発明者】
【氏名】スヴァネス エリック ケーランド
(57)【要約】
本発明は、i)一次コイル及び二次コイルをそれぞれ有する磁化可能なコア(110)と、ii)送電網(900)の外部接地端子(999)に電気的接続するための接地端子(PE)と、iii)絶縁変圧器(100e1)の内部の位置に配置される物理的電気的接地ノード(175)であって接地端子(PE、199)に電気的接続される物理的電気的接地ノード(175)と、を備える変圧器(100e1)に関する。変圧器(100e1)はさらに、iv)変圧器(100e1)内において動作上の使用中に磁界が蓄積し得る別々の位置にそれぞれ配置される、少なくとも2つの導電性ループ(CL1..CL6)と、v)特定の順序及びパターンに従って、導電性ループ(CL1..CL6)のサブセット(SS)を物理的電気的接地ノード(175)に、順次に、一時的に、及び選択的に電気的結合するように構成される切替回路(801)と、を備える。本発明は、規格の適合を全く必要とせずに、はるかにEMIの影響を受けにくい絶縁型変圧器を規定する。さらに、変圧器は電磁界の調整や較正が全く必要ない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器(100e1)であって、
磁化可能なコア(110)と、
前記磁化可能なコア(110)の周りに設けられた少なくとも1つの一次コイル(120、120-1..120-3)及び少なくとも1つの二次コイル(130、130-1..130-3)と、
外部接地端子(999)に電気的接続するための接地端子(PE)と、
前記変圧器(100e1)の内部の位置に配置される物理的電気的接地ノード(175)であって、前記接地端子(PE、199)に電気的接続される物理的電気的接地ノード(175)と、を備え、
前記変圧器(100e1)はさらに、
前記変圧器(100e1)内において動作上の使用中に磁界が蓄積し得る別々の位置にそれぞれ配置される、少なくとも2つの導電性ループ(CL1..CL6)と、
特定の順序及びパターンに従って、前記導電性ループ(CL1..CL6)のサブセット(SS)を前記物理的電気的接地ノード(175)に、順次に、一時的に、及び選択的に電気的結合するように構成される切替回路(801)と、を備える、変圧器(100e1)。
【請求項2】
前記少なくとも2つの導電性ループ(CL1..CL6)は、少なくとも3つの導電性ループを備える、請求項1記載の変圧器(100e1)。
【請求項3】
前記少なくとも2つの導電性ループ(CL1..CL6)は、少なくとも6つの導電性ループを備える、請求項2記載の変圧器(100e1)。
【請求項4】
最少の2つの導電性ループ(CL1..CL6)は、前記コイル(120、120-1..120-3、130、130-1..130-3)の間の空間に配置される、先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器(100e1)。
【請求項5】
前記少なくとも2つの導電性ループ(CL1..CL6)は、磁界を透過可能であり且つ電気絶縁性を示す材料で薄く被覆されている1つの平板(800-1、800-2)又は複数の平板(800-1、800-2)に統合されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器(100e1)。
【請求項6】
前記導電性ループ(CL1..CL6)の前記サブセット(SS)は、導電性ループ(CL1..CL6)の対を構成する、先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器(100e1)。
【請求項7】
前記特定の順序及びパターンは、実質的に全ての導電性ループ(CL1..CL6)に及び、先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器(100e1)。
【請求項8】
前記特定の順序及びパターンは、導電性ループ(CL1..CL6)のサブセット(SS)を選択する所定の順番を構成する、先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器(100e1)。
【請求項9】
前記特定の順序及びパターンは、導電性ループ(CL1..CL6)のサブセット(SS)を選択する無作為の順番を構成する、先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器(100e1)。
【請求項10】
前記磁化可能なコア(110)は、前記変圧器(100e1)の全ての外部アクセス可能部品からフローティングしていて、且つ、電気的に絶縁されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器(100e1)。
【請求項11】
前記変圧器(100e1)は、三相変圧器(100e1)を形成するために、3組のコイル(120-1..120-3、130-1..130-3)を備え、各組は少なくとも1つの一次コイル(120-1..120-3)及び少なくとも1つの二次コイル(130-1..130-3)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器(100e1)。
【請求項12】
前記磁化可能なコア(110)は、少なくとも3つの脚(110l1..110l3)を備え、一次コイル及び二次コイルの各対に対して少なくとも1つの脚を備える、請求項11記載の変圧器(100e1)。
【請求項13】
前記変圧器(100e1)は、さらに、前記磁化可能なコア(110)と前記それぞれのコイル(120-1..120-3、130-1..130-2)と前記少なくとも2つの導電性ループ(CL1..CL6)とが配置されるファラデーケージ(150)を備え、前記ファラデーケージ(150)は前記物理的電気的接地ノード(175)と電気的接続される、先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器(100e1)。
【請求項14】
電力システム(1000)であって、
送電網(900)と結合するための端子(L1、L2、L3)と、
外部接地端子を構成するための専用のアース(999)と、
全ての必要なケーブル、電気接点、及びプラグを備える電力供給ネットワークと、
先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器(100e1)と、を備え、
前記変圧器(100e1)の前記入力端子は前記電力供給ネットワークに電気的接続され、前記変圧器(100e1)の前記接地端子(PE)は前記専用のアース(999)に電気的接続される、電力システム(1000)。
【請求項15】
電気機器又は電子機器(1)の性能を向上させる方法であって、
少なくとも2つの導電性ループ(CL1..CL3)を、前記機器(1)内において、前記機器(1)を動作上の使用中に磁界が蓄積し得る別々の位置に配置する工程と、
特定の順序及びパターンに従って、前記導電性ループ(CL1..CL3)のサブセットを物理的電気的接地ノード(175)に順次に、一時的に、及び選択的に電気的結合する工程と、を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、磁化可能なコアと、磁化可能なコアの周りに設けられる少なくとも1つの一次コイル及び少なくとも1つの二次コイルと、送電網の外部接地端子に電気的接続するための接地端子と、変圧器の内部の位置に配置される物理的電気的接地ノードであって接地端子に電気的接続される物理的電気的接地ノードと、を備える変圧器に関する。本発明はさらに、このような変圧器を備える電力システムに関する。本発明はまた、電気機器または電子機器の性能を向上させる方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
絶縁型変圧器は、一方の回路から他方の回路へと流れる信号のDC成分の伝達を阻止するが、信号のAC成分は通過させる。一次巻線と二次巻線との比が1:1である変圧器は、通電されている導体と接地との間における電気ショックから二次回路や個人を保護するために使用されることが多い。適切に設計されている絶縁型変圧器は、接地ループにより生じる干渉を阻止する。静電シールドを有する絶縁型変圧器は、コンピュータ、医療機器、または実験器具といった干渉を受けやすい機器の電力供給に使用される。
【0003】
ファラデーケージは一般的に電界を阻止するために用いられる。外部電界によって生じる(ケージを構成している)導電性材料の内部の電荷は、ケージ内部においてその電界の影響を打ち消すように分布する。この現象は、外部からの無線周波数干渉(RFI)から、ケージ内にある干渉を受けやすい電子機器を保護するために利用される。ファラデーケージはまた、RFIそのものを発生させる機器、例えば無線送信機を囲い込むためにも使用される。よってファラデーケージは、電波がケージの外側にある近くの機器に干渉することを抑制する。電磁界が変化している場合、その変化が速いほど(つまり周波数が高いほど)、磁界を透過させにくい材料が良いということになる。このような場合での遮蔽は、ケージに用いられている導電性材料の導電率や磁気特性、及びその厚さにも依存する。
【0004】
上述した既知の絶縁型変圧器の問題は、絶縁型変圧器の接続に関する国際規格に従って使用した場合でも、多数の電磁障害(EMI)を被ることである。ノイズレベルが規定された最大許容レベルよりも一桁以上も大きい値になり得る。そのため、絶縁型変圧器のさらなる改良に対して明確な必要性がある。最も関連する国際規格は、UL、CSA、及びNEMA規格(NEMA ST-20)を参照している「2011 NEC」である。
【0005】
本発明の発明者は、以前にWO2019/013642において、i)磁心と少なくとも1つの一次コイルと少なくとも1つの二次コイルとを備えるファラデーケージと、ii)入力ワイヤを介して少なくとも1つの一次コイルに接続されている入力端子と、iii)出力ワイヤを介して少なくとも1つの二次コイルに接続されている出力端子と、iv)ファラデーケージに接続するための入力接地端子と、ファラデーケージに接続されている出力接地端子であって、絶縁型変圧器に接続される別の回路にさらに接続するための出力接地端子と、を備える低EMI変圧器を提案した。WO2019/013642において、絶縁型変圧器はさらに、v)外部のクリーン接地を受け取るためのクリーン接地入力端子と、vi)別の回路の別のクリーン接地入力端子に接続するためのクリーン接地出力端子と、vii)ファラデーケージ内部において磁束と電界が最低値、好ましくはゼロに近い位置に配置される物理的電気的ノードと、を備える。クリーン接地入力端子は絶縁型変圧器へと送電を行い、第1電気的接続を介して物理的電気的ノードに接続される。さらに、物理的電気的ノードは、第2電気的接続を介して、クリーン接地出力端子にさらに電気的に接続される。
【0006】
WO2019/013642に記載の変圧器の重要な特徴は、変圧器には、クリーン接地を受けるための別個の(追加の)入力端子と、別の回路にクリーン接地を供給するための別個の(追加の)出力端子とが設けられることである。一方でこの従前の先行技術の解決策では、全ての接地が互いに接続されている、つまり別個の低EMI接地は存在しない。(通常の)入力接地端子はファラデーケージに接続され、これが他の回路の他のファラデーケージにさらに接続されてもよい。このようなことは従前の先行技術の解決策の事例でもある。クリーン接地入力端子は、物理的電気的ノードに供給され、そこからさらにクリーン接地出力端子に向かって供給される。発明者は、この物理的電気的ノードの配置が非常に重要である、つまり、磁束と電界が最低値である場所にノードを配置しなければならないことを発見した。さらに、物理的電気的ノードの理想的な位置は変圧器の負荷によっても決まる。負荷は内部に発生する電界と磁界を決定するからである。さらに、クリーン接地出力端子は、動作中に、別の回路の別のクリーン接地入力に供給される。第1電気的接続及び第2電気的接続は、好ましくは、例えば、遮蔽されたワイヤを用いることによって、かつ、ワイヤを他の信号伝送導体と並行して通すことによって、これらの接続においてEMIの発生が最小になるように配置される。また、第1及び第2電気的接続は、低周波数だけではなく高周波数でも低インピーダンスを有していなくてはならない。これらの技術的対策を講じることにより、WO2019/013642に記載の変圧器は、別の回路で発生したEMIの変圧器への再供給を、別の回路の供給電圧内だけでなく別の回路に接続されている回路や構成要素内にも多数のノイズを生じさせる高インピーダンスの接地接続を介する代わりに、低インピーダンスのクリーン接地接続を介して行う変圧器を規定している。上述の特徴を組み合わせた結果が、従前の先行技術で既知の絶縁変圧器よりもはるかにEMIの影響を受けにくい絶縁型変圧器である。
【0007】
しかし、WO2019/013642号に記載の変圧器の起こり得る難点は、絶縁型変圧器の接続に関する国際規格の適用を必要とすることである。これにより、この素晴らしい製品の商品化に壁をもたらす、または少なくとも遅れをもたらすおそれがある。
【0008】
また、WO2019/013642に記載の変圧器の別の難点は、ある程度の電磁界の較正と、調整に依存した適用とを必要とし、かつ、電磁気についての多くの知見を必要とすることである。
【0009】
したがって、これらの問題を解決するために、低EMI変圧器をさらに開発する必要がある。
[発明の概要]
本発明は、先行技術の難点のうちの少なくとも1つを改善または低減すること、あるいは少なくとも先行技術の有用な代替策を提供することを目的とする。
【0010】
本目的は、以下の記載及びそれに続く請求項で明記されている特徴によって達成される。
本発明は独立請求項によって規定される。従属請求項は本発明の有利な実施形態を規定する。
【0011】
第1態様において、本発明は変圧器に関し、変圧器は、
磁化可能なコアと
磁化可能なコアの周りに設けられた少なくとも1つの一次コイル及び少なくとも1つの二次コイルと、
送電網の外部接地端子に電気的接続するための接地端子と、
変圧器の内部の位置に配置される物理的電気的接地ノードであって、接地端子に電気的接続される物理的電気的接地ノードと、を備える。
【0012】
変圧器はさらに、
変圧器内において動作上の使用中に磁界が蓄積し得る別々の位置にそれぞれ配置される、少なくとも2つの導電性ループと、
特定の順序及びパターンに従って、導電性ループのサブセットを物理的電気的接地ノードと順次に、一時的に、及び選択的に電気的結合するように構成される切替回路と、を備える。
【0013】
本発明に係る変圧器の効果は以下の通りである。
本発明の重要な特徴として、本発明は変圧器を送電網及び負荷に電気的接続するための国際規格の適用を必要としないことに留意すべきである。本変圧器は、外側では、従来の入力端子と出力端子、及び接地端子を有する。しかし本変圧器は、内側では、下記で説明する特別な特徴をいくつか有する。
【0014】
第1の特徴は、変圧器内において動作上の使用中に磁界が蓄積し得る別々の位置にそれぞれ配置される、少なくとも2つの導電性ループを設けることに関する。種々の実施形態が示すように、このような配置に適した異なる位置が存在するが、重要なのは、導電性ループが、磁界の蓄積が予想される場所、つまり実際にEMIが蓄積すると予想される場所に意図的に配置されるということである。これは、磁界が最低と決定または予測された場所に意図的に配置される、WO2019/013642の物理的電気的ノードの配置とは反対である。
【0015】
第2の特徴は、所定の順序及びパターンに従って、導電性ループのサブセットを物理的電気的接地ノードと順次に、一時的に、及び選択的に電気的結合するために構成された切替回路を設けることに関する。最も基本的な形態である2つの導電性ループが存在する場合において、これは、これらのループが交互に物理的電気的接地ノードと電気的接続されることを意味している。本発明者は次のように洞察した。この導電性ループのサブセットを物理的電気的接地ノードと順次に、一時的に、及び選択的に電気的結合することにより、EMIがループによって効果的に「捕捉」され、その後にそれぞれのループが物理的電気的接地ノードに結合された時に物理的電気的接地ノードへと追い出される。このようにして、EMIが蓄積することが抑制され、電気的性能が向上する。別の言い方をすれば、変圧器は多くの磁界を蓄積させる機会を得られない。なぜなら、こういった磁界は導電性ループによって捕捉され、いかなる誘導電流(EMI)も物理的電気的接地ノードへと追い出されるからである。本発明者は、これがEMIを平均化することに関係するだけでなく、熱も低減し、それによって変圧器の力率を向上させることを発見した。これまでのところ約0.9と高い力率が達成されているが、本発明を用いない場合は、この力率は約0.4まで減少した。国際規格IEC61000で最近公開された絶縁変圧器の要件である、8%以下の全高調波歪(THD)を達成することも可能と考えられる。
【0016】
本発明の別の大きな効果は、物理的電気的ノードの配置位置がもはやそれほど重要ではないこと、つまり、磁束と電界が少々存在する位置に配置してもよいことである。
【0017】
非常に高い力率を有することに加えて、本発明に係る変圧器はまた、もはや電磁界の較正や調整を必要としないという優れた利点も有する。本変圧器は、たとえ負荷が適切な平衡状態ではなくても、負荷に関係なく効果的に自己較正する。さらに、変圧器は調整や較正のための可動部品を全く備えていない。このことは、導電性ループを用いてEMIを捕捉して物理的電気的ノードへと追い出すことによって得られた、本発明の大きな利点である。WO2019/013642において行われていたように、物理的電気的接地ノードの位置の操作によってEMIを最小化することに代わり、本発明は蓄積されるEMIを許容し、EMIを平均化/徐々に消失するようにこのノードへと追いだすだけである。これは非常に画期的な考えである。
【0018】
所望の効果に達するために、ループを物理的電気的接地ノードと常時接続し続ける必要はない。どのループも物理的電気的接地ノードと接続されていない時間間隔が数間隔、実際には長時間存在することもある。それぞれの順序及びパターンの多くの変形例が可能である。本発明者は、多くの実験を行い、最良の実用的な実施形態を発見した。
【0019】
本発明の理解を容易にするために、本明細書を通じて使用される1つ以上の表現を以下においてさらに定義する。
「コイル」という語を用いる場合は常に、インダクタンスが発生するように形成された導体の巻線(少なくとも1つ)であると解釈される。
【0020】
「導電性ループ」という語を用いる場合は常に、インダクタンスが発生するように形成された導体の巻線(少なくとも1つ)であると解釈される。
「ファラデーケージ」という語を用いる場合は常に、電磁界を阻止するために用いられる囲いとして解釈される。導電性材料の連続的な被覆によって、またはファラデーケージの場合にはこのような材料のメッシュによって、ファラデーシールドが形成されてもよい。ファラデーケージは、1836年にファラデーケージを発明したイギリスの科学者マイケル・ファラデーにちなんで名付けられた。
【0021】
本発明に係る変圧器のある実施形態において、少なくとも2つの導電性ループは少なくとも3つの導電性ループを備える。配置されるループが多いほど、より良好なEMIの平均化が得られるだけでなく、EMIの蓄積をさらに低減できるように、ループ間の切り替えがより多く行われ得る。
【0022】
本発明に係る変圧器のある実施形態において、少なくとも2つの導電性ループは少なくとも6つの導電性ループを備える。配置されるループが多いほど、より良好なEMIの平均化が得られるだけでなく、EMIの蓄積をさらに低減できるように、ループ間の切り替えがより多く行われ得る。本実施形態は、詳細な説明の中でさらに詳しく説明する。
【0023】
本発明に係る変圧器のある実施形態において、最少の導電性ループはコイル間の空間に配置される。WO2019/013642では、物理的電気的接地ノードを磁界または電界が全くまたは少ししか存在しない位置に配置することが重要であったが、導電性ループの配置に関する限りでは、このことは本発明では文字通り問題ではない。導電性ループの配置には、コイル間の空間を便利に使用できることが見出された。変圧器においてこれらの空間は、従来では小型化のために最小化されていたが、本発明では非常に有用である。変圧器が、3つの脚とそれらの間にあるコアのそれぞれの開口部とを有し、各脚がそれぞれの一次コイルと二次コイルを有する三相変圧器である場合、これらの開口部内にあるコイル間の空間を便利に使用できる。このことは図面を参照してさらに説明する。
【0024】
本発明に係る変圧器のある実施形態において、少なくとも2つの導電性ループは、磁界を透過可能であり且つ電気絶縁性を示す材料で薄く被覆されている1つの平板又は複数の平板に統合されている。ループはコイルと同様に導電性なので、これらのループを、磁界を透過可能であり且つ電気絶縁性を示す材料で薄く被覆されている1つの平板又は複数の平板内で実装することは有利である。選択可能なこの材料の例としては、カーボン、テフロン(商標)、ゴム、プラスチック、ファイバーグラス等が挙げられる。
【0025】
本発明に係る変圧器のある実施形態において、導電性ループのサブセットは導電性ループの対を構成する。例えば6つの導電性ループが存在する場合では、第1ループを第4ループと、第2ループを第5ループと、第3ループを第6ループと、それぞれ対にしてもよい。
【0026】
本発明に係る変圧器のある実施形態において、特定の順序及びパターンは実質的に全ての導電性ループに及ぶ。全てのループを使用することは必須ではないが、こうすることで、最良の平均化効果を提供するとともに、リソースの最も効率的な使用を提供する。
【0027】
本発明に係る変圧器のある実施形態において、特定の順序及びパターンは、導電性ループのサブセットを選択する所定の順番を構成する。所定の順番は、変圧器内におけるそれぞれのループの位置に基づいて選択できる、つまり、最良の平均化が得られる順番を選択できる。
【0028】
本発明に係る変圧器のある実施形態において、特定の順序及びパターンは、導電性ループのサブセットを選択する無作為の順番を構成する。これにより、特定の用途において便利な解決策を構成できる。
【0029】
本発明に係る変圧器のある実施形態において、磁化可能なコアは、変圧器の全ての外部アクセス可能部品からフローティングしていて、且つ、電気的に絶縁されている。本発明者は、磁化可能なコアが変圧器の全ての外部アクセス可能部品からフローティングしていて、且つ、電気的に絶縁が維持されると、変圧器の性能が著しく向上することを発見した。試験より、磁化可能なコアを接地端子から切り離して電気的にフローティングしている状態に保つと、変圧器の性能が大幅に向上することが示された。これは、コアがフローティング状態である場合に接地ネットワークのインピーダンスがより適切に設定できるということで説明できる。
【0030】
本発明に係る変圧器のある実施形態は、三相変圧器を形成するために、3組のコイルを備え、各組は少なくとも1つの一次コイル及び少なくとも1つの二次コイルを備える。この実施形態群は当該技術分野において最大の適用範囲を有してもよい。しかし、本発明は三相変圧器に限定されない。
【0031】
本発明に係る絶縁変圧器のある実施形態において、磁化可能なコアは、少なくとも3つの脚を備え、一次コイル及び二次コイルからなる各対に対して少なくとも1つの脚を備える。
【0032】
本発明に係る絶縁型変圧器のある実施形態はさらに、磁化可能なコアとそれぞれのコイルと少なくとも2つの導電性ループとが配置されるファラデーケージを備え、ファラデーケージは物理的電気的接地ノードと電気的接続される。
【0033】
第2態様において、本発明は電力システムに関し、電力システムは、
送電網と結合するための端子と、
外部接地端子を構成するための専用のアースと、
全ての必要なケーブル、電気接点、及びプラグを備える電力供給ネットワークと、
先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器と、を備え、
変圧器の入力端子は電力供給ネットワークに電気的接続され、変圧器の接地端子は専用のアースに電気的接続される。
【0034】
本発明者は、変圧器の接地端子との電気的接続に、送電網で既定されているアースを使用する代わりに専用のアースを使用すると、本発明の技術的効果がさらに向上することに気づいた。こうすることで、送電網端子上のEMIや他のノイズを変圧器内に供給しないようにして、クリーン接地から変圧器が始動する状況が得られる。
【0035】
第3態様において、本発明は電気機器又は電子機器の性能を向上させる方法に関し、本方法は、
少なくとも2つの導電性ループを、機器内において、機器の動作上の使用中に磁界が蓄積し得る別々の位置に配置する工程と、
特定の順序及びパターンに従って、導電性ループのサブセットを物理的電気的接地ノードに順次に、一時的に、及び選択的に電気的結合する工程と、を備える。
【0036】
本発明は適用範囲が(絶縁)変圧器よりも大幅に広い。EMIは実質的にあらゆる電気機器や装置に発生し得る一般的な問題である。請求項15に係る方法は、これらの全ての適用を含むものとなる。導電性ループの個数、配置、並びに、ある特定の順序及びパターンに従った物理的電気的接地ノードとの順次の、一時的の、及び選択的な電気的接続に関係する変圧器の全ての実施形態は、本発明の方法の同等な実施形態を有していることは言うまでもない。
【0037】
以下において、添付図面に示された実施形態の例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】様々なタイプの先行技術の変圧器を示しており、先行技術で従前に提示されているように無電磁界区域が実現可能である場所を図示している。
【
図2】様々なタイプの先行技術の変圧器を示しており、先行技術で従前に提示されているように無電磁界区域が実現可能である場所を図示している。
【
図3】様々なタイプの先行技術の変圧器を示しており、先行技術で従前に提示されているように無電磁界区域が実現可能である場所を図示している。
【
図4】様々なタイプの先行技術の変圧器を示しており、先行技術で従前に提示されているように無電磁界区域が実現可能である場所を図示している。
【
図5】難点をまだ抱えている先行技術の低EMI変圧器を示している。
【
図6】本発明に係る改良低EMI変圧器の第1実施形態を示している。
【
図7】
図6の低EMI変圧器の他の態様を示している。
【
図8】
図6の低EMI変圧器のさらに他の態様を示している。
【
図9】本発明の低EMI変圧器の第2実施形態を、本発明のいくつかの他の態様とともに示している。
【
図10】本発明に係る改良低EMI変圧器の第3実施形態を示している。
【
図11】本発明の低EMI変圧器が好ましくはどのように送電網に接続されるかを示している。
【
図12】ループの接続に関係する本発明に関係する他の態様を示している。
【
図13】本発明に係る方法にも関係する本発明の非常に幅広い適用用途を示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[実施形態の詳細な説明]
本発明の主題の様々な例示的実施形態を以下に説明する。分かりやすくするために、本明細書では実際の実施例の全ての特徴を記載しているわけではない。このような実際の実施形態のいずれの開発においても、実施形態ごとに異なるシステム関連やビジネス関連の制約の遵守といった開発者特有の目標を達成するためには、実施形態によって特有の決定を数多く行わなければならないことは当然理解されよう。さらに、このような開発への尽力は複雑で時間がかかり得ることも理解されよう。しかし、本開示の利益を有する当業者には、これは日常的な取り組みであろう。
【0040】
次に、添付図面を参照して、本発明の主題を説明する。各図面において、種々のシステム、構造、及び機器は説明の目的のみで模式的に描かれており、当業者には周知である詳細を用いて本開示を曖昧にしないようにしている。しかしながら、添付図面は、本開示の例示を記載及び説明するために含まれている。本明細書で用いられている語句は、関連技術の当業者による当該語句の理解と一致する意味を有すると理解及び解釈されたい。本明細書での語句の一貫した用い方によって含意されることが意図される、語句の特別な定義、つまり当業者が理解するような通常の慣例的な意味とは異なる定義はない。語句が特別な意味、つまり当業者が理解する意味以外の意味を持つことが意図されている範囲においては、このような特別な定義は、本明細書では、語句に対して特別な定義を直接かつ明確に与える定義を示すようにして明記される。
【0041】
変圧器の要求がより高い場合には、通常では絶縁型変圧器が使用される。絶縁型変圧器は、一方の回路から他方の回路へと流れる信号のDC成分の伝達を阻止するが、信号のAC成分は通過させる。一次巻線と二次巻線との比が1:1である変圧器は、通電されている導体と接地との間における電撃から二次回路や個人を保護するために使用されることが多い。EMIにより生じるノイズに取り組む周知の手法は、ノイズを能動的に抑制する高価で複雑なフィルタを形成することである。
【0042】
WO2019/013642では、絶縁型変圧器を組み立てて使用するやり方により、問題は実は悪化していることが判明した。この問題は多くの場合、全ての接地端子を単純に一緒に接続しているが、このような接続がシステム内に誘導される接地ループの量を悪化させることに気づかずに用いていたために引き起こされることが判明した。言い換えると、従来の絶縁型変圧器を組み立てて使用するやり方での接地はほとんど効果的ではない、つまり、解決された問題以上に多くの問題をもたらしている。
【0043】
WO2019/013642における第1の改良は、絶縁型変圧器の設計に関する。第一段階として、この発明の絶縁型変圧器には、ファラデーケージの内部において磁束と電界がほぼゼロである位置に、別個の電気的接地ノードが設けられている。この別個の接地ノードによる主要な概念はノードを可能な限りクリーンに保つことだけでなく、この別個の接地ノードへのインピーダンスを可能な限り低く保つこともある。強い磁界及び/又は電界が存在する場所に配置されるのだとしたら、別個の電気的接地ノードが望まない信号を再び捕捉する(アンテナとして機能する)ことになろう。
【0044】
図1~4は様々なタイプの先行技術の変圧器を示しており、先行技術で従前に提示されているように無電磁界区域が実現可能である場所を図示している。
図1の変圧器は、O形コア110aを有する単相(一般に単相と呼ばれているが実際には二相)変圧器100aである。O形コア110aは、図示されているように、磁束Φを一次コイル120から二次コイル130へ、又は逆方向に誘導するためのものである。一次コイル120と二次コイル130は各々、O形コア110aのそれぞれの脚の周囲に設けられている。2つの入力相の電位差は入力電圧Vaと呼ばれ、2つの出力相の電位差は出力電圧Vbと呼ばれている。
【0045】
図2は、いわゆる三脚コア110bを有する別の単相変圧器100bを示している。一次コイル120と二次コイル130は両方とも、図示されているように、コア110bの中央脚の周囲に設けられている。
【0046】
図3はいわゆる三相変圧器100cを示している。このタイプの変圧器では、図示されているように、各相は、それぞれ、一次コイル120-1、120-2、120-3を有し、且つ、それぞれ、二次コイル130-1、130-2、130-3を有する。このようなコイルは、先行技術で一般に知られているようなスター型又はデルタ型で接続されてもよい。この図はまた、磁化可能なコア110cは5本の脚(又はリム)を有し、そのうち3本にはそれぞれのコイル120-1…120-3、130-1…130-3が設けられている様子を示している。
【0047】
図1~3には、WO2019/013642で提案されているように、想定される無電磁界区域(又は低電磁界区域)NFZが図示されている。各実施例において、無電磁界区域(又は低電磁界区域)NFZは、2つの静電シールド140-1、140-2の間(電界がほぼ無いことを意味する)且つそれぞれの磁心110a、110b、110cの外側(磁界がほぼ無いことを意味する)に形成される。
【0048】
図4は異なる実施形態の変圧器100dを図示している。コイル間にさらなる電気的接地ノードを設ける代わりに、ここでは絶縁型変圧器100dのファラデーケージ150の内部に製造されたさらなるファラデーケージ170で実装されている。図示されているように、ファラデーケージ150は個別の一次コイル120と二次コイル130を備え、一次コイル120には入力電圧Vaが供給され、二次コイル130は出力電圧Vbを供給する。このさらなるファラデーケージ170を実装することによって、変圧器自体がある程度の電界及び磁界を発生させても、いわゆる無電磁界区域NFZ(又は低電磁界区域)を確立可能である。完全に閉鎖されたファラデーケージを作製する代わりに、ファラデーケージ150内部にファラデーシールド171を実装するだけで十分であり、これによりさらなるファラデーケージ170を効果的に区画できる。無電磁界区域NFZの内部には、上述のさらなる電気的接地ノードを実装できる。
【0049】
本明細書で提示する改良低EMI変圧器に関する本発明は、
図1~4に図示されたものを含む、任意のタイプの変圧器設計又はコア設計を使用して適用されてもよい。
【0050】
図5は、難点をまだ抱えている先行技術の低EMI変圧器100eを示している。変圧器100eは、3つの入力端子Ti1、Ti2、Ti3を有する三相絶縁型変圧器(三相は従来からL1、L2、L3と呼ばれている)である。入力端子Ti1、Ti2、Ti3は、入力ワイヤi1、i2、i3を介し、第1絶縁接続箱180を介して、本実施形態ではスター型ネットワークで接続されるそれぞれの一次コイル120-1、120-2、120-3に供給される。二次コイル130-1、130-2、130-3は、出力ワイヤo1、o2、o3を介し、第2絶縁接続箱181を介して、それぞれの出力端子To1、To2、To3に接続される。二次コイル130-1、130-2、130-3もまた本実施形態ではスター型ネットワークで接続される。しかし、変圧器の入力側、出力側、又は両方のいずれにおいても、デルタ型ネットワーク等の他のタイプのネットワークが用いられてもよいことに留意しなければならない。これは全て、変圧器が結合する送電網の種類や、変圧器が発電させる必要がある送電網の種類によって決まる。
【0051】
さらに、図示されているように、上述のファラデーケージ150が存在し、ファラデーケージ150は入力接地端子GT1に(よって接地PEに)接続される。ファラデーケージ150は静電シールド140-1、140-2にも接続され、さらには、別の回路に接続されるための接地出力端子GT2に接続される。これまでのところ、
図7で述べた全ての部品は、絶縁型変圧器にとっては従来から備わっているものである。
【0052】
図5の絶縁変圧器100eを特別なものにしているのは、ファラデーシールド171によって図示されているように区画されたファラデーケージ150内部のさらなるファラデーケージ170(先に説明した無電磁界(又は低電磁界)区域NFZを区画する)の内部に、物理的電気的ノード175が設けられていることである。物理的電気的ノード175は、第1電気的接続185(例えば、家庭の電気系統内にある漏電遮断器の手前に通常用いられている二重絶縁ケーブル)を介して、クリーン接地入力端子179に接続されている。物理的電気的ノード175はさらに、第2電気的接続195を介してクリーン接地出力端子199に接続されている。本実施形態における第2電気的接続195は、図示されているように絡み合わせた2本のワイヤ196を備えた撚り対線遮蔽ケーブルになる。このワイヤ196の各々は、図示されているように物理的電気的ノード175に接続されてクリーン接地出力端子199へと供給される。
図5では、第2電気的接続195は、静電シールド140-1、140-2の間で双方に平行に延びるように引き出されるが、これは必須ではない。実際には代替として、第2電気的接続195は例えば出力ワイヤo1、o2、o3に平行に、絶縁型変圧器100eの外側へと通されてもよい。
【0053】
図5はさらにセンサ及び制御回路190(CPU)を図示している。制御回路190は、矢印で図示した入力及び出力のノイズを測定するように構成され、最終的には物理的電気的ノード175の位置を制御して、このノードが受ける電界と磁界を最小限にすることによってノイズを低減/最小限にする。
図5の実施形態では、物理的電気的ノード175の位置は矢印で示されているように制御可能である。
【0054】
図5の変圧器100eを精査すると、外側に2つの異なるタイプの接地端子、つまり、従来の接地電位Peと接続されている従来の接地端子GT1、GT2と、WO2019/013642でISPEと称されてもいる、別個の接地電位との接続に役立つ特別なクリーン接地端子179、199とを有していることから、本変圧器は従来の変圧器ではないことが容易に確認できる。言い換えれば、本低EMI変圧器は、絶縁型変圧器の接続に関する規格に従っておらず、同じ資料で正確に説明されたように、新たな規格を必要とする。よって、これは問題ではないが、変圧器の迅速な製品化を妨げるおそれがある。この結果、
図6~13を参照して説明するような低EMI変圧器のさらなる改良の必要性が認識される。
【0055】
図6は本発明に係る改良低EMI変圧器100e1の第1実施形態を示している。本図は変圧器のいくつかの部品を模式的に示しているにすぎない。一次コイル及び二次コイル120-1..120-3、130-1..130-3の各々はスター型ネットワークを構成している。一次相と二次相のコイルの間には第1平板800-1が設けられている。同様に、二次相と三次相のコイルの間には第2平板800-2が設けられている。これらの平板800-1、800-2は、以下に説明するように、いわゆるEMI捕集器の役目を果たす。平板は、磁界を透過可能であると同時に電気絶縁性を示す材料で構成される。材料の例としては、カーボン、テフロン(商標)、ゴム等が挙げられる。両平板ともそれぞれ、図示されているように切替回路801と電気的接続される導電性ループ(
図6では見えていない)を備える。切替回路801は、導電性ループのサブセットを、図示されているように物理的電気的接地ノード175に順次に、一時的に、及び選択的に電気的結合するように構成される。これが何を意味するかは他の図面を参照してこの後説明する。物理的電気的接地ノード175は、今度は接地出力端子199と電気的接続される。残りの図面では、物理的電気的接地ノード175と接地出力端子199は同じ電位を担持しているため、これら2つの電気ノードは(簡潔にするため)1つの構成要素として描かれている。
【0056】
平板800-1、800-2は主にループを所定の位置に保持することに役立つことを強調しなければならない。任意の数の平板が存在可能であり、各平板は任意の数のループを有することができるが、本発明の記載では、本発明の原理は、2枚の平板であって、各平板は3つのループを実装している2枚の平板を用いて説明されている。このことは
図7でさらに説明される。
【0057】
図7は
図6の低EMI変圧器100e1の他のいくつかの態様を示している。本図は上述の導電性ループCL1..CL6を図示している。本実施形態において、第1平板800-1は3つのループCL1、CL2、CL3を備え、第2平板800-2もまた3つのループCL4、CL5、CL6を備える。全てのループは元々2つの端子を有し、図示されているように、両端子は切替回路801に供給される。
【0058】
図8は
図6の低EMI変圧器100e1のさらに他の態様を示したものである。本図では、平板800-1、800-2がどのように変圧器100e1の各相の間に配置可能であるかが図示されている。本図を理解しやすいように、磁化可能なコアは本図には描かれていない。より多くの平板を追加可能であり得ることに留意すべきである。例えば、図面の前側、後ろ側、左端側及び右端側を含む、各相の全ての側面に追加し得る。
【0059】
図9は本発明の低EMI変圧器100e2の第2実施形態を、本発明のいくつかの他の態様とともに示している。本実施形態は、変圧器100e2の一次側がデルタ型ネットワークとして接続されている点がこれまでの実施形態とは異なる。ノルウェー国を含む特定の国では、多くの地域で未だに230Vデルタ型ネットワーク送電網が提供されている。本実施形態により、このネットワークが230Vのスター型ネットワークに上手く変換されて、二次側の相出力I1、I2、I3の間で400Vの電圧が効果的に提供される。本実施形態では、二次側のスターポイントnは接続されていない。
図9はさらに磁化可能なコア110を模式的に示しており、本実施形態では磁化可能なコア110はフローティングに保たれる。
【0060】
変圧器100e2を動作させて使用する場合には、物理的電気的接地ノード175は外部の接地端子999に接続され、外部の接地端子999は通常はアースと接続される(例えばアース棒又は接地用スピアに接続される)。
【0061】
図10は本発明に係る改良低EMI変圧器100e3の第3実施形態を示している。本実施形態は、変圧器100e3の二次側にあるスター型ネットワークのスターポイントnも物理的電気的接地ノード175に接続される点が、これまでの実施形態とは異なる。完全な平衡状態では、スターポイントnは信号を全く伝えず、このスターポイントnに接続されるいかなる導体も電流を全く通さないことに留意すべきである。しかし、平衡状態が崩れた場合は、このようなことが起こる可能性がある。本発明は、変圧器内のEMIを強力に低減することにより、追加の技術的効果として、より優れた負荷の平衡をもたらす。この効果により、本発明は、スターポイントnを物理的電気的接地ノード175に接続することを可能とする。代替として、中性点は、接続しないままにしておいてもよいし、あるいは、四角枠で示されているように、接地PEのインピーダンスを調整することによって制御されてもよい。変圧器100e2の二次側にある中性端子nに関するこの態様は、
図9~11に示されている全実施形態に当てはまる。
【0062】
図11は、本発明の低EMI変圧器100e3が好ましくはどのようにして送電網に接続されるかを示している。本図では、第3実施形態を例として採用する。同じ原理は他の実施形態にも等しく当てはまる。変圧器100e3は送電網900に結合され、送電網900は3つの相L1、L2、L3、中性点N、及び接地端子PEを与える。中性点N及び接地端子PEは、好ましくは変圧器100e3内では使用されない。その代わりに、本発明に係る変圧器100e3は、図示されているように、専用のアース999を使用することによって、自前のクリーン接地を効果的に規定する。このようなアースは、アース棒又は接地用スピア999を局所的に実装することによって形成されてもよく、これにより新たな接地基準を規定する。このようなアース棒又は接地用スピア999を隣接する建物間で共有することもある。本発明者は、本発明の効果を最大限に得るために、変圧器に専用のアース999を設けるべきであることに気づいた。こうすることによって、接地電位PEは最もクリーンに保たれる(つまりノイズ及びEMIが最小になる)。
【0063】
図12は、ループの接続に関する、本発明に繋がる他の態様を図示している。本図は、本発明の非常に重要な要素を成す切替回路801を示している。既に上述したように、本発明には、変圧器の内部において動作上の使用中に磁界が蓄積し得る位置に配置される、少なくとも2つの導電性ループが必要である。適切な位置は各相の間にある空間(変圧器の脚)であるだろうことも既に説明した。
図12に示されている実施形態は6つのループを備え、各ループはそれぞれのループ端子対を有する。
図12は、第1導電性ループCL1(
図7)に属する第1ループ端子対T1a、T1b、第2導電性ループCL2(
図7)に属する第2ループ端子対T2a、T2b、第3導電性ループCL3(
図7)に属する第3ループ端子対T3a、T3b、第4導電性ループCL4(
図7)に属する第4ループ端子対T4a、T4b、第2導電性ループCL5(
図7)に属する第5ループ端子対T5a、T5b、及び第2導電性ループCL6(
図7)に属する第6ループ端子対T6a、T6bを示している。
【0064】
本発明の切替回路801は、ループのサブセットSSをそれぞれの物理的電気的接地ノード175に順次に電気的連結するように構成される。このようなサブセットはループを1つしか備えていなくてもよいが、2つ以上のループを同時に物理的電気的接地ノード175と連結することも可能である。特定のループを接地ノード175と結合するとは、ループの両方の端子を同じノードに接続することによって、ループを電気的に閉じることを意味する。蓄積されたいかなるEMIも、このようにして接地ノード175を介して効果的に追い出される。
【0065】
図12の実施形態では、2つのループを同時に(
図12の状況ではループ3とループ6が同時に接続されている)物理的電気的接地ノード175と結合する選択が行われている。その後、この選択を使用可能なループを通じて繰り返し行っている。しかし、本発明者は、複数のループを接地ノード175と連続的に結合し続ける必要はないことを発見した。複数のループが結合される期間と期間の間にかなりの中断があってもよい。ループのサブセットの選択、並びにこれらを接地ノード175に接続する順序及びパターンは、最適な解、つまり変圧器の最高性能を見出すために試験可能である。この性能を決定する1つの手法は力率を求めることであり、別の方法は変圧器の温度を求めることである。力率が高いほど性能が優れている(損失が少ない)ことを示している。また、動作温度が低いほど損失が少ないことを示している。
【0066】
図8に示されているような平板800-1、800-2及びループの物理的構成を用いて試験を行って、本発明者は非常に優れた性能(力率が高く温度が最低)を発揮する下記の順序を見出したことに留意すべきである。
【0067】
-まず、第1ループCL1と第4ループCL4を両方、接地ノード175に5秒間接続する。
-次に20分間中断する。
【0068】
-次に第2ループCL2と第5ループCL5を両方、接地ノード175に5秒間接続する。
-次にさらに20分間中断する。
【0069】
-次に第3ループCL3と第6ループCL6を両方、接地ノード175に5秒間接続する。
-次にさらに20分間中断する。
-次に、
図12に矢印でも示されているように、この順序をすべて最初からやり直す。
【0070】
切替回路801を
図12に示されているように作製する手法が数多くあることを強調しておかなければならない。本発明者はこの回路を時間制御リレーとして作製したが、これは実施可能な例の1つにすぎない。
【0071】
また、本発明は上述の順序に決して限定されないことも強調しておかなければならない。疑いなく、より多く試験を行えば他の順序やパターン(時間計画)が導き出される可能性がある。さらに、最適な順序やパターンも変圧器の物理的設計に大きく依存し、よって数多くの設計パラメータに依存する。
【0072】
本発明者は、上述の順序を実施する、本発明に係る変圧器のある実施形態の試作器を組み立てた。本変圧器は、例えばTrafox社から入手可能な250kVAでIEC60076-11規格の変圧器で組み立てられた。変圧器は三脚のコアを有する三相変圧器であり、各脚にはそれぞれの一次コイルと二次コイルが設けられており、これらのコイルは同心円状に(外側が二次側)配置される。それぞれの外側のコイルの間の最小距離は1.5cmである。コイルの(磁化可能なコアの脚の方向で測定された)高さは約80cmである。コイルとコイルの間には、高さ80cm、奥行き30cm、厚さ約1cmの平板が配置される。両平板は、並んで配置され平板の高さに亘って分布する3つの導電性ループを備える。外側のループと平板の上端及び下端との最小距離は11cmである。第1ループと第2ループとの最小距離は11cm前後である。第3ループと第3ループとの最小距離は11cmである。各ループの閉ざされた面積は約60cm2である。平板はカーボンで覆われている。導電性ループは銅ワイヤでできている。上述の試作器は1つの実用的な実施形態にすぎないことを強調しておかなければならない。本製品のさらなる開発の過程で多くの変更、最適化、及び調整が可能である。
【0073】
図13は、本発明に係る方法にも関係する本発明の非常に幅広い適用用途を示している。本発明者は、EMIを導電性ループCL1..CL3で捕捉し、接地ノード175に向かって追い出すという概念を、より広範に適用可能であることに気づいた。本図は、電気機器又は電子機器1の性能を向上させる、このより一般的な方法を示すことに役立つ。EMIは年々より深刻になっている問題である。EMIは外部電源、つまり機器の外側から発生することもあるが、機器自体から発生することもある。言い換えると、請求項15に記載の方法ステップの適用範囲は、変圧器の技術分野以外でも広範に適用可能である。本出願人は、本発明の方法のこのような適用に対して保護を受ける権利がある。この保護は、このような特徴が組み込まれている任意のこのような電気機器又は電子機器にも及ぶことは言うまでもない。
【0074】
各図面で開示され、これまでに説明された全ての実施形態は、時間で操作されるループの選択に傾注している。代替実施形態として、電圧で操作される選択を実施する、つまり、最大誘導電圧を実際に保持しているループ又は複数のループを選択し、そのループ又はそれらのループを物理的電気的接地ノードに接続してEMIを除去することが可能である。
【0075】
別の実施形態として、温度で操作される選択を実施する、つまり、最高温度を有しているループ又は複数のループを選択し、そのループ又はそれらのループを物理的電気的接地ノードに接続してEMIを除去することが可能である。
【0076】
本発明は、本明細書にある教示の利益を有し、当業者には明らかである、異なるが等価な手法で変更や実行が可能であるので、上記で開示した特定の実施形態はもっぱら例示のためのものである。例えば、上記に記載された方法ステップは異なる順序で実行されてもよい。さらに、下記の請求項に記載されていることを除き、本明細書で示された構造や設計の詳細に限定されることを意図してはいない。したがって、上記で開示した特定の実施形態を修正あるいは変更してもよく、且つ、このような変更は全て本発明の範囲内であるとみなされることは明白である。よって、本明細書で求められる保護は下記の請求項に記載されているとおりである。
【0077】
上述の実施形態は、本発明を限定するのではなく例示するものであり、当業者であれば、添付の請求項の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計することができることに留意すべきである。各請求項において、カッコ内にあるいかなる参照符号も請求項を限定するものとして解釈すべきではない。動詞「備える」及びその活用形の使用は、要素やステップの存在を、ある請求項で述べたもの以外を排除するものではない。要素に先行する冠詞「1つの」は、そのような要素が複数存在することを排除するものではない。ある手段が互いに異なる従属請求項に記載されているにすぎない事実は、これらの手段の組み合わせが有利になるようには使用できないことを示すものではない。数個の手段を列挙した装置に関する請求項において、これらの手段のうちの数個を、ハードウェアの1つの同一品目によって具現化してもよい。
【国際調査報告】