(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】浸潤プロセスを用いて製造される部品、該部品を含む装置、および部品を製造するための浸潤プロセス
(51)【国際特許分類】
C04B 41/90 20060101AFI20240905BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20240905BHJP
C04B 35/577 20060101ALI20240905BHJP
C04B 35/563 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C04B41/90 C
C04B38/00 303Z
C04B35/577
C04B35/563
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519013
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2021076820
(87)【国際公開番号】W WO2023051905
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524115763
【氏名又は名称】シュンク インジェニエーアケラーミク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ラーズ シュネッター
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ギンター
(72)【発明者】
【氏名】クララ ミナス-パヤムヤー
(72)【発明者】
【氏名】ダスティン ケルスベルグ
【テーマコード(参考)】
4G019
【Fターム(参考)】
4G019FA11
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのキャビティ(3)が形成された部品本体(2)を備える部品(1)であって、キャビティ(3)を画定する部品本体(2)の壁表面(4)の少なくとも一部がコーティング(10)で被覆されている部品(1)に関する。部品(1)の設計は、(a)無機マトリクス(M1)から1つまたは複数の部分に作られた多孔質前駆体本体(5)であって、キャビティ(3)を有する前駆体本体(5)、(b)前駆体コーティングが、前駆体本体(5)の壁表面(4)の少なくとも一部を被覆し、壁表面はキャビティ(3)を画定する無機マトリクス(M2)から作られた多孔質前駆体コーティング(11)、(c)多孔質前駆体本体(5)および多孔質前駆体コーティング(11)に無機浸潤物(M3)を浸潤させることに基づいている。浸潤された前駆体本体(5)は部品本体(2)を形成し、浸潤された前駆体コーティング(11)はコーティング(10)を形成する。本発明はまた、部品(1)の製造方法に関し、この方法において、前駆体本体(5)および前駆体コーティング(11)は、コーティング(10)を備える部品本体(2)を製造するように浸潤される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのキャビティ(3)を備える部品本体(2)を有する部品(1)であって、
前記キャビティ(3)を画定する前記部品本体(2)の壁表面(4)が、コーティング(10)によって少なくとも部分的に被覆され、
- 無機マトリクス(M1)からなる単一片または複数片の多孔質前駆体本体(5)であって、前記キャビティ(3)を備える前駆体本体(5)と、
- 無機マトリクス(M2)からなる多孔質前駆体コーティング(11)であって、前記キャビティ(3)を画定する前駆体本体(5)の壁表面(4)を少なくとも部分的に被腹する、多孔質前駆体コーティング(11)と、
- 多孔質前駆体本体(5)および前記多孔質前駆体コーティング(11)に無機浸潤物(M3)を浸潤させることと、
に基づいて形成され、
浸潤された前記前駆体本体(5)が、前記部品本体(2)を形成し、浸潤された前記前駆体コーティング(11)が、前記コーティング(10)を形成している、部品(1)。
【請求項2】
a) 前記前駆体コーティング(11)が、前記前駆体本体(5)よりも前記浸潤物(M3)に対する濡れ性が悪く、かつ/または、
b) 前記前駆体コーティング(11)の前記マトリクス(M2)および前記前駆体本体(5)の前記マトリクス(M1)が、それぞれ微細構造(K1,K2)から形成され、前記前駆体コーティング(11)の前記マトリクス(M2)の前記微細構造(K2)が、前記前駆体本体(5)の前記マトリクス(M1)の前記微細構造(K1)よりも細かい、請求項1に記載の部品(1)。
【請求項3】
前記前駆体コーティング(11)の前記マトリクス(M2)の前記微細構造(K2)が、0.1μm~100μm、好ましくは0.2μm~60μm、より好ましくは0.5μm~30μm、さらに好ましくは0.8μm~8μm、特に好ましくは1μm~6μmの一次粒径を有する、請求項2に記載の部品(1)。
【請求項4】
前記前駆体本体(5)の前記マトリクス(M1)の前記微細構造(K1)が、0.1μm~500μm、好ましくは0.2μm~400μm、より好ましくは0.5μm~300μm、さらに好ましくは1μm~250μm、特に好ましくは2μm~200μmの一次粒径を有する、請求項2または請求項3に記載の部品(1)。
【請求項5】
前記前駆体コーティング(11)が、前記前駆体本体(5)よりも前記浸潤物(M3)に対する浸潤傾向が低い、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の部品(1)。
【請求項6】
前記浸潤物(M3)が、凝固時に膨張するような溶融異常を示す、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の部品(1)。
【請求項7】
前記前駆体本体(5)が、前記前駆体コーティング(11)よりも高い割合の前記浸潤物(M3)の反応相手を含み、特に、該反応相手と反応して遊離した浸潤物(M3)の割合が、前記前駆体コーティング(11)の前記マトリクス(M2)内よりも前記前駆体本体(5)内の前記マトリクス(M1)内において大きい、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の部品(1)。
【請求項8】
前記キャビティ(3)が、チャネルまたはチャネル構造を形成する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の部品(1)。
【請求項9】
前記前駆体本体(5)の前記無機マトリクス(M1)が、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、二ケイ化モリブデン、窒化ケイ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化アルミニウム、炭化タングステン、またはこれらの材料の組合せの材料群から少なくとも実質的にまたは完全に形成されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の部品(1)。
【請求項10】
前記浸潤物(M3)が、ケイ素、またはケイ素と、特に、アルミニウムおよび/またはホウ素および/または銅との合金である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の部品(1)。
【請求項11】
前記前駆体コーティング(11)が、
a) 前記キャビティ(3)を画定する前記壁表面(4)上に形成されるスリップからなるキャストによって形成される、または、
b) 気相法によって前記キャビティ(3)を画定する前記壁表面(4)上に堆積されることにより形成されている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の部品(1)。
【請求項12】
前記前駆体コーティング(11)が、前記前駆体本体(5)の材料に少なくとも実質的に対応するコーティング材料から形成されている、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の部品(1)。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の部品(1)を備え、流体導管を介して前記部品(1)の前記キャビティ(3)に接続される流体搬送装置(21)を備える装置(20)。
【請求項14】
少なくとも1つのキャビティ(3)を備える部品本体(2)を有する部品(1)の製造方法であって、
e) 前記キャビティ(3)を構成する無機マトリクス(M1)からなる単一片または複数片の多孔質前駆体本体(3)を提供するステップと、
f) 前記キャビティ(3)を画定する前記前駆体本体(5)の壁表面(4)に、無機マトリクス(M2)からなる多孔質前駆体コーティング(11)を形成するステップと、
g) 浸潤物(M3)の液相温度以上の温度で、前記多孔質前駆体本体(5)および前記多孔質前駆体コーティング(11)に無機浸潤物(M3)を浸潤させるステップと、
h) 浸潤された前記前駆体本体(5)および浸潤された前記前駆体コーティング(11)を、前記浸潤物(M3)の固相温度未満に冷却するステップであって、コーティング(10)が、前記前駆体コーティング(11)および前記浸潤物(M3)から形成され、部品本体(2)が、前記前駆体本体(5)および前記浸潤物(M3)から形成され、特に、前記コーティング(10)と前記部品本体(2)との間に材料化合物が形成されるステップとを含む、方法。
【請求項15】
- 前記前駆体コーティング(11)が、前記多孔質前駆体本体(5)よりも前記浸潤物(M3)に対する濡れ性が低く、
- 前記前駆体コーティング(11)の前記マトリクス(M2)および前記前駆体本体(5)の前記マトリクス(M1)が、それぞれ微細構造(K1,K2)から形成され、前記前駆体コーティング(11)の前記マトリクス(2)の前記微細構造(K2)が、前記多孔質前駆体本体(5)の前記マトリクス(M1)の前記微細構造(K1)よりも細かく、
前記浸潤物(M3)が、凝固する際に膨張するような溶融異常を示し、
冷却中に、前記前駆体コーティング(11)によって覆われていない自由表面(6)上に、少なくとも実質的に排他的に表面溶融滲出物が形成される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の部品、請求項13に記載の部品を備える装置、および請求項14に記載の部品を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の部品、例えば、半導体ウェハをそのリソグラフィ処理中に保持するセラミック保持要素(例えば、チャック)の製造は、多孔質材料からなるプリフォーム/前駆体本体に溶融塊が浸潤する浸潤法を採用することができる。このような浸潤法のよく知られた代表的なものは、炭化ケイ素のような多孔質セラミック材料からなる前駆体本体にケイ素融液を浸潤させるものである。浸潤中、浸潤物は多孔質セラミック材料内の炭素と反応し、二次炭化ケイ素(SiCまたはin-situ SiC)を形成する。この二次炭化ケイ素は、例えばJ.N.Ness,T.F.Page,Microstructural Evolution in reaction-bonded Silicon Carbide,Journal of Materials Science 21(1986)1377-1397に記載されているように、一次炭化ケイ素粒上にエピタキシャル成長する。
【0003】
浸潤前に前駆体本体に炭素を導入するために、例えば、ピッチ、フェノール、フルフリルアルコール、砂糖のような炭水化物などの非常に多様な炭素含有前駆体本体材料を使用することができる。炭素含有前駆体本体材料からなる前駆体本体は、浸潤前に炭素含有前駆体本体材料を炭素に変換するために、最初に不活性雰囲気中で600℃以上に加熱される。その後、前駆体本体を不活性雰囲気または真空雰囲気中でケイ素金属またはケイ素合金と接触させ、浸潤材料の融点以上に加熱する。炭素と溶融ケイ素(Si)との間の自己湿潤および反応により、前駆体本体は完全に浸潤される。前駆体本体中の炭素はSiと反応し、in situ SiCを形成する。in situ SiCは、多孔質プリフォーム内で足場を形成する。一般的に望まれるのは、in situ SiCが形成されない孔も含め、すべての孔が充填された緻密な構成体である。したがって、余分なケイ素がここに存在する。このようにして得られる複合体は、炭化ケイ素および未反応のケイ素を含み、略してSi/SiCと呼ばれることがある。
【0004】
米国特許第5509555号には、炭素および/または炭化ケイ素を含む多孔質前駆体本体を、ケイ素に加えて、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケルまたはそれらの組合せなどの他の金属を含むケイ素合金を用いて浸潤させることによる炭化ケイ素複合材の製造が記載されている。ケイ素は溶融異常があり、冷却すると膨張する。ケイ素の一部は多孔質前駆体本体の表面に残り、そこに強固に付着するため、その後の工程で除去しなければならない。このため、米国特許第5509555号では、表面から浸潤物を除去するために、付着した浸潤物と反応すると言われる、例えば、粉末およびエッチング浴を提案している。しかし、これはコスト高で不便であり、有害廃棄物も発生させる。
【0005】
米国特許第5205970号は、多孔質前駆体本体に浸潤物を浸潤させる溶融浸潤法による反応結合された炭化ケイ素複合材料の製造を記載している。製造工程の終了後、前駆体本体の表面には過剰のケイ素が表面溶融滲出物の形で、特に液滴の形で存在する。これは、特にケイ素の溶融異常に起因して、その一部が冷却時に多孔質前駆体本体から再び流出するためである。多孔質前駆体本体の表面では、ケイ素は凝固して強固に付着するため、寸法精度の高い部品を得るためには、その後の工程で除去する必要がある。このため、米国特許第5205970号によれば、余分なケイ素は、炭素系の吸湿性材料と部品表面とを接触させることによって除去される。この方法では、浸潤物の液相温度を少なくとも表面溶融滲出物の領域において超える第2の高温サイクルが必要である。吸湿性材料としては、例えば、炭素系フェルトが挙げられ、このフェルトの毛細管は、反応結合工程終了後の炭化ケイ素複合体の毛細管と少なくとも同じ大きさでなければならない。炭化ケイ素複合体の毛細管作用は、吸湿性材料の毛細管作用よりも強くなる。このため、部品表面において流出した余分なケイ素だけがフェルトに吸収され、部品の容積からケイ素が引き出されることはないと言われている。
【0006】
米国特許第3857744号は、浸潤前に窒化ホウ素粉末を多孔質前駆体本体に塗布することを開示している。この窒化ホウ素粉末は、粉末で覆われた部品へのケイ素の析出および付着を減少させると言われている。欠点は、窒化ホウ素粉末を再び除去する必要があることであり、そうしなければ、その部品を後に使用する際に環境中に排出されてしまうからである。その結果、窒化ホウ素および剥離した浸潤物を含む有害廃棄物が発生する。さらに、除去はアクセス可能な表面でのみ可能で、キャビティでは不可能なことが多い。窒化ホウ素粉末が必ずしも十分でないことは明らかであるため、窒化ホウ素とまだ付着しているケイ素は、サンドブラスト作業によって部品から除去される。これにはコストと手間がかかり、追加の作業工程が必要である。また、この方法は、アクセスが困難な現場において、実施できるとしても限られた範囲のみである。
【0007】
PCT国際出願公開第2005/037726号には、キャビティを備え、溶融浸潤によって製造された金属-セラミック複合材料からなる部品の製造方法が記載されている。キャビティへの浸潤物の溶融滲出によるキャビティの閉鎖は、浸潤物によって浸潤され得ない一時的な充填材でキャビティを充填することによって防止される。
【0008】
PCT国際出願公開第2005/037726号によれば、非浸潤性材料をキャビティの全壁に接触させることで、この材料への浸潤、ひいてはキャビティへの浸潤が防止される。この接触は、キャビティを内張りするか、キャビティ全体を充填することによって行われる。このため、非浸潤性材料は、多孔質前駆体本体の浸潤後に容易に除去することができ、これは、非浸潤性材料が、浸潤工程の前および後の両方において、緩く結合しているか、または自由に流動する粒子塊の形態だからである。PCT国際出願公開第2005/037726号によれば、緩く結合しているか、または自由に流動する粒子塊の除去は、圧縮された空気、水、振盪または吸引を用いて、浸潤工程の後に容易に実施される。しかしながら、この目的のために、場合によっては、充填材料を除去するためにアクセス可能にするために、キャビティ内に追加の孔を導入することが必要である。その後、これらの孔を再び閉じなければならない。コストおよび複雑さはそれに応じて高く、非浸潤性材料の残留物が、部品の後の用途において問題と損傷を引き起こすリスクがある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、特に表面溶融滲出物の場合にも、浸潤物質を含まないキャビティを備える部品を提供するための、より安価で複雑でない解決策を提供することであり、キャビティ内に不純物が残留するリスクも低減することである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の主な特徴は、請求項1および請求項14に特定されている。実施形態は、請求項2~請求項13および請求項15に特定されている。
【0011】
本発明は、少なくとも1つのキャビティを備える部品本体を有する部品であって、キャビティを画定する部品本体の壁表面が、コーティングによって少なくとも部分的にまたは完全に被覆されている部品に関し、部品は、
- 無機マトリクスからなる単一片または複数片の多孔質前駆体本体であって、キャビティを備える/含む、多孔質前駆体本体と、
- 無機マトリクスからなる多孔質前駆体コーティングであって、キャビティを画定する前駆体本体の壁表面が少なくとも部分的にコーティングされている多孔質前駆体コーティングと、
- 多孔質前駆体本体および多孔質前駆体コーティングへの無機浸潤物の浸潤と、
に基づいて形成され、
浸潤された前駆体本体が部品本体を形成し、浸潤された前駆体コーティングがコーティングを形成する。
【0012】
前駆体コーティングおよび前駆体本体の浸潤は、前駆体本体と前駆体コーティングの間、すなわち部品本体とコーティングの間に材料化合物を形成する。その結果、強固に密着した耐久性のあるコーティングが形成される。これを除去する必要はない。特に、コーティングと部品本体との間に材料結合を形成することが可能であり、コーティングと部品本体との間の材料結合は、好ましくは少なくとも部分的にイオン結合によって形成される。さらに、固化した浸潤物は、部品本体からコーティング中に延びることができ、したがって、特に、前駆体本体と前駆体コーティングとの間に連続的な足場を形成することができる。これも安定した結合をもたらす。プロセス工学の観点からは、前駆体コーティングと浸潤物との相互作用により、特に、表面の溶融滲出を防止するために先行技術において使用されている一時的な補助物質の代替として、永久的なコーティングを採用することが可能になる。したがって、前駆体コーティングは、特に、前駆体本体の浸潤特性から逸脱した特性をキャビティの領域に提供することを可能にする。部品本体の領域では、浸潤物がその中に十分に分散されることが重要であるが、前駆体コーティングの領域では、前駆体コーティングの部品本体への永久的な結合を達成するのに十分である。
【0013】
浸潤物は、好ましくは、多孔性前駆体コーティング中に(流体)不透過性のコーティングを形成する。これにより、その後、何らかの不純物がコーティングに定着したり、微生物がコーティングにコロニー形成したりすることを防ぐことができる。
【0014】
前駆体本体と前駆体コーティングには異なる無機マトリクスが選択されるため、コーティングの材料特性および残りの部品の材料特性は、互いに明確に定義することができる。特に、前駆体コーティングのマトリクスは、前駆体本体のマトリクスとは、例えば、その微小粒径、微細構造密度および/または材料/材料合金の点で異なっていてもよい。
【0015】
多孔質前駆体本体および多孔質前駆体コーティングの微細構造は、浸潤によっても、浸潤中に完了する温度サイクルによっても変化しない。研磨された切片の採取と顕微鏡検査、特に光学顕微鏡検査または走査型電子顕微鏡検査によって、浸潤後の微細構造も識別可能である。浸潤物は、前に空であった気孔の中で、別々に同定可能である。エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、微細構造中の異なる材料、特に前駆体本体材料、前駆体コーティングの材料、浸潤物の材料および反応により形成された材料を同定することも可能である。
【0016】
前駆体本体は、そのような(特に浸潤中に機能的に等価な)前駆体コーティングを有しない少なくとも1つの自由表面を有するべきである。したがって、部品は、そのような(特に多孔質前駆体コーティングの浸潤によって形成される)コーティングを備えない少なくとも1つの自由表面を有するべきである。したがって、前駆体本体への浸潤の観点からの最適化は、自由表面の領域において実施されてもよい。前駆体本体の全表面の最大30%が前駆体コーティングによって被覆されることが好ましい。同様に、前駆体本体の全表面の少なくとも70%が、浸潤物の表面溶融滲出が特に可能である、そのような前駆体コーティングのない自由表面である場合が好ましい。
【0017】
より具体的な実施形態において、前駆体コーティングが前駆体本体よりも浸潤物に対して濡れ性が悪く、かつ/または前駆体コーティングのマトリクスおよび前駆体本体のマトリクスがそれぞれ微細構造から形成され、前駆体コーティングのマトリクスの微細構造が前駆体本体のマトリクスの微細構造よりも細かいものが提供される。濡れ性が悪い場合、浸潤物は前駆体コーティングの材料に浸潤することをあまり強く誘導されない。したがって、浸潤は主に前駆体本体内で起こる。対照的に、前駆体コーティングへの浸潤は、自由外表面からも前駆体本体に面する側からも遅い傾向がある。
【0018】
同時に、前駆体コーティングの自由表面上に意図せず到達した浸潤物は、前駆体本体の領域よりも強く付着しない、すなわち、コーティングの気孔にあまり強く吸収されない。これにより、浸潤物が固化した後もコーティングに強い付着物が残らない。より細かい微細構造は、浸潤物の機械的障害を形成し、浸潤物の粘度は、通常、浸潤される前駆体本体の気孔率に適合する。さらに、より微細な毛細管は、前駆体本体の気孔よりも前駆体コーティングの気孔の方が、既に浸潤した浸潤物をより強固に保持する。したがって、溶融中に、浸潤物は、前駆体コーティングを越えて外部への経路を求める。表面溶融物のキャビティへの滲出は、前駆体コーティングによって低減されるか、あるいは防止されることさえある。
【0019】
特別な変形例において、前駆体コーティングのマトリクスの微細構造は、0.1μm~100μm、好ましくは0.2μm~60μm、より好ましくは0.5μm~30μm、さらに好ましくは0.8μm~8μm、特に好ましくは1μm~6μmの一次粒径を有する。微細構造(微結晶としても知られる)の粒径が小さく、その結果、粒子間隙が小さいため、浸潤物は、前駆体本体への浸潤よりも、前駆体コーティングへの浸潤傾向が低い。
【0020】
さらに、前駆体本体のマトリクスの微細構造が、0.1μm~500μm、好ましくは0.2μm~400μm、より好ましくは0.5μm~300μm、さらに好ましくは1μm~250μm、特に好ましくは2μm~200μmの一次粒径を有するという選択肢もある。この粒径は、浸潤を促進する十分な毛細管作用を依然として保証する。この一次粒径と組み合わせて前駆体本体に微粒子状の追加の炭素を任意に使用することによっても、前駆体本体上および前駆体本体内の高い濡れ性が達成される。
【0021】
一次粒径は、前駆体コーティングのマトリクスの微細構造が多孔質前駆体本体のマトリクスの微細構造よりも細かくなるように、特に、重なり合う値の範囲が一致する場合にも、それらの値の範囲に関して組み合わされるべきである。
【0022】
一次粒径の決定は、前段階において、原料のレーザ回折粒度分析/レーザ粒度測定によって実施されてもよい。一次粒径は、前駆体本体および前駆体コーティングの製造後、または後の部品において、研磨切片の採取および光学顕微鏡または電子顕微鏡検査によって決定されてもよい。
【0023】
特に、前駆体コーティングは、特に濡れ性が悪いことおよび/またはより細かい微細構造のために、前駆体本体よりも浸潤物に対する浸潤傾向が低い。したがって、コーティング上の浸潤物の付着は容易に除去できる。さらに、浸潤物は、前駆体本体内部でより自由に分散し、そのため、浸潤および冷却中に浸潤物の熱体積が変化した場合には、主に前駆体本体内部を通る経路、すなわち前駆体コーティングを通過する経路を求める。
【0024】
浸潤終了後の浸潤物の表面溶融滲出および浸潤物の堆積は、このようにして、主として、対応する前駆体コーティングが施されていない部品の自由表面に対して低減される。一つには、前駆体コーティングの浸潤傾向が低いため、例えば、内部から外部へ向かう表面滲出が部分的に遮断される。前駆体コーティングが施された壁表面に外部から浸潤物が到達した場合、浸潤傾向が低いため、いずれの場合でもコーティングとの結合力は低く、冷却された浸潤物は、例えば、振盪、振動、圧縮空気または水の導入などのような、適度な材料除去力を有する方法によって除去することができる。
【0025】
キャビティを画定する壁表面全体は、任意に前駆体コーティングによって被覆される。
【0026】
前駆体本体、浸潤物および前駆体コーティングは、研磨された切片の採取および顕微鏡検査、例えば光学顕微鏡検査または電子顕微鏡検査によって、部品内で識別可能である。
【0027】
部品が、溶融浸潤および任意の反応接合によって製造された金属-セラミック複合材料とコーティングとで構成されている場合が好ましい。金属-セラミック複合材料は、ケイ素浸潤され反応結合された炭化ケイ素(SiC)(SiSiCまたはRBSiCとしても知られる。)であってもよい。SiCを製造するためのプロセスチェーンは、通常、以下の工程を含む。最初に適切な成形法(プレス、(圧力)スリップ鋳造、フィルム鋳造、射出成形、押出成形、スタンピング、3D印刷)を使用して、典型的には実質的に炭化ケイ素、炭素および/または他の有機補助物質からなる多孔質前駆体本体を製造する。その後の真空および/または保護ガス雰囲気下での高温処理において、この前駆体本体に溶融ケイ素またはその合金を浸潤させる。浸潤したケイ素は、溶解および再沈殿によって炭素と反応し、一次炭化ケイ素粒上にエピタキシャル成長するいわゆる二次炭化ケイ素を形成する。このことは、例えば、J.N.Ness,T.F.Page,Microstructural Evolution in reaction-bonded silicon carbide, Journal of Materials Science 21(1986),1377-1397に記載されており、これを参照されたい。反応終了後に残る前駆体本体の気孔は、未反応の遊離ケイ素によって充填され、気孔の完全な充填を確保するために過剰のケイ素が使用される。しかしながら、この過剰なケイ素は、冷却中に液相温度以下になると、ケイ素の表面溶融滲出物が形成されるという弊害があり、ケイ素は凝固時に約10%の体積膨張を示す。このようなケイ素の溶融滲出物は、部品の表面にほとんど制御されずに形成され、幾何学的に影響を受けやすい容積(例えば、窪み、内部キャビティなど)に凝集する。その後、例えば、サンドブラスト処理によってケイ素溶融滲出物を除去することは、適切にアクセス可能な領域においてのみ可能である。本発明に係る前駆体コーティングは、ケイ素溶融滲出物が、そのような前駆体コーティングを備えない部品本体の表面上に主に形成されることを保証する。したがって、溶融滲出物は、重要でない領域に集中させることができる。
【0028】
コーティングは、浸潤物が凝固時に膨張するような溶融異常を示す実施形態において特に好ましい。表面の溶融滲出物は、ここでは自由表面に集中する。浸潤物は特に、前駆体コーティングを貫通することができないか、少なくとも内部からの強い反圧がなければ前駆体コーティングを貫通することができず、その結果、凝固してキャビティ内でコーティングと強固な結合を形成することができない。このようにして、空のキャビティが、多くのコストと複雑さを伴わずに達成される。
【0029】
より具体的な実施形態において、前駆体本体が、前駆体コーティングよりも高い割合の浸潤物の反応相手(例えば、炭素)を含み、特に得られる部品において、遊離した浸潤物への反応相手と反応した浸潤物の割合が、前駆体コーティングのマトリクス内よりも前駆体本体のマトリクス内において大きいものが提供される。例えば、炭素のような反応相手は、特に前駆体本体の濡れ性を増加させることができ、逆に前駆体コーティング中のそのような反応相手の不足は、そこでの濡れ性を低く保つことができる。
【0030】
部品のより特定の実施形態において、キャビティがチャネルまたはチャネル構造を形成するものが提供される。これにより、この部品は、例えば、ヒートシンクとして好適になる。このコーティングは特に、表面溶融物の滲出による閉塞の危険性なしに、小さなチャネル径および複雑な形状を有するヒートシンクを製造することを可能にする。したがって、チャネルは、特に冷却媒体を流すための冷却チャネルであってもよい。また、これに代えて、チャネルは、特に、例えば、ケイ素ウェハのような被加工物を固定するための排出チャネルであってもよい。
【0031】
前駆体本体の無機マトリクスが、少なくとも実質的にまたは完全に、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、またはこれらの材料の組合せの材料群から形成されていることが好ましい。これらは、浸潤可能な前駆体本体を形成するのに特に適している。
【0032】
一実施形態において、前駆体本体の無機マトリクスは、少なくとも実質的にまたは完全に、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、二ケイ化モリブデン、窒化ケイ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化アルミニウム、炭化タングステン、またはこれらの材料の組合せの材料群から形成される。製造の結果として避けられない不純物も含まれ、この特徴に含まれる。このことは、本文書における材料の定義にも適用される。
【0033】
例えば、浸潤物はケイ素、またはケイ素と特にアルミニウムおよび/またはホウ素および/または銅との合金であってもよい。製造の結果として避けられない不純物も含まれ、この特徴に含まれる。この浸潤物は、特に、無機マトリクス中の任意の炭素との反応も含む多孔質前駆体本体の特に良好な浸潤が、二次炭化ケイ素をもたらすことを可能にする。
【0034】
ケイ素合金は、例えば、1種以上の金属を含んでいてもよい。金属は、特に、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、コバルト、クロム、銀、金、またはこれらの金属の合金からなる群から選択されてもよい。このようなケイ素合金は、純粋ケイ素と比較して低い溶融異常を有し、すなわち凝固中の体積膨張を低減することができる。したがって、部品の応力および表面滲出は低い。
【0035】
浸潤物は、特に好ましくは、ケイ素と、アルミニウムおよび/またはホウ素の少なくとも1つの材料とを含む合金である。
【0036】
特に好ましいのは、前駆体本体の無機マトリクスが第1の炭化ケイ素をベースとし、前駆体コーティングが第2の炭化ケイ素をベースとし、浸潤物がケイ素をベースとする実施形態である。また、前駆体本体が、ケイ素の浸潤の反応相手として炭素を含有し、二次炭化ケイ素を得ることも可能である。
【0037】
前駆体本体の無機マトリクスは、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素および/または炭素のうちの1種以上から、またはそれらの組合せと1種以上の金属とから形成されてもよい。ここでも特に、金属は、ケイ素、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、コバルト、クロム、銀、金、またはこれらの金属の合金からなる群から選択されてもよい。金属は、特に溶融異常を低減することができる。
【0038】
好ましい実施形態では、コーティングと部品本体との間に材料結合が形成され、コーティングと部品本体との間の材料結合は、好ましくは少なくとも30%の範囲に、より好ましくは主にイオン結合によって形成される。これにより、製造中または製造後に除去されない、または除去する必要のない、強固で耐久性のあるコーティングが得られる。この目的のためには、イオン結合の割合が共有結合の割合に対して優勢であるべきである。イオン結合(異極結合または電気価結合としても知られる)は、正と負に帯電したイオンの静電引力に基づく化学結合である。
【0039】
前駆体コーティングが、キャビティを区画する壁表面上に形成されるスリップからなるキャストによって形成されることも、一つの特徴であろう。このように成長したキャストは、比較的均質な層厚を有する初期微細孔表面を形成し、特に低い技術的複雑性でこれを行う。スリップ鋳造において、キャストは、特に、スリップの凝固した堆積が達成されたことを意味すると理解される。
【0040】
キャストの形成は、前駆体本体の気孔率およびその結果生じる毛管力に基づいている。これらの毛管力により、スリップから分散材(好ましくは水)が除去され、スリップからの固体粒子の蓄積が壁表面に生じる(「キャスト形成」)。
【0041】
前駆体コーティングは、代わりに、気相法によってキャビティを画定する壁表面上に堆積させることもできる。これによっても均一な塗布が可能になる。スリップ/スリップ鋳造法を用いる場合にプロセス工学の観点から必要となる前駆体本体の乾燥は、ここでは必要ない。気相法は、例えば、CVD(化学気相成長)プロセスまたはPVD(物理気相成長)プロセスによって実施されてもよい。これらのプロセスにより、均一な厚さの薄いコーティングを達成することができる。
【0042】
具体的には、前駆体コーティングは、少なくとも実質的に前駆体本体の材料に対応するコーティング材料から形成されるか、またはコーティング材料からなる。このように、この材料は、前駆体本体のマトリクス材料に対応するタイプ固有のものである。したがって、浸潤後に壁表面から除去する必要はない。製造と塗布の両方において、コーティングは少なくとも部分的に前駆体本体のマトリクスと同じ材料特性を有する。コーティングと前駆体本体との間の熱膨張応力も低く、コーティングは無傷のままである。
【0043】
有利な実施形態では、特に前駆体本体に浸潤物を浸潤させた後に、浸潤物と反応してコーティング中に炭化物を生じる反応物質が前駆体本体中よりも割合的に少なくなるように、浸潤前にコーティングが低い割合の炭素を含むか、または全く含まないことが提供される。
【0044】
前駆体コーティングは、0.01mm~1.0mm、好ましくは0.02mm~0.5mm、特に好ましくは0.05mm~0.2mmの厚さを有していてもよい。これらのコーティングの厚さは、浸潤物に対する障壁としての目的を果たすが、それにもかかわらず、互いに非常に接近して配置される可能性のある非常に小さなキャビティを提供することができる。層厚が小さければ小さいほど、前駆体コーティングの塗布前に、前駆体本体内のキャビティを互いに近接して配置することができる。
【0045】
キャビティの直径は、好ましくは2mm~25mmである。したがって、手や人、大型の工具が入らないため、内部から後処理することが容易でないキャビティである。このような小さな直径は、同時に、表面溶融物の滲出によって閉鎖される影響を特に受けやすい。
【0046】
一つの可能な実施形態は、部品がウェハチャックとして構成されていることである。ウェハは、ブランクとして機能する厚さの薄いスライスであり、そこから集積回路(「チップ」)などの電子部品が多段プロセスで製造される。ウェハチャックは、処理中に真空および/または静電引力によってウェハを保持する。
【0047】
本発明はさらに、上記および下記において説明されるような部品を含み、流体導管を介して部品のキャビティに接続される流体搬送装置を含む装置に関する。これにより、キャビティを冷却用またはワークの吸引把持用に使用することができる。この装置において、部品は、例えば、冷却チャネルまたは排出チャネルを有するキャリア/ホルダの形態で、小さく、閉塞されておらず、安価に製造可能なキャビティにより、その利点を発揮することができる。
【0048】
本発明の装置のより具体的な実施形態において、装置は加工装置を備え、部品は、加工装置内でワークを保持するためのワークホルダを形成する。例えば、チャネルとして構成され得るキャビティは、キャビティ内またはキャビティを通して冷却材を伝導させることにより、ワークを熱変形させることなく、例えば、正確に取り付けることを可能にする。しかしながら、キャビティは、任意に、ワークホルダのワーク受容面に開口していてもよく、それによって、流体搬送装置によるキャビティ内の排出によってワークを固定することができる。
【0049】
最後に、本発明は、少なくとも1つのキャビティを備える部品本体を有する部品の製造方法であって、
a)キャビティを備える無機マトリクスからなる単一片または複数片の多孔質前駆体本体を提供するステップと、
b)キャビティを画定する前駆体本体の壁表面に、無機マトリクスからなる多孔質前駆体コーティングを形成するステップと、
c)浸潤物の液相温度以上の温度で、多孔質前駆体本体および多孔質前駆体コーティングに無機浸潤物を浸潤させるステップと、
d)浸潤された前駆体本体および浸潤された前駆体コーティングを、浸潤物の固相温度未満に冷却するステップであって、前駆体コーティングおよび浸潤物からコーティングが形成され、前駆体本体および浸潤物から部品本体が形成され、コーティングと部品本体との間に、特に材料化合物が形成されるステップと、
を含む方法にも関する。
【0050】
本発明の利点は、コーティングが部品本体に確実に接着され、除去する必要がないことである。前駆体本体のマトリクスは、浸潤物を介した浸潤の点で最適化可能である一方、前駆体コーティングのマトリクスは、表面の溶融滲出の防止の点で最適化可能である。これにより、キャビティの閉塞を回避し、キャビティを表面溶融滲出物および/またはその回避のための補助物質から解放するためのコストおよび複雑さを回避することができる。
【0051】
多孔質前駆体コーティングの形成において、無機マトリクスは、任意に、一時的な有機成分、例えば、可塑剤、結合剤などを含むことができる。これらは、多孔質前駆体コーティングをより良好に塗布するのに役立つ場合がある。このような有機成分は、通常、浸潤中に燃焼除去される。
【0052】
より特定の方法の構成において、
- 前駆体コーティングは、多孔質前駆体本体よりも浸潤物に対して濡れ性が悪く、かつ/または、
- 前駆体コーティングのマトリクスおよび前駆体本体のマトリクスは、それぞれ微細構造から形成され、前駆体コーティングのマトリクスの微細構造は、多孔質前駆体本体のマトリクスの微細構造よりも細かい、
ものが提供される。
【0053】
浸潤物は、凝固時に膨張するような溶融異常を示し、冷却中に表面溶融滲出物が、前駆体コーティングによって覆われていない自由表面上に少なくとも実質的に排他的に形成される。
【0054】
コーティングの領域に表面溶融滲出物がない場合には、キャビティの(部分的な)閉塞はここでは起こらない。その代わりに、表面溶融滲出物は、問題が少ないか、少なくとも容易に除去される傾向がある、コーティングされていない自由表面に向けられる。
【0055】
部品に関して説明した特徴はすべて、必要がありまたは目的にかなっている限り、個々にまたは組み合わせてプロセスの主題の一部を形成することもできる。したがって、利点は、装置の特徴に関して記載された利点に対応する。特に、本プロセスの任意的な発展は、例えば、以下の特徴を個々にまたは組み合わせて備えていてもよい。
【0056】
- 前駆体コーティングの低浸潤傾向は、例えば、内部から外部への経路において表面滲出を部分的に阻害する。
- 前駆体コーティングが施された壁表面に外部から浸潤物が浸潤した場合には、任意に、キャビティに振盪、振動、または、圧縮空気または水の導入によって除去されてもよい。
- 前駆体本体は、2つ以上の個別の部品から構成されていてもよい。
- 前駆体本体の任意の個別の部品は、それぞれキャビティに隣接していてもよく、特にキャビティの壁部を形成してもよい。
- 前駆体コーティングは、前駆体本体の浸潤前に既に塗布されているべきである。
- 浸潤は、浸潤物が内部から前駆体コーティングまで突出し、好ましくは内部から前駆体コーティングに浸潤するまで継続されてもよい。
- 部品は、ケイ素が浸潤され反応結合された炭化ケイ素(SiC)(SiSiCまたはRBSiCとしても知られる)であってもよい。
- 前駆体本体は、前駆体コーティングよりも高い割合の浸潤物の反応相手(例えば炭素)を含んでいてもよい。
- 反応相手は、前駆体コーティングを塗布する前に前駆体本体に分散され/その中に取り込まれるような配置で存在してもよい。
- 最初は、例えば実質的に炭化ケイ素、炭素および/または他の有機補助物質からなる多孔質前駆体本体を製造するために、適切な成形プロセス(プレス、(圧力)スリップ鋳造、フィルム鋳造、射出成形、押出成形、スタンピング、3D印刷)が使用されてもよい。
- 前駆体本体および前駆体コーティングは、真空および/または保護ガス雰囲気下でのその後の高温処理において、溶融ケイ素を浸潤されてもよい。
- 浸潤したケイ素は、溶解および再沈殿によって炭素と反応し、一次炭化ケイ素粒上にエピタキシャル成長するいわゆる二次炭化ケイ素を形成することができる。
- 反応終了後に残る前駆体本体の気孔は、未反応の遊離ケイ素によって充填されてもよく、完全な気孔充填を確保するために過剰のケイ素が使用されてもよい。
- 凝固の際に約10%の体積膨張を示すケイ素により、表面溶融滲出物が形成されてもよい。
- 前駆体コーティングは、前駆体本体よりも浸潤物に対する濡れ性が悪い状態で形成されてもよい。
- 前駆体本体のコーティングは、多孔質前駆体本体よりも細かい微細構造から形成されてもよい。
- 浸潤物の粘度は、浸潤される前駆体本体の気孔率に適合されてもよく、またはその逆に、気孔率は、特に毛細管作用による最適な浸潤を達成するために、浸潤物の粘度に適合されてもよい。
- 前駆体コーティングの微細構造は、0.1μm~100μm、好ましくは0.2μm~60μm、より好ましくは0.5μm~30μm、さらに好ましくは0.8μm~8μm、特に好ましくは1μm~6μmの一次粒径を有していてもよい。
- 前駆体本体の微細構造は、0.1μm~500μm、好ましくは0.2μm~400μm、より好ましくは0.5μm~300μm、さらに好ましくは1μm~250μm、特に好ましくは2μm~200μmの一次粒径を有していてもよい。
- 前駆体コーティングは、特に、濡れ性が悪いこと、および/またはより細かい微細構造であることに起因して、多孔質前駆体本体よりも浸潤物に対する浸潤傾向が低くてもよい。
- キャビティは、チャネルまたはチャネル構造の形態で形成されてもよい。
- 前駆体本体の無機マトリクスは、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、二ケイ化モリブデン、窒化ケイ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化アルミニウム、炭化タングステン、またはこれらの材料の組合せの材料群から、少なくとも実質的にまたは完全に形成されてもよい。
- 浸潤は、前駆体本体と浸潤物とを接触させることによって実施されてもよく、前駆体本体、前駆体コーティングおよび浸潤物は、共通の温度サイクルを完了する。
- 浸潤物は、ケイ素またはその合金であってもよい。
- ケイ素合金は、例えば、1種以上の金属を含んでいてもよい。
- 金属は特に、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、コバルト、クロム、銀、金、またはこれらの合金の群から選択されてもよい。
- 前駆体本体の無機マトリクスは、第1の炭化ケイ素、第2の炭化ケイ素上の前駆体コーティング、およびケイ素上の浸潤物をベースとしてもよい。
- 炭素は、好ましくは、前駆体コーティングの塗布前に第2の炭化ケイ素を得るために、ケイ素の浸潤のための反応相手として前駆体本体に導入されてもよい。
- 無機マトリクスは、一次物質である炭化ケイ素、炭化ホウ素および/または炭素のうちの1種以上から、またはそれらの組合せと1種以上の金属とから形成されてもよい。金属は特に、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、コバルト、クロム、銀、金、またはこれらの金属の合金からなる群から選択されてもよい。
- コーティングと前駆体本体との間に材料結合が形成されてもよく、コーティングと浸潤した前駆体本体との間の材料結合は、好ましくは少なくとも30%の範囲で、より好ましくは優勢に、イオン結合によって形成される。
- コーティングは、製造中または製造後に除去されない、固体かつ耐久性のあるコーティングとして形成されてもよい。
- 前駆体コーティングは、スリップ鋳造法で形成されてもよい(ここでの多孔質前駆体本体は、スリップ鋳造法でしばしば使用される石膏の代わりになり、脱型は行われない)。
- 前駆体コーティングは、キャビティを画定する壁表面に形成されるスリップからなるキャストによって形成されてもよい。
- 前駆体コーティングは、気相プロセスによって壁表面上に堆積されてもよい。
- 気相法は、例えば、CVD(化学気相成長)プロセスまたはPVD(物理気相成長)プロセスによって実施されてもよい。
- 前駆体本体は、前駆体コーティングの塗布後に乾燥されてもよい。
- 前駆体コーティングは、少なくとも実質的に前駆体本体の材料に対応するコーティング材料から形成されるか、またはコーティング材料からなっていてもよい。
- 前駆体コーティングは、浸潤前に炭素の割合が低いか、または炭素の割合がない状態で形成されてもよい。
- 前駆体本体への炭素の導入は、前駆体コーティングの塗布前に行われてもよい。
- 前駆体コーティングは、0.01mm~1.0mm、好ましくは0.02mm~0.5mm、特に好ましくは0.05mm~0.2mmの厚さで施されてもよい。
- キャビティは、2mm~25mmの直径で形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明のさらなる特徴、詳細および利点は、特許請求の範囲の文言および図面に基づく例示的実施形態の以下の説明から明らかである。
【0058】
【
図1】部品を備える装置の斜め上方から見た斜視図および流体搬送装置の概略図である。
【
図2】部分的な断面を含む、
図1による部品の斜め下方から見た斜視図である。
【
図3】部品を備える装置の斜め上方から見た斜視図、および流体搬送装置の概略図であり、部品は部分的に透明として示されている。
【
図5】部品のキャビティを断面で示す光学顕微鏡による研磨断面顕微鏡写真である。
【
図6】前駆体本体および前駆体コーティングの微細構造が明らかな、
図5の光学顕微鏡の詳細画像である。
【
図7】一次炭化ケイ素、二次炭化ケイ素および遊離ケイ素の区別が明らかな、
図6の電子顕微鏡による詳細画像である。
【
図8a】前駆体本体および前駆体コーティングの微細構造が明らかな、光学顕微鏡による白黒の詳細画像である。
【
図8b】前駆体本体および前駆体コーティングの微細構造が明らかな、光学顕微鏡による白黒の詳細画像である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、斜め上方から見た斜視図であり、部品1と流体搬送装置21とを備える装置20が概略的に示されている。
図2は、部品1を、今度は斜め下方から見た、部分的な断面を含めて再び示す斜視図である(この部分的な断面も
図1に含まれるが、ほとんど識別できない)。
図1および
図2は、2つの開口部の間にそれぞれチャネルを形成する3つの部分環状キャビティ3を備える部品本体2を示す。開口部は、部品本体2の周面および部品本体2の上面に配置されている。
【0060】
部品本体2は、(平均粒径20μm、炭素含有率10%を有する)SiC-炭素材料の接合された2つの半製品からなる無機マトリクスM1からなる多孔質前駆体本体5をベースとして製造される。前駆体本体5のキャビティ3/チャネルは、半製品の接合面に沿って延びており、チャネルの底部および/または上部をそれぞれの半製品に組み込むことによって製造される。半製品は、例えばシートのプレス加工やフライス加工などの減法製造によって製造されてもよい。半製品は、最新の仕上げ方法を用いて、同種の材料で準モノリシックに接合される。このようにして得られた前駆体本体5は、2~5mmの直径を有する複数のチャネル(キャビティ3)を有する。
【0061】
キャビティ3の壁表面4の多孔質前駆体コーティング11は、チャネル(キャビティ3)の2つの開口部を通して、さらなる無機マトリクスM2の形態で塗布される。外側に見える表面は、このような多孔質の前駆体コーティングを受けず、自由表面6を形成する。壁表面4の前駆体コーティング11は、特にスリップ鋳造法により製造される。約5μmの一次粒径と50重量%の固形分を有するSiCスリップ(特に水性)がコーティングスリップとして使用される。スリップは、開口部を介してチャネル(キャビティ3)内に充填され、十分なキャスト形成を可能にする規定時間後に、そこから排出される。前駆体本体5の固有の多孔性により、0.05mm~1mmのキャストが壁表面4に形成され、前駆体コーティング11として機能する。次に、コーティングされたチャネル(キャビティ3)を備える前駆体本体5が室温で乾燥させられ、中間製品から残留水分を除去する。
【0062】
次いで、前駆体本体5がケイ素と接触させられ、ケイ素が液化され多孔質前駆体本体5および多孔質前駆体コーティング11に浸潤するまで真空オーブンで加熱される。この結果は、
図4の概略詳細断面からも明らかである。
【0063】
前駆体コーティング11の浸潤により、前駆体本体5および浸潤物M3から生じる部品本体2に強固に結合した永久的なコーティング10が得られる(
図4参照)。この結果、特に材料化合物が得られる。
【0064】
前駆体本体5にケイ素を完全に浸潤させた後、部品1は冷却され、ケイ素の溶融異常により自由表面6の領域に表面溶融滲出物が形成される。この場合、表面溶融滲出物はサンドブラストによって除去可能である。キャビティ3の壁表面4のコーティング10により、キャビティ3内には、たとえあったとしても、通常、僅かな小さなケイ素ビーズが存在するだけであり、これらは、例えば、空気または水の導入により除去可能である。さらに、前駆体本体5および前駆体コーティング11のマトリクスM1,M2は異なる。特に前駆体コーティング11は、前駆体本体5よりも浸潤物M3(
図4参照)に対する濡れ性が悪い。さらに、前駆体コーティング11のマトリクスM2および前駆体本体5のマトリクスM1は、それぞれ微細構造から形成されており、前駆体コーティング11のマトリクスM2の微細構造は、前駆体本体5のマトリクスM1の微細構造よりも細かい。
【0065】
前駆体コーティング11のマトリクスM2の微細構造は、例えば、0.1μm~100μm、好ましくは0.2μm~60μm、より好ましくは0.5μm~30μm、さらに好ましくは0.8μm~8μm、特に好ましくは1μm~6μmの一次粒径を有していてもよい。前駆体本体5のマトリクスM1の微細構造は、前駆体コーティング11の微細構造よりも粗く、0.1μm~500μm、好ましくは0.2μm~400μm、より好ましくは0.5μm~300μm、さらに好ましくは1μm~250μm、特に好ましくは2μm~200μmの一次粒径を有する。したがって、前駆体コーティング11は、前駆体本体5よりも浸潤物M3(
図4参照)に対する浸潤傾向が低い。
【0066】
前駆体コーティングには、浸潤物M3(
図4参照)の反応相手として利用可能な炭素が導入されていない(小さな不純物などを除く。)。その結果、前駆体本体5のマトリクスM1は、遊離した浸潤物M3(
図4参照)に対する反応相手(
図4参照)と反応した浸潤物M3の割合が、前駆体コーティング11のマトリクスM2よりも大きい。
【0067】
図3は、部品1と流体搬送装置21とを備える装置20を斜め上方から見た斜視図であり、部品1は部分的に透明に示されている。
図1および
図2とは異なり、キャビティ3は複雑なチャネル構造として形成されている。チャネル(キャビティ3)は一平面上にあるだけではなく、空間内において三次元的に形成されている。
【0068】
前駆体本体5は、内部チャネル構造を有するSiC-炭素材料からなる2つの半製品の準モノリシック接合によって、
図1および
図2と同様に製造される。しかしながら、半製品は3D印刷、この場合はバインダジェット技術によって製造される。バインダジェット法においては、プラットフォーム上に粉末を層状に塗布し、粉末の局所的に結合するバインダを各層に点ごとに導入することにより、3次元体を構築し、緩い粉末ベッドからの3D前駆体本体の取り出しを可能にする。使用されるSiC粉末は、平均粒径50~250μmのマトリクスM1を形成する。半製品のキャビティ3のチャネル部分は、チャネルから未結合の粉末を除去できるように、十分なアクセス性を有していなければならない。したがって、前駆体本体5は、ここでも多数の部品構成を有する。3D印刷用粉末からキャビティ3を完全に除去した後、半製品は、各チャンネルが複雑なダクトシステムで接続されるように接合される。前駆体本体5内のチャネル(キャビティ3)は、5mmのチャネル径を有し、各チャネルの端部には、キャビティ3の壁4に続く前駆体コーティング11を実施するための2つのチャネル開口部がある。
【0069】
前駆体コーティング11の塗布およびさらなる処理は、
図4と合わせて
図1および
図2に類似して実施されてもよい。
【0070】
しかしながら、特に3D印刷中に粉末を十分に空にすることが可能であれば、前駆体本体5の任意の単一片構成も同様に考えられる。この目的のために、前駆体本体5は、バインダジェット法によってモノリスとして製造可能である。これにより、チャネル形状(キャビティ3の形状)の幾何学的自由度を最大限に高めることができる。特にチャネル径と粉末の流動性に影響される、目的とするチャネル/キャビティ3からの未結合粉末の除去が、ここでの制限要因である。モノリシックに製造されたチャネル構造(キャビティ3)のチャネル径は、例えば10mmである。これらは、例えば古典的な導水冷却チャネルとして適している。
【0071】
キャビティ3の壁表面4への前駆体コーティング11の塗布は、
図1および
図2について説明した塗布プロセスに従って行われてもよい。チャネルの直径が10mmの場合、固形分65wt%のコーティングスリップを使用して行われてもよい。前駆体コーティング11を有する前駆体本体5のその後の処理は、
図4と併せて、
図1および
図2に従って実施されてもよい。
【0072】
図4の概略的な詳細断面を考慮して、
図5は、部品1のキャビティ3を断面で示す光学顕微鏡による実際の研磨断面顕微鏡写真を示す。キャビティ3は前駆体本体5に形成され、キャビティ3の壁表面4は前駆体コーティング11で被覆されている。前駆体本体5は、前駆体コーティング11を形成する第2のマトリクスM2の微細構造K2よりも粗い微細構造K1を有する第1のマトリクスM1から構成されている。コーティングのない前駆体本体5の自由表面6も明らかである。前駆体本体5および前駆体コーティング11の浸潤物M3による共同浸潤の結果、前駆体コーティング11および浸潤物M3のコーティング10で被覆された前駆体本体5および浸潤物M3からなる部品本体2が得られる。コーティング10の層厚は画像方向で、2時方向が550.940μm、5時方向が704.762μm、8時方向が652.110μm、11時方向が719.315μmである。
【0073】
図6の光学顕微鏡による詳細画像は、部品本体2とコーティング10との境界領域を示している。壁表面4に沿って、前駆体本体5の無機マトリクスM1の粗い材料粒K1と、前駆体コーティング11の無機マトリクスM2のより細かい材料粒K2が隣接している。その結果、浸潤物M3は、前駆体コーティング11の無機マトリクスM2中では、前駆体本体5の無機マトリクスM1中よりもはるかに微細に分布する。浸潤物M3は、壁表面4の個々の領域において、前駆体本体5のマトリクスM1の材料粒K1間の間隙から、前駆体コーティング11のマトリクスM2の材料粒K2間の間隙まで延びていることが明らかである。このようにして、前駆体本体5および前駆体コーティング11を通って延びる浸潤物M3からなる一種の骨格または足場が存在する。
【0074】
図7のさらに大きな拡大図は、
図6の電子顕微鏡による詳細画像である。ここでは、多孔質前駆体本体5のマトリクスM1を形成する材料粒K1が最初に明らかである。浸潤物M3はマトリクスM1の間隙に浸潤し、現在2つの異なる形態で存在している。浸潤物M3.1は反応相手と反応し、前駆体本体5のマトリクスM1の材料粒K1上にエピタキシャル成長した。残りの間隙は、遊離した浸潤物M3.2で満たされている。
【0075】
本実施例では、多孔質前駆体本体5のマトリクスM1の材料粒M1は炭化ケイ素であり、浸潤物M3はケイ素であり、その結果、in-situ炭化ケイ素が反応浸潤物M3.1として存在し、ケイ素が遊離浸潤物M3.2として存在する。このため、前駆体本体5には、浸潤物M3の反応相手として炭素が存在した。
【0076】
図7によれば、前駆体コーティング11のマトリクスM2の微細構造は、幾分微細な形態で非常に類似している。しかしながら、前駆体コーティング11に反応相手が組み込まれていないために、反応した浸潤物M3.1に対する遊離した浸潤物M3.2の割合が、前駆体本体5の領域よりも、ここでははるかに強く優勢である。
【0077】
図8aおよび
図8bは、部品1の研磨断面の光学顕微鏡による追加の詳細画像を白黒で示す。多孔質マトリクスM1および浸潤物M3からなる多孔質前駆体本体5からなる部品本体2が明らかである。多孔質前駆体本体5のキャビティ3の壁表面4には、コーティング10が配置されている。コーティング10は、マトリクスM2と浸潤物M3とからなる多孔質前駆体コーティング11から構成されている。いずれの場合も、部品本体2の領域における微細構造は、コーティング10の領域よりも粗いことが明らかである。さらに、
図5、
図6および
図7に関して前述を参照するが、これらの個々の特徴が、ここで個々に実現されてもよい。
【0078】
当業者であれば、説明した例示的な実施形態の個々のステップを、説明した方法または部品に個別に組み込むこともできることが理解されよう。
【0079】
本発明は、上述の実施形態のいずれにも限定されず、非常に多様な方法で変更することができる。
【0080】
構造的詳細、空間的配置、および方法ステップを含む、特許請求の範囲、説明、および図面から明らかな特徴および利点は全て、個々にかつ非常に多様な組合せの両方で、本発明に不可欠であり得る。
【符号の説明】
【0081】
1 部品
2 部品本体
3 キャビティ
4 壁表面
5 多孔質前駆体本体
6 自由表面
10 コーティング
11 多孔質前駆体コーティング
20 装置
21 流体搬送装置
K1 材料粒(前駆体本体)
K2 材料粒(コーティング)
M1 無機マトリクス(前駆体本体)
M2 無機マトリクス(前駆体コーティング)
M3 浸潤物
【国際調査報告】