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特表2024-533736固体エネルギー貯蔵デバイスのための乾式電極製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】固体エネルギー貯蔵デバイスのための乾式電極製造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20240905BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240905BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240905BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240905BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240905BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALN20240905BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M10/0565
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518913
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022044388
(87)【国際公開番号】W WO2023055644
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】17/492,458
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/942,579
(32)【優先日】2022-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520198960
【氏名又は名称】リキャップ テクノロジーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、リンダ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM12
5H029AM16
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ22
5H029HJ01
5H029HJ14
5H050AA19
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050DA11
5H050DA13
5H050GA02
5H050GA03
5H050HA01
5H050HA14
(57)【要約】
固体電池のための電極ブロックを製造する方法は、電極膜の第1の面上に集電体を有する前記電極膜を提供する段階、前記第1の面に対して反対側の前記電極膜の第2の面上に乾燥電解質粉末の層をコーティングする段階、及び前記電極膜上にコーティングされた前記乾燥電解質粉末をプレスして、前記電極膜上に固体電解質層を生成する段階を備える。固体電池のための電解質膜を製造する方法は、少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ及び少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を備える粉末混合物を調製する段階、前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、重量比で前記粉末混合物の大部分である、前記粉末混合物を剪断力にさらすことによって、前記粉末混合物内の前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダをフィブリル化する段階、及び前記粉末混合物をプレスして自立膜にする段階を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電池のための電極ブロックを製造する方法であって、前記方法は:
電極膜の第1の面上に集電体を有する前記電極膜を提供する段階;
前記第1の面に対して反対側の前記電極膜の第2の面上に乾燥電解質粉末の層をコーティングする段階;及び
前記電極膜上にコーティングされた前記乾燥電解質粉末をプレスして、前記電極膜上に固体電解質層を生成する段階
を備える、方法。
【請求項2】
前記集電体を有する前記電極膜を提供する前記段階は:
少なくとも1つのタイプの電極活物質及び少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを備える粉末混合物を調製する段階;
前記粉末混合物を剪断力にさらすことによって、前記粉末混合物内の前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダをフィブリル化する段階;
前記粉末混合物をプレスして自立膜にする段階;及び
前記集電体上に前記自立膜を積層する段階
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末混合物は、少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
固体電池を製造する方法であって、前記方法は:
第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面を有する第1の電極膜を提供する段階;
第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面を有する第2の電極膜を提供する段階;
前記第1の電極膜の前記第2の面を乾燥電解質粉末の層を用いてコーティングする段階;
乾燥電解質粉末の前記層上に前記第2の電極膜の前記第2の面を配置する段階;及び
乾燥電解質粉末の前記層がその上にコーティングされている前記第1の電極膜を、前記第2の電極膜と共にプレスして、前記第1の電極膜、前記第2の電極膜、及びその間の固体電解質層を備える固体電池を生成する段階
を備える、方法。
【請求項5】
前記第1の電極膜を提供する前記段階及び前記第2の電極膜を提供する前記段階のうちのいずれか一方又は両方は:
少なくとも1つのタイプの電極活物質及び少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを備える粉末混合物を調製する段階;
前記粉末混合物を剪断力にさらすことによって、前記粉末混合物の中の前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダをフィブリル化する段階;及び
前記粉末混合物をプレスして自立膜にする段階
を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粉末混合物は、少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を更に備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の電極膜を第1の集電体上に、前記第1の集電体が前記第1の電極膜の前記第1の面上にある状態で、積層する段階;及び
前記第2の電極膜を第2の集電体上に、前記第2の集電体が前記第2の電極膜の前記第1の面上にある状態で、積層する段階
を更に備える、請求項4から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の電極膜を積層する前記段階及び前記第2の電極膜を積層する前記段階は、コーティングする前記段階の前に実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の電極膜を積層する前記段階及び前記第2の電極膜を積層する前記段階は、プレスする前記段階の後に実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
固体電池のための電極膜を製造する方法であって、前記方法は:
少なくとも1つのタイプの電極活物質、少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ、及び少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を備える粉末混合物を調製する段階、前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、前記粉末混合物の5~30重量%である;
前記粉末混合物を剪断力にさらすことによって、前記粉末混合物内の前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダをフィブリル化する段階;及び
前記粉末混合物をプレスして自立膜にする段階
を備える、方法。
【請求項11】
フィブリル化する前記段階の前に、前記粉末混合物に溶媒を添加して前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを活性化する段階を更に備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
フィブリル化する前記段階の前に、前記粉末混合物を70℃以上まで加熱して、前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを活性化する段階を更に備える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記粉末混合物は、ポリマー添加物及び液体キャリアを有する添加溶液を更に備え、前記添加溶液は前記粉末混合物の5重量%未満である、請求項10から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記粉末混合物は、ポリマー添加物、液体キャリア、及び導電性材料を有する導電性ペーストを更に備え、前記導電性ペーストは、前記粉末混合物の5重量%未満である、請求項10から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
自立電極膜であって:
少なくとも1つのタイプの電極活物質;
少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ;及び
前記自立電極膜の5~30重量%の量の少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末
を備える、自立電極膜。
【請求項16】
固体電池のための電解質膜を製造する方法であって、前記方法は:
少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ及び少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を備える粉末混合物を調製する段階、前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、前記粉末混合物の大部分である;
前記粉末混合物を剪断力にさらすことによって、前記粉末混合物内の前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダをフィブリル化する段階;及び
前記粉末混合物をプレスして自立電解質膜にする段階
を備える、方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、前記粉末混合物の80~97重量%の量である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、前記粉末混合物の80重量%以上の量である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、前記粉末混合物の80~99重量%の量である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、前記粉末混合物の95~99重量%の量である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
フィブリル化する前記段階の前に、前記粉末混合物に溶媒を添加して、前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを活性化する段階を更に備える、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
フィブリル化する前記段階の前に、前記粉末混合物を70℃以上まで加熱して、前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを活性化する段階を更に備える、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記粉末混合物は、ポリマー添加物及び液体キャリアを有する添加溶液を更に備え、前記添加溶液は前記粉末混合物の5重量%未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
固体電池のための電極ブロックを製造する方法であって、前記方法は:
請求項16から23の何れか一項に記載の方法;
電極膜の第1の面上に集電体を有する前記電極膜を提供する段階;及び
前記自立電解質膜を、前記第1の面に対して反対側の前記電極膜の第2の面上に積層する段階
を備える、方法。
【請求項25】
前記集電体を有する前記電極膜を提供する前記段階は:
少なくとも1つのタイプの電極活物質及び少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを備える粉末混合物を調製する段階;
前記粉末混合物を剪断力にさらすことによって、前記粉末混合物内の前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダをフィブリル化する段階;
前記粉末混合物をプレスして自立膜にする段階;及び
前記集電体上に前記自立膜を積層する段階
を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記粉末混合物は、少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
固体電池のための電極ブロックを製造する方法であって、前記方法は:
請求項16から23の何れか一項に記載の方法;
電極膜を提供する段階;及び
前記電極膜上に前記自立電解質膜を積層する段階
を備える、方法。
【請求項28】
前記電極膜を提供する前記段階は:
少なくとも1つのタイプの電極活物質及び少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを備える粉末混合物を調製する段階;
前記粉末混合物を剪断力にさらすことによって、前記粉末混合物内の前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダをフィブリル化する段階;及び
前記粉末混合物をプレスして自立膜にする段階
を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記粉末混合物は、少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
自立電解質膜であって:
少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ;及び
前記自立電解質膜の80~97重量%の量の少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末
を備える、自立電解質膜。
【請求項31】
自立電解質膜であって
少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ;及び
少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末、前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は重量比で前記自立電解質膜の大部分である、
を備える、自立電解質膜。
【請求項32】
前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、前記自立電解質膜の80重量%以上の量である、請求項31に記載の自立電解質膜。
【請求項33】
前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、前記自立電解質膜の80~99重量%の量である、請求項32に記載の自立電解質膜。
【請求項34】
前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、前記自立電解質膜の95~99重量%の量である、請求項33に記載の自立電解質膜。
【請求項35】
固体電池のための電極ブロックを製造する方法であって、前記方法は:
請求項31から34の何れか一項に記載の自立電解質膜を提供する段階;及び
電極膜上に前記自立電解質膜を積層する段階
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本願は、2021年10月1日に提出され、「DRY ELECTRODE MANUFACTURE FOR SOLID STATE ENERGY STORAGE DEVICES」と題する米国特許出願第17/492,458号の一部継続出願であり、その全開示が参照によって本明細書に組み込まれる。
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
【0002】
該当なし
【0003】
1.技術分野
【0004】
本開示は、概して、Liイオン電池などのエネルギー貯蔵デバイスを製造することに関し、より具体的には、固体電池の製造のための乾式プロセスに関する。
【0005】
2.関連技術
【0006】
Liイオン電池及び他のエネルギー貯蔵デバイスにおける可燃性液体電解質の使用を取り巻く安全性の懸念を理由に、及びLi金属アノードを使用して達成可能な高エネルギー密度を利用するために、固体電池及び他のエネルギー貯蔵デバイスの開発に多くの関心が向けられている。固体電池において、従来の液体電解質及びセパレータは、セラミック又は固体ポリマー電解質に置換されている。残念ながら、電解質材料は、N-メチルピロリドン(N-Methylpyrrolidone:NMP)、又はウェットコーティング法を使用することによって固体電解質膜を形成するために使用される他の溶媒に影響を受ける傾向にあり、電池性能の低下がもたらされる。さらに、固体電池を組み立てるための現在の技法は、固体電解質及び電極の間の実質的な境界層をもたらして、電解質イオンが通過することを困難にして、ひいては電池抵抗を高める。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、関連技術に付随する上記の欠点を克服するための様々な方法及びデバイスを企図している。本開示の実施形態の1つの態様は、固体電池のための電極ブロックを製造する方法である。前記方法は、電極膜の第1の面上に集電体を有する前記電極膜を提供する段階、前記第1の面に対して反対側の前記電極膜の第2の面上に乾燥電解質粉末の層をコーティングする段階、及び前記電極膜上にコーティングされた前記乾燥電解質粉末をプレスして、前記電極膜上に固体電解質層を生成する段階を備え得る。
【0008】
前記集電体を有する前記電極膜を提供する段階は、少なくとも1つのタイプの電極活物質及び少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを備える粉末混合物を調製する段階、前記粉末混合物を剪断力にさらすことによって、前記粉末混合物内の前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダをフィブリル化する段階、前記粉末混合物をプレスして自立膜にする段階、及び前記集電体上に前記自立膜を積層する段階を有し得る。前記粉末混合物は、少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を更に備え得る。
【0009】
本開示の実施形態の別の態様は、固体電池を製造する方法である。前記方法は、第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面を有する第1の電極膜を提供する段階、第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面を有する第2の電極膜を提供する段階、前記第1の電極膜の前記第2の面を乾燥電解質粉末の層を用いてコーティングする段階、乾燥電解質粉末の前記層上に前記第2の電極膜の前記第2の面を配置する段階、及び乾燥電解質粉末の前記層がその上にコーティングされている前記第1の電極膜を、前記第2の電極膜と共にプレスして、前記第1の電極膜、前記第2の電極膜、及びその間の固体電解質層を備える固体電池を生成する段階を備え得る。
【0010】
前記第1の電極膜を提供する段階及び前記第2の電極膜を提供する段階のうちのいずれか一方又は両方は、少なくとも1つのタイプの電極活物質及び少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを備える粉末混合物を調製する段階、前記粉末混合物を剪断力にさらすことによって、前記粉末混合物の中の前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダをフィブリル化する段階、及び前記粉末混合物をプレスして自立膜にする段階を有し得る。前記粉末混合物は、少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を更に備え得る。
【0011】
前記方法は、前記第1の電極膜を第1の集電体上に、前記第1の集電体が前記第1の電極膜の前記第1の面上にある状態で、積層する段階、及び前記第2の電極膜を第2の集電体上に、前記第2の集電体は前記第2の電極膜の前記第1の面上にある状態で、積層する段階を更に備え得る。前記第1の電極膜を積層する前記段階及び前記第2の電極膜を積層する前記段階は、コーティングする前記段階の前に又はプレスする前記段階の後に実行され得る。
【0012】
本開示の実施形態の別の態様は、固体電池のための電極膜を製造する方法である。前記方法は、少なくとも1つのタイプの電極活物質、少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ、及び少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を備える粉末混合物を調製する段階、前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、前記粉末混合物の5~30重量%である、前記粉末混合物を剪断力にさらすことによって、前記粉末混合物内の前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダをフィブリル化する段階、及び前記粉末混合物をプレスして自立膜にする段階を備え得る。
【0013】
前記方法は、フィブリル化する前記段階の前に、前記粉末混合物に溶媒を添加して前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを活性化する段階を備え得る。
【0014】
前記方法は、フィブリル化する前記段階の前に、前記粉末混合物を70℃以上まで加熱して、前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを活性化する段階を備え得る。
【0015】
前記粉末混合物は、ポリマー添加物及び液体キャリアを有する添加溶液を備え得、前記添加溶液は前記粉末混合物の5重量%未満である。
【0016】
前記粉末混合物は、ポリマー添加物、液体キャリア、及び導電性材料を有する導電性ペーストを備え得、前記導電性ペーストは、前記粉末混合物の5重量%未満である。
【0017】
本開示の実施形態の別の態様は、自立電極膜である。前記自立電極膜は、少なくとも1つのタイプの電極活物質、少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ、及び前記自立電極膜の5~30重量%の量の少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を備え得る。
【0018】
本開示の実施形態の別の態様は、固体電池のための電解質膜を製造する方法である。前記方法は、少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ及び少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を備える粉末混合物を調製する段階、前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、重量比で前記粉末混合物の大部分(例えば、前記粉末混合物の80重量%以上、例えば80~97重量%又は80~99重量%、好ましくは95~99重量%)である、前記粉末混合物を剪断力にさらすことによって、前記粉末混合物内の前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダをフィブリル化する段階、及び前記粉末混合物をプレスして自立膜にする段階を備え得る。
【0019】
前記方法は、フィブリル化する前記段階の前に、前記粉末混合物に溶媒を添加して前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを活性化する段階を備え得る。
【0020】
前記方法は、フィブリル化する前記段階の前に、前記粉末混合物を70℃以上まで加熱して、前記少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを活性化する段階を備え得る。
【0021】
前記粉末混合物は、ポリマー添加物及び液体キャリアを有する添加溶液を備え得、前記添加溶液は前記粉末混合物の5重量%未満である。
【0022】
本開示の実施形態の別の態様は、固体電池のための電極ブロックを製造する方法である。前記方法は、前記電解質膜を製造する上記の方法を実行する段階、(集電体を有するか、又はそれを有しない)前記電極膜を提供する段階、及び前記自立電解質膜を、前記電極膜上に積層する段階を備え得る。
【0023】
本開示の実施形態の別の態様は、自立電解質膜である。前記自立電解質膜は、少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ及び少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を備え得る。前記少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末は、重量比で前記自立電解質膜の大部分であり得る。例えば、前記乾燥電解質粉末は、前記自立電解質膜の80重量%以上、例えば、80~97重量%又は80~99重量%、好ましくは95~99重量%であり得る。
【0024】
本開示の実施形態の別の態様は、固体電池のための電極ブロックを製造する方法である。前記方法は、電極膜上に上記自立電解質膜を積層する段階を備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本明細書に開示される様々な実施形態のこれらの及び他の特徴及び利点は、下記の説明及び図面に関してより良好に理解され、これらの図面では、同様の数字は全体を通して同様の部分を指している。
【0026】
図1】固体電池のための電極ブロックを製造するための装置の図である。
【0027】
図1A】電極ブロックの拡大図である。
【0028】
図2】固体電池を製造するための装置の図である。
【0029】
図2A】固体電池の拡大図である。
【0030】
図3】電極ブロックを製造するための作業フローである。
【0031】
図4】固体電池を製造するための作業フローである。
【0032】
図5】電極膜を製造するための作業フローであり、図3中の段階310、図4中の段階410、又は図4中の段階420の例示的なサブ作業フローである。
【0033】
図6】電解質膜を製造するための作業フローである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、固体電池及び電極の様々な実施形態、並びにその製造方法及び中間製品を包含する。添付の図面に関連して、下記に記載される発明を実施するための形態は、複数の現在企図される実施形態の説明として意図されており、開示される発明が開発され得る、又は利用され得る唯一の形態を表すことを意図するものではない。この説明は、例示される実施形態と関連して機能及び特徴を記載する。しかしながら、本開示の範囲内に包含されることが同じく意図される異なる実施形態によって、同じ又は等価な機能が達成される場合があることを理解されたい。第1の及び第2の及び同様のもののような関係語の使用は、1つの主体を別の主体から、そのような主体の間にいかなる実際のそのような関係性又は順序を必ずしも要求又は示唆することなく、単に区別するために使用されることを更に理解されたい。
【0035】
図1は、固体電池のための電極ブロック100を製造するための装置10を示す。図1Aは、電極ブロック100を示す拡大図であり、当該電極ブロック100は、電極膜110及びその上に積層された固体電解質層120を備え得る。電極ブロック100は、円筒型又は角柱型セルなどの多層電池を製造するために、追加の電極ブロック100と共にスタック及び/又は巻き付けられ得る。示されるように、装置10は、1つ又は複数のピースのロールツーロールプロセス設備を備え得、例えば、その上に電極膜110がロールとして最初に巻き付けられ得る第1のスプール12、その上に最終電極ブロック100が巻き付けられ得る第2のスプール14、及び第1のスプール12から第2のスプール14に向けて装置10を通して電極膜110を運ぶための1つ又は複数のローラ16(例えば、駆動及び/又はアイドラローラ)を含み得る。従来の固体電池製造設備と異なり、図1の装置10は、乾燥電解質粉末119の層を電極膜110の一方の面114にコーティングするためのスキャッタコータ11又は他の手段を含み得、当該コーティングの後、乾燥電解質粉末119がローラプレス又はカレンダ18によってプレスされて電極膜110の上に固体電解質層120が生成され得る。このようにして、固体電解質層120は乾式プロセスで形成され得、本来であれば固体電解質の性能を低下させ得る従来のスラリーベースプロセスにおいて使用される著しい量のNMP又は他の溶媒が回避される。さらに、固体電解質層120が電極膜110の上に続いてスタックされるのではなく、その上に直接形成されるので、電極膜110及び固体電解質層120の間に結果として得られる境界は、電解質イオンが通過することがより容易であり得、電池抵抗が低減する。
【0036】
電極膜110は、カソード膜又はアノード膜のいずれかであり得、それぞれカソード又はアノードに好適な活物質層を含み得る。多層電池を組み立てるために、カソード及びアノード電極膜110を有する電極ブロック100は、固体電解質層120が各カソードを隣接するアノードから、及び各アノードを隣接するカソードから分離するように、典型的には交互となる様式でスタックされ得る。図示を容易にするために、電極膜110は単層、すなわち(例えば、50μmから350μmであり得る)活物質層のみを有するものとして図示されており、乾燥電解質粉末119がその一方の面114上にコーティングされている。しかしながら、カソード電極膜110の場合のアルミニウム金属シート、又はアノード電極膜110の場合の銅金属シートなどの(例えば、8μmから30μmであり得る)集電体は、反対側の面112上に積層され得る。別個に示されてはいないが、この集電体は、図1中に図示されるプロセスについて存在してよく、乾燥電解質粉末119を固体電解質層120へとプレスする最中の安定性を提供することを助け、図1A中に示される最終電極ブロック100内にあり得る。図1のプロセスの前ではなく後に集電体が電極ブロック100に積層され得ることも、通常、実用性はより低いが、企図される。
【0037】
図2は、固体電池200を製造するための装置20を示す。図2Aは、固体電池200を示す拡大図であり、当該固体電池200は、第1の電極膜210、固体電解質層220、及び第2の電極膜230を、示されるように述べた順序で備え得る。装置20は、図1の装置10と大部分は同じであり得、その上に第1の電極膜210がロールとして最初に巻き付けられ得る第1のスプール12、その上に最終製品、この場合は固体電池200が巻き付けられ得る第2のスプール14、1つ又は複数のローラ16、ローラプレス又はカレンダ18、及びスキャッタコータ11又は他の手段を同様に含み得る。装置20は、その上に第2の電極膜230がロールとして最初に巻き付けられている第3のスプール22を追加しているという点で装置10とは異なり得る。装置20において、スキャッタコータ11は、乾燥電解質粉末119の層を、第1の電極膜210の一方の面214上にコーティングし得、当該コーティングの後、第2の電極膜230の一方の面234が乾燥電解質粉末119の層上に配置され得る。ローラプレス又はカレンダ18を使用して、その上に乾燥電解質粉末119の層がコーティングされている第1の電極膜210は、次に第2の電極膜230と共にプレスされて、第1の電極膜210、第2の電極膜230、及びその間の固体電解質層220を含む固体電池200が生成され得る。
【0038】
図1及び図1A中に示される装置10が多層電池における使用のための個別の電極ブロック100を生成し得る一方で、図2及び図2Aの装置20は、1つのカソード及び1つのアノードのみを有する最終単層固体電池200を生成し得る。そのような単層固体電池200は、例えばパウチセル又はボタンセルとしてパッケージされ得る。第1の及び第2の電極層210、230のうちのいずれか一方がカソードであり、他方がアノードであり得ることに留意されたい。すなわち、乾燥電解質粉末119は、カソード又はアノードのいずれかの上に、他方によって挟まれプレスされて固体電解質層220が形成される前に、コーティングされ得る。
【0039】
ここでも、図示を容易にするために、電極膜210は、単層、すなわち活物質層のみを有するものとして図示されており、乾燥電解質粉末119がその一方の面214上にコーティングされている。同様に、電極膜230は、活物質層のみを有するものとして図示されており、一方の面234が乾燥電解質粉末119に接して配置されて図示されている。上記のとおり、カソード電極膜210、230の場合のアルミニウム金属シート、又はアノード電極膜210、230の場合の銅金属シートなどの集電体は、反対側の面212、232上に積層され得、当該集電体は図2中に図示されるプロセスについて、及び図2A中に示される最終固体電池200内に存在し得ることが理解されるべきである。しかしながら、ケースの金属をこの目的のために利用するコインセルなどのいくつかの単一セル電池200は、集電体を有しなくてよいので、図2のプロセスが実際には電極膜210、230上の集電体が存在せず進行し得ることが企図される。これに関連して、図2のプロセスは、追加の電極膜230が図1のプロセスと比較してプレス中のある程度の安定性をもたらし得るので、金属集電体層の実際の必要性はより低い場合がある。したがって、集電体が最終固体電池200内に使用される場合、電極膜210、230は、乾燥電解質粉末119を用いたコーティングの前(ひいてはプレスの前)又はプレスの後のいずれかで、それぞれの集電体上に積層され得る。
【0040】
図3は、図1A中に示される電極ブロック100などの電極ブロックを製造するための作業フローである。作業フローは、電極膜110を提供する段階(段階310)で始まり得、当該電極膜110は典型的には上記で説明されたように集電体上に積層され得る。電極膜110は、例えばスラリーコーティング法、押出法、及び乾式法を含む任意の方法によって生成され得る。有利には、「Electrode for Energy Storage Devices and Method of Making Same」と題する米国特許第10,069,131号、「Dry Electrode Manufacture by Temperature Activation Method」と題する米国特許出願公開第2020/0388822号、「Dry Electrode Manufacture with Lubricated Active Material Mixture」と題する米国特許出願第17/014,862号、及び「Dry Electrode Manufacture with Composite Binder」と題する米国特許出願第17/097,200号を含む本発明者の自身の先行する特許及び特許出願において説明される方法のうちのいずれかのような乾式法が使用され得、これらの各々の全開示が、参照によって本明細書に全体として組み込まれる。特に下記でより詳細に説明されるように、電極膜110は、少なくとも1つのタイプの電極活物質(例えば、カソードの場合のリチウム金属酸化物、又はアノードの場合のグラファイト)、及び少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylne:PTFE)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone:PVP)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride:PVDF)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide:PEO)又はカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose:CMC)を含む粉末混合物を調製し、粉末混合物を剪断力にさらすことによってバインダをフィブリル化し、粉末混合物をプレスして、次に集電体上に積層され得る自立膜にすることによって生成され得る。
【0041】
電極膜110が好ましくはその第1の面112上に集電体を含んで生成又は別様に提供された状態で、図3の作業フローは、第1の面112に対して反対側の電極膜110の第2の面114上に乾燥電解質粉末119の層をコーティングする段階(段階320)へ続き得る。図1中に図示されるように、電極膜110上の乾燥電解質粉末119のコーティングは、装置10によって例示されるロールツーロールプロセスの一部であってよく、その中で電極膜110が第1のスプール12から第2のスプール14へ1つ又は複数のローラ16によって運ばれるときにスキャッタコータ11が電極膜110上に乾燥電解質粉末119をコーティングする。作業フローは、電極膜110上にコーティングされた乾燥電解質粉末119をプレスして、電極膜110上に固体電解質層120を生成する段階(段階330)で終了し得る。図1中に示されるように、例えば、乾式電極膜110が第1のスプール12から第2のスプール14へ装置10を通過するときに、ローラプレス又はカレンダ18は電極膜110上の乾燥電解質粉末119をプレスして、固体電解質層120を生成し得る。上記で説明されたように多層電池を生成するために使用され得る完成した電極ブロック100は、図1A中に図示されるとおり(集電体は図示を容易にするために省略されている)であり得る。
【0042】
図4は、図2A中に示される固体電池200などの固体電池を製造するための作業フローである。作業フローは、第1の電極膜210及び第2の電極膜230を提供する段階(段階410及び420)で始まり得る。上記で説明された電極膜110と同様に、電極膜210、230は、例えばスラリーコーティング法、押出法、及び、上記で参照によって組み込まれたもののような本発明者の自身の先行する特許及び特許出願において説明される方法のうちのいずれかを含む乾式法を含む任意の方法によって生成され得る。特に、下記でより詳細に説明されるように、電極膜210、230の各々は、少なくとも1つのタイプの電極活物質(例えば、カソードの場合のリチウム金属酸化物、又はアノードの場合のグラファイト)及び少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ、例えば、PTFE、PVP、PVDF、PEO又はCMCを含む粉末混合物を調製し、粉末混合物を剪断力にさらすことによってバインダをフィブリル化し、粉末混合物をプレスして、次に集電体上に積層され得る自立膜にすることによって生成され得る。第1の電極膜210がカソード活物質から構成される場合、第2の電極膜230はアノード活物質から構成され得る。第1の電極膜210がアノード活物質から構成される場合、第2の電極膜230はカソード活物質から構成され得る。
【0043】
電極膜210、230がオプションでその第1の面212、232上にそれぞれの集電体を含んで生成又は別様に提供された状態で、図4の作業フローは、第1の面212に対して反対側の第1の電極膜210の第2の面214上に乾燥電解質粉末119の層をコーティングする段階(段階430)へ続き得る。図2中に図示されるように、電極膜210上の乾燥電解質粉末119のコーティングは、装置20によって例示されるロールツーロールプロセスの一部であってよく、その中で第1の電極膜210が第1のスプール12から第2のスプール14へ1つ又は複数のローラ16によって運ばれるときにスキャッタコータ11が(カソード又はアノードのいずれかであり得る)第1の電極膜210上に乾燥電解質粉末119をコーティングする。乾燥電解質粉末119が第1の電極膜210上にコーティングされた後に、作業フローは乾燥電解質粉末119の層上に第2の電極膜230を配置する段階へ続き得る。特に、第2の電極膜230の第2の面234(すなわち、オプションの集電体を有する第1の面232に対して反対側の面)は、第1の及び第2の電極膜210、230が乾燥電解質粉末119の層を挟むように、図2中に示されるように乾燥電解質粉末119の層の近くに配置され得る。作業フローは、その上に乾燥電解質粉末119の層がコーティングされている第1の電極膜210を第2の電極膜230と共に(例えば、ローラプレス又はカレンダ18を使用して)プレスして、第1の電極膜210、第2の電極膜230、及びその間の固体電解質層220を含む固体電池200を生成する段階(段階450)へ続き得る。上記で説明されたような単層電池であり得る完成した固体電池200は、図2A中に図示されるとおりであり得る。
【0044】
図4の作業フローは、第1の集電体(例えば、カソードの場合のアルミニウム金属シート、又はアノードの場合の銅金属シート)上に第1の電極膜210を積層する段階、及び同様に、第2の集電体上に第2の電極膜230を積層する段階(段階460、470)で終了し得る。これらの段階は、図4中に示されるように段階450に後続し得、完成した固体電池200はその後、外側面212、232の両方の上のそれぞれの集電体に対して積層される。代替的に、段階460及び470のうちの一方又は両方は、電極膜210、230が上記で説明されたように乾燥電解質粉末119を用いてコーティングされる前にそれぞれの集電体に対して積層されるように、段階430に先行し得る。この場合、図2Aは、図示を容易にするために、そのようなオプションの集電体を省略している。代替的に、段階460及び470は、完全に省略され得、これは集電体を使用しない特定のボタンセルを製造する場合に有用であり得る。
【0045】
図3及び図4の作業フローのいずれかにおいて(及び装置10、20のいずれかによって)使用される乾燥電解質粉末119は主に(例えば、80~100重量%)、ガーネット構造酸化物、例えば、様々なドーパントを有するリチウムランタンジルコニウム酸化物(lithium lanthanum zirconium oxide:LLZO)(例えば、Li6.5LaZr12又はLiLaZr12)、リチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物(lithium lanthanum zirconium tantalum oxide:LLZTO)(例えば、Li6.4La1.4Ta0.612)、リチウムランタンジルコニウムニオブ酸化物(lithium lanthanum zirconium niobium oxide:LLZNbO)(例えば、Li6.5LaZr1.5Nb0.512)、リチウムランタンジルコニウムタングステン酸化物(lithium lanthanum zirconium tungsten oxide:LLZWO)(例えば、Li6.3LaZr1.650.3512)、ペロブスカイト構造酸化物、例えば、チタン酸リチウムランタン(lithium lanthanum titanate:LLTO)(例えば、Li0.5La0.5TiO、Li0.34La0.56TiO、又はLi0.29La0.57TiO)又はリン酸リチウムアルミニウムチタン(lithium aluminum titanium phosphate:LATP)(例えば、Li1.4Al0.4Ti1.6(PO)、リチウム超イオン伝導体Li2+2xZn1-xGeO(lithium super ionic conductor:LISICON)、例えば、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)(例えば、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO)、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(LAG又はナトリウム超イオン伝導体、すなわちNASICON型LAGP)(例えば、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO又はLi1.5Al0.5Ge1.512)又はリン酸、例えば、リン酸リチウムチタニウム(lithium titanium phosphate:LTPO)(例えば、LiTi(PO)、リン酸リチウムゲルマニウム(lithium germanium phosphate:LGPO)(例えば、LiGe(PO)、リン酸リチウム(lithium phosphate:LPO)(例えばγ-LiPO又はLi11)、又はリン酸リチウムオキシナイトライド(lithium phosphorus oxynitride:LiPON)などのセラミックであり得る。別の例として、乾燥電解質粉末119は主に(例えば、80~100重量%)、PEO、PEO-PTFE、PEO-LiTFSi、PEO-LiTFSi/LLZO、PEO-LiClO、PEO-LiClO/LLZO、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホネート(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) polystyrene sulfonate:PEDOT:PSS)、ポリフェニレンオキシド(polyphenylene oxide:PPO)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)、ポリエーテル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ポリシロキサン系ポリマー、ポリウレタン、ポリ(ビス((メトキシエトキシ)エトキシ)ホスファゼン)(poly-(bis((methoxyethoxy)ethoxy)phosphazene):MEEP)、又はポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)などのポリマーであり得る。別の例として、乾燥電解質粉末119は主に(例えば、80~100重量%)、硫化リチウム(lithium sulfide:LS)(例えば、LiS)、ガラス状硫化リチウム硫化リン(lithium sulfide phosphorus sulfide:LSPS)(例えば、LiS-P)、ガラス状硫化リチウム硫化ホウ素(lithium sulfide boron sulfide:LSBS)(例えば、LiS-B)、ガラス状硫化リチウム硫化ケイ素(lithium sulfide silicon sulfide:LSSiS)(例えば、LiS-SiS)、リチウムゲルマニウム硫化物(lithium germanium sulfide:LGS)(例えば、LiGeS)、リチウムリン硫化物(lithium phosphorus sulfide:LPS)(例えば、LiPS、例えば、75LiS-25P又はLi11例えば、70LiS-30P)、リチウムケイ素リンスズ硫化物(lithium silicon phosphorus tin sulfide:LSPTS)(例えば、Li(SiSn)P)、硫銀ゲルマニウム鉱LiPSX(X=Cl,Br)(例えば、LPSBr、例えば、LiPSBr、LPSCl、例えば、LiPSCl、LPSClBr、例えば、LiPSCl0.5Br0.5、又はLSiPSCl、例えば、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3)又はチオ-LISICON(例えば、LGPS、例えば、Li10GePS12)などの硫化物であり得る。
【0046】
図5は、上記で説明された電極膜110、210、230などの電極膜を製造するための作業フローである。それゆえ、図5図3中の段階310、図4中の段階410、又は図4中の段階420の例示的なサブ作業フローとして機能し得る。特に、図5はカソード又はアノード電極膜110、210、230を生成するための乾式法の1つの例を提供し、これは更に図3の作業フローに従って多層電池の電極ブロック100を生成するために、又は図4の作業フローに従って単層電池を生成するために使用され得る。上記で述べられたように、乾式法によって電極膜110、210、230を生成することは、概して少なくとも1つのタイプの電極活物質及び少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダを含む粉末混合物を調製し、粉末混合物を剪断力にさらすことによってバインダをフィブリル化し、粉末混合物をプレスして、次に集電体上に積層され得る自立膜にすることを伴い得る。より具体的には、図5の作業フローは、電極膜110、210、230のための粉末混合物を調製する段階(段階510)で始まり得る。電極活物質は、粉末混合物の大部分を構成し得、例えば、粉末混合物の82~99重量%(例えば、94重量%)である。カソードに関して、電極活物質は、リチウム金属酸化物、例えば、リチウムマンガン酸化物(lithium manganese oxide:LMO)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(lithium nickel manganese cobalt oxide:NCM)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(lithium nickel cobalt aluminum oxide:NCA)、リチウムニッケルマンガン酸化物(lithium nickel manganese oxide:LMNO)などであり得る。アノードの場合、電極活物質は、グラファイト、二酸化ケイ素(SiO)、その2つの混合物などであり得る。活物質の伝導率に応じて、導電性材料が例えば0~10重量%(例えば、4重量%)の量で粉末混合物へ添加されてもよい。例示的な導電性材料は、活性炭、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、又はsuper P(例えば、スイス国所在のImerys Graphite & Carbon社によってSUPER P(登録商標)の商標名の下で市販されるカーボンブラック)などの導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ(carbon nanotube:CNT)、グラファイト粒子、導電性ポリマー、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0047】
電極膜110、210、230を乾式法によって形成する(ひいては従来のスラリーコーティング及び押出法に関連する長い乾燥時間を回避する)ために、粉末混合物は、上記で参照によって組み込まれた、「Dry Electrode Manufacture with Composite Binder」と題する米国特許出願第17/097,200号において説明されるような複合バインダを含む、少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone:PVP)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride:PVDF)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide:PEO)又はカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose:CMC)を更に含み得る。フィブリル化可能バインダは、それらの柔らかく、しなやかな堅さによって、及び、特にそれらの伸展する能力によって特徴付けられ得、それらが剪断力を受けるときにより長く且つより細くなって繊維質の状態を呈する。下記で説明されるように更に化学的に又は熱的に活性化されてその柔軟性を増加させ得る1つ又は複数のフィブリル化可能バインダの使用のおかげで、粉末混合物は、破損なく且つNMPなどの溶媒の過度の使用なくプレスされて自立膜にされ得る。
【0048】
上記で参照によって組み込まれた「Dry Electrode Manufacture with Lubricated Active Material Mixture」と題する米国特許出願第17/014,862号においてより詳細に説明されるように、電極活物質を含有する粉末混合物は、バインダを添加する前にポリマー含有添加溶液又は導電性ペースト内で混合することによって潤滑化され得る。例えば、粉末混合物は、電極活物質に加えて(及び続いて添加されるフィブリル化可能バインダに加えて)、ポリマー添加物及び液体キャリアを含む添加溶液を含み得る。添加溶液は、添加される比較的少ない量の液体にも関わらず粉末混合物が乾燥粉末のままであり得るように、粉末混合物の5重量%未満であり得る。例えば、電極活物質、任意の導電性材料、フィブリル化可能バインダ、及び添加溶液、並びに任意の電解質粉末(下記を参照)を含む最終粉末混合物は、95重量%を超える総固体含有量を有し得る。添加溶液の0.5重量%~10重量%であり得るポリマー添加物は、カーボンナノチューブ用の分散剤として、又はバインダとして使用されることが公知のもののようなポリマー化合物、界面活性剤又は高粘度液体(例えば、鉱油又はワックス)であってよい。例えば米国特許第8,540,902号を参照されたく、これは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホネート、ポリフェニルアセチレン、ポリメタ-フェニレンビニレン、ポリピロール、ポリp-フェニレンベンゾビスオキサゾール、天然ポリマー、水溶液の両親媒性物質、アニオン性脂肪族界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム、環状リポペプチドバイオ界面活性剤、水溶性ポリマー、ポリビニルアルコールドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン界面活性剤、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシルエチルセルロースポリアクリル酸、ポリ塩化ビニル及びそれらの組み合わせを含めた例示的な分散剤及びポリマーバインダを提供する。別の例示的なポリマー添加物は、スチレンーブタジエンゴム(SBR)であってよい。添加溶液を生成するのに使用される液体キャリアは、水性であっても非水性であってもよく、例えば、n-メチルピロリドン、炭化水素、酢酸エステル、アルコール、グリコール、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、ジエチルカーボネート及びジメチルカーボネートからなる群から選択された1又は複数の化学物質を含んでよい。
【0049】
代替的に、粉末混合物は、電極活物質に加えて(及び続いて添加されるフィブリル化可能バインダに加えて)、ポリマー添加物、液体キャリア、及び導電性材料を含む導電性ペーストを含み得る。上記で説明された添加溶液と同様に、導電性ペーストは粉末混合物の5重量%未満であり得る。例えば、電極活物質、フィブリル化可能バインダ、及び導電性ペースト(典型的には、別個の導電性材料が粉末混合物内に使用されない)、並びに任意の電解質粉末(下記を参照)を含む最終粉末混合物は、95重量%を超える総固体含有量を有し得る。導電性ペーストは、例えば導電性ペーストの1~20重量%、好ましくは2~15重量%、より好ましくは5~10重量%である導電性材料の添加という点で添加溶液とは異なり得る。導電性ペーストは、例えば、米国特許第8,540,902号によって例示されるようなコーティング方法で使用される湿潤混合物において電気の導電性を高めるために従来使用されるCNTペーストであってよい。1つの例として、導電性ペーストは、ポリマー添加物としての3.08(重量)%PVP、液体キャリアとしての91.67(重量)%NMP、及び導電性材料としての6.25(重量)%カーボンナノチューブからなり得る。
【0050】
最終電極ブロック100又は固体電池200において、結果として得られる電極膜110、210、230がより簡単に電解質イオンを固体電解質層120、220と交換でき、それによって電池抵抗が低減されるように、粉末混合物は少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を含み得る。粉末混合物における乾燥電解質粉末の量は、例えば5~30重量%であり得る。粉末混合物内に含まれる乾燥電解質粉末は、固体電解質層120、220を形成するのに使用される乾燥電解質粉末119と同じ又はそれとは異なる場合があり、例えば、乾燥電解質粉末119に関して上記で列挙された材料のうちのいずれかであり得る。
【0051】
電極活物質、電極活物質を潤滑化するための任意の添加溶液又は導電性ペースト、フィブリル化可能バインダ、任意の追加の導電性材料、及び有利には少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を含む粉末混合物が調製された状態で、図5の作業フローは、1つ又は複数の活性化方法によってフィブリル化可能バインダを活性化する段階へ続き得る。溶媒活性化段階において、溶媒が粉末混合物に添加されて、フィブリル化可能バインダが化学的に活性化され得、フィブリル化可能バインダを軟化させ破損なくより長く且つより細く伸展できるようにし、その接着強度を改善する(段階520)。除去が困難であり長時間の乾燥プロセスを伴い得るNMPなどの溶媒と異なり、溶媒活性化段階520において添加された溶媒は、130℃未満又は100℃未満の(すなわち水の沸点未満の)相対的に低い沸点を有し得る。例示的な溶媒は、炭化水素(例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン)、酢酸(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル)、アルコール(例えば、プロパノール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール)、グリコール、アセトン、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate:DMC)、ジエチルカルバマジン(diethylcarbamazine:DEC)、テトラクロロエチレンなどを含み得る。溶媒が結果として得られる湿潤混合物の60~80重量%であり得るスラリーコーティング及び押出プロセスと異なり、段階520において添加される溶媒は、結果として得られる混合物の20重量%未満であり得る。例えば、粉末混合物の添加された溶媒に対する割合は、およそ100:10又は100:5又は100:3であり得る。
【0052】
段階520の溶媒活性化の代わりに又はそれに加えて、作業フローは温度活性化段階を含み得、当該段階において粉末混合物が70℃以上、好ましくは100℃以上まで加熱されて、フィブリル化可能バインダが熱的に活性化する(段階530)。溶媒活性化段階520と同様に、温度活性化段階530は、フィブリル化可能バインダを軟化させ破損なくより長く且つより細く伸展できるようにし得、その接着強度を改善する。温度活性化段階530において、粉末混合物が加熱される温度は、バインダの軟化がガラス温度に到達する前に生じ得るので、バインダのガラス転移温度(例えば、PTFEに関して114.85℃)未満であり得る。代替的に、混合物はバインダのガラス温度に等しいか又はそれを超える温度まで加熱され得る。溶媒活性化段階520及び温度活性化段階530の両方が使用される場合、2つの段階はどちらの順序でも進行し得る。
【0053】
段階520及び530のうちのいずれか一方又は両方によってフィブリル化可能バインダが化学的に及び/又は熱的に活性化されている状態で、図5の作業フローは、粉末混合物を剪断力にさらすことによって、粉末混合物内のバインダをフィブリル化する段階(段階540)へ続き得る。例えば、粉末混合物は通常のキッチンブレンダ又は産業ブレンダにおいてブレンドされ得る。フィブリル化可能バインダを変形(例えば、延伸)してより粘性の高く、よりしなやかな混合物をもたらすのに十分な剪断力は、およそ10,000RPMで1~10分(例えば5分)の間ブレンダ内で粉末混合物をブレンドすること、又は市販の生地ミキサ又は産業サイズのすり鉢とすりこぎを使用して練り混ぜプロセスが後続することによって実現され得る。好ましくは、高剪断グラニュレータ(例えばジェットミル)などの高剪断ミキサが使用されてよい。溶媒が溶媒活性化段階520において添加されてバインダが化学的に活性化する場合、溶媒は、場合によっては、粉末混合物が段階540において剪断力にさらされている間に、粉末混合物へと注入され得る。そうして、段階520及び540は、単一の段階において実行され得る。
【0054】
混合物が剪断力にさらされた後、図5の作業フローは、混合物をプレスして電極膜110、210、230として機能する自立膜を生成する段階550へ続き得る。これは、例えば、150℃の温度及び20μmのロールギャップで、例えば、ローラプレス又はカレンダを使用してなされ得る。結果として得られる自立電極膜110、210、230は、少なくとも1つのタイプの電極活物質、少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ、及び自立電極膜の5~30重量%の量の少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を備え得る。電極膜110、210、230が固体電解質層120、220を形成するための乾燥電解質粉末119のコーティング(段階320、430)の前に集電体上に積層される場合、図5の作業フローは、集電体上に自立電極膜110、210、230を積層する段階(段階560)で終了し得る。例えば、上記で説明されたように、これは、図3の作業フローに従って多層電池のための電極ブロック100を生成する場合(すなわち図5が段階310のサブ作業フローである場合)、特に有利であり得る。集電体が使用されない場合、又は(図4のオプションの段階460及び470の場合と同様に)集電体が後で添加される場合、段階560は省略され得る。
【0055】
上記で述べられたように、図5の作業フローは、有利には、図1及び図2中に示される電極膜110、210、230を生成するために使用され得、これらは次に図3の作業フローに従って多層固体電池の電極ブロック100へと、又は図4作業フローに従って単層固体電池200へと組み立てられ得る。この目的で、図5の段階510において調製される粉末混合物は、好ましくは、上記で述べられたように少なくともいくらかの乾燥電解質粉末を含み、本明細書で説明される活性化された乾式プロセスを固体電池の製造に比類なく好適にし得る。図5の作業フローと図3又は図4のそれの組み合わせを使用して、このようにして開始から出来上がりまで全体的に乾式法によって電極ブロック100又は固体電池200を製造することによって、従来の湿式法に関連する長い乾燥時間及び低下した電池性能が完全に回避され得、より実用的且つ効率的な固体電池製造がもたらされる。
【0056】
図6は、電解質膜を製造するための作業フローである。図6の作業フローは、乾燥固体電池製造の代替的な方法の一部であり得る。電極膜110、210上に直接コーティングされた乾燥電解質粉末119から形成される、図1図4に関して説明された固体電解質層120、220と異なり、図6において生成される固体電解質層は、その後に電極膜上に積層され得る自立膜の形である。これに関連して、図6の電解質膜を受ける電極膜は、依然として図5の乾式法に従って生成され得、そのため固体電池を生成するための別の全体的に乾式のプロセスがもたらされることに留意されたい。
【0057】
図6の作業フローは、(図5の例示的な方法のような)電極膜を生成するための乾式法に類似するとみなされ得、主な相違点は、粉末混合物がカソード又はアノードではなく固体電解質を生成するための成分を含有することである。特に、図6の作業フローは、電解質膜のための粉末混合物を調製する段階(段階610)で始まり得る。この場合、乾燥電解質粉末(電極活物質ではなく)は、重量比で粉末混合物の大部分を構成し得、例えば粉末混合物の80重量%以上、例えば80~97重量%又は80~99重量%、好ましくは95~99重量%であり得る。乾燥電解質粉末の例は、乾燥電極粉末119に関して上記で列挙された材料のうちのいずれかを含み得る。乾式法によって電解質膜を形成する(ひいては従来の湿式法に関連する長い乾燥時間を回避する)ために、粉末混合物は、上記で参照によって組み込まれた、「Dry Electrode Manufacture with Composite Binder」と題する米国特許出願第17/097,200号において説明されるような複合バインダを含む少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ、例えば、PTFE、PVP、PVDF、PEO又はCMCを更に含み得る。上記で説明されたように更に化学的に又は熱的に活性化されてその柔軟性を増加させ得る1つ又は複数のフィブリル化可能バインダの使用により、粉末混合物が破損なく且つNMPなどの溶媒の過度の使用なくプレスされて自立膜にされることが可能になり得る。
【0058】
電極膜110、210、230のための粉末混合物の場合とまったく同様に、乾燥電解質粉末を含有する粉末混合物は、バインダを添加する前にポリマー含有添加溶液内で混合することによって潤滑化され得ることが企図される。例えば、粉末混合物は、乾燥電解質粉末に加えて(及び続いて添加されるフィブリル化可能バインダに加えて)、ポリマー添加物及び液体キャリアを含む添加溶液を含み得る。添加溶液は、添加される比較的少ない量の液体にも関わらず粉末混合物が乾燥粉末のままであり得るように、粉末混合物の5重量%未満であり得る。例えば、乾燥電解質粉末、フィブリル化可能バインダ、及び添加溶液を含む最終粉末混合物は、95重量%を超える総固体含有量を有し得る。ポリマー添加物は上記で説明されたものと同じであり得る。上記で説明された導電性ペーストは、伝導率が固体電解質において典型的には望ましくないので電解質膜のための粉末混合物を調製する場合は概して使用されないことに留意されたい。
【0059】
乾燥電解質粉末、乾燥電解質粉末を潤滑化するための任意の添加溶液、及びフィブリル化可能バインダを含む粉末混合物が調製されている状態で、図6の作業フローは、1つ又は複数の活性化方法によってフィブリル化可能バインダを活性化する段階へ続き得る。すなわち、図6の作業フローは、図5の溶媒活性化段階520と同じ溶媒活性化段階620及び/又は図5の温度活性化段階530と同じ温度活性化段階630を含み得る。このようにして、フィブリル化可能バインダは、化学的に及び/又は熱的に活性化され得、その結果それは軟化し破損なくより長く且つより細く伸展できるようになりそのためその接着強度が改善される。溶媒活性化段階620及び温度活性化段階630の両方が使用される場合、2つの段階はどちらの順序でも進行し得る。図6の作業フローは、粉末混合物を剪断力にさらすことによって粉末混合物内のバインダをフィブリル化する段階(段階640)へ続き得、これは図5の段階540と同じであり得る。溶媒が溶媒活性化段階620において添加されてバインダが化学的に活性化される場合、溶媒は、場合によっては、粉末混合物が段階640において剪断力にさらされている間に、粉末混合物へと注入され得る。そうして、段階620及び640は、単一の段階において実行され得る。
【0060】
混合物が剪断力にさらされた後、図6の作業フローは、混合物をプレスして自立膜を生成する段階650で終了し得、これは例えば、図5の段階550と同じ方法で実行され得る。結果として得られる自立電解質膜は、少なくとも1つのタイプのフィブリル化可能バインダ、及び重量比で自立電解質膜の大部分を構成し、例えば自立電解質膜の80重量%以上の量で、例えば80~97重量%又は80~99重量%、好ましくは95~99重量%の量であり得る少なくとも1つのタイプの乾燥電解質粉末を備え得る。そのような自立電解質膜は、続いて電極膜(カソード又はアノードのいずれか)上に積層されて、固体電池又はその中間製品(例えば、多層固体電池の電極ブロック)が生成され得る。図3及び図4の作業フローと同様に、図6の作業フローは、図5の作業フローと組み合わせて使用されて、開始から出来上がりまで全体的に乾式法によって固体電極ブロック又は固体電池を生成し得る。このようにして、従来の湿式法に関連する長い乾燥時間及び電池性能の低下が同様に完全に回避され得、より実用的且つ効率的な固体電池製造がもたらされる。
【0061】
上記の説明は、例として提供されており、限定するものではない。上記の開示を考慮すると、当業者は、本明細書に開示される本発明の精神及び範囲内にある変形を考案することが可能である。さらに、本明細書に開示される実施形態の様々な特徴は、単独で、又は互いとの様々な組み合わせで使用することができ、本明細書に説明される特定の組み合わせに限定されることを意図するものではない。よって、請求項の範囲は、例示された実施形態によって限定されるものではない。
図1
図1A
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】