(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】木材の成形方法
(51)【国際特許分類】
B27K 5/06 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B27K5/06 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518675
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 IB2022059014
(87)【国際公開番号】W WO2023047347
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524112050
【氏名又は名称】クレアホリック・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】トリアーニ・ローラン
(72)【発明者】
【氏名】シャプラ・カロル
【テーマコード(参考)】
2B230
【Fターム(参考)】
2B230AA30
2B230BA02
2B230EA20
(57)【要約】
【課題】木材からなる物の成形方法を改良する。
【解決手段】本発明は、- 木材の繊維に交差する交差木理方向にて木材を切断することによって被加工物を得る工程と、- ダイを使って被加工物を位置決めする工程と、- 被加工物の自由面に当てられる成形プレスを使って、木材の繊維に平行な木理方向に圧力をかけながら、被加工物のプレスを行う工程とを備える、木材からなる物体を成形する方法において、プレス時の圧力が1.5×106N/m2を超えることと、プレス工程では冷間プレスが行われること、プレス工程ではドライプレスが行われることを特徴とし、ダイが、プレス中に被加工物に対して当てられる位置決め側部であって、ダイに配置された被加工物の木材の繊維と5°を超えない第1角度を作る位置決め側部を備えることと、成形プレスが、プレス中に被加工物に対して当てられる打ち抜き側部であって、第2の、打ち抜き側部が、ダイに配置された被加工物の木材の繊維と5°を超えない第2角度を作る打ち抜き側部を備えることとの少なくとも一方を特徴とする。また、本発明は、この方法を用いて得られる木の物体に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 木材(10)を木材の繊維に交差する交差木理方向にて切断して被加工物(11)を得る工程と、
- ダイ(20)を使って前記被加工物を位置決めする工程と、
- 木材の繊維に平行な木理方向に沿って圧力をかけながら、前記被加工物の自由面に当たるようにもたらされる成形プレス(30)を使って、前記被加工物のプレスを行うプレス工程と
を備える、木材からなる物体を成形する方法において、
プレス時の圧力が1.5×10
6N/m
2を超えることと、
前記プレス工程で、冷間プレスを行うことと、
前記プレス工程で、ドライプレスを行うことと、
を特徴とし、
前記ダイ(20)が、プレス中に前記被加工物に対して当てられる位置決め側部(21)であって、前記ダイに位置決めされた前記被加工物の木材の繊維と5°を超えない第1角度(α)を作る位置決め側部(21)を備えることと、
前記成形プレスが、前記ダイ内に位置する前記被加工物の木材の繊維に対して5°を超えない第2角度(γ)を作る第2の、打ち抜き側部である、プレス時に被加工物に対して当てられる打ち抜き側部(303)を備えること
との少なくとも一方を特徴とする、木材からなる物体を成形する方法。
【請求項2】
前記ダイ(20)が、本質的に鉛直の第1案内側部(24)を備えることと、前記成形プレス(30)が、本質的に鉛直の第2案内側部(32)を備えることとの少なくとも一方であり、前記第2案内側部が、プレス時に前記第1案内側部に対して摺動可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
木材繊維の木理に沿った方向における前記被加工物(11)の最大高さ(H)が、プレス中に減少する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ダイの第1案内側部(24)の高さが、プレス前の前記被加工物の最大高さ(H)よりも大きい、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記プレス工程中の圧力が、好ましくは2×10
6N/m
2超であり、より好ましくは5x10
6N/m
2超である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プレス工程は、木材の木理に垂直な第1の平らな表面(301)と第2の平らな表面(302)とを備える成形プレス(30)を使って行われ、前記成形プレスの打ち抜き側部(303)は、前記第1の平らな表面と前記第2の平らな表面とをつないでいる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記打ち抜き側部(303)が、第1面取り部(304)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1面取り部(304)が、前記ダイの底面と最大35°の角度をなす、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記位置決め側部(21)が、第2面取り部(211)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2面取り部(211)が、前記ダイの底面(23)と最大55°の角度をなす、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記成形プレス(30)が、段付き階段の輪郭を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記階段のピッチが0.01mmから0.2mmの間とされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記被加工物をプレスする工程の後に、前記被加工物を前記ダイ(20)と前記成形プレス(30)との少なくとも一方から取り外すように、前記被加工物(11)を取り出す工程をさらに備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記成形プレス(30)と前記ダイの底面(23)との少なくとも一方は、プレスにより前記被加工物にレリーフをなすように作られる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記レリーフの最小決定間隔が10μmから50μmである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記被加工物(11)が、0.75kg/dm
3未満、好ましくは0.5kg/dm
3未満のプレス前密度を持つことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記木材が、クリ、カエデ、ブナ、シナノキ(ライム)、ポプラ、バルサ、モミ、オクメ、アララ松、ハンノキ、クルミ、トネリコ、又はトウヒから選択される樹種である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
気孔率を増加させ、密度を減少させるように、プレス前に前記被加工物(11)を機械的に加工する工程によって特徴付けられる、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記機械的に加工する工程が、木材繊維の木理に沿った方向に複数のマイクロドリル又はニードルパンチを備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記被加工物と接触する前記成形プレス(30)の一端が、面取りされた輪郭を備える、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の方法によって得られる、木の物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を成形する方法に関し、特に圧力を使って木製品を作る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、木工プレスは木工製品作成用の既知の技術である。この技法は、多くの場合、ダイに入れられた木材からなる加工物の表面に大きな力を適用することで、木材を圧縮して所定の形状を付与すると同時に、高密度化の結果として対象物の強度を高めるものである。この技術には、フライス削りでは不可能なくぼんだ形状、例えば鋭く画定された角を持つ多角形形状の作成を可能にするという有利点もある。
【0003】
ほとんどの場合、圧縮は木材の繊維に垂直な横木目方向に適用される。横木目方向に木材を圧縮するのに必要な圧力は、繊維に平行な縦木目方向に同じ木材を圧縮するのに必要な圧力よりもはるかに低いからである。言い換えれば、圧縮によって繊維同士を近づけるのに必要なエネルギーは、繊維を縦方向に圧縮するのに必要なエネルギーよりも少ない。
【0004】
木材を繊維に平行な木目方向に圧縮することも提案されているが、木材の繊維を木目に沿って圧縮する際に使用される圧力は、通常のプレス機では、もしくは大型の対象物では不可能なほど非常に高い場合があるため、このような方法はほとんど使用されていない。
【0005】
特許文献1には、以前に機械加工された(例えばフライス加工された)被加工物を圧縮することによって得られる、電子装置用のハウジングのような木製の物体が記載されている。この文献では、脱型の問題及び完成品の輪郭の鋭さの問題を回避するために、被加工物が置かれるダイ(又はモールド)の底部が大きく湾曲している。被加工物は、空洞形成の、例えばフライス加工の前加工を要する。空洞の深さは、プレス加工によって増えるだけである。圧縮を受けるのは空洞の底部だけである。対照的に、被加工物の上面は成形プレスの作用で変形することはない。物体の外縁及び内縁の美的外観は、主にフライス加工によって決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1706248号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の1つは、従来技術から知られている方法の制限から解放された木質物体の成形方法を提案することである。
【0008】
本発明の別の目的は、生態学的及び経済的な木質物体の成形方法を提案することである。
【0009】
本発明の別の目的は、特にきれいな側面及び正面並びに鋭利な角を迅速に得られる木質物体の成形方法を提案することである。
【0010】
本発明の他の目的は、耐湿性及び耐衝撃性の側面を迅速に得られる木質成形体の成形方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、これらの目的は、特に、以下の複数工程を備える、木材からなる物体を成形する方法によって達成される。それら工程とは、
- 木材の繊維に交差する交差木理方向に切断して被加工物を得る工程と、
- ダイを使い被加工物を位置決めする工程と、
- 被加工物の自由面に対して当てられるように被加工物に持っていった成形プレスを使って、木材繊維に平行な木理方向に沿って圧力を適用しながら、被加工物をプレスする工程
であり、この方法では、
プレス時の圧力が1.5×106N/m2を超えること、
前記プレス工程は、冷間プレスが行われること、
前記プレス工程は、ドライプレスが行われること
を特徴とし、
ダイは、プレス中に被加工物に対して当てられて、ダイ内に配置された被加工物の木材の繊維と5°を超えない第1角度をなす位置決め側部を備えることと、
成形プレスは、プレス中に被加工物に対して当てられる打ち抜き側部を備え、第2の、打ち抜き側部は、ダイ内に配置された被加工物の木材の繊維と5°を超えない第2角度をなすこと
との少なくとも一方を特徴とする。
【0012】
プレス工程中の圧力は、好ましくは2x106N/m2を超え、そして優先的には5x106N/m2を超える。繊維を木目に平行な方向に押圧するために使用される力は、木目に垂直な圧縮の10倍から20倍のオーダー(大きさ)である。
【0013】
打ち抜き側部は、プレス中に被加工物の木理に沿って摺動する。
【0014】
打ち抜き側部は、繊維の長手方向の圧縮に寄与することなく、又は打ち抜き側部が繊維の木理に平行でない場合には非常に限定された方法でしかこの圧縮に寄与することなく、プレス中に被加工物の木理に沿って摺動してよい。
【0015】
一実施形態では、打抜き側部全体及び位置決め側部は、プレス中に被加工物の繊維の木理に沿って摺動する。
【0016】
木理に沿った圧縮は、得られる対象物に利点を与える。
【0017】
特に、完成した物体の面、縁及び輪郭は、木材の繊維によって画定されるため、特に鋭く画定され、これらの繊維はそれ自体圧縮されるが、その直線性を維持する。
【0018】
プレス時に木材の木理に平行な、打ち抜き側部及び位置決め側部の場合、これらの側面に沿った対象物の横方向の面は、圧縮された連続繊維の横方向の表面によって画定され、これらの面には端面(繊維の端部)が見えない。
【0019】
この結果、側面の粗さは非常に低く、特にプレス機から出たときに側面の粗さが特に滑らかになる。
【0020】
一方では、打ち抜き側部と位置決め側部との少なくとも一方と、他方では、木材の繊維との間の角度が5°未満であっても、対象物の側方面に現れる繊維の端部の数を制限できるようになり、よって、きれいで(ザラザラのない)滑らかな面の取得が可能になる。
【0021】
木理に沿って長手方向に圧縮された繊維によって画定されたこれらの側面と正面との少なくとも一方の面は、湿気及び衝撃に対して特に耐性がある。
【0022】
被加工物は、くぼんだハウジング又は空隙の事前の機械加工を必要としない。
【0023】
部品の1つ又は複数のくぼみ部は、事前に機械加工することなく、プレス加工のみによって得られてよい。
【0024】
高圧が使われるので、木材を変形させるために湿らせたり加熱したりする必要はない。
【0025】
1.5x106N/m2を超える圧力、好ましくは2x106N/m2を超える圧力、より好ましくは5x106N/m2を超える圧力により、鋭く画定された面及び縁を持つ物体、さらには多角形の空洞又は輪郭を持つ物体の取得が可能になる。
【0026】
1.5x106N/m2を超える圧力は、0.5kg/dm3以下の密度を持つ木材に対して、被加工物の高さ(木理に沿って)の少なくとも50%の圧縮を可能にすることが、試験によって実証されている。一例として、平均密度0.5kg/dm3を持つ木材の場合、被加工物の高さは、その結果、完成品を損なうことなく、最大でも50%圧縮できる。より低い密度の木材の場合、破損なく、さらに大きな圧縮を適用できる。例えば、0.4kg/dm3の密度の木材の場合、被加工物の完全性を危険にさらすことなく、被加工物の最大高さを60%圧縮できる。
【0027】
成形プレス及びダイは、プレス中に互いに摺動する案内側部を備えてよい。案内側部(単数又は複数)は、有利には、プレス中にダイを正確に定位置に保持し、制御された変形及び精密成形を保証する。それにより、被加工物はプレス時に固定される。
【0028】
ダイに属する案内側部は、プレス中に成形プレスを案内してよく、それにより、圧縮された部品に鋭く画定された側部を得ることに寄与する。
【0029】
プレス工程は、木材の木理に垂直な第1の側部及び第2の平らな側部を備える成形プレスを使って行ってよく、2つの平らな側部は打ち抜き側部によってつながっている。
【0030】
プレス工程は、成形プレスを案内する段階(工程)を備えてよく、ダイの案内側部は成形プレスを案内する。
【0031】
案内側部は、有利にはプレス方向に平行である。
【0032】
案内側部は、有利には木材繊維の木理方向に平行である。
【0033】
このようにして、木材は、ダイの位置決め側部に対して横方向に押圧されながら、長手方向に圧縮される。
【0034】
木材繊維の木理に沿った方向における被加工物の最大高さは、押圧中に減少可能である。
【0035】
ダイの案内側部の高さは、プレス前の被加工物の最大高さよりも大きくできる。
【0036】
第1表面、第2表面とダイの底面との少なくとも一方は、構造化されてもよい。
【0037】
構造化のレリーフの最小決定間隔は、非常に微細な間隔、即ち、10μmと50μmとの間を備えてよい。それにより、木材の表面に非常に微細な構造を形成できる。
【0038】
打ち抜き側部は、製造される物体の内部側部と内部底部との間の遷移部を特に滑らかにする第1の面取りを備えてよい。
【0039】
第1面取り部は、ダイの底面と最大35°の角度を持ってよい。
【0040】
ダイに備わる位置決め側部は、特に、製造される物体の外形側部と外形底面との間の遷移部を滑らかにする第2面取り部を備えてよい。
【0041】
第2面取り部は、ダイの底面と最大55°の角度を持ってよい。
【0042】
成形プレスは、横方向又は縦方向の階段状の輪郭を備えてよい。これは特に、実現が困難な曲線への近似を可能にする。
【0043】
段付き階段のピッチは非常に微細であってもよく、典型的には0.01mm及び0.2mmの間のピッチである。
【0044】
本方法は、被加工物をプレスする工程の後に、ダイと、成形プレスとの少なくとも一方から被加工物を剥がすように被加工物を取り出す工程を備えてもよい。
【0045】
被加工物は、0.75kg/dm3未満、好ましくは0.5kg/dm3未満のプレス前密度を持つものでよい。
【0046】
被加工物が切り出される木材は、クリ、オクメ、アララ松、シナノキ(ライム)、ハンノキ、ポプラ、バルサ、トウヒ、モミ、カエデ、クルミ、トネリコ又はブナであってよい。
【0047】
プレス工程の前に、被加工物の機械加工の工程を導入して、被加工物の気孔率を高め、及び密度を下げられる。
【0048】
機械的加工は、木材繊維の木理に沿った方向の複数の微細穿孔を備えてよい。
【0049】
マイクロドリルは、ドリルビットを使用して、又は例えば木材繊維の木理に平行な方向に同時に駆動される針を使用して、パンチング(打ち抜き)によって製造してよい。
【0050】
被加工物に接する成形プレスの一端は、面取りされた輪郭を備えてよい。
【0051】
本発明によれば、これらの目的は、本明細書に記載した方法によって得られる木の物体によっても達成される。
【0052】
本発明の例示的な実施の形態は、添付の図によって示される説明に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、木材の塊から被加工物を切断する可能な方法を示す。
【
図3a】
図3aは、ダイ内の被加工物に成形プレスを当てるプレス工程を示す。
【
図3b】
図3bは、整形プレスが被加工物の一部を圧縮したプレス工程を示す。
【
図4】
図4は、木材被加工物を収納したダイの横断面を示す(ダイの位置決め面は傾斜している)。
【
図5】
図5は、被加工物を保持するダイを通りそして成形プレスを通る横断面を示す(ダイの位置決め側部とプレスの案内側部は傾斜している)。
【
図6】
図6は、傾斜した打ち抜き側部を持つパンチを備える成形プレスを通る横断面を示す。
【
図7】
図7は、木材の被加工物を持つ特定のハウジングを持つダイの横断面を示す。
【
図8】
図8は、2つの打ち抜き部を持つ特定の輪郭を持つ成形プレスを通る横断面を示す。
【
図9】
図9は、底部が構造化されたダイを通る横断面を示す。
【
図10a】
図10aは、被加工物の表面に様々な圧力を加える前の、成形プレスを通した横断面を示す。
【
図10b】
図10bは、被加工物の表面に様々な圧力を加えられるようにした後の、成形プレスを通した横断面を示す。
【
図13】
図13は、プレス後に成形プレスを剥離する装置の2つの位置を示す図である。
【
図14a】
図14aは、一方の側面が階段状部分を備える成形プレスを示す。
【
図14b】
図14bは、輪郭が階段状部分を備える成形プレスを下から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、被加工物を圧縮することにより木の物体を成形する方法であって、圧縮を木目の繊維に平行な方向に行う方法に関する。
【0055】
本発明の方法を使って得られる木製品の例としては、例えば、玩具、カトラリーの取っ手、装飾品、食器、箱、時計ケース、宝石箱、化粧品の容器又は包装、小間物、又はボタンや履物のような服飾要素、その他を挙げられる。
【0056】
本発明の方法は、軟膏、クリーム、あるいは液体のような粘性のある製品の容器に特に適している。これは、プレスによる緻密化によって木材の空隙率が減少し、粘性のある製品や液状の製品を入れるのに十分な不透過性が得られるからである。それにより、輸送経路が閉じられるので、木材からそれに接触する材料へ、あるいはその逆へ分子が移動する危険性が低い。加えて、木材は抗菌性を持つ天然の不活性材料であり、手触りがよく、心地よいと受け取られる匂いをしばしば持つ。
【0057】
図1は、木材10(木片10)から被加工物11の切断する方法のあり得る例を示している。切断は、第2段階で木材の木理の繊維に平行な圧縮を可能にするように、木材の繊維に対して横方向に、切断線12に沿って行われる。ここでの交差木理又は横方向という用語は、木理に「平行でない」方向、すなわち、切断線12と木材の繊維の木理との間の角度がゼロでない方向を意味するものと理解されたい。
【0058】
切断によって得られた被加工物11は、次にダイ20の中に、又はダイ20と共に位置決めされる。このダイは、被加工物に対して当てられる位置決め側部21を備える。
図2に示すように、被加工物は、木材繊維の木理を横切る被加工物の一面が露出し、位置決め側部とダイの底面が残りの面にわたって被加工物を取り囲むように、ダイ内に位置決めされる。被加工物の位置決めは、成形プレスを案内するダイの開放部分を通して被加工物を単に配置することからなる場合もあれば、より複雑な実施形態では、被加工物をダイのハウジング内へ横方向に導入することもある。このような実施形態は、
図7に表されていて、被加工物に対する幾何学的制約により、被加工物は、例えばプレス方向に対して垂直方向に摺動させることでダイ20内に配置する必要がある。被加工物を、被加工物に加工された開口部によって、もしくは互いに把持可能な複数ダイ部品によって、配置することもあり得る。
【0059】
被加工物11がダイ20に対して位置決めされると、この被加工物は成形プレス30によって押圧(プレス)される。プレスの方向は、被加工物の木材繊維に平行な木理に沿う方向である。こうして、成形プレスが被加工物の露出面に押し付けられ、成形プレスとダイの少なくとも一方の容積の全部又は一部が被加工物に負値で再現されるまで、被加工物を変形させるように成形プレスに圧力が加えられる。
【0060】
本発明の方法の特徴の一つは、プレス工程では、冷間プレスでドライプレスが行われることである。熱間プレスは、木材を変形させるのに必要な押圧力を低減可能である。しかし、木材の温度の上昇は木材の乾燥を助長し、その結果、変形、特に収縮傾向が強くなりやすくなり、それを補正しなければならないか、割れが発生する。このような補正は、プレスの前に木材を蒸すか、特定の寸法に収縮可能なダイによって回避できる。しかし、このような工程は方法をさらに複雑にするため、費用がより高くなる。
【0061】
乾式プレスはまた、木材の被加工物がプレス前の浸漬が不要であることを意味し、典型的には硬化性樹脂への浸漬や蒸煮を必要としない。
【0062】
成形プレスは、プレス中に被加工物に対して当てられる打ち抜き側部303を備える。
【0063】
図3aは、被加工物11が、位置決め側部21に対して当てられてダイ20内に位置決めされて、成形プレス30が被加工物の露出表面に向かって移動された、この方法の第1工程を示す。
図3bは、成形プレス30の中央部が被加工物20を圧縮し、被加工物の側部に対してくぼみが形成されるまでの第2工程を示す。
【0064】
プレス工程の間、成形プレス30は、被加工物11の露出した表面に機械的に接触させられる。被加工物に向かって移動する際の成形プレスの横方向の移動を最小限にするために、ダイは、成形プレスを案内する第1案内側部24を備えてよい。この第1案内側部は、好ましい実施形態では、位置決め側部21の一部からなるものとしてよい。図示されていない別の実施形態では、ダイの案内側部24は、成形プレスを案内する役割を果たす面を増やすようにダイにしっかりと固定されたモジュール要素であってもよい。この第1案内側部24の1つの機能は、プレス中にダイと被加工物に対する成形プレスの正確な案内を保証することである。
【0065】
図3a及び
図3bに表されているように、成形プレスは、成形プレス30の移動中に第1案内側部24とダイの位置決め側部との少なくとも一方に対して摺動する第2案内側部32を備えてもよい。プレスの案内を最適化するために、第2案内側部の部位における成形プレスの直径は、第1案内側部の部位におけるダイの内径よりもわずかに小さくし、プレス後に物体を取り出すために必要な0.01mmから0.5mmの間のクリアランス(ゆとり)を残すようにしている。
【0066】
プレス中に被加工物11を最適に保持するために、ダイの位置決め側部21は、理想的には木材繊維の木理に平行である。しかしながら、プレス後の被加工物の脱型を容易にするために、ダイの少なくとも1つの位置決め側部を木材繊維の木理に対して第1角度αだけわずかに傾斜させ、その最も広い直径が被加工物の露出面側に位置する切頭円錐形を形成するようにしてよい。このような実施形態を
図4に示す。この第1角度αは、プレス方向、すなわち、被加工物がダイ内に配置されたときの木材繊維の木理に沿った方向に対して、最大でも5°としてよい。
【0067】
一実施形態では、ダイは、脱型を容易にするように、本明細書で上述したような傾斜した位置決め側部を備えると共に、プレス中のプレスの案内を確実にするように、位置決め側部の続きにおいて実質的に垂直である案内側部を備える。
【0068】
第1の位置決め側部21と被加工物との間のクリアランスは、好ましくは、被加工物のダイへの挿入を可能にするが、横方向の変形を回避しつつプレス中に被加工物の固定を確実にするように、プレス前には非常に小さい。好ましい一実施形態では、このクリアランスは好ましくは0.5mm未満である。
【0069】
図5中の成形プレス30は、位置決め側部21と同様に、位置決め側部の傾斜に適合するように圧縮方向に対して第3角度βで傾斜している第2案内側部32を備える。第3角度βは、プレス方向に対してせいぜい1°でよい。
図5は、成形プレスの案内側部32が、位置決め側部21の傾斜相当する角度βを形成する実施形態を示す。
【0070】
傾斜した1つ又はそれより多い位置決め又は案内側部と、木材繊維の木理に平行な少なくとも1つの他の位置決め又は案内側部とを持つダイ又は個別の成形プレスを持ち得る。これにより、成形プレスの移動全体を通してダイに対する成形プレスの効果的な案内が可能になる。
【0071】
木材繊維の木理に対して角度βを形成するように成形プレスの第2案内側部32を傾斜させることは、例えばプレス工程後の被加工物の脱型を容易にできる。しかしながら、この傾斜は、成形プレスの第2案内側部がダイの第1案内側部24と接触するとすぐに、被加工物に対する成形プレスの垂直移動が妨げられるため、成形プレスのダイ内での案内はしないことになる。
【0072】
別の実施形態では、ダイ20は、プレス後の木材の物体の脱型を容易にするために解体可能である。代替的に又は追加的に、ダイは、同様に物体の脱型を容易にする抜き型を併せ持ってもよい。
【0073】
脱型の際に生じ得る2つの異なる問題がある。第1に、成形プレス30及び被加工物が互いに付着したままになるおそれがあり、第2に、ダイ及び被加工物も同様に互いに付着したままになるおそれがある。
【0074】
プレス後に成形プレスを被加工物から離すために、
図13に示すように、脱型支持体をダイの上方に配置してよい。脱型サポートは、プレスされた被加工物を備えるダイを成形プレスから機械的に離すようにダイの上側部分をプレスできる、ダイに対して移動可能でかつプレス軸に対して平行なロッドを備えてよい。
【0075】
別の実施形態では、移動可能なロッドは、成形プレスを被加工物から引き抜くように、成形プレスが引き抜かれる際に被加工物をプレス可能な保持リングによって置き換えられる。
【0076】
成形プレス30上の第2打ち抜き側部32は、木材繊維の木理に対して第2角度γをなす。より多様な形状を被加工物にプレスできるようにして、プレス後のプレスからの被加工物の脱型を容易にするために、この角度は0°及び5°の間で変えてよい。それにより、成形プレスの打ち抜き側部の輪郭は、
図6に示されるように、わずかに先細りになるだろう。この第2角度γにより、さらに、木材の物体の内部表面に、より高品質の仕上げが得られる。
【0077】
代替的に、プレス後にダイから対象物を抜き取る又は剥がすために、引き抜き手段を使ってもよい。これらの引き抜き手段は、例えば、ダイ又は成形プレスのモジュール要素からなる。通常、成形プレスの打ち抜き側部が垂直である場合、すなわち角度γが0°に等しい場合、引き抜き手段の追加が好ましい。
【0078】
図6に示される1つの好ましい実施形態では、成形プレス30は、被加工物11がダイ20内の所定の位置にあるときに木材繊維の木理に対して垂直な第1の平らな表面301及び第2の平らな表面302を備え、これらの面は成形プレスの打ち抜き側部303によってつながっている。第1の平らな表面及び打ち抜き側部は共に、被加工物の圧縮のための形状と体積との少なくとも一方を決定する打ち抜きを作る。プレス工程中、第1の平らな表面301は、被加工物と接触した後、圧力の効果で被加工物を貫入する、成形プレスの最初の部分である。
【0079】
図8に示される別の実施形態では、成形プレス30は、被加工物11に複数の異なる跡(打ち抜きでできた跡)を形成可能な、複数のパンチを備える。各パンチは、被加工物がダイ内の所定の位置にあるときに木材繊維の木理に対して垂直な第1の平らな表面301と、第2の平らな表面302と、第1の平らな表面と第2の平らな表面とをつなぐ打ち抜き側部303とを備える。
【0080】
ここで、パンチという用語は、プレス中に被加工物に最も近い端部における成形プレスの突出部分を指すために使われている。
図15a及び
図15bは、複数のパンチ、例えば3つのパンチを持つ成形プレスを示す。3つのパンチの幅は異なっていてもよい。それにより、パンチは、成形プレスの打ち抜き側部303によって、又は成形プレスの刻み目305によって、横方向に区切られる。
【0081】
複数のパンチを備える成形プレスによるプレス用の木材の最小決定間隔、すなわち連続する2つのパンチの最も近い端部間の最小距離は、0.1mmと10mm、好ましくは0.5mmと8mm、典型的には1mmと5mmの間にする。この分解能は、木材の種類やプレスの深さなどの多くの変数が関係する。
図15aは、3mmのオーダー(大きさ)の決定間隔を持つ成形プレスを示し、これは、刻み目305の幅がほぼ3mmに等しいことを意味している。
図15bは、決定間隔が約2mmであり、くぼみを特に成形プレスの中心に対してずらした実施形態を示す。
【0082】
成形プレス30の打ち抜き側部303の下側部分、すなわちプレス中に被加工物に最初に接触する部分の形状は、側部の定義の鋭さ、及びプレスから得られる木材部品の底部と側部との間の遷移部の鋭さに関して特に重要である。
【0083】
一実施形態では、打ち抜き側部は、木材繊維の木理に対して垂直である成形プレスの部分に対して、鋭角を形成する。
【0084】
図11a及び
図11bに示されるように、打ち抜き側部303は、プレス後の被加工物に応じた面取りを得る、面取り部304を持ってもよい。このような面取り部は、典型的には、被加工物をプレスした後に得られる側部と部品の底部との間の遷移部を滑らかにするのに使われる。
【0085】
内側形状には、垂直側部とダイ23の底面との間の遷移部は、典型的には最大35°、優先的には最大30°の面取り部を持つ鋭角を示す。
【0086】
代替的に又は追加的に、打ち抜き側部303は、ダイの底面となす角度が35°、優先的には30°を超えないように放射状にしてもよい。
【0087】
図示されていない実施形態では、案内側部303は、プレス中に被加工物の外形に面取りを形成するように、上部に面取り部を施してもよい。このような外形上の面取りについては、面取りの角度は、典型的には、最大50°の範囲である。
【0088】
図12に示されるように、ダイの位置決め側部21は、位置決め側部とダイの底面との間の遷移部に面取り部211を持ってもよい。
【0089】
このような面取り部211は、プレス後のダイからの被加工物の取り出し又は剥離を特に容易にする。それはまた、被加工物の外側の側面と被加工物の底部の外面との間の鋭く画定された遷移部を得られるようにする。面取り部211は通常、ダイの底面と最大55°、優先的には45°の角度を持つ。
【0090】
被加工物からプレス加工によって得られる部品の形状の作り方を改善するために、成形プレス30の打ち抜き側部303は、そのピッチが被加工物の大きさを持つ比較的小さい階段状の輪郭を備えてよい。このような階段状の輪郭により、プレス工程で達成するのが複雑な曲線を、視覚的な表現を損なうことなく近似させることが特に可能になる。また、被加工物の側面及び底面の間の特定の遷移部の鮮明さを向上させることも可能である。
【0091】
図14aに示される実施形態では、プレス工程と成形プレスの下部との間の遷移部の輪郭は、ピッチ、すなわち階段の踏面の深さが0.01mm及び0.2mmの間に備える階段状を備える。したがって、階段の踏面は、被加工物がダイの中にあるとき、木材繊維の木理に対して垂直である。
【0092】
別の実施形態では、案内側部は、踏面が被加工物の木材繊維の木理に平行な階段状の輪郭を備える。
図14bは、成形プレスの階段状の輪郭を示し、この輪郭は、ダイ内で被加工物の木材繊維の木理に直交する平面で切断することによって得られる。本明細書で上述したように、特に曲率が木材繊維の木理に平行である場合の曲線部分のプレスは、曲線の角度が大きい場合、側面の鮮明さの点で問題がある。プレス工程で矩形区間が鋭く定義される階段部分を用いてこのような曲線を近似することにより、この問題を克服できる。
【0093】
側部の定義の鮮明さは、プレス速度に依存する場合がある。一般に、プレス速度を高くすると、より鋭く定義された側部を得られるようになる。この速度は、典型的には、4mm/s及び180mm/sの間である。
【0094】
プレス工程の間、被加工物11は、その露出した表面の全体にわたって、又は成形プレスの形状に対応する1つ又は複数の予め決めておいた区域にわたって圧縮され得る。したがって、木材繊維の木理の方向における被加工物の最大高さHは、被加工物の全体が圧縮される場合、プレス後に低減され得る。対照的に、木材繊維の木理の方向における被加工物の最大高さHは、被加工物の1区域のみが圧縮される場合、プレス後も同一のままである可能性がある。
【0095】
図3aでは、被加工物はプレス前最大高さHを持つが、
図3bに示されるように、被加工物はプレス後最大高さH’及びプレス後最小高さH”を持つ。全ての場合において、以下の関係
H≧H’≧H”
が常に満たされる。被加工物の一部のみがプレスされる場合、H=H’>H”であり、被加工物の全体がプレスされる場合、H>H’≧H”である。
【0096】
プレス工程は、1回の操作で所望の高さの全てを圧縮するように、成形プレス30が被加工物の露出した表面に連続的な圧力を加えることによって実施してよい。代替的に又は追加的に、プレス工程は、成形プレスによる被加工物の露出表面への連続的なプレスを意味するハンマリング動作を適用することによって実施してよい。
【0097】
ハンマリングにより、同様の高さをプレスするのに必要なプレス力を低減することと、木材をより深く緻密化することとの少なくとも一方が可能になる。
【0098】
代替的に又は追加的に、被加工物又はダイ又は成形プレスに振動、例えば1Hzと1MHzの間の周波数で木材繊維の理に沿った長手方向の振動を与えて、振動を生じさせ、成形プレスによる被加工物の圧縮を容易にすることができる。これらの振動は、成形プレスが木材に浸透しやすくし、木材の繊維が互いに滑りやすくし、そしてプレス中に木材をわずかに加熱することによって木材を軟化させる役割を果たす可能性がある。従って、ハンマリングを持つ場合と同様に、被加工物にこれらの振動を与えることで、同様の高さをプレスするのに必要なプレス力を低減することと、木材をより深く緻密化することとの少なくとも一方が可能になる。
【0099】
構造化は、被加工物の一部をプレスしてレリーフ(浮き彫り)を形成することに相当し、このレリーフは被加工物の大きさに比べて比較的小さい。構造化によって得られるレリーフは、通常、木材中の通水路の大きさのオーダー、すなわち10μm及び50μmの間に備える最小決定間隔を持つ。
【0100】
プレス方向における構造化レリーフの深さは、成形プレスが被加工物内に移動する距離よりも小さい。プレス方向における構造化の深さは、2mm未満としてよい。
【0101】
一実施形態では、成形プレスは、プレス中に被加工物にパターンをネガで作るような構造になっている。代替的に又は追加的に、ダイの底面は、ダイの底面と接触する被加工物の外面にパターンをネガで作る構造にもなっている。
【0102】
構造化によって、特に、ロゴ、商標、テキスト、パターン、及び物理的又は美的機能を持つ特殊なテクスチャ(表面状態)の作成が可能になる。
【0103】
代替的に又は追加的に、構造化要素を成形プレスと被加工物との間、又は被加工物とダイの底面との間に配置し、プレス時に構造化要素のパターンが被加工物上にネガで再現されるようにしてもよい。構造化要素は、例えば、布、革片、紙片、木の葉などである。一実施形態では、第1プレス工程で被加工物、特に側面が成形され、次に第2プレス工程で成形された被加工物の一部が構造化される。
【0104】
成形プレスの、プレス中に被加工物に接触する部分は、被加工物にネガ像又はポジ像を生成するように構造化してよい。成形プレスの第1の平らな表面と第2の平らな表面との少なくとも一方が、構造化されていてもよい。
【0105】
同様に、
図9は、ダイ、この例では被加工物の露出面とは反対側のダイの底面23も、被加工物の露出面とは反対側の面にポジ又はネガのパターンを得るように構造化してよい、一実施形態を示す。
【0106】
成形プレスとダイとの少なくとも一方のこのような構造化により、木製品の成形を視野に入れた被加工物のプレスと、模様のネガ又はポジの刻印との組み合わせが可能になる。
【0107】
構造化したものは、例えば、被加工物にネガで刻印されるように、成形プレスの表面に画像、パターン、ロゴ、文字、リブ、溝、その他を備えてよい。
【0108】
明らかに、被加工物に選択される木材の樹種は、プレスの変数及び製造可能な物体の多様性にかなりの影響を持つ。具体的には、木材の密度が高ければ高いほど、所定の高さだけ圧縮するために必要なプレス力は大きくなる。したがって、選択した木材の密度が低ければ低いほど、圧縮は大きくなり、及び圧縮される体積も大きくなる。
【0109】
よって、一実施形態では、被加工物は、0.75kg/dm3未満の密度を持つ木材から、好ましくは0.5kg/dm3未満の密度を持つ木材から切り出される。好適な樹種としては、例えば、ポプラ又はライム/リンデン(約0.5kg/dm3)、トウヒ(約0.45kg/dm3)、バルサ(約0.14kg/dm3)が挙げられる。栗、カエデ、ブナ、モミ、オコメ、アローラ松又はハンノキといった他の樹種も、本発明の文脈に特に適している。本発明の加圧方法は、0.75kg/dm3、又は0.85kg/dm3までの密度の木材に適用できるので、この樹種の一覧は決して限定的なものではない。
【0110】
木材の気孔率を高め、そしてそれによりプレス工程を容易にするために、被加工物を機械的に加工する予備工程を行ってよい。一実施形態では、プレス前に被加工物の密度を低下させるために、ドリルビットを用いて、又はニードルパンチによって、一連の微細穿孔を行う。このようにマイクロドリルで開けられた穴は、圧縮の間に充填されるため、得られる物体は、粘性のある製品(クリーム、ペーストなど)又は液状の製品さえも入れられるほど十分に流体密にすることができる。
【0111】
本発明の方法は、上面にくぼみ部を持たず、突出部のみを持つ物体の製造にも使ってよい。一実施形態では、本方法は、木製玩具部品、例えば積み重ね可能な組立ブロックの製造に使われる。
【0112】
一実施形態では、プレス中に最初に被加工物を持つ成形プレスの端部は、木材への侵入を容易にするために面取り部と切削輪郭との少なくとも一方を持つ。このような輪郭はまた、プレスの対象である木材にきれいな(ザラザラでない)側部(フランク)を得られるのでプレス後のヤスリがけ作業の潜在的な必要性を回避する。
【0113】
図10a及び
図10bに示される一実施形態では、成形プレスを使用する単一のプレス工程の間に、様々な異なる圧力を被加工物の異なる複数区間に適用してよい。
図10a及び
図10bに示されるように、プレス力F2が被加工物の第1の側方区間に適用される一方で、別のプレス力F1が被加工物の中央部分に適用される。このようにして、単一のプレス工程により、異なる圧縮密度及び高さを達成できて、同時に、プレス中にダイ内での被加工物の最適な保持を保証できる。
【0114】
単一の成形プレスによって異なる複数のプレス力を得る可能性は、例えば、成形プレスの側方区間の上方(すなわち、プレス力F2に対応する区間の上方)にバネを取り付けることによって達成される。それにより、成形プレスの上部に同じプレス力が適用された場合、バネは被加工物の側方区間でプレス力の一部を吸収できる一方、中央区間の圧力は最大となる。
【0115】
また、本方法は、プレス加工を用いて第2の木の被加工物を第1の被加工物に組み付ける場合にも適用してよい。図示されていない実施形態では、第2の被加工物は、第1の被加工物と成形プレスとの間に配置される。その後、2つの被加工物は、プレス工程中に、成形プレスによる圧力の影響下で、一方を他方に組み付けられる。2つの被加工物の組立ては、互いに接触することが意図される被加工物の面のそれぞれに、2つの対応する輪郭を事前にプレスすることによって容易になる。
【0116】
第1の被加工物の木材繊維の木理の方向が常にプレス方向に対して平行であるのに対して、第2の被加工物の木材繊維の木理の方向は、それ自体、プレス方向に対して平行、垂直又は斜めであってもよい。この自由度により、完成品に興味深い模様をつけられるとともに、2つの被加工物を圧縮するのに必要な圧力を減らすことでプレスが容易になり、又は特に強度の高い完成品を得られる。また、密度の異なる木材及び圧縮強度の異なる木材の組み合わせも可能である。
【0117】
記載したプレス方法を用いて得られた2つの部材の組立は、例えば、ほぞ突起とほぞ穴を使用して、各部材のプレス後に行ってもよい。もう一方の部品に挿入する予定の部品は、挿入する前に乾燥させてもよい。周囲の空気から水分を取り戻すと、膨張してほぞ突起とほぞ穴の接合部を強化する傾向がある。
【0118】
代替的に又は追加的に、本発明の加圧方法は、より大きなサイズの被加工物をプレスできるように、2つ又はそれより多い木材(木片)を接着して作成した被加工物にも適用してよい。接合は、典型的には、2つの木材の木材繊維の木理の方向に行ってよい。接着された接合部のプレスに対する抵抗は、接着されていない被加工物と本質的に同じである。さらに、プレス後には接着剤の線はほとんど見えなくなる。
【符号の説明】
【0119】
10 木材
11 被加工物
12 切断線
20 ダイ
21 位置決め側部
211 第2面取り部
22 ハウジング
23 ダイ底面
24 第1案内側部
30 成形プレス
31 打ち抜き部
32 第2案内側部
301 第1の平らな表面
302 第2の平らな表面
303 打ち抜き面
304 第1面取り部
305 刻み目
40 可動ロッド
α 第1角度
γ 第2角度
β 第3角度
H プレス前最高高さ
H’ プレス後最高高さ
H” プレス後最低高さ
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明では、これらの目的は、特に、以下の複数工程を備える、木材からなる物体を成形する方法によって達成される。それら工程とは、
- 木材の繊維に交差する交差木理方向に切断して被加工物を得る工程と、
- ダイを使って被加工物を位置決めする工程と、
- 被加工物の自由面に対して当てられるように被加工物に持っていった成形プレスを使って、木材繊維に平行な木理方向に沿って圧力を適用しながら、被加工物をプレスする工程
であり、この方法では、
プレス時の圧力が1.5×106N/m2を超えること、
前記プレス工程は、冷間プレスが行われること、
前記プレス工程は、ドライプレスが行われること
を特徴とし、
ダイは、プレス中に被加工物に対して当てられて、ダイ内に配置された被加工物の木材の繊維と5°を超えない第1角度をなす位置決め側部を備えることと、
成形プレスは、プレス中に被加工物に対して当てられる打ち抜き側部を備え、前記打ち抜き側部は、ダイ内に配置された被加工物の木材の繊維と5°を超えない第2角度をなすこと
との少なくとも一方を特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
成形プレス30上
の打ち抜き側部
303は、木材繊維の木理に対して第2角度γをなす。より多様な形状を被加工物にプレスできるようにして、プレス後のプレスからの被加工物の脱型を容易にするために、この角度は0°及び5°の間で変えてよい。それにより、成形プレスの打ち抜き側部の輪郭は、
図6に示されるように、わずかに先細りになるだろう。この第2角度γにより、さらに、木材の物体の内部表面に、より高品質の仕上げが得られる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
代替的に又は追加的に、本発明の加圧方法は、より大きなサイズの被加工物をプレスできるように、2つ又はそれより多い木材(木片)を接着して作成した被加工物にも適用してよい。接合は、典型的には、2つの木材の木材繊維の木理の方向に行ってよい。接着された接合部のプレスに対する抵抗は、接着されていない被加工物と本質的に同じである。さらに、プレス後には接着剤の線はほとんど見えなくなる。
本願は例えば次の観点を提供する。
[観点1]
- 木材(10)を木材の繊維に交差する交差木理方向にて切断して被加工物(11)を得る工程と、
- ダイ(20)を使って前記被加工物を位置決めする工程と、
- 木材の繊維に平行な木理方向に沿って圧力をかけながら、前記被加工物の自由面に当たるようにもたらされる成形プレス(30)を使って、前記被加工物のプレスを行うプレス工程と
を備える、木材からなる物体を成形する方法において、
プレス時の圧力が1.5×10
6
N/m
2
を超えることと、
前記プレス工程で、冷間プレスを行うことと、
前記プレス工程で、ドライプレスを行うことと、
を特徴とし、
前記ダイ(20)が、プレス中に前記被加工物に対して当てられる位置決め側部(21)であって、前記ダイに位置決めされた前記被加工物の木材の繊維と5°を超えない第1角度(α)を作る位置決め側部(21)を備えることと、
前記成形プレスが、前記ダイ内に位置する前記被加工物の木材の繊維に対して5°を超えない第2角度(γ)を作る第2の、打ち抜き側部である、プレス時に被加工物に対して当てられる打ち抜き側部(303)を備えること
との少なくとも一方を特徴とする、木材からなる物体を成形する方法。
[観点2]
前記ダイ(20)が、本質的に鉛直の第1案内側部(24)を備えることと、前記成形プレス(30)が、本質的に鉛直の第2案内側部(32)を備えることとの少なくとも一方であり、前記第2案内側部が、プレス時に前記第1案内側部に対して摺動可能である、観点1に記載の方法。
[観点3]
木材繊維の木理に沿った方向における前記被加工物(11)の最大高さ(H)が、プレス中に減少する、観点1又は2に記載の方法。
[観点4]
前記ダイの第1案内側部(24)の高さが、プレス前の前記被加工物の最大高さ(H)よりも大きい、観点2に記載の方法。
[観点5]
前記プレス工程中の圧力が、好ましくは2×10
6
N/m
2
超であり、より好ましくは5x10
6
N/m
2
超である、観点1から4のいずれか一つに記載の方法。
[観点6]
前記プレス工程は、木材の木理に垂直な第1の平らな表面(301)と第2の平らな表面(302)とを備える成形プレス(30)を使って行われ、前記成形プレスの打ち抜き側部(303)は、前記第1の平らな表面と前記第2の平らな表面とをつないでいる、観点1から5のいずれか一つに記載の方法。
[観点7]
前記打ち抜き側部(303)が、第1面取り部(304)を備える、観点1から6のいずれか一つに記載の方法。
[観点8]
第1面取り部(304)が、前記ダイの底面と最大35°の角度をなす、観点7に記載の方法。
[観点9]
前記位置決め側部(21)が、第2面取り部(211)を備える、観点1から8のいずれか一つに記載の方法。
[観点10]
前記第2面取り部(211)が、前記ダイの底面(23)と最大55°の角度をなす、観点9に記載の方法。
[観点11]
前記成形プレス(30)が、段付き階段の輪郭を備える、観点1から10のいずれか一つに記載の方法。
[観点12]
前記階段のピッチが0.01mmから0.2mmの間とされる、観点11に記載の方法。
[観点13]
前記被加工物をプレスする工程の後に、前記被加工物を前記ダイ(20)と前記成形プレス(30)との少なくとも一方から取り外すように、前記被加工物(11)を取り出す工程をさらに備える、観点1から12のいずれか一つに記載の方法。
[観点14]
前記成形プレス(30)と前記ダイの底面(23)との少なくとも一方は、プレスにより前記被加工物にレリーフをなすように作られる、観点1から13のいずれか一つに記載の方法。
[観点15]
前記レリーフの最小決定間隔が10μmから50μmである、観点14に記載の方法。
[観点16]
前記被加工物(11)が、0.75kg/dm
3
未満、好ましくは0.5kg/dm
3
未満のプレス前密度を持つことを特徴とする、観点1から15のいずれか一つに記載の方法。
[観点17]
前記木材が、クリ、カエデ、ブナ、シナノキ(ライム)、ポプラ、バルサ、モミ、オクメ、アララ松、ハンノキ、クルミ、トネリコ、又はトウヒから選択される樹種である、観点1から16のいずれか一つに記載の方法。
[観点18]
気孔率を増加させ、密度を減少させるように、プレス前に前記被加工物(11)を機械的に加工する工程によって特徴付けられる、観点1から17のいずれか一つに記載の方法。
[観点19]
前記機械的に加工する工程が、木材繊維の木理に沿った方向に複数のマイクロドリル又はニードルパンチを備える、観点18に記載の方法。
[観点20]
前記被加工物と接触する前記成形プレス(30)の一端が、面取りされた輪郭を備える、観点1から19のいずれか一つに記載の方法。
[観点21]
観点1から20のいずれか一つに記載の方法によって得られる、木の物体。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 木
材を木材の繊維に交差する交差木理方向にて切断して被加工
物を得る工程と、
- ダ
イを使い前記被加工物を位置決めする工程と、
- 木材の繊維に平行な木理方向に沿って圧力をかけながら、前記被加工物の自由面に当たるようにもたらされる成形プレ
スを使って、前記被加工物のプレスを行うプレス工程と
を備える、木材からなる物体を成形する方法において、
プレス時の圧力が1.5×10
6N/m
2を超え、
前記プレス工程で、冷間プレスを行
い、
前記プレス工程で、ドライプレスを行
い、
前記成形プレスが、プレス時に前記被加工物に対して当てられる打ち抜き側
部を備え、
前記打ち抜き側部が前記ダイ内に位置する前記被加工物の木材の繊維に対して5°を超えない第2角度を作り、
前記成形プレスと前記被加工物との間の接する表面が、前記木材繊維に垂直な第1の平らな表面と、第2の平らな表面とを備え、前記成形プレスの前記打ち抜き側部が前記第1の平らな表面と前記第2の平らな表面とをつないでいるので、前記プレス工程の間、前記第1の平らな表面が、前記被加工物に接触してその後圧力の効果で同じく貫入する、前記成形プレスの最初の部分である、木材からなる物体を成形する方法。
【請求項2】
前記ダ
イが、本質的に鉛直の第1案内側
部を備えることと、前記成形プレ
スが、本質的に鉛直の第2案内側
部を備えることとの少なくとも一方であり、前記第2案内側部が、プレス時に前記第1案内側部に対して摺動可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
木材繊維の木理に沿った方向における前記被加工
物の最大高
さが、プレス中に減少する、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記プレス工程中の圧力が、好ましくは2×10
6N/m
2超であり、より好ましくは5x10
6N/m
2超である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記打ち抜き側
部が、第1面取り
部を備える、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記ダイが、プレス中に前記被加工物に当てられて前記ダイ内に位置決めされた前記被加工物の前記木材繊維に対して5°を超えない第1角度をなす位置決め側部を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記位置決め側
部が、第2面取り
部を備える、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2面取り
部が、前記ダイの底
面と最大55°の角度をなす、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記成形プレ
スが、段付き階段の輪郭を備える、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記成形プレ
スと前記ダイの底
面との少なくとも一方は、プレスにより前記被加工物にレリーフをなすように作られる、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記レリーフの最小決定間隔が10μmから50μmである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記被加工
物が、0.75kg/dm
3未満、好ましくは0.5kg/dm
3未満のプレス前密度を持つ、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
気孔率を増加させ、密度を減少させるように、プレス前に前記被加工
物を機械的に加工する工程
をさらに備える、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記機械的に加工する工程が、木材繊維の木理に沿った方向に複数のマイクロドリル又はニードルパンチを備える、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
請求項
1に記載の方法によって得られる、木の物体。
【国際調査報告】