(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】光学機械的調整装置を含む光学顕微鏡及び光学機械的調整方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G02B21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519252
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2022076871
(87)【国際公開番号】W WO2023052371
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520356906
【氏名又は名称】オリバ フランス エス.アー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】ガヴリリュク ヴァシーリィ
(72)【発明者】
【氏名】ヤゴヴキン アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AA08
2H052AB01
2H052AC01
2H052AC26
(57)【要約】
本発明は、光学系(1)と共焦点絞り(2)とを含む光学顕微鏡に関し、共焦点絞り(2)は顕微鏡のフーリエ面(12)内に配置され、共焦点絞り(2)は顕微鏡の本体に関して固定され、顕微鏡は対物面からの光ビーム(20)を集光することができ、光学系(1)は、光ビーム(20)をフーリエ面(12)内に合焦させ、光ビーム(20)の少なくとも一部を共焦点絞り(2)を通って供給するために適している。本発明によれば、光学顕微鏡は、光学系(1)と共焦点絞り(2)との間に配置された屈折光学コンポーネント(3)を含み、屈折光学コンポーネント(3)は、共焦点絞り(2)に関して合焦光ビームの横方向の位置を調整するために顕微鏡の光軸(10)と交差するように回転可能に取り付けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系(1)と共焦点絞り(2)とを含む光学顕微鏡であって、前記共焦点絞り(2)は前記顕微鏡の光軸(10)と交差する前記顕微鏡のフーリエ面(12)内に配置され、前記フーリエ面(12)は前記光学系(1)を介して対物面と光学的に共役であり、前記共焦点絞り(2)は前記顕微鏡の本体に関して固定され、前記顕微鏡は前記対物面からの光ビーム(20)を集光することができ、前記光学系(1)は、前記光ビーム(20)を前記フーリエ面(12)内に合焦させ、前記光ビーム(20)の少なくとも一部を前記共焦点絞り(2)を通って射出させるようになされた光学顕微鏡において、前記光学系(1)と前記共焦点絞り(2)との間に配置された屈折光学コンポーネント(3)を含み、前記屈折光学コンポーネント(3)は、前記共焦点絞り(2)に関して前記合焦光ビームの横方向の位置を調整するために、前記顕微鏡の前記光軸(10)と交差するように回転可能に取り付けられることを特徴とする光学顕微鏡。
【請求項2】
前記共焦点絞り(2)が共焦点開口を含む、請求項1に記載の光学顕微鏡。
【請求項3】
前記共焦点絞り(2)が、マイクロメートルレベルの断面寸法のコアを有する光ファイバの端により形成される、請求項1に記載の光学顕微鏡。
【請求項4】
光ファイバコネクタを含み、前記光ファイバコネクタが前記顕微鏡本体に強固に取り付けられ、前記光ファイバコネクタが、前記光ファイバ端が前記顕微鏡の実像面(12)内に配置されるように前記光ファイバ端を受けるために適している、請求項3に記載の光学顕微鏡。
【請求項5】
前記光学系(1)が0.1未満の像側開口数を有し、前記屈折光学コンポーネントが平坦で平行な面を持つ透明プレートを含み、前記プレートが、前記顕微鏡光軸と交差する少なくとも1つの回転軸の周囲で回転可能に取り付けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学顕微鏡。
【請求項6】
前記プレートがガラスプレートであり、前記プレートの厚さは1mm~6mmである、請求項5に記載の光学顕微鏡。
【請求項7】
前記光学系(1)が、前記光ファイバのそれに合わせて調整された像側開口数を有し、前記屈折光学コンポーネントが、前記光学系(1)の前記レンズと焦点面との間に前記顕微鏡光軸上の回転中心の周囲で回転可能に取り付けられる収束レンズを含む、請求項3に記載の光学顕微鏡。
【請求項8】
励起レーザビームを生成するようになされたレーザ源を含み、前記共焦点絞りが、前記光学系(1)と、ラマン散乱放射を検出するようになされた検出器との間に配置される、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学顕微鏡。
【請求項9】
不透明筐体(4)を含み、前記共焦点絞り(2)と前記屈折光学コンポーネント(3)とが前記筐体の内部に配置され、前記屈折光学コンポーネント(3)が並進及び/又は回転ステージ(30)に取り付けられ、前記ステージ(30)が光学機械的調整手段(31、32)を含み、前記光学機械的調整手段(31、32)に前記筐体(4)の外側から到達可能である、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学顕微鏡。
【請求項10】
前記光学系(1)が、顕微鏡対物レンズ及び/又はチューブレンズを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学顕微鏡。
【請求項11】
光学顕微鏡検査方法であって、
対物面からの光ビームを集光し、前記集光した光ビームを顕微鏡内の光学系(1)によってフーリエ面内に合焦させるステップであって、前記フーリエ面(12)は前記対物面と光学的に共役であり、前記フーリエ面(12)は前記顕微鏡の光軸(10)と交差するステップと、
前記集光した光ビームを、前記光学系(1)と前記フーリエ面(12)との間に配置された屈折光学コンポーネント(3)を通じて伝送するステップと、
伝送した前記光ビームを、前記顕微鏡の前記フーリエ面(12)内に配置された共焦点絞りに合焦させるステップであって、前記共焦点絞り(2)は前記顕微鏡の本体に関して固定されるステップと、
前記共焦点絞り(2)に関して前記合焦光ビームの横方向の位置を調整するために、前記屈折光学コンポーネント(3)を、前記顕微鏡光軸(10)と交差する回転によって調整するステップと
を含む光学顕微鏡検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学顕微鏡検査法の技術分野に関する。
【0002】
より詳しくは、本発明は、共焦点顕微鏡における検出器に向かうように集光された光ビームのオプトメカニカル調整のための装置と方法に関する。
【0003】
このような装置は特に、光ビームの空間フィルタリング又は光ファイバへの結合に利用できる。
【背景技術】
【0004】
共焦点顕微鏡、特にラマン共焦点顕微鏡は、サンプルにより放出され、顕微鏡対物レンズにより集光される放射の空間フィルタリングを行う。その目的のために共焦点絞りが使用され、これは共焦点開口又は、マイクロメートルレべルの断面寸法を有する光ファイバを含む。共焦点絞りは、一般に、顕微鏡の鏡筒内の、顕微鏡対物レンズとチューブレンズとを介して対物面と光学的に共役の、いわゆるフーリエ面内に配置される。光学系は、空間フィルタリングされた信号を、所望の情報の取得のための要求事項に応じて、例えば分光型の、又は時間分解測定のための検出系に向かって伝送する。空間フィルタリングによって、サンプルの注目点からの光信号を抽出し、それをサンプルの他の領域からの光信号から分離することができる。特に、ラマン顕微鏡では、空間フィルタリングにより、サンプルの特定領域から発せられるラマン信号を抽出することが可能となる。
【0005】
しかしながら、共焦点絞りの断面寸法は一般にマイクロメートルレベルである。これらの寸法は、顕微鏡対物レンズ上での集光された光ビームの散乱によって生じる点拡がり関数(PSF:Point Spread Function)によって特定される。これらのマイクロメートルレベルの寸法では、集光されたビームを高い精度で共焦点絞りへと方向付けることが必要となる。したがって、顕微鏡はきわめて安定且つ光学機械的に強固でなければならない。
【0006】
共焦点絞りは一般に、顕微鏡本体の内部に取り付けられる。共焦点絞りの位置は顕微鏡の光軸と整列しており、工場で設定される。ユーザは一般に、共焦点絞りには到達できない。この構成により、共焦点絞りを外部からの影響から保護することができる。
【0007】
特定のケースでは、顕微鏡は光ファイバによって検出系に接続される。光ファイバの端は共焦点絞りを形成し、その寸法は光ファイバの開口によって決まる。顕微鏡の光学系は一般に、ビームをファイバの開口数と同じ値の開口で合焦させるようになされる。顕微鏡の光学系はまた、球面収差も補正される。光ファイバ端を合焦ビームと整合させるために、光ファイバ位置決めメカニズムを使用することが知られている。しかしながら、このようなメカニズムは、ファイバの曲がりやねじれ等の動きがこのメカニズムにある程度の力を伝達し得、ミスアラインメント及び信号損失を生じ得るため、課題を生じさせる可能性がある。
【0008】
共焦点光学顕微鏡又は共焦点ラマン顕微鏡の中に、自由空間中に、又は光ファイバにより検出系に接続された調整システムを設けて、光学的アラインメントの調整を可能にしながら、アセンブリの安定性を保証することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術の前述の欠点を改善するために、本発明は、光学系と共焦点絞りとを含む光学顕微鏡を提案し、共焦点絞りは顕微鏡の光軸と交差する顕微鏡のフーリエ面内に配置され、フーリエ面は光学系を介して対物面と光学的に共役であり、共焦点絞りは顕微鏡本体に関して固定され、顕微鏡は対物面からの光ビームを集光することができ、光学系は、光ビームをフーリエ面内に合焦させ、光ビームの少なくとも一部を共焦点絞りを通って射出させることができる。
【0010】
本発明によれば、光学顕微鏡は、光学系と共焦点絞りとの間に配置された屈折光学コンポーネントを含み、屈折光学コンポーネントは、共焦点絞りに関して合焦光ビームの横方向の位置を調整するために、顕微鏡の光軸と交差するように回転可能に取り付けられる。
【0011】
ある実施形態によれば、共焦点絞りは共焦点開口を含む。
【0012】
この実施形態の特定の態様によれば、共焦点絞りは、マイクロメートルレベルの断面寸法のコアを有する光ファイバの端により形成される。
【0013】
有利には、光学顕微鏡は光ファイバコネクタを含み、光ファイバコネクタは顕微鏡本体に強固に取り付けられ、光ファイバコネクタは、光ファイバ端が顕微鏡の実像面内に配置されるように光ファイバ端を受けるために適している。
【0014】
特定の態様によれば、光学系は0.1未満、さらには0.05未満の像側開口数を有し、屈折光学コンポーネントは平坦で平行な面を持つ透明プレートを含み、このプレートは、顕微鏡の光軸と交差する少なくとも1つの回転軸の周囲で回転可能に取り付けられる。
【0015】
特定の態様によれば、プレートは例えばBK7型のガラスプレートであり、プレートの厚さは1~6mmである。有利な態様として、プレートの面の少なくとも1つは、例えば薄層から製作される反射防止コーティングを含む。
【0016】
他の実施形態によれば、共焦点絞りは、例えば0.22の所定の開口数NAを有する光ファイバ端により形成され、光学系は光ファイバのそれに合わせて調整された像側開口数を有し、屈折光学コンポーネントは、レンズと焦点面との間に顕微鏡光軸の回転中心の周囲で回転可能に取り付けられる収束レンズ、例えば平凸レンズを含む。有利な態様として、この例では、光学系の像側開口数は0.1より大きく、例えば0.2のオーダである。
【0017】
特定の有利な態様によれば、光学顕微鏡は励起レーザビームを生成するようになされたレーザ源を含み、共焦点絞りは、光学系と、ラマン散乱放射を検出するようになされた検出器との間に配置される。
【0018】
有利には、顕微鏡は不透明筐体を含み、共焦点絞りと屈折光学コンポーネントとは筐体の内部に配置され、屈折光学コンポーネントは並進及び/又は回転ステージに取り付けられ、前記ステージは光学機械的調整手段を含み、光学機械的調整手段に筐体の外側から到達可能である。
【0019】
有利には、光学系は顕微鏡対物レンズとチューブレンズとを含む。有利には、顕微鏡対物レンズは無限遠に物体の像を形成し、フーリエ面はチューブレンズの下流の物体の実像面と融合する。
【0020】
本発明はまた、対物面からの光ビームを集光し、集光した光ビームを顕微鏡内の光学系によってフーリエ面内に合焦させるステップであって、チューブレンズのフーリエ面は対物面の実像面と一致し、対物面と光学的に共役であり、フーリエ面は顕微鏡の光軸と交差するステップと、集光した光ビームを、光学系とフーリエ面との間に配置された屈折光学コンポーネントを通じて伝送するステップと、伝送した光ビームを、顕微鏡のフーリエ面内に配置された共焦点絞りに合焦させるステップであって、共焦点絞りは顕微鏡本体に関して固定されるステップと、共焦点絞りに関して合焦光ビームの横方向の位置を調整するために、屈折光学コンポーネントを、顕微鏡光軸と交差する回転によって調整するステップと、を含む光学顕微鏡検査方法にも関する。
【0021】
有利には、顕微鏡の光学系は顕微鏡対物レンズとチューブレンズとを含み、対物レンズは無限遠に対物面の像を形成する。
【0022】
自明なこととして、本発明の各種の特徴、代替案、及び実施形態は、それらが矛盾せず、又は相互に関して排他的でないかぎり、様々な組合せによって相互に関連付けることができる。
【0023】
さらに、本発明の非限定的な実施形態を示す以下のような図面を参照しながら行われる以下の説明から、本発明の他の様々な特徴が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図3】本発明のこの、他の実施形態の概略断面図である。
【
図4】レンズ型の屈折光学素子の回転により誘導される、平凸レンズの回転時に垂直な子午面内の焦点の変位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
これらの図中、異なる図面間で共通の構造的及び/又は機能的要素には同じ参照番号が付けられていることがある点に留意されたい。
【0026】
図1は、器具、例えば光学顕微鏡又はラマン顕微鏡の一部を示している。顕微鏡のフレーム又は本体、顕微鏡対物レンズ、検出系のいずれも、この図には示されていない。
【0027】
一般に、このような顕微鏡は、顕微鏡対物レンズと、鏡筒と、チューブレンズとを含む。顕微鏡対物レンズは、顕微鏡の対物面からの光ビームを集光する。対物レンズは一般に、無限遠の収差を補正し、コリメートビームを形成する。チューブレンズはコリメートビーム20を受け取り、顕微鏡の対物面と光学的に共役のその焦点面に像を結ぶ。共焦点顕微鏡では、共焦点絞りが前記焦点面内に配置され、光信号を空間的にフィルタ処理し、対物面の注目点以外の点からの信号を抑制する。
【0028】
図1には、光学系1と実像面12との間に位置付けられた顕微鏡部分だけが示されている。光学系1は、例えば、共焦点顕微鏡のチューブレンズを表す。共焦点絞り2は、光学系1の焦点面と融合する実像面12内に配置される。共焦点絞り2は、一般に、ディスク形状の開口を含む。開口径は一般に、20~100マイクロメートルである。例えば、直径30~50マイクロメートルの円形開口を有する共焦点絞り2が使用される。
【0029】
正規直交の参照フレームが
図1に示されている。顕微鏡の光軸10は、ここでは軸Zに平行である。
【0030】
本開示によれば、屈折光学コンポーネント3が光学系1と共焦点絞り2との間に配置される。例えば、
図1では、屈折光学コンポーネント3は、平坦で平行な面を持つ厚さdのプレートからなる。屈折光学コンポーネント3は、顕微鏡の光軸10と交差する少なくとも1つの軸の周囲で回転可能に取り付けられる。
【0031】
例えば、屈折光学コンポーネント3は、X軸の周囲で回転可能に取り付けられる。屈折光学コンポーネント3がX軸の周囲で回転することにより、フーリエ面における合焦ビームの位置をY軸に沿って変化させることができる。
【0032】
同様に、屈折光学コンポーネント3は、Y軸の周囲で回転可能に取り付けられる。屈折光学コンポーネント3がY軸の周囲で回転することにより、フーリエ面における合焦ビームの位置をX軸に沿って変化させることができる。
【0033】
有利には、屈折光学コンポーネント3はY軸の周囲及びY軸の周囲で回転可能に取り付けられて、フーリエ面12内の合焦ビームのX及びY位置を調整することができる。
【0034】
光学顕微鏡の横方向分解能は、使用される光の波長と顕微鏡対物レンズの開口数によって特定される。液浸されていない対物レンズの開口数は、1を超えることはできない。顕微鏡光学系により、共焦点絞り2の平面内にサンプルの実像が生成される。顕微鏡は、ここでは無収差光学系と考えられ、像空間内の開口数はアッベの正弦条件から推測することができる。横方向の倍率が50(100×の対物レンズと焦点距離F=100mmのチューブレンズ)の顕微鏡の場合、像空間内の開口数は1/50=0.02を超えない。この比較的低い開口数は、像を形成する光線の全てが光軸に関して多少傾斜することを意味する。ガラスプレート型の厚さdの屈折光学コンポーネント3を像面12の前に挿入しても、焦点品質はそれほど低下しない。周辺光線の入射角度はβで示される。角度βはここではYZ平面内にある。像空間の開口数が0.02であるとき、入射角βは約0.02radである。屈折率n=1.5、厚さd=5mmの、平坦で平行な面を持つガラスプレートにより生じる球面収差は以下のように計算される。
[式1]
【数1】
【0035】
軸方向分解能は、アッベの条件に従って以下、dZ=2λ/(NA2)のように推定することができ、ここでλは光ビームの波長を表し、NAは像空間内の開口数である。
【0036】
上記の数値例では、この推定により、波長λ0.5μm、ビームの焦点面での球面収差δs’約18.5μmの場合に約2.5mmの軸方向分解能dZが得られる。平坦で平行な面を持つプレートにより誘導される球面収差は限定的なままであり、焦点品質をほとんど劣化させないことが確認される。
【0037】
ガラスプレート3の顕微鏡の光軸10に関する傾斜角度はαとされる。例えば、
図1では、角度αはXZ平面内で表される。光学系1と共焦点絞り2(光ファイバ又は共焦点開口)との間に設置されたガラスプレートの回転により、フーリエ面とも呼ばれる実像面12内の光学系1により合焦される光ビームの位置を、検出系に向かって正確に調整することができる。ガラスプレートの角度αの傾斜に応じた焦点の変位は、次式により計算される:
【数2】
式中、displはフーリエ面12内の合焦ビームの変位を表し、nは平坦で平行な面を持つプレートの屈折率である。
【0038】
通常の実践においては、光は光ファイバ内で結合するための光ファイバのそれ(NA~0.22)に対応する像側開口数で合焦されるので、この単純な設計は一般的に使用されない。ここで、この場合、プレートにより誘導される球面収差は、傾斜光線については不可避であり、合焦に強い影響を与える。
【0039】
図2は、屈折光学コンポーネント3がガラスプレートであり、共焦点絞りが光ファイバのコアで構成される例示的実施形態を示す。ガラスプレート3は、光学系1、ここでは顕微鏡のチューブレンズと、その中に光ファイバ端が位置付けられる光学系1によって形成される実像の平面12との間に配置される。光ファイバは、コネクタサポート上に標準的コネクタ6によって固定され、コネクタサポート自体は顕微鏡フレーム、例えば顕微鏡本体に取り付けられるステージ4に強固に取り付けられる。ガラスプレート3は、線-点-面型の光学機械的支持部の上に取り付けられ、それによってプレートは顕微鏡の光軸10と交差する2つの軸で傾く。その目的のために、調整ねじ31、32はユーザによって顕微鏡の外側から到達可能であり、顕微鏡を開ける必要がない。有利には、光学系1、ガラスプレート3、及び光ファイバ端は顕微鏡筐体の内部に隠れたままである。光学系1と光ファイバ端とは顕微鏡本体に関して固定されたままである。向き付け可能なガラスプレートによってのみ、合焦ビームの光ファイバコアに関する位置の調整が可能である。プレートを数度回転させただけで、合焦光の位置は数十又は数百マイクロメートル移動し、他方で安定性、高い正確さ、及び調整しやすさが確保される。厚さ5mmのBK7ガラスプレートに±3度の角度αの傾斜を適用すると、高い焦点品質を保ったまま、焦点を±50マイクロメートル横方向に移動させることができる。
【0040】
他の実施形態において、特定の顕微鏡機能は、光ファイバへの放射入射をファイバの開口数と同等の像側開口数で調整することを必要とする。この実施形態では、屈折光学コンポーネント3が平坦なプレートであることは不可能であり、これは、収束ビーム内の平坦プレートの球面収差が、合焦対物レンズの軸方向分解能と同程度及びそれよりはるかに高い容認不能な値に到達するからである。この場合、平坦で平行な面を持つプレートの代わりに収束レンズが使用される。例えば、平凸レンズが使用され、これは、
図3に示されるように、球凸面ディオプトリが放射源側に位置するように取り付けられる。この収束レンズは、光軸10の回転中心Oの周囲で回転可能に取り付けられ、回転中心Oはレンズ3と焦点面12との間に位置付けられる。収束レンズの回転により、光学系1の焦点面12内での合焦ビームのY及びZ位置を調整できる。さらに、収束ビームにおいてレンズの厚さにより生じる球面収差は、凸面ディオプトリの球面収差について補償できる。回転軸は、回転中心Oにおける顕微鏡の光軸に関して横方向であり、レンズの球面と焦点面(光ファイバ端)との間でレンズ回転中の球面収差を最小にするように適当に選択される。
【0041】
図4は、
図3に示される実施形態に関して説明した装置の、それぞれ異なる数値の傾斜角度α、すなわち0度(点線の曲線)、1度(破線の曲線)、及び3度(実線の曲線)での動作の解析結果を示す。グラフの横軸は焦点位置をミリメートルで示す。縦軸は、問題の光線の開口数、換言すれば像面12への光線の入射角に対応する点を表す。グラフの水平軸から最も遠い点は、像側開口数NA=0.23の限界半径に属する。ビーム光線に関するレンズの傾斜によって引き起こされる光軸に沿った焦点の変位は、グラフ上で、レンズの3つの傾斜に関するビーム光線の開口の関数として明らかに見ることができる。傾斜レンズ系は、もはやセンタリングされた系ではない。レンズの回転軸に垂直な子午面の半径+β及び-βは光軸と異なる点で交差する。この解析のために、Edmund Opticsが販売する#45-260のレンズ3が使用されている。これはn-BK7ガラス製の、中心厚さ3mm、第一の表面の半径R1が51.68mmの平凸レンズ(PCX)である。計算は、開口数NAが0.22の対物レンズ1により合焦される波長529nmの光について行われる。正レンズ3は、像側開口数を0.23まで増大させる。回転中心Oはレンズ3と(光ファイバ端が位置付けられる)像面12との間に設置され、レンズ3の凸面の頂上部から5.1mm、像面12から1.5mmにある。例えば、カルダン継手又は同様のメカニズムが、レンズの回転運動を生じさせるために使用される。レンズが±3度傾斜すると、焦点は横方向に±50マイクロメートル移動し、球面収差が±1マイクロメートルまで限定されることになる。しかしながら、モノクロ収束ビーム内に設置されたレンズが合焦品質に与える有害な影響は無視できる程度であることが確認されており、これは、収差の合計値がほぼ1マイクロメートルを超えないからである。
【0042】
本発明の提案による微調整の技術的利点は、光軸に沿ってマイクロメートルレベルの範囲に合焦状態を保ちながら焦点位置を光軸と交差する方向に数十マイクロメートル調整するために、小型の屈折光学部材3(プレート又はレンズ)を比較的大きく角度運動することで得られる。調整可能な屈折光学素子の質量が小さいことにより、装置の安定性及び振動負荷に対する抵抗力が確保される。
【0043】
もちろん、添付の特許請求の範囲内で、本発明に様々な変更を加えることができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系(1)と共焦点絞り(2)とを含む光学顕微鏡であって、前記共焦点絞り(2)は前記顕微鏡の光軸(10)と交差する前記顕微鏡のフーリエ面(12)内に配置され、前記フーリエ面(12)は前記光学系(1)を介して対物面と光学的に共役であり、前記共焦点絞り(2)は前記顕微鏡の本体に関して固定され、前記顕微鏡は前記対物面からの光ビーム(20)を集光することができ、前記光学系(1)は、前記光ビーム(20)を前記フーリエ面(12)内に合焦させ、前記光ビーム(20)の少なくとも一部を前記共焦点絞り(2)を通って射出させるようになされた光学顕微鏡において、前記光学系(1)と前記共焦点絞り(2)との間に配置された屈折光学コンポーネント(3)を含み、前記屈折光学コンポーネント(3)は、前記共焦点絞り(2)に関して前記合焦光ビームの横方向の位置を調整するために、前記顕微鏡の前記光軸(10)と交差するように回転可能に取り付けられることを特徴とする光学顕微鏡。
【請求項2】
前記共焦点絞り(2)が共焦点開口を含む、請求項1に記載の光学顕微鏡。
【請求項3】
前記共焦点絞り(2)が、マイクロメートルレベルの断面寸法のコアを有する光ファイバの端により形成される、請求項1に記載の光学顕微鏡。
【請求項4】
光ファイバコネクタを含み、前記光ファイバコネクタが前記顕微鏡本体に強固に取り付けられ、前記光ファイバコネクタが、前記光ファイバ端が前記顕微鏡の実像面(12)内に配置されるように前記光ファイバ端を受けるために適している、請求項3に記載の光学顕微鏡。
【請求項5】
前記光学系(1)が0.1未満の像側開口数を有し、前記屈折光学コンポーネントが平坦で平行な面を持つ透明プレートを含み、前記プレートが、前記顕微鏡光軸と交差する少なくとも1つの回転軸の周囲で回転可能に取り付けられる、請求項
1または2に記載の光学顕微鏡。
【請求項6】
前記プレートがガラスプレートであり、前記プレートの厚さは1mm~6mmである、請求項5に記載の光学顕微鏡。
【請求項7】
前記光学系(1)が、前記光ファイバのそれに合わせて調整された像側開口数を有し、前記屈折光学コンポーネントが、前記光学系(1)の前記レンズと焦点面との間に前記顕微鏡光軸上の回転中心の周囲で回転可能に取り付けられる収束レンズを含む、請求項3に記載の光学顕微鏡。
【請求項8】
励起レーザビームを生成するようになされたレーザ源を含み、前記共焦点絞りが、前記光学系(1)と、ラマン散乱放射を検出するようになされた検出器との間に配置される、請求項
1または2に記載の光学顕微鏡。
【請求項9】
不透明筐体(4)を含み、前記共焦点絞り(2)と前記屈折光学コンポーネント(3)とが前記筐体の内部に配置され、前記屈折光学コンポーネント(3)が並進及び/又は回転ステージ(30)に取り付けられ、前記ステージ(30)が光学機械的調整手段(31、32)を含み、前記光学機械的調整手段(31、32)に前記筐体(4)の外側から到達可能である、請求項
1または2に記載の光学顕微鏡。
【請求項10】
前記光学系(1)が、顕微鏡対物レンズ及び/又はチューブレンズを含む、請求項
1または2に記載の光学顕微鏡。
【請求項11】
光学顕微鏡検査方法であって、
対物面からの光ビームを集光し、前記集光した光ビームを顕微鏡内の光学系(1)によってフーリエ面内に合焦させるステップであって、前記フーリエ面(12)は前記対物面と光学的に共役であり、前記フーリエ面(12)は前記顕微鏡の光軸(10)と交差するステップと、
前記集光した光ビームを、前記光学系(1)と前記フーリエ面(12)との間に配置された屈折光学コンポーネント(3)を通じて伝送するステップと、
伝送した前記光ビームを、前記顕微鏡の前記フーリエ面(12)内に配置された共焦点絞りに合焦させるステップであって、前記共焦点絞り(2)は前記顕微鏡の本体に関して固定されるステップと、
前記共焦点絞り(2)に関して前記合焦光ビームの横方向の位置を調整するために、前記屈折光学コンポーネント(3)を、前記顕微鏡光軸(10)と交差する回転によって調整するステップと
を含む光学顕微鏡検査方法。
【国際調査報告】