(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ターボ分子ポンプのブレードディスク
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
F04D19/04 D
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024519083
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 GB2022052826
(87)【国際公開番号】W WO2023084200
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】グラント ニコラス ジョナサン
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131BA06
3H131CA02
3H131CA03
(57)【要約】
ターボ分子ポンプのブレードディスク(400)であって、軸方向を規定する軸(412)の周りで回転するように構成された中央ハブ(402)と、中央ハブ(402)から半径方向に延びる1又は2以上のブレード(410)と、を備え、1又は2以上のブレード(410)の各々は、軸方向と平行である第1の方向における第1の点に向かってテーパー付けされる;軸方向と平行である第2の方向における第2の点に向かってテーパー付けされる;及び、実質的に平行四辺形である;断面(500)を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ分子ポンプのブレードディスクであって、
軸方向を規定する軸の周りで回転するように構成された中央ハブと、
前記中央ハブから半径方向に延びる1又は2以上のブレードと、
を備え、
前記1又は2以上のブレードの各々は、
前記軸方向と平行である第1の方向における第1の点に向かってテーパー付けされる、
前記軸方向と平行であり、前記第1の方向の反対方向である第2の方向における第2の点に向かってテーパー付けされる、及び、
実質的に平行四辺形である、
断面を有する、ターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項2】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記ブレードの前記断面は、前記ブレードと、前記ブレードが前記中央ハブから延びる半径方向に垂直な平面との共通部分である、請求項1に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項3】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記ブレードの前記断面は、前記ブレードの先端である又は前記先端に近接する、請求項1又は2に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項4】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、前記ブレードの長さの少なくとも大部分に沿って前記第1の方向におけるある点に向かってテーパー付けされ、前記ブレードの前記長さは、前記中央ハブから半径方向外向きの方向において規定される、請求項1から3のいずれかに記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項5】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、前記ブレードの前記長さの全体に沿って前記第1の方向におけるある点に向かってテーパー付けされる、請求項4に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項6】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、前記ブレードの長さの少なくとも大部分に沿って前記第2の方向におけるある点に向かってテーパー付けされ、前記ブレードの前記長さは、前記中央ハブから半径方向外向きの方向において規定される、請求項5に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項7】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、前記ブレードの前記長さの全体に沿って前記第2の方向におけるある点に向かってテーパー付けされる、請求項6に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項8】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記第1の点は、前記第1の方向において前記ブレード上の最も離れた点である、請求項1から7のいずれかに記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項9】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記第2の点は、前記第2の方向において前記ブレード上の最も離れた点である、請求項1から8のいずれかに記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項10】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、複数の側面によって規定され、前記複数の側面の全ては、前記軸方向に対して斜め又は平行である、請求項1から9のいずれかに記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項11】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、複数の側面によって規定され、前記複数の側面のうちの1又は2以上は、前記軸方向及び前記半径方向の両方に対して垂直であり、ブレードの厚さの20%以下である、請求項1から10のいずれかに記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の1又は2以上のターボ分子ポンプのブレードディスクを備えるターボ分子ポンプ。
【請求項13】
前記1又は2以上のターボ分子ポンプのブレードディスクは、ロータディスク又はステータディスクである、請求項12に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項14】
ターボ分子ポンプのブレードディスクを製造する方法であって、前記ターボ分子ポンプのブレードディスクは、請求項1から11のいずれかに記載のものであり、前記方法は、
前記ディスクを提供するステップと、
前記ターボ分子ポンプのブレードディスクを製造するために前記ディスクを機械加工するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記機械加工するステップは、
前記ディスクのブレードに第1の半径方向カットを施すステップであって、前記ブレードを半径方向に沿って見た場合に、前記第1の半径方向カットは、前記ブレードの最前部の頂点から前記ブレードの最後部側に沿った中間点まで実質的に直線状に延びる、ステップと、
前記ブレードに第2の半径方向カットを施すステップであって、前記ブレードを半径方向に沿って見た場合に、前記第2の半径方向カットは、前記ブレードの最前部側に沿った中間点からブレードの最後部の頂点まで実質的に直線状に延びる、ステップと、
を含む、請求項14に記載の方法であって、
【請求項16】
前記第1の半径方向カット及び前記第2の半径方向カットは、同時に又は少なくとも時間的にある程度重なるように行われる、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ分子ポンプ(TMP)及びそのためのロータディスク及びステータディスクなどのブレードディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプは、真空ポンプの一種であり、1又は2以上のブレードポンプ段の回転ブレードを使用して所望のポンプ送給方向にガス分子を押し出すことによって作動する。
【0003】
ターボ分子ポンプは、典型的には、互いに後続し、ポンプの軸方向に互いに間隔をあけて配置された複数の回転ディスク及び静止ディスクを備える。回転ディスクはロータディスクと呼ばれ、静止ディスクはステータディスクと呼ばれる。両方のディスクは、ディスク周縁部でブレードを形成するように形作られている。従って、ディスクはブレードディスク(bladed discs)と呼ばれる場合がある。ブレードディスクは、隣接するブレード間に通路が存在するように形成されている。ロータディスクのブレードは回転方向に対して鋭角をなすが、ステータディスクのブレードはロータディスクの回転方向に対して鈍角をなす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、軸方向を規定する軸の周りで回転するように構成された中央ハブと;中央ハブから半径方向に延びる1又は2以上のブレードと;を備える、ターボ分子ポンプのブレードディスクが提供される。1又は2以上のブレードの各々は、第1の方向において内向きにテーパー付けされた断面を有し、第1の方向は軸方向と平行である。
【0005】
1又は2以上のブレードの各々は、第1の方向に沿って幅が減少する断面を有することができる。幅は、断面の平面において第1の方向に垂直な方向に規定することができる。
【0006】
1又は2以上のブレードの各々について、そのブレードの断面は、第1の方向におけるある点に向かってテーパー付けすることができる。1又は2以上のブレードの各々について、そのブレードの断面が第1の方向においてテーパー付けされる点は、第1の方向において最も離れた点とすることができる。
【0007】
1又は2以上のブレードの各々について、そのブレードの断面は、第2の方向に(例えば内側に)テーパー付けすることができ、第2の方向は、軸方向と平行であり、第1の方向の反対方向である。1又は2以上のブレードの各々について、そのブレードの断面は、第2の方向におけるある点に向かってテーパー付けすることができる。1又は2以上のブレードの各々について、そのブレードの断面が第2の方向においてテーパー付けされる点は、第2の方向において最も離れた点とすることができる。
【0008】
1又は2以上のブレードの各々について、そのブレードの断面の形状は、実質的に、平行四辺形、台形、又は五角形とすることができる。
【0009】
1又は2以上のブレードの各々について、そのブレードの断面は、そのブレードと、そのブレードが中央ハブから延びる半径方向に垂直な平面との共通部分とすることができる。
【0010】
1又は2以上のブレードの各々について、そのブレードの断面は、そのブレードの先端である又は先端に近接することができる。
【0011】
1又は2以上のブレードの各々について、断面は、ブレードの長さの少なくとも大部分に沿って、第1の方向において内向きにテーパー付けすることができる。ブレードの長さは、中央ハブから半径方向外向きの方向に規定することができる。
【0012】
1又は2以上のブレードの各々について、断面は、ブレードの長さの全体に沿って第1の方向において内向きにテーパー付けすることができる。
【0013】
断面は、複数の側面によって規定することができ、上記複数の側面の全ては、軸方向に対して斜め又は平行である。
【0014】
1又は2以上のブレードの各々について、断面は、複数の側面によって規定することができ、複数の側面のうちの1又は2以上は、軸方向及び半径方向の両方に対して垂直であり、ブレードの厚さの20%以下及び/又は5mm以下である。
【0015】
さらなる態様において、1又は2以上のターボ分子ポンプのブレードディスクを備えるターボ分子ポンプが提供され、1又は2以上のターボ分子ポンプのブレードディスクは、何らかの上記の態様に従う。
【0016】
1又は2以上のターボ分子ポンプのブレードディスクは、ロータディスク又はステータディスクとすることができる。
【0017】
さらなる態様において、ターボ分子ポンプのブレードディスクを製造する方法が提供される。ターボ分子ポンプのブレードディスクは、何らかの上記の態様に従う。本方法は、ディスク(例えば、ブレードディスク)を提供するステップと、ターボ分子ポンプのブレードディスクを製造するためにディスクを機械加工するステップと、を含む。
【0018】
さらなる態様において、軸方向を規定する軸の周りで回転するように構成された中央ハブと、中央ハブから半径方向に延びる1又は2以上のブレードと、を備える、ターボ分子ポンプのブレードディスクが提供される。1又は2以上のブレードの各々は、軸方向と平行である第1の方向における第1の点に向かってテーパー付けされる;軸方向と平行であり、第1の方向の反対方向である、第2の方向における第2の点に向かってテーパー付けされる;及び、実質的に平行四辺形である;断面を有する。
【0019】
1又は2以上のブレードの各々について、そのブレードの断面は、そのブレードと、そのブレードが中央ハブから延びる半径方向に垂直な平面との共通部分とすることができる。
【0020】
1又は2以上のブレードの各々について、そのブレードの断面は、そのブレードの先端である又は先端に近接することができる。
【0021】
1又は2以上のブレードの各々について、断面は、そのブレードの長さの少なくとも大部分に沿って第1の方向におけるある点に向かってテーパー付けすることができ、そのブレードの長さは、中央ハブから半径方向外向きの方向において規定される。1又は2以上のブレードの各々について、断面は、ブレードの長さの全体に沿って第1の方向におけるある点に向かってテーパー付けすることができる。1又は2以上のブレードの各々について、断面は、ブレードの長さの少なくとも大部分に沿って第2の方向におけるある点に向かってテーパー付けすることができ、ブレードの長さは、中央ハブから半径方向外向きの方向に規定される。1又は2以上のブレードの各々について、断面は、ブレードの長さの全体に沿って第2の方向におけるある点に向かってテーパー付けすることができる。
【0022】
1又は2以上のブレードの各々について、第1の点は、第1の方向においてブレード上の最も離れた点とすることができる。1又は2以上のブレードの各々について、第2の点は、第2の方向においてブレード上で最も離れた点とすることができる。
【0023】
1又は2以上のブレードの各々について、(平行四辺形の)断面は、複数の側面によって規定することができ、上記複数の側面の全ては、軸方向に対して斜め又は平行である。好ましくは、平行四辺形の側面は、軸に対して斜めである(すなわち、平行でも垂直でもない)。
【0024】
1又は2以上のブレードの各々について、断面は複数の側面によって規定することができ、複数の側面のうちの1又は2以上は、軸方向及び半径方向の両方に対して垂直であり、ブレードの厚さの20%以下である。
【0025】
さらなる態様において、1又は2以上のターボ分子ポンプのブレードディスクを含むターボ分子ポンプが提供され、1又は2以上のターボ分子ポンプのブレードディスクは、何らかの上記の態様に従う。
【0026】
1又は2以上のターボ分子ポンプのブレードディスクは、ロータディスク又はステータディスクとすることができる。
【0027】
さらなる態様において、ターボ分子ポンプのブレードディスクを製造する方法が提供され、ターボ分子ポンプのブレードディスクは、何らかの上記の態様に従う。本方法は、ディスクを提供するステップ、ターボ分子ポンプのブレードディスクを製造するためにディスクを機械加工するステップと、を含む。
【0028】
機械加工するステップは、ディスクのブレードに第1の半径方向カットを施すステップを含むことができ、ブレードを半径方向に沿って見た場合に、第1の半径方向カットは、ブレードの最前部の頂点からブレードの最後部側に沿った中間点まで実質的に直線状に延びる。
【0029】
機械加工するステップは、ブレードに第2の半径方向カットを施すステップを含むことができ、半径方向に沿って見た場合に、第2の半径方向カットは、ブレードの最前部側に沿った中間点からブレードの最後部の頂点まで実質的に直線状に延びる。
【0030】
第1の半径方向カット及び第2の半径方向カットは、同時に又は少なくとも時間的にある程度重なるように行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】ターボ分子ポンプを示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図2】ターボ分子ポンプの従来のロータディスクの一例を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図3】従来のロータディスクのロータブレードを通る断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図4】ターボ分子ポンプのロータディスクの一実施形態を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図5】
図4のロータブレードを通る断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図6】さらなるロータブレードを通る断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図7】さらなるロータブレードを通る断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図8】ターボ分子ポンプブレードディスクの製造方法の特定のステップを示すプロセスフロー図である。
【
図9】
図8の方法中に実施することができる様々な機械加工操作を示す概略図である。
【
図10】
図8の方法中に実施することができる様々な機械加工操作を示す概略図である。
【
図11】
図8の方法中に実施することができる様々な機械加工操作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
【0033】
ターボ分子ポンプ100は、複数の段102を備える。
【0034】
各段は、それぞれの一対のブレードディスク、具体的にはロータディスク104及びステータディスク106を備える。
【0035】
作動時、ロータディスク104は、
図1に実線矢印及び参照数字107で示すように、ステータディスク106に対して高速で回転する。作動時、ターボ分子ポンプ100の上段102aは、ターボ分子ポンプ100の入口108を介して、ターボ分子ポンプ100の外部の場所(例えば、ガスをポンプ送給することが望まれるチャンバ)からガスを受け取る。ガス分子が入口108から入ると、上段102の回転するロータディスク104のブレードがガス分子に衝突し、ガス分子を上段のステータディスク106のブレード間のガス移送空間に押し込む。このようにして、ガス分子は次の段102に移送され、そこでガス分子はその段の回転ロータディスク104のブレードと衝突し、このプロセスは、ガス分子がターボ分子ポンプ100の出口110の外に押し出されるまで続けられる。
【0036】
図2は、ターボ分子ポンプの従来のロータディスク200の一例を示す概略図である(縮尺通りではない)。従来のロータディスク200は、
図1を参照して上記でより詳細に説明したターボ分子ポンプ100に使用することができる。
【0037】
この例では、従来のロータディスク200は、上側の第1の面204と、第1の面204とは反対側の下側の第2の面206と、第1の面204と第2の面206との間に配置される周囲側面208とを有する実質的に円筒形の中央ハブ202を備える。従来のロータディスク200は、中央ハブ202の周囲側面208から半径方向外側に延びる複数のロータブレード210をさらに備える。
【0038】
従来のロータディスク200は、作動時、中心軸212の周りで回転するように構成されている。軸212は、軸方向を規定する。
【0039】
図3は、従来のロータディスク200のロータブレード210を通る断面300を示す概略図である(縮尺通りではない)。
図3に示す断面300は、ロータブレード210と、このロータブレード210が延びる半径方向に垂直な平面との共通部分である。
【0040】
この例では、各ロータブレード210は互いに実質的に同一である。
【0041】
この例では、ロータブレード210の断面300の形状は、実質的に平行四辺形である。断面300は、4つの側面、すなわち、第1の側面301、第2の側面302、第3の側面303、及び第4の側面304を有する。
【0042】
第1の側面301は、ロータブレード210の上側である。この例では、第1の側面302は、従来のロータディスク200の中央ハブ202の上側の第1の面204と実質的に平行である。
【0043】
第2の側面302は、ロータブレード210の下側である。この例では、第2の側面302は、第1の側面301の反対側である。第2の側面302は、従来のロータディスク200の中央ハブ202の下側の第2の面206と実質的に平行である。
【0044】
第3の側面303は、従来のロータディスク200の回転方向(この回転方向は、
図3に矢印及び参照数字306によって示されている)に関して、ロータブレード210の前方面又は前面である。第3の側面303は、第1及び第2の側面301、302の間に配置されている。
【0045】
第4の側面304は、従来のロータディスク200の回転方向306に対するロータブレード210の後方面又は後面である。第4の側面304は、第3の側面303の反対側である。第4の側面304は、第1及び第2の側面301、302の間に配置されている。
【0046】
この例では、従来のロータディスク200をターボ分子ポンプに実装し、その軸212の周りで回転させると、ロータブレード210の間の空間に入るガス分子は、ロータブレード210の第3の側面303(すなわち前面)に優先的に衝突する。ロータブレード210の第3の側面303は、回転方向に対して鋭角をなしている、すなわち角度がついている又は下向きであるため、ガス分子の大部分は、ポンプ段102の協働するステータディスク106の方へ下向きに向けられる又は散乱する。このような分子の動きは、
図3に実線矢印及び参照数字308で示されている。
【0047】
しかしながら、本発明者らは、ロータブレードの第1の側面301(すなわち上面)に衝突するガス分子は、ガスの所望の流れ方向とは反対の方向に反射される、すなわち上向きに反射される傾向があることを認識している。このような分子の動きは、
図3では実線矢印及び参照数字310で示されている。従って、ポンプ効率が低下する傾向がある。
【0048】
以下に説明するのは、ガスの所望の方向とは反対の方向へのガス分子の不要な反射を低減又は除去する傾向があるターボ分子ポンプのブレードディスク、すなわちロータディスク及び/又はステータディスクの実施形態である。
【0049】
図4は、ターボ分子ポンプのロータディスク400の一実施形態を示す概略図である(縮尺通りではない)。ロータディスク400は、
図1を参照して上記でより詳細に説明したターボ分子ポンプ100に使用することができる。
【0050】
この例では、ロータディスク400は、上側の第1の面404と、第1の面404とは反対側の下側の第2の面406と、第1の面404と第2の面406との間に配置された周囲側面408とを有する実質的に円筒形の中央ハブ402を備える。ロータディスク400は、中央ハブ402の周囲側面408から半径方向外側に延びる複数のロータブレード410をさらに備える。
【0051】
本実施形態では、各ロータブレード410は互いに実質的に同一である。
【0052】
ロータディスク400は、作動時、中心軸412の周りで回転するように構成されている。軸412は、軸方向を規定する。
【0053】
図5は、ロータディスク400のロータブレード410を通る断面500を示す概略図である(縮尺通りではない)。
図5に示す断面500は、ロータブレード410と、このロータブレード410が延びる半径方向に垂直な平面との共通部分である。
【0054】
この例では、ロータブレード410の断面500の形状は、実質的に平行四辺形である。断面500は4つの側面、すなわち第1の側面501、第2の側面502、第3の側面503、及び第4の側面504を有する。
【0055】
第1の側面501は、ロータブレード410の上側である。この例では、第1の側面302は、ロータディスク400の中央ハブ402の上側の第1の面404に対して斜めになっている。
【0056】
第2の側面502は、ロータブレード410の下側である。この例では、第2の側面502は、第1の側面501の反対側である。第2の側面502は、ロータディスク400の中央ハブ402の下側の第2の面406に対して斜めになっている。
【0057】
第3の側面503は、ロータディスク400の回転方向(この回転方向は、
図5に矢印及び参照数字506によって示されている)に関して、ロータブレード410の前方面又は前面である。第3の側面503は、第1及び第2の側面501、502の間に配置されている。
【0058】
第4の側面504は、ロータディスク400の回転方向506に関して、ロータブレード410の後方面又は後面である。第4の側面504は、第3の側面503の反対側である。第4の側面504は、第1及び第2の側面501、502の間に配置されている。
【0059】
この実施形態では、第2の側面502は、第3の側面503よりも回転方向506とのなす角度が小さい、すなわち浅い。
【0060】
この実施形態では、ロータブレード410の断面500の側面501-504の全ては、ロータディスク400の第1及び第2の面404、406に対して斜めになっている。
【0061】
この実施形態では、ロータブレード410の断面500の側面501-504の全ては、ロータディスク400の軸412に対して斜めになっている。
【0062】
この実施形態では、ロータブレード410の断面500は、第1の方向508において内向きにテーパー付けされている。第1の方向508は、軸412によって規定される軸方向と平行な上向き方向である。第1の方向508は、回転方向506に対して実質的に垂直である。
【0063】
換言すれば、ロータブレード410の断面500の幅又は厚さは、第1の方向508に沿って低減又は減少する。ロータブレード410の断面500の幅又は厚さは、第1の方向510に垂直で、断面の平面内にあるロータブレード410の断面500の寸法とすることができる。
【0064】
この実施形態では、ロータブレード410の断面500は、第1の方向508においての第1の点510に向かってテーパー付けされている。この実施形態では、第1の点510は、第1の方向508における断面500の最も離れた点である。
【0065】
この実施形態では、ロータブレード410の断面500は、第2の方向512において内向きにテーパー付けされている。第2の方向512は、軸412によって規定される軸方向と平行な下向き方向である。第2の方向512は、第1の方向508とは反対である。第2の方向512は、回転方向506に対して実質的に垂直である。より具体的には、この実施形態では、ロータブレード410の断面500は、第2の方向512における第2の点514に向かってテーパー付けされている。この実施形態では、第2の点514は、第2の方向512における断面500の最も離れた点である。
【0066】
この実施形態では、ロータディスク400を、
図1を参照して上記でより詳細に説明したターボ分子ポンプ100のようなターボ分子ポンプに実装し、その軸412の周りで回転させると、ロータブレード410の間の空間に入るガス分子は、ロータブレード410の第3の側面503(すなわち、前面)に優先的に衝突し、同様にロータブレード410の第2の側面502(すなわち、下面)にも衝突する。この実施形態では、ロータブレード410の第2及び第3の側面502、503の両方は、回転方向506に対して鋭角をなしている。換言すれば、ロータブレード410の第2及び第3の側面502、503の両方は、角度がついている又は下方を向いている。従って、ロータブレード410の第2及び/又は第3の側面502、503に衝突するガス分子は、ポンプ段の協働するステータディスクの方へ下向きに向けられる又は散乱する傾向がある。第2の側面502に衝突する分子の動きは、
図5の実線矢印及び参照数字516によって示されており、第3の側面503に衝突した分子の動きは、
図5の実線矢印及び参照数字518によって示されている。
【0067】
この実施形態では、ロータブレード410の第1の側面501(すなわち上面)に衝突するガス分子は、回転方向506とは反対の方向に向けられる又は散乱する傾向がある。すなわち、第1の側面501に衝突するガス分子は、ロータディスク400上の後続のロータブレード410に向かう方向に向けられる傾向がある。詳細には、ガス分子は、ロータディスク410上の後続のロータブレード410の第2及び/又は第3の側面502、503に衝突するように向けられる傾向があり、それによって下向きに向けられる。第1の側面501に衝突する分子の動きは、
図5の実線矢印及び参照数字520で示されている。
【0068】
ロータブレード410は、中央ハブ402の上側の第1の面404と平行な上面を備えていない。詳細には、ロータブレード410の上方に向かう面、すなわち第1の面501は、回転方向506に対して鈍角をなしている。
【0069】
従って、有利には、上向きのガス分子の反射が低減又は除去される傾向がある。これにより、ポンプ効率が向上する傾向がある。
【0070】
ロータブレード410の長さは、ロータブレード410が中央ハブ402に接合するロータブレード410の根元又は近位端から、根元又は近位端とは反対側のロータブレード410の先端又は遠位端までの寸法である。ロータブレード410の長さは、ロータブレード410がそれに沿って中央ハブ402から延びる半径方向と平行である。
【0071】
上記の実施形態では、ロータブレード410の断面500は、ロータブレード410の長さ全体に沿って実質的に同じである。従って、
図5に示す断面は、ロータブレード410の長さに沿ったどこかのロータブレード410の断面とすることができる。例えば、
図5に示す断面500は、ロータブレード410の先端又は先端に近接したロータブレード410の断面とすることができる。また、
図5に示す断面500は、ロータブレード410の根元又は根元に近接したロータブレード410の断面とすることができる。しかしながら、他の実施形態では、ロータブレードの断面は、ロータブレードの長さ全体に沿って実質的に同じではない。例えば、いくつかの実施形態では、ブレードの根元又は根元に近接したブレードの断面のサイズ、形状、及び/又は向きは、ブレードの先端又は先端に近接したブレードの断面のサイズ、形状、及び/又は向きと異なる。いくつかの実施形態では、ブレードは、その個別の半径方向に関してその長さに沿ってねじれている。いくつかの実施形態では、第2の側面502及び/又は第3の側面503は、ロータブレード410の根元又は根元に近接する場所よりも、ロータブレード410の先端又は先端に近接する場所の方が、回転方向506に対して小さい、すなわち浅い角度をなす。好ましくは、ロータブレード410の断面500は、ロータブレード410の長さの少なくとも大部分に沿って、第1の方向508において内向きにテーパー付けされている。より好ましくは、断面500は、ロータブレード410の長さの全体に沿って第1の方向508において内向きにテーパー付けされている。断面500は、ロータブレード410の長さの全部又は一部に沿って第2の方向512においてテーパー付けすることができる。
【0072】
上記の実施形態では、ロータブレードの断面の全ての側面は、ロータディスクの第1及び第2の面に対して斜めになっている。しかしながら、他の実施形態では、ロータブレードの断面の側面の1又は2以上は、ロータディスクの第1及び第2の面に対して斜めになっていない。例えば、ロータブレードの断面の1又は2以上の側面は、ロータディスクの第1及び第2の面に対して実質的に平行とすること、すなわち軸に対して実質的に垂直とすることができる。
【0073】
図6は、ロータブレードのさらなる実施形態を通る断面600を示す概略図である(縮尺通りではない)。このロータブレードは、中央ハブ402から半径方向に延びる。
図6に示す断面600は、ロータブレードと、ロータブレードが延びる半径方向に垂直な平面との共通部分である。
【0074】
この例では、ロータブレード410の断面600の形状は実質的に台形である。断面600は4つの側面、すなわち第1の側面601、第2の側面602、第3の側面603、及び第4の側面604を有する。
【0075】
第1の側面601は、ロータディスクの回転方向606に関して、ロータブレードの後方面又は後面である。第1の側面601は、ロータディスクの中央ハブ402の上側の第1の面404に対して斜めになっている。第1の側面601は、第2及び第4の側面602、604の間に配置されている。
【0076】
第2の側面602は、回転方向606に関して、ロータブレードの第1の前方面又は前面である。第2の側面602は、第1及び第3の側面601、603の間に配置されている。
【0077】
第3の側面603は、回転方向606に関して、ロータブレードの第2の前方面又は前面である。第3の側面603は、第2及び第4の側面602、604の間に配置されている。
【0078】
第2及び第3の側面602、603は、第1の側面601の反対側に配置されている。第2及び第3の側面602、603は、ロータディスクの中央ハブ402の第1及び第2の面404、406に対して斜めになっている。
【0079】
第4の側面604は、ロータブレードの下側である。第4の側面604は、ロータディスクの中央ハブ402の下側の第2の面406と実質的に平行である。
【0080】
この実施形態では、ロータブレードの断面600は、第1の方向508において内向きにテーパー付けされている。より具体的には、この実施形態では、断面600は、第1の方向508の第1の点610に向かってテーパー付けされている。この実施形態では、第1の点610は、第1の方向508における断面600の最も離れた点である。
【0081】
この実施形態では、ロータブレードの断面600は、第2の方向512において内向きにテーパー付けされていない。より具体的には、ロータブレードの最下部は、第2の方向512にテーパー付けされておらず、ロータブレードの最下部の幅(すなわち、回転方向606と平行な方向で反対側の第1及び第3の側面601、603の間の距離)は、第2の方向512で実質的に一定のままである。この実施形態では、第4の側面604は、第2の方向512において断面600の最も離れた点である。いくつかの実施形態では、ロータブレードの断面600は、第2の方向512において外向きにテーパー付けすること又はある程度内向きにテーパー付けすることができる。
【0082】
この実施形態では、
図6に示す断面600を有するブレードを備えるロータディスクを、
図1を参照して上記でさらに詳細に説明したターボ分子ポンプ100のようなターボ分子ポンプに実装し、その軸の周りで回転させると、ロータブレードの間の空間に入るガス分子は、ロータブレードの第2の側面602及び第3の側面603(すなわち、前面)に優先的に衝突する。この実施形態では、ロータブレードの第2及び第3の側面602、603の両方は、回転方向606に対して鋭角をなしている。換言すれば、ロータブレードの第2及び第3の側面602、603の両方は、角度がついている又は下方を向いている。従って、ロータブレードの第2及び/又は第3の側面602、603に衝突するガス分子は、ポンプ段の協働するステータディスクの方へ下向きに向けられる又は散乱する傾向がある。第2の側面602に衝突する分子の動きは、
図6の実線矢印及び参照数字616によって示されており、第3の側面603に衝突する分子の動きは、
図6の実線矢印及び参照数字618によって示されている。
【0083】
この実施形態では、ロータブレードの第1の側面601(すなわち、後面)に衝突するガス分子は、後続のロータブレードに向かって回転方向606とは反対の方向に向けられる又は散乱する傾向がある。詳細には、ガス分子は、ロータディスク上の後続のロータブレードの第2及び/又は第3の側面602、603に衝突するように向けられる傾向があり、それによって下向きに向けられる。第1の側面601に衝突する分子の動きは、
図6の実線矢印及び参照数字620で示されている。
【0084】
図4の実施形態と同様に、ロータブレードは、中央ハブ402の上側の第1の面404と平行な上面を備えていない。従って、有利には、上向きのガス分子の反射が低減又は除去される傾向がある。これにより、ポンピング効率が向上する傾向がある。
【0085】
さらに、この実施形態では、ロータブレードは、中央ハブ402の下側の第2の面406と平行な、第4の側面604に相当する下面を備える。従って、有利には、ターボ分子ポンプ内で望ましくない上向きに進むガス分子は、下向きに反射される傾向があり、これらは、所望の下向きに進むようになっている。これによりポンプ効率が向上する傾向がある。この第4の側面604からの上向きに進むガス分子の反射は、
図6の実線矢印及び参照数字622によって示されている。
【0086】
図7は、ロータブレードのさらなる実施形態を通る断面700を示す概略図である(縮尺通りではない)。このロータブレードは、中央ハブ402から半径方向に延びる。
図7に示す断面700は、ロータブレードと、このロータブレードが延びる半径方向に垂直な平面との共通部分である。
【0087】
この例では、ロータブレードの断面700の形状は、実質的に五角形、例えば不規則な五角形である。断面700は、5つの側面、すなわち第1の側面701、第2の側面702、第3の側面703、第4の側面704、及び第5の側面705を有する。
【0088】
第1の側面701は、ロータディスクの回転方向606に関して、ロータブレードの後方面又は後面である。第1の側面701は、ロータディスクの中央ハブ402の上側の第1の面404に対して斜めになっている。第1の側面701は、第5及び第4の側面705、704の間に配置されている。
【0089】
第2の側面702は、回転方向706に関して、ロータブレードの第1の前方面又は前面である。第2の側面702は、第5及び第3の側面705、703の間に配置されている。
【0090】
第3の側面703は、回転方向706に関して、ロータブレードの第2の前方面又は前面である。第3の側面703は、第2及び第4の側面702、704の間に配置されている。
【0091】
第2及び第3の側面702、703は、第1の側面701の反対側に配置されている。第2及び第3の側面702、703は、ロータディスクの中央ハブ402の第1及び第2の面404、406に対して斜めになっている。
【0092】
第4の側面704は、ロータブレードの下側である。第4の側面704は、ロータディスクの中央ハブ402の下側の第2の面406と実質的に平行である。第4の側面704は、第3及び第1の側面703、701の間に配置されている。
【0093】
第5の側面705は、ロータブレードの上側である。第5の側面705は、ロータディスクの中央ハブ402の上側の第1の面404と実質的に平行である。第5の側面705は、第1及び第2の側面701、702の間に配置されている。
【0094】
この実施形態では、ロータブレードの断面600は、第1の方向508において内向きにテーパー付けされている。しかしながら、いくつかの他の実施形態とは異なり、断面600は、第1の方向508の点に向かって内向きにテーパー付けされていない。代わりに、この実施形態では、断面600は、第1の方向508において内向きにテーパー付けされ、第5の側面705を形成する。この実施形態では、第5の側面705は、第1の方向508において断面700の最も離れた点を規定する。
【0095】
この実施形態では、ロータブレードの断面700は、第2の方向512において内向きにテーパー付けされていない。ロータブレードの断面700は、第2の方向512において外向きにテーパー付けされている。しかしながら、他の実施形態では、断面700は、第2の方向512において内向きにテーパー付けされる又はテーパー付けされない。この実施形態では、第4の側面704は、第2の方向512において断面600の最も離れた点である。
【0096】
この実施形態では、
図7に示す断面700を有するブレードを備えるロータディスクを、
図1を参照して上記でさらに詳細に説明したターボ分子ポンプ100のようなターボ分子ポンプに実装し、その軸の周りで回転させると、ロータブレードの間の空間に入るガス分子は、ロータブレードの第2の側面702及び第3の側面703(すなわち、前面)に優先的に衝突する。この実施形態では、ロータブレードの第2及び第3の側面702、703の両方は、回転方向706に対して鋭角をなしている。換言すれば、ロータブレードの第2及び第3の側面702、703の両方は、角度がついている又は下方を向いている。従って、ロータブレードの第2及び/又は第3の側面702、703に衝突するガス分子は、ポンプ段の協働するステータディスクの方へ下向きに向けられる又は散乱する傾向がある。第2の側面702に衝突する分子の動きは、
図7の実線矢印及び参照数字716によって示されており、第3の側面703に衝突する分子の動きは、
図7の実線矢印及び参照数字718によって示されている。
【0097】
この実施形態では、ロータブレードの第1の側面701(すなわち、後面)に衝突するガス分子は、後続のロータブレードに向かって回転方向706とは反対の方向に向けられる又は散乱する傾向がある。詳細には、ガス分子は、ロータディスク上の後続のロータブレードの第2及び/又は第3の側面702、703に衝突するように向けられる傾向があり、それによって下向きに向けられる。第1の側面701に衝突する分子の動きは、図の実線矢印及び参照数字720によって示されている。
【0098】
この実施形態では、ロータブレードは、中央ハブ402の下側の第2の面406と平行な、第4の側面704に相当する下面を備える。従って、有利には、ターボ分子ポンプ内で望ましくない上向き方向に進むガス分子は、下向きに反射される傾向があり、これらは、所望の下向きに進むようになっている。これによりポンプ効率が向上する傾向がある。この第4の側面704からの上向きに進むガス分子の反射は、
図7の実線矢印及び参照数字722によって示されている。
【0099】
この実施形態では、ロータブレードは、中央ハブ402の上側の第1の面404と平行な、第5の側面705に相当する上面を備える。上向きの入射ガス分子の反射を低減又は制限するために、ロータブレードの上面の寸法は制限される。詳細には、この実施形態では、
図7に両頭矢印及び参照数字724で示される第5の側面705の寸法は、5mm以下に制限される。より好ましくは、第5の側面705の寸法は4mm以下である。より好ましくは、第5の側面705の寸法は3mm以下である。より好ましくは、第5の側面705の寸法は2mm以下である。より好ましくは、第5の側面705の寸法は1mm以下である。この実施形態では、第5の側面705の寸法724は、ブレードの厚さの20%以下とすることができる。このブレードの厚さは、第1及び第3の側面701、703の間の、例えば垂直距離とすることができる。第1及び第3の側面701、703は、互いに平行とすることができる。第5の側面705の寸法724は、ブレードの厚さの10%と20%の間とすることができる。第5の側面705の寸法724は、ブレードの厚さの10%以下とすることができる。
【0100】
上記の実施形態では、ターボ分子ポンプのブレードディスクはロータディスクである。しかしながら、他の実施形態では、ターボ分子ポンプのブレードディスクはステータディスクである。
【0101】
上記の実施形態では、ロータディスクのロータブレードは、互いに実質的に同一である。しかしながら、他の実施形態では、ブレードの1又は2以上は、ディスクの1又は2以上の他のブレードと異なっている。例えば、いくつかの実施形態では、ターボ分子ポンのブレードディスクは、本明細書に記載される複数の異なる実施形態から選択されるブレードを備えることができる。
【0102】
以下、ターボ分子ポンプのブレードディスクの一実施形態の製造方法を説明する。
【0103】
図8は、一実施形態によるターボ分子ポンプのブレードディスクの製造方法800の特定のステップを示すプロセスフロー図である。
【0104】
図8のフロー図に示され、以下に説明されるプロセスステップのうちの特定のプロセスステップは、省略することができる、又はそのようなプロセスステップは、上記/下記に示され、
図8に示される順序とは異なる順序で実行することができることに留意されたい。さらに、全てのプロセスステップは、便宜上及び理解を容易にするために、別々の時間的に連続するステップとして示されているが、それにもかかわらず、プロセスステップのいくつかは、実際には、同時に実行すること又は少なくとも時間的にある程度重なって実行することができる。
【0105】
ステップs802において、最初のターボ分子ポンプのブレードディスクが提供される。この実施形態では、最初のターボ分子ポンプのブレードディスクは、
図2及び3を参照して上記でより詳細に説明したような従来型のターボ分子ポンプのブレードディスクである。
【0106】
最初のターボ分子ポンプのブレードディスクの提供は、何らかの適切な方法で行うことができる。例えば、最初のターボ分子ポンプのブレードディスクは、当業者に公知の何らかの方法を用いて適切なブランク材から形成することができる。ブランク材は、金属の円板又は円筒、又は環状の金属シート又はプレートとすることができる。いくつかの実施形態では、ブレード間の通路又は空間は、ブランク材からミル加工することができる、又はブランク材は、ブレードの半径方向長さに沿った半径方向カットによってその周縁で細分化することができる。いくつかの実施形態では、個別のブレードは、同じ操作又は後続の操作の間に、ブランク材の平面に対して所望の角度になるまでねじることができる。
【0107】
ステップs804において、最初のターボ分子ポンプのブレードディスクのブレード(以下、「最初のブレード」と称する)は、ターボ分子ポンプのブレードディスクが本明細書に記載される何らかの実施形態に従うように機械加工される。
【0108】
一例として、1又は2以上の最初のブレードは、それぞれの半径方向に垂直な面で切断したそれぞれの断面が、
図5を参照して上述したものと実質的に同じになるように機械加工される。
【0109】
図9は、最初のブレードを通る断面900を示す概略図である(縮尺通りではない)。
図9に示す断面900は、最初のブレードと、その最初のブレードが延びる半径方向に垂直な平面との共通部分である。
【0110】
図9は、断面900が
図5を参照して上述したものと実質的に同じになるように、最初のブレードを機械加工することができる方法を示す(断面形状は、
図9ではハッチング及び参照数字500によって示されている)。この実施形態では、最初のブレードは、第1の半径方向カット901及び第2の半径方向カット902を適用することで機械加工される。各半径方向カット901、902は、最初のブレードの半径方向の長さに沿って延びる。半径方向に沿って見た場合、
図9のように、第1の半径方向カット901は、断面900の最前部の頂点から断面900の最後部側に沿った中間点まで実質的に直線状に延びる。半径方向に沿って見た場合、
図9と同様に、第2の半径方向カット902は、断面900の前側に沿った中間点から断面900の最後部の頂点まで実質的に直線状に延びる。
【0111】
この実施形態では、第1の半径方向カット901及び第2の半径方向カット902は、実質的に平行である。
【0112】
好ましくは、第1の半径方向カット901及び第2の半径方向カット902は、同時に又は少なくとも時間的にある程度重なるように行われる。より好ましくは、第1の半径方向カット901及び第2の半径方向カット902は、同時に行われる。第1の半径方向カット901及び第2の半径方向カット902を同時に又は少なくとも時間的にある程度重なるように行うことは、有利には、切断中にブレードの反対側に等しい圧力を加える傾向があり、これは、ブレードの損傷又はブレードの応力を低減する傾向がある。
【0113】
別の例として、1又は2以上の最初のブレードは、それぞれの半径方向に垂直な面で切断したそれぞれの断面が、
図6を参照して上述したものと実質的に同じになるように機械加工される。
【0114】
図10は、最初のブレードを通る断面900を示す概略図である(縮尺通りではない)。
図9に示す断面900は、最初のブレードと、その最初のブレードが延びる半径方向に垂直な平面との共通部分である。
【0115】
図10は、断面900が
図6を参照して上述したものと実質的に同じになるように、最初のブレードを機械加工することができる方法を示す(この断面形状は、
図9ではハッチング及び参照数字600で示されている)。この実施形態では、最初のブレードは、第3の半径方向カット1001及び第4の半径方向カット1002を適用することで機械加工される。各半径方向カット1001、1002は、最初のブレードの半径方向の長さに沿って延びる。半径方向に沿って見た場合、
図10のように、第3の半径方向カット1001は、断面900の最前部の頂点から断面900の最後部の頂点まで実質的に直線状に延びる。半径方向に沿って見た場合、
図10のように、第4の半径方向カット1002は、断面900の最前部側に沿った中間点から断面900の下側に沿った中間点まで実質的に直線状に延びる。
【0116】
第3の半径方向カット1001及び第4の半径方向カット1002は、実質的に平行とすることができる。
【0117】
好ましくは、第3の半径方向カット1001及び第4の半径方向カット1002は、同時に又は少なくとも時間的にある程度重なるように行われる。より好ましくは、第3の半径方向カット1001及び第4の半径方向カット1002は、同時に行われる。第3の半径方向カット1001及び第4の半径方向カット1002を同時に又は少なくとも時間的にある程度重なるように行うことは、有利には、切断中にブレードの反対側に等しい圧力を加える傾向があり、これは、ブレードの損傷又はブレードの応力を低減する傾向がある。
【0118】
別の例として、1又は2以上の最初のブレードは、それぞれの半径方向に垂直な面で切断したそれぞれの断面が、
図7を参照して上述したものと実質的に同じになるように機械加工される。
【0119】
図11は、最初のブレードを通る断面900を示す概略図である(縮尺通りではない)。
図11に示す断面900は、最初のブレードと、その最初のブレードが延びる半径方向に垂直な平面との共通部分である。
【0120】
図11は、断面900が
図7を参照して上述したものと実質的に同じになるように、最初のブレードを機械加工することができる方法を示す(この断面形状は、
図9ではハッチング及び参照数字700で示されている)。この実施形態では、最初のブレードは、第5の半径方向カット1101及び第6の半径方向カット1102を適用することで機械加工される。各半径方向カット1101、1102は、最初のブレードの半径方向の長さに沿って延びる。半径方向に沿って見た場合、
図11のように、第5の半径方向カット1101は、断面900の上側に沿った中間点から断面900の最後部の頂点まで実質的に直線状に延びる。半径方向に沿って見た場合、
図10と同様に、第6の半径方向カット1102は、断面900の最前部側に沿った中間点から断面900の下側に沿った中間点まで実質的に直線状に延びる。
【0121】
第5の半径方向カット1101及び第6の半径方向カット1102は、実質的に平行とすることができる。
【0122】
好ましくは、第5の半径方向カット1101及び第6の半径方向カット1102は、同時に又は少なくとも時間的にある程度重なるように行われる。より好ましくは、第5の半径方向カット1101及び第6の半径方向カット1102は、同時に行われる。第5の半径方向カット1101及び第6の半径方向カット1102を同時に又は少なくとも時間的にある程度重なるように行うことは、有利には、切断中にブレードの反対側に等しい圧力を加える傾向があり、これは、ブレードの損傷又はブレードの応力を低減する傾向がある。
【0123】
このようにして、ターボ分子ポンプのブレードディスクの製造方法800が提供される。
【0124】
図9-11を参照して上述した実施形態では、各半径方向カットは、最初のブレードの長さに沿って半径方向に延びる。いくつかの実施形態では、最初のブレードに施された半径方向カットは、最初のブレードの半径方向の長さの全体に沿って延び、それによって、ブレードの断面は、そのブレードの長さの全体に沿って変化する。他の実施形態では、最初のブレードに施された半径方向カットは、最初のブレードの半径方向の長さの全体に沿って延びておらず、それによって、それぞれのブレードの断面は、そのブレードの長さの一部のみに沿って、例えば、根元部分ではなく先端部分又はその近傍に沿って変化する。
【符号の説明】
【0125】
100 ターボ分子ポンプ
102 段
102a 上段
104 ロータディスク
106 ステータディスク
107 回転方向
108 入口
110 出口
200 従来型ロータディスク
202 中央ハブ
204 上側の第1の面
206 下側の第2の面
208 周囲側面
210 ロータブレード
212 中心軸
300 断面
301 第1の側面
302 第2の側面
303 第3の側面
304 第4の側面
306 回転方向
308 分子の下向きの動き
310 分子の上向きの動き
400 ロータディスク
402 中央ハブ
404 上側の第1の面
406 下側の第2の面
408 周囲側面
410 ロータブレード
412 中心軸
500 断面
501 第1の側面
502 第2の側面
503 第3の側面
504 第4の側面
506 回転方向
508 第1の方向
510 第1の点
512 第2の方向
514 第2の点
516、518、520 分子の運動方向
600 断面
601 第1の側面
602 第2の側面
603 第3の側面
604 第4の側面
606 回転方向
616、618、620、622 分子の運動方向
700 断面
701 第1の側面
702 第2の側面
703 第3の側面
704 第4の側面
705 第5の側面
706 回転方向
716、718、720、722 分子の運動方向
724 第5の側面の寸法
800 方法
s802-s804 ステップ
900 断面
901 第1の半径方向カット
902 第2の半径方向カット
1001 第3の半径方向カット
1002 第4の半径方向カット
1101 第5の半径方向カット
1102 第6の半径方向カット
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ分子ポンプのブレードディスクであって、
軸方向を規定する軸の周りで回転するように構成された中央ハブと、
前記中央ハブから半径方向に延びる1又は2以上のブレードと、
を備え、
前記1又は2以上のブレードの各々は、
前記軸方向と平行である第1の方向における第1の点に向かってテーパー付けされる、
前記軸方向と平行であり、前記第1の方向の反対方向である第2の方向における第2の点に向かってテーパー付けされる、及び、
実質的に平行四辺形である、
断面を有し、
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記ブレードの前記断面は、前記ブレードと、前記ブレードが前記中央ハブから延びる半径方向に垂直な平面との共通部分である、ターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項2】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記ブレードの前記断面は、前記ブレードの先端である又は前記先端に近接する、請求項1に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項3】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、前記ブレードの長さの少なくとも大部分に沿って前記第1の方向におけるある点に向かってテーパー付けされ、前記ブレードの前記長さは、前記中央ハブから半径方向外向きの方向において規定される、請求項1に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項4】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、前記ブレードの前記長さの全体に沿って前記第1の方向におけるある点に向かってテーパー付けされる、請求項3に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項5】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、前記ブレードの長さの少なくとも大部分に沿って前記第2の方向におけるある点に向かってテーパー付けされ、前記ブレードの前記長さは、前記中央ハブから半径方向外向きの方向において規定される、請求項1に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項6】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、前記ブレードの前記長さの全体に沿って前記第2の方向におけるある点に向かってテーパー付けされる、請求項5に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項7】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記第1の点は、前記第1の方向において前記ブレード上の最も離れた点である、請求項1に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項8】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記第2の点は、前記第2の方向において前記ブレード上の最も離れた点である、請求項1に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項9】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、複数の側面によって規定され、前記複数の側面の全ては、前記軸方向に対して斜め又は平行である、請求項1に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項10】
前記1又は2以上のブレードの各々について、前記断面は、複数の側面によって規定され、前記複数の側面のうちの1又は2以上は、前記軸方向及び前記半径方向の両方に対して垂直であり、ブレードの厚さの20%以下である、請求項1に記載のターボ分子ポンプのブレードディスク。
【請求項11】
請求項1に記載の1又は2以上のターボ分子ポンプのブレードディスクを備えるターボ分子ポンプ。
【請求項12】
前記1又は2以上のターボ分子ポンプのブレードディスクは、ロータディスク又はステータディスクである、請求項11に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項13】
ターボ分子ポンプのブレードディスクを製造する方法であって、前記ターボ分子ポンプのブレードディスクは、請求項1に記載のものであり、前記方法は、
前記ディスクを提供するステップと、
前記ターボ分子ポンプのブレードディスクを製造するために前記ディスクを機械加工するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記機械加工するステップは、
前記ディスクのブレードに第1の半径方向カットを施すステップであって、前記ブレードを半径方向に沿って見た場合に、前記第1の半径方向カットは、前記ブレードの最前部の頂点から前記ブレードの最後部側に沿った中間点まで実質的に直線状に延びる、ステップと、
前記ブレードに第2の半径方向カットを施すステップであって、前記ブレードを半径方向に沿って見た場合に、前記第2の半径方向カットは、前記ブレードの最前部側に沿った中間点からブレードの最後部の頂点まで実質的に直線状に延びる、ステップと、
を含む、請求項13に記載の方法であって、
【請求項15】
前記第1の半径方向カット及び前記第2の半径方向カットは、同時に又は少なくとも時間的にある程度重なるように行われる、請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】