(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】LINE-1のDNAメチル化変異を用いた免疫抗癌治療反応性予測方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6827 20180101AFI20240905BHJP
【FI】
C12Q1/6827 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519086
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 KR2022014662
(87)【国際公開番号】W WO2023055128
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0128751
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0124049
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522110164
【氏名又は名称】ペンタメディックス・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PENTAMEDIX CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】517HO, 516, 42, CHANGEOP‐RO, SUJEONG‐GU, SEONGNAM‐SI GYEONGGI‐DO 13449, REPUBLIC OF KOREA
(71)【出願人】
【識別番号】518366555
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジュン・ギュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン・フイ
(72)【発明者】
【氏名】シン,イン・キュン
(72)【発明者】
【氏名】ノ,スン・ジェ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,デ・ヨン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA08
4B063QA17
4B063QQ43
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、癌患者の分離された試料からLINE-1(Long Interspersed Nuclear Element-1)サブファミリーのDNAメチル化レベルに関する情報を獲得する段階を含み、前記LINE-1サブファミリーは、L1PA12_5end、L1HS_5end、L1PA10_3end、L1P2_5end、L1PA11_3end、L1P2_5end、L1PA13_3end、L1PA11_3end、およびL1P1_orf2からなる群より選択される1種以上である、癌治療反応性を予測するための情報提供方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌患者の分離された試料からLINE-1(Long Interspersed Nuclear Element-1)サブファミリーのDNAメチル化レベルに関する情報を獲得する段階を含み、
前記LINE-1サブファミリーは、L1PA12_5end、L1HS_5end、L1PA10_3end、L1P2_5end、L1PA11_3end、L1P2_5end、L1PA13_3end、L1PA11_3end、およびL1P1_orf2からなる群より選択される1種以上である、
癌治療反応性を予測するための情報提供方法。
【請求項2】
癌患者の分離された試料からLINE-1(Long Interspersed Nuclear Element-1)サブファミリーのDNAメチル化レベルに関する情報を獲得する段階は、
LINE-1サブファミリーのメチル化および非メチル化DNAを検出する段階;
メチル化および非メチル化DNA間の割合を用いて、LINE-1サブファミリーのメチル化レベルの推定値を計算する段階;
を含む、請求項1に記載の癌治療反応性を予測するための情報提供方法。
【請求項3】
前記LINE-1サブファミリーが複数個である場合、各メチル化レベルの推定値に重み係数値を乗じた上で、これらを合算してスコアを計算する段階を含む、請求項2に記載の癌治療反応性を予測するための情報提供方法。
【請求項4】
前記メチル化および非メチル化DNAを検出する段階は、次世代シーケンシング(Next Generation Sequencing)を行う段階を含む、請求項2に記載の癌治療反応性を予測するための情報提供方法。
【請求項5】
前記癌治療は、免疫抗癌療法である、請求項1に記載の癌治療反応性を予測するための情報提供方法。
【請求項6】
前記試料は、セルフリーDNA(cell free DNA)である、請求項1に記載の癌治療反応性を予測するための情報提供方法。
【請求項7】
前記癌は、黒色腫、膀胱癌、食道癌、神経膠腫、副腎癌、肉腫、甲状腺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、胃癌、膵臓癌、肝癌、精巣癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、脳癌、乳癌、腎臓癌または肺癌からなる群より選択されたいずれかの癌である、請求項1に記載の癌治療反応性を予測するための情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌患者の分離された試料からLINE-1(Long Interspersed Nuclear Element-1)サブファミリーのDNAメチル化レベルに関する情報を用いて、癌患者の免疫治療に対する反応性を予測するための情報を提供する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌は、全世界で最も高い死因の一つであり、早期診断の可否が完治率を決定することが多く、健康診断などを通じての癌の早期診断が重要視されている。一般に、健康診断の際によく利用される癌検査は、血液中のタンパク質腫瘍マーカー(marker)検査であり、その他に内視鏡、組織検査などを通じて癌発生の有無を確認することができる。
【0003】
癌を引き起こすゲノム異常変異には3種類があることが知られているが、染色体の一部が丸ごと変わったり、塩基配列が1-2箇所変わる染色体の順番や塩基配列の変化に加えて、クロマチン修飾(chromatin modification)であるエピジェネティクス修飾がその原因であるといえる (Sticker T、Catenacci DV、Seiwert TY.Molecular profiling of cancer-the future of personalized cancer medicine:a primer on cancer biology and the tools necessary to bring molecular testing to the clinic.Semin Oncol 2011 38(2):173-85)。一般に、染色体の一部または数箇所が変化する変異は、遺伝的(genetic)なものがその原因とも考えられ、放射線のような突然変異の誘発要因により体細胞において局所的に起こり得る。エピジェネティックゲノム修飾の中でも最も代表とされる癌細胞におけるDNAメチル化の変化は、正確な原因が明らかにされていないが、食生活や環境的要因がその原因であると考えられている。特にこのようなエピジェネティックゲノム修飾は、癌が発生した組織のゲノムに多く見られており、これを用いた診断法の開発など、臨床適用への関心が高まっている。
【0004】
DNAメチル化(DNA methylation)は、シトシンのピリミジン環の5位の炭素にメチル基(-CH3)が共有結合で添加される現象であって、DNAメチル化は、正常な個体の発生においてもゲノム刷り込み、X染色体不活性化など様々な生命現象で重要な役割を果たしている。
【0005】
癌組織では、正常細胞とは異なる2種のDNAメチル化現象が現れるが、それは、ゲノム全体にわたるグローバルな低メチル化(hypomethylation)現象と、遺伝子発現の調節部位に位置するCpGアイランド(island)の高メチル化(hypermethylation)現象である。低メチル化現象は、主に遺伝子と遺伝子間領域(intergenic region)に現れ、これは染色体を不安定にし、細胞分裂の過程で染色体の組換え、転移、欠失、再配列などを引き起こすことが推測されている。特にLINE-1のようなトランスポゾン(transposon)は、通常はメチル化されて発現が抑制されているが、癌での低メチル化現象によって発現され、ゲノムのあちこちに転移され、染色体不安定性の一因となることが知られている。ここで、癌組織におけるDNAメチル化の変化は、エピジェネティック(epigenetic)であると考えられているが、このようなエピジェネティック修飾は、細胞分裂後も維持されるため、低メチル化及び高メチル化は、トランスポゾン及びCpGアイランド周辺に位置する遺伝子の発現に持続的な影響を与えることになる。実際、癌抑制遺伝子(tumor suppressor)、細胞周期調節遺伝子、DNA修復関連遺伝子、細胞接着関連遺伝子などは、癌組織においてDNAメチル化によって発現が抑制されることにより、これらの遺伝子が崩壊したことと同様の効果を奏することが知られている(McCabe MT、Brandes JC、Vertino PM.Cancer DNA methylation:molecular mechanisms and clinical implications.Clin Cancer Res.2009 15(12):3927-37)。これら遺伝子の発現が抑制されることによって細胞は異常に増殖し、遺伝的安定性を維持することができなくなり、さらなる突然変異を誘発し、癌を進行させるのに重要な役割をすることになる。
【0006】
一方、CTLA-4、PD-1/PD-L1免疫チェックポイント阻害剤などの免疫抗癌剤は、癌細胞または癌関連遺伝子を標的として作用する既存の抗癌剤とは異なり、体内免疫系を活性化して、免疫細胞が癌細胞を攻撃するように助ける。免疫抗癌剤は、高価格の割に完治に近い効果を示す患者は少数に過ぎず、免疫療法に適した患者群を選別することが重要であるが、治療反応性を予測する因子に関する知識は非常に制限的であり、免疫療法反応性とDNAメチル化変異の相関関係に対する研究は、皆無であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、分離された患者の試料からLINE-1(Long Interspersed Nuclear Element-1)サブファミリーのDNAメチルレベルに関する情報を利用して、患者の癌治療に対する応答を予測するための情報を提供することである。
【0008】
ただし、本発明が解決しようとする課題は、上述した課題に限定されず、言及されなかった他の課題は、以下の記載により当該技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるはずであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例による癌治療反応性を予測するための情報提供方法は、癌患者の分離された試料からLINE-1(Long Interspersed Nuclear Element-1)サブファミリーのDNAメチル化レベルに関する情報を取得する段階を含む。
【0010】
ここで、LINE-1サブファミリーは、L1PA12_5end、L1HS_5end、L1PA10_3end、L1P2_5end、L1PA11_3end、L1P2_5end、L1PA13_3end、L1PA11_3end、およびL1P1_orf2からなる群より選択される1種以上であることができる。
【0011】
一実施例によれば、癌患者の分離された試料からLINE-1(Long Interspersed Nuclear Element-1)サブファミリーのDNAメチル化レベルに関する情報を獲得する段階は、前記試料からDNAを分離する段階;分離したDNAのシトシン塩基を変形させる化合物を処理する段階;変形されたDNA配列に結合するプライマーを用いて、LINE-1サブファミリーを増幅する段階;LINE-1サブファミリーのメチル化および非メチル化DNAを検出する段階;メチル化および非メチル化DNA間の割合を用いて、LINE-1サブファミリーのメチル化レベルの推定値を計算する段階;を含む。
【0012】
前記LINE-1サブファミリーのメチル化レベルの推定値は、ベータ値で表すことができ、該ベータ値は、メチル化程度を0~1の範囲の値で表すことができる。例えば、0は当該CpG座位が完全にメチル化されないことを意味し、1は当該CpG座位が完全にメチル化されたことを意味する。
【0013】
一実施例によれば、前記LINE-1サブファミリーが複数個である場合、各メチル化レベルの推定値に重み係数値を乗じた上、これを合算してスコアを計算する段階を含む。
【0014】
一実施例によれば、DNAのシトシン塩基を変形させる化合物を処理する段階は、バイサルファイト処理を行うことができるが、これに制限されるものではない。
【0015】
一実施例によれば、メチル化および非メチル化DNAを検出する段階は、次世代シーケンシング(Next Generation Sequencing)を行う段階を含む。
【0016】
一実施例によれば、癌治療は、免疫抗癌療法である。
【0017】
一実施例によれば、試料はセルフリーDNA(cell free DNA)である。
【0018】
一実施例によれば、癌は、黒色腫、膀胱癌、食道癌、神経膠腫、副腎癌、肉腫、甲状腺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、胃癌、膵臓癌、肝癌、精巣癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、脳癌、乳癌、腎臓癌、または肺癌である。
【0019】
本開示における用語「癌治療反応性を予測するための情報提供方法」とは、診断のための予備的段階であって、癌を診断するために必要な客観的な基礎情報を提供することであり、医師の臨床的判断または所見は除外される。
【0020】
本開示における「メチル化(methylation)」とは、DNAを構成するシトシンのピリミジン環の5位の炭素にメチル基(-CH3)が共有結合で付着する現象を意味する。
【0021】
本開示における「プライマー」とは、標的核酸分子(例えば、標的遺伝子)の少なくとも6つの連続するヌクレオチド配列に相補的な領域を含むオリゴヌクレオチドを表す。
【0022】
本開示における「次世代シーケンシング(Next Generation Sequencing、NGS)」とは、ゲノムの塩基配列の高速分析方法であって、従来の塩基配列の分析法とは異なり、多数のDNA断片を並列に処理することを特徴とし、大容量のゲノムデータを迅速に解読することができる。
【0023】
本開示における「セルフリーDNA(cell-free DNA、cfDNA)」とは、血流や尿などの体液に乗って回る核酸として定義され、循環腫瘍細胞(circulating tumor cell、CTC)に由来するctDNA(circulating tumor DNA)を含むことができる。
【0024】
前記メチル化レベルは、制限酵素で切断した後、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはメチル化特異的PCR(methylation-specific polymerase chain reaction、MSP)、リアルタイムメチル化特異的PCR(real time methylation-specific polymerase chain reaction)、メチル化DNA特異的結合タンパク質を用いたPCR、パイロシークエンシング、MS-HRM(Methylation-Sensitive High-Resolution Melting Analysis、メチル化特異-高解像度融解曲線解析とメチル化感受性制限酵素を用いたメチル化の可否の測定、DNAチップおよびバイサルファイトシーケンシングのような自動塩基配列解析などの方法で測定することができるが、これに限定されるものではない。
【0025】
前記試料は、患者のDNAを含むセルフリー(cell free DNA)であることができる。また、前記患者のDNAは、患者の血液や組織、FFPEなどから抽出したgDNAなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0026】
前記癌治療は、免疫抗癌療法であって、免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor)、免疫細胞治療剤(immune cell therapy)、治療用抗体(therapeutic antibody)などを含むことができる。免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞抑制に関与する免疫チェックポイントタンパク質の活性化を遮断し、T細胞を活性化させて癌細胞を攻撃する薬剤であって、CTLA-4、PD-1、PD-L1抗体を含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一実施例による癌治療反応性を予測するための情報提供方法は、 高正確性の患者の癌治療反応性に関する情報を提供することができる。
【0028】
本発明の一実施例による癌治療反応性を予測するための情報提供方法は、癌治療を進行する前に治療効果および良好な予後が予測される患者群を選別して不要な治療を減らし、副作用と治療費を軽減させることができる。
【0029】
ただし、本発明の効果は、上述した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能なあらゆる効果を含むことを理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーのメチル化 値(methylation value)に対する生存分析の結果である。
【
図2】免疫抗癌療法に対する反応患者群(responder)と非反応患者群(non-responder)において、本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーのメチル化値の高い患者と低い患者との割合を表す。
【
図3】任意に選定されたLINE-1中の10個の標的のメチル化値に対する生存分析の結果である。
【
図4】免疫抗癌療法に対する反応患者群(responder)と非反応患者群(non-responder)において、任意に選定されたLINE-1中の10個の標的のメチル化値の高い患者と低い患者との割合を表す。
【
図5】任意に選定されたLINE-1中の10個の標的と本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーそれぞれの生存分析および免疫抗癌療法に対する反応性予測に対するp-value(p-値)を表す。
【
図6】反応患者群と非反応患者群間のメチル化値の分布を表す。本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーに対して左側はInfinium Methylation 450k microarray方法により求めたメチル化値であり、右側はNGS方法により求めたiMethyl(iメチル)スコアを確認した結果である。
【
図7】肺癌患者において、本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーに対してそれぞれInfinium Methylation 450k microarray方法により求めたメチル化値(左側)とNGS方法(右側)により求めたiMethylスコアで免疫抗癌療法反応患者群と非反応患者群間の生存率の差を分析した結果である。
【
図8】肺癌患者において、免疫治療反応性を予測する多様な因子で予測された免疫抗癌療法の反応患者群と非反応患者群間の生存率の差を比較した結果である。
【
図9】肺癌患者の試料から抽出したDNAから本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーに対するiMethylスコアを通じて予測された免疫抗癌療法の反応患者群と非反応患者群間の生存率の差を分析した結果(左側)および免疫抗癌療法の反応性予測性能を評価するためのROC曲線(右側)を表す。
【
図10】乳癌患者の血液(PBMC)、セルフリーDNA(cfDNA)、腫瘍組織のFFPE検体(Tissue)に対する本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーのメチル化値の分布を表す。
【
図11a】本開示の一実施例による10個のLINE-1サブファミリーに対する血液と腫瘍組織のFFPE検体間の相関性の結果(
図11a)およびcfDNAと腫瘍組織のFFPE検体間の相関性の結果(
図11b)である。
【
図11b】本開示の一実施例による10個のLINE-1サブファミリーに対する血液と腫瘍組織のFFPE検体間の相関性の結果(
図11a)およびcfDNAと腫瘍組織のFFPE検体間の相関性の結果(
図11b)である。
【
図12】本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーに対する主成分分析(Principal Component Analysis、PCA)の結果である。
【
図13a】本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーに対する階層クラスタリング(Hierarchical Clustering)の結果である。
【
図13b】本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーに対する階層クラスタリング(Hierarchical Clustering)の結果である。
【
図13c】本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーに対する階層クラスタリング(Hierarchical Clustering)の結果である。
【
図14】肺癌または乳癌患者の試料から抽出したcfDNAから本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーに対するiMethylスコアを通じて予測された免疫抗癌療法の反応患者群と非反応患者群間の生存率の差を分析した結果を表す。
【
図15】肺癌または乳癌患者の試料から抽出したcfDNAと腫瘍組織間の本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーに対する生存分析p-value分布を比較した結果である。
【
図16】肺癌または乳癌患者の試料から抽出したcfDNAから本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーに対するiMethylスコアに重みを付与し、生存分析p-value分布を比較した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付された図面を参照にして実施例を詳細に説明する。しかし、実施例には様々な変更を加えられることができるので、特許出願の権利範囲はこれらの実施例によって制限されるまたは限定されるものではない。実施例の全ての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0032】
実施例にて使用した用語は、単に説明のために用いられたものであって、限定する意図として解釈されるべきではない。単数の表現は、文脈上明らかに別段の意味がない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」等の用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定することを意図したものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されるべきである。
【0033】
特に断りがない限り、技術的または科学的用語を含む本明細書で使用される全ての用語は、実施例が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有することと解釈されるべきであり、本出願で明白に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されるべきではない。
【0034】
実施例を説明するにあたって、関連する公知技術の具体的な説明が実施例の要旨を不明確にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
以下において、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。ただし、以下の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0035】
実施例1.LINE-1サブファミリーの選定
LINE-1因子内のメチル化程度を確認するために、LINE-1因子内に10個の標的を、以下の表1のように選定した。次の表1において、Array IDは、Infinium Methylation 450k microarray内のプローブIDであり、RepeatMaskerは、RepeatMaskerデータベース(www.repeatmasker.org)にて提供するyoung LINE-1サブファミリーにマッピングされる情報である。以下の実施例では、表1に記載されている順にLINE-1サブファミリーをT1~T10と命名して用いた。
【0036】
【0037】
選定された10個のサブファミリーが実際に免疫抗癌療法の予後を予測するのに有意な効果を有するか否かを確認するために、最初に肺癌患者141名に対して生存分析(Survival Analysis)を進めた。まず10個のサブファミリーに対するメチル化値(methylation value)で一つの代表値を求めた。具体的に、各サブファミリー毎のスケールの差を最小限にするために、患者全体のメチル化値に対して最小-最大正規化(Min-Max Normalization)を進めた。そして、各患者毎に正規化された10個のメチル化値の平均を計算し、代表値とした。それから、患者全体群の代表値に対する平均を基準に、各患者を高メチル化(high methylation)(代表値が平均以上)または低メチル化(low methylation)(代表値が平均未満)群に分けて分析した。生存分析は、Kaplan-Meierモデルを用いて行った。
【0038】
その結果、
図1に示すように、メチル化値の高い群(high methylation)が、低い群(low methylation)より生存率が高いことが確認され、p-valueが0.0096と統計的有意性が立証された。選定された標的プローブセットだけでも免疫抗癌治療の予後が正常に予測されたことが確認された。
【0039】
次に、免疫抗癌療法の治療反応性に対する予測能力を評価するために、前記患者群を再び反応患者(responder)(DCB、durable clinical benefit)と非反応患者(non-responder)(NCB、no clinical benefit)に分けた。そして反応患者と非反応患者群のそれぞれにおいてメチル化値の高い患者(methylation high)とメチル化値の低い患者(methylation low)との割合を求めて比較した。
【0040】
その結果、
図2に示すように、反応患者(responder)群では、メチル化値の高い患者の割合がより高いのに対し(0.683 vs 0.480)、非反応患者(non-responder)群では、メチル化値の高い患者の割合がより低く(0.317 vs 0.520)、統計的有意性も同様に確認された(p-value=0.026)。
【0041】
前記結果を通じて、本開示の一実施例によるLINE-1サブファミリーは、実際の免疫抗癌療法の治療反応性を予測することができることが確認することができた。
【0042】
実施例2.LINE-1サブファミリーと任意(random)標的の治療反応性予測性能の比較
前記実施例1にて選定されたLINE-1サブファミリーが他の任意の標的に比べて免疫抗癌療法の治療反応性に対する予測性能に優れているか否かを検証するために、任意にLINE-1中の10個の標的を抽出し、前記実施例1に記載された実験を繰り返した。
【0043】
その結果、
図3および
図4から確認できるように、任意に標的を定めたときには、生存分析と免疫抗癌療法の治療反応性予測能力分析において、有意な結果が示されなかった。すなわち、前記実施例1にて選定されたLINE-1サブファミリーは、LINE-1中の他の標的と比較してより優れた治療反応性予測力を有している。
【0044】
次に、前記実施例1にて選定されたLINE-1サブファミリーがLINE-1中の他の標的と比較してより優れた予測力を有していることを明確に確認するために、1,000回繰り返し、LINE-1中の10個の標的をランダムにサンプリングした後、生存分析のp-value分布と免疫抗癌療法の治療反応性予測能力分析のp-value分布を求めた。
【0045】
その結果、
図5に示すように、左側の生存分析に対するp-value分布(p-value平均0.418、中央値0.383)と右側の免疫抗癌療法 の治療反応性予測分析に対するp-value分布(p-value平均 0.502、中央値0.506)の全部において、前記実施例1にて選定されたLINE-1サブファミリーのメチル化値を用いた場合、顕著に低いp-valueを有し(赤色星印、生存分析のp-value=0.0096、免疫抗癌療法の治療反応性予測分析のp-value=0.026)、分析の結果が有意であることを確認することができた。
【0046】
実施例3.LINE-1サブファミリー検出PCRプライマーの設計
前記実施例1にて選定された10個のLINE-1サブファミリーに対するPCRプライマー配列を設計した。Amplicon sizeを100-125bp範囲にし、LINE-1サブファミリーが含まれるように順方向と逆方向のプライマーセットを設計した。ヒトゲノム参考配列としては、GRCh37(Genome Reference Consortium Human Build 37;hg19)を用いており、次の表2に10個のLINE-1サブファミリーが参考配列にマッピングされる代表位置に対する情報を記載した。
【0047】
【0048】
選定された10個の標的に対してPCR増幅を行うためのプライマーを設計した。プライマーは、リファレンスゲノム配列にバイサルファイト処理を行うことによって、CT置換されたと仮定して作られたconverted sequenceに対して、標的を含むPCRプライマーとしてデザインした。選定されたプライマー配列は、次の表のとおりである。標的周囲の塩基配列に基づいてワトソンまたはクリック鎖に対してプライマーを設計した。
【0049】
【0050】
実施例4.NGSライブラリーの調製
まず、患者の検体から抽出したDNAにて非メチル化されたシトシンをウラシルに変化させるために、バイサルファイト処理した。バイサルファイト処理は、EZ DNA Methylation-Goldキット(Zymo Research社)を用いてメーカーの指示方法に従って進めた。
【0051】
バイサルファイト処理したDNAに対して、前記実施例1にて選定された10個のLINE-1サブファミリーを増幅させるために、前記実施例3にて作製したプライマーを用いて標的PCRを行った。本実施例では、10個のサブファミリーの標的を2つの群(1群:T4、T6、T7、T8、T10、2群:T1、T2、T3、T5、T9で構成)に分けて、多重PCR方法により増幅した。
【0052】
具体的に、PCRプライマーは、NGSアダプターライゲーションのために、5´末端をリン酸化修飾して合成し、各200nMの濃度で用いた。PCR試薬は、EpiTect MethyLight PCRキット(Qiagen社)を用いた。バイサルファイト処理を行ったDNA1-100ngを用いて95℃で5分間1回、95℃で15秒、60℃で2分間からなるPCRサイクルを計23回~29回実施し、標的領域を増幅した。
【0053】
PCR産物は、二つの群のPCR反応液を混合した後、1.8×体積のAMPure XP(Beckman Coulter社)ビーズを用いて精製した。磁気ビーズを用いた精製は、メーカーの使用方法に従って進めた。精製したPCR産物にNGSアダプターをライゲーションした。精製したPCR産物(10-100ng)にNGSアダプターを1uMの濃度になるように添加し、Quick Ligaseキット(NEB)を用いてライゲーションした。25℃で30分間反応させ、その後、1×体積のAMPure XP(Beckman Coulter社)ビーズを添加して精製した。アダプターがライゲーションされたライブラリーは、KAPA HiFi HotStart ReadyMixを用いて増幅させた。精製したサンプルに以下のライブラリー増幅用プライマー各200nMとKAPA HiFi HotStart ReadyMixを添加し、98℃で45秒間1回、98℃で15秒、60℃で30秒、72℃で30秒からなるPCRサイクルを計7回、72℃で5分間1回実施し、ライブラリーを増幅した。増幅後、AMPure XP(Beckman Coulter社)ビーズを用いて、1×-0.5×(left-right)でdouble side精製した。
【0054】
<ライブラリー増幅用プライマー>
P5:AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACAC(配列番号57)
P7:CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT(配列番号58)
【0055】
一方、NGS分析のためのライブラリーは、前述した方法の外に既製のAmpliSeqライブラリー作製試薬(Illumina AmpliSeq Library PLUSなど)を用いて作製することができる。AmpliSeq Library PLUS(Illumina社)ライブラリー作製試薬を用いた場合、FuPa処理による部分切断(partial digestion)のために、前記表3のプライマー配列において一部TをUに置換した(表4)。ライブラリー作製方法は、メーカーのプロトコルに従って進めた。
【0056】
【0057】
市販のキット(Illumina AmpliSeq Library PLUS)を用いてライブラリーを作製する方法は、次のとおりである。まず、前記表4のプライマーを用いて多重PCRを進めた。このとき、プライマー濃度は、それぞれ200nMにし、10個の標的に対して1つまたは2つの群に分けて多重PCR方法により増幅した。バイサルファイト処理を行ったDNA1-100ngにPCRプライマーセットとAmpliSeq HiFi Mixを添加し、99℃で2分間1回、99℃で15秒、60℃で2分からなるPCRサイクルを計26回~32回実施し、標的領域を増幅した。
【0058】
PCR産物に1/10volのFuPa Reagentを添加し、50℃で10分間、55℃で10分間、60℃で20分間反応させた。その後、Switch solutionを入れてよく混合し、アダプターとDNA ligaseを入れた後、22℃で30分間、68℃で5分間、72℃で5分間反応させて、PCR産物にアダプターを付着した。
【0059】
ライゲーション産物は、1×AMPure XP(Beckman Coulter社)ビーズを添加して精製した。精製の最後の段階で洗浄後、乾燥したビーズに溶出(elution)のための溶液の代わりに1×Lib Amp Mix 45uLと10×Library Amp Primers 5uLを添加した。98℃で2分間1回、98℃で15秒間、64℃で1分間からなるサイクルを計7回行い、ライブラリーを増幅した。増幅後、AMPure XP(Beckman Coulter社)ビーズを用いて、1.2×-0.5×(left-right)でdouble side精製した。
【0060】
前記の過程を通じて作製したライブラリーは、KAPA library quantificationキット(Kapa Biosystems社)を用いて、real-time PCRで定量した後、NGS反応を進めた。
【0061】
実施例5.NGS分析
NGSの装置で生成されたBCLファイルからBcl2fastqプログラム(ver2.20.0.422)を用いて、各検体別に生成されたNGS配列をfastqファイルの形態で分離(デマルチプレクシング)した。公用データベースからダウンロードを受けたUCSC hg19ヒトゲノムの標準配列を基にbismarkプログラム(ver0.22.3)を適用し、バイサルファイト処理により発生し得るC-to-T(シトシンベースがチミンベースに変換)或いはG-to-A(グアニンベースがアデニンベースに変換)変換を反映したバイサルファイト標準ゲノム配列と配列マッピングのためのインデックスファイルを予め用意した。各検体別にfastqファイルからイルミナユニバーサルアダプター配列をトリミングした上で、用意した前記バイサルファイト標準ゲノム配列にbismarkプログラムを用いて、整列(alignment)した。SAM(配列整列マップ、Sequence alignment map)ファイルからワトソン鎖(Watson strand)とクリック鎖(Crick strand)に整列された配列を分離し、bam-readcountプログラム(ver0.8.0)を用いて、各LINE-1サブファミリー標的位置でのA,T,G,C塩基の個数の情報が入っているbam-count-tableを得た。このcount-tableから10個のサブファミリーそれぞれの位置別にLINE-1(Long Interspersed Nuclear Element-1)サブファミリーのDNAメチル化レベルを計算した。
【0062】
前記LINE-1サブファミリーのメチル化レベルの推定値は、ベータ値で表すことができ、前記ベータ値は、メチル化程度を0~1の範囲の値で表すことができる。例えば、0は、当該CpG座位が完全にメチル化されていないことを意味し、1は、当該CpG座位が完全にメチル化されたことを意味する。
実施例1にて選定された10個のLINE-1サブファミリー標的の位置でのベータ値を統合し、検体別に一つのiMethylスコアで取った。iMethylスコア計算およびカットオフ(cut-off)値は、免疫抗癌剤の治療肺癌コホートでのベータ値と治療反応性データからマシンラーニングを適用した先行研究を基にロジスティック回帰分析法により選定し、肺癌コホートでの治療反応性予測に対するiMethylスコアカットオフ(cut-off)値は0.37であった。免疫抗癌剤の反応性データとT1~T10のベータ値データを確保した90名の患者に対して、ロジスティック回帰分析法を適用した3-fold validationを通じて最適のプローブと変数の組み合わせを発見し、各プローブのベータ値から最終iMethylスコアを求める数式は、次のとおりである。
【0063】
【0064】
Tibetaは、各プローブの位置でのベータ値、aiおよびbは、マシンラーニングを通じて得られた変数値である。
【0065】
実施例6.Infinium Methylation 450k microarrayとNGSに対するメチル化値の比較
次に免疫チェックポイント阻害剤の治療履歴のある肺癌患者に対して、実施例1にて選定したLINE-1サブファミリーの治療反応性に対する予測能力を評価するために、反応患者群と非反応患者群間にメチル化値の分布の差を確認した。その結果、
図6に示すように、Infinium Methylation 450k microarrayにより求めたメチル化値は、p-value=0.047であるのに対し、前記実施例5にて記述した方法により求めたiMethylスコアは、p-value=0.039とより優れた予測能力を示すことを確認することができた。
【0066】
次に、Infinium Methylation 450k microarrayにより求めたメチル化値、または、前記実施例5にて記述した方法により求めたiMethylスコアに基盤した免疫チェックポイント阻害剤の反応予測群(治療反応性が高いことが予測された患者群)と非反応予測群(治療反応性が低いことが予測された患者群)間の生存率の差を、Kaplan-Meier推定技法を用いて分析した。
【0067】
その結果、
図7に示すように、前記実施例5にて記述した方法により10個のLINE-1サブファミリーに対するiMethylスコア(p-value=0.012)が、Infinium Methylation 450k microarray方法に対する値(p-value=0.098)より優れた予測力を示すことが確認された。
【0068】
従来に広く知られた免疫チェックポイント阻害剤に対する反応を予測する因子として、腫瘍変異負荷(Tumor mutation burden、TMB)、新生抗原負荷(Neoantigen load、NeoAg)、PD-L1(SP263)発現の有無がある。各予測因子に基盤して同様にKaplan-Meier推定技法を用いて免疫チェックポイント阻害剤の反応予測群と非反応予測群に分けて、生存率の差を分析し、ログランク検定(Log-Rank test)を通じて反応予測群と非反応予測群間の生存曲線の差の統計的有意性をP-valueで導出した。免疫チェックポイント阻害剤の反応性予測因子間により有意な比較をするために、各因子毎に1,000回繰り返し、患者サンプルをランダムにサンプリングを行い、生存分析のp-value分布を比較した。
【0069】
その結果、
図8から確認できるように、INE-1サブファミリーに対するiMethylスコアが他の従来の因子よりも免疫チェックポイント阻害剤に対してより優れて予測することが確認でき、特に実施例5にて記述した方法により計算したiMethylスコアが最も高い予測力がみられた。
【0070】
実施例7.肺癌患者における治療反応性予測性能の検討
計123名のanti-PD1或いはanti-PD-L1免疫チェックポイント阻害剤の治療履歴のある肺癌患者に対して、患者の組織またはFFPE検体から抽出したDNAを用いて、前記実施例5にて記述した方法(iMethyl)により10個のLINE-1サブファミリーに対するメチル化レベル、すなわち、ベータ値を分析した。
【0071】
Kaplan-Meier推定技法を用いてiMethylスコアに基盤した免疫チェックポイント阻害剤の反応予測群(治療反応性が高いことが予測された患者群)と非反応予測群(治療反応性が低いことが予測された患者群)間の生存率の差を分析した。生存率は、基本的に無増悪生存期間(Progression free survival、PFS)を基準にした。ログランク検定(Log-Rank test)を通じて反応予測群と非反応予測群間の生存曲線の差の統計的有意性をP-valueで導出し、コックス比例ハザードモデル(Cox´s proportional hazard model)を通じてバザード比(HR、Hazard ratio)を導出した。感度と前記陽性率を用いたROC(Receiver Operating Characteristic)曲線の曲線下の面積(AUC、Area Under a Curve)値を通じて最終的な予測性能を評価した。カテゴリ変数の群間の差の統計的有意性は、Fisher´s exact test(2つの群の比較)で分析した。連続変数の平均値或いは中間値との差の統計的有意性は、Mann-Whitney U testにより分析した。
【0072】
予測されたiMethylスコアが高い群(反応予測群、high、39名)と低い群(非反応予測群、low、84名)に分けて、両群の生存率を比較した結果、
図9に示すように、p-value=0.0103の統計的に有意なレベルで非反応予測群の生存確率が反応予測群よりHR=0.684倍程低く、AUCは0.789と確認され、優れた予測性能を示した。
【0073】
実施例8.LINE-1サブファミリーメチル化値に対する試料別の相関関係
まず、乳癌患者50名に対して血液細胞(PBMC)、セルフリーDNA(cfDNA)および腫瘍組織のFFPE検体(Tissue)に対するメチル化値(methylation value)分布を、前記実施例1にて選定した10個のLINE-1サブファミリーに対して確認した。メチル化値は、前記実施例にて記述したNGS方法により求めた。
【0074】
その結果、
図10に示すように、前記の図のように各サブファミリーにおいて、全般的に血液細胞(PBMC)よりセルフリーDNA(cfDNA)が腫瘍組織とより似たような傾向のメチル化値の分布を有し、血液対比cfDNAと腫瘍組織においてメチル化値がより低い分布を示した。
【0075】
次に、10個のLINE-1サブファミリー毎に血液と腫瘍組織のFFPE 検体間、そして、cfDNAと腫瘍組織のFFPE検体間の相関性を確認した。
図11aおよび
図11bから確認できるように、全般的に血液は、腫瘍組織と相関性がさほど有意でないのに対し、cfDNAと腫瘍組織はほとんどが強く正の相関関係を示すことを確認することができた。
【0076】
さらに、全LINE-1サブファミリーにおいて、cfDNAと腫瘍組織との相関関係をより分明に視覚化するために、主成分分析(Principal Component Analysis、PCA)により次元を縮小し、
図12に示した。
図12に示すように、血液は腫瘍組織と分離され分布した反面、cfDNAは、腫瘍組織と非常に類似に分布することが確認された。したがって、cfDNAと腫瘍組織の相関関係がより分明であることを確認することができた。
【0077】
また、LINE-1サブファミリー間の群集の傾向性および関連性を確認するために、血液細胞(PBMC)、cfDNA、腫瘍組織(Tissue)それぞれにおいて、LINE-1サブファミリーに対する階層クラスタリング(Hierarchical Clustering)を進めた。その結果、
図13a~
図13cに示すように、腫瘍組織(Tissue)とcfDNAは、[{T5,T1,T3}/{T2,T9,T6,T7}/{T4}/{T8,T10}]のように、同様にクラスタリングされた。各クラスタを1群(group1)から4群(group4)で表した。この反面、血液(PBMC)は、[{T4}/{T6,T7,T2,T9}/{T10}/{T5,T1,T3,T8}]のようにクラスタリングされながら、腫瘍組織と異なるパターンがみられた。
【0078】
実施例9.肺癌および乳癌患者におけるcfDNAを用いた治療反応性予測性能の検証
免疫チェックポイント阻害剤の治療履歴のある計167名の肺癌患者と90名の乳癌患者に対して、患者のセルフリーDNA(cfDNA)を用いて、前記実施例5にて記述した方法(iMethyl)により10個のLINE-1サブファミリーに対するメチル化レベル、すなわち、ベータ値を分析した。
【0079】
実施例7にて記述した方法と同様にKaplan-Meier推定技法を用いてiMethylスコアに基盤した免疫チェックポイント阻害剤の反応予測群(治療反応性が高いことが予測された患者群)と非反応予測群(治療反応性が低いことが予測された患者群)間の生存率の差を分析した。
【0080】
予測されたiMethylスコアが高い群(反応予測群、high)と低い群(非反応予測群、low)に分けて、両群の生存率を比較した結果、
図14に示すように、肺癌において、p-value=0.003、乳癌においてp-value=0.0017の統計的に有意なレベルで非反応予測群の生存確率が反応予測群よりも低く予測された。
【0081】
次に、cfDNAから得たメチル化値と腫瘍組織から得たメチル化値による免疫チェックポイント阻害剤の反応性予測力を比較した。統計的な有意性のために、各1,000回繰り返し、患者のサンプルをランダムにサンプリングし、生存分析p-valueを求めた。
図15にて確認できるように、肺癌患者と乳癌患者において、全部cfDNAを用いた生存分析が腫瘍組織を用いた生存分析においてより優れた予測力を示した。
【0082】
さらに、免疫チェックポイント阻害剤の反応性予測をより有意にするために、前記実施例1にて選定した各10個のLINE-1サブファミリー毎に重みを異にし、iMethylスコアを計算した(Weighting)。各167名のcfDNA肺癌患者群と90名のcfDNA乳癌患者群において、最も優れた予測力を示す重みを適用するか(Self weighting)、または他の患者群において最も優れた予測力を示す重みを交互適用(Cross weighting)した。その結果、
図16に示すように、従来のiMethylスコアより重みをおいて計算したiMethylスコアの方がより有意な予測力がみられた。特に、腫瘍組織での重みを交互適用するか、他の腫瘍cfDNAでの重みを交互適用しても同様に予測力がより優れることが確認できた。
【0083】
前記結果を総合してみると、cfDNAから得られたメチル化値は、腫瘍組織のメチル化値と高い相関関係を示すため、cfDNAを用いるとより高い正確度で免疫抗癌療法の治療反応性を予測できることが分かった。
【0084】
以上のように実施例が限定された図面によって説明されたが、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、前記に基づいて多様な技術的修正及び変形を適用することができる。例えば、記載された技術が記載された方法とは異なる順序で実行したり、および/または記載された構成要素が記載された方法とは異なる形で結合または組み合わせたり、他の構成要素または均等物によって代替されたり置換されたりしても、適切な結果が達成され得る。
【0085】
したがって、他の具現例、他の実施例および特許請求の範囲と同等なものも添付された特許請求の範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】